以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:07:00.67 ID:luxIPjs0O<>短いオリジナル短編を二作品投稿します。
最後まで、お愉しみください。
それでは以下、本編です。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1561212420
<>納豆キムチ女「……納豆キムチの味がする」納豆キムチ男「……当たり前だろ」
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:08:28.65 ID:luxIPjs0O<> 「好きな食べ物は、納豆キムチご飯です」
小、中、高と、同じ自己紹介を耳にした。
またかと思いつつ、横目で様子を伺う。
眼鏡を掛けた、ショートカットの女子生徒だ。
姿勢が悪く、猫背気味で、暗い雰囲気。
女好きの友人曰く、意外と胸が大きいらしい。
そんな情報は自己紹介と同じくどうでもいい。
しかし、高校に進学するにあたり、人間関係はリセットされており、周囲の興味を惹いた。
だが、腐れ縁じみた俺に言わせれば、彼女に興味を持つことは無意味であると、断言出来る。
「毎日キムチ納豆を食べてるの?」
「いえ……多くても月3回程度です」
「チゲ鍋は好き?」
「いえ……キムチが好きなわけではないので」
「ご飯なしでキムチ納豆食える?」
「いえ……ご飯がなければ好きではありません」
新しいクラスメイトとの質疑応答の内容。
それもまた、聞き覚えのあることばかり。
聞いていて、イライラする。つまらない。
それっきり興味を失い、彼女は孤立する。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:09:59.66 ID:luxIPjs0O<> 「なあ、納豆キムチ女」
「えっ? なんですか……?」
数ヶ月が経過した、放課後の教室にて。
帰ろうとしていた納豆キムチ女に声を掛けた。
このあだ名が定着してる時点でお察しの通り。
彼女のクラスでの立場はあまり良くなかった。
本来ならば、こうして声を掛けるのも憚れる。
けれども、何故か、俺は彼女に、こう言った。
「放課後、暇なら、うちに食べに来いよ」
「はい?」
「納豆キムチご飯、好きなんだろ?」
我ながら、どんな誘い方だとは思う。
突発的な思いつきをそのまま口に出しただけ。
計画性など皆無で、断られても別に良かった。
たぶん俺は、何かしてやりたかったのだろう。
腐れ縁の女生徒が孤立しているのを、見て見ぬ振りをする人間に、なりたくなかったのだ。
「えっと……?」
「嫌ならいい」
困らせるつもりはない。ここが引き際だろう。
ともあれ、これで義理や義務は果たした。
最初から、結果なんて、どうでも良かった。
そのまま足早に教室を出ようとしたの、だが。
「……行きます」
「……あっそ。んじゃあ、家まで案内するから」
「はい」
思いがけず、一緒に、下校することとなった。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:11:33.04 ID:luxIPjs0O<> 「とりあえず、上がれよ」
「……お邪魔します」
帰宅して、納豆キムチ女を家に上げる。
共働きの両親は不在で、2人きりだ。
リビングで待たせて、キッチンへと向かう。
手早く用意して、お盆に載せて持っていく。
「待たせたな」
「いえ……あの、ご両親は?」
「どっちも仕事」
「あ、そう……です、か」
いきなり、そんなにソワソワされても困る。
2人きりだからと言って、何も起こらない。
ただ、納豆キムチご飯を食わせてやるだけだ。
盆に載せたそれを、ずいっと差し出した。
「食え」
「い、頂きます」
パクリと一口。意外と一口がデカい。
すると、彼女は吃驚した表情を浮かべた。
モグモグ、ゴクンと咀嚼して、一言。
「……美味しい」
「だろ?」
どうやら気に入って貰えたようで、良かった。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:13:33.71 ID:luxIPjs0O<> 「これ、付属の醤油だけじゃないよね?」
「市販の醤油も足してある」
「キムチが入ってるのに、カラシまで」
「おっ? 隠し味に気づいたか」
「……実は、私もよくやる」
ふむ。流石は納豆キムチ女ってところか。
斬新さで吃驚したわけではないらしい。
同じ食べ方をしていることに驚いた様子。
「それなら、この食べ合わせはどうだ?」
俺はもう一品、付け加えた。
それは、カップラーメンだ。
しかも、ただの醤油味ではなく。
「こ、これは、チリトマト味……!」
「どうだ、驚いたか?」
チュルチュル麺を啜る彼女にドヤ顔をすると。
「……私もよくやる食べ合わせ」
「……あっそ」
食い合わせまで同じとは流石に思わなかった。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:15:12.47 ID:luxIPjs0O<> 「ふぅ……美味しかった」
「なら、さっさと帰れ」
「うん……お邪魔しました」
あっという間に、ペロリと完食して。
納豆キムチ女は、あっさりと帰って行った。
その後、同じメニューを独りで食べながら。
一緒に食えば良かったと、後悔した。
とはいえ、食い物に罪はない。やはり美味い。
キムチの辛味と、白菜のシャキシャキ感。
納豆の独特な匂いと、粘り気が絶妙にマッチ。
そして濃い目の味付けにより、ご飯が進む。
極め付けの、チリトマト味のカップラーメン。
後悔に苛まれる俺の胸を、温めてくれた。
要するに俺も納豆キムチご飯が大好きだった。
「……お邪魔します」
「また来たのか」
それから、月に2〜3回ペースで、会うことに。
場所は、俺の家だったり、彼女の家だったり。
目的は、納豆キムチご飯を一緒に食べるため。
新たな食べ方を模索することなどはなかった。
「美味しいね」
「ああ、そうだな」
この会話もお決まりだった。お約束である。
食べ終わると、いつも同じやりとりをする。
その度に、彼女の艶めいた唇を見て、思う。
キスしたら納豆キムチの味がするのだろうか?
我ながら、馬鹿な発想だとは思うのだけど。
どうやら、馬鹿なのは、俺だけではなくて。
どちらからともなく、唇が接近していって。
「……納豆キムチの味がする」
「……当たり前だろ」
糸を引く唇は当たり前のように、美味かった。
【納豆キムチ味のキス】
FIN <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:23:48.03 ID:luxIPjs0O<> 二作品目は書いてからしばらく時間が経ってしまったので、新年のネタが含まれておりますが、どうかお気になさらずに。
それでは以下、二作品目です。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:24:43.04 ID:luxIPjs0O<> 「男の人は、ぽっちゃり系が好きらしいね」
一概には言えないけれど、好きな男は多い。
「君も肉付きの良い女の子が好きだろう?」
「まあ、どちらかと言えば……」
「そんな君に朗報だよ」
「朗報?」
「とりあえず、僕のお腹を見たまえ」
そう言って、ペロンとお腹を見せてきた。
「どう思う?」
「えっと……綺麗なおへそだね?」
「バカたれ! そうじゃないだろう!?」
怒られた。しかし、それ以外、思いつかない。
「正月太りをした僕のお腹をどう思うんだ!」
なるほど。そういうことか。少し、太ったな。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:25:55.18 ID:luxIPjs0O<> 「ちょっと太っ……」
「太ったとか抜かしたら折檻するぞ!」
「……ちょっと、ぽっちゃりした?」
「ちょっとね! ほんのちょっとだけさ!」
その言葉通り、わずかに肉がついていた。
恐らく、ベルトをしたら肉が乗るくらい。
柔らかなお腹のお肉に惹かれて、つまむ。
「ふあっ!?」
「あ、痛かった?」
「だ、誰がつまんでいいと言ったんだ!?」
「ダメなの?」
「ダメじゃないけどさ……恥ずかしいよぅ」
ダメじゃないなら問題ない。腹の肉を揉んだ。
「ちょっと! いい加減にしたまえよ!」
「やめる?」
「べ、別に……好きにしたらいいさ」
好きにしろと言われたので、その肉を噛んだ。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:27:00.47 ID:luxIPjs0O<> 「ひぅっ!?」
「ガツガツ」
「痛い痛い! 噛むのは禁止!」
つまむのは良くても噛むのは良くないらしい。
「まったく、もっと僕のことを大切にして!」
「してるよ」
「どこがさ! 僕はお腹の肉を気にしてるの!」
どうやら気にしていたらしい。俺は励ました。
「大丈夫。すごく可愛いよ」
「ほ、本当かい……?」
「本当だよ」
「じゃあ、僕のお腹にちゅーして」
「ちゅー」
熱烈なキスをした。主に、おへそを集中攻撃。
「くすぐったい!」
「やめる?」
「……もっと」
それから小一時間くらい、おへそを、愛でた。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:28:27.34 ID:luxIPjs0O<> 「ふぅ……お腹はもういいよ」
「ご馳走さまでした」
「はい。お粗末さまでした」
満足したらしい。俺も大満足だったの、だが。
「そんなわけで、僕はぽっちゃりしたのさ」
「喜ばしいことだと思うよ」
「ありがとう。しかし、新たな問題がある」
そう言って、こちらにお尻を突き出してきた。
「なんと、お尻まで巨大化してしまったんだ」
「胸は?」
「うるさい。黙れ。シバき倒すぞ、オラァ!」
シバかれるのは嫌だ。俺は口を噤み沈黙した。
「一説によると、男の人はお尻が好きらしい」
「お胸も好きです!」
「黙れって言ってんだろ! このバカヤロー!」
シバかれた。腫れた頬を抑えて、俺は泣いた。
「まったく、お尻の良さがわからないなんて」
「面目ない」
「仕方ないから僕が君にレクチャーしてやる」
「有り難き幸せ」
こうして俺は、尻の良さをレクチャーされた。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:29:47.80 ID:luxIPjs0O<> 「いいかい? まずは優しく撫でてみて」
「失礼します」
「んっ……どうだい?」
「すげースベスベで、めちゃくちゃ柔らかい」
「ふふっ。気に入ってくれたようで何よりだ」
なんだこれ。新触感だ。ずっと撫でていたい。
「撫でて良し、揉んで良し、叩いて良しだよ」
「えっ……叩いて、いいの?」
「もちろんだとも。僕と君の仲じゃないか」
いつの間にか尻を叩く仲になっていたらしい。
「それって、どういう仲?」
「……どういう仲だと思う?」
ここだけはハッキリしたかったので、尋ねた。
「俺のこと、好き?」
「……君は僕のこと、好き?」
「好きだよ」
「僕も……君が好き」
なんか、照れる。だから俺は、尻を、叩いた。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:31:08.95 ID:luxIPjs0O<> 「ひゃんっ!?」
乾いた音が鳴り響き、嬌声が耳朶を打つ。
「痛くないの?」
「全然へっちゃらさ!」
「でも、赤くなってるよ」
真っ白なお尻についた赤い手形にキスをした。
「んっ……君は、優しいね」
「好きだから、大切にしたいんだ」
「僕も好き。優しい君が、大好き……んあっ!」
また恥ずかしくなったので、お尻を叩いた。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫?」
「……いぢわる」
「嫌いになった?」
「ううん……もっと好きになったよ……あんっ」
叩く回数を重ねるたびに、嬌声は甘くなった。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:33:07.16 ID:luxIPjs0O<> 「ごめんね」
「ん?」
「君を試すような真似をして、ごめんなさい」
「どういう意味?」
「君が僕のことを好きかどうか、知りたくて」
どうやら俺は、試されていたらしい。
考えてみれば、色々とおかしな話だった。
お腹を見せてきたり、お尻を突き出したり。
そうやって、こちらの好意を探ったのだろう。
なんとも不器用で、いじらしくて、可愛い。
そんな可愛らしいお尻に、俺はキスをする。
「あっ……ダメだよ、お尻の穴は」
「ダメじゃない」
「んんっ……ダメダメ! 出ちゃうから!」
「出して」
「や! 出したら嫌われちゃうもん!」
「嫌わないよ」
「……ほんと?」
心配性な恋人に、俺は優しく、諭した。
「俺の気持ちは、うんちになんか、負けない」
「っ……好き。大好きだよ。だから、見てっ!」
ぷりっと、うんちが、こんにちは。やったぜ! <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:34:22.20 ID:luxIPjs0O<> 「フハッ!」
腹の底から込み上がった愉悦を、ぶちまけた。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
こんなの普通じゃない。明らかに異常だった。
「僕たちはおかしいのかな?」
「そうかも知れない」
「でも、僕も君のうんちを見たいと思う」
「その気持ちは、よくわかる」
「それは、やっぱりいけないこと?」
「そうかも知れない」
「じゃあ、やっぱり僕たちはおかしいんだね」
俺たちはおかしいのだろう。だから、なんだ。
「別に、いいじゃん」
「えっ?」
「おかしくたって、愛し合ってるんだから」
愛の形は無数に存在する。だから、問題ない。
「怖くないの?」
「怖い思いなんてさせやしない」
「君と一緒におかしくなるなら、怖くないね」
独りじゃないから。だから、恐怖は感じない。 <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:35:43.16 ID:luxIPjs0O<> 「僕が思うに、理解出来ないから怖いのさ」
事後、お尻を拭きながら、彼女は解説をした。
「自分にわからないことを、人は恐れるんだ」
「要するに、ビビってるってこと?」
「その通り。それを認めたくなくて否定する」
「まるで意地を張ってる子供だな」
「そう。精神的に未熟な子供の癇癪と同じさ」
自分にわからないことが怖くて。
理解出来ないものが恐ろしくて。
自分がビビっていることを認めたくなくて。
顔を真っ赤にして、子供みたいに、怒る。
今回のように、糞を目の当たりにした時。
それが普通であり、一般的な反応だろう。
人間が恐怖を感じる理由は、簡単だった。
「君はもう怖くないよね?」
「ああ……教えてくれて、ありがとう」
「ふふっ……どういたしまして」
感謝するとキスをされた。もう怖くなかった。
俺は今日、未知を、尻で知り、克服したのだ。
それはまさしく、新しい時代の始まりだった。
【フハッピー・ニュージェネレーション】
FIN <>
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2019/06/22(土) 23:38:29.03 ID:luxIPjs0O<> 以上となります。
二作品目はちょっと自分でもおかしいと思ったので、長いことお蔵入りだったのですが、久しぶりに読み返してみたらこれはこれでありかもしれないと思い、投稿しました。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました! <>