◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:08:56.00 ID:+9mhoYU8O<>年末 事務所


P「ただいまー」

飛鳥「おかえり。外回り、お疲れ様」

P「ありがとう。あー、部屋の中はあったか……くない?」

飛鳥「最近どうも暖房の効きがよくないね。さっきちひろさんに相談したところだ」

P「そうか……まあ、これでも外の寒さに比べればずっとましだけど」ハーッ

飛鳥「手が冷たいのかい」

P「一応、手袋はしていたんだけどな。もっと分厚いやつ買おうかな」

飛鳥「ふうん……なら、ボクがあたためてあげようか」

P「え?」

飛鳥「ほら。こうしてボクの手でキミの手を包み込むと――」

ぴとっ


P「つめたっ」

飛鳥「あぁ、そういえばボクは冷え性だった」

飛鳥「というかキミの手、十分あたたかいじゃないか。これはむしろボクがあたためてもらうべきじゃないか?」ニギニギ

P「ちょ、くすぐったいぞっ!? わかったわかった、ふたりであったまるためにアレを持ってくるから」

飛鳥「アレ?」

P「飛鳥も手伝ってくれるか?」




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<>モバP「飛鳥とこたつでゆっくりと」
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:11:09.77 ID:+9mhoYU8O<> P「よし、こたつのセッティング完了だ」

飛鳥「アレ、とはこたつのことだったのか」

P「今年は出さなくてもいいかなあと思っていたんだけど、暖房の調子が悪いなら仕方ない」

飛鳥「プロトタイプの出番というわけだね」

P「べつにこたつは暖房のプロトタイプってわけじゃないぞ?」

飛鳥「言葉のあやだよ。それより、せっかく協力して物置から運び出してきたんだ。早速、和の文化を味わおうじゃないか」

P「そうしよう」モソモソ

飛鳥「今冬、このこたつを味わうのはボクらが初めてか。少し特別な感覚だ」ヌギヌギ

P「ん? どうしてタイツを脱いでいるんだ?」

飛鳥「こたつは裸足で楽しむのがボクの流儀なのさ」

P「へえ……」

飛鳥「よし」

P(こうして素足の飛鳥を見ると……やっぱり綺麗な足してるよな。脚線美も十分売りにしていける)

飛鳥「……P。女性はキミが思っている以上に、男からの視線に敏感だよ」

P「!? ご、ごめん」

飛鳥「いや、いいさ。今の視線は、キミがボクのカラダに魅力を感じていた証拠だ」モソモソ

P「魅力……まあ、それはそうだけど」

飛鳥「誰にだって心に闇が潜んでいる。キミの闇が見られてボクはうれしい」

P「そこまで邪な感情じゃないぞ」

飛鳥「フフ、冗談だよ。少し見惚れていただけで、本気でそういう感情を抱いたわけじゃないことは理解っている」ニヤニヤ

P「………」

飛鳥「P?」

P「もし、本気だったらどうする?」

飛鳥「えっ」

P「俺が本気で、そういう邪な感情を飛鳥に抱いていたら、どうする?」

飛鳥「あっ……えっと。それは、困る。困るけど……それだけではなくて……」

P「…………」ニヤニヤ

飛鳥「…………はっ」

P「あくまで仮定の話だよ」

飛鳥「…………」


げしっげしっ

P「痛い痛い、こたつで足を暴れさせないで」

飛鳥「今さらキミに聖人君子を求めるつもりはないけれど、ボクの純情を弄んだ罪を受け取れ」ゲシゲシ

<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:12:20.56 ID:+9mhoYU8O<> 10分後


P「……あたたまるなぁ」ヌクヌク

飛鳥「あたたまるね……」ヌクヌク

P「こうしてゆっくりするのも、いいもんだな」

飛鳥「そうだね。静かで、暖かくて……とても落ち着く」

飛鳥「緩やかに流れゆく刻に身を任せるのも、たまには悪くない。怠惰は罪とは限らないというのが、ボクの持論さ」

P「…………」

飛鳥「どうかした?」

P「頬杖ついている飛鳥を見てたら、肌が柔らかそうだなと思った」

飛鳥「今日のキミはアレだな。いつもより本能に生きている」

P「飛鳥とふたりきりだから、いろいろと緩んでいるのかもしれない」

飛鳥「喜ぶべきか判断に迷うところだ」

P「あとこたつの魔力のせいかもしれない」

飛鳥「きっとそれだ。ともかく、そういう発言を梨沙とかの前ではしないことだね。セクハラロリコン罪で訴えられる」

P「はは、だろうな」

飛鳥「あと、心さんの前でも控えたほうがいいな。若さへの嫉妬が待っている」

P「だろうな」

飛鳥「目が笑っていないね、P」
<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:13:03.70 ID:+9mhoYU8O<> 飛鳥「そういえば、実家からみかんが送られてきたんだ。おすそわけするよ」

P「おっ、ありがとう。さすが静岡出身だな」

飛鳥「こたつといえばみかんだからね。ちょうどいいタイミングだった」

P「こたつ、みかんとくれば、あとは」

飛鳥「日本茶はノーサンキューだ」

P「エスパーか、君は」

飛鳥「お茶は苦手だからね。ボクはコーヒーでいい」

P「みかんとコーヒー、絶対合わないだろう」

飛鳥「それは固定観念というものさ。まあボクも合わないと思うけど」

P「おい」

<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:14:18.92 ID:+9mhoYU8O<> 飛鳥「こたつで身体の外側をあたためた後は、温かいコーヒーを飲んで身体の内側に熱を与える。贅沢だけど心地よいね」

P「結局コーヒー淹れるんだな」

飛鳥「みかんは後で堪能するよ」

P「なら、俺のぶんも淹れてくれないか?」

飛鳥「なんだ、キミもコーヒーの気分なのか」

P「せっかくふたりきりなんだし、一緒に飲むのもありかと思って」

飛鳥「フフ、そうか。なら、しばしお待ちを」



飛鳥「おまたせ。コーヒー、淹れてきたよ」

P「ありがとう。いただくよ」

飛鳥「うん」

P「まずは砂糖を一杯」サッ

飛鳥「一杯」サッ

P「そして飲む」

飛鳥「飲む」

P「うん、おいしい」

飛鳥「うん、苦い」

P「一緒に飲むからって砂糖の量まで同じにしなくてもいいのに」ハハ

飛鳥「その通りだ」サッサッ

飛鳥「……ただ。いつか、キミと同じ分量で味わいたいものだ」

P「どうして」

飛鳥「さぁね。乙女心ってヤツじゃないかい?」


<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:15:38.97 ID:+9mhoYU8O<> P「みかん、ごちそうさま。おいしかったよ」

飛鳥「どういたしまして。残りは他の子にあげよう」

P「にしても、飛鳥は皮剥くのうまかったな」

飛鳥「それはそうさ。幼い頃から手慣れているからね」

P「手先の器用さはそうやって培われたのか」

飛鳥「それは関係ないと思うけど……まあいいか。おやつも食べたし、ボクは冬休みの宿題でもやろう」

P「真面目だな」

飛鳥「学校での成績が悪くなると、キミがボクの親に怒られるだろうからね。それは避けたい」

P「飛鳥……よし、俺も手伝おう!」

飛鳥「いや、べつにひとりで解けるから問題ない」

P「そう言わずに、ちょっと見せてくれ」ズイズイ

飛鳥「そこまで言うなら……数学、やってみる?」

P「任せてくれ。えっと、図形の問題か」

飛鳥「そう」

P「…………」

飛鳥「…………」

P「あれ、中学生の数学ってこんなに難しかったか……?」

飛鳥「オジサンみたいなことを言うね、キミ」

P「お、オジサン……待ってくれ、もう少しだけ考えさせて」

飛鳥「それはいいけど……ちょっと、顔が近い」

P「あっ、ごめん! つい熱中してしまって……」

飛鳥「ヒゲがボクの頬に刺さるくらい近かった」

P「ちゃんと剃ってるからそれはない」

飛鳥「バレたか」フフ

P「ちゃんと毎日丁寧にシェーバーをかけてるから」

飛鳥「ふうん」サワサワジョリジョリ

飛鳥「…………」サワサワジョリジョリ

飛鳥「面白い感触だ。ぷちぷちの中毒感と似たものを感じる」

P「こらこら、人の顔で遊ぶな」



<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:16:48.89 ID:+9mhoYU8O<> 飛鳥「今日はこんなものでいいかな」

P「勉強終わったのか。お疲れ様」

飛鳥「ありがとう。さて、次は何をしようか」

P「そうだな……もうすぐ今年も終わりだし、これまでの日々を振り返ってみるなんてどうだ」

飛鳥「ボクが生まれたのは静岡の産婦人科だった。3203グラムの元気な赤ん坊で」

P「生い立ちから話すのはさすがに長すぎないか?」

飛鳥「ジョークさ」

飛鳥「この一年の振り返り、か。数えきれない思い出があるのに、終わってみればあっという間な日々だった」

P「それだけ毎日が忙しかったってことじゃないか?」

飛鳥「違いない。だからこそ、今この時のような静寂を愛おしく思うのだろうね。キミと過ごす、憩いの時間を」

P「……スケジュール、詰め込みすぎちゃった日もあったよな。ごめん」

飛鳥「謝る必要はないよ。静と動は表裏一体。どちらが欠けても意味を成さないものだ」

飛鳥「なにより、キミはボクにたくさんのものを見せてくれた。様々な仕事を通して、ボク自身が知りえなかった可能性までも示してくれた。それは、とても価値あることだ」

P「……そう思ってもらえるなら、本当に光栄なことだよ」

飛鳥「また、季節をともに巡ろう。春は桜を眺めて、夏は夜空を見上げて、秋は紅葉に思いを馳せて」

飛鳥「そして次の冬も、こうしてこたつで語りあおう。その日が来るのを、ボクは心待ちにしている」

P「……うん。俺もだ」

飛鳥「その時は、きっと。もっと……」

飛鳥「……いや。その先を口にするのは、野暮かな」

P「そこで止められると、気になるな」

飛鳥「そう言わないでくれ。今は理解らずとも、いずれはキミも答えを知ることになるんだから」

P「?」

飛鳥「これから、キミとボクとで創り上げる未来さ」
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◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:19:29.14 ID:+9mhoYU8O<> 帰り道


P「やっぱり外は寒いなー」

飛鳥「手袋とマフラーが手放せないね」

P「冬は辛いなぁ」

飛鳥「まったくだ。けど、夜空が透き通っているのはいいところだね」

P「夜空? おー、本当だ。オリオン座がよく見える」

飛鳥「キミ、星座に詳しいの?」

P「いや、オリオン座以外はどれがどれだか」

飛鳥「フフ、そうか」

P「飛鳥は詳しいのか?」

飛鳥「詳しいというほどではないけど、関心はある」

飛鳥「星は天然モノだけど、そこから星々を繋ぎ合わせて星座を創り上げたのは人間だ。何千年も昔に生きていた人々も、ボクらと同じ空を見上げていた。彼らの思想が、願いが、あの星座たちに秘められているのさ」

P「なんだか、ロマンチックだな」

飛鳥「キミもそう思うだろう?」

P「時間があれば、少しだけ勉強してみるよ」

飛鳥「うん、それがいい」

P「星か……俺もいつか、飛鳥達をスターアイドルに育て上げないとな」

飛鳥「ボクらを、夜空に輝く星にしてみせると?」

P「それくらいの存在にしたいと思っているよ」

飛鳥「そうか」
<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:20:25.47 ID:+9mhoYU8O<> 飛鳥「……太陽に近づきたイカロスは、己の翼を溶かされ地に堕ちた。ボクの翼は、いつまでもつだろうか」

P「もし翼が溶けてしまったら、落ちる前に生やせばいいさ」

飛鳥「スパルタだな、キミは……まあ、頼んだよ。ボクの飛翔が、短命でないことを祈っている」

P「10年以上はもたせるようにしないとな」

飛鳥「それはまた、先の長い話だ」

P「10年なんてあっという間だぞ?」

飛鳥「それはキミが年寄りだからじゃないか?」

P「そこまで年は食ってない! 飛鳥も言うようになったなぁ」

飛鳥「生意気なのは昔から変わってないだろう?」

P「それ、本人が言うことか……?」

飛鳥「確かに……なら、そうだな。たまには、殊勝な言葉でも」

P「ん?」
<>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:21:18.40 ID:+9mhoYU8O<> 飛鳥「少し早いけれど……一年間、お世話になりました。来年もよろしくお願いします」ニコ

P「…………」



P「飛鳥に敬語を使われるの、すごい違和感あるな……」

飛鳥「やっぱりキミの前では絶対に生意気でい続けてやる」

P「ははは」

飛鳥「次のバレンタインで渡すチョコのグレードがダウンした」

P「いや、それは困る。楽しみにしてるのに」

飛鳥「そう思うなら、名誉挽回してみせることだ」

P「何をすればいいんだ?」

飛鳥「そうだな。まず手始めに、初詣を一緒に――」



おしまい <>
◆C2VTzcV58A<>saga<>2017/12/30(土) 15:22:26.36 ID:+9mhoYU8O<> おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
飛鳥とこたつに入りたい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/12/30(土) 15:43:47.26 ID:D+J3D1bDO<> おっつおつ


今年一年(何本お世話になったか知らないですが)ありがとうございました。
しーぶいつーさんもよいお年を <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/01/04(木) 23:10:44.38 ID:2SNVx01U0<> おつ <>