VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:24:30.98 ID:7.2Lf8w0<>・番外通行モノです。
・キャラ崩壊注意。ただそこまでひどくはしないつもりです。
・書き溜め有り。平均的には三日に二回ペースを予定していますが、期間が長く空きそうな場合は報告します。
・ロシア編後の話なので完全オリ設定です。
・ギャグ? シリアス? ほのぼの? …よく分からんです。
・地の文形式だったり台詞形式だったりで結構メチャクチャです。
・その他、ご都合主義により既存の原作設定と矛盾してる箇所が多く見受けられますが予めご了承下さい。こまけぇこたぁ(ry
・打ち止めは『家族』 よってセロリ要素は割と少なめ…です。
とりあえずこんな感じで始めたいと思います。
誤字、脱字、ミス等は尽きないと思いますが生暖かい目で見てやってくれたら嬉しいです。
では早速初回(プロローグ的なの)投下します。<>番外個体「ってなワケで、今日からお世話になります!」 一方通行「……はァ?」
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:25:44.99 ID:7.2Lf8w0<>
《第三次世界大戦》終結―――
―――キィィィィ……ン
寒いロシアとは一転し、暖かく綺麗な夜景が映えた『学園都市』の上空を飛行する一機の小型旅客機。
機内の窓際では一人の少女がその風景を見下ろしていた……。
「……………」
少女の格好は全身真っ白に僅かな模様が入ったタイツのようなスーツ……。
何と言うか奇抜で、それこそアニメにでも出てきそうな戦闘服……そんな印象だった。
「久々の学園都市かぁ………夜だってのに相変わらず眩しいわね」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:26:35.26 ID:7.2Lf8w0<>
下の景色にそう呟く少女の名は『番外個体《ミサカワースト》』……。『妹達(シスターズ)』第三次製造計画(サードシーズン)
で作られた御坂美琴のクローンである。
「もうすぐ、か……」
窓淵で頬杖をつくその容姿は、御坂美琴(オリジナル)よりも随分と大人びていた……。
「…………」
ロシアから出発し、大した時間も掛からず目に映った故郷の光景に……番外個体はどこか感慨深い表情を作る。
??「―――気分はどうだ?」
ふと横から声を掛けられ、振り向いてみると……そこには白衣を着た中年の男性が立っていた。……風貌から察するに、
どうやら科学者のようだ。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:28:57.40 ID:7.2Lf8w0<>
「んー……悪くないかな」
適当にそう返し、再び窓から外を見つめる。
科学者の男は素っ気無い彼女の態度を気に止める事なく、また話し掛けてきた。
科学者「あと五分ほどで着陸だ。その時はさすがにベルトを装着しておいた方が良いぞ?」
番外個体「ハァ……あれ窮屈だからイヤなのよねー…」
科学者「なら着陸時の『G』に逆らわず宙を舞うか?」フフッ
番外個体「……わーったわよ。っていうかさ、『超音速旅客機』ってもっと『G』がキツイんじゃなかったっけ?」
科学者「この旅客機はその一歩先へ進んだ……言わば『最先端』だ。どうだ? 快適だろう? 普通なら飛行中に立つことなど
不可能に近いからな」
番外個体「ふーん……だからこんな“小っちゃい”んだ…」
科学者「まぁな、……だがいずれは『大型』として一般的に運用される日も近いだろう。さすがに離着陸時に発生する『G』の
看破とまではいかないがな……。それにまだコイツは『試験機(テストマシン)』のようなものだ。実用化は当分先
になるかもしれんな」
番外個体「はぁ? そんなのにミサカを乗せたワケ? 墜落でもしたらどう落とし前つけてくれんのよ?」ジロッ
ただでさえキツイ目つきを更に鋭くさせる。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:31:36.02 ID:7.2Lf8w0<>
その視線に一瞬身を竦めた科学者の男は、少しだけ小さい声になる。
科学者「……俺は別に『アッチ』の方でも構わなかったんだが……お前はそれでも良かったのか?」
番外個体「はっ、イヤに決まってんでしょ! あんなのもう二度とゴメンだわ!」
科学者「やれやれ、わがままな………調整ミスったかな……」ハァ
番外個体「ああ? 何か言った?」ギロリ
科学者「いや、何も……それよりその目で睨むのはやめてくれないか? ……正直かなり怖いんだが」
番外個体「あんだけマイナスの感情が流れてくりゃこんな目つきにだってなるっつーの……だいたいそれ、自分で生んだ子供を
批判してるのと変わんないし」
科学者「……まぁ色々と不満はあるだろうが、もう少しで第二十三学区内に入る。とりあえず着陸までは我慢してくれ」
番外個体「ふん……」プイ
興味なさそうに頬杖をつくが、他に会話をする相手がいないせいか……互いの口数は減らなかった。
しばらく続いた会話の後、科学者の男は番外個体にこう警告する。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:33:13.45 ID:7.2Lf8w0<>
科学者「念のためにもう一度言っておくが、次はないぞ? お前が作られた本当の『目的』を忘れるな。お前だってタダな訳じゃない
が、“代わり”はいくらでも用意できるんだからな? 再度のチャンスがこうして与えられたことだけでも寛大だと思え」
番外個体「またそれ?……何度も何度もしつけーっての。いい加減ウンザリなんだけど?」
科学者「ふっ、そうか。まぁいいが……あまり『ハメ』を外しすぎるなよ?」
番外個体「…………分かってるわよ」
科学者「さて、じゃあ俺もそろそろ着陸に備えるとするか」スタスタ
番外個体「…………」
意味有り気な笑みを零してその場から去っていく科学者の背中を、番外個体は目を更にキツくして睨んでやった。
「……チッ」
忘れている訳がない……自分には妹達の『負の感情』が全てこもっていると言っても過言ではないからだ。
「一方通行(アクセラレータ)………」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:34:25.95 ID:7.2Lf8w0<>
しかし―――
「………………」
―――ジッと見つめるのは自身の左手。
彼女の脳裏に甦る“あの時”の記憶……。
「………………」
少女は今、何を思う?
あの時、彼は言った……。
『学園都市に吠え面をかかせてやる』と……。
『そのために協力しろ』と……。
よりによっていつ背中を刺されても不思議ではない相手に、彼はその背中を預けたのだ。<>
うんちたーべたい<>a<>2010/09/10(金) 18:34:43.11 ID:ZDmWscAO<>さっさと書けボケ
おもしろくもねぇスレ読んでんだからありがたく思え<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:36:33.94 ID:7.2Lf8w0<>
己のリスクを、利害一致のために曝してまで。
彼らしくない方法を選んでまで………。
「だから……何なんだよ」
そう……だがあれは所詮一時的な共闘だ。交渉によって利害が一致したから仕方なく手を組んだようなものだ。
終わった後はまた『敵同士』に戻る……。これが当たり前……。
「……………」
なのに、何故か左手の感触は消えない……。
彼の手の感触が、あの時に彼の手から伝わってきた『強い意志』が……今もまだハッキリこの手に残っている。
「…………どうするかなんて、決まってんじゃん。今さら後になんて…」
………引ける筈もない。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:39:08.16 ID:7.2Lf8w0<>
「そうよ、ミサカに変更のオーダーはインプットされていない。……今度こそ―――」
「―――第一位を……一方通行を、殺す」グッ
調整も終え、憎しみ(負の感情)も再び組み上げた。身体の調整も終わった今、自分の仕事をする以外の道など彼女には
用意されていない。それ以外の『存在理由』が彼女には無いと言ってもいい。
どの道自分がやらなければ、また別の個体が作られて彼の元へと派遣されていくだけだ………。
番外個体は左手が覚えている感触を拭い去るかのように拳を握った。
「………そんなことになるくらいなら……」
いっそのこと……自分が終わらせてやる。
自分がこの手で終わりにさせてやる…ッ! と、番外個体はギプスのとれた右腕にも力を入れて気を引き締めた―――。
―――その時だった。
ドォォォン!!!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:40:49.85 ID:7.2Lf8w0<>
「ッッ!!?」グラッ
突然の砲撃音と共に激しく揺れる機内。
番外個体は急に訪れた衝撃のあまり、身体がシートからずり落ちかけた。
「―――な、何!? 何なの!?」
あまりにも唐突すぎる展開に思考が追いつかない。
咄嗟に移動しようと立ち上がるが、ひどい揺れに襲われて通路の床に身体が吸い込まれる形となった。
(ッ!……何が、どうなってんのよ……? まさか……マジで墜落!? ウソでしょ!?)
立ち上がるのはもはや不可能だった。
なおもグラグラと激しく揺れ続ける機内で、番外個体はそのまま通路を這いずって移動する。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:42:47.15 ID:7.2Lf8w0<>
「―――!?」
横の窓から一瞬見えた小型の戦闘機……。おそらくアレがこの旅客機に向けて砲撃したのだろう。
翼の方で被弾した機体が、下を向くのが分かった。
もはや安全な着陸ルートは絶たれたと言えるだろう……。彼女にとってこの後の展開を予測するのは容易かった。が、
「ッ……!!」グラリ
激しい揺れの中での移動は決して容易くはない。それでも何とか体を床につける形で番外個体は機体前方部を目指す。
「ハァ……ハァ……!」ズリ…ズリ…
途中、何度も傾く機体に身体が翻弄され、思いきり壁に叩きつけられながらも何とか必死の思いで緊急避難用ハッチへと
辿り着いた。
「ハァ……ッ!!」ビリビリッ
そのまま全力で電撃を放ち、ハッチをブチ破る……。態々ニ億Vの電流をぶつけるまでもないのだが、非常事態に面倒な
加減ができるような人間は少ないだろう。
空いたハッチから下を見るが、やはり機体は地面へと急下降しているようだ……。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:43:59.64 ID:7.2Lf8w0<>
「パ、パラシュート……!」
何故このような事態が起きたのかは理解できないが、このままでは旅客機と共にお陀仏だ。
一緒に乗っていた科学者やパイロットなどは見当たらないが、気にするほどの間柄でもなければ余裕もない。
いずれにせよ、ここに居ればあと数分であの世行きが確約されている以上ぐずぐずしてはいられなかった。
「クソッ! パラシュートは一体何処にあんのよ!? こんなことなら聞いとくんだった………ッ」
焦りを露呈しながら避難用具を目で探すが……明かりも切れた上に設置場所も分からないのでは探すだけ時間の無駄だった。
おまけにまともな探索ができる状態でもない。大地震が続いている中で物を探すようなものだ。
「あぁーもうっ!! 何が『最先端』よ馬鹿!! ホント使えねえっ……!!」
分かりやすい場所に置いとけよ……と愚痴りながら壁に背中をつけて座り込む。
が、そうしていても仕方がないので、とりあえず四つん這いでハッチまで近づき、もう一度下を眺めてみた。もの凄い速度
で見える景色が変わっていく……。だが、確実に地面が近づいているのが分かる。のんびりしている暇はなさそうだ……。
「……………」
街中では無いのがせめてもの救いか……。旅客機はすでに第二十三学区へ突入していたようだ。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:45:12.19 ID:7.2Lf8w0<>
「チィッ……」
(仕方ない……ッ!)
舌打ちをして覚悟を決める。避難用具がない以上、自力で脱出するしかない。
「…………」
まだ地面との距離は百メートル以上ある……。もっと、もっと地面に近づかなければ……。
(まだ……まだよ……………)
振動する空間の中、神経を集中させ、冷静にタイミングを見極める番外固体。早ければ転落死、遅ければ旅客機と仲良く爆死……。
生憎どっちも願い下げだ。
(駄目、まだ遠い………もっと…………もう少し……)
同じ地面(草の生えた平地)が延々と続く……。地面との距離は、もうあと僅かのところにまで迫っている。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:46:50.72 ID:7.2Lf8w0<>
「―――!!」
そして、ついに………その時が来た。
「…………今だ―――ッッッ!!!」
―――バッ……!!
旅客機が地面に墜落する直前、番外個体は勢いよく――――ハッチから飛び降りた。
「!!!!!」
体じゅうから夥しい程の電流を纏いながら、少女の肢体が地面へと落下していく。
「――――ッッッ!!!!」バチバチッ
今宵、学園都市に……こうして一人の少女が舞い降りた。
放電によって生まれた輝きのせいか、その姿は遠くから見たらまるで精霊または天使のようにも見える……。
終戦の直後に動き出したこの小さな物語は、今ここから始まろうとしていた。
小型旅客機が地面と接触した事によって生じた激しい爆発音と共に―――。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 18:49:11.71 ID:glyOUYAO<>面白そう。支援
しかしミサワさんの口調が美琴っぽいのが気になる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 18:51:55.68 ID:7.2Lf8w0<>こんな感じで番外個体が学園都市にやって来ました。駄文ですいません……
短いですが、とりあえずプロローグっぽいのは以上です。
また明日から本格的に投下していきます。
正統派な番外通行目指していけたらなぁと思います。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 19:35:28.79 ID:q7pdCog0<>地の文がいもったいというかダサいというか
中学生が書いてるような文章だから台本形式をおすすめする<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 19:37:33.57 ID:sHzizgYo<>き
た
い<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/10(金) 20:35:52.40 ID:7.2Lf8w0<>>>18
ご指摘感謝します。
見苦しいのを見せてすいませんでした。やっぱ地の文はむずい……
始めからこんな調子で大丈夫なのかすげー不安になってきた……
けど始めてしまった以上は進んでいきたいんで、どうかご容赦を。
>>19
ありがとっす。
今日のはさわりなんで、お見逃しを…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 20:44:38.98 ID:O6bp7MAO<>楽しみです!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 20:45:41.92 ID:UQBIy.wo<>書きなれてないだけで、書いていくうちに慣れて違和感はなくなるだろうからこのままでもおk
下手に形式変えるとかえって変になるぞ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 20:53:02.35 ID:iFym5UMo<>番外個体はもっと幼い喋りかただぜ
今のままだと違和感MAX
応援してるから頑張って<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 20:53:46.63 ID:q7pdCog0<>>>20
試してみたらいかが?ってだけで>>1の好きなようにするのが一番だ
余計なことを言ったようですまん<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 20:55:57.86 ID:AyD3e36o<>あたりまえだけど番外通行少ないからな。期待する<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 22:04:18.92 ID:6ScM.ZUo<>続きを待ってる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 22:13:30.49 ID:/7Iyku6o<>内容は期待
ただ、見やすくするため行間を開いているんだろうけど、逆に見づらい
もっと詰めてくれるとありがたい
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 22:41:39.79 ID:jCGTYsko<>乙!
期待して待ってる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 23:41:41.77 ID:oTEETXko<>今流行りだしてる番外通行か
期待<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/10(金) 23:55:03.11 ID:aYGHqA60<>地の文を書くのなら原稿用紙的な段落の頭1マス空けとか改行は段落毎にとか、
そういう文章の基本を踏まえて小説形式にしちゃう方がかえって読みやすい
あと間を取りたい時以外は地の文と会話文の間に1つ改行はさむだけで十分読みやすいよ
最近小説形式の文章を投下してた禁書SSがあった気がするから、
他の人のを読んでみてどの程度の改行や空白だと読みやすいか自分なりに見てみるといいかも
うん、あれだ、長々と講釈垂れたけど続き期待してる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 09:25:32.04 ID:OirbHMAO<>>>27
俺はこのぐらいが見やすいな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 09:50:31.60 ID:NZRyWEAO<>番外通行への期待が大きいせいか
お前等かつてない程に厳しいな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 10:49:32.89 ID:K.G3Q9.o<>数少ない番外通行だから期待は高まるよな
>>1の自由に書いて完結して欲しい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 10:50:13.46 ID:7RnBlzc0<>まぁ、書き方云々はともかく………
「 逃 げ ち ゃ ヤ ダ だ よ ? 」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 14:49:29.36 ID:SWXKRNQo<>始まってそうそうに、書き方云々言い出す評論家(笑)なんなんだよ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:39:01.66 ID:L27.cK60<>こんにちは、>>1です。
うわぁ……何かすげぇプレッシャー……何故22巻の表紙が出たにも関わらず番外通行少ない
のか分かった気がする……。
ご指摘、ご感想ありがとうございます。
まあ…最初から下手なのは自負してますんでお手柔らかに頼んますね。
逃げる? 大丈夫、完結までは絶対逃げません。
たとえスクリプトにスレの大半を一瞬で潰されようとも…(遠い目)
書き方については読みにくい方、ホント申し訳ない……このスレ立てる前も書いてたんですが、
その時の癖が完全に染みついちまってた…。
是非参考にさせてもらいますね。
……では、投下します。スローペースですがお許しを…
あと、この時間に来るのは稀で基本夜投下です。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:41:28.68 ID:L27.cK60<>
――とあるシティホテルの一室
広いリビングルームは明るい照明が点いてはいるが……そこには今、誰もいない。
代わりに浴室から鳴り響くシャワーの音……。広めの浴室にすっかり元気を取り戻した太陽のような幼い少女と
白髪細身の少年がいた。
「とりゃーっ! ってぇ、ミサカはミサカは勢いよくダーイブ!」ピョン
バシャーン! と湯船に少女の身体が吸い込まれた。いや、少女が淵を超えてそのまま湯船に飛び込んだのだ。
「おォ!? ッ……こ、このクソガキィ!! 何しやがンだァ!?」
すぐ近くで頭を洗っていた少年は、当然それによって生じた水しぶきをモロに浴びる結果となる。
防御のため、咄嗟に閉じた目を再び開いて鋭くさせた彼は、波のおさまらない湯船へ向かって怒鳴りかけた。
この少年こそ学園都市の頂点に立つ“最強”の超能力者、一方通行《アクセラレータ》だ。
打ち止め「あ〜、極楽どすなぁ〜♪ ってミサカはミサカはちょうどいい湯加減に感嘆してみたりぃ…」ポカポカ
一方通行「極楽じゃねェよ! 飛び込みはすンなって前も言ったよなァ? 忘れたとかほざきやがったらそのまま
沈めンぞコラ?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:44:05.09 ID:L27.cK60<>最強のガンをくれても打ち止めは臆すどころか笑顔のままだった……。
打ち止め「またまたぁ、照れちゃって〜」
一方通行「……急に何を意味分かンねェ事言い出すンだァこのガキは?」
打ち止め「え? だってアナタはまたミサカのために命を張ってくれたんだよね? ってミサカはミサカはニヤニヤ
しながら蒸し返してみたり」
一方通行「……………」
打ち止め「そんな素直じゃないけどミサカが好きで好きで仕方ないアナタと久しぶりに一緒のオフロに入れるのが
嬉しくて……ついハシャイじゃった♪ ってミサカはミサカは言い訳してみたり///」ペロッ
最終信号、または打ち止めと書いて《ラストオーダー》と呼ばれる少女は照れ笑いを浮かべ、舌まで出して可愛く
誤魔化そうとしたが……一方通行は青筋に不敵な笑みを混ぜた表情を作った。
一方通行「……あっそォ、ンなら俺がハシャイだって何の不思議もねェワケだよなァ」
打ち止め「!?」
反撃の顔面シャワーが打ち止めを襲ったのはその直後だった。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:45:56.62 ID:L27.cK60<>
〜〜〜〜〜
時は一時間ほど前に遡る。
一方通行「…………」カツ カツ カツ
打ち止め「〜〜〜♪」テク テク テク
日はすっかり落ち、辺りは暗く、街灯の光だけが二人を映していた。
一方通行は杖をついて先をさっさと歩き、打ち止めは彼の服の裾を掴んで楽しそうについて来ている。
一方通行「…………」
打ち止め「ねぇねぇ、何さっきからダンマリ決め込んじゃってるの? ってミサカはミサカは尋ねてみる」
一方通行「……なァ、ひとつ訊いてイイか?」
打ち止め「なになに〜? ってミサカはミサカは何を訊かれるのかワクワクしてみたり」
一方通行「オマエさァ……」
打ち止め「うんうん?」
一方通行「いったい何処まで俺について来るつもりなンだよ?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:48:05.51 ID:L27.cK60<>
打ち止め「」
一方通行「? ……オイ、何フリーズしてンだ?」
打ち止め「はっ!? 予想外のスルーパスに一瞬思考が止まってしまった…ってミサカはミサカは不覚を負ってみたり」
一方通行「予想外でも何でもねェっつの……。ガキはもォ家に帰る時間だろォが」
打ち止め「んーとね……」モジモジ
一方通行「?」
打ち止め「今日は……アナタのおウチにお泊まりしたいな。ってミサカはミサカは頬を赤らめながらも希望してみるんだけど…」
一方通行「却下」
打ち止め「ガーン! ……な、なんでーっ!? ってミサカはミサカは即答で拒否られたことに憤慨してみるーっ!」
一方通行「うるせェ、却下っつったら却下だ。オラ、黄泉川ン家まで送ってやっからさっさと歩け」
打ち止め「冷たい! 冷たい冷たい冷たいぃぃ!! ってミサカはミサカは駄々こねてm」
一方通行「ダメだっつってンのが分かンねェのかァ!?」
打ち止め「わかんないっ! ってミサカはミサカは聞く耳持たず!」
一方通行「…………」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:50:47.88 ID:L27.cK60<>
打ち止め「ミサカはミサカは帰らないっ! っていう固い意志を見せてみたり!」
一方通行「…………オマエなァ」
打ち止め「帰りたくないの! 今日はアナタと一緒のいたいのーっ! ってミサカはミサカは一歩も退かない姿勢で訴えてみる」
一方通行「ガキが定番の誘い文句をクチにしてンじゃねェ! あンまワガママ言ってっと送ってやンねェぞ?」
打ち止め「いいもん! アナタに勝手について行くから!」
一方通行「はァ? オイふざけンなよ?」
打ち止め「いいじゃん! 何? ミサカを部屋に入れたくない理由でもあるの!? ってミサカはミサカはイヤな予感を瞬時に
感じとってみたり…」
一方通行「何を予感してンだァ? 少なくともオマエが考えてるよォな事はなンもねェよこのマセガキ!」
しばらく平行線を辿ったこの口論の果て……
打ち止め「むぅぅ……どーしても連れてってくれないんなら、ミサカにも考えがあるんだからね!」
一方通行「あァ?……ンだそりゃあ?」(まさかこのガキ、演算補助切る気じゃねェだろォなァ……)
打ち止め「ミサカはここからテコでも動かないっ! ってミサカはミサカは……えーっと……ストライキに突入してみる!」ズン
一方通行「…………」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:52:26.14 ID:L27.cK60<>
一方通行(あァ……頭痛てェ…)
鼻息を荒くしてその場に座り込んでしまった打ち止めに、一方通行は本気で頭を抱えた。
一方通行「……立て」
打ち止め「やだ!」
一方通行「みっともねェ真似してねェで立てっつってンだよォ!」
打ち止め「い・や!! 今日は絶対アナタのおウチで過ごすってミサカはミサカはすでに決心してるの!!」
一方通行「だから勝手に決心してンじゃねェェ!!」
打ち止め「アナタのおウチに行くぅ!! 行くったら行くーーーーっっ!!!」バタバタ
一方通行「…………」
ついには駄々っ子のように(子供だが…)手足をバタつかせる打ち止めに一方通行は……
一方通行「はァー…もォ勝手にしろ」
………折れた。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:53:58.63 ID:L27.cK60<>
打ち止め「!! うわーいっ♪ ってミサカはミサカは飛び跳ねて喜びを表現してみたりーっ♪」
一方通行「……はァ…」
力ずくで帰そうとも思ったが、誘拐と間違われて通報されるのがオチだ。
ピョンピョン跳ね回る打ち止めの横にいる最強の背中は、普段よりも三割増しの哀愁が漂っていた……。
〜〜〜〜〜
んで、現在に至る…
打ち止め「もーう、顔謝はやめてって言ってるのにぃ…ってミサカはミサカはブーたれてみる」
一方通行「その言い回しはヒデェ勘違いが生まれそォだからやめろ」
やがて風呂から上がった二人はリビング(ベッド付)で寛ぐ。※打ち止めの現保護者である黄泉川にはこの時連絡済。
一方通行(クソ、あの緑ジャージが……何が『ヨロシク頼むじゃん』だっつーの……人の気も知らねェで…)イライラ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:56:02.42 ID:L27.cK60<>
打ち止め「ねぇねぇ、アナタって家出てから学生寮に住んでたんじゃないの? ってミサカはミサカは訊いてみる」
一方通行「……まァな。今改装工事してンだ」
(チッ、明日からまた別ンとこ探しか……面倒臭ェ)
打ち止め「そうなんだ…それならウチに帰って来ればいいのに……ってミサカはミサカは寂しげな顔で呟いてみたり…」
一方通行「ひとりの方が気楽なンだよ。言っとくが、外泊許可すンのは今日だけだかンなァ?」
打ち止め「えぇー………」ムスー
一方通行「……ホラ、いつまでもむくれてねェでオマエもとっとと寝ろ」
そう言いながらソファーにゴロンと横になった。
打ち止め「……そんなトコじゃ風邪引くよ。ベッドで一緒に寝よ?」
一方通行「ンなの気にしてンじゃねェよ」
打ち止め「どうしてアナタはいつも素直じゃないのかなぁ。ってミサカはミサカは溜息交じりに嘆いてみる」ハァ
一方通行「………Zzz」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 15:56:12.13 ID:5Y290ugo<>空けすぎ
見づらい
空けるなら
1行に
しなさい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 15:59:16.82 ID:L27.cK60<>>>45 了解
打ち止め「そして相変わらず寝るの早いし!………おやすみ…」パサッ
つまらなそうな顔でベッドに潜った打ち止め。一方通行はもちろんウソ寝だが…。
「……………」
ロシアからコッチ(学園都市)へ戻って何日か過ぎ、打ち止めもすっかり元気を取り戻していた。
ここからまた、いつもの『日常』へと戻る。………のだが、
(……アイツは、今どォしてる……元気でやってンのか…?)
寝る前に必ずこう考えるようになってしまった。アイツとは……そう、番外個体のことだ。
ロシアで初めてその姿を見た直後、身体に戦慄が走ったのを今も忘れていない。自分の精神を壊すにはこの上ないほどに残忍な
策で来た学園都市……。自分を殺すために来たと言う少女……。恐怖のあまり、思わずその場から逃げ出したほどだ。
しかし、どういう訳か……その後少女と自分は同盟のようなものを結んだ。結束なんて言葉が、最も不相応な筈の相手と。
互いの目的のために。
そして、全てが終わった後……少女は自分の前から姿を消した。
何の言葉もないまま……黙っていなくなっていた。
「…………」
学園都市に戻るか、残って番外個体を探すか……本当は少し迷った。
研究者たちに引き取られたのなら場所が割れなくもないが、会ったところでどうする?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 16:02:58.70 ID:L27.cK60<>
「一緒に学園都市へ帰ろう」とでも言えと?
番外個体の生産事情を知っている彼の口からそんなことが言えるのか……?
「やっぱ……ソイツは無理な話ってモンだろ…」
できれば会いたくない存在だし、もう互いが手を結ぶ理由はどこにもない。
一方通行は、諦めた。
別れの言葉もない内に、彼は学園都市へと帰ってきたのだ。
その後に残ったのは……病室で確かに掴んだ『手の感触』だけだった。
「…………」ジー
自身の手を見つめる……。
帰ってきてからというもの、ずっとこんな調子だ。
感傷に浸るガラでないことは充分に自覚しているのだが、どうにもならなかった。
打ち止め「Zzzzz」
一方通行「………」フッ
寝てしまった打ち止めを一瞬チラリと見て、自分もそろそろ意識を闇に落とそうかと思った時―――。
ドォォォン…
一方通行「あァン…?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 16:05:01.37 ID:L27.cK60<>
遠くで何かが爆発したかのような音が耳に入ってきた。
一方通行(ンだァ……今のは? どっかで花火でもやってンのか?)
一瞬、音のした方角に目を向けるが……
一方通行「…………ま、別にどォでもイイか…」
特に興味もなかったのでそのまま眠りについたのだが、この時彼はまだ知らなかった。
先ほどまで思考を塞いでいた少女本人が、来日していたことを―――。
―――
第二十三学区は空港設備が多いため、広い平地が延々と続いているような場所である。
そのど真ん中に墜落した小型旅客機の成れの果て……。
辺り一面に渦を巻いて燃えさかる炎……。
そこから、二百メートルほど離れた平地。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 16:06:08.57 ID:L27.cK60<>
「……………ぅ」
フラフラと、おぼつかない足取りで歩く一人の少女……番外個体。
「………ぁ……ぁ…」
炎を背に歩く彼女の口から出る声は……か細く、今にも消え入りそうだった。
「…………うぅぅぅ!」
突然頭を両手で押さえ、うずくまる番外個体。出てくるのは苦しみに悶える呻き声。
まるで何かを“思い出そう”としているかのような……。
「!!!……ッッ…」
痛みに耐える彼女の表情から、やがてフッ…と力が抜けた。
その直後、番外個体は崩れるようにゆっくりとその場に倒れ伏し……完全に意識を失った―――。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 16:10:11.18 ID:L27.cK60<>ここで一旦切ります。
番外個体の口調については、20〜21巻もう一度読んで勉強し直します。
至らない所ばっかりでホントすいません。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 16:14:24.35 ID:K.G3Q9.o<>乙<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 16:22:08.34 ID:s3oVQ9ko<>乙乙
期待してる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 16:26:05.63 ID:L27.cK60<>>>45
あと、改行は空けた方が見やすいって方もいるので、
間の部分だけはもう一行空けようと思います。
他にもこうした方がいいって部分あったら遠慮なくお願いします。
少しでも読みやすくなってくれれば幸いです。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 16:26:06.73 ID:gMNAB2wo<>番外通行止めか
胸が熱くなるな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:24:53.00 ID:L27.cK60<>明日ちょっと来れないっぽいんで、速攻書き溜めた!
量たいしてありませんが投下します。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:26:43.56 ID:L27.cK60<>
―――
翌朝…
打ち止め「おっはよー! ってミサカはミサカは朝から元気にアナタへ向かってボディプレスしてみるっ♪」ピョン
一方通行「―――ブゲェ!?」ズン
潰れたカエルの声と同時に意識が覚醒する。
一方通行「ゲホ…ッ…このォ…クソ……ゴホッ……ガキがァァあああ!!」カチッ
打ち止め「わー! ってミサカはミサカは逃亡を計ってみたりー!」ドタドタ
一方通行「待てやゴルァァああ!!」バタバタ
今日も朝から賑やかな二人……。
打ち止め「―――ねーねー! 今日はどこ行こっか? ってミサカはミサカは期待のまなざしでアナタを見つめてみたり」キラキラ
一方通行「帰れ」
打ち止め「ブーブー! ひーどーいー! ってミサカはミサカは頬を膨らませて猛抗議してみる!」プクー
一方通行「俺は今日予定があンだよ」
打ち止め「……何の予定?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:27:45.45 ID:L27.cK60<>
一方通行「オマエにゃ関係ねェ」
打ち止め「ふーん……それでミサカが納得すると?」
一方通行「できなくてもしろ」
打ち止め「うん♪ って、できるかーっ! ってミサカはミサカは乗りツッコミの要領でアナタに向かって突撃ー!」ピョン
一方通行「………」ヒョイ
打ち止め「うぅー! どうして避けるのー!?」
一方通行「当たり前だろォ。……オラ、早く着替えて来いよ」
打ち止め「ミサカとお出かけする気になったの!?」パァァ
一方通行「送るから着替えろって意味だ。オマエは寝巻きのまンま外歩きてェのか?」
打ち止め「やだやだー! まだ帰りたくないー! ってミサカはミサカは食い下がってみる!」
一方通行「だァァ! 我が儘ばっか言ってンじゃねェよ!」
打ち止め「予定って何なのー? ミサカより大事な用なの?」
一方通行「アホか……だいたい昨日は遊園地からショッピングまで、オマエに散々付き合ったじゃねェか。これ以上俺に何を
望ンでンだよ?」
打ち止め「場所とか時間とかの問題じゃないよー! ってミサカはミサカは憤慨してみる!」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:29:25.65 ID:L27.cK60<>
一方通行「……っつーか、もォ充分遊ンだだろォがよ。今日は我慢しろ」
打ち止め「どうして!? アナタはミサカと一緒がイヤなの!? ミサカが嫌いになったの!?」
一方通行「……そォじゃねェ」
打ち止め「ミサカは、アナタと一緒にいたい……ずっと……」
一方通行「…………そォかよ」
打ち止め「今のアナタの顔は、何か考え込んでる顔だよ? 何かあったの? ってミサカはミサカは尋ねてみたり…」
一方通行「………別に何もねェよ」
打ち止め「ウソ!!」
一方通行「ウソじゃねェ……」
打ち止め「じゃあミサカの目を見てよ! ミサカの目を見て喋らなくなったの、自分で気づいてる!?」
一方通行「…………」
打ち止め「何を考えてるの……? ミサカには言えないこと? ってミサカはミサカは追求してみたり」
一方通行「…………」
打ち止め「ねぇ! 何とか言ってよ!! ってミサカはミサk」
一方通行「イイからさっさと着替えて来いってンだよクソガキがァァ!!」カッ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:31:07.66 ID:L27.cK60<>
打ち止め「!!」ビクッ
一方通行「……ッ!」
打ち止め「…………」ジワァ
一方通行「………ァ」
打ち止め「アクセラレータのばか!! もう知らないっ!!」タタタタ バタン
目に涙を浮かべて出て行ってしまった打ち止め。はっと思った時にはもう遅かった……。
(……やっちまった………クソッ!)
すぐに追おうとするが打ち止めの足は意外と速く、一方通行が急いで部屋を出た時には……少女の姿はすでに
何処にも見えなかった。
「何やってンだよ俺はァ……ッ!」
ガツガツと乱暴に杖をついて移動する一方通行。
(ガキに当たっちまうなンてよォ……最悪だクソッたれ!)
ロビーの受付に札束を投げてホテルから出たが、打ち止めはいない。
(どこだァ……? あのガキどこに行きやがったァ!?)
キョロキョロと周囲を見渡すが、見つからない……次第に苛々が積もってくる。
捜し始めてから数分ほどでその苛立ちは爆発した。
「クッソがァァああああ!!」ガンッ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:32:28.64 ID:L27.cK60<>
「お!!? おォォォ………」ヒリヒリ
思いきりドラム缶を蹴り飛ばし、自爆して足を摩りながらうずくまる第一位がそこにいた。
―――
「…………」ポツーン
ホテルから少し離れた公園のベンチに一人座る打ち止め。その表情は暗い……。
「アクセラレータのばか……」
もう何回呟いたのか分からなかった。
「…………」
さすがに少し我が儘だったかな、と反省はしている。
けど今戻るのも若干気まずい……。
目が覚めてからの一方通行は優しかった。目は自分を見てくれてなかったが、自分の行きたい場所に連れて行ってくれたし、
渋々ながらも珍しく部屋に招き入れてくれた。ホテルだったが……。
いつの間にか「もっと」という気持ちが膨らんでしまうのも、無理のないことかもしれない。まだ『子供』なのだから……。
「……でも、ミサカも……ばか…」
決して一方通行を困らせたい訳ではないのだが、それでもやはり甘えたい……何というか、難しい年頃だ。
??「―――あれ? もしかして打ち止めか……?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:34:21.79 ID:L27.cK60<>
打ち止め「?」
声を掛けられて横を向くと、黒色にツンツン頭の少年がそこに立っていた。
打ち止め「あ…!」
学生服に気だるそうな物腰の少年の名は上条当麻。不幸体質で無能力者の高校生だが、右手にだけ“能力を無効化”させる
『幻想殺し』が備わっている。
上条「よう、しばらくぶりだなぁ。こんなトコにひとりで何やってんだ?」
通学途中なのは見れば分かるが、予想外な人物の登場に打ち止めは一瞬気後れする。
打ち止め「え……えーっと…」
上条「? どうした?」
打ち止め「…………」
上条「一方通行と喧嘩でもしたのか?」 ※知ってる設定
打ち止め「えっ!?」
上条「……まさか、図星?」
打ち止め「………」コクリ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:36:40.71 ID:L27.cK60<>
上条「……あんま時間ねーけど、話くらいなら聞くぞ?」
打ち止め「……ホント?…ってミサカはミサカは確認してみる…」
上条「あぁ、遠慮すんなって」
打ち止め「実はね――」
―――
上条「――ふーん、なるほどなぁ……一方通行のヤツが…」
打ち止め「……悪いのは我が儘言ったミサカだよ。ってミサカはミサカは非を認めるんだけど……」
上条「戻りにくい、か…?」
打ち止め「……」コクリ
上条「そうか……」
打ち止め「ミサカは…ミサカは……怖いよ」
上条「あー……俺の予想だけどさ、一方通行は多分もう怒ってないと思うぞ」
打ち止め「どうして…? ってミサカはミサカは訊いてみる」
上条「だってよ、アイツ……お前のこと大好きだから、お前が戻れば“怒り”なんかより“安心”の方がデカイんじゃねえかな?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:39:07.80 ID:L27.cK60<>
打ち止め「ミサカが戻ればあの人は安心するの? ミサカを早く帰そうとしたのに? ってミサカはミサカは意味がよくわから
ないんだけど……」
上条「それはアイツが打ち止めを想うからこそ……なのかな。これについては俺もよく分かんねえけど、少なくとも一方通行はお前
を邪魔に思ったり嫌いになったりなんかしねえよ」
打ち止め「ホ、ホント…?」パァァ
上条「あぁ、そこは上条さんが保障する」
打ち止め「アナタは…あの人のことが分かるんだね。ってミサカはミサカはちょっぴり羨ましかったり」
上条「う〜ん、何となく……」(ってか、ロシアで見てるしな……)
打ち止め「……ミサカ、あの人の所へ戻る!」スクッ
上条「はは、そっか……一方通行によろしくな」
打ち止め「うんっ!」
少女の顔に光が戻り、上条の表情も綻ぶ。
打ち止め「じゃあ、ミサカは行くね! ありがとー! ってミサカはミサカは手を振りながらアナタにお別れするの!」
上条「おーう、気をつけてなー!」
ヒラヒラと手を振って打ち止めを見送った。
……実に気分がいい。今日は何か良いことが起きそうだ! と上条が上を向いてベンチから立ち上がった瞬間…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:40:49.57 ID:L27.cK60<>
キーン コーン カーン コーン♪
現実を呼ぶ鐘の音が遠くから聞こえてきた。
「あははっ、完全に遅刻………不幸だ」
十秒前に抱いた希望はそこで完全に潰えた。
―――
一方通行「…………」
打ち止め「あのー……我が儘言ってゴメンなさいっ! ってミサカはミサカは……頭を…」
一方通行「打ち止め」
打ち止め「は、はいっ!?」
一方通行「言っておくがよ、俺は別にオマエが邪魔だとか思ってる訳じゃねェンだぞ?」
打ち止め「え…?」
一方通行「俺だってオマエといて退屈とか思った事ァねェしな。ただよォ、何も今日一緒じゃなきゃいけねェって決まってる
訳でもねェだろ?」
打ち止め「う…うん……」
一方通行「また会おうと思えばいつでも会えンだ。それで良いじゃねェか」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:42:59.31 ID:L27.cK60<>
打ち止め「ホントに……また会える?」
一方通行「あァ、約束してやンよ。俺を誰だと思ってる? 約束も守れねェよォなクズにまで成り下がった覚えはねェぞ」
その言葉で打ち止めの表情が一層明るくなる。
一方通行「だから、また今度な」
打ち止め「うん! 今度は動物園行こうね! ってミサカはミサカは今から楽しみだったり!」
一方通行「そォかい、ならその楽しみをとっとけ。そン時まで笑ってろ」
打ち止め「わかった!」
一方通行「それとよォ……」
打ち止め「ん、何?」
一方通行「さっきは……ちっとキツく言った。悪かったなァ…」ポリポリ
打ち止め「…ううん、もういいの。ってミサカはミサカは笑って許してあげる」
一方通行「……オマエ、何かあったのか?」
打ち止め「ううんっ、なーんにもっ♪ ってミサカはミサカは駆け出してみるー!」
一方通行「オイ、あンま走ってコケても知らねェぞ?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:45:24.51 ID:L27.cK60<>
打ち止め「そしたらまた絆創膏よろしくね!」
一方通行「あァ!? 調子に乗ってンじゃねェよ!」ズビシ
イターイ! ナニスルンダヨー! ッテミサカハミサカハボウリョクハンタイヲウッタエテミタリー
ウルセェ! オレハオマエノホイクシジャネェンダゾォ!
こうして二人は、並んで歩き出した。その姿は端から見たらまるで実に仲が良い『兄妹』のようである。
―――
一方、ここはとある病院の一室……。
「――ッ!」
ベッドで眠っていた少女の目がパチリと開いた。ゆっくりと起き上がろうとするが、身体にミシミシと痛みを感じて苦悶の
表情を浮かべる。
「うっ!…ん………ここ…どこ?」ムクリ
それでも何とか体を起こし、周りを見ながら呟く。病室なのはすぐに理解できた……。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:47:54.66 ID:L27.cK60<>
「ミサカは……生きてるの…?」
誰に対してでもなく、自分に問いかけるかのように声を漏らした。
腕には点滴の針が刺してあり、着せられた患者衣の隙間から見える痛々しい包帯……。手足や頭に巻かれた無数の包帯が、
重傷さを物語っている。
「あれぇ……?」
そんな中、“違和感”はすぐに彼女を襲った。
「ミサカは番外個体、第三次製造計画によって作られた御坂美琴のクローン…」
自己紹介とはまた違うニュアンスで語り始める番外個体……何やら様子がおかしい。
「わかる……それはわかるよ」
「じゃあ、ミサカは―――」
「―――いったい何のためにつくられたの?」
誰もいない空間に向かって、そう問いかけたが……
「いや、そもそも『第三次製造計画』って………何だっけ?」
……いくら問いかけても答えは返ってこなかった。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/09/11(土) 20:50:58.30 ID:L27.cK60<>以上です。続きは明後日になります
ペース遅かったり引っ張ったりで申し訳ない…
どうか暖かく見守ってやって下さい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 20:55:48.04 ID:K.G3Q9.o<>乙
楽しみにしてる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 21:09:35.27 ID:erStAXwo<>面白そうな展開になってきたじゃないの<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 21:10:50.08 ID:l0dICVs0<>乙
>>60
思いきりドラム缶を蹴り飛ばし、自爆して足を摩りながらうずくまる第一位がそこにいた
よせww折れるぞwwww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/11(土) 22:42:02.05 ID:WVfHaOAo<>記憶喪失ときたか・・・期待だな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/12(日) 00:18:49.23 ID:a4xFfm.0<>>>36で言ってた「前書いたやつ」って…まさか上条さんと一方さんの友情モノ?
違ったら悪いが、最初の改行回しや台詞使いがかなり似てる気がするんだが……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/12(日) 01:00:00.89 ID:n0WB.IEo<>俺もそんな気が初日からしてた<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/12(日) 21:36:14.30 ID:nO0exN20<>話はいいけど「…」に頼りすぎかも
俺だけかもしれないが字の文に三点リーダが違和感
とりあえず期待と支援
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 01:56:20.83 ID:.WgkDxwo<>お前ら人の文体に文句つけすぎだろって
ミサカはミサカは痛いお腹をさすりながら批判してみたり<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 13:24:10.92 ID:4SwvBYAO<>打ち止めついに孕んだのか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 13:53:05.96 ID:f1CBicAO<>セロリェ…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/13(月) 18:36:07.83 ID:5faDWzA0<>番外通行は革命だな
期待されてる分だけ皆厳しい<>
酉つけてみた ◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:10:32.14 ID:LqZsn3Q0<>こんばんは。
多分>>73ので合ってます。自分から言うのは正直どうかなぁと思ってました。
調子こいてごめんなさい…
前のはやたら長くなってしまいましたが、今回はそこまで長くはならない予定です。
やはり俺には番外通行は無謀だったか……と少し後悔しつつ今から投下します。
今日の投下での地の文は最後以外あまりナシです。
>>75
ためになるご意見ありがとうございます! 是非参考にさせて頂きますね。
厳しい意見も優しさなので全然構わないっすよ。ってか『意見あったら遠慮なくどうぞ』って言ったの自分だし。
それはむしろありがたいかな。<>
酉つけてみた ◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:11:54.64 ID:LqZsn3Q0<>
〜黄泉川宅〜
打ち止め「ただいまー!」
黄泉川「おーう、おかえり。ってか何で寝巻き…?」
一方通行(あ、着替えさせンの忘れてた……まァいいか)
黄泉川「お? お前も来たのか。久しぶりじゃん」
一方通行「……すぐ帰るけどなァ、ついでだから顔見に来てやったンだよ。にしても何だその隈は? 不眠症にでも
なったってかァ?」
黄泉川「いや、昨夜に急な“仕事”が入ってな。あんま寝てないじゃんよ……ふぁぁ」
一方通行「ふゥン……」
芳川「あら、珍しい。どうしたの? ホームシックにでもかかった?」クスクス
一方通行「第一声からうぜェなオマエ……っつか、まだここ(黄泉川家)にいたのかよ?」
芳川「新しい住居探すとなったらそれなりにお金が要るのよ」
黄泉川「別にウチは構わないけどな。お前も、寂しかったらいつでも帰ってきて良いんだぞー?」
一方通行「間に合ってンだよォ。人をいつまでもガキみてェな目で見てンじゃねェっつの」
芳川「充分子供じゃないの」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:13:35.66 ID:LqZsn3Q0<>
一方通行「あァ? なンか言ったかァ無職。余生送るにはちィとばかし早えェンじゃねェのォ?」
芳川「……“クソ生意気なガキ”に訂正するわ」
一方通行「そりゃドッチかっつったらコイツだろォが」ジー
打ち止め「そこでミサカを見るなー! ってミサカはミサカは不満を爆発させてみる!」
黄泉川「ま、ドッチも可愛い子供じゃん。打ち止め、あんたは手ぇ洗ってきな」
打ち止め「はーい♪」パタタタ
黄泉川「お前は朝メシ食ってくか?」
一方通行「イヤ、帰るわ」
黄泉川「……ちゃんと学校行ってんのかお前?」
一方通行「あいにく今日は“お休み”だ」
芳川「駄目よー? ちゃんと学校行かないと、将来ロクな大人になれないから」
一方通行「そォだな、ちょうどイイ見本が目の前にいるし」
芳川「……愛穂、ちょっと包丁をk」
黄泉川「駄目だ、落ち着け。あんたをしょっぴくのはさすがに心が痛いじゃん」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:14:47.60 ID:LqZsn3Q0<>
一方通行「ンじゃあなァ、ガキの世話頼ンだぜェ」ヒラヒラ
チョット? ニゲルノ? マダハナシハオワッテナイケド?
ダカラオチツクジャンヨー! ッテカ アイツニカナウワケナイジャン!
バタン
「ふン、なンてェか……相変わらずだよなァ。アイツらもよォ」カツ カツ
甘さを感じられない顔で迫る芳川と背後からそれを押さえる黄泉川を背に、一方通行はその場を後にした。
―――
アナウンサー『えー、続きまして昨夜未明、第二十三学区敷地内で発生した小型旅客機の墜落事故について速報が入りました。
乗員数は依然不明ですが、機内から発見された遺体は操縦士の○○ ○○さんである可能性が高いため、警備員
では身元の確認を―――』
黄泉川「…………」
芳川「愛穂…? 昨日の仕事って、まさかこれのこと?」
黄泉川「ん、まあな」
芳川「小型と言っても結構な大きさのハズよ。なのに見つかった遺体が操縦士だけ……? 乗客がいないなんて少し妙じゃない?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:16:07.28 ID:LqZsn3Q0<>
黄泉川「それがな、何故か上から圧力が掛かって……結局捜査は途中で中止になっちまった。ほら、テレビも『遺体の身元確認を
急ぐ』ってだけで捜査を続行させるとは言ってないじゃん」
芳川「そう言えば……そうね」
黄泉川「なーんか引っ掛かるな……」
芳川「上層部が何らかの圧力を掛けたってことは……誰か『機密』に絡む人間でも乗っていたのかしら……?」
黄泉川「それはさっぱり分からんが……上が決めた以上、私達もこれ以上の干渉はできないじゃんよ」
芳川「………ここは上に従っておいた方が無難ね…」
黄泉川「……だな」
打ち止め「……………」ゴクリ
―――
〜移動中のキャンピングカー内〜
一方通行「っつーかよォ……態々全員揃うまでもなかったンじゃねェのか?」
土御門「そうも言ってられないぜい。なんたって墜落した旅客機からは操縦士以外発見されてないことになってるからにゃー」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:17:24.82 ID:LqZsn3Q0<>
結標「暗部が絡んでいるのかしら?」
土御門「さぁな……それは分からん」
海原「墜落の原因も分かってないんですか?」
土御門「衛星が捉えた映像だと、外国産戦闘機による砲撃だと確認されてる……」
結標「ふーん……で、私達は今回何をすればいいワケ?」
土御門「今から“ある少女”と接触する」
海原「全員で……ですか?」
結標「ってか、それって『グループ(ウチら)』がするような仕事じゃなくない? 何よ“ある少女”って?」
土御門「墜落した旅客機の生存者だそうだ」
海原「それ、確かニュースでは公表されてませんよね?」
結標「確かに……どういう事?」
土御門「……実はその少女が少し“特殊”らしいんだが、詳しい事は俺もよく分からんぜよ」
一方通行「ケ、くっだらねェ……女の扱いならオマエら二人で充分だろォがよ。なンで俺まで駆り出されなくちゃならねェンだ…」
結標「その言い分だと、私は要らないみたいね……帰っていいかしら?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:19:10.49 ID:LqZsn3Q0<>
土御門「駄目だ。大体、俺と海原だけじゃ幅が狭まっちゃうにゃー」
海原「勝手に人の幅まで設定しないでください。自分はこれでも一途なつもりですが?」
結標「もうやだ……ここの連中ときたら変態(ロリコン)ばっかり……」
一方通行「黙れよショタコン」
土御門「公園で男児に声掛けてんじゃねえよショタコン」
海原「さりげなく自分も一緒のカテゴリーに入れないでくれますかショタコン」
結標「あんたら最終的に地球の裏側まで飛ばすわよ!?」
ブロロロ…
―――
「ミサカはミサカなの。それはわかるの……けど、うぅぅ……やっぱ無理ぃ! それ以上考えようとすると頭痛くなるぅぅ!」
「……オーケー、もう結構だよ。負担をかけて悪かったね?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:21:43.88 ID:LqZsn3Q0<>
ベッドで頭を抱える番外個体と、ベッドの横でその様子を見つめる『冥土帰し《ヘブンキャンセラー》』。
番外個体「はぁー、なんか疲れちゃったぁ……」
冥土帰し「ふむ……やはりこれは……」
番外個体「ミサカは何処も悪くないよねぇ? だってほら、手足だって動くし自分の能力もわかるんだよぉ?
何? 何か問題でもあるって言うのかにゃーん?」
冥土帰し「いや、大丈夫だ。君の身体は間違いなく“健康そのもの”だよ。怪我自体も大した事はない……。
じゃあ僕はこれで失礼するね?」
番外個体「おーい、コラコラちょーっと待ってよ。ミサカはいつ退院できんのぉ? こんな薬臭い部屋もう
ヤなんですけどぉー?」
冥土帰し「……自分の『帰る場所』は分かるのかね?」
番外個体「わっかんなーい☆ あひゃひゃ」
冥土帰し(重症っと……)カキカキ
番外個体「けど、ここよりマシなら正直何処でもいいかなぁ〜」
冥土帰し「そうかい。……それじゃ、また後で来るよ」バタン
番外個体「あっ! おい待てこらカエル! ……チッ、逃げやがった…」
冥土帰しが出て行ったドアを見つめて不満の色を浮かべる番外個体。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:24:06.84 ID:LqZsn3Q0<>
番外個体「……はーあ、いったいいつまでここにいりゃいいんだろ……この部屋何もないから飽きちゃった〜」
退屈そうに手足をブラブラとベッドで動かすが…
番外個体「――痛っ! ……ッツ〜、まだ無理はできないかぁ〜」ズキズキ
怪我人であることも失念していた。
番外個体「………はぁ〜…つまんねーのぉ……寝よ」
―――
ブロロロ……キキーッ
土御門「――お? 着いたみたいだな……」
海原「いや、ここって……」
結標「“いつもの”病院よね……」
一方通行「まァ、特殊な患者ならここで別に不思議はねェが……」
土御門「さ、行くぜい」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:25:42.62 ID:LqZsn3Q0<>
バタン
冥土帰し「おやおや、お揃いで……」
一方通行「………」(やっぱコイツが絡ンでやがンのか…)
土御門「で、『例の少女』は?」
冥土帰し「ちょうど今眠りについた所だ。見ていくかい?」
土御門「当然♪」
冥土帰し「では案内しよう。ついてきなさい」
ゾロゾロ
海原「……素性については明かされないのでしょうか?」
土御門「『見れば分かる』らしいがな……」
結標「んで、それからどうするの?」
土御門「上層部の出した結論によると、少女は狙われているらしいからウチラの誰かが護衛して欲しいとのことにゃー」
結標「はぁ!? 何それ……私らはSPじゃないのよ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:27:41.46 ID:LqZsn3Q0<>
一方通行「っつーか何に狙われてるってンだよ?」
土御門「さぁ……学園都市外の研究機関か……あるいは内部か…」
海原「つまりまだ不明ということですね?」
土御門「まぁ、そうなるにゃー」
一方通行「ソイツはよォ、墜落させた戦闘機ってのと何か関係あンのか?」
土御門「俺も事情を把握してる訳じゃないが、多分あるんだろうな……」
海原「その少女を狙って戦闘機は砲撃した。と考えるのが妥当ですね…」
結標「ふーん、大体読めてきた。その子がまだ生きてるから今後も狙われる可能性がある。そこで上層部は私達を派遣した……
そんなトコでしょ?」
土御門「正解♪」
一方通行「ドッチにしろ、俺らがやるよォな仕事じゃねェのは確かだよなァ。上層部ってのはよっぽど人員が不足してンのかよ?」
土御門「何で『グループ』に召集が掛かるのか……そこは俺も疑問だにゃー」
結標「その子ってのはもしかしたらこの中の誰かの関係者だったりしてね」
「!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:30:26.63 ID:LqZsn3Q0<>
海原「それは有り得ますね……我々全員『訳あり』みたいなものですし……」
土御門「あぁー! なるほどにゃー! その発想はなかったぜぃ」ポン
一方通行「アホか、だったら尚更全員で来る意味がねェだろォがよ。アレイスターは一体何考えてやがンだか……」
土御門「『面白いものが見れるから』としか言ってなかったな……」
一方通行「ンだよそれ……全員でガキに会ってどンな面白れェモンが待ち受けてンのか、是非知りてェなァ」
土御門「あ、あと『約一名の面白い顔が見れる」とも言ってたっけ」
一方通行「ケッ、やっぱオマエらの中の関係者なンじゃねェか。別にオマエらの馬鹿面なンて見慣れてンだからどォでも
イイってのによォ……ンな理由で来させられたってンなら、今すぐ俺は帰ンぞ?」
海原「まぁまぁ、折角ここまで来たんですから見て行きましょうよ。案外あなたの知ってる顔かも知れませんよ?」
一方通行「あいにく俺はオマエらみてェな節操なしじゃねェンだよ。だいいち俺にそンな女なンて……?」
結標「あら? 心当たりでもあるの? 顔色変わってるけど……」
一方通行「イヤ、何でも………」(まさかなァ……そンな訳……)
海原(あー、これはおそらくヒットですね……自分じゃなくてよかった……)フー
土御門(面会時にはコイツの顔から目を離さないでおくか…)ニヤニヤ
結標(少年だったらよかったのに……あーあ)ハァ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:32:27.26 ID:LqZsn3Q0<>
ゾロゾロ
冥土帰し「着いたね。この部屋だよ」
一同(ゴクリ……)
ガチャ
番外個体「Zzzzzz」
冥土帰し「おやおや、よく眠ってるね」
結標「」チラッ
海原「」チラッ
土御門「」チラッ
一方通行「」
土御門(やっぱお前か……プッ)
結標(無表情で固まってる……でも、これはこれで……プフッ)
海原(ププッ、何ですかこのマジ顔……ってあれ? この少女は……え!? まさか……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:34:02.69 ID:LqZsn3Q0<>
一方通行「な、ンで……」
土御門「一方通行、この女はお前の知り合いか……?」(←笑いを堪えている)
一方通行「あァ……ってか、どォいう事だよ……コイツは…」
結標(放心してるわね……けどこの女、誰かに似ている気が……)
番外個体「Zzzzz」
海原「……いや、似ていますが……別人……姉か何かか…? しかし…これは……」
冥土帰し「君たちの誰かが護衛に当たってくれると聞いているんだが……」
土御門「俺はパスだにゃー」
結標「私も遠慮しとくわ……」
海原「…………」
結標「あれ? 海原……?」
土御門(はっ!? ま、まさかコイツ……)
海原「その護衛、自分が引き受けましょう!」バン
一方通行「!!??」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:36:26.27 ID:LqZsn3Q0<>
土御門(あぁー、やっぱりか……)
結標(あ、一方通行の顔が……面白い)
冥土帰し「ん? そうかね、ではそれでよr」
一方通行「オイちょっと待てよ」
海原「ム…?」
土御門(お?)
結標(来た来た♪)
一方通行「オマエじゃ信用できねェなァ。不純な動機が見え見えなンだが」
海原「あなたこそ彼女の何だと言うのですか? それにこれは仕事です。不純な気持ちなんてありませんが?」
一方通行「ウソ吐け。何が“一途”だよ。似てりゃあ誰でもイイってかァ?」
海原「だから仕事だと言ってるでしょう? それとも、あなたが引き受けるんですか?」
一方通行「そォは言ってねェが、何となくオマエに預けンのは気にいらねェ……」
海原「なら引っ込んでてください。護衛には自分が――」
一方通行「」カチッ
海原「―――!?」
ドムッ!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:38:07.02 ID:LqZsn3Q0<>
一方通行「…………」
海原「かはぁ………ッ」ドサッ
土御門(あ、死んだ……)
結標(音速を超えたボディブローが見事に決まったわね……あれじゃひとたまりもないわ…)
一方通行「土御門ォ、結標ェ」カチッ
土御門「な、何だ……?」
一方通行「オマエらに仕事だ。コイツをどっか人目に付かない場所に埋めてこい」
結標「」
土御門「」
一方通行「可能ならさっきまでの記憶も消しといてくれると助かるンだがよォ」
土御門「わ、わかった……善処する。行くぞ結標」
結標「え? マジで……」
土御門「お前がいれば穴を掘る必要はなくなる」キリッ
結標「全然トキメかないんだけど……」
土御門「一方通行の目がマジだ……。ここは大人しく従っておいた方が無難だにゃー」ヒソヒソ
結標「そうね、いつになく怖い気がするし……面倒臭い口論になる前に実力行使する辺りが本気よね……」ヒソヒソ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:39:37.28 ID:LqZsn3Q0<>
土御門「と、言う訳だ……悪いな海原よ。楯突いた相手が悪すぎたってことで諦めるにゃー」
結標「貴方のこと、いちおう忘れないでおくわね……」
海原「」チーン…
土御門「じゃ、俺らはこれで失礼するぜい。一方通行、あとは任せた」グイッ(←担がれる海原)
結標「じゃあね」
一方通行「……おォ、頼ンだ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:41:10.69 ID:LqZsn3Q0<>
エッホ エッホ
バタン
一方通行「行ったか……」
冥土帰し「……いつもあんな感じなのかい?」
一方通行「いつもはもォ少しソフトだ」
冥土帰し「そう、仲が良さそうで何よりだね」
一方通行「別に俺達は仲良しグループとかじゃねェよ。それよりオマエと二人だけで話がしてェンだが……ちっと
場所変えねェか?」
冥土帰し「実は僕も君に訊きたかったんだ。そうしてくれるとありがたいね」
一方通行「そォか……ならさっさと移動すンぞ」
冥土「分かったよ、ついてきなさい……」
――バタン
すやすやと寝息を立てる番外個体を残し、一方通行と冥土帰しは病室を出て行った。
あまりにも突然すぎる再会に冷静さを失いかけたのは事実だが、いつ目を覚ますかも分からない番外個体の前では
このまま落ち着いて話を聞く事などできる訳がない。
何の関係もない海原に任せるなど論外である事は言うまでもないが、かと言って自分が護衛につくともハッキリと
は言えない。
恐らく彼女は自分を抹消するために学園都市へやって来た。それは簡単に推測できるが、そんな立場の自分が護衛
任務に当たれるのか? 冥土帰しの話をまだ聞いていない一方通行はこの時そう思っていた。
移動中の渡り廊下に一方通行の複雑な感情が滲み出ている。これから更に複雑な事情が一方通行の身に降り注ぐ事
となるのだが、今の彼にそこまでの予測はできなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/13(月) 19:45:25.18 ID:LqZsn3Q0<>今日は以上です。
海原はこれで終わりませんので安心して下さい。
頭の中で話は出来上がってるのに肝心の文章力が追いついていない……
続きはまた明日。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 19:48:06.76 ID:f1CBicAO<>エツァリさんの御冥福を心よりお祈り申し上げます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 20:14:37.93 ID:4SwvBYAO<>悔しいので小さい御坂さんの所へ行きますね<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 20:28:03.36 ID:8P7nkgAO<> -‐‐‐- .._
. ´ `丶、
/ \
ィく_ −‐ __ .
/ `^Z, ‐z− 、 −--- __ ',
、___ _彡- / / ´'^二こ¨ミ ,_ __ ` ;
_.>, .∠ ,〈 ,ィ伝い `ヽ. , ⌒ヽ\ !
-イ /,厶 〈/ 、__ ‘ー'′ ′旡_`^' j、
_,) { i'⌒〉 ⌒ -‐ __,ノ ヒン }i ハ\
`て.人 、_厶 __ ; 、__ z;h 丶`Z.
`⌒ヘ,__`′ '^ }i }、 ,ハ(¨
}小, , _ _____ ,リヘiV
_j厶 ___{ `¨⌒ヽ 〃
__]  ̄ ̄ミヒ´__`¨て } , ″
厂  ̄ ̄ミ 、__ i /
厶 ___ ___ _ `丶.j__, , イ
厶 `≧=− =⇒ 、__ \イ⌒ン
, / `丶、 く{
/ , ' _ ___ \ \
, / , `丶、 \ \
′ .′ { \ .\ \
/ i 、 \j く \
/ \j `≧= - \\ \
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 22:47:35.64 ID:hw/HMoDO<>番外、一部妹達、打ち止め
みごとに大中小と揃えたな!
え?胸はみんな小(あばばばばばばば<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 22:56:52.04 ID:zk4fl9Eo<>番外は普乳↑だと思う
少なくとも俺はそう信じてる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/13(月) 22:58:39.94 ID:1Xr2nKMo<>貧乳バカにすんな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 02:03:35.03 ID:JcLTJZE0<>打ち止めの胸が小さいのは当たり前だろォが
あの体で巨乳だったらどォすンだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 03:01:16.03 ID:vhlp3vY0<>>>105
全くだな
打ち止め⇒美琴・妹達⇒番外個体⇒美鈴という過程を見れば、
段階的に成長していくことなど確定的に明らかなのである<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 03:37:41.49 ID:UwoDO3Ao<>ーーーーーここまでミサカ達の自演ーーーーー<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 03:40:43.40 ID:nw1Ic/so<>一卵性の双子でも発育具合はそれぞれ
片方がグラマー、片方がスレンダーに育つ場合もある
遺伝の影響もあるけど、後天的な影響の方が大きいし
というわけで将来的には美鈴さんばりにナイスバディな打ち止めも、いつまでもなだらかな美琴もありえるというわけだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 04:37:41.75 ID:BTtQBtAo<>エターナル・ノーバスト
究 極 絶 壁<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 06:10:15.21 ID:LMC1nYoo<>知ってるか? [田島「チ○コ破裂するっ!」]の寸止めを毎日繰り返せば、三年間でAからEまで増やせるんだぜ?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 08:39:43.92 ID:AovX7iEo<>DNAからオリジナルと一緒だし大きくなるんでねーの?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 08:47:35.01 ID:SpRy/xwo<>>>111が>>108の言ってることを何一つ理解していないことはわかった<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 10:12:07.67 ID:3LGnnzMo<>>>110
こういうフィルター?の一覧ってある?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 10:15:56.94 ID:mz8HkwAO<>胸なんてデカくてもかたこるだけじゃん普通が一番じゃん<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 19:01:57.47 ID:rHuzX2AO<>>>113
確か運営板にあったはず
最初にご覧くださいのとこ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:23:03.76 ID:dcvJxWQ0<>上条さんが揉んで大きくすればいい。けど個人的には貧乳のままが……
失礼こんばんは。続き投下します。昨日より量少ないです。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:24:50.67 ID:dcvJxWQ0<>
―――
〜番外個体のいる病室から離れた部屋〜
冥土帰し「さて、まずは君の話を聞こうか」
一方通行「……まず、アイツは平気なのか? 容態は?」
冥土帰し「あぁ、怪我は大した事ないね。ニ〜三日後には退院できるだろう」
一方通行(つまり退院までの間、アイツの面倒見ろってかァ……)
冥土帰し「で、護衛については結局君が適任という事でいいんだね?」
一方通行「…………」
冥土帰し「どうしたんだい?」
一方通行「……イヤ、それ以前に俺がアイツに何て思われてるか、オマエは知ってンのか?」
冥土帰し「?……言ってる意味がよく分からないんだが?」
一方通行(やっぱり『第三次製造計画』については知らねェらしいな……何て説明すりゃ良いンだ…?)
冥土帰し「?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:25:59.86 ID:dcvJxWQ0<>
一方通行「………姿見た時点で気づいたと思うが、アイツは、『妹達』のひとりだ。俺への負の感情が目一杯詰め込まれた
“復讐のクローン体”だと思えば良い」
冥土帰し「…………」
一方通行「アイツと俺はちっと『訳あり』でなァ。まず普通に挨拶が交わせンのかが問題だ。クチ開いた途端、喉元に
ナイフ突きつけられてもおかしくねェ……」
冥土帰し「なるほど……大体察したよ。君が学園都市からいなくなってた時だね?」
一方通行「さすが、オマエとは話が早く済ンで助かるわ。まァそンなトコだ。護衛に付かせる役目をグループ(俺)に
回した“アイツらの嫌がらせ”にはつくづく呆れたけどなァ」
冥土帰し「……それで、護衛の方はどうする?」
一方通行「やっても構わねェが、下手すりゃ退院が延びちまうぞ? 多分アイツは俺のツラを見た瞬間に豹変するだろォ
からなァ。そン時はオマエ逃げてた方が良いぜェ」
冥土帰し「…………」
一方通行「……オイ、何そこで神妙なツラしてンだよ?」
冥土帰し「目が覚めたら、一度彼女に会ってみると良いね」
一方通行「あァン? オマエ今の話聞いてなかったのか? アイツは――」
冥土帰し「『会ってみれば分かる』とだけ言っておくね。多分今説明するよりは早く伝わるハズだ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:27:20.12 ID:dcvJxWQ0<>
一方通行「なンだそりゃ……」
冥土帰し「…………」
一方通行「……アイツに何かあったンかよ?」
冥土帰し「説明するより見た方が良い。その後に補足した方がきっと分かりやすいだろう」
一方通行「…………」
冥土帰し「君と彼女の事情はおよそ見当がつくが、それについてはおそらく問題ないと思うよ」
一方通行「ずいぶン思わせぶりだなァ。……まァとりあえずそれで良いが、オマエが訊きたい事ってのは何だ?」
冥土帰し「いや、もう大丈夫。彼女の『容姿』から推測するに、君とは何らかの関わりがあるんじゃないかと少し気に
なっただけだ」
一方通行「そンならもォ言う必要はねェな」
冥土帰し「まあね。しかし……幸か不幸か……何ていうか、これも巡り合わせなのかねぇ…」
一方通行「? オイ、今のはどォいう意味だ?」
冥土帰し「おっと失礼。さて、他の患者さんもいるから僕はもう行くよ? 彼女も直に目を覚ますだろうから、それまで
ゆっくり寛いでいるといい。その時はまた呼びに来るから」バタン
そう言い残し、冥土帰しは部屋を出て行った。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:29:20.24 ID:dcvJxWQ0<>
一方通行「…………」
訳が分からないまま部屋に一人残された一方通行。
一方通行「何だっつーンだ……? 一体よォ」
扉に向かって吐かれた疑問は、鮮やかにスルーされる。
冥土帰しが再び部屋に来るまでの時間が妙に長く感じたのは言うまでもない事だった。
―――
〜○○学区のある場所〜
??「―――そうか、で? 死体は確認したのか?」
下っ端「そ、それが……すでに回収されてまして…」
研究施設のような場所で、怪しげな会話をする二人の男。
見るからに上の立場な白衣の男は顔じゅうに施された刺青が特徴的だった。
??「あぁそう、で?」
下っ端「は…?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:30:23.88 ID:dcvJxWQ0<>
??「は? じゃねえよボケ。場所割り出して死んだのか確認したんだろうなって訊いてんだよ」
下っ端「あ……その…」
??「オイオイ、俺は『息の根止めてこい』っつったハズなんだが、耳に入ってなかったんか? あ?」
下っ端「う……あの……しかし、あれだけの惨状で生きているとは…」
??「だから確認したのかって訊いてんだろぉが! 何度も言わせんじゃねえぞコラ!?」ガンッ
下っ端「ひっ……も、申し訳ありま……」ガタガタ
??「あー、いい、もういいから喋んな。すげえ耳障りだからよ」チャキ
下っ端「ま、待―――ッ!?」
パァン! ……ドサッ
??「ったく、弾の無駄遣いさせてんじゃねえよカスが」フッ
煙を出す銃口を一息で飛ばす。
??「ま、ハナから期待なんてしてねえけどな……。オイ、片付けろ」
声の数秒後、数人の男達がやって来て“今できたばかりの死体”を回収していった。
??「…………へへ」
まるで社長専用に使われていそうな革製の椅子に腰を下ろし、不敵な笑みを浮かべる刺青の男。
そして、楽しみと憎しみが混ざったような声で囁いた。
「“敗者復活戦”までもうすぐだなぁ」と。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:32:29.90 ID:dcvJxWQ0<>
―――
コンコン…
一方通行「!」
…ガチャ
冥土帰し「―――待たせたね。それじゃ行こうか」
一方通行「……目ェ覚ましたのか?」
冥土帰し「うん」
一方通行「……」スクッ
立ち上がり、先を歩く冥土帰しの後に続いていく一方通行。どこか緊張の含まれた空気が周囲を漂う。
一方通行「……普通に入って平気なのかよ?」
冥土帰し「構わないよ」
一方通行「…………」
冥土帰し「……怖いかい?」
一方通行「そりゃあなァ……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:33:56.81 ID:dcvJxWQ0<>
冥土帰し「まぁ、まずはその目でしっかり見ることだね」
一方通行「……この面倒臭がりが…」
冥土帰し「こういうのは実際確認するまで信憑性がない話だからね」
一方通行「チッ……」
カツン カツン カツン…
〜部屋の前〜
一方通行「……入らないのか?」
冥土帰し「お先にどうぞ」
一方通行「いつからオマエはイタズラ好きになったンだ?」
冥土帰し「そういう訳じゃないが、彼女はどうも僕の苦手なタイプでね…」
一方通行「医者のくせに患者差別してンじゃねェよ」
冥土帰し「誰にでも得手不得手はあるよ。君やよく運ばれてくる少年なんかは前者だがね」
一方通行「ふン……」
ドアに手を掛ける一方通行。一瞬ためらいも伺えるが、そのままゆっくりと病室のドアを―――開けた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:35:29.21 ID:dcvJxWQ0<>
ガチャ ギィィ…
一方通行「………」
番外個体「………?」
上半身だけ起こし、ぼんやりと窓の外を見つめていた番外個体の顔が、コチラを向いた。
番外個体「………」
一方通行「よォ……」
番外個体「?」
キョトンとした目の番外個体に一方通行はタダならぬ予感を感じたが、極めて普通に話し掛けるよう努めた。
一方通行「また会ったなァ。ってかオマエ、何で俺に何も言わn」
番外個体「だれ?」
一方通行「!」
冥土帰し「………」
番外個体「ねぇカエル、そこの目つきが悪くてロシア人も真っ白なほど白くて何か変な模様の服着てるガリガリ君は何処の誰?
研修医か何か?」
冥土帰し「いや、彼はね……」
一方通行「」
思考が停止した一方通行は、しばらく棒立ち状態のまま動かなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 19:39:44.89 ID:dcvJxWQ0<>ほんとに短いが今日はここまでです。
書き溜め終わったら明日の内にまた来ます。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 19:49:02.59 ID:nw1Ic/so<>乙
まさかの木原くンか・・・・・・?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 19:54:08.24 ID:MrPf.MAO<>おつおつ!
ヤツの復活にwktkがとまらない…!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/14(火) 20:05:55.56 ID:dcvJxWQ0<>>>121訂正
煙を出す銃口を一息で飛ばす。→銃口から出る煙を一息で飛ばした。
国語力足りなくてサーセンした。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 20:10:44.81 ID:BTtQBtAo<>吐息で銃口ぽっきりか…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 20:28:51.08 ID:WnAos2Ao<>乙です
続きを楽しみにしてるよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/15(水) 03:07:30.54 ID:erhFnN20<>またお前かァァ!!
乙乙!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします <>sage <>2010/09/15(水) 08:27:02.47 ID:/5t7cnI0<>なんか続いてると思ったら……またお前かァァァァァ!!!!
これは支援するしかないな
前作以上の感動を期待してる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/15(水) 09:14:20.08 ID:BiHwRlIo<>木原くンキタ━(゚∀゚)━!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/15(水) 09:46:17.24 ID:nltLIgDO<>まあお前かぁぁぁぁぁ乙乙乙<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/15(水) 11:08:36.93 ID:rK2jO.s0<>今更だが打ち止めは一方通行の事を名前で呼ばないぞ
直接呼ぶ時はあなた、誰かに話す時はあの人って呼んでる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 01:16:09.18 ID:lh8a4VUo<>地の文の時「」前に名前は入れない。
地の文の時「」後の擬音は使わない。
でも台本形式で進むところも多いし>>1の好みってことで。
ただ名前も擬音も文章に組み込むようにしたほうが少しでも上達するんではないかと思う。
ともかく続き待ってます。
これからさらに文章も磨かれてくるのかと思うとwktkがとまらない。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 09:03:42.83 ID:H99no0Mo<>(笑)<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 10:03:42.88 ID:a6WCX0Qo<>またお前かァァ!!
待ってたぜ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 13:27:50.81 ID:ht/pJ8Uo<>>>136
だからお前黙ってろグズが
書き方に突っ込むのは書き終わってからでいいんだよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 15:04:44.92 ID:JoAhWvMo<>>>139
>>80ってことでオブラートに包んで書いたつもりなんだがな。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:15:08.97 ID:cl.NZmM0<>こんばんは。
今日も少しだけですが、投下します。
>>135
「あなたの馬鹿!!」じゃおかしいかなと思って敢えて名前呼びにしました
勝手な設定変更申し訳ないです…
>>136
お手数掛けさせてすいません
また俺だァァ!!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:17:17.81 ID:cl.NZmM0<>一方通行「…………」
番外個体「なに真顔で固まっちゃってんの? ……ぷっ……あれ…?」クスクス
冥土帰し「?」
何故か一方通行を見て急に笑いを堪えた表情になる番外個体。
番外個体「なんでだろ……フフッ、あなたのその顔……やけにツボなんだけどぉ……」プルプル
一方通行「!?」
番外個体「―――あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃひゃ!!! ひぃひひひひひ!!」
ついに耐え切れなくなったのかベッドで腹を抱えて爆笑した。
一方通行「…………オイ」
冥土帰し「あー……いったん出ようか」グイッ
一方通行「!」
冥土帰しは一方通行の腕を掴んだまま病室から出てドアをパタンと閉めた。
番外個体の甲高い笑い声がドア越しからBGMを演出する。
一方通行「………」
冥土帰し「……まぁ、という訳だ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:20:08.10 ID:cl.NZmM0<>
一方通行「何が『という訳』だよ? オイ、何だあれ?」
冥土帰し「さすがに最後のは想定していなかったね。じゃ、戻ろうか」
一方通行「そォだなァ……」
アッヒャッヒャッヒャッヒャ ヒーヒー クルシイ
一方通行(訳が分からねェにも程があンぞ……)
カツン カツン
〜さっきの部屋〜
冥土帰し「まぁ、見ての通りだ。彼女は記憶喪失……いや、“記憶障害”と言った方が正しいかね」
一方通行「ンなのは一発で分かったけどよォ………イヤ、おかしいだろ。アイツァ他の『妹達』と記憶やら感覚やらを共有
できンじゃねェのかよ? 仮に脳が何らかのダメージを受けて記憶が飛ンだとしても、MNW《ミサカネットワーク》
に接続する事で過去の情報は補えるハズだろォが。あのクソガキが確かそォだったぜ?」
冥土帰し「どうやらそのネットワークに接続できなくなっているみたいだね」
一方通行「何でだ?」
冥土帰し「おそらく、脳内の電気信号が正常に働いていない」
一方通行「何!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:22:53.99 ID:cl.NZmM0<>
冥土帰し「彼女は自分が何者なのか、妹達とは何なのかについては覚えている。ただ―――」
一方通行「……ただ?」
「―――“自分は何故作られたのか”が理解できていないらしい」
一方通行「!? なン……」
冥土帰し「自分は何のために生きているのか、何をさせるために製造されたのか、言ってみれば『存在理由』だね。そこが……どう
いう訳かすっぽりと抜け落ちているようなんだ。MNWに接続もできない。つまり妹達と記憶も感覚も共有ができない彼女
にはそれを知る術もない。単純な記憶喪失ならまだマシだったのかもね」
一方通行「原因は墜落の時に負った傷か……?」
冥土帰し「その可能性が最も高いね」
一方通行「……治らねェのか!? ここの『調整』で何とかならねェのかよ!?」
冥土帰し「それは無理だ。彼女は他の妹達とは違う。『第三次製造計画』と『量産型能力者計画(レディオノイズ)』や『絶対能力
進化計画(シフトプラン)』で作られた妹達専用の設備しかここにはない」
一方通行「それでも同じ妹達だろォが! 何の問題があるってンだよ?」
冥土帰し「まず、同じ設計の培養器で作られたかが分からないんだ。それこそ“計画者”でも現れてくれれば手っ取り早いんだがね。
もし仮にここで『調整』を試みたとしても、もしかしたら他の妹達の脳内信号に影響が出るかもしれない。更に下手を
すると、身体と合わない調整の影響で彼女自身(番外個体)の脳が完全に停止してしまう恐れもある」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:26:17.62 ID:cl.NZmM0<>
一方通行「じゃあ……」
冥土帰し「少なくとも、今分かっているだけの段階では……ここでの調整は不可能だ」
一方通行「!!…………」
冥土帰し「ロシアの研究機関とコンタクトを取るしかないが、それには時間が掛かる。何しろ終戦後の両国同士、迂闊な接触は望め
ないからね?」
一方通行「……このまま調整受けられなきゃ、アイツはどォなるンだ? まさかとは思うが……死ぬなンて事にはならねェよな?」
冥土帰し「あぁ、その心配は要らないよ。彼女は他の妹達と違うと話した意味はそこにもある」
一方通行「……!」
冥土帰し「普通なら定期的な調整を受けなければ生命を維持できないハズなんだが、『第三次製造計画』というのは知らないが、
先の二つよりも更に発展した計画と言えるね。向こうでの調整は“生命維持”ではなく、あくまで“記憶操作”を目的に
行われているらしい」
一方通行「って事は、アイツは『作られた時の記憶』を調整されて……また学園都市に送り込まれたってか?」
(俺を、殺すために……)
冥土帰し「…………」
一方通行「ンで、どこの馬の骨とも知れねェクソ野郎に……その記憶まで奪われちまった……と」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:28:42.82 ID:cl.NZmM0<>
「…………」
一方通行の表情が、除々に険しくなる。
勝手に作られた記憶を勝手に奪われ、ついには己の存在理由も忘れてしまった。一方通行には理解ができない。
何故? いったい何故彼女がそんな目に合わなくてはならないのか。
「ざ………ンな……」
学園都市が、ロシアが、ひとりの“少女の運命”を弄んでいる。まるでゴミのように。
一方通行はもはや周囲には目もくれずに、腹の底から思いきり叫んだ。
「ふざっけンじゃねェぞォォクソったれがァァあああああ!!!!!」
ガン!! と蹴り飛ばされたゴミ箱が、中のゴミを散乱させながら宙を舞う。
「何でアイツがくっだらねェ連中のためにいちいち運命振り回されなくちゃいけねェンだよォォ!! アイツがいったい何を
したってンだァ!? 何でオマエ達の都合でアイツの記憶が良い様に弄ばれなきゃなンねェンだよォォォ!!!」
許せなかった。
自分のために作られ、自分のために死んでいく少女達を救えなかった自分自身。
科学の発展を表向きにし、私利私欲に溺れて人を人とも思わない者達。
全てが許せない。
「…………」
ひとしきり叫んだ一方通行は、横で慈悲深い表情をしていた冥土帰しにこう告げた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:30:12.52 ID:cl.NZmM0<>
「あの女は俺が守る」と。
(オマエ達の思い通りになンて……させっかよ)
(アイツが元気になるまでの間、少しでも近づいてみろ)
(地獄に落ちた方がマシな目に合わせてやる!!)
彼女も自分にとっては『守る対象』だ。その彼女に害を及ぼそうものなら、鬼でも悪魔でもなってやる。
一方通行は、怪しく輝いた紅い目でそう誓った。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:31:32.78 ID:cl.NZmM0<>
―――
「はぁ、不幸だ……」
トボトボと覇気のない顔で道を歩く上条。結局遅刻した後、幼い容姿の担任教師から「罰掃除でーす」と告げられ、終わる頃には
スーパーの特売サービスタイムも終了してしまっていた。
予算で買えたのはもやしと卵。今日は肉料理を予定していただけに、この結果は残念だった。
「また噛まれるよな〜……」
同居人シスターはまだ上条宅にて居候中。噛み砕きを覚えてからはシャレ抜きで命を脅かす存在になりつつあるシスターに上条は
身体を震わせる。と、そこへ―――
「とうとう見つけたわよ!!」
「あん……?」
聞きなれた、と言う程でもない高く強気な声が身体の震えを止めた。
声のした方を見ると、そこにいたのは身体に電気を纏わりつかせたまま仁王立ちの少女だった。
「戻ってたんなら一言くらい連絡入れなさいよ!! おかげでロシア中探し回るハメになったんだからね!!」
何やら少女は怒っている。
「御坂か……お前も今帰りかよ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:32:41.32 ID:cl.NZmM0<>
御坂と呼ばれた少女はそのいつもと変わらない上条の態度に眉をピクつかせる。
その直後、身体を纏っていた電気の一部が―――
「うわっ!? ち、ちょっと!!」
―――上条に向かって伸びた。
「ッッ!!」
さっと右手を前方に翳す。放たれた電気は右手から先に進むことなく消滅する。
「うぅぅ……何か久々だなこの応酬」
改めて右手に感謝し、少女をキッと睨む。睨まれた少女、御坂美琴は喧嘩上等とばかりに睨み返す。
「イキナリ何すんだテメェ!! あっぶねぇーだろ!?」
「アンタがコッチに帰って来たのをあの子(妹達)から聞かなかったら、私は今頃ロシアで凍死してたかもしんないのよ!?
そんな目に合わせといて、連絡のひとつもよこさないってどーいう事なのかって訊いてんの!!」
負けじと言い返されて「うっ…」となる上条。そもそも美琴が何故ロシアに来ていたのか。鈍感な上条は分からなかったが、
訊いた途端に返って来たのは言葉ではなく音速を超えた“コイン”だった。
異国の地で骨にはなりたくないので、必死にガードしたのを覚えている。ある意味フィアンマより恐ろしかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:33:49.78 ID:cl.NZmM0<>
上条「……悪かったよ。てっきりお前も一緒の旅客機で帰ったんだとばっかり思ってたんだ」
美琴「ふざけんじゃないわよ!! 先に帰っちゃうとか信じらんない! 折角人が……その、心配して来てやったってのに!」
上条「だからゴメンって……」
美琴「ゴメンで済んだら黒子は要らないのよ!」
上条「じゃあどうしろって言うんだ?」
美琴「え……そ、そうね……」ウーン
上条「確かに連絡しなかったのは悪かったと思ってるよ。埋め合わせについてはは今日あんま時間ないから、また今度にして
くれると助かるんだが?」
美琴「! な、何でもしてくれるの?」
上条「俺でできる事ならな。いちおう言っておくけど、上条さんは年中無休で貧乏n」
美琴(どうしよ……てっきりいつもみたいに終わると思ったら、まさかの大収穫ってヤツ……!?)ボー
上条「おーい? 御坂さーん?」コンコン
美琴「!?」ビクッ
上条「何固まってんだよ?」
美琴「う、ううん! 何でもないっ! じゃ、じゃあまた連絡するから、ちゃんと埋め合わせなさいよね!」タッタッタ
上条「……何だ? ロシアで悪いモンでも食ったのかな?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/16(木) 20:35:28.39 ID:cl.NZmM0<>
―――
(どどどど、どうしよ!? 急展開ってか……とりあえず、こないだみたいにならないようにしないと!!)※十二巻参照
美琴は下を向いたまま街中を疾走していた。顔は勿論真っ赤なまま。
道行く人がその様子に目を向けるが、当の本人はそれどころではない。
(ま、まずは帰ってから入念にプランを立てないと! 邪魔が絶対入らない所で……そのまま……///)
そこまで考えてから頭の中はピンク一色なので、説明は要らない。
しばらくそのまま走っていた美琴は、人とぶつかりそうになり、足を止めた。
「―――ッッ!?」
慌てて足を止める。
「あぁ? ……チッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:37:03.49 ID:cl.NZmM0<>―――
(どどどど、どうしよ!? 急展開ってか……とりあえず、こないだみたいにならないようにしないと!!)※十二巻参照
美琴は下を向いたまま街中を疾走していた。顔は勿論真っ赤なまま。
道行く人がその様子に目を向けるが、当の本人はそれどころではない。
(ま、まずは帰ってから入念にプランを立てないと! 邪魔が絶対入らない所で……そのまま……///)
そこまで考えてから頭の中はピンク一色なので、説明は要らない。
しばらくそのまま走っていた美琴は、人とぶつかりそうになり、足を止めた。
「―――ッッ!?」
慌てて足を止める。
「あぁ? ……チッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:37:55.72 ID:cl.NZmM0<>
横断した背丈のある男は走ってくる美琴に鋭い目を一瞬ギロリと向けて、また正面を向いた。舌打ちのオマケ付きだ。
あとは美琴など目もくれずにそのまま歩いていった。
「……何よアイツ…」
前を見ずに走っていた自分が悪いのだが、男のふてぶてしい態度も気に障る。
「顔に刺青で白衣とか……どんなファッションよ」
去っていく男の背中に皮肉を込めた視線をぶつけてやった。
「!?」
立ち止まった男は、何故か足を止めて美琴に振り返った。急に振り向かれてビクリとする美琴。
コチラに向けられた男の目からは驚きの様子が伺えたが、美琴の方は首を傾げるしかない。あんな男になど見覚えは
ないからだ。
「……え?」
男の表情が驚きから怪しい笑みに変わる。美琴が疑問を抱く間に、男は美琴へと再び歩み寄ってきていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/16(木) 20:44:28.67 ID:cl.NZmM0<>>>151は操作ミスなのでスルーで
とりあえずここまでです。あんま進まなくてごめんなさい
書き溜め終わったらまた来ます
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 20:47:17.90 ID:vlLX83Ao<>うあー、先が気になる展開だ!
次回が楽しみ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 20:51:03.98 ID:N51EpBoo<>美ィィィ琴ちゃァァァァン!?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/16(木) 23:18:05.36 ID:je7UgQAO<>こここここここここで終わるとか生殺しすぎですの!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:13:24.67 ID:NznIDfY0<>ども、今日も少しですが投下します。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:15:31.93 ID:NznIDfY0<>
美琴に向かって真っ直ぐ引き返してくる謎の男。
「な……?」
白衣を纏ったスキルアウトと言った表現が的確な長身の男は美琴のすぐ目の前で立ち止まった。
まるで品定めでもしているかのように上から下までジーッと眺めている男に、美琴は寒気を感じる。
「ふーん」
視線があまりに不気味なせいか、やや躊躇いが生まれたが、それでも美琴は声を出した。
「な、何よ……?」
思ったよりも弱気で小さな声だった。超能力者の上位に立つ彼女がそう簡単に物怖じなどしない筈なのだが、
何故か男のオーラというか雰囲気というか、よく分からないものがいつもの「強気」を削いでしまっている。
「この男は何かやばい」「下手に抗ってはいけない」
美琴の直感はそう警告していた。
思わず背中に冷たい汗が流れたと同時に男の声が返ってくる。
「あー、こりゃ失礼。知った顔に見えたんだがなぁ……残念。“人違い”だったわ」
たった一言。それだけ告げた男はまた背を向ける。
そして今度こそ振り返る事なく、男は美琴の視界から姿を消していった。
「…………」
何か不敵に見えた男の目が頭から離れず、美琴はしばらくその場に立ち尽くしていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:18:10.38 ID:NznIDfY0<>
―――
一方通行はドアの前に立っていた。
このドアの向こうにいるのは番外個体だが、記憶に障害を負っているのとMNW接続不可のため、自分の存在意義が欠落
してしまっている。つまり、一方通行の存在も忘れてしまっている事になるのだが。
「………ホッとしてる訳じゃねェが、護衛するには好都合かもな」
今の番外個体に起こっている状況は決して良いと思わない。むしろ元に戻したい気持ちの方が強い。
だが、敵意や殺意を向けられない今なら護衛しやすいのも事実。
(複雑な気分だぜ。ったくよォ)
彼女は今、相当不安定な状態らしい。記憶を刺激する過去の話や分からない事を無理に考えさせるのは危険だそうだ。
身体自身は軽傷で済んでいるとは言え、これでは重病人である。本当にニ〜三日の入院で大丈夫なのか疑問だが、今は
あの医者の言う事を信じる他に術がない。
面会の許可は退院までの間常に許可されている。もっとも、そうでなければ護衛にならないのだが。
(……どンな話すりゃ良いンだ? 迂闊に表情作ったらまた馬鹿笑いされンだろ。人の気も知らずによォ……)
なかなかドアノブに掛けた手を回せない。最初の一歩を考えすぎているようだ。
(不安定で少しタブーに触れたら頭痛めちまうヤツ相手だ。慎重にいかなきゃならねェのは分かるが、どォもなァ……)
冥土帰しから注意事項の後「襲撃の心配はいらないと思うが、後は頼んだよ。異変が起きたらすぐに呼んでくれ」と部屋を
追い出されてからここまで来たものの、ドアの前から足が進まなかった。何となく顔が合わせ辛いのだ。
とは言え、室内に窓がある以上このまま外で護衛という訳にもいかない。
(だァァクソ! いつまでもここに居たって仕方ねェだろォが! しっかりしろってンだよ!)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:19:36.75 ID:NznIDfY0<>
一方通行は覚悟を決めて、ドアノブをガチャリと回した―――その時だった。
「ッ!?」
ゴンッ! と良い音が病院の廊下に響いた。
「☆〜〜〜!!」
「あれぇ? ………ちょっとぉ、何やってんの?」
唸りながらを額を押さえてうずくまる一方通行に番外個体はおずおずと尋ねる。
「おォォォォ……」
突然開いたドアが一方通行の額に勢いよく命中したのだが、開けた本人の番外個体は顔に「?」を浮かべている。
その末に出た言葉が「うっわ〜、間抜け……」だった。
その言葉が耳に入った瞬間、一方通行は「普通に入ってればよかった……」と後悔する。
出鼻は完全に挫かれた。先が思いやられるとは正にこの事だろうか。
―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:20:38.23 ID:NznIDfY0<>
〜気を取り直して二人は病室へ〜
番外個体「そんで、何? 検温ならさっきやったけど、ってか男のあなたがやるワケ? ソイツはちーっと勘弁願いたいかな〜」
一方通行「だから俺は研修医でも看護士でもねェっつの………オマエが退院までの間、ここで面倒見る事になった」
番外個体「やっぱ看護士じゃーん。ミサカの面倒って、えっ!? うわマジでそれちょっとヤバイっしょ!?」アタフタ
一方通行「看護は専属の看護士がいるから心配すンな」
番外個体「……は? じゃああなたは何でここにいんの?」
一方通行「オマエが逃げないか見張るためだ。“さっき”みてェになァ」
番外個体「だ、だからアレは逃げようとしたんじゃなくて暇だったからちょーっと探索に……じゃなくてお散歩に」アセッ
一方通行「駄目だ。許可が下りねェ内は勝手に出歩くンじゃねェ」
番外個体「え〜、だってここって何もないからつまんねーんだも〜ん」ブーブー
一方通行「我が儘たれてンじゃねェよ。しばらくしたら医者に訊いてやっから、それまで大人しく寝てろ」
番外個体「さっき寝たから〜、眠くないっ☆」
一方通行「…………あァそォ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:23:39.79 ID:NznIDfY0<>
番外個体「うんそーぉ、あひゃひゃ♪」
一方通行(なンか頭痛くなってきた。コイツ更に幼児化してねェかァ? ……まァ脳波が不安定ってンならそれも仕方ねェかも
しンねェけどよォ……)
番外個体「んだよ〜、露骨に頭抱えちゃってさぁ。ったくあのカエルめ。話相手ならもーちょいマシなのよこせっての」
一方通行「不足で悪かったなァ」
番外個体「うわぁ、つまんない返し。あなたってトークとか苦手な人? ……ゲ、最悪じゃん。暇つぶしにもなんね〜」
一方通行「あァそォかい。ってか別に人と話すのが嫌いなワケじゃねェし」
番外個体「けどさぁ、その“他人を寄せ付けないオーラ”っての? それ消した方がいいよ?」
一方通行「そンなの分かンのかよ……?」
番外個体「だって友達いる顔には見えないもん♪」
一方通行(ショック与えりゃ記憶戻るンじゃねェかなコイツ……試したらダメかなァ)ピキピキ
番外個体「あ、怒ってる? こめかみヤバイよ? ピクピクしてるよ?」
一方通行「………は、べっつに気にしてねェし。ダチなンて要らねェし」プイ
番外個体「拗ねんなよ〜。悪かったって」
一方通行「ケッ……」(何かやりにくいっつーか……何なンだよこのやりとりはァ……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:25:34.67 ID:NznIDfY0<>
番外個体「あ! ねぇ、そう言えばあなたの名前は?」
一方通行「! ……別に名乗る必要なンざねェだろ」
番外個体「えー? じゃあ何て呼びゃあいいってのよぉ? お前とか貴様とか?」
一方通行「……好きに呼べば良いだろォが」
番外個体「ふーん、そう。ならぁ……う〜ん、どーしよっかなぁ〜」
一方通行「?」
番外個体「“ウサギさん“か“ガリ君”か“イモの根君”か“雪頭(ゆきあたま)さん”の中だったらどれが良い?」
一方通行「全部ボツ」
番外個体「はぁ!? なにコイツわがまま〜! 好きに呼べっつったじゃん!」
一方通行「それ以前にオマエのネーミングセンスはどォなってンだよォ!? ちったァ他にマシなの思いつかねェのか!?」
番外個体「そんなのミサカのせいじゃないし!」 ※>>1のせい
一方通行「あァもォイイ! 俺の事は一方通行って呼べェ!」
番外個体「アクセラレータ……?」
一方通行「あ……!」(しまった!)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:28:13.14 ID:NznIDfY0<>
番外個体「……アクセラレータァ?」
一方通行(やべェ、マズったか……?)
番外個体「……それがあなたの名前なの? ずいぶん日本語上手いけど、ひょっとして外人さん?」
一方通行「ま、まァそンなトコだ」(セーフか……)ホッ
番外個体「ふーん、……まぁいっか。じゃあそれで♪ よろしく一方通行」
一方通行「おォ……」(自分で言っといて何だが、すげェ違和感。……コイツが無邪気なツラを俺に向けてっからか…?)
番外個体「ってかさぁ」
一方通行「ン…?」
番外個体「確かこの街で最強の超能力者がそんな風に呼ばれてた気がするんだけど、あなたじゃないよね?」
一方通行「!?………」
番外個体「……やっぱ違うか、悪いけどトップには全然見えないし。ミサカでも勝てそうだし」
一方通行(学園都市がどォいう所かは分かってンのか……まァそこから説明すンのはさすがに面倒だからありがてェが)
番外個体「おいコラー、皮肉もつけてやったのにひとりで瞑想してないで反応してよ〜。ミサカが暇になっちゃうじゃーん」ブー
一方通行「ン、あァ……とりあえず、オマエが退院するまで俺はここに居る。だから安心して寝ろ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:29:50.86 ID:NznIDfY0<>
番外個体「寝れるかーっ! 逆に無理だっつーの! ミサカが寝る時はあんた出てけよ!」
一方通行「そォはいかねェンだよ。………いちおう言っとくが別に寝顔見たり寝込み襲ったりしねェぞ」
番外個体「今日会ったばっかのあなたを信じろと? ははは、無理」
一方通行「じゃあ死ぬまで起きてろ」
番外個体「カッチーン。ムッカつく〜、あなたそんな性格じゃホントに友達できないよ?」
一方通行「ほっとけ! 別にンなモン欲しいとも思わねェっつの」
番外個体「あっそ。………あーあ、まぁ何も無い部屋で独りよりはマシっちゃマシだけどさぁ……せめてもう少し良い相手
いなかったのぉ?」
一方通行「せいぜい我慢すンだなァ。俺以外にも候補がいねェ訳じゃねェが、多分俺が一番マシだと思うだろォぜ」
番外個体「……いちおうチェンジしてみて良い? それで判断するから」
一方通行「ざァンねン、ソイツは今ごろ土ン中だ。来年の春にはまた会えンだろ」
番外個体「人間じゃねーのかよっ!? ミサカ爬虫類とか苦手なんだからね! カエルなら歓迎だけど」
一方通行「類が違うってだけでドッチも大して変わンねェじゃねェか!」
番外個体「はぁ!? テメちょっとそこに直れよ! カエルとヘビが一緒とか有り得ないし!」
一方通行「どォ違うってンだよ?」
番外個体「わかった、今説明してやるわ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:31:48.50 ID:NznIDfY0<>
番外個体のカエル講座はその後二時間ほど続いた。完全にグッタリしながら一方通行は美琴の趣味を心の底から恨み、着替え
やらを取りに病室をいったん離れる。
「一方通行か……なーんか初めて会った気がしないなぁ。気のせいだろうけど」
一人になった病室で番外個体はそう呟く。
少し捻くれてるけど、悪い人ではなさそうね。と更にぼやいた後、喋り疲れたのか眠ってしまった。
「…………」
その頃、一方通行は杖を鳴らして歩きながらもの思いに耽っていた。
ロシアで行動を共にした番外個体と今さっきまで一緒に居た番外個体。正直な感想を言うと、まるで別人を相手にしている
かのようだった。
(ハァ、思ってた以上に骨が折れンなこりゃあ)
内心で呟き溜息を吐く。
彼女から“自分への憎しみ”が抜ければあんな風なのだろうか。自分を“敵”だと一切認識していない相手だとあんな顔を
するのか。自分がその対象になることを想定していない一方通行は順応する時の違和感がまだ消せずにいた。
『相手に合わせる』といった経験が不足しているせいでもあるだろう。
デリケート(?)な状態の番外個体への接し方は取り敢えずあれで良いとして、自分の精神があれに慣れてしまうのは拙い。
ふとした事で記憶が戻り、牙の緩んだ自分を容赦なく地獄に落とそうとする番外個体。考えるのも嫌な未来だ。
不安定な今の状態ならそれも有り得る。と、冥土帰しも言っていた。
私情を完全に捨てるのは無理だが、いざとなった時の心構えはしておく必要があるな。と、一方通行は心中で思いながら着
替え等入りのバッグを背負って病室へと戻る。
(どォいう訳か、あの部屋にはソファーがあるから寝るのには困らねェ。病室に洋製のソファーってのは不釣合いにも冗談
が過ぎる気がしてならねェが、好都合には違いねェな)
どうやら彼女の退院までは本気であそこに居つくらしい。
バッグに詰め込まれた自分専用の枕がそれを物語っていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:32:46.43 ID:NznIDfY0<>
―――
〜とある研究施設のような場所〜
「どうしました? ずいぶんとご機嫌ですが……」
つい先ほど戻ってから笑みを崩さない男に若い男性の研究者が尋ねた。
外の空気を吸おうと散歩している間に何かあったのか気になっての質問である。
「なあに、面白れぇヤツとたまたま遭遇してよぉ」
尋ねられた男はやはり上機嫌な態度で答えた。
「はぁ……?」
「おい、お前は『オリジナル』を知ってるか?」
呆気に取られている若い研究者に男は尋ね返す。
「え? 例の少女のオリジナル、御坂美琴の事ですか……?」
「そう、それだよ」
ポンと手を叩く男に若い研究者の疑問は深まるばかりだった。
「あの……それが何か?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:34:17.24 ID:NznIDfY0<>
「…………」
しばしの沈黙後、男は口を開く。
「おい、仕事増やすが構わねえな?」
「は?」
唐突にそんな事を言われてキョトンとなるが、男は構わずに指示をした。
『御坂美琴』について徹底的に調べろと。既存のデータだけではなく、彼女の“全て”を洗い出せと。
「わ、分かりました」と返事を残して若い研究者は席を外した。
残された男は不気味な笑みを一層歪ませる。
(良いこと思いついちまったぜ。あのガキは利用できそうだな……)
(同じ超能力者らしいが、所詮はあのクソガキ以下。まぁどうにでもなんだろ)
(クククク、待ってろよぉ……一方通行。もうすぐだからなぁ)
(テメェにゃ最高に苦しい地獄を味あわせてやらねぇと気が済まねえんだからよぉ……)
「そのためには手段なんざ選んでらんねえってなぁ! ククク」
「くひひひ……ひゃーっはははははははは!!!」
地の底から響いてきそうな男の高笑い。その笑いから伝わってくるのは、目的のためならどんな卑劣な手も厭わないという
男の断固たる意志だった。
この男がこれから後々引き起こす事件に対し、一方通行がどう動くのかが見ものだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/17(金) 19:37:41.94 ID:NznIDfY0<>本当ゆっくりで申し訳ないが、いったんここまで
今度はもっと書き溜めてから投下しに来ますんで許して下さい
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/17(金) 21:56:52.61 ID:C4GCvt.o<>おつおつ〜
これは面白そうだ。ゆっくり待ってます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/17(金) 22:20:54.31 ID:465ETtAo<>乙です
ゆっくりでも構わないですよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/17(金) 23:38:39.12 ID:zIuHGo2o<>乙なんだよ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/18(土) 02:19:15.80 ID:04QaDbEo<>オツカレーター<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/18(土) 21:21:44.74 ID:8e8cT/w0<>乙乙
こまめな投下も悪くないが、ある程度まとまった投下の方が俺としてはありがたいな
次の投下が楽しみだ!!
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:14:53.63 ID:8RA6x1Q0<>こんばんは。いちおうキリがいい(?)とこまで書けたので
今から投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:16:21.95 ID:8RA6x1Q0<>
〜病院内の売店を通りかかる二人〜
番外個体が店の前で立ち止まる。
番外個体「ねぇ、ジュース飲みたいんだけど」
一方通行「あ? 好きにしろよ」
番外個体「ミサカ、お金持ってませーん♪」
一方通行「あっそォ」
番外個体「…………」スッ
一方通行「……何だその手は?」
番外個体「お金♪」
一方通行「……ったく、ほら」チャリン
番外個体「おぉ! 意外にもあっさりくれたね! “一方通行はケチキャラではない”……っと」メモメモ
一方通行「何メモってンだよ!? ジュース代ぐれェケチでも出すだろォが!」
番外個体「うわ〜、まさかのブルジョア発言。あなたって金持ちなの? 貧乏人に聞かれたら殺されるよ?」
一方通行「ジュース如きでブルジョアまで繋げてンじゃねェよ! 買うンならさっさと買ってこい!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:17:23.01 ID:8RA6x1Q0<>
番外個体「おー怖い怖い、“朝はキレやすい”……っと」メモメモ
一方通行「だからメモンなァァ!!」
看護婦「病院内ではお静かに!!」(とミサカはまたあなたに会えた喜びを胸にしまいます。今度はどこに注射してやろうかな……)
一方通行(な、何だァこの寒気は…?)ゾクッ
番外個体「ぷぷーっ、怒られてやんの〜」ニヤニヤ
一方通行(誰のせいだと思ってやがる……血ィ止めてやろォかこのアマァ…)ピクピク
番外個体「じゃあ買ってくるね〜」
一方通行「オイ待て、俺のコーヒーも頼ンで良いか?」
番外個体「いいよ〜」
―――
番外個体「あー、旨い♪」ゴクゴク(←トロピカルサイダー)
一方通行「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:18:25.24 ID:8RA6x1Q0<>
番外個体「あれ? 飲まないの? ……もしかして嫌いだった?」
一方通行「イヤ、そォじゃねェ………いただくわ」プシュ
番外個体「……?」
一方通行(コーヒーってだけで“ブラック”とは言ってねェのに、コイツはしっかりブラック買ってきやがった……)
(確かに、ロシアでコイツといた時は無糖のコーヒーを飲ンで突っ込まれた事がある)
(俺とロシアにいた事をコイツは覚えてねェハズ。なのに何故コイツは俺の好みを?………ただの偶然か?
それとも、無意識の内に覚えてるってのか?)
番外個体「………」ジーッ
一方通行(イヤ、さすがにソイツはちっと考え過ぎか……よくねェなこりゃ)
番外個体「なーにコーヒー見つめたまま固まってんの〜?」ヌッ
一方通行「ッッ!?」ビクッ
番外個体「!? ち、ちょっと! 驚き過ぎ! あなたって痴呆症?」
一方通行「オ、オマエが急に顔近づけて来っからだァ!」
番外個体「あれ? 照れた?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:19:56.50 ID:8RA6x1Q0<>
一方通行「ンなワケねェだろォがァァ!!」
看護婦「」ギロリ
一方通行「!」ビクッ
番外個体(なにコイツ面白い……)
一方通行「……オイ、中庭行くぞ」(どォも落ち着かねェ……。あの看護婦、さっきから何で俺の事睨ンでンだ?
ってか、アイツどっかで見たよォな…)
番外個体「は〜、久しぶりに外出られる〜♪」
一方通行「怪我人なの忘れてハシャぎ過ぎンじゃねェぞ」
番外個体「わ〜かってるってぇ」
一方通行(……すっかり面倒見が板に付いちまってる。不本意だクソ)
〜中庭〜
「きゃははははははは♪」
忠告を忘れてハシャギ回る番外個体を一方通行はベンチから見守った。
「あァあァ、ハシャギ過ぎだろアイツ……」
呆れ気味だが、それでいて穏やかな表情をした一方通行はそう漏らす。
芝生でゴロンと横になりながら蝶を眺めるその仕草は、どこから見ても普通の少女。自分を抹消するために製造
されたとは思えないほどだ。少なくとも彼女を眺めている間はその事を忘れていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:22:44.69 ID:8RA6x1Q0<>
「…………」
あの純粋で無邪気な笑顔を脅かそうとする者がいる。その事実だけでも腸が煮えくり返りそうだ。
(ふざけンな。絶対にそンなマネはさせねェ)
(アイツの乗った旅客機を撃ち落としやがったクソ野郎を早く見つけて嬲り殺しにしてやりてェが、情報が少なすぎる)
(戦闘機の特定は出来ても、人物の特定までは出来ねェ。もし相手がつい最近“やり合った”ばかりのロシアだとした
ら尚更だ)
(向こうから動き出すのを待つしかねェのか……)
(クソ……)
「おーい! あなたも来ればー!? 可愛いチョウチョさんいるよー!」
「!………チッ」
(コッチはオマエのために頭ァ働かせてるってのによォ、ノンキなモンだぜ全く)
更に呆れた表情になった一方通行は立ち上がって番外個体の方へと歩いた。
守りたい者を守るのはこれが初めてではない。壊す事しか出来なかった自分でも人のために命を張れるのは学習済みだ。
(オマエ達がどンな姑息な手ェ使って来るかは知らねェがなァ、コイツは―――)
(―――必ず俺が守り抜いてみせる)
今は何も出来ないが、自分がいる限りこの笑顔を絶対に奪わせはしないと改めて誓った。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:24:45.88 ID:8RA6x1Q0<>
―――
そして三日後・番外個体退院
冥土帰し「―――退院おめでとう」
番外個体「お世話になりました〜」
一方通行「………」
病院入り口で番外個体と一方通行は冥土帰しの送り出しを受けていた。
一方通行から言葉はない。この三日間、大した出来事も特になく、番外個体にとっては充実した入院生活だったと
言えるだろう。
一方通行は退院後の予定を土御門に確認しようと電話を何度か入れたのだが、未だに折り返しが掛かってこない。
飄々としている上に色々と多忙な土御門の事だからさして珍しいとも思わなかったが、今後の予定が聞けないのは
困る。冥土帰しと別れを済ませ、病院門から出た後も掛けたのだが、いっこうに繋がらない。
(ったく、何してやがンだァ? あのグラサン野郎……)
「ねぇ、ところでさ……」
心中で舌打ちをしている所で番外個体が不安そうに尋ねてきた。
「ミサカはこれからどうしたら良いのかな? 帰る場所とかミサカ分かんないし、何でここに来たのかも正直よく
分かんないってか覚えてないんだよね……」
一方通行に縋るような、その目は「ミサカを捨てないで」と言っていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:26:44.91 ID:8RA6x1Q0<>
「……心配すンな」
番外個体にアテがない事は百も承知だ。仮にもしアテがあったとしても、信用できない場所に彼女を預けるつもりも
なかった。
取り敢えず、『グループ』の所有する隠れ家に行くか。土御門がもしかしたら居るかもしれない。と考えた一方通行
は、番外個体を連れて歩き出した。
道中、「変なトコに連れ込んだらショック死させるよ!」とか言われたがアッサリ聞き流す。この三日間でソッチの
方の免疫もだいぶついていた。
〜隠れ家〜
「……ここがあなたの家?」
「ま、そンなトコだ」
幾つかある隠れ家の中で最も病院から近い場所を選んだ。
一般的なリビングにこれまた一般的な寝室やら浴室やら。特に目立つ箇所もない至って普通の住居だった。
番外個体「こう言っちゃなんだけどさ、すっげーつまんない部屋だね」
一方通行(やっぱ土御門はいねェか……あの野郎、一体どこで何してンだっつの)
番外個体「おいっ、聞いてる? 無視とか一番傷つくんだよ?」
一方通行「……あァ、聞いてンよ。別に住めりゃ問題ねェだろォが」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:28:57.36 ID:8RA6x1Q0<>
番外個体「まぁそうだけどさ〜、なんつーか……普通」
一方通行「普通のどこが悪いンだよ? 荒らされまくった部屋に住むよりはよっぽどマシじゃねェか」
番外個体「……荒らされまくった事あんの?」
一方通行「昔の話だ」
番外個体「ふ〜ん……ま、いいけどね。それよりミサカ、洋服が欲しいんだけど」
一方通行「あン?」
番外個体「こんなアニメっぽいってか、エ○ァみたいな服、いつまでも着ていたくないワケよ。ここまで来るのも相当苦痛
だった事に気づいてる? もうこの格好で出かけるのは正直ヤだな〜」プクー
一方通行「……ンなむくれなくても、そンぐらい買ってやっから心配すンな」
番外個体「……ねぇ、ずっと気になってたんだけどさ、あなたって何でそんな金持ってんの? まさか怪しい商売とかして
ないよね?」
一方通行「別にィ」プイ
番外個体「…………」ジー
一方通行「だァあああ!! そンな目で見つめてンじゃねェェ!! 怪しいモン売ったりとかしてねェよ!!」
番外個体「………ぷっ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:30:48.02 ID:8RA6x1Q0<>
一方通行「あァ?」
番外個体「あっひゃっひゃっひゃ! 冗談に決まってんじゃん! なぁに一人でムキになってんの〜? あーおかし♪
だいたい売るんなら自分の身体売りなよ。ソッチの方がイケルんじゃないの?」
一方通行「こ……このォォ」グッ
番外個体「お? 何? ミサカに手を出すって言うなら大声出して放電するよ?」
一方通行「大声は別に要らねェだろォがよ!!」
―――
〜付近の洋服屋〜
「ったく、何がどォしてこォなってンだよ。科学の摂理ってのはどォなってやがる……」
訳の分からない事をブツブツと呟きながら洋服屋の前までやって来た一方通行。
あの後結局、番外個体に「こんな格好で外なんか出たくないからミサカに合いそうな服買ってきて!」と命令された。
「はァ!? ふざけンな! 俺一人で女モンの店入れってかァ!? 冗談じゃねェ!」と一応は抵抗してみたのだが、
「これ着てけばいいじゃん。ミサカよりはきっと似合うよ?」と言われて差し出されたのは、さっきまで番外個体が
着ていた『あのスーツ(戦闘服)』だった。これにはさすがの一方通行も口調を変える。
「あンま良い気になってンじゃねェぞコラ? その素敵に巻かれたバスタオルひン剥かれてェのか? あァ?」
「えー? 絶対似合うよぉ。ためしに着てみなって♪」
普通の人間なら腰を抜かすほどの威圧感でも、番外個体にさほど効果はなかった。それどころかウキウキしている。
よっぽど戦闘服姿の一方通行を見たいのだろうが、そうは問屋が卸さない。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:32:58.71 ID:8RA6x1Q0<>
「絶・対! 俺は着ねェぞ! 明日学園都市が滅ンだとしても絶対に着ねェ! 一生の汚点に自ら足突っ込む馬鹿が
どこにいンだよ!? そンならこの格好のまま行った方がまだマシだ!」
「お? 言ったね? じゃあよろしく」
「………あァっ!?」
こうしてまんまとハメられて今に至ると言う訳だ。記憶に障害が出ても、決して馬鹿になった事にはならない。
それに気づくのがほんの少し遅かった。ただそれだけの事である。
服も髪も、オマケに肌まで完全真っ白状態での外出は何とか避けたが、レディースショップの前まで来て新たに生ま
れた抵抗と一方通行はまだ戦っていた。
(とは言ってもよォ……)
(やっぱ俺一人じゃ無理ってモンだろォ! 大体何で俺がこンな思いしなくちゃいけねェンだァ!?)
しかも負けそうだ。
(サイズはフリーで何とかならなくもねェが……ってそォじゃねェ! そォじゃねェだろォ!? 最初っから店員に
事情を話すか? イヤそれでもドッチみち店には入らなきゃダメじゃねェか! あァどォする!? どォすりゃあ
俺はこの窮地を乗り超えられるンだァ!? 誰か俺に教えてくれェェえええ!!)
ついに店の前で頭を抱え出す一方通行。自分でも段々訳が分からなくなってきているようだ。
そろそろ警備員でも来てしまいそうな所で、彼にやっと救いの手が伸びる。
「あなたは……こんな所で一体何をしているのですか? とミサカは呆れ顔で尋ねます」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:34:54.84 ID:8RA6x1Q0<>
「あァ?……オマエは…」
御坂妹「お久しぶりですね。とミサカは敵意の篭もった目で睨みます」
一方通行「……オマエか」
御坂妹「本当は声など掛けたくはなかったのですが、あまりに滑稽な姿だったので思わず話し掛けずにはいられません
でした。とミサカは今更ながら後悔します」
一方通行「……見てたのか?」
御坂妹「はい、ばっちり。とミサカは親指を立てます」
一方通行「…………」
御坂妹「別にミサカはあなたの間抜けな姿になど興味ありませんよ? とミサカは念のために伝えておきます」
一方通行「…………」
御坂妹「学園都市最強の無様な様子を見れた事に悪い気はしませんね。ではミサカはこれで。とミサカはそそくさとt」
ガシッ
御坂妹「……何故ミサカの腕を掴むのでしょうか? とミサカは早く放せと目で訴えます」
一方通行「………オマエに頼みがある」
御坂妹「は?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:36:57.84 ID:8RA6x1Q0<>
一方通行(このチャンスを逃す訳にはいかねェ。この際こだわってなンかいられねェンだ!)
御坂妹「ミサカに頼みごとですか? あなたが? とミサカは信じられない表情であなたを見ます」
一方通行「もォオマエしかいねェンだ。オマエにしか今の俺を救えねェンだよ」
御坂妹「……何でしょうか? とミサカは一応聞くだけ聞いてみます」
一方通行「俺の代わりに服を買ってきてくれ」
御坂妹「……………ハイ?」
一方通行「頼む。そこの店で、オマエが良いと思う服一式を俺の代わりに買ってきてくれ。金なら渡してやる。多めに
渡すからソイツでオマエも好きなヤツ買ってくれて構わねェ」
御坂妹「………ミサカは」
一方通行「?」
御坂妹「ミサカは、自分の心理状態と、あなたの頼みの両方に疑問を抱きます。調整を終えたばかりだというのに……」
一方通行「オ、オイ……?」
御坂妹「どうやら、二時間前に行われた調整は失敗したようですね。やけに背が高くスタイルの良いミサカまで見える
始末……とミサカはフラフラと旅に……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:38:13.09 ID:8RA6x1Q0<>
一方通行「行くな! 行くンじゃねェ! 今オマエに行かれたら俺が困ンだよ! 行くなら服買ってからにしろォ!」
ガシッ
御坂妹「……分かりました。分かりましたから、ひとまず腕を放して下さい。とミサカは懇願します」
一方通行「あ、あァ……悪りィ」
―――
それから十数分後、御坂妹が袋を持って店から出てきた。
御坂妹「これでよろしいでしょうか?」ドッサリ
一方通行「……ずいぶン買ったなァ」
御坂妹「ミサカの服も買いましたので。ありがとうございました。とミサカは一応あなたに頭を下げます」
一方通行「気にすンな、ソイツは当然の報酬だ」
御坂妹「……訳は敢えて訊きません。特に興味もありませんので、ミサカはこれで失礼しますがよろしいですか?」
一方通行「あァ、助かったぜェ」ヒラヒラ
御坂妹「では……」スタスタ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:40:07.64 ID:8RA6x1Q0<>
「ふゥ、アイツがたまたま通ったおかげで何とかなったなァ。しっかし、やむを得なかったとは言っても、
アイツにこの俺が頭下げて頼むなンてよォ……我ながら思い出したくねェ事しちまった」
自分の行動に軽く後悔するが今更である。
「さて、服も手に入った事だし……さっさと戻るか。隠れ家に居るとは言え、長い時間アイツから離れるってのは
得策じゃねェ」
杖と荷物で両手が塞がった状態で一方通行は来た道を引き返していった。
―――
その頃
「〜〜♪」
帰宅路途中に設置されている自販機前で美琴は上機嫌な顔をしていた。
蹴りによるルーレットの結果から来た笑顔である。戦利品のヤシノミサイダーを片手に、美琴はベンチへと腰を下ろす。
「久々に当たったわね、ラッキー♪」
ささやかな勝利の味に酔いながらそう漏らす。
「…………」
当然、目的もないのに公園で一人ジュースを飲んでいる訳ではない。ここに居れば上条との遭遇率が高いのだ。
一昨日も昨日も結局こうして張っていたのだが、上条は現れなかった。今日こそは会えそうな気がする。特に根拠は無い。
なんとなくである。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:41:35.39 ID:8RA6x1Q0<>
「早く来なさいよ。いつまで女の子待たせりゃ気がすむのかしらねー、あの馬鹿は」
待ち合わせをしている訳でもないのに勝手な事を呟いているが、これも乙女心だ。
連絡を取ってしまえば手っ取り早いのだが、それでは面白くない。これも乙女心か?
美琴は遭遇時の計画を脳内でイメージしながらその時を待っていた。その脳内を覗くまでもなく、表からでも分かりやすい
ほどに浮かれた表情の美琴。自分に向けられている怪しい視線にもこの時ばかりは気づかなかった。
「ん………?」
しばらくして美琴の前に現れたのは、上条ではなかった。
白衣姿の男が数人ほど、彼女に向かって歩み寄って来る。
怪しい空気を感じた美琴は脳内妄想を瞬時にストップし、白衣の男達へと目を向ける。
やがてベンチに座る美琴を囲むように男達は立ちふさがる。
「御坂美琴だな?」
男の一人が低い声で問い掛けてきた。
「そうですけど……何ですか?」
警戒心を込めて言葉を返す。
見た目では研究者や科学者だが、それにしては少々怪しい雰囲気だ。
「私達と一緒に来てもらいたい」
別の男がそう言った。当然「ハイ分かりました」と答える筈がない。
「何? 新手のナンパ? どう考えたって流行りそうにないからやめた方がいいわね。白衣着てれば偉く見せれるつもり?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:43:47.79 ID:8RA6x1Q0<>
微笑を浮かべる美琴の反応などお構いなしにまた別の男が口を開く。
「君に拒否権はない。大人しくついてきた方が身のためだぞ?」
言葉が終わると同時に一歩前へと足を出す男だが、美琴がそれに怯える筈もない。
こういうケースは流石に初めてだが、ナンパされるのには慣れている。上条と初めて出会った時も似たような状況だった。
あの時の連中との違いは、分かりやすく表れた欲望の有無と、ここにいる彼等はどこか得体が知れない事ぐらいだ。
いずれにせよ、美琴にとってはどうでもいい事に違いはない。
上条が来る前にさっさと終わらせようと、美琴は軽く首を捻って立ち上がる。
「ついて来る気になったか?」
「ハッ、んなワケないでしょ? お断りよ」
―――
「…………」
隠れ家に戻った一方通行は持っていた袋をドサッと床に落とした。
「……オイ、嘘だろォ…」
番外個体が、いない。
「まさか……」
来る時に履いていたブーツも、ない。それはつまりこの隠れ家にはもういない事を意味する。
「そンな……」
嫌な予感がこみ上げてくる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:44:59.29 ID:8RA6x1Q0<>
「―――ちっくしょおおおォォォォ!!!」
ためらう事なく電極スイッチを『能力使用』状態にし、伸縮自在な杖を縮め、表へ弾丸の如く飛び出す一方通行。
考えが甘かった。やはり一人にするべきではなかった。一方通行は走りながら後悔の渦に呑まれていた。
(どこだ!? どこにいンだよォォ!!)
捜す。
とにかく捜す。
一方通行はバッテリーが続く限り捜す思いで街中を疾走した。
そして、そろそろ太陽が真上に昇る頃、もう一人の少女にゆっくりと魔の手が伸びようとしていた。
今、この段階でその事実を知る者は少ない。
だが近い未来、学園都市全域に衝撃が走る事となる。
『御坂美琴、謎の失踪』という大きく書かれた文字によって―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/19(日) 19:49:19.40 ID:8RA6x1Q0<>ここで切ります
大体このくらいの量が書き溜まり次第投下に来ますんで
お付き合い頂いてありがとうございました<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/19(日) 20:08:44.04 ID:fYPqKMQo<>乙<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/19(日) 20:41:48.04 ID:A9liVsEo<>乙です<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/19(日) 20:43:27.97 ID:dNeA6R6o<>木原くンいないのに美琴やられたのかww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/20(月) 00:01:58.96 ID:pMsAlLso<>上条さんが人質に取られたとか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/20(月) 00:04:51.36 ID:a1XtTqUo<>無能のあなたでも超能力者を倒せるこのキャパシティダウン!
今なら3つセットで19800円
おまけに学園都市公式作成のLv5プロマイドつき!
ミーサネットミサネット〜
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/20(月) 00:12:59.35 ID:QkMSJAQ0<>終わり方から考えるにこの後多分捕まった描写があるんじゃないか?
>>1おつ!御坂妹との約束をここで果たすとは畏れ入った<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/20(月) 00:27:24.95 ID:Rbow4oE0<>乙
スレタイと内容の雰囲気の差がww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/20(月) 10:28:34.47 ID:dhCP4sDO<>予想やめろ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/20(月) 14:22:11.94 ID:QkMSJAQ0<>すまなかった…忘れてたもれ
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 18:01:56.51 ID:gBJAt5w0<>こんばんは
一応書き溜めたのであと一時間くらいしたら投下します
ペース遅くなって本当申し訳ない…
気長に待っててやってくれたら幸いです<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 18:07:51.50 ID:Tf2.lhoo<>VIPじゃないんだし別にペース遅いとは思わないんだよな
他のスレでも週一くらいが多いし、無理せず頑張ってくれ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:16:31.87 ID:gBJAt5w0<>>>205
そう言って頂けると嬉しいっす
では続き
―――
「あーあー……ったく、小娘一人になんてザマだよ」
身体を痙攣させて気絶した男数人を見下ろした刺青の男は冷たく切り捨てるように言った。
倒れた男達の中心に立っていた美琴は、いつの間にかすぐ正面にいた刺青男を見て表情を凍らせる。
「!? アンタ、あの時の……」
「よっ、強いね〜お嬢ちゃん。けどちょーっとオイタが過ぎるかなぁ」
ヘラヘラと笑いながら子供を相手にしている調子で声を掛けてくる刺青男。
「こいつら、アンタの仲間? ずいぶん躾がなってないみたいだけど」
「さっきまでは一応部下だったんだが、やっぱ要らねえわ。テメェみてぇなガキにあっさり倒されてんじゃあ
使い物にもならねぇ。ま、別に戦闘要員でもねえから仕方ねえんだけどよ」
「ガキ……ですって?」
刺青男の発言に口元が歪む。こめかみ辺りに血管が浮き出るが、冷静に訊き返した。
「……で、私に何の用よ?」
「いやなに、ちっとばかし協力して欲しくてさぁ。大丈夫、悪いようにはしないぜ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:19:49.79 ID:gBJAt5w0<>
「大人しくついてきてくれればな」と追加したが、当然美琴はこれに拒否する。
「冗談じゃないわ。何で私がアンタなんかに付き合わなきゃなんないのよ? ってか、そもそもアンタ誰よ?」
「チッ……」
美琴の返答に刺青男の顔も歪む。一瞬だけ優しい表情を作ったものの、本性を隠すのはどうも慣れていないらしく、
すぐに邪悪な顔を覗かせた。
「大人しくついてくりゃあ少しは良い思いさせてやろうってのによぉ……つくづく超能力者ってのはムカつくわ」
「!」
刺青男の急変した態度に美琴は身構えた。
「もういい、やっぱ紳士なんてのはガラじゃねえから力づくで連れてく事にした」
「ふん、その方が手っ取り早くていいわね」
そこからは言葉なしに対峙し、睨み合う両者。すでにお互い戦闘態勢に入っていた。
「――っ!」
そんな中、先に仕掛けたのは美琴だった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:23:30.51 ID:gBJAt5w0<>
前髪から先ほど数人を倒したのと同じ電圧を放電する。
気絶させる程度だが、まともにもらえば一撃で終わる攻撃だ。
青白い電流が描く曲線は刺青男に一瞬で突き刺さる―――
―――はずだった。
「えっ!?」
……外れた?
「どこ狙ってんだ? お嬢ちゃん」
平然とした顔で立っている刺青男。電撃は男のすぐ横を通り過ぎたかに見えた。
(そんな、確かに狙ったのに………もう一度っ!!)
しかし再度放たれた雷撃も、あっさり男の真横を走っただけに終わる。
一撃目と全く同じ結果だった。
「な、なんで!?」
刺青男目がけて真っ直ぐ撃ったはずなのに何故当たらないのか?
答えはすぐに返ってきた。
「一応言っとくけどよ、テメェは演算ミスもしてねえし、電撃も真っ直ぐ俺に向かってる。能力不調とかそういうん
じゃねえから心配すんな」
「じゃあ……何で当たらないのよ!?」
急かす声で問う美琴に、刺青男は信じられない回答をした。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:26:45.49 ID:gBJAt5w0<>
「なぁに簡単だ。別に何てことはねえよ―――」
「―――ただ単純に俺が“避けてる”だけなんだから」
「!!??」
この発言に美琴は驚愕の表情を作る。平然と言ってのけるが、それが一体どれほどの事か分からない筈がなかった。
「う、嘘よ!! そんな……そんなことができる訳ないじゃない!!」
「信じられねえか? なら何度でも撃ってみろよ」
挑発するような刺青男の態度に美琴は迷いを見せた。その隙をつくように男は言葉を続ける。
「……と言いたい所だがな、生憎コッチはいつまでもテメェと遊んでやってる時間がねえんだ。っつーことで悪いが、
しばらく寝てろやクソガキ」
瞬間、刺青男は一瞬で美琴の懐に潜り込んだ。
「―――ッッ!?」
咄嗟の事に反応する暇もなく、腹部の辺りにドスッ! と、重い衝撃が伝わる。
「ハイ、ゲームセット♪」
男の高らかな勝利宣言が頭上で聞こえた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:31:48.74 ID:gBJAt5w0<>
気づいた時には刺青男の拳が、容赦なく美琴の腹にめり込んでいた。
正に抵抗もできない程の速さで。
「……ぁ…ぐ…」
その一発で意識を刈り取られ、なすすべなく地面に崩れ落ちる美琴。
文字通り瞬殺である。
「クク……残念だったな。俺はテメェよりも遥か上の能力に携わってきた男だぜ? なめんじゃねえよ」
男の発した声は、もう美琴の耳に届いていなかった。
「ケッ、本当に一発で沈みやがったか。所詮はただの中学生ってな。よっと――」
完全に気を失った美琴を担ぎ、すぐ近くに停めてあった車の後部座席へ放り込んだ。
そして自らは助手席に乗り、運転手に車を出すよう告げる。
大きなエンジン音を上げて動き出す。
後ろに『超電磁砲』の異名を持つ超能力者の少女を乗せたまま、車はゆっくり加速していった―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:33:59.45 ID:gBJAt5w0<>
―――
「…………」
一方通行は道のど真ん中で突然動きを止めた。
それに乗じて巻き起こっていた風も止む。
(……待て、待てよ。やっぱさっきっから何か引っ掛かってる……何だ?)
風となって駆け抜けていたのをピタリと止めたのは頭に何か気に掛かる事があったからなのだが、その正体が分からない。
一方通行はその場で立ち尽くしたまま頭を過去に遡らせた。
(番外個体の服買いに行って、けど店の雰囲気が見るからに女じみてるせいで入れなくてどォしよォか困ってる時に……)
(そォだ、妹達の誰かが現れて……ンでしばらく喋って…………!!)
〜ここで先ほどの御坂妹との会話シーンへ戻る〜
「………ミサカは」
「?」
「ミサカは、自分の心理状態と、あなたの頼みの両方に疑問を抱きます。調整を終えたばかりだというのに……」
「オ、オイ……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:35:46.35 ID:gBJAt5w0<>
「どうやら、二時間前に行われた調整は失敗したようですね。やけに背が高くスタイルの良いミサカまで見える
始末……とミサカはフラフラと旅に……」
『“やけに背が高くスタイルの良いミサカ”まで見える』
〜〜〜
(―――それだ!!)
(アイツはあそこにいる! 少なくとも俺と妹達が一緒にいた時、間違いなくアイツも近くにいた!!)
(何でそン時すぐに気づかなかったンだクソったれがァァァ!!)
嘆きながら方向転換し、一方通行は再び疾風の如く駆け出す。
あの店付近を重点的に捜せば必ずいるはずだ。間に合え。妙な輩がヤツに接触する前に見つかれ。
一方通行はそれだけを願いながら全力で走った。
「わぁー、これも良いな〜♪」
……目的はあっさりと達成された。
なんとさっき御坂妹が代わりに入ってくれた店に番外個体はいたのだ。しかも瞳を輝かせて衣類を物色している。
一方通行は拍子抜けのあまり思わず引っくり返りそうになった。躍起になって走った自分が馬鹿みたいだ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:40:56.27 ID:gBJAt5w0<>
「オ・マ・エ・はァァああああ!!!」
ズシズシと足を踏み鳴らす勢いで入店する一方通行。さっきは入るのをあれだけ躊躇していたのに、どうやら今は
その事もすっかり忘れているようだ。
鬼のような表情の一方通行が接近してくる事に番外個体は気づく。
番外個体「―――あれ? あなたこんなトコで何やってんの?」
一方通行「そりゃあコッチのセリフだァ!! オマエ何勝手に出歩いてンだよ!? ……ってオイ、オマエその服…」
番外個体「あぁこれ? 何か別の部屋にあったから借りてきちゃった♪」
一方通行(あァァ……ソイツは訊くまでもなく結標の……俺知らねェぞ)
番外個体「ねぇ、この服ってあなたの趣味? あの格好よりはマシだから着ちゃったけど、これ結構露出激しいから
ちょっとだけ恥ずかしいかな……」
一方通行「……俺の趣味じゃねェ。っつーか勝手に着て勝手に外出てンじゃねェよ。無駄にバッテリー使っちまった
だろォが」
番外個体「あっれぇ〜、ミサカの事心配してくれたのぉ?」ニヤァ
一方通行「るっせェ。オラとっとと帰ンぞ」
番外個体「えー、ヤダ! だってまだ服……」
一方通行「もォ買ったから安心しろ」
番外個体「え! ウソ!? あなた一人で?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:43:53.80 ID:gBJAt5w0<>
一方通行「ンだよ? 悪りィかァ?」
番外個体「……よく入れたね」
一方通行「ま、まあなァ」
(本当はオマエの姉みてェなヤツのおかげなンだがな……まァアイツにも服買ってやったし、チャラってことでイイか)
番外個体「ん〜、ならついでにこれも買って♪」(←チューブトップ)
一方通行「今着てンのより露出度高けェだろォがァァ!! 恥ずかしいとか言ってたよなァ!?」
―――
帰り途中
一方通行「ったくよォ、そンだけ買っちまったら俺の買ったヤツが無駄になンじゃねェか」カツカツ
番外個体「いいじゃ〜ん。たくさんあって損はないんだし」テクテク
一方通行「理解できねェ……」
番外個体「とか言っても、結局買ってくれるんだよね。あなたって結構良い人?」
一方通行「ンな訳ねェだろォが。ただの気まぐれだっつの」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:46:57.32 ID:gBJAt5w0<>
番外個体「ツンツンしちゃって♪ 可愛いヤツ」
一方通行「……殴ンぞ?」
番外個体「ハハッ、怒った〜♪」タタタタ
逃げるように先を走る番外個体。追いかけるのも面倒な一方通行は溜息を吐く。
一方通行「あのクソガキと一緒にいるのと同じぐらい疲れるわ……ハァ」
打ち止め「誰と一緒だって? ってミサカはミサカは横から口を出してみたり」ヌッ
オワァァァァァ!!!
番外個体「ん? 何叫んでんのアイツ……?」
一方通行「こ、このクソガキがァ!! 最高のタイミングでいきなり現れてンじゃねェよ!!」
打ち止め「へへへ♪ さっき見かけたからつい後尾けちゃった。ってミサカはミサカはペロッと舌を出してみる。
驚かしちゃってゴメンねっ」
一方通行「………心臓止まりかけたじゃねェか」
打ち止め「ねぇねぇ、ところで―――」
一方通行「あン?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:52:04.49 ID:gBJAt5w0<>
打ち止め「―――あの人、妹達だよね? どういう事? ってミサカはミサカはいきなり確信に迫ってみる」
一方通行「……?」
打ち止め「あのミサカ、他の妹達とは違うよね。けど流れている電磁波は妹達やミサカ以上お姉様未満ってトコかな。
姿もお姉様より成長しているし……あのミサカは何なの? ってミサカはミサカは後を尾けた本当の理由
を告げてみる」
一方通行「オマエは知らないのか?」
打ち止め「へ?」
一方通行「第三次製造計画についてだ」
打ち止め「…………知ってるよ」
一方通行「なら、アイツの事も分かンだろ?」
打ち止め「まさか、あのミサカは番外個体……なの?」
一方通行「あァ、そォだ」
打ち止め「!……何で? おかしいなぁ。あのミサカはネットワークからの信号が届いてないよ? ってミサカはミサカは
当然の疑問をぶつけてみる!」
一方通行「…………」
打ち止め「それに、番外個体にはアナタを………するようインプットされているハズなのに、どうしてアナタと仲良さそうに
歩いてるの? ってミサカはミサカは更に問い詰めてみる!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:55:14.89 ID:gBJAt5w0<>
一方通行「オイ、打ち止め……」
打ち止め「どういう事なの!? 説明して!」
一方通行「…………」
(言うべきか? ……イヤ、駄目だ。本当の事言っちまったらコイツも関わってくるに決まってる。俺らと一緒の所を
見られでもしたら拙い。連中の手がもしコイツにも伸びちまったら、正直守りきれる保障がねェ。ここは何とか納得
させて無理にでも帰さねェと……)
打ち止め「まさかアナタ、また危険な場所に飛び込んでいくんじゃないよね? 違うよね? もう危ない事はしないって
ミサカと約束したよね? ねぇ答えて!! ってミサカはミサカは―――」
一方通行「落ち着け打ち止めァ!」
打ち止め「っ!」ビクッ
一方通行「……大丈夫だ。危ねェ事はしねェ」
打ち止め「………嘘じゃない?」
一方通行「あァ、別に危険に巻き込まれてる訳でもねェよ。ただアイツとの事情は……今オマエに言えねェンだ」
打ち止め「どうして……?」
一方通行「近い内話してやっから、今は納得しろ」
(可哀相かもしンねェが、コイツまで巻き込ンじまう訳にはいかねェ。念のため、事が済むまでは打ち止めともしばらく
会わねェ方が良いな)
打ち止め「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:57:00.95 ID:gBJAt5w0<>
一方通行「オマエは何も心配しなくて良いンだよ。俺を信じろ」
打ち止め「…………」
一方通行(駄目か……)
打ち止め「………わかった。ってミサカはミサカはアナタを信じてみる」
一方通行「!……おォ、良い子だァ」ナデナデ
(すまねェ……)
打ち止め「……♪」(←撫でられて嬉しそうに目を細める)
一方通行「ところで、オマエ一人か? 黄泉川や芳川と一緒じゃねェのか?」
打ち止め「うん、ここからちょっと戻った店にいるよ。ってミサカはミサカは抜け出してきた事実を白状したり」
一方通行「なら早く戻ってやれ。アイツら心配すンだろォが」
打ち止め「うん………」
一方通行「ン? どォした?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 19:58:10.05 ID:gBJAt5w0<>
打ち止め「……次はいつ会える? ってミサカはミサカは確認の意味を込めて訊いてみる」
一方通行「………その内またな」
打ち止め「……本当?」
一方通行「あァ本当だ。近い内電話するから、ンな薄暗れェツラしてンじゃねェよ」
打ち止め「うんっ! 待ってるね! ってミサカはミサカはアナタから離れてみたりするけど……やっぱり名残惜しい…」
一方通行「ハイハイ、また今度な」
打ち止め「………じゃあね。ってミサカはミサカはサヨナラしてみる」
一方通行「おォ、気ィつけて行け」
パタパタと打ち止めは来た道を走っていった。時折一方通行に振り返っては手を振ってくる。
一方通行はそれに対し、杖を軽く持ち上げてやる事で答えた。
必ずまた会いにいくと言う想いを胸に秘めて。
番外個体「ちょっとぉー、ミサカの存在忘れないでくんな〜い?」
○○学区のある研究施設に御坂美琴を抱えた刺青男が何人かの部下による出迎えを受けていたのはそれから
間もなくの事だった―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/21(火) 20:05:49.58 ID:gBJAt5w0<>今回はここまでです
次回は未定ですが、なるべく近い内に来ます
それでは
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 20:21:49.65 ID:iXEomToo<>乙です<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 20:26:16.32 ID:LAbyBv.o<>乙
美琴が心配過ぎてご飯も三杯しかおかわり出来なかった<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 20:51:51.81 ID:0a585KQo<>乙
ここの木原くン学園都市第三位でいいだろww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 21:09:43.79 ID:ISHF5cgo<>電撃を避ける無能力者か…
やべぇな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 23:06:10.29 ID:h6jU0O.o<>電撃を見てから回避余裕でしたな高校生もいただろ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 00:50:16.41 ID:t9CBaa.0<>木原くンチート過ぎわろた
正直キャパシティダウン頼みだと思ってましたさーっせん<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 02:29:39.52 ID:T6dLRIAO<>いくら行動パターン読めてるからってセロリさん相手にフルボッコできるからなww
マジ木原神拳最強<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 02:36:46.99 ID:RkkFk..o<>あれはセロリさんへの愛の賜物だけどな
ということは木原くンもロリコンだったのか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 15:16:43.03 ID:T6dLRIAO<>>>228
ロリコンって事はヤツの本名百合子なのか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 15:30:55.14 ID:UXHwuMk0<>>>229
百合子=ロリコン的な言い方はやめろwwww
けど実際木原くンと美琴が戦ったらこうなりそうだな
美琴は一般人だと思って絶対甘く見るだろうし…
木原くンは普通の人が無理なことをあっさりやってのけるしな
木原神拳とか片足が沈む前にもう片方の足を出せば水の上も歩けるってのと同レベルwwww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 15:41:48.00 ID:Wp6k4jM0<>普通無理だろと思いつつ、何か木原だと納得してしまう俺がいる
上条に上条さん補正が掛かっているように、木原にも木原くン補正が俺達に掛かってるよな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/22(水) 23:55:26.48 ID:wmi22vo0<>木原くン補正www何wwだwwそwwれww
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:46:01.29 ID:PQcFI4c0<>こんばんは
少し遅い時間ですが、続きを投下します
相変わらずゆっくりです<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:46:55.01 ID:PQcFI4c0<>
―――
土御門元春はとある場所の資料室らしき部屋にいた。
目的は当然、今回の件での調べ物だ。上からの圧力により捜査不能となった警備員や風紀委員。
更にアレイスター直属の“自分達”が被害者との極秘接触。
被害者は一方通行と何らかの関係があるらしいが、一方通行本人はこれについて言葉を濁すばかり。『妹達』と
被害者の少女が類似している点も気に掛かるが、襲撃犯の全貌も気掛かりである。要するに色々と調べたいネタ
が豊富という事だ。大体そんな時に彼が情報を集めるのはこの書物や機械が豊富に備えてある資料室が主だった。
当然、一般人なら普段は立ち入る事のない場所にある。携帯電話の着信音にも気づかないほど彼は調べ事に熱中
していた。
「………なるほど」
その成果により今しがた把握した『第三次製造計画』の全貌に土御門の口角が上がる。
これで一方通行から直接伺う必要もなくなった。アレイスターの言葉の謎もようやく解けた。
「確かに、アイツが適任なハズだにゃー」
そう呟きながらウーン、と背伸びをする。
「さて、そうなると今回旅客機を襲撃した犯人の形もうっすらと見えてくるぜい」
もうひと調べ、と土御門は再び情報の詰まったデータバンクを探し始めた。
今回の事件については公けにされている情報が限られている。その裏を漁るのは彼が最も得意とすることだった。
「…………あった」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:51:07.62 ID:PQcFI4c0<>
関係していそうな組織、機関を洗い出した。
どれが一番匂うか……。
土御門はスパイとしてこれまで培った勘と神経を研ぎ澄ませる。
「………こいつは違う。こいつも……違うな」
それぞれの組織の代表者の顔とデータをアップしては次の画面へ行く作業を繰り返す。
なかなか怪しい人物が出てこないが、土御門は焦らず坦々とリストを絞っていく。
「…………やはり、この時に動けそうな連中は“第三次製造計画”の連中……しかし、ヤツらに番外個体を襲撃する
意味は……」
状況から言えば第三次製造計画について関わりを持つ組織が怪しいのだが、データにはまだ表示がない。
つまり計画者が怪しい事も考えられるのだが、旅客機には当然計画に携わった研究者も同乗していた筈。
「……やっぱりそれはないな。メリットゼロというか、無駄にも程があるだろ。………仕方ない」
もう一度バンク内のデータを調べる。しかし、同じやり方だと結果は変わらない。
土御門は少しだけ悩む仕草を見せた。
「………うーん、やっぱ自動規制を解除するしかないか」
ブラックアウトを覚悟の上で土御門はセキュリティレベルをMAXにした。要するに、機密とされいる極秘データの観覧
も可能になるという意味だ。当然これは危ない橋を渡るようなものだが……
「やっぱり上層部に一目置かれている連中なら、これくらいのリスクは冒さないとにゃー♪」
何故か土御門は楽しそうだ。彼は意外とスリル好きというか、神経が並の人間よりも図太いのだろう。
一緒にフランス上空でポイ捨てされた時、上条もそれを嫌というほど思い知っている。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:53:35.96 ID:PQcFI4c0<>
やがて――
「お? 出てきた出てきた。うわぁ、セキュリティレベルMAXの組織がこんなに……つくづく歪んでるな。この街は」
まぁけど今更か。と言葉を付け加えながら組織リストを纏めていく。学園都市の闇が全て詰まったデータが今、土御門の
目の前に映る。
「………ん?」
しばらく無言で調べている内に、ひとつの組織名が目に止まった。
「『地獄の猟犬《ケルベロス》』……? なんだこりゃ?」
最新のデータにあったその名前。つい最近設立された組織らしいが、どこか気になった土御門は詳細をアップしてみた。
そして表示された代表者の顔写真と名前に、土御門は驚愕の表情を浮かべた。
「―――な!!?」
サングラスの奥の目を見開く。
「……馬鹿な………いや、そんなハズは……」
設立された日付は何度見ても同じだった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:56:16.10 ID:PQcFI4c0<>
「………ありえん……こんなの俺は聞いてないぞ……」
「どういう事だ。アレイスター……」
震える指で事件発生時刻と照らし合わせてみる。他にも何やら色々と探るように指を動かしていく。
結果は―――
―――ビンゴだ。
「間違いなさそうだな……このデータに間違いが無いとしたら、こいつが今回の首謀者……しかし何故こいつ……」
「ッ! 待てよ……という事は……ヤツらの狙いは―――!!」
リストに映る首謀者の顔写真を残した土御門は、珍しく取り乱した様子で資料室から飛び出していった。
無人となった資料室で、顔に刺青を彫った男の写真が怪しく笑っている。
顔写真と、その上に表示された『木原 数多(きはら あまた)』という名前は、いつも飄々としている土御門の背筋を
一瞬凍りつかせるのに充分だった。
―――
刺青男こと木原数多は研究施設の自室にいた。御坂美琴を拉致監禁までした以上、後になどはもう引けないのだが、彼には
引く気などさらさら無かった。むしろ木原の狙いはここからスタートを切ったと言っても過言ではない。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:58:21.52 ID:PQcFI4c0<>
「………さて、後はもう一人の方だな。……ククク、このまま上手くいきゃあニ〜三日ってトコか」
ソファーに行儀悪く座りながらワインを飲む木原の自室の扉がコンコン、と音を立てる。
「おう、入れ」
「……失礼します」
ノックの後にドアが開かれ、遠慮がちに入室したのは部下の研究員の一人だった。
木原「―――で、どうだ? “アレ”は動きそうか?」
部下「えぇ、問題なさそうですね。さすがは学園都市でトップの発電能力を持つだけあります。あれほどの電力があれば充分
すぎるかと……」
木原「ははは! 当たり前だろぉ? そのために捕らえたんだからなぁ。当初の片っ端から『妹達』集めるなんてクソだりぃ
計画よりはよっぽどお手軽だったろ? 他の国にいるヤツらまで捜す手間もこれで大幅に削減できたって訳だ」
部下「しかし……大丈夫なんですか? いくら超能力者とは言え『闇』との関わりが少ない……言わば『表の住人』ですよ?
この事がもし上層部に知れたら……」
木原「ハッ、心配すんな。お偉いさんにはすでに“手回し済み”だ。三日もすりゃ報道もされるだろうが、それも計算の内よ」
部下「えぇ!?」
木原「……なに驚いてんだよ? 俺には“ソッチ”のコネがねぇとでも思ったか? まぁ、さすがに上の連中が全員味方って
訳じゃねえけどな。そこんトコはどうにでもなるんだよ。偉いヤツが一人でも味方にいるだけでもだいぶ違ってくん
だぜ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 00:59:32.49 ID:PQcFI4c0<>
部下「はぁ……なるほど……しかし統括理事長は?」
木原「あぁん? あーダメダメ、アレイスターの馬鹿はどうせ聞かねえだろうから、今回は出し抜き決定だ。余計なトコに
まで漏らしたら、せっかく高い金出して購入した“道具”が全部無駄んなっちまう」
部下「………しかし、いくら何でも一般人を巻き込むのは…」
木原「あ? なんだテメェ、俺に説教たれようってか?」
部下「い、いえ! 決してそのような意味では…」
木原「言っただろぉが? コッチは手段なんて選んでる余裕が無えんだよ! 借金も大量に背負っちまってんだからなぁ!」
部下「も、申し訳ありません…」
木原「チッ……もぉいいから行けぇ。酒が不味くなる」
部下「あ、あの…」
木原「あぁ? まだ何かあんのかよ?」
部下「いえ……ただ…」
木原「何だ?」
部下「ずっとお伺いしたかったのですが……木原さんは、その……何故そこまで…」
木原「んだよ、何を言うかと思ったら……それかよ。お前『地獄の猟犬』にいるクセしてそんな事も知らなかったのか?」
部下「す、すみません…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:02:08.20 ID:PQcFI4c0<>
木原「………いいぜ、なら教えてやるよ」
部下「はい…」
木原「そこまでしてでも“ブチ殺してやりてぇ男”がいるからだ。どんなド汚ねぇ手ぇ使ってでもなぁ……。そのために
俺はこうしてこの世に舞い戻ってきたんだ。わかるか? だから俺は『地獄の猟犬』なんだよ」ニヤァ
木原の表情は、その言葉と共に表情を歪めた。
かつてないほど、不気味に。
部下はその表情に恐怖を抱いたせいか完全に言葉を失っている。
今の答えを聞く限りでは完全に木原の私情だが、そこに指摘など入れられるはずがなかった。
「たったそれだけのために」など、今の彼に一体誰が言えようものか。
―――
「………ん…」
御坂美琴は薄暗い牢のような部屋で目を覚ました。
「――はっ!? どこ……ここ…?」
キョロキョロと見回すが、見覚えなどあるはずもない場所だった。例えるなら犯罪者でも収容されていそうなイメージの個室。
何故自分は今ここにいるのか一瞬呆けたが、すぐに自分に起こった状況を思い返す。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:06:00.00 ID:PQcFI4c0<>
「そ…そうだ、私……アイツに……!」
目にも止まらぬスピードで急接近され、男の身体がすぐ目の前に来たと認識する前に意識を奪われてしまった。
美琴にとっては屈辱以外の何物でもない。
「私とした事が……完全に油断したわ」
無論、あっさりと拉致されてしまったのは美琴の過信も原因の一つだ。だが、それ以前に……
(けど、何者よアイツ……動きが全然見えなかった。まさか、黒子と同じ『空間移動系』の能力でも使えるっての? だとしたら
ちょっと厄介ね…)
「とりあえず、ここから出るか……」
と…
「―――ッ!?」
立ち上がろうとした美琴の腕が、何かに引っ張られた。というより引っ掛かった。
「………ま、そりゃそーよね」
壁と美琴の両手は手錠よりも太めの鎖で繋がっていた。
幸い足は自由なままだが、鎖を外さなければ移動ができない。
さらに、目の前に見えるのは鉄格子張りに見える通路。これではまるで囚人だ。
冗談じゃないわ! と美琴は啖呵する。
「いつまでもこんな所にいれるかっつーの!」
能力を行使しようとするが―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:07:51.80 ID:PQcFI4c0<>
「痛ッ!!?」
―――その瞬間、頭に激痛が走った。
「………うぅ」
突然の頭痛にその場でうずくまる美琴だが、演算を止めた途端痛みはすぐに消えた。
ギュッと閉じた目を薄っすらと開けた美琴は今起きたばかりの現象に不可解な表情をする。
「何?……今の」
今はもう頭痛など起こっていない。どうやら能力を使用するために脳が演算を行おうとしたのがキッカケのようだ。
試しにもう一度だけ軽くやってみるが、やはり演算処理と同時に軽い痛みが脳を襲った。どうもこの痛みは能力の
強弱に比例しているらしい。
「これは………」
実は前にこれと似たような経験がある美琴は、この現象の正体をすぐに見抜いた。
(―――まさか、キャパシティダウン……!?)
と、その時―――
「お目覚めかい? お嬢ちゃん」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:10:08.55 ID:PQcFI4c0<>
「ッ!!」
突然の声に驚く。
声の直後、美琴の前に姿を現したのは木原数多だった。
「へへへ…」
鉄格子越しに怪しく薄ら笑いを浮かべている木原に美琴は目を鋭くさせる。
「アンタは……ッ!」
喰って掛かろうと身体を前に動かすも、左右の手に繋がれた二本の鎖が邪魔をする。
「ぐぅ…ッ!!」
「おーおー、獰猛だねぇ。お嬢様は実はジャジャ馬娘でしたってかぁ?」
ぎゃはは! と笑う木原に美琴は唇を噛みしめる。
「アンタ、こんな事してタダで済むと思ってんの!? 早くこれ外しなさいよ! 今ならまだ許してあげなくもないわよ!?」
「あん? テメェまだ己の立場が分かってねーのか? おっかしいなぁ、常盤台は頭良い連中の集まりって聞いたんだが……」
「うっさい黙れ!! さっさとこっから出しなさいよぉっ!!」
ガシャンガシャン! と鎖を鳴らして暴れる美琴にすっかり呆れ顔の木原。
「……あー、ピーピーうるせえなぁ。ったく、だからガキは嫌いなんだよ」
「ガキって言うなっ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:13:28.92 ID:PQcFI4c0<>
「どう見てもガキだろーが。ったく……クソ生意気なトコだけはあの野郎にソックリだな」
「……あんま私を嘗めない方がいいわよ? いざとなったらこの建物ごとぶっ飛ばせるんだからね」
勿論脅しのつもりで美琴は警告するが、木原は表情を変えない。
それどころか、「できるもんならやってみろよ」とばかりに挑発的な態度で美琴を見下していた。
「…………ッ」
木原の表情で脅しが効かない事を悟った美琴は、核心に迫る。
「……何が目的よ? 私を一体どうしようっての?」
「なあに、ちょっとした『実験』に協力してもらうだけだ。別にどっかに売り飛ばしたりする訳じゃねえから安心しろよ」
「実験……?」
「まぁテストってヤツだ。とにかく、あんま反抗すんのは後々よくないぜ? 更に苦しい結末を迎えるだけだからな」
「…………」
「さぁて、じゃあ早速付き合ってもらうとすっか」
木原はそう言って鉄格子を開けた。
そのまま美琴の側まで近づき、両手の鎖を外していく。脱出するには絶好のチャンスともとれるが……
「一応言っておくが、逃げようだなんて馬鹿な考えは捨てろ。無駄以外の何モンでもねぇし、余計な仕事が増えんのは嫌い
でねぇ」
「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:15:43.18 ID:PQcFI4c0<>
鎖を外しながら忠告する木原に美琴は何も答えなかった。
やがて鎖が外され、両手が自由になる。
「コッチだ。ついて来い」
拘束具一切無しの美琴に余裕の振る舞いで木原は前を歩き出す。
何とか隙を伺って逃げた方がよさそうだと判断した美琴はひとまず従う事にし、木原の後ろを無言で歩いた。
木原「もう気づいてるとは思うが、この建物内じゃ“一部の場所を除いて”能力は一切使えねぇ。何でか知りてぇか?」
美琴「……キャパシティ…ダウン」
木原「お? 知ってたか。なら話は早えぇな。まあ正確には演算妨害してんだが…」
美琴「それも知ってる。前に嫌ってほど体験してるわ…」
木原「ここに設置されてんのは多分お前が知ってるヤツよりも強力だぜ。何せ超能力者と言えど“完全無効化”だからな。
前のヤツはお前でも何とか使えるか使えないかのレベルだったんだが、コイツは最新作よ。まぁ言っちまえばアレは
未完成品っつーか、試作品みてぇなモンだったからなぁ」
美琴「!? ………あれが、試作品……?」ゾクッ
木原「驚いたか? 高かったぜぇ。おかげで俺は一気に借金まみれよ」
美琴「そんな……あれって確か……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:19:44.61 ID:PQcFI4c0<>
木原「あぁ、普通じゃまず手に入る代物じゃねぇ。けどたまたま身内で持ってるヤツがいたんだよ。ソイツからサンプルデータ
さえもらえりゃあ後はどうにでもなる。こう見えて俺も一応科学者だからな。費用はかなり掛かっちまったが、結果は今
お前が体感してる通りだ」
美琴「………ッ!」
木原「な、すげえだろ? ここは俺らがアジトにしてる研究施設なんだが、一部を除いた施設内には常にコイツを流している。
俺達の耳じゃ到底聞き取れねえが、生憎コイツは耳からじゃなくて脳に直接伝えるタイプだ。分かりやすく言やぁ、そぉ
だな……低周波ってヤツか。そういうこったから、いくら耳を塞いでも無駄だぜ?」」
美琴「……何で……そこまでしてアンタは一体何をやろうとしてんのよ!?」
木原「カカカ、その内イヤでも分かるからそう急くなって♪ とにかく、今は黙って俺に協力しといた方が無難だぜぇ?」
美琴(……冗談じゃないわよ! 誰が…ッ! 早く隙を作ってここから逃げないと……!)
木原「あ。そうだ、身内ってので思い出したんだがよ」ポン
美琴「えっ?」
木原「“姉貴”が以前お世話になったらしいな。『超電磁砲』」
美琴「は? 姉貴……? 何のことよ?」
木原「っと、いけねぇ。そう言やぁ自己紹介もまだだったか」ポリポリ
美琴「………」
木原「はじめまして、超電磁砲。元『猟犬部隊《ハウンドドッグ》』、現『地獄の猟犬《ケルベロス》』のボス―――」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:21:34.06 ID:PQcFI4c0<>
木原「―――木原数多だ。以後よろしく……ってかぁ」ニヤリ
美琴「ッッ!!? ……き、木原…って、まさか…」
木原「お前の事はテレスのクソビッチから聞いてたぜ? 第三位は反吐が出るぐれぇに生意気な小娘だってなぁ。ぎゃははは!」
美琴「!……って事は……アンタも木原幻生の…」
木原「あぁ? なんだ、お前俺の“じいちゃん”も知ってんのか……。ま、繋がってんのは血縁だけだから別にどうでもいいけどよ」
美琴「!!……」
さらっと告げられた衝撃の新事実に流石の美琴も驚きを隠せなかった。
―――
その頃
隠れ家に戻ってきた番外個体と一方通行
番外個体「―――ねぇ、ところでささっきの子……」
一方通行「ン?」
番外個体「ミサカに似てたけど、もしかしてあの子が最終信号《ラストオーダー》?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:23:14.09 ID:PQcFI4c0<>
一方通行「は……?」
番外個体「あれ? 違った?」
一方通行(!……そォか。ネットワークに接続できねェって事は妹達の存在は知ってても人物、つまり検体番号の特定までは
できねェのか……つってもあのガキならそンな区別の意味はねェが…)
番外個体「おーい、聞いてる?」
一方通行「あ、あァ……まァな」
番外個体「やっぱり……ってことはあの子がミサカ達の上位個体なんだね」
一方通行「まァそォなンのか……」
番外個体「あなたとずいぶん仲良さそうだったけど、何で?」
一方通行「そ、そりゃあ…」
番外個体「まさか、あなた……」
一方通行「………!!」
番外個体「…………ロリコン?」
一方通行「なワケあるかァァあああああ!!!」クワッ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:24:56.27 ID:PQcFI4c0<>
番外個体「どうどう。まぁコーヒーでも飲んで落ち着けよ」コトン
一方通行「フー……フー……」
番外個体「鼻息荒いって」
一方通行「…………」ゴクゴク
番外個体「うわ……ホントにあなたってブラック好きなんだね〜」
一方通行「……文句あンのかァ?」ギロリ
番外個体「ロリコン呼ばわりしたのは謝るからそんな睨まないでよ。目が怖いんですけど〜?」
一方通行(目つきの事をオマエだけには言われたくねェよ)
番外個体「さてと、んじゃミサカ着替えてくるね。あなたが買ってきた服は?」
一方通行「そこに置いてあンだろ」
番外個体「あ、これね。……ってか、ずいぶん買ったんだ〜。まぁあって困ることはないけどさぁ」
一方通行「それで文句はねェだろォ。着替えンなら早く行け」
(いつまでもそのまンまの格好だと目のやり場に困ンだよォ…)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:25:35.47 ID:PQcFI4c0<>
番外個体「はーい。隣の部屋借りるね♪」
一方通行「お好きにどォぞォ」
番外個体「………」ジーッ
一方通行「……ンだよ?」
番外個体「覗くなよ?」
一方通行「誰が覗くかァァ!!」
お決まりのやりとりを済ませ、番外個体は服の詰まった袋を抱えて別室へと向かう。
この馬鹿みたいな会話の応酬をもう三日も続けている自分の現状に、一方通行は大きな溜息をひとつ盛大に吐いた。
間もなく訪れる猟犬の牙によって、この何気ない二人の空間が呆気なく破壊されてしまう事になるのをこの時の彼は
まだ知らなかった―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/23(木) 01:26:27.86 ID:PQcFI4c0<>
とりあえずここまでです
ここでは身内設定にしちゃってますが、実際木原くンとテレスティーナってどんな関係なんでしょうね…
俺は敢えてテレスティーナが姉の方だと推測します! ってか身内さえ明らかになってないのに姉って……
他にもキャパシティダウンの設定勝手にグレードアップさせたりと色々好き勝手やっちゃってますが、どうかお見逃し下さい
ではまた<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 01:32:26.65 ID:hBA9wjEo<>ファミリーネームのこともあるから、従兄弟とかかなと思ってた俺ガイル
乙!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 01:33:48.14 ID:04S4iX6o<>乙!
囚われの美琴がどんな目に遭うのか不安だ……
木原一族って設定はあるから身内は身内だろうね
ただテレスさんは外国の血混じってそうだし少し親等は離れてそうな希ガス<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 01:56:15.41 ID:u3ZoZKAo<>何となく数多の方が(木原ファミリー的に)優秀な兄っぽいが、、、弟もよし!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 02:01:20.73 ID:UMC25NIo<>木原一族って優秀な女科学者の卵子に一族の精子ぶっかけて試験管の中で育成してそう<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 08:45:53.13 ID:HKok2m.o<>タイトルからしてほのぼの系かと思ったらガチシリアスじゃねーか、期待してるぞ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 12:03:45.46 ID:0f/Belk0<>何故かはわからない…
ここの一方通行の声を脳内で再生するとき何故かバギーの声で再生される<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 13:15:07.95 ID:d76h.YAO<>セロリ「ヨクモ、ミサワサンヲイジメタナ!」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/23(木) 23:29:45.49 ID:Lbj5HU2o<>>>258
バギーちゃん…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage <>2010/09/24(金) 19:23:07.80 ID:P33.Exo0<>こんばんは
バギーってそっち!?どらえもんかよwwww俺てっきりワンピの方かと思ったwwww
また少し投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:25:30.80 ID:P33.Exo0<>
―――
通路を歩く木原と、その後ろをついて歩く美琴。どこに向かってるのか美琴は気に掛かるが…
美琴「ねぇ。アンタに訊きたいんだけど……」テクテク
木原「あ? 何だよ?」テクテク
美琴「どうやって私の電撃を避けたのよ? ……どう考えてもやっぱ普通じゃないわ」
木原「ハッ、そんな事か…」
美琴「そんな事!? ふざけないで! 人間が雷の速度より速く動ける訳がない事ぐらい、子供でも分かんのよ!」
木原「そんなショックだったのか? テメェも案外プライド高けぇんだなぁ」
美琴「ッ……別に、今なら教えてくれたっていいじゃない……」
木原「まぁそれもそっか……いいぜ、教えてやる。つっても簡単なんだけどな」
美琴(簡単……!?)ピクッ
さりげなく自分の能力を見下されている気がした美琴は目を細めてムッとした。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:28:05.58 ID:P33.Exo0<>
そんな彼女の心境などお構いなしで木原は答える。
木原「確か三日ぐれぇ前か? お前と最初に遭遇してから、お前のありとあらゆる情報を部下に探らせた」
美琴「なん……ですって!?」
木原「俺の方も監獄でテレスからお前の能力や勝気な性格について聞けるだけ聞いた。まぁアイツも性格腐ってやがるから
面会の終わりにゃ高笑いで締めてたけどな。ククク」
美琴「………!!」
木原「ウチの部下共は皆優秀でねぇ。つっても、使えねえヤツを切り捨ててる内に使えるヤツだけが残っただけなんだが……
二日ほどでお前の能力は底まで調べがついた」
美琴「な……!」
木原「攻撃パターンは勿論、演算開始から放電までのロスや、能力の正確な範囲まで……。今じゃお前が持ってる下着の趣味
まで調べがついてんだぜ? ぎゃはは! そんなにカエルちゃんが好きー♪ ってかぁ!」
美琴「〜〜ッッ!!?」
木原「そういう訳で、テメェの攻撃を予測して放電の瞬間に身体を移動させるくらいは造作もなかったんだよ。どうだぁ?
これで満足したかぁ?」
美琴「…………勝手にっ! なぁぁにしてくれてんのよおおっ!!!」シュッ
プライバシーの侵害によって怒りを爆発させた美琴だが…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:30:50.54 ID:P33.Exo0<>
木原「――おっと!」ガシッ
美琴「くぅ……ッ!!」ギリッ
木原「おいおい……なんだそりゃあ。色気ねぇにも程ってモンがあるだろぉ。これはデマだと思ったが……マジだったんか」
美琴「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」
怒りが爆発し、血のジュースを吐かせんとばかりに木原のわき腹へ繰り出された美琴の蹴りはあっさりと足を掴まれる結果に
終わる。
返ってきたのはスカートの中から晒された短パンに対する木原の冷めたコメントである。
これにより、美琴の顔は今にも噴火しそうなほど歪むのだが、木原が涼しい表情を崩す事はなかった。
その後も移動を続けるが、美琴の頬はむくれたままだった。
テクテクテク
美琴「………」ムッスー
木原「まぁ心中は察するが、これも計画のためなんだ。悪く思わないでくれや」
美琴「……勝手にストーカーされて悪く思うなってのが無理よ…」
木原「その代わりと言っちゃあ何だが、これから更に珍しいモン見せてやるよ。この学園都市でここにしかない、“とっておき
の技術”ってヤツをな」
美琴「…………?」
木原「お、着いたぜ。ここだ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:33:23.94 ID:P33.Exo0<>
ドアの前で立ち止まる木原。美琴も恨めしい顔から緊張の顔に戻る。
木原「先に伝えておくが、ここから先はキャパシティダウンの効果範囲外だ」
美琴「え!?」
木原「さっき“一部の場所を除いて”っつったろぉ? 実はこの部屋がそうなんだよ。お前の能力が働かなきゃ話になんねえんだ
から当然の処置なんだがな」
美琴「いったい……何されるってのよ……?」
木原「ははっ、そぉビビんなよ。気楽にいけ」
美琴(気楽ぅ!? そんなの無理に決まってんでしょ!? もう怪しいなんてレベルじゃ……)
木原「しつけぇとは思うが、もう一回だけ忠告しとくぜ? 能力使えるようになったからって逃げようとか考えるな。今度は一発
で気持ちよくさせねえぞ?」
美琴「わ……分かってるわよ」
(チャンス! 能力が使えるんなら、何とかこの部屋で……)キラーン
木原「じゃ、行くぜ」
ギィィ……バタン
美琴「!………な、何これ……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:37:06.53 ID:P33.Exo0<>
木原「な、どうだよ? すげえと思わねえか?」
目の前に映ったオペレーター室のような空間。前方の巨大モニターに見た事もない複雑な機械。科学の中でも最先端と呼ばれる
学園都市内で、更にここはその最先端な場所だ。と木原は言う。
確かにこれだけの設備を揃えるのなら借金地獄に陥っても無理はないが、木原自身はネタぐらいにしか以外に思っていなさそう
な様子である。
底が知れない男だ。と美琴は身体を震わせた。
美琴「…………」
(一体ここで……何をしようっての……?)
木原「今日は見学に連れてきただけだ。実際お前の出番は今から三日後になる訳だが……」
美琴「ッ!?」
木原「あん? どうした?」
美琴「ちょっと待ってよ! み、三日って……嘘でしょ!?」
木原「嘘なワケねーだろ。これはもう決定事項なんだよ」
美琴「何が決定よ!! ふざけんな!!」
木原「ふざけてねえよ。こいつは大マジだ」
美琴「じ……冗談も大概にしなさいよアンタッ!! 私は帰らなきゃいけないのよ!!」
木原「んん? 学校行きたいってか? 残念だが諦めな。それに“そんなつまんねえトコ”より、コッチの方がまだ意味あると
思うぜ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:39:38.13 ID:P33.Exo0<>
木原の発言に美琴の頭は完全に沸騰したようだ。
美琴「はぁ!? 何それ!? 何でアンタにそんな事決めらんなきゃいけないの!?」
木原「どーせ学校じゃ浮いて退屈してんだろ? 超能力者の宿命ってヤツだ。よく分かるぜぇ」
美琴「アンタに何が分かるってのよ!? 私にだってちゃんと『居場所』ってモンがあるんだからっ!」
木原「あぁそう。まぁそんなのどうでもいいけどな。とにかくもう決まってんだ。我が儘ばっかたれてんじゃねえよ」
美琴「だから勝手に決めんなっての!!」
木原「…………」
美琴「私がどうするかは私が決める! アンタの敷いたレールの上なんかを歩くつもりはないわ!」
木原「…………」
美琴「私は絶対帰る……帰らなきゃいけないのよ! ここで協力するか帰るかなんて、選ぶまでもない!」
木原「今のお前に選択権なんてご大層なモンが用意してあるとでも思ってんのか?」
美琴「………もういいわ。アンタにこれ以上言ったってどうせ無駄よね」
木原「あぁ、無駄だな。……で、どうすんだ?」
美琴「決まってんでしょ!? アンタをぶっ飛ばしてでもここから逃げてやる!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:42:20.88 ID:P33.Exo0<>
木原「いや、だから無理だって。っつか人の話全然聞いてねえなこいつ……」ハァ
美琴「うっさい! ちゃんと聞いてるわよ!………確かここじゃ能力使えるんだったわね?」ニヤッ
木原「あぁ、だったらどうした?」
美琴(だったら、超電磁砲で部屋ごと―――)チャリン
木原「チッ……!」ヒュッ
ドスッ
美琴「―――ぐっ!!?」ドサッ
木原「……ったくよぉ、これじゃせっかく忠告してやった意味がまるでねえだろぉが。あんまし世話を焼かすんじゃねえっつの。
学習能力ゼロの小娘が」
美琴「……ううぅ…」
木原「まだ良く理解できてねえ様だから教えてやる。いいか? もう元の暮らしになんて帰れると思うな。テメェにゃ俺の計画の
終わりまで付き合ってもらう事決定なんだよ。一度“コッチ”側の世界に入った以上、光を浴びる生活になんざ戻れやしねぇ」
美琴「…………ッッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:44:06.11 ID:P33.Exo0<>
木原「あと勘違いしねぇ様に言っておくが、俺はテメェを優しく扱うつもりは毛頭ねぇ。テメェは『お客さま』なんかじゃなく、
ただの『実験動物(モルモット)』だ。ソイツを忘れんな。本来“科学者”と“能力者”ってのはそういう関係であるべき
なんだよ。テメェが役目を終えたその後の末路は……もう言わなくても分かんだろ?」
美琴「…………」ギリッ
木原「これが最終通告だ。今度くだらねえ真似しやがったら……二度と人前に見せれねえ身体になると思え。テメェはせいぜい俺が
機嫌を損ねないように身の振り方でも覚えてりゃ良いんだよ」
美琴「……ちく…しょう……ッ」
木原「でなきゃ、次は本当にこんなモンじゃあ済まさねえぜ!」ズドッ
美琴「が!!……は………ッ」ガクッ
地面にひれ伏した美琴の腹に強烈な蹴りを突き刺したのは、言葉とほぼ同時だった。
その一撃で再び呆気なく気絶した美琴に向かって唾でも吐きかけるかのように、木原はこう言った。
「恨むんなら、一方通行を恨むんだな」と。
美琴の監禁生活はこうして始まりを迎える。
―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:45:34.55 ID:P33.Exo0<>
―――
その日の夜
一方通行「…………遅せェ」
番外個体「何さっきからケータイ睨んでんの? 誰かからの連絡待ち?」
一方通行「あァ、気にすンな」カパ
(何で誰も折り返して来ねェンだ……? 土御門はともかく、結標からも海原からもサッパリ応答がねェのは……)
番外個体「ね〜、ところでミサカお腹空いたんだけど?」
一方通行(俺が病院でコイツといた三日の間に『グループ』内で何かあったのか? イヤ、だとしたら俺に何の音沙汰
もねェのはおかしいよなァ……)
番外個体「おーなーかーすーいーたーっ!」
一方通行「ッ! ……あァ?」
番外個体「あァ? じゃなくて! お腹空いたから何か食べたいっつってんのーっ! ってかあなたさっきからミサカを
放置しすぎじゃね? ミサカ別にそういうプレイは好きじゃないよ?」
一方通行「……もォ夜か」
番外個体「あなた大丈夫? その見た目で頭の中はお年寄りとかシャレになってないよ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:46:25.37 ID:P33.Exo0<>
一方通行「………仕方ねェな。何か食いに行くか?」
番外個体「え? あなたって料理……しないよねーやっぱ。うん、しないねこりゃ」
一方通行「オイ、勝手に質問を自分で解決してンじゃねェよ。……まァその通りだが」
番外個体「しょーがない。そんじゃあミサカが作ってあげよっかな♪」
一方通行「は?……オマエ作れンのか?」
番外個体「あ! バカにした目で見てる! 任せといてよ。これでも結構得意なんだから!」
一方通行「ホントかよ……」
番外個体「ムッ……よーしわかった。意地でも美味しいって言わせてやるんだからそこで大人しくしてて!」
一方通行「不安要素しかねェぞ」
番外個体「……えーっと、冷蔵庫は…」スタスタ
一方通行「聞いてねェし………」
番外個体「お、結構材料あるじゃん♪ スーパー行く必要ないね」ガラッ
一方通行「…………」
この先は言わなくても分かる結果だった。
ただ、この日の二人の夕食は結局出前で済ませる事になったとだけ言っておこう。
その後も同僚から連絡が来る事はなかったが、一方通行は自ら動く訳にもいかずにただ待つしかなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:50:08.70 ID:P33.Exo0<>
―――
それから更に三日後の朝……学園都市で報道された大事件
御 坂 美 琴 謎 の 失 踪
『常盤台中学在学、御坂美琴さん(14)の行方が三日前の正午すぎから完全に途絶えていることが分かり、警備員は―――』
『最後に目撃されたのは、寮の付近に位置する公園とされており―――』
『何らかの事件に巻き込まれたのではないかと見て、捜査を―――』
『同室で生活されている学生からは、未だ詳しい話が聞けていない現状で―――』
どのチャンネルでニュースをつけても同じ内容だった。新聞の一面にも大きく載っている。
“常盤台のエース”を襲った突然の報道に学園都市の学生達は衝撃を受けた。
ほとんどの学生達が彼女の無事を願っている。
当然だが、事件の影響によりマスコミが殺到しているせいでこの日の常盤台中学は休校となった。
―――
正午・第七学区
「おいおい、今朝のニュース見たか?」
「あぁ、見た見た。常盤台の『超電磁砲』が失踪したんだろ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:53:23.19 ID:P33.Exo0<>
「急に姿消すとか、変じゃね?」
「超能力者が行方不明って、どーなんだろうな?」
「山奥とかで死体になってたら笑えなくね?」
路上でたむろしながら口々に今朝の話題で盛り上がるスキルアウト達。
「けどよ、誰かが攫ったとか有り得るぜ。超電磁砲って相当生意気らしいし、恨み買ったりとかもしてんだろ」
「えっ? そうなのか?」
「あぁ、実は俺の友達が一回声掛けた事あるらしくて……」
??「ちょっと、そこのあなた方」
「!」
突然掛けられた女の声にスキルアウト達は顔を上げる。
そこにいたのは『風紀委員《ジャッジメント》』の腕章を腕につけた一人の少女だった。
「あぁ?……何だお前?」
「風紀委員が俺達に何か用かよ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:55:29.20 ID:P33.Exo0<>
スキルアウト達は「早くどっか行けよ」と目で伝えるが、少女は立ち去るどころか更に歩み寄ってくる。
??「あなた方にお尋ねしたいのですが、『御坂美琴』について何かお心当たりはございませんか?」
目の前で立ち止まった少女は丁寧すぎて逆に怖い口調でそう尋ねてきた。
「何? 聞き込み捜査?」
「風紀委員も大変だね〜」
??「知らないのでしたらもう結構ですの」
素っ気無く言って立ち去ろうと背を向ける少女の腕をいちばん近くの一人が掴んで止める。
「もう帰っちゃうの〜? もう少しゆっくりしてきなって♪」
「つーか“んなダルい仕事”放っといてさ、俺らと遊ばない?」
「何だよ。よく見たら結構可愛いじゃん♪」
「っつかその制服常盤台? ってこたぁ今日休みだから問題なしだな」
「どっか楽しいトコ行こうぜ〜」
止められて振り返った矢先に次々と返ってくる余計な返答。少女は呆れたのか俯いてしまった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 19:57:04.93 ID:P33.Exo0<>
「あれ? 怖くなっちゃった?」
「バーカ♪ お前の顔のせいだよ」
「「「ぎゃははははは♪」」」
??「…………」
「お? 大丈夫〜?」
顔を上げて再び座ったままの彼等を見下ろす少女。
表情は俯く前と変わっていないように見えるが、彼等は気づかなかった。
少女の目の色が恐ろしいほど黒く変化していたことに―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/24(金) 20:00:40.07 ID:P33.Exo0<>とりあえずここまで
続きはまた書き溜め終わったら来ます
完全シリアス突入してますが、後悔はしてません
それでは
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 20:21:02.78 ID:KaizPwAo<>乙、監禁とか胸が熱くなるな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 21:33:30.74 ID:brol6/Uo<>>>276
まったくな
妹達に監禁されたい
あとおつ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 21:49:06.87 ID:e17tnaUo<>乙
シリアス展開も好きだぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 23:44:14.33 ID:kmj3b6DO<>乙ー
もはやこのスレを見る事が日課になってきた<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/25(土) 08:31:29.70 ID:pN5EAVM0<>うおおお乙ぅぅう!!!
美琴が木原くんに監禁されるとはまた斬新だな!
今一番楽しみにしてるスレだ
ところで>>1の前作ってどっかで読める?
タイトル教えてくれれば助かるんだが<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 08:51:53.33 ID:N/VR0oAO<>先ずはsage を覚えてからだな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 12:32:29.00 ID:EHmBLR.o<>第四波動の人もそうだけど、よく書き溜めしないでシリアス書けるな。すげぇやマジで<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 12:55:58.99 ID:omOHxwAO<>下着なんてどこで目撃するんだよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 12:57:28.63 ID:wcELsVgo<>大方黒子のPCでもハッキングしたんだろう<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 14:21:30.40 ID:zbkz5nQo<>海原「へっくし!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 19:57:17.55 ID:1sXLRjQ0<>こんばんは。今日もゆっくり進ませていただきます
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 19:58:35.01 ID:1sXLRjQ0<>
―――
少女の目に闇が現れてから数分後。
そこに映っていたの狂ったように暴れまわる少女と、完全に戦意を喪失した若いスキルアウトの面々だった。
「ひぃぃ……っ!!」
「も、もうやめてくれぇ!」
「あ……あんた風紀委員だろ!? お、俺達が一体何し――」
「やかましいっっ!!!」ドゴッ
「――グハッッ!!」
地面にひざまずき許しを請うような目で見上げるスキルアウトのわき腹を容赦なく蹴り飛ばす少女。
その後も少女は完全に我を忘れた形相で恐怖に怯えたスキルアウト達を一人、また一人と徹底的に叩きのめしていく。
「ハァ…ハァ……ふぅぅ………思い知りましたか? この下衆ども…」
数分間、休むことなく一方的な暴行を働き続けた少女は肩で荒く息をしながらボロ雑巾となった男達を見下す。
その中の一人がボロボロの身体を起こして少女に抗議する。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:00:04.93 ID:1sXLRjQ0<>
「ぐ……テメェ……正気かよ…? 風紀委員が…一般人にこんな事して………ただで済むと?」
もはや立つ力も無い男に少女は氷のような冷たい視線で答えた。
「あなた達がどうなろうが、わたくしの知った事ではありません」
「ッ!」
風紀委員とは思えない言葉に背筋が凍る男。
だが、すぐに強がりともとれる姿勢で少女に向かって言う。
「ふ…ふざけんな! これは立派な傷害罪だ! テメェの特徴は覚えたからな……今すぐ支部へ駆け込んで、訴えてやる!!」
「ふん、好きにすればよろしいですわ」
「!?」
少女のまるで何も感じていないような声に言葉を失うスキルアウトの男。
何だこの女? 普通じゃない……!! と、歯をガタガタ言わせて恐怖した。
「……仰りたい事はそれだけですの? ではそろそろ眠って下さいな。とても目障りですので―――ッ!!」
「―――ぐふっ!!?」
言い終わると同時に少女は蹴りを入れて最後の一人を完全に沈黙させた。
「…………」
静まり返った溜まり場で倒れたままのスキルアウト達に少女は背を向ける。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:01:37.61 ID:1sXLRjQ0<>
「お姉様……」
聞きとれないほどの小さな声でたった一言呟いた少女は、ゆっくりとその場から姿を消した。
無残なまでにボロボロにされたスキルアウト達を、放置したまま。
―――
「……………」
鬱憤を晴らすように暴れ、路地から出てきた少女はとぼとぼと大通りを歩く。
その様子は、先ほどスキルアウト達の前で見せた表情とはうって変わって悲しみと疲労により憔悴した後のようだった。
足元も若干フラついているが、これは急激に高まった感情によって体力を一気に使った影響か。
「お姉様ぁ………どこにいらっしゃいますのぉ……?」
この言葉をここ三日で何度使ったか、もう少女は覚えていなかった。
そうしてしばらく歩き続けている内に、彼女の後ろから怒ったような口調の声が掛けられる。
「―――白井さん!」
「……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:03:31.13 ID:1sXLRjQ0<>
名前を呼ばれて振り向いた少女、白井黒子の目に映ったのはまず頭頂部に咲いた色鮮やかな無数の花。
これに該当する人物は一人しか知らない。
「初春……」
頭の花の華やかさから一転した表情の初春飾利は、振り向いた顔を戻して歩こうとする黒子の前に立ち塞がった。
まるで「行くな」とでも言うように。
黒子「……どいてくださいまし」
初春「どきません!」
黒子「………」
初春「どこに行くつもりですか?」
黒子「言わなくても分かるでしょう? お姉様を捜すんですのよ」
初春「……また、“あんなやり方”でですか?」
黒子「……!」
初春「……いくら何でもやり過ぎです! あれじゃ裁判になっても文句言えませんよ!?」
黒子「………見てましたの?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:05:29.18 ID:1sXLRjQ0<>
初春「当たり前です! 固法先輩からも『なるべく一緒にいてあげて』って言われてるんですから……」
黒子「あの方々なら自業自得ですわ。お姉様の悪口などを好き勝手に叩くから、鉄槌を下してあげたまでですの」
初春「それでもあれはやり過ぎですよっ! あの人達が無抵抗になった後も一方的に殴るなんて……」
黒子「…………」
初春「止めなきゃ。って思ったんですが………怖くて、足が動かせませんでした。あんなの白井さんじゃない………
白井さんらしくないですよ!」
黒子「………余計なお世話ですの。放っておいてくださいまし。風紀委員も警備員も、どういう訳か発令された上層部
からの『捜査禁止命令』を受けている以上、もうアテにはなりませんし期待もできません。表面だけは『捜査』を
続行している事にするなんて、馬鹿げているにも限度がありますわ……」
初春「……だからって単独で、それも腕章を付けて動くのはさすがにマズイです! もしこの事がバレたら……クビどころか、
下手したら逮捕だって有り得ますよ!?」
黒子「覚悟の上ですの。風紀委員として動けない以上、わたくしだけでも何とかしてみせます」
初春「そんな……」
黒子「それにわたくしは今日非番ですの。腕章は聞き込みをする上で都合が良いから付けているだけですわ。やり過ぎて
しまった事については反省していますの。次からはなるべく抑えるように努めますわね……。ところで、初春は今日
出勤でしょう? わたくしはもう大丈夫ですので、あなたは早くお行きなさいな。わたくしについていると、あなた
にまで火が飛ぶかもしれませんわよ?」
これ以上関わるな。と言いたげに初春を突き放そうとするが…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:06:55.45 ID:1sXLRjQ0<>
初春「そうはいきませんっ!」
黒子「!」
初春「今の白井さんを放っておくなんて、私には無理です! 先輩に言われなくても、私は白井さんを放ってなんて行けません!
私達、パートナーじゃないんですか!?」
黒子「……っ!」
初春「ひとりで危ない橋なんか渡らせませんからね?」
黒子「別にそんなつもりはありませんわ。お姉様を捜すのはあくまで勤務外ですから、心配など不要ですの」
初春「それだけじゃありません!」
黒子「?」
初春「白井さん……御坂さんが行方不明になってから、いったい何時間寝ましたか?」
黒子「!…………」
初春「心配なのは分かります。けど……私だって心配なんです! 佐天さんも心配で眠れないって………それに固法先輩だって」
黒子「……何が仰りたいんですの?」
初春「自分だけだなんて思わないで欲しいんです! 御坂さんが心配なのは皆一緒なんですよ!? なのに……自分だけ食事も
とらないで、アテもなく一人で捜し続けて……手掛かりすら掴めない苛立ちを一般人にまでぶつけて……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:08:14.17 ID:1sXLRjQ0<>
黒子「…………」
初春「白井さん……ここニ〜三日、まともに寝てないんでしょう?」
黒子「………ふ…」
初春「…………」
黒子「何を言い出すかと思えば、そんな当たり前の事を……。お姉様が見つかるまではのんびり休んでなどいられないに決まって
ますわ。初春も重々承知だとは思いますが、わたくしはお姉様のためならどんな事でもしてみせますのよ?」
初春「けど……白井さんがこのまま無理して倒れでもしたら……何にもならないじゃないですか!」
黒子「わたくしなら平気ですわ。この程度で音なんて……」
初春「嘘ですっ!!」
黒子「!?」
初春「自分の姿を鏡でよく見てください! 目に隈をつくって、肌はカサカサで、髪は傷んで、頬はすっかり痩せこけて……
痛々しくて……もう見てられません…っ……今の白井さんを御坂さんが見たら……きっと、怒りますよ……」グスッ
黒子「…………」
初春「私…っ……もう、そんな白井さんを……見たく……ない…」ポロッ
黒子「……初春…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:09:11.63 ID:1sXLRjQ0<>
初春「だから……もうっ……ッッ……やめて、くだ……さいっ………御坂さんを早く見つけたいのは……私だって同じ……
なんですからぁ………ッ」グスッ
黒子「…………」
初春「……もう………やめて……っっ」グスグス
黒子「ですが……わたくしは………ルームメイトでありながら、お姉様の異変に全く気づけなかったっ!!」
初春「白井さんが悪いんじゃありませんっ! 自分を責めないでください………」
黒子「でも……お姉様が、わたくしに何も言わずにもう三日も……携帯も全く繋がらず、送り続けたメールも全てエラー……
これをただ事とは思えません……っ。お姉様の身に何かあったのではないかと考えると……わたくしは……もう……」
初春「………白井さん…っ!」
黒子「わたくしは……わたくしは一体どうしたらいいんですのぉぉ……っ!!」ポロポロ
精神を繋ぎ止めるために装着していた心の仮面を外し、二人の少女はそのまま路上で抱き合い泣いた。
心から慕う先輩の身を案じる黒子と、憧れのお嬢様として友人として、ただただ無事を祈る初春。
精神的に相当参っていたのは二人とも同じだった。
その後、初春と共に風紀委員支部へ向かった黒子は備え付けられている宿直用のシャワーと仮眠室で、これまで殆ど不眠不休で
動き続け酷使した身体の疲れをひとまず癒す事にした。
「こんなひどい姿でお姉様に会う訳にはいかない」と自分に言い聞かせ、今は少しでも休む。
歯痒い思いを抑え、焦る気持ちを押し隠し、黒子は眠る。
愛するお姉様の無事を、ただ信じて。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:10:12.79 ID:1sXLRjQ0<>
―――
〜『グループ』が所有する隠れ家〜
オーイ オーキーロー
一方通行「……zzzzz」
チョットー モウアサダヨー
一方通行「……ンゥ……うるせェぞ。クソガキィ……むにゃ」
クソガキ? ナンノユメミテンノー?
一方通行「………ンン…」ノソノソ
番外個体「―――おーい! コラー! ア・ク・セ・ラ・レーターーー! 起きろーーー!!」
一方通行「!……ンあ……?」パチッ
番外個体「あ? 生きてた」
一方通行「おォ、オマエか…………っつか、今のはどォいう意味だァ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:12:00.63 ID:1sXLRjQ0<>
番外個体「いや〜、あなたって肌白いからさ。一歩間違うと死体にも見えるってか…」
一方通行「久しぶりの不愉快な目覚めを提供してくれてアリガトウよ。オマエも白くなりてェンならお礼に協力して
やってもイイぜ?」ギロッ
番外個体「おーっと、やっぱ寝起きのあなたってちょっと怖いね♪」
一方通行「……怖がってるよォには見えねェが?」
番外個体「気のせい気のせい☆」
一方通行「ったく…………!…」
番外個体「……どうしたの? 急に固まったりして…」
一方通行「…………………オイ、ちょっと待て」
番外個体「ん?」
一方通行「なンで当然みてェにオマエが俺の隣りに居ンだよォ!?」
番外個体「? だってあなたが『隣りで寝ていい』って言ったから…」
一方通行「そりゃ『隣りの部屋で』って意味だァ! っつーか一昨日までは普通にソッチで寝てただろォが!」
番外個体「え……そうだっけ?」
一方通行「あァ? 何だオマエ、まだ寝ぼけてンのか?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:13:28.63 ID:1sXLRjQ0<>
番外個体「うーん……あれ? なんでかなぁ……一昨日ミサカどこで寝てたっけ……?」
一方通行「ッ!?」
(しまった……! そォ言やコイツは記憶障害で脳が不安定なンだった……ややっこしいなクソ)
番外個体「……ん〜」
一方通行「オイ、もォイイからいつまでも気にしてンな。それより腹減ってンならメシ食いに行くぞ」
番外個体「お! いいね〜♪ ミサカ腹ぺこ〜。それじゃーまたミサカが作っt」
一方通行「ファミレスで良いよな? よし決定。ンじゃ早い内に行くとすっかァ」
番外個体「………」ビリッ
ウォオ!? アブネエナ! アサッパラカラナニシテクレテンダァ!
ウルセー!! コノデリカシーゼロノガリガリヤロウ!! サワヤカナアサトトモニシンジャエ!!
アァ!? イミワカンネェーンダヨォォォ!!
こうして、終始ドタバタしながらも二人は外へ。
―――<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 20:15:28.66 ID:uxJKZ3wo<>こっちの二人が平和なだけ、美琴の境遇が切ない<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:18:47.17 ID:1sXLRjQ0<>
(隠れ家に身を潜めてからもう三日……土御門も結標も海原も音信不通のまま。一体どォなってやがンだ?)
(明日は番外個体を検診に連れてく事になってっから、そン時に医者から何か聞けりゃあ良いが…)
(どォも妙な胸騒ぎがすンだよなァ……)
―――
〜ファミレス〜
番外個体「あなたってさ、寝てる時の顔と起きてる時の顔のギャップが激しいよね」
一方通行「あ? 急に何言い出すンだァ?」
ファミレスでモーニングセットを平らげて食後のコーヒーを啜る一方通行に唐突な事を言う番外個体。
番外個体「前々から思ってたんだけど、言ったらあなた怒るかなぁって………怒った?」
一方通行「……自分の寝顔がどォかなンて知る術もねェから分かンねェし、別に怒りゃしねェよ」
番外個体「お? 寛大だね〜。コーヒー飲んでる時なら機嫌良さそうだから言ってもいいかなって思ったらその通りでした〜♪」
一方通行(クソガキにも言われたなァ……っつか、人の寝顔を覗く趣味とか……超電磁砲のDNAはどォなってンだよ…)
番外個体「ねぇ、この後どうしよっか?」
一方通行「どォするって……」
番外個体「たまにはさ、どっか出かけない? ミサカはまだこの街の事あんま知らないし」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:20:34.51 ID:1sXLRjQ0<>
一方通行「……構わねェが、人の多いトコは行かねェぞ?」
番外個体「そうだね。ミサカも人混みはドッチかっていうと苦手かも」
一方通行「………あと十分ぐらいしたら出るかァ?」
番外個体「そうだね。………」ジーッ
一方通行「……何でそこで見つめてくンだよ?」
番外個体「い〜やぁ、ちょっと意外だっただけ〜」
一方通行「何が?」
番外個体「あなたって遊びに行くの嫌いそうじゃん。超インドア派です、みたいな?」
一方通行「俺だって暇な日ぐれェ外出るっつゥの」
番外個体「えー!? 日の光浴びててそれ!? ウッソだぁ〜!」
一方通行「………紫外線に強ェンだよ。多分生まれつきに…」
番外個体「はぁぁ!? 何その超羨ましすぎる体質!? ちょっとぉ! ミサカと身体交換してよ!」
一方通行「女に羨ましがられたってちっとも嬉しくねェぞ……」
番外個体「いいな〜。あなたって北欧とかソッチの方の人なの? 何かそんな気がする…」
一方通行「あ、あァ。まァあンまし覚えてねェけどなァ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:21:46.24 ID:1sXLRjQ0<>
(そォ言やそンな設定にしたンだったな……チッ、自分で言っといて何だが、イイ加減まどろっこしくなってきやがったぜ。
どォも俺に演技は向いてねェらしい……)
番外個体「さて、じゃあそろそろ行きましょっか!」
一方通行「どこに行きてェンだ?」
番外個体「今日天気良いから景色の綺麗な海沿いの公園とかが良いなぁ〜」
一方通行「ンじゃそこにすっか。こっからなら遠くねェし」
番外個体「あなたはどこか行きたいトコはないの?」
一方通行「ン……特にねェ」
番外個体「寂しいヤツ……」ジトー
一方通行「うるせェ! オマエが行きてェ場所で良いっつってンだ! 行くンならさっさと行くぞ!」カツ カツ
番外個体「あぁ!? ちょっ、待ってってば〜!」
これは、まさかデート? 慌てて追いかける番外個体はふとそんな事を思ったが、杖を鳴らして先を歩く一方通行の方はどう思って
いるのか。
(ま、たまには外の空気を吸わせンのも悪くねェだろォ)
こうしてほのぼのと過ごしていられる時間もあと僅か。
それを未だ知らない一方通行と番外個体は、明るい太陽の光を浴びながら移動を続けた。
彼等の平和を脅かす足音は、もうすぐそこまで迫ってきていた―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/26(日) 20:27:26.25 ID:1sXLRjQ0<>とりあえずここまでです
展開はあまり変わってませんが、もうすぐで動き出す予定です
次回はまた未定ですが、なるべく早めに来ますね
辛抱していただけたら幸いです
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 20:33:15.60 ID:R0XRbA2o<>辛抱たまらんですたい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 20:35:46.88 ID:ZeCBBY.o<>ワーストが可愛すぎていろいろやばい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 23:35:04.64 ID:6bYJtA6o<>辛抱しますので必ず来てください<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/27(月) 09:40:53.11 ID:XLiHsa20<>ただでさえ規則の厳しい寮生活で三日間連絡なしじゃそりゃ黒子も荒れるわな
そして暴走モードの黒子を必死に止めようとする初春…
キャラ崩壊注意してた割にはよくキャラを掴んでるじゃないか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/28(火) 14:33:56.88 ID:kKurfWY0<>番外通行は革命やで<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/28(火) 14:57:51.81 ID:UBWaYes0<>ワーストたん可愛い<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:06:46.65 ID:05Wgzhk0<>こんばんは
今日は番外通行要素多め(?)です
雰囲気がやたら甘いですが勘弁で
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:08:25.33 ID:05Wgzhk0<>
―――
〜海浜公園〜
番外個体「うわぁ〜……海キレイだねぇ」
一方通行「あァ」
(考えてみりゃあのガキともここには来たことなかったな……)
番外個体「な〜に感慨に耽っちゃってんのかにゃ〜ん? 似合わないよ?」ニヤニヤ
一方通行「う、うるせェよ」
番外個体「あ! あっちから砂浜行けるみたいだね。行こ行こ♪」グイッ
一方通行「わかったから引っ張ンな」
〜砂浜〜
ザブーン…
番外個体「ひゃっ、冷たっ! あ〜あ、夏だったら良かったのにぃ…」
一方通行「もォすぐ冬だぞ?」
番外個体「もっと早くここ来たかったな〜。ロシアの海なんて凍ってるから……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:10:16.77 ID:05Wgzhk0<>
一方通行「見たことあンのか?」
番外個体「うんにゃ。イメージ的に」
一方通行「………」(だよなァ…)
番外個体「さっきから渋く決めてどしたの? あ、さてはミサカの水着姿でも想像してたとか?」
一方通行「は? 何言ってンだァ?」
番外個体「照れんなって♪」
一方通行「照れてねェし」
番外個体「きゃわいい〜♪」
一方通行「……沈めンぞ」
番外個体「あははは♪ 怒った〜」ザザザザ
一方通行「あ! オイ走ンな! ックソ! 砂浜じゃ杖が上手く……」
番外個体「あっひゃっひゃ! 動物の赤ちゃんみたい! ウケル〜♪」
一方通行「ちっくしょ。歩きにきィ…」ザッ ザッ
番外個体「ミサカがおぶってやろっか〜?」
一方通行「馬鹿にしてンじゃねェぞ!」ザッ ザッ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:12:52.36 ID:05Wgzhk0<>
番外個体「えい♪」グイッ
一方通行「うォ! 馬鹿オマ――ッ!?」フラッ
番外個体「え?―――キャッ!?」
ドサッ
一方通行「…………」(←番外個体に馬乗り)
番外個体「…………」(←真下)
一方通行「あ……」
番外個体「………///」
一方通行「わ、わざとじゃ……!」
番外個体「変態……///」
一方通行「っつか、オマエが急に引っ張るからだろォが!」
番外個体「あはは、ゴメンゴメン……」
一方通行(あァ…? てっきりまた電気が来ると思ったら、何だこの反応……?)
番外個体「……ねぇ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:14:15.28 ID:05Wgzhk0<>
一方通行「な……何だよ?」
番外個体「そろそろ、どいてくれたりすると……その……」モジモジ
一方通行「!? わ、悪い!」ムクッ
番外個体「………」
一方通行「ほら……」(←手を差し伸べる)
番外個体「うん……」ギュッ
スクッ
番外個体「…………」
一方通行(何黙り込ンでンだァ……? 普段うるせェコイツがダンマリとか違和感しかねェ……っつかこの雰囲気がまずおかしくねェか?)
番外個体「………なんかさぁ」
一方通行「ン?」
番外個体「さっきあなたの手を掴んだ時……なんか、懐かしいってか……よく思い出せないけど、そんな気分になったんだよね」
一方通行「……そォ…か」
番外個体「やっぱり、あなたとミサカって……どこかで逢ってる気がする」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:16:17.75 ID:05Wgzhk0<>
一方通行「!?」
番外個体「やっぱり、ミサカの勘違いなのかな……」
一方通行「…………」
(少しずつだが……コイツは安定してきている。まだボケた所はあるが、確実に元の番外個体に戻りつつある)
(ネットワークへの接続が再び繋がるのも……もう時間の問題かもしれねェ…)
(そしたらまた……負の感情を拾い集めて、コイツは俺を――)
番外個体「ご、ごめん。 変なこと言っちゃったね。忘れていいよ」
一方通行「……あァ、気にすンな」
番外個体「っくしゅん! ……海沿いって、やっぱ冷えるね〜。公園の方に戻ろ?」
一方通行「そォだな」
(死ぬのは……別に怖くねェ)
(前は自分の命が一番だったが、今はそれ以上に大事なものがある)
(怖いのは……コイツが、今目の前で俺に微笑ンでるコイツが俺の命を奪うために生産された事)
(なンだかンだ言って、コイツと再会して一緒に過ごすハメになっちまってからもう一週間……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:18:06.39 ID:05Wgzhk0<>
(負の感情がねェコイツの……言わば『表』を見てきた……)
(無理だ……)
(コイツを傷つけるのは……今の俺じゃ絶対にできねェ)
(けど、俺は死ねない……クソガキもコイツも妹達も、全員イカレた呪縛から解き放たれて自由に生きられる。その時まで、
俺はアイツらを守り続けると決めた)
(……考えたくもねェが、コイツが俺にまた牙を剥いた時……その時が来ちまったら俺は―――)
(―――どォすれば…良い……?)
ザッ ザッ ザッ
番外個体「あ! ネコみーっけ♪」
ネコ「ニャ〜」サササッ
番外個体「あ……」
一方通行「どォした?」
番外個体「逃げられちゃった……」
一方通行「ネコか……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:20:10.03 ID:05Wgzhk0<>
番外個体「好きなのになぁ〜。こういう時ってこの能力恨めしいよね。あはは……」
一方通行「………」
番外個体「………」ショボーン
一方通行「………」カチッ
ポン…ッ
番外個体「ん?……何?」
一方通行「ネコに触りてェンだろ? まだあそこにいるじゃねェか」
番外個体「いや……だから逃げられるって。ミサカの身体は常に電磁波が発生してるから動物には…」
一方通行「ンな事ァ知ってンだよ。イイから行くぞ」
番外個体「……ちょっ」
カツ カツ
ネコ「ニャ〜♪」ゴロゴロ
番外個体「!……うそ……逃げない…」
一方通行「………」
番外個体「なんで……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:21:40.58 ID:05Wgzhk0<>
一方通行「さァな、鈍感なネコなンじゃねェのか?」
番外個体「あはっ♪」ナデナデ
ネコ「ニャ〜」
番外個体「か〜わいい〜♪ ネコに触れる日が来るなんて思わなかったよぉ」
一方通行「……ソイツは良かったなァ」
番外個体「うん♪ ……ねぇ、いつまでミサカの肩に手ぇ置いてるの?」
一方通行「歩き疲れちまったからなァ。このまましばらく貸せ」
番外個体「はは、貧弱ぅ〜」ニタァ
一方通行「っせェよ」
(触れてねェと生体電気のベクトルが操れねェだろォが)
番外個体「まぁいいか。考えたらあなた杖つきだもんね」
一方通行「そンなのひと目見りゃ分かンだろォ」
番外個体「ありがと……」ボソッ
一方通行「あン?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:23:26.98 ID:05Wgzhk0<>
番外個体「なんでもなーい」
一方通行「…………」
番外個体「おー、よしよし」ナデナデ
ネコ「ニャー♪」ゴロゴロ
一方通行「………」
(考えたら、今のコイツと俺って……脳に障害負ってるって意味じゃ同じなンだよなァ…)
(……イヤ、同じじゃねェな。コイツら妹達がいなきゃ俺はこンな風に考える事も立って歩く事もできねェンだし…)
(コイツを重病人みてェに最初は見ちまったが、俺に比べりゃまだ救いようがあるンじゃねェのか)
(ンな事に今気づいたからどォって訳でもねェけどよ……)
(っつーか変だよなァ。さっきからどォしてこンな事ばっか考えてンだ俺は…?)
(ガラでもねェ……)
番外個体「ばいばーい。元気でね〜」ヒラヒラ
一方通行「………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:25:24.35 ID:05Wgzhk0<>
番外個体「さて……もうネコ行っちゃったし、そろそろ行こ?」クルッ
一方通行「ン? ……あァ」
番外個体「〜〜♪」
一方通行「ずいぶン機嫌良いなァ」
番外個体「そりゃあね。夢の一つが叶ったんだもん」
一方通行「あァーそォかい。良かったじゃねェか」
番外個体「うん♪ 来て良かったな〜。……また来ようね」
一方通行「機会があったらなァ」
番外個体「ううん、絶対行くの! ………あ」ピタッ
クレープ屋の前で番外個体が足を止めた。
一方通行「……オイ」
番外個体「………」ジーッ
一方通行「……食いてェのか?」
番外個体「」コクリ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:26:41.49 ID:05Wgzhk0<>
一方通行「ったく、仕方ねェな」
アリガトウゴザイマシター
番外個体「♪」パクッ
一方通行「………」
番外個体「おいしー!」
一方通行(つくづく甘いよなァ俺ってヤツァ。一体いつからこォなったンだか……)
番外個体「あなたは食べないの?」
一方通行「俺はイイ。甘いのは好きじゃねェンだ」
番外個体「ひとくちだけ食べてみなよ。絶対おいしいから」
一方通行「イヤ、だから要らねェって」
番外個体「はい、あーん」
一方通行「オイ、人の話聞いてンのかァ?」
番外個体「あーん」ジリッ
一方通行「ってかオマエ…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:27:44.30 ID:05Wgzhk0<>
番外個体「あーん」ジリジリッ
一方通行「…………」パクッ
番外個体「ふふっ♪」
一方通行「………」ムシャ ムシャ
番外個体「どう? おいしい?」
一方通行「…甘ェ」
番外個体「やっぱりヤだった……?」シュン
一方通行「けどまァ、たまには甘いモノも悪くねェ」
番外個体「ホント?」パァァ
一方通行「おォ、あンがとな」(あからさまっつーか、分かりやす過ぎンだろコイツ…)
番外個体「半分あげる♪」ニンマリ
一方通行「ひとくちだけっつっただろォが!」
番外個体「いいから食えよー」ズイッ
一方通行「だァ! バ――!?」ベチャ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:29:30.28 ID:05Wgzhk0<>
番外個体「あ……」
一方通行「……こ、この野郎ォ」(←口の周りクリームだらけ)
番外個体「……ぷっ! あっひゃっひゃっひゃ!! なにそのツラ面白れぇ〜!! ばっかみてぇ〜!!」パン パン パン
一方通行「………あー、こりゃちっとばかしお仕置きが必要だなァァ」スクッ
番外個体「おっと、ここは戦略的撤退っ♪」ピュー
マチヤガレコノクソアマァァァァ!!
アハハハ マテッテイワレテマツバカハイナイデショバーカ
二人の時間はこうしてマッタリと過ぎていく。
その後も他愛無いコミュニケーションはしばらく続き、一方通行も護衛という義務感を段々と忘れつつあった。
それほどに楽しく、平和なひとときだったから。
「そろそろ帰ろっか」
「そォだな」
〜帰り道の途中〜
「えいっ」ギュッ
「!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:31:14.19 ID:05Wgzhk0<>
どういう心境なのか、番外個体が杖をついていない方の腕にいきなり自らの腕を絡めてきた。
「〜〜〜♪」
「………」
咄嗟に抵抗しようとも思ったが、番外個体のどこか幸せそうな表情に免じて諦める事にした。
(ったくよォ……歩きにくいっつの)
文句を心中で漏らす。が、
(チッ、今回だけだかンなァ)
まんざらでもなさそうな顔をしている事に当の本人は気づかず、二人はそのまま家路に着いた。
―――
○○学区内、研究施設(『地獄の猟犬』アジト)
「……ハァー…」
施設内の地下。牢屋の一歩手前とも言える部屋の中心で大きな溜息を吐くのは御坂美琴。
彼女がこの独房で監禁生活を強いられてから早くも三日が過ぎた。
窓もなく、電球一個分の明るさしかない室内は美琴の鬱な気分を更に促進させている。
「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:33:00.12 ID:05Wgzhk0<>
言葉もなくただ俯き、膝を抱えて時を過ごす。動こうにも左右から伸びた鎖が両手に繋がれているため不可。
用足しや食事、シャワーの時は木原の部下である女性研究員が付き添い、鎖も外されるが不自由に変わりはない。
最初は勿論脱走を目論んでいた。
しかし、能力が使えない以上できる事などたかが知れている。そして木原によって徹底された監視体制の中では、
隙など簡単に見つかるはずもなかった。
独房内や通路に仕掛けられた監視カメラや盗聴器。
外へ通じる全ての扉はカード式のロックシステム。
この上、交代制で見張りの警備員も各持ち場に配置されていては、能力を封じられてただの女子中学生と化した
美琴の希望など、打ち破るのにそう時間は掛からない。
もはや逃げられる可能性は絶望的皆無だった。
こうなっては大人しく助けを待つしかない。自分が帰らない事によって動いてくれる人間はきっといるはずだ。
自力で脱出できる希望は捨てつつあるが、助かる希望までは捨てていない。いや、捨てきれない。
(……みんな、今頃どうしてるんだろ……)
(黒子、無茶してないかな……)
(初春さんや佐天さんも……)
(心配かけて……ごめんね)
(それに―――)
そこで頭に浮かぶのは、彼だ。
ツンツン頭の黒髪に「不幸」が口癖の少年。
自分の築き上げた『自分だけの現実《パーソナルリアリティ》』を崩壊させるほどに大きくなってしまった存在―――。
(アイツは……どうしてるかな…)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:34:41.81 ID:05Wgzhk0<>
(逢いたいなぁ)
(逢いたい……)
今では美琴の希望を繋ぎ止めてくれている大切な存在でもある。
もしかしたら、彼がまたあの時のように助けに来てくれるんじゃないか……。
そんな淡い夢も抱いてしまうほど、美琴の精神は追い詰められていた。
いくら努力して超能力者の第三位に上り詰めたとて、実際の中身は普通の女の子だ。
こんな生活にいつまでも耐えられるものでもない。
これが更に一週間、一ヶ月と続いてしまえばどうなるのか……。
美琴はそれ以上考えるのを放棄していた。正確には「考えたくない」と言った方が正しいか。
「もう、いや………。いつまでこんなトコにいなきゃいけないの……」
「帰りたい……早く帰りたいよ……」
果たして彼女はあと何日持つのか? これではやがて精神そのものが崩壊してしまうのも時間の問題である。
と、その時……
「―――よう、気分は……良いワケねえか」
「…………」
皮肉そうな笑みを浮かべて登場した木原数多。自分を拉致監禁した張本人が目の前に立っているにも関わらず、
美琴は顔を上げて睨む事しかできない。無力な自分に舌を噛み切りたくなる思いだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:36:07.49 ID:05Wgzhk0<>
「お? だいぶお嬢様らしくなってきたじゃねえか。そんくらい大人しい方が良いセンいってるぜぇ。目つきだけは
相変わらず気にくわねえがなぁ。ククク…」
うすら笑いと共に掛けられる声が屈辱と恐怖心を刺激する。
「ここに来てから三日経ったワケだが、どうだ? 少しは協力的になったかぁ?」
遠まわしに「もう諦めがついたろ?」と投げ掛けてくるが、
「…………」
何も答えない。答えたくない。それだけが唯一の抵抗とでも言うように、美琴は無言を貫いた。
「ケッ、つまんねえの……。まあいい」
木原の方も会話にならないと察したのか……早々に切り上げて独房に入り、美琴を拘束している鎖を手早く外す。
「いよいよお前が役に立つ時が来たぜ。さぁ、ついてきな」
「…………」
逆らおうとも逃げようともせず黙って立ち上がり、木原の後について歩きだす美琴。
無表情で生気を感じさせない様子だが、木原は気にせず前を歩く。
「三日前に言ったことは覚えてるか?」
「………えぇ」
唐突に尋ねられて迷うが、ずっと無言という訳にもいかないと悟った末に美琴は声を返した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:37:43.98 ID:05Wgzhk0<>
「なら、もう一から教えてやる必要はねえな」
フッ、と鼻で笑いながら漏らす木原。
忘れるどころか、美琴の頭には今日する事への不安がずっとこびりついていて離れなかった。
木原の目的や計画の詳細は依然知らされていないのだから当然である。これから自分は一体何をされるのか……。
どうしても悪い方向へ想像してしまう。何も分からない事が余計に不安を誘っている。
(私、どうなっちゃうの……何されるの?)
(怖い。怖いよ……)
通路を進むにつれて恐怖が増してくる。
目の前を歩く男がまともでないのが分かっている以上、何をされてもおかしくない。
何かの実験体になるのか、はたまた三日前に聞いた“とっておきの技術”とやらの生贄になるのか。
いずれにせよ、楽に終わるとは思えなかった。
緊張のあまりの身体が僅かに震えだす。
(誰か、助けて……助けてよ)
間もなく三日前訪れたっきりの部屋へ繋がる扉が見えてくる。
まるで処刑台に向かうような気分だ。
そして、遂に扉の前に到着する。木原は美琴のそんな心境から目を逸らし、ためらいを見せずに扉を開けた。
「………」
そこに映ったのは三日前に見た光景とほぼ同じ。
建物全域に鳴らされているキャパシティダウンもここだけは例外である。つまり、ここなら美琴本来の力が存分に
発揮できるのだが…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:38:30.95 ID:05Wgzhk0<>
「…………」
結果は三日前に証明されてしまった。
今、木原は美琴に背を向けて何やらよく分からない機械をいじっているが、彼の背中には隙がまるで感じられない。
背中に監視されている気分である。コインを取ろうとポケットに手を突っ込もうにも手が動かない。
仮に実行に移したとしても、それより早く木原の拳が届く。
何故かは分からないが木原の体術はまるで“軍用”としか思えないほどの動きだった。
不良の放つ拳とはケタ違いな命中率とスピードを持つこの男が、やすやすと隙など見せるはずがない。
これは『余裕』というやつなのだろう。
隙があるようで実は全く隙がない。木原数多とはそういう男なのだ……。と、美琴はこの三日間で完全に理解した。
「―――さて…」
「!」
機械から手を放して唐突に振り向いた木原にビクリとする美琴。
いよいよだ……。いよいよ始まる。
「………」ゴクリ
美琴の顔に緊張が走った―――。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/28(火) 19:41:25.15 ID:05Wgzhk0<>今回は以上です
続きはまた後日…三日以内には必ず来れるようにします
それでは<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/28(火) 19:42:46.60 ID:vTbeK2AO<>乙
番外個体は一方通行の能力を思い出してるのか?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/28(火) 20:02:14.83 ID:IoVXH5oo<>おっつー
続きが気になるじぇ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/28(火) 20:15:22.19 ID:778oVZgo<>乙です<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/28(火) 22:04:22.97 ID:ldFtRSo0<>乙だァ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/28(火) 23:53:46.22 ID:QRcBYWw0<>乙
番外通行よ流行れもっと流行れ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/29(水) 11:36:54.88 ID:pj5OLkIo<>乙!やっぱ番外通行はいいね、胸と股間が熱くなるな
美琴パートもいい感じにシリアスだがなにより木原クンの出番があるのが嬉しい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/29(水) 17:25:03.33 ID:/.k2PWQ0<>乙乙
今回の木原クンは前作のていとくん的立場かな?だったら嬉しいんだが…
にしてもシリアスとほのぼのを同時進行なんてすげーな!
面白すぎて続きが気になるぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/09/29(水) 20:28:10.28 ID:dr/UgqQ0<>前作kwsk<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/29(水) 22:47:05.69 ID:/.k2PWQ0<>>>337
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」シリーズ
自分用まとめで全部見れるぞ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/30(木) 01:02:59.85 ID:6K/YRxoo<>>>338
d<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:33:18.82 ID:jQ78ni.0<>>>330
思い出してはいないはずですが、一方通行が何かしてくれたんだなということだけは分かったようです。
それとも何となく覚えていたのかも……ご想像任せです
>>335
完全悪役ですがww
>>336
覚えててくれて嬉しいっす
ただ、二番煎じになっちゃうっぽいから何とも…
それでは投下します。
今回一方は美琴と木原くンの絡みメインです<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:35:09.24 ID:jQ78ni.0<>↑すんません、ミスリました。『一方』っての抜かしてください
「―――さて、じゃあ早速この装置から説明してやるか」
「……!」
そう言いながら木原が指をさしたのは目の前の巨大モニターである。
モニター正面には回路線が複雑に入り組んでおり、幾つかの正体不明な装置と接続されている。
軍の管制室などにありそうなイメージだ。
木原はいつの間にかモニターのリモコンらしきものを手に持っていた。
木原「まず、こいつは最新の対人探索装置だと思えばいい。今は範囲を学園都市全域に設定しているが、設定変更すりゃ世界
じゅう全域の探索も可能になる優れモンだ。つけてみるとこんな感じだな」ピッ
美琴「っ…!」
木原「どうだ? 学区ごとにキチンと区分けもされてんだろ? 要するに世界のどこまで逃げてもこの装置は“対象”の位置を
常にリアルタイムで把握し、正確な位置を示す信号をこのモニターに表すってワケだ」
美琴「……そんなものを、いったい何に?」
木原「まあ焦んなよ。説明は最後まで聞いとけや」
美琴「………」ゴク…
木原「んで、こいつだが……このままじゃただの『デジタル世界地図』だ。対人探索として使うには条件みてぇなモンがある」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:37:17.33 ID:jQ78ni.0<>
美琴「条件って……?」
木原「本人、またはソイツのDNAをそこのタンクに数滴分注入しなきゃならねぇ」
美琴「――!?」
木原「だがソイツは三日前にお前を眠らせた時回収した」
美琴「………」ギュッ
木原「だがなぁ、それだけじゃまだこいつは実用できねえんだよ」
美琴「えっ……?」
木原「対象の信号を受信するのに電力が足りねえんだ。なんたって電力消費の激しいモンばっかここにはあるからよ。こいつは
そん中で最も電力を使う。今無理に使用しても三秒で停電よ」
美琴「……」
木原「家電で言うなら“電子レンジ”と“ドライヤー”を合わせてるようなモンだ。……そこで、お前が活躍ってなぁ! 期待
してるぜ? 『電撃使い《エレクトロマスター》』」
美琴「!」
木原「ホントはよ。当初はテメェじゃなくて『妹達』を引き入れる予定だったんだ。規定値を超えるまで生き残ってるヤツらを
片っ端から集めるっていう気の長げぇ話よ」
美琴「あの子達を……!?」
木原「けどよ、“お前一人”いれば規定値なんて軽くオーバーで釣りまで来る。だがお前は『表』の人間。簡単に上から許可は
降りそうにねぇ。さて、どうする?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:39:36.24 ID:jQ78ni.0<>
美琴「知らないわよ…」
木原「んな難しい事じゃねえよ。上のお偉いさん連中を賄賂で釣った、ただそんだけだ」
美琴「!!」
木原「お嬢さんにはちっと生々しかったか? けどまぁ大人の世界なんてこんなモンよ。いち早く社会の勉強ができて良かったなぁ」
美琴「ッ……」
木原「グダグダうるせぇ上層部対策もできたところで、コッチもやっとお前に手が出せたってワケだ。ククク…」
美琴「……何でよ」
木原「あん?」
美琴「アンタは一体何のためにそこまでしてんのかって訊いてんのよ!」
木原「……知りてぇか?」
美琴「当たり前でしょうが! 私のDNAを使って、一体どうしようってのよ!? 妹の誰かでも捜すっての!? サッパリ話が見えて
こないんだけど!?」
木原「…………」
美琴「いい加減に教えなさいよ! でないと、とても協力的になんて……」
木原「話したら多分もっと協力したくなくなるぜ。それでもいいってか?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:42:49.90 ID:jQ78ni.0<>
美琴「え…?」
木原「テメェの大嫌いな学園都市の闇が絡んでんだぜ?」
美琴「………いいわ、聞かせてみなさいよ」
木原「…………ふ」
木原「ま、言ったところで何かが変わるワケでもねえな……いいぜ、教えてやるよ」
美琴「………」
木原「お前は知らねえと思うが、『絶対能力進化実験』の後にこんな計画ができたんだ」
美琴「“あの実験”の後……?」
木原「『第三次製造計画』」
美琴「サード……シーズン…? 何それ……」
木原「名前の通り、クローン個体製造企画の三代目…ってことになんのかねぇ」
美琴「……何のため…?」
木原「簡単に説明すっと、学園都市統括理事会がアレイスターの計画(プラン)から離れていく一方通行と最終信号に打った対策案
ってトコか」
美琴「アクセラレータ……? ラストオーダー……??」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:44:11.76 ID:jQ78ni.0<>
木原「あぁ? 何だよ、最終信号も知らなかったのか? チッ、面倒臭ぇ…」
美琴「訳が分からないんだけど……ちょっと待って。一方通行とそのラストオーダーっていうのは……」
木原「最終信号は第三次製造計画前に作り出された最後の妹達だ。調整不十分で放り出されたために、姿形はチンマリしてるがなぁ。
その最終信号は偶然か必然かは知らねえが、一方通行と出会った。思えば、この時すでに統括理事会の誤算は始まっていたの
かもな」
美琴「最終……信号……最後の妹……それが何で一方通行と……?」
木原「お前からすりゃ理解できねえだろうなぁ。“最強”から“無敵”の称号を得る、ただそれだけのために一万体以上の妹達をブチ
殺したあの一方通行がだぜ? たかだかガキ一人の命と引き換えに“最強の力”すら制限されるハメになっちまったとはよぉ……
ククッ、笑い話にもならねえったらありゃしねぇぜ」
美琴「ッ!? ちょっと……それ、どういう事? ……一方通行が妹を救ったって……」
木原「お前は確か“あの実験”で一方通行を憎んでたんだよなぁ? だったら信じられなくても無理はねぇ。俺だって最初聞いた時は
嘘だと思ったぐれぇだからな」
美琴「……そんな……まさか…」
木原「だがこれは紛れもない事実だ。どういう風が吹きまわされたんだが分からねえが、一方通行と最終信号はその後もしばしば行動
を共にしていた。まぁいわゆる『子守り』ってヤツか」
美琴「一方通行…が…?」
木原「それが続いてる内に一方通行にとって全ての妹達は『守るべき存在』となったらしい。そのためならどんな敵にも立ち向かうし、
命だって惜しみなく張るだろうな」
美琴「……!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:45:31.14 ID:jQ78ni.0<>
木原「そんな一方通行の決意を打ち砕くために発案されたのが『第三次製造計画』だ。要は、思い通りに動かねえ一方通行の希望を
粉々にしてやろうっていう、言っちまえば八つ当たりみてぇな計画だな」
美琴「な……」
木原「目的はそれだけじゃねぇ。……その前に訊くが、お前は『ドラゴン』について何か知ってるか?」
美琴「ドラゴン……???」
木原「やっぱ知らねえよな。実はその正体について俺もよく分かってねえんだが、妹達にとって共有手段でもある“ミサカネットワーク”
がどうも出現の鍵みてぇなんだ。なんでもアレイスターが言うには、『AIM拡散力場の結晶』らしい」
美琴「???」
木原「……ちゃんと理解できてんのか?」
美琴「だって、急にそんな意味不明な存在を理解しろだなんて…」
木原「……まぁ、それはいい。とにかくソイツがここ最近姿を現したんだよ。で、ヤツの出現は全世界に散らばる妹達及び最終信号に
多大な影響を与えた」
美琴「え!?」
木原「その影響で使えなくなった妹達の『代わり』を製造するのも第三次製造計画の一環だ」
美琴「代わりって……」
木原「その先行、つまり“切り込み隊長”として製造されたのが、番外個体《ミサカワースト》。姿はそうだな……お前の約二年後って
ところかぁ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:46:32.60 ID:jQ78ni.0<>
美琴「ミサカワースト……?」
木原「ロシアの研究機関と学園都市の開発部門が協定を結んだ時に輸入された特殊な『学習装置《テスタメント》』を用いて作られた、
言わば最新作よ。これまでの欠陥電気とは格が違う。能力もレベルで言うなら大能力者クラスってトコだな」
美琴「……!!」
木原「さっそく計画実行(スタートプラン)によって差し向けられた番外個体だが、結果は散々だった。それどころか番外個体は標的と
一時的な同盟まで結んじまう始末……これには上層部もカンカンだ」
美琴「………」
木原「そこで番外個体はロシアの研究施設に再調整され、計画は再スタートを迎えたように見えだが―――」
木原「―――その時点じゃウチらにとって番外個体はもうただのお邪魔虫でしかなかった」
美琴「!?」
木原「どうもロシアの連中は勘違いしてたらしくてなぁ……。『代わりの刺客なんざいくらでも作れるんだから、わざわざ失敗作を返品
してくんな』って言っておかなかったコッチの落ち度もあるが」
木原「だから鬱陶しい存在になる前に消しておこうと思ったワケよ。また“同盟”でも組まれたら面倒臭ぇことこの上ねえからなぁ」ニヤリ
美琴「ロシアから……って事はまさかあの二十三学区の『墜落事故』って!?」
木原「あぁ、実行させたヤツは“不手際”が目立つから殺しちまったが、その後更に面白れぇこと思いついてよぉ…」ニヤァ
美琴「……ッ…」ブルッ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:47:47.67 ID:jQ78ni.0<>
木原「もし、同盟で一方通行と番外個体の間に絆が生まれていたとしたら……?」
木原「『守るべき存在』として認めていたら、これを利用しない手はねえと思わねえか?」
美琴「どういう……事よ?」
木原「簡単だ。一方通行をより一層苦しめて殺すために、番外個体を奪う。俺の予測じゃあ十中八九、ヤツは一方通行と共に行動している
ハズだ。まだ学園都市内で生きているとしたらの話だがなぁ」
美琴「なっ!? 何よそれ!! そんな……そんな事して一体アンタに何の得があるっての!?」
木原「そこまでお前に話す意味はねぇ。……話が長くなっちまったな。さっさと始めんぞ」
美琴「待ってよ! アンタはこれから、番外個体ってのを探すんでしょ!? まさか、そのために……」
木原「まぁな、さすがに一方通行も馬鹿じゃねえから今ごろ相当気ぃ張り巡らせてんだろ。そうなると捜すのは手間が掛かる。だが地道に
捜すってのはどうも俺の性分に合わねぇ。そこでこの装置の出番ってワケよ。お前のDNAと発生されるAIM拡散力場の違いが色に出て
表れるコイツなら、正確な居場所もすぐに把握できる。俺の目的は番外個体を誘拐して一方通行のボケに間抜けな泡ぁブクブク吹かす
ことなんだよ! もちろん最終的には無残な肉の塊にしてやるつもりだぁ! ただで死なすには惜しすぎる野郎だぜぇぇアイツはよぉ!
それを果たすためなら借金抱えようがどこで誰がどうなろうが知ったこっちゃねぇ! そして、そのためにお前はこれから協力すんだよ!」
美琴「―――ッッ!!?」
木原「これで理解したかぁあ!? ぎゃははははは!!」
美琴「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:49:32.10 ID:jQ78ni.0<>
美琴「……ん……でよ」
木原「あぁん?」
美琴「なんで!? なんでそれだけのために……っ!!」
木原「キヒッ」
美琴「番外個体は見た事ないから知らないけど……その子も私の妹なんでしょ!?」
木原「見た目は逆だが、正確にはそうだなぁ」
美琴「アンタ……一方通行に何か恨みでもあるの?」
木原「あぁ、少なくともテメェよりは深いつもりだぜぇぇ」
美琴「…でも、それでも……っっ」
木原「ん?」
美琴「それでもその子には関係ないじゃない!! 結局はアンタが一方通行に恨みを晴らしたいっていう個人的な理由じゃないの!!」
木原「……ま、否定はしねえな。確かにウチらは第三次製造計画に携わった人間とも関わりはあるが、コイツは確かに俺の独断だよ。
別に上からこうしろと指図された訳じゃねぇ。全部俺が決めて仕組んだ事だ」
美琴「番外個体が、その子がアンタに何したのよ……」
木原「………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:52:07.25 ID:jQ78ni.0<>
美琴「“そんなくだらない理由”のために生み出されて、好き勝手に利用されるなんて……そんなの、あんまりじゃない。妹だって、
最終信号だって、番外個体だって、……みんな生きてるんでしょ!?」
木原「学園都市に生かされてるって言った方が正しいけどなぁ」
(俺も、お前も……)
美琴「アンタには、情ってモンが欠片もないの!?」
木原「この街で研究に携わる以上、そんなモンは邪魔でしかねぇ。何も俺だけがイカレてる訳じゃねえんだぜ?」
美琴「………ひどいよ……そんなのひどすぎる」ギリッ
木原「どう思おうが勝手だが、どの道テメェに拒否権はねえんだ。大人しく俺に協力してもらうぜ?」
美琴「……いやよ」
木原「あぁ?」
美琴「誰がそんな事に協力なんてするかって言ってんのよっ!! それならいっそのこと死んだ方がマシだわ!!」
木原「ほう」
美琴「アンタの思い通りになんか、絶対させない!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:54:10.16 ID:jQ78ni.0<>
木原「……やれやれ、懲りねえな。テメェも」
「こうなるのが目に見えてっからなるべく話したくはなかったんだがな」
「仕方ねぇ。また少し痛めつけてやっか…」グッ
美琴「!!…………」サッ
木原「と、言いたいところだが―――」シュン
美琴「―――ッ!?」
ガチャリ……!!
美琴の背後に一瞬で回り込んだ木原はいつの間にか手にしていた謎の腕輪を彼女の右腕に装着した。(この間僅か二秒)
「!?」
「はっはぁ、良かったなぁぁ。これで痛い目見ずに済むぜ? 俺の優しさに心から感謝しやがれ! ぎゃははは!」
「え………」
目にも止まらぬスピードでまた正面に戻った木原の高笑いに美琴は唖然とした。
右腕に付けられた正体不明の腕輪に困惑するが、これが何なのか訊かずにはいられない。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 19:57:46.67 ID:jQ78ni.0<>
「何よこれ……?」
「ソイツは『自分だけの現実』へ進入し、能力者の発するAIM拡散力場を自動放出させる機能を持った特注品だ」
「んなっ!?」
木原の言葉に驚愕する美琴。つまり、この腕輪を付けている限り、脳が自動的に演算をして超能力を放出させているような
ものだ。そして、
「お前から発生された電力は、全て自動的にその腕輪に集められてそこの探索装置へ転送される」
「ッッッ!!??」
勝ち誇った笑みを見せながら木原はそう告げた。意味を理解した美琴は腕輪を外そうと試行錯誤するが、
「無駄だ。これがなきゃソイツは絶対に外せねえよ」
意地悪く鍵を見せびらかす。美琴はそれを見るや否や木原に飛び掛かった。
「よこせぇぇええ!!」
「ひゃっはっはっはぁ!! ほ〜らコッチコッチィ〜♪」
手が鍵に届く寸でのところでサッと避けられる場面が何度も繰り返される。
完全に遊ばれていた。
「くっ! こんのぉぉっ!!」
「よっ。おっと。ほらほらぁ、どーしたぁ〜? ヒヒヒッ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:00:10.96 ID:jQ78ni.0<>
その後も必死に鍵を奪おうと美琴は奮闘するが、木原の余裕を消すには至らなかった。
「あー愉快愉快♪ 娘と遊んでるみたいで楽しいねぇ」
「ハァ…ハァ」
「ったく、何だよもう終いかぁ? 若ぇのに体力ねぇなオイ」
輪っか状のホルダーを指で回しながら平然とする木原に対し、美琴は肩で息をしていた。
単純な身体能力では、差があり過ぎる。
「………!」
この腕輪を付けている以上、能力は腕輪にしか集まらない。
(なら、フル放電してこんな腕輪ぶっ壊してやるっ!)
最大の十億ボルトを一気に爆発させようとするが…
「あ、あれ?」
電流が流れることはなかった。
「あー、言い忘れたがソイツは定められた出力以上は受け付けねえように設定されてっから、いくら壊そうとしても無駄だぞ。
ついでに言うと、規定値以上の電圧は全部お前の体内へ戻り、消滅する造りにもなってる。『キャパシティダウン』の制限機能
付きっつった方が分かりやすいか? 要は外にも体内にも放電できねぇってこった」
「!!?」
ご丁寧に返ってきた思いもよらない種明かしに美琴は唇を噛む。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:02:32.37 ID:jQ78ni.0<>
「……外してよ」
最後は今にも消え入りそうな声で懇願するが、木原はそれに応じることなく話を進めた。
「よし、これで準備が整ったな。―――おい!」
木原の合図の直後に入室してきた数人の部下が美琴を取り押さえた。
「い、いやっ! やめて! 離してっ!!」
抵抗も虚しくあっさりと捕まる美琴を木原は舌なめずりしながら見つめる。
「んじゃあ早速やってもらうか。つってもだいぶ時間喰っちまったが……」
そう言いながら、機械のリモコンをいじる木原。すると、
「な、何……?」
突如、人ひとり入れる程度の大きさをしたドーム状の物体が床から現れる。中はコックピットのような造りになっていた。
美琴は押さえられながらもその物体を見て呟く。
「こん中に入れ」
木原の言葉に美琴の身体が反応する。
「い……いや……」
お化け屋敷の苦手な人間が入り口で見せるような仕草で抵抗するが、木原には所詮無意味な足掻きだった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:05:29.34 ID:jQ78ni.0<>
「おい、早く入れろ」
「っ!?」
容赦なく告げられた木原の命令で、美琴を押さえている部下が彼女をドーム内のコックピットに押し込んだ。
「いやぁ!! いやぁああああ!!!」
悲痛な叫びと共にドーム内へ姿を消した美琴。
この機械と美琴に取り付けた腕輪で初めてモニターが検索し、DNA信号をキャッチするという事らしい。
「お? 早くも出たか……さすが超能力者だな。欠陥品たぁ格が違うぜ」
嫌味ともとれる口調でモニターを見上げる木原。
モニターには学園都市全学区が表示されており、青マークは無能力者〜強能力者。赤マークは大能力者。そして、超能力者
である美琴は黄色マークで表される。つまり黄色いマークの場所が現在地だ。
見た限りでは、青マークが目立っていた。これは学園都市に在住する妹達を表している。数は十程度だが、木原が注目して
いるのはもはやそこではなかった。
「クククク、見つけたぜぇぇぇ」
第七学区に一つだけ表示されている赤マークを見つけた途端、木原の顔が悪魔のように歪む。この街で赤マークが表示される
という事は、御坂美琴のDNAを持つ大能力者がいる事に繋がる。そして、これに該当する人物はひとりしかいなかった。
「ついに見つけたぁぁああああ!!! 番外個体ぉぉおおおおお!!!!! ぎゃーはははははははぁ!!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:06:35.80 ID:jQ78ni.0<>
管制室のような部屋に木原の笑い声が響く。
「…………グスッ」
小型ドーム内の座席から見える邪悪な喜びに満ち溢れた木原の姿に、美琴はただ涙を飲むしかなかった。
ドームには鍵が掛けられ脱出不能な上に能力も使えない。自分にはもうどうする事もできない。
逃げる事も、木原を止める事も。
「クックック……。さあ、地獄に落ちる時間がやって来たぜぇ。一方通行ぁぁ」
「待ってろよ。今行くからなぁ!」
こうしてひとしきり笑い終えた木原は美琴を見張るための部下を二人残し、残りの部下を引き連れて部屋を出ていった。
どこへ行くのかはもう分かりきっている。
ついに復讐の斧を振り下ろす時が来た。
―――
「…………」
白井黒子は風紀委員支部から寮までの帰路を俯きながらトボトボと歩いていた。
目を覚まし、ある程度回復した彼女に突きつけられた現実はしばらくの謹慎処分である。
先ほど暴行した連中の一人が宣言通り被害届けを出したのもそうだが、この三日の間に同じような事を幾度となくしていたために
本部も決断を下したのだ。
風紀委員が一般人に暴行などあるまじき行為なのはもはや承知。黒子も覚悟の上で美琴の捜索に身を削った。焦る心が生んだ暴走
だと、先輩風紀委員の固法美偉が必死に弁護してくれたおかげで解雇は免れた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:08:17.26 ID:jQ78ni.0<>
謹慎処分程度で済んだだけマシなのかもしれない。下手をすれば初春の言ったように傷害罪で告訴されてもおかしくはなかったのだ。
被害者への謝罪のために各寮をまわった黒子は、すっかり疲れきった表情で寮へと足を運ぶ。
当分は勤務時間中の外出を禁止すると寮にも連絡がいった以上、寮監の目が今後更に光を増してくるだろう。
(先輩にはお世話になりっぱなしですの……。初春にもしばらく頭が上がりませんわね…)
(ですが、学校以外の外出はしばらく禁止……)
(これでは、一体いつお姉様を捜せばいいんですの……)
(いっそ、夜中にこっそり抜け出して……)
表情とは違い、頭の中は忙しい。
(それしか手段がなさそうですわね)
(またご迷惑を掛けてしまうかもしれませんが、やはりわたくしはお姉様を放っておけませんの)
(たとえ塀にぶち込まれたとしても、これだけは決して譲れませんの!)
(どうか、許してください。先輩、初春……)
今夜からまた捜索を再開しよう。せめて美琴が無事なのかだけでも確認できない事には、このまま泣き寝入りなど到底できそうにない。
自分の能力さえあれば、寮監の目を盗む事も容易い。
決まりだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:08:59.45 ID:jQ78ni.0<>
(帰ったら、夜に備えて少し寝ておかなければ……)
一人息巻く黒子。反省はしているが、諦めるつもりはないらしい。
やがてしばらく歩いている内に常盤台女子寮が見えてきた。
「………!」
寮の入り口が視界に見えた時点で彼女の足が止まった。
寮の入り口正面に、誰か立っている。
「あ……!!」
人物を確認できる距離まで近づいたところで黒子は驚きの声を上げる。
その人物には見覚えがあった。忘れようにも、あの後ろ姿は印象が強すぎて忘れられるはずがない。今回の美琴失踪事件にもしかしたら
何らかの関わりがあるかもしれない、と実は黒子が密かに捜していた人物でもあったからだ。
「―――ッ!」ダッ
常盤台寮正面に佇んでいるツンツンと無造作に跳ねた黒髪の少年に向かって、黒子は迷う事なく一気に駆け出した。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/30(木) 20:10:37.94 ID:0Wx.1tEo<>上条さァァァァン!!!!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/09/30(木) 20:11:37.53 ID:jQ78ni.0<>今回は以上です
続きはまたある程度書き溜まったら更新に来ます
読み返していて結構誤字の多さに気づいた…
至らなくてホントすいません<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/30(木) 20:20:12.94 ID:0Wx.1tEo<>乙だぜ!
美琴厨の俺にはホント展開辛いけど
面白いから目が離せない・・・
上条さんマジたのんます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/30(木) 21:19:45.23 ID:MEzRDlQo<>木原くンいいねぇ
こういう純粋な悪役を禁書にもっと出してくれ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/30(木) 22:48:01.62 ID:PDrZPDgo<>乙
多少の誤字なんて脳内変換するから無問題
続き待ってるよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/01(金) 01:40:07.74 ID:Ebwya.AO<>やれやれ木原くン君とは色々と話が合いそうだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/01(金) 03:46:49.85 ID:yaEsiO6o<>あぁもう色々と熱いなぁ。おつおつ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/01(金) 18:23:49.47 ID:7p5qA1k0<>乙乙
二十二巻を心待ちにしてる俺にとって番外通行は俺得
そして二期を心待ちにしてる俺にとって木原くン登場は俺得だぁぁぁあ!!!
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/01(金) 22:19:20.99 ID:fmnM4RU0<>風紀委員もボランティアのはずだから、解雇というより解任じゃないカナとかミサカモドキは思ってみる。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/02(土) 22:44:30.42 ID:PUTUSWU0<>つ・づ・き・は・ま・だ・か?????<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 01:52:16.24 ID:uvLCn7I0<>すっかり遅い時間になりましたが、更新に来ました
>>363のようなレスはマジで救われた気になりますわ
もちろん見てくれてる方全員にも激しい感謝を
では、続き
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 01:55:03.12 ID:uvLCn7I0<>
>>367
thx 補正よろ
常盤台女子寮門前
黒子は、上を見上げたまま立ち尽くしていた後ろ姿に声を飛ばした。
「上条さんっ!」
「ん…?」
その声に反応した上条が、ついに振り向く。
「あっ、白井!」
そして、黒子の顔を見るなり上条もコチラへと駆け寄ってくる。
それはまるで別々に逃亡していた仲間同士が無事に落ち合ったかのような場面だった。
「ようやく見つけましたわ……」
「え?」
「貴方のことも捜してましたのよ! お姉様のことで…」
「いや、俺もお前に訊きたいことが……」
「え……」
これでようやく手掛かりが掴めるかもしれない。
黒子は気の緩んだ表情をすぐにキリッと戻して上条に尋問しようとするが、その前に上条が口を開いたのだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 01:56:47.43 ID:uvLCn7I0<>
「白井、ニュースのあれ…本当なのか? 御坂が行方不明って、一体どういう事なんだ?」
「…!」
自分の推測が外れた……。美琴失踪の数少ない関係者だと踏んでいた小さな希望が、ここで崩れた。
この言葉だけでもう上条が無関係なのは確定である。嘘を吐いているようにも見えない。この真剣な表情が演技だとしたら、
今すぐ役者になった方がいい。
「………」
期待、というよりは藁にでも縋るつもりだっただけに、この事実はショックだ。
それを認めたくない心が働いたのか、黒子は頭が空っぽになったような顔をする。
「今朝テレビ見てビックリしたよ。アイツ、何かあったのか? 知ってる事があったら教えてくれ」
そんな黒子の心情を知らない上条は、再度黒子に尋ねてくる。
どうやら上条も美琴が心配で今まで動いてくれていたらしい。
「……貴方は、何も知りませんのね…」
「? 何のことだよ?」
黒子の呟きに反応を示す上条。本当に何も知らない彼の様子を見て黒子は溜息を吐いた。
「ハァ……」
「…?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 01:59:50.42 ID:uvLCn7I0<>
黒子「では……ここで一体何をしていますの?」
上条「いや……だから、アイツが何か事件に巻き込まれてるんじゃねえかって思って……」
黒子「それで、何故ここに?」
上条「俺も色々捜し回ったんだけどさ。常盤台は休校だから、他にアイツが行きそうな場所とか行ってみたり…」
黒子「捜し回ったって……貴方、学校は?」
上条「それどころじゃねえだろ! アイツが危ない目に合ってるかもしれねえってのに、呑気に授業なんか受けてられっかよ!」
黒子「っ……!」ビクッ
上条「あ……悪い。大声だして…」
黒子「……いえ、構いません」
上条「……けど考えてみたら、行方不明って報道されるぐらいだし……で、白井なら何か知ってるかもって思って、ここでお前を
待ってたんだ」
黒子「待ってたって、いつから?」
上条「ん〜、二時間くらいか…」
黒子「……馬鹿ですか?」
上条「う、うるせぇ。けど、その感じだと……お前も知らないみたいだな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:01:21.28 ID:uvLCn7I0<>
黒子「えぇ。わたくしにも何が何だか……お姉様とは三日前に風紀委員の仕事で寮を出た時が最後ですの……」
上条「その時の御坂はいつもと同じだったか? 何か変わった様子とかは……」
黒子「いえ、特にありませんでしたわ。どちらかと言えば浮かれた様子に見えましたの」
上条「どこかに出かけるとかも言ってなかったのか?」
黒子「お姉様はよくブラブラとお出かけになりますので何とも……」
上条「……そうか」
黒子「ロシアから帰国したばかりだと言うのに……どうして……」
上条「白井……」
黒子「血まなこになって捜しても、お姉様の足取りすら掴めません……もし、お姉様に万が一のことが……」
上条「やめろ! ………大丈夫だよ。アイツは学園都市でも三本の指に入る実力者なんだぜ」
黒子「でも、お姉様が無断で三日も……連絡すら取れないんですのよ?」
上条「俺も掛けてみたけど、ダメだった…」
黒子「やはり、何かあったんですわ。……誰かがお姉様を……もうそれしか……」ジワァ
上条「っ!?」
黒子「わたくしには……何の…グスッ……役にも……ヒクッ……立てませんの……お姉様が、ヒック、辛い目に……合ってるかもしれない
と言うのに……グス……わたくしには……何も…」ポロポロ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:04:54.62 ID:uvLCn7I0<>
上条は目の前で号泣する黒子を見て言葉を失う。
上条「…………」
黒子「お姉様ぁ……お姉様ぁぁぁぁぁ……」グスッ グスッ
上条「…………」
黒子「うぅぅ……うえぇぇ」ポロポロッ
そして…
上条「――――白井…」
黒子「……?」
上条「信じろ」
黒子「ふぇ……?」グス…
上条「御坂は俺が何としてでも捜しだしてみせる。お前はアイツを信じるんだ。アイツならきっと無事でいるって…。お前がそれを
信じてやらなくてどうすんだよ?」
黒子「……!」
上条「御坂のことだ。そう簡単にくたばるようなヤツじゃない。それはお前もよく知ってるだろ?」
黒子「は……はい…それは…」
上条「だからお前は、安心して待ってろ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:06:28.18 ID:uvLCn7I0<>
黒子「で、ですが……」
上条「確かに、アイツはお前に黙ってどっかに行ったりするなんて事はしないハズだ。……多分お前が言ったように、きっと誰かが
絡んでるんだろうな。もしそうだとしたら……どこのどいつか知らねえが、必ず俺が見つけだしてやる。そんで御坂も絶対に
助けだす。………だから、もう泣くな」ポン
黒子「あ……」
上条「な?」(←相手の頭に手を乗せてこのイケメン顔。大抵の女子はここでフラグが立つ)
黒子「…………」
上条「じゃ、俺もう行くから。お前はゆっくり―――」
黒子「―――お待ちになって!!」
上条「ん?」クルッ
黒子「カッコよく決まった直後で大変恐縮ですが……」
上条「え……?」
黒子「だいたい貴方、捜すって言ってますが一体何処を捜すんですの?」
上条「! どこって……」
唐突に痛いところを突かれた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:07:43.04 ID:uvLCn7I0<>
黒子「どの学区かも見当はついていますの? 広い学園都市のどの辺りが怪しいとか、ちゃんと踏んでいるのでしょうか?」
上条「……いや、それは…」アセッ
黒子「この三日間でわたくしが不眠不休の捜索をしても、未だに手掛かりは一切ゼロの状況ですのよ? にも関わらず、まさか
アテもなく闇雲に捜すつもりだったのではございませんわよねぇ?」
上条「ッ!!」ギクッ
黒子「……やはり図星でしたか……ハァ。呆れてモノも言えませんわ…」
上条「あ、あははー……」
黒子「後先を考えない無鉄砲馬鹿とは正にこの事ですわね」
上条「」グサッ
黒子「単純、猿並の低級知能、ですから貴方は類人猿なんですの」
上条「」グサグサッ
黒子「だいたい、考えもなくただ走り回って見つかるのでしたらわたくしも苦労しませんわ」
上条「う、申し訳ない……」
黒子「全く……こんな殿方の何処がよろしいのやら…」ボソッ
上条「へ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:09:14.29 ID:uvLCn7I0<>
黒子「な、何でもありません。それより、捜すのでしたらわたくしも是非協力しますわ」
上条「は? いや、でもお前門限あるんじゃ……」
黒子「ふん、そんなのクソ喰らえですの! それに、今のわたくしは風紀委員ではありませんし…」
上条「え、そうなの?」
黒子「えぇ、ですから多少のことには目を瞑れますわ!」
上条「そっか。……けどまぁ、確かにアテもないし……ここは協力した方がいいかもしれねえな」
黒子「当然ですの! さぁ、そうと決まったら早く行きますわよ!」グイグイ
上条「うわ!? おい引っ張るなよ! お前、何か急に吹っ切れてねえか?」
黒子「乙女は涙を超える度に強くなるんですのよ」
上条「はぁ……よく分からんけど、あまり無理はするなよ?」
黒子「何を言いますやら! お姉様のいない暮らしの方が精神的に無理ですの!」
上条「さいでっか………」フッ
黒子「それでは、参りましょうか。本当は貴方と肩を並べて歩くなど不本意極まりないのですが、ここは一時休戦ですわね」スッ
そう言いながら手を差し出してくる黒子に上条は首を傾げた。
上条「休戦? 何言ってんだお前?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:10:35.76 ID:uvLCn7I0<>
黒子「ほら、レディが握手を求めているというのにいつまで放置する気ですの? さっさと応じなさいなこの鈍感猿」
上条「あ、あぁ…」(何かよく分かんねーけど、これでいいのかな本当に……)スッ
―――ガシッ!
黒子「言っておきますけど、わたくしはお姉様を見つけたいだけですの。そのために、あくまでそのために貴方と共に行動する
だけですので、決して勘違いなどなさらぬよう…」
上条「へいへい、分かった分かった。分かったからさっさと行くぞ〜」サラッ
黒子「……っ」ムカッ
ゲシ! ゲシ!
上条「痛っ! ちょっ、痛ぇって! 何で蹴るんだよ!?」
黒子「ふんっ……!」プイ
上条「……?」
(何なんだ一体?)
こうして、二人の恋敵同士(?)は手を結ぶ事となった。共通する目的のために。あくまで、一時的に。
―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:11:59.64 ID:uvLCn7I0<>
―――
〜隠れ家に帰宅した一方通行と番外個体〜
「…………」
一方通行は何気なくテレビを付けた。特に見たい番組があった訳でもなく、ただ何となくである。
番外個体が入浴に行ってしまったので、時間を持て余す程度に視聴するだけのつもりだった。その時たまたまやっていたのが
夕方のニュース番組だった。本当にただそれだけだ。
しかし、ある話題へ差し掛かった瞬間、彼の顔つきは急激な変化を見せた。
飲んでいたコーヒーを吹きそうになってしまうほどに。
「……超電磁砲が……行方不明だァ?」
あまり世間の話題には興味を示さない一方通行だが、今回は例外のようだ。
目線はその後もニュースが終わるまでの間、テレビ画面から微動だにしなかった。
「三日前からっつゥと……ちょうど番外個体が退院した日じゃねェか…」
一方通行の頭はそこから思考モードへと移行する。
(……どォいう事だ? 偶然……イヤ、それはねェ。番外個体を狙ったヤツらと関連してるって考えた方が自然だ)
(だが、何故オリジナルを……まさか見た目が似てっから人違いしたなンてふざけたオチじゃねェだろォなァ?)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:14:25.83 ID:uvLCn7I0<>
(………それもねェか。そンな見分けもつけらンねェよォな馬鹿相手なら、こンな隠居生活みてェな事するまでもねェっつの)
(『警備員による捜査を』とか言ってやがったが、コイツも多分嘘だな。どォせ上層部がまた圧力掛けてンだろォ)
(けど分っかンねェなァ。これが連中の仕業だとしたら、態々報道する意味があンのか? 何が狙いなンだ?)
(全域に流すことで番外個体を焙り出そうってのか? ……イヤ、そこまではいかねェにしても動揺を与えるぐれェには…)
(チッ……この先は考えても無駄か。連中の腐った頭を推理しろってのがそもそも無理な話だ)
(番外個体には、どォすっか……アイツまだ風呂だよなァ。もォニュースは終わってるし、いちいち伝える必要もねェか…。
余計な心配与えても意味はねェし)
(オリジナルは七人しかいねェ超能力者の内の一人。殺されてる可能性はまず有り得ねェ。上層部が許すハズねェだろォからな)
(とすると、どっかに監禁されてるってのが妥当か……)
(ドッチにしろ、ヤツらはついに何の罪もねェオリジナルにまで手ェ出したってかァ……)
やがて、その顔から徐々に怒りの感情が表れる。
(そォか、そォかァ。ヤツらはそォきたかァ……ヒヒッ)
(……ッ!)
(―――クッソ野郎がァァァ!! ふざけやがってよォォ!!)
いつの間にか拳に力が入っていた。
タイミング的に、どう考えても番外個体を狙っている人間が美琴と接触した以外にない。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:16:14.55 ID:uvLCn7I0<>
(絶対に許さねェ!! そンな事が許されてたまっかよォ!!)
冷静にならなければいけない。
分かってはいるのだが、腹の底から湧き上がってくるこの熱情はどうしようもなかった。
(イイぜェ、上等だァ!!)
もはや黙っていられるはずがなかった。
番外個体は隠れ家に置いておくとして、まず明らかにしたいのは美琴の居所である。
一方通行は紙に『すぐ戻る。絶対に外へ出るな。誰が来ても開けるな』と殴り書きして頭に血を上らせたまま隠れ家を飛び出した。
「キキキッ……! 久々に頭に来たぜェ! 良い度胸してやがる!」
轟!!!
電極チョーカーのスイッチを能力使用状態にした一方通行は凄まじい速度で隠れ家をを離れる。
そして上空へ飛び上がり、下に向かって大声を張り上げた。
「出て来い!! コッチが静かにしてりゃあコソコソと水面下で動きやがって!!」
「どこだァ!? どっから仕掛けるつもりだァァ!! せこい真似ばっかしてンじゃねェぞォォ!!」
「ソッチが来ねェンってンならそろそろコッチから動いたって構わねェンだぜェ!? 大人しく身を潜めてるだけなンてのはやっぱ性に
合ってねェからなァ!!」
「俺が本気でブチ切れる前に来いよ……来いよォォ!!」
「全員まとめて俺が叩き潰してやっから、イイ加減姿を現しやがれェェェ!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:17:07.63 ID:uvLCn7I0<>
街に叫ぶ。
闇に叫ぶ。
まだ正体の見えぬ敵の意表をついた行動に、一方通行の怒りは頂点に達した。
―――
「――ふ〜、良いお湯でしたぁ♪………って、あれ?」(←パジャマ姿の番外個体)
「アクセラレータ? あっれぇ……いない」
「どこ行ったんだろ?」キョロキョロ
「ん? 何このメモ?」ジー
「『外へ出るな』……? ハッ、そんな子供じゃないんだから……」
「っつーか風呂上がりですぐ外出たら風邪引くし」
「どこ行ったんだろ……またコーヒー買いに行ったのかなぁ?」
「……けどまぁ『すぐ戻る』って書いてあんだし、いっか」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:19:04.88 ID:uvLCn7I0<>
「おっと忘れてた。ムサシノ牛乳〜♪」パタタタ
グビ グビ
「ぶはぁぁ! たまんねぇ〜☆」
「やっぱこれ最高! もーやめらんな〜い」
「風呂上がりまでコーヒー飲んでるアクセラレータの気が知れないわ。せめてコーヒー牛乳にしとけっちゅーの」
「〜〜〜♪」(←そのまま寛ぎモード突入)
十分後
「………遅いな〜。まだかなアクセラレータ」
「おなかすいたぁ〜」
「一緒にご飯作る約束したのに何やってんのよアイツはぁぁ」
「………」ブー
「……アクセラレータ………」
(成り行きで一緒に住むことになったけど、考えたらミサカってアイツのこと何も知らないんだよね)
(なんでだろ? なんだかんだでミサカ、すっかりアイツに心許しちゃってるなぁ〜)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:21:52.97 ID:uvLCn7I0<>
(初めて会ってからまだ一週間しか経ってないのに……)
(何かアイツと一緒だと居心地良いんだよなぁ〜。安心しちゃうって言うか……不思議な感じ)
(やっぱり前から知ってたのかなぁ。……けど、前のこととか何も思い出せないし…)
(アイツは何か知ってるのかなぁ。……帰って来たらちょっと訊いてみよっと)
「ハァ……」
一方通行から離れていると、何故か心細く不安な気持ちになる。理由は彼が唯一の頼りだから。それだけのはずだが、
(それもあるんだけど……違う。何か違う気がする。この気持ちは一体何なんだろう……)
正体不明の感情に襲われ、番外個体は膝を抱えた。
それからまたしばらく時間が過ぎる。
(早く帰って来ないかなぁ)
その時、一方通行の帰りを今や遅しと待っていた番外個体の耳に―――
―――ピンポーン♪
「!! 帰って来た……?」
呼び鈴を何故わざわざ鳴らしたのか少し疑問だったが、出迎えて欲しいのかもと勝手に納得した番外個体は立ち上がり
玄関へ向かった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:26:00.92 ID:uvLCn7I0<>
「〜〜♪」
廊下を歩く彼女の表情はご機嫌だ。
これから待っているのは一緒に仲良く夕食作りという、まるで新婚夫婦のようなイベントである。
楽しみなのは勿論、乙女な番外個体が密かに憧れていたシチュエーションでもあった。渋っていた一方通行も、
結局最後は強請りに負けて了承してくれた時は本当に嬉しかった。
とびっきりの笑顔で出迎えてやろう。と、満面の笑みをすでに浮かべている番外個体は―――ドアに手を掛けた。
が……
「おっかえ……り………?」
「番外個体だな?」
番外個体の笑顔が、一瞬の内に固まる。
ドアの向こうにいたのは一方通行ではなく、三〜四人の見知らぬ男達だったからだ―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/03(日) 02:28:59.69 ID:uvLCn7I0<>取り敢えずここまでです
お待たせしましたが、いよいよ再会の時です
十三巻読み直してから念入りにいくつもりですのでまたしばらく時間ください<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 03:03:29.67 ID:JV/mPFko<>おつ!
幻想通行なら怖いものなしだぜ!
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 08:10:33.92 ID:17p7MnMo<>乙!
次回更新が楽しみすぎる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 11:46:19.00 ID:hE.016AO<>乙です!
スゴく面白いです
続き楽しみにまったり待ってます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 12:12:53.96 ID:Nlj6iwAO<>上条さんが良いとこ取りするのだけは止めて頂きたい。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 12:17:02.03 ID:Ph.QeKgo<>主役はあくまで一方さんとミサワさんだから大丈夫だろ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 12:48:22.05 ID:zlkcTxQo<>最後は上条さんをベクトルで超加速して相手にぶつける「超三下砲」でとどめをさします
たぶん<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 13:44:19.10 ID:EfadSsAO<>右手があるから難しいので上条さんを地球の自転がずれるレベルの力で思いっきり投げます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 15:49:19.33 ID:7lANH9Q0<>それ上条さん死んじゃうwwwwww…のか?
「不幸だー!」位で済んで、意外と無事なのか
しかし実際木原くンの怖い所は(当然っちゃ当然だけど)しっかりと対策を取ってくる所だろうからなぁ
俺は上条さんの身が心配です<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 15:55:27.97 ID:SeFLDX6P<>相手が攻撃を避けるのなら避けられない攻撃をすればいいだけのことだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 23:01:14.80 ID:Nlj6iwAO<>それが出来ないから困ってる訳で…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 23:41:23.02 ID:lG4yYkAO<>>>394
アックアさんに2キロぶん投げられて無事じゃなかったか?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 23:43:02.32 ID:rQIHPM6o<>アックア戦はヘタ錬戦に次ぐ大怪我だぞ
>>394
眉間をパーンで幻想殺し余裕でした<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 00:46:43.17 ID:HMG8/wDO<>うおおおおおお
面白いぜえええ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 01:35:16.86 ID:JizOTUwo<>上条さんのすごいところは能力者かよってくらい頑丈なところだな
補正と言ってしまえばそれまでだが<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 06:55:40.99 ID:49IbuMAO<>>>398
いやいや、キャーリサ戦<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 09:58:12.81 ID:ypZm4Fs0<>>>400
右腕もげても次の日普通に歩き回るくらいだからな
まさに不死身<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 12:30:57.49 ID:KxnE7L2o<>しかし主人公補正のきれた上条さんは悲惨なもんでな……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 15:31:30.85 ID:haIpOxco<>自殺考えるレベルだろwwwwww<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:36:32.51 ID:aw/upMM0<>こんばんは
出会いの時までは書き終わりましたので投下しに来ました
ここからオリキャラが出ます
メインキャラにするつもりはないのでオリキャラ苦手な方はお許しを<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:38:44.69 ID:aw/upMM0<>
〜移動中のワゴン車内〜
「――木原さん! 南南西から強い磁場が!」
後部座席で測定器らしきものを凝視しながら報告する部下に助手席の木原は、
「おー、コッチのAIM観測機にも反応が出てる」
カーナビのような車内モニターを見つめて応じた。
「ついに動きだしたか……へへへ」
「いいぞ、計算通りだ。こんな数値が叩き出せる能力者はアイツしかいねぇ」
「ククククク……」
不気味に笑う木原に部下がおそるおそる尋ねる。
部下「あの……木原さん。“計算通り”とはいったい……?」
木原「あぁ?」
部下「あっ、いえ……すみません。ただ、どういう事なのか気になって……その…」
木原「………」
軽く振り返っただけで尻込みして小さくなっていく部下を不憫に思ったのか、木原は教えてやる事にした。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:40:12.44 ID:aw/upMM0<>
木原「ったく、お前も頭が働かねえなぁ。普通すぐ分かるモンだが?」
部下「す、すみません……」
木原「謝んな見苦しい。……しょうがねぇな……。なら訊くが、何で超電磁砲の失踪報道を今日にしたと思う? 何も今日に
しなくても一週間とか、もうちょい先にした方が色々都合が良いかもとか思わなかったか?」
部下「え……? それは確かに……けど、何故ですか?」
木原「それも分かんねえのかよ……。おい、お前は分かるか?」
部下2「い、いえ……」
木原「テメェらそれでも科学者かよ? 応用利かねえヤツはこの世界じゃ食ってけねえぞ」
「「も、申し訳ありま――」」
木原「謝んな鬱陶しい。全くテメェらはよぉ……」
部下「………」
木原「報道何故今日にしたか、それは一方通行と番外個体の『束の間の平和』ってヤツをブチ壊す日を今日に決めたからだ」
部下「…?」
木原「考えてみろよ。一方通行が妹達の原点とも言える超電磁砲(オリジナル)の存在を軽視すると思うか?」
部下「あ! なるほど……」
理解したのか手をポン、と叩く部下。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:42:09.44 ID:aw/upMM0<>
その様子に木原も表情を緩める。
木原「だろ? ヤツはおそらく番外個体を潜伏先に置いて超電磁砲の捜索に乗り出すハズだ。……アイツがテレビや新聞に
目をつけんのかだけが不安要素だが、いずれは知って動くに違いねぇ」
部下「………」ゴクリ
木原「そして報道が良いキッカケとなり、精神的に乱れが生まれ出すのも計算済みよ。確実に捕らえてアジトに連れ込む以上、
少しでも有利にしとくに越したことはねぇだろ?」
部下「……!」
木原「それに、絶望を味あわせてやるんなら尚更二人は別々に捕らえる必要がある。自分の手が離れている内に大事なモンが
消えちまう……あのガキはそういうのを最も嫌がるからなぁ」ニヤァ
部下「」ゾクッ…
部下2「しかし、番外個体の方は大丈夫でしょうか? 相手は仮にも大能力者ですよ……」
木原「心配すんな。ソッチは“アイツ”に任せてある。ヤツなら失敗はまずねえだろ。なんせテメェらと違って有能だからなぁ」
部下「まさか……“あの方”を?」
木原「おう、俺が唯一認めた『弟子』みてぇなモンだ。あのガキには及ばねえだろうが、大能力者程度なら何とかならぁな」
部下2「おお……」
木原「で、あのクソガキはこの俺が直々に踏ん縛っちまえば、成功万歳ルート直行って寸法よ」
部下「す、すごい……そこまで計算して…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:43:39.34 ID:aw/upMM0<>
木原「あのガキがどう動くかなんて知れてっからなぁ。常に俺の手の上で踊ってるようなモンだぜ。ククク」
部下「………」
木原「フヒヒヒ、もうすぐだぁ。やっと、やっと会えるぜぇ……フヒ、グヒヒヒヒ」
車内の静かな空間に音響する囁き笑い。
もはや不気味を通り越した悪魔の表情。
それらを乗せたワゴン車の走っている道は、正に地獄から死人を迎えに来た死神の通る道とも言えた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:45:09.24 ID:aw/upMM0<>
―――
「……だれ? あなた達」
玄関前に佇んだいかにも怪しい面子に不信感を露にしながら番外個体は尋ねる。
「標的を発見。これより捕獲に入る」
先頭にいた男はその問い掛けを無視し、無線機のようなものを取り出してそう告げた。
「……?」
番外個体はこの意味が理解できずにキョトンと首を傾げる。
そんな彼女に、いきなり手が伸ばされた。
「一緒に来るんだ」
「っっ!?」
一人の男の手が番外個体の腕を掴んだ。突然の展開に番外個体は……
「いやっ! 何すんだよ!!」
反射的に放電する。掴んでいた男はもろに青白い電流を受け、「ぐぁあ!」と悲鳴を上げて身体中から煙を吹きながら
あえなく撃沈した。
「い、いきなり触ってきたソッチが悪いんだからねっ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:48:42.32 ID:aw/upMM0<>
咄嗟とは言えかなりの電圧を浴びせてしまったことに番外個体は焦るが、正当な主張で乗り切ろうとする。
そんな彼女とは対称的に、残った連中からは焦りは感じられない。まるで、仲間がやられることに慣れてしまっている
かのような。それとも仲間意識という概念が元々ないのか。いずれにせよ、彼等の表情に変化はなかった。
それどころか、
「ふん、相手は大能力者クラスだからナメてかかるなと言ったろう。バカめ」
蔑んだ目で見下ろして吐き捨てられる始末。
「バカが失礼したね。初めまして番外個体。我々は君を迎えに来たんだ」
新たに先頭に来た男が仕切り直す。背が高く若いその男の胸元には名札が付いており、『出雲 傭兵(いずも ようへい)』
と書かれていた。
「君は今日から我々の機関が保護することになった。もう心配は要らない」
「機関……?」
番外個体の頭に『?』が浮かぶ。
「第三次製造計画をこれ以上停滞させるのは君にとってもマズイだろう? 我々と一緒に来れば調整もできるし、計画も
また軌道に乗れる。君にとって悪いことなど何ひとつないぞ?」
「……???」
顔がすっかり「話についていけてません」と語っている番外個体を不審に思った出雲は尋ねた。
「……どうした?」
この問いに番外個体は理解不能な問題に頭を悩ませるような仕草で答えた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:50:09.56 ID:aw/upMM0<>
「あのぉ……何言ってんのかサーッパリ分かんないんですけどー」
「何?」
この状況でシラを切る意味がどこにあるのか出雲は疑問に思うが、番外個体の表情からは真意が読み取れない。
それはそうだ。シラを切っているのではなく、今の彼女は本当に何も知らないのだから。正確には忘れているのだから。
番外個体「……あなた達って、ミサカの知り合いだったりする?」
出雲「…面識はないが、君の管理を任されている」
番外個体「じゃあ知らない人ってことで良いんだよね? よかった〜、ミサカ知ってる人に電撃浴びせてたらどうしようかと
思ったよぉ。……あ、でも知らない人でもマズイか」
出雲「さっきから君は何を言っているんだ? 自分の使命を忘れたのか?」
番外個体「使命? ナニそれ。ミサカに使命なんてあるの?」
出雲「――!?」
番外個体「ミサカ、一週間くらい前からかな……何してたのかよく覚えてないんだよね〜」アハハ
出雲「……そ、そうか」
(番外個体は記憶喪失。これは木原さんに報告だな……)
脳内でメモをとる出雲。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:53:23.91 ID:aw/upMM0<>
番外個体「だからさ、おじさん達がミサカの知り合いだったら悪いことしちゃったな〜って」
出雲「と、とにかく……我々は君の管理を任されたんだ。一緒に来てもらえるかい?」
番外個体「やだ」
出雲「!!」
番外個体「ミサカはあの人の帰りを待たなきゃいけないの。あ、そういや『誰が来ても開けるな』とも書いてあったっけ……?
まぁ、いっか☆」
出雲「その人とは一方通行(アクセラレータ)のことなんじゃないのかい?」
番外個体「え!? おじさんアクセラレータの知り合いなの?」
出雲(おじさん……?)ピクッ
番外個体「なんだ。じゃあアクセラレータも一緒なんだね♪」
出雲「そうそう、だから――」
番外個体「って、そんな手に乗るないでしょバーカ☆」
出雲「……ッ!」
番外個体「んなガキ誘拐する時みたいなパターンでホイホイついてくとでも思ってんの? ってか、おじさん達どう見ても
怪しいし。何でアクセラレータを知ってるのかは謎だけど、どうせ友好的な関係じゃないんでしょ?」
出雲「………チッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:55:33.96 ID:aw/upMM0<>
番外個体「ミサカは行かないよ。あの人に『絶対外に出るな』って言われてんだから。さ、用がないんならもう帰ってくんない?」
出雲「残念ながらそうはいかないんだよ」ユラァ
番外個体「!」
出雲の表情が一変する。表から裏に人格が入れ替わったような、そんな印象だった。
「君に逃げ場なんてありはしない。大人しく従った方がいいぞ?」
「うわ……おじさん何か怖いよ? 大丈夫? 血管出てるけど…」
プチッ…
「―――俺はおじさんじゃねえええええええええええええ!!!!!!!」
「!!」ビクッ
「あぁもう面倒くせぇ!! いいからとっとと来いってんだよこのジャジャ馬がぁぁあ!!!」
激昂した彼の様子にドン引きする番外個体。
どうやらこの出雲という男。タガが外れると面倒なことを全てすっ飛ばし、力ずくで事に及んでしまう癖があるようだ。
「く、来るなっ!!」
手を伸ばして来る出雲に向けて咄嗟に電撃を放とうとするが……<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:56:46.53 ID:aw/upMM0<>
「―――えっ……?」
次の瞬間、出雲の姿は視界から消えていた。
「う、うそ? どこ……?」
「―――後ろだよ」
「!!?」
背後から聞こえた声に驚き振り返る番外個体。と、同時に首裏から激しい衝撃を感じ、脳が揺らされる。
「ぁ!!………っ」
そのままフラッ…と番外個体は意識を手放し、力なく玄関の床に倒れた。
「ふん、手間取らせやがって。誰がおじさんだっつーの。俺はまだ二十代前半だボケが」
「おぉ、すげぇ。大能力者クラスを手刀一発で仕留めるとは」
「さすが出雲さんだ。木原さんの次期後任って言われてるだけあるぜ」
手をパンパンと払う出雲の後ろで二人の部下がヒソヒソとそう漏らしていた。
それに反応することもなく、意識のない番外個体の身体を乱暴に担ぎ上げた。
「さて、もうここに用はねぇ。早いとこズラかるぞ。計画は今のところ滞りなく進んでいる」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:58:06.89 ID:aw/upMM0<>
番外個体を担いだまま部下二人に命令する。
「後は木原さんだが、心配には及ばないか。あの人が失敗することなど、まず有り得ないからな」
木原を崇拝するような言葉だけを残し、彼等は番外個体と共に隠れ家を離れていった。
ここまでは概ね木原の思惑通りに事が進んでいる。計画は出雲が言ったように順調そのものだ。
―――
「……チッ、気づいたらこンなに離れちまった」
疲れた動作で杖をつきながら歩道を進む一方通行。
空中で吼えている内にずいぶんと隠れ家から遠ざかってしまった。冷静になってみれば今動いたところでどうにかなる問題
でもない。そして、番外個体と離れ離れになるのも賢明ではないと判断した一方通行は、今こうして隠れ家へと引き返して
いるという訳だ。
「クソ、こンな時に土御門のヤツはマジで何してやがンだ? つまンねェ件だったらブチ殺すぞ……」
何度も掛けた番号にもう一度だけ託すが結果は一緒。それに対するコメントが思わず口から漏れた。
(さすがに三日も音沙汰なしってのは……まさかとは思うが、土御門達にも連中の牙が剥いたとかってンじゃ……?)
(少なくとも俺と連絡が取れねェ状況には違いねェ。追われてるか捕まってるかもしくは………チッ)
(とにかく、明日病院行った時にあの医者と話ができれば何か分かるかもしれねェ……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 19:59:09.54 ID:aw/upMM0<>
(さァて。うるせェヤツも待ってる事だし、急いで帰るとすっかァ)
急いで帰ろうと思ったのは番外個体と夕食を一緒に作って食べる約束をしたからでもあるのだが……
(妙な胸騒ぎがすンぜェ……)
不吉な予感が全身を駆け巡っていたのだ。原因不明の寒気が一方通行を今も襲っている。
(歩いたンじゃまだ十分ぐれェ掛かるな。いっそまた能力使ってぶっ飛ンでくか?)
電極チョーカーにスイッチを入れようか入れまいか少々迷いながらも歩を進めている内に、人通りのない河原へと差し掛かった。
陽も落ちて薄暗い丘の遊歩道は少し不気味な雰囲気が漂っている。
(ここ渡りきればもォすぐそこだし、このまま歩いてくかァ。頭冷やすにも良いだろォし)
歩いて帰ろう。そう決めて一方通行は杖をつき続けた。
道中思い出すのは番外個体と過ごしたここ一週間の出来事である。
思っていたよりも穏やかで平和に過ぎていった彼女との生活は一方通行の心に安らぎを与えていた。
「…………」
建前はあくまで『護衛』。それも自ら選んだ道。だが、今ではその事すらうっかり忘れてしまうほどに一方通行は今の生活を
楽しんでいた。
できるなら、この時がいつまでも続いて欲しいとさえ思う時もあった。
彼女がああして楽しそうな顔でこの先も生きていって欲しいと……。
それを壊そうとする輩は全力で潰す。その決心は日に日に強くなっていくばかり。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 20:02:07.27 ID:aw/upMM0<>
打ち止めと出会ってから覚えた『自分の帰りを待っていてくれる存在』。
これは実にかけがえのないものなのかもしれない。と、ふと気づいた一方通行はよく感傷に浸るようになった。
最近よく物思いに耽るのも、自分がどのように変わったのかが認識できた影響なのかもしれない。
(帰ってメシ食ったら、久々にガキと電話でもしてやっか)
心中でそう呟き、薄い笑みを零しながら一方通行は丘の上を歩き続ける。
やがて、住宅街へと続く橋まで辿り着いた。ここを渡れば隠れ家はすぐそこだ。
橋の向こうから誰かがコッチへ歩いてくるのに気づいたのは、渡り始めてしばらく経ってからだった。
「………?」
暗くてまだよく分からないが、歩いてきた人物は足を止めて門番のように立ち塞がっていた。まるで、誰も通さない。ここから
先へは行かせないとでも言うように。
(ンだァ……?)
まだ距離があるので人相までは分からない。
取り敢えず一方通行はそのまま進む。
だんだんと、立ち止まったままの人物との距離が縮まっていく。
そしてついに―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 20:04:07.55 ID:aw/upMM0<>
―――立ち止まっていた人物が、突然大声を発した。
「久しぶりだなぁ! 待ってたよぉ! 一方通行ぁぁぁ!!!」
「―――ッッッ!!!!???」
聞き覚えのある声を聞き取ったのと、はっきり目に映った人物の正体に気づいて言葉を失ったのは、ほぼ同時だった。
「本当に待ってたぜぇ………この時をなぁぁあああ!!!!!」
「………オマ……エは………」
予想外な人物の突然の登場に、一方通行は頭がしばらく混乱したままだった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/04(月) 20:05:56.74 ID:aw/upMM0<>以上です
ついに、ついに再会しました
オリキャラの『出雲傭兵』は木原くンの右腕的な存在です
次の投下も三日以内を予定しています<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 20:09:28.38 ID:uRrtwwko<>ここで止めるかよぉぉぉぉぉ!!!
おつ!
次回の投下が楽しみ過ぎて辛い<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 20:29:26.07 ID:gyIQU/co<>木原jrか
おつ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/04(月) 20:35:55.19 ID:3wxXPeco<>木原くンキター
次回が楽しみすぎるぞ、おい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/05(火) 09:33:53.86 ID:ChG4mGM0<>まちくたびれたぜェ
木ィ原くゥゥゥゥン!!!!!
>>422上手いwwww吹いた<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/05(火) 10:15:01.56 ID:46Obxuwo<>うわああああ熱いいいい!!おつおつ!
ほんと頑張ってくだしあ。のんびりでも完結期待してる。
もう欠陥電気の時みたいな思いはしたくないお<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/05(火) 21:58:46.78 ID:ChG4mGM0<>さっきsage忘れたすまぬ
>>1なら完結まで持っていくと信じてる
死 な な い 限 り は な
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/06(水) 00:24:01.09 ID:bjbDttYo<>オリキャラか・・・・<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/06(水) 20:23:35.73 ID:qf4lyNc0<>そろそろ来るかな?<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 00:55:25.65 ID:v8lDtIY0<>ども
また半端な区切りになって申し訳ありませんと先にお詫びします
完結までの道のりは大体頭に入ってます
色々突っ込み所が豊富ですが、許してあげて
それでは続き<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 00:57:02.88 ID:v8lDtIY0<>
―――
夜の陸橋の上、遂に因縁の二人が顔を合わせた。
両者の反応は全く真逆である。
「…………」
目を見開いたまま無言で固まっているのは一方通行。やがて、
「木…原ァ……?」
ようやく言葉が出たが、一方通行はまだ信じられないといった顔だ。
「そぉだよ。俺だよぉぉ。ひははは」
一方で、喜びと殺戮に満ちた極悪人独特の雰囲気を曝け出している木原数多は今、至福の瞬間に酔いしれていた。
「この時を待ちわびたぜぇ。ククク、ずっと……俺はずぅーっと! この瞬間を待ち焦がれてたんだよぉぉ!!!」
「あの日、テメェに地獄へ落とされてからずーっとなぁぁああ!!!! ぎゃーはははははははははぁぁぁ!!!!!」
「…………っ」
木原の馬鹿笑いが脳に響く。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 00:58:06.84 ID:v8lDtIY0<>
「……………」
が、一方通行はその間に頭の整理を終えていた。
間違いない。
こいつが……元凶!!
「……………きひっ」
全ては―――
「そォかそォかァ。そォいう事でしたってかァァァ」
―――繋がった。
「オマエだったのかァァ………。木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!」
確信へと……。
「番外個体を狙ったのはオマエかァァあああああああっっっ!!!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:00:30.39 ID:v8lDtIY0<>
木原の笑い声を掻き消すほどの叫び声をぶつける一方通行。
「ぴんぽーーーん♪」
表情そのままに肯定の言葉をふざけた口調で告げる木原。
息を整えながらも一方通行の目は鋭く木原を捉えていた。
怒りと焦りを無理矢理押し殺し、今度は一方通行が虚勢を張った。
「…………ッ」
すぐに飛び掛かりたい衝動を抑えこんだ。
「……何のため、とか訊くまでもねェよなァ」
そして、ふっと『悪党の笑み』を覗かせて木原に問う。
「ほう? 少しは賢く生きる術を覚えたみてぇだなぁ。手間が省けて助かるわ」
木原の表情もそれに劣りを感じさせない。
一方通行「っつかよォ、オマエ何で生きてンだァ? 何で俺と同じ地面の上に今こォして立ってやがンだよ? 地獄は寂しいから
戻ってきたとか言うつもりなら笑えるぜェェ」
木原「ぎゃはは! 残念ながらテメェが来るまで待ってらんねえよ。いっこうに来やしねえしな」
一方通行「ケッ」
木原「だから迎えに来てやったのさ。もっとも―――」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:01:55.23 ID:v8lDtIY0<>
一方通行「……?」
木原「―――逝くのはテメェひとりだけだがなぁ」ニヤァ
一方通行「………ぷっ」
木原「?」
一方通行「あはははははははっ!!! ぎゃはははははははははァ!!! ぎひひひひひひっ!! ……オイオイ、何だよそりゃあ。
面白れェ。最っ高に面白すぎて涙が止まンねェよ! ……ンだァ? 地獄じゃあ今はそンなジョークが流行ってンのかァ?
あァ? 木原くンよォォ」
木原「…………」
一方通行「無様に地の底にまで落ちたオマエが、今さら俺に何の用よ? 折角生き繋いだ命さえ疎かにしちまう程馬鹿なンですかァ?
大人しく震えながら余生送りゃあちっとは長生きできたかもしンねェってのに、のこのこ俺の前に姿現すたァよ……全く哀れ
すぎて同情しちまうよなァァ」
木原「……ククク」
一方通行「っつー訳だからよォ。もォ一度臨死体験するのがイヤなら今すぐ尻尾巻いて失せてくンねェかなァ? 生憎今はオマエとじゃれ
あう時間も気も持ち合わせてねェンだ。勿論、ズタボロにぐれェはしてやっけどよォ」
木原「言いてえ事はそんだけか? クソガキ」
一方通行「あァン?」
木原「あーあ、っつーか久しぶりに会ったってのにひでぇ言われようだ。やっぱテメェとは“感動のご対面”にならねえらしい」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:05:03.14 ID:v8lDtIY0<>
一方通行「ある意味感動するけどなァ。わざわざ俺のために面倒な手間まで掛けてくれたみたいだしィ……。で、何?
また上の連中に駆り出されでもしたのォ? 本当は折角長引いた寿命を縮めたくないからイヤだっつったン
じゃねェのか?」
木原「上に言われたって部分だけは間違ってねえがな。……今回はノリノリで引き受けたどころじゃねえよ。つーかぁ、
いちいち命令なんざ受けなかったとしてもテメェを始末することに変わりはねえさ」
一方通行「ハッ、懲りねェな。死にかけたぐれェじゃ馬鹿は直らねェことがこれで立証されたってワケだァ」
木原「………」ニヤ
一方通行「……さァて。久々の会話はこンくれェにしとくか。オマエが復活した経緯ってのも是非聞いてやりてェところ
だがよォ、ソイツはまたの機会にってなァ。今、オマエに答えてもらうのはこの二つだ」
木原「………?」
一方通行「どっからオマエが番外個体の情報を得たのか。超電磁砲は今どこに居ンのか。これについて喋ってから地獄でも
どこでも好きな場所に帰ンな」
木原「目星はつけてたってか? ククク、さっすがー。どうやら頭はまだ腐ってねえらしいな。一方通行よぉ」
一方通行「さすがに“オマエ”だとは予想できなかったけどなァ。ナメた真似してくれやがってよォ………。洗いざらい
吐いてもらうぜ?」キッ
木原「まあいいけど、立ち話もなんだ。知りたけりゃあウチ(アジト)でゆっくり聞かせてやんよ」
一方通行「話が全然読めてねェらしいなァ。俺はオマエとのンびりお茶してる時間がねェンだよ」
木原「なに? 今日は帰らせろってか? 馬鹿かよ。テメェに帰る場所なんてあると思ってんのか?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:07:30.05 ID:v8lDtIY0<>
一方通行「残念ながら、今はあるンだよ。オマエよりは数百倍マシな“居場所”ってヤツがなァ」
木原「へぇ……そりゃオメデトさん」
一方通行「ククク……けどよォ、オマエをこのまま放置してくのはちっと気が引けるよなァァ」
木原「……んで、どうすんだ?」
一方通行「ひゃはっ。決まってンだろォ。思考力でも低下したかァ木原くゥン? オマエをこの場で死なない程度に
痛めつけてから吐かせる以外の展開でも望ンでンのかァ?」カチッ
木原「………」
一方通行「オマエの戯言に付き合う気はこれっぽっちもねェ。悪いが速攻で沈めさせてもらうぜェェ!!」
木原「っていうかよ、やる気満々なトコに水さして悪いんだが……」
一方通行「ンだァ? 今さら怖気づいたってかァ? もォ遅せェよ。オラ、どォしたァ? 足掻かねェンなら本当に
終わらせちまうぞォ? 無駄足ご苦労様ーってなァァ!」
木原「いや……別にそれは構わねえんだがよ。いつまでもこんな所でモタモタしてていいのかなぁー。って、疑問に
思っちゃってさぁ」
一方通行「チッ、だからすぐに終わらせるって言ってンだろォが!」
木原「おっ? 俺を瞬殺してる余裕すらあんのか? おー、そりゃすげぇ。やっぱ“最強”は一味違うねぇ」
一方通行「……さっきから何ほざいてやがる? 意味不明な時間稼ぎなンざしてンじゃねェぞ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:09:25.32 ID:v8lDtIY0<>
木原「あれ? 何? もしかしてまぁだ気づいてねえの?」
一方通行「あ……?」
木原「お姫様が待ってるんじゃないのぉ? いいのかなぁ。早く帰んなくて」
一方通行「っっ………!!?」
木原「おいおい。んだよそのツラは? 今までの威勢が一瞬で消えちまったぞおい。何? 顔芸にでもハマってんの?
それとも今度は俺を笑い死にさせようって魂胆かぁ?」ニヤニヤ
一方通行「まさか……オマエ………っ!!」
木原「あっれー? まさかホントに予想外だったぁ? ……ぷっ! ぎゃははははぁ!! 馬っっ鹿じゃねえのぉぉ!?
テメェらの潜伏先なんざすでに割れてんだよ!!」
一方通行「!!!」
木原「早く帰ってやって方がいいんじゃないのかなぁ。でないとぉ―――」
「―――いなくなっちゃうかもよぉ?」ニヤリ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:13:46.03 ID:v8lDtIY0<>
「ッッ……!!?」
一瞬、目の前の男の発言を信じられなかった。
心の奥で想定していた最悪の事態が今、現実となって一方通行に襲い掛かる。
「―――クソったれがァァあああああああ!!!!!」
叫び声と同時に走る。いや、飛ぶと言った方が的確か。
いやらしく笑う木原の横を弾丸と化した一方通行がすれ違う。
その衝撃で生まれた突風によって木原の白衣が激しくめくれるが、彼は笑みを崩すどころか更に醜悪な表情を
作っていた。
「くくっ。走れ走れぇ。精々馬鹿みてぇに必死こいてよぉ」
一方通行の姿はすでに見えなくなっていた。
だが、これさえも木原は予測済みである。一方通行の能力開発に携わっていた過去は伊達ではない。
木原は一方通行の能力どころか人格、人間性すらも完全に把握していた。計画が順調に事を運んでいる最大の
要素は正にそれだ。
「まぁ、どうせもう手遅れだろうけどなぁぁぁ。クククク………」
「ひひひ………ぎゃーはっはっはっは!!! あーははははははははははははぁぁぁ!!!!!」
橋の上では完全に悪魔と化した木原数多の高らかな笑い声だけが木霊していた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:16:59.91 ID:v8lDtIY0<>
―――
「ちっくしょおおおおおお!!!」
風のように駆け抜ける学園都市最強。
(ちくしょおっ!! ちっくしょおお!!)
一番恐れていた事が、
(俺があのクソ野郎にまンまと釣られてアイツを一人にしたばっかりに!!)
ついに起こってしまった。
(一番離れちゃいけねェ時に……何やってンだよ俺はァァ!!)
隠れ家が、見えた。
(頼む!! 無事で……頼むから無事でいてくれ!!)
「―――番外個体ォォおおおおおおおおっ!!!」
走る。そして手を伸ばす。
しかし、どれだけ走っても手を伸ばしても、彼女にはもう決して届かない。
もうすぐそれを嫌と言うほど思い知る事になる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:23:56.36 ID:v8lDtIY0<>
そんな未来など知る由もなく、一方通行は勢いを止めずに突っ込む。
ドォン!! と隠れ家の扉をブチ破る。
「どこだ!? 返事しろォ!!」
電気は点いていなかった。帰りを出迎えてくれたのは正に『静』の空間。
これが、一方通行に突きつけられた現実だった。
「……ッ!」
が、それを認めないとばかりに頭を切り替える。
「クッソォ!!」
靴など脱がずに上がりこみ、リビング、クローゼット、洗面所、二階の客室まで家中ありとあらゆる場所を駆け回る。
(どこだァ!? どこだよォォ!!)
(悪い冗談はやめろよオイ!!)
(出て来いよォ! ……どっかに隠れてンだろォ?)
(俺を脅かそうとしてるだけだよなァ? そォだよなァ!?)
「頼むから返事しろってンだよォォおおお!!!」
勿論、返事など返ってくるはずがなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:25:06.40 ID:v8lDtIY0<>
―――
「……………」
いない。
「…………なンで……だよ……」
番外個体は、どこにも。
「なンで………」
―――なんでアイツがいない―――?
「こンな……」
―――何故アイツが、こんな目に合わなければならない―――?
脱力し、憔悴しきった顔で一方通行は玄関付近で立ち尽くしていた。生気のない人形のような顔で。
と、その時…。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:26:57.62 ID:v8lDtIY0<>
「――あ〜あ、だからあんま寄り道しねえ方がいいって言ったのによぉ」
声が、背後から確かに聞こえた。
「………ッッ!!!」
表情を修羅へと変貌させて振り返る一方通行。その鋭く突き刺さるような視線の先には木原が何食わぬ顔で丁度玄関ドアのあった場所に
立っていた。ポケットに両手を突っ込んだまま、彼の目は「ざまあみろ」と言っていた。
「へー、ここがお前らの“愛の巣”かぁ。地味なトコだなぁおい。ま、つってもどうせ暗部の隠れ家なんだろーけどよ」
見回しながら御託を並べる木原の言葉に一層表情が歪む。
「木ィィ原ァァァ……」
死者の呻きともとれる声が一方通行の口から漏れる。
「アイツをォ……」
「番外個体をどこへやったァァあああああああああ!!!!!」
もはや加減など考える余裕もなく木原へ向けて殴り掛かるように手を伸ばすが……
その手も、届くことはなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:30:29.58 ID:v8lDtIY0<>
「―――!!!」
一方通行の手は何もない空間を掴んだだけだった。
「ッ……!!」
首を振り、突如消えたかに見えた木原の姿を探す一方通行。しかし、目的の声は見当違いな場所から耳に入ってきた。
「ぎひひひ。何その必死な顔? やべぇ、こりゃあホントに面白れぇや」
「!?」
いつの間にか木原の身体は家の中へと移動していた。
「そぉだよ。そのツラが見たかったんだよ。そのためにこんな面倒で普段なら絶対お断りなやり方をとったんだよ俺はぁ」
肉眼では全く捉えきれないほどのスピードで。
一方通行には何が起こったのかすら理解できない。少なくともじっくりと見解できるほど余裕な精神状態ではなかった。
一方通行「……な…!」
木原「こりゃ想像してた以上に痛快だわ。手間と金を惜しんだ甲斐ありってなぁ! ぎゃははははっ!」
一方通行「…………ッッ」ギリッ
木原「あー、笑いすぎて腹痛ぇや。ホントお前最高のリアクションだよ。今なら成仏できるんじゃねえかってぐれぇに気分が
良いぜぇ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:34:27.96 ID:v8lDtIY0<>
ニヤニヤと笑う木原に取り敢えずは当然の疑問をぶつけてみるが、
一方通行「何でここが分かった……?」
木原「企業秘密でぇぇす♪」ヘラヘラ
結果は余計にイライラが増すばかりだった。
一方通行「……この……野郎…っ!!」
木原「はははっ! ムキになっちゃってまぁ。そんなに“あの娘”が大事ーってかぁ?」
一方通行「黙れ!! オマエには関係ねェッ……! オマエのよォな外道になンざァ、何も分かるはずがねェンだよ!!」
木原「寂しいこと言うねぇ。こちとらテメェだけのために借金しまくってまで最高のおもてなしをしてやろうってのによぉ」
一方通行「………アイツを、放せ」
木原「は?」
一方通行「番外個体を解放しろってンだよ!! アイツには何の関係もねェはずだァ!! オマエが殺してェのは俺なンだろォ!?
だったら最初っから俺だけを狙えば良い話だろォがァ!!」
木原「無関係じゃねえんだがな……」フッ
一方通行「あァ!?……どォいう意味だ…?」
木原「冥土の土産代わりに教えてやっから心配すんなって。もっとも今はまだその時じゃねぇ。テメェに今くたばられちゃあまりにも
味気ねえからな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:35:52.29 ID:v8lDtIY0<>
一方通行「今すぐ、無理にでも聞き出してやる。その後はもちろン地獄へお帰りの時間だぜェ。覚悟はできてっかァ?
木原くンよォ」
木原「…………」
一方通行「番外個体も絶対に奪い返す。オマエらのくだらねェ道楽にアイツを巻き込ませンのだけは許さねェぞ」
木原「ふん……」
一方通行「これ以上オマエの好きになンかさせねェッ!!」
木原「意気込むのは勝手だがよぉ、テメェ……まだ自分の立場ってモンが良く理解できてねえらしいな」
一方通行「ンだと……?」
木原「テメェの前にわざわざこうして姿を見せたのが偶然だとはもう思ってねえだろ? つまりそういうこった。テメェも
これから一緒にウチ(アジト)まで来てもらう。もちろん『VIP』待遇でなぁ」
一方通行「ッ!?」
木原「何意外そうな反応してんだよ? どの道助けるために乗り込むつもりだったんだろぉ? よかったなぁぁ。これで
手間が省けるぜぇ?まぁ、お姫様とも直に“会わせて”やっからそう噛み付くな」
一方通行「オマエ……一体何企ンでやがる……?」
木原「教えてもいいが、ソイツも後で“ゆっくり”な……」
一方通行「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:37:07.49 ID:v8lDtIY0<>
一方通行「オマエの提案に、俺が素直に乗ってやるとでも思ってンのか?」
木原「さあどうかねぇ。イヤだってんなら当然力ずくでも引っ張ってくつもりだがな。言っとくがテメェに拒否権はねぇ。『立場を理解しろ』
って言ったのはそういうことよ」
一方通行「きひひっ、………この俺を拉致しようってかァ? 上等じゃねェかよオイ。………イイぜェ、やれるモンなら―――」
木原「ん?」
「―――やってみろやァ!!!」
「!」
直後、一方通行の周囲に黒い瘴気が生まれる。そして――
「おォォおおおおおおおお……」
――背中から解き放たれるように吹き出てくる黒い噴射物。
「がァァああああああああああああっっ!!!!!」
雄叫びと共に噴射物は翼へと形成し、壁を抉る。
番外個体と三日ほど潜伏した『グループ』の隠れ家は、十秒もしない内に瓦礫の山へと姿を変えた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:38:38.06 ID:v8lDtIY0<>
―――
「――ふ〜、危ねえ危ねえ。さすがに家の下敷きはゴメンだわ」
さほど動揺を感じさせない調子で木原は隠れ家だった場所を眺めながら呟いた。
いつの間に脱出したのかはもはや愚問である。
「しっかし、こうも上手く予定通りに進むとはなぁ……順調すぎてさすがの俺も少し怖くなってきたぜ」
一方通行の心理を的確につき、理性を狂わせる。ここまでは完全に木原の術中だ。
「だが、こっからだ。ただ殺すんじゃ面白くねぇ。最高の鳴き声上げてくんなきゃ俺のこの気持ちは晴れそうにねえなぁ」
その時…
「―――ひひひっ……」
「お?」
薄気味悪い声を漏らしながら、瓦礫の下から一方通行が姿を現した。
黒翼は彼自身を覆うように艶かしく、夜の闇の中で一層揺らめいている。
「木ィィ原くゥゥゥン? どォこでーすかァァァ?」
周囲に目を光らせて目標を探す。
「それだよそれ。テメェのその力ぁ、ずっと解明してやりたかったんだ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:40:37.61 ID:v8lDtIY0<>
「あァ?」
声に反応し、瓦礫の上から見下ろす。そこに木原はいた。
「おォ、そこで生きてたかァ。きひっ」
「前と同じケツを踏むのは御免だからなぁ。おかげで逃げんのも必死よ」
「その割りにはずいぶンと涼し気なツラじゃねェか」
「……何故、俺が以前テメェにやられたか教えてやるよ」
「………」
「“知らなかった”。予想ができなかったからさ」
「!」
「だが今は、どうかな?」ニヤ
そこでこの不敵な笑みである。これに一方通行は…
「……勝算があるってかァ? ぎゃはははっ! ソイツァ面白れェ! こりゃちっとは期待できそォだなァ」ニヤ
全く同じ表情で返す。そして―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:43:27.86 ID:v8lDtIY0<>
「そンじゃあ、遠慮なくいかせてもらうぜェ? 木原くンよォォおおおおおおおおっっ!!!!!」
―――ゴングが鳴らされた直後のファイターとばかりに、木原へ向けて翼を勢い良く振り下ろす。
先手必勝。一方通行は早く終わらせるつもりだった。早く木原を倒して番外個体を救出に行かなければならない。
木原如きに無駄な時間を喰ってる場合ではない、と……。
「………ふっ」
対する木原はその場から微動だにせず、怪しく微笑みながら自分に振るわれる翼を見つめるだけだった。
まるで脅威などは微塵も感じていない様子である。
木原のこの余裕は一体何だというのか。
その答えはすぐに明かされる事となる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/07(木) 01:47:18.64 ID:v8lDtIY0<>今日はここまでです
続きは未定ですが、出来次第更新します
いつも読んでくれてありがとう
期待ハズレにならないように最善を尽くします
それではまた<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 01:56:56.19 ID:jMZBp.Q0<>ここで切るとか!!鬼畜!
原作22巻待機で気が気じゃない俺をこれ以上wwktkさせてどうすんだよぉぉぉおぉぉ!!!
乙!
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 02:04:41.64 ID:xlm.peso<>木原くん…
人間じゃねぇ……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 02:09:10.07 ID:S0KsXW6P<>>>451
そりゃ冷蔵庫だし<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 02:16:03.61 ID:aH8.BDU0<>>>447
「前と同じケツを踏むのは御免だからなぁ。おかげで逃げんのも必死よ」
轍じゃねぇんだ。多分勘違いなんだろうケド、ケツのほうが木原くンらしい気がしたわ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 05:58:16.50 ID:2QbqlUAO<>>>452
えっ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 07:16:08.42 ID:6pln0Pco<>おつ!
期待ハズレになる不安なんてとっくに吹き飛んでる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 07:23:38.62 ID:nHqC1WEo<>なんか28巻くらいで木原くン出てくるような気がしてきた<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 08:21:35.41 ID:F90diMAO<>この木原くンそのうち手からエネルギー弾出しそうで困る<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/07(木) 13:46:52.95 ID:xlm.peso<>木原「俺の戦闘力はLevel6だ」
一通「三下のことかァーっ!」
こんな感じか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/08(金) 16:07:03.83 ID:bd1x7bk0<>うおおお!!アニメの木原くンを早く見てみたいぜ!
最後の方だからまだ先なんだろうけど
この先どうなんのか気になりすぐるwwwwwwww
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/09(土) 20:24:19.56 ID:d7gBwcw0<>まだか?
そろそろ体が冷えてきたんだが…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/10/09(土) 20:31:30.12 ID:fxA.DkAO<>話題を変えて申し訳ない
禁書目録二期は今日なのか?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/09(土) 20:33:10.97 ID:b7He1BIo<>今日と言うか今夜だな
日付が変わるから<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/09(土) 21:23:51.33 ID:moNAoIDO<>ななな何時に何ちゃんだっけ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/09(土) 21:28:21.65 ID:ky9sW6Mo<>地方によると思うけど、うちの場合はtvkで26:15〜かな
ってかこれ以上はスレチ、せめて総合か相応しいスレでやろうぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/09(土) 21:39:06.01 ID:d7gBwcw0<>オーケェ、今日の上条さんはちょっとばかしバイオレンスですよォ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/10/09(土) 21:40:14.33 ID:pu6PkAs0<>もうすでに動画は上がってるけどね<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:02:42.59 ID:MY33iTU0<>見たよおおおおおお!!!
opとedやっべえよおおお!!!
一通さんかっけえよおおお!!!
……失礼取り乱したw
続き投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:05:26.37 ID:MY33iTU0<>
瓦礫の上から一方通行は下で憮然と立つ木原に鋭い眼光を放った。
「登場早々で悪りィが、あっという間に片付けてやる! オマエと遊ンでる暇はねェからなァ!」
「おーおー……怖いねぇ。身体が震えてくるわ。ドッチでもいいけどよ、俺はテメェを連れて帰るぜ。たとえズタボロに
してでもな」
「キヒッ……そォーかい。なら、逆にオマエを虫の息にしてやンよォ」
「ふふっ、……そう上手くいくかなぁ?」
天使との死闘を経て更なる高みにまで上りつめた一方通行。
どこか不気味なオーラを放つ木原数多。
「ンじゃ、いくぜェ? 覚悟はできたかァァ? 木原くゥン」
「あぁ、どっからでも掛かって来いよ」
二人の異なる悪党の激突は、一方通行の先手から始まりを告げた。
「おおおァァああああああああああああああああっ!!!!」
黒い刃と化した翼の先端が、木原目がけて一直線に堕ちていく。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:06:48.65 ID:MY33iTU0<>
「………」ニヤ
しかし、木原は薄い笑みを浮かべたまま眉一つ動かさない。
回避行動を一切とろうとしない木原の様子に一方通行は翼を下ろしながらも顔をしかめた。
覚悟を決めたのか? それとも……。
どちらにせよ、もう攻撃は止められないし、止めるつもりもない。
せめて道案内用に喋れる程度の状態まで傷めてやる。
疑問を振り払い、迷いを掻き消した。
そして、翼に更なる威力を込めるべく、自らも飛び上がる。
この行為により、更に落下速度を増した翼が木原に迫る。それでも彼の立ち位置と表情に変化は見られない。
もう今からでは回避に間に合わない距離まで詰めた。
黒い先端が、木原に直撃するまで一秒も掛からない。
何を考えているか知らないが、これで終わりだ。
勝利を確信した一方通行の口元が歪んだ―――。
が…、
「――――うッッ!!!!?」
それが合図となったのか、一方通行の空間に急激な異変が起きた。
翼が、木原の頭上数十センチ付近でピタリと停止する。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:09:09.49 ID:MY33iTU0<>
「うゥ、あァァああ………」
地面に落下したのは黒翼ではなく一方通行だった。木原は彼の異変を予期していたような顔つきである。
やがて、意志とは関係なく、黒い翼は背中から霧が晴れたように消滅していった。
「……っ……っ…」
何故? 何故……!!
突然力を制御できなくなった事に対し、一方通行は驚きを隠せなかった。彼の身体は落下した時のダメージ以外受けていない。
(何だァ!?)
(何が……、どォなってンだァ……ッ!!)
頭に、自身の中にある『自分だけの現実』に、何か異常な物体でも侵入したのか?
一方通行は一瞬そう思ったが、
(イヤ、違う! これはそれ以前の……俺の生み出した空間そのものが何らかの妨害で崩された感じだ!)
(野郎………どォやって…?)
考え事はそこで終わった。木原が声を掛けてくることによって。
「おーい、どうしたぁ? 寸止めプレイかぁぁ? 悪いが全然萌えねえぜー」
いちいち癇に障る言い方と表情で。
「……オマエェェ、何しやがったァ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:11:20.54 ID:MY33iTU0<>
「はぁ? 何のことぉ?」
白々しい答えに一方通行は喚く。
「すっとぼけてンじゃねェぞォォォ!!! オマエが何かしたに決まってンだろォがァァァァ!!!」
しかし、木原の態度は変わらない。
「さぁ? 知らないねぇ。ま、何かしたとしても、それをいちいちテメェに説明してやる義理なんか俺にはねえし」
「………ぐ…」
もっともな理屈に一方通行の口が塞がる。そして反論を述べる前に、木原がようやく動きを見せた。
「さーって、まーた余計な時間とっちまった。いけねえなぁ。悪いクセだぜ全くよぉ。どーも遊びすぎちまう」
手首をパキポキと鳴らし、ゆっくり足を踏み出す。
「んじゃ、もういいか? 手品が終わったんなら今度はコッチからいくぜぇ」フッ…
「―――!!?」
木原の身体が残像だけを残したのは、その宣告とほぼ同時だった。
「ぐァッッ!!??」
刹那。
木原の重い拳が一方通行の顔面に深くめり込んだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:13:00.81 ID:MY33iTU0<>
「ァあああッ!!!」
その一撃で、あっという間に少年の身体は瓦礫の山から飛ばされる。一方通行は隠れ家だった場所の隣りにあった空き地の
ほぼ中央に位置する地面へと身体を叩きつけた。
「ぐふゥ…ッッ!!」
背中から圧迫される衝撃に息ができなくなる。
それから回復する間もない内に木原は倒れて悶える一方通行の側まで降り立っていた。
「何だよ。相変わらず軟弱だなぁー」
「ッッ…の、野……郎ォォッ!!」
嘲笑いの言葉に反応しようと、何とか息を整えて立ち上がろうとするが、それより先に追撃の蹴りがわき腹を捕らえた。
「ゴブゥッ!!?」
今度はさっきほどではないにしろ、数メートルはノーバウンドで飛ばされた。
反射が意味を成さないことは前の戦闘で学習済みだが、木原の身体速度の異常な増幅にはどうしようもない。
何しろ動きが見えないのだ。普通なら木原が空間移動の能力でも持っているのか疑う所だが、よく考えればそれは当てはまら
ない。空間移動は予め脳内で特定した場所へ身体を転移させる能力。決してスピードによるアドバンテージではないのである。
別の空間へ一旦身体を沈め、脳で推定した場所へその空間を越えるのが俗に言うテレポート、つまり三次元(この空間)での
移動とは全く異なる移動法だ。木原の移動する瞬間を見ると、地面には蹴った衝撃、更には残像まで見えている。これが木原
は空間移動の類を使用していない証拠になる訳だ。信じられないだろうが、木原はあくまで超速で移動しているに過ぎない。
数値は測定していないので分かるはずもないが、少なくとも肉眼では捉えられないスピードで。
『「0930」事件』で対立した時の木原も、一方通行の反射最強説を覆したりと、常人ではまず不可能な技をやってのけて
いたが、今の木原はその時以上に人の域を超えていた。『地獄の猟犬』の名を名乗るに相応しい力を持って、彼は一方通行の
前に再び現れたのだ。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 01:13:40.09 ID:nryd9Tso<>ノーバウンドさんキター<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:15:41.15 ID:MY33iTU0<>
だが、それにしてもこの身体能力は異常すぎる。何かの能力者でもない人間にできる事など、“一人を除いて”たかが知れて
いるはずだ。一方通行は地面を転がりながらも身体を起こし、立ち上がりつつそう考えていた。
「はァ……はァ……ッ……なンだよそりゃあ。…とうとう化け物になっちまったってかァ?………シャレになってねェぞ」
悠然と近づいてくる木原に早くものまれかける。木原の姿が心なしか大きく見えた。
「おぉ、まだ元気そうじゃん。こんぐれえで終わってもらっちゃつまらねえからなぁ。つっても、今言ったように時間も押して
んだ。可哀そうだが、このまま一方的に締めさせてもらうぜ」
「………ッ!?」
また、木原の身体が消えた。と思った時には木原がもう目の前にいた。身長で劣る一方通行は目を見開いて木原を見上げ、木原
の方は勝ち誇った顔で一方通行を見下ろしている。
「オラ!」
「――ぐォ……!!」
一方通行の腹に木原の左拳が刺さり、一方通行は内臓が軋む感覚に陥る。
「おっと、まだまだぁ!」
突き上げるように右拳を真上に振った。前のめりになっていた一方通行の顎はこの一撃で跳ね上がり、倒れることを許さなかった。
「がッ……!!」
一方通行の脳が揺らされ、三半規管に一時の障害が生じる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:18:25.12 ID:MY33iTU0<>
しかし、それ以降も木原は回復を許すことなく、左右の拳を一方通行の顔面や腹に遠慮なく叩き込んでいく。
両腕で防御しようにも、速すぎて見えない拳を防ぎきるなど不可能な話だ。
木原の一撃一撃の重さが一方通行の肉体を圧倒的に翻弄する。
正に、袋叩きである。
「ひゃっははははぁ!! どうした一方通行ぁ!? 俺が開発してやったベクトル操作能力で何とかしねえのかぁ?」
「ぐ……うゥ…ッ!」
「それとも、自慢の黒い翼(笑)にもう一度賭けてみるか? もっとも、出せたらの話だがなぁ! ははっ!」
拳を振るいながら問われるが、言葉を返す余力などはもう残っていなかった。
幾度となく死線を潜り、耐性を増したはずの身体が悲鳴を上げている。
そこから反撃のチャンスは一向に掴めず、結局一方的に叩きのめされる以外の展開は訪れなかった。
「がっ……はァ…」
「ひゃっはぁぁ!! オラよ!」
「―――ぶッッ!!!」
グラリとよろめいた所へ放たれた右ストレートをまともに喰らい、ついに一方通行は倒れてしまう。
「………っっ…」
腕に力を入れるが、力が入らない。立ち上がるどころか、起きることさえできない。すでに勝敗は誰が見ても明らかだ。
木原の勝因はスピードだけではない。以前よりも拳の重さが数段増していた。
もはや科学者というか人間の成せる技ではない。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:21:13.30 ID:MY33iTU0<>
(コイツ……本当にあの“木原”か!?)
それでも必死に意識を保ちながら、一方通行はそう考えていた。
復讐心だけで、ここまで強くなれるものなのか?
(前とは、別人みてェだ……クソっ…たれ……ッ)
木原の足音が、耳に入る。
思考がゆっくり薄れていく。
身体が思い通りに動かない。
「クククッ、無様だねぇ。良く似合ってるぜぇ一方通行」
「これで分かったろぉ? テメェがどう足掻こうと、どんな虚勢を張ろうと、テメェ一人が守れるモンなんてたかが知れてるってことがよ。
いよいよテメェも終わりだ」
「しょせんテメェは実験動物として、檻から一生出られねえ様になってんのさ。『学園都市』って名の檻からなぁ」
「飼われてる身分のテメェが飼育員に楯突くのは、そもそもの間違いなんだ。……それが身に染みたってんなら―――」
「―――もう眠っちまえよ。惨めな“最強”くん?」
「――――ッ!!!」
この木原の言葉で、一方通行の閉じかけた目がカッと見開く。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:24:08.43 ID:MY33iTU0<>
(ふざ……けンな)
(終わり…だとォ?)
(まだ……まだ眠れねェ!!)
(俺には、守らなきゃならねェヤツがいる……ッ!)
(ソイツのアホみてェに笑ったツラァ……取り戻すまで、俺は寝る訳にはいかねェンだっ!!!)
一度抜けた力が、再び腕に宿る。
「俺をォ……飼う…だァ?」
「ん?」
「ふざ…けやがって……人に勝手な設定つけてンじゃ……ねェぞ……ッ!!!」グググ
「ほう…」
これに少し驚いた顔をする木原。
『魂は、まだ尽きてはいない』
木原は、悠然と見下しながら確信した。一方通行の戦意はまだ薄れてなどいないと。
自分を凄まじい眼光で睨み上げてくる目を見ただけで。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:26:03.77 ID:MY33iTU0<>
「オーケェ。もう少し、延長してやるよ」
口角を上げて、木原は倒れたまま見事な気迫を見せる一方通行に応えた。
「その偽善面、粉々にしてやりてえし」
あくまで、自分流に。
「テメェのそういう一面、すっげえムシズが走るからなぁぁ!!!」
一方通行の魂を完膚なきまでに圧し折ることで。
まだ立ち上がれていない一方通行の身体に、木原の振り上げた足が迫る。
だが、
「―――木原さん!!」
「!?」
足が、一方通行のわき腹に刺さる寸前で止まった。
木原は足を下ろし、声の飛んできた方角に目を向ける。そこには…
「もう、そこまでで充分かと……。一方通行はすでに意識を失っています。回収に支障がある状態とは思えません」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:27:23.92 ID:MY33iTU0<>
「出雲か…」
出雲傭兵が瓦礫の外で見上げていた。
木原は一方通行に目を戻す。結局立ち上がること叶わずに力尽き、横になったままピクリとも動かない一方通行の姿が確かにあった。
「ここで殺す気ですか? 自分としてはそれも構いませんが、木原さんはそれで満足しますか? この日を待ち焦がれていたのでは
ないのですか? 今、彼を殺してしまっては、“あの計画”を実行に移る意味がなくなりますよ」
「……チッ、わーってるよ」
どこか不貞腐れた感じで一方通行を脇に抱えた木原は、そのまま瓦礫の山の上から軽く飛び降りた。
危なげなく出雲の目の前へ着地し、停めてあった車に一方通行を押し込むと、「帰るぞ」と目だけで合図する。
「木原さんらしくないですね。一時とは言え目的を忘れるなんて……」
運転席に乗った出雲の言葉に木原は、
「しかたねーだろ? 久々の再会につい血と肉が騒いじまったんだよ」
楽しい時間を奪われた子供のような顔でそう返した。
「とにかく、これでついに始めることができるんですから、もっと喜びません?」
「ケッ、当然の結果だっつーの。いちいちハシャイでられっか。それに――」
「?」
「今からハシャイでたんじゃ、後々しんどいぜぇ? “その時”まではできるだけ温存した方がいい。俺もテメェらもよ」ニヤァ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:30:02.75 ID:MY33iTU0<>
「……そう、ですね…」ゾク…
木原の片腕として仕えている出雲ですら、この悪魔の笑みには身震いせざるを得なかった。
「なぁ、一方通行。テメェもせいぜい良いザマで演じてくれよぉ? クックックッ……」
後ろにも声を掛けるが、返事は帰って来ない。
真後ろで眠る一方通行にとって本当の地獄は、ここからがスタートとも言えるだろう。
木原達を乗せた車は、正に地獄の舞台へと向かって真っ直ぐ爆進していた。
―――
第三位の御坂美琴
第一位の一方通行
そして、番外個体……
木原数多がこの三人を手中に収めた頃、人知れぬ場所でひとつの結束が生まれていた。
19:30
上条「白井、お前はここまでにしとけ。後は俺が…」
黒子「寝言は寝てからにしてくださいな。当然、わたくしも参るに決まってます」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:31:19.17 ID:MY33iTU0<>
上条「いや、でもこの先は……」
黒子「怖気づく要素がどこにあるんですの? 貴方が行かないのでしたら、わたくし一人でもよろしくてよ?」
上条「だーかーらぁぁ、女の子がここを通るのは危険だって!」
黒子「ここまで来て戻るなど、風紀委員の名折れですわ!」
上条「……お前、今は謹慎中なんだろ? 腕章外した方が良いんじゃねーのか? 知り合いとかに見られたらマズイんじゃ…」
黒子「お姉様捜しの必需品を外す訳にはいきません。だいたい貴方こそ、ご学友の方と遭遇してはマズイのでは?」
上条「まあ、そうだけど……」
黒子「明日はどうなさいますの?」
上条「いちおう学校には風邪って伝えてるから明日休んでも問題はない」
(……後が怖いけど、非常事態だからな。ってか、そんなこと気にしてる場合じゃねえし)
黒子「では、行きましょうか」
上条「おい、人の話聞いてますかー? ここからは俺一人で行くからお前は先に帰るか待ってるかにしろって!」
黒子「笑えない冗談は好きではありませんの。ほら、置いていきますわよ?」シュン
上条「だぁぁ!? テメェ! 空間移動はずるいぞ! 待てってばコラ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:32:48.01 ID:MY33iTU0<>
二メートル程度の感覚を保ちながら空間移動し、上条の手から逃げる黒子。
やがて上条が無茶をしない事を条件に妥協するのだが、それがこの長い議論に決着がついた瞬間だった。
何故このようなやりとりを交わしていたのかというと、時間は少し前に遡る。
〜〜〜
「情報屋…?」
「ええ。場所もここからそう遠くありませんし、行ってみる価値はあるかと……」
夜の街で聞き込みを続けている時に黒子が成果を上げた。なんでも、今二人のいる歩道橋から割りと近い場所に学園都市の
裏に精通している『情報屋』があるらしい。黒子は協力してくれた通行人から簡単な地図まで書いてもらっていた。
「ここの×印……と思われますわ」
地図を上条にも見えるように広げ、目的の地点と思われる印を指で示した。
上条「っつか、そこって確か……ガラの悪い連中もよく溜まってるっていう裏路地の方じゃねえか」
黒子「そのようですわね。臆されたのでしたら、わたくし一人で構いませんが?」
上条「……上条さんがそこで『じゃあよろしく』って言うとでも思います?」
黒子「いいえ、思えませんね……言ってみただけですの」
上条「むしろ逆だ。俺が一人で行くから、お前は来るな。何が起こるか分かんねーし、お前に何かあったら御坂にも怒られ
ちまうしな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:33:44.55 ID:MY33iTU0<>
黒子「貴方は……わたくしを誰だと思っていますの? スキルアウト如きに恐れをなすなど、言語道断もいいとこですわね」
上条「その過信がいちばん危ねーんだよ。それに、女の子が行っていいような場所じゃないだろ? だからここは俺に任せr」
黒子「何してますの? 場所が割れたのならとっとと向かいますわよ? ……えーと、まずあの信号を右に曲がってそれから…」トコトコ
上条「ってクラァ! 話聞けよオイ!!」
〜〜〜
という訳で、結局黒子と一緒に悪い雰囲気の漂う道をこうして移動するハメになったのである。
「にしても、薄気味悪い所だな……」
僅かな灯りしか届かない裏路地にそんな言葉をふと漏らす上条。
「幸いでしょうか、スキルアウトらしき連中も今はいらっしゃいませんのね。いかにも溜まりそうな場所ではありますが……」
黒子も周囲に目をむけつつそう返した。
「………お」
しばらく路地を進んでいくと、目印の店が見えてきた。地図によると、その隣りの建物が『情報屋』らしいのだが……
「ここで、よろしいんでしょうか……?」
「なんつーか、いかにも怪しい館って感じだな……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:35:32.75 ID:MY33iTU0<>
似たような感想を吐き、目当ての物件を見上げる。
いつまでもそうしてたって始まらない。二人は意を決して中へ入った。
ノックの後にドアを開き、二人は奥へと進んでいく。
「足元暗いから気をつけろよ」
「えぇ。大丈夫ですの」
中は小さな豆電球しかなく、とても明るいとは言えなかった。
それでも壁づたいに手を添えながら何とかぶつからずに先へ進む。
「すいませーん。誰かいませんかー?」
入る時にも一応掛けた声をもう一度だけ飛ばしてみるが、最初と同じで反応はなかった。
「まさか……無人ですの?」
「いや、小っちゃいけど電気もあるんだし……きっと誰かいるはずだ」
不安が少し襲ってきたのか、弱気な黒子の声に上条がポジティブなセリフを吐く。
やがて、進む二人の前に大きなカーテンが現れた。
「っ!」
「これは……!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:37:46.97 ID:MY33iTU0<>
情報屋というよりは占い屋に近い印象を二人は受けた。
「あのー……誰かいませんかぁ?」
上条の呼びかけに、やっとカーテンの奥から返事が来る。
「いらっしゃい」
「!!」
低く、営業向きとは言えない声だが、引き腰になってる暇がない二人はカーテンの奥に話を続ける。
黒子「情報屋とお伺いして参りました。……ここで間違いはございませんか?」
情報屋「あぁ、ここで合ってるよ。で、何の情報が欲しいんだい?」
上条「御坂美琴の行方が知りたいんですけど…」
情報屋「……最近噂の超電磁砲か。今行方不明中の」
黒子「何か知ってますの!?」
情報屋「いや、私にも今のところ詳細が届いていない」
上条「ッ!………そうですか…」
情報屋「君達は彼女の知人かい?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:39:45.75 ID:MY33iTU0<>
黒子「わたくしが最も憧れている先輩ですわ。どんな情報でも構いませんの。お金なら幾らでも用意してみせますので、
どうか……」
情報屋「やめた方がいい」
上条・黒子「―――!?」
情報屋「見たところ、君達は暗部の人間じゃないだろう?」
上条「暗部……」
黒子「………」
情報屋「ここに来る客は殆どが暗部所属の人間だ。裏に関する情報は大抵私の耳に入ってくる。だが、この件に関しては
……これがどういう意味かわかるか?」
黒子「わかりかねます……」
情報屋「ならハッキリ伝えておこう。この件は君達が首を突っ込んで良い次元ではない」
上条「っ…!」
情報屋「心配な気持ちは察するが、諦めることを勧める」
黒子「な、何故ですの……?」
情報屋「私にも分からない情報だからだ。よほどの機密でない限りは私の元へ情報が届くことになっている。しかし、この
件については一切、何ひとつ入って来ないのだ。相当なバックがついていると思われる。もしかしたら学園都市の
トップそのものが直接絡んでいるかもしれん」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:43:14.97 ID:MY33iTU0<>
上条「トップって……何でだよ!? 御坂が一体何したって言うんだ!?」
情報屋「……それは分からんが、私に情報が来ないのはそういうことだと思っていい。私でも知る事が許されない
ほどの大きなヤマか、あるいは情報提供の関係者がすでに消されたか……どちらにしろ、暗部の日常範囲外
には違いないだろう」
上条「………あんたの言ってる意味が全く分からない訳じゃないけど……アイツは超能力者とはいえ、それ以外は
ただの中学生なんだぞ!? なのに……そんなヤバイ事に何で、……何でアイツが巻き込まれなくちゃいけ
ないんだよ!!」
黒子「上条さん! 落ち着いてくださいまし!」
上条「!……あ……わ、悪い」
情報屋「君は、彼女の恋人か何かかい?」
上条「へ?」
黒子「」ピキッ
上条「い、いや。アイツはそんなんじゃ……友達っていうか…」
情報屋「そうか……。力になれなくてすまないな」
上条「そ、そんな……俺の方こそ、急に怒鳴っちゃって…」
情報屋「構わんよ。だが、君達のためにもう一度忠告しておく。この件には関わらない方が賢明だ。ただでは済まなくなる恐れがある」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:44:09.62 ID:MY33iTU0<>
黒子「ご忠告感謝致しますわ……」
上条「……ありがとう」
二人は一言礼を告げて情報屋を後にした。
結局分かったのは、美琴が学園都市の中でもかなり危ない事件に巻き込まれてしまっているかもしれない。という事だけである。
情報屋の話が本当だとしたら、やはり事態は只事ではないどころか、一刻の猶予すらないのかもしれない。
しかし、今の自分達には手掛かりを捜す以外にできる事などない。上条も黒子も、表情から悔しさが滲み出ていた。
時間も時間なので今日はここまでにし、明日の捜索に備えてひとまず今日は帰って休む事にした。
その後は黒子を寮まで送り、上条もそのまま帰宅する。本当は自分一人でも捜索を続行したいのだが、帰りを待っている同居人シスター、
インデックスを放っておく訳にも行かなかった。以前のように一晩中ひとりにさせておく気にもなれない。
黒子は別れる最後まで諦めの空気を出さなかった。彼女もすでに覚悟を決めているようだ。本気で暗部の世界だろうがどこだろうが飛び
込んで行きかねない。上条はそんな黒子の様子と美琴の安否を気遣いながらも帰路に着いた。
寮のドアを開けた途端に飛んで来た大口を紙一重で避けつつ今後の事について整理した。
実際のところ、情報屋に言われた事自体は気にしていない。ヤバイ件に首を突っ込むのは彼にとって大した問題ではないから。もっと
危ないであろう事件にも遭遇しているし、死線も相応に掻い潜ってきた。
この先にどれほどの事態が待っていようとも、どんな人間が関わっていようとも、捜索をやめるつもりは微塵もない。
理由はただ一つ、『彼女が心配だから。助けたいから』。それだけと言えばそこまでだが、上条にとってはそれだけで充分だ。
結局、いつもの上条らしさで落ち着いたところで、頭に重みが増し、頭部の中心に歯が刺さる。ただ、こればかりはあんまり放置して
いると後々己の命にも関わってくるので、疎かにしない程度に美琴を捜そう! と、意気込んだ直後、上条は出血多量により敢え無く
その場で失神した。
「朝からずーっと私を放っておくなんてひどいんだよ!」という恨みの満ちた抗議に耳を痛めながら。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 01:46:12.26 ID:FzWZlKYo<>上条さんここで退場か…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 01:48:01.38 ID:MY33iTU0<>取り敢えずここまでです
続きはまた出来次第参ります
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 01:54:54.68 ID:jRbhHNIo<>木原くンはハードテーピングでもしてんのか?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 02:04:10.51 ID:QkqSj5Yo<>乙
木原君と上条さんの絡ませ方って難しそうだなー<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 02:05:27.99 ID:9/50PbUo<>のんきに説教なんかかましたらその隙に眉間に鉛玉ぶちこまれて終わりそう<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 02:36:21.23 ID:p5QWb3k0<>木原くンに説教は無意味だろうな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 02:36:32.43 ID:25KKdB2o<>上条じゃ木原クンに勝てないからな・・・・、上条は上条で出来ることをやってくれるだろう<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/10(日) 02:37:43.32 ID:MY33iTU0<>あ、いけね。ミスった
『一方通行は木原の猛攻からいったん離れるため、瓦礫の上に跳ぶが、あっさり追いつかれてしまう』って文を>>474のどこかに追加でお願いします
すっかり忘れてました。すいません<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 03:24:05.93 ID:FzWZlKYo<>幻想通行vs木原師弟
になりそうだな
そげぶミサイルかなやっぱ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 00:13:28.93 ID:jIGgiiko<>>>497
右肘のファニーボーンを押すと右手が音速の3倍で発射されるやつ?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 00:14:43.72 ID:aSKBN2Io<>>>498
その上条さんに勝てる奴まず居ないからwwwwwwww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 01:07:02.36 ID:Hsq.UkAO<>多分この木原くンエネルギー弾どころかどこぞの黒い医者(趣味殺人)と戦えるだろ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 04:02:17.84 ID:GLw8aTAo<>>>500
それはあれか一人かけたら間抜けになってしまうやつにでてくるあの人かww
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 09:31:16.93 ID:Hsq.UkAO<>>>501
チート世界で自分が想像できないことは全部無効にするお医者様です<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:24:09.42 ID:qw5M2ok0<>こんばんは
少ないですが投下します
最後ちょっと小ネタ入ります<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:25:38.43 ID:qw5M2ok0<>
―――
〜地獄の猟犬アジト〜
木原数多は地下に位置する駐車場で停められた車から運転手の出雲と共に降りた。
そして後部座席から未だ気を失っている一方通行を荷物のように抱えて歩き出す。
通路を渡っている途中、隣りを歩く出雲が遅めの称賛をしてきた。
「けど、さすがですね。相手は仮にも学園都市最強と謳われる能力者なのに、全くの無傷とは……おそれいりました」
一方通行を片手に木原も足を止めないまま会話に応じる。
「ったりめーだ。コイツの能力は俺が開発してやったんだぜ? 能力者っつっても所詮はガキよ。種の割れた力なんざぁ、
脅威でも何でもねえんだ」
「……確かに。ですが、彼には“あの力”があったハズ。それについてはどう対処を…?」
納得の後に新たな疑問を投げかけてきた。実はコッチの方が気になるのだ。
一方通行の力事態は木原から聞いた程度の知識を得ているが、対策法までは掌握していない。一番信用を置いている部下の
出雲でも、計画の全貌を木原は伝えていなかった。これはただ単に忠実な駒しか求めない木原の意思だ。
使えるか使えないか、それだけが部下への信頼度に繋がる以上、全てを話す話さないにこだわりはしない。
部下は自分の言った通りに動けば良い。それ以上は望まない。
これはボスの立場にいる木原の『信念』のようなものである。部下はあくまで自分に従う『駒』だ。使えなければ切り捨て
るし、有能ならば責任を持って相応の業務に就かせる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:27:13.34 ID:qw5M2ok0<>
これが猟犬部隊時代からのスタイルだし、このやり方を変えるつもりもない。最初は出雲のことを『組織の中では最も有能』
程度にしか思っていなかったのだが、どうも木原への忠誠心が強いせいか、自分とやり方が似てきた気がする。
しかも最近では格闘技に凝っているらしく、よく稽古の相手をする機会が多い(科学者だよな? お前ら…)。
そんなこともあって、今ではすっかり出雲を弟子のように可愛がっている訳だが、やはり彼にも知らない事はまだある。
訊かれた事について木原は素直に明かしてやった。
「あぁ、ヤツの新しいAIM拡散力場か。……これを使ったのさ」
そう言って木原が白衣から取り出したのは、使い捨てカメラほどの大きさをした正体不明の機械だった。
「何です? それ……」
初めて見た妙な物体に出雲は当然尋ねる。
「『AIMジャマー・携帯版』だ。一方通行が新たに操作し始めたAIM拡散力場にも干渉できるほどの強力なヤツよ」
「!!」
またサラッととんでもないネタ明かしに出雲の顔が仰天する。
「あれ? お前にも言ってなかったっけか?」
「そんなのがあったなんて聞いてませんよ!!」
「あっははー、悪い悪い♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:28:48.53 ID:qw5M2ok0<>
「………」
誤魔化すような笑顔に出雲はムスッしながらも追求する。
「……AIMジャマーはAIM拡散力場を乱反射させることによって自分で自分の能力に干渉させ、力を妨害する代物ですが、
照準を狂わせて暴走を誘発させるだけの効果しかないはずですよ? 今の一方通行によく通用しましたね……」
どこか呆れた感じだが、木原は特に気にせず答えた。
「コイツが携帯できる時点でそんな突っ込みはすでに愚問だと思わねえか? コイツもキャパシティダウン装置と同様、
学園都市が誇る『最新技術(ニュータイプ)』の結晶よ」
それどころか少し調子の良い笑顔まで向けてくる。ここまでご機嫌な木原を見るのも珍しい…。と出雲は思っていた。
今なら色々訊いても問題ないな。と判断したのか、更に質問を続ける。
「それ……一体いくらしたんですか?」
「ソイツは、訊くな………訊かないでくれ…」ズーン
あ、少し沈んだ。これもやっぱり借金地獄の肩をしっかりと担いでいたんだ。と、確信して訊いた事を後悔しながらも、
強引に話題を変えてみた。
「…あ! そ、そう言えば! 確かこれって凄く電気とか演算能力とか使うんですよね? それらはどうやって?」
「………テメェは馬鹿か? 何のための超電磁砲だと思ってる?」
「あ……」
どうやら墓穴を掘ってしまったらしい。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:29:48.86 ID:qw5M2ok0<>
上手く話を逸らすつもりが、結局は自分の首を絞めるだけの結果になってしまって出雲はハッとするが、もう遅かった。
「普通に考えれば猿でも分かんだろ。超電磁砲を攫ったのはこのためでもあるんだよ。……おいおい、頼むぜぇ? 今のは
ちっとお前らしくなかったな」
「す…すみま……いえ。何でも」
見苦しく頭を下げられるのを木原が嫌うことを思い出し、慌てて取り繕う。
せっかく上機嫌だったのにこれ以上余計な言葉はマズイ。と、どこか必死な顔の出雲を見かねたのか、木原はそこで勘弁して
やろうかと、溜息交じりに口を開いた。
「ハァ……もういい。お前にはまたすぐ任務に就いてもらうから、今の内に休んでろ」
「は、はい。では……」ソソクサ
そうして出雲と別れた後、木原は一方通行を抱えたまま“あの部屋”へと向かった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:31:07.31 ID:qw5M2ok0<>
―――
「…うぅぅ……グス」
閉じ込められてから早くも二時間以上が経つ。
御坂美琴はカプセル(小型ドーム)内からの脱出を諦め、座席で膝を抱えて涙を拭っていた。
木原の狂喜する様は見えたが声は届かなかったため、彼等がどこへ出かけたのか明白ではないが大方の予想はできる。
とにかく木原の思惑通りに進まないよう、ここから願うしかなかった。
そんな彼女が今考えているのは、先ほど木原から告げられた思いもよらぬ事実だった。
「アクセラレータとラストオーダー……ミサカワースト……」
何度思い返しても、ピンと来ない。あの一方通行が今や妹達を守る側として立っていることが。
「アイツの言ったことがもし本当なら……私は……」
どうしたら良い?
許す?
(……だめよ。それじゃあ今までアイツに殺されていった“あの子達”は……)
しかし、
(今のアイツが以前の一方通行と違って、“今生きてる子達”を守ろうとしてくれてるんなら……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:33:32.98 ID:qw5M2ok0<>
(私は、アクセラレータにつく…)
(そうよ! これと過去の事とは別の話……)
(今、私の敵は……アクセラレータじゃない)
(―――木原、数多……)
「おーおー、すっかりしおらしくなっちまって」
その木原数多がいつの間にか横にいた。
だが、美琴がそれに気づいたのは鍵が解除された音を聞いてからだった。
「っ…!!」
「オラ、ご苦労だったな。お嬢様よぉ」
ドアが開かれ、木原が手を差し出して来るが、
「………」
「誰がそんな汚い手を掴むものか!」と眼光で伝える。
「ハッ、こりゃ完全に嫌われたか……まぁいいけどよ」
手を引っ込めて頭をかき、ドアを開けたままカプセルから離れる木原。
後から美琴も出ようと捩るのだが、カプセルから身を乗り出してすぐに驚愕の光景を目の当たりにした。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:35:56.70 ID:qw5M2ok0<>
「………!!!」
美琴の視線が、一箇所に釘付けとなる。
少し離れた場所に立っている木原の、ちょうど足元に……。
「アクセラ…レータ……!!??」
信じられない! といった口調で慄く。……無理もない。
自分よりも遥かに上の力を持っているあの一方通行が。
この街に住む二百三十万人の中で頂点に君臨するあの一方通行が。
まるで無謀な喧嘩をした後のチンピラみたいに床で無様に寝転がっているのだから。
「そんな………嘘…でしょ……!?」
身体はボロボロで、意識も完全に失っている。
学園都市最強の見るも無惨なその姿に、美琴は言葉を失ってしまった。
「……っ……っ…」
木原はそんな一方通行をゴミでも見るような目で一瞥すると、顔を上げて美琴に笑い掛ける。
「ククッ、どぉだ? 最高の気分だろぉ? 一応だが、テメェの恨みも込めといてやったぜぇ。なあに、感謝の言葉なら
別にいらねえよ」
「………っ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:37:44.46 ID:qw5M2ok0<>
「お、なんならテメェも一発殴っとくか? チャンスだぜ? 見ての通り、今なら絶賛グロッキー中だから反射もされねえ
だろぉしなぁ」
ぎゃははは! と声を上げ、一方通行を爪先で陵辱するように弄ぶ木原に、美琴はとうとう感情を爆発させる。
「―――やめてっっ!!! どうして……ッ!! どうしてこんな事すんのよ!!!」
「…んぁ?」
美琴の言葉に木原は怪訝な顔を作る。
「何喚いてんだよ? お前もコイツが憎かったんだろ? もっと嬉しそうにするかと思ったんだがな」
「ふざけないで!! ……いくら何でも……こんなの、ひどすぎる…」
ギリギリと拳を握り締めて木原に憎悪の顔を見せるが、木原は心外とでも言いたげな顔を崩さない。
もっとも、美琴の性格は事前調査されているせいもあり、これも木原は予測できていた。その上で演出として楽しんで
いるだけである。もっと分かりやすく言えば、美琴の反応で楽しんでいるだけなのだ。
「チッ、んだよ……せっかくお前の恨みも晴らしてやったってのに。あーあ、何かまたイライラしてきたぜぇぇ」
狡猾な木原の演技は続く。
「お、ちょうどここに良い解消道具があるじゃねえか。コイツにこのイライラをぶつけちゃおっかなー♪」
「―――!!?」
一方通行の頭の上に足を翳す。勢い良く踏み潰す寸前の木原に美琴は過剰なほどの反応を見せた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:40:39.59 ID:qw5M2ok0<>
「やめなさいよっ!!! もう……ソイツ、意識ないじゃない!! それ以上やったらホントに……ッ」
「死ぬだろうな」ニヤァ
木原の不気味な目から顔を下に逸らしつつも、美琴は
「………やめてよ……」
と、目を潤ませて懇願するが、木原は内心で面白がるだけである。要するに無駄なはずの申し出なのだが…。
「クククッ、そーだなぁ。今日は充分やったし、続きは明日にしときますか」スッ
意外にもあっさりと足を下ろす木原。しかし、その言葉に別の意味で驚いた美琴は慌てて問う。
美琴「―――ち、ちょっと!! 明日ってどういう事!?」
木原「あぁ? 明日は明日だよ。何言ってんのお前」
美琴「アンタ……一方通行をどうするつもり…? まさか本当に殺すんじゃ……」
木原「ん? まだ詳しく教えてなかったっけ?」
美琴「聞いてないわよ!!」
木原「あー、すまんすまん。さっき部下にも同じような感じで怒られちまったってのに、どーもウッカリしちまったわ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:42:00.24 ID:qw5M2ok0<>
美琴「…………」
木原「何てことはねぇ。これから一週間かけてコイツの精神と肉体を徹底的に痛めつけ、最終的にはゴミクズみてぇに
焼却処分してやるだけよ」
美琴「なっ!!??」
木原「俺にとっちゃ天国、コイツにとっちゃ地獄の一週間の始まりーってなぁ! まぁ、少なくとも一週間は生かすのが
確約されてっから、そう心配しなさんな」
美琴「……ッ」
木原「お前もその間、良い子にしてたらちったぁマシに扱ってやるよ。ククク…」
美琴「ふ…ふざけてんじゃないわよアンタッッ!!」
木原「ん?」
美琴「そんな勝手が許されると思うの!? いったい何考えてんのよ!? 今さらだけど、言わせてもらうわ………。
正気の沙汰じゃないっ!! アンタ絶対頭おかしいわよ!!」
木原「ふーん、で?」
美琴「真面目に聞け!! ………アンタ、本気なの? ここまでやったんなら、もうそれで充分じゃない……。何も
殺さなくたっていいじゃないの!! 今からなら……まだ間に合うわよ。…お願いだから………お願いだから
もうやめてよっっ!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:43:41.49 ID:qw5M2ok0<>
木原「お前に指図される覚えはねぇ。それにこれはもう決まってる事なんだよ。残念だが変更は許されねえんだなー」
美琴「ッ!!…………嘘……よね……?」
木原「だから、大マジだって。理解力の乏しいガキだなぁ………そろそろウンザリしてきたぜ」
美琴「私はアンタにウンザリよっ!! それ……本気で言ってんだとしたら許さない!! …絶対に止めてやるっ!!
死んだって止めてやるんだからっっ!!!」
木原「あー……もうつっこんでやんのも面倒だ。好きにしてくれぇ」
美琴「えぇ、そうさせてもらうわよ!! アンタの良い様になんか……ッ!!」
木原「ハァ………おい。ピーピーうるせえから黙らせろ。耳障りで仕方ねえよ」
部下達『―――はっ!』
どこからともなく現れた部下達によって、呆気なく取り押さえられる美琴。
全力で暴れもがくものの、能力が使えない今の彼女では抵抗など無に等しかった。
美琴「!? あぁ…っ…ちょ! は、離せぇ!! 離しなさいよっ!! 離せって言ってんでしょーがぁぁああ!!!」
虚しく響く声。木原はもうコチラに目を向けてはいなかった。
美琴「このぉ……卑怯者っ!!!」
木原「ふん、何とでもほざけ。小娘ひとりに何ができるってんだか………。笑わせやがる」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:44:49.88 ID:qw5M2ok0<>
美琴「くぅ……っ!」
悔しさで唇を噛み千切りそうになるが、木原は無情にも立ち去ろうと扉へ足を向ける。
美琴「待ちなさいよ…………」
木原「…………」カツン カツン
美琴「待てぇ……ッ…!!」
木原「…………」カツン カツン
美琴「――――待てっつってんのよ!!!!!」
木原の足は止まらない。
追いかけようにも身体を押さえつけられて口以外は動かせない。
そしていくら叫んでも、木原にとっては負け犬の遠吠え程度にしか思われていないのが背中から伝わってくる。
かつてないほどの屈辱感を味わい、美琴の目からは涙が滲んだ。
「最低………アンタ、最低よ」
「アンタなんか、人間じゃない……」
「アンタ………腐ってるわ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:46:12.21 ID:qw5M2ok0<>
遠ざかる背中に精一杯の罵声を浴びせるが、木原は部屋を出て行く直前に一度だけ振り返り、
「カカカッ、たくさんの褒め言葉をありがとうよ」
と、言っただけだった。その後に聞こえたドアの閉まる音が、美琴の胸を痛めつける。後に残ったのは、『絶望』
だけだった。
「………ううう……ぐぅ…ッッ……ひぃん…」
しばらくの間、室内には取り押さえられた少女の悲痛な嗚咽だけが響いていた。
(お願い………アイツを止めて。もう、“アンタ”しかいないの……)
(助けて……助けてよ……っ)
(……助けてっっ!!!)
美琴の心に浮かぶのは、あの少年。彼女にとって最後の希望。
正直言って、あまりにも無謀で確率の低い小さな可能性かもしれない。
だが…。
(信じてる……。それでも、アンタはきっと来てくれるって、信じてるから………)
それが誰の事をさすのかは、もう言うまでもない。
一方通行とは別の個室に隔離されながらも、美琴は心中で抱き続けている密かな希望を捨てないでいた。
「“人間じゃない”……か」
「ま、あながち間違っちゃいねえがなぁ」
美琴と一方通行を残したまま部屋を後にし、通路を歩いていた木原はボソリと呟いた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:47:34.04 ID:qw5M2ok0<>
―――
翌朝・上条宅
目を覚ましてすぐに着信が入った。
昨日番号を交換したばかりの白井黒子からである。
今日は本格的に御坂美琴の行方を掴むため、協力者を引き入れたとの事だった。
黒子は上条に風紀委員第一七七支部へ来るよう指示して通話を切った。
(風紀委員って……大丈夫なのか?)
謹慎処分中の身分である彼女を案ずるが、それも直接訊けば良いか。と上条は判断する。
上条はインデックスの食事を作り置きし、なおかつ学校に仮病連絡を終えてから寮を出た。
「一七七支部って、どこだっけ?」
寮を出て数秒で気づいた。
「もしもし、白井? あのさ…」
黒子に詳しい場所を折り返しコールで聞いて移動している最中だった。
「ん…?」
コチラに向かって少女が一人で歩いて来る。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:48:29.04 ID:qw5M2ok0<>
「!」
上条はその少女とは顔見知りだった。
「打ち止め? こんな朝早くに何してんだ…?」
やがて、打ち止めは上条のすぐ側までやって来た。
「よう、打ち止め。……?」
様子が変だ。
「…………」
彼女にいつもの元気がない。
「おい、どうしたんだ? 何かあったのか?」
真剣な態度で尋ねる上条に、打ち止めは俯いていた顔を上げて――
「あの人が……いないの」
――と、上条に告げた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:52:51.53 ID:qw5M2ok0<>
小ネタ(1レス) 〜とある科学者と幻想殺し〜
上条「……ふざけんなよ。何でお前にそんな決定権があるんだ?」
木原「……」
上条「復讐なんて、結局その後に残るのは虚無感だけなんじゃねえのか? お前だってそれに気づいてるんじゃないのか!?」
木原「………」
上条「もうこんなこと…やめろよ。御坂には何の関係もないんだろ?」
上条「無関係な人間巻き込んで、過去の鬱憤を晴らすためだけに生きる。……あんたはそれで本当に満足なのかよ!! この先も
そうやって生きていくのかよ!?」
上条「違うよな……。本当は、笑って生きたいはずだ。復讐心に憑りつかれて自分を見失ってるだけだよな!?」
上条「もう終わりにしようぜ…」
上条「薄汚い闇なんか、捨てちまえよ。その方がきっと楽しいはずだ」
上条「それでも……それでもまだ、お前がこんなくだらねえ悲劇を繰り返すって言うのなら……」
上条「まずは―――そのふざけた幻想をブチk」
木原「うるせぇ」パァン!
上条「あっ…」パタリ
木原「いきなりやって来て何語り出してんだコイツ? 意味わかんねぇっつーの」
上条「」ドクドク
木原「おい、目障りだから捨ててこい」
部下「へいっ」
上条「…」チーン<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/11(月) 20:54:17.68 ID:qw5M2ok0<>……はい、という訳で以上!
最後の1レスは単なる気分転換です
>>493さん
ネタ提供ありがとうございました
続きはまた後日<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 21:08:09.27 ID:c44vZLMo<>・・・なんだろう、最後の一レスですっきりした<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 21:44:36.26 ID:3XQtppgo<>今の上条さんならこの後「効かねえぞ…」とか言いながら復活しそうだなw<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/11(月) 22:50:20.50 ID:pszjmg6o<>これが本当の現実だよな…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/12(火) 01:48:27.44 ID:IotQeVc0<>おつおつ!
木原くンマジ鬼畜だな、一通さんどうなるの…とか心配しつつ
木原くンによる一週間いたぶりタイムに期待せざるを得ない俺ドS<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/12(火) 02:05:45.28 ID:z7jPbRAo<>ああ・・・最後の1レスを本編でみれたらどんだけいいか・・・<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/12(火) 02:46:33.32 ID:IotQeVc0<>>>525
あくまで「説教中に攻撃くらっちゃうネタ」だろ
それ以上の上条さんアンチをやりたいなら別のところでどうぞ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/12(火) 07:33:01.45 ID:EkHqDxoo<>上条さんの説教には相手を弱体化させる効果があるが木原くンには効かないな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/12(火) 11:50:40.21 ID:uKa3kKs0<>シリアスにこういうオアシス的な小ネタをはさんでくれる>>1のサービス精神に
感服しますたwwww
コーラ返してください<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/12(火) 22:34:30.18 ID:z7jPbRAo<>>>526
誰も本編のシリアスムードのときにいなんて言ってないだろ
ギャグパートのときでいいんでそのネタを本編で見てみたいんだよ
つーかアンチだと思ったんなら反応せずにほっとけよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/13(水) 06:07:58.60 ID:zqNL8aE0<>>>529
526だけど、一晩明けてみて見たらひどい言いがかりなレスしてるな俺
最近何かと信者アンチで過敏になってた。本当にすまん
ネタをネタとして受け取れなかったのは俺のほうだな
せっかくの良スレの雰囲気を悪くしてしまって、>>1と>>529、そしてみんなに申し訳ない
以降何事もなかったように再開して欲しい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/13(水) 08:29:26.44 ID:x61G9Ok0<>まあまあ、>>1はちゃんと投下する前に「ネタ」って明言してるんだし、双方おさえて
>>530もこうして謝ってるんだし、>>529も水に流してやんなさいな
後は黙って>>1が来るのを待とうじゃまいか
続き待ってるぞ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/13(水) 08:55:21.91 ID:/8BaPkAO<>原作がいい加減過ぎて二次でどれだけふざけた理論展開してもあまり違和感が湧かないのが凄いな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/13(水) 23:30:28.27 ID:Xcv0blw0<>worstたンの髪モフモフしたいォ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/14(木) 07:48:47.63 ID:9VkYPgDO<>>>533
一通さん何やってんすか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/20(水) 18:34:14.89 ID:LKzBUX60<>復活だあああああああ!!!
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:41:24.53 ID:hEmZgqY0<>こんばんは
復旧したようですね
おかげさまで書き溜めかなり進みました
とりあえず区切りは決めたのでそこまで投下したいと思います<>
◆8NBuQ4l6uQ<>saga !red_res<>2010/10/21(木) 00:43:22.67 ID:hEmZgqY0<>
※この先、グロ表現及び陵辱シーンを含みます
苦手な方はスルーでお願いします
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:44:38.65 ID:hEmZgqY0<>
―――
打ち止めはいつもの元気さを潜めた口調で上条に告げる。
「あの人が、どこにもいないの……ってミサカはミサカは不安な心中を吐露してみる…」
「!?」
不安そうな顔で縋るような視線を向けてくる小さな少女。
それは迷子になって母親を探す子供の表情に酷似していた。
「………あの人って、一方通行のことだよな?」
慎重な口ぶりで喋る上条に打ち止めはコクンと頷く。
「……ミサカ、テレビでお姉さまのニュース見てびっくりして、あの人に電話したの。けど、あの人はずっと電話に
出なくて………。それで、さっきあの人が住んでるトコまで押しかけてみたんだけど、誰もいなくて………メールも
返してくれないし、電話も返して来ないし。…って、ミサカはミサカは不安な気持ちが大きくなって、途方に暮れて
いたんだけど…」
胸を両手で押さえながら心配そうな声を漏らし始めた打ち止めの姿に上条は言葉を紡げない。
「…………」
一方通行とは異国の地、ロシア以降顔を合わせていない。ついこの前に打ち止めと遭遇した時はケンカするほど仲が
良い様子で微笑ましくさえ思えた。ところが今はその一方通行の方が全くの音信不通だと言う。
上条はそれを聞いた瞬間から美琴が行方を眩ました件との関係性を脳内で探ってみるが、話が見えていない今の段階
で決定づけるのはまだ難しかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:46:48.02 ID:hEmZgqY0<>
打ち止め「あの人……この前もどこか様子がおかしかったし、何かあったんじゃないかって、ミサカは……ミサカは心配で…」
上条「様子がおかしかったって…?」
少女のデリケートな心を労わるようにあくまで優しく問う。
打ち止め「あの人事態はいつもと同じだったんだけど、何か雰囲気が違ってたの。……なんていうか、何かを背負って
るっていうか……ってミサカはミサカは曖昧ながらも答えてみたり」
上条「雰囲気…」
打ち止め「顔つきも、どこか戦いに身を潜めているような感じで……周囲にさりげなく警戒心を少し出してたりしてた
様な気がするの。ってミサカはミサカは思い返してみる」
上条「…………」
打ち止め「最後は、ミサカを優しい目で見てたし……。その時は気にしてなかったんだけど、今思うとやっぱり不思議
だったり…」
上条「そうか……」
打ち止め「あの人、無茶なことはもうしないってミサカと約束したんだよ。けど、ひょっとしたらまた……」
上条「……っ」
打ち止め「危険なことに……足を踏み入れてるかも……ミサカを置いて、あの人は……」ジワァ
目を潤ませ始めた打ち止めに上条は沈黙を解いた。
上条「打ち止め。……大丈夫さ。お前だって知ってるだろ? 一方通行はお前を置いてどっか行ったりしないって」
打ち止め「でもぉ……」ウルウル<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:48:55.20 ID:hEmZgqY0<>
上条「…きっと今は色々忙しいだけなんだよ。少ししたら必ずお前に会いに来るさ」
打ち止め「…………」
上条「一方通行は打ち止めを命賭けで守りたいって思ってる。それは俺が実際にこの目で見たんだから間違いない」
打ち止め「本当……? あの人、危ない目に合ってたり…してないかなぁ……」
上条「あぁ、アイツなら……絶対に大丈夫だ。お前に黙ってどっか行ってそのままなんて事はまず有り得ねえよ」
打ち止め「………うん」ニコッ
上条「はは、そうそう。一方通行がいつ帰って来てもいいように、そうやって笑ってた方がいいぞ」
打ち止め「うんっ! ってミサカはミサカは元気に頷いてみたり」
上条「よし、その調子だ。……ところで、打ち止めはずっと一人で外にいたのか?」
打ち止め「そうだけど…?」
上条「………」
打ち止め「?」
上条(おいおい……こんな小さい女の子が一人で出歩くなんて、この子の保護者は何やってんだよ。まして今は
御坂が誘拐されたかもしれないってのに、……無用心だろぉが)
打ち止め「……どうしたの? ってミサカはミサカは首を傾げて訊いてみる」
上条「いや、……そうだ、打ち止め。上条さん今から御坂を捜しに行くんだけど、お前はどうする? 帰るんなら
送ってくぞ?」
打ち止め「ミサカも行くっ! ってミサカはミサカは即答っ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:50:37.92 ID:hEmZgqY0<>
上条「家の人は大丈夫なのか?」
打ち止め「大丈夫! ってミサカはミサカは親指サインで乗り切りを図ってみたり!」ビシッ
上条「………ふぅ、わかった。じゃあ行くか」
打ち止め「うんっ!」
上条(これは決して誘拐ではありませんので、警備員や風紀委員のみなさん。上条さんに職質なんかしないで下さいね。
って、その風紀委員支部にこれから行くんだし、何ら問題ねえか…)
打ち止め「〜〜〜♪」
上条(ここで別れて一人で帰すってのは、さすがにナシだろ…)
こうして上条はひょんなところで打ち止めと再会し、一緒に風紀委員支部へ行く事となった。
―――
〜地獄の猟犬アジト〜
研究施設(アジト)内の朝は早い。
すでに起床した研究員たちが各実験室や調査のために表へと出向く姿がまばらだ。
そんな中、とある一室。
病院の手術室(オペルーム)を匂わせる室内では、何人かの研究者が設置されている機械をいじったり何かの資料を
観察したりと、各業務にあたっていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:51:52.97 ID:hEmZgqY0<>
室内の中央に設置されているこれまた手術患者用を思わせるベッドには今、ひとりの少女が寝かされている。
番外個体。
安らかな寝顔で仰向けになっている彼女の身体には複数のチューブが接続されており、頭部にはヘルメットのような
正体不明の器具が取り付けられていた。頭部の器具からも太いコードが伸びて何かの装置らしきものに繋がっている。
端から見たら生命維持装置で命を延ばしている風景と思えなくもないが、この場合では当てはまらない。
これからこの少女がどうなるのか。それを知っている研究者たちは、坦々と作業を進めていく。
そこへ――
「おう、……よく眠ってんなぁ」
自動設定の扉がウィーンと開閉される。そこから姿を見せたのはこの施設の長を任されている木原数多だった。
研究者たちはボスの登場にいったん手を止めて挨拶に入るが、木原は手のフリで「構わないから続けてろ」と促す。
「んで、どうだ? 間に合いそうか?」
最もベテランの空気を発している年配の研究者の付近で腕を組み、尋ねる木原。
「問題ありませんな。この分なら、むしろ予定より早く終了するやもしれません」
返ってきた研究者のその言葉に木原の口元が斜めに上がる。
そこへ別の研究者が木原に問い掛けてきた。
「予定を早めますか?」と。
「いや。コッチはもう一週間分の予定は組んじまった。今さら予定を変更する気はねぇ。何たってコイツは最大の
楽しみでもあるんだ。……このために進めてきた計画と言っても良いぐれぇになぁ」
「………」ゾク…
「っつーワケだからよ、きっちり計画通り一週間後に行う。最終調整(マスタリング)は六日後だ。いいな?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:54:04.17 ID:hEmZgqY0<>
部下が木原の表情に萎縮したのか、「か…かしこまりました…」と、どこか弱気な態度で業務へ戻っていった。
「さて……んじゃ、あとよろしく頼むわ」
と、言葉を残して木原は退室した。
どうやらただ立ち寄っただけらしい。
「くっくっく……さぁ、そろそろだな。…ぎひひ、滾ってきたぜぇ」
「たっぷりイタぶってやるからなぁぁ。ぎっひっひっひっ」
ジュルリと舌なめずりをしながら凶悪な表情へと変貌する木原。
これがもうすぐ心待ちにしていた時間を迎える直前の悪人の顔である。
少なくとも、通りすがる研究者たちが震え上がるほどの恐ろしさだったのは間違いない。
どこへ向かっているのかもう表情とセリフから明かしている木原の足取りは、ゆっくりでいて軽やかだった。
―――
隔離された牢獄の中、一方通行は最も刑の重い、それこそ死刑囚が投獄されるような奥の檻で閉ざされた部屋にいた。
外界は完璧に遮断され、ここだけはまるで別世界、それこそ地獄の風景とも捉えられた。
そんな空間で一方通行は身体の自由を失っていた。
両腕は美琴と同じ要領で拘束され、足にも鉄球が装着されている。
これら全てを解放するための鍵は、木原本人と責任と忠誠心を買われた出雲のみが所有している。
陽の光も届かない部屋の薄暗さは不気味さを十二分に演出しているが、そんな中にふと通路の灯りが点灯した。
その光で、一方通行は目を覚ます。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 00:56:30.32 ID:hEmZgqY0<>
その光で、一方通行は目を覚ます。
「――――ン……?」
意識がハッキリするまでに少々の時間を要した。
もぞっ、と動いただけで木原に痛めつけられた身体が軋む。
その痛みで脳が一気に起床した。
「ッ……!?」
覚醒したと同時に首を振って周囲を見渡し、今の自分の状況をおぼろげな記憶を辿って整理する。
「…………」
「クソが……。気づいたら“囚われの身”ってヤツかよ…」
情け無さに満ちた口調でボソッと嘆く。
いつから意識を失ったのかは分からないが、最後に木原が自分を侮蔑するような言葉が耳に入ったのだけはハッキリ
と覚えていた。思い出すだけでもムシズが走る。
「絶対に許さねェぞ。あンの野郎……ッ!」
ギリッ、と口元を歪める。当然このままで済ますつもりは微塵もない。
「…………とりあえず、この反吐が出るトコからさっさと出なきゃな」
何とかここから出る術はないか。まずはそれからだ。捕まったままでは何を思おうがただの負け惜しみにすぎない。
「しっかしよォ、こンなモンで俺を拘束たァ、……ンっ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:00:01.51 ID:hEmZgqY0<>
腕に思い切り力を込めてみるが、やはり施錠範囲を超えた自由は利かなかった。
「くっ……そ! 何て頑丈なヤツ使ってんだよ。……まァ、そりゃそォか。仮にも拘束用具だもンなァ。っつゥか、
この監獄みてェな空間も、何か胸糞悪りィしよォ……。入るンなら木原の野郎が一番適任じゃねェか」
愚痴を漏らしながらその後もしばらく手足の拘束具と格闘するが、結果は同じだった。
「ハァ……、ちくしょう……。ホントに笑えねェなこりゃあ」
捕まった番外個体を助けるどころか自分が捕まっている。
「これじゃ護衛が聞いて呆れるぜ……」
ふっ、と苦笑しながら吐くが、悔しさを噛みしめているようなオーラが身体からは溢れ出ていた。
「……今ァ、何時だ。……っつか、日付変わってンのか? チッ、それすらも分からねェ…」
不自由なこの状況に嫌気がさし始める。
よく周りを見ると、部屋の隅には愛用している杖が立て掛けてあり、電極チョーカーの充電器らしき器具も隣に見えた。
「……ケッ、ずいぶンと用意周到なこったな…」
(最初から俺も拉致る予定で、まンまとその通りに事が運ばれちまったってワケか。……ックソ!)
木原の思い通りに進んでいるこの現状に舌打ちするが、今のところは打破策がないのも事実。
隙を見てここから出る以外に方法はなさそうだ、と捕まった当初の美琴とほぼ同じ結論に至った。
(超電磁砲と番外個体も、ここのどっかに監禁されてンのか…? もしそォだとしたら、尚の事早く抜けださねェとな。
ずっとこンな辛気臭ェ場所にいたら、そのうち気が狂ってもおかしくねェぞ)
彼女らがどんな状況なのかは推測の域を出ないが、自分の状況を踏まえるに、想定が全くの的外れとも思い難かった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:03:15.04 ID:hEmZgqY0<>
(とにかく、いつまでもこンなトコでモタモタしてらンねェ。これ以上、木原のクソ野郎を調子づかせるワケにはいか
ねェンだ!)
彼女たちを助けられるのは今のところ自分しかいない。その自分がこうして無様に捕まっている現実に気持ちが焦る。
やがて、いったんその気持ちを落ち着けて思案に没頭し始めた、ちょうどその時だった。
「よーう、起きてたかぁい。一方通行ちゃん♪」
「!!」
通路に響く足音に耳をひそめている最中に聞こえてきた忘れもしない声。
そしてすぐに声の主は通路の先からその姿を見せた。
「良いねぇ、良い格好だ。こいつぁ最高の眺めだぜぇ。クククク…」
「木原ァァァ……」
檻の向こうに薄ら嗤いを浮かべて立つ木原にこれ以上ないほどの憎しみを込めて睨む。
が、木原はそんな一方通行のささやかな抵抗にも物怖じひとつしない。
それどころか、この自分に対する反応を面白がっているようにさえ見えた。
「おぉ〜、怖い怖い。あんまそう睨むなよ。余計笑えてくっからさぁ」
「………ッッ」
それも当然かもしれない。どんなに虚勢を張られても、現実は変わらないのだ。どちらに優位があるかは一目瞭然だし、
木原には絶対の余裕と自信を誇る根拠もある。一方通行は今や自分の手の中。言わば反抗的なペットとさほど感覚的な
違いはないとさえ意識していた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:05:54.50 ID:hEmZgqY0<>
木原「んで、気分はどうよ?」
一方通行「……最悪に決まってンだろォが。何だってオマエの小汚ェツラを、寝覚め代わりに拝見しなきゃならねェン
だっつの」
木原「ははっ! これから死ぬまで見られんぜぇ? 良かったじゃねえか」
一方通行「ッ………。いちいち胸クソ悪りィ野郎だ……」
木原「いちおう確認しといてやるがよ、今の己の立場は把握できてっか?」
一方通行「ケッ……。ンだァ? ここまで厳重に拘束しとかねェと恐ろしくて仕方ねェってかァ? ずいぶン臆病に
なったモンだなオイ。木原くンよォ」
木原「躾も満足に受けてねえダメ動物を放し飼いにするのはただの無能な飼い主さんだぜ? 窮屈だろぉが我慢しな」
一方通行「………ッ。…ンでよォ、わざわざ俺の前に何しに現れやがった? 嘲笑いにでも来たのかよ?」
木原「それもあるが、虐めに来たって方が正しいな。現実を知らしめるために教えてやるが、テメェは今、俺の玩具だ。
生憎それ以上の待遇は用意してねぇんだ」
一方通行「……何が『VIP』だよ…。笑わせやがって」
木原「あぁ? そういう意味だって事くらい分かってたんだろ? とにかくテメェは俺のストレス解消の道具へ成り下が
ったんだ。こっからはせいぜい俺の機嫌を損ねないようにすんだな」
一方通行「…………」
木原「……っつーか、さっきから何だよそのツラは。早くも気に入らねえな。何か言いたいことでもあんのか?」
一方通行「無事か……」ボソッ
木原「あん?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:09:04.98 ID:hEmZgqY0<>
一方通行「……アイツらは、無事なンだろォな」
木原「何ィ?」
一方通行「番外個体と超電磁砲は無事なのかって訊いてンだよ! ……言っておくが、アイツらに手ェ出してやがったら
ブチ殺すぞ」
木原「……ぶっ、何だよ。テメェの身より女が心配ってか? いつからフェミニストになりやがった?」ククク
一方通行「………俺をどォしよォが勝手だがなァ、アイツらはもォ良いだろ? ……帰してやれよ。俺さえブチ殺せりゃ
オマエは満足すンじゃねェのか?」
木原「…………」
一方通行「…………」
木原「テメェはさぁ」
一方通行「……?」
木原「そんなにあの小娘どもを救いたいワケ?」
一方通行「……それをオマエに言う必要はねェ。ただ、オマエが今こォして俺に恨みを晴らすことと、アイツら自身には
何の関係もねェだろォが。むやみやたらと無害な人間を巻き込ンでどォなるっつーンだよ?」
木原「………」
一方通行「それでオマエに得でもあるってのか? 現にオマエの最終目的であろう俺が今ここにこォしてる時点で、番外個体
や超電磁砲の役目は終わりなハズだろォ。だったら、もォ解放したって良いンじゃねェのか?」
木原「……ふっ」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/21(木) 01:10:53.67 ID:wqmRHIAO<>ああうん木原くんが何する気なのかわかってきたよ…
マジでやめて下さい<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:11:21.80 ID:hEmZgqY0<>
木原「……ふっ」
一方通行「…………」
木原「何も知らないってのは良いねぇ」
一方通行「あ…?」
木原「残念だが、あの小娘どもにはまだ仕事が残ってんだ。テメェの意見は通らねえよ」
一方通行「な!……どォいう事だ!? 仕事って……アイツらに何させる気だァ!?」
木原「今テメェが知る必要はねぇ。っつか、知る権利があるとでも思ったか?」
一方通行「……ッッ!」ギロッ
木原「ぶっ! あはっはははは!! 良いぞぉ! 良い! 最高の表情だぁ! 喜べ! 今の顔でだいぶ俺の機嫌は取れたぜ!?」
一方通行「………」
木原「ひひひひっ!」
一方通行「ふざァ………」
木原「んん?」
一方通行「ふざけンじゃねェぞ!!! アイツらに何かしてみやがれ……。そのツラァ、今すぐグチャグチャに磨り潰してやる!!
顔の骨格すら残させねェぞ!!」
木原「………」ニヤ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:14:42.12 ID:hEmZgqY0<>
木原「………」
一方通行「オマエにどンな事情があろォと、アイツらがそれに巻き込まれて良いワケねェだろォがよ!! アイツらがオマエに
何したってンだァ!? 何で平和な世界で生きてるアイツらの人生をオマエみてェなクソ野郎が左右してンだよォ!?
オカシイにも程があンだろォが!!」
木原「…………」
一方通行「オイ木原ァ!! 聞いてンのかァ!? 黙り込ンでねェで何とか言えってンだよォ!!」ガシャン ガシャン
木原「……あんま調子に乗んなよ。このクソガキが」
一方通行「!?」
木原「テメェに発言権を与えてやっただけでも泣いて感動する所をよぉ、ベラベラと好き放題騒いでくれちゃってまぁ……。
あーあー、こりゃあやっぱ今すぐ調教が必要みてえだなぁ。………最高のリアクションに免じてほんの少しだけ優しく
してやろうかとも一瞬思っちまったが、気が変わったわ。ドッチが主人なのかその貧相な身体にたっぷりと教えてやるよ」
一方通行「ンだとォ……!」
木原「つってもまぁ、“ほんの少し優しく”ってだけで、どの道テメェを粛清すんのには変わりねえけどなぁ。……っつー事で、
会話はここまでだ。……さぁ、“遊ぼう”ぜ。一方通行ちゃん♪」
言い終わった途端、木原は何を思ったのか檻を開放し、一方通行の側まで更に歩み寄って来た。
鎖や鉄球で拘束された一方通行に逃れる術はないが、脱出ルートは開放されている。何とか木原を制圧し、ここから離れようと
目論む一方通行が思考を始めたとほぼ同時に、すぐ目の前まで迫っていた木原の重く速い蹴りが飛んだ。
「―――がはっ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:15:44.68 ID:hEmZgqY0<>
ゴキッッ!! と、身体の内から鈍い音を響かせた直後。激しい痛みと圧迫感が思考を強制的に止める。
拘束具のおかげか、本来なら壁まで吹き飛ばされるほどの強烈な一撃も、その場で悶絶させるだけに留めていた。
「ごほっ、ごほっっ……!」
腹に受けたダメージにむせている途中で頬、というよりはこめかみに近い箇所に拳が飛ぶ。
バキッ! と、鈍い音が獄内に響くと同時に一方通行の上半身が大きくぶれた。
「―――うっ!」
なす術なく横へ倒される身体。不自由な手足では受身すら取れない。
床に転がることで再びガラ空きとなった腹部に、木原は集中的な攻撃を浴びせる。
「オラ、まだだ。まだ寝るんじゃねえよ」
ドスッ! ドスッ!
と、何度も蹴りながら木原はサディスティックな目でされるがままの一方通行を見下ろす。
「っぐ…! ゥうっ!!」
体内の臓器が激しく暴れている錯覚を味わいながら苦痛に顔を歪める一方通行。
あまりに突然訪れた暴行に、もはや脱獄を考えるどころではなかった。
というか、何も考える暇さえ木原は与えてくれなかった。
「ウラァ! はっはぁぁ♪」
サッカーのフリーキック映像のリプレイを見ているかのような光景が、獄内で依然と続く。
「ァあ…ンぐっ!……はァ……ッッ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:16:36.24 ID:hEmZgqY0<>
ボール代わりと化した白髪少年は本物のボールのように身体を丸くさせて痛みから逃れようと試みるが、木原の容赦ない
攻撃に効果はなかった。
檻が開いた時に芽生えた脱獄への希望は、とっくに淡く儚い夢へと消えていた。
僅かな希望を垣間見せておいて、次の瞬間にはあっさりと虫ケラのように踏み砕く。
これも狡い木原の狙いだった。
「ははっはははははぁ!! どうだ? 痛てぇかぁ? オイ」
「ククッ、良い調子だぜぇ。けど、まだだぁ! まだまだこんなモンじゃあ収まんねーなぁぁ!」
「あん時テメェに殺された時ぁ、これの百倍は痛かったぜぇぇ!!」
――ドムッ!
「視覚で確認する間もなく吹き飛ばされ、隕石みてぇに夜空を舞って、その後はどっかの硬ぇ地面に真っ逆さまよ!!」
――ズドッ!!
「分かるかぁ? あの世でも目指さなきゃ一生味わえねぇ体験を、テメェは俺にさせたんだよ!! ならそれなりの“礼”
くらいはしてやりてえよなぁ! ぎゃははあははあはあははははっっ!!!」
――ドスッ!! ズム!! ベキィ!!
蹴る。ただひたすら蹴り続ける。
完全に無抵抗の一方通行を、狂気に満ちた罵倒を浴びせながら。
一撃入る度に、一方通行の肉体が痛々しい音と同時に揺れる。見ているのが辛くなる光景だが、木原はこの時を心待ちに
していたのが窺える。ずっと待ち望んでいたテレビ番組が始まった瞬間のように、彼の表情はイキイキとしていた。
邪悪で染まっている部分を除けば、だが。
そして、<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:18:33.34 ID:hEmZgqY0<>
汚い床が血で更に汚れていく。
「ぐっ!……ふ……ごふァ…ッ!」
ついに内臓を痛めたのか、激しく咳こみ吐血する。もはや息をするのも困難に見えた。
「がはっ! ごふっっ!……はァ、はァ…っ」
しかし、それでもまだ木原は止まらない。一方通行の頭に足を乗せてそのままギリギリと力を込める。
抵抗も逃亡も失われ、成すがままになるしかない一方通行を木原は嗤いながら見下ろしていた。
「…うァ……あああ……っっ!」
「だいぶマシなツラになってきたが、……まーだ足りねえなぁぁ。俺を満足させてえんなら、せめて1リットルは血反吐
ブチ撒けてくんなきゃよぉ!」ゴリ…ッ
「がァ!……ァ……ァァ…」
苦しみと痛みに満ちた表情も木原の足が隠しているが、どんな表情をしているのかは想像に容易かった。
意識も朦朧としているのか、身体の力が抜けてグッタリし始めているように思える。
そして木原の方はというと、すっかりこの一方的な展開にご満悦の様子だった。
正に今までの中で一番輝いてる瞬間とも言える。
一方通行とは正反対の顔で木原は語りかけた。
「知ってっかぁ? 人ってのは無抵抗に空中を彷徨ってるとよぉ、気ぃ失ってそのまま落下すっから痛みを感じねぇって良く
聴くが、ありゃあ嘘なんだぜ」
「…………」
言葉など返せる状態ではないが、木原は続ける。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:19:42.62 ID:hEmZgqY0<>
「実際は確かに上空で意識はどっか逝っちまってたが、コンクリートに身体打ちつけた瞬間目が醒めてよぉぉ、……耐える
耐えない以前の痛みが襲ってきやがった」
「感覚はあんのに、意識はねえってヤツか。……凄かったぜぇ。車に轢かれたネコみてぇに内臓が口からはみ出すわ、足は
どこ向いてんのかってぐれぇに折れ曲がってるわ……。クククッ、思い出しただけでも未だに身体が震えちまうよ」
「だが、そんな激痛の感覚に悶えることも。大声で助けを求めることもできねぇ……」
「……当たり前だ。なんせもう死んでるんだからなぁ」
「――――!?」
最後ら辺のセリフに一方通行の耳がほんの少し反応した。
失われかけていた意識がひとつの疑問に集中する。
「……死……ンだァ…?」
「お、まだ起きてたかぁ…」
さして驚く様子もなく木原は吐き捨てる。同時に一方通行の頭に乗せられた足が静かに退かされた。
退けられた足の奥から露になった一方通行の眼は、佇む木原を正確に射抜いている。
聞き流せない単語が、まだ一方通行の頭に残っている。
「死ンだ……だと……?」
「そぉだよ。死んでも意識や感覚ってのはしばらく消えねえんだ。まぁ、テメェも直に分かるだろぉぜ」
「………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:21:22.03 ID:hEmZgqY0<>
違う。知りたいのはそこではない。木原は確かに今、『自分は死んでる』と言った。おぼろげな意識だが、聞き間違いなど
ではない。どういう事なのか一方通行には解らなかった。
いくら科学が進んだ街とはいえ、死人を甦らせる技術までには至っていないはずである。いや、このテーマはいくら科学が
発展してもどうにかなる話ではないだろう。
生あるものに絶対的なものは『時間と死』。
どれだけ未来が先へ伸びようとも、生物である以上このテーマから脱することなど不可能なはずだ。
人は死ねばそこで終わり。それより先の理論など、全て根拠が不充分の仮説でしかない。そう思っていた一方通行にとって、
超人的な力を兼ね揃えた木原の存在と耳に届いた台詞は理解に悩むのを必然とさせた。
「………オマエ……は―――」
一方通行は、ここで原点へと戻ることにした。
ボコボコに殴られ蹴られ、痛めつけられた身体に鞭を打つ。
ミシミシと動かす度に激しく軋み、悲鳴を訴え続ける肢体を無視して木原という目の前の『人間』を見定める。
その上で、こう訊ねた。
「―――『誰』だ……?」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:23:35.73 ID:DM3/sLQo<>なん…だと…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/21(木) 01:28:11.81 ID:hEmZgqY0<>ここで切ります
>>549や気分を害された方にはお詫びします
投下しようか迷ったんですが、途中で変更するのもなぁと…
どうかお許しを
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:31:38.07 ID:vcdndMIo<>鬱いなぁ・・・でも目が離せないわぁ・・・
乙!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:31:55.05 ID:DM3/sLQo<>途中からアッー!かなぁと思ってごめんなさい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:32:10.11 ID:AsrsqUAO<>>>1のやりたい様にやればいいと思う
乙<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:34:46.23 ID:CNegM6AO<>ボコられてんのにニヤニヤしてしまってすみません
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:36:04.36 ID:ejj2qcAO<>俺は木原くンの横でニヤニヤしてたいお<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 01:44:53.44 ID:DM3/sLQo<>木原さん!番外個体と超電磁砲の世話は俺に任してください!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 02:14:43.88 ID:Uxn67Tko<>>>564
お前上半身頼むわ、俺下半身やる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 02:27:49.26 ID:rJ6sNwAO<>フレ/ンダ「結局、私ならどっちもこなせる訳よ。」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 03:10:41.37 ID:txEv1/.o<>>>560と同じこと考えてましたごめんなさい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 07:25:05.71 ID:Bq.xTwwo<>俺もアレな展開だと思ってましたごめんなさい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 12:38:28.89 ID:G2kNZ.Eo<>一方通行の前で番外個体陵辱するんだと思ってました<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 12:38:55.14 ID:y/W8qWs0<>>>537を見てから読んでいく内に一方通行の目の前で
美琴と番外個体が[らめぇぇっ!]な事になるかと身構えちまった<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 12:44:14.16 ID:9QRu8U.o<>何このエロゲ脳の多さ
ごめんなさい、全く同じ想像してました<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 12:52:13.62 ID:vcdndMIo<>え?これからそういう展開になるのかとビクビクしてたんだけど違うの?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 15:44:38.46 ID:7.YgA5oo<>暴力だと冥土返しはなんとかしてくれるだろうけど、心の傷はなぁ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 17:28:34.84 ID:23zuoLwo<>俺もそういう展開になるのかと思ってガクブルしながら読んでた
それだけはさすがに勘弁だわ…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 18:34:26.23 ID:z1mzrjAo<>>>572
ビクンビクンの展開になります<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 21:22:15.08 ID:CNegM6AO<>え?
一方さんが美琴と番外固体の前でアーッされあbbbbbbbbbb…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 23:50:01.38 ID:DM3/sLQo<>20000号がアップをはじました<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:20:25.82 ID:hIOs3Ww0<>こんばんは
陵辱シーンってか暴力シーンですね
言葉ミスりますた
とりあえず続き投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:22:12.56 ID:hIOs3Ww0<>
―――
〜風紀委員第一七七支部〜
学バスを乗り継ぎ、とうとうまでやってきた上条は黒子に到着コールを掛ける。
彼は一瞬だけ隣で「ほえー…」と目的の建築物を見上げている打ち止めに目線を送ってから通話ボタンを押した。
「―――もしもし、俺だ。着いたぞ」
黒子から中へ入る許可だけを取って通話を切る。打ち止めの説明は電話よりも直接会ってする方がいいと上条は判断した。
まだぼんやりと建物に注目していた打ち止めの手を引いて、校舎へと足を踏み入れる。
「ここだね。ってミサカはミサカは初めての訪問に少しわくわくしてみる」
移動中、先ほどばったり会った時よりも少々明るさを取り戻した声が上条に向けられる。
「あぁ、俺も来たのは初めてだ…」
そんな少女に若干安堵したような面持ちで上条も応じた。
普段は訪れる機会など皆無な場所といえばその通りだ。というか、このような『科学の表』を象徴するような所では都合が
悪い出来事に襲われるパターンが多かったというのが本当のところである。実際、魔術士との交戦を学園都市で行うのには
自分にとっても相手にとってもなるべく最も避けたいのがこういう取り締まり的な団体だ。規模に際限なくである。
相手には侵入者として捕縛の道。自分には事件扱いとなり、後に学校へ報告が行くことになるだろう。善い処分などは勿論
期待できない。何故なら自分は不幸だから。丸く収まった後でそういうオチを迎え、お決まりの台詞を大声で絶叫する己の
自画像など簡単に想像できる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:24:08.88 ID:hIOs3Ww0<>
そんな訳で、どちらにも面倒なリスクが生まれかねない風紀委員や警備員といったような存在は、極力スルーが望ましいの
だが、今回のケースに至っては例外だと上条は判断した。
(なんかドキドキするなぁ。……っつか、俺、来て大丈夫なのか? 完全に場違いなんじゃ…)
そんな事を考えながら廊下を渡って行く。
上条は打ち止めを連れて何故か面接前のような緊張感を抱いたまま黒子が指定した通りの道を歩いていた。
おそらく、立派なビジネス風景だとか、根本的に勘違いなイメージでもしているのだろう。
記憶が破壊されて一年も経っていない上条には風紀委員の日常がどんなものか想像でしか分からない。
黒子から聞いた話では、まず自分じゃなれないだろうな、というのが正直な感想だった。
黒子の普段の振る舞い(変態行為はこの際除く)から思うに、きっと自分の苦手とする『お堅い』雰囲気なのだろう。
これからそういった場へ赴くとなると、流石の上条も多少は心の準備が必要なのかもしれない。
女子中学生の溜まり場と化していた実態など露知らず。
「ここか…」
そして、指定された場所へと到達する。
厳重なロックが掛かっているため、上条達だけではそれ以上進めない。
携帯電話を再び取り出して来訪を伝えた後、白井黒子がすぐにドアを開けて姿を見せてくれた。
「―――お待ちしておりましたわ。さ、どうぞ……って!?」
そこで彼女の目線は一気に上条の隣へと移る。上条が危惧していた展開が訪れた瞬間だった。
打ち止めの存在を目視してすっかり硬直してしまっている黒子に上条は慌てて告げた。
「あ、こ、この子はその……御坂の親戚の子なんだ。な?」
打ち止めに当初予定していた弁解の言葉を出すように目で合図する上条。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:26:10.17 ID:hIOs3Ww0<>
打ち止めはその合図を上手く拾って元気の良い挨拶をした。
「こんにちは。ミサカはミサカなんだけど、ラストオーダーってよく呼ばれてるからソッチの方がいいかな。ってミサカは
ミサカは早速提案してみたり!」
「……………」
黒子の硬直は、解けるのにもう少しだけ時間を費やす事となる。
上条はこれに対し、「あははー…」と誤魔化すように苦笑するしかなかった。
喋り方も変えさせるべきだったことを後悔するのが遅かった。
それから少し待って、ようやく石化から解けた黒子がおずおずと打ち止めを観察する。
「……お姉様……本当にそっくりですわ。まるで小さい頃のお姉様を見ているようですの」
「…………」
当たり前だ。御坂美琴のクローン個体なんだから。似てるどころかDNAが一緒だ。と言う訳にもいかず、何か代わりの言い回し
はないかと模索している上条を尻目に打ち止めが切り出した。
「ミサカもお姉さまの捜索に協力したい! ってミサカはミサカは志願してみるんだけど…」
ダメかなぁ? と、首を傾げた可愛らしい仕草まで付けて申し出られては、黒子に拒否の選択などない。
「まぁまぁぁ………、なんて健気な……。えぇ、もちろんですわよ。是非一緒にお姉様を捜しましょう。小さなおね……いえ、
ラストオーダーちゃん……でよろしかったでしょうか? ずいぶんと個性的なアダ名ですのね…」
「ああ、でもやはり『小さいお姉様』の方がしっくりきますわ。わたくしは白井黒子と申しますの。わたくしを姉だと思って
存分に慕って構いませんわというか慕ってくださいイヤむしろわたくしに慕わせてくださいな!」
「……???」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:30:26.49 ID:hIOs3Ww0<>
動作がもう美琴といる時のようにトリップしているが、小さい子供ということで流石に手は出さず自重しているのが窺えた。
お姉様とのスキンシップがご無沙汰な反動か、自重というか今にも飛びつきたいのを必死で我慢しているのが上条ですら察知
できる。打ち止めの方は突然意味不明な舞いを見せられて唖然とするしかない。
そのまま欲望に黒子が呑み込まれてしまう前に上条が纏める。
「と、とりあえず中入らないか? 色々予定も立てたいし…」
「はっ、……そ、そうですわね。わたくしとしたことがつい……。失礼致しました。コチラですの。さ、どうぞ」
やっと現世へ戻った黒子が二人を支部へと招き入れてくれた。
こうして、ようやく風紀委員が普段業務を行っている場へと案内されるのだが。
「…………」
中は意外と予想していた通りだったことに上条は驚いた。大体こういう時は予想と違うパターンが多いと逆に想定したのも無駄
だったようだ。
扉の向こうは教室というか、やはりオフィスみたいな空間だった。こざっぱりな割りには思った以上に設備がしっかりしている。
それがここの学校の設備からか、はたまたこの支部内だけなのかは不明だ。
(まだ学生の俺にはやっぱ場違いな空間だな。…って、風紀委員も学生じゃん)
打ち止めの手を引き、黒子について歩きながら上条は意味不明な感想を心中でぼやいた。
支部内は静まり返っていた。当たり前だ、風紀委員も学生である。もう登校時間も過ぎているのだから、黒子や協力者とやらを
除いて今ごろはどの支部に所属している風紀委員も授業を受けているはずだ。
(そうだよな……。今の時間じゃ普通に活動なんてしてねえよな)
妙な緊張が杞憂に終わった事に胸を撫で下ろした直後。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:32:20.15 ID:hIOs3Ww0<>
「――!」
パソコンが設置されているデスクの一席に座る二人の少女の姿がふと視界に入った。
あの子たちが協力者だろうか。黒子は目立ちにくい奥の席で何やら一点に集中している少女二人へと近づいていく。
当然、後に続く上条と打ち止めも少女達に接近する事になる。
「……………」
少女の一人はキーボードを操作し、カタカタと音をならしている。
頭にはオシャレの域を軽く超越した花を咲かせながら。
真剣な目で画面に集中している様が、頭部に咲いた花のせいでどこかシュールに見える。それでも真面目な印象を少なからず
は受けたので、花にツッコミたい衝動だけは何とか抑えた。
もう一人の少女はそのすぐ後ろで同じように真剣な表情をしながら画面を覗き込んでいた。同じ制服を着ている辺り多分友達
同士なのだろう。と、上条は推測した。髪は長めで、スタイルも子供から少し成長した雰囲気の少女だ。
キーボードを操作している少女が座る椅子の背もたれに片手を掛けながら身を屈め、情報の羅列を必死に目で追っているよう
だった。
少女のもう片方の手には、何故か金属バットが握られていた。
「…………」
この日常から僅かに逸れた光景に今度は上条が硬直する番だったが、やがて少女たちはコチラの接近に気づいて顔を向けた。
「あ!………」
花を咲かせた一見おしとやかそうな少女が上条を見るなり目を泳がせた。
「うわ、……へ〜、この人が御坂さんの……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:34:11.82 ID:hIOs3Ww0<>
金属バットを片手に持った少女の方は聞こえない程度に呟いたつもりだろうが、しっかりと聞こえている。
御坂さんの、何だというのか?
「上条さん。この方々はわたくしとお姉様のご友人で、今回協力を買って出てくれましたの」
黒子は何やら複雑そうな顔で振り返り、仲介に入った。
少女たちは何故かわざわざ立ち上がって自己紹介を始める。
初春「は、はじめまして。初春飾利です! あの……御坂さんと白井さんがいつもお世話になってまふっ!?」
上条「あ、あぁ。俺は上条当麻。……よろしく」
(……いきなり噛んだぞ。大丈夫か…?)
黒子「別にわたくしはお世話になった覚えなどありませんが……」
佐天「わ、私は佐天涙子って言います! 上条さんのことは、ときどき御坂さんから話を伺ってます! よ、よろしく…」
上条「え……? そうなのか?」
黒子「さぁ、知りませんの」プイ
上条「…?」
佐天「……ところで、この子は…」
打ち止め「こんにちは♪ ミサカはラストオーダーって言います。ってミサカはミサカは丁寧にお辞儀してみたり」ペコ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:35:41.51 ID:hIOs3Ww0<>
初春「あ、どうもこんにちは……って、アホ毛ちゃん!?」
打ち止め「あー! そういうあなたはあの時のお姉ちゃんだ! お久しぶり〜! ってミサカはミサカは予期せぬ突然の
再会に驚きを隠せなかったり!」
黒子「初春、知ってますの?」
初春「………えぇ、あんまり思い出したくないですけど……」
佐天「っていうか、ラストオーダーって……」
上条「……アダ名だよ。この子は御坂の親戚なんだ」
打ち止め「お姉さまがいつもお世話になってます。ってミサカはミサカは深々とお辞儀してみたり」ペコリ
黒子「はぅぅ……」キュン
佐天「あは♪ かわい〜い♪」
初春「今日もアホ毛が絶好調ですね〜」ピーン
打ち止め「これはアホ毛じゃないよー! ってミサカはミサカは奮起してみるーっ!」
佐天「私も触っていい? あはは♪」ツンツン
黒子「わわわ、わたくしも〜! ……ふふふふ♪」ツンツン
打ち止め「あうぅ〜〜……」
上条「オイ。約一名、子供に対して向ける視線が間違ってるぞ…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:39:22.94 ID:hIOs3Ww0<>
そんなこんなで自己紹介も終わり、二人の女子中学生は男子高校生に興味深々の話題を振る。
初春「あ、あの! ところで上条さんは、御坂さんと仲良いんですよね?」
上条「えっ? 仲……良いって言えるのかな……」
佐天「そう言えばどこで知り合ったんですか〜? 御坂さんたらいっつも肝心な所でしどろもどろになっちゃうから、
まだまともに聴けてないんですよ〜」
上条「いや、あの〜……」
黒子「オホンッ! ……お二人とも。そういったご質問は後にしてくださいまし。今は一刻も早くお姉様の足どりを
掴む事の方が先決ですのよ」
初春・佐天「す…すいません。……つい」
上条「えーっと……、話進めて大丈夫なんでせうか?」
黒子「……どうぞ」
上条「まず、君たちはその……風紀委員なの?」
初春「あ、私はレッキとした風紀委員の一員ですよ♪」エヘン
黒子「初春は情報処理能力に長けていますの。後方支援に回れば右に出るものはそうそういませんわ。実際の現場では
わたくしの良きパートナーですの」
初春「えへへ……」テレッ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:41:12.46 ID:hIOs3Ww0<>
素直に感心した上条は隣りの佐天に目を向ける。
上条「へぇー……、そりゃすごいな。………んで、君は?」
佐天「私は上条さんと同じ部外者ですけど、気持ちだけはいつでも風紀委員なつもりですよ♪」
初春「佐天さんは元々私の親友なんです」
佐天「今では御坂さんも白井さんも友達ですけどね。よく四人でツルんでます♪」
上条「そ、そうなんだ…」
黒子「お二方ともわたくし同様、お姉様の身を心から案じてますの。ですから上条さん、ここはどうかひとつ……」
上条「いや、どうかひとつも何も、協力してくれるんなら是非俺から頼みたいくらいさ。俺だって御坂が心配で学校
サボったんだし、今さら後になんて引けねえしな。御坂の無事がハッキリするまでは絶対に諦めないつもりさ」
初春「わぁー……///」
佐天「き、キマってる……///」
初春「御坂さんが惚れるのも、何か納得かも……///」ボソッ
上条「ん? どうした?」
黒子「こんの殿方はぁぁ……」ピクピク
上条「……?」
己は気づかず他は認める天然フラグメイカーは今日もまた自覚なしの撃墜を繰り返していた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:43:50.05 ID:hIOs3Ww0<>
上条「―――で、初春さん達は、何を調べてたんだ?」
初春「学園都市の人工衛生から何か手掛かりになる映像がないか探してたんです」
上条「衛星から!? ……そんなことできるのか?」
佐天「初春にとっちゃ朝メシ前ですよ♪」
打ち止め「うわー、お姉ちゃんすごーい! ってミサカはミサカは素直に感心してみる」
黒子「それで、手掛かりとなりそうな映像は何かありましたの?」
初春「それが……」
上条「どうしたんだ?」
初春「三日前の映像を探っている途中、衛星カメラに異変が起きていたことが判明したんです」
上条「ええっ!?」
打ち止め「どういうこと? ってミサカはミサカは首を傾げて尋ねたり」
初春「午後一時から五時までの間、衛生機能が全ストップしてたんですよ……」
黒子「そんな……!」
佐天「学区内の防犯用でアチコチに設置されてるカメラも、同じでした。GPSもダメですね……。反応無しです」
上条「マジかよ……。原因は?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:46:34.30 ID:hIOs3Ww0<>
初春「不明です……。さっきまで色々調べてたんですけど、やっぱり何も掴めませんでした」
黒子「……ちょっと見せてもらえますか?」
初春「はい…」
手早くキーボードを操作し始める初春。やがて衛星から送られている学園都市内の映像が映し出された。
「ここが三日前の早朝です。飛ばします」
そう言って映像を早送りし、12:59の地点で再生した。
「……ここからです」
そして、時刻が13:00を迎えたと同時に映像が乱れ、次の瞬間にはザーッとノイズを流していた。
「この後は五時になるまで、ずっとこんな状態でした……。誰かが意図的に操作したか、偶然故障したか……」
「…………」
言葉を失くす一同。だが、黒子がこの沈黙を破る。
「……きな臭いですわね」
「――?」
この言動で全員の視線が黒子に集中する。
「衛星機能と佐天さんが仰った各区の防犯映像がいっせいに停止し、全く同じ時間に復旧するなど……有り得るんですの?」
腕を組んで疑問を口にする黒子。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:49:33.98 ID:hIOs3Ww0<>
「……普通なら考えられません。防犯映像が四時間も止まったままっていうのは……。それに、学園都市を映す映像全てが
停止してしまうのも……」
初春が言いにくそうに答えた。
「確かにおかしいよな……。誰かが意図的に止めた線が強いんじゃないか?」
上条に同意するように佐天も頷く。
佐天「『空白の四時間』か……」
黒子「お姉様が最後に目撃された時間は三日前の午前十ニ時半。……匂いますわね」
初春「誰かが御坂さんを攫った。それを目撃されないために、映像を切った。……やっぱりそういう事なんでしょうか…?」
上条「……ってか、そうとしか考えられないな…」
黒子「えぇ。確証はありませんが、これが偶然だとは思えませんの」
佐天「でも、衛星までストップさせるなんて……」
初春「よっぽどの設備が施されてないと不可能ですよ……『樹形図の設計者《ツリーダイアグラム》』との通信ができる
くらいの施設じゃないと……」
黒子「……そんな施設が一体どこに……。初春、何とかして調べられませんの?」
初春「さすがに機密レベルが高すぎて無理ですよぉ。それこそ全員逮捕じゃ済まないかも……。せめて確定ができてから
なら私も腹を括れますけど……」
黒子「………そうですわね。お姉様の所在地が不明な段階でリスクを負うのも、得策ではありませんし……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:52:00.90 ID:hIOs3Ww0<>
佐天「ってことは……、相手はやっぱり……」
上条「大規模な組織……」
黒子「それも統括理事直属の暗部組織かもしれませんわね……。だとしたら、上層部から圧力が掛かるのも頷けますわ」
上条「……圧力?」
黒子「忘れたんですの? 警備員も風紀委員も、お姉様失踪事件に正式な関与はできなくなったと言ったはずですが?」
上条「あぁ、そうだったな。それも真意は明かされてないんだろ?」
黒子「えぇ……、しょせん飼い犬は主人の下した命令には逆らえませんの……」
上条「ひでぇよな……。それじゃ納得できるハズねえよ………。ん? 打ち止め。さっきから何してんだ?」
打ち止め「……ハァー……。お姉さまの電波をキャッチしようと頑張ってみたんだけど、……やっぱりダメだった。って
ミサカはミサカは徒労に終わって肩を落としてみる…」
黒子「小さいお姉様も発電能力者ですの?」
打ち止め「う、うん……」
上条「御坂の電波がないって……どういう事に繋がるんだ?」
打ち止め「携帯で言うなら圏外だから、ミサカじゃ探知できないほど遠くにいるか、何らかの妨害対策が張られているか、
……あとは……その…」
その先の言葉を口に出すのを躊躇う打ち止めの様子に上条が察した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:53:28.71 ID:hIOs3Ww0<>
打ち止め「ううん、平気……。ミサカは落ち込んでないよ。ってミサカはミサカは笑ってみる」
黒子「まったく、貴方って人は……。もっと気を利かせなさいな」
上条「ごめん……。ちょっと無神経だった」
佐天「最後のは絶対ないから大丈夫だよ。なんたって御坂さんなんだから。もし捕まったとしてもきっと心配ないって!」
初春「そうですよ。上条さんもアホ毛ちゃんも気にしないでください」
上条「あぁ……。けど、どうする? この分じゃコンピューターからの手掛かりは得られそうにないけど…」
黒子「なら、足で直接捜すより他ありませんわね。人数も増えたことですし、これで捜索範囲も多少広げられますわ」
上条「機械が駄目なら目と足でってか。けど、やっぱそれっきゃねえよな」
佐天「よしっ! そうと決まったら早く行こう!」
初春「あ、でも一応帰って私服に着替えてからの方が良くないですか?」
上条「そうだな……。学校の人間に見つかったりしたら面倒だし、念のため簡単な変装ぐらいはしておいた方が良いかもな」
黒子「では、いったん解散して、後に○○駅前集合でいかがでしょう?」
佐天「オーケーです♪」
初春「そうしましょう」
上条「俺もそれで構わないぜ。打ち止めはどうする?」
打ち止め「とーぜん行くよー♪ ってミサカはミサカはまたも即答っ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:54:56.08 ID:hIOs3Ww0<>
黒子「では、小さいお姉様はわたくしと一緒に寮まで…」
打ち止め「あなたと一緒に行っていい? ってミサカはミサカはあなたの目を見てお願いしてみる」
上条「あぁ、いいぞー」
黒子「……………チッ」
こうして緊急結成された御坂美琴捜索隊は各々の準備のため一時その場で解散し、ニ時間後に駅前で再び集合して本格的な
捜索活動に乗り出す事となった。
まだ真相がハッキリした訳ではないのだが、もし学園都市に潜む巨大な闇が絡んでいたとしても、少年少女に諦める選択肢
などはない。理由は『友達のため』というシンプルなものだったが、それ以上の理由は要らなかった。
美琴が捕まっているのだとしたら、最悪戦ってでも取り戻す覚悟を決めた上条は、打ち止めを連れて一旦自宅へと戻る。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/22(金) 19:57:56.63 ID:hIOs3Ww0<>ということで、上条さん達もついに動き出しました
続きはまた明日投下します
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/22(金) 20:00:06.50 ID:q0ZIoMYo<>乙!
打ち止めもういさて加わったか・・・
彼らが最後の希望となるよう信じて祈る他ない
胸が苦しい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/22(金) 21:46:12.06 ID:2BQwlyMo<>佐天さん決戦装備はやはり金属バットか…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/23(土) 18:37:03.49 ID:u45tOcs0<>
今日投下予定だったのですが急用が入ったので明日に延期します
申し訳ありません
報告ついでに訂正
>>579冒頭
×『学バスを乗り継ぎ、とうとうまでやってきた上条は黒子に到着コールを掛ける』
○『学バスを乗り継ぎ、とうとう支部のある校舎までやってきた上条は黒子に到着コールを掛ける』
流石に見苦しかったので訂正させてください
お目汚し大変失礼致しました
脳内補正してくださった方、ありがとうございます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/23(土) 19:58:12.01 ID:kD0SC8go<>明日を楽しみにしてる
脳内補完は余裕だから気にしなくて良いよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 01:32:01.81 ID:6CNnrBco<> {、 ,≫==ミ: .、______ \_○
)) \ . :´: : : : : : : : : : : : : : : :`丶、 0 ヽ
___ {{ )./ : : : : : : : : : . : :´: : : : : : : : : :\ o \
‘⌒≫ ‘'ー=彡: : :/: : : : :、ヘ : : : : : : : : : : : :  ̄ミ:、 。 \}
(_____,ノ´ : :/ : : : : : /\ \/ : : : : : : : : :  ̄ミ: 、 ヽ,
` ー…ァ : : / : : / : : , ': : :/: ,>:': : : : : : : : : :/: : : : : : \ }i,
/: :/: : : :,〃 : :/: / /:, ' : : : : : : : : : / : : : : : : : : : 、\___,.ノ八
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◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:00:23.32 ID:VSMfDIY0<>ども
昨日は失礼しました
今から続き更新します
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:01:46.76 ID:VSMfDIY0<>
―――
「オマエは………誰だ……」
一方通行の絞リ出すような声に木原は目の色を変えた。漆黒な瞳が背景と重なって不穏な空気を生み出す。
「“誰”ねぇ……。ククク……」
一度だけ低く嗤った木原は、か細くもハッキリと出された少年の質問に応え始める。
「いけねえな、……つい興奮してクチが滑っちまった。まぁ、とっくに気づいてても不思議じゃあねえから別に
良いんだけどよ」
「…………?」
独白を漏らしながら上を向いた木原を、一方通行は黙って見上げていた。
「………そぉだな。まだ脳がまともに働いてる内にハッキリ教えといてやっか…」
「どォいう……意味だ?」
焦らされるのが嫌いな一方通行は若干のイラつきを込めて訊ねた。
そして顔をコチラに下げた木原の口から、ついに答えが返ってくる。
「確かに俺は木原数多だが、正確には“木原数多”じゃねぇ」
「は……?」
突然の意味不明な言動に、一方通行の顔が硬直する。
いきなり何言い出すんだ? と、言葉を返す前に、木原は衝撃の事実をあっさりと告げた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:03:56.83 ID:VSMfDIY0<>
「テメェが知ってる木原数多はなぁ―――」
「―――今ほのめかした通り、もう死んでんだよ」
「………なン……だと…?」
告げられた方は意味が全く理解できていない様子だった。
一方通行「……オイオイ……、何だよそりゃあ………。じゃあ、今俺の目の前に立ってるオマエは、……誰なンだよ…?」
木原「俺かぁ? お前ならひと目で分かるだろぉが、“俺も”木原数多だ」
一方通行「オイ、待てよ。……さっぱり分からねェ……。オマエ、さっきから何言ってンだ?」
木原「ちなみに、『実は双子だった』っていうベタなオチじゃねえぞ」
一方通行「………」
木原「そぉだな、どっから話してやろうか……。まずよぉ、テメェは第三次製造計画がその後どうなったか知ってっか?」
一方通行「あァ? ……何でオマエが……っつか、何で今その話になるンだよ? ……っそォいやオマエ、『番外個体は
無関係じゃねェ』みてェな事ほのめかしてやがったよな? まさか、それと関係があるってのか……?」
木原「いーから答えろって。除々にスッキリさせてやっからさぁ」
一方通行「……あの計画は、凍結したはずだ。俺が直接言ってやったンだよ。『見つけ次第叩き潰す』ってなァ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:06:21.30 ID:VSMfDIY0<>
木原「……だろーな。事実、計画は頓挫してそのまま見送られるはずだった」
一方通行「“はずだった”だと……?」
木原「テメェが可愛い可愛い最終信号ちゃんを助けようとロシアで健気に奮闘していた時、俺はもう“生まれていた”」
一方通行「……?」
木原「“生まれ変わった”んじゃない。“生まれた”んだ。この違いが分かるかい? 一方通行ちゃん」
一方通行「……!! まさかオマエは……ッッ!!」
木原「そう、俺は肉塊となって回収された『木原数多』のDNAから生み出された軍用クローンさ」
一方通行「!!!!!」
木原「木原数多自体はあの日に死んだよ。テメェにやられて即死状態だった。……“身体”はな」
一方通行「な……」
木原「死んだ俺の身体からDNAマップを採り、超電磁砲の時と“ほぼ同じ”要領でのクローン化に成功。その『成功体』が、
今テメェの目の前に存在する俺だよ。量産化しねえ代わりに欠陥化もしなかった、正当版(ストレートタイプ)って
ヤツが初めて生み出された決定的瞬間と共に、俺は目を醒ましたのさ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:07:33.13 ID:VSMfDIY0<>
一方通行「………!!」
木原「妹達とは根本的に違う存在(モノ)だと思っていい。まぁ、そん中でもいちばん決定的な違いを上げるとすりゃあ……
俺は複製品でもあり、木原数多(オリジナル)でもある、って所か…。何たって木原数多の生前の性格、思考、そして
記憶まで、全てがこの身体に受け継がれている……らしいぜ。つってもよ、主観的にはただ単純に『生き返った』って
感覚なんだけどな。……っつか、本当にすげえと思わねえか? 学園都市の技術はいつの間にかもう『神』の域にまで
達してたんだぜ!? ぎゃははははっ! 実際動いてみるまでは、自分がクローン技術によって生み出された自覚さえ
持てなかったぐれぇだ!」
一方通行「………そンな、馬鹿なことが……」
木原「な? やっぱり信じ難いだろぉ? だがな、コイツは魔術(オカルト)でも夢でも幻でも何でもねぇ! 紛れもない、
正真正銘立派な科学の力で、俺は再びこの世に舞い戻って来たんだよ! そう、テメェに復讐するためだけになぁぁ。
……ククッ」
一方通行「ッッ……!」
木原「呼び名があるとすりゃあ『怨念個体《キハラゴースト》』ってかぁ。番外個体の二番煎じ臭ぇ辺りが気に入らねえが、
名前になんざこの際こだわりはしねぇ。そういうワケで、改めてよろしくな。一方通行」ニヤァ
一方通行「怨念個体……。オマエが……クローン………だとォ……」グググ
木原「ぎゃはは! 無理して起きようとしなくて良いんだぜ? 意識保つのが精一杯なのは充分伝わってきてっからよぉ」
一方通行「………そォか。……なるほどなァ。オマエに感じた妙な違和感は、それかよ……」
木原「軍用レベルも妹達と比べモンにならねえのはテメェの身体がとっくに理解したはずだ。まぁ欠陥品とはそもそも性能が
違うから当然っちゃあ当然なんだが」
一方通行「……………ッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:10:34.44 ID:VSMfDIY0<>
木原「じゃあここで問題。俺が作られた理由は一体何でしょう?」
一方通行「知るかよ……。知りたくもねェ…」
木原「チッ、張り合いねえな……。少しは考えてみろ。さっき第三次製造計画について触れただろぉが。それで何かちっとは
結びつかねえか?」
一方通行「……! まさか、オマエも……」
木原「あぁそうさ。俺の存在もまた、第三次製造計画の一つなんだよ」
一方通行「!!?」
木原「正確には第三次製造計画の凍結に備えた、言わば『保険』だな。要するに軌道修正が狙いってことだ。上層部はテメェの
行動なんて最初っからお見通しだったらしいぜ。テメェが計画発案部門の連中に牙を剥くってこともなぁ」
一方通行「ッッ……!」
木原「連中の予想結果は案の定さ。だから俺は製造された義理ってヤツと利害の一致で連中と手を結び、再び第三次製造計画を
始動させたってワケだ。せっかくの警告も無駄に終わって残念だったねぇ。一方通行」
一方通行「………そォか」
木原「ん?」
一方通行「まだ、終わってねェのか。……いや、終わりかけていたのをオマエが……ッッ!」ギロッ
―――生み出された事で凍結にいたらなかった……!!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:11:46.20 ID:VSMfDIY0<>
木原「そう恨めしく見つめんなって。俺としちゃあ計画そのものは正直どぉでもいいんだ。俺はただテメェの全てを奪えりゃあ
それでいい。連中の駒として製造されたことは否めねえが、木原数多の人格としては興味がねえからな。俺が回りくどい
やり方を嫌ってたのは知ってるだろぉ? それもこれも全てこの時のためよ! テメェの芋虫以下にまで落ちた姿をこの
目に永久保存させるためだけにだ! 番外個体とは言ってみりゃ同じ立場、同じ存在ってことになるのかもなぁ!!」
一方通行(コイツと番外個体が『一緒』……だとォォ!!?)
木原「ぎゃははははははははぁぁ!!! あーはっはははははははは!!!」
一方通行(くっ………だが、とりあえず今は置いとけ……。今はそンなの気にしてる場合じゃねェはずだろォ!!)ググッ
「―――つまり……」
木原「ひひひひ!!………んん?」
一方通行「つまり、オマエさえ……オマエさえいなくなりゃあ、このイカレた計画も止められるンだな……。計画自体乗り気じゃ
ねェオマエに上のクソ共連中が任せるほど、オマエの存在は重要視されているってことだよなァ? 違うか?」
木原「んー、実際そうなるねぇ。確かに、俺がいなくなりゃあ進行の軸が一気に薄くなっちまうワケだしなぁ。……で、だから何?
俺を止めて計画も止めてみるってか? ぷぎゃはははは!! ぶわーか! テメェの立場わきまえてからモノ言えってんだよ!
何なら今すぐ鏡持ってきて、その情けなく床と一体化する自身の姿でもよーく見せてあげましょうかぁぁ?」
一方通行「………ッッ!!」
木原「何でわざわざ親切に教えてあげたのかが全然分かってねえんだな。ハッキリ言ってやるが、テメェ如きがどう足掻こうとも
計画は凍結しねぇ。テメェに今の俺を倒すのは不可能だからな。今のテメェのザマが何よりの証拠よ。それどころかテメェ
自身が生きることも嫌になるのさえ、もう時間の問題かもしれねえぞ?」
一方通行「関係ねェ……」
木原「あん?」 <>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:12:58.63 ID:VSMfDIY0<>
一方通行「そンなのどォでも良いンだよ。俺が生きることに拘りを持とォが、オマエを止めるほどの力量があろォが無かろォが……」
木原「………」
一方通行「……“全部”関係ねェンだ。それであのガキや超電磁砲、番外個体を守ることに躊躇する意味が分からねェ……。どンな
事情抱えよォが、どれだけ惨めに腐ろォが、…それでも俺は『あいつらの未来』を一生懸けてでも守るって決めてンだよ。
分かったかこの三下が」
木原「ふぅーん、……そりゃ大いに結構なこったな。だがお生憎さま、『テメェの未来』だけはもう決まってんだよ。テメェがここに
居る時点ですでに、な」
一方通行「……………」
木原「……クチも開けねえか? そりゃそうだわな。『死の宣告』を直に受けた人間としちゃあそれが正しい反応だわ。無口にもなって
当然ってか? クククッ」
一方通行「……イイか? よく聞けよクソ野郎」
木原「あ?」
一方通行「俺をどォしよォと知ったこっちゃねェが、オマエだけは絶対に生かしておく訳にはいかねェ。だから潰す。どンなド汚ェ手を
使ってでも、俺は全力でオマエを潰してみせるぜ」
木原「ほぉう……」
一方通行「覚えておけ。……オマエの余裕に満ちたそのツラァ、近い内に恐怖で引き攣らせてやる。必ずな……」ニヤッ
へっ、と挑発するように笑って木原を見上げる。
木原のこめかみに亀裂が走るのも構わず、一方通行は更にこう述べた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:13:59.01 ID:VSMfDIY0<>
「もォ一度言う。“オマエだけは絶対に俺が叩き潰す”。たとえ俺の命に代えてでもな。………分かったらせいぜい用心しとけやこのタコ野郎」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:15:18.65 ID:VSMfDIY0<>
「―――ッッッ!!!」
言い終わった直後に木原の蹴りが前ぶれもなく放たれ、一方通行はその場で呆気なく意識を奪い取られた。
「……ふん、くだらねぇ。シラケちまったわ。減らず口に免じて、今日はこの辺で勘弁しといてやるか。寛大に思いやがれ」
動かなくなった一方通行に背を向け、木原は牢に再度ロックを掛けて立ち去っていった。
一方通行の最後に放ったセリフと不気味な笑顔で木原の背筋が一瞬だけ凍ったのは誰にも内緒である。
―――
上条当麻、打ち止め、白井黒子、初春飾利、佐天涙子、そして禁書目録は予定通り駅前で合流を果たしていた。
いや、正確には予定と違う。それは禁書目録の加入だ。
理由? もちろんある。上条が言いくるめるのに失敗した。ただそれだけだ。
経緯はこうである。
上条宅に打ち止めと戻った時、禁書目録はすでにニュースで御坂美琴の失踪事件を既知していた。
そこで上条の行動に合点がいった。
後は上条の頭に歯で脅迫すれば全てが成立する。
上条はなるべく関わらせない内に解決したかったのだが、ああも公けに報道されては禁書目録が自力で事態を把握するのも遅かれ
早かれである。
むしろこうなった場合は連れて行かない方が逆にマズイ。
打ち止めとは早くも意気投合したのか仲睦まじい様子だが、あとの三人にはどう言い訳しようか、と、上条は駅に着くまで思慮に
明け暮れたが、思ったよりも楽に受け入れられたため徒労に終わった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:16:30.74 ID:VSMfDIY0<>
「とうまったらひどいんだよ。いつも私だけのけ者にしようとして。私がカナミンの放送時間を間違えてなかったら絶対置いてく
つもりだったんだよ!」
中学生の眼六つと少女四つの非難する視線が一人の男子高校生に突き刺さる。
痛い。心も身体も精神も、とにかくいたたまれない気持ちと後ろめたい気持ちが交錯していた。
黒子「まったく、人手が少しでも欲しい時に暇人を引き込まないなんてどういうつもりですの?」
禁書「言い回しが何となく気に入らないけど、この人の言う通りかも」
打ち止め「ミサカもジャッジメントさんに同意! ってミサカはミサカは仲間はずれにしようとしたあなたを非難してみる」
上条「いや、そうは言ってもさぁ……」
初春「まぁまぁ、喧嘩はやめましょうよ〜」
佐天「そーですよ。今は少しでも頭数が増えた方がいいじゃないですか」
黒子「下校時間になれば仲間も増える手筈になってますが。それにしても、このシスターさんの存在を何故先ほどの段階で言わな
かったんですの?」
上条(インデックスが迷子になって余計に捜し人が増える恐れがあるから、って言ったら噛まれるんだろぉな……)
黒子「っていうか、貴女は上条さんとはどういう関係ですの? そろそろハッキリさせてくださいまし」
禁書「うーん、……ハッキリっていうか、私はとうまのおウチでお世話になってるだけかも」
「―――!!??」
上条「あ……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:18:25.03 ID:VSMfDIY0<>
初春「どどどど、同棲〜!?」
佐天「え!? ちょっ……。み、御坂さんはどうなっちゃうんですか!?」
黒子「上条さん……、ちょっとツラを貸してもらえませんかしら? なぁに、時間は取らせませんの」ゴゴゴ
上条「え……ちょっと何これ? 上条さんは一体どこで地雷を踏んじゃったの!?」
上条の質問に答えるように黒子は金属矢をスカートの裾から取り出す。
その後、自身の事情を簡単に説明するのに貴重な時間を三十分も無駄にした。
何故みんなが過剰に反応したのかさっぱり分からないが、命の危機だけは察知できたから死にもの狂いで弁解した。
生き延びる代償が三十分なら安いものだと無理矢理納得して気を取り直す。
早くも前途多難が予想された。
―――
とある研究室。
ゴポゴポと音を立てながら機動する水槽のような大型の機械。これが俗に言われる『培養器』か。
口と鼻を覆う呼吸用マスク、そして手足に無数の管線を取り付けた状態で充満した液中に漬けられて漂う番外個体の
瞼が僅かに動く。
「………」
しかし、それだけで彼女の目が開くことはなかった。
その代わりに脳裏で木霊する『声』に、番外個体は失われている意識を預ける。
聴こえてくるのは一人の少年の声。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:20:20.73 ID:VSMfDIY0<>
姿は見えないが、浮かんでくる。
頭の中で自分を呼び続ける少年と離れることを拒んでいる。
―――あなたは、ミサカの敵。ミサカをたくさん殺した。
みんなの悲痛な叫びが、ミサカに集まってくる。だから、全てのミサカを代表して―――
殺 す の
―――やっほう、殺しに来たよ。
何逃げてんの? ぶひゃひゃひゃ―――
これは、誰……?
―――待て待て待てって。何それ? ぶひゃっ♪ 何よその殺す気すら薄れちゃう間抜けな顔は。
で、何よその手は? ミサカに協力しろだぁ? あっひゃっひゃっひゃっひゃ!! 何だその真顔―――
これは………ミサカ?
分からない。想い出せない。けれど、確かに“経験”している。ミサカはこの場面に立ち会っている。
ミサカはこの後、どうなった?
『―――このガキを、頼む』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:22:00.51 ID:VSMfDIY0<>
そうだ、あの馬鹿は一番守りたかったモノ(最終信号)を託すほどミサカに気ぃ許したんだっけ。ホント、何であんな
のが『恨みの対象』になるんだか…。せめて息をする価値もないぐらいの極悪道を徹底的に貫けよ。そしたらいつでも
その鼓膜障りな心臓の音を停めてやんだからさぁぁ。
え…? 何これ? 何この感情? 想い出してる……の?
―――つまり、あなたはミサカの執事みたいなもの? ぶっ、似合ってねぇ〜〜! っつーか、何でミサカがあなたに
世話されなきゃなんないワケよ―――
なら、これは?
―――うわ! つっまんねぇーーの! 何そのつまんない返し! あなたって人嫌い? なんでそんなムスッとしてんの?
クール系目指してるとか―――
これも……ミサカ……?
どういう事なんだろう。頭が混がらがってきた。どっちが本当なの?
『―――グダグダうるせェ。とにかく今日からしばらくオマエの面倒は俺が見る事になったンだよ。我慢しやがれ』
やっぱり、同じ人だ。
ミサカとこの人は、敵同士なの? 違うの?
わからない………。
わからない、わからない、わからないっっ!!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:23:02.15 ID:VSMfDIY0<>
『―――そう悩むことはない』
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:24:28.69 ID:VSMfDIY0<>
えっ、……誰?
『お前に正しい道を教えてやるよ』
正しい道……?
『お前の脳裏に浮かぶその男こそ、全ての元凶だ。そいつはこれからもお前を苦しめ続けるだろう』
あの人が、ミサカを苦しめている……。
『そいつは敵だ。お前の敵だ。お前にはそいつを殺す権限がある』
ミサカの敵。………でも、
『迷う必要がどこにある? ヤツは悪だ。お前の仲間をたくさん殺してきた、大悪党だ。死んで当然の人間なんだよ』
あの人は、悪……。
『そうだ、だから殺せ。お前の手でヤツを葬ってやれ。殺された妹達の仇をお前がとるんだ―――!!』
「…………ッッ!!」
眉間にシワを寄せ、苦悶の表情を浮かべながら魘される番外個体。
ゴポポ、と泡をマスク越しから発生させて悪夢と葛藤に苦しむような彼女の様子を冷静に観察しながら、研究員は何やら
レポートをとっている。
「クックック……」
そしてその背後には、腕を組んだままほくそ笑む木原数多(怨念個体)の姿も見受けられた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:26:31.33 ID:VSMfDIY0<>
―――
木原数多にリンチにより二度寝を強要させられた一方通行から隔離された獄室に御坂美琴は囚われていた。
一方通行が収容されているのは地下一階。美琴の監禁室は階段もしくはエレベーターでの移動に加え、複雑な通路を渡った
末に厳重なロックを解除する必要もある。同じ囚われの立場でも互いの身は完全に隔離されていた。
ここからも想像できるように、施設内は迷路の如く通路が入り組んでおり、到る所にロックが掛けられている。指紋や声紋
により対応するシステムではなく、暗証番号の入力やカードキーが主なタイプだ。
仕掛けられた防犯装置やカメラの数は数えきれないほどである。
研究施設の中でも大手クラスの設備が施されているこのアジト。その脅威度は超能力者二人を完全無効化して幽閉できる点
からも大いに窺えた。
「……………」
美琴は一方通行ほどの扱いは受けないまでも、やはり不自由な自分の立場に唇を噛みしめていた。
腕に巻かれた奇妙なデザインの腕輪を忌々しく見つめる。
どうやら、これは自身の電力を施設内に共有する装置も兼ねているようだ。
探索装置が稼動を終えたにも関わらず、『出力中』のランプが今もなお点灯していることからそう結びつく。
「……………」
だが、能力を使用している感覚はない。というか、一部を除いた施設内には常時キャパシティダウンが流れており、そもそも
能力使用の軸となる演算処理が行えないのだ。
勝手に『自分だけの世界』に干渉され、勝手に力が放出されていくのは妙な心境である。
そして彼女自身にもこれによる負担が殆どない事を考えると、いかに優れた性能なのかが分かる。こんな代物が存在していた
ことなど勿論知らなかった美琴だが、悪用されている以上は素直に称賛できない。
(ふーん、つまりこれはセンサー式のコンセントみたいな役割なのね……。まったく、上手く利用されたモンだわ)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:28:46.62 ID:VSMfDIY0<>
『自分はここの電気代節約に大幅な貢献をしている』。そう思うと非常に腹も立つが、結局どれだけ駆使しても腕輪は外せな
かった。
やはり木原の言うように、小さく見える鍵穴に鍵を差し込む以外になさそうだ。
(アイツから鍵を奪う…か……。ハァ、可能性低いわね…)
この期に及んで木原の恐さがまだ分からないような美琴ではないが、だからってこのまま一生木原の言いなりになって生きる
つもりもない。
(きっと、黒子たちが……みんなが私を捜してくれてる。……大丈夫、もう少しの辛抱よ)
外の状況など知るはずもなく、美琴は前向きな心中で自身に喝を入れた。
(あんなヤツに、屈してたまるかっての!)
気合と共に両拳を握る。
この状況で己をしっかりと保てる精神力の強さも、彼女が超能力者へと上り詰めた要因の一つだろう。
一階収容所で希望に目を光らせていると、ドアが開いて女の人が入って来た。しかし、美琴は特に驚きの素振りを見せない。
ここに来てからもう四日目、すっかり見慣れた使用人の女性だったからだ。
「オラ、メシだ。さっさと食いな。残したら許さねえわよ」
入室の第一声がそれである。食事の乗ったトレーを床に置いた女性は慣れた手つきで美琴の拘束具を取り外す。やがて両手は
自由になった。
最初の日は外された途端に逃亡を試みたのだが、五秒で関節をキメられてから体術では敵わないことを学んだ。
華奢で清楚な見た目からは想像できないほど強い使用人に今では逆らえないでいた。
ついでに口も悪い。まるで二人の木原を見ているようだ。
黒く長い髪を垂らしている使用人の顔は少し見覚えがある気がしたが、ハッキリと思い出すには到らなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:30:30.57 ID:VSMfDIY0<>
「食べればいいんでしょ……」
設置されてある卓袱台に美琴はトレーを乗せて箸を動かす。
最低限の生活は保障されているものの、依然不自由な環境に不満が消えるはずもない。ましてや美琴の年齢を考えるとあまり
にも過酷な話だ。
美琴はムスッとしながらも食事を終え、使用人に話し掛ける。
「ねぇ、これっていつもアンタが作ってるの?」
「んだよ。悪いか?」
基本的に暇なせいか人肌が恋しいせいか、使用人とはよく会話する。内容はくだらない事ばかりだが、それでも時間潰し程度
にはなっていた。
美琴「べ、別に悪いなんて言ってないじゃない。そんな睨まないでよ」
女使用人「ケッ……贅沢なんて言える身分じゃねえだろーが。食わせてもらってるだけでもありがたいと思え」
美琴(………やっぱりこの人の声、前に聞いた気が……)
女使用人「あぁ? 何だよ。今日はやけに静かじゃねえか」
美琴「うん……、ちょっとね」
女使用人「ふぅん」
美琴「アンタは、木原ってヤツの計画については知らない……のよね?」
女使用人「……興味もねえし、あったとしても知っていい立場じゃねえだろぉ」フン<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:31:33.69 ID:VSMfDIY0<>
美琴「ねぇ、アンタって………やっぱり前にどっかで会わなかった?」
女使用人「……昨日も同じこと訊いたなぁ。知らねえっつっただろぉが」
美琴「でも……。……ねぇ、ちょっと眼鏡掛けてみてくんない?」
女使用人「っ!」ドキッ
美琴「………」
女使用人「ななな、何でんなモン掛けなきゃなんねえんだよ? 別に目ぇ悪くもねえぞ?」ドキドキ
美琴「そう言わずにちょっとだけ♪」
(明らかに動揺したわよね今……)
女使用人「お断りだボケ! く、食い終わったんなら食器持ってくからなぁ」
美琴「あ、ちょっ……もう行っちゃうの?」
女使用人「るっせぇな。コッチはテメェと違って暇じゃねえんだよ」
美琴「別に好きで暇してんじゃないのに………」
女使用人「ケッ……」
美琴「…………」
女使用人「……んな犬みてぇな目で見んじゃねえよ。風呂の時間になったらまた来てやらぁ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:34:40.24 ID:VSMfDIY0<>
美琴「それまであと何時間あると思ってんのよ?」
女使用人「…………あぁー、……わーったよぉ! んじゃコレ(食器)置いたらな!」
美琴「♪」
女使用人「……何嬉しそうなツラしてんだぁ?」
美琴「だって、退屈で死にそうなんだもん……。今の私の境遇考えりゃ分かんでしょ? これでも青春真っ盛りの
乙女なつもりなんですけどー?」
女使用人「まぁ、同情ぐれぇならしてやるよ。助ける気はこれっぽっちもねえがな」
美琴「えぇ分かってる。アンタにも立場ってのがあるもんね……」
女使用人「………とりあえずこれ置いてくっから待ってろ」
美琴「絶対来なさいよ?」
女使用人「チッ……」カツン カツン
(無様な超電磁砲の姿が見れると思ったから数多のボケに頼んでまで嗤いに来たってのに、何でいつの間にかガキの
世話役になってんだ? 納得いかねぇぜクソ。ゲテモノ食わすつもりで作ったモンが『美味い』って言われたぐれえ
で何良い気になってんだよ私はよぉ!?)ブツブツ
獄室を離れ、通路を歩きながら女使用人は愚痴り続けていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/24(日) 20:39:32.78 ID:VSMfDIY0<>今回はここまでです
次は明後日ぐらいになります
お付き合いいただきいつも感謝です
んでは<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 20:48:16.93 ID:pndKaX2o<>クリスティーナかwwwwwwwwwwwwwwww
デレてるのかwwwwwwww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 20:57:33.41 ID:ogaSAxYo<>テレスティーナな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 20:59:12.55 ID:iyErYOQo<>クリスティーナだと運命石の扉がエル・プサイ・コングルゥしちゃう
ともあれ乙!
ここから少しずつでも逆転の布石が打たれていけばいいが、どうなるんだろ・・・<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 20:59:20.67 ID:en5LDZgo<>乙
まさかクリスティーナが世話役とはwww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 21:00:44.59 ID:en5LDZgo<>ミスた
テレスティーナだなorz<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 21:37:26.84 ID:ZcahSmEo<>顔芸さん、超電磁砲のお世話、乙であります<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 21:58:03.52 ID:3LXzAuMo<>キハラゴーストでなぜかワロタww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/25(月) 00:35:17.33 ID:0Q.Yu6U0<>色々てんこ盛りで、どんな感想書いたら良いか分からなくなってきたが
取り合えず一方さんカッケー……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/25(月) 01:31:30.62 ID:jC7.y6DO<>何だ、デレスティーナか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/25(月) 09:19:12.16 ID:Xr3M/cs0<>美こっちゃんとデレスの百合と聞いて(ry
木原くン軍用クローン化したのか…
どおりでな
生身でも一方さん追い詰めてたぐらいだもんな
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/25(月) 10:38:27.47 ID:pYObDYAO<>ネオ木原くンと同じ作り方をすればレベル5クローン作れそうだなと思った<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/25(月) 18:16:35.75 ID:jC7.y6DO<>今回は(一応)一般人を軍用特化したからなだけであってLv5クラスになるとやっぱキツいんでない?
まぁこのままクローン技術進化したら出来そうだけど<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:25:44.22 ID:.EBaUuA0<>レベル5クローンか…
いつか劣化版じゃないやつできるのかなと
肉体強化系なら木原くンイイ線行きそうですね
では続き投下します
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:26:56.24 ID:.EBaUuA0<>
―――
普段来ることのない学区内を、控えめな私服で格好で歩く数名の少年少女。全員帽子着用で、学校が厳しい上に謹慎
処分中の身である白井黒子に至ってはサングラスも装着している。
学校を休んで捜すのにも限界がある以上、今日一日の時間を有効にしたい気持ちは皆同じだった。
呑気にクレープを頬張るいつもの格好をした修道女以外は。
「とうまー。これもうひとつ食べたいな♪」
頭に三毛猫を乗せて甘えた瞳を向けてくる。上条はグラリと萌える前にワナワナと拳を握った。
「さてここで問題でーす。インデックス様は一体いくつクレープを食したでしょう?」
打ち止めが最初に挙手する。
「はーい! まずミサカが残した分! ってミサカはミサカはボリュームの多さに半分も食べられなかったんだけど、
あっさり完食したシスターさんに唖然としてみる」
打ち止めの言葉に続くように佐天、初春、黒子の順番で手が挙げられる。
「シスターさんの胃袋って亜空間にでも繋がってるの?」
「見てるだけでお腹いっぱいになったのは生まれて初めてです」
「能力でも使ってるのかと思わず疑ってしまうくらいですわね」
たまたま寄ったクレープ屋のクレープはボリュームがいつものより多かった。上条ですら残してしまうほどに。
当然全員食べ残すのが摂理だったのだが、約一名例外がいた。自分の分は完食し、あまつさえ全員の食べ残しすら処理
してしまったフードファイターがここにいた。限度を知らないファイターは更に対戦相手を要求している。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:28:38.23 ID:.EBaUuA0<>
「味は良いけど量が足りないかも」
こんな事を平然と言ってくる。これが上条の堪忍袋の緒が切れるキッカケの言葉になった。
「ざっけんな!! むしろウリなのは量の方だろうが!! ……ってそんなこたぁどうでもいいか。あのなぁ、俺らは
遊んでるワケじゃないんだぞインデックス。コッチはあまり目立たないように行動しなきゃならねえってのに、お前の
大食いパフォーマンスで全てが台無しになりかけたじゃねえか! ……しかも、今日の夕食費用はこれで完全にアウト
確定ですよ!! いやむしろそれに対する怒りの方がデカイ!!」
マシンガンの如く熱叫する上条だが、修道女もとい禁書目録は頬張っていたクレープを飲み込んで何やら祈り始めた。
「ああ神様。日本には『腹が減っては人捜しならぬ短髪捜しは叶わぬ』という諺が存在します。これを無視し、今も強行
に及ばんとするこの憐れな少年にどうか最後のお慈悲を…」
「テメェの空腹を満たしてたら交通費が尽きて何も叶わなくなるんだよ! ってか何だその語呂が悪くて言葉にもなって
ねえ諺は!? 諺と言う名の欲望ですかーッ!?」
祈りの途中でも上条は容赦なく口を挟んだ。
「いつまでも馬鹿やってないで早く開始しますわよ」
冷静で痛い言葉を投げつけた後、黒子が進行を仕切る。
黒子「まず、二手に分かれて聞き込みですの。わたくしと初春と佐天さん、上条さんとシスターさんと……くっ、小さい
お姉様に分かれましょう。異論はございませんか?」
上条「異論はないが、何故に打ち止めを名残惜しそうに見る?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:29:48.86 ID:.EBaUuA0<>
打ち止め「………ホッ。ってミサカはミサカは密かに安堵の息を吐いてみる」
佐天「白井さんの気持ちも分かりますよ。アホ毛ちゃんって御坂さんに似てるから……」
初春「そうですね。こうして見るとまるで御坂さんの生き写しみたいで、何だか涙が出そうです…」
黒子「縁起でも無いこと言わないでくださいな! お姉様は生きてますの!」
打ち止め「そうだよ! お姉さまの形見みたいな目でミサカを見ないでーっ! ってミサカはミサカは憤慨してみる!」
佐天「そ、そうだよね。ごめん」
初春「ホント、縁起でも無かったですね。すいません……」
上条「……んじゃ、気を取り直して行きますか! 早く御坂と再会して安心しようぜ」
初春「はい!」
佐天「そうですね!」
黒子「当然ですわ!」
打ち止め「よーし! ミサカも頑張る! ってミサカはミサカは気合を入れてみたり!」
禁書「途中でお腹空いても我慢するね! あとで短髪にいっぱいご馳走してもらうんだから!」
上条「………どうしてだろう。なーんかどうも今いちシリアスに欠けてるような気がする」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:30:55.25 ID:.EBaUuA0<>
不安は消えないが、上がった士気を下げるつもりもない。
一同は予定通り二手に分かれ、御坂美琴失踪事件に関わっていそうな人間もいなさそうな人間も問わず、片っ端から
情報提供を求めた。
それぞれ往来の比較的多い場所へと赴き、道行く人々をキャッチセールスの如く呼び止めるという地道で地味な方法
だが、派手な真似ができるような立場でもない。
上条「―――すみません。御坂美琴について何か知りませんか? 何でも良いんで、お願いします」
禁書「―――捜してるんだよ。見てないかなぁ。……え? ジャッジメント? ううん。そんな食べ物は知らないんだよ」
打ち止め「―――えーと、ミサカはミサカで、お姉さまは………うーん…。ってミサカはミサカは唐突な質問のお返しに
些か戸惑ってみたり……。い、妹でいいのかなぁ……?」
黒子「―――えぇ、どんな些細な事でも結構ですの。何か思い当たる事がありましたら是非お願い致します!」
佐天「―――友達なんです。だから心配で……。何か知っていたら教えてください!」
初春「―――あの〜、すみません。御坂美琴さんの失踪について情報を集めてるんですけど……」
そして、二時間後。上条達は一旦合流した。
黒子「そちらは何か分かりましたの?」
上条「いんや。収穫ゼロ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:32:18.74 ID:.EBaUuA0<>
禁書「見たって人はいなかったね……」
打ち止め「ミサカに向けられる同情に近い視線がちょっと痛かったかな……。ってミサカはミサカは身内を捜す健気な境遇を
体感して複雑な心境だったり」
上条「打ち止めは身内に見えるだろうしなぁ。……ソッチはどうだった?」
初春「……コッチもダメですね。御坂さんの行方を知ってる人どころか新たな目撃証言もありませんでした」
佐天「無視する人多くてちょっと腹立ったよ〜」
初春「仕方ないですよ。急いでる方だっているんですから。止まって話を聞いてくれただけでも感謝するべきです」
黒子「ですが、手掛かり無しでは意味がありませんの。もう少し粘ってみましょう」
モシ ソコノアナタガタ
上条「場所を変えてみないか? 隣り駅まで行ってみるとか」
禁書「それ良いかも! 同じ所じゃ飽きちゃうもんね!」
チョット ソコノアナタガタ
黒子「シスターさん、ですから遊んでる訳ではございませんのよ?」
禁書「わかってるんだよ〜」プクー
…オホン オホンッ!
打ち止め「もう学生さんたちが帰り始める時間だから早く行った方がいいんじゃない? ってミサカはミサカは勧めてみる」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:33:37.46 ID:.EBaUuA0<>
上条「そうだな。よし、それじゃ―――」
「―――オイコラァァ!! いい加減に気づけやぁぁぁあああ!!!」
上条「うわぁ!?」
打ち止め「わぁ!?」
禁書「ひゃっ!?」
初春「ひっ!?」
佐天「な、何っ!?」
黒子「あ……!」
婚后「さっきから呼んでますのに無視とは……、わたくしを常盤台の婚后光子と知っての狼藉ですの!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:34:43.35 ID:.EBaUuA0<>
上条「いや。知らないし、狼藉を働いた覚えも皆無なんですが……」
黒子「………上条さん。この方にはツッコムだけ無駄ですの」
初春「こ、婚后さんか……」
佐天「な、なーんだぁ。ビックリしましたよ〜。でも何でここに……?」
黒子「わたくしが呼びましたの。……遅いですわよ」
婚后「貴女と違って堂々とサボれる身分ではございませんの。これでも急いで来たんですのよ」
上条「そっか。白井が言ってた『後から来る仲間』って君のことか」
婚后「いかにも! 常盤台の婚后光子とはわたくしのことですわ! 以後お見知りおきを」スッ
上条「あ、いや。コチラこそどうも……」ギュッ(←握手)
禁書「またかこの野郎」
打ち止め「お、落ち着いてー! ってミサカはミサカはシスターさんの凄い力に引っ張られそうになりながらも懸命に押さえてみたり」
禁書「がるるるる…」
上条「君も、御坂捜しに協力してくれるんだよな……?」
婚后「えぇもちろん。御坂さんはわたくしの大切な友人です。心配するなと仰る方が無理ですわ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:36:07.03 ID:.EBaUuA0<>
上条「ありがとう。俺は上条当麻。御坂とは、まぁ腐れ縁みたいなモンかな」
婚后「え? 恋人では――ムグッ!?」
黒子「お、おほほほほ♪ 友達ですわよねー! いやですの婚后さんったら♪」
婚后「〜〜〜〜〜!!」モガモガ
上条「???」
湾内「―――あ、婚后さんいましたわ!」タタタタ
泡浮「―――婚后さーん! あ、白井さんも!」タタタタ
上条「ん?」
黒子「お!……来ましたわね」
婚后「モガモガ〜〜!!」(訳:苦しいから早く手を退けろ〜〜!!)
初春「湾内さんに泡浮さん!」
佐天「うわ〜! お久しぶりですね〜♪」
泡浮「ふふ、ごきげんよう。お二人ともお元気そうで♪」
黒子「お待ちしておりましたわ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:37:10.41 ID:.EBaUuA0<>
湾内「白井さん。遅くなってごめんなさい」
黒子「いいえそんな。わざわざ部活を休んでまで来ていただいて感謝していますわ」
泡浮(わっ! ととと、殿方がいる……///)
婚后(この小さい御坂さんは一体……?)
湾内(シスター? 外国の方でしょうか……?)
この後、常盤台からの更なる援軍や柵川中から駆けつけてくれた初春や佐天の級友などで、御坂美琴捜索隊の勢力は
除々に拡大していく。遂にはまるで署名運動まで始める団体もでき、御坂美琴の安否を気遣う声が街中に飛び交う事
となる。
美琴の人望の大きさを上条は深く実感した。
―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:38:09.44 ID:.EBaUuA0<>
それから一週間後。
一方通行は研究施設(アジト)の牢獄で七度目の朝を迎えた。
「…………」
ボロボロになってやつれた自身を見ても、もう何も思わない。
この一週間で味わってきた地獄は、一方通行の肉体と精神を確実に追い詰めていた。
だが、一方通行は負けなかった。
木原による度重なる暴力という名の拷問も、バスタイムと興じた水責めも、頭に電極を通されて脳を弄くり回された
精神的苦痛にも、彼は弱音を一切吐かずに受けた。
目が醒めた直後、木原にサンドバック同然の暴行を浴び、ズタズタにされた身体を引き摺られて実験室に放り込まれ、
詳細など告げられる事もなく『自分だけの現実』に介入されて精神と脳を汚される。
おそらくデータを採っているのだろうが、それが何に使われるのかも説明はされない。正にモルモット同然の扱いだ。
実験室には一方通行の悲痛にもがく叫び声がここから終わりまでの長時間に渡って響く。
そして、脳に走り続ける激痛からやっと解放されたのも束の間、意気揚々とした木原によって浴室へと連行される。
いくら拘束具が外されているとは言え、能力が使えない上にダメージも蓄積した身体では抵抗も敵わなかった。
乱暴に衣服を剥ぎ取られて浴槽に押し込まれる。
泡の充満した湯船に頭を沈められて息ができなかったり目に泡が染みたりと、別の意味での地獄を味わされた。
水責めならぬ泡責めである。
身体の汚れ自体はそれで落ちていくが、心の汚れは黄ばみを増していく一方だった。
あげくにコーヒーを要求したら、砂糖にミルクたっぷりのミルクティーが差し出される始末。
容赦のない拷問から地味で素敵な嫌がらせまで、木原はとにかく徹底していた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:40:20.80 ID:.EBaUuA0<>
実に不愉快で壮絶な一週間だったが、一方通行は最後まで木原に屈さなかった。
奴隷に等しい扱いを受けながらも、心を折らずに耐え続けた。
(今、何日目だ……。もォ日にちの感覚すらねェよ)
だが、流石にそろそろ限界が近づいているのもまた事実だった。
(クソガキは、元気でやってンのか……? こンな事になるンならあの時すぐに電話しておけば良かったな……)
(超電磁砲はまだ拘束されてンのか……。アイツは仮にも『表の人間』だろォがよ。さすがにもォ解放されてなきゃ
世間的にやべェンじゃねェか? ………イヤ。木原ならそンなの眼中に入れねェかもな)
そして―――
(番外個体は……無事なのか? ツラが見てェなァ。せめてひと目だけでも確認してェよクソったれ……)
(きっと今の俺の姿見たら、悪そォでアホな目ェひン剥いて馬鹿笑いすンだろォな……。我ながら情けねェが、それも
今なら悪くねェかも……)
(って馬鹿か?、何考えてンだっつの。………ハァ、かなりやられてンな。そりゃあンだけ頭弄くられてりゃイカレて
ても別におかしくねェけどよォ……。さすがに今のはねェだろ)
(にしても妙だよなァ。木原の野郎……何でさっさと俺を殺さねェンだ? 計画ってのも結局曖昧っつか、何か明確的
じゃねェしよォ……。まさかホントに俺を一生懸けてイタぶるつもりってか? ハッ、そこまで暇人かよアイツ……)
(……アレイスターの計画の『第一候補(メインプラン)』に俺が属してるからって事はまさかねェよな。木原の野郎も
計画自体は“独断”っつってやがったし……。実質今木原がやってる事はヤツの計画から大きく逸脱しているハズ……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:41:39.36 ID:.EBaUuA0<>
(つまり、このクソ計画に全面協力してンのは統括理事会のごく一部になるワケだ。アレイスター本人は省られてるって
事になンのか……。知ってて泳がせてる可能性も有り得るが……あァー、分っかンねェなァ)
(ったく……にしても、いつまでこンな茶番続ける気なンだか………)
ぼんやりと思考に耽る最中、モーニングコールが通路の奥からタイミング良く聴こえてきた。
「―――おはよう、一方通行くぅん♪ ご機嫌いかがぁぁ? ぎゃはははははぁ!」
(………チッ、今日も来たか。相変わらず馬鹿みてェな寄声発しやがって。このマッドサイエンティストが)
間もなく姿を見せた声の主を、苦虫を噛み潰すような表情でキッと睨みつけた。
―――
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:43:05.71 ID:.EBaUuA0<>
御坂美琴の監禁生活は十日目に突入していた。
「………もう、いや……帰りたい……」
枯れた声で嘆く美琴の顔は、まるで漂流生活でもしているかのようにやつれていた。
一方通行ほどひどい仕打ちは受けていないものの、日常を奪われた少女にとっては過酷以外の何物でもない。
解放の目処も立たずに時間だけが過ぎていく。
「……帰りたいよ……。誰かぁ…」
時間が経てば経つほど不安も増していく。『このまま一生を終えるのか』と思う気持ちが強くなる。
「……………」
木原数多は一方通行に専念しているのか殆ど自分に干渉してこない。それはありがたいが、ただ何もない日が延々と
続いていくというのもある意味地獄だった。
「お父さん………お母さん………黒子ぉ……初春さん……佐天さぁん……」
「…………当麻ぁぁ」
―――みんなに逢いたいよ……。
脳内で再生される自分の『日常』。あの場所に戻りたい。二日ほど前、美琴はついに発狂した。
気が狂った猛獣のように、ネジが外れたかのように、彼女はひたすら檻の中で叫びまくった。
『―――ここから出してよぉぉ!!! 帰して!! 帰してよぉ!!! こんなトコいたくないのぉ!! 帰りたい
のよおおっ!! もういやァァあああああああああ!!!!!』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:44:15.76 ID:.EBaUuA0<>
そこにいつもの彼女はいなかった。いたのは我を忘れて暴れ叫び、解放を訴え続ける幼い少女だけだった。
海で漂流した人なんかが味わう“絶望への恐怖”。それに近い精神状態にまで追い込まれた美琴の悲痛な叫びが施設
に響き渡る。聴いていて耳を塞ぎたくなるほどに。
しかし、訴えの矛先にとっては“駄々をこねるただの子供”。結局その程度の印象しか与えられなかった。
使用人はそんな美琴を微笑ましく見つめるだけで、泣き叫ぶ彼女を取り押さえようとはしなかった。
まるで、「これが見たかったんだ」とでも言っているかのような眼で、ただ傍観するだけだった。
「―――よぉう、どうだい調子は?」
そんな極限の状態も通り越してしまった美琴とって唯一の対話相手に位置づけられる使用人は、今日もいやらしい笑み
を浮かべながら彼女の目の前に現れた。
女性にも関わらずどこか木原数多を思わせる雰囲気が未だに若干苦手だが、話し相手を選べる身分ではない。
この粗暴な性格を合わせ持つ女とはやはりどこかで会っている気が当初からずっとしていたが、もうそんなことはどう
でも良くなっていた。
「……良さそうに見えんの?」
「見えねえよ。がははは♪」
「…………」
いつもどおりのニヤケ面な使用人に美琴を眉をピクつかせる。
美琴「もう、いい加減にしてよ……。何で私がこんな目に合わなきゃいけないの……? 私もあの子達も、何も悪いこと
してないのに……」
女使用人「こりゃ相当参ってるみてぇだなぁ。ま、無理もねえか」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:46:42.24 ID:.EBaUuA0<>
美琴「これで平然としてられる方がむしろ異常よね……」
女使用人「……今日もメシ食わねえのか?」
美琴「いらない……食べたくない」
女使用人「あっそ、…まぁ好きにしな」
美琴「…………ねぇ」
女使用人「あん?」
美琴「お願いがあるんだけど……」
女使用人「ここからは出せねえぞ?」
美琴「ッ……どうして…?」
女使用人「おとといからずっと言ってんじゃねえか。またこのやりとりかよ……。とうとう頭でも沸いたか?」
美琴「沸きもするわよ……もう、頭が変になりそう」
女使用人(いいぞいいぞォォ。良い顔だ。最高の快感だぜぇ。ぎひひッ……あー、笑いてぇ。今すぐ腹抱えて爆笑してぇぇ。
けどまだだ。まだその時じゃねぇ。ククク……堪えろ堪えろ)プルプル
美琴「どうしても、ダメ?」
女使用人「ダメに決まってんだろ。……今はな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:48:29.09 ID:.EBaUuA0<>
美琴「……いつ?」
女使用人「その内もっかい木原サマに頼んでやるよ。もうしばらく我慢しな」
美琴「……ごめんね。アンタはなんだかんだで善くしてくれてるのに、無理ばっかり言って……」
女使用人「気にすんなよ。別に大したことじゃねぇし」
美琴「………ありがと」
女使用人(嘘だよ、ばぁぁぁぁぁか♪ 誰が逃がしてやるかっつの! すっかり私を信じきった目で見やがって。思惑通り
すぎて気持ち良いんだよぉ! 見てろぉ。第一位の処刑が終わったら、今テメェの抱いてる“唯一の縋り場所”
を跡形も無く打ち消してやるからなぁぁ。で、その後は殺してやる。絶望に瀕したままゴミクズのようにブチ殺し
てやるぜェェ。ぐふふふふ♪)
仮面のウラに隠した邪悪な本性。
と、そこへ―――
「―――おう」
「!?」
美琴と使用人の前に第三者が姿を見せた。
肩ほどまで伸びた茶髪に白衣をはだけさせた若い男が檻の前にいる使用人の側まで歩み寄って来ている。
出雲傭兵。木原の部下であり、唯一全てのセキュリティパスを持つ人物である。
木原ほどではないが、その容姿は科学者から逸脱している。どちらかと言えばホストが似合いそうな印象を
美琴は初見で受けた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:49:15.21 ID:.EBaUuA0<>
「あぁ? 何だよ、出雲じゃねえか。お前帰ってたのか?」
使用人は馴れ馴れしい態度ですぐ隣まで来た出雲に声を掛ける。
「ああ、ついさっきな。今日が『予定日』だからって木原さんに呼び出されたんだよ」
対等な友人と会話するような口調で出雲も応じる。
「……にしても、まさかお前がそれの世話をしてたとは知らなかったぜ」
出雲はソレという代名詞を美琴に使った。使用人は鼻で嗤って言葉を返す。
「仕方ねえだろ。ここには薄汚ぇ野郎しかいねえんだ。女の世話なら私が適任だろぉがよ」
「よく言うぜ。根っからの世話嫌いなクセによ。どーせ特権でも使ったんだろ?」
「おいおい、コイツの前であんまし余計なこと言うんじゃねえよ。私の密かな楽しみを奪う気かい?」
「あー悪かった。そうだったな。陰湿な貴女さまには毎度頭が上がりませんよ」
(何なのよこいつら……)
気分悪く二人を交互に見る。
それからしばらく出雲と使用人の会話は続いたが、美琴には殆ど内容が理解できなかった。
分かったのは、『今日、何かが行われる』ということだけである。
―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/26(火) 19:54:20.39 ID:.EBaUuA0<>一気に進んじゃいましたが、とりあえずここで切ります
間に起こった出来事(一方さん水責めや美琴とテレスのお風呂タイムなど)は
機会あれば…
続きは未定ですが、多分また明後日だと思います<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/26(火) 20:41:13.10 ID:t9fZHggo<>>美琴とテレスのお風呂タイム
>美琴とテレスのお風呂タイム
>美琴とテレスのお風呂タイム
>美琴とテレスのお風呂タイム<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/26(火) 20:54:09.38 ID:6TPNaPgo<>乙<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/26(火) 21:15:49.49 ID:122vl.AO<>水責めだ…と…ゴクリ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/26(火) 22:49:11.62 ID:av.UAv.o<>木原さん!番外個体への責めは俺に任せてください!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/26(火) 22:53:10.26 ID:cZjg4oDO<>木原さん!じゃあ一方通行は俺がやりますね!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/26(火) 23:53:45.73 ID:8eY4APIo<>>>656
お前さっき超つかれたーベッドでやすみてーっつってたろ?無理すんな変わってやるよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/27(水) 00:13:55.83 ID:J85AiQAO<>みんなまとめてそげぶ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/27(水) 09:42:17.68 ID:VMk3bqI0<>おおおつ!
ここの>>1が某上琴スレの作者ほどドSじゃなくてよかった…
おかげで一方さんの貞操は守られたぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/27(水) 10:14:46.98 ID:bOW/aUAO<>科学が神の時代か…
洗脳装置やら培養器という名の人口子宮
クローンならぬ同一体を作り出す技術
生物の尊厳なんて吹いて飛ぶようなもんなんだろうな…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/27(水) 12:48:20.20 ID:WcKAGNYo<>どうせ生命なんて化学反応の連鎖ですしおすし<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/27(水) 23:35:11.49 ID:VshuSEQ0<>乙!水責めもいいがサンドバックも…(チラッ
>>660
なにそれkwsk
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/28(木) 09:04:35.96 ID:1jeiBkAO<>>>663
上条「二人で一緒に逃げよう」 美琴「………うん」の事じゃねーの
現行スレ
http://s.s2ch.net/test/-/ex14.vip2ch.com/news4gep/1285421029/653-<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:42:17.30 ID:NRU4.fY0<>こんばんは
ほのぼの番外通行から完全にかけ離れてしまった…どうしてこうなった?
ちくしょう、この話終わったら書きまくってやる!
という決意を胸に秘めつつ続き投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:43:30.42 ID:NRU4.fY0<>
―――
本日は祝日で、学生達は休みを満喫している。
しかし上条当麻、白井黒子、初春飾利、佐天涙子などの御坂美琴捜索活動班は無論例外だ。
流石に学校を休み続ける訳にもいかず、初日と休日以外は放課後からの活動なのだが、今日は丸一日費やせる。
彼等は何とか美琴の足取りを掴もうと、草根を掻き分けるような捜索を勿論今日も試みるつもりである。
この一週間、何の手掛かりも得られていないにも関わらず。
(お姉様、わたくし達は諦めませんわよ! 絶対無事だと信じてますの!)
(御坂さん、早く帰ってきてください。また四人で遊びに行きましょう!)
(御坂さんは無能な私とも仲良くしてくれた。……私、絶対に見捨てたりしませんからね!)
(御坂……お前は今どこにいるんだ? 元気でいるのか? ……あんま俺や友達に心配かけてんじゃねえぞ!)
それぞれの想いを胸に秘めた捜索活動は、思っていた以上に難航していた。
連日協力してくれた打ち止めや禁書目録には体調を考慮して休んでもらい、上条達は支部へ集結していた。
固法美偉も、上条達の説得に負けて今では協力者の一員だ。元々彼女も美琴の身を案じていただけに、説得は困難
ではなかった。
他にも婚后光子、湾内絹保、泡浮万彬といった、美琴を慕い心配する者達もそれぞれの合間を縫って今も協力して
くれている。
人数も少しずつだが着実に増えている。
打ち止め(上位個体)指揮の下、学園都市在住の妹達も捜索活動に参加している。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:45:04.40 ID:NRU4.fY0<>
しかし、人口二百三十万人の広い学園都市内で少女一人を見つけるのはやはり苦難なのか、未だ有力な情報は手に
入るまでに至らない。
このあまりに無情な現実に一同の脳裏には否が応にも『最悪の結果』がよぎってしまう。それを否定したいがため
に、彼等は躍起になっていると言っても良い。
「………」
上条もその空気を感じ取っていた。気が急くのも分かるが、それで美琴の居場所が分かる訳でもない。
中学生の多い(それも全員女子)捜索隊の中で、上条は年上らしく冷静に努めざるを得なかった。
(みんな、だいぶピリピリしてきてるな……。白井は大丈夫か? 一週間前みたいに無理し始めなきゃ良いけど…)
デスクに座して情報処理を行っている黒子の背中を上条は眺めた。
背中からでも焦りのオーラが見てとれる。
これまで、思いつく限りの捜索手段は実行してきたつもりだ。
先日、藁にも縋りたい一心からか、禁書目録に「魔術の力で何とかならないか?」と訊ねてみた。が―――、
〜〜〜
禁書『―――う〜ん、あるにはあるんだけど……ちょっと厳しいかも』
上条『厳しいって…?』
禁書『まず、術式が大掛かりなのと、範囲が特定できないことかな。術式を張るにしても範囲設定は絶対必須だし、
仮に街全域に設定するとしても、範囲が広いとやっぱりそれだけ高度な術式になってくるんだよ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:46:00.16 ID:NRU4.fY0<>
上条『ステイルとか、神裂とか、知り合いの魔術師でも無理ってことか…?』
禁書『魔術にも色々分野があるんだけど、二人は多分それに当てはまらないかも』
上条『そ、そうか……』
禁書『人捜しと言っても状況によって異なるんだよ。その中でも“人がいるかいないか”を確かめる魔術が比較的
いちばん簡単かな。調査範囲の熱量、反射音の変化、呼吸による空気量の相違、魔力の流れとかを精査すれ
ば人間の有無は案外割りとすぐにハッキリするよ。でも、個人の捜索となると……更に幾つかの条件が必要
になってくるかも』
上条『条件って……たとえば?』
禁書『ひとつはその人が持つ“魔力”だね。魔力は人によって特徴があって、完全に一致する確率は万分の一くらい
だから、それで個人を特定出来るんだよ。多くの魔術師が人捜しをするなら、この“魔力探知の術式”を作る
のが一般的っていうか定番かも。……けど、“能力”が人間の魔力を露呈させにくくしている学園都市じゃ…』
上条『駄目ってことか……?』
禁書『うん……。普通の人でも微弱な魔力が備わってるはずだから、探知できるんだけど……“能力者”の場合は魔力
が完全に埋もれてる状態だから、探知するのは余計に難しいんだよ。当麻の場合だとそれ以前に右手の力が妨害
するから“対象”は無理かな』
上条『………っ』(←自身の右手をジーッと見つめる)
禁書『あと、……捜索対象のサンプルも必要になってくるんだよ』
上条『サンプル…?』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:47:10.11 ID:NRU4.fY0<>
禁書『たとえば一本の髪の毛とか爪の欠片とか。あとは魔力のサンプルとかでもあれば術式もずいぶん簡単になるけど
……“魔力”の条件がクリアできない時点でこの術式はもう不可能だね……。魔力に頼らないで捜すとなると、
その人個人の正確なデータとせめてニ〜三日以内の血痕が必要な上、術式もより高等になっちゃうし……』
上条『失踪した人間を探すために失踪した人間が必要って……それじゃ駄目じゃねーか!』
禁書『うーん……』
上条『他には、無いのか……? 他に魔力が無くても捜せる方法は何か無いのかよ!?』
禁書『……何のデータもなしに術式を組み上げて捜したい人を見つけてしまう魔術師もいなくはないと思うけど……
少なくとも魔術師の中で高位に属するほどじゃないとまず無理かも……。けど……』
上条『っ!』
禁書『私には、魔力も無いし……そんな力なんて……』
上条『あ……いや、悪い。別にお前を責めてる訳じゃないんだ』
禁書『ううん……。……ごめんね、とうま』
上条『な!? なんでお前が謝るんだよ!? お前は何も悪いことしてねえじゃねえか!』
禁書『ううん……。十万三千冊分の知識があるくせに、短髪ひとり見つけてあげられない……。私、役立たずだね……』
上条『そんなことねえよ! 何言ってんだ!? “学園都市の能力開発”っていうイレギュラーのせいだろ! お前が
責任感じる理由なんてどこにもないだろうが!』
禁書『とうま……』
上条『悪かったよ。……俺もつい焦っちまってさ。お前に当たるつもりじゃなかったんだ。ごめん、インデックス……』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:48:54.56 ID:NRU4.fY0<>
〜〜〜
(―――あれ以来インデックスのヤツ、御坂を捜すのにやたら積極的になっちまった。メシを食うのも忘れるくらい…
あいつがそこまで無理しなきゃならない理由なんかないってのに……)
(俺のせいだ。俺が詰め寄る言い方なんかしたから……あいつに要らない責任感じさせちまった……)
(自分の無力さに苛立って、インデックスにまで当たるなんて……最低じゃねえか。何やってんだよ俺は?)
(これ以上インデックスに無理させる訳にはいかねぇ。……休ませたのは正解だな)
(………みんなも言葉には出さないけど、相当追い詰められてる)
(ダメだ……。これじゃダメだよな……)
(ここは、俺がしっかりしねえと―――!!)パァン
絶望感が漂い始めている空気を打ち破ろうと、両頬に気合の張り手を打った上条が口を開く。
上条「……なぁ、婚后さんのヘビってさぁ、毒あんのかな?」
黒子「はい?」
初春「え? さぁ……どうなんでしょうね? 可愛いとは思いますけど」
黒子「……どこが可愛いんですの?」
初春「えぇー? 可愛いじゃないですかぁ〜♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:50:19.53 ID:NRU4.fY0<>
上条「そ、そうかぁ……? 上条さん危うく噛まれかけましたけど…」
黒子「それは貴方が不幸なだけですのよ」
上条「ぐぐ……爬虫類にまで上条さんの不幸属性は有効なのかよクソォ……」
佐天「っていうか、何で急にヘビの話題!?」
上条「いや、昨日連れて来てたじゃん? 首に巻きつけて平気なのかなーって、ちょっぴり思ってさ。ははは…」
黒子「ハァ……上条さん。気休めは感謝致しますが、もう少しマシな話題はございませんの? よりにもよって
ヘビって…」
上条「ぐ……申し訳ないですね。どうせ上条さんには女の子を和ます術など持ち合わせていませんよ」
黒子「あら、自覚はあったんですのね」
上条「!」グサッ
佐天「あ……言葉が刺さった図だ……」
初春「ちょっ!? し、白井さん!」アワワ
上条「………」ズーン
初春「上条さんっ!? そ、そんなことないですから! 落ち込まないでください!」
佐天「そうそう! 上条さん充分面白いですよ!……多分」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:51:19.77 ID:NRU4.fY0<>
上条「うぅ……励まされると余計に心が痛い」
黒子「クスッ………ですがまぁ、確かにここまで収穫無しでは、滅入りもしますわよね。気分を変えようとしてくれたの
は充分に伝わりましたから、あまりお気になさらないでくださいまし」
上条「はは……」
佐天「ポスター貼ったり色んな人に訊いたりしてるんですけどねー……」
初春「……ネットにも情報集まりませんしね……。ガセネタにもだいぶ踊らされちゃいましたし」
黒子「風紀委員として捜査に協力できないっていうのも厳しいですの。表上の活動が許されれば、他の支部との連携も
取れて、捜査効率もグンと上がりますのに……」
上条「それ以前に警備員が一切関われないってのがなー……。アッチの本部とかなら、それなりの設備はあるんだろ?」
黒子「それはそうでしょうが……」
上条「こうなったら、警備員の人達を説得してみるか? どうしても無理なら、せめて捜索に使えそうなものだけでも
借りるとか?」
佐天「あ! それ名案じゃないですか! 上条さんすごい♪」パチパチ
初春「うーん……」
上条「……どうだ?」
黒子「難しいでしょうね。警備員も上の決めた事には逆らえませんし、風紀委員のわたくし達がこうして隠密に活動して
いる時点ですでに問題ですの」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:52:25.61 ID:NRU4.fY0<>
上条「……風紀委員の白井や初春さんは行けないか。……なら、俺が直接行ってみるよ。必死に頭下げれば、何とかなる
かもしれないし」
佐天「わ、私も行きますっ!」
上条「佐天さん……」
黒子「いやいや! そっちの方が無理ですの! 上層部からの発令によって禁止されている以上、一般人の意見が通る訳
ありませんし、施設の備品を提供してくれるとも思えませんわ!」
上条「そんなの言ってみなきゃ分かんねえだろ? 可能性がゼロじゃないなら、賭けてみるべきだ。っつか、もう方法が
どうとか言ってる場合じゃねえよ。それに、もしかしたら話の分かる警備員だっているかもしれ――――ッッ!!」
佐天「上条さん……?」
初春「どうしたんですか?」
黒子「……?」
上条「……そうだ……そうだよ。何で今まで気づかなかったんだ……。ひとり……いるじゃねえか。警備員で話が分かって
くれそうな人が……」
黒子佐天初春「???」
上条「初春さん!」
初春「はっ、はい!?」
上条「○○高校で体育教師をしている黄泉川愛穂先生のデータベースを上げてくれ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:53:34.73 ID:NRU4.fY0<>
初春「黄泉川……先生って…」
黒子「っ!! そ、その手がありましたわ!!」
上条「あぁ、黄泉川先生ならきっと分かってくれる! 初春さん、頼む!」
初春「わ、わかりました!」カタカタカタ…
佐天「黄泉川先生って……まさか」
上条「警備員で、隣りのクラスの担任なんだ。先生だったら、正直に事情を話せば力になってくれるはずさ」
黒子「わたくしも同意ですの。警備員の協力者なら、きっと心強い味方になりますわね!」
初春「―――データが出ましたよ!」
上条「よし! 電話番号も載ってるな。……白井、俺に任せてくれるか?」
黒子「もちろんですの!」
佐天「お願いします!」
上条「よし、掛けるぞ……」ピッ
黒子佐天初春「………」ドキ ドキ
(pururururu pururururu―――)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:54:45.93 ID:NRU4.fY0<>
上条「頼む……出てくれよ先生……」
(―――プツッ)
上条「っ! あ、あの……」
『―――もしもし! ミサカ……じゃなくてヨミカワですけど! ってミサカ……ごほんっ! ど、どちらさま
でしょうか?』
上条「」
『えーっと、もしもーし? ってミサ……げふん!』
上条「…………その声、ひょっとして打ち止め……?」
『え? ……あ! そういうあなたはひょっとして正義のヒーローさん!? ってミサカはミサカは声から推察
してみる!』
上条「やっぱり打ち止めか!?」
初春「ぶっ!?」
佐天「えぇっ!?」
黒子「なんですとーー!?」
上条「なんで打ち止めが……? っていうか、そこってまさか…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:55:54.25 ID:NRU4.fY0<>
打ち止め『そこってここ? ミサカは今ヨミカワって人のおウチにいるよ。ってミサカはミサカは何であなたが
ウチに電話してきたのか気になる衝動を抑えつつも丁寧に答えてみる』
上条(打ち止めの保護者って、黄泉川先生だったのか……)
黒子「何たる偶然……ですの」
上条「…………」
打ち止め『もしもーし? あれ? 返事がないなぁ。ってミサカはミサカは切れたかな? と疑いつつ受話器
を覗き込むという意味不明な行動をとってみたり』
上条「……あー、……大丈夫だ。切れてないから』
打ち止め『ホッ。……ところでどうしたの? ってミサカはミサカは本題に入ってみる。お姉さまは見つかった?』
上条「……いや、まだだ。けど少し希望が出てきたんだよ」
打ち止め『ホントー!? ってミサカはミサカは今すぐソッチへ行きたい衝動に駆られてみたり! 今日は休め
って言われたけど、ミサカは平気だよ! ってミサカはミサカはタフネスぶりをアピールしてみる』
上条「駄目だ。そこにいてくれ。っつかさ、お願いがあるんだけど……」
打ち止め『えー!? ってミサカはミサカはぶーたれてみるんだけど、お願いってなぁに?』
上条「黄泉川先生は今いるか? いたら代わって欲しいんだ」
打ち止め『なんだよー! ヨミカワに用かよー! ミサカじゃねーのかよー! ってミサカはミサカはぶーぶー』
上条「頼むよ。今は黄泉川先生だけが頼りなんだ。……あとでまたクレープ買ってやるから」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:57:05.81 ID:NRU4.fY0<>
打ち止め『も、もので釣るとは姑息な! ……けどまぁ仕方ない、そこまで言うなら乗ってやろう。ってミサカは
ミサカはクレープが食べたいという本音を隠しつつも決して釣られた訳ではないんだから! ってツン
デレ風に装ってみたり。うわーい! クレープクレープー♪』
上条「あぁもうめんどくせぇ! とにかく先生に代わってくれよ!」イライラ
打ち止め『今いないよ』
上条「」ピキッ
黒子「か、上条さん……落ち着いてくださいまし。相手はお子様ですのよ?」アワワワ
上条(あぁ、そうだな。相手が子供じゃなきゃ殴ってるな……。少なくとも土御門とかだったら間違いなく殺してる
とこだろうな……)ピクピク
初春「ひぃぃ……」ガクブル
佐天「か…上条さん。受話器、受話器握り潰さないで……」オロオロ
上条(……ふぅ。よーしよし、深呼吸、深呼吸っと……。ここでキレるほど上条さんは大人気なくないですよー)スーハー
打ち止め『あれ? もしもーし? ってミサカはミサカはまた切れたかな? って受話器を叩いてみる』コンコン
佐天(『叩いてみる』ってテレビじゃないんだから…)
上条「………あー、もしもし打ち止め? 切れてないから大丈夫だぞー」
初春(違う意味でキレてましたけど……)
上条「えーと……黄泉川先生って何時くらいに帰ってくるか分かるか?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 19:58:40.96 ID:NRU4.fY0<>
打ち止め『うーん、今日はお昼過ぎに帰るって言ってたよ。ってミサカはミサカは思い出してみる』
上条「昼か……分かった。黄泉川先生が帰って来たら風紀委員第一七七支部へ連絡するように伝えてくれないか?」
打ち止め『いいよー。ヨミカワにソッチへ電話させれば良いんだね? ってミサカはミサカは確認を取ってみる』
上条「ああ、頼んだぜ」
打ち止め『オッケーイ♪ 任せて! ってミサカはミサカは平らな胸をドンと叩いてみ……ごほっごほっ!』
上条「………ありがとう。それじゃ、ゆっくり休んでくれ」ピッ(←通話を切った)
黒子「小さいお姉様の保護観に当たっているのが黄泉川先生でいらっしゃったとは……」
上条「あぁ、俺もビックリしたよ……。けど、これでちょっとは希望が出てきたな」
初春「では、それまで私は情報収集を続けてみます」カタカタ
黒子「なら、わたくし達はビラ配りに参りましょうか」
上条「そうだな。今、婚后さん達が『学舎の園』で頑張ってくれてるから、俺達は人通りの多い公園にでも行くか」
佐天「望みが出るとモチベーション上がりますよね♪ 私今日はメガホン使って思いっきり叫んじゃおっかな」
黒子「どこの政治家ですの……?」
上条「……なぁ。ずっと気になってたんだけど、佐天さんって剣道部?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 20:00:03.62 ID:NRU4.fY0<>
佐天「…? いいえ。帰宅部ですけど」
上条「え? じゃあその細長い袋の中身って……」
佐天「あぁ、これですか。バットですよ♪」
上条「………何でそんなのずっと持ち歩いてんの? 護身用とか?」
佐天「あ〜、ほら、私って無能力者だから……せめていざって時に何か壊せる獲物くらい持っとこっかな〜って」
上条「………そ、そう…」
佐天「ちなみに、実績ありです♪ だから今回も役に立つかな〜って思って常に持参してます」
上条「ま、まぁ……あまり無茶はしないで良いからね」
黒子「貴方が言える事ですの?」ジー
上条「う…」
佐天「……?」
黒子「……さて、お話はこれくらいにしてそろそろ出ますわよ? 関連している人の一人ぐらいは必ずどこかに
いるはずですの」
上条「お…おう、そうだよな。んじゃ、行くとしますか」
しかし、それぞれが動き出そうとした正にその直前―――、<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 20:01:10.00 ID:NRU4.fY0<>
piriririririr―――♪
「――!」
上条のポケットに入っていた携帯電話が着信音と共に振動した。
「誰からだ……?」
表示は非通知。
支部へ来た電話なら有力な証言を得る可能性もあるため迷わず出るのだが、自分の携帯電話に非通知で掛かってくる
のは少し躊躇してしまう。だいたい彼の場合ロクな事に繋がった試しがないのだ。
「上条さん。出たらどうですの?」
戸惑いの表情で鳴り続ける携帯電話と睨めっこをしている所に黒子が横から口出しした。
「……わたくし達は先に出てますわね」
「あ、あぁ…」
「公園で待ってますから、早く追いついてくださいよ♪」
そう言い残し、黒子と佐天はひと足先に支部を出た。
(……まさか、インデックス? とりあえず、出てみるか……)
意を決した上条は通話ボタンを押して耳に携帯電話を近づけた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 20:02:51.47 ID:NRU4.fY0<>
「はい、もしもし―――」
『―――カミやんか!? 俺だ!』
「ッ!!!」
通話口から聴こえた声に、上条の目が見開かれる。この声は―――
「つ、土御門……土御門か!!?」
ここのところ久しく姿を見ていない親友の声だった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/28(木) 20:05:33.79 ID:NRU4.fY0<>とりあえずここまでです
書き溜まり次第、また投下に参ります
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/28(木) 20:06:33.27 ID:uThZnGoo<>リアルタイムで見れたぜ
ここでつっちーからの電話とか続きがwktk<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/28(木) 20:55:02.27 ID:n0lnZpoo<>ここで消息不明だったグループか…胸熱<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/28(木) 21:23:09.28 ID:WbauFqIo<>乙
盛り上がってきたな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/29(金) 09:40:01.49 ID:TSEAgng0<>土御門キターーーーーー!!
あれからどうなったのか気になってたんだ!
上手いこと持ってくるねぇ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/29(金) 19:42:00.67 ID:POhV32DO<>つつつつ続きが気になりすぎて顎ががくがくする<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:31:15.85 ID:/vp1pcI0<>こんばんは
では続き<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:32:27.74 ID:/vp1pcI0<>
土御門『ふー……カミやんは無事だったか。とりあえずはホッとしたぜい』
上条「土御門お前っ!! 今どこにいるんだよ!? 学校どころか家にもずっと居ないし、心配したんだぞ!」
土御門『そう怒鳴るなよカミやん。コッチも命懸けだったんだぜい』
上条「命懸けって……どういう事だ!?」
土御門『あー、その前にカミやん。近くに誰かいるか? できれば誰もいない所で話したいんだが……』
上条「え……?」チラッ
初春「………」ジーッ
上条「わ、わかった……」サササッ
上条「―――で、一体どうしたってんだ? っつか、『俺が無事』って何だよ?」
土御門『上層部がカミやんに手出しした可能性もゼロとは言えなかったんでな……。まぁ無事なら良い。ホントはもっと
早く連絡したかったんだが、そんな余裕もなかったぜよ』
上条「………すまん、全然話が見えてこないんだが。……それよりお前、今どこにいるんだ?」
土御門『正確な場所は言えんが、学園都市の外だとだけ言っておくにゃー』
上条「! ……まさか、魔術絡みか!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:33:35.69 ID:/vp1pcI0<>
土御門『いいや、それとは“別”だにゃー。俺にも色々あるんだぜい』
上条「……そうか、とにかく元気でいるならそれで良いけど……。あ! あと、お前に訊きたいことがあるんだ!」
土御門『何だ?』
上条「御坂っていう……ほら、夏休みの最後の日に俺にタックルしてきた子がいただろ? あの子が行方不明なんだ……。
もう十日も帰ってないんだよ。お前は何か知らないか?」
土御門『常盤台のエース、第三位の超能力者、御坂美琴か……』
上条「ッ! 知ってたのか!?」
土御門『当たり前だにゃー♪ こちとら伊達にスパイやってないぜよ』
上条「………ま、まぁいっか。で、俺とその御坂の仲間連中とで行方を追ってるんだけど、手掛かりが全く掴めないんだ…。
それで、お前にも手を貸してもらえないかと思ってたんだけど……」
土御門『ふむ……なるほどにゃー……そういうことか』
上条「ッッ!!? 何か知ってるのか!? 土御門っ!!」
土御門『落ち着けカミやん。友達が心配なのは分かるが、焦ってる内は何をやっても成功につながらないぜ』
上条「……わ、悪い…」
土御門『吉報から言うぞ? 俺の“スパイメモ”が筋書き通りなら、彼女はおそらく、まだ無事でいるハズだ』
上条「ほ、本当かっ!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:35:10.19 ID:/vp1pcI0<>
土御門『あぁ、だが……いつ用済みとなって消されるかもしれない』
上条「な……ッ!」
土御門『カミやん。今から言うことは、“学園都市の裏世界”に関わる話だ』
上条「………!!」
土御門『しかも、今までカミやんが関わった裏世界の中で最大級の“闇”が相手だ』
上条「…………」
土御門『それでもカミやんは、彼女を助けたいか? 彼女を救うために、自分の住む街に潜む強大な未知の世界に、
その足で飛び込んで行けるか?』
上条「―――当たり前だろ!!!」
土御門『……!』
上条「相手が誰とか、強大な裏世界とか、そんなの知ったこっちゃねぇ!! 救い出すことを躊躇う理由になってねえよ!
全然なっちゃいねぇ!! どんな事情があんのか、どんな闇が潜んでんのかは知らねえが、何の罪もないはずの御坂
を傷つけたりするようなヤツを黙って見過ごすなんて、俺には絶対にできない!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:36:36.59 ID:/vp1pcI0<>
土御門『……ふふっ』
上条「土御門……?」
土御門『カミやんなら、そう言うと思ったぜよ』
上条「……試したような言い方するなよ」
土御門『悪かったにゃー。ただ、やっぱりそれ相応の覚悟がないと、太刀打ちするにはキツイ連中なんですたい』
上条「で……」
土御門『……』
上条「教えてくれるんだろ? 御坂がどこにいるか見当のつく場所を」ニヤリ
土御門『……あぁ。っつか、そのつもりで最初から電話したんだにゃー』
上条「そうこなくっちゃな。ところで、お前はコッチに帰れないのか? 直接会えるんならその方が良いんだけど……」
土御門『ああ、それなんだが……』
上条「何だ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:39:05.01 ID:/vp1pcI0<>
土御門『生憎、今コッチは逃亡中の身だ。まだソッチへ帰るのはちっと厳しいにゃー』
上条「逃亡って……おい大丈夫なのかよ!? ってか、何に追われてんだ!?」
土御門『カミやんがこれから挑むヤツらと関連しているんだが、ちょっとドジったっつーか、深く介入し過ぎちまってな。
おかげでここんトコ、生傷の絶えない日が続いてるぜい』
上条「……マジかよ……!」ゴクリ
土御門『そんな訳だから、ほとぼりが冷めるまでは帰れそうにない。とりあえず黒幕の詳細とアジトの場所を今からソッチ
へ送りたいんだが、近くにFAXはあるか? ってか、カミやん今家か?』
上条「あ、あぁ。今、風紀委員の支部にいるんだ。多分FAXもあると思うから、ちょっと待っててくれ」
土御門『オーケー♪』
タタタタ
初春「……上条さん? どうしたんですか?」キョトン
上条「えーと……初春さん。悪いけど、ここのFAX番号教えてくれないか?」
初春「え……?」
上条「頼むよ。急ぎなんだ」
初春「は、はい……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:40:28.99 ID:/vp1pcI0<>
上条「―――もしもし? 土御門。いいか? 番号言うぞ。『×××――――」
土御門『―――オッケイ♪ んじゃ、すぐにソッチへ送る。無茶はするな……って言ってもどうせ無駄だろうから、頑張れ
とだけ言っておくぜよ』
上条「サンキュー土御門。恩に着るよ。じゃ――」
土御門『おっと、もうひとつ言い忘れたことがあったぜい』
上条「えっ?」
―――
上条「………」ガチャ
初春「あ、上条さん。電話…誰からだったんですか?」
上条「……え? あぁ……実は…さ」
初春「…?」
上条「………御坂の居場所が、分かったんだ」
初春「………へ……えええええっっ!!!??」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:41:38.63 ID:/vp1pcI0<>
上条「電話はずっと連絡の取れなかった友達からだった。……ソイツが調べてくれたんだよ」
初春「ほほほほ、本当ですかぁぁ!!?」
上条「ああ、信用は……まぁ一応できる。……安心してくれ。御坂はまだ無事らしい」
初春「!?……まだって……?」
上条「やっぱり、誰かが御坂を監禁してるみたいなんだ。今のところはまだ大丈夫だそうだけど、用が済んだら消される
とも言ってた。……つまり、あんましのんびりはしてられないって事だな」
初春「……そんな……ッ」
上条「もうすぐ、詳細の資料がFAXで送られてくるハズだ。それさえあれば、御坂を助けに行ける」
初春「わ、私、白井さん達を呼び戻しm」
上条「―――ダメだ」
初春「え……か、上条さん……?」
上条「ごめん……。けど、相手は俺たちが予想していた通り、かなりヤバイ連中らしいんだ。白井たちを危険に曝す訳には
いかない………」
初春「な……何言って……!」
上条「初春さん。………ここは、俺を信じてくれねえか?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:43:24.53 ID:/vp1pcI0<>
初春「は……?」
上条「御坂は……俺が連れて帰るよ」
初春「ま、まさか……一人で行くつもりですかっ!?」
上条「あぁ」コクリ
初春「そんなの無茶ですっ!! 死んじゃいますよ!!」
上条「大丈夫だ。こう見えても、危ないヤツらを相手にすんのには結構慣れてるからな。……任せてくれ」
初春「けど……いくらなんでも一人じゃ……ッッ!?」
ピー ピピーー
上条「きたか……」パッ
FAXで転送されてきた資料をふんだくるように入手した上条。
初春はそんな上条を何とかして止めようと、必死に言葉を模索する。
初春「待って! は、早まらないでください! 白井さんたちが戻って来てから作戦を立てて……」
上条「言っただろ。グズグズしている暇はないんだ。いつ御坂が消されるとも限らない。それに、お前らまで危険に飛び込む
必要はねえよ。……そういう役回りは俺だけで充分だ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:44:55.84 ID:/vp1pcI0<>
初春「で、でも!」
上条「初春さん。白井たちには……すまないけど、とりあえず君から謝っといてくれないか? もちろん、全部終わった後で
俺も謝るからさ」
初春「………うぅぅ…」
上条「御坂は、必ず俺が連れ戻してみせる。……約束するよ」
初春「………!!」
上条「だから、安心して待っててくれ」ニコッ
これから戦いに赴くとは思えない笑顔を初春に向け、上条は背を向けて歩き出した。
握った右拳に力を込めて。
(待ってろよ、御坂。今……助けに行くからな―――!!)
初春は、出口へ足を進める上条に声を掛けることもできなかった。
上条の雰囲気がそれまでの穏やかなものから急変し、今は背中からもその気迫が充分に伝わってくる。
こうなった上条は、もはや美琴でも止められない。
「っ……っっ………!!」
(……待って………待ってくださいっ!!)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:45:58.97 ID:/vp1pcI0<>
離れて行く上条の背中を、ただ見つめることしかできない。
止めなければならないのに、声が上手く出せない。身体を張って止めようにも、魔法でもかけられたかのように動けない。
そうしている内に、上条は初春の視界から姿が見えなくなりそうな位置まで移動してしまった。
あとはドアを開け、部屋を出てから閉めるだけ。上条を引き止めるならもう今しかないが、それは敵いそうにない。
椅子から立ち上がれずに心中で叫び止める初春を振り返ることなく、上条はドアを開錠した。
しかし、遂に上条が支部からその足を踏み出そうとした正にその時。
「―――ハイストーップ♪ どこへ行こうってんですか〜? 上条さぁぁん」
「………あまりにも遅いから様子を見に戻って参りましたが、どうやら正解だったようですわねぇぇ……」
「んなぁっ!?」
ドアの向こうで待ち構えるように立っていた少女達を直視した途端、これまでの鬼気迫る場面が全てぶち壊しになるほどの
間抜け顔を上条は披露した。
―――
〜とある隠れ家(学園都市外)〜
上条との通話を終え、追われるキッカケとなった資料をFAXで転送している土御門の背中を一つの影が覆った。
「お友達のヒーローさんは動き出したの?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:48:20.46 ID:/vp1pcI0<>
「ん……?」
掛けられた声に振り向く土御門。明かりは薄く、午前の陽射しが射しこむ倉庫型の室内で、少女は床に座り込む
金髪の後ろに立っていた。
結標淡希。
ツインテールにピンクのサラシ、そして着崩した学生服姿。
土御門の失敗により、共に学園都市からの脱走を余儀なくされた憐れな仲間の一人である。
土御門「あぁ、当然。……っつか、聴いてたのか?」
結標「聞こえたのよ。ずいぶん隙が多くなったわね……。ここ数日は追手もないからって、少し平和ボケでもした?」
土御門「かもな。やっぱ一週間前の“あれ”がピークか……。とりあえず、やっと落ち着いてきたぜよ」
結標「にしても、死を覚悟したのは久しぶりね。いくら撒いてもしつこいのなんのって……。本気でどうなるかと思ったわ」
土御門「ははっ、俺もだ。あの時はマジで殺されるかと思ったぜい」
結標「ええ、誰かさんがヘマをやらかしたおかげさまでねっ!」
土御門「う……まだ蒸し返しますかい? だからそれについては……まぁ、連帯責任ってヤツだにゃー♪」
結標「ざけんじゃないわよ! コッチはただの巻き添えじゃないの! 大体、貴方が私たちに何の一言もなく『禁止区間』
にまで勝手にアクセスしたりしなきゃこんな事にはならなかったのよっ!!」
土御門「悪い悪い♪ 反省してるって。俺だってミスのひとつぐらいは犯すぜよ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:49:44.94 ID:/vp1pcI0<>
結標「あー…もう、ホントに勘弁して欲しいわ……。で、一体いつになったら私達は学園都市に帰れるのよ?」
土御門「ん、そうだな。“アイツ”もすぐ行動に移るだろうし、ここらが潮時か……」
結標「は? ちょっと貴方、何言ってんの?」
土御門「そんじゃ、帰るか。結標のホームシックが限界に近づいてるみたいだしな」サラッ
結標「…………っ!?」
土御門「ん? どうした?」
結標「……え……帰れるの?」
土御門「あぁ、そうだが…?」
結標「………」
土御門「おいおい大丈夫か? 顔色悪いぜよ」
結標「ハァ……眩暈がするんだけど……。とりあえず、どういう事なのか説明してくんないかしら?」
土御門「説明も何も、ここ数日間何も音沙汰が無いし、そろそろ帰っても大丈夫かにゃーと」
結標「貴方が曖昧なまま行動しないって事ぐらい知ってんのよ!! 隠してないで正直に言いなさい!!」
土御門「……。はは、いやー、悪い。実は…総括理事会の中に木原数多へ根回ししていた組織がついさっき割れてな」
結標「えっ……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:51:22.58 ID:/vp1pcI0<>
土御門「つまり、俺たちに追手を回していた組織の頭も割れたワケで……」
結標「……ってことは、アレイスターの耳にも…」
土御門「当然入った。ってか、俺が入れた♪」
結標「いつの間に……」
土御門「俺が状況も把握できないままただ逃げるだけの男じゃないってことは知らなかったか?」ニヤリ
結標「知ってるけど! な・ん・で・私らには何も言ってくれないのかしらぁぁ!?」
土御門「いや、今言っ―――」
結標「貴方もモグラさんとお友達になりたいの? そう、それは知らなかったわ。それなら是非今すぐ叶えてさしあげるわね♪」
土御門「ゴメンなさいホントそれだけは勘弁してください」ヘヘーッ
結標「……ったく、んじゃあサクッと整理すると、上層部は裏切り者が内部にいる事実に気づいた。んで、貴方がソイツらの詳細
を提出した。よって連中は全員ブタ箱行き。……こんな所? そして私たちは学園都市に戻り次第、ヤツらの一斉検挙に回
されるってシナリオでしょ?」
土御門「いやー、その洞察力は見事としか言いようがないな……。大体その通りだが、最後だけハズレだにゃー。裏切った連中の
検挙は別働隊の方がすでに手を回してる。俺たちには『別任務』がしっかり用意されてるぜよ」
結標「別任務……? ってか、貴方さっき電話で『まだしばらく帰れない』みたいな事言ってたわよね?」
土御門「へ? …あぁ、あれ嘘♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:52:44.59 ID:/vp1pcI0<>
結標「……もう驚くのも馬鹿馬鹿しくなってきた……。これじゃ先に逝った海原が浮かばれないじゃないの……」
海原「―――何勝手に故人扱いしてんですか? 自分はまだ生きてますよ!」バタン
結標「あら、いたの?」
土御門「よう、今回お前は損な役ばっかだったにゃー」
海原「ええ全くです。ようやく地中深くから暖かい日の当たる世界へ帰還したのも束の間、強制追放ですからね! 今ほどあなた方
と組んでる自分に嫌気がさした事はありません!」
土御門「ははははは♪ まぁ過ぎた事だ。水に流せ」
結標「どのクチが言うのかしらね。やっぱり地底探検してみる?」
海原「そうですね。少なくとも自分の倍は深くお願いします。できるならいっそ地核まで送ってさしあげてください」
土御門「この度の事件につきましては、わたくしの落ち度により関係者の皆様には多大なご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び
申し上げます」ペコペコ
結標「どこの政治家または社長よ貴方は……」
海原「っていうか、明らかにふざけてますよね?」ピキキ
土御門「とんでもない。真面目に謝罪会見しただけだにゃー♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:54:53.99 ID:/vp1pcI0<>
結標「……もういいわ。海原、貴方も準備しなさい。帰るわよ」
海原「え? 帰るって……学園都市にですか?」
土御門「あぁ、そうだ」
海原「……大丈夫なんですか? 自分は今回の件であなたへの信用度がガタ落ちしました。今戻ってまた追われるなんて展開は御免
こうむりたいですね」
結標「あら? じゃあ貴方は帰らないの?」
海原「もちろん帰りますよ。あなた達とは別ルートでねっ!!」
結標「……ほら見なさい。貴方のせいよシスコン。海原のヤツ、すっかり人間不信に陥っちゃったじゃない」
土御門「あー……海原よ」ポリポリ
海原「……なんですか?」ジロッ
結標(うわ……『もうあなたの言葉なんて一切信用しませんよ!』って目が言ってる……。まぁ囮役にまで仕立て上げられたあげく
に負傷したんだから無理もないでしょうけど……)
土御門「俺たちと一緒に戻った方が最短時間で着くぜ」
海原「結構です。あなたと一緒にいてロクな目に合った試しがありませんからね。自分はのんびり帰りますんでご心配なくっ!」フン
土御門「………いいのか? のんびりなんかしてて」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:56:46.33 ID:/vp1pcI0<>
海原「……どういう意味ですか?」
土御門「あぁー、そうか。そう言やお前まだ知らなかったな。今、学園都市では何が起こっているのか」
海原「………?」
土御門「ふふふ、しゃーないな。教えてやるぜい」ニヤリ
―――
海原「……!! ほ、本当なんですか? それは……」
土御門「ほれ、証拠の新聞」パサリ
海原「―――ッッッ!!!??」
結標(ってか、なんでそんなモン持ってんのよ……)
海原「そ、そんな……まさか、……そのような事態になっていたなんて……ッ」ワナワナ
土御門「そして、俺たちは今から正に“その現場”へ直接向かうワケだが……。どうだ? 早く学園都市へ帰る気になったか?」
海原「………ッッ!!」カッ
結標(あ、目の色が……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:58:24.84 ID:/vp1pcI0<>
海原「―――ッたりまえでしょうッ!! さぁ、とっとと帰りますよ!! 車はどこですか!?」
土御門(ふっ、まぁざっとこんなモンぜよ)ニヤニヤ
結標「いや……ちょっと…」
海原「あぁぁぁ、何という事ですか……。こんな事になると知っていたら、学園都市から離れるなんて馬鹿な道は選ばなかった
というのに……ッッ!」グヌヌヌ
土御門(やっぱりコイツに言うタイミングを見計らったのは正解だにゃー。言った途端『学園都市に戻る!』って聞かないのを
予測していた俺に死角はなかった……)グッ
海原「何をグズグズしてるんですか!? とっくに準備は整ってますよ! 早く行きましょう!」
結標「もうやだコイツら……。いい加減まともな人間と関わらせてよ……」ハァ
土御門「……んじゃ、まぁそういうワケだから―――」
「―――帰るぞ。『学園都市』へ」
―――
佐天「上条さぁぁぁん?」ジロッ
黒子「どこへ行こうってんですのぉぉ?」ギロッ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 20:59:38.02 ID:/vp1pcI0<>
上条「あう……」アセアセ
初春「佐天さん! 白井さん! ……よ、良かったぁぁ」フニャー
黒子「上条さん? その手に持ってる資料、とりあえず見せてもらいますわね♪」パッ
上条「あっ……」
佐天「お手柄ですよ! さっすが上条さん♪ おぉ、これに御坂さんの居場所が載ってるんですね!」ジー
黒子「今回ばかりは、上条さんに心から感謝致しますわ♪ しかし……」ピクピク
上条「ひっ…」
黒子「―――こんのドアホがァァあああああああああああッッ!!!!!」ブン
上条「へぶもっ☆!?」バコーン
黒子「何考えてますの貴方は!? 一人で乗り込むぅ!? 馬鹿? 真性の馬鹿なんですの!? 無謀にも程がありますわ!!」
佐天「そうですよ!! 水臭すぎです!! 私たちが一緒だと邪魔だって言いたいんですかっ!?」
上条「……いや、あの、決してそういう訳ではなくてですね。何と言いますかその〜……」スリスリ
ガミガミ ガミガミ
スイマセンデシター
初春「かっこ悪……」ボソッ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/30(土) 21:00:15.34 ID:fLqUQFEo<>このカタルシスの予感……たまんねぇっすwwwwww<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/10/30(土) 21:03:33.60 ID:/vp1pcI0<>また半端なとこですが、取り敢えずここまでです
続きはニ〜三日後です
相変わらず誤字多くて読みづらくて申し訳ありません…
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/30(土) 23:02:27.08 ID:56GYT.DO<>乙乙
やっとグループ来たー<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/10/31(日) 04:20:32.32 ID:4SKzcUw0<>マジ熱い!!
脳内再生しやすいな
読みづらいどころかむしろ読みやすいんだが<>
なすーん<>なすーん<>なすーん<> __ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
``ー// |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|! | `ヽ=='´
l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ| | |
┏┓ ┏━━━┓ | || `Y ,r‐、 ヽl,_)ヽ ゙、_ | | |. ┏━┓
┏┛┗┓┗━━┓┃ ...ヽリ゙! | l::ー':| |:::::::} |. | / l|`! |i |. ┃ ┃
┗┓┏┛ ┃┃┏━━━━━━━.j | l|.! l::::::ノ , ヽ-' '´ i/| !|/ | |リ ━━━━┓┃ ┃
┃┃ ┏━┛┃┃ ┌┐ | l| { //` iー‐‐ 'i 〃/ j|| ||. |ノ ┃┃ ┃
┃┃ ┃┏┓┃┗━━━.んvヘvヘゝ | l| ヽ ヽ / _,.ィ ノ/川l/.━━━━━┛┗━┛
┃┃ ┏┛┃┃┗┓ i .i ゙i\ゝ`` ‐゙='=''"´|二レ'l/″ ┏━┓
┗┛ ┗━┛┗━┛ ノ ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、 ┗━┛
r|__ ト、,-<"´´ /ト、
| { r'´ `l l /|| ヽ
゙、 } } | _|___,,、-─‐'´ | ゙、
`‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/ | | |、__r'`゙′
| |/ i |
| | |<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/31(日) 21:25:43.28 ID:4SKzcUw0<>sage忘れたー!!
っつか、最初から読み直してて一個気になったんだが、木原の部下の出雲って奴もクローンなの?
それとも単に木原神拳の伝承者なの?
番外個体をあっさり捕まえた辺り、ただの無能力人間とはとても思えないんだが、どうなんだろうか?
後ではっきりする予定なら余計な口出しだと思って聞き流してくれ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/01(月) 11:27:57.96 ID:bKik4BQo<>木原神拳の伝承者って言うと、ドラゴンボールとかそういう系のキャラみたいでワラタ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/01(月) 11:48:13.47 ID:bSp6KoDO<>>>713
DBよりは北斗や蒼天あたりかな?
出雲「木原の文句は、俺に言え!」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/01(月) 19:07:26.39 ID:byxMJ9Y0<>wktkすぐるwwwwww
決戦の予感wwww
>>694
>>土御門『おっと、もうひとつ言い忘れたことがあったぜい』
>>上条「えっ?」
の後で描写変わってるけど、何かの伏線か? それともミス?<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:16:58.81 ID:x7YQbas0<>お待たせしました
>>712
出雲さんはクローンではないです。ですが、格闘術は木原くン直伝ですので強いですね
ただ、一方さんの反射対策は流石にできない設定です。あれは木原くンだけの技術です
よって木原神拳を完全習得したわけではないので伝承者には届かないですね…
>>715
ミスではないのでご安心を。分かりにくい描写ですいません
では続き投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>saga<>2010/11/02(火) 20:18:07.71 ID:x7YQbas0<>
――――
結局、単独で美琴の救出に乗り出そうとした上条は黒子と佐天からこっぴどく怒られてしまい、彼等はひとまず作戦を練る事
にした。
資料にはアジトの地図と住所。そして首謀者の木原数多についての詳細が記されていた。
土御門の暗躍成果に彼等はざっと目を通し、まず黒子が硬直する。
黒子「首謀者、木原数多……『木原』って……まさか!?」
上条「ん…? 白井……?」
初春「これって、偶然……なんですか……?」
佐天「………っっ」
上条「……???」
黒子「どうやら……『因縁』のある相手のようですわね……ッ!」
上条「……おい、みんなさっきからどうしたんだよ? この『木原数多』ってヤツのこと、知ってんのか?」
初春「いえ…実は―――」
〜ポルターガイスト事件について簡単に説明中〜
上条「―――そんな事が……それじゃ、この“木原”って!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:19:13.62 ID:x7YQbas0<>
黒子「……おそらく、『テレスティーナ・木原・ライフライン』と関連した人物の線が強いですわね……」
初春「御坂さんを攫ったのって……やっぱり敵討ちとか……?」
上条「いや……多分それは…」(ないな…)
佐天「…? 何か知ってるんですか?」
上条「っ! い、いや……何でもない」(ふぅ、危ねー…)
黒子「いずれにせよ、この資料通りなら……危険な相手ですわ」
佐天「『元総括理事直属組織・猟犬部隊《ハウンドドッグ》』……科学者の中でも地位が高い人なんですね…」
初春「現在は『地獄の猟犬《ケルベロス》』ですか……。シークレット組織の中でもトップだなんて……」
上条「……どおりで普通に探してたんじゃ足がつかなかった訳だ」
黒子「たしかに、……ですが、上層部の許しが出てるとは考えにくいですわね。お姉様は超能力者とは言え一般学生ですのよ。
いったい何故……?」
上条「調べたヤツが教えてくれたんだが、上層部の中で一部が直系している組織に賄賂が流れたらしい」
佐天「!?」
黒子「な! ……で、では上層部の一部が一役買っているということになりますの!?」
上条「……みたいだな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:20:44.98 ID:x7YQbas0<>
初春「そんな……」
黒子「なるほど……警備員を抑圧させるほどの権限を持った連中ならではのやり方ですわね……くっ」
佐天「それって、立派な裏切りってか犯罪じゃないですか!? 何とかして捕まえられないんですか……?」
黒子「……通報したところで、揉み消されるのが目に見えてますのよ。それこそ理事会直々の許可が下りなければ……それに
証拠もないのでは、ただの無駄骨に終わってしまいますの」
上条「けど、そんな時間の掛かりそうな手段を考えてるワケにもいかないんだよ。御坂がいつ消されるか……」
黒子「仰る通りですが、だからって一人で突っ走るのはおよしになってくださいな。大体、お姉様がこんな馬鹿デカイ施設の
どこに収容されているのかも把握できてますの?」
上条「うっ……それは……」
黒子「それ以前に、正面から救おうものなら門前払いがオチですのよ。まったく……」
上条「……ですよねー」タハハ
佐天「ホント、間に合って良かったですよ……」
上条「申し訳ございません……」トホホ
黒子「……けど、これでやっと有力な情報が手に入りましたの。……初春!」
初春「えぇ、もうやってます!」カタカタカタカタカタ
上条「――!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:21:48.66 ID:x7YQbas0<>
黒子「さすが、仕事が速いですわね」ニヤリ
上条「うわぁ……すげぇ……何やってんのか全然わかんねぇ…」
佐天「初春の本領発揮だね♪」
初春「はい、場所さえ分かればコッチのものですよ!」カタカタカタカタカタ
普段はとろくて鈍そうな少女の印象が、上条の中で180度変わった瞬間だった。
目の前に居たのはホンワカしたお花畑少女ではなく、『守護神《ゴールキーパー》』の顔へと変貌した凛々しき少女。
心なしか、頭のお花もどこか凛としているような気がする。
「―――やった!」
思わず喜びの声を漏らす初春。
そんな初春の後ろから三人が画面に注目する。
「こ、これは……?」
映し出される映像に上条が尋ねた。
「施設の内部に設置されている監視映像をジャックしました。見取り図の作成も成功しましたよ」
振り返った笑顔からサラッととんでもない発言をした初春に上条は唖然とした。
(この子……もしかして滅茶苦茶スゴイ子なんじゃ……?)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:23:12.98 ID:x7YQbas0<>
「でかした初春!」ナデナデ
「さすがですの!」ワシャワシャ
「ひゃん、や、やめてくださいぃぃ……」
黒子と佐天は初春の頭を揉みくちゃにしながら称賛の言葉を並べている。
上条は己の無謀な一直線ぶりをこの時ばかりは後悔したそうな。
「で、お姉様は……?」
「えーと……」カタカタカタ
四つに分かれた映像が切り替わっていく。
通路、実験室、制御管理室といった様々な内部詳細がコンピューター画面から明らかにされていった。
そして、遂に―――
「―――ッッ!!!」
「み、御坂さんっっ!!!」
「い、いました!!」
「お、お、……ォォおねえええさまァァああああああああ!!!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:24:40.80 ID:x7YQbas0<>
―――御坂美琴の姿が画面左上にはっきりと映し出された。
彼女達の目に映る、十日ぶりの彼女。
見るからに監禁状態な上に、肌も少し痩せこけていて決して元気には見えないが、これで間違いなく美琴が生存していることが
証明されたのだ。一同に安堵と心配が入り混じった表情が浮かぶ中、約一名が堪えきれずに発狂した。
「おねえさまぁぁあああん!! よく……よくぞご無事で……わたくしはぁぁ、わたくしは信じておりましたのぉぉおおおおお!!!」
「し、白井ぃぃ!! 落ち着けって!!」
画面の中に入ってしまうのではないかというほどの勢いで飛びつこうとする黒子を押さえる上条。
上条は腕の中でバタバタともがく黒子から目を画面に向けた。
「御坂……。けど、よかった。とりあえずは無事みたいだな……」
画面の美琴に微笑む上条。
黒子は上条の腕からするりと抜け出し、初春に詰め寄る。
黒子「初春! お姉様が囚われているのはどの辺りですの!?」
初春「えー……5648BH……一階の……この地点です!」
上条「すげえな……そんなことまで分かんのかよ……」
佐天「見取り図のプリントとコピー終わったよ!」パサッ
上条「早っ!?」
佐天「御坂さんが捕まってる部屋もマーク済みです♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:25:39.46 ID:x7YQbas0<>
黒子「ナイスですの佐天さん!」
上条「す、すげえぜ! これがあれば、迷うことなく御坂が捕まってる部屋まで行けるな!」
黒子「お姉様ぁぁ、すっかりやつれてしまわれて……辛かったでしょうに………。もうしばらく辛抱してくださいな。すぐお助けに
参りますのぉぉ」スリスリ
初春「し、白井さん!! 画面に頬擦りしないでください! 汚れますから!」ゴンッ!!
黒子「てへぶっ!?」
佐天「どうします……? 場所は完璧に割れましたよ。………切り込みますか?」スチャ(←バットを刀のように構える佐天)
初春「うーん……。けど、まだ一つ問題があるんですよ……」
黒子「はて、問題とは…?」タンコブ
上条「何だ?」
初春「……施設内の至る所にロック付きの扉があって……クラッキングしようとしてるんですが、どうも指紋や眼球から識別する
タイプじゃないみたいですね……」
上条「ハッカーかよ……。いや、もう驚かないけどさ…」
佐天「そっか、確かにこれだけ大きな施設だと……そりゃシステムも厳重だよね」
初春「暗証番号やキータイプの扉は手間なんですよねー……。機械解析しにくいんですよ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:27:24.51 ID:x7YQbas0<>
上条「……たとえば、どう違うんだ?」
初春「『自動ドア』と『手動ドア』の違いですかね。『自動』の方は精密な機械調整が施されているからクラッキングしやすい
んですけど、……多分、対策のために敢えてこういう造りにしたんだと思います」
黒子「敵もさるもの、という事ですわね。……何とかなりませんの?」
初春「時間は多少掛かりそうですが……多分イケると思います」カタカタカタ
上条「あ、イケるんだ……」
黒子「……では、ひとまず現地まで移動しましょうか」
上条「そうだな、じゃあ初春さんはここで支援を……」
初春「えー!? 何言ってるんですか? 私も行きますよ!」
上条「え? でも、バックアップは……?」
初春「持ち運び用ノート式にデータも転送してありますから大丈夫です! 最前線でバックアップしますから!」
佐天「それバックアップって言わないんじゃ……?」
黒子「……確かに、連絡を受けるよりは一緒にいた方が手間も掛からず良いでしょうね……」
上条「……そうだな、初春さんも御坂を助けたい気持ちは一緒なのに、一人だけ留守番ってのもな……悪かった」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:28:46.36 ID:x7YQbas0<>
初春「いいえ、……みんなで、力を合わせましょう」
上条「おう! 燃えてきたぜ!!」
佐天「久々にコイツの出番ですね……。どうも“木原”って名前に縁があるな〜」(←バットを見つめて呟く)
黒子「―――では、参りますわよ……。待っててください。お姉様!!」
上条達は決意を胸に刻み、意気揚々と支部を後にした。
黄泉川から連絡が入るかもしれないので、支部には婚后達を待機させておく。
彼女達も同行を志願したが、大人数で行くのは得策ではない。
結局上条が何とか彼女達を説得し、あとは自分達に託すよう納得させた。そこは流石の上条である。
いよいよ、明確となりつつある今回の事件。
上条達の“御坂美琴奪還作戦”が始動する。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:30:44.20 ID:x7YQbas0<>
―――
研究施設(アジト)
「ハァ……ハァ……ッッ!」
すっかり日課となった木原数多によるリンチ。
時には鞭で背肌をダイレクトに叩かれ、またある時には視界を隠されて時間差をつけての暴行。
ロウソクまで使用する時もあった。
このように、木原のサディスティックぶりは日に日にエスカレートする一方である。
屈辱感に歯を食いしばって耐える一方通行だが、その顔すら木原の快感剤となった。
「っぐ……っ!……ハァ……」
獄室の外の暗い通路にまで響く打撃音。
その度に一方通行の息が詰まったような声も漏れてくる。
「ひっひひひひひ!! いい、いいぃ! 最高だ! 最高にいいぞぉぉ! もうすぐお別れなのが残念なくれぇだぜ!!」
「ぐァ……! うっ!………ォ…」
「―――オラ! フィニッシュだ!!」
「―――ッッ!!」
トドメと言わんばかりに放たれた蹴りが腹部に突き刺さり、木原の足が離れたと同時に一方通行の身体が床へ沈んだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:33:36.53 ID:x7YQbas0<>
「ふぅ……オーケー、今日も良い発散になったぜ。ご苦労さん、っても聞こえちゃいね………ん?」
しかし。
「ハァ、ハァ……ゲホ……っく……の、……やろ…ォ……」
一方通行の意識は、まだ闇に落ちていなかった。
「ほぉー、こりゃあ驚いた。まだ意識があったとはな。いつもより強めにイッたってのに大したモンじゃねえか」
顔を上げて敵意の眼を向けてきた一方通行に木原は素直な褒め言葉を送る。
木原「ま、そりゃそうか。毎日あんだけボコられりゃ流石に耐性もつくわな。逞しい身体になれて良かったじゃねえの」
一方通行「………ッ……パツ…」
木原「あん? 何か言ったか? 聞こえねえぞ」
一方通行「…『873発』。……今までの……オマエの“ツケ”だよ。…へへ…っ…」ニヤッ
木原「ッ……!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:36:36.18 ID:x7YQbas0<>
一方通行「覚悟しとけよォ……きひひ、……俺は執念深いからなァァ……全部キッチリ返してやンぜェェ。あは……ぎゃはっ」
木原「……ふ、ふふっ、くくくっ―――」
「―――ぎゃはははははははははははは!!!!」
「ひひひっ、面白れぇ。そりゃ楽しみにしとくぜ! 実はよ、コッチも朗報があんだわ。お返しと言っちゃあなんだがな」
一方通行「……?」
木原「ハイではご報告、テメェの処刑は本日急遽執行されまーす♪」
一方通行「……ッ!!」
木原「おーおー、……ふふふ、いいね。ナイスリアクション♪」
一方通行「……ぐ…」
木原「ぎゃはは! 安心しやがれ。死刑執行まであと六時間ぐれぇあるからよ。ま、その間に今までの思い出でも振り返って、
間もなく訪れる死の恐怖にでもガタガタ震えてりゃいいさ」ニヤニヤ
一方通行「…………」
木原「あれぇ? 喜んでくれるかと思ったんだがなぁ。ようやく楽になれるんだぜ? もっと腹の底から喜びを噛みしめろよ」
一方通行「ケ……今更だよなァ。別に俺は今すぐでも良いンだぜ?」
木原「悪いなー、コッチにも『準備』ってのがあんだよ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:39:25.83 ID:x7YQbas0<>
一方通行「……パーティーでも用意してくれるってかァ?」
木原「ま、似たようなモンだな。盛大にあの世まで送ってやっから、寂しがることなく成仏してくれや」
一方通行「……ッ……何を目論ンでンのか、冥土の土産に聞かせちゃあくンねェか?」
木原「ソイツはお楽しみよ。お前にとって『最高の刑』をセッティングしといてやる。きっと気に入ってくれんだろぉぜ」
一方通行「……最高の刑…だと…?」
木原「っつーこったから、テメェはその時までここで大人しくしてな。最後ぐれぇ独りの時間を与えてやろうってんだ。俺の
慈悲深さに感涙しろ」
一方通行「…………」
木原「そんじゃあな。最期の時まで、せいぜいごゆっくり〜♪」ヒラヒラ
カツン カツン…
一方通行「…………」
(チッ……今日で俺のクソッたれな人生も終止符ってかァ)
(別に良いンだけどよォ……どォせ駒でしか生きられねェ運命だしな)
(木原のボケが笑顔のまま退場させられるってのが一番納得いかねェ。死ンだら“ツケ”の請求しに化けて出てやっか)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:41:20.68 ID:x7YQbas0<>
(あァーあ、地獄ってのァどンな所なンかねェ。やっぱ鬼とかがいっぱい居ンのかなァ)
(俺がこのまま死ンだら……クソガキのヤツ、……泣くかな)
(俺がいなくなって泣きそォなヤツなンざいねェと思ってたが、あのガキは……やっぱ少しぐれェは悲しンでくれンのか?)
(ンで、月日が経って、次第に俺の事も忘れて立ち直って、成長を続けてくってかァ…?)
(なンつーかよォ……そォ考えると案外寂しいモンなのかもしンねェな。人生ってのは……)
(あと六時間ねェ……寝たらすぐ過ぎちまうな。………最後ぐれェ起きて過ごすとすっか…)
(こォして『死の宣告』受けた後に待つ時間ってよォ……恐さとかそンなン超越しちまって、逆に冷静になるモンなンだな)
(木原みてェに突然死ンだ場合ってのは……どォなンだろォな。恐怖を感じる間もなくお陀仏……ハッ、っつか、今も生き
てるみてェなモンか……)
「……………」
(死……か)
(そォいう局面で意識することなンて、今までなかったな)
(こンな暗くて静かな場所に独りでいっからこンなこと考えちまうのか……?)
(テメェのことだっつゥのに、どこか客観視しちまうってのはどォいう現象だ?)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:43:24.17 ID:x7YQbas0<>
(……クソが。……にしたって、悲観的になりすぎだろォがよ。俺も相当ヤキが回ったよなァ)
「…………」
(………死にたく……ねェな)
(俺が今死ンだら、あのガキが危ねェ時、誰が守ンだよ?)
(何の関わりもない超電磁砲はどォなるンだよ?)
(それに………)
―――― やっほう、殺しに来たよ。第一位。
「……っっ!!」
(…………駄目だ!! 何考えてやがンだ馬鹿野郎!!)
(今、こンなトコでくたばるワケにはいかねェだろォが!!)
(あのクソ野郎を地獄に送り返して、アイツの――)
番外個体―――。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:46:20.33 ID:x7YQbas0<>
(笑顔を、もォ一度……)
―――ミサカ、自分が何で生きてるのかが分かんないんだよね……
(見るまでは、アイツの無事を見届けるまでは………)
俺は、死ねない――――。
「――――死ぬ訳にはいかねェンだ!!!」
消えかけた魂が、再び目に宿る。
「うォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
失いかけた戦意を、剥き出しにして叫ぶ。
「誰でも良い!! ここから助けろォォ!! 俺に出来ることなら何でもやってやる!! 泥を被ってもイイ! 靴底を
舐め回したってイイ! 正義のヒーローだろォが悪魔の化身だろォが構わねェ! あとでいくらでもモトはとってやる!
旋毛が見えるぐれェに頭下げて、感謝だって何だってする! だから―――」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:47:01.10 ID:x7YQbas0<>
「―――早く誰か助けに来やがれクソッたれがァァあああ!!!」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:47:53.56 ID:x7YQbas0<>
誰に向かって叫んだ訳ではない。
ただ、ここから出たい。その一心だ。今はただ、奇跡を信じるしかない。
守りたい存在(モノ)を救いに行きたい。逢いに行きたい。
自分なら後でどうなっても構わない。無様に頭を下げることになってもいい。
正義の味方でも何でもいいから、自分に手を貸して欲しい。
助けて、欲しい。
かつて最強の座につき、人を全く寄せ付けなかった少年が今、救いを求めて手を伸ばしている。
その手を掴んでくれる英雄(ヒーロー)の登場を、彼はただひたすら待ち続けた。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:49:48.60 ID:x7YQbas0<>
―――
上条当麻、白井黒子、初春飾利、佐天涙子の四人は目的地付近の喫茶店にいったん足を入れた。
作戦の最終確認と初春のハッキング作業が終了次第、突入する。
支部で待機してくれている婚后光子たちに黄泉川愛穂から連絡があったら研究施設(アジト)へ出動させる様、伝言も残した。
もしもの時は警備員が到着するまで隠れてやり過ごすのだが、それはあくまで最終手段。できればその前に御坂美琴を救出し、
施設から脱出するのが望ましい。
「……あっ!!」
そんな中、初春が持ち運び用のノート型コンピューターを操作中に突然声を上げた。
上条「! ど、どうした…?」
黒子「初春…?」
初春「…………一応観測してみたんですけど………まさかこれって……」チラッ
黒子「っ!?」
上条「し、白井?」
黒子「このデータ……見覚えがありますの…」
初春「やっぱり……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:51:52.05 ID:x7YQbas0<>
佐天「え!? な、何…」
上条「……どういうことだ? 何がなんだかさっぱりなんだけど…」
初春「……キャパシティ……ダウン」
佐天「!?」
上条「えっ…?」
黒子「間違い無さそうですわね。施設内に流れ続けるこの微弱な音波は……」
上条「あのー……画面に映ってる心電図みたいなグラフは一体何なんでせうか?」
初春「キャパシティダウンですよ。……どうやら、建物の中ほぼ全域有効範囲みたいですね……」
上条「それって……確か演算妨害装置ってヤツだよな? けど、何でそんなモンが……?」
黒子「……考えてみれば、それほど不思議な事でもございませんのよ」
上条「え…?」
佐天「テレスティーナからの流用……」
上条「あっ! そ、そうか……!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:53:44.16 ID:x7YQbas0<>
黒子「えぇ……これで、超能力者であるお姉様を拘束できた謎が解けましたわ」
上条「……ってことは、御坂は今も能力が使えない状態にあるわけか…」
初春「しかもこれ、以前私たちが関わったのより……ずっと強力ですよ!」
黒子「……強度は分かりますの?」
初春「う〜ん……多分、脳が演算に取り掛かった時点で白井さんの場合、……卒倒するぐらいは……ありますね」カタカタ
黒子「くっ……厄介な」
上条「そっか。じゃあ中に入っちまったら……」
黒子「……わたくしの空間移動《テレポート》は、一切アテにできないということになりますわ…」
上条「ッッ…………」
初春「…………」
佐天「…………ねぇ、初春」
初春「…何ですか?」
佐天「それも当然、流してる元っていうか……装置があるんだよね? 施設の中のどこにあるのか分かる?」
初春「え…? それは……音響の元ですから、磁場を辿っていけば分かりますけど……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:55:37.23 ID:x7YQbas0<>
佐天「悪いけど、調べてくれる?」
初春「は、はい……?」カタカタ
黒子「……佐天さん?」
佐天「ふっふっふ♪」ニヤリ
初春「あっ!! さ、佐天さん! まさか!?」
佐天「うん。そのキャパシティダウンってのを流してる装置、私が破壊する」
上条黒子初春「―――!?」
佐天「ですから白井さん達は、御坂さんを助けに行ってください。なるべく……急いでみせますから」
黒子「だ、大丈夫なんですの……?」
上条「っつか、破壊するって……どうやって?」
佐天「要は装置を止めればいいんですよね? だったら、外から衝撃を加えちゃえば……♪」スッ
上条「っ! な、なんつー過激な…」
黒子「って、店の中でそんなもの(バット)出さないでくださいな! 店員に勘違いされますわよ?」
佐天「ありゃ、ゴメンゴメン♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:57:27.87 ID:x7YQbas0<>
初春「……っ!……佐天さん。装置が施されているのは、最上階の九階です……」
佐天「うへー……今回も遠いなぁ〜……けど、行くしかないですね」
初春「……決めました。私も佐天さんと一緒に行きます!」
黒子「う、初春…!?」
初春「入り口からだとかなり距離がありますけど……、内部の人間の有無もリアルタイムで掌握している私がサポートし
ながら進めば、何とかなると思います」
上条「……なるほど…」
佐天「ありがと初春っ♪ 心強いよ!」
初春「最短ルートと安全ルートを考慮しますので、ナビは任せてください」
上条「でも、無理に進もうとしなくていいからな? 見つかりそうになったら、どこかに隠れてやり過ごして……とにかく
無事に乗り切ってくれればそれでいいから」
佐天「む〜! 上条さん心配しすぎ! 少しは私たちを信頼してくださいよ!」
上条「あ、ああ……ごめん」
黒子「電波管理も当然してあるでしょうし、それだと中では通信手段が一切使えませんの。…連絡が取り合えないのは少々
厳しいですわね。成功の合図はどのようにすれば……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 20:58:51.08 ID:x7YQbas0<>
初春「多分、装置が止まったら違和感に気づくと思います。これだけ強力な装置なら、音響の変化を脳も感知するはずです」
黒子「そうですの。……なら、特別問題はありませんわね」
上条「それじゃ、俺と白井は御坂の方に専念するよ。ハッキングの方はどうだ?」
初春「監視システムの方はもう大丈夫です。実際にオトすのは、突入直前でいいですよね?」カタカタ
上条「い、いいんじゃないか……それで」
黒子「入り口ゲートは当然警護が回ってますわね。とすると……」
初春「裏口の塀からなら……白井さんのテレポートを使えば侵入できますよ。キャパシティダウンは建物の中にしか流れて
ませんし」
黒子「いえ……それは…」チラッ
佐天「…?」
上条「………ごめん。俺にはテレポートが……」
佐天「『幻想殺し《イマジンブレイカー》』……でしたっけ? 白井さんのテレポートも無効化しちゃうんですか?」
上条「あぁ。多分、転移に右手も含まれるからだと思うんだけど。塀か……。ちょっと自力で上れる高さじゃないな……」
初春「す、すみません……」
上条「あ、けどみんなはそこから侵入していいぜ。俺は何とか別の入り口から…」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 21:02:00.76 ID:x7YQbas0<>
黒子「では、初春と佐天さんは裏口からお願い致しますの。わたくしがお二人を塀の向こうまで送りますわ。上条さんは、
わたくしと共にお姉様の救助へ参りましょう」
上条「え? あ、あぁ…」
佐天「オッケー♪ 任せといてください!」
初春「では、白井さんと上条さんは……」カタカタカタ
「うーん、そうですね……。南ゲート付近なら一部フェンスですから、そこからお願いします。警備も少なめです」
「侵入直前に、合図のコールを送った後、施設内全ての監視システムをオトします。復旧はすぐには無理だと思います
ので、焦る必要はありません」
上条「……っし! 何か急にサクサク進みすぎて正直ついてくのが大変だけど、とりあえずは具体的になってきたな」
黒子「そうと決まったら、早速行動に移りましょう!」
佐天「うん、善は急げっていうしね!」
初春「はい……」(けど、何か気になりますね……。設備が充実しすぎてる……。いったい何の目的なんでしょうか……?)
その後、入念な打ち合わせと会計を済ませた上条達は、店を出ていよいよ目標の研究施設へと足を進めた。
捕まったら命を落とす恐れもあるのだ。移動する彼等の顔にも除々に緊張が表れ始める。
それから更に数分ほど歩き、遂に一同は美琴が収容されている建物を見上げる位置にまで近づいた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/02(火) 21:06:12.54 ID:x7YQbas0<>区切りが悪いせいでちょっと長くなりましたが、今回はここまでです
次回はまた書き溜め終了次第に投下します
ここから面白くなる……はずです。多分…
それではまた
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/02(火) 21:11:38.74 ID:AnxITMAO<>乙!
それにしても木原くんは一方さんを苛めすぎwwロウソクww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/02(火) 21:17:06.70 ID:nI.Tlvwo<>乙
監視カメラで御坂は確認されてたのに一方さん放置ww
誰か気にかけてやれよww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/02(火) 21:36:47.81 ID:uSHsicUo<>早く一方さんを助けてあげて……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/02(火) 23:37:29.87 ID:SdsHd9co<>一方さんは助けられる側じゃなくて助ける側だと思う
騒動に乗じて無双する為にも美琴サイドとは切り離されてるんじゃなかろうか
とか勝手に妄想してみる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 00:22:37.70 ID:XR7h3jk0<>乙乙!!
ついにキターーー!!!
上条さんマジ頼む!!けど一方さんの分はちゃんと残してあげて…
>>746
だから予想は(ry<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 01:16:52.99 ID:k3euqCco<>木原さんいままでありがとうございました!
用事思い出したんで今日は早めに帰るっす!<>
>>726-727をみたらつい衝動にかられた<>sage<>2010/11/03(水) 09:59:42.69 ID:75tJOgDO<>―――
研究施設(アジト)
「ハァ……ハァ……ッッ!」
すっかり日課となった木原数多による○○○。
時には鞭で背肌をダイレクトに叩かれ、またある時には視界を隠されて時間差をつけての暴行。
ロウソクまで使用する時もあった。
このように、木原のサディスティックぶりは日に日にエスカレートする一方である。
屈辱感に歯を食いしばって耐える一方通行だが、その顔すら木原の快感剤となった。
「っぐ……っ!……ハァ……」
獄室の外の暗い通路にまで響く打撃音。
その度に一方通行の息が詰まったような声も漏れてくる。
「ひっひひひひひ!! いい、いいぃ! 最高だ! 最高にいいぞぉぉ! もうすぐお別れなのが残念なくれぇだぜ!!」
「ぐァ……! うっ!………ォ…」
「―――オラ! フィニッシュだ!!」
「―――ッッ!!」
トドメと言わんばかりに放たれた○○が腹部に突き刺さり、木原の足が離れたと同時に一方通行の身体が床へ沈んだ。
「ふぅ……オーケー、今日も良い発散になったぜ。ご苦労さん、っても聞こえちゃいね………ん?」
しかし。
「ハァ、ハァ……ゲホ……っく……の、……やろ…ォ……」
一方通行の意識は、まだ闇に落ちていなかった。
「ほぉー、こりゃあ驚いた。まだ意識があったとはな。いつもより強めにイッたってのに大したモンじゃねえか」
顔を上げて敵意の眼を向けてきた一方通行に木原は素直な褒め言葉を送る。
木原「ま、そりゃそうか。毎日あんだけ○○られりゃ流石に耐性もつくわな。逞しい身体になれて良かったじゃねえの」
一方通行「………ッ……パツ…」
木原「あん? 何か言ったか? 聞こえねえぞ」
一方通行「…『873発』。……今までの……オマエの“ツケ”だよ。…へへ…っ…」ニヤッ
木原「ッ……!」
あら不思議、少しモザイク入れたらやけにエロスに……
ちなみに俺は腐ってないぞ。氏家脳なだけだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 10:08:21.99 ID:TlQLO1Mo<>ねーわ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 10:21:35.24 ID:riSxjfEo<>>>1以外は10行以上書き込まないで欲しい
ROMるときも迷惑だし<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 11:17:21.93 ID:im0q.E2o<>つまんねえ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 11:58:52.42 ID:XR7h3jk0<>くだらねえんだよ
そういうのをこのスレに求めたいんなら別でスレ建てろ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 12:57:57.71 ID:Evi2Nw.o<>小ネタスレか総合にするべきだったな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 13:00:24.41 ID:k3euqCco<>しかし全く同じことを考えてしまったのも事実である<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 13:44:39.99 ID:ML.RuyUo<>うぜぇ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/03(水) 15:36:37.38 ID:qJVussoo<>>>749
なんだ、もしもしか。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/04(木) 05:46:12.49 ID:KS2y5gAO<>>>749
なんだ、もしもしか。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:26:49.67 ID:UDRMMUM0<>>>749
うは、確かにwww
ゴメンなさい。これは紛らわしい書き方した自分にも落ち度ありますわw
書き溜まったので続き投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:28:50.91 ID:UDRMMUM0<>
研究施設(アジト)の裏側。
上条当麻、白井黒子、初春飾利、佐天涙子は目標の建造物を囲んでいる塀を見上げていた。
塀の高さは約十メートルと言ったところか。パソコンから映し出された映像から思った通り、垂直にそびえる塀を
よじ上っての侵入は不可能に近い。
「……ここに、お姉様が…」ゴクリ
黒子が塀の向こうの建物を見据えて生唾を飲んだ。
「……よし! ロックの解除が終わりました!」
草の生い茂る中、ポツンとあった石の上でハッキング作業を続けていた初春から吉報が入った。
「やったじゃん、初春! ……これで、もう鍵の心配は要らないわけだよね?」
「はい! ……とりあえず、通路に設置されている同じような扉の施錠に関しては問題ありません」
石に置いたパソコンを折り畳んで脇に抱える初春に親指を立て、微笑む佐天。
「では、向こうの様子を確認して参ります」シュン
そう言い残して黒子が姿を消した。
「……けど、本当に二人だけで平気か?」
上条が尚も心配の眼差しを向けてくる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:30:53.31 ID:UDRMMUM0<>
「大丈夫ですよ。大きい施設だからこそ、穴も多いはずですから」
初春は自信満々に答えた。佐天もウィンクをしてみせる。
「上条さんたちこそ、無理しないでゆっくり進んでくださいね。私らが装置の破壊に成功すれば、白井さんの能力が
復活しますから、その時からスタートでも全然オーケーですよ」
「あぁ……けど、やれるだけやってみる。地図(ルート)もあるんだし、何とかなるだろ」
と、その時。
「―――お待たせですの」ヒュン
軽く偵察に出向いていた黒子が戻ってきた。
「どうだった?」
「思ったより薄くて、何だか拍子抜けですわね。この塀が門番代わりと言ってもよろしいぐらいですわ」
「けど、油断はできねえな。俺たちの方はどこに人が居るか分かんねえんだし、手探りで進むしかねえぞ」
「えぇ、もちろん承知してますの」
そして、黒子が佐天と初春の身体に手を置く。
「それでは、そろそろ行きますわよ? 準備はよろしくて?」
黒子の問いに二人は、<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:31:44.54 ID:UDRMMUM0<>
「どうぞ」
「いつでもオッケーです」
威勢良く返事をした。
そんな二人に、上条も言葉を送る。
「二人とも気をつけてな。無事に御坂を助けだして、また会おうぜ」
「はい! もちろんです!」
「上条さん。御坂さんを……お願いしますね!」
「あぁ…」ニコッ
「……では―――」ヒュン
互いの武運を祈り合うやりとりを済ませ、二人の身体が消える。
上条は、成功も勿論だが、何より二人の無事を心から願った。
美琴の救出が上手くいったら、二人の手助けにも回りたいほどに。
だが、今は彼女たちを信じるしかない。彼女たちの強さを。
やがて、二人を送り届けた黒子が再び上条の所に戻ってきた。
「……さて、わたくし達も参りましょうか」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:33:26.33 ID:UDRMMUM0<>
「ああ」
黒子も、二人の前では表に出さなかったが、本当は心配で仕方ないのだろう。肩が僅かに震えていた。
上条はそんな彼女の肩に手を置いて声をかける。
「信じようぜ。お前や御坂の親友なんだろ? きっと大丈夫だよ」
「……ええ。お気を遣わせたようで申し訳ないですの。平気ですわ。初春も佐天さんもお姉様も貴方も、みんなが無事に
帰ることはもう決定してますのよ」
上条の言葉で少し気が和んだのか、黒子が向けてきた顔は笑っていた。
どうやら上条が思っていた以上に彼女たちの絆は強いようだ。
「……あぁ、そうだな。みんなで無事に帰ろう」
上条も笑顔を作って、先を歩く少女に応えた。
研究施設(アジト)の南口。
ゲートから百メートルほど離れた地点は塀ではなく、有刺線の張られたフェンスがそびえている。
乗り越えられなくもない高さだ。
が、
「監視カメラ……。ま、当然でしょうね」
「手薄だから、あるとは思ってたけどな。……予定通り先にオトしてもらうか」
「えぇ。………ん?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:34:18.54 ID:UDRMMUM0<>
映像に移らない距離で言葉を交わす上条と黒子。
そこへ初春からタイミング良く着信が入った。
「―――初春。ソチラは大丈夫そうですの?」
『―――はい。白井さんの言った通り、コッチはあまり厳重じゃないですね。内部の移動も、これならスムーズに行きそう
です。今、入り口前にいますが、ソッチはどうですか?』
「コチラの方はやはり監視システムを何とかしなければ、中へ入れそうにないですわね」
『……オトしますか?』
「えぇ、お願いしますわ」
『じゃあ―――いきますよ!』
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:35:24.34 ID:UDRMMUM0<>
〜施設内・制御管理室〜
プツッ ザーーーーー……
「……ん? おい、何だコレは?」
「!? ど、どうなってる……? 故障か!?」
「調子悪いな……って、おい! コッチも映らないぞ! どういう事だ!?」
「映像が…いっせいにストップした……!?」
「馬鹿な! 停電か!? ……いや、雷も鳴ってないし、許容電気量も超えてないぞ!?」
「自然にオチたのか……? おい、早く復旧させろ!」
「そ、それが……何者かが外部からアクセスしたのか……コードが勝手に変更されてます! 制御不能!」カタカタ
「な……っ!?」
「コッチも駄目です! 復旧には時間が掛かります!」カタカタ
「なん……だと……!?」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:37:07.54 ID:UDRMMUM0<>
〜施設内・通路〜
「おい! カードキー無しで扉が開いたぞ! ……壊れたのか?」
「い、いえ……じ、自動解除モードになってますよ!?」
「だ……誰がやった!? そんな勝手な……!!」
「くそっ! どうなってんだ!? 何で設定変更できない!? 誰かコードを入力しろ!」
「……む、無理だ。コードも変更されている…」ピッピッピッ…
「すぐに木原さんに報告しろ!! くそっ……いったい何が起きたっていうんだ……?」
〜南側・入口〜
「―――さぁぁぁ、いよいよ決行の時ですわ! お姉様! 今助けに参りますのーっ!!」ダダダダ
「おい白井、あんま突っ走るなよ! ……って、聞いちゃいねえか」ヤレヤレ
やや暴走気味の黒子を宥めながらも何とかフェンスを越え、無事施設内部へと侵入を果たした上条と黒子。
この先、何が待ち構えているか分からない。しかし、それでも彼等が踵を返す事はなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:38:54.45 ID:UDRMMUM0<>
〜施設内通路〜
黒子「………思ったより静かですわね。研究員の一人も見当たりませんの」テクテク
上条「行き着くまでが大変で、そっから先は楽…ってヤツか?」テクテク
黒子「絶対に足が着かない上に警備員も黙らせているのでは、驕りが出ても仕方ありませんわね」
上条(こりゃ、土御門にはマジで感謝しなきゃな……)
黒子「!? シッ……足音がしますの……」
上条「っ!」
カツーン カツーン…
上条「……一人みたいだな……まずい、コッチへ来るぞ…」(←物陰に黒子と身を潜めながら窺っている)
黒子「一人や二人なら、能力が使えなくとも何とかなりますわ」ダッ
上条「あっ、おい!?」
黒子「―――風紀委員《ジャッジメント》ですの!!」ビシッ
研究者(下っ端)「はぁ? ……何だこのガキ?」
黒子「罪状を述べている暇はありませんので、少し横暴ですが……しばらく眠っていてもらいますわね」シュッ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:40:54.93 ID:UDRMMUM0<>
研究者「何!? うっ……!!」
ドスッ!
研究者「が……は」ドサッ
黒子「ふん、子供だと思ってタカを括るからですのよ」
研究者2(やっぱり下っ端)「―――な……! だ、誰だ!? どっから入った!?」
黒子「チッ……まだいましたの?」
研究者2「う、動くな!」チャキ(←拳銃)
黒子「ッ…! 科学者のくせに何て物騒なモノを……」サッ
上条「………っ!」ヌッ
「――――だぁぁっ!!」ブォン
バゴッ!!
研究者2「ごぇっ!?………ぐふ……」ズル……ドサッ
黒子「…あら? ……もしかして、助けてくれたんですの? 余計な真似ですが、一応感謝しておきますわ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:42:55.36 ID:UDRMMUM0<>
上条「アホかーっ!? 能力が使えない丸腰の状態で拳銃と対峙する馬鹿がどこにいんだよ!?」
黒子「そ、それは………」
上条「早る気持ちも分かるけど、ここで捕まっちまったら意味ねえだろ? 俺の右手は相手が能力系統なら何とかなるけど、
ああいう凶器とかはどうにもならねえんだ。ここだと能力者が敵の可能性は低いだろうから、実質俺もお前もここじゃ
いつもみたいに能力に頼ることはできねぇ」
黒子「…佐天さんと初春がやってくれるまでは、なるべく退き手に回らなければならない。という事ですのね……」
上条「そうなるな。せめて、お前のテレポートが使用可能になれば……成功率も相当上がるんだろうけど」
黒子「ですが、上条さんを連れてのテレポートはできませんのよ?」
上条「俺の方は俺で何とかするさ。だから気にすんな。いざとなったら俺が囮になるから、お前は迷わず逃げろよ」
黒子「まったく……。少しぐらいは他人より自分を気遣いなさいな」
上条「はは、それもよく言われるけど……生まれつきなのかな。やっぱ」
黒子「毎度ながら、呆れてモノも言えませんわ……。貴方は“あの時”から何も変わってませんのね」
上条「ん……あの時って?」
黒子「覚えてませんの? わたくしは一日だって忘れたことなどないというのに……っ!」
上条「あ、あー、あれか! たしか夏終わってすぐだったっけ…」
黒子「……思い出すのが遅いですのよ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:45:34.61 ID:UDRMMUM0<>
〜〜〜
『―――何で、わたくし達は……ただの他人でしょう? 何で本気になれますの? 何で迷わず突っ込んで来れますの!?』
『―――どうしてって言われてもな……ぶっちゃけた話、逃げるより立ち向かった方が早いだろ』
『そうではなくて、……怖いとか、恐ろしいとか、思いませんの!?』
『まぁ怖いっちゃ怖いけど、約束だしな……』
『約束…?』
『そう、約束だ。“御坂美琴と彼女の周りの世界を守る”ってな―――』
〜〜〜
黒子(思い起こしてみれば、わたくし……このお方にどれだけ借りがあるのでしょうか……?)
上条「そう言や、お前あの後入院したりして大変だったんだよな……」
黒子「まぁ、今はこの通りピンピンしてますが……」(いいえ……)
(この方はそんな“約束”などに縛られて動いてはいない。それはここしばらく一緒に行動していて良く分かりました)
(本当にこのお方は……“目の前で困っている人間”なら誰彼構わずに手を差し伸べる人間ですの)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:46:50.44 ID:UDRMMUM0<>
(お姉様の殿方を見る目は、あながち間違っていないのかもしれませんわね……)フフッ
上条「……白井、何笑ってんだ?」
黒子「いえ、なんでもないですのよ。さ、こんな所で油売っている場合ではありませんわ。お姉様の救出を急ぎましょう」タタッ
上条「あ! おい、待てって! あんま走るのは良くねーぞ! 見つかったらどーすんだってオーイ!」タタッ
―――
一方、佐天と初春は狭い通気口を這いずりながら上を目指していた。
「初春〜……他に良い道無かったの〜?」
外に漏れない程度の声でクレームを出す佐天に、初春は端末機に表したルート図から目を離して前方の佐天を見る。
「仕方ないじゃないですか。見つからないように最上階へ行くのにまともな道なんて、そもそもあるわけないんですから」
返ってきたのは同じくらいの小声だが、佐天にはハッキリ聞こえた。
初春の言う事も一理ある。というか、完璧な正論だ。いくら端末機にデータを送信して道の確認を改善化したとは言え、二人は
潜入操作の経験もないただの女子中学生である。そんな二人が誰の目にも触れず目標地点まで到達するのに、まともな道を選ん
でいる余裕などはなかった。
「……ハァ、まさかこのまま上まで行くってことないよね?」
窮屈そうな吐息を漏らしてから心配そうに訊ねてくる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:48:36.49 ID:UDRMMUM0<>
「大丈夫です。もう少し進んだらエレベーターの入り口がありますから、そこで下りましょう」
端末機を確認しながら返ってきた言葉に佐天の調子が上がる。
「お、ラッキー♪ 一気に上まで行けるじゃん!」
「佐天さん、声……」
「あ……ゴメ〜ン」
慌てた仕草で口に指を当てる初春に佐天は舌を出した。
「でもさ、初春。エレベーターのカメラってメーカー違うんでしょ? ……ちゃんと止まってんのかな?」
今度は素朴な疑問をぶつけてきたが、初春は動じない。
「大丈夫です。メーカー問わず、施設内全域の範囲で映像を抑えてますから。個室や通路はもちろん、エレベーター内のカメラ
対策もカンペキです」
狭い中、胸を張る初春を佐天は褒め称えた。
「さっすが〜。その腕章は伊達じゃないね♪」
「へへへ……まあ、失敗も結構しますけどね………っと、この辺ですね」
喋りながら這っている内に、下り口まで来たようだ。
「よいしょ……っと」
監視カメラに気を回す必要はないが、周囲に気を配らなければならない。二人の少女はゆっくりと地に足を着けた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:50:23.39 ID:UDRMMUM0<>
「よしっ……早く…」
すぐさまエレベーターを呼び、付近を警戒する。ここで研究者にでも遭遇し、捕まったりでもしたらオシマイだ。
佐天はバットを構えて周りを見渡し、初春は表示ランプを見ながらオドオドする。
(早く……早く……)
「―――来たっ!」
エレベーターの扉が開いたと同時に素早く乗り込む。幸い、扉が閉まるまで誰にも発見されることはなかった。
「ふーっ……ヒヤヒヤするね〜…」
「心臓に良くないですね……」
九階を押そうとボタンに手を伸ばすが、あれ?
「……って、これ六階までしかないじゃん!?」
「あ……言い忘れてました。すいません」
「はぁぁ!? な、何それぇぇ……」
「え……えーとですね、六階で降りてから、今度はこの……」
説明で誤魔化そうという初春の試みは佐天に通用しない。
「う〜い〜はぁぁぁるぅぅ〜〜〜!!」
「ひぃぃぃ!?」
六階に到着するまで初春の悲鳴とエレベーターの揺れが止むことはなかった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:53:29.87 ID:UDRMMUM0<>
―――
施設内の実験用設備が充実している広々とした場所に木原数多はいた。
木原の正面には巨大な培養器。その中に番外個体の姿も見える。
木原はまるで脳の神経を遮断しているかのように直立不動と化し、ただ無表情で培養液に漬けられている番外個体を
眺めていた。
(もうすぐだ。もうすぐで始まる。……いや、“終わる”っつった方が正しいか? とにかく、これで上層部の喧しい
『反対派閥』も泡を吹くこと決定だ)
(クククッ、楽しみだなぁ。この日をどれだけ待ったことか……)
(第三次製造計画の『引継ぎ計画《ネクストステージ》』が実行されるこの日をよぉぉ!!)
「そして、お前はその栄誉ある執行人だ。ぎひひっ! いいなぁ羨ましいなぁ。こりゃ表彰モンだぜ。全てが片付いた
暁にゃ、スクラップ処分だけは勘弁してもらえるかもなぁぁ」
「頼むぜぇぇ。自ら地獄へ行きたくなるぐれぇに追い詰めてやってくれよぉぉ?」
『 番 外 個 体 』
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:54:56.67 ID:UDRMMUM0<>
「―――き、木原さん! あ、し……失礼しました」
ニヤリ笑顔が究極にまで歪んだ所で声が掛かった。
木原は表情を無に戻して振り返る。
「あぁ? 何だ? 慌しいな」
「じ、実はその―――」
部下の研究員は、監視制御システムが原因不明の故障状態に陥っている事と、通路や扉に設けられたロック装置が自動解除
モードに設定されたまま変更ができなくなっている事態を木原に報告した。
「―――ふぅん……。…で、復旧の目処は立ってんのか?」
「それが……外部から規制が掛けられていて………少々時間を要すると…」
顔色を窺うようにこわごわと答えた部下にはもう目もくれず、木原は少しの間を置いてから舌打ちする。
「チッ……、記念日に“招かざる客”ってか…」
「え…?」
木原の呟きの意味が理解できなかったのか、部下は思わず疑問の声を口にした。
「何素っ頓狂な顔してやがる。テメェの頭は鳥と一緒か?」
「……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:56:38.59 ID:UDRMMUM0<>
「監視システムの異常、加えて電子ロック制御装置の強制解除。これでピンと来ねえってんならテメェの脳は賞味期限切れだ」
「侵 入 者 だよ。何者かは知らねえが、アジト内に部外者が侵入したって考えるのが普通だろぉが」
「……!!」
木原の言葉を聞いてようやく事態が飲み込めた部下は木原の指示を仰ぐ。
「おいおい……んな想定ぐれぇ出来ねえでどうすんだよ。すぐに警備を固めろ。研究やレポートも中断させて、全員巡回に回せ」
「はっ、はい! あ……あの、木原さんは……?」
恐る恐る訊ねる部下。
「“最終調整”が終わるまではここから離れる訳にいかねぇ。ネズミの駆除くらいテメェらでも出来んだろ?」
「は……はぁ」
「狙いはおそらく超電磁砲だろぉな。……何の勢力かは分からねえが、思ったより早く嗅ぎつけてきやがったか…。ま、猟犬が
ネズミに遅れをとるなんてこたぁねえと思うが、一応油断はすんな。敵側に少なくとも凄腕のハッカーがいる事だけは間違いねぇ。
超電磁砲の周辺を念入りに固めろ。警備に当たるヤツらにもしっかり伝えておけ」
「はっ! ……あの、警報は…?」
「頭回せっつったばっかだろぉが!! んなモン鳴らして警備員に通報でもされたら余計面倒な事態になるのは目に見えてんだろ
このクソボケ!!」
「もっ、申し訳ござ…」ビクッ
「はぁ……もぉいいから、とっとと侵入者の捕獲に当たれ。せっかくの“記念日”に俺の手間を増やすんじゃねえぞ?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 16:59:11.42 ID:UDRMMUM0<>
「―――了解しました!!」
軍隊のような返事を残し、何故か敬礼までした部下は急ぎ足でその場から去っていった。
「…………」
(範囲設定で監視装置を無力化できるぐれぇだ。施設内の様子はジャックされてるハズ……)
(暗部組織の仕業か……? プロ連中が相手じゃ、俺が出向いた方が手っ取り早ぇかもな……)
(だが、今調整を中止しちまったらまた時間掛けなきゃならなくなっちまう……。ソイツはちと勘弁だな)
(……まぁ、何とかなんだろ。いざとなりゃ上の名前でも出して脅しかけりゃ一発よ)
(それに、出雲やクソ姉貴も警護につかせりゃあ、そう簡単にはいかねえハズだ。百パーセント信用したワケじゃ
ねえけどな)
(わざわざ俺が動くまでもねえのよ。クククク……)
余裕の笑みを漏らし、眠り続ける番外個体へと目を戻した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/04(木) 17:05:11.87 ID:UDRMMUM0<>とりあえずここで切ります
ついに上条さんたち侵入しちゃいました
こっからどうなるのか……どうしよw?
続きはまた後日投下します
それでは<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/04(木) 17:08:43.21 ID:y0zCU6DO<>おつおつ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/04(木) 17:43:29.06 ID:HwpASQYo<>さすが木原くン
隙が全く無いぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/04(木) 20:36:54.23 ID:am1WcC6o<>乙!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/04(木) 20:50:01.49 ID:aSKWtMDO<>乙
結局、>>1の好きなようにすればいいって訳よ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/05(金) 15:27:50.65 ID:Gf/JuAU0<>乙なんだよ!
できれば投下の最初はageてくれると助かるかも
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/05(金) 18:45:53.03 ID:54wjl6wo<>>>783
専ブラお勧め<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/06(土) 16:48:19.49 ID:TwAocUA0<>ああもう
続きが気になってしかたない
この映画の後半みたいな正義側のターンがたまらん<>
◆8NBuQ4l6uQ<>saga<>2010/11/07(日) 17:07:29.95 ID:HGmnQ4I0<>いつも温かいレスありがとうございます
>>783-784
特にsage進行を意識してるわけでもないので、専ブラ使ってない人ように
最初だけageようと思います
気が利かず申し訳ない
それでは投下します
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:08:49.08 ID:HGmnQ4I0<>
―――
開き始めた傷口に構うことなく地下の牢獄でひとしきり叫んだ。
口の中に鉄の味がまた広がっていく。
一方通行は枯れ果てた声を荒息に変えて血の混じった唾をペッ、と吐き捨てた。
「ハァ…ハァ………っくそ……ったれ……」
通路からの足音は聞こえてこない。
(当然か……ンな都合の良い展開なンざ今どきC級映画でも見れねェよ)
(考えろ。……何か、何か手はねェか? 何でもイイ。考えろ……。何か見落としてることは……)
思考をフル回転させる。
「……っ………っっ……」
打開策を、逆転の一手を打つ方法に全ての意識を集中させる。
が、しかし
(…………って、そンな方法があンなら俺は今ここに居ねェっつの!)
バン! と悔しみを込めて床を叩いた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:09:49.15 ID:HGmnQ4I0<>
(あの野郎にはムカつくほどに隙がねェ……。ご親切に電極の充電までしてくれやがる……)
――― 木原『屈辱も痛みも満足に味わえないのは不憫だろぉ? 電池切れだなんて楽な逃げ道は与えねえよ。
思考回路をしっかり保ったまま苦しみやがれ』
(……ンな事ほざいてたが、あれは余裕の表れ……俺の思考能力なンざ奪うまでもねェ、って高らかに宣言され
てるよォなモンじゃねェか。どこまでも悪趣味な野郎だぜ)
(まァよ……悔しいなンてレベルじゃねェが、確かにその通りだよクソが…)
(何度も何度も、涙も枯れるぐれェに、ありとあらゆる方法を試そォとした。能力も演算を妨害する何かが張ら
れてンのか、この忌わしい拘束具のせいか、全く使い物にならねェ。それでも、どこかに穴がねェか必死に模索
してみた。……が、駄目だった)
(結局俺の思考なンて全てお見通しだったらしい。何を企ンでも、どンな悪知恵働かそォにも、あのクソ野郎は
常に一歩先に立ってやがる……)
(自力で脱獄するのは……無理だ。認めたくねェけどよ、完全に手詰まりだクソったれ……)
(この俺が、まさか居もしねェ誰かに助けを求めちまうほど切羽詰まっちまうなンてよォ……もォ腹も立たねェ)
(けど、拘りとかプライドとか……そンなモン持ってたって何の役にも立ちゃしねェ。それは“あの時”から学習
してるだろォがよ……)
(もォ、……こいつァ俺ひとりじゃどォにもならねェ…)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:11:23.78 ID:HGmnQ4I0<>
(神の奇跡だって何だって、今なら信じてやるからよォ……。力を……俺に手を貸してくれ!)
(頼む……ッ!!)
この時、一方通行は目を固く閉じ、初めて人外(神)に祈った。
彼は今、護りたいモノを護る以外に何も望まない。
そのために、もう一度立ち上がるチャンスを与えて欲しい事以外に何も求めない。
非力な己を悔いるのは、後でいい。
(助けてくれ! 俺にも、失いたくないモノをこの手で護らせてくれ! あのクソガキの時みてェに……!)
叫べない代わりに、祈った。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:12:25.53 ID:HGmnQ4I0<>
―――
「ハァ…ハァ……ち、ちっくしょおおおおおっ!!」
上条当麻は追われていた。
一階の通路内を、縦横無尽に逃げ回っていた。
彼の隣りに白井黒子は、いない。走っている途中でとっくに二手へと分かれたのだ。
もう説明の必要もないとは思うが、一応言っておく。二人は呆気ない程すぐに見つかってしまった。
通路の曲がり角で科学者と、言い訳無用なほどにバッタリと遭遇してしまっただけである。それ以上のドラマ的な
展開があった訳でもなかった。
「―――待てぇぇこのガキィィいいい!!」
「―――どこから入りやがったぁ!? 止まれ!! 止まれェェええ!!」
追手の科学者が一人、また一人と増えていく。その分、逃げ続けるのが困難になっていく。
気づけば十人近くが自分の後ろを走っている事実に上条は絶叫した。
「だああああああ!!! 見つからずに御坂を救い出す作戦もこれで完全にオジャンじゃねーかクッソォォおおお!!」
走りながら頭を抱える。
「待てェェえええええ!!」
それでも追手は足を止めない。
「待てだぁ!? いくら上条さんが馬鹿だからって、待てっつわれて素直に停止するほど馬鹿じゃねーぞ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:14:00.26 ID:HGmnQ4I0<>
逃げながらも威勢よく振り返って言葉を吐くが、
(せっかくここまで来たってのに、ここで捕まるなんて冗談じゃねぇ!! 何が何でも逃げ切ってやる!!)
内心、心臓はバクバクいっていた。
「……ハァ…ハァ…ハァッ………!?」
追われている人間の心理は面白いもので、真っ直ぐ逃げるよりも曲がれる道は曲がって逃げる方を本能的に選ぶ。
上条も例外ではなく、曲がった直後に続く直線をそのまま走るよりすぐ近くの抜け道みたいなポツン、と存在する通路へ
迷うことなく飛び込んだ。
「―――クソ! なんて逃げ足の速いガキだ!」
「―――もう姿が見えなくなったぞ!?」
「―――とにかく追え!」
「…………ッ」
乱れた息を無理矢理殺して壁と一体化する。そのまま微動だにせず、走り過ぎていく科学者たちを横目で見送った。
追っている側の心理も面白く間抜けで、咄嗟の場合は曲がるより直進していくパターンが多い。
こうして、曲がった後更にすぐ曲がった上条は、曲がってそのまま直進して行った科学者たちを何とかやり過ごすに至った。
「……ふぅ、……っぶは! ハァ、ハァ……マジで危なかったぜ……ッ!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:15:35.45 ID:HGmnQ4I0<>
たまたま目に入ったから飛び込んだ通路だが、走っていると普通は見逃してもおかしくないほどの小さな道である。
上条にとっては不幸中の幸いというやつだ。
「はぁぁぁ……参ったぞ。こりゃあ警備も更に厳重になっちまうな。カメラで位置を特定されないだけまだマシだけど、
御坂のいるトコからだいぶ離れちまった。……ってか、ここどこだ? ……あれ?」
脱力し、壁にもたれ掛かって地図を見る。
必死に逃げ続けている間に現在地が分からなくなってしまった。
「…ふ…不幸だ……」
溜息と一緒にお約束の一言を吐いた。
「ッ……そうだ。白井のヤツ、無事に逃げ切れたかな?」
途中で追手をかく乱させるために一旦黒子と別れてしまったが、彼女の方は大丈夫なのか?
まさか捕まったのでは? と、上条は表情を強張らせた。
「……頼む。逃げ切ってろよ…」
とりあえず今はそう信じる他ない。
あまりグズグズしていると警備も厳重になり、更に動きが取れなくなる。
なるべく早い内に動き出そうと、上条は広い通路の方へ戻ろうとした。
だが、
「ん……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:17:40.29 ID:HGmnQ4I0<>
その時、逃げ込んだ通路の奥がふと気に止まった。
「……今、広い場所に出ても、またすぐ見つかっちまうだろうしな……。……いったんコッチへ進んでみるか」
カツン カツン
(……なんだ? ずいぶん狭いっつか、暗いな……。どこに繋がってるんだ?)
(まぁ、どうせ自分がどこにいるか分かんねーんだし、気にする必要もねえか……)
そうしてしばらく進んで行く。すると、
「……!」
下へと続く階段が目に映った。
(……。ここって一階だよな? 地下もあったのか……。見取り図には画いてなかったぞ……)
(どうする……)
少し躊躇うが、引き返すのも何となく気が進まない。
やがて、結論が出た。
(―――行ってみるか!)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:19:13.10 ID:HGmnQ4I0<>
階段を慎重に下り、地下へとやって来た上条。
相変わらず薄暗くせいで周囲を観察しにくいが、先ほどより視界も慣れてきた。
「うわ……何だよここ……まるで牢屋じゃねえか。……薄気味悪いとこだな…」
「っつーか、今時犯罪者でも流石にこんなとこには入れられないだろ……」
収容施設が実際どうなのか知らない上条は、一般的なイメージだけで感想を漏らした。
鋼鉄の檻が左右に広がる中、一歩、一歩と警戒しながらも前進する上条。
「中には、誰もいないんだな……もしかして、無人…?」
意味のない場所を歩いているのでは? と上条は思った。
だとしたら、ただ時間を無駄にしているだけだ。
「……やっぱ、戻るか」
引き返そう、と結論して身体を反転させた。
――――その時だった。
ガシャン…
「……!?」
上条の足がピタリと止まり、後ろを向く。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:21:05.24 ID:HGmnQ4I0<>
(何だ? 今の……)
奥の方から、かすかな物音がしたのを上条は聞き逃さなかった。反転した身体をまた戻し、耳を澄ませてみる。
ガシャン…
「…! やっぱり……。空耳じゃないよな」
「誰か、居るのか……?」
そのまま、音のする方へと、上条は再び歩を進めた。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:22:08.50 ID:HGmnQ4I0<>
―――
「……クソ、せめてこの鎖が外せれば……ッ!」
ガシャン、ガシャン、と音を鳴らしながら鎖をいじるが、無駄なのはイヤと言うほど思い知っている。
(もしこの鎖が能力を封じる役目になってンだとしたら、コイツさえ何とかすりゃまだ救いようが有るかもしれねェ…)
キャパシティダウンを体感したことがない一方通行は拘束具から解放されれば能力も戻ると踏んでいた。
ならば尚のこと、意識は拘束具に集中する。更に音を立てていじり始めた。
(外れろ、外れろよこのヤロォォ!)ガシャン ガシャン
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:23:31.01 ID:HGmnQ4I0<>
―――
(音が大きくなってきた……。近いぞ)
上条はゆっくりと音の鳴る牢獄へ接近していた。
どうも奥の一室に誰か収容されているらしい。
(犯罪者か? それとも……)
ガシャン、ガシャン
(……あそこだ!)
遂に、鎖を鳴らしているような音を響かせている牢獄を目に捉えた。
上条は足音控えめで檻に近づく。中に誰か―――
―――いる!
「………!!!!!」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:24:36.58 ID:HGmnQ4I0<>
中に閉じ込められている人物が顔をコチラに向けた。上条も中で拘束されている人物の姿を確認した。
二人の目が合う。
かつて命懸けの死闘を演じたことさえある少年同士が鉄柵越しに顔を見合わせる。
その瞬間、彼らはこれ以上無理なほど思い切り目を開く。
ポカン、と口を開けたまま、両者の間に僅かな沈黙が生まれる。
やがて、檻の向こうにいるツンツン頭の少年が開いたままの口を動かし、唾を飲んだ。
「ア……アクセラレータか……!!?」
「……………ッ!!?」
檻の中の白髪の少年、一方通行は柵の外に立っているヒーローの存在を一瞬疑った。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:25:30.10 ID:HGmnQ4I0<>
―――
上条当麻と離れ離れになった白井黒子は、無人の個室でじっと息を潜めながら表の様子を窺っていた。
(まだ探してますわね……。これでは身動きが取れませんの。上条さんの方は大丈夫でしょうか…? 上手く逃げ切れ
ていればよろしいのですが……)
気配と物音から付近に人がいることを認識できる。今動けば確実に見つかって捕まる。
黒子は逃げる途中でたまたま空きっ放しだった個室に運良く飛び込み、追手から間一髪で逃れたこの物置部屋のような
個室でこれからの動きを脳内整理した。勿論周囲への警戒は解かないまま。
(今、この辺りですわね。お姉様の収容されている地点はここから北西の方向……。くっ、思った以上に離れてしまい
ましたの! しかも、最短の道はおそらくまだ追手がウヨウヨしていますわ……遠回りですが、ここは一旦引き返す
しか無さそうですの。そしてこの地点まで戻ってルートから………っっ)
手に持った見取り図を眺めて道順を再構築しながら歯軋りする。
安全に進める保障など全くと言って良いほどに無い。もう侵入した事がバレてしまっている以上、尚更進み辛くなって
くることだろう。
美琴の救出を急ぐあまり先走って急ぎ過ぎた結果がこれだ。美琴の事になると周りが見えなくなる事があるとは言え、
彼女らしくない失敗だった。おそらく、自身の能力に頼れない不安も手伝ってしまい、警戒も疎かになってしまったの
であろう。
だからこそ冷静に事を進めなければならなかった。上条の言う通り、もう少し慎重に行くべきだった。
(こんな時に、わたくしは何をやってますの!? 上条さんは何度も忠告してくれていたと言うのに……)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:26:31.28 ID:HGmnQ4I0<>
〜〜〜
上条『―――ハァ、ハァ、………ッ!? ちくしょうっ! また増えてやがる!』
黒子『―――っ!! しつこい……ッ! ハァ、ハァ…』ドドドド
追手(4〜5人)『―――止まれぇぇ!! 止まりなさい!!』ドドドド
上条『く……今捕まるワケに行くかよ! 白井! ここはひとまず二手に分かれるぞ! いいな!?』ドドドド
黒子『え……っ!?』
上条『このままじゃ人数も増えていって、いずれ捕まっちまう! あの正面の突き当たりで俺は右へ曲がるから、お前は
左に行け!』
黒子『し、しかし……!』
上条『御坂を助けるんだろ!? ここで二人揃って拘束されちまったら、完全アウトじゃねえか!! なぁに、俺なら心配
要らねえよ! 必ず逃げ延びてみせるから、お前も絶対に逃げ切れ! 死んでも捕まるんじゃねえぞ!!』
黒子『上条さん……』
上条『わかったか!?』
黒子『は、はい……っ!』
上条『よし! じゃあここで一旦お別れだ。けど……あとで、必ず無事で、また会おうな―――!』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:27:49.70 ID:HGmnQ4I0<>
〜〜〜
(……迷惑を掛けたのはわたくしだというのに、あのお方は最後までわたくしを責めませんでしたの……それどころか笑顔
で『また会おう』と……)
(上条さん……どうか、どうか無事でいてくださいまし……! 初春、佐天さんも……どうか……っっ)
「……………」
(………いつまでも嘆いたところで仕方ありませんわね。この辺りを散策する気配も感じられなくなりましたし、そろそろ
動かなければ……)
(まだですの……まだまだこれからですの! 今度は慎重に参りますわよ!)
表情を引き締め、黒子は音を殆ど立てずに個室を後にした。
まるで忍者のように素早く、冷静に、まさしく風紀委員の仕事をしている時同様の凛とした顔つきで。
(お姉様ともう一度逢うまでは、この白井黒子……諦める訳にはいきませんの!!)
たとえ能力が使えなくとも、心の強さは決して折れてなどいない。
どんな難事件にも果敢に挑み、使命をまっとうするいつもの“風紀委員”、白井黒子が再び動き出した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:28:53.09 ID:HGmnQ4I0<>
―――
(何…? 何か起きてるの?)
目の前を往来する科学者達の様子がおかしい。どこか殺気立っている。
御坂美琴は監禁部屋で相変わらず不自由な状態のまま異様な空気を感じていた。
「やけに厳重ね……。無意味なくらい」
そう呟きたくもなるほどに、周囲を科学者が徘徊していた。異常な警戒心を放ちながら。
まるで誘拐予告を受けた王国の姫だ。自分のこの理不尽な状況を除けばだが。
「……ねぇ、アンタは何か知ってる?」
この“いつも”明らかに違う光景に我慢できず、美琴はまだ真横で腕を組みながらぼんやりと立っている女使用人に訊ねて
みた。先程どこかと連絡を取ってから、女使用人の様子も少しおかしい。
「さぁね……」
彼女の口数は明らかに減っていた。
何かイレギュラーな事が起きているのだけは美琴にも理解できる。
(この“ジャジャ馬”を取り返しに、だぁ? ケッ……どこの馬の骨か知らねえが、良い度胸じゃねえか。……まさかとは
思うが、“あの時”のお仲間さん達じゃあねえよなぁ……?)
(クククッ、そうだったら良いなぁ。ヤツらにもまとめて借りが返せて言うこと無しってヤツだ)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:30:16.22 ID:HGmnQ4I0<>
(いい加減ガキの世話も飽きたしな。そろそろひと暴れしたってバチは当たんねえだろ…)
(まぁ、仮に“あの小娘ども”だったとしても、テレポーターは能力が使えねぇ。取るに足らねえとはこの事だな)
(ま……実際はどうなのか分からねぇが。けど、映像に姿が映らないよう侵入前にカメラをオトし、セキュリティ対策も
万端で来やがったからには、そこそこ食えねえ相手なんだろうなぁ? そうでなきゃ面白くねえぞ……)
女使用人はその後も訝しげにコチラを見つめる美琴を無視し、何かを考えている。
やがて、
(……念には念だ。“アレ”を使わせてもらうとすっか)
「決めた」とでも言いたい雰囲気で女使用人は監禁部屋を離れ出した。
「あ! ちょっとねぇ! どこに行くのよ!?」
思わず背中に声を飛ばす美琴。女使用人はゆっくりと振り向き、
「あぁ、駆逐の準備さ」
そう言って端整な顔を崩した。
「えっ……?」
美琴はその言葉と表情の意味が理解できず、首を傾げた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/07(日) 17:35:17.09 ID:HGmnQ4I0<>とりあえずここまでです
ペース落ちてますが、完結までは必ず持っていきますのでどうか長い目で
見てやってください
続きは二日後予定です
それでは<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/07(日) 17:36:02.26 ID:nFe/tuQo<>乙
wktk<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/07(日) 19:07:47.88 ID:UuFtSYY0<>乙!
上条さんマジヒーロー<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/07(日) 20:34:56.12 ID:gW6HR/co<>そろそろ反撃の時間か…
燃えてきたな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/07(日) 23:42:22.04 ID:ADFuZto0<>結局一方通行は上条さんがいないと何もできないのか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 04:24:11.34 ID:KxsyiKg0<>>>808
上条さんあっての一方さんではないか
つかこの現状じゃもう誰かが助けてやらないと無理だろjk
他の人が助けるくらいなら上条さんが最も適役だと俺は思うぞ
あと>>1乙!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 05:13:32.10 ID:mKkCP6AO<>そもそもこのSS一通とワースト要らなかったんじゃ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 07:27:05.85 ID:oOsZFEEo<>え・・・
メインは一方さんとワーストだろ
助けるきっかけに美琴が出てきただけ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 09:56:53.35 ID:fBHXhfIo<>ぶっちゃけ上条さんじゃ木原くんに勝てそうにない<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 15:17:25.95 ID:BtweNLo0<>確かに、上条だとフルボッコだろうな
どう考えても美琴と上条は引き立て役だろう
救出編が終わったら美琴はともかく上条の出番無さそうだし<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 17:40:25.43 ID:bV8h/8k0<>>>812
上条さんじゃ勝てないのは当たり前じゃないか
その為の一方さん救出だろ
木原くんは最終的には一方さんが何かして逆転するんだろ……たぶん<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/08(月) 19:15:11.31 ID:fBHXhfIo<>一通「行くぜ三下!」ガシッ
上条「えっ」
一通「そげぶミサイル!」
これなら….!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 11:35:35.39 ID:KDDPVeo0<>感想はともかく、変に重圧をかけるこれから先の展開を狭めるようなレスは止めようぜ
ここの>>1が全く気にしないでいてくれる人なら良いが、それでも書きづらくなると思うぞ
読むだけの人間が横からしゃしゃり出る話じゃないと思うが、同じ一方さん好きとして悲しくなるわ<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:19:44.39 ID:Uf4KWKo0<>自分はあまり気にしないですよ
ただ喧嘩とか険悪ムードとかはちょっと…ね
他の方の気分が悪くならない感じで進むのが理想です
一方さんの話に上条さんの存在は欠かせないと自分は考えてるんで、合わない人も
いるとは思いますが、それでも読んでもらえたら嬉しいです
では続き投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:21:38.99 ID:Uf4KWKo0<>
―――
「………!!!」
「……一方…通行……か? ……ここに居たんだな……」
しばし互いの顔を見合わせて表情を凍りつかせていた二人。先に口を開いたのは上条だった。
偶然迷い込んだ地下フロア。物音を頼りにここまで来てみれば、その正体はかつて命懸けで衝突し合った事さえある学園都市
最強の変わり果てた姿。
全身ズタボロで、すぐにでも治療を受けなければ危ういかもしれない檻の奥の少年に、上条は冷たい汗を流した。
しかし、
「っは……、見つかった時は不幸だと思ったが……思いがけない形でラッキーってのは起こるモンだな……」
口の端だけで笑い、そう零した。
〜〜〜
上条『―――それ、本当なのか!? 土御門……!』
土御門『―――ああ、カミやんにだけは教えておくぜよ。今言った事は資料には書いてない。これはできれば、カミやんの胸にだけ
留めておいて欲しいにゃー』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:22:53.97 ID:Uf4KWKo0<>
上条『……あぁ…けど、一方通行も捕まってるなんて……』
土御門『黒幕の木原数多は、元々一方通行の能力開発に携わっていた研究者だ。死んだと思われていたが、ヤツは生きていた』
上条『……そうだったのか……。あの日にそんなことが………っつか土御門! お前、一方通行の事を何で俺に!?』
土御門『はっはっは♪ 何を今さら。カミやんと一方通行に因縁がある事ぐらい、とっくに把握している』
上条『………何か、お前が何を知ってても…もう不思議だなんて思わない方がいい気がしてきた……』
土御門『褒め言葉として受け取っておくぜよ♪』
上条『ハァ……んで、その木原数多って野郎が、一方通行や御坂を拉致監禁したと……。けど、一体何のために?』
土御門『カミやんが以前学園都市を襲撃した神の右席、“前方のヴェント”と交戦した日、木原数多は一方通行に殺害されている。
何故今も生存しているのかは俺にも分からないが、単純に考えれば、木原数多の目的はそれで大体察しがつくはずだ』
上条『………復讐か?』
土御門『あぁ、多分な……』
上条『おい……おい、ちょっと待てよ……。何でそれで御坂まで……? アイツも何か関係してるのか!?』
土御門『いや、直接は関係ないぜよ。彼女は一方通行を誘き出す餌の一つとして利用された可能性が高いな』
上条『な…に……?』
土御門『確証は無いが、あと他にあるとしたら施設の出力調整要員ぐらいか……』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:23:58.42 ID:Uf4KWKo0<>
上条『ッ………。それじゃあ、御坂には……何の罪もねえんじゃねえか!』
土御門『…………』
上条『何だよそれ………。何なんだよ!! そんなくだらねえ理由で御坂をずっと縛り付けてるってのか!? たったそれだけ
のために―――!!』
(―――白井や初春さんに佐天さん……アイツを慕う人達が辛い思いをしてるっていうのかよ!!?)
土御門『木原数多は、そういう男だ。目的のためなら部下も平気で見放し、赤子さえも笑顔で虐殺する。カミやんには到底理解
できないだろうけどにゃー……』
上条『……ふ、ふざけやがって………ッッ!!』ワナワナ
土御門『…………』
上条『許せねぇ……絶対に許せねぇ………そんなのが許されてたまるかよ!!』
土御門『………カミやん。イカレてるのは何も木原数多だけじゃーない』
上条『……何が、言いたいんだ…?』
土御門『まぁ聞け。学園都市で研究職に就いている人間は学生を“研究対象”としてしか見ていないヤツが多い。私利私欲に溺れ、
成功のためならどんな犠牲も厭わない。無論“例外”もいなくはないが、他人の命を“実験”や“研究”と称して平気で
命を弄ぶヤツらの方が実は大半を占めてるんだぜい』』
上条『……けど、だからって御坂は関係ないんだろ? だったら…』
土御門『カミやん……。今、何故こんな話をしたのか分かるかい?』<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:24:52.54 ID:Uf4KWKo0<>
上条『え……?』
土御門『“ヤツらに話し合いは一切通じない”ってことを教えたかったんだ。説得で解決しようなんて考えるな。少なくとも木原
数多には無駄だ。言葉の前に銃弾が飛んでくる恐れもある。御坂美琴が関連を持っていようがいなかろうが、利用できる
ものは何でも利用し、価値が無くなればゴミ同然に切って捨てる。木原数多はそういう典型的な“血も涙も無い”タイプ
の人間だ』
上条『………』
土御門『だから……本気でヤツらに挑むつもりなら、カミやんもそれなりに甘さを捨てていけ。これは親友としての忠告だ』
上条『土御門………』
土御門『……以上だ。長々とすまなかったにゃー』
上条『いや……助かったよ。ありがとうな』
土御門『じゃ、資料送らせてもらうぜい』
上条『ああ、頼むよ―――』
〜〜〜
結局土御門は、あの時「一方通行も頼む」とは最後まで言わなかった。
これを教えたら上条ならどう行動するのか、彼は最初から知っていた。だから敢えて頼まなかったのだ。<>
おっとage忘れた ◆8NBuQ4l6uQ<>saga<>2010/11/09(火) 18:26:01.52 ID:Uf4KWKo0<>
事実、上条は黒子達に悟られないように一方通行の事も気に掛けていた。
美琴の救出を遂行出来たら先に彼女達を外へ逃がし、自分は一人残って一方通行を助け出すつもりだった。
だから、この偶然は彼にとって不幸ではない。
――― あの人が、いないの……。ってミサカはミサカは不安な心中を吐露してみる… ―――
脳裏に浮かぶ打ち止めの悲しげな瞳。
躊躇う理由など、どこにもない。
『一方通行を打ち止めの所まで連れて行く』
上条が密かに決心していた事だった。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:26:57.13 ID:Uf4KWKo0<>
―――
一方通行は目の前に出現した少年を見て、これは夢かもしくは幻覚なのかと思った。
信じられなかった。所詮叶わない願いだと、心のどこかで諦めかけていたのもあったせいか。
一端の無能力者でありながら、最強の称号を持つ自分に臆する事なく挑んできた生粋の善人。
道を失いかけて暴走した自分にその拳を叩き込んで目を醒まさせてくれた羨望のヒーロー。
まさか、本当にこの少年がここに来るなど、一体誰が予想したか?
(オイオイ……ついにこンな幻まで見えてきやがった。っつか、やっぱコイツかよ……。まァ、それも無理ねェか。俺にとって
ヒーローっつったら、コイツしか想像つかねェモンなァ………)
願いとは、叶う希が低いからこそ願うものだ。
だから、叶った時の顔は驚愕と希望に満ち溢れるのが普通である。
一方通行も例外では無かった。硬直から滲み出そうになる、驚きと疑心と歓喜の全てが入り混じったような複雑な表情。
どうせこれは夢だ。幻想だ。なら素直に受け入れよう、と。
しかし、その前に少年が声を掛けてきた。
「……一方…通行……か? ……ここに居たんだな……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:28:13.62 ID:Uf4KWKo0<>
「―――ッッ!!?」
現実だ。本当に、上条当麻がそこにいる。夢なんかではない。
そう認識した時、一方通行はやっと我に返った。
「何…で……」
「……何で、オマエがここにいる?」
感情を隠し、低い声で問う。
実際上条がここに居るとしたら、それは一体どういう事に繋がるのか。
はっきり言おう。
馬鹿だ。命知らずだ。無謀だ。とてもまともな神経じゃない。自分が何をしているのか果たして理解できているのか?
一方通行の顔がみるみる険しくなっていく。そして上条の答えが、そんな彼の眉間のシワを一気に寄せた。
「何でって、決まってんだろ。御坂と―――」
「―――“お前”を助けに来たんだよ」
薄暗い空間だが、何の迷いも感じられない上条の眼だけはハッキリと見えていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:29:36.93 ID:Uf4KWKo0<>
上条「ん…? おい! お前……ヒデェ怪我してるじゃねーか!」
一方通行「…………」
上条「待ってろ。今すぐ……って、くそ! やっぱ鍵が無いと開かねえか……。仕方ねぇ。今取ってくるから、ちっと待っ――」
一方通行「オイ………オマエ……自分がどこにいるのか……ちゃンと分かっててモノ言ってンのか?」
上条「――ん? 当たりめーだろ。そうでなきゃこんなトコまで来れねえっつの。っても、ここに着いたのは偶然なんだけどな」
一方通行「……偶然…だァ?」
上条「ああ、施設のヤツらに見つかって、たまたまここに続いてる通路へ逃げ込んだんだよ。そしたら、奥から物音がしてさ。
気になったから来てみたら、お前が居た。ってワケだ」
一方通行「そンな事はどォでも良いンだよ! オマエ自分がどこで何してンのか本当に理解できてンのかって俺は訊いてンだ!」
上条「……分かってる」
一方通行「分かってねェだろ!! どォやって来たかは知らねェけどなァ、正体も掴めずに飛び込むには悪すぎる相手なンだよ!
オマエみてェな『表の人間』が関わって良いよォなヤツじゃねェンだぞ!? …それを知ってて……それでもオマエは
ここに来たってのか!?」
上条「……ああ、そうだ」
一方通行「…ッ……何で……だよ……」
上条「お前も御坂も助けて……『みんなで無事に帰る』って、俺がそう決めたからだよ。誰が相手かなんて関係ない。何て言われ
ようと、俺はお前も助ける」
一方通行「……ひひっ……ひひひひ……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:30:34.68 ID:Uf4KWKo0<>
上条「………」
一方通行「ひひっ………あは、あはは、ぎゃははは! あはははあはははぎゃははははあははははは!!!」
「きひ、きひひっ……惨めに成り下がったモンだなァ。俺もよォ……」
「ついに三下にまで同情されるたァ、ひひひ……ホント、なっさけねェよなァ……。こりゃもォ笑うしかねェわ」
上条「…………」
一方通行「けどよォ、誇りだとか意地だとか、ンな安っちいモン全部捨てたって、結局俺はオマエみたいにはなれなかった。
現に俺ひとりじゃ護りたいモノを護ることすらできやしねェ……」
上条「一方通行……」
一方通行「結果は今オマエが見てる通りよ。無様だろ? 情けねェだろォ? 嗤いたきゃ嗤えよ。薄汚ねェ闇で染まった
俺が、いくらオマエの様に誰かを救いたいがためにもがいたところで、所詮はこのザマだよ畜生」
上条「………」
一方通行「何でだろォな。何で俺じゃ上手くいかねェンだろォなァ。……これでも以前より変わったつもりだった。大切な
モノが出来て、こンな俺でも誰かのために生きれるンじゃねェか、って本気で思った……。前にオマエが言った
『誰がヒーローだろうが関係ない』ってセリフ、今も胸に残ってンだよ。俺みてェなヤツがここまで来れたのも、
言ってみりゃ全部オマエのおかげなンだよ。今の俺にとってどれが正義でどれが悪かなンて知ったこっちゃねェ。
ただ、アイツらの……笑顔を守ってやりたいだけだった……」
上条「…………」
一方通行「けど、それでも……やっぱり、俺一人じゃ無理だ。建前全部ブチ壊してでも守りたかったのに、俺だけじゃどォ
にもできなかった……。悪あがきも、無意味にしかならねェよ……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:34:30.33 ID:Uf4KWKo0<>
上条「………で、それでどうするんだよ?」
一方通行「ケッ……どォもこォもねェよ……分かってンだ。もォ、何しても無駄だってのは……」
上条「……だから終わり、ってか? お手上げだ、って、そこで諦めるのかよ?」
一方通行「…………」
上条「いくら無様な姿を曝しても、ボロボロになっても、それで終わりってルールはどこにもねえだろ? それなのに、自分
から降りようってのか?」
一方通行「…ッッ!」
上条「カッコ悪くたって良い。誰かに縋りついたって良い。お前が『救いたい気持ち』を放棄しない限り、終わりだなんてこと
はねえよ。……お前はもう良いのか? ここでテメェの限界に見切りをつけるつもりかよ?」
一方通行「………」
上条「それに、必ずしも自分が救わなきゃいけない。ってワケじゃないだろ?」
一方通行「……!」
上条「自分がやりたいと思った通りにやるのが一番なんだよ。お前は勘違いしてるかもしれねえけど、俺は別にヒーローでも
何でもねぇ。ただ自分のしたいようにしてるだけだ。それがたまたま結果的に都合良くいった、ってだけの話さ。やり
遂げたい想いが結果を呼んでくれた。ただそれだけだ」
一方通行「…………」
上条「打ち止めのヤツ、お前の事すげえ心配してたぞ」
一方通行「……クソガキ………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:35:41.50 ID:Uf4KWKo0<>
上条「あの子にとってのヒーローは、お前だろ?」
一方通行「…………!!」
上条「存在(い)るだけでお前は、あの子の笑顔を生み出せるじゃねえか。ときたま会ってたけど、お前の話をしている時の
打ち止めは楽しそうに笑ってたぜ」
「打ち止めを心から笑顔にしてやれるのは俺でも他の誰でもない、お前ひとりだけだろぉが。あの子はお前の帰りを今も
ずっと待ってるんだぞ?」
「なのに……お前が帰って来るのを待っている人間がちゃんといるってのに、お前はそれすらもここで投げ出すのかよ?」
「お前が誰のために動いたのかは訊かねえけど、守りたい者を守るって決めたんだろ? なら、その気持ちを捨てんなよ!
テメェで一度決めた事を、簡単に覆そうとするなよ! 何度失敗したって、最終的に救えればそれで良いじゃねえか!」
「……絶望するなら、後で好きなだけすればいい。今は、それよりも他にやらなきゃならない事があるはずだ」
「まだ終わったワケじゃねえんだろ? なら、立ち上がる意味はまだあるんじゃないのか? ……俺は、そう思うけどな」
一方通行「……ッ……ッ…」
上条「……改めて訊くぞ」
「お前はこれからどうしたい? 匙を投げてリタイヤするか、最後まで一人で足掻き続けるか、それとも俺の手を借りて
ここから出たいか―――」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:36:28.03 ID:Uf4KWKo0<>
「―――決めるのはお前だ。お前自身が選ぶんだ」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:37:34.67 ID:Uf4KWKo0<>
一方通行「………ッ」
上条「……………」
しばらく続いた沈黙。
そして、ついに一方通行は殻を全て脱ぎ捨てた。
「――――たい………出……たい……」
呻くように絞り出された要望に、上条の眉がピクリと反応する。
「………ここから、出たい………出してくれ…………アイツ(番外個体)を……助けたいンだ。護りたいンだよ…」
思った事はあっても、今まで決して他人の前で口にしようとしなかった何かを乞う行為。
これは交渉でも何でもない。ただの願い、一方的な頼み。
感情の抜けたような、しかし明確で強い意志の感じられる懇願の言葉が、半開きの口から尚も漏れ続ける。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:38:16.22 ID:Uf4KWKo0<>
「だから、頼む………手を、貸してくれ…………俺を……ここから出してくれ」
それは今にも消えそうなくらい微かな声だったが、確かに上条の耳に届いた。
一方通行の本心を聞いた上条は厳しかった眼を緩め、その言葉を待っていたんだ、とでも言いたげに微笑んで見せる。
「わかった。すぐ鍵を取ってきてやるから、もう少しだけ我慢しててくれ」
柔らかい表情でそう告げてから背を向けた上条は、そのまま静かに走り去っていった。
彼の背中は「必ず戻ってくる。だから心配するな」と語っているようで、どこか頼もしく感じられた。
「頼ンだ……」
一方通行は、上条の姿が完全に見えなくなってからポツリと呟いた。
その眼にはもう恐れも絶望も自棄もない。彼の中で何かが吹っ切れたのか、澄んだ瞳には希望の光が滲んでいた。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:39:03.13 ID:Uf4KWKo0<>
―――
六階、南西方面へコソコソと移動する二つの影。
その正体は、バットを所持していつでもホームラン体勢な佐天涙子と小型ナビ代わりの端末機と付近を交互に見ながら
やたら挙動不審な初春飾利だった。
今、彼女達は不法侵入中である。
目的は最上階に設置されている今も施設内に流れ続けるキャパシティダウンの音源をストップさせる事。
途中で見つかればゲームオーバー。相手が相手なだけに問答無用で死も有り得る。
何しろここは最上クラスのシークレット組織が潜伏するアジトなのだ。
かつてない緊張感を持って移動するのが正しい。
しかし、初春の奮闘で施設内のセキュリティが弱体化している今、彼女達は確実に目的地へと接近していた。
初春の記した道が正しいせいか、ことのほか順調である。
「もうすぐ九階行きのエレベーターが見えてくるハズです」
先を歩く初春がナビゲートする。
佐天は頷き、
「誰にも遭遇しないで着きそうだね。……ちょっと拍子抜けかな」
こんな余裕の発言をする。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:40:53.69 ID:Uf4KWKo0<>
「佐天さん。ゲームっぽいですけど、ゲームじゃないんですよ。気は抜かないでくださいね」
初春が少し呆れた顔で指摘した。
「冗談だって♪ でもさ、もうちょっと急いだ方が良いんじゃない? 慎重過ぎてだいぶ時間掛かってる気がするんだよね」
セキュリティの復旧が完了してしまっては進むのが一気に困難となる。
初春は佐天の意見に「うーん…」と少し考え込む仕草を見せた。
「たしかに……。多分まだ大丈夫だと思いますけど、あんまりグズグズしてる余裕も無くなってはきましたね…」
「よし! ほんじゃあもちっと急ごう♪」
どうやら佐天は潜入捜査には向いていないようだ。あっさり初春を追い抜き、早足で進んで行く。
「ああっ!? さ、佐天さんってば!」
慌て気味で制止するが、
「ほら、初春早く」
歩くスピードを緩めるどころか手招きを返す。
「もう! 駄目ですってば!」
仕方なく佐天の歩くペースに合わせる。
「白井さん達もそろそろ心配になってきたし、あと少しなんでしょ? このまま一気に………」
ところが、佐天のセリフは途中で視界に入った前方の人影が止めた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:42:01.42 ID:Uf4KWKo0<>
「―――!!?」
研究者が運悪く前を通行していたと気づいた時には、研究者がコチラを振り返ってお決まりの行動をとっていた。
「ん…? 何だお前たちは!?」
ズカズカと走り寄ってくる白衣男。
「…ぁ………」
あまりに唐突だったため、二人とも完全に反応が遅れてしまった。
逃げようにも足が動かない。
佐天はそれでも走って逃げようとする初春の首根っこを踏ん捕まえた。
「待って、初春」
すでに半パニック状態の初春にボソッ、と耳打ちする。
「この距離じゃ、逃げるきれないよ。ここはお客さまになりすまそう」
「ででで、でもでも、今警戒態勢なんですよ!? 無理です!」
「だから、隙を見て逃げた方が確率高いって。もうすぐエレベーター前だってのに、ここまで来て逆走なんて冗談じゃないよ。
それに、私らみたいな子供が犯人だなんて普通思わないって」
「しし、しかしですねぇぇ……」
二人の小さな会話が続く。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:43:06.67 ID:Uf4KWKo0<>
「とにかく、やるしかないよ。初春は私に話合わせてくれれば良いから」
すでにすぐ近くまで接近している研究者。
最後にそれだけ言って佐天は作り笑顔を作って正面を向いた。
「お前ら、ここで何してるんだ?」
研究者が問い掛けてきた。
明らからに怪訝な表情で佐天と初春を見ている。
「あっ、あの〜……私たちその……道に迷っちゃって。あはは」
「そそ、そうなんですよ〜」
頭を掻きながら演技を始めた佐天に初春もオロオロと便乗した。
「………」
まだ疑いの眼差しを向けている研究者に佐天は、
「あ、私たち柵川中学の生徒なんですけど…」
そう言い出してパッ、と学生証を素直に提示した。とにかく何でも良いから信用させなければならない状況である。
無許可で侵入したと確信されれば終わりだ。
「……社会科見学か何かか? そんな話は聞いてないが……というか、ウチはそんな公けにして大丈夫なのか……?」
一人で何かブツブツ言い始めたが、素直に身分証明をしたのは正解だったようだ。
トドメとばかりに佐天は畳み込む。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:44:40.51 ID:Uf4KWKo0<>
「わ、私たち、木原数多さんの親戚なんです。それで今日特別に職場を見せてくれるって。ねぇ飾利?」
「ッ!? ……そ、そうそう! ね? 涙子ちゃん」
もうなるようになれ、と開き直ることに落ち着いた初春も支援射撃した。
「木原さんの? ……そうか、そうだったのか。それはすまなかった」
木原の名前を出したのも、どうやら効果的だったらしい。
パッと見、暗部の構成員には見えない少女達が『木原数多』の存在を知っている。
そして素直な態度と身内発言。若干オドオドしていたが、この馬鹿な研究者を騙せる要素はこれで充分だった。
「実は今、中は諸事情でだいぶ取り込んでてな。……皆かなりピリピリしている。外部の人間が侵入したと聞いていたから、
お前たちを疑ってしまったんだ。そうとは知らず、悪かったな」
「(!?)……い、いいえ〜、いいんですよ。こんな所でウロウロしてた私らも悪いんですから。あは」
「……そう言えば、道に迷ったんだったな。どこへ行きたいんだ?」
もう自分達を疑っていないようだ。客人に接するように物腰を柔らかくした愚かな研究者を見て佐天は内心ガッツポーズする。
「九階にある特製のキャパシティダウン装置を見せてもらうんですけど、エレベーターの場所が分からなくって……」
「あぁ、それならここを真っ直ぐ進んだ先にあるぞ。誰か案内できるヤツを呼ぶか?」
「い、いえ! いいですよ〜! 自分らだけで行けますから。忙しい中、お世話かけてすみませんでした」
「いや、構わんよ。それじゃ気をつけてな。侵入者に間違われるかもしれんから、あまりウロつかない方がいいぞ」
「はーい、ご忠告どうも〜♪」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:45:48.05 ID:Uf4KWKo0<>
研究者は最後まで少女達の嘘に気づくことなく、立ち去っていった。
笑顔で見送った佐天と初春は彼の身体が視界から消えた途端、マッハでエレベーター入り口まで到達し、偶然止まっていた
エレベーターへ弾丸の如く駆け込んでからドアを閉めた。
「ハァー、ハァー……」
「ふぅぅぅぅ〜………」
中へ入った途端、解かれた緊張の糸と急な全力ダッシュの反動で二人は中腰になる。
そのまま初春はヘナヘナ、とエレベーターの壁にヘたれ込んだ。
初春「も、もう駄目かと思いましたぁぁ」グッタリ
佐天「はぁぁ〜、私もだよ〜。まさか急に来るなんてさぁ……。マジ反則」
初春「でも、あの人だけで良かったですね。他に人呼ばれてたらオシマイでしたよ」
佐天「そうだよね。逃げなくて正解だったよ」
初春「けどビックリしました! 佐天さんって、土壇場になると頭の回転がすごく速いんですね」
佐天「むふふふふ、まぁね〜♪ ところでさ……。あの人、『侵入者』って言ってたよね……。それってやっぱり……」
初春「白井さんと上条さんですよね……。あの人の言い方ではまだ捕まってないみたいですけど……」
佐天「時間の問題……か。……いよいよのんびりしてられなくなってきたね。あの人が木原さんとかに会っちゃったら、
私らのこともバレちゃうよ」
初春「そうですね。……もう多少危険を冒してもこの際止むを得ません。急ぎましょう」ポチッ(←九階を押した)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:47:43.63 ID:Uf4KWKo0<>
ウィー…ン
佐天「キャパシティダウン装置がある場所まで、あとどれくらい?」
初春「距離はそんなに遠くないですけど、生体信号(マーカー)が多いです……」
佐天「うわ、ホントだ〜……システム制御の管理をしてるのも九階なんだっけ。そりゃ人も多いんだろぉな〜…」
初春「ルートは……また通気口から行くしかなさそうですね」
佐天「うげ……マジで?」(←イヤ顔)
初春「私だってイヤですけど仕方ないんですよ〜。他に道ないんですから。御坂さん達のために、ここは我慢しましょう」
佐天「……わかったよ〜…」(全部終わったら、御坂さんに何奢ってもらおっかな〜)
あんな埃だらけで鼠でも出そうな通路(?)を普通の女子学生が通りたくないと思ってしまうのは不思議でも何でもない。
ごく当たり前のことだ。けど行くしかない。行かなければ帰れないし、友達も救えない。
九階に着いた頃には佐天の覚悟も決まっていた。
―――
一階フロアへ回帰した上条当麻は必死に逃げ隠れしながら施設内を彷徨っていた。
「…………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:50:36.49 ID:Uf4KWKo0<>
今は奥の壁にへばりつき、巡回中の科学者達をやり過ごしている。
こんな息が詰まりそうな時間が地上に出てからというもの頻繁に続いていた。
すぐ近くから彼等の会話が耳に入る。
「―――くそ、あのガキどもどこへ行きやがったんだ?」
「―――何としてでも捕まえろ。逃がしたりしたら木原さんにどんな仕打ちを受けるか……」
「―――あぁ、全く寒気がするよ。とにかく、警護を続けよう。全入り口にはすでに見張りを着けてある。逃げ場など
ありはしない」
「―――セキュリティが復活すりゃ楽なんだがな〜。まだなのかよ?」
「―――まだ掛かりそうだってさ。……グダグダ文句言っても仕方ないだろ?」
カツン カツン カツン……
「………」
(行ったか……ふぅぅ)
気づくことなく通り過ぎたまま、通路の奥へと消えていった科学者たちを横目にホッと息をつく上条。
腕で額の汗を拭う。
(思った通り、進むのが厳しくなってきたな……。どうする? 一方通行には『鍵を取ってくる』って自信満々に断言したのは
いいが、その鍵がどこにあるのか分かんねえんじゃな……)
(御坂を先に助けようにも現在地すらとっくに不明……これじゃ地図が役に立つのは御坂の所に着いてからだな……。今は行き
当たりばったりに賭けるしかねえってか?)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:51:21.60 ID:Uf4KWKo0<>
(この不幸な上条さんにそんなギャンブル要素満点の手段しか用意されてねえなんて……クソッ。……こうなったら誰か一人を
押さえ込んで吐かせるしかねぇ。リスクは高いけど、こうしてる間にもどんどん逃げ場が無くなっていっちまうだろうし…)
もはや四の五の言っている余裕など無かった。
(誰か……誰かいないか? できれば一人! 二人以上だとキツイ!)
移動しながら辺りに適当な情報源(科学者)を探す上条。
人数が固まっているグループは避け、なるべく単独で動いている人間を絞る。
その最中、背後から声が掛かる。
「―――よう、そこで何やってんだ? 小僧」
「!!??」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/09(火) 18:54:35.81 ID:Uf4KWKo0<>今日はここまでです
…一スレで終わる予定だったのに、余裕で次スレ行きそうw
続きはまた一日空いてからになります
では<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 19:43:13.57 ID:HdrfSfs0<>一方通行情けねぇな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 20:00:58.47 ID:/uCKkQAo<>上条さんありきってことは一方通行単体じゃなんの価値もないってことだろ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 20:02:38.54 ID:Wy2YU8.0<>上条オワタ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 21:02:13.76 ID:aAx6qzQo<>木原くンか出雲かどっちだ
どっちにしても上条さん死んだな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 23:17:12.71 ID:1V8tssDO<>お前ら登場人物に対して辛辣過ぎw
でもキャパダウソが攻略できりゃ鍵取りいった上条さんの意味が…
上条さん死んだな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 00:33:49.77 ID:SucMZDE0<>>>1乙!
佐天さん肝っ玉パネェっす
ええい!ロリロリショタはまだかッ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 01:17:10.60 ID:plKl36.o<>さすが俺の涙子だな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 01:22:29.82 ID:41tBTgAO<>上条との絡みはいんだけどなんつーか違和感はあるなぁ
一方通行らしくないっつーか
おんぶにだっこ状態なのもそうだし
例え絶望的でもこと妹達に関わる事なのに
諦めの言葉吐いちゃうあたりが<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 01:29:34.66 ID:GUJQY/Yo<>ちゃんと読んでないのかただ理解してないのか知らんが
このSSに関しちゃ自然な流れだと思うがな
むしろ佐天がいるほうが不自然<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 01:47:53.53 ID:41tBTgAO<>俺がいってんのは原作一方とかけ離れすぎてる気がして
違和感感じるってだけだよ
そこまでキャラ崩壊させないとはあるが
ロシア後にしちゃへたれすぎでらしくないんじゃね?
と思っただけさ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 01:49:06.39 ID:qtxH1kAO<>理解の仕方は人それぞれだろ
自分の考えだけで判断して周りに押し付けるなよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 02:04:51.30 ID:GUJQY/Yo<>どん底まで落としてから這い上がるってのが禁書の一つのテーマだし
こんだけ作者が状況やら心理状態やらを丁寧に書いてるのにらしくないはないだろう
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 02:06:48.14 ID:DE4B1zko<>そもそもこのスレが始まったのがロシア編が終わる前だし<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 02:09:06.06 ID:6PJO4sDO<>ロシア帰りとはいえ一週間もボコられ続け死ぬのも時間の問題だったらへたれても仕方ないんじゃないか?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 02:16:25.22 ID:GUJQY/Yo<>むしろロシア編後の一方さんのほうが悪党(笑)とか言ってたときより人間らしくなってると思うがな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 02:25:22.83 ID:41tBTgAO<>どん底まで落ちたからって
助けにくるともしれない不確定要素にまで頼るような思考になる
ってのがらしくないって意味なんだけど
確かにロシア後なら人間味増してるし
誰かを頼るってのはわかるけど
不確定すぎる要素にまで頼るってのは
なんか違う気がして違和感感じちゃったってだけだよ
まぁもう黙るわ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 06:14:41.37 ID:esbX75Qo<>もしもしは頭のおかしい奴ばかりだな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 07:23:34.95 ID:XwDx/.AO<>全くだな
これだからもしもしは<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 07:27:28.32 ID:rAbBORIo<>結局、一方通行は上条さんがいないとなにもできないんだよ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 08:42:22.19 ID:uwGl11.0<>いいじゃないか
最弱に助けを求める最強なんて素敵じゃないか
人間の心理をよく踏まえてると思う
原作の一方さんもコッチの一方さんも俺は好きだな
上条さんありきなのは当然じゃね? 一方さんはあくまで第二の主人公なんだし、
上条さんと出会ったから今に至ると言っても過言じゃないだろ
>>848
さりげないつもりだろうがそげぶ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 08:54:23.32 ID:NEjjxgco<>解釈なんて人それぞれだからな
批判はするなとは言わないけど、長文で何度も同じような事をレスするんなら自分で書けと言いたくなる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/10(水) 12:25:01.84 ID:Jt3zAak0<>まあ、上条さんありきと言うよりも、打ち止めありきといった表現のほうが正しいかな
とりあえず、上条さんの無事を祈る<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 00:34:59.72 ID:NnPbMcAO<>つか黙って待とうぜ
いちいちつっかかって引っ張る方もどうかと思うぞ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 02:26:49.00 ID:WLLYzkU0<>みんなもっと>>1が気持ちよく書けるような雰囲気作ろうぜ
そうすれば最高のSSを書いてくれるんだから
もしもしだからダメとかやめて
みんな仲良くしよう
というわけで期待と支援
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:28:09.63 ID:yITOSbI0<>>>857
もっともな指摘ありがとうございます
一方さんへたれシーンは木原くンの拷問がそれほど過酷だったことを強調したかっただけ
なんです。実際の一方さんならこんな弱くないでしょうけど…
違和感は重々承知してますが、どうせならどん底まで落とした方がリアリティあるかなと
思ったんですが、ちょっと人間性重視しすぎて実キャラとは離れちゃいましたね
今後はもうちっと気をつけます
今回は上条さん最大の見せ場(の、つもり)です
では続き<>
◆8NBuQ4l6uQ<>saga<>2010/11/11(木) 18:30:20.08 ID:yITOSbI0<>
「―――ッ!!?」
突然掛けられた声に、上条の肩がビクッと跳ね上がる。
誰もいないと思っていた空間から聞こえてきた質問に、立ち止まった上条はゆっくりと振り返った。
その目に、白衣を着た一人の男性の姿が映った。
はだけたインナーに銀のネックレス、更に肩まで伸びた茶髪は、科学者の印象を見事にブチ壊していた。
そしてこんなルックスをした科学者など、この施設には一人しかいない。
出雲傭兵、一人しか。
上条はポケットに手を突っ込んだままだらしなく立っている出雲の存在に一瞬慄いたが、瞬時に頭を切り替える。
(しまった! 見つかった………けど、一人か! だったら―――)
先手必勝!
増援を呼ばれる前にカタをつける必要がある。
鋭い目つきで出雲を捉え、拳を握り、力強く前へ飛び出す。
(―――気絶しない程度に黙らせてやる!!)
十メートル近くあった出雲との距離を一気に縮めようと、最速で踏み込む。
依然気だるそうに立ったままの白衣が、ぐんぐんと近くなる。
「――――ッッ!!!??」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:32:18.36 ID:yITOSbI0<>
しかし、次の瞬間上条が見たのは、延々と続く通路。
そこに人はいなかった。
「えっ……あ、あぁれ……?」
訳が分からず、キョロキョロと辺りを見回す上条。
その背後から、
「ったく、最近のガキは凶暴だな。カルシウムでも投与してやろうか?」
また声が聞こえた。
「!!!?」
驚いて振り返った上条の僅か数メートル先に、同じ姿勢で出雲は立っていた。
「え……えぇ???」
いつ移動したのか、上条には当然分かっていない。
幻でも見せられた? それとも能力? いや、この施設で能力は使えないはず。
様々な憶測を立てようとするが、先に出雲が声を発した。
出雲「―――で? テメェは何よ?」
上条「は…?」
出雲「どこの組織の者(モン)かって訊いてんだが? 頭平気か? ってか、お前本当に暗部の人間かよ? 悪いけど、とても
そうは見えねえなぁ。立ち振る舞いも、まるで一切訓練受けてません、ってくらい素人丸出しだしよぉ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:34:12.64 ID:yITOSbI0<>
上条「……俺は、暗部になんか所属してねえよ」
出雲「はぁ? んじゃあお前は一体どこの誰サマだよ?」
上条「ただの高校生だよ。悪いか?」
出雲「………おい、おいおいおいおい。何だそりゃ? “ただの高校生”……だとぉぉ? まさか、“侵入者”ってのはお前の
ことじゃねえよなぁ?」
上条「ああそうだよ。それがどうした?」
出雲「ウソでしょ〜………ただの高校生が、何でここにいんだよ……。迷子にでもなったんか? っつーか、何の因果があって
ここまで来た?」
上条「友達を、連れ戻しに来たんだ」
出雲「友達ぃ? ……誰のことよ?」
上条「御坂だよ、御坂美琴。そして一方通行……。二人とも解放してもらうぞ!」
出雲「……………っぷ」
上条「…?」
出雲「ぎゃーはっはっはっはっはっ!!! はぁーはははははははっ!!! おいおい勘弁しろよ!! 冗談も大概にしねえと
しまいにゃ笑い死にすんぞ!! ぎひひひひひ……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:35:31.73 ID:yITOSbI0<>
上条「冗談なんかじゃねえよ! 大マジだ!」
出雲「……あぁ? お前、誰に立ち向かってるのか分かった上でほざいてんのか?」ギロッ
上条「勿論分かってるさ。頼りになる仲間が調べてくれたんだよ。けどな、誰が相手だろうが、そんなん俺の知ったことじゃねぇ。
テメェらのせいでどれだけの人間が悲しい思いをしてるのか、テメェこそ良く分かってんのかよ!?」
出雲「それこそ、俺の知ったこっちゃねえ話だな」フッ
上条「テメェ……ッ!!」
出雲「お前の目的は分かった。んじゃ質問変えるが、仲間は何人だ? 繋がりは超電磁砲の派閥ってことで良いのか? ウチの
セキュリティを駄目にしてくれた凄腕のハッカーさんってのは誰だ?」
上条「……教えると思うか?」
出雲「痛い思いする前に吐いた方がいいぜ。コッチは『侵入者(ネズミ)の駆除命令』を請け負ってんだ。テメェらみてぇな素人
集団が粋がったのは良いが、相手が悪すぎたんだよ」
上条「………ッ」
出雲「ネズミ如きが、生意気にも猟犬サマに楯突いてんじゃねえよ。ちったぁ身の程を知りやがれ」
上条「……ごちゃごちゃうるせぇんだよ」
出雲「んん?」
上条「悪いが、時間喰ってる暇はねーんだ。御坂の居場所と一方通行の檻を開ける鍵がどこにあるのか、さっさと教えてもらうぜ。
知らねえんなら知ってるヤツの所まで案内しろ。イヤだっつったって、無理矢理にでも吐かせてやるからな…!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:37:15.18 ID:yITOSbI0<>
出雲「ほーう………良い度胸だ」
「……そんじゃ仕方ねえな。ちょいと遊んでやんよ。坊ちゃん」
「適当に痛めつけてから、残りのお仲間連中についてじっくり語ってもらうことにするわ―――」フッ
上条「―――ッ!?」
(また消えた―――!?)
そう認識した時、すでに出雲が上条の目の前で腕を大きく振りかぶっていた。
「!!!!」
反射的に腕を構えたとほぼ同時、出雲の鉄拳が振り下ろされる。
ゴスッッ!! と、鈍い音が衝撃と共に左腕を打ち抜いた。
「がぁ……っ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:38:13.09 ID:yITOSbI0<>
ガードが間に合ったおかげで直撃は免れたものの、その重い一撃によって上条の身体が後方に弾かれる。
が、辛うじて地に足を着け踏み止まった。
「ッッ……!」
痺れた腕を一瞬だけ見て、正面を向く。
「へぇー、反応は悪くないな」
振り下ろしたままの体勢で顔だけコチラに向けたまま笑みを零す出雲。
追い討ちをしなかったのは余裕の表れか。
(何なんだコイツ……本当に科学者なのかよ!?)
あまりのパンチ力とスピードに上条は顔をしかめる。そこいらのスキルアウトなど目ではないほどの威力だった。
「ほらぁ、どうした? かかって来ねーのかぁ?」
クイ、クイ、と手招きする出雲。
「っやろォォおおお!!」
その挑発にあっさり乗った上条が仕掛ける。
しかし、<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:39:41.27 ID:yITOSbI0<>
「―――らぁっ!! ………っ!!?」
踏み込んで放った渾身の右ストレートは容易く避けられ、がら空きの腹へ逆にカウンターを打ち込まれる。
「っぐ……ぅ」
石でも捻じ込まれたような衝撃に身体が折れ曲がる。
直後、頭上から退屈そうな声が聞こえた。
「何だぁ? 良かったのは最初の威勢だけかよ。……あー、駄目だこりゃ。悪いけど全然話になんねえわ」
「ッ!!!」
頭に血を昇らせて顔を上げるが、もうそこに出雲はいなかった。
「……んぁ!??」
「コッチだアホ」
「!! ……っ」
いつの間にか後退していた出雲。また追い討ちせずに上条の回復を待っていた。明らかに見下されている。
とは言え、単純な身体能力では勝ち目が無さそうなのも事実。
上条は腹部の痛みを堪えて立ち上がった。
(……何てヤツだよ…。喧嘩慣れしてるなんてモンじゃねえぞ……ッ)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:41:27.27 ID:yITOSbI0<>
うかつに飛び込めなくなった上条の心情を察してか、出雲が嘲笑いながら尋ねてきた。
「これで分かったろぉ? 所詮お前みたいな小ネズミが、俺たちに刃向かおうってのが間違いだってことがよ。とっとと
他のヤツらについて教えな。テメェの命には替えられないだろ?」
最後の警告。
だが、上条は眉間に力を込めて言い放った。
「何を勘違いしてんだ……? 教えてもらうのはコッチの方なんだよ!! 勝手に立場を変えてんじゃねぇ!!」
「………そうかよ」
それを聞いた途端、出雲の顔から余裕の笑みが消えた。
「なら、もう用はねぇ。人が優しくしてりゃ吼えやがってよぉ……。もういい、死ねや」
死刑実行宣言と共に空気が歪む。
上条が身構える前に出雲が懐へ飛び込んできた。
(クソッッ…!!!)
フットワークで回避しようとするが、相手の方が速い。
横から薙ぎ払うように飛んできた拳を避けきれず、再度ガードを構える。
「んぎっっっ!!」
防御に掲げた腕ごと身体が揺れる。体勢が崩れた所へ、今度こそ追撃が来た。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:42:48.53 ID:yITOSbI0<>
「ぐぁ……!!」
前蹴りが胸骨に刺さり、そのまま吹っ飛ばされて床を転がる。
しかし、丸くなって胸を押さえている暇などなかった。
すぐさま体勢を立て直し、正面に居るはずの出雲を睨もうとした、瞬間。
「ごふ……っ!!?」
首が軋んだ。
立ち上がる前に回し蹴りが首に炸裂し、横の壁に身体を強打した。
「……ハァ……っくそ……ッッ!!」
それでも何とか意識を保ち、首を押さえながら顔を上げた上条に更なる猛攻を仕掛ける出雲。
「しゃあっ!!」
気合一閃で繰り出された飛び蹴り。
「―――っ!!?」
しかし、上条はこれを間一髪で避けた。
「っはぁ! ……ハァ、ハァ………」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:43:45.50 ID:yITOSbI0<>
雑な動作ながらも、壁に足をつけた出雲を視界に収める。
そのままストン、と軽く着地した出雲は口元を不気味に歪めた。
「ほぉぉ、いいね。なかなか骨あるじゃん」
最後の攻撃を回避したことについて称賛するが、上条自身、出雲の驚異的な動きに困惑していた。
(ちっくしょう……ハァ、……ハァ……まともにやったんじゃ勝てねぇ。科学者相手ならちっとはどうにかなるかと思った
けど……甘かったってか)
(……何とかしねえと!)
だが、ゆっくり考える時間など、出雲が与えるはずもない。
「ホラ、何ボサッとしてやがる?」
「――っく!!」
飛んできた一撃目の拳は紙一重で横へ流した。が、
「ククク…ッ!」
二発目の左拳がわき腹に直撃した。
「っが!!……は」
激痛に顔をしかめるが、まだピンチは続く。
三発目が、やってくる!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:45:15.75 ID:yITOSbI0<>
「―――んにゃろぉぉ……っっ!!!」
上条も足に無理矢理体重を掛け、必死に迎撃の拳を繰り出す。
が、
「ぐぁぶっっ……!!?」
先に出雲の拳が顔面に刺さり、その勢いが死なないまま無抵抗で宙を舞わされる結果となった。
「……ふっふっふ」
出雲のニヤリ顔が増したと同時に上条の身体が床に打ちつけられた。そのまま何メートルか通路を滑り、やがて力の抜けた
腕がグタリと床に接着した。
「……………」
終わった、出雲は動かなくなった上条を見てそう確信する。
「ふっ……まぁ、ネズミにしちゃもった方だな」
あとは木原の元へ連行するか、それとももっと嬲ってやるか、と迷走を始めた矢先、倒れていた上条の身体がムクリと起き
上がった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:46:55.27 ID:yITOSbI0<>
「っぐ……ぬ……」
「―――!?」
この予想外な回復の早さに出雲も少し驚きを見せた。
「……マジか? 今のはキマったと思ったんだが…」
「く…うっ!」
唖然としている間に上条は難なく立ち上がった。
頬を腕で拭い、切れた口から血混じりの唾を床に吐いて出雲を睨む。
「ぺっ………なめんなよ。こんなんでいちいち気ぃ失ってたら、いつも入院程度で済んでねえんだよ」
「……???」
上条が漏らした言葉に懐疑な目を向ける。
意味は分からないが、そこら辺のガキよりは頑丈だという事は理解できた。
「……ククク…、少しは根性見せてくれんじゃねえか。いいぜ、なんならもっと遊んでやってもいいぜ? 小僧」
「へ……オッサンといつまでもジャレ合う趣味はねえよ」
「―――――」
これを聞いた途端、出雲の様子が豹変した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:47:52.39 ID:yITOSbI0<>
「――――だぁぁれがオッサンだこのクソガキがァァあああああああああああああ!!!!!」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:48:58.89 ID:yITOSbI0<>
老け顔を気にしている二十代前半の青年にとって禁句だったらしい。
「俺はまだ三十路も迎えてねェェんだよォォおおお!!!!」
一気に激情した出雲は牙を剥き出す肉食獣の如く上条に襲い掛かった。
「やっぱ今すぐ死にさらせやァァああああ!!!」
「―――うぉ!?」
咄嗟に腰を屈める。その瞬間、剛腕が頭上を掠めた。
「……ッ!」
仕留めるつもりで放ったのか、大振りである。故に外れた時の隙がデカかった。
上条は反して冷静を維持し、その隙を突く。
「うおらっ!!」
右アッパーが出雲の顔面を抉った。
「がっっ……!!」
続けて仰け反った身体を思い切り蹴飛ばす。
今度は出雲の肢体が宙に浮いた。
「……ッッ!! こ、こんの……!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:50:25.09 ID:yITOSbI0<>
しかし、背中が床に着くことはなかった。足を地面に刺すように踏み止まり、強引に物理法則に抗ったのだ。
「ぐ……」
意外な反撃を喰らい、苦悶の表情を浮かべる。
だが、逆に頭に昇った血が少し下降したのか、すぐさまムキになって飛び掛かっては来なかった。
「……やってくれんじゃねえか。“窮鼠猫を噛む”ってヤツかぁ?」
ダメージよりも屈辱の方が大きい。
上条は息を整え、光の篭もった鋭い眼光を向けながら構えている。
「………クッソガキがぁぁ……」
目を血走らせてギリッ、と歯を鳴らす。
上条はそんな出雲から注意を逸らさないままある疑問に気づいた。
(おかしい……こんだけ派手に騒げば他の科学者も気づくだろうに……。何で誰も来ないんだ……? 好都合だけど)
チラチラと周囲の気を向けている上条の様子に出雲が回答をくれた。
「安心しろや小僧。邪魔なんざ割り込ませねえよ。俺の徘徊中は全員他の警護につく事になってんだ」
「っ! ……テメェ、やっぱり下っ端じゃねえんだな?」
「三下共と一緒にすんな。木原さんがここの大将なら、俺はさしずめ“副将”ってトコか」
「―――!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:51:41.45 ID:yITOSbI0<>
この強さで一般科学者はないと睨んだ上条だったが、まさかボス(木原)の右腕とまでは思っていなかった。
どうやら予想以上の大物が釣れてしまったようだ。
しかし、この目の前の青年が木原に次ぐ権限を持っているということは、
「それじゃあ……テメェなら、一方通行と御坂を檻から出してやれるのか?」
「……まぁ、後で木原さんにぶっ殺されるのは間違いないだろうが、いちおう可能だぜ。全てのセキュリパスもこの通り
持ってるし―――」
「―――じゃ〜ん♪ ホーラ、鍵もぜ〜んぶ預かってんだよ」
そう言いながら見せびらかしてきた、ホルダーに付いた無数の鍵。
「!!」
突如、上条の顔色が変わる。
「っそ、それ……まさか……」
「そうだ。これがあればお姫様も最強の悪魔も釈放できる。……欲しいか?」
「―――よこせっ!!」
啖呵と一緒に飛び掛かった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:53:15.73 ID:yITOSbI0<>
しかし、
「ッ!?」
伸ばした右手の先にはもう誰もいない。
真横に廻り込んだ出雲がいやらしい笑顔で囁いた。
「ククッ、欲しけりゃ腕ずくで取ってみろ」
指で回していたキーホルダーを内ポケットにしまう。
「ぐ……この野郎っ! ソイツをよこしやがれ!!」
再度上条の手が伸びるが、またも容易くいなされる。
「ふふっ、楽しくなってきたなぁぁ。いいぞ、もっと必死に喰らいついて来いや!」
「ハァ……ハァ……ッッ……クッソォォ!!」
懸命に追うが、何度やっても捕まらない。
次第に疲れが見えて動きが鈍った所へ出雲が攻めに出た。
「―――っが!!」
後を取られて背中を蹴り飛ばされる。
床をゴロゴロと転がりながらも受身を取る上条だが、体勢を立て直すどころではなくなった。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:54:10.56 ID:yITOSbI0<>
「良く頑張るじゃないか。その執念は認めてやるよ。だがな、悪いがもう飽きたわ。とっとと沈め」
「―――!!?」
ついに遊ぶのを止めた出雲の猛攻から、上条は逃げられなかった。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:55:22.02 ID:yITOSbI0<>
だが、
「……………」
「何故…だ……」
「何そこまで意地張ってんだテメェはァァああああ!!?」
上条は、まだ立っている。
何度殴り倒しても立ち上がってくる。
顔や身体に痣を増やし、それでも少年は息を切らして歯を食いしばり、また地を踏みしめる。
流石の出雲もこれには戦慄を覚えていた。
「ゼェ……ゼェ……」
今にも倒れそうなほどフラフラな上条。当然だ。自分の拳は軽くない。普通ならとっくに夢の世界へと旅立って
いるはずなのに、何故この少年は―――。
「……ッッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:56:40.10 ID:yITOSbI0<>
―――立ち上がるというのか?
出雲「……倒れたままの方が楽だってのに、一体何がお前をそうさせてんだよ?」
上条「ゼェ……ッ……んなの、決まってん……だろ…」
出雲「あぁ?」
上条「あいつらを、助けたいからに決まってんだろぉが!!」
出雲「……ッ。そんなに真剣になることなのか? 所詮は他人じゃねえか。自分の命を懸けてまで救う価値なんか
ねえハズだろ?」
上条「…………」
出雲「お前が必死に救おうとしてる“あいつら”だって、所詮モルモットじゃねえか。実験動物じゃねえか。お前
も学園都市に住む学生なら自負してんだろ? “自分達は能力開発の研究対象”として大人に利用されてる
ってことくらい知ってるよな?」
上条「……だから、何なんだよ?」
出雲「モルモットが俺たちにどう扱われようが文句垂れんじゃねえよ!! 抗ってくんなよ!! 刃向かおうとする
こと自体が間違いなんだよ!! なのに、何故テメェは逆らい続ける!? モルモット以下の野ネズミの分際
で、何故俺らの前に立ちはだかろうとしてんだ!! そんなボロボロになってまで、一体何の見返りを求めて
やがる!?」
上条「そんなモン、別に求めちゃいねえよ……。ただ、何の罪も無い人間を縛り付けるテメェらのやり方が……ハァ…
……許せねえだけだ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 18:57:51.45 ID:yITOSbI0<>
出雲「っは…? なんだなんだオイ!? 正義の味方気取りですかぁぁ!? 今時そんな奇麗事だけで動く人間が何処
にいるっつーんだよ!?」
上条「…………」
出雲「俺らのやってる事は正当な実験さ! 超電磁砲も一方通行も、実験に必要な“道具”だ! トップに立つ能力者
ほど、その価値がデカイ! お前みてぇなガキには一生分からねぇ世界なんだよ!!」
「それをなんだぁ、“救う”? “助けたい”? ぎゃはははははは!! ばっかじゃねえのか!? そんな発想
自体がすでにおこがましいんだよ!!」
「笑わせんな! 能力を授かった時点でテメェらは俺たちの“人形”なんだよ! 助けるも何もねえだろぉが!!
お前如きがいくら立ち上がったところで、この理が覆る訳ねえだろボケ!!」
上条「………フザけてんじゃねえぞ」
出雲「……なにぃ?」
上条「人の命を、何だと思ってやがる…」
出雲「命、だぁ? ぷくくく……人形にそんなモンねえだろっつーの」
上条「俺も御坂も一方通行も、他の学生たちも、テメェらの人形なんかじゃねぇ!! 自分の足で立って、自分の頭で
考えて、自分で目標を作って生きてんだよ!!」
出雲「……俺らに“生かされてる”の間違いだろぉ?」
上条「……研究者と能力者の関係は俺には良く分からねえけど、テメェらがやろうとしてることは全部チッポケだ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:00:21.25 ID:yITOSbI0<>
出雲「んだとぉ? 何も知らねえガキが聞いた風なことを―――」
上条「知ってるさ! これは元々一方通行に復讐しようっていう木原数多の思惑から始まったんだろ!?」
出雲「っ……テメェ、何でそれを…」
上条「確かに、テメェらの方針は正しいかもしれねぇ。『科学の発展』のために日々研究してるテメェらを全て否定する
つもりはねえよ! だがな、そんな“小せえ”目的のためにテメェらはここまで進んできたのかよ!? こんだけ
最新設備を揃えておいて、結局は復讐のためなのかよ!? そうじゃねえだろ!! テメェは何で学園都市で研究
を続けてんだ!? こんな何も生み出さねえような復讐劇を果たそうとしてる野郎の下に就いて、それでも堂々と
胸を張れるのかよ!?」
出雲「……俺に説教垂れる気か、このガキが。これは木原さんの意志だ。そして、俺は木原さんに一生ついていくって決め
てんだよ! 木原さんのやることに逆らうつもりはねえし、あの人が正しいっつったことは全て正しいんだ! 何も
あの人のことを分かってねえテメェが、好き勝手ほざいてんじゃねえよ!!」
上条「じゃあ木原が“死ね”って言えばテメェは死ぬのかよ? 罪が無い人を殺すようなヤツでも、テメェは正しいって
本気で思ってんのか?」
出雲「当たり前だろぉが! 分かりきったこと訊いてんじゃねえぞ! 木原さんのやる事に間違いなんかない! あの人の
おかげで今の俺があるんだよ!! 俺はこれからもあの人に従い続けるさ! そう決めたっつったろ!!」
上条「……それで、虚しくならないのかよ? せっかくの自分の人生、全部他人に委ねるような生き方で、あんたは虚しい
ってこれっぽっちも思わないのかよ!?」
出雲「……テメェみてぇな小僧にゃ一生分かんねえだろうさ。とにかく、あの人の計画を邪魔させるワケにはいかねえんだ。
テメェがどうしても“対象”を逃がしたいって言うんなら、俺はソイツを全力で阻止しなきゃならねぇ」……スッ
そう言って、出雲は懐から何かを取り出した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:02:02.09 ID:yITOSbI0<>
「……!」
拳銃? いや―――。
(―――ボウガン……ッ!?)
咄嗟に身体を横へずらす上条。と、次の瞬間。
「ッ!!?」
発射された矢が上条の横を過ぎたと思った時だった。
突然、矢が爆発した。
「っぐぁ……!!」
通路に響く小爆音。
直接命中こそしなかったものの、すぐ付近にいた上条は当然その爆発に巻き込まれて吹き飛ばされる。
「ツツ……何だ……今……何が……」
ボウガンから放たれた矢を避けたと同時に襲った爆発。硝煙が広めの通路に尚も漂う。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:03:29.83 ID:yITOSbI0<>
「……ハァ…ハァ……。爆……弾…?」
上条は壁から背を離し、晴れた煙の向こうに佇む出雲を見つめる。
「クククク……喜べや。高説に免じて、ジワジワ苦しめるのは無しにするぜ。“コイツ”で一気にあの世へ飛ばしてやる」
上条へ構えられたボウガンは特に変わった風に見えない。
さっきの爆発が矢から起こされたとしたら、ボウガンに何か細工がしてあるのか? と上条は考えたが、真相は定かではない。
(……ッ…矢に爆弾でも仕込まれてるのか……?)
最期に種明かしをしてやってもいいか、とでも思ったのか、出雲は上条の心中を察して解説する。
「言っておくがな、コイツ(矢)に爆発物は混入されちゃいないぜ。もちろん発射口の方にもな」
「………?」
更に分からなくなる上条だが、出雲の説明は続いた。
「これは“無能力者”や“低能力者”などが“能力不足”を補うために開発された最新作さ。もっとも、まだ試作段階だがな」
「……!!」
「たとえば無能力者が『発火能力者《パイロキネシスト》』でもないのに火を使う方法は何だ? ライターを使えばいい。そう
いった単純な話よ。分かりやすいだろ? これはその概念から採って進化した結果さ」
「………ッ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:05:21.80 ID:yITOSbI0<>
「このボウガンには、“能力者が放つAIM拡散力場”を発し、設定された能力を持ち手の意思で使用することが可能だ。演算の
必要もねえから、キャパシティダウンによる干渉は受け付けねぇ」
「!? ……まさか、物が能力を使用してるってのか!?」
「お? 物分かりがいいねぇ。まぁ簡潔に言えばその通りなんだが、いかんせんまだ研究途中の段階だ。無理矢理作った試作
品のコイツじゃ、せいぜいレベル2〜3程度がやっとだな。だが、いずれは超能力者クラスの力を持った兵器をも生み出せる
未来が来るだろぉぜ。何年先かは知らねえがな」
「……!!」
この言葉に愕然とする上条。自分が知らない『学園都市の裏』では、すでにそこまで進んでいるというのか。
これが本当なら、能力開発制度そのものがやがて意味を成さなくなり、将来の学園都市は一体どうなっていくのか。
あまり考えたくない未来だった。
「つまり、コイツはただの爆発じゃねえのよ。キチンと能力者特有のAIM拡散力場も放出している、立派な“能力物”ってワケだ。
放つ矢に“俺”という持ち手を伝って矢に起爆物質を注ぎ込む『物体爆発《エクスプロージョン》』さ」
正直言って驚いた。すごいとも思った。
だが、上条は顔を俯かせて悲しそうに口を開く。
上条「………そんなすげぇ科学力があるってのに……なんで……ッ……。こんなくだらねえ事のために、そこまで発展させた
ワケじゃねえんだろ? もっと使い方を考えればいくらでもこの街は良くなるってのに、何で復讐のためなんかに……」
出雲「……社会がどう回転してるのかも知らねえテメェが、語ってんじゃねえぞ。確かに復讐がメインだがな……コッチにも、
“大人の事情”ってのがある。お前みてぇなガキが口出しできる次元じゃねえんだよ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:07:03.82 ID:yITOSbI0<>
上条「あぁ、確かに知らねえよ! けど、お前は悲しくなってこないのか!? 今日まで科学者として研究に携わってきたん
だろ!? 本当にこんな事をするためなのか!? 『木原数多のすることなら何でも正しい』っつってるけど、お前は
どうなんだよ!? 実際お前はどう思ってるんだよ!?」
出雲「……馬鹿かよ。俺がどう思おうが、木原さんは――」
上条「木原の事を訊いてるんじゃねぇ! お前自身について訊いてんだ! …………本当はお前、嫌なんじゃないか? もう、
こんな計画に手なんか汚したくねぇ、って思ってるんじゃないのか!?」
出雲「……何を根拠に、んなフザけた結論が…」
上条「テメェがさっきから自分の意志を全部木原に預けてるような発言をするからだろ! 木原を尊敬してるんなら、こんな
馬鹿な真似する前に、止めてやるべきだったんじゃねえのか!? テメェが根っからの悪人なんて、俺には思えねぇ!
もう後に引けなくなってるだけなんだろ? 心の底じゃあ木原の計画に反対なんだろ!?」
出雲「ハッ、馬鹿な……くだらねぇ……」
上条「じゃあ訊くけどな、何で俺はまだ生きてんだよ?」
出雲「…!?」
上条「やっぱ、自分じゃ気づいてねえんだな……。散々打たれたけど、最初みてぇなキレや威力も、途中からは少しずつだが
弱くなってた…。きっと無意識に手加減してたんだろ? 俺を殺すつもりなんか、ホントは最初から無かったんだろ?
多分、テメェが本気でやれば、俺の意識なんて一発で奪い取れるハズだ」
出雲「……ッ……何で、テメェにそんな事が分かんだよぉ!? あぁ!?」
上条「……立場とかタイプは全く違うけど、前に似たような経験があるんだよ。……本当の自分を隠して強がり続けるヤツが
いて、その時のソイツとお前が一瞬ダブって見えたんだ。……勘だったんだけど、そのツラからすると図星みたいだな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:09:03.01 ID:yITOSbI0<>
出雲「………ッッ!」
上条「なぁ、……いい加減、終わりにしようぜ。その方が良いってことは、もうあんただって分かってるんだろ?」
出雲「……せ…えよ…」ボソッ
上条「……?」
出雲「―――うるせえんだよおおおおお!!!!!」
「わかってんだよぉ!! そんなこたぁテメエなんかに言われなくたってわかってんだよぉぉ!!!」
「けどなぁ! もう無理なんだよ!! このまま進み続けるしかねんだよ俺はぁぁ!!」
「せっかく甦ってくれた木原さんを、止めることもできない歯痒さを押し隠して、それでも優秀な部下を演じて、これ
からもあの人に従い続けるって決めたんだよぉぉ!!!!!」
「ここまで来て、今さらやり直せるワケねえだろぉがあああああ!!!!!」
上条「………戻れるさ」
「やり直すことはできなくても、引き返すことならできるだろ」
「時間は掛かるかもしれねえけど……このまま行って、後で後悔するよりはマシなはずだ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:09:47.02 ID:yITOSbI0<>
出雲「うるせえ……うるせえよ……黙れ」
上条「それでも、テメェがこのまま間違った道を進み続けるっていうのなら―――」
「―――まずは、そのふざけた幻想をブチ殺す!!!!!」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:10:44.84 ID:yITOSbI0<>
右拳に力を込めて、喉から放たれる高らかな声。
上条の叫びに恐れを抱いたような反応をした直後、出雲は鬼の形相で引き金を―――
「うあああああああああああああ!!!!! 黙れェェええええええええ!!!!!」
―――弾いた。
起爆機能を備えた矢が、弾丸の如く上条に襲い掛かる。
しかし、上条は回避の代わりに右手を開いて正面へ構えただけだった。
「…………………え?」
思わず間抜けな声を発したのは出雲。ボウガンを上条へ向けたまま、彼は放心していた。
矢は、真っ直ぐ上条へ向かって飛んで行き、命中と共に起爆するはずだった。
「なん……で……何……しやがった……今……?」
出雲の敗因は二つ。
一つは、ボウガンの特性を自ら明かしてしまったこと。
そしてもう一つは、上条の右手にはどんな異能の力でも打ち消してしまう『幻想殺し《イマジンブレイカー》』が宿っている
ということを知らなかったことだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:12:15.74 ID:yITOSbI0<>
出雲の目の前で起きた信じられない現象。
矢が上条のすぐ眼前で爆発した瞬間、その衝撃は全て相殺されてしまったのだ。何かを打ち砕く神秘的な音と共に。
近距離からの爆発で吹っ飛ばされ、無惨な肉塊と化すはずだった末路を覆し、右手を構えたまま雄々しくと立つ上条の姿は
出雲の脳を混乱へ陥れるに何の申し分もなかった。
「な…………」
「―――ッッ!!」
出雲が硬直から解ける前に突進する上条。
開いていた右手は、いつの間にかまた力強く握られていた。
「――ひっ!?」
我を取り戻し、もう一度矢を放とうとするが、動揺が激しいせいか思うように装填できない。
「………ッ!」
上条が懐へ勢い良く飛び込む。ダメージで身体がおぼつかないが、最後の力を振り絞って足に体重を乗せた。
二発目を番える時間など、無論与えてやるつもりはない。
渾身の力を込めた右拳が、凄まじい勢いのまま出雲の面へ吸い込まれるように刺さった。
「―――――ォォォおおおおおおおおおっっ!!!」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:13:37.18 ID:yITOSbI0<>
ドゴォォッ!!! と、響き渡る強烈な打撃音。
深々とめり込む右の拳。
グニャリと激しく歪む顔面。
空中を飛び、床へ落下し、頭を何度も打ちつけながら通路を転がって行く出雲の身体。
やがて仰向けのまま停止し、出雲はそのままグッタリと動かなくなった。
「ハァッ、ハァッ、ハァ……ゼェ……」
振り抜いた姿勢のまま荒々しく肩で呼吸する上条。
そのまま床に座り込んでしまう。
無意識に加減されていたとは言え、それでもダメージは大きかった。
いつもならここで倒れて病院送りの展開だろうが、今回はそうもいかない。
「ハァ…ッ…。こうしちゃいられねぇ………ッ!」
ボロボロの肉体に鞭を入れて立ち上がる。
まだ肩の荷を下ろすには早かった。
「………ッ」
倒れていた出雲の瞼が薄っすらと開いた。
側へ寄った上条に反応したかのように。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:15:12.23 ID:yITOSbI0<>
「…………」
出雲は身体を起こさなかった。その代わりに口が開く。
「……久々によぉ………気持ち良いのをもらっちまったわ……。上手くは言えねえが、木原さんのより……なんつーか
こう……ズシンと効た」
「…………」
「あーあ……俺、……木原さんにきっと見捨てられんだろうなぁ……。殺されるより辛れぇかも……ククッ」
「…………」
「今すぐお前を始末すりゃ、まだ挽回は利きそうだが、……身体はやっぱ正直か……動かそうにも動かせねぇ。よぉ、
小僧。お前、一体何の力使ったんだよ? 能力じゃねえのは分かってるぜ」
「……大した力じゃねえよ。ただ“人の間違った幻想をブチ壊す”。……それだけの力さ」
上条はフッ、と笑って出雲を見下ろした。一瞬出雲の顔に『?』が浮かぶが、すぐに表情を崩す。
「ハッ、何だそりゃ……滅茶苦茶だなオイ……。まだまだ科学じゃ解明できねえ事が、この街にゃあるってか……。
お前みたいによ……」
出雲も笑みを零し、内ポケットから鍵束を取り出し、上条の足元へと投げた。
「……!」
「ソイツは、俺が偶然“落とした”。んで、たまたまお前が拾った……。そういうことにしとけ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:16:40.91 ID:yITOSbI0<>
「ははっ、何だよそれ?」
「深く訊くんじゃねえよ。……“大人”ってのはこういうモンさ」
ご丁寧にも何処の鍵なのか分かるように各名称がついている鍵束を拾った上条は、出雲へ視線を向けた。
「悪いな。コイツは、使わせてもらうぜ」
「……超電磁砲は、俺の足が向いている通路をずっと進んで突き当たりを左に真っ直ぐだ。一方通行は逆方向で突き当
たった所を右行ってすぐ左曲がれば階段から行ける。……おっと、今のはうっかりクチが滑っちまったことにしろ」
(大変なんだな。大人って……)
取り繕う出雲を見て、社会に出るのが少し不安になった上条だった。
何はともあれ、鍵は手に入った。これで一方通行を救いに行ける。
今は身体の痛みなど気にしている場合ではなかった。
―――
上条が去った後の通路は、まるでさっきの一戦が嘘のように静まり返っていた。
「木原さん……。申し訳ありません。……どうやら、俺は猟犬失格のようです……」
床で横たわり、天井を見上げたままの出雲が発した呟きだけが静寂な空間に流れた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/11(木) 19:20:21.90 ID:yITOSbI0<>ということで、ここで出雲さんは退場です
オリキャラを長々と出張らせてすいませんでした
途中区切りが厳しかったので最後までやっちゃいましたが、これでとりあえず布石は立った…のか?
またある程度溜まったら続きを投下しに来ます
それでは<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 19:33:12.93 ID:CAG49RMo<>乙
いい意味でも悪い意味でも禁書っぽい上条さんっぽい戦闘でした<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/11/11(木) 19:38:39.75 ID:zHlG4wk0<>能力物に妙にワクワクしてしまったぞ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 19:47:54.88 ID:s/Zh2fw0<>乙
確かにそういう展開にならないと上条さんの勝機がないからなw
さあ、一方さんの逆襲の始まりだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 19:51:09.47 ID:Dn1Ip.co<>やはり上条さんのタフさは異常<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 19:56:08.19 ID:q7Wba2ko<>乙!面白かった
原作読んでる気分になったぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 20:39:01.56 ID:ThOjIWA0<>乙!
一方さんの戦闘に期待<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 21:07:39.55 ID:bGChMgko<>出雲さん良いキャラしてたなぁ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 21:32:24.20 ID:czpu8qco<>妙に説明口調なのも手の内明かすのもまんま禁書だな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 21:45:22.85 ID:cVqA36SO<>どうでもいいけど、残り100レス程度しか無いけど終われるの?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/11(木) 22:03:23.19 ID:4GKXLADO<>>>1も予想外にも次スレ行きそうとか言ってたな
無事一方さんへバトンタッチできそうだな、オラわくわくしてきたぞ!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/12(金) 00:03:16.27 ID:.AB3jZwo<>あぁ・・・ぞくぞくしたぜ、>>1乙だぁ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/12(金) 00:25:53.64 ID:C0x9D8Yo<>まあこの展開じゃないと禁書はなりたたないもんな
さて、前座は終わったか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/12(金) 02:48:40.10 ID:Eqw1tSoo<>やっぱり説教→そげぶパンチかよ・・・
それでこそ上条さんだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/12(金) 09:14:00.76 ID:fYoCuBs0<>乙!!!熱い!!!
ここの>>1のように原作をきちんと網羅してる書き手が最近少なくて困る
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/12(金) 13:20:08.19 ID:LrTIGl.0<>wktkが止まらないどうしてくれる
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>saga<>2010/11/13(土) 19:59:05.29 ID:YJ5DX0Y0<>こんばんは
いつも読んでくれてありがとう
次スレ突入の際はあらすじもまとめさせて頂きますね
では続き<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:00:18.99 ID:YJ5DX0Y0<>
―――
白井黒子は行き詰っていた。
曲がり角の向こうで配置されている科学者二名が邪魔だ。
せっかく大回りしてまで厳しい包囲網を突破できたというのに、別ルートの序盤から嫌な位置に配備されている。
侵入目的がバレてしまったのだろうか?
(そうだとしたら……お姉様の周辺は最も厳戒態勢ということに……)
非常にマズイ事態だった。愛しのお姉様に近づくことすら敵わなくなるではないか。
(ぐっ、せめてテレポートが使えれば……)
こうなっては、初春と佐天に命運を委ねるしかなくなってしまう。
警備員が来るまで最悪隠れ続ける方法もあるが、そこにはあまり期待しない方がいい。
連中が上層部にコネを回して抑えつけてしまったら、警備員は当然動けなくなる。
あくまで上条達だけが一時撤退するための手段だ。
せめてその前に御坂美琴だけでも救出しておかねばならない。
ここで撤退などしたら、もう侵入の余地がなくなるのは目に見えているからだ。
(みなさんも心配ですが……やはり、今わたくしにできることは、お姉様の奪還ですの! だから……だから――)
(―――早くどっか行けっつってんだろぉがァァ!!! ジ ャ マ で す のよォォおおおお!!!)
曲がり角を曲がったすぐ先にいる研究員に凄まじい殺気を飛ばす黒子。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:01:11.24 ID:YJ5DX0Y0<>
(ええい! もうこうなったらイチかバチか、特攻するしか……っ!)
ここを通れないと、もうルートがないのだ。お嬢様である彼女では狭くて汚い通気口を通る手段など思いつくはず
もない。ジーッ、と見つからない程度に向こう側を覗き込み、様子を窺う。
(……見るからに油断していますわね。あれなら、速攻でタタメば何とかなりそうですの……)
念のため二名とも別方向を向いている時を狙おう、と息巻く。
大胆な性格は変わらないが、侵入時よりは冷静で判断力も光っており、丁度良くバランスが取れていた。
今の彼女なら、イケる。
(―――今ですのッ!!)
完璧なタイミングで飛び出した。
「っぐぁ!?」
「なん……ぷぐっ!?」
どこで拾ってたのか、持っていた分厚い本の角で背後から後頭部を思い切り殴り、もう一人が振り向いたと同時に
足払いで倒し、本の角でトドメを刺す。
風紀委員の訓練で培った技術が見事に活きた瞬間だった。
「聞こえておりませんでしょうが、一応言っておきますわね。失礼致します」
目を回している二人の研究員に背を向け、黒子は先を急ぐ。
視野が狭くならないよう注意を払いつつ、上条とは違い現在地を常に把握しつつ、広い施設を駆け巡る。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:02:32.02 ID:YJ5DX0Y0<>
小石を影から投げて見張りの注意を逸らし、その隙に突破するという忍者まがいの方法で難関も突破する。
セキュリティが復旧する前に、警備員が来訪する前に、何としてでも美琴を助けださねばならなかった。
切迫した時間が途切れることなく流れ続ける。
(チッ、あそこにもいますわね……)
気配を敏感に察し、身を隠しながら通路の奥にいる見張りに注意を向ける。
(……石はもうありませんし、今度は本でも投げつけてやりましょうか)
辞書のような分厚い本は読むためではなく武器用だ。
角で殴ればかなり強烈なのは先ほど倒された二人の研究員が証明している。
要領も得て、若干落ち着く余裕も出てきたが、それでも仕掛ける寸前は緊張感に呑まれそうになる。
一旦敵から目を離し、壁に寄り掛かって深い息を吐いている途中、壁の向こうから鈍い音と敵の悲鳴と倒れる音が
した。
「……?」
そーっと覗いてみると、そこには気絶した見張りの後ろに見慣れたツンツン頭が立っていた。
「―――上条さんっ!」
迷うことなく壁から飛び出して上条に駆け寄る黒子。
「白井!? ……良かった。無事だったんだな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:03:42.38 ID:YJ5DX0Y0<>
驚きから安堵に変わる上条の表情。
「っ! 上条さん……その傷は……」
かなりひどい怪我をしているのはひと目で分かった。
上条「あぁ、大丈夫だ。大したことねえよ」
黒子「で、ですが……」
上条「それより、丁度良かった。お前に頼みたい事があるんだけどさ…」
黒子「……何ですの?」
上条「えーと……」ゴソゴソ
黒子「?」
上条「あった。……これで、御坂の方をお願いできるか?」チャリン
黒子「……そ、その鍵は…?」
上条「御坂の檻と鎖を解放するための鍵だ。名称書いてあるからどれがどこの鍵かは分かるな?」
黒子「あ、貴方……それを何処で手に入れましたの…?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:05:28.28 ID:YJ5DX0Y0<>
上条「ん? あぁ……落ちてたのをたまたま拾ったんだ」
黒子「本当でしょうか……?」ジー
上条「ホ、ホントだって! とにかく、これで御坂も助けられるハズだ。白井、お前に預けるよ」
黒子「……貴方は、一緒に来てくれませんの?」
上条「ごめん。行きたいんだけど、その前に寄らなきゃならない所があるんだ……」
黒子「……わたくしには言えませんのね?」
上条「……すまん。けど、すぐに俺も行く。だから先に行ってて欲しいんだ。……頼めるか?」
黒子「………分かりましたわ。これ(鍵)は受け取らせて頂きます」
上条「ありがとう、御坂を頼んだぞ」
黒子「一足先に行くだけですのよ。必ず、あとから貴方も来てくださいまし」
上条「あぁ、分かってる」
こうして上条は、鍵束から美琴救出用の鍵だけ取って外し、運良く再会できた黒子に美琴を一旦託し、自らは先ほど交わした
約束を果たしに再び地下の牢獄へと戻って行った。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:06:29.19 ID:YJ5DX0Y0<>
―――
地下の監禁室の最深部。
「…………」
どんな結末が自分に訪れてようとも、一方通行はもう見苦しく騒ごうとはしなかった。
ただ、じっと待つ。本来なら耐え難く辛い時間のはず。
しかし、あの少年が来てからというもの、どういう訳か心はやけに落ち着いていた。
その原理は自分にもよく分からないが、妙な安心感が胸の内で流れていた。
無意味に足掻く気は、もう起こらなかった。
(どォしてだろォな……)
(前も、こンな風に心の余裕が無くなった時……アイツは俺の前に現れやがった)
(……右手に特別な力を持ってるとは言えアイツは無能力者で、ただの学生に過ぎねェってのに、何でこンな期待してンのか……
けど、今はあの熱血野郎を信じるしかねェ)
(ホント……“縁”ってのは馬鹿にできねェわ)
彼には自分に無いものがある。自分では足りないものを持っている。その心情から、いつからか一方通行は上条を“ヒーロー”と
称していた。
だが、実際は違う。彼は決してヒーローなどではなく、ただ己の信念を通しているだけだ。そして、今の一方通行にも“譲れない
モノ”がある。なのに、まだ自分には足りないものがあった。上条が去った後で一方通行はそれにやっと気づいたのだ。
(諦めねェ。どンな絶望の状況でも、絶対に自分を捨てねェ。俺は危うく、ソイツを忘れちまうところだった)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:07:51.42 ID:YJ5DX0Y0<>
事実、一方通行は耐えてきた。だが最後の最後で彼は自棄になりかけた。「もうどうにもならない」などと口にしてはいけない台詞
を吐いてしまったのだ。
「……もォ、弱音は吐かねェ」
自分に言い聞かせるように、敢えて声に出した。
そこへ―――
「―――悪いな。遅くなっちまった」
上条が、戻って来た。
「……オマエ……ッ!」
(はっ……この野郎。本当に戻って来やがったよ………)
信じていたとは言っても、実際こうして自分のために戻って来てくれた上条を前にしては、やはり驚きが上回る。ここの警備は決して
緩くなどないはずだから。
「今、出してやるからな」
ギィィ、と音が鳴る。檻が上条の手によってゆっくりと開かれた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:08:36.83 ID:YJ5DX0Y0<>
「……!!」
上条が、獄室へ足を踏み入れる。
「……オマエ、ボロボロじゃねェか……無茶しすぎだっつの」
「ボロボロなのはお互い様だろ。お前こそ、ひどい怪我してるじゃねえか」
鎖の鍵穴に鍵を挿し込み、ガチガチと音を立てながら右手、左手と拘束具を解除していく。
「ホント、馬鹿だよオマエは………」
「ははは、かもな」
そして、両足も―――。
「…っ。よし! 全部外れた! ……立てるか?」
解除され、ついに―――
「……あァ、問題ねェ」
一方通行が、解放された―――。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:09:35.53 ID:YJ5DX0Y0<>
「よし、じゃあとっととこんな辛気臭いトコから出ようぜ。肩貸すか?」
「イヤ、要らねェ。コイツがあれば歩ける。オマエこそ平気かよ?」
隅に置かれた杖を取り、上条と共に檻の外へ出た。
「俺は大丈夫だ。道は大体覚えたからさ、ついて来いよ」
先導する上条の背中に、慣れない口調で礼を告げる。
「上条っつったな? 今回は……本当に助かった。感謝する。……この借りは、いつか必ず返すからよォ」
「よせよ、らしくねぇって。それにまだ終わったワケじゃないぞ」
顔だけ振り向く上条に、一方通行は正面を見たままはっきりと口にした。
「あァ、これで俺にもよォやくチャンスが与えられたってワケだ。……オマエのおかげでな」
表情に、笑みを浮かべながら。
(―――待ってろよ木原……。俺はまだ終わらねェぞ。番外個体は必ず助け出す。今度こそ有言実行だクソ野郎!)
反撃開始の時間だ。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:10:34.48 ID:YJ5DX0Y0<>
―――
〜黄泉川家〜
打ち止め「―――あ! ヨミカワおかえり〜! ってミサカはミサカはお出迎えしてみる」
黄泉川「ただいま。はぁぁ……」
芳川「あら、どうしたの愛穂? ……あぁー、また駄目だったのね」
黄泉川「ああ、『御坂美琴失踪について捜査の申請は認めない』、ってさ。上層部連中め……一体何を隠してんのか…」
打ち止め「警備員が捜査する許可は……やっぱり降りないんだね。ってミサカはミサカは悔しがってみたり」
芳川「貴女も、辛い立場ね…」
黄泉川「全くじゃんよ。こういう時のための警備員じゃん。……闇が絡んでようが何だろうが、『子供を守る』のが私ら
の役目だってのに…」
芳川「………」
打ち止め「……あ! そー言えば、ヨミカワに伝言があるよ! ってミサカはミサカは思い出してみる」ポン
黄泉川「ん? 伝言って何だ?」
打ち止め「うん、あのね―――」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:11:53.36 ID:YJ5DX0Y0<>
―――
〜風紀委員第一七七支部〜
婚后「……やはり解せませんわね。どうしてわたくしがお留守番なのでしょう?」
湾内「まぁまぁ婚后さん。白井さん達を信じましょう。ハーブティーでよろしいですか?」
婚后「あら、ありがとうございます」
泡浮「けど、わたくし達も能力者ですから、何かのお役に立てるかもしれませんのに…」
婚后「上条様曰く『大勢で行くのは非効率だから』だそうですけど、今思えばこの『空力使い』大能力者の婚后光子を
さりげなく戦力外扱いしたのは非常に気に入りませんわねぇ」
ザワザワ ザワザワ…
固法「……いつからここはお嬢様たち憩いの場になったのかしら…」
お嬢様1「固法様もどうぞ。ムサシノミルクティーでよろしかったでしょうか?」
固法「あ、どうも♪」
お嬢様風BGMが流れる優雅な支部内。
と、そこへ―――<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:12:52.40 ID:YJ5DX0Y0<>
―――Purrrrrrrr♪
固法「あら、電話…」
カチャ
固法「はい、コチラ風紀委員第一七七支部―――」
婚后「……どうやら、“来た”ようですわね」
泡浮「はい……」
固法「―――はい、お願いします。……白井さん達に勝手な事をさせてしまって申し訳ありませんでした。それでは」
カチャ
固法「ふぅ……。確かに伝えたわ。黄泉川さんの部隊が現地へ出動するって」
婚后「ふふ、予定通りですわ。さて、使命は無事果たしたことですし、もう構いませんわよね」
固法「えっ……?」
泡浮「もちろんですわ♪」
固法「ち、ちょーっと貴女達? 何? どこへ行こうとしてるの……?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:13:58.69 ID:YJ5DX0Y0<>
湾内「決まってますわ。白井さん達の援護に行くんですのよ♪」
固法「……そ、そんなの聞いてないわよ!?」
婚后「さぁ、皆の者! わたくし達と共に参りましょう! これから赴く地は戦場! 命を張る覚悟で臨みますのよ!」
お嬢様全員「おおおおおおお!!!」
「御坂様! 今、お助けに参りますわ!」
「全ては御坂様のために!」
ドドドドド…
固法「……イヤ、あんなのどうやっても止められないし」
黄泉川率いる警備員、そして婚后を筆頭に御坂美琴の捜索に協力していた方々もとうとう動き出していた。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:16:01.06 ID:YJ5DX0Y0<>
―――
施設内、地下フロアから地上階へと上がってきた二人の少年。
上条当麻と一方通行。
肩を並べて歩く二人の空気はどこか禍々しく、まるでこれから戦争でも引き起こすかのように異様な空気を放っていた。
一階に戻るまでの間に上条は一方通行にこれまでの経緯を簡潔に説明した。土御門の存在だけは言われた通り上手く伏せながら。
一方通行「―――なるほどねェ。……けどまァ、確かにそンぐれェやンねェとオマエがここまで侵入してきた説明がつかねェな」
上条「俺もビックリしたよ。御坂の友達にあんなすげぇ子がいるなんてさ…」
一方通行「……何より、さっき話したその『知り合い』ってのは何モンだよ……っつか、オマエの周りも相当危ねェヤツらが
いンだな。俺がここにいる事まで知ってるたァ、並の組織じゃまず割り出せねェぞ」
上条「はは、けどいざって時は頼もしかったりそうでなかったり……。ま、今回の場合は助かったけどな」
一方通行「ンで、問題はその『キャパシティダウン』か……。確か能力者犯罪防止を目的に作られた演算妨害装置があるって
のは聞いたことあったが、これがソイツかよ……」
上条「ああ。……仲間が破壊してくれる手筈になってるんだが、そう簡単にいくかどうか……」
一方通行「ソイツらは暗躍に関しちゃ素人なンだろ? ……ちっと危険すぎじゃねェのか?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:16:59.11 ID:YJ5DX0Y0<>
上条「だよな。……けど、他に手もなかったし、あの子達を信じるしかなかったんだ。ホントは危険なことさせたくなかった
んだが…」
一方通行「………状況は大体把握した。どォやら息を吐く暇もねェらしいな」
上条「そうみたいだな。これからどうするか……」
一方通行「オマエは超電磁砲の方を頼む。そのテレポーターの仲間も今はただのガキになってる以上、安全に事が運べるとは
思えねェ。だからオマエが援護しに行ってやれ」
上条「もちろんそのつもりだけど……お前は?」
一方通行「俺は俺でやる事がある。……どォしても果たさなきゃならねェ事がな…」
上条「っ!? け、けど……お前も今は能力がまだ使えないんだろ? 単独になるのはマズイんじゃ…」
一方通行「逆だ。俺がこのままオマエと一緒に行動してたら、オマエの足枷になっちまうだろォがよ。こォいった場所じゃあ
“気の遣い合い”が命取りに繋がるンだ。テメェ一人逃れるのに集中した方が生存率も高いンだよ」
上条「いや……そりゃ分かるけど……」
一方通行「安心しろ。オマエに助けられたこの命を無駄にするよォな真似だけは絶対にしねェ。……約束してやる」
上条「一方通行……」
一方通行「……ホントは、俺も超電磁砲を助けに行きてェンだ。…だが、状況と効率性を考えたらソイツは却下だ。今の俺が
一緒に行ったところで足手まといにしかならねェ。……だからオマエに託す。超電磁砲を必ず救い出してくれ」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:17:56.02 ID:YJ5DX0Y0<>
上条「………わかった。御坂は任せてくれ」
一方通行「すまねェな。頼める義理じゃねェのは、自分でも良く分かってる……」
上条「いや、そんなことねえよ。御坂だっていつか………いや、何でもねぇ。じゃあ、どうする? 俺はアッチなんだけど…」
一方通行「………あァ、じゃあ俺はコッチへ行く。あとは自分で何とかするから、オマエは心おきなく超電磁砲に専念しろ」
上条「……なぁ、その内聞かせてくれよ。お前が何を護りたかったのか」
一方通行「……聞かねェンじゃなかったのか?」
上条「“今は”な。全部終わった後ならいいだろ?」
一方通行「………機会があったらな」
上条「ああ、打ち止めも連れてな」
一方通行「…そォだな」
上条「………」
一方通行「………」
しばし空気が変わり、無言の時が流れる。<>
↑“空気が変わり、しばし無言の時が流れる”。に訂正で ◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:20:08.83 ID:YJ5DX0Y0<>だが、やがて二人は最後に言葉を交わした。
上条「……じゃ、もう行くよ」
一方通行「おォ、そンじゃあ俺も行くとすっかァ」
上条「一方通行」
一方通行「……何だ?」
上条「……死ぬなよ」
一方通行「……互いにな」
今度は直接、無事の生還を祈り合って二人は背を向けた。
鏡に映したように真逆方向へと歩き始める上条と一方通行。
これで最後ではない。必ず互いの目的を果たし、俺たちはまた巡り会う。
そう確信しているからこそ、少ない言葉で充分だった。
決意を胸に、少年達はこうして別々の道を進んだ。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/13(土) 20:23:52.95 ID:YJ5DX0Y0<>前回に比べて少なくて申し訳ありませんが、ここまでです
あと二回ほどの投下で次スレ行けたら丁度良いかな
それでは今日は失礼します<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 20:33:42.23 ID:GH/8dEEo<>乙っす<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 20:47:28.43 ID:OhwVP76o<>おっつー
>黄泉川率いる警備員、そして婚后を筆頭に御坂美琴の捜索に協力していた方々もとうとう動き出していた。
お嬢様の空気は作者をも飲み込むんだな。恐ろしいぜ。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 21:00:52.54 ID:8QSWRG.o<>いよいよ一方さんのターンが・・・胸が熱くなるな
美琴さんが上条さんに会った時にどう反応するかは気になる所<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 21:04:08.57 ID:uhKZX1Ao<>最後のやりとりとか完全に死亡フラグだけど…
まあ上条さんだからなあ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 21:40:49.30 ID:EiHTrPoo<>上条さん、恋愛フラグと同じくらい死亡フラグも立ててるからな
しかもどれも回収しない<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 22:54:31.20 ID:MKwC4W6o<>あぁもうかっこいいぜ、>>1乙<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 22:56:31.44 ID:IkW9isso<>「死ぬなよ」「互いにな」は禁書の中でもトップクラスの名言じゃないか
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 23:28:16.80 ID:rrnwdS.o<>ああ、次回が楽しみだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/13(土) 23:51:54.06 ID:tppRkvEo<>赤い糸も打ち消すらしいから死亡フラグも打ち消してもおかしくない
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/14(日) 00:15:50.77 ID:X4rweSM0<>>>「有言実行だクソ野郎!」
やべえ鳥肌立ったわ。これまでのへたれぶりを全て帳消しにするこの台詞!
一方さんかっこよすぎだろ
これが最高に落としてから最高に上げる業か…勉強になった乙!<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:25:00.00 ID:lHBFiJo0<>いつもありがとう
では続き<>
◆8NBuQ4l6uQ<>saga<>2010/11/15(月) 17:26:16.96 ID:lHBFiJo0<>
―――
「っつーかよォ、この辺りはさっぱり人の気配がしやがらねェな。まさか全員出払ってるってこたァねェだろォし…」
上条と別れてしばらく長い通路を歩いている内にふと気づいた。人と全然出くわさないことに。
普通なら好都合なのだが、この施設の内部については全くといっていいほど知らないのだ。木原に敗れて気がついたら
あの二度と戻りたくない監獄に収容され、連れ出される時も目隠しされていたのだから至極当然の事である。
「参ったよなァ……どこに誰がいンのか分からねェ。そこらへンにいる適当なヤツでもゲロさせりゃ良いと思ってたが、
どォいう訳か誰も見つからねェ。こォして見ると無人にさえ思えてくンぜ」
カードキーは上条から聞いた通り無条件で通れるが、迷路のように分かれ道が頻繁に設けられている施設内ではどこへ
行けば正解なのかが判明しない。要するに早くも迷子だ。
「……チッ、適当なエサが見つかるまで闇雲に進むしかねェか」
ぼやくのを止め、いつ内部の人間が現れても対応できるように注意を促しながら進む。
大勢は無理だが、一人や二人程度の下っ端なら杖を武器に利用すればどうにか制圧できるだろう。
移動するための必需品をあまり乱暴には扱いたくないが、所持していた拳銃は木原に没収されてしまっているので我が儘
は言えなかった。
脳に傷を負い、能力制限の生活を余儀なくされて幾月か経った今、能力使用不可の状態でもそれなりの“生き残る術”は
暗部組織に加入してから多少身につけていた。拳銃による射撃術もその一つである。
(上条の方は地図があるだろォから心配ねェが、俺の方は幸先悪しってかァ。……セキュリティがいつ復旧するかも知れ
ねェってのに、いつまでもこォして彷徨ってる訳にはいかねェぞ)
カツン、カツン、と杖が床を鳴らす音に僅かずつだが苛立ちが込められてくる。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:27:15.05 ID:lHBFiJo0<>
それから更にしばらく進んだ、その時―――
(――! ……誰かいる)
道を曲がる直前で人の気配を感知し、停止する一方通行。
曲がり角の向こうから話し声がする。
「………」
顔だけ覗かせてみると、向こうからコッチに歩いてくる白衣姿の男がニ人。
どう見ても平の研究員だ。
(よォーやく三下発見、ってかァ?)
口角を斜めに吊り上げて壁に身を預ける。
勝負は、一瞬だった。
「―――!?」
驚きの声も悲鳴も上げる間もなく一人は気絶した。仕掛けた杖に足を取られ、転倒したところをすかさず脳天に一撃
かましてやったからだ。
そのまま流れるような動きで突然の出来事に唖然とするもう一人の研究者を視中に収める。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:28:13.14 ID:lHBFiJo0<>
「ぐが!!?」
事態を認識する前に鳩尾へ杖先を刺し込んだ。呼吸困難で膝を着いた研究員をドン、と一突きで床に倒し、更に首元
を杖先で押さえつける。
「……っっっ!!!」
大声を上げようにも喉を圧迫されて声が出せず、もがこうとする研究員に一方通行は不気味なほど冷徹な声で告げた。
「このまま喉元潰されたくなかったら大人しくしろ。素直な態度で質問に答えりゃあ、これ以上の怪我は負わなくて
済むぜェ?」
悪魔の笑みを浮かべている一方通行に研究員は凍りついた。
警告後、すぐに力を抜いて両手を頭に置いた研究員の妥当な応対に一方通行はご機嫌の意味で笑顔を深める。
「そーそー、イイ子だァ。ンじゃあ喋れる程度に力緩めてやンよ。だが、もし意味無く叫ンだりしたら……ビックリ
してうっかり手が滑っちまうかもなァ」
コクコク、と頭を縦に動かす研究員の男。もはや顔色は恐怖に染まりきっており、抵抗の意思は感じられない。
声が喉を通る程度に杖を引っ込めてから一方通行は有無を言わさぬ勢いで蒼白したままの研究員に訊ねた。
「番外個体はどこにいる?」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:30:01.61 ID:lHBFiJo0<>
「……っはぁ! はぁ……み、番外……個体……?」
息を切らせながら単語の意味を死中模索する研究員に一方通行は険しい顔を作る。
(チィ……こンな三下じゃ、やっぱ知らねェか……?)
だが、
「……まさか、木原さんが……調律しているクローン個体のことか……?」
「―――!? 調律だァ? オイ、そりゃどォいう事だ? 詳しく話せ」
眼で脅しかけるが、研究者は首を横に振って見上げてくる。
「お、俺はそこまで知らねえよ! ただ、“調律”としか……」
「………」
(木原の野郎……。一体どォいうつもりだ? だが、“クローン個体”ってのが番外個体なのは間違いねェはず…)
(……待てよ。そォいやアイツ―――)
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:31:18.66 ID:lHBFiJo0<>
―――『お姫様とも直に“会わせて”やっからそう噛み付くな』―――
―――『残念だが、あの小娘どもにはまだ仕事が残ってんだよ』―――
(………今思えば妙に気になることほざいてやがったよなァ。何かを企ンでることだけは間違いねェンだろォが、俺の
所へ来る時以外、アイツは番外個体に何を……チッ、悪い予感しかしねェ)
「おい……おい! お前、『一方通行《アクセラレータ》』だろ? 何故……どうやって外に!?」
考え事の最中に杖の下でピーピーと喧しい下っ端を睨みつけてやる。
「……うるっせェンだよ。ンなことより、その場所がどこなのか今すぐ言え。どこでやってンのかぐれェは当然オマエ
でも知ってるよなァ?」
「ひ……し、しかし、……木原さんの情報をうかつに他言したら……俺、あとでどうなるか……」
今度はガタガタ震えだした。余程木原が怖いらしいが、そんなことを考慮する理由はない。
杖を少し押して一気に脅し掛ける。
「今ここで声帯潰されて今後筆談人生を送りたいか、俺が木原をブチのめす可能性に賭けて知ってる事を全部吐くか、
オマエに好きな道を選ばせてやる。……コッチはあまり時間の余裕がねェンだ。とっとと決断しろ」
少しの間が空き、研究員はとうとう白状した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:32:28.39 ID:lHBFiJo0<>
「……………最上階、九階の北西部……そこにある大広間が、木原さんの書斎部屋だ。研究自室も兼ねてる……」
ニヤリ、と一方通行は満悦の表情で震えた声の研究員を見下ろす。
「オーケー、ご苦労さン」
「な…なぁ、あんた、木原さんに俺から聞いたなんて言うなよ? 絶対に言わないでくれよ!?」
「………」
「頼むぞ…! でないと……殺される…!」
「そンなにあのインテリちゃンが怖ェンなら、さっさと荷物まとめて夜逃げでもしてろ。目が覚めた後でなァ」
「え―――ッ!?」
瞬時に腹部を杖で刺し、研究員の見苦しい願望を強制ストップさせた。
「二度と喋れなくなるよりはマシだろボケが」
のびた研究員の懐から二丁の拳銃を奪い取る。
あとは研究員にもう目もくれず、一方通行はすぐその場から離れ出した。
(……一番上か。ケッ、まさにボス猿にゃ御あつらえ向きのステージってワケだ)
(待ってろォォ。すぐに行くぞ)
(今度は俺がオマエに行き着く番、ってなァァ。ククク…)
不敵に笑い、禍々しいオーラを身に纏いながら少年は地獄からの戦線復帰を果たす。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:33:36.88 ID:lHBFiJo0<>
―――
「ハァ、ハァ、ハァ……」
見張りの目をまたしても欺き、白井黒子はついに御坂美琴が監禁されている部屋まであと僅かの所まで到達していた。
付近に人の気配はない。やはりコチラの目的にはまだ気づかれていなかったのか、思った以上に手薄だった。
これなら一気に行ける!
「ハァ、ハァ、あと……あとは、ここを左に行って真っ直ぐですの…!」
地理を確認しながら最後の直線を急ぐ。前方に人影はない。
今が絶好のチャンスだと黒子は確信した。
(お姉様。もうすぐ……もうすぐ逢えますのよ)
(白井黒子、今お姉様の元へ!)
洞窟で何日も彷徨い、ようやく地上の光が射し込む出口を発見した遭難者のような顔で黒子は走る。
鍵も先ほど上条から託された。あとは誰も来ない内に美琴を連れ出して脱出するだけ。
彼女の足が意思よりも早く進むのは無理もないことだった。
そして、やっと―――
「―――!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:35:08.11 ID:lHBFiJo0<>
肉眼で、美琴の姿を捉えることができた。
とうとう、ここまで来た。黒子にとって悪夢のような十日間だったが、それもこれで―――
「お姉様あああああ……」
「く……黒……子……?」
本当は叫びたかったのだが、今そんな事をしては救出前に誰か来てしまう。
黒子は柵に両手を掛け、奥で拘束されている美琴に涙混じりの視線を向ける。
美琴の方はもちろん突然現れた親しいルームメイトの登場に口をポカンと開けている。
「逢いたかったぁ……逢いたかったですのぉぉぉ……グスッ」
「え?……えっ?……黒子…なの……本当…に……?」
だんだん飲み込めてきた様子の美琴に、黒子はシワクチャになりそうな表情をキリッと正す。まだ気を抜いて良い場面
でも浮かれて良い場面でもない事を思い出してくれたようだ。
「お姉様。お助けに参りました」
「黒子……アンタ、どうして……」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:36:39.32 ID:lHBFiJo0<>
美琴はまだ少し信じられないといった表情だが、黒子はすっかり落ち着きを取り戻している。
「訳は後ほどご説明致します。今はわたくしと逃げるんですのよ」
「え……で、でも……」
「ご心配には及びませんわ。鍵なら持ってますの。……んっ」
鍵を取り出し、檻を開けようと挿し込んだ次の瞬間、美琴の切迫した声が飛んだ。
「―――黒子! 後ろ!!」
「―――!?」
振り返ると同時に全身を襲う強烈な痺れ。
「あぁあああっ!!!」
力の入らない身体はあっという間に取り押さえられた。
「―――ふふ、あっさり引っ掛かったな。まさに袋のネズミってかぁ?」
「―――ここに来ると思って張ってたのさ。この方が捕まえるのも楽だしな」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:37:51.84 ID:lHBFiJo0<>
「―――馬鹿な小娘だぜ。『地獄の猟犬』をなめるんじゃねえよ」
「―――さて、一人は捕らえた。残りの連中はコイツから炙り出すぞ」
続々と姿を見せる『地獄の猟犬』構成員たち。他の科学者と違い、プロの空気を纏わせている。
どうやら、黒子は猟犬の張った罠にまんまと飛び込んでしまったようだ。
動かせない手足を三人がかりで床に押さえ込まれている。抵抗はもはや絶望的な状況だった。
「あ……あぁぁ……」
スタンガンを当てられたショックで意識はぼんやりだが、自分の現状は理解できる。
薄く開いた目は美琴を見つめた。美琴が自分に何か叫んでいるようだが、何を言っているのか聞こえない。
「黒子っ!! 黒子ぉぉ!! やめて! その子に手を出さないで!!」
必死に叫ぶが無視される。
大好きな後輩が自分のために傷つけられてしまう。美琴が冷静なままでいられるはずはなかった。
「黒子を放せェェええええええっ!!!」
悲痛な声も届かない。
助けようにも、何もできない。
能力が使えないのが実に恨めしい。こんな時に、一体何故自分は無力なのか?
自分を呪いたくなるほど、美琴は唇を噛んだ。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:38:33.97 ID:lHBFiJo0<>
(ああ……おねえ……さ……ま……)
虚ろな意識で、黒子も悔しさを噛みしめる。
あと少しで手が届く距離にいるのに。
目の前に、心酔して止まない先輩がいるというのに。
(最後の……最後で……ヘマをやらかすなんて………せっかく……ここまで来たのに……無念…ですの……)
目に涙を浮かべ、黒子は美琴へ手を伸ばそうとするが、それすら叶わない。
(お……ね……え……さ―――)
(―――ま………)
意識が闇に落ちる、正にその時だった。
「―――っ!!」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:39:58.88 ID:lHBFiJo0<>
〜〜〜
ここでほんの少しだけ時間を巻き戻す。
一方通行は階段を上っていた。
エレベーター付近は警護人が多く、突破は面倒だったからだ。
奪った拳銃は二十発式が二丁。今時珍しいぐらいに古い型な上にあまり無駄撃ちできる弾数でもない。
(このまま最上階まで行けりゃ良いが……)
やはり難しいようだ。上から誰か下りてくる足音が聞こえてくる。しかも複数。
仕方なく、一方通行は三階でいったん階段から離れた。
できれば『階段』という移動手段は捨てて、このままエレベーターを見つけたい所だが、生憎このフロアも複雑に
入り組んでいるようだ。曲がってはまた曲がってを繰り返す。
(クソ、内部の地理が把握できねェ以上あまり動き回るのは好ましくねェってのに。っつーか、勤めてるヤツらは
本当にこンな迷路みてェな施設内を掌握できてンのか? 怪しいモンだぜ、ったく……)
心で愚痴りながら歩き続けるが、階段までのルートは一応頭に残している。エレベーターが見つかれば無駄な記憶
に終わってしまうが、見つけても使えない場合を想定した結果である。
以後も道を忘れないように気を張り巡らせる。
が、その時、気配を察知して動きをピタリと止めた。
(―――!? チッ……コッチからも来たか。まァ遅かれ早かれこォなンのは目に見えてたけどなァ)<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:41:20.70 ID:lHBFiJo0<>
すかさず壁に身を潜め、息を殺す。前の右折しかできない先に数人はいる。更に後ろからも数は不明だが複数迫って
きている。
(……やるしかねェか)
後ろに追手が迫っていない保障はない。というか、戻るには“まだ早い”。ある程度時間が経たない内に戻って鉢合
わせるのは一方通行でなくても予測できた。
覚悟を決めて前へ進む。すると案の定、研究者たちが自分の姿を見て一瞬たじろぎ、驚愕の表情を演出した。
「お、お前は!?」
「ア、アク―――!?」
その瞬間が勝負だった。
驚きながらまともな行動が起こせる人間はまずいない。最も隙をつけるタイミングとも言える。
位置の確認と同時に拳銃で研究者たちの足を撃ち抜く。当然問答無用でだ。
ビックリしている途中での激痛はたまらず彼等の思考を中断させる。
「ぐぉぉ……!!」
「ぎゃ…あ…あああ!!」
辛くも全員を床へのたまわせるのに成功したが、銃声が響いたせいで後方の連中が急ぎ足でコッチに向かって来る
のが分かった。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:42:13.74 ID:lHBFiJo0<>
「っ!」
冷静に素早く拳銃を替え、杖を前に先へと急ぐが。
「―――いたぞ!!」
「おい! 止まれ!!」
「……チ」
ついに見つかった。舌打ち一つ残し、向こうが発砲してくる前に曲がった壁へと身を隠す。
その直後、敵側の発砲音と共に銃弾がすぐ横を通った。間一髪、射程距離からは外れたようだ。
「面倒になってきやがったか。……さァて、どォしたモンかねェ。全員を床にへばり付かせるには若干心許ねェ気
もするが……」
応戦するか退くか。
考えてる間にも敵はじりじりとコチラに歩を進めて来ている。いつまでも留まっている訳にはいかない。
「……時間の無駄だな。仕方ねェ、ひとまずコッチへ―――」
退却するしかない、と判断した一方通行は身体を翻して奥へ進もうとするが、
「―――ッッ!!?」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:43:16.15 ID:lHBFiJo0<>
「見つけたぞぉぉ。脱走者が」
「牢へ戻ってもらおうか。これが木原さんにバレたら面倒になる」
「逃げられないように、とりあえず足撃っとくか?」
なんと、そこからも更に組織の構成員が道を塞いでいた。唯一のルートが遮断されてしまった。
これは手痛い誤算である。
「……!!」
後ろも前も逃げ道はない。完全に八方ふさがりだ。
「くっ……」
流石の一方通行もこの事実に焦りを隠せなかった。
「おい、麻酔弾があったろ。撃つならそれにしとけ。もし殺しちまったら、俺たちが木原さんに殺される」
「そうか、そうだな。へへへ………寿命はまだ少し先だぜ」
この会話を聞いて冷や汗を流す。
(クソが、冗談じゃねェ。眠らされてまた最初からやり直しってかァ? フザけンじゃねェぞ!!)
先にこいつらを黙らせるために拳銃を抜こうとするが、その前に後ろから通告される。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:45:48.13 ID:lHBFiJo0<>
「おっと、動くな。そこまでだ。ふふふ」
「っ!?」(―――しまった!!)
後から追いついた研究者から羽織い締めに遭い、身動きを封じられた。
一方通行の脳が『まずい!』と危険信号を飛ばしてくる。
「クソッたれがァァ!!」
絡められた腕から逃れようと暴れるが、体格に差があり過ぎてどうにもならない。
(ちっくしょう!! ここでゲームオーバーなンて洒落になってねェぞォォ!!)
そして、
「おい、うるせえから早く撃って黙らせろ」
「―――おう。へへ、んじゃあな」
パァン、と乾いた音がしたと同時に一方通行目がけて真っ直ぐ放たれる麻酔弾。
「……ッ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:46:54.26 ID:lHBFiJo0<>
絶体絶命。
無情な末路が一方通行に再び訪れようとしていた。
だが、その直前である。
「――――!!!?」
麻酔が着弾するまでの、コンマ何秒差か。
突如、一方通行の脳内に何か妙な違和感が走った。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/15(月) 17:48:33.79 ID:lHBFiJo0<>いい所(?)ですいませんがここまでです
明日にはここで最終投下して次スレ建てようと思います
ではまた明日<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 17:53:15.28 ID:4Kog8.o0<>乙
佐天達が間に合ったのかな?<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 18:11:44.83 ID:5atpE320<>乙
先が気になる引き…流石です<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 18:26:01.99 ID:1IHxFLEo<>どうやら俺の涙子が間に合ったみたいだな
次回まで正座しとくか<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 19:18:40.36 ID:I2mwu2DO<>そうだな、俺の涙子はやる時はしっかりやる子だからな<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 21:01:25.74 ID:KkGoJ.DO<>>>966-967
お前等初春の事も忘れてやるなよ……
しかし、流石は俺の涙子だ。
佐天さんマジ涙子<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 23:11:02.42 ID:dQih3y6o<>いい所にも程がある乙<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/16(火) 00:06:22.06 ID:fOV2H2DO<>乙!ほんと良いところでw
しかし木原クンも最上階だと…<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/16(火) 08:54:11.11 ID:xOu.f7Ao<>そうだな、俺の涙子と飾利がピンチだな<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:23:13.83 ID:nvelhGQ0<>お待たせしました
では投下します<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:24:17.07 ID:nvelhGQ0<>
〜〜〜
一方通行、白井黒子、両名は時同じくしてピンチを迎えていた。
更にここで、もう一度だけ時間を巻き戻してみる。
最上階(九階)では通気口から二つの小さな影が機械設備豊富な室内へ足を踏み入れていた。
初春飾利と佐天涙子。
下フロアの騒然とした状況など知る由もない少女二人の暗躍は、ついに佳境を迎えていた。
「とうとうここまで来たね……。初春、装置はどこ?」
いつになく緊張感が走っている面持ちで佐天は訊ねた。
「ちょっと待ってください……」
端末を見ながら足を辿る初春。やがて目標座標が中央に点滅した。
「―――ありました! これです! 佐天さん!」
初春が目の前の大きな制御装置を指し示した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:25:46.61 ID:nvelhGQ0<>
「これが……新型のキャパシティダウン発生装置……こいつが…ッ!」
親の敵と遭遇したかのように憎々しく睨む。
初春もいつになく真剣な表情で佐天に伝える。
「内部からの操作は……やっぱり難しいですね。ですが、これだけ大きく精密な装置なら……外部からの刺激が
致命的なハズです」
「要するにブッ壊し甲斐があるってワケねっ!!」
途中で佐天が割り込むように前へ躍り出る。すでにバットを振りかぶりながら。
初春は、指でゴーサインを作り、
「えぇ、やっちゃってくださいっ!!」
佐天を思いっきり煽ってやった。
「うぉぉおおおおーーーーーーーっっ!!!!!」
気合混じりの一撃が、悪条件の元となった物体へ向けて勢い良く繰り出された。
無論、これ一発だけでスッキリするはずもない。
何度も、何度も、佐天は力任せに音響の根源へ対し怒りの鉄槌をお見舞いした。
「こんのぉっ!! こんにゃろぉおおおお!!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:27:43.38 ID:nvelhGQ0<>
激しい火花を散らせながら、装置がみるみる変形していく。無効化が進んでいくのが見てとれる。
そして、トドメに何やら表示されている液晶画面を完膚なきまでに叩き割ってやった。
「―――うおりゃあああああ!!!」
ガシャアアン!! と、装置がけたたましく音を立てる。やがて電源は完全に消え落ち、キャパシティダウン発生
装置はただのスクラップへと廃化した。
「やりましたよ佐天さんっ!!」
端末に表示された標的の電子マークが消えたのを確認し、その場で喜びの声を上げる初春。
装置は完全に無力化されたのは良いが、派手な騒音を聞きつけた研究者及び構成員たちが今にも部屋へ突入しよう
としている。
いつまでも喜んでいる暇はない。
「よしっ! 行こう初春!」
「はいっ!」
あとはズラかるだけだ。二人は迅速に行動を開始する。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:30:24.83 ID:nvelhGQ0<>
予め鍵を掛けておいたため、再び通気口から脱出するための僅かな時間だけは稼げた。
少女達がさして大きくない穴へ姿を消してからほんの一分ほどで突入は決行される。
中の惨状に彼等は揃って驚愕したが、すでに逃亡した彼女達の知った事ではなかった。
〜〜〜
そして現在。
御坂美琴を救い出す一歩手前で道を閉ざされてしまった白井黒子。
目の前で捕まった後輩を助けることもできず自責に溺れる御坂美琴。
地獄からの復活早々、無念にもリタイヤを再度余儀なくされようとしている一方通行。
この三人が脳に奇妙な違和感を感じたのは、全く同じタイミングだった。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:31:30.84 ID:nvelhGQ0<>
「――――!!?」
一方通行へ一直線に飛来する麻酔弾。
これを喰らってしまえば、何もかもが終わってしまうと言ってもいい。
(ッッ!!)
本能に従うかのように、一方通行の手は首筋の電極スイッチへ伸びる。すでに発砲された弾が自分に超速で迫って来ている。
(間に合え―――ッ!!!)
何も思考する猶予などない。ただスイッチを入れ、能力を、自身を“最強”へと変えるだけ。
麻酔弾が一方通行の腕に接触する、まさにその寸前。
カチッ……
「!!!!!」
―――ギィィィン!
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:34:37.79 ID:nvelhGQ0<>
まるで彼の腕に吸い込まれたかのような波を立てた銃弾はその後、波紋から飛び出したように跳ね返っていく。一切のブレ無く、
真っ直ぐに。規則正しく反射された麻酔弾は、発砲した当人を逆に撃ち捉えた。
「ああっ!? …………う……ぅ…」
やげて力なく崩れ落ちる狙撃手。
そして、今度は。
「!!?」
一方通行を後ろから押さえつけていた体格の良い男が、まるで突風に殴られたかのように後方へと吹き飛ばされた。
その場にいた全ての人間が、この立て続けに起きた不可思議な現象にどよめく。
約一名を除いて。
「クク、クキキ………クカカカカ――――」
「―――ひはっ、きひっ、ひゃはっ、ぎゃははははははははははははははははァァァァァ!!!!!」
自由になった直後、いきなり大声を上げて笑い出した一方通行。
包囲している連中はこれにビックリし、後退する。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:36:40.63 ID:nvelhGQ0<>
一 方 通 行 復 活 !!!!!
「きひひッ、待ってたぜェェ。この時をなァ。ギリギリセーフゥ? 間一髪ゥ? まァ、どっちでもイイけどよォ。最高の仕事
をしてくれたじゃねェか。上出来だぜェ、三下共ォォ。これ以上ない絶妙のタイミング、ってなァァ!」
狂喜から出た独白に理解不能な構成員たちだが、妙な危機感だけは根付いていた。
「どういうことだ……? 今、何が……」
「能力者は、ここでは無力なはず……」
何も知らない構成員たちは戦慄を覚える。だがもう遅い。最強の超能力者はもうここに降臨したのだ。
完全復活を遂げた一方通行がすぐ目の前にいる。
この事実は彼等を充分パニックに陥れていた。
「ええい! 構わねぇ! 撃てっ! 撃てぇぇ!!」
一方通行の放つ特有のプレッシャーに恐怖を駆られた構成員たちは、後の事など考えずいっせいに発砲した。
しかし、一方通行の不敵な笑いがその程度で消えるはずもない。
「なァ、こォいうのをよォ……確か世間一般じゃあ“形勢逆転”って言うンだっけか? ぎゃはっ、ははははっ!!」
自身に集められた銃弾は、全て今通った道を引き返していく。まるで彼を恐れて思い留まったかのように。
「っぐあ!?」
「ぎゃああっ!!」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:39:13.75 ID:nvelhGQ0<>
反射された銃弾を逆に浴びて倒れた構成員や研究員は、そこでやっと一方通行の能力が完全に復活している事実を悟った。
原因は勿論不明だが、今はそれを気にしている場合ではない。
こうして最強の超能力者が猛威を振るっている。その現実だけで充分だ。
「クククク……。悪いなァ。一個ずつクリアしていくセオリーは嫌いなモンでよォ。何ぶン今は時間が惜しいンだわ」
自分以外はすでに皆床で転がっていた。命は奪っていないが特にどうでも良い。
あの時に“警告”はしたのだ。彼等に容赦する理由が思い浮かばない。
呻き声だけが返ってくる通路の中央で一人立ち尽くし、彼は天井を見上げた。
「っつーワケで、ショートカットだ! 一気にラスボスまで飛ばさせてもらうぜェ!!」
その宣言通りに跳躍する。
一方通行は頭上の天井など無いも同然に破壊しながら、一気に最上階を目指して進撃を開始した。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:41:43.19 ID:nvelhGQ0<>
―――
「ッ!!!」
白井黒子は薄れていた意識を無理矢理叩き起こした。
『多分、装置が止まったら違和感にすぐ気づくと思います。これだけ強力な装置なら、音響の変化を脳も感知するはずです』
初春の言っていた“違和感”が、もし“今の”だとしたら?
黒子は賭ける思いで脳内で演算式の組み立てを開始してみた。その結果―――
(―――グッジョブですの!! 初春、佐天さん!)
“ビンゴ”だった。思わず顔が全力でニヤける。
取り押さえられたままの黒子が、突然不敵な笑みを浮かべた。
構成員集団がそんな彼女に疑問を抱いた直後、
「―――んな!?」
「な……えっ!?」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:43:21.28 ID:nvelhGQ0<>
組み伏せていたはずの少女はすでにいなかった。
「!!!?」
すぐさま周辺を見回す集団。すると、
「あ! あそこに!!」
一人が指をさした先は美琴が囚われている檻の中。
黒子はいつの間にか美琴を拘束する忌々しい手枷を鍵で解除する作業に取り掛かっていた。
「黒子……アンタ……ッ!」
「今、外しますの。もう少しの辛抱ですわよ」
勝ちを確信した表情の黒子。上条への敬意のつもりからか、敢えて鍵を使用している。
やがて、鎖は難なく外せた。
「何がどうなってるのか………後で説明よろしくね。黒子」
「えぇ、お姉様……。さ、外れましたわ」
「……ありがと。あ、あとこれも…」
「……これは?」
美琴は黒子におずおずと腕輪を見せた。<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/16(火) 18:45:35.11 ID:lrpD6EMo<>初春パネェw<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:46:15.79 ID:nvelhGQ0<>
それが何なのか知らない黒子は当然訊ねた。美琴はパッと説明だけする。
「これもさ、能力制限の元みたいなヤツなのよ。……これ付けてる限り、流した電流は全部この施設の電力として利用
されちゃうの。ホント迷惑な話だわ」
「なるほど、それにしても趣味の悪いデザインですこと。お姉様には相応しくありませんわね―――」
蔑んだ感想と同時に腕輪へ手を置き、
「―――ふふっ♪ こんなものッッ!!」
一瞬で消し飛ばした。
「あはっ♪」
その時、通路の方から音が聞こえた。
おそらく、美琴の腕から消えた腕輪が遠くの方に移動されて落ちた音だろう。
これで、美琴を縛るものは何も無くなった。
腕輪の無くなった自身の肌を愛しそうに見つめ、黒子に極上の微笑みを向ける。
「ありがとう、黒子。助かったわ」
「いいえ、お安い御用ですのよ」
久方ぶりに笑い合う常盤台中コンビ。
その光景を唖然と見ていることしかできない研究者たち。黒子が空間移動能力者なのは分かるが、キャパシティダウン
は一体どうなっている? と顔が訊ねていた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:48:24.31 ID:nvelhGQ0<>
そして、
「―――さて、と……」
「―――ええ……」
二人の少女が笑うのを止め、コチラへと顔を向けた。
思わず背筋に悪寒が走るほどの眼差しが兵達を射抜く。
「長居は無用ね。行くわよ、黒子」
「はい、お姉様」
二人の身体が一瞬でそこから消え、気づいた時には檻の外へと移動していた。
突然すぐ近くに現れた空間移動能力者と学園都市上位に名を連ねる超能力者に全員思わず退く。
だが、
「に、逃がすな! ここで逃がしたら、あとでどうなるか分かってるだろ!?」
「―――!!」
「そ、そうだ。もしこんな失態が木原さんにバレたら……ゴクリ」
「よ、よし……能力者と言っても小娘二人だ……。ここは俺らでやるしかねぇ」
木原の恐怖に駆り立てられた猛者たちは臨戦態勢を取る。
そんな虚勢だらけの兵たちに、美琴と黒子は唇の端だけで笑ってあげた。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:49:17.33 ID:nvelhGQ0<>
「くすくす、運がすでにどちらの味方をしているか、まだ彼等には良く理解できていないようですわねぇ」
「そうみたい。けど丁度ひと暴れしたいと思ってたし、まぁ歓迎っちゃ歓迎よね」
全快の御坂美琴と白井黒子。今の二人に恐れるものは何もなかった。
「―――さぁ! ここからはコッチのワンサイドゲームよ!! いいわね!? 黒子!!」
「―――当然ですわ!! お姉様と共にこの白井黒子! 存分に暴れさせて頂きますの!!」
全身から夥しく稲妻を走らせる美琴。
太股に隠し持っていた金属矢に手を掛ける黒子。
常盤台が誇る能力者二人は躊躇うことなく戦闘モードへと移行した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:50:14.28 ID:nvelhGQ0<>
―――
初春飾利と佐天涙子が通気口から無事エレベーターへとたどり着いて下降している途中、もの凄い衝撃が密室の空間
を襲った。
「―――きゃあっ!!?」
「―――なっ、何!!?」
一瞬、乱気流に突入したジェット機内のようにグラリと揺れるエレベーター内。二人ともこの不意打ちにバランスを
大きく崩す。
本当に揺れはすぐ治まったが、代わりにマズイ事態が発生した。
「な……何だったの今……って、ちょっと!? エレベーター止まってないこれ!?」
「ええっ!?」
何度ボタンを押しても反応はない。電灯も消え、表示ランプも点滅したまま動かない。下に降りている感覚は全くしな
かった。
「う、うそぉ!? ま……まさか今の揺れが原因で……?」
「そ……そんなぁぁ……ど、どうしよ?」
予想外の展開に一時慌てふためく二人。
すると初春が、
「……ッ!」
鞄にしまっていたノート式パソコンを取り出した。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:51:25.96 ID:nvelhGQ0<>
「う、初春? どうするの……?」
「何とか、復旧させてみます!」
「えぇ!? で、でもエレベータートラブルって……確か管理施設が違うんじゃ……」
ごく当たり前の指摘をするが、そんなことは初春も承知だった。
「管理会社のデータを少し借りれば大丈夫です! 少なくとも……ここと違ってブロックレベルは低いでしょうから、上手く
アクセスできればすぐに復旧させられると思います」
「センターに問い合わせたらダメなの?」
「こういう機密に触れるような施設じゃ“身元調整機能”が付いてるんですよ。多分助けてはくれるでしょうけど、下手したら
そのまま捕まる危険があります」
話しながらも初春の手は止まっていない。
佐天にはよく理解し難い話だが、要するに侵入した建物内でコッチから助けを求める行為はなるべく慎むべきだ、との事。
風紀委員でも教わるのか疑わしい知識だった。
というか、エレベーターに閉じ込められても、それを自分で直すという所業を駆使できる人物が身近にいたことに対しての驚き
が佐天の中では圧倒的に勝っていた。
初春達は気づかなかった。いや、気づくのは不可能と言える。
打ち上げられたロケットの如く垂直に昇っていく超能力者がすぐ側を通過していったことに。
彼こそがエレベーターに震動を加え、停止にまで導いた張本人である。
そして彼もまたそれに気づくことなく上へと昇り続けていた。
全ての障害は一切無駄。ただの瓦礫やコンクリートの塊へと塗り替えるだけ。
顔を上に向けたまま崩壊する天井などお構いなしで上昇する彼の通った跡は、一階から七階までの空間がくっきりと繋がっている。
今の一方通行は止まらない。いや、誰にも止められないと言った方が正確か。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:52:42.64 ID:nvelhGQ0<>
「ぎゃあははははははははァァァ!!!」
狂喜溢れんばかりの高笑いだけが後に残った。、
―――
「な、何だ……? 今アッチでも、すげぇ音が……」
見つからないよう慎重に進まなければならない少数派の一人、上条当麻は後ろの方角から聞こえた崩壊音に足を止めた。
(前からも何かドンパチやってるのか、騒音が響いてくるし……まさか、みんな危ねえ事になってんのか?)
正解は逆なのだが、ある意味では危ない事なのかもしれない。しかし、この少年にその真実を教えてあげられる人間は
この場にいなかった。
「……白井、無事なんだろうな」
幸いなのか、上条周辺は驚くほどにスカスカの手薄だ。
このチャンスを生かさない手はない。
「とにかく急がねえと! 御坂、白井、待ってろよぉぉ!! 今行くk――――」
出雲との一戦で痛んだ肉体に喝を入れ、その一歩を踏み出した瞬間だった。
「―――――ん……?」
足の感覚でもおかしくなったか?
地の感触が、足裏に伝わって来ない。<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:53:57.17 ID:nvelhGQ0<>
「………」
金縛りにでも掛かったように全身を硬直させる上条。おそるおそる、真下に目線を下げてみる。
「………」
なんと、そこには床が無かった。
それは偶然にも、この施設に一つしかない『落とし穴』だった。
施設の遊び心満載な研究員が、“ネタ”として作ったものだった。
床の色もあからさまに違うので、まさか引っ掛かる人間はいないだろうと。
言わば、難易度の高い問題だらけに一つだけ設けられてある“サービス問題”のようなものだ。実際こんな子供騙しの罠になど、
今どき誰も引っ掛かりはしない。
前しか見据えていなかった上条当麻、ただ一人を除いては。
「―――ふ、不幸だああああぁぁぁぁ!!!!!」
叫びと共に下の暗闇へと瞬く間に沈んでいく上条。
小さくなっていく滑稽な姿も闇に消えて見えなくなったし、腹の底から出た悲痛な声もやがて聞こえなくなった。
そんな彼を嘲笑うかのように、穴はパタンと音を立てながら元の床に閉ざされた。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:54:37.35 ID:nvelhGQ0<>
―――
監禁所周辺は超能力者と相棒の大能力者の大暴れにより惨状と化していた。まるで大量の火器を用いり戦争でも
したかのような。
天井は崩壊し電灯は粉々に砕け、床は塗装が剥がれて鉄筋が剥き出しとなっている。高圧電流によって抉れた壁
は所々にバラバラな大きさの穴が開いていた。そこの部分だけテレポートしたのだろうか。
答えは完全に勝ち誇った声の主だけが知っている。
「あー、スカッとしたわ」
「ふん、他愛もないですわね」
その凄惨な現場に佇むのは常盤台制服姿の御坂美琴とコートを脱ぎ捨て同じ服装になった白井黒子の約二名。
あとは全員床に没しているか壁へめり込んでいるか崩れた天井の下敷きになっているかだ。無論、もう誰一人
として動かない。能力不使用の呪縛から解放された少女二人の戦闘力はあまりに圧倒的だった。
こうしてひとしきり暴れた二人は、立ち向かってくる者が誰もいなくなったのを確認してゆっくり戦闘体勢を解き、
ハイタッチを交わした。
美琴「ふふっ、それにしても、ずいぶん派手にやったわね〜」
黒子「いつも使っている能力がいざという時に頼れないのは思った以上に応えますわね。おかげさまでつい加減を
間違えてしまいました」
美琴「私もかな。久々な気がしたから結構有り余ってる感じ……♪」
黒子「封じられて溜まっていた鬱憤が爆発した、という所でしょうかしら」
美琴「あ、多分それね」
黒子「まぁ確かに少しやり過ぎたかもしれませんわね」
美琴「私はまだちょっと暴れ足りないけどな〜。どうせなら思いっきりやりたいかも」<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:55:28.04 ID:nvelhGQ0<>
黒子「お姉様……お気持ちは分かりますが、お姉様が本気をお出しになったらこの建物なんてあっという間に倒壊
してしまいますの」
美琴「わ、分かってるってば! 冗談よ」
黒子「冗談には聞こえませんでしたが? ……まぁよろしいですわ…」
美琴「あはは〜…」ポリポリ
黒子「さぁ、お姉様。あとはここから脱出ですの。まず初春と佐天さんと上条さんを見つけてそれから―――」
美琴「―――ッッ!!? ちょちょちょちょっーと待って!? 今……何てった?」
黒子「あ、そうですわ。簡単にご説明しておきますが、キャパシティダウン発生装置を無力化してくれたのは別ルート
から侵入した初春と佐天さんですの。予定は多少狂いましたが、いちおう作戦通り進んでおりますわ」
美琴「へ〜、そうなんだ。だから能力が戻ったのね……。初春さん、佐天さん、……ありがとう…」ニコッ
黒子「お礼でしたら直接がよろしいかと…」
美琴「もっちろん♪ 当たり前よ! ………って違ぁーーう!! イヤ違わないけど!! 黒子、アンタ今その二人以外に
誰の名前言った!?」
黒子「はて? 何のことで? ……いえ、冗談ですの。冗談ですからジト目をやめてくださいまし」
美琴「………」ジー
黒子「上条さんですわ。上条当麻」
美琴「アイツ……来てるの……?」ポカーン
黒子「えぇ、わたくし程ではありませんが、彼もお姉様の身を案じておりましたわ………って、お姉様?」
美琴(どうしよアイツ来てるってことは私のためにでもアイツなら誰でも助けるだろうしでも危険冒してでも助ける人って限られてくるわよねそれってもしかして私のことをイヤけどあの馬鹿は無自覚)ブツブツブツブツ…<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:56:24.62 ID:nvelhGQ0<>
黒子「オーイ、お姉様ー……」
そして、ひと波乱ありつつも二人は移動を開始した。
美琴「―――そうだったの……みんなに、心配掛けちゃったわね。帰ったら謝らないと…」テクテク
黒子「いいんですのよ。お姉様が元気な姿を見せるだけで、みなさんきっと喜んでくれますわ」テクテク
美琴「……うん」
黒子「……。遅くなってしまって、申し訳ございませんの」
美琴「黒子が謝ることないわよ。私がドジ踏んじゃっただけなんだから」
黒子「……ですが…」
美琴「けどね、嬉しい。黒子が、みんなが私を心配してくれてたことが、何より嬉しいかな。申し訳ない気持ちにもなるけど」
(アイツも―――)
黒子「お姉様……」
美琴「さ! それならこれ以上心配掛けないためにも、早く帰らないとね! 急ぐわよ黒子!」ダッ
黒子「は、はいですの!」ダッ
「―――ちょっと、貴女たち。どこへ行くつもりかしら?」
「!?」
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:57:20.54 ID:nvelhGQ0<>
走り出そうとした少女達の前に立ちはだかる大きな機械。これは、
「ぱ、駆動鎧(パワードスーツ)……!」
黒子が漏らした通り、確かに道を塞いでいるのは藍色に光る駆動鎧だった。
「ア……アンタは……!!」
美琴は黒子と違い、頭部の方に注目する。駆動鎧で全身を纏っていた女の顔を驚いた目で凝視していた。
「だめねぇ。勝手に逃げちゃうなんて、悪い子さん♪」
女の口調に美琴は軽い吐き気を覚えた。
何故なら女はこの十日間、自身の世話を担当していたあの使用人だったからだ。そして美琴の記憶が正しければ、その女
使用人はこんなウーマン口調などではない。そもそも駆動鎧を着ている時点で違和感だらけだが、普段は粗野なはずだ。
「な、何よそれ……? アンタ、何でそんなものを……」
「……お姉様、知り合いですの?」
黒子が美琴に視線を移す。しかし、ここで予想外の人物に出くわした美琴の表情はまだ硬かった。
「あら、いやね。そこのお嬢さんは私のことを忘れちゃったのかしら」
「へ…?」
自分に言われたのか一瞬理解できなかった黒子は、美琴と女使用人を交互に見る。
黒子にはこんな長い黒髪に端整な顔立ちをした知り合いは思い当たらなかった。
「まだ分からないのかしら。ふふ……じゃあそんな貴女の運命、これで占ってみる?」
そう言ってから女使用人が見せてきたのは、<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:58:08.86 ID:nvelhGQ0<>
「―――!!?」
マーブルチョコのスティックだった。
これに覚えがある黒子は一気に青ざめるが、美琴は更に蒼白した。
しかし、女使用人は凍りついた少女達に構わず続ける。
「どれどれぇ………ふぅん、“赤”ね。これはつまり―――」
振って最初に落ちた色を見た後、彼女は一息にスティックをクシャリと握り潰し。
「―――“血まみれの未来”ってなァァァ!!! ぐァはははははははははは!!!!!」
恐ろしい本性を崩れた顔面と共に曝け出して絶叫した。
美琴たちは絶句する。美琴が見たことのないほどの恐ろしい形相は、確かに見覚えがある。
ようやく二人は目の前にいる人物が一体誰なのかを認知できた。
驚愕しきった少女達に、テレスティーナ・木原・ライフラインが再び牙を向く。
目的は当然『復讐(リベンジ)』―――。
<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 18:58:38.01 ID:nvelhGQ0<>以上です
次スレ建ててきます<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/16(火) 18:59:46.05 ID:SpLcJ860<>乙です!<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/16(火) 19:01:51.06 ID:Z8ppfD2o<>乙
ぅ
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ッ
!
!<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/16(火) 19:05:29.50 ID:/bDlDSso<>1000レスはお前が云々<>
◆8NBuQ4l6uQ<>sage saga<>2010/11/16(火) 19:06:00.17 ID:nvelhGQ0<>誘導間に合ったw
次スレです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1289901654/l50<>
1001<><>Over 1000 Thread<> ´⌒(⌒(⌒`⌒,⌒ヽ
(()@(ヽノ(@)ノ(ノヽ)
(o)ゝノ`ー'ゝーヽ-' /8)
ゝー '_ W (9)ノ(@)
「 ̄ ・| 「 ̄ ̄|─-r ヽ
`、_ノol・__ノ ノ 【呪いのトンファーパーマン】
ノ / このスレッドは1000を超えました。
ヽ⌒ー⌒ー⌒ー ノ このレスを見たら期限内に完成させないと死にます。
`ー─┬─ l´-、 完成させても死にます。
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.〔:::::l l:::l 凵 http://ex14.vip2ch.com/news4gep/
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最近建ったスレッドのご案内★<><>Powered By VIP Service<>番外個体「ってなワケで、今日からお世話になります!」 一方通行「……はァ?」2 @ 2010/11/16(火) 19:00:54.94 ID:nvelhGQ0
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64『風来のシレン2』 99Fの階段上ろうとしたら手前に召喚スイッチあった件 @ 2010/11/16(火) 18:59:19.33 ID:HoI110k0
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ニート「訳分かんねぇ・・・」 @ 2010/11/16(火) 18:54:44.08 ID:0l2MG2SO
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野菜協同組合A雑総合本部 きゅうり @ 2010/11/16(火) 18:20:57.96 ID:DGvxOiA0
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「少しオタク」「微妙にオタク」=「微タク」 @ 2010/11/16(火) 14:44:09.34
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