◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:46:45.12 ID:/qsdMp9Co<>提督「私の部隊が映画化……ですか?」

耳を疑うかのような内容
普段は理知的である彼でさえ唖然とした表情を隠すことができなかった。

「至急出頭せよ」
という電報
なにが起きたかと慌てふためき
現状の作戦をも放り出して馳せ参じたところの斜め上な命令
まさに青天の霹靂
当初訪れたのは驚き。次発は呆れそして最後尾は怒りである

上役A「戦意高翌揚と軍のイメージアップ戦略だ」

上役B「見目麗しい君の部隊こそが相応しい! と映画会社から打診があってな」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1498391204
<>ドキュメンタリー映画 艦娘部隊
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:47:21.41 ID:/qsdMp9Co<> もっともその怒りは面に表示されることはない
せいぜいが僅かばかりの抗弁

提督「現在戦線は厳しく、協力する余力があるかどうか…」

上役C「君 勘違いをしてはならないこれは提案ではない。決定事項だよ」

提督「…はっ」

無論、歯牙にもかからないのは理解している

上役A「では合意も取れたところで概要を説明しよう」

提督「宜しく…お願いいたします」


撮影期間:2か月弱
実物の艦娘が参加&軍の全面協力が謳い文句
制作総指揮・監督・演出は数々の大作を作ったプロが行うので従うこと
スタッフを危険な地域に侵入させないこと
撮影中の被害などについて全責任は提督が負うこと 等等 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:48:19.42 ID:/qsdMp9Co<> 上役A「この映画化については軍の予算30億ほどを投資している」

上役B「続編映画・書籍化・TVドラマ化・聖地化とあらゆるプロジェクトも並行して計画済みだ」

上役C「ふはははは 抜かりのないこと」

上役B「いえいえ これもA様のご尽力があってこそ」

上役A「なにを言いますか この企画が出来たのもC様のご人脈が」

上役C「3か月後の公開が楽しみだ」

上役B「まぁ100万人は動員したいですな」

上役C「馬鹿を言うな。それは通過点だよ君」

妄想という名の計画と書面には残らない命令
それを聞きながら絶望的な顔で提督は呟く <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:49:11.69 ID:/qsdMp9Co<> 提督「そ、そんな公開時期近いんですか」

上役A「4か月後に大規模な徴兵が予定されているのでな 時期は厳守」

上役B「遅れたりしたら…どうなるか」

上役C「すべては君の責任 わかっているな?」

提督「はっ ははぁー」

上役A「では監督とスタッフを連れて直ちに戦線へと戻りたまえ」

提督「かしこましました」

彼が深々と頭を下げたのは形ばかりの敬意の表れか
表情筋の暴走を見せないためか
誰も知るものはなかった <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:49:39.98 ID:/qsdMp9Co<> ・・・・・・・・・・・・・・・

提督「ってわけでこの人たちを連れて帰ってきたんだけど」

大淀「……」

大淀「とりあえずそのあの 言いたいことはいろいろありますが…」

大淀「今までの回想だったんですか」

提督「ああ」

大淀「モノローグ風のって提督?」

提督「ああ」

大淀「戦線ヤバイんですけど映画…撮るんですか」

提督「ああ」

大淀「嫌な予感しかしないんですが」

提督「ああ」

大淀は頭を抱えた
提督も頭を抱えた <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:50:24.60 ID:/qsdMp9Co<>
そんな重い空気…を一人の人物が破壊する

監督「そろそろ喋ってもいいかね?」

監督「えー宜しくお願いする 気軽に監督と呼んでくれ」

監督「今回は君たち艦娘部隊という数百人の人生を2時間の映画にまとめるにあたり題材は限定せねばならない」

監督「一部の人物のみにスポットライトを当てることとなるが許してほしい」

監督「決して残りをその他大勢と認識しているわけではない」

監督「そこの君も今回は出番がないが存在を軽視しているわけではないことは承知してくれ」

大淀「…あっはい」

監督「基本線としては赤城加賀と瑞鶴翔鶴の4人を中心としてリアル感の高い なおかつ興行をも意識した作品としたい」

監督「とりあえず4人を呼んでくれるかな?」

提督「なんだ まともそうな人だな」ヒソヒソ

大淀「そうですね」ヒソヒソ <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:50:50.90 ID:/qsdMp9Co<> 招集により執務室を訪れた4人を加え、監督の説明は続く

監督「撮影プランはなんぼでもある」

監督「私はかちかち山の泥船ではなく大船を用意してきた」

監督「初心者の皆様は不安なことと思うがやすんじて私の船に乗ってもらいたい!」


話を聞きながら提督は安堵していた
『映画化』

この押し付けられた反発と怒号の源
それをこの監督が溶かしていくのが分かったからだ

その証拠に当初硬直していた4人もだんだんと監督の言葉に耳を貸していくのが理解できる
さすがは長年の経験の持ち主
やはりプロは違うねプロは。重要なのは練度だよ

赤城「演技とかは専門外で…」
監督「アイドルや読者モデルなど 数多くの素人を被写体にした経験がある。要は演出とカット割り」

加賀「……あらましはわかりました」
加賀「ただ私たち4人が2か月もの間撮影に専念…戦力的に問題が生じるのでは?」

監督「この提督君の要望でそのことについては承っている」
監督「瑞鶴翔鶴君の2人はこれまで通り出撃してもらい、2人の役については他の艦娘から演じる子をオーデションする」

監督「本人がいるのに突飛なことと聞こえるかい?」
監督「映画エドウッドでエドウッドは本人か? ジョブズは本人か? 映画とは虚像。必ずしも本人である必要はない」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/25(日) 20:51:27.55 ID:/qsdMp9Co<> その安堵の通り
重厚な説明が30分も続けられると
瑞鶴「あーあ 私も出たかったなー ちえー」

と、当初は安堵の表情で出演を免除された2人のほうが悔しがるありさまだった

赤城「よし 誇りにかけて」
加賀「気分が高翌揚してきました」

提督「いやぁ大変素晴らしいお話でした 私も加賀と同じく気分が高まってきましたよ」

監督「光栄ですな」

提督「ぜひ監督の作品を拝見したいもので。さっそく買い求めますので作品名をご教授いただければ」

監督「代表作としてはテラファーマーズやエビルマン、イベリコ超特級などがございますな」

提督「ほほぉ 取り寄せて拝見させていただきます」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/06/25(日) 20:55:04.50 ID:fTrQsXLaO<> あっ(察し) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/06/25(日) 21:05:27.09 ID:L/G4nTHyO<> この世界では名作かもしれねーし() <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/06/25(日) 22:01:26.42 ID:7vaOLPdr0<> ワロタwwwwwwwwwwwwwwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/06/26(月) 22:06:12.26 ID:H2Cg/LxW0<> TOKIO主演
テラファーマーズとか名作そう <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/27(火) 00:05:04.09 ID:ugzvLyoro<> 翌日からセット作り。それに並行してオーディションや脚本作りが開始された


秋雲「えーと あーもー秋雲さんは同人作家だけど絵師寄りの人なんだよー 脚本とか無理だよー」

監督「今回は艦娘自身が演じ、作り上げた作品! というのが売りだ。頑張ってほしい」

青葉「よーし がんばりますよー」

監督「役者として使ってよい。主戦力ではない艦娘の一覧は作成できたかね?」

提督「はい この通りです」

監督「ここからオーディションをする」

監督「夕張に明石君…だったかな? 戦場シーンと夕焼けシーンの特撮の完成度は」

夕張「難しいなぁ〜 やっぱり機械とは違います」

明石「うーん。絵心のある人がほしいですねー 秋雲ちゃん以外にいましたっけー」

提督「セットも私たちが作るのですか?」

監督「無論 艦娘自身が演じ、作り上げた作品! というのが売りですからな」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/27(火) 00:05:29.75 ID:ugzvLyoro<>
「1番 瑞鳳 瑞鶴さんの演技やります!!」

提督「おおっー 意外に上手い!」
提督「こんな特技があったとはねぇ 艦載機動かせ体型も近いしこれで決まりですかね」

「2番 那珂ちゃんでーす!」

監督「ほうほう所属事務所が…」

「3番 武蔵 演習専で暇なので瑞鶴役を」

提督・監督「現実を見ろ」
  <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/27(火) 00:06:16.23 ID:ugzvLyoro<> 監督「今回のテーマは 愛・夢・友情」 
監督「軍人でありながら等身大の恋する乙女たちが巻き起こす感動 これを今作の主軸としようと思っています」

提督「愛? 恋? 
   あのー? 全員女の子なんですが」

監督「整備士とかコックとか男いるでしょ」

提督「……いや私が鎮守府唯一の男でして。そういうのは妖精さんが」

監督「妖精ってなに?」

提督「え?」

監督「うーん、あんたみたいな50代オッサンしか男いないのか それはそれでVシネ的な縄と鞭」

監督「って駄目だ資本は軍だった。じゃイケメン連れてくるからソレ提督役で」

提督「提督は最低でも45歳以上ではないと就任できません。」

監督「あー 誤認防止。軍規は順守が契約要件か……じゃ翔鶴は女装美少年だったって設定で演じさせよう」

提督「えっ」

監督「双子同士禁断の愛と横恋慕する一航戦サイド 悪くないね」

監督「艦娘は女に限るという軍規はない胸のないイケメンいたろあの子で決まり!」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/27(火) 00:06:43.40 ID:ugzvLyoro<> 夕張「提督ー やっぱり無理ー 私たち背景とか描けませんよー」

明石「空母に夜戦させるようなもんです!」

提督「だよなー」

提督「さすがにセットとかそういうのはプロに外注するよ」



提督「と、いうわけで見積もりだしたら2億もあればすごいのが作れそうなんですよ」

監督「金?ないよ?」

提督「…は?」

提督「製作費は…30億と聞いておりますが」

監督「確かに軍からは30億くらい出ているんだろうね」
監督「そして受注した業者がまた20億で発注してそれを受けた業者がまた発注して」
監督「製作費なんて4億くらい 旅費も滞在費もかかるのに半分もセットに回せるか」

提督「ちょちょちょ それ おかしい 上役に 確認を」
監督「その上役のポッケに入ってる分もあるってことよ さぁさぁ手作りできるもんは手作り! なんのための工兵だ!」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/27(火) 00:07:15.43 ID:ugzvLyoro<> 撮影準備開始3日ほど経過すると
提督の頭の中は希望ではなく不安と疑念が渦巻くようになった
その時である
KONOZAMAの段ボール箱が届いたのは


青葉「通販! DVD! ほほぉ司令官もやっぱり男ですね!」

青葉「いやいや、伊達にハゲてないです その枯れた無害感の陰に隠された野獣」

青葉「青葉見ちゃい…って口封じに調教されちゃいますか? 縄はいいけど鞭はいやん」

提督「アホなこと言ってんなよ ほらあの監督の作品全てを取り寄せたんだよ一緒に見るか?」

青葉「ほほぉ どれどれ〜」

青葉「……あっ」(察し)

提督「? 見たことある映画だったか? 自分はこういったものは無知でなぁ」

青葉「夕張さんと秋雲さんを呼んできませう」

提督「詳しそうなメンツだな」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/27(火) 00:07:41.99 ID:ugzvLyoro<> そして20分後
「あの監督だったのか」「顔までは知らなかったです」「DVD割っていい〜」「三池」
との呟きを交えながら開かれた臨時会議(参加者3人)

その場で提督は本土に電話をし…
「動き出した企画は止められない」とのご回答こと軍命を頂戴し

せめてもの情け
役者連中には黙っておくことを決めました。

演技に集中させるため
被害を受けるのは……少しでも…遅いほうが…いい

秋雲「うーん、この進撃の巨人後編見に行く直前の気分」

夕張「ハードオフのジャンク棚を漁る気分」

青葉「露店の紐くじを引く気分」

提督「言うな!」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/29(木) 00:34:29.90 ID:6YA0UK47o<> 〜翌日〜

監督「シーン1 アクション!」

撮影が開始されました

監督「まず悲しいBGMが流れて主人公が走り出すシーン!」

監督「表現はオーバーに! 泣け 叫べ」

監督「うーん違うんだよねぇ 会話シーンは向かい合ってじゃない背中合わせになって喋るんだよ」

赤城・加賀「はい!」

熱の入った演技指導とそれを吸収する2人
素晴らしい撮影現場…でした。最初の30分は

監督「じゃ次 瑞鶴役那珂ちゃんが加賀さんに反目するシーン!」

加賀「えっ?」

加賀「五航戦役はこの子なのですか?」

赤城「うーん イメージとすこし違うような… もうちょっとツンケンしている部分が」

加賀「ですが監督が選んだ結果です 仕方ありませんか」

赤城「多少の誤差は… まぁ」

監督「そして瑞鶴を翔鶴が宥める」

「翔鶴役の…嵐…だ  あの なんで俺 学ランなんだよ」

加賀・赤城「いやこれはおかしい」

けっこうすぐバレたね <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/29(木) 00:36:15.43 ID:6YA0UK47o<> ざ わ ざ わ

にわかに騒がしくなってくる撮影現場

誰もが感じはじめた 「何かがおかしい」という感情
しかし素人ゆえの悲しさ
どこがおかしいのか誰も具体的には言えず撮影は続く


嵐「見られっちまったからには仕方ねぇな」

嵐「俺……じゃなくて翔鶴は実は男の子だったんだ!!」

加賀「なにぃ!!」

赤城「い、イケメン」

加賀「お、お姉さんとちょっと…イケナイ…こと…なんですかこの台本は」

那珂「セリフは守らなきゃダメだよ〜」

加賀「くぅ…」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/29(木) 00:37:03.37 ID:6YA0UK47o<> 那珂「翔鶴お兄ちゃんから離れてこの泥棒猫!!!」

加賀「所詮あなたは妹 この方と結ばれることはない」

那珂「ああ、お兄ちゃん なんであなたはお兄ちゃんなの!?」

赤城「那珂ちゃん…じゃなかった瑞鶴さん 嘆いていてはダメ 変わらなきゃいけないの あなたも私も」

那珂「変わる! ああ目から鱗が」

赤城「涙の数だけ強くなれるよ アスファルトに咲く花のように」

那珂「そう変わらないと! かけがえのない仲間と共に」

赤城「さぁ!皆前を向いて歌いましょう!!」

加賀「ここで感動の涙を流す」

赤城「加賀さん 演技部分を読んではダメよ」

加賀「皮肉ですがなにか?」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/29(木) 00:39:01.95 ID:6YA0UK47o<> 監督「はいカット!!」

監督「本日の撮影はここまで 皆よかったよーではまた明日」

赤城「……」

加賀「……」

提督「お疲れお疲れ ……では私はこれで」

加賀「待て」

提督「はい」

まるで深海の底のような冷たい 冷たい二人の視線を浴びながら
提督は処刑台の前に立ったかのような顔をしていた

赤城「言いたいことは…わかりますよね」

提督「はい」

加賀「はい ではわかりません」

提督「…」

提督「二人ともいい演技だったよ☆」

赤城「このハゲ〜! ちーがーうーだろー!」

提督「仕方なかったんや!!!!!!!!」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/06/29(木) 00:42:49.98 ID:6YA0UK47o<> 突然ブチ切れて批難しにくくしたろ
の精神で提督は叫ぶ

提督「上からの命令に反抗したら首が飛ぶんや!」

提督「最前線に栄転させられるかもしれない!!」

提督「私にだってまだ学校に通ってる子供がいるんだよ!」

提督「逆らって死ぬのはごめんだ!!」

…吠えた後はおずおずと加賀さんたちの顔を覗き込む
はたしてその表情は?

やった。同情の色が見える

提督「助けると思って…明日も頼むよ」

赤城・加賀「…はい」

提督流人心把握術によりどうにか撮影は続く

翌日もその翌日もどんどん撮影撮影撮影撮影
なぜなら時間がないのだから
小道具も背景も並行してどんどんと出来てきた
出来はおいておいて <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:44:08.40 ID:PrvzfMzqo<> 出来はおいておいて

秋雲「明石画伯ちーっす」

秋雲「あっ、メロンさんは結構イケてるじゃ〜ん こんどアシしてー」

明石「工作艦に特撮やらせるほうが間違ってるんですー」

夕張「それにしたって」ブブッ

明石「笑うなー!」

秋雲「お遊戯会みたい」」

夕張「手作り感満載」

明石「うーん もう一回作り直さないと」

監督「いや、画面暗くすれば十分いけると思うよ?」

秋雲「うぉっ 出た」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:44:35.43 ID:PrvzfMzqo<> 監督「背景も小道具も小奇麗にしすぎてリアル感がない」

監督「それが邦画の悪いところ 少しはいい意味での雑さが求められるところだ」

監督「だから秋雲くんは早く脚本を 夕張くんは早く小道具を作り給え」

秋雲・夕張「へーい」

明石「これでいいんですか? 脳みそ大破してますか? 直さないでいいんですか?」

監督「いいんです」

明石「納期を考えるとこの出来で…やるしかないか」

明石「昔を思い出すなぁ」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:50:24.20 ID:PrvzfMzqo<> カンコンカンコン

夕張「はーい スーツとヘルメットできたわよ」

秋雲「おおっ ありがと〜」

夕張「なんでこんなコスチュームが?」

秋雲「いや〜 監督がアクションシーン入れたいって言うからさ〜」

秋雲「素人のアクションとか痛いよねぇ それで小道具のインパクトでごまかそうと」

夕張「アクションねぇ…」

夕張「根本的なカメラワークが素人だから無理でしょ」

青葉「むーっ 青葉の陰口ですかぁ?」

夕張「あらいたの」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:50:51.90 ID:PrvzfMzqo<>
青葉「青葉腕前には自信あります! ほら全員が映るようにちゃんと引いて撮って」

夕張「映像がのっぺりしてる…と」

秋雲「記念撮影みたいなアングルばっかー」

青葉「え、ダメ? がーん!」

監督「いや、よいぞよいぞ」

秋雲「うわっ また出た」

監督「ほら、出演シーンをある程度設けないと扱いが悪いとか事務所がうるさくて」

監督「あとカメラ台数少なくて済むし」

青葉「今作は青葉一人で全シーンを撮影してます♪」

秋雲「ほぇ〜 一台ぃ?」

青葉「さてさて アクションシーンの撮影に移りますか! 1台で!!」

秋雲「あっ もうヤケになってるやつかぁ」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:52:23.27 ID:PrvzfMzqo<> アクションシーン撮影


嵐「出たな敵め! 俺の力を見やがれええええええ」

ライダーチェーンジ!!!
嵐がベルトを掴みながら叫ぶとその体は輝き
その全身は金属のスーツに包まれた

嵐「ありぃ?」 

嵐「んだよこれ」

嵐「こういう変身するのって衣装ビニール製じゃねぇの?」

夕張「本当に申し訳ない」

嵐「まぁ金属のほうがグレード高いよな! ア〇アンマンみたいで!」

嵐「それでどこ押せば飛んだりできんの?」ワクワク

夕張「本当に申し訳ない」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:56:38.87 ID:PrvzfMzqo<> 嵐「じゃあビームとか出したり」

嵐「ロケットパンチとかも無いの?」

夕張「本当に申し訳ない」

嵐「……んじゃなにができるんスか?」

夕張「ステルス と前にフルを付けて唱えてみてくれ」

嵐「はぁ  えーと フルステルス!」

途端に彼女を包む金属のスーツは消失した

嵐「ええっ?」

彼女の制服や下着を巻き込んで <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/01(土) 19:57:48.20 ID:PrvzfMzqo<> つまりつまるところその効能は身に着けている全ての衣類を透明化することであり
実際は着ているにもかかわらずその青い肢体は生まれたままの姿で公衆の面前へと晒されたのだった

否、青いという表現は正しくないかもしれない
平時のサバサバした口調。駆逐艦という艦種
その二つが彼女の女性らしさを損なっているものの、改めて靴下を除き全裸となった肉体だけを見れば
なかなかどうして… 
同年代と比較し、遜色のない丸みが

嵐「ゆ、夕張さん! 変なモノローグ入れてないで! 早く 戻せ戻してください」

夕張「30秒で戻るわよ」

嵐「ああ、戻った…… マジかよ! ひでぇよ! なんだこの機能!」

夕張「本当に申し訳ない」

提督「服ステルスか…」

嵐「ったく… こんな衣装… あれ? ん? 脱げねえ?」

夕張「本当に申し訳ない」

嵐「え? え? えええ?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/07/01(土) 22:28:40.36 ID:9GKzOSpgo<> メタルマンじゃねーか!! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/07/04(火) 21:43:26.06 ID:tVeKw6iL0<> もう一生脱げない <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/06(木) 00:00:39.42 ID:DyeS9V6Ho<> 提督「ちなみにフルじゃないステルス機能はあるのか?」

夕張「ええ 『セミステルス!』」

と、夕張が唱えると途端にまたしても服は透明化され
悲鳴と共にさくらんぼは隠れつつ中の下くらいの双丘が露わに

提督「本人以外が唱えてもいいのか…」

提督「セミでセミヌードになるということは… 『ヘアステルス!』」

途端に燃えるような赤の色が

嵐「ぶ、ぶっとばすぞ! やめろ!!」

加賀「お遊びはそのへんにしてください」

加賀「というか実は男…という展開だったのでは?」

監督「女と見せかけて実は美少年…と思いきややっぱり女」

監督「名作は観客の予想を裏切るものだよ君」

加賀「はぁ」


春雨「あのー 殺陣はまだ…ですか?」←深海棲艦役 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/06(木) 00:01:40.52 ID:DyeS9V6Ho<> 撮影3日目

さすがに3日目ともなると…

提督「頼む 撮影に参加してくれよ な? な?」

赤城「アサイラムの映画で必死に演技する役者の気持ちがわかりますか?」

加賀「辛いです」


那珂「ねー ガンバってー 那珂ちゃんの初主演映画なんだよー」

嵐「……」

秋雲「主役にした覚えないんだけどなー」

全体的な士気は落ちる一方
だんだんと役者も反抗的な態度が目立つように <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/06(木) 00:02:53.85 ID:DyeS9V6Ho<> 監督「声に濁点がない! もっと そう お"お"お"おお"お" と!!」

加賀「そんな喋り方をする人はおりません」

監督「スポンサーの小道具を全面に! 監督のいうことが聞けないのか!?」

夕張「本当に申し訳ない」

監督「怒っているときはなぜ怒っているか 悲しい時はなぜ悲しいか 言葉にしないとわからないだろ!」

那珂「一回一回のセリフ長すぎだよー」

監督「ちがーう そこの演技はもっとオーバーに! 腹から声だして!!」

赤城「グー」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:51:16.84 ID:8hG8tBS3o<> すっかりやる気を失った役者たちは芝居は雑にセリフは覚えずNG連発

結局ロクなカットが撮れないまま3日目は終了
4日目も5日目もそのまま そしてあれよあれよと月日は過ぎて

クランクアップしなければいけない日まであと一カ月
撮れたのはツギハギのシーンだけ <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:52:10.10 ID:8hG8tBS3o<> 提督「どどどどうするんだよ? あああと一カ月で撮影が終わるわけが」

秋雲「修羅場だねぇ〜 秋雲さんは慣れっこだから大丈夫〜」

提督「あ"あ"あ"あ"あ"  し"っ"ぱい" し"た"らくび"た"あ"あ"あ"あ"あ"」

秋雲「大変大変 しっかし監督はどうするつもりなのかねぇ?」

夕張「期日という言葉を思い浮かべよう」

夕張「そして唱えるんだ 『存在しない』」

提督「するわボケぇええええええええ」

夕張「ちなみに監督は実際の軍の映像を混ぜ込んで編集してるみたいですね」

青葉「青葉、南国の風景を撮るように頼まれました」

提督「そんな小学生なみのごまかし方…」

夕張「これが『歴戦』のテクニックだよ君  とかなんとか」

秋雲「下書きだけで掲載するよりましかも」

提督「…ちょっと一言言ってくる」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:52:36.89 ID:8hG8tBS3o<> 首がかかった50男の執念を込めた一言をぶつけるため
ドアを開ける提督

そこに待っていたのは鼻歌を歌いながら映像を切り貼りする『作業』をする監督

監督「おお、提督君ちょうどいい」
監督「駆逐艦の子供たちが背景や小道具を作るシーンを撮っておいてくれ」
監督「幼子が作ったメイキングシーンを入れれば全てのチープさは許されるだろうなははは」

提督は理解した
ああ こいつは… プロ… じゃない
ただ納期までに形を作ることしか考えていない
オータムクラウド先生の本並の薄っぺらいプロ意識
夕張の胸部装甲並のプロ意識
いや、その表現すらも生易しい 龍驤だ こいつのプロ意識は龍驤だ

提督「そんなんだから…」

提督「そんなんだからテメェの作品は駄作しかないんだぁあああああああああ」

提督「今まで! 一本でも! 視聴者を感動させる作品を作ったことがあるのか!!」

監督「……」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:53:12.42 ID:8hG8tBS3o<> 監督「あるよ 10までナンバリングされた大ヒットシリーズが」

提督「題名は?」

監督「…素人ナンパ ハイエースシリーズ」

赤城「……」

加賀「???」

夕張「……」

青葉「……」

秋雲「……」

提督「……」

提督「全巻見ました」

2人の男は固い握手を交わした

夕張「確かに素人を撮るのは得意そう」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:53:52.29 ID:8hG8tBS3o<> 監督「あなたの剣幕に押されつい言ってしまったが」

監督「ありのままの自分をさらけ出してみると心が晴れたようだよ」

はぁ?

監督「私は実は舞台作家になりたかったんだ」

監督「それが糊口を繋ぐためポルノに手を出してから気が付けば便利さが売りの監督」

監督「読んだこともない漫画やアニメを短期間で実写化。形にする作業ばかり」

監督「もうこんな仕事は嫌だ 決めたぞ 今回は…今回は…私の最高傑作とする」

監督「長年温めてきたこの脚本を… 使うときだ!!」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:55:52.55 ID:8hG8tBS3o<> 或る男と女
二人はごく普通に出会いごく普通に恋をした
しかしお互いが持つ拭いきれない違和感
男の職業は刑事
女の職業は結婚詐欺士

男は手配書を見ながら問いかける 「君の本名は」

決して結ばれることのない悲恋の「ちょちょちょ」
秋雲「……それパクってるよねぇ」

監督「ふっ なんのことだね」

秋雲「ちなみに主題歌は」

監督「前前前科から僕は 君を探し続けたよ」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/12(水) 23:56:29.30 ID:8hG8tBS3o<> 夕張「実は私も脚本を用意してたりして」

秋雲「おおっと どんなのどんなの?」

真面目で可愛い整備員の主人公は複数の夢の反乱の果てに目を醒ますと違和感に襲われる

見たことのない感触、重量、そして身体には、無いはずのものが有った

そう。胸がメロンとなっていたのである。

戸惑いながらもう少し眠ろうと試みるが、体を眠るためのちょうどよい姿勢にすることができない

秋雲「……いやだからさー パクってるよねぇ」


提督「実は私も学生時代は文学部に席を置いていてね」

秋雲「先に主題歌言ってー」

提督「全全全裸から僕は」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/13(木) 00:01:18.61 ID:wNuipU+Fo<> 秋雲「実は秋雲さんも漫画家になりたかったんだよ」

夕張「かった? 諦めたんですか?」

秋雲「ふっ… まぁ今の脚本を見てから言ってもらおうか」

夕張「諦めてよかったですね」

秋雲「原作付けてくれればワンチャン」

秋雲「誰かこの先の脚本書いてよー」

夕張「じゃやっぱり私の」

秋雲「パクりじゃなくて」

青葉「艦娘の水着モードで2時間持たせましょう!」

秋雲「さすがに軍出資だしー」

赤城「理外の飯テロ映画!! グルメとチンチロ倍プッシュだ…!」

秋雲「いくらなんでもニッチすぎー」

提督「現実問題既存撮影分を使わないと完成は困難 おねがい」

秋雲「急に真面目なこと言わないでよぉ…」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/13(木) 00:02:17.17 ID:wNuipU+Fo<> 加賀「あ、では私一つ考えたものが」

と言って手を挙げた加賀さんが出した脚本は
黒髪無口という文学少女属性を持つだけはありそこそこまとまったもの

まぁこれでいいか
いきますか
いっちゃいますか

満場一致でそれを元にすることが決まった

疲労からだろうか
焦りからろうか
誰も今自分たちのテンションが「酒入った深夜」
であることに気が付いてはいなかった

他が酷すぎただけでソレもそこそこアレなことに目をつぶってしまった

そして「勢い」で撮影は再開
「ノリ」で様々な要素をブッこみ
わずか30日でクランクインを迎え…

本日 締め切り前夜に
予告編が完成 本土に送る前に観てみることとした <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/16(日) 11:38:21.59 ID:nnwpzCNRo<> 人類の運命を握る最前線

そこに着任した提督

彼が見たのは

赤城「第一次攻撃隊、発艦してください!」

加賀「今日も鎧袖一触」

……女の花園!? <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/16(日) 11:38:47.91 ID:nnwpzCNRo<> 提督「大佐は命じた 攻撃せよ!」

戦いあり!!

秋雲「草むらにサーチライトを照らすと」

お色気あり!!

青葉「敵は、まだこちらに気づいてないよ」

笑いあり!!

夕張「これが最新兵器の威力なのよ!」

機密あり!!

全深海が震撼 今世紀最大の映像化不可能戦場がついに映画化

日本映画の巨匠が軍全面協力の元送るリアルドキュメンタリー  この夏! 後悔!!

あなたは伝説の目撃者となる……

coming soon




全員「……」

全員「……」

全員「……」 <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/16(日) 11:39:36.49 ID:nnwpzCNRo<> しかし大衆は中身など気にしない
SNSなんてある時代じゃないし評論家を巻き込めば問題ないファミ通形式だ

さぁ評論家たち皆様、公開前に絶賛を願います


「記憶に残る素晴らしい出来栄え」
「ここ10年で最高」
「ここ10年で最高と言われた前作を上回る出来」
「過去50年でも素晴らしい出来」
「近年の最高傑作と肩を並べる出来」
「よくぞ脱がせた」

この大絶賛の嵐!

イムヤ「ねーねー」

うん?

イムヤ「イムヤのスマホ電池の持ち悪いな〜 新しいの買ってよ!」

SNSなどある時代じゃないし(願望) <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/16(日) 11:40:38.88 ID:nnwpzCNRo<> 「金のかかった学芸会」
「これが興業に乗る という点で未来のクリエーターに夢を与える作品」
「もっと脱がせろ」

公開後
内容は酷評されつつも軍需産業社員動員と題材の物珍しさで興行収入はどうにか黒字を確保

また評価と反比例するようにグッズは飛ぶように売れ、大幅な益を達成したという話を聞いた

皆、特段責任を負わなくてもいいことにホッとしつつ
その収益の還付がないことには腹が立った
だがまぁ宣伝・広報・フォトショなどそれぞれのプロが頑張った結果なのだろう

少なくとも私たちはなにもしていない。金をとれるような内容にできていない

もういいんだ。鎮守府内ではもうだれもあの映画に触れようとしない
聖地巡礼の観光客の相手は張り付けた笑顔で対処する
いいよ もう あれは なかったことに <>
◆W7gaJxN1wk4q<>sage<>2017/07/16(日) 11:41:39.46 ID:nnwpzCNRo<> 秋雲「さて 仕方ないなぁ〜 二作目の準備しとくかぁ〜」

加賀「は?」

提督「頭大丈夫か?」

秋雲「いい? 続編予定ありの映画が黒字確保… それは。そういうことなんだよ」

秋雲「一番受けたのは脱衣だから〜 さぁーて体作らないとねぇ〜」

赤城「ゆ、誘爆?」

加賀「まさか…あの出来で続編…いえそんなこと」

秋雲「90人が駄作と思っていても残り10人に見染められればいい」

秋雲「金を注いでくれる10人にねぇ!!

秋雲だけが理解していた
私たちはようやく登りだしたばかりということを
このはてしない商業主義をよ……

終わり <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/07/16(日) 17:42:46.89 ID:lqcr0sYpO<> 男坂エンドやめろ
おつでした
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/07/21(金) 10:38:24.92 ID:C7jCla2B0<> ワロタwwwwwwwwwwww <>