旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/01(月) 00:13:22.02 ID:5yqL2vk0<>まだテンプレもないような状態

スタッフ様は全職種大歓迎です<>【スタッフ】ハイロア(仮)ってゲームを製作するスレ【募集・歓迎】 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/01(月) 00:19:48.68 ID:5yqL2vko<>ttp://127.0.0.1:8823/thread/http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1243753172/

近未来、限りなく人間に近い高度な知性を持ったロボットがいる世界
この世界の人々はロボットが人間になりすましているのではないかと言う疑念に駆られている
それを少しでも緩和しようと政府はあるイベントを開く
10人の人間と10人ロボットを一定期間どこぞの閉鎖空間、もしくは閉鎖都市で共同生活させる
選ばれた人間は誰がロボットで誰が人間なのかを当てなければならない
ロボット側が当てられた率が低ければ低いほど開発した企業への莫大な賞金がある
主人公はひょん事からこのイベント(大会)に参加することになる

こんな感じ 主人公もロボットでしたってミステリにしたり企業と政府の癒着を描いたり
近未来の科学が進んだ世界なので科学力ということでちょっとしたファンタジーもOK
キャラをテンプレ化したり生活を通しての恋愛模様を描くもよし、エロ展開もあり
広げすぎかな まぁ何でもあり ちなみに異星人がいたりとかもOK <> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/01(月) 00:20:26.57 ID:5yqL2vko<>ロボットのいる世界、農業用や工業用のロボットは見るからに機械というような外見をしているが
人間の日常に近い介護用や家事手伝いロボ達は人類との外見的差異はもはやない
当然それらのロボット達は目立つ首飾りなどをして誰の目にもロボだとわかるようにされている。
更にロボ達には感情はなくデータベースと演算機能に頼り感情があるよう見せてるに過ぎないと公式には発表されている。
しかし技術開発目的で作られたロボの中には年を取る機体も存在し、人々の中では既にロボ達が人間社会に溶け込んでいる
との噂や疑念が後を絶たない。 【ここまで世界観設定】
      ↓
主人公は(ヒロインの幼馴染【仮】と)ある実験に参加する事となる
(主人公の特殊技能はロボットと人間を見分ける能力とかどうだろう ただし感情有は無理)
      ↓
感情のあるロボットを確認する ここでそのロボとひと悶着
      ↓
人類滅亡主義者や政府などお偉いさんの思惑が働いてると感じる
      ↓
この実験の目的は感情を完成させることだと思う(主人公) あと自分がそのロボットかもしれないとかうんぬん
      ↓
ヒロインは感情のあるロボットだとわかる
      ↓
更に感情有りロボとひと悶着 ロボットの方が人間にくらべより優性であるとかそういう思想うんぬん
      ↓
結局この実験の目的は感情有のロボット達を危険だと感じた人たちによる結果ありきの実験
この問題 (ロボットの感情うんぬん) の決定権をもつ人 (まぁ偉い人、今となってはあんま重要じゃない)
への働きかけ (工作みたいなもん) のために過ぎなかった
      ↓
ヒロインは感情を切られ感情のないロボへ
      ↓
おしまい <> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/01(月) 00:25:21.21 ID:5yqL2vko<>ttp://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1243753172/
ゲ ー ム 作 ろ う ぜ
というスレを建てる
    ↓
色々諭される
    ↓
ノベルゲーを作ることにする
    ↓
>>2-3が暫定的な世界観、設定
他にも色々案があるので詳しくは上のログを
----------
まだここまで

一応シナリオ(ライター)してもいいという方が
二人います ←実際はわかりません
あと1    ←コレは確実です
スタッフはまだそれのみ<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/01(月) 00:46:45.33 ID:AJGsX9Qo<>製作速報からきました
チューリングテストをモチーフに恋愛を主題においたゲームってことか
おもしろそうだねー。シナリオか音楽で関わらせてーww<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/01(月) 00:48:03.90 ID:AJGsX9Qo<>あ、一行目は気にしないでくださいww
VIPのほうに書き込もうかと思ったけど規制されてたから結局こっちに書き込んだだけなのでww<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/01(月) 18:56:07.72 ID:5yqL2vko<>>>5-6
どちらでもかまわないのでぜひぜひ

ゲ ー ム 作 ろ う ぜ【ハイロア】
ttp://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1243850011/

建てました
<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/01(月) 19:29:38.71 ID:5yqL2vko<>wiki(まとめ)ページ作りました
ttp://www12.atwiki.jp/hairoa/<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/01(月) 20:36:39.93 ID:FYStDmko<>             /  ,  -――――-     \
            /   /           \   ヽ
川川川川川 l/   厶-――――――‐-、 '、   \ヾ川川川
.         彡   /  /   {  {   {  \〉   ミ
         彡  /{ ∧{, ∧ 、∧| ∧  |   三 マ  そ
  設  自  三  丁W ̄「 / ∨ ̄∨ ̄W|   三 ジ  ん
  定  分  三 { .レィ≠ミ、{      ィ≠ミ/ |   三 な  な
  を   の   三 W ト':::::|      ト':::::| Y   三 顔
   :  考.  三  {{ 辷リ      辷リ }}  | 三 で
.      え   三| ∧     ′      /  │ 三  :
.       た  ミ | ト_>u          厶イ  | 三
.          ミ | |   \   ‘ `    イ  |  ,  |彡
. 川川川川ヾ\ | |    >   _,.  ´ 几 / / │//川川川
              | |   | r∧      / ∨/ l   |
             ト、|   ∨/ \  /   〉卜、|  |
            | ヽ//│ /弋^ス   / |  \ |<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/02(火) 01:16:43.72 ID:vnWrW.Yo<>ちょっとだけ進みました
でも一歩進んで0.8歩下がるといった感じです

こっち先に見た方はwikiがあるので
ttp://www12.atwiki.jp/hairoa/

あとこっちのスレに色々書いてくれるのも全然かまわないですよ<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/02(火) 20:59:35.32 ID:VMooiSs0<>今日はスレ立ってない?
それとも落ちた?<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/02(火) 21:36:16.37 ID:Il6XMv20<>多分立ってないんじゃないかな<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/03(水) 01:44:52.29 ID:Kk9qlU6o<>立てろよw<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/03(水) 12:21:02.24 ID:xerP1VE0<>設定は面白いけど、それに比べてストーリーが薄いキガス<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/04(木) 23:05:07.01 ID:xerCUBs0<>もう放置か…。やることやって飽きたのかね<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/05(金) 03:42:47.10 ID:cfswDfo0<>>>1 >>2 >>3
は結構好きな設定だ…

だけど、その設定は在りがち、とも思う…

>>1
はニューロマンサーや電気羊の系譜からのブレクスルーを望んでるの?

それとも、単純に知らなかったの?<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/05(金) 05:23:29.97 ID:Ocrz2JAo<>近未来、限りなく人間に近い高度な知性を持ったロボットがいる世界

農業用や工業用のロボットは見るからに機械というような外見をしているが、
人間の日常に近い介護用や家事手伝いロボ達は人類との「外見的」差異は「もはや」ない。

表層的には人間と変わりないように作られているそのロボット達にも実はある識別方法があるらしい。
一方、人々の中では既にロボ達が人間社会に溶け込んでいるとの噂や疑念が後を絶たない。
それをうけ、メディアが「この世界の人々はロボットが人間になりすましているのではないか」と言う疑念を煽る。

メディアの煽動と人々の不安を打破すべく、政府が一計を案じる。
「ロボット」なのか「人間」なのかわからない13人を閉鎖空間で共同生活させ「ロボット」なのか「人間」なのかをメディアを通じ投票させる。
ロボット側が当てられた率が低ければ低いほど、開発した企業へ政府からの莫大な支援金があるが実はメディアは企業の意向に沿った報道しかしていない。

政府はあくまで、メディアによるリアリティー番組、との体をとっているが実は政府内の、それを構成している官僚達の権力党争に過ぎなかった…

これは以前vipのスレで有志が改変してくた文な。

>>16

たぶんそういう次元では考えてなかったと思うよ。
好きな人にとってはありきたりだろうけど、最近はメジャーなジャンルじゃないからね。<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/05(金) 06:31:11.16 ID:S8no0nIo<>おもしろそうだな
参加してみたいけどどうなってるんだろう<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/05(金) 12:55:05.53 ID:wsqf43Ao<>1です
すいませんすいませんすいません

近々に資格試験が迫っている事に重ね
ちょっとしたゴタゴタが続いてしまいスレ建てできませんでした

こっちのスレだけにでもその旨書いて置くべきでしたね
まことにごめんなさいごめんなさいごめんなさい

それで恥の上塗りならぬ勝手の上塗りとでも言うか
要するに大変自分勝手な事ながら上で申しました
資格試験なるものが終わる時分、ずばり14日その日まで
まとまった時間が取れそうにありません
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

普段はすごく暇なんですけどね・・・
このスレは毎日見て適宜カキコもするので
しばらくはこっちonlyという事でおねがいしまごめんなさい<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/05(金) 13:18:45.44 ID:wsqf43Ao<>wikiトップページを更新して
>>17も載せておきました↓

ttp://www12.atwiki.jp/hairoa/<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/05(金) 14:17:33.92 ID:wsqf43Ao<>>>16,17
その二作品は読んだことはないですが
どんな物語かは一応知っています

>>2の時点ではそれらについてまったく考慮していませんでしたが
>>3は電気羊などそのジャンルを結構意識して考えたつもりです、ブレイクスルーを望んでるのかはよくわからないですが。
「結局、全て杞憂に過ぎなかった」
というラストは、こういうジャンルでよくある管理社会や管理する側の想像もつかない意志など
そういう陰謀的なものは、始めからありもしなかったものでした。
主人公やこういうジャンル自体に事前イメージを持つ読み手の幻想でした。という意味合いのつもり、かな。

なので、ラストについては「主人公も実はロボ・・」とか「実は第3の意志が存在して・・・、全部アイツの・・」
のような含みは残さず、こうこうこうで、こうでした。としっかり話をつけたいと思います。

一連の物語は
人類全体に関わる何か、そこで起こっている何かを主人公、読み手が垣間見た話。 とかではなく
週刊誌が真実を知れば大々的なゴシップとして取り上げる程度のこと、話。 だったと。
その中で主人公やヒロイン、周りの人物達にとっては重大な出来事であり
ちょっと切ない恋愛物語といて話を展開できたらいいな、と。こんな感じです。
一文で表すと「SFの傘をさしたギャルゲに、雨なんて降ってないよと言ってあげるお話」・・変ですね

全部あくまで1の考えたのは、って話であってもちろんこうである必要はないと思います。<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<><>2009/06/05(金) 19:47:50.85 ID:s/jUZdY0<>お、>>1来てたのか
vipでは人集めを主にやるとして、14日まではどうするよ?
設定煮詰める?<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/05(金) 23:46:02.36 ID:.wB5h0E0<>登場人物として殺人狂の男を出してくれww

男は殺しを行うことで、人々の悲鳴や恐怖を感じ、快楽を得ていたんだが、ロボットには全く興味がなかった
ロボットには感情がないと思うし、作り物の悲鳴を聞いても面白くもなんともない

しかしある日、感情がある(らしい)ロボットに出会う
男はそのロボットを襲い、危害を加えようとするが、直前で手を止める
例えロボットに感情があったとしても、それが何者かに作られたモノであることには変わりない

誰かが作った偽物のニンゲンを、本物のニンゲンと見立てて壊し、欲求を満たす
それをやってしまうと、己が小さくなってしまう。そんな気がした
ロボットを作っているやつらに踊らされることになる気がした
他人を躍らせるのは好きだが、他人に踊らされるのは大嫌いなのだ

とかなんとかそんな感じでww<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/06(土) 03:47:39.08 ID:hDIKR7k0<>>>17 転載ありがとね

>>1の原案をまとめただけなならいざしらず
さらに改編して >>17 にしちゃったのは…
酔っ払った俺です、ゴメンナサイ…

そして、さらにゴメン…

>>16 も、酔っ払った俺なんだよ…
ホントごめん…

で、>>1へのお願い
まあ、俺のワガママなんだけどね…

過去のSFでは自己「批判」や自己「否定」を描いた事は結構あると思うんだ…

だからこそ、もう一歩進みたい…<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/06(土) 12:38:01.48 ID:ZlD9UCM0<>おぉ、>>1戻ってきてたのか
急性虫垂炎にでもなって、入院してるんじゃないかと心配してたよ


>>24
じゃあ倫理について書いてみようか?
ロボットを作る側と所有する側、また感情を持っているロボットの権利についてとかさ
<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/06(土) 16:18:35.78 ID:EfNo2eko<>>>22
そうですね、設定煮つめるとかでいいと思います
>>23
おおこういう具体的なのはすごいうれしいし、わかり易いです
まったくそのままと行かないかも知れませんが
ぜひ使わせてもらいたいです
>>24
そのもう一歩は道筋がないもう一歩ってことだよね
当然だけど一歩が難しいな
>>25
ただの怠慢でした・・・
色々書いてくれればなんでもプラスになるので
ぜひぜひ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/06(土) 16:30:21.47 ID:XlTRhwAO<>指図されながら作るとまともなもんが出来ない。
そいつらにとっては助言のつもりだろうけど、ぶっちゃけ足かせ。
重荷。
ああしろこうしろなんざ、はた迷惑。
だからある程度>>1の自由に作った方が良いよ。


という俺もまあそういう輩と同じになっちゃうから、まあ心の隅にでも置いといといてくれ。<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/06(土) 18:18:30.63 ID:Wu2SEZwo<>>>27
勘違いしてないか?
指図? 足かせ? 重荷? はた迷惑?
個人が、自分の為に自分だけで作りたいならば、当てはまるかもしれない
他人と製作するという行為でそう感じる人間は小説やイラストをやっていればいいと思う
とりあえず、ここに指図している人はいないよ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/06(土) 18:52:58.29 ID:XlTRhwAO<>身に覚えがあるからそうやって反応するんだろ?
自分が言われたわけじゃないのに、自分のしてきたことに当てはまった気になって言い返してしまう。
しかも、特に反論するようなことでもないのに。
悲しいよな。
まあ、スレチだからもう何も言わないけどね。<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/06(土) 18:57:06.34 ID:MOy1C1o0<>きめえwwwwwwww<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/06(土) 19:16:59.62 ID:Wu2SEZwo<>>>29
俺もこれで最後にするけど、
人の話を聞かないで、自己完結するならレスするなよ
>>27のレスを見て、勘違いする人が減ればいいとおもってレスしただけだよ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/06(土) 20:03:09.53 ID:MOy1C1o0<>いいからお前らもアイディア出せよww

>>26
>>23だけど、もちろんいくらでも改変してくれてかまわないんだぜww
嵐の日ってちょっとワクワクする。毎日天候悪いとウザいけど。そういう刺激をくれるキャラであってほしいなww<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/08(月) 00:47:58.55 ID:1cPUG4Ao<>>>27->>31
ちょっと荒れてたのかな
こんなこと言ったら蒸し返してだめか・・

ただ自分にはどちらも絶対間違ってるって事は言ってないと思うので
なんとも言えないです。
とりあえず穏便に行きましょう

>>32
なるほど・・・
わかったようで・・・わかったかな。うん<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/08(月) 03:27:39.68 ID:vI1z4Sw0<>やっぱ、企画の方向性としては>>1 が物語をどうオトしたいのか?
被体験者にどう考えさせたいのか?
ってのに尽きるのかも…

>>3 を読んだ限りは、やっぱ
「自己」や、それらの境界を成すはずの「他」のとの境界認識、
そして、その認識は時代や環境によって揺らいでしまう…
という事を描いて欲しいかな…
<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/09(火) 03:50:11.66 ID:3cKzboM0<>やっぱ、>>1 の>>、1 なりのオチを一度聞いてみたい<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/13(土) 11:34:39.68 ID:OYTr/Js0<>明日試験なのかな。がんがれ>>1!<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/13(土) 23:55:14.14 ID:9VHn7QEo<>>>34,>>35
勉強に集中するあまりこっちの内容が忘却の彼方へ・・・
なんて・・・彼方は言い過ぎですね此方は近いのでくなたくらいでしょう
でも実際ちょっと忘れてしまってるかも・・
>>36
ありがとおおおお
ガンガル<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/14(日) 00:26:18.33 ID:qQgvlF60<>明日から活動再開でおk?
VIPにスレ立つの?<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/15(月) 20:15:48.31 ID:k2zyX8U0<>楽しみなんだがなあ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/16(火) 00:20:58.49 ID:BqVYjMMo<>1は見事に規制されているようです
プロバ別スレによるともうすぐ解除ではないかとのことなので
様子見てみます<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/18(木) 02:41:35.98 ID:9dk3uF60<>じゃあ >>1 の復帰を望みつつ…

>>1 が居ない間に勝手に進めちゃおうぜ!

まずは >>1 に代るまとめ役募集!<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/18(木) 03:36:51.99 ID:ysn1BKMP<>製作速報って外部板扱いだから規制は関係ないと思うんだが
<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/18(木) 11:09:14.48 ID:gXHCDlM0<>規制云々はvipのことじゃないの? ここには普通に書き込めるだろ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/18(木) 14:23:20.73 ID:6lYywcUo<>俺も毎日チェックしてるんだけどなー
>>1よいずこに<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/18(木) 15:10:26.59 ID:RCS3yeIo<>1いますよー
まだ規制されてるみたい・・・<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/18(木) 22:02:36.07 ID:EGlqb/Q0<>わかったからソース貼れよクズ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/18(木) 23:09:28.48 ID:RCS3yeIo<>1であるソース?
それとも規制されてる事のソースかな<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/21(日) 02:21:17.53 ID:vZQtxJIo<>規制解除されました
といってもほとんど進まないまま3週間が過ぎてしまった上
まだ正式なスタッフさんもいない状況

このレスすら誰も見ていないだろうし
とりあえずノベルなのかADVなのかとか
そういう根幹の部分を決めようと思います<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/21(日) 13:52:19.82 ID:G4lVf.6o<>俺は見てるから心配すんんな<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/21(日) 16:12:08.99 ID:jnLdnMU0<>見てるってばよ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/21(日) 23:20:56.18 ID:ZZDecgYo<>>>48
そこは多分根幹じゃないだろww<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/22(月) 03:45:07.57 ID:Iyk1QaYo<>>>5で書き込んだ者だけど俺も見てるよww<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/24(水) 23:02:37.11 ID:n85N9bA0<>そして時は動き出す<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/26(金) 14:05:27.27 ID:BMiD0e20<>レス見てないのは>>1のほうだってことでおk?<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/27(土) 23:59:37.52 ID:ncuiyNoo<>面白そうだと思うんだけど>>1逃亡かよ<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/28(日) 01:05:57.55 ID:kGhkt.Y0<>なんか SF好きが集まってるみたいだから、妄想を続けようぜ!

もう >>1 は無視の方向でイイんじゃね?

とりあえずストーリーベース(舞台設定)は >>1 発の >>2 を元に、
「テーマ」と「どう落としたいか」を各自書き込め!

もちろん、改編、付け足し、ちゃぶ台返しも OK!<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/06/28(日) 01:13:32.03 ID:RlpNvCQP<>来月くらいに、萌え化したアンドロイド娘と
恋愛する近未来ADV企画になってたりしてな


いや、まさか、そんなことは…<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/28(日) 01:49:48.63 ID:kGhkt.Y0<>と言う訳で、まずは俺から!
ちなみに、俺はフィリップ・K・ディック好き…

だが、彼の気に入らない所は、
「問い」を投げっ放しで、「答え」を
読者任せにしている(様に感じる)事だ…

「自分とは?」、「人間とは?」、「生命とは?」
そんな問いかけをされたら、アナタはどう答えますか?


と、言う分けで…

テーマ
「アナタが愛したモノ(者、物」)と、「愛してくれたモノ(者、物)」との境界線を
各ユーザ毎に線引きしたいでっす!

オチ
1. 「アナタが愛した"アイツ"は物(ロボ)でした」 (ありがちだが…)
2. 「アナタを愛してくれた"あの人"は物(ロボ)でした」 (アナタが「物」だったと仮定して、「親」や「恋人」などから愛されているなら、それにどう答える?)
3. 「アナタが愛するに足る存在(人か、そうでないか)」として「人である必要があるか?」 (と投げっぱなし?)

等のマルチエンディング AVG ゲームを目指します!

まあ、ゲームは無理でも、ゲームブックぐらいにはしたいなぁ…
<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2009/06/28(日) 02:39:17.15 ID:EagvOgw0<>近い未来

エロゲ規制→ロボットなら良いんじゃね

あ、あれ?<> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:23.76 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:24.43 ID:xXBmnJAo<> 頷いてから、沙耶は問いかけるような眼差しで僕の目を覗き込んできた。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:25.41 ID:xXBmnJAo<> 脱力しきった両足では体重を支えることもできず、瑶はそのまま床に倒れ込んだ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:26.08 ID:xXBmnJAo<> 耕司の車に乗って帰る誘惑にも駆られはしたが、それでは画龍点睛を欠く。耕司の死体もろとも、あいつの自動車まで隠匿できる場所として、この別荘は完璧だったのだ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:26.46 ID:xXBmnJAo<>「なぁ、それって俺とお前の役回りが逆じゃないのか?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:26.68 ID:xXBmnJAo<> 意図して言葉に失笑を交え、耕司はたったいま目にしたものを貶(おとし)めることに腐心する。奥涯の本宅で見た骨の山や、郁紀の家で嗅いだ正体不明の悪臭については、つとめて思い出すまいとした。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:27.07 ID:xXBmnJAo<> 悲鳴を上げた洋佑が床から起きるよりも早く、さらに無数の手らしきモノが彼の腕と脚に絡みつき、洋佑の自由を奪う。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:27.61 ID:xXBmnJAo<> 青海の一件を担当することになった刑事が聞き込みに来たときも、耕司は別れ際に彼女が告げた目的地について、『N区S駅』とまでは正確に答えたが、その先は曖昧に濁していた。目的についても知らないと言い張った。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:27.69 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:28.19 ID:xXBmnJAo<>「なぁ津久葉……」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:28.72 ID:xXBmnJAo<>冷たく軟質の感触が洋佑の上に乗り上げてくる。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:29.56 ID:xXBmnJAo<> 最後のテキストを見届けて、僕はそのまま携帯を外に戻した。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:29.92 ID:xXBmnJAo<>「ああああああッ!!」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:30.57 ID:xXBmnJAo<>「なぁ、それって俺とお前の役回りが逆じゃないのか?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:30.84 ID:xXBmnJAo<> そうやって三ヶ月。泣いて、泣きはらして、今は嫌悪だけが残った。耕司らしき肉塊と青海らしき肉塊と瑶らしき肉塊に囲まれて、僕は以前と何一つ変わらない素振りを装って茶番を続けている。それが課題だ。こいつをこなせなければ僕はまた病院に送り込まれるだろう。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:31.18 ID:xXBmnJAo<>「家族はもういないから、部屋はいくらでも余ってる。人目を忍ぶような必要もないし、住み心地もそんなに――悪くないんじゃないかと――」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:31.49 ID:xXBmnJAo<>「どう……って?」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:31.81 ID:xXBmnJAo<> だが右足は僕に跨られ、左足は僕の両手に抱えられ、がっちりと横位の姿勢で固められた瑶の下肢は、大きく拡げられたまま動かすこともできない。いくら上体だけを捩(よじ)っても、彼女が僕の腰から解放されることはない。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:32.12 ID:xXBmnJAo<>「どういう意味です?」
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:32.62 ID:xXBmnJAo<>「いや、別に」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:32.88 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:33.13 ID:xXBmnJAo<> 汚しては洗い、洗っては汚し、を繰り返してきた生活の証。だがいったい、毎日どんなものを拭き取るのに使っていたら、ああいう色に染まるのだろうか。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:33.65 ID:xXBmnJAo<> 恋人同士が普通に楽しむ二人の時間を、耕司と青海もまた楽しんでいる。それは決して妬くようなことではない。瑶はたまたま運が悪かっただけだ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:33.76 ID:xXBmnJAo<> むろん今の僕の指使いは、『ほんの少し』なんていう程度のものではない。左右とも両手の人差し指と親指の二本で乳首をつまみ上げ、捻り潰すようにして転がしてやると、瑶の悲鳴はますます甲高く、息づかいも激しくなっていく。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:34.25 ID:xXBmnJAo<> 体表の半ば近くを引き剥がされたその身体から、中身が――およそ生物の組成とは思えないような毒々しい色の液体や粘液や脂が、逆流するようにして噴き出した。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:34.77 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:35.02 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:35.55 ID:xXBmnJAo<> 事実がどうあろうと彼らには興味ない。彼らが関知するところではないんだよ。小説より奇なる事実、なんてものは」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:35.88 ID:xXBmnJAo<> とうぜん事故にあった時の怪我はもっと酷かったんだろうが、相手から故意に与えられた痛みを受け止めるという体験は、今回の骨折がいちばんの重傷だ。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:36.70 ID:xXBmnJAo<>『ナァ郁紀、オ前ハドウ思ウ?』
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:36.95 ID:xXBmnJAo<>「今まではどうであれ、これからの君の人生に、その二人は一切関わりを持たないだろう。断言してもいい」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:37.86 ID:xXBmnJAo<>『彼女はね、念願叶ってようやく僕の持ち物になったんだよ。お前と青海のお膳立ても、ようやく実を結んだわけだな』
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:37.96 ID:xXBmnJAo<>「どう……って?」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:38.36 ID:xXBmnJAo<> 何事もない風を装ってそう笑う、その笑顔さえもが引きつって見える。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:38.74 ID:xXBmnJAo<> 耕司は悲鳴を上げながら、ただ己の指先にのみ救いがあるかのような錯乱に囚われて、遮二無二(しゃにむに)、引き金に絡んだ指を屈伸させた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:39.15 ID:xXBmnJAo<> 横倒しにされた瑶の脇腹に沙耶は馬乗りになると、瑶の腰骨のあたりに花芯の蕾を押し当てた。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:39.43 ID:xXBmnJAo<> 耕司は、ついに自分が何も取り戻せなかったことを知った。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:39.87 ID:xXBmnJAo<>「ご――しゅじん――さま?」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:40.11 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:40.77 ID:xXBmnJAo<> さらにもう一つの仮定を積み重ねる。とある疑問を解くために――すなわち、一体どうして青海は郁紀の家へ行こうなどと急に思い立ったのか、という疑問。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:40.86 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:41.40 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:41.51 ID:xXBmnJAo<>「彼女、僕の家に来る途中でいなくなったんだろう? もちろん僕だって心配だよ」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:42.09 ID:xXBmnJAo<> 
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:42.46 ID:xXBmnJAo<> ここで一息ついて甘えて休息を許せば、もう二度と彼は、この一件に立ち向かうだけの勇気と意志力を発揮することはできないだろう。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:42.90 ID:xXBmnJAo<> ――彼の部屋に書物を運び込むだけで一日を費やす。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:43.23 ID:xXBmnJAo<>「さあ、どうだかな。どうだっていいことだろう」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:43.42 ID:xXBmnJAo<> 純粋な酸素が生体にとって有害であるように、剥き出しの真実は、ヒトの精神を破壊する。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:44.65 ID:xXBmnJAo<> だが今は、まるきり絶望しているわけではない。こんな僕にも希望はあった。たった一縷(いちる)の希望が。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:44.96 ID:xXBmnJAo<> 僕は自分の嘘偽りない心境をどうやって言い表したものか、途方に暮れながらも切り出した。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:45.51 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:45.83 ID:xXBmnJAo<> 分からないが、それがこんなにも沙耶の身体を苛(さいな)むことだというのなら、見過ごせるわけがない。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:46.17 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:46.37 ID:xXBmnJAo<>「教えてくれ……どうすれば、君を失わずにいられる? 僕は何をすればいい? どうやって君に報いればいい?」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:46.88 ID:xXBmnJAo<>「どうだろうな。――今日の診療で、先生に聞いてみる」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:47.00 ID:xXBmnJAo<>『青海のことは本当に知らない。彼女は僕の家まで来ていない。でも瑶は――』
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:47.53 ID:xXBmnJAo<> アパートにも帰宅した形跡はなく、実家でも心当たりはないという。青海の両親はすでに捜索願を出している。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:47.80 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:48.15 ID:xXBmnJAo<> 一週間前の夕刻に、やはり沈黙したままの呼び鈴を前にして、同じように青海が途方に暮れていたことを、もちろん瑶は知る由もない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:48.80 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:49.33 ID:xXBmnJAo<>「じゃあ、俺、行くわ」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:50.20 ID:xXBmnJAo<> 成すすべもない瑶の両胸を、侵入者は容赦なく揉み上げ、搾り、おぞましい刺激に竦(すく)み上がって凝った乳首に吸着して翻弄する。自分の肌を舐め上げられるズルズルと湿った音が、胸の谷間から瑶の耳に届く。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:50.45 ID:xXBmnJAo<> 本当の悲劇は、視力が回復してからだった。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:50.72 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:51.60 ID:xXBmnJAo<>「その人にやったのと逆のことを、郁紀にしてあげればいいだけ。とっても――簡単なことよ」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:51.60 ID:xXBmnJAo<> 沙耶は言葉を切り、深く息を吸ってから、言った。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:52.61 ID:xXBmnJAo<> それらすべてが、まるで今生最後の景色のように、耕司の脳裏に消しがたく焼き付いた。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:52.68 ID:xXBmnJAo<>「ああ、神様……助けて……お願い……」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:53.46 ID:xXBmnJAo<> 策略としての善し悪しよりも、沙耶は僕の請け負う危険の度合いが減ったというだけで、充分に名案なのだろう。まったく現金なものだ。そこがまた可愛いが。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:54.03 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:53.46 ID:xXBmnJAo<> 
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:54.53 ID:xXBmnJAo<> 瑶が木曜日四限のコマに入れているのは生化学。この日、郁紀と顔を合わせる講義はここだけだ。
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:55.08 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:55.61 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:55.88 ID:xXBmnJAo<> 居間に踏み込み、壁を手探りして電灯のスイッチを入れた瞬間に、その答えが耕司の眼前に晒された。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:56.69 ID:xXBmnJAo<>「そうか。お父さん、見つかるといいね」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:56.78 ID:xXBmnJAo<> なかば辛抱を忘れて、僕は性急に席から立っていた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:57.23 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:57.46 ID:xXBmnJAo<>「ひ……ひ……ひぃ……ッ!!」
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:57.94 ID:xXBmnJAo<> 私の知識で追いつく限り10番目の『89』までは正解だったが、彼はその先の値を苦もなく列挙していく。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:58.25 ID:xXBmnJAo<>『ごめんなさい。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:58.48 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:59.29 ID:xXBmnJAo<>『彼女はね、念願叶ってようやく僕の持ち物になったんだよ。お前と青海のお膳立ても、ようやく実を結んだわけだな』
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:15:59.60 ID:xXBmnJAo<> 固く重苦しい沈黙の中、凉子がファイルの頁を捲(めく)る紙の囁きだけが、淡々と時を刻んでいく。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:00.30 ID:xXBmnJAo<>「わたし、この人の脳をいじったの」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:00.32 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:00.89 ID:xXBmnJAo<> 必要量として自分に課しただけの食料を嚥下し、しばらくシートに凭(もた)れて人心地ついたところで、耕司はリアシートに投げ出してあった鞄のポケットから、予備の携帯電話を取り出した。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:01.15 ID:xXBmnJAo<> 門をくぐって庭に入ったところで、なぜか開け放しになったままの玄関に気がついた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:01.46 ID:xXBmnJAo<> なんて迷惑な。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:01.91 ID:xXBmnJAo<> 沙耶が言い終わるより先に、僕は彼女の喉の奥にまで突き入れて、息詰まるその表情を眺めながら溜まった欲望を解き放つ。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:02.26 ID:xXBmnJAo<> 何が彼をここまで豹変させたのか、たとえ郁紀を尋問しようとも答えは出てこないだろう。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:02.56 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:02.77 ID:xXBmnJAo<> 講堂に向かうのかと思いきや、様子が違う。どうやら帰宅するつもりらしい。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:03.69 ID:xXBmnJAo<> 僕は手近なところに転がっていた果実らしきものを拾い上げ、手を挙げて制止しようとする沙耶の反応を待たず、口に運んでみた。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:05.33 ID:xXBmnJAo<> 偽ることのない、今の僕の気持ち。
                                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:05.86 ID:xXBmnJAo<> 黙り込んだ僕を機嫌を損ねたものと勘違いしたのか、さっきまでよりなお一層、懸命に乳房を竿に擦り寄せ、献身的な舌使いで僕の亀頭を包み込む。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:06.50 ID:xXBmnJAo<> 確かめずにはいられなかった。耕司はふらつく足取りで部屋を横切り、凉子が指さした衝立に――そこに描かれた、鱗に覆われた蛸のような絵柄は極力見ないようにして――近寄った。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:07.05 ID:xXBmnJAo<> 試しに値のうち幾つかを選出して私のノートPCに入力し、ルーカステストを行ったところ、そのすべてが正解だった。おそらく残りは確認するまでもないだろう。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:07.16 ID:xXBmnJAo<> 耕司の方を見ようともせずにそう言って、郁紀は再び家を出ていこうとする。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:07.55 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:07.95 ID:xXBmnJAo<>「やっぱり、何も教えてくれない。何か隠している雰囲気なんだが……」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:08.23 ID:xXBmnJAo<> 声をかけようとしたが無駄と悟り、耕司はかぶりを振ってからその後を追った。アコードのダッシュボードを開け、フラッシュライトを取り出して、雪の積もる別荘の前庭へと踏み込んでいく。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:08.53 ID:xXBmnJAo<> 洋佑の足首を掴んだ手は――果たしてそれが手と呼べるモノかどうかは別として――居間のソファの下から伸びていた。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:08.84 ID:xXBmnJAo<> こんな場所には浮浪者でも近寄らないだろう。およそ人が居着くような場所ではない。雨風だけを凌ごうというのでも、他にいくらでも快適な場所を見つけられるだろう。
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:09.38 ID:xXBmnJAo<>「津久葉さんか……参ったね。まぁ、あんな事があった後だからさ。最近、声がかけづらくて」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:09.45 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:09.93 ID:xXBmnJAo<>『そうやって、郁紀を誘おうとしたんだね。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:10.27 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:10.78 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:10.85 ID:xXBmnJAo<> もし別荘で奥涯教授の足取りが見つからなかったとしても、それならそれでこの物件は、もう誰が訪れることもない忘却の地だということになる。邪魔者を始末するには絶好の場所ではないか。わざわざ栃木まで出向いた手間を無駄足にすることはない。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:11.31 ID:xXBmnJAo<> 長い長い時間をかけて、耕司は更けていく街の夜を眺め続けた。初恋の人の弔報を遠い未来で聞くかのような、取り返しのつかない距離を噛みしめた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:11.63 ID:xXBmnJAo<> 体表の半ば近くを引き剥がされたその身体から、中身が――およそ生物の組成とは思えないような毒々しい色の液体や粘液や脂が、逆流するようにして噴き出した。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:12.28 ID:xXBmnJAo<>「うん。やらせてやらせて」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:12.58 ID:xXBmnJAo<>「いただきます」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:12.80 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:13.42 ID:xXBmnJAo<>「本当に、僕だけでもいいのか?」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:13.78 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:14.08 ID:xXBmnJAo<>「もう全然問題ない。一方通行の標識もどういうのか解ったし。スピードさえ出さなければどこを走っても大丈夫だよ。で、そっちは?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:14.84 ID:xXBmnJAo<> 真っ直ぐな視線で見つめ返されながらそう問われては、ただもう言葉に詰まるしかなかった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:15.40 ID:xXBmnJAo<> わずかに溜飲の下がる思いで、まず耕司は先手のジャブを放った。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:15.43 ID:xXBmnJAo<>「……郁紀? 泣いてるの?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:15.96 ID:xXBmnJAo<>「そうすればみんな、郁紀みたいに、わたしに優しくしてくれるように――なるかと思って」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:16.24 ID:xXBmnJAo<> 怪物の動くリズムに合わせて、沙耶の啜り泣く声がしゃくり上げるように上擦る。涙に濡れた瞳が僕を見た。息も絶え絶えのまま、彼女はか細い声で僕を呼ぶ。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:16.75 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:17.10 ID:xXBmnJAo<>「なぁ……別に、運動するのが傷に障るとか、そういうわけでもないんだろ?」
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:17.36 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:17.71 ID:xXBmnJAo<> 昨日、耕司とともに訪れたT大病院ではじめて明かされた事実である。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:18.17 ID:xXBmnJAo<> 拍子抜けするほど安っぽい音を立ててドアは枠から外れ、奥へと倒れ込む。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:18.44 ID:xXBmnJAo<>「助けてくれ!」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:18.90 ID:xXBmnJAo<>「大丈夫。安心していいよ。……さ、じゃあ急いで支度しよう」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:19.16 ID:xXBmnJAo<>「匂坂さん……」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:19.40 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:19.86 ID:xXBmnJAo<> 瑶には、なぜが理解できた。――それが嘲り笑うそいつの声だと。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:20.15 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:20.88 ID:xXBmnJAo<> 
                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:21.00 ID:xXBmnJAo<><<以下、郁紀に電話したルートのみ>>
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:21.68 ID:xXBmnJAo<> 心臓の鼓動がガンガンと耳の中で鳴り渡る。この音を聞きつけられたらそれまでだ。今度こそ喰い殺されるかもしれない。泣き声を堪えるだけでも必死だった。
                                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:22.56 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:22.57 ID:xXBmnJAo<> すぐにも立ち去ろうとする彼女を、僕は藁にもすがる思いで呼び止めた。呼び止めてどうするかまで考えていないことに気がついたのは、彼女が振り向いた後だった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:23.65 ID:xXBmnJAo<> 沙耶の言葉の意味するところを、僕は何度も頭の中で反芻し、確かめた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:23.88 ID:xXBmnJAo<> なるべく要点だけを簡潔に、耕司は現状をメッセージに記録した。郁紀に奥涯教授の別荘だという場所まで連れてこられたこと。所番地を説明し、ここが本当に奥涯という人物の所有物件なのか確かめたい旨……
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:24.24 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:25.51 ID:xXBmnJAo<> 密かに隠れ住むには絶好のロケーションだろう。あるいは密かに誰かを抹[ピーーー]るのにも。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:25.83 ID:xXBmnJAo<>「どのぐらい――かな」
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:26.06 ID:xXBmnJAo<> しばしの間、丹保医師は目を泳がせて逡巡していたが、それでも最後にはかぶりを振った。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:26.44 ID:xXBmnJAo<>「津久葉が死んでると決めてかかってるあんたなら、当然そう思うでしょうね」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:26.94 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:27.07 ID:xXBmnJAo<> 昼下がりの住宅街は、どこか薄ら寒いような静寂をたたえていた。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:27.48 ID:xXBmnJAo<> 凉子はかぶりを振って、冷然と続けた。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:27.87 ID:xXBmnJAo<> これでは問診が成り立つわけがない。凉子は溜息をついてカルテを置く。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:28.21 ID:xXBmnJAo<>「そんなことより、沙耶、もう――そろそろ」
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:28.40 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:29.41 ID:xXBmnJAo<> 注意して見れば、壁の低い位置、床に近いあたりにも、飛沫のような汚穢(おわい)が散った痕跡があちこちで目についた。水を濯(すす)がないままのモップで乱暴に床を拭いて廻れば、こんな汚れがつくかもしれない。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:29.39 ID:xXBmnJAo<> そう、たとえば銀の鍵を得た私のように、自らが探索者を気取って彼女たちを“発見”したものと有頂天になるような軽率な知性体が、他世界にもどれだけいたことか』
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:29.94 ID:xXBmnJAo<>「うん?」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:30.27 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:30.63 ID:xXBmnJAo<> 途方に暮れたまま耕司は地上に戻り、別荘の壁に沿って周囲をぐるりと巡ってみようと歩き出して……そして裏庭の存在に気がついた。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:31.12 ID:xXBmnJAo<> メキリ、と肋の折れる手応え。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:31.46 ID:xXBmnJAo<> たおやかな、まるで汚れを知らないかのような五指に優しく絡め取られる感触は、それだけで倒錯的な喜悦に雄の本能を引きずり出される快感だった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:31.69 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:32.30 ID:xXBmnJAo<> 後で知ったことだが、鈴見さんは僕に殺される前に自分の家族を殺していたらしい。その辺の順序は解ってもらえず、僕は一家3人を惨殺した容疑で逮捕された。さらに僕の家から高畠青海の遺留品が見つかり、僕の罪状は都合4人の殺人および死体棄損という線で落ち着いた。
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:32.80 ID:xXBmnJAo<>「参ったなぁ。正直なとこ、お前はもう少し迷うもんだと思ってたんだけど」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:32.88 ID:xXBmnJAo<> そもそも、はたして青海は本当に郁紀の家を目指したのだろうか? 彼女の行動は勢い任せの感情的なものだった。途中で頭を冷やして気が変わったとしても何の不思議もない。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:33.47 ID:xXBmnJAo<>「ひどい有様だね。まったく」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:34.16 ID:xXBmnJAo<>「少しは我慢してくれよ。なぁ、沙耶だって、お父さんのこと見つけたいんだろ?」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:34.72 ID:xXBmnJAo<> T大付属病院で意識を取り戻したときも、世界はこんな風に闇、だった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:34.76 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:35.23 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:35.68 ID:xXBmnJAo<>「いいのよ。こうやって色々試していけば、いつか郁紀でも美味しく食べられるメニューが見つかるかもしれないじゃない」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:35.88 ID:xXBmnJAo<> そこまで思考が繋がったところで、彼の中に戸尾耕司が還ってきた。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:36.52 ID:xXBmnJAo<> 細くたおやかな女性の指。青白く変色した肌が蝋細工を思わせる。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:36.77 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:37.07 ID:xXBmnJAo<> 何が、頭に引っかかったのか……そう、自動車だ。自動車の排気音。どこか遠くから聞こえてくる……
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:37.74 ID:xXBmnJAo<> メールの着信だ。タイトルはない。発信者は――
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:38.35 ID:xXBmnJAo<> なら手がかりは、自らこの手で掴むしかない。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:38.38 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:38.91 ID:xXBmnJAo<> 井戸の縁に寄りかかり、耕司はしばし思案した。奥涯という人物は何を思って、こんな辺鄙(へんぴ)な山奥に別荘を購入し、訪れていたのだろうか。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:39.49 ID:xXBmnJAo<>「こう言っちゃ何だが……」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:39.49 ID:xXBmnJAo<> 凉子が“最後の一線”と言っていた場所が、今ちょうど耕司の一歩後ろにあった。そしてそこを踏み越えた耕司には、もはや心に防壁となるものなど何もなかった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:40.07 ID:xXBmnJAo<> 暗い。何も見えない。それに強烈な汚臭。廊下や台所の比ではない。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:40.41 ID:xXBmnJAo<>「声を聞かせろ」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:40.61 ID:xXBmnJAo<> 雌として生まれ持った本能の奥底で、瑶はまざまざと悟っていた。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:41.09 ID:xXBmnJAo<>「ねぇ大丈夫? それって――」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:41.61 ID:xXBmnJAo<>「触るな! 郁紀に触るな! テメェは――何様だってんだよ! あぁ!?」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:41.69 ID:xXBmnJAo<>「……郁紀は、嫌?」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:42.32 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:42.59 ID:xXBmnJAo<> 空も、街も、狂っていた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:42.84 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:43.30 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:43.63 ID:xXBmnJAo<> はたと、思い当たった。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:43.99 ID:xXBmnJAo<> 他ならぬ瑶にしか見えない僕自身の質問としては奇妙なものだったかもしれないが、僕だって、津久葉瑶という人間の本来の容姿が、僕の目に瑶として見えない姿形であるはずだということは理解している。
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:44.36 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:44.92 ID:xXBmnJAo<> もしかしたら、この三枚は購入する別荘の候補として撮影されたものなのかもしれない。隠れ家としていちばん妥当な物件がどれか検討するために。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:45.20 ID:xXBmnJAo<> 甘えた声で囁く彼女の躯は、僕の上に被さるとなお一層、華奢で軽く感じる。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:45.43 ID:xXBmnJAo<> 文字通り逃げるようにして、僕はその場を後にした。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:45.94 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:46.24 ID:xXBmnJAo<> 気取られてはいけない。僕の目にどう見えていようと、この世界で正常なのは彼らの方だ。異常なのは僕の方なんだ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:46.53 ID:xXBmnJAo<> さっきの怪物は――まだ凉子の一撃から立ち直れないらしく、ビチャビチャと体躯をのたうたせながら苦悶を顕していた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:46.91 ID:xXBmnJAo<> 我知らず声に出していた。それほどの驚きだった。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:47.39 ID:xXBmnJAo<>『アラ……イナイノカシラ。買イ物ニ行ッテルノカナ?』
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:47.67 ID:xXBmnJAo<> 
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:47.91 ID:xXBmnJAo<> 共犯者がいるのは心強い。が、それは足を引っ張らないだけの人物に限った話だ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:48.36 ID:xXBmnJAo<>「この子はね、郁紀のこと喜ばすためだけに沙耶が用意したの。郁紀がこの子のこと好きになって、この子と過ごすのを楽しいって思うようになってくれたら、それだけ沙耶も嬉しいんだよ。それ、遠慮するようなことじゃないよ」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:48.83 ID:xXBmnJAo<> 奥涯の手記は戯言ではなかった。つまりは、それ以外のすべてが戯言だった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:49.75 ID:xXBmnJAo<> たおやかな、まるで汚れを知らないかのような五指に優しく絡め取られる感触は、それだけで倒錯的な喜悦に雄の本能を引きずり出される快感だった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:49.59 ID:xXBmnJAo<> 郁紀が力任せに振り下ろしてきた斧を、耕司は鉄パイプで受け止めた。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:50.31 ID:xXBmnJAo<>「何か、他の予定でもあるのか?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:50.86 ID:xXBmnJAo<> 洋佑の足首を掴んだ手は――果たしてそれが手と呼べるモノかどうかは別として――居間のソファの下から伸びていた。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:51.38 ID:xXBmnJAo<>「沙耶は、これからどうするんだい?」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:51.42 ID:xXBmnJAo<>「まぁどっちみち鈴見さんの一家が消えたのがバレれば、この近辺も騒がしくなってただろうし。遅かれ早かれ、こういう日は来てたと思うよ」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:51.93 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:52.19 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:53.01 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:53.08 ID:xXBmnJAo<> 答えの見えていた質問だったが、そう問わずにはいられなかった。そんな耕司の張りつめた口調が、また凉子の乾いた笑みを誘う。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:53.65 ID:xXBmnJAo<> 嬉しくないわけがない。そう思う一方で、ここで喜んでいいわけがないという理性の声もまた、無視できない。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:53.93 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:54.43 ID:xXBmnJAo<>「――で、調べ物は終わりましたか?」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:54.84 ID:xXBmnJAo<>「耕司が消えたのと僕のことを結びつけて考えそうなのは、そいつ一人だけだからね。彼女の始末が終わったら、やっと安心できるんだが」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:55.33 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:55.89 ID:xXBmnJAo<> 臓物の紫と腐肉の茶色と鮮血の真紅と脂肪の黄色と、それ以外の言葉にならない色彩の狂乱が壁を床を窓を天井を塗り込めていた。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:55.98 ID:xXBmnJAo<>「なぁ、それって俺とお前の役回りが逆じゃないのか?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:56.65 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:57.08 ID:xXBmnJAo<> 心苛(さいな)まれて、焦らされて、なのに瑶は独りでは何の行動も起こせなかった。もとから闊達(かったつ)なたちでも、勘が鋭いわけでもない。こんなとき何をどう判断し、どういう行動に移ればいいのか、瑶にはまるで見当もつかなかった。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:57.45 ID:xXBmnJAo<>「君がやった、って……何を?」
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:57.65 ID:xXBmnJAo<> 以前と違って、もう二度と外に出てこられない病棟へと連れて行かれることになる。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:58.22 ID:xXBmnJAo<> 耕司もすでに手は尽きた。あとはこの若い女医を信用して任せるしか他にない。歯がゆくはあったが、ただの友人でしかない彼には出来ることにも限度があった。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:58.31 ID:xXBmnJAo<>「は、はぁ……」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:58.93 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:58.96 ID:xXBmnJAo<> 臓器、です。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:16:59.50 ID:xXBmnJAo<> もはや悲鳴さえ声にならなかった。耕司は仰向けに床に押し倒され、恐怖に喉を詰まらせたまま、胸から上まで覆い被さってくるモノに必死で抵抗した。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:00.01 ID:xXBmnJAo<> まるで待ち受けていたかのように、すぐに通話は繋がった。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:00.29 ID:xXBmnJAo<> 風の出所を探して、洋佑は居間に入った。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:00.74 ID:xXBmnJAo<> 我を忘れて沙耶の身体に没頭していた怪物が、ようやく首を巡らせて僕の方を見る。僕は自分でも驚くほど冷静に無駄のない動きでヤツの傍らをすり抜けると、台所のシンクの横にある肉切り包丁を手に取った。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:01.31 ID:xXBmnJAo<> 悲鳴を上げた洋佑が床から起きるよりも早く、さらに無数の手らしきモノが彼の腕と脚に絡みつき、洋佑の自由を奪う。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:02.37 ID:xXBmnJAo<>「人間にできないことを、簡単に出来るっていう君は――人間じゃ、ないんだね?」
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:03.01 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:03.56 ID:xXBmnJAo<> 幼い頃に兄と連れだって行った昆虫採集。虫籠に入りきらない蝶をビニール袋に詰めていくうち、気がつけば窒息した蝶の翼が袋いっぱいに詰まっていた――
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:04.14 ID:xXBmnJAo<>「……」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:04.20 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:05.05 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:05.35 ID:xXBmnJAo<>「そんじょそこいらの映画よりは危険な冒険なんだよ。これは」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:05.78 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:06.51 ID:xXBmnJAo<>「なぁ、コレ。美味そうだし、食べちゃおうか?」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:06.95 ID:xXBmnJAo<> たまらず蹲(うずくま)る郁紀。その無防備な後頭部を見下ろしながら、耕司は自分でも驚くほど醒めた心境で、とどめの一撃を振り下ろすべく鉄パイプを高々と掲げ持つ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:07.51 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:07.59 ID:xXBmnJAo<>「だってお前も関心あるんだろう? 耕司」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:08.08 ID:xXBmnJAo<> 瑶にはそんな耕司の優しさが嬉しい反面、それに甘えるのもまた、耕司の言うとおり良くないと思う。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:08.44 ID:xXBmnJAo<> 奥涯教授の件とは別に、僕の頭の中で、ある計画がだんだんと形になりつつあった。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:08.69 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:09.27 ID:xXBmnJAo<>「――で、あと心配なのが、津久葉瑶って女の人?」
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:09.80 ID:xXBmnJAo<>「奴は大学の機材を無断で使って、こっそり検査をしようとしたらしい。だがドジを踏んで露見した。そこから先はもう大騒ぎでね……」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:10.29 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:10.56 ID:xXBmnJAo<>『……だ、れ……?』
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:11.34 ID:xXBmnJAo<> いま僕は、今まで沙耶と共にあったどの瞬間よりも痛切に、彼女との絆を感じていた。たぶんきっと沙耶も同じだっただろう。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:11.63 ID:xXBmnJAo<> 門をくぐって庭に入ったところで、なぜか開け放しになったままの玄関に気がついた。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:12.76 ID:xXBmnJAo<> いずれにせよ――
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:13.73 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:13.74 ID:xXBmnJAo<> それにしても――臭い。隙間風が運んでくる臭気だけで、こんなにも匂うものだろうか? まるで匂いの元が部屋の中にあるようではないか。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:14.35 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:14.66 ID:xXBmnJAo<> 人類の英知だの、勇気だの、そんな戯言に価値があるものと信じて疑わずにいられるのは――この深淵を覗き込んだことがない、幸福な者たちだけなのだ。
                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:14.86 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:15.40 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:15.74 ID:xXBmnJAo<> 電話越しにもはっきりと、凉子は耕司の語調の変化に気がついていた。打ちのめされ、疲弊しきった者ならではの、無味乾燥でざらついた声。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:16.17 ID:xXBmnJAo<> それにしても量が異常だ。これだけの骨を溜めるとなると、いったい何匹分の死骸を集めればいいのだろうか?
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:16.50 ID:xXBmnJAo<>「なぁに?」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:16.79 ID:xXBmnJAo<> なんのことはない、こんな日常の景色さえ、今の瑶にはどこか不吉なものに見えてしまう。まるで近隣の住人がすべて死に絶えてしまった、白日の下のゴーストタウンに立っているかのようで……
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:17.27 ID:xXBmnJAo<> 僕は我を忘れて吼え猛りながら肉塊を斬って斬って斬って斬って斬りまくり、ヤツが微動だにしなくなってからも切り刻み、それから屍がもう苦痛を感じないことに気がついて余計に逆上し、さっさと殺してしまった悔しさに駆られて包丁を突き立てた。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:18.17 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:17.91 ID:xXBmnJAo<> 振り向きざまに、ありったけの殺意を込めて、右手の鉄パイプを横薙ぎに一旋させる。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:18.74 ID:xXBmnJAo<> だがその部屋の住人は闇だけではなかった。明らかに何かが、いる。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:19.30 ID:xXBmnJAo<>「……少しだけ、考えさせて」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:19.55 ID:xXBmnJAo<>「うー、まぁ、ね……」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:19.83 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:20.25 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:20.99 ID:xXBmnJAo<> 不吉なまでの静けさの中で、耕司はかつて、郊外の住宅街で奥涯邸の前に立ったときと同じ、薄ら寒くなってくるような違和感に――一歩ずつ異界へと踏み込んでいくことを、原始の本能が忌避(きひ)する声に――囚われていた。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:21.09 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:21.65 ID:xXBmnJAo<>「……」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:22.32 ID:xXBmnJAo<> この街の輝きを享受することは、もう二度と耕司には叶うまい。そう思うからこそ今、目に映るすべてがいつになく懐かしいのかもしれない。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:22.41 ID:xXBmnJAo<> こういう忘却の土地というのは、市街地から距離を隔てたところにばかりあるのではない。生活圏の直中であろうと、人の注意を惹かないというだけで、世界の死角はいくらでも発生しうる。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:22.84 ID:xXBmnJAo<> サンドイッチを食べ終えた手で、凉子はファイリングされていないルーズリーフの束を手に取り、軽く振って見せる。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:23.41 ID:xXBmnJAo<> 郁紀の返事は、取りつく島もないほどにそっけない否定だった。なぜ青海が彼の家に行ったなどと推測されるのか、それさえも釈然としない様子だった。当然といえば当然だ。あの日、郁紀が瑶を泣かせる様を青海たちが見ていたことは知られていない。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:23.46 ID:xXBmnJAo<> 奥涯家の捜索から戻った僕を迎えたのは、空っぽの家の静寂だった。沙耶は行く先も告げずに姿を消していた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:23.96 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:24.23 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:24.75 ID:xXBmnJAo<> 瑶の、もはや人並みに稼働することのなくなった精神が、そのとき人の耳を越えた領域から囁きかける声を聞いた。優しさと邪悪さを兼ね備える少女の声。嬉々として蝶の羽をむしるような、残酷なほどに無邪気な声。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:25.40 ID:xXBmnJAo<> やや当惑したように視線を泳がせながら、沙耶は言った。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:26.46 ID:xXBmnJAo<>「え〜?」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:26.99 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:26.76 ID:xXBmnJAo<> 暗号めいた形で放置されていた手記を、一貫して読める形に書き直し、重複を削除し、索引性を高めて編集していく。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:27.60 ID:xXBmnJAo<> 体表の半ば近くを引き剥がされたその身体から、中身が――およそ生物の組成とは思えないような毒々しい色の液体や粘液や脂が、逆流するようにして噴き出した。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:28.19 ID:xXBmnJAo<>「そんなにも彼は君との接触を意識してるのか?」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:28.67 ID:xXBmnJAo<> 吐き捨てるようにそう言う郁紀の口調には、気まずくなった空気を和ませようなどという配慮は欠片ほどもなかった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:29.19 ID:xXBmnJAo<> 居間や寝室と同様に、この風呂場も僕と沙耶の色に塗り込めた安らぎの空間だ。玄関や廊下は万が一のとき人目に触れても問題ないよう、元の色彩のまま残してある。自分の家でありながら、僕が心底リラックスできる場所は三部屋しかない。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:29.32 ID:xXBmnJAo<> 紹介を受けた瑶も、やや恐縮した面持ちでぺこりと頭を下げる。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:29.70 ID:xXBmnJAo<> そう恐れて、この手で彼女を確かめたくて、僕は薄い乳房に手を差し伸べ、縋(すが)るようにして両手で掴む。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:30.21 ID:xXBmnJAo<>「そうだ忘れろ。これは提案じゃない。警告だ」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:30.76 ID:xXBmnJAo<> 家捜しした限りでは、複数の人間が逗留していたとはとても思えない。
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:30.50 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:31.30 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:31.71 ID:xXBmnJAo<> 耕司の嘲りを非情なほど完全に無視して、凉子は淡々と語りはじめた。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:32.22 ID:xXBmnJAo<> たとえ沙耶が気にしないにしても、喉に詰まらせたら大変だ。まさか窒息でもしたら……
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:32.77 ID:xXBmnJAo<> 郁紀は家に帰るわけではない。駅で逆方向の電車に乗った時点で、それは明確になった。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:32.80 ID:xXBmnJAo<> こうやって自分はこれからも、沙耶との日常を守り抜いていくのだろう。僕には――それが出来るのだ。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:33.30 ID:xXBmnJAo<>「――で、あと心配なのが、津久葉瑶って女の人?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:33.81 ID:xXBmnJAo<> 社交辞令として声をかけてくるというのなら、まぁ僕だって我慢する。だが興味本位で他人のプライベートに首を突っ込んでくるというのは……明らかな侵害だ。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:33.91 ID:xXBmnJAo<>「心配しないで。次に目が覚めるときには、何もかもが終わっているから」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:34.41 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:34.72 ID:xXBmnJAo<> 山中の別荘に孤立していた凉子は、独り過ごす時間の慰みに、奥涯の残した研究資料の整理を引き継ぐことにした。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:35.22 ID:xXBmnJAo<> 食い下がるかと思いきや、匂坂はあっさりと引き下がった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:35.45 ID:xXBmnJAo<>「調理ってほどのことは……捌いてから、ちょっと溶かして食べやすくしただけで、ほとんど生なんだけど」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:35.73 ID:xXBmnJAo<> 洋佑は麻痺しかかった思考でナイフをじっと見つめた後、考え直した。これではあまりに心許ない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:36.29 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:36.68 ID:xXBmnJAo<> 世界の色彩が不愉快ならば、快いと思える色に塗り替えてしまえばいい。そう気付いた日に僕はホームセンターで手当たり次第にペンキを買い込み、沙耶と一緒に色々な配合を試してみた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:36.97 ID:xXBmnJAo<> 持て余すほどに長い時間を使って、耕司は自分のアパートに戻り、シャワーを浴びて服を替え、久しぶりに満足な食事さえ摂った。
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:37.24 ID:xXBmnJAo<> ぴたりと、まるで息を詰めるように、喘息めいた呼吸音が沈黙する。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:37.76 ID:xXBmnJAo<> 言葉を尽くす瑶の内側では、すでに歯止めが利かなくなっていた。胸の中で渦巻く諸々の想いの、そのすべてが、今この場で吐き出してしまわなければ行き場を失ってしまうような、そんな焦りがあった。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:38.07 ID:xXBmnJAo<>「外のどこかにこの輪を引っかけて、井戸の底まで伝って降りる。その後、ナイフで輪を切って井戸の中に引っ張り込めば――井戸の底に降りた痕跡は残らない」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:38.27 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:39.18 ID:xXBmnJAo<>『……ふぅん、なるほど。やっぱり僕の家に来たか』
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:39.42 ID:xXBmnJAo<> 扉のない、虚ろな空洞だけになった玄関口に立ったところで、耕司はちらりと背後を顧みる。門柱のところに停めてきたアコードは、ちょうど粗大ゴミの山に遮られて建物から死角になる位置だった。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:40.05 ID:xXBmnJAo<> 黴臭く饐(す)えた空気の中で、耕司はただじっと時を待っていた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:40.16 ID:xXBmnJAo<> 身構えていただけでは事足りなかったらしく、瑶の押し殺した悲鳴には断末魔の痛ましさがあった。何となく僕は、包丁で鈴見を刺し殺した夜のことを思い出す。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:40.69 ID:xXBmnJAo<> どのみち彼を否定するだけの理由は、凉子にも、この世界にも残されていないのだから。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:41.09 ID:xXBmnJAo<> 青海はどうやら完全に怒り心頭の様子だった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:41.84 ID:xXBmnJAo<> 大変だった一日をようやく終えて、ベッドに就こうとしたところで、僕は奥涯邸からの収穫物を沙耶に見せた。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:42.32 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:42.63 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:43.26 ID:xXBmnJAo<> その魂を語り示すべく、君はそう名乗る資格がある。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:43.39 ID:xXBmnJAo<> 弱々しく訴えかけながら、瑶は摺り足で前に進む。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:43.83 ID:xXBmnJAo<>「じゃあ、なぜ――」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:44.40 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:44.41 ID:xXBmnJAo<>「郁紀に抱いてもらうの、大好き。ずっと一緒にこうしていたい。だから、わたしは郁紀から離れたりしない」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:45.68 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:46.10 ID:xXBmnJAo<>「――ふぅん」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:46.81 ID:xXBmnJAo<>「まぁ、あいつのことだからな。何事もなかったみたいにヒョッコリ顔出しそうな気もするんだが」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:47.81 ID:xXBmnJAo<> 丹保医師は耕司のなりを頭から爪先まで眺めて苦笑すると、ポケットからフラスクを取り出し、渡した。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:48.28 ID:xXBmnJAo<> ――本当にあったコワ〜イ話:病院編――
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:48.72 ID:xXBmnJAo<>「どうせ人生なんて旅みたいなものなんだ。永遠に変わらない場所なんてない。時の流れを見送るか、自分自身が流れていくか、それだけの違いだよ」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:49.03 ID:xXBmnJAo<> 死体を解剖して移植用に摘出した臓器が、保管場所から消え失せる、っていうトラブルが立て続けに起こったんです。何度か責任問題にもなったそうで。それに本当は二度や三度の話じゃなくて、私たち研修生には伏せられたところで、もっと何度も同じ事が起こってたらしいんです。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:49.66 ID:xXBmnJAo<> うすうす察していたことだ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:50.18 ID:xXBmnJAo<>「家族はもういないから、部屋はいくらでも余ってる。人目を忍ぶような必要もないし、住み心地もそんなに――悪くないんじゃないかと――」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:50.42 ID:xXBmnJAo<> 恋人と親友を殺したのみならず、その遺骸まで辱めた郁紀には、裁判という形で情状酌量のチャンスが与えられることさえ許し難かった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:51.74 ID:xXBmnJAo<> 返す言葉もなく、僕はただ強く彼女を抱きしめることしかできなかった。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:50.74 ID:xXBmnJAo<>『ヒトに代わってこの地球を支配するべく現出し、そのためにヒトについての理解を深めておきながら、ついに彼女はヒトに恋をすることができなかった。愛という名の祝福を得られなかったこの世界に、沙耶は自らの眷属を産み増やすだけの熱意を持てなかった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:52.29 ID:xXBmnJAo<> それにしても量が異常だ。これだけの骨を溜めるとなると、いったい何匹分の死骸を集めればいいのだろうか?
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:52.81 ID:xXBmnJAo<> それでも沙耶は僕を見ていた。僕の顔のあるあたりに、僕の表情を想い描いているのが分かった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:52.90 ID:xXBmnJAo<> こんなときに不正直になっても沙耶は喜びはしない。彼女は僕の障害について理解している。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:53.50 ID:xXBmnJAo<> 沙耶は本当に、還るべき場所に還ったのかもしれない。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:53.74 ID:xXBmnJAo<>「隣のおじさんにしたような小細工じゃなくて、今回のは大がかりな変換だったけど、でもこれがわたしの能力の本当の使い方なんだよ。実際にやってみたのは、これが初めてなんだけど」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:54.12 ID:xXBmnJAo<> 
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:54.46 ID:xXBmnJAo<>「そうすればみんな、郁紀みたいに、わたしに優しくしてくれるように――なるかと思って」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:54.98 ID:xXBmnJAo<> 欲を出さずに悠々自適。洋佑の理想そのままの生活だ。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:55.27 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:55.49 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:56.09 ID:xXBmnJAo<>「わたし、この人の脳をいじったの」
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:56.56 ID:xXBmnJAo<> 何がどうなっているのか判らない。おそるおそる目を開ける。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:56.81 ID:xXBmnJAo<>「それで津久葉の気が晴れるってもんでもないだろうに」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:57.85 ID:xXBmnJAo<> 台所は洋佑の下りてきた階段に近い。動きがあったなら廊下にいたうちに判ったはずだ。となると、まず怪しいのは客間の方か。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:57.94 ID:xXBmnJAo<> 
                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:58.51 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:59.05 ID:xXBmnJAo<> 指定した7時までの間、郁紀が何をするつもりかは知らないが、むざむざ相手に先回りを許すことはない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:17:59.35 ID:xXBmnJAo<> 深呼吸をし、はやる気持ちで入力ミスをしないよう慎重に、瑶はテンキーを操作して返信メールを作成した。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:00.16 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:00.43 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:00.94 ID:xXBmnJAo<> 密かに隠れ住むには絶好のロケーションだろう。あるいは密かに誰かを抹[ピーーー]るのにも。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:01.39 ID:xXBmnJAo<> いや、そんなことよりも――
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:01.81 ID:xXBmnJAo<> 凉子は間隙から手を抜くと、色の違う石壁を押した。さして力を込めないうちに、石はゴロゴロと滑車の転がるような音とともに、奥へと滑り込んでいく。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:02.14 ID:xXBmnJAo<>「郁紀……郁紀……怖かった……怖かったよぉぉ」
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:02.66 ID:xXBmnJAo<> 郁紀が力任せに振り下ろしてきた斧を、耕司は鉄パイプで受け止めた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:02.70 ID:xXBmnJAo<> 人をして万物の霊長などと、そんな脳天気な戯言を誰が言ったのか?
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:03.26 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:03.60 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:04.13 ID:xXBmnJAo<>「さっきも言ったよね。1年前の私も手元に銃を持ってればって、どれだけ後悔したか知れないんだ。――もう二度と後悔するつもりはない」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:04.46 ID:xXBmnJAo<> トレイに膳を乗せて運んできた沙耶が、居間に踏み込むやクンクンと鼻を鳴らす。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:04.68 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:05.31 ID:xXBmnJAo<> 耕司の記憶が確かなら、瑶にも次のコマの授業はあるはずなのだが、彼女は心ここにあらず、といった態(てい)で席を立とうともしない。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:05.52 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:05.82 ID:xXBmnJAo<> 瑶にはそんな耕司の優しさが嬉しい反面、それに甘えるのもまた、耕司の言うとおり良くないと思う。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:06.35 ID:xXBmnJAo<>「今度こそ信用できるっていう保証は?」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:06.75 ID:xXBmnJAo<> とりあえず、煙草だ。一箱あれば朝までは保つ。昨日の買い置きはどこに仕舞ったんだったか。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:06.98 ID:xXBmnJAo<> 泣き腫らした目で、沙耶は散らばった肉塊を見やり、
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:07.51 ID:xXBmnJAo<> 彼女たちは環境を制した遺伝子に干渉し、自らの眷属となるべく“書き換え”を行うのだ。それを可能とするだけの生態的機能を、沙耶は備え持っていた』
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:08.13 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:08.16 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:08.71 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:09.13 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:09.57 ID:xXBmnJAo<> 深く息を吸い、それから吐いた。片手の五指を拡げ、目の前に翳して確かめる。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:10.11 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:10.38 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:10.66 ID:xXBmnJAo<> そうやって心の狂気は、じわじわと種から芽吹き、やがて耕司に残されたすべてを覆い尽くしていくのだろう。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:11.34 ID:xXBmnJAo<>『コンバB&ワ、匂坂サン。今オ帰リャIスカ?』
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:11.88 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:11.92 ID:xXBmnJAo<>「ああ」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:12.39 ID:xXBmnJAo<>「あはっ、何度やっても面白い!」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:12.93 ID:xXBmnJAo<> 彼は水底まで潜ってから頭上を見上げ、水面越しに月を眺めていた。どこか遠くで自動車が走っている。その音をぼんやりと聞きながら、彼は海の底から、丸い、明るい、月の輪の光を――
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:12.95 ID:xXBmnJAo<> こういう忘却の土地というのは、市街地から距離を隔てたところにばかりあるのではない。生活圏の直中であろうと、人の注意を惹かないというだけで、世界の死角はいくらでも発生しうる。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:13.47 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:13.82 ID:xXBmnJAo<>「あらま」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:14.34 ID:xXBmnJAo<> こういう忘却の土地というのは、市街地から距離を隔てたところにばかりあるのではない。生活圏の直中であろうと、人の注意を惹かないというだけで、世界の死角はいくらでも発生しうる。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:14.59 ID:xXBmnJAo<> かつては閑静な森の中で開業されていた個人経営の療養所。不況の折りに倒産し、そのまま地所の買い手もつかぬまま放置され、忘れ去られてしまったのだろう。
                                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:14.87 ID:xXBmnJAo<> もとの身体に戻りたい気持ちもあるにはあった。だがそんな願いは捨てたって良かった。どこまでも沙耶と一緒に、たとえ禁じられた領域にまで踏み込もうとも、手を取り合って進んで行けたと思う。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:15.37 ID:xXBmnJAo<> 真っ直ぐな視線で見つめ返されながらそう問われては、ただもう言葉に詰まるしかなかった。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:15.71 ID:xXBmnJAo<> ――いや、不潔だとかタブーだとか、そういう価値観は人それぞれだろうし、特に沙耶には通用しないんだろうが。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:16.23 ID:xXBmnJAo<> だいたい、こんな家に上がり込んで郁紀は一体なにをしていたのか?
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:16.33 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:16.78 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:17.20 ID:xXBmnJAo<> だが、それでも凉子には何かが引っかかる。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:17.49 ID:xXBmnJAo<> 言葉を切って間を置いてから、耕司は郁紀を出し抜いたという満足感を声に滲ませる。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:17.73 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:18.32 ID:xXBmnJAo<> 昨夜、井戸の底で耕司を包み込んでいたのと同じ闇。それらの虚ろな空洞に比べれば、右のこめかみに空いた小さな穴は、むしろ慎ましいものだ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:18.64 ID:xXBmnJAo<> 奥涯雅彦(おうがいまさひこ)。沙耶の父親で、T大医学部の教授。沙耶の唯一の縁者である彼は、現在、行方不明になっている。彼の失踪の謎を解くことを、僕は沙耶に約束していた。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:18.83 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:19.34 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:19.60 ID:xXBmnJAo<> そのうち、診療に訪れる医師の声までもが人間の言語からかけ離れていくに至って、僕は自殺を決意した。新しい世界と折り合いをつけて生きていく自信など、とうてい僕には持ち得なかった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:20.96 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:21.48 ID:xXBmnJAo<> 身体の自由を取り戻すやいなや耕司は膝立ちになり、新たな得物を救いの護符のように両手で掴む。掴んでから初めて、それが錆の浮いた鉄パイプの断片だと気がついた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:22.01 ID:xXBmnJAo<> それから意を決し、分厚い扉に手をかけて、開けた。まず冷凍庫。それから冷蔵庫。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:22.83 ID:xXBmnJAo<> 郁紀の車は例の事故で廃車になっている。他人に頼るのも解らなくはない。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:23.67 ID:xXBmnJAo<> 未練がましい気持ちで、もと来た方を振り返る。いま青海がいる位置は、さっき玄関からは死角だった場所だ。奇妙な声と、何かが動く物音がしたのは、きっとこの台所だろう。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:23.78 ID:xXBmnJAo<> 徐行で門柱の側まで車を寄せてから停車し、耕司はエンジンを切って森の静寂に身を任せた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:24.26 ID:xXBmnJAo<> 決然と譲らぬ意志を込めて、耕司は凉子に言い放った。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:24.90 ID:xXBmnJAo<> 退院祝いに渡された花束は、色も匂いも吐き気を催すような代物だったが、それでも僕は笑顔を繕って受け取った。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:25.33 ID:xXBmnJAo<> 折れた骨の先端は鋭利に尖っている。両手で持って体重をかければ、身を守る程度の武器にはなるかもしれない。
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:25.62 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:26.11 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:26.44 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:27.14 ID:xXBmnJAo<> 僕は頷いた。頷くしか他になかった。溢れ出そうになる涙をこらえるために、声を出す余裕はなかった。いま勇気を振り絞って痛みに立ち向かっている沙耶に、涙なんて見せられるわけがない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:27.15 ID:xXBmnJAo<> もし変死体でもあるようなら即座に警察を呼ばなければならない。すでに屋内には耕司の指紋がいたるところについている。いま第一発見者になって通報すれば不法侵入を咎められるだけだが、それが後日になってからでは申し開きが立たなくなる。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:27.74 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:27.94 ID:xXBmnJAo<> さも鬱陶しそうな語調で凉子が嘯(うそぶ)く。耕司の方を見ようともしていない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:28.48 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:28.80 ID:xXBmnJAo<> すぐ手元にまで届いたザイルの確かな手触りに、耕司は今度こそ本当に安堵を感じながら、ようやく心にできた余裕で疑問を懐(いだ)くことができるようになった。――いったい誰なんだろうか? この救いの主は。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:29.06 ID:xXBmnJAo<>「郁紀……わたしを愛してくれた、あなたに……この惑星(ほし)を、あげます……」
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:29.83 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:29.83 ID:xXBmnJAo<><<以下、凉子に電話したルートのみ>>
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:30.48 ID:xXBmnJAo<> 廃墟の中のこもった空気は噎(む)せるほどの血臭が立ちこめ、霜の降りた床にじわじわと広がっていく血糊は途絶えることなく流れ続けていたが、それでもなおその光景は、一枚の絵画のように静謐だった。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:30.77 ID:xXBmnJAo<>「……」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:31.07 ID:xXBmnJAo<> 2階だった。さっきカーテンが動いた部屋。やはりまだ、あそこにいる。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:31.68 ID:xXBmnJAo<> 笑いながら、戸尾耕司(とのおこうじ)が青海の発言をフォローする。彼女の言動の突飛さは今に始まったことではなく、それを周囲にフォローするのはいつも、青海の彼氏である耕司の役目だった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:31.91 ID:xXBmnJAo<> からかうような口調で言いながら、沙耶は僕の股間を暴き出すと、白く繊細な指で竿と睾丸をそれぞれに包み込む。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:32.32 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:32.98 ID:xXBmnJAo<>「ひぃッ、ひぃッ、ヒィィィッ!」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:33.28 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:33.87 ID:xXBmnJAo<>「まぁ、あなた達は無関係そうね。ちょっと安心したわ」
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:33.90 ID:xXBmnJAo<>「ひぃッ、ひぃッ、ヒィィィッ!」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:34.62 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:35.02 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:35.26 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:35.93 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:36.01 ID:xXBmnJAo<> 広い。軽く20畳以上のスペースはあるだろう。中を一目見た耕司の印象は、物置部屋になった手術室、というものだった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:36.72 ID:xXBmnJAo<> 僕は自分が抱え込んだ知覚の障害を、用心深く隠し通した。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:37.09 ID:xXBmnJAo<>「ねぇ先生、いい加減ファミレスのコーヒーは止めましょうよ。何なら新しいのを淹れますから――」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:37.54 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:38.17 ID:xXBmnJAo<> 分厚い刃は凉子の左肩から、鎖骨と肩胛骨(けんこうこつ)、さらに数本の肋までを砕いて肺を潰し、胸の半ばまで達していた。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:38.52 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:38.97 ID:xXBmnJAo<>「郁紀にそう言われたもんだからさ、騙されたと思って殺ってみたワケよ。そしたらもう、楽しくって」
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:39.28 ID:xXBmnJAo<> 
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:39.92 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:40.19 ID:xXBmnJAo<> 汚れだ。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:40.51 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:41.28 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:41.35 ID:xXBmnJAo<> 井戸の横で耕司が電話していた相手が瑶だというのも、考えようによっては好都合だった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:41.93 ID:xXBmnJAo<> ヒトを学び尽くした沙耶は、それほどまでに人間的になってしまったのだろう。孤独に疲弊し、世界に絶望するほどに、彼女は乙女になってしまったのだろう。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:42.24 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:43.12 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:43.46 ID:xXBmnJAo<> 偏執的なほどに丹念な刷毛使いによる、ただ一筋の塗り残しもなく分厚い重ね塗り。この部屋を塗り潰した人間の憎しみと悪意と狂気の程を、余すところなく物語る色合いだった。
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:43.82 ID:xXBmnJAo<> 沙耶が言い終わるより先に、僕は彼女の喉の奥にまで突き入れて、息詰まるその表情を眺めながら溜まった欲望を解き放つ。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:44.52 ID:xXBmnJAo<>「まぁ、構わんが……」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:44.77 ID:xXBmnJAo<>『はたして我々の恋愛感情とは何なのだろうか? 効率的な種の繁栄を遂げるのに、これほど妨げとなるような精神活動があるだろうか?
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:45.18 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:45.57 ID:xXBmnJAo<>「どういう意味です?」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:46.38 ID:xXBmnJAo<> 耕司は眉をひそめた。3冊の本はどれも歳経た重厚な革表紙の洋書で、学術書というよりはむしろ、ガラスケースに収まっていそうな稀覯書(きこうしょ)の類にしか見えない。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:47.21 ID:xXBmnJAo<> 床――なのか? 毛足の長い絨毯かと思ったそれがざわざわと蠢き、洋佑の指の一本一本に絡みついてくる。
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:47.67 ID:xXBmnJAo<> 絶望の黒い炎が、耕司の中のすべての感情を焼き尽くし、焼き尽くしてもなお燃えさかり、やり場のない熱量となって沸々と血を滾らせる。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:48.01 ID:xXBmnJAo<> 不思議な少女だった。あどけない容姿や話しぶりとは裏腹に、大人たちの目を欺いて独力で衣食住を確保する生活力。常識の欠落は幼さ故のものだとしても、会話の端々に窺わせる聡明さや知識の深さは、およそ子供のものとは思えない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:48.30 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:48.57 ID:xXBmnJAo<> 凉子がポケットからたどたどしく新しい実包を引っ張り出す。郁紀が間合いを詰めながら斧を両手に持ち振りかぶる。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:49.09 ID:xXBmnJAo<> さっきまで、食事も喉を通らないほどに自分を責めていたのは、こんな自分の臆病さが嫌だったからではないのか。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:49.40 ID:xXBmnJAo<>「あの、お話があるんです。ちょっと……いいですか?」
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:49.94 ID:xXBmnJAo<> だが最近では、山や空がどう見えて、人工の建築物とはどう違って見えるか等々、だんだんと輪郭だけでも判別できるように慣れてきた。以前なら平面に描画された写真の類は、何が写っているのやら皆目検討もつかなかったのだが。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:49.96 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:50.49 ID:xXBmnJAo<> あれはあくまで我々の行動模写なのだろうか。さもなければ、彼女はすでにもう……
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:50.91 ID:xXBmnJAo<> 頭に白く霧が湧くような性感への刺激は明らかに思考の邪魔だったし、そもそも興奮は、すでに僕の中から失せていた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:51.27 ID:xXBmnJAo<> 違うのだ。僕は沙耶の好意を無碍(むげ)にしようなんて、これっぽっちも思っていない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:51.78 ID:xXBmnJAo<>「うん。やらせてやらせて」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:52.05 ID:xXBmnJAo<>「ぁぁ――」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:52.30 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:52.88 ID:xXBmnJAo<> 初めのうちは凉子にも、ファイルの各所に挟まっているその記述が何なのか理解できなかった。片面にだけ書き込まれ、裏が白紙のままのそのルーズリーフは、記述が行ごとに断絶していて繋がらず、全体としてまったく意味を成さない内容だったからだ。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:53.15 ID:xXBmnJAo<> だが、ここは間違いなく地球で、日本で、僕は僕の産まれ育った街に住み、生まれてこのかた二〇年間、慣れ親しんだ社会に属している。ただ、僕一人にだけそう見えなくなってしまった――それだけのことだ。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:53.38 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:53.90 ID:xXBmnJAo<>「……」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:54.13 ID:xXBmnJAo<>「これは……家だよね。それと、木と……山?」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:54.52 ID:xXBmnJAo<> 乾ききって紙のようにかさついた喉に、まずスポーツドリンクを少量ずつ、それからゼリー少量を流し込んだ。36時間あまり放置された胃袋が突然の補給を受けて痙攣し、あやうくえずいて吐き出しかかるのを、意志の力で抑え込む。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:54.77 ID:xXBmnJAo<> 怒鳴ろうにも、掠れた呻き声しか出てこない。それが狭い井戸の底で反響し、なおいっそう意味不明な声に変換される。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:55.26 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:55.45 ID:xXBmnJAo<> そして永遠に思える50日が過ぎ、退院した郁紀は、どこか人が違っていた。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:55.91 ID:xXBmnJAo<> それでも僕が、いま床に転がって悶えている裸身を正視できずにいる理由を、どう沙耶に説明したものか。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:56.42 ID:xXBmnJAo<> 仮眠を取るぐらいの備えをしておいた方がいいのは充分、承知していたが、どんなにリラックスしようとしても眠りだけは訪れなかった。心を鎮めれば鎮めるほどに、ただ神経が冴え渡っていくばかりだった。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:56.42 ID:xXBmnJAo<>「もう、言ってもいいよね? 沙耶、君のこと――愛してる」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:57.04 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:57.81 ID:xXBmnJAo<>「そうか。じゃあ今日からは沙耶が一家の大黒柱だな」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:59.23 ID:xXBmnJAo<> 
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:59.35 ID:xXBmnJAo<>「それにこの子、どっちみち逃げ出して何かしようとか、そういう難しいことはもう出来ないから。ね? これでもう郁紀が心配することなんてないでしょ?」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:18:59.77 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:00.20 ID:xXBmnJAo<> そして夜の静寂の中に、独り、僕は取り残された。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:00.65 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:01.16 ID:xXBmnJAo<> ら、り、る――
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:01.18 ID:xXBmnJAo<> むろん誰に読ませるためでもない。己の行為の無意味さは他ならぬ凉子自身がよく弁(わきま)えていた。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:01.73 ID:xXBmnJAo<> 耕司はドアに耳を押し当て、しばらく屋内の物音に耳を澄ませた。まるきり空き巣の行動だな、と我ながら情けなくなる。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:01.93 ID:xXBmnJAo<> 仮眠を取るぐらいの備えをしておいた方がいいのは充分、承知していたが、どんなにリラックスしようとしても眠りだけは訪れなかった。心を鎮めれば鎮めるほどに、ただ神経が冴え渡っていくばかりだった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:02.33 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:02.84 ID:xXBmnJAo<> この殺風景な内装――思い出した。奥涯の別荘の地上階。井戸に落ちる前に家捜していた部屋だ。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:02.92 ID:xXBmnJAo<>「ああ、これはこれで……」
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:03.34 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:03.89 ID:xXBmnJAo<> そうだ。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:04.60 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:04.68 ID:xXBmnJAo<> 申し訳程度に棚に積まれた保存食は賞味期限をとうに過ぎ、ボイラーもここ数年は稼働した形跡がない。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:05.64 ID:xXBmnJAo<> 閉ざされた地下室で人知れず乾涸らびていくうちに、奥涯の骸はかなり萎縮してしまったらしい。そのミイラは子供ほどの上背しかなく、在りし日の体格は、ぶかぶかになった背広の寸法から察するしかなかった。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:06.32 ID:xXBmnJAo<>「そりゃあもう、おじさんが愉しめそうなこと、全部さ」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:06.42 ID:xXBmnJAo<> 青海としては、できることなら振り向きもせずにこの家を出ていきたかった。だがそうすると、あの闇に背を向けたまま廊下を戻らなくてはならない。それだけは絶対にできない相談だった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:06.86 ID:xXBmnJAo<> 姿だけではない。その声も、そして――
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:07.39 ID:xXBmnJAo<>「そんなに理由が欲しいなら、一人でじっくり考えなよ。そこでなら、時間はたっぷりあるだろう?」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:07.47 ID:xXBmnJAo<> 耐え難い痛みではあったのだろうが、それを痛みとして認識できるだけの精神が、すでに形を留めていなかった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:07.99 ID:xXBmnJAo<> 気がつくと、ベッドサイドに佇んで興味深げに僕を見下ろしている顔があった。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:08.32 ID:xXBmnJAo<> たとえばあの日、耕司が瑶と出会ったのが偶然じゃないとしたら?
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:08.83 ID:xXBmnJAo<> その後も彼は暗算を続け、私が目を離していた数時間のうちに、ふと見れば70個あまりの値がメモ書きに残されていた。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:09.35 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:09.37 ID:xXBmnJAo<> 午後8時――電話が鳴った。丹保凉子からの着信だった。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:10.19 ID:xXBmnJAo<> 二度三度と斧が唸りを上げて、立て続けに耕司を襲う。歴とした道具として設計された郁紀の得物には、耕司がたまたま拾っただけの棒きれよりも数段勝る威力と操作性があった。
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:09.93 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:10.72 ID:xXBmnJAo<>「ごめんね。本当はもっと早く帰れると思ってたんだけど、調べだしたらキリがなくって」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:11.34 ID:xXBmnJAo<> 家捜しした限りでは、複数の人間が逗留していたとはとても思えない。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:11.37 ID:xXBmnJAo<> むろん、凉子自身もまた――
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:12.04 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:12.46 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:12.74 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:13.31 ID:xXBmnJAo<>「大丈夫。安心していいよ。……さ、じゃあ急いで支度しよう」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:13.83 ID:xXBmnJAo<>「匂坂郁紀……」
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:13.58 ID:xXBmnJAo<> なんと邪(よこしま)な、おぞましい沙耶。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:14.39 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:15.90 ID:xXBmnJAo<> かつて耕司と初対面の時に言葉を濁した奥涯雅彦の真相を、いま凉子は包み隠さず、合成音声のような淀みない無感情で語り上げていた。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:16.21 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:16.49 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:17.05 ID:xXBmnJAo<> それは、いつ誰の身に降りかかってもおかしくない悲劇だった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:17.31 ID:xXBmnJAo<> 携帯を握る手が震えているのが、自分でも分かった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:17.56 ID:xXBmnJAo<> 独り、別荘の玄関から外へと踏み出した耕司は、明け方の森の冷気をあらためて痛感した。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:18.19 ID:xXBmnJAo<> 何もない。家具調度品は必要最低限――いや、部屋によってはまったく何もない。がらんどうの空間に分厚く埃が積もっているだけの空き部屋さえある。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:18.30 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:18.71 ID:xXBmnJAo<> もっとも従順に反応したのは右手人差し指だった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:19.11 ID:xXBmnJAo<> 上だ。青海の頭上から滴り落ちてくるのだ。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:19.33 ID:xXBmnJAo<>「ちょっと待ってろ。すぐに助ける」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:19.74 ID:xXBmnJAo<>※選択肢
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:20.43 ID:xXBmnJAo<> 僕は精一杯の意志の力で、明るく弾んだ声を出した。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:20.52 ID:xXBmnJAo<> この世が彼の理性によって照らし出せる場所であることを、確かめ、保証するためだけに、耕司はあの異物を抹消しなければならない。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:21.19 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:21.52 ID:xXBmnJAo<> 結局、僕には罪を償うことができないという結論ですべてが片付けられてしまったらしい。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:22.01 ID:xXBmnJAo<>「津久葉が! 津久葉が大変なんだ! おい郁紀! 聞いてくれ! ここから出してくれぇ!!」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:22.42 ID:xXBmnJAo<>「端的な感想ありがとう。でもね、君だって他人事じゃなくなるよ。これ以上先に進むんならね」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:23.01 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:23.41 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:24.01 ID:xXBmnJAo<> あまり誉められた話ではないが、そのおかげでこうして沙耶との知遇を得たと思うと、僕としては厳しくたしなめる気にもなれなかった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:23.71 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:24.80 ID:xXBmnJAo<>「君はここいらへんで降りた方がいい。那須か日光の温泉でゆっくり羽を伸ばして、何もかも忘れる気になってから東京に戻ってきなさい」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:24.91 ID:xXBmnJAo<> 何を? ――もちろん問うまでもない。たったいま僕があられもなく吐き出した欲望のすべてを、だ。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:25.33 ID:xXBmnJAo<> 僕は――嫌だとまでは思わない。もちろん早急すぎる気はしないでもないが、いまさら世間体が気になることはないし、僕と沙耶だけの問題だというのなら、むしろ歓迎したい。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:25.95 ID:xXBmnJAo<> ただ、それだけ――
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:26.02 ID:xXBmnJAo<> たった今、瑶を背後から捕らえたモノは――今も、部屋の片隅の薄暗がりに潜んでいる。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:26.47 ID:xXBmnJAo<> さして広くない前庭には不法投棄された粗大ゴミが山になり、ていのいいバリケードになっている。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:26.92 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:27.20 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:27.84 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:28.36 ID:xXBmnJAo<> 
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:28.92 ID:xXBmnJAo<>『――コゥジ、グン――ォネ、ガィ――コ、ロ、シテ――』
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:29.14 ID:xXBmnJAo<>「――どういうことだよ? わけわかんないよ! 沙耶、しっかりしてくれよォ!」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:29.56 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:29.97 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:30.29 ID:xXBmnJAo<> まるで待ち受けていたかのように、すぐに通話は繋がった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:30.48 ID:xXBmnJAo<> 
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:31.02 ID:xXBmnJAo<>「だってもう3ヶ月よ? 何なのよアレ!? つきあってるこっちが変になりそうよ」
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:31.08 ID:xXBmnJAo<> 沙耶がこんな目に遭っていいわけがない。何もかもが――そう、自分自身も含めて許せなかった。沙耶を護れなかった。傍にいてやれなかった。僕次第でこんなことは未然に防げたかもしれないのに……
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:31.61 ID:xXBmnJAo<> それに加えて、何とは名状しがたいが、放置された水槽が放つような湿った汚臭がかすかに匂う。やはりこの家に住人はいない。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:32.37 ID:xXBmnJAo<> 喜色満面でそう嘯(うそぶ)いてから、洋佑は少女のワンピースの襟元に手をかけると、一気に引き裂いた。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:32.72 ID:xXBmnJAo<> そして、いま世界は二人だけのものだった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:33.02 ID:xXBmnJAo<> 思わず耕司が立ちすくむほどに、その眼差しは冷ややかで感情を欠いていた。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:34.54 ID:xXBmnJAo<> その途端に理解した。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:34.81 ID:xXBmnJAo<> 返答する前に、耕司の脳裏に閃いた咄嗟の思いつきが、素早く交渉の策略を形にする。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:35.35 ID:xXBmnJAo<>「……なるほど、納得いった」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:35.44 ID:xXBmnJAo<> がっちりと僕の腿を抱え込み、舌と唇はますます激しく、さらに喉の奥にまで呑み込まんばかりの勢いで吸い貪る。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:35.87 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:36.60 ID:xXBmnJAo<> すでに耕司にも、郁紀の豹変が事故だけを原因とするものとは思えなくなっていた。より納得できる理由が欲しかった。今の郁紀を信用していいのかどうか、それを判断するためにも。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:37.34 ID:xXBmnJAo<> 悪夢としか思えない病室の有様や、身の毛もよだつ容姿をした医師と看護婦を見た僕は、初めのうちこそ錯乱したものの、すぐにその異常の原因がどこにあるのか察しがついた。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:37.40 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:37.86 ID:xXBmnJAo<> 小さい果肉はタッパーに、大きいものは鍋やボールに入れてラップをかけて、僕らは残りの食料を手分けして冷蔵庫に詰め込んだ。明日からの晩餐を思うと、今からもう心が躍る。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:38.20 ID:xXBmnJAo<>「……まぁ、そうかもしれんが」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:38.78 ID:xXBmnJAo<>「やめろぉぉッ!!」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:38.79 ID:xXBmnJAo<> まるで抜け殻になったような空っぽの疲労感にくるまれて、ベッドに仰向けになったまま、僕は今日から始まる新しい暮らしに思いを馳せた。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:39.44 ID:xXBmnJAo<> 声を出して居場所を明かすぐらいなら、いっそライトを点けても同じことだったが、なぜか耕司は、そこまで不可逆的な行動を取ることに躊躇があった。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:39.97 ID:xXBmnJAo<>「そういうのは、迷惑だ。二度とやらないでもらいたい」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:40.08 ID:xXBmnJAo<>「でもここ……遠いんでしょ?」
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:40.48 ID:xXBmnJAo<>『標的となる種族はその進化の過程において、かなりの確率で知性を発現させていることだろう。それは当地の環境を支配する上で鍵となる要素であるかもしれない。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:41.25 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:41.27 ID:xXBmnJAo<>「まっかせて。これでも沙耶、狩りは得意なんだから。頑張っていっぱい捕まえてくるよ」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:42.66 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:42.95 ID:xXBmnJAo<> そうなのだ。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:43.51 ID:xXBmnJAo<>「どうして……どうして、優しく、してくれない……の……」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:43.57 ID:xXBmnJAo<> 凉子はさらに視線をじりじりと動かし、その横にある石積みの隙間を凝視した。手を平たく伸ばせば、大人が手首を差し込むこともできなくはない……そんな程度の間隙がある。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:44.02 ID:xXBmnJAo<> もう何の抵抗も出来ない肉塊に、繰り返し鉄パイプの殴打を叩き込む。今ここでこいつを止められなければ、今度こそ自分の負けだと……なぜか耕司は何の脈絡もなく、そんな思いこみを懐(いだ)いていた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:44.52 ID:xXBmnJAo<>「昔はね。それに、さっきまでも」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:45.06 ID:xXBmnJAo<>「今から出発すれば、夕方ごろには着くだろう?」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:45.07 ID:xXBmnJAo<> 耕司の出方が判らない以上、一カ所に留まっていたら防戦一方に立たされることになる。みすみすそんな愚を冒すつもりはない。もう一度主導権を掴むチャンスを窺って、それから場所を変えて対決すればいい。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:45.59 ID:xXBmnJAo<> そうなのだろう。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:46.09 ID:xXBmnJAo<> トレイに膳を乗せて運んできた沙耶が、居間に踏み込むやクンクンと鼻を鳴らす。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:46.45 ID:xXBmnJAo<> いまさら気がついたことだが、こいつら、体臭は鼻が曲がりそうなのに、血や腑からはわりと良い匂いがする。僕にはもう嗅ぎ慣れた芳香だ。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:47.74 ID:xXBmnJAo<> ――まぁ結局、みんな賢明だったわけだ。理性は理性、戯言は戯言、そういう線引きを危うくしないで済む程度ってもんを心得ていた。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:49.15 ID:xXBmnJAo<> あくまで仮定だ。だがもしそれが真相だとすれば――青海の身に何があったにせよ、それは瑶にも責任の一端があることになりはすまいか?
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:49.92 ID:xXBmnJAo<> 郁紀のくだらないジョークに、青海と瑶が声を立てて笑う。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:50.48 ID:xXBmnJAo<> なら手がかりは、自らこの手で掴むしかない。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:50.53 ID:xXBmnJAo<> 悲鳴を上げた洋佑が床から起きるよりも早く、さらに無数の手らしきモノが彼の腕と脚に絡みつき、洋佑の自由を奪う。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:51.08 ID:xXBmnJAo<> 指先を動かすのがやっとという程度の有様で、そんな芸当を演じる自信は耕司にはない。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:51.38 ID:xXBmnJAo<> 津久葉瑶の名前を聞いた郁紀は、気まずそうに苦笑した。だが耕司はその笑みの裏側に、同情よりなお冷たい、見下すような憐憫の色を見て取った。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:51.75 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:52.18 ID:xXBmnJAo<>「――長い旅だと、思えばいいさ」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:52.58 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:52.83 ID:xXBmnJAo<>「……いいのか?」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:53.35 ID:xXBmnJAo<> それ以上に明快な説明の仕方を考えるのに、凉子はじっくりと言葉を選ぶ必要があったらしい。しばらく間をおいてから、つらつらと語りはじめた。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:53.43 ID:xXBmnJAo<>「ん――ぷはぁ……ウフ、美味しかったよ。郁紀」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:53.90 ID:xXBmnJAo<> 僕が促すと、沙耶は慌てて肋肉を放り出し、ひたむきな口淫に没頭している瑶を押しのける。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:54.82 ID:xXBmnJAo<>「それなのに、この人は……ぜんぜん優しくなんかなかった。沙耶のこと虐めたいって、壊したいって言って、あんな……」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:54.16 ID:xXBmnJAo<>「――そう」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:55.71 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:56.28 ID:xXBmnJAo<>「わからない」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:56.80 ID:xXBmnJAo<> 判った。僕の家の隣に住んでいる鈴見(すずみ)とかいう中年男だ。職業は絵描きだか何だかで、仕事勤めの女房の代わりに、日がな一日じゅう家にいるらしい。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:57.42 ID:xXBmnJAo<> ぬめり粘つく柔らかい質量が、耕司の爪先の上に乗る。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:57.91 ID:xXBmnJAo<> もう恥も外聞もなかった。僕は口を衝いて出るがままの言葉を吐き出した。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:58.38 ID:xXBmnJAo<>「解らないんだ。解らないのに、僕だけが……どんどん君に惹かれていく。君なしじゃ耐えられなくなっていく」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:58.76 ID:xXBmnJAo<> 耐え難い痛みではあったのだろうが、それを痛みとして認識できるだけの精神が、すでに形を留めていなかった。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:59.36 ID:xXBmnJAo<>「おやおや、ずいぶん男に慣れてるねェ。可愛い顔して本当はエッチな子だったんだ」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:59.66 ID:xXBmnJAo<>『タダイマ』
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:00.24 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:19:59.98 ID:xXBmnJAo<>「切れ味とか、どう? 瑶で試してみたら?」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:01.21 ID:xXBmnJAo<> 凉子の用意した食料の中から、耕司はスポーツドリンクとゼリータイプの栄養食を二つばかり掴み取ると、ドアに向かった。足元がまだ頼りないが、この程度なら気力でカバーできる。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:02.17 ID:xXBmnJAo<> 沙耶――
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:03.59 ID:xXBmnJAo<>「済まんね。色々と準備に手間取った」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:04.51 ID:xXBmnJAo<> 文体からして、青海の書いたものとは思えない。だが確かに発信者名は高畠青海となっている。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:05.33 ID:xXBmnJAo<>「――はい?」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:05.96 ID:xXBmnJAo<> 耕司は足早に門を潜って庭を抜け、玄関のドアノブに手をかけた。呼び鈴も鳴らさなければノックもしない。そんな訪問の礼節を弁(わきま)えるような段階ではない。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:06.43 ID:xXBmnJAo<> どれもこれも、制作者がまるで後世に悪意だけを伝えようとしたかのような、そんな邪な意図を感じさせるものばかりだ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:06.91 ID:xXBmnJAo<> 動悸が切迫していくのを意識しながら、洋佑は居間の中を見渡した。身を隠せそうな場所は、そうない。ダイニングから台所へ抜けたか、それとも客間へと逃れたか、ふたつにひとつ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:07.12 ID:xXBmnJAo<> さしたる収穫も期待できない屋内の捜索は打ち切って、玄関から外に出た。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:07.70 ID:xXBmnJAo<> 妻と娘を家から送り出した後、午前中のうちに掃除と洗濯を済ませ、ゆったりと昼食を取ったあとは、いよいよイーゼルに向かう番である。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:07.83 ID:xXBmnJAo<> 再び鉄パイプを手に、今度こそ背後から郁紀を一撃しようとしていた耕司だったが、忌むべきその殺人鬼のあまりにも透明な表情に、彼はしばし毒気を抜かれて立ちすくんだ。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:08.37 ID:xXBmnJAo<>『郁紀はもう、俺が生きてることを知ってます。誰に助けられたかまでは教えてませんが、ともかく奴は警戒してるはずです』
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:08.89 ID:xXBmnJAo<> そう言い聞かせようとする僕の腕の中で、沙耶は激しくかぶりを振る。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:08.89 ID:xXBmnJAo<> 昨夜、井戸の底で耕司を包み込んでいたのと同じ闇。それらの虚ろな空洞に比べれば、右のこめかみに空いた小さな穴は、むしろ慎ましいものだ。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:09.40 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:09.69 ID:xXBmnJAo<> 裏を返せば彼女には、強いてこの場に留まる理由もないということだ。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:10.16 ID:xXBmnJAo<> ここT大医学部に比べれば遥かにランクが落ちるとはいえ、僕もまた歴とした医大生であり、奇しくも脳神経外科学を専攻している。自分の身に起こったことは――信じがたいとはいえ――概ねのところで想像がつく。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:10.89 ID:xXBmnJAo<> 午後7時。
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:10.89 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:11.49 ID:xXBmnJAo<>『……』
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:12.14 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:12.40 ID:xXBmnJAo<>「……じゃあ先生は、信じるんですね? この内容を」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:12.66 ID:xXBmnJAo<>「――奥涯が沙耶と名付けたモノが何だったのか、答えが隠されてるはずだ。そいつを突き止めて、ちゃんと対策を講じてから動くべきだと私は思う」
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:13.39 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:13.46 ID:xXBmnJAo<> 中断させようかとも考えたが、瑶のすがりつくような眼差しと視線を合わせたところで、僕の中に別の思惑が形になる。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:13.97 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:14.64 ID:xXBmnJAo<> もはや人間の手として機能しなくなった右手首を切り落としたのは三日前のことだが、今度は肩から背中にかけての掻痒(そうよう)感が耐え難くなってきている。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:14.84 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:15.38 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:15.56 ID:xXBmnJAo<> 1時間が経ち、2時間が経った。奥涯家には誰も出入りする気配がない。夕暮れがゆっくりと家々の景観を変えていった。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:15.92 ID:xXBmnJAo<>『彼女たちが異世界への扉を見つけだす可能性は如何ほどだろうか。首尾良く異界への旅を成し遂げたとして、辿り着いた世界が生命の繁殖に適した環境である可能性は、さらにどれほど稀少だろうか。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:16.83 ID:xXBmnJAo<> あくまで仮定だ。だがもしそれが真相だとすれば――青海の身に何があったにせよ、それは瑶にも責任の一端があることになりはすまいか?
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:17.41 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:17.48 ID:xXBmnJAo<>「お前も僕の後から、奥涯教授の家を色々と探し回ってたじゃないか。僕とお前とでバラバラに探すなんて二度手間だよ。どうせなら協力して、もっと効率的にやろう」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:17.99 ID:xXBmnJAo<> 
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:18.33 ID:xXBmnJAo<> 耕司が思うに、奥涯氏の別荘は東京の本宅よりも久しく人が出入りしていないように見える。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:19.25 ID:xXBmnJAo<> そうは思っても、油断はできなかった。郁紀はいつどのタイミングで、耕司が助勢を連れていないか確かめようとしてもおかしくない。ここで下手を打って郁紀を警戒させたら、奇襲を企む凉子の思惑も水泡に帰すのだ。もうしばらく、凉子には狭いトランクの中で我慢してもらうしかない。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:19.87 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:20.37 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:20.92 ID:xXBmnJAo<>「したよ。君と一緒で繋がらない。正直なところ、私はてっきり君も死体になってるもんだと思ってたんだがね」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:21.51 ID:xXBmnJAo<> 携帯を握る手が震えているのが、自分でも分かった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:21.54 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:22.21 ID:xXBmnJAo<>「まさかとは思うが、生ゴミをそのまま庭に捨てているんじゃあるまいな?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:22.81 ID:xXBmnJAo<> 土間の片隅、下駄箱の裏に押し込まれて隠れている一足の靴に、瑶は目をとめた。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:22.92 ID:xXBmnJAo<>それを飲みかかった瑶が苦しげに噎(む)せ返る。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:23.50 ID:xXBmnJAo<> 怪物はもういなかった。さっきまで怪物だった残骸が、あたり一面に散らばっているだけだった。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:23.61 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:24.02 ID:xXBmnJAo<><<以下、凉子に電話したルートのみ>>
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:24.30 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:24.83 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:25.52 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:26.04 ID:xXBmnJAo<> 
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:26.34 ID:xXBmnJAo<> 青海は耳を疑った。廊下の奥の部屋から、たしかにそういう声が聞こえた。人間の発声とは思えない、だが動物の鳴き声にしては複雑すぎるイントネーション。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:26.70 ID:xXBmnJAo<> 止めるべきなのか、どうなのか、耕司には判断がつかなかった。たとえ止めるべきだったとしても、止められる言葉が見つからなかった。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:27.27 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:27.48 ID:xXBmnJAo<> 
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:28.04 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:28.49 ID:xXBmnJAo<> 瑶には気付かなかったのだろうか? いや、あり得ない。だいたい真面目に講義を受ける気であれば、好きこのんであんな不便な席に着くわけがない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:29.02 ID:xXBmnJAo<> 違うのだ。僕は沙耶の好意を無碍(むげ)にしようなんて、これっぽっちも思っていない。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:29.13 ID:xXBmnJAo<>「この季節でも、山の寒さは尋常じゃないね。薄着で行ったのはつくづく失敗だった。夜中あたりは凍死するんじゃないかってヒヤヒヤしたよ」
                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:29.86 ID:xXBmnJAo<> 不安のあまり泣きそうになった。瑶の精神は、こういう説明のつかない不条理に立ち向かえるようには出来てない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:30.22 ID:xXBmnJAo<>「ふぅん」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:30.46 ID:xXBmnJAo<> 耕司は、以前にはない狡猾さを発揮しはじめた郁紀の読みの鋭さに慄然となりながらも、それでも怖じることなく肯定した。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:30.95 ID:xXBmnJAo<>「……さよなら、なのか?」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:31.27 ID:xXBmnJAo<>「ヒ、ぃ、いた、痛いィ!」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:31.56 ID:xXBmnJAo<>「そうか。じゃあ今日からは沙耶が一家の大黒柱だな」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:32.13 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:33.02 ID:xXBmnJAo<> おぞましい世界を少しでも見ないですむよう、僕は可能な限り足下に視線を落としたままで、家路を急いだ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:33.22 ID:xXBmnJAo<> 即ち――巡り会った中でもっとも繁栄している種族を選別して侵蝕し、当地の生態系における支配的地位もろともに略奪する。言うなれば種族の“乗っ取り”である。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:33.65 ID:xXBmnJAo<>「あ、そうだっけ」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:34.22 ID:xXBmnJAo<> だがその理由は、どの骨にも溝状の傷が幾重にも刻まれていることで明らかになった。――肉を歯でこそげ落とした跡だ。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:34.42 ID:xXBmnJAo<> 意を決して、耕司は打ち明けた。これには丹保のみならず、横にいる瑶も眉をひそめる。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:34.79 ID:xXBmnJAo<> 次に会うときこそ、この手で殺そう。きちんと最後まで息の根を止めよう。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:35.46 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:36.12 ID:xXBmnJAo<> 匂坂は無言のまま、足下の枯れた芝生を靴先で蹴っている。自分の意気が萎えないうちに、瑶は思い付くままに言葉を続けた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:35.43 ID:xXBmnJAo<> 受講者の多い基礎科目なので二〇〇人収容の大教室で行われるが、席の埋まり具合は半分程度なので、座る席を選ぶのにはさして不自由のない講義である。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:37.12 ID:xXBmnJAo<> 持ち前の嘲るような冷笑で耕司を見送るかと思いきや、凉子は深い溜息をついて、どこか疲れたようにテーブルに頬杖をついた。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:37.40 ID:xXBmnJAo<>「約束した……これが……最後の、プレゼント」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:38.15 ID:xXBmnJAo<> 耕司の行動は軽率だったが、いまさら後悔したところでどうにもならない。むしろ耕司が郁紀に与えたであろうプレッシャーを、どう活用するか――それを考えた方が前向きだ。
                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:38.90 ID:xXBmnJAo<> 奥涯の手記は戯言ではなかった。つまりは、それ以外のすべてが戯言だった。
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:39.46 ID:xXBmnJAo<> 言葉を尽くす瑶の内側では、すでに歯止めが利かなくなっていた。胸の中で渦巻く諸々の想いの、そのすべてが、今この場で吐き出してしまわなければ行き場を失ってしまうような、そんな焦りがあった。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:39.57 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:40.28 ID:xXBmnJAo<> 右手には絵の具がついたままのパレットナイフがあった。何の気なしに、手に持ったまま階下に下りてきたようだ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:40.79 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:40.86 ID:xXBmnJAo<>「――やめようよ、沙耶」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:41.72 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:42.54 ID:xXBmnJAo<>「私にはこいつを持ち歩く資格なんてないし、こんな風に改造するのも銃刀法違反だ。他に質問は?」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:42.87 ID:xXBmnJAo<> 奥涯の手記は戯言ではなかった。つまりは、それ以外のすべてが戯言だった。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:43.07 ID:xXBmnJAo<>「わたしの同類にしてあげたの」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:43.69 ID:xXBmnJAo<> 西那須野塩原インターチェンジを降りる頃には、気がかりだった雪も止んでいた。だが既にこの近辺ではすでに降雪も珍しくない時期なのか、間近に見る山並みは梢の下に白く凍った雪化粧を残している。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:44.36 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:44.62 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:44.92 ID:xXBmnJAo<> 
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:45.32 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:46.24 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:46.80 ID:xXBmnJAo<> こうなれば、覚悟を決めるしかない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:46.87 ID:xXBmnJAo<>「な――」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:47.33 ID:xXBmnJAo<> そう答えると、彼女は安堵したように表情を和ませ、満ち足りた様子で僕の胸板に凭(もた)れかかってきた。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:47.84 ID:xXBmnJAo<> どうやら狭い井戸の底にこもって流れのなかった空気は、夜の冷気を幾分か和らげていたようだ。もし外気の冷たさに晒されて一夜を過ごしていたならば、間違いなく耕司は凍死していただろう。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:48.00 ID:xXBmnJAo<> しゃくり上げるような悲鳴を上げて、瑶は無様に床に転がる。その様は沙耶の言うとおり、まるっきり知性の欠けた動物のようだった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:48.40 ID:xXBmnJAo<> 叱咤しながら、凉子は5歩ほど離れたところに蹲(うずくま)っている郁紀にショットガンの狙いをつける。連銃身の改造猟銃にはまだもう一発が装填されている。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:48.93 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:49.86 ID:xXBmnJAo<> 何が君をそこまでさせるのか。身も心も捧げて尽くすほどの、何が……この僕にあるというのか。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:49.89 ID:xXBmnJAo<> 病院の廊下の壁に相応しい色は? もちろん白だ。白一色だ。間違ってもこんな色で塗ったりはしない。そして多分――さっきからそこいらを右往左往している腐肉の塊みたいな生物たちには、この廊下が白く見えているんだろう。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:50.85 ID:xXBmnJAo<> それは今まで、僕が自分の未来から、完全に切り捨てていた可能性だった。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:50.52 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:51.42 ID:xXBmnJAo<> 廊下の奥の居間からは電灯の明かりが漏れている。舌鼓を打つような音と――何か、馥郁と鼻をくすぐる匂い。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:51.94 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:52.51 ID:xXBmnJAo<>「……ん?」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:52.96 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:53.50 ID:xXBmnJAo<> 沙耶が少し不服そうな声で口を尖らせたのが意外だった。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:54.10 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:54.16 ID:xXBmnJAo<> 股間だけで味わう満足度で言えば沙耶が上だが、瑶の恵まれた体躯には、そこだけではない蹂躙の快楽を与えてくれる。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:54.74 ID:xXBmnJAo<> どこかに携帯を置き忘れているんだろうか?
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:55.04 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:55.56 ID:xXBmnJAo<> 泣きながらも沙耶は笑う。涙に濡れた晴れやかな笑顔で。
                                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:55.62 ID:xXBmnJAo<> こんなことなら、いっそ交際を申し込まれたその場で断っておくべきだったかもしれない。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:56.09 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:57.32 ID:xXBmnJAo<>「ただいま、沙耶」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:57.71 ID:xXBmnJAo<> ダッシュボードから昼のうちに新しく調達したマグライトを取り出し、ポケットの銃の重みを確認してから、耕司はドアを開け――タイミングを合わせてトランクのロックも解除する。凉子なら、いちいち状況を説明せずとも察しはつくだろう。
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:58.27 ID:xXBmnJAo<>「でも、それじゃ大した効き目はなかった。悪夢は日毎にひどくなっていく一方で。安眠するには鉈じゃまだ足りなかったんだ。それで父の銃を盗んできた。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:59.26 ID:xXBmnJAo<> 結局、ついに実物と対面することはなかった。今となっては一度ぐらい会ってみたかったものだと思う。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:20:59.38 ID:xXBmnJAo<> 携帯を握る手が震えているのが、自分でも分かった。
                                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:01.55 ID:xXBmnJAo<> 青海の手が思い出せない。何度もキスしたあの指と指の形が、今すぐに思い出せない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:01.95 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:02.41 ID:xXBmnJAo<> 結局、別荘の外にも屋内と同様、気を引くようなものは何もない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:02.56 ID:xXBmnJAo<> 銃の空撃ちと同じく取り憑かれたような反復で、耕司は鉄パイプを振りかざし、滅多打ちにそいつを叩きのめす。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:03.20 ID:xXBmnJAo<>「いいの。わたしにはもう郁紀がいるし」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:03.38 ID:xXBmnJAo<> 地下墓地のように静まりかえった家屋の中へ踏み込み、そこで人知を越えた営みの痕跡を目にするという体験が、すでに耕司の日常の一部になってしまったかのようだ。
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:03.72 ID:xXBmnJAo<>「やめろぉッ!」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:04.25 ID:xXBmnJAo<>「どうだろうな。――今日の診療で、先生に聞いてみる」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:04.54 ID:xXBmnJAo<> 何の邪気もなくそう言われて、僕はますます返答に詰まる。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:05.14 ID:xXBmnJAo<> 洋佑の足首を掴んだ手は――果たしてそれが手と呼べるモノかどうかは別として――居間のソファの下から伸びていた。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:05.19 ID:xXBmnJAo<> 居間に踏み込み、壁を手探りして電灯のスイッチを入れた瞬間に、その答えが耕司の眼前に晒された。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:05.93 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:05.96 ID:xXBmnJAo<> 車を止めて、耕司は改めて手元の写真と目の前の建築物とを見比べる。たしかに、間違いない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:06.53 ID:xXBmnJAo<> 耕司と申し合わせていたわけではない。何か別の用事があってカフェテリアに現れなかったとしても、べつだん何の不思議もない。以前にもそういうことはあったし、そんなときは青海や郁紀とだけで雑談に興じたものだ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:06.83 ID:xXBmnJAo<> その夜は一分一秒が、僕を拷問のように苛(さいな)みながら過ぎていった。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:07.17 ID:xXBmnJAo<> それまで通り過ぎてきた部屋と同様、ねっとりとした液状の闇に満たされた一室。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:07.37 ID:xXBmnJAo<>「私が奥涯を取り逃がしたように、ね」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:07.89 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:08.20 ID:xXBmnJAo<> 違うのだ。僕は沙耶の好意を無碍(むげ)にしようなんて、これっぽっちも思っていない。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:08.42 ID:xXBmnJAo<> 何を? ――もちろん問うまでもない。たったいま僕があられもなく吐き出した欲望のすべてを、だ。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:08.83 ID:xXBmnJAo<>「なんせ青海ってさ、この前、この歳になって初めてスケートやったんだ」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:09.21 ID:xXBmnJAo<> 鼻歌交じりに台所へ戻っていく沙耶を見送ってから、僕は居間に入った。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:09.65 ID:xXBmnJAo<>「――軽く何か口に入れて、それから風呂に入りたいな。暖まるまでゆっくり」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:10.06 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:10.30 ID:xXBmnJAo<> これならば――そう気を取り直して、耕司は家の他の場所も見て回ることにした。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:10.84 ID:xXBmnJAo<>「……」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:11.16 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:11.43 ID:xXBmnJAo<> 嘯(うそぶ)いて、凉子は袋から新しいサンドイッチを取り出す。さっき耕司に一瞥をくれたきり、以後は視線さえよこさない。こうして話している間も、彼女の注意は目の前の書類にだけ注がれていた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:12.00 ID:xXBmnJAo<>「お前まさか、近頃様子がおかしいのは、その知り合いっていう奴のせいなんじゃ――」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:12.33 ID:xXBmnJAo<>“匂坂郁紀に興味があるか?”
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:12.86 ID:xXBmnJAo<> オイルライターの弱い光では判らなかった奇妙なものに、耕司はすぐ気がついた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:12.95 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:13.40 ID:xXBmnJAo<> たしかに暗い井戸の底で、一燈のライトが作り出す不気味な陰影に彩られた顔を見ているのだから、表情の違いはそのせいだと無理に納得することもできる。だとしても、この口調の豹変ぶりは何なのか?
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:13.67 ID:xXBmnJAo<> 呼ばれたとたん、郁紀はまるで怒鳴りつけられでもしたかのようにビクリと総身を硬直させ、それから億劫そうに振り向いて瑶を見た。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:14.21 ID:xXBmnJAo<> 
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:14.50 ID:xXBmnJAo<> 病院で見た白衣とタイトスカートからは一変し、厚手の皮コートとデニムジーンズに、踵のない編み上げブーツという選択は、最初から山歩きを覚悟していたとしか思えない実用一辺倒な出で立ちだった。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:15.13 ID:xXBmnJAo<> 空も、街も、狂っていた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:15.43 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:16.00 ID:xXBmnJAo<> だが一方で、郁紀が『沙耶』という言葉にこれほどの反応を見せたことに、耕司の中にまだ残っている友情の残骸が、心の深い場所で傷みに呻く。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:16.07 ID:xXBmnJAo<> 頼もしい重さを両手で確かめ、バッタースイングで一振りしてみる。鋼鉄の斧頭が危険きわまりない威力で、ちょうど人間の首の高さを薙ぎ払う。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:16.97 ID:xXBmnJAo<> それにしても――臭い。隙間風が運んでくる臭気だけで、こんなにも匂うものだろうか? まるで匂いの元が部屋の中にあるようではないか。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:17.53 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:17.62 ID:xXBmnJAo<> 折れた骨の先端は鋭利に尖っている。両手で持って体重をかければ、身を守る程度の武器にはなるかもしれない。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:18.05 ID:xXBmnJAo<>「――長い旅だと、思えばいいさ」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:19.03 ID:xXBmnJAo<>「ええ、もちろん」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:19.47 ID:xXBmnJAo<> 身を捩(よじ)り、背後の見えざる敵に鉄パイプを振り下ろそうとする耕司だが、その右手もまた軟体の圧力に絡め取られた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:20.07 ID:xXBmnJAo<>「参ったなぁ。正直なとこ、お前はもう少し迷うもんだと思ってたんだけど」
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:20.47 ID:xXBmnJAo<>『ハハ、勘(煕ヒ&ヤッテクレヨ津久葉。コイツ今WCQエヒ]?ア角咨まッテンダ。ナンカオf&ノ前、コ6GBbュlナッテ始メテすけームVワユア性タ縷ンダカラサ』
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:20.71 ID:xXBmnJAo<> 彼女の笑い。怒り。そして今日私に見せた――涙。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:21.44 ID:xXBmnJAo<> ……隣は、おそらく居間だろう。外から見たとおり雨戸を閉め切っているらしく、真っ暗い闇の中は何も見透かせない。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:22.00 ID:xXBmnJAo<> 予想を上回る閃光と轟音。ただ一瞬だけ閃いた圧倒的な破壊力は、だがその一瞬後にはもう再びぬばたまの闇に呑まれて消えている。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:21.45 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:22.78 ID:xXBmnJAo<> 凉子は腕時計の針を確認する。午前七時。戸尾耕司がどこにも寄り道せずに車を駆ったのだとしたら、そろそろ東京に着く頃合いだろう。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:23.31 ID:xXBmnJAo<> あれはあくまで我々の行動模写なのだろうか。さもなければ、彼女はすでにもう……
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:23.91 ID:xXBmnJAo<>「苦労して破ってみたら、別荘のボイラー室に出た。反対側は薄くモルタルを塗って隠してあったんだな。隠し部屋に機材を運び込んでからドアを塞いで、その後は井戸から出入りしていたんだろう。周到なもんだ」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:24.34 ID:xXBmnJAo<>「それ名案! うん、郁紀って頭いい!」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:24.87 ID:xXBmnJAo<> もしそれが非器質性の障害だとすればお手上げだ。彼自身が異常を訴えてくれない限り、こちらとしては対処のしようがない。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:24.98 ID:xXBmnJAo<> 沙耶が瑶にした仕打ちの残酷さ。その邪悪さのなんと人間的なことか。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:25.44 ID:xXBmnJAo<>「うん!」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:26.06 ID:xXBmnJAo<>「いいって、でも……君のお父さんだろう? 心配じゃないのか?」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:26.08 ID:xXBmnJAo<> 何もかも、僕と沙耶だけの問題なんだ。いまさら世間体なんて気にする柄でもあるまい。むろん沙耶の保護者と話をつける必要はあるだろうが……やはり奥涯教授は、なるべく早く探し出さなければ……
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:26.62 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:26.99 ID:xXBmnJAo<> 郁紀は家に帰るわけではない。駅で逆方向の電車に乗った時点で、それは明確になった。
                                      <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:27.37 ID:xXBmnJAo<> 案の定、胃が痙攣しそうな味だったが、悪いのは沙耶じゃない。きっと彼女は昼の料理番組で教えられた通りに調理したのだろう。単にそれを僕の味覚が受けつけないだけのことだ。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:28.16 ID:xXBmnJAo<> こんな事なら奥涯家の捜索をもっと早めに切り上げて帰宅していれば良かった。耕司などにかかずらって無駄にした時間が惜しくてならない。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:28.26 ID:xXBmnJAo<> たとえばあの日、耕司が瑶と出会ったのが偶然じゃないとしたら?
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:29.11 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:29.42 ID:xXBmnJAo<> その痙攣と、乳房の圧力を通して伝わる沙耶の手の感触と――僕は二人分の奉仕を一身に受けて、一気に快楽の絶頂まで押し上げられる。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:29.75 ID:xXBmnJAo<>『……』
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:30.07 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:30.39 ID:xXBmnJAo<> 化け物は、二匹とも殺したはず……だが悪夢の世界は一向に終わる様子がない。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:30.96 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:31.44 ID:xXBmnJAo<> 僕は形ばかりの愛想笑いを返すと、さっさと門の内側に退散した。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:31.51 ID:xXBmnJAo<> 俺は……一体、どうなった……?
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:32.01 ID:xXBmnJAo<>「先生が心配しているような脳機能不全は、画像診断だけでも充分に判るはずですよね? 何か異常はあったんですか?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:32.53 ID:xXBmnJAo<> 僕らは、僕らの歓喜でこの世界を染め上げる。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:32.59 ID:xXBmnJAo<>「君がそういう乱痴気騒ぎに手こずっている隙に、匂坂郁紀を追いつめるチャンスを逃すことだよ。身辺で火の手が上がれば、彼は手遅れになる前にさっさと姿をくらますだろう。そうやってまた万事が振り出しに戻る」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:33.09 ID:xXBmnJAo<> 
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:33.38 ID:xXBmnJAo<>「ああ、そりゃあもう」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:33.71 ID:xXBmnJAo<>「しばらく会わないうちに、えらく悪食になったらしいな。――いったい今日まで何人殺した?」
                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:34.39 ID:xXBmnJAo<>「なぁ郁紀、お前はどう思う?」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:35.59 ID:xXBmnJAo<> その日の時計の針は、まるで世界の終わりの日のようにゆっくりと、気を持たせて時を刻んだ。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:36.12 ID:xXBmnJAo<> だからそういう威嚇も結局のところ、沙耶が言うような『確実ではない心理戦』と変わらない。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:36.43 ID:xXBmnJAo<>「僕が沙耶に優しいのは、僕が事故に遭ったからだって……そう君は思ったんだね?」
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:36.69 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:38.17 ID:xXBmnJAo<>「心配だね。どうしたんだろう」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:38.49 ID:xXBmnJAo<>「でも、少しだけ待って。私は私なりに色々と調べてみる。放っておける状況じゃないのはよく理解できたから」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:38.93 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:39.66 ID:xXBmnJAo<> ぬめり粘つく柔らかい質量が、耕司の爪先の上に乗る。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:40.36 ID:xXBmnJAo<> 郁紀は声のトーンを落とし、暗鬱とした眼差しで耕司の撲殺した肉塊を見遣る。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:40.58 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:41.14 ID:xXBmnJAo<>「こいつがロッカーから消えたせいで、父は責任を問われて地元の猟友会から除名させられた。申し訳ないと思ってるよ。私は両親にとっては自慢の娘なんだ。それが金庫の銃を盗み出すなんて想像もしてないだろう」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:41.39 ID:xXBmnJAo<> 挑発の言葉で締めくくって、郁紀は通話を切った。
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:42.71 ID:xXBmnJAo<>「僕はこの家の人と知り合いなんだ。頼まれて捜し物をしに来ただけさ」
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:41.86 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:43.24 ID:xXBmnJAo<>「沙耶、もっと真ん中に寄せてくれ」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:44.07 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:44.59 ID:xXBmnJAo<> 僕はつい可笑しくてクスリと笑った。沙耶でも、こんな風に恥ずかしがることがあるなんて。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:45.69 ID:xXBmnJAo<> 数少ない家具類も、その半数以上は、まるで運び込まれてから一度も使ったことがないような新品だった。空のままの抽斗(ひきだし)、傷も手垢もひとつもないまま、黴と湿気に傷んで埃を被っている。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:46.43 ID:xXBmnJAo<> 呼ばれたとたん、郁紀はまるで怒鳴りつけられでもしたかのようにビクリと総身を硬直させ、それから億劫そうに振り向いて瑶を見た。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:46.95 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:47.49 ID:xXBmnJAo<> 大変だった一日をようやく終えて、ベッドに就こうとしたところで、僕は奥涯邸からの収穫物を沙耶に見せた。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:47.20 ID:xXBmnJAo<> 
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:48.45 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:49.38 ID:xXBmnJAo<> 緑地公園、河原の河川敷、そして4度目の誘導は、まだ麓までしか開発の進んでいない丘陵地の、森に覆われた頂だった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:49.42 ID:xXBmnJAo<> ――本当にあったコワ〜イ話:病院編――
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:50.13 ID:xXBmnJAo<> ただ独り真相を知る耕司には、それを明るみに出す意図など毛頭ない。これまでも、これからも。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:50.15 ID:xXBmnJAo<>「目を開けちゃ駄目!」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:50.70 ID:xXBmnJAo<>「――そうらしいな」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:51.57 ID:xXBmnJAo<>「え〜?」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:51.68 ID:xXBmnJAo<> 
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:52.14 ID:xXBmnJAo<>「――じゃあ、津久葉は? 津久葉瑶にも連絡を?」
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:52.48 ID:xXBmnJAo<> 誰か別人が青海の携帯を手に入れて、このメールを打ったのだろうか? だとしても、なぜ瑶宛てに?
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:52.98 ID:xXBmnJAo<> 
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:53.32 ID:xXBmnJAo<> 不満げに唇を尖らせる沙耶。そんな表情がまた愛らしい。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:53.72 ID:xXBmnJAo<>「津久葉さんか……参ったね。まぁ、あんな事があった後だからさ。最近、声がかけづらくて」
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:56.14 ID:xXBmnJAo<> 
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:56.34 ID:xXBmnJAo<>「怪奇SFの草稿か何かですか? 罪のない悪ふざけですね。彼にはこんな子供っぽい趣味があったわけだ」
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:57.11 ID:xXBmnJAo<> もしかしたら、耕司の口から唾が飛んだのかもしれない。だとしてもそれは日常の会話でたまに起こる程度の不注意だったはずだ。少なくとも瑶の目からは、はっきりそれと判るほど明らかなものでさえなかった。どう考えても、躍起になって身を庇うほどのことではない。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:57.88 ID:xXBmnJAo<>「うん――いいよ、郁紀――」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:57.98 ID:xXBmnJAo<> だが僕一人しかいないこの部屋でなら、僕は沙耶の声を聞いてもいいんじゃないだろうか。ここは僕だけの現実――沙耶とともに過ごした、たしかに現実だったあの日々と地続きの場所なんだから。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:58.59 ID:xXBmnJAo<>「……本当に、嫌だよ?」
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:59.41 ID:xXBmnJAo<> 促されるままに、耕司は肉筆の記述に目を通し――3分足らずで読むのをやめた。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:21:59.49 ID:xXBmnJAo<> 
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:00.33 ID:xXBmnJAo<> 居間を通り抜け、引き戸の向こう側の台所に向かう。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:00.44 ID:xXBmnJAo<> 
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:00.99 ID:xXBmnJAo<> 片足が床から離れない。靴底のゴムが貼りついている。さっき沙耶に浴びせた液体窒素の仕業だった。耕司の立っている辺りまで床底に極低温が伝播していたのだ。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:01.27 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:02.06 ID:xXBmnJAo<> この手を誰かの血に染めたことに、何の葛藤も感じていない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:02.11 ID:xXBmnJAo<> 特にドアノブや階段の手すりが著しい。手垢などというレベルではなく、まるで汚れ雑巾を巻いて掴んだかのような、妙に黒ずんだ液状の汚れが、そこかしこにこびりついている。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:02.76 ID:xXBmnJAo<>「いや……一通りは確かめたし、なぁ」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:03.20 ID:xXBmnJAo<> たしかに少し離れた場所に、都内有数の緑地公園がある。こんな果物が成っているなんて聞いたこともないが――そうか、今の僕に果物っぽく見えるというだけで、たぶん本当は別のものだ。
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:03.72 ID:xXBmnJAo<> 僕は別の塊を手にとってみた。今度は硬そうな芯のまわりに厚い果肉がついている。囓り取るとこれも、味は似たようなものだった。
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:03.77 ID:xXBmnJAo<> この殺風景な内装――思い出した。奥涯の別荘の地上階。井戸に落ちる前に家捜していた部屋だ。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:04.46 ID:xXBmnJAo<> 耕司はとある部屋の前に立っていた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:05.04 ID:xXBmnJAo<> それに触れるだけの勇気を奮い起こせるまでの間、ただ棒立ちのまま眺め続けていた。
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:05.36 ID:xXBmnJAo<> いま自分が危うい均衡の上に立っていることは、耕司も自覚している。
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:05.56 ID:xXBmnJAo<>「いいや、全然」
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:06.11 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:06.64 ID:xXBmnJAo<> 書架の内容は、一介の学生では見たことも聞いたこともないような専門書のオンパレードである。臨床医学より研究者寄り、という程度の判断しかつかない。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:06.67 ID:xXBmnJAo<> 
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:07.43 ID:xXBmnJAo<>「辛そうだね〜」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:07.68 ID:xXBmnJAo<> それから瑶の頭を掴んで無理矢理に横を向かせ、そうやって汚された彼女の顔と直面すると、たった今僕が吐き出したものを、弄(いら)うような舌使いで愛おしげに舐め取っていく。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:08.10 ID:xXBmnJAo<> 
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:08.84 ID:xXBmnJAo<> 彼女が一種のアーティストであることは間違いない。はたして彼女がその体内で、ラットの精子を素材として創出したものはいったい何なのか?
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:08.87 ID:xXBmnJAo<> 
                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:09.40 ID:xXBmnJAo<> そのとき――郁紀はまるで怯えて身を竦(すく)めるような勢いで、手で顔を庇っていた。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:10.08 ID:xXBmnJAo<> それにしても――ただの患者であるという以外にこのT大とは何の縁もない匂坂が、どうやって奥涯のことを知ったのか?
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:10.58 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:11.30 ID:xXBmnJAo<>「あの日から今日まで、沙耶と一緒にいた僕だから……沙耶に優しくして、大切にしてあげたいって……そう思う僕になった。そう思われる沙耶になったんだ。これって――大変なことだろう?」
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:11.34 ID:xXBmnJAo<> とんでもないことをした……僕は狼狽のあまりパニックになりかかっていた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:12.15 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:12.23 ID:xXBmnJAo<> ここにいる。今たしかに沙耶は僕とともにいる。確かなのは今この瞬間だけ。信じられるのは僕と繋がっている彼女ただ一人だけ。
                                  <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:12.80 ID:xXBmnJAo<>「不法侵入だぞ。耕司」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:13.27 ID:xXBmnJAo<> 
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:13.34 ID:xXBmnJAo<> ……まだ私……好きな人にキスしてもらったことも、なかったっけ……
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:13.93 ID:xXBmnJAo<> 
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:14.05 ID:xXBmnJAo<> 言葉の途中で瑶が咳き込む。ただの咳ではない。ゴボゴボと激しく咽せ返り、気道に詰まった何かを吐きだしている。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:14.89 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:14.96 ID:xXBmnJAo<> 津久葉瑶。耕司ほど積極的に行動を起こしそうな人間ではないが、だからといって油断はできない。戸尾耕司と高畠青海が消えたことを結びつけて考える程度の知恵は、あの女にもあるだろう。
                        <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:15.88 ID:xXBmnJAo<> 不思議な少女だった。あどけない容姿や話しぶりとは裏腹に、大人たちの目を欺いて独力で衣食住を確保する生活力。常識の欠落は幼さ故のものだとしても、会話の端々に窺わせる聡明さや知識の深さは、およそ子供のものとは思えない。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:16.47 ID:xXBmnJAo<> 声が枯れ、叫び続けるだけの力もなくなってからは、耕司の思考能力は完全に麻痺していた。
                             <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:16.73 ID:xXBmnJAo<> イメージが、悪夢の中の妄想でしか成し得ない連想で、耕司に直感と理解をもたらした。
                                <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:17.22 ID:xXBmnJAo<> 人間の骨では、ない。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:18.58 ID:xXBmnJAo<>「可愛いからだよ! いじめたくなるほど可愛くて、壊したくなるほど綺麗だからだよ!」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:19.42 ID:xXBmnJAo<>「いいだろう。場所は?」
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:19.48 ID:xXBmnJAo<> しばらく考え込んだ後、沙耶は自らの内側に探りを入れるかのように、淡々と言葉を探して紡ぎはじめた。
                                   <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:20.22 ID:xXBmnJAo<>「長さは私が使ったロープのほぼ2倍。途中に結び目があって、端は両方とも切断されてる。この両端が繋がって輪になってたのさ」
                         <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:20.69 ID:xXBmnJAo<>「いなくなって今日で一週間になる。まだ何の連絡もない」
                           <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:21.33 ID:xXBmnJAo<> 
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:21.29 ID:xXBmnJAo<> 人間の骨ではないと判った時点で安堵しかかったのも束の間、耕司はこの家にまつわる不可解な謎がなおいっそう不気味なものに思えてきた。
                          <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:22.07 ID:xXBmnJAo<>『青海と、瑶ね……』
                                     <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:22.47 ID:xXBmnJAo<> 急に気弱になってそう訊いてくる沙耶に、僕は慌てて、
                              <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:23.13 ID:xXBmnJAo<> 陰惨な笑みとともに呟いてから、凉子はためらいもなく片手を石の隙間に押し入れた。
                            <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:23.66 ID:xXBmnJAo<> 居間で洋佑を襲い、洋佑の頭の中に入り込んできた『アイツ』――
                               <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:23.74 ID:xXBmnJAo<> 隣の郁紀に声をかけようとすると、すでに親友は無言のまま助手席のドアから降りるところだった。
                                    <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:24.46 ID:xXBmnJAo<> 
                       <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:24.75 ID:xXBmnJAo<> 
                                 <> VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2009/07/05(日) 12:22:24.99 ID:xXBmnJAo<> いまいち僕には説得力がないんだが、沙耶の容姿がショッキングで、それに驚いた相手が戦意を喪失する、というのはあり得る話だ。
                          <>