◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 22:56:05.76 ID:raJY7OxV0<>〜二ヶ月後

絵里「はぁ……」

「どうしたの?絵里ちゃん」

絵里「ん…あぁ花陽、いや昨日ちょっとあったのよ」

花陽「何があったの?」

絵里「このカフェの自動販売機の当たりの確率が低すぎて困ってるのよ」

花陽「あはは……確かにここの自動販売機は当たらないことで有名だよね」

絵里「当たらないような設定にしてるならそもそもくじ機能をやめろって生徒会にクレームが来たのよ」

絵里(二ヶ月後、私はオシャレなカフェテリアで何事もなく溜め息をつく)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1571061365
<>絵里「例え偽物だとしても」 part2
◆iEoVz.17Z2<>sage saga<>2019/10/14(月) 22:58:15.89 ID:raJY7OxV0<> 前スレ
絵里「例え偽物だとしても」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1569313066/ <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 22:59:11.76 ID:raJY7OxV0<> 花陽「まぁ感じ方は人それぞれなんじゃないかな…私はそういう当たらないといわれてるところで当たりを引くのが楽しいって思うから良いと思うんだけどな〜」

絵里「そうね…そういう考えもあるのよね」

花陽「ふふふっそれにね、あそこの自動販売機は何と言っても安いんだよ!お金のない学生に優しい仕様だからくじに文句は言えないよ!」

絵里「それはそうね、穂乃果はあそこにあるいちごミルクがお気に入りらしいわ、80円」

花陽「やっぱり安いね」クスクス

絵里「ええ、だからくじの確率をあげてもらうべきか悩んでるのよ、赤字の可能性だって出てくるわけだし」

絵里(あれから約二ヶ月が経った、花陽を助けるまでに色々しちゃったしお咎めは覚悟してたけど、予想とは反して特にこれといったことはなかった)

絵里(それは鞠莉の力でもあったし、真姫の力でもあった。そして何より花陽というスーパースターを助けた功績が称えられたから何もなかった)

絵里(そういうわけで私たちは今、花陽と一緒にこの学生が集まるカフェでくつろいでるわけよ)
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:01:16.17 ID:raJY7OxV0<> 「お待たせ」


花陽「ん?あ、鞠莉ちゃん!」


絵里「遅かったわね、何かあった?」

鞠莉「oooh 授業が長引いちゃって★」

花陽「そっか、大変だね」

絵里「ええ、大変ね」

鞠莉「同情するなら今日からこのカフェで販売開始のチーズケーキを買ってよえりぃ〜はなよぉ〜」

絵里「うぇ…鞠莉お金持ってるじゃない…」

鞠莉「こういう場合は私にチーズケーキを買ってくれるっていう愛情が本命で、チーズケーキはおまけなのよ?」

絵里「えぇ…」

花陽「あはは…私買ってこようか?」

絵里「いいわよ別に買わなくて」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:03:19.74 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「えぇ酷い!か弱い女の子に一つくらいチーズケーキ買ってくれてもいいじゃない!」

絵里「どこがか弱い女の子よ……」

花陽「…じゃあ一つのチーズホールケーキを三人で買わない?」

鞠莉「おお!Nice Ideaよ!」

絵里「まぁ……そうね、じゃあそうする?」

花陽「うんっ!」

絵里(また平和な日常が帰ってきた、今まで以上の平和でね)

絵里(花陽の通う学校は違うけど、こういうカフェであったりプライベートであったりで頻繁にあってる。あの件から花陽も私も色々解放されて毎日がとても楽しいものよ)

絵里(鞠莉とはまぁ…切っても切れぬ関係になってしまったわ。元々鞠莉が死ねば私も死ぬという話だったけど、あれから手術なりなんなりをして命を復元してもらった。正直これは人道に反しているけど、私が変えた世界を私が見れないのはなんだか寂しくて、私は生きることを望んだ)

絵里(だから今の私はゾンビでもないし一人の人間として生きている、もちろん銃弾で貫かれれば私は死ぬだろう)
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:04:30.16 ID:raJY7OxV0<>

ことり「わぁ…!!チーズケーキだぁ!」


絵里「あらことりじゃない、食べる?」

ことり「うんうん食べるっ!」


ことり『私、この戦いが成功に終わったら絵里ちゃんの学校に通ってみたい!』ニコッ


絵里(あの言葉が実現した)

絵里(ことりは私や鞠莉の通ってる学校の生徒となった。初めて会った時は凶暴だったけど、今となって可愛い普通の女の子だ)

鞠莉「ちょっとそれ私と花陽と絵里で買ったケーキなんだから遠慮しなさいよ?」

ことり「うぅ〜ん分かってるよぉ」パクパク

鞠莉「…いや分かってないような気がするのは私だけ?」

絵里(……まぁ、ことりの凶暴なところはまだ見え隠れするような気もするけどね)

絵里(でも、とにかくことりもこの平和の日常を満喫してるわ) <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:05:12.00 ID:raJY7OxV0<>

「え、絵里さんですよね…?さ、ささささサインください!」


絵里「え?ええ…え?」

鞠莉「サインよ絵里、書いてあげればいいじゃない」

絵里「え、ええ…」カキカキ

「ありがとうございます!家宝にします!」

絵里「え、いやそんな大切にしてなくても大丈夫よ?」

「いえいえ!ではっ!」ダッ

絵里「あ、行っちゃった…」

鞠莉「…近くに花陽というスーパースターがいながらも絵里だけのサインを欲しがるなんてあの子も一途ね」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:06:01.23 ID:raJY7OxV0<> ことり「平和になったなぁって感じるよね」

花陽「アンドロイドと人間の隔たりが無くなっていってるいい証拠だね」

絵里「え、ええまぁそうね」

絵里(アンドロイド差別が消えたわけじゃない、けど従来の時と比べればだいぶ落ち着いてきた)

絵里(それもこれも花陽のおかげ、花陽のような名声高い人がアンドロイド差別について訴えることで東京じゃなくて世界にアンドロイドと人間の隔たりについて影響を及ぼした)

絵里(元々アンドロイドに対してのイメージに問題があったの、アンドロイドは人を殺すっていうそういうイメージが拭えなかったから、実際にアンドロイドと関わりが無かったりする人にとっては悪いイメージで一直線。だけど今はそういうのが無くなったことで根拠もなしにアンドロイドが悪く言われることはなくなった)

絵里(だけどそれでもアンドロイド差別が存在するのは確か。だからそれを無くすべく努めていく必要がありそうね)
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:07:03.11 ID:raJY7OxV0<> 絵里「…変わったものね」

絵里(そしてそんな私は現在も人気急上昇中。元々レジスタンスになる前からファンが多いと果南に言われていたけど今はかなり大規模なファンクラブが存在してて、私はそれを公認してるわけじゃないけどまぁ温かい目で見守ってる)

絵里(Y.O.L.Oを爆破したりショッピングモールで銃撃戦を起こしたりで暴動をしたことはあったけど、それも無に帰してしまうくらいには平和で、時の流れが早い都市なのよ)

絵里(様々な犠牲はあったけど、その果てで掴んだこの幸せ————それを私は今日も抱きしめ続ける)


穂乃果「おかえり!絵里ちゃん!」

せつ菜「おかえりさない!」


絵里「ただいま二人とも、というか今日は珍しくせつ菜がいるのね」

せつ菜「私の家に私がいるのは当然ですよ!」エッヘン

絵里「まったくいつもふらふらとどこかへ行っちゃうものだから困ったものよ」ヤレヤレ

絵里(亜里沙は死んだ。けど亜里沙の代わり…なんていうつもりは更々ないわ、新しい私の家族——穂乃果とせつ菜が私の家にはいる)

絵里(二人の主は私、だからきっと私が死ぬまでは二人もここにいるのでしょう)
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:07:49.86 ID:raJY7OxV0<> 絵里「ふふふっ……」

絵里(でもそれって本望でしょう?元気な二人が家にいてくれたら私も退屈しないもの)

絵里(でも基本的に私も希と一緒で放任主義だ、家の鍵とお金だけ渡して犯罪や悪行にならない限りで好き勝手やらせてあげてる)

絵里(希と花丸で培ったであろう常識と、私の常識が合わさって今では二人とも胸張って常識人っていえるほどにはなってるからこうして放任主義のままでいても何も問題はない)


曜『もしもーし?絵里さん元気?』


絵里「もしもし、曜こそ元気?」

曜『あははっ元気だよー!最近は元気すぎてアタッチメントの開発で二徹したくらい!』

絵里「何やんちゃしてるのよ……」

絵里(曜は故郷である静岡の沼津ってところへ帰った。そこで対アンドロイド特殊部隊で稼いだお金を使って学校へ通いながら研究と開発をのびのびとしてるらしい)

絵里(そんな曜との関係だけど、頻繁にはしないけど週に一回くらいは電話で連絡を取り合ってる。ラストバトルの爆破で黒く焼けた皮膚は治療でなんとか元に戻ったみたいだったからよかったわ。曜の顔は綺麗なんだから大切にしないとね)
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:08:58.47 ID:raJY7OxV0<>

真姫「ふふふっ相変わらずね絵里は」

絵里「だってそうじゃない〜!」

ルビィ「あははっ」


絵里(そんな現実————例え平和な日常でもまだ私の理想とは程遠いこの現実だけど私はそれが大好きだ)

絵里(ルビィもことりと同じように私たちと同じ学校に通い始めて、そんなルビィと、いつも一緒にいた真姫といつも通り、今まで通りの日々を過ごしてる)

絵里(例え私という存在が偽物だとしても)


絵里(それは、この世に一人しかいない本物の絢瀬絵里なのよ)


絵里(例え私が偽物の命を宿していたとしても、今私はアンドロイドとして——人間として生きている)

絵里(それが何より私の存在証明だ)

<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:09:36.45 ID:raJY7OxV0<>

真姫「そういえば曜からこの前一つスナイパーが送られてきてね」

絵里「あぁずっと前に言ってたやつ?」

ルビィ「スナイパーだったらルビィに使わせてよ!!」


絵里(限りある時間の中で、限りない幸せが今を廻る)

絵里(今日も東京は死人が出るでしょう、ここは平和だけど、危険な都市だ)


絵里(そこで私たちは強く生きていく)


絵里(今も輝きを放ち続けるこの命を無駄にはしない、この輝きを放ち続ける瞳に映るものを信じていく)

絵里(そしてこの瞳が映すのは————)

<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:10:48.00 ID:raJY7OxV0<>

バァンッ! バァンッ!


真姫「っぁ!?」

ルビィ「……ぁ?」


バタッ




絵里「っ!?ルビィ!?真姫!?」



<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:11:21.70 ID:raJY7OxV0<> 絵里(二つの銃声の直後に倒れる真姫とルビィに思わず顔を真っ青にさせた)

絵里(何故顔が真っ青になったのか、あの戦場で戦った私ならイヤでも察しがつく)


絵里「ねえルビィ!真姫ってばぁ!!」


絵里(倒れるルビィと真姫を揺さぶっても返事がない、いや…分かってる、返事をしてくれないってことはもう知ってる、だけど私がこの現実についていけなくなった)

絵里(突然陰りだす私の現実——忘れたつもりはない、だけどこの平和な時間である今だけは……銃弾という存在を消したかった) <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:12:09.56 ID:raJY7OxV0<>

スタスタスタ


「ねえ、そこのあなた」


絵里「…!」

絵里(声がしたから振り返って映る一丁のハンドガンを下げて生意気な笑顔を浮かべた見知った姿)

絵里(だから、私は問う)


絵里「…あなたは誰?」

<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:12:58.82 ID:raJY7OxV0<> 「……私は」


千歌「高海千歌!」


千歌「あなた、相当強いよね!?私分かるもん!!」

千歌「だから————」




千歌「———私と、バトルをしてくださいっ!」



<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:13:49.19 ID:raJY7OxV0<> 千歌「私、今までの記憶が無いんだ。だから一回死んだんだと思う、でも一回死んでみてようやくわかったよっ!」


千歌「私の中でずっとときめき続けるこの“輝き”が!」


千歌「もう記憶はないけれど、私は絶対にあなたに憧れてた!何故ならあなたを見た瞬間に、私の心の輝きが最高潮に達したの!」


千歌「この輝きは——あなたを殺す為に、そして殺してあなたを超える為にあるんだねっ!」


千歌「きっとこの輝きは…もう消えないと思う」


果南『その憧れとこの胸に宿る輝きは今になっても未来になっても消えることはないと私は思う』

穂乃果『この胸に宿る輝き……その正体を知りたいの』


絵里『この“輝き”を私はずっと待ってたのかもしれない』


絵里「……!!!」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:14:48.16 ID:raJY7OxV0<> 絵里(私…バカだ……)


絵里(バカだ…馬鹿だ…大馬鹿者だ………)


絵里(馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だバカだバカだヴァカだバカだばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばbakabakabakabaka)



絵里(私ってホントバカだッ!!!)



絵里(なんで気付かなかったんだろう、なんで私戦ってたんだろう)

絵里(そうよ、なんであんな差別の原因であった鞠莉が急に味方をしたの?)


絵里(なんでアンドロイドが大好きな鞠莉が差別を起こすの???)

<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:16:20.69 ID:raJY7OxV0<> 絵里(分からなかった、いや気付かなかった。なんで…なんで……?)

絵里(だって…そうじゃない…私……)

絵里(………)

絵里(……私は恵まれた環境で毎日を過ごしていたのよ、差別は受けてたけどそれでも味方をしてくれる人間やアンドロイドは大勢いて、だからそれ大層な問題は無かった)

絵里(だけど差別を受けて病むアンドロイドだっていた、それがイヤで私は叛逆を起こした)

絵里「………」


絵里(だけど、今の私ならそれは仕方ないって言える)


絵里(ただ勘違いしないでほしいの、それは心の劣化じゃない)


絵里(…だって、アンドロイドは人間より強い存在なのよ?その証拠に私たちアンドロイドというのは強い人間やアンドロイドを数人仲間にして何百人といる勢力を粉々にして世界を変えた)




絵里(そんな膨大で未知の力を持つアンドロイドを自由にさせたらどうなるのよ!?!?)



<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:17:13.05 ID:raJY7OxV0<> 絵里(…私、バカだ)

絵里(アンドロイド差別って、消えたらダメなのよ)


絵里(アンドロイド差別は、アンドロイドが自由にならない為の————アンドロイドが“気持ち的”に人間より強くならないようにする)



絵里(コラテラルダメージを伴った抑制だったのよ…!!)



絵里(それを破壊した東京はどうなる?)

絵里(少なくともまだ平和だ、だけどまた少なくとも自由の身になり破壊を尽くすアンドロイドが出てくる…!) <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:18:34.36 ID:raJY7OxV0<>

鞠莉『でも初期型にはそれがなかった、海未と友達になるっていう目標を課しただけで、それを一日で達成してしまったしずくは後に破壊的衝動を自発的に生み出した』

鞠莉『それから何度と試行錯誤してもその破壊的衝動を抑えることが出来なかった、何故か人を殺すし身の危険を感じると何らかの対抗手段を持って襲いにかかってくる』


絵里(鞠莉は言っていた、目標を達成したしずくは自発的に破壊的衝動を生み出したと)

絵里(…千歌もその一人だ。目標がないのよ、千歌には)

絵里(さっき千歌は私に憧れてたと言っていた、それはつまり私の武術を見て憧れたのだろう)


穂乃果『……私が知ってるのはその探してる人が私にとってとても大切な人だっていうことだけ、後は全部曖昧なんだ』


絵里(例え死んでも、死ぬ本人の強い思いというのは死んでも尚受け継がれるらしい)

絵里(その受け継いだ憧れを、虚無の状態で胸に宿したその瞬間千歌は——)


絵里(——殺しの選択しかない)


絵里(…だから穂乃果だって最初はデスマシーンとか言われてたのよ、だって生まれ変わったから…目標がないから……その状態から何を生み出そうとしてもどの道破壊衝動が生まれてしまう…) <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:19:49.79 ID:raJY7OxV0<>

絵里(……あぁ、結局この東京は退廃を迎えるのね)


絵里(東京で生まれ育った私たちは、死んでも東京に拘束され続ける)

絵里(東京が過激な都市であるからこそ、生まれて間もないアンドロイドというのは自分の身を守る術を作り出す。その結果“相対的”に破壊衝動が出来上がる)


絵里(……だからもう、東京は手遅れなのよ)


絵里「……そう、いいわよ」


絵里(結局——そう、結局私は戦う羽目になる)

<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:20:47.85 ID:raJY7OxV0<>

絵里「ふふふっ……」


絵里(私初めてよ、こんなに人を殺すのが楽しみになるなんて)

絵里(“こいつ”をやればいいんでしょ?分かったわ、目の前にいるアンドロイドを殺すことを考えると自然と笑みが出てしまって、高揚でずっと気分が良く感じて、お腹が永遠にくすぐったくて、胸が熱い……熱すぎる)

絵里(アンドロイド差別という足枷の消えた東京で、大切な人を殺された。そして殺した相手が元知人)


絵里(だけど私、この状況にときめいちゃってる)


絵里(アンドロイド差別をなくすことが目標だったのに、それをなくしちゃダメって気付いた今は目の前のあいつを殺すことが目標)


絵里(……あははっなんだ、私もただのアンドロイドじゃない。自分で自分に呆れて、思わず鼻で笑ってしまった)
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:22:30.29 ID:raJY7OxV0<> 絵里(私が例え人間なんだとしても、本物の正義を宿してようとも)


絵里(私の命が————)



絵里(————例え偽物だとしても)



絵里(まず最初にそれは、目標が消えた際に本能的に破壊を抱いてしまう——)




絵里(————“本物のアンドロイド”でしかなかったのよ)




絵里「————じゃあ、やりましょうか?」



絵里(瞳と胸に新たな“輝き”を宿した私は、静かにハンドガンを手に持った)
<>
◆iEoVz.17Z2<>sage saga<>2019/10/14(月) 23:25:57.48 ID:raJY7OxV0<> おしまいです。
バトルを書きたいなと思って書き始めた作品ですが、ここまで長くなるとは思ってませんでした。
ここまで見てくれた方、途中でレスをくれた方本当にありがとうございました。
次の作品があればまた、よろしくお願いします。

ちなみになんですけど、千歌の識別コードって何でしたっけ? <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:27:17.66 ID:raJY7OxV0<> 〜同時刻、??

鞠莉「……平和になったものね」

鞠莉「アンドロイド差別……消えてよかったのかしら」

鞠莉「正直、今の私にはよく分からないのよね」

鞠莉「……しかしながら自分を見てるって不思議なものね、私はきっと一生絵里の体を乗っ取れないんでしょう」

鞠莉「………」

鞠莉「…でも、あなたは何の躊躇いもなく乗っ取るのね?」



鞠莉「————希」


<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:28:22.57 ID:raJY7OxV0<>


「ん?やだなぁ、“今の私”は希じゃないよ?」



花陽「花陽だよ?」



鞠莉「………」

花陽「言ったよね、私は」

花陽「まるで人間なんじゃなくて、人間そのものなアンドロイドを創りたいって」

花陽「“人間そのもの”に識別コードなんていらない、“人間そのもの”にアンドロイドと人間の隔たりなんて存在してはいけない」

花陽「それに、私は元殺し屋だよ?」


花陽「世界の人々すら騙す——鞠莉ちゃんの分身であるあの絵里ちゃんですら騙す存在でありたかったんよ」


鞠莉「…素が出てるわよ」

花陽「あ、えへへ……」
<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:29:40.60 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「私も絵里も、可哀想ね。こんな友人を持っては」

花陽「なにも標準型アンドロイドXが一人だなんて誰もいってないよ?しかも私はちゃんと花陽ちゃんと話し合って花陽ちゃんと理解した上で今にここにいる。花陽ちゃんの体を乗っ取ったなんて人聞きの悪いこと言わないでほしいな」

鞠莉「…その姿でこれからどうするつもり?」

花陽「しばらくは伸び伸び暮らしてようかなーって思ってるよ、穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんは今は絵里ちゃんの部下だし、こんな姿じゃ殺し屋なんて出来ないし、そもそもいえば私は歌姫なんだからお金に困ることは特にないし」ウフフ

鞠莉「……確かに標準型アンドロイドXは戦線を走る私たちの保険として創ったアンドロイドだけど、いざその保険を適用した姿を見ているといけ好かないわね。やっぱり作るべきではなかったわ」

花陽「でも、作っちゃった。この意味が分かる?」

鞠莉「……絵里は殺せない、二重の意味でね」

花陽「そうだね、だって絵里ちゃん自身が強いというのに絵里ちゃんの周りにいる人も全員最強レベルなんだもん」

花陽「私が花陽になる前の花陽ちゃんだって、本能的に絵里ちゃんを助けた、私の分身が鞠莉ちゃんの分身を本能的に助ける——これってすごく運命的じゃない?」

鞠莉「………」

花陽「……ノーリアクションはちょっと寂しいけど、まぁいいよ」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:30:40.99 ID:raJY7OxV0<> 花陽「それより、私はさっきの話について一つだけ鞠莉ちゃんに言いたいことがある」

鞠莉「…何?」


花陽「結論から言って、アンドロイド差別は消すべきではなかった」


鞠莉「……どうして?」

花陽「私自身がアンドロイドになってから気が付いたよ、この“輝き”の存在を」

鞠莉「輝き…?」

花陽「そう、輝き。私は歌姫としての使命があるから少しのんびりした後はこれからもずっと歌姫を続けると思う、例えこの東京が更なる過激を遂げようともね」

花陽「私はこの輝きという存在は何回も見てきた、けど私にはよく分からなかった。人を殺したくなる衝動を生む輝きという存在が」

花陽「でもあの時絵里ちゃんと鞠莉ちゃんに助けてもらってようやくわかった」

花陽「絵里ちゃんの宿す輝き……それをこの眼で見てね」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:33:00.33 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「……?あなた殺し屋でしょ?何故そこまで歌姫に執着……っ!まさか!?」

花陽「そうだよ、この輝きというのは破壊衝動を生むものではない」


花陽「輝き、というのはそのアンドロイドが抱く強い思いを更に一途にして拗らせる“ウイルス”みたいなものなんだよ」


花陽「じゃあなんで破壊衝動を生むんだろう?それはこの東京で“強くなりたい”、“生きたい”、“誰かを助けたい”というような思いを抱いた時、その輝きに感染して誰かを殺すことで強くなり、生きて、助けれたという目標達成を得ることが出来るから破壊衝動が生まれるんだよ、そしてその思いを抱くアンドロイドが東京では大半だったから今に至るってことだよ」

鞠莉「じゃあ……ってあなたなんでそんなこと知ってて今……!」


花陽「…私がアンドロイド……だからかな」


鞠莉「…どういうこと?」

花陽「確かに輝き——いえば破壊衝動の正体が分かれば対処にも繋がるよ、でもね、私が今抱いてるこの輝きは本当にかけがえのないモノだって分かるんだ、歌姫を続けろって、歌姫でしか私は満たされない……もう殺すことなんてどうでもいい」


花陽「この輝きを消さないでほしい」


花陽「……それが私の本音だよ」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:34:04.67 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「希……あなた……!」

花陽「……私は花陽だよ」

鞠莉「……あなたには悪いけどその輝きの正体が分かったなら私はその輝きを消すことに努めるわ」

花陽「…うん、だから私も酷いことはしないよ。鞠莉ちゃんに輝きの正体を教えて私と鞠莉ちゃんを“フェアな状態”にして、そして私は——」



花陽「——今ここで、鞠莉ちゃんと敵になるよ」



鞠莉「…は?」

花陽「私はこの輝きを消したくない、だから諦めがつくまで抵抗するよ」

鞠莉「ちょ、ちょっと待ってよあなた自分が何言ってるか分かってる?」

花陽「分かってるよ、でも鞠莉ちゃんはアンドロイドじゃない」

花陽「アンドロイドの気持ちはアンドロイドにしか分からない」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:35:10.21 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「アンドロイドって……あなたは人間でしょ!?」


花陽「アンドロイドだよ」


鞠莉「っ…!」

花陽「だから絵里ちゃんにも輝きの正体、伝えてあげてよ」

花陽「そうして絵里ちゃんは私と鞠莉ちゃん、どっちの味方をしてくれるんだろうね?」

鞠莉「希……っ!」

花陽「うふふ、私は花陽だよ?」

花陽「花陽は死ぬまで歌姫をしたいだけ、それを止めるっていうなら抵抗するのも当然でしょ?」

花陽「これは私だけの意見じゃない」


花陽「ウチと花陽ちゃんの意見やもん」


花陽「平和を望むなら、戦いに備えよ」


花陽「アンドロイド対人間の戦争も、そう遠くないかもしれないね?」


鞠莉「あなた……さいっていのクズねッ…!!!」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:36:07.34 ID:raJY7OxV0<> 花陽「うふふ、絵里ちゃんがまだレジスタンスになって間もない頃、絵里ちゃんは私に向かって言ったよ?」


花陽「私が裏切り者だろうと関係ない、心臓を貫けば終わりなんだからって」


花陽「鞠莉ちゃんも見習ったらどう?」

鞠莉「………」

花陽「ふふふっ東京の未来のカギを握るのは絵里ちゃんだね、だって穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんを引率してるわけだし、何より名声高い。絵里ちゃんが動けば味方をしてくれるアンドロイドや人間はたくさんいるからね」


花陽「それで私個人としては、絵里ちゃんは私のところに来てくれると思うなー」


鞠莉「…そんなはずないわ、絵里は私よ?私が希と対抗するなら、絵里も希と対抗するに決まってるじゃない」

花陽「うふふ、どうだろうね」

鞠莉「きっ……」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:37:03.39 ID:raJY7OxV0<> 花陽「あ、忠告しておくけど今ここで私を殺さない方がいいよ?」

花陽「今ここで私を殺しても世間からすれば悪いのは鞠莉ちゃんだけだからね」

花陽「…そして逆も然り。今ここで私が鞠莉ちゃんを殺しても世間からすれば悪いのは私だけ」

花陽「つまりお互い平行線の状態、だからここから始めよう?」

花陽「東京は終わりを迎えたんじゃない」


花陽「絵里ちゃんが狂った歯車を元通りにしてくれたおかげでようやく東京は始まった」



花陽「だから…じゃあ、やろう?戦争を」


<>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:38:42.09 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「…私に勝てると思ってる?」

花陽「あはははっだからそれを確かめる為に戦争をしようって言ってるじゃん」

花陽「確かに鞠莉ちゃんの行動記憶体質は敵にしたら厄介だよ、でもね?私にだってこの爪を隠す能力があるんだよ?」


花陽「花陽という存在は、戦えないんじゃない。戦わないだけ」


花陽「イヤな仕事が来た時の為に光学迷彩を自作してサボる時用の部屋を造ったり、どんな状況においても相手に“不思議”と思わせるような悟られない態度を取り続けるその巧妙さとメンタル」

花陽「…分かるかな?私——花陽の力は」


花陽「鞠莉ちゃんの力に対してジョーカーになれる」


花陽「…今さっき、鞠莉ちゃんは私に勝てると思ってる?って言ったよね」

花陽「じゃあその言葉、そっくりそのまま返させてもらうけど」



花陽「アンドロイドの“私たち”に勝てると思ってる?」



花陽「アンドロイドが人間より強いというのは、何を言おう絵里ちゃんがついこの前証明してくれたばっかだよね?」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:39:49.79 ID:raJY7OxV0<> 鞠莉「……そう、ならやるしかないようね」


鞠莉「戦争を」



花陽「ふふふっ…歴代最高の戦争と行きましょう?」



花陽「歌姫を守る為に——私は戦う」

花陽「私は歌姫に恋をしてる、その思いが熱くて、熱くて……熱すぎて止められない」

花陽「人間の時は過激な都市だと思ってたけど、アンドロイドになった瞬間東京は天国になったよ」

花陽「輝きがずっと満たされる、こんな都市他にはないね」

花陽「うふふふ、鞠莉ちゃんも早くアンドロイドになればいいのに」

鞠莉「…そんな危険思想を抱いてしまうようなら私がアンドロイドになることは一生無いでしょうね」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:41:17.32 ID:raJY7OxV0<> 花陽「ふふ、そうかもね?」


花陽「だって、もうじき絵里ちゃんは私のモノになっちゃうし」


鞠莉「…絵里はそんな安くないし弱くない。それに言葉の一つや二つであなたに忠誠を誓うほど馬鹿じゃない」

花陽「それもそうかもね、だって鞠莉ちゃんの分身だもん」

花陽「だからさ、歴代最高の戦争は」




花陽「絵里ちゃんの取り合いから始めよう?」




鞠莉「…絵里は絶対に私のところに来る、絶対によ」

花陽「一途だね、その気持ち。まるで輝きみたいだよ」

花陽「でも、絵里ちゃんが鞠莉ちゃんのこと一途に思ってるかは分からないよ?」

鞠莉「……っ」 <>
◆iEoVz.17Z2<>saga<>2019/10/14(月) 23:42:31.16 ID:raJY7OxV0<> 花陽「あっははっ面白くなってきたね?」

花陽「戦いを意識したら——絵里ちゃんを私の部下にすることを考えたら、この輝きが熱を帯びて更に煌きだしたよ」

鞠莉「………」

花陽「熱い……胸が焼けるほど熱い……」

花陽「だから、あぁ…今日からまた——」




花陽「——熱いね、東京《ヘブン》♪」




END <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/10/14(月) 23:55:43.44 ID:/GuFGKn50<> 乙、どんでん返しの連続で引き込まれました。
素晴らしい作品をありがとうございます。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/10/15(火) 01:25:04.12 ID:9/G4FdfV0<> 初期の山田悠介っぽい文体に違和感
文語体書き慣れてないなら無理しなくてもと思ったが
半角擬音で銃撃戦やっても仕方ないしな <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/10/15(火) 01:45:24.40 ID:2CaonRKRo<> 更新される度に夢中で読んでたよ
良いssだった、乙!
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2019/10/24(木) 00:20:49.21 ID:lpASVFtno<> 面白かった
第二次世界大戦編も期待していいのか? <>