VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 08:36:27.77 ID:uQLwObvEO<>
男「……」

男「やべー」

男「いまの見た? ねぇ、メラが掌から出ちゃいましたよ奥さん」

男「魔法だよ魔法」

男「……」

男「…いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406158587
<>男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 08:42:41.90 ID:f6EfDpWAo<> 俺はイオナズン出せるからまだ大丈夫 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 08:44:06.29 ID:uQLwObvEO<>
〜 1ヶ月前 〜


男「……」

スライム【ピー】ホヨン

男「……」

男「!?」


男(え、なにこの……え? スライム? ドラクエ? ドラクエなの?)

男(いやいやいや……え、本当にスライム?)


スライム【ピキィーッ】ヒュッ

< ドゴォッ!!

男「ぐぉ……ッ…げほっ、がふッ……!?」ドサッ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 08:51:35.37 ID:uQLwObvEO<>
男(や、ヤバい……よくわからんけど本当にヤバい…)ゴホッゴホッ…

男「だ…誰か!! 誰か助けてぇ!!」

< ダッ!


スライム【ピー】

スライム【ピキィーッ】ヒュッ!!

< ズザァッ

男「うわ、回り込まれ…っ」

< ドゴォッ!!


男「〜〜っ!! ゲぇっほ…!! ぉえ……ッ」ガクッ

男(いってぇ……なんだよこれ…な、何の悪夢だ…ヤバいヤバいヤバいヤバい……!!)ゲホッゲホッ…

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 08:56:34.30 ID:uQLwObvEO<>
男「はぁ…はぁ……」


スライム【ピー】ホヨン


男(……動かない)

男(こっちが何もしなければ、何かしらアクションを起こすと攻撃してくるのか…な?)

男(〜っ!)ズキズキッ

男(脇腹にサッカーボール大の痣……もう夢じゃないなこれは)

男(糞が……会社どころじゃねえぞ)


スライム【ピー】

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 09:07:20.49 ID:uQLwObvEO<>
・・・・ 30分後


男「……」

スライム【ピー】ホヨン

男(やっぱり、こっちが何もしなければ襲ってこない)

男(……刺激しないように逃げれば良いのだろうか)

男(……)スッ


スライム【ピー】


男(……)

男(1歩)スッ

男(2歩)スッ

男(……)スタスタ


スライム【ピキィーッ】ヒュッ!!


男「うわぁああ!?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 09:14:34.54 ID:uQLwObvEO<>
男(もう駄目だ……殺ってやる…!!)

男「らァッ!!」ブンッ

スライム【ピキィーッ】バチンッ

< ポニョンッ! コロコロ……

スライム【ピー…】


男(目を回してる? だったら今のうちに逃げるしか……!!)ダッ!


< タッタッタッ…!!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 09:23:24.98 ID:uQLwObvEO<>
< ガチャッ!

< バタンッ!


男「ぜぇ……ぜぇ……」

男(逃げ切った……)

男「あ、カギ……かけとかねぇと…!」バッ

< カチャン

男「はぁ…はぁ……」

男「………」ガクガク

男(まだ足が震えてて……上手く立てない)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 09:49:36.05 ID:2ra+c7JSO<> 傘とか、杖っぽくもあり、先端で刺して攻撃も出来る、良い装備品だと思うんです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 09:51:50.57 ID:MSSfpOaMO<> シャベル最強 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 09:54:29.01 ID:Fv/aWh/L0<> 砂利をつめればブラックジャック、石を挟めばスリングになる靴下とかいう便利グッズ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 10:02:49.21 ID:J3/hTY1lO<> >>11
スライムの類には効きそうにないな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 11:03:34.27 ID:bR2v1xN2O<> なんか期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 15:43:25.72 ID:Oby9K/1KO<>
男「……」prrrr…prrrr…

< 「はい、こちら銅鑼久重商事株式会社です」

男「すいません、男です」

< 「え? あれー、どうしたの男君」

男「ちょっと……トラブルで、今日はお休みさせて頂きます」

< 「トラブル? どうかしたの」

男「あー……」

男(何て言えばいいんだ、あんなの……)

男「……通り魔(物)にあったんです」

< 「嘘ー! 通り魔!? 大丈夫なの? 警察には?」

男「これから行きます……なので、いいですか」

< 「わかったわかった、主任に伝えとくねー」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 15:48:00.13 ID:Oby9K/1KO<>
< ピッ


男「……」

男「はぁ…どうなってんだよ、もう……」

男(あれは夢……じゃないな、痣残ってるし)

男(幻覚? 俺が頭おかしいだけか……?)

男(こんなに自覚症状ないもんか…?)

男(でも……なら、この痣はなんだ…)


男「……」

男「テレビでも見て……眠ったら、消えてるかな…」ピッ


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 15:55:33.50 ID:Oby9K/1KO<>
< 『本日の天気は晴れのち曇り…』

ピッ

< 『デデデーン! デーデーデーデーン!!』

ピッ

< 『新番組、スタイリッシュ★プリキュア!』

ピッ

< 『特別放送、【スラムダンクVS黒子のバスケ】が遂に明日の23時から……』

ピッ


< 『……らしく、目撃者は一様に「あれはポルターガイストだ」と証言しており…』


男(………ポルターガイスト…)ピタッ


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 16:10:38.04 ID:Oby9K/1KO<>
< 『本日の午前3時頃起きた、女子大生四人暴行事件で明かされる証言』

< 『犯人は深夜に現れた悪霊なのでしょうか! 今日は専門家の方に来て頂きました』

< 『まず、霊が生きている人間に襲いかかるとは到底思えないし有り得ないとだけ言わせて貰います』

< 『そして今回の事件で最も注目されている犯人の事』


< 『それはどの被害者も【見えない何かに殴られた】と言っていた事が原因と言えます』


男「………」

男(関係ないか…)スッ


< 『更に言うならばサッカーボール大の痣、こんな痣をどうしたら作れるのか不明だという事も原因でしょう』


男「……!!」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 16:26:17.46 ID:Oby9K/1KO<>
男「……結局あの後もテレビを見たけど、同じようなのばかり」

男(けど……多分、間違いない)

男(俺と同じく被害者達はスライムに襲われたんだ)

男「………」


男「でも、皆には見えてない……?」


男「それっていいのか? まずいんじゃないのか……」

男「皆には見えてないものが見えてるんだぞ俺は…」

男「……やっぱり」

男(頭…おかしくなっただけ?)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/24(木) 16:38:44.95 ID:Oby9K/1KO<>

・・・・その夜



男(あぁ……)

男(ぁあ、なにやってるんだ俺は…)カラン…カラン…

男(馬鹿か……馬鹿だよなこれ、夜中にヘルメット被ってバット持参とか……捕まるだろ)カラン…カラン…

男(やめろ…やめた方がいいんだ、忘れよう、帰ろう)

男「……なのに、なのに…」



男「ドキドキする……また、あのスライムに会いたいと考えちまってる…」

男「モンスターを思い切り殴り付けたあの瞬間に広がった感覚が……」


男(……忘れられない)チラッ


スライム【ピー】ホヨン

スライムB【ピー】ホヨン


男「……」

男「見つけたぞ…魔物め」ギシッ…

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 17:20:44.18 ID:IMqUsYxDO<> なんとなくオチが読めたような・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/24(木) 17:50:48.06 ID:bR2v1xN2O<> いやいや
期待している <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 10:37:54.89 ID:kQaQqeYkO<>
男(回り込む時だけ異様に早いけどさ、動きや攻撃は思い切り体当たりしてるだけだ)

男(まぁその思い切りが……)


スライム【ピキィーッ】ヒュッ

男(うぉッ…!)バッ


< パァンッ!!


スライム【ピー】ホヨン


男(コンクリの壁に激突して今の音……ゼリーってwikiで見たけど本当かよ)カラン…

男「っ!! おおおおおおおおお!!!!」ブンッッ


スライム【ピキィイイイイイ!!】バチュンッ!!

< ビチャァッ!!


男「うわっ、破裂した……っ!?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 10:44:36.03 ID:kQaQqeYkO<>
男「うぁ……トロトロして、なんか…うわ……」ドロドロ

< ポニョンッ!

男「!!」


スライムB【ピキィーッ】ドゴォッ!!

男「ヴぁああっ…!! づぅ……やば、腰が……ァッ……」ガクンッ

男「〜〜っ!!」ブンッッ


< ベチンッ!!

スライムB【ピキィッ!】ポテンッ

スライムB【ピキィーッ】ポニョンッ!


男「うわぁっ!」ヒョイッ

男(今だ……!)ブンッッ

< バチィンッ!


スライムB【ピキィイイイイイ!!】バチュンッ!!

< ビチャァッ!!


<> 乙蛇<>sage<>2014/07/25(金) 10:50:07.55 ID:2I4XSkik0<> いいぞいいぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 11:06:19.59 ID:kQaQqeYkO<>
男「……ハァッ…ハァッ…!」

< カラン…


男「………」

男「た、倒した……」

男「やったぁ! はは、魔物の群れを倒したぞぉ!」グッ

男「感触も、この痛みも本物なんだ! 夢じゃない!! はははは! はははははぁははははははは!!」


OL「……」ジトー…


男「」

OL「……」スタスタ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/25(金) 11:11:11.12 ID:EeFyVR9m0<> 30歳童貞的な意味かと思った…
他人には見えない魔物ってなんかKanon思い出すな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/07/25(金) 11:16:32.63 ID:2xqGjV970<> おれはビッグバンだせるよ!だから最強俺は <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 11:28:22.90 ID:kQaQqeYkO<>
< タッタッタッ…!!

男(とりあえずさっきの場所から離れつつ…)

男(まだスライムが何処かにいないか……)キョロキョロ

男(……公園の方に行ってみるか?)



< チリンチリン

男「?」


警察官「そこの人いいですかー、ちょっと止まってくださーい」シャカシャカ

男「〜〜〜〜!!?」ビクゥッ!!


男(一番会いたくないのに遭遇した……!! や、ヤバ… )ダッ!


警察官「あっ、待ちなさい!!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 12:21:42.25 ID:E0O8hezGO<>
男「ひぃ…っ、ひぃ…〜〜っ!!」タッタッタッ…!!

男(ま、まだ追ってきてる…!! 駄目だ駄目だやめろ……来るな来るな来るな来るな!)

男(捕まったら仕事が……前科…逮捕歴…お袋への仕送りもできなくなっちまう…ッ)


< 「うがぁっ!?」

< ガッシャーン!!


男「……?」ピタッ

男(…今の、なんだ?)

男「………………」コソコソ


< 「や、やめっ……うわぁ! うわぁあああああああ!!」ジタバタ

< ゴンッ!!

< ゴチュンッ……


男「…え」

男「!?」ガタガタガタ…

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 12:25:53.78 ID:E0O8hezGO<>

< スタ…スタ…

男(い、一体何が…?)

男(お巡りは…? どうなったんだ……)スッ…

男「……」

男「あれは……」




大木槌【フモッ】モフッ、テクテク…



男「…おおきづち…だ」

男「?」

男(……足元のあれ……お巡りの…体? は…? 頭は? なんで首から上が潰れて…)

男「ぉえッ……げぇええっ…!」ビチャビチャッ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 18:48:34.96 ID:/ZG2a44JO<>
男「はぁ…はぁ………ど、どうする…」

男(あんなの…警察官を秒殺って、どういうことだよ…)

男(明らかに旅人の服より防御力高いはずだろ…? いや、それを言ったら俺もか……)

男(違うそうじゃないんだ、おおきづちの足元の自転車が歪んでる…側面から不意討ちされたんだ)

男(そして訳も分からないうちに、力を溜めたアイツの痛恨の一撃を…)

男(…力を溜めてない場合もある…つまり痛恨の一撃で……?)ゾクッ

男(……スライムが相手が気絶するまでしかやらなかったのは、単に攻撃力と知能の問題だとしたら)


男(魔物は人間を殺すつもりで襲ってきてる……ってことなのか!?)


男(ってことは、警察官が一撃で死んだってことは……レベルが1だと考えるとHPが15か20前後…これが人間の生命力…というか、人間一人の肉体だ)

男(あのおおきづちの痛恨の一撃は、人を殺せるって事になる……)

男「……」ドキドキドキ…

男(……)

男「経験値はスライムの三倍以上なのは間違いない……」ゴクリ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/25(金) 22:28:20.61 ID:/ZG2a44JO<>

大木槌【ンモッ、ンモッ】テクテク



男(……大きさは膝上10cm程度)

男(だが……ゲームのあれと同じ動きが出来るなら)

男(自身より大きい木槌を振り回して、挙げ句には降り下ろしてくるのか……死ぬな)

男(だけど見た目からしてスライムよりは金属バットが効きそうな気はする)


男(行けるか……?)カラン…


大木槌【ンモッ?】クルン

男「でぇあっ!!」ブンッッ

< ゴキンッ!

大木槌【ブモォッ!!】ドシャァッ

大木槌【……ンモッ!!】ヒュンッ…ブルンッ!!


男「ぅお……っ」ビクッ

男(ゲームとは違うのは分かってた……人が死ぬんだもんな、こいつの一発で)

男(……そうだ、さっきの警察官は俺を追いかけてたから…こいつに殺されたんだ)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/25(金) 22:31:49.87 ID:vOWMMFWBo<> かわいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 01:52:34.85 ID:OLxzD5hjO<>
男「……このッ!」ブンッッ

大木槌【ンモッ!!】ヒュンッ

< ガンッ!!

男(受け止め……!? いや、当たり前か…!)ググッ…

男「ははっ…」ガンッ!!

男「ドラクエをリアルで出来るなら……これが幻覚でも構わない…!」ブンッッ

< ゴキンッ!

大木槌【ブモォッ……!!】クラッ

男(怯んだ!!)


男「……きっと、そこの死体も…!」ブンッッ

< ガコンッ!

大木槌【ンモッ…!〜〜っ!!】ビチャッ…


男「きっと……幻に違いないんだ……ッ」ブンッッ



────────── ゴシャッッ!!



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 02:05:14.59 ID:OLxzD5hjO<>
< ドシャァッ

男「ハァッ…ハァッ……」カラン…ッ

男「……あ」


大木槌【…】シュゥゥ……

< ポワァ…ン…


男(消えた…)

男(そうか…確かにスライムの体液もいつの間にか体に付いていたのも消えてる)

男(ドラクエ8の描写…に近いな)


男「!」


< ゴトッ


男「……え」

男「大木槌……だけ、なんで消えてないんだ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 02:39:26.96 ID:OLxzD5hjO<>
男(……)

< ギシッ……

男(!)

男「かるっ」ヒョイッ

男「うわ……なんだ、この…えーと」ブルンッ!!

男「……軽いけど、変に音が凄い」

男「……」

男「……」ブンッッ


男(……警察の人の分も、モンスターを退治してやろう)スタスタ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)<>sage<>2014/07/26(土) 05:05:39.51 ID:9IA8O9eU0<> 一人称で進んでく感じがええなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/26(土) 08:01:19.69 ID:vuLsEEfIo<> いいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/26(土) 09:53:41.57 ID:Oahd97kEo<> おもしろい!支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 11:42:11.87 ID:OLxzD5hjO<>

・・・・翌朝



男「……ん…ぁ」ムクッ

男(…布団)

男「…ッ! やべ、今何時だ!?」

男(……今日はまだ間に合う、会社行かねえと…主任に怒られる)バッ


< ガコンッ


男「……」

男(そうか、そうだった)シュルッ…バッ…

男(昨夜は大木槌を手にいれてから30匹は倒したんだったな…)バサッ

男(この大木槌……)スッ


< ブンッッ!!

男(音が凄い、とか思ったが……どうも違うらしい)

男(これ、持ち主にとっては軽くても現実には恐ろしく見た目通りの重量を持った木槌だ)

男(まぁ当たり前か……人の胴体はある大きさの木槌なんだ)

男「……ふふ、それが俺の今の武器か」ドキドキ

男「そもそもおおきづちが大木槌落としてくれる事はないはずだけど、それがリアルって事なのかもな」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 11:46:09.79 ID:OLxzD5hjO<>
< ガチャッ…

< パタン


男「っし、急ぐぞ」ダッ!

男(そう言えば、スライムを何匹か倒していて幾つかのアイテムを手にいれたな)

< シュタタタタタ…!

男(1つは…形とか、ハーブみたいな香りからして多分あのやくそう…だな)ダッ!

男(もう2つは、何かの種だけど……名前が分からない)

男(会社に着いたらググって種の種類でも調べてみよう、形とかあるはず)


男(……ああ)

男(いままで退屈というか、疲れてばかりだった毎日が、急に楽しくなってきた…!)

男「ひゃっほーぅ!!」


OL「……」ジトー

男「」シュタタタタタ…!!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 12:44:55.15 ID:OLxzD5hjO<>
< シュタタタタタ…!!


男(うおおおおおおお!! あの電車逃したら死ぬぅぅ!!)バッ!!

男(なんか今日は体の調子が良いな…! これなら間に合う…!)


< ブワッ!

会社員「うぉっ…!」ビクッ

会社員B「今の人、すげー足はえーな……」

会社員「陸上部でもやってたんかねぇ」

会社員B「にしちゃフォームが適当な気がする」




男(っしゃ! 間に合った……)シュタッ

男(あー……家から10分、駅まで全力疾走したからちょっと疲れた)

男(……)

男(あれ、こんなに走れたっけ)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 13:00:06.42 ID:OLxzD5hjO<>

女「おはよう男くん、大丈夫?」

男「ああ、すいません心配かけてしまって」

女「いいよいいよー、うちの部署で頼りになる同世代なんて男くんしかいないしさ」

女「困った時はお互い様っしょ」


男「あはは……」

男(こりゃ……先輩には本当のこと話せないな…当たり前か)


女「あ、そうそう主任なんだけどね?」

男「はい?」

女「今日は病欠だってさ」

男「へー……珍しい」


男「あんな真面目な女性でも、風邪引いてダウンするんすねぇ…」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/26(土) 13:59:44.54 ID:Xf9LWvcho<> やっぱりステータス上昇してるのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/26(土) 15:27:49.34 ID:jQXq3TTmO<>

・・・・その夜



男(……)

男「ふぅー……よし、食うぞ」

< パクンッ…カリッ…カリッ……

< ゴクンッ……

男「……ピーナッツと変わらないな」

男「!」トクンッ…

男「くっ……体が少し…なんだこれ、痛ッ……」ガクンッ


男「…………………………」


男「治まっ…た?」

男「……あんまり変化ないな、『ちからの種』二粒も食べたのに」

男「まぁいいや、モンスターハント2日目……行くか」ギシッ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/27(日) 18:41:12.79 ID:KeDOF7j4O<>
スライム【ピキィーッ】ヒュンッ

男「っと」ブルンッ!!

< バチィンッ!!

< ビチャァッ!!


男(……慣れてくるとスライムの体当たりに合わせて大木槌で必殺ホームランでカウンターできる)

男(いや、やっぱり何か俺の……腕力が少し上がった……のか?)

男(まぁいいか…それより、なんだ……)


< ヒョコッ…ヒョコッ…

スライム【ピー】ホヨン

スライムB【ピー】ホヨン

スライムc【ピー】ホヨン


男(さっきから集まってきてないか……!?)ギシッ


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/27(日) 18:48:41.02 ID:KeDOF7j4O<>
男「でぁッ!」ブルンッ!!

スライムB【ピギッ…!!】ビチャァッ!!


< クルン!!

男(背後の奴も…!)ブルンッ!!

スライム【ピッ…キッ】ビチャァッ!!


男「よし……!?」

スライムc【ピキィーッ】ヒュンッ

男(しまっ……)


< ドゴォッ!

男「ぐっ……」グラッ

男(油断した……調子よく倒せても、こいつらは問答無用で襲いかかってくる)

男(油断するな…どうせ、現実じゃぁないんだ)

男(だから……もっと意識を集中させよう……)


男(何も考えちゃ駄目だ……殺すんだ)

男「ッ!!」ブルンッ!!


< ビチャァッ!!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/27(日) 18:55:05.34 ID:KeDOF7j4O<>

────────── ビチャァッ!!


───── ブォンッ!!


────────── ビチャァッ!!


───── ブォンッ!!


────────── ビチャァッ!!


───── ブォンッ!!


────────── ビチャァッ!!


───── ブォンッ!!


────────── ビチャァッ!!


───── ブォンッ!!


────────── ビチャァッ!!


───── ブォンッ!!


────────── ビチャァッ!!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/27(日) 19:03:14.63 ID:KeDOF7j4O<>


男(……おかしい)


男「ハァッ…ハァッ……ハァッ…!……〜っ…!!」

男「多すぎる……もう何回、木槌を振り回してるんだ…」へたんっ

男(休憩でもしないと……帰るのすら難しくなりそうだ…)ハァッ…

男「……ハァ…ハァ…」


< ガシャッ…

男「!」ビクッ

男「ひっ…!?」バッ!!



さまよう鎧【……】ガシャッ…



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/27(日) 19:13:30.06 ID:dl/lHJ1PO<> 雛見沢ならすでに殺人者 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/27(日) 19:16:11.78 ID:KeDOF7j4O<>
男(この……朽ちかけた鎧…バイザーから見える中は空洞といい…)

男(……)チラッ


さまよう鎧【……】

ホイミスライム【ホヨヨ…】フヨフヨ…


男(間違いなく……さまようよろい、と…ホイミスライム……ッ)ゾクッ

男「……」ギシッ…








さまよう鎧【……】

さまよう鎧「おおきづちの……武器、であるか」







男「……」

男「!!?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/27(日) 20:03:37.00 ID:2vjHEAbAO<> ( ゚Д゚)シャベッター <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/28(月) 00:44:34.33 ID:nb6bxnL1O<> お?
仲間にできるのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/28(月) 06:49:41.34 ID:CpZNjvv7O<> 仲間クルー? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/28(月) 10:40:38.61 ID:rKxepJJLO<>
ホイミスライム【ホヨヨ…】シュン…

さまよう鎧「仕方あるまい」


さまよう鎧「我等の姿を見破った者は未だおらぬが……何事も前例の無い事から始まるものだ」

さまよう鎧「ましてや、我等を討ち倒して力を手にしよう等と……先祖の戦ったあの一族を思い出すわ」

ホイミスライム【ホヨヨ…】



男(……もしかして)

男(このさまようよろいなのか、この近辺でスライムを統率していたのは)

男(ゲーム内でまともに喋れるモンスターなんて、それこそ友好的なやつかボスモンスター位な筈…… )

男「お前は……」



さまよう鎧「喋るな人間」



さまよう鎧「分かっているだろうが、我等はこの世界の者に非ず」

さまよう鎧「そして、見られていた以上この世界の人間に存在を悟られる訳にはいかぬ」

さまよう鎧「故に」シャキ…ン



男(駄目だ、やっぱりコイツ……!!)

さまよう鎧「貴様には死んで貰う」ガシャッ!!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/28(月) 11:03:19.57 ID:rKxepJJLO<>
踏み締めるアスファルトが、金属を擦る音を奏でた瞬間に撃ち出される砲弾。

違う。

俺の目の前に飛び出してきたのは砲弾なんかよりも凶悪で、もっと恐ろしい物だ。


男「なッ……!?」

ホイミスライム【ホヨヨ…ッ】ビュルルンッ!


スライム系モンスターで最もポピュラーであり、スライム同様に愛らしい青の体と愛らしい触手。

ホイミスライム、奴が先陣を切って突撃してきたのだ。


男(ホイミスライムが先手……くっ…ッ)

腕をクロスして触手の一撃を凌ごうとする。


だが、余りにも俺の考えは軽率だった。



──────── ズッ・・・パァンッッ!!!



男「……ッッ!!!??」ドシャァッ!!


風を貫き、音が聴こえるより先に、俺の体が後ろへ弾き飛ばされる感触。

そして壮絶な痛みが攻撃をまともに受けた左腕から伝わってきたのと同時に、夜闇に包まれた路上を炸裂音が響き渡った。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/28(月) 11:16:43.58 ID:rKxepJJLO<>
男「〜〜〜ッッ!! 〜ッッ!!」

男(今の……なんだ)

男(左腕の側面が皮膚をごっそり削られたように肉を出して……ッ、鞭でも喰らったみたいだ)

男(……!)ビクッ


凄惨な見てくれになってしまった左腕に戦慄している暇はなかった。

ホイミスライムの頭上を朽ちかけたあの鎧が舞い上がる姿が見えてしまったから。



さまよう鎧【シィィ……ッ!!】ギュォオッ!!







─────────【『兜割り』】 ─────────






<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/28(月) 12:55:56.79 ID:DmIjKZ7Zo<> 不思議なダンジョンの戦いかたとは違うのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/28(月) 14:41:18.50 ID:nb6bxnL1O<> おぉ!
いいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<>sage<>2014/07/28(月) 20:53:19.01 ID:H8s1Fyc10<> いかにゲーム中の勇者達が超人だったのか分かるな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/29(火) 08:57:32.27 ID:MGgYigNNO<> ターン制の背後にはこのようなやり取りがあったんだなぁ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/29(火) 12:16:38.05 ID:RgRONR7yO<>

体を全力で投げ出して回避しようとした俺の背中を、散弾の様に礫が叩きつけてくる。

そして、続いて襲ってきた衝撃波に意識を向ける事もままならない中で、俺は刹那に見たのだ。


猛烈に振り被ってからの着地と同タイミングに叩き下ろされるバスターソード。

数瞬前まで俺がいた位置を刃が穿ったその時、爆撃のようにアスファルトが撒き散らされ土砂すら噴き出した、その瞬間を。



男「ぎ……ッ…ぅわあああっ!!」ドザァッ! ゴロゴロゴロッ!!

男(や、ば…ぃ……殺されっ……)

男「……あ」



OL「な、なに? 爆発……?」ビクビク



激痛に喘ぎ、転がる様にモンスター達から離れる俺の前に居たのは……近所でよく見かけるあの女性だった。

恐らく仕事の終わる時間が遅いのだろう、とくに酒の臭いもなく、しっかりとした印象がある。

そして今、彼女は目の前で爆風にも似た衝撃波に吹き飛ばされた俺を見て驚きに満ちた表情を見せていた。


逃がさなくては。


そう考えていた筈なのに、俺はいつの間にか……


男「た、助けて……っ!! 助けて下さいぃッ!!」バッ

OL「っ?! キャッ…!!」ドサッ


……あの女性を押し退け、逃げ出し、目もくれずに走り去ろうとしていた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/29(火) 12:39:40.70 ID:RgRONR7yO<>
男「ひぅ…ッ、うわぁ!! うわぁぁあああ!!!」ダッ!!


何かのタガが外れた様に叫びながら、走り出していた。

思えば俺は、この夜の時間だけはどこか楽しい夢を見ている気分だったのかもしれない。

だから。

だから、と言い訳をして、俺は背後で突然の不幸に悪態を突いて立ち上がろうとするOLを1人残して。

自分だけ逃げ出してしまった、見殺しにしてしまった。



OL「もう…何なのよ……」ヨロヨロ



さまよう鎧「……」チャキッ

ホイミスライム【ホヨヨ…?】

さまよう鎧「念のためだ、この人間も消す」ヒュッ…!!



OL「……っ?」ズパァ……ッ

OL「…か……フッ…?」ブシュゥッ!!


< ドシャッ・・・!



さまよう鎧「追うぞ我が右腕よ、あの男……逃がすわけにはいかん」

ホイミスライム【ホヨヨ…】フワフワ…

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/29(火) 13:02:52.61 ID:RgRONR7yO<>
俺は必死に逃げていた。

家の方向とか、交番とか、そんなものを意識して走る余裕はなかった。

背中から疼く傷みと左腕から鈍く高まってくる焼かれるような傷み。

この2つの傷みが背を後押しするかのように、俺は幾つかの街灯の下を駆け抜け……そして、いつしか深夜の路地裏にまで逃げていた。


男「ハァッ…ハァッ…ッ!! ゼェ……!!」タッタッタッ


悪夢だ。

これは悪夢だ、質の悪い……上げて落とすタイプの夢だ。

そうだ、これは悪夢だから……逃げてしまっても仕方ない筈だ。




だから…………俺は……………………





ホイミスライム【ホヨヨ…】ヒュルンッ!!

男「ぁ……」

男(…まわり…こまれ……)


さまよう鎧「よくやった我が右腕……!」タンッ…!!


男(逃げないと……逃げて、逃げ…)




───────── 【『兜割り』】 ─────────




< ───── ゴガァンッッ!!


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/29(火) 18:58:57.44 ID:IbfKqfQCO<>
────────── パラパラ……ザリッ…「ケホッ……」



男(生き…てる……)グググ…ッ

男(……手も動く…)フラッ…


粉塵の中で戻る僅かな意識。

全身を打たれたと思える傷みが薄れる程に朦朧とした意識で、俺は静かに巻き上げられた粉塵の向こうで立つ影を見た。

さまようよろいは、俺を見失っていた。

そして右腕と呼ばれていた相方のホイミスライムもまた、同様に見失っていたのだ。

恐らく予期せぬ何かが奴等のトドメの連携を遮ったのだ。


だが、それを思考する余裕も体力もない。


男「……」

< ギシッ……


手には、これだけ取り乱しながら逃げていたにも関わらず離さなかったあの大木槌がある。

しかし。


男(……あんな化け物に、通じるのか…)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/29(火) 21:56:24.18 ID:FWdNhmf/O<>
男(……化け物…?)


何か、見落としは無いのか。

そう……あれだけ好きだったゲームの中で、自分はどれだけのさまようよろいを倒したのだろう。

いや、そうではない、それは自分ではない。

『勇者』は、初めから強かった訳ではない筈だ。



そうでなければ、『勇者』の成長を描かれる事など無いのだから。



男(これは……俺の夢だ、幻覚だ、全てが俺の望んだゲームなんだ)

男(いわばこれはボス戦……そうだ、あれは最初の俺にとってのボスだ)


粉塵が晴れる。

カーテンが開き切ったその瞬間、俺は再びあの殺人モンスター達と対峙しなければならない。

だがもう逃げない。

それは決して俺のシナリオでは、ストーリーの一角を飾るエピソードではないのだから。


ただ殴って勝てないなら戦略を見出だせ、それが『ゲーム』の醍醐味なのだ。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/29(火) 22:28:22.12 ID:FWdNhmf/O<>
うっすらと、ホイミスライムの影がはっきりとした輪郭を映し出していく。

それを見ながら俺は激痛を訴える身体を立たせ、そして構えた。


男(……レベルの問題だろうか)

男(いいや、ボスモンスターが通常のモンスターと違ってステータスが上のは当たり前)

男(だがこれは『リアリティのある敵』だ、そして相手は……)


思い出すべきなのだ。

さまようよろいが喋る事は問題ではない。

ボスの位置にいる事も問題ではない。

ホイミスライムが傍にいるのも問題ではない。


そう、問題なのは『強い理由』。


さまようよろいという下位のモンスターが、何故指揮官の役目をしているのか?

何故にあのさまようよろいは強い、そうではない。

さまようよろいは、強くはない。

レベルを間違えば確かに強敵だが、思い出すべきはそうではなく。

『兜割り』の行使、そしてそれを繰り出すに至る連携。


男(……そうか)


男(そういう事なのか)


ルールを理解し、それを自身が把握していく時の優越感が俺の中を満たしていく。

ボロボロの今にも死ぬように思える体に、力が僅かばかり戻っていく。

そして、次の瞬間。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/29(火) 22:43:47.02 ID:qt+3sBQnO<> しかし まわりこまれて しまった! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<>sage<>2014/07/29(火) 23:21:13.28 ID:+FnClYuR0<> てきのせんせいこうげき! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/30(水) 01:31:53.16 ID:1T1n4aTAo<> お前ら鬼かww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/30(水) 07:24:54.45 ID:VWvDgmBUO<> DQ3で初めてさまようよろいに出くわしてダメージのでかさにびびって逃げれず全滅、あると思います <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/31(木) 05:19:36.99 ID:BKLqAMXWo<> まだかなー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/31(木) 11:26:58.42 ID:Snya6zCwO<>
さまよう鎧「チィ…ッ、ぬかったわ……さっきのは一体…」


< ゴズンッ・・・!!


さまよう鎧「?」

さまよう鎧「!!」


粉塵は晴れ、残されていた筈の逃走手段はもう無い。

だがもう逃げない、逃げる必要はない。

ここからなのだから。


ホイミスライム【ホヨヨ…ホヨ……】ビクンッ…ビクンッ…

先陣を切ってホイミスライムが俺の動きを止める役割として先手を取り、

そして曲がりなりにもスライム以上の攻撃を受けて止まった獲物を狩り獲る。


男「……そうだ、だからお前は決まって追撃しかしてこなかった」

男「何らかの理由で『力』が上がっていても、本来のポテンシャルである素早さの低さはどうにも出来なかったから」

男「その鈍重な動きが、お前にこの狩人のような戦い方を強いたんだ」

男「恐らくその素早さはせいぜいが人並み程度……だけど」


不意打ちをまともに受け、訳も分からぬまま目を回すホイミスライムに木槌を添える。

そして俺は腕を振るい上げ……


────────── グチャァァッ!!


男「……俺みたいに『少しレベルの上がった人間』を相手にした場合、互角以上にまで持ち込まれかねなかった…そうだろ!?」


蒼い液体が噴き出し、飛沫を上げながら散っていく。

対峙するさまようよろいは、固まったように立ったまま。




さまよう鎧「……貴様………ッ!!」ギシィッ…!!




冷たい光を反射する剣を構え、静かにその殺意を俺に向けた。


<> 乙蛇<>sage saga<>2014/07/31(木) 12:15:33.09 ID:o9dK0bn00<> 反撃開始いい! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/07/31(木) 15:01:22.43 ID:Ucp8layoO<> おーーー
あつくなってきたな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<>sage<>2014/07/31(木) 16:13:19.74 ID:71U9wVqi0<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/07/31(木) 18:51:53.92 ID:T8I02sTbO<>
俺の中をこの時満たしていたのは、まるで漫画やアニメのような状況と、ゲーム通りのステータス勝負に、ただひたすらに興奮しているという事だけだった。

そして何より。


男(……ホイミスライムを倒した瞬間、体に力が湧いた気がした)

男(多分……もしかしたらこの感触がレベルアップなの…か?)


僅かに呼吸が楽になった感触に合わせて……腕に、手に、足に、更なる力が込められる。

昨夜、初めてモンスターと出会いそして初めて倒した夜。

あの時も同じ感触が身体を巡ったのだ、つまり本当にレベルが上がったのかもしれない。


男(昨夜から四回か三回はレベルが上がっている……だとすれば、今の俺ならこのさまようよろいと互角にやれる筈…)

男「……ッ、うおおおおおおおお!!!」


咆哮、そして踏み出す足。


さまよう鎧【シィィ……ッ!!】ガシャッッ


俺の眼前であの朽ちかけた鎧が、具足が、軋みを打ち鳴らしながら駆け出してくる。

数分前の俺なら逃げ出してすらいたであろうその重量感溢れる猛進は、今の俺にとっては酷くリアルな動きだとしか思えなかった。


これがあのゲームのプレイヤーには理解のできなかった戦いなのだ、と。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/08/01(金) 02:36:52.03 ID:6RRHrXK/O<>
────────── ビュォ・・・ンッッ!!


男(まともに受けるな……!!)バッ…!

男(こいつは自分の力が最大の武器だ)

男(真っ向からぶつかれば、タックルですら致命傷を負いかねない……なら!)


俺の背丈はある剣を軽々と一閃させる剣撃に、対して瞬時に踏み込み……木槌の側面を真横から振られる刃に合わせて構えた。

たった、それだけだった。


──────── ガガッッ!!


さまよう鎧【ッ…!! シィィイイッ……!!!】ズザァッ!!


たったそれだけでさまようよろいは大木槌の側面を数センチ削り抉るだけで、俺と擦れ違いを起こしてしまう。

憎悪に染まった声を漏らしながら立ち止まる鎧のバイザーから、光の無い眼が俺を刺し貫く様に見てくる。

苛立ちと自身の鈍重さから来る屈辱が明らかにさまようよろいの冷静さを欠かせていた。


男(行ける……本当に、俺ならコイツを…)

男「さまようよろいにも、勝てる……ッ」


さまよう鎧【シィィイイッ!!!】ガシャッッ!!


男「来い!!」


男(……コイツの剣の軌道は、大振りの一撃ばかりだ)

男(素人の俺でも読める……きっと日本の居合いとかの達人に比べればずっと遅い!)

男(倒す……ここでコイツを殺してやる…!!)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/09(土) 12:36:22.91 ID:fOrNQ4iSo<> 久しぶりに面白いの発見した!期待して待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/10(日) 11:49:08.47 ID:NHCaVb06O<> 続きが楽しみだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/10(日) 13:41:19.69 ID:53dmqOBsO<> なんか面白そうなのあった
期待する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/17(日) 18:20:19.25 ID:McuFmKO+o<> 焦らしやがる… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/23(土) 00:22:39.76 ID:Xm9AMuCEO<> まってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/08/27(水) 19:11:17.22 ID:ig1Mxx2gO<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/09/07(日) 00:52:43.55 ID:lLfPQR3uO<> 続きはよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)<><>2014/09/11(木) 17:10:20.68 ID:F/CyxFaMO<> ヽ( `o´)ノンゴンゴダンスの時間だあああああああああああああああ
v(`o´)vンゴwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwンゴンゴ若林♪L(`o´)┘
( `o´)∩ンゴンゴンゴwwwwwwwwwwwwwwww(岩嵜;) ンゴーンゴーwwwwwwwwwwww
(ノ`o´)ノンーゴンゴンゴ若林♪( `o´  )。ンゴンゴッ!(;´岩嵜)ンゴンゴンゴンゴ?ッ ヽ( 岩嵜)ノわ?かば?やし?♪
いかんのか(すまんな) ┏(`o´)┓ヨダ ヨダヨダヨダ 肩幅?♪ └(`o´)」ありがとうどういたしましてを忘れてる?┗(`o´)┓今の時代に終止符だ!(何をそんなに) 。・゚・(`o´)・゚・。
ゆくんだ若林(いかんのか!?) (`o´)勝負だ若林(いかんでしょ) o(`o´)o勝利を掴め!(お、若林か?)
┗┏┗┏┗┏(`o´)┓┛┓┛┓┛わかばーヤシの木ー ワイらがわーかーバヤシー♪
ちょwwwwフェイスブックにも若林が!?wwwwよ!フェイスブック民ゥー!wwwwww
(※^。^※)ツイッターから出る喜びを感じるんだ!wwwwwwポジハメ君可愛すぎワロタやでwwwwwwwwww
英語も練習中カッスwwwwwwwwwwwwWWWwwwwwwwwwwww???????wwwwwwwwwwWWWWWWwwwwww
(ちな東京都在住若林瑞穂23歳やけどここにいては)いかんのか!?!?wwwwww大村「駄目だろ(享楽)」←草不可避wwwwwwww
なお、好きなスポーツはサッ川カー児ンゴwwwwwwマシソンですwwwwwwwwwwぐう蓄すぎぃ!wwwwwwwwwwww
嫌い選手はメンチと本田とノウミサンやでwwwwww好きなのはメッシとチックやさかいwwwwwwwwwwww
アンチは若林騒ぐな!wwwwwwwwwwンゴオオオオオオオオwwwwwwwwカッタデー(33-4)wwwwwwww
こんなあへあへ若林まんやけどよろしくニキータwwwwwwwwwwwwwwww
ヨロシクニキー、小並感wwwwwwンゴンゴニキー、ぐう震え声wwwwww
ンゴンゴwwwwゴンゴンwwww(ぐう畜ぐうかわ)アンド(ぐう聖)
日ハム内川「(川ンゴ児ゥ)いかんの茶?!?」wwwwwwwwwwwwww
なんや!若林やんけ! (その顔は優しかった)
う?んこのホッモなカッス(お、察し)(あ、察し)あっ…(迫真)
なおわいはイライラの模様・・・(ニッコリニキ
ポロチーン(大合唱) ←チーンwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
大松「お!(お客様ニキンゴ)?よろしくニキファル川GG児WWWW?????W」
お茶茶茶茶茶ッ茶wwwwwwwwwwwwwwww(オカン)
あのさぁぁ!あくホリデイ(憤怒)←(適当ニキ)
↑ああ?^^これは教育開始だろなあ^^(指圧)
ちょwww WAKA林に草生える可能性がBIRESON!?www(迫真ニキ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/09/18(木) 00:27:12.73 ID:wkaHLZt+o<> まだかねー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/05(日) 09:43:26.99 ID:oGQqLSkAo<>
男「ッ……だぁあッ…!!」

─────── ガリガリガリィッ!!


声を張り上げ、限界まで体の重心を下に落としていく。

そうして同時に襲い掛かるさまようよろいの、横薙ぎの一撃を擦れ違う様に受け流して後ろへ走り抜ける。

……当然、抜けた瞬間にさまようよろいへのダメージを与える事を忘れない。




─────── ゴンッッ!!
                   ミシィッ!! バギンッッ……!!




さまよう鎧「ぐぉ……ァッ!!…?……」ズシャァッ!!


振り向き様、鎧の腰部分へ振り抜いた木槌が打ち付けられる。

僅かに破片が散り、朽ち欠けていた鎧が更に亀裂を深めて悲鳴を挙げていた。

そう……大きく体勢を崩して、遂に膝をついていたのだ。


男(常に動き続けろ……それしかコイツには勝てない、殺される……!!)

男(殴れ! 振れ! 叩きつけろ!!)ブンッ!!


─────── ゴンッ!! ガッ…ガツッ! ガンッ!!


さまよう鎧「ぐゥ…ぉ、お……ッ!!……がぁ…!」ミシッ…ミシッ…


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/05(日) 09:49:14.00 ID:nLR1g2cto<> 待ってた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/05(日) 11:18:51.05 ID:pr2z/ZgkO<> やっとだー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/05(日) 12:25:28.15 ID:A93OTcd0O<>
─────── ガギィッ!!

男「っ……!?」


一閃が駆け抜けたのと同時に、俺の手から大木槌が飛ばされそうになった。

それが力任せに振った裏拳によるものだと気づいたのはその後。

そして、一瞬の動揺が


さまよう鎧「シィ……ッ!!」


────────── パァンッ……


男「……?」

何かが横一文字に薙がれ、俺の左腕を叩きつけながら引っ掛けた。

だがしかしそれ以上の変化は無く、俺は全身を僅かな一瞬で動かす。

例え裏拳で弾かれようと、大木槌は俺の手にまだ握られているのだから。

ここで止まって生き残れる筈は無いのだから。


───── ヒュッ ─────


さまよう鎧「グ……、まッ……」

振り被り、大木槌を握り締める手を強めて。

刹那に感じた死の危険に声を漏らす目の前の鎧に、俺は一切の加減はしなかった。


────────── ガギュッッ!!


腕に込められる全力を乗せた一撃。

さまようよろいの頭部であるバイザーに大木槌が叩き込まれた瞬間、それまで朽ち欠けていた鎧が遂に砕けたのだ。

金属が悲鳴を挙げ、形が捻り曲がる音が鳴り響き、バイザー部分のボルトが弾かれた様に宙を舞う。

俺は……軋む大木槌を更に振り上げた。





────────── ゴッッ!!!




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 02:06:34.68 ID:9lTw/5eMO<> よしっ
来てた! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/06(月) 16:04:14.70 ID:cndlDU9qO<>



────────── ポワァ・・・ン……ッ





< ガキィンッ!! カラカランッ……!

男「はぁ……ッ、っぜぇ、はぁ……ッ…はぁぁ…っ」ドサッ


どれだけの時間が経ったのだろう。

僅かにさまようよろいが動けば、それよりも速く叩きつけて砕き。

僅かにさまようよろいが揺れればそれよりも速く強く叩きつけて粉砕した。

それこそ、右手に握っていた大木槌がボロボロになるまで金属の残骸を叩き続けたのだ。


暫くして、遂にさまようよろいが黒い煙と僅かな光の残滓に包まれて消えるまで。


俺は一切の身動きも出来ず、さまようよろいの残滓から落ちてきた腕輪と鋼の剣をただ見ていた。


男(……あの、赤い腕輪……………)

男(なんだ……? 見たことがある、確か……あれは……)フラッ…

< ドサッ


男「ぅ……う………」ズル…ズル…

男(そうだ、思い出した……)

男(……これは…『豪傑の腕輪』………)カチャ…パチンッ…


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/06(月) 16:38:13.67 ID:cndlDU9qO<>

〜〜 1ヶ月後 〜〜



男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」

男「今まで真夜中にひっそりと魔物を倒してたけど」

男「なんというか……メラとか放火魔の素質に目覚めたんじゃないかと心配になる」

男「……」


男「メラッ!」バッ


< バカァアンッッ!!    カランッ! カランカランッ…!


男(多分、掌を向けなくても炎弾は出る)

男(速度も威力も……殆ど銃弾だな、現代の人間に撃ったら即死だ)

男(……俺の賢さが一定を越えているなら、そっちの補正もあるかもしれないが…期待しても無駄だな)

男(メラでこの威力……スライムやホイミスライム、奴等の攻撃力を元に考えてみれば自然かな)

男「……あ」


男「あー……またか、やっちまったな」

男「朝日を迎えちまったかー、本当にこれが病気なら俺は本当に末期だな」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sаge<>2014/10/06(月) 17:46:51.63 ID:mWF1W2FUO<> いよいよスレタイに追いついたか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 18:00:25.30 ID:1fMiyZpXo<> 乙
面白い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)<>sage<>2014/10/06(月) 18:42:29.67 ID:1o8mnA6d0<> 終わりですか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 19:26:13.11 ID:Yl0FK/tSo<> 更新を待ってたよー乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/06(月) 19:44:01.47 ID:cndlDU9qO<>
────────── ダンッ!! タタタタタタタタッッ・・・!!


男(『狩場』にしている廃屋の三階屋上から飛び降りてから、いつも通り自宅に向かってフリーラン……)ダッ!!

男(我ながら、人間としてそろそろ自重しないとって気はしてきた……でもやめられない)

男(毎日が楽しい、一部の事に目を閉じれば毎日が楽しくて仕方ない)


< 「ぎゃぁあああっ!?」


男「っと……」ピタッ…

男(……そう、一部の事にさえ………目を閉じれば……)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 20:21:27.67 ID:QT8DmN9UO<> 男なら誰もが憧れる生活の一つではある <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 20:34:59.50 ID:D1TXUpDXO<> ようやっと来なさったか
9月末まで6時間ごとに更新来てないか確認してた俺だぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/06(月) 22:06:28.44 ID:cndlDU9qO<>

< ガシャッ…ガシャッ…


リーマン「うわぁあああっ!! なんで腕が斬られて……っ、たすっ…助けてくれ誰かぁあ!!!」


さまよう鎧【シィィ……】ガシャッ…ガシャッ…

ホイミスライム【ホヨヨ…】フヨフヨ

ホイミスライムB【ホヨヨ…】フヨフヨ


男(………1ヶ月前、俺がこの生活になる様になった時から世界は変わった)

男(不可視の傷害、殺人、猟奇事件は日本だけでなく……ほぼ世界中で確認されるようになった…らしい)

< 「ひっ、ぃ……ぎゃぁぁああ……ッ…!!」

< ビシビシビシィッッ!! ズパンッ!! ブシャァァア!!!


男(……何より、日が経つに比例してスライムよりもレベルの高いモンスターが出てきてる)

男(半月前まではホイミスライムすら最大の強敵だったのが、今ではさまようよろいすら普通に出てきてる)

男(まぁ……明け方に出てきたのは初めて見たけどさ)スッ


ホイミスライムB【ホヨヨ…】ヒューンッ


男「来いよ、新技を試したいんだ」ボォウッ


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/10/06(月) 22:13:44.70 ID:cndlDU9qO<>

< シュゥゥ……ポワァ…ン…


男「ふぅ…ホイミスライムはメラ2発で行けるな」

男(さまようよろいは近づかれなければ、一発当てて回り込めば倒せそうだ……けど)

男(丸腰で挑むものじゃないな、背中に一太刀受けて血まみれだ……やくそう一枚消費か)ムシャムシャ


< パチャッ……

男「!」


リーマン「」ピクンッ…ピクンッ…


男「……っ」ダッ!!

男(……そう、『これ』だ)

男(俺の見ている世界も、能力も、何もかも俺以外には見えてないし見てないものだ)

男(だからなのかもしれない……俺は、怖い……)

男(この楽しい生活が、誰かを助けようとして『実は寝たきりの俺が見ている夢』なんて幻想で終わってしまうのが、堪らなく怖い……)

男(だから……その『現実』を見ないために、俺は誰かが死ぬのも……モンスターと戦うのも、俺の妄想だと思うしかない)

男(……消えてしまいそうで、どうしようもできないから)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 23:46:06.08 ID:9lTw/5eMO<> 薄ら怖い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/06(月) 23:46:39.55 ID:9lTw/5eMO<> 薄ら怖い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/10(金) 17:52:15.87 ID:US1EcmHlo<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/10/14(火) 03:44:53.66 ID:QfI/oGQLO<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/10/24(金) 00:21:57.74 ID:hO0Ur3pvO<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/11/06(木) 00:18:18.62 ID:3r09ct8JO<> まだかー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/11/06(木) 18:19:25.78 ID:cL51kt9Co<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/11/22(土) 14:31:49.60 ID:UAWrTLSAO<> まだー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/11/24(月) 09:26:25.25 ID:YQd2ILXco<>

< ガチャッ…バタンッ!

男「……大丈夫、目を閉じれば……問題ない」

男「……」

< ズルズル……


男「はぁ……」

男「着替えたら会社に行こう、それでもって……」ヨロヨロ…

男「いつも通りだ……今さら振り返っても、後悔しても、『もう助けられないし、見捨てた事に変わりはない』んだから……」ヨロヨロ…


男「ん……?」

男(なんだ、またタンスが開きっぱなしになってる気がする)

男(気のせいか?)

男(だとしたらヤバイな俺の頭、いや……もうやめよう…それより仕事だ仕事)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/11/24(月) 09:52:42.17 ID:3kTKt5b40<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/11/24(月) 10:08:30.89 ID:6UIM6gtG0<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2014/11/24(月) 15:16:02.33 ID:QyBdbqnvO<> セシウムまみれなのは関東では柏だけ

まあ、松戸に住んだほうが
都心にも近いし、駅もキレイになるし、放射能もないし
全然いいのは間違いない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/11/26(水) 18:00:19.02 ID:HWt39IHIO<> みじかっ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/12/02(火) 08:06:07.91 ID:u9KseOJDO<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/12/03(水) 19:52:17.28 ID:22XqSC86O<>
< ガチャッ


男(……いつものルートで行くか)

男(いや、今日は電車を使おう)

< カチャンッ

男「ああ……外して行かなきゃな」チャカチャカ…

男(『豪傑の腕輪』、シリーズ次第では力の基礎を25の値を上昇させるアクセサリー……)

男(とはいえ、殆どのDQ作品では15しか上がらない筈の代物だ)

男(……)

男(それでも日常生活でまともに過ごせない位には力が上がる、だから出勤時には外してる訳だ)


男(あの夜に戦ったさまようよろい、奴が特別な存在だったって事だろうなぁ)グググ……ッ

男「さて……行ってきます」





────────── タンッ・・・!

             ・・・シュタタタタタタッッ!!! ──────────






<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/12/03(水) 20:16:51.34 ID:zYR1oTx40<> まってたー! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/12/03(水) 20:50:24.06 ID:d8MWypzw0<> 面白いですな
頑張って完結させて欲しい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2014/12/03(水) 22:27:31.35 ID:22XqSC86O<>
男(この時間なら余裕で間に合うな)

男(駅までは極力、人に見られないように建物の隙間を縫いながら走る)ダンッッ

男(フリーランニングはスーツでやるとボロボロにしちまうしなぁ、パルクールで会社行けたらどれだけ楽しい事か)

男(まぁ、【深く考える必要はない】訳だけど)タンッ


スライム【ピキィーッ】ヒョコッ

男(……そう言えば他にも変わったな、この1ヶ月)

< ゴッッ

スライム【ピギィィ……】ボシュッ…ポワァン…


男(例えば、このスライムの出現頻度)ニチャァ…

男(他の強力な奴等に比べて、コイツらは昼間でも物陰に出てくる様になってる)ダンッッ

男(……まぁ、レベル上げ出来るから良いけど)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2014/12/04(木) 20:57:57.45 ID:SYCcphtkO<> きたっ!
待ってたよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2014/12/21(日) 22:34:10.69 ID:UPf94eJoO<> はよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2014/12/25(木) 10:55:39.67 ID:2lLOmHTUO<> 見てるぜ!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/06(火) 11:55:48.46 ID:LjSrKTWWo<> 待ってるよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/18(日) 12:18:11.64 ID:DsU91kcqo<> 夜な夜な凶器を片手にうろつく男
真犯人は見えない、倒すと消える
警官殺害の凶器所持
男アウトですわ〜 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/29(木) 19:39:32.39 ID:vqFkfgCiO<>
【会社】


男「おはようございます」

女「あ、おはよー男くん」

男「今日は溜まった仕事片付なきゃですねー、終わったら一階のカフェ行きません?」

女「んー、それより気になる事があってさ? 聞いて聞いて」

男「あれ、先輩確かこないだ下のカフェにできた新メニュー食べたいって言ってましたよね?」

男「それとも今夜は飲みに行きますか?」

女「やーだよ、こんな物騒でホラーな世の中なのに外なんて出歩けないよ」

男「じゃ、どうして?」

女「ほら、うちの主任だよ」

男「主任さん?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/29(木) 19:55:25.71 ID:vqFkfgCiO<>
女「ほら、主任さん……ここ1ヶ月ずっと会社を有給使ったりして休み続けてるでしょ?」

男「あー……」

女「これは他の上司に聞いたんだけど、その理由って精神的な病から来る幻覚が原因なんだって」

男「え、幻覚?」

女「そうそう」

男「通院してるんですかね、いやそれより大丈夫なんですか主任」

女「分かんない、レイプされたんじゃないかって噂もあるんだけど曖昧だし」

男「そんな……あの主任が…」

男「……で、主任の事が気がかりだと?」

女「うん、結構酷い幻覚らしくて最初の三日間はなにがなんだか分からなくて誰か向かわせる話まであったらしいの」

男「重症じゃないですか……麻薬じゃないっすよね、まさか」

女「多分……? なんでも、ドラクエのスライムが家の外を夜中うろついてるって言ってたらしいよ……」



男「…………は?」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/29(木) 20:01:14.76 ID:VlnolPhFO<> 1ヶ月はやばいな…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/29(木) 20:17:35.90 ID:vqFkfgCiO<>

───────── 『ど、どうしたの男くん……急に』


───────── 『先輩、主任は……もしかして夜中に徘徊するようになったとか、ありますか』


───────── 『わ……わかんないよ、でもずっと自宅療養とかで精神的に回復するの待ってるみたいだよ』


───────── 『その話をしていた上司の名前は? それと、主任の連絡先を知ってたら教えて下さい』


───────── 『男……くん…?』






◇◆◇◇◆◇◇◆◇






男「……ここが、主任の住んでるマンション…?」

男「嘘……だろ」

男「なんで、なんで誰も気づかねぇんだよ……」


男「このマンション、氷漬けにされてんじゃねえか!!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/29(木) 20:41:53.63 ID:X+WO8EyXO<> 初ダンジョンってとこか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/29(木) 21:05:25.74 ID:6bYqqCgyo<> いいね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/29(木) 22:21:54.06 ID:y4AzBc19O<> 待ちに待ってた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga sage<>2015/01/29(木) 22:35:58.36 ID:ryY4HEZKo<> 新キャラの登場だな! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/30(金) 07:52:33.15 ID:1XITuCpXO<> きたっ
パーティ組めるのかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/30(金) 09:43:12.35 ID:jJ5Bu7EHO<>

男(……気づいてない、のか?)

男(いや違う、凍らされてるのが出入り口とかじゃないからだ)

男(つまり見えてない、でなきゃこんな明らかにヤバい物件……ニュース沙汰だろ)

男(…………)


< ゴソゴソ……


男(『豪傑の腕輪』はある、万が一モンスターが出ても多少は戦える)カチャンッ

男(剣を家に取りに行きたいけど……マンション内だ、狭い中で振り回す気になれない)

男(……主任の身に何かあったとして、それを助けられるのか?)

男(んー……まぁ、とりあえずあれだ)

男(正面玄関から行ったらカメラに映る、適当な所から二階まで跳ぶしかねぇな)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/30(金) 09:49:48.20 ID:jJ5Bu7EHO<>
【氷のマンション・2F】


──────── スタンッ……!



男「っと、と……!」

男(思ったより凄いな、かなり分厚い氷が内部の天井も通路も全部凍らせてる)

男(モンスターがやったとしたら……なんだ、まさか何処かの妖精の国を冬にした女王じゃないだろうな)

男(メラで溶かせるかもしれないけど……どこまで俺が連射出来るか分からないしなぁ)

男「ってか寒っ」ブルッ



< ヒュォオオオオオ………………


男「……今の、風か?」

男(やっぱりなんかおかしいな、糞……会社のスーツのまま来るんじゃなかった)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/30(金) 10:05:31.67 ID:jJ5Bu7EHO<>
< カツン……カツン……


男(……主任の住んでるのは六階だ、上がるなら階段だと思ってたんだがな)

男「普通、階段の扉まで凍らすかよ……おい」ガチャガチャ

男「どうするかね、これ」

男「……」

男「メラッ!」バッ



< バァンッッ!!      ジュゥゥ……



男(……割れない溶けない、なーんてダンジョンの氷みたいな性質だったらやばかったな)

男(とりあえずマンションの住人に見つかる前に行こうかね)ガチャッ

< カツン……カツン……


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/30(金) 15:06:55.75 ID:i5M4loLe0<> 続きが気になる。
ついにパーティでも組むのか?? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/30(金) 16:25:43.71 ID:spK/MpUDO<> >140
私のパンティを組んでみるか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/30(金) 16:27:00.86 ID:spK/MpUDO<> >139 だったパンティ履かないでスカート散歩の刑に服してきます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/01/30(金) 17:56:40.12 ID:sX+jbCAyO<> 面白いね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/30(金) 21:44:59.54 ID:jJ5Bu7EHO<>

「……あれは、男…さん?」


「こんな時間に何をしてるの……」


< バァンッ


「!」


「魔法……ということは、男さんも?」


「……違う、そんなはずない」


「あれはモンスター、そう……魔物」


「…………倒さなきゃ……私が世界を守るんだから、私が……殺さなきゃ…」


「ごめんね男さん、ううん、似てるだけの魔物だよね」


「行かなきゃ……」ダッ……!!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/30(金) 21:48:25.55 ID:gTdScLTPo<> モシャスとかあるから仕方ないな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/30(金) 22:15:08.46 ID:jJ5Bu7EHO<>

【氷のマンション・3F】



男(クソ、四階までの階段は崩れてる)

男(……いや、というかある意味ではこれって重要な崩壊な気もするな)

男(ここの住人が全員エレベーター使ってるとしても、一人はこの非常階段使うんじゃないかな?)

男(あー、とは言ってもたまたま使わなくて気づかれない、なんてのもあるか)

男(もしくは…………)


< ヴオゥンッ


男「は!?」バッ





アルミラージ【………】スタンッ

アルミラージB【………】スタンッ

アルミラージC【………】スタンッ

アルミラージD【………】スタンッ

アルミラージE【………】スタンッ



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/30(金) 22:26:43.41 ID:jJ5Bu7EHO<>
男(……紫色の毛並み、額の一角、あれは……アルミラージ?)

男(って、ふざけるな……! あいつら何処から出てきた!?)

男(さっきの音もなんだ? まずい、さまようよろい程では無いにせよこんな狭い通路じゃ……!!)


────────── ダダッ!!


アルミラージC【キィッ】


男「はッえぇ……!!」バッ

男「!?」



アルミラージE【キィッ】ダダッ!!

アルミラージ【キィッ】ダダッ!!

アルミラージB【キィッ】ダダッ!!


男(ヤッ……べぇ…………!!?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/30(金) 23:59:46.89 ID:4kf69vC/o<> 謎が深まるね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/01/31(土) 01:30:28.43 ID:QSlK2wMFO<> ぱふぱふのお姉さんも現実化してくれるんだよね…ウヒヒ

あぶないみすぎきた踊り子とか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/31(土) 11:26:57.15 ID:fUluSgMLO<>

< ゴッ!!


男(落ち着け落ち着け!! よく見ろ、危惧すべきはあの一角だろがッ)ズザァッ

男(間一髪避けたとはいえ、刺されれば重傷)

男(一角が半ば以上、氷の張られたマンション壁のコンクリートに突き立てられてやがる……防ぐのは無しだ)


男「メラッ!」バッ


< ボンッッ!!

アルミラージC【ギィッ!?】ドシャァッ


アルミラージE【キィッ】ダダッ!!

男「ッ……!」ヒュッ


──────── グシャァアアッ

< ドシャァッ……ポワァン……


男(メラで吹っ飛ばした奴はまだ生きてる、なら殴って倒す方が早そうか)

男(落ち着け……落ち着け、さまようよろいに比べたら何も恐くねぇ……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/31(土) 11:36:15.03 ID:fUluSgMLO<>
< ダダッ!!

< 「らぁっ!!」ヒュッ

< グシャァアッ!……ポワァン……


< 「よし……カウンター決めれば頭を潰せるな」

< 「来いウサギ共!!」












【……シィィ…………】

【……】

< チャキンッ

【…シィィ……ァアァハハァハハハハあハハハハッッ!!】ケタケタケタケタ


───── ヴオゥンッ ─────












<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/31(土) 11:55:28.18 ID:fUluSgMLO<>

< 【 アァハハァハハハハあハハハハッッ!! 】



男「っ!?」ビクゥッ


真夜中のマンション、いや、近辺全体にすら響き渡る様な甲高くもどこか低い笑い声が鳴った。

それは戦いに集中していた俺でさえ、足が竦む程の異質な警告音に聴こえたのだ。

現に目の前のアルミラージも動きを止めて……



────────── ヒュルンッ……



アルミラージ【キッ……ギュア 】



……動きを止めた瞬間、アルミラージの横にある『住人の部屋から』扉ごと一閃が薙いだ。

そして俺がその一瞬の光景に凍りついていると、予感していた結末が訪れた。


< ズルッ……ビシャッ…ポワァン


男(ッッ……ッ!!)


アルミラージの体が遅れて分断され、氷の張った通路床に崩れ落ちる。

消えていくモンスターの残滓を見た俺の体が即座にマンションの外へ飛び出そうとした。

何も考えていない、反射的な逃走。

しかし。

手摺に足をかけた瞬間にその行動は遅かった事を俺は思い知らされた。


堕ちる様にマンションから落下する俺を追いかけてきた、1体の死神によって。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/01/31(土) 13:45:52.27 ID:fUluSgMLO<>

< ヒュゥゥゥッ……

男(……ッ)バッ




───── ヴオゥンッ ─────




男「今の……!?…嘘だろ…」

男「こいつ、たしか……」ヒュゥゥゥッ





死神【 アァハハァハハハハあハハハハ……アハハハハハハハハハハハッッ!! 】






男(ドラクエ2か…? 死神なのは間違いないだろうが……ッ)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 11:26:10.01 ID:AYvWS+r8O<>
手摺から飛んだ俺の背後から、空気を布が叩き煽る様な音を慣らして現れたのは死神。

扉という障害物をすり抜け、凍りついた手摺を乗り越えながら、高速で浮遊するその橙色の煙にも見えるローブに身を包んだ者。

手に持つのは、一目でそれと分かる巨大な鎌。

そして何よりも……鳥肌が立つ程に白い顔の中で光る赤い眼と裂けた様に笑う口。


さまようよろいや、人を撲殺するおおきづち等とは決して違う種類の恐怖。



男「うぉわぁあああああああ!!!!」バッ

男(だ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ……!! 攻撃、冷静、お、落ち着……)



唇が震えて呪文を叫ぶ事が出来ない。

もうすぐ地面のアスファルトに叩きつけられてしまうのに、俺は眼前に迫る死神から意識を逸らす事が出来なくなっていた。


死神【ァァああははァはァはあはははァはハッ!!!】


死神の鎌が高速で回転し、夜空を背後にした切っ先が突き立てるかの様に俺を…………



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 11:39:46.44 ID:O5W7ZiLxO<> (お、キルバーンか?) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 11:55:34.13 ID:AYvWS+r8O<>

────────── 「『ヒャド』ッ!!」



死神の鎌が振り下ろされ、俺の胸を地面に縫い付けるより早く、何処からか撃ち込む様な声が走る。


死神【シィッ……!?】


直後、二本の太い……淡く蒼白に光る矢が死神を側面から襲ったのだ。

反射的に、俺は矢が飛来した方へ視線を移そうとする。

……だが同時に俺は、長く感じた僅かな一瞬の出来事を目にしながら遂にアスファルトへ背中から叩きつけられてしまった。


< ドッッ!!

男「ぅぐはァッ……っ…!!」


咄嗟に後頭部へ手を回していたものの、心臓がバウンドするにも似た凄まじい衝撃に打たれ、揺さぶられた意識が一気に潰されてしまう。

目蓋を開ける力すら、気怠くなり……そのまま俺は全身の力を手放した。



<     「 ?  っ!!    っ」



誰かが俺の体を揺さぶっている。

何処か、久しぶりに聞いた声の筈なのに、返事が出来ない。

数瞬して揺さぶってくる相手は俺が意識を戻さないのが確実だったからか、そのまま強引に俺を背負うと走り出した。

そうして……俺は顔に当たる夜風を気持ちよく思いながら、僅かな意識が完全に途絶えた。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 13:23:19.83 ID:QaOve74VO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 13:27:55.98 ID:hZ/QKNIzO<> 意識が戻ってボンヤリと瞼を開けると見知った顔の女性が俺の上に跨り腰を激しく上下させていた。

それと同時に激しい快楽が俺を襲い腰を降っている女性の膣に俺の精をぶちまけた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 14:31:14.71 ID:8KJAfKjM0<> >>157
一瞬>>1かと思ったじゃねえか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 14:42:51.61 ID:J+g53hhjo<> >>157
嫌いじゃないけど紛らわしいじゃねえか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 15:49:29.95 ID:AYvWS+r8O<>


────────── ・・・


< タンッ…タンッ……

男(…………ぅ………)


誰かが、俺の胸の辺りに両手を乗せて体を揺さぶっている。

目蓋は閉じているが、その向こうは明るい。

恐らく俺は助けられたのだ。


< グイッ……ヂュップヂュップ…タンッ…タンッ…


しかし、規則的な揺れに応じて俺の体が熱くなっていく。

何が起きているのだろう、そう考えるのと同じ時に俺は自然と手を自分の腰の辺りへ伸ばしていった。

同じく熱い汗ばんだ太股が指先に触れ、そこへそっと手を伸ばして掴み撫でる。


男「っ…っ…っ……ぅ……あっ…?」

< 「ぁ ♥ んんっ… ♥ はぁっ ♥ あぁあああんっ! ♥ ♥ 」


意識が戻ってボンヤリと瞼を開けると、見知った顔の女性が俺の上に跨り腰を激しく上下させていた。

それと同時に激しい快楽が俺を襲い腰を降っている女性の膣に俺の精をぶちまけた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 15:52:33.08 ID:r6Ggp57a0<> えっえっ

えっ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 15:57:01.98 ID:AYvWS+r8O<>
< バサァッ



男「はッッ…………!!?」



男(い、今のは……夢?)

男(くそ……股間が大変な事に……ッ)グッショリ


< 「…………えーと、おはよう男さん」

男「ッッッッ!!!??」ガバァッ!!



主任「そ、そんなに驚かないでよ……あと、しゃ、シャワー使って良いから、少しは冷静になったら?」

男(……主任?)

男(ていうか、俺……夢精してぐっしょりーぬなパンツ履いてんのな、そりゃ冷静になれとか言われる)


主任「……ちなみに、それ以上近寄ったら警察に突き出します」


男(ああ、しかも溜まってただけに濃ゆい精子の臭い漂ってるしそりゃ警戒される……)

男(最悪だ……死にたい)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 16:08:18.17 ID:reMjCWZOo<> 拾ったwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 16:23:38.40 ID:QMHFHuK3o<> やるじゃん <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 17:14:06.64 ID:8KJAfKjM0<> うまいwwwwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 17:24:42.21 ID:eZzBEsTpo<> わざわざ拾うなよwwwwwwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 17:47:37.47 ID:BfRd121WO<> 死に瀕すると生存本能で性欲が上がるからね、仕方ないね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 21:17:04.89 ID:13XzNlHcO<> うまいけど調子に乗って2度3度と同じことする奴が現れないか不安 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 21:49:12.02 ID:AYvWS+r8O<>

【某ビジネスホテル】



男「……シャワーも浴びた、冷静にもなった」

男「それで……」

主任「待って」

男「?」

主任「まずはこっちの話を聞いて、試さないと私も信用できないんですよ」

男「試すって……そっちは俺を助けてくれたのに?」


< カラン……

男「……へ?」


主任「なにも言わずにその水、飲んで下さい」

男「別に構わないっすけど、主任……このコップに沈んでるコインは?」カランカラン

主任「……いいから、水を飲みなさい」

男「………………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 21:55:27.06 ID:AYvWS+r8O<>
< ゴクッ……ゴクッ……


男「……これで良いかな」

主任「…………」

主任「……ほん、とに…? 本当に今、飲んでたよね?」

男「え、ぁ……はい」

主任「…っ」


< ドサッ


男「ちょ、主任!?」

主任「ぅ…うっ、ぁぁ……っ」ポロポロ

男「なんで、主任……泣いてるんですか」

主任「ひっぅ……ぅあぁぁ…ん…っ」ポロポロ

主任「…っ……っく、だ……だって、私……ずっとこれは悪夢なんじゃないかって……ずっと……ずっと……っ!」ポロポロ

主任「誰もね…? 誰も信じてくれないんだよ?……テレビに映ってるのも外で人を襲ってるのもモンスターなんですよって……言っても…」ポロポロ

男「…………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 22:19:11.77 ID:fwFbvQaN0<> あぁ、そりゃ見えないものを見えるって言ってたらそうなるわな。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 22:30:40.41 ID:b52wU3ywO<> なるほど、魔翌力の水なのか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 22:55:45.98 ID:2S9VxzR2o<> ヒャドの氷でも溶かしたんだろうか
1ヶ月は長かっただろうな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/01(日) 23:08:42.89 ID:lXJpkQ/tO<> 建物凍らしてるのが主任説 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 23:34:29.51 ID:AYvWS+r8O<>
主任「ぅっ…ぇえ…ん」ポロポロ

主任「でも……でも……、私は頑張ったんだよ…っ」

主任「沢山のモンスターと戦ったし……沢山のモンスターを殺した……」

男「…………」

主任「…っ、だ、だけど……だけど……っ」ポロポロ

男「主任」

主任「……っ?」ポロポロ

男「ゆっくり、落ち着いたらまた話を聞かせて下さい」

男「俺は……多分、現実ですから」


主任「……っ…うん、うん…っ」ポロポロ


男「…………」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/01(日) 23:46:51.03 ID:AYvWS+r8O<>
【深夜・ビジネスホテル裏】


男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「…………」


男「………………はは」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/02(月) 08:42:02.79 ID:+TM7EgmRo<> 主任さんのレベルはどんなもんだろね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/02(月) 11:55:55.98 ID:eSweWb0NO<> 乙
普通の人なら主任みたいになるよな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/02(月) 18:24:42.17 ID:yUNqkdJhO<>

男(……主任も、見えてる)

男(さっき俺を助けた時にほぼ間違いなく、魔法を使ってた)

男(つまり見えてる、よな…魔物を?)

男(今は主任は部屋で寝てる、朝になったら聞くとしようかな)

男(だから、今は……今は…………)


< バサバサバサッ


ドラキー【キキキキッ】バサバサァッ

スライム【ピキーッ】ポヨンッ

アイアンアント【……】カサカサカサ…



男「……もう少し、頭の中を空っぽのままでいさせてくれないか?」

男(…………あぁ)

男(駄目だ、主任のせいだ……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/02(月) 18:52:13.62 ID:yUNqkdJhO<>
男「お゛あ゛ァァアアアアッ!!」バッ!!

スライム【ピィッ!?】ガシィッ


< ヒュン ────────── !!!

< ドッパァンッッ



ドラキー【キ…キキィ……?】ビクゥッ



男(……今までのは、やっぱり現実…………)

男(現実だとしたら? 俺は何をしてた…?)


アイアンアント【ギュィィィッ!!】シャキンッ

男「っ!」ズバァッ

男(……今まで俺って、何をしてたっけ…………)

男(妄想って事にして、人を何人見殺しにしたっけ……)


男「メラァッッ!!」

アイアンアント【ッッ】ボゥンッッ!!…ポワァン……


男(……見殺しに…した、っけ…?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/02(月) 19:08:10.80 ID:yUNqkdJhO<>
ドラキー【キキキキッ!】バサバサァッ

< スカッ

ドラキー【!?】


男(そうだ、見殺しにしたんだよな……俺は)ズザァッ

男(人が死ぬのを、平然と……助けにも入らないで)

男(最低だ、俺は……、最低だ……)ヒュッ


< ゴンッ!!……ポワァン……


男「…………」

男「…………」

男(自首……しようかな)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/02(月) 19:55:51.94 ID:yUNqkdJhO<>

< ヒュゥ……ンッ

男「!」バッ


さまよう鎧【シィィ…】ガシィン!!

< ガシャッ…ガシャッ…

さまよう鎧B【シィィ…】チャキッ


男(…………)

男(朝、まずは主任の話を聞こう)

男(それから俺の事を話す、自首についても……相談しよう)

男(主任を独りにする程、自分勝手に堕ちる訳にはいかない…と思う)


さまよう鎧【シィィイッッ】バッ!!

さまよう鎧B【シィィイッッ】バッ!!


男「夜明けまでにこっから俺の家とホテルを往復する間、お前らモンスターを一匹でも多く倒してやる……!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/02(月) 20:27:55.02 ID:kbptNA/rO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/02(月) 21:02:21.92 ID:8kn6U5mro<>




主任「……それ、もしかして『鋼の剣』?」

男「はい」

主任「あ…………」

男「?」

主任「な、何でもないです」

主任「何だか嬉しくて、男さんもドラゴンクエスト知ってるんですね」

男「あー……えっと、そうですね」

主任「……」

男「……」


男(……なんか、落ち着いたら気まずいな)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/03(火) 01:03:48.26 ID:Q6X1qf11o<>
< 「「………………」」



主任「……私が『見える』ようになったのは、1ヶ月程前の事でした」

男「……」コクン

主任「あの当時はまだ見えない存在の事はニュースでたまに見る程度で、私も特に気にしていませんでした」

主任「ただ、その日私は運が悪かったんだと思います……あの時は」

男「もしかして」

主任「襲われました、何も見えないのに何かが私を横から叩き伏せたんです」

主任「………その時に左腕を折られて、私は必死に逃げようとしたんですよ? でも駄目で……」

主任「何度か見えない何かが私を叩きつけ、吹き飛ばし、足まで潰しました」

男(………………よく生きてたな、この人)


主任「そして私は気がついたら、治っていたんです」


男「……」

男「?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/03(火) 01:27:53.33 ID:Q6X1qf11o<>
男「それってどういう意味なんだ……じゃなくて、どういう意味なんですか」

主任「私も訳が分からなかったんです、一瞬で体が温かい空気に包まれて、そのまま治っていたんです」

主任「同時に、今度は目の前に『スライム』がいてびっくりでしたけど」

男「ま、待って! いや、それはつまり主任が突然ダメージを回復させたと思ったら急に『見える』様になったってことっすか!?」

主任「そうなります、男さんは違うんですか?」

男「俺は違いました、けど……」

主任「なら、この話の続きにも驚くかもね」

男「今度は何ですか」

主任「他の見えない何かが、見える様になったモンスターを目の前で倒したんです」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/03(火) 10:58:58.80 ID:ljxNcNFJo<> 回復してくれたってことか…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 09:43:07.14 ID:D8zL3k2JO<>
男「他の見えない何か、って……?」

主任「分かりません、姿も形も分からない」

主任「何となく気配を探って手を振ったりしてみたけれど、触れられないの」

男「魔物、ですかね」

主任「分からないけど、助けてくれたんじゃないかって私は考えてる」

主任「……考えてた、が正解かもしれません」

主任「その時は必死に逃げたんです、他のモンスターも見えたから……悪夢みたいな気分になって、帰りたくなってしまって……」

主任「そうしたら途中で道に現れた魔物もやっぱり何かが倒してるんです」

男「……」コクン


主任「私は無事にあのマンションへ辿り着きました、けれど其処には名前も分からないモンスターが居たんです」

主任「……緑の衣を着た、魔法使いみたいで魔法使いとは違う魔物なんですけど」


男「緑の衣?」

男(そんなの幾らでもいるな……機種やソフトによっては大分変わったやつもいるし)

男(緑の衣……分からん)

男「杖とかは持ってました?」

主任「いえ……顔も隠してたので」

男「顔?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 09:49:53.26 ID:D8zL3k2JO<>
男「んー……ちょっとネットで調べてみます」

男「……」ポチポチ

主任「……」

男「……」ポチポチ

主任「……」

男「……」


主任「あの」

男「?」スッ


主任「……男さん、まだガラケーなんですねぇ」

男「えぇー……まぁ、愛着湧いちゃって、なんだかスマホとかに乗り換えられないんですよ」ポチポチ

主任「結構便利ですよ? スマホ」

男「なら次の週末買いにいくの付き合って貰えますかね」ポチポチ

主任「はい?」

男「ん?」

男「あ、ドラクエ まほうつかい で調べたら少し出てきた……顔も隠してたってのはこれですか?」

主任「……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/04(水) 12:45:55.22 ID:ucX+6+WqO<> ナチュラルに誘ったな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 13:37:16.91 ID:D8zL3k2JO<>
主任「これは違います、でもこっちのは……」

男「これ?」

男「……あー、作品によってはまほうつかいのグラですね」

主任「ちょっと貸してもらっていい?」

男「ぁあ、はい」


主任「…………これ」

主任「これ! これ、『ヒャダルコ』とか『ヒャダイン』を撃ってたの!」


男「え……………じゃぁ、それ………」


主任「『エビルマージ』ですね、私のマンションの前に居たのはこのモンスターです」

男「……」

男(エビルマージとか嘘だよな?)

男(かなりの高レベルモンスターだぞアイツって……!!)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/04(水) 13:46:39.71 ID:oH9UOs5+o<> エビルマージくらいならマヒャド撃てそう <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 19:44:00.81 ID:D8zL3k2JO<>
男「えー……と、主任?」

主任「はい」

男「本当に見たのはエビルマージだったんですか? ドラゴンクエストの中でもそいつはかなり特殊な部類ですよ」

主任「そうなんですか?」

男「そうなんですかって、主任はドラクエ3をやったこと無いんです?」

主任「無いかな、私が入ったのはドラクエ5からだったの」

主任「ほら……それから4と6、8をやってから7をやったの」

男(……DQMとかキャラバンハートはやってないのか、トルネコとか不思議のダンジョンも)

男(とはいえこの姿そっくりな上に、ヒャダインまで使ったのか)


男(…………他にいたか、こんな奴は)


主任「男さん」

男「?」

主任「続きを話してもいいですか?」

男「あ、はい……良いですよ」

男(主任にとってはどうでもいい、かもしれんけど……本当にエビルマージだったならやばくないか)

男(この一連の騒動、現象は、大魔王『ゾーマ』がやってることになる)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/04(水) 19:47:28.19 ID:at7JV3HWO<> リアルにゾーマとか絶望すぎるな…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 20:06:37.93 ID:D8zL3k2JO<>
主任「……マンションの前に居たエビルマージは私と、丁度横の辺りを指差して言ったんです」

主任「『試してみろ』……と」

男(試す?)

主任「その後は今思い出しても滅茶苦茶でした、目に見えない何かが……私の周囲を駆け回るのが分かったんです」

主任「そうしてると、マンションの中から大勢出てきたんです」

主任「あの死神が……」


男「エビルマージが呼んだのか」


主任「『あの時の私』は死神の動きはおろか、エビルマージが撃ったヒャダルコにすら気づけませんでした」

主任「時々、氷の太い針が私のお腹とか、肩とか……沢山刺さったりもしたんです」

< ……ギュッ…

主任「……凄く怖かった………」


男「…………」

男(メラであの威力だ、想像もしたくないや……)

男(だけど主任が今こうしていられるってことは……?)

男「それで、主任はまた助けて貰ったんですね…? 『その人』は」


主任「はい……大勢の魔物に囲まれたまま、私はどうにか部屋に入りました」

主任「そして、それから私は一週間……かな? 多分…………そのくらいずっと部屋に籠ってました」


男「ん?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 20:22:44.97 ID:D8zL3k2JO<>
主任「……?」

男「あ、いや、何でもない」

主任「…………」ふぅ

主任「……会社の人事部の部長さんに助けを求めても、誰も信じては貰えず、警察に言っても救急車だけ来る始末…………」

主任「毎日を震えながら過ごすしかなくて、それで……」

男「水、持ってこようか」

主任「……! …はい」ニッコリ


男(……今の話は全部本当なのか、色々突っ込みたい所はある)

男(ただ……)チラッ


主任「……」

< ギュゥッ……


男(あの悔しそうな、というか……耐えてる感じは、嘘ではない気がするんだよなぁ)

男(…………)

男(現実だと理解してたから、ああいう風に苦悩したんだよな)

男(多分俺よりよっぽど主任の方がまともな神経をしてる)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/04(水) 20:52:23.38 ID:D8zL3k2JO<>
< ゴクッ……ゴクッ……

< コトッ…


主任「ありがとう、男さん」

主任「……一週間経った頃、ですか」

主任「何かが割れる音がしたんです、ぱりーんって」

男「ガラス…?」

主任「分かりません、けど代わりに私の……ほら、脇腹」スッ

男「ちょっ……!」ビクッ

男「…………ぁ……」

主任「いきなりでした、壁ごと私を切り飛ばしたんです」

主任「正確には『壁をすり抜けて』、でしたけど……ね」


男「『死神』の特性です、あれは壁や建物……岩も通り抜けて移動できるから」


主任「そうなんだ……」

主任「……パニックになった私は部屋を出て深夜の外を見て唖然としましたよ」

主任「エビルマージが呼んだ死神は、殆ど減らずにマンションを囲んで……いや、多分あの時既にマンションは支配されていたんです」

男「住人……他の人は?」

住人「何部屋か見ましたが…………駄目でした」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/04(水) 23:54:05.68 ID:ro3s8LPgO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/05(木) 00:58:00.93 ID:dzq1NPPx0<> おつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/02/05(木) 17:16:39.64 ID:7QoBGuAUo<> やばい…
メチャクチャ面白くなりそう。
ほし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/05(木) 18:30:45.49 ID:WzEZ/mrLO<>
主任「……男さん」

男「ん、はい」

主任「それから私はどうやって生き残ったと思いますか?」

男「そりゃ、逃げたんじゃ?」

主任「はい」

主任「夜明けまで逃げ延びる、それを目指して私はあらゆる障害も通り抜けるモンスター達を相手に生き残りました」

主任「……でも逃げ切れるものではありませんでした、だからそんな時は…」

主任「『ヒャド』を後ろの壁に、撃ったんです」

男「壁に?」

主任「はい、あれ? 魔法がいきなり使える様になったことは驚かないんですか」

男「え、あぁ……そうだった」

男(死神の群れから生き残ってる事に比べたら、そんなに驚かないなぁ、今さら)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/05(木) 18:41:48.57 ID:WzEZ/mrLO<>
主任「これは逃げている最中に気づいたのだけど、まずエビルマージはいなかったんです」

主任「もしかしたら『何か』と戦って倒されたか……満足したか、とにかく戻ってくる事はありませんでした」

主任「それだけでなく、死神は魔法で生み出された氷の塊である壁を通り抜ける事が出来ないんです」

男「あ……! ならあのマンションのほぼ全体が氷に覆われていたのは……」

主任「私が死神達を閉じ込める為に、何時間もかけて『ヒャド』を撃ったからかな」

男「エビルマージかと……アイツならやれそうな実力はあった」

主任「そうなんですか?」


男「あとでエビルマージのwikiを見せるけど、かなり強いボスモンスタークラスの脅威はあるっすよ」

男「……次に見ても、もう近づくのも止めた方が良いと思います」


主任「……」コクン

主任「それで、私はそれをずっと続けてました」

主任「昼間は薄暗い所に現れるモンスターを倒して、ヒャドに慣れて……出来るなら襲われてる人も助けてました」

主任「『見えない人』にとっては、魔法も見えないらしくて街中でも小声で使えるから魔法は便利です」

主任「せめて、おかしな人だなんて言われないで済むから……」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/05(木) 18:49:04.12 ID:WzEZ/mrLO<>


男「…………」

主任「これで、全部です」

主任「私の1ヶ月が今の短い話に籠められてます」

男「そう、ですか」

主任「敬語は使わなくて良いですよ男さん、落ち着いたら会社を辞めるつもりなんです」

男「えっ」

主任「……分かるんです、日に日にモンスターが人を襲う数が増えてる中で、私だけ生き地獄みたいな理不尽に苦悩させられてるのは意味があるって」

主任「誰も信じてくれない、独りの私にはそうやって考えるしか正気を保てなかったんです」

男「主任」

主任「はい?」

男「主任は俺なんかより……」


< 「嫌ぁぁああああああああああ!!!!」


男・主任「「!!」」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/05(木) 18:55:34.81 ID:WzEZ/mrLO<>

女性「ひ、ひぃぃ……」ガタガタガタ…ッ


< ガチャッ!

男「今のは!?」


女性「っ、たすけて……たすけてぇぇえ……っ!!」ガシィ!

男「おわっ、落ち着いて! 何がおき……」


主任「男さん!!」バッ

< ガッ!!

男「!?」ドサァッ




────────── ヒュルンッ…………!!



主任「っ……!」

< ズバァッ…ッ

主任「ぁ……あ…………」ドサッ



男「主任 ──────!! 」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/05(木) 19:11:14.28 ID:WzEZ/mrLO<>
……早朝の、様々なビジネスマンや会社員が慌ただしくホテルを後にする中で。

俺のいた位置に崩れ落ちる主任は、叫び声も出せずに、清潔感のある通路の中心に倒れ伏せたまま動かなかった。

切り裂かれた背中からは赤黒く染まりつつある白のカーディガンが見える。

救急車を、呼ばないと………………





───── 「貴方達、私を他のモンスターと一緒にしてないかしらぁ?」 ─────




男「……!!」


嘲笑う様に、そして僅かに怒気を含めた声色で、潰れた女の声が響き渡った。

俺の脇で震える女性は先程と何も変わらない、なら……。


男「モンスターか……ッ」





───── ヴォゥンッ ─────


俺の絞り出した様な言葉と同時に、黒い煙が突然通路の奥で噴き出した。

……否、煙とは全く違う。

その質感はまるで闇、そこから白い仮面の様な物が這い出していたのだ。



死神「あははははは!! 馬鹿な人間……あの氷に覆われた建物から私だけ抜け出て幾つかの氷を割ってある時点で雑魚な訳ないでしょぉおおお??」



早口で叫ぶ、その橙色の衣を纏った……大鎌を構える姿に、俺は目眩と少なくない恐怖心を覚えた。

『しにがみ』。

その名の通りの姿を持った、死神のモンスターだった。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/05(木) 19:28:00.91 ID:WzEZ/mrLO<>

死神が動くよりも先に、俺は脇で震える女性を主任といた客室へ放り込む。


男「アンタは警察を呼んでくれ!! こっちの女性も……出来る限りの止血と、これを傷口に!」


突然の事に茫然としかける女性に怒鳴り付けると、即座に主任を女性に渡す。

そして、二枚の大きな新緑の葉を渡した。

まだ試した事はなかった、『やくそう』だった。


男「……」

< チャキッ

男(……鋼の剣まで通されたら厄介な事この上ないけど、多分それはない)

男(さっきの女性が主任にやくそうを使ってくれれば、まだ間に合う)

男(落ち着け、昨夜の醜態をまたここで晒せば今度こそ死ぬ)

男(落ち着け……落ち着


────────── ビュォッ!!


男「!!?」


通路を疾走する橙色の残像を見て、俺は咄嗟にその先に向けて鋼の剣を無闇に振り下ろした。

だが。


< ガギィンッ!!

死神【……シィィ………】ニタァ・・・


男「くっ……ッ!? こい、つ……!!」ギリギリギリ…ッ


鋼の剣という、現実ではかなりの質量を持っている上に切れ味を誇る、ゲームなんかでの序盤では上位の武器。

それを正面から押し込んでくる死神の膂力に俺は通路に膝を着きながら耐えるしかなかった。

化け物、明らかに本来の『しにがみ』のスペックではない気がした。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/05(木) 21:13:10.92 ID:CufjwondO<> アイテムって一般人に見え……る? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/05(木) 22:02:59.51 ID:1YVDK70oO<> 待ちきれん乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/02/05(木) 22:09:25.23 ID:7QoBGuAUo<> 呪文は見えないけど、アイテムたちは見える? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/05(木) 22:13:48.18 ID:5fKInzk3o<> いや、鋼の剣とか見えてたら一大事じゃないかな
つーことは薬草も見えてなくて治療もされてない可能性がある

もしかしたら「意図的に巻き込んだ(傷つける、アイテムを触らせる等)場合その対象は見えるようになる」とかあるかもしれんが分からないね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/06(金) 00:12:28.53 ID:6UwPlKXn0<> 時間経過でダメージ受けないからヘーキヘーキ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/06(金) 00:27:54.34 ID:ikSS6eXz0<> 女性はモンスター見えてるんじゃ無かったのか
文盲だったわ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/06(金) 09:29:46.24 ID:iNEOjO/8O<> 手渡したから見えてなくても重さがあればワンチャン <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/02/06(金) 19:59:13.83 ID:JcZlcnNbO<>
一度だけ、想像した事があった。

スライムの早さ、強さは人間を一撃で叩き伏せる位の力があった。

ならば、それ以上の強さを持つ他のモンスターはどれだけ強いのだろう、と。

その答えの僅か一片を見せてきたのが、一ヶ月前に遭遇したさまようよろいとホイミスライムだ。

奴等はただのレベル1の人間にとっては化け物といっていい。

なら。

ならどうなのだろう、もしもこの先でこの地球上に『もう少し強い魔物』が現れたなら。



それは生半可な装備や銃弾では倒せない……最悪のモンスターになるのではないのだろうか。



< ギャリンッ・・・!

男「フゥ……ッ」ズザァッ


死神の大鎌は両刃ではなく、草刈り鎌でも見られる刈り取るタイプの片刃だ。

なら剣を滑らせて懐へ入り込めばいい。

警戒すべきはその早さと純粋な膂力のみ、こいつは魔法は使わない筈だ。

瞬時に踏み込み、刃を死神の空いた懐に叩き込む……


死神【ぁあアッははははハハァアハハハハハハハハ!!!!】ケタケタケタケタケタ


< フワッ……!

男「えっ…………」


死神の狂笑が響き渡った瞬間、俺の振り抜いた一閃は通路の空を斬っただけで終わってしまった。

何故なら、死神の体が床へ煙が溶け込むかのように沈んだからだ。

避けられた。

そう、あの一瞬で俺の剣速より速く避けられたのだ……。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/07(土) 23:55:28.14 ID:hRZVLcWmO<> おもしれぇぇえ
続きはよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/09(月) 22:45:04.88 ID:WDovWGAY0<> これは期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/02/22(日) 12:51:33.91 ID:onvnu9bko<> マダー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/03/11(水) 14:12:21.12 ID:pT3oRk0Z0<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/03/18(水) 08:18:00.08 ID:BbGbKC5LO<> エタらないよね? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/04/05(日) 16:56:36.54 ID:UK+tDgm80<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/04/05(日) 22:32:54.29 ID:xm5MA5mVO<> 期待してるんやで <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/04/06(月) 10:54:04.05 ID:CcyZ7uVoo<>









────────── ッ ──────────







完全。

その一瞬で起きた動作は、完全に同時だった。


死神【シィィッ………!!?】


故に、死神は大鎌を空振りさせるに終わってしまう。

眼前で回避した男の動きを見て、僅かにその手を止めてしまったのだ。

それまで彼女が生きてきた『元の世界』では、決してなかった戦術がそこにあったのだから。


死神【………なんだその動きは】


<  ヒュパッ


思わず唖然としながら呟いた死神を、俺は眼で追いながら『跳んだ』。

跳躍、反転、跳躍、跳躍、跳躍、反転、跳躍、反転、跳躍、跳躍。

三半規管が狂いそうになるのを必死に抑え、手に握る鋼の剣を最後の跳躍と同時に一閃させた。


男「おぉぉッ!!」


    チッッ………!


死神【嘗めるなァッ!!】

男「ッ………!」ズサァァッ! ダンッッ


剣先が死神の橙色の衣を切り裂き、それに激昂した死神の振る大鎌の下を滑り潜った。

正直、その大鎌の動きは見えていない。

俺はそれに臆さず、鎌の軌道を読んで最も安全な位置を走り抜けただけだ。


そして、直後に俺は再び跳躍する。

狭い通路だからこそ、今の俺に出来る技。

天井、壁、床の全方向を足場とした、三次元機動。

全身を猫の様に使い、常に全力での移動速度を維持出来るのだ。



男(……クソ、やっぱり駄目だ……まともにこっちの一振りが当てられない)ダンッッ ダンッッ

男(だがこれならアイツの一撃も当たらない、全力で避けられる……!)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/04/06(月) 11:56:34.63 ID:SPjA1VMyo<> 人間やめてるなー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/04/07(火) 05:25:03.42 ID:DZvbS1MaO<> なんだこれクッソ面白いんだけど

期待して待ってるよ。ペースゆっくりでも完結してくれー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/04/28(火) 17:18:11.21 ID:r52JOKY30<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/05/06(水) 07:36:10.20 ID:A2ITqgK1O<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/05/21(木) 00:24:56.20 ID:9bWEKbeF0<> 続きマダー? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/05/28(木) 14:11:02.00 ID:eUG1FMvb0<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/06(土) 22:42:01.12 ID:HYsRIdDbo<>

────────── ギィンッ!!



剣と鎌が擦れ違い、火花が散る。

死神【シィィッ!! ちょこまかと……ッ】

瞬時に壁へ、そして床へ、上下の概念さえ忘れる様な機動に死神が激昂していた。


恐るべき膂力を振るい、大鎌が薙がれるも……その全てを俺の剣が弾いている。

純粋な力でさえ負けているのだ。

速度も、恐らく俺は劣っている。

覚えたばかりの『メラ』を撃っても、この死神には通用はしないだろう、際どいとはいえ俺でも多分避ける事は出来るのだから。


男(……とはいえ、このままこれを続けていても……っ!!)ダンッ!!……ダンッ!!


死神が橙の衣を翻して俺の機動を読みながらその先へ鎌を一閃させる。

徐々に迫って来る切っ先を跳躍で避けるも、決定的な一撃は与えられない。

そしてこの状態が続けばそう間もないうちに、俺は最悪の状況に陥る可能性があった。





そう、『三半規管』の酔いだ。




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/06(土) 22:53:21.34 ID:w47zEEHG0<> キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/06(土) 22:58:36.67 ID:J4JT8aEiO<> 待ってた乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/08(月) 06:01:48.51 ID:zfBYzSFmO<> きたー
まってたー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/14(日) 10:27:39.83 ID:zC2ZC1rvO<> 待ってたぜ
続きはよ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/17(水) 19:47:36.02 ID:z2btaUdPo<>

人が乗り物に酔う理由は様々な要因があるにせよ、根本に関わっているのは三半規管という身体の平衡感覚を担う器官だ。

乗り物に限った事では無い、人によってはその場で十回や二十回と『ゆっくり回る』だけでも酔う事がある。

俺が大学で一度書いた論文で触れた事があった、脳における『速度の』許容範囲。


────────── ダンッ!!


男(ッ!……足、が……っ!?)


……人はその三半規管を鍛える事が出来る。

それも俺はこの日常へ変わってからの一ヶ月間、ずっとパルクール等で体を慣らしていた。

高い所からの着地、急な高低の変化と一定以上の速度を越えた疾走。

超人的だと考えていた俺の肉体は、今や凄まじい三次元機動を実現出来るレベルに到達していた。

だが。

戦闘が始まり、時間にして約4分。




全身を使い衝撃を上手く足を通して逃がしていたのが、遂に着地に失敗したのだ。



男(何故……! 『まだ』酔ってるわけじゃ……)

    ゾクッ……!

男「!!」バッ


死神【シィィイッッ!!】ユラァッ



瞬間、着地に失敗し足を止めてしまった俺を狙い響き渡る激昂の声。

衝撃を逃がし切れずに破壊した客室の扉の表面が水面の様に揺らぎ、その向こうから一筋の一閃が薙がれた。




────────── バズッッ!!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/17(水) 20:13:00.34 ID:7B1fsE+E0<> キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/17(水) 20:58:15.05 ID:US1RjWQEO<> きたーけどまたこれだけかよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/17(水) 23:53:55.14 ID:z2btaUdPo<>
ブレる視界。

右腕に走る激痛。


男「ぐぁあああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッ!!!」

< ドサッ!! ズダンッ……!!


通路を直線に吹き飛ばされ、何度か床に叩きつけられた俺は遅れて喉から声を弾き出すしかなかった。

数瞬前、右腕に薙がれた鎌に気づいた俺は……漫画やアニメで見られる『自分から跳ぶ』というのをやってみた。

しかしその効果はまるで感じられない。

痛みが、混乱が、俺をそれまで支えていた気力さえ奪っていく。



男「ぉ、げほっゲホッ……ぉぇえッ……!」

< ビチャァァッ…

男「ぅぐ…ゲホッ……!」

男(なん、だ…? 頭が急に……ッ)


俺は知らなかった。

酔いとは、脳の処理が追い付かずそこで更に『嫌な匂い』『唐突な揺れ』『混乱』『痛み』等で引き起こされる事もある。

それまで抑え込み、死と隣り合わせの機動戦の中で限界に達していた俺の脳は、悲鳴を挙げたのだ。

反動は未だ止まる事なく視界を揺らし、吐き気を誘発している。


死神【随分手こずらせてくれたわねぇ、人間】

死神【実戦経験のある人間は殆どいない、私達を見る事も出来ない奴等だと聞いていたけど……】

死神【まぁ『依り代』は手に入れた、これで数日あればお前達は私達に支配される事になるわぁ】


男「な……何だそれ……?」

男「っ…」ヨロッ


黒い煙に包まれて、死神が通路の中央に降り立つ。

嘲笑い、俺への殺意を滲ませた深紅の眼光を揺らして語りかけてくる。


死神【こちらの世界の戦士にしてはレベルが低い、つまり奴等と会ったのよねぇ?】

死神【答えなさい人間、奴等は何処にいるのかしらぁ】


男「…………」

男(奴……等…?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/18(木) 11:59:08.83 ID:JcnEtcnwO<>
立ち上がるより速く、死神は俺へ鎌を振り下ろす事が出来る距離。

俺の眼前へ近づいてきた橙色の衣を纏う化け物が、その白い歪んだ仮面を更に歪ませる。


男「……俺は……何も知らない…本当に、分からないんだ」


揺れる視界を元に戻そうと歯を食い縛り、立ち上がった。


男「お前達こそ、一体何なんだ……! ゲームの中から出てきたのか!! 何が……何が目的なんだよてめぇら!!」


< ピクッ

死神【……ゲーム…だと…?】


口元に付いていた吐瀉物を拭い、右腕に視線を落とす。

激痛が吐き気を、そして次第に冷静さを俺に与えてくる。

今の状況で俺に出来る事を探し出す。

『ガラケーと違って明るいんだな』等と考えながら、俺は死神の意識を此方へ向けさせる為に言葉を探す。

余裕は、無い。


男(は、はは…………)

男「実戦経験が無い奴ばっか? そりゃそうだ、こっちゃ平和な現実なんだよ!」

男「魔王が指示してんのかどうか知らねえがふざけんじゃねぇぞ!!」


死神【……黙りなさい】

< ガッ!


男「ぅぎぃっ!?」


死神【何者だ……我等が『王』の存在を知っているとは、ただの戦士ではないな?】

死神【あの方を何処まで知っている、貴様……】ギロ…


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/18(木) 21:43:53.51 ID:apmAkkm2o<>
巨大な鎌を振り下ろした死神の気配が殺意とは別の物に変化した。

不味い……この位置では『見えない』。

何より再び右腕に突き立てられた刃が肉を抉り、骨に食い込むその痛みに意識さえ手放してしまいそうになった。


男「ぁ"ぁ"ぁ"……っ!! や、やめッ……ろぉおおおお!!!」ガチッ…!


死神【!】




      カァンッ……!!



少なくない量の血が右腕を伝い、赤いカーペットの敷かれた通路を更に赤黒く染める中で。

俺は渾身の力で足元に転がっていた鋼の剣の剣先を踏み込んだ。


男(チャンスは、多分一度だけ……!!)ガバァッ!!

死神【なっ…これ程のダメージを受けながらまだ動けるのか?】


    ギシッ……!


死神【ッッ!?】


俺との間で起き上がった剣を、驚愕の表情で見る死神。

同時に引き裂こうと動いた鎌を俺の右腕に着けられていた『豪傑の腕輪』で、瞬時に抑えつけたのだ。

そして、起き上がった剣の柄を逆手に掴んだ俺はそれを突き立てた。

血と胃酸で痛む喉を無視して、全力で叫んだ。





男「今だ主任 ────────ッッ!! 」





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/19(金) 00:48:04.23 ID:b+IV6Iqjo<> おおおおおおおお! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/19(金) 11:26:08.29 ID:4xAsps/3O<>
──────── バッ!!

主任「『ヒャダルコ』ッ!!」



死神【〜〜っ!!?】



背後の客室から飛び出した主任に、死神の紅い眼光が激しく揺らぐ。

刹那、主任の視線が俺に向くも……俺はそれに首を振って見せた。

彼女は俺が巻き込まれる様な呪文を撃つ気だと、何となく考えたからだ。

だがこのモンスターを仕留めるなら、『鋼の剣でコイツの衣を床に縫い付けている今』しかない。


俺の仮説に間違いはなかった。

死神の透過出来る壁とは違い、俺の振るう剣は透過できない。

奴の透過出来る特性ではこの拘束から抜け出す事は出来ないのだ。



    ヒュォオオオオッッ・・・



主任の全力で叫んだ呪文と同時、俺と死神の頭上でサッカーボール大の結晶が形作られる。

橙色の衣を引き裂いてでも抜け出そうと、それまでとはまるで違う焦り様を見せる死神。

そこへ、更に追い撃ちをかける……!


男「『メラ』……っ」

   ボォンッ!!

死神【ギ、ギャアアァッ……!! 貴ッ、様ァァア!!】


    パキパキパキパキィィ……!!


手を翳す必要が無い事は、これで証明された。

そう俺が思った直後……瞬時に周囲の空気が光の結晶で溢れた。

俺は主任を






━━━━━━━ キィンッ!! バキバキバキバキィィッッッ!!! ━━━━━━━






<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/19(金) 11:39:03.07 ID:4xAsps/3O<>



━━━━━━━━ 【何者かの視点】




< バキバキバキバキィィッッッ!!!


死神【…………ッ……ッッ……】パキパキ……


死神【さ、最後の……最期で、『アンタ』に出会すとはねぇ……ッ】パキッ……


死神【あの方に頂いた……っ、『闇』が薄れるから、なるべく使いたくなかった虎の子の呪文……『ラリホー』……】パキッ……


死神【『マホトーン』を使われるとは予想外だったわ……く、ヒヒ……】シュォォオ……


死神【……でも、もう遅い……この戦争は私達の勝利よ…………】シュォォオ……


死神【…………この世界の人間と手を組めないお前達なんて、もう怖くはない……ヒヒァ……恐怖しろ、絶望しろ……狂え、そして死ね……ッッ】









死神【我等が『大魔王』はこの世界で復活するのだから……!!】




────────── ポワァ・・・ン……ッ








「…………」

「……、…………」ボソボソ…


男「……」ジュゥゥ…ッ


「……」

「お疲れ様でした、戦士様方」

< スタスタ……


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/19(金) 11:50:17.04 ID:4xAsps/3O<>





────────── 「……ぁ…れ…?」



────────── 「俺……何してたん…だっけ……」



「……お疲れ様でした…戦士様方」



────────── 「……あ?」


(…………綺麗……な、女の子……?)

(でも、あの耳って……髪色も……もしかして…………妖せ…)

< 「男さん! 男さん!!」


    ユサユサッ!


< 「しっかり……! あぁ、血が……『ヒャダルコ』のダメージが『何故か奇跡的に殆どないけど』……右腕からの出血が……!」


(……えー…と、誰だっけか…………)


< 「ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、自分に『ホイミ』使って『ヒャダルコ』使ったから、もうMPが……っ」

< 「ぁぁあ……! ぁぁあぁ、だれか! だれか来て!! お願い誰かぁ!」


(……あー…………思い出した)

(この人、あれだ……上司だ…………)



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/19(金) 18:34:56.77 ID:sfDmuCtSo<> 一月の訓練で大金星だな
死戦とボス級の経験はデカイ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/20(土) 10:31:03.09 ID:bmjM/cxqO<> 乙! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/21(日) 01:09:09.53 ID:09n7vBCtO<> 愛してる乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/21(日) 22:02:29.61 ID:9o7l4vE+O<>

男「……主…任」


主任「男さん!? 良かった気がつい…」

男「…いや……死にそうだ…やばい…」

主任「え……」

男「…………」


男(目がやばい……黒いチカチカが走って……耳が……)

男(なんか足とかガクガクしてるし…………はは、本格的に死ぬかも……)


主任「待って、待って下さい……っ、メラが使えるから、つ、使えるから……っ」

主任「えと、ぁ……あ……」

男(……せっかく綺麗な顔が、台無しだな……ぐ!?)ビキィッ

< ガクガクッ……ガクンッ

主任「!!」

主任(ショック症状が……っ、このままだと本当に死んでしまう……!)


主任「ほ、『ホイミ』!」バッ


男「ぁ…ゥア……ッ」ガクガクッ


主任(だめ……やっぱりMPが足りない、んだと思う……どうしたら、どうしたら……!!)


< 「……その人に、今みたいにしたら…さっきの……魔法、使えば助かるの…?」


主任「……!」

女性「やり方……こうです……か? 『ホイミ』……って」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/22(月) 07:32:19.09 ID:EEvsmogsO<>
< シーン……


主任(MPが足りてない、のかな…?)

主任(それとも……!)

主任「イメージを、この人の傷を温かいタオルで覆うイメージをして下さい……!」

女性「え……ぇ…?」

主任「焦らないで下さい! ゆっくり傷口に当てるつもりで……!」

女性「…………」


女性「『ホイミ』」

< ポゥ……


男(……あったか……ぃ……)ジュゥゥ…



主任「っ! やった!!」

女性「傷が…治ってる……本当に魔法使えちゃった……」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/22(月) 20:05:24.89 ID:+UXLMnlnO<>
主任「聴こえますか男さん……まだ、痛い所はありますか…?」


男「ぅ……く、はは……っ」ググッ…

男「なるほど……体力が回復しないけど『HPは回復する』ってこんな感じ…か」ググッ…

主任「大丈夫…?」

男「……全身が痛いっす、傷口なんて無いのに……まるで切り開いた傷を指で無理やり閉じている様な…………」


< ピンコーン♪

< ガー


警備員「君達! 大丈夫か!?」

警備員B「女性と男性が怪我をしています!」

警備員C「おいまずいぞ!」


男(……ホテルの警備員か、どう言い訳するかな)

主任「気を付けて! 『見えないアレ』がこの辺りにいます!!」

男「ちょ、主任……?」

主任「早くエレベーターを開けて戻って下さい!! 早く!!」


警備員B「見えないアレって、テレビのか!?」

警備員C「きっと、この間俺を襲ったやつだ……ひぃぃっ」

警備員「おいバカ野郎! エレベーターを閉じるんじゃねえ!!」


< 「うわぁあ!!」

< ガー


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/22(月) 20:28:23.34 ID:+UXLMnlnO<>
男「…………」

女性「………」


主任「今の世の中なら、『見えない存在が分かる位置』から逃げるのは当然ですよ」

主任「ましてや私達が全員血塗れでは誰でも逃げます」


男「……逞しいな主任」

主任「この歳であの営業課の主任をやるなら、こうでないと」

男「はぁ」

主任「しかし妙ですね…? 警備員が来たということは、監視カメラでもあるんでしょうかここ」

男「有り得なくないな、ってかそれだと俺ヤバくね…? 銃刀法違反だろこれ……」

主任「それなのですが男さん」

男「?」




主任「……私達がモンスターから得たアイテムは、『見える人』以外には触れても何をしても見えません」



男「!?」

主任「よくて男さんが通路を縦横無尽に暴れてる映像しか見えません」

男「!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/22(月) 21:34:36.99 ID:9XLPTode0<> シュールやん…

まあ見えないアレを振り払おうとしてたって言えばええな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/22(月) 21:48:32.14 ID:zdCSfr92O<> そうすると、超人的な動きをしていたのは、見えないアレに振り回されてたって事にするか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/22(月) 22:13:09.47 ID:s305MR790<> www <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/22(月) 22:26:23.94 ID:kG+DK8EjO<> 乙ーーーーー!ー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/23(火) 07:29:12.25 ID:pTJz+cqdO<>
主任「……とりあえず私と男さんは、本格的に警察を呼ばれる前にここを出ましょうか」

男「でもこの人は? 魔法が使えたならもしかして見えるんじゃ」

女性「……見え、る?」

主任「さっきの彼が戦っていた相手が、見えていましたか」

女性「あの黄色い……死神…?」

男(見えてる!?)


主任(よく考えてみれば、最初の悲鳴がモンスターを見てしまったからなのだとすれば有り得ますね)

主任(……でも、それだと私を手当てしていた時のこの女性の行動が説明つかない……)


主任「まぁ……彼女は彼女で、客室に荷物やこのあとの予定があると思いますし」

男「……」

男「じゃあ、その、なんと言えばいいか……」


女性「……そうですね」

男「ありがとう、貴女がいなかったら俺は死んでました」

女性「私もですから、頭を下げないで下さい! こんな事が起こるなんて……魔法? みたいなの使った今も信じられなくて……」

男「…………」


主任「エレベーターが一階からこっちに上がってきてますね、警察かも」

男「うわ、非常階段で出る?」

主任「そうしましょうか」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/23(火) 07:37:48.35 ID:pTJz+cqdO<>
< ピーポォーピーポォー

< 「退いて下さい! ここは封鎖します! 下がってー!! 」

< 「輸送車がもうじき到着するぞぐずぐずするなぁ!」

< 「警視庁の捜査官は機動隊の方々に『水』をかけろ! 急げ!」








< ウゥゥゥ……! ウゥゥゥ……!

< ピーポォーピーポォー……!


男「……凄い騒ぎだな」

主任「き、機動隊って……もしかして男さん立て籠りだと思われてたりして……」

男「ありえそうで笑えねぇえ……」

主任「冗談ですよ」

男「でもありえそうで笑えねぇえ……」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/23(火) 19:02:49.09 ID:nfFT69itO<> 一気に来た!

水かけるって事は事態に気付いてる奴らもチラホラ居るのかね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/23(火) 22:21:10.52 ID:pTJz+cqdO<>

    コツッコツッ……

    スタスタ……


男「そう言えば会社、どうすっかな」

主任「休みの連絡を入れたらどうかな」

男「携帯、主任のヒャダルコでぶっ壊れたみたいですわこれ」カチカチ

主任「え」

男「……本格的に買い直しかなぁ、これ」

男「っと、あれ……ッ」グラッ

主任「!」

< ガシッ

男「…………頭が、揺れてる」


主任(顔色が悪い…? まださっきの戦いの疲労が出てるのかも)

主任「男さん、何処かで休みませんか?」

男「……」

主任「男さん?」

男「ホテルは懲り懲りっすね」

主任「ちょ、何を言うんですか!」

男「あはは……じゃあ、あの……つまんないもんしかないっすけどさ」


男「俺の家、行かないか…?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/23(火) 23:22:02.59 ID:zO4ZN0tO0<> キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 01:35:47.78 ID:RHwqUBCSo<>

【自宅】



男「そこが主任に貸す寝室、寝室出て右の突き当たりがトイレね」

主任「一人で一軒家に住んでるの?」

男「いや、妹と暮らしてたよ」

主任「妹さんは?」

男「四年前に事故で亡くなったんだ、両親と一緒に」

主任「……悪いことを聞いちゃったね」

男「気にしないでいいっすよ、知らないんだから仕方ない」


男「んで、トイレ横のがバスルーム」

主任「……」

男「えーと……や、やましい事は無いよ」

主任「借りて良いですか?」

男「どうぞ………」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 07:22:39.44 ID:RHwqUBCSo<>
< ザァァア……


男(……タオル置いとくか)バサッ

男(女性、それも主任をこの家に泊めるなんてなぁ……人生ってわかんねーや)

男(……っ…)ヨロッ


< ドサァッ!    ピッ

男「いってー……さっきから定期的に頭がぐわんぐわんする……」


< 『……機動隊が出動し、一時騒然となり…………』

< 『監視カメラのこの異常な映像から、男性の身元を調査中』

< 『なお現場にいた女性は現在警察が保護しており、詳しい状況を聞いているとの事です』


男「これ……やっぱりホテルかぁ……やべぇな、仕事クビどころか捕まるんじゃ……」

男(他のチャンネル見んのこええな)ピッ


< 『臨時ニュースです、本日都内のホテルで信じられない事が起きました』

< 『今からお見せする映像は、ホテルの宿泊客がスマホで録画したものです、CGは使われていません』






男(…………え?)







<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 07:49:30.52 ID:RHwqUBCSo<>

……いつからだったのだろうか。

RPG『ドラゴンクエスト』の世界を半ば楽しむ程度の認識だったのは。

戦う事で強くなれる、その考えと知識がそうさせたのかもしれない。

そして何より俺は自分は頭がおかしいと思っていた。


だが。


< 【ぁあアッははははハハァアハハハハハハハハ!!!!】ケタケタケタケタケタ

< ビュッッ!!   ダンッッガガガガガガダダダッガガガガッッッッ

< 「ぐっ、ぉおおおおおおお!!!」ダダダダッッ


男(な、んだ…………これ………………)ズルッ…


< 【嘗めるなァッ!!】

< 「ッ……!」ズサァァッ! ダンッ!!

< ガギィンッッ ドゴォッ!! ダダダダダダガガガガガガガガガガッッッッ


< ダァンッッッ!!!

< ビュッッ!!

< 「ひ、ひぃいっ!?」ガタガタゴトゴトッ!


< 『最後にアップで映った黄色の死神を見た撮影者の男性は、身の危険を感じてベランダから通報したそうです』

< 『この信じられない光景を撮影した男性は、「女性の悲鳴が聴こえたので通路を覗くと別の女性が黄色の衣を着た仮面の女に鎌で切りつけられていた」と証言しており』

< 『現場に残された多量の血痕から他の女性の存在は明らかであり、この映像の後にどうなったかを男性から聴取しているとの事です』

< 『繰り返しますが、今の映像にCGは使われていません』

< 『彼は何者なのか、また彼が見えない何かを振って応戦していたこの尋常ではない壁を高速ですり抜け、男性に襲い掛かっている女性らしき人物』

< 『一体何が起きていたのでしょうか』



男(…………は…は、ははは……)ドサッ

男(何で、何でだ……)

男(何で見えている……モンスターが何で他の人達にも見えてるんだ!?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 08:06:41.33 ID:RHwqUBCSo<>

< ガチャッ

主任「シャツまで貸してもらってすいません」

主任「……男さん?」


男「…………」


主任「どうかしたんですか? 大丈夫…?」

男「主任……ニュース見てくれ」

主任「ニュース、ですか」ピッ


< 『……で、男性を襲ったこの人間らしき存在はもしかしたら今世界で起きている見えざる事象を……』


主任「これ……!!」

男「見えて……る」

男「あのホテルで会った女性が特別な訳じゃなかった、『あのモンスターが特別だったんだ』」

主任「見えない人達にも……見える、モンスター……?」

男「……」

主任「でもっ、これで私達は世間の人に受け入れて貰えます! 男さんも私も、見えるモンスターの数が多い程度でしかないんです!」

男「…………」


男(もし他の人達もモンスターが見えるようになって)

男(モンスターの存在が、もしも一般的な認識になったら)

男(俺が見殺しにした事は……罪になるんじゃないか…?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 08:40:34.08 ID:RHwqUBCSo<>



俺は忘れていた。


初めてスライムに襲われた時に感じた恐怖を、混乱を。


あの痛みから感じた『本物』を。


ゲームを意識するより先に、俺が信じた現実。


そう、現実にゲームのキャラクターは出てこない。


これはゲームではない事を、俺はきっとこの世界で一番早く知っていたのだ。


テレビの中で何度も繰り返される映像は、俺がその現実に居る事を世界が認識を急がせている様に見える。


何より。


何度も聴こえてくる『死神』の笑い声は、まるで俺の苦悩する姿を嘲笑っている風に聴こえた。


俺は崩れ落ちながら確信していた。


もう、俺は戻れないのだと。




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/24(水) 08:46:36.87 ID:WH7hmJOa0<> ふうむ… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 09:14:53.12 ID:RHwqUBCSo<>





─────【二週間後】─────


────【イギリス:ロンドン……ウェストミンスター大聖堂】────




父親「うわああぁあああっ!!」ブシュゥッ!!


女児「パパー!」


父親「来るなぁ!! 逃げろ、早く逃げろぉお!!」

シルバーデビル【ギキキキ、逃げたらお前のパパ殺しちゃうよぉ…?】メキメキッ……

父親「ぎぃぃぃいいいい……っっ!!!??」


女児「パパー! パパー!!」


シルバーデビル【ギキキキ……ギキキキ……!】

シルバーデビル【『死神』の野郎が見つけた依り代が馴染むぜ、だが顕現位置が違うのはどういうこった?】

父親「ば、化け物めぇ……!」

シルバーデビル【ハン、てめぇら人間はもうおしまいだぜ】


シルバーデビル【余興だ……パパの前でガキごと街を吹き飛ばしてやるよ!】キィィンッ

父親「な、何を……っ」




シルバーデビル【……『イオラ』……】キィィンッ



────────── カッ……!!

< ボォンッッ!!


シルバーデビル【!?】ピタァッ



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 09:30:00.38 ID:RHwqUBCSo<>
────────── 「スラリン、スラきちで追撃」

────────── 「スラベエはスクルトを、ホイミンは彼等にべホイミを」



スライム…?「行くよスラきち!」ぴょーんっ

スライム…?B「おう!」ぴょーんっ



──────── 【『スラ・ストライク』ッ!!】 ────────



< ヒュッッ……ズドドォッ!!

シルバーデビル【ご、ごふァッ……!? てめぇ……ら、まさか……】ヨロッ


スライム…?C「皆をまもるよ! 『スクルト』!」

< キィィンッ


ホイミスライム…?「『べホイミ』っ、大丈夫……?」

父親「な、何が起きてるんだ…? 折れていた腕が治っていく……おお、神よ」

ホイミスライム…?「……」


シルバーデビル【くそがぁ!! 『イオ』!】キィィンッ


スライム…?「させない! 『スラ・ストライク』ッ!!」

< ズドォッ!!

シルバーデビル【ッッ……カハァ……!!】ドシャァアッ






────────── ポワァ・・・ン……ッ





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 10:41:10.98 ID:26y/yp1WO<>
父親「はぁ……はぁ……、恐ろしい化け物だった……」

女児「パパ! こわかったよぉ……!」

父親「ああよかった、お前が無事で……」

女児「あの子たちなーに?」

父親「……ん? 何の事だ」




スライム…?B「あの娘見えてんのかー?」

スライム…?「そうみたい」


「……シルバーデビルの魔法による干渉の影響は受けていない筈だね」

「となると、漸く見つけたのかもしれないな」


< スタスタ……


「お怪我はありませんか、異国のお嬢さん」

女児「ほら! パパを助けてくれた人だよ!」

父親「な、何を言ってるんだ女児、何もいないよ」

女児「え? いるよ、ほら! 髪の毛が真っ赤だよ!」



「……見えているのか、僕が」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 10:55:05.02 ID:26y/yp1WO<>
女児「お兄ちゃん、触っていーい?」

「……」

「ああ、構わないよ」

女児「パパー! ほら、手!」ぐいっ

父親「Oh……」

< さわっ……

父親「なっ!?」ビクッ


「なるほど、子供らしい発想とはいえ説得力がある」

「これで僕の存在がやっとこの世界の人間に知られた訳だ」

「『こちらに来て四ヶ月経った』が、仲間と連絡を取れる日も近いな」


女児「?」


「ありがとうお嬢さん」

「実は私はお嬢さん達には見えない、特別な人なんだ」

女児「妖精さんみたいに?」

「そうだね、彼等と違うのは子供のように澄んだ心の持ち主でも私達を見ることが出来ず声が聞こえない」

「今はね」

女児「そうなんだぁ」


父親「女児、いったい誰と話をしてるんだ…?」

女児「妖精のお兄ちゃん!」

父親「!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/24(水) 10:58:21.52 ID:qgAzaS8YO<> 魔法を受けるとDQ世界とチャンネルが合うのか、見えるようになるのかな?
で、男や女児のように先天的に見える人間もいると……
海外ではドラクエの知名度低いらしいしどうなるのかな?
1〜4がdragon warriorでそれ以降はdragon questになるんだっけかな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 11:51:12.18 ID:26y/yp1WO<>
父親「よ、妖精だって? そんなまさか……」

女児「でも悪いおっきいお猿さんやっつけて助けてくれたよ」

父親「……」


「お嬢さん、私達を見える人間は僅かしかいない」

「そしてお嬢さんしか今は私の言うことが聞こえないんだ、助けて欲しい」


女児「いいよ! 今度は私が助けてあげるの!」

父親「は? え?」


「君のお父さんと話がしたいんだ、私の言うことをゆっくりとでいいから伝えて欲しい」


女児「うん!」

女児「パパ、今から妖精のお兄ちゃんの言うことを伝えるね!」

父親「うむ……」


魔物使い「はじめまして父上殿、私は『ムーンブルク国兵団』遊撃隊の、名は魔物使いと申します」

女児「はじめましてパパ、私はむーんぶるくこくへいだん ゆうげきたいの 、なわ まものつかいともうします」


父親「……」

父親(まずいな聞いたことがない……ネットで調べても出てこないかもしれないが、後で調べるか……)

父親「私はこの子の父親だが、助けてくれてありがとう……助かったよ」


魔物使い「お気になさらず、私は貴方にお願いがあります」

女児「おきにならさず、私はあなたにお願いがあります!」フンス


父親「な、なんですか……?」




魔物使い「共に世界を救うため、手を貸して頂きたい」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 12:52:00.91 ID:26y/yp1WO<>

【アメリカ・ホワイトハウス】


大統領「将軍、ではその日本に居るのかね……」

将軍「情報提供者である『彼等』の話では、連絡を取れる仲間の魔法での探索により一点の方向を指していたそうです」

大統領「それが日本か……ヒーローはまさかサムライではないだろうな」

将軍「そこは何とも言えませんが、『彼等』の話では似ているとのことです」

将軍「日本のテレビゲーム『ドラゴンクエスト』、まさか今の世界に蔓延しつつある化け物どもがゲームの中から出てきているとは思いませんな」

大統領「しかし彼等は異世界として我々のこの世界を認識し、そしてゲームではない場所から確かに来ている」


大統領「将軍、日本政府に等しく情報を」

大統領「そして彼を呼んでくれ」


将軍「ええ……」


将軍「『堀井雄二』ですね」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 13:36:34.99 ID:26y/yp1WO<>

【日本】


部長「辞表、確かに受理しました」

男「今までお世話になりました」

部長「君の事は大学生の時から知っていたが真面目に仕事してくれる良い社員だったよ」

男「そうですか?」

部長「まぁね、主任くんに続いて君もいなくなったら寂しくなるな」

部長「主任くんの所へ君が訪ねて、そして翌日に『マンション殺人』が起きてから君ら二人は会社へ来なくなった」

部長「一体何があったのかな」

男「それは……言えません」

部長「ふむ、そうかね」


男(……人事部、部長…………)

男(アンタ何者だ)


部長「? どうかしたか」

< ォォォォオオオオオオオ……!!


男(……やっぱり、か)

男「いえ、調子が悪いのでこのまま帰ります」

男「お疲れ様でした」

部長「ああ、お疲れさん」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/24(水) 18:52:48.15 ID:1sgSh3khO<> ふぉぉお乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/24(水) 18:58:09.14 ID:vQg6lTsyo<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/24(水) 23:42:38.70 ID:RHwqUBCSo<>
< 「お疲れ様でした男さん」

< 「お疲れ様ーっ」

< 「今度飲み会行こうなー」


男「……」スタスタ

男(……主任が俺と同じく『見える人間』だと分かった、あの二日間)

男(あの後、警察が来たが軽い質問とホテルに関してだけ聞かれて終わった)

男(ただ……主任が1日以上空けた事で、主任が戦い続けていたあのマンションのヒャドが溶けてしまった)


男(……結果は最悪、日本中を本気で恐怖させる殺人事件の出来上がりだ)

男(マンション内の住民はほぼ全員が惨殺、主任が閉じ込めていた死神系のモンスターも街に解放されていた)

男(それを俺と主任がこの二週間近く倒し続けて、やっとこの地域のモンスターは大体狩り尽くしたわけだ)

男(……んで、ついでに辞表‥)


< 「男くん」

男「……」ピタッ


女「あの、ちょっといい……?」

男「女さん…?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/25(木) 00:20:22.40 ID:D/OYinTAo<>
< ガチャッ……バタンッ


男(屋上に連れ出されるとは思って無かったなぁ、なんだろ)

女「あのね…? まずちょっと聞きたいんだけど」

男「はい?」

女「男くんってさ、私の事気になってたりするのかな」

男「……んぇぅぇ?」

女「なにいまの」

男「ええ、いやいやいや」


男「異性としてでなら、多少は意識はしますけど特に恋愛感情は……」


女「はぁ? いや、そこまでは聞いてないんだけどね……まいっか」

女「実は今日の夜頼みたい事あるの、いい?」

男「?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/25(木) 09:35:23.22 ID:2KsnVIBAO<> 乙です。
まさかスライムもりもりまで出るとは。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/25(木) 14:10:49.04 ID:dZ5P+hsQO<> ブオーンが出ないだけまだましだよな あれ出たらもうゴジラの世界だが <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/25(木) 20:03:29.08 ID:79DOkp2nO<>


主任「女さんのボディーガード、ですか?」


男「そうなんすよね、女さんここ二週間近く誰かが仕事帰りに自宅近くの駅からストーカーされてるみたいで」

男「いきなり俺に話をしたのも、時期的に俺が怪しいと思ってたみたいでさ……」

主任「……あはは」

男「はー、仕方ないと言えば仕方ないにしてもここ最近は警察沙汰ばっかで疲れたよ」

主任「そうですね……私が『ここ』にいたせいで余計に迷惑をかけちゃいましたし」

男「ん、それはいいっすよもう」


主任「ありがとう男くん、少し早いけど女さんの退勤に合わせてもう夕食にしちゃう?」

男「お願いします、ええ、お願いします」



男(……この二週間で大きく変わった事はただ一つ)

男(わたくし男めは主任嬢と只今同棲生活をしております)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/25(木) 21:13:26.92 ID:D/OYinTAo<>
男(今度の週末にお互いに何か適当な昼間の仕事を探すついでに、俺の携帯買いに行くのと映画を観に行く)

男(それはいいけどさ、半分は俺の意図もある)

男(ただ、まさかあれから一緒に住むことになるとはな……)


< 「今夜はパエリアにしますね、サフラン買ってきたので」


男(……『マンション殺人』事件で、ホテルの監視カメラに映っていた俺とマンション内のカメラに手摺から飛び降りた俺が同一だと分かった時)

男(マンション内の住人でもある主任が事件後俺と共に行動して、ましてやあの日から一時的に同棲していた事で何日か聴取された)

男(結果は『それまでの関連性の無さ』と『殺人が起きたのが一ヶ月も前』だったから、他にも理由はありそうだがとりあえず俺は見逃して貰った訳だ)

男(ただ主任はあのマンションに住めなくなった)

男(それが精神的なものからか、それとも警察から何か話をされたのかは知らない)

男(……少なくとも主任が、誰かに何処に住んでいるか知られていない今の方が俺は安全だと思ってる)




男(あの人事部の部長は人間じゃないからだ)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/26(金) 09:24:55.72 ID:VMRfZU6nO<> 乙!
名作の予感 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/26(金) 21:45:44.69 ID:cYpnXNjjO<>
< ジャラッ


男(信仰する神は関係なく、『教会』のメダルやコインなら何でもいいんだったな)

男(主任が俺を人間か魔物かを試すのに使った方法、それが『聖水』だった)

男(聖水の作成方法は簡単だ)

男(水に教会のコインを沈める、もしくは教会の水道から拝借するだけ)

男(笑ってしまう程に簡単だが、効果は今の世界では絶大な意味を持つ)

男(モンスター……例えばスライムやドラキーにかければ、それだけで即死するからだ)

男(当然、その位に弱いモンスターなら即死させる水を飲ませたら、モンスターならばやはり即死、殺せなくとも正体を現す事になる)

男(俺はこの方法を聞いてから、直ぐに会社にいる部長に試した)

男(あの男が飲もうとしていたコーヒーに聖水を少し混ぜた)



男(結果は、奴が一瞬だけ姿を見せただけで終わった)

男(あのシルエット、全身に蟲が這う様な感覚……『モシャスナイト』なのは明らかだった)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/26(金) 22:05:14.91 ID:cYpnXNjjO<>
男(本当に僅かな一瞬とはいえ、姿を現した)

男(そしてその正体を見れたのは本当に幸運だったかもしれない)

男(今の俺では勝てるか分からない、ましてや『いつから部長になっていたのか』分からない以上、これからはもう関わらない方が良い)


男(……もし俺が最初に怪しんだ通りの理由で会社へ潜入し成り済まし続けているなら)

男(『敵』に俺や主任の事を知られる訳にはいかない)

男(あのモシャスナイト、もし『主任が見える人間だと分かったから』部長に成り済ましていたのなら)

男(目的は……主任を孤立させる事だった)


< 「少ししたら出来上がるよ」

男「ありがとうございます」


主任「難しい顔をしていたように見えたけど、大丈夫?」

男「俺は問題ないっす」

主任「そう? 無理しないで下さいね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/27(土) 21:37:05.62 ID:fMvFdDnDo<> むこうも単独犯ではなくて、奴等との繋がりを警戒して
孤立させてから始末させるつもりだったって事か <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/06/30(火) 12:04:23.25 ID:OtD+U/w60<> あれ?これわりと人間側が詰んでないか…? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/06/30(火) 21:24:56.56 ID:IamPxsz+O<>
男「……強いて言えば」

主任「?」

男「よく聖水の事を思い出したな、って思って」ジャラッ

主任「ああ、最初の頃は私……スライムにも勝てなかったから……」

男「女性だもんなぁ」

主任「それもあるし、流石に包丁やバットを振り回してたら危ない人でしょう?」

男「ま、まぁそっすね……」グサッ

主任「かといって人目のつかない所はモンスターの数が多くて、やっぱり危ないし……」

主任「だから私、聖水とかあったらなーって考えてね?」

主任「『ヴァンヘルシング』って映画を知っています?」

男「洋画かな?……パイレーツオブカリビアンとかなら見てるけど」

主任「ヴァンパイアハンターのお話なんですが、その中で教会の水道から出る水を聖水と言ってるのが有ったんです」


男「……もしかして、それで?」

主任「うん、試しに近くの教会でペットボトル一本の水を採らせて貰ったら、それだけでモンスターが寄り付かなくなったの」


主任「勿論、少量を撒いても効果は有ったし、モンスターにかけてもダメージが有ったから本当に助かったの」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/01(水) 00:52:41.08 ID:THFqJwhio<> この事件の後、水道施設に教会が併設される事となり
大規模な癒着と教会権力が新たな問題になるのであった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/01(水) 23:01:02.23 ID:sZ2O/7Mo0<> 自然の水をろ過し聖水化させる装置が開発され大ヒット。飲みやすくさらっとした飲みごたえが聖水ブームを巻き起こした <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/04(土) 00:42:48.21 ID:ghfQrHeKO<> なんだか動物愛護団体がモンスターを[ピーーー]なと騒ぎそうな気がするなぁ
嫌だなぁ、なぁんか怖いなぁ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/04(土) 21:57:52.81 ID:NQ79qc9DO<>
主任「大変だったんだよ、コインをたまたま助けた人に貰って、それをたまたま水に落としたら光ったりしたんですから」

男「光ったんすか…?」

主任「うん、それも驚く事に水面だけでしたからあの時は余計にびっくり」

男「なるほど」

主任「うん」


男「……」

男「この二週間忙しくて言えなかったけど、ありがとうございました主任」


主任「急にどうしたの」

男「死神と戦った時に、俺がピンチだったのを助けてくれたじゃないっすか」

主任「あれは……助けてあげられたのかな」

男「俺にとっては間違いなく助けて貰ったんですよ」

男「それにほら、最後のヒャダルコとかも……まさか客室から出てきた主任がスマホで指示を出すとも思わなかったし」

主任「あはは……」

男「あれはちょっとピンチとはいえ笑いそうになった」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/06(月) 07:41:28.92 ID:8hlxMoFao<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/07(火) 00:21:11.28 ID:ltq968xKo<> 乙! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/07(火) 16:03:16.57 ID:cRyNKopmo<> 熱くて読み直したけどまた読んじゃった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/07(火) 20:10:08.86 ID:/UlVBuqfO<>
男「スマホが文章ズームとか出来るって知らなかったし、んでもって指示内容が『一瞬だけ時間を稼いで』だもんな」

男「ヒャドでいいから直ぐに助けて欲しかったかも?」

主任「感覚的に、ヒャドを二回……ヒャダルコを一発撃ったらMPが切れる気がしたの」

男「あ、そういえばwikiで調べたらドラクエのMPは『マジックパワー』らしいっすな」

主任「魔力ってことかな、感覚だけで言えば精神力って感じだけれど」

男「メラを何回撃てば実感出来るかな…?」

主任「余り経験はしなくていいと思いますよ? 目眩がして、集中力が無くなって感情的になりやすくなるので」

男「……マジか」


主任「さてと、そろそろパエリア出来上がるので待っててくださいね」スッ


男「うっす」

男(ニュースでも見るか)

男(まだ俺の映像出てんだろうけど、こればっかりはなぁ……)ピッ


< 『次のニュースは、午前に起きた大変可愛らしい珍事件です』

< 『赤ちゃんがベビーカーから落ちたかと思いきや、突然走り寄ってきた大型犬が赤ちゃんを見事背中で……』


男(……どのチャンネルも俺の事、もしくは世界の何処かでモンスターの被害を受けた事か、或いは平和な日常を映してるな)ピッピッ

男(ま、これはこれで気が楽か)ピッ

< 『……頃、アメリカのネバダ州ラスベガスの大型カジノで保管していた…』


< 「男さーん、ちょっと手伝ってくれますか?」


男「ん、りょーかい」


< 『……強奪された金品等から合わせて被害総額は予想されるもので数十億を越えており、現在強奪した犯人達を追跡しているとの事です』

< 『しかし複数の犯人達は全員「緑の装束で全身を隠しており」、監視カメラの全てが凍結されていた事で依然として新たな手掛かりが無く、重傷を負ったカジノの警備員の男性の証言しかない様です』


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>age<>2015/07/08(水) 14:07:52.16 ID:csV16xuSO<> あ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/08(水) 21:10:07.23 ID:WYZXcphUo<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/11(土) 09:34:35.93 ID:JiLCuhNTO<>
〜 【二時間後……】 〜



男「ご馳走さまでしたっと」

主任「そろそろ女さんが退勤する頃だし、先に彼女の自宅近くの駅へ向かいましょうか」

男「まだメールは来てないっすよ」

主任「夜だし、彼女の話では相手がはっきりと人間か見てないのでしょう?」

男「あ……」

主任「そう、ここ二週間といえば遂に私達以外の人にも見えるモンスターが現れた後なの」

主任「だから念の為に私達二人で様子を見ておきたいなって」

男「りょーかい、それなら先に行くので正解っすな」

主任「それじゃ準備しましょっか」


男「んじゃ俺は薬草でも二枚ほど……」

< prrrr……

男「お、家の電話か」スタスタ

男「はい」ガチャッ


主任「さてと、私は私で聖水と例のアイテムをポーチに入れて、と」ゴソゴソ


男「ああ、お袋か! 久しぶりだなぁ、妹や親父は元気にしてんのか?」


主任「…………」ピタッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/11(土) 09:46:25.43 ID:JiLCuhNTO<>
主任(今……何を言って…?)


男「会社? あー、うん……そうなんだよ、てか何で知ってるんだ」

男「部長が連絡したのか」

男「いや、別に何もないよ」

男「最近物騒だろ? 外に出ない仕事でも見つけようかと思ってさ」

男「はは……妹は相変わらずだなぁ、お袋は調子どうなんだよ」


主任(…………)

主任(きっとこの間のはからかってたって事なんだよね、質が悪いなぁ……)ゴソゴソ

















男「そうだな、また今度一緒に海外に行きたいなぁ……もうバミューダ島の沖には行きたくねえけど!」あはは

男「四年前は『事故になる前に親切な人達に助けられた』だけなんだからな!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/11(土) 11:13:37.37 ID:mykwhmDDO<> いいね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/11(土) 11:49:20.64 ID:35z3oKfo0<> 天涯孤独じゃ…? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/11(土) 11:50:39.48 ID:2ktJu7UMO<> 両親妹って… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/11(土) 16:11:52.84 ID:8ddAYECOo<> 乙
お袋に合わせて…それとも男に?しにがみとの会話で気づいてなかったけど四年前「誰か」に会ってたのかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/11(土) 20:31:52.90 ID:RYbn+kOYo<> どのパターンだろ
敵の改竄じゃなさそうだけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/12(日) 21:49:14.50 ID:zKVHm+ItO<>

─────── …… ポワァ……ンッ



主任「ふぅ、男くんと一緒に戦うと多少囲まれても無傷で殲滅出来るね」スタッ

男「主任のレベルがいまいち分かんないな……俺よりすんげぇ速いのに、腕力は無いんだもんなぁ」

主任「それはこっちの台詞だよ、男くんは呪文をあまり使えないのに鉄の鎧のさまようよろいを叩き斬れるんだから」

男「とりあえず二週間で知った事を踏まえて、もう少し連携を上手くならないとっすよ」

主任「もう充分連携取れてないですか?」

男「時々、タイミングが合ってないなって思わない?」

主任「全然」

男「そ、そっすか……」


< テテテテーテッテーテッテレー〜♪


主任「女さんがそろそろ駅に着くそうです」

男「FF………………?」

主任「?」

男「な、なんでもないけどさ」

男(ドラクエに続きFFか、ホントこの人って会社にいた頃と比べて意外なイメージばっかだ)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/12(日) 22:52:05.95 ID:DmT4d52ko<> テンテンテテンテ、テンテンテテンテ、テンテンテンテテー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/13(月) 09:24:19.50 ID:a/AlXAIZO<>



男「お疲れ様です女さん」

女「ありがとー、ごめんねこんな時間に付き合って貰って」

男「まぁ会社で仲良くして貰ってたし、構いませんよ」

女「頼りになるねぇ! 頼んだぞボディガード!」

男「おう」

女「それじゃとりあえず私の家に行く前に、コンビニ寄りたいから行くよ」

男「りょーかい」



男(……俺らの背後は任せたっすよ、主任)チラッ


< ……コソッ



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/13(月) 09:44:48.68 ID:a/AlXAIZO<>
< コツッコツッ……


女「そういえば、男くん最近のニュースとかテレビ見てるかな」

男「一応は、なんで?」

女「最近某区のホテルで凄いの出たでしょ」

男「あー、あの黄色っぽい死神……」

女「死神?」

男「っぽくないですかね、あれ」

女「黄色い死神って何だかダサいような気がするな私ー」

男「じゃあ何だと思います?」

女「とりあえず悪そうな奴だよね、男くんに襲いかかって笑ってたし」

男「あんな鎌振り回してたら普通悪者でしょう!?」

女「そう? あはははっ」


女「ねぇ、気づいてる?」

男「ん? ……何がです?」チラッ

女「違う違う、後ろとかストーカー関連じゃなくて……まぁいっか、君って面白いなぁ」

男「??」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/13(月) 09:58:04.04 ID:a/AlXAIZO<>
< 「何なんですかー?」

< 「いいっていいって! あ、それよりチューハイ奢ったげよっか?」


主任(……こういうボディガードって暇かも)ふぁあ…

主任(世間的に私が男くんの家にお世話になってる事を女さんに知られない様に……とは思ってたけど)

主任(適当な嘘をついて普通に男くん達と行動すれば良かったかな?)

主任(でも私、会社辞めたのに男くんとボディガード付き合うっておかしいよね)

主任(それにここら辺のモンスターを倒しておいたけど、もしかしたら追加とか出るかもしれないし)

主任(例のストーカーの事もあるしね)


< ……スタ…スタ…


主任(!)

主任(人影……モンスターじゃなさそう)

主任(フラフラ歩いてて、何だか怪しい……)

主任(……)


< ……スタ…スタ…


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/13(月) 10:06:21.82 ID:a/AlXAIZO<>
男(……?)

男(さっきから主任の足音以外にも、少し主任より前を誰かが歩いてるな)

男(足取りが千鳥足に近いから酔っ払い……か?)


女「所で男くんって、携帯壊れちゃって今は代わりのを使ってるんだっけ」

男「ですね、もうチップまで粉々になったんで連絡先をまた登録するのめんどいです」

女「ありゃりゃ、何で壊れちゃったの?」

男「ちょっとタンクローリーに潰されまして」

女「どんな状況!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/13(月) 12:29:02.97 ID:3YDEs8B1O<> どっかのスカルな探偵さんじゃないんだからさぁ…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/13(月) 22:06:27.92 ID:a/AlXAIZO<>
< 「とりあえず俺はファミチキでも……」

< 「なら私は肉まんかな」



……【…………イ、ィナ…ァ】



主任(喋った……声からして歳は四十後半? モンスターじゃなくて良かった)

主任(何かする前に通報しようかしら)



……【オデ……の、ぉンナさん…………笑顔、カワイ……】



主任(気持ち悪いなぁ、とりあえず110番でも)スッ


    グルンッ!!
……【……お前の顔はキライだァ……】



主任(気づかれてた!?)ビクッ

主任「……っ」

主任「人間じゃなかったんですね……モンスターめ」






腐った死体…?【オデ……オマェ、見エてる…?】






<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/13(月) 22:43:05.19 ID:a/AlXAIZO<>
━━━━━━━━ 【届かぬ声】



主任(『くさったしたい』……ゲームで何度か見たことがある、けど……)



…………『そういえば主任、気をつけて下さいね』

…………『この間、俺達が戦った「話せるモンスター」』

…………『俺はあの死神を含めて二度戦ってます、戦ったんだ、だけど二匹とも明らかに強かった』

…………『今の俺を数値化するなら、レベル9か8だ』

…………『そして普通のモンスター達はレベル5程度……だが話せる奴等は、知識も経験も、何もかもが別格なんだ』

…………『だから、もしこれから先で主任一人でそいつらと出会ったなら、気をつけて欲しい』




主任(……このくさったしたい、性癖こそ人間らしい最低男だけど……)

主任(話せるモンスターが強いなら私がすべきなのは戦闘ではない……助けを呼んで協力して倒すべきだね)


主任「男さ………………きゃぁあ!?」ドサッ!

主任「なっ……ひぃ……!?」ガシィッ

< メキメキメキ……ズボォッ!


腐った死体【ォ"ォ"ォ"オ"オ"オ"オ"……!!】

腐った死体B【ォ"ォ"ォ"オ"オ"オ"……!!】


主任(アスファルトを破って、地下から……!?)

主任(それよりも、このままだと身動きが……)

主任「男さん、助け……」


腐った死体…?【オマェ……コロス】キィィン


主任「えっ……」


腐った死体…?【『ギラ』】

───── カッッ!!! ─────




< ゴバァアアアアッ!!




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/13(月) 23:10:00.40 ID:Lo/ZqIhKo<> ああっ、服が <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/14(火) 09:37:23.84 ID:wJleCNocO<>
  ゴォオオオオオ・・・!


腐った死体…?【…………に、匂ぃ……ガすル……】

腐った死体…?【マダイキテ……る、コロス、コロス、殺せ……】


腐った死体【ォ"ォ"オ"】

< 「『バギ』!!」


    ゾンッ!!


腐った死体【ォ"ォ"オ"オ"オ"ッ!?】ベチャァッ


主任「気持ち悪いですね……人間に近い構造をしているから、尚更」ビュォオッ

主任(ああっ、服が……これだと私やばくないですか、男さんにも見られるし)

主任(それより厄介ですね、男さんのいるコンビニを巻き込んだら一般の方が死にかねない)

主任(魔法を使うくさったしたい、そんなの『私の知るドラゴンクエストシリーズでは一度も見たことがない』)

主任(……男さんに持たされた物はさっきギラを防いだ時に、道端に立て掛けましたが……果たして気づいてくれるかどうか)


腐った死体…?【『ギラ』】キィィン


主任「ッ! 『バギ』ィッ!!」ビュォオッ



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/14(火) 09:46:13.12 ID:wJleCNocO<> 〜 【コンビニ店内】 〜



< ゴバァアッ!!


男「!」ピクッ

女「どしたの、そんなびくっとして」

男「今の、聴こえない?」

女「何の音?」

男「爆発音……もしかして聴こえてないんすか!?」

女「聴こえないよ、え、なに? 外からなの?」


男(呪文を使った爆発音だからか? だとしてもまずい!)バッ

女「男くん!」




< ウィーンッ


男「主任!!」

    ジュゥゥウウウ……!

男(アスファルトがあちこち捲れて……ってか、これ溶けてるのか!?)

男(メラじゃねえよな、まさか『イオ』とか…?)

男「主任!! 何処だ!!」ダッ

男(くそ、いない! 一体何処に……!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/07/14(火) 11:42:23.34 ID:wJleCNocO<>
〜 【男が気づく僅か七秒前】 〜



    ゴバァアアアアッ!!


主任「〜〜っ! く、ぁッ……! 『ホイミ』!」シュッッ

< トンッ!


主任「はぁっ……はぁっ……!」クラッ

主任(ギラをまともに受けたら、HPが残ってるとか関係なく、動けなくなるかも……!)

主任(咄嗟の『バギ』で弾こうとしても、思ったよりバギの風はギラほど押し出す力が無いみたい、あくまでも風の刃でしかない……!)


< ズダンッ!

腐った死体…?【オマェ、レベルから想像したノよリ……思っタょ…り速い……コノ世界…のニンゲン…ダカラカ……?】


主任(……民家の屋根で立ち止まってるのも気持ち悪い、このまま移動して周囲を気にせず戦える場所へ行こうか)ググッ……


< バッ!!


腐った死体…?【逃がさ……ナィ……!】ビュバッッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/14(火) 21:33:36.69 ID:lvqXetl9O<> 1ってドラクエシリーズはどれやってたの? <> 初の酉付き>>1
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/07/14(火) 22:17:37.05 ID:VQ4oQWVvO<> 【休憩代わりの質問回答(投下を再開するまで)】

>>318
A、DQ&リメイク&剣神DQ、DQ2&リメイク、DQ3&リメイク、DQ4&DS版、DQ5&PS2版&DS版、DQ6&DS版、DQ7、DQ8、DQ9(ストーリーのみクリア、やりこみ要素は放置orすれ違い皆無)、トルネコD、トルネコD2&GBA版、トルネコD3&GBA版&PS2版、ヤンガスD、DQMテリー、DQM2イルルカ一式(ルカのみ「スラお」等完成)、DQMJ、DQH←プレイ中

です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/14(火) 23:25:29.27 ID:ivAhHyFdo<> ダイの大冒険はありですか? <> >>1
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/07/14(火) 23:57:44.91 ID:fhZBbDoJo<> >>320
A、あり(何がかは分からないが)です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/15(水) 22:38:49.91 ID:iyl9ofQ/0<> 回答ありがたい
結構やってるのなー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/25(土) 02:30:49.27 ID:z762+4oJ0<> つまりアバンストラッシュとかメドローアとか五指爆炎弾も夢じゃないという訳か <> sage<><>2015/07/30(木) 22:12:21.95 ID:oa7L2fLQO<> 生きてるか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/07/30(木) 22:30:30.51 ID:nPCawXZjo<> DQ11の発表で忙しいんだよ
あちら側との調整とか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/15(土) 08:38:19.37 ID:40x12NAAO<> 最後の更新から1ヶ月たったな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/15(土) 17:28:00.97 ID:1w2pgpufO<> 本人からの書き込みが必要なのは2ヶ月だから黙って待ってろカルロ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/15(土) 17:36:39.14 ID:QPXUz8Zvo<> 確か2ヶ月経っても処理される前に書き込んだら一応ノーカンなんだっけ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/17(月) 08:43:20.04 ID:QddgUq7AO<> それは分からんが、誰もレス書かないと1ヶ月てアウト。
あと、327はもう少し言葉を選べ。醜いぞ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/19(水) 09:50:25.61 ID:OAJrQYtoo<> 他のとこでもこんなレスしないように言っておくが
この程度でマジレスするほうが見てて酷いぞ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/19(水) 12:53:12.07 ID:xpjczqIjO<> うんわかった! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/08/30(日) 19:01:50.01 ID:wPCduVd3O<> まだかな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/04(金) 07:21:52.49 ID:z3SJnS4AO<> あと10日か <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/13(日) 09:35:08.13 ID:EbsVfxepO<>
< ウィーンッ


女「もう、急に男くんどうしたのさぁ……」

女「ってあれ…?」

女「うわっ、何これ道路がメチャクチャ……もしかして男くんの言ってた爆発ってこれかな」

女(ガス爆発…? 事故…? どっちにしても危ないかも)

女(男くんはもういないし……)


< 「あ、あの……」


女「?」


初老「こんばんは女さん…な、何だか凄いことになってますね……!」

女「え…? そうですね、あの、どちら様ですか…?」

初老「あっ、ごめんなさい! ほら僕はその……」

< バチバチッ…

初老「女さんの恋人の初老ですよぉ」



女「……!!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/13(日) 09:49:59.66 ID:EbsVfxepO<>
初老「ずっとお話したいなって……思ってて……えへへ」

初老「今日は変な奴につきまとわれてたみたいだから、家から女さん守る為の武器持って来ちゃいました……」

初老「だからもう、大丈夫ですよぉ」


女「ぁ……ッ、っ…!」

女(やだ嘘でしょ……今、コンビニに逃げ込めばなんとかなる……かな…)ザッ…


初老「女さん、僕と帰ろう?」

初老「大丈夫だから、安心して……」

< バチバチッ…


女「っ」バッ

女「誰か助けてぇえ!!」ダッ…!!



< パァンッ!!
          チュインッッ
女「ひっ!?」ピタッ

女(え…? え……?)



初老「……そっちは危ないよ」カチャッ

初老「そこのコンビニにいた元カノはね、そこの奴等に何か吹き込まれたんだ」

初老「そうしたら、いつものように僕が彼女を見に行った時に変なボタンでSECOMやら警察やら呼ばれちゃって……」

初老「おかげで僕……仕事が無くなっちゃったんだぁ」


初老「そんな時に君と出会った訳だけど、とりあえず僕と帰ろうか女さん」


女(拳…銃……)へたっ…

女(や、やだ……誰か……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/13(日) 13:07:44.02 ID:fSlNHFK/0<> うおおおかえり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/13(日) 21:43:21.80 ID:EbsVfxepO<>


────────── バキィンッ!!



主任「……」ゼェ…ゼェ…

主任(侮っていたのは私、そういうことかな)

主任(このモンスター……多分…………)


腐った死体…?【ぉォ……ぉい詰めタ……】バキバキバキッッ

腐った死体…?【お前、コロ……こロコろ殺す、呪文もコの程度なら怖くナィ……】


主任(ヒャドが効かない、バギで付けた傷も癒えてる)

主任(このモンスター、私が出会った中で一番強く思える……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/14(月) 12:03:33.82 ID:KPCIFRNgo<> 乙
ストーカーどっちもヤバイな、潰し合えばいいのにww間に合え男!すぐに倒して戻るんだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/14(月) 18:30:05.20 ID:VkhNCVKAO<> 乙
期限ギリギリだな。
間に合って良かった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/14(月) 21:41:28.58 ID:/pvVLCItO<>
腐った死体…?【死ね】


< ボッッ!!
          ズバッ……!

主任(落ち着いて動きを見れば避けられない攻撃ではない、なのに……)タンッ

主任(『攻撃の予備動作に反応出来なければ』ッ!)




    ゴバァッ!!



主任「きゃぁあ!?」ドサァッ!!

主任(ッ……、一撃でギラ以上の破壊力! そもそも余波だけでアスファルトを抉るってどんな法則無視の一撃なのッ)ぐぐぐ……

主任「『ピオリム』!」キィンッ

主任(逃げながら男さんを見つけて、二人で戦うしかない! 先ずは逃げ切ってみせる!)ダンッ!



腐った死体…?【……マタ逃ゲた…】

腐った死体…?【……!】ピクンッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/15(火) 07:40:55.09 ID:Cf5NRBFdO<> きた! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 10:48:20.55 ID:096jSZSGO<>



腐った死体…?【そ、そそソソソソぞうカ】


腐った死体…?【この先…、タシか……】


腐った死体…?【…………】


腐った死体…?【……ド…、どうせ他の地区はオデとハ…違うだろウが……】


腐った死体…?【逃がされても困ル……オデが、確実にコロス……】ググッ




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 10:59:52.21 ID:096jSZSGO<>
< スタッ!

男(糞、主任が見つからねえ……!)

男(逃げたならいい、だけどあの主任が逃げに回ったなら助けに行かねえとまずい)

男(どうすりゃいい、さっきから携帯で呼び掛けても出ないぞ)

男(…………)


< ゴォ……ンッ


男「!」

男(主任か? でも音が遠いッ!)

男(こうなりゃ最後の手段か…っ)


男(……届いてくれよ、俺の新技)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 11:10:24.06 ID:096jSZSGO<>
─────【男の居る位置より西側2キロ】─────


腐った死体【ォ"ォ"オ"ッッ】

主任「くっ、やぁッ!!」

< ドゴッ!

腐った死体【ォ"ォ"オ"ォ"ッ!?】ズサァッ

腐った死体B【ォ"ォ"オ"オ"】ブンッ


主任「ぎっ……ぁ!?」ズバッ

主任「ほ、ホイ……」


腐った死体…?【ォオオオオッ!!】ギュンッッ

< ゴバァッ!!


主任「 ──────────ッッ!! 」ドサァッ!! ゴロゴロ……!!

主任(ぅ……ぐ、どうしよう……囲まれた……)ヨロッ…

主任(腐った死体達だけなら、逃げ切れたけど……まさか、こんな所にも……っ!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 11:41:58.53 ID:096jSZSGO<>


バンパイア【キシシッ、まさかこんなつまらない夜に面白い獲物が舞い込んで来るとはな】

バンパイア【品の無い輩が混じってはいるが、ね】



腐った死体…?【………】じろっ

バンパイア【キシシッ】

腐った死体…?【………】


ベビーサタン【キキキッ】

ベビーサタンB【キキキッ】バサバサッ


主任(……逃げ切れない)

主任(ううん、それだけじゃない! あの如何にも吸血鬼みたいな男も多分『喋るモンスター』……連続して遭遇するなんて…!)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 12:14:59.28 ID:096jSZSGO<>
バンパイア【さて、殺すのは構わないがそこの人間には聞かなければならないな】


主任(……時間を稼ぎながら、何か手を打たないと)

主任「聞きたいこと…?」


バンパイア【近頃我々『指揮官』を各個撃破している輩がいる、仮にも人間を遥かに凌駕する力を持った我々をだ】

バンパイア【信じたくはないが『こちらの世界』の人間に撃破された可能性がある、そこで貴様に問うのは……】

バンパイア【『心当たりはあるのかね』?】


主任(……男さんの事、だとしたら…)

主任(それに指揮官って言ってたし、普通のモンスターを統率するこんなモンスターの事を示すなら間違いない……)

主任(けどそれを話しても男さんが狙われるだけ……)

主任(………)


腐った死体…?【……ヤッぱり、オデ…コイツコロす……】

バンパイア【馬鹿め、出しゃばるなよ役立たずめ】

腐った死体…?【……………ナ、ニ……?】ギロッ…

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 12:26:58.36 ID:096jSZSGO<>
腐った死体…?【ぉ前……】

バンパイア【初期の依り代で不完全な顕現しか果たせなかったらしいじゃないか】

バンパイア【それに比べ、私は遂に最もこの世界に適した依り代を与えられて力を与えられたのだ】

バンパイア【どちらが優れているかは自ずと分かるだろう】


腐った死体…?【………】

腐った死体…?【嘗めるなよ下等種族が……】


バンパイア【言ったな時代遅れの老害め……!!】



ベビーサタン【……?】オロオロ

腐った死体【……】ボー…




主任(な、仲間割れ…?)

主任(今なら振り切れるかもしれない)チラッ

主任「………!」ピタッ

主任(何…? 向こうの空に何か赤い光が打ち上がって……)


主任(もしかして……!)バッ!!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 12:59:35.96 ID:096jSZSGO<>
バンパイア【貴様の様な奴にこの私が敗れるとでも……】

< 【キキキッ! キーキー!】

バンパイア【何だ】

ベビーサタン【キーキー!】パタパタ

バンパイア【なに!?】バッ


< シュタタタタタッッ……!!


バンパイア【逃がすな! 追うのだ!】

腐った死体…?【……フ】

バンパイア【チィ、あの方向は貴様の担当地区だろう! 追わせろ!】

腐った死体…?【………】バッ

腐った死体…?【アッち……の、空に…何かが打ち上げラれテイル…!】ダッ!


バンパイア【何ぃ…?】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 13:10:10.12 ID:096jSZSGO<>
男「ぜぇっ……ぜぇっ……!!」タッタッタッ

男「メラッ!」ボンッ

< ヒューン……パァーンッ

男(メラは一定の距離を飛ぶと赤い光になって弾ける)

男(こいつを空へ打ち上げりゃ、主任に見えるかもしれない…!)

男(そして俺自身が光を放ちながら建物の上を走ればかなり目立つ筈)

男「……何せさっきから大量にモンスターが俺の事追ってきてるし」

< 【ピキー】【シィイッ】【キーキー!】
< 【ォ"オ"オ"…】【キィー!】





男「主任!! どこだぁあああ!!」タッタッタッ…!




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/15(火) 13:32:27.37 ID:AW2nypku0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 13:58:59.59 ID:096jSZSGO<>
〜 【男が走る位置から僅か100m右、路上】 〜



< 「……!! どこだぁあああ!!」


女「…!」ビクッ

初老「今のは何だろうね、こわいなぁ」

< ぐいっ

女「……」

初老「変な事をしないでね女さん、君は僕が守るから」

初老「もうすぐ僕の家だよ、着いたらまずはシャワーでも浴びようねぇ」

女(……さっきの声は男くん、だよね…)

女(私を探してる……今ここで逃げれば、男くんが助けてくれる……)

女(でも……下手したら私、撃たれちゃうのかな……)ポロポロ…


女「…………」


女(おじいちゃん……!)グルンッ!

初老「お?」

女「わああああ!!」ブンッ!!

   ゴッ!
     パァンッ!!

初老「ぐぇぇっ…!」ドサッ


女「……〜〜っ!」

女(逃げなきゃ、逃げなきゃ……)ふらっ

女(……あれ、お腹……痛…………)



< ドサッ……



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/15(火) 15:26:51.05 ID:096jSZSGO<>
初老「ぁああ……あぁあああぁあぁああ!!!!」

初老「女さぁぁあんっッッ!!」ガバッ


女「ぅ……あ…ッ」


初老「なんで、何で何で何で!!? 撃つ気なんて無かったのに! アァアアア!!!」

初老「変な事をしないでって言ったじゃないかぁ!! オォイッ!!」

初老「畜生が!! 隊にいた時もそうだった!! あの時に一尉が邪魔しなけりゃ僕はァ!!」

初老「くそクソ糞ッッ!! 僕の言うことを聞かないからだぁ!!」


初老「アァアアア!!」カチャッ


女(………男くん、おじいちゃん……)




    パァンッ!!
         パキュィンッ!!




初老「……?」

初老「……??」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/15(火) 16:11:39.68 ID:ZTvRiKlNo<> 俺「……??」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/09/15(火) 19:22:08.54 ID:suvd1Pnc0<> スレタイからは想像もできないくらいハードな内容だな。
確かに「普通の人には見えないモンスター」に襲われたら、生き延びたとしても異常者扱いされるから人生詰んでるよな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/18(金) 09:49:52.84 ID:j9r5DGhNO<>
━━━━━━━━ 【何者かの視点】



(……近くでモンスターとの戦闘があったのか?)

(血の匂いが漂っている、相手はこの町のボスといった所か)

(だが、『俺達』は戦闘していない)

(となれば戦っているのはモンスター同士か、それとも……『異世界の戦士』とやらなのか)

(こんな事ならば近辺に潜伏している仲間と連携して様子を見に来るべきだったな)

(……いずれこの世界の人々とコミュニケーションが取れる機会はある、だがそれで間に合うのか俺達は)



< ヒューン……パァーンッ



(!)

(あれは『メラ』の火……?)

(仲間か? いや、だが移動しながらメラを打ち上げているのか)

(罠とも取れるが……)

(……)

(近くまで行ってみるしかないな)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/18(金) 12:05:28.85 ID:6LIBrgNzO<> wktk <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/18(金) 12:20:39.26 ID:j9r5DGhNO<>
腐った死体【ォ"ォ"オ"…】



「『………』ッ!!」ボヒュッ


< ドゴシャァッ!!

腐った死体【オ"………ォ"……  < ポワァン……ッ


(アンデッド系のモンスターが多いな、それも異様に数が増えている)

(俺と同様にさっきから打ち上げられているメラを追いかけている?)

(罠、ではないということか)

(しかし如何せん地の利で負けているのか中々追い付けんな……やはりこちらの人間かもしれないな)


    ズズズズ・・・!


(……新手、それもこの気配は悪魔系のモンスターか)


ベビーサタン【キキキッ】

ベビーサタンB【キキキッ】


(エリアが変わった……? しかし町のあちこちからアンデッドの気配が残っている)

(『奴等は互いに干渉するのを嫌っていた』、つまりこれは……)

(急ぐか)ダッ!


< 「わああああ!!」

< パァンッ!!


「なんだ……!?」ピタッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/18(金) 12:29:07.65 ID:j9r5DGhNO<> 初老「なんで、何で何で何で!!? 撃つ気なんて無かったのに! アァアアア!!!」

初老「変な事をしないでって言ったじゃないかぁ!! オォイッ!!」

初老「畜生が!! 隊にいた時もそうだった!! あの時に一尉が邪魔しなけりゃ僕はァ!!」

初老「くそクソ糞ッッ!! 僕の言うことを聞かないからだぁ!!」



< スタッ……

(女性が怪我を? モンスターにやられたのか、 薬草が間に合えば良いが……)ゴソゴソ

(だが出血が酷い、ここはローレシアの薬剤を飲ませるか……?)



初老「アァアアア!!」カチャッ

「!?」


(あれはこちらの世界の武器…! 何故だ、この男が襲っているのか!?)

「よせ、やめっ……




    パァンッ!!

「破ァッ!!」ビュンッ!!
         パキュィンッ!!



初老「!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/18(金) 13:05:44.53 ID:l0QenXxyo<> Tさんが! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/19(土) 04:51:48.83 ID:aaK60zPP0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/09/19(土) 11:33:36.30 ID:gRnZMdgKO<>
(間一髪であの粒を弾けたか、危なかった)

(指先一つで人を殺める事の出来る武器か、何度見ても恐ろしいな……)


初老「な、なんだ……? まさか噂の見えないやつか……!?」カチャッ


(まだやるのか……!)


「『……』ッ!」ボヒュッ


< ドゴシャァッ!!

初老「……コヒュ…ッ……?…」

< ドシャッ……



「ふぅ……」

「!」

「それよりこの薬を飲ませなければ……おい、しっかりしろ!」ガバッ


女「………?……」ユサユサッ…

「聴こえるか! これを飲み込むんだ!」

女「コヒュー……カヒュー……」

(駄目か……ッ)

(どうすればいい、糞ッ糞ッ!)


< 【ホヨヨ……】


(!!)

「お前は……?」


ベホマスライム【……】ホヨヨ…


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/25(金) 00:32:55.68 ID:Y4ZFa12LO<> 待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/25(金) 00:33:45.08 ID:Y4ZFa12LO<> ちょっと展開がわかりづらくなってきた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/25(金) 01:26:35.23 ID:Hhk9WVNFo<> 護衛ほっぽり出して死ぬ目に遭わせて
女が助かっても男は潰れそう <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/09/28(月) 22:24:28.92 ID:9yoFJfoNO<> 男がメラで合図+主任探し
主任は隙ついて逃走
女は糞に致命傷受けるも何者かに助けられる
だな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/15(木) 17:43:09.46 ID:OAWmY+xMo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/26(月) 21:42:59.47 ID:Yw3MNl4VO<>


主任「『ヒャダルコ』……!!」


────────── バキバキパキィンッ!!


バンパイア【面白い、その程度のレベルでヒャダルコが使えるか】

バンパイア【だがその傷で大技は早計だったな! 『ベギラマ』!】キィンッ


─────ギュオオォッ!!─────


主任(っ!? ベギラマって閃光系の呪文じゃっ……!)

< ゴバァッ!!

主任「きゃぁあ……っ!!」ドサッ

主任「ぐぅぅっ! ァアァぁぁ……!!」ジタバタッ

主任(腕が熱いっ…痛い…っ!! 痛い痛い熱い熱い熱い熱い!!!)


バンパイア【さて、手間取らせたものだ】ザッ

バンパイア【この私からこれだけ逃げられたのは誉めてやろう、だがそれだけだ】

バンパイア【さぁ言え! 貴様が他のモンスターを倒していたのだろう!】

< ガシッ!

主任「ぐぁ……かはぁ…息がっ……〜〜!!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/26(月) 21:56:24.69 ID:VtMbVxKGO<> まってました <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/26(月) 22:17:44.93 ID:Yw3MNl4VO<>





─────────【『兜割り』】 ─────────






バンパイア【ッ!?】バサァッ!!


夜闇に包まれた中で響く、低い声。

主任を掴んでいた男は、黒いマントを翻して数十メートルもの距離を一瞬で後退する。

そして、その直後に俺は見た。

未だに夢に見る程、俺の脳裏に焼き付けた恐るべき追撃者の一撃。

『兜割り』……俺が出会ったモンスター達の中でも唯一にして最初に見た特技。


───── ゴガァンッッ!!


爆撃に等しい衝撃波、捲れ吹き飛ぶアスファルトの散弾。

俺は既視感を覚えるその光景を目の当たりにしながら、宙に投げ出された主任を受け止めた。



主任「…………っ……男さん!!」

男「すいません、遅くなりました」ズサァッ

男「それよりも……」



主任が何かを叫びながら俺の首に抱き着く、しかし俺はその事よりも自分の目に映っている光景から意識を逸らせずにいた。

原因は、主任の首を絞めていたモンスターらしき男の前に現れた、鎧だ。

近くの蛍光灯は既に割れていて、照らす灯りは少し離れた位置にある蛍光灯のみ。

だがその少ない灯りから生まれた影だけで、鎧の正体が分かった。

分からない筈がなかった。



男「……あの時の、さまようよろい……ッ!」



さまよう鎧…?【シィィ……】ギシッ…



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/28(水) 04:34:06.32 ID:QkmlBZeq0<> 乙乙
待ってたで <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/28(水) 17:31:24.99 ID:UQfrdhK6O<>
よく見れば黒い。

暗いだけではない、鉄の鉛色とも違う。

このさまようよろいは黒の鎧なのだ、それも……今までに見たモンスターとは別格の威圧感を纏っている。

その理由は動きだ、鎧らしからぬ滑らかな挙動で黒色の盾を構えていた。

そして……手に持つのは、今俺が背負っているハードのギターケースに隠している『鋼の剣』。


男「……まさか、『じごくのよろい』になって復活した…?」

主任「男さん、あのさまようよろいを知ってるんですか…?」

男「知ってるも何も、俺は前に倒した……と思う」

男(考えれば考える程に、自信が無くなるな……)


特徴的だった細かい傷のある剣を持っている以外は全くの別物、そんなさまようよろいらしきモンスターを俺は観察する。

見れば見るほど、考えれば考えるほど、違うような気がする。

だが、そんな俺の方へ黒色のさまようよろいは視線を向けた。


さまよう鎧…?【……】ギシッ…


男(こっちを見た……?)


さまよう鎧…?【……】

さまよう鎧…?「また会ったな、人間」


男「……やっぱりあの時のッ」


バンパイア【……貴様、何者だ】



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/28(水) 18:26:27.14 ID:joFRbWESo<> スレタイからこうなるとは予想できなかった面白い <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/10/28(水) 19:15:08.77 ID:IoSiNaY60<> 30歳童貞が魔法を使えるようになる話かと思いきや、かなりマジなストーリーだもんな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/28(水) 20:46:42.41 ID:POxuQIq0O<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/28(水) 21:37:26.89 ID:S4DV6QxNO<>
モンスターは突如現れた黒色のさまようよろいに赤い眼光を向ける。

その問いかけは、警戒よりも何かを知っている上での『確認』に近いと俺は思えた。

しかし。



さまよう鎧…?「話は後だ」



取り合わない、振り向きもしない。

さまようよろいは俺の方へ意識を向けたままだった。



さまよう鎧…?「加勢する……私に続け、人間」


男「お、俺に言ってるのか…?」


さまよう鎧…?「直ぐに此処へもう一人、厄介なのが来る」

さまよう鎧…?「……どうした、私が戦った人間は手段を選ばずに足掻く戦士だった筈だが」


男「……っ、勝手な事を……!」

主任「耳を貸しては行けません男さん、モンスターの中には人間を騙す奴もいる筈です」

男「分かってる! こいつは前に俺が倒したんだ!!」


手助けをしてやる。

このモンスターはそう俺に言っていた。

敵が味方になる、なんて漫画の様な展開に胸を躍らせながら首を縦に振れるわけがなかった。

約2ヶ月前に俺が人生で初めて体験した強敵、死んでいてもおかしくなかったような化け物だ。

そんな相手を前にして、ましてや主任が戦えず、俺の腕の中にいる状況で、共に戦う事を良しとする事など出来るわけがない。


男(……それに、俺はもう…………)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/28(水) 21:52:06.84 ID:6rAgZTC8o<> 更新頻度高くて嬉しい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/28(水) 22:06:00.88 ID:QkmlBZeq0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/28(水) 22:15:26.48 ID:S4DV6QxNO<>

──────── ガギィンッ!!



俺は迷い、腕の中にいる主任を強く抱き寄せた瞬間。

目の前を散った火花で俺の意識が前に向いた。

眼前に立っていたのは、黒いさまようよろいだった。


男「な……」

さまよう鎧…?【シィィ……】ギシッ…ギチギチッ


左腕に携えた円盾を前に突き出したまま、右手の剣を構えて動かない。

俺はその鎧の影から向こうを見て声が出せなくなった。



バンパイア【……やはりか】ギロッ

バンパイア【貴様、『依り代』無しに……こちら側へ来ているな?】


さまよう鎧…?【シィィ…ッ】ギギギッ……


バンパイア【さては精霊の力でも借りたのか、裏切り者がぁ!!】


さまよう鎧…?「五歩下がれ、人間」ドンッ

男「っ!?」



激昂を露にして鋭い爪を鳴らして襲いかかる黒マントのモンスターは、その細い身を捻らせて一閃させた。

少なくとも俺にはそうとしか見えなかった。


────────── ジャリィンッッ
    ゴッ!!       ビュガッ……!!

          ギギギギィンッッ ──────────


……だが俺の耳が捉える轟音が、そして数瞬前まで立っていた位置で弾けた閃光が、実際は違うと否定する。

全くの別次元だった。

目で追う事が出来ないならば避けられないのと同じ。

俺が入り込めない世界に、二体のモンスターは互角の戦いを見せていた。


主任「……化け物…っ」

男「…………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/29(木) 04:10:23.09 ID:9/61IbZoo<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/29(木) 09:37:43.66 ID:ybeVUqSNO<>
主任が信じ難い物を見る目で呟いた時、俺は二体のモンスターが『どういうモンスターだったか』を思い出していた。

もしも、この二体が戦ったとしたら。

片方は攻撃方法やその姿から、恐らくは『バンパイア』だろう。

こうもりおとこ、モンスターなのかそうでないのか微妙なモンスターの上位種。

ヒャドを使える程度の奴だが、この喋るモンスター達は何らかの力が上乗せされているか、或いは『ゲームではないが故に』これだけの能力を有しているかのブーストがある。

つまり、喋るモンスターにどこまでゲームの知識が通用するかは未知数だ。

ましてや……あのさまようよろいに至っては何故か『じごくのよろい』になって復活している。


だがもしも、ゲーム通りの能力値でこの二体がぶつかったのだとしたら。



男(……本当に俺達の味方になるつもりなら)


男「俺が手を出す間もなくあいつが勝つ」

主任「え……?」

男「あの鎧は多分、じごくのよろいってモンスターだと思う……」

男「あのモンスターの怖さはゲームで初めて出てきた時から、どの作品でも大体同じなんだ……アイツは、レベルの高い勇者を一撃で瀕死にさせる特性がある」

主任「……特性…ですか」

男「そう、それは ─────── 」




地を蹴り砕き、辺りを粉砕しながらぶつかり合うモンスター達は依然として後退せずにいる。

僅かにバンパイアの方が速いのかもしれない、じごくのよろいに何度か火花が散ったのと同時に鎧に傷が入る。

しかし、じごくのよろいは焦らない。

俺と戦った時とは違う、今のこいつにはこのモンスターが動きたい通りに動ける体がある。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/29(木) 12:12:15.43 ID:ybeVUqSNO<>

……そして、俺と主任が見る初めての上位モンスター同士の戦いは突如として終わりを迎えた。



────────── ズッ・・・ドッッ!!



バンパイア【ッッ……〜〜ッ…!!?】

地獄の鎧【シィィイ…ッ】ギシッ…!



それまで互角だった筈が、僅か一瞬で覆される一撃必殺。

俺はそれを知っている。

そしてそれが現実ではどのように見えるのか、時々気になっていた。

それは。



男「 ──────── 『痛恨の一撃』」

男「じごくのよろいの特性は、初めて登場した作品内で最もそれが出る確率が高かったんだ」



肩口から足元まで両断されたバンパイアは、傷口を中心に黒い煙の様な物に包まれていく。

恐らく、モンスター達が死ぬ時に散る光と黒煙と同じ物だ。

たった一撃で、俺や主任でも勝てないかもしれない敵を葬る驚異の剣撃。

俺が背負う鋼の剣と同じ物なのに、全く違う魔剣にすら見えてくる。



バンパイア【ッッ、ぬゥッ……!! 何が目的かは知らないが、それでいいのか? じごくのよろいよ……キシシッ】


地獄の鎧【……】


バンパイア【あのお方は無敵だ……精霊ルビスだろうがロトの一族だろうが、決して勝てやせんよ……】

バンパイア【この世界は……もう終わりなのだ…………闇に包まれ……て………………】


< ドサッ

────────── ポワァ・・・ン……ッ



バンパイアが地に倒れ伏せた瞬間、その体が黒煙に包まれてから光と共に散って消えていく。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/29(木) 12:21:45.52 ID:ybeVUqSNO<>

< ……パサッ!


男「え?」

主任「紙、ですね」


< バサッ! バサバサバサバサバサバサァアッ!!


男「う、うわ……!?」

男(バンパイアの消えた場所から……お札かこれ!? なんで……ていうか、これ……)

< カサッ……

主任「100ドル札……こっちのは……元札…?」

男「多いのは日本の万札か、これ……あのバンパイア倒して出てきたのか」



地獄の鎧「この世界に最も適した依り代、それはこの世界の『ゴールド』だ」ギシッ…



男「……!!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/29(木) 12:32:10.55 ID:ybeVUqSNO<>
地獄の鎧「我等モンスターは、こちら側に顕現する際に依り代となる物を媒介する」

地獄の鎧「理屈は分からんがな、その事を知るのに多くの同胞がこちら側と元の世界を行き来して二年近くかかった」


男(……二年、だと)

主任「貴方は味方なんですか……?」


地獄の鎧「敵の敵は味方、が正しい」

地獄の鎧「我等が王の命によりお前達に力を貸す事になったのだ」


男「ちょっと待て……待て、駄目だ分からない! 結局お前達は何なんだよ!?」


地獄の鎧「……」

地獄の鎧「『隣の世界』から来た者、としか言えぬ」

地獄の鎧「我等が聞いている事は断片的な物だけだ、こちら側の世界とは、大昔に『誰かが引き寄せた別世界』ということらしいが……」

地獄の鎧「それ以上は恐らく誰も知らないだろうな」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/29(木) 16:15:25.17 ID:hB8oFwiq0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/29(木) 17:14:50.65 ID:6ytrZQOq0<> 乙! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/29(木) 18:01:32.21 ID:iLpAVHf+O<> おー
ここでまた盛り上がってきたな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/29(木) 18:16:07.39 ID:SYkmpJgro<> 胸熱やな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/29(木) 21:42:00.35 ID:ybeVUqSNO<>
男「……本気で、別の世界から来たって言うのか」

主任「……」

男(主任も流石に困惑してるな)

男(ってか、バンパイアの言っていたのが本当なら、精霊ルビスなんて明らかに厄ネタな存在がいる事になる)

男(それと敵対していて、世界を飛び越えて来そうな魔王なんて一人しか……)


地獄の鎧「そろそろか」


男「何がだ…?」

地獄の鎧「我が右腕が戻ってくる、そうすれば一度ここを脱するぞ」

男「右腕って、もしかしてあのホイミスライムか?」

地獄の鎧「如何にも」

男「……なんで生きてるんだ、お前もそいつも」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/29(木) 22:02:49.87 ID:ybeVUqSNO<>
地獄の鎧「そういった詳しい話は落ち着いてから語ってやろう」ギシッ…


男「……!」

主任「男さん、私達囲まれてませんか…?」

男「罠じゃないと良いっすね……」

主任「手を離して下さい、ホイミで体の傷は回復しました」

男「ん」スッ

主任「よ……っと、ありがとう男さん」


    


【【【 ォ"オ"ォ"ォ"ォ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッッ!!! 】】】



       < ヴオゥンッ
< ヴオゥンッ       ヴオゥンッ >
< ヴオゥンッ    
          ヴオゥンッ
    ヴオゥンッ

 < ヴオゥンッ          ヴオゥンッ >




腐った死体【ォ"ォ"オ"オ"オ"ォ"】スタンッ

腐った死体B【ォ"ォ"……オ"……】スタンッ

< スタンッ……スタッ…ズルズルッ……



主任「な……何…? 一体どこから出てきて……っ」

男「俺の近くにいてくれ主任!」バッ

< ガチャッ……チャキッ

男(今の黒煙から手品みたいに出てくる芸当……主任のマンションでも見たぞ…ッ)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/10/30(金) 02:12:47.93 ID:vHlPkbKe0<> 久々にストーリー進んだな。おつー
次回も期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/30(金) 09:14:48.19 ID:TkZ1xMQ7o<>

地獄の鎧「……」


< ザッ……

腐った死体…?【……ソ、そノ匂い……】

腐った死体…?【じごくのよろい……カ、ナゼ…こ、此処にィル……?】


地獄の鎧「……あのお方が遂に立ち上がったのだ、『ワイトキング』……今は配下の『グール』だったか」


グール【ぁ……ァ、アのオ方…? マサカ、我等の王がっ……!?】


地獄の鎧「私は得体の知れぬ輩に使われるつもりはない、何より……これではっきりしたのだ、今の大魔王名乗る奴は我等の王ではない、偽物だ」


グール【……ッッ!!】


地獄の鎧「どちらに付くつもりだ、ここで私と人間の前に立ちはだかるのならば貴様は『王の敵』となる」

地獄の鎧「……退け、元……我が主よ」


グール【…………】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/30(金) 09:50:23.29 ID:TkZ1xMQ7o<>

腐った死体C【ォ"ォ"オ"オ"オ"ッ!!】バッ


男「っ! 」ガギィンッ

主任「バギ!」キィンッ

   ズバァッ!
腐った死体C【ゴ……ボォ……】ポワァン…


腐った死体B【ァ"ア"ア"ア"…ッ】

腐った死体D【ォ"ォ"オ"ォ"オ"ッ】ダッ




地獄の鎧「……それが貴様の答えか」チャキッ

グール【……】

グール【どうするかは俺が考える事だ、黙れ】バッ!


男(……くそッ、グールって言われてたなアイツ……!)ブンッ

< バシュッ

男(さっきなんか『ワイトキング』なんてとんでもない名前は聞こえるし……ぁあ! やってられるかこんなジャンプ漫画みてぇな急展開!!)ブンッ

< ズバンッ!

男(こっちは女さんが帰れたか心配だし世界がマジでヤバそうだし、あと主任の格好が殆ど下着しかないのが一番気になってきた!!)ブンッ

主任(何故か男さんが私をチラチラ見て……え? もしかして私の下着見てる? いやでもそんなこんな時に……)キィンッ! キィンッ!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/30(金) 18:50:04.51 ID:L8Cwmwi0O<> わかるわ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/30(金) 20:05:35.76 ID:E59Vkjf70<> オイ男wwwwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/31(土) 08:48:28.97 ID:N3pnNheiO<> 仕方ないね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/31(土) 09:35:59.60 ID:wEjdxAUtO<>
腐った死体N【ォ"ア"ア"ア"ア"!!】

主任「ヒャド!」

< ……

主任「っ…!? 男さん!」

男「どした主任ッ」ザッ

主任「私、MPが無くなりましたっ」

男「マジか……」ブンッ

< ズバンッ!

腐った死体N【ォ"……オ"……】ポワァン…


男「ふぅ……数が多いとか、そんな問題じゃないな」

主任「やっぱりゲームの主人公って凄いですね、こんな数を相手にしても勝てるんですから」

男「ですね……って言ってる場合でもないんだよな」

男(……じごくのよろいに加勢するか、否か、迷っちまう)

男(ゲーム内のステータスを参考にした力関係、こいつら喋るモンスターには意味がない)

男(だから……グールの『攻撃力』が判断出来ない、じごくのよろいより弱いのか、それとも……原作通りなのか)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/10/31(土) 19:54:35.47 ID:Si1fBhey0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/10/31(土) 21:34:21.16 ID:cPCqVhMNO<>
地獄の鎧【シィィイッ…!!】ビュォッ

< ザンッ

グール【魔法が余り使えないのは不便だ……ォ"オ"ッ……】ヨロッ

地獄の鎧【……シィィイ…】ギシッ…

グール【だが俺とて伊達に王を名乗ってはいない】

グール【例え偽物だったとしても、今は俺の主……忠義は果たす】

グール【『ピオリム』……ッ】キィンッ!

< ビュォッ!!


地獄の鎧【ッ……! シィィッ!! 】ガギィンッ

< ズザザァッ……

地獄の鎧(この私が、グールに遅れを取るだと? 奴め、さてはこちら側に顕現する際に得た力は弱点を補う呪文か……!!)

グール【ォ"オ"オ"オ"ッ!!】グルンッ

地獄の鎧【シィィッ!! シィィイッッ…!!】ガギィンッ ギィンッ

グール【『ピオリム』ッ】キィンッ!

地獄の鎧【!?】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/01(日) 01:29:51.91 ID:Vah5hwOgO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/01(日) 12:26:31.45 ID:TvZXhknwo<> 追いついた
面白い <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/02(月) 09:02:17.78 ID:5xSJpsaco<> 只でさえゲームと違って脆弱な人間なのに、知識から外れ始めるとつらいなぁ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/02(月) 21:50:00.20 ID:b+W2Pt4YO<>
男「主任! 俺に掴まって下さい!」ガシッ

主任「え、ぇっ? ちょっと男さんっ!?」

男「一度ここを離れる……囲まれたままで戦うよりも追ってきた奴を斬り伏せた方がマシだ!」

主任「でも……」



< ゴガァンッッ


地獄の鎧「ぐぉ……ぉおッッ!!」ガシャァッ…!! ドザァッ…!



男「んなっ…!? おい、お前っ……!」

地獄の鎧「チィ……正面からの一騎討ちでは私では勝てないと言うのか……ッ」

男「お前で勝てなきゃどうするんだ!」

地獄の鎧「……」

地獄の鎧「貴様と戦えば、或いは……」

男「無茶言うんじゃねぇよッ」

地獄の鎧「無茶なものか、貴様はあの日からやはり変わっておらん……そのレベルでこれだけ……」

男「……レベル…?」

地獄の鎧「ああ、貴様のレベルは……」


< ガシィッッ

地獄の鎧「グァッ……!!」ミシミシッ…!!


グール【…………】


男(い、いつの間に……っ)ぞくっ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/02(月) 21:53:52.12 ID:ZErMBL6mo<> きた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/02(月) 22:13:10.19 ID:b+W2Pt4YO<>
主任「やぁッー!!」バッ!

男「主任!?」


グール【ッ……!】

< ゴッ!!

グール【ォ"……ァ、よ、ヨくもヤッたな……】

主任「…………」


主任(今、何かが変わった……?)

地獄の鎧【シィィッ!!】バッ

主任「きゃっ……!」ガシッ

地獄の鎧「投げるぞ」ボソッ

主任「え?」






─── ブワッ ───


主任(嘘……でしょ…!?)ブワァアッ





男「テメェ!! 主任を上空に投げて何がしたいんだよ!!」ダッ!

地獄の鎧「手伝え人間! その剣は自分より弱い敵を切り裂く為の物ではない!!」バッ

男「けど、俺は……ッ」


男(俺は死にたくない……!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/02(月) 23:42:22.99 ID:d6nEvnawO<> わかる! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 02:05:49.23 ID:lsot57EHO<> やべぇ更新来たから久々に読んだけどホント面白いなこれ

今更だけど擬音の表現マジで上手いわ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 09:41:24.42 ID:y06T67yto<>
グール【チッ、『グール』の肉体が一瞬……】フラッ…

地獄の鎧【シィィッ……!!】ザッ

グール【!】


    < ダンッ!!




─────────【『兜割り』】 ─────────





────── ッズドォッッ!!

グール【ッ!? ……っ、ォ"オ"オ"ッッ!!】グラッ

グール【か、体の力が抜け……っ?】


地獄の鎧「今だ……!」ギシッ…!


男(ッ、畜生が……!)

男「らァアッ!」ブンッ


グール【ッ!】バッ

< グジュッ……! ガシッ!

男「!?」

男(手で受け止められた……しかも、引けねえ…!?)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 10:44:03.27 ID:Y/FXw58Ko<> 更新増えてマジ嬉しい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 11:19:28.70 ID:kXmUj3BXO<>
グール【クク……所詮は人間の村人が剣を持っているだけ、刃を録に立てられぬ攻撃などひのきのぼうにも劣るッ】

< ギチギチッ……

男「く、ぁっ……!」

男(くそ、押しても引いても剣が動かない! これヤバいんじゃ……っ)


地獄の鎧【シィ……ッ!!】

< ザクッ……!

地獄の鎧「飛べ!!」


男「は?」

男(いやまて、剣を地面に突き刺す構えってまさか……)ビクッ


地獄の鎧【シー……ッ】ギシッ…!

< バチバチバチィッ……バリバリィッ…!!

男「ざっけんなお前ぇええええ!!」バッ!






地獄の鎧「地を走れ……雷ッ!!」


──────── ギィンッ……バリバリバリィィッ!!





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 11:45:00.69 ID:kXmUj3BXO<>
グール【…………ッ……コホ……ァ"…】グラッ

< ビリビリッ…パチンッバチバチッ


男(……紫電を全方位に放つのか、『地を走る雷』って)スタッ

男(電圧とか感電率とかの法則は完全に無視、人間相手にこれをやったら……どう足掻いても感電死だな)

男(コイツ……さまようよろいの時とは本当に違う、今のコイツは序盤に出てきた終盤の敵みたいな理不尽な強さだ…!)


地獄の鎧【……シィィイ…】ギシッ…

地獄の鎧「……そろそろ降りてくるぞ、受け止めてやれ」

男「へ?」

< 「男……さぁぁぁぁあああああああん」

男「え」



主任「きゃぁあっ!」ドッ!

男「おぶっふぁあ!?」ドザァッ


男(主任……の桃尻が…………)ガクンッ

主任「や、やだ男さん!? 頭打ちましたか!? 大丈夫!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 11:55:23.39 ID:kXmUj3BXO<>

地獄の鎧「……」ザッ

グール【……ゥ、ウグッ……やはりグールでは駄目か】

地獄の鎧「途中から貴様ではない意志が表れていた、あれがその肉体の本来の持ち主だな」

グール【如何にも……俺は不完全な依り代を用いても力が減少しない術を見つけたのだ】

グール【力の弱い個体を媒介に、それ以上の個体を顕現させる事で種族的弱体化を防ぐ……あのバンパイアでさえ俺には勝てなかったろう】

地獄の鎧「……通常の不完全な顕現とは違う、恐らく精神体の貴様を通して『そちらの世界』でも無事では済むまい」

グール【暫くは顕現出来ないだろうな……だが、覚えておけじごくのよろいよ】


グール【……あと一月もせぬうちに世界が『近づく』、そうなれば完全な依り代も用いて数々のモンスターが一斉にこちらへ来るだろう】

グール【よく考えろ……お前は何のために戦っているのか】シュゥゥウ……



< 【…………悪夢に勝てる者など居はしないのだ…………】




────────── ポワァ・・・ン……ッ



地獄の鎧「……」

地獄の鎧【シー……】ギシッ…


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 12:10:51.26 ID:kXmUj3BXO<>

腐った死体T【ォ"ォ"オ"オ"……】ピタッ

腐った死体U【……ォ"…オ"……】ユラ…ユラ…


男「くさったしたい達の動きが遅くなって来た?」

主任「やっぱりあのボスを倒したからですかね…?」

男「分からないけど、倒すなら今かもっすね」スタスタ…


< カランッ


男「……」

男(刃を立てられてない…か、もしかして俺……剣の振りとか間違ってたのかな)チャキッ

ベホマスライム【ホヨヨ…?】

男「いや、なんでもない」



男「……ん?」

ベホマスライム【ホヨヨ…♪】フワフワ

男「うぉわぁ!? ベホマスライム!?」

主任(やっぱりホイミスライムシリーズ可愛いなぁ…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 13:05:43.57 ID:yDnxyr2tO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 13:14:46.09 ID:6agFoN+n0<> 悪夢ってもしかしてダークドレアム? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 14:40:53.93 ID:kXmUj3BXO<>
地獄の鎧「よくぞ戻った我が右腕」

ベホマスライム【ホヨヨ】コクン

地獄の鎧「此度の現界はこちら側で死ねば死ぬ、完全な敵地遠征に近い」

地獄の鎧「覚悟はいいな」

ベホマスライム【ホヨヨ…!】ムキッ!

地獄の鎧「うむ、それでこそだ」


ベホマスライム【ホヨヨ…ホヨ……】

地獄の鎧「何?……そうか、わかった」


男(あの時のホイミスライムも実はベホマスライムって……)


地獄の鎧「人間、ここを早急に離脱する」

男「ああ、あれだけ暴れてたら警察も来るだろうしな」

地獄の鎧「ケーサツ? まぁいい、だが近くの『指揮官』級が集まる危険性がある」

地獄の鎧「そしてそれだけではない、我が右腕が傷ついた人間を保護したらしくてな」

男「モンスターにやられた怪我人か」

地獄の鎧「人間にやられたそうだ、まぁ行けば分かる」ギシッ…


男(……あー、なんだこれ)

男(いつの間にか流れでさまようよろい……じゃねぇや、じごくのよろいと一緒に戦って、一緒に歩いちまってる)

男(もしかして……ゲームや漫画の勇者や主人公達はこんな感じなのかもしれない)


男(余裕がないからこそ、こうなるのかもな……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 16:29:09.41 ID:4TK53dVqO<> おつおつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 17:40:03.26 ID:lsot57EHO<> まさかの続き来てた

ホント面白いよこれ、続き期待してる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 17:43:01.97 ID:Y/FXw58Ko<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 18:02:31.09 ID:y06T67yto<>


女「……」すぅ…すぅ…


男「女……さん?」

主任「大変っ! 血が……!」


ベホマスライム【ホヨヨ…】

地獄の鎧「既に回復しているそうだ」


男「そんな……何故女さんがこんな事に……」

主任「私達はモンスターと戦っていましたから、そればかりは仕方ないと思います……それにしてもこの出血量は、本当に何が起きたのか」

男(……俺のせいだよな)

男(人間にやられたって言ってた、それってつまり女さんが言うストーカーに殺されかけたんじゃないのか?)

男「ぁぁ……俺、なんてこと……っ」


地獄の鎧「後にしろ、今はその人間も連れて離脱する事を考えろ」

ベホマスライム【ホヨヨ…】

地獄の鎧「うむ、そうだな、何処か落ち着いて話せる場所を知らぬか? 家屋内ならば良いのだが」



主任「……男さん」

男「………」

男「俺の家に行こう」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 18:57:53.08 ID:y06T67yto<>

【自宅】



地獄の鎧「ヌゥ、狭いな」ギシッ…

ベホマスライム【ホヨヨヨ】フワフワ


男「そりゃー、180越えの鎧甲冑のフル武装なんて一般家庭に住むなんて想定されないしな 」

主任「着替えてきました、あと男さん? シャワーが出たままになってましたよ」

男「あれ? 俺、朝以降は入ってないんだけどな……分かった」

主任「女さんは私が借りてる寝室で寝てます」

男「ん、りょーかい」



男「………それじゃ、そろそろ話して貰うぞ」チャキッ

主任「………」スッ



地獄の鎧「フ、いつ戦闘になっても良いように臨戦態勢か……おかしな奴等だ」

ベホマスライム【ホヨヨ…】プークスクスクス


男「何がおかしい」


地獄の鎧「我等がこの家屋に入れた時点で、敵意が無いという事なのだ」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 19:09:16.06 ID:jkn+/i9Wo<> 招かれないと入れない的な? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/03(火) 19:12:22.48 ID:0rDncYME0<> あれだろ、仲間モンスターのゴーレムとかすごい巨体だけど平然と民家に入れるとかそういうやつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 19:15:44.79 ID:y06T67yto<>
男「敵意が無いって……俺達が?」

地獄の鎧「『モンスターの』、だ」

主任「それって……」


地獄の鎧「いわば『仲間』という事だ、今の我々は貴様のな」

ベホマスライム【ホヨヨ…!】フンスッ


男「……」チラッ

主任「……」コクン

男(ある程度の警戒は続けながら、今は静かに話を聞くか)


地獄の鎧「では何処から話すべきか………やはりまずは今、こちら側で起きている事からにするか」

地獄の鎧「お前達の分かる事から話していった方が早かろう」

男「ああ」

地獄の鎧「そうだな……今、こちら側で起きているであろう混乱、それは私達モンスターの侵攻によるものだ」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/03(火) 19:36:02.97 ID:lsot57EHO<> 遂に事態の全貌がみえてくるか


シャワーが嫌な予感しかしない <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 20:11:24.05 ID:y06T67yto<>
地獄の鎧「事の全ての始まりは四年前、我等の世界に一つの門が現れたのだ」

地獄の鎧「それは黒い、煙の様にも、闇そのものにも見える不可思議な渦……」

地獄の鎧「そこを潜ると、ランダムでこちら側へ顕現する事が出来るのだ」


男「……旅の扉か?」

地獄の鎧「やはり面白い男だな、何故それを知っているのか理解できんが……違う」

地獄の鎧「我等モンスター、そして『アレフガルド』『ムーンブルク』等といった地下世界の者は皆……『衣の残滓』と呼んでいる」

男「衣……?」

地獄の鎧「全ての魔物の王、魔王の纏っていた衣だ」

男(……!)ピクッ

主任「魔王……やっぱりいるんですね」

男「その魔王って……」

地獄の鎧「『魔界の大賢者』にして、『全てを滅ぼす者』……魔王をも統べる真の王」

地獄の鎧「………大魔王・ゾーマ様だ………」



男(………………………)

男(本物の……大魔王ゾーマが、現実にいるってのか……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 20:37:18.68 ID:y06T67yto<>
━━━━━━━━ 【予兆】



< ザッ

「……RPGでも撃ち合ったのか、この惨状は」

機動隊員A「三佐殿! 付近の住民の聴取終わりました!」ザッ

三佐「ああ、どうだった」

機動隊員A「男女が黒い西洋鎧姿の男と並び、『ホテル事件』の時みたいに暴れていた……と」

機動隊員A「それと、この現場から少し離れた路上では銃声がしたという情報もあります、同時に薬莢らしき物も見つかり、現在鑑識に回しています」

三佐「……死人は」

機動隊員A「奇妙な話ですが0……血痕らしい血痕も発見されていません」

三佐「だぁー……滅茶苦茶だな世の中、深夜に爆発騒動に銃声が当たり前とかどこの戦地だよここは日本だぞバァーロォー」

機動隊員A「うんなこと言われても……」


三佐「とりあえず異常無し、陸自に指示を仰いでから移動!」

三佐「『聖水』を付近に撒いてから、修繕業者を手配……だな」

機動隊員A「ハッ」


< 【シィィイ……】ガシャッ






三佐「『ピオリム』ッ!」キィン!   < キィンッ!
機動隊員A「『スクルト』ッ!」キィン!
< ババッ!!
────────── パララララララッッ!!




さまよう鎧【ッ…!? ッッ……〜〜ッ!?】ガガガガッ!! ゴシャァアッ!!

< ポワァ・・・ンッ



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/03(火) 21:01:17.59 ID:y06T67yto<>
三佐「……今の何のモンスターだった?」カシャッ

機動隊員A「ちゃんと見て下さいよ!? 一般人だったらどうするんですか! ……『さまようよろい』ですよ」カシャッ

三佐「いやいや、君も気づいてるだろ? モンスターと戦闘になる瞬間に……こう、何だ? 空気が変わってるだろ」

機動隊員A「……三佐殿もそうですか」

三佐「ニュータイプとか、レベルが高いからとかとは違うねこれは」

三佐「多分そういう存在なんじゃねえかな、もしくは世界がそういう風に変わってきてるとかな」

機動隊員A「怖いこと言わんで下さいよ……」

三佐「怖がろうぜ、んでもって慣れろ、国民を守るだけじゃなく『見ることの出来ない仲間』を助けられる様にもな」


< ザザッ…「三佐さん! 応答願います! 防衛省から緊急の連絡が!」


三佐「!」

< カチャッ

三佐「こちら三佐、モンスター一体と交戦し撃破した」

< 「至急、都内の○○公園に向かって下さい! 他の機動隊や陸自の小隊も向かっています!」

三佐「何があったんだ」

< 「分かりません! 黒い……高さ約15mに半径30mにドーム状の何かが出現したんです!」

< 「おまけに第一発見者の近隣住民が通報した後に消息不明、向かった警官三名が遺体で発見されています!」

< 「この警官三名は『聖水』を摂取済みです! 各部隊が揃った後に緊急避難警報を出す予定です!」


機動隊員A「……三佐」

三佐「行くぞ、他の隊員に伝えてここを撤収……目的地へ向かう」




三佐(……今日は夜になってからやけに湿った空気だ……気味が悪い)



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/04(水) 00:22:45.97 ID:JNY9qhgT0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/04(水) 03:46:39.28 ID:E3Oxm2mxO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/04(水) 08:20:09.08 ID:cI0TN9lOo<>

・・・【男の自宅】



地獄の鎧「……最初は誰もそこへ近づこうとはしなかった、不気味なその渦を見た誰もが怯えていたのだ」

地獄の鎧「だがしかし、僅か数日後に『声』が聴こえてきた」

地獄の鎧「『声』は全ての生物に聴こえたらしい、まるで頭の中に何者かが居るようにな」


主任「その声は何と…?」


地獄の鎧「……」

地獄の鎧「『声』は自らを大魔王ゾーマと名乗った 」

地獄の鎧「『再びこの世界に蘇る時、二つの世界を悪夢で包んでやろう』」

地獄の鎧「『逃げられる者はいない、生き残れる者はいない』」

地獄の鎧「『我は破滅と殺戮の神となり蘇るのだ』、そう言っていた」

地獄の鎧「以来、世界は混乱した」

地獄の鎧「人間達は我等が王の復活の原因を探し、モンスターはどうすればいいのかを模索した 」


地獄の鎧「そんな時に現れたのが、今のこちら側へ侵攻している『魔王軍』のトップ……エビルマージという魔導士だったのだ」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/04(水) 23:03:15.91 ID:cI0TN9lOo<>
主任「エビルマージ……!」ギリッ


地獄の鎧「どうやら初めて聞く名では無いようだな、なら話が早い」

男(大魔王ゾーマにエビルマージ、まさかキングヒドラとかバラモスまで出て来ないだろうな……)

男(それに……今の話、何か引っ掛かる)

男(あのゾーマが自分を『大魔王』って名乗ったのか? リメイク版ならともかく……自分を大魔王って名乗るもんか…?)


地獄の鎧「エビルマージはゾーマ様から受けた言葉を我等モンスターに伝える役目を与えられたと、そう言った」

地獄の鎧「新生魔王軍としてエビルマージを筆頭に八体の魔将……『ゾーマ八魔将』と共に、我等は知能やレベルの高いモンスターを中心に構成された」

地獄の鎧「……そして数日もしないうちに世界各地に出現した渦を使い、多くのモンスターがこちら側へ送り込まれたのだ」

地獄の鎧「当時は侵攻よりも『調査』に近く、私も戸惑いながら入った物だ」

地獄の鎧「時間をかけ、我等は渦の仕組みを解き明かし……こちら側の文化を知るために人間に擬態できるモンスターを通して、徐々に水面下から根を伸ばしていった」


男「………」

主任「……」


地獄の鎧「私が貴様に敗北して元の世界に戻されるまではこの戦争に勝ったと確信していたのだ」

地獄の鎧「お前達の周囲は既にモンスターが隠れ潜み、今も各地域を私や先程戦ったバンパイア達の様な『指揮官』が制圧しようとしている」

地獄の鎧「今にして人間の側に付けば分かるが、もう段階としては人間は遅いのだ……ここからの形勢逆転は奇跡に等しい」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/05(木) 02:08:28.35 ID:aMJaS4avO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/05(木) 03:39:30.33 ID:1VsrHuOA0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/05(木) 09:55:43.62 ID:9mP4WW7AO<>
男「………」

男「何故、俺達にモンスターは見えない? なのに何故、人間にモンスターは危害を加えられる?」


地獄の鎧「何度も口に出していた『依り代』と、ここが完全な別世界なのが関係している」

地獄の鎧「まず、こちら側の人間に我等を見る事が出来ないのは元々『存在しない者』だからだ」

地獄の鎧「空想の存在であり、こちらの法則により生み出された訳でもない」

地獄の鎧「無いものを見る事が出来ないのは当たり前だろう? 我等は『まだ』そういう存在なのだ」


主任「まだ…? それってまるでこの先見えるようになるみたいな……」

男「見えるようになる、そうなんだろ? じごくのよろい」


地獄の鎧「……」コクン

地獄の鎧「ここ数ヶ月で人間と接触が可能になった時から、触れられる理由となる」

地獄の鎧「約三ヶ月前を境に、こちら側へ改めて来たモンスター達が次々とこちら側の物や人間に触れられる様になった」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/05(木) 18:31:14.71 ID:1VsrHuOA0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/05(木) 22:21:46.37 ID:aMJaS4avO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/06(金) 09:23:57.70 ID:a0PnzMeDO<>
男「……は?」

男「何だよそれ、本当につい最近じゃないか……たった三ヶ月で俺達の世界に根を張り巡らせたってのか?」


地獄の鎧「否、そうではない」

地獄の鎧「モンスターという意味ではそうなるが、こちら側の世界で我等が知り得た事は多くある、しかしそれら全てを説明できる訳ではない」

地獄の鎧「話が戻るが……要は、『モンスターの姿』ではこちら側の世界にほぼ干渉出来なかったのだ」

地獄の鎧「そこで擬態が可能な……つまり人間の姿を維持できるモンスターをこちら側に送った……結果は成功、人間社会に溶け込む事ならば可能だった」


地獄の鎧「我等は元からこの世界に触れられた訳ではなかった、モンスターの姿をしている限りな」


地獄の鎧「……それが三ヶ月より以前の話だ、突然として変化が起きたのだ」

地獄の鎧「改めてこちら側に来たモンスターの多くがモンスターの姿を保ったままで、この世界に干渉出来るようになった」

地獄の鎧「一番の変化は……呪文の行使、人間に見られる事なく使える事で我等の世界よりも、非常に有効に使えた」

地獄の鎧「………こちらの存在に勘付いた者を抹殺するのにも、な」


男(やっぱりか)

主任「じゃあ……貴方達にも分からないんですね、モンスターが触れられる様になった原因は」


地獄の鎧「分からぬ」

地獄の鎧「何がきっかけで変化が起きたのか、見当も付かないと八魔将の連中も言っていた」

地獄の鎧「だが依り代が僅かに関係しているかもしれないと、そう言ったのがエビルマージだ」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/06(金) 13:49:28.75 ID:kAbTjIOR0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/07(土) 22:10:42.99 ID:nLlJifW9o<> う〜む、原因の方は取り敢えず棚上げするしかなさそう
それよりも問題は敵の強さだよなぁ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/08(日) 09:29:24.69 ID:hXRsNBEbO<>
地獄の鎧「最初は一定量の魔力を依り代にしていたがな」

地獄の鎧「それ以外に代わりの何かを代用してはどうか、エビルマージのその言葉を基に我等は様々なモノを依り代に使った」

地獄の鎧「結果、依り代として適しているのは二種類だと分かったのだ」


地獄の鎧「一つは、私が敗北して貴様が手に入れた鋼の剣……」

男「あれか」

地獄の鎧「あのように、そのモンスターを象徴するアイテムを依り代に使う事で顕現出来る」

地獄の鎧「が、これは後に不完全な依り代と呼ばれるのだ」

地獄の鎧「完全な顕現を実現させる物……それが今まで変化の無かったこちら側と、我等モンスターの関係を一変させるだろう」


男「俺達の世界にあるゴールド、つまり金だよな? その……完全な召喚みたいなのになると、どうなるんだ」


地獄の鎧「今、こちら側で起きている事件は殆どが小規模なものだろう?」

地獄の鎧「スライムか下位のモンスターに襲われた村人が怪我をした、老人が歩けなくなったとかな」

男「……死人だって出てるんだぞ」

主任「私のいたマンションだけで何百人の人が殺されたのか……!」ガタッ

地獄の鎧「だとすれば想像しやすかろう、完全な依り代を用いて全モンスターがこちら側へ来た場合……」


地獄の鎧「その被害、そしてモンスター個々の能力は十倍以上になるのだ」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/08(日) 10:02:18.10 ID:hXRsNBEbO<>
男「じ、十倍!? スライムとかもか……!?」

地獄の鎧「そのスライムすら、元々は上位の種だった可能性がある」

地獄の鎧「我等は『軍』なのだ、一匹とて『野生』のモンスターなど居ないのだぞ?」

地獄の鎧「寄せ集めとはいえ、連携が行える程度の知能と力を持ったモンスターが約三十万……そしてそれらモンスターが従える下位のモンスターの数が総勢千二百万……」

地獄の鎧「下位とはいえそのレベルは野生のそれとは比べ物にならん、こちら側の世界にいる人間ならば一匹で十人は殺せる」

地獄の鎧「………だが、これまでは不完全な顕現で一定のレベルのモンスターしか来れず、更に力も十分の一以下となっていたのだ」


地獄の鎧「私がそうだった様に……な」



男「………」

男(三十万に……、千二百万? 12000000………?)

男(いや、考えてみれば世界中に侵攻しているとすればその数は少ない……のか?)

男(……一つの国に数十万のモンスターが……? 少なくない、じごくのよろいみたいな化け物が一体いるだけで大惨事だぞ……!!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/08(日) 20:19:41.29 ID:hXRsNBEbO<>
主任「……あの、いいですか?」

地獄の鎧「なんだ」

主任「貴方達がこちらの世界に侵攻しているのは分かったんです……けど、何のために…?」

地獄の鎧「何のためかだと?」

地獄の鎧「フム……」チラ…


ベホマスライム【ホヨヨ…】


地獄の鎧「……表向きはエビルマージ達八魔将をトップとした、魔族の支配下に置くつもりらしい」

地獄の鎧「だが、訳が分からんのだ……」

主任「わけがわからない? 何故? 訳も分からないままに貴方達は私達を殺して傷つけて侵略をしているの?」


地獄の鎧「…………」

地獄の鎧「エビルマージからの指示がバラバラなのだ、ある地ではそこの人間を虐殺せよと命じ……ある国ではトップの人間に成り代われと命じる」

地獄の鎧「そしてこの国……『ニホン』だったか、ここでは各地域を制圧した上でいつでも人間を殺せるようにと命じられている」

地獄の鎧「……よく、分からんのだ」

地獄の鎧「まるで人間を痛め付ける事を目的としているかのように動かされている」

地獄の鎧「私はそう感じたのだ」

ベホマスライム【ホヨヨ!】

地獄の鎧「すまんお前もだったな」


主任「……」

<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 09:45:43.90 ID:CmgkfT7SO<>


─────【困ったことになりました】─────


─────【脳内の書き貯めが落ち着かない為、地獄の鎧の説明回で何を書けば良いのか思い付かなくなったのです】─────


─────【よって、当スレは安価モノではないのですが進行速度上昇のために緊急措置を取ります】─────




男(………何か聞きたいことがあるような気がする)

主任(………)



>>450までで地獄の鎧に聞きたい事を自由に書き込んで下さい。
ただし、神目線による考察からのメタな質問は遠慮して頂けると有り難いです。
現時点で男や主任の知り得る情報から思い付く、或いは『ゲーム』を元にした作品内メタな質問をするのは構いません。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 09:56:21.97 ID:eK+1bIJFo<> DQ世界に勇者的なやつ居ないの
居たとして、依代に宿る前の魔物向こうで倒して貰えないの <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 12:18:20.35 ID:TRVrJPF5O<> 結局のところ地獄の鎧の目的がいまいちわからん <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 13:11:54.44 ID:YxUChwEAO<> 裏ステージの敵の有無。
こいつら居たらまず勝ち目無い。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 13:31:43.57 ID:Jmah2iAB0<> ワイトキングとの関係性について <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 14:21:59.90 ID:8eWADvgfO<> 向こうの世界の勢力均衡と人間について
自分が、効率的に強くなるための方法
強力な武器をくれないかとの要望 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 14:48:19.17 ID:YJR5d1IDO<> ルビスについて
あとこちらの教会や聖水について <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 14:48:32.31 ID:O6Y1rtNQO<> そもそも男や主任はこっちの世界の勇者になるのか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 18:03:47.60 ID:nXu7Dq35o<> 男のレベルううううううう <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 18:39:49.48 ID:QLYD1+ivo<> むこうと言ってるけど作品ごとの世界がある多重世界なのかな? 全部一緒なのかな?
かま掛けついでに他の作品のラスボスの名前を出してみる(シドーとか) <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:18:26.30 ID:8+bm6nhbO<>
>>444

地獄の鎧「今更驚きはせんが、その『ドラクエ』とは何だ」

男「あー……」

男(一応それは伏せとくか?)

地獄の鎧「まぁいい……だが、確かに勇者はいる」

地獄の鎧「我等モンスターにその勇者一族の名を知らぬ者はいない、奴等は本物の化け物だからな」

男「……ロトなのか?」

地獄の鎧「!……そうだ、ロトの一族……今は三つに別れているがな」

地獄の鎧「そして貴様が言っていた事だがな、今現在の人間側の事は私には分からんのだ、勇者達が来ているのかすらな」

地獄の鎧「時折、モンスター達の間でそれらしき姿を見た者もいるが……我等の方が探している程だ、連絡の取りようも無い」


男「そうか……」

地獄の鎧「ワイトキングや八魔将ならば知っているかもしれないが、私は末端のモンスターでありただの『指揮官』だったからな」

>>447

男「ワイトキングってあのグール……だよな? 何者なんだ、お前の知り合いなのか」

地獄の鎧「奴は私の父、『しにがみのきし』の主だったモンスターだ」

地獄の鎧「だが直ぐに私の父は『竜王』と呼ばれている魔王の配下となり、私だけワイトキングの配下として残った」

地獄の鎧「数百年支えていたが……此度の戦争で主従関係は消えた、今の奴は偽の王の配下であり私の敵だ」

男「……ワイトキングに勝てるのか?」

地獄の鎧「無理だ」

男「え」

主任「えっ」

<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:18:56.12 ID:8+bm6nhbO<>
>>445

主任「……結局、ここまでベラベラと話続けている貴方は何が目的なんですか?」


地獄の鎧「我等が真の王の命じた通りに、人間達の味方をしに来た」


主任「ずっと気になってたんですが、やっぱり真の王……つまり、貴方達が味方になった原因は本物の『大魔王ゾーマ』が命令した……という事ですか」

地獄の鎧「そうだ」

男「会ったのか」

地獄の鎧「違う、貴様に敗北して元の世界に送られている最中に声が聞こえてきたのだ」

男「マジか……って、それじゃゾーマじゃねえかもしれないだろがそれ」

地獄の鎧「かもしれぬ」

男「おいおい……」

地獄の鎧「だがベホマスライムも聞こえていた、そしてなによりも自然とその声がゾーマ様の物だと理解した事が根拠だ」

地獄の鎧「理屈や感覚は説明できぬ、だがしかし……あれは確かにゾーマ様だった」

男「……」


>>449

男「精霊ルビスが存在するんだよな? 何か反応とか、人間に救済的な何か……無いのか?」

地獄の鎧「存在する、だが大昔にゾーマ様が封印したのをロトの勇者が救った事しか知らぬ」

地獄の鎧「伝説でしか知らないが、未だに精霊ルビスの信仰は続いている上……効果があるのを見ると、やはりまだ存在しているのだろうな」

男「じゃあ……!」

地獄の鎧「だがこの戦争に精霊ルビスが介入、或いはそれらしい力を見せた事は報告されていない」

男「………そう……か」


<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:19:22.70 ID:8+bm6nhbO<>
地獄の鎧「こちらの教会や聖水に関しては我等モンスターも把握している」

地獄の鎧「問題なのはこちらの世界の建物はどれも特殊で分かり難い、しかも聖水の効果でうっかり教会の建物に近づけば体を焼かれる」

男「やっぱり聖水の効果あるんだな」

地獄の鎧「タチが悪いのは無尽蔵に用意できる所だな」


男(主任)ヒソヒソ

主任(はい?)ヒソヒソ

男(今度タンク一杯に聖水入れたトラックに乗ってモンスター轢いてみないっすか?)ヒソヒソ

主任(悪趣味ですよ)ヒソヒソ

男(……冗談です)ヒソヒソ

<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:19:52.47 ID:8+bm6nhbO<>

>>448

地獄の鎧「勢力、か」

地獄の鎧「大昔はともかく、ここ数百年の中では『邪教団』というモンスターの集団が現れた位だな」

男「邪教……」

男(なんだっけか、んー……あ、ハーゴンか? え? いやでもさっきムーンブルクって言ってたもんな……あ?)

男(バズズとか、シドーとかいるのか!?)

地獄の鎧「ロトの一族を甘く見た者達だったがな、最期は信仰していた破壊の神と共に討ち倒されたそうだ」

男「……へ?」

主任(何だろう、高校時代……昼食の時に知らないゲームの話を目の前でされてる気分になってきた)


地獄の鎧「後は……他のモンスターの勢力を私も把握している訳ではないが、ロトの一族を恐れて世界を支配しようという輩はいないな」

地獄の鎧「人間達の間での勢力としては最強の魔法国家ムーンブルクと、アレフガルドの旧支配国家のラダトームだな」

地獄の鎧「我等の動向を知ってから連合軍を作ったらしいが、さてな……私の知る限りでは特に動きは無い」


地獄の鎧「世界のモンスターと人間の均衡を保っているのは、完全にロトの一族の存在があると言えるな」


地獄の鎧「人間については……フム」

男「何だよ」

地獄の鎧「うまく言えんが、こちらの世界に比べれば我等の世界の人間は温和な方だ」

男「そうなのか」

地獄の鎧「比較的……いや、そうだな、向こうの方が温和だ」

地獄の鎧「それと、効率的に強くなる方法についてだが」

男「ああ」

地獄の鎧「分からぬ」

男「何でですの……」

主任(ですの?)


地獄の鎧「人間の強くなる方法など、我等モンスターが知りたがると思うか?」

男「常識の範囲内でなら知ってるかと思ったんだよ」

地獄の鎧「ロトの一族は戦った数や感情一つで力が上がったりするが、後は鍛練や戦闘を積み重ねてレベルを上げるだけだな」

男(レベル、やっぱりあるんだな)


地獄の鎧「……ちなみに、強力な武器ならばこちらの世界の方が多いと思うがな」

男「ん、そうなのか?」


<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:20:20.01 ID:8+bm6nhbO<>
地獄の鎧「報告にあるこちらの世界の一般的な武器、『銃』はそれ自体がメラミ級の威力を有したボウガンだそうだな」

男「えー……メラミ? メラも結構強いと思うんだが」

地獄の鎧「銃から放たれる金属の粒は殆どのモンスターを怯ませる、しかも粒が人間の指ほど大きければ上位の種であるモンスターすら致命傷を負うのだ」

地獄の鎧「手の届かない位置から、姿や気配すら察知できぬ距離で撃たれては私ですらどうする事も出来ん」


男「……指って、小指の第一間接まで位か?」スッ

地獄の鎧「人差し指だ」

男「その口径の銃撃で……致命傷?」

地獄の鎧「ああ、恐ろしい事にな」

男「……どっちがだ」ボソッ

主任(??)


地獄の鎧「故に、私から渡せる武器など精々が貴様にやった鋼の剣だな」

男「分かった」

<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:20:47.67 ID:8+bm6nhbO<>
>>446

地獄の鎧「裏…?」

男「あー、忘れてた……何でもない」

男(こいつとの会話は現実離れし過ぎてこっちがおかしくなってくる……)


男「例えば……『しんりゅう』ってモンスターに聞き覚えは?」


地獄の鎧「知らぬ」

ベホマスライム【……】ピクッ

地獄の鎧「どうした我が右腕よ」

ベホマスライム【ホヨヨ…ホヨ】アセアセ


男「何と言ってるんだ?」

地獄の鎧「ベホマスライムの父が会った事があるそうだ」

男「ん"な"……ッ!?」

男(裏ダンのラスボスだぞ!? 嘘だろ、じゃあ上位の種って相当な化け物揃いじゃ……)


ベホマスライム【ホヨヨーン】

地獄の鎧「人間のエッチな本を貰ったらしい」


男「………」

男「何者だよスライム一族………」


地獄の鎧「貴様は何が知りたいのだ」

男「バラモスの名を持ったモンスターとかがわんさか居やしないかと、怖いんだよ……」

地獄の鎧「いるわけなかろう」

男「そ、そうなのか……」


ベホマスライム【……】

ベホマスライム【(彼の氷の洞窟にいたモンスター達は、私の父と当時の勇者様が全て倒したそうだけど……言う必要はないわね)】ホヨヨ…

<>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:21:23.45 ID:8+bm6nhbO<>
>>450(>>451込み)


地獄の鎧「貴様の様な勇者がいて堪るか」

男「そこまで言わんでも……」

地獄の鎧「そっちの女が普通なのだ、貴様は余りにも異常だ」

地獄の鎧「こちらの世界の事を知り過ぎている、まるで生ける伝説か何かの本の様だ」

男「あー……まぁ、な」

地獄の鎧「だけではない、貴様のレベルと強さが理解できん」

男「……?」

主任「私のレベルも分かるの…?」


地獄の鎧「貴様は『レベル14』、こちらの世界の人間でも相当な実力者だ」

主任「……そうなんですか…?」

地獄の鎧「だが男、貴様のレベルは……」

男「い、幾つなんだよ」

男(十回はレベル上がった筈だが……)














地獄の鎧「………『レベル0』だ」



男「Oh……」

主任「 」 <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2015/11/09(月) 22:21:57.10 ID:8+bm6nhbO<>
主任「ぜ、0って……1ですら無いんですか?」

地獄の鎧「うむ」

男「それって一般人と変わらないのか…?」

地獄の鎧「こちらの世界で活躍する『スポーツ戦士』とかいう奴等は総じてレベルが2か3なのだ、だが貴様は……一般人以下だ」

地獄の鎧「そもそもが0なんてレベルは有り得ぬのだ、となれば貴様が特殊か……もしくはこちらの世界の人間にはたまにいるのか、だ」

男「……」

地獄の鎧「故に面白い、初めて会った時に貴様が私の配下の『おおきづち』を倒したのを知った時は何の冗談かと思ったぞ」

男「……だろーな」

地獄の鎧「我等の世界の勇者一族には程遠いが、もしかすると貴様はこちらの世界の勇者だったりするかもしれんな」

主任「!」チラッ

男「ないない」


男(……俺なんかが勇者だったら主任の方が勇者だよ)


>>452

地獄の鎧「シドー……聞いたことがないと思うが……」

男「邪教団の信仰している神の名前なんだが」

地獄の鎧「ロトの勇者達が倒してしまったからな、名前が広まる前に途絶えたのかもしれん」

男(マジかよ)



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/09(月) 22:29:30.61 ID:8+bm6nhbO<>

─────【如何でしたか】─────


─────【地獄の鎧に聞きたいことはもうありませんね?】─────



→ はい
いいえ



───── 【ある場合は書き込んで下さい、このレスから20分の間で書き込まれた事に地獄の鎧が答えます】 ─────


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 22:35:01.59 ID:Ovw0Ck06O<> 八魔将ってどんなやつら? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 22:36:45.63 ID:YxUChwEAO<> ロトシリーズ以外のボスについて。
もしくは、強力な野生の魔物について。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 22:42:59.78 ID:gTP7OVnAO<> 理屈はともかく今のじごくのよろいはフルパワーで顕現してるんだよな
不完全な依代と違って周りの一般人から気付かれやすくなったりするのかな?むしろ逆? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 22:45:55.56 ID:W91LH/dco<> ザオリクについて <> 465<>sage<>2015/11/09(月) 22:59:22.28 ID:W91LH/dco<> 言葉足らずだったので付け加えさせてください
・そもそもザオリクが存在するのか
・人間や魔物で使えるものが存在するのか
・存在するならその効果も <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/09(月) 23:16:11.79 ID:Q57gHCVCO<> いろんな作品でよく話題に昇るけど、蘇生魔法は位置づけ謎なことが多いね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 11:14:52.56 ID:9zIf/ORRo<> >>462

地獄の鎧「……八魔将のうち、私が見たことがあるのは三人だけだ」

地獄の鎧「一人は『エビルマージ』、大昔からゾーマ様に仕えている魔導士だ」

地獄の鎧「次に『グレイトドラゴン』、ドラゴン種のモンスターを束ねる竜だ」

男(マジかよ)

地獄の鎧「そして三人目が『キングヒドラ』……得体の知れない女だ、常に人間の姿をしたモンスt…

男「おいまてドラゴンそれドラゴンだよお前」ガタタッ

主任「ヒドラって言っているのになんで気づいてないんだろう」


地獄の鎧「お前達の方がモンスターを知っているのは何なのだ」


男「そのまま八魔将を言ってけこのお馬鹿鎧!!」

主任「グレイトドラゴンも知ってますしね……」


地獄の鎧「……釈然としないがまぁいい、海魔将『クラーゴン』、悪魔将『ヘルバトラー』、怪魔将『ガルゴル』、『魔王の使い』」

男(かなり知ってる……が、初めて聞くのが一人いる)

主任「……」

主任「クラーゴンがいますね」

男「ん、多分あのイカだろうなぁ」

主任「空母とかあれば瞬殺出来ませんか…?」


男「…かもね」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 11:16:01.94 ID:9zIf/ORRo<>
地獄の鎧「八魔将がどの様なモンスターかは、会ったことのある三体だけでも分からん」

地獄の鎧「だがどのモンスターも恐ろしく強い、一体を除いてな」

男「八体目か」

地獄の鎧「名は『ボストロール』、大昔にゾーマ様の配下にいた『トロルキング』の子孫だ」

男(……サマンオサを侵略しようとしたのはそっちなのか、調べないと…ゲーム以外に何か近い物があるかもしれない)

男(しかし何だ、この違和感……何処か……法則性がある所を掻き乱してる様な)


地獄の鎧「ボストロールは力こそ上位の種を遥かに越えるが、スピードはそれほどでもない、私の二倍程度だ」

主任(化け物ですそれ)

地獄の鎧「何より奴は頭が悪いことで有名だ、スライムとの知恵比べに負けた事があるそうだしな」

地獄の鎧「他の八魔将に関しては、余り私も知らぬ」



>>463

男(……ロトシリーズ以外のモンスターはいる)

地獄の鎧「強力な野生のモンスターか……、比較的に力を持っているのはグールやシルバーデビル……後は稀に生まれる我が種の『アーマー系』だな」

地獄の鎧「『あくまのきし』や『キラーアーマー』、『しにがみのきし』は凄まじい力を有している」

地獄の鎧「私も同じ種ではあるが、自然に生まれたモンスターで上位の種は相当な強さを誇るのだ……何故かは分からないが」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 11:16:56.87 ID:9zIf/ORRo<>
>>464


地獄の鎧「私やベホマスライムは『顕現していない』、依り代を使ってもいないのだ」

男「初耳だぞそれ、さっきまで完全な顕現してるみたいな事を言ってなかったか」

地獄の鎧「これから現れるモンスターの話をしたのだ、私の様に本来のスペックは数日前までの物とは比べ物にならぬとな」

主任「……顕現でないなら、何ですか」


地獄の鎧「ゾーマ様の声を聞いた後、我等は元の世界に何故か戻らずに本来の体でこちらの世界に居たのだ」

地獄の鎧「男、貴様に敗北したあの場所だ」


男「滅茶苦茶速攻で帰ってきてたのか……」

地獄の鎧「そうでもない、あれから数ヵ月経っている事から時間の流れがおかしい」

地獄の鎧「流石はゾーマ様といった所だ」

男「まさかいきなり俺を探しに来たのは、純粋に味方になれるような見知った人間を知らないからとかじゃないだろうな」

地獄の鎧「こちらの世界の人間には極力存在を知られぬ様に行動していた、特殊なレベルの事も考えれば貴様に協力するのが妥当だろう」

主任「……」コクン

男「そうなるのか……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 11:17:26.08 ID:9zIf/ORRo<>
>>465

地獄の鎧「蘇生魔法、ザオリクか」

男「あるのか!」

地獄の鎧「ゾーマ様が君臨されていた頃は存在していたが、随分昔にラダトームの王女が奇跡を起こす際に使用したのが最後だ」

地獄の鎧「現在では消失している」

男(やっぱりそこまで都合よくないか)

主任「ザオリクの効果はどんなものだったんですか?」


ベホマスライム【ホヨヨ】

地獄の鎧「奇跡の呪文と呼ばれていたザオリクは、あらゆる損傷も治癒させ再び蘇らせたそうだ」

ベホマスライム【…ホヨヨ】

地獄の鎧「それこそ塵芥と化してしまっても蘇生させられる程の奇跡を起こす……らしい」


主任「棺桶要らずですか」

男「ゲームよか高性能だったんだなぁ」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 11:58:58.05 ID:9zIf/ORRo<>

─────【ありがとうございました、ご協力感謝します】─────



主任「……はぁ、何だか今夜は疲れてきちゃった」

男「俺もだよ」ハァ…

主任「今夜はもう寝ませんか?」

男「ああ、でも寝れるかって聞かれると……」


地獄の鎧「警戒してしまうならば我等は外へ出るぞ」ガシャッ

ベホマスライム【ホヨヨ-】フワフワ


主任「待って下さい」

地獄の鎧「なんだ」

主任「どうして、ゾーマに命令されただけなのにここまで話をしてくれたの?」

地獄の鎧「納得出来ぬか」

主任「正直」コクン

地獄の鎧「フム……ならいい事を教えよう」


地獄の鎧「我等の世界では仲間になった時点で敵ではなくなるのだ」


< ガシャッ…ガシャッ……ガチャッ…バタンッ


主任「……」

男「主任、安心出来ないなら俺が起きてても良いっすよ?」

主任「ううん平気です……ありがとう」スタスタ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/10(火) 12:14:39.01 ID:rmu096xs0<> 久々に見たら結構進んでるな!
また楽しみにしてる! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 12:25:42.95 ID:9zIf/ORRo<> ━━━━━━━━ 【夢】



兄貴心配しすぎだよー     そりゃ心配だろ、船から体を乗り出すなよ
                        兄貴は泳げないもんね〜♪


お、おい! あの海面……何か黒い渦がっ
                    兄貴ぃっ!!
                        親父! 妹を!!
    母さんが落ちた!! 男は妹を頼む!
       ザバンッ!!

      波が……何だあれ!?大王烏賊か!?   お父さん! お母さん!


 うわぁあああ!! ぐっ、妹ぉおおおおおお!!


     兄貴っ……助け……て…………

      やめろ!! やめろぉ……ッ!!

   










     【【 全ての生ける者に悪夢を 】】


     【【さあ、お前の悪夢は何だ・・・!】】






   「返してくれ……俺の家族を……俺の妹を…………」






<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/10(火) 12:33:12.58 ID:9zIf/ORRo<>

男「…………ッ!!」パチッ…!

< 「起きた?」

男「はぁッ……はぁッ……ッ…」

男(今の夢は…? それに、誰だ……誰かが俺を抱き締めて………)


女「ゆっくり、ゆっくり深呼吸して……?」なでなで

男(女さん……!?)

女「体の力を抜いて、ゆっくり深く息を吸って……ゆっくり吐いて……」なでなで

男「…………すぅ……ハァ…」


女「ん、上出来」ぺしぺしっ

女「へへっ、オハヨーッス男くん!」


男「……」

男「え、えと……おはーっす」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/10(火) 12:49:32.75 ID:4X8TDJ/UO<> やっぱ悪夢っていったらあの魔王か裏ボス彷彿とさせるぜ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/10(火) 12:52:51.72 ID:GBQlSiaxO<> > 地獄の鎧「我等の世界では仲間になった時点で敵ではなくなるのだ」

当たり前に聞こえそうだけどすごく大事なことだな
ある種の純粋性だ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/10(火) 18:45:25.60 ID:8Z8sBYZc0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/10(火) 20:32:46.07 ID:tXjSUmRDO<> スライム 大木槌
彷徨う鎧 ホイミスライム
アルミラージ 死神
エビルマージ ドラキー
アイアンナイト シルバーデビル
腐った死体 バンパイア
ベビーサタン ベホマスライム(元ベホマスライム)
地獄の鎧(元彷徨う鎧) グール

ここまで確認のあるモンスターだけでも結構な数が人間界に出没したな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/10(火) 20:49:58.36 ID:unLli/8v0<>

個人的には夏の終わりごろの海岸に無数のしびれくらげが出没してたらいいなって思った。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/10(火) 21:22:15.99 ID:tXjSUmRDO<> >>479
アカン、ベホマスライムそのままだったwwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/11(水) 04:10:45.59 ID:12W6gdfsO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/11(水) 04:28:13.28 ID:/wUVnAITo<> 主任のマンションだけで数百人ってどんなマンションだよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/11(水) 07:48:26.96 ID:dI1I33pAO<> アイアンナイトって出たか?モシャスナイトなら居た気がする。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/11(水) 08:50:47.90 ID:s8sdsosJo<>

女「いやいや驚いちゃったよ私、目が覚めたら隣で主任寝てるんだもん」

男「い、色々と事情がありまして……」

女「それで主任さんの家かなーっと思ってたら別の部屋で男くん見つけるし」

男「ここは俺の家でして……」

女「まさかの男くんの家に何故か私と主任さんが寝ている状況に混乱しちゃうしー」

男「つ、連れ込んでたりはしないですからね…?」

女「……」ニタァ

男「……」ニ…ニコッ

女「交番へ駆け込まれたくなければ朝飯を作れー! さぁさぁ飯だぁ!」バンッバンッ

男「分かったから! 分かりましたから!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/11(水) 10:00:28.89 ID:fkQa4m0L0<> >>484
>>179のアイアンアント【俺の存在忘れないでぇぇええ〜!(泣】カサカサカサ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/11(水) 12:09:04.64 ID:KTbgNZJo0<> それ言ったらシルバーデビルとベビーサタンはどこらへんで出てたんだよってなるけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/11(水) 17:56:58.10 ID:s8sdsosJo<>


主任「……それで起きたら男さんが朝食を」

男「ええ、まぁそんなとこっすね」

女「御馳走様でした、美味しかったよ」

女「さてと私は職場に連絡入れなきゃね」ゴソゴソ

男「え?」

女「当分、会社はお休みかなって思うのよねー」

主任「どうして?」


女「私、もう家から一人で会社行くのも、会社から家に帰るのも、怖くて出来ないからかな」


男(……あぁ)

女「ちょっとごめんね」p! prrrr! Prrrr!

男(俺のせいでこの人は死にかけたんだよな)

男(なのにさっきは……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/11/11(水) 18:44:11.08 ID:VkUb1XecO<> 面白いな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/11(水) 19:22:47.47 ID:s8sdsosJo<>
< P!

女「……さてと、後は携帯の電源落として放置だね!」

女「主任さん」

主任「何か?」

女「男くんと二人にして貰っていいですか?」

主任「ええ、構いませんよ」

女「あはは、すいません」


男(……)


< スタスタ……ガチャッ…


女「……ふぅ」

女「とりあえず、何て言えば良いのかな」

男「……」

女「色々言いたい事もあったし、聞きたい事は山ほどあるし、爆発させたい気持ちもあるんだけどね」

女「男くんが隠してたのは『そういう事』だったんだね」

男「そういう事、とは…?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/11(水) 20:45:21.27 ID:GgDfNTEfO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/11(水) 22:32:31.44 ID:TIULi5rb0<> おっとこれは・・・? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/12(木) 01:09:10.82 ID:xlfwGA/V0<> まさか男さんが主任さんを拉致監禁調教してたなんて(ただの同棲です) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/12(木) 01:19:27.57 ID:DwqFjf8uO<>
女「まさか男くんが主任さんを拉致監禁調教してたなんて」

男「ヘァッ!?」

女「……ふふ、じょーだん」

男「ただの同棲です……ホントに、いや同棲というか、ど…同棲です」

女「なにいつまで動揺してるのよ君……」


女「言わない」

女「男くんが隠してる事を言わないなら、私は言わないよ」

男「……」

女「とりあえずはね?」

男「とりあえず?」

女「君が明かしてくれたら私も君に色々明かしてあげようと思います」くすっ


男「……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/11/12(木) 07:51:24.44 ID:sMXqJPW3O<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/12(木) 10:36:55.76 ID:dNJ6JDOe0<> ヘァッ!? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/12(木) 13:32:24.24 ID:ReZDYUn1O<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/12(木) 15:54:25.65 ID:76y6HB+BO<>
主任(……そういえば男さんと女さんは同期だったね)

主任(やっぱり何やかんや付き合ってるのかなぁ、私邪魔してないといいけれど)

主任(あの二人が入社してきた年は大変だったなぁ、うちの会社の貿易船が航行中に事故で沈んだり……台風が三つ直撃したり……)

主任(四年前のあの日、新人歓迎会の時は皆会社で寝泊まりしたくらいだし)

主任(……あれ、そういえば男さん達はあの歓迎会にいたっけ)

主任(あの頃は特に面識も無かったしなぁ)



< ブルルル……! カタンッ……キキッガチャッ



主任(……? ハーレーかな、良いバイク……って、乗ってたのお爺さん!?)


老人…?「すみませんな、そちらの住居が『男』って人の家かね」スタスタ


主任「はい、そうですが…?」

老人…?「多分そちらに僕の孫娘が来てるみたいでしてな、『女』というのですがの」

主任「……女さんのお祖父様ですか?」

女祖父「そうですよ」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/12(木) 19:49:27.18 ID:76y6HB+BO<>
< ガチャッ

男「!」


女祖父「お邪魔しますよぃっと、すいませんね」

女「おじいちゃん!」

女祖父「おぉー、大丈夫かよお前さん」

女「良かったおじいちゃん来てくれて……」

女祖父「朝っぱらから心配させる電話かけんじゃないよこの子ァ」

女祖父「んで君が男さんなぁ、悪かったねこの子が迷惑かけたみたいで」

男「いや、そんなことは……」


男(デケェ)

男(190はあるだろこの爺さん、こえぇ……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/13(金) 01:03:07.45 ID:3mVGWIHvo<> (女さん、会社にしか電話して無いのに……ひょっとしてこの爺さん社長で、女さんは社長令嬢だったりとか?) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/13(金) 01:24:54.81 ID:JrXPQ6WXO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/13(金) 06:33:53.95 ID:y4IDHsAoo<> 爺さんの武器はハンマーかな斧かな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/13(金) 12:41:08.00 ID:NIT8hO/uo<>
男「いつの間にご家族に連絡を?」

女「さっき君が朝食を作ってる間に電話したの」

女祖父「いきなり電話かけてきて『迎えにきて』とはなぁ……二十六にもなる大人が子供みたいに」

女「色々あったの」

男「……」

女祖父「とりあえず帰るぞ、僕は午後から若いのの面倒見なきゃならんし」

女祖父「外にバイク停めてあるから出てな」

女「うん」


女「またね、男くん」

男「え、あぁ……」

男「……今朝はありがとう」

女「気にしないで…♪」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/13(金) 13:03:55.12 ID:NIT8hO/uo<>
女祖父「……んで、ちょっと良いかね男さん」

男「?」


< ガシッ!


男「ひぃぇ!?」ビクッ

女祖父「おーおー、良い筋肉付いてるね」モミモミ

女祖父「何か格闘技を?」モミモミ

男「うぉ、ふ、んぐぁ…ッ! いえ特には何も…グッ…!?」

男(いッッッてぇえええええええ!!!!)

男(嘘だろこの爺さん!? どんな握力してんだよぉおおおおおぐぁあああああああ!! ふぁあああああああ!!!??)


女祖父「何もやってないのにこの筋肉の付き方は……へー、凄いな」モミモミモミモミ

女祖父「良かったらウチに来ないかね、君なら色々教えても飲み込みが良さそうだ」パッ

男「は……はぃ…?」ゼェゼェ…

< カサッ

女祖父「これ、ウチの道場の案内ね」

女祖父「興味有ったら来てくれな」

男「……はい」


< ガチャッ……バタンッ


男(……道場…ね)

男(普通の人間の戦い方じゃぁな……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/13(金) 18:10:44.09 ID:ysfOuUX2O<>
< ブルルンッ!ブルルンッ! ボボボボッ!!

< ブォォオオオオンッ


男「……女さんもとりあえずは帰ったし、俺等はどうしますかね」

主任「そうですね」

男「またあの二人来るなら待ってますかい?」

主任「その事なんですが、今日ここにまた来るんですか?」

男「えっ」

主任「えって……じごくのよろいは私達に配慮して出ていったけど、朝になったから戻るとも限らないと思うけど?」

男「あー……確かに」

主任「私が男さんの家に残ります、男さんは確か今日……携帯を取りに行く予定ですよね」

男「ですね、さらっとそれだけ済ましてきます」

主任「うん」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/13(金) 19:09:19.19 ID:1/Iva2OEO<> 久しぶりに見つけた
まだ続いてたのか良かった
とりあえずおつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 00:07:59.97 ID:3vxCflb+0<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 00:28:21.93 ID:l4jxa1MNO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 07:33:42.53 ID:Fj45lHJmO<>

男「一緒に購入した携帯が届くのは、俺の注文したカバーと共に来週ですか……」

店員…「そうなんです申し訳ございません、お客様のこちらのスマートフォンでしたら届いていまして」

男「やっぱり最近起きてるアレのせいですか」

店員…「詳しくは聞いていませんが、そうらしいです……怖い世の中になっちゃいましたねぇ」

男「お姉さんも気をつけた方が良いですよ、アレは人気の少ない道や夜に人を襲うから」

店員…「そうなんですよね、でも人の多い所に出ない分、私も助かってますけど」

男「……?」

店員…「どうかされましたか?」ニコッ

男「知ってるんですか、アレの対処法」

店員…「え? ……ぁ、ああっ! えと、ぁは、いえいえ……! ネットで最近、その、警視庁のHPでそんな注意書が貼られているみたいですよ?」


男「警視庁……」

男(気づかなかった、ニュースを見る限りじゃ警察は把握できてないとばかり……)

男(もしかして俺達が知らないだけで案外、警察もこの事態を理解していたりするのか…?)

男(分からねぇな……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/14(土) 07:44:43.34 ID:Fj45lHJmO<> < スタスタ……


男(……とりあえず入れられる範囲で連絡先を入れて、早速主任に連絡だな)

男(今度のは結構良い値段したがGPS入れてるし、帰ったら主任のガラケーにGPS探知のアプリ入れねぇと……)

男(昨日の戦闘でこういうのの必要性分かっちゃったからなぁ)


< 【キキッ】


男「…………」ピタッ

男「……」

男(今、何かいたな)

< ダッ!

男(そこの路地裏だ……!)タッタッタッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 08:58:08.85 ID:xYF1s8jJo<> もしもし警察ですか、不審者が路地裏に <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/14(土) 10:00:11.23 ID:3vxCflb+0<> おつおつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 01:07:02.42 ID:VbMRwjTnO<> もしもし?……きーれーてーるー〜乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 09:41:49.75 ID:ZJ2pr+e0O<>

  ズザッ!

男「!」


ドラキーA【キキーッ】バサバサッ

ドラキーB【キキーッ】バサバサァッ

ドラキーC【キキキッ】バッサバッサッ

ドラキーD【キキーキキッ】バサバサッ

ドラキーE【キキーッ】バサバサッ



男(なんでこんなにドラキーいるんだよ、ったく)カチャ…

男「メラ」

< バゴォッ!


ドラキーD【ギィッ!?】ボボボッ……バサバサッ!


男(メラを耐え切った!?)


ドラキーA【「人間だ」】バサバサッ

ドラキーC【「人間だよ」】バサバサッ

ドラキーB【「ドラきちをよくも……」】バサバサッ


────────── ギュンッ!!


男(!??)

男(コイツら、速いぞ……!!)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 09:54:13.35 ID:ZJ2pr+e0O<>

ドラキーK【ギィッ……キィイッ!!】ドサッ

< ポワァ……ンッ



男「ぜぇ……ぜぇ……」

男「だぁあぁああ……っ、ざけんな……ッ!」がくっ

男「仲間まで呼びやがって…はぁ、はぁっ……動きは速いし攻撃も噛みつく以外にも尻尾とか使いやがって……いってぇ」ダラダラ

男「はぁっ……はぁっ……」


男(……明らかにドラキー達が強くなってる)

男(いや、じごくのよろいが言った通りなら……これがコイツらの本来の強さなのか)

男(帰ろう、もしかしたらじごくのよろいが来てるかもしれねぇ……っ)ヨロヨロ…


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 10:14:49.62 ID:MoPjOR1MO<> まだクリアしてないのに二週目の強さみたいな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 10:20:11.51 ID:ektD3wJwO<> 敵だけ強くてつづきから始める状態 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/15(日) 13:07:48.51 ID:QmLg23Wd0<> というかプレイ時間によって敵が強化される感じだな。

ちなみに町でダラダラしてても敵はどんどん強化されてしまうという <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 13:09:48.85 ID:dkf4/ylso<> ロマサガ状態より酷いな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 15:02:01.62 ID:oQXhkoEv0<> なのに主人公のレベルは上がらないというね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 17:45:57.43 ID:uv54ZTgFo<> ロマサガで例えるなら地相変化が大幅に作用してるようなもんじゃないかね主人公側の基礎能力自体は変わらんのだし
レベル0って要素が今後どう働くもんか気になる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 19:43:15.56 ID:GbjEUc6Ho<> れ、レベルは飾りだから…! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/15(日) 20:15:38.63 ID:QmLg23Wd0<> まだ一般人(冒険者のクラス未収得)だからレベル0なのかもな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/15(日) 21:22:38.66 ID:NQemJNjpo<> ドラクエで説明出来ない成長システムなんじゃね
メラ使えたり尋常じゃない脚力とか成長はしてるしの <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/15(日) 21:47:41.81 ID:ZJ2pr+e0O<>



地獄の鎧「寧ろ遅かったくらいだと、私は思うがな」



ベホマスライム【ホヨヨー♪】ポゥ…

男「ベホマさんきゅ……って、何だって?」

主任「男さんが出掛けた後、一時間しないうちに彼等が来たの」

主任「そこで良い機会だったから聞いてみたんです、私達が戦った『死神』の事を」

男「……そうか、そういやアイツは色々知ってたもんな……忘れてた」

地獄の鎧「依り代に必要なゴールドは既に集まっていた筈だ、なら後はこちらの世界へ次々とモンスターを送ればいい」

地獄の鎧「だがその死神が予想していたよりも後になって、漸く完全な顕現を果たしたモンスターが現れだした」

地獄の鎧「貴様達の話と今の状況を見るに、もしかしたら我等の世界で人間達が何らかの妨害をしているのやも知れぬ」

男「妨害、つまり戦ってるのか!」

地獄の鎧「或いはな、だが情報が少なく、そして人間達が魔王軍に正面からぶつかれるとは思えんのだ」

地獄の鎧「故に……有り得るとすれば、我等以外の存在だろう」


男「お前達以外の…?」


地獄の鎧「そうだ、私が会った本物のゾーマ様は我等二人以外にも使命を与えているに違いない」

ベホマスライム【ホヨヨー】ウンウン


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/16(月) 02:44:34.65 ID:WV6sCGSwO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 08:49:12.89 ID:3zSXdJoKO<>
男「何の根拠があって言えんだよそれ……」

地獄の鎧「そんな予感がするのだ、ゾーマ様に『ゾーマ様だと分かる何か』を感じた時のようにな」

ベホマスライム【ホヨヨー】ウンウン

男「んだそれ……」


地獄の鎧「何にせよ、だ」

地獄の鎧「いよいよドラキー等という下位のモンスターまで完全な顕現を果たしているのだ、近いうちに大きく動き出すだろう」ガシャッ


主任「そうですよね、例の……八魔将? とか、いつ来てもおかしくないんですから」

地獄の鎧「そうだ、そうなれば本格的に戦況は変わる」

男「お前達をこっちにやったゾーマは、何か戦局を変える手を用意してないのか?」

地獄の鎧「分からぬ、だが何かしらの意図があって人間の味方となるモンスターを選別した……と私は思いたい」

地獄の鎧「となれば私に出来る事は、一つだけだ」ギシッ

男「?」




地獄の鎧「私と同位のモンスターまでならば対等に戦える術を教えてやる」




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 09:43:49.97 ID:3zSXdJoKO<>

──────────・・・




男「ここなら人は来ないだろ」

主任「廃屋、ですか……こんな所が都内にあったんですね」

ベホマスライム【ホヨヨ】


地獄の鎧「フム……人の気配は無い、だがモンスターの気配ならば建物のあちこちからしたな」

男「お前達モンスターは人の少ない場所を好むみたいだしな」

地獄の鎧「人が多すぎるのだ、こちらの世界は」ギシッ

地獄の鎧「さて、戦える術を教えてやるとは言ったがこれは慣れなければ不可能な点もある」

地獄の鎧「本気で戦いはしないが、実戦訓練をしてやろう」


男「あぁ……」チャキッ

主任「……」


地獄の鎧「ふ、だが相手をするのは私ではないぞ?」

地獄の鎧「そうだろう我が右腕よ」


ベホマスライム【ホヨヨー!】ムキッマッチョ!


男(……ホイミスライムだった時、あいつの攻撃痛かったから嫌い)

主任(可愛い……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/16(月) 12:39:47.10 ID:Ly2tDeMsO<> あー金目のものが依り代ってアベル伝説っぽいな
宿屋に泊まる度橋渡った程度に敵が強化されるDQ3とかちょっとテストプレイ不足もいいとこなんじゃないですかね…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 21:41:40.26 ID:3zSXdJoKO<>
   ヒュルルルルッ!!


ベホマスライム【ホヨヨ…ッ!】ビュンッッ


男「ッ!」バッ

男(ホイミスライムの時でさえ『あれ』だ、受けるならば剣で受ける)


< ヒュッッ……ガァンッ!!

男「ぅおァッ!? だが耐えた、主任!」ズザァァッ…!

主任「『ヒャド』!」バッ


ベホマスライム【ホヨ…!】バキィンッ


主任「動きは止めましたよ」

男「流石!」ダッ!

男(決まってくれよ……ッ)ダンッ……!


地獄の鎧【シー……】(ほう、あの構えと飛び方は)






男( ─────『兜割り』─────!!)グルンッ

ベホマスライム【ホヨヨー!?】





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/16(月) 21:59:45.35 ID:3zSXdJoKO<>
< ボッッ……!!

男(……『ボッ』?)スタッ

男(え、てか何この感触……斬れてねぇえええええ!?)ギチギチギチ……


ベホマスライム【ホヨヨ…ッ】ビュンッッ

男「づァッ……!!」バチィンッ!


主任「男さん!?」

男「ぐぁっ、がっ!……ッ!」ドサッ…ゴロゴロゴロッ!

男「いっ……てぇええ……」

地獄の鎧「貴様、今のはわざとなのだろうな?」

男「あのベホマスライム、柔らか硬すぎるだろ……」

地獄の鎧「違う、貴様の太刀筋がおかしいのだ」

地獄の鎧「剣は槌とは違い、叩きつければ良いのではない」

地獄の鎧「今までそれでモンスターと戦っていたのか?」


男「………………はい」

地獄の鎧「貴様ァ……」
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/17(火) 01:59:02.57 ID:HnkAN1I8O<> それでも軍人かー乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/18(水) 00:03:59.81 ID:i61f3ZrL0<> 社畜だよ乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 13:43:01.31 ID:sOawwQVm0<> 刃の向きくらい気をつけろよwwwwww
乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 16:46:02.75 ID:LCncOtM+o<> 向き合わせるだけじゃ駄目なんだよ
押し切り引き切り、刃の付き方も見て合った使い方しないと <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 17:11:40.93 ID:JVN4nf++o<> 生肉切ってみればわかる
叩ききろうとしてもうまくいかない <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 17:14:14.80 ID:c4fcMhZsO<> まな板まで真っ二つになっちゃうから困るよね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 17:14:42.65 ID:sVkLYhUn0<> 鋳造の直剣は鈍器 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/18(水) 17:22:02.90 ID:i61f3ZrL0<> そもそも西洋の直剣は鋭さでじゃなくて重さで叩き切るわけだから刃は申し訳程度にしかついてないぞ。
それでも平の部分で叩こうとかしたら空気抵抗で相当威力落ちる気がするから刃を立てるのは理に適ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 18:35:38.44 ID:aa4WT0+to<> 斧でも鉈でもそうだが、鋭さにかかわらず少しでも刃が斜めになってたら力は分散する。
それくらい初歩の初歩だろ……。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 18:51:35.87 ID:QUglokJoo<> 初歩っちゃ初歩だがそれ実践するのクソむずいぞ
ある程度はモノの重みでいけるが刃を立て続けてスパスパ切るとか集中してても難しい
材木屋で働いてたとき鉈で枝の剪定やったけど一年以上怒鳴られ続けた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/18(水) 19:13:34.96 ID:EI2hoiqDO<> パパス? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/20(金) 11:44:28.87 ID:85XMdjAdo<> >>541
ごめん、>>540は>>538に対するレスだった。
楔形状の断面をしている以上、鈍器扱いするのはおかしいぞと言いたかったんだ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/21(土) 07:37:42.99 ID:3bEbH3jHO<>



男「そんなこんなで一人寂しく帰宅しました、男です、はい」




男「…………」

男「…………」

男「…………」

男「えっ、何この……野球部か何かで真面目にやってなかったから先輩にキレられて帰らされた気分は」

男「いやいやいや! おかしくね? 俺の今までの戦い全否定されてるし……!!」




━━━━━━━━ 『それでも戦士なのか、今までの戦いを今一度思い出すがいい馬鹿者が!』

━━━━━━━━ 『せめてまともに剣の使い方を調べるなりして直してから来い、そのままでは大木槌の方がマシだ』

━━━━━━━━ 『帰れ!!』

━━━━━━━━ 『男さん帰らせるんですか!?』




男「……」

男「どうしろってのよぉ……剣術って、日本刀とかとは違うだろーし……」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 10:00:42.36 ID:HPTfF+T2O<> ここで道場ですね。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 10:08:56.36 ID:WRi0CG8DO<> 山籠りして、鉈で黙々と薪を作り続けるんだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 11:50:17.83 ID:pN23vSEoo<> 刀も剣もある程度刃筋を立てるってのは共通事項でないの? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 12:44:11.88 ID:w7wTPHUKO<> もはや斬るのではなく突けばいいんじゃね? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 15:22:35.77 ID:1k7Hmhp8o<> >>548
突きの方がもっと難しいぞ。
踏み込みの力、体重、体のひねりを「同時に」「剣先が相手にめり込む瞬間に」集中させなきゃいけないんだから。
しかも、体勢を崩さずに。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/21(土) 17:20:25.15 ID:OI5IbpQY0<> なんで農民上がりに剣ではなく槍を教えるかって言うと、剣をまともに使えるようになるより早く戦場で使いもの(戦力計上できるって意味であって、使いこなせるようになるとは言ってないが)になるからなんだけど

つまりそのくらい剣で戦うのは難しいってこった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 19:08:30.15 ID:ZBO5AaKho<> じゃあRPGの主人公やその仲間は初っ端から剣使いこなしてるし凄いことだったんだな… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 21:33:05.83 ID:S4rbwlrDO<> >>550
槍相手に剣で戦うには3倍の力量が必要っていうしな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/21(土) 22:50:17.04 ID:hPyBmhS3o<> 王様「うむむ……やはり最初はひのきのぼうを与えることにするか」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/21(土) 23:01:45.27 ID:OI5IbpQY0<> 鋳造した銅の剣なんて棍棒みたいなもんだからいいんじゃないですか?
DQ3の勇者なら「16歳まで勇者として育てた」らしいから剣の使い方習熟しててもおかしくないし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 04:40:23.79 ID:0uGmtSYWo<> そんな事より俺の剣をみてくれ
こいつをどう思う? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/11/22(日) 09:50:36.14 ID:Xhf9YvF0O<>
──────────・・・



< カチカチッ…カタッカタカタッ…タンッ


男(……西洋剣術、直剣の扱い、刃を立てて当てる際の角度、引き方……)カタカタッ

男(…………どれも、違う…気がする)

男(そもそも『鋼の剣』って名前に俺は惑わされてるんじゃないか? これ……ああ、三時間も経ってるし)

男(主任はまだじごくのよろい達と何かやってんのかねぇ? 良いな、楽しそう)

男「!!」ガタッ



男「あーもう!! 楽しいわけねぇだろこの馬鹿野郎が!」ダンッ!!             ビクッ…



男「でも、どうしろってんだ……あー……」

男(……気分転換にどっか行くか…? A葉駅かI袋駅らへんまで…)

男「……」

男「よし行くか」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 10:44:09.57 ID:IdtRrvyv0<> >>555
すごく……細いです <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 13:50:02.64 ID:OznVCSkDO<> >>555
すごく点滴用の針です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 14:10:52.78 ID:neAc9DZZO<> >>549
そうなのか
剣って奥が深いのな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2015/11/22(日) 14:48:20.30 ID:0DdeyuPa0<> 剣に限らず武術は奥が深いものだけど、素人を戦力に計上できるようにするためには何を使わせたらいいかってことを考えたら、剣よりは槍、槍よりは槌、槌よりは棍棒(よく山賊とかが棍棒持ってるのは素人でも充分使える上に得物をあまり傷つけずに捕らえることもできるから)
男が大木槌使ってたほうがうまく戦えてたって言われるのも当然と言えば当然

あと状況によるけど、素人を戦力にする場合の最適解は人数集めて飛び道具持たせるのが一番いいんじゃないかな(当てることができれば最高だけど最悪敵の注意を惹かせて囮にできる)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 15:08:34.07 ID:R2meIr8Uo<> 高いところからの投石って素人ができる最大の攻撃だったのか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 16:05:42.05 ID:BD831wBqo<> 実際、戦国時代の戦争での死因は九割近くが弓じゃなかったか?
飛び道具って消費を考えなければ最強だよね
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 16:56:40.61 ID:lnNXISEfo<> やはり三段撃ちを考えた信長は天才だったわけか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 17:43:55.93 ID:8UsZvvFc0<> 今は三段撃ちは嘘だって説が有力なんじゃなかったっけ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/22(日) 18:48:39.98 ID:jZBnceA6o<> マジかよ光秀最低だな(竹槍ザクー) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/23(月) 08:32:36.02 ID:dIQB0Z9Vo<> 農民兵に槍を使わせる最大の理由は「距離が離れることによる恐怖の遠隔化」にあるんだけどね。
だから信長は、農民兵に持たせる槍を思いきって三間半(約6.5m)もある長槍にしたわけだし。
そんなに長いと懐に入られると不利じゃないか? 数十人が構える槍の穂先を前に、飛び込めるんならそうなるかもね。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/23(月) 11:15:02.47 ID:PNxemx/cO<> ssに無関係な知識のひけらかししなくていいから <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/23(月) 12:44:13.64 ID:EpYB7BQ6O<> どこが無関係なんだ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/23(月) 16:56:43.42 ID:ttFe3ZOk0<> そして雑談が始まり、自治厨が湧き、スレが荒れ、世界は滅んだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/23(月) 17:13:20.71 ID:fDBwFgLfO<> そういうスレをこないだ見たな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/11/24(火) 00:25:09.63 ID:UqjD0V9oo<> 雑談はほとんどの場合書き手も喜んでやる気出すけど
速報は読者がうるさくて自治で滅んだスレがたくさんあるからな
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/11/28(土) 20:24:30.83 ID:Ph+zMvPlO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/05(土) 21:27:59.09 ID:7w4tuxbuO<> まだかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/06(日) 09:48:58.09 ID:kSNFRwtX0<> 男の部屋に隠れてるの誰カナー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/11(金) 09:32:42.75 ID:WzoCDFKNO<> 急に止まったな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:36:09.42 ID:yWFxeqy3o<>
                タタタタッ……!! >
            タンッ!
            スタッ…!
      ダダッ…!!


  シュタタタタッ!



男(俺の家から全力で走った場合、A葉駅周辺まで一時間もかからねぇ筈だ! このまま走る!)

男(くそ、もやもやする……ッ)

男(そもそも俺は何のために戦ってんだってんだよ畜生がッ)ダッ!


男(何を俺は勘違いしてるんだ、何から俺は目を逸らせばいいんだ……ッ!)


男(俺は……! 俺は……ッ…………)バッ


タホドラキー【ギキキキッ】バサバサァッ


男「邪魔だぁあああッ!!」キィンッ



< ドッッ……

タホドラキー【!?】

< ゴバァアッッ!!



男「…………」

男「え……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:37:41.97 ID:yWFxeqy3o<>
< 「今の音は!?」

< 「奴等かもしれない、行くぞ!」

< 「おいヤバいぞ!!」




男(メラじゃない、何だよ今の……『メラミ』か……?)

< バッ…!

男(メラゾーマみたいに火柱が立ったぞ!?)ダダッ

男(チッ、このままA葉駅に向かっても警察に見られるかも……I袋駅に進路変更か)タタタタッ


男(さっきの緑の毛並みは多分タホドラキーだ、あれを一撃で殺れた!)

男(今はまだ午後三時過ぎ、試すなら夜中だな)

男(はは、我ながら凄いタイミング……まるで夢みたいだ)




                       「……」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:38:46.65 ID:yWFxeqy3o<>
【I袋駅・デパートビル前】


< ザワザワ……


男(なんか今日は精神的に疲れるな)

男(とりあえず警察は撒けたな、ここまでは来れないだろ)

男(何か叫んでたけど、止まってたらヤバかったな)

男(……はぁ)


調査兵団?「「 ザワザワ… 」」スタスタスタ……


男「!?」ギョッ


魔法少女?「……」スタスタ…

御坂美琴?「……」スタスタ…


男「……!? …?」

男(…………コス…プレ…!?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:39:43.05 ID:yWFxeqy3o<>
立て札【〜〜イベント開催! 準備期間中〜〜】


男(あー……なるほど、テレビでもやってたっけな)

男(ああいうのはアキバ系とか思ってたが、I袋にもあんのな……へぇ)

男(……)ドキドキ

男(ど、ドラクエのコスプレとか……有りかなー…?)ドキドキ

男(あぁ、でも……イベント開催は明日なのか、衣装とかどうするかな)

男(そもそも主任に見られたら死ぬ自信がある)

男(…………)ウーン


< スタスタ……

男(ん…?)チラッ



武道家?「……」スタスタ…



男(……)ドキドキドキドキ……ワクワク

男(コスプレしよう)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:40:43.38 ID:yWFxeqy3o<>
【その頃……男宅】



主任「……これで本当に私も戦えるんですか?」

地獄の鎧「うむ、動きとしてはこれ以上無いだろう」

主任「そんなに影響していたんですね、私達の戦い方……」

地獄の鎧「奴は、男は半ば理解して動いていた様だったがな」

主任「そうなんですか?」

地獄の鎧「恐らくは早い段階でこちら側に来たモンスターの特性を見破り、実戦の中で自身の感覚と結び付けたのだ」

主任「私と同時期から戦ってたんですもんね、彼……」

地獄の鎧「それだけではない」

地獄の鎧「『あの時』、男の傍に何者かがいたのは間違いないのだ」

主任「……え?」



地獄の鎧「私の推測が正しければ、その何者かは昨夜の我々を見ていただろう」

地獄の鎧「しかし気配すら感じなかったのも確かだ、気のせいかもしれん」

地獄の鎧「だが主任、モンスターの存在を認識したその日や翌日に『レベル8』相当のさまようよろい、ホイミスライムを倒せると思うか?」


主任「……レベル、8…?」

ベホマスライム【ホヨヨー】ウンウン


地獄の鎧「……手を出して来ない以上、敵では無いかもしれぬが用心しろ」

地獄の鎧「直接戦わず男の手助けのみに徹している存在……無視するには得体が知れないのも確かなのだからな」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:41:41.54 ID:yWFxeqy3o<>


< ガチャッ

男「ただいまー」パタンッ

男(主任、いるか?)


< ザァァ……


男(シャワー中か、よしよし)ガサゴソ

男(とりあえず俺の部屋に持ってって……と)スタスタ…

男(主任、まだ出ないよな…?)


< ザァァ……


男(……)

男(多分、まだ頭を洗ってるな)

男(恐らくはコンディショナー使って、それを流して、身体を洗い、流して、最後に入浴……この流れだ)

男(ここから予測できる上がるまでの時間はおよそ八分から二十分!)

男(いける、着れるぞ……ッ)ドキドキワクワク


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/16(水) 19:42:13.85 ID:yWFxeqy3o<>
< ゴソゴソ……

< 「む、こう…か? くそ入らないぞこれ……」

< 「おー…? ってこのカツラ……いやウィッグだっけか…? どう被るんだ……」

< 「くっ……?」





主任「男さん? 帰ってたんですか」ガチャッ




セフィロス(男)「…………」ピクッ

セフィロス(男)「!!!??? 〜〜ッッ!!? 〜〜……ッッッッ!!!!!????」ガタガタガタガタ




主任「……」

主任(え、なんでFFなの…?)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/16(水) 20:29:26.30 ID:vsfxH+C6O<> DQ3の女武闘家は可愛いからね、仕方ないね

ってコスプレ初体験ならDQ3勇者みたいなシンプルなのでいけよ…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/18(金) 00:07:48.63 ID:yj5TYB9LO<>

ベホマスライム【ホヨヨー♪】ピッカァァアアア


男「……シャワー浴びてたのアイツかよ」

主任「モンスターでもお風呂に入りたがる子はいるらしいですよ?」

男「ヘーソウナンダー」

主任「……」

男「……」


ベホマスライム【ホヨヨー?】クイックイッ


主任「あ、帰るんですか?」


ベホマスライム【ホヨ!】


主任「では見送りますよ、明日もよろしくお願いします」


ベホマスライム【ホヨヨー】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/18(金) 08:25:11.37 ID:SdzNPyWAO<> まあ、変装目的ならDQじゃない方がいいよ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/18(金) 08:43:01.53 ID:C2R2kOjPo<> 女子会と遭遇するよりはマシだったと思って <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/18(金) 09:37:29.45 ID:yj5TYB9LO<>
主任「えー……と、ですね」

男「……」

主任「……」

主任「正座しなくて良いんですよ?」

男「……」

主任「どんだけ落ち込んでるのよぉ……私は気にしませんよ? そんな、あの、コスプレ程度で」

男「似合ってましたか」

主任「はい?」

男「俺の上半身裸セフィロスは、似合ってましたか」

主任「……正直に?」

男「yes」

主任「身長が足りないような違和感が……あと、何故裸の彼をチョイスしたのか…」


男「……っ」プルプルプルプル

男(ピサロのコスプレが見つからなかったんだよ……!! なんて言えない、駄目だダサすぎる……ッ)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/19(土) 08:36:32.67 ID:60eo9dwBo<> もうレタス頭に乗っけてDQ4勇者ですとでも言い張ればよかったのに…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/19(土) 09:32:36.94 ID:T6tb3MHdO<>
主任(もうレタス頭に乗っけてDQ4勇者ですとでも言い張ればよかったのに……)

主任「はぁ、とりあえず今日は気分転換に遊びに行ってきたという所ですか?」

男「うぐっ」グサッ

主任「刺さらない刺さらない……昨日や今朝は大変でしたし息抜きは必要だと思うの」

男「……でも俺のやってる事って課題そっちのけで遊ぶ学生っすよね」

主任「そうですか?」

男「多分」

主任「私だって遊びに行きたい気持ちはあるんですよ?」

男「…………」

男「じゃ、明日俺とデートがてらイベント行くか」

主任「はい?」


< prrrr……

男「ん、家電だ」スタスタ


主任「……」

主任(ま、前から思ってたけど……もしかして私口説かれてる…?)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/19(土) 09:45:31.77 ID:T6tb3MHdO<>


男「ふー」スタスタ

主任「誰からだったんですか?」

男「うちの妹からっすよ、アイツはアイツで元気にしてるみたいだ」

主任「……」

主任「そういえば、ご家族亡くなってないじゃないですかー……あまりそういう嘘は良くないですよ」

男「ん?」

主任「あの部屋の中を見られたく無いならもう少しマシな嘘を…」

男「妹は四年前に死んだよ」

主任「……?」

男「いや、あ? まてまてさっき電話で俺……」



主任「男さん、何を言っ…
────────── ゴォォン!! ゴォォン!!



  任「なにこ…れ… …… 鐘の… 音  ? …




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/19(土) 09:50:15.46 ID:R/zStoyAO<> 男はメダパニでもかけられてるのか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/19(土) 09:52:23.27 ID:T6tb3MHdO<>


男「ふー」スタスタ

主任「誰からだったんですか?」

男「聖書の勧誘っすよ、途中思わず『仲間』かと思って話聞いちまった……」

主任「あぁ……魔を払うとか言われたりしたんですか」

男「そんなとこっすねー」


主任「ところで男さん、さっきの話なんですけど」

男「お、行きます?」

主任「……ううん、ごめんなさい」

男(オゥフ)

主任「やっぱりじごくのよろいが言っていた話を聞いちゃうと、ちょっと不安で……」

主任「明日も彼等に付き合って貰うつもりです」

男「そっか……まぁ、その……俺もただ遊んでる訳じゃないから安心してくれると有難いっす」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/19(土) 12:25:14.72 ID:Nhv1ROISO<> 記憶を書き換えられたか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/19(土) 13:56:55.42 ID:6Kh7MuIW0<> イッキ読みしてしまったww
色々気になる点があるがこれから解明されていくのだろう
楽しみですのぉ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 07:38:17.85 ID:Hxw+K7CNo<>
主任「それはわかってますよ、男さんが遊んでばかりじゃないのは」

主任「あなたはただ、私よりもずっと強いだけなんです」

男「……強い?」

主任「ええ」

男「そう、かな…?」

主任「じごくのよろいに聞きました、男さんはモンスターと戦う際に必ず『行動を予測している』と」

男「いやそんなどこの達人だよって」

主任「ゲームのターン制に酷似した特性をあなたは見抜いていたんじゃないですか?」

男「……」

男(ああ、そういや……最近はどいつもこいつも速くて忘れてた)

主任「モンスターは必ず相手を見る、気配を探り、相手を知る」

主任「それも戦いの一部なんだそうです」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 07:52:07.73 ID:Hxw+K7CNo<>
男「みたいだな、けど主任も知っての通りだよ」

男「『奴等』にはまるで気休めだ」

男「多分あれはゲームで例えるならかしこさとすばやさが合わさった様な物なんだ」

主任「……らしいですね、指揮官級…これから先で戦う事になる上位モンスター達は皆こちらの動きや状況を即座に判断した上で動いてくると」

男「そう、知能の高いモンスターはきっと一瞬こっちの動きを読むために止まったりはしない」

主任「じごくのよろいに聞かされて私は知ったのに、そこまで分かってるんですね……」

男「主任は一人で戦おうとしない方がいい」

主任「どうして?」

男「仲間は一緒に戦うから、仲間なんだよ」



男「ドラクエじゃ、一作を除いたら絶対の常識だぜ?」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 08:25:54.75 ID:Hxw+K7CNo<>

【翌日……イベント会場】


段ボールガンダム(男)「(昨日はあんなかっこいい事言ったが今日やる事は変わらねぇぜ!)」< ガシィンッ

段ボールガンダム(男)「(しかし良かった! 初のコスプレにあんな変態ロン毛のにしなくて良かった!)」

段ボールガンダム(男)「(こういうイベントって人ヤバいからな、ギャグに徹しながら他のレイヤー見るに限るぜ……)」


< 「……ですよー、皆さんいっぱい撮って下さいねー」


段ボールガンダム(男)「(んー?)」

段ボールガンダム(男)「(写真撮影か何かか?)」



段ボールガンダム(男)「(……『きのこブース』……?)」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 09:03:15.49 ID:Hxw+K7CNo<>
< 「ぐぁああああっ!?」ガッシャーン

< 「ランサーが死んだ!」

< 「この人でなしぃ!!」


セイバー?「こうですか?」

「良いよ良いよー、セイバーちゃん可愛いよー」パシャッ



段ボールガンダム(男)「(ああ、なんか見たことあるな)」

段ボールガンダム(男)「(前に映画であった……なんだっけか、空の境界? あれの系列だったような)」

段ボールガンダム(男)「へぇ……お、あの金髪の人可愛い」スタスタ


スタッフ「ちょっとそこの人ー、困りますよ」たたっ

段ボールガンダム(男)「え」

スタッフ「イベントに参加するのは初めてですか? 受付通ってないでしょう」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 11:08:12.70 ID:Hxw+K7CNo<>
段ボールガンダム(男)「(名刺だの何だの面倒だからビルの側面を伝って会場の中に飛び下りて来たんだけどなー)」

スタッフ「それコスプレですか?」

段ボールガンダム(男)「(めんどいなー……)」

男「いや、ちょっとノリで被ってました」ゴソッ

スタッフ「そうですか、じゃあ受付を済ませて貰っても……」

男「はい」

男(戻ってきてから色々見るかねー……ん?)




セイバー?「…」アワワワ……ガタガタガタガタ




男(おいあのキャラすげぇぷるっぷるしてんぞ、良いのかあれ、カメラマンすっげぇ顔してびっくりしてんぞ)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 11:34:33.52 ID:Hxw+K7CNo<>


男(コミックとか同人誌は興味ないから食い物だけ調達したけど)

男(やっぱりこういうイベントって色々いるなぁ、テレビ局とか来てたし)

男(ドラクエ、来年ついに10出るんだなー)

男(WIIでオンラインなのは気に入らないけど、いや絶対荒れるだろ……やだなドラクエで昨今のネットスラング飛び交うとか)

男(さてどうしたもんか)


< ガシャッ

男「?」


セイバー?「……」


男(あの金髪の子……さっきのアニメのブースにいたレイヤーか)

男(ここは撮影は禁止だし、休憩か? いや仕事じゃねんだし待ち合わせかね)スッ

男(移動しよ)スタスタ

セイバー?「男さんですよね」

男「……」ピタッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 12:14:00.65 ID:Hxw+K7CNo<>
男(コイツ、何故俺の名前を……)

男(って身構える程のもんでもないか、受付で名前を見たかもしれないし)

男「そうっすけど、なに?」

セイバー?「……あの、次来店なさってもこの事は内密にお願いします」

男「は……?」


< パサッ

店員…セイバー「流石にウチの携帯会社、こういうのに厳しくて……バレたら良くないんですよぅ……」ぺこり


男(この子いつもの携帯ショップのー!!)

セイバー「あ、ここではセイバーって呼んで下さいね? 私毎回こういうイベントに出てるんですよ〜」ガシャッガシャッ

男「は、はぁ……」

セイバー「でもやっぱり野良でコスプレしてると身バレこわくて本名は明かせなくてー」

男「いやぶっちゃけヅラ取らずに言われなかったら店員さんって気づかなかったけど」

セイバー「 」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 12:22:00.60 ID:Hxw+K7CNo<>
セイバー「……」

男「……」

男(なんだこの沈黙……主任の時にも流れたような)

セイバー「ま、まぁ内密にしてください」

男(顔真っ赤ですやん、このお嬢)

セイバー「で……好きなんですか?」ガシャッ

男「ん? なにが」

セイバー「型月!」


男「かたつき…?」

男「なんだそのガン=カタみたいな」


セイバー「違います」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 12:52:29.81 ID:Hxw+K7CNo<>
セイバー「型月とは「有限会社ノーツ」のゲームブランド名でこれを通称「型月」。同人サークルとして1999年に発足され、その作り込まれた世界観とキャラクターなどで有名となりました。アダルトゲームブランドでありながらもバトル・アクションシーンの熱さに定評があり、同時にはっちゃけるときには「キャラ崩壊どんとこい」というぐらい、とことんカオスを貫き通すため、羽目を外した際のギャグにも定評があり、近年では毎年エイプリルフールに何かをする企業としても関連業界では定評があるのです!!」


男「ほ、ほう…?」


セイバー「私の格好の元であるキャラはご存知ですか!」

男「ああ、まぁCMとかネットとかゲーム屋で……」


セイバー「セイバーとは、『Fate/stay night』のメインヒロインの一人及びその派生作品に登場するキャラクターで、第五次聖杯戦争において衛宮士郎に召喚されたセイバーのサーヴァントです。青いドレスに白銀の甲冑を纏い、雄々しく戦う金髪碧眼の少女剣士で、あ! 私のいま着てる衣装も全て鋼と特殊繊維で出来てるので本物並みですよぅ! で、「Fate/stay night」におけるメインヒロインの一人であり、Fateシリーズを代表する顔です! 同じく型月の『月姫』と並ぶメインキャラなんです。ちなみに第四次聖杯戦争では、士郎の育ての親である衛宮切嗣により召喚されました。しかし切嗣の勝利至上の戦闘方針と、セイバーの騎士としての誇りは相容れることなく、結果反目し合い、当時の彼に直接声をかけられたのは3回のみしかも令呪の命令という徹底ぶり。そして第五次聖杯戦争の折、士郎の体内にある聖剣の鞘が触媒となって召喚される。士郎に剣の誓いを立て、彼とともに聖杯戦争を戦う。有名なのはやっぱりあの「問おう。あなたがわたしのマスターか」ですね!!」



男「……そ、そーなんですかぁ…」

セイバー「ちなみに型月で知ってる作品は何ですか?」

男「いや、あー……」

男(迂闊に口を開けばwikiのような事をペラペラと聴かされる……ッ! く、どうすればッ…………)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 13:31:39.37 ID:Hxw+K7CNo<>

< 「うわぁああああっ!!」


セイバー「!」

男「今のっ!?」

男(尋常じゃねぇ悲鳴、まさか……!)バッ

セイバー「男さんはここに! 私が見てきます!」ガシャッガシャッ

男「いや店員さんはここで待ってろ! 俺が行く!」

セイバー「男!」

男「!?」びくっ

セイバー「セイバー、です」


    ガシャッ、ドッッ!
             ダダッ…! シュバッ



男(なっ…!?)

男「嘘だろ……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 14:09:05.44 ID:FvTagl3AO<> まさか店員まで見える人だったのか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 15:49:39.14 ID:UnBBTf5WO<>



カメラ男「ぎゃぁああ!! わぁああああっ!! 誰かぁぁあ……っ!!」バタバタ

レイヤー「いやだぁ……やだぁ……体を、体を虫が……っ!!」ガシガシ

警備「……」ボーッ…


男「こいつァ……ヤバいな」ザッ


無数の悲鳴が辺りを飛び交う中に辿り着いた俺の前に、大勢の人間が『異常』な姿でいた。

ある女は全身を掻き毟り、あるカメラを携えた男は先程から悲鳴をあげながら猛烈な勢いで地面を何故か走っている。

そして、そこへ駆けつけたらしき警備員の殆どが倒れる中で一人だけ虚ろな目で空を見上げたまま座っていた。

開催されてからピークの直前だったとはいえ、大勢の人々が会場のそこかしこで地獄と化していたのだ。


薬物テロの可能性が無かったわけではない、会場の入り口でドリンクを配っていたのを覚えている。

だがそれ以上に、俺にはたった一つの存在が見えていた。

『モンスター』だ。



ゴーゴンヘッド【 弱い 】

ゴーゴンヘッド【 なんと貧弱な精神力だ……こちら側の人間は呪文一つで倒れる 】

ゴーゴンヘッド【 情けない指揮官共が制圧するまでもない、この己が街ごと潰してくれる 】

ゴーゴンヘッド【 だがそれはこちら側の人間の剣士、貴様を壊してからだ 】


昼間である事すら忘れさせる黒い煙を散らして宙に浮き、深緑の蛇を無数に生やした妖しい眼球。

巨大であり、異質な空気を纏うその姿はこれまで見た中では最も『モンスター』らしい怪物と言えた。


男(『ゴーゴンヘッド』! コイツも完全な顕現ってので出てきたのか……!?)

男(いや、それよりも……)


混沌渦巻くその会場の中で俺の意識を釘付けにしたのは、かつてない強敵ではなく。

一人の、キャラクターになりきっている女だった。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 16:36:01.90 ID:UnBBTf5WO<>


セイバー「……」


    ガシャッ


悠然。

頭上を飛行する怪物を目の当たりにしても、彼女はそれに臆す事なく一歩踏み進んだ。

その時、彼女の足元から何かが巻き上がっているのに俺は気づく。

視線を落とした先に俺が見たのは、黒い残滓と共に散っていくモンスター。

そこに横たわっていたのは、一体の獣だった。


男(青い体毛……ダースリカント…か?)


言葉を話すモンスター達の共通点が、一定の実力を持った上位種のモンスターなのだとすれば。

あのアニメに熱く語っていた女性、店員が倒したと思われるモンスターは間違いなく指揮官と呼ばれるその地区の最強クラスのモンスターである。

俺が彼女を追い掛けて到着したのは、恐らく彼女の十秒後しかない筈だ。

その短時間で倒したとは思えない。

であれば仲間割れだろうか……そう俺が考えを巡らせた瞬間だった。








セイバー「行くぞ怪魔」



────────────────────  ゴッッッ!!!!







<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 16:38:05.92 ID:wNYB3Rr/O<> へ? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 16:57:52.21 ID:Hxw+K7CNo<>
男「 ────────!!?」


大気を揺るがす程の轟音、そして全身を駆ける衝撃。

初めてさまようよろいの使ってきた『兜割り』等とは比較にならない、身が竦み上がる様な砲撃だ。

だが目の前で起きたのは砲撃とは程遠い、原始的な行動。


一閃、或いは一薙ぎ。


最早その刹那に起きた事は音でしか分からず、彼女がいつの間にかその手に赤い両手剣を握っていなければ魔法だとすら思ったのだ。

そして、残滓すら残さずにあのゴーゴンヘッドが粉砕されなければ、俺は彼女に近づきもした。


男「…………」

動けない。

動けるはずがない。


ゴーゴンヘッドというモンスターの初期開発時の守備力は恐るべき120、これは上位レベルの勇者でも一撃では倒せない硬さなのだ。

仮にそうではなくリメイク版の99だとしても、あれは決して一撃で倒せるモンスターではない。

ましてや弱点である脆さを指揮官級のモンスターが対策していない筈がないのに。

空へ向けていなかったらどれほどの破壊が周囲に及んだのかも知れない、そんな一撃を放った携帯ショップの店員である女は……それをたった一瞬で消し飛ばしたのだ。


セイバー「……あ、っと…」パサッ

セイバー「あはは、カッコ悪いですね……もう…髪の毛染めちゃおうかな……無理か」ごそごそ


セイバー「…………」クルッ


そんな彼女を前に俺は動けなかった。

色々な考えが浮かんでは消えていく中で、彼女だけは平然と俺に振り向いた。


セイバー「手伝って下さい、会場の人達を助けないといけません」


男「…………」


俺は、声を出すことすら出来ずに頷いた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 18:40:57.49 ID:Hxw+K7CNo<>
< 「くけけけけけけけけけけけけけ」

< 「おかあさぁん、どこー…なにも見えないよぉ、なにも聞こえないよぉ……」

< 「わぁああああっ!! わぁああああっ!!」

< 「ひぎぃいいい!!」


セイバー「怪魔を倒したのに、未だ呪いが解けない……何故」

男「『マヌーサ』だ、幻惑の魔法で皆ひどい幻覚を見てる……だけだと思いたい」

セイバー「その魔術を解除するには?」

男「時間が立てば解ける……はず」

セイバー「曖昧な事を、本当に問題ないのだろうな」

男「ゲームじゃその程度の阻害魔法でしかないんだ、でも現実のこれも同じかは分からない」

セイバー「……ゲームだと?」

セイバー「遊んでる場合じゃないんだぞ!」

男「こっちも遊んでるつもりはないよ! ドラクエ知らないのかそんなに強くなっておいて!」


セイバー「え、ドラクエ…?」


男(あーもうやだ! この人ドラクエやってない人だ! 何が悲しくて分野の違うオタクにキレないといけないんだ!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 20:12:32.04 ID:w+MZUR4io<> ドラクエ知らないで強くなった結果か <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 20:29:36.33 ID:Hxw+K7CNo<>
セイバー「ドラクエ……」

セイバー「……!」ハッ

セイバー「なら状態異常を回復する魔術がある筈だろう? それを使えれば……」


セイバー「エスナ!」バッ


男「違うそれはFFだ!!」

男(けどキアリーやキアリクは違う、はず……やっぱりこのまま待てば…?)

< 「ぅう……っ、ぐぅ…!」

男「?」

セイバー「様子がおかしい……これは!?」

男「痙攣…? 心臓発作か何かか……!」

セイバー「お、男さん! どうしたら……」ガシャッ

男(恐怖か何かでおかしくなってしまう事は有り得るのか……どうすりゃいい)

男(俺に、そんな都合の良いことなんて……)




『 ゆっくり、ゆっくり深呼吸して……? 』




男「……」

男「……じーさん、起きろ」ペシペシッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 20:41:17.36 ID:FvTagl3AO<> まさかのビンタ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 20:51:52.85 ID:Hxw+K7CNo<>
セイバー「ちょっ!? なにを……」

男「片っ端から叩き起こせ、高齢者から順に」ペシペシッ

男「じーさん、起きろー」ペシペシッ

セイバー「それで……!」


< 「ぅ……あ…?」


セイバー「……!」

男「うし、起きたな」ぐいっ

男「よくがんばったなじーさん、もう大丈夫だぞー……」ギュゥッ

男「ゆっくり深呼吸しろな、ゆっくりだぞー……」


セイバー「……」


男「…?」

男「なにしてんだ、早くしろって」

セイバー「は、はいっ」ガシャッガシャッ


セイバー「もう大丈夫です! 起きてください! 目を開けて!」ユサユサ

< 「あぁあああああ!!」

セイバー「起きて! 起きて!」


男(……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 21:12:05.44 ID:Hxw+K7CNo<>
男(これだけじゃ駄目だ、これだけだと端からおかしくなる)

男(理屈は……勘だけど分かった)

男(皆は見ているんだ)


男(『悪夢』を)


男「……すぅう…ッ」バッ

男(夢を見ている筈なんだ、これじゃ駄目かもしれない、駄目ならもう俺はこの人達を一人ずつ起こすことしか出来ない)

男(夢ならば醒める)

男(悪夢から逃がしてやればいい……その筈なんだ)ググッ

男(大丈夫だイメージしろ、今のところ作品の共通点は分からねえが……メラが使えて使えない道理はない)


男(主任は言っていた、『ギラ』の特性が違うことがある…って)

男(ならつまり…同じ魔法でも使う者によって形は変わるんだ)



男(皆を起こす……この魔法で!!)



男「 『ザメハ』 !!」


キィインッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 21:35:17.82 ID:Hxw+K7CNo<>


< 「……っ、あれ……私…何を…」

< 「すごい汗だく…なんか怖い夢見てた気がするな……」

< 「はぁ……はぁ……?」

< 「おかあさん、セイバーのお姉ちゃんが助けてくれたんだよー」

< 「あ、あれ…? さっきまで緑の触手の化け物が浮いてたような……」



─────── 「「ザワザワ……」」



セイバー「……」

男「成功、だな……」

男「……っ」ぐらっ

男「やべ…魔力持ってかれた…のか……」へたんっ…

セイバー「男さん、とりあえずここを離れます」ガシッ

男「へ…?」


セイバー「掴まっていて下さい」バッ!

男「うぉおっ!」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 21:51:06.05 ID:Hxw+K7CNo<>
【路地裏】


< ガシャッ

セイバー「大丈夫ですか、男さん」

男「……魔法を使いすぎると…意識が混濁するんだ、店員も気をつけろよ…」へたっ

セイバー「魔術回路を酷使したんですね」

男「ごめん分からん…っ」

セイバー「えっ」


< カシュンッ

店員「っと」スタッ


店員「男さん、Fate知らないんですか……」

男「……服が消えた」

男(そういや剣もいつの間にか消えてる、ただのコスプレじゃなかった……のか、どういう仕組みだ…?)

男(この女……何者……)グラァ…

< ドサッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 21:57:36.28 ID:hNQxs/t6o<> セイバー口調おかしいような <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 22:17:26.53 ID:Hxw+K7CNo<> ※ セイバーは本家セイバー本人じゃありません、店員が素の話し方になってるのです




──────────・・・


男「ぅ……ん……」

店員「起きましたか」ひょこっ

男「…っ、ツゥ……頭が…」ズキッ

店員「エクスカリバーに聞きました、魔力切れを起こすとそうなるらしいです」コトッ

店員「紅茶どうぞ」

男「……ありがとう」

< ズズ……


男「……はぁ」


店員「ハーゲンダッツもありますよ、ストロベリーですけど」

男「……いや、いい」

店員「男さんも私と同じくサーヴァントに選ばれた方なんですか?」

男「サーヴァント……?」

店員「はい、闇の怪魔達と戦う『ゾーマ派』という異世界から召喚された英霊達の……」

男「ごめんマジやめてちょっと考えさせて……!」

店員「え、あ、はい」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 22:23:15.43 ID:hNQxs/t6o<> ああ、ですます口調は店員としての演技で、本当は〜だっていう口調なのか
セイバーになりきってるにしては喋り方違うと思った <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 22:45:51.08 ID:w+MZUR4io<> いやですますが素でしょ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 22:52:08.23 ID:Hxw+K7CNo<> ※ >>620そこに加えて『店員』としての仕事柄も彼女の口調に落ち着きを与えておらず、バラバラになりがちですね。〜だ、が彼女の素の口調ではありませんがセイバーの口調とは違う『崩した敬語』は彼女の素となります。
(ちなみにFate/staynight&Zeroでのセイバーというキャラクターの口調は基本は敬語となります。)
気になる方の為に一応減るものでもないので説明しておきました。
Fateシリーズに興味を持たれた方は是非とも原作或いはアニメをお買い上げ下さい。
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 23:08:11.67 ID:Hxw+K7CNo<>
男(……この子に説明させるにしても常時自分の世界に入ってる感じだ、結構気になるポイント多いがこれは…)

男「……エクスカリバー、って?」

セイバー「私の宝具です」パサッ

男「いやヅラ着けなくていいからいいから」

店員「むぅ……ちぇー」パサッ

店員「エクスカリバー、出てきて下さい」


< スゥゥ……

赤い剣…?「大丈夫なの、この人間」


男(うををぉおい喋ってるよこの剣んんんん)真顔

店員「問題ないと思いますよー? 彼、あんなに沢山の人を助けてくれましたし」

赤い剣…?「ふぅん」

赤い剣…?「他の二人は呼ばなくていいわ、私が話すから」

店員「分かりました」


ブラッドソード「初めまして人間、私は『ブラッドソード』」

ブラッドソード「こちら側とは異なる世界から来た、モンスターよ」



男「……」

男「ゾーマに言われて……味方になったモンスターか」

ブラッドソード「グッド、凄いじゃないセイバーこいつ当たりよ」

店員「ふぇ?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 23:10:12.05 ID:hNQxs/t6o<> >セイバー「曖昧な事を、本当に問題ないのだろうな」

>セイバー「……ゲームだと?」

>セイバー「遊んでる場合じゃないんだぞ!」

ここらへんどの媒体のセイバーとも違うなーって思ったからさ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 23:17:50.95 ID:T6PSJAQwO<> まさかドラクエのssでセイバーの指摘が入る日が来るとは <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 23:23:01.34 ID:Hxw+K7CNo<>
──────────・・・




< ガチャッ

男「ただいまー」

店員「お、お邪魔しますー……」


主任「男さん、その方がさっき電話してきた時に話した……例の?」

男「奇跡ってあると俺は本気で思いました」

主任「……目の下にクマが出来てません?」

男「ここに来るまでのタクシーの中で物凄い話をされて……」

主任「はぁ」

店員「あ、これどうぞ私の友人のサークルで作ってるアホ毛モナカです」

主任「え? はいありがとう」

店員「ちなみにこのアホ毛はFate/EXTRAのセイバーをモチーフにしていまして……」

男「ストーップ、マジでやめてその人俺の元上司だからやめて!」


主任「セイバーのアホ毛って別に作品ごとの違いなんてないと思いますけど」

男「主任!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 23:25:35.43 ID:FvTagl3AO<> まあ10年位人気なゲームだからね。
ファンがいても不思議ではない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/20(日) 23:30:30.35 ID:tf52lzHTO<> 赤セイバーはちょっと長いんだよな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 23:36:59.23 ID:Hxw+K7CNo<>
< スゥゥ……


ブラッドソード「こんな短期間で仲間を見つけるとは思わなかったわ、だいぶ希望が見えてきたじゃない」


地獄の鎧「……ブラッドソード、か」

ベホマスライム【ホヨヨ…】キッ


ブラッドソード「大丈夫よそこのスライムさん、私もまた貴方達と同じくゾーマ様にお声をかけられた者なのだから」

地獄の鎧「フム、だが他の二匹は何者だ」

ブラッドソード「分かるの?」

地獄の鎧「『レムオル』ではないな、恐らくはエレメント系のモンスターか……物理的に姿を消そうと気配は漏れているぞ」

ブラッドソード「あら怖い、思ったより血の気が多いのね」

地獄の鎧「……」

ブラッドソード「でも安心して、私達はセイバーが戦う意思を見せない限りは危害は加えないから」

地獄の鎧「ゾーマ様に誓ってか」

ブラッドソード「我等が王に誓って、よ」


男(……男です、この3日で胃がマッハで穴が出来そうです)

主任(男さんの顔色悪いですね……大丈夫かな)

店員(あの鎧完全にランスロットだよぉ……うわぁ、写メ撮ってもらお……)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 23:46:45.76 ID:Hxw+K7CNo<>
ブラッドソード「元々、私達とセイバーは一ヶ月前に出会ったのよ」

ブラッドソード「それもセイバーの実家、北海道でね」

男(……たった一ヶ月?)

ブラッドソード「私達がゾーマに言われたのは一つだけ、彼女に付き従い戦う事」

ブラッドソード「じごくのよろいみたいに漠然とは言われてないわねー」

ブラッドソード「でも、これでやっと今こちら側で起きてる事が分かったわ……元指揮官級のモンスターと合流出来たのは奇跡よ」

地獄の鎧「同感だ、一体どれほど前からどれだけの数がゾーマ様の配下になったかは知らないが高い確率ではあるまい」

ベホマスライム【……】キッ

店員「…?」


主任「ベホマスライムさん、どうかしましたか」

ベホマスライム【……ホヨヨ】フルフル

主任「?」


ブラッドソード「さて、それじゃ互いの知らないことの情報交換と行きましょうか」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/20(日) 23:59:21.27 ID:Hxw+K7CNo<>


地獄の鎧「うむ……分かった事としては、『北海道の指揮官級は全て撃破されている』」

地獄の鎧「そしてそれをやったのはそこの店員という女一人」

店員「です!」

地獄の鎧(……私と同レベル帯、恐るべき成長速度だ……いやそれ以前にこの人間はどれだけ戦えばそこまで到達できるのか)

地獄の鎧「一時的に里帰りしていた店員と会った貴様ら三匹は共に東京都へ戻ってきた」

地獄の鎧「そこから幾つかの指揮官級を撃破、今日たまたま男と遭遇し更に指揮官級二体を撃破……」

地獄の鎧「……そして都内の大型森林公園で『渦』の出現、か」


男「前半の話が凄すぎて気持ち悪い嘘に聴こえる」

主任「普通に嘘なんじゃないですか」

店員「ほ、本当ですよー……」

ブラッドソード「まー北海道の指揮官の最後の一体は私達が彼女と消したから嘘っちゃ嘘ね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/21(月) 00:14:47.69 ID:HIwOAVpvo<>
ブラッドソード「それにしても厄介な話ねー……ここの所、やけに敵がしぶとく感じると思ったら依り代を手に入れてたなんて」

ブラッドソード「おまけにそっちでも人間の味方は少ないし、例の『こちら側に来ている人間達』の影も掴めてない」

主任「それらしき人に助けられてはいますよ」

ブラッドソード「確証がないわね、私達みたいなエレメント系のモンスターが味方になっていたのかもしれない」

地獄の鎧「同感だ、この状況になっても接触がない時点で我々の世界の人間とは考え難い」

主任「なるほど……」

男「ってか、ヤバくないか? 都内にあの黒い渦……つまりこっちへ来るための旅の扉みたいなのが開いてんだろ?」

男「そろそろ来るのか…? もっとヤバい奴等が」


ブラッドソード「分からない、通常はこちら側へ来る瞬間に開くものが何故か数日開いたままなの」

ブラッドソード「警察という機関がその公園を封鎖してる、けど特別何か出来るわけじゃないみたいね」

地獄の鎧「……通常はと言ったな」

ブラッドソード「ええ」

地獄の鎧「私もあの渦に関してはそういった事象しか知らぬ、何かあるのか」


ブラッドソード「仲間の、姿を消してる奴の片方だけど……そいつが私達とこちら側へ来る時に渦が開いたままで2日経った事があるの」

ブラッドソード「元指揮官級でもわからないならそこまでだけど、どう?」


地獄の鎧「そこにいるんだろう、出てきて話したらどうなのだ」



< 「……」



店員「…!」

店員「分からないそうです」

地獄の鎧「ほう」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/21(月) 00:24:10.93 ID:HIwOAVpvo<>
地獄の鎧「余程その姿を見せるのが嫌らしいな」

< 「……」

店員「恥ずかしがりやさんですよきっとー」

ブラッドソード「多分セイバーのせいよ」ボソッ

店員「え?」


男「とりあえず行ってみるか、今夜」

主任「その公園にですか」

男「ああ、このメンツで行けば何が相手でも負けはしないと思うぜ」

ベホマスライム【ホヨヨ】ブンブンッ

地獄の鎧「我等は今夜は駄目だ」

男「なぜ?」

地獄の鎧「主任との訓練で消耗している、魔力を回復させなければ指揮官級との戦いで不利になる」


ブラッドソード「なら明日の夜、またこの家に集合でいいかしら」

店員「あれ、私達だけでも行かないんですか?」

ブラッドソード「セイバーを寝かせないといけないからね」

店員「え、大丈夫ですよそんなー」

ブラッドソード「駄目よ、もう8日も寝てないわアナタ」


男「なっ……8日!?」

主任「それは……確かに寝たほうが良いですね」

店員「えー、せっかく同盟組んだのにー……カッコ悪い」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/21(月) 00:44:11.67 ID:IctsytYko<> 恥ずかしい、セイバーのせい…あっ(察し)
後わざわざ同盟って言ってるところとか細かいな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/21(月) 06:39:12.83 ID:IcwHKfmSo<> 成りきり思い込みで強くなるタイプか
丁度、力の引き出し方と相性良かったんだな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/21(月) 07:58:58.17 ID:vrjOJW5mO<> >>624
おたくって怖い <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/21(月) 08:11:13.96 ID:/ozACJhH0<> 店員は戦闘の天才かなんかかな
久しぶりにぶっ通しで読んじゃったよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/21(月) 22:22:36.33 ID:RgVuxPDFO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 10:28:53.57 ID:kzMwgpIcO<>
< 「それでは男さん! また明日〜!」

< 「夜なんだから大声出したら駄目よセイバー」


< バタンッ


男「……だぁー、なんか疲れた」

主任「そうですね……モナカ美味しかったですが」モグモグ

男「食っとる……」

地獄の鎧「ところで男よ」ギシッ

男「ん?」


地獄の鎧「貴様、何故にその『いべんと』とやらに遊びに行っていたのだ……?」ギシッ


男「……」

地獄の鎧「……」

男「ハハッ」

地獄の鎧【シィィッ!!】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 10:41:40.09 ID:kzMwgpIcO<>
< ギャースッ

< ガッシャーンッ ドゴォッ


主任「それにしても、こんな偶然が連日続くなんて……どれだけの確率なのか」

ベホマスライム【……】

主任「……ずっと黙っていましたね、それも先ほどの店員さんを見ていた」

主任「何かあるんですか?」

ベホマスライム【ホヨ…】フルフル

主任「そうですか、でも何かあれば教えてくださいね」

ベホマスライム【ホヨ…】コクン






ベホマスライム【(……じごくのよろいは気づいてないみたいだったけれど、あの人間から只ならない気配を感じた……)】

ベホマスライム【(恐らくは魔王級、或いはその眷属に類する者から漂う魔力のせい……)】

ベホマスライム【(私とじごくのよろいが二人でかかっても勝てない、そんなモンスターが店員という人間の味方をしている)】

ベホマスライム【(ゾーマ様は、一体何を考えてそんな怪物を……? いいえ、そもそも……)】


ベホマスライム【……】

男「ぐほぉおおおおおっっ!?」ドサァアッ

ベホマスライム【ホヨー】つ ベホマ

男「……ありがと」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 11:38:10.35 ID:JMqXvoTIO<> ━━━━━━━━ 【夢】



……その日はいつも通りの朝。


……私は壁に貼ってある ━━ザザッ━━ を眺めて、少し気持ちを上げてから寒い外に出る。


……私の住む ━━ザザッ━━はとても寒くて、特に近くに町らしい建物すら見えないくらいの田舎だから、少し寂しい。


……けど私は好き、この白い雪が。


……いつかは都会に出てこの雪を見れなくなると思うと、ちょっと残念だけど。


……でも、それはそれ。


……私はこのまま頑張れば来年にはきっと ━━ザザッ━━で ━━ザザッ━━になって……


…………一度、満足が行ったら私はまた別の事に挑戦する。


……だって私は多分、出来ない事なんてないから。


……私はきっとそんな毎日を送れると思う、それできっと私は……






━━━ザザッ━━ ザザァーッ ━━━━━━

━━━━━━━━━━━━ザザザッ ━━━━━━━━







<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 11:52:16.78 ID:JMqXvoTIO<>

男「……」

男「今の……夢…?」むくっ

男(体が妙に重い、夢の中で軽かったからか)

男(変な夢だ、何だって雪景色の似合うJKなんぞの夢を見にゃならんのだ……溜まってんのに)

男(……)

男「たまには一発……」ぬぎっ



主任「起きてますか? 男さん」ガチャッ



男「 」

息子『(・∀・)ノ』



主任「……」

主任「ヒャダr…

男「待ってやめろぉおおおお!!」ダッ

息子『(/\)< キャッ \(^o^)/< キャッ』ブルンッ


主任「いやぁああああ!!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 13:26:04.22 ID:JMqXvoTIO<>
男「……昼間でも戦える場所?」

主任「そんな所があるんですか?」


セイバー「はい、東京都内とその周辺で数少ない、いわば『狩り場』とも呼べる場を見つけています」

セイバー「昨夜の話から察するに昼間は余りそういった活動をしない様ですし、共にどうかと」

男「お供のブラッドソードとかは?」

セイバー「彼等は私の近くに居ますが、今日は手出しをしません」

セイバー「私以外の事情を知る者を見るのは初めてです、この機会に互いの実力を見せ合うのが良いと思いましたので」

主任「なるほど、それはいいと思いますが……店員さんのお仕事は?」




セイバー「セイバーです、それと仕事は今朝辞める連絡をしました」




男「……次々と無職が集まる家」ぼそっ

主任「……何かに取り憑かれてそうですね」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 13:43:19.84 ID:JMqXvoTIO<>
────────── ・・・


男(…………ここは……)

主任「……」

男「おい、封鎖されてるぞ」

セイバー「今となっては誰も近づいてませんよ、問題ありません」

セイバー「警察もどうやら他の事で手が回らないらしく、この『マンション』を昼間訪れる事が無いのを確認済みです」


男(……)

男(主任の住んでいたマンション……じゃねぇか、ここ)

男「主任……」

主任「行きましょう、男さん」ザッ

男「!」


主任「魔物は殺さなきゃ、ですよ」


男「……」コクン

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/24(木) 14:03:08.57 ID:W6zQNvdGO<>
< カツンッ……カツンッ……


セイバー「死者は数十人、約43世帯が皆殺しにされた事でここはずっと電力も止められています……点検に踏み入る事すら危険ですからね」

男「43世帯……っ」

セイバー「だからここでは思う存分に暴れても気にすることはありませんよ、見つかっても全力で逃げれば誰も私達に追いつけません」

男「俺が言うのも何だが不謹慎だぜそれ」

セイバー「大勢の死者が出た場所です、それが当たり前でしょう」

< ピタッ


セイバー「……けど私達が戦わなければもっと大勢の死者が出るのは目に見えています、違いますか?」

主任「ヒャド」ヒュッ


< バキィンッッ


セイバー「……」

男「主任! 今のは……ッ」

セイバー「ナイスショット!」バッ

男「っ!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/12/24(木) 18:52:04.97 ID:R+Kd5DXuO<> 乙

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga sage<>2015/12/24(木) 23:17:21.64 ID:CXOiCR/Uo<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/24(木) 23:33:00.48 ID:z4o9I3shO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/25(金) 07:48:25.68 ID:u+T2pgi5O<> 乙! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 08:59:20.71 ID:C6jqQMhWo<>
< ダダッ!

セイバー「ふ……ッ」

───────── ゴッッ!!


【「ぐぁ……ッ!?」】ゴシャァッ!!


< ポワァ……ンッ


男「!?」

主任「姿が見えませんが、モンスターに囲まれているのは確かですね」スッ

男「主任、見えてたんすか…?」

主任「見えないと言った通り、見えてませんよ……ただ」

主任(少しあの子を黙らせようとしただけです)


< ビュッ!

男「っ!」バッ

< ガギィンッ!! ギチギチッ……


男(シャドー…か? 或いはゆうれいとかその辺りのモンスター!)キィンッ

男「メラッ!」


< ボンッ!!


セイバー「お見事」ヒュッ

───────── ゴッッ!!


【「〜っ!!?」】ゴシャァッ!!

< ポワァ……ンッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 09:28:03.49 ID:C6jqQMhWo<>
男「素手で一撃…っ、滅茶苦茶だな」

セイバー「エクスカリバーが言っていました、私程のレベルならば会心の一撃で倒せると」

男「脱いだらムッキムキなんだろうなそりゃ」

セイバー「ふぇえぁっ!?」ガバッ!!


主任「店員さん! 貴女、このモンスター達をどうやって見破ってるの!」ザッ

セイバー「気配を探ってみて下さい、これも特訓向けだと思いますよ?」

主任「それが出来たなら苦労はしないのよ!」キィィンッ


主任「ヒャダルコ!!」バッ





━━━━━━━ キィンッ!! バキバキバキバキィィッッッ!!! ━━━━━━━





< 【「ォォオオオ……ッ!?」】

< 【「おのれ……まだ此方に顕現したばかりなのに……ッ」】


男(声、主任のヒャダルコで不自然に氷が突き立てられてない位置……冷気の乱れ……)

男(……大体の位置は分かった)チャキッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 10:49:39.52 ID:C6jqQMhWo<>

────────── ポワァ・・・ンッ



男「はぁ……ッ、はぁッ……」チャキッ

主任「凄い数でした、ね……MPが切れる前に全滅させられて良かった」へたんっ

男「だな、まさか主任の住んでいたマンションがこんな恐ろしいモンスターハウスになってるとはな……」

主任「……」

男「後で俺から事情は話す、けどこうなるとここは彼女の言う通り野放しには出来ないのも確かだよ」

主任「そうですね、分かってます」

主任「だけどあの子は何処か楽しんでいる素振りがあって、そこが私には不愉快で……」

男「それに関しても言っておくよ」

主任「……」


男(に、してもだな……ブラッドソード達は手を出して無いんだろ? なのにこれか)


セイバー「ふー……」スタスタ


男(素手で完全な顕現をしているモンスターを一撃で仕留めてるし、俺や主任とは違って確実に姿の見えないモンスターを捉えてる)

男(俺や主任のレベルが15前後だとして、店員のレベルは幾つなんだこれ)

男(じごくのよろいには見えていた筈だ、後で聞いてみるか?)

セイバー「男、どうかしましたか?」

男「いや……それよりもうモンスターは出ないのか?」

セイバー「ええ、そろそろ出ましょうか」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 11:42:58.63 ID:C6jqQMhWo<>

< スタスタ……


セイバー「……」パサッ

店員「何だかその……ごめんなさい」

男「いやいい、知らなかったのもあるだろうし」

男「君も遊び半分であそこに行っているわけじゃないんだろ?」

店員「……遊ぶ?」

男「何処か楽しんでいる素振りが嫌なんだと、主任が言っててさ」


店員「遊んでなんかないです、私」

男「あー、や、それは分かったけど」

店員「罪のない人が傷つくのを私は防げるなら防ぎたい、ただそれだけですよ? その過程で法律を破ることになるとしても、私達にはそれが出来る力があるんです」

男「……っ」

男(なんだなんだ…?)

店員「力があるのに、それをちゃんと使わないのは……力がない人に対する侮辱、冒涜ですよそんなの」

店員「失礼します……その、主任さんにはごめんなさいとだけ伝えてください」

店員「……帰ります、エクスカリバー」


< ダンッ

< シュタタタッ……!


男(……俺にどうしろと)

男(もう一人男性が欲しい話だぜ……これ)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/25(金) 12:00:01.52 ID:gpTlU7VSO<> 店員は何か勇者系ともとれるが、何かそのうち他人を大怪我させそうだな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 12:06:10.73 ID:C6jqQMhWo<>
━━━━━━━━ 【幻想騎士】



< ギシッ……

地獄の鎧(……濃い魔力を感じて男の家に行かずに来たが、無駄足だったか)ギシッ

地獄の鎧(この国、『ニホン』には多くの神を祀る社や祠があるらしいが)

地獄の鎧(これほど小さな社に、周囲の魔力が渦巻いているとはな……さてどうしたものか)

ベホマスライム【ホヨヨ】

地獄の鎧「やはり社を破壊するか、厄介な事になりそうだ」シャキィ…




< タッタッタッ……!




地獄の鎧「……」ピタッ

地獄の鎧(人間の足音……近いな、この社まで階段を登っているのか)

地獄の鎧(……チィ、仕方ない)シャキッ

地獄の鎧「様子を見るぞ、我が右腕よ」

ベホマスライム【ホヨヨー】

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 12:21:09.11 ID:C6jqQMhWo<>
ポニテ「……はぁ…はぁ…」スタスタ……

ポニテ「あー……もう、やだ…っ」


< タッタッタッ……!
< タッタッタッ……!


茶髪「ポニテぇ! アンタ何逃げてんだ、ざけんじゃねえぞテメェ!! 金貸せってすら言ってねぇぞコラァッ!!」

金髪「あたしらが今度の試合に向けて訓練してやるって言ってんだろ、ちょっとこっち来な!」コキッコキッ


ポニテ「せ、先輩……っ…私、そんなのいらないです…っ」

金髪「あぁ? 今日はたまたま あたしらに勝ったからって試合に出させて貰ってさぁ!」

ポニテ「それは前から先生が出してくれるって……」

金髪「それが気に入らねぇんだよオラァッ!!」ブンッ


< バチィンッ!

ポニテ「ぎぃ…っ!?」ドサァッ


茶髪「おい、顔に竹刀は不味いだろ馬鹿、金髪馬鹿」

金髪「っせぇ! こいつ、昼間の稽古の時に私から二本も取りやがって!」

茶髪(え、 こいつそんなんでキレてんの?)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 12:33:37.76 ID:C6jqQMhWo<>
< 「このッ! このッッ!!」

< バシッ! バチィッ!

< 「きゃぁ!! わぁっ……!! 痛ッ……やめっ…ぎゃ……」

< 「お、おい金髪……あんま怪我させたらアタシ達がやばいって…!」



地獄の鎧「……」

ベホマスライム【……】

地獄の鎧(こういう姿を見るのはこれが初めてではないな……全く、何と醜い)ギシッ…

ベホマスライム【ホヨヨ?】

地獄の鎧「よく分からぬが、あの殴られている娘にそこまでの非は無いのだろう」

地獄の鎧「適当に脅かして散らせば良いのだ」チャキッ



────────── ズンッ!!

地獄の鎧「ッ!!」ビクッ

ベホマスライム【ホヨォッ!?】ビクッ



地獄の鎧「この気配……は……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 13:06:02.94 ID:C6jqQMhWo<>

────────── ズズズズ・・・ッッ



金髪「……?」ピタッ

茶髪「やっと気がすんだか……とりあえずこの事他言されないようにポニテの服脱がして写メを……」

金髪「ねぇ、あれなんだよ」

茶髪「は?」



────── ズズズズズズズズ・・・ッッ



茶髪「神社の上に……黒い穴が……」

金髪「もしかしてテレビでやってるやつじゃねえの!? ほら、イタリアとかアフリカで出てきた『黒い玉』!」

金髪「すっげー! 写メろうぜ写メ!!」


ポニテ「ぅ……あ……ッ…」ヨロッ…

ポニテ(ぁ…あれ…? 私の人差し指…動かない……)




──── ズズズズズズズズズズズズ・・・・・


< ズルンッ




    ドゴォォッ!!



金髪「……ぇ……」

茶髪「ぅ……」

ポニテ「…っ」ヨロヨロ……

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 13:17:15.79 ID:C6jqQMhWo<>

トロル【ブォォオオオオッッ!!!】




金髪「きゃぁああああ!!!」

茶髪「ぎゃぁああああ!!!」


< ダダッ!!


ポニテ「ぇ……あ…? 先輩たち……?」

< ヨロッ……

ポニテ「今の…何…?」


トロル【……】ズシンッ!!


ポニテ「……」

ポニテ(え?)


ポニテ(なに、この人…? 人、だよね……?)

ポニテ(私頭叩かれておかしくなっちゃったのかな……)


トロル【ウマソォナ…ニンゲン……ミィィツケタァアアア】ズシンッズシンッ


ポニテ「あの、あれ……なに、なにっ……?」ヨロッ…
                ダダダダッ……!!


      チャキンッッ ダンッ!!



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 13:29:20.70 ID:C6jqQMhWo<>
地獄の鎧【シー……ッ!!】ビュバァッ!

トロル【ッ!?】


< ザシュンッッ

トロル【グォオオオッ!!? キ、キサマァ!!】

    ギュォッ……!

地獄の鎧【シィッ……ッ!!】ガギィッ……

地獄の鎧(くっ、止められん……ッ)ミシミシッ……ブワッ!!



< ギュンッ! ズドォッッ! ゴガァンッ!! ガシャァッ……ゴロゴロッ……!!



ポニテ「え? え?」

ポニテ「あ、足が……」カタカタカタ……

ポニテ(怖い怖い怖い……っ、誰か、誰か助けて……っ)カタカタカタ……


トロル【オデノ ジャマシヤガッテェェエ!! ブッコロシテヤルゥ!!】ズシンッズシンッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/25(金) 13:48:03.39 ID:E7hgKQcAO<> 痛恨の一撃が決まらなければ、ベホマスライムいるからギリ勝てそうだな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 14:21:48.92 ID:C6jqQMhWo<>
< ガラガラァッ……

地獄の鎧「ヌゥ、『トロル』か……いよいよ八魔将の配下が来るとはな……ッ」ギシッ…

ベホマスライム【ホヨヨー!】ビューン!

地獄の鎧「盾ごと左腕をやられた、ベホマでも感覚が戻るのに時間が掛かる」チャキッ

地獄の鎧「……あの人間の娘を逃がせ、私がトロルを止める」

ベホマスライム【ホヨヨ…?】

地獄の鎧「心配するな、私とてあの程度のモンスターに遅れを取るつもりはない」

ベホマスライム【……】コクンッ


< ズシンッ!!


地獄の鎧【……シー…ッ】

地獄の鎧(……)

地獄の鎧(あの一族を思い出す……私の父を、先祖を倒したあの人間を……)

地獄の鎧(ロトの勇者、貴様ならばこういう戦いにも勝利するのだろうな)

地獄の鎧(無論、私もだが)ギシッ…!


トロル【ブォオオッ!!】ブォッ!

地獄の鎧【シー……】ヒュッ





─────────【『ライトニングソード』】 ─────────




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 14:31:42.19 ID:C6jqQMhWo<>

    カッ!!



トロル【  】

< バチバチッ…!!

ズンッッ!!!

トロル【……ッッ!!?】グラッ…

トロル【ヌァニィィ……ッ!?】ブシュァッ……バチバチッ…

トロル【(オ、オデノ カラダ ガ シビレテッッ!!)】ビクビクッ…!!



地獄の鎧【シィィッ……!!】ガシャッ!!

< ヒュンッ……ザクッ

地獄の鎧(駄目押しだ、手負いだと思ってノコノコと近付いてきた貴様のミスだったな!)バリバリィッ…!!



──────── ギィンッ……バリバリバリィィッ!!



トロル【ブヌゥォォオオオオァァッッ!!!】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 14:36:46.19 ID:C6jqQMhWo<>
< ズゥンッッ・・・!


地獄の鎧「……地を走る我が雷、勇者の雷撃には程遠いがそれに近い物なり」シャキンッ

地獄の鎧「貴様が弱くて助かったぞ、トロルよ」


ベホマスライム【ホヨヨー!】ビューン!


地獄の鎧「我が右腕、よく戻った」

ベホマスライム【ホヨヨ…!】ベホマー

< ポォゥ……

地獄の鎧「ウム、感謝する」

地獄の鎧「あの人間の娘はもう逃がしたか」

ベホマスライム【ホヨヨ】フルフル

地獄の鎧「なに?」


< ガサガサッ……


ポニテ「……ぁ、あの…」ガサッ


地獄の鎧「……」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 14:52:45.64 ID:C6jqQMhWo<>
ポニテ「おじさん……っ、あの、ありがとうございました」

ポニテ「助けてくれて……」ポロポロ…

トロル【……〜〜ッッ】ユラァッ



地獄の鎧「!!」

ベホマスライム【ホヨォッ!?】



< ガシィッ……!

ポニテ「わっ…きゃぁあっ!!」

トロル【カ、カラダガタリナイ……オデノカラダ……ニク、タリナイッッ】ブンッ

ポニテ「ひっ……!?」


トロル【イタダキ……マァス……】ガパァッ……!


地獄の鎧(しまった……ッ……)

ベホマスライム【ホヨヨー!】キィンッ

地獄の鎧(ベホマで娘の受ける致命的ダメージを回復させる……! ならば私は……)


地獄の鎧「ッッ……」

地獄の鎧【ッ! シィッ…!!】バチバチッ……


【【剣を振っても間に合う事は無い】】

【【ならば、飛ばせばいい】】

【【あの日、私が見た勇者はその力で父を倒していたではないか】】


【【その呪文の名を私は理解している筈だ】】


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 15:02:28.88 ID:C6jqQMhWo<>

トロル【ァアーン……】


──────── カッッ!! ドゴォォッ!!

トロル【〜ッッ!!!?? ッッグォアァッ!!?】バチバチッバリバリィッ!!


ポニテ「きゃぁっ……!!」ブワッ


       ガシッ…!
< ドサァッ!


地獄の鎧「……間一髪か」ギシッ…

ポニテ「ぁ……っ」


トロル【オ、オノレェェエ……ウラギリモノッッ、ウラギリモノォオッ!!】ズゥンッッ

トロル【セッ……カク、ボストロールサマニ、イタダイタ…チカラガァァア…………】

< シュオォオ……

トロル【デ、デモコレナラ……ッ……】





< ポワァ・・・ンッ




地獄の鎧「……」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 16:28:25.60 ID:C6jqQMhWo<>

ベホマスライム【……】ポカーン…


地獄の鎧「……どうした、我が右腕よ」ギシッ…

ベホマスライム【…! ホヨヨ…】フルフル

地獄の鎧「フ、そうか」

< ヒック…ヒック……

地獄の鎧「さて、どうしたものかな」


ポニテ「ヒック……ぅ、ヒック…こわかったよぉ……おじさん……っ」ポロポロ…


地獄の鎧「……」

< ギュッ…

地獄の鎧「あまり泣くな、どうしたら良いのか分からなくなる」

地獄の鎧「剣士の卵か何かなのだろう、貴様は」

地獄の鎧「それにな」ギシッ…



地獄の鎧「……私の体は硬く、冷たいだろうに」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 16:37:57.30 ID:C6jqQMhWo<>

【夜中、男宅】



男「じ、じごくのよろいが怪我でしばらく来れない!!?」



ベホマスライム【ホヨヨー】身ぶり手振り

主任「付近の神社で強力なモンスターと戦い、その際のダメージが当分回復しないようです」

男「ベホマがあんだろ?」

ベホマスライム【ホヨヨ】フルフル

主任「……じごくのよろいは『アーマー系』という特殊な性質があります、見た目のダメージ以外に何かあるんじゃ」

ベホマスライム【ホヨヨ!】コクンッ

ベホマスライム【ホヨヨ、ホヨヨー】身ぶり手振り

主任「……なるほど、それのせいですか」


男「さっぱりわかんねーっす主任」

主任「魔力を枯渇寸前まで使ってしまったらしいです、通常ではそんな事がないので回復の仕方がよくわからないとか……」

男「お、おいおいマジかよそれ……大丈夫なのかアイツ」

ベホマスライム【ホヨヨ】身ぶり手振り

主任「協力者に頼んでいるから、少なくとも明日には簡単な戦闘が出来る様になるらしいです」

男「協力者? 俺達みたいな? もう見つかったのかよ他に!」


ベホマスライム【ホヨヨ…】フルフル

主任「?」

男「なんだ、違うのか…?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 16:54:06.20 ID:C6jqQMhWo<>
……どの位、前の事だろうか。


たった三週間程度前、俺は更なる非日常が訪れる事を予感して自室で崩れ落ちた。


泣いたのか、絶望したのか、もう覚えていない。


少なくとも希望なんてものはずっと抱いていない。


雨に打たれたままの冷えた体で、俺はずっと先の事も過去の事も考えられずにいるのだ。


店員という女性、そしてじごくのよろいとベホマスライムというモンスター達。


彼等に出会い、話をしても俺は何も考えられないでいる。


疲れた。


疲れたのだ、俺はきっと。


だから脳は浅い眠りの中で俺の記憶を整理しようとして夢を見せているに違いない。


でなければ、これは何の意味があるのだろう。




「嫌っ……やめて、やめて下さい…やぁ……ッ」

「動くんじゃねぇ!!」

ガッ!

「……〜〜っ」




何もない雪景色の中で、制服らしき物を着た少女がもがいている。


人の腰まで積もり、掻き分けられて壁の様になっている雪の中に押さえ付けられて。


顔は見えない、悲痛な声を漏らして自身に覆い被さる男に何度も手足をぶつけている。


しかし男は止まらない。


少女は次第に繰り返される暴力と、雪の冷たさに弱々しくなっていった。


何だこれは。


俺の夢にしては悪趣味だった。


だから、これは疲れているに違いない。


俺は……生きる事に疲れているんだ。


そうだ、あの時俺は死んだ、死んだ、俺は死んだ。


四年前……皆と死んだんだ。



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 17:17:13.41 ID:C6jqQMhWo<>
「目を、目を覚まして下さい……!」


男(……)


「戦士様、目を覚まして……っ」

< ユサユサッ

「お願いっ……消えちゃ駄目……」


男「……んぅ…っ、だれ……だよ」むくっ…

男「…………」ボー…

男(寝ぼけてた、か……)

男(そろそろ起きるかね、今日はメラミの練習でもしてみるか)スッ


男(……)ぶるっ


男(何だ? 悪寒じゃない……これは……)


< ドタタタッ!

< ガチャッ!

主任「男さん! 起きてますか!?」

男「どうした?」

主任「来て! テレビで今……大変な事に……っ!」

男「……!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 17:38:44.28 ID:C6jqQMhWo<>
< 『こちら中継の○○です! 現在アメリカ、ニューヨークのエンパイアステートビルが見えるブロードウェイ周辺に来ています!』

< 『見えますか!! ビルの頂上に黒い球体らしき物が見えます!!』

< 『周囲には武装したアメリカ兵の姿などもあり、ただならぬ雰囲気が出ております!』


男「……これ」

主任「他にも! ネットの書き込みで北朝鮮の上空に二つの、アメリカで確認されている黒い球体が目撃されているんです!」

男「一気に出てきたな……ヤバいんじゃないのかこれ」

主任「他にも有りそうですけど、ネットやテレビで見る限りでは今はこれしか分かりません!」

主任「どうしよう……このまま見てるだけって訳にも……」

男「様子を見るしかないと思うぜ、後はじごくのよろいに聞こう」

主任「でも……!」

男「場合によっては俺達じゃ何も出来ないかもしれない、冷静に行こう」

男(……本当は俺の方が冷静になれねーんだけどね!)

男(いやいや、待てよ待てよこれ……! じごくのよろいが言っていた事やあの時の死神が言っていた事から考えるに……相当ヤバいのが来るんじゃないのか)

男(まるで強くなれてない俺が、主任が、戦えるわけがない!)


< 『……続いて今情報が入りました、都内の封鎖されていた大型森林公園で動きがあった模様です』


男「!」

主任「男さん……これ……」

男「……」

男「何かあるとしたら、日本もいよいよヤバいかもね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 18:10:41.56 ID:C6jqQMhWo<>

男(……どうする)

男(とにかく今は店員を呼ぼう、何かあっても彼女がいればそうそう死にはしない)ピッ

男(それから、じごくのよろい……弱っているなら呼びに行くか)

男(せっかくの『仲間』なんだ、ドラクエ的に見捨てるのは抵抗がある)

男(後は……そうだ)


男(妹、家族に連絡を……)

< キィンッ

男(……え? いや、俺の家族は四年前に事故で……何言ってんだろうな俺、くそっ)ブンブンッ


主任「男さん」

男「店員に来てもらう様に言ってくれ、俺はじごくのよろいを連れてくる」ギシッ…

主任「剣を剥き出しで持っていたら捕まりますよ…?」

男「捕まる前に逃げる、それにギターケースに入れていたら何かあった時に動作が遅れちまう」

男「何かあったら連絡を! 行ってくる!」

主任「待って……」

< ガシッ

男「…?」


主任「……早く戻ってきて……」


男「……」

男「直ぐ戻る」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 18:16:48.89 ID:C6jqQMhWo<>

────────── ダンッ!! シュタタタタッ・・・!


男(街に人の気配がない……皆家に籠ってるのか)ダダダッ

男(それに……あちこちからモンスターの気配がする、今日は空が曇っているからか……!?)ダダダッ


< ヴオゥンッ

さまよう鎧【シー……】チャキッ


男「邪魔だァ!!」ダンッ!!

男( ─────『兜割り』─────!!)グルンッ


< ガギィンッッ

さまよう鎧【ー!?】ガシャァッ

< ポワァ……ンッ



男(……急がねぇと、なんか嫌な予感ばっかしやがる)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/12/25(金) 18:53:21.52 ID:qfPkvw/ZO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 18:55:37.16 ID:C6jqQMhWo<>
【神社】


地獄の鎧「……!」シャキンッ

ベホマスライム【ホヨヨ!!】バッ


男「まてまて、俺だ!」スタッ


地獄の鎧「男か、何が起きているのだ」

男「他の国で一斉に黒い渦が出現した、それに何かおかしい! モンスターの出現頻度が増えてる!」

地獄の鎧「『衣の残梓』が出現する要因は分からん、だが自然発生でないのも確かな様だな」

男「ああ、とにかく来てくれ! 店員も呼んである!」

地獄の鎧「……私は行けん」

男「何でだよ!」

地獄の鎧「あと一時間しないうちに、ここへ協力者が私の体を回復させる効果のある物質を持ってくるのだ」

男「じゃあそいつも……って、連絡先わかんねぇのか」

地獄の鎧「そういうことだ、私が迂闊だったとはいえこの危険な時に放っておく訳にもいかんのだ」

地獄の鎧「それにここはこの地区では最も魔力が渦巻く霊域とも呼べる、私の回復を早めるならばこうするしかあるまい」

ベホマスライム【ホヨヨー】


男(……となるとじごくのよろいにはベホマスライムが必要か、コイツらの連携は俺がよく知ってる…強さも)

男「分かった、その協力者と合流したら俺の家に来てくれッ」


地獄の鎧「了解した」

ベホマスライム【ホヨヨー♪】


男(仕方ない、戻るか……!)バッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/25(金) 20:58:03.55 ID:C6jqQMhWo<>

────────── ・・・



機動隊員A「三佐、本部から報告です!」

三佐「駄目だったんだろ?」

機動隊員A「……はい、まだ何も起きていない以上は付近の住民を避難させるしか出来ません」

三佐「チッ、陸上自衛隊をここに配置して欲しかったんだがな」

三佐「場合によっちゃ、俺等の装備じゃ勝てねぇのが来るかも知れないぜ?」

機動隊員A「……そうなったらどうなるんでしょう、俺達」

三佐「運がよけりゃゲームみてーに半殺しで金も奪われて教会か総理大臣のとこ、現実的に見ればまぁ殺されるわな」

機動隊員A「総理、びびりますねそれ」

三佐「むしろ俺がびびるわ」


三佐「で、例のあれは?」

機動隊員A「設置完了、前代未聞の量ですよ……バレたら間違いなく刑務所ですこれ」

三佐「何か起きたらその瞬間に吹き飛ばす、責任は俺が取る」

機動隊員A「その時は教えてくださいよ、スクルトかけますんで」

三佐「いや、常に隊にかけておけ」

機動隊員A「えっ?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/26(土) 07:42:18.38 ID:S9xtus70O<>
< カシャッ…

三佐「……街の其処らからモンスターの『あれ』を感じる、近頃増えてきた高位のモンスターが襲ってくるかもしれねぇな」

三佐「スクルト、スカラを使える隊員を掻き集めて全員にかけろ、臨戦態勢に移れ」

機動隊員A「はっ!」ザッ


三佐(……あの黒い渦、見てるとどれだけの武器を持ってようと不安になってくる)

三佐(あれはただのモンスターが出てくる『穴』なんかじゃない、もっと人類が見ちゃいけない様な禁忌の代物だ)

三佐(世界がこのまま破滅するんだとして、その原因はきっとアイツだ)

三佐(そんなことを確信できる、あの渦は……)





< ポツッ……

< ポツッ……ポツッ……





三佐(雨か?)

三佐(今日は曇るだけだったと思ったが……)

三佐「……」

三佐「……聴こえるか狙撃班」スッ

< ガガッ『どうしました三佐殿』

三佐「あの黒い渦を撃て」

< 『……は?』

三佐「許可する、今すぐ撃て」

< 『ちょ、しかし今は……』


三佐「撃て」


< 『……了解』ガガッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/26(土) 08:58:49.37 ID:A/D/lnNLo<> 黒い球体「あーたーら、しーいあーさがきた」

黒い球体「てめぇ達は今からこの方をやっつけに行って下ちい」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/26(土) 19:02:44.74 ID:S9xtus70O<>

────────── ッ・・・!


< チュィンッッ


三佐(……ッ!!)バッ

三佐(弾かれた…!! 野郎、ずっとあの中から見ていやがったな……ッ)

三佐「総員戦闘開始ッ、黒い渦に攻撃せよ!!」

< ガガッ『『了解!!』』


三佐「くっ……!」ガシャッ

──────── パラララララッッ!!!





< ギギギギィンッッ ガキィンッ!! チュィンッッ

< バッ!!


地獄の騎士【カタカタカタカタッッ】ジャキキィッ


< バッ!!

< バッ!!


ラゴンヌ【グルルルッ……!!】ズシッ…

トロル【タァダイマァァアアア!!】ズシンッ

トロルB【ブォォォオオオオッッ!!】ズシンッ




三佐(『じごくのきし』か『ソードイド』か……それに続いて、『ラゴンヌ』と『トロル』……!!)パララララッッ

三佐(まだ出てきてやがるぞ……!?)ガシャッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/26(土) 22:30:18.74 ID:rx8L8qrSO<> (アカン) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/27(日) 11:35:42.34 ID:Vb3SwfwCO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/28(月) 05:22:42.18 ID:4r9a9F6no<>
< ガガッ『公園東、B班です! 本部から支援不可の連絡が……』

三佐「!?」

三佐(ここ以外にも同じ事が起きているのか……? 何にせよヤバいって事か)

三佐「こちら三佐、公園中央に近い班はスクルトをかけ合いながら退避せよ!」

三佐「黒い球体周辺に設置したC4爆薬を起爆する!!」

< 『『了解』』ガガッ


キメラ【ギャァァアッ!!】バサバサァッ


三佐「チィッ」パララララッッ!!

< ポワァ……ンッ


地獄の騎士【カタカタカタカタッッ】ビュバッ!


    キィンッ!
三佐「『ピオリム』……ッ」ヒュッ

< ガゥンッ! ガゥンッ!
          ガィンッ!! ヂュィンッ!!

地獄の騎士【「馬鹿め、銃なんて分かりやすいモンに当たるかよォッ!」】ジャキキィッ

三佐(至近距離で45口径を弾くか……っ、今までとは別格だぞコイツら!!)ガシャコンッ!

地獄の騎士【「死ね!!」】シャキンッ



    ズドンッッ……!!

地獄の騎士【 】ゴキャァッ……

< ドサァッ……ポワァ……ンッ



< ガガッ『アンチマテリアル、効いてます……狙撃に弱いという情報は確かな様です』

三佐「助かった狙撃班、このまま頼む! 他の班も恐らく苦戦してる筈だ」

三佐(今のうちに……起爆する、退避が済んでない班もいるかもしれないがこのままでは街に流れるかもしれねぇ)カチッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/28(月) 06:00:56.63 ID:4r9a9F6no<>



       【『マヒャド』】





────────── ドォウッッ!!!
       ギィィンッ…!! バキバキバキパキキキィィインッッ!!! ───────





三佐「…………な……」

< ガガッ『ぅ、うわぁああああっ!!?』

< ガガッ『助けて隊長!! 隊長ぉお!!』

< ガガッ『ひぎぃぃいいいっ!!』

< ガガッ『こ、氷が……ッ! 氷が体を…………』


三佐(爆薬が起爆したのと同時に……何が起きた……)

三佐(爆発を覆うように巨大な氷山がまるごと落ちてきた……そんな風に見えた……)ガクッ

三佐「……全員、動けるか…?」ガガッ

< ガガッ『こちらA班! 三佐殿、こちらへ来てください! 貴方の居る位置は敵の出現域に近すぎる!』パララッ!! パララララッッ

< ガガッ『こちらB班……仲間が三名やられました』

< ガガッ『こちらC班、一名負傷! 後退しながら狙撃班と協力して敵を撃退しています……!』タッタッタッ…


三佐「全員、この地区から撤退……爆薬は不発、幾つかの班は恐らくあの氷山に潰されている」

三佐「周囲のモンスターも多少は巻き込まれている、逃げるならば今だ……」

< ガガッ『隊長…?』

三佐「無意味に死ぬ必要はない……撤退だ」



三佐(……クソッ!!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2015/12/28(月) 06:14:38.41 ID:4r9a9F6no<> ────────── ・・・


男「主任! 今戻った!」ガチャッ


セイバー「男、行きましょう」

男「店員……!」

主任「お帰りなさい……でも男さん、このまま様子を見ているわけにいかなくなりました」

男「なんだ、どうしたんだ?」

セイバー「例の公園で怪魔達が一斉に現れました、待機していた機動隊も撤退した事から恐らく太刀打ち出来なかったのでしょう」

男「……モンスターは強いのか?」

セイバー「現時点では男や主任でも苦戦は免れません、しかしこのまま放っておく事はもっと出来ない」

主任「行きましょう、男さん」

男「……」


男「先頭は頼んだぜセイバー」


セイバー「ええ」

主任「頼りにはしていますから、お願いしますね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/29(火) 01:20:28.82 ID:YCgoeG06O<> 激烈乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2015/12/29(火) 02:05:27.38 ID:eidosOcSO<>
荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450628050/


>>1を守りたい信者君が取った行動
障害者は構って欲しいそうです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451265659/ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2015/12/29(火) 07:43:47.06 ID:gTxPW636O<> 乙
熱い展開好き <> 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします<>sage<>2016/01/08(金) 08:49:15.91 ID:hD4wMziAO<> まだかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/01/22(金) 19:36:10.63 ID:S0NpJ8mbO<> マダー? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/01/28(木) 13:16:50.20 ID:W5gMUDNH0<> 保守 <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2016/02/01(月) 15:43:19.35 ID:Msg+xyzno<> あけましておめでとうございます
相も変わらぬ遅筆でありますが、今年中に完結させる事を目標とさせて頂きます
>>1ですが、今週末辺りに再開します

最近はFGOでヒロインXを呼符一枚で手に入れて無課金なりに漸く星5がお迎え出来て嬉しさの余りにブレイクダンスを踊っていました <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/01(月) 15:45:26.33 ID:S0wwO2XFo<> 白アサシン→ああ、またけーかちゃんか……→変化エフェクト→金色アサシン→
!?→ジャックちゃんだと思った?ヒロインXでした!

アレはビビるね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/01(月) 15:46:28.61 ID:MlP0nQmcO<> >>691
期待してる
おめでとう
自分も無課金で沖田無双してるよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/01(月) 19:06:39.46 ID:JjiDcKnqo<> C←最近支援って意味だと知ったよ…

という訳で置いておくわ つC <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2016/02/08(月) 12:03:39.55 ID:LRqJVUaTO<> 申し訳ありません……聖処女様が降臨されたので少し延期します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/08(月) 12:40:06.40 ID:fxJweRcRo<> 裏山
取り敢えず何とコラボするか楽しみだわ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/08(月) 16:40:35.14 ID:8jM1xky40<> おのれジャンヌゥ…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2016/02/08(月) 18:54:12.05 ID:72jRI2IYO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 20:51:38.35 ID:bcgHFL1Ko<>


──────── ゴッッッ!!!


……何度も打ち鳴らされる轟音に耳が慣れてきた頃、俺より少し前を走っていた主任に追いついた。

主任と俺はセイバー……つまり店員を先頭にして家を飛び出したものの、セイバーとは少し距離が出来ていた。

追い付けないのだ。

主任のピオリムで加速しているにも関わらず俺と主任よりも早く走り……その上、先程から視界に入ったモンスターを全て一撃で倒している。

まさに無双、もうあいつ一人で良いんじゃないかな? と言いたくなる程に。

ただ……


男「とは言え……なんか、焦ってないかあの子」

主任「やっぱりそう見えますか」タンッ

男「ああ、上手く言えないけど……こう」


前日の彼女を見ていた俺は、荒々しく走りながらモンスター達を片手間に粉砕する姿に違和感があった。

表情は分からない、俺も店員も相当速い速度を出して走っているから見えないのだ。


しかも追い付けない。



男(……上手く言えないけど、なんか……俺みたいだ)



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 20:52:23.47 ID:bcgHFL1Ko<>
セイバー「男、主任、二人ともついて来れてますか?」

男「何とかなッ……少しは振り向いて聞いたらどうだ!」

主任「本当にね……!」


降り落ちる雨に濡れながら、俺達は森林公園に向かう。

屋根を、建物を、途中で現れるモンスターを退けながら飛び越えて行く。

目的の地区までそれほど時間はかからない、実際には交通機関を駆使しても一時間半はかかった筈だが。


そうして、俺達は異変に気づいた。


    ……ォォン…ッ

男「!」

主任「男さん、今の!」

男「『銃声』……撤退した機動隊なのかもしかして」ズザァァッ

男「セイバー!」


咄嗟に足を止めると、俺は前方を走っているセイバーを呼び止める。

現状、もしも機動隊がまだ近くにいるなら多少のリスクは覚悟して公園の事を聞いておかなければならない。

しかし。





……俺の声に応じたセイバーが戻ってくる事は無かった。





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 20:52:52.54 ID:bcgHFL1Ko<>
刹那に、俺は半ばその前兆の様な物を見ていた。

視界の端で何かに気付いた主任が取り乱した様子で俺の呼び掛けに重ねて、声を挙げようとしていた。

その姿に俺も何らかの反応をしようとした。

だが、俺の声にセイバーが応じなかったのと同じだ。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そ れ ら 全 て を 塗 り 潰 し て 、白銀の閃光が降り注いだのだから。




────────── ッッ!!!




誰かが叫んだ。

それは悲鳴かもしれないし、俺が出した主任と店員……セイバーを呼ぶ声だったかもしれない。

或いは断末魔となる全身から絞り出された俺の、死への恐怖そのものが吐き出されたのかもしれない。

どれにしても、叫んだ事は分かっても聴こえない。

強い耳鳴りが頭を揺さぶる中、俺は眼前に誰かが居ることに漸く意識が行き着いた。


男「……ッ…………」

店員「……?」


チカチカと目の中で閃光の残滓が弾け、俺は店員が口に出した言葉を聞きそびれてしまった。

しかしニュアンスは分かる。

『怪我はないか』と彼女は訊ねたのだ。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 21:24:20.66 ID:bcgHFL1Ko<>
男「……セイバー…っ!」

店員「良かった、二人とも無事みたいですね」


そう言った彼女は静かに赤い両手剣を、視線と共に一点に向けた。

その先に視線を巡らせるより先に、近くから聞き慣れた声が微かに聞こえた。

見れば俺の傍に同じく何が起きたのか把握出来ずにいる主任が座り込んでいる。


男(……今の一瞬で何が起きたんだ)

主任「…………」

主任「ヒャド系の、呪文……」

男「え?」

主任「周りを見て……!」


驚愕する主任に言われ、俺は周囲の惨状に気付く。

電柱か何かだと思っていた白い柱が、何本も俺達三人を囲む様に突き立っていたのだ。

それは巨大な氷の杭。

一本一本に籠められた破壊力と、それが撃ち出された速度は全く俺が認識出来なかった事から想像はつく。

かつてない強敵、しかし俺にはそのヒャド系の呪文を撃った者が誰なのか分かっていた。

主任の話を聞いてから幾度となくその存在はチラついていた。

ただ、『向こうは此方に興味を持っていなかった』だけで一度も遭遇……或いは接触が無かったに過ぎない。


男「……まさか……」


主任「『エビルマージ』!!」


八魔将の一人、エビルマージ。

緑衣の魔導師がその姿を現していた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 21:24:49.31 ID:bcgHFL1Ko<>

店員の向けていた視線の先。

濃密な異物感……或いは、それが気配という物だろうか。

日常的に見える住宅街の向こう、繁華街に通じている大通り沿いにある一本のビル上に奴は居た。

距離にして約500m。


主任の言葉通り、そこには緑衣の人型が立っていた。

ただの人形やモンスターではないと確信出来る程の存在感。


男(間違いない、アイツが……!)


主任の住んでいたマンションを襲い、各地域でその存在を何度も見せていた。

まさに黒幕、あの怪物こそが主任にとっての仇敵に他ならない。


エビルマージの動きが無い事を確認して、俺はギターケースから鋼の剣を取り出した。


男「主任、セイバー、相手は八魔将の一人だ」

主任「……」コクンッ

男「エビルマージは三人でやれば勝てない相手じゃない筈だ、行くぞ……!」


店員「お二人は先に行ってください」


男「……!?」


真っ直ぐに緑衣の姿を捉えたままで告げる店員の背中を、俺は背後から見た。

声音だけではない。

キャラクターになりきるのとは別に、彼女は全身で俺と主任がいる事に落ち着きを取り戻せずにいたのだ。


男(そういう事か)


つまり、彼女は今日これだけの事態になってから余裕が無かったのは俺達の存在があったから。

『守らなければいけない』という概念は、俺よりも年下で日本人である以上欠けている、実戦における多大な緊張を与えるに違いない。

1ヶ月前に俺が負傷した主任を守るために、死神と一騎討ちした際にそれは痛感した。

一人で戦っていた時間が長ければ長いほど、誰かと共に戦う事が不安に思えてしまう。


そして今。

店員は感じ取っているのだ、今までとは別格の相手を前にして俺達の存在が足枷になりかねない事を。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 21:28:38.96 ID:bcgHFL1Ko<>
理解できてしまう。

力量としては俺よりも遥かに店員の方が格上、だけど彼女が感じている焦りは理解できた。

なら。

なら俺はどうすればいいのか。

ここで彼女を置いて行って良いのか。


男「…………」

店員「私は大丈夫です、それに」


どうすべきか迷う俺に、初めて店員が僅かに緊張を解いて振り返る。

その表情は笑っていた。


店員「別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」


男「……おう」

主任「男さん?」

男「行こう主任、森林公園で何が起きてるのか確認してから戻ってくればいい」ザッ

主任「でも、相手はあのエビルマージですよ……!」

男「セイバーの……店員の強さはもしかしたらアイツよりも強いかもしれない、だったら俺達は居ても邪魔なだけだ」


男「それに……多分、大丈夫だよ」


俺は逡巡する主任の手を引き起こすと、その場から直ぐに立ち去った。

一瞬、店員の表情を見ようと振り返ったがその笑顔に変わりはなかった。


さっきの台詞はFateという作品を知らなくても分かる。


あれはきっと、彼女なりの絶対に勝てる時に言う台詞に違いないと悟ったからだ。

だから信じた。

少なくとも彼女なら死ぬまで戦う様な事はしない。


男(どうせなら本当に倒してくれよ、店員……!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/20(土) 21:31:49.00 ID:bcgHFL1Ko<>

━━━━━━━━ 【八魔将エビルマージ】



エビルマージ「…………ほぉ」



緑衣の魔導師、八魔将エビルマージは静かに感嘆の声を漏らした。


数秒前、エビルマージの視界に入った人影に撃った『ヒャダルコ』。

その精度は同じ呪文を使える主任や各モンスターとは比較にならない程に正確であり、破壊力もまた魔力の上位操作によって段違いな物だった。

そう、本来ならば如何に優れた身体能力を有していようと『世界の異変の修正を受けていない人間』だろうと、レベルが低い時点で必殺の一撃だったのだ。

しかしエビルマージの呪文は誰一人として仕留める事はなかった。

外したのではない。

確かに無数の氷の杭は三人を射抜く軌道だった。

防がれたのとも違った。


エビルマージは異世界に来て初めて目の当たりにする、一定のレベルを遥かに越えた存在へ意識を傾けた。


金髪のカツラを被っていた、女騎士らしき人物へ。



エビルマージ「面白い」

仲間を瞬時に背後に隠し、氷の杭全てを『逸らした』。

神業とも言える技にエビルマージは一つの評価を出した。

即ち……敵として認識したのだ。


エビルマージ「次はこれでどうかね?」

仲間を何処かへ向かわせたのを見て、エビルマージはそっと指先をそちらへ向ける。

詠唱は無い。

そっと闇へ誘う様に、緑衣の魔導師は死の呪文を紡いだ。





       【『マヒャド』】





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/21(日) 00:51:56.51 ID:pTCbkzKBO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/21(日) 09:20:56.93 ID:XB2t/Qi4O<>
────────── ギィィンッ!!


距離に左右される事の無い、絶対の氷牙。

その莫大な魔力の奔流は真っ直ぐにエビルマージの指先に示された位置に流れ込み、敵を凍らせ或いは引き裂く。

その絶大な発動速度と範囲の広さ故に回避は不可。

伝説の『ロトの盾』や『メタルキングの盾』でも無い限り、防御すら意味を為さない最凶の呪文である。


だが、しかし。

エビルマージは瞠目する。



    パキィンッ!


店員「 ────── 『ブレードガード』 」


エビルマージ「何だと……ッ」




刹那、何かが女騎士の周囲を舞った直後に『マヒャド』の発動そのものが消滅した。

呪文の発動を無効化する事が出来るなど、エビルマージでさえ聞いたことが無い。

動揺を表すかのように緑衣が揺れ動く。

その隙を、遠距離にも関わらず女騎士は見逃さなかった。



お返しと言わんばかりにエビルマージの立っていたビルは謎の砲撃によって倒壊した。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/02/21(日) 09:49:48.42 ID:XB2t/Qi4O<>

< ドォォオンッッ……!!


男(……!)

男(大丈夫、大丈夫だ……今は他の事に意識を向けろ……!)

主任「男さん!」

男「任せろ!!」


そう遠くない場所から鳴り響く轟音に最悪の想像を駆り立てられてしまう。

だとしても止まるわけには行かない。

森林公園は近い、現に俺達はこれまでとは明らかに違うモンスターと戦っていた。


地獄の騎士C【ヌゥ、さっきの人間共とは違うな……ッ】シャキキィ

< ビュカカカッ!!

男「づッ……ァアアア!!」ギギギィンッ


六本の腕から繰り出される五月雨斬り、攻守完璧な単騎としての戦闘力は高い。

『じごくのきし』、俺の記憶の中では印象に無いモンスターだがその強さは計り知れない速度と強靭さを持っていた。

一人ならば決して勝てない。

だが二人ならば……!


主任「今です!」

男「……!」バッ


主任の声に合わせて跳躍し、後退する。

直後、じごくのきしの頭上に現れたサッカーボール大の結晶を起点に無数の氷の刃が辺りを貫き立った。




━━━━━━━ キィンッ!! バキバキバキバキィィッッッ!!! ━━━━━━━




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/21(日) 15:54:27.84 ID:5VDzlc72O<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/21(日) 17:34:54.07 ID:ThdKOjR+O<> 乙
マホトーンって相手が呪文撃つ瞬間に先に唱えたら打ち消せるんじゃね?DQ1からあるけど…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/21(日) 20:59:05.11 ID:wHX2HO5MO<> すげえかっこいい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/21(日) 23:22:59.70 ID:sh6qCUR5o<> 乙

>>710
いろんなDQ設定のマンガを見る限り、マホトーンは「相手の呪文の発動(もしくは詠唱)を阻害する呪文」なので、すでに完成している呪文は防げないっぽい。
そういうのができるのは「マホカンタ」「マホステ」かも。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2016/02/22(月) 02:27:22.56 ID:/6oIunbf0<> 多分だけど>>710は「同じターンでもマホトーンを先に唱えて封じることができれば呪文を阻害できる」って言いたいんじゃないかな。見当違いだったら済まんけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/10(木) 10:30:20.26 ID:ao92uL5xO<> まだかなー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/20(日) 22:27:04.04 ID:7EORCLhcO<> ここまでイッキ読みしてしまった
期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage-saga<>2016/03/23(水) 11:35:24.32 ID:boj4YWrco<>

< パキッ……ミシッ

地獄の騎士C【ク……カッ…………】

< ポワァ……ンッ


僅かに黒い煙と光の残滓を散らして、骸骨の騎士は消えていく。

後に残る強烈な氷の剣山は音を立てて冷気を漂わせていた。


男「……前よりも威力上がってないすか」


戦いの最中に切り落とされてしまったギターケースを拾い上げながら主任に声をかける。

肩で息をしている姿から、不安を覚えたからだ。

今の短時間で連続して『ヒャダルコ』を撃った主任の疲労はエビルマージに遭遇した影響か、著しい物があった。

……ギターケースは半ばから切断されてしまっていて使い物にならなさそうだ。


主任「何度も呪文を使っていると、何となく分かってくるんです」ザッ

主任「呪文は唱えれば発動出来ます、威力も多分……唱える時に感情を昂らせて……というか」


ゆっくりと、主任は顔を上げて俺を見た。

額から流れる汗に長い髪の毛がへばりついているのも意に介さない。


主任「……殺意、みたいなものを籠めると…少しだけ、少しだけ……呪文の通りが良くなる感じがするんです」

男「…………」ぞくっ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage-saga<>2016/03/23(水) 11:36:08.76 ID:boj4YWrco<>
何か言おうとするも、言葉が出てこない。

この状況で余計な事に時間を使うわけにも行かない、そんな焦りが更にどうしたらいいのか分からなくさせた。

しかしいつの間にか……主任は俺の前に進み出ていた。


主任「……あれは、何が起きてるんでしょうね」

男「!」

男(光の柱……!? いや、あれって……ッ!!)


俺達は店員にエビルマージを頼み、森林公園に到着した。

居たのは二体の『じごくのきし』、主任と連携して戦闘をしていたが……


他のモンスター達とは違い、まるで見張りか門番の様に奴等は立っていた。

いや、間違いなくあれはゲームにおける見張り役のモンスターだろう。

つまり何者かを通さずに『何か』を成そうとしていたのだ。

それが今、俺と主任の眼前で空に向かって伸びている巨大な光の柱に違いない。


より正確には。


男(モンスター達が次々と消えて……その残滓が集合している……?)



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage-saga<>2016/03/23(水) 11:37:39.38 ID:boj4YWrco<>
恐らくは森林公園の中央、その上空に巨大な光の柱が突き立っていた。

或いは空に向かって伸びているのか。

俺と主任の目前で木々の隙間から見える異常な光景は、それまで見てきた魔法やモンスターによる異能現象とは違うことがそれだけで分かった。

チリチリと肌を撫でる、静電気の様な性質の風が吹く度に辺りを濃密な何かが漂っている事に気付く。

恐らくは……魔力か何かだ。


男(モンスターが次々と空へ浮き上がって……そのまま死んでるのか?)

男「主任……」

主任「行きましょう男さん」

男「!……エビルマージがいた、つまりあれの根元には俺達じゃどうにも出来ない奴等がいるかもしれない!」ガシッ

主任「っ、だから何ですか急に」

男「死ぬかも知れないんだぞ! なんでそんな簡単に行こうとしてるんだよアンタ!」

主任「落ち着いて下さい!!」バッ


俺の手を払い、主任の掌が眼前に翳された。

その手の向こうに見える眼には、少なからず籠った殺意が見えてしまう。

咄嗟に俺は飛び退いた。


男「……!!」

主任「…………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/23(水) 19:37:24.64 ID:SrP+UU+Q0<> 来たか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/23(水) 23:15:34.05 ID:uYwPbMJMO<> おつ!
きたか! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/23(水) 23:43:59.68 ID:YrP1sNSho<> 乙
殺意か <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/29(火) 01:13:09.05 ID:EtpjZzZDo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/04/06(水) 04:22:26.97 ID:ueebhPaho<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/04/16(土) 17:10:59.21 ID:XNzNXPO0o<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2016/04/25(月) 00:12:24.17 ID:DknTvVx+0<> あと一カ月か <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/04(水) 00:15:36.42 ID:G3390bIao<> ほし <> ID加速中
◆V9LlgfWZs2<><>2016/05/07(土) 17:48:08.68 ID:2Rhxxw+y0<> あ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/17(火) 20:07:45.01 ID:IInPq3rbO<> おいおいおいおい
いよいよ危ないじゃないか
早く来いよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/18(水) 23:53:49.47 ID:74YvOmpBo<>
主任「……私はモンスターを、あいつらを許せない」

主任「一匹残らず消し去ってやりたい、私はそんな思いで戦ってるんです! 生きるために見逃すなんて私は嫌だ!!」

男「何言って……」

主任「私はあのマンションに住んでいた人達を、いつも見ていた!」


飛び退いた俺に近付き、主任は俺の胸元を掴む。


主任「映画や漫画の中みたいに、都合良く殺されて良い人なんかいなかった! そんな人達じゃなかったんですよ!!」

< ガシィッ…!!

男「く……ッ」

男(主任の眼、本気だ……このままだとヤバいんじゃ……)


掴んで来た手を掴み返すも、俺の腕力でもまるでびくともしない。

我を見失った様に怒る主任の眼をもう一度覗く。

俺はその中に未だ揺るがない殺意を再確認した。


主任「貴方には分からない! あのコスプレした女にも分かりっこない!!」

主任「人が死ぬって事が、人がこの世界から消えるって事がどれだけ辛くて悲しくて取り返しのつかないことか! 貴方達には分からないんだ!!」


< ガバッ!

男「っ!」ドサッ


主任「……はぁ…ッ、はぁ…ッ」

主任「…………」

主任「男さんはここに残ってて下さい、私があの光の根元へ行きます」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/18(水) 23:59:10.90 ID:74YvOmpBo<>
男「何言ってるんだよ……主任こそ落ち着けよ! アンタ一人なんて……」

主任「一人でも、誰かが行かなくちゃいけないんです」

主任「止められるかもしれないのに、ただ隠れて震えてるのはもう……嫌ッ!」

男「主任!!」


────────── シュタンッ・・・!

俺が止める間も無く、主任は跳躍し森林公園の中へと姿を消してしまう。


恐らく『ピオリム』を唱えたのだろう、たった一度の跳躍で凄まじい速度を出して行ったのだ。

対する俺は…………

俺は?


男「……どうしろっていうんだよ」


主任の様子は普通じゃない。

先程までの冷静さが消えていた。

魔力切れか、或いはそれほどの琴線に触れたのか。

いずれにせよ放っておけば彼女は間違いなく殺される。


最初の威勢は何処へ消えたのか、自分でも呆れ返る。

俺はあの空へ伸びる巨大な光の下へ向かうことを何より恐れていた。

怖いのだ。

恐ろしいのだ。


男「畜生…………」


彼女の速さなら直ぐにあそこへ辿り着くだろう。

残された時間は無いのは分かっている、分かっているんだ。


…………それでも、俺は暫くの間何も出来ずにその場に立ち尽くし迷っていた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 00:02:29.97 ID:aw0yPgO8o<>
━━━━━━━━ 【数分前……店員達】



< ボヒュッッ…!!

エビルマージ「『ヒャダイン』ッ!」
          キィィンッ


『マヒャド』を弾いて無効化し、返す刃でエビルマージに向けて放った一撃はビルごと破壊した。

そう店員は認識していた。

しかし粉塵から飛び出た緑衣の魔導師を見た瞬間、それは早計だったことを知る。


店員(魔術師タイプのモンスターなら或いは……と思ったけど、駄目か)ズザァッ

ブラッドソード「動きが速いわねアイツ」

< 「来てるぞ」


    ガシャァアンッ!!


店員の仲間が反応するが先か後か、大気を切り裂いて殺到してきた氷柱の一本が粉砕される。

横薙ぎの一閃。

金髪のウィッグが背後で衝撃波に吹き飛ばされて何処かへ行ってしまうのを、店員は半ば舌打ちしながら傍目に見ていた。


店員「八魔将ってお金落としてくれますかね」

< 「急になんだ」

店員「あのウィッグ高いんですよ、アホ毛再現してる特注品なんで」

< 「……」



────────── ドッッ・・・ドドドドドドドォォッ!!



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 00:03:44.38 ID:aw0yPgO8o<>
一瞬の間を空けて鳴り続ける轟音。

殺到してくる氷柱が店員の居た位置を正確に、逃げ場の無いように、アスファルトを貫き土砂を巻き上げている。

しかし巻き上がったのは礫と雨に濡れた土砂のみ。


エビルマージ「……!!」


緑衣の魔導師は見た。

レベルの高い、優れた戦士や盗賊の類である者達でさえ成し得ない身軽さと瞬発力。

それを爆発させ、女騎士らしき姿の店員が飛来した氷柱を次々とかわしながら虚空へと身を躍らせた……その一部始終を。


幾度か身を捻り回転しながら店員は数十メートル離れた一軒家の屋根に降り立った。


    ガシャッ!


店員「……ふぅ」

店員「避けるのが精一杯とは言え、『負ける相手』ではなさそうですね」

ブラッドソード「油断は禁物よセイバー」

店員「分かってますよ」


土砂で微かに汚れた頬を籠手で拭いながら、店員はブラッドソードを構える。

そして、まるで唱える様に彼女は呟いた。


店員「……あれが主任さんの怨敵ですし、ね」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 00:05:30.71 ID:aw0yPgO8o<>
< ビリビリッ……!!


直後、店員の握る剣が僅かに瞬く。

真紅の刃が蒼白に染まったかのように、ほんの僅かなその一瞬だけ発光したのだ。

一瞬だけ見せたその現象はまさしく『雷光』 ────────


店員「二割減るけど、後は任せたよ『リリィ』、『オルタ』、『クラーク』」

店員「これで仕留めます」キィンッ


< バチバチバチィイッッ!!


───────── 稲妻を纏うかの如く、蒼白の電光を放出しながら剣を逆手に持ち替える。

店員の足が屋根瓦を踏み砕き、瞬時に雨空へと身を躍らせた。

    ドゥッッ・・・!!




エビルマージ「ヌゥ……!?」

緑衣の奥でエビルマージが声を漏らす。

そこへ、


店員「 ───────ッッ 」ブンッ!!


一気に距離を詰めた店員が大きく振り被って雷光を迸らせる!


エビルマージはその光を見て即座に技の正体に見当をつける。

エビルマージ「『稲妻斬り』……異世界の人間如きが魔法剣を振るえるか」


距離を詰めた所で、未だ両者には十数メートルの間がある。

それを無視して店員は振り被り、そしてエビルマージは距離を詰められるより先に呪文を発動させる!

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 00:08:43.40 ID:aw0yPgO8o<>

    ギュィインッ!!


大気を渦巻く力は、果たして『どちら』の物だったのかは分からない。



都市を覆い尽くせる災害を一点に集束したかのように、その場所に破壊がもたらされたのだから。


エビルマージ【『マヒャド』ッ!】キィンッッ


無駄な口を開く事はしない。

如何に力量差のある相手だろうと、その愚かな行為が、一瞬の隙が強者をも殺す事をエビルマージは理解していたからだ。

棒立ちで魔法を撃つ事もしない。

緑衣から伸びる手から魔力を放出して後方へ跳躍し、店員から距離を取りながらの『マヒャド』だ。




────────── 地面から突き立つ一本の氷の塔は店員の視界を塞ぎ。


────────── 上空から降り注ぐ氷塊は高層ビルの崩落よりも凶悪に、店員を捉える。


────────── 貫き穿つ為の氷柱とは違い、触れただけで凍てつく冷気を纏った質量攻撃である。




一瞬で繰り出される氷結系最上位の呪文は、最強の魔導師によって更に攻撃魔法として磨かれ殺到する……!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 00:10:27.48 ID:aw0yPgO8o<>
    ガシャァアアンッッ!!
  ドドドドッッ……!!


轟音を周囲に響かせて、店員を狙った氷塊が次々と住宅街を破壊し凍り付かせていく。

雨によって湿った空気が一気に冷えた中、緑衣の魔導師は冷気漂う氷山を見る。

今ので仕留められるほど弱く無い相手故に、追撃の呪文を密かに唱えながら。



─────── ボヒュッ・・・!



< ズドォォッ!!

エビルマージ「……?」


   ブシュァアッ!!
エビルマージ「ッ……な、んだと………!!」


エビルマージの目には捉えられなかった。

一瞬、氷山の一部が弾けて閃光が走った事しか認識できずにいたのだ。

…………爆撃を受けた様に巻き上がる粉塵の中から投擲された『剣』によって左腕を落とされ、血飛沫を上げるまでは。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/19(木) 00:32:18.56 ID:qTChlXyho<> 復活してた! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 02:47:26.77 ID:aw0yPgO8o<>
──────── ヒュォオオオ・・・

< パキパキパキッ……カシャンッ……


店員「外れちゃった、か」

< 「セイバー、傷は……」

店員「油断はしていなかったんですけどね、肩の感覚が鈍いです」パキッ…

< 「凍っている様だ、傷は私がどうにかしよう」

店員「……」コクン


氷山が建物の瓦礫ごと凍らせている横で、店員は膝を着き息を切らせていた。

表情こそ平然としてはいるものの、初撃の呪文がどういったものか見る前に無効化した事が災いしてしまった。

店員とて未だ見たことの無かった最上位系の呪文。

圧倒的質量を生み出す事も出来れば、特異的に触れた箇所を凍らす効果も付与出来る。

それを知らずにカウンターを狙った結果、思わぬ魔法を撃たれてしまった。


だが、それでも店員は即座にマヒャドから逃れての一撃を加える事に成功しているのは間違いなかった。


店員「エクスカリバーが何処まで『時間を稼ぐ』かは分からないし、このまま追撃します」バッ!


氷山が目の前に次々と突き立つ最中に、店員は氷の層が脆い位置を見極め、手に持つブラッドソードを投擲したのだ。

『他の剣』を使って、同じく稲妻を纏いそれで電磁加速させて撃ち放ったのである。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/19(木) 07:43:11.58 ID:hLBy9sPNO<> 来てた!
かっこいいね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 18:52:00.43 ID:aw0yPgO8o<>
    ギュルルルッ!!

深紅の両手剣が激しく回転しながら、突き刺さっていたビルの壁面から離れる。

ブラッドソードはそのままの勢いで不意打ちに怯んでいたエビルマージに向かい、一直線に飛び出していく……!


エビルマージ「チィ……! 魔剣の類を持ち合わせていたか!」キィンッ

背後から高速で回転し向かって来るブラッドソードに気付いたエビルマージが、右手に魔力を集中させて迎え撃つ。


────────── ヒュィンッッ!


ブラッドソード「お生憎様、魔剣は魔剣でも『魔物剣』なのよねぇ!」

エビルマージ「ッ、貴様……『ブラッドソード』か」


魔力を集中させて撃った光弾を難なく回避し、ブラッドソードはエビルマージと交差する。

吹き飛ばされた左腕は傷口が既に凍らされ止血されていた。


ブラッドソード(一瞬よ、一瞬だけコイツを足止め出来れば……!)

ブラッドソード「行くわよ!!」


───────── ギュオオ ッ!!

風を切り裂くかの如く、縦横無尽に剣閃を走らせ乱舞を繰り出す。

ブラッドソードは、彼女は軌道を読ませる事を許さない。

魔剣の姿をした魔物である以上、その弱点は剣筋を読まれてしまう事にあるからだ。

今、エビルマージに対して繰り出された乱舞は正しく彼女の全力の攻撃だった。

その一瞬で行使された凄まじい剣舞は、仮に相手がトロル系の巨人だったとしても打ち倒しただろう。


       パキパキパキッ……ガガガッッ!! ─────────

エビルマージ「『ヒャド』、『ヒャダルコ』、『ヒャド』」


< ビキビキッ! ギシィッ・・・!!

それを。

上位の呪文すら使わずに、緑衣の魔導師は止めた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/05/19(木) 19:15:33.69 ID:aw0yPgO8o<>
ブラッドソード「がッ……ぐぅぅっ……!!」ビキィッ

ブラッドソード(こ、これ程だなんて……なんて魔力の強さ……!)


刀身を上下から氷塊に挟み込まれ、動きを止めた所に次々と叩き込まれる重く冷たい一撃。

片腕を落とされ、窮地に立たされているとは思えない冷静な動作だったのだ。

加えて初歩的な呪文に籠められた恐るべき魔力は、鉄をバターの様に切る事の出来るブラッドソードさえヒビが入る程に強力な物だった。


ブラッドソードは全身を打たれて意識が遠退いていく。

ブラッドソード(……でも、これで……)

遠ざかる意識の向こうで、彼女は異世界で出会った友人を思い出す。

知る中で間違いなく最強の人間。


店員「ブラッドソード!!」

< ガシィッ!


エビルマージ「く、無傷だと……!?」


好きなキャラクターのコスプレを愛する変人ではあるが、その才能は底が知れない。

ブラッドソードに不安は無い、どれだけ強大な相手であろうと必ず店員ならば勝利すると分かっていたのだから。

店員の持つ才能は、剣術や身のこなしではない。




彼女は、自分に再現が可能ならばそれを見ただけで物にする事が出来る。




店員「……お返しですッ」キィィン…ッ


       【『マヒャド』】


エビルマージ「〜〜!!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/19(木) 20:23:14.51 ID:vbG5ZGDKo<> どーゆーシステムなんだろ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/19(木) 23:57:07.88 ID:lpgkbj2ro<> 来てた
待ってました <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/25(水) 23:41:12.94 ID:2aerLLsVO<> こい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/05/31(火) 17:09:08.88 ID:N5cyTFBso<> こい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/06/06(月) 21:57:07.88 ID:2UQGjTRRo<> 7 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/06/12(日) 03:11:04.23 ID:XrFee9/wo<> メガロ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/06/24(金) 18:28:23.82 ID:oMkxNZD9o<> メがラブ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/12(火) 01:45:37.50 ID:AMoFUj9t0<> カカロン!バルバルー!クシャラミ!ドメディ!
何故だ!何故召喚できんのだ!
時間がないぞ!!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/07/17(日) 13:23:01.93 ID:ealKhtGPo<>


────────── ドォォオオンッッ!!



広域に撒き散らされる破壊の音。

それは巨大な氷山を上空から高速で同じ質量をもって砕いた音。

店員が半ば強引に唱えて振り下ろした魔法は、周囲に強烈な冷気と共に衝撃波を発生させた。

その中心部に居たのは店員ではなく、緑衣の魔導師である。


エビルマージ「馬……鹿な、何故……異世界の人間がマヒャドを…………」


その姿は凄惨なものとなっていた。

下半身は凍り付き…ローブごと砕け散っており、何らかの魔法で防いだらしくも未だに凍結の侵食は止められずにいた。

驚愕の表情は文字通り凍り付いている。


店員「……確か、エビルマージ……でしたか」ガシャッ

エビルマージ「……ヌゥ…ッ!!」


眼前に降り立つ店員を、凍り付くエビルマージは見上げた。


店員「貴方達の目的は何ですか、今、世界で何を起こそうとしてるんです?」

店員「答えなければ……」


冷気の籠った瞳で、店員はエビルマージに掌を向ける。

それが意味するのは生か死か。

生かす気が有るかどうかを問う余裕も無ければ、力も残っていなかったエビルマージは沈黙するしか無かった。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/17(日) 16:11:30.86 ID:Zyb4Toh2O<> まってた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/17(日) 16:16:34.03 ID:9SWjr4C7o<> おつおつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/17(日) 17:08:33.50 ID:OrbhuiK3o<> 復活しててうれしい
乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/18(月) 00:22:50.70 ID:SHpFA4hTo<> 復活乙

巨大な氷塊を落下させる魔法、どこかで見たな……と思ったらネギまか。
確か質量攻撃だけじゃなく、砕けた氷の潜熱を利用して大規模な冷却範囲を作るんだったか。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/29(金) 08:09:40.69 ID:WOGyWRdtO<> ほし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/08(月) 23:35:51.51 ID:8rR6XZtLo<> ほし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/23(火) 07:48:42.94 ID:sIlHeufWo<> まだか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/26(金) 17:48:51.64 ID:mGaPwQ/+o<>
エビルマージ「…………」


店員「……?」


数瞬の沈黙。

ふと、店員はエビルマージが緑衣の中で何かを呟いた事に気付いた。


エビルマージ「……それで勝ったつもりか」

エビルマージ「意識が抜けていないのだな……く、く……」


店員「……」

店員「意識、とは?」


瀕死の筈なのに、突如笑い始めたエビルマージに店員は問い掛けた。

何が余裕を生ませているのか。

それとも、決定的に何かエビルマージは店員達とは別の視点を持っているのか。

そう考えた瞬間、店員は次のエビルマージが放った言葉に硬直する事になる。








エビルマージ「””これはゲームで遊んでいるのではないぞ?””」






<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/26(金) 18:35:18.42 ID:mGaPwQ/+o<>
店員「……」

< 「……セイバー?」


周囲から聴こえてくる仲間の声が、上手く店員の耳に入ってこなかった。

彼女は恐ろしい程の目眩を覚えていた。

決して有り得ないとすら思っていた事が目の前で起きている。

現実に存在する筈のない幻想が侵食してくる感覚。

今、店員という人間は初めて不確かで曖昧な気配に狼狽えていた。


店員「それは……どういう意味ですか」ザッ…

エビルマージ「この『ニホン』以外の国にも何人もいた……くく、我々を『ゲーム』から出てきたキャラクターだとな」

店員「まさか本当に……!?」

エビルマージ「くく……くははッ……そんなわけがないだろうに、お前達異世界の人間はそうして根本的に間違えてきた……」

エビルマージ「認めよう! ハハハハッ!! あれは、あの『ドラゴンクエスト』は我々の世界の全てを見事に描いている! これ以上ないほどの奇跡だとな!!」


エビルマージ「だがゲームのつもりで戦っている貴様らでは我々に勝てるわけがないだろう!! 嘗めるなよ人間、これは『命』と『未来』を奪い合う闘争……戦争なのだッ!!」

< キィィィインッッ!!


エビルマージが鮮血の混ざる冷気を散らして吼えた瞬間、店員の全身が魔法の気配を察知する……!


< 「これは……!」

店員「ッ、しまっ ─────── 」


何らかの魔法が襲ってくる事に気付くも、間に合わないと悟った彼女は衝撃に備えて構える事しか出来なかった。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/27(土) 00:23:37.47 ID:usO9YgGAO<> うおお乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/27(土) 01:44:32.95 ID:uGE1Alt4o<>
それは、店員が身構えた刹那に動いた者の思考。


(『ブレードガード』で防ぐには数が多い、更にブラッドソードがほぼ戦闘不能)

(ここがセイバーの限界だな)


一定のレベルを越えた者の思考速度は凄まじい回転と反応を見せる。

同時に、店員を中心に二重の渦が冷気を巻き上げた。


    パガァンッッ!!

────── 片や、身構える店員を八方向から挟むように突き上がる氷の刃。


    ドゥッ・・・ンッ!!

────── 片や、白銀の軌跡のみを残して店員を抱えて跳躍する者。


それらは、エビルマージを押し潰していた氷山に亀裂が入る程の衝撃波であった。

ただ質量を生み出し弾く、叩きつける、突き上げるのみならず。

店員を襲った氷の刃は……その特性から如何に自在に形を変えて凶悪な武器となるのかを物語る。

そう、数十メートルの距離を取ってから、自身の立っていた位置を切り裂いた氷の刃を見て理解した。


店員の視線が魔法を撃った者を捉えて。



< スタッ……

店員「……これは、どういう事ですか…………何故、他に……!?」
       シュルルルルッッ……

ここに来て初めて危機感に満ちた声をあげた店員を補足するように、彼女の『身に纏っていた白のドレス』が宙に飛翔した。

今まで消されていた気配と、変えていた姿形が露となる。



シルバーマント「『八魔将』を名乗るからには、ただの魔導師ではなかったという事だろう」

シルバーマント「そうだろう? エビルマージ」



エビルマージB「…………」

エビルマージC「…………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/27(土) 07:26:30.46 ID:/gbQVfsAO<> 乙
ヤバい状況だね。
ザオリク使える奴が大量に出るとは…
マホトーンかマホカンタ使えないとキツいな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/27(土) 10:23:46.77 ID:uGE1Alt4o<>
多少の余裕はあったとはいえ、それでもブラッドソードが戦闘不能になる必要があった程の相手。

その実力に狂いはなく、店員が聞かされていた『八魔将』の名に値する脅威だった。


しかし。


エビルマージは『一人ではなかった』。


エビルマージD「まさか儀式場を邪魔されない為に配置した『私』が敗北するとは、些かこちら側の人間を嘗めていたか」ザッ…

エビルマージB「それだけではない、幾つかの報告にあった未知のモンスター……先の『ヒャダイン』を回避したのを見るに相当の熟練者だ」


緑衣から放たれる重圧感と耳に残る低い声。


エビルマージC「エレメント系か……いや、純粋なエレメント系とは違い性質は亡霊に属する者に近い」

エビルマージC「呪文も扱えるとして、さて……『私達』を相手にどこまで堪えられるかな?」


嘲笑するかに見えて、その実、決して警戒を怠らずに能力を考察する。

店員が見ている新たな緑衣の魔導師は、確かに一人一人が先程まで戦っていたエビルマージと同一の存在だった。

仕草から、その視線の動きに至るまでが同じ。

僅かに後退りする店員を引き止めたのは白銀のマントのみで浮遊する、仲間のモンスターだった。


シルバーマント「あれの戦い方がいまいち支援型に見えていたが、なるほどこういったタイプのモンスターか」

店員「リリィ……ここは撤退しよう」

シルバーマント「駄目だ」

店員「……何故?」


リリィと呼ばれたモンスターは、虚空から同じく白銀の剣を取り出す。


シルバーマント「男と主任、あの二人ではエビルマージ一人にすら勝てないだろうな」チャキッ

シルバーマント「であれば私とセイバーがやるべきことは見えている」

店員「…………」

シルバーマント「私の力を全く借りずに、あくまでも自身の限界と向き合って戦ってきたお前なら分かるはずだ」

シルバーマント「ここで、お前はエビルマージと戦うべきなのだ」

シルバーマント「ブラッドソードの奴がお前を買っているのも、セイバー……いや、店員、お前が特別だからだ」


シルバーマント「見せつけてみろ、私に、そしてお前が憎んできた『出来ないこと』に」

シルバーマント「逃げずに戦い続けてきたお前の強さを奴等の脳髄に切り込んでやれ」


店員「…………」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/27(土) 11:46:20.63 ID:uGE1Alt4o<>


────────── ッ・・・ォォン



男「……っ!」

遠くから聴こえてきた轟音に、それまで雨の音を聞いていた体が反応する。


俺は、主任を追いかける事が出来ずに何をしているのだろう。


男「ぁぁぁ……あああああっ!!!」

男「どうしろってんだよ!! どうすりゃいいんだよ!!」


分かっている、分かっているのに、ここに来て俺は壊れてしまった。

思えば最初から俺は英雄願望や主任のような復讐の為に戦っていたのではない。

俺は、全てをゲームとして見てきていた。

だってその筈だ、これはドラゴンクエストだ。

スライムと戦った。

ドラキーと戦った。

さまようよろいとも、ホイミスライムとも戦った。

どのモンスターも、化け物だったし、どの戦いも痛かったし苦しかった、何度も心臓が止まるかと思った。


死ぬ事が怖くて、死なないように慎重にレベル上げをしていた。

改めて旧作から新作に至るまでのドラゴンクエストシリーズを調べた。

改めてゲームをプレイした。


俺は、『ずっと自分ではない者として生きていた』。


男「お、俺は……っ、俺はぁ!!」


俺は、『ずっと一人で戦っていた』。


男「糞ォ……くそぉ……ッ!!」ガクッ


なのに、どうしたらいいのだろうか。

いつの間にか独りで居た部屋から、見知らぬ部屋に連れ込まれた。

そんな中で俺は何を為せば良いのだろう?

何がしたかったのだろう。



男「もう……俺は……」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/27(土) 21:04:01.88 ID:uGE1Alt4o<>
━━━━━━━━ 【同時刻……主任】


< キィン……キィン……

主任「…………」


主任(……あれは何をしてるの?)

主任(見たことの無いモンスターばかり……それも凄い数、彼等があの光の柱に入って消えていく)

主任(阻止すべきなのかしら……)スッ


< パキッ

主任(っ! しまった……)チラッ





ラゴンヌ【グゥルルルル……ッ】ピクンッ

< 「どうした」

ラゴンヌ【…………】





主任「……!! ……!!」バッ

主任(息を、止めないと……今ここで戦闘になったら……!)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/27(土) 21:19:38.04 ID:uGE1Alt4o<>
< 「何をしているのだ、早くしろ」

< 「まさか……我が王の命に背く気か」


ラゴンヌ【ッ……クゥン……】フルフルッ


< 「それでいい、お前達は此度の戦いにて最大の要となるのだ」

< 「私では意味がないのでな」




主任(……?)スッ

主任(…………アイツ、は……!)




エビルマージ「ラゴンヌを始めとして、残りの『指揮官』は全員入水しろ」

エビルマージ「既に此方側の国々で計画は始動している、この『ニホン』も今日をもって陥落するのだ」

エビルマージ「さぁ、今こそ儀式の時、行け戦士達よ!!」


< 【【「【 グルゥオオオオオオオオオオオオッ!!!! 】」】】




主任(儀式? 計画? ……日本が、これで終わる?)

主任(それに、なんであそこにエビルマージが……!? 店員さん、彼女は……!)

主任(彼女までアイツに殺られたの? 待って、男さんは……私が置いて来てしまった彼は……)


主任「…………ッ」ギリッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/28(日) 02:31:18.18 ID:eRud64qJo<> おつおつ きててうれしい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/28(日) 18:38:35.91 ID:4IAMM1UTo<>
エビルマージ「……ほう、確かに此処へ汚いネズミが入らぬよう配置していた『私』が敗れたのは知っていたが」

────────── ヒュンッ
         パシッ!!

エビルマージ「毒の塗り方も知らぬようなこちら側の人間に突破を許すとはな、『私』も少々驕りが過ぎていたかな?」


エビルマージは多くのモンスター達が光の柱へ入っていく中、木々の隙間から飛来した小刀を振り返りもせず、素手で掴み取る。

そして間髪入れずに小刀を放り投げると、上下から氷塊が生み出されて粉々にそれを砕いてしまう。

緑衣の中から視線を背後の森林に向け、その先の木陰にいた人間の女を見た。

長い黒髪は乱れ、前に垂れて表情は見えないが、女の全身から伝わる気配は認識出来ていた。

そこにあるのは殺意。


エビルマージ「仲間も無しによくもここへ姿を現せたものだ」

エビルマージ「それでどうするのだ? ナイフを投擲して終わりか?」


    パキパキパキッ……!!


エビルマージ「儀式を続けろ、あの人間は私が『観客』に仕上げてやる」


周囲のモンスター達がエビルマージの様子に一瞬気をとられるも、その言葉で光に包まれては消えていく。

その光景に、左右に氷塊を生み出したエビルマージを主任は睨み付けた。


主任「…………」ザッ…ザッ…

主任「『ピオリム』、『スカラ』」キィンッ

全身を光の膜で包み主任はついに森林を抜けてエビルマージに向かっていく。


その手にはベルトから引き抜いた新たなナイフが握られていた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/28(日) 21:00:05.53 ID:4IAMM1UTo<>

エビルマージ(あれで『私』を倒したとは考え難い、他の地区から集まった他の『私』が敵を消している頃の筈)

エビルマージ「……まぁ良い、あの女にはこの儀式による絶望を直に味わえばいい」

エビルマージ「それこそが我が王の意思なのだから」


補助呪文を唱えて近付いてくる主任を捉えて、エビルマージの左右に浮いていた氷塊が動き出す。


主任「『ヒャダルコ』ォォッ!!」
    ザザァッ……!!

攻撃に移ろうとする事を予感した主任が、即座に咆哮した。


─────── キィンッ!!


エビルマージ「ほう、『ヒャダルコ』を唱えられるとは我等の知識を扱える者か」

天を仰ぎ見たエビルマージは静かに感心を示す。

エビルマージ「だが所詮は使うだけが限界の凡人よな……?」



空気中の水分が微かに震え、エビルマージの頭上にサッカーボール大の氷結晶が生み出される。

直後に襲うのは無数の氷の刃が爆発的に辺りを満たすのみ。






それを、エビルマージは  ” 知っていた ”  





<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/29(月) 03:31:05.47 ID:+QtCciIvO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/29(月) 06:10:03.78 ID:UQ6UXNVuo<>

< バキィッ……
     ガシャァアッ!!


エビルマージ「『ヒャド』」ズザァッ


主任の『ヒャダルコ』による魔法を緑衣の魔導師は涼しげに一蹴する。

その際に使った呪文は氷結系最下位の『ヒャド』。

左右に浮いていた氷塊がエビルマージの居た位置を細い氷柱を無数に広げる事で、『ヒャダルコ』による刃を全て防いだのだ。


< ダッ!!

主任「『バギ』ィッ!!」

防がれる事を予想していた主任の手がタクトを振るように薙がれる。


エビルマージ「『ヒャド』」


指先の軌跡に合わせて発生する風の刃が突風を撒き散らしてエビルマージを捉えた。

しかし、そこに割り込む形でエビルマージの前に氷の壁が地中から突き出た。


───────── ガシャンッ!!


相殺である。

主任の放った『バギ』では傷一つ付けられず、エビルマージに氷壁の破片を散らす事しかできない。

だが粉砕された氷壁の向こうから飛び出したのは。


エビルマージ「……!」

主任「うぁぁぁぁッ!!」バッ……!

    ビュッッ!!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/29(月) 06:34:11.69 ID:UQ6UXNVuo<>
主任は一つ、エビルマージを誤解していた。


それまでの彼女にとって、エビルマージというモンスターは自分よりも遥かに呪文に長けていて、恐るべき強さだと認識していた。

その上に油断もしない。

主任の使える魔法の悉くを撃ち落とし、余裕を持って撃破しようとするだろう。

そこまでは彼女の認識で間違いなかったのだ。

その先である。


    「遅い」


主任「っ!?」

< ガシィッ


既に疲弊し、魔力が尽きかけた彼女は全力で魔法を撃つことでエビルマージの視界を奪う。

その隙に彼女は接近戦を挑もうとしていたのだ。

ステータスは調べていた、エビルマージの近接戦となった場合の能力は恐らくレベル10程度の戦士のパラメーターらしいと。

故に主任はエビルマージを捉えてそこへ一撃を加えた。


それこそが間違い。


主任(は、離れない……引き剥がせない!?)

< ミシミシミシ……ッ


魔法使いのイメージと、ネット上にある『あくまで解析されただけのデータ』。

そんな物で八魔将の一人を量った事が、そもそもの間違いだったのだ。



エビルマージは『弱くない』。

    ドゴッ!!


主任「げ……ッぁ、うぁ……ッ……」グラッ……!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/29(月) 06:57:15.33 ID:UQ6UXNVuo<>
ドサァッ!


エビルマージ「ふむ、私を相手に接近戦で挑む発想は買ってやろう」ザッ…ザッ…

エビルマージ「だが貴様では力不足だったな?」


呪文すら使わずに魔力を溜めて至近距離で撃っただけ、その光弾だけで主任の意識が途絶えようとしていた。


主任「ぐぅ……ッ、げほっ! ガフッ! ……え、エビルマージ!」

< チャキッ


それでも、主任はナイフを手放す事なくその切っ先を向けた。


エビルマージ「ふ……なら」

緑衣の中から伝わる嘲笑。


エビルマージ「『メラミ』」

直後。

主任の眼前で 太陽が弾けた 。


    ギュボォッ・・・!!


主任「ぇ    ッ ッ




────────── ドッッ…… ゴォォオッ!!




自身の出した悲鳴が耳に届かない程の爆発と、全身を殴られたような激痛、そして浮遊感。

津波に飲まれたかのように投げ出され転がっていく彼女が止まった時、既にその意識は切れていた。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/29(月) 11:28:05.01 ID:M14w85d3o<> 己の力を過信しすぎたな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/29(月) 13:54:41.55 ID:hkcruBCFo<> 更新きてた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/29(月) 23:07:13.89 ID:xyYEVhRmO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 01:18:09.08 ID:6JFLvN2lo<>
━━━━━━━━ 【其処に居た者】



男「もう……俺は…………」


   「大丈夫だよ」


男「……俺は、大丈夫……?」


   「大丈夫」

   「ほら、ゆっくり……深く息を吸って……」


男「…………すー……」


   「ゆっくり吐いて……」

   「そうだ、雨降ってるんだから空を見上げて深呼吸したほうが良いよ」

   「君は ”いつも” 追い詰められた時、自分が〜とか、それに対して理由が〜とか、考え過ぎだよ」


男「…………」


   「ね、人を助ける時に頭で考えながら助けようとしてない?」

   「男くんは何でも頭で考えてから行動しようとする」

   「一ヶ月以上前、ホテルで女の人を助けたよね? あの時は何も考えずに動けてたじゃない」

   「あれで良いんだよ」


男「……だけど、俺は主任のような戦う理由なんて……」


   「ほら、直ぐ理由を探しちゃう」


男「……!」


   「確かに君は最初の一ヶ月は色々な人を見殺しにしたかもしれないね」

   「きっと一人くらいは君が手を引けば助かったかもしれない」

   「でもね、きっとその結末は酷い事になってたの」

   「だから私が君の心に干渉した」


   「全部私のせいなんだよ、男くん」



男「…………」スッ

男「君は……誰だ…………」



──────────・・・



男(……誰も、いない……)


男「…………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 03:16:05.38 ID:6JFLvN2lo<>


───── 体が、冷たい…… ─────

───── 手足の感覚が無い……? ─────




主任「…………ぅ……ぁ、ああぁ……!!」ビクッ

主任「やだ……何これ、体が氷の中に……や、やだ……動かない……!?」ググッ……


< 「動かぬ方が身のためだぞ? 人間の女よ」


主任「……っ、エビルマー…ジ!」

エビルマージ「貴様には特別席を作ってやったのだ、そこでこの儀式を見届けるがいい」

主任「殺してやる!! 絶対に、皆の仇を……ッ! あぁあぁあああ!! 体が、動かない、なんでなんでなんで……!!」グググ……

エビルマージ「威勢が良いな、そして何より貴様のような怒りと憎しみに満ちた人間は実に我が王の好みでもある」

エビルマージ「くく……さぁいよいよだ、『門』はこれで最後の鍵が解かれる事になる」


エビルマージ「今日この日によって、世界は我が王の物となるのだ! さぁ、今こそ此処に!」バッ!


──────── カッッ!!



主任(エビルマージが、自分から光の中に……!?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/30(火) 03:20:55.07 ID:2KPq6CygO<> まだ続いてたんだなこのスレ…
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 03:22:45.57 ID:6JFLvN2lo<>


━━━━━━━━ 【数多くの力を持った者達よ】 ━━━━━━━━


━━━━━━━━ 【異界にて血を流し倒れた者達よ】 ━━━━━━━━


━━━━━━━━ 【そして、『それを知った』人間達よ】 ━━━━━━━━


━━━━━━━━ 【我等を率いるは死の果てを夢に見し真の絶望を知る者】 ━━━━━━━━


━━━━━━━━ 【闇の奥深くに飲まれた者】 ━━━━━━━━


━━━━━━ 【我が王、そしてかつて我等を生んだ『ゾーマ』の二つの名の下に完全なる顕現を果たせ】 ━━━━━━










━━━━━━━━ 【来たれ、『八魔将』ども……!!】 ━━━━━━━━









<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 03:38:59.61 ID:6JFLvN2lo<>
【アメリカ・ニューヨーク】


兵士「軍曹! ビル上空にあった球体、さっきから光ってたと思ったら……空に『穴』が!!」

軍曹「援軍はまだなのか……こっちゃ、戦車歩兵全滅、支援無しであのフロストマンと戦ってるってのに!」

軍曹「『エビルマージ』なんてふざけた名前しやがって!! アメリカ陸軍の力を見せてやるぜあのやろう!」

中佐「それ以前の問題だ……」

軍曹「は?」

中佐「あれを見ろ……」


兵士「……」ガシャッ

軍曹「な……」

軍曹「なんだ、ありゃ…………」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 08:27:35.56 ID:6JFLvN2lo<>
【イギリス・ロンドン】



魔物使い「……なるほど、あれが魔王軍最高幹部にして最強戦力かね」

魔物使い「どう思う、スラリン」

スラリン「ボク達のいた世界のモンスターじゃないと思う」

魔物使い「そうなのかい」

スラリン「『アイツ』はね、本体の親玉だけならボク一匹で大丈夫だと思う」

スラリン「けど、どう見ても『アイツ』は単騎の強さが売りじゃないよ」


魔物使い「だろうね」


魔物使い(まだレベルの低い女児殿と父親殿には避難して貰ったが、数の不利を覆すには必要だったか)

魔物使い(だが)


< ザッ……


魔物使い「貴方の出番の様です」

魔物使い「『サマルトリア王子』」


サマル王子「ああ、後方支援は任せたよ」


魔物使い「イギリス王室の方々は何か言っていましたか?」


サマル王子「いつも通りだよ、『頼む』ってね」

サマル王子「勿論、答えは『はい』さ」ニッ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 08:49:24.16 ID:6JFLvN2lo<>

【エジプト・カイロ】



エビルマージ「ば、馬鹿な……何故ここに貴様等がいる! こちら側に来るには力が大きすぎる筈だ!」


< 「そうですね、確かに今の私や他の『王子達』も力が半減しています」

< 「でもそれだけですから、その程度なら私達は必ず貴方達を倒して見せる」


エビルマージ「おのれおのれェッ……!! だが果たしてそうかな? 既に儀式は完成しているのだからなぁ!」


< 「!」

< 「『衣の残滓』……? 何故、あんなに広がって……」


エビルマージ「『マヒャド』ォッ!!」

< 「『イオナズン』」キィンッ




━━━━━━━━ ドドドドドドドォォオオオッッ・・・!!!




エビルマージ「が……ハッ…………」

< ドサッ


< 「……」

< (全身がピリピリする)

< (恐らくは魔王軍の最高戦力、『八魔将』ですね)

< (私一人でどうにか出来るとは思えないけど、大丈夫……)

< (きっと、『彼』が何とかしてくれる)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 14:17:40.93 ID:6JFLvN2lo<>
─────── 空が割れる光景を見たことのある者が、いったいどれだけ居るだろうか。


天高く伸びる光の柱。

見る者全てが畏怖を、或いは荘厳な光景に感動すら覚えていた。

その光が何を糧として輝いているのかも知らずに。



       キィイイイイッ



建物に隠れていた者、布団に潜っていた者、モンスターと戦っていた者。

何処にいようと、耳を塞ごうと、誰もがその金属を引き裂く様な音を聞いていた。

当然、中には何事かと外を見る者が現れる。

そして誰もが皆、自分の目を疑うことになるのだ。



主任(光の柱の頂点が黒くなって……っ!? そこから空が割れて……!?)


眼前で眩い極光を放つ柱と、その遥か上空で曇り空に塗られる異物感に、主任は息を飲む事しか出来ないでいた。

何か恐ろしい事が起きているのは間違いないのに、何も出来ず見ているだけしか出来ない。

主任は冷たくなっていく身体を必死に動かそうとしながら唇を噛み締める。


そして、その時。

何かが音も無く大気を激しく揺さぶって、闇に裂かれた天空から飛び出した。



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 14:41:34.70 ID:6JFLvN2lo<>

   ビュッッ・・・ゥゥゥンッ ━━━━━━━━


━━━━━━━━ ズンッ・・・!!!



降り立った巨大な岩山、主任の目に映ったのはそんな馬鹿げた光景だった。

数十メートルの距離が開いていたにも関わらず、天空から降ってきたその巨体を中心に土砂の津波が周囲を巻き込み吹き飛ばしていく。

その衝撃波によって、主任を拘束していた氷の結晶が粉砕される。

しかし、彼女の華奢な肉体も周囲の樹木や土砂と同じく、為す術も無く投げ出されてしまう。


主任「きゃぁぁあっ!!」


手足の感覚が未だ重度の凍傷により麻痺していたせいで、受け身を取ることもできず数回に渡って全身を打ち付けながら森林公園の出入口近くまで吹き飛ばされてしまった。

凄まじい衝撃波による破壊の波は森林公園の樹木をほぼ全て薙ぎ倒していた。



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 15:09:47.61 ID:6JFLvN2lo<>

< ゴゴゴゴォ・・・ォォ・・・


地響きが雨の降る街に響き渡る。

衝撃波は既に止んでいたが、何かが降り立った位置を中心に広がって倒れていった樹木がまだ転がっていたのだ。


< ズズッ……ドシャッ


その土砂と枝葉に埋まった小さな丘の中から、髪も服も血と泥に塗れた主任が這い出てくる。

主任「はー……はー…………」

主任(途中から訳も分からずに『ホイミ』を連続で唱えたのに、身体中が痛い……)

主任(……さっきのは、何? 空から、なにが……)ググッ…


    ズンッ

    ズンッッ……


不意に、それは背後から聴こえてきた。


主任「…………」

主任「……え」


見上げるまでもない。

振り向くまでもない。


うっすらと自身を覆う巨大な影のシルエットで分かってしまったのだ。

そして、彼女は間抜けな声を漏らして背後へと首を回した。




ダークトロル「何だ、まだ生きているじゃないか」




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 16:32:26.08 ID:6JFLvN2lo<>
主任「……っ…、っ……」


初めてだった。

かつて、二ヶ月前に彼女は人生初めての『死』を間近に感じた時。

あの時は自身を守る事とエビルマージが見せた信じ難い非日常を受け止めるので精一杯だった。

そんな主任は今、まさにそれを遥かに上回る恐怖に直面していた。

耳元で鳴り響く「ひゅー……ひゅー」という音が、自身の喉から鳴っているものとは気付かない程に。



ダークトロル「その臭い、『アークマージ』の奴の魔法かァ?」

ダークトロル「グフハハハ!! 確か下位種の『エビルマージ』だった筈だろォ! やはりその程度かこちら側の奴等ってのァよ!!」



ジェット機の轟音に匹敵する程の声で笑う巨人。

そう、主任の目の前に居たのは決して敵わないと理解出来る程の巨体。

その体格、体長、約二十メートル以上。



”” 全身が黒く変色した、深緑の肉体 ””



彼女はそれを一度だけ目にしている。

エビルマージを調べていれば、当然の如く目にする同作品における最強のモンスター達。

その中に、確かに居たのだ。

『ボストロール』『トロルキング』『トロルボンバー』、いずれも超える最強種。



主任「ダーク……トロ…ル……」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 16:45:16.04 ID:6JFLvN2lo<>
(動けない……)


主任「……ヒュー……」


(モンスターは全て根絶やしにしてみせる)

(そう、私はあの夜に約束したのに)


主任「ヒュー……」


(無理だ)

(私は死にたくない、死にたくないよ)

(いやだよ、助けて)


主任「は、は……ははは…………」ポロポロ…




ダークトロル「……戦う意志も無いムシケラか、つまらんなァ」

< ズシッ……



(逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ)

主任「はは…は……戦わなきゃ、たおさな……きゃ……」

(無理だよ逃げなきゃ死んじゃう、あの時に見た『あの人達』みたいな死に方はいやだよ)

主任「ひ、ヒャダルコ……」

(もう魔力もないのに、勝てるわけない)

(手が、せまってきてる……よ……)



主任「っ……! わあぁぁぁっ!!!」ガバッ




<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/30(火) 17:32:04.15 ID:6JFLvN2lo<>





───────── 【『兜割り』】!! ─────────

                   ドゥンッッ!!


    


< ズザザァァッ……!

主任「…………っ」ガタガタガタ…ッ

主任「……?」ガタガタ…ッ


(まだ……生きてる……?)

(なんで、誰が助けてくれたの…………)


< 「……」

< 「すんません、遅れました主任」


主任「え……?」スッ…

男「追いかけるの、遅くなってすいません」

男「時間は俺が稼ぎます……どのくらい稼げるかは分かんないッスけど、主任が逃げる時間はどうにかするんで」チャキッ

主任「お……男さん、生きてたんですか……」

男「酷いなその反応、いやまぁさっきの爆風で死にかけはしましたけどね」

男「まあとりあえず……行ってくれ、主任」

主任「…でも………私」ポロポロ…

男「……ほんと、ごめん、すいませんでした」


男「後は任せろ」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/31(水) 02:47:03.70 ID:z1EqKGVmO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/08/31(水) 10:39:35.79 ID:NtL6CiCjo<>
……突然の爆風によって巻き上がった土砂と樹木が殺到してきた時は、流石にそれまでの出来事を忘れて肝を冷やした。


ただ、おかげで頭の中がよりスッキリしたのも確かだった。

やるべき事も、その為に必要な物が何なのかも。

だから俺はこうして主任の前に立っている。


男「さて……」ギシッ

今日ほど手の中にある鋼の剣が頼り無いと思ったことは無い。

それこそ戦車とかミサイルが欲しい。


先程の爆風がこのボストロールらしきモンスターの仕業なら、まず勝ち目は無い。

そもそもの次元が違う。

まず第一に、さっき主任を庇う為に放った『兜割り』だ。

気配を探る様子も無く、倒壊した樹木の陰から一気に跳躍しての奇襲だったのだ、あれは。

それを何の冗談なのかガンダムみたいな巨体で瞬時に後方へ回避されてしまったのだ。


男(……話が違うぜ、おい)

男(じごくのよろいが嘘を言ったとして、そこにメリットは無い)

男(八魔将なんて如何にも低レベルじゃ勝てない相手の情報を偽ったって、意味無いだろうしな)

男(…………つまり、八魔将の存在を隠すだけじゃなく、対策すらされないようにしてやがったわけだ)




男(勇者対策か? にしても……トロル系ってのはこんなデカイのかよ……巨デブかと思ってたっての)

男(あの巨体で俺より速いとか……)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/09/01(木) 00:10:29.29 ID:Nuup6NYHo<> サイズ差で狙われ難いのがせめてもの利点か <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/09/01(木) 02:11:42.62 ID:1caPeOLgO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/09/01(木) 08:07:36.95 ID:7OaRX/6AO<> 乙
791はゲームやアニメの見過ぎだぞ。
サイズ差あるなら小さい方は大きい方より速く動けないと、攻撃範囲から脱出できない。
人間が蟻に攻撃しようとして、避けられるようなもんだぞ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/09/15(木) 08:41:18.49 ID:GJwfuElso<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/09/16(金) 01:23:13.10 ID:h5qfoOlK0<> どっかの16体の虚像ぐらいだったらワンチャンあったかもだけどなぁ。
トランザムしてるガンダムとなるとキツイか?
でも相手ガンダムみたいなやつなら、どうなんだろうか...w <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/09/17(土) 02:07:31.67 ID:yStdlPGTo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/10/01(土) 02:06:37.79 ID:xlXlMS8go<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/10/12(水) 17:12:41.45 ID:oPHNvqyJo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/10/14(金) 18:19:04.47 ID:j0xM/BZRo<>

ダークトロル「……お前、何者だァ」

< ズッ……ンッ

ダークトロル「ただの人間じゃ無いのは確かだ、てめえ……」


不意に、話し掛けてきたボストロールらしきモンスターを前に。

俺は思わず聞いてしまった。


男「もしかして見えてるのか、俺のレベルが……?」


  ズンッッ……


      ゴッッ!!!



───────── それが油断を誘う言葉だと気付くよりも先に、足元が揺らいだ。


男(マ…ジ……か……ッ!?)

反射的に全身を奮い立たせて右へ跳躍。

だが、それすら遅い。

黒い巨人が踏み込んできたと思った瞬間。

たったそれだけで、莫大な衝撃を撒き散らして俺の真横に巨体が飛んできたのだ。



────────── ズンッ・・・ゴゴゴゴォォッ!!



男「うぉおおおおぁぁあっ!!?」ブワァッ

男(速い、しかもただの体当たりがなんだこの威力……ッ!?)ドザァァッ…!


視界が二転三転と、地面とボストロールらしきモンスターを映しながら身体を打ち付ける。

頭に響くような鈍痛。

それを上回る化け物の脅威。

今このとき、俺は間違いなく追い詰められていた。


男(……けど、そこまで絶望的じゃない)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2016/10/14(金) 20:35:46.82 ID:j0xM/BZRo<>     ギュッ……
────────── ォォオンッッ!!


横殴りの暴風が迫るのが分かった時、俺は体勢を立て直す。

そちらへ視線を向ける事は諦めて祈るように再び宙へ身を躍らせた。


< ゴォッッ!!

男「ッ……!! 全力で避けても、飛ばされっ……っ!」ブワァッ

周囲に倒されていた樹木と土砂が巻き上がり、それらに弾かれるように俺も吹き飛ばされてしまう。


だがこれで、確認したい事は確認出来た。

当たり前だと言われればそれまで。

しかし『無駄撃ち』が避けられるならば、この状況から逃走する事が容易になるのだから。


< ガツッ……!
    ドサッ! ゴロゴロッ……ズサァッ…!

男「嘗めるなよ、ボストロールゥッ!!」バッ!


奴から受ける攻撃を悉く俺が回避できたのは、速さとは別に『大きいからこその出方』を予測出来たからに他ならない。

単純に考えれば見えてくる。

俺がこの八魔将から逃げ切るのに必要なのは ”” 視界から逃れる事 ”” が先決なのだ。

蹴るべき小石が視界から消えれば蹴るのを断念するように。




虫を踏み潰そうとして予期せぬ目潰しに会って見失うかのように。


男「『メラミ』ィィッ!!」


俺と巨人の八魔将の間に、十数メートルに伸びる業火の柱が立ち上る ────── !!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/10/14(金) 21:39:40.48 ID:BKduNcBAO<> 続きだ!

待ってました! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/10/14(金) 22:39:28.72 ID:Q3uWzGhYo<> ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/10/15(土) 09:11:48.47 ID:pkZ2Escpo<> おつ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2016/10/17(月) 00:47:10.57 ID:IelBXUjk0<> メラミが使えるようになるとか末期通り越してるんですけどなんて呼べばいいのか

おつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/03(木) 20:32:28.15 ID:9WFwGrNAO<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/12(土) 14:20:10.64 ID:8boie14go<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/22(火) 17:04:03.76 ID:GLtQWC7P0<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/12/02(金) 16:02:53.42 ID:eIpL/GFfO<> 早くしないと2ヶ月経っちゃうよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/12/10(土) 10:53:12.50 ID:FHqSIM9mO<> メラメラ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage-saga<>2016/12/14(水) 09:46:40.43 ID:+1xqEO1Go<>
< ザザッ・・・!!

男(走れ……! 動け、俺の脚……ッ!!)バッッ


炎の塔が立ち昇るその瞬間、身を振るわせて遮蔽物の陰を縫うように走り出す。

ゲームで見たメラミとは全く違う威力と派手さ、それを利用した目眩ましだ。

だが、勿論このまま真っ直ぐ背を向けて逃げるつもりはない。

主任が逃げた方向へこの巨人を誘導させてしまっては、元も子もない。

だから俺が取る動きは……!



────────── ズッッ・・・ンッ!!

ダークトロル「小癪な真似しやがって……ッ、ムシケラァァアッ!!」ドッッ!



男「っっ……ぅ、おおァッ!」
    < ドドドドッッ

大きく弧を描く事をイメージして、巨人の八魔将が飛ばした瓦礫の範囲から避ける。

衝撃が地面を揺らす。

雨で弛んでいた足下は最初の出現時での爆撃に更に、脆くなっていた。

踏み出す足が揺れに持って行かれそうになっても、俺は炎の柱が消えようとしている方へ手を向けながら続けて叫ぶ。

全力で踏み締め、逃げながら、虫の抵抗を見せるために……!


男「『メラミ』ッ!!」

空気を切り裂いて火球が撃ち出される。

それと同時に俺の頭に鈍痛が走り、目眩が一瞬起こる。


それだけではない、あの巨人の八魔将は俺が呪文を唱えたのに気付いたのだ。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/12/14(水) 11:28:23.82 ID:CFv98eOXo<> 更新来てた‼ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/12/14(水) 19:08:23.74 ID:qqTE4WLno<> 待ってた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/12/14(水) 20:47:33.43 ID:PBbJmzqNO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/12/15(木) 13:40:15.10 ID:/MZ59Ui+o<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/01/01(日) 11:03:09.49 ID:KdqPH7Wi0<> 今更だけどこれ異世界(が)転生モノなんだな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/01/12(木) 09:29:17.80 ID:2AxfC+lZ0<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/01/15(日) 11:20:29.95 ID:DCQwrXkTo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/01/26(木) 22:29:05.81 ID:D/Y+2SDt0<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/05(日) 20:22:31.17 ID:DWurn+MTO<> もうダメなのか? <>
◆3Jh764FmrU<>sage<>2017/02/18(土) 11:44:56.06 ID:TupET3LMo<> まだ落ちていないのが奇跡ですね……
少々仕事の都合と体力的な問題でまだ投下できそうに無いです、申し訳ない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/18(土) 13:34:28.87 ID:ISrwp9/Xo<> 待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/18(土) 14:44:41.22 ID:wOk7fIUzo<> 時間かかってもいいのよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/18(土) 17:11:57.38 ID:TEnzyEPs0<> 待てる
待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/18(土) 17:33:32.12 ID:VkG2e+TuO<> ゆるりと待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/20(月) 23:55:44.07 ID:sCLmiysM0<> o <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/24(金) 00:14:46.18 ID:TB6aLYY9O<> 生存報告だけはしてくれ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/02/27(月) 22:27:13.81 ID:slMNQWijO<> よかったまだ生きてたのか
舞ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2017/03/14(火) 18:17:03.61 ID:gyUXIrXxo<> ♫ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/27(月) 00:05:04.76 ID:F/cAI3who<> ♪ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2017/04/04(火) 01:12:27.38 ID:Hg/8W0V/0<> 待ってるよ <>
◆3Jh764FmrU<>sage<>2017/04/12(水) 01:21:47.93 ID:WKf19j0N0<> ひっそりと生存報告しておきます…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/04/12(水) 04:20:40.62 ID:5IpT3Mo5o<> よかったよ
いやほんとよかった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/04/12(水) 07:19:06.82 ID:9cjE0p7OO<> よかったよかった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/04/13(木) 21:31:54.05 ID:d0FY9QpGO<> 11楽しみね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/04/15(土) 13:16:51.50 ID:XPUA3Zoo0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/02(火) 23:27:09.70 ID:lZ4C6Kbbo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/05/29(月) 06:23:21.57 ID:rDNqhHElo<> 待ってる <>
◆3Jh764FmrU<>sage<>2017/06/10(土) 22:58:54.33 ID:IqwVIM6Qo<> 生存報告……ぐふっ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/06/11(日) 00:16:21.22 ID:8UJ/t2kzo<> 気長に待ってます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/06/11(日) 06:09:06.05 ID:unFzGjxLo<> ザオラル!ザオラル!ゆっくり待ってます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/07/08(土) 21:44:04.70 ID:TLHYs9mCo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/07/24(月) 22:17:37.27 ID:pr8cozNx0<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2017/08/08(火) 10:05:26.37 ID:AQb8T3two<> XYZ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/08/22(火) 21:01:46.33 ID:Wn6ZIsDOo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/09/15(金) 01:59:20.66 ID:qs07/1xjo<> まだかな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/10/05(木) 22:52:20.64 ID:1hA/2P9qo<> わくわく <> ◆XebqFQ51gc<><>2017/10/19(木) 01:09:14.00 ID:Et5py52d0<> まだかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/11/14(火) 01:08:18.21 ID:LzDwHAQZo<> わくわく <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/11/30(木) 16:08:21.33 ID:km3eKnyFo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/12/15(金) 21:29:23.98 ID:QilOyAmjO<> 読み直してきた
続き待ってるよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/01/09(火) 00:54:53.26 ID:nK9F92rko<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/01/27(土) 14:27:36.89 ID:gPG14Gm4o<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/02/17(土) 14:36:57.22 ID:AUQfyvVZo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/03/10(土) 00:18:24.87 ID:+iTIeAf1o<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/10(火) 10:44:47.32 ID:lmdZ5P17o<> 待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/29(日) 13:23:56.23 ID:4oZTCWN4o<> 待ってるよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/05/23(水) 22:37:31.13 ID:wAoBWblIo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/06/19(火) 21:30:54.23 ID:3Yesqlr+o<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/07/17(火) 02:09:59.81 ID:MoL4m1UXo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/08/08(水) 23:29:36.38 ID:xRhyn84wo<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2018/10/25(木) 01:19:56.20 ID:XBl9jsKA0<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/11/23(金) 23:31:48.95 ID:MKcSD5L3o<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/27(木) 04:13:11.18 ID:pA/QjLfCo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/01/15(火) 23:19:58.24 ID:GCyBQI8Co<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/02/15(金) 12:33:53.38 ID:1viG3/RiO<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/04/18(木) 21:35:17.74 ID:+2Zpp5zro<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/07(火) 22:19:54.38 ID:/JlY1PP0o<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/10(金) 23:07:59.11 ID:FMoLsFsGO<> まだ待ってる...‼ <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2019/05/11(土) 21:11:06.94 ID:sSOqQLyQ0<> これだったかな……(テス <> ◆3Jh764FmrU<>sage saga<>2019/05/11(土) 21:18:09.88 ID:sSOqQLyQ0<> 良かった合ってたけど上げてしまった。

未だスレが落ちていない事に驚きながらも生存報告&投下再開報告、
色々とプライベートが落ち着き、スレのサルベージしつつ戻って来ました。

いつの間にかDQも11作目になってたりと、当作でその辺大丈夫か気になってプレイして来た感じあまり問題無さそうで一安心。
明日以降から大体2万字程度進めて行きます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/11(土) 22:15:56.75 ID:3e6AQm9vo<> 生き返るとは思わなんだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/11(土) 23:10:59.31 ID:agd5GTkbo<> 待ってたよ
めっさ嬉しい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/12(日) 14:40:46.08 ID:Cc0GRAIDo<> 楽しみにしてる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/12(日) 21:18:47.10 ID:XMfOVd6Ro<> うおぉぉ 待ってました <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/13(月) 00:48:00.81 ID:+Iiz2yuIo<> 待ってたー!
保守しまくって本当に良かった… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/13(月) 02:43:39.51 ID:QcSAP2MDO<> 上がったところでこのSSの存在を知った新規ですが応援しています
ベホマスライムが癒される <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/13(月) 21:31:56.72 ID:uW9y6ZVRO<> 生き返るとはたまげた
楽しみ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/15(水) 12:01:44.11 ID:TzTdChCKO<> これで令和も生きていける <>
◆3Jh764FmrU<>sage_saga<>2019/05/16(木) 21:29:29.31 ID:pPzhPuANO<> こんな古いスレに人が……!お待たせして申し訳ない。
かつての端末とは違い、今の環境に合わせて編集してるので暫しお待ちを(今夜辺りから行けそう)

テスト投稿を兼ねたアナウンス。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/16(木) 23:12:38.91 ID:cmi01UnDO<> こちらは余裕で待てる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/17(金) 08:46:50.36 ID:oxtG5/c1O<> はよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/05/17(金) 22:26:09.50 ID:BMvwloBoO<> 復活してくれて嬉しい
早く読みたい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/06/01(土) 14:52:17.67 ID:TL4qAVaVO<> 生きてるかー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/07/01(月) 19:17:09.63 ID:ySAUqb8NO<> 保守 <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2019/08/04(日) 09:47:01.65 ID:QH+DGF2Ro<> 正直、作者があまりベラベラ喋る物じゃないと思っていたから言わなかったけど、
今の私は端くれ程度ではあるけど商業で執筆活動してたりします。
色々な世界に触れる機会があったり今後に期待させられる話が多かったりする中、
先日の劇場版ドラクエを観に行って色々とクる物がありました。良い意味でも悪い意味でも。

本当は書き溜めてから投下するつもりでしたが、ちょっとこの後のんびり低速(プロットに沿って即興執筆)気味に投下していきます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/08/04(日) 11:30:08.06 ID:aBzIuzsVO<> おお!そりゃめでたい話だ
名前言えんだろうからそっちは追えないだろうが、このSSはのんびり待つからいつでも書いてな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/08/05(月) 09:06:32.41 ID:S+JATNGgO<> おぉ 待ってました
宜しく頼んます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/09/03(火) 21:50:59.97 ID:nY1lU6D7o<> 5年の間かな?地道に頑張って下さい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/10/02(水) 19:13:52.81 ID:7Pz4Go96O<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/12/06(金) 12:19:51.93 ID:ADIQ+hpQO<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/12/22(日) 01:10:17.78 ID:UXfZp4Yc0<> ダイの大冒険再アニメ化だってよ!こっちも頼むぜ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2020/01/22(水) 10:02:10.11 ID:2Ct3DcsIO<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2020/05/12(火) 01:26:17.15 ID:bXT41yJoo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2020/07/10(金) 21:28:23.40 ID:4Etqj/oQ0<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2020/10/17(土) 12:05:58.34 ID:athwBqKkO<> 待ってる <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2020/12/05(土) 14:57:48.09 ID:Uzc0WNP5O<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/01/13(水) 00:21:45.98 ID:zzMTi/q5O<> ほっしゅどぽてと <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/03/02(火) 19:11:03.98 ID:e33fF+rhO<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/04/16(金) 00:38:29.24 ID:B2b9W+PHo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2021/04/16(金) 21:04:26.20 ID:Da1vrUHd0<> あ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/05/16(日) 20:53:50.85 ID:frA6DACz0<> ほ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/05/30(日) 21:28:16.35 ID:6aYzsMRf0<> ほ <>
◆3Jh764FmrU<>saga<>2021/09/07(火) 04:49:46.36 ID:8g1Ib9ct0<>

< ヒュッッ……ゴォッン!!


 視界が暗転した。

 全身を何かに打って、何が起きたかも認識出来ぬまま。

 俺は遠くで鳴り響く轟音を聞いていた。


男(ッ……!!)


 呼吸を忘れていた自分に気付き、それから喉の奥から鉄臭い何かを思い切り吐き出す。

 不意に視界に映った自身の右腕を目で追えば、鋼の剣が砕けている。

 俺は降り注ぐ雨粒に溺れる様に――胸の奥で鋭い痛みを感じながら急いで立ち上がろうとした。

 だが、足が動かない。


男(……あ)ゴポォッ
          ビチャッ…ビシャァッ!


 無かった。

 俺の左足は、膝から下が。

 俺の右足は、太腿の辺りから捻れて背中の下敷きになっていた。

 ぺたぺたと手探りにそれら事実を確認した俺は、次に胸元を貫く木片に気付いた。

 どうにも気付けば、折れた鋼の剣を握っていた俺の手は震えていた様だった。


ダークトロル「一発で壊れちまったなァ……虫ケラァ?」

< ズシィン・・・!

ダークトロル「こっちに来て最初に闘り合った相手がお前で良かったぜェ」

ダークトロル「本物の『虫ケラ』だってよく分かったからなァ! グフハハハハ!!」


 土砂の山に倒れている俺を見下ろす黒き巨人。

 俺は化け物の手に先程まで無かった、長大な棍棒を見つける。

 それから何が起きたのかうっすらと察しがついた、恐らく俺はあの棍棒を投擲されたのだ。

 メラミを吹き消す様な怪物の膂力で投げ放たれた巨大な石の塊は、容易く俺を破壊して見せたのだろう。

 目が見えない。

 感じるのはダークトロルの笑い声による振動と、痛む手足を打つ雨粒だけだった。
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◆3Jh764FmrU<>saga<>2021/09/07(火) 04:51:01.57 ID:8g1Ib9ct0<>

男(……死ぬ、のか)


 喉の奥からまだ溢れ出る血液に溺れる様に、俺は息を吐いた。


男(こんな……俺……は…………)


 冷たい水に浸かるような感覚。

 今際に感じる物は寒気だと聞いた事があるが、全然違う。

 これは別の何か、違う場所に落ちる感覚だ。


男(……主任)

男「…………ごめん」


 力を抜こうとするが、どうしても痛む部位が強張ってしまう。

 いつの間にかダークトロルの声も聴こえなくなって来た頃、俺は次第に呼吸する事を諦めていった。

 体の奥が冷え切って行くのを感じながら、俺は暗闇に落ちて――――



「目を、目を覚まして下さい……!」



 ――――暗闇に落ちて行く最中、突然ハッキリとした少女の声が聴こえて来た。




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◆3Jh764FmrU<>saga<>2021/09/07(火) 05:13:39.68 ID:8g1Ib9ct0<>
 声の主が誰かは分からない。

 主任でも無ければ、店員でもない。

 女さんでも無い様だった。


「戦士様、目を覚まして……っ」


 誰かが俺の体を揺さぶっている気がする。

 だがその手は震えていて、俺の怪我を気にしているのか遠慮がちだ。

 起きてあげたいとは思うが……何も考えられない。



「お願いっ……消えちゃ駄目……」


 そういえば雨の音が聞こえなくなっている。

 だというのに、何故この少女の声は聴こえるのだろうか。

 そもそもこの場にはダークトロルがいたはずだ。

 ここは危ない。

 家に帰してやらないといけない。

 それには、どうすればいいのだろう。


「…………!」

「まだ、あなたは捨てていないのですね……戦士様っ」

「ああ精霊ルビスよ……どうか私に今一度、勇気をお与え下さい……!」


 立ち上がらなければ。

 起きなければ、ならないのに。

 なぜこんなに俺は眠いのだろう。


「聞こえますか……戦士様」

「ごめんなさい。私は未熟者だから……どうしてもあなたを蘇らせるのに"チカラ"が足りませんでした」

「けれど、私は……っ! あなたのおかげで今ここに、この決戦の刻に立っています!」

「本当ならばあの日……あの時、私は同胞たちと同じく消えている筈でした」

「ごめんなさい……ごめん…なさいっ……! ずっと、助けられなくて。あなたがたを救えなくてっ」


 ………………俺……は。


「だから、私の命をあげます」

「きっとそれが私の使命だったんです」

「……どうか負けないで下さい、闇は深く……冷たく恐ろしい。けれどそれに打ち勝たなければならないのです」

「……っ」






「あたたかいシャワーを貸して頂き……ありがとうございました」




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◆3Jh764FmrU<>saga<>2021/09/07(火) 05:24:57.82 ID:8g1Ib9ct0<>

―――― ズゥゥ・・・ンッ……!!


地獄の鎧「……我が右腕よ」

ベホマスライム【ホヨヨー!】グッ

地獄の鎧「ああ、私も充分回復した」

地獄の鎧「感謝する」ガシャッ


ポニテ「で、でもおじさん……本当に行くの!?」


地獄の鎧「破壊の中心地に我が同胞がいる」

地獄の鎧「敵は強敵だ。恐らくは……既に死んでいる事もあるだろう」


ポニテ「無茶だよ! ラジオで聞いたもん、機動隊や自衛隊が壊滅したって……! どうしてそうまでして助けに行くの!?」


地獄の鎧「どうしてか、だと?」

ベホマスライム【ホヨッ!】フルフル

地獄の鎧「その通りだ、我が右腕よ」

地獄の鎧「娘よ、貴様は知らんだろうがな……『仲間』が助けを求めていれば、そこへ駆け付けるものなのだ」


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◆3Jh764FmrU<>saga<>2021/09/07(火) 05:42:46.62 ID:8g1Ib9ct0<>

―――― ドゴォォ……ッ!!


機動隊員A「三佐……! どうなさるおつもりです!?」

三佐「ただの職務放棄だよ」カシャンッ ジャコッ!

機動隊員A「そんな骨董品で実弾撃てるんですか? ……じゃなくて! 何を考えてるんですか、たった一人で九九式なんか持ち出して!」

三佐「ドローンの映像は見たろ? あそこには民間人がいる」

三佐「司令部への通信は依然として途絶。隊の過半数が重傷を負っていて、弾薬は殆ど尽きた」

三佐「こんな俺達が民間人の救出に向かってもどうしようもねえ、だったらこの中じゃ『レベル』の高い俺が一人で行った方がマシだ」

機動隊員A「指揮はどうするんです!」

三佐「……指揮を執ってどうするんだ、あのとんでもない化け物が出た世界で。同じ様にやるつもりか?」

機動隊員A「錯乱してるんですか、三佐!」

三佐「俺はあの公園で戦ってる馬鹿野郎を助けに行くだけだ!!」ガッ

< パシッ!

機動隊員A「だったら俺も行きます。俺の方が……その、レベルは高いですし」

三佐「……」

< スッ

三佐「仕事の引き継ぎ、頼んだぜ」

機動隊員A「いやちゃんと上司の貴方が説明してって下さいね!?」

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◆3Jh764FmrU<>saga<>2021/09/07(火) 06:13:16.84 ID:8g1Ib9ct0<>

 ――耳元で鳴り響く水飛沫の音。


男「……う、ぁ……?」パチッ


 口の中に入り込む雨粒を吐き出すように、俺は喉の奥に溜まっていたものを吐き出した。

 濁った血液が地面の泥に混ざり、雨によって流されて行く。

 暫しの後。

 俺は肺に吸い込む空気によって脳を活性化させ、開きかけの目蓋を完全に見開いて顔を上げた。


男「は……!?」ガバッ


武闘家?「……!」バッ

武闘家?「目を覚ましたか……! おい、立てるな!?」


 目を開けた先に見えたのは壮年の男の背中だ。

 何の文字かよく分からない紋章を背負う道着姿の男は、全身の所々に金属製らしい防具を身に着けている。

 立ち上がるように指示する彼を、俺は知らない。

 だが倒れ伏せていた俺に手を伸ばした壮年の男の表情は必死だ。


武闘家?「僧侶の……アイツが命を懸けて救った命だ。意地でも生き延びて貰うぞ!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/09/07(火) 20:45:29.12 ID:eosqiml1O<> >>1おかえり!
待ってて良かった
さて、最初から読み直して来るかな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/09/13(月) 00:37:36.17 ID:Ps/XN5Tm0<> 乙乙
覚えててくれて嬉しいよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/09/14(火) 07:28:37.41 ID:KzkzG+4wO<> おーーー!お帰りー!
この時を待ってた! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/09/23(木) 12:46:05.10 ID:WR0TRmCGO<> おかえりー!続き期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2021/10/20(水) 13:39:23.44 ID:fP8LzkIbo<> 来てた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2022/01/14(金) 00:34:48.37 ID:RoXlPlUlO<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2022/04/15(金) 21:31:31.98 ID:Rp4zjGlRo<> 保守 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2022/05/19(木) 20:00:56.88 ID:W3Y/MGDhO<> 保守 <>