以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:17:01.04 ID:y1AgrPS70<>――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「んっ……?」ムクッ

高森藍子「あっ……。加蓮ちゃん、起きた?」

加蓮「……寝てた?」

藍子「はい。寝ていました」

加蓮「寝てたんだ……」

藍子「ぐっすり、眠っちゃっていましたよ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1593944219
<>高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「時間がたくさんあるカフェで」 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:17:35.80 ID:y1AgrPS70<> レンアイカフェテラスシリーズ第125話です。

<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

〜中略〜

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェでの離席と天気雨」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「紫陽花のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「梅雨の晴れ間のカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「30分だけのカフェで」

お話の性質上、今回はいつもより長めです。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:18:07.52 ID:y1AgrPS70<> 藍子「すみませ〜んっ。……う〜ん、アイスコーヒーよりも、ホットコーヒーの方が良いのでしょうか」

藍子「弱冷房もずっと効いたままだから、加蓮ちゃん、体が冷えちゃってるかな」

藍子「でも、7月なのにホットコーヒーなんて変かも? ううんっ、飲みたいものはいつ飲んでもいいですよね。ブレンドは――」

加蓮「ふわ……。とりあえず、藍子。店員さんを呼んでから考えるのは、迷惑だよー……」

藍子「あっ……。ごめんなさい店員さんっ、お忙し――え? 忙しくないから大丈夫、ですか?」

加蓮「確かに、忙しくなさそーな店内ではあるね」

藍子「加蓮ちゃん、そんなにはっきり言わなくても」

加蓮「でも店員さんだってやることがあるでしょ。……お客様以上に優先することはない、って。ホント真面目だねぇ。誰かさんみたい」

藍子「……私?」

加蓮「さぁ?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:18:35.01 ID:y1AgrPS70<> 藍子「ところで、加蓮ちゃん。……寝起きの顔、ばっちり見られちゃっていますけれどいいんですか?」

加蓮「……、」

加蓮「……、」

加蓮「…………」

藍子「ああ、加蓮ちゃんが店員さんを見つめたまま動かなくなっちゃった……」

加蓮「まぁいっか」

藍子「いいんですね」

加蓮「店員さんだし」

藍子「ふふ。店員さんですもん」

加蓮「藍子が寝顔を見られた回数よりは遥かに少ないからオッケーオッケー」

藍子「加蓮ちゃんっ!」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:19:05.26 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「店員さんだからよくない?」

藍子「寝ている時の顔と起きた時の顔とでは少し違いますっ」

加蓮「だって。残念だね、店員さん。藍子ちゃんの……なんだっけ。攻略? には、もうちょっと経験値が足りないみたいでーす」

藍子「もう……。あっ、注文でしたよね。ええと、加蓮ちゃんが目がばっちり覚めるコーヒー……」チラ

藍子「は、もういらないみたいですね。ふふっ」

加蓮「じゃあ何を頼むの?」

藍子「何にしましょうか。加蓮ちゃん、何か飲みたいものはある?」

加蓮「お水」

藍子「お水」

加蓮「あ、入ってるままだ。いただきまーす」ゴクゴク

藍子「……注文は後でいいみたい。呼び止めてしまってごめんなさい」ペコッ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:19:34.83 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「改めて。おはよ、藍子」

藍子「おはようございます、加蓮ちゃん♪」

加蓮「んー……」チラ

加蓮「10分?」

藍子「10分と、2時間です」

加蓮「……ホントに熟睡してた」

藍子「店内で物音がする度に、加蓮ちゃんが起きてしまわないか、はらはらしてしまいました」

藍子「そういえば、加蓮ちゃん、ときどき何かをつぶやいていたような……」

加蓮「気のせい」

藍子「気のせいじゃありませんよ〜。確か、」

加蓮「気のせいってことにしなさい。そーいう優しさがあるのが藍子でしょ?」

藍子「……確か、奈緒ちゃんの名前を呼んでいたかな?」

加蓮「ちょっと?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:20:04.57 ID:y1AgrPS70<> 藍子「あと、少しだけ顔をしかめていたり、寂しそうにしていたり……」

加蓮「人の話を聞け! っていうかその言い方だと私がまるで最近奈緒と一緒に現場に行けなかったりして寂しがってるみたいじゃん!」

藍子「そういえば加蓮ちゃん、最近は1人でのお仕事が増えてきましたよね」

加蓮「ぐ……。しまった、そこまではまだ言ってなかったか」

藍子「やっぱり、コーヒーを注文しますか?」

加蓮「いいよ……。お水でごちそうさまでした」

藍子「それから他に、眠っていた加蓮ちゃんが言っていたのは……」

加蓮「続けなくていいでしょ、続けなくて!」

藍子「え〜」

加蓮「何なのよ……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:20:35.03 ID:y1AgrPS70<> 藍子「じ〜」

加蓮「?」

藍子「じぃ〜」

加蓮「んん? んー、何か言いたいことがあるって顔?」

藍子「♪」

加蓮「当たりなんだ。別に……寝言を暴露されるよりは何か言われた方がマシだろうし、何? 何でも言ってみて?」

藍子「せっかく、加蓮ちゃんのことをやっと誘えて、今日は1日、ず〜っとここにいられるってなったのに――」

藍子「私、お話したいことをたくさん用意してきたんですよ。でもそれ以上に加蓮ちゃんのお話を聞きたいなって思っていたんです」

藍子「そうしたら、加蓮ちゃん、ご飯だけ食べてすぐに寝ちゃうから」

加蓮「……」

藍子「じいぃ〜」

加蓮「……すみませんでした」

藍子「よろしい♪」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:21:04.04 ID:y1AgrPS70<> 藍子「なんて、冗談ですっ。眠い時には寝ちゃいましょう。今のは加蓮ちゃんの真似です♪ 加蓮ちゃん、あんな風に言うとまるでお姉ちゃん――」

藍子「ううんっ、学校の先生みたいですよね」

加蓮「だっからさー、それわざわざ言い換える必要あるの?」

藍子「私がそう思って、そう言いたいから言っただけです」

加蓮「はいはい。まぁ、最近ちびっこ相手に先生って言われたりもするんだけど……」

藍子「加蓮ちゃん先生、って?」

加蓮「あとは加蓮さん先生。ちゃんもさんもいらないのにね。……藍子じゃなくてちびっこ達が。藍子じゃなくてね。藍子じゃなくてだよ?」

藍子「そんなに何回も言わなくても」

加蓮「ここまで言わないと口にするからねアンタは。いくら私が悪いって言っても」

藍子「加蓮ちゃんは、悪くありませんよ。それと……」

加蓮「何」

藍子「加蓮ちゃんから、教えてもらいました。そういう時は、逆に言ってほしいって時なんですよね♪」

加蓮「……、」ペシ

藍子「痛いっ。メニューで叩かないでください!」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:21:34.14 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「外、いつの間にか雨が降ってたんだ……」

藍子「加蓮ちゃんが眠り始めてから、すぐに。本当に、不思議なくらいすぐ、降り始めちゃいました」

加蓮「確か、ここに来た時には晴れてたんだっけ」

藍子「はい。でも、加蓮ちゃんが寝息を立て始めてから――」

加蓮「その言い方はやめなさい。生々しいって言うかガチで寝た感があるから」

藍子「……? 加蓮ちゃん、寝たふりだったんですか? とてもそうには見えませんでしたけれど」

加蓮「そういうんじゃなくて……。ごめん、いいよ。続けて?」

藍子「そうしたら窓の外に、急に雲が流れてきて、広がり始めて。あっという間に大雨になってしまいました」

藍子「今は、あの時よりは少し弱くなってはいますけれど、まだまだ降りそうですね」

藍子「天気予報でも……ほら。3時間後まで、雨のマークがついているみたい」

加蓮「そっか」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:22:04.41 ID:y1AgrPS70<> 藍子「早く止むといいですね、雨」

加蓮「私はいいよ。藍子が楽しいなら、雨が降っても」

藍子「じゃあ、私はいいので、加蓮ちゃんが元気になるなら晴れてくれた方が嬉しいですっ」

加蓮「即答でそれを言うかー……」

藍子「雨は、もういっぱい降りました。今は7月ですから。梅雨の時期も好きだけれど……そろそろ、夏が来てほしいなって♪」

加蓮「夏かー。夏って言えば」

藍子「?」

加蓮「ううん。藍子は……とりあえず水着、選んでおいてあげるね」

藍子「お願いしま――って待ってください加蓮ちゃん。私の分の水着を、加蓮ちゃんが選んでおくんですか?」

加蓮「そうだよ?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:22:34.36 ID:y1AgrPS70<> 藍子「……一緒に選ぼうね、ではなくて?」

加蓮「うん。どうせ近いうちに水着のグラビアとか新商品の紹介とか、そういう仕事が来るだろうし。その時ついでに選んでおいてあげる」

藍子「そうですね、加蓮ちゃんはまだまだ忙しいですから……」

藍子「ではなくて!」

加蓮「ではなくて」

藍子「……私が着るものを、加蓮ちゃんが?」

加蓮「そうだよー」

藍子「……、」

加蓮「どうせ身長同じだし藍子のバストサイズくらい知ってるし、着れないってことはないでしょ? 藍子もさ、ほら。けっこう忙しいみたいだし、水着を買いに行く時間を何か別のことに使えるじゃん。お散歩でも、レッスンでも。ふふっ、好きに使っていいんだよ?」

藍子「加蓮ちゃん」

加蓮「うんうん」

藍子「自分で選ぶので、加蓮ちゃんは選ばなくていいです」

加蓮「うっわ、冷た……。一瞬で夏を通り越してここだけ冬景色じゃん」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:23:05.77 ID:y1AgrPS70<> 藍子「だって加蓮ちゃん、絶対に変な水着を選んで来るでしょっ」

加蓮「そんなに変なのを選ぶつもりはないんだけどなー……。藍子が、アイドルとして新しい魅力を見つけられるようなのをね?」

藍子「けっこうです!」

加蓮「はぁー? そんなんでこの先やっていけると思ってんの? どーせパーカーを羽織ったら自然に街を歩けるようなワンピースタイプのヤツとか! なっがいパレオで足を隠したりとか! 藍子はいつだってそうでしょ!」

藍子「ぎくっ」

加蓮「ほーらみなさい」

藍子「その……。この前少しだけスマートフォンで調べてみたら、いいなって思うのがあって」

加蓮「買ったんだ」

藍子「買っちゃいました」

加蓮「じゃそれ、私がもらうから」

藍子「ええ!?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:23:34.74 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「そーいうのも加蓮ちゃんが着たらイメージチェンジになるでしょ? ワンピースタイプなら胸が多少キツくても最悪リメイク頼めばいけるし、パレオのなら合うトップスを選んでくるだけだもん」

加蓮「ま、今はちょっと違うイメージで魅せる時って感じじゃないけど、準備しておいて損はないってモバP(以下「P」)さんもよく言うし」

加蓮「あとはこっちから提案した時に藍子チョイスだって言っておけば、藍子の名前や話題も出せるかもしれないもんね、そーやって次のオファーは生まれていくんだよ」

藍子「……加蓮ちゃん、なんだかすごいアイドルになりましたね」

加蓮「どーいう褒め言葉よ、それ」

藍子「でも、私が買った水着なので、加蓮ちゃんにはあげませんっ」

加蓮「えー」

藍子「貸してあげるのは、オッケーです。着ている姿は、見てみたいですからね。ちゃんとカメラも用意していきますよ〜」

加蓮「藍子が私の選んだ水着姿を撮らせてくれるなら、それでもいいよ」

藍子「だからそれがイヤですっ!」

加蓮「ちゃんと藍子のことを考えてるのに? 私、これでも真剣なんだよねー。いつもみたいなおふざけモードじゃなくて」

藍子「加蓮ちゃん。……本当に?」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……嘘です」

藍子「無理な嘘をつくのはやめましょうね……」

加蓮「はぁい。ちぇっ。どーにかPさんと交渉できないかなー……。私が選んだ水着を藍子が着てっていうお仕事。……無理だよねー。Pさん、藍子に甘々だもん。はぁ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:24:04.66 ID:y1AgrPS70<> 藍子「…………、………………」

加蓮「んー? どしたの、そんな考え込んで。引き受けてくれる気になった?」

藍子「引き受けません。……お仕事でなくて、プライベートの……他に誰もいないところでなら、1回だけ……なら……」

加蓮「……え、いいの?」

藍子「……1回だけですからね。本当に1回だけ! その時は、加蓮ちゃんも私の水着を着てくださいよ」

加蓮「やったっ。やっぱりやりたいことは何でも言うに限るよね」

藍子「もう……。でも、早く夏が来るといいですね。焦って水着を注文しちゃいましたけれど、こうしてお話をしていると、早くプールや海に行きたくなっちゃいました♪」

加蓮「ね」

藍子「残念ですけれど、まだ梅雨は明けないみたい」

加蓮「いっつもいっつも雨ばっかりで。朝になったら髪は爆発するし、油断してたらすぐ傷むし」

藍子「加蓮ちゃんがいつも頑張っているから、加蓮ちゃんの髪も応えてくれているんですよ♪」

加蓮「その考えはなかったー」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:24:34.55 ID:y1AgrPS70<> 藍子「さっきは、加蓮ちゃんが元気になるなら……って思ったけれど、今度は正真正銘、私が早く夏に行きたいって思っちゃいました」

加蓮「水着以外にも、夏服とかたくさん着てみたいしね。それに合う髪型も試してみたくて……あと、浴衣!」

藍子「浴衣……」

加蓮「お祭りとかほとんど行ったことないもん。前に……いつだったかっけ。何かの帰り道で、たまたまお祭りをやってるのを見つけてね」

加蓮「あ、お祭りやってるんだー、ってちょっと入ってみたけど、すぐ出ちゃった」

藍子「満足しなかったんですか?」

加蓮「うん。なんか自分だけ無性に浮いてるみたいで、しかも1人ぼっちだったし。焼きそばとかぜんっぜん美味しくなくてっ」

藍子「ふんふん」

加蓮「浴衣でなら、もっと楽しめるかもしれないもん。……それに、やっぱり一緒に来てくれる人がいないとね?」

藍子「くすっ♪ 加蓮ちゃん。それって、どういうことですか〜?」

加蓮「Pさんでも誘ってみよーっと」

藍子「ああっ、ごめんなさい。冗談ですっ。私も一緒に行かせてください〜っ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:25:04.44 ID:y1AgrPS70<>

□ ■ □ ■ □


加蓮「限定メニュー、何になっただろ……あれ? まだライチのジュースのままなんだ。料理は変わってるのに」

藍子「本当だっ。きっと、すごくお気に入りの出来なんですね」

加蓮「ホントに? ネタが思いつかないとかじゃないのー?」

藍子「……今、向こうの方で店員さん、ぎくり、って反応をしていました」

加蓮「マジなんだ」

藍子「ジュースの方が、料理よりいろいろ思いつくと思うんですけれど……。いいアイディアが、閃かなかったのかな?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:26:05.49 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「……、」チラ

加蓮「とりあえず果物とか果実とか、なんでも混ぜてみたら何かできそうなんだけどね」

藍子「そういえば、前にネネちゃんがいろいろ試していて、なんだか肩をしょんぼりと落としていました。新しく考えるのは、けっこう難しいみたい?」

加蓮「へぇー……そうなの?」

藍子「なんでも混ぜればいいって訳ではないみたい。でも、新しく何かを思いついたり、試している時は、なんだか楽しそうでしたっ」

加蓮「試行錯誤も悪くはない、って感じだね」

藍子「1度だけ、私もこういうのはどうかなって教えてあげたんですけれど、ネネちゃんに、それはもうやっているって言われてしまって」

加蓮「その手のプロだから、安易に侵入したらそうなっちゃうよー?」

藍子「みたいですね。店員さんも、そうなのかな? 私が思いつくことなんて、もうぜんぶ試しちゃっていそう」

加蓮「思いつく限り全部やってみて、それ以上思いつかなくなっちゃった的な?」

藍子「そういう時は、どうしたらいいでしょうか? ……教えてください、加蓮ちゃん先生っ♪」

加蓮「よかろう。……ってよくないわよ。前にも言ったことあるけど、ジュース作りなんてやったこともないし」

藍子「やったことがないから、今から試してみるんです」

加蓮「微妙に反論しにくいことを……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:26:34.85 ID:y1AgrPS70<> 藍子「それに、今はジュース作りのお話ではなくて……いえ、ジュース作りのお話ではあるんですけれど」

藍子「これ以上思いつかない! ってくらいまでやった時、どうしたらいいかって質問ですっ」

藍子「加蓮ちゃんなら、どうしますか? 髪型をぜんぶ試してみた時とか、ネイルの色をひととおり塗ってみた後とか」

加蓮「その時は……最初に戻るかな、私なら」

藍子「最初に戻る……」

加蓮「実際は1回試したことも何度もやったりしてだから、ぐるっと1周したりはないけどね」

藍子「髪型は、パンケーキとは違うんですね……」

加蓮「……は?」

藍子「あれっ?」

加蓮「……聞かなかったことにしとく。とにかく。ずっと前にやったこととか、昔挑戦してみたこととか。ネイルなら、ずっと昔に買ってそのまま使い切らなかったヤツを試すとか……もし私が試すとしたら、そうなるのかな」

藍子「ふんふん」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:27:04.93 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「あんまり昔に立ち直るって好きじゃないんだけどねー。……ほら、私って昔が昔だし」

藍子「あはは……まあまあっ。昔探しも、時にはいいかもしれませんよ♪」

加蓮「それ、私に言う?」

藍子「加蓮ちゃんにだから、言うんです」

加蓮「……私にだから言うかぁ」

藍子「はい。でも……なるほど〜。行き詰まった時には、最初に立ち返ってみるといいってことですね」

加蓮「藍子の方が熟知してそうだけどね、そーいうこと」

藍子「そうでしょうか? あっ、でも、アイドルとして悩んだ時には、昔お仕事で撮ってもらった写真や、以前頂いたファンレターを見返すことはあるかもしれません」

加蓮「そーいうことでしょ」

藍子「……そういうことですね♪」

加蓮「そーいうことです」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:27:34.64 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「店員さーん、聞こえてたー? 参考になったら、店員さんも加蓮ちゃんのこと、加蓮ちゃん先生って呼んでもいいからねー!」

藍子「もう、加蓮ちゃん。店員さんの方が、年上なんですよ〜?」

加蓮「関係ない関係ない。お母さんにだって時々ファッションを教えてあげてるくらいなんだし」

藍子「加蓮ちゃんが、加蓮ちゃんのお母さんにファッションのことを……?」

加蓮「……なんか今、私のお母さんに対して失礼なこと思わなかった?」

藍子「お、思ってませんっ。ちらっと思い浮かべただけで」

加蓮「ま、いいけど。そういうことじゃないよ? ちゃんと、お母さんにはお母さんに合ったコーデを教えてあげています」

加蓮「何かを教えてあげる時には、自分の基準だけで考えるんじゃなくて、相手がしてほしいこととか望んでることとかじっくり考えて――」

藍子「アイドルとして、つちかわれた経験ですね」

加蓮「どっちかっていうと藍子から学んだような気もするけどさ」

藍子「私?」

加蓮「勝手に盗んだ」

藍子「ふふ。じゃあ、おあいこです。私も、加蓮ちゃんからときどき盗んでしまいますから」

加蓮「返せー」

藍子「イヤですっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:28:04.98 ID:y1AgrPS70<> <ぐぅ〜

加蓮「ん?」

藍子「あっ」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「…………」

藍子「…………」

加蓮「……うん。そういう日もあるよっ」

藍子「優しい笑顔でそう言うの、やめてください……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:28:36.47 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「なんか食べよっか」

藍子「食べちゃいましょう」

加蓮「私も何か食べとこ。誰かさんみたいに、帰り道でお腹を鳴らしたりしたら恥ずかしいもんね」

藍子「もうっ!」

加蓮「藍子、見てみて。限定メニューの料理。新鮮サラダだってさ。限定って言うにはちょっと今さらだよね」

藍子「もしかしたら、加蓮ちゃんの言う基本に立ち返った結果なのかも?」

加蓮「いやいや。このメニューは加蓮ちゃんが来る前から置いてあったんだから」

藍子「そうでした。加蓮ちゃんに教えてもらわなくても、もう分かってたってことかも!」

加蓮「藍子の言う通り、年上に先生って言うのはやりすぎってことだよね。すみませーんっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:29:08.99 ID:y1AgrPS70<> 藍子「新鮮サラダをお2つ、お願いしますね。……でも、事務所のみなさんならそうではないかもしれませんよ。加蓮ちゃんになら、何か教えられることがあるかもっ」

加蓮「ポテトの美味しいお店のこととか?」

藍子「も、もうちょっと他にあるハズです。……でも、それも面白いかも?」

加蓮「加蓮ちゃんと一緒に行く、ファーストフードの!」

藍子「ファーストフードの?」

加蓮「豆知識ー!」

藍子「わ〜」

加蓮「みたいな? ポイントとか見分け方とか、そういうのもいいかもね」

藍子「ポテトを食べるのに、見分け方ってあ――」

加蓮「あるよ、あるに決まってるでしょ? まずお店に入ったら、いやお店に入る前から確認することがあって」

藍子「……あっ。なんだか、やってしまったかもしれません」

加蓮「お店に入ったらまずは店員さんの顔をチェックして次にカウンターの奥から見えるのを、これは何回か見ておきたいからバレないように回数に分けて――」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:29:34.69 ID:y1AgrPS70<> ……。

…………。

藍子「加蓮ちゃん。店員さん、来ましたよ」

加蓮「……ホントだ。あれ、もう?」

藍子「ポテトのお話を、5分以上も続けていましたから……」

加蓮「あぁうん。……まぁいっか。いただきまーす」

藍子「いただきます♪」

加蓮「あむ。お……。ドレッシングがだいぶ控えめな感じ」

藍子「もぐ。本当っ。野菜の味を楽しんでもらうためでしょうか。このきゅうりもキャベツも、すっごくおいしいっ」

加蓮「パプリカもなんかいつもより美味しいかも? いつも、ってほどには食べてないけどね」

藍子「そうですか〜? 加蓮ちゃん、この前ぼやいていたじゃないですか。最近、野菜たっぷりのロケ弁ばかりが出るって」

加蓮「……あれ絶対Pさんが余計なことしてるせいだよ。健康第一アイドルで売り出すのは嫌だって前からずっと言ってるのに」

藍子「Pさんも、何か諦めたくない想いがあるのかもしれません」

加蓮「でもこのサラダはうまー。と言ってもこれじゃ物足りないから、あとで刺激物は食べるけど」

藍子「せめて、食べられる物にしてくださいね……? 加蓮ちゃんに食べられない物は、たぶん私にも食べられませんから」

加蓮「はーい」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:30:04.58 ID:y1AgrPS70<> 藍子「きゅうりもパプリカも、今が旬の野菜って、前に夕美さんが言ってたような?」モグモグ

加蓮「ふぅん。夕美がそんなこと……」

加蓮「……夕美が? なんで?」

藍子「なんでって、夕美さんが言っていたから?」

加蓮「いやそうじゃなくて、あの人は花専門でしょ。それとも農園でも始めたの?」

藍子「そういえば最近、ずっと長期ロケに出ているって言っていましたよね」

加蓮「そういえば……」

藍子「私がお話を聞いた時も、電話でした。みなさんでテレビ電話を使って……」

加蓮「まさか?」

藍子「ずっと農園にいたり……?」

加蓮「……まさかぁ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:30:34.35 ID:y1AgrPS70<> 藍子「ふふ。ひょっとしたら、いつかテレビに出てきちゃうかも」

加蓮「そうなったら、帰ってくる夕美のために何か作ってあげようよ」

藍子「いいですね! 何を作るんですか?」

加蓮「ピーマンで作ったネックレス」

藍子「…………まず、それはどうやって作るんですか」

加蓮「藍子に相談したらなんとかならないかなって思いました」

藍子「なんともなりません……。食べ物は大事にしましょうね」

……。

…………。

「「ごちそうさまでした。」」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:31:04.98 ID:y1AgrPS70<> <ぼーん、ぼーん・・・

加蓮「時計の鐘の音……。ふふっ。私達が言い終えた瞬間に鳴ったよね、今」

藍子「私たちのことを、見守ってくれていたのかもしれませんねっ」

加蓮「ゆっくり食べてもいいんだよ、って?」

藍子「うんうん」

加蓮「そっか。カフェだし、藍子のことは大歓迎だよねー」

藍子「何を言っているんですか。加蓮ちゃんもですっ」

加蓮「私? 私はほら、最近時間を見てスケジュールを確認してって日々だし、むしろ嫌われてる方でしょ」

藍子「だからこそ、ここにいる時はゆっくりしていいんだよ、って言っているんです」

加蓮「えー? それは藍子が言いたいってだけじゃないのー?」

藍子「ふふ♪ もしかしたら、そうなのかもしれませんね」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:31:34.25 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「5時かー。ちょっと半端な時間に食べちゃった。晩ご飯、食べれるかな……」

藍子「サラダですから大丈夫ですよ。もし食べられそうにないなら」

加蓮「ないなら」

藍子「お腹が空くまで、ずっとここにいちゃいましょ?」

加蓮「おぉ。悪い顔してる」

藍子「ここでなら、晩ご飯の時間が遅れてしまっても、お母さんに怒られる心配はありませんから」

加蓮「ホントに悪い子してるー」

藍子「えへへ……。そうと決まれば、さっそくお母さんに連絡をしちゃいます」

加蓮「私もしとこ。怒られる前に――って、もうメール来てるし」

藍子「……ひょっとして、何か用事とか?」

加蓮「違うから。……さっきまで楽しそうだったのに一瞬で泣きそうな顔にならないの」ポフ

藍子「わっ」

加蓮「それにいつものうっさいメールだよ。藍子ちゃんに迷惑をかけないようにーって。何度目よ、全く」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:32:05.59 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「はいはい迷惑かけてません、それ以上言ったら藍子のとこに家出します。迎えに来ても帰りません、っと。よし。これでちょっとは静かになるでしょ」

藍子「……♪」

加蓮「なーに楽しそうに笑ってんのっ」

藍子「ええっ。さっきは、楽しそうだったのに泣きそうな顔にならないでって言ってくれたのに」

加蓮「それとこれとは別。ぼやーっとしてたら、藍子の分までメールを送っちゃうよ?」

加蓮「そんで加蓮ちゃんにいっぱい迷惑をかけてしまいましたってあることないことを全部、」

藍子「そ、そんなことしたら怒られちゃうのは私です! 待って加蓮ちゃん、今送るから〜っ」

加蓮「たははっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:32:34.92 ID:y1AgrPS70<>

□ ■ □ ■ □


加蓮「…………」ウズウズ

藍子「ただいま、加蓮ちゃん。……どうしたんですか? なんだか、うずうずしているみたい」

加蓮「藍子、お帰り。いや……なんか、こう……」

藍子「?」

加蓮「ううんっ。大丈夫。ここはカフェだし、藍子と店員さんと、何人かのお客さんしかいなんだっ」

藍子「はあ。そうですね……?」

加蓮「んーっ!」ノビ

加蓮「っと」

加蓮「……、」

加蓮「んーっ!!」ノビ

加蓮「っとぉ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:33:05.18 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「ずっと座ってたらちょっと身体が変な感じになっちゃって。最近動き回ってばっかりっていうのもあるし……。思いっきり背伸びしたら、気持ちいいねっ」

藍子「ふふ、分かります♪ よくPさんにも言うんですよ。座ってばかりだと健康に悪いから、たまには背伸びでもどうですか、って」

加蓮「ほうほう」

藍子「Pさん、立ち上がって思いっきり背伸びして……くすっ♪ そうしたらときどき、ごきごきって音がするんです」

藍子「運動不足かも……って、深刻そうに呟いたから、今度誰かのレッスンに付き合ってあげたらどうですか? って言ったら、なんだかちょっぴり嫌な顔をされちゃいました」

加蓮「あぁ、それは嫌な顔をされちゃうねー」

藍子「えっ……。私、Pさんを傷つけちゃうようなこと――」

加蓮「たははっ。そこまで深刻にならなくても。ほら、みんないつもハードなレッスンばっかりしてるじゃん? そこに運動不足のPさんが放り込まれたら……ねぇ?」

藍子「あっ、確かに。急な運動は、よくありませんよね。まずはジョギングや、お散歩くらいがちょうどいいのかもっ」

加蓮「ほう? そういう建前でPさんのことを誘うんだ」

藍子「ふぇ?」

加蓮「さってと。……やっぱもう1回。んーっ!」ノビ

藍子「あっ、違います、そういうことではなくて!」

加蓮「あははっ、ノリわるーい」

藍子「もぅ……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:33:34.45 ID:y1AgrPS70<> 藍子「私も、加蓮ちゃんみたいに。ん〜っ」ノビ

藍子「うんっ。たまには、思いっきり伸びをしてみるのも気持ちいいですね♪」

加蓮「ねー」

藍子「でも加蓮ちゃん、さっき伸びをする前に、何かを気にしていたような……?」

加蓮「まあね。ついカメラのことを気にしちゃった」

藍子「……カメラ? カメラって……防犯カメラとか? それとも、この後撮影の予定があるのでしょうか」

加蓮「ないよ。今日は1日お休み。防犯カメラなんて気にしないよ」

加蓮「そうじゃなくてさー。撮影の時って、休憩時間とか合間の待ち時間にもたまにカメラを回されたりするじゃん」

藍子「そうですね……。油断していると、すぐ撮られちゃいます」

加蓮「ホントホント。カメラを持ってる人って、隙あらばシャッターを切ろうとするんだから」

藍子「それが、カメラマンさんのお仕事って言われたら、そうなんですけれどね」

加蓮「……いや今のは藍子を皮肉ったつもりだけどね?」

藍子「あれっ?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:34:04.70 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「でさー。藍子は前からそうだけど、最近どうもそういうことが前より増えてきちゃって」

藍子「私は前からって、どういう意味ですか〜」

加蓮「今日だって、私が寝てる間に写真を撮ったりしたんじゃないの? ……あ、しまった。言う前にこっそり藍子のスマフォを確認させてもらうべきだったかも――」

藍子「……!」

加蓮「何その"しまった、その手があったか!"みたいな顔」

藍子「……っ」ガクッ

加蓮「突っ伏せるほどショック受けなくてよくない? ……その反応なら撮ってないってことなんだね。じゃあいいや」

加蓮「最近はホント、現場とかでもさ。カメラマンさんがこっそり……っていうのは慣れたし、Pさんからも対策とか心構えはしてろって言われてるし。いいんだけどさ」

加蓮「ちょっとね。ひどい時には何人も陰に隠れて、ってこともあるし」

藍子「それは、ちょっぴりひどいですね……」

加蓮「盗撮をするなら1人で堂々とやりなさいよっ」

藍子「それはそれでひどいことだと思いますけど!?」

加蓮「盗撮魔筆頭の藍子がなんか言ってるー」

藍子「う゛っ……。何も言い返せません」

加蓮「あははっ。Pさんも、あんまりな時には注意してくれてるみたいだけど、どうしてもね……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:34:35.10 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「っていうか文句を言う前に慣れちゃった。それに、スイッチオフの時の自分と、表情を作った自分の、境目って言うのかな」

加蓮「そのラインを勝負していくのが、最近のマイブームって感じ」

藍子「ええっと……?」

加蓮「演技はしてないけど素の自分でもない、みたいなの」

藍子「……あっ、今ので分かりました。本音を少しだけ隠して……みたいな感じですよねっ」

加蓮「どちらかというと、本音を少しだけ出してって方なの」

加蓮「撮られた写真を見る機会もそこそこあるから、それで自分がどう映ってるのかなーって確認しちゃって」

加蓮「ま、たいていは不自然だったり、SNSとかでも割と不評だし、"表情作ってるのがバレバレ"みたいなコメントもついたりしちゃうんだけどね」

藍子「みなさん、厳しいんですね……」

加蓮「だからこそ、ちゃんと騙したいなとも思ってる」

藍子「ふふっ。加蓮ちゃんの見せたいように、見せられるといいですね♪」

加蓮「ね」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:35:05.47 ID:y1AgrPS70<> 藍子「だから、さっきはカメラを気にしちゃって?」

加蓮「そ。カメラがあったら迂闊に背伸びなんてできないし」

藍子「背伸びくらいなら――」

加蓮「その後の気が抜けた表情。撮られたくないでしょ」

藍子「あっ……」

加蓮「ここには藍子と店員さんと、他のお客さんしかいなくて、他のお客さんだってじっと私の隙を窺ってる訳でもないんだけどさ」

加蓮「分かってるけど、一瞬だけ意識が変なところに飛んじゃった」

加蓮「職業病ってヤツなのかなー……。気を付けなきゃ」

藍子「大丈夫。ここは、いつものカフェですよ〜」

加蓮「そっか。いつものカフェなんだー」

藍子「はい。いつものカフェです。ここでは、表情を作ったり、誰かに見せる自分でいなければならない、なんてことはないんですよ」

藍子「加蓮ちゃんの、そのままの姿でいていいんですからね」

加蓮「そのままの姿……。忘れないようにしなきゃ、ね」

藍子「はいっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:35:35.22 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「……表情を作ってばっかりだと、昔の頃のことを――」

藍子「こらっ。加蓮ちゃん。昔のことは、もう言わないようにするんじゃなかったんですか?」

加蓮「あっ」

藍子「ふふ♪」

加蓮「い、いやー? ほら、昔話もネタにできるようになった加蓮ちゃんって言った気がする。言ったよね、私!?」

藍子「はい、言いましたね」

加蓮「だから言うのっ。えーっと……とにかく、そういう自分でいると昔の頃のことを思い出しちゃうんだけどね?」

藍子「ふんふん」

加蓮「寝起きの顔、見られたじゃん。……こら! 笑うのを我慢したような変顔になるなっ。笑うなら思いっきり笑いなさいよ! 藍子らしくもないっ」

藍子「だ、だって〜。目をこすっている時の、あどけない顔とか、店員さんと見つめ合っていた時の気まずい感じとか、思い出したらなんだか、加蓮ちゃんが可愛いなって思っちゃっ……」プルプル

加蓮「なによー、普段は可愛げがないって言うの? 悪かったわね! スタッフから媚を売るような話しかけられ方ばっかりしてたらいくら私でもそうなるわよ!」

藍子「何のお話ですか?」

加蓮「ただの愚痴!」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:36:04.44 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「ったく……すごいアイドルだってちやほやされるのは悪い気はしないけど、媚を売るならそうと分からないようにくらい心がけなさいよ……」

藍子「……?」

加蓮「なんでもなーい」

藍子「……」ジッ

加蓮「……藍子だって、例えば学校でノートを写させてほしいからってやたらニコニコしながら擦り寄られたら嫌な気持ちになるでしょ?」

藍子「……? ノートを見せてほしいなら、見せてあげますけれど」

加蓮「えー」

藍子「学校の受業のことか、宿題のことで困っているんですよね。困ったことをそのままにしていたら、あとからもっと困っちゃうかもしれません。それならノートくらい、いくらでも見せてあげますよ〜」

藍子「でも、宿題の丸写しは駄目ですからねっ」

加蓮「…………」

藍子「???」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:36:34.40 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「とにかく。私が言いたかったのは」

藍子「加蓮ちゃんが、言いたかったのは」

加蓮「私は別に可愛いって訳じゃないってこと――あれ? いやいや違う、そうじゃなくて……」

藍子「それなら、加蓮ちゃんは可愛いってことですよねっ」

加蓮「そうそう。私は可愛いってこと――そうじゃないんだけど!?」

藍子「きゃっ」

加蓮「何言わせんのよ!」

藍子「勝手に言ったの加蓮ちゃんですよ〜っ。ま、まあまあ。ほら、加蓮ちゃんは可愛いですから♪ ねっ。Pさんも、ファンのみなさんも、きっと、ううん、絶対そう言っていますからね」

加蓮「……、」

藍子「ふう。よかったです、冷静になってもらえて。……加蓮ちゃん、顔が真っ赤? ひょっとして、照れちゃいましたか?」

加蓮「アンタがさせておいて何を他人ごとみたいにさぁ……!!」

藍子「きゃ〜っ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:37:05.05 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「あーあ、もうグダグダ。喋りたいことが途中で消えちゃう感じー」

藍子「今日は、のんびりする日ですから。たまには台本にないことを喋ってみたり、思いついたことを思いついたままお話しちゃいましょ?」

加蓮「ラジオだと全ボツ食らう……」

藍子「そうなんですか? よく、スタッフさんからも面白いって言われたりしますけれど……」

加蓮「それは藍子の住んでる世界が優しすぎるだけだってー」

藍子「加蓮ちゃんだって、一緒の世界に住んでいるじゃないですか〜」

加蓮「……無意識ににやけるようなこと言うのやめてくれない?」

藍子「加蓮ちゃん、こっちにおいで〜♪」

加蓮「誰が行くかっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:37:34.96 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「あれ、雨が上がってる。そしてもう暗くなっちゃってるみたい」

藍子「もう7時半ですね。……ふふっ。もうこんな時間なのに、慌てたり焦ったりしなくていいなんて、なんだかおかしな気分」

加蓮「今日は閉店時間くらいまでいるって決めたし、藍子のところに家出しますって連絡はしてるもんね」

藍子「行き先を言ったら、遊びに行って来るねって言ってるだけなんじゃ……」

加蓮「お母さんにスイーツを奢ってもらうまで藍子の家から帰らない」キリッ

藍子「……じゃあ、私がずっと加蓮ちゃんに食べさせてあげたら、ずっと私の家にいてくれますか?」

加蓮「え、なんでそうなるの」

藍子「あれっ」

加蓮「……事務所の女子寮にでも家出しよっかなぁ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:38:04.55 ID:y1AgrPS70<> 藍子「加蓮ちゃん、1人で大丈夫? 夜は寂しくありませんか? 私も、一緒に行こうかな……?」

加蓮「私を何だと。むしろ女子寮の方が、みんないるから寂しくなくない?」

藍子「確かに、それもそうですね。前に歌鈴ちゃんが、お泊り会をしたって言っていたような……」

加蓮「歌鈴ってなんか、女子寮の夜の廊下を泣きそうな顔で歩いてそー」

藍子「……、」

加蓮「でしょ?」

藍子「お、思っていませんよ? ほら、歌鈴ちゃんは早寝早起きする子だから、夜はすぐ寝ちゃうんじゃないでしょうか」

加蓮「お泊り会なのにすぐ寝るんだ……」

藍子「もしも加蓮ちゃんが女子寮に行っちゃうなら、歌鈴ちゃんのこと、見てあげてくださいね」

加蓮「いやだからなんでそうなる……。もういいよ、なんでも」

藍子「くすっ♪」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/07/05(日) 19:39:14.90 ID:y1AgrPS70<> 加蓮「すみませーんっ。私晩ご飯食べたいけど、藍子は?」

藍子「そうですね〜……。夕食の時間ですけれど、たまにはご飯じゃないのも食べてみましょうかっ」

加蓮「また悪い顔してるー♪ 何食べる? パフェとか、ホットケーキとか?」

藍子「思い切って、パフェを食べてしまいましょう!」

加蓮「だって、店員さん。私も同じのでお願いね」

加蓮「……うん」チラ

加蓮「なんか……いつもは藍子と一緒にいると時間がすぐ経つのに、今日はそんなことないね」

加蓮「たまに時間は気になっちゃうけど、その度にまだ時間があるんだって分かって、もうちょっとのんびりできるんだねって思って……それだけで、ほっとする……」

加蓮「ふふっ。今日はありがと、藍子。今日は付き合ってくれて」

藍子「いえいえ。加蓮ちゃんこそ。久しぶりのお休みなのに、私といてくれてありがとうっ」

加蓮「……たはは」

藍子「……ちょっと照れちゃいますね」

加蓮「ね。店員さーん、パフェまだー! おそーい!」

藍子「加蓮ちゃん、今注文したばっかりですよ。もうちょっと、のんびり待ちましょうっ」


【おしまい】 <>