◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:19:48.11 ID:/n5bZo6G0<>アスラン「戦争はヒーローごっこじゃない!」

アスランの平手がシンの頬を打ち、その音が格納庫に響き渡る。
帰還したレイとルナマリア、メカニックたちがしんと静まり返った。

シン「…殴りたいのなら構いやしませんけどね!俺は間違ったことはしてませんよ!」

アスランを睨みつけ、シンは言い放つ。

シン「あそこの人たちだって、あれで助かったんだ!」

シンの言葉に、アスランは二度目の平手打ちで答えた。

アスラン「自分勝手な判断をするな!力を持つ者なら、その力を自覚しろ!」

シン「くっ…」

シンには、アスランの叱責の意味が理解できなかった。
自分は非道な連合の兵士たちを討ち、捕らわれていた人々を解放しただけだ。間違ったことはしていない。
このときはそう思い、アスランへの反感を強めただけだった。

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<>アスラン「頼りにしているぞ、シン」
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:23:18.66 ID:/n5bZo6G0<> しばらくしてミネルバは、ガルナハン攻略のためにマハムール基地への入港を果たし、艦内にアナウンスが流れる。

<入港完了。各員、別命あるまで待機。ザラ隊長はブリッジへ>

アスランたちがブリーフィングを行っている間、他のクルーたちは思い思いに過ごしていた。
仏頂面を続けているシンを見て、レイとルナマリアは苦笑する。

ルナマリア「まあ、シンの気持ちもわからなくはないけどね。急に現れて、フェイスだって言われて」

シン「……」

ルナマリア「おまけに二度もぶたれたし」

シン「別に、殴られたことを根に持ってるわけじゃない」

ルナマリア「ふーん?」

シン「俺は間違ったことはしてないのに、あいつが分からず屋だから!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:29:27.55 ID:/n5bZo6G0<> レイ「…しかし先の作戦、おまえに落ち度が無かったわけじゃない」

シン「え…?」

レイ「独断専行によるインパルスの孤立、そして事情があったとはいえ、自分の判断だけで敵基地を攻撃したのは問題だ」

シン「じゃあレイは、捕まってた人たちを見殺しにすればよかったっていうのかよ!?」

レイ「そうは言っていない。だが、俺たちは戦争をしているんだ。もし敵基地に罠でも仕掛けてあったらどうなっていた?」

シン「それは…」

レイ「おまえとインパルスが戦えなくなれば、ミネルバにとっては致命傷だ。総崩れになる可能性もある」

レイ「怒りに身を任せて冷静さを失えば、そのツケを払うのは自分ひとりではないかもしれない」

シン「……」

レイ「今のは軍人としての忠告だ。おまえが死んだら、友として俺は悲しい」

シン「レイ…」

レイ「だから、あまり無茶はするな。ザラ隊長の言うことにも、少しは耳を傾けてやれ」

シン「……わかったよ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:32:44.23 ID:/n5bZo6G0<> シン「ごめん、ちょっと風に当たってくる」

シンが席を外し、残されたレイとルナマリアは再び苦笑する。

ルナマリア「レイの言うことは素直に聞くのよね、シンのやつ」

レイ「そういうわけじゃないさ。元々根は素直なやつなんだ、シンは」

ルナマリア「私には反骨精神の塊みたいに見えるけど。アカデミーのときもよく教官と衝突してたし」

レイ「自分の気持ちにも素直であるが故に、納得のいかないことには黙っていられないんだろう」

ルナマリア「なるほどねー」

レイ「隊長も隊長で不器用な方だ。あれでは余計に反発されるだけだというのに…」

ルナマリア「シンと隊長って、案外似たもの同士だったり」

レイ「そうかもしれないな」

レイ「お互いに頭が冷えたら、もう一度よく話をしてみてほしいものだが」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:36:41.37 ID:/n5bZo6G0<> 甲板に出たシンは、沈んでいく陽を眺めながらぼんやりと考えていた。
怒りで血が上った頭は、レイの言葉と甲板に吹き抜ける涼やかな風が冷やしてくれた。

しかし、どうしても心のどこかでアスランに対する苛立ちが燻ぶっていた。
彼がオーブにいたこと、今更になってザフトに出戻ったこと、そんな彼に指図されること、頭ごなしに否定されて殴られたこと。
理由を挙げればキリがない。

この先自分は上手くやっていけるのだろうかと、大きな溜息をついたのと同時に、背後のドアが開いた。
振り返り、甲板に入ってきた人物をみとめた途端、シンの眉間にシワが寄った。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:38:30.58 ID:/n5bZo6G0<> アスラン「人の顔を見るなり、そんな顔をするなよ」

怒るどころか笑みすら浮かべてみせたアスランに、シンはどんな態度をとればいいのか図りかねていた。
てっきりまたお説教のひとつでもされるものだと思っていたから、拍子抜けしてしまったのだ。

シン「いいんですか?フェイスがこんなところでサボってて」

アスラン「ああ、ブリーフィングが終わったんでな」

つい挑発的な物言いになってしまうが、アスランは気にした様子もない。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:40:39.31 ID:/n5bZo6G0<> シン「……」

アスラン「暇なんだ、少し話相手になってくれないか?」

シン「それなら、ルナのところに行ってやれば喜びますよ」

アスラン「そういうなよ。君と話がしたいんだ」

どういう風の吹きまわしだ、とも思ったが、結局シンはアスランの申し出を受けることにした。
断って出ていくのも、子供が拗ねているようでみっともなく思えたし、アスランの態度がなんとなく気になったからだ。

シン「まあ、いいですけど」

アスラン「ありがとう」

シン「で、なにを話したいっていうんです?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:42:35.38 ID:/n5bZo6G0<> アスラン「…単刀直入に聞くが、君は俺のことが気に入らないか?」

アスランは、シンの瞳を真っ直ぐに見つめて問いかけた。

シン「は?…はあ、気に入らないですが」

あまりにストレートにぶつけられた問いに一瞬面食らったものの、シンもまたアスランの瞳を見返して答えた。

アスラン「そうか…それは何故なんだ?」

シン「そんなの、この間までオーブでアスハの護衛なんかやってた人が急に戻ってきて、フェイスだ、隊長だなんていって…」

シン「あなたのやってることはめちゃくちゃですよ!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:45:33.16 ID:/n5bZo6G0<> アスラン「…確かにな」

シン「え?」

あっさりと認めたアスランに、シンは戸惑った。

アスラン「確かに、俺のやっていることは、君から見ればめちゃくちゃだろう」

アスラン「しかし、だから俺の言うことは聞けないと、上官として認められないと、君はそういうのか?」

シン「それは…」

先ほどのレイの言葉が頭をよぎる。隊長の言うことにも耳を傾けてやれ、と。

シン「そこまで言うつもりは、ないですけど…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:47:44.43 ID:/n5bZo6G0<> アスラン「なら、先のインド洋での戦闘のことはどう思ってる?」

シン「……」

アスラン「今もまだ、間違いじゃないと思うか?」

シン「さっきまで、レイたちと話してたんです、そのこと」

シン「俺が自分勝手に動いて無茶したら、そのツケを払うのは自分だけじゃないかもしれないって言われて…。少しは反省しましたけど」

アスラン「それだけじゃない。彼らにもう抵抗する力は残されていなかった。基地ごと殲滅する必要はなかったはずだ」

シン「でも…あのとき、捕まった人たちが撃ち殺されてるの見て、連合の奴らが許せなくて…」

アスラン「そんな光景を目にすれば、誰でも君と同じことを思うさ、多分」

アスラン「だが、俺たち軍人が自分の理屈と正義だけで力を振るってしまったら、それはただの破壊者だ」

シン「……」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:49:47.37 ID:/n5bZo6G0<> アスラン「己の無力さを呪い、力を求めるのはいい。だが、力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる」

アスラン「それだけはどうか、忘れないでくれ」

シン「…はい」

今度こそ納得した様子のシンを見て、アスランは微笑みながら言った。

アスラン「それさえ忘れなければ、君は優秀なパイロットだ」

アスラン「頼りにしているぞ、シン。君がミネルバのエースだ」

シン「え…!?」

アスラン「話は以上だ。では、またな」

アスランが甲板から出ていくのを、シンは茫然としたまま見送った。
予想もしていなかった賛辞に、なんだかくすぐったいような感覚を覚える。
ミネルバのエース。悪くない響きだ。
シンの中に渦巻いていたどうしようもない苛立ちは、いつの間にか消え失せていた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/12(木) 00:54:13.02 ID:/n5bZo6G0<> 今回はここまでになります。
アスランとシンがもう少し親交を深めていたらというもしもの話です。
全然書き溜めてないので更新は不定期です。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 00:55:00.61 ID:4/V7Zk3oO<> おつおつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 01:24:41.77 ID:IScWtifmO<> これはまた珍しい
種タヒSSって大体シンTUEEEEEEとかになるし
こういうコミュニケーションを取っていく系はあまりないから期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 01:41:40.44 ID:k0yGDrnHo<> 乙ー こういうの見たかったんだよね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 02:43:28.14 ID:tqP0/D2eo<> アスランが導いてくれるならどうなるかとか考えたりもしたなぁ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 06:04:21.78 ID:8AZDThlbO<> >>14
このssを褒める気持ちは分かるがシン強物なんて滅多にないだろ?だいたいラクシズキラマンセーばっかだし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 09:04:06.20 ID:xDwA5fCn0<> どっちがマンセーとかどうでもいいよ主観でしかないし
このSSと関係ない話だし

互いにお話してコミュニケーション深めてけばいい方向に向かうだろうなって思うよねやっぱり
とにかく期待 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 09:45:07.94 ID:e97SfmPDO<> 乙
種死懐かしい
こうして思い返すと、シンもアスランも激情家だった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 18:54:50.03 ID:98vPkZYI0<> ここのアスラン…出来る…! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 19:57:27.35 ID:zm+O5XezO<> シン強いけど我が強すぎたからああなったしなぁ
それがこうやってちゃんと話し合って絆を深めたらどうなるのか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/12(木) 20:06:44.53 ID:YV4bsd0P0<> 乙です <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:10:04.20 ID:qu2ciWen0<> マハムール基地を発ち、ローエングリンゲート攻略のためガルナハンへと向かうミネルバ。
その艦内では、レジスタンスの一員である少女"コニール"を迎え、ブリーフィングが行われていた。

アスラン「これより、ガルナハン・ローエングリンゲート突破作戦の詳細を説明する」

敵の陽電子砲"ローエングリン"を叩こうにも、強固なリフレクターを搭載したMAがそれを守っているため、正面突破が有効とはいえない。
そこでアスランたちが陽動をかけてMAを砲台から引き離し、その間にローエングリン砲台付近に通じる坑道の中を分離したインパルスで通り抜け、
奇襲によってローエングリン砲台を撃破するというのが、作戦の概要だった。

アスラン「抜け道となる坑道内は非常に狭く、分離状態のインパルスでようやく通れる程度だ」

アスラン「視界は悪いが、ミス・コニールが持ってきてくれたデータ通りに飛べばいい。やれるな?シン」

シン「はい!」

躊躇や不安を微塵も感じさせないシンの返答に、アスランは満足げに頷いた。
視界の端でルナマリアが目を丸くしていたが、シンはそれを無視した。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:13:50.95 ID:qu2ciWen0<> アスラン「ではミス・コニール、彼にデータを」

促されて、コニールはデータの入ったディスクをシンに差し出した。

コニール「…前にザフトが基地を攻めたとき、街は大変だったんだ。逆らった人たちは酷い目に遭わされて、殺されて…」

コニール「今度失敗したらどうなるかわからない、だから…!」

涙ぐむコニールの頭にそっと手を乗せ、シンは微笑んだ。

シン「大丈夫、俺はこの艦のエースなんだ。必ず成功させてみせるさ!」

コニールを安心させるためだけに出た言葉ではない。
そう言い聞かせることで、自身を奮い立たせたのだ。

コニール「うんっ…頼んだぞ!」

シン「ああ!」

もし連合軍に見つかればただでは済まされなかっただろうに、こんな小さな子供が、
必死に恐怖に耐えながら、街を救うという大任を背負ってここまで来たのだ。
手渡されたデータディスクに、シンは自らの使命の重みを感じとった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:15:42.77 ID:qu2ciWen0<> やがて作戦が開始され、インパルスも発進準備に入っていた。
メイリンが読み上げる発進シークエンスを聞きながら、シンは操縦桿を握りしめる。

メイリン「コアスプレンダー、発進どうぞ!」

シン「シン・アスカ!コアスプレンダー、行きます!!」

発進したコアスプレンダーの後を、チェストフライヤー、レッグフライヤーがビーコンに従って追従する。
シンは躊躇なく、コアスプレンダーを岩壁の隙間に飛び込ませた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:17:18.77 ID:qu2ciWen0<> 一方、アスラン率いるミネルバのMS隊は、MA"ゲルズゲー"を中心とする敵部隊と交戦。
MSの数の差、ローエングリン砲台の火力、そしてゲルズゲーの圧倒的な防御力を前にして、ミネルバは苦戦を強いられていた。
ミネルバの主砲"タンホイザー"の一撃すら、ゲルズゲーは無傷で防いでみせたのだ。
事前に知ってはいたものの、いざ目の前でその性能を見せつけられ、アスランは嫌な汗が伝うのを感じていた。

アスラン「シンは以前、あれと同タイプのMAと交戦し撃破したと聞いたが、一体どうやって…」

いや、撃破を焦る必要はない。
ゲルズゲーの持つ陽電子リフレクターがいかに強固であろうと、この場に釘付けにして時間を稼げば、インパルスが敵の陽電子砲を潰してくれる。
そうなれば、戦況は一気にこちらに傾くはず。
セイバーの機動性を活かし、アスランはゲルズゲーを撹乱する。

アスラン「レイ、ルナマリア!敵MAは俺が引き付ける!シンが来るまでの辛抱だ、持ち堪えるぞ!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:19:14.49 ID:qu2ciWen0<> シンは、モニターには殆どなにも映らないほどの暗闇の中を、データだけを頼りに進んでいた。
実際に坑道内に入ってみて、シンはこれがどれほど困難な作戦であるかを理解した。

狭い坑道内を抜けるまでは、合体シークエンスに移行することもできない。
フェイズシフト装甲をもたないコアスプレンダーの状態では、岩壁に激突すれば命はないだろう。

それでも、シンはスピードを緩めることなく、ひたすらに進み続けた。
アスランの信頼に応え、コニールとの約束を果たすために。

コクピットに警告音が鳴り響き、行き止まりが近いことをシンに知らせた。

シン「やっと出口か!」

シンは暗闇に照準を向け、コアスプレンダーのミサイルを発射した。
爆発によって岩壁が崩れ、流れ込んだ光の中に機体を突っ込ませる。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:21:27.09 ID:qu2ciWen0<> モニター一面に広がる青空は、無事に坑道を抜けたことを意味していた。
だが、安心している暇はない。
視界の中に敵のローエングリン砲台を確認しながら、シンは機体を合体シークエンスに移行させた。
三機の戦闘機は瞬く間にトリコロールのMSへと姿を変え、ローエングリンに肉薄する。

シン「堕ちろっ!!」

インパルスのビームライフルに貫かれたローエングリンが爆炎を噴き上げ、ゲルズゲーに一瞬の隙が生まれる。
アスランがそれを見逃すはずもなく、セイバーの両肩から引き抜かれた二振りのビームサーベルが、ゲルズゲーを引き裂いた。

アスラン「敵の主力は潰した!このまま制圧するっ!!」

一気に攻勢に転じるミネルバ。
ローエングリンとゲルズゲーという両翼をもがれた連合軍は士気を失い、総崩れとなった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:24:20.67 ID:qu2ciWen0<> 作戦終了。ガルナハンの街は、連合軍基地陥落の知らせを受け、活気を取り戻していた。
解放の喜びに色めく人々、街を救った英雄として歓迎され、照れくさそうに笑うシン。
アスランはその光景をセイバーのモニター越しに見やり、笑みを浮かべた。

だが、ザフトの勝利がもたらしたものは、それだけではなかった。
街の影に引きずりこまれ、男たちに足蹴にされ、血を流す連合軍の兵士たち。
連合軍がこの街にしてきたことを考えれば、当然の仕打ちではあるし、
戦争をしている以上、どちらかが戦いに勝てば、負けた方は苦汁を嘗めることになる。
頭では理解していても、アスランはその光景に後味の悪さを感じずにはいられなかった。

アスラン「わかっていたことじゃないか。何を今更…」

自嘲し、セイバーのコクピットハッチを開く。
困難な作戦をやり遂げ、期待に応えた部下に、ねぎらいの言葉のひとつぐらいかけてやらなければ、と。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/14(土) 00:31:23.76 ID:qu2ciWen0<> 今回はここまでです。
アスランとシンの関係がどこまで物語に影響するかはわかりませんが、
ひとまずこんな調子で物語の大筋は変えずに進めていくことになると思います。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/14(土) 03:48:06.67 ID:qz2XEwRFo<> 乙乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/14(土) 09:17:24.69 ID:cHYUR0loO<> アスランもシンもお互い信頼関係を気付ければ少なくともアスラン逃亡の際にアスランの話に耳を傾けることはしたんだろうなと思う
そうすれば少しシンの暴走癖も抑えられ冷静になることが増えステラを守れた可能性もあるんじゃなかろうか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/14(土) 10:18:15.68 ID:etkuZ4hDO<> 乙 大量のウィンダム撃墜したり、巨大MAも破壊したシンからすれば、アスランにはもうちょっと活躍してほしかったんだろうな、と思った
確かに、シンからすると偉そうな事いったり、殴ってくる癖に、セイバーの戦績がイマイチというか、ここのゲルズゲーくらい自力でいって欲しかったのかな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/14(土) 10:31:40.92 ID:Wsw+3DSL0<> 乙ー
アニメよりちょっと素直になってるね

やっぱ一言でも会話が増えると感情って変わってくるよね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/14(土) 18:21:52.62 ID:qB9L1hfAO<> >>33
つうよりシンの場合元々はザフトの赤服でエリートだったのにオーブでずっと何もせずにいたくせに急にまた出戻りしてフェイスなって隊長になったからムカつくんでしょ
今のザフトは自分達が頑張った結果なのに急に出戻りし、しかも議長に信頼されてムカつくって <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:27:42.37 ID:LVOQTlxo0<> ガルナハン基地を攻略したミネルバは、美しい港町"ディオキア"にあるザフト軍基地へと到着した。

上陸許可を得るや否や、クルーたちは一目散に基地の一角に集まった。
それというのも、この日ディオキア基地でラクス・クラインの慰問コンサートが行われるからだった。

ミーア「みーなさぁーん!ラクス・クラインでぇーすっ!」

殆どの兵士たちが熱狂する中、壇上の歌姫の正体を知るアスランだけは、冷や汗をかいていた。
天真爛漫なキャラクター性も、扇情的な衣装も、以前のラクスとは明らかに違って見える。
もし別人だとバレたら、議長はどうするつもりなのだ。

メイリン「ラクス様かわいい!でも、なんか変わられましたよねぇ」

アスラン「え!?あ、ああ…まあ…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:29:11.16 ID:LVOQTlxo0<> なんとかコンサートを乗り切ったアスランは、シンとルナマリアを連れ立って、デュランダルの元へとやってきていた。

アスラン「失礼します」

デュランダル「久しぶりだね、アスラン」

先にテーブルについていたレイとタリアを含めれば、ミネルバの中心人物が一堂に会したことになる。

デュランダル「それから、君たちは…?」

ルナマリア「ルナマリア・ホークであります」

シン「シン・アスカです!」

デュランダル「ああ、君のことはよく憶えているよ、シン」

シン「え…?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:31:03.57 ID:LVOQTlxo0<> 思いがけない言葉に目を丸くするシンを見て、デュランダルは微笑んだ。

デュランダル「君の活躍の知らせは、私の元にも届いているよ。特にガルナハンでは、大活躍だったそうだね」

シン「い、いえ…ザラ隊長の作戦が凄かっただけで…」

アスラン「それは違うぞ、シン。あの作戦は、おまえだからこそ任せることができたんだ。誇っていい」

デュランダル「実践はアーモリーワンが初めてだったというのに、本当に大したものだよ。」

シン「あ、ありがとうございます!」

デュランダルとアスランから手放しの賛辞を受け、シンは小躍りしそうになるのを必死に抑えていた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:34:12.09 ID:LVOQTlxo0<> その後、デュランダルの話は今現在の戦況の説明へと向かい、
シンはデュランダルにひとつの問いを投げかけられる。

デュランダル「シン、なぜ戦争が無くならないのか…考えてみたことはあるかな?」

シン「え…それは…」

シン「ユニウスセブンのときみたいなやつらや、ブルーコスモスみたいな自分勝手な連中がいるから…」

デュランダル「ふむ」

シン「…違いますか?」

言いながら、シンはいまいち自分の答えに自信を持てずにいた。
今までこんな根源的なことを訊かれたこともなかったし、考えてもみなかったのだ。

デュランダル「もちろん、それもある。憎いとか怖いとか、自分と違う考えを許せないとか、そういった理由で戦いが起こることも少なくない」

デュランダル「だが…それよりも、もっと救いようのない理由が、戦争にはあるのだよ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:41:18.90 ID:LVOQTlxo0<> シン「救いようのない理由…で、ありますか?」

デュランダルは静かに頷き、話を続けた。

デュランダル「戦争の中では、MSを中心に多くの兵器が消費される」

デュランダル「そして、次から次へとまた新しい兵器が造られる…その一機一機の値段を考えてみてくれたまえ」

シン「…それって!?」

デュランダル「そう、戦争を産業と考え、利用する者たちがいるのだよ」

デュランダル「死の商人"ロゴス"。ブルーコスモスの母体でもある」

シンは愕然とした。金儲けのために何千、何万という人間の血を貪るなど、想像を超えた狂気だ。
憎しみや怖れから剣を手に取るという方が、ずっと理解できるというものだ。

デュランダル「今回の戦争の裏にも、間違いなく彼らがいるだろう。なんとかできればいいのだがね…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:46:23.60 ID:LVOQTlxo0<> デュランダルの計らいで、ミネルバのパイロットたちはディオキアのザフト軍宿舎に一泊することとなった。
軍の宿舎といっても、内装は最高級ホテルにも引けをとらないほど豪華なものだ。
ルナマリアは年相応にはしゃいでいたが、シンはそんな気分にはなれなかった。
デュランダルの口から語られた、戦争を裏で操る存在ロゴス。それがシンの心に暗く影を落としていた。
死の商人。そんな奴らのくだらない金儲けのために、自分の妹と両親は殺されたのだ。
そう思うと、全身の血が沸騰し、怒りに支配されてしまいそうだった。

不意にドアをノックする音が鳴り、シンは我に返った。時計に目をやると、時刻は午後七時を回っていた。
レイとルナマリアあたりが夕食の誘いにでも来たのだろうかと思いドアを開けると、思いがけない人物が立っていた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:48:11.17 ID:LVOQTlxo0<> アスラン「シ、シン!説明は後でする!とにかく匿ってくれ!!」

シン「はぁ!?」

返事を待たず、シンを押しのけて部屋へと侵入したアスランは、そのまま地面を這い、ベッドの下へと潜り込んでいく。

シン「ちょっと!なにやってんですか、あんたは!!」

アスラン「説明は後だと言った!誰か来たら俺の居場所は知らないと言ってくれ!!」

アスランはすっかりベッドの下に隠れてしまい、シンは状況を飲み込めずに茫然とするほかなかった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:51:35.86 ID:LVOQTlxo0<> シン「…いつまでそうやってる気なんです?」

アスラン「………」

シン「ここに誰か来るとしたら、レイかルナぐらいのもんですよ。まさか、二人から逃げてるわけでもないでしょう」

アスラン「油断するなシン!それと、俺はここにいないものだと思え!」

シン「はあ」

上司の奇行は放っておいて、食事にでも行こうかとドアノブに手を伸ばしたとき、再びドアがノックされた。

アスラン「きた…!?」

シン「今開けます。って、え…?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:53:50.83 ID:LVOQTlxo0<> ミーア「こんにちは、兵士さん☆」

シン「…すみません、どなたですか?」

ミーア「え?」

シン「え?」

訪ねてきた少女に心当たりがなかったシンからすれば当然の問いかけなのだが、
どうやら少女にとってそれは信じらない言葉だったらしい。

ミーア「あなた、私のこと知らないの!?嘘でしょう!?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:56:13.31 ID:LVOQTlxo0<> シン「えっと…ああ!昼間のコンサートで歌ってた人!」

ミーア「そうだけど…そうだけど〜!」

不満気に頬を膨らませる少女に、シンは戸惑いつつも再び問いかける。

シン「それで、俺に…あーいや、自分になにか用でありますか?」

ミーア「あら、わたくしったら…忘れるところでしたわ」

ミーア「あなた、ミネルバの方でしょう?アスランがどこにいったか、ご存知ありませんか?」

シン「!」

ああ、なるほど。うちの隊長は、この少女から逃げ回っていたのだ。
ようやくシンはこの異様な状況のワケを理解した。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 00:59:01.07 ID:LVOQTlxo0<> シン「自分は知らないであります」

ミーア「そう…それは残念ですわ」

シン「隊長の追っかけかなにかでありますか?」

ミーア「あなた、本当に私のこと知らないんだ…!」

シン「用件は以上でありますか?自分はお腹が空いたので、失礼するであります」

ミーア「……」

シン「まだ、なにか…?」

ミーア「じゃあ、あなたでいいわ」

ミーアは悪戯っぽく笑い、シンの腕を掴むと、そのままずんずんと歩き始めた。

シン「え、ちょっと」

ミーア「お腹が空いてるんでしょう?席はもうとってあるから」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/15(日) 01:01:12.13 ID:atd+BmLSO<> 『シン』? <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 01:01:46.44 ID:LVOQTlxo0<> ドアが閉まり、二人分の足音が聞こえなくなった後で、アスランはようやくのそのそとベッドの下から這い出た。
自分の代わりに連行された部下のことは気がかりだが、ひとまず窮地は脱したと考えていいだろう。
緊張から解放され、ほっと息をつく。

アスラン「許せよ、シン」

すぐにここを出てミーアとすれ違ってはまずいので、アスランはもう少しばかりこの部屋に留まることにした。
なんの気なしに周囲を見回してみると、愛らしい桃色をした、小さめの携帯電話が目に入った。

アスラン「これは…」

シンのものだろうか。それにしては趣味が可愛らしすぎる気がする

アスラン「…形見、か」

シンがオーブで起きた戦闘の際に家族を失ったことは、以前アレックスとしてカガリと共にミネルバに乗艦した際に聞いていた。
デュランダルからロゴスの話を聞いて、シンはきっと誰よりも憤っているだろう。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 01:04:35.80 ID:LVOQTlxo0<> 怒りや憎しみという感情が悪だとは思わない。
だが、一度経験したから分かるのだ。
抱えた憎悪を戦場で相手にぶつけるようなことになれば、その先には後悔しかないのだと。

今でもニコルのことを思い出すたび、胸が締め付けられる。
そしてキラも、同じ苦しみに苛まれているだろう。
キラの友を葬ったのは、ほかの誰でもない自分だ。

自分の部下たちには、決して同じ思いはさせまい。
導く、とまで言う自信はないが、一緒に正しい道を探していくことはできるはずだ。
自分と、ミネルバの皆と、そしてデュランダル議長と一緒ならば。
アスランはこのとき、そう信じて疑わなかった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/15(日) 01:07:10.25 ID:LVOQTlxo0<> 今回の更新はここまでです。
1話完結でやっていきたかったんですがディオキアの話は1話にまとめきれず…。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/15(日) 02:08:44.45 ID:V6GxPQJDO<> 復讐に囚われ怒りでシンはSEEDに目覚めたが、怒りとかではなくキラみたいな感じだったらキラにも勝てる強さ持ってる気がするんだよね
まあシンがなぜSEED持ってるのかはガチで謎だけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/15(日) 02:43:27.80 ID:ndMrpgkQ0<> おつー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/15(日) 09:52:39.11 ID:7khO/f5o0<> 乙です。
さてアスランの身代わりになったシンはどうなることやら <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/15(日) 12:41:48.48 ID:EgEkVg2Ao<> 乙
面白いからゆっくりでもいいから頑張って <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/15(日) 13:07:27.26 ID:SyVtZmrA0<> コミュ力のあるアスランなんてあれだ!
しっかりしてるクワトロだ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/16(月) 16:15:15.14 ID:Q6ehXFas0<> しっかりしてる時点でクワトロじゃないだろ!いい加減にしろ! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/16(月) 18:42:03.82 ID:nJnOwiFl0<> まあ二の腕隠してる時点でアスランの方がまともだよね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/16(月) 20:06:04.49 ID:MxX17HzEO<> 身代わりになったシンは翌日ファンになってたら笑う <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 00:55:29.73 ID:TTCM1fps0<> ミーア「あなた、お名前は?」

シン「シン・アスカであります」

ミーア「わたくしはラクス・クライン。ラクスって呼んでね。それと、もう堅苦しいのはナシ!」

シン「…わかった、ラクス」

ミーアは満足そうに微笑み、エレベーターへと乗り込む。

ミーア「ほら、シンも!この上に美味しいレストランがあるの!」

ミーアの一方的な誘いにシンは戸惑ったが、強く拒絶する気にもなれず、ついていくことにした。
案内されたのは、施設上階にあるレストランのVIPルームだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:00:18.88 ID:TTCM1fps0<> 注文を済ませたあとで、シンは今更な疑問を口にする。

シン「なんで俺、君と一緒にこんな高そうなレストランに来てるんだ?」

ミーア「アスランとご一緒するつもりだったのよ。でも、どこにもいないんですもの」

シン「まあ、忙しい人だし」

ミーア「それに、あなたが面白そうだったから」

シン「え?」

ミーア「私のことを知らないなんて言うザフトの兵士さん、初めて見たわ」

シン「それは…少し前までオーブにいて、プラントに来てからも訓練ばかりだったからさ」

ミーア「ふぅん。それでプラントの有名人には疎いんだ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:02:47.64 ID:TTCM1fps0<> ミーア「でも、ライブは見てくれたんでしょう?ラクス・クラインを知らない人から見て、私の歌はどうだった?」

シン「どうって、良かったと思うよ。みんな、君の歌で元気出たみたいだし」

なんとも当たり障りのないことを言ってしまった、とシンは思ったが、目の前の少女は特に気にした様子もない。

シン「けど、ラクスは普段はプラントで歌ってるんだろ?どうして地球に?」

ミーア「さっき、あなたが言ったじゃない。みんなを元気にしてあげたいからよ!」

シン「そのためだけに、わざわざ…?」

シンは驚きを隠せなかった。
今自分たちがいるこのディオキアという街も、元々は地球連合軍に占領されそうになっていたところを、ザフト軍によって解放されたばかりなのだ。
プラントのあたりでは小競り合いこそ起きているものの、大きな戦闘があったとの報告はない。
今起きている戦争の中心地がこの地球であり、プラントにいるよりずっと危険だということは、目の前にいる少女も承知しているだろうに。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:07:18.31 ID:TTCM1fps0<> ミーア「戦う力のない人たちや、戦うことを選ばなかった人たちのために、そういう人たちを守るために、軍の人たちは戦ってくれているんでしょう?」

ミーア「それって、凄く大変なことだと思う。私には想像も及ばないぐらいに」

ミーア「だから、私の歌でその人たちに元気を与えることができるなら、いくらでも頑張るつもり!」

シン「ラクス…」

屈託なく笑う少女の言葉には、なんの打算も、嘘偽りも感じられなかった。
軍人である自分とはまた別の手段で、平和のために力を尽くしている人がいる。
その事実は、ロゴスへの憎悪で暗く沈み込んでいたシンの心に、希望の火を灯してくれたような気がした。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:10:46.13 ID:TTCM1fps0<> ミーア「ねえ、シンはミネルバの人なんでしょう?色々お話聞かせてほしいの!アスランって、軍務のときはどんな感じなの?」

シン「そうだなあ…うちの隊長は凄い人だよ。MSの操縦も上手いし、俺なんかよりずっと大人で」

シン「最初は怒鳴られたり殴られたりして、ちょっとムカついたけど…」

ミーア「へぇ、アスランって意外とスパルタなのね」

シン「まあね。でも、俺のこと心配してくれてたってわかったから、もう気にしてないよ」

シン「ただ怒るだけだったアカデミーの教官たちとは違う。ちゃんと俺のこと認めて、歩み寄ってくれたんだ、あの人は」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:13:25.32 ID:TTCM1fps0<> 食事を終え、すっかり意気投合したシンとミーアは、施設内の庭園へとやってきていた。
空は藍色の夜闇に覆われ、ライトに照らされた噴水が煌いている。

ミーア「私、シンのこと気に入っちゃった。専属のボディガードにならない?」

シン「え?…無理だよ、俺がミネルバ離れるわけにはいかないし」

ミーア「そう、残念。でも、あなたを除いてもアスランと赤服のパイロットさんが二人いるんでしょう?」

ミーア「そこにフェイスが一人加わるんだから、戦力としては十分だと思うんだけどなあ」

シン「フェイスが…?なんのこと?」

ミネルバのパイロットが増員、それも議長直属の特務隊であるフェイスが加わるなど、シンには全く心当たりのないことだった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:14:53.31 ID:TTCM1fps0<> ミーア「聞いてないの?ハイネ・ヴェステンフルス。"緋蝶"の二つ名を持つ、凄腕のパイロットなんだって」

シン「そんな報告は受けてないけど、なんでラクスがそんなことを知ってるんだよ?」

ミーア「議長がお話してたの聞いちゃった!」

シン「えぇ…」

ミーアを部屋まで送り届けたあと、シンは自室へと戻ってきていた。
ロックを解除して扉を開くと、そこにアスランの姿はなかった。

シン「後で説明するって言ってたのに、逃げたな…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:16:57.18 ID:TTCM1fps0<> 翌朝、シンがラウンジへと向かうと、オレンジの髪をした赤服の兵士が、他のミネルバ隊のメンバーと談笑していた。
その赤服の襟元に輝くフェイスのバッジを見て、シンは昨夜のミーアの話を思い出す。
彼がミネルバに新たに着任するパイロットということだろうか。
シンに気づいたルナマリアが、こっちだと手招きする。

ルナマリア「シン!こちらは…」

シン「ハイネ・ヴェステンフルス…」

ルナマリア「え?」

ハイネ「おっ、なんだよ!俺ってば有名人?」

シン「あ、すみません。自分は、シン・アスカであります!」

挨拶が遅れたことに気づき、慌てて敬礼してみせるシンに、ハイネは気にするなと肩を叩いた。

ハイネ「ミネルバには休暇明けから配属される。よろしくな、シン」

シン「はい!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:18:45.45 ID:TTCM1fps0<> 顔合わせが済んだところで、レイがひとつの疑問をアスランへと投げかける。

レイ「隊長、一つの部隊にフェイスが二人となると、作戦指揮は…?」

アスラン「ハイネの方が先任だ。これからミネルバ隊は、彼の預かりになる」

レイ「了解しました。ではヴェステンフルス隊長、よろしくお願いします」

ハイネ「ハイネでいいよ、堅っ苦しいのは得意じゃないんだ。大体、ヴェステンフルス隊長ってなげーだろ」

レイ「は、はあ…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:20:21.36 ID:TTCM1fps0<> ハイネ「ていうか、アスランおまえ、隊長って呼ばれてんの?」

アスラン「ああ、まあ…」

ハイネ「……」

レイ「戦闘指揮を執られますので、我々はそうお呼びしてきました」

ハイネ「なるほどね…じゃ、これからはアスランでいこうか」

アスラン「俺はそれでも構わないが…」

当惑するシンたちに、ハイネはやれやれ、と肩を落としてみせた。

ハイネ「あのな、俺たちザフトのパイロットは、戦場に出ればみんな同じだろ?赤でも、緑でも、フェイスでも…」

確かに、ザフト軍には階級制度というものが存在しない。
その代わり、部隊の中でリーダーを決め、その者が隊長の役割を果たす。
故に、シンたちはなんの疑問も抱かずに自然とアスランを隊長と呼んできた。

ハイネ「だからさ、隊長なんて余所余所しい呼び方する必要はないんだよ」

ハイネ「おまえもおまえだぜ、アスラン。なんで名前で呼べって言わないの」

アスラン「はは…俺も、おまえみたいにやれたらなと思うよ…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:23:01.11 ID:TTCM1fps0<> ハイネ「艦の方には、また改めて挨拶に行くよ。それじゃあな!」

景気よく言い放ち、ラウンジから立ち去るハイネ。
それと入れ違いに入ってきた人物に、アスランの顔がこわばった。
その人物はアスランをみとめると、はしゃぎながら彼に駆け寄る。

ミーア「ア〜スランッ☆」

アスラン「ミ…いや、ラクス…!」

ミーア「ごめんなさいアスラン。せっかくお会いできたのに…わたくし、もうここを発たなければいけないの」

アスラン「そ、そうですか。お気をつけて」

どこまでも余所余所しいアスランに、不満気に目を細めてみせたあと、
ミーアはシンの方に向き直り、小さく手を振ってその場を後にした。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:25:34.97 ID:TTCM1fps0<> レイとルナマリアは思わず顔を見合わせる。

ルナマリア「…ねえ、今」

レイ「…ああ」

ルナマリア「ラクス様、シンに手振ってた?」

レイ「…ああ」

ルナマリア「どういうことなの…」

レイ「…わからん」

ルナマリア「ちょっとシン!…って、いない?」

エレベーターの方を見やると、ちょうどアスランとシンが乗り込んだところだった。
声をかける間もなく扉は閉まり、ルナマリアは茫然と立ち尽くす。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:26:37.97 ID:TTCM1fps0<> ルナマリア「最近のシン、全然読めない…。この前の作戦から、急に隊長と仲良くなってるし」

レイ「隊長ではなく、アスランだろう?」

ルナマリア「あっ…」

レイ「休暇はまだ残ってるんだ、一緒に街にでも行ってくればいいじゃないか。最近シンとゆっくり話す機会もなかったろう?」

ルナマリア「そりゃ、まあ…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:27:28.83 ID:TTCM1fps0<> レイ「それとも、おまえが誘いたいのはアスランの方か?」

珍しく冗談を言ってみせたレイに、ルナマリアは少し驚いたあと、むくれてみせた。

ルナマリア「もう!からかわないでよね!…レイはどうするの?」

レイ「俺はミネルバでシンと同室だからな。いくらでも話はできるさ。それに、今日は先約があってな」

ルナマリア「ふーん。せっかくだから、久々に三人で出かけるのもいいと思ったんだけど…仕方ないか」

レイ「悪いな」

ルナマリア「ううん。じゃあ私、行ってくるわね」

レイ「ああ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:30:13.64 ID:TTCM1fps0<> エレベーターの中で、シンは率直な疑問をアスランにぶつけてみた。

シン「なんでラクスのこと避けてるんです?いい子じゃないですか、彼女」

アスラン「ああ、いや…いい子なのは間違いない、と思うが…」

シン「自分の歌でみんなを元気にするんだって…そのために、危険な地球まで降りてきて…」

シン「…俺、ちょっと感動しました。CDも貰ったんで、ちゃんと聴いてみるつもりですよ」

アスラン「そう、だな…」

シン「……?」

いつものアスランとは違う歯切れの悪さに違和感を感じたものの、シンは余計な詮索をするような性格でもなかったから、それ以上は聞かないことにした。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:32:05.75 ID:TTCM1fps0<> アスランと別れ、自室で残りの休暇の過ごし方を考えていると、ルナマリアから着信が入った。

シン「ルナ、なにか用?」

ルナマリア「せっかくだから街に出ようと思って。でも、一人じゃつまらないでしょ?」

シン「ああ、荷物持ちね。しょうがない、付き合ってやるよ」

ルナマリア「オッケー。じゃ、ラウンジに集合ね」

通話を切り、身支度を整えながら、ルナマリアはほくそ笑む。
実戦に出てから活躍を重ね、エースとして昇り詰めていくシンに、少しばかり気後れしていたのが馬鹿馬鹿しく思えたからだ。

ルナマリア「よーし、思いっきり羽伸ばしちゃお!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:34:01.38 ID:TTCM1fps0<> さっさと支度を終えたシンは、ラウンジのソファーに腰掛け、
小型の音楽プレーヤーで、ラクスの歌を――正確にはミーアの歌だが――を聴きながら、少しばかりの安らぎを感じていた。

この休暇が終われば、またミネルバは戦場に赴くことになるのだ。
今日ぐらいは呑気でいてもバチは当たらないだろう。

この日、自分の運命を揺るがすような出会いが待ち受けていることを、シンは知る由もなかった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/17(火) 01:35:43.55 ID:TTCM1fps0<> 今回の更新はここまでになります。
ディオキアの話はもう少し続きます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 01:42:19.63 ID:/16P/48EO<> おつー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 08:29:36.73 ID:m2fm34tko<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 09:02:23.54 ID:E7MlZUmw0<> 乙
当時シンミアとかありじゃねって友人に言ってた黒歴史を思い出したよ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 09:44:51.42 ID:8CTIn4ADO<> 乙
ミーアはマジでアスランとしか絡まなかったから、もったいないと思った
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 09:57:20.20 ID:kLdCUxdw0<> 乙です。
ディオキアってことは次ステラと出会うのかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 12:09:40.60 ID:0vIyDXEOO<> 俺の見間違いじゃなきゃ一度レイのシャワーシーンあっておっぱいあったような気がするんだがレイは男なんだよな?
シャワーシーンでおっぱいあったから女性陣の誰だろと期待してたらレイだったから驚いた記憶あるんだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 12:35:51.47 ID:E7MlZUmw0<> そんなシーンあったっけ
ちょっと前までテレ玉のリマスター見てたけど記憶に残ってないな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 12:37:42.74 ID:/aAWcxQio<> いまさらながら思うけど、
種運命って料理の仕方を間違えた感じだよなあ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 14:23:11.23 ID:1ugkKQwC0<> だからこそ色んな作品で種運命は原作アニメから変化させていい展開、納得のいく話に持って行ってるんだよなー
漫画版然りスパロボZやL然りガンダム無双2のシンルート然り
ここではさらに他では絡んだことのなかったミーアと絡んでるから新鮮な感じ
ミーアもラクスを演じてはいるけど戦争を早く終わらせたいその手伝いが出来ればっていうのは本心だから悪い娘じゃないんだよね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 17:22:41.63 ID:3WJkM/1p0<> 前作キャラを無理にageて活躍させようとした結果があの惨状だからな
あとバンク挟み過ぎて話の流れがくっそダレたのを思い出した <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 17:53:45.94 ID:VroXjc0mO<> 種は良かったよな?
たまに種ごと叩くのがいるけど種は良作だと思うんだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/17(火) 18:17:23.03 ID:E7MlZUmw0<> シャア板でやっても良い話題にシフトしそうだからSSに関して以外は今後も落ち着いてレスしたいところだね… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/18(水) 07:54:54.72 ID:DX9NxUIhO<> 種は良かった思うし好評だと思う
種タヒはなぁ…最初の頃は面白い感じでワクワク感はあった
でも中盤前から酷くなってきたし最後はOPキラに乗っ取られたからギャグになった気する
フリーダムがいくら強くても最新式のセイバーが一発でバラけるシーンもおかしいしな
あとはミゲルと違い多少ハイネは出落ちじゃなく少しは活躍したのは良かった(種タヒでよかったのはそこだけ個人的に) <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/18(水) 18:32:13.82 ID:zPGybNKf0<> 種死は面白くなる要素はいっぱいあったけどほとんど無駄にしちゃってるからねぇ
シンvsキラだって入念な分析と他にはない機体特性を活かしたシンの勝利ってのもまだ納得がいくが私怨と顔芸ラッシュでやるのは明らかに調理方法を間違えた <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/18(水) 19:43:28.86 ID:OWHJUwvb0<> 演出用に素材の設定を作るスタイルだから先に演出があるわけでしょ
調理法を間違えたってのは素材が先にあった場合の話じゃないのかなあ <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:31:52.79 ID:k+y3Cfxv0<> ルナマリア「お待たせ」

シン「ああ、バイク借りられるみたいだけど、どうする?」

ルナマリア「ううん、歩いていきましょ」

シン「いいのか?街までそこそこ距離あるだろ」

ルナマリア「だからいいのよ」

シン「ふぅん…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:33:20.09 ID:k+y3Cfxv0<> 空は快晴。街道は見晴らしもよく、陽光を浴びて輝く海の美しさと、吹き抜ける潮風に心地よさを感じる。
どうやら、ルナマリアの提案に乗ったのは正解だったようだ。

ルナマリア「ほんっと綺麗!プラントの人口海とは違うわねー!」

シン「ルナが歩くっていった理由が、よくわかったよ」

ルナマリア「景色だけじゃないわよ。最近ゴタゴタしてて、ゆっくり話をする機会もなかったでしょ」

シン「そういや、そうかも」

ルナマリア「色々聞きたいことあるんだから、覚悟してもらうわよ!」

シン「あはは…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:34:52.48 ID:k+y3Cfxv0<> ルナマリアの質問攻めにほとほと疲れ果て、一旦会話を打ち切って海の方を見やると、崖の突端で、一人の女の子が歌いながら踊っていた。
ステップを踏むたび、やわらかそうな金髪と、軽やかな白と青に彩られたドレスが、ふわりと風にはためく。
波の音に混じって耳に届く歌声は、ディオキアの海のように澄みきって美しかった。

シン「綺麗だな…」

ルナマリア「歌の話?それともあの子が?」

シン「…からかうなよ」

シンはしばし目を閉じ、彼女の歌声に聞き惚れていた。
戦いに明け暮れる世界の中にも、こんなに優しい時間があるのだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:36:53.43 ID:k+y3Cfxv0<> ずっとそうしていたかったが、隣にいたルナマリアの悲鳴に驚いて目を開けると、崖の上に少女の姿はなく、
下方に水音が聞こえたのとほぼ同時に、シンは走った。

少女のいた崖から身を乗り出して下を覗き込むと、水の中で少女が必死にもがいているのが見えた。

シン「あの子、泳げないのかよ!?」

念のため基地に連絡するよう、ルナマリアに目で合図し、シンは迷うことなく崖から飛び降りた。

海面が身体を打つが、痛みに悶えている余裕などない。
波をかきわけ、少女へと手を伸ばす。

シン「掴まれ!」

パニック状態にある少女は、シンの声も聞こえない様子で、めちゃくちゃに手をばたつかせている。

シン「くそっ!」

少女を抱き寄せようとするが、細腕からは想像もできないような強い力でもがくものだから、今度はシンまで水に引きずりこまれそうになる。
遅れて海に飛び込んだルナマリアが少女の背面に回り、身動きできないよう二人で抱きかかえて、なんとか浅瀬まで辿り着いた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:39:05.17 ID:k+y3Cfxv0<> シン「泳げもしないのにこんなところで…死ぬ気かっ!このバカ!」

怒鳴りつけられ、少女の身体が、縮み上がる。

ルナマリア「ちょっとシン!」

シンの言っていることが間違っているわけではないが、つい先ほどまで命の危機に晒されていた相手に、
それは冷たすぎるのではないかと、ルナマリアが押さえ止めた。

ルナマリア「ほら、怖がってるじゃない!」

シン「あ……」

見れば、少女は目に涙を溜めて肩を震わせていた。
ルナマリアの言う通りだ。命を落としかけた直後に、随分と乱暴な言葉をかけて、怯えさせてしまった。

シン「ごめん、俺…」

謝ろうと顔を近づけると、少女は弾かれたように立ち上がり、シンから逃げるように走り出した。

「いやぁぁっ!!」

シン「え、!?」

「怖い!死ぬのは嫌ぁっ!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:41:27.35 ID:k+y3Cfxv0<> 半狂乱になった少女の向かう先は、今さっき逃れたばかりの海だった。
シンは慌てて走り寄って少女の身体を抱きとめ、懸命に叫んだ。

シン「大丈夫だ!君は死なない!」

少女の細い身体を、かたく抱きしめる。

シン「俺がちゃんと…君を守るから!!」

少女の身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
涙に濡れたつつじ色の瞳が、おずおずとシンの顔を見上げる。

「まも…る……?」

シン「…うん」

少女を安心させるために、咄嗟に出た言葉だった。
それでも、この無垢な瞳に見つめられれば、その言葉を嘘にはしたくないと思った。

シン「俺が、君を守るよ。約束だ」

少女はシンの手を取り、その温もりを確かめるように、自分の頬に当てた。

「守る……」

シンは空いた方の手で、少女の髪を優しく撫でてやった。
少女はうっとりと目を閉じ、シンに身を委ねた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:42:50.65 ID:k+y3Cfxv0<> ルナマリア「もう大丈夫みたいね」

シン「ルナ、基地には連絡してくれたんだろ?」

ルナマリア「ええ。でも、救援が来るまでずっとこのままってわけにも…」

シン「あっ、あそこ!」

岩壁に、小さな洞窟のようなものができていた。
流木を集めて火でも焚けば、水浸しの服と身体を乾かすぐらいはできるだろう。

焚き木の周りに、脱いだ服を広げ、三人は肩を寄せ合って座り、身体を温めた。
シンとルナマリアは、少女を怖がらせないように、言葉を選びながらいくつかのことを聞いた。
少女の名前は、"ステラ"というらしい。
ステラは、スティングと、アウルという人たちと共にこのディオキアを訪れたのだという。
今頃、その二人もステラを探しているのだろうか。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:45:41.81 ID:k+y3Cfxv0<> ステラは、シンの肩に頭をもたせかけ、揺らめく火をぼうっと眺めている。
洞窟の中に聞こえるのは、火がパチパチと弾ける音と、寄せて返す波の音だけ。
安心しきったステラを見て、シンとルナマリアも、心地よい静けさに身を任せた。

どれぐらいの時間そうしていただろうか。
波の音に混じってエンジン音が聞こえ、徐々に近づいてくる。
ステラが不安そうにシンとルナマリアの手を握るようにしたから、シンは大丈夫だと言い聞かせて、洞窟の外へと向かった。

アスラン「なんでこんなところで遭難するんだ?」

シン「すいません、色々あって…」

服を着て洞窟から出てきたルナマリアとステラの手を取ってボートに引き上げ、アスランに事情を説明していると、
上方からかすかに声が聞こえた。崖の上に目をやると、小さな人影が二つ、並び立っていた。

「おおーい!ステラ、どこだぁー!?」

シン「ステラ、あれって…」

ステラ「スティング、アウル…」

アスラン「ここからでは無理だ。一旦基地まで戻って、車を出そう」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:47:16.72 ID:k+y3Cfxv0<> スティングは焦っていた。ステラを一人にして、アウルと共に街で遊び惚けていたのは失敗だった。
ステラは朝、街の近くにある海岸で遊んでいた。だが、夕暮れになって迎えに来てみれば、彼女の姿はなかった。
艦にいるときも、甲板で一日中海を眺めているようなやつだから、海岸に置いておけば平気だろうと軽んじていた。
ネオには、ステラから目を離すなと言われていたのに。

アウル「ひょっとして、海にドボンとか?」

スティング「縁起でもないこと言うんじゃねえ!ネオにどう説明する気だ!」

アウル「けどよ、こんだけ探しても見つからないんじゃ…」

スティング「……」

スティングはそれ以上の叱責を止めた。
アウルの目を見れば、口ではそう言いながら必死なのはわかったからだった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:49:15.24 ID:k+y3Cfxv0<> それからしばらく探し続けて、いよいよ途方に暮れたとき、一台の軍用車両が、スティングたちの近くで停まった。

アウル「おい、あれ!」

スティングたちが驚いたのは、それがザフト軍の車両だったということよりも、その車上に、探していた少女の姿があったからだった。

ステラ「スティング!」

見知った顔を見つけたステラは、車から降り、嬉しそうにスティングたちの方に駆け寄る。

スティング「ステラ!おまえ、一体どこに…」

シン「海に落ちたんですよ」

ルナマリア「私たち、偶然そばにいて」

ステラの代わりに答えたのは、黒髪の少年と赤い髪の少女。
きっと、彼らはザフトの人間だろう。こちらを警戒する様子はないし、どうやら自分たちの正体を知っているわけではないようだ。

スティング「そうですか。それは御迷惑をおかけしました、ありがとうございます」

シン「いえ、そんな」

ルナマリア「良かったねステラ、お兄さんたちに会えて」

ステラ「うんっ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:51:06.66 ID:k+y3Cfxv0<> やがて車が軽くクラクションを鳴らし、赤い髪の少女は車の助手席に乗り込む。

シン「それじゃあ、自分たちはこれで」

少年も後部座席の扉を開けるが、ステラに服の裾を掴まれ、こちらを振り向く。

ステラ「行っちゃうの…?」

切なそうなステラの表情を見て、少年は困ったように頭を掻く。

シン「ああ…ごめんね、ステラ」

ステラ「んー…」

尚も悲しげに顔を曇らせるステラ。少年は少し考え込んだあと、ハッとした顔をする

シン「そうだ!名前言ってなかったよな」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:53:14.00 ID:k+y3Cfxv0<> シン「俺はシン。シン・アスカ」

ステラ「シン…?」

シン「うん。…また会えるよ、きっと」

ステラ「シン、また会える…?」

シン「っていうか、会いに行く!約束な!」

ステラ「…やくそく!」

ようやく笑顔を取り戻したステラは、ふと思い出したようにドレスのポケットから薄紅色の綺麗な貝殻を取り出し、それを少年の掌に乗せた。

シン「これ、俺にくれるの?」

ステラ「うん!」

シン「…ありがとう!」

今度は、少年も嬉しそうに笑う。
幸せそうに笑う二人を見て、スティングは形容しがたい気分になった。
自分たちと一緒にいるときでさえ、ステラはこんな風に笑ったりはしないのに。
ふとアウルの方を見やると、面白くなさそうに少年の方を睨んでいたので、肘で小突いて止めさせた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:55:15.16 ID:k+y3Cfxv0<> やがて車両が動き出し、それを追ってステラは二、三歩走った。
少年の方も、車上から顔を出して、ステラに手を振り続けていた。
車両が角を曲がり、少年が見えなくなっても、ステラはしばらく立ち尽くしたままだった。

スティングは、少年とステラが二度と出会わないことを祈った。
なぜなら、彼とステラが再会するようなことがあるなら、それはきっと戦場でのことだからだ。

らしくない、と感傷を打ち切って、スティングはステラに声をかけた。

スティング「帰るぞ、ステラ。ネオが待ってる」

ステラ「…うん」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:57:35.86 ID:k+y3Cfxv0<> シンたちを宿舎まで送り届けて車を返し、自分も部屋に戻ろうとしていたアスランは、
テラスに見覚えのある人影があるのに気づいて足を止める。

アスラン「ハイネ…?」

ハイネ「ん…?ああ、アスランか」

振り返ったハイネの顔には、赤みが差していた。

アスラン「酔ってるのか?」

ハイネ「まあ、そうだな。…俺はずっと本部にいてな。隊を率いて、開戦時の防衛戦にも出た」

ハイネ「そこで、一人死んだんだよ。そいつのこと思うと、ついな…」

アスラン「…そうか」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 17:59:14.22 ID:k+y3Cfxv0<> ハイネ「しかし休暇中に遭難とは、ミネルバのエースくんもやることが派手だねえ。戦闘中に無茶しなけりゃいいんだけどな…」

ハイネ「もう、仲間が死ぬのは御免だぜ」

拳を握りしめるハイネに、アスランはなんと声をかけたものか迷ったが、ひとつだけ確かな答えがあった。

アスラン「心配しなくても、あいつは大丈夫さ」

なんの根拠も保証もない。シンと共に戦場を駆けたのも、まだ数えるほどだ。
それでも、不思議とそう思えるのだ。

ハイネ「…そっか。おまえがそう言うなら、まあ大丈夫なんだろうな、あいつは」

ハイネ「けどさ、おまえ自身はどうなんだ?」

アスラン「え…?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 18:01:25.08 ID:k+y3Cfxv0<> ハイネ「前の大戦のあと、おまえ…オーブにいたんだろう?」

ハイネ「オーブは地球連合軍と同盟を結んだ。今はオーブも地球軍ってことだ」

ミネルバがカガリをオーブに送り届けたあと、地球連合軍とオーブに挟撃されたことは聞いていた。
地球連合軍とオーブの同盟条約が締結した今、再びオーブ軍がミネルバを襲う可能性は十分にあった。
それは、アスランが無意識に目を逸らし続けていたことだった。

アスラン「………」

ハイネ「割り切れよ、アスラン」

ハイネ「でないと…死ぬぜ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 18:04:14.34 ID:k+y3Cfxv0<> 部屋に戻ったシンは、備え付けのソファーに腰を下ろし、ステラに貰った貝殻を掌で弄びながら、彼女に想いを馳せた。
出会って半日も経っていないし、交わした言葉も少ない。それでも、彼女のことを心の底から守りたいと思った。
信頼しきって、全てを委ねるようなステラの瞳は、シンを誇らしい気持ちにさせてくれた。
この子には、俺が必要なのだと。そしてきっと、俺にもこの子が必要なのだと思った。

シン「もう一日、休暇が残ってればなあ…」

彼女のフルネームも、住んでいる場所も聞かずに戻ってきてしまったことを、心底後悔した。
だが、なんとなくではあるが、ステラとは再び会える気がしていた。
戦争が終わったら、ディオキアにまた来よう。そして、ステラの手がかりを探そう。
君を守ると、会いに行くと、そう約束したから。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/19(木) 18:06:08.92 ID:k+y3Cfxv0<> 今回はここまでとなります。
次回は多分戦闘シーンも書くことになるので時間かかりそうです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/19(木) 18:18:33.89 ID:R3/O5zVy0<> なんか昔似たようなの見た気がする。
SEEDは懐かしいし好き。いろいろ言われてるけどキラとフリーダムも好きなので上手く書いてくれるとうれしいな。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/19(木) 18:23:56.64 ID:UthX1hnp0<> 乙です。
次はダーダネルス海峡での戦いだけどハイネの処遇はどうなることやら <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/19(木) 20:31:06.99 ID:dz2tvT3Xo<> 乙ー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/19(木) 21:23:48.78 ID:5fwMS7/R0<> おつー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/20(金) 11:44:49.15 ID:IwfdMJSQO<> 種死ってなんであんなネタ化されるんだろうな
アスランはカガリ一筋なのにお墓のシーンでメイリンが隣にいただけでメイリンを選んだとか言われるし
シンはシンでステラステラ言ってたくせに最後はルナマリア選ぶし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/21(土) 02:24:04.40 ID:xuw2XrQ4O<> エヴァのとあるシーンを種運命変えてみた

シン「ステラステラ」ハァハァシコシコ

シン「ステラ!…うっ」ドピュ

シン「ハァ…俺って最低だ」ネチャァ

……違和感仕事放棄? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/21(土) 02:29:37.55 ID:hguaXYc0O<> 気持ち悪い <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/21(土) 03:26:37.00 ID:eQ+E/NpKo<> >>115
頭大丈夫?精神科いく? <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:10:19.91 ID:Ln/MZHyB0<> 研究員「大佐、本当によろしいんですか?」

ネオ「君もしつこいなあ、何度同じことを言わせるんだ?」

ネオ「記憶をデリートするんじゃ、あいつらに休暇をやって、街にまで出してやった意味が無いだろ?」

ネオ「成果をあげさせるには、恐怖で縛るより、報酬を与える方がずっと効果的だ。特に子供相手にはな」

研究員「彼らは兵器です。MSのパーツのひとつにすぎません。余計な記憶や感情が故障を引き起こしたら、どうするおつもりです?」

ネオ「そうは言うがな、生物を完全に兵器として扱うのは無理だ。いつか必ず綻びは出てくる」

研究員「綻び、ですか?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:12:16.42 ID:Ln/MZHyB0<> ネオ「"ゆりかご"による記憶のデリートは完璧じゃない。つぎはぎだらけの自分の記憶に、疑問を持たない人間などいるものか」

ネオ「自分たちが育った環境、今置かれている状況が異常なことぐらい、あいつらもとっくに気づいてるはずだ」

研究員「ですが…」

ネオ「あーもう!全責任は俺が負う!だから言うとおりにしろ!!」

研究員「…どうなっても知りませんよ」

ネオ「そう心配するなよ。ちゃあんと保険もかけてある」

研究員「保険?」

ネオ「オーブのお坊ちゃんは、上手いこと口車に乗ってくれたよ。無能な権力者ってのは、どこにでもいるもんだよなあ…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:14:27.43 ID:Ln/MZHyB0<> ユウナ「"ダルダノスの暁"作戦、開始ッ!!」

トダカ「……は?」

突然わけのわからない作戦名を叫ぶユウナに、トダカは言葉を失う。

ユウナ「わからないの?君たち軍人は、本当に教養ってものが無いよなあ…。ギリシャ神話だよ、かっこいい作戦名だろう?」

わざとらしく肩をすくめながら、ユウナは言った。

トダカ「………」

呑気なものだ。オーブ軍がこの作戦で前衛を担うことになったのは、一体誰のせいだ。
黒海奪還を掲げ、ミネルバを強襲し撃墜するのが、今回の作戦。
地球軍の都合で行われる作戦だ。なのに、なぜオーブが矢面に立たなければならない。
怒りを通り越して、もはや呆れるしかなかった。
トダカは、大きな溜息が出そうになるのを必死に堪え、号令をかけた。

トダカ「MS隊、発進!」

空母"タケミカヅチ"から、次々とMSが飛び立っていく。
ユウナには聞こえぬように、トダカは小さく呟いた。

トダカ「カガリ様を送り届けてくれた艦を討つ…か。恩知らずだな、我らは」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:16:47.86 ID:Ln/MZHyB0<> メイリン「MS接近、機種特定!ムラサメ、アストレイ!オーブ軍です!」

タリア「インパルスとセイバーを発進させて!」

敵の戦力を確認し、タリアは指示を出す。
まずインパルスとセイバーを出したのは、長期戦も視野に入れての判断だった。
この二機は、デュートリオンビームによって、通常の機体よりも素早い補給が可能であるからだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:17:43.28 ID:Ln/MZHyB0<> 理念のために自分の家族を殺したオーブが、その理念をあっさりと捨てて、地球軍に付いた。
その事実に対し、シンは自分でも驚くほどに冷静だった。
怒りが湧かなかったわけではない。ただ、怒りに勝る思いが、今のシンにはあった。

力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。それだけは忘れないでくれと、アスランは言った。
それに対して自分は、はいと答えた。
ならば、もう怒りに任せて引き金を引いたりはできない。

シン「ミネルバは、やらせないっ!」

インパルスのビームライフルが光を放ち、次々に敵MSを撃ち堕としていく。
セイバーの巨大ビーム砲"アムフォルタス"が、敵艦の発射したミサイル群を薙ぎ払う。
二機のコンビネーションは、オーブ軍の攻撃を完璧に防いでみせた。
エース二人の力量に頼もしさを感じながら、タリアは次の指示を出す。

タリア「ミネルバ離水!敵艦隊の前面に回り込む!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:19:40.61 ID:Ln/MZHyB0<> ユウナ「なにをやってるんだ!敵のMSはたったの二機だぞ!?」

トダカ「……」

ユウナは狼狽しているが、既に一度ミネルバの戦いを目にしているトダカからすれば、この状況は予測の範囲内だった。
オーブ領海線際の戦闘で、地球軍の虎の子であるMAを討ち取り、そのまま空母含む戦艦六隻を沈めたインパルス。
そして、その隣で戦う赤いMS。初めて目にする機体だが、動きは間違いなくエースのそれだった。

ユウナ「MS隊を全機出撃させろ!取り囲んで堕とすんだよ!」

トダカ「それではこちらの被害が大きすぎます!」

ユウナ「うるさい!これは命令だぞ!」

オーブ軍オペレーター「待ってください!これは…!?敵艦首砲、発射態勢!!」

ユウナ「なに!?」

トダカ「この距離で、もう陽電子砲の射程内だというのか…!?」

今からでは、回避も間に合わない。トダカは、己の迂闊さを呪った。
ミネルバに陽電子砲が搭載されていることは事前に知っていたというのに、後手に回るとは。なんたる無様だ。
だが、そこに一筋の光が射した。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:21:52.56 ID:Ln/MZHyB0<> 一瞬のことだった。
天から降り注いだ翡翠色の光が、ミネルバの陽電子砲を貫いたのだ。
その爆発によって艦首を吹き飛ばされたミネルバは、煙を上げながら海へと落ちていく。

太陽を背に、十枚の蒼い翼を広げた白亜のMSが舞い降りる。
その神々しさに圧倒されるように、戦場は一瞬、静寂に包まれた。

インパルスのコクピットに、ハイネからの通信が入る。

ハイネ「シン、気をつけろ!奴はヤキン・ドゥーエの"フリーダム"だ!」

シン「フリーダム…?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:22:53.53 ID:Ln/MZHyB0<> フリーダムと呼ばれた機体の背後から、大型の白い戦艦が接近してくるのが見える。
その戦艦から、一機のMSが飛び出した。薄紅色のフェイズシフトを纏う、どこかインパルスにも似た機体。

シン「あれも地球軍の増援なのか…!?」

アスラン「いいや、違う。あれは…!」

薄紅色のMSから、全周波での通信が発せられる。

カガリ「この空域で戦闘中の全ての者に告げる!ただちに戦闘を停止せよ!」

カガリ「私は、オーブ連合首長国代表…カガリ・ユラ・アスハ!」

カガリ「その名において命ずる!オーブ軍はただちに戦闘を停止し、軍を引け!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/21(土) 23:24:23.99 ID:Ln/MZHyB0<> ダリフラ見たいのでちょっと小休止入れます <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/21(土) 23:29:06.31 ID:9QZ+1whnO<> そういや種死にはカガリ!カガリ!と鳴くことしか能のない無能指揮官がいたっけか <> ◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:03:32.66 ID:xt3V/HfJ0<> 再開します <> ◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:05:39.02 ID:xt3V/HfJ0<> タリア「なんてこと…!」

ミネルバのブリッジでは警報が鳴り響き、クルーたちが対応に追われていた。
発射寸前の陽電子砲を破壊されながらも、薬室への誘爆をまぬがれたのは不幸中の幸いだった。
とはいえ、被害は甚大である。今の攻撃で、何人の死傷者が出たことだろう。

アーサー「か、艦長…?」

副長のアーサーが、不安げにタリアを仰ぎ見る。

タリア「ちょっと待ってちょうだい。今は、相手の出方を窺うしかないわ」

頼りない副長に溜息をつきながら、タリアは大空に鎮座するフリーダムを睨みつけた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:08:11.06 ID:xt3V/HfJ0<> ネオ「これは一体、どういうことですかな?ユウナ・ロマ・セイラン」

ユウナ「えっ…いや…これは…」

タケミカヅチのモニターに映し出された仮面は、静かにユウナを威圧する。

ネオ「今すぐキッチリお答えいただかないと…色々と面倒なことになりそうですが?」

ユウナ「あ…あ……あんなもの、僕は知らない!」

トダカ「ユウナ様!?」

信じられない、といった表情で、トダカはユウナに食って掛かる。

トダカ「あのストライクルージュは、獅子の紋章は、紛れもなくカガリ様のものです!!」

ユウナ「黙れ!あれは偽物だ!本物の…僕のカガリなら…!夫の僕に恥をかかせるような真似をするはずがない!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:10:21.84 ID:xt3V/HfJ0<> ユウナ「早くあの偽物を討つんだよっ!!合戦用意!!」

トダカ「あ、あなたという人は……!」

尚も食い下がろうとするトダカに、ユウナは、指揮官席のアームレストに拳を叩きつけて怒鳴った。

ユウナ「でなけりゃ、オーブが地球軍にやられる!!また国を焼きたいのか!?」

不服を隠そうともしていなかった将校たちの顔色が変わる。
それを見て、ユウナはここぞとばかりに畳み掛ける。

ユウナ「僕らはオーブのためにここまで来たんだぞ!!撃てえっ!!オーブのためにぃ!!」

トダカ「くっ…!ミサイル照準!アンノウンMS!」

フェイズシフトを持つストライクルージュならば、ミサイルが命中したとしても致命傷を負うことはないだろう。
この攻撃の意図が伝わることを祈りながら、トダカは発射指示を出した。

トダカ「撃てえっ!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:12:40.04 ID:xt3V/HfJ0<> カガリ「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない!それがオーブの理念だったはず!」

カガリ「それを忘れたかっ!!」

懸命に呼びかけるカガリに、オーブ軍はミサイルの掃射で答えた。
フリーダムがストライクルージュを庇うように前に出て、ミサイルを撃ち落としていく。
こちらは撃たざるを得ない状況にある、だからカガリ様を守ってくれ。
今の攻撃に含まれていたメッセージを、キラは理解していた。

カガリ「なぜだ、オーブ軍!私の声を…!」

キラ「カガリ、もう駄目だ。残念だけど、こうなってしまったら…」

カガリ「そんな……」

キラ「カガリは下がってて。ここからは、僕ができるだけやってみるから」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:14:21.58 ID:xt3V/HfJ0<> オーブ艦隊の発砲を皮切りに、地球軍本隊が攻撃を開始する。
次々とウィンダムが発進していく。カオスが空に躍り出て、アビスが変形して海へ飛び込む。

ミネルバ側も、甲板にレイとルナマリアを配置して迎撃にあたらせ、ハイネのグフを出撃させる。

グフは、まるでオレンジの矢のように戦場を駆け抜ける。
電撃を纏う"スレイヤーウィップ"がしなり、押し寄せる敵機を海面へと叩き落していく。
両腕の四連装ビームガン"ドラウプニル"からばら撒かれた光弾が、次々と空に火の華を咲かせる。
期待を上回るグフの性能に、ハイネは高ぶりを抑えきれずに叫んだ。

ハイネ「ザクとは違うんだよ!ザクとはっ!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:17:11.88 ID:xt3V/HfJ0<> タリアは、獅子奮迅の勢いで敵を堕としていくグフを見て、ひとまずは胸を撫で下ろした。
しかし、一番の問題は所属不明機たちの動きだ。彼らの行動によって、ミネルバは一気に不利な状況に立たされた。
かと思えば、今は所属不明艦"アークエンジェル"はミネルバを援護し、地球軍の攻撃を押しとどめている。

タリア「まさか、本当に戦闘を止めたいだけ…?」

見れば、フリーダムは敵機を撃墜することなく、メインカメラや武装だけを破壊して戦っている。
アークエンジェルの砲撃も、命中はさせず、あくまで牽制としてのものだ。
馬鹿げている。こんなことをしても、戦場は混乱し、ただ戦闘が長引くだけだ。
これが、ヤキン・ドゥーエの英雄と呼ばれた者たちのやることなのか。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:18:07.72 ID:xt3V/HfJ0<> アスラン「くそっ、キラ…!」

アスランは焦っていた。
キラたちは、自分が今ミネルバの一員として戦っていることを知らない。
なんとか接触して、こんなことはやめさせなければ。
だが、それを許してくれるほど、この戦場は甘くない。
襲い来るカオスを捌きながら、ミネルバへ向かおうとするウィンダムを撃ち落とすのが精一杯だった。
オーブという第二の祖国を相手に、覚悟を決めきれないでいる今のアスランにとっては。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:21:58.09 ID:xt3V/HfJ0<> ハイネ「どれだけ数で勝っていようが、その程度の腕でぇっ!!」

グフが、ビームソード"テンペスト"を振り下ろし、ウィンダムを両断した直後、モニターの死角からビームが浴びせかけられた。
コクピットに響く警告音によってそれを察知したハイネは、咄嗟に回避運動をとり、ビームが放たれた方へと向き直る。

ハイネ「なっ…ガイアだと!?」

アーモリーワンで奪われた三機の情報は事前に聞いていた。
だが、陸戦用の機体であるガイアが、この海上戦で前に出てくるとは思っていなかったのだ。

艦艇の上を次から次へと飛び移りながら、舞い踊るように攻撃を仕掛けてくるガイア。
足場を潰してしまいたいが、あいにくとグフは艦艇を一撃で葬るほどの破壊力を持ち合わせてはいない。
ガイアの斬撃をすんでのところで躱しながら、ハイネは冷や汗が伝うのを感じていた。

ハイネ「チィッ!こいつ、できる…!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:23:40.86 ID:xt3V/HfJ0<> 足場を移動しながら、グフへと猛攻を仕掛けるガイア。
ガイアに踏みしめられた艦艇はバランスを崩すが、ステラは気にも留めない。

ステラ「ふふふっ…」

戦いの最中にあって、ステラは、先日自分を助けてくれた少年――シンのことばかりを考えていた。
抱きしめてくれた腕の温もりを、焔のように紅い瞳を思い出すと、ステラの身体は熱くなる。
また会うと約束した。その約束を果たすためには、生き延びなければならない。
だから、敵には死んでもらわなくちゃ。
グフの腕から伸びた鞭をビームサーベルで切断し、その爆発によろめいた隙に、コクピットに向けてビームライフルの狙いを定める。

ハイネ「しまった!」

ステラ「…ばいばい」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:24:53.21 ID:xt3V/HfJ0<> だが次の瞬間、急接近したフリーダムの振るう光の刃を受け、ガイアの腕はビームライフルごと宙を舞った。
フリーダムはそのまま身を翻し、今度はグフの両腕を切り飛ばす。

ステラ「なんなの…!?」

ハイネ「この野郎、手当たり次第かよ!」

一方的に武装を破壊して飛び去るフリーダム。
ハイネは、今まで味わったことのない屈辱に唇を噛んだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:27:11.65 ID:xt3V/HfJ0<> カオスの猛攻を凌ぎながら、アスランは苛立ちを募らせていた。
フリーダムの攻撃を受け、ハイネ機が戦えなくなった。状況は悪化する一方だ。
一刻も早く、キラを止めなくては。
こんなところで足止めを食らっている場合ではないというのに。

スティング「オラァ!!沈めッ!!」

アスラン「ええい、邪魔をするな!!」

爪先にビームサーベルを纏ったカオスの両足が、ギロチンのように振り下ろされるが、
セイバーは、それをシールドで防ぎ、押し返した。
かち上げられてバランスを崩したカオスに照準を合わせ、アムフォルタスの一撃を見舞う。

スティング「ぐあっ!?」

バックパックに直撃を受けたカオスは飛行能力を失い、海面へと叩きつけられる。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:30:47.90 ID:xt3V/HfJ0<> アスラン「なんとか、キラに呼びかけないと…!」

周波数を切り替えるために通信機を探る。その動作が生む一瞬の隙に、他とは違う紫檀色のウィンダムが、セイバーに迫っていた。

ネオ「悪く思うなよ、こっちも必死なんでね」

アスラン「くっ!?」

ほぼ同時にビームライフルを向け合った両者は、その引き金を引く前に、フリーダムによって攻撃の手段を奪われる。

アスラン「キラ!?今のうちに、周波数を…!」

邪魔が入らないうちにと、アスランはまた通信機を探る。

ネオ「……はははっ!」

堪えきれず、ネオは嗤った。
こちらが武装を失ったのを見て、目の前の紅い機体も、第三勢力の白い機体も完全に油断している。
最初から、囮作戦だということにも気づかずに。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:31:53.85 ID:xt3V/HfJ0<> ネオ「アウル!」

アウル「待ってましたぁ!」

突如として海中から姿を現したのは、アビス。
その手に握られた槍が、セイバーを刺し貫くべく、先端にビームを発生させる。

ハイネ「アスラン!」

アスラン「!」

コクピットにハイネの声が響き、ハッとしてモニターに目を向ける。
迫りくるアビスの槍。回避は間に合わない、シールドは、腕ごとフリーダムに叩き落された。
アスランは、背筋が凍るような感覚に身を震わせた。

アスラン「カガリ…!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:34:00.27 ID:xt3V/HfJ0<> アスランが身を竦め目を閉じた次の瞬間、機体に衝撃が走った。
アビスの攻撃によるものだろうか。ならばなぜ、自分は生きている?

目を開けると、モニターに映し出されていたのは、アビスの槍に貫かれたオレンジのグフ。
ハイネは咄嗟に自分の機体をセイバーにぶつけ、槍の一撃からアスランを庇ったのだ。

アスラン「あ……ああ…!」

ハイネ「仲間が死ぬのは、もう御免だと言ったろ…」

それが、ハイネの最期の言葉だった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:36:22.40 ID:xt3V/HfJ0<> アスラン「ハイネェェェッ!!」

アスランは、爆散し海に散っていくグフの破片を、呆然と見つめるしかできなかった。
セイバー同様、ハイネのグフも、敵に対応する手段を失っていた。
もし、その手に武器さえあったなら、こんな結果にはならなかったかもしれない。

だが、アスランはこんな風に思っていた。
ハイネを死に追いやったのは、キラじゃない。
キラを止めることばかり考えて、目の前の戦いに徹しきれなかった、自分の愚かさだ。


――アスラン、下がって!!


ニコルの声が、脳裏に蘇る。

アスラン「俺のせいで……また……!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:37:36.91 ID:xt3V/HfJ0<> アウル「今度こそ、堕ちろよっ!!」

キラ「させない!」

再びセイバーに襲い掛かったアビスは、フリーダムによって推進部を破壊されて海へと沈んでいった。

フリーダムは、そのまま戦場にいるほぼ全てのMSの戦闘能力を奪い、地球軍とオーブは撤退を余儀なくされた。
それを見届けたアークエンジェルも、フリーダムと共に去っていった。

アスラン「キラ…カガリ…おまえたちは、戦いが起こるたびに、こんなことを続けるつもりなのか…?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/22(日) 00:40:28.83 ID:xt3V/HfJ0<> 今回はここまでです
原作とちょこちょこ変えてる部分ありますが基本的に行き当たりばったりで書いているので
ここ変えた意味なくね?って部分も多々出てくると思いますが許して <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/22(日) 00:50:10.11 ID:awGb8TGO0<> 乙です
ハイネはどうあっても逝くのか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/22(日) 00:55:54.50 ID:9iW8WSICO<> ハイネはどうあがいても死ぬのか…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/22(日) 01:30:09.01 ID:EFyrrgGA0<> 乙
記憶消さない理由付けが自然でいいね
消しちゃうほうが連合っぽいっちゃぽいのかもだけど <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/22(日) 02:32:29.06 ID:ejZqZzyFO<> 記憶がないとはいえネオはあの人だしな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/22(日) 10:19:46.79 ID:cI7B2kyg0<> これハイネ死んだのアスランのせいってシンが怒るのでは? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/22(日) 15:52:57.34 ID:SO3W7VsCo<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/23(月) 09:31:48.28 ID:5kNKIauDO<> 乙 またしてもニコル死亡回数が加算されてしまった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/23(月) 12:17:27.16 ID:2DwgUH3i0<> ハイネが残ってたら機体受領できないからしょうがないね <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 20:51:14.58 ID:NlmXOd7+0<> 戦いを終えたミネルバは、マルマラ海にある小さな港"ポートタルキウス"に停泊していた。
激しい損傷を負ったミネルバと、そこから運び出された黒い袋を見て、タリアは何度目かの溜息をついた。
袋の中に納められているのは、先の戦いで命を落としたクルーたちだ。
これが、敵軍と戦った結果であるなら、まだ納得もできただろう。
だが、彼らを撃ったフリーダムは、今のザフト軍にとって、敵とみなしていいのかどうかも分からない存在だった。

タリア「……次に戦場で会ったら、こちらもそれなりの対処をしなければならないわね」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 20:53:37.93 ID:NlmXOd7+0<> ハイネの遺品を載せた車が走り去るのを、ミネルバのパイロットたちは重苦しい気持ちで見送った。
車が見えなくなってから、四人はミネルバへと向かう。

ルナマリア「こんなのってないよ…あの人、これからよろしくって…」

シン「クソッ!あいつらが変な乱入してこなけりゃ、こんなことにはならなかったのに!」

アスラン「……!」

前を歩いていたシンとルナマリアの会話に、アスランは耳を塞いでしまいたくなった。
シンの言う"あいつら"とは、フリーダムとアークエンジェルのことだ。
彼らが無謀な行いをしたのは、アスランにも否定しようのない事実だった。
ふと、レイが足を止め、ひとつの疑問を口にした。

レイ「アスランは先の大戦で、フリーダムとアークエンジェルと共に戦ったとお聞きしました」

レイ「今回の彼らの行動について、なにかご存知なのでは?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 20:56:53.18 ID:NlmXOd7+0<> レイの懐疑的な視線に、思わずアスランの頭に血が上る。
本来アスランは、自分が疑いを向けられた程度で怒りを露わにする人間ではなかったが、
フリーダムとアークエンジェルの一件が、アスランから冷静さを失わせていた。

アスラン「もし知っていたら、あんなことを許すはずがないだろう!!」

突然大声を上げたアスランに、シンとルナマリアが何事かと振り返った。

ルナマリア「アスラン…?」

アスラン「……あ…」

心配そうに見つめてくるルナマリアに気づき、アスランは自分を戒める。
ハイネがいなくなった今、この部隊を纏め上げるのは、再び自分の役目になった。
だというのに、苛立ちを部下にぶつけてしまうなど、隊長失格ではないか。

アスラン「…すまない、八つ当たりだ」

レイ「いえ、お気になさらず。俺が無神経でした」

レイは怒鳴られたことを気にした様子もなく、踵を返して歩き始めた。
シンとルナマリアは戸惑っていたが、アスランに先に戻っていてくれと促され、レイに続くようにミネルバのハッチに消えた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 20:58:54.44 ID:NlmXOd7+0<> アスラン「なにやってるんだ…俺は…」

またも仲間の命と引き換えに生き延びてしまった。
頭の中で、ニコルとハイネの笑顔が重なる。

アスラン「いいや違う…あのときとは…」

話をしなければならない。だが戦場では駄目だ。
軍服を脱ぎ、誰からも邪魔されないところでなければ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:01:14.74 ID:NlmXOd7+0<> タリア「アークエンジェルと、接触を…?」

アスラン「はい。艦長は既にご存知かもしれませんが、私は先の大戦で、あの艦と共に戦いました」

アスランは当初、そのことを話さないつもりだった。公式記録には残されていないことだし、
なによりフリーダムがミネルバを攻撃したあとでは、余計な誤解を招く可能性があるかと思ったからだ。
ダーダネルス海峡の戦闘で、全周波通信を使わなかったこともそれが理由だった。
だが、軍に入って間もないレイですら知っているのであれば、もう隠していても仕方がないと判断したのだ。

アークエンジェルを説得したいというアスランの申し出を、タリアは許可した。
あの艦と交渉するのにアスランほど適した人物はいないと思ったし、
なによりアスランには、フェイスとしてその権限があった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:03:53.24 ID:NlmXOd7+0<> アスランが去ってからしばらくして、再び艦長室のドアを叩く者がいた。

レイ「レイ・ザ・バレルです。艦長、少しよろしいでしょうか」

タリア「どうぞ」

レイ「失礼します」

入ってくると、レイは律義に敬礼してみせた。

タリア「そんなに畏まらなくていいわ。それで、なんの用?」

レイ「…少し、申し上げにくいことなのですが…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:05:24.60 ID:NlmXOd7+0<> エーゲ海。小さく波が打ち寄せる海岸に、セイバーを着陸させる。
街で偶然再会したミリアリア・ハウの助力が得られなければ、こうも早くにキラたちと接触することは叶わなかっただろう。

セイバーから降りると、先に到着していたミリアリアが手を振っていた。

アスラン「キラたちは…?」

ミリアリア「もうすぐだと思うけど…あっ、あれ!」

アスラン「!」

ミリアリアの指さした岩場の影に、二人の人影が見える。

アスラン「キラ…カガリ…」

キラ「アスラン…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:07:36.56 ID:NlmXOd7+0<> カガリ「アスラン、おまえ…ザフトに戻ったって、本当なのか…?」

アスラン「…ああ。その方がいいと思った。俺自身のためにも、オーブのためにも」

カガリ「そんなっ!なにがオーブの…!」

キラ「カガリ」

カガリを抑え、今度はキラがアスランへと疑問を投げかける。

キラ「あれは、君の機体?」

アスラン「…そうだ。今はミネルバの一員として戦っている」

キラ「じゃあ、この前の戦い…」

アスラン「おまえを止めようとした。だが、通じなかった」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:09:15.53 ID:NlmXOd7+0<> アスラン「キラ、カガリ…おまえたちは何故あんな馬鹿げたことをしたんだ?おまえたちのせいで、ミネルバからも要らぬ犠牲が出た!」

カガリ「馬鹿げたこと…!?」

吐き捨てるように言うアスランに、カガリはたまらず言い返した。

カガリ「あのときおまえたちが戦おうとしていたのは、オーブ軍なんだぞ!?私たちはそれを…」

アスラン「あそこで君が呼びかけたぐらいで、オーブが素直に撤退するとでも思ったのか!?」

カガリ「それは……」

キラ「二人とも、ちょっと落ち着いて」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:12:09.98 ID:NlmXOd7+0<> アスラン「キラ…」

キラ「君はどうしてプラントに戻ったの?僕たちを探していたのは何故?」

アスラン「…プラントは、議長は、今のこの状況を終わらせるために尽力している。その手伝いがしたいと思った」

アスラン「だというのに、おまえたちはただ戦況を混乱させているだけじゃないか!」

キラ「…本当に、そう?」

アスラン「なに…?」

キラから向けられた目に、アスランは既視感を覚えた。
先日、レイから向けられた、疑うような目。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:14:47.19 ID:NlmXOd7+0<> アスラン「どういう意味だ?おまえだって、デュランダル議長の言葉は聞いているはずだ!」

キラ「…だったら、今プラントにいる、あのラクスはなに?どうして本物の彼女が殺されそうになるの?」

アスラン「ラクスが狙われた…!?それはどういう…」

キラ「君がプラントに上がって、戦争が始まった後…僕らはコーディネイターの特殊部隊に襲撃されたんだ」

キラ「狙いはラクスだった。彼らはMSまで用意していて…だから僕は、またフリーダムに乗ったんだよ」

キラ「ラクスも、みんなも…もう誰も死なせたくなかったから」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:17:34.36 ID:NlmXOd7+0<> キラ「どうしてラクスが狙われなければならないのか…それがはっきりしないうちは、議長もプラントも信じられない」

アスラン「……」

確かに、デュランダル議長には動機がある。
議長にとって必要なのは、ラクス本人ではなく、その求心力。
ミーアという自分に都合のいいラクスを手にしたのなら、本物は必要ない。むしろ邪魔ですらある。
だが、誰よりも戦争の終結を望み、そのために力を尽くしている議長が、そんな――。
嫌な想像を振り払うように、アスランは言葉を紡ぐ。

アスラン「…プラントにだって、色んな想いの人間がいる。ユニウスセブンの事件を引き起こした犯人たちのような…」

キラ「この一件も、議長のあずかり知らない人たちが、勝手にやったことだって言うの?」

アスラン「口にしたくはないが…ラクスが狙われる理由はいくらだってある。例えば、失脚させられた旧ザラ派の逆恨みだって…」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:19:34.46 ID:NlmXOd7+0<> キラ「アスラン、君はおかしいと思わないの?ラクスが襲われたのと同時期に、偽物のラクスが出てくるなんて」

そんなことはキラに言われずとも分かっていた。ただ、信じたくなかったのだ。
アスランがザフトに復隊したのは、議長の力になりたいと思ってのことだったから。

アスラン「…その件は、艦に戻り次第、俺も調べてみる。だからもう、この前のようなことはするな」

カガリ「戻るって、ミネルバにか?じゃあ、オーブにもアークエンジェルにも、戻らないつもりなのか…?」

アスラン「ミネルバの仲間たちだって、俺を必要としてくれている。彼らを放り出すような真似はできない」

カガリ「そんな…」

泣きだしそうなカガリを見て、アスランはやりきれない気持ちになる。
本当なら今すぐにでも抱きしめてやりたかったが、今の自分にその資格は無いような気がした。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:22:15.18 ID:NlmXOd7+0<> キラ「じゃあ君は、これからもザフトで戦うつもりなの?この前みたいに、オーブとも?」

アスラン「俺だって、オーブとの戦いは避けたい。だが攻めてきているのは、地球軍とオーブだ」

キラ「でも…それでも僕たちは、オーブを撃たせたくないんだ」

キラ「カガリの国を、ウズミさんの残してくれた国を…」

キラ「本当は、オーブだけじゃない。戦って失ったものは、二度と戻らないから……」

アスラン「キラ、おまえっ…!」

綺麗事を言うな、という言葉が、喉まで出かかったが、アスランはそれを堪えて、懸命に言葉を探す。
今日ここに来たのは、彼らに怒りをぶつけるためではなく、想いを伝えるためだから。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:26:28.89 ID:NlmXOd7+0<> アスラン「キラ、カガリ…俺たちの想いは、きっと同じだ。だが、おまえたちはそれを伝えるために何をした?」

アスラン「戦いをやめろと叫んで、やめなかったときは力で捻じ伏せて…それが本当に、オーブを守ることに繋がるのか?」

カガリ「それは…」

俯くカガリをよそに、キラは真っ直ぐにアスランを見つめ、今までと違う強い口調で言った。

キラ「……それでも僕は、オーブ軍の戦いを放っておくことはできない…カガリが泣くのを、ただ見ているだけなんてできないよ!」

アスラン「キラ…!」

キラ「今みたいになるのを止められなくて、悔やんで…それでも諦めきれずに、カガリは僕の力を必要として…!」

キラ「君はそれを、無駄なことだって、馬鹿なことだって切り捨てるの!?」

アスラン「………」

分かっている。カガリが傷ついていることなど。
だが、戦争を終わらせるための最善の道だと思ってザフトに戻ったんだ。
いつでも手の届く距離で、大事な人を直接守れるなら、それで望む未来が得られるのなら、誰だってそうするだろう。
世界がそんな風に単純であったなら、こんなに苦しまなくてもよかったのに。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:28:39.31 ID:NlmXOd7+0<> アスラン「…時間だ。もう、ミネルバに戻らなければ…」

キラ「アスラン!まだ話は…!」

アスラン「あんなことを続けていれば、軍はおまえたちを野放しにはしない!いずれ、おまえたちを倒すための戦いだって起きてしまう!」

アスラン「ミネルバに…俺の仲間に、おまえたちを撃たせるようなことには、なってほしくない…!」

キラ「………」

カガリ「アスラン…」

アスラン「…理解はできても、納得のできないこともある…俺にだって…」

キラたちに背を向け、セイバーへと向かう。
これ以上カガリの顔を見ていたら、きっと戻れなくなってしまうから。

セイバーのコクピットに乗り込み、ハッチを閉じる。
これでいい。伝えるべきことは伝えた。

アスラン「今は違う道を歩んでいても、目指す先は同じはずなんだ……」

ザフトに復隊した自分の選択が、間違いでないように。
そしてもう二度と、戦場で彼らに会うことのないように。
そんなアスランの願いをのせて、セイバーは空へと舞い上がった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/23(月) 21:34:22.51 ID:NlmXOd7+0<> 今日の更新はここまでです
個人的にレイが好きなんですが今のところちょっと空気気味でどうにかしたい… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/23(月) 21:47:45.77 ID:1bJd6hQmO<> これもしアスラン脱走せずあのままザフトいたらレジェンドに乗ってたのだろうか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/23(月) 23:35:49.55 ID:r70o4nJGo<> 乙ー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/23(月) 23:52:40.94 ID:SKkHrxIsO<> アニメでもレイは空気だったし <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/24(火) 00:31:12.21 ID:E3zq6TUu0<> アニメでジエッジのシンとレイの会話だけでもあればなぁ…… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/24(火) 01:07:48.52 ID:+Z6SbYO40<> 乙ー
アニメだとモノローグでの心情吐露が徹底して排されてるからSSで文字にすると新鮮でいいね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/24(火) 09:51:18.33 ID:+7Duy6Oh0<> そういやルナマリアの尾行無かったな <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:01:48.17 ID:iButzoxC0<> 時間は、ディオキアでの休暇中、シンとルナマリアがステラという少女に出会った日まで遡る。
その日レイは、デュランダルに招かれ、宿舎内のVIPルームを訪れていた。

レイ「レイ・ザ・バレル、出頭いたしました」

デュランダル「入ってくれ」

部屋の主の了承を得て、木製のドアを押し開く。
出迎えたデュランダルの父親めいた表情を見て、レイの顔も自然と綻んだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:04:07.22 ID:iButzoxC0<> デュランダル「やあ、レイ。昨日はゆっくり話す時間もなくて、すまなかったね。さあ座ってくれ、なにか飲み物を用意しよう」

レイ「はい、ありがとうございます」

VIP専用の部屋だけあって、室内はエレガントな調度品で整えられている。
部屋を照らすシャンデリア。風格漂うアンティークのソファー。壁にかけられた絵画。宝石で縁取られた鏡。
だがレイの心になにより安らぎを与えたのは、室内装飾の美しさよりも、デュランダルが淹れた一杯のコーヒーだった。
上品な香り、ほどよい酸味と苦味が、戦いに疲れたレイの心に染み渡っていく。

レイ「とても美味しいです、ギル」

デュランダル「それはよかった」

こうして二人でコーヒーを飲みながら、とりとめのない話をする。
レイにとっては、この上なく幸せで大切な時間だった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:06:10.95 ID:iButzoxC0<> デュランダル「ミネルバの活躍は報告で聞いているが、それだけでは味気ないだろう?レイの口から、色々と聞かせてほしい」

デュランダル「そうだな…例えば、アスラン。彼が加わったことは、ミネルバにとって良い影響を与えてくれただろうか?」

レイ「ええ。不器用な方ではありますが、不器用なりに部下とも向き合って、信頼関係を築いています」

レイ「アカデミーでは教官と衝突してばかりいたシンも、アスランには心を開いているようです」

レイ「私も、彼の篤実さは嫌いではありません」

デュランダル「そうか…ならばいいのだが」

デュランダルの常態とも言うべき微笑が、僅かに陰る。
そして、その変化に気づかないレイではなかった。

レイ「なにか、気になることでも?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:08:41.34 ID:iButzoxC0<> デュランダル「…オーブの姫君がフリーダムによって攫われたことは、君も聞いているだろう?」

レイ「はい」

デュランダル「その後、彼らに目立った動きはない。このまま大人しくしてくれていれば、それでいいのだがね」

デュランダル「もし彼らが戦場に出てきたら…アスランは、一体どちらに付くのかな?」

レイ「アスランが、裏切ると…?」

デュランダル「想像もしていなかった、という顔だね。だが、彼は一度ザフトを裏切り、アークエンジェルに付いたこともある」

デュランダル「全く可能性が無いとは、言えないのではないかな?」

数秒の沈黙があった。その数秒の間に、レイは決断した。
彼にしては、少しばかり長い逡巡であった。

レイ「…であれば、アスランに監視をつけるというのは?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:10:27.49 ID:iButzoxC0<> デュランダル「ふむ、監視…か」

レイ「そして、その役割には自分が適任であると考えます」

シンとルナマリアには任せられない、とレイは思った。能力的な問題ではなく、アスランの監視を続けるうちに、
知らなくていいことまで知ってしまう可能性があるからだ。例えば、今プラントにいるラクスの正体であるとか。

デュランダル「だが、君にそんな真似をさせてしまうのは、心苦しくもあるな」

レイ「少しでもギルの不安を取り除くことができるのなら、やらせてください。俺は、あなたの力になりたくて軍に入ったのですから」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:11:43.96 ID:iButzoxC0<> セイバーが飛び、キラたちが去ったあと、レイは撮影と録音のための機材を回収し、ここまで乗ってきた小型のジャイロへと向かう。

レイ「…ハァ」

思わず、溜息が漏れた。仲間を監視するという行為には、少なからず罪悪感が伴うものだ。
だが、それでも実行に移したのは正解だった。
彼らの会話を聞いていれば、アスランがギルに不信感を抱いたことは想像に難くない。
もしアークエンジェルに寝返るような素振りを見せれば、撮影した写真を証拠として処断を下すこともできる。

レイ「願わくば、これからも仲間でありたいと思うが…」

ギルに不利益をもたらすようなことがあるなら、そのときは自分が彼を撃たねばならない。
来たるべき、平和な世界のために。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:12:59.25 ID:iButzoxC0<> 地球軍空母"ジョン・ポール・ジョーンズ"とオーブ艦隊は、ダーダネルスでの戦いのあと、
エーゲ海の地球連合軍基地に着艦し、船体とMSの補修に追われていた。

ネオ「うーん、やられたねえ」

研究員「幸い、アビスとガイアの損傷は軽微です。カオスも、次の戦いまでにはどうにか…」

ネオ「いや、やられたってのは、ロドニアのラボの件さ」

ネオ「閉鎖に失敗した挙句、事後処理の前にザフトに暴かれてしまうとはね」

研究所「スエズも慌てているようですが…しかし私たちにできることはありませんよ」

ネオ「ただ、無関係とも言えまい?ロドニアのラボは、スティングたちにとっては……」

研究員「彼らの耳には入らないように、他の者たちには言ってあります」

ネオ「助かる。特にアウルには聞かせたくない話だ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:14:30.39 ID:iButzoxC0<> 艦内の待機室でスティングとアウルがボードゲームに興じる横で、
ステラはいつものように、ボトルアクアリウムの中を泳ぐ魚を眺めていた。

ステラ「ろどにあ…の…らぼ…」

ふとステラが呟いた言葉に、スティングとアウルが手を止め、振り返る。

ステラ「って、なに?」

こてん、と首を傾げたステラに、スティングは呆れて苦笑する。

スティング「おいおい、マジかよ…」

アウル「ロドニアのラボって、僕たちが前にいたとこじゃんか」

ステラ「そうなんだ…」

スティング「そうなんだ…って、おまえも一緒だっただろうが。それで、ラボがどうしたって?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:15:53.82 ID:iButzoxC0<> ステラ「さっき、ネオのところに行こうとして、話してるのが聞こえて…ザフトがラボにって…」

スティング「なっ…!」

アウル「なんだって!?」

スティングは訝しんだ。ザフトが、つまりは敵が関わっているということは、どう考えても良い話ではない。
そして、その件について自分たちがなにも聞かされていないというのは、つまり――。
そんなスティングの思索は、アウルの怒声によって遮られた。

アウル「ステラ!ザフトがラボにって、どういうことだよ!?」

ステラ「あわ、わ…」

血相を変えて詰め寄るアウルに、ステラはすっかり怯えてしまっている。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:17:49.04 ID:iButzoxC0<> スティング「アウル!落ち着け!」

アウル「スティング!なんでおまえは落ち着いていられるんだよ!?ラボには"母さん"が…!」

スティングに掴みかかっていた腕から力が抜け、アウルは糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
強制的に恐怖を思い起こさせ、エクステンデッドを抑制するための"ブロックワード"を、アウルは自ら口にしてしまったのだ。

アウル「かあ、さん…が…!…あ…あ…!」

スティング「この馬鹿!ああ、くそっ!しっかりしやがれ!」

アウル「母さんがぁっ!!"死んじゃう"じゃないかぁっ!!」

ステラ「!」

――死。
ステラにとっては、何よりも恐ろしい言葉だった。
だが、ディオキアの海で、ステラはその恐怖から解放された。
そのときのことを、ステラは片時も忘れたことはない。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:18:40.66 ID:iButzoxC0<> 肩を震わせて、子供のように泣きじゃくるアウル。
ステラは、そんなアウルの髪を撫で、そっと肩に抱き寄せた。

ステラ「大丈夫…死なない…守る…」

アウル「ま、もる…?」

ステラ「うん…守る」

守るということは、死なないということだ。あたたかくて、やさしい言葉。
シンが自分にしてくれたように、頭を撫でながら、その言葉を言い聞かせる。

ステラ「守る…だから、大丈夫…」

アウル「かあ…さん…」

やがて、アウルが正気を取り戻し、顔を真っ赤にして振りほどくまで、ステラはずっとそうしていた。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:21:25.67 ID:iButzoxC0<> スティング「まったく、どうなることかと思ったぜ」

アウル「…うっせ」

スティング「ラボの件は、俺がネオに聞いてみる。おまえはステラと一緒に、部屋で大人しくしてろ」

アウル「……」

スティング「ステラも、いいな?」

ステラ「うん…」

スティングは待機室を出て、ネオのいるであろう指令室へと向かう。
その途中で、研究員や兵士たちとすれ違う。彼らから向けられる目が、スティングは大嫌いだった。
エクステンデッドよりも遥かに脆弱な連中が、何故そんな憐れむような目で俺たちを見るのだ。
だが今は、そんなことを気にしている場合ではないことも、スティングは分かっていた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/26(木) 21:21:37.80 ID:fNRr88ox0<> これは…スティングやアウルにも救済入るかな? <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:22:41.43 ID:iButzoxC0<> ネオ「うーん、おまえたちには聞かせるつもりはなかったんだがなあ…」

スティング「教えてくれ、ネオ。あのラボに、なにがあったんだ?」

ネオ「ふむ……ま、聞かれてしまったのなら仕方ないか」

研究員「大佐!」

余計なことを言うな、と目で訴えてくる研究員を無視し、ネオは続けた。

ネオ「ロドニアのラボは、ザフトの襲撃を受けて壊滅した。以上」

スティング「……そうか」

ネオの言葉が本当かどうかは、スティングには分からなかった。
ただ、事態がもう手遅れで、自分たちの出る幕はないということだけは、その言葉の端から読み取ることができた。

スティング「わかった、アウルたちには俺から上手く言っておく。邪魔したな」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:23:52.77 ID:iButzoxC0<> スティングが指令室から出ていくのを確認し、研究員が口を開いた。

研究員「大佐が本当のことを話してしまうのではないかと思って、肝を冷やしましたよ」

ネオ「ま、あいつも俺が嘘をついたってことは、なんとなく気づいているだろうけどね」

研究員「えっ…?」

ネオ「上手く言っておくってのは、そういうことだろ?」

研究員「もしそうなら…ああも物分かりがいいと、かえって不安になりますが」

ネオ「軍人たるもの、ときには納得のいかないことも飲み込まなければならない…」

ネオ「あいつも、兵器から兵士になりつつあるのさ」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/04/26(木) 21:25:12.18 ID:iButzoxC0<> 今回の更新はここまでです
前回アスランが尾行されている描写をしなかったのは、誰に尾行させるか迷っていたからでした <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/26(木) 22:46:17.97 ID:4ONK/axgo<> 乙ー <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/26(木) 22:46:40.82 ID:khtl71Ro0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/26(木) 22:52:23.77 ID:Kl1JypX7o<> おつ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/26(木) 23:01:04.08 ID:drGzCz7To<> 乙
安定感ある <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/04/27(金) 09:56:20.94 ID:ZkWYSk/L0<> 乙です <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:38:33.60 ID:svCzTigi0<> ジョン・ポール・ジョンズのブリッジで、ネオはオーブ艦隊とミネルバの戦いを眺めていた。

ネオ「まったく、オーブ軍は本当によく働いてくれるなあ」

副官「我々地球軍に恭順の意を示すことが、国を守ることに繋がると考えているのでしょう」

ジブラルタルへ向かうミネルバをクレタ沖でオーブ軍に迎え撃たせ、自分たちはミネルバの索敵範囲外からチャンスを窺う。
我ながら卑劣な作戦だ、とネオは自嘲した。
だが、ドライでなければ"ファントムペイン"の司令官は務まらないのだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:41:16.42 ID:svCzTigi0<> インパルスはブラストシルエットで出撃し、その大火力で敵機を撃滅していく。
ハイネを欠いた今、ブラストの大火力でもなければ、敵の数に攻撃が追いつかなかった。
フォース以外のシルエットには飛行能力は無いが、ホバリングによって海上を移動することは可能だ。

アスラン「エネルギー残量には気をつけろよ、シン!オーブ軍の後ろには、例の地球軍空母が控えているはずだ!」

シン「オーブを盾にするような真似を…!どこまで卑劣なんだよ、地球軍は!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:43:34.28 ID:svCzTigi0<> 思うようにいかない戦況に、ユウナは苛立ちを抑えきれずに喚いた。

ユウナ「んもう!ムラサメ隊はなにをしてるの!?」

トダカ「現在ババ一尉が隊を率いて、ミネルバに向かっています!」

うんざりしたように怒鳴るトダカや、反抗的な目で自分を見ている将校たちに、ユウナは舌打ちをした。
こいつらは、ダーダネルスの戦闘でカガリを撃てと命じたことを根に持っているのだ。
なんの力も持たない小娘が崇拝されて、オーブ再建の立役者たるセイラン家の僕が蔑ろにされるなんて、絶対におかしい。

ユウナ「艦の一隻ぐらい、さっさと堕としてみせろよ!この作戦が失敗したら、おまえのせいだからな!」

トダカ「……」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:44:19.60 ID:svCzTigi0<> ムラサメとM1アストレイの大群を相手に、インパルスとセイバーは手一杯の状態だった。
ミネルバの甲板で迎撃に当たる白と赤のザクの死角を狙い、ババ率いる別動隊のムラサメが突撃をかける。

ババ「小隊各機、俺に続けぇッ!!」

矢の如く加速するムラサメ。
一瞬遅れて反応したザクの攻撃は、それでもムラサメを一機、また一機と撃ち堕としていく。
だが、ババは振り返らない。身体を打ちひしぐGに耐えながら、ムラサメの加速をそのままにMSへと変形させる。
ビームライフルの銃口が、ミネルバのブリッジを捉えた。

ババ「やれる!」

トリガーを引こうとした刹那、ビームライフルの銃身が火を噴き上げた。

ババ「なに!?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:45:37.28 ID:svCzTigi0<> 唖然とするババの前に立ち塞がったのは、フリーダム。
オーブの守護天使として、伝説となった機体。

ババ「何故!?何故フリーダムが我らを撃つ!?」

ババを焦らせたのは、フリーダムの存在だけではない。
フリーダムが現れたということは、すなわち――。

カガリ「オーブ軍!ただちに軍を引け!」

ババはまたも、仕えるべき元首と仰ぐ少女に銃を向けなければならなかった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:49:03.90 ID:svCzTigi0<> ネオ「アークエンジェルまで出てきたのなら、オーブだけにやらせておくわけにもいかんな…」

ネオ「カオス、アビス発進させろ!ガイアはフリーダムが来たときのために、迎撃準備しておけ!」

アークエンジェルの乱入を機に、地球軍も本格的に戦力を動かした。
状況は、まるでダーダネルスの戦いを再現したかのようだった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:50:14.58 ID:svCzTigi0<> 前回とは違い、今度は自分たちを救ってみせたフリーダムに、ミネルバのクルーたちは困惑するしかなかった。

アーサー「艦長…?」

タリア「なるほどね…どうやら彼らは、本当に戦闘を止めたいだけということのようだわ」

タリア「ただ、少なくともあれは味方ではない。本艦は前回、あれによって甚大な被害をこうむった!敵艦と認識して対応!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:52:15.63 ID:svCzTigi0<> スティング「てめぇは俺がァッ!!」

前回の借りを返すべく、カオスがセイバーへと迫る。

スティング「この前のようには、やらせねえ!」

カオスのバックパックから、二機の機動兵装ポッドが分離する。
高出力のスラスターを内蔵して、大気圏内でのオールレンジ攻撃を可能とした兵器だ。
ポッドから発射されたビームの矢が、ミサイルの嵐が、セイバーの加速を阻む。

アスラン「チィッ!」

スティング「これでぇぇッ!!」

あの紅い機体は、この脚で真っ二つにしなければ気が済まない。
爪先に凶暴な光の刃をひらめかせ、カオスはセイバーに突進する。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:53:44.73 ID:svCzTigi0<> アスラン「ええいっ!」

咄嗟に、シールドをブーメランのように投げつけてカオスの体勢を崩し、
そのわずかな隙に、ポッドの射線から抜け出て間合いを詰める。

スティング「馬鹿な!?」

アスラン「終わらせる!」

カオスが反撃するよりも速く、セイバーの手に握られた光剣が一瞬の軌跡を描く。
推進部と下半身を切り裂かれたカオスは、コントロールを失ったポッドと共に海面へと落下していった。

アスラン「くそっ…何故こんなことになるんだ…!」

アークエンジェルを敵艦として認識せよとの指示は、当然アスランにも聞こえていた。
だが、ショックと受けている暇など無かった。カオスを退けようとも次から次へと敵機は襲ってくる。
戦いに徹することができなければ、今度はハイネのみならず、ミネルバが沈むのだ。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 19:57:39.03 ID:svCzTigi0<> カガリ「オーブ軍!今すぐ攻撃をやめろ!ミネルバを、敵でないものを撃ってはならない!」

懸命に訴え続けるカガリのストライクルージュに、一機のムラサメが肉薄した。
その手に握られたビームライフルの銃口が、ルージュを捉える。

こんな戦いが起きているのは、地球連合との条約に調印した自分のせいだ。
ならばいっそ彼らに討たれて、死んで詫びるべきなのではないか。
そんな思いが一瞬、カガリの頭の中を支配する。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 20:00:21.16 ID:svCzTigi0<> だが、ビームに貫かれて四散したのは、棒立ちになったルージュではなく、ムラサメの方だった。

カガリ「あ……!」

インパルスの精密射撃が、的確にムラサメだけを堕としたのだ。
ルージュのコクピットに、怒声が響く。

シン「なにを戦場で呆けているんだよ!この馬鹿っ!」

カガリ「お、おまえ…!?」

シン「さっさと自分のいるべきところに帰れ!でなきゃ、次はあんたを撃つ!」

カガリ「私の、いるべきところ……?」

答えは返ってこない。
インパルスは再び戦場に躍り込んでいく。
だが、それで十分だった。

カガリ「逃げるな…生きる方が、戦いだ!」

かつてアスランに言った言葉を、今度は自分に言い聞かせて、カガリはアークエンジェルへと帰還した。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 20:02:44.87 ID:svCzTigi0<> 全周波で発信されていたシンの声は、当然地球軍の機体にも届いていた。
そして、それに反応したMSが一機。ジョン・ポール・ジョーンズの甲板で、警戒に当たっていたガイアだ。

ステラ「シン…?」

突き動かされるように、ガイアは駆けた。
ここが戦場であることなど、ステラには関係なかった。
シンに会いたい。
もう一度抱きしめてほしい。
その想いだけだった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 20:04:28.31 ID:svCzTigi0<> シン「いなくなれって言ってるだろッ!!あんたもッ!!」

インパルスのブラストシルエットから繰り出される、ありったけのミサイル掃射。
フリーダムはそれを、頭部の機関砲と右手のビームサーベルで打ち払いながら間合いを詰める。
破壊されたミサイルの爆発が、インパルスの視界を埋め尽くす。

シン「くそっ、これじゃあ…!」

煙の中からフリーダムの右腕が伸びて、その手に握られたビームサーベルがインパルスの左腕を切り飛ばす。
衝撃がコクピットを揺さぶり、シンの身体の奥で、なにかが弾けた。

シン「いつもそうやって…やれると思うなァァッ!!」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 20:05:41.57 ID:svCzTigi0<> キラ「くっ!?」

凄まじい殺気に、キラは咄嗟に機体を反らした。
直後、インパルスのジャベリンが、恐ろしい速さでフリーダムの右腕を背中の翼ごと刺し貫いた。
あとコンマ一秒でも反応が遅れていたら、ジャベリンはコクピットを貫通していただろう。

キラ「こんな…!?」

腰部のクスィフィアスレール砲を撃ちこみ、インパルスを吹き飛ばす。
反撃を警戒しつつ、迅速にアークエンジェルへと後退する。
これ以上あの相手と戦い続ければ、どちらか、或いは双方が死ぬ。そう思った。
アスランがザフトにいる今、カガリのためにも、ここで堕とされるわけにはいかなかった。 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 20:07:46.94 ID:svCzTigi0<> 体勢を立て直したインパルスは、後退していくフリーダムを追うことはせず、ミネルバの防衛に徹する。
いかにフリーダムといえど、右腕と片翼を串刺しにされ、機体バランスを欠いた状態では、戦場を支配することなどできようもない。
考えるべきは、徐々にミネルバを包囲しつつあるオーブ艦隊への対処だ。

シン「ミネルバ!チェストフライヤーと、ソードシルエットを!」

素早く換装を終えたインパルスの胸部が、シンの瞳に宿る焔を映したように、紅く染め上がる。

シン「全艦叩っ斬る!!」

ソードインパルスの対艦刀が容赦なく振り下ろされ、瞬く間にオーブ艦の一隻が沈む。
二隻、三隻、四隻、凄まじい勢いで敵艦を撃滅していくインパルスが次に狙い定めるのは、オーブの旗艦タケミカヅチ。
その眼前に、一機の黒いMSが躍り出た。その機体、ガイアが一切の武装を解除して、無防備にコクピットハッチを開いたのだから、
シンが混乱して、インパルスが動きを止めるのは仕方のないことだった。

ガイアのパイロットが開いたハッチの上に立つのを見て、カメラの倍率を切り替える。
桃色のノーマルスーツを着たパイロットの姿が、モニターに大きく映し出された。

シン「嘘…だろ…なんで、君がっ!?」 <>
◆kiXe9QcYqE<>saga<>2018/05/01(火) 20:09:41.98 ID:svCzTigi0<> 今回はここまでとなります
ダーダネルスの戦闘でシンが空気すぎたけど今回は活躍させられたかな… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/05/03(木) 14:13:43.32 ID:VkJr35Tg0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/05/07(月) 09:38:40.00 ID:M5AnDWVDO<> 乙 やっばりカオスガンダムは見せ場0だった
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/06/17(日) 23:35:16.49 ID:IuMzLPrhO<> 一ヶ月半過ぎたわけだが続きはまだ?
楽しみにしてるから早く続き来ないかな? <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/06/29(金) 04:53:02.65 ID:LGuKli9kO<> あと二日で二ヶ月になるぞ
どうしたというのだ… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2018/07/04(水) 15:19:00.17 ID:xqfR/tFI0<> 続き、待ってます…どうか… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/07/11(水) 15:23:43.39 ID:QCjvNBn0O<> 書くのが無理そうで続けられないならエタるのも手よ
んで、お暇になったら再開すればいい。

何はともあれ楽しみにしてるんで、無理のない範囲でがんばってください <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2018/08/03(金) 16:58:11.62 ID:BaVF0cHd0<> 面白い
続き、待つ <>