暗黒史作者 ◆FPyFXa6O.Q<>saga<>2016/01/03(日) 02:35:32.02 ID:FQv2s0UF0<>Happy New Year!!!

………何と言いますか、すいません。
別スレに手を出して、
そろそろ平行作業入れるかと言う矢先に作者の私的な機能停止とスレ落ちと言う次第で。

改めまして、本作は

「魔法少女まどか☆マギカ」



「とある魔術の禁書目録」

及びその外伝のクロスオーバー作品です。

前スレ
ほむら「幸せに満ち足りた、世界」2(まど☆マギ×禁書)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435465986/

過去スレ
ほむら「幸せに満ち足りた、世界」(まど☆マギ×禁書)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419447208/

二次創作的アレンジ、と言う名の
ご都合主義、読解力不足

分野によっては考証を勘と気合で押し切る事態も散見される予感の下、
まあ、数学とかもアレな世界だしとか若干の言い訳をしたりしなかったり

本作第二部の続きとなります。

年始特番的なノリとタイミングでまずは区切りのいい所まで投下、出来たらいいなと。

それでは今回の投下、入ります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451756131
<>ほむら「幸せに満ち足りた、世界」2.5(まど☆マギ×禁書) 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 02:41:33.13 ID:FQv2s0UF0<> ==============================

 ×     ×

土曜日、上条恭介は、
ホオズキ市内の屋敷の正門でインターホンを押していた。
恭介の自宅も見滝原市内では立派な部類に入るのだが、
目の前の屋敷は明らかに一つ上の存在感を放っている。

「はーい」
「あの、上条です」
「今、開けるから入って」

電子ロックを解除され、恭介は正門から玄関に進みインターホンを押す。

「どうぞー」

恭介が扉を開き、玄関に入る。

「こんにちは」
「いらっしゃい」

そんな恭介を、奏遥香が出迎える。
その美少女の眩しい笑顔は、
同年代の少年のハートであればまず一撃食らわせる事が出来る威力。
恭介も又、特技以外、そちらの感性に於いては只の平凡な中学生に他ならない。

「上がって」
「お邪魔します」

促され、恭介は邸内に入る。
手入れの良さそうな長い髪に白いワンピースの遥香は、
いかにも清楚なお嬢様と言った雰囲気。
と、言語化できるかはとにかく、恭介の感性にそう響く。
案内された先で、恭介は促されるまま応接セットのソファーに掛ける。

「お待たせ」

声と共に、どこか温かで甘酸っぱい香りが漂う。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 02:46:48.70 ID:FQv2s0UF0<>
「どうぞ。アップルティーとタルト・タタン」
「いただきます」
「どうかしら?」
「美味しいです」

当然と言うべき返事だったが、それは素直な本心。
少なくとも、素人としては十分な技量に基づく一品だった。

「良かった。丁度いい紅玉があったから」
「美味しいです」

美味しい林檎のスイーツをもぐもぐいただきながら、恭介の記憶にふと触れるものがあった。
ごく最近の記憶であったが、それを口には出さない。

出さなかったのはたまたまに過ぎない、
と言うぐらい、些か疎い向きのある恭介であったが、
そこは結果良ければ全てよし。

その間に、遥香は部屋のカーテンを閉じる。
カーテンを閉じて薄暗くなった室内で、
用意を終えた遥香は恭介の隣に座っていた。

 ×     ×

至福の時間が過ぎ、恭介はふーっとも、ほーっともつかぬ息を吐いていた。

「良かった」
「はい」

遥香の言葉に、恭介は応じた。

「もう一杯、お茶を用意するわ」
「いただきます」

立ち上がった遥香が、今度は普通の紅茶を用意して戻って来る。
少なくとも、一山幾らで湯の中に糸で吊るす類の紅茶でない事は確かだ。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 02:52:15.33 ID:FQv2s0UF0<>
「まだ誰もが無名だった学生時代、
友人の自主製作映画にグループで演奏に加わった。
今となっては、映画も、音楽も、とてつもないとしか言い様のないメンバー」

「やっぱり、素晴らしかったです。
後から見たら粗削りで稚拙な所があっても、
でも、勢いがあって力強くて、何よりも面子が信じられない」

ホームシアターで、まだ頬の紅潮が見える様な恭介の言葉を聞きながら、
遥香はにっこり頷いた。

「商品化の話は何度もあった。
だけど、権利関係の問題とかでどうしても叶わなかった。
関係者と仕事をした伝手で姉さんが持っているのを最近知って、
上条君なら絶対食い付いて来るだろうって」

「ありがとうございましたっ!」

ソファーに掛けたまま深々と頭を下げる恭介を、遥香はくすくす眺めていた。

「と、言う訳で、姉の七光りだけどね。
それでも喜んでもらえて光栄です。
何より、将来有望な上条君がこれに触れる事が出来て、
姉さんに頭を下げたかいがあった」

「そう言えば、カナタさんは?」
「お仕事よ。両親も揃って文化事業の会合に出席してる」
「そうですか」
「………そろそろかしら」
「?」

遥香が閉てた指を唇に当てる。
それと共に聞こえてきたのはヴァイオリンの音色。
弾き手も、その録音を伝える機材も素晴らしいの一言。
再び、恭介は潤んだ目を見開き、頬を紅潮させた。

「………やっぱり、凄い………」

演奏が終わり、ほーっと息を吐いた恭介がぽつりと言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 02:55:41.52 ID:FQv2s0UF0<>
「そうね」
「音質を気にしなければ大抵のものは聞けますけど、
やっぱりこうやって聞くと………」
「聴いた事、あった?」

遥香は、やや意外そうに尋ねた。

「ええ。………版ですけどCD持ってますから、
時間があったらよく聞いています。
でも、この版をこの設備で聴けるなんて、最高です」

「それは良かった。でも、流石ね。
それですら、中学生で持ってる人なんてまずいないでしょう」
「そう、ですね………」

何か思い出した様な恭介の少々やんちゃな笑みを、
遥香は横で少し眩しそうに眺めていた。

「上条君」
「はい」

遥香に呼びかけられ、ソファーに隣同士で座りながら、
恭介と遥香は互いに横を向いて正面から顔を見合わせた。

==============================

今回はここまでです>>-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 12:49:26.21 ID:FQv2s0UF0<> 引き続き今回の投下、入ります。

==============================

>>5

 ×     ×

「次は、何がいいかしら? そうね………」

言いかけた所で、
二人はしんと静まっていたホームシアターに響く物音に気付き、そちらを見る。

「ただ今」
「姉さん」
「カナタさん」

ドアを開いて現れたのは、スーツ姿の奏可奈多だった。

「やっぱりここにいた。まだ、映画の途中だったかしら?」
「映画の後の音楽鑑賞会」
「そう、じゃあカーテン開けましょうか」
「そうね」

遥香の返答を聞き、可奈多がシャッとカーテンを開ける。

「こんにちは、上条君」
「はいっ! 素晴らしいものを聞かせていただいて、ありがとうございましたっ!」

可奈多から魂を根こそぎ奪い尽くさんと言う魅惑の微笑を向けられ、
恭介は直立不動から一礼していた。

「姉さん今日仕事だって」
「ええ、だから仕事して帰って来たの。
一日かかる様なものじゃないわ」

「そう」
「上条君これから暇?」
「え?」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 12:54:30.56 ID:FQv2s0UF0<>
 ×     ×

奏可奈多の運転する車は、コインパーキングに駐車した。
可奈多を先頭に、車を降りた遥香と恭介は駐車場を出て少し歩く。
ちらほらと食堂や飲み屋が見える街並みを歩き、
ビルの入り口からそのまま地下への階段を下りる。
ドアを開けると、強烈なフォーンが三人を歓迎した。

「やあ、いらっしゃい」
「こんにちは」

ドアの向こうの喫茶店で、可奈多、遥香と初老のマスターが挨拶を交わす。

「ジャズ喫茶、ですか?」
「そう、来た事あったかしら?」
「いえ」
「そう。ま、そっち座ってて」

可奈多と恭介が言葉を交わし、恭介と遥香は促されるままにボックス席につく。

「ブラッドオレンジジュース、あなた達は?」
「私もそれでいい」
「僕も」
「ブラッドオレンジ三つとソルトピーナッツ」
「はいよ」

マスターが気さくに応じ、用意を始める。
恭介が改めて周囲を伺うと、ジャズ喫茶とはこういうものかと、
なんとなくイメージ通りにも思える。
結構な音量のジャズレコードが響き、ぱらぱらと客も入っている。

「お待たせ」
「有難うございます」

出されたものを摘みながら、
恭介は折角の機会なのでレコードに耳を傾ける。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 12:59:48.80 ID:FQv2s0UF0<>
「上条君」
「はい」

遥香が、そんな恭介を正面から見て声をかけた。

「上条君、
私がクラシックだと姉さんにかなわないからジャズを始めた、
って思った?」
「え? えっと………」

「ふふっ、正直ね。ま、そういう所が全然ないとは言わない」
「………」
「このお店、父と母の青春の場所なんですって」
「じゃあ、この店に二人で?」

「そうみたい。
もう随分昔の事ね、私もピアノで煮詰まってた時、
察してくれたのか、父が私をここに連れて来てくれた。
麻疹、お蔭で大分良くなったわ」

「そうですか」
「大体、この間聞いたでしょう。
ジャンルを変えたぐらいでどうこう出来る人じゃないって」

ついっと遥香が視線を向けた先では、
二人に背を向ける形で、可奈多がマスターと立ち話をしている。
確かに、それだけでも圧倒的なオーラが伝わってくるのだから仕方がない。
そのマスターが、ボックス席に近づいてきた。

「上条恭介君」
「はい」
「見せたいものがあるんだけど」

遥香が小さく頷き、恭介は立ち上がる。
マスターに付き合い、店内の一角に移動する。
そこで渡されたものは、恭介にとっては馴染み深いケースだった。
マスターの視線を追うと、そこには写真立て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 13:05:10.64 ID:FQv2s0UF0<>
「これって………この店ですよね?」
「ああ、学生時代からの常連さんだ。
今でも時々弾いていく」

恭介は、自分が知っているのよりもずっと若い、
恭介とは畑違いであるが好感を持っている
女性ジャズヴァイオリニストの写真を眺めてからケースを開く。

「………いいですか?」
「ああ、カナちゃんの紹介だからね」

恭介がケースからヴァイオリンを取り出し、弓を弾く。
高価なものではないが、
十分に手入れされ弾き込まれている、温かで好感が持てる出来だ。

その時、ぱち、ぱち、ぱち、と、店の客から拍手が起きる。
恭介がその気配を追うと共に、
いつの間にかレコードは止まり、その代わりに生のピアノ演奏が店内を席巻する。
演奏者は奏遥香、恭介と初めて会った時、最初に弾いていた曲、ではあるが、

「驚いた?」

そう、恭介に声をかけたのは奏可奈多だった。

「あの娘、外ではあの曲ちょっと女の子っぽく弾くでしょう。
だけど、本当はこの方が好きだし得意なの」

そして、それは恭介もそうなのかも知れない。
スタンダードで、男性的な程に挑む様な力強さ。
遥香の演奏は力一杯恭介の感性に迫って来る。

「昔はちょっと引き気味だったんだけど、
あれで結構負けん気強いからね。
それを御するってなると大変だよ。
だが、それがいい」

腕組みしてうんうん頷く可奈多の言葉そのままに、
ぐいぐい引き付ける激しくも艶やかな演奏はあっと言う間に過ぎていく。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 13:08:28.04 ID:FQv2s0UF0<>
「Attention please」

一曲弾き終えた筈が、
何か同じ曲の前奏の様なものを弾きながらそうコールした遥香と恭介の目が合った。

元来、上条恭介は些か気難しい所もあるが荒々しいタイプの少年ではない。
或は、身近な女の子の方が力強いタイプだったため、
自然と逆に性格が触れたのかも知れない。
だが、それでも、ここは譲れない、と言うものは持っている。

ピアノの側に歩を進めた恭介に、
奏姉妹は不適な笑みをもって応じる。
再び、力強い演奏が始まった。
力強くも繊細で、艶やかでいて男性的な二重奏は、
拍手喝采を以て店中から迎えられた。

 ×     ×

「今日はありがとうございました」
「こちらこそ、いいものを聞かせてもらったわ」

ビルの入口近くで、恭介と可奈多が言葉を交わす。

「ちょっと済ませたい用事あるんだけど、
何なら二人で先帰ってくれるかな?
この辺ならこの娘が案内できるから
それとも、やっぱ先に送った方がいい?」

「私は構わないけど、上条君は?」
「ええ、僕も大丈夫です」
「そ、じゃ、悪いわね」
「有難うございました」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 13:12:42.28 ID:FQv2s0UF0<>
 ×     ×

逢魔が時、魔を狩る二人の少女が、ホオズキ市の繁華街周辺を見回っていた。

「あーあー、どうせだったらさっさと見つかんないかなぁ」

本日の反応の鈍さに、成見亜里紗が腕を頭の後ろに組んで声をあげる。
その側で、詩音千里はふうっと小さく嘆息して歩を進める。

「?」

その千里がふと足を止め、亜里紗がそれに気づく。
ぱちくりと瞬きする千里の視線を亜里紗が追った。

「あれって?」
「………」

亜里紗が、通りの向こうに見える、
見覚えのある先輩を交えた二人組に目を凝らす。

「へぇー、もしかしてなんかいい感じ?」
「………」

 ×     ×

奏遥香にバス停まで案内してもらい、
上条恭介は無事見滝原の帰路に就いていた。

「上条君」
「ああ、志筑さん」

もうすぐ自宅、と言う路上で、恭介は志筑仁美と遭遇した。

「お出かけでしたの?」
「うん、ちょっとね」
「そうでしたか………」
「じゃ、明日………明後日、学校で………」
「はい………」

挨拶を交わし、恭介はすれ違い歩を進める。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/03(日) 13:16:22.97 ID:FQv2s0UF0<>
「………お待ち下さいっ!」
「?」

叩き付ける様な声に、恭介は振り返る。
その恭介に、びっ、と、何かが差し出された。

「明日、あすなろプールのリニューアルオープンでチケットが手に入りましたの。
それで、是非上条君とご一緒に………」
「………」
「ごめんなさい、コンサートも近くてお忙しい時でしたわね」
「いや」

仁美は、意外な声を聴いて視線を上げた。

「明日だよね」
「はい」
「うん、一緒に行こう。
明日は自主練だけだから少しそういう時間も欲しかった」
「本当ですの?」

疑う訳ではないが、嬉しさ故に確かめずにはおれない。

「うん」

それは、仁美が手と手を組んで歌い上げたくなる様な恭介の微笑みだった。
さあ、帰宅したら改めて吟味しよう。
それは、戦いに挑む鎧、武器であると共に戦場の華。
決して後悔等しない様に、未だ十分には程遠くても、
女の知恵の粋を尽くす今がその時。

==============================

今回はここまでです>>6-1000
続きは折を見て。 <> 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします<><>2016/01/03(日) 16:29:37.21 ID:FLseByhfO<>  【このスレは無事に終了しました】

  よっこらしょ。
     ∧_∧  ミ _ ドスッ
     (    )┌─┴┴─┐
     /    つ. 終  了 |
    :/o   /´ .└─┬┬─┘
   (_(_) ;;、`;。;`| |
   
   【放置スレの撲滅にご協力ください】  
   
      これ以上書き込まれると

      過去ログ化の依頼が

      できなくなりますので

      書き込まないでください。


            SS速民一同
 【糞スレ撲滅にご協力ください】 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/22(金) 00:34:56.12 ID:iGnM/Ek50<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>12

 ×     ×

「もしもし」

日曜日午前、上条恭介は、待ち合わせ場所に向かう途中で
自分のスマホに一本の電話を受けていた。

「もしもし、上条君?」
「志筑さん」
「ごめんなさい、朝稽古の帰りに電車の事故がありまして、
少し遅れそうです」

「どれぐらい?」

取り敢えず、待ち合わせ場所と時間は折り合う事が出来た。

「申し訳ございませんが、先に入っていて下さいまし」
「うん」

 ×     ×

「おーい」

そういう訳で、本日リニューアルオープンのあすなろ市内の総合遊泳施設、
通称あすなろプールを一足早く訪れた上条恭介は、
さてどこで泳ごうかと動き出した頃合いで、呼びかける声を聞きそちらに顔を向ける。
そちらでは、ビーチチェアの上から、水着姿の女性が口元に笑みを見せて手を振っていた。

「よっ」
「あ、どうも」

鹿目詢子は、ラベンダーカラーの水着姿で、
ビーチチェアの上でサングラスをずらしてニッと笑う。
恭介もなんとなく知り合いだと思い当たってはいたが、
それを見てようやく頭で理解する。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/22(金) 00:40:22.47 ID:iGnM/Ek50<>
「上条君も来てたんだ」
「はい。おばさんも」
「ああ、ファミリー券もらったからね」

「じゃあ、まどかさんも?」
「いんや、まどかは先に友達と予定入れてたとかでさ、
だから今日はまどか抜き」
「そうでしたか」
「さて、と、あたしも日向ぼっこはこの辺にしとくかな」

そう言って、詢子は右腕を掲げ、んーっと伸びをする。

「ああ。ま、まどかと仲良くしてやってくれよ」
「はい」
「………一応言っておくが、
仲良く、って言っても節操持ってだからなモテ男。
まあー、まどかもそんなネタになるぐらい色気づいてくれりゃいいんだけど」
「あははは」

割と古い知り合いの、元々がむしろ恭介自身より男っぽいのではと言う
陽性の友人の母親にからりと言われ、恭介も笑って受け流す。
それを見て、詢子も微妙に戦闘的な笑みで釘をさす。

「おーい」
「まーまー」
「それじゃあ、僕は」
「ああ」

踵を返す恭介が軽く手を挙げ、
愛する家族の声を聞いた詢子はビーチチェアから軽く飛び降りる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/22(金) 00:45:51.71 ID:iGnM/Ek50<>
「あれでコブつきかよ」
「上級者向けだな」

プールサイドで立ち上がり、んーっと伸びをした詢子を見ながら、
プールの中では小さく毒づいた後輩にショウさんがふっと戦闘的な笑みを浮かべる。

仮想ターゲットは、どこぞのバリキャリと言っても通用するであろう、
さっぱりと活動的なショートボブも好印象のいい女。
通用する、と言うか、と言う辺りは知らないのだから仕方がない。

ショウさんに言わせれば、まず、お子さんがいる様には見えませんね、と言う事になるだろう。
但し、その点で詢子の家族構成を完全に知れば、流石のショウさんも少々驚いて
七割本気を120%本気に引き上げてその称賛を言ったかも知れない。

水着のデザインは、前から見るとホルタービキニの上下を同じ布で繋いだ様なもの。
小娘一捻りの力強さと見た目二十代もアリかも知れない若々しさを兼ね備えて、
両サイドのざっくり抉れたモノキニに近い水着を
無理すんな感を欠片も見せずに着こなして見せている。

価値はある、と、上級者たるショウさんは確信するが、
リスクから言っても今はその時ではない、となる相手だ。
何よりも、とっかかりとなる欲求不満が欠片も見えない。
ここは、その野郎に敬意を表し引き下がる所だ。

 ×     ×

「あらあら、降りられなくなったのかしら?」

あすなろプールの一角で、水着姿の宇佐木里美が、
結構高い立ち木の前に立って何やら話しかけている。
誰かがそれを聞いていたならば、
独り言を言っている様にしか聞こえなかっただろう。
里美の視線の先には、見上げた先の枝に蹲る子猫の姿が。

友達と遊びに来たと言う事で、今の里美は水着姿。
簡単に言えば、彼女の魔法装束のスカートをフリル程度にバッサリ切って、
ノーマルタイプのワンピース水着の下半身と合体させた様なデザイン。
基本、木登りには余り向いている格好ではない。

だからと言って、割と人通りもある中、この用件で変身、
と言うのも流石に気が引ける。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/22(金) 00:51:15.59 ID:iGnM/Ek50<>
「踏み台でもないかしら」

里美は、困った顔できょろきょろと周囲を見回す。

「これでいいですか?」

そんな里美の背後から話しかけたのは、
プラスチックの酒函をぶら下げて現れた上条恭介だった。

「あら、有難う」

里美は函をあっさり受け取ると、木の下に函を置いて立ち上がる。

「大丈夫、こっちよ。おいで」

そして、腕を伸ばして優しく呼びかける。
動物の扱いに慣れてそうだ、と、恭介がなんとなく感じる話し方だ。

「うふふっ」

そして、子猫は恐る恐る下へと移動し、
にゃんころりんとばかりに木から飛び降りて、
そのまま着地した里美の胸元で抱き留められた。

「良かった。もうあんまり危ない事しちゃ駄目よ」

優しく語り掛けるその姿を、本当に猫と話している様だ、
と、恭介は微笑ましく眺めている。

「ありがとう、手伝ってくれて」
「いや、大した事は」

胸に猫を抱いたままにっこりと礼を言う里美に恭介が応じる。
実際の所、もうちょっと早く事態を把握していたのだが、
それなりに優しい少年であると同時にコンサートを控えたヴァイオリニストの卵として、
素性も気性も知れない猫の相手は躊躇していた、と言うのが実際だった。

「里美ーっ」
「それじゃあ」

そして、里美は遠くで呼びかける声を聴き、その場から立ち去っていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/22(金) 00:54:59.16 ID:iGnM/Ek50<>
 ×     ×

「ふーっ」

ひと泳ぎしていた恭介がプールサイドに手をついて水からあがる。
えらい美人がそこにいた。
恭介の目の前では、しゃがみ込んだ奏可奈多がにこにこ笑って水から上がる恭介を見ていた。

「はぁい」
「カナタさん」

立ち上がる恭介に合わせて、可奈多も立ち上がって軽く手を挙げた。

「やっぱり上条君」
「ハルカさんも」

その側から、奏遥香も恭介に声をかけた。

「今日は二人で?」
「姉さんは仕事」

恭介の問いに遥香が答える。

「ここのリニューアル、姉さんも仕事で少なからず関わってるの。
だから、さっきまでちょっとインタビュー受けてたの。
若干読者サービス入りの記事になるわね」

遥香が言い、共に水着姿の姉妹でふふっと笑い合う。

確かに、奏可奈多はこの世に似合わないものを探す方が難しい
抜群のプロポーションを備えた最強クラスの美人であるが、
今日はクラシックコンサートのドレスを思わせる濃いワインレッドのワンピース水着。

ドレスを基に例えるなら、スカートをばっさり切って
シースルーのミニスカート状態に変換し、その下はハイレグのワンピース。
可奈多の大人の美女の魅力を一欠落とて殺す事はしていない。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/22(金) 00:58:07.45 ID:iGnM/Ek50<>
「ハルカさんは?」
「うん、これからちょっとお友達と。
姉さんがこっち来るって言うから送ってもらったの」

そう言って遥香はにっこり笑う。
遥香の方はトップスがクリーム色ボトムスが黒のハイネックビキニ。
こちらもすらりと背の高い、全体に見栄えのするプロポーションに、
健康的なスポーティーさも備えたデザインがよく似合う。

「そうでしたか」
「じゃあ、私はこれから取材だから」
「うん。じゃあ、私も待ち合わせに」
「そうですか」

それぞれが自分の予定で動き出し、小さく手を振って恭介と別れた。

==============================

今回はここまでです>>14-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 03:55:49.04 ID:omF0MHMp0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>19

 ×     ×

「上条先輩?」

ひと泳ぎしてプールサイドを歩いていた恭介が、その声に足を止めた。

「上条せんぱーいっ」

恭介がそちらを見ると、フリルトップが可愛らしい感じの
タンキニ水着の女の子が手を振っていた。

「確か、茜ケ崎の」
「はい、日向茉莉です」

そちらに歩み寄って尋ねた恭介に、茉莉が明るく答える。

「こんにちは」

茉莉の斜め後ろで、
色白の頬に若干の赤みを増した天乃鈴音がミリ単位で頭を下げるのを発見し、
恭介は優しく笑って挨拶する。

それを見て、鈴音はすすすと移動し、改めてぺこりと頭を下げる。
鈴音は、彼女の魔法装束にも似ている黒と白を合わせたプリントの、
トップスはフルカップに近いスポーティーにも見えるミニスカートつきビキニを着用していた。

「ほおずきからこっちに」
「はい。見滝原からも来てるんですね」

頭を上げても視線は下向きの鈴音の側で、恭介と茉莉がのんびりと世間話を交わす。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:01:19.40 ID:omF0MHMp0<>
「ここにいたんですか」

そこに、更にもう一人、水着姿の女性が近づいて来る。

「お友達ですか?」
「上条先輩。この間、見滝原に音楽聞きに行った時に。
すっごくヴァイオリン上手なんだよ」
「そうでしたか」

会話の合間に、天乃鈴音の首がミリ単位で下に動き、
美琴椿はそれを鋭敏に察してにこっと微笑みを向けていた。

「お姉さん?」

屈託なく会話する茉莉と美琴椿を見て、恭介が尋ねた。
年上と言うか成人、低く見ても大人びた高校生なのは間違いないとして、
紅に近いオレンジ色のクロスホルターのワンピース水着は
スタイルのいい妙齢の美女によく似合っている。

「んー、保護者、かな?」
「ああごめんなさい。美琴椿です」
「上条恭介です」

そうして、恭介に向き直った椿と恭介が互いに一礼する。
その側で、すすすっと移動していた歴戦の戦士天乃鈴音が、
冷徹に戦況を分析するのと同じ目で恭介の視線の動向を把握する。

「マツリーっ、何やってんのーっ?」
「すいません、友達待たせてるから」
「うん」

遠くから声が聞こえて、茉莉が慌てて動き出す。
その側で、鈴音が踵を返しながら小さく頭を下げ、
恭介がにっこり微笑みを返すと、
鈴音は僅かに足を止め、そして、つつつと茉莉の後を追う。

「仲良くしてあげて下さいね」
「はい」

ふふっとほほ笑む椿に恭介はほぼ社交辞令、特に考えもなしに返答し、
椿はふうっと小さく息を吐きやや困った笑みを浮かべて後を追った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:06:31.25 ID:omF0MHMp0<>
 ×     ×

さてどこかのプールに入ろうかと恭介がプールサイドを移動していると、
小さな女の子がトテテと動き回っていた。
あっちこっち動き回りながら、きょろきょろと周囲を見回している。

「………う………ええ………うえぇえぇーーーーーんんんっっっっっ!!!」
「えーと、もしかして、迷子?」

しゃがみこんだ恭介が尋ねると、千歳ゆまはこくんと頷いた。

「そう。じゃあ、ちょっと………あっちの売店で聞いてみようか」

恭介の言葉に、千歳ゆまはこくんと頷いた。

「あらあら」
「おりこ」

ぱたぱたと駆け付ける気配と共に、ゆまが喜色を浮かべた。
恭介がそちらを見ると、水着姿の少女がこちらに向かって来ていた。

恐らく恭介よりも年上だろう。
前から見るとワンショルダーのビキニの上下を細い三角の布で斜めに繋いだ様な、
モノキニの範疇に入る水着と本人の素晴らしいマッチングもしかり。
恭介が少々圧倒されるぐらい、大人びた美女と言った雰囲気を解き放っている。

「お姉さん?」
「保護者です」
「おりこー」

恭介の質問に、駆け付けて来た水着姿の少女が応じる。
確かに、迷子ちゃんも懐いているらしい。

「そうですか、売店で迷子センターの事聞こうと思って」
「そうでしたか、有難うございました」
「ありがとー」

美国織莉子とゆまが頭を下げ、恭介もそれに応じた。
織莉子がゆまに向ける眼差しは優しく、年相応の素直さも見えるが、
その微笑みの気品は恐らくいい所のお嬢様。
割とそちらに縁のある恭介は何となく感じ取っていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:11:39.83 ID:omF0MHMp0<>
「おりこーっ、見つかったかーい?」
「ええー、大丈夫。
それじゃあ、有難うございました」
「ありがとー」

織莉子が相変わらず気品溢れる微笑みと共に踵を返し、
友人の呉キリカ、間宮えりかが待つ方向に歩き出す。
その織莉子に手を引かれたゆまは恭介ににこにこ手を振っていた。

 ×     ×

キャッキャッアハハハ

連れが遊んでいるプールのプールサイドで一休みする美国織莉子は、
銀色がかった白い水着姿でビーチチェアに身を横たえ、
カップに入ったドリンクのストローに口をつけていた。
そして、サングラスをちょっとずらすと着信した携帯に出る。

「もしもし、そっちはどうだい?」
「ええ、楽しんでるわ。
そちらこそモモさんの具合は?」

「ああー、残念がってるよ、この分だと大丈夫だろ」
「それは何よりです」
「悪いな、チケット手に入って
こっちで行く予定がモモは熱出してあっちの爺さんも腰やっちまって」
「お大事に」

「おーい、織莉子ーっ」
「おりこー」
「織莉子さーんっ」
「はーい」

電話を切って、んーっ、と、体を伸ばした所で一斉にお呼びがかかる。
織莉子がすくっと立ち上がり、改めて体を伸ばすと
目の前のプールを中心に少なからず視線がそちらに集まる。
一部のカップルに於いて女性が男性の頭を水に沈めていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:14:56.89 ID:omF0MHMp0<>
 ×     ×

「うん、うん分かった」

水着姿でプールにいると言う事で、
仁美に携帯で定時連絡を入れて待ち合わせを再確認した恭介は、
待ち合わせの前に屋台売店を訪れていた。

「えーと、じゃあチーズたこ焼き一つ」
「あいよ」

お金を払い、注文の品物を受け取って屋台を後にする。

「ええぇぇーーーーーーーーーっっっっっっ!?!?!?
ええぇぇーーーーーーーーーっっっっっっ!?!?!?
ええぇぇーーーーーーーーーっっっっっっ!?!?!?
ええぇぇーーーーーーーーーっっっっっっ!?!?!?」

その、つい先ほどまで自分がいた屋台から聞こえるリフレインした悲鳴に、
恭介はふと足を止めた。

「チーズたこ焼き、無いんですかぁぁぁーーーーーーっ!?!?!?」
「ごめんねー、普段そうでもないのに今日に限って馬鹿売れでさー、
後で材料買いに行くまで売り切れなんだ」
「う゛う゛う゛ーーーーー………
……………お腹すかせて待ってるです………普通のたこ焼き下さいです」
「ごめんねー、毎度あり、ちょっとサービスとしくからね」
「はい、有難うです………」

買い物を終えた百江なぎさは、とぼとぼと売店前広場を歩いていた。

「あー、ちょっと」

そこで不意に思い切り年上の男の子に声をかけられ、
なぎさは反射的に身を固くする。

「ごめんね急に」

既にたじっと後ずさりしていたなぎさだったが、
しゃがみ込んだ恭介にパックを見せられて、ごくっ、と喉を鳴らしていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:18:39.52 ID:omF0MHMp0<>
「さっき、最後に買ったんだ。
なんか、僕は適当に買ったけど君、凄く欲しそうだし、
良かったら普通のたこ焼きと交換してあげるけど」
「本当ですかっ!?!?!?」

自分の絶叫ににっこり笑って頷く恭介を見て、
なぎさの精神状態はハート目で天国に飛び上がる様相を呈していた。

「どうしたんですかっ!?」

そこに、厳しいぐらいの声が割って入る。

「あ、マミ」
「あの、なぎさちゃんがどうかしたんですかっ?」

そこに現れた巴マミが、半ば詰問調で恭介に声をかける。

「あ、お姉さんですか?」
「ええ、保護者です」

恭介の問いに、やや息を乱して駆け付けたマミが答える。
なざきの余りの落胆に引っ張られてしまったが、
流石に今のご時世、よく考えると今の自分の立場は少々きな臭いと、
それは恭介も分からない訳ではない。

「そうですか。えっと、
売店でなぎさちゃんの欲しがってたチーズたこ焼きが売り切れてて、
たまたま僕が買ったのとなぎさちゃんのたこ焼きを交換しようと言う話で」
「そうなの?」

立ち上がった恭介が答える。
それを聞いたマミに問われ、
なぎさは少々バツ悪そうにこくんと頷いた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:22:13.69 ID:omF0MHMp0<>
「ごめんなさい、わがままにつき合わせて」

なぎさのお守りも兼ねて遊びに来たのだろう。
同色の短いパレオを巻き付けた白い三角ビキニ姿で
なぎさに顔の高さを合わせて腰を曲げて話し込んでいたマミだったが、
話が終わったらしく、恭介の方に向き直って頭を下げる。

「いえ、いいんですよ。僕も適当に買っただけですから。
なんか、サービスでそっちの方が数ありそうだし」
「そう言っていただけると………じゃあ、せっかくですから。なぎさちゃん」
「はい、有難うです」
「どういたしまして」

なぎさの顔を覗き込む様に体を折ったマミに促され、
なぎさが自分のパックを差し出す。
品物が交換され、ぺこりと頭を下げるなぎさに恭介はにっこり笑みを見せる。

「本当に有難うございました」
「いえ、こちらこそ………」
「それじゃあ」

なぎさと共に深々と頭を下げるマミの前で恭介も頭を下げ、
マミとなぎさは席を探して移動を始める。
それを見て、恭介も移動を開始した。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:25:26.59 ID:omF0MHMp0<>
 ×     ×

「上条君」

大きな屋外時計に近づいた所で、恭介は声を掛けられた。

「やあ、志筑さん」

プールサイドの屋外時計周辺、大体合ってる待ち合わせの時間と場所で、
上条恭介は姿を現した志筑仁美に声を掛ける。

「お待たせして申し訳ございません上条君」
「なんか、大変だったね。お疲れ様」
「はい」

志筑仁美は、軽いフリルのついた白いワンピースの水着姿で、
恭介の側にトトトと駆け寄りにっこりほほ笑む。
いかにも仁美らしい清楚な可愛らしさは、恭介にほっとしたものを感じさせる。

「志筑さん」
「はい」
「たこ焼き、買ったんだけど食べる?」
「あら、ちょうどお腹がすいていましたの」
「そう。じゃああっちの広場で」

 ×     ×

「はっ、はふっ、ふっ」

屋台広場のテーブル席で、一瞬我を失った、
それをはしたないと躾けられていた仁美はかああっと頬を赤くするが、
くすくす笑う恭介を見て、うーっと怨みっぽく見てしまう。
そして、仁美も又、くすくす可愛らしく笑い出した

「ごめんごめん」
「いえ」

互いににっこり笑い、仁美は今度はゆっくりフランクフルトの続きを食する。
恭介がちょっと見回すと、既にたこ焼きを交換した二人連れはここにはいないらしい。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/23(土) 04:37:26.86 ID:omF0MHMp0<>
ちょっと本格的に空腹を覚えたと言う事で、
フランクフルトを追加したランチタイム。

その後は、二人で大型プールに入って
相手を追いかけたり探したり、
キャッキャウフフを地で行く遊泳を満喫する。

「そう言えば」

他の場所でもうひと泳ぎしようか、
と言う頃合いに、仁美がぽつりと口を開いた。

「先程の売店にクレープもありましたわね」
「食べたい?」
「んー………」
「僕も食べたくなったんだけど、二人でどう?」
「いただきますわ」

と、言う訳で、恭介と仁美は改めて売店広場に戻った。

「………ちょっと、かかるかな」
「ですわね」
「僕が並ぶけど、いい?」

かなり疎い方ながら、
こういう時の男の振る舞いをなんとなく思い浮かべた恭介の言葉だった。

「有難うございます。では、わたくしはあの辺りのプールで」
「うん」

かくして、恭介は売店へと動き出した。

==============================

今回はここまでです>>20-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:12:20.27 ID:xNl9Ab8c0<> それでは今回の投下、入ります。

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>>28

 ×     ×

「上条君?」

結構しぶといクレープ屋の行列のスタートを探しながら、恭介はその声を追う。
恭介の視線の先には、恐らく美人なのだろう、
髪の毛をアップにまとめた水着姿の女性がこちらを向いていた。

「はぁい」
「ああ、カナタさん」

女性がサングラスをずらし、ようやく恭介は返答する。

「水着、替えたんですね」
「プライベートだからね」

どちらかと言うと、敢えて話題に出す事には疎い恭介であるが、
それでも、コンサートドレスを大胆にカッティングした様なワンピース水着が、
ボトムスの両方の腰から伸びる黒い帯が狭まりながら首のすぐ下でクロスし、
そのまま細紐になって背中に回ってクロスしてボトムスに繋がってる様なデザインに代わっていれば、
奏可奈多の完璧とも言えるプロポーションへの強烈な適合性も含めて
恭介ですら口に出す程に気づくのも当然の事と言えた。

「それじゃあ、撮影とかも終わったんですか?」
「ん」

恭介の質問に、可奈多はニッと笑って返答する。

「お待たせ、姉さん」

そこに駆け寄って来たのは、可奈多の妹、奏遥香だった。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:20:41.65 ID:xNl9Ab8c0<>
「あら、上条君」
「どうも」

可奈多共々先程も遭遇した遥香を前に、恭介はぺこりと頭を下げる。
遥香も水着を着替えており、
白とレモン色を合わせたハーフカップのトップスの前方中心辺りと
ネックレスタイプの紐を小さなリング一つで接続したスタイルの、
黒いボトムスに合わせたバンドゥビキニを着用していた。

「ハルカも友達と現地解散で、
これから一緒に夜のイベントにも参加するんだけど
なんなら上条君も一緒にどう?」
「あ、すいません。今日はちょっと………
ごめんなさい。人が待ってるので」
「あらそう、残念ね」

ぱたんと頭を下げ、ようやく見つけた行列のスタートに走る恭介を見て、
可奈多も予定があったのか、
タイミングを逃した様に、一言告げて遥香と共にそれを見送るだけだった。

 ×     ×

「えーと………」

結構なかなかの忍耐力の消費を経てチョコクレープを手にした恭介は、
打ち合わせていたプールサイドで仁美を探してきょろきょろ周囲を見回す。

「こちらですわー」

その声を聞いて、恭介はその方向に駆け寄る。

「志筑さん?」
「はい」
「水着、替えたの?」
「はい♪ あちらでレンタルしてましたの」

そう言って、仁美は両腕を広げてくるりと一回転した。

「ふうん。ああ、これ、あっちで食べようか」
「はい」

恭介の言葉に応じ、仁美もそちらの方向を向く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:26:18.11 ID:xNl9Ab8c0<>
「水着、可愛いね」

もったいない事に、恭介は直後の直視を少々逃したものの、
そのぱああっと輝いた仁美の表情は可憐そのもの。
細紐ではなく全体に同じ布に見えるタイプのオレンジ色のビキニで、
こちらは買い取りで髪の毛に花飾りと言うトッピングもつけていたが、
仁美としては些かの冒険の結果に心から満足する。

取り敢えず、ちょっと目を離して再び目にした仁美が
満面の笑みでご機嫌であるので、それは恭介としても気分がいい。
こうして、二人でテーブル席に移動して微笑ましい一時を過ごす。
そうやって、科学的な糖分と精神的な甘さをたっぷり注入してから、
二人は又、水と戯れる。

二人で流れるプールを泳ぎ回ったり
ウォータースライダーを滑って顔を見合わせてなぜか笑っていたり、
波プールで悲鳴を上げたり笑ったり。
そうやって、詳細に描写するとなると力量を求められる
他愛もない一時を積み重ねる内に、楽しい時間は瞬く間に過ぎていく。

「ふーっ」
「疲れまして?」
「ん、楽しかった」

プールハウスの廊下を歩きながら、恭介と仁美はそんな会話を交わす。
仁美にとっては、そんな一言一言、
本当に久しぶりに二人で言葉を交わしながらの道行き全てが楽しく、幸せだった。
もちろん、恋愛感情としてそのまま二人の世界を独占で、と言う気持ちもある。
だが、一方で、やっぱりまだ恋敵の親友と一緒も楽しいのではないか、
と、思える辺り、それは心が広いのか幼いのか。

「それでは」
「うん」

そんな事を自覚的に考えているのかどうかは別にして、
仁美は一旦恭介と別れ、シャワー付き更衣室に入る。
ブースの扉に水着を引っ掛け、温かな湯を浴びる。
鼻歌も絶好調に、ご機嫌だった。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:31:36.17 ID:xNl9Ab8c0<>
 ×     ×

巴マミは、後輩達の拍手喝采を浴びていた。
親戚の子であるなぎさとプールに遊びに行った訳だが、
その後、二人の後輩達と合流してカラオケボックスに雪崩れ込み、
極まった乙女の歌を溢れ返りそうな中身で熱唱して盛り上がっていた。

「ヒューヒューッ!」

ぱちぱち手を叩き、
美樹さやかがいい気分のマミに歓声を浴びせる。

「やっぱマミさん、ティロ・フィナーレッ」
「もー、美樹さんっ」

マミが、ちょっと頬をぷっとさせて見せる。
ともすればぴりっとしそうなからかいではあるが、
現状のノリノリとさやかのキャラクターと信頼が楽しい範囲にとどめている。

「お、まどか?」
「うん」
「おーし、いっけーまどかーっ」
「ウェヒヒヒ」
「そう言えば………」

拳を突き上げるさやかにやや照れ気味に、
自分と言うものに就いて当たり前と言えば当たり前の言葉で
極まった乙女の歌をまどかの側で、マミがさやかに声をかける。

「さっき、お話ししたけど今日は上条君あっちの娘と?」
「ええ、まあそういう事です」
「先輩として一応聞くけど、平気なの?
只でさえ最近会えないって言ってたのに」

「まあー、仁美には前にちょっと借りがありますし、
ちゃんと話してくれますからねー。
なんか、こんな正々堂々やってたら当面それでいいかって。
なんかこういうのも楽しくなって来た、って言うか」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:36:02.15 ID:xNl9Ab8c0<>
「んー、美樹さんがそれでいいって言うならいいけど」
「はい。もし、もう駄目だーってなったら
マミさんの胸で泣かせてもらいますから」
「そうして頂戴、そのぐらいの事はさせてあげるから」

「ごっつぁんです。その胸で泣かせてもらうとか、
マミさん周りの男子なんか血の涙で羨ましがるでしょうねー」
「美樹さんっ」
「おっとぉーっ出番だ。まどかヒューヒュー」
「ウェヒヒヒ」

ぱあんとまどかにハイタッチしてステージに立ったさやかが、
実に諦め悪く執念深く極まった乙女の歌で元気よく盛り上がる。

 ×     ×

暁美ほむらが、
鯵の握りを逆さにして、ちょいと醤油をつけてからぱくりと口にする。

「はい、岩牡蠣お待ちっ」

少し珍しい岩牡蠣のいいのが入ったと言う事で、
両親と共に、お勧めのままに軍艦の塩酢橘でいただく。
成程、その言葉は知らなくとも馥郁たる味わいは分かる。
今日は、午前中から旧友の鹿目まどか、美樹さやかとショッピングを楽しんでから、
両親と合流して寿司屋の小上がりで夕食を共にしていた。

「すまないな、なかなか仕事の目途がつかなくて」
「うん。ご苦労様」
「おお」

本来、見滝原での転校直後に同居する筈が、
父親の仕事の事情の急変で未だにほむらは一人暮らしを続けている。
この寿司屋は見滝原への引っ越しが決まった頃に一度見つけて来た所ではあるが、
久しぶりの家族の夕食を些か張り込んだのも、その辺の心苦しさもあったりしたり。
そんな父親に、ほむらも瓶ビールをお酌して気持ちを示す。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:41:04.85 ID:xNl9Ab8c0<>
「カレイを下さい」
「はいよっ」

ほむらが追加を注文する。
知っている者から見たらちょっと順番に難があるのかも知れないが、
それでも、なんとなく又食べたいと思ったお気に入りだった。

「………学校は、楽しいか」
「うん」
「友達は、出来たのか?」
「うん」

恐ろしい程に当たり前の当たり障りの無い会話だが、
これを真実として心からの返答が出来た事をほむらは心から幸せに思う。
かつて、病気に怯え、それを克服してむしろ優秀に突き抜けてからは孤高に過ぎて、
そんな不器用なほむらを、やはり器用とは言い難い態度でもと心配してくれた、
それはよく分かっていた。だから、

「中トロ鮑ウニ、一貫ずつ、でいいわね」
「ああ」
「あいよっ」

ニュアンスとして事前に承諾を得た上で、今夜は、甘える事にする。

 ×     ×

「ふんっふんっふんっふんっふんっ!!!」
「スズネちゃーん、お風呂いいよーっ」
「はーい」

ホオズキ市内の新聞販売店二階で、
ノルマの腕立て伏せを終えた天乃鈴音は立ち上がる。
そして、一風呂浴びて汗を流すと、
用意しておいた300ミリリットル牛乳を飲み干した。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:45:10.79 ID:xNl9Ab8c0<>
 ×     ×

「ふーっ」

よく眠れそうだ。
心地よい疲れと共に床に就いた上条恭介が、実感する。
確かに時間的には厳しい事になったが、それでも、
久しぶりに親しい相手と外で思い切り遊んで、それから力いっぱい弾き込んだ。
精神的に、随分楽になったと思う。

そんなお相手、志筑仁美の事は心から愛しく思う。
いかにもお嬢様らしくお上品でおっとりした所があって、
それが素直さであり、凄く優しい女の子である事を恭介は知っている。

そして、最近は自分でも少々自覚出来るぐらいヴァイオリン馬鹿の不器用者な、
ちょっと女の子相手には難があるらしい恭介の事を心から思ってくれている。
幼馴染の美樹さやか、と言う、少々微妙なファクターも存在するが、
それも又、仁美ともさやかとも今の所は織り込み済みの楽しい関係。

今日も、仁美の事は、一人の女の子として見て、
一緒にいて可愛らしいと素直に思った。
こうして相手が恭介だと公然となる迄は、
誠実な仁美は頻繁たるラブレターのお相手に悩んでいた、
と言う状態が生じたのも無理からぬ事だと。

今日の、プライベートの仁美は可愛かった。
蕾が綻ぶ様な可憐な笑顔。美少女の部類と言ってもいいクラスメイトの水着姿。
この年頃の男子であれば、それだけでも十分にハートを直撃出来る。
それは恭介とて例外ではない。このヴァイオリン馬鹿も、
もちろんその辺の人並みの感性は持ち合わせている。

楽しい一日の脳内メモリーを稼働させる。
思い出シアターを脳内上映していた恭介は、
その幕が下りるまでに、ギンギンに目が冴えてむくりと身を起こしていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 03:50:16.61 ID:xNl9Ab8c0<>
 ×     ×

「んー」

夜、志筑仁美は、天蓋つきのベッドの上で枕を抱いて幸せに浸っていた。
今日一日でたっぷりと焼き付けた、
恋愛乙女アイを通した恭介の爽やかな笑顔を何度でも思い返す。
まあ、恭介の事だ、水着を口に出して褒めてくれたのは
デートの常識に従った様な気がしないでもない。

それでも、仁美としては相当に思い切った、
購入時には躊躇したものを敢えてあの場で選択したぐらいには
ちょっとした冒険に踏み切った甲斐があった、あった筈。
はしたなかろうとさやかさんと研究した雑誌の
殿方とはそういうものですものキャーキャーキャーと確信する。

そうやってプールで一緒に遊んで一緒におやつを食べて帰路を共にし、
自宅近くで唇をキャーキャーキャー
今日一日、仁美をエスコートした恭介は実に優しく、
丸で若き賢者の如く紳士的なふるまいだった、仁美はそう記憶していた。

とにもかくにも、その想い人のジェントルな振る舞い爽やかな笑顔、
放っておいても勝手に思い浮かぶその度に、
仁美は頭の中でキャーキャー叫びながら
枕を抱いてスペースたっぷりなベッドの上を転げまわる。
安眠は、もう少々先の事らしい。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 04:00:21.70 ID:xNl9Ab8c0<>
 ×     ×

本日のおまけ 幕間小ネタラジオ劇場「ブリザード」
録音済み放送 いつものファミレス収録

ほむら「美樹さやか」

さやか「なーに?」

ほむら「相変わらずそのタグなのね」

さやか「お互いにね」

ほむら「今日、上条恭介と志筑仁美のデートみたいね」

さやか「そうだね。ま、今日は仁美の番、楽しんで来たらいいよ」

ほむら「寛容と言うか淡泊と言うか、
    アップルパイもあんな感じで、最近彼女らしい事してないんでしょ」

さやか「それはお互い様、仁美にはちょっと貸し借りはあるから今回は優先って事で」

ほむら「志筑仁美の事はおいといて、
    そんな放し飼いで大丈夫なの? 浮気の心配とか」

さやか「無い無い、あのヴァイオリン馬鹿にそんな器用な真似できないって」アハハハハ

まどか「んー、でも、私の親友二人に熱烈ラヴされてるって、
    いい線行ってるんじゃないの上条君」ウェヒヒヒ

さやか「褒めてくれてありがとーまどか」

ほむら「そうね。彼氏がそれだけ魅力的だと、
    どこかで例えば年上でスタイル抜群で実は肉食系で髪が長くてピアノが上手な美人のお嬢様、
    辺りに迫られるなんて事もあるかも知れないわね」

さやか「元女子校のお姉様妄想とか別の意味で面白そうだけど、
    それあったとしても気づくかなぁあの朴念仁」

まどか「鈍感主人公って流行ってるって聞くけど」ウェヒヒヒ <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 04:05:00.86 ID:xNl9Ab8c0<>
さやか「それが成立するためには、
    それだけの積み重ねとテレパシーが必要なのだよ明智君。
    あの朴念仁のヴァイオリン馬鹿にそれを伝えるのに
    あたし達がどれだけ苦労したか………」ハアッ

ほむら「あなた方って、本当にどういう付き合いしてる訳?」

さやか「どういうって?」

まどか「やだなぁさやかちゃん。
    それはもちろん………とか………とか………とか………」

カチッ

ほむら「何か、まどかに相応しくない空耳でも聞こえたかしら美樹さやか?」ファサァ

さやか「(口にバッテン絆創膏………)
    ああ、うん。今は恭介忙しいけど、普段は登下校とかお昼一緒したり、
    一緒に遊びに行ったり、それで、まあ、時々チューしたり、
    いちおーやってる事は友達以上って感じで、ま、楽しくやってるよ」

ほむら「分かった、了解、お腹いっぱい」

まどか「まーたまたぁ」ウェヒヒヒ

まどか「1スレの>>169-なんて、完全に事go………」

カチッ

ほむら「何か、まどかに相応しくない空耳でも聞こえたかしら美樹さやか?」ファサァ

さやか「うん。そのイマジン早めにブレイカーしとかないと後悔すると思うよ転校生」

まどか「と言うか、あの人いつ出て来るんだろうねー?」

ほむら「それで、実際の所どうなのかしら美樹さやか?」

さやか「聞く事は聞くんだ」

ほむら「それは、興味が無ければハナから聞かないわよ仲間として友達として
    それ以前に思春期真っ盛りとして」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 04:08:54.35 ID:xNl9Ab8c0<>
さやか「花札」

ほむら「は?」

さやか「だから花札、三人でベッドの上で盛り上がってたって訳」

ほむら「あの描写のどこからそういう与太話が?」

さやか「思わせぶりな単語を使いたくなるお年頃なのよー」ウェーッヒッヒッ

まどか「でも、1スレの序盤とか、
   仁美ちゃんとおしくらまんじゅうとかしまくってたよね」

さやか「あー、あれね。やっぱ正々堂々のライバルとかいるからね。
    あれぐらいの事はやりますよ」

ほむら「中学生の男の子にはちょっと刺激強すぎるんじゃない?」

杏子「さやかだからなぁ………
   ま、ほむらがやっても効果薄いモンな。
   だって、本当に薄いんだから」

まどか「マジカルな光に包まれたタンクローリーで
    杏子ちゃんを追いかけてるほむらちゃんはおいといて。
    でも、ワルプルギスの時、ビルの中でカマかけられてたよね」

ほむら「ハァーハァー戻ったわゼェーゼェー」ファサァ。

さやか「ああ、お帰り」

ほむら「それで、1スレ>>337でこれ図星って事?」

さやか「ああ、幼稚園の頃ね」

ほむら「幼馴染ネタの鉄板ね」

さやか「それに、あの女に煽られたら行くっきゃないでしょ」

ほむら「まあ、カップルの前に存在している時点で宣戦布告みたいなキャラだから」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 04:12:46.39 ID:xNl9Ab8c0<>
杏子「ま、ほむらにすりゃあ、
   あいつの存在自体が宣戦布告しちまってるからなぁ」

まどか「黒い翼を伸ばして杏子ちゃん追いかけてるホマンドーはおいといて、
    さやかちゃん、言ってて苦しいって思わない?」

さやか「軽率な行動で誤解を与えてしまい、
    心から反省しています。やめるつもりは毛頭ございません」

ほむら「ハァー、ハァー、今戻ったわ。
    つまり、あくまで中学生として健全なお付き合いをさせていただいております。
    そう言いたいのね美樹さやか?」

さやか「ま、そういう事になるね」

ほむら「アホみたいにアレな状況を描いたはいいけど、
    展開が予想以上にラブコメしてるから急遽過去改変を実行した、
    なんて事じゃない訳ね?」

さやか「ヤダナーソンナコトアルワケナイジャナイデスカ」ダラダラダラ

まどか「さやかちゃん、目、見て話そうか」メガミスマイル

ほむら「滝の様に汗、って実物はなかなかお目にかかれないわね」

放送終了(無言土下座)

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今回はここまでです>>29-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/01/24(日) 04:16:56.00 ID:xNl9Ab8c0<> すまん修正1レス

>>37

 ×     ×

本日のおまけ 幕間小ネタラジオ劇場「ブリザード」
録音済み放送 いつものファミレス収録

ほむら「美樹さやか」

さやか「なーに転校生?」

ほむら「相変わらずそのタグなのね」

さやか「お互いにね」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/01/30(土) 21:32:42.19 ID:kytLJanTo<> 追いついた、しんど
一スレ目の長文批評書きたいんだけど書いてもいい? <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/02/17(水) 14:36:36.53 ID:8gLkL7sQ0<> それでは今回の投下、入ります。

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>>41

 ×     ×

「おはよう」
「お早うございます」

月曜日の朝、さやかとまどか、仁美、ほむら、と言った面子が通学路で合流する。

「昨日、どうだった?」
「はい、楽しませていただきました」

さやかの問いに仁美が臆面もなく返答し、
さやかの肘がぐりぐりと仁美に押し付けられる。
これは、まどかもほむらもお手上げである。

「お早うございます」
「おはよー」
「おはよう志筑さん、さやか」

教室で恭介が交わす挨拶を、
教室内の面々はさり気なくウオッチする。

「昨日は楽しかったですわ」
「うん」
「ふふーんっ、仁美の水着姿、どうだった?」
「うん、可愛かったよ」

これは、まどかもほむらもお手上げである。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/02/17(水) 14:41:42.86 ID:8gLkL7sQ0<>
 ×     ×

「ああ、美樹さん」

放課後、美樹さやかは、
廊下で担任の早乙女和子教諭に呼び止められた。

「ちょっといいかしら?」
「なんですか?」

取り敢えず、少々長い話になりそうなので、
ほむらとまどかは先に帰路に就く。
まどかはまどかでウサギ小屋の用事を一つ忘れたかも知れないと言う事で、
ほむらは先に帰路に就く。

<ちょっと、いい?>

校門を出た辺りで、ほむらの頭の中に聞き覚えのある声が届く。
視線を走らせると、近くの曲がり角に人影が見えた。

「どうしたの?」

そちらに向かったほむらが、
塀に背中を預けていた詩音千里に声を掛ける。
その側には成見亜里紗の姿もあった。

「ちょっと、聞きたい事があって」

千里が口を開く。

「何?魔法少女関連?」
「んー」

ほむらの問いに、千里は少々困った顔を見せた。

「?」
「暁美さん、そちらの学校に上条、って男子生徒はいるかしら?」
「かみ、じょう?」

千里の問いに、ほむらは怪訝な表情をする。
<> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/02/17(水) 14:46:52.35 ID:8gLkL7sQ0<>
「ええ、結構いい家に住んでて、多分ヴァイオリンに関わってる」
「知らない事もないけど、一体どういう話?」
「どういう男子?いい人?」
「んー、悪い人、って事はないと思うけど」

ほむらと千里が、やや要領を得ない会話を交わす。

「で、その上条君、彼女とかいるの?」

少々苛ついた様に、亜里紗が口を挟んだ。

「ええ、いるわよ」

ほむらがあっさりと応じる。

「その、彼女と上手くいってんの?」
「リア充爆発しろ」

亜里紗の問いに、ほむらはぼそっと答える。

「その、恋人と言うのは見滝原中学校にいるの?」
「ええ」

千里の、やや低い声の問いにほむらはやはりあっさりと応じる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/02/17(水) 14:51:44.95 ID:8gLkL7sQ0<>
「………そう、分かった」

どこか、底に冷たいものを漂わせた千里の答えを聞きながら、
ほむらにもなんとなく話の筋が読めて来た。
女子校育ちで少々疎い、とほむらは自覚していたが、
つまり、千里の学校の誰それが、と言った辺りの事で、
顔見知りで学校が同じほむらに探りを入れて来た、と言った辺りだろう。
どちらにしても、ほむらとしては余り深入りしたくない類の事だ。

「お手間を取らせたわね。じゃあ」

千里がくるりと踵を返し、ざっざっと前進する。

「それじゃあ」

亜里紗もその後について行く。
ほむらから見て、本来危険人物と見ていた亜里紗は千里を追うばかりで、
むしろ優等生タイプの千里がどこか剣呑なのが気にかかった。
むしろあのタイプこそ、こじれたら面倒だ。

「えーっと、千里」

亜里紗が、ざしざしと前進する千里に後ろから声を掛ける。

「なんか、背中が物語ってるって言うか、
今、この辺に魔獣とか出てたっけ?………」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/02/17(水) 14:54:59.11 ID:8gLkL7sQ0<>
 ×     ×

「美樹さやか」
「おおっ」

用事を終えて、歩いていた廊下で思わぬ声を聞いたさやかが仰け反っていた。

「何?転校生、さやかちゃんを待っててくれたの?」
「あなた、詩音千里、って知ってる?」
「詩音?」

「ホオズキ市の魔法少女、ワルプルギスの時に会ったんだけど?」
「いや、知らない」
「そう。じゃあ、
どうしてその詩音千里が上条恭介の事を聞きに来ているのかしら?」
「は?」

「さっき聞かれたのよ、詩音千里から上条君の事を」
「何を?」

さやかの表情が少々剣呑なものとなる。

「いい人かとか彼女はいるかとか」
「何それ?」
「取り敢えず、
魔法少女関連でその手の揉め事とか、勘弁して頂戴」

 ×     ×

「食うかい?」

友人に会うために訪れた見滝原市内の路上で
佐倉杏子は、チョコ菓子を差し出したまま
ばびゅうんっと通り過ぎた痕跡を追って首を右から左に動かしていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/02/17(水) 14:58:05.16 ID:8gLkL7sQ0<>
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今回はここまでです>>43-1000

>>42

まずは読了感謝です。
あれを読了するのに相当な忍耐を求められる事は、
書いてる私もよく分かりますので………

許可求められても困る、と言うのが正直な所ですが、
荒らしじゃなければ現時点で止める理由はありません。

本来は歓迎したいのですが、まあ、色々ありまして。
敢えて事前にそう質問されますと、ここは無難な返答を。

続きは折を見て。 <> ご自身でさえ忍耐力がいると思うのならばもう少し改善してほしい……<>sage<>2016/02/18(木) 02:48:46.59 ID:HAaEd5cro<> お許しも出たので遠慮なく批評行きます

まずは文章について

恐らく三人称であると思うのですが『話し言葉』が文中に頻出するせいで、あれ? と幾度も首を傾げました

三人称で書くのならば地の分は『書き言葉』を中心にし、
心理描写をするときなど状況の変化に合わせて『口語体』を雑ぜる程度に収めておくべきと感じます
文体の不徹底感もあいまって物語への没入感が大きく削がれているという印象を受けます

>>1は軽妙洒脱な文章を書きたいのかなと勝手に憶測しているのですが、個人的には滑っているとしか思えません
もしくは単に手癖と勢いでつないでいるのか、どちらにせよ地の文でユーモアを語るのは一考した方がいいかもしれません

特に唐突に挟まれる伏字のギャグっぽいやつとか冷笑がこみ上げてくるレベルでした、どことは言いませんが

これは極々個人的な見解ですが、文章そのもので笑いを取るのは恐ろしいまでに難易度が高いです
強烈なキャラクタを用いるのでもなく、世界設定そのものを盛大に崩すでもなく、ただ文章だけで笑いを取る
これのなんと難しいことか。はっきり言ってプロの作家でさえ時折滑ったりしているのです

最低限プロレベルの文章力がないと成功しない手法と言って差し支えないと思っています
それだけの実力があるとお考えならば止めはしないですけれど、私見を言えば『キツイ』かなと思います

場面転換と描写について

まず場面転換について、三人称であれば転換用の記号は排除してしまっても構わないと思います
というより、氏の場合は転換用の記号は排除してしまった方がいいように思います

最も大きな理由としては『転換用の記号を入れているのだから場面が変わったってわかるだろ』
という意識が生まれてしまう、ということです。自覚的か無自覚かは問いませんし、これは非常に自覚し辛いです

きちんと情報を整理してあれば、必要な場面に必要な情報を必要なだけ仕込めるはずです
ですが書き手の意識に少しでも『これくらいは伝わるだろう』という思いが入ると途端に崩れます。

『これは伝わらないかもしれないな』というのならば伝わらなくても問題はない構成であることが多いですが
『これくらいは書かなくてもわかるはず』という意識になるとほぼ百パーセント伝わらなくなります
理由は単純です、書き手は読み手が持っていない情報も持っているから、にほかなりません

なのでまずは大枠として時間、例えば太陽や月、星が出ているや空の色など、ほかには正確な時間等々
その次に場所、屋内か屋外が、どんなところで、何のためにいるのか等も併せて併記し
最後にそのキャラの目線へと移行して、誰といるのかそこで何をしようとしているのか、等の情報を添付する
といったように順序を決めて描写し、慣れてきたらそこから徐々に崩していく、というような手法をお勧めします


描写にも触れます

読んでいて真っ先に思ったのことがあります
『果たしてその情報は必要なのか?』というもので、これを思った文章は大体あとで何かにかかわることもなかったです
修飾語や状態の説明が無意味に長く書き連ねられているために全体としてとっ散らかった印象の文になるのだと思います
少し引用させてもらいます

> 年上で、一見するとややふっくらかぽっちゃり目にも見えるとは言え、
> ブラウスタイにスカートと言う着の身着のままの姿で
> 焼け出されに近い形で土砂降り暴風雨の大嵐の中に放り出されている。

これなんか
『濡れ濡れスケスケの年上の少女(しかも巨乳でエロい)。』とかそんな風にすればたったの一行に圧縮できますし
その次の

> そんな、素人目にも当然体力ゲージがゴリゴリ音を立ててノンストップでマイナス進行している筈の
> 風斬氷華の肩を借りるのは男として間違いなく心苦しいが、
> 骨折こそしていなくともむしろ痛みを忘れそうなぐらい危ない怪我人の身として、
> 黄泉川の合理的な発言に逆らう気力も体力も持ち合わせてはいなかった。

これも
『上条恭介の男のプライドには反しているが背に腹は代えられず素直に黄泉川の言葉に従って風斬に肩を借りたのだった』
とかにしてしまえば圧縮率は約五割程度になります

これに対しての解決策は
『必要最小限の描写にどれだけ肉付けをすべきかを考える』になるかと思います

憶測ですが、氏は足し算で書いているんじゃなないでしょうか? 恐らくその辺りに原因があると見ています
なので、引いて引いて極力シンプルな文章へと変換したのちにそこからどうしても必要な描写だけを足してあげてください
そうすれば恐らくですが読みやすい文章になるかと思います

ついでに氏の文章は益体もないことをくどくどと並べ立てる傾向を感じました
そういう書き方をするならば一人称形式を採用した方が違和感は抑えられるかと思います、キャラクタにもよるのですが

まとめれば、
文体と人称は徹底してブレがないように、話し言葉は極力混ぜないようにしてください
地の文でのギャグは相当自信がなければ控え方が無難です
場面転換をするときは時間、場所、キャラ、思考のように順序立てて描写すると分かり易いです
足し算でどんどん修飾描写を積んでいくのではなく、引き算でシンプルな文章になるように考えるといいと思います
といった感じだと思います <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/02/18(木) 02:55:46.66 ID:HAaEd5cro<> 長くなりましたけど、続けてお話についても触れます
一言でいうとひたすらに退屈でした
おそらく考えるに理由は明白で、『目的の欠如』でしょう
冒頭から特に目的のない暁美ほむらの日常というなだらかな物語が延々と続きます

だらだらと続く日常モノとして見たとしてもあまりにも起伏がなさすぎます
お話自体がスロースタートなのだから仕方がないと思うかもしれませんが、そういうことではありません

例えば、投下一発目の時点で恐らく主人公と思われるほむらに目的を与えてあげるのです
この目的っていうのは何でもいい、例えば『まどかと仲良くなりたい』でも、『早くクラスに馴染みたい』でも、
『この町にいる魔法少女たち全てと知り合う』とかでもいいかもしれないです、とにかく何かしら目的をあげてあげてください

そうすればキャラクタに方向性が生まれるし、読者も話の方向性が分かれば読みやすくなります
これは非常に重要なことです。方向性の分からないお話を読みたいと思う人は少ないです、長丁場なら尚更です

で結局ほむらちゃんに仮初の目的が付与されるのに大体百レス程度掛かって、しかもなんだかふわっとしてる
これでは読んでる方には何にも響かない、少なくとも私はそうでした

でクライマックスっぽいワルプルギス戦になってわらわらと禁書キャラが登場します
ただ、理由付けがなおざりに過ぎる、百歩譲って吹寄制理がボランティアに来るのはいいです
でも、教師である黄泉川愛穂がボランティアで来ちゃダメでしょ。授業どうするの?
風斬氷華はまぁロシアに行ってたしで済ませるとしても、
アイテム勢が来てる理由は全く分からないです、しかもフレンダもいるっぽいですし……。時系列ちゃんと考えてますか(小声
なんというか、人的資材あたりの属性を便利なご都合主義と勘違いしてません?
新約のあの辺って負でも正でもご都合主義がから回る話じゃないでしたっけ? 記憶違いなゴメンナサイですけど

それでやっと話が動き出したと思えば全く何も絡まない上条君主役の番外編が始まる始末です
しかも無駄に長い。書きたいのは分かるけれどワルプルギスそっちのけすぎて思わず投げたくなりました。
面白いならいいんですけど、正直このパートはほかにもましてつまらなく感じられました……。
『君たちなにしてんの?』感が半端じゃないです。もちろんこの後の展開に必要なパートだったのですよね?

正直言って群像劇は向いてないと思います

キャラについても少しだけ
ほむらちゃん自意識過剰すぎだし、全部乗せしすぎです
この感じは所謂『U‐1』とか『スパシン』とかに近いものを感じました
ほかにもキャラ出しすぎの割に全然捌けてないぞ、とかいろいろあります

けど一番言いたいのはこれです
『大人書くの下手』

ぶっちゃけ上条君パートの黄泉川先生とかいる必要が微塵も感じられません
大人キャラを集団に突っ込むのならば相応の役割と行動をさせないと意味がないです
これは詢子さんや知久さんも同じです。背中を押す役やブレーキをかける役というだけならば別のキャラでも同じに思えます
同じ背中を押す役だとしても大人には大人なりの、子供には子供なりの時と場合によって必要となる属性は変わってきます

だけれど氏の書く大人にはそれを感じられませんでした
なんというか、『それ別のキャラが言っても同じだよね』というか、『言葉に重みがない』というかそんな感じです

理性と感情を切り離して背中を押すだとか、背中を押してあげたい気持ちはあるけれどそれでもブレーキをかけてあげる
みたいなキャラクタとしての芯の強さや責任みたいなものがいささか足りていない感覚です

禁書作中の黄泉川先生も割と無茶なことには突っ込みがちですが、その後ろには必ず子供たちがいますし、
組織に抑えられて動けなくなる場面も多いです。そんな中でもできる限り子供たちのためになることを選択していきます

そんな先生が果たしてボランティアの先で予想以上の悪天候により要救助者になるでしょうか?
少なくとも私には想像できないです。例えばこれが突然堤防が決壊して鉄砲水に飲み込まれるとかならば、
まぁあり得るかな、と思うのですけれど暴風雨の水害で身動き取れなくなるというのはキャラクタとして軽率が過ぎるのでは?
学生の吹寄ならばまぁそういう甘い目算でもそんなもんだよなと思えるのですけれど、大人キャラがそれはダメだろう、と思うのです

そのほか細かいこと
本文と>>1の一言や挨拶を分けてほしいといわれる理由

本文だと思って読み始めたら違っていて萎えるだとか、
そもそも本文以外には興味がないから本文と一緒くたにされると読みたくないものも読まなくちゃいけなくなって苦痛だとか、
各々理由は違うだろうけれど共通することが一つ
つまり、余計なノイズが混じると物語の没入感が損なわれるということ

もし書いたものを色眼鏡で見られたくないと思うならば絶対に分けた方がいい
一言だけなら平気、だとか本文と区別がつくようにマーカーつけてるとかそう言い訳ははっきり言えば無意味
なぜならば一レスは紙の本の一ページに相当する。紙の本で章の頭や区切りの部分で作者の挨拶が乗っていたら鬱陶しいでしょう?
そういうことなのです。どうしても挨拶に一レス使いたくなければ名前欄に入れるとか、メール欄に入れるとか、工夫しよう

返レスそのものが無駄に長いのも読者にとってはノイズになりえます
私がその内容で返すとすれば
荒しじゃなければどんと来い
くらいに収めます。キーワードは短く簡潔にです

ついでになぜ批評を書いていいか聞いたかといえば
称賛以外の感想なんか聞きたくない、という人種が一定数存在するから、です
流石にそう思っている書き手に批評をするのは労力の無駄なので出来れば避けたいし、お互い気分が悪くなるだけかと思います

言いたいことはこれで全部です
続き書くの頑張ってください。この長文で心が折れないことを祈っております <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/03/06(日) 13:29:41.39 ID:jFT/WcAU0<> 生存報告しときます。 <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/03/11(金) 01:54:19.04 ID:M9gxy/OV0<> 今回は作品投下無しで。

>>49
>>50

あんただったか(汗

畏れ入って乾いた笑いが、と言うのが実感です。

そして、まず何よりも感謝と敬意を。
何と言うか、全部賛成、とは言いませんが、
あなたの熱意、作品愛と観察には脱帽です。

今回の返答ですが、基本はノーコメントです。
あれだけの熱意を傾注していただき本当に申し訳ないのですが、
言える事言えない事入り乱れでちょっと返答しかねる、と言うのが一つ。

技術面も含めて大いに読ませていただきました感謝します、
と言うのは正直な所なのですが、
ちょっとそこから先の返答が難しいと言うのも。

かなりの部分私の書き癖になっている様ですが、
読み返してみると場所によっては身の程知らずにも
原作かまちーに勝手に引っ張られて地の果てまでスリップした部分もある、かも。

そういう訳で、まことに失礼いたします。

ではありますが、二つばかりこちらで気が付いた事を。

何故か作者の私が他人事の様な口調になりますが、
実際、結構前と言う事もあり、
自分で読み返して感想を書くのに書き易いと言う事で。
書いてる時には、プロットと押さえておくべき事を叩き込んで
勘に近い所を突き進んでる部分もありますので。

以下、震え声タイム。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage saga<>2016/03/11(金) 01:56:55.77 ID:M9gxy/OV0<>
>>49の時点で、上条君は純粋に
風斬さんの体調やそちらの悪条件の事しか考えていなかったと思いますよ。
少なくとも自覚意識の88.3%以上は。

まず余計な事を考える余裕なんて無い状態でしたから。
彼がメインで自覚している限りにおいては
主に風斬さんの体力面を測る要素を観察して
助けを得るべきか自分がどう行動するべきか。

あの時の彼の考えを論理的に言えば、
およそこれ以上の事を考える余裕もなさそうでしたので、
記述に於いてもそちらの要素を専らとしたものになったものと。
まあ、その辺で人称のブレが、と言う事にもなりましょうが。
語彙が異常にくどい、と言うのは書き癖でしょうが。

それから、黄泉川先生は引率ですね。
時々書かれてはいましたが、
確かに成り行きでそうなったとも受け取られる書き方でした。
(準)公的なボランティア募集で、安全なルートを移動して
安全地域の受け容れ先に引き渡して帰って来る予定だったのではと。
本来スーパーセルは短期間で素人ボランティアは災害後が出番ですから。

その途中で天候の急変とバス事故に巻き込まれた
と言う事ならあの状態もありでは、と。

そちらも呆れて触れなかったのかも知れませんが
しまいに交通システム障害も絡んで常盤台まで来てましたし。
あっちは実習っぽいですね。

ワルプルさんのスーパーセルって暴風雨としての威力も常軌を逸している上に
元がモンスターですから発生しても移動パターンの予測が難しい。
本編でも住民が避難している体育館をミンチにする勢いで突き進んでいましたから。
そんなのが進路を急変更してバスごと巻き込まれたら
或はああ言う事態も発生する、かも(汗

そこまで書かなくても、と言う見込みが余り上手くないのかも知れませんが。

言われておきながら色々妙な書き方になりましたが、
私からは以上です。
ホントーに中身の無い事を長々とマジすまん。

それでは、今回はこれにて失礼します。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/03/11(金) 17:05:14.52 ID:k+s9kuyfo<> 今全てが腑に落ちました
長々と批評家気取りで書き込んだ手前、頂いた返信に返信するのは憚られるのですが、

一個だけ絶対に伝えておかなければならないことが出来てしまった。というか氏の決定的な弱点がハッキリしました

内面描写と外面描写を一緒くたにまとめてしまっているんですね。それならば読みづらいのは道理です
取り上げさせてもらった文章にキャラクターの主観描写が混在しているとは全く読み取れていませんでした
多分、読んでくれてる方のほとんどが気が付いてないと思います

内面と行動を同時進行するならば、〜はそう考えながらも、や――の状況を客観的に頭の中で分析して、のように
キャラクタの内面描写であることを明確にし、そのあとで動きや行動の結果を描写するとグッと分かり易くなります

文章のどこまでが内面描写でどこからが外面描写になっているのかがとかくわかり辛い
氏の返信を拝見して本当に全てが腑に落ちました

三人称でキャラクタの内面を描く場合は()や〜はそう思った。等の分かり易い描写の分かれ目を意識してみてください
重ね重ね長文失礼しました <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/03/12(土) 03:35:37.35 ID:UcxQ0O8D0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>47

 ×     ×

上条恭介は、ごくごく当たり前に安全なルートを選択し、
通いなれた歩道をテクテク歩いて帰路に就いていた。

そして、気が付いた時には、見知らぬ工事現場のただ中に立っていた。
そこは、取り壊し中のビルの前、囲いの中の資材置き場だった。
少なくとも、彼自身は何をされたのか、全く理解出来ていなかったが、
種を明かせば意外と単純だった。

フルブースト状態の魔法少女に胸倉を掴まれ、
短時間の内に力ずくの最高速でそこまで移動していたため、
理解が追い付かない。これだけの事だった。

「上条恭介君?」

そして、恭介の目の前には、
体をすっぽりとマントで覆った成見亜里沙が不敵な笑みと共に立っていた。

「な、何?」

見た目、同年代らしい亜里沙に、恭介が怪訝な顔で聞き返す。

「ちょっと、聞きたい事あって顔貸してもらったんだけど………」

その時、資材の山の陰から、もう一人の少女がツカツカと接近して来る。
そして、亜里沙にドムッ、と、肘鉄を食らわせた。

「手荒な事をしてごめんなさい。
もう少し常識的な話し合いをする予定だったんだけど」
「つうぅーっ」
「一体、何?」

一応、まともな話の出来そうな新しい少女に恭介が声を掛ける。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/03/12(土) 03:40:59.07 ID:UcxQ0O8D0<>
「失礼しました。私は詩音千里。茜ケ崎中学校の者です」
「茜ケ崎?」
「はい。風紀委員として奏ハルカ会長と関わりを持っています」
「ハルカさんと」
「へぇーっ、名前呼び」
「あの人は、多少親しい人にはそれを求めます」

ずいっと顔を出す亜里沙を千里が手で制した。

「つまり、ハルカ先輩とはそれなりに親しい、と言う事ですよね?
先輩とはどういうお知り合いなんですか?」

「どういう、って、ハルカさんが見滝原中学校に来た時に知り合って、
ジャズ同好会と一緒にピアノを弾きに来た時に。
僕もジャズヴァイオリンを少し弾くから、その時に」

「ああ、あの時ね」

亜里沙が、間違いなく自分のせいで聞き逃した演奏を思い出して声を上げた。

「それで上条君、あなた、付き合ってる人、いますか?」
「付き合ってる?」
「彼女とかいるのか、って聞いてるんだけど」

どうも少々鈍い反応を返す恭介に、亜里沙が続けて尋ねる。

「なんでそんな事、を?………」
「恋人はいるんですか?Yes or No?」

どうにも不躾な質問に答えあぐねたその時に、
恭介はそれこそキスしそうな距離感で千里の顔を見ていた。
何か、妙な成り行きだが千里自体は可愛い、
本来、真面目にきりっとした雰囲気も悪くない、美少女と言ってもいい。
混乱しながらも、恭介としてもその事を全く感じないでもない。

「う、うん、いるけど」
「その恋人は、見滝原中学校にいるんですか?」
「う、うん」

とにかく、気圧されているのが一番で、恭介は返答する。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/03/12(土) 03:46:33.12 ID:UcxQ0O8D0<>
「そう。もう一度聞くけど、ハルカ会長とはどういう関係?」
「どういう、って、ハルカさんとの関係って………」

次の瞬間、やはりマント姿だった千里の右腕が、びゅうんっと右手に振られていた。
そして、その右手には、拳銃が握られている。

「それって………」
「ああ、玩具よ。
ごめんなさい、少々苛立ってたみたい。
だから、これが本物だ、と言うぐらいのつもりで返答して」
「あー、上条恭介君」

そそそっと近づいていた亜里沙が、恭介の肩をぽんと叩く。

「早めに全部ゲロッた方がいいよ。
アタシも結構大概だけど、この件に関してだけは、
チサトがキレたらアタシの百倍怖いから」
「ハルカさんの事?」

恭介の改めての問いに、拳銃をだらんと下げた千里が頷く。

「さっきも言ったけど、最初に会ったのは見滝原中学校のジャズ同好会で。
ハルカさんは尊敬するピアニストの妹さんで、
ハルカさん自身も尊敬に値する演奏者。
僕も、ヴァイオリンやっててジャズも少し齧ってるから、
その事で何回か会ったり演奏した事はある」

「音楽関係の付き合いって事?」

恭介の返答に、千里が聞き返す。

「うん」
「あの人の事を、魅力的な先輩だと思う?」
「うん。素晴らしいピアノを弾いて、
それであんなに綺麗でしっかりした人だから、尊敬してる」

その返答を聞き、千里は天を仰ぐ。
千里自身経験豊富、と言う訳では決してないが、これは、素直過ぎる。
何か、想像以上に単純過ぎる事が、千里にも段々と分かって来ていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/03/12(土) 03:52:09.82 ID:UcxQ0O8D0<>
「そう、分かった」

次の瞬間、千里と亜里沙は目配せを交わした。

「これはっ?」
「チッ!」

千里と亜里沙は、目の前の景色がぐにゃりと歪むのを目の当たりにする。

「加減、大丈夫でしょうね」
「伊達に経験積んでないって」

尋ねた千里に、恭介を当て落とした亜里沙が答える。
千里の右手の拳銃が天に向けて発砲され、
花火のシャワーの様なものが降り注ぐ。
それと共に、景色は普通の工事現場のそれに戻される。
次の瞬間には、死神規格の大鎌と槍がガキインッと衝突していた。

「!?」

千里の発砲した魔法弾が、空中で飛来したサーベルを撃ち落とす。

「えーっとさ」

飛来源からのその声を聞きながら、千里の足がじりっ、と下がる。

「あんた達、他所の縄張りで一般人捕まえて何やってる訳?」
(オーケーそれでいい、打ち合わせ通り、取り敢えず魔法少女の筋論から様子を見る)
「ごめんなさい、もう用事は終わったわ。
彼にも危害は加えていない。退散させてもらう」
「ふーん、それで、納得してもらえる、とか思ってる訳っ?」


==============================

今回はここまでです>>55-1000

>>54
有難うございます。
今回はお礼だけで失礼します。

続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/04/04(月) 23:46:50.78 ID:Fmu7ZFeG0<> 生存報告しときます <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/04/28(木) 23:02:33.43 ID:ZljhueG40<> すいませんが生存報告です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>age<>2016/05/11(水) 22:42:25.47 ID:6/81+6x40<> age <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/05/28(土) 23:13:51.08 ID:AjTiPIr50<> 生存報告です <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/06/25(土) 13:38:06.89 ID:zwFCVwBT0<> 生存報告です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/07/02(土) 00:32:13.72 ID:tULHUK7J0<> 乙です
本日初めてこちらのSSを発見したので、ちょっと読んでみます <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/07/24(日) 02:42:19.59 ID:5R2V/YuL0<> 生存報告

そろそろ行けます、かね……… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2016/07/25(月) 10:24:34.00 ID:kBbsFUTXo<>   <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/07/29(金) 01:40:19.27 ID:b1q2A61p0<> 大変お久しぶりですいません。
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>58

「おっ」

佐倉杏子が呟いた時には亜里紗が踏み込み、
成見亜里紗の大鎌と杏子の槍が打ち合う。

(こいつ、強いっ)
(ちょっとは出来るじゃんっ)

杏子に、ニッと笑みを向けられて、亜里紗の頭にカッと血が上る。

「っのおっ!」

一度距離を取った亜里紗が再び杏子に突っ込んだ。

(こっちもデカイけど、あのでっかい槍なら動き、をっ!?)

何とか、杏子の槍働きに合わせて打ち合っている、
と、亜里紗が思っていた時には、
亜里紗は杏子の得意手にはまっていた。

「こ、のっ!(鎖仕込みかよっ!!)」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/07/29(金) 01:46:22.78 ID:b1q2A61p0<>
ーーーーーーーー

ほとんど裸のフロアの空中で、
放たれるサーベルと銃弾が激しく衝突する。
親友の突撃が作った隙に、詩音千里は解体中のビルの中に逃げ込んでいた。

そして、途中で待ち伏せして、
美樹さやかとの戦闘状態に入っていた。

本来、無闇な戦闘をするタイプではない千里だったが、
今回は色々まずい歯車が回った、と、頭を痛めていた。
それも自業自得と言わざるを得ないのが本当に頭が痛い。

まともに逃げても追い付かれる、
千里の側が縄張り荒らしなだけに、普通の話し合いも難しい。
と、なると、申し訳ないが一度ぶつかって退路を作るか、
虫のいい話だが優位に立ってから話を付けるしかない。

およそその様な発想だったが、
追いかけて来た相手もなかなかの手練れ、
益々以て頭の痛い話だった。

(やるじゃん)

柱の陰で、さやかも心の中で呟く。
ホオズキ市から来てよりによって上条恭介に手を出す。
なんだか知らないけど何はともあれ取り敢えず万死に値するのは間違いない。

そんな相手を追い込んでここまで来た訳だが、
まあ、誘い込まれた、と言う事は理解出来る。
相手が銃だけに、遠距離戦は向こうに分がありそうだ。

「!?」

物陰から物陰へ、ちょこまか移動を始めたさやかを、
千里は銃口で追いかけて銃撃を続ける。
その内に、さやかの動きに合わせて空中に現れた消火器が、
千里の銃撃を受けて爆発していた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/07/29(金) 01:51:48.51 ID:b1q2A61p0<>
(もらった、あっ!?)

さやか会心の一撃、が、ガキイッと受けられた。
自分の距離に持ち込んだ、その確信が、逆にさやかの心に狼狽を生んでいた。
そして、気が付いた時には、振り下ろした刃は全て相手の銃身に受け流され、
ドカッ、と、腹を蹴られたさやかはそのまま背中を打ち付けるまで吹っ飛んでいた。

「ごめんなさい」

経験差があったとは言え、パワーそのものを願いに大業物を振るう成見亜里紗を
手もなく捻った事もある千里である。
さやかの隙を堅実に見抜くと一気に畳みかけ、
さやかが復活する前にドンドンドンと魔法弾を浴びせていた。

(ありゃ? 変身解けた?)

マジ死んだ、ぐらいに思っていたさやかが自分の異変に戸惑っている間に、
千里は走り出していた。
魔法少女の強みで、何階もの高さの窓から飛び降りる。
もう一人のポニーテールもかなり厄介そうだ。
亜里紗に撤退を促して、と、思っている所で千里は異変に気付く。

ーーーーーーーー

千里が把握した現実は、降下中に近くの窓に引きずり込まれたと言う事だった。
その結果を齎した、千里の脚に絡まった黄色い紐を千里が銃撃した頃には、
別の銃弾が雨あられと千里を襲っていた。

「くっ!」

物陰に隠れ、そこから敵を銃撃したが、
その効果は覿面だった、悪い意味で。
身を隠していた柱が目の前から消滅し、千里は這う這うの体で別の柱の陰に入る。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/07/29(金) 01:57:12.43 ID:b1q2A61p0<>
(一発撃ったら百発返って来る、っ)

自分が銃撃タイプの魔法少女だけに、
今戦っている状態が本気でまずい、と言う事が骨身に染みて理解出来た。

最早、余計な事を考えている余裕はない。
鋭い空気が掠める連射にチビりそうな恐怖を覚えながら、
千里は柱から柱へと駆け抜け、威嚇にもならない拳銃を発砲しながらチャンスを伺う。
足を止めたら死ぬ、見切り損ねても死ぬ、と、痛感しながら。

「やああああっ!!!」

そして、千里は相手の斜め後ろから飛びかかった。
千里の右手に握られた横殴りの拳銃が相手の振るった長い銃身に受け流され、
千里の左手の拳銃が火を噴いたが、その銃弾は壁に埋まる迄空しく空を切る。

いつの間にか、相手が振るった銃床が千里の後頭部に叩き付けられそうになり、
千里は文字通りに這う這うの体でそこから逃れる。
千里が走り去った後を銃撃が追跡し、千里は柱の陰で荒く呼吸する。
そして、又、紙一重に銃撃を交わしながら柱から柱へと飛び回る。

(もらったっ!!!)

その中で発見した千載一遇の機会。
詩音千里はそこに、文字通り飛び付く。
魔法少女ならこのぐらいでは(辛うじて)死にはしない。一番大きな胴体を的に。
とっさに狙った相手の胸元に魔法弾の連射を浴びせた瞬間、
千里の目の前には、
ぶわっ、と、紐の塊が展開していた。

==============================

今回はここまでです>>-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage saga<>2016/07/29(金) 02:04:30.76 ID:b1q2A61p0<> 雑談
随分お久しぶりになりまして、
短い投下での再開ですいません。

少し勘が鈍ってる予感もありますが、
まあ、ぼちぼち続けます。

改めまして、
今回はここまでです>>67-1000

それでは失礼します。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 01:38:23.12 ID:PL2otzEv0<> No.16 充填完了。

それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>70

「付いて来てもらいましょうか?」

全身雁字搦めで身動きが取れない。
その間に、銃口を向けられて詩音千里は一度抵抗を諦める。

魔法銃を使う事が出来たら拘束を解除する目もあったが、
拘束がきつくてそれも使えない。

魔法少女同士の抗争になってしまった以上、
本来ならここで頭を吹っ飛ばされても文句は言えない。
千里は、その生真面目な声の指示に従う事にする。

ーーーーーーーー

かくして、連行された先は、最初の資材置き場だった。
そこには、多節棍で拘束された成見亜里紗の姿もあった。

「チサトっ!? 放せ畜生っ!!」
「てめぇで喧嘩売って来たんだろうがっ!!」
「この、っ………」

拘束されたまま、無言で向けられた銃口に亜里紗が息をのんだ。

「余り手荒な事はしたくないけど、
他人の縄張りで暴力沙汰を起こされて甘い顔は出来ないわね」
「申し訳ありません」

厳しい口調で告げる巴マミに、千里が拘束されたまま頭を下げた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 01:45:33.44 ID:PL2otzEv0<>
「私は巴マミ、この辺りで魔法少女のリーダーみたいな事をやってる。
あなた達の事は暁美さんから聞いてるけど、
一体どういう事か説明してもらえるかしら?」

「はい、その、何と言いますか………
私達のチームの副長、奏ハルカと最近見かけない男子生徒がやけに親しくと言いますか。
それで、その男子生徒に就いて少し確認した所、見滝原の上条恭介君だと分かって、
それで、あの、本当はもう少し穏やかにどういう事か確かめるつもりだったんですが、
手違いがありまして………」

「つまり、そちらの副長さんに粉掛けて来た野郎がいたから、
どんな奴だか確かめてやろうとこの見滝原まで出張って来たって事ね」
「まあ、そういう事ね」
「アリサッ、確かに、否定する程間違ってはいません」

杏子の要約に亜里紗と千里が応じた。

「で、その、奏ハルカ? あっちの副長って知ってるのか?」

杏子が、側にいた暁美ほむらに尋ねる。

「ええ」
「どんな奴だ?」
「綺麗なひと(女性)よ」

杏子の問いに、ほむらはファサァと黒髪を払って答える。

「綺麗なロングヘアの美人で背が高くてスタイル抜群。
物腰は折り目正しくて、育ちがいいみたいね。
魔法少女のリーダーとしても強い責任感と実力の持ち主で、
いかにも憧れの先輩、ってタイプかしら」

「ええ、その通りです。
ハルカ先輩は立派な先輩で素敵なひとです」
「ウェヒヒヒ………」

自分の指で自分の顎をついと上げて言うほむらの言葉に千里が応じる。
その側では、腕組みして眉をヒクヒク動かしている幼馴染を横目に入れて、
鹿目まどかが乾いた笑い声を漏らしていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 01:51:44.80 ID:PL2otzEv0<>
「本当はもっと穏便に話を進める予定でしたし、
そちらと事を構えるつもりもなかったのですが、
全てこちらの不手際で騒ぎを大きくしてしまって、
本当に申し訳ありません」

プイッ
ギロッ

千里が頭を下げ、そっぽを向いた亜里紗もそれに倣う。

「それで、その、元々の調査の目的はどうなったのかしら?」

ほむらが尋ねた。

「音楽を通じた友人だと言う事が分かりました。
それだけの事です。彼には他に付き合っている人もいるみたいですし、
それが分かって引き上げる所だったのですが、本当にすいませんでした」
「この事は、そちらの副長さんやリーダーは知ってるの?」

頭を下げる千里にマミが尋ねる。

「いえ、知りません。全て私の一存です。
アリサにも無理を言ってついて来てもらいました」
「格好つけるなっつーの」

千里の言葉に亜里紗が毒づく。
しかし、マミと杏子がチラッと見たところ、その脚は震えを帯びている。
まず、本人の言葉がどこまで信用されるか、と言う事もあるし、
魔法少女が他所の縄張りで変身しての暴力沙汰となると、
それ相応の目に遭わされても文句は言えない。

「あー、めんどいから言っておくけど、
あの坊やの彼女ってこいつだから」

親指で指しての杏子の言葉に、千里と亜里紗の首がぐるーりと動く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 01:56:52.12 ID:PL2otzEv0<>
「んんっ、あたしは美樹さやか、よろしく」
「つーか、そんなら彼氏の事ぐらいちゃんと見とけってーの」
「アリサッ。今回は本当にごめんなさい。
あなたにも彼にも迷惑をかけて」

「まあ、分かったんならそれでいいけど、
それでその、ハルカ先輩って音楽とかやってるの?」
「ピアノを、年齢的には相当な腕前だそうです。
こちらの学校でジャズピアノを弾いた時に上条君と知り合ったと。
ただ、肝心な所の確認に少し手間取りまして………」

「ああー、恭介も時々ジャズ弾いてるからね。
あいつ筋金入りの音楽馬鹿で、ちょっと色々疎い所あるから、
なんかそっちで誤解招いたかも、って事にしておくわ」
「有難うございます」

「これでまた恭介に手ぇ出した、とか言ったら、
あたしも本気でキレるからね、多分文字通りの意味で」
「覚えておきます」

「美樹さんがそれでいいと言うなら。
ワルプルギスの件では手助けしてくれたとも聞いてるし、
今回だけはあなた達を信じて不問に付しましょう」
「有難うございます。本当にすいませんでした」

マミの言葉に、千里が深々と頭を下げ、
拘束を解かれた亜里紗が腰を抜かしていた。

ーーーーーーーー

「ん、んー」
「気が付きましたか?」

上条恭介が目を開けると、可愛らしい少女が視界に入る。
確か、ごく最近の記憶にありそうな。

「話している最中に立ちくらみしたみたいで、
短い時間でしたけど」
「そう」

そっぽを向いて笑いを堪える亜里紗の横で、
地面で身を起こす恭介と、それを覗き込む千里が言葉を交わした。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:00:11.15 ID:PL2otzEv0<>
「確か、ハルカさんの後輩の」

「詩音チサトです。
さっきまであなたと先輩の事を少し話していただいたのですが、
事情は分かりました。
こんなところでお手間をとらせてすいません」

「ああ、うん。こちらこそ何か面倒かけたみたいで」
「はい。出来れば今日の事はハルカ先輩には内密に。
私達もあなたから勝手に色々聞きましたから、
余り気分のいい事ではないですので」

「詩音さんがそういうなら僕は構わないけど」
「それじゃあ」

双方、頭を下げた後で合意が成立し、ここで別れる事となる。

ーーーーーーーー

「あなた達」
「良かった、追い付いて」

馬鹿馬鹿しい騒ぎに付き合わされ、帰路に就いていたほむらの前に、
その騒動の元凶二人組が姿を現した。

「少しだけ、いいかしら?」
「何?」
「………あの場では、収拾するために敢えて言わなかった事」

その時には、千里の唇はほむらの左耳のすぐ側まで近づいていた。

「私は、あんな女の子の顔をしたハルカ先輩を見た事がない」

ほむらが視線を外すと、亜里紗も小さく肩をすくめていた。

「正直、この手の事で拗れたら他人にはどうにも出来ない。
それでも魔法少女同士のトラブルは避けたい。
だから、私も気を付けるけど少しだけ頭に入れておいて欲しい」
「そうさせてもらうわ」
「ごめんなさい」

千里が小さく頭を下げ、ホオズキの二人組はその場を離れる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:03:49.08 ID:PL2otzEv0<>
「………どうしろって言うのよ」

女子校出身暁美ほむら、人選を考えろと心の中で毒づく所であるが、
後の人選はと言えば、

当の本人。
暁美ほむらが固く信じている所によると、ピュアそのもの。
花より団子のがさつ者。
多分残念美人。
消去法の結果、暁美ほむらはもう一度嘆息する。

ーーーーーーーー

「何やってんだかなぁ」

見滝原でのちょっとした馬鹿馬鹿しい揉め事も片付いて、
佐倉杏子は陽の落ちた風見野で繁華街をうろついていた。

「ん?」

そこで、ちょっとした気配を察知する。

ーーーーーーーー

「うぐっ!」

薄汚い路地裏で、一人の少年がうめき声と共に蹲る。
その周辺には、少女を含む柄の悪いのが集団で、
ニタニタ笑って取り囲んでいる。

「なぁ、このままボコボコなる前に金出しちまおうぜ」
「分かんねーならもう一発いっとく?」
「ヒャハハ………あがっ!?」
「おいっ? おごっ!!」
「てめぇ、何して………」
「?」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:07:21.78 ID:PL2otzEv0<>
蹲った少年が気が付いた時には、
彼を取り囲んでいたグループが仲間割れの様に殴り合いを始めていた。

「行くぞっ!!!」

そして、彼を掴んだ手は、意外に柔らかなものだった。

ーーーーーーーー

「大丈夫か?」
「ええ、すいません」

佐倉杏子は、夜の公園で、
路地裏からかっ攫って来た少年にハンカチを差し出した。

下らない気配を感じて路地裏を探った所、
分かり易く進行していたカツアゲの中から被害者の手を引いて今に至る。
見ると、相手は杏子と同年代、
ちょっと年上にも見えるが、如何にも育ちのいい、線の細そうなタイプ。

「アンタみたいな坊ちゃんがあんな所で何やってたんだよ? 夜遊び?」

まず、「食うかい?」とチョコ菓子を勧めてから杏子が質問する。

「妹を、探してた」
「妹?」
「うん。この娘、見かけなかったかな?」

杏子が差し出された写真を見る。
同年代らしいが、生憎心当たりはない。

「妹さん、どうかしたのか?」
「いなくなったんだ。何日も帰ってない」

「警察には?」
「一応。恥を言うけど、僕の母親がちょっと毒親入っててさ、
昔から僕の事を贔屓して妹にはきつく当たってたんだけど、
事故の後からちょっとひどくなって」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:10:59.43 ID:PL2otzEv0<>
「事故?」
「うん。通学路に車が突っ込んで来てね。
僕が妹を庇う形で大怪我したから」
「それで、母親から嫌われたってか」

「正直、家出しても仕方がないと思う。
僕も、出来るだけフォローして可愛がってたつもりだし、
兄妹仲は悪くなかった、と、思ってるけど。
妹も、祈ってくれた」

「祈って?」
「入院中に、僕のために祈ってくれた。
夢か現実か、はっきりしないんだけどね。
だって、意識もなかった筈だし。
それでも、妹が僕のために必死で祈ってくれてたのはなんとなく覚えてる。
後で看護師さんに聞いても本当にそうだったって」

「健気だな」
「うん。必死に僕の回復を祈って、
しまいには何かおかしなものが見えてたのかも知れない」
「おかしな、もの?」
「うん、なんか、願いを叶えるとか、奇跡とか、契約とか、
そんな事をぶつぶつと言ってた様な気がして」

「奇跡、か」
「実際、僕がこうして普通に動いてる事自体、
医者に言わせれば奇跡なんだって。
即死しなかっただけで、まず生きて病院を出られないって所から
信じられない勢いで回復したって、医者も驚いてた」

話を聞きながら、杏子は、すっ、と目を細めていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:14:51.49 ID:PL2otzEv0<>
「何か、手がかりとかないのか?」
「携帯とか財布とかもなくなってた。只………」
「只?」

尋ねる杏子に差し出されたのは、印刷された風見野の地図だった。

「申し訳ないけど、妹のPC開けさせてもらった。
見当のついたパスワードが当たりだったから。
それで、見られる範囲で見つかったのがこの地図」

「印がついてるな」
「何か所か印がついてるから、
そこを回ってみようと思ったんだけど、一つ目であんな風に………」
「ああ、これ、アンタみたいな坊やが出入りする場所じゃねーよ、
コピーとっていいか?」

「え?」
「ちょっと、あたしが見てみるって言ってるの。
アンタはもう帰った方がいい。
そうだ、名前は? あたしは佐倉杏子」

「マナ、人見マナ」
「妹さんは?」
「人見リナ」

「そうか。連絡先聞いていいか?
何か分かったら連絡する。はっきり言って気紛れでやってる事だし、
全然当てにならないって事で良かったらだけど」
「うん」

人見マナは素直に応じた。杏子の見た所、愛されて育ったのだろう。
確かに、甘やかされたのかも知れない、と言う部分はあるが、
ある種の素直な好ましさが見える。
甘やかされても、それを他人、恐らく妹にも、
優しさに変換する術を身につけている様に見えた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:18:09.86 ID:PL2otzEv0<>
ーーーーーーーー

大槍一閃、魔獣が一掃され、魔獣の結界は錆の浮かんだ廃工場でしかなくなる。

「佐倉、杏子か?」

ドン、と槍の石突で床を叩いた杏子が、背後から声を聞いた。

「この辺には現れない、と思っていたが」

そんな言葉を聞きながら、
杏子は背後に現れた集団に魔獣のキューブを放った。

「最近この辺で売り出し中の魔法少女パーティーってあんたらか?
あたしも面倒はごめんだからなるだけ近づかなかったけど」

「まあ、そういう事になるだろうな。
私は朱音麻衣。風見野で槍を使う凄腕、佐倉杏子と言うのは?」
「佐倉杏子はあたしだけど。
それで、ちょっと聞きたいんだけど、人見リナってそっちの関係か?」

次の瞬間、杏子は胸倉を掴み上げられていた。

「お前、何を知ってる!?」
「美緒っ!?」

麻衣が叫び、美緒と言う魔法少女は杏子に振り解かれていた。

「やるってーの?」
「風見野でも利己的な魔法少女って聞いてる。
リーダーをどうかしたのかっ!?」

槍を持ち直した杏子に美緒が叫ぶ。

「やめなよっ!」
「よせ美緒っ!
仮にも風見野の一匹狼で名の通った相手だ」

グループの一人佐木京がおろおろと叫び、
麻衣も強く制止する。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:20:45.06 ID:PL2otzEv0<>
「じゃあ、人見リナって、あんたらのリーダーかよ」
「そういう事だ。だから、何か知ってると言うなら話して欲しい」

不精不精引き下がった美緒に代わって麻衣が頭を下げた。

「リナの兄貴に会った」
「お兄さんに?」

杏子の言葉に京が聞き返す。

「ああ、リナの事を探してた。何日か前から行方不明だって」
「こっちも同じだ。急に連絡が取れなくなった」

杏子の説明に、麻衣が続ける。

「独りで魔獣にやられたんじゃねーだろうな?」
「まさか、あの生真面目で、自分で集めたグループを大事にしてたリナが、
何の連絡もなくなんて考えられない。
そもそも、リナの技術で魔獣相手に致命的な事態になる事自体考えにくい」

「家庭がちょっとアレみたいってのは聞いたが」
「それも、少しは聞いている。
だが、お兄さんとは仲が良かった筈だ。
誰にも何も報せず、と言うのは、リナの性格からして………」

杏子とやり取りをしていた麻衣の言葉が途切れた。

「だとすると………本気でどっかの変態野郎にとっ捕まって、
何かの弾みで変身も出来ず、って線か」
「そんなっ」
「残念だが、理論的に一番あり得る推測と言わざるを得ない」

叫ぶ京の側で、麻衣も下を向いて言う。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/08/19(金) 02:24:15.83 ID:PL2otzEv0<>
「人見リナって、どういう奴なんだ?」
「立派な奴だ」

杏子の問いに麻衣が答え、京が頷いた。

「立派な魔法少女で立派なリーダー、であろうとしている。
そしてそれを実践している。
正直、それで少し頭が固過ぎて抱え込み過ぎる所がある。
だが、それを含めて私達はリナを支え、付いて行こうと決めた。
私達にそう思わせる奴だ」

麻衣の言葉を聞き、杏子はくるりと背を向けた。

「………親の事以外は恵まれてる奴だな、色々と」
「ああ。だから、心から無事を祈ってる。
心当たりも色々当たったが、駄目だった」
「………気が向いたら探してみるよ。
気が向いたら、だからな」
「ああ、分かったよ」

麻衣の言葉を背に、杏子は歩き出していた。

==============================

今回はここまでです>>72-1000
続きは折を見て。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/08/19(金) 07:27:24.46 ID:wi4EqFEgo<> まだこのスレあるのか <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/09/15(木) 23:06:58.53 ID:Ymq9F1qf0<> 生存報告です <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/10/06(木) 20:19:13.02 ID:yiR9IGEW0<> 生存報告しときます <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2016/11/02(水) 02:39:10.35 ID:1VKAtVmY0<> 生存報告

そろそろ行けそう、ですが <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 00:45:33.11 ID:6BO///6e0<> かなりお久しぶりですいません。
それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>83

 ×     ×

その日、上条恭介は少なからず陰鬱な心を引きずりながら登校していた。

「おはよー」
「おはよー」
「お早う、上条君」
「お早う」

教室近くの廊下で、恭介は顔見知りの女子生徒と挨拶を交わす。

「それで、連絡とかは?」

恭介の問いに対し、割と古い馴染みの同級生は首を横に振る。
その側から向けられる、
最近こちらの学校に来た黒髪美少女の涼しい眼差しが重苦しさを増加させる。

「お早う、志筑さん」
「お早うございます上条君」

教室で挨拶を交わした恭介に対し、
彼と親しくしている志筑仁美が相変わらず優美な物腰で一礼する。
しかし、その表情には常にない疲労が漂っている。
そして、恭介の問いに対して、仁美は小さく首を横に振る。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 00:51:05.14 ID:6BO///6e0<>
ーーーーーーーー

放課後、上条恭介は、ごくごく当たり前に安全なルートを選択し、
通いなれた歩道をテクテク歩いて帰路に就いていた。
しかし、その表情は常になく険しく、憂いていた。

そして、気が付いた時には、最近見かけた工事現場のただ中に立っていた。
そこは、取り壊し中のビルの前、囲いの中の資材置き場だった。
少なくとも、彼自身は何をされたのか、全く理解出来ていなかったが、
種を明かせば意外と単純だった。

フルブースト状態の魔法少女に胸倉を掴まれ、
短時間の内に力ずくの最高速でそこまで移動していたため、
理解が追い付かない。これだけの事だった。

「えー、と、成見亜里紗さん、だっけ?」
「そう」

そう返答した亜里紗の口調は、以前に増して剣呑なものだった。
亜里紗が恭介の胸倉から手を離し、一歩下がる。
それと入れ違う様に、近くにいた詩音千里がつかつかと恭介に近づいてきた。

「あなたに聞きたい事があります」

千里の口調は丁寧だが、前回とは違う、敵意に近いものすら感じられた。

「先輩がどこにいるのか、分かりますか?」
「ハルカ先輩? いなくなった?」

それは、自分への問いに近い恭介の呟きだったが、
次の瞬間恭介の体は軽く浮き上がっていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 00:56:23.65 ID:6BO///6e0<>
「もしかして尻尾出した?」

恭介の胸倉を掴みながら、亜里紗の口角は僅かに吊り上がっていた。

「知ってる事、洗いざらい喋った方がいいよ、じゃないと………」

言いかけた亜里紗の肩が、ぽんと叩かれる。
亜里紗が移動すると、恭介は自分に向けられた銃口を見ていた。

「早めに全てを白状して下さい」

地面を一発の何かが貫き、恭介のこめかみにつーっと汗が伝う。

「さもなくば、足から始まって手の指が残っている間に、
と言う事になりますから。
それは大いに困る事でしょう、特にあなたは?」

「あー、上条君上条君、
基本、千里は常識的な冗談は通じる娘だけど、
ハルカ先輩絡みだとヒャクパー本気だから」
「ち、ちょっと待って」

「はい」

ごくりと息をのんだ恭介がまあまあまあの形で手を動かし、
千里も素直に従う。

「聞きたいのは僕の方なんだ」
「え?」
「さやかの事を、知らないか?」
「何?」

恭介の言葉に、亜里紗が聞き返した。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 01:01:47.42 ID:6BO///6e0<>
「ちょっと、待って下さい………さやかと言うのは?
あなたの知り合いの方ですか?」
「うん、ハルカ先輩、いなくなったんだよね?
それで探しに来たんだよね?」

「ええ」
「さやかもそうなんだ、何日も家を空けて、
今までそんな事なかったのに」

恭介の言葉に、二人の少女は顔を見合わせた。

「分かりました」

千里が言った。

「正直言って、何も分からないからこちらに来た次第で、
さやかさんの事までは分かりません。失礼しました」

千里がぺこりと頭を下げて走り去り、亜里紗がその後を追う。

ーーーーーーーー

マミルームに集まっていたのは、
鹿目まどか、暁美ほむら、詩音千里、成見亜里紗、
そして巴マミと言った面々だった。

「あなたから連絡をもらった訳だけど、
奏ハルカさんが失踪したと言うのは本当?」
「ええ」

まず、ほむらと千里が状況を確認し合う。

「奏さんと美樹さんが、失踪………」

マミが不安げに呟いた。

「この組み合わせだと………」

言いながら、ほむらが顎を撫でて思案する。
その脇で、マミがインターホンに向かっている。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 01:07:33.99 ID:6BO///6e0<>
「可能性として考えるなら、何処かで二人で剣を交えた決闘を行って、
そのまま二人とも動けなくなった、とか」
「ほむらちゃん………」
「アンタ、ふざけてるの?」
「可能性として、排除出来るかしら?」

剣呑な声を上げる亜里紗にほむらが言う。

「二人だけならな」

そんな会話に割って入ったのは、佐倉杏子だった。

「もう一人、いなくなってる」
「もう一人?」

杏子の言葉に、ほむらが聞き返した。

「人見リナ、風見野で魔法少女グループのリーダーをやってる奴だ」
「魔法少女のリーダー………」

杏子の言葉に、千里が呟いた。

「多少調べて回ったが、魔獣にやられたとも思えない、
責任感が強い真面目な奴で、
一人で勝手にいなくなる様な奴じゃないってな」
「それは、ハルカ先輩もそうです」
「さやかちゃんも、色々やんちゃな所はあったけど、
こんなに何日もいなくなる、なんて事はなかった」
「魔法少女が、失踪してる?」

口口の言葉を聞きながら、マミが言った。

「その可能性が出て来たわね」

ほむらが言う。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 01:10:54.50 ID:6BO///6e0<>
「今の所三人。
その何れもが魔法少女で、失踪する様な理由が無い。
確かに魔法少女には危険があるけど、
三人が三人、一人で誰にも分からず連絡不能になる、
そんな間抜けが揃っている面子じゃない」
「その通りです」

ほむらの言葉に千里が同調した。
その時、マミが自分のスマホを手にして着信を受けていた。

「もしもし………ええ、ちょっと落ち着いて………ええ………」

マミがスマホをテーブルにおいてスピーカー状態にする。

「キリカを、探して頂戴」
「織莉子さん?」

スマホの声にほむらが言う。

「キリカと連絡がつかない、
その前に不審な状況があった。手がかりは………」

切迫した口調の織莉子の声を聞きながら、ほむらがメモを走らせた。

「こちらでも条件に合う所を探しながら、みんなで手分けしてって事でどうかしら?」
「それで行きましょう」

パソコンを起ち上げたほむらの言葉にマミが応じ、一同が動き出した。

==============================

今回はここまでです>>88-1000
続きは折を見て。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/03(木) 01:19:18.01 ID:f0KkfsexO<> このクソスレ読んでるやつまだいるのか? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2016/11/03(木) 09:38:21.40 ID:Me4fTiLmP<> ここにいるぞ!
ここまで来たからには頑張って完結して欲しいな <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 12:56:03.13 ID:6BO///6e0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>93

ーーーーーーーー

「詳しい話、聞かせてもらえるかしら?」

マミルームに再集結した一同の中で、
新たに合流した美国織莉子に暁美ほむらが尋ねる。

「有難う」

織莉子は、巴マミが差し出した紅茶を傾ける。

「見えたのよ」
「予知?」

ほむらの質問に、織莉子は頷いた。

「キリカが、見覚えの無い車に乗っていなくなるシーンが。
変な感じだったから、私はキリカに連絡を取った。
キリカも覚えが無いと言った。
だけど、その後で連絡が取れなくなった」

「それで、私に連絡して来たのね?」
「ええ、私が見た光景を覚えている限り伝えたんだけど………」
「彼女も、手がかりも見つからなかったわね」

割と大量の魔法少女が出動しての捜索結果をほむらが告げた。

「まだ、連絡はつかないの?」

亜里紗の言葉に、織莉子が頷く。

「こんな事、今までなかった」
「ああ。あいつ、織莉子にべったりだったからな」

この中では織莉子と割と古い知り合いである杏子が言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 13:01:17.74 ID:6BO///6e0<>
「きな臭いわ」

ほむらが言う。

「今、その事で話し合っていたんだけど、
最近、魔法少女が相次いで失踪してる」
「なんですって?」

ほむらの言葉に、織莉子も硬い口調で聞き返す。

「こちらの美樹さやかもいなくなった。
その事で、こちらのホオズキの魔法少女も合流していた所」

千里と亜里紗が頷き、ほむらが概略を説明した。

「それじゃあ、魔法少女が相次いで姿を消していて、キリカも」
「状況から言って、十分考えられる」

織莉子の言葉にほむらが応じた。
織莉子の元々の性格から動揺は少ない様にも見えるが、
内心の動揺は想像以上だろうと、その事は周囲の者からも見えていた。

「でも、正直手詰まりね」

マミが言った。

「探し回っても手がかりは見つからなかった。
今までの失踪は警察にも届けが出ている。
取り敢えず、織莉子さんは連絡を待って、
今夜は一度、それぞれの狩りに行きましょう。
決して単独行動はとらない様に。
明日、又ここで話し合うと言う事で」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 13:07:16.23 ID:6BO///6e0<>
 ×     ×

翌日放課後、マミルームのリビングに、
一人の少女が疾風の如く飛び込んできた。

「魔法少女失踪事件の事、詳しく聞かせて」
「………この娘は?」

飛び込んで来た少女が、周囲をじろりと見回して叩き付ける様に言った。
その有様に、余りの勢いに戦闘態勢を取りながらほむらが尋ねる。

「日向カガリ、私達のチームメイト」

追い付いた千里が質問に答えた。

「天乃スズネ………」
「日向マツリです。ほら、カガリ」

千里らと一緒に現れた鈴音がミリ単位で頭を下げ、
華々莉との関係が一目で推測できる日向茉莉が頭を下げながら華々莉に促す。

「只事ではなさそうね」

そんな様子を見ていた織莉子が口を挟んだ。

「ツバキが、いなくなった」

ぼそっと言ったのは鈴音だった。

「ツバキ?」
「私達のリーダーよ」

聞き返すほむらに千里が言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 13:12:33.00 ID:6BO///6e0<>
「じゃあ、そっちはリーダー、
サブリーダーがいなくなったって言うの?」
「そういう事っ」

少し驚いた口調で言うマミに、亜里紗が苛立ちを隠さずに言った。

「前にも言ったけど、うちは実質的に二つのチームの合同に近い。
副長のハルカ先輩の下に私とアリサ、
リーダーのツバキの下にカガリとスズネ、両方に属しているマツリ」

「対立とか派閥とかじゃないけど、
元々の人間関係とかもあってやり易い様に組んでる」

千里の説明を亜里紗が補足する。

「ツバキはマツリ達の家の家政婦でもあるんだけど、
私達が学校にいる間にいなくなってた、連絡もつかない。
携帯の電源もずっと切られてるし、まさかと思って………」

「今まで、こんな事は無かった。しかも、魔法少女失踪事件の真っ最中。
チサト達がそっちに向かっている間も
私達は私達でハルカを探してはいたけど、他に考えられないっ」

泣き出しそうな茉莉に続いて、
吐き出す様に言った華々莉がギリッと歯噛みしていた。

「それじゃあ、一度分かっている事をまとめましょう」

マミが提案し、報告会が始まる。
それぞれに分かっている事を報告するが、
ほむらの聞く限り目新しい話は出て来ない。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 13:17:07.48 ID:6BO///6e0<>
「車に乗った?」

華々莉が織莉子を見て言った。

「呉キリカは、自分で車に乗ったと言う事でいいの?」
「ええ、私が見た映像はそうだった」
「魔法少女を力ずくで車に乗せるとか、
それも何人も、そっちの方が無理だろうな」

織莉子の言葉に杏子が続いた。

「それで、何か他に見えた事は?」

マミの質問に織莉子は首を横に振る。

「車に乗った時の映像は辛うじて見えたんだけど、
それ以上の事は何も見えない。
キリカの事を見ようとして集中しても形になる映像が全然出て来ない。
多分………意図的にジャミングされてる」
「なんですって?」

織莉子の言葉に、ほむらが聞き返した。

「いくつもグリーフシードを消費して全力で集中して、
それでも、一つの事に就いてここまで何も見えないなんて
そんな事は今までになかった」
「完全に、こっち側の人間か」

織莉子の説明を聞き、杏子が天を仰ぐ。
その側で、華々莉がすくっと立ち上がった。

「カガリ?」
「ツバキを、探す」

声を掛ける茉莉に華々莉が告げた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/03(木) 13:21:16.93 ID:6BO///6e0<>
「ちょっと………」

マミが声を掛けるのにも構わず、華々莉はそのまま出て行った

「どういう娘なの?」
「ちょっと、難しい娘だから」

ほむらの質問に千里が応じた。

「あの娘を本当に抑えられるのは、ツバキだけでしょうね」
「あいつの前にツバキと犯人探し出さないと、犯人の方が危ないな」

千里がぽつっと言い、亜里紗がバリバリと頭を搔いて続けた。

「教えて………」

呟いた鈴音は、胸の中できゅっと手を握っていた。

「誰が、こんな事をしたのか………」
「もう一人いた………」

呟いた亜里紗がごくりと息を飲む。

==============================

今回はここまでです>>96-1000

コメントどうもです。
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/07(月) 02:38:56.20 ID:DBnCgKGX0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>101

ーーーーーーーー

「大漁だな」
「ええ」

夜更けの見滝原、高台の公園で
魔獣狩りを終えた杏子とマミが余り嬉しくなさそうな会話を交わしていた。

「怪しそうな所を重点的に回ったから、魔獣には遭遇したけど」
「さやかちゃんは、見つからなかった」

ほむらの言葉に、まどかが悲し気に続いた。

「失踪しているのは魔法少女、何か手がかりだけでも、
とは思ったんだけど」

マミも無念の思いを隠さない。

「ったく、何処行きやがったあいつら………」
「さやかちゃんにハルカさん、他にも何人も、
あの、ツバキさんも………」
「そう考えるべきね」

まどかの言葉を、ほむらが肯定する。

「日向マツリに色々確認したけど、予定や約束を完全にすっぽかしてる。
何より今まで発見されたと言う連絡が無い」

そのまま、話が続いても実りも無く、
その夜は重苦しさを残した解散となった。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/07(月) 02:44:35.88 ID:DBnCgKGX0<>
 ×     ×

「日向カガリは?」
「連絡はしておいたんだけど、家にも戻ってない。
返事は返って来るから失踪はしていないと思うけど」

放課後のマミルームリビングで、ほむらの質問に茉莉が答える。

「それ、本人の返事なんだろうな?」
「うん、そう言われると思ったのか折り返しの電話はくれるから」

杏子の問いに茉莉が答えた。
失踪した者を別にすると、
マミチームと椿・遥香チームのほとんどの者がこの部屋に顔を揃えていた。

「来たみたいね」

インターホンに応対したマミが言う。

ーーーーーーーー

「カガリっ」
「ちょっと遅れたけど、一応それだけのものは持って来た」

口調が強くなる茉莉に、
華々莉が答えて自分のノートPCをテーブルに置く。

「警察関係の情報を収集してきた」
「警察?」

華々莉の発言に、ほむらが聞き返した。

「ええ、その辺のお巡りさんから始まって、
上から下から横から手繰れるだけ手繰ってね。
警察自体の動きは鈍いから外れかとも思ったんだけど、
あすなろ警察署にこれを一連の事件と疑って独自に動いてる刑事がいた」

PCのディスプレイに、一覧表が表示される。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/07(月) 02:51:55.68 ID:DBnCgKGX0<>
「奏ハルカ、美樹さやか、人見リナ、他にも、
この近隣で発生した条件の似ている失踪事件がかなり詳しくリストアップされてる」
「さやかちゃん………」
「思った以上にいるわね」

リストを見ながらマミが言った。

「あすなろ警察署………確かに、あすなろにも該当者がいるのね」

リストを見て、千里が呟く。

「事件扱いのケースだと、
失踪直前の携帯電話の位置情報や聞き込みの結果も入ってるわね」
「ええ。車に乗った、と言う証言も出て来てる。
状況から言って、頭の方をどうにかする能力が絡んでる」

ほむらの言葉に華々莉が続く。

「このリストを参考に、失踪した魔法少女のテリトリーを洗ってみましょう」
「当面、それしかないかなぁ」

マミの提案に亜里紗が応じた。

「私はあすなろに行く」

ほむらが言う。

「杏里あいりは私の古い友人、
あいりの友人の飛鳥ユウリとも面識がある」

「それじゃあ、私となぎさちゃんはここに残るから、
安否確認のメールはさっき言った通りのルールでお願い」

マミの言葉に、一同が小さく頷いた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/07(月) 02:57:19.37 ID:DBnCgKGX0<>
ーーーーーーーー

「よう」
「佐倉杏子」

あすなろ駅周辺で、遭遇した相手にほむらが言った。

「当てはあるのか?」
「取り敢えず、さっきのリストから
あの二人とあすなろの魔法少女の関係先を調べるつもり」

「じゃあ、一緒に行くか。こっちの魔法少女にちょっと当てがあるんだ」
「そうなの?」
「ああ」

「さっきはそんな事言ってなかったけど」
「日向カガリ」

ほむらの問いに、杏子がぽつっと言った。

「今、敵対するつもりはないけどあいつはちょっとヤバイ。
今、あいつに手がかりがあるって言ったら何やらかすか分からない、
そういうタイプだ」
「同感ね」

ーーーーーーーー

「よう」
「杏子ちゃん、に………」
「暁美ほむらです」
「あたしの知り合い、見滝原の魔法少女だ」
「見滝原の………」

あすなろ市内のビストロで、
取り敢えず三人の少女が一つのテーブルに就く。

「こちらが?」
「ああ、和紗ミチル、こっちの魔法少女」
「和紗ミチル、よろしく」

杏子に紹介され、ミチルが頭を下げる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/07(月) 03:01:51.93 ID:DBnCgKGX0<>
「それで、今日はどうしたの? 急に連絡とって来たけど」
「飛鳥ユウリ」
「杏里あいり」

それぞれ杏子とほむらが、ほぼ同時に言った。

「覚えてるよな」
「うん、二人がもめてる所をわたしが間に入ったんだから」
「そうだったの」

「うん。それから杏子ちゃんと約束してたんだけど」
「ああ、悪かったな。仲間と引き合わせるとか言われてたけど、
ちょっとこっちで色々あってな。なんとなく流しちまった」

「その、飛鳥ユウリの友人が杏里あいり、杏里あいりは私の友人。
そして、総合すると二人とも魔法少女と言う事になる」
「うん、知ってる。地元が同じだから」

ほむらの言葉にミチルが応じた。

「二人とも、姿を消してる」
「え?」

ほむらの言葉に、ミチルが聞き返した。

「飛鳥ユウリと杏里あいりが失踪した。
他にも、何人も魔法少女が姿を消してる」
「ちょっと待って、姿を消した、って、
それって魔獣退治で………」

ミチルの言葉に、説明していた杏子が首を横に振る。

「こっちの仲間や知り合いの知り合いも姿を消してるが、
魔獣絡みにしては色々不自然な事がある。
あすなろでもユウリとあいり、それに双樹って奴も姿を消してるらしいが、
何か聞いてる事無いか?」
「………」

杏子の問いに、ミチルは首を横に振る。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2016/11/07(月) 03:05:44.36 ID:DBnCgKGX0<>
「ごめん、最近ちょっとあの二人とも連絡とってなかったし、
そういう事は知らなかった」
「そう………さっき、仲間って言ったけど、
あなたのお仲間で不自然に姿を消した人とかは?」
「いない」

ほむらの問いにミチルが答えた。

「あなたのお仲間ともお話しがしたいわね。
広範囲に魔法少女が失踪しているから、少しでも情報が欲しい」
「うん、わたしから話しとく。
只、忙しい娘もいるから今すぐってのは無理だけど」

ーーーーーーーー

「なかなかウエストに厳しい一日になりそうね」

日が沈み、風見野のラーメン屋で相席した杏子にほむらが言った。

「ま、今日も狩りに行くし、体が資本ってな」

ニカッと笑う杏子に、ほむらが嘆息する。
かくして、美味しいラーメンと共に話が進む。

「あそこのパスタ、
美味しかったしボリュームも一杯だったわね。彼女も………」
「………ああ、今のあいつには少し多すぎたらしいな」

ほむらの言葉に、杏子はつと横を見て言った。
ふとした無言の中、本棚に視線の向いたほむらの目が見開かれる。

「?」
「思い出した」
「何?」
「和紗ミチル、どこかで見たと思ったら」
「なんだ、知ってたのか?」
「一方的にね」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/07(月) 03:09:21.24 ID:DBnCgKGX0<>
ーーーーーーーー

食後、ほむらと杏子の姿はネットカフェのブースにあった。
今時スマホでもいいのだが、
そんな時代から取り残された様なラーメン屋では気が引けた。

「ワルプルギスの時に来てたから、
元々魔法少女としても見た事のある面子ではあったんだけど」

言いながら、ほむらがパソコンの操作を続ける。

「御崎海香、中学生小説家か」
「ええ、それから牧カオル。
中学レベルだけど、そのつもりで探せば見つかる女子サッカー選手」
「この二人がミチルの仲間だって?」

「ええ、多分。
少なくともあの店で彼女達とつるんでいるのを見た事がある。
それから、和紗ミチルには双子の姉妹がいる筈よ。
何か、彼女に不審を覚えたんでしょう?」

「ああ………まあな」
「どっちにしろ彼女のグループには接触する必要がある。
みんなにどこまで情報を共有して協力を求めるか、考えましょう」

==============================

今回はここまでです>>102-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage saga<>2016/11/09(水) 02:44:14.78 ID:B3RAv/ZC0<> すいません、差し替え入ります。

該当箇所を、以下の通り差し替えになります。

>>107

==============================
ニカッと笑う杏子に、ほむらが嘆息する。
かくして、美味しいラーメンと共に話が進む。

「私達はデザートだったけど、パスタも美味しそうだったわね。
ボリューム一杯だったから彼女も………」
「………ああ、今のあいつには少し多すぎたらしいな」

ほむらの言葉に、杏子はつと横を見て言った。
ふとした無言の中、本棚に視線の向いたほむらの目が見開かれる。
==============================

差し替えは以上です、失礼しました。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 01:36:05.68 ID:t3CPdH3c0<> それでは今回の投下、入ります。

>>108

==============================

ーーーーーーーー

佐倉杏子、暁美ほむらが
あすなろ市で和紗ミチルと接触していたその夕方のお話。
百江なぎさは仲のいい親戚のお姉さんである巴マミの家を出て、
一人、見慣れた帰路に就いていた。

しかし、この日は、少々いつものルートを外れつつある。
その理由は明らかだった。

「フォンデュー、フォンデュー、
あっつあつのフォンデュはいかがっすかぁー」

百江なぎさは、涎を垂らしそうになりながら、
一台の手押し屋台の後をふらふらと追跡していた。

「お嬢ちゃん」

ぴたりと止まった屋台の側で、
屋台を押していたショートボブのお姉さんがなぎさに声を掛けた。

「お嬢ちゃん、フォンデュ好きかな?
お子様用のノンアルコールのもあるけど」

風邪マスク姿のショートボブが、なぎさににっこり笑いかける。

「大好きなのですっ!」
「だって」

その言葉に、調理台にいたもう一人のお姉さんがにっこり笑う。

「じゃあ、開店祝いに一本サービス、バゲットでいい?」
「はいですっ」

ショートボブの誘いになぎさが易々と応じて、
調理台で調理が始まる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 01:41:44.73 ID:t3CPdH3c0<>
「はーい、お待たせー」

ふわふわ髪を三角巾に包んだお姉さんが調理台から出て来て、
わくわくと舌なめずりするなぎさにフォンデュを差し出した。

「熱いから気を付けて食べてねー………」
「有難うなのですーっ」

エプロンをたゆんと揺らしてなぎさの前にしゃがみ込んだお姉さんが、
なぎさに囁きかけながらフォンデュを渡した。

「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」

明るく挨拶を交わし、なぎさと屋台は別方向へと別れて行った。

ーーーーーーーー

屋台と別れた後、ひょこひょこ歩いていたなぎさは、
塀による人通りの死角となった一角にたどり着いていた。
そして、そのまま停車したワンボックスカーに近づいた所で、
なぎさの体が秘かに装着されていたリボンに引っ張られ、ガクンッ、と、停止した。

「ぐ、ぐっ………」

次の瞬間、空から斜めに撃ち込まれた光弾がなぎさを直撃し、
なぎさの動きが止まる。

「なぎさちゃん逃げてっ!」

聞き覚えのある叫び声を聞き、体の自由を取り戻したなぎさが
自分の体から延びるリボンを頼りに元来た道を一目散に駆け戻る。
ワンボックスカーから、黒スーツの集団がバイザーを装着してばらばら降車する。
その内の一人が、飛来した光弾を浴びてぶっ倒れ、残りの者が一斉に拳銃を抜く。

(本物の拳銃っ)

近くの低いビルの屋上から、
黒スーツと撃ち合いになった詩音千里がささっと身を伏せる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 01:46:58.29 ID:t3CPdH3c0<>
「何やってんだこの野郎っ!!」

怒声と共に、黒スーツの一人が吹っ飛ばされる。
辛うじて軍用ナイフを抜いた者もいたが、
ブーストで飛び込んで来た成見亜里紗の敵ではなかった。

「さあて、きっちり吐いてもらおう、かっ!?」

亜里紗がグロッキーの黒スーツの一人の胸倉を掴んでいたが、
それをどんと突き放して飛びのいた。

(電撃っ!?)

と、思った次の瞬間、びゅんと振った亜里紗の鎌が鞭を弾き飛ばす。

「逃げろっ!」

そして、亜里紗との間に割って入った浅海サキの言葉に、
黒スーツ達は這う這うの体で車に飛び乗った。

「じゃあ、あんたが話してくれるってーのっ?」

鼻から下にマスクを巻いたサキを、亜里紗が鎌を振って威嚇する。
バババッ、と、両者が交錯した。

((速さ、の能力はお互い様かっ))

荒い息を吐きながら、双方が心の中で呟く。

「ちっ!」

長さの変わった鞭を亜里紗が寸手で交わし、
続いて亜里紗が大鎌の刃と柄をぶん回してラッシュする。

「くっ、この、っ………」

鎌の柄に鞭が巻き付き、力ずくで弾ける。
サキの頬の辺りを柄が掠める。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 01:52:30.97 ID:t3CPdH3c0<>
「な、に、やってんだぁ………
こんのっやろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!!!」
「!?」
「落ち着けっ!!」

助けられる筈のサキが叫び声を上げる。
次の瞬間には、雪崩れ込んで来たクマーの大群は、
その大半が一掃されていた。

「!?」

チリ、ン………

「教えて………」

振り返ったサキの大剣が、負けじと振るわれた豪剣と衝突する。

「あなたの名前を、何故こんな事をしているのか………
ツバキはどこに行ったのかっ!?」

刃が弾け、若葉みらいと天乃鈴音がじりっと対峙した。

ーーーーーーーー

路地裏をすすすっと移動していた宇佐木里美は、すっと足を止めた。

「操る能力はあなたのものね?」

里美の前方から現れた巴マミが、マスケットの銃口を向けて里美に問う。

「話してもらいましょうか?
何故こんな事をするのか、失踪した魔法少女はどこにいるのか?」

里美は、ふっ、と昏い笑みを浮かべて小さく両手を上げた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 01:56:47.32 ID:t3CPdH3c0<>
「分かりました、今、詳しくお話しします」

マミは、そう言って静々と接近して来る里美をじっと警戒する。
すぐそこまで接近していた里美とマミの距離が、
ふいっ、と急接近していた。

「!?」
「そう、そのまま銃を床に置いて両手を上げて、動かないでちょうだい」

里美は、里美の指示に従うマミからじりじりと距離を取る。

「!?」

里美が、ざっ、と飛び退いたが、
近くの曲がり角から飛び込んで来た光弾は、巴マミを直撃していた。

「!?」
「チェックメイト」

里美がハッとその意味に気付いた時には、
懐に飛び込んで来たマミが里美の顎の下にアンティーク拳銃の銃口を差し込んでいた。

「喋らないで下さい、喋ったら容赦なく撃ちます」

曲がり角から現れた詩音千里が銃口を向けて言う。

「巴さん、ここでの尋問は危険です。この手の能力には心当たりがある。
喋らせないでカガリに引き渡して口を割らせるべきです」
「分かった、わっ!」

その時、ざっ、と振り返ったマミの召喚した大量マスケットの銃弾と
飛来したミサイルが衝突、爆発した。

「えっ、えほっ!!」

周囲が煙に包まれ、気が付いた時には里美の姿は消失していた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 02:00:40.47 ID:t3CPdH3c0<>
ーーーーーーーー

「!?」

鈴音、亜里紗は、近くでの爆発と発煙にぴりっと反応した。

「くっ!」

そして、ドドドッと飛来した幾つもの光球から身を交わす。

「双方引き揚げよっ!!」
「何勝手言ってやがるっ!?」

他の面々同様巻覆面を装着して
牧カオルと共に現れた御崎海香の言葉に、亜里紗が激昂した。

「これ以上は警察沙汰になるって分からないかしら!?」
「スズネっ!」

海香が叫んだ時は鈴音が大跳躍で海香に斬りかかり、
亜里紗の叫びと共に、
カオルの硬化した両腕でガキインッと受け太刀された鈴音が後ろに吹っ飛ぶ。

「つーっ」
「こ、のっ………」

痛そうにぶんぶん腕を振るカオルを前に、
益々激昂する亜里紗の肩を掴んだのは鈴音だった。

「言う通り、これ以上はまずい………」

普段低体温系な後輩が目を吊り上げて言う言葉を前にしては、
亜里紗も従わざるを得ない。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/10(木) 02:08:24.70 ID:t3CPdH3c0<>
ーーーーーーーー

「動きがあった」

風見野で、メールの着信を確認したほむらが鋭く言った。

「来やがったか誘拐犯っ!」
「戻りましょう、見滝原に」

吐き捨てる様に言う杏子に、ほむらが促した。

==============================

今回はここまでです>>110-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 02:37:59.98 ID:TB46B0gp0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>116

ーーーーーーーー

「つまり、なぎさを囮に使った、って事か?」

マミルームで、大まかな説明を聞いた杏子が言った。

「結果としてはそうなるわね。

出来る事なら失踪事件が解明されるまで、少なくとも事件の集中時間帯は
なぎさちゃんは私の手元で保護しておきたかったんだけど、
急に事情が変わって一度親元に帰さざるを得なくなった。

だから、本当は念のためと言う事で、
追跡用のリボンを付けて近場にいたホオズキの娘達にも
協力を要請してたんだけど………」

「そうしたら、本当に本命が食い付いて来た、って言う事?」

ほむらの言葉に、マミが頷いた。

「今までの例から帰宅後は大丈夫だと思うけど、
念のため後から合流した鹿目さんと織莉子さんにお願いして
なぎさちゃんを家まで送って周辺警備をしてもらってる」

「これで色々はっきりしたな」
「ええ、敵は魔法少女と武装した人間のグループ。
そして、狙われているのも魔法少女と見ていい」

杏子の言葉にほむらが続けた。
<> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 02:43:29.41 ID:TB46B0gp0<>
「で? 結局捕虜の一人も確保出来なかった訳?」

腕組みして聞いていた日向華々莉が片目を開いて言った。

「向こうも集団、かなりの手練れでもあったわ。
かなり派手に暴れたから、あれから本当に警察も出動してた」
「ああーっ、もうっ。
そんなの私がいたらいっくらでもごまかし効かせたのにっ」
「仕方ないよ、間に合う場所じゃなかったんだから」

マミの言葉に華々莉が吐き捨てる様に言い、茉莉が宥めた。

「せめて一人でもとっ捕まえてたら
アジトでもなんでも吐かせられたのに、これじゃあ手がかりなし?」
「気になる事がある」

苛立ちを隠さない華々莉にほむらが言った。

「もしかしたら、あすなろに何かがあるのかも知れない」
「あすなろ市? 今日あなた達が行ってた?」

マミの質問にほむらが頷いた。

「証拠、って程でもないんだけどな。
あすなろの魔法少女で和紗ミチル、
今日そいつと接触したんだけど、どうも様子がおかしかった」

杏子が説明する。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 02:48:59.08 ID:TB46B0gp0<>
「オーケー、その和紗ミチルをとっ捕まえて吐かせる、居場所どこ?」
「分からん」

杏子の言葉と共に、
チャクラムを振り上げた華々莉を茉莉がドウドウドウと押さえる。

「だけど、手がかりはあるから、
少し穏便に話をしていただけないかしら?」

腕組みをして見ていたほむらが、ファサァと黒髪を掻き上げて片目を開いた。

ーーーーーーーー

会合は、マミルームからほおずき市内の夜のファミレスに移っていた。

「御崎海香、牧カオル、ね」

既に為されたほむらの説明に、マミが呟く。

「似てる………」
「うん、顔隠してたから確定とは言えないけど」

スマホに映し出された海香、カオルの顔に鈴音と亜里紗が言う。

「いらっしゃいませ」

ほむらが、聞こえて来た店員の声にちろりと視線を向ける。

「当たりっぽいね」

店に入ってほむら達と相席し、注文を終えた日向華々莉が言った。

「ほむらの言った通り、御崎海香御殿はちょっと調べればすぐ分かる」
「中学生でもあんな豪邸に住んでる人気小説家、当然目立つわよね」

華々莉の言葉にマミが言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 02:54:55.23 ID:TB46B0gp0<>
「取り敢えず交番押さえて、
適当な理由つけてご近所の事情通から情報聞き出した。

御殿に住んでるのは御崎海香、牧カオル、和紗ミチル、昴かずみ。
ミチルとかずみは、家庭の事情はあるみたいだけど恐らくは一卵性の双生児。
この四人は親の海外勤務だかで中学生だけで共同生活送ってる。

直接住んでるのはこの四人だけだけど、
その友人含めて十人ぐらいが常時たむろってるって話、
みんな中学生ぐらい、男っ気なしでね」

日向華々莉がメモを確認して説明する。

「それが、魔法少女のグループ?」
「ミチル本人の発言とも符合しそうね」

マミの言葉をほむらが肯定する。

「それで、そのお屋敷だけど、もぬけの殻だった」
「なんですって?」

華々莉の言葉にマミが反応した。

「一人で確認したの?」
「警察使ってね。盗聴器つけたお巡りさんにお屋敷に行ってもらって、
適当な理由つけて聞き込みしてもらったんだけど、結果は留守。
出て来たらやり様もあったんだけどね」

「正直、留守で助かったわ。
相手の実力は相当なものよ、人数もいる。
あなたの能力があったとしても、
いつだって相手より優位な立場にいると思いこむのは禁物よ」
「………へーへー」
「逃げたか」

華々莉の報告とマミのお説教を聞きながら、杏子がぎりっと歯噛みする。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 02:58:22.62 ID:TB46B0gp0<>
「それに、セキュリティが厳しいのも確か。
留守宅への侵入となるとちょっと骨よ。
窓ガラス一枚割れても警備会社に連絡が行く」
「私ならブービートラップを仕掛ける」

華々莉の言葉にほむらが続けた。

「爆弾を仕掛けるまでもない。
ウェブカメラ一つでも、不法侵入で通報されたら言い訳が効かない」
「そういう事」

ほむらの言葉に華々莉が天を仰ぐ。

「それだけのお屋敷だと………
相手も中学生、張り込んでたら何れ戻って来ないかしら?」
「根競べね」

言葉を交わすマミとほむらに、杏子が鋭い視線を向けた。

「忘れてないか? さやかの事。
向こうの意図はさっぱり分からない、十人じゃ効かない魔法少女が行方不明、
悠長な事言ってらんねぇぞ」
「一人でも戻って来たら、洗いざらい吐かせてやるんだけど、
ツバキをどうしたのか、返答次第では………」

杏子の言葉に、華々莉がぎりっと歯噛みした。

「戻りました」

そんな中、美国織莉子と鹿目まどかが玄関からリビングへと姿を現す。

「ご苦労様。何か変わった事は?」
「いえ、特には」
「今までのパターンや分かった手口から言って、夜の自宅が狙われる可能性は低いわね。
むしろ自宅警備の帰りの方が危ないから二人で戻って来てもらったけど」

マミと織莉子が言葉を交わし、
顔を見合わせたまどかと織莉子がふふっウェヒヒと小さく笑みを交わすのを
ほむらは涼やかな眼差しで眺めていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 03:01:40.39 ID:TB46B0gp0<>
「日向カガリ」

言葉を続けたのはほむらだった。

「あなたの能力の事、詳しく聞かせて欲しい」
「ん?」
「私に少し、考えがある。
リスキーなやり方になるけど、当たれば大きい」

「勿体ぶらないでくれる?
確実にツバキを取り戻せる方法がある、って言うんだったら、
別に魔法少女でも警察でもガチバトルしたってかまわない」
「カガリッ」
「………若干、近いわね」

華々莉を制する茉莉の前で、ほむらはそう口にした。

「織莉子さん、あなたにも知恵を借りたい」
「私に出来る事なら。私も、一刻も早くキリカを取り戻したい」

ーーーーーーーー

「美国織莉子、まどかがあの人とコンビで行動ってちょっと珍しかったわね」

マミルームからの帰路、ほむらがまどかに話しかけた。

「うん。なぎさちゃんが襲われて、そこにいたマミさんやホオズキの娘達が
犯人を捜索するって事で、ちょうど間に合って手が空いたのがわたしたちだったから」
「そう」

「うん。だから、最初ちょっと近づき難かったけど、
織莉子さんの方から気を使ってくれたり、優しい人だと思う。
間近で見ると、改めて綺麗で素敵な人だったし」
「そう」

「………でも、やっぱり寂しそうだった。キリカさんがいなくて。
わたしも、もう何日もさやかちゃんがいなくて、
さやかちゃん、どうしてるんだろう? 大丈夫、だよね」
「分からない」

泣かせたくない、と、思いながらもほむらの理性は安直を拒んでいた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/15(火) 03:05:27.46 ID:TB46B0gp0<>
「魔法少女とそれ以外のグループが何人もの魔法少女を生け捕りにしておいて、
それで何をやりたいのかがさっぱり分からない。

………少しだけ、時間を頂戴。今回の襲撃で敵は尻尾を出した、
それを手繰る策を考えた。何としてでも引っ張り出して、
美樹さやか、他の魔法少女達の事も解明してみせる」

「うん、ほむらちゃんがそう言うんなら」

痛々しい、それでも精一杯の笑みが、ほむらの胸に響く。

「それじゃあ、まどか」
「うん、ほむらちゃんも気を付けて」

挨拶を交わし、まどかが自宅に入るのを見届けてほむらは歩き出す。
当面の対策としては、帰宅まで何人たりとも物理的に近づけない、
それしかなさそうだ。

==============================

今回はここまでです>>117-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 02:58:54.24 ID:gLShNy640<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>123

ーーーーーーーー

「それで、百江なぎさの確保には失敗か」

「ホテル・ニューアスナロ」スイートルームで、
レディリー=タンクルロードが確認する。

「見滝原、ホオズキの魔法少女が本格的に動き出してる。
ミチルにも接触して来たってなると、聖団の仕業だと割れるのも時間の問題だ」
「ミチルに接近して来たのは風見野の佐倉杏子か?」

浅海サキの言葉に、レディリーが聞き返す。

「うん、佐倉杏子ちゃんに、それから見滝原の暁美ほむら。
杏子ちゃんとは前に会った事があるから」

ミチルが応じた。

「元々、佐倉杏子は暁美ほむら初め巴マミのチームと親しい関係にある。
それは調べがついている」

レディリーが言う。

「今、時間の問題と言ったけど、もう既に確定しているでしょうね」
「あたし達がこうやって夜逃げして来てる時点でな」

御崎海香の言葉に、牧カオルが続いた。

「巴マミ、詩音千里のチームと交戦、百江なぎさの確保に失敗して、
そしてミチルに接触して来た事が繋がったから、
即座にデータを持ってこっちに移動して来たけど」
「賢明な判断ね」

海香の言葉に、連絡を受けて受け容れを即断したレディリーが応じる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:04:15.25 ID:gLShNy640<>
「根本的な事を確認したい」

浅海サキが言う。

「当たり前だが、私達がやっている事は犯罪だ、
法に触れている、相手にも家族もいる、
魔法少女の仁義で言っても袋叩きにされても文句は言えない」
「そんな事、させる訳ないだろっ」

サキの言葉に若葉みらいが割り込む。

「本当に、それだけの価値はあるのか?」
「それを確答出来るなら、こんな手段はとっていない」

サキの質問に応じたのは、同じ聖団仲間の聖カンナだった。

「根拠と言えるのはレディリーの占星術と私のコネクト、
しかも、その技術でもはっきり結果が出ている訳じゃない、
むしろ、理論的には異常なし、と結論付けるのが当たり前の勘頼み」
「それでも、何かがある、んだよね?」

カンナの言葉に、和紗ミチルが応じる。

「ああ、私はそれを感じる。特に、かずみのジェムからだ。
かずみにコネクトする反応には何か、違和感とも言えない違和感がある。
胸騒ぎ、とでも言うべきか」

要領を得ない説明に、集結した聖団のメンバーも言葉が見つからない。

「私の占星術でも同じ反応よ。理論的には異常なし、むしろ良好。
だけど、私に告げる何かがある。その鍵になるのが昴かずみのソウルジェム。
実力者揃いのマギカ集団が本格的に動き出したとなると、猶予はないわね」
「後、どれぐらい必要なのかしら?」

レディリーの言葉に海香が質問した。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:10:04.16 ID:gLShNy640<>
「本来ならあの四人、百江なぎさに加えて日向カガリ、暁美ほむら、鹿目まどか。
この四人はぜひとも確保したかった。

だけど、日向カガリは美琴ツバキ、日向マツリとのセットが多くて手出しが難しい上に、
カンナとこちらの調べでは、聖団の乙女の力をもってしても面倒な相手。

暁美ほむらと鹿目まどかは対の存在、引き離す事は危険過ぎると私の占いが告げている。
現実的にも、仲間との行動が多い上に、
暁美ほむらの能力も手出しが難しい類のものらしい」

「じゃあ、無理なのか?」
「いや」

サキの言葉をレディリーが否定する。

「元々、欲を言えば切りがない事でもあるわ。
リストアップした中からピックアップした対象者となる魔法少女。
範囲を広げて調べればまだまだ幾らでも出て来る筈よ。

鹿目まどかは、対象者とはむしろ正反対の資質の反応だけど、
だからこそ、本来は要として確保したかった。

だけど、これだけ集まれば、決行の見込みは立った。
何より向こうの動きに猶予が無い。取り掛かる」

「そういう事だ」

レディリーの言葉に、カンナが続いた。

「とにかく、計画を実行する。話はそれからだ。
それでどんな結果が出るか。
その結果次第では、総員で土下座する事になるが」
「あの様子だと、それで生きて帰れるかね」

カオルがややおどけた口調で言うが、懸念は真面目なものだった。

「元々こちらで持ち込んだ話、お金で片が付く事なら幾らでも
ジュラルミンケースで往復ビンタしてあげる」
「いいだろう」

レディリーの言葉にサキが続く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:16:12.44 ID:gLShNy640<>
「かずみに対する懸念がある、カンナがそういうのなら私は信じる」

若葉みらいがすっと視線を向ける中、サキが言った。

「他に方法が無いならその方法で最善を尽くす。それだけだ。
それが世の中の罪に当たると言うなら、私はそれを背負う」
「ボクも背負うよ、サキ」
「そういう事ね」

同調したみらいの後で、海香が言う。

「現実問題として、もう後戻りは出来ない。
巴マミ、美琴ツバキのグループはすぐにでも私達を狙って来るでしょう。
その時に手土産が出来るか土下座するか。
何よりも、かずみへの懸念が一欠片でもあると言うなら、
私達は誰を敵に回しても払拭する」

「当然だ」

海香の言葉に、カオルが力強く頷いた。

「ありがとう、みんな」

かずみが上ずった声で言い、顔を上げたかずみの頭を
ミチルがポンとぽんと撫でた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:19:49.94 ID:gLShNy640<>
 ×     ×

「暁美さん、今日もお休みですわね」

学校のお昼休み、
まどかとお弁当を共にしていた志筑仁美が言った。

「うん、お家の都合で何日か留守にするって」
「早乙女先生もそうおっしゃっていましたけど」

まどかが説明するが、仁美はどこか不安げだ。

「暁美さんもお休み………寂しい、ですわ」

ストレートには口に出さない。それだけに精神的に厳しい。
一番明るいムードメーカーの物言わぬ失踪は、
それだけの空白を齎していた。

ーーーーーーーー

放課後、まどかは学校の玄関でマミと合流していた。
事態が見えて来た今、なりふり構ってはいられない。
まどかにとってマミは優しい先輩だが、
珍しく一緒に下校しているとさやかとほむらの不在が身に染みる。

「メール、届いたわよね?」
「はい、ほむらちゃん今からマミさんのお部屋で合流したいって」
「何か、分かったのね」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:23:27.12 ID:gLShNy640<>
ーーーーーーーー

マミルームには、マミ、織莉子、椿・遥香チームの全員、
失踪が確認された者以外の全員が集結していた。
ほむらが、マミのチームと織莉子、ホオズキの面々に資料を配る。

「御崎海香、牧カオル、和紗ミチル、昴かずみ。
この四人の最近の携帯電話の位置情報よ」

ほむらの説明を聞きながら、一同は地図資料に目を通した。

「百江なぎさちゃんが襲撃されたその日の位置情報、
四人が集まっていたセルのメイン施設ホテルニューアスナロ。
そこで聞き込みをかけたらビンゴだったよ」

日向華々莉が説明を続けた。

「四人とその仲間はホテルのスイートに泊まり込んでる。
当日の部屋の借主はレディリー=タンクルロード。
科学の学園都市の大物経営者。
彼女も随分前から借りてたこの部屋を次の日に引き払ってる」
「………げっ、何これ?」

華々莉の説明と共に、レディリーの資料を見た成見亜里紗が言った。

「科学の学園都市、何でもありね………」
「表向きだけでもこれよ、まだまだなんか出て来るんじゃないの?」

詩音千里の言葉に、華々莉が言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:27:27.33 ID:gLShNy640<>
「こんなもの、どうやって手に入れたのよ」
「ハッキングが出来たら一番簡単だったけど、
それが無理だったから、人間の方をハッキングさせてもらったわ。
日向カガリの能力で警察を動かして、関係する情報を引き出してもらった」

マミの疑問にほむらが応じる。

ーーーーーーーー

(回想)

「何だね、君達は? ………」

京都府警管内のとある警察署署長室で、部屋の主が不意の訪問者に声を掛ける。
フードを被ったままのジャンパー姿の人物とスーツ姿の女性。
それが、面会予定もノックも無しに堂々と立ち入って来たのだから、
署長から見て不審人物以外の何物でもない。

「お静かに」

日向華々莉がジャンパーのフードを少しずらして声を発すると、
署長がデスクの上のスイッチに伸ばした手が止まる。

「これより警察庁長官及び京都府警察本部本部長からの極秘指令を伝えます。
従って、他の者の出入りは禁止していただきたい」

華々莉の言葉に、署長が姿勢を正した。

「改めまして、わたくし内閣総理大臣特別秘密補佐官秘書を務める加賀爪、と申します。
これより、わたくしの上司の話を聞いていただきます。
彼女の話には一片の嘘も間違いも無い、と言う事を最初にご理解下さい」

華々莉の言葉と共に、彼女に手で示されたスーツ姿の女が動き出す。
署長の前に移動した彼女が身に着けたリクルート風のスーツは全体に半サイズ程小さいらしい。
ブラウスのボタンを上から三つ開放しながら、
膝上四捨五入二十センチのタイトスカートを合わせたスーツをきりっと着こなしている。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:31:07.70 ID:gLShNy640<>
「初めまして。わたくし、
内閣総理大臣特別秘密補佐官を務めます織田みくり、と申します。
京都府警察本部長は警察庁長官及び内閣総理大臣の承認を得て、
貴方に対して私の指示には絶対に従うべし、
全ての責任は本部長、引いては総理大臣が負う、との命令を下しました。
その事をまずご理解下さい」

髪をアップに纏め、赤縁眼鏡を装着した
スーツ姿の美国織莉子が宣告と共に優美に一礼する。

「あなたには、この警察署に設置された廃ビル爆破事件捜査本部、
その中からあなたを班長、
警部一名を主任とした捜査班を一つ編成して引き抜いていただきます。
捜査班は、口が堅く手堅い人間を揃えていただきたい」
「お言葉ですが補佐官」

織莉子の唐突過ぎる指示に、署長は真面目に応じる。

「私にその様な権限はありません」
「しかし、経験と人望はあります。
京都府警に於いてノンキャリアの刑事人脈を実質的に掌握しているのはあなた、
その事を把握した上での指示です」

そう言って、織莉子はデスクに一台の携帯電話を置く。

「この電話に一番最初に登録された番号、アドレスは府警本部長に直結していると考えて下さい。
あなたからの要請があれば、
府警本部長以下が必要な体裁を整え、指示命令を下す体裁になっています。
あなたが選んだ捜査班のメンバーを伝えたならば、
そのメンバーには名古屋のここ、このホテルの部屋に極秘に集合する様に出張命令が下ります。
もちろん、あなたも含めてです」

織莉子が、携帯電話を操作し画面を示しながら告げる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:34:53.87 ID:gLShNy640<>
「名古屋、ですか」

「ええ、そこであなた達には、
私の指示に従って独自の捜査、と言うより調査を行っていただきます。
はっきり言って爆破事件の捜査とは全く関係はありません。
公式には、上が独自に仕入れたネタの裏取りが空振りで終わった、と言う結果になりますが、
人事評価の上では十分な配慮が為される様に取り計らいます。
元々この事件の捜査は公安主導で刑事警察は初動の足場固めに限定されるものです。
公安にも、警備局を通じて念のため無駄足を踏んでもらっているだけだと根回しをしておきます」

「………補佐官」
「何でしょうか?」
「そもそも、爆破事件自体が………」
「元々完全に廃墟だった廃ビルが死傷者を出す事も無く
軍用火薬を用いて綺麗に瓦礫の山になりましたね」

赤縁眼鏡を通した織莉子の笑みは、実に魅力的な女性の微笑みだった。

「テロリストやシンジケートと言った枠では収まらない、
世界存亡の危機が迫っています。
今は、と言うより恐らく永久に詳しい説明すらできませんが、
今回の事はそれを回避するための超法規的措置です。

そのために私が絶対的な権限を行使すると言う事に就いては、
日本はもちろんアメリカ、イギリス、EU、中国ロシアに至る迄、
各国の政府代表が承認している。

こういう事は言いたくありませんが、
少なくともあなたと府警本部長は完全にCIA、DIAに掌握されている。
私の一言であなた達の免職はもちろん刑務所、その上すらあり得る、
もちろん真実が何であれ関係なく、です。
それだけの事態である事をご理解下さい」

「………了解しました」

「敢えて言います、極秘捜査班の仕事は、
私の指示に従い必要な情報を収集する、それだけです。
まともな説明も何も期待しないで下さい。
知る事それ自体に大変な危険の伴う事です」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:38:43.88 ID:gLShNy640<>
「厳しい、ですな」

「はい。そのために、
府警本部長と裁判所は完全にこちらの、貴方の支配下に入ります。

適当な名目で主任警部が令状請求を行えば、
裁判官がそれをフリーパスで通す様に手配します。
同じく、京都府警本部の鑑識も科学捜査研究所も、
あなたがこの携帯を通じて要請を出せば、
適当な名目での依頼でもただちに通る様に手配が行われます。

有体に言いましょう、形さえ整っていれば申請書、報告書は
落書きでもでっち上げでも構わない。
形式上は完全に犯罪ですが、これは超法規的措置です。
最悪でも全責任は総理が負う、あなた達が罪に問われる事は無い事を保障します」

そう言って、織莉子は膨らんだ茶封筒をデスクに置く。

「捜査費用の一部です。名古屋で追加をお渡しします。
金で買える時間と情報には糸目をつけないで下さい。
経費に関しては書類も領収書も不要、完全に自由裁量です。
調査が終わり次第、全員に相応の特別手当が支給されます。
これも、書類には残らない現金です。
もう少し詳しい事は、名古屋で集合した時点でお話しします」

ーーーーーーーー

(回想修了)

「何故に京都?」
「彼女、カガリさんの能力で全てをカバーするのは難しいと言う事よ。
だからある程度はトップダウンの極秘捜査と言う形式をとったけど、
上からの命令でやらされてるだけだと、
地元で対象者が知り合いだと変に勘ぐられるリスクが大きくなる。
それはなるべく避けたかったと言う事」

ほむらの説明を受けて、杏子の当然の疑問に織莉子が付け加えた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:42:37.34 ID:gLShNy640<>
「その、捜査のための費用はどこから?」
「少なくとも紛失して良心が痛む類のお金でない事だけは保障するわ」
「警察関係を押さえていく内に、
帳簿上は既に支出されてて幹部の手元で自由裁量な現金が結構あったからね、
その辺もまとめて使わせてもらったけど」

詩音千里の問いにほむらがファサァと黒髪をかき上げ、華々莉が補足するのを
成見亜里紗は笑みを引きつらせながら聞いていた。

「それで、四人組の携帯の位置情報を突破口にホテルを割り出して、
ホテルと御崎海香邸、その周辺の防犯カメラの録画データを集めるだけ集めた」
「それも京都府警に?」

詩音千里の問いに、説明していたほむらが頷いた。

「こっちの警察にも私が根回ししたけどね。
所轄の生活安全課の課長押さえて、特に公共の防犯カメラのデータは誰が持ってるか、
関係する情報を出させて、スムーズに押収出来る様に根回しもしてもらった。
それも、署長と県警本部の本部長と生活安全部長からの重要極秘命令って事にしてね」

華々莉が自分達の動かした経緯を報告する。

「押収した録画データは、京都府警察本部の科学捜査研究所に解析させた」
「それって、あのぼやけた画像をはっきりさせる技術?」
「そう。それに、別々の映像の中のどれが同じ人物であるかも可能な限り特定した」

千里の問いに、説明を続けていたほむらが応じる。

「それで、四人組と常時つるんでいる残りのメンバーのおおよその顔写真も作成出来た。
その写真を使ってあすなろ市内の中学校の職員室を片っ端から当たって、
メンバーを直接撮影した顔写真と個人情報を引き出したから、
その残りのメンバーに関しても携帯電話の位置情報を押収出来た」

「その辺の事は、本人らに連絡がいかない様に
私達が直接学校と掛け合った上で忘れていただいたけどね。
で、身元が割れた所で、全員分の携帯電話の位置情報もgetって事で」

「やりたい放題だな」
「もう、いっそ世界征服でもしちゃえば?」

ほむらと華々莉の説明に、杏子と亜里紗が呆れ返った様に言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/11/21(月) 03:46:38.44 ID:gLShNy640<>
「それじゃあ、その携帯電話の位置情報から
彼女達の立ち回り先を?」
「大体合ってる」

マミの言葉にほむらが言った。

「だけど、普通の立ち回り先じゃない。
彼女達は百江なぎさの事件以降自宅や学校からは姿を消している。
そしてこれ」

ほむらが示したのは、携帯電話の位置情報だった。

「旧あすなろ工業団地の一角。
ニューアスナロを出た後、グループの位置情報がここに集中してる。
それ以前からもしょっちゅうこの辺りに位置情報が記録されてる」
「立ち寄ってる、ってレベルじゃないわね」

資料を読み返したマミが言う。

「位置情報の集中箇所、他はまだしも、これだけは理由が本当によく分からない。
場所柄魔獣退治なのかも知れないけど、
それにしては訪れている頻度が以前からおかしい」

華々莉が補足した。

「この地域のコンビニ、スーパー、ドラッグストアの防犯カメラの記録からも、
メンバーがごく最近立ち寄った映像が幾つも発見されてる。
美樹さやかも他の魔法少女も、失踪してから時間が経過している。
手段や手がかりを躊躇している余裕はないわ」

ほむらの宣言に、他の面々も強く頷いた。

==============================

今回はここまでです>>124-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:28:40.83 ID:z1Lpz1fr0<> それでは今回の投下、入ります。

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>>135

ーーーーーーーー

巴マミ
暁美ほむら
鹿目まどか
美国織莉子
佐倉杏子
詩音千里
成見亜里紗
日向茉莉
日向華々莉

以上のチームが、旧あすなろ工業団地の一角を訪れていた。

「この辺りね」

掌にソウルジェムを乗せた暁美ほむらが言う。

「ええ、確かに何か反応してる。魔獣ではないけど、何かがある」

同様に、掌のソウルジェムを見つめてマミが言った。
頷き合い、めいめい魔法少女に変身して、詩音千里がざっと前に出た。
千里は、一見すると無人の廃工場の敷地に魔法拳銃を向け、発砲する。
発砲された魔法弾が、途中でオーロラと化して目の前に広がった。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:35:27.44 ID:z1Lpz1fr0<>
「建物………」

目の前に現れた物体を見て、マミが呟く様に言う。

「何か、こっちの認識をごまかしてたか」
「それとも、異次元空間に存在していたか………」

華々莉とほむらが、めいめい推測を述べる。
一同は、周囲に注意を払いながら、
目の前に現れた結構な大きさの洋館風の建物に接近する。

「どう?」
「ドアは開いてる」

背後でティロ・フィナーレを抱えて尋ねるマミに
玄関ドアを確認していたほむらが応じた。

ーーーーーーーー

「薄暗いなぁ」

成見亜里紗が呟く。

洋館に足を踏み入れた面々は、
そのまま、洋館の中のだだっ広いホールをうろついていた。
壁には燭台が並び、蝋燭が点灯されている。

「蝋燭って古風だけど、誰かが火をつけたって事よね?」
「誰かを待っているのか、歓迎されたのか」

ほむらの言葉に、マミが真剣な表情で応じた。

「あれ?」
「どうしたのまどか?」

ほむらが問い返す。まどかの視線は、前方の床に向けられていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:40:50.98 ID:z1Lpz1fr0<>
「これって………」
「待って、まどか」

言って、ほむらが盾から検知器を取り出す。

「………特に反応は無いわね。
ブービートラップとしてはポピュラーな手法だけど」
「じゃあ、大丈夫なの?」
「恐らく」

ほむらとまどかが言葉を交わし、まどかが床から持ち上げたのは、
ミニチュアの座椅子に鎮座した小さな熊のぬいぐるみだった。

「可愛い」
「テディベアね」
「あれ? これ」

こんな状況にも関わらず、
椅子ごと持ち上げたぬいぐるみに目線を合わせるまどかの顔が綻ぶ。
ほむらがその笑顔を堪能している間、
マミがぬいぐるみの素性に当たりを付け、杏子が何かに気付いた。

「鬘に、リボン?」

確かに、ぬいぐるみは人間、それも女の子らしきものを模した鬘を被っており、
その鬘には赤いリボンが結ばれていた。

「あら?」

そして、巴マミが視線を別に向ける。

「あっちにもあるみたい」

マミの言葉に、少し離れた場所に移動すると、
確かにそこにも同様のぬいぐるみが置かれていた。
ほむらがふとそのぬいぐるみを持ち上げる。
基本、今現在もまどかが愛でているぬいぐるみと同じものだが、
黒髪ロングの鬘を被っていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:46:05.33 ID:z1Lpz1fr0<>
「おい」

亜里紗が言った。

「なんか、結構あっちこっちにあるぞ」
「ええ、あっちにも」

亜里紗の言葉に、マミは一番近い別のぬいぐるみに移動する。
そして、巻髪の鬘を被ったぬいぐるみを持ち上げる。

「これ、なんかあんのか?」
「確かめてみましょう」

杏子の言葉に千里が応じて、
一同は幾つもおかれているぬいぐるみを確認するためホールに散る。

「えっ?」

ぬいぐるみの一つを持ち上げていた千里が何かに気付く。

「!?離れてっ!!」

マミが叫んだ時には、床がカッと光を放っていた。
それも、全面的にではなく、何かの模様に合わせるかの様に発光している。
それと共に、天井にもぼっ、ぼっと光が点灯し始めた。

「「やばっ!」」
「まどかっ!!」

亜里紗、杏子が叫び、ほむらがまどかを目で追う。
とにかく、一同ぬいぐるみを放り出して壁際へと走る。

「なん、だこりゃ?」
「なんだか分からないけど………」

亜里紗が呻き、杏子が呟きながら槍を手にすっと前に出る。

「スズネちゃん」

茉莉の声を背に、鈴音も光る床に向けて剣を構える。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:49:51.22 ID:z1Lpz1fr0<>
「どう、マツリ?」
「聞こえる、嫌な、まがまがしいものが」
「そうね、それに、これは………魔力だわ、それも巨大で邪悪な」

華々莉の言葉に茉莉が答え、マミが続いた。

「ティロ・フィナーレッ!!」

まず、床から巨大な噴煙が上がり、
その中心に向けてマミが一撃を加えた。

「よけてっ!!」

マミの叫びと共に一同が左右に分かれ、
一同がいた場所に何かが飛び込んできた。

「ひっ!」
「くっ!!」

ほむらが、すくみ上ったまどかの前に立った。

「なん、だこりゃ?」
「地獄の番犬ケルベロス」

杏子の問いに応じたのは、マミだった。

「こうやってみると、普通にグロテスクね………」

目の前の、巨大な三頭犬を見据えてほむらが言う。

「こ、のおっ!!」
「危ないっ!!」

ぶうんっ、と振るった亜里紗の鎌はケルベロスにひらりと交わされ、
大ジャンプから亜里紗の背後に回った大犬に
千里がドンドンドンッと発砲する。

「デカイ癖に身軽ですばしっこいのかよっ!!」

千里の発砲が交わさるのを見て亜里紗が叫んだ。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:53:28.10 ID:z1Lpz1fr0<>
「ほむ、らちゃん………」
「!?チッ!!」

まどかの呻きにほむらが反応し、
光る床の中心にほむらがマグナムライフルを連射するが、
床から響く不気味な音はやまない。

「魔法陣、体系的に魔術を使える人間が絡んでる」

その床を見ていた織莉子が言った。
黒い、悪臭の噴煙が上がった。

「おおおおおっ!!!」

茉莉の側で、鈴音が豪剣を振るい急接近していた巨大な蛇をぶった斬る。

「どけ、馬鹿っ!!!」

そこに華々莉が割り込んでバリアを張り、
噴射された毒液をバリアが防御する。

「嘘っ!?」

茉莉が言葉に出し、鈴音の表情にも驚きが浮かぶ。
空中で、幾つもの水晶球が音を立てて激突する。

「ヒュドラよっ」

美国織莉子が叫ぶ。

「ギリシャ神話に出て来る沼蛇の怪物。
あの首は、斬った切り口から一本が二本に分裂するっ」
「ああ、見ての通りだねっ」

織莉子の言葉に華々莉が応じる。

そして、華々莉が蛇と睨み合いになり、
蛇が別の蛇の胴体に噛み付いた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:56:44.06 ID:z1Lpz1fr0<>
「よし、っ………」

しかし、次に飛んで来た毒液を華々莉は這う這うの体で交わしていた。

「数が多すぎるっ!」

何体もの巨大な蛇が
根本で結合している様なヒュドラを相手に華々莉が吐き捨てた。

「わわわっ!!」
「詩音さん、成見さんっ!!」

マミが叫ぶが、ケルベロスにロックオンされた千里と亜里紗はいつしか
玄関からその外へと退却を余儀なくされていた。

「お、おいっ!」

叫んだ杏子の視線を追うと、床が改めて光を放っていた。

「まだ、何か出て来るのかよっ!」

杏子が叫ぶ間にも、魔法少女達はヒュドラとケルベロスを相手に
這う這うの体の状態を崩せない。

「あれよっ!」

叫んだのは織莉子だった。

「鹿目さん、あの星、一番輝いている所、あれを射ち抜いてっ!」
「はいっ!」

織莉子の言葉に、まどかがきりきりと弓を引き絞り始めた。

「このっ!」

その側で、フルオートのAKMが発砲される。
迫っていたヒュドラの注意を向ける程度の事は出来たらしい。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/07(水) 03:59:52.58 ID:z1Lpz1fr0<>
「ひっ!」

注意を引き付けた結果として、ずしゃあっと床を滑るほむらに
何本もの大蛇の首ががぱっと大口を開いて迫って来る。

「おらあっ!!」

その内の一本に多節棍が絡み付き、魔法少女の馬鹿力で引っ張られる。
その根元が鈴音によって一刀両断される。

「下がってっ!!」

マミの声と共に、大量のマスケットが空中からヒュドラを銃撃し、
流石にヒュドラも無事と言う訳にはいかない。

「あ、有難う」

息を荒げたほむらの言葉に、めいめいが頷いた。
その時、光の尾を放ってまどかの矢が天へと吸い込まれた。

「収まった………」

天井の星々と床の輝きが消失し、蝋燭だけがホールを照らす。

「完全な予知はまだ妨害されているけど、それでも、
天の星々と地面の魔法陣、その関連は何となく把握できた」

織莉子が額を押さえながら言った。

「だけど、出て来たものは引っ込まないみたいね」
「増えないだけ上等、かしら?」

ほむらの言葉に、マスケットを構えたマミが汗を伝わせながら応じる。

==============================

今回はここまでです>>136-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 02:40:22.41 ID:qgufq2ev0<> それでは今回の投下、入ります。

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>>143

ーーーーーーーー

「参ったなぁ」

自分達が追い出された洋館の玄関近くで、成見亜里紗が嘆息を漏らす。

「まさに、地獄の番犬ね」

亜里紗の親友にして魔法少女仲間の詩音千里も、
洋館の入り口にぬーんとばかりに居座る巨大な三頭犬、
通称地獄の番犬ケルベロスを見て呆れた様に言った。

「実際、強いんだよなぁあれ」

亜里紗が苦い声で言う。

「他に、入口探した方が早いかも」
「かもね」

ーーーーーーーー

本来は魔法少女若葉みらいの願いにより実現した
テディベア博物館「アンジェリカ・ベア」。

現在、その一階ホールでは
見滝原、風見野ホオズキから訪れた魔法少女達がヒュドラと激闘を展開し、
地下ホールには若葉みらいを初めとしたあすなろ市の魔法少女グループ
「プレイアデス聖団」が集結していた。

聖団の側には、一組の紳士淑女を従えた
一見して幼いゴスロリ少女レディリー=タンクルロード。
元々が魔法に加え、魔法を取り入れた科学力が導入されていたこの博物館を、
魔術と先端科学で更にいわゆる魔改造を施したのはレディリーに他ならない。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 02:45:59.91 ID:qgufq2ev0<>
「指示通りに配置を完了した」
「そう」

聖カンナとレディリーが言葉を交わす。

「理屈通りの配置、なのよね」

大きな本を手にした御崎海香が尋ねた。

「その通りよ」

レディリーが答える。

「これから私が行う事は、言わばこのホールに計算通りの世界を再現する。
この世界がそのまま再現される、本来であれば。
それ以上の意味は何も無い筈よ」
「魔術的な意味合いから言っても、
只、世界を表現する術式、それ以上の意味は見出せない」

レディリーの発言を海香が補強する。

「未だに何を言ってるのか分からないんだけどっ」

口を尖らせたのは若葉みらいだった。

「サキやみんなを巻き込んでここまで危ない思いをして、
それで意味が無いとか言われても」
「意味が無いならそれに越した事はないわ」

噛み付きそうなみらいに、レディリーは余裕を見せる。

「その場合、只の取り越し苦労と言う事になる。
但し、攫ったマギカ達に対する言い訳が難しくなるけどね」
「取り越し苦労ならそれに越した事はない、かずみに関わる事だからな。
やってしまった事に対しては、土下座でも八つ裂きでも私が引き受ける」

浅海サキの言葉に、みらいがサキとかずみをすっと見比べる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 02:51:23.64 ID:qgufq2ev0<>
「魔法少女の肉体は、大丈夫か?」
「ああ、さっきも点検した。
この地下のレイトウコは無事稼働してる」

牧カオルの問いに、神那ニコが応じた。

「始めるわよ」

一同がホール中央に集まる。
ホール中央でレディリーがデスクに用意されたパソコンの操作を始める。

「魔術師、って光景じゃないね」
「それは、私に対する挑戦と受け取ってもいいのかな?」

牧カオルの言葉に神那ニコが反応した。

ホールの天井にプラネタリウムが輝き、
ホールの床には魔法陣が光を放つ。
円を基調とした大量の図形と地図、星座が、
床の上でそれぞれの色に輝き始める。

「そろそろ、魔術師らしい事を始めましょうか」

レディリーが口元に笑みを浮かべ、パソコンを離れる。

魔法陣が走る床の方々に、テディベアが置かれている。
テディベアにはソウルジェムと、
そのジェムの持ち主の髪の毛が装着されている。

「世界を再現する」

レディリーが言った。

「マギカ達のパーソナルデータ、その魔術的意義。
そこから導き出される理論的な位置、方角を星座と対応させる」

「魔法少女の中でも、
独特の違和感がある魔法少女のソウルジェムを使って、だな」

レディリーの言葉にニコが続く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 02:57:22.82 ID:qgufq2ev0<>
「私の占星術と財力に基づく調査力、聖カンナのコネクト、
それらを総動員して可能な限り調べ上げた。
まず、地理的要素の強い見滝原、風見野、あすなろ、ホオズキ。
その土地の魔法少女の中から、僅かな、ズレとも言えない違和感がある者達を」

「本当に何かおかしな事があるなら、
海香が分からない筈がないんだけどな」

レディリーの言葉に、カオルが改めて問い直す。

「そう。理論的には何のズレも間違いも無い。
只、私達、私と聖カンナの勘がそう告げただけの違和感。
ソウルジェムはマギカの魂の輝きそのものを現している。
私の占星術を持ってすれば、
極端な話ソウルジェムが二つあれば星座と対応させて世界を描き出す事が出来る」

「その世界は、今、私達がこうして生きている世界」
「ええ、その筈よ」

海香の問いに、レディリーは笑みを以て応じた。

「これだけのソウルジェムと対応させた場合、
かなり正確に世界は描き出される。
そして、その世界は、私の占星術が先々に至る迄その幸福を示し続けている、
至って穏やかで平和な、
災いらしき災いが絶えて見えない世界、そうなる筈。
時間みたいね」

僅かずつ動く星々を眺めていたレディリーが言い、
中央の、更に中央へと動き出す。
中央に置かれた祭壇に立ち、その上で両腕を広げて呪文を口にする。
聖カンナが目を細める。
テディベアに装着されたソウルジェムが淡い輝きを見せ始めた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 03:00:37.06 ID:qgufq2ev0<>
「終わったのかしら?」

祭壇から戻って来たレディリーに海香が尋ねる。

「そういう事になるわね。
少なくとも起爆スイッチは押した筈だけど」
「で、ソウルジェムがちょっと光っただけ………」
「おいっ」

言いかけたみらいをサキが制する。

「ん?」

牧カオルが気付いた。
他の者達も気付き始めたらしい。
蛍よりも遥かに小さい光の粒が周囲を漂い始めた。

「何かが召喚された?」

レディリーが呟く。
その間にも、光の粒は徐々に量を増す。
それは、ピンク色の光の粒だった。

「これは? なんだ? まるで………」
「分からない。でも、嫌な気分ではない………」

戸惑いを覗かせるレディリーの側で、
やはり解析に失敗した海香が言った。
その間にも光の粒は量を増し、
いつしか、ホール全体の視界を靄の様に覆い始めていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 03:04:18.98 ID:qgufq2ev0<>
ーーーーーーーー

「星と魂との対応、そこから色の手がかりを見つけたか」

「アンジェリカ・ベア」の外で、そんな呟きが聞こえた。

「個別の違いが分からなければ理論値で最初から作り直して比較する。
稚拙だが発想は悪くない」

「止まりなさい」

詩音千里が、前方に見える影に魔法銃を向けた。

「あなたも魔法少女? あすなろのグループかしら?」

千里の問いも、銃口も全く無視してすたすたと動き出す。

「待ちなさいっ!」
「気安いぞ」

千里が肩を掴み、引き留めようとした次の瞬間、声が聞こえた。

「!?」

その時には、千里の体はお星さまになる勢いで吹っ飛ばされていた。

「な、な………
な………に、やってんだっ
てめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっ!!!!!」

成見亜里紗の怒号が一帯に響き渡った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 03:07:49.36 ID:qgufq2ev0<>
ーーーーーーーー

ヒヒヒヒヒ

「ん?」

カオルが周囲を伺う。

ヒヒヒヒヒヒ

「海香、聞こえたか?」
「ええ」

聖団が、徐々に効かなくなる視界の中、警戒を始めていた。

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ

「笑い声?」

レディリーが呟く。

「どちらかと言うと、可愛らしいわね。
邪気は感じられない。魔術的なものも………」
「物の怪に誘われてる、って線は?」
「それは無いわね」

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ

海香の問いにレディリーが応じる。

「そんなものであれば、私が気づかない感じない筈がない」
「何が、起きて………」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 03:11:43.67 ID:qgufq2ev0<>
ヒヒヒヒヒ

解析不能を示すスマホを懸命に操作していた神那ニコが、
ふと、その手の動きを止めた。

ヒヒヒヒヒ

「ミチル?」

異変に気付いたかずみが双子の姉に声を掛ける。

ヒヒヒヒヒヒ

「うふふっ」

どこからともなく聞こえて来て、
段々とその存在が認知される可愛らしい笑い声。
それに呼応する様に、宇佐木里美も艶めいた笑みを浮かべた。

「お、おいっ」

ふらり、と、あらぬ方向に動き出した仲間達を見て、
牧カオルが声を上げる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/08(木) 03:15:08.97 ID:qgufq2ev0<>
「引き寄せられている」
「何に?」
「分からないっ」

レディリーの問いに、
引き寄せられている仲間の事は把握してもその先が見えない聖カンナが
その通りにコネクトの結果を伝える。
その間にも、和紗ミチル、神那ニコ、宇佐木里美、浅海サキは、
心ここにあらずと言った表情でふらふらと動き出し、
中央からピンク色の靄の中へと移動しようとする。

「あれは? ………」

レディリーが目を凝らす。
ピンク色の靄の中に、白い人影の様なものが見え隠れしている。

「い………い、くな………
行くなサキ行くな
行ぐなザギィィィィィィィィィッッッッッッッッッ!!!!!」

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ

==============================

今回はここまでです>>144-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:01:38.04 ID:65YIRYbq0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>152

「待ちなさいっ!」

「アンジェリカ・ベア」地下にしつらえられた儀式場で
レディリー=タンクルロードが叫ぶが、
ふらふらと動き出した面々は全く意に介さない。

(魔術? しかし、私の感覚を以てしても禍々しいものは感じられない)

ヒヒヒヒヒ

ティ

ピンク色の光の靄が辺りを覆い、
何処からともなく可愛らしい笑い声が響き続ける。
靄の中に白い人影が見え隠れし、
それに誘われる様に、複数の魔法少女がふらふらと歩みを進める。

「レディリー、どういう事なのっ!?」

普段は沈着な御崎海香から鋭い質問が飛ぶ。

「そちらでは、何か分からないの?」
「分からないわね、はっきり言って解析不能。
魔法で解析出来る次元のものじゃないみたいね」
「魔術もご同様」

本を広げて苦い声で言う海香に、レディリーは言葉を続けた。

「ふ、ざ、け、る、な」

血の滴る様な声で呻くのは、若葉みらい。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:03:53.37 ID:65YIRYbq0<>
「サキ、サキが、レディリー、お前………」
「取り敢えず、大事な彼女を引き留めておくべきね」
「分かってるっ! サキッ!!!!!」

みらいにしがみつかれた浅海サキは、呆然と天を仰ぐ。

(なんなの? 魔術に誘われている、と言う感覚が感知出来ない?
魔法少女を何処かに誘い込む存在………)

「かずみ?」

和紗ミチル、神那ニコ、宇佐木里美、浅海サキがふらふらと動き出し、
他の面々が何とかそれを留めようとしている中で、
牧カオルがそれとは違った声を上げた。

「どうしたの?」
「いや、今、かずみ?」

海香の質問にも、カオルが要領を得ない返答しかしない。

「!?」
「?」

海香とカオル、レディリーが目を見張る姿に、
昴かずみはきょとんと反応する。

「気のせい、じゃあ、ないみたいね」

ごくりと息を飲む海香に、カオルが頷いた。
ほんの一瞬、かずみの姿が丸で陽炎に呑まれた様に見えた。
そして今、さっ、と、かずみの体に何かが走る。

「かずみっ!」

ついにはカオルがかずみに駆け寄り、その両肩を掴む。

「かずみ、大丈夫かっ!? なんでもないかっ!?」
「う、うん」
「どう?」
「ええ、異常は、ないわ」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:05:59.28 ID:65YIRYbq0<>
レディリーの問いに、
海香は明らかに納得していない返答をする。

海香の本はその結果を示していても、
ほんの一瞬ずつ、かずみの姿が陽炎に揺らぎ、
或は、昔のポンコツテレビの様に
ささっと白い横線が走っているのを目の当たりにしているのだから
それも当然の反応だ。

ヒヒ

ヒヒヒヒヒ

ウェヒヒヒヒヒ

「おいっ!」

聖カンナの叫び声だった。

「ソウルジェムがっ」
「なんですって?」

レディリーが駆け付けたのは、
儀式に用いられたソウルジェムだった。

「濁りが、広がってる」
「肉体から切り離しているのに?」

レディリーが問い返すが、確かに、
テディベアと共に床の魔法陣に配置されたソウルジェムを確認すると、
じわじわと濁りが拡大し続けている。

「若葉みらい、ソウルジェム、テディベアを集めろっ!!」
「分かったっ! ラ・ベスティアッ!!」
「こっちよっ!!」

レディリーの誘導で、ソウルジェムを装着したテディベアは一か所に集結する。
その間に、レディリーは中央デスクのパソコンを操作する。
集められたテディベアが、ばこんっ、と、半透明なドームに蓋される。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:07:04.98 ID:65YIRYbq0<>
「どう、だ?」
「駄目だっ!!」

レディリーの問いに、カンナが叫び返す。

「濁りの拡大が止まらない」
「あらゆる有害光線、
宇宙線を遮断する遮断フィールドの効果が無い、と言う事は………
世界そのものか?」

レディリーが、未だ星々の瞬く天を見上げる。

「まさかヴァルキュリア? だとすると北欧神話?
だが、その特徴は見えない………
それは、死の国、だとでも言うのか………」
「どうする?」

ぶつぶつ声に出し始めたレディリーに、カンナが問い直す。

「今からまともに術式を解除していても間に合わない。
精密な術式だけに、中途半端な事をしたらもっと厄介な事になる。
聖カンナ、コネクトを貸しなさい」
「ああ、いいだろう」
「全員、撤収の準備を」
「なんだって?」

レディリーの指示に、カオルが尖った声を上げる。

「彼女達を助けても、どの道ここは維持出来ない、
魔法少女どころじゃない、
昔の米ソと全面戦争の方が遥かにマシ、って相手を敵に回す事になる」
「何を、しようって言うの?」

海香が尋ねる。

「魔術と科学が角突き合わせていた、
そんな時代の負の遺産、かしらね」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:08:51.00 ID:65YIRYbq0<>
ーーーーーーーー

「遅ェぞ、オリジナル」

科学の学園都市、研究所の一室で、
駆け込んで来た御坂美琴に一方通行が毒づいた。

「どうなってるの? 妹達に何がっ!?」
「あなたの理解している状況は?」

美琴の質問に、芳川桔梗が質問で返す。

「ええ、私の目の前で急に倒れたからあの病院に預けた。
他の妹達もそうね。打ち止めも?」
「だからこうやってンだろうが」
「ウィルスだとか………」
「ええ、そうよ。MNW、ミサカ・ネットワークに
ウィルスを流し込んだ者がいる」

端末のキーボードを操作しながら、
芳川は焦りを隠せない口調で告げる。

「おいおいおィ、今更ウィルスとか、
MNWのセキュリティーはどうなってるんですかァ?」

軽口に聞こえるが、
返答次第では椅子の上に挽肉が鎮座するのは確実だろう。

「普通だったらまずあり得ない、
こんなハッキング、出来る筈がない」
「でも、出来てるのよね?」
「ええ、そうよ。今の所、理解出来ない技術を使ってね。
何処かから不可思議な技術を使って、
MNWに外から干渉してる、セキュリティーが丸で機能していない」
「それで、済むと思ってるんですかァ」
「どいて、私がやる。ハッカーの逆探知と改竄箇所の修復ね」
「お願い」
「後の方、オリジナルだけで出来るんですかァ?」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:10:03.37 ID:65YIRYbq0<>
ーーーーーーーー

「召喚せよっ!!」

呪文と共にPCを操作していたレディリーが、
叫びと共にリターンキーを叩いた。

「白い」
「稲妻?」

ばばばっ、と、一瞬辺り一帯に走った情景に、
一同が感想を漏らす。

「コネクト、切ったわね?」
「ああ、物凄い勢いで追跡して来てる奴がいた」
「でしょうね」

その間にも、ばばっ、ばばっ、と、
白い稲妻が幾度か周囲を照らす。

「なんだ、これは?」

聖カンナが眉をひそめる。

「稲妻、電気の様でいて電気ではない、
得体の知れない感触だな」
「流石、鋭いわね」

カンナの言葉に、レディリーは返事になっていない賞賛を返す。
次の瞬間、


「!?!?!?」

地下儀式場の下から上に、
ずっどぉーんっ、と、ばかりに、白い何かが一息に突き抜けた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/30(金) 03:11:29.79 ID:65YIRYbq0<>
「!? サキッ!!」

無機質な人工の照明の下、
ふらりと倒れ込んだ浅海サキを若葉みらいが抱き起す。

「ミチル!?」
「おい、ニコ」
「里美、大丈夫かっ!?」
「変身が、解けて………」

倒れた面々を介抱する中、海香が異変に気付く、

「引き揚げるわよっ、死にたくなければ一刻も早く!!」

==============================

今回はここまでです>>153-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:24:07.66 ID:pKwKL5HU0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>159

ーーーーーーーー

「………」
「危ないっ!!」

「アンジェリカ・ベア」一階ホールで、
暁美ほむらは悲鳴を上げて鹿目まどかに飛びついた。

「ほむらちゃん?」
「何、ぼーっとしてるのっ!?」
「あ、ご、ごめんっ!」

ようやく状況に気付き、まどかが頭を下げる間にも
その側では怪獣以外の何物でもないヒュドラと
巴マミや佐倉杏子等が激闘を展開していた。

「行かなきゃ」
「え?」

ぽつりと呟いたまどかの言葉に、ほむらが聞き返す。

「何? どうしたのまどか?」
「う、ううん。何か、この建物の中に何かがあるって言うか」
「ああ、確かに」

まどかの言葉に続いたのは、日向華々莉だった。

「この建物の、多分地下だ」
「何? マツリには分からないけどっ!!」

華々莉の言葉に茉莉が続くが、実の所、ほむらも華々莉に同感だった。
或は、まどかや華々莉の反応に暗示されただけなのかも知れないが、
それでも、ほむら自身が先程までとは違うざわっとしたものを感じている。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:26:28.09 ID:pKwKL5HU0<>
「どちらにしても」

ほむらが、魔法武器の弓矢を用意し直す。

「あの化け物をどうにかしない事には」

確かに、その通り。
大量に首を持つ巨大な蛇、ヒュドラが暴れ狂っている状況では
先に進むも何もありはしない。

「みんな、ホールに展開してっ!
多少首を増やしてもいいから、
少しだけあいつを引き付けて混乱させて頂戴っ!」
「分かったわっ!!」
「オーケーッ!」
「分かった」

どうやら何かを決めたらしいマミの言葉に、
次々と返答が飛ぶ。
ほむらの矢が突き刺さり、杏子の槍がぶっ叩く。
許可を得た天乃鈴音が飛翔し、
その豪剣がヒュドラの首を一つをぶった斬る。

「オラクルレイッ!!」

美国織莉子がとっておきの一撃を食らわせた辺りで、
ホールに大量の銃声が響き渡った。
ヒュドラが、床に用意された大量のマスケットを撃ちまくるマミに
絶叫と共に猛スピードで接近する。

「マミさんっ!」
「大丈夫っ!」

まどかが叫ぶが、マミは一足早く飛翔してそれに応じていた。
そして、気付いた時には、
ヒュドラは地面から噴出した大量の黄色いリボンによって
雁字搦めにされていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:28:25.58 ID:pKwKL5HU0<>
「ヒュウッ、流石だね」
「手練れの技ね」

未知の相手との苦戦の中でも、
気が付けば今まで通りのヴェテランの手並みを見せる。
そのマミの危なげなさに杏子とほむらも安堵する。

「………まどか?」

そして、ほむらがふと視線を戻すと、
やはりまどかがぼーっと突っ立っていた。
幾ら、ヒュドラが拘束されたばかりとは言え。

「ほむらちゃんっ!?」
「まどかっ?」

そして、今度は気が付いた様に叫び出す
そんなまどかに、ほむらが駆け寄る。

「何かが、変わった?」

耳を澄ませていた日向茉莉が呟く。

「みんな下がって!!」

織莉子が叫んだ、その次の瞬間だった。

「!?!?!?」

何かが、ぶち抜けた。

「何?」

マミが、目をぱちくりさせて誰ともなく尋ねる。

「白い、何かが、上から下に………」

そう言ったのは、鈴音だった。
よく見ると、今だ、周辺の空中にはぱちっ、ぱちっと何かが弾けている。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:29:06.94 ID:pKwKL5HU0<>
「電気? 雷?」

その白く弾ける光の破片を見て、ほむらが呟いた。

「女の人………」
「えっ?」
「何となくだけど、女の人みたいだった」
「マツリも、そう思う」

まどかの言葉に、茉莉が続いた。

「何が起こるか、じっと見てたけど、
なんて言うのか、物凄く大きい髪の長い女の人の白い幽霊」
「ああ、あたしにもそう見えた」

茉莉の言葉に、杏子も同意する。

「ヒュドラは?」

ぽつりと言ったマミの言葉に、一同はようやく気付く。
ヒュドラも、ヒュドラを拘束していたリボンも雲散霧消していた。

「魔法陣も、起動状態がシャットダウンに変わったみたい」

床を調べた織莉子が言う。

「つまり、ここで発動していた魔術が、消えた?」
「そういう事になるわね」」

ほむらの言葉を織莉子が肯定した。

「こっちに階段があるっ!」

いつの間にか、ホールの奥にある扉の前に移動していた茉莉が言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:30:10.07 ID:pKwKL5HU0<>
ーーーーーーーー

「逃げられたかも知れない」

螺旋階段を地下へと下りながら、茉莉が言った。

「なんとなく、こっち側から人の気配みたいのがあったんだけど、
今はそれが消えてる」
「まさか、ツバキ達もその中にっ?」

茉莉の言葉に、華々莉が鋭く問い返す。
そして、到着した地下一階は、無機質なホールだった。

「これも、魔法陣ね。だけど、魔力の反応はない。
或は、こちらも一度発動させてシャットダウンさせた。
でも、さっきのと比べて物凄く複雑な内容よ。
様々な占いの要素が入り組んでる」

床を調べながら織莉子が言う。

「どう?」
「専門家って訳じゃないけど、素人目にも無理そうね」

マミに問われ、
最早ガラクタ同然のパソコンを操作していたほむらが言った。

「おいっ、ちょっと来いっ!!!」

遠くから、佐倉杏子の怒号が聞こえて来た。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:32:08.79 ID:pKwKL5HU0<>
ーーーーーーーー

「何、これ?」

地下二階に到着したまどかは、絶句していた。

「まさか、誘拐された魔法少女達?」

ほむらもやっと言葉を発するが、それは、SFじみた光景だった。
地下二階のホールには大きな透明カプセルが林立し、
透明な液体が満たされたその中には
意識を失った少女達が立ったまま眠っている様に見える。

「ツバキ、ツバキッ!!」

その間にも、既に華々莉と鈴音は走り出していた。

「置手紙がある」

マミが言った。

「カプセルの中の魔法少女の解放方法。
解凍、水抜き、記号に合わせてソウルジェムを近づける、
手順に従って行えば復活します、って」
「それ、信用出来るのか?」
「どっちにしても、やるしかない」

杏子が言うが、ほむらが結論付ける。
近くには、ビニールパックに入った
メモつきソウルジェムも大量に用意されている。
その時には、織莉子が動き出していた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:34:15.40 ID:pKwKL5HU0<>
「キリカ、目を覚ましてキリカ………」

織莉子が、呟きながらカプセルの基盤の機器を操作する。
そのカプセルの中にいるのは、呉キリカに他ならなかった。

「キリカッ!! 目を覚ましてっ!!」
「………織莉子?」
「そうよっ」
「………なんだい、これはっ!?」

立ったまま肩まで水に浸かったキリカが叫び出す。

「ちょっと待ってて、
今全部水を抜くから、転ばない様にしてね」
「………全員、手分けして初めて頂戴っ!」

「実験」成功を見届けたマミの指示で、他の魔法少女達も動き出した。

「さやかちゃんっ!」
「まど、か?」
「ツバキッ!!」
「あら、あら………」
「人見リナさん?」
「ええ………そうだけど」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:35:52.15 ID:pKwKL5HU0<>
ーーーーーーーー

「チサトっ!!」

「アンジェリカ・ベア」屋外で、詩音千里は自分を呼ぶ叫び声を聞いた。

「大丈夫だったのっ!?」
「ああ、マツリ。ええ、大丈夫」

気が付いたらあすなろタワーまで吹っ飛ばされて、
今ようやく戻って来た所だったが、
まあ、今の所自分は大丈夫、そういう事だった。

「それよりマツリ、こんな所で、中は………
………先輩っ!?」
「心配、かけたわね」

その言葉に、千里の涙腺が緩みそうになる。
だが、それはまだ早い、と言う妙な雰囲気を千里は察していた。

「こちらで把握している、失踪中の魔法少女は全員救出出来た」

奏遥香の背後から現れ、説明する暁美ほむらの歯切れは悪い。

「何か、あった?」
「こっちに来て頂戴っ」

ーーーーーーーー

「アリ、サ?」

千里の親友成見亜里紗が、微動だにせず千里の目の前に横たわっていた。

「な、に?」
「今は、ソウルジェムを離して仮死状態にしてあるわ」
「どうしてっ!?」

マミの説明に、千里が叫んだ。
ほむらが、無言で亜里紗のソウルジェムを肉体に近づける。
亜里紗は、ぱっと目を覚ました。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:37:00.16 ID:pKwKL5HU0<>
「アリサ………」
「嫌あああああっっっっ!!!!!」

千里が声をかけようとした瞬間に、亜里紗は絶叫していた。

「嫌、嫌、嫌あ、嫌………」
「アリサ?」

亜里紗は、我が身を抱き、ガタガタと震えながら逃げる様に這いずり回る。

「やだ、やだ、やだ、やだ、もうやだ、もうやだ、もうやだあっ!!!
やだようやだようやだようやだよう………」
「私達が見つけた時から、ずっとこうなの」

マミが言った。

「何かに、ひどく怯えてる。
浄化してもソウルジェムの濁りが止まらない。
だから一時的にああしていたの」
「アリサ? ねえどうしたのアリサっ!?」
「やだあっ!!!」

差し伸べられた千里の手を振り払い、亜里紗は絶叫する。

「やだあっ!! もうやだあっ!!」
「普通じゃないわ、何らかの魔術が使われている。
詩音千里、なんとかならない」
「もちろん」

ほむらの言葉に、千里は亜里紗に銃口を向ける。
それを見て、亜里紗は目を見開いた。
特に親しい訳でもないが、
知り合いではあるほむらから見て、異様な光景だった。
はっきり言って、亜里紗のキャラクターが違い過ぎる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:38:10.72 ID:pKwKL5HU0<>
「大丈夫よ、亜里紗。今すぐその悪い夢………!?!?!?」

千里が引き金を引く。
だが、次の瞬間、弾き飛ばされたのは千里の方だった。

「うああああーーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!」

それを見て、いよいよ亜里紗も
丸で地に潜ろうかと言う異様な態度で恐慌を始めた。

「そん、な………」
「どういう事なの?」

呆然とする千里にほむらが尋ねる。

「分からない。敢えて言うなら、グレードが違い過ぎる」
「何?」

千里の説明に杏子が聞き返した。

「なんと言うのか、アリサにかけられている術が高度過ぎて
私の解除を遥かに上回っていると言うか」
「そんな………」
「アリサ、しっかりしてアリサっ!!」
「やああああっ!!!!!」

説明を聞いた茉莉が震えている間にも、
少々長い眠りから覚めたばかりの遥香が亜里紗の肩を掴もうとしたが、
亜里紗はぶんぶん腕を振り回して抵抗した。

「駄目っ! 一時しのぎで洗脳しようにも何かが邪魔してる、
浄化してもキリがない、キューブの残りも………」
「やだ、やだぁ………」

一難去っての事態に華々莉がギリギリ歯噛みしている側で、
亜里紗は泣きじゃくっている。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:39:27.83 ID:pKwKL5HU0<>
「やだ、やだぁ、もうやだぁ、
助けて助けて助けて助けて助けて………」
「あああああっ!!!!!」

詩音千里は、日向華々莉を突き飛ばす勢いで、
ガッ、と、亜里紗の両手を取った。

「や、やっ、や………」
「大丈夫、私、チサト、チサトだから、アリサ」

千里の言葉と共に、千里と亜里紗が光り輝いた。

「チサトっ!?」
「だい、じょ、うぶっ」

そんな二人に、バチッ、と稲光が光ったのを見て遥香が叫ぶが、
千里は手を離さない。

「高度な術式を力ずく、力押しで解除するつもり?」

織莉子が言う。

「危険ね、既にカウンターが続々撃ち込まれてる」
「愛、だね」

事態を把握する織莉子に、キリカが続けた。

「あああああっ!!」
「チサトっ、一回離れて、危険よっ!!!」
「アリサは………」

遥香の制止を拒否した千里が、苦しい息と共に告げる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2016/12/31(土) 03:41:24.05 ID:pKwKL5HU0<>
「アリサ、は、ひどいいじめを受けていて、
魔法少女になって克服したけど、簡単に、消える傷じゃない」
「ええ、そうよ」

千里の言葉に、遥香が続く。

「まだ知り合う前だったとは言え、
同じ学校の上級生として生徒会長として魔法少女として、
私は恥じ入るばかり」

バババハバッ、と、千里の体を電撃が貫き続ける。

「アリサ、は、私の魂を、救ってくれた。
だから、だから私が、
今度、は、私がああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!!」

==============================

今回はここまでです>>160-1000

恐らく本年最後の投下、だと思いますので。

それでは良いお年を。

続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage<>2017/01/22(日) 21:18:25.67 ID:2HaHrhio0<> 生存報告です <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2017/02/18(土) 03:38:23.16 ID:eMp5afFD0<> 生存報告です <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/13(月) 03:17:46.52 ID:Hw2qFdHg0<> まずは訂正です。

>>121

そんな中、美国織莉子と鹿目まどかが玄関からリビングへと姿を現す。

そんな中、美国織莉子と鹿目まどかが姿を現す。

>>122

マミルームからの帰路、ほむらがまどかに話しかけた。

帰り道、ほむらがまどかに話しかけた。

完全にやらかしてました、すいません。

それでは今回の投下、入ります。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/13(月) 03:23:26.44 ID:Hw2qFdHg0<>
==============================

>>171

ーーーーーーーー

イヤダ、イヤダ、イヤダ、イヤダ、イヤ、ダ……………

沈む、沈む沈む闇の底に沈むもういいそれでもいいこの苦しみから

光が、見えた、手を引いてくれるのは

そうだ、光に引き上げてくれた、
沈んで、

たまるか

ーーーーーーーー

「かああああああっっっっっ!!!!!」

成見亜里紗が、一声叫んで身を起こした。

「気が付いたっ!?」
「あ、ハルカ? 無事だった? ………」
「それはこっちの台詞よ、
でも、心配かけてごめんなさいっ」

亜里紗の手を取った奏遥香は、涙目だった。

「ん?」

そして、亜里紗は気が付く。

「チサト? ねえ、ちょっとチサトどうしたの?」

跳ね起きた亜里紗が、近くで身を横たえる詩音千里に駆け寄った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/13(月) 03:29:00.97 ID:Hw2qFdHg0<>
「アリ、サ? 気が付いた?」
「うん、夢を見た、あの時の夢」
「あの時の?」

「あの時、チサトがアタシの事を、
アタシの心を救って、今のグループに誘ってくれた時の事、
全っ然かなわなくてさ」
「そうだったね」

くしゃっと笑顔になった亜里紗に、千里もふふっと笑みを見せた。

「ん、んんっ!」
「チサト? ねえどうしたのチサトっ!?」
「離れてっ!」

叫ぶ亜里紗を、巴マミが鋭く制する。

「彼女の魔力消耗、ソウルジェムが限界値に近づいてる。
キューブも使い果たした、今は時間を稼ぐしかない」
「そんな………」

マミの説明を聞き、亜里紗が両膝をついた。

「………あ、あ………」

そして、亜里紗もそのまま体を折る。

「そう、あなたのソウルジェムも危険領域である事に違いは無い。
今、大至急魔獣を探してる」

状況を告げたのは暁美ほむらだった。

「ん、ぐっ………これ、マジでヤバイ、かも………」
「!?」

跪いて体を折る亜里紗、その様子を見守っていたほむらが物音に視線を向ける。
そちらでは、千里がゆらっと立ち上がっていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/13(月) 03:34:16.05 ID:Hw2qFdHg0<>
「ア、リサ」
「チサト………」

亜里紗も、苦しい息と共にそちらに目を向ける。

「良かっ、た、戻って来て」

すとん、と膝をついた千里が口にした。

「うん。まあ、なんか又、ヤバそうだけどさ」

そう言って、亜里紗が笑みを作った。

「今度は、助けてあげられない、かな」
「お互いに、今まで、色々と」
「こちらこそ」
「勝手に、終わらないでくれるかしら?
じきに、キューブが間に合う、筈だから」

手に手を取り始めた千里と亜里紗に、
ほむらが苛立たし気に言う。
それは希望的観測に過ぎないのだが、諦めるつもりは毛頭なかった。

「何?」

奏遥香が呟く。
「何?」と言われても何がなんだか分からない。
だが、感じる事は出来た。
或は風、或は星々の輝き。

論理的な五感の数値に変動はないのかも知れない。
だが、魔法少女達は感じていた。
何かが、動いている、輝きが増している、近づいている。
それは、魔獣等と言うものではない、何かもっと。

「鹿目さん?」

そして、巴マミは気付いた。
呆然と突っ立っている鹿目まどかに。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/13(月) 03:37:29.43 ID:Hw2qFdHg0<>
「まどか?」

ほむらが声を掛けるが、まどかは反応しない。
そのまま、まどかは天を仰ぎ、ゆっくりと腕を広げ始める。

「鹿目さん?」
「まどかっ!!!」
「暁美さんっ!?」

ほむらに続き、マミが叫び声を上げた。

「ほむら、ちゃん?」

荒い息を聞きながら、まどかがぽつっと言った。

「あ、ごめんなさい」

ほむら自身も、今、気付いていた。
自分がまどかに飛びつき、抱き着いていた事に。

「まどか、今、何が?」
「え?」

そっと腕を離し尋ねるほむらに、まどかはきょとんと答えていた。

「!?」

一同が物音に反応する。
そちらを見ると、佐倉杏子と、レイトウ監禁から
復帰したばかりの美樹さやかがこちらに駆け込んで来る所だった。

「佐倉さん、美樹さんっ!?」
「やっべーかも」

荒い息を吐きながら杏子が言う。
それを裏付ける様に、ここに残った魔法少女達も身構え、
魔獣を探しに出ていた呉キリカもずしゃあっと戻って来た。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/13(月) 03:41:03.17 ID:Hw2qFdHg0<>
「うわっ! これ本気でまずいんじゃないっ?」

千里と亜里紗の状態に気づいたさやかが声を上げる。
不意に、銃声が響いた。
パパパアンッと、巴マミが空戦型魔獣数体を仕留めた所だった。

「何よ、これっ?」

うぞうぞうぞと周囲を囲む魔獣の大群を見てほむらが呻く。
そして、空には空戦型のシュゲン魔獣がびゅんびゅんと交差し始める。

「なんか、魔獣探してたらさ」

二刀を構えたさやかが口を開く。

「いきなりとんでもない数が出て来て大群でこっち向かい出してさ」

槍を構えた杏子が、そう言ってじりっと後退する。

「そう、つまり」

覚悟を決めた奏遥香が双剣を振る。

「キューブの取り放題、って所かしら?」
「いい加減、警察沙汰になる前に片づける必要はありそうね」

両脇に機関銃を挟んだほむらの側でマミがマスケットを林立させる。

「全部の意味で時間がないわ」
「オッケー」

マミの言葉に、さやかと杏子が応じる。
まどかが弓矢を手に小さく頷いた。

「スタートッ!!!」

==============================

今回はここまでです>>174-1000
随分お久しぶりですいません。
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/14(火) 03:25:24.25 ID:rUqmCrDW0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>179

ーーーーーーーー

「ふぅ………」

遅めの帰宅となった自宅の浴室で、
鹿目まどかは文字通り一息ついていた。
今までの魔獣とは根本的に違う怪物と衝突した救出作戦、
その後始末まで、心と共にくたくたに疲れた身を浸す熱めの湯が心地よい。
そのままとろとろと眠ってしまいそうだが、
それをやったら大変だとタオルを巻いた頭を一振りする。

ーーーーーーーー

「お休み」
「ああ、お休み」

お風呂を使ったまどかが、
食堂で水割りを舐めている詢子と挨拶を交わす。

「お疲れさん、なんだか知らないけど無事で良かったよ」
「うん」
「ああ、お休み」

短く、優しい言葉を交わしながら、
まどかは自分の部屋に入りベッドに背を投げ出す。

さすがに、何件も捜索願が出されている以上、警察の介入は避けられなかった。
その辺は、魔法少女仲間の中でも頭のいい辺りがなんとか話をまとめて、
ついでにまどか自身が通報者の立場になった。

大半の事はほむらやマミが引き受けてくれたが、
探している内に探していたさやかを見かけたので通報した、
と言う実の所嘘ではない筋書きで、
周辺にいた事が発覚する危険を先回りする筋書きで話を進めた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/14(火) 03:30:39.27 ID:rUqmCrDW0<>
「さやかちゃん、大丈夫かな………」

それでも、まどかは未だ半分部外者の立場だったが、
当事者であるさやかは想像するだけで大変だ。
そこは、一人や二人だったら非常に厳しい事になるが、
人数が人数だけに、全員が覚えていないと、
これも本当の事を言ってしまえばいい、と言う作戦が図に当たればいいが。
そんな所まで考えが及ぶ前に、まどかの瞼は重くなる。

ーーーーーーーー

「幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」
「めでたしめでたし」

夫の優しい声に続けて、部屋の入口に立った詢子が繰り返した。
部屋に横たわり、頬杖をつく知久の前では、
子ども布団に入ったタツヤがとっぷりと夢の国に旅立ってる。

「寝たか」
「うん」

詢子の問いに知久が答え、詢子がすっと近づいて片膝をつく。
そして、タツヤの鼻をくにくにとして見るが、
みんなみんな幸せな笑顔に揺るぎはない。

「お休み、タツヤ」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/14(火) 03:37:09.78 ID:rUqmCrDW0<>
ーーーーーーーー

鹿目まどかが目覚めたのは、日付が変わって何時間、と言う闇の中だった。
その意識は鼻に近づけられた刺激臭で強制的に覚醒する一方、
体が全く動かず口も動かない。
感覚的には何かがシャットダウンする寸前のパニックに見舞われていた。

電灯がつく。恐怖で見開かれたまどかの目が周囲を見回す。
まどかが見たのは、何か西洋の喪服の様な
もこもこと黒い服装に身を包んだ、背の低い女の子の姿だった。

「今晩は、鹿目まどかさん」
「ん、んー、ん………」

「まず、今、この家は私達が占拠している。
他の人は熟睡しているけど、
あなたやその家族に危害を加える事を避けた上で穏便に話を進める。
それが私の希望よ。理解していただけて?」

そう言って女の子が摘み上げたのは、
本来まどかの持ち物である指輪だった。
そして、女の子の横では、黒ずくめ黒覆面の不審者が、
鋭い光を放つ「短剣」としか言い様がないものを、
切っ先を天井に向けて所持している。

「つまり、ここであなたが大声を出したら、
平凡な一家の大惨事として今日の夕刊を飾る事になる。
理解したわね?」

女の子が一方的に通告し、ベッド周辺にいた侵入者の掌が外れて
まどかは大きく口呼吸をしていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/14(火) 03:43:09.95 ID:rUqmCrDW0<>
「あなたは?」
「知っている筈よ」

その笑みに、まどかは血の凍る心地を覚えた。
西洋人形の様に端正な、
何故か血の紅が連想される美しい女の子。

レディリー=タンクルロード。
恐らく、一連の魔法少女失踪事件の黒幕。
そのレディリーの目配せを受け、
布団越しに掴まれていた両腕も解放された。

「巴マミに電話をしなさい、彼女と話したい」
「マミさんに?」

布団の上に自分のスマホを放り出され、まどかが尋ねた。

「こんな野蛮でリスクの大きい手段はとりたくないんだけど、
どんな能力があるか分からないあなた達マギカと直接交渉するよりはマシ。
そう言う事だから、話が付けば余計な血を流すつもりはないわ」

ーーーーーーーー

半開きの目でスマホの画面を確認した巴マミは、
ベッドで就寝スタイルのまま通話を開始した。

「もしもし? 鹿目さん?」
「も、もしもし、マミ先輩、ですか?」

目を見開いたマミは、飛び起きてサブのスマホの操作を開始した。

「どうしたの鹿目さん、こんな夜中に?」
「え、ええと」
「なんだか知らないけど、昼間にしてもらっていいかしら?」

眠そうな声で言いながら、
マミはサブの通話開始を確認し、メインスマホの送話口を塞ぐ。

「緊急事態、少し黙って聞いてて」
「もしもし」

マミの耳に、聞き覚えのない声が聞こえる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/14(火) 03:46:41.03 ID:rUqmCrDW0<>
「? ………どちら様?」
「初めまして、レディリー=タンクルロードよ」
「どちら様ですか?」

「おとぼけは無しにしましょう。
私達は今、鹿目家を占拠している。
鹿目まどかを拘束し、他の者は熟睡している。
いつでも血祭に上げる事が出来る、と言う事を理解した上で
建設的な話し合いをしましょう」

「確認していいかしら?
あなたは、鹿目さんの家を占拠して、
鹿目まどかさんを拘束して、他の家族が眠っている状況で
私に話に応じろと、そう脅迫しているのね?
レディリー=タンクルロードさん?」

「そういう事になるわね。
間違っても好ましい方法ではないけど、他の選択が難しかった。
あなたが私の提案に合意するなら、誰にも危害を加えるつもりはない。
あなた達にとっても損にはならない話よ」

ーーーーーーーー

「んだよ、こんな時間に?」

一仕事、それも大仕事を終えた深夜に、
しつこく鳴り続けていたスマホに向かって佐倉杏子は悪態をつく。
それも、相手がそこそこ親しい、
その大仕事をした相手とあらば遠慮もいらない。

「まどかの自宅が占拠された」
「は?」

斜め上を行く暁美ほむらの言葉に、
杏子の思考は一瞬停止し睡魔は吹き飛ぶ。

「レディリー=タンクルロードよ、
今は巴マミが交渉してる。
美樹さやか、美国織莉子、呉キリカ、
近い順から叩き起こして」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/14(火) 03:50:34.51 ID:rUqmCrDW0<>
ーーーーーーーー

「くそっ!」

実感はないが随分長い事留守にしていた自分の部屋で、
美樹さやかはパジャマシャツをベッドに叩き付けていた。

「まどか、タッくん、おじさんおばさん、
指一本触れてみろ………」

ーーーーーーーー

街灯の下、暁美ほむらは走っていた。
昨日の救出作戦、その後の事も含めて、魔力、キューブを消耗し過ぎた。
あの二人以外にも、救出された魔法少女の中にも危険な状態の者もいた。
だから、今は時間停止はもちろん、変身もギリギリまで控えなければならない。
今は心臓が爆発しないだけマシだ。

「………まどか………」

一声口に出して、ほむらはギリッと歯噛みする。
レディリー=タンクルロード。
とにかく今は、その額のど真ん中に穴を空けるイメージしか浮かばない。

「止まれ」

それは、無機質な声だった。
ほむらが前を見る。
行く手を塞ぐのは、一人の女。
セミロングの黒髪、バイザーを装着し、
ライダーを思わせる黒い繫ぎ姿で背は余り高くない。
或は、ほむらとも余り変わらぬ歳かも知れない。

==============================

今回はここまでです>>180-1000
続きは折を見て。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/14(火) 04:54:16.22 ID:23+B13IlO<> この糞スレまだ存在してたのかよキモいからさっさと辞めてくれ <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:30:19.34 ID:IzspGz4I0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>185

ーーーーーーーー

「初めに言っておくけど、私もあすなろの御崎海香のグループも、
これ以上あなた達に危害を加えようと言う意思はないわ」
「今現在あなた達がしている事はなんなのかしら?」

所詮、頭の中身はプロの交渉人でもない只の中学生。
余りと言えば余りの言い草に、
ストレートな発言が巴マミの口をつく。

ーーーーーーーー

「何か、御用でしょうか?」

ほむらの言葉に対し、
目の前のバイザー少女は腰のホルスターに手をかけていた。

「何か、奇妙な能力を使うと言う事だが、
素振りを見せたら命の保障は出来ない」
「あなた、自分が何に加担しているのか、理解しているの?」
「この街では非合法の領域に踏み込む事になるが、
事が裏の能力に絡むとなるとやむを得ない」

噛み合わないやり取りに、ほむらの苛立ちが募る。
だが、それでもギリギリで短慮を抑えていたのは、
ほむらの歴戦の勘だった。

「気づいている様だが、私は一人ではない」
「そこを、どけてくれるかしら?」
「断る。ここを通す訳にはいかない、そういう指示を受けている。
押し通る力を持っている、と言うのであれば尚の事だ」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:35:45.41 ID:IzspGz4I0<>
ーーーーーーーー

「ごっ、がっ………」
「峰打ちだよ、いっそ刻んで、も………」

建物の屋上で、ライフルと共に昏倒する黒ずくめの
背後に立っていた呉キリカが、
ゆーっくり飛んで来たライフル弾をひょいと交わして
ひょいひょいと屋根から屋根へと飛び移る。

ーーーーーーーー

「ごきげんよう」
「!?」

振り返ったシャットアウラ=セクウェンツィアが、
その声に向けて拳銃を発砲する。
標的は、すすすっと横にその弾道を避けながら、光に包まれていた。

「うあっ!」
「どうしたっ!?」

周囲が煙に包まれ、シャットアウラは援護要員の悲鳴を聞いた。

「ちいっ!!」

そして、シャットアウラは、
自分に向けて飛んで来る幾つもの球体を察知していた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:41:05.86 ID:IzspGz4I0<>
ーーーーーーーー

「多分、向こうの思う壷な展開ねっ」

夜の住宅街の一角で、美国織莉子の手を引いていた
暁美ほむらは吐き捨てる様に言った。

「この夜中に街中で大爆発。
まどかの家にはまだ距離もあるのに、警察も介入するから迂闊に動けない。
そこから時間停止で脱出したから魔力もギリギリよ」
「それで痛み分けって結果も厳しいわね」
「勘違いしないで、膠着状態から助けてくれた事には感謝してる」

苛立ちが頂点に達している事を自覚するからこそ、
ほむらは頭を下げていた。

ーーーーーーーー

「美樹さんや他の魔法少女達を攫った理由を説明していただけるかしら?
当たり前だけど、
それだけでこちらは大変な迷惑をこうむったし恐怖も覚えた。
言わないと分からないかしら?」

「したくても出来ないわね。
だって、こちらでも理解していないんですもの」
「話にならないわ」
「じゃあ、一戦交える?」
「まともに返答出来る状態? すぐに人質を解放して」

「ええ、これ以上誰にも危害を加えるつもりはない。
話が終わったら無傷で解放するわ。
だから少し、順を追って話をしましょう」
「聞かせてくれる?」

言いながら、ここまでの展開でまともな説明等期待出来ない。
期待するのは時間稼ぎ、仲間の暁美ほむらは
人質籠城事件であれば万能に近い相性。
とにかく平穏に時間を稼ぐ事、巴マミは心の中で深呼吸をする。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:46:21.76 ID:IzspGz4I0<>
ーーーーーーーー

「なっ!?」

鹿目宅周辺。
黒い外套姿の不審者の腕が、美樹さやかの振るった一刀にぶつかり、
ギリギリと食い止めている。

(凄く固い、防具を着けた腕?
それに、魔力を感じる………)

さやかが一旦引いた。
それに合わせて、外套の者がタンターンッと後退する。
さやかがそれに向けてサーベルを放とうとするが、

「とっ!?」

その時には、さやかは、
タタターンッとアクロバティックに接近していた
外套の者の足払いを辛うじて交わしていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:49:35.60 ID:IzspGz4I0<>
ーーーーーーーー

「改めて言うけど、今後、あなた達に手を出すつもりはない、
だって、そんな事をする利益が無いんですもの。
但し、そちらから仕掛けて来ると言うのならやむを得ないけど」

「勝手過ぎる言い分ね。
今までも今現在もこの状態で、どう信用しろと言うの?
魔法少女の勢力として、全力であなた達を潰す、
と言う結論にしかならないと思わないの?」

「まあ、そういう事になるわね。
でも、事実だから仕方がない。
本当は、一連の誘拐事件に関しても納得のいく説明がしたいんだけど、
これを理屈で説明するのは難しい。
只、どうしても必要なデータがあった、と言うだけで、
傷付けるつもりは最初からなかった」

「そう、物理的にはね。
だけど、そのために私達は小さくないリスクを負った。
その事だけでも、あなた達は魔法少女の敵でしかない」

「そう。あなたの言う通り、
一連の誘拐事件で私達は大きなリスクを負った。
あなた達は、実行犯を含めた犯人側の情報を
自分達だけに留めてくれたみたいだけど、
本来であれば、魔法少女各勢力と
御崎海香のグループ、オービット=ポータルが
泥沼の戦いに突入してもおかしくない事態ね」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:53:00.49 ID:IzspGz4I0<>
「その事は理解しているのね。
ええ、統一的でもない多数の魔法少女にその情報を流したら
収拾がつかない事になる。
だからそちらの情報は一旦抑えた。
抑えたと言っても、十人以上の魔法少女があなた達の仕業だと知っている」

「ええ。その上でやらざるを得ない理由があったし、
そして、これ以上続ける理由もない。
だから、これ以上はそちらから手出しをしなければ
こちらも手を出さない、そういう話」

「堂々巡りね、呆れるわ」

「私には財力も、権力との繋がりもある。
その上で、マギカを含めた裏側の事情にもある程度通じている。
単体の戦闘力ではあなた達マギカが上でも
それをカバー出来る力、人材が揃ってる。
あなた達マギカのお子様達が戦いを望むなら、
こちらはこちらの社会的なものを含めたやり方で対処させてもらう事になる」

「脅迫ね」
「その通り」
「こちらが手を出さなければ危害は加えない、と約束してくれるの?」

「ええ。別に倫理的な事だけじゃない。
これ以上あなた達をどうにかしても、
リスクばかり大きくてリターンが全くないんですもの。
即答は難しいでしょうね。何れもう少し穏便に連絡する事もあると思うわ」

「もしもし?」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 03:56:29.29 ID:IzspGz4I0<>
ーーーーーーーー

「美樹さやか」
「転校生っ?」

路上で声を掛けられたさやかが、肩で息をしながら振り返る。

「もしかして、戦ってた?」
「たった今までね。
ここまで来て妙な奴に襲われてさ」
「その敵は?」

尋ねたのは、美国織莉子だった。

「逃げた。だからまどかん家に向かうトコ」
「時間稼ぎね」

織莉子が言い、さやかも小さく頷いた。
その時、そこにいた者は一斉に携帯を見た。
そして、代表する形でほむらが携帯を使う。

「ええ、電話では無事を確認したわ。
自分達が逃走してから指定の時間になったら私に連絡する様に。
レディリーは鹿目さんにそう指示したみたいね」
「窓の鍵とカーテンを開ける様にまどかに言っていただけますか?
念のため、この目で確認します」
「分かった」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/16(木) 04:00:21.89 ID:IzspGz4I0<>
ーーーーーーーー

「まどか」
「!?」

まどかは、ベッドの上で腰を抜かしそうになった。
理屈では分かっていても、
深夜の寝室を、相手は知り合いとは言え突如として占拠されては
それは本能的な反応だった。

「暁美さんと一緒に、
時間を停止して家の中を捜索したけど完全に撤退したみたいね」

まず、織莉子が状況を確認する。

「まどか、大丈夫? ケガとかない?」
「さ、やかちゃん………」

ずいっと顔を近づけて尋ねるさやかを前に、
まどかの目がみるみる潤み始める。
さやかの胸の中ですすり泣くまどかを、
ほむらは静かに見下ろしていた。

==============================

今回はここまでです>>187-1000
続きは折を見て。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/16(木) 17:12:14.89 ID:qFJdwX3rO<> ごむでら並にキモいからここでやんの辞めろよ
やんならハーメルンにでもいってやれよガイジ <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:14:25.24 ID:iAJJyARm0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>194

ーーーーーーーー

「こちらの意思は伝わったわね。今すぐの返事は期待していない。
一度電話を切るけど、その後で鹿目まどかがそちらに電話を掛ける。
それ迄の間に余計な事が起きたら、
銃器、爆薬その他で武装したこちら側の人間が
中流よりやや上の平凡な住宅内で死に物狂いで抵抗する事になるでしょうね」

仲間の魔法少女達が救出に来る少し前、
鹿目まどかの寝室を家ごと占拠していたレディリー=タンクルロードは、
そう言って一度電話を切っていた。

「あ、あのっ」
「何かしら?」
「どうして? どうしてこんな事を?」

「聞いての通り、それを簡単に説明出来るぐらいなら
最初からこんなリスキーな事はしていない。
私の事は、どの程度知っているのかしら? 鹿目まどか?」

「科学の学園都市の天才少女で、凄く大きな経営者だって」
「まあ、そんな所ね。だから、あなた達マギカを相手にしても、
単純な武力では済まない力を持っている。
その事は覚えておきなさい。大事なものを守りたいのならね」

「本当に、パ………父や母、弟には?」
「ええ、手を出すつもりはないわ。
倫理上、感情的な問題も当然あるけど、それ以上にメリットが全くないもの。
だから、私達に、あなたの大切な家族、
あなた自身を盾にする様な事をさせないで鹿目まどか」

そう言って、レディリーはすたすたと
その小柄な姿をまどかのいるベッドに近づける。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:19:50.79 ID:iAJJyARm0<>
「鹿目まどか」

そして、まどかをじっと見つめたレディリーが声を掛ける。

「あなたは、自分の人生が貴いと思う?
家族や友達を、大切にしてる?」

その問いは、今までの余裕ぶったものを離れた、
大真面目なものに聞こえた、だから、

「………もちろん、大切だと思ってるよ?
家族も友達も、みんな大好きだもん!」

まどかは、目の前の女の子に言い切った。

「そう。ええ、このシチュエーションである以上、
脅迫であると言うのも本当。
だけど、本心から大切にして欲しいとも思う。
温かな光に包まれ、人から愛され幸せに満ち足りたあなたの定め。
その奥底には秘めた力がある」

「秘めた、力?」

「ええ、とても強い、そして正しい力。
力は振るう者によって正にも負にも働く。
だから、忘れないで。あなたが一番大切にすべきものは何なのかを。
このシチュエーションで言えた義理ではない、
只の脅迫ととらえるなら仕方がないけど、
あなたの星を見たシビルとしての忠告。警告、かしらね」

そして、レディリーはまどかのいるベッドにスマホを置く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:25:17.49 ID:iAJJyARm0<>
「あの時計で長針が6に来たら巴マミに電話をしなさい。
それまでは黙ってこの部屋にいる事。
多大なる迷惑をかけて、悪かったとは思ってる」

レディリーを見せたのは、自分のスマホに表示した見取り図だった。

「特殊な技術でこの窓を開かせてもらった。
目立たない場所だから、
本職の泥棒に入られる前に鍵をかけておく事ね」

レディリーはスマホをしまい、
まどかの指輪を見せ付けながら離れた場所に置く。
レディリーと、何人かの黒ずくめがまどかに背を向けた。

現実問題として、レディリーはとにかく、
他の面々は変身前のまどかでは一対一でも勝てるとは思えない。
まどかとしては、ここで、賭けに出る度胸がある訳でもないし、
漠然とだが、レディリーの言葉を信じてもいい様な気もする。

取り敢えず、マミに伝わっていると言う事は、
仲間が助けに来てくれると信じたい。

レディリーがここで破局的な被害を出したら、
魔法少女をまともに敵に回して嬲り殺し上等の報復を受ける。
レディリーがこちらの事情をそれなりに知っているからこそ、
そんな馬鹿な事はリスクが高すぎる、と言う
彼女の言を信じられる気がした。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:31:16.02 ID:iAJJyARm0<>
 ×     ×

翌日放課後、当然の如くマミルームでの緊急会合が開かれていた。

「お待たせ」
「警察、どうだった?」

遅れて入った美樹さやかに、巴マミが問うた。

「いやー、結構厳しかったよ。
失踪直前から自分があの場所にいる迄の間の事をすっぽり覚えてないってさ、
普通に無理あるもんそんなの。
他の魔法少女のみんながみんなそう言ってくれなかったら
未だに居残りだったと思うよ」

「失踪して救助されたのが魔法少女で助かったわよ。
即座にテレパスで口裏合わせ出来たから」
「覚えてない、ってのも本当の事だったけどね」

マミの言葉にさやかが言った。

「そっちの副長さんは?」
「今は無理だって。警察の事情聴取もあるし、
お家の方にも弁護士が来てるからちょっと抜けられないって」

佐倉杏子の問いに、成見亜里紗が答えた。

「問題は………」

詩音千里が本題に入る。

「救出作戦の直後、
レディリー=タンクルロードが直接鹿目まどかさんの自宅を占拠。
巴マミさんを通じてこの件にこれ以上関わるな、と脅迫して来たと言う事。
巴さんはどう見ますか?」
「かなりの部分、嘘はないと思う」

千里の問いに、マミが答えた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:35:42.12 ID:iAJJyARm0<>
「レディリー=タンクルロードは
こちら側の事をかなり知った上でああ言う手段を取った。
問題はリスク計算よ。公表されている情報が本当なら、
レディリーは天才少女で巨大企業の経営者、少なくとも馬鹿ではない」
「無暗に魔法少女に喧嘩を売る様な事はしない、と言う事ね」

そう言ったのは、美国織莉子だった。

「いや、喧嘩売りまくりでしょう」

亜里紗が、こちらも当たり前の発言をする。

「だから、それには理由があった」
「どんな?」
「分からない。それはあちら側にだけしか分からない事かも知れない。
だけど、これ以上私達をまともに敵に回す、
その事のリスクは理解している筈よ」

亜里紗と問答しながら、マミが言った。

「私と日向カガリが組めば、大概の相手なら
その懐に潜り込んで洗いざらい吐かせる事が出来るけど」
「もちろん。連中、ツバキに手を出したんだ。
そのぐらいの事は当然だ」

暁美ほむらの言葉に日向華々莉が続く。

「敵方にも魔法少女がいるわよ」

そんな二人に、織莉子が言った。

「プレイアデス聖団ね」
「プレイアデス?」

ほむらの言葉に、呉キリカが聞き返した。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:39:32.49 ID:iAJJyARm0<>
「御崎海香、牧カオル、ミチルかずみ姉妹その他のグループの名前よ。
あいりとユウリに確かめた。
誘拐犯だって事は知らなかったけど、同じ地元の事だから
グループの名前がプレイアデスだと言う事は知っていた。
プレイアデスは7人姉妹、二人多い計算になるけど、
双子を一人、と数えたら計算が合うそうよ」

「プレイアデス、ギリシャ神話ね」

ほむらの説明に、織莉子が続いた。

「ミチルにはメール入れたけど、今んトコ返事はねぇな」

佐倉杏子が付け加える。

「まず、そこからぶっ叩く?」
「難しいわね。レディリーによると、
プレイアデスのメンバーは普通の生活に戻ってるけど、
その周辺にあちら側の人間が配置されてる。
トラブルになったら、警察が介入するための時間稼ぎに徹するそうよ。
あのお屋敷のセキュリティーが厳しいのも調べ済みだし」

華々莉の問いにマミが答える。

「それも、遠距離もありだから私達でもきっついかな」
「屋外ではレディリーの配下、屋敷はそれに加えて警備会社もついてる。
後は………普段通りだとすると、直接監視するのが難しいのは学校だけど、
まさか授業中の学校にこちらから殴り込む訳にもいかないでしょうし………」

実際に対処した呉キリカの後に、織莉子が可能性を潰していった。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:43:30.04 ID:iAJJyARm0<>
「あなた達の考えも分かるけど、
向こうはこちらの手の内を、魔法少女と言うものの事も知ってる。
私があちらの立場なら、遠くからマスターの異常を察知出来る伏兵を仕込む。
いつだって、自分が優位な立場にいると思い込むのは禁物よ」
「じゃあ、引き下がるって言うの? ここまでされて?」

諭すマミに噛み付く華々莉。
ほむらも、決して心から納得した顔つきではない。

「レディリーは言っていた、単純戦闘力ではこちら側が上でも、
戦争になったらあちら側は社会的な力を使う事も出来ると。
そして、その単純戦闘力でも、
こちら側が即座に仕留める事が出来る程の優位ではない」
「そうだね」

マミの言葉にさやかが続いた。

「あたしも妙な奴と戦ったけど、
魔法少女の剣と戦って時間稼ぎが出来る程度には強かった」
「暁美さんはどうだったかしら?」
「私は、変身前に不意を突かれた。
あの救出でギリギリまで魔力を使えなかったし」
「でも、素人ではない」

ほむらの言葉に、織莉子が続く。

「こちらの出方を読んで奇襲が出来る時点で、
スポーツ競技ではない局地戦ではこちらの負け。
あのレベルの相手と「戦争」をするとなると、
魔法少女でもちょっと厄介ね。
時間を稼いでいる間に社会的な力を使う、
と言うのが本当なら尚の事リスクは高い」

織莉子の言葉に、マミが小さく頷いた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/20(月) 02:46:54.50 ID:iAJJyARm0<>
「冗談じゃないっ!」

激したのは、やはり華々莉だった。

「あいつら、ツバキに手を出したんだ。
そして、まともな説明一つ聞いていない、
今後同じ事をしないって保障はどこにもない。
魔法少女って存在そのものに喧嘩売ってるんでしょ?
表の法律が通じない事なら、全部吐かせて八つ裂きにして
他の誰かが二度とこんな事する気にならない様に
見せしめにしてやるのが当たり前なんじゃないのっ!」

「まあー、それがあたしらの筋ってモンだよな」
「………やるならいつでも」

華々莉の言葉に杏子と天乃鈴音が肯定を示した。

==============================

今回はここまでです>>196-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:10:52.40 ID:4JAsB1wn0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>203

「まどか?」

マミルームでの会合中、気が付いたのは美樹さやかだった。

「大丈夫?」
「大丈夫鹿目さん?」
「う、うん、大丈夫」

いつの間にか、青い顔でうつむいていた鹿目まどかに
美樹さやかと巴マミが声を掛け、まどかが返答する。

「やっぱり、決着つけないといけないかしら」

言ったのは暁美ほむらだった。

「あいつらは、まどかと、まどかの家族を人質にした。
そういう手段を選択肢として持っている。
そうであれば、やっぱり元凶を断ち切る必要がある。
レディリーを信用する理由は無い」
「そう、なんだけど………」

ほむらの言葉に、まどかが歯切れ悪く言う。

「いいよ、まどか、言いたい事言っちゃって。
今、ここでまどか怖がらせるって言うんなら、
それはあたしが許さない」

さやかの言葉に、まどかが小さく頷く。

「わたしは………
これ以上、事を荒立てたくないって言うか………」
「カガリ」

美琴椿にふんわり声を掛けられ、
一瞬まどかに噛み付きそうになった日向華々莉がそっぽを向く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:16:21.56 ID:4JAsB1wn0<>
「心配なんだよね。パパやママやタッくんの事」

さやかの言葉に、まどかは小さく頷き、俯いた。

「そう………理屈で言えば、この状況では、
そうであればこそ徹底的に叩いて二度とこんな事がない様に
向こうから納得の行く結果を出させるべきなんだけど、
でも、まどかの言いたい事も分かる」

「ありがとう、ほむらちゃん」
「そうね」

そして、マミが引き取る。

「私は、今は様子見で構わないと思う。
レディリーの側も私達との衝突と言う事ではギリギリの状態で、
どちらかがこれ以上突っ込んだらどっちが勝っても命に係わる大損害。
その現実を理解していると思う」
「だから、これ以上は手出しして来ないと?」

殺気と共に尋ねる華々莉にマミが小さく頷いた。

「単純な武力ではこちら側に分があるかも知れない。
だけど、「戦争」と言う意味の
知略と社会的な総合力を加えると多分、向こうの方が上。

私達が勝つとしたら、レディリー一点を狙って、
殺すつもりで一直線の頂上作戦を仕掛ける。

それぐらいの事をしなければ泥沼の消耗戦になればどんどんまずい事になる。
それでもやる、と言うのなら………」

美国織莉子の分析を前に、意気上がると言う事は無い。

「レディリー=タンクルロード、どんぐらい怖いんだかね」

そう言って、佐倉杏子はパキッ、とチョコ菓子を口でへし折った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:22:02.86 ID:4JAsB1wn0<>
「科学の学園都市の経営者」

マミが答えた。

「飛び級の天才研究者として宇宙工学の分野でも高い評価を受けていながら、
その実践のために投資ファンドを率いて
巨万の富を得てオービット=ポータル社を買収。

科学の学園都市の中でも宇宙開発を中心に
最先端の研究開発を進め、それを利益に繋げて
経営者としても一大勢力を築き上げているマルチな天才少女。

彼女は只のお飾り、下手すると宣伝用のホログラムなんて
都市伝説が出来るのも納得の経歴だけど」

各種情報を集めたほむらがお手上げした。

「少なくとも、物騒な手段を直接実行した、って事は確かだね」

成見亜里紗が口を挟んだ。

「シビル、って言ってた。私の星を見た、って」
「ギリシャ占星術ね、占星術師を名乗っていると言う事」

まどかの言葉に、美国織莉子が反応する。
織莉子自身の能力の関係上、
関心を覚えて占い一般の基礎知識を頭に入れている。

「魔術サイド」

ぼそっと言った美琴椿の言葉に、マミが頷く

「それって? ………」
「私達とは別系統の、
昔からの物語や言い伝えの魔術、魔法とでも言えばいいかしら。
別系統と言っても、魔法の論理構造が全く別、でもないみたいだけど」

亜里紗の疑問にマミが応じた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:28:02.66 ID:4JAsB1wn0<>
「私達にしても、一般には知られていない存在。
だったら、そういうカテゴリーが私達以外にあるのも理論的には頷ける、
そして、存在している。そういう事ね」

織莉子が補足する。

「普通は、私達とは何となく住み分けて別世界の存在。
私達魔法少女としても、ある程度経験を積んだら
なんとなく実在している事が耳に入る程度の存在の筈なんだけど、
どういう訳か、今回は向こうから出て来た」

「魔術サイドが私達に喧嘩売りに来たって事?」
「筋目から言えばそういう事になる」

マミの説明に華々莉が食い付き、マミも肯定する。

「レディリーはマギカと言う言葉を多用していた。
確かに、マギカは私達の正式名称でもあるんだけど、
同時に、だからこそ、自分達との混乱を避けるために
魔術サイドの人間が私達を指す際によく使うとも聞いてる」

直接レディリーと交渉したマミの言葉に、他の面々も耳を傾ける。

「科学に、魔術まで出て来たって」

「あの、あすなろで戦った魔獣はケルベロスにヒュドラ、
その召喚術式も地下室にあった魔法陣も、
ギリシャ占星術のホロスコープやゴエティア系の術式。

レディリーが魔術サイドに関わっているのは確定でいい。
科学も最先端まで行くと、むしろ魔術に交わるものなのかも知れないわね。

古に錬金術から科学の基礎への至った
その道の優秀なシビルだからこそ、応用も効く」

吐き捨てた杏子に織莉子が言った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:34:25.73 ID:4JAsB1wn0<>
「じゃあ、あれも魔術サイド………」

詩音千里が、考え込む形で呟いた。

「ヒュドラ、ケルベロスとの戦いで建物の外に追い出された後、
私達は不審な者に声を掛けてあんな状態になりました」
「どんな相手だったの?」

千里の言葉に、マミが尋ねた。

「それが、全然覚えてないんだわ」

亜里紗が答える。

「私もです。私は気が付いたら瞬時に
あすなろタワーまで吹っ飛ばされていましたから。
最初は敵方の魔法少女かと思って声を掛けたんですけど、
今考えると、あれは魔術サイドなのかも………」

千里が続けた。

「じゃあ、これから、
その魔術サイドと私達がぶつかるって事になるの?」
「もう、完全に衝突して宣戦布告終わってるよ」

さやかの言葉に、華々莉が憮然とした表情で言う。

「ええ、確かにその通り。
それでひとまず休戦、と言う段階になるかどうかね。

只、レディリーの動きが魔術サイドの総意とも思えない。

魔術サイド自体はワルプルギスの時も出没していたし
こちらで全体像まで分かっている訳じゃないけど、
今回の件は魔術サイドの中でも
レディリーの動きが余りにも突出してる」

「うん、確かにあの時そういう人達はいたと思う」

マミの言葉にさやかが続いた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:38:39.79 ID:4JAsB1wn0<>
「そうですね………」

そこで口を開いたのは、美琴椿だった。

「巴さんの言う通り、少しの間様子見をしましょう。
その間に向こうから連絡があればその時。
その間、各勢力間の定時連絡と異変に関する連絡の徹底。
今はこの線で収拾するのがいいと考えますが」
「私は、それでいいと思います」

椿の提案にマミが応じた。

「異議があると言うならここで申し出て下さい。
具体的な反論が無くても構いません。
裏で方針を無視されるのが一番困りますから、
反対すると言うならその意思を示して下さい」

「私は、それでいいよ。
今すぐにでもプレイアデスとレディリーをシメて白状させた方がいい。
私はそう思うけど一人じゃ無理そうだし、
ツバキが………方針がそうなら私も従う」

「ありがとう」

織莉子の言葉に華々莉が言い、椿に声を掛けられて華々莉は下を向く。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:42:31.02 ID:4JAsB1wn0<>
「私も、今回はそれでいい、現実的な提案だと思う。
あなた自身の考えは? 美国織莉子」

「私自身の考えを言うなら、総力戦でレディリーを抑えて
強制的に事のあらましを喋ってもらう。

多くの魔法少女が誘拐された事に対して何一つ真実が見えない以上、
本来であればそれをするべきである、と考えていました。

但し、それをやるにはここにいる実質的な同盟軍の総意が必要。
現実問題としてその合意を得る事が困難である上に、
私達の総力を挙げてもリスクの大きな戦いになる。

やるべきかも知れないけど、それは今じゃない。
今は警戒しつつ経緯を見守る、それが私の結論です」

ほむらの問いに、織莉子が答える。

「私は、織莉子が頷くなら喜んでその戦場に立たせてもらうよ」

「有難うキリカ。この事件ではあなたが攫われた。
それが取り返しのつかない事になっていたら、
私は一人でも彼女達を終わらせていた。
だけど、そうじゃなかったならば、決して無駄には出来ない」

織莉子と目が合ったまどかは、
さやかに一度視線を向けて、そして小さく頷いた。

「じゃあ、方針は決まった、と言う事でいいわね?」
「異議なし」

マミの問いに対して、大きな声ではないが、
少なくとも明示と黙示でその意思は統一されていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:45:56.07 ID:4JAsB1wn0<>
ーーーーーーーー

「なんか、色々大変だったね」

帰り道、さやかが口を開く。

「取り敢えず、落ち着く所に落ち着いたけど、
正直、今だけはちょっと全面戦争やりたくなかったし。
助けてもらってなんとか間に合ったから」
「間に合った?」

さやかの言葉を、ほむらが少し訝しむ。

「コンサートだよね」

まどかが言い、さやかが眩しい笑みと共に頷いた。

「上条恭介、そうだったわね」
「そ、今週末。いやいや、ここまで色々あって、
誘拐されて寝てる間に終わってました、とか言ったら、
多分あたしプレイアデスとレディリーの首取りに行ってるから。
………こんな時に、勝手言ってるよね」
「そうね」

さやかの言葉に、ほむらが応じる。

「魔法少女の命懸けの恋だもの。
それは全てに優先して勝手を通すものじゃないの?」
「真顔で言ってくれるよ」
「ウェヒヒヒ」
「まどかーっ」

苦笑いするまどかに、さやかが抱き着いた。

「うん、まどかが無事で良かった。
恭介の事も大事だけどさ、まどかと家族が人質になったって聞いた時は、
さすがにあたしもキレたからね。
当然、あいつらの事を許した訳じゃない」
「当然ね」

真面目な顔になったさやかに、ほむらも応じる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:49:26.34 ID:4JAsB1wn0<>
「ありがとう、さやかちゃん、ほむらちゃん」
「いつかは、近い内に決着をつける。だけど、それは現実的にやる。
大切な人の命が懸かっているなら尚更、それだけの事よ。
もし、この上何かあれば容赦はしない」
「当然」

ほむらの言葉に、さやかも続いた。

「平和に、終わればいいんだけど」
「優しいなーまどかは。うん、もちろんそれはそうだよ」
「私もそう願ってる」

ーーーーーーーー

「美樹さやか」
「ん?」

まどかを自宅まで送ってから、
ほむらはさやかに声を掛けていた。

「付き合い長いのね」
「まあね、まどかがこっちに転校して来て以来だから」
「そう」

「あー、妬いちゃったかなー転校生?」
「目と目で通じ合う、志筑仁美の言葉を思い出しただけよ」
「そうだよー、あたしは不思議ちゃんだよー」

ふふっと笑ったほむらを、さやかはストレートに魅力的だと思った。
なんとなく、分かる。ほむらはまどかを大事にしている。
だからこその空回り、まどかのため、
と思っても慮れなかった部分が不甲斐なかった、と言うほむらの気持ちも。
互いに自分に無いものを持っている。そして、まどかを大事に思っている。
だから、少なくとも今のこの局面で余り自信を失くして欲しくはない。

「とにかく、昨日からあれやこれやで正直眠いわ。
魔獣狩りのペース取り戻すまで、一休みするよ」
「同感ね。じゃあ、くれぐれも用心して」
「お互いにね」
「無事、愛しい人のコンサートを鑑賞できる様に」

にっこり笑ったさやかを、ほむらはストレートに魅力的だと思った。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/22(水) 03:52:33.04 ID:4JAsB1wn0<>
 ×     ×

その夜、ホオズキ市内の新聞販売店二階の部屋で、
天乃鈴音はスマホを操作していた。
床に腹ばいになり、イヤホンを差してネット動画を視聴する。

「………続きまして………ヴァイオリン、上条恭介………」

配信されているのはコンサート中継。
まだプロと言うには駆け出しだから宣伝優先の無料配信。
辛うじて時を共に出来る、と言う程度の動画配信。
直接見に行きたいのはやまやまでも、
販売店住まいの勤労少女には敷居が高い。

案内が終わり、旋律が、そして歌声が鈴音の心に染み渡る。
コンサートの主役は、新進の女性シンガーだった。
彼女はまだ十代、つい最近まで全くの個人活動と言って良かったが、
ネットでの好評の後押しもあって、路上からメジャーに一歩踏み出した。

今日のコンサートは、軽音楽からクラシック、和風まで、
そんな彼女と若干の段階を経て集められた各分野のジュニア世代が
コラボレーションすると言うやや色物的にも見えるコンサートだったが、
その企画に誘われた皆々には、色物臭を吹き飛ばすだけの真摯さと力があった。

普段は、自分でキーボードの弾き語りで歌っている曲だが、
今日はオルガン、そしてヴァイオリンの演奏と共に
しっとりと、そして伸び伸びと歌っている。

クラシック出身の演奏二人の正装に対して、
下品にならない程度のカジュアルさも
歌と共に彼女らしさ、と言えるものだった。

==============================

今回はここまでです>>204-1000
続きは折を見て。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/22(水) 09:15:34.96 ID:7vEPLo8PO<> まだやってんのかよこれ
まどマギキャラを踏み台にする糞クロスSS消えろ <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 02:51:29.84 ID:X6/HCBTI0<> まずは訂正です。

×レディリー=タンクルロード
○レディリー=タングルロード

このスレに入ってから、
いつの間にか間違えていましたすいません。

それでは今回の投下、入ります。

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>>213

ーーーーーーーー

「恭介っ!」

コンサート会場となったホールのエントランスで、
上条恭介は馴染み深い声を聞いた。

「さやか」
「うん」

満面の笑みで自分を迎える幼馴染の女の子。
そんな愛しい相手に、恭介も優しい笑みを以て応じる。

「上条君」
「志筑さん、みんな、来てくれてありがとう」

そのさやかの側から恭介に熱い眼差しを注ぐ
深い知り合いのお嬢様と言葉を交わし、
恭介は改めて奏者としての礼を示す。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 02:56:33.10 ID:X6/HCBTI0<>
「こちらこそ、素晴らしい演奏を有難う」
「ウェヒヒヒ」

丁重に一礼したのは、割と最近恭介のクラスメイトになった
長い黒髪が印象的な転校生暁美ほむら。
そして、その側で屈託なく微笑むのは、
こちらはほむらと仲が良く、小学生時分から
さやかを通じて恭介の友人でもある鹿目まどか。

「やっぱり、恭介だよね。
なんて言うか、感動しちゃった」

元々、花より団子を地で行くタイプのさやかは、
クラシックに詳しいとは言えない。
それでも、恭介のヴァイオリンが好き、と、
今ではてらいなく言ってくれるし、恭介もそれを心から嬉しく思う。

「素晴らしい演奏でした。クラシックではないもので、
少し心配しておりましたが杞憂でしたわね」
「そうだね。歌も素晴らしかったし、
その土俵で精一杯、満足出来る演奏だったと思う」
「堪能させてもらったわ」

クラシックに嗜みのある仁美と恭介が言葉を交わし、
そこにほむらも一言加わる。
恋人の友達の友達と言うのか、
クラスメイトなのは別にしても全くの他人ではない、
と言うのが恭介から見たほむらなのだが、
こうして見ると落ち着いた、少し大人びた美少女と言う事になる。
男として食指が動く訳ではないが、それは素直な感覚だった。

「それじゃあ、僕はこれで」
「うん、お疲れ様」

さやかがにへらっと笑い、恭介とこん、と拳を合わせる。
仁美とも同じ仕草をして立ち去る恭介。
エントランスで幸せ馬鹿全開な二人の乙女を、
ほむらとまどかは生暖かく見守っていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 03:07:52.83 ID:X6/HCBTI0<>
ーーーーーーーー

「やあ、上条君」
「どうも」

ホール通路で恭介が落ち合ったのは、
今回のコンサートのプロデューサーだった。
二人は、そのまま近くの練習室の一つに移動する。

「恭介君」
「アリサさん」

少し遅れて部屋に現れたのは、
今回のコンサートのメインシンガー、鳴護アリサだった。

「今日はありがとう、素晴らしい演奏だった」
「こちらこそ、あの歌と演奏出来て光栄です」

アリサは屈託のない笑みで恭介を賞賛し、
そのまま、舞台を共にした者同士両手で握手する。

恭介から見たアリサは、例え駆け出しでも、自分とさほど歳が変わらなくても、
自分の音楽で自分の道を切り開き始めた力強い音楽家であり、年上の女性。
恭介の感覚では、そんなアリサは一歩も二歩も前を行く眩しい存在であり、
そして自分がまだまだ子どもだと自覚させられる。

そんな恭介が縁あってコンサートに選抜されて出会った後、
アリサはその天真爛漫さと音楽への真摯さを以て、
こうやって恭介の側に屈託なく飛び込み、
恭介もそのペースに気持ちよく乗せられていた。

「それで、私と、恭介君も呼ばれたのは?」

アリサがプロデューサーに確認する。
後で施設育ちの癖だとも聞いた、
敬服するプロシンガーであり魅力的な年上の少女から
出会って早々の頃からこうやって呼ばれた事に、
恭介も初めの頃は些かこそばゆく感じたものの、それもすぐに慣れた。
アリサはそういう少女だった。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 03:13:58.99 ID:X6/HCBTI0<>
ーーーーーーーー

「用があるのは私」

練習室のドアが開き、新たな入場者がそう発言する。
その様子を見て、恭介は首を傾げていた。

入って来たのは一組の紳士淑女。
そして、その真ん中に一人の女の子。

彼女の服装は暗い紅を基調としたゴシックロリータとでも言うのか、
しかし、それはコスプレと言った下品さがなく、
クラシックコンサートでも大きな違和感のないものだった。

「レディリー!」

その姿を見て、アリサが声を上げる。
その間にも、三人組はツカツカと恭介に近づき、
女の子が真正面から恭介を見上げる。
整った顔立ちと服装も相まって、何かお人形さんに見上げられている様な、
恭介はそんなホラー染みた感覚を覚えていた。

「ブラボー」

それが、恭介に向けられた第一声だった。
可愛らしさを秘めた、澄んだ声だった。

「素晴らしい演奏だったわ、ジャンルの違いもそうだけど、
強いて争う事なく、混然一体となって「奇蹟の歌」を引き立てた」
「有難う」

すっ、と、手を差し出され、
子ども向けの笑みを作りながら恭介はレディリーの手を取る。
だが、内心では息を飲んでいた。
アリサの歌は、今の自分には捉まえ切れない。
じゃあどうするか? 自分の出した今の答えを的確に読まれた気がした。
レディリーの目配せを受け、紳士が恭介に名刺を差し出す。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 03:19:10.12 ID:X6/HCBTI0<>
「レディリー=タングルロード?
オービット=ポータル代表………」
「えーと、恭介君」

アリサが、少々言い難そうに口を挟む。

「真面目に聞いてね」
「はい」

恭介はきょとんとする。確かにアリサは朗らかな少女だが、
今は恭介から見て年上、格上の音楽仲間に他ならない。
真面目な場面では真面目な話なのは当然だ。

「この子、こちらはレディリー=タングルロード。
科学の学園都市の住人で、いわゆる天才少女。
飛び級で大学院まで出て宇宙工学と経営学をマスター、
オービット=ポータルを初めとした
宇宙開発に関わる巨大な企業グループを経営している大企業家。
科学の学園都市の私の支援者の一人でもあるの」

恭介は、きょとんとして聞いていた。
取り敢えず、アリサが科学の学園都市の出身である事は知っているし、
科学の学園都市と言う最先端科学開発都市の事もなんとなくは知っている。
それにしても、目の前の光景と恭介の常識は、
リンクするには些か乖離の度が過ぎていた。

「だから、冗談じゃないからね」

可愛らしい声だが、アリサが真面目に話していると言う事は理解出来る。

「えーと、今の話って」
「全部、本当の事だよ上条君」

プロデューサーの言葉に、ようやく恭介の現実感が追い付いて来た。

「もういいわ」

レディリーの言葉と共にプロデューサーが一礼して辞去した事で、
恭介の感覚は現実に急接近する。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 03:23:18.46 ID:X6/HCBTI0<>
「上条恭介君」
「はい」
「楽にしていいわ、この私に物理的に
どういう姿勢で対していいのか分からないでしょうし」

正に、図星だった。

「あなた達をここに呼んだのは私。
あなたをスカウトするためにね」
「僕を、ですか?」

返事の代わりに、淑女が恭介にパンフレットを差し出した。

「エンデュミオン?」
「オービット=ポータルが建造した宇宙エレベーターよ。
その落成式典で演奏をしてもらいたい、鳴護アリサと一緒にね」
「………」

言葉を失っているのは、恭介もアリサも同じだった。

「知っての通り、今回の形式のアリサのコンサートは
全国で何度か行って来たけど、
コンサート企画自体が大幅にこちらの資本とプロデュースによるもの。
式典のためのスカウトの意味合いもあったって訳。
そして、上条君はその眼鏡にかなった。
私だけじゃない、プロの意見も十分に反映されている」

「光栄です」

真面目に、と、念を押され続けていた恭介は、
無理矢理にでも現状をロジックで理解して最適解を口にする。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/25(土) 03:28:19.96 ID:X6/HCBTI0<>
「コンサートの核は鳴護アリサ、それはとっくに決まって準備も進めて来た。
だけど、その中であなたの様な演奏者が欲しい、だからスカウトしている。
ご理解いただけたかしら?」
「はい。光栄だと思います」

「まあいいわ、今すぐ信用しろって言ってもそれは無理よね。
明日からでも、あなたが信用出来る形で人を立てて交渉させてもらう。
只、今はあの演奏を聴いた私の思いを受け取って欲しい」
「はい、重ね重ねですが、光栄です、有難うございます」

取り敢えず、レディリーにもリアリティの埋め合わせをするつもりがある、
と言う事も理解して、恭介は丁重に一礼した。

「良かった」

アリサが言葉を挟む。

「私も今聞いて、本当に驚いた。
でも、又恭介君と、あの舞台で弾けるんだったら嬉しい」
「僕もです。僕も、アリサさんの歌で演奏するの、楽しかったですから」
「有難うっ!」

アリサが屈託のない笑みと共に両手を差し出し、手に手を取り合う。

「私が言う迄も無いと思うけど、これだから、
楽しい、だけじゃ済まないのは覚悟しておいてね」
「「はいっ」」

パンフレットを掲げたレディリーに、二人の音楽家の卵が力強く返答した。

==============================

今回はここまでです>>215-1000
続きは折を見て。 <> 全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様<>二次元美少女達は金髪王子様の須賀京太郎様の嫁<>2017/03/25(土) 06:18:22.02 ID:0sbE9dhi0<> 長編乙安価スレだったらチョンのQB来世基地外(`艸´;)チョンバナナマンズラ <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:15:54.58 ID:34/MwJ0P0<> それでは今回の投下、入ります。

==============================

>>221

ーーーーーーーー

「失礼します」

又、練習室のドアが開き、恭介は聞き覚えがある声だ、と首を傾げる。

「………ハルカさん?」
「アウラちゃんっ?」

入場者を見て、恭介とアリサは口口に声を上げた。
そこに現れたのは、
奏遥香とシャットアウラ=セクウェンツィアの二人だった。

「今晩は、上条君。聞かせてもらったわよ。
上条君に、鳴護アリサさん。素晴らしい音楽を有難う」
「有難うございます」

遥香と恭介、アリサが握手を交わす。
大人びた長身の美少女に、
ライトブルーのドレスがよく似合っていた。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:22:17.50 ID:34/MwJ0P0<>
「シャットアウラ=セクウェンツィア、私の姉さん」
「シャットアウラ=セクウェンツィアです」

アリサの紹介に、シャットアウラがぼそっと言って一礼する。

「お姉さんも音楽を?」
「うん。洋楽なら今でも私より上」
「元々、シャットアウラは私の身近で働いている。
奏ハルカの事はこちらの情報ルートで知って、
彼女が演奏すると言う所に人を派遣して、
見極めとスカウトをやらせた次第よ」

その間に、遥香とシャットアウラは僅かに目と目で通じる。
遥香が、練習室のピアノ椅子に着席し、とんとんと鍵盤を鳴らす。
シャットアウラが、その側に直立する。

「Attention please」

ドレミファソラシドの後の遥香の一声に、アリサは少しぎょっとしたが、
恭介の表情を見て「舞台」の二人に視線を向ける。
ここで遥香が弾くのは、やはりジャズ・スタンダード。
恭介は頬を紅潮させ、ほうっと息を吐く。

今の状態で、音楽に関してアリサは身贔屓で物は言わないだろう、
とは恭介も思っていたが、
今流暢な原語で歌っているシャットアウラの水準は間違いなく高い。

そして、遥香のピアノ演奏と溶け合いながら高め合う。
恭介としては本来畑違いなのだが、
今、自分がいいものを聞かせてもらっている、その事は十分理解出来る。

今は、かつてSFアニメEDにも使われた
太陽系なラブソングに暫し聞き惚れる。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:27:47.01 ID:34/MwJ0P0<>
ーーーーーーーー

パチパチと響く拍手の中、奏遥香とシャットアウラが一礼した。

「素晴らしかったです」
「有難う」

近付いた恭介は、まず、顔見知りの遥香と言葉を交わす。

「シャットアウラさんの歌も、素晴らしかったです」
「ああ、有難う」

シャットアウラの雰囲気はやや儀礼的ではあったが、
それでも、握手は拒まれなかった。

「アウラちゃん、良かったよ」
「ああ。まあ、なかなかアリサみたいな訳にはいかないが」
「ううん」
「アリサさんのお姉さん?」

恭介が聞くともなしに口を挟む。

「うん、二卵性双生児なの。
色々事情があって小さい頃は全然別々に育って、
一緒になったのは割と最近だから」

恭介もアリサが施設で育ったと言う事は聞いた事がある。
根本的にフルネームが丸ごと違う点も含め、
余り立ち入るべきではない、と言う事は理解出来た。

「本当はベースも上手なんだけど………」
「流石に、金を取るだけの準備は出来ないよアリサ」

シャットアウラは不愛想、ぶっきらぼうな所はあるが、悪い人ではない。
天真爛漫なアリサとは好対照であり、
それで姉妹仲は良好らしいと恭介にも察せられる。
そう見ると、ますます親しい友人の友人でもある
身近なクラスメイトを思い出したりもする。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:33:07.28 ID:34/MwJ0P0<>
「上条君」
「ああ、ハルカさん。さっきの演奏、良かったです」

「うん、有難う。上条君と鳴護アリサのコンサートも素晴らしかったわ。
出来る事なら、私も一度、彼女とも合わせてみたいものね」
「僕も、聞いてみたいです」
「有難う。別々のパートになりそうだけど、
エンデュミオンでのコンサートも期待してる」

「ハルカさんも、あの歌とハルカさんのピアノ、楽しみです」
「有難う。頑張りましょう、お互いに」
「はい」

遥香が手を伸ばし、恭介がその手を握る。
そして、遥香が左手を出して、手に手を取っていた
恭介の胸を直撃して余りある眩い笑顔と共に。













これは












<> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:38:48.39 ID:34/MwJ0P0<>




少し強気な







普通の少女










奏遥香の









物語








<> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:42:09.84 ID:34/MwJ0P0<>
 ×     ×

オービット=ポータル社のトップルームで、
レディリー=タングルロードは
PCのデスクとホロスコープを行き来していた。
部屋は展望仕様であり、その設備は天文台にも等しい。

「エンデュミオンにはセレネの竪琴を授けましょう」

ホロスコープの上にはいくつものカード、写真入りカード。

「何もない、相変わらず曇り一つない」

ホロスコープを見ていたレディリーが結論を言った。

「それでも、法則の変わる場所で、
少しでもそれに近い者達が奏でる竪琴が奇蹟の歌と出会うとしたら?」

言いながら、レディリーはカードを移動する。

「あれは、何だったのか?
本来の配置を行う事はヴァルハラの門を開く、とでも言うのか?」

同じ位置に並べ替えたカードを、少しの間注意深く観察する。

「だが、やはり、何もない。何の問題も無い。
光り輝く幸せに満ち足りた世界が続くばかり。
科学にせよ魔術にせよ、現実的に大きなリスクは丸で見えない。
そして、マギカも、私達自身が及ぼしたリスク以外は。
そして、それすら容易に修復されている模様」

レディリーが、ぐしゃぐしゃとカードをかき回す。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:45:45.11 ID:34/MwJ0P0<>
「では、何を感じた? 只の自意識過剰?
じゃあ、あのヴァルハラは何だと言うのだ?
私ほどの魔術、そして、あの高度な性能のマギカにすら、
形あるものは片鱗すら掴ませない。
それ程に高度な隠蔽が存在する、とでも言うのか?
それが出来るとするなら、
魔術、マギカすら……いや………」

レディリーは、ホロスコープから顔を上げた。

「だとすると、そんなものが私達に察知出来るものか、
例え違和感の欠片であってもだ。
もし、だとするならば、
そうなる程に不安定な何かが起きているとでも言うのか………」

少しの間考え込むレディリーだったが、
程なく、にいっと口角を上げていた。

「まあいい、あなた達の大好物を携えて、
これより天上に使わそう。
わざわざこれを、これ程に優れた星の流れを壊そうと言う程、
Mな趣味は持ち合わせていない。
では何なのか、不安の源を見せてもらおう」

ホロスコープの中央に、一対の写真が並べられた。

「それはマギカの素質でもあるのかしらね?
その輝きは、丸でアポロンの加護。
そして、一対の、丸でアルテミスの様に」 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:49:09.69 ID:34/MwJ0P0<>
ーーーーーーーー

いで………

ないで………

かないで………

「まどかっ!!!!!」

暁美ほむらは、叫びと共に跳ね起きた。

「何?」

真っ暗な部屋、一人暮らしのいつものベッド。
寝起きでぐちゃぐちゃの頭の中で現実のピースをはめ直す。
そして、自分の両方の頬がつーっと濡れている事に気づく。

「嫌な夢でも、見たのかしら?」

ほむらは一人ごちるが、それでも、覚えてもいない悪夢の後遺症なのか、
僅かに呼吸が弾んでほろほろと涙が溢れ、寝汗も気持ち悪い。

ぐいっとパジャマの腕で顔を拭うと、
一人暮らしの気楽さでそのままシャワールームに直行して
全身まとめて諸々洗い流す。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:52:45.97 ID:34/MwJ0P0<>
一息ついて、温かなベッドに入る。
ほむらは改めて考える。嫌な夢でも見たのだろうか。
あんな誘拐事件があり、そして、ごたごたと危うい事があれば、
悪夢の一つを見ても仕方がない。

レディリーは、まどかを家族ごと人質にした、
その事に就いて、未だ何の保証もされていない。
只、何も起きない状態が続いているだけ。

美樹さやかの大事なコンサートも終わった、
そろそろ抜本的な事を考える時期だろう。

「何だったんだろう?」

ほむらは、ふと思い出す。
旧あすなろ工業団地での救出作戦の一幕。
何者かの襲撃の結果、詩音千里と成見亜里紗が危険な状態となり、
そんな中で、まどかが、

「………」

ほむらはガバッと布団を被り、
脚の動きに合わせてバタバタと掛け布団が跳ね上がる。

「まどか」

すっ、と、布団から目だけを出したほむらが口に出す。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:56:05.59 ID:34/MwJ0P0<>
「まどか、美樹さやか、マミ先輩、佐倉杏子………」

みんな、大事な友達であり仲間。
時には共に死地を潜り、背中を任せ、
楽しい日常を共にする大切なみんな。
それを壊そうと言うのなら、
決して譲らない。それは今のほむらにとって余りにも当たり前の事。

「まどか、の、家族………」

お邪魔した事があるが、温かな家族だった。
それを、仲間の友達の家族を魔法少女の抗争に巻き込むと言うのであれば、
仲間として友達として、全力で守り抜く。
それは当然の事、と、ほむらは心の内で確認する。

そして、ほむら自身の事も
そろそろ両親の準備も整う、また、家族一緒の生活になる。
まだまだ人恋しい年頃にそれは嬉しい事ではあるが、
では、魔法少女の方はどうするか?

まあ、過去には何とかして来た訳だからどうにかなるが、
気楽な一人住まいにも慣れた手前、考えなければいけない。

そうだ、全ては上手くいく。
レディリーの事も、不安ではあるが実際はそうでもないかも知れない。

実際に、魔法少女、自分の知っているグループだけでも、
この勢力をこれ以上怒らせる程レディリーは馬鹿ではない。
単純な理屈だが説得力はある。

もう少し、気楽に考えてみよう。
暁美ほむらは、輝く明日に向けて呼吸を整える。
静かな寝息を立て始め、もう、悪夢は見なかった。

ほむら「幸せに満ち足りた、世界」

第二部―了―

第三部に続く <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>saga<>2017/03/26(日) 01:59:45.13 ID:34/MwJ0P0<> ==============================

後書き

ここまでお読みいただいた読者様に御礼申し上げます。

この進行具合は言い訳の種も尽きた状態で、
只、申し訳ありません。

せめて昨年末に第二部だけでも、
と思いつつ個人的に力尽きました。

最初から三部構成の予定で現状変えるつもりもないのですが、
この手の予定を言って当たった試しがない、と言うのも
私の場合実際ですのでその辺りは。

今回はここまでです>>223-1000
続きは折を見て。 <> 幸福咲乱
◆5sHeUtvTRc<>sage<>2017/04/24(月) 12:59:06.20 ID:mFj0ahpg0<> 生存報告です <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage<>2017/05/20(土) 01:49:36.94 ID:4xW2/Nn80<> 生存報告です <> 幸福咲乱 ◆5sHeUtvTRc<>sage saga<>2017/06/05(月) 22:44:13.53 ID:DRD62RRt0<> 第三部開始に就き
次スレに移行します。

ほむら「幸せに満ち足りた、世界」3(まど☆マギ×禁書)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496667140/

それではHTML依頼行って来ます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2017/07/12(水) 17:12:46.39 ID:U+4dJS0M0<> あ <>