Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:33:15.45 ID:p5ftvJd7o<>千奈「レッスン疲れましたわ……」

広「ふふ……もう動けない」

佑芽「ええ〜! まだレッスン始まったばかりだよっ!?」

千奈「自慢じゃありませんけれど、わたくし実はストレッチの段階でヘトヘトでしたわ!」

広「……ストレッチの途中で倒れてごめんね」

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<>【学マス】篠澤広「負けたら退学?」 Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:33:47.47 ID:p5ftvJd7o<> 佑芽「もォ〜〜! 2人とももうすぐ中間試験なんだよ〜? そんなんで大丈夫かなぁ」

広「分らない……中間試験に落ちてしまったら、私は今度こそプロデューサーに見限られてしまうかも知れない」

佑芽「だったらもっと頑張ろうよ〜!」

広「無理……きっと明日は筋肉痛で動けない……」

千奈「ストレッチだけですのに!?」

千奈「と言いつつわたくしもきっと明日までヘトヘトですわ」

佑芽「あ! だったらあたしが疲れが取れるマッサージをしてあげるねっ!」

千奈「ひぃ!? あ、あの地獄のようなマッサージを!?」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:34:17.56 ID:p5ftvJd7o<> 佑芽「酷いな〜。 お姉ちゃんのマッサージよりちょっぴり痛いだけなのにぃ」

千奈「絶対にちょっぴりじゃありませんでしたわ!」

広「よろしく、佑芽」

千奈「だからどうしていつも篠澤さんは快く受けられますの!?」

広「佑芽はマッサージの天才……、痛くて疲れも取れて……私にとって一石二鳥のマッサージ」

佑芽「褒められてるのかなぁ?」

千奈「おそらく褒めていらっしゃいますわ……」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:34:54.68 ID:p5ftvJd7o<> ──

P「またストレッチで倒れたそうですね?」

広「うん、あのストレッチは私には過酷すぎる」

P「中間試験も近いのに、未だにレッスンまで辿り着けないなんて……はぁ……」

広「見限る?」

P「いいえ」

広「そう……」

P「とにかく篠澤さんには中間試験を乗り切ってもらうために、審査員にアピールする方法だけでも頭に叩き込んでもらいます」

広「アピールする方法を覚えたら、試験は上手くいく?」

P「……わかりません。篠澤さんの場合、知識に問題はありませんがそれを実践する体力がありません」

広「うん」

P「ですので、試験では後半まで可能な限り体力を温存し、後半で一気にアピールをしましょう。これで普通にやるよりも強く印象に残る事ができるはずです」

広「わかった。前半は何をしてたら良い?」

P「アイドルとしての意識の基本を考えたり、辛いレッスンのあふれるような思い出に浸ったり、手持ち無沙汰ならえいえいおーだったり、基本的に何をしてても構いません」

広「棒立ちは?」

P「受かる気あります?」

広「ふふ……怒られた」

P「……とにかく、篠澤さんは体力があまりに無さすぎるので、前半から動いて審査員にアピールするのは得策ではありません。後半に全てをかけるつもりでいきましょう」

広「わかった。だけど、プロデューサーは1つ大事なことを忘れている」

P「?」

広「私は間違いなく試験会場に立っているだけで体力を消耗してしまう。温存しても後半に畳み掛けるだけの体力が残っているかは疑問」

P「………………棒立ちをレッスンメニューに入れるようトレーナーに伝えておきます」

広「……レッスンまで辿り着けるかな?」

P「…………はぁ……」

広「最高、好き」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:35:37.06 ID:p5ftvJd7o<> ──

トレーナー「篠澤、お前は今日立ってろ。ストレッチもしなくていい」

佑芽「えええええええええっ!?」

千奈「篠澤さん、ついにトレーナーさんから見限られてしまいましたの!?」

広「……千奈、残念ながらそれは違う。おそらく私のプロデューサーの指示だと思う」

トレーナー「分かってるじゃないか。篠澤のプロデューサーから、とにかく立てるようにしてくれとの事だ」

佑芽「片足立ちは出来るようになったんだよね?」

広「うん。でもプロデューサーからの試練は、中間試験の後半まで温存できる体力を身に付けること」

千奈「今は温存できませんの?」

広「今の私は中間試験の前半を棒立ちで過ごしたとしても、後半でアピールする体力は残っていない可能性が高い」

佑芽「中間試験を棒立ちで受けるの!?」

広「違う……そうならない為の特別レッスン」

千奈「な、なるほどですわ……?」

トレーナー「これをレッスンと呼んでいいのか甚だ疑問なんだが……まぁそういう事だ」

広「そういうワケだから、千奈と佑芽は私に構わずいつも通りのレッスンを続けて欲しい……。私はこの過酷な特別レッスンに全身全霊をかけようと思う」

佑芽「立ってるだけなんだよね?」

千奈「篠澤さんにとっては過酷なんですわ……」

広「生きてるだけで辛い」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:36:15.38 ID:p5ftvJd7o<> ──

佑芽「つかれたあああああっ」

千奈「わたくしもヘトヘトですわ……」

広「倒れなかった」

佑芽「ああっ! ホントだ! 広ちゃんが倒れてないっ!!」

千奈「し、篠澤さんが成長していますわ……!」

広「……成長、してる?」

千奈「成長に決まっていますわ!」

佑芽「そうだよ広ちゃんっ! 広ちゃんも千奈ちゃんもあたしも! みんな成長してるよっ!」

千奈「そうですわ! わたくしたち歩みは遅くとも成長していますわ!」

広「そうなんだ……。私も、ダメダメなアイドルじゃなくなる?」

千奈「もちろんですわ! きっと中間試験だって上手くいきますわ!」

佑芽「3人一緒に合格できたら良いね〜」

広「試験の合格者はグループごとに3人ずつ……私と佑芽達は別のグループ……、だから、同じグループで試験を受けるよりは現実的」

千奈「そうですわ! 我々3人、それぞれ頑張って共に合格を目指すのですわ!」

佑芽「うおおおおおおっ!! 頑張るぞおおーっ!!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:36:41.98 ID:p5ftvJd7o<> ──

中間試験当日

千奈「ダメでしたわーーっ!!」

佑芽「うわあああん! またお姉ちゃんに負けたーー!」

千奈「残るは篠澤さんのグループだけですわ……。篠澤さん! 我々の分まで頑張ってくださいませ!」

佑芽「頑張れ広ちゃん!」

広「うん……頑張る、ね」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:37:41.92 ID:p5ftvJd7o<> ──

広「……よろしくお願いします」

審査員A(倒れそう)
審査員B(倒れそう)
審査員C(倒れそう)

P(試験はグループごとに1人ずつ……審査員それぞれの得点の合計で競い、その合計値の高い上位3人が最終試験へと進む事ができる……)

広(持ち時間は11分……残り5分までは体力の温存)

P(頼むから倒れないでくれ……!)

広(ふふ……プロデューサー不安そう)

審査員A(この子なにもしないな)
審査員B(動かない……)
審査員C(可愛い)

広(……流石に何かした方が良い、かな)

広「えいえいおー……」

審査員A(何か鼓舞しはじめた……)
審査員B(試験前に済ませといて)
審査員C(可愛い)

広(もう少しだけ、何かしようかな……あ、靴紐が……)

審査員A(靴紐結び始めた)
審査員B(だから試験前に済ませといて)
審査員C(気付けて偉い! 加点しよう!)

広(靴紐結んだら疲れた……)

審査員A(また動かなくなった)
審査員B(え、もしかしてひなたぼっこしてる?)
審査員C(可愛い)

P(後半だ、篠澤さん、そろそろアピールを……) <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:38:15.14 ID:p5ftvJd7o<> 広(そろそろ後半……審査員にアピール……)

広「……篠澤広です。……今日は朝起きて……しばらくベッドから起きれなくて……」

審査員A(何か喋り始めた)
審査員B(何このゆるふわお喋り……まぁ喋ってるから加点しとこう)
審査員C(お喋りできて偉い! 加点!)

P(篠澤さん! アレを!)

広(プロデューサーが何かしてる……あ、)

広「……篠澤広です。よろしくお願いします……!」

審査員A(なぜ突然挨拶を……)
審査員B(まぁ最初の挨拶よりは元気だから加点)
審査員C(挨拶ができて偉い! 加点!)

P(違います篠澤さん! コレですコレ!)

広(……そうだった。あの合図は……)

広「……」スッ

審査員A(え!? 急に手でハートマーク作った!?)
審査員B(ダウナー系からのハート!? このギャップ萌えが狙いか!? 加点!)
審査員C(可愛い! 加点!)

P(よし、効いてるぞ!) 

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:39:01.70 ID:p5ftvJd7o<> ──

千奈「おめでとうございますわ〜っ!」

佑芽「おめでとう広ちゃんっ!」

広「……ありがとう千奈、佑芽」

広「……ふぅ」

千奈「嬉しくありませんの?」

佑芽「広ちゃんもっと喜ばないと〜」

広「そうじゃない……。合格は嬉しい、でも、もし次も上手くいってしまったら……それはつまらない」

佑芽「上手くいったら嫌なの?」

広「嫌というより、つまらない」

「3位でのギリギリ合格で上手くいったなんて、落ちこぼれの目標は低いんだね」

広「あ、2位の人」

「そう、2位だけどアナタよりは上だよ。もっとも、最終試験は当然1位を取るつもりだけど」

千奈「いったい何の用ですの?」

「別に、落ちこぼれを笑いにきただけ。流石落ちこぼれ組だよね、3人もいて1人がギリギリ合格なんて」

佑芽「いじわるだな〜! 悪口言うだけならあっち行ってよ!」

「行かない。まだ言いたいことあるから」

千奈「もうっ、いったい何ですの!」

「アナタ達、もう学園辞めたら?」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:39:40.15 ID:p5ftvJd7o<> 広「……どうして?」

「ハッキリ言うけど、アイドル向いてないよ」

広「やっぱりそうなんだ」

佑芽「ぐぬぬぬぬ! そんなの分かんないよっ!」

千奈「そうですわ! わたくしたちはまだ成長途中ですわ!」

「成績最下位」

広「うん」

「補欠合格」

佑芽「うぐっ!」

「コネ入学」

千奈「ひぃっ!」

「足を引っ張るだけの雑魚3人、学園にいる必要ある?」

千奈「あ、あんまりですわ!」

佑芽「そうだそうだ! 自分だって2位じゃん!」

「私は合格してる」

千奈「篠澤さんだって合格してますわ!」

佑芽「そうだよ広ちゃんだって合格してるもんっ。最終試験だってきっと合格できるよっ」

「無理だね。辞退した方が良いと思うけど?」

広「……辞退は、しない」

千奈「そうですわ! 篠澤さんは我々落ちこぼれ組の希望の星! 最終試験ではきっとアナタにだって勝ってみせますわ!」

広「……え」

「ふぅん……やる気なんだ。いいよ、勝負してあげる。私が勝ったら3人揃って退学でいいよね?」

千奈「た、退学!?」

広「それは困る」

「勝つつもりなら問題ないと思うけど? それとも、やっぱり勝てないと思ってるんだ」

佑芽「その勝負乗ったああああっ!!」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:40:06.28 ID:p5ftvJd7o<> 千奈「花海さん!?」

「決まりだね。後で後悔しても知らないから」

佑芽「そっちだって! 広ちゃんが勝ったら今まで言ったこと全部謝ってもらうからね!」

「……いいよ、土下座でも何でもしてあげる。……そこの落ちこぼれが私に勝てたらの話だけど」

佑芽「決まりだねっ! 頑張ろうね広ちゃん!」

広「……無理」

千奈「はわわわわわわ……! た、大変な事になってしまいましたわ……!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:41:02.18 ID:p5ftvJd7o<> ──

広「……という事で、負けたら退学することになった」

P「どうしてそうなるんですか……」

広「わからない」

P「何とか中間試験を乗り越えたと思った矢先に何故……」

広「とにかく私は、最終試験であのアイドルより上位に入る必要がある」

P「……何か作戦は?」

広「ない」

P「そんな無謀な……」

広「無謀?」

P「無謀です」

P「いいですか篠澤さん。篠澤さんと同じグループで2位だったそのアイドルは、中等部でアイドルユニットのセンターをつとめてた経験者。今回の試験で1位でもおかしくなかった実力者です」

広「……そうなんだ」

P「そもそも最終試験は中間試験を乗り越えた実力者の集まり、ギリギリで合格できた篠澤さんが上位に入る事も難しいです」

広「……そう、ふふ、難しいんだ」

P「……嬉しそうですね」

広「うん、その困難を乗り越えるためにプロデューサーがどんな鬼畜なレッスンを私に課すか、今からワクワクする……」

P「人聞きの悪い言い方しないでください。並のアイドルなら篠澤さんの3倍、あの2位のアイドルなら5倍はレッスンをこなしているんです」

広「うん、私のレッスン量が人並み以下なのは理解している」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:41:30.91 ID:p5ftvJd7o<> 広「……だけどね、プロデューサー」

P「なんでしょうか」

広「私、勝ちたい」

P「……珍しいですね」

広「うん」

広「理由は2つ。1つはこの学園が私にとってとても居心地の良い場所だから、辞めたいとは思わない」

広「もう1つは、千奈と佑芽にもアイドルを続けて欲しいから」

P「……」

広「プロデューサー……勝てる?」

P「……」

P「……そこまで言われて、無理とは言えないでしょう」

P「……でもいったいどうすれば…………うーん……」

広「ふふ、頑張ろうね……プロデューサー」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:42:02.78 ID:p5ftvJd7o<> ──

佑芽「作戦会議だー!」

千奈「ですわー!」

広「おぉー……」

佑芽「広ちゃんが最終試験を突破するために! あたしと千奈ちゃんは極秘資料を入手してきました!」

広「極秘資料……?」

千奈「生徒会特権ですわ!」

佑芽「じゃじゃーん! 中間試験の時の点数表だよー!」

広「点数表……」

千奈「これには篠澤さんが中間試験のどこで評価されたかが詳細に書かれていますわ!」

佑芽「ほら見てこれ! 広ちゃんは残り1分のところですごーく点数が入ってる!」

広「……ハート」

佑芽「そう! 広ちゃんの最後のハートポーズがものすごく可愛かったってことだよ!」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:42:49.40 ID:p5ftvJd7o<> 千奈「このハートポーズで最終試験も突破ですわ!」

広「……佑芽、千奈、それは難しいと思う」

佑芽「ええっ!? なんでー!?」

広「あのハートが評価されたのはよく分かった。だけど、アレはプロデューサーの作戦で不意打ちみたいなもの。同じ手は通じないと思う」

千奈「そんな……ではいったいどうすれば……!」

佑芽「じゃあじゃあ! 新しいポーズを考えるのは!?」

千奈「そうですわ! 審査員を魅了するような新しいポーズを考えれば良いのですわ!」

広「……新しいポーズ」

佑芽「よーし! それじゃあ早速新しいポーズを考えよー!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:43:55.14 ID:p5ftvJd7o<> ──

広「いだだだだ……!!」

佑芽「ほら! 広ちゃんもっと脚上げて!」

千奈「花海さん! それ以上は篠澤さんの脚がもげてしまいますわ!」

佑芽「えー? 広ちゃん身体かったいなー」

広「……佑芽、今のポーズは関節を外さないと無理だと思う」

佑芽「大丈夫だよー、ほら」

広「……凄い。佑芽の関節は取り外しが可能……?」

佑芽「違うよ広ちゃんが固すぎるんだよっ」

千奈「それにしても花海さんは柔らか過ぎますわ」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:44:45.47 ID:p5ftvJd7o<> 佑芽「もー、じゃあ広ちゃんストレッチからやろうよ」

広「……佑芽、千奈」

佑芽「なーに? 広ちゃん」

千奈「どういたしました?」

広「ありがとう」

佑芽「……」

佑芽「えー、急にどうしたの? 照れちゃうなー」

千奈「そうですわ篠澤さん、なんだかくすぐったいですわ」

広「……佑芽と千奈がいなかったら、私が最終試験に合格する可能性は殆ど0に近かったと思う」

佑芽「そんなことないよっ! 広ちゃんは可愛いんだから最終試験だって充分可能性はあるよ!」

千奈「そうですわ篠澤さん! 自信をお持ちになって!」

広「……プロデューサーが言っていた。あの2位の人は中等部からのアイドルで、私が挑むのは無謀だって」

佑芽「ムボー……」

千奈「そんな……」

広「でも、私は諦めたワケじゃない。今、プロデューサーが勝つための作戦を考えてくれている」

広「……佑芽と千奈も協力してくれる。この事で私は無謀じゃなくなったと考えている」

千奈「篠澤さん……」

佑芽「今はどれくらいで勝てると思ってるの?」

広「……2%?」

千奈「ダメですわーー!?」

佑芽「特訓再開だああああっ!!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:45:52.33 ID:p5ftvJd7o<> ──

P「無理ですね」

広「……そう」

P「篠澤さんの言うように、中間試験は不意打ちがたまたま上手くいったようなものです。安易にポーズを変えただけで最終試験を突破できるとは思えません」

広「うん」

広「でも、佑芽と千奈は私のために新しいポーズを考えてくれている。それを無駄にするワケにはいかない」

P「無駄にはなりません。新しいポーズは活かせませんが、その為のストレッチや体力作りは最終試験に必要不可欠なものです」

広「……つまり、最終試験に向けての作戦はもう考えてある?」

P「ええ」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:46:34.97 ID:p5ftvJd7o<> P「基本的には中間試験と変わらず後半に力を入れる形です。ただ違うのは後半は新しいポーズではなく」

広「ではなく?」

P「ソロ曲を披露してもらいます」

広「……後半に?」

P「はい」

広「……プロデューサー、それは不可能」

P「はい」

広「私は一曲歌うと酷く体力を消耗してしまう。試験の前半から歌い出したとしても、歌いきった時には倒れてしまうかもしれない」

P「はい」

広「それを体力を消耗した後半から歌い出すのは無謀。確実に私は体力の限界を迎えてしまう」

P「はい」

P「だから、やりましょう」

広「……聞いてた?」

P「ええ、篠澤さんの体力を考えると後半からの歌唱は難しいものになります。最悪試験中に倒れてしまうかもしれません」

P「だから、やりましょう」

広「ふふ、倒れるかもしれないのに……やるんだ」

P「はい、篠澤さんには体力を消耗した上で更にソロ曲を披露してもらいます。試験終了に合わせて歌い終われるよう歌い出しのタイミングを練習しましょう」

広「……作戦の意図は?」

P「言えません」

広「……そう」

P「……すみません」

広「大丈夫。私はプロデューサーを信じてる」

広「倒れるのが前提の作戦でも、望むところ」

P「一応言っておきますが、倒れないのが前提です」

広「ふふ、頑張るね」

P(……勝つなら合格が必須、負けたら退学、か)

P(相変わらずギャンブル性の高いプロデュースになるな……この人は……)

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:47:01.93 ID:p5ftvJd7o<> ──

トレーナー「すごいわ篠澤さん、休憩を入れずに1曲歌えるようになったわね」

広「──」

千奈「ああっ! 篠澤さんがまた倒れてしまいましたわっ!」

佑芽「広ちゃん深呼吸深呼吸っ!! もう1曲いくよっ!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:47:52.68 ID:p5ftvJd7o<> ──

トレーナー「ステキよ広ちゃん、もともと顔立ちは良いんだからもっと自信持って笑顔よ」

広「ひ、ひひ……」

千奈「ああっ! 篠澤さんの表情が疲労で引きつった不気味な笑顔になっていますわっ!」

佑芽「可愛いよ広ちゃんっ!! はいっ! 笑顔でポーズっ!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:48:24.59 ID:p5ftvJd7o<> ──

トレーナー「以前と比べたら体力はついているようだが……」

広「──」

千奈「ああっ! とっくに倒れていた篠澤さんが立ち上がろうとしてまた倒れましたわっ!」

佑芽「頑張れ広ちゃんっ!! ほら立って立って!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:48:55.11 ID:p5ftvJd7o<> ──

佑芽「いよいよ明日は最終試験だねっ!」

千奈「わたくし不安ですわ……」

広「佑芽……千奈、レッスンに付き合ってくれてありがとう。2人はレッスン中に倒れた私を何度も叩き起こしてくれた……。お陰で私は限界を越えて辛いレッスンに取り組む事ができて、とても充実している」

広「……それでも、勝てるかは分からない」

千奈「そんな……」

佑芽「そんな事ないよ広ちゃん! 広ちゃんすっごく頑張ったもん!」

広「佑芽と千奈のお陰で、可能性はずいぶん上がったと思う。だけどそれは元々の可能性と比べての話。ハッキリ言って可能性はまだ低いと思う」

佑芽「今は何%くらいなの?」

広「……10%?」

千奈「ひえぇぇ……」

佑芽「大丈夫だよ千奈ちゃんっ! 2%が10%になったんだからすごい成長だよ! 10回に1回は勝てるんだよ!」

広「その1回を最終試験に持ってこられるかは、プロデューサーの作戦にかかっている。正直、私はまだプロデューサーの作戦の意図はわかっていない」

佑芽「最終試験の終わりの方で歌うんだよね? どうしてだろう?」

千奈「始めに歌った方が上手に歌えますのに」

広「分からない。だけどプロデューサーは私の事をよく分かってくれている。だからこの作戦も、きっと私に適しているんだと思う」

佑芽「相変わらず信頼が厚いな〜」

千奈「素晴らしい事ですわ」

広「ふふ、もしかしたら私を見限ってて、わざと負けさせようとしているのかも」

千奈「相変わらず幸せそうに言うセリフではありませんわ……」

佑芽「よく分かんない関係だなぁ」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:49:34.86 ID:p5ftvJd7o<> ──

P「いよいよ明日ですね」

広「うん、いよいよプロデューサーが私との契約を解除する日」

P「……負けて本当に退学するなら、そうなるかも知れませんね」

広「ふふ、プロデューサーはどっちが良い……?」

P「最終試験に向けてですが」

広「プロデューサーはすぐ無視する」

P「……最終試験に向けてですが、既にやれることは全てやりました」

広「……そうなんだ」

P「はい、倉本さんと花海さんのお陰で篠澤さんのコンディションはこれ以上ないほど万全の仕上がりです」

広「……プロデューサー」

P「はい」

広「今の私は通常よりも酷く疲労が溜まっている。何故なら、いつもなら倒れて中断していたレッスンを、佑芽と千奈が私を叩き起こすことで無理矢理続行させた」

広「ふぅ……」

広「お陰でとても満足のいく辛いレッスンになった。だけどそれに比例して私の疲労は明日の最終試験にまで影響の出るレベルに達している。つまり、万全とは言えない状態で最終試験に挑むことになる」

P「はい、それが万全です」

広「……プロデューサーは私の体力を奪うことが目的だった?」

P「……間違いではないですね」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:50:00.75 ID:p5ftvJd7o<> 広「……プロデューサー、私は勝ちたいと言った。プロデューサーの作戦は理にかなっていないように思う」

P「そうですね」

広「……つまり、プロデューサーに勝つ気はない?」

P「そうではありませんが、篠澤さんには体力的に厳しい状態で試験に挑んでもらいます」

広「そうすれば勝てる?」

P「わかりません」

広「……プロデューサー」

P「はい」

広「プロデューサーは不思議、いつも私が欲しいものをくれる」

広「こんなに大変で、ボロボロの状態で試験に挑むほど頑張るのに、それでも上手くいくとは限らない」

広「ふふ、アイドルって本当に……ままならないね」

P「……篠澤さん」

広「うん」

P「明日はきっと、楽しいですよ」

広「うん……頑張る、ね」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:50:48.92 ID:p5ftvJd7o<> ──

試験当日

佑芽「広ちゃーーーーん!!」

千奈「し、篠澤さーん……!」

広「おはよう、佑芽、千奈。どうしたの?」

佑芽「どうしたのじゃないよ! はいこれ! 今日の試験前に食べたら元気モリモリだよ!」

広「これは……お弁当?」

佑芽「うん! 名付けて『転がり続ける元気の源弁当』!! これ食べて試験頑張ってね!」

千奈「わたくしからはこれですわ!!」

広「……上着?」

千奈「わたくしが自宅での自主練で愛用していたカーディガン、名付けて『ひみつ特訓カーディガン』ですわ! わたくしの努力が染み込んだこのカーディガン、きっと篠澤さんを助けてくださいますわ!」

広「……佑芽、千奈、ありがとう」

広「頑張ってくる、ね」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:51:42.70 ID:p5ftvJd7o<> ──

P「……今、あのアイドルの試験が終わって点数が出ました、暫定1位です」

広「……そう」

P「……何を食べてるんですか? それと、この時期にカーディガンですか?」

広「佑芽と千奈がくれた。カーディガンは暖かいし、お弁当は、食べ切れない量だけど、美味しい」

P「……そうですか。では俺からもプレゼントがあります」

広「プレゼント?」

P「ホットコーヒーです」

広「……プロデューサー、私は今お弁当を食べている。正直、お米とコーヒーは合わないと思う」

P「3杯用意しました。全部飲んでください」

広「問答無用……ふふ、鬼畜」

P「昨日も言いましたが、やれる事は全てやりました」

広「うん」

P「……それでも勝てるかは分かりません。あとは篠澤さん次第です」

広「うん」

広「プロデューサー」

P「はい」

広「行ってくるね」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:52:33.45 ID:p5ftvJd7o<> ──

広「よろしくお願いします」

審査員A(倒れそう)
審査員B(倒れそう)
審査員C(倒れそう)

広「……えいえいおー」

審査員A(また鼓舞し始めた)
審査員B(なぜ試験前に済ませないのか)
審査員C(可愛い)

広(試験に合格するイメージを……)

審査員A(えぇ……目閉じた……)
審査員B(まさかイメトレ? 今?)
審査員C(可愛い)

広「…………」

審査員A(日差し浴びてる……)
審査員B(また日向ぼっこ……何なんだこの子…)
審査員C(可愛い)

広(あと数分で……時間がきたら歌い出して……それで……)

審査員A(なんか考えてる?)
審査員B(またイメトレ? なんで今?)
審査員C(可愛い)

審査員A(中間試験では不意をつかれて点数入れちゃったけど……)
審査員B(流石にこれは……)
審査員C(可愛い)

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:53:01.43 ID:p5ftvJd7o<> ──

佑芽「千奈ちゃーん! 大変大変! 大変だあああ!!」

千奈「花海さん、どこへ行っていましたの?」

佑芽「あたし今、こっそり広ちゃんの点数を覗いてきたんだ!」

千奈「まぁ! それでは今の篠澤さんの点数が分かりましたの?」

佑芽「そ、そうなんだけど……広ちゃんの点数……今のところ……」

佑芽「ぜ、0点……」

千奈「ぜ、ぜぜぜ0点!?」

佑芽「ど、どうしよう千奈ちゃん! あたし達に出来ることないかな!?」

千奈「と、とにかく応援ですわ!」

佑芽「頑張れ広ちゃーん!」

千奈「ファイトですわー!」

P「……」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:54:09.88 ID:p5ftvJd7o<> ──

広(そろそろ歌い出し……声出る、かな)

広「たーのしーみねー、またー……」

審査員A(歌い出した……。時間的にこの歌で終わりか?)
審査員B(声出てないな……)
審査員C(可愛い)

広「声がしたのー……」

佑芽「うわああああ広ちゃん声が小さいよおおお!! 頑張れ広ちゃーーん!!!」

千奈「は、花海さん! 応援の声で篠澤さんの歌が掻き消えてしまいますわ! 抑えてくださいませ!」

広(佑芽の声……。ふふ、私の歌より響いてる……)

広(……佑芽と千奈)

広(……この学園は私に無かった物を沢山くれる)

広(辛いこと……苦しいこと……ままならないこと……)

佑芽「頑張れ広ちゃーん!」
千奈「頑張ってくださいませー!」

広(友達……)

広(2人のためにも勝たなきゃいけないのに、私の歌声は小さくて、ダンスもヘロヘロで……)

広(こんなに疲れて……こんなに一生懸命やってるのに……上手くいかない……)

P『明日はきっと、楽しいですよ』

広(……ふふ)

広(うん、楽しい)

審査員A(なんだ……? 声もダンスもフラフラなのに……なんで……)
審査員B(なんで楽しそうに見えるんだ……?)
審査員C(可愛い)

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:54:53.41 ID:p5ftvJd7o<> ──

広(こんなに苦しくて、辛くて、今にも倒れそうなほど頑張っても、アイドルは上手くいかない)

広(上手くいかない事が楽しい、私の趣味)

広(全力で、精一杯、全身全霊をかける私の──)

広(──本気の趣味)

佑芽「広ちゃーん! ラストスパートだー!」
千奈「篠澤さん決めポーズですわー!」

P(そんな体力は残らない。もうすぐで歌い終わる……篠澤さんは歩く事もままならない状態になるだろう)

P(歌やダンスでは篠澤さんに勝ち目はない。しかしこれはアイドルの審査だ。勝ち目があるとするなら──)

広(……楽しいな)

広(声も、もう出ない。体も、動かない。何もかも思うようにいかない)

広(それが、すごく楽しい)

広(この楽しい気持ち、伝わる、かな。伝わって欲しいな)

佑芽「広ちゃーん! 頑張れー!」
千奈「篠澤さん素敵ですわー!」

広(この楽しい気持ち──)
佑芽(あたし達の応援──)
千奈(篠澤さんの魅力──)

広佑芽千奈(──届いて!!)

──── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:55:25.26 ID:p5ftvJd7o<> ────

広「えーらーぶー……」

広「わたしが」

審査員A(歌い終わった……)
審査員B(妙に惹き込まれたが……)
審査員C(可愛い)

広「……ふふっ」

審査員A(っ!? な、なんだ今の微笑みは!?)
審査員B(なんて胸に刺さる表情なんだ……!)
審査員C(──今の微笑みは……我々へのアピール…… いや違う。アレは心から楽しんでいる者の内から漏れ出た微笑み。しかし何故今その表情ができる……。確かにこれまで勝利を確信し笑う者はいた。だが、この子は明らかに劣勢だった。本人もそれは分かっているはず。それなのに今、この土壇場で自然と笑みが溢れたというのか? 作り笑い……いや、そうは見えなかった。少なくとも我々は、この会場にいる者には彼女が心の底から楽しんでいるように見えたはずだ。……『アイドル』の語源は『偶像』。実態がどうあれファンが求める偶像であり続けるのがアイドルという存在だ。どんな内情を隠していても、どんなに不利で窮地に立たされようと、ファンの前では『アイドル』でいなければならない。彼女は、篠澤広はそれを実践してみせたとでもいうのか……? だとするならば彼女は本物の──)

P(……アイドルが輝きファンを魅了する瞬間は、アイドル自身が楽しんでいる瞬間だ。そして篠澤さんが最も楽しいと思える瞬間はまさにこの倒れる寸前……努力と研鑽の果てでありながら求めるものに未だ手の届かないこの瞬間)

P(篠澤さんの魅力を引き出せるかが鍵だったが……)

P(……)

P(賭けには勝ったかな……)

P「……さて」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:56:35.44 ID:p5ftvJd7o<> ──

広「ありがとうございま──」

佑芽「ああああ!? 広ちゃんが倒れちゃう!!」
千奈「た、大変ですわ!」

「ちょっとあなた、大丈夫なの?」

広「……誰?」

P(倒れるだろうと思ってステージに上がったが……出遅れたようだ。あのアイドルは確か──)

「妹から聞いてた通り、変わったアイドルなのね」

広「妹……?」

P(──総合成績1位、学年首席)

咲季「私は花海咲季よ! 妹がいつもお世話になってるわね!」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:57:14.67 ID:p5ftvJd7o<> 佑芽「おおおお、お姉ちゃん!???」
千奈「まぁ! 篠澤さんの次の受験者は花海さんのお姉さまでしたのね!」

P「……お手数おかけします」

広「あ、プロデューサー……」

P「意識はあるようですね」

咲季「あなたがこの子のプロデューサー? なかなか不思議なパフォーマンスだったわ。あなたの作戦かしら?」

P「…………篠澤さん、歩けますか?」

広「──」

P(気を失っている……やはり限界だったようだ……)

咲季「なによ、つれないわね。……まぁいいわ。今その子の点数を見てきたわ。暫定1位ですって、凄いじゃない」

P「…………すみません、篠澤さんを保健室に連れていくので失礼します」

咲季「えぇ……大丈夫なのその子……」

咲季「でも残念ね。目が覚めた時には1位じゃなくなってるわ」

P「…………」

咲季「だって私は今日、絶好調なんだもの!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:57:55.44 ID:p5ftvJd7o<> ──

佑芽「やったああああああ!!! 広ちゃんが1位だああああ!!!」
千奈「大逆転ですわー!!」

「へぇ、凄いじゃん」

佑芽「あ! いじわるアイドル!」

「運が良かったとはいえ私に勝つなんて、落ちこぼれもたまにはやるんだね」

佑芽「へっへーん! 運じゃなくてこれが広ちゃんの実力だっ!」
千奈「そうですわ! さぁ、約束通り篠澤さんに謝ってくださいませ!」

「は? 謝らないけど?」

佑芽「ええええええ!??」
千奈「そんな!? 約束が違いますわ!」

「よく考えなよ。私が勝ったとしても、私にあなた達を辞めさせる権限なんてないんだから、あんな約束有効になるワケない。だから、私が謝る必要もないよね?」

佑芽「何だそれー! ズルじゃん!」
千奈「そうですわ! 詭弁ですわ!」

「あなた達が何と言おうと、あの約束は無効だから。じゃあね、落ちこぼれ達」

佑芽「あー! 逃げた!」
千奈「ああ! そんな事より篠澤さんが運ばれて行きますわ! きっと保健室ですわ!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:58:21.37 ID:p5ftvJd7o<> ──

保健室

広「…………」

P「……おはようございます」

広「……うん、おはようプロデューサー」

P「やはり倒れましたね」

広「うん」

P「曲の振り付けもフラフラで歌も声が全く出ていませんでした」

広「うん」

P「篠澤さんの良さを活かせた良いライブだったと思います」

広「……褒めてる?」

P「はい、最大限に」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 21:59:40.60 ID:p5ftvJd7o<> 広「歌もダンスもダメダメだったのに?」

P「はい。歌やダンスでの勝負は最初から諦めていました。充分な休養をとって試験に挑んだところで、篠澤さんでは並のアイドル相手にも勝ち目はありません」

広「辛辣」

P「……ですから歌やダンスではなく『篠澤広』で勝負するしかありませんでした」

広「私?」

P「はい。歌手やダンサーではなく、これはアイドルの試験です。篠澤さんのアイドル性を全面に出せれば勝機はあると考えました」

広「私のアイドル性……」

P「……辛いこと苦しいこと、ままならないことが好きなアイドル。これは、少なくとも学園内では唯一無二です。そして唯一無二というのはアイドルにおいて強い武器になります」

広「そうなんだ」

P「篠澤広というアイドルを審査員にアピールする。これが今回の作戦の意図でした」

P「……この作戦が吉と出るか凶と出るかは賭けでしたが…………」

広「プロデューサーの意図はわかった……。それで、結果はどうなったの?」

P「結果は──」

佑芽「広ちゃんおめでとーーー!!」

千奈「快挙ですわーー!!」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:00:07.91 ID:p5ftvJd7o<> 広「佑芽、千奈」

佑芽「ごめん広ちゃん! お姉ちゃんの試験見てたら遅くなっちゃった!」

千奈「その代わり最終試験の結果までバッキリ見てきましたわ!」

佑芽「その結果はなんとなんとなんとおおお!!」

佑芽「広ちゃんが2位!! 私のお姉ちゃんが1位!!」

千奈「あのいじわるな方は3位でしたわ! 篠澤さん! わたくしたち退学せずに済みましたわ!」

P「……という事です」
<> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:00:37.84 ID:p5ftvJd7o<> 佑芽「あ、広ちゃんのプロデューサーさん初めまして! 花海佑芽です!」

千奈「倉本千奈と申します。篠澤さんとは仲良くさせていただいておりますわ」

P「こちらこそ、篠澤さんのために尽力していただいたそうで、ありがとうございました」

佑芽「いやいやそれほどでも〜〜」

千奈「ああ! それより聞いてくださいませ篠澤さん!」

佑芽「あー! そうだそうだ! 聞いてよ広ちゃん!」

広「なに?」

佑芽「あのいじわるアイドルだよ! あのいじわるアイドル!」

「私がなに?」

佑芽「ってうわああああああ!?」

千奈「出ましたわあああああ!!」

「人をお化けみたいに言うのやめてくれない?」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:01:11.74 ID:p5ftvJd7o<> 佑芽「広ちゃん! このいじわるアイドル、負けたのに約束守らないんだよ! あんな約束無効とか言い出して──」

「ごめんなさい」

佑芽「──全然謝らな……」

佑芽「………あれ?」

「だから、その……ごめんなさい……」

佑芽「えええええええええええ!?」

千奈「いったいどういう風の吹き回しですの!?」

「それは……その……私のプロデューサーから『ちゃんと謝ってこい』って怒られたから……」

佑芽「プロデューサーの言うことは聞くんだ……」

千奈「プロデューサーはまともな方ですのね」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:01:47.96 ID:p5ftvJd7o<> 広「……いじわるな人」

「う……な、なに? こんな謝罪じゃ足りないって言うの?」

広「違う」

「だ、だったら何……?」

佑芽「今さら謝ったって遅いって事だよ! ね、広ちゃん!」

千奈「あの時の屈辱、今こそ晴らす時ですわ!」

「…………っ」

広「……ありがとう、いじわるな人」

佑芽「へ?」

「あ、ありがとう……?」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:02:50.62 ID:p5ftvJd7o<> 広「うん」

千奈「ど、どういう事ですの?」

広「いじわるな人のお陰で、今回の試験はより刺激的で楽しいものになった。そして私のために動いてくれる千奈と佑芽のこと、これまでよりも更に好きになる事ができた」

佑芽「広ちゃん……」

千奈「篠澤さん……」

「……………」

「……そう、私はあなた達の友情を試したんだよ。合格だね」

P「え」

佑芽「……は?」

「感謝しなよ。私のお陰で友情を再確認できたんだから」

千奈「この人なにを言っていますの?」

「それじゃ、用は済んだから。じゃあね、落ちこぼれ達。気が向いたらまた遊んであげるよ」

広「うん。ばいばい、いじわるな人」

「……………次は負けないから」

広「うん」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:03:31.97 ID:p5ftvJd7o<> 千奈「行っちゃいましたわ……」

佑芽「いじわるなだけじゃなくて変な人だったね」

P(実力があるアイドルだからといって、プロデュースが楽なワケではなさそうだ……)

広「改めて佑芽、千奈、ありがとう」

佑芽「え〜? お礼なんていいよ〜。えへへ〜」

千奈「そうですわ。わたくし達、お友達として当然のことをしたまでですわ」

広「プロデューサーも。プロデューサーのお陰で佑芽と千奈も退学しなくて良くなった」

P「……俺も倉本さんや花海さんと同じですよ。プロデューサーとして当然のことをしただけです」

広「うん」

佑芽「そうだ! それなら私も広ちゃんのプロデューサーさんにお礼言わなきゃ!」

千奈「花海さん花海さん……」

佑芽「ん? なーに千奈ちゃん?」

千奈「わたくし達、もしかしてお邪魔なのでは?」

佑芽「え?」

佑芽「………」

佑芽「あー! ごめんね広ちゃん! せっかくプロデューサーさんと2人になれるのに邪魔しちゃって!」

千奈「は、花海さん……! そんな露骨に言うものではありませんわ! ここはさり気なく立ち去るのが友人としての気遣いですわ!」

P(聞こえてるからさり気なくも何もないような気が……)

千奈「それでは篠澤さん、わたくし達ちょっと用事がありますので失礼させていただきますわ」

広「ふふ……、うん。またね、千奈、佑芽」

佑芽「ばいばい広ちゃん! 頑張ってね!」

千奈「応援してますわ!」

── <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:04:37.80 ID:p5ftvJd7o<> ──

P「……行ってしまいましたね」

広「……うん」

P「…………」

広「…………」

広「…………する?」

P「いきなりぶっ飛んだ事を言うのはやめてください。心臓に悪い」

広「ふふ、冗談」

広「……ね、プロデューサー」

P「なんでしょうか」

広「もしも私があのアイドルに負けて、退学する事になったら、プロデューサーはどうしてた?」

P「…………そうですね。いまさら他の誰かをプロデュースしたいとも思いませんし、この学園でないとプロデュース出来ないというワケでもありませんから」

P「ついていきますよ、どこまでも」

広「うん。プロデューサーならそう言うと思ってた」

P「我ながら酔狂だな、と」

広「ふふ」 <> Dの人<>sage<>2025/03/18(火) 22:05:40.94 ID:p5ftvJd7o<> 広「あのね、プロデューサー」

P「はい」

広「私、嬉しい」

P「それは良かったです」

広「違う、プロデューサー聞いて」

P「なんでしょうか」

広「私はままならない事が欲しくてこの学園に入った」

P「はい。よくわかっています。篠澤さんはアイドルを目指す過程そのものを求めて入学した、と」

広「うん」

広「この学園に来る前は、何をやっても褒められたし、何をやっても上手くいった」

広「何もかも予想通りで、退屈で、つまらない日々」

P「……」

広「だから私は、この学園でも上手くいくと、またつまらないと感じるんじゃないかと思ってた」

広「だけど今回、佑芽や千奈、プロデューサーのお陰で合格できて……上手くいったのに、私は嬉しいと思ってる」

広「嬉しいと思えることが、嬉しい」

P「素晴らしい変化だと思います」

広「うん」

P「あとは健康面や体力面も良い方に変わってもらえると助かります」

広「プロデューサーはすぐそういうこと言う」

P「気長に待ちますんで」

広「ふふ、うん」

広「ね、プロデューサー」

広「ずっと一緒にいようね」





完 <>