以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:02:16.52 ID:dEp6YdU10<>「ん……?」

しんしんと雪が降り積もる、冬の日のこと。
物音が聞こえ、ふと、夜中に目が覚めた。
一人暮らしの家には、自分の他に誰も居ない。
それなのに、何故か自分以外の気配がする。
衣擦れや、息遣いが、暗闇から伝わった。

(おいおい……勘弁してくれよ)

はっきり言おう、正直怖い。ガクブルだ。
物盗りにせよ、ストーカーの類いにせよ。
どっちにしろ、お断りだ。うちに来んな。

(ここはガツンと、怒鳴り散らしてやるか)

なんにせよ、断固として抗議するしかない。
それで、大人しく帰ってくれたらいいけど。
もしも開き直られて、危害を加えられたら。

(落ち着け……短絡的な思考はやめとこう)

そう考えると、このまま寝たふりが最善か?
いいや、相手の狙いがこちらの命なら別だ。
端から害意があった場合はどうにもならん。
森で、クマに遭遇したわけでもあるまいし。
人間に、寝たふりが通用するとは思えない。

「はぁ……はぁ……んっ……くぅっ!」

(ていうか、何やってんだ、この侵入者は?)

暗闇から伝わる息遣いは、切羽詰まっていた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1545656536
<>ミニスカサンタ娘「貰って、くれますか……?」 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:04:36.21 ID:dEp6YdU10<> 「んっ……んんっ!」

どうも、必死に声を押し殺しているようだ。
か細い声音から、女性であるとわかった。
気のせいか、なんだか良い匂いがするような。
たぶん、錯覚だろうが、ちょっと嬉しい。

(いやいや、何を喜んでいるんだ!)

危ない危ない。侵入者の性別など関係ない。
油断して、サクッとやられたらお終いだ。
ふぅ。危うく色香に惑わされるところだった。
そもそも、まだ顔だってわからないのだ。
明かりをつけたらババアである可能性もある。
もっとも、美人ならばいいわけでもない。
不法侵入は歴とした犯罪だ。厳罰に処す。
具体的には警察に通報する代わりに、むふふ。

(あんなことや、こんなことを……はっ!)

アホか。何を考えてるんだ。
こっちが犯罪者になっちまう。
ハニートラップだ。何という巧妙な罠。
などと、勝手に盛り上がっていたら。

「はぅ……このままじゃ、バレちゃいますぅ」

いや、バレバレだから。思わず、溜息が出た。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:07:24.14 ID:dEp6YdU10<> 「ひぅっ!? も、もしかして起きましたか?」

やばい。今の溜息で気づかれちまった。
どうする? このまま寝たふりをするか?
しかし、この緊張感のない舌足らずな声。
これでババアなら、迫真の名演技だ。
声帯の劣化すら超越していると思われる。
間違いなく、アカデミー賞の授賞候補だ。
とはいえ、それは現実的ではないだろう。
まず間違いなく、この侵入者は若い女だ。
いや、もしかしたら子供なのかも知れない。
それなら、怖がる必要は皆無である。
たっぷりとお仕置きをしてやろうと思って。

(だからどうしてそうなるんだ。自重しろ)

頭を冷やしつつ、身体を起こし、照明を点灯。

「ふわぁっ!? お、起こしてごめんなさい!」
「いや、それは別に良いんだけどね?」

やはりというべきか、侵入者は女。
ガキではないが、まだ相当に若い。
綺麗な長い黒髪と、赤い服が印象的な美少女。
別に、起こしたことを咎めるつもりはない。
そもそも、勝手に人の家に入ったのが問題だ。
しかし、それよりも大きな問題があった。

「どうしたんだ、その格好は?」
「へっ? な、何かおかしいですか?」
「まるでサンタみたいだと思ってさ」

侵入者の格好はサンタクロースを模していた。
しかも、ミニスカだ。露出度が高すぎる。
綺麗な脚線美を黒のニーソが引き締めていた。
似合ってるけど、そういう問題ではない。

「あ、はい。私、サンタさんですので」

あっさりと正体を明かされ、言葉を見失った。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:10:35.04 ID:dEp6YdU10<> 「サンタ、だと?」
「はい。まだ新人ですけど、免許もあります」

そう言って、身分証を提示された。
受け取ってまじまじと見ると、よく出来てる。
顔写真に、有効期限。サンタ協会の判子まで。
ガキのままごとにしては、リアルすぎた。

「これ、本物なの?」
「はい、本物ですよ」

そう言われても、俄かには信じられなくて。

「サンタである確証を見せて貰えるかな?」
「免許証だけでは納得出来ませんか?」
「ちょっと信じられなくてさ」
「でしたら、プレゼントをお見せしますか?」
「プレゼント?」

一瞬ポカンとしてから、すぐに思い至る。
プレゼントか。それはたしかにサンタらしい。
サンタと言えば、プレゼントを配る存在だ。

「くれるのか?」
「はい、特別にお好きな物を差し上げます」
「いいのか?」
「えっと、実は、我々サンタは秘匿すべき存在でして、こうして姿を見られるのは問題なのですよ。だから、もしよろしければ、このことは口外しないで欲しいのですが……」

なるほどな。要するに、口封じってわけか。
なんでも好きな物をあげるから口外するなと。
そう言われても、咄嗟に何も思い浮かばない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:13:21.62 ID:dEp6YdU10<> 「うーん……欲しいものかぁ」
「っ……で、出来るだけお早めにお願いします」

悩んでいると、急かされた。
そういやさっきまで切羽詰まっていたな。
どうしたのだろうと首を傾げて、ふと気づく。

(なるほど、きっと配達で忙しいんだな)

そう言えば、今夜はクリスマスだ。
仮にこの少女が本物のサンタクロースならば、多忙なのも頷ける。書き入れ時なのだ。
だったら、この場に引き留めるのはよそう。

「特に思いつかないからいいよ」
「ええっ!? そ、そんなの困ります!」
「気にしなくていいから、お帰り」

結局、サンタの証明は出来なかったけれど。
まあ、いいさ。物を盗られた様子はない。
もしも何かなくなっていたら後日通報しよう。
あとは、ストーカーの可能性だけど。
こんな可愛い子がストーカーなら問題ない。
むしろ嬉しい。迷惑とは思わない。
これも後から困った時は、通報すればいい。

「お前を待ってる人が大勢居るんだろ?」
「えっ? 居ませんけど?」
「は?」
「あなたで最後ですので、ご安心ください」

あ、そうすか。残り者には福があるってか。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:16:04.65 ID:dEp6YdU10<> 「それなら、ちょっと考えさせてくれ」

どうやら、懸念は杞憂だったらしい。
ならば、じっくり欲しい物を考えよう。
その思って、熟考し始めたのだが。

「うぅ……意地悪」
「えっ?」

なんかサンタがみるみる涙目になった。
何故だ? 泣かせるようなことしたっけ?
あれか? 一刻も早く立ち去りたいってことか?
なんだよ。それなら無理しなくていいのに。
逆にすげー傷つくから、早くお帰り頂きたい。

「待たせるのも悪いから、帰っていいよ」
「ですから、困るんです!」
「なんで?」
「だってあなたは、とっても良い人ですから」

良い人なんて、あまり言われた経験がない。
たぶん、恋愛対象ではないという意味だ。
えっ? もしかして今、俺は振られたのか?

(まだ告ってもないのに、振られるなんて)

愕然としていると、サンタが捕捉してくれた。

「あなたは本当に優しくて良い人です」
「だから、俺とは付き合えないと?」
「はい?」
「あ、いや……なんでもない、妄言だ」

どうやら、振られたわけではないらしい。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:19:24.77 ID:dEp6YdU10<> 「私はちゃんと知っています」
「何を?」
「あなたが積み上げてきた、善行の数々を」

サンタは語る。自分でも忘れていた善行を。

「あなたは雨に濡れた子猫を拾いました」
「ああ。でも、この家では飼えなくて……」
「飼ってくれる人を探したのですよね?」

そう言えば、そんなこともあった。
このボロアパートでは動物の飼育は不可。
先行きがわからない保健所に任せるのは論外。
だから、雨の中、飼い主を探して歩いた。

「あの子猫は、今でも元気です」
「どうしてわかるんだ?」
「ついさっき、ご近所にお住まいの飼い主さんへプレゼントを届けた際に、確認しました」

それが、嘘か本当かは知らないけれど。

「そうか……それは、良かった」

しみじみと、安堵した。無駄じゃなかった。

「他には、道に落ちてた財布を拾って……」
「ああ、もう良いよ」
「どうしてですか? せっかく良いことを……」
「褒められたくてやったわけじゃないからな」

あの子猫が元気とわかっただけで充分だった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage sage<>2018/12/24(月) 22:25:58.94 ID:dEp6YdU10<> 「とにかく、あなたには資格があるのです!」
「資格?」
「良い子はプレゼントを貰う資格があります」

良い子って。もうそんな歳じゃないってのに。
それに子猫の件も里親に任せきりだ。
ちょくちょく様子を見に行く勇気がなかった。
不審者と思われたくなかったからな。
何より、俺はもういい歳こいた大人だった。

「俺はもう子供じゃないぞ?」
「だからと言って、見過ごせません!」
「プレゼントなんて、もう何年も貰ってない」
「ですから、見かねて私が来たのですよ!」

どうやら使命感に燃えている様子。しかし。

「だけど、俺はもう子供じゃない」
「うっ……それは、そうですけど」
「これは、ルール違反じゃないのか?」

サンタは子供にプレゼントを配る存在だ。
大人よりも一人でも多くの子供に渡すべきだ。
そのことを指摘すると、泣きそうな顔をして。

「くすんっ……貰ってくれるまで、帰りません」

なんて言われると、もうどうしようもない。

「わかったから、泣くな」
「貰って、くれますか……?」
「ああ、だからちょっと考えさせてくれ」
「またそうやって私に意地悪して……はうっ」

泣かせたくなくて、つい頭を撫でると。
サンタは突然その場に蹲った。びびった。
そんなに、頭を撫でられるのが嫌だったのか。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:29:00.08 ID:dEp6YdU10<> 「わ、悪い。勝手に触って悪かった」
「い、いえ、お気になさらずに……くぅっ」

気にするなと言われても、気になっちまう。
なにせ、すげー顔色だ。
真っ青を通り越して蒼白。
息も荒く、必死に何かに耐えている様子。
やはり、触れられたのが、嫌だったのだろう。
頭ナデナデはイケメンにしか許されないのだ。

(だったら、イケメンにして貰おうか?)

ふと閃いた願いを、そのまま口にしてみる。

「俺をイケメンにすることは可能か?」
「へっ? そのままでも充分イケメンですよ」
「えっ? あ、そう」

なにそれ。初めて言われた。すごく嬉しい。

「それよりも、早く要望を……んあっ!?」
「ど、どうした!?」
「いえ、ちょっと波が……」
「波?」
「な、なんでもありません! はぁ……はぁ……」

波ってなんだ。サイコウェーブか? 気になる。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:31:18.77 ID:dEp6YdU10<> 「な、なあ、大丈夫か?」
「ふぅ……ひとまず、乗り切りました」
「それなら、いいんだけどさ」

とはいえ、相変わらず、顔色は青いまま。
額に脂汗が滲んで、前髪が張り付いている。
衝動的に、それを取ってあげたくなった。
手を伸ばして、躊躇する。一応、確認しよう。

「ちょっと触ってもいいか?」
「へっ? 構いませんけど、どうしました?」
「おでこに髪が付いてるぞ」

了承を得てから、張り付いた髪を取り除く。

「えへへ……くすぐったいですぅ」

(なにこの子。めちゃくちゃ可愛い!)

はにかむサンタっ娘は破壊力抜群だった。
『はにかみサンタ娘』と命名しよう。
恐らくNo.1 アイドルに登り詰める金の卵だ。
俺はプロデューサーとして、暖かく見守る。

(ゆくゆくはアニメ化、映画化、実写化だな)

そこまで夢を膨らませて、我に返る。
最初から、実写だ。夢は叶っていた。
そう考えると欲しい物がない理由もわかった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:34:18.21 ID:dEp6YdU10<> 「やっぱり、俺は何も要らないよ」
「ですから、それは困るんですよ!」
「困らせるつもりはないんだけどな」
「だって、私はどうしてもあなたにプレゼントを受け取って頂きたくて、こうして……」
「君が来てくれたってだけで、嬉しいよ」

それ以上に価値があるものなど思いつかない。

「だから、ありがとう」
「……あなたは、欲がなさすぎます」
「人並みにはあるつもりだけどなぁ」

口には出さないだけで、色々と考えている。
だから自分が良い人である自覚は皆無だ。
むしろ、人よりもゲスい破綻者かも知れない。

「私は……あなたにとって、不要ですか?」

だが、どれだけゲス野郎でも、矜持がある。

「不要とか、言うな」
「でも、私はあなたに何も出来なくて……」
「いいんだよ、そんなことは」
「しかし、これではサンタとして失格です」

また、泣きそうな顔。そんな顔は見たくない。

「どうしたら、笑ってくれる?」
「えっ?」
「俺はお前の笑顔が見たい」

あれ? 何言ってんだ? すげー恥ずかしいぞ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:36:51.87 ID:dEp6YdU10<> 「私の、笑顔……?」

ほら、やっぱり首を傾げちゃったじゃん!
バカバカ! いつの時代のドラマだよ!
完全に黒歴史ですわ。もうお嫁にいけない。

「すまん、忘れてくれ」
「……冗談、だったんですか?」

あ、駄目だわコレ。もう後に引けないやつだ。

「もちろん、冗談じゃないけどさ」
「……私の笑顔が見たいんですか?」
「あ、ああ。それが俺の願いだ」

仕方ない。もうこのまま押し通すしかない。
なんてったって、スマイルはプライスレス。
そう悪くない願いの筈だ。そう思うしかない。

「そうですか……それは困りました」

何やら困った様子のサンタ娘。
そんなに困らせるつもりはなかった。
こちらとしては、愛想笑いでもいいのに。

「実は、私は今、訳あって笑えないのです」

どうやら、サンタ娘には事情があるらしい。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:39:10.81 ID:dEp6YdU10<> 「それはどんな事情なんだ?」
「い、言えません!」
「言えないって、なんで?」
「言いたくないからですっ!!」

はっきり拒絶されて、ぷいっとされた。

(やっべー。がっつきすぎたみたいだ)

どうやら、完全に怒らせてしまったらしい。
これでは笑顔もヘッタクレもない。
片頬を膨らませるサンタ娘は可愛いけれど。
だからと言って、それに甘んじては駄目だ。
美少女は、笑顔こそが至高の表情なのだから。

「わ、悪い。詮索するつもりはなかったんだ」
「ふんだ」

(か わ い い ! 怒った顔も最高じゃん!)

おっと、いかんいかん。初心を忘れるな。

「謝るから、機嫌を直してくれよ」
「もう詮索したりしませんか?」
「ああ、約束する」
「それなら、許してあげます。ふあっ!?」
「な、なんだ!? どうしたんだ!?」
「ち、近づかないでくださいっ!!」

まるでこの世の終わりみたいな悲鳴に驚き。
慌てて駆け寄るも、またしても拒絶された。
だから、がっつくなとあれほど自戒したのに。

(んなこと言っても、放っておけるか!!)

自重など捨て置く。サンタ娘が心配だった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:41:57.90 ID:dEp6YdU10<> 「だ、大丈夫なのか!?」
「はぁ……はぁ……もう、ダメかも知れません」
「くそっ! すぐに救急車を!」

一刻を争う容態を見て、電話を手に取ると。

「ダ、ダメです! 口外しないでください!」

たしかにそう約束した。しかし状況が状況だ。

「んなこと言ってる場合じゃないだろ!?」
「サンタは人に見られてはいけないのです!」
「それはそうかも知れないけど、だからって」
「あなたは……本当に、優しい人ですね」

焦るこちらを安心させようとしたのだろう。
サンタ娘は柔らかな笑みを浮かべた。
儚いその笑顔はまるで、最期の笑みのようで。

(そんな、そんな笑顔、見たくないんだよ!)

もっと幸せな、嬉しくなる笑顔が見たかった。

「なあ、教えてくれ」
「えっ?」
「どうしたら、お前を助けられる?」

無力感に苛まれながらも、足掻き続けよう。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:44:05.77 ID:dEp6YdU10<> 「お気持ちはとても嬉しいのですが……」
「なんでもする! なんでもするから!!」

その言葉は本心だ。目の前の少女を助けたい。

「ですが、これは私の問題で……」
「余計な、お世話だったか……?」
「その言い方は……ズルいです」

ズルくてもいい。そこまで人間は出来てない。
どうせ、ゲス野郎さ。とことんゲスになろう。
それで、苦しむサンタ娘を助けられるならば。

「でしたら、笑わないでください」
「えっ?」
「これから事情をお話しするので、何を聞いても、笑わないでください。約束出来ますか?」

何を言うかと思えば、そんなことか。頷いた。

「ああ、約束する。俺は絶対に笑わない」
「それなら、ご説明致します」
「ああ、聞かせてくれ」
「実は……ずっと、うんちを我慢してまして」
「おっ?」
「で、ですから……うんちがしたいのですよ」

おいおい、待ってくれよ。笑うなって?

「フハッ!」

そりゃあ、無茶だろうよ。愉悦が漏れた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:46:07.37 ID:dEp6YdU10<> 「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

俺は笑った。それはもう盛大に、嗤った。
嘲笑って、嘲嗤った。哄笑に、哄笑を重ねた。
何がそんなにおかしいのだろう。不思議だ。
どうして今、自分は愉悦を感じているのか。
それはきっと、宇宙の神秘だからに違いない。
たった今、神秘を知った。それはうんちだ。
サンタ娘がうんちを我慢していた。神秘だ。
うんちだからこそ、うんちじゃないと駄目だ。
うんちとはすなわち、神秘であり、うんちだ。

(最高の気分だ! 全知全能とはこのことか!)

まるで神にでもなったかのような気分だった。
恐れるものなど何もない。来るなら来い。
今ならば、うんちだって、パクッと。
いや、それは無理か。一瞬で冷静になった。

「ふぅ……おや?」
「ぐすんっ……ぐすんっ」

至福のひと時が終わり、現実に舞い戻る。
そこは自分の部屋で、サンタ娘が居た。
まるで幼い子供のように、泣いている。

(どうして泣いているんだ? あ、そうか)

すぐに思い至る。そういや、約束をしていた。

「約束破って、ごめん」
「ひっく……ばかぁ」
「ごめん」
「ばかぁ! ばかぁ!」
「ごめん……ごめんな?」
「もう、戻ってこないかと、思いました!」
「悪い。ちゃんと戻ってきたから」
「もう、帰って、来ないかもって……!」
「大丈夫。こうして、帰って来れた」
「ううっ……もう、どこにも行かないで!」
「ああ、約束する」

どの口が言うのやら。しかし、固く誓った。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:49:08.30 ID:dEp6YdU10<> 「ひっく……ひっく……」
「そろそろ落ち着いたか?」
「……もうちょっとだけ」

気がつくと、サンタ娘を抱きしめていた。
泣き止むまではこうしていよう。
それが、泣かせた者の責任であり、贖罪だ。

「笑って、悪かったな」
「……もう、いいですよ」
「いや、でも……」
「なんだか、スッキリしました」
「えっ?」
「笑われるのって、案外気持ち良いんですね」
「お、おう」

ちょっとよくわかんない。まあ、いいか。

「しかし、なんでまた我慢してたんだ?」

目下の問題はそれだ。
どうして便意を我慢していたのか。
我慢は身体に毒だ。痔になっちまう。
こんなに可愛い子が痔になるのは許せない。
可愛い女の子は、可愛い尻穴で然るべき。
要するに、この子の尻穴を守りたかった。

「それには、深い事情がありまして」
「聞いてもいいか?」
「ここまで来たら、恥も外聞もありません」
「じゃあ、聞かせてくれ」

もう笑わないぞ。同じ間違いは二度としない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:52:08.72 ID:dEp6YdU10<> 「実は……その」

言い辛そうにモジモジしながら、告白された。

「うんちを我慢するのが、好きでして」
「は?」
「うんちを我慢するのが、好きなんです」

おーけー。わかった。簡単なことだ。つまり。

「要するに、それはお前の性癖か?」
「簡単に言えば、そうですね」
「ちょっと理解出来ないな」
「バレないかドキドキするのが堪らなくて」
「もう喋んな。この変態サンタ」

ガッカリだよ。心底、とことん、ガッカリだ。

「もっと」
「えっ?」
「もっと、叱ってください」

なんだ、こいつ。急にグイグイ来やがったぞ。

「もう自分ではどうしようもないのです」
「だから、俺に叱れと?」
「あなたに叱って欲しくて……ダメですか?」

上目遣いで懇願されたら、駄目とは言えない。

「わかったよ……なら、尻を出せ」

さあ、諸君。待たせたな。宴の始まりだ。
楽しい、愉しい時間を満喫しようではないか。
お望み通り、たっぷりとお仕置きしてやろう。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:54:33.79 ID:dEp6YdU10<> 「こ、これで、よろしいですか?」
「おっと、下着は穿いとけ」
「えっ? どうしてですか?」
「今のご時世、規制が厳しいからな」

こちらに小ぶりな可愛い尻を向けて。
ミニスカートをたくし上げるサンタ娘。
もちろん、下着は身につけたまま。
あくまでも健全な教育的指導に努めよう。

「ちなみに尻を叩かれた経験は?」
「あ、ありませんよぅ! 初めてです!」
「それは光栄だな」
「私も、初めてを貰って頂けて嬉しいです」
「感謝は終わった後にしてくれ。それっ!」
「ひゃんっ!?」

新雪に足跡を残すように、尻を叩いた。

「もっとか?」
「は、はい……もっと」
「そりゃっ!」
「もっと! もっと、強く、お願いしますぅ!」
「よっしゃあ! そりゃっ! うりゃっ!」
「あんっ! ひぅっ! ひぐっ! んああっ!?」

(すげー楽しい。これが、スパンキング、か)

自分でも、びっくりだ。驚きが、隠せない。
驚愕を禁じ得ない。これぞ禁じられた遊び。
禁じるのは勿体ない。何故禁じているのか。
痛みを快感に変える秘儀。まさに、痛快だ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:56:59.28 ID:dEp6YdU10<> 「どうだ? ちゃんと反省したか?」
「ふみゃあ……ちっとも反省できましぇん」
「やれやれ、困った奴だな」

真っ白なお尻を赤くして。息も絶え絶え。
これ以上は不味いだろう。暴力になる。
痣が残らないように加減するのが大切だ。

「ん?」

どうしたものかと悩んでいたら、ふと気づく。

(なんだ、この染み。さっきはなかったのに)

真っ白なパンツに小さく付いた、茶色い染み。

「なあ、なんか染みが付いてるぞ」
「っ……!」
「もしかして、これって……」
「い、言わないで!」

ふむ、言われたくないと。なら、別の手段だ。

「じゃあ、匂いを嗅いでもいいか?」
「ダ、ダメですよぅ!」
「別にお前の尻を嗅ぐつもりはないさ」

そんなことをしたら変態になっちまうからな。

「嗅ぐのは自分の手のひらだ」
「ダメ……やめて」
「どうして自分の手を嗅いだらダメなんだ?」
「だって、さっきまで、私のお尻を……」
「じゃあ、お前が嗅ぐか?」

すっと手のひらを差し出すと、生唾を飲んだ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 22:59:06.32 ID:dEp6YdU10<> 「わ、私が、嗅ぐんですか……?」
「どっちかが確認する必要があるだろう?」

あの染みは何なのかを、明らかにするのだ。

「でしたら、どうぞ、ご自由に……」
「嗅いでいいのか?」
「いいですけど、お願いがあります」
「なんだ?」
「……嫌いに、ならないでください」

切実なサンタ娘の願いを、確かに聞き届けた。

「わかった。絶対に、お前を嫌わない」
「ほ、ほんとですか?」
「この命に代えても、約束は守る」
「もうどっかに行ったりしませんか?」
「大丈夫だ。耐性がついたからな」

尻を叩いても正気が保てたから平気だろう。

「それなら、嗅いでください」
「では、遠慮なく」

鼻から大きく息を吸い込み、悟る。便だった。

「何も、臭わないな」
「えっ?」
「何も、臭わながっだ……!」

これが矜持。尊厳を守るべく、現実を変えた。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 23:01:20.32 ID:dEp6YdU10<> 「……嘘つき」

ジト目をされても、詰られても、曲げない。

「嘘つきは、悪い子です」

咎めながらも、サンタ娘は嬉しそうだった。

「どうして、こんなに嬉しいんでしょうね?」
「さてな……ただ、言えるのは」
「なんですか?」
「うんちはそう悪いもんじゃないってことさ」

なんかそれっぽいことを言ったら、突然。

「フハッ!」

サンタ娘が愉悦を漏らして、びっくりした。

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「うるさい、近所迷惑だろうが」
「あ、すみません」

ボロアパートには他にも住民がいる。
自分のことを棚に上げて注意すると。
サンタ娘は小さく、てへっと、舌を出した。
そのあまりの可愛さに、思わず抱きしめる。

「ど、どうしたんですか? 私、汚いですよ?」
「汚くなんかない」
「嫌いに、なってませんか?」
「約束しただろ? 嫌わないって」
「じゃあ、私のこと……」
「ああ、好きだよ! 大好きだ!!」

本当に、つくづく、勢いって、凄いと思うよ。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 23:04:04.24 ID:dEp6YdU10<> 「……嬉しい」

勢いのままに気持ちをぶつけると、喜ばれた。
本当に、嬉しそうな笑顔だ。そこで気づく。
その笑顔を望み、これで、願いは叶ったのだ。
プレゼントを配る、彼女の仕事は終わった。

「来てくれて、本当にありがとな」
「感謝はいりません」
「仕事だからか?」
「いいえ。私はもう、無職ですので」
「は?」
「サンタは人に見られてはいけないのです」

つまり目撃された時点で無職だったのか。
そこまで重い処分が課せられるとは。
しかし、子供に夢を贈る存在だからな。
万が一にも、目撃されてはいけないのだろう。

「悪いな。俺が、起きちまったから……」
「違います。わざと、起こしたのです」
「わざと?」
「でなければ、うんちなんて我慢しませんよ」

くすくすと、してやったりと、小悪魔めいた蠱惑的な笑みを浮かべる、元サンタ娘。
始めから見つかるつもりだったらしい。
そのために、このボロアパートへ来たのだ。

「なんで、そんな……」
「好きだから」

そう言われても、好かれる根拠などない。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2018/12/24(月) 23:06:20.14 ID:dEp6YdU10<> 「必死に子猫の里親を探すあなたが好きです」
「また、それか」
「拾った財布を交番に届けるあなたが好き」
「褒めて欲しいわけじゃない」
「だから、愛したい」

別に褒めて欲しかったわけじゃない。
ただ、良かれと思ってやっただけだ。
だから、それで好きになられても困る。
だけど、それは愛される理由になった。
人が人を愛するのは。好きになるのは。
存外、簡単な理由なのかもしれない。

「……ずっと、見ててくれたお前が好きだ」
「サンタでしたから、当たり前ですよ」
「子供じゃないのに来てくれたお前が好きだ」
「年齢なんて関係ありません。私はあなたを」
「愛してる」

女に二度も言わせるわけにはいかない。
格好つけすぎかも知れないけれど。
元サンタ娘は、嬉しそうだ。なら、いいさ。

「新しい仕事が見つかるまで一緒に暮らそう」
「見つかったら追い出すんですか?」
「なんなら、ずっと家に居てもいい」
「プレゼントはもうあげられませんよ?」
「もう充分、貰ったよ」
「……染みが付いた、パンツのことですか?」
「それも含めて、全部だ」

こうして、俺は、かけがえのない存在を得た。
染み付きパンツも含め、満ち足りた気持ちだ。
元サンタ娘自身が、最高のプレゼントだった。


【ミニ『スカ』サンタ娘の贈り物】


FIN <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 02:58:15.27 ID:N539Jndz0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/25(火) 12:18:25.40 ID:8o0g0Os20<> いきなりだと思ったらそういうことかw <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2018/12/26(水) 01:00:56.00 ID:rt9oe9+Bo<> フハッ!の人だったか
>>15以降キョンと朝比奈さんで再生されてしまう <>