以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2025/07/06(日) 21:56:01.37 ID:6gSJ+Xjp0<>ネットニュースから流れてきたのはアイドルの熱愛記事で、ファンとの交際が露見したことをなじるように記者の筆が乗ったのがわかりやすく彼女を揶揄するようなニュアンスが多分に含まれていた。

いつもならそんなことは右から左へ受け流すし、皆さんこんな記事でよく盛り上がれるなと思って終わるわけですよ。人の色恋沙汰でどうこう言うなんて暇人のやることだし、人恋路を邪魔する奴は〜なんて大昔から言われている。

『ネットニュース見たよ、大変じゃん』

『あはは、やられちゃったね』

SNS のダイレクトメールの返信末尾に泣き笑いの絵文字がついているあたり、まだまだ心の余裕はあるらしい。

『ま、そんなわけだからこのアカウントもそのうち消すかも』

追撃で送られてきたメッセージは、僕は彼女にとって特別な何某ではなかったという証明でもあった。

公式マークもついておらずフォロワーも数十人の彼女のプライベートなアカウントは、それから二、三日のうちに僕のフォロワーリストから消えていった。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1751806560
<>特別じゃない僕へ           以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<><>2025/07/06(日) 21:56:42.90 ID:6gSJ+Xjp0<> 鵜島ひかりという名前を認識しているのは結構なアイドルオタクだと思うし、それをちゃんと理解している自分はそのうちの一人だという自覚もある。

人気のアイドルグループの、人気のないメンバーの一人。人気がないという表現は失礼かもしれないが、少なくとも歌番組に出演してもMCから話題を振られることはないし、顔と名前が一致している人も少ないだろう。

要するに、干されという言葉が一番正しい気がする。

初めてライブを見に行った時に、マイクも持たずに笑顔で踊る彼女の姿がとても印象的だった。人気なアイドルのライブにミーハーな気持ちで言ってみたら、一目で彼女に惹かれた。

人気なメンバー、歌割が多かったりセンターに立っていたり、そういうスポットライトをあたる人たちは華があるという表現があまりに似合うと感じたし、輝いても見えた。それでも彼女から目を離せなかったのは、そういう立ち位置でも懸命な姿が凡夫の僕に刺さったからなのだろう。

そのライブが終わって彼女のSNSにコメントを残すと初めて反応がついて、それから彼女は偶に僕の投稿を見ている素振りを見せた。

初めて握手会に行った時には名前を尋ねられ、SNSで登録している名前を告げると「分かる! いつも褒めてくれてるよね、やっと一致した」と伝えてくれたし、それからは投稿していた内容についても話してくれるようになった。

有名人に認知されるなんていうのはオタクの戯言だと思っていたけれど、いざ自分がそうなるとやっぱり浮かれてしまうし、一方でこうして深みにはまっていくんだなということも他人事のように感じていた。 <>