◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:09:48.35 ID:gqrBASFk0<>提督「ああ、手伝ってくれないか?」
Bismarck「嫌よ……艦娘を騙すんでしょう? 楽しいの?」
提督「うーん、楽しいと言うよりは好奇心かな? どんな反応するんだろう、って」
Bismarck「……息抜きも大事だとは言ったけど、そういう感情って自制すべきだと思わないの?」
提督「ああ、もちろん思ったさ。本来なら死亡ドッキリなんてしちゃいけないし、命は大事にすべきだってね」
Bismarck「罪悪感があるんならやめて欲しいんだけど……」
提督「まあ、怪我人は出さないよう気を付けるよ。心に傷を残さないようにネタバラシも早めにな」
Bismarck「仕方ないわね……私は何をすればいいの?」
提督「さすがビスマルク、分かってくれると思ってたよ」

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<>Bismarck「死んだフリをして艦娘の反応を見る?」
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:10:23.76 ID:gqrBASFk0<> 提督「実はな、昨日隠し撮り用の小型カメラを設置したんだ。で、映像が俺の自室のモニターで見れるんだが、とりあえずはそれを楽しんでくれればいい」
Bismarck「あ、見てるだけでいいの?」
提督「ああ。あと、ネタバラシは基本俺がやるが、きっかけとして良いタイミングで執務室に来てほしい」
Bismarck「でも死んだフリってなかなか難しそうだけど……秘策でもあるの?」
提督「安心してくれ、工廠含め各所から援助して貰えたんだ。ま、俺達だけで準備と片付けをしなきゃいけないから、結構時間はかかるだろうが」
Bismarck「結構用意周到なのね……仕方ない、やるわよ。誰に仕掛けるの?」
提督「最初は駆逐艦で行こう。演習から帰ってくる親潮が狙い目だな」
Bismarck「あの頑張ってる子ね……ん? 最初は?」
提督「もうすぐ帰ってくるだろうし、ビスマルクも俺の部屋に行っててくれ」ソソクサ
Bismarck「ねえ、あの……」
Bismarck「まあ、提督も嫌われないよう気を付けなさいね」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:11:12.79 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「なんだかんだ、流されてしまったけど、本当にこんなことしていいのかしら……」
Bismarck「それに、私はこうやって別の所で眺めてて、卑怯じゃないかしら……」
Bismarck「また今度言ってやらなきゃ」
Bismarck「……ともかく! モニターを見ましょう、そろそろ始まるでしょうし」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:11:44.21 ID:gqrBASFk0<> コンコンコン
親潮『失礼します、親潮です!』
Bismarck「ん、親潮が来たわ。表情は晴れやかね。って、提督?」
親潮『司令、艦隊、演習より帰投しました!』
親潮『……あれ? 司令、いない? うーん、とりあえず報告書を提……』
親潮『しゅ……つ……え』
Bismarck「うわっ」
Bismarck「ナイフはないけど、刺されたのかしら、お腹から血を流して執務室の壁にへたり込んでる……辺り一面血の海じゃない」
Bismarck(これ、ドッキリよね?)
親潮『し、れい……? え? 嘘ですよね? こんなの、いたずらですよね? だって、司令がこんな、こんな……』ペタン
Bismarck「これは誰だって腰抜かすわよ……」
親潮『起きて……下さいよ。おかえり、って言って下さいよ。あたし、まだ司令に恩返しできてないのに……迷惑ばっかり掛けて、何も出来てないのに!』
Bismarck「やっぱ抱きつくわよね。あ、これ暖かいとバレるんじゃ」
親潮『っ……まだ暖かい……。あたしが途中寄り道したせいだ……真っ直ぐ来ていれば助けられた……!』
Bismarck「え、寄り道?」
親潮『久々に完全勝利出来たからって、間宮さんで休んでたから……』
親潮『ごめんなざい、ごめんなざいっ……ひぐっ、あたし、あたしっ……うぐっ……』
Bismarck「こういうのを泣きじゃくるっていうのね。初めて見たかも」
親潮「どうしたら……あたし、何をすれば……」
Bismarck「何をすれば、って……あ、ネタバラシすればいいのかしら」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:12:20.98 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「アトミラール、入るわよ」
親潮「」ビクッ
親潮「あ、あぁ……ビスマルクさん、あたし、その、あの……」
Bismarck「分かってるわ。ほら、アトミラール、起きなさい」
提督「ん、おはよう」
親潮「ひゃぁっ!」
提督「ちょ、そんな逃げなくても……生きてるよ、ドッキリだよ、親潮」
親潮「え?」
Bismarck「ドッキリ。死んでない、生きてるわ」
親潮「いや、ドッキリは分か……え?」
提督「死んだフリだよ。騙してごめんな」
親潮「あ、じゃあ生きてる……と?」
提督「ピンピンさ」
親潮「司令っ!」ダキッ
提督「おわっ」
親潮「あた……親潮、怒りました。まんまと騙されて大泣きさせられて。あたし、司令が死んじゃったと思って、あたしのせいだと思って……」
提督「悪かったよ、本当に」
提督「あ、そう言えば寄り道したんだ?」
親潮「あっ……。あの、その……すみません、本当ならすぐ報告しに来なきゃいけないのに……」
提督「分かってるならいいよ。次からはちゃんと真っ直ぐ来てくれ、な?」
提督「あと、今回のお詫びと言っちゃなんだが今度はこれを使うと良い。タダで楽しめるぞ」
Bismarck(間宮券で詫びるとは。まぁ駆逐と軽巡と一部大型艦にしか通用しなさそうだけど……)
親潮「うぅ……分かりました。これからはすぐに報告に来ます。あ、あと、二度とあたしに死んだフリなんてしないで下さい。失礼します」
<>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:13:50.31 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「片付け終わったわね」

提督「……親潮に嫌われたかな」

Bismarck「どうかしら」

提督「でも『あたしに』って言ってたし他の子には仕掛けてもいいんだよね」

Bismarck「最低ね……人間性を疑うわ」

提督「そんなぁ。ああ、ビスマルク、次はお前にも芝居して貰いたい、頼めるか」

Bismarck「やっと手伝えるのね!」

提督「やっぱり見てるだけじゃ面白くないだろ?」

Bismarck「!! ……まぁね」ボソッ

提督「乗ってきたな」

Bismarck「ところで次のターゲットは?」

提督「今度は大淀さんだ。昨日は過労気味だったから早めに寝かせた。まだ寝てるかもな」

Bismarck「過労の原因は提督だったりして」

提督「さぁ、どうだか? ビスマルク、彼女を呼んできてくれ。あと、このおもちゃのピストルも持っていてくれ。持ってるのが大淀にバレないようにな」

Bismarck「ピストル? まぁ、良いけど……貴方が呼んでるって言えばいいかしら?」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:14:32.76 ID:gqrBASFk0<> Bismarck(アトミラールの指示通り大淀を起こしたわ。大淀は執務室へ、私は提督の部屋に向かう。無線でアトミラールと通信できるようになっているわ)

提督(今はマイクを切ってるから何言ってもあっちには聴こえない。あと、ビスマルクには俺の部屋へ行ってもらった)

提督「今回は特に準備はねえな、血糊をバラ撒いてニセ弾痕と出血を演出してと」ベチャ

提督「過労の原因、か」

提督「よく考えてみれば、大淀さんって物凄く仕事の出来るだけで、艦娘なんだよなぁ……」

提督「提督になった頃からの流れで随分頼っちまってたな」

提督「この際、大淀さんには休暇をあげよう。あの人なら『休みだけど仕事します』とか言い出しそうだが」

ピピッ
Bismarck『貴方の部屋に来たわ。何すればいいの?』

マイクオン
提督「起こしてくれたか? ありがとう、機を伺ってこっちへ来てくれ。内容については追って話す」

提督「あと、大淀が入ってくるのが聞こえるまでモニターをつけるな」

Bismarck「え、いいけど、どうしたの?」

提督「俺の死に方を見るっていう、お前の楽しみがなくなるだろ?」

Bismarck「なっ……」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:15:12.15 ID:gqrBASFk0<> 大淀「提督が私を呼ぶなんて珍しい……私、一日中寝てたみたいだし書類仕事も手伝わなきゃ」

パァン!
大淀「!!」

大淀(執務室から銃声!?)

タッタッタッタッ
提督(お、来るな……。ちなみに銃声は玩具拳銃、本体は机の上に乗せておいた)

Bismarck(それじゃあ、モニターの電源を入れましょう。アトミラールはどんな死に方してるのかしら)

ガチャガチャッ、バンッ!
大淀『提督っ、大丈夫ですか!』

Bismarck「わっ、これは大丈夫じゃないわね……後頭部を撃たれてうつ伏せに倒れてるわ。もちろん頭の周りは血塗れで」

大淀『うっ!? 物凄い血の匂い、提督! ……いや、ダメですね。後頭部を銃で一発……凶器は机上の拳銃ですかね』

Bismarck「大淀、凄く冷静ね。何とも思ってないのかしら……よし、行ってみましょう。彼女と話がしてみたいし」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:16:41.53 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「入るわよ」

大淀「あぁ、ビスマルクさん。こんにちは」

Bismarck(こんにちは? 提督が死んだことに対して動揺してないのかしら)

Bismarck「ええ、こんにちは。提督は?」

大淀「殺されました」

Bismarck「え? どういうことよ、なにこれ、ちょっと、アトミラール、起きてよ! なにやって……って。ねえ、貴方が撃ったの?」

大淀「まさか。もしそうなら貴方も部屋に入ってきた時点で撃ち殺してますよ」ニコッ

Bismarck「」ビクッ

Bismarck(今、冗談抜きで寒気がしたわ……殺意はこもってないのに、冷淡な笑顔がこんなに恐ろしいなんて)

大淀「……私、以前から『いつかこうなる』って思ってました」

Bismarck「え、こうなる、って? どういうこと?」

大淀「提督が殺されて、私も一緒に消される。他所の提督が秘書艦共々、何者かにより射殺されたという話を聞いて、それ以来、ずっとです」

Bismarck「……真犯人に嵌められるってこと? 提督殺しとして顔に泥を塗られ、そのまま殺されて、真犯人は提督の敵を討った英雄になれる。まあ、そんなところかしら」

大淀「ええ。そうです。そして、貴方が提督を殺したんでしょう?」

大淀「私を執務室へ呼びつけ、到着する前に提督を射殺し、執務室隣の給湯室へ逃げる。私が執務室へ入ったら給湯室から廊下へ出て、執務室へ入る。そうすれば、見事私は殺人犯」

Bismarck(物凄い推理力……いや、これはただの思い込みね。でも、まさか私が殺人犯にされるとは思わなかったわ。これ、アトミラールのシナリオ通り……なのかしら)

大淀「もし私が抵抗しても、貴方なら私を抑えつけて撃ち殺せる。自分以上のベテラン秘書艦で、提督をよく知る私を殺しておけば、後々自分が真犯人だとは突き止められないでしょう」

Bismarck「ええ、そうね。じゃあ、殺される準備は出来てるかしら?」ジャキッ

大淀「はい。私、提督の為、艦隊の為、ひいては私の為に頑張ってきましたが、提督が亡くなっては私が生き長らえる意味もありません」

Bismarck(なんか凄く悪いことしてる気がしてきたわ……でも、殺るしかないっ)

Bismarck「いい覚悟ね。じゃあ、提督をよろしく頼むわね」

大淀「こちらこそ、艦隊をよろしくお願いします」

パァン!
大淀「っ!」ビクッ

大淀「うっ、ん……? 生き、て……る?」

Bismarck「おめでとう、大淀」

大淀「紙吹雪……クラッカー? ん、この大きいの、裏に文字が……」

『ぱんぱかぱーん!
   ドッキリ大成功!』

大淀「はい……? あ、まさか。提督?」

提督「おはよう、大淀さん」ムクリ

大淀「はあ……私、騙されましたか」

提督「えーと、まず。ごめんな、大淀さん」

大淀「大丈夫です。提督が生きていてくれればこの艦隊は……私は大丈夫ですから」

提督「そっか。あと、大淀さん。悩みがあるなら相談してくれっていつも言ってたよな?」

大淀「確かに仰ってましたけど……提督のミスで殺されるのが怖いなんて言えるわけないじゃないですか!」

提督「ああそれ、艦娘からセクハラの苦情を受けた憲兵が無断で執務室を襲撃して、秘書艦も巻き添え食らったってだけでミスは関係ないぞ」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:17:11.91 ID:gqrBASFk0<> 大淀「あ、そうなんですか……ビスマルクさん」

Bismarck「なに?」

大淀「その、殺人犯扱いしてすみません。私、殺されるって分かってタガが外れてしまって……お陰であることないこと口走って……」

Bismarck「別に気にしてないわ。それより、まだ疲れが抜けてないんじゃない?」チラッ

提督「ん? あぁー。そうだよ大淀さん。お詫びといっちゃ何だが3日程休暇をあげるよ」

大淀「え、三日もですか? それは困ります、三日もあれば提督は書類仕事を溜めますし、その始末をするのは私になりそうなので二日で十分です」

提督「あ、うん……俺ってそんなに仕事サボってるかなぁ……そう言うなら二日あげるね」

大淀「あと、提督。生きてて良かったです。また明日からも頑張って下さい。それでは!」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:17:51.30 ID:gqrBASFk0<> 提督「片付け終わったな」

Bismarck「大淀、大人だったわね」

提督「まあ大淀さんは軽巡だが中身は重巡と大して変わらないしな。でも涙目だったな」

Bismarck「え? じゃあ堪えてたってこと?」

提督「だろうな。俺への涙だったのか自分への涙だったのかは、大淀さんにしかわからん」

Bismarck「ところで、これで終わり?」

提督「期待してんだろ?」

Bismarck「なっ、そんな事ないわよ。辛い思いをする子は少ない方が良いってだけ」

提督「まあ確かにな。にしても、お前も大淀に銃向けた時かなりツラそうだったな」

Bismarck「当たり前じゃない。仲間に銃を向けるなんて禁忌中の禁忌よ。……本気でやりたくはないわね」

提督「まあ、そうだな。でも次はあるぞ。もう夜だし夕食を食べたら再開しよう」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 15:18:29.27 ID:gqrBASFk0<> 一旦ここまで、続きは後で投下します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/03/18(日) 16:00:10.94 ID:E6DaoEZa0<> 不知火のと同じオチじゃなければ読む <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/03/18(日) 16:38:37.56 ID:A/8s5wru0<> 同じオチでも対象違うなら見る <> ◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:30:56.68 ID:gqrBASFk0<> それでは続き投下します
エンディングは不知火の方の作品とは違うものになりますが、ありきたりなエンディングなので、そこはお許しください… <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:31:52.93 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「……そうね。次って誰なの?」

提督「次は空母にしよう。そうだな……グラーフはどうだろう?」

Bismarck「え? ドイツ艦に手を出すの? ドイツ語で散々文句言われても知らないわよ」

提督「確かにそれは怖いが……ダメか? もしお前が嫌ならやめるよ。俺もお前達に過度な無理はさせたくないしな」

Bismarck「うーん……だったら初めからやらなきゃ……確かにあの子は優しい子だし心配だけど、分かったわ。やりましょう」

提督「そうと決まれば今回も手伝ってもらう」

Bismarck「今度はどんな役なの?」

提督「俺を殺す役だ」

Bismarck「またぁ!? さっきも提督を殺したじゃない! 殺してないけど!」

提督「ん? さっきのは大淀さんの思い込みであってお前が殺したとは言ってないぞ。でも今度は現行犯だ。ツェッペリンの
目の前で絞殺してくれ。もちろん本気で絞めんなよ。いい感じの所で落ちるから臨機応変に頼むぞ」

Bismarck「ええ、それは良いけど……あの子の方が私より高出力なのよ? 場合によっては引き剥がされるかもしれないわよ」

提督「ああ。それに関しては問題ない。剥がされそうなら早めに落ちるから任せとけ」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:38:41.15 ID:gqrBASFk0<> Graf「アトミラールに呼ばれたが、怒られるのだろうか……あぁ、思い当たる節しかない……」

ガタンッ!
Graf(? なんだ? ……執務室から? アトミラールとビスマルクが喧嘩でもして……? いや、まさかな。あの二人に限って……)

Graf「……心配だな。急ごう」

タッタッタッ
Bismarck「……来たわね」ヒソヒソ

提督「……部屋荒らしすぎるなよ」ヒソヒソ

提督「やめてくれ! 誰か、助けてくれ! 殺されそうなんだ! 誰かいないのか!」

Graf(殺されそう!? アトミラールの声……何が起きてるんだ!?)

コンコンコンッ
Graf「私だ! GrafZeppelinだ! 入るぞ!」

ガチャガチャッバンッ
Graf「大丈夫か、アトミラール!」

提督「あがっ……グラーフ、助けてくれ!」

Bismarck「あら、奇遇ね、ツェッペリン。少し待っていてくれるかしら?」

Graf「ビスマルクっ!? 貴方は、自分が何をしているのか分かっているのか……!?」

Bismarck「『提督の首を絞めてる』のよ」

Graf「分かっているならやめろ! ほら、アトミラールが苦しんでいるだろう! 冗談にしては笑えないぞ、だから早く……!」

Bismarck「冗談じゃない、本気よ。私は、本気で、提督を、殺してるのよ」

Graf「なぜ、だ……なぜ貴方が……! アトミラールを慕っていたのは嘘だったのか!?」

提督「グラー……フ……! 助けて……くれっ!」

Graf「ああ、今助ける、今、すぐに……」

Graf(私が動かなければ、アトミラールは絞め殺される。頭では分かっているのに体が言うことを聞かない……)

Graf(恐怖、困惑、憎悪、失望? 分からない、けれど混乱して、一歩足を出すことすら出来ない……。動け、動け、動いてくれ……私がやらなければ、ダメなんだ!)

Graf「……っやめろぉおおお!」

Bismarck(えあっ、速い……っ!?)

提督「あぁっ、あっ……」プラーン

Graf「離れろ、ビスマルクっ! ……えっ? あ、アトミラール? 嘘、だろう……?」

Bismarck「あーあ、一足間に合わなかったわね」

Bismarck(うわあ……助かった……本気で殺される所だったわ……目が艦娘に向ける目じゃなかったもの)

Graf「そんな……そんなのって……私が……私のせいで……? 私が怯えていたから……? あ、あぁ……そんな、そんな……」ボロボロ

Bismarck(これガチ泣きじゃない? ……というか、死んでないわよね?)

Bismarck「アトミラール?」ヒソヒソ

提督「どうした。ネタバラシか?」ヒソヒソ

Bismarck「いえ、生存確認よ」ヒソヒソ <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:40:14.20 ID:gqrBASFk0<> Graf「アトミラール、あとみらーる、うあ、うあぁ……ごめんなさい、ごめんなさい……うぅ……」

Graf「……ビスマルク。聞かせてくれ。なぜアトミラールを手に掛けた。答えてくれ」

Bismarck「そういう運命だったのよ。そういう結末。私も、貴方も、アトミラールもね」

Graf「私『も』? ……殺すのか。同じように、首をぐっと絞め上げて」

Bismarck「さぁ、どうでしょうね」

Graf「私が口外すれば貴方の立場はないぞ、ビスマルク」

Graf「貴方にも、貴方の言う『私の運命』にも、失望した。……頼む、私をアトミラールの元へ送ってくれ。こんな惨めな私を死なせてくれ」

Bismarck「それは……」

提督「出来ねえな。却下だ」

Graf「アトミラール!?」ビクッ

提督「いいか、ツェッペリン。お前、死にたいなんて言わないでくれよ。俺達が深海から引きずりあげたお前の命、もっと大切にしてくれよ」

Graf「え? あれ? あ、えと、すまない。錯乱してしまって、死にたいなんて思ってないぞ、断じて」

提督「分かってくれりゃ良いんだ。尤も、死んだフリなんてしてる俺が説教なんて出来ねえんだがな……おふっ」

Graf「良かった……私、貴方を助けられなかったと思って……救えた命を救えなかったと思うと……本当に申し訳なくて……」ギュッ

提督「良いって良いって。これからはちゃんと救ってくれ。まあ、こんなことはないのが一番だが」

Graf「無論だ。……では、ビスマルクは殺人犯ではないのだな」

Bismarck「当然じゃない。私が提督を殺す訳が無いわ。ツェッペリン、お詫びと言っちゃなんだけど」チラッ
提督「ああ。こんなもので許してもらえるかは分からないが、ちょっとした食事券だ。受けとってくれるか」

Graf「食事券……? ……そうか、そうか。では、二度とこのような事はするんじゃないぞ。貴方が死んで悲しまない艦娘などここには居ない」バタン <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:41:20.10 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「食事券ってなに?」

提督「ん? グラーフに渡したやつか? 以前お前達が見てた雑誌に載ってた店だ。新しい店で、夜景が綺麗に見えるんだっけ?」

Bismarck「ねえ……抜け駆け?」

提督「そう怒るなって。別にグラーフは好きだが、だからってお前を無下にしたりはしない」

Bismarck「怒ってないわよ」

提督「なら良いが。いい店だったら一緒に行こうぜ。そうだな、半月後くらいか?」

Bismarck「まぁ、楽しみにしておくわね。それより、次は? 私、今回みたいに片付けしなくてもいい死に方が良いわ」

提督「お、期待してるのか? だが残念、。楽しみがなくて悪かったな。さ、軽く書類仕事を片付けたら寝るぞ。あ、そうだ。たまには一緒に寝ようぜ」

Bismarck「嫌よ……明日の朝起きたら死んでそうだし」

提督「そこはお前が守ってくれるんじゃないのか? 俺だって、勝手に死にはしないよ。何かしら理由がなきゃ死なねえさ」

Bismarck「本当? 本当に……死なない?」

提督「理由が無きゃな。俺はお前を……お前らを置いて勝手に死ぬわけにはいかねえしな」

Bismarck「ありがとね、アトミラール。じゃ、早く仕事を終わらせましょ!」ニコッ <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:41:48.50 ID:gqrBASFk0<> Bismarck「ねえ、アトミラール」

提督「うん?」

Bismarck「急に死んだりしないでよね……?」

提督「絶対、とは言えんが、そうだといいな。俺も、皆と……お前と、別れたくないよ」

Bismarck「私も。おやすみ、アトミラール」

提督「あぁ。おやすみ、ビスマルク」

提督(死なないで……か。ったく、軍人に掛ける言葉じゃねえよ。やっぱり、やるか)

提督「絶対、お前を一人にはしない。最愛のビスマルク、我が愛しい妻よ。また、明日」
<>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/18(日) 22:44:10.78 ID:gqrBASFk0<> とりあえず今日はここまで 続きは明日の夕方には投下できると思います <> ◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:32:27.53 ID:zajAehwo0<> 投下してきます <> ◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:32:59.00 ID:zajAehwo0<> 提督「おはようビスマルク、よく眠れたか?」

Bismarck「ええ、お陰様で。心労もバッチリ回復したわ」

提督「俺は何もしてないさ。って、心労?」

Bismarck「自覚が無いって、重罪よね……」

提督「そーかもな。ともかく、今日からは真面目に仕事をするぞ」

Bismarck「ええ。もちろんそのつもりよ」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:34:00.13 ID:zajAehwo0<> Bismarck(あれから二日経ったけれど、アトミラールがそれ以来ドッキリを仕掛けることはなく、艦隊はいつも通りだった。……そう、私がそれを見つけるまでは)

コンコンコン
Bismarck「アトミラール、入るわよ」

Bismarck「ん? 居ないのかしら?」

ガチャガチャ
Bismarck「勝手に入っても怒られないわよね。だって、私は秘書艦だし……って、なにこれ」

Bismarck「ん、健康診断、再検査結果……?」

Bismarck(そういえば、何日か前に、健診に行くって言ってたわね……見ちゃおうかしら)

Bismarck「でも、再検査ってことは何かあったのかしら……いえきっと大丈夫、大丈夫」ススッ

Bismarck「っ!? ……嘘、でしょ」

Bismarck(ガン、だなんて。それも末期の……治療は不可能……そんなのって……)

Bismarck「と、とりあえず戻さなきゃ」ススッ

Bismarck「そんなぁ……どうして……」フラフラ

ガチャガチャッバタン
Graf「あ、ビスマルクじゃないか。……ん? どうしたのだビスマルク、足がおぼつかないぞ、酔っているのか?」

Bismarck「ああ、ツェッペリン、いえ、大丈夫……私は……なんでも……」

Graf「そうか? なら良いが……」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:34:35.01 ID:zajAehwo0<> Bismarck(理性で自分自身を律するのは得意だった。いや、だったはず。けど、こうして愛する人の死期を知って、ここまで感情に流されるとは思わなかった。震える体を止めることも出来なければ、後にアトミラールを問いただすことも出来なかった。何一つ、出来なかった)

Bismarck(それから数日、アトミラールは私……艦隊の皆に、いつも通り接してくれたが、怖くて彼の顔は見られなかった。彼はちょくちょく外出するようになり、死場とする病院を探しているのか、葬式の準備でもしているのかと思うと、内心穏やかではいられなかった。考えてみれば、あのドッキリは……) <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:35:09.11 ID:zajAehwo0<> 提督「じゃあ行ってくるよ、ビスマルク」

Bismarck「ええ。楽しんできてね……」

Graf「では行こうか、アトミラール」

提督「ああ。無理やり用事も一緒にしちゃって悪いな。せっかくの食事なのに」

Graf「問題ない。私はアトミラールと食事が出来ればそれで良い」

提督「そうか。俺もグラーフと食事が出来て嬉しいよ。今日は楽しもう」

Graf「まったく、罪作りだな」フフッ <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:36:12.34 ID:zajAehwo0<> Graf「例のドッキリが、まだ終わってない?」

Graf「……そういえば、まだ本命が残っていたな。えっと、誰だったかな?」パクッ

提督「勘がいいな、そういうことだ。言っちゃ悪いが、グラーフ達へのドッキリは、本命への予行練習みたいなもんさ」

Graf「ん、私達は効果を上げたか?」

提督「ああ、予想以上に上手く行ったよ。ここまで来るのに時間がかかったがな。これを見てくれ」スッ

Graf「健康診断? うわー、ガンがあるのかー、それも末期の!」ニコニコ

提督「ったく、知った様な顔しやがって……軍医長に話して作ってもらった、偽の診断書だよ」フフッ

Graf「診断書……あ、そうか。これを見てビスマルクはフラフラしていたのだな?」

提督「戦艦の砲弾食らってもそう簡単にはフラつかないあいつがそこまでだったんだ。余程堪えたんだろう。俺があいつなら寝込むだろうな」

Graf「うむ。だが、ここまで伸ばす必要はあったのか? ビスマルクが落ち込んでいるのは目に見えて明らかだったろうに」パクッ

提督「でも、そこの反応も込みで見たかったんだ。あいつは俺が死ぬって知ったら、俺への対応はどう変わるんだろう、ってな」

Graf「どうだったんだ?」

提督「全くと言っていいほど目を合わせてくれなくなったよ。嫌われたりしてなきゃいいが」

Graf「そうか……。なら、帰ったら、私がビスマルクに聞いてみよう。貴方のガンの話も合わせてしても良いか?」パクッ

提督「頼むよ。大淀にはこっちから話しておくよ。流石に親潮にまで負担をかけるのはどうかと思うから、このことは伏せておく」

提督「美味しいか、その料理は?」

Graf「ああ、とても美味しいぞ。普段はこのような高級店には来ないから、今日はとてもいい経験になった。アトミラールとも沢山話せたしな」

提督「そう言われると本当に心苦しいよ。お前には、これから苦労かけることになるんだし」

Graf「安心してくれ、アトミラールのためなら頑張れる。色々、話してくれるか」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:36:52.62 ID:zajAehwo0<> 提督「ただいまー」

Graf「もう皆眠っているかな」

提督「いや、執務室はまだ電気がついていたよ。多分、大淀かビスマルクだろうな」

Graf「では、ビスマルクが居たら私が連れて行く。大淀なら私は先に失礼するが」

提督「それで構わないよ」

Graf「ただいま、入るぞ」

ガチャ、バタン
提督「大淀さんか。ただいま」

大淀「お二人とも、おかえりなさい。お食事は楽しめましたか?」

提督「うん。遅くなってごめんね」

Graf「では、私は寝るぞ。おやすみ」

提督「ん、おやすみ」大淀「おやすみなさい」

提督「さて、と」

大淀「? どうしました?」

提督「ちょっと話があるんだけど、いいかな」

大淀「構いませんが……」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:37:26.88 ID:zajAehwo0<> 大淀「末期ガンで、明後日から入院、そしてそれは嘘だ、と」

提督「あぁ。もしビスマルクに話題を振られたら、その時はここの軍病院だとを教えてくれ。……振ってこなかったら、なんて考えたくもない」

大淀「ビスマルクさん、提督のことが心配なんだと思いますよ。決して、嫌いなんかじゃ」

提督「……ありがとう。皆には出張ってことにしておくから、緊急でない書類は溜めておいて、緊急の書類だけを病室に持ってきてくれ」

大淀「分かりました。……知らないうちに提督のお役に立っていたんですね、大淀は」

提督「うん?」

大淀「だって、私は練習か準備、そんなところだったんでしょう?」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:38:42.32 ID:zajAehwo0<> 提督「さて、と。入院当日だな」

Graf「軍病院は近くていいな」

提督「あぁ。軍医長に行ったら快諾してくれたよ」

提督「グラーフもこれから通う訳だしな」

Graf「そうだな。全力で『看病』しよう」

提督「それは助かるよ。重病らしいしな」フフッ <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 15:40:02.56 ID:zajAehwo0<> とりあえずここまで 次でエンディングです 後日談をちょっと書く予定です <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/03/19(月) 15:41:16.65 ID:0Du2uggR0<> お、後日談あるんか
wktk <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 20:14:33.25 ID:zajAehwo0<> Bismarck「……ねぇ、大淀」

大淀「なんでしょう?」

Bismarck「提督は、どこに行ったの?」

大淀「出張で、本土の方に行かれました」

Bismarck「本土……本当は?」

大淀「何が知りたいんですか?」

Bismarck「提督は、もう長くないの?」

大淀「……詳しくは知りません、ただ、長くはないでしょうね。提督は軍病院に入院されました」

Bismarck「……ありがとう。助かるわ」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 20:15:30.73 ID:zajAehwo0<> Bismarck「入院……。延命治療、それとも? もう、お別れなんて……」

Bismarck「(ひたすら、部屋のベッドの中で涙をこらえる。けれど、思えば思うほど、想いが募ってこらえきれなくなった。到底『枕を濡らす』程度では済むはずがなかった)」

Bismarck「……明日、軍病院に行きましょう」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 20:30:07.14 ID:zajAehwo0<> 翌朝


提督「病院飯って意外とうまいのな」

Graf「これで減塩だと言うのだからな。全く、こういうのを考える人は尊敬する」

提督「……なぁ」

Graf「うん?」

提督「いや……何となく、こういう味気ない朝にも慣れちまったと思ってね」

Graf「味気ない、か……」

提督「モーニングコールは便利でいい。的確かつ正確に俺を起こしてくれる。どっかの誰かと違って途中で諦めたりしないし一緒に寝ようともしない。……最近はそれくらい無機質に起こされてたんだ」

Graf「起こしてくれてはいたのだな」

提督「毎朝死んだような声で起こされるのはかなり苦痛だった。ああいうビスマルクはたまにでいいと思ったよ」

Graf「たまにはいいのか?」

提督「たまには、な。昔にもあいつが塞ぎ込んだ時期があって、それを思い出したよ」

Graf「……アトミラール」

提督「うん?」

Graf「頬が緩んでいるぞ。本当に好きなんだな、彼女が」フフッ

提督「……まぁ、ね。──今、どうしてるかな」

Graf「やはり心配か」

時計(7:30)
提督「あいつも朝飯食ってるかな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 20:30:42.55 ID:zajAehwo0<> 時計(7:45)
Bismarck「提督に会わせて」

受付「すみません、面会は8:00からなので、しばらくお待ち下さい」

Bismarck「……ちっ。私は彼の秘書のBismarckよ。上に伝えなさい」

受付「っ!?」ビクッ

受付『軍医長、金髪の女性が面会待ちなんですが、ビスマルクと名乗っていて』

軍医長『あー、ビスマルクさんか。分かった。通してくれ』

受付「すみません、許可が出ましたのでご案内します」

Bismarck「ありがとう、でもその必要はないわ。部屋番号だけ教えて」

受付「……こちらになります」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 20:35:10.27 ID:zajAehwo0<> プルルルルル
提督「ん、電話だ」ピッ

軍医長『よう、俺だ。今にビスマルクさんが行く。忙しいから切るぞ』プツッ

提督「あ、おい……聴いたか、グラーフ?」

Graf「ビスマルクが来たらどうするつもりだ?」

提督「別にどうもしねえさ。元からそのつもりだからな」

Graf「そのつもり、か……」

提督「……来たな。食堂の冷蔵庫からメロンを貰ってきてくれ」

Graf「あぁ。分かった」

Graf「(二人きりで話をしたいのだな……あ、メロンは切って持ってきた方が良いのだろうか……)」

ガラガラ
Bismarck「……!」

Graf「あ、ビスマルク。おはよう……」

Bismarck「……ツェッペリン?……そ。おはよう」スタスタ

Graf「(一瞥しただけか……もっと色々言われるかと思った)」ホッ

提督「ビスマルクか。おはよう」

Bismarck「……ぅじゃ……ぃわよ」

提督「?」

Bismarck「何が『おはよう』よ……! アトミラール、ねえ、体は……」

提督「まだ、動くよ」

Bismarck「なんで……、なんで私に、教えてくれなかったのよ」

提督「それは……」

Bismarck「弱ったとこを見られたくなかった? まさか、もちろん、そんな理由じゃないわよね」

提督「……そのまさか。俺の勝手なエゴさ。お前がどう思うかじゃない、俺がどう思うかしか考えてなかった」

Bismarck「……っ」

提督「もちろんお前と死ぬまで一緒に居たかったさ。死ぬまでずっと二人きりでな。でも、そんなの惨めで仕方なかった」

Bismarck「私は惨めだなんて思わない」

提督「だろうな。今考えればそうさ。お前はきっと俺の気持ちを癒してくれる。お前といれば心が落ち着くし、お前といると、なにものにも代えられない幸せを感じる」

Bismarck「ねえ、アトミラール、ここにいつもいるんでしょ?」

提督「ああ、そうだ」

Bismarck「なら、毎日会いに来るから、毎日私に元気な姿を見せてよ。変わらないアトミラールを……」

提督「会いに来てもいいが、変わらないってのは無理だな。……ビスマルク」

提督「弱々しくて、かっこよくもない、こんな俺だけど、死ぬまで俺のそばに居てくれ」

Bismarck「!!」

Bismarck「(そんなの、まるで告白みたいじゃない……やっぱりずるい)」

Bismarck「……もちろんよ。そんなの、ずっと前に誓ったことだもの」

提督「あぁ……そうだったな。そう言われればそうだった」

Bismarck「ところで、病気の方はどうなの?」

提督「あぁ――」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/19(月) 20:36:31.90 ID:zajAehwo0<> Bismarck「たったのひと月……本当にすぐじゃない……」

提督「医者曰く、ひと月持つかどうかも分からないらしくてな。こっちはピンピンしてんだが、どうやら突然来るらしい」

Graf「明日でもおかしくないのか?」

提督「流石にそれはないだろうが、一週間もすればいつ来てもおかしくないだろうな」

Bismarck「……ねえ、アトミラール」

提督「うん?」

Bismarck「怖くは、ないの?」

提督「怖いさ。もちろん怖い。でも、そんなの気にならないくらい、申し訳無さとか、悔しさとかがある。それに、お前らを置いていかなきゃならない不甲斐なさでとても苦しい」

Bismarck「そう……私、演習があるから帰るわ。また後で来るわね……」

提督「ああ。頑張ってこい」

ガラガラ
Graf「さて」

提督「これ、思ったより心苦しいな」

Graf「後悔しているのか?」

提督「ちょっぴり」

Graf「あとどれくらいこうしている?」

提督「大淀さんには一週間くらいって言っといたからそれくらいだな。六日後の土曜の夕方、俺の容態が急変しよう」

Graf「ふふ、変な言い回しだな。ビスマルクに死に際を見せるか?」

提督「ああ、そのつもりだ」

Graf「泣くんじゃないか、彼女は」

提督「だといいな。……久々に口をきけて良かった。嫌われてはいなかったな」

Graf「ああ、そのようで何よりだ。では、これから一週間は一度きりの演劇の、最初で最後の公演だな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:22:20.80 ID:l9rgsAs80<> 火曜日

提督「よう、ビスマルク。元気か?」

Bismarck「ええ。あなたは?」

提督「まあまあだな。悪くは無いよ」

Bismarck「なにそれ」
<>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:22:48.93 ID:l9rgsAs80<> 水曜日

提督「おはよう、ビスマルク。今日は雨だな」

Bismarck「雨は嫌い?」

提督「いや、嫌いじゃないさ。ただ、少し寂しい気持ちになるな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:23:19.57 ID:l9rgsAs80<> 木曜日

Graf「今日は検査だそうだ。昼には戻ってくるだろう」

Bismarck「ツェッペリンは何か変わったと思うことない?」

Graf「んー、外をよく見るようになったな。多分青空を見ているんだろう」

Bismarck「空……?」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:25:26.54 ID:l9rgsAs80<> 金曜日

提督「ビスマルク、おはよう」

Bismarck「おはよ。……元気?」

提督「まあまあだな」

Bismarck「(まあまあ? そんなに顔色が悪いのに……)」

提督「俺の朝飯だけ当たったぞ……本当に病院飯かよ……」

Graf「演技には好都合だったじゃないか」

提督「まあほとんど戻しちゃったけどな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:26:36.50 ID:l9rgsAs80<> 土曜日

提督「ビスマルクか」

Bismarck「ええ。私よ」

提督「毎日来てくれてありがとな」

Bismarck「もちろんこれからも来るわよ」

提督「本当にありがとうな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:28:53.60 ID:l9rgsAs80<> タタタタッ
Bismarck「そんな……急すぎる……っ!」


五分前……
大淀「そうですか……分かりました。すぐ向かいます」

大淀「ビスマルクさんを呼びに行かなきゃ……」

大淀「ビスマルクさん、居ますか! 提督が、提督が……!」

Bismarck「アトミラールがどうしたの?」

大淀「容態が急変したらしくて、もうギリギリって感じらしくて……!」

Bismarck「……行くわよ、大淀」

大淀「はい!」

大淀「はぁ、はぁ……速すぎ……置いてかれた……」

大淀「というか、ギリギリってなんなのよ……もうちょっとまともな嘘つけないんですか……」

時計(9:30)
受付「あっ……ビスマルクさん!」

Bismarck「提督はどこ?」

受付「いつもの病室にいらっしゃいます」

Bismarck「ありがとう!」

タッタッタッ……
……ガチャッ <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:30:41.27 ID:l9rgsAs80<> Bismarck「アトミラール!」

提督「……」

Graf「あ、こんばんは、ビスマルク。ほら、アトミラール。ビスマルクが来たぞ」

提督「……ビスマルクか。あぁ……レストラン……連れていけなかったな……」

Bismarck「っ……バカ言わないで、ねぇ……」

提督「そうだな……俺は……バカだな……」

Bismarck「一ヶ月って言ったじゃない……早すぎるわよぉ……ひぐっ、ぐすっ……」

提督「お前ともっと一緒にいたかったな……」

Bismarck「今更そんなこと言ったって遅いじゃない……」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:31:28.73 ID:l9rgsAs80<> 提督「なあ、ビスマルク?」

Bismarck「……なに?」

提督「俺は、お前と一緒にいられて幸せだった。お前は、どうだった?」

Bismarck「私は……そうね。幸せだったわ。とても、とっても、幸せだった」

提督「そうか……ありがとな。もっと幸せにしてやりたかったんだけど、ここまでらしい」

提督「……手を、握ってくれないか」

Bismarck(アトミラールの左手に、両手を重ねる。暖かいその手は、いつもと変わらなかった)

提督「暖かいな……。もし俺が生まれ変わって、お前の前に現れたら、また、ケッコンしてくれるか?」

Bismarck「ええ、もちろん! 生まれ変わった貴方を見つけて、結婚をせがんであげるわ」

提督「そこまでか、それは嬉しいな……。ビスマルク、机の引き出しだ」

Bismarck「引き出し?」

提督「ああ。手紙が入ってる。伝えられなかったこと、伝えたかったこと、今伝えたことも書いてあるから、後で読んでくれ」

提督「これで、いいんだ。ありがとう、ビスマルク。また会えたら、一緒に……遊ぼうな──」

Bismarck「……ええ。楽しみにしてるわね」

Bismarck「さて、帰りましょう」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:32:06.25 ID:l9rgsAs80<> Bismarck「引き出しって、どこの引き出し……とりあえず全部開けてみましょ」

Bismarck「ここは空、ここは……あ、これ、記念写真……」

Bismarck「私とケッコンしたときの……こんなのまで取っておいてたのね」

Bismarck「ここは……封筒、これかしら」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:35:41.63 ID:l9rgsAs80<> ビスマルクへ

まず、一つ。正確なことは言えないが、俺は急死するかもしれない。
だから、もしかしたら、死に際の俺から聴いたことが書かれているかもしれない。
俺は、お前とケッコンしてよかったと思ってる。お前はどう思ってるんだろうな。
レストランに連れていけなかったのも後悔してる。
思い出せば悔やまれることばかりだが、お前との日々は楽しかった。

お前を好きになった経緯はケッコンするとき話したな。
友達が出来なかったんだよな。で、それ言ったらお前怒ってさ。
まだあの頃は日本の艦ばっかだったもんな。
今じゃドイツだけじゃない、イタリアや、イギリス。ソヴィエトの子も居て、賑やかだよな。
もっと長く、見ていたかった。でもまあ、天国からでも見守ることは出来るかな。

最後に、ありがとう、ビスマルク。今も変わらず、君を愛してる。

提督より <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:39:04.93 ID:l9rgsAs80<> Bismarck「えへへ……懐かしいわね……ん? 二枚目もあるのね」



追伸

明後日、一緒にレストランに行こう。



Bismarck「……は?」

ガチャガチャ
Bismarck「え、なに」

提督「やあ」

Bismarck「……え? あ、え、え? 提督、え、え?」

提督「まずは落ち着け」

Bismarck「え、アトミラール、死んだはずじゃ……あっ!」

提督「明後日、レストラン行こうぜ」

バタンッ
提督「っ! ど、どうした、急に押し倒して……悪かったよ、ごめんって」

Bismarck「人が本気で心配したのに……! う〜〜っ! このバカ! 嘘つき! 大っ嫌い!」

提督「……本当は?」

Bismarck「言わせないでよ、恥ずかしいじゃない……」

提督「俺は言ったんだけどな?」

Bismarck「うぅ……分かったわよ。Ich liebe dich……これでいいでしょ?」

提督「ん、それ、どういう意味だ?」

Bismarck「内緒! ドイツ語勉強したら良いと思うわ!」

提督「そうだな。ドイツ語勉強して、いつか、ドイツの皆に挨拶しにいこう」

Bismarck「……ねえ、アトミラール?」

Bismarck「急に死んだりしないでよね。約束してよ」

提督「……ああ。俺は死なない。お前と一生、添い遂げる。約束だ」

提督「お前も、死んだりするなよ?」

Bismarck「当たり前じゃない! 一生貴方の側にいてあげるわよ!」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/21(水) 21:40:01.75 ID:l9rgsAs80<> 終わりです
このあと、後日談を書きます、書き終わったらそのうち投下します <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/03/21(水) 21:51:27.70 ID:TcQ1CSCSO<> >>48
縦読みじゃなかった… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/03/22(木) 09:39:04.62 ID:fQzMjDO90<> そういえば前のは縦読みだったけどまた別のオチになってたww
後日談期待 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/28(水) 22:03:52.94 ID:jWr+HV9w0<> 少し書き溜めたので投下していきます <> ◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/28(水) 22:04:24.33 ID:jWr+HV9w0<> 月曜日、7:00
Bismarck「おはよう、アトミラール、晴れていて、いい朝よ」

提督「ん、んん……おはよう、ビスマルク。よく眠れたか?」

Bismarck「ええ、ぐっすりと。あなたは?」

提督「同じく、ぐっすりと」

Bismarck「それはよかったわ。じゃあ私、着替えてくるわね」

提督「ああ――。(ビスマルクの私服見るの、いつぶりだったっけな……)」

7:30
提督「その服、かわいいな。お前によく似合ってる」

Bismarck「ふーん、それはよかったわね」ムッ

提督「ったく……かわいいお前によく似合ってるよ」

Bismarck「仕方ないからそれで許してあげるわ♪」

提督「(相変わらずわかりやすいな)」

Bismarck「でも、ねえ、アトミラール」

提督「うん?」

Bismarck「まだ朝よ? 朝、早朝。夜景って朝にも見れるのかしら」

提督「何バカなこと言ってんだ。レストランの前にデートするに決まってんだろ」

Bismarck「どこかへ行くの?」

提督「どこか行きたいところあるか?」

Bismarck「んー、そうね……特にはないわ。決めてないの?」

提督「いや、だいたい決めてはあるんだ。電車で30分くらいで動物園にも水族館にも行けるんだが、どっちがいい?」

Bismarck「んー、そうね……どっちもいけないかしら?」

提督「どっちもか……まぁ、いけなくはないな。先はどっちにする?」

Bismarck「寒いから水族館からにしましょ」

提督「どっちも一緒じゃないか? まあ、行こうか」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/28(水) 22:26:21.63 ID:jWr+HV9w0<> ガタンゴトン……
提督「街に出るのは久しぶりだな」

Bismarck「ちょっと前まで大規模作戦で忙しかったものね」

提督「まったくだ。あ、そうだ。ビスマルク、いつか日本も観光するか?」

Bismarck「観光、いいわね……楽しみにしてるわ」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/28(水) 22:31:48.53 ID:jWr+HV9w0<> Bismarck「水族館……大きい建物ね……提督、早く行きましょ!」ギュッ

提督「あ、おい、そんな走んなって」

Bismarck「入館料は、大人二人で……1400円ね」

提督「地図を一枚貰っていこう」


Bismarck「最初は何を見に行くの?」

提督「ちょっと待てよ、うん、そうだな……まあ順番に行くか。最初は小魚のコーナーだな」

Bismarck「熱帯魚とか? ……ねえ、アトミラール。地図見ながら歩くのはやめなさい」

提督「ん? ああ、悪い。……ほら、これとか母港の近海にも居たろ」

Bismarck「本当だ、これ、色が綺麗ね」

提督「熱帯魚はいろんな色の魚が居るから見てて楽しいな」

Bismarck「この大きな水槽は……あ、あれ、マンタかしら?」

提督「そうだな。エイの仲間らしいが……いつぞやの夏を思い出す、嫌な感じだ」

Bismarck「言われてみればいつぞやの忌々しい複葉機に似てるわね」

提督「別にソードフィッシュには似てないと思うが……」

提督「こっちはカニか…タカアシガニだな」

Bismarck「足が長いわ…歩きづらそうね」

提督「でも美味しいらしいぞ。俺は甲殻類苦手だから食べたことないが」

Bismarck「こっちは――」

提督「ああ――」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/28(水) 22:34:10.42 ID:jWr+HV9w0<> Bismarck「ねえ、アトミラール、これ……」

提督「うん? 鯨のキーホルダーか。かわいいな。欲しいのか?」

Bismarck「ちょっとだけ、ちょっとだけよ」

提督「そうか。一個でいいか?」

Bismarck「お揃いで……ダメかしら?」

提督「ああ、わかった。じゃあこれ二個ください――」


Bismarck「ありがとね、アトミラール」

提督「気にすんなって。記念になるからな」

Bismarck「記念……そうね」

Bismarck「――えへへ、記念かぁ……」

提督「じゃあ次は動物園だな、また電車か」

Bismarck「電車乗るのも楽しくていいじゃない」

提督「まあな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/31(土) 23:22:18.19 ID:/kTkzFFH0<> Bismarck「付いたわね、動物園」

提督「やっぱり電車乗ってるときは雑談しかしてなかったな」

Bismarck「大体さっきと一緒だったものね」

提督「そんなもんだろ。ささ、入ろうぜ」

Bismarck「入園料は……大人二人で1200円ね」

提督「はいよ、1200円ね」

Bismarck「地図は要るかしら?」

提督「そうだな、貰っておこう」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/31(土) 23:22:48.11 ID:/kTkzFFH0<> Bismarck「これはヤギね、かわいいわね」

提督「ヤギってちょっと目が怖いよな」

Bismarck「そうかしら……?」

提督「羊も居るぞ、ほら」

Bismarck「もこもこね……あったかそうね」

提督「アルパカも暖かそうだな」

Bismarck「こっちにはゴリラがいるわ、大きいわよ!」

提督「ああ、大きいな……お、ドラミングした」

Bismarck「力強いわね――あ、こっちにはチンパンジーが居るわ! 木に登ってるわよ!」

提督「器用に登ってるな……昔は俺も木登りできたんだぜ」

Bismarck「チンパンジーと張り合ってどうするのよ……」

Bismarck「――あ、ライオンだ、アトミラール、ライオンがいるわ!」

提督「俺はトラの方が好きだな」

Bismarck「トラもかっこよくていいわよね……でも見たのは初めてなのよね」

提督「そういえばそうだったな」 <>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/03/31(土) 23:32:43.44 ID:/kTkzFFH0<> Bismarck「キリンの首長かったわね……」

提督「サイの角も凄かったな」

Bismarck「ペンギンもかわいかったわね」

提督「何かおみやげ買うか?」

Bismarck「ぬいぐるみとかは別に興味ないけど……そうね、ボールペンなんかどうかしら?」

提督「普段使い出来そうでいいな。二本買っていくか」

<>
◆6JdLhB27E2<>saga<>2018/04/16(月) 19:02:49.45 ID:1vOX1t6E0<> Bismarck「改めて、今日はありがとね、アトミラール。楽しかったわ」

提督「どういたしまして。こちらこそありがとう。良い一日だったよ」

Bismarck「街がキラキラひかってる……本当に綺麗ね。本当に、とっても綺麗」

提督「やっぱり、お前と一緒に来て良かったよ」

Bismarck「そこは『お前の方が綺麗だ』とかって言ってくれたって良いじゃない?」

提督「言ったら言ったで怒るだろ。そもそも、俺はそんな柄じゃない」

Bismarck「むぅ……まあ、それもそうね。食べましょう」

提督「ああ。楽しんでくれ」 <>