以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 18:58:45.97 ID:5/tybdgM0<>――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「お待たせ藍子。時間……通りだよね。よかったっ」

高森藍子「こんにちは、加蓮ちゃん。どこかに寄っていたんですか?」

加蓮「お、さすがお散歩マスター。すぐに見抜いちゃうんだ」

藍子「なんとなく、そうなのかな? って思っただけですよ」

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<>高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「普通のことをやるだけのカフェで」 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 18:59:21.24 ID:5/tybdgM0<> レンアイカフェテラスシリーズ第134話です。

<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

〜中略〜

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「汗の跡が残る場所で」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「1時間だけのカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「ただいまと言えるカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんが」北条加蓮「アイドルではない時間に」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 18:59:50.99 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「アクティブコーデを試すと、特に用事もないのに色んなとこを歩き回りたくなっちゃうんだよね」

藍子「分かりますっ。いつもより、ちょっとだけいろんな場所に行きたくなっちゃいますよね。つい早歩きや、駆け足になっちゃったり……」

加蓮「……藍子が?」

藍子「……私だって、早歩きになる時くらいはありますよ?」

加蓮「あははっ。知ってる。最近忙しかったから本格的な秋コーデが用意できなくてさー。アクティブコーデとか言ってみたけど、シャツとパンツをテキトーに選んだだけ。誤魔化しコーデだね」

藍子「加蓮ちゃんにしては珍しいですね。それほど忙しかった、ってことですか?」

加蓮「それもまぁ、そうなんだけど……そうっていうか」

藍子「?」

加蓮「どうせお仕事する時は衣装なんだし、とか思っちゃった」

加蓮「ってことで、夏コーデをちょっと使いまわしてみた感じ。今度オフの日1日使って、改めて用意するつもりなんだー♪」

藍子「どんな結果になるか、楽しみに待っていますねっ」

加蓮「ふふっ。プレッシャー。1人で行く予定だったけど、藍子ならいいや。ついてくる?」

藍子「……加蓮ちゃん、お1人でどうぞ」

加蓮「冷たい」

藍子「うんって言ったら、加蓮ちゃん……自分のコーディネートより、私を着せかえ人形にするんじゃないかなって」

加蓮「だってその方が楽しいじゃん」

藍子「もうっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:00:20.24 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「藍子は……いつも通りって感じではあるよね。ベージュのカーディガンも深ブラウンのスカートも」

藍子「いつも通りですよ〜。……にあいますか?」

加蓮「似合う似合う」

藍子「よかった♪」

加蓮「なんかそこまでガチガチの秋コーデを用意されちゃうと、テキトーなのを着ただけの自分がちょっと恥ずかしくなってきたなぁ……」

藍子「そんなことないと思いますよ? 加蓮ちゃんに言われるまで、夏服を使いまわしたなんて気が付きませんでしたから」

加蓮「騙せる?」

藍子「せめて、ごまかすって言い方にしましょうよ〜」

加蓮「サボったのを誤魔化す」

藍子「まあまあ。私服よりアイドルの衣装のことを意識してしまうのは、それだけ加蓮ちゃんがアイドルだからってことですから」

加蓮「サボりはサボりだしー」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:00:49.56 ID:5/tybdgM0<> 藍子「シャツの柄が変わるだけで、季節も変わっちゃったみたい。なんだか今の加蓮ちゃん、すぐにでも走り出しちゃいそうっ」

加蓮「そう? 赤のシャツなんて女の子っぽくないって最初は思ってたけど、案外アリなんだね」

藍子「でも、無理しちゃ駄目ですからね?」

加蓮「うっさーい」

藍子「ふふ。ごめんなさいっ」

加蓮「走っちゃダメ?」

藍子「う〜ん……。走るのではなくて、お散歩で♪」

加蓮「アンタそれ言いたかっただけじゃないの?」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:01:20.33 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「アクティブコーデか、藍子を見習ってゆるふわ系コーデかで迷ったんだけど――」

藍子「!」

加蓮「即決でアクティブコーデにしました」

藍子「……」プクー

加蓮「だってほら、私は藍子ちゃんじゃなくて加蓮ちゃんなんだよ?」

藍子「……たまには、ゆるふわを選んでくれてもいいのに」

加蓮「よく考えてみたらそもそも手持ちが無かったし、今回のテーマが誤魔化しコーデなんだからそうなるよね」

藍子「…………、」

加蓮「藍子?」

藍子「……あのワンピースドレスなら加蓮ちゃんに似合うかな……。それと前に買った妖精がテーマの……」

加蓮「……人のクローゼットに余り物を捨てる計画を立てないでもらえるかな?」

藍子「あまり物ではありませんっ。捨てるのでもありません! ちゃんと加蓮ちゃんに似合うのを吟味してから、加蓮ちゃんに着てもらうために持っていきますから」

加蓮「着ないので持ってこないでください」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:01:50.09 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「……野暮ったいこと聞くけど、暑くない?」

藍子「大丈夫ですよ。加蓮ちゃんこそ、寒くありませんか? 体を冷やしすぎたら、風邪を引いちゃうかもしれないから……気をつけてくださいね」

加蓮「ウザーい」

藍子「先に聞いたのは加蓮ちゃんなのに……」

加蓮「私はそこまで言ってない」

藍子「もう。でも、今日は涼しいから大丈夫ですよ。確かに……9月って言っても、お昼には、30度にもなる日もありますよね」

加蓮「ね」

藍子「秋のつもりでお出かけしたら、けっこう暑くて……つい、カフェや、雑貨屋さんから出たくなくなっちゃって。ドリンクのおかわりなんてしちゃったりして……」

加蓮「こもりきりになる藍子ちゃんでした」

藍子「そうそう。その時に作ったものが……これです。じゃん♪」

加蓮「ものづくりカフェ?」

藍子「はい。ちょっとだけ寄って、店員さんとお喋りだけして帰ろうって思っていたんですけれど……。新しい素材が入ってるよ、って誘われちゃって」

加蓮「なるほどねー。それで、ちっちゃいバッジなんだ。かわいー」

藍子「銀杏の葉と、紅葉と、それからたき火のバッジですっ」

加蓮「秋の欲張りセットだね」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:02:20.26 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「そこに焼き芋を足したら完璧だった」

藍子「焼き芋……!」

加蓮「焼き芋」

藍子「……くすっ♪ それって、加蓮ちゃんが食べたいだけじゃないんですか〜?」

加蓮「バレた?」

藍子「ばればれですっ」

加蓮「ポテトもいいけど、この時期は焼き芋もいいよね。今度事務所で作ってもらおっかな?」

藍子「……加蓮ちゃんも、たまには作るのに参加しましょ?」

加蓮「食べさせてもらう専門ですし♪」

藍子「も〜っ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:02:49.37 ID:5/tybdgM0<> 藍子「加蓮ちゃんに、どれか1つをプレゼントです♪ どれがいいですか?」

加蓮「えー、悩む。どれにしよー」ジー

藍子「ゆっくり選んでくださいね。試しに、つけてみてもいいですよ」

加蓮「どれもオシャレなんだよね。普通に雑貨屋で売ってそう」

藍子「ありがとうございますっ」

加蓮「……ちょっとズルい質問かもしれないけど、これ、私が選ばなかった分はどうするの?」

藍子「1つは、モバP(以下「P」)さんにプレゼントしようかなって思っています。もう1つは、次に事務所に行った時次第ですね」

加蓮「事務所に行った時次第?」

藍子「他に誰かいたら、最初に会った人にプレゼントします。あっ、でも大人のみなさんには、ちょっと可愛すぎるかな……? 失礼になっちゃうかも」

加蓮「あははっ。そこは大丈夫でしょ。うちの事務所の大人たち、だいたい子供っぽいとこがあるし」

藍子「そうかな……? そうかもっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:03:18.76 ID:5/tybdgM0<> 藍子「事務所に行った時、他に誰もいなかったら、残った分は自分用にしちゃいます」

加蓮「おー」

藍子「次に事務所に行くのがちょっぴり楽しみなんですよね♪ 誰にプレゼントすることになるのかなって……加蓮ちゃん、先回りして誰がいるか連絡するのはやめてくださいね?」

加蓮「さすがにそこまではしないって。でもそれだと難しいなぁ。Pさんはともかく、もう1人が誰か分からないってなると似合うかどうかも想像しづらいし……」

藍子「……む〜」

加蓮「……?」

藍子「加蓮ちゃん。できれば、加蓮ちゃんが自分に似合うのはどれかなって想像して、決めてほしいです」

加蓮「あ……そっか。そうだよね。ごめんっ」

藍子「ううん。加蓮ちゃんが優しいのは知っていますから。……でも、今のはなんだか寂しかったですよ?」

加蓮「人を着せかえ人形にするのが好きなだけだよ。じゃあ……この銀杏のヤツ。これもらうね」

藍子「はい、どうぞ♪」

加蓮「つけるのは、今度秋コーデをちゃんと作った時。それでいい?」

藍子「もちろんですっ」

加蓮「あーあ。さらにプレッシャーだ」

藍子「加蓮ちゃんなら、きっとすてきなコーディネートになるって期待していますよ」

加蓮「……分かってて言ってる?」

藍子「えへへ……。ちょっとだけ、お返しっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:03:48.89 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「はいはい、どうせ空気なんて読めませんよっと。にしても――」

藍子「?」

加蓮「ほら、アクティブコーデ……まぁ誤魔化しコーデなんだけど。これ着たら歩き回りたくなるって言ったじゃん」

藍子「言いましたね」

加蓮「それで、途中で寄り道して来たんだけどさー……」

藍子「ふんふん」

加蓮「……もー。なんでそういう時に限ってバッジとか用意してくるかなー」

藍子「……?」

加蓮「はい、お土産。秋色ミサンガ」

藍子「わ、綺麗……!」

加蓮「テキトーに買っただけだよ? ……でも結構いいでしょー。パッと見つけただけなんだけど、お気に入りなんだ」

藍子「こんなに細いのに、紅葉の色と銀杏の色が混ざり合って……ふふっ。秋色ですね♪」

加蓮「でしょ? いいって思って買って、藍子にも似合うかなって思ったのに……誰かさんがバッジとか持ってくるから?」

藍子「これはこれで、違ったすてきさがありますから」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:04:18.87 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「でも私的にはちょっと物足りないんだよねー。紅葉色と銀杏の色と、あとここに焼き芋が混ざれば完璧だったのに」

藍子「くすっ♪ ここに、どうやって焼き芋を混ぜるんですか?」

加蓮「…………焼き芋の色?」

藍子「焼き芋の色……。少し濃い目の黄色? それとも、お芋の皮の色でしょうか」

加蓮「腕につけると焼き芋の湯気が立ち上がる腕飾りとか、どうにか作れない?」

藍子「それはちょっと私には無理です……。でも、私たちの事務所なら、そんな近未来みたいな雑貨も作れてしまいそうですね」

加蓮「ねー。ま、残念だけどこれは普通のミサンガ。あんまり高い物じゃないけど、藍子にあげる」

藍子「いいんですか? 加蓮ちゃんが見つけたのなら、加蓮ちゃんがつければいいのに――」

加蓮「私の分も確保済みでーす。ほら」ヒラヒラ

藍子「あはっ。同じ物がもう1つ! それなら、これは遠慮なくいただいちゃいますね♪」

加蓮「……冷静に考えてみると、これお揃いにしようって言ってるようなもんじゃない?」

藍子「?」

加蓮「うわ、もうつけてるし。私はしまい直そーっと……」ガサゴソ

藍子「お揃い、いいじゃないですか〜」

加蓮「やだよー。やるならせめてゆるふわコーデとセットで――」

藍子「!」

加蓮「あ、ヤバ。今のナシ。……ナシだからテーブルを乗り越えようとすんなっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:04:49.20 ID:5/tybdgM0<>

□ ■ □ ■ □


加蓮「さすがにメニューに焼き芋はないね」

藍子「もしかしたら、もっと秋が深まった頃に追加されるかもしれませんよ?」

加蓮「藍子ー。カフェアイドルの権限で店員さんに聞き出してよー」

藍子「いいですけれど……追加されてるかな、されてないかな、って心待ちにするのも、楽しくありませんか?」

加蓮「……そっちにしちゃおっか?」

藍子「はいっ♪」

加蓮「……、」

藍子「?」

加蓮「あのさ。……変な顔しないで聞いてほしいんだけど」

藍子「はあ」

加蓮「……カーディガン、借りていい?」

藍子「はい、どうぞ」

加蓮「あ、いいんだ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:05:20.30 ID:5/tybdgM0<> 藍子「寒くなっちゃいましたか?」

加蓮「ううん。そうじゃないんだけど……なんかこう……ここって、カフェじゃん?」

藍子「はい。カフェです」

加蓮「他のお客さんもいるし、店員さんもいるし……当たり前なんだけど……」

藍子「いますね」

加蓮「なんかそこで、私だけ薄着のアクティブコーデで座ってるのが、すごく落ち着かなくなって」

藍子「あ〜」

加蓮「ごめん。帰る時に返すね」

藍子「いいですよ。気にしないでください」

加蓮「ん」モゾモゾ

加蓮「っふう。どう? ちょっとは秋感、増した?」

藍子「う〜ん……。ゆるふわ度が、ちょっぴり足りません」

加蓮「いやゆるふわの話じゃなくて。秋の話」

藍子「ふんわりとしたワンピースや、スカートはどうでしょうか」

加蓮「だからゆるふわの話じゃなくて秋の話!」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:06:19.54 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「ベージュのカーディガン抜きでも、白ニットにスカートだけでここまで秋っぽくなるかー」

藍子「?」

加蓮「藍子の話」ジー

藍子「……な、なんだか、じいっと見られると恥ずかしいですよ?」

加蓮「そう?」

藍子「さっきまで、上にもう1枚着ていたからかも……」

加蓮「あー」

藍子「私服でいる時は、あまり視線を感じることがないから――……加蓮ちゃん。身を乗り出して、じいっと見ようとするのはやめてくださいっ」

加蓮「さっきの藍子のマネ」

藍子「も〜っ!」

加蓮「アイドルバレとかってしないの? あ! もしかしてお散歩アイドルの! とか」

藍子「そうですね。普段、てくてく歩いていても話しかけられることはほとんどありません。でも、ファンレターではよく、私を見たってお便りを頂けるんです」

加蓮「ほうほう」

藍子「私の顔を見て、楽しそうにしているのが嬉しいって言ってもらえたり♪」

加蓮「いいじゃんっ」

藍子「あと……遠くから見守ろうとしたら、警察の方に声をかけられましたっていうお便りも」

加蓮「……うん、傍から見たらそうなるのかな?」

藍子「ラジオで読んだお便りなので……。あまり周りの方の心配をさせたりしないでくださいね、って、一応言いましたけれど。ちゃんと伝わったかな?」

加蓮「明日、いつもの道の角を曲がったら、大量のファンと出くわしたりするよ。どうしよっか?」

藍子「しませんっ」

加蓮「えー」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:06:49.41 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「っていうか結構見られてるじゃん。気付かないの? 視線を感じない、とか言ってるけど」

藍子「お散歩している間に見られるなら、それはお散歩仲間ですから♪」

加蓮「……そういうものなの?」

藍子「加蓮ちゃんと一緒に事務所にいる時は、加蓮ちゃんがアイドルだけれど、外で一緒にお出かけしている時は、大切な友だち……それと同じです♪」

加蓮「はいはい、ありがとありがと。じゃあカフェにいる時は?」

藍子「カフェにいる時は……」

加蓮「カフェにいる時は」

藍子「……加蓮ちゃん?」

加蓮「あははっ。何それー。ま、私もそんな感じだけど」

藍子「…………、」

加蓮「ん?」

藍子「加蓮ちゃんとお話していたら……普段の私も、ファンのみなさんに見てほしいなって思えてきて――」

加蓮「お……」

藍子「あっ、ちょっぴりだけですよ。やっぱり、アイドルではない時間や、なんでもない時間も大切にしたいですから」

加蓮「アイドルだからこそ、アイドルじゃない時間を……ね。藍子らしいや」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:07:19.40 ID:5/tybdgM0<> 藍子「その中で見つけたもの……お散歩で発見した面白いものとか、色んな方に紹介したいお店とか。あと、みんなとのアウトドアの記録とか、事務所で面白いことがあった時とかっ」

藍子「そういうのは、見てもらうこともありますけれど……」

藍子「そういうのでもない、本当に、なんでもない時の私を……ほんの少し。もう少しだけ……見てほしい、見せてあげたい、って思っちゃいました」

加蓮「さっきの撤回。カフェにいる時も、藍子はちゃんとアイドルだね」

藍子「ありがとうございます♪」

加蓮「私は逆に、もうちょっとアイドル気分を抜きたいとか思うけど……」

藍子「?」

加蓮「なんでも」

藍子「でも……」

加蓮「?」

藍子「加蓮ちゃんとここにいる時間は……普通だけど、特別なんです」

藍子「改めて考えてみると、なんだか分からなくなっちゃいますね。どっちなのかな……? 本当になんでもない時かもしれませんし、ちょっぴり特別な時間なのかもしれません」

藍子「……加蓮ちゃんは、どっちだって思いますか?」

加蓮「えー……。難しいこと言うなぁ……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:07:49.02 ID:5/tybdgM0<> 藍子「まあまあ。思ったことを、そのまま答えてみてください」

加蓮「そんなこと言われても。確かに……なんだろ、普通っていうか、当たり前になってる時間ではあるよね」

藍子「そうですよね♪」

加蓮「でもさ。藍子の言うことも分かるなぁ。普通だけど、特別にしてる部分もあるっていうか……」

加蓮「こうしてここで藍子と話したり、いろんな時間を過ごしたり……気持ちを受け止めてもらったりしてなかったら、今の私って絶対いない訳だし」

加蓮「もっと大げさに言うと、アイドルとして大活躍してる私もいないのかもしれない」

加蓮「じゃあ、この時間って何よりも特別なんだろうけど……」

加蓮「そうやって特別扱いすると……踏み込みにくくなるよね」

加蓮「藍子を誘いにくくなっちゃったり、言いたいことも軽い気持ちで言えなくなるし。特別な物は大事にしなきゃ、って……。自分の考えに、縛られちゃう」

藍子「……、」

加蓮「特別扱いはしたくないけど……うん、そうだ。私は特別扱いしない、でも誰かには特別扱いされたい」

加蓮「ほら、私ってば未だに藍子ちゃん大好き同盟から狙われてる身ですし?」

藍子「あはは……」

加蓮「ま、そんな訳で……って、結局どっちなんだろ?」

加蓮「んー……」

藍子「う〜ん……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:08:19.48 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「……いや、待って待って?」

藍子「?」

加蓮「なんで私達こんな真面目な話してんの」

藍子「私は、最初から真面目にお話しているつもりですけれど……?」

加蓮「そうなんだろうけどそうじゃなくて……。っていうか元々藍子のコーデの話とかだったじゃん! なんでこんなことになってんのっ」

藍子「ふふ、そう考えてみると、お話って不思議ですよね。なんでもないお話から、大切なお話に繋がっていくのも、いいと思いますよ」

加蓮「えー」

藍子「最初から、こう――大事なお話があるんです! って言われると、緊張感を持ってお話することはできますよね。でもそれだと、肩に力が入っちゃいます」

藍子「それよりは、のんびりお話して、あるがままに答えて――」

藍子「そうした方が、着飾ったりしていない、本当の気持ちを聞くことができるって思いませんか?」

加蓮「……言いたいことは分かるけど」

藍子「けれど?」

加蓮「なんかさ」

藍子「うん」

加蓮「真面目な話とテキトーな雑談って、分けておきたいかな?」

藍子「あ〜……」

加蓮「ちゃんと線引きしておかないと、仮面は脆くなっていくばかりだし。……私だって誰彼構わず話したい訳じゃないんだし?」

藍子「そっか、加蓮ちゃんはそうですよね……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:09:20.03 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「あくまで私はそうってだけだよ。藍子の考えもいいんじゃないかな?」

藍子「……、」

加蓮「時間は……藍子がいつも言ってる、楽しいのもそうじゃないのもひっくるめて時間ってことでよくない? それが特別だと思ったら特別なんだし、いつものことだって思ったらいつものことなんだし。あらかじめビシッと決めておきたくはないかな」

藍子「その考え、けっこう好きかも……。でもっ」

加蓮「ん?」

藍子「その考えだったら、私にとって加蓮ちゃんとすごす時間が、ぜんぶ特別なものになっちゃいそう……」

藍子「ふふ。もうちょっと、自然体でいたいのにっ」

加蓮「大丈夫大丈夫。ここにいる時のアンタはやりたいようにやってるから。自然体自然体」

藍子「ちょっと違います」

加蓮「もー、いいから話を元に戻そ? もうちょっとだけファンに見てもらいたいって話でしょ?」

藍子「そうでしたね。どうしたら、見てもらえるかな?」

加蓮「どうしたらって、それこそ今更。簡単な話じゃん。んー……藍子、ちょっと左に寄って」

藍子「こうですか?」スッ

加蓮「もうちょっと。テーブルで身体が隠れない程度に」

藍子「この辺りなら……?」

加蓮「はい1枚」パシャッ

藍子「わ」

加蓮「で、これをSNSにアップします。はいおしまい」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:09:50.13 ID:5/tybdgM0<> 藍子「あっ。……あははっ。簡単なことでしたね♪」

加蓮「誰かさんは人の写真ばっかり撮ってるから、案外思いつかなかったのかもしれないけど?」

藍子「……加蓮ちゃん。なんだか、言い方に悪意がある気がします」

加蓮「ん? 人の隙を見つけては盗撮してこっそり保存してを繰り返してる誰かさんがなんだって?」

藍子「…………き、きのせいですよ〜」

加蓮「それも今更!」

加蓮「アイドル活動とか、トップアイドル目指して、なんて言うとどうしてもハードルが高くなっちゃうけどさ。自分を見せてあげるなんて、ホントに簡単なことなんだから」

加蓮「なんとなく写真を撮って、なんとなくアップして、それだけでしょ?」

加蓮「藍子だって、よく風景写真を載せてるじゃん。それと同じ。なんかちょっとファンに見てもらいたいなー、って思ったら見せればいいだけなの」

加蓮「少なくとも、それだけで見てくれる人がいる程度には、藍子はもうアイドルなんだから」

藍子「……はいっ」

加蓮「……言っとくけど、あとは自分でやってよ? いちいち撮ってあげたりしないから」

藍子「大丈夫です。次からは、ちゃんと自分でやりますから――」

藍子「……でも加蓮ちゃんにカメラで撮ってもらうのも、いいかも?」

加蓮「自分でやれ」

藍子「厳しいっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:10:18.85 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「私が撮影係ねー。せっかくカフェにいるんだし、"カフェにいる藍子"ってことで1枚撮っとく?」

藍子「いいですよ。加蓮ちゃんにお任せしますね」

加蓮「じゃあせっかくだし……って、そういえば今日なんにも注文してないじゃん」

藍子「そういえば、加蓮ちゃんが来てからは何も……?」

加蓮「……うっわー、来てから3時間経ってるー。なのに喉も渇かないしお腹も減ってない。これもゆるふわの呪いか」

藍子「なんでもかんでも、ゆるふわのせいにしないでくださいっ。それに、呪いって言い方っ、まるでひどいものみたいに!」

加蓮「呪いじゃん」

藍子「む〜」

加蓮「たはは。すみませ……って、何注文するか決めてない――店員さん来るの早っ!」

藍子「こんにちは、店員さんっ♪ ……待ってくださっていたんですか?」

加蓮「あー。いつ注文してくれるかな的な……。ごめんね? 話に盛り上がっちゃって」

藍子「ごめんなさいっ。注文、何にしようかな……」

加蓮「紅茶でお願い。味はねー……今日の藍子のコーデに合いそうなヤツで!」

藍子「……て、店員さん? あの、じ〜っと見られると、恥ずかしいですよ……?」

加蓮「何言ってんの。それでもアンタはアイドルなの!?」

藍子「今はオフですっ」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:10:48.94 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「お、店員さんは答えを見つけたみたい」

藍子「もう……。加蓮ちゃん。店員さんを困らせちゃ駄目ですよ?」

加蓮「はーい。でも、考えてる時の店員さん、楽しそうだったけどね」

藍子「……加蓮ちゃんにも、そう見えました?」

加蓮「ってことは藍子も」

藍子「悪いなぁとは思うんですけれど……」

加蓮「ねっ」

藍子「真剣な様子で、どうしようかな、って考える顔、けっこう好きなんです。Pさんや加蓮ちゃんがそうしているのも……そっと、見守ってあげたくなるから」

加蓮「察して部屋から出ていってくれない?」

藍子「大丈夫、邪魔はしませんよ」

加蓮「いや見られるのが恥ずかしいって意味なんだけど」

藍子「ふふっ。――あっ、店員さん♪」

加蓮「ありがとー。ということで藍子、撮影会だねっ」

藍子「さつえいかい?」

加蓮「…………アンタさっきまでの話忘れてない??」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:11:19.91 ID:5/tybdgM0<> ……。

…………。

「「ごちそうさまでした。」」

加蓮「んー……」

藍子「どうですか? 私の写真、どんな風に撮れましたかっ?」(隣から覗き込みながら)

加蓮「んんー……。なんか納得いかない……」

藍子「そんなことありませんよ〜。加蓮ちゃんの写真、なんだかいい感じですっ」

加蓮「えー」

藍子「なんだか、撮られる人のいいところをたくさん引き出そうって気持ちが、写真から伝わってきますよ」

加蓮「私の腕じゃなくて、撮られる人の素質がいいからじゃないのー?」

藍子「ううんっ。きっと、加蓮ちゃんの腕があってこそです」

加蓮「ちぇ。ほら、向かいに戻りなさい。写真はぜんぶ送ってあげるから」

藍子「は〜い」タチアガル <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:11:49.39 ID:5/tybdgM0<> 加蓮「んー……」

加蓮「んー、まぁいっか。どれを載せるかは藍子が選ぶべきだよね。送るねー」

藍子「は〜い」

加蓮「……一応言っとくけど、そーいうのってホント、軽い気持ちで選ぶ物だからね? 最高の1枚を! とか言って何時間も悩むものじゃないんだよ?」

藍子「ぎくっ」

加蓮「いやアンタね……。パッと写真を見比べて、最初にいいなって思ったのを直感で選んで、それでアップする! それで終わり! もう今やっちゃいなさいよ」

藍子「じゃあ……この写真っ」

加蓮「はいお疲れー、おめでとー」

藍子「……ありがとう?」

加蓮「……なんで今更こんな話になっちゃってるんだか」

藍子「まあまあ。加蓮ちゃんにとっては、当たり前のお話かもしれませんけれど……当たり前のことだって、何度確認してもいいじゃないですかっ」

加蓮「そうだけど……」 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage saga<>2020/09/13(日) 19:12:19.33 ID:5/tybdgM0<> 藍子「〜♪」

加蓮「……? どうしたの。もうリプライでももらった?」

藍子「ううん。加蓮ちゃんが撮ってくれた、私の写真を見てたの。……えへへっ」

加蓮「ったく……。普通も特別もって言うけど、藍子といたら普通のことがなにもかも特別なことになっちゃいそう」

藍子「〜〜♪」

加蓮「でも特別なことが普通のことになっちゃうんだから……ホント。なんなんだか」

加蓮「普通のことが特別、か……。そうだよね。藍子のことを、もっとたくさんの人に知ってもらうんだから……普通のことも、当たり前になったことも、もう1回見直してみなきゃねっ」


【おしまい】 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2020/09/15(火) 15:28:16.63 ID:ylJE3iej0<> 乙 <>