◆nV158uMR4EBZ<>!orz<>2019/03/25(月) 21:43:52.28 ID:Ef2ohd7zO<>【諸注意】
・何番煎じかもわからないオリロンパスレです
・以下の作品のリメイクとなっております。一部に軽い設定の変更が有ります
『元スレ』
【二次創作】安価で進めるオリロンパ リミックス
 https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1532086400/

・エタらない事を重視するため、展開等が速いかもしれません
・キャラクターは以下のスレから拝借しましたが、一部に才能や氏名の変更があります
※エタロンパのキャラを書き留めるスレ
 https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/17143/1499596380/l30

『プロローグ〜一章まで』
【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】
 https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1541335141/



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1553517832
<>【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.2
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:45:47.93 ID:Ef2ohd7zO<>
【彩海学園  生徒名簿】
【女子】
※身長や胸囲はフィーリングなのでおかしい部分は目を瞑ってください


【名前】瀬川 千早希(セガワ チサキ)
【才能】超高校級のコスプレイヤー
【身長】167cm
【胸囲】87cm
【好きなもの】クレープ
【嫌いなもの】カメラ

【名前】天地 りぼん(アマチ −−)
【才能】超高校級の家庭教師
【身長】154cm
【胸囲】64cm
【好きなもの】プラネタリウム
【嫌いなもの】宝くじ

【名前】御伽 月乃(オトギ ツキノ)
【才能】超高校級の童話作家
【身長】165cm
【胸囲】95cm
【好きなもの】雲
【嫌いなもの】尖ったもの

【名前】陰陽寺 魔矢(オンミョウジ マヤ)
【才能】超高校級のヒーロー
【身長】160cm
【胸囲】71cm
【好きなもの】竹刀
【嫌いなもの】ハムスター

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:47:12.79 ID:Ef2ohd7zO<>
【名前】古河 ゆめみ(コガ −−)
【才能】超高校級のスタイリスト
【身長】170cm
【胸囲】84cm
【好きなもの】流行りもの
【嫌いなもの】水たまり

【名前】臓腑屋 凛々(ゾウフヤ リリ)
【才能】超高校級の家事代行
【身長】163cm
【胸囲】74cm
【好きなもの】干したての布団
【嫌いなもの】火事

【名前】月神 梓(ツキガミ アズサ)
【才能】超高校級のアイドル
【身長】168cm
【胸囲】82cm
【好きなもの】ぬいぐるみ
【嫌いなもの】パクチー

【名前】照星 夕(テルホシ ユウ)
【才能】超高校級の柔道家
【身長】158cm
【胸囲】92cm
【好きなもの】マット運動
【嫌いなもの】避難訓練

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:48:23.19 ID:Ef2ohd7zO<>
【男子】



【名前】御伽 朝日(オトギ アサヒ)
【才能】超高校級のショコラティエ
【身長】170cm
【胸囲】76cm
【好きなもの】ハートマーク
【嫌いなもの】猫

【名前】駆村 沖人(カケムラ オキト)
【才能】超高校級の地域振興委員
【身長】187cm
【好きなもの】時雄島
【嫌いなもの】嵐

【名前】神威 スグル(カムイ −−)
【才能】超高校級の???
【身長】160cm
【好きなもの】マカロン
【嫌いなもの】抹茶ラテ

【名前】竹田 紅重(タケダ ベニシゲ)
【才能】超高校級の玩具屋
【身長】196cm
【好きなもの】狩猟
【嫌いなもの】ハイテクノロジー

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:49:53.49 ID:Ef2ohd7zO<>
【名前】吊井座 小牧(ツルイザ コマキ)
【才能】超高校級のイラストレーター
【身長】176cm
【好きなもの】日陰
【嫌いなもの】〆切間近

【名前】デイビット・クルーガー
【才能】超高校級のプロファイラー
【身長】184cm
【好きなもの】統計学
【嫌いなもの】イエダニ

【名前】飛田 弾(トビタ ハズム)
【才能】超高校級のダンサー
【身長】190cm
【好きなもの】美しいもの
【嫌いなもの】もんじゃ焼き

【名前】御影 直斗(ミカゲ ナオト)
【才能】超高校級の幸運
【身長】168cm
【好きなもの】醤油ラーメン
【嫌いなもの】ピーマン

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:50:48.48 ID:Ef2ohd7zO<>



……小さな頃、一度だけパパとママに叱られた事がある


あれは……そう。確か、小学生の時。まだ善悪の分別のつかない頃


ずっとお家に帰らない両親が恋しくて、二人が大切にしていた絵画を破いた事があった


最初はこれでパパとママに会えるって思っていたんだけど……結局、二人は戻ってこなかった


帰ってきたのはそれから一ヶ月が経った頃……二人は家政婦さんから事情を聞いたみたいで、私を呼び出すと、大声で怒鳴り付けたんだ


『どうしてこんな事をしたんだ』『貴女をこんな悪い子に育てた覚えはない』『お前がそんな事をするなんて』……


何を言っていたかはあんまり覚えていない。けど、その後パパは私を抱き締めて、こう言ったんだ


『もう、こんな事はしないでくれ』。それが、私とパパの最初で最後の約束だった


怒られた事は悲しかった。けど、それよりももっと大きな事実が、私の心を支配していたんだ




……『約束を破れば、私に構ってくれる』って

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:52:07.35 ID:Ef2ohd7zO<>

それからしばらく経って……私が小学生に上がった頃


私の大好きな友達に、『私のお家に遊びにおいでよ』って誘われた


勿論、最初は行くつもりだったけど……ふと頭の裏を過ったのは、幼い頃の、苦い思い出


……好奇心が沸いたんだ。もし、ここで友達との約束を破ったら、友達は私にどうするんだろう?




そんな無邪気な好奇心に負けて、私は、もう一度約束を破った




翌日、学校で何気無く話しかけてみた。友達からの返事は無くて、顔はこっちを向いていなかった


一瞬でわかった。私は無視されている。友達の視界から、世界から私は殺されている……


好奇心が罪悪感に変わったのはすぐだった。ごめんなさい。許してください。もうしないから。お願いだから


思い付く限りの謝罪と懇願。頭が壊れるかと思う程頭を下げ続けて、その子はゆっくりとこう言った


『もう友達との約束を破らないって、誓える?』。私はこの時、ようやく自分のした事の重さに気づいたんだ



約束を破る事はいけない事。それも、友達との約束を破った人には罰を与えないといけない事

私は、心に硬く誓った。もう約束は破らないって

友達との約束は、絶対に叶えないとダメなんだって……


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:52:35.31 ID:Ef2ohd7zO<>






【Chapter2】
  もうやらないと誓ったのさ







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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:53:03.84 ID:Ef2ohd7zO<>




……嫌な夢を見た。よりにもよって、辛い事があった日に限って悪夢を見る

目を閉じると、瞼の裏に昨日の出来事がスクリーンの様に映し出される

殺人事件、学級裁判、オシオキという名の処刑……

その果てに、天地さんと吊井座君。二人もの命が、たった一日で何処かへ消えてしまったんだ

……どうせなら、私もここから消えてしまいたい。一刻も早く、私のモラトリアムに浸りたい

けど、ここから帰ろうとした二人は……もう、戻れない所まで行ってしまったんだ

「はぁ……行くしかないかぁ」

進むも退くも最悪なら、進んだ方がいいと思う。流石に今のタイミングで逃げるのはイメージが悪い

……皆の様子も、一応見ておきたいしね

「……よし!行くぞ!」

鏡の中の私に渇を入れる。思ったよりも、鏡の中の作り笑顔は大丈夫そうだった

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:53:33.86 ID:Ef2ohd7zO<>


スグル「あ、瀬川さん……」

月神「……おはよう。瀬川さん」

瀬川「うっ……お、おはよ」

入った瞬間に、重苦しい雰囲気が歓迎してくる

どんよりとした顔つきに淀んだ目。生気の無い顔の集団は、ゾンビゲームを連想させる

まるで、お葬式をした直後に怪獣が襲来してきたかと思わせる様な……そんな諦めと絶望の混じった顔

モノクマ「うわぁ、オマエラ酷い顔してるね!何か変な夢でも見てた?」

瀬川「げっ」

うん。もしかしなくても、お葬式の後に怪獣が出てきたね……全ての元凶が

スグル「モノクマ……!」

古河「モノクマァ!おどれよくもウチらの前に出てこれたなぁ!?えぇ!?」

モノクマ「まあまあカッカしないでよ、閣下!」

竹田「それは駄洒落か?」

モノクマ「今回はコロシアイをしてくれたオマエラに、いいお知らせを持ってきたんだよ」

御影「いい知らせ……?もしかして脱出の手がかりとか!?」

臓腑屋「絶対に違うでござる!」

月乃「……わざわざ教えに来るとは思えない」

モノクマ「まあ見てみればわかるよ!という訳で、パパッと再生スタート!」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:54:12.12 ID:Ef2ohd7zO<>


〜〜〜♪



ハルカ『良い子のみんなー!ココロオドルTVの時間だよー!』

ハルカ『うぅっ!やっと終わったんだね……!あの学級裁判が!』

ヨウ『悲しんでいるのか?殊勝な心掛けだな』

ハルカ『いなくなっちゃった人達には悪いけど、今生きている人達にはいいお知らせがあるよ!』

ヨウ『切り替えが早すぎるだろ。せめてもう少し悲しげな態度を取れなかったのか』

ハルカ『皆にはここで共同生活を送って貰っているけど、この学園には色々と足りてないものがあるんだよね』

ヨウ『そうだな。主に娯楽方面での不足ぶりは見るに堪えない』

ハルカ『そこで私は考えました。この学園に足りないものはなんなのか!』

ヨウ『おっ?それで何が足りないんだ?』

ハルカ『それはズバリ!運動です!』

ハルカ『なので、皆には体操着のプレゼントを上げちゃいまーす!勿論女の子はブルマだよ!』

ヨウ『……………………』

ハルカ『どしたの?まるで養鶏場の卵を見るような目をしているけど』

ヨウ『いや、お前の下心丸出しのプレゼントに少し気分が悪くなってな』

ハルカ『や、やだなー……純粋な好意デスヨ?』

ハルカ『そもそもブルマに下心のあるヨウ君の方が不純だよ!ちゃんとジャージも用意してるし!』

ハルカ『ってもうこんな時間じゃん!さっさと合言葉言って切り上げないと!』


『『鮮やかな!!』』

ハルカ『遥かな明日を!』ヨウ『見届けよう!』

ハルカ『バイバーイ!アンドバイバーイ!』

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:54:48.47 ID:Ef2ohd7zO<>


モノクマ「という訳なんだけど」

御影「いやどういう訳なんだよ!?」

臓腑屋「そもそも、今頃体育着など渡されてどうすれば良いのでござるか……」

飛田「いや……これはもしかしたら革命かもしれぬ……!」

飛田「ここには麗しきレディが居るのに、肝心の衣服が少なすぎる!少しでも潤いを増すべきだッ!」

御影「それに賛成だよ!」

古河「反対や!そもそもオマエ真っ先に伸びとった癖に何で乗り気なん!?」

飛田「フゥ!何故か今朝から身体が軽くてね!」

月神「ああ、すぐに気絶していた分深く休めていたのね……」

駆村「誰か飛田を止めてくれ……」

モノクマ「ああそれと、こっちの方はどうでもいいんだけどさ……」

モノクマ「彩海学園の二階にも行ける様にしといたから新しい施設を確認してね」

朝日「そっちの方が重要だと思うんだけどなぁ」

モノクマ「それじゃあ良い学園生活を!オマエラの健闘を祈る!うぷぷぷぷっ!」

言いたい事だけ言いました。と言わんばかりの速さでまくしたて、その速さのまま去っていく

後に残された気まずい沈黙。取り合えず何か声をかけようとして……口を閉じた

今はまだ、動くタイミングじゃない。その時になるまで行動するのは止めておこう

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:55:19.98 ID:Ef2ohd7zO<>

照星「……しゃ!行くっすよ!先輩!」

そして、時は動き出す。照星さんの底抜けに明るい声で

照星「新しい場所が出来たなら、そこに何か手がかりがあるかもしれないっすよね?」

照星「だったら、ここでモタモタしてる暇は無いっす!行動あるのみっすよ!」

デイビット「フム。一理あル。でハ、各々探索を進メ、昼頃に集まり情報を纏めるのは如何かネ?」

月神「そうね。なら皆、これから学園の二階の探索をしましょうか」

竹田「だけどよぉ、二階に行く階段も無えのにどうやって行きゃあいいんだ?」

月乃「……梯子?」

スグル「梯子で移動する学校なんて聞いた事ありませんね……」

竹田「なら俺は無理だな。……冗談だっての」

陰陽寺「僕は行く。行きたい奴だけ来い」

照星「あっ!待って欲しいっすよー!」

こうして二階への探索が決まった。意気揚々と足取り軽く、重い何かを振り払う様に




御影「あ、照星さん。糸屑ついてるよ!」

照星「……っ!?」

照星「……ど、どーもっす!先輩!」

御影「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃんか!?」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:57:23.09 ID:Ef2ohd7zO<>


瀬川「ええと、階段は……あったあった」

学園を徘徊する事数分あまり。二階へ続くであろう階段を発見する事に成功した

ここまで、他の人とは会っていない。皆はもう二階へ上がっていったのかな……

スグル「あ、瀬川さん!今から探索ですか?」

瀬川「うん、そうだよ。スグル君も今からかな?」

スグル「はい!ちょっと気になる事があったので、確認しに行ったら遅れちゃって……」

瀬川「……気になる事?」

気になる事。スグル君の何気無いその一言が、今の私の気になる事だ

思わず彼を問い質してみる。彼は直ぐに顔を伏せ、少し悲しげに語ってくれた

スグル「……天地さんの、死体です。いつの間にか無くなっていました」

スグル「恐らく、学級裁判の最中に片付けられたのだと思いますけど……」

……私達に弔う資格はない。って事かな、そうだ、彼女には別れの言葉も掛けられなかったっけ

進んだ足跡は消す事は出来ない。例え道を違えたとわかっていたとしても

瀬川「……行こっか。早く先に、さ」

スグル「え?あの、瀬川さん……?」

だったら、もう後戻りはしない。溢した水が還らないなら、潔く捨ててしまえばいい

瀬川「皆が上で待ってるよ。私達も早く行こ!」

見据えるのは未来だけ!……今、目の前にあるのは真っ暗な道だけなんだけどね


<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:58:12.95 ID:Ef2ohd7zO<>




カンカンカンと階段を上がると、目の前には酷く簡素な通路が広がっている

モニターの張り巡らされた一階と比べると、何処と無く殺風景な印象だ

もう、何でモニターがあんなにあったのか。それを疑問に思わなくなる位には馴染んできたのかな?

スグル「地図によると、二階は大きなフロアが一つと、小さなフロアが三つで構築されている様です」

スグル「近くにあるのは大きなフロアですね。どうしますか?」

瀬川「どうするも何も……行くしかないよ」

わざわざ遠い所から潰していく必要もない。近くにあるなら、そこに向かうしか道はない

瀬川「さ、行こっか。私に付いてきてね」

スグル「あっ……!?」

くい、とスグル君の小さな手を引く。男の子とはいえ未だ完成には至らない白い手が、私の手の中で少しだけ跳ねた

白い頬を微かに赤らめる。初々しくて純朴なその姿に、とくんと胸が高鳴った気がした

小さな男の子相手にこの感情は……多分、気のせいだ。と思いたい


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:59:01.56 ID:Ef2ohd7zO<>




月神「……あら、二人とも。一緒だったの?」

綺麗だ。……勘違いしないで欲しいけど、別に月神さんにそう思ったわけじゃない

扉を開くと、シャンデリアの眩しい光が目を包む。傍らには、剣、槍、斧。各々の武器で武装した鎧が佇んでいる

鈍く重厚に輝く鎧。シャンデリアの優美な光に当てられて、幻想的な風景を造り出していた

瀬川「ここは……?」

飛田「ダンスホール!即ちオレのオンステージ!」

スグル「わっ!?」

飛田「ここはオレの一人舞台!誰の追随も許さぬ美の極致!とくと見てくれ……オレの勇姿を!!!」

朝日「あ、スグルくぅん。ここはねぇ、来賓をおもてなしする為の部屋なんだってねぇ」

瀬川「あぁ、映画とかでよくあるアレね……」

朝日君の説明で合点が行く。途端に頭の中で、正装の紳士と婦人がくるくると踊り始めた

手を取り合って輪になって。二人は比翼の連理の様に、繋いだ身体は広がっていく

二人の歩はカツカツと音を立てながら、新しい足跡を床に刻んで……

臓腑屋「……瀬川殿?瀬川殿ー!?」

瀬川「ハッ、またボーッとしてた……」

朝日「大丈夫ぅ?チョコはねぇ、頭の栄養にぴったりなんだよぉ?」

可愛くラッピングされたチョコを丁重に断る。頭に栄養が足りてない程バカじゃない

残念。と少しだけ困った様な表情を見せる朝日君。チョコをぱくりと頬張って、甘ぁいと満足げに微笑んでいた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 21:59:59.97 ID:Ef2ohd7zO<>
瀬川「こほん!ところで、この剣とかって本物?」

咳払いをして空気をリセット。まずは気になる事を聞いてみようか

壁に佇む鎧。その手にある銀色の煌めきは、確かに本物の刃物だと理解できるけど……でも、確認するに越した事はない

駆村「ああ……デイビットと陰陽寺に確認させた。殺傷力は充分ある」

瀬川「え!?それじゃあ危ないじゃん!」

駆村「と言っても、結構重たいぞ?スグル、持ってみるか?」

スグル「はい!……わわっ、これ凄く重たい……!」

駆村君がゆっくりと引き抜かれた剣を手渡す。渡されたスグル君は、あっちこっちへよろよろ動く

そんな挙動を少し続けたスグル君は、もう疲れたのか、剣を下げて息を切らしていた

スグル「はぁ、はぁ……」

瀬川「お疲れさまー……そんなに重いの?」

駆村「俺も重く感じるが……軟弱過ぎないか?」

スグル君こら剣を受けとると、軽々とした動きで剣を納め直す。さすがは農筋……

瀬川「剣は無理そうだけど他の凶器はどうなの?ハンマーとか短剣とかあるけど」

月神「それに関しても二人に意見を貰っているわ」

月神「ハンマーは重くて振り回しにくいし……短剣はよほど深く突き刺さないといけないみたい」

月神「でも、危険な事は危険だから……皆も充分に注意してほしいとの事よ」

朝日「危ないから隠しちゃおっかって話もあったんだけどぉ、そうしてもモノクマに直されたら意味が無いって話になったんだぁ」

……要するに、危ないから気を付けてね。って事か

対処出来ないなら放置する。合理的だけど、寂しい解答だ……なんちゃって

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 22:01:14.28 ID:Ef2ohd7zO<>
瀬川「スグル君、他に気になる事は無いかな?」

スグル「あ、なら……あの窓開けてみませんか?」

彼が指を差したのは、ステンドガラスの嵌められた窓。中央にサッシが入った変わった形だ

開いてみると、内側に向けてガラスが動く。キラキラとガラスを通して変化した光が、顔をくすぐった

瀬川「わ……凄い!花畑が一望出来るよ!」

スグル「こんなに色とりどりの花が咲いてたんですね。普段の目線だと気づかなかった……」



「瀬川さーん!スグルクーン!!」



瀬川「……あれ?誰の声?」

何処からか私達を呼ぶ声がする。その声は外から。いいや、隣から聞こえていたようで……

御影「おーい!こっちこっちー!」

身を乗り出す様な体勢の御影君が目に入る、手を振って存在感を精一杯にアピールしていた

スグル「御影さん!?何処にいるんですか?」

御影「更衣室だよ!隣にあるから来てみなって!」

瀬川「更衣室か……行ってみよっか」

スグル「はい!待っててください、御影さん!」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 22:01:58.21 ID:Ef2ohd7zO<>




御影「あっ!二人とも!こっちこっち!」

御影「ここが更衣室だよ!赤い扉が女子で青い扉が男子なんだってさ」

ここだよ。と御影君が指差した先にあったのは、赤と青の二つの扉

年期の入った重苦しそうな見た目だけど、よく見てみたらパネルの様なものがついている……

御影「電子ロックなんだって。電子生徒手帳をかざせば開くんだって」

御影「男子は男子の、女子は女子の生徒手帳じゃないと開かないから気をつけてってさ!」

瀬川「ふーん……なら、御影君が私の生徒手帳を使えば女子の更衣室に入れたりする?」

御影「そうそう。ボクもそう考えて古河さんに借りようとしたんだよ?でもそれがさぁ……」



古河『オマエ絶対覗くつもりやろ!貸さへんわ!』

モノクマ『そうそう!他の人の生徒手帳を使う事は禁止!校則にも追加しておくからね!』

御影『そんな〜〜〜!』



御影「だってさ。残念だよね……」

スグル「残念でもなんでもなく、当然な気が……」

全くもってその通りだ。うんうんと頷きながら生徒手帳を確認する

校則の欄に新着がある。そこには確かに、『他者の電子生徒手帳を使用した場合、生徒手帳の持ち主を罰します』と書かれていた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 22:02:58.26 ID:Ef2ohd7zO<>




古河「……で、スグルとどっか行ったんか?」

瀬川「まあ、色々あったけどそういう事だね」

臓腑屋「どういう事なのでござるか……」

今、私達は更衣室で雑談をしている。部屋の中は、更衣室というよりちょっとしたトレーニング施設だ

ダンベルにランニングマシン。それに、握力を計るアレも備わっている。箱には粉末状のスポーツドリンクまで用意されているなんて……

臓腑屋「駆村殿も喜んでいたでござるよ。それと陰陽寺殿も意外と興味があったみたいでござるな!」

瀬川「そりゃあ、これだけ充実してたら運動する人にとっては嬉しいよね!」

あの二人は如何にもな体育会系だし嬉しがる気持ちもわからなくもない

……でも、一番こういう施設を好みそうな人の名前は、全く出てこなかった

瀬川「ところで照星さんは?こういうの好きそうなイメージがあるけれど……」

古河「それなんやけどな、『今は少しそんな気分やない』いうて別のトコにいってもうた」

瀬川「……へぇ」

そんな気分じゃない、か。空々しい言い訳としては及第点といった所かな

普段の頭が空っぽの様な行動ばかりの彼女にも、何か思うところがあるのかもね

……せっかくだし、会いにいってみようかな?

瀬川「ふぅん……照星さんって、今どこなの?」

臓腑屋「にゃあう。恐らく……美術室でござるな」


<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 22:03:37.08 ID:Ef2ohd7zO<>




瀬川「えっと、確かこっちだったっけ……?」

竹田「ん…?よう、嬢ちゃん。どうかしたのか?」

……余談だけど、この彩海学園は割りと入り組んだ通路をしている

モニターまみれの通路だった一階と違ってさっぱりとした二階だけど……それでも初めて通る路は混乱する。……しない?

だから、まごついていると誰かに捕まる訳で……

瀬川「あ、竹田さん……ちょっと色々あってー……」

竹田「丁度いいか。どうせ今暇してんだろ?ちっと付き合ってくれや」

瀬川「……………………」

竹田「おいおい、そんなセクハラ親父を見るような目で見ないでくれよ?」

がっははは!と破顔しながら大声をあげる

豪快に笑い飛ばしているけど、今の発言はセクハラ親父以外の何物でもないよ

ひとしきり笑い飛ばした後、私に向き直る。その顔は、さっきの豪放なものではなくて……

竹田「……ここだけの話だけどよ。照星の嬢ちゃんの状態があまり良くねえんだわ」

瀬川「?どゆこと?」

竹田「ずっと上の空でろくに反応しねえ。俺も何とかしてやりてえのは山々だけどよ」

竹田「俺よりも同性の瀬川の嬢ちゃんのが話しやすいだろ?頼まれてくれよ。若いんだしよ」

そっか……やっぱり、彼女は……

瀬川「わかった。それじゃあ行こっか」

竹田「あいよ。そんじゃあ着いてきな」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 22:06:13.24 ID:Ef2ohd7zO<>




竹田「着いたぜ、嬢ちゃん……デイビットの坊主、後は頼むぜ」

デイビット「承っタ。でハ、瀬川女史は此方ニ」

瀬川「ちょ、ちょっと待って?少し質問させて?何でこんなに慎重なの?」

着くや否や、竹田さんとデイビット君の刑事ドラマで見たようなやり取りが襲う

まるで魔法の白い粉を取り扱う様な……いや、今の照星さんが危険なのはわかるけど!

デイビット「照星女史。現在、彼女の状態は極めて不安ダ」

デイビット「感情を取り繕うという事ハ、その深層を他者に覚られる事を恐れる故の傾向であるからニ」

竹田「下手に気を使うと逆効果ってこった。だからこうして秘密にしてんのさ」

瀬川「……取り扱い注意って事だね」

二人の言葉に気を引き締める。これからの対応次第で、私の好感度が左右される気がするから

照星さんを何とかする。私にしか出来ない事だから頑張らないとね!

瀬川「それじゃ、行ってきまーす!」

手を軽く振ってドアを開く。私が活躍するいいチャンスなんだから……!






竹田「…………本当に嬢ちゃんで大丈夫かぁ?」

デイビット「ム、何か言ったかネ?」

竹田「何でもねえよ。……ふぁあ〜あ、運動したら眠くなっちまったなぁ」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/25(月) 22:06:39.92 ID:Ef2ohd7zO<> 本日はここまでで <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:02:29.20 ID:XP/zMJPIO<>




照星「……………………」

……いた。美術室の椅子の上、ぽかんとした表情で絵を見詰めている

何を考えているかは読み取れない。そもそも、何も考えていないのかもしれない

瀬川「……照星さーん。今、大丈夫?」

慎重に、慎重に……むやみやたらに刺激しない様にそっと話しかける

ぽん、と肩に手を置くと、ビクン!と身体を震わせながら振り向いた

照星「ひゃあ!?せ、先輩!近くに居るなら言って欲しいっすよー!」

瀬川「言ったんだけど……」

これは中々重症だ。それを、本人が自覚していなさそうなのが更にマズイ

流石に面と向かってそんな事は言えない。照星さんと喧嘩になったらまず間違いなく殺される

照星さんにぶつける言葉を選択する。……よし

瀬川「照星さん……少しいいかな」

照星「な、なんっすか?顔怖いっすよ……?」

深呼吸して息を整える。人格を切り替えて、





瀬川「いつまで、そうやって情けない態度をとっているつもりなのかな?」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:03:34.42 ID:XP/zMJPIO<>
照星「え、先輩……?」

瀬川「照星さんが悲しむ気持ちもわかるよ。けど、それだけじゃダメなんだ」

瀬川「辛い事も飲み込んで、前に向かって進まないと死んだ二人も浮かばれないよ」

瀬川「だから、元気だして!いつもの明るい照星さんに戻ってよ。……ね!」

照星「先輩…………」

考えた末の結果は、熱血先輩系ムーブメント

取り合えずキツめに説教してみた。体育会系っぽい照星さんには受けると思うけど……

照星「……そう、っすね!くよくよしてるのは自分らしくねーっす!」

照星「もう……戻るっす!お先、失礼します!」

にこっと笑って顔を上げる。その姿は紛れもなく、あの頭に栄養がいってなさそうな能天気な顔だ

照星さんはトタトタと走り去っていく。うんうん、どうやら上手くいったみたいだね

瀬川「……いいこと言ったなぁ。えへへ」

自画自賛もそこそこに、周りの様子を確認してみる

美術室。という通り、周りには色々な美術に関するモノが置いてある

石膏像は今にも動き出しそうな迫力でこっちをガン見しているし、風景画からは風がそよいできそう

きっと、これを作った人、描いた人は、よっぽど虚構の世界が好きなんだろう。そんな気がする

照星さんがここにいたのは、死んだ二人の事を考えていたからだろう。目を瞑ると、未だに声が脳内に反響する……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:05:12.52 ID:XP/zMJPIO<>




天地「わー絵の具に石膏像!なっつかしー!」

瀬川「吊井座君的にはどう?お眼鏡に適うかな?」

吊井座「ま、まあいいんじゃねえの?お、俺もたまにはここで描いてみるか……」

照星「吊井座先輩、絵を描くんすか!?」

瀬川「忘れてない?イラストレーターだからね?」

照星「冗談っすよ!にっひひひ♪」





……もしかした、こんなやり取りをしていたのかもと思いを馳せる

もう絶対に有り得ない、有り得る訳がない未来だけど、だからこそ綺麗だと思うんだ

手に入らないからこその美しい毎日。今の理不尽な生活では、きっと手から零れる煌めき

そんな時に溢れる感情を、人は尊いと言うんだ

瀬川「……あれ?」

風景画を眺めていたら、急に強いデジャヴに襲われた。ここの絵はどれも始めて見るはずなのに

……忘れているだけ?まさかね

古河「瀬川ァ!そっちはもうええかー?」

古河「そろそろ集まって報告せなアカンねん、はよ食堂に来てなー」

瀬川「あ、はーい」

古河さんに催促されるがままに美術室から立ち去る

チラッと振り返って絵を見たら、絵の真ん中に亀裂が走っている様に見えた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:06:32.11 ID:XP/zMJPIO<>



瀬川「じゃあ、結局脱出に関するものも……」

瀬川「この学園に関わるものも無かったんだ」

私の一言にデイビット君が頷き、他の皆は押し黙る

ダンスホールが二階のほとんどの面積を占めているせいで、見た目よりも実りの無い結果になったんだ

ガッカリとした雰囲気が流れ始める。陰陽寺さんに至っては既に食堂から出ていった

月神「……仕方無いわ。でも、諦める事はしない」

月神「私達は私達で過ごしていくしかないわ。今日は取り合えずここまでにしましょう」

賛成、と月神さんの提案に乗るように、各々好きに動き始める

何人かは陰陽寺さんみたいに食堂の外に出ていったけど、まだ残っている人も多い

私も暇だし、せっかくだから誰かと話してみよっか

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:07:45.56 ID:XP/zMJPIO<>




月乃「……千早希、前に座っていい?」

瀬川「えっ?あ、うん。いいよ」

動く前に月乃さんが話しかけてきた。すとんと私の前に座ると、コップを一つ差し出してくる

月乃「……ココア、飲む?朝日が作っていたから貰ってきた」

瀬川「あ、どうも……」

ココアを喉に流し込む……うん、美味しい

瀬川「そう言えばさ、月乃さんって朝日君……お兄さんの事はどう思っているの?」

月乃「恥」

即答された。実の兄妹なのにこの塩対応は清々しさすら感じられる

月乃「……兄さん、昔はあんなじゃ無かったのに」

瀬川「あ、そうなの?昔から女装していたイメージがあったんだけど……」

瀬川「そうだ。どうして朝日君が女装してるか月乃さんは知ってる?」

月乃「………………」

瀬川「………………」

月乃「……お花摘みに行ってくる」

瀬川「あっ!?ちょ、逃げる気!?」

言うが早いか。月乃さんは普段のぼんやりした態度とは裏腹に、機敏に食堂から去っていく

まあ、『実の兄が男の娘だけど質問ある?』なんて普通は言えないし、教えてくれないよね……

なら朝日君の方に……は、止めておこうかな

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:08:58.53 ID:XP/zMJPIO<>



デイビット「でハ、宜しく頼むヨ。スグル氏」

スグル「はい。わかりました」

……? デイビット君とスグル君。比較的珍しい組み合わせの二人が話している

相性は悪い訳じゃないけど、こうして向かい合って話しているのを見ると不思議な気分になる

スグル「あ、瀬川さん。どうしたんですか?」

瀬川「いや、二人が話してるのって珍しいから気になってさ」

スグル「そうですか?デイビットさんは頼りになるので、懇意にさせて貰っています」

……そうなんだ。確かに、デイビット君はこの中で一番冷静な考えの人だし、頼りになるのはわかる

でも、なんだろう。この胸のモヤモヤは……嫉妬。じゃないとは思いたい

デイビット「フム、丁度良イ。瀬川女史もご一緒に如何かネ?」

デイビット「無論。無理ニ、とは言わないガ」

瀬川「んー……わかった。いいよ」

唐突なお誘いだけど……今は暇だし、乗ってみよう

返事を聞いて満足したのか、デイビット君は深く頷き、スグル君と一緒に歩いていった……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:10:30.37 ID:XP/zMJPIO<>
瀬川「……ここって」

私達は黙って歩く。学園内から外に出て、寄宿棟へ進んでいく

デイビット君が止まった場所。そこはもう誰も使わない……いいや、使わなくなった部屋だった

デイビット「吊井座氏の個室ダ。本来ならば天地女史の弔いも行いたい所だガ」

デイビット「余り大々的に行うト、周囲に弔いの強要をさせている様に思われる故」

瀬川「だからひっそりとやろうって事ね」

確かに皆の目の前で葬式なんてやられたら、気分を害する人が出てもおかしくない

スグル君が言葉を静かに紡ぎ始める。デイビット君は沈んでいく様に、ゆっくりとその目を閉じた

瀬川「…………」

私は目を閉じていない。スグル君は背中を向けているし、デイビット君は私が見えていない

スグル君の話す祝詞は穏やかだ。だけど、その中に二人への思いが籠められている事がよくわかる

その姿は、まるで救世主だ。迷った魂に道を標し、正しい世界へ導いていく……

そんな妄想を繰り広げていると、スグル君が言葉を止める。私は、慌てて両目を閉じて指を組んだ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:11:08.10 ID:XP/zMJPIO<>

スグル「―――――……終わりました。目を開けていいですよ」

デイビット「感謝、感謝。よもやスグル氏がこの様な事に詳しいとはネ」

瀬川「えっ?そうなの?」

スグル「はい。本当になんとなくですけど……」

スグル「死者の弔いや普段の生活……僕は、何らかの宗教を信仰していた様な気がするんです」

宗教。色んなヤバイ事をする人達のイメージが強い私にとって、スグル君は真逆の存在だ

私と友達になったのも勧誘する為……?スグル君とはちょっとだけ距離をおいておこう

スグル「……? 瀬川さん、何か?」

瀬川「べ、別に〜?」

デイビット「ハ、ハ、ハ。宗教と一言で纏めてモ、実際には様々な宗派が存在するものダ」

デイビット「スグル氏が、真に宗教関係者だからとして怯える必要は無いだろうヨ」

瀬川「肝に命じておきま〜す……」

そんな考えを見透かされていたのか、デイビット君に釘をさされた。本当に油断も隙もない……

デイビット「……スグル氏、協力感謝すル。然シ、葬儀等本来ならしなくても良いものダ」

デイビット「ワタシモ、もう二度とワタシの力を必要としない事を祈っているヨ」

服を翻しながら、デイビット君は外に出ていく。どこか決意の様な発言を残して

……学級裁判は起きない方がいい。それは皆もそう思って当然だと思うけど、でも……

…………私は?自分の本心と向き合う勇気は、まだ私には無いみたいだ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/03/31(日) 22:12:07.07 ID:XP/zMJPIO<>



「……えっと、今日の夜はお魚がいいかな」

「味噌が余ってるし、鯖の味噌煮とか……?」

瀬川「……ん?」

少し小腹が空いたから食堂に来たら、誰かがまだ奥にいたみたい

瀬川「もしもーし、誰かいるのー?」

臓腑屋「にゃあ!?せせせ、瀬川殿ぉ!?」

瀬川「あれ?臓腑屋さんだけ?」

臓腑屋「にゃあ……そうでござる。致し方ない。実は拙者……」

瀬川「おかしいなぁ、空耳かな?ごめんね」

臓腑屋「話を聞くでござる!それは紛れもなく拙者でござるから!」

臓腑屋「拙者は、一人の時や通学の場合は普通の口調なのでござる!これはあくまで条件反射なのでござるからな!?」

瀬川「へぇー……じゃあキャラ作ってるって事?」

臓腑屋「い、意識している訳ではないでござるが、そう言われると否定できないでござる……」

がっくりと肩を落としてシュンとする

そのわざとらしい忍者キャラが作ってるのはわかってたけど、そんなにがっくりする事かな……?

因みに、余談だけど……今晩の晩御飯は私の大好きなハンバーグに決まったみたい。やったね!

……不正は無かった。いいね?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:40:22.82 ID:OcgGkYvEO<>




『えっと、ゴメンなさい……許して……』

『ふうん……。――はそれで許されると思ってるの?そんなんじゃ甘いよ』

『だからいつまで経っても私以外に友達が出来ないんだよ?……ほら、もっと誠意を見せて』

『ご、ゴメンなさ……』

『謝る位ならもっと私の言うこと聞いてよ。ほら、頭しっかり下げて』



……暗闇の中に響く幼い二人の少女の声。頭を踏まれて呻くのは、過去の私だ

私はずっと、『友達』に囚われている。呪縛の様に縛られているのが、今の私だ

……悪いのは私だから。だから、あの子は私を虐めるんだ。あの子は悪くない。あの子は友達だから

私は独りぼっちなんかじゃない。そう自分に強く言い聞かせる。無様な姿が、解けない様に

そうだ。ずっと気にしてなかったし、特に困る事も無かったから忘れていた

あの子の、友達の名前はなんて言ったんだっけ……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:41:22.49 ID:OcgGkYvEO<>




御影「サッカーやろうぜ!」

朝。そろそろ皆も立ち直りかけたかなという微妙な時期に、その発言は撃ち込まれた

御影「サッカーやろうぜ!」

月神「えっと、御影君。それは……」

瀬川「スグル君、ちょっと醤油取ってくれない?」

スグル「あ、はい。これですね」

駆村「この味噌汁……いい味だな。具はなんだ?」

朝日「えっとねぇ今日のお味噌汁の中はぁ、玉ねぎと油揚げと、後は……たあっぷりの愛情だよぉ♪」

臓腑屋「最後のは必要でござったか……?」

御影「聞けよ!無視するなよ!」

飛田「しかし毎日朝は和食ではつまらんッ!食卓の色味が薄すぎるッ!」

デイビット「フム、偶には欧州風の朝食でも如何かネ。と提案してみよウ」

月乃「……本格的なブレックファスト。興味が無い事もない」

御影「ちょっとー!ねえ!ボクの声が聞こえてないの!?おーい!!」

古河「じゃかあしいわボケカス!オマエのどうでもいい話なんて聞きたかないわ!」ドスッ

御影「そんな〜〜〜!!……あ痛ぁっ!?」

うろちょろと目の前を右往左往する御影君。ウザイを通り越して鬱陶しい

我慢の限界が来たのか、古河さんからの強烈な蹴りが御影君に炸裂する

古河さんのヤクザキックをモロに受けた御影君は、よろよろと呻き、バタリと床に手をついた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:42:25.84 ID:OcgGkYvEO<>

御影「うぅ……何でさ、何で蹴るのさ……」

古河「さっきからチョロチョロウザイねん!なんでいきなりサッカーなん!?」

御影「……だって、だってさ。ボク達はずっとここに閉じ込められて、満足に動けないじゃないか」

臓腑屋「そうでござるな……幾ら広いとはいえ、根本的には閉鎖空間でござる」

朝日「ずうっと壁に囲まれてるとぉ……苦しくなっちゃうよねぇ」

御影「それに、皆最近怖いよ!なんだか無理して笑顔作ってるみたいでさ……」

月神「それは……」

デイビット「否定は出来ないナ」

御影「だから、皆で楽しく運動すればきっと気分も晴れるって思ってたのに……」

竹田「なんでえ。坊主にしちゃまともな意見じゃあねえの」

古河「せやったんか……スマン御影。ウチが……」

御影「そうだよ……ボクはちゃんと皆の事を考えているんだからね!」





御影「決して、女子達の体操服が見たいワケじゃないんだからね!」

古河「いや絶対にそれが目的やろッ!」スパーン

御影「いってええええええ!?!?」

最後の最後でボロが出た……真剣に聞いていた皆も呆れ顔だ

二度目の制裁を受けて、御影君のライフはもうゼロだよ……合掌

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:43:19.35 ID:OcgGkYvEO<>
月乃「……珍しく、真面目な事を言うと思ったら」

スグル「やっぱり、下らない考えでしたね……」

御影「ちょっと!?スグル君はボクを何だと……ぐふぅ!?」ドスッ

古河「ちっと黙ってろやボケカス。オマエはもう一生口開くなや」

臓腑屋「厳しすぎるのではござらんか!?もう少し位は温情を……」

古河「なら臓腑屋は明日から体操服で過ごそか?」

臓腑屋「御影殿は調子に乗りすぎでござる!今回ばかりは厳しい処遇を求めるのでござる!」

瀬川「汚い……さすが忍者汚い」

飛田「まぁまぁ落ち着きたまえ!良いではないか、体操着!オレは大歓迎するぞ?」

古河「ウチらが嫌なんや!何で好き好んで体操服なんざ着なアカンねん!」

デイビット「ワタシは構わんガ、月神女史はどうお考えかネ?」

月神「私?そうね……」

月神「私は、御影君に賛成かしら」

古河「せやせや!こんなん反対に……なぁ!?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:44:57.60 ID:OcgGkYvEO<>
瀬川「……もしかして、体操服着たかったり?」

月神「そうじゃないわ。皆で集まって運動すれば、きっと気分も晴れるはずよ」

月神「普段より運動不足になっている部分も否めないし……いいアイデアだと思うわ」

御影「でしょ!?」

コスプレ願望でもあるのかなって思ったら、割りと納得できるアイデアだった

うんうんと御影君も便乗してるけど、さっきのは絶対に出任せだよね?

駆村「でも、何でサッカーなんだ?」

御影「ボクが出来るからね!」

瀬川「あ、基準はそこなんだね……」

月乃「……私は、バスケットボールやバレーボールの方がいい」

御影「はぁ〜?そんな背の高い奴が有利になる競技だとボクが活躍できないじゃんか!」

古河「チビやもんな!」

御影「言っておくけど、皆がデカ過ぎるだけでボクの身長は平均だからね!?」

古河「でもこん中ならチビやろ?」

御影「そうだけど!そうだけどさ!?」

デイビット「ならバ、他にスポーツの提案のある者はいないのかネ」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:45:34.90 ID:OcgGkYvEO<>
朝日「はぁい。ドッジボールなんてどうかなぁ?」

朝日「ルールも簡単だしぃ、運動の苦手な人も一緒に楽しめると思うんだけどぉ……」

デイビット「ドッジボール……フム、悪くないアイデアだとワタシは思うガ」

飛田「いいじゃあないか!外野に行けば無様に動き回る事もないだろう?」

スグル「そうですね。全員に活躍の場があり得るのはいいと思います」

月乃「……認めたくないけど、悪くない」

臓腑屋「頑なに認めてあげないのでござるな……」

月神「私も、朝日君の提案はいいと思うわ。他の皆はどうかしら?」

古河「まあ……ええんとちゃう?どうせやるならおもろい方がええもんな!」

御影「やったぜ!それじゃあ早速着替えてきて!」

竹田「あ?今からなのか?坊主はともかく嬢ちゃん達にも準備が必要だろうよ」

月神「一度試しに着てみないと困るわね。いざ着てみたら不都合があると困るもの」

臓腑屋「であれば、明日の昼はどうでござろうか。食前の運動は健康に良いでござる!」

御影「ならそうしようよ!ボクはいいと思うな!」

駆村「ったく……調子のいいやつめ」



こうして、とんとん拍子で明日の昼に急遽ドッジボール大会を行う事になるのであった

……そう言えば、何だかいつもより騒がしくない気がしたけれど……気のせいだよね?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:46:20.04 ID:OcgGkYvEO<>





照星「…………」

陰陽寺「おい。何処にいく」

照星「え?あ、その……ちょっとしたウォーミングアップっすよー!」

照星「皆で運動するなんて楽しみっす!自分も負けてらんないっすからね!」

陰陽寺「そうか。好きにしろ」

照星「……止めないんすね、陰陽寺先輩は」

陰陽寺「知らない、興味もない。そもそも、お前に聞く気もないだろうが」

照星「……そうっすね。それじゃ、また」





月神「……あら?照星さんは?」

デイビット「さっきまでそこにいたガ?」

月神「そう、ありがとう。…………」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/09(火) 22:46:47.79 ID:OcgGkYvEO<> 本日ここまで <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:04:08.23 ID:q5NqIFBWO<>




古河「ったく。月神は御影に甘いんと違うか?」

月神「そうかしら……。でも、皆の親交を深める事にはうってつけだと思うわ」

月乃「……皆でワイワイするのは楽しい。わかる」

瀬川「いや、わかるじゃなくてさ?ちょーっと聞きたい事があるんだけど」

古河「ん?どうかしたん?」

瀬川「えーっと、何で皆は私の部屋にたむろしているのかなって」

食後、古河さんに部屋で待っていろと指示されてからはや数分。気がつけば照星さんと陰陽寺さん以外の女子がここに集っていた

勿論、別に来て困る理由はあんまり無いけど…私はこんな事になるなんて、聞いてない!

古河「アハハ!ええやんええやんそんくらい!」

瀬川「嫌だよ!良くないよ!人権とプライバシーの侵害だよ!?」

臓腑屋「瀬川殿、お気を確かに!」

月乃「……落ち着いて。マシュマロ食べる?」

瀬川「あ、うん……。って勝手にお菓子を持ち込まないでよ!?」

古河「細かいなぁ。疲れるで?」

瀬川「もう現在進行系で疲れてるよ……」

ケラケラと笑う古河さんに殺意を覚えながら腰をかける。やけにずっしりとした感覚が、全身にのし掛かってきた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:05:04.74 ID:q5NqIFBWO<>
瀬川「……で、何で来たの…………?」

臓腑屋「にゃあ。明日にドッジボール大会をやるのは瀬川殿も知っているでござるな」

月神「激しく動くだろうから普段着ではやれないのだけど……」

月乃「……体操服がどんなものかも知らない。一度誰かが着てみてから私達も着る」

瀬川「だから、試しに私に着せてみようって?」

古河「せやな。理解が早くて助かるわ!」

瀬川「……なんで私?」

古河「一番着慣れてそうやからな。コスプレイヤーなんていかがわしい服着てナンボやろ?」

いったい古河さんはコスプレイヤーを何だと思っているんだろう。酷い偏見だ

そもそも、いかがわしい服なんて着た覚えが……

瀬川「…………あー、うん。ワカリマシタ」

古河「せやろ?あんなキラキラフリフリしたん着とるんやし、ワケないやろ!」

脳内に浮かび上がるキラキラフリフリとした衣装。本当になんでああなったのか、私にもわかんない

瀬川「別にいかがわしくないよ……元ネタは」

月神「私も着るから……ね?瀬川さん」

瀬川「はーい。わかりましたよーっと……」

肩にぽんと掛けられた手が、ずっしりとした重みになって身体にのし掛かる

もう既に無駄な抵抗は出来そうにない。観念して体操服を手にとって、浴場へと歩いていった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:05:55.21 ID:q5NqIFBWO<>




瀬川『うぅ……これなんか……』

月神『そ、そうね……これは、ちょっと……』

古河「お?終わったんか?はよ出てこんかーい!」

臓腑屋「瀬川殿ー月神殿ー、人生には諦めも肝心なのでござるよー」

月乃「……大丈夫。笑い者にはしないから」

瀬川『その微妙な優しさが怖いんだってー……!』

外からはお気楽そうな三人の声が。他人事だと思って調子のいい……!

月神『瀬川さん、もう……』

瀬川『わかったよ……!ええい!』

ガチャッ

瀬川「はい!着てきました!どう!?」

月神「へ……変じゃ、ないかしら」

臓腑屋「お、おおう……これはなんと言えばよいのでござろうか……」

瀬川「素直な感想をお願いしまーす……」

古河「感想も何も際ど過ぎやろ!?脚とかヘソとか丸見えやんけ!!」

月乃「……いかがわしいお店みたいな雰囲気」

臓腑屋「これは流石に男子の皆には見せられないでござるな……先に確認しておいて正解でござる」

月神「そ、そうね……私もこれはちょっと……」

頬を赤く染め、もじもじと恥じらう月神さん。胸の部分に書かれた名前が、動きに合わせて控えめに歪んでいく

これ、プレイはプレイでも別の意味じゃ……こんなモノを女子に配布するモノクマは、ちょっとマトモな頭をしていないと思う

……コロシアイをさせてあいて、何を言っているんだって話だけどね

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:07:34.82 ID:q5NqIFBWO<>
瀬川「それじゃ、もう着替えてくるね……」

月乃「……待った。千早希の胸の名前、どうして塗り潰してあるの?」

瀬川「えっ……と、何だか本当にアレっぽくなるから……この話止めよ?」

月乃「……そう?なら聞かない事にする」

臓腑屋「瀬川殿が着ると、本当にコスプレ用に見えてくるのが不思議でござるな……」

瀬川「と言うかそうだからね……皆、これ着る?」

古河「着るワケあらへんやろ。ジャージで充分や」

月神「これは流石にダメね……」

結局、私と月神さんだけが恥ずかしい目にあっただけだった。ちぇっ

月乃「……夕と魔矢にも伝えておいて。明日は体操服じゃなくてジャージを着てきて」

臓腑屋「では、その様に。尤も、照星殿はともかく陰陽寺殿は来ないと思うでござるが……」

瀬川「そう言えば照星さんって今日来なかったね。こういうの、呼んでなくても来そうだけど」

月神「それが……今日は身体を動かしたいからって断られたの」

古河「アイツは少しくらい動いてた方がええわ。ちっとは大人しくなるやろ!」

瀬川「まあ、それもそうだよね。私からも少し言ってしておいたし」

……昨日、私は照星さんを元気つけたんだし、照星さんは大丈夫なはずだ

彼女に向けた言葉。思い返すと恥ずかしいけど、私なりにいい話を言えたはずだ

だから……きっと、もう立ち直ってるはずだから

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:09:13.11 ID:q5NqIFBWO<>
月神「ふふっ。瀬川さんは優しいのね」

瀬川「……そんな事無いよ。普通だよ」

月神「普通じゃないわ。誰かの事を気にかけて行動出来る人は、案外少ないもの」

月神「貴女の優しさは、皆の事が大好きだから誰かの為に動く事が出来るのだから……」


……痛い、痛い、イタい。月神さんの暖かくて綺麗な言葉が、身体と心を抉っていく


古河「ほぇー、月神は瀬川を評価しとるんやな。ウチは自分勝手な奴やと思っとったわ」

臓腑屋「本人の目の前でござるよ!?いや陰口よりはマシかもしれないでござるが……」

瀬川「別にいいよ……自覚はあるからさ」

月神「瀬川さんはそんなに悪い人じゃないわ。皆の事を真剣に考えられる、優しい人よ」


……違う。私は、そんなに良い人間じゃないんだよ

照星さんを励ませば私に感謝してくれるから。皆が私を頼ってくれるようになってくれると思ったから

前に陰陽寺さんが私を偽善者って言っていたけど、私はそれに反論出来なかった

他でもない私が、そう思っていたんだから



瀬川「と、とにかくもういいでしょ!?」

月乃「……まだお菓子が残っている。待っていて」

もぐもぐとお菓子を頬張りながら答えられる。その姿からは私の苦悩を理解出来そうな素振りも無い

全てのお菓子を皆で食べ終えた後、誰からともなく解散していった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:10:42.61 ID:q5NqIFBWO<>



瀬川「はぁ、お腹減った……」

あの後、ほとんどのお菓子は月乃さんのお腹の中に入っていった

私が口をつけたのはほんの数個だけ。それだけだと小腹満たしにもなりはしない

照星「……あっ。先、輩」

瀬川「どうも。今は休憩中かな?」

食堂でお昼を取ろうとしたら、ぼんやりと座っていた照星さんと目があう

額に汗を垂らしながら水を眺めていた照星さん。私を見て少し驚いた様な表情を見せた

照星「そうっすね、絶賛お休み中っす!先輩もお隣どうっすか〜?」

ぺしぺしと隣の席を叩いて座ったらと聞いてくる。この調子ならもう大丈夫だよね

瀬川「うん、ありがたく座らせて貰おうかな。何かあるか見てくるね」

照星「あざーっす!それじゃあゆっくり待ってるっすね」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:11:49.46 ID:q5NqIFBWO<>
瀬川「……無い」

迂闊だった……普段料理を作ってくれる臓腑屋さんが、何か作っているでしょと思っていた

よく考えたら、その臓腑屋さんは私の部屋でお菓子を食べていたんだ。当然料理なんて作ってない……

かといってこのまま引き下がるのは私の面子に関わるし……よし!手早く作っちゃおう!

瀬川「何がいいかな……卵焼きとか?」

卵を溶いて丸めればいいんでしょ?それ位誰だって出来る。私にだって出来るはずだよ

瀬川「どれだけ使えばいいんだろ……?取り合えず十個位割ればいっか」

それだけ割るとなるとお皿じゃダメだよね。もっと大きなお皿……ラーメン丼を使えばいいかな?

瀬川「んしょっと。でもこれフライパンで引っくり返せる?無理でしょ……」

目の前のタプタプになった卵を溶いたの。料理した事ないけど、これはちょっと無理ってわかる……

瀬川「もっとおっきなフライパン使わないとダメっぽいなぁ……あ!あれ使お!」

壁にかかっていた大きなフライパン。これならなんとかなるかな……

瀬川「よし!やるぞ!」

気合も充分あるし、これは成功フラグだよね!まずは火をつけて……

瀬川「……あれ?つかない?ガスの元栓どこ?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:13:46.59 ID:q5NqIFBWO<>

スグル「……ふぁ、もうお昼ですね」

御影「う〜漫画一気読みしたから目が疲れた……」

御影「……あれ?なんか食堂が騒がしくない?」

スグル「そうですね。何が……」





瀬川「う゛わぁぁぁあ!う゛わぁぁぁぁん!!」

月神「な、泣かないで、瀬川さん!大丈夫よ!」

臓腑屋「にゃああ!?これ卵でござるか!?何で床に落ちているのでござるか!?」

瀬川「卵を引っくり返せそうとして……でも落としちゃって……」

駆村「中華鍋で卵焼きが出来るわけないだろ!」

朝日「えっとぉ、ところで調味料とか入れたぁ?」

瀬川「いるの……?」

駆村「いるに決まっているだろ!?」

瀬川「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

月神「駆村君……!」

駆村「わ、悪い……」

竹田「おうおう。地獄絵図だなこりゃあ……」

デイビット「皿やフォークが散乱しているナ。どれだけの事をすればこうなるやラ」





御影「………………」

スグル「………………」

照星「……先輩、スグルん。何してるんすか」

御影「あ、照星さん。ちょっと運動したい気分だからボク達走ってくるね」

スグル「ごめんなさい……」

照星「……自分、なんかよくわかんねーっす」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/14(日) 22:15:04.69 ID:q5NqIFBWO<> 本日ここまで <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:21:00.96 ID:JP0g5fzsO<>



飛田「……何かね?このエイリアンの卵は?」

瀬川「私の作ったのでーす……ごめんなさーい……」

飛田「ハハハハハ!中々愛嬌のあるフォルムじゃないか。そう思うだろう?」

古河「コイツホンマ首へし折れんかな」

臓腑屋「古河殿は容赦無いでござるな……」

飛田「ところで、このオブジェは何故食堂に置いてあるのかな?」

駆村「言っておくが卵焼きだからな。それ」

朝日「味の全く無い、ただ焼いただけのパサパサな卵の塊だけどねぇ……あぅ」

月乃「……次に余計な事を言ったら二度と味を感じられなくなる位辛い物を食べさせる」

瀬川「いいんだよー……事実だしー……」

和やかな夕食の中、阿鼻叫喚を生み出しているのは私の力作こと卵焼き

努力の甲斐も虚しく、ボロカスに叩かれた私の卵焼き……もといエイリアンの卵

もしゃもしゃと月乃さんが処理する姿を見ると申し訳無い気分になる。けど私は食べたくない

月神「そ、それじゃあ明日はドッジボール大会だし早めに終わらせましょう?」

御影「そうだね!それじゃあいただきまー……」


…………ザザッ



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:23:50.75 ID:JP0g5fzsO<>


〜〜〜♪



ハルカ『良い子の皆ー!ココロオドルTVの時間だよー!』

ハルカ『皆、久しぶり!元気にしていたかな?』

ヨウ『俺達は人知れずネタ切れとの戦いに明け暮れていたぞ。連休?そんなもんあるか!』

ハルカ『そんな私達がどうしてTVに出ているのかは聞かないでね。大人の事情ってやつだから』

ヨウ『クソッタレ。アニメーターは賃金が安いと聞くが、それに動かされる俺達は更に薄給だ』

ヨウ『俺達の一月の給料は、丁度牛丼並盛一杯分位だ。ここテストに出るぞ』

ハルカ『聞きたくなかったそんな話……』

ハルカ『まあそんな話はおいておいて、皆、明日はドッジボール大会なんだってね!』

ヨウ『小学校の頃よくやったな。顔に延々と当てられ続けてサンドバッグになった奴もいたアレだ』

ハルカ『はい顔面セーフ!これは負けてはいられないと、私達も新たなミッションを作ってきたよ!』

ヨウ『ミッションといっても、今回はアンケート形式だ。各々の電子生徒手帳に送っておいたぞ』

ハルカ『これで皆の仲も深まる事間違いなし!』

ハルカ『それじゃあ皆で仲良くね!今回もいつもの合言葉で終わらせるよ!』



ハルカ『鮮やかな!』

『遥かな明日を!』『見届けよう!』

ハルカ『バイバーイ!もひとつバイバーイ!』


……………………

…………

……



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:24:58.48 ID:JP0g5fzsO<>





古河「……な、なんやこれ!?」

最初に声を挙げたのは古河さんだった。持った生徒手帳から目を離さず、大きく目を見開いている

照星「これ、って……!」

駆村「なんだこれは……!?こんな事を答えろって言うのか!?」

月乃「……悪趣味な」

御影「こんなの答えられないって!絶対!」

口々に飛び交うのは文句と悪態。言葉は違えど、内容は概ね似たようなもので

デイビット「ほウ。これハ……」

陰陽寺「騒がしいと思って来てみたが、成る程な。そういう事か」

ふらりと表れた陰陽寺さんが毒づく。でもその言葉を咎める人は誰もいない

何人かはアンケートの狙い。アニメの作成者であるモノクマの意図に気づいたみたい

それもそうだ。だってアンケートにはたった一行。こう書かれている


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:26:01.81 ID:JP0g5fzsO<>




『貴方の嫌いな人を教えてください』





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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:27:17.86 ID:JP0g5fzsO<>
モノクマ「わんばんこ〜。アンケート答えてる?」

月神「モノクマ!これはどういうつもりなの!?」

モノクマ「どう言う津守……?津守って誰の事?」

臓腑屋「知らないでござるよ!?」

古河「こんなんがアンケートやと!?ふざけんのも大概にせえや!」

竹田「なんだこの内容は?こんなん誰が素直に答えると思うよ、なぁ?」

スグル「真面目に答える必要性を感じません。誰か適当な人に票を集中させれば問題は無いはずです」

月神「そうね……皆、私に投票して。それで平和に解決するはずよ」

モノクマ「……本当に?本当に解決するのかな?」

瀬川「な、なんで?別に本人がいいって言うなら大丈夫なんじゃないの?」

モノクマ「当の月神さんは誰に投票するの?他の人がちゃんと月神さんに投票するって断言出来る?」

瀬川「それは……」

モノクマに問われて言葉に詰まる。全員がちゃんと投票するとは限らないんだ

それに、月神さん本人は誰に投票するのか……彼女に嫌われている。影でどんな風に思われているのか

他人の本音なんて絶対にわかりっこない。例えば、誰かが、誰かを憎んでいたとしても……

モノクマ「選挙というのは公正でなくてはならないのです。オマエラ、清き一票でお願いします!」

モノクマの発破で投票が行われていく。私も、名簿にある名前一覧から一人を選んで、タップした

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:28:22.63 ID:JP0g5fzsO<>
モノクマ「うぷぷ。これで全員の投票が終わったみたいだね、ありがとうございました!」

……投票は案外速かった。それは、月神さんの言う通りに、素直に彼女に投票したからなのか

モノクマ「いやぁ、これはこれは驚いたよ。なんせ票がビックリする程バラけてたからね!」

御影「ちょっと!?何でわざわざ票がバラけけた事を言うんだよ!?」

モノクマ「別にいいじゃん。単純に驚いただけだしさ。それとも言ったら困る事あるの?」

飛田「貴様。もしかしてとは思うが、梓の言う事を無視した訳ではあるまいな?」

御影「まままっさかぁ!そんな訳ないじゃん!?」

……明らかに怪しい。御影君は嘘がつけないんなら素直に黙っていればいいのにね

現に……皆の口数は、わざとらしい程に減っているんだもん

モノクマ「えー、アンケートにお答えいただき誠にありがとうございます。この結果は真摯に受けとめ今後に役立てていきたいと思います」

古河「嘘つけやぁ!!!」

モノクマ「そして、今回アンケートにご協力していただいたオマエラに、ささやかながらオマケを用意しておきました!」

スグル「理屈がよくわかりませんが……」

竹田「ああ。保険会社のアンケートに答えてやったら飴ちゃんくれるみたいなモンだろ?」

スグル「そ、そうなんですか。知らなかった……」

合点がいった様子のスグル君。でも少し世間知らずだと思うんだ

周りも微妙に呆れているしそれを見ているモノクマもクツクツと笑っているし……

……笑っている?


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:29:53.18 ID:JP0g5fzsO<>
モノクマ「それではオマエラ、電子生徒手帳をご確認くださーい!」

瀬川「えっ? ……あっ!」

モノクマが言うや否や、皆の電子生徒手帳には新着の履歴が表示される

待ってましたと言わんばかりの速度だったから、私の反応は一瞬遅れて……

だから、かな? 手帳に映し出された文章が、やけにくっきりと目に焼き付いたんだ









『―― ――は、  “オンミョウジ マヤ” さんに投票しました』

『“超高校級のヒーロー”陰陽寺 魔矢は、対戦相手に選手生命を断つ程の暴行を加えた事で、高校剣道会から追放されている』






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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:30:42.86 ID:JP0g5fzsO<>
御影「う……うわああああ!?何だよコレ!?」

照星「これ、って……! 何でなんすか!? 何で自分が……!? むぐっ!?」

月乃「……しっ。今は言ったらダメ」

月神「どうしたの!?モノクマ、皆に何を……!」

モノクマ「うぷぷ。特になーんにも? ボクはただ教えてあげただけだよ」




モノクマ「『嫌いな相手として投票した人の、周りに知られたくない秘密』をね……!」




臓腑屋「何てものを教えたのでござるか……!?」

飛田「あが、あがががががが……ガッデム!!」

陰陽寺「嫌いな相手の秘密か。下らないマネを」

吐き捨てる様に呟く陰陽寺さん……私が投票した人

これを世間に公表したら、まず間違いなく彼女は破滅する……少なくとも、今後超高校級のヒーローを名乗る事は出来なくなる

その事実を理解した瞬間、背筋が凍り付く。もし、もしも誰かが私に投票していたら……?

そして、その秘密が仮に“ずっと隠してきた、私にとって極めて致命的”なものだとしたら……

瀬川「……っ!」

脳裏に浮かぶビジョンに目眩がする。今まで被ってきた仮面を、無理矢理に剥がされた様な感覚が


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:31:47.91 ID:JP0g5fzsO<>
モノクマ「いやぁボクって優しいね!いじめっ子に報復の言い分をあげたんだからさ」

モノクマ「ん……? あっ! しまった! ボクとした事が、投票されなかった生徒の事を全く考えていなかったよ……」

モノクマ「世の中は今男女平等ブームだしね。何せ男の子だってプリキュアになれるし!」

朝日「えへへ、そうだよぉ。オトコノコだってぇ、いくらでも可愛くなれるもんねぇ」

月乃「は?」

駆村「気持ちはわかるが落ち着け……! 朝日も余計な事は言うな……!」

モノクマ「という訳で……明日から四日後、全員の秘密を公衆の面前でバラ撒きたいと思いまーす!」

古河「はああああああああああああ!?!?!?」

モノクマ「いやあワクワクするね!それとも気になるあの子やイラつくアイツに影でこっそり噂されててドキドキする?」

瀬川「そんな事思える訳ないでしょ!?個人情報とプライバシーの概念が無いの!?」

モノクマ「まあボクも鬼じゃないからね。オマエラが誠意を見せてくれたら取り止めてあげなくもなくなくないよ?」

月神「誠意、って……」

陰陽寺「どうせ殺し合いだろう。わざわざ聞く必要も無いがな」

モノクマ「イグザクトリィ!ご近所のクラス会で噂されたくないならコロシアイするんだね!」

御影「案外範囲が狭かった!」

モノクマ「そんじゃアデュー! 精々こっ恥ずかしい秘密で強請られないように気を付けるんだね!」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:36:19.84 ID:JP0g5fzsO<>




瀬川「……大丈夫だよ。きっと!」








……嘘だ。言葉とは裏腹に、心の中は焼けつく様な焦燥感と、凍てつく程の殺意に満ちていた


誰かが冷酷な悪意を隠しているなら、私だって全力で対抗してみせる


もしも秘密が“あの事”なら、私はそれを死守しなくちゃいけない……。例え、何を犠牲にしてでも


例え、この場にいる全員を、闇の中に葬ってでも





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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/21(日) 22:40:24.44 ID:JP0g5fzsO<> ※ミス
>>58と>>59の間にこれが入ります





……モノクマは去っていった。軽やかな足取りで、重苦しい動機を残して

嫌いな相手の知られたくない秘密。それは、相手にとってはこれ以上ない悪夢になる

そして、自分にも……致死のダメージが与えられる恐怖がつきまとう諸刃の凶器

御影「だ……誰だよ! ボクに投票した奴は誰なんだよ!」

月神「大丈夫よ、御影君。きっと皆は私に投票しているはずだから……」

飛田「そんな事は無いだろう!何故ならオレはレディに投票なぞ出来ないから、適当に投票したのだからなッ!」

古河「オマエそんな事滅茶苦茶な事したんか!?誰に投票したんか言うてみろや!」

デイビット「止めた方がいイ。飛田氏にとってモ、月神女史にとっても不利益な結果となル」

スグル「こんなの……どうしようもない、です……」

誰かの秘密を握りながら、誰かに秘密を握られる。しかも、自分の秘密を握っているのは悪意を秘めた人かもしれない

個人情報の流出がどれだけおぞましい事態かは理解しているつもりだ。それこそ、私の身に深く染み付く程に

月神「どうすれば……。このままじゃ、皆バラバラになっちゃう……!」


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◆nV158uMR4EBZ<><>2019/04/21(日) 22:41:16.43 ID:JP0g5fzsO<> 本日ここまで <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 22:57:52.93 ID:PGk4e/k4O<>




突然だけど、私は夜が好きだ

暗い位の闇の中。一人で物思いに耽る時だけは、他の誰でもない”私”でいられるから

……ただ、そのせいであまり眠れなくなる時もあるんだけれどね

「……ふぁあぁ。もう朝だ……」

欠伸を噛み殺して頭を振る。少しだけクラクラするけど、動く分には問題はなさそう

昨日は誰も、何も言わずに帰っていった。皆の後ろ姿から、全員が強い警戒心を抱いていた事は明白だ

……もう一度生徒手帳を確認してみる。そこにあるのは紛れもなく陰陽寺魔矢さんの秘密……

勿論、これがただの嘘の可能性もあるけど……確認の為には本人に聞かなくちゃダメだもん



『ねぇ!私、陰陽寺さんが嫌いだから投票したんだけど、対戦相手ボコッて殺したって本当?』



……ないない。そんな事を聞いた日には間違いなく私が再起不能になる。見てわかる様な明らかな地雷を踏みたくないし

グルグルグルグル思考は回る。とめどなく溢れる思考が、お腹に強い違和感を……

……? お腹? そういえば……

「……夕食食べ損ねてた……」

エイリアンだの何だの言われてたから、食べるのが申し訳なくて口をつけてなかった

食堂に行くのは怖いけど……どの道何か食べないと頭だって動かせない

とにかく今はご飯が食べたい。重たい足をなんとか動かして、食堂に向かった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 22:58:51.52 ID:PGk4e/k4O<>




陰陽寺「………………」

御影「………………」

デイビット「おヤ、瀬川女史。ご機嫌よウ」

瀬川「アッ、おはようございまーす……」

入りにくい空気の中、気配を消していたのにデイビット君に見破られる

鋭く、ギロッと皆から睨まれた……様な気がした

ピリピリとした空気は、きっと気のせいじゃない。全員の放つ殺気が、食堂に張り巡らされていた

大なり小なり……隠す気のあるなしに関係なく、ね

スグル「あ、あの、瀬川さん」

スグル「その、えっと……誰に投票しましたか?」

不安げに訪ねられて、思案を重ねる。ここでなんて答えるかで、私の道は少し変わる気がする……

瀬川「……月神さんだよ。本人が言ってたしね」

スグル「そうですか。……良かった」

良かった。その言葉には、どんな意味があるの?

真意を問うその前に、一筋に放たれた言葉が、張り詰めた空間を引き裂いていった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 22:59:28.05 ID:PGk4e/k4O<>
月神「……皆! 私の話を聞いてほしいの」

月神「動機で誰に投票したとか、誰の秘密を見たとか……そんな事は聞かないわ」

月神「ずっとここに閉じ込められて、互いに不安や不満もあると思う。それは否定したらいけないの」

月神「でも、どうしても我慢できないなら……今日のドッジボールで、精一杯ぶつけてほしい」

月神「ネガティブな気持ちも、我慢できないイライラも! ボールに乗せて伝えてほしいの!」


響かせる様に私達に届く、月神さんの切なる想い

ヒリついた空気が和らいでいく。マイナスに満ちた雰囲気が、一気にプラスに切り替わる

彼女の声には、心には。それだけの大きな力が秘められているから


古河「……しゃ! ウジウジしとるのはウチらしくないわな! 御影、ブチのめしたるわ!」

御影「えっ!? ボクだけ!? 何でさ!?」

臓腑屋「にゃっ! うるさいでござるよ!?」

駆村「そうやって騒がしい方が安心するよ……」

お通夜ムードからバースデイに。皆の雰囲気を一言で変えた、月神さんのその言の葉に、どれだけの力があるんだろう?

どれだけの才能があれば……いいんだろう?


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:00:09.22 ID:PGk4e/k4O<>
竹田「ま、話はまとまったんじゃあねえのか?」

竹田「ビビる事なんかねえ。楽しめる時は存分に楽しめばいいってコトよ」

パンパンと手を叩き、竹田さんが話を纏める。既に全員はやる気みたいだし、辞める人もいなくなった

照星「…そう言えば、陰陽寺先輩はやるんすか?」

陰陽寺「やらない。する必要も無いからな」

朝日「この雰囲気でも断っちゃうんだねぇ……」

いや、一名いた。空気も考えも読めない人が

竹田「おいおい陰陽寺の嬢ちゃん。若いのにノリが悪いんじゃねえの?」

竹田「命短しなんとやらだ。肩肘張った生き方は嬢ちゃんには合わねえよ」

陰陽寺「知るか。僕はもう戻る」

竹田「でもなぁ〜、万一何かあった時に一番頼れるのは嬢ちゃんなんだけどなぁ〜」

陰陽寺「頼りにする様な奴はない。僕には何の関係もないからな」

竹田「厳しいねえ。まっ、気軽に来な。坊主共も嬢ちゃんを今更省く事はないだろうからな」

立ち去ろうとした一瞬。ふいっと振り向いた陰陽寺さん

でも、直ぐに前を向くと……そのまま廊下へ消えていった


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:01:03.28 ID:PGk4e/k4O<>






飛田「フッハハハハ! 楽しみだなぁ諸君!」

御影「勿論さ! だって女の子達の体操服姿が拝められるんだもんね!」

月神「ああ、女子は全員ジャージでお願いね?」

御影「そんな〜〜〜〜〜!!!」

駆村「そうだ。陰陽寺が入らないなら誰か一人余りになるな……」

竹田「その心配は要らねえ。俺はやらないからな」

朝日「どうしてですかぁ?」

竹田「派手に動いて腰をやっちまうのは、な?」


……こうして、最後にに一悶着あったけれど無事に朝を終わらせる事ができた

でも、まだ少し余裕があるかな……お昼になるまで誰かと話してよう


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:01:59.54 ID:PGk4e/k4O<>




御影「あ、ちょっと瀬川さん!」

瀬川「何?」

御影「瀬川さんってコスプレイヤーでしょ? ならせめて瀬川さんだけでも体操服着てくれない?」

瀬川「お断りします」

したごころをきみに。残念だけど、私はコスプレをそういう目的でするつもりはありません

御影「ちぇっ。まあいいや! 今日のドッジボール楽しみだよね!」

御影「月神さんは投票とか気にするなって言ってたけど……ま、まあ? ボクに投票する人なんていないし!」

投票かぁ。確かに御影君の秘密はどうって事なさそうだもんね

……私は気にしてる。少なくとも、バラされる秘密次第では、私は……

瀬川「……そうそう。御影君って誰に入れたの?」

御影「いやそれはちょっと……そう言う瀬川さんはどうなのさ!?」

瀬川「ちょっと言いたくないかなー……」

流石に易々とは教えてくれないかぁ……でもあの反応を見るに、月神さん以外に投票したと思ったんだけどなぁ

瀬川「教えてよー。ダメ?」

御影「ダメだから! ……ああ、でも」




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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:02:59.14 ID:PGk4e/k4O<>










御影「それ相応の誠意と真心を見せてくれるならいいよ!」

瀬川「ん? 今見せてくれるって言ったよね?」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:05:01.14 ID:PGk4e/k4O<>
瀬川「ふぅん。ならさぁ……」

ムギュッ

御影「ちょ、え…ええええええ!?!?!?」

瀬川「…教えて欲しいな。み、か、げ、く、ん?」



ぐいっと体を近づける。不審そうな表情を見せる彼に両手を伸ばして……抱きしめた

互いに抱き合う様な体勢に移る。まるで、愛し合う恋人の様な甘い姿……

尤も私にそんな感情は無いし……私の目的は御影君から情報を引き出す事なんだけどね

呆気にとられるその合間に、耳元に言葉を流し込んでいく。かかった獲物を絡めとる蜘蛛のように



御影「あ、あの、瀬川さん? えーっと、柔らかくて大きいものが当たってるんだけど」

瀬川「あててるんだよ?」



腕にぎゅうっと力を込める。御影君の身体が、私の肢体に、全身に、蝕まれる様に沈んでいく

神経がぴりぴりと焼き付く感覚。きっと、私の顔は今真っ赤っかに染まっているんだろう

ここまでしたんだ。絶対に話して貰うんだから……



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:06:12.01 ID:PGk4e/k4O<>
瀬川「……ねえ。まだダメかな?」

御影「い、いや? えっと、その、あー……」

御影「ぼぼぼボク達ってまだそんな合って間もないし? まだそんな親密な関係には……」

うーんこの。少し引っ付いただけで好意があるって勘違いするんだから。オタクって怖いなー

あんまし長くやると、今後の生活に悪影響を及ぼさないとも言えなくなるし……ぱぱっと終わらせよう

瀬川「ね? 私にこっそり教えてよ。絶対に、絶対秘密にするから……」

御影「う、うう……わ、わかったよ! はい!」

もぞもぞと腕を動かし始める御影君。それを察した私はクールに腕を外していった

御影「ほら! これがボクのやつ! 古河さんには本当に黙っててよね!?」

電子手帳を動かして、秘密の書かれたページを見せてくれた。誰のモノかは……言った通りだね





『御影 直斗さんは、 "コガ ユメミ" さんに投票しました』

『"超高校級のスタイリスト"古河 ゆめみは、中学時代の素行が悪く、喫煙、飲酒経験がある』



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:07:20.28 ID:PGk4e/k4O<>
瀬川「うわぁ、これは……」

御影「要するに元ヤンって事だろ? まっイメージ通りだけどさ!」

元ヤンっていうか……これもう暴走族の人じゃん……

やたら気が強いし、直ぐに手が出るとは思ってたけど、これはちょっと衝撃が強いかな……

瀬川「これは確かに知られたくない秘密だね……」

御影「ね、ねえ? 本当に黙っててよ? ボクまだ死にたくないしさ」

瀬川「うん、約束するよ」

まっ、口約束には何の制約も無いんだけどね! 万が一何かあった時の為にとっておこっと

瀬川「でも、どうして古河さんに要れたの? 別に月神さんでも良かったのに」

御影「だってさぁ! いっつもボクの事馬鹿にしてくるじゃん!? ムカついてるんだよね!」

要するに、ただの私怨だね……

瀬川「もしかしたら気になってるのかもよ? ほら好きな子程イジメたくなるって言うし」

御影「えっそうなの!? いやあボクって今モテ期なのかなぁ!? 辛いなぁ〜!」

単純過ぎる……まあ、古河さんに向けていれば私に来る事はないよね

御影「なんでこんなにツイてるんだろ? あっ! ボクって超高校級の幸運だったもんね〜!」

ケタケタと笑う御影君を遠巻きに眺めながら、冷ややかな笑顔をプレゼントする

……まあ、暇潰しにはなった……よね……うん……



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:08:33.41 ID:PGk4e/k4O<>




「……遂に、この時間が来たみたいだね」

ポンポンとジャージを叩き、袖を通す。思った以上に、滑らかに入っていった

「もう、皆待ってるかな……?」

ドクドクと心臓が早鐘を打つ。緊張は想像以上に私を蝕んでいたみたいだ

「よし……頑張るぞ!」

目を閉じて、鏡に向かって喝をいれる。目を開けた時に見えたのは、自信に満ち溢れた、いつもの顔だ

さあ、行こうか……!



暴力と理不尽と圧倒的力の差が乱舞する、ドッジボール大会へ……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/04/28(日) 23:09:06.37 ID:PGk4e/k4O<> 本日はここまで <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 22:54:09.90 ID:ERyPquDVO<>




瀬川「……全員、来てたみたいだね」

体育館に集まった、十四人のクラスメイト達

全員が……。いや、竹田さんと陰陽寺さんだけは普段着だけど……ジャージに着替え、待っていた

談笑したり、準備運動したりと思い思いに過ごしているように見えるけど……

瞳の奥は戦意に燃えている。そう。これは誰を攻撃して誰を守るか。好き嫌いがハッキリと解る戦争だ

勝ち負けだけじゃない……ここで、皆が皆の事をどう思っているかが決まるんだ




スグル「瀬川さん……何を言ってるんでしょう?」

古河「放っとけや。そんなん気にするより、そろそろ始まるんとちゃうか?」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 22:54:54.66 ID:ERyPquDVO<>
月神「……今日は集まってくれて、ありがとう」

月神「それじゃあ、始めに……御影君。お願いね」

彼女の指示で御影君が前に出る。心なしか……なんて思わなくても、その顔からは興奮が溢れていた

御影「え〜、今日はボクの尽力で……」

古河「調子のんなや! 殆ど月神のお陰やろ!」

御影「なんだよ! アルコール中毒のニコチン中毒の癖に!」

あっ。自分から言っちゃった……

駆村「ん? 何の事だ? 古河」

デイビット「フム、タバコと酒に心当たりハ?」

古河「な、なんでその事……。 ……御影! オマエウチに投票したやろ!?」

御影「えっ何でその事を……瀬川さぁん!!」

瀬川「話を振らないでよー!!」

唐突な飛び火に動揺を隠せない。私まで命の危機に晒されるなんてまっぴらなのに!

古河「ははーん……理解したわ。表に出ろや」

瀬川「してないから! て言うか、もう隠す気全然無いでしょ!?」

指をポキポキと鳴らしながらにじりよってくる古河さん。私達はその圧倒的迫力に震えるしか出来ない

眼前に満面の笑みの古河さんが近づいてくる。そのまま腕を振り上げて、殴ろうとした瞬間……

月神「ストップ! ここで喧嘩は良くないわ。続きは……ね?」

月神さんが制止してくれた。安堵の視線を彼女に向けると、可愛らしいウインクで返答してくれる

……いちいち可愛い人だ。本当に


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 22:56:21.01 ID:ERyPquDVO<>
御影「た、助かった……」

古河「チッ月神が言うんなら今は見逃したる……」

古河「まっここは正攻法で、ドッジボールでボコればいいだけの話やしな?」

瀬川「ひえっ……」

……残念だけど、驚異はまだ去ってないみたいだ。古河さんの満面の笑顔が、今は凄く不気味に見えた

スグル「だ、大丈夫ですよ。古河さんと同じチームになれれば……」

瀬川「その手があった! ……で、どうやって二つのチームを決めるの?」

竹田「ジャンケンでいいだろ。偶数だしよ」

駆村「ただ、照星や臓腑屋が同じチームだと力量差がありすぎるからその二人は別れてくれるな?」

照星「了解っす」

臓腑屋「承知したでござる!」

照星さんがこくんと頷き、臓腑屋さんが勢いよく返事する。それにうんうんと男子が納得してるけど、恥ずかしくは無いのかな……

何気無いジャンケンだけど、これで古河さんと同じチームになれるか……身の安全が決められる……!

御影「ボクは幸運なんだ……誰が何と言おうと超高校級の幸運なんだ……!」

月神「それじゃあ……、ジャンケン、ぽん!」

皆が一斉に手を出す。私の運命を決める一手を……


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 22:57:00.73 ID:ERyPquDVO<>



……で、チームが決まったんだけど

瀬川「ちょっとねえ御影君!? なんで私と同じ手を出したの!?」

御影「瀬川さんがどの手を出すかなんてわかるわけないじゃんか!?」

最悪だ……よりにもよって御影君と同じで古河さんと離れるなんて……

朝日「あは。よろしくねぇ〜皆ぁ〜」

デイビット「フム、宜しく頼もウ」

照星「よろしくっす! やるっすよー!」

飛田「フン……オレを動かすにはレディが足りなさ過ぎる。つまらんな……」

御影「あーあ。せっかく瀬川さんと照星さんが同じチームなんだから体操服着てほしかったなぁ」

瀬川「どういう意味で言ってるのかな?」

セクハラかな? だからコスプレはそういうのじゃないって言ってるのに……

朝日「えっとぉ、実は女の子じゃないけれど……」

朝日「私じゃ……ダメ。かなぁ?」バッ

瀬川「うわぁ!? 朝日君なんでそんな短いの着てるの!?」

朝日「えへへぇ。実は下に着てきたんだぁ」

瀬川「そういう意味で聞いたんじゃないけど!?」

デイビット「ハ。朝日氏は平常運転だナ。慣れぬ事だがワタシも楽しもウ」

飛田「よし! やる気と元気が沸いてきたぞッ!」

御影「えぇ……」



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 22:58:02.40 ID:ERyPquDVO<>



月神「さあ、皆の準備はいいかしら?」

月神「私達は今からチームよ。よろしくね!」

古河「なーんか、作為的なモンを感じるわ……」

月乃「……同感」

スグル「あはは……お手柔らかにお願いします」

古河「せやな! こうしてなったんも何かの縁や。絶対に勝ってやるで!」

駆村「あんまり闘争心を高められても、相手が困るがな……」

臓腑屋「にゃあ、喧嘩が起きないか……拙者も心配でござるよ」

スグル「大丈夫ですよ……二人とも、しっかり場は弁えられる方ですし」

スグル「……あれ? 朝日さん、下にブルマを着ていたんですね」

月乃「……あいつ。後で締め上げる」

古河「おーおー鼻の下伸ばしとる……アイツら女の見た目しとったら何でもええんやなぁ」

駆村「……本当か?」

スグル「……た、多分」




竹田「おーい。話し合いはそろそろいいか?」

竹田「いい加減に始めちまうぜ。全員コートの中に入っちまいな!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:00:05.38 ID:ERyPquDVO<>
月神「……皆! よろしくお願いします!」

瀬川「お、お願いしまーす!」

竹田「うし。んじゃ早速始めるか。ボールはまたジャンケンでいいよな?」

御影「ちょっと待った! ボクらの方が弱いんだからせめて先攻くらい譲ってよ!」

朝日「そうだよぉ。私はあんまり運動出来ないからちょっとだけハンデが欲しいなぁ」

月乃「両腕へし折ってやろうか?」

古河「ここで目ぇ潰せばええで?」

臓腑屋「スプラッター!? 親睦が目的なのでござるから暴力暴言はダメでござるよ!?」

飛田「梓ァ! どうか、どうかオレにボールを渡してはくれないだろうか!?」

飛田「オレにはわかる……その美しい瞳の奥、懊能を秘めたその憂いを断ち切る為にも!!!」

月神「え、ええっと……皆、いいかしら……?」

駆村「俺はいいぞ。平等は大切だしな」

スグル「ボクも……ボールどうぞ」

照星「あ、どうもっす」

……ゴネ得って単語がちらつくけど。ボールは私達が奪取した。これならなんとか戦える……!

竹田「決まったな? んじゃ坊主共、思いっきり遊んできな!」

竹田さんの一声で皆の表情が真剣になる。色んな意味で絶対に負けられない戦いが始まるんだ……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:00:51.51 ID:ERyPquDVO<>
瀬川「で、ボールはこっちが貰えたけど……誰から狙っていくの?」

御影「古河さん! って言いたいんだけど、正直当てたら当てたで後が怖いんだよね……」

それは私も思う。今の古河さんは怒っている。彼女を下手に刺激したら、ろくな目に合いそうにない

御影「駆村クンや臓腑屋さんを狙っても取られるだろうしなぁ……動きがトロそうな月乃さんやスグルクンから潰していこうか!」

弱い人から順に潰していく。うん。作戦……もといバトロワの定石としては妥当な所だね! 戦わなければ生き残れない!

デイビット「どうやラ、決まった様だナ?」

朝日「御影くぅん。誰を狙うか決めたのぉ?」

御影「うん! えーっと今ボクに近いのは……月乃さんの方だね!」

朝日「月乃ちゃん? それは止めた方がぁ……」

御影「ゴメンね月乃さん! これも勝負だから!」

月乃「…………はっ!」パシッ

御影「片手で取られた!?」

月乃「っ!」

飛田「ゴハァ!?」

御影「飛田クンが一撃でやられたー!?」

瀬川「恐ろしく速い球……私よく見てなかった……」



竹田「飛田の坊主アウトー。外野に行ってくれや」

飛田「オレの出番……これだけ、なの、か……ガク」

月乃「……先制点、貰った。ぶい」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:04:13.48 ID:ERyPquDVO<>
朝日「月乃ちゃんはねぇ、バスケで地区優勝になるくらい球技が得意なんだぁ〜」

御影「それ先に言ってよ! どうするのこれ!?」

瀬川「取り合えずボールは返ってきたし……照星さん。誰を狙えばいいと思う?」

照星「え? あー……そうっすね、月神先輩でいいんじゃないっすか?」

瀬川「月神さんかぁ……」

デイビット「ワタシモ、彼女が妥当な所ではあると感じていル。余り情けはかけないようニ」

確かに、向こうは全体的に運動が出来そうな面子とはいえ月神さんは下の部類……

私もそれなりに出来る自信はあるし……よし! 月神さんを仕留めよう!

瀬川「わかった! ……えいっ!」

月神「きゃっ!?」バシッ

瀬川「やった!?」

臓腑屋「……とう! 間に合ったでござる!」ザッ

スグル「な、何が起きたんですか……?」

デイビット「臓腑屋がボールを取ったのダ。月神に当り弾かれたボールをネ……!」

臓腑屋「ギリギリでござった……床に着く前に拙者が取った故、これはセーフでいいでござるか?」

竹田「そうだな。まあギリセーフって事でいいか」

瀬川「そんなのアリなの!? ローカルルール持ち出すのは反則でしょ!?」

竹田「悪いな。俺のシマじゃ俺がルールだ」

古河「大人げないわ……」

竹田「大人げあるヤツがおもちゃ売れるか? そう言う事だぜ。嬢ちゃん」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:05:07.83 ID:ERyPquDVO<>

…………その後は、ただの一方的な蹂躙劇だった






古河「御影ェ! これで終いや!」

御影「うわぁあああああああ!?!?」バシィッンッ

竹田「御影の坊主、アウトー」

御影「あ、頭が……割れる……割れてない……?」

スグル「凄い音でしたよ、大丈夫でしょうか……」

古河「顔面はセーフなんやったっけ?」

竹田「アウトだな」






実力差とか運の良さとか全く関係ない……最初から土俵にすら挙がれていなかった事を思い知らされた





駆村「悪いな瀬川! 当てさせてもらう!」

瀬川「きゃっ! あっ、はいガードベント」グイッ

朝日「えっ何の……あうっ」バシッ

月神「瀬川さん……今のは流石に危険行為じゃないかしら?」

瀬川「近くにいた朝日君が悪いんだよ……」

竹田「どうすっかな……おい月乃の嬢ちゃん。どうすりゃあいいと思うよ?」

月乃「……両成敗」

竹田「それはちょっと可哀想だなぁ……よし、瀬川の嬢ちゃん。コートから出な」

瀬川「そんなぁ……まあ私は痛い目に合ってないからいいんだけどさ」

臓腑屋「審議の結果、瀬川殿は今日一日ご飯抜きでござる」

瀬川「そんなーーーっ!?」




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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:06:05.69 ID:ERyPquDVO<>



朝日「ええっとどうしよぉ、もう少なく……あぅ」

朝日「うぅ〜転んじゃったぁ。靴紐もほどけちゃったし結び直さないとぉ……」

臓腑屋「隙あり! とりゃあっ!」ビュンッ

朝日「きゅうっ」

瀬川「待ってよ! 下を向いてる時に狙うのは卑怯だって!」

竹田「まあ反応出来てねえとはいえ別に反則じゃあねえしなあ。朝日の坊主、アウトー」








デイビット「フーム……ここからどう動くべきカ」

デイビット「数的不利、実力の不足。これらを補うにはどうするべきカ……」ベシツ

竹田「坊主ー、もう当たってんぞー」

デイビット「……これはこれハ。ワタシに球技は向かない様だナ」






……この間数分。私達は秒殺という言葉すら生温い速度で殲滅されていったんだ

瀬川「うわっ……私達、弱すぎ……?」

御影「というか向こうが強いんだって……何でジャンケンで決めちゃったのさ……」

飛田「オレの……活躍……何処に……」

デイビット「相手が悪すぎたナ。残念、無念」

朝日「皆にはぁ、後でチョコボールあげるねぇ」

瀬川「私のお昼と夜のご飯、チョコだけ……?」

今日のご飯事情を考えると憂鬱な気分になる。そろそろ終わらないかな……

瀬川「……そう言えば、まだ照星さんが残ってたっけ?」

コートの中では、照星さんと相手の皆が死闘を繰り広げていた

全員からの猛攻を、紙一重で避け続けている……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:07:06.73 ID:ERyPquDVO<>
照星「ふーっ、ふーっ……」

駆村「流石だな……俺達のボールが当たらない……」

臓腑屋「まるで獣でござるな……動きの一つ一つが俊敏で柔軟でござる」

古河「ああもうチマチマ避けおって……!」

月乃「……でも、避けているだけじゃ私達には勝てない。攻め続けていけば……」

確かに照星さんは避けているだけだ。このままだとジリ貧になるし……

瀬川「照星さーん! 反撃してー!」

朝日「頑張ってぇ、照星さぁ〜ん」

御影「こっから逆転だ! ボク達の力、思い知らせてやる!」

照星「……っ! わかったっすよ!」

駆村「その意気だ! やれ、スグル!」

スグル「はい! ……えいっ!」ヒュンツ

向こうもやる気を出してきたみたい。でも、ボールを投げたのはスグル君だ

スグル君程度なら、照星さんは余裕で取れる―――



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:07:46.86 ID:ERyPquDVO<>
照星「………………」バシィンッ

瀬川「え?」

駆村「は?」

月乃「……あれ」

竹田「……おぉ?」

照星「………………あ」

照星さんは構えて、ボールを受け止め……なかった

わざと弾いたと言うよりも反応出来なかった。不意をつかれた様な反応だった

テンテンと転がるボールが、虚しくコートの中を転がっている。私達の心境を表すみたいに行き場なく

照星「え、あ……当たっちゃったっすね! 自分の負けっすよ!」

照星「アハハハ! いやースグルん凄いっすよ!」

スグル「え? そ、そうですか?」

竹田「……まあ不正は無かったしなぁ。今回は月神の嬢ちゃんチームの勝ちだな」

月神「…………そうね」



こうして、ドッジボール大会は呆気なく終了した

何処か消化不良な、煮え切らない空気を残しながら


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/04(土) 23:08:42.88 ID:ERyPquDVO<>








「……照星さん。まだ、きっと…………」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:28:18.89 ID:YA2rLe63O<>




……あの後、皆で昼食を軽く食べた

私はさっきの危険行為のペナルティとして、水しか飲めなかったけどね!

取り合えずの間はしのげるから、外に出て少し散歩しようと歩いていると……

臓腑屋「んしょ、んしょっと……」

瀬川「臓腑屋さん。何を運んでいるの?」

臓腑屋「洗濯でござるよ。ジャージが汗で濡れていたでござるからな」

見ると、臓腑屋さんの手にはカゴが。その中には数人分のジャージが入っていた

カゴの中にはロープも入っていて、端にはフックが取り付けられている

臓腑屋「この洗濯ロープは引っかけるだけで取り付けが可能なタイプなのでござる。物干し竿とは違い場所も取らないのでござる!」

瀬川「ふーん。これどこにあったの? 倉庫?」

臓腑屋「更衣室でござる。恐らく、運動終わりに衣類を干す目的でござろうな」

更衣室かあ。確かに、部屋干しにはこっちの方が向いているかもね

臓腑屋「時に瀬川殿。実は洗濯物の量が予想よりも多いのでござる。出来ればお力添えを依頼したいのでござるが……」

瀬川「えー……いいや。面倒だしお腹減ってるし」

臓腑屋「夕食は拙者が口添えして差し上げなくもないでござるが」

瀬川「喜んでお手伝いさせていただきまーす!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:29:30.88 ID:YA2rLe63O<>
瀬川「臓腑屋さーん。これはここに干せばいい?」

臓腑屋「そうでござる! なるべく日の当たる様に干すのでござるよ」

瀬川「うえぇ。面倒くさい……」

何で私はこんな事を……でも、夜ご飯の為にはやらないと……

そういえば、私はやった事無いんだけど……アルバイトって、こんな気持ちでやるのかな?

デイビット「………………」

臓腑屋「おや、あれはデイビット殿? ……どうかしたのでござるか?」

瀬川「デイビット君!? 何故見てるんです!?」

デイビット「いヤ、何……少シ、瀬川女史の尽力に感心していただけダ」

瀬川「見てるだけなら手伝ってよ〜……」

デイビット「そうだナ。女性にのみ働かせるのは紳士精神に欠ける行イ。ワタシも手伝おウ」

臓腑屋「忝ない……では、デイビット殿はそちらを頼むでござる!」

人が増えた事で、私の負担も更に減る。みるみる内に洗濯物はロープに吊るされていった

瀬川「ふぅ……何だかスッキリした……」

臓腑屋「心の洗濯という言葉もあるでござる。瀬川殿もこまめに掃除を行ってみては?」

なんだか引っ掛かる言い方だね……まるで私が掃除出来ないみたいな……

私だって掃除機くらいは使えるし……多分

デイビット「瀬川女史、ご苦労。ディナーを抜かれているのニ、素晴らしい精神ダ」

臓腑屋「にゃあ、それは実は……むぐぅ」

瀬川「シーっ」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:30:08.24 ID:YA2rLe63O<>
デイビット「ハ、ハハ! いやはヤ、瀬川女史の献身には恐れ入ル」

デイビット「月神女史も言っていたヨ。彼女は皆の事がとても大切なんダ。とネ」

瀬川「……そ、そうなんだ! 嬉しいなー!」

褒められて、思わず嬉しがる反応をする。でも、嬉しいならチクリと胸を刺すこの感覚はなんだろう

臓腑屋「後は拙者が入れておくでござる。瀬川殿にデイビット殿、お力添え感謝するでござる!」

瀬川「あ、そう? じゃあね」

用事が無いならいる意味も無い。さっさと帰って横になっていよっと

デイビット「ム……ワタシは残ろウ。臓腑屋女史にのみやらせるのは心苦しい故ニ」

臓腑屋「そうでござるか? ならば是非……!」

……でも、デイビット君は残るみたい。それは私への嫌味……じゃないと信じたい

幾ら洞察力に優れた彼でも、人の心全てを見透せる程の力は無いはずだから

私の秘密までわかっているはずは無いから……私に投票していないという前提だけど

……ダメだ。胸の奥から考えちゃいけない事ばかりが溢れてくる。自分の冷酷さに怖気が走る

なにより怖いのは、それが『誰かを殺してはいけない』という事じゃなかった事……







『殺せばすぐに皆にバレる』と思った事だった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:31:09.71 ID:YA2rLe63O<>




瀬川「……はぁ」

駆村「ど、どうした? 何かあったのか?」

瀬川「ううん。別に」

この悩みは、誰かに打ち明ける事はしたくない。今までだって秘密を話すなんてしたことないのに

竹田「お? 嬢ちゃんメシにありつけてるじゃねえか。誰か横流ししたのか?」

駆村「自分で作ったとは思わないんだな……」

月神「……瀬川さん。大丈夫? もし、何か不安があるなら相談に乗るわよ」

瀬川「だーい丈夫だって! ゴメンゴメン。少し疲れちゃっただけだからさ」

臓腑屋「にゃ、その節はどうも……」

瀬川「だから心配しないでよ。私は平気だからさ」

月神「……わかったわ。でも辛くなったらいつでも相談してね?」

瀬川「うん!」

いつもの笑顔の仮面を被る。その裏に隠している心を見せないように、深く。深く

だから、かな。誰かの顔がよく見えなくて、いつも顔色を窺うクセがついたのは




飛田「オレが……出落ち……何故なのだ……」

スグル「まだ気にしていたんですか……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:33:44.48 ID:YA2rLe63O<>
御影「アイタタタ……なんか、さっきから身体が痛むんだけど……」

古河「単なる筋肉痛やろ? ウチがぶつけたボールで痛いって言うとるワケやないよな?」

御影「言ってないよ!? だからもう関節技極めるのは止めてって痛ああああ!?!?」

月乃「……絶対にそれが原因だと思う」

臓腑屋「にゃ、筋肉痛ならばこの豚のしょうが焼きは如何でござろうか。豚肉は疲労回復に良い……」

御影「わー美味しそう! いただきまーす!」

臓腑屋「せめて解説を聞いてほしいのでござる!」

御影「うわっ、ホントだ! なんだか疲れがとれた気がするよ!」

古河「効果が出るの速すぎやろ!」

デイビット「十中八九、プラシーボ効果だろうヨ」

スグル「プラシーボ効果……ですか?」

デイビット「ウム。偽薬効果とも呼ブ、人間の思い込みの力ガ……」

スグル「あ、あの! その話はまた今度に……!」



……皆は、秘密にどう向き合っているんだろう

こうしてゆっくりしている間にもリミットは迫ってきているのに、皆はそれを気にしていない

もしかしたら、気にしているのは私だけ。皆の秘密は大したことなかったりして?

なんて、モヤモヤした気分を遺したまま今日という日は終わる。明日へ不安を送りながら……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:34:24.66 ID:YA2rLe63O<>



月神「ごめんなさい。いきなり夜に、こんな場所に呼び出してしまって……」

月神「……照星さん」

照星「どーも。自分はそんな気にしてないっすよ」

照星「それはいいんすけど、どうしたんすか? 急に体育館に連れてきて……」

照星「もしかして……デートっすか!? アイドルの先輩となんて、なんだか照れるっすね〜!」

月神「…………照星さん。気づいてる? 今の貴女、とても酷い顔をしているわ」

照星「いやーそれほどでも……。……え?」

月神「泣きそうなのに、無理に笑ってる。苦しそうで、とっても辛そうで……」


月神「酷く、歪な顔をしているの」


照星「……っ、な……なんなんすかいきなり!? 何の根拠があってそんな……!」

月神「ごめんなさい。でも、言わせてほしかった。黙っていられなかったの」

月神「根拠は……特にないわ。だけど、これでも私は“超高校級のアイドル”なの」

月神「その評価が正しいかはわからないから、私はそれに答え続ける……だから、わかるの」

月神「貴女の表情が、その仕草が、紛れもない作り物だと言う事が!」

照星「………〜〜〜〜〜っ!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:34:59.26 ID:YA2rLe63O<>
照星「……だったらなんなんすか? それで何か問題でもあるんすか!?」

月神「問題がどうこうの話じゃないわ。私が気になったから指摘した。それだけよ」

照星「そんなの関係ねーじゃないっすか! 先輩にとやかく言われたくねーっすよ!」

月神「関係無いわけない!」

照星「!?」

月神「私が照星さんをどうこう言う権利が無い事はわかっている。そんな権利、誰にもないから……」

月神「だから私は指摘するだけよ。照星さんは何かをずっと気にしている様に思えたもの」

月神「学級裁判の事。天地さんと吊井座君の事を」

照星「………………先輩っ!!」ドンッ!

月神「ぐっ……!」

照星「そんな知った風に言わねーでくれねーっすか!? 自分がどう考えてようと自分の勝手じゃねーっすか!」

照星「そうっすよ……ずっとずっと考えたっす。自分がわかんなくなるくらい、ずっと……」

照星「でもどうしたらいいのかわかんなくって、頭の中がぐちゃぐちゃになって……自分でも訳わからなくなったっす」

照星「何がよくって何がダメなのか……もう、どうすればいいのかわかんないっすよ……!」

月神「う、くっ………」

照星「天地先輩はどうして殺そうとしたんすか、吊井座先輩はどうして殺したんすか……」

照星「先輩を止められなかった、信じられなかった自分が一番悪いんすか……!?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:35:54.34 ID:YA2rLe63O<>

月神「く………照星、さん………」

照星「どうなんすか……どうなんすか!?」

月神「う………わ、わた、しは………」

月神「わ、たしは……照星さんのその質問には、答えられないわ……」

月神「二人の本心がわからない以上、どれだけ考えても自己満足にしかならないから……」

照星「なら! 自分はどうすれば……!」

月神「だけど、ね? そうやって貴女がずっと二人の事を忘れないで、想っている事が……」

月神「きっと、二人を救ってくれているはずなの」

照星「救うって……それも結局自己満足じゃ……!」

月神「そうかもしれない。けれど、誰からも覚えて貰えなくなって、忘れられたらその人は永遠に救われない……許されない」

月神「それって、とても哀しくって、残酷な事だと思うから……」

月神「少なくとも私は……貴女の気持ちは、想いは間違っていないと思っているわ」

照星「………あ」パッ

月神「ぐっ!」ドサッ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:36:43.23 ID:YA2rLe63O<>
月神「けほっ、こほっ……大丈夫? 照星さん」

照星「あ、えっと……自分こそごめんなさい、月神先輩に八つ当たりして……」

照星「でも、ありがとうございます。自分のモヤモヤが、なんだか晴れた気がしたっすよ」

照星「正直、まだどうすればいいのなわかんねーっすけど……悩むのはヤメっす!」

照星「二人を絶対に忘れない! そんで皆と一緒にここから出る! それが目標になったっす!」

月神「照星さん!」



「おいおい。なんだぁ? どうやら俺の出番は必要無さそうじゃあねえの」

照星「うぇっ!? この声は……!」

竹田「悪いな嬢ちゃん、覗いてたぜ。まっ、出歯亀するつもりは無かったんだけどよ」

月神「竹田さん……どうしてここに?」

竹田「なんだか剣呑な雰囲気の嬢ちゃんらが、夜中にこそこそ動いているじゃねえか」

竹田「当然信じてはいたぜ? だけどよぉ、万一何かあったら責任が持てないだろ?」

照星「要するに、監視って事っすか?」

竹田「言い方がアレだがそうなるな。いざって時には何とかするつもりだったから許してくれや」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:37:31.60 ID:YA2rLe63O<>
竹田「それによぉ、嬢ちゃんらを見てっと姪っ子を思い出すんだわ」

月神「姪……ですか?」

竹田「おうよ。ま、最後に会ったのは姪が赤ん坊の頃なんだけどな」

竹田「今頃は嬢ちゃんらと同い年くらいのはずなんだよなぁ。何してんだろうなぁ……」

照星「お姉さんがいるんすか?」

竹田「月神の嬢ちゃんとは違って、お転婆で怒ると怖い女だけどな。鬼だぜあれは」

竹田「……ま! オッサンの独り言はどうでもいいだろ。早く寝ないと肌に悪いんじゃあねえの?」

照星「わっ、本当っす! もう深夜になっちゃってるっすよー!」

月神「そうね、そろそろお暇しましょうか」

竹田「よし、帰るぜ。ボディーガードにはなってやるからよ……」






陰陽寺「……戻るか」




瀬川「むにゃむにゃ……私は魔法少女なんだぁ……Zzz」



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/12(日) 21:38:16.98 ID:YA2rLe63O<> 本日ここまで
次の更新で死体発見までいく予定です <>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:32:00.60 ID:w4J4NWnCO<>




「ふぁああ……よく寝たぁ」

なんだか不思議な夢を見ていた気がする。ふわっとした様な、きらっとした様な……

でも、その内容は既に頭の中から消えていた。所詮夢なんてそんなもんだよね

どれだけ楽しくて気持ちのいい夢でも、醒めてしまえば水の泡。泡沫の夢なんてよく言ったものだ

……でも、もしもその泡が割れなかったら? ううん。ぱちんと割れるその一瞬が、とても遅く……考えるのも嫌になるくらい遅くなったら……

それは、永遠に……無限に夢を見続けているって、呼べるんじゃないかな?

……なんて、ね。どれだけ頑丈な泡だって話だよ

「………頭痛い」

寝起きはいっつも頭が安定しない。だから、いつもどうでもいい事が頭をぐるぐる回るんだ

……回りすぎて、酔ってきたし

コップに水を注いで、それを一気に飲み干す。頭の中は、少しだけ冴えた様な気がした

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:33:00.27 ID:w4J4NWnCO<>



瀬川「………」

竹田「ん? どうした嬢ちゃん、座らねえのか?」

瀬川「あっ、ごめんなさーい」

食堂に入った瞬間、一瞬だけ肌が裂かれる様な錯覚に陥った

……この感覚は気のせいなんかじゃない。巧妙に隠している様で、その実見せびらかす様なこの殺気は

モノクマ「ねえねえ。オマエラ呑気にしてるけど、タイムリミットあるの忘れてない?」

モノクマ「明日の朝に知られたくない秘密をバラすからね。ついでに誰に投票したのかも!」

御影「うぐっ……」

モノクマ「泣いても笑っても今日が期限だよ。後で後悔しても知らないからね〜……」

瀬川「……『後』で『後悔』って、意味が重複していない?」

モノクマ「むっ、揚げ足を取るんじゃありません。重複ではなく強調です。大事な事だから二回言うのです!」

月神「……もし、ここで私が自分の秘密を皆に話したらどうなるの?」

モノクマ「関係無いよ。あくまでも人気投票のオマケで教えただけだしね」

デイビット「つまリ、コロシアイが起きない場合は問答無用で秘密を開示するト」

モノクマ「そういう事だよ! 数少ない残り時間、有意義に過ごしてくださーい!」

古河「あっ、おい待てぇや! ……いってもうた」

朝日「そう言えばぁ、モノクマってぇ、どこから出てきているんだろうねぇ?」

月乃「……大人の事情に突っ込むと、馬に蹴られて死ぬから止めて」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:33:56.34 ID:w4J4NWnCO<>
竹田「マジな話、どうするよ? 俺は別に今更探られようが痛くもなんともねえけどよ」

駆村「あの、竹田さんは社長……なんですよね?」

照星「……だったら、せめて自分達だけでも秘密を共有するのはどうっすか?」

瀬川「と、言うと?」

照星「ここで誰が誰に投票したのか言ってみるんすよ。そうすれば誰が自分に……」

陰陽寺「そんな事をして何の意味がある。一人で勝手にやっていろ」

瀬川「陰陽寺さん、言い方ってものが……」

照星「いいんすよ。確かにそうっすからね……だから勝手にやらせて貰うっす!」

……照星さんはあっけらかんと笑っている。にかっとした顔からは、吹っ切れた事をありありと見せていた

最初はどうなる事かと思ったけどこれなら安心……

照星「つー訳で、さーせん! 瀬川先輩!」

瀬川「あ゛?」

……出来なかった。今なんて?

瀬川「ちょっと待って。今なんて?」

照星「いやー、適当に投票したら瀬川先輩に投票しちゃって……さーせん!」

さーせん! じゃないよ、なにしてくれてるの!?

瀬川「……因みに、私の秘密って」

照星「これっす。……なんかバグってるっすけど」

ポチポチと手帳を弄って手渡される。震える手を気取られない様に受け取って中身を覗くと……




『照星 夕は■■ ■■さんに投票しました』

『”超高校級のコスプレイヤー”■■ ■■は、親しい友人がいない』





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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:35:27.28 ID:w4J4NWnCO<>
瀬川「………………………はぁ」

照星「ど、どうっすか? もしかしてあんまり知られたくない秘密だったり……」

瀬川「ううん。大丈夫……ありがとね」

……良かったぁ! あの事じゃなかったんだ……!

不安の塊が一気に解れていく。心に残っていた最悪の想像が、音も立てずに消えていった

この程度ならなんて事もない。今夜は安心して過ごせそうだ

古河「照星……よし! 御影、ちっと手帳出し」

御影「いや何がよしなの!? 何でボク限定!?」

古河「ええから貸せや。今の見たやろ?」

月神「強要は良くないわよ、古河さん。……でも、秘密を打ち明けた方がいいのも確かね」

デイビット「ハ。ならばワタシから提案があル。今宵はグラス片手に語り明かそうではないカ」

竹田「おっ飲みニケーションってやつか? 坊主も日本の常識を随分知っているじゃねえか」

朝日「常識……なのかなぁ……?」

飛田「断る! 夜はしっかりと睡眠を取らねば肌の潤いに影響が出るのだ!」

臓腑屋「にゃあ。流石に全員は無理なのでは……」

竹田「んだよ。若いのにちっとノリが悪いんじゃあねえの? 参加してくれよ。若いんだしよ」

臓腑屋「パワハラでござるか!?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:36:13.72 ID:w4J4NWnCO<>
御影「うーん……ボクはいくよ! 暇だし!」

古河「せやな、ウチも出るわ」

御影「あっ……やっぱボク止めよっかな……」

スグル「僕も行きますから……」

デイビット「ワタシも全員が参加するとは思っていなイ。各自、好きに集って貰いたいナ」

瀬川「うーん。でも正直気乗りはしないかな……」

飛田君じゃないけど、私は夜は寝ていたい派。深夜アニメは録画で見る派だし

臓腑屋「時にデイビット殿、それは夜通しやる予定なのでござろうか?」

デイビット「その予定だナ。無論、途中退席は認めるつもりだガ」

臓腑屋「そうなると、つまむものも必要になるのでは? 拙者が幾つか作るでござるよ」

月神「なら、私も手伝うわ。腕によりをかけて作るわね!」

飛田「うむ! ならばオレも出ようではないか!」

月乃「……変わり身が早すぎる」

何だかよくわからないけど、とにかく今夜はパーティーをするみたい

……皆ってパーティー好きだよね。これがあの噂のパリピってやつかあ……

そんなこんなで朝が終わった。私はどうしていよっかな……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:37:03.08 ID:w4J4NWnCO<>




瀬川「あ、お皿どうぞ」

月神「うふふっ、ありがとう」

……暇だし、料理の手伝いをする事にした

と言ってもまだ作り始める訳じゃない。今は仕込みの段階っていうやつだ

月神「臓腑屋さん。何を作ろっか?」

臓腑屋「そうでござるな……夜食として出す故、なるべく軽いものにするでござる」

月神「そうね。なら……」

うんうん。と頷きながらトマトをかじる。酸っぱい野菜特有の青臭さが、今だけは受け入れられた

瀬川「……そう言えばさ、トマトって野菜じゃん」

臓腑屋「どっ、どうしたのでござるか? 急に」

瀬川「でもさあ、最近はフルーツトマトって品種も売られる様になってきたよね」

月神「え、ええ……確かにそうね」

瀬川「で、気になったんだけど……フルーツトマトは野菜なの? それとも果物?」

臓腑屋「にゃ!? そんな事をいきなり言われても困るのでござるよ!?」

月神「どうしていきなりそんな事を……?」

……正直な所、前に見てた特撮で大真面目に話してたなあって思い出しただけなんだけど

まあ、そんなに真剣に考える事は無いよね

瀬川「ごめんごめん。ちょっと気になって……」

月神「トマトは野菜なのよね……なら、フルーツトマトも野菜なのかしら……」

臓腑屋「いやいや、名前にフルーツと付けられているのなら果物なのではないのでござろうか」

……まあ、楽しんでくれたなら何より。かな


<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:38:05.28 ID:w4J4NWnCO<>



朝日「あは。スグルくぅん。もう夜だねぇ」

スグル「あれ……? まだお昼頃だと思ってたんですけど……」

竹田「おいおい。爺さんじゃあねえんだぞ? しゃきっとしな。坊主」

スグル「そうですか……? そう……なのかな……」

あっという間に夜になった。なんだか大人の事情的なものも感じるけど……

デイビット「でハ、此より夜会を始めたいと思ウ。参加を希望する者は手を挙げてほしイ」

ゆっくりとデイビット君が切り出してくる。その手を挙げたのは、思ったよりも少なかった

デイビット「……これだけかネ」

スグル「し、仕方無いですよ。動機が動機ですし」

古河「ウチらはともかく、殆どはバラされたない秘密なのかもしれんしな……」

やっぱり、秘密を明かすのは勇気のいる事だ。ましてや他人の、嫌いな人の秘密なら尚更

デイビット「……仕方あるまイ。でハ、今夜は共に語り明かそウ。ゆっくりと、ネ」

臓腑屋「では、それ以外はもう休まれた方が宜しいと思うでござる。色々と考えてしまう故……」

瀬川「そうだね……ふぁああ、眠いや……」

臓腑屋「瀬川殿は寝過ぎではござらんか……?」

月乃「……送っていく。千早希は私に捕まって」

難しい事を考えていたら、眠くなってきちゃった。もう頭を動かすのも億劫になっている

引きずられる様に食堂を退室する。……何処からか強い視線を感じたような気がした

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:38:49.69 ID:w4J4NWnCO<>




月乃「……はい。ここが部屋。もう少し」

瀬川「ふぁああ〜……ありがとぉ、月乃しゃん……」

月乃「……緊張感が無い。秘密、バラされても問題の無いものだった?」

瀬川「ふぇ? ああ、うん……私は大丈夫……」

月乃「……”私は”?」

瀬川「え? あ、いや……言葉の綾だよ、うん」

危ない危ないうっかりしてた……ポロッと陰陽寺さんの秘密をバラす所だったよ……

瀬川「そう言う月乃さんはどうなの? 誰の秘密を持っているの?」

月乃「…………………………」

月乃「…………………………秘密」

瀬川「あ、そう……」

まあ、教えてくれるとは思ってなかったけどね……

ふふふとミステリアスに笑う月乃さん。その顔つきは普段の姿とは違う妖艶さを醸していた

……お兄さんに似ているね。なんて、色々な意味で言うべきじゃないよね。うん

瀬川「……うゅ。それじゃあおやすみぃ〜……」

月乃「……お休み。せめて良い夢を見てね」

良い夢を……ね。そんなつもりは無いと思うけど、それは秘密を明かす事から逃げた皮肉にも聞こえた

でも、もうそんな事はどうでもいい。部屋に入った私は着替える事も忘れてベッドに倒れ込んだ……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:39:47.67 ID:w4J4NWnCO<>







……ーンポーン、ピーンポーン

「……ぅゆ?」

何だろう……。今の……

ピーンポーン! ピーンポーン!

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!

「う……うわぁああああああ!?!?」

本当に何なの!? 物凄い勢いでチャイム鳴ってるし、扉はひっきりなしにノックされてるし……!

まさか……誰かが私を殺しに……!? どうしよう。今の私は丸腰だし……

……いや、一つだけある。だけど正直やりたくない

でも、さっきからうるさく聞こえるノックを無視して眠れる程鈍感じゃないし……目も冴えちゃったし

やるしかない……かな!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:40:35.72 ID:w4J4NWnCO<>




スグル「ど、どうしましょう……。瀬川さん出てきませんよ……!?」

駆村「クソ! こんな時に何をして……!」

スグル「あの……本当に部屋にいるんですか?」

スグル「ここまで鳴らしても出ないなんて、もしかして別の場所にいるのかも……」

駆村「最後に見たのは月乃だったな。まさかとは思うが、瀬川も……」

ガチャッ

「待たせたね! さあ、かかってきなさい!」

……なんだ、スグル君と駆村君か。こんな夜更けにデートのお誘いかな?

スグル「あ! 瀬川……さ……」

瀬川「ふふん。どう? 今の私に何をしようとしても無駄なんだからね、スグル君」

スグル「いや、あの……えっと、もしかして聴こえてなかったんですか?」

駆村「お前……! こんな非常事態にいったい何をしているんだ!?」

うるさいなぁさっきから……ていうか、まだ夜中の一時だよ?

いきなり押し掛けてきて、いったい何にキレているんだか……

瀬川「さっきから何の話をしてるの? 聴こえていなかったって何の事?」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:41:37.57 ID:w4J4NWnCO<>








スグル「……死体発見アナウンスです。ダンスホールで死体が見つかりました」









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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:42:24.59 ID:w4J4NWnCO<>





……聞き返す事も、着替える事も忘れて、一心不乱に学園を駆け上がる


寝起きの身体にムチを打って、必死に頭と足を無理矢理に動かして突き進む


死体が発見された……そんな事、私は絶対に信じたくはないけれど


瀬川「はぁ、はぁ……どういう事!?」

月神「瀬川さん!? どこにいたの!?」

陰陽寺「またその格好か、随分と余裕があるな」

瀬川「これについては後で説明するから……そこ、どいて!」




人を掻き分けてホールの中を覗きこむ。そこにあるモノは、私の想像とは違っていた


ホールの中央には人がうつ伏せに倒れていた。最初に見た時は、死体とは全く思えなかった


でも、明らかに何処かに違和感がある。その正体は背中に深々と突き刺さる何かの柄だ


遠目から見ても、深く刺さっていると認識出来る刃物……それは、まるで墓標の様に静かに佇んでいる


―――ふと、彼の言っていた事を思い出した。確かあれは、探索を終えたあの日のお昼に言っていた……




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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:44:00.38 ID:w4J4NWnCO<>












『ワタシモ、もう二度とワタシの力を必要としない事を祈っているヨ』





瀬川「デイビット、君……」


ホールに静かに横たわり、ぴくりとも動かない超高校級のプロファイラー。デイビット・クルーガー君

彼がどうして死んでしまったのか? ……それは、今の私には全然わからない

けど、私にはハッキリとわかる事がある

デイビット君の祈りは、叶ったんだ……考えうる限り、最悪の形で



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◆nV158uMR4EBZ<>!red_res saga<>2019/05/19(日) 22:45:55.41 ID:w4J4NWnCO<>








【Chapter2】
  もうやらないと誓ったのさ 非日常編









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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/05/19(日) 22:47:16.87 ID:w4J4NWnCO<> 本日ここまで。次回は捜査編です
何かあればどうぞ <>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:15:27.14 ID:W3JrOh+uO<>


〜〜〜♪



ハルカ『良い子の皆ー! ココロオドルTVの時間だよー!』

ハルカ『とうとう死体発見……ってあれー!? 何で皆いないのー!?!?』

ヨウ『二階にはモニターが無いからな。ダンスホールや美術室にでかでかとモニターを置けるか?』

ハルカ『そんな所拘らないでよ! もっとこう、ご都合主義全開でいこうよ!』

ヨウ『一番のご都合主義は俺達の存在だけどな。元はテコ入れ用キャラなのに今ではテレビの中だ』

ハルカ『私達だって、本当はねぇ……』

ヨウ『っと、愚痴はここまでだ。さっさと進めるとしようじゃないか』

ハルカ『と、言うわけでバイバーイ! 学級裁判で私と握手!』

ヨウ『なるべくならしたくないんだがな』




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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:16:40.22 ID:W3JrOh+uO<>




……少し、状況を整理しよう

ホールの中では、倒れているデイビット君

その背中に突き刺さっている刃物は彼の命を奪った物だと主張している

その凶器は、真上にあるシャンデリアの華やかな光に当てられて幻想的な輝きを放っていた

一歩。私がデイビット君に近づこうとすると、後ろからぐいと強い力で引き戻される

私を掴んでいたのは陰陽寺さん。私の代わりに前に進んでいって……

御影「お、陰陽寺さーん……もしかして、まだ……」

陰陽寺「死んでいる。もう無駄だ」

月神「……っ! そんな……っ!」

冷酷な宣言が告げられる。既に死んでいるから何をしても……祈っても無駄なんだと

朝日「でもぉ、どうしてホールにいるのぉ? 確かデイビット君は食堂にいたんじゃないのかなぁ?」

飛田「そ、そんな事はともかくだ……ッ」

飛田「し……死んだとはどういう事だッ、何故こうなってしまったのだ!?」

モノクマ「どうもこうもないよ。起きちゃったんだよ……殺、人、事、件!!」



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:17:19.98 ID:W3JrOh+uO<>
モノクマ「うぷぷぷ……やっぱり発破をかけたのが効いたのかな?」

モノクマ「でもリミットギリギリになって行動するのは遅すぎるよね。夏休みの宿題は最終日まで放っておくタイプと見た!」

ねちっこく、うぷうぷと笑いながら歩いてくるモノクマ。その足音すら苛立ちの原因になる程嫌らしい

全員からの敵意のこもった視線を一身に浴びても、その姿からは余裕が溢れていた

照星「なんなんっすかモノクマ……いったい何しにきたんすか!」

駆村「俺達をおちょくりに来たのか!?」

モノクマ「まっさかぁ! ボクはいつでも金と権力と生徒の味方だよ?」

竹田「前の二つで台無しになってねえか?」

モノクマ「今回もモノクマファイルを用意させていただきました。存分に推理に使ってちょーだい!」

スグル「……どうして、モノクマは僕達にヒントになるような情報を渡すんですか?」

言われてみると、確かにモノクマは私達にも公平になる様に情報を与えている。まるでどちらにも争う事を望む様に

モノクマ「あんまりクロのワンサイドゲームになるとツマラナイからね。33−4位ボロカスに負けてるとやる気も無くなるでしょ?」

古河「なんでや! 阪神関係ないやろ!?」

要するに、私達に真面目に学級裁判をして欲しいって事なのかな……でもそれはどうして……?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:18:20.96 ID:W3JrOh+uO<>
朝日「つまらないってぇ……」

臓腑屋「ゲーム感覚でござるか……」

微妙な空気が流れていく。形容しがたい脱力感が、重たく身体にのしかかる

それを壊したのは……少しだけ、意外な人物だ

月乃「……渡した相手はともかく、モノクマファイルは絶対に必要」

月乃「……学級裁判を生き残らないと、私達も死んでしまう」

月乃「……そうなると、殺されたデイビットも浮かばれない。……やるしか、ない」

静かに。けれども強い決意を秘めた声色で月乃さんが前を……モノクマを見据える

ぽつぽつと呟くその言葉からは、普段の大人しげな態度と変わらないのに……不思議と力強く聞こえた

月神「……そうね。やりましょう!」

モノクマ「うんうんヤる気に満ちているね。どうせならその豊満なバストで悩殺しちゃえば?」

月乃「殺すぞ」

モノクマ「あ〜ららら……それじゃオマエラ、捜査頑張ってちょ!」

睨み殺すと言わんばかりにモノクマを射竦める。さしものモノクマもこれにはタジタジだ

転がり逃げる様にホールから去っていく。残された私達も、もう進まないといけない……

もうやらないと誓ったはずの……学級裁判の為に……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:18:58.95 ID:W3JrOh+uO<>
【捜査 開始】



月神「……まずは、現場の保全係を決めましょう」

未だ動揺が色濃く残る中、リーダーである月神さんが進んで仕切り始める

前まではデイビット君が仕切っていたけど、当の彼は被害者……私達でなんとかしないとダメなんだ

月神「まずは……陰陽寺さん。頼めるかしら?」

陰陽寺「………………」

古河「返事したりや……わからんやろ……」

月神「大丈夫よ。わかるから……それと、後の一人は誰もいないなら私が……」

照星「あ! なら自分がやるっすよ!」

月神「……いいの? 照星さん」

照星「正直、自分は推理出来ねーっすからこれくらいは役に立ちたいんすよ」

照星「……コロシアイを防ぐのは無理でも、自分には勝てないって証明するのは出来るっすから!」

自信ありげに笑った彼女は、グッと掌を握り両手を曲げる。俗に言うファイティングポーズだ

今の照星さん相手に敵う人はいない。そう感じる程に気迫とやる気に満ちている

……まあ、照星さんがクロじゃなかったら。の場合だけどね

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:19:40.86 ID:W3JrOh+uO<>
月神「決める事は決めたわね……なら、一度ここでモノクマファイルの確認をしておきましょう」




【モノクマファイル2】
 被害者はデイビット・クルーガー
 死体発見場所は二階ダンスホールエリア
 死因は心臓部を刺傷した事によるショック死
 死亡推定時刻は夜11半頃
 身体には外傷は無く、また、薬物及び薬品を接種した形跡は無い




駆村「天地の時よりも詳しくないか?」

月乃「……検死が出来たのはデイビットだけ。私達が大幅にピンチになる」

竹田「その分向こう側で補ったって事か。感謝すべきじゃねえけどな」

臓腑屋「全くでござるな……」

デイビット君の死因はショック死……確か天地さんは失血死だったから、同じ刺殺でも違うみたい

私には細かい事はわからないけど……誰か詳しい人とかいるのかな……?



GET:コトダマを入手しました
【モノクマファイル2】
 被害者はデイビット・クルーガー
 死体発見場所は二階ダンスホールエリア
 死因は心臓部を刺傷した事によるショック死
 死亡推定時刻は夜11半頃
 身体には外傷は無く、また、薬物及び薬品を接種した形跡は無い

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:20:16.51 ID:W3JrOh+uO<>

瀬川「う〜ん、凶器は背中に刺さってるよね」

それなら、デイビット君は犯人に対して背中を向けていた事になる。天地さんは揉み合いの末で刺されたから、お腹に刺されたんだし

瀬川「となると、犯人は隠れていてデイビット君を刺したのかな?」

ダンスホールにはお誂え向きに、鎧兜が陳列されてある。この中に隠れればもしかして……

竹田「あー、悪いとは思うけどよ。鎧兜の中に隠れるのは無理だと思うぜ」

瀬川「うわぁ!? 心を読まれた!?」

竹田「鎧ってのは見た目よりも重いモンだ。それこそ戦争に使われた防具なんだからな」

竹田「そんなモン着ていざ殺すとなってみろ。重さで脱げなくなるから難儀しちまうだろ?」

瀬川「あ、ホントだ……」

鎧を一つ手に取ると、それだけでずっしりとした質感が手に伝わってくる

これを何とかして着た後、咄嗟に脱いでデイビット君を刺すのは、私でも少し厳しいかな……

竹田「俺から言わせてみりゃあ、ブッ刺すよりも鎧でブン殴った方が速く片付くと思うがね」



GET:コトダマを入手しました
【ダンスホールの鎧兜】
 鎧兜はとても重い。これを脱いで犯行に及ぶのは難しいと思われる

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:21:25.06 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「え〜……じゃあ竹田さんはどう思う?」

竹田「さあな……ただ今回の犯人はやべえぞ。相当なバケモンだなこりゃあ」

ん? バケモン? いつでもポケットにモンスターじゃなくて?

瀬川「それってどういう意味? もしかして超能力とか言っちゃったり?」

竹田「そこまでトンチキな事は言わねえよ。こっち来て見てみろ嬢ちゃん」

竹田「デイビットの坊主に刺さったこの凶器、美術室の彫刻刀じゃあねえのか?」

言われてみると、その刃物の柄は凶器の類いというよりも工具の様な印象を受ける

それに彫刻刀……版画に使う様な長いものなら心臓に突き刺せば殺す事が出来るかも

瀬川「あ……言われてみればそうかも……」

竹田「幾ら長いったって彫刻刀は人を刺す道具じゃねえ。要するに殺しには向いてねえんだよ」

竹田「そんな刃物を心臓に一撃で。尚且即死させるなんて素人には無理なのさ」

瀬川「へぇ〜、なら私には出来ないのかな?」

竹田「普通にやればな。だがよ、強い力を加えれば何とかってトコだな」

例えばトンカチみたいによ。とカンカンと釘を打つジェスチャーをする竹田さん

よくわからないけど……普通に刺すだけじゃ無理って事だけはわかったかな

……なら、犯人はいったいどうやって?



GET:コトダマを入手しました
【竹田の証言】
 彫刻刀等の小さな刃物で、心臓部に刺して殺すには通常のやり方では不可能
 強い力を加えればあるいは……?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:22:25.45 ID:W3JrOh+uO<>
……なんだかよくわからなくなってきた

兎に角、犯人はデイビット君に近づいて背中に刃物を刺したのは間違いないんだ

ならばその方法さえ逆算出来れば……!

瀬川「ちょっと皆ー! 手の空いてる人いるー?」

スグル「あ、はい。なんですか?」

月神「どうかした? 瀬川さん」

瀬川「ねえねえ! 少し”だるまさんがころんだ”をしようよ!」

照星「……は?」

スグル「い、今から……ですか?」

竹田「オイオイ現実逃避は止めておけ。嬢ちゃん」

……しまった。わかりやすい言い方にしたけど、これだと私がおかしくなったみたいじゃん!

瀬川「そうじゃなくて……ただ、ホールの外側から犯人が来るのはどのくらいかかるのかなって思ったからさ」

瀬川「少し、実験に付き合ってくれないかな?」

陰陽寺「必要ない。時間の無駄だ」

即答。そして即刀を抜いて私に向ける。斬りかかるつもりは無さそうなのが、少し私に余裕を持たせた

瀬川「どうして? そんなのやってみないとわからないじゃん!」

陰陽寺「言って理解出来ない奴に説明する必要は無い。したいなら勝手にしろ」

瀬川「……むっかーっ!」

わざわざ冷たい返しをしてくるのが頭に来る。いいもん、そんな事言うなら勝手にしてやるんだから!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:23:46.06 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「それじゃあ、私が後ろを向くからスグル君は外から来てね」

瀬川「それで、私が気づいたら振り向くからその時点でスグル君は止まってね!」

スグル「わかりました!」

簡単に事件の再現をしつつ状況を探る。周りの視線はこの際気にしない事にしようっと

目を瞑って後ろを向く、事件当時、デイビット君は恐らくこういう体勢になっていたはず……

程無くして、大きく反響する足跡が聴こえた。これは間違いなくスグル君の足音……!

瀬川「そこだぁっ! ……って、アレ?」

確かにそこにスグル君はいた。ただ、いたのは入口から数歩進んだだけの場所……

あれだけ遠くにいたら、殺すどころか触れる事すら不可能だ

月神「ダンスホールはよく響くものね。少し歩いただけでもあんなに音が鳴るもの」

照星「自分でも無理っすよ。多分臓腑屋先輩や駆村先輩、陰陽寺先輩でも無理なんじゃないっすか?」

瀬川「そっかぁ……」

陰陽寺「そんな事にも気づかなかったのか。だから現実と空想の判別が出来ないんだ」

瀬川「むっかーっ!」

そういう事言う!? ただ私は可能性を考えているだけなのに!

陰陽寺さんに詰め寄ると、彼女は少しも身動ぎせずに視線を私から離さない

その態度に、カチンときた。思いっきり胸ぐらを掴んで……気づいた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:24:45.77 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「……あれ? なんでデイビット君はこんな所で殺されたの?」

そうだ。よく考えてみれば不自然なんだ。ホールで殺されたとしたら、こんな真ん中まで来て犯人に気づかなかった事になる

なら、もしかして死体を引っ張ってきた。とか……

瀬川「陰陽寺さん。デイビット君を引っ張れる?」

陰陽寺「やる意味が無い」

照星「やってみなきゃわかんないっすよ!」

陰陽寺さんの代わりにデイビット君の向きを変えてくれた照星さん。でも、照星さんでも少し辛そうだ

照星「んー死体を引き摺った後は無さそうっすね」

瀬川「なら、やっぱりここで……?」

だとしたらどうしてデイビット君は……あれ? 何か下にモノが落ちている。引っ張った事で出てきたんだ

瀬川「ちょっと……これって、手鏡?」

月神「それは……もしかしたら飛田君の物じゃないかしら?」

瀬川「何で飛田君の物がこんな所に……」

これは、もしかしたらとんでもない証拠になるかもしれない。後で本人に確認を取っておこう

……だけど、考えれば考える程、この事件は不可解な事ばっかり出てくるなぁ……


GET:コトダマを入手しました
【だるまさんがころんだ】
 瀬川とスグルで行った実験。どの程度の位置で外からの人間が判断出来るか試していた
 結論として、音が反響するので入口付近で気づく事が出来る

【死体の違和感】
 デイビットの死体はホールの真ん中に倒れていた
 死体を外部から引き摺った後は無いようだが……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:25:59.42 ID:W3JrOh+uO<>




……現場で出来る事は粗方済ませた。そろそろ別の場所を捜査しよう

そこでやって来たのは美術室。今回の凶器として使われた彫刻刀があった場所だ

瀬川「ええと……彫刻刀はどこかなっと……」

駆村「何か探し物か? 瀬川」

御影「良ければ手伝ってあげてもいいよ!」

瀬川「あ、二人ともいたんだ」

奥から現れたのは、少し珍しい組み合わせの駆村君と御影君

そう言えば、この二人は夜に食堂に残っていた中の一人だったんだっけ?

殺されたデイビット君もあの中にいたんだし、話を聞いておくべきだよね……

瀬川「ねえ。それは後にするから事件が起きる前の事を教えてほしいんだけど……」

御影「えぇ!? ボク達疑われているの!?」

駆村「仕方が無いか……確かに、俺達はデイビットと接触するチャンスが幾らでもあったしな」

二人の顔には、困惑と納得が色濃く出ている。御影君はあわあわと動揺し、駆村君はため息をついた

やがて、駆村君は覚悟を決めたのか―――昨晩の事を語り始めた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:27:01.14 ID:W3JrOh+uO<>
駆村「夜時間が始まった頃……俺達は普通に飲み食いしていたんだ」

御影「そうそう! 美味しかったよね〜」

駆村「元々は秘密を打ち明け合う事が目的だったんだが、流石にいきなりはな……」

うんうんと適当に相づちを打ちながら考える。どうすればあの不可解に答えをつけれらるのかを

料理に毒は入っていなかったと思うしなぁ……もう少し話を聞いてみよう

駆村「それで、少し経った後……飛田が来たんだ」

瀬川「飛田君が?」

御影「そうなんだよね〜、いきなりオレの鏡はどこだなんて言ってきてさぁ!」

駆村「まあ、俺達は知らない。明日にでも探したらどうだと答えたら直ぐに戻っていったけどな」

鏡……月神さんの言うように、アレは多分飛田君のモノで間違いなさそうだね

御影「で、その後少し経った頃だっけ? デイビットクンがどっか行っちゃったの!」

瀬川「え? 飛田君の後に?」

駆村「まあ偶々だとは思うぞ? 急に姿が見えなくなったんだ」

駆村「それで、皆で探してみたんだ。それで二階のダンスホールで……」

そこで、駆村君は首を横に振る。何があったかは見当がつくから、聞く気にならなかった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:27:46.42 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「……因みに、メンバーは?」

御影「ええっと、デイビットクン以外はね……」

御影「ボクと駆村クン、竹田さんに古河さん。後はスグルクンに月神さんに、照星さんだよ!」

……デイビット君を含めると合計8人。私達の中の過半数は残った事になるね

瀬川「ふぅん……なら、皆は誰が誰に投票したかは知っているの?」

駆村「……俺は教えてある。それは月神じゃない」

駆村「正直、必要になるまで黙っていて貰っていていいか? あまり大っぴらに話す事でも無いしな」

瀬川「うん。わかったよ」

駆村君は言ってあるんだ……でもそれを私に言うって事は証拠にはならなさそうかな

駆村「これも言っておくが、流石に、全員がずっと食堂にいたかは自信がないな……」

駆村「これが、あの朝まで語ろう会の全てだな」

御影「あれ!? そんな名前だったっけ!?」

頭の中で出来事を整理していく。アニメをコマ回しするように、丁寧に

まず夜時間が始まった頃……10時位に二組に別れた

そして、それから少し経って飛田君が食堂に来た。直ぐに帰ったみたいだけどね

その後、デイビット君がいなくなった……

ほとんどの人は食堂にいたけど、ずっと居たかどうかは断言出来ない。と


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【朝まで語ろう会】
 夜10時頃、食堂に数名集まっていた
 少し経った頃、飛田が食堂に来たが直ぐに帰った
 そして、その少し後にデイビットはいなくなったようだ
 参加していたメンバーは御影、駆村、古河、スグル、竹田、月神、照星

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:28:51.01 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「じゃあ、全員でデイビット君を探したんだ」

御影「いや? ボクと古河さんは一階にいたよ!」

瀬川「そうなの? 全員で探した方が早く見つかると思うんだけど」

駆村「全員で行くと入れ違いになるかもしれない。だから俺達は三組に別れていたんだ」

あーそっか。全員がいきなりいなくなると、流石にデイビット君も困惑するだろうしね

そうならない様に何人かは一階で待っていたんだ。合理的……

駆村「まず、竹田さんと月神が食堂に残ったんだ」

駆村「そして、一階を御影と古河が……」

駆村「二階を俺とスグル、照星で探したんだ」

ダンスホールがあったのは二階だから……駆村君とスグル君と照星さんが第一発見者になるね

瀬川「……あれ? 三人とも犯人見なかったの?」

御影「ボクら全員見てないよ! だってアナウンス鳴ってから初めて二階に上がったんだし!」

駆村「その事については俺達も見ていない。一階に いた全員が集まった後、他の生徒も来たんだ」



GET:コトダマを入手しました
【三組のアリバイ】
 デイビットが居なくなった際、食堂にいた生徒は三組になり探していた
 竹田と月神は食堂に残り、古河と御影は一階を。駆村とスグルと照星が二階を探し、三人が死体を発見した
 尚、三組の誰も他の生徒とは会っていないと言う

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:29:29.50 ID:W3JrOh+uO<>
駆村「話し込んで悪いな……瀬川は何の用だ?」

瀬川「そうそう。実はね……」

ようやく私のターンが回ってきた。せっかくだし、二人にも本題を手伝って貰おう

『凶器は、もしかしたら美術室にある彫刻刀かもしれないから確認しに来たんだ』

そう言うと、二人は面食らった様に驚いて……

御影「えぇ!? それは本当かい!?」

駆村「何かの間違いじゃないのか? あんな小さな刃物で人を殺せるのか?」

瀬川「だからそれを確認しに来たんだってば……」

駆村「わかった! そう言う事なら俺達も手伝う。御影もそれでいいよな?」

御影「えぇー面倒臭いなぁ……睨まないでよ!」

瀬川「ありがとう!」

二人は快く引き受けてくれた。御影君は少し脅しも入れたけどね

兎に角ここの捜査を始めよう。人手もあるから直ぐに終わりそうかな……?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:30:46.18 ID:W3JrOh+uO<>
駆村「取り合えず、それらしい物を集めたぞ」

ガチャガチャと音を立てながら、箱に無造作に放り込まれた彫刻刀の群れがいきり立つ

その中の一つに、紛れもなくデイビット君に突き刺さったソレはあった

特徴的な柄の彫刻刀を手に取る。刃先は結構長くてちょっとしたナイフみたい

だけど、やっぱり彫刻刀は彫刻刀。これで殺そうとなるとかなり心許ないよね……

駆村「本当にこれなのか? 俺には凶器には見えないが……」

眺めてみると、本当にこれで人を殺せるのか疑問に思う。持ち運びは簡単そうなんだけどな……

御影「見てみて! こんなん見つけたんだけど!」

瀬川「……ナニコレ?」

御影君が取り出してきたのはポケットにギリギリ入る様な箱だった。中には工具らしきものが入れられているのが確認できる

ニッパーにハンマーにカッターにドライバー。凶器のオンパレードみたいなラインナップだけど……

御影「工具セットだってさ! 日曜大工とかに使えそうだよね! きっと犯人はコレを使ってデイビットクンを……」

駆村「これは……一つしかなかったのか?」

瀬川「それに、なんだか封も開いてないように見えるけど……」

御影「え……あ、うん。ソウダネ……」

……一つしか無い上に未開封。これは事件とは関係無さそうだね


GET:コトダマを入手しました
【彫刻刀】
 凶器となった刃物。美術室のモノで間違い無い

【工具セット】
 様々な工具が閉まってある。未開封で一つ限り

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:31:24.87 ID:W3JrOh+uO<>



美術室の捜査もこんな所かな。後は……

瀬川「ねえ、飛田君がどこにいるか知らない?」

駆村「飛田? 知らないな……」

御影「あ、ボク見たよ! 多分更衣室じゃない?」

瀬川「更衣室?」

更衣室って、確かダンスホールの隣にある部屋だよね……何でそこに?

御影「さぁ? 流石にそこまでは知らないけど」

瀬川「……まぁいいや。ありがと、二人とも」

瀬川「それじゃあ、私は更衣室に行ってくるね。後はヨロシク!」

そうと決まったら善は急げ。また何処かへ雲隠れされる前に行かないとね!

駆村「あ、おい! 後は。って……」

御影「あーっ!? ここ、こんなにグチャグチャになってる!?」

駆村「まさかあいつ一人でこんなに……? 瀬川には整理整頓の概念はないのか……?」

御影「……ねえ、これボク達で片さないとダメ?」

駆村「だよな……全く、アイツは……本当に……」

御影・駆村「「はぁ……」」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:32:24.67 ID:W3JrOh+uO<>




古河「おっ、瀬川やん。どないしたん?」

瀬川「古河さん! 飛田君見た!?」

臓腑屋「飛田殿でござるか? それなら先程……」

瀬川「えっ……もういないの……?」

嘘でしょ? まさかまたすれ違ったんじゃ……

飛田「ハハハハハ! オレに会いたかったかね!」

臓腑屋「来たばかりでござるよ!」

瀬川「脅かさないでよ!」

……全く笑えない。心臓は未だにうるさく、バクバクと声高に鳴っている

いきなり出てきた飛田君を軽く睨んで、聞きたい事を突きだした

瀬川「ねえ飛田君。もしかして探し物とか……」

飛田「そう! そうなのだ! オレの手鏡がどこにも無いのだぁああ!!」

古河「うっさ! 何処に忘れたねん!」

飛田「今朝、食堂で髪を整えたのを最後に何処かへ雲隠れしてしまったのだ! くぅううう!!」

瀬川「食堂……? 臓腑屋さん。見た?」

臓腑屋「いや、拙者は全く見てないでござる」

食堂には私達がいたけど、そんなもの私は見ていない。月神さんもそんな事は言ってなかったし……

飛田「学園内のどこにも無かった! 夜に食堂にいた連中も知らないという! 何処だ! 何処に消えてしまったんだああああああ!!」

古河「わーったわーった! 見つけたら教えたるからちっと黙ってくれや!」

……本当にうるさい。実は持ってまーすって言いたいけど、今は我慢、我慢……


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【飛田の手鏡】
 デイビットの下に落ちていた。飛田の私物
 食堂に置き忘れたらしいが、瀬川は見ていない

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:33:03.79 ID:W3JrOh+uO<>

無くなった鏡をデイビット君が持っていた……これはどういう事なんだろう

犯人が持っていたの奪った? それともデイビット君が持っていたの?

どちらにしても、何か違和感が……

臓腑屋「いやはや、まさか鏡であれだけ騒いでいたとは思わないでござる」

臓腑屋「瀬川殿も食堂にいたでござるな。拾っていたりしていないでござるな?」

瀬川「…………え? う、うん! モチロン!」

実は持ってまーす。なんて言える訳ない。でも深く突っ込まれると私が持っている事がバレる……

とにかく、ここは誤魔化すしかない。何とか適当に言い訳しないと……!

瀬川「あ、私更衣室の捜査しないと! じゃ!」

臓腑屋「あ、ちょっ!? 瀬川殿ーーー!?!?」

かなり苦しいけど戦略的撤退だからセーフ! 少し更衣室で休んでよっと

古河「……幾らなんでも唐突すぎひんか?」

臓腑屋「にゃあ……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:33:45.38 ID:W3JrOh+uO<>




瀬川「はぁ……何とか撒いた……」

自分でも唐突で適当な言い訳だとは思う。せっかくだし適当に捜査しようかな……

瀬川「でも事件とは関係な……あれ?」

更衣室の窓際の壁、少し凹んでる? 普通にモノをぶつけたり、蹴った程度でつく傷には見えない

瀬川「んー……けど争いがあった風には見えないんだけどなぁ」

更衣室の中は綺麗そのもの。血痕はおろか塵芥すら落ちていない

まるでさっき掃除をしたかの様に、辺り一面がピカピカに輝いている

……? 前に来たときここまで綺麗だったっけ……?

瀬川「……少し調べてみよっと」

微かな違和感。それに引かれる様にロッカーの中を調べてみる

……結論から言うと、証拠になりそうな物は見つからなかった。……一つを除いて

瀬川「ジャージ? ってこれ血がついてる!?」

血の付着したジャージ。間違いなくデイビット君を殺した際に着ていたものだろう

それが女子の更衣室にあった……という事は、犯人は女子……?

でも、それだと竹田さんの証言とは矛盾が起きる。これはどういう事なんだろう……



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【更衣室の壁の傷】
 更衣室の窓際に、何かをぶつけた様な傷があった
 普通に蹴飛ばしただけではつかないが……

【綺麗な更衣室】
 事件後、更衣室が不自然に掃除されていた

【ジャージ】
 全校生徒に配られたジャージ。女子更衣室のロッカーに隠されていた
 血が付着している

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:34:28.71 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「何だろう、この感じ……」

何かがおかしい、妙な感覚。まるで間違った数式を無理に進めていく様な……

瀬川「もう少し細かく捜査して……」

月乃「……いた」

瀬川「うわぁああああ!?!?」

気配を消して、スッと現れた月乃さん。私は窓辺にいたから、驚いた勢いで前のめりになって……

瀬川「…………ふぇ?」

月乃「……………………あ」

一瞬、私の世界から足場が消えた。そして、急速に降りかかる重力が下へ下へと私を落とす

もしかしなくても、これって飛び降りじ……

瀬川「お、おおお落ちるうううううう!?!?」

月乃「……騒がないで」ガシッ

間一髪。宙ぶらりんの姿勢で止まる。腰を掴んでいる月乃さんの腕がやけに頼もしい

と言うか、今のこの危機的状況は月乃さんのせいでもあるんだけどね……

月乃「……高校生にもなって水玉はどうかと思う」

瀬川「うるさいな! 早く助けてよ!」

物理的に頭に血が上ってクラクラする。何で私がこんな目に……

朦朧とする意識で確認する。真横にあるホールからは心配してくれたのか、何人かが顔を出して此方を見てくれていた

『嬢ちゃーん。自殺するのは止めてくれよー』

瀬川「違うからー……」

引き上げられながら返答する。顔を向けると壁際の辺りに不自然な染みを発見した

手を伸ばして触ろうとしても、意外と離れてるから届かない……

月乃「……? まだ引き上げない?」

瀬川「ゴメン今すぐ引き上げて。死ぬ死ぬ……!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:35:09.69 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「死ぬかと思った……」

月乃「……面目ない」

朝日「あはは。月乃ちゃんと瀬川さんってぇ、仲がいいんだねぇ」

九死に一生を得た私を見ながらケラケラと笑う朝日君。こんな目に合わせた張本人である月乃さんと瓜二つな分、イライラが溜まっていく……

瀬川「で? 何か用? それとも私を突き落としに来ただけだったりする?」

朝日「あは。そんなに怒っているとシワが出来ちゃうよぉ? 深呼吸。深呼吸〜」

殴りたい。寧ろ殴らせて

月乃「……そいつは後で私が殴っておく。今はそんな事をしている場合じゃない」

朝日「殴っちゃダメだよぉ。えっとねぇ、スッゴく重要な証拠を見つけたんだぁ」

瀬川「凄く重要な証拠……?」

のほほんとした口調からは想像がつかない程あっさりと話す朝日君。表情を変えないまま取り出したのは、二つの生徒手帳だった

瀬川「……それが証拠? 二人の生徒手帳じゃん」

月乃「……違う。私達のはこっち」

べしっと朝日君を叩くと、二つの電子生徒手帳が零れ落ちる。ドロップアイテムかな?

月乃「……重要なのは、この二つの内の片方が故障している事。多分、これは……」

朝日「天地さんとぉ、吊井座君のものだと思うんだあ。壊れているのは吊井座君のぉ……あぅ」

また月乃さんに殴られた……でも、朝日君の言おうとした事はだいたいわかった

壊れた生徒手帳が吊井座君のものなら、無事な方の生徒手帳は天地さんのもの……

それなら、男子でも女子の更衣室に入れる……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:36:32.70 ID:W3JrOh+uO<>
手に取った無傷の生徒手帳を眺めながら思案する。犯人がこれを知っていたら……

瀬川「あれ? でも他の人の生徒手帳って使えないんじゃ……」

朝日「えっとねぇ、それってぇ校則の事を言っているのぉ?」

それ以外に何があるのか。私の生徒手帳にだって、手帳の貸し借りについての校則は載っている



『他者の生徒手帳を使用した場合、生徒手帳の持ち主を罰します』



月乃「……よく見てほしい。校則には、”生徒手帳の持ち主を罰します”」

朝日「でもでもぉ、この生徒手帳は天地さんと吊井座君のものだからねぇ。誰も罰せないよぅ」

瀬川「あーなるほどなるほど。死んだ人のものを使う分には校則違反にならないと……」

瀬川「……トンチかい!」

思わず声を出して叫ぶ。抜け穴とか裏道とかそんなチャチなモンじゃない。もっと下らないものの片鱗を味わった……

瀬川「はぁ、はぁ……因みにだけどこの事を知っているのって……」

月乃「……手帳の事なら全員に話した。校則の事は話してない」


GET:コトダマを入手しました
【壁のシミ】
 ダンスホールと更衣室を繋ぐ壁に、不自然な染みがあった
 何でつけられた染みなのかは不明

【二つの生徒手帳】
 朝日と月乃が見つけてきた生徒手帳。片方は起動が不可能となっている
 故障していない方は、天地のものと推測される

【校則の抜け穴】
 校則では『他者の生徒手帳を使用した場合、生徒手帳の持ち主を罰する』となっている
 つまり、死んだ生徒の生徒手帳を使用しても問題ないという事になる
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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:37:24.12 ID:W3JrOh+uO<>

キーンコーンカーンコーン!


モノクマ『えー、オホン! 本日は晴れやかにして良きお日柄となるでしょう』

モノクマ『ここでオマエラに問題です。ズバリ今日という日はオマエラの命日になるでしょうか!』

モノクマ『その答えは……是非とも学級裁判で答えてください! 学級裁判、始まるよー!』

月乃「……始まるみたい」

今日がお前の命日ね……少なくとも、今回のクロにとってはそうなるだろう

それとも私達の命日になるのかな? クロの考えたトリックを見破れなければ……だけど

デイビット君を狙った理由。それはきっと、前回の学級裁判で活躍した彼を消せば有利になる為……

何処まで考えても自分の為に殺したとしか思えない残忍で凶悪な犯人。そんな奴は死んじゃったとしても文句は言えないよね?

朝日「それじゃあ行こっかぁ〜」

瀬川「うん!」

朝日「……瀬川さん。元気あるんだねぇ」

瀬川「えっ、何か問題でもある?」

朝日「ううん。何でもないよぅ」

言われてみれば確かに心のどこかで、弾ける様な、心地のよいワクワクとした感情が疼いている

それは、学級裁判が楽しいから……? 別に、誰かを糾弾して自分の正しさを証明する事に快感を覚えているワケではないはずだから

瀬川「……じゃ! 行こっか!」

これだと私が悪役みたい。それは違うよ。と証明しにいこう

あの肌のヒリつく感覚を、焼けつく程の心の鼓動を思い出していた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:38:25.89 ID:W3JrOh+uO<>




スグル「瀬川さん。自殺しようとしたって……」

瀬川「だから違うんだってばー……」

月乃「……本当に申し訳ない」

古河「ところで、何で駆村と御影はそんなホコリっぽいねん」

月神「本当……どうしたの? 何かあった?」

駆村・御影「「……………………」」

瀬川「本当に申し訳ありませんでした……」

ジロッと二人から睨まれる。怪訝そうな雰囲気で、もの凄く肩身が狭い……

陰陽寺「来るぞ」

短くそう呟いた陰陽寺さん。その言葉が終わるや否や、花園の中からエレベーターがせり出してくる

……これ、毎回やるの? 予算かかってそうだなぁなんて関係ない事を考えてみる

そんな妄想を振り払う。裁判へ向かう為に皆と前へ進む……はずだった

瀬川「……あれ? なんで皆来ないの?」

臓腑屋「にゃ……眠いでござる。頭がフラフラするでござる……」

スグル「事件が起きたのが夜で、夜通し捜査でしたからね……」

竹田「俺も年でキツいな。くそっあと十年若けりゃ何とかなったんだけどよぉ」

……よく見てみると、皆は目を擦ったり欠伸を噛み殺したり。眠気と必死に戦っている

これじゃあ、クロの前に睡魔にやられちゃう……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:39:12.22 ID:W3JrOh+uO<>
瀬川「でも、私は何ともないよ?」

朝日「瀬川さんはぁ、ぐうっすり眠っていたからだと思うなぁ〜」

瀬川「そうだった……」

月神「困ったわね。モノクマは仮眠なんて認めないでしょうし……」

照星「あ! 先輩、すぐに戻るんでちょっと待ってて欲しいっす!」

胸を張りながら、照星さんは走り去っていく。本当にすぐに戻ってきた照星さんの手には、大きな箱が握られていた

瀬川「それ何?」

照星「コーヒーっす! 眠気覚ましにお一つどうっすか?」

真っ黒な缶を持ちながらニコニコと笑う照星さん。その手にある缶。私には見覚えがあった

スグル「それ、吊井座さんの……」

照星「……お守りも兼ねてるんすよ。何だか、先輩が力を貸してくれる気がするんっす」

照星「だから! 絶対に自分は負けらんないっす。クロを絶対に見つけてみせるっす!」

照星「……何で殺したのか、知りたいっすから」

俯きながら答える照星さん。その瞳に宿る光の意味は、私にはわからなかった

一人、また一人と缶コーヒーを飲んでいく。かなり苦いのか、皆は一様に顔をしかめて苦い顔をする


因みに私は飲んでいない。ブラックコーヒーは嫌いだし、別に眠くないし

全員が飲み終わると、誰ともなくエレベーターに進んでいく。……それぞれの思いを乗せながら

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:39:49.80 ID:W3JrOh+uO<>





……沈黙。この空間にあるのはそれだけだ

これに乗るのは二回目なのに、この肌にまとわりつく重苦しい空気には慣れそうにない

まるで焼き直しの様な似た光景。きっと変わる事は無いんだろう

……私達が、コロシアイを止めない限りは



前回の学級裁判のMVPと言っても過言じゃない、デイビット・クルーガー君

彼の『自分の才能を使わなくてもいい』という願いは、彼の死を以て叶えられたんだ

そして、デイビット君を殺した人。もうやらないと誓ったハズの約束を破った人

誰かが生き残る為に誰かを殺し、私達が生き残る為に誰かを殺す。まるで永遠に続く輪廻転生だ



……それを、ここで断ち切る。断ち切らないといけないんだ

それが、例え絶対確約出来ない誓いだとしても


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/01(土) 23:40:22.55 ID:W3JrOh+uO<> 本日ここまで <> ◆nV158uMR4EBZ<>sage<>2019/06/11(火) 23:05:27.66 ID:xxXytD7BO<>
【Chapter2 もうやらないと誓ったのさ】
【コトダマ一覧】



【モノクマファイル2】>>118

【ダンスホールの鎧兜】>>119

【竹田の証言】>>120

【だるまさんがころんだ】>>123

【死体の違和感】>>123

【朝まで語ろう会】>>126

【三組のアリバイ】>>127

【彫刻刀】>>129

【工具セット】>>129

【飛田の手鏡】>>131

【更衣室の壁の傷】>>133

【綺麗な更衣室】>>133

【ジャージ】>>133

【壁のシミ】>>136

【二つの生徒手帳】>>136

【校則の抜け穴】>>136

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:32:19.32 ID:kh5viBv9O<>








【 学 級 裁 判  開 廷 ! 】








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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:34:09.19 ID:kh5viBv9O<>




ハルカ『では! まずは学級裁判のルール説明から始めまーす!』

瀬川「あ、またそれやるんだね……」

ハルカ『いわゆるお約束ってヤツだからね! よい子はテレビから離れて見てね!』

ヨウ『無駄話は止めろ。学級裁判では犯人は誰かを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されるんだ』

ハルカ『正しいクロを指摘できれば、クロだけがオシオキ!けど間違ったクロを指摘しちゃうと……』

ヨウ『クロ以外の全員がオシオキされ、クロにはこの彩海学園の卒業権利が与えられるな』

モノクマ「……Zzz。はっ、寝てた。ゴメンゴメン、オマエラと同じでこっちも一睡もしてないからね」

モノクマ「だからと言って学級裁判では居眠り禁止です! もし寝ている人がいたら水をたっぷりいれたバケツを両手に持って裁判して貰います!」

臓腑屋「地味に嫌でござるっ!?」

モノクマ「アハハハハ! そんじゃボクは仮眠を取るので、オマエラはその間頑張ってね〜!」

モノクマ「……Zzz」

飛田「寝たのか? これは本当に寝たのかッ!?」

目を瞑って、普段ふんぞり返っている座席の手すりに頭を乗せる。電車で居眠りする様な姿勢で微睡んでいるモノクマ

その姿に若干の殺意を覚えながら、周囲を見渡す。私の隣に置かれている天地さんの遺影……そして、既に居なくなった人の分

吊井座君とデイビット君の顔に、バッテンの書かれた遺影が掛けられていた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:37:29.54 ID:kh5viBv9O<>
月乃「……本当に悪趣味。ここに来る度に向き合わなくちゃならないなんて」

照星「自分はもうここには来ないって思ってたんっすけど……」

竹田「しゃあねえだろ? 起きちまったモンはどうも出来ねえ。覆水は盆に返らねえのさ」

月神「そうね。どうしてクロがデイビット君を殺したのか……私達には、それを知る必要があるわ」

瀬川「あれ? 前までは犯人なんていないってスタンスだったじゃん。どういう風の吹き回し?」

スグル「瀬川さん。そんな言い方は……」

月神「……自分でも驚いているの。一度学級裁判をやっただけで、私はここまで冷酷になれるのって」

月神「それが良い事なのかはわからないけど、私はデイビット君も……吊井座君も信じている」

月神「勿論、それはクロだって同じよ? だから、私は……信じる議論をしたいの」

濁りの無い澄んだ瞳。満月の様に、微かな光を湛えながら彼女はそう宣言した

浄化される。と言うのはこういう時の事を言うんだろうな。……まるで、私が悪い人みたいだけど

瀬川「……わかった。それじゃ、早速始めようか」

御影「は、始めようって言ってもさぁ……ボク達、何から話し合えばいいの?」

古河「今更何言うてんねん……前回みたいにすれば大丈夫やろ!」

朝日「でもでもぉ、前まではデイビット君が仕切ってくれてたけど、もう……」

朝日君が口をつぐむ。今まで……と言っても二回目だけど……デイビット君は既に殺されている

既に指針は壊れている。どう進むかすら、私達は手探りの状態なんだ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:39:42.94 ID:kh5viBv9O<>

臓腑屋「では、不承ながら拙者から切り出させて貰うでござる」

臓腑屋「デイビット殿が学園で殺されたのならば、やはり食堂に残っていた御仁が怪しいのでは?」

未だ舵取りの出来てない裁判。そこに臓腑屋さんが一石を投じた

臓腑屋さんが言う人。食堂に残っていた人達は、皆わかっていたのか『そりゃそうだ』とでも言いたげな表情をしていた

駆村「だよな……俺達が疑われるのは予想してた」

古河「せ、せやけど! ウチらはデイビットがいなくなるまではずっとおった! ホンマや!」

陰陽寺「それを証明出来るモノはあるのか」

瀬川「先に言っておくけど、なんとなくで全員いたとは言わないでね? 人の記憶だけだと、どうしても限界があるからさ」

古河「わーっとるわ! いちいちウザいねん!」

古河「そう言うお前らはどうなん!? お前らかてアリバイはあらへんやろ!」

月乃「……それを言われると、どうしようもない」

うーん。このままだと水掛け論にしかならないね

その気になれば相手が根負けするまで叩けるけど、それは最早議論じゃなくてレスバトルだ

何について、どう話し合えばいいのか。議題は早速大きな問題に直面していた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:42:22.86 ID:kh5viBv9O<>

スグル「あの、提案なんですけど……」

スグル「僕達の事よりも、まずはデイビットさんの事を話し合いませんか?」

月乃「……確かに、このまま私達のアリバイを話し合っていてもラチが明かない」

御影「デイビットクンを追っていけば犯人にも辿り着けるかもしれないしね!」

月神「なら、そこから話し合っていきましょう。私から昨夜の事を話していくわね……」

ゆっくりと、なるべく全員に行き届く様に月神さんが語り始める。少しずつ、丁寧に織り込む様に

肝心の内容については……前に駆村君の言っていた事と変わりはなかった

朝日「そうなんだぁ、途中で飛田くんがぁ……」

古河「正味、普通に怪しいんやけどどうなん?」

飛田「待てぃ! オレは本当に少ししかいなかったしすぐに戻ったぞ!?」

さて、これからはこれを踏まえて議論を進めていかないといけない。

ゆらゆら揺らめく微睡みの様にふわふわと、籠の中の小鳥の様に小刻みに

ゆっくりと、学級裁判は廻っていく……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:44:46.00 ID:kh5viBv9O<>
【ノンストップ議論  開始!】

『コトダマ』
【モノクマファイル2】
【ダンスホールの鎧兜】
【死体の違和感】



古河「正味な話、ウチは飛田が怪しいと思うわ」

古河「最初から参加せえへんかったクセに、《いきなり食堂に来るなんて怪しい》やん?」

御影「ボクもそう思うな!」

飛田「黙れ御影ッ! オレの心象が悪くなるッ!」

竹田「おーい坊主共、喧嘩は後にしてくれや」

月乃「……でも、犯人の可能性は高い」

月乃「……予めデイビットを呼び出しておいて、自分は身を隠せば……」

月乃「……例えば、あそこにある【鎧は身を隠すのに最適】だと思う」

飛田「クッ……可憐なる乙女からの疑い、必ず晴らしてみせようぞ!!」

臓腑屋「おなご限定でいいのでござるか!?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:45:42.36 ID:kh5viBv9O<>
【鎧は身を隠すのに最適】←【ダンスホールの鎧兜】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「う〜ん。月乃さん。鎧に隠れるのは無理だと思うよ?」

月乃「……何故? ダンスホールで隠れられる場所は限られてくる」

月乃「……全身を覆う上、数もある。一度着てしまえば気付かれにくくなるはず……」

瀬川「うん。それなんだけどね? あれ、実はもの凄く重いからまともには着れないんだよ」

竹田「そうなんだよなぁ月乃の嬢ちゃん。ありゃもう鈍器だぜ」

駆村「鈍器……? そんなに重いんですか?」

竹田「応ともさ。俺が思いっきしブン回したら人が何人かはフッ飛ばせるくらいには」

照星「むむむ、なら自分も無理っぽいっすね……」

がっくしと重く肩を落とす。この中で随一のパワータイプである照星さんでも無理そうだ……

月乃「……結構、イケると思ったけど」

朝日「私でも片手で持てたんだもんねぇ〜」

……ん?

竹田「オイオイ、持てたのか?アレを片手で?」

朝日「うふふ。おかしいかなぁ〜?」

御影「ボク、朝日クンと月乃さんにケンカ売るのはや〜めよ……」

月神「人は見かけによらないわね……」

出来るんだ……この双子、何食べたらそんな腕力がつくんだろう……?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:48:08.02 ID:kh5viBv9O<>
飛田「フッハハハ! ではオレの無実が決まった所で議論を再開しようじゃあないか」

古河「は? まだ最有力容疑者候補なんやけど」

臓腑屋「そうでござるな。いきなり食堂に来てすぐに立ち去るなんて怪しいでござるよ」

駆村「最初からいなかったのに途中から来た理由がわからないからな……」

飛田「……………………」

どうやら、まだ飛田君は容疑者として色濃く見られているみたい。自分でも予想外なのか、某海賊漫画のカミナリ様みたいな顔をしている

飛田「ま、ままま待ちたまえ。オレには理由があるからこそ食堂に向かったのだよ」

御影「デイビットクンを殺す準備!?」

飛田「黙れ小僧ッッッ!!!」

月神「お、落ち着いて……デイビット君。その理由を話して貰えるかしら」

飛田「フフフ。それはだね、探し物を捜索していたのだよ。レディ」

朝日「探し物ぉ? それってなぁにぃ?」

飛田「……手鏡さ。オレの前髪を直すのに愛用していた、フランスで一目惚れした……」

照星「今なんでちょっと言い淀んだんすかね……」

月乃「……どういう風に接すればいいのか考えたんだと思う。私にも覚えがある」

一人で合点がいったのか、頷いている月乃さん。鏡なんてどこで買っても同じだと思うけどね……

でも、黙っていても議論が進まない。ここは本人に返却しておいておこうっと

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:49:54.05 ID:kh5viBv9O<>
【飛田の手鏡】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「ああ飛田君。実はその鏡……」

飛田「おお……! これだとも! ようやく我が手に戻ってきた……!」

手渡しで持っていた鏡を飛田君に返却する。慈しむように受け取った飛田君は優雅に一礼してくれた

飛田「おお……この手触り、光沢、曲線美。全てが懐かしく愛おしい……」

古河「ウッザ……」

飛田「ところでこの手鏡はどこにあったのかね?」

瀬川「デイビット君の死体の下だよ」

飛田「そうかそうか。デイビットの死体の下……」

飛田「………………………………」

瀬川「………………………………」

竹田「おっ、親父ギャグか?」


「「「………………………………………………………………」」」


飛田「死体の下あああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」

御影「滅茶苦茶重要な証拠じゃん! やっぱり飛田クンがクロなんでしょ!?」

朝日「これはちょっと、擁護出来ないかなぁ……」

飛田「嘘だろう? これはちょっとブラックな軽いジョークなのだろう!?」

照星「あ、自分は何か引っ張ってたの見たっすよ」

飛田「あああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」

先程の優雅はどこへやら。白目を剥いて泡を吹く飛田君へは同情を禁じ得ない

でも、このまま飛田君が犯人の流れでいくのは本意じゃない。気になる所は指摘していこう

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:52:10.45 ID:kh5viBv9O<>
【ノンストップ議論  開始!】
『コトダマ』

【彫刻刀】
【飛田の手鏡】
【竹田の証言】



飛田「ああああああああああああ!!!」

御影「これもう【飛田君がクロ】でしょ!?」

月神「飛田君、せめて何か証言して……!」

飛田「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」

駆村「と、飛田がクロなら、食堂には《デイビットを呼びに来た》のか?」

臓腑屋「そして、どさくさ紛れに【凶器の包丁を盗み出し】たのでござるな……」

月乃「……後は適当に切り上げて、【ダンスホールで殺せばいい】」

飛田「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

古河「あーーーーー!! 頭おかしなるわ!!」

スグル「む、矛盾は無さそうですけれど……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:53:51.60 ID:kh5viBv9O<>

【凶器の包丁を盗み出し】←【彫刻刀】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「臓腑屋さん。実はデイビット君を殺した凶器は包丁じゃないんだよ」

臓腑屋「にゃ? 前回と同様に、凶器となったのは包丁ではないのでござるか?」

月神「流石に、そんなにすぐに凶器として使わせる程管理は甘くないわ……」

月乃「……なら、疑問がある。デイビットを殺した凶器はなんだったの?」

瀬川「美術室にある彫刻刀だよ。丁度同じ柄のものがあったんだ」

古河「ちょ、彫刻刀やと? そないなモンで人を殺せるんか?」

照星「そう言われるとそうっすね。ちょっと無理がある気がするっす!」

裁判場がざわついていく。そりゃ彫刻刀と言われてそれが凶器だと思う方が不自然だ

駆村「なら、飛田は食堂に寄った後わざわざ美術室で彫刻刀を持っていったのか?」

臓腑屋「いや、逆に予め彫刻刀を用意していたのではないでござろうか……」

飛田「おい待てぃっ! オレを犯人だという前提で進めるんじゃあないッ!」

瀬川「じゃ、次はどうやってデイビット君を殺したのか考えてみようか」

飛田「待てえええええええええええええ!!!!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:56:04.20 ID:kh5viBv9O<>
【ノンストップ議論  開始!】
『コトダマ』
【死体の違和感】
【竹田の証言】
【だるまさんがころんだ】



御影「え〜それじゃあどうやって殺したのか……」

御影「議論するって事でいいんだよね?」

飛田「勝手に話を進めるなぁーーーッ」

月神「まず、デイビット君はダンスホールに向かったのよね?」

竹田「そりゃあ間違いねえだろう。死体もホールのド真ん中にあったしな」

照星「本当にそうっすかね〜?」

月乃「……どういう事?」

照星「もしかしたら《別の場所で殺されて》……」

照星「【運ばれて来た】のもあると思うっす!」

駆村「それなら、わざわざダンスホールまで【呼び出す必要もない】しな」

朝日「なら、本当はどこで殺されたのかなぁ?」

御影「どうなのさ飛田クン!」

飛田「知るかァアアアアアアアアア!!!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 20:58:06.53 ID:kh5viBv9O<>
【運ばれて来た】←【死体の違和感】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「ちょっと待ってよ……他の場所で殺された可能性は無いんじゃないかな?」

照星「えっどうしてなんっすか?」

これはとぼけているの。それとも本当に覚えていないの? 普段がマイペースな照星さんだから考えが読めない……

瀬川「どうしてって、照星さんも試したでしょ?」

瀬川「デイビット君の死体には引きずった様な跡は無かったし……それに、照星さんも重そうにしてたじゃん」

照星「あっ……そうだったっす……」

しょぼんと肩を落としてガッカリアピール。これはどっちなんだろう……?

朝日「ええっとぉ、ならデイビット君はぁ、ダンスホールまで行ったのぉ?」

臓腑屋「にゃ、それは何故でござるか? あれほど聡明なデイビット殿なら、迂闊に呼び出しに応じるとは思えないでござるよ」

確かに、数日前に事件が起きたのにホイホイ着いていくなんて、幾らなんでも学習能力が無さすぎる

臓腑屋「拙者としては、本当にダンスホールで殺害されたのかも疑問でござる。跡があったのを見落としただけでは?」

瀬川「それは違う! ……と思うよ」

スグル「そこは断言してほしかったですね……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:00:37.19 ID:kh5viBv9O<>

飛田「んっ? ならば、犯人はどこでどうデイビットを殺したのかね」

自らの疑いが晴れたとみたのか、いきなり核心をつく様な事を話し出した飛田君

だけども、どのみちいつかは話し合う必要のある議題でもある。ここは臆さず切り込んでいこう

瀬川「えーっとね。デイビット君の心臓を一撃で、しかも一瞬でぶっ刺して殺したんだよ」

臓腑屋「いや殺し方を聞いているワケではないのでござるよ!?」

陰陽寺「……一撃で、一瞬か」

スグル「? どうかしましたか、陰陽寺さん」

小声で、繰り返す様に反復する陰陽寺さん。少し考えた素振りを見せると、私に視線を向け直す

静かに。深く差し込む様に疑問を口にする。

陰陽寺「それは本当の事なのか。奴は確かに心臓を一撃で刺され、殺されたのか」

月乃「……そこ、気になる所?」

古河「まあ陰陽寺やしな……で? それってホンマなんか?」

陰陽寺さんに影響される様に、皆の視線が集中する

この場で、今最も発言力があるのは私だ。その実感が身体の先から先まで快感が走る

さあ言ってやるんだ。その証拠は―――!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:02:42.41 ID:kh5viBv9O<>
【モノクマファイル2】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「モノクマファイルをよく読めばわかる事なんだよ。デイビット君が一撃で殺されたのは……」

瀬川「それじゃあ皆、お手元の電子生徒手帳を開いてみて?」

御影「なんで教師風?」

語り聞かせる様に推理を披露する。私の説明を受けて、手持ちの電子生徒手帳を起動し始めた

こめかみ辺りに手を置き、くいっと上げる動作をする。メガネを直す時によくするあのポーズだ

……私、視力は両方2.5だけど



瀬川「えー、まず注目するのはここの部分だね」つ



→身体には外傷は無く、また、薬物及び薬品を接種した形跡は無い←



瀬川「この部分から、デイビット君は誰かと争ったり薬で動きを封じられた訳じゃない事がわかるね」

スグル「あの、そのフリップどこから……」

瀬川「そこ突っ込むの? 馬に蹴られて死ぬよ?」

月神「スグル君。今は黙って聞きましょう……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:04:58.17 ID:kh5viBv9O<>

駆村「待ってくれ。確かに書いてあるが……」

駆村「それだけで、一撃死したと言えるのか?」

瀬川「いい質問ですね!」

古河「池○彰!?」

瀬川「では、ここで前回のモノクマファイルを確認してみましょう……モノクマー!」

モノクマ「出番だぞオマエラ! 給料払ってんだからとっとと働けよ!」

ハルカ『はーい! では画面に注目して下さーい』

駆村「たらい回しにされてるじゃないか!」




→身体中に軽い打撲痕が確認でき、右手の指の関節に骨折が見られる←




瀬川「これは天地さんが、犯人との争いがあった事を証明する部分だよ」

月神「この部分で、吊井座君が犯人だという証拠が出てきたのよね……」

瀬川「そうそう。今回のデイビット君にはそうとは書かれていない……争っていなかったんだ」

瀬川「つまり、デイビット君は争う間もなく殺されたって事なんだよ!」

私が一息で説明を終えると、おお。と歓声が上がる

ふふん、と得意げに鼻を鳴らしてみる。私の推理に感心している事は明らかだった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:06:50.17 ID:kh5viBv9O<>
瀬川「……で、これで何がわかるのかな?」

余韻に浸る間も与えられず、すかさず陰陽寺さんに問いかける

目を閉じ、静かに顔を上げる。私の推理を咀嚼したのか、その顔には仄かに自信が浮かんでいる様にも見えた

陰陽寺「今の推理を聞いて、多少は当時の状況を推察する事が出来た。考えられる可能性は……二つ」

指を突き付けて自説を説いていく。……恐らく、この中に潜んでいるだろう犯人に向けて

陰陽寺「まずはパーティーに出ていた連中があいつと共にダンスホールまで行き、殺した可能性」

竹田「おうおう俺達が疑われるのか? 俺達は会場にずっといたんだぜ?」

陰陽寺「黙っていろ。話は最後まで聞け」

竹田「はいよ。怖い怖い」

憎まれ口にも涼しい顔。陰陽寺さんは構わず推理を進めていく……

陰陽寺「もう一つはデイビットを誘い出し、不意を突いて殺す方法。この方法は会合に参加しなかった奴にしか出来ない」

視線を再び全員に向ける。その意味は絶対に……

朝日「……それってぇ、参加していない私達が犯人だって事だよねぇ」

陰陽寺「それ以外にどう読み取れる?」

飛田「そ、そもそもッ、パーティーに参加した連中は誰なのかね!?」

臓腑屋「一度、誰が参加していたのか確認をすべきだと思うでござる」

パーティーに参加していたのか人達……それはあの人達だよね

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:08:42.24 ID:kh5viBv9O<>
【朝まで語ろう会】



瀬川「これだね!」解!

瀬川「ええっと、朝まで語ろう会にいたのは……」

瀬川「スグル君に駆村君、御影君に竹田さん……」

瀬川「月神さんに古河さん。照星さんだね」

月神「ええ。それで間違いないはずよ」

御影「いや、そうなんだけどさ……その朝までってどういう……」

古河「せやな! あの朝まで語ろう会はその面子でやっとったんや!」

竹田「俺も記憶には自信はねぇが、朝まで語ろう会には今嬢ちゃんが言ってたのが来てたぜ」

御影「あれ!? 気にしてるのボクだけ!?」

今言った7人、そして被害者のデイビット君。合計8人があの夜に集まっていた事になる

あんな事があったのにまだ集まろうとするのは、人がいいのか悪いのか……

月乃「……なら、そうじゃない人。つまりは私達が容疑者という事になる」

駆村「じゃあ、逆に俺達は容疑から外れたって事でいいのか?」

瀬川「そうはならないでしょ……なら次は殺害状況から議論してみたら?」

私の一言で議論は廻る。次の議題は……状況だ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:10:29.75 ID:kh5viBv9O<>
【ノンストップ議論  開始!】
『コトダマ』
【工具セット】
【竹田の証言】
【彫刻刀】
【ダンスホールの鎧兜】
【だるまさんがころんだ】



月乃「……デイビットが殺された状況は、二つ」

臓腑屋「共に行って殺害したか、誘きだして殺害したか。でござるな!」

御影「でも、ボクらには【アリバイがある】よ!」

駆村「逆に、朝まで語ろう会に来ていなかった連中なら《誘いだせた》んじゃないのか?」

朝日「えっとぉ……誘ったってどうやってぇ?」

竹田「【手紙】とか【約束】とか色々あんだろ?」

照星「誘い出す方法は幾らでもあるっすけど、肝心のデイビット先輩はどう殺すんすか?」

月神「【先にホールにいた】ら呼び出されていた事もあって警戒するはずよ」

臓腑屋「では、ホールにやって来たデイビット殿の背後から……」

臓腑屋「【不意を突いて殺した】のでは……?」

古河「それや! それなら殺せるやん!」

臓腑屋「発言が怖いでござるよ……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:11:24.85 ID:kh5viBv9O<>
【不意を突いて殺した】←【だるまさんがころんだ】



瀬川「それは違うよっ!」論破!

瀬川「不意討ちで殺すのは無理だよ……絶対にね」

臓腑屋「やけに自信満々でござるな。して、何故にそう思うのでござるか?」

瀬川「まず、デイビット君の死体の位置を思い出して欲しいんだけどさ……」

スグル「死体の位置……確か、ホールのほぼ真ん中でしたよね」

飛田「遮蔽物も何もない更の地だ! これでは不意討ち出来ないではないかッ!」

古河「せやろか? 後ろからササッと駆け寄って、刺せばええんとちゃう?」

陰陽寺「不可能だ。それで殺されるのは余程の間抜けだけだろう」

古河「デイビットがそうかもしれへんやろ!」

臓腑屋「そんなワケないでござるよ!?」

瀬川「うん。その可能性も考えて、私はスグル君とだ……」

駆村「だ?」

瀬川「……コホン。とにかく死体の位置から入り口まで、どこで気がつくか実験したんだ」

危ない危ない。また引かれる所だったよ……

瀬川「結果から言うと、あのホールは音がよく響くんだ。だから入り口に入ってきた時点でデイビット君は気づくはず……」


           反

臓腑屋「助けと書いて且つ力!」

    論

 !

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:12:48.59 ID:kh5viBv9O<>

臓腑屋「音で気付く……誠にそうでござろうか」

臓腑屋「否! 音等幾らでも誤魔化しの効くもので不可能と決めつけるのは早計にござる!」

瀬川「ふーん。抜き足差し足が得意な臓腑屋さんが言うと説得力あるね」

臓腑屋「偏見にござるよ!? とにかく、瀬川殿の推理では納得しきれないでござる!」

……どうしても認めてはくれないみたいだね。私の信用の無さに泣きそうだ

それなら、他の人の話す言葉ならどうかな……?



【反論ショーダウン  開始】
『コトノハ』
【モノクマファイル2】
【竹田の証言】
【死体の違和感】


臓腑屋「デイビット殿が気づいていなかった可能性もあるのでござる」

臓腑屋「例えば別のものに注意を払っていた場合、抵抗出来なかった場合……」

臓腑屋「様々な可能性が考えられる以上、結論を下すのは早計と言わざるをえないでござるよ」


瀬川「ならその可能性を言ってみてよ。臓腑屋さんがわかっているならね」


臓腑屋「そ、それを言われると痛いでござる……」

臓腑屋「し、しかし! 【他の手段が考えられないワケではない】のは確かでござるし……」

臓腑屋「不意をつけば【弱くとも可能】なのは紛れもない事実!」

臓腑屋「他の可能性を模索するのも悪くないのではござらんか?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:14:09.02 ID:kh5viBv9O<>
【弱くとも可能】←【竹田の証言】



瀬川「その反論、打ち切っちゃうね!」論破!

瀬川「犯人は力が無い? その可能性は低いよ」

瀬川「寧ろ、相当なパワーがあった……私達はそう思うけどね」

月乃「……達?」

竹田「応とも。俺も瀬川の嬢ちゃんと同意見だぜ」

臓腑屋「竹田殿!? 正気でござるか!?」

瀬川「どういう意味!?」

なんで私を信用すると正気を疑われないといけないの!? そんなに嘘つきじゃないでしょ!?

竹田「あー…説明させて貰うとだな。デイビットの坊主の背中に刺さった刃物。ありゃ力を相当に入れなきゃ深く刺さんねえんだよ」

竹田「彫刻刀だぞ? それを不意討ちでぶちこむのは陰陽寺の嬢ちゃんでも無理だろう」

瀬川「陰陽寺さーん。舐められてるけどいいの?」

陰陽寺「不可能なものは不可能だ。僕でもな」

瀬川「……案外物分かりがいいね」

臓腑屋「にゃあぁ……な、ならば他の面々はどうなのでござる!?」

照星「流石に自分でも無理っすよー!」

駆村「俺もだ。そもそも、人力のみで刃物を深く体に突き刺すなんて可能なのか?」

ぽつり。と疑問が投げ掛けられる。波紋の様に広がったそれは、私達の思考を奪っていく

駆村君の疑問は尤もなもの。その証拠に、裁判場はしんとした空気に包まれ始めていた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:15:37.72 ID:kh5viBv9O<>
竹田「……ま、方法が無いわけでもねえがな」

完全に包まれる直前に、竹田さんが話を切り出す。言い出しっぺの責任感からか、既に用意していたんだろう

竹田「トンカチか何かで釘を打つ。この要領でやれば誰でも出来るは……」

陰陽寺「無理だな。奴は即死している、悠長に凶器を叩いている程の余裕と理由があるなら別だがな」

竹田「……ずなんだけどよぉ」

用意していた答えは陰陽寺さんに切り捨てられる。頭をポリポリと掻きながら、苦笑いを浮かべていた

朝日「ねぇねぇ、今思い付いたんだけどねぇ。刃物を勢い良く突き刺したらどうかなぁ?」

朝日「こうやってぇ……んっ、身体を押し付けるみたいにどすってすればイけると思うなぁ」

瀬川「ああ、アゾット剣!」

スグル「なんですかそれ……?」

陰陽寺「デイビットが凶器を持った相手に背中を向けたのか。わざわざ殺してくれと頼む様な事だ」

朝日「ダメかぁ……」

竹田さんとは対称的に、えへへと笑う朝日君。隣の月乃さんの凄まじい視線は見なかった事にしよう



照星「……あれ? じゃあ犯人はどうやって殺したんすか?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:18:17.57 ID:kh5viBv9O<>
月神「……どういう事? 照星さん」

照星「だって、先輩は背中を一撃で殺されたんっすよね……?」

照星「近づく事も出来ないなら、即死させる事も無理じゃないっすか!」

スグル「…………あっ!?」

飛田「た、確かにそうだッ。不可能ではないか!」

……そう。今までの議論でわかった事は、『犯人はどうやってもデイビット君を殺せない』という事実

不自然、不可解、不可思議。殺害現場の奇妙な状況が……造り上げた犯人が、私達を混迷へ導いていた

御影「部屋に入ると気づかれるし、近付いても一撃で殺さないとダメなんだろ!? 無理だよ!」

月乃「……密室殺人。かなり変則的だけれど」

竹田「開いているのに密室ねぇ……随分とトンチが効いているじゃねえの」

臓腑屋「言っている場合でござるかっ!?」

犯人へ近付いているのか、離れているのか。視界が朦朧と霞んでいく

視界の隅でクツクツと笑う竹田さん。そして、彼を諌める臓腑屋さんがやけに際立って見えた

まだ私達は、事件の本質も見えていないのかもしれない。犯人の足跡すら、全く掴めていない……

瀬川「……上等!」

口の中で、噛み潰す様に小さく呟く。難易度は高ければ高いほど、攻略し甲斐があるってものだ

裏で嘲っている犯人を……完膚無きまでに叩き潰してやるんだから!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/06/23(日) 21:20:07.80 ID:kh5viBv9O<>





【 学 級 裁 判  中 断 】







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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:31:39.95 ID:B0eBlC/WO<>



〜〜〜♪


ハルカ『良い子の皆ー! 学級裁判エンジョイしてるかな?』

ヨウ『俺達か? 久々に羽を伸ばせたよ。デスクの前でな!』

ハルカ『ところで、画面の前の皆はもう学級裁判の犯人ってわかるかな?』

ハルカ『ここで唐突に、犯人当てクイズをしたいと思いまーす!』

ハルカ『”こいつだ!”って思う人をレスして、どしどし書き込んでね!』

ヨウ『まあ書き込めないんだけどな! 因みにこのやりとりに特に意味は無いぞ』

ハルカ『こういうメタっぽいのがそれっぽいんじゃないの? ……え、違う?』

ヨウ『試行錯誤を繰り返しているはこっちもあっちもどっちも同じだ。よろしくな!』


〜〜〜

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:32:17.33 ID:B0eBlC/WO<>


【 学 級 裁 判  再 開 】




月神「…………………………」

スグル「…………………………」

モノクマ「あのー、もう五分経ったんですけど? 早く議論してちょーだいな」

飛田「うるさいッ! 今考えている最中だッ!」

モノクマ「そうそう。下手な考え休むに似たりって言葉があってね」

飛田「余計な事を言うなッ! 思考がこんがらがるだろうッ!」

臓腑屋「飛田殿、気を確かに……」

……現在、議論は絶賛停滞中。いいアイデアも突破口も見つからず、全員が口をつぐんでいた

モノクマも言うように、この時間は裁判の中で一番無駄な使い方をしている。けどそう簡単には裁判を動かす事は出来ない

……適当に嘘でもつく? でも、前は確信があって嘘をついたけど……今はそんなに自信がないもん

御影「……あ、あのさ? ボクすこーしだけ思ったんだけど……」

月神「どうかしたの? 御影君」

御影「本当に、本当の本当にこの中に犯人っているのかな……?」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:32:57.45 ID:B0eBlC/WO<>

月乃「……どういう意味?」

御影「だって、おかしいじゃん! デイビットクンは無抵抗で殺された事になるんだよ?」

御影「流石にモノクマには抵抗出来ないだろうし、デイビットクンは……」

瀬川「あのさあ……今頃になって、そんな白ける事言わないでよ」

御影「モノクマに……えっ?」

瀬川「前回も結局、吊井座君が犯人だったじゃん。この中に間違いなくいるよ」

瀬川「息を潜めながら、今の私達をほくそ笑んでる犯人が……ね」

御影「うっ……」

モノクマ「そうそう、彼女の言う通り。デイビットクンを殺した犯人は間違いなくこの中だよ」

駆村「そうか……出来れば違って欲しかった……」

月神「……瀬川さん。貴女は私達を、仲間を……」

瀬川「何か言った?」

冷たく。出来るだけ感情を消して、月神さんを睨み付ける。……この期に及んで、何言っているんだか

ここに犯人がいないなら、学級裁判自体が起こらない。そんな初歩の初歩を忘れるなんて、平和ボケもいいところだ

月神さんも私の呆れが伝わったのか、何でもないわと目を伏せて、口を閉じた

瀬川「で、何から議論しよっか。このままだと本当に休み時間と変わらないよ?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:34:08.54 ID:B0eBlC/WO<>
陰陽寺「話す事は決まっている」

凛。涼やかな鈴の音が響く様に、怖いほど涼しい声の陰陽寺さんが発言する

瀬川「……へえ? 言ってごらんよ、陰陽寺さん」

陰陽寺「犯人だ。どれだけ不可解な事実が起きていようが、クロだけは間違いなく真相を知っている」

瀬川「いやそんな当たり前の事を言われても……」

スグル「あっ……もしかして、アリバイですか?」

照星「アリバイっすか? でも自分達も他の人達もアリバイは不透明っす、昨今の政治みたいに!」

竹田「耳が痛えなあ……」

陰陽寺「誰が僕達のアリバイを話すと言った。デイビットのアリバイの方から洗い出していく」

陰陽寺「犯人と同様に、デイビットも真実を知っている可能性がある。なにせ当事者なんだからな」

朝日「確かにそうかもしれないけどぉ……でも、デイビットくんは死んじゃったよぅ」

月乃「……! ……そうじゃない。デイビットの行動の足跡を辿れば、何処かで犯人と巡り会う」

朝日「そっかぁ。デイビットくんと犯人は会っているはずだもん。月乃ちゃんすごぉい」

月乃「……私じゃなくて、魔矢の考えた事」

……そっか。犯人に固執し過ぎてて、被害者のデイビット君を蔑ろに考えていたんだ

やっぱり、裁判に必要なのは柔軟な思考力だ。それを議論で養っていかないと……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:34:47.05 ID:B0eBlC/WO<>

【ノンストップ議論  開始!】

『コトダマ』
【死体の違和感】
【彫刻刀】
【三組のアリバイ】


御影「デイビッドクンのアリバイかぁ……」

朝日「パーティーにいた人ならぁ、【何処に居たかわかる】んじゃないかなぁ……?」

古河「アホ! そんなよう見とらんわ!」

臓腑屋「開き直りでござるかっ!?」

飛田「しかし犯人もデイビットといたのかね? ならば【他にも抜け出した】奴がいたのでは?」

スグル「《パーティーで抜け出した人はいない》と思います……」

月乃「……それを確認できる証拠は」

竹田「別に【メモ取ってたワケでもねえ】しなあ。断言は出来ねえな」

御影「……本当にこれで犯人がわかるの?」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:35:35.81 ID:B0eBlC/WO<>

《パーティーから抜け出した人はいない》←【三組のアリバイ】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「うん、私もスグル君と同じ意見だよ」

瀬川「だって、パーティーの途中で抜け出したのはデイビット君だけだからね」

スグル「ほ、本当にそうですか……?」

古河「ちょい待ち! 瀬川はパーティーに来とらんやろ。なんでそんな事言えんねん!」

臓腑屋「確かに疑問でござるな。瀬川殿があの場にいない限りはわからぬのでは?」

瀬川「そうでもないよ。だって皆が教えてくれたんだもん」

月神「皆が……?」

瀬川「えっと、確かデイビット君がいなくなった後に、皆で探す為に何人かで別れたんだよね?」

竹田「応。そのくれえなら俺でも答えられるぜ」

ふんふんと頭を左右に振り、竹田さんが話し始める

肝心の内容は……私が聞いた話と同じだったので、ここでは割愛しちゃおっと

竹田「……ま。これがそん時の状況だな。これで何かわかんのか?」

瀬川「うん。これで、朝まで語ろう会にいた人にはアリバイがある事がね」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:36:18.31 ID:B0eBlC/WO<>

瀬川「デイビット君がいなくなって、皆で行動していたなら……」

瀬川「他に抜け出した人はいない事になるよね?」

駆村「確かにそうなるが……途中で抜け出て、探す前に戻ってきた可能性もあるぞ?」

陰陽寺「その可能性は無い。一階から二階まで駆け上がり、デイビットを刺し殺す。それも、相当な力を使ってだ」

陰陽寺「その後に、誰にも気付かれずに混ざる事等無理だ。全員の目が節穴ならその限りじゃないが」

古河「流石にそこまではアホちゃう……はずや!」

月神「古河さん。もっと自分に自信を持って!」

御影「じゃあ、パーティー……じゃなかった。朝まで語ろう会にいたボク達は無罪なんだね!? やったー!」

スグル「あの、その朝まで語ろう会……って何の事ですか?」

御影「あれぇ!? ボクだけじゃ無かったの!?」

……これで、朝までなんとか会にいた人達にはアリバイが出来た事になる

皮肉な事に、皆を疑って離れた人より、皆を信じた人の方が断然有利になったんだ

信じる者は救われる……なんて、そこまで信心深くは無いけれどね

古河「なら、逆に出とらんかったのはどいつや?」

月神「確か最初の方に話していたわね……おさらいの意味も含めて、振り返ってみましょう」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:37:04.65 ID:B0eBlC/WO<>
瀬川「そうだね。それじゃあスグル君、言って」

スグル「ええと、瀬川さんに朝日さんと月乃さん。飛田さんに……」

スグル「臓腑屋さん。それに陰陽寺さんですね」

瀬川「正解。よく覚える事が出来ました」

古河「オマエはいったいスグルの何なんや……」

御影「でも、これで候補はかなり絞られたね!」

御影「飛田クンか朝日クン! それか陰陽寺さんが殺した犯人だ!」

竹田「ま、妥当なトコだな。嬢ちゃん達じゃあ深く刺す事は出来ねえだろう」

朝日「陰陽寺さんも女の子だよぉ?」

御影「陰陽寺さんは別だよ。ボクより強いじゃん」

瀬川「男子でしょ? もっと頑張ってほら……」

情けない御影君は置いておいて、容疑者はほとんど決まってきた。三人の中に犯人がいる……

瀬川「……あれ? でも駆村君と御影君、こんな事言ってなかったっけ?」



御影「ボクら全員見てないよ! だってアナウンス鳴ってから初めて二階に上がったんだし!」


駆村「その事については俺達も見ていない。一階に いた全員が集まった後、他の生徒も来たんだ」



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:37:48.65 ID:B0eBlC/WO<>
月神「犯人を、見ていない……?」

御影「あーっ!? そうだった! ボク達犯人見てないじゃん!」

駆村「そんな筈は……いや、でも……?」

古河「そんなん見逃したんとちゃうか?」

御影「そんな訳ないだろ! 節穴じゃあるまいし」

月乃「……じゃあ、御影が見逃したという事で話を進めていく?」

御影「何でだよ!?」

犯人を見逃した……その可能を否定しきれないのが辛い所だ。別に皆を信用してない訳じゃないよ?

駆村「俺達は、確かにデイビットを探す時にくまなく探したはずだ……」

照星「でも、自分達は誰とも会ってないっすよ! 本当っす!」

竹田「疑う訳じゃねえが、間違いねえんだよな?」

御影「も、もしかして……幽霊……とか……?」

月乃「……そんな事」

陰陽寺「人を殺すのはいつでも人だ」

御影「…………は?」

陰陽寺「下らない空想は考えるな、時間の無駄だ。死にたくなければ事実だけを組み立てろ」

御影「えっ? あ……ど、どうかした?」

月神「うふふっ、陰陽寺さんなりに御影君を励ましているのよ」

控えめな笑みを浮かべながら、ちらっと月神さんが陰陽寺さんを見やる

その視線を受けた彼女は、恥ずかしいのかふいっと顔を微かに反らした

人を殺すのは人。その人がこの中にいる以上、少しも油断は出来ないんだ……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:38:58.71 ID:B0eBlC/WO<>
【ノンストップ議論  開始!】

『コトダマ』
【彫刻刀】
【綺麗な更衣室】
【だるまさんがころんだ】
【工具セット】



御影「ボク達が犯人を見逃したって言うの!?」

月神「流石に、そんな事は無いと思うけれど……」

朝日「でもでもぉ、皆は犯人を見ていないんだよねぇ?」

駆村「確かに見てないが……デイビットを探す時、念入りに見て回ったはずだ!」

照星「そうっすよ! ちゃんと【先輩が行きそうな所は全て見た】っす!」

陰陽寺「《見ていない場所にいた》んだろう」

スグル「そんな場所は【無かったと思います】」

飛田「フンッ、どうせ《寝惚けていた》から見逃したんだろうッ」

臓腑屋「先に言っておくでござるが、【隠し扉や隠し部屋は無い】でござるからな!」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:39:44.98 ID:B0eBlC/WO<>

《見ていない場所にいた》←【綺麗な更衣室】



瀬川「その意見、フォローするね!」同意!

瀬川「うん……私も、全員が見ていない場所に犯人が隠れていたんだと思う」

スグル「瀬川さんまで……」

予想外の言葉だったのか、うるうると潤ませた瞳で困惑した表情を浮かべる

その表情が見たかった……違う違う。ここはびしっと頼りになる所を見せなきゃね

瀬川「三人共、ちゃんとデイビット君がいそうな所をしっかりと探したんだよね?」

駆村「ああ。間違いなくデイビットが行きそうな所は探し回ったが……」

瀬川「なら、照星さん。”女子更衣室”は調べた?」

スグル「女子更衣室ですか……?」

照星「アハハ、何言ってるんすか! デイビット先輩は男の人っす。そんな所調べても……」

照星「……あっ!?」

合点がいったとばかりに目が見開かれる。虚を突かれたのが丸わかりだ

そもそも違和感があったんだ。あの更衣室はやけに綺麗になっていたけれど……

瀬川「照星さんが唯一探していない場所……女子更衣室に犯人がいたとしか思えないよ」

臓腑屋「し、しかし……更衣室でござるか? 何故そんな所に……」

瀬川「それはわからないけれど……犯人が更衣室にいた証拠があるんだよ」

犯人が更衣室にいたと考えられるモノ。それは……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:40:25.66 ID:B0eBlC/WO<>

【ジャージ】



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「更衣室に置いていたジャージだよ。血がついているオマケ付きでね」

竹田「血がついている……? 犯人がそれを着て、デイビットの坊主を刺したんだろうな」

月神「瀬川さん、そのジャージのサイズは? どのくらいの大きさなのかしら……?」

瀬川「私の目算だけど……古河さんくらいかな?」

古河「それホンマかいな? もし違うたらエライ事になるで」

瀬川「ふふん。私を誰だと思ってるの? こう見えても、私は超高校級のコスプレイヤーなんだよ」

月乃「……どこからどう見てもそう思う」

瀬川「服のサイズくらい見ただけでもわかるよ。何ならここで着てあげようか?」

飛田・御影「「是非!」」

古河「………………………………」

挑発的な言葉と視線。そして服に手をかけて、チラチラと上着を捲る仕草を繰り返す

男子からは声が、女子からは怒気がわっと上がる。私もここで喧嘩はしたくは無いから止めとこう

……久々に、皆に注目されて気持ちよかったなんて思ってないんだからねっ

臓腑屋「全く瀬川殿は……にゃ? ならば、候補はかなり絞られるのでは?」

飛田「犯人はデイビットを一撃で殺せる力の持ち主であり、更にパーティーに出ていない奴だッ」

スグル「そして、女子……」

これらの全ての条件を満たす人……それは、あの人だけだ

でも、彼女が……? まあいいや。とにかくその人を指摘しよう


【全ての条件を満たす生徒は?】

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:41:08.76 ID:B0eBlC/WO<>
【陰陽寺 魔矢(オンミョウジ マヤ)】



瀬川「貴女しか……いないよ!」解!

瀬川「女子でパーティーに出ていない。尚且つデイビット君を殺せる力がある人物……」

瀬川「全部の条件に合うのは……陰陽寺さんだね」

陰陽寺「………………」

……静かだ。誰も、私の言葉に異論を出してこない

しいんという音が聞こえそうな程に、今、裁判場は静まり帰っている

どうして誰も口を開かないのか? ……それは、私に名指しされた陰陽寺さんの気迫が原因だろう

場の全てを黙らせるだけの気迫が、彼女にはあった

御影「……ほ、ホントに?」

駆村「じょ……条件を満たすのは、陰陽寺だけだ」

古河「ホンマかいな……!? 陰陽寺やぞ!?」

瀬川「だからこそ、とも言えるよね。自分なら疑われないって思ったからこそ、犯行に踏み切ったって考えられるし」

全員からの疑念の視線を一身に浴びても、尚微動だに動かない陰陽寺さん

まるで、鋭い茨の檻……素手で触れるとズタズタに傷がつく様な鋭利な彼女。そんな彼女に、月神さんが一歩踏み込んだ

月神「陰陽寺さん。どうなの……?」

月神「私には、貴女が人を傷つけるとはとても思えないの……!」

震えを隠しきれていない声で、陰陽寺さんへ問う。その中に籠められた想いに、向けられた彼女は……

陰陽寺「……僕は」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:41:41.64 ID:B0eBlC/WO<>
陰陽寺「誓って、殺しだけはしていない」

月神「陰陽寺さん……!」

毅然と、無実を主張した。その瞳に宿る光は強く、自分の信じる正義を讃えている

御影「してないって言ってもさあ……陰陽寺さんにしか出来ないんだよ?」

陰陽寺「していないものはしていない。自身の無実は、僕が証明して見せる」

月乃「……どうやって?」

陰陽寺「現場は音の響くダンスホール。そして使用された凶器は美術室の彫刻刀だ」

陰陽寺「そして、デイビットは無抵抗だった。心臓を一撃で突き刺して殺している」

瀬川「うんそうだね。で、それがどうかした?」

陰陽寺「僕にはその芸当が出来る。それを否定する事はしない」

瀬川「なら、犯人は陰陽寺さ……」

陰陽寺「僕は犯人じゃない」

静かに、だけども激しく反論してきた。ここを切り抜けないと私は、一生陰陽寺さんに勝てない……!


         反

陰陽寺「僕は僕だけの正義を信じる」

   論

 !


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:42:18.02 ID:B0eBlC/WO<>

【反論ショーダウン  開始】

『コトノハ』
【工具セット】
【壁のシミ】
【竹田の証言】
【更衣室の壁の傷】
【ジャージ】



陰陽寺「僕が犯人だという根拠は理解した」

陰陽寺「だけど、それだけで犯人扱いされる訳にはいかない」

陰陽寺「僕が犯人で無い以上、何処かに見落としがあるはずだ」

陰陽寺「誰も議論していない部分に、な」


瀬川「誰も議論していない部分……って、何処?」


陰陽寺「彫刻刀を力強く刺すならば、【道具を使えば】誰にでも出来る」

陰陽寺「【工具セットのハンマーを】使って叩けば深く突き刺す事が可能だ」

陰陽寺「彫刻刀と【同じ場所にあった】のだから、犯人が知っていてもおかしくは無い」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:44:26.77 ID:B0eBlC/WO<>
【工具セットのハンマーを】←【工具セット】



瀬川「その反論、打ち切っちゃうよ!」論破!

瀬川「工具セットは未開封の状態だったんだ。犯人が中の道具を使える訳ないじゃん!」

御影「そうだよ! ボクも確認したからね!」

月乃「……本当に未開封だったの?」

古河「一気に不安になってもうた……」

駆村「俺も確認したから安心してくれ。御影の言う事は間違ってないぞ」

竹田「なら決まりだな。犯人は工具セットを使ってない。もしくは知らなかったんだろうよ」

瀬川「工具セットのハンマーを使ってない以上、彫刻刀を突き刺すのは犯人の力で行ったはずだよ」

瀬川「それともダンスホールの鎧をハンマー代わりにしたって言ってみる? あんな重くて取り扱いの悪いもの。とても使えないと思うけどね!」


        反

陰陽寺「背水死中に活路を見出だす」

   論

 !


<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:45:07.72 ID:B0eBlC/WO<>
陰陽寺「まだだ。僕はまだ諦めていない」

陰陽寺「お前の推理が本当に正しいか、僕が試してやる」

瀬川「お、往生際悪っ……!」

陰陽寺「何とでも言え。活路に光明がある限り、僕は折れる訳にはいかない……!」


【反論ショーダウン  続行】
『コトノハ』
【工具セット】(済)
【壁のシミ】
【竹田の証言】
【更衣室の壁の傷】
【ジャージ】


陰陽寺「そもそもの推理が狂っているんだ」

陰陽寺「ジャージが落ちていたから更衣室にいた。確かに理に適った推理ではある」

陰陽寺「だが、それはあくまでも物質的な証拠のみで構成されている推理だ」

陰陽寺「【ジャージ以外に証拠は無い】。ならば、根本から推理が間違っている可能性もある」

陰陽寺「僕は犯人じゃない……それを認める訳にはいかない……!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:45:39.89 ID:B0eBlC/WO<>
【ジャージ以外に証拠は無い】←【更衣室の壁の傷】



瀬川「その反論も停止しちゃうよ!」論破!

瀬川「更衣室のはジャージだけじゃないんだよ。壁に傷がついていたんだもん」

瀬川「月乃さん、見てない? ほら、窓の下についてた傷だよ」

月乃「……ああ、確かにあった」

瀬川「ふぅ……どう? これでもまだ犯人は更衣室に行ってないって言い切れる?」

陰陽寺「……………………」

目を閉じ、観念した様に俯く陰陽寺さん。その姿は負けを認めたと言わずともわかる

……やった。総ての反論を切り倒して、とうとうあの陰陽寺さんを倒す事に成功したんだ

まるでロールプレイングゲームを成し遂げたかの様な高揚感。魔王を討ち滅ぼした勇者を讃える声が無いのは残念だけど……

月神「でも、どうして更衣室の壁に傷が? 犯人はただ隠れていただけでしょう?」

瀬川「まあまあそんなのどうでもいいじゃん。犯人は陰陽寺さんで決まって……」



朝日「うぅん。本当にそうなのかなぁ?」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:46:12.13 ID:B0eBlC/WO<>

瀬川「……は?」

朝日「えっとねぇ、オトコノコでも女子の更衣室に入る事は出来るんだぁ」

スグル「それは朝日さんだけですよ……」

月乃「……そうでもない。死んだ二人の電子生徒手帳を使えば可能」

竹田「あ? 二人ってえと、天地の嬢ちゃんと吊井座の坊主の事か?」

照星「電子生徒手帳……!? 二人の!?」

飛田「そ、それがあればレディの更衣室に入れるのかね!?」

臓腑屋「下心! 下心が出てるでござるよ!」

朝日「一つだけ動かない手帳があるけどぉ、これは吊井座くんの物だと思うんだよぅ」

月乃「……だから、犯人も生徒手帳を使えば男子でも女子の更衣室に入れるはず」

月神「なら、女子の陰陽寺さんだけが犯人とは言い切れない……!」

瀬川「えぇ……」

冗談じゃない……せっかく陰陽寺さんが犯人なのに余計なケチは付けたくないよ……

ここで要らない議論をするのは嫌だ。なら、”嘘”で終わらせちゃおう……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:46:46.64 ID:B0eBlC/WO<>
【ノンストップ議論(嘘)  開始】

『コトダマ』
【校則の抜け穴】
【だるまさんがころんだ】
【二人の電子生徒手帳】
【工具セット】



朝日「二人の電子生徒手帳を使えばねぇ……」

朝日「オトコノコでも、女の子の更衣室に入れちゃうんだよぉ?」

月神「なら、陰陽寺さんだけが犯行が可能だったとは言えないわね……」

御影「じゃあ、犯人は《飛田クンか朝日クン》?」

飛田「オレをさも犯人かの様に言うなッ!」

古河「せやけど、ホンマにそれ天地のなんか?」

月乃「……流石に試してはいないけれど」

月乃「……でも、吊井座の最期は【爆死だった】」

月乃「……これが【りぼんの生徒手帳】である可能性は、極めて高いと思う」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:47:16.45 ID:B0eBlC/WO<>
【りぼんの生徒手帳】←【二人【吊井座の電子生徒手帳】




瀬川「これで嘘つきを暴くよ……!」偽証!

瀬川「それは違うよ……だってそれ、天地さんじゃなくて吊井座君の生徒手帳手帳だもん」

月乃「……は?」

月神「瀬川さん。何を言っているの……?」

嘘だ。そう月神さんの目が訴えている。お前は何を言っているのか。と

陰陽寺さんがクロなのは判りきった事。なら、それを補強する様な証言をすれば……

瀬川「実はさ、私、前に天地さんの生徒手帳を水没させちゃってたんだよね」

瀬川「本人は気にしてないって言ってたけど、多分故障してたんじゃないかなあ……」

駆村「待て! そんな話、天地からは一度も聞いた事が無いぞ!」

瀬川「さあ? それは私も知らないよ」

朝日「でもぉ、あんなオシオキされれば電子生徒手帳だってえ……」

瀬川「あの時、電子生徒手帳を持っていなかった。あるいは回収されてたかもしれないじゃん」

瀬川「何にせよ、あれが天地さんのものだって証明は不可能だよね?」

御影「え? 起動して確かめればよくない?」

月乃「……いや、起動する事は出来る。けど確認には指紋認証が必要」

竹田「流石に死体をここに持ってねえだろうしな」

瀬川「それに、まだ電子生徒手帳が使われていない根拠があるんだ……」

犯人が生徒手帳を使っていない根拠。それは……


1:月乃が電子生徒手帳を持っている事
2:犯人が電子生徒手帳を持っている事
3:電子生徒手帳が乾電池で動いている事

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:48:00.70 ID:B0eBlC/WO<>
1:月乃が電子生徒手帳を持っている事



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「月乃さんが、死んだ二人の電子生徒手帳を持っていた事。これがその証拠だよ」

瀬川「だって、もし犯人が使ったなら、当然、今は犯人が持っているはずだよね」

飛田「おい待てッ! ならば電子生徒手帳を持っていた朝日が犯人なのではないかね!?」

朝日「違うよぅ。だって手帳は月乃ちゃんが持ってきたんだもん」

月乃「……因みに、一階の教室の教卓にあった」

古河「御影ェ! そこお前の担当やろ、何身逃がしてんねん!」

御影「あれ……? おかしいな。そんなの無かったけど……見逃してたかな……?」

まあ、この際場所は何処でもいいんだけどね。重要なのは陰陽寺さんがクロって事実だけなんだから!

瀬川「……で、どう? 陰陽寺さん。犯行が完璧に暴かれた気分は」

竹田「おいおい……マジなのか? 俺には陰陽寺の嬢ちゃんがクロには見えねえ」

陰陽寺「……僕は、犯人じゃない」

月神「陰陽寺さん……」

スグル「本当ですか? 僕も陰陽寺さんは……!」

瀬川「真実は時に残酷なものなんだよ。モノクマ、投票タイムお願い」

モノクマ「あ、もういい? それじゃあオマエラ、お手元のボタンで投票してくださーい!」

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:48:42.75 ID:B0eBlC/WO<>

ハルカ『はーい! それでは、全員の投票が終わりましたー!』



駆村「これで、終わりなんだな……」

臓腑屋「デイビット殿……無念でござろう」

投票先は迷わず陰陽寺さん。あの無愛想な顔に一泡吹かせられた事で、胸は清々しい気分でいっぱいだ

陰陽寺「……僕は」



ヨウ『それでは、オマエラの投票結果は正解なのか、果たして不正解なのか!』



飛田「くううっ、また、あのオシオキを見る羽目になるとはッ!」

古河「なんでや……なんで腐ってもヒーローのクセに殺したんや!」

月乃「……本当に、残念」

皆も、最早疑う余地は無いと言わんばかりに陰陽寺さんを睨み付ける。彼女の普段の鋭い眼光も、今は可愛らしく怯えている

陰陽寺「僕は、僕は!」

陰陽寺「犯人じゃ、ない……!」

瀬川「……あれ?」

最期。陰陽寺さんが精一杯の力で叫ぶ

絶叫が脳裏にこびりつく。私には、その言葉がどうしても嘘には聞こえなくて……




モノクマ『それでは、今回の投票の結果を発表しまーす!』



<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:49:35.69 ID:B0eBlC/WO<>







【投票結果】
 陰陽寺 魔矢:13票
 無投票:1票








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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:50:19.36 ID:B0eBlC/WO<>
モノクマ「うぷぷっ、それでは結果を発表します」

モノクマ「今回、デイビット・クルーガークンを殺したのは陰陽寺魔矢さん……」



モノクマ「……では、ありません! 残念!」



瀬川「………………………………は?」

モノクマは、今、何て言った?

クロ、じゃない? 本当の犯人は、陰陽寺さんじゃない……?

そんな、嘘だ、間違いなんてない。だって、議論でおかしな部分は無かったのに……

思考が追い付かない。どこで間違えたのか、どこで道を踏み外したのか……

月神「モノクマ。今、なんて……」

モノクマ「言葉通りの意味だよ。今回のクロは陰陽寺さんじゃないんだってば」

飛田「な、何をバカな事をッ! これまでの議論は間違いなかったはず……」

モノクマ「間違っていたんだよ。とにかく今回のクロには、約束通り卒業の権利を与えます」

約束通り……なら、私達は、これから……!

モノクマ「そ、し、て! 間違えたダメダメなオマエラには約束通り……!」

瀬川「ま、待ってよ……! 一回だけ、一回だけ間違えただけじゃん……!」

モノクマ「吊井座クンだってちゃんとオシオキしたでしょ。ワガママ言わないの!」




モノクマ「それでは張り切って参りましょう! 空前絶後、超絶怒濤の…………」

モノクマ「オシオキターーァイム!!!」




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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:51:09.17 ID:B0eBlC/WO<>
瀬川「…………………………あ」


フラフラ、クラクラ、ユラユラ、キラキラ


視界が歪んで煌めいて。世界が崩れて薄れていく




まるで悪い夢の中。早く醒めたい。けど赦されない

この深淵の様な感情を形容するとしたら……




――――『絶望』。これが、私の夢のおしまい……


<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/08(月) 20:51:53.79 ID:B0eBlC/WO<>






………………………………………………………………







<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:09:58.94 ID:mkp4fcdrO<>





………………。

……………………静かだ

あれから、何の音も聴こえない。視界全てが真っ黒に染まって、何もない零に還っていく


既に感覚は無くなっている。いや、私には最初からそんなものは無かったんだっけ……?


暗いドロドロとした澱の中、とろとろになった身体と思考を固めていく


虚空に浮くような不思議な感覚。これは夢? それとも現実? 哲学の様な問いが頭を廻る


ふと、中学生の時に知った蝶の変態を思い出した。幼虫は蛹の中で全てを融かし、成虫としてのカラダを創り直す……


脆弱で矮小な檻の中、必死に明日を夢見る虫けら。それが、何故か私と重なって見えて……



それを否定したくなって、ほんの少しだけ上に手を伸ばした

<>
◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:10:45.71 ID:mkp4fcdrO<>



瀬川「……んっ、ふぁあ。あれ……」

瀬川「ここって……学級裁判場……?」

長い夢でも見ていた様に、頭が現実への処理に追い付けない

目の前に広がるのは裁判場。最初に来た時とは若干違うけど……まあ、概ね記憶通りだ

そして、周りには変わらない三つの遺影。後は……

スグル「あ……瀬川さん。大丈夫ですか?」

古河「ええ度胸しとるなぁ……裁判中に居眠り決め込むヤツ、オマエ以外におらんわ!」

照星「やっぱりコーヒー飲んどいた方が良かったんじゃないっすか? にひひっ!」

変わらない皆。さっきまでの地獄絵図とはかけ離れた様子は、まるで今までの議論が無かった事になっているみたい

瀬川「えーっと、今どこまで議論したっけ?」

古河「は? どこまでも何ももう投票タイムやろ」

駆村「瀬川が言ったんじゃないか。デイビットを殺したのは陰陽寺だと」

陰陽寺「僕は犯人じゃない」

御影「いい加減見苦しいぞ! もう証拠は上がってるんだよ!」

臓腑屋「にゃあ。拙者は正直な所、これ以上議論の余地は無いと思うのでござる」

飛田「その通りッ。ぐぐぐ、隠れてはいるが可愛い顔立ちをしていると睨んでいたものを……」

どうやら、議論そのものは実際にあったみたいだ。でも、その結末。陰陽寺さんに投票したという未来だけが無くなっている

そして、恐らくはその先の未来は……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:11:27.68 ID:mkp4fcdrO<>
竹田「で、マジな話どうすんだ? もう嬢ちゃんに投票しちまうのか?」

朝日「そうだねぇ。私も、もう何処にも議論する所は無いと思うなぁ」

月神「でも、あの陰陽寺さんよ? 彼女が人を殺すなんて……」

飛田「現実とはかくも残酷なものさ。千早希もそう言っていただろう?」

瀬川「えっ? あ、うん」

スグル「僕も正直、陰陽寺さんがこんな事をするとは思えませんけど……」

月乃「……二人が言っているのは印象に過ぎない。魔矢が二人が思う程高潔な人間では無かっただけ」

御影「そうだそうだ! ボクを馬鹿にした事、まだ忘れてないんだからな!」

古河「ちっさいな! まあ、ウチもクロは陰陽寺や思うわ。てかそれ以外考えられへん!」

陰陽寺「僕は犯人じゃない」

御影「犯人じゃない犯人じゃないってさっきからそれしか言えないのかよ! もう諦めろってば!」

陰陽寺「なら何て言えばいい。僕は本当に犯人じゃない。デイビットを殺していない」

臓腑屋「にゃあぅ、その曲がらぬ意思は評価するでござるが……」

……誰が何をどう言おうと、自分の主張を曲げない陰陽寺さん。けれど、全員の意見も一致している

正直、私は陰陽寺さんが嫌いだ。無愛想だし、ツンケンしてるし、血が通っているのかもわからないし

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:12:07.95 ID:mkp4fcdrO<>

…………けど





陰陽寺「僕は、僕は!」

陰陽寺「犯人じゃ、ない……!」





頭の中で響く声。目の裏に焼き付くあの表情

それは嘘には見えなくて。それが皆に伝えないと、私達は、最低最悪の未来に辿り着いちゃう……!


瀬川「……ま、待って!」

竹田「どうかしたのか? 瀬川の嬢ちゃん」

瀬川「あ、あの……その、言いにくいんだけど……」

御影「言いにくいんだけど?」



瀬川「…………もう一回、議論をやり直さない?」

「「「「「…………は?」」」」」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:13:57.03 ID:mkp4fcdrO<>
古河「……寝ぼけとるんか?」

瀬川「寝ぼけてないよ! ただ、本当に陰陽寺さんが犯人なのかなーって……」

御影「いやいやいや!? 犯人だって言ったのは、他でもない瀬川さんじゃんか!」

瀬川「そうなんだけどさ。何だか急にそう思えなくなったっていうか……」

駆村「大丈夫か? 裁判で疲れるんじゃないか?」

朝日「えへへぇ。瀬川さんはぁ、早く寝た方がいいんじゃないかなぁ」

ダメだ……完全に呆れられている。そりゃ私だってにわかには信じられないよ

どうすれば皆を議論に呼び込める? 証拠も証言も使えるモノは全て使いきった。後は……

瀬川「……まだ、言ってない事があるんだ」

月乃「……は?」

瀬川「まだ皆には話してない事があるんだ。それがもしかしたら陰陽寺さんの無実を……」

古河「オマエまたそれか! この際だからハッキリ言うたるけど、瀬川は嘘ばっかで信用出来へん!」

竹田「確かになあ、前回も吊井座の坊主を釣り出す為とはいえ平気でホラ吹いたのはヤバいだろ」

駆村「そもそも自分で犯人だと追い詰めたのに、次は犯人じゃないって……矛盾してないか?」

陰陽寺「……何のつもりだ。何が目的だ」

瀬川「何が目的。って……」

とうとう陰陽寺さんにすら不審がられてしまった。最早私の言葉は、どれだけ真実を伝えても聞き入れてはくれないだろう

……なら、答えは1つ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:14:40.52 ID:mkp4fcdrO<>
瀬川「目的……? あはは。教えてほしい?」

瀬川「それはね……陰陽寺さんを困らせる為だよ」

今までの議論に縛られるなら、その思い込みを解き放てばいい


スグル「………………? え……っ?」


瀬川「皆も思ってると思うんだけど、陰陽寺さんって無愛想だし協調性は無いし扱いにくいし……」

瀬川「正直、苦手だよね……」

今までの議論が正しいと思うなら、全部違っていたと思わせればいい


駆村「さっきから瀬川は……何が言いたいんだ?」

照星「陰陽寺先輩の事と学級裁判に何か関係があるんすか?」


これから皆には……信じてもらう必要がある

"今までの議論は全部無駄だった"って事に……!


瀬川「関係あるに決まってるじゃん。だって、それが目的だったんだから!」

瀬川「幾ら陰陽寺さんでも、皆に疑われて責められれば少しは身の振り方を反省するでしょ?」

瀬川「あはははっ! 全てはこの為、陰陽寺さんを痛い目に合わせる事だったんだよ」


例え……私の事をどう思われようと。でも、そんな事は今更だよね?

だって、ずっと私は、嘘で繕ってきたカラダの心を纏ってきたんだから……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:15:28.91 ID:mkp4fcdrO<>
御影「えーっと……ボク何言ってるかわかんないんだけど……」

朝日「瀬川さんが、何もしてない陰陽寺さんを犯人にしていたのぉ……?」

竹田「つー事はよ、瀬川の嬢ちゃんは私怨で陰陽寺の嬢ちゃんが疑われる様にしてたんだな?」

月神「酷い……! 陰陽寺さんがどれだけ傷ついたか、考えられない訳じゃないでしょう!?」

月神「陰陽寺さんだけじゃない。ここにいる皆の命を巻き込んでまで、憂さ晴らしするなんて……!」

瀬川「…………………………」



……恐い。初めて彼女に抱いた感覚。隣にいる月神さんは今、本気で私に怒っている

陰陽寺さんが嫌いな事は事実だし、陥れる為に嘘をついたのも本当だ

だからこそ、月神さんの気迫が恐ろしい。この裁判を切り抜けたとしても、私の事を、きっと……



瀬川「……私の事を許せないならそれでもいいよ。けど、これだけは聞いてほしいんだ」

瀬川「もう一度議論をしよう。私だけじゃない、皆の命がかかった本当の学級裁判を!」

でも、立ち止まれない、止まっちゃいけない。この未来が嘘で導かれたものなら、変えられるはずだ

最悪の未来を、もう一度嘘で変える為に……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:16:15.15 ID:mkp4fcdrO<>
【ノンストップ議論(嘘)  開始】
『コトダマ』
【竹田の証言】
【だるまさんがころんだ】
【工具セット】
【三組のアリバイ】



御影「議論するって言ってもさぁ……」

御影「どう考えても《陰陽寺さんがクロ》にしか見えないんだけど!?」

月乃「……証拠は、全て【正しいと思う】」

古河「陰陽寺しか【デイビットを殺せへん】やろうしなあ……」

朝日「朝まで語ろう会にもいなかったからぁ、【アリバイも無い】もんねぇ」

臓腑屋「女子である故に、【女子更衣室に入れるのも陰陽寺殿のみ】でござるな!」

竹田「決めつけるわけじゃあねえが、役満だろう」

駆村「それでも、ここから陰陽寺の無実が証明できるとは思えないが……」

月神「瀬川さん……どういうつもりなの……?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:16:59.78 ID:mkp4fcdrO<>
【アリバイも無い】←【三【三組以外のアリバイ】



瀬川「これで世界をひっくり返すよ!」偽証!

瀬川「それは違うよ……アリバイがあるのは陰陽寺さんだって同じなんだよ」

朝日「ふえぇ……そうなのぉ?」


嘘、本当はそんなの知るわけがない。だけどさっきは無理矢理証拠を造り上げたんだから同じ様に……

この嘘で真実を曲げる……世界を造り上げる……!


瀬川「私、寄宿棟に戻った時に少しだけ外の空気を浴びてたんだ」

瀬川「それで、10時30分位かな……部屋に戻って寝たんだ。誰にも合わずにね」

陰陽寺「それがどうかしたのか」

瀬川「別に? それだけの話だけど」

古河「はぁ!? なんやそれ!?」

飛田「MA☆TE! オレはその位の時刻に、食堂に探しにいったんだぞ!?」

瀬川「そうなの? 私全然気がつかなかったー」

臓腑屋「凄い棒読みでござるよ!?」

瀬川「まあぶっちゃけ嘘なんだけどね。皆さん」

スグル「嘘なんですか!?」

……よし。重要な証言は引き出せた。これ以上つく必要の無い嘘は捨てちゃおう

後はコレをぶつけるだけ……さあ、今だ―――!

瀬川「飛田君。その位の時間に食堂に行ったんだよね? それに間違いは無いかな」

飛田「当然! オレの美しさに賭けてもいい!」


瀬川「なら、その時に陰陽寺さんとすれ違ってたりする?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:17:43.64 ID:mkp4fcdrO<>
飛田「フッ……何を聞くかと思えば……」

飛田「オレは誰とも会っていない! 断言する!」

瀬川「……ふ、ふふふっ! あははははは!!!」

瀬川「ありがとう飛田君! これで、私の思う様に議論を進める事が出来るよ!」

飛田「どういたしましてレディー!」

月神「……瀬川さん。どういう事なのかしら?」

堂々とした答え。それは、今の私の求めていたモノだった


瀬川「飛田君は学園にいた。それなのに陰陽寺さんんに会っていない……これって変だよね?」

瀬川「陰陽寺さんだって学園にいたんだ。それなのに二人が会ってないなんておかしいよ!」

臓腑屋「にゃ、そうでござろうか? 陰陽寺殿は前もって更衣室に隠れておけばよいでござろう」

スグル「デイビットさんが本当に来るかわからないのにですか? 当然、呼び出されたなら時間の指定はしていたはずですけど……」

竹田「幾ら隣同士とはいえ、女子更衣室からはダンスホールの様子はわからねえ。最悪デイビットの坊主がバックレる場合もあるしな」

照星「言われてみればヘンっすね。なんだか行き当たりばったりな気も……」

陰陽寺「犯人は緻密な計画を立てていたはずだ」

陰陽寺「わざわざ犯行の行い辛いダンスホールまで呼び寄せ、女子更衣室に身を隠す。犯行が露見した場合の保険すらかかっている」

陰陽寺「狡猾で残忍な犯人のトリックが、まだ隠されているはずだ」

陰陽寺さんが今とばかりに切り込んでいく。それは否定するだけの少女ではなく、ヒーローとして……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:18:40.03 ID:mkp4fcdrO<>
御影「だ、だけどさ! だからって陰陽寺さんが犯人じゃないとは言えないよ!」

古河「せやせや! 陰陽寺しか出来ひんから、今の今まで疑われとったんやろ!」

臓腑屋「正直な所、陰陽寺殿では無いとはにわかには信じがたい話でござるよ」

議論を修正する事は出来た……でも、ダメだ。まだ大部分は陰陽寺さんを疑っている

陰陽寺さんが犯人なのか。確かに疑問を持つ人はいるけど、それが裁判に与える影響は微々たるもの

どうすれば裁判の流れを逆転出来る? 私だけの力じゃ、もう不可能だし……

……こうなったら、背に腹は変えられない。かな

瀬川「月神さん。貴女はどう思う? 陰陽寺さんは犯人だと思ってる……?」

私を睨み付けてきた月神さん。私の事が憎いであろう月神さんに問いかける

さっきまでの怒りは鳴りを潜め、目を閉じる。月神さんは少し思案し……答えた

月神「私は……陰陽寺さんを信じる。犯人じゃないと思うわ」

月神「根拠は無いけど、それでも……信じたい」

瀬川「……月神さんは、私と同じ意見みたいだね」

照星「自分も……信じてみるっす! 陰陽寺先輩が本当に犯人か、もっと考えてみたいっすから!」

スグル「僕もです……彼女があんな残酷な事をするとは、とても思えません……!」

私の言葉に呼応するかの様に、照星さんとスグル君が同調する。数は揃った。これで皆と戦える……!


ハルカ『はいどうもー! 皆さんお馴染み変形裁判場の出番かな?』

ヨウ『それでは張り切って頑張ってくれ。スイッチオン!』

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:19:34.04 ID:mkp4fcdrO<>
裁判席が空中に浮かぶ。もう二度目だけど、この高揚感と浮遊感はまだ慣れない

隣には陰陽寺さん。月神さん。スグル君。照星さんが並んでいる。対するは御影君を筆頭に陰陽寺さんが犯人だと主張する……



飛田「待てッ! スグル貴様、オレを差し置いてレディに囲まれるとはいい度胸だなッ!?」

スグル「えぇ……?」

飛田「オレもそちらに行くッ異論は認めんッ!」

「「「えぇ……?」」」


……飛び入り参加の飛田君も含めて、私達は大分賑やかになった。役に立つかは別として

とにかく、この議論を制した者がこの最近を制するんだ。負けるわけにはいかないよ!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:20:39.01 ID:mkp4fcdrO<>
駆村「そもそも陰陽寺を見ていないのは、飛田が見逃しただけじゃないのか?」
飛田「見逃すなどあり得ん! オレの嗅覚に賭けてもいい!」
臓腑屋「先んじて女子更衣室にいただけでは?」
瀬川「更衣室にずっと隠れていたら、肝心の犯行が狂う可能性もあるんだよ?」


事件を再確認し構成し直す。そうしていると、ふと脳裏にある疑問と可能性が過る

それはかなり現実味に欠ける可能性。でも……今はこれに懸けてみる……!


瀬川「それに、犯行を終えて外に出た時に、探しに来た人と鉢合わせになる……」

瀬川「そうなったら犯行の全部が駄目になる……そのリスクを背負いながら実行したの?」

月神「確かにそうね……不自然だと思うわ」

朝日「ならぁ、犯人はどうやったのぉ?」

古河「あのダンスホールは一歩でも歩くと音が響くんやろ? なら迂闊に動けへんやん!」

瀬川「あるんだよ。誰も想像しないような、秘密の通路がね……!」

月乃「……秘密の通路? ホグワーツ?」

あ、ノッてくれるんだ……それはそれとして、この推理を裁判場にぶつける!

瀬川「ダンスホールの外だよ。そこから犯人は出入りしたんだ」

御影「あのさぁ……さっき瀬川さんも自分でいったでしょ? 外から入ると音でバレるって!」

竹田「謎かけか? 昔っから頭固えからそういうの苦手なんだよな」

瀬川「そんな難しくないよ……本当に、本当に単純な答えだったんだ」

瀬川「犯人が移動経路にしたのは……”ダンスホールの窓”だったんだよ!」

……ここからが、本当の議論。スクラムの様に一列に並び、意見をぶつけ合う戦場になる

高速の議論、一瞬たりとも見逃せない。皆もついてこれるなら―――!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:22:03.96 ID:mkp4fcdrO<>
古河「ダンスホールの窓て……無理やろ!」

瀬川「無理じゃないよ。足場さえ確保すれば移動に使える通路になる」

駆村「その肝心の足場はどこにも無いだろう!」

瀬川「ある。更衣室に置いてある洗濯ロープ。それを張れば人が乗っても大丈夫!」

瀬川「ロープの端はフック状になっているから、窓のサッシに引っ掛ければ取れないし……」

瀬川「いざ外す時も、逆側から引っ張れば簡単に取れるはずだよ」

竹田「無茶じゃねえか? ロープはどう引っ掛けんだよ。重りがねえと難しいぜ」

スグル「鎧は……使えませんもんね。あの場に全て揃っていましたし……」

竹田「絶対無理とは言わねえ。けどよ、あると無いとじゃ安定感が断然違うぜ」

月乃「……犯人も、そうそう試行する時間は無い」

陰陽寺「握力測定器だ。片側の持ち手にロープを巻き付ければ、簡易的な分銅になる」

陰陽寺「鎖鎌の要領だ。握力測定器を巻いた方は重く、放り投げても軌道は安定する」

陰陽寺「試行回数も最低限に抑えられ、どちらも元は更衣室に置いてあるものだ」

スグル「そうか。一連の工作を終えて片付けても怪しまれない……犯人にとっては一石二鳥の隠れ場所だったんだ」

月神「あっ……もしかして、あの更衣室の壁の傷。握力測定器がぶつかった痕じゃないかしら?」

月神「犯人も命中率を少しでも上げる為に、力一杯投げたはず……だから、壁に奇妙な痕がついたの」

月神さんの一言で議論が収縮する気配を感じ取る。結論は出た。私の推理は正しいと……!

瀬川「これが私達の答えだよ!」全論破!!!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:23:39.27 ID:mkp4fcdrO<>
瀬川「……犯人は窓を使って経路を確保したんだ」

瀬川「これなら、誰にも見られずにダンスホールと更衣室を行き来出来るよ!」

照星「確かにそうかもしれないっすね……」

朝日「でも、どうやってぇ? ロープが切れないって言ってもぉ怖いよぅ」

飛田「不可能でも無いだろう。オレ程並外れた優れたバランス感覚があれば!」

月乃「……なら、やっぱり飛田が犯人?」

飛田「これは自慢であって自白では無いッ!」

御影「この状況でそれを自慢するの!?」

確かにそうだ。私だって、ロープの上を歩けなんて言われたら罰ゲームとしか思わない

いったい犯人はどうしたの? どうやってロープの上を、安全に渡る事が出来たの……?




1:下にマットを敷いていた
2:安全ロープを用意していた
3:何も用意してなかった

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:24:24.55 ID:mkp4fcdrO<>
1:下にマットを敷いていた


瀬川「下にマットを敷いたんじゃない? 落ちても平気なら思いきって動けるし」

駆村「そのマットはどこにあるんだ? まさか体育館から持ち出した訳でも無いだろ」

照星「そもそも、それだともう一回下に降りないとダメじゃないっすか。犯人は更衣室に隠れていたんじゃないっすか?」

うーん、どうやらこれは違うみたい。なら……



2:安全ロープを用意していた



瀬川「安全ロープを巻いていたんだよ。これなら体が固定されるから落ちないでしょ?」

瀬川「洗濯ロープも一本だけじゃないし、何なら倉庫からロープくらい幾らでも……」

竹田「無難っちゃ無難だが、そのロープはどこに巻いてあるんだ? 更衣室から延びきった状態で殺すのは無理だろう」

月神「安全ロープですものね。同じ様に張ったら無意味になるでしょうし……」

スグル「うー……安全ロープは違うと思います……」

これも違うの……!? なら犯人は何を用意して、窓の外を伝ったって言うの……!?

何もせずに渡れる訳がない。それじゃまるで……

瀬川「…………………………あれ?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:27:18.86 ID:mkp4fcdrO<>



引っ掛かったのは、ただ一つの単語だった


頭の中で浮かんだその単語は、まるで炭酸の様に私の中で弾けて回る


パチパチ、パチパチと脳細胞が開いて繋がる。脳内シナプスが限界まで駆け巡る


そして、鮮明に浮かび上がるのは……犯人の正体


それを示す前に、この疑問の答えを打ち出さないといけない。これが私の答え……


この裁判の真実を……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:28:14.12 ID:mkp4fcdrO<>
3:何も用意してなかった



瀬川「これだよ!」解!

瀬川「犯人は何も用意してなかったんだ。だって、犯人には道具なんて無くても……」

瀬川「自信があったからね。自分なら絶対に、失敗する訳が無いってね!」

月神「えっ……じ、自信があった?」

竹田「がっははは! こりゃ一本盗られたな。瀬川の嬢ちゃんはトンチが上手えや」

私の渾身の答えを豪快に笑い飛ばす竹田さん。それ以外の反応は、冷えきったというのも憚られる様な絶対零度

スグル「瀬川さん。冗談はよしてください……」

瀬川「冗談じゃないって! 犯人はロープの上を、壁伝いに歩いたんだよ」

瀬川「そうじゃなきゃ、物証が何一つ無い事に説明がつかないでしょ?」

御影「……ぷっ! あはははは! 瀬川さん、幾らなんでもそりゃ無いよー!」

御影「大体壁伝いにロープを歩くって何さ! そんなのまるで……」

御影「…………え?」

古河「は? どないしたん。なんなんそのえ?は」

御影「えっ、えっ? 嘘でしょ? え?」

月乃「……まさか」

はっと月乃さんが何かに気づいた様な表情になる。その視線は、ある人に向けられていた

向けられている人は……何を考えているか。閉じた目の奥の感情は、まだわからない

だから、ここに引きずり出す。私を一度殺した罰。ここで叩きつけてやる……!

瀬川「……犯人、見つけたよ!」



【この事件の真犯人は?】

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:30:57.32 ID:mkp4fcdrO<>
【臓腑屋 凛々(ゾウフヤ リリ)】




瀬川「御影君は、こう言いたかったんじゃない?」

瀬川「《まるで忍者みたいだ》ってさ」

御影「え……あ、うん……」

確認の為に、御影君に聞いてみる。若干の怯えと、困惑を含みながら答えてくれた

それに応じる様に、月乃さんも頷く。彼女は御影君とは違って、ある種の確信を持っていた

竹田「ちょいと待て……忍者だと?」

古河「忍者言うたら……そんなん……!」

瀬川「女子更衣室に入れるのは当然女子。そして、陰陽寺さん同様アリバイは無い……」

瀬川「それに、ロープの上を何も用意せずに歩ける人なんて貴女しかいないんだよ」

瀬川「貴女も犯行は可能なんだ。臓腑屋さん」

瀬川「貴女が、デイビット君を殺した犯人だよね」

臓腑屋「……………………」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:31:58.07 ID:mkp4fcdrO<>
臓腑屋「……瀬川殿は勘違いしているでござる」

瀬川「へぇ、勘違い?」

臓腑屋「まず、犯人がロープを使って移動した等、現実的に考えてあり得ないでござる!」

瀬川「でも、女子更衣室とダンスホールの間の壁には変なシミがついてたんだよ?」

瀬川「犯人が着ていたジャージにも血痕がついていたんだ。あれは犯人が壁伝いに進んだ……」

臓腑屋「見違えただけでは? まさか、触って確認した訳ではないでござろう」

そう来るか。確かにあれは血痕だけど、それを見たのは私だけだし……

臓腑屋「やはり、犯人は陰陽寺殿しかいないでござろう。全ての条件を満たすのがその証拠!」

臓腑屋「な、に、よ、り! 拙者は忍者では無いのでござるからな!」

胸を張って、自分の意見を主張する。そこからは、犯人だという後ろめたさも弱気も感じない

だけど、臓腑屋さんの主張……陰陽寺さんがクロというのは間違っている。それは身に染みて理解した

臓腑屋さんの主張、どこから崩す……?

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:32:53.18 ID:mkp4fcdrO<>
照星「臓腑屋先輩がクロ……? でも……」

月神「信じられない……あんなに皆に尽くしてきた臓腑屋さんが犯人なんて!」

瀬川「そんな事言ってたらキリがないじゃん。私は臓腑屋さんがクロだと思ってるから!」

スグル「ですが、本当に臓腑屋さんがロープの上を歩けるのかどうか……」

臓腑屋「よくよく考えるのでござる。拙者はあくまでも家事代行の身。そんなイメージだけで……」

陰陽寺「出来るだろう」

臓腑屋「出来る訳が……にゃ!?」

陰陽寺「お前はあの時、僕を担ぎながら体育館の梁に登った。一人でロープを渡るなんて簡単だろう」

瀬川「あの時……?」

不意に出てきた言葉で記憶を手繰る。あの時って、もしかして……




陰陽寺「……………………ふん」

臓腑屋「あ、危ない所でござった……!」

御影「え!? 陰陽寺さんと臓腑屋さん!? どこ!?」

臓腑屋「ここにござる!とうっ!」





瀬川「……あ、本当だ! 出来るじゃん!」

臓腑屋「にゃ、にゃあぁああ……!」

さっと顔が青ざめる。まさか、そんな昔の事を出させるとは夢にも思わなかったんだろう

まさか、陰陽寺さんに救われるとは思わなかったけど……これならいける気がする!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:33:43.78 ID:mkp4fcdrO<>
【ノンストップ議論  開始】

『コトダマ』
【ダンスホールの鎧兜】
【飛田の手鏡】
【校則の抜け穴】
【二つの電子生徒手帳】
【工具セット】



月神「臓腑屋さんが、クロ……?」

臓腑屋「待つでござる! 瀬川殿の罠でござる!」

駆村「臓腑屋なら、【ロープの上を渡れる】……」

スグル「女子更衣室に入るのも【問題ない】です」

臓腑屋「違うのでござる! こんなの、有り得る訳が無いのでござる!」

古河「陰陽寺に出来る事は、ほとんど臓腑屋も出来るんやな……」

朝日「本当にぃ……臓腑屋さんがぁ……?」

臓腑屋「そん、な……そんな訳、無いでござる!」

臓腑屋「拙者に出来ない事はあれど、【陰陽寺殿が出来ない事は無い】でござろう!?」

臓腑屋「惑わされてはダメでござる! もう一度、冷静になって考え直すべきなのでござるよ!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:34:21.59 ID:mkp4fcdrO<>
【陰陽寺殿に出来ない事は無い】←【飛田の手鏡】



瀬川「その矛盾! ツマラナイよ!」論破!

瀬川「それは違うよ! 臓腑屋さんにしか出来ない事、本当はあるはずだよね?」

臓腑屋「そんな事……!」

瀬川「ずっと不自然に思ってたんだ。そもそも何でデイビット君が飛田君の手鏡を持っていたのか」

瀬川「どうしてあの日、飛田君が何処を探しても鏡が見つからなかったのか」

瀬川「どうして事件が起きたあの時、デイビット君が鏡を抱えて死んでいたのか!」

一つ一つ丁寧に疑問を提起していく。あの時感じた違和感を、皆にも伝えていく様に

対する臓腑屋さんは、疑問を挙げられる度、顔は青く染まって二つの目は見開かれ、焦点がズレていく

その反応に、確信に近い手応えを感じる。後はこれで、確かめるだけ……!

瀬川「その答えはただ一つ……臓腑屋さん。貴方は飛田君の手鏡を盗んだんだ!」

飛田「ぬ……盗んだだとぉおおぉお!?!?!?」

瀬川「飛田君はあの時食堂で置き忘れたって言ってたけど、本当はその時臓腑屋さんが盗ってたんじゃない?」

月乃「……だから、何処にも見つからなかった」

瀬川「私と月神さんも食堂にいたけど、月神さんにはアリバイがあるし、私は寝ていたし……」

駆村「それ自慢げに言う事じゃないからな」

瀬川「どうしてデイビット君の下敷きになっていたかまではわからないけど……」

瀬川「臓腑屋さん。貴女しかいないんだ。飛田君の鏡を盗めたのは!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:35:01.16 ID:mkp4fcdrO<>
臓腑屋「何を……何を、馬鹿な事を!」

臓腑屋「そんな物、飛田殿が違う所で落としただけの事! デイビット殿はそれを偶然拾っただけ!」

瀬川「それって都合が良すぎない? 偶然拾って、偶然現場に落っこちてたの?」

臓腑屋「それは……!」

瀬川「臓腑屋さん。反論はある? 無いならもう、投票タイムにしちゃうけど」

古河「ちっと強引過ぎひんか? もうちっと反論を聞いてから決めーや」

朝日「陰陽寺さんが犯人じゃないってぇ、決まった訳でもないもんねぇ」

それはもう決まってるんだよ。なんて言えないからここは我慢……

臓腑屋「……瀬川殿の推理は滅茶苦茶でござる」

臓腑屋「窓にロープを張り、そこから経由して移動した。一見矛盾の無い推理でござるが……」

臓腑屋「仮に、デイビット殿を殺害し終えた後、窓枠まで歩けば結局音が響く……無意味でござろう」

照星「あっ……確かにそうっす! 自分達、そんな音は聞いていないっすよ!」

臓腑屋「そうでござろう。万歩譲って瀬川殿の推理が正しいとしても、この様に大きな穴がある!」

臓腑屋「その様ないい加減な推理で拙者を陥れよう等言語道断! 許される事では無いのでござる!」

臓腑屋「先に言っておくでござるが、忍び足にも限度があるでござるからな!」

強気な態度はバレないという自信の裏打ちなのか、臓腑屋さんはさっきとはうって変わってビシリと指を私に突き付ける

音の響くダンスホール。そこから音を立てずに移動するには……

考えろ……常識を捨ててでも、解き明かすんだ……!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:35:40.81 ID:mkp4fcdrO<>
【ブレインドライブ  START】



1:【犯人は、殺し終わった後どうした?】

A.食堂に向かった
B.更衣室に向かった
C.ダンスホールに残った


解:B.更衣室に向かった
瀬川「これだよ!」解!


犯人は更衣室に向かったはず……皆はデイビット君を探しているんだから、入れない女子更衣室は探さないんだ

次は、どうやって女子更衣室まで行ったのか……


2:【どうやって更衣室まで向かった?】

A.隠し扉を使った
B.廊下を歩いて扉から入った
C.ロープを張って足場にした


解:C.ロープを張って足場にした
瀬川「これだよ!」解!


廊下を歩くと、探しに来ていた皆と鉢合わせになる可能性が高い……隠し扉? そんなの考えるだけ無駄でしょ

残っているのは、窓の外……窓のサッシにロープを張って、そこを伝って足場にしたんだ

これが最後……犯人は、あの状況でどうやって窓に辿り着けたのか……


3:【犯人は窓までどうやって移動した?】

A.歩いて移動した
B.ロープに飛び移った
C.\フロート/

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:36:22.70 ID:mkp4fcdrO<>
B.ロープに飛び移った



瀬川「推理を纏めたよ!」CLEAR!

瀬川「そうだ……飛び移ったんだよ! 窓に掛けられたロープまで!」

御影「と、飛び移ったぁ!?」

スグル「確かに、それなら床を歩かないので、音は響かないでしょうけど……」

臓腑屋「それは無理でござる! どれだけの距離があると思うのでござるか!?」

臓腑屋「それを一息で飛び移るなんて、拙者でも不可能でござるよ!」

瀬川「助走をつけて……は、無理だよね。うん」

駆村「踏み台があれば何とかなるんじゃないか?」

照星「でも、そんなのあったっすか?」

竹田「鎧戸や武器は使えねえよな。なにせロープと窓は一方通行だ」

月神「女子更衣室にも、持ち運びの観点からそれらしい物はないでしょうし……」

陰陽寺「無いなら作ればいいだろう」

飛田「どうやってだね……」

月乃「……錬金術? 魔法?」

臓腑屋「拙者は忍者でも無ければ魔法使いでも、錬金術師でも無いでござるから!」

……踏み台を作る? その発言がどこか引っ掛かる

少し考えてみよう。あの場には踏み台があった前提で……!



【犯人が踏み台代わりに使ったものとは?】
 解:○○○ッ○の○体

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:37:28.32 ID:mkp4fcdrO<>
解:デイビットの死体



瀬川「これだよ!」解!

現場の様子を全て思い出す。そして、ある可能性が頭に浮かんだ

きっとこの事件は、私達の想像以上に残酷な……

瀬川「そっか……踏み台は、ずっと私達の目の前にあったんだ……」

朝日「目の前に……? 踏み台なんてどこにもぉ」

瀬川「それは事件の前は、でしょ? 事件の後には踏み台があったんだよ」

古河「いや意味がわからへんけど」

竹田「またトンチか? 嬢ちゃんも好きだな」

照星「むむむ……事件の前に無くて、事件の後にはあったものと言うと……」

月神「……まさか! デイビット君の死体を足蹴にしたと言うの!?」

臓腑屋「にゃ!? そんな事……!」

瀬川「デイビット君には引きずった跡は無かった。けど、それはあくまで外部からの跡……」

瀬川「踏み台として蹴った、微かな跡が付かない様に調整して飛んだんだ!」

駆村「何て奴だ……死体を道具にするなんて……!」

月乃「……自分が殺した人間、死者への冒涜。人間を何だと思っているの」

……口々に、臓腑屋さんへの批難が飛び交う

自分の殺したデイビット君を、まるで道具の様に扱った非道な行いは、皆には許しがたいんだろう

だから、そろそろ負けを認めて……降参してほしい

瀬川「どうかな、臓腑屋さん。まだ認めない?」

臓腑屋「…………………………まだ、まだやれる」

臓腑屋「裁判の趨勢は決してはいないのでござる」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:38:23.80 ID:mkp4fcdrO<>
瀬川「……まだ、諦めないんだね」

……残念な事に、臓腑屋さんは認めてはくれない

寧ろ、その姿からは素人の私でも察する事の出来る濃密な殺気が露になる

隣にいる飛田君や駆村君。離れているはずの陰陽寺さんに照星さんすら、各々固く身構えている……

臓腑屋「そも、拙者ではなく陰陽寺殿が疑われたのは、デイビット殿を一撃で葬ったという事実故」

臓腑屋「すなわち、拙者では殺す事は出来ても一撃で殺す事は不可能! さすれば、犯人は陰陽寺殿であるというのは自明の理!」

臓腑屋「仮に出来たとしても、デイビット殿は凶器を持った拙者に背を向けた事になる。それも真ん中まで来た上で、逃げようとしたことになる」

臓腑屋「不自然でござろう。呼び出された事を承知で誘われた挙げ句! むざむざと犯人に近づいたのでござるからな!」

……そう。臓腑屋さんにデイビット君を一撃で殺せたのかは正直疑問だ。彼女は見た目通りのスピードタイプだし……

それに、デイビット君は凶器を持った臓腑屋さんにわざわざ近づいたの? 幾ら彫刻刀とはいえ、あのデイビット君が見逃すとは思えない

臓腑屋「考えられる可能性は一つのみ。陰陽寺殿の力で、無理矢理屈服させたのでござる」

臓腑屋「犯人は……陰陽寺殿なのでござる!」

陰陽寺「……………………」

月神「……陰陽寺さん! 本当に違うのなら、自信を持って!」

月神「私が……ついているから……っ!」

……陰陽寺さん。そして他の皆からの反論は無い。きっと、誰も犯行の手口がわからないんだ

なら、この犯行を暴くのは私にしか出来ない……。何となくそんな気がする

だから、もう退けない、止めない、死にたくない。全てを思い出し、全てを繋げ―――!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:39:16.44 ID:mkp4fcdrO<>

        【Re:理論武装】



臓腑屋「拙者が犯人だという明確な根拠は無い!」

臓腑屋「瀬川殿の滅茶苦茶な推理に、惑わされてはならないのでござる!」



まず、全ての疑問を振り返ろう

一つ、デイビット君を一撃で殺すには?

二つ、臓腑屋さんはデイビット君にどう近づいた?

三つ、……どうして手鏡を持っていたのか?

落ち着いて、常識を捨てて考えよう。必ず何処かに解決できるポイントがあるはず……!

……ん? 『解決できるポイント』?



――――――――――――



朝日「こうやってぇ……んっ、身体を押し付けるみたいにどすってすればイけると思うなぁ」


竹田「まあ反応出来てねえとはいえ別に反則じゃあねえしなあ」


その凶器は、真上にある―――の華やかな光に当てられて幻想的な輝きを放っていた……



――――――――――――

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:40:06.65 ID:mkp4fcdrO<>
……そうか、やっとわかった

全ての疑問をいっきに解決できる、《秘密のポイント》が……!



瀬川「……滅茶苦茶なんかじゃないよ」

瀬川「臓腑屋さんにしか使えない……行けない、秘密の隠れ場所があったんだから!」


臓腑屋「バカバカしい! そんな所ある訳ない!」

臓腑屋「隠し部屋? 忍法? カラクリ? そんなものがあればとっくに使っている!」

臓腑屋「いい加減現実を見なよ! 私をどうしても犯人にしたいなら……」

臓腑屋「ちゃんとした証拠を、持ってきてみなさいよ……で、ござるよ!」


臓腑屋「【拙者しか使えない場所なんて、ある訳が無いのでござる!】」



【全ての疑問を解決できる”場所”は?】
 1:リア
 2:ン
 3:シャ
 4:デ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:40:48.39 ID:mkp4fcdrO<>
解:シャンデリア



瀬川「さあ、これがトゥルーエンドだよ!」解!

瀬川「デイビット君の真上にあったシャンデリア。そこから臓腑屋さんは襲ったんだ!」

臓腑屋「にゃ、あっ…………!?」

御影「しゃ……シャンデリアあああ!?!?」

私の答えに一同の驚く声が響き渡る。そして臓腑屋さんの、今日一番絶望したという顔も

その反応で、この推理が正しい事が証明された。後は一気呵成に攻め立てる……!

瀬川「やっとわかったよ。どうして飛田君の手鏡を盗む必要があったのか」

瀬川「それは、デイビット君をシャンデリアの下に誘き出す為……だよね?」

古河「せや……飛田が来たんも、手鏡の事を知らせる為やったんか!」

飛田「お、オレにそんな意図は無かったッ。ただ鏡が見つからず焦っていただけだッ!」

朝日「でもぉ、鏡が大切なものならぁ遅かれ早かれ言ってたんじゃないかなぁ?」

スグル「そうか……シャンデリアの上から全体重をかければ、相当な重さになります」

竹田「落下の速度を加えりゃ倍率ドンだ。成る程、鏡を拾おうと屈み込んだ所をドスッとやったのか」

竹田「……今のは親父ギャグじゃねえぞ?」

瀬川「誰も何も言ってないから……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:41:28.01 ID:mkp4fcdrO<>
陰陽寺「合点がいった。そいつが何故凶器に彫刻刀を選んだのか」

月神「どういう事? 何故シャンデリアの上に潜む事と彫刻刀が関係するのかしら」

陰陽寺「わざわざダンスホールを犯行現場に選んだ以上、凶器の候補は幾らでもある」

月乃「……確かに、どれも扱いにくさはあれど自由に使えるものだった」

月神「普通なら、それらを使おうと思うわね……」

陰陽寺「それでも、彫刻刀を選ぶ理由は一つ。軽量で取り回しのしやすさを重視したんだ」

照星「そうっす! ちょっとでも重いと、身体の勘が変わっちゃうっすから!」

駆村「」

臓腑屋「しょ……証拠! 証拠は無いで……!」

瀬川「あるよ! シャンデリアはその高さの都合、頻繁に掃除する事はしないはずだよ」

瀬川「だから、シャンデリアの上に何かがいた痕跡があれば、臓腑屋さんしかいない事になるよ!」

臓腑屋「……な」

瀬川「どうなの? これでもまだ犯人は陰陽寺さんって言い切れるの!?」

瀬川「是非とも答えてみてよ。私達を納得させられるものならね!」

臓腑屋「にゃ、あ、あぁ……!」



臓腑屋「あああぁぁああぁあぁあああ……!!!」

……轟沈。絶叫とも慟哭とも取れる声で崩れ落ちる

やれやれ。どうやらもう……死ななくて済むみたいだね

瀬川「それじゃあ事件を振り返ろっか。それでもう終わらせちゃおう」

瀬川「嘘偽り一切無い、これが事件の真相だよ!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:42:26.30 ID:mkp4fcdrO<> undefined <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:43:11.53 ID:mkp4fcdrO<>
【クライマックス推理  開始】


Act.1
まず、犯人は今回のターゲット……殺す人を、デイビット君に定めたんだ
デイビット君は前回の裁判でも活躍したし、何より彼がいる限り学級裁判で勝つ事は凄く難しいからね
犯人はデイビット君と会う約束を取り付けたんだ。どうやってデイビット君を呼んだのかまでは流石に知らないけど……
だけど、それでも応じたって事は……誰かの秘密を盾にゆすったんじゃないかな?


Act.2
そして犯人はまんまとデイビット君を呼ぶ事に成功した。けど、デイビット君も馬鹿じゃない……
敢えて食堂に人を集める事で、犯行を防ごうとしたんだ。これは推理じゃなくて私の想像だけどさ
でも、犯人にとっては堪ったものじゃない。計画が大幅に狂ったんだから……
それでも犯人は事件を決行した。デイビット君がいなければ絶対に辿り着けないとタカをくくってね


Act.3
犯人は今回の凶器として彫刻刀を選んだ。これは後で説明するけど、他の凶器ではダメだったから
次に向かったのは女子更衣室。そこで、置いてある洗濯ロープと握力測定器を持っていく……前に、窓を開けたんだ
一連の行為は意味がわからないけれど……実は重要な布石だったんだ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:44:16.74 ID:mkp4fcdrO<>
Act.4
そして、隣のダンスホールに向かったんだ。ダンスホールの窓を開けると……
片方に握力測定器を縛ったロープを、窓に向かって投げたんだ! 放り投げられたロープは更衣室の窓の中に入り……下の壁に命中した
この時に壁に凹みが出来たんだけど……そんな事は知るよしもない犯人は、もう片方、フックのついた方を真ん中のサッシに引っ掛けたんだ
そして女子更衣室に戻ると、ロープをピンと張り、固定した。これが犯人にとって一番重要なトリックだったんだ!


Act.5
全てを終えた犯人は、目標のポイント……シャンデリアの真下に、盗んでいた飛田君の手鏡を置いた
そして最後。犯人はシャンデリアの上に飛び乗り、デイビット君が来るのを息を潜めて待ったんだ……
その間に、そうとは知らない飛田君が食堂に乱入したりしてたみたいだけどね


Act.6
時が来て……デイビット君はダンスホールに来た
最初は困惑したと思うよ、呼び出されたのに、誰もいない様に見えたんだから。……見えないだけで、本当はいたんだけど
首を傾げるデイビット君は、飛田君の手鏡が落ちているのを見つける。さっき食堂まで来た飛田君の為か、それを拾おうと近づいて……
鏡を拾おうとして屈んだ瞬間、犯人はデイビット君の真上から急襲したんだ! 流石の彼もまさか思考の外から襲われるとは思わないだろうね。抵抗も出来ずに即死したんだ


Act.7
犯行を終えた犯人は、用意していた”経路”に向かったんだ
ただ、歩くと音が響いて気付かれるかもしれないから……デイビット君の死体を、踏み台代わりにしたんだ
そうすれば飛距離を稼げるし音も響かない。そして前もって張ってあったロープの上を渡って、隣の女子更衣室に戻ったんだ



常識外れの犯行、予想や思考からも大きく上回ったトリック……シャンデリアの上から殺す事、ロープの上を渡って逃げるなんて、普通じゃ出来っこない

出来るとしたら……貴女だけなんだよ! 【超高校級の家事代行】臓腑屋 凛々さん!

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:45:07.71 ID:mkp4fcdrO<>
瀬川「どう? まだ反論はある?」

臓腑屋「………………だ」

瀬川「ん? なぁに? おっきな声で言ってくれないと聞こえないなぁ〜」

臓腑屋「ま、だ……終わって、ない……」

……嘘でしょ? まさか、まだこの状況をなんとか出来ると思っているの?


そんな事は出来ないと思うけど……何だかすっごく嫌な予感がする……!




臓腑屋「学級裁判とは、議論の後の投票結果により決定される……」

ハルカ『うん、そうだよ!』


臓腑屋「そして、学級裁判に参加した生徒は必ず投票しなくてはならない……」

ヨウ『おう、そうだな』



瀬川「臓腑屋さん……何が言いたいの?」

ブツブツと何かを呟いている。けど、ここからじゃ何言ってるのかさっぱり聞き取れない……

臓腑屋「学級裁判で必ず投票しなくてはならないなら……投票そのものを無くしてしまえば……」




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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:45:39.01 ID:mkp4fcdrO<>






臓腑屋「ここにいる全員を殺せば、誰にも投票される事はない……!」


瀬川・ハルカ・ヨウ『『「は?」』』







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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:46:21.99 ID:mkp4fcdrO<>
竹田「伏せろっ!」

御影「えっ、何が……うわぁああっ!?」

飛田「ギャアアアアアアアア!! オレの髪がああああああああ!!!」

駆村「全員一纏まりになれ! 絶対に外れるな!」

気がついた時には、もう遅かった。姿が消えたかと思うと、あちこちで皆の悲鳴が上がる

咄嗟の事で、全員の対応が一瞬遅れた。その隙に、裁判場を縦横無尽に動き回るのは黒い影

臓腑屋凛々。クロとして暴かれた彼女が、先んじて私達を葬ろうとしている事に……!

月神「瀬川さん! 危ない!」

瀬川「えっ……うわぁああああ!!!」

目の前に、刃物を突き立てんと振りかぶる臓腑屋さん。咄嗟に近くにあった天地さんの遺影を盾にする

遺影の陰から覗く彼女の目……それは、何の感情も感じない、暗いだけの瞳……

瀬川「はぁ、はぁ、危なっ……!」

陰陽寺「どけ、僕が仕留める」

私と月神さんを押し退けて、前に陰陽寺さんが立ち塞がる

竹刀を抜き、じっと構える。……一瞬だった。上段に切り上げた竹刀は臓腑屋さんを仕留め……

瀬川「……てない?」

月神「陰陽寺さん! 上にっ!」

上。そこには刃物を握り、真下に振り落とさんとする臓腑屋さんが

陰陽寺さんも竹刀でガードしようとする。けど、間に合わない……!

月神「止めてーーーっ!!!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:46:58.95 ID:mkp4fcdrO<>




「……とぉりゃあああああああっ!!」

臓腑屋「……!?」

照星「やった……間に合ったっす……!」

瀬川「て、照星さん!? いや、確かに超高校級の柔道家だけどさ……」

間一髪。刃物が陰陽寺さんに突き刺さる瞬間、横から割り込んできた照星さんに投げられる

綺麗な型で投げられた臓腑屋さんは、どうして。と言いたげな表情を浮かべながら照星さんを見ている

照星「正直、どうして臓腑屋先輩が殺したのかはわかんねーっすし、それを否定していいのかも自分にはわかんねーっす」

照星「けど、もう逃げないって、自分が助けられるなら……誰かが傷つく事はさせないって!」

照星「もういない先輩に……天地先輩と吊井座先輩に……誓ったんすよ!」

キリッとした顔で、照星さんが高らかに宣言する。心なしか、私の盾にした天地さんと、向かいにある吊井座君が笑っている様な気がした

臓腑屋「後、少し……だったのにぃいいい!!!」



モノクマ「Zzz……ハッ、寝てた。何かあったみたいだけど、もう終わったみたいだし……」

ハルカ『それでは、お手元のボタンで投票してくださーい!』

ヨウ『果たして結果はどうなのか。投票結果は正解か不正解か!』

モノクマ「それでは投票結果の集計が終わりましたので、早速発表したいと思います!」

モノクマ「では、どうなんだーーーっ!!!」


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:48:57.97 ID:mkp4fcdrO<>






【投票結果】
 臓腑屋 凛々:13票
 無投票:1票









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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/13(土) 20:50:13.93 ID:mkp4fcdrO<>








【 学 級 裁 判  閉 廷 】










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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 20:58:58.25 ID:NBVOAR80O<>
モノクマ「え〜それでは結果を発表します」

モノクマ「今回、デイビット・クルーガークンを殺害したのは……」

モノクマ「…………あっ」

瀬川「えっ」

えっ? あっ、て何。あっ、って

心臓がバクバクと早鐘を打ち始める。額からはダラダラと嫌な汗が流れるのを感じる

嘘でしょ……嘘だって言ってよモノクマ……!

モノクマ「だ〜いせ〜いか〜い! 超高校級の家事代行。臓腑屋凛々さんなのでした〜!」

モノクマ「うぷぷ。どう? ビックリした?」

瀬川「あぁああぁぁあ〜……!」

スグル「わっ、どうしたんですか!? 気分が優れないですか?」

月神「大丈夫……? 腰が抜けたのかしら……」

瀬川「平気平気……良かったぁ……」

……本当に良かったぁ。また、あの死んだ様な感覚を味わうのは勘弁だよ。……私はね

胸を撫で下ろして、後ろに振り返る。そこには今回のクロ……臓腑屋凛々さんが、ボロ雑巾の様にうちひしがれていた

臓腑屋「…………………………」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:00:05.12 ID:NBVOAR80O<>
月神「……どうして? どうしてこんな事を!」

月神「デイビット君だけじゃない。失敗すれば貴女も死ぬ事はわかっていたのに!」

臓腑屋「……誰も真相に辿り着けなければ、死ぬのは拙者以外の御仁でござろう」

臓腑屋「特に、中核となるであろうデイビット殿。彼の者さえいなければ裁判は成り立たない」

臓腑屋「リスクとリターンを天秤にかけ、リターンの方が大きい……そう感じただけでござる」

彼女の言葉に怒りの感情が沸々と沸き上がる。皆もきっと同じだろう。明らかに顔をしかめている

御影「くそっ! ボク達を馬鹿にしやがって!」

古河「生憎やったな! オマエの企みは、ウチらに通じひんかったちゅー事や!」

うん。実は通じていましたーなんて言えないから、この事は私の胸の中に留めておこう

そんな事より、もっと大切な事があるしね

スグル「……殺そうとした経緯はきいていません。それよりも話して欲しい事があります」

スグル「どうして、殺そうなんて思ったんですか」

静かに、スグル君が問い質す。確かな怒りを感じる声。普段のオドオドとした態度は鳴りを潜めていた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:01:09.27 ID:NBVOAR80O<>
臓腑屋「…………………………」

それでも、臓腑屋さんは口を開かない。固く両目を閉じたまま、微動だにしなかった

陰陽寺「今更、聞くまでもないだろう」

駆村「聞くまでもない、か……そうだよな」

モノクマ「え? そうなの? 言ってみないとわからない事もあると思うよボクは」

臓腑屋「……件の動機でござる。最早隠し立ては無意味、事のあらましを話すでござるよ」

……やっぱりか。正直それしかないと思ってたけど

突っ込まれて観念したのか、臓腑屋さんはぽつぽつと事件の裏を話し始めた……

臓腑屋「まず、瀬川殿は拙者がデイビット殿を呼び出したと話したでござるな」

瀬川「うん。確かにそう言ったけど」

臓腑屋「それは、本来は違うのでござるよ。拙者がデイビット殿を呼び出したのではなく……」

臓腑屋「デイビット殿の方が、拙者を呼び出したのでござる……」

月神「……そんなっ!」

竹田「成る程なあ、合点がいったぜ。なんで坊主が俺達を振り切ってまで行ったのかがよ」

照星「自分から呼んだなら、いかない方が不自然っすよね……」

事実関係は逆だったんだ……まあ結果としてどっちが呼ぼうが関係無かったからいいけどさ

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:01:59.93 ID:NBVOAR80O<>
飛田「んっ? おかしいではないか。殺された方が呼びつける等!」

月乃「……確かに妙ではある。わざわざ自分から殺されにいくようなもの」

飛田「そうかッ! 本来はあのデイビットがコロシアイを起こそうとしたのかッ!」

古河「んなワケあるかい! デイビットがどうシャンデリアの上に登れるって言うんや!」

陰陽寺「頭を働かせられないなら黙っていろ」

飛田「ゴバァ!!」

撃沈した飛田君を尻目に、少し考えてみる。可能性は幾つかあるけれど、これは多分……

瀬川「もしかして、デイビット君が投票した相手って臓腑屋さんだったりする?」

御影「えっ、なんでそうなるのさ!?」

瀬川「だって明らかに余裕があるんだもん。自分から呼んで、それでいて臓腑屋さんが承諾する条件はこれしかない……」

臓腑屋「その通り。デイビット殿は、拙者の秘密を持っていたのでござる」

……やっぱり。自分の秘密をバラ撒かれたくなければ来いって言われたら、誰だって行くに決まってる

あれ……でもおかしいな。だって、確かにあの時……

瀬川「……何で月神さんに投票しなかったの?」

投票前、月神さんは《私に投票して》と確かに全員に言った。誰かの秘密がバレるくらいなら、自分の秘密だけでいいって……

月神「……! もしかして、二人は……!」

臓腑屋「恐らく、その推測は正しいでござる」

臓腑屋「拙者とデイビット殿は、互い互いに投票していたのでござるよ……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:02:50.23 ID:NBVOAR80O<>
駆村「な!? 互いに投票し合っただと!?」

竹田「そんなん通じるのか? 選挙法違反に引っ掛かりそうだけどよ」

ハルカ『それについては私達からお答えしまーす』

ハルカ『結論としては……全然アリ! だってこれ本当の選挙じゃないんだもーん!』

ヨウ『嫌いな相手に投票しろとは言ったが、別に誰でもよかったしな。それに、これが駄目だと月神の案も駄目になるぞ?』

モノクマ「重要なのは秘密の方だしね。勝手に悪口大会でもしてギスギスしたらいいなーってくらい」

朝日「最初から誰でもよかったんだぁ……」

月乃「……本当に卑劣な奴等。わざわざ嫌いな相手なんて言葉を使うなんて」

本当だよ。と月乃さんに相づちを打つ。これじゃ正直に嫌いな相手に投票した私がただのバカじゃん!

臓腑屋「拙者はデイビット殿の秘密を知り、そしてデイビット殿は逆に拙者の秘密を知った」

臓腑屋「その後は……既に、説明するまでも無いでござろう」

古河「なんやソレ……」

照星「えーっと、少し聞いていいっすか?」

照星「その、デイビット先輩と臓腑屋先輩の秘密って……なんなんすか?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:04:11.10 ID:NBVOAR80O<>
月神「照星さん。それは……」

照星「すみません……流石に軽率だったっすね……」

臓腑屋「否。拙者の動機を知りたいと言うのならば言うのが道理」

臓腑屋「これが、デイビット殿の秘密でござる」

いやにテキパキと答え、電子生徒手帳を起動させる

手に持った電子手帳に、鮮明に映っていたのは……

『デイビット・クルーガークンは、父の部下の失態を公表した事で辞職に追いやっている』

駆村「これは……」

臓腑屋「詳しくは教えてはくれなかったでござる。しかし、事実である事は確認済み故」

月神「あのデイビット君が……? 彼が秘密を話すなんて事……」

古河「プロファイラーってよう知らんけど、警察の仲間なんやろ? なら……!」

竹田「機密漏洩に当たる可能性があるな。まあ、既に死んじまった後だから確認出来ねえけどよ」

臓腑屋「……デイビット殿は信用出来なかったのでござる。拙者の秘密を誰かに話されたら……!」

瀬川「ふーん。で、その臓腑屋さんの秘密って?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:05:17.36 ID:NBVOAR80O<>
月神「……瀬川さん!」

瀬川「デイビット君の秘密はわかったよ。で、その上でもう一度聞くけど……」

瀬川「臓腑屋さんの秘密って何? 今の話だと、自分の秘密がバラされたくないから殺したって聞こえるけど?」

駆村「いい加減にしろ! 何度も責めるような事をしつこく聞くなんて、どうかしているぞ!」

瀬川「どうかしてるのは臓腑屋さんの方だよ! 皆だって、本当は知りたいはずだよね?」

瀬川「どうして仲間が殺されたのか……それを知りたくない方が、どうかしてるよ!」

どうかしてる? その言葉にカチンとくる。誰のお陰で今生きていられるのか。わかっていないみたいだね……!

一気に捲し立てるように責め返す。反論を許さない論調で、造反劇を促すように

……実際の所、私の個人的な興味もあるけどね

御影「ま、まあ瀬川さんはしつこいけどさ? ボクも知りたいなー……なんて……」

古河「何でなんや……人を殺してまで守りたい秘密なんて、そんなんあるんか……?」

臓腑屋「……拙者の、秘密は」

臓腑屋「…………どうせ、理解できないでござるよ」

不貞腐れた様な声色で吐き捨てる。その表情には、見覚えがあった

まるであの時の、パパの絵を破って叱られた時に鏡に映っていた……

モノクマ「えー、どうやら本人からは言う気が無さそうですし、かといってデイビットクンの生徒手帳は動かせないので……」

モノクマ「ボクから発表したいと思いまーす!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:08:18.70 ID:NBVOAR80O<>







『臓腑屋 凛々は、忍者である』







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◆nV158uMR4EBZ<>sage<>2019/07/22(月) 21:10:01.36 ID:NBVOAR80O<>
瀬川「…………………………」

瀬川「……………………は?」

……え? 今、モノクマは何て言った?

聞き間違い? でも、私だけかと思ったら皆も首を傾げているし……

現に、皆は口々にモノクマへの疑問を示している

スグル「あ、あの……聞き間違い。でしょうか?」

飛田「き、きっとそうに違いない。本当の秘密を話したまえッ!」

モノクマ「さっきも言ったでしょ? 臓腑屋さんは忍者なの」

御影「えっ!? 本当に忍者だったの!?」

古河「忍者って……んなアホな! そんなん見ればわかるやろ!」

朝日「それにぃ、何でそれが動機になるのぉ?」

月乃「……これで人を[ピーーー]ほどの動機になるとは、とても思えない」

月神「モノクマ……ふざけていないで、本当の動機を話して……」

臓腑屋「……だから言ったでしょう。言ったってわからないって」

臓腑屋「誰かの秘密なんて理解出来なくて当然の事なのに、それを知ろうなんて……」

御影「臓腑屋さん……? なんか、普段とキャラが違わない?」

モノクマ「あのさぁオマエラ。一応聞くけど……」



モノクマ「臓腑屋さんが、ずっとその格好で今の今まで生活してきたと思っているの?」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:12:54.52 ID:NBVOAR80O<>
瀬川「……え?」

モノクマ「だからさぁ、臓腑屋さんが毎日その忍者服を着て、ござるござる言いながら……」

モノクマ「ここに来るまでそう生きてたって、本気でそう思っているの?」

そう話すモノクマを、ふっと鼻で笑う臓腑屋さん。いや……笑われているのは私達の方か

臓腑屋さんが今までどう暮らしてきたか。なんて、全く考えた事も無かったけれど……

でも、なんとなく『今がこうなんだから、きっと、ずっとこうだったんだ』って思っていた

それは、アニメのキャラクターの様に……勝手に私が固定化した空想だった事を忘れていたんだ

御影「それは……えっと、うん……」

照星「そう、思ってた……っす。自分、臓腑屋先輩のその姿しか知らなかったっすから……」

臓腑屋「そうだよね。皆は拙者の……私の本当の事なんて知らない……わからない」

臓腑屋「だから、何が何でもこの事は知られたくはなかったのに……!」

ギリッと歯を鳴らして、血走った眼で睨み付ける。憎悪を迸らせるその顔は、確かに見た事ない表情だ

月神「でもどうして? 臓腑屋さんは普段……」

陰陽寺「ただの忍者というだけで、人を殺すまでに至るとは考えられない」

陰陽寺「考えられるのは忍者である事が周囲に知られる事。それそのものが恐ろしかったんだろう」

臓腑屋「……く。ふふ、ふふふふ」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:13:55.29 ID:NBVOAR80O<>
陰陽寺さんに指摘され、自嘲気味に笑う

それを崩したのはモニターからの声。画面奥の二人の手には、テロップが握られていた

ハルカ『えー、丁度いいので特別企画、”あの人は今。ニンニン修行虎の巻”をお送りしまーす』

ヨウ『なんだそれは、ちなみに内容は今回の動機に関してだから安心して見てくれよな!』

臓腑屋「……! 勝手に話すな!」

必死な声で制止するけど所詮テレビの中の絵空事。叫びも虚しくスラスラと語られていく裏の部分……

ハルカ『臓腑屋さんの家……取り合えず仮名で佐藤さんにしておきますが、そこはかつて日本で動いていた諜報を専門とする組織でした』

ヨウ『その歴史なんと数世紀以上! 明治時代辺りから活動が確認されているな』

ヨウ『当然組織としての記録が残っていたのがその辺りというだけの話だからな。もしかしたらもっと長いかもしれないぞ?』

ハルカ『まあざっくりいうと、凄い旧家の人って事だね! 佐藤さん!』

陰陽寺「……………………」

飛田「な……つまり凛々は深層の令嬢ッ!?」

朝日「全く気づかなかったよぉ。臓腑屋さん。凄く偉い人だったんだねぇ」

臓腑屋「……気づかせないようにしていたんだよ。知られたら困るから……」

瀬川「え? 何で? 知られたら困るって……」

普通、自分の家が偉いなら自慢したくなるのが人情だ。私はそうだったし……

疑問は置き去りに。話はスラスラと進んでいく……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:15:00.27 ID:NBVOAR80O<>
ヨウ『さて、そんな物凄い家の出身という佐藤さんは普段何しているのか?』

ハルカ『そんな物凄い家なら、きっとやんごとない暮らしをしてるんじゃない?』

ヨウ『ところがどっこい、そうでもないのさ。何故なら世を忍び、人を忍んで活動してきた一族……』

ヨウ『そう易々と、他人に本来の素性を明かす事なんて出来ないのさ!』

ハルカ『そっか! だから臓腑屋さんは本名を教えてくれないんだね』

瀬川「え!? 臓腑屋さんって偽名なの!?!?」

月乃「……そこ、強く反応するところ?」

瀬川「あ、ゴメンゴメン。お気になさらず……」

臓腑屋「……正確には、外で使う名前と内で使う名前があるんだよ。本当の名は私にもわからない」

さらっととんでもない事を……名前が複数あるのは

ハルカ『要するに超高校級の家事代行の時は臓腑屋さん。普通の女子高生の時は佐藤さんって事かー』

ヨウ『ややこしいがそういう事だな。取り合えず今は佐藤さんという体で話を進めるぞ』

ハルカ『佐藤さんの普段の生活は、まあ普通だね』

ヨウ『普通に起き、普通の服を着て、普通の友人と普通の話題を話して、普通の授業を受ける』

ヨウ『まあそんな普通の日々だ。本当に何も書く事が無い位にはな』

ハルカ『ふーんつまんなーい。じゃあ臓腑屋さんとしての生活はどうなの?』

ヨウ『安心しろ。こっちはかなり面白いぞ!』

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:16:42.05 ID:NBVOAR80O<>

ヨウ『普段は目立たない地味な存在である佐藤。しかしその裏の顔は!』


ハルカ『闇に紛れて人を撃つ。握手を交わしたその手で首を切る! まさに必殺仕事人!』


ヨウ『忍者と聞いて連想する体験は一通りこなしている。正しい歴史の遺物がそいつさ』


ヨウ『現代に生きる忍、暗闇に潜む暗殺者。それが今目の前にいる、臓腑屋凛々の正体さ!』



臓腑屋「……………………!!!」

……愕然。それは、ここにいる全員……モノクマとその一味以外に当てはまる感情だろう

皆は臓腑屋さんを、まるで異物を見るような視線で見つめ、当の本人は膝から崩れていく

……コスプレなんかじゃなかったんだ。臓腑屋さんは、いや、彼女は、本物の忍者だったんだ……!

駆村「な……なら! その姿や口調はいったいなんなんだ!?」

竹田「ああ、成る程な……まさか、忍者のモノマネしている奴が本物とは思わねえだろうよ」

竹田「木を隠すなら森の中、か。百戦錬磨だからか随分とイメージ戦略が上手いこった」

臓腑屋「ふ、ふふふ……皆、忍者忍者って言ってたもんね……私は……」

臓腑屋「忍者、じゃ……ない、よ……」

瀬川「臓腑屋さん……」

……きっと、私と臓腑屋さんは似た者同士なんだ

違うとするなら、臓腑屋さんはキャラクターに飲み込まれて、私はキャラクターに溺れている事……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:17:58.89 ID:NBVOAR80O<>
瀬川「臓腑屋さん。私は……」

スグル「それでも、殺すのはダメなんです」

瀬川「……スグル君?」

一歩、臓腑屋さんに近づくスグル君。その顔は普段のオドオドとした、子供っぽい表情じゃなくて……

決意を秘めた、一人の男の子の顔だった

スグル「デイビットさんは、臓腑屋さんを信じていたから自分の秘密を貴女に明かしてもいいと思ったはずなんです」

スグル「なのに、貴女がデイビットさんを裏切ってしまったら……!」

臓腑屋「じゃあどうすれば良かったの!?」

臓腑屋「ずっとずっとずっと、私はこんな事したくは無かったのに! 口調も服も染み付いていて変えようって思えなかった!」

臓腑屋「自分を変えたくっても変えられない。そういう人間だっているんだよ!」

スグル「……それは、」

叫ぶ、叫ぶ、思いを叫ぶ。臓腑屋さんは、最早取り繕う事すら忘れ、猛り狂う様に響かせる

スグル君も、彼女の心はわからない。狼狽える彼に助け船を出したのは、少しだけ意外な人だった

照星「そんな事、無いっすよ……必要なのは、考える勇気だと、自分は思うっす」

照星「考えたその先が怖くても、それを受け入れれば、きっと変われるはずなんっすよ!」

臓腑屋「そんなの……綺麗事だよ! 私は……強く、無いんだよ……」

眩しすぎる、綺羅星ストレート。その輝きは、闇の住民である臓腑屋さんにはキツいはず

……私? 私は臓腑屋さんに賛成かな。私は弱い方だから、ね

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:19:28.16 ID:NBVOAR80O<>
モノクマ「えー、それではそろそろ……」

陰陽寺「待て。言い忘れていた事がある」

月神「陰陽寺さん? それって……」

モノクマ「んもう、早くしてね!」

モノクマを制止して、臓腑屋さんに歩み寄る。その姿には、静かなのに有無を言わせない迫力があった




臓腑屋「……濡れ衣を着せようとした事は謝るよ」

臓腑屋「陰陽寺さんに罪を被せれば、皆は私を疑わなくなる。そう思ったから……」

陰陽寺「ありがとう」

瀬川「え?」

スグル「へ?」

臓腑屋「……は?」



想定外の事態に頭の処理能力が追い付かない。あの陰陽寺さんだよ? 

その陰陽寺さんが、頭を。しかも、クロに向かって下げるなんて……!

陰陽寺「入学式の時、お前に助けて貰わなかったら死んでいた。命の恩人だ」

陰陽寺「お前がいなくなる前に言っておきたかった事だ。僕を助けた事、僕は絶対に忘れない」

臓腑屋「な、あ、あ……」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:21:05.65 ID:NBVOAR80O<>
モノクマ「ねえねえ、もういい?」

陰陽寺「ああ。僕の言いたい事は終わった」

本当にあれだけ言いたかったんだろう。スタスタと臓腑屋さんの元から去っていく

きっと、これは陰陽寺さんなりの仕返しだ。もしくはヒーローとしてのせめてもの矜持かな?

『貴女は、悪人では無かった』そう言いたかったのかも……まさかね

臓腑屋「……あ、あ、あ…………!」

臓腑屋「ごめんなさい……! ごめんなさい!!」

臓腑屋「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」

対する臓腑屋さんは、バグったみたいに謝罪を続けている

誰に対して謝っているんだろう? 殺したデイビット君? 助けた陰陽寺さん? 騙していた私達?

臓腑屋「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

偽り続けていた、名前も知らない誰か? それとももしかして全部乗せ?

……多分、本人にもわからないんだろう。そう言う風に、今まで生きてきたみたいだから

臓腑屋「私は……! 私は……っ!」

モノクマ「それでは、今回は超高校級の家事代行である臓腑屋 凛々さんの為にスペシャルなオシオキを用意しました!」

モノクマ「それでは張り切って参りましょう! オシオキターーーイム!!!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:22:58.50 ID:NBVOAR80O<>







GAME CLEAR!

ゾウフヤ さんが クロに 決まりました

オシオキ を 開始 します







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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:24:41.39 ID:NBVOAR80O<> undefined <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:25:35.52 ID:NBVOAR80O<> undefined <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:30:46.05 ID:NBVOAR80O<> undefined <> ◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:31:58.21 ID:NBVOAR80O<> ※

小さな白い丘の上、臓腑屋さんは座っていた
こんもりとうず高く盛られた頂点。まるで昔の罪人の様に、後ろ手を組み縛られている

周囲にあるのは銀色の壁。よく見ると、どこかメカニカルな印象を受ける不釣り合いな背景だ
突然、臓腑屋さんの顔に影がかかる。その理由は、臓腑屋さんの前に突然巨大なモノクマが正面にある円形の窓から覗いていたから
その光景で気がついた。臓腑屋さんが座っていたのは洗濯物で、臓腑屋さんが今いるのは巨大な洗濯機の中なんだと

ピッとモノクマがスイッチを押す。『入水』と書かれたボタンが点滅し、洗濯機が動き始めた……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:34:33.03 ID:NBVOAR80O<>
『はいすぴィど・ぼでぃーうぉっしゅ』
『超高校級の家事代行  臓腑屋 凛々処刑執行』


ガタガタゴットン! ズッダンズダン!
洗濯機は不協和音を奏でながら、激しく激しく揺れていた
その中では白の洗濯物が水を舞い、臓腑屋さんは息継ぎも出来ず振り回されている
衝突したかと思えば洗濯物に絡め取られる。それを外すと、また壁に衝突の繰り返し……
水流と障害物に阻まれて、呼吸を狙う余裕も無い。洗濯物を取る手も鈍り、もう……。……その時だった

外では『脱水』と書かれたボタンが点滅し始める。寸前の所で、責め苦から逃れられたんだ
洗濯機の中の臓腑屋さんは、死にかけとはいえまだ息をしている。虫の息といってもいい様な弱々しい呼吸だけれど
そんな事もお構いなしに、モノクマは洗濯物を取り込んでいく。……中にいた、洗濯物に挟まれている臓腑屋さんごと


場面は変わって、そこは青空の眩しい、のどかな原っぱだった
そこでモノクマは洗濯物を干そうとしたのか、木の幹に手をついて……しまった。という表情になる
どうやらロープを忘れてしまったみたいで、洗濯物を手に、慌てて右往左往していた
困り果てているモノクマ。目についたのは、洗濯物に紛れてぐったりとしている臓腑屋さん
臓腑屋さんを引き抜くと木の幹に押し付けて……お腹をまさぐり始めた
抵抗も出来ず、なすがままにされる臓腑屋さん。モノクマはお臍の辺りを擦り……そのまま、腕を突き刺した
びくん!と身体を震わせ、血を吐き出す。お構い無しと言わんばかりに、ずるずると臓腑屋さんの身体からロープを引き出し始める……


充分な長さでもう片方の木に引っ掛け、ロープの上に洗濯物を引っ掛ける
やりきった表情のモノクマの後ろ。真っ青な空の下に不釣り合いな真っ赤な洗濯物がはためいていた

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:39:04.41 ID:NBVOAR80O<> ※



モノクマ「エクストリィィィム!!!」

モノクマ「やっぱり一仕事終えた後の洗濯は最っ高だぜぇぇぇぇぇ!!!!」

飛田「ぶっ……げぇえええぁっっっ!!!」

駆村「大丈夫か!? 気分が悪いなら座ってろ!」

月乃「……朝日、立ってられる?」

朝日「私なら大丈夫だよぉ……ありがとう」

オシオキ……処刑を終えた後の裁判場は、前回以上の地獄絵図と化していた

倒れる人、吐き出しそうになる人、それを介抱する人に、ただ眺める人……

モノクマ「終わった終わった。ボクもう疲れたから巣に戻ってハチミツキメるとするよ!」

モノクマ「それじゃ、まったねぇ〜!」

ハルカ&ヨウ『『まったねー!』』

竹田「どうすんだ。月神の嬢ちゃん……これじゃあ動くのもままならねえぜ」

月神「とにかく、今は心が不安定よ。落ち着くのを待ちましょう……」

照星「……先輩! 立てないなら、自分が支えになるっすよ!」

古河「サンキューな。照星……ちと辛いわ」

竹田「うー……つつつ」

御影「わぁ!? 竹田さん怪我してるじゃんか!」

スグル「もしかして、僕達を庇った時に……」

竹田「気にすんなよ……年上に見栄を切らせんのも年下の仕事だぜ」

スグル「……ありがとうございました」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:40:37.45 ID:NBVOAR80O<>
瀬川「やっぱり、こうなっちゃったね」

月乃「……? どういう意味?」

ぽつり。心の中の声が、外へと漏れだす

漏れ出た言葉は奔流みたいに溢れ出す。誰彼構わずに、全員に叩きつける様に

瀬川「コロシアイだよ。私達がどれだけ止めようとしても、結局は始まっちゃうんだからさ」

瀬川「私達、本当に仲良くなれたのかな……?」

御影「な……っ、何言ってるんだよ!?!?」

朝日「瀬川さんはぁ、皆の事が嫌いなのぉ?」

言葉は濁流になって場を飲み込む。悪意とモヤモヤが混ざった言葉に沈みこんだ

瀬川「そうじゃないけどさ、ただ実際にこうやってコロシアイになってるじゃん」

瀬川「デイビット君も吊井座君も、ここにいた人を信用した事が死ぬ原因になってるんだしさ」

月乃「……それは」

竹田「まあ、否定は出来ねえよな」

瀬川「私達は、仲良くなれっこないんだよ。所詮は他人同士なんだから」

瀬川「だから、皆も気を付けようね。いつ、誰に殺されるかわからないんだからさ!」

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:43:36.68 ID:NBVOAR80O<>
月神「……私は、そう思わないわ」

月神「確かに私達は他人同士。理解し合う事なんて不可能に近い」

月神「けど、だからこそ私達は惹かれるの。自分にない強さや弱さ。全部が魅力的に思えるの……」

瀬川「そんな事言ってたらコロシアイなんて起きないよ。どっちが正しいかなんてわかるでしょ?」

月神さんが私を射抜く。バチバチと火花の散る音が聞こえる。そんな睨み合いが少し続く

それを終わらせたのは……

陰陽寺「瀬川の言う事は正論だろう。月神の言う事は綺麗事に過ぎない」

瀬川「ふふん、そうでしょ?」

陰陽寺「正論は刃物だ。どんな馬鹿でも、振れば誰かを傷つける事が出来る」

瀬川「どんな馬鹿でも……馬鹿ぁ!?」

陰陽寺「問題は使い方だ。正論も空論も使う人間の思いによって凶器にも武器にも成りうる」

陰陽寺「……瀬川。お前は何がしたい」

瀬川「何が、したいって……」

……そんなの、私が聞きたいよ。自分がおかしい事は、私だってわかってる

私のココロに何があったの? 何で、何でこんなに身体の奥がムズムズするの?

この学園生活はどこまでも続いていく。この狂った世界は果てしなく廻っていく

その終着には何が待っているの? 狂った世界の先には何があるの?

いや、そうじゃない。狂っていたのは世界じゃなくて……

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:45:00.37 ID:NBVOAR80O<>


『おかしいよ、――ちゃん。まるでこの世界に住んでないみたい』




瀬川「〜〜〜〜〜っ!!」

スグル「わっ、瀬川さん!?」

照星「どこ行くんすか!? 落ち着くっすよ!」


違う違う違う違う!! わたしはおかしくなんてない。おかしいのは世界の方だ


どこも受け入れてくれなくて、どこも私が嫌いだと笑われて、私は拒絶されたんだ


何がしたい? なら、皆はどうすれば私の事を好きになってくれるの?


頭の中が壊れていく。それは私を写す鏡が壊された様な崩壊感が原因だ


それが耐えられなくて、受け入れられなくて

私は、必死にここから。裁判場から逃げ出した


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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:46:41.50 ID:NBVOAR80O<>




『くっくっく、もう四人。我ながらいいペースなんじゃないか?』

『このままなら、俺達の野望まで順調に進んでいく事が出来る……楽しみじゃないか、なあ?』

『そうだねヨウ君! これからもこの調子で、ガンガンやっていこうよ!』

ヨウ『馬鹿野郎、なんで名前を出すんだ。せっかくのオフレコが台無しだろうが』

ハルカ『ダメだった!? ゴメン!』

ヨウ『まあいいさ。俺達の目的は誰にもわからないだろうしな』

ハルカ『モノクマにも?』

ヨウ『当然。今は従順に奴に従って……』

ハルカ『隙を見てスパッと退治! この彩海学園は私達のもの!』

ハルカ『でも皆は可哀想だよね。知らない内に私達の野望に利用されてるんだもの』

ヨウ『気にするな。どうせ何も変わりやしないさ』

ハルカ『そうだね! だってここプログラムせ

ヨウ『おっと手が滑ったァーーー!!!』

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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:48:59.49 ID:NBVOAR80O<>









【CHAPTER2】
  もうやらないと誓ったのさ 【END】

  生徒総数:12









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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:50:36.99 ID:NBVOAR80O<>


GET:シノビコスメ
 二章を歩き渡った証。臓腑屋凛々の遺品
 これを着れば貴方も忍者。誰じゃ? 俺じゃ! 忍者! 因みに本来の持ち主は着るのを大層嫌がっていたそうな



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◆nV158uMR4EBZ<>saga<>2019/07/22(月) 21:56:55.08 ID:NBVOAR80O<> 本日ここまで。三章はその内に
なにかあるならどうぞ <>
◆nV158uMR4EBZ<>sage<>2019/07/28(日) 22:57:30.86 ID:MYWNZgLQO<> 建てました。よろしくお願いします
【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.3
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1564320430/ <>