VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 01:12:36.72 ID:RIqcOKo0<>※>>1からの注意事項
こちらはとある魔術の禁書目録、及び、とある科学の超電磁砲に登場する白井黒子をメインにしたSSです。
ちょっぴりシリアス時にコミカル、気の向くままスレの反応も見ながらフナ〜と書いていくスレです。
○特に気をつける項目
1.原作を準拠していますが設定など一部独自のものが入ったりします。
2.キャラも原作準拠ですがある程度独自の解釈が入ったりもします。
3.地理なんかも原作を準拠していますがある程d(ry
4.オリジナルキャラクターが登場します。
5.メインは黒子とオリジナルですが、ラヴい関係にはなりません。
以上をふまえて、よろしければお付き合いください。<>黒子「わたくしに、お目付け役ですの?」固法「近いうちに派遣されてくるそうよ」
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 01:13:07.72 ID:RIqcOKo0<>「わたくしに、お目付け役ですの?」
「ええ、近いうちに派遣されてくるそうよ」
風紀委員第177支部にて。
いつもの放課後いつもの支部内いつもの面子の中で、唐突に突飛な出来事が発表された。
「そう、あなたの奔放すぎる行動はこうでもしないと手に追えないと判断されたのね」
「ということは、白井さんもいよいよ年貢の納め時ということですか」
どこか残念そうに伝える固法美偉と、対照的にワクワクした目で聞く初春飾利。
「初春、あなたどうしてそんなに嬉しそうですの」
「これで白井さんの暴走からちょっとは解放されると思うと気も楽に――って、いたいいたい、いたいですよーー!」
涙目の初春に構わず拳骨で頭をぐりぐりやっていく。
「いい気なもんですわね、わたくしと普段コンビを組むあなたも監視対象になるかもしれないというのに」
「わ、わたしは監視されるようなことしてませんよー」
「……ハッキング」
ビクッと初春の肩が上がった。
「防壁の構築……データのダミー変換……」
「な、なんで白井さんがそんなことを知ってるんですか」
「ネットワークやコンピュータにそれ程強くないわたくしでもこれくらいは知れてますのよ、一体どれほど裏があるのやら」
「や、やめてくださいよー、わたし悪いことはしてませんよ!?」
「わたくしだって、悪いことはしてませんわ」
たまたま始末書を書くような事態になってしまっているだけですの、と言いながら初春の肩に手を置く。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 01:13:51.66 ID:RIqcOKo0<>
「お互い叩けば埃の出る身、せいぜい協力しあって監視者の眼を欺こうではありませんの」
「あ、あうあう」
初春飾利、現在蛇に睨まれた蛙状態なり。
「ええと、盛り上がってるところ言いにくいんだけど」
「? なんですの?」
お目付け役について書かれた書類を白井の方に差し出しながら、固法が続ける。
「まず一つ、白井さんとコンビを組んで、で初春さんをバックアップとして活動させるそうよ」
「えぇ!?」
「あら、初春も最初から監視対象でしたのね」
「そしてもう一つ、これは監視ではないわよ」
「「はい?」」
お目付け役についての紙を手に取り、二人仲良く目を通す白井と初春。
「年齢は21歳、大学生なんですね」
「風紀委員になったのは3年前、高校卒業前の夏休み……厄介なことに一応先輩ですの」
「先輩じゃないとお目付け役になりませんよ、」
「大学生ということは、ある程度学区を跨いでの行動も容認されているはずですわね」
「そういえばそうですね、一つの校舎だけでなく研究所や活動機関にも出入りしますし」
「ということは……」
「もしかして……」
二人の視線が固法の方に向く。
「ええ、これは白井さんを押さえつける監視ではなく、活動範囲を広げてどの程度許容できるかを見る試験ね」
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 01:14:32.74 ID:RIqcOKo0<>
つまり、押さえつけて効果がないなら開放してしまおうということだ。
「確かに、活動範囲が広がればより初春のサポートが必要に……というよりも初春以外にはほぼ無理かもしれませんわね」
「あんまりやることは変わらない気もしますけど」
これまで何度も学区内外に飛び出しているのだ、唯一の違いはそれが合法か否か。
「なにはともあれ、これは風紀委員の規則を曲げてでもわたくしを試す価値ありと判断された、ということですのね」
気合が入ったのか、白井の眼が燃えている。
「このお目付け役さん、どういう方なんでしょうか」
対照的に、より冷静に情報を見極めようとする初春。
なんというか、性格が出ていた。
「真意城大学所属で、AIM拡散力場の研究を専行しているんですね」
一通り気合が入った白井も、初春の肩に顎を乗せて書類を見つめる。
「性別は男ですのね……名前は『紅黄 碧』(くおう あおい)」
「白井さんとふたり揃えばフルカラーで絵が描けますね」
「黒だけダブってますわ」
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 01:18:06.16 ID:RIqcOKo0<>
書かれている内容は対して特長のない一般人のものだった。
年上や大学生の生活や活動には興味はあるが、逆に言えばそれ意外に惹かれる特徴はない。
「……なんですの? 最後のこれは」
「聴いた事ありませんね」
最後の項目は能力とレベル、そして能力に関してのおそらく研究者かなにかからのコメントだった。
「レベル3の……」
「読人感応能力<サイコパスヒューマン>? なんですのこれは?」
「読心能力(サイコメトリー)の一種のようですね」
そして、最後に記されたコメント。
「彼の能力にレベル表記は出来ないため暫定で3とする……」
「基準がないくらいレアな能力者ですの?」
「能力の名前からすると、実現不可能と言われた多重能力(デュアルスキル)関連なのかもしれませんね 」
試験官『紅黄 碧』。
その人物についてあれこれ想像を膨らませていく。
大きな期待と、それに比するくらいの大きな不安を抱えて。
本当に、ただの試験なのか、実は処分や資格取り消しの審査ではないか。
様々な思いを内包して、試験開始の日は近づいて来ている。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 01:20:15.67 ID:RIqcOKo0<>とりあえずここまでです。
導入というかさわりだけ、たぶん数あるSSの中でも癖があるものになると思われますので
気にいっていただければ幸い、SS書くのは初なので物凄くドキドキしております。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/27(日) 02:31:10.48 ID:z8tCVYSO<>期待<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>saga<>2010/06/27(日) 02:53:04.70 ID:RIqcOKo0<>期待感謝
今夜中に2話投下予定ですので、よろしければ御覧ください。
……しかし、人入りが少ないのでどこかで宣伝したほうがいいのかも<>
なすーん<>なすーん<>なすーん<> __ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
``ー// |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|! | `ヽ=='´
l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ| | |
┏┓ ┏━━━┓ | || `Y ,r‐、 ヽl,_)ヽ ゙、_ | | |. ┏━┓
┏┛┗┓┗━━┓┃ ...ヽリ゙! | l::ー':| |:::::::} |. | / l|`! |i |. ┃ ┃
┗┓┏┛ ┃┃┏━━━━━━━.j | l|.! l::::::ノ , ヽ-' '´ i/| !|/ | |リ ━━━━┓┃ ┃
┃┃ ┏━┛┃┃ ┌┐ | l| { //` iー‐‐ 'i 〃/ j|| ||. |ノ ┃┃ ┃
┃┃ ┃┏┓┃┗━━━.んvヘvヘゝ | l| ヽ ヽ / _,.ィ ノ/川l/.━━━━━┛┗━┛
┃┃ ┏┛┃┃┗┓ i .i ゙i\ゝ`` ‐゙='=''"´|二レ'l/″ ┏━┓
┗┛ ┗━┛┗━┛ ノ ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、 ┗━┛
r|__ ト、,-<"´´ /ト、
| { r'´ `l l /|| ヽ
゙、 } } | _|___,,、-─‐'´ | ゙、
`‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/ | | |、__r'`゙′
| |/ i |
| | |<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/27(日) 03:02:41.11 ID:RIqcOKo0<>二話目行きます、基本は4レスくらいの単発で<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/27(日) 03:03:34.75 ID:RIqcOKo0<>
どことも知れない場所。
時間は深夜0時。
学生がその大半を占める学園都市はそのほとんどが眠りについている時間。
「別にかまわねェがな」
「まぁ、不便になりますけどね」
「私も特に依存ないわよ」
「………」
とあるマンションの一室。
集まったのは『グループ』の一方通行、海原光貴、結標淡希、土御門元春。
そして、『グループ』の下部構成員、紅黄碧。
いずれも学園都市の暗部を知る者達だった。
『グループ』はそれぞれが闇と守るべき弱点を抱えている。
だが、下部構成員の紅黄には特にそういった事情はなかった。
すなわち、表に戻ろうと思えば戻ることは不可能でない位置にいるのだ。
「まさか、こうも簡単に了承されるとは……」
なかば呆れながら、紅黄碧はほっとした表情を浮かべた。
彼の読人感応能力<サイコパスヒューマン>ではとてもではないがこの四人を相手に戦えない。
「抜けるのは構わないが、聞いてもいいか?」
先ほど一人だけ無言だった男、金髪アロハシャツの土御門元春が言った。
いつものおちゃらけた口調ではなく、真剣に。
「本当に、表の世界に戻れるのか? 下部構成員とは言え、裏と闇に染まったというのに」
「あらま、聡明な土御門さんらしくない愚問だね」
<>
なすーん<>なすーん<>なすーん<> __ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
``ー// |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|! | `ヽ=='´
l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ| | |
┏┓ ┏━━━┓ | || `Y ,r‐、 ヽl,_)ヽ ゙、_ | | |. ┏━┓
┏┛┗┓┗━━┓┃ ...ヽリ゙! | l::ー':| |:::::::} |. | / l|`! |i |. ┃ ┃
┗┓┏┛ ┃┃┏━━━━━━━.j | l|.! l::::::ノ , ヽ-' '´ i/| !|/ | |リ ━━━━┓┃ ┃
┃┃ ┏━┛┃┃ ┌┐ | l| { //` iー‐‐ 'i 〃/ j|| ||. |ノ ┃┃ ┃
┃┃ ┃┏┓┃┗━━━.んvヘvヘゝ | l| ヽ ヽ / _,.ィ ノ/川l/.━━━━━┛┗━┛
┃┃ ┏┛┃┃┗┓ i .i ゙i\ゝ`` ‐゙='=''"´|二レ'l/″ ┏━┓
┗┛ ┗━┛┗━┛ ノ ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、 ┗━┛
r|__ ト、,-<"´´ /ト、
| { r'´ `l l /|| ヽ
゙、 } } | _|___,,、-─‐'´ | ゙、
`‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/ | | |、__r'`゙′
| |/ i |
| | |<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/27(日) 03:04:20.08 ID:RIqcOKo0<>
紅黄はわずかに胸を張り片目をつぶり、右手の人差し指をピンとたてる。
「その下部構成員というところがポイント。別に俺は誰かからマークされてるわけじゃないし何かの計画に携わっているわけでもない。
暗部の情報が洩れるのを心配するならそれこそお門違い――」
どこか諦めたような、それでいて楽しそうな、つかみどころのない笑顔を向けて。
「私は『グループ』の下部構成員を抜けて、下部研究員になることになりました」
一瞬、目の前の4人がポカンと口を開いた。
「前線に行かなくなり『グループ』活動にも明るくなくなるけれど、扱いそのものに変化はない部署ですね」
「おい、誰だァ? ンなポスト用意しやがったのは」
「海原じゃないの? いつものように」
「いいえ、覚えはありませんね」
「にゃー、これって抜けるっていうのかにゃー」
「名目上は残って実質は抜けている状態ですね」
「なンだ、その中途半端な位置は」
「暗部として動かないけど、抜けたわけではないから目はつけられないわね」
「実質の活動が監視されるような立場でもない……それこそ下部構成員だからにゃー」
「あとは実働として彼に関わる我々が容認すれば、問題は一切なくなるわけですね」
「……ついさっき容認しちまったじゃねェか」
「……なんというか、とんでもなく狡賢いにゃー」
「あんたが言うんじゃないわよ」
「ああそうだ、下部研究員としての研究課題を提示しなければなりませんね」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/27(日) 03:04:46.43 ID:RIqcOKo0<>
笑顔は崩さず、淡々と。
(今日初めて知ったけど、この顔は企みをばらす時のにやけ顔にゃー)
「差し当たって、結標さんの空間移動能力(テレポーター)について研究したいと思います」
結標からゲッという女の子らしくない声が出たが、一切無視して、これまた笑顔で淡々と続ける。
「といっても、グループの活動を阻害するわけにはいきません、そこでどこかで手頃なテレポーターを見つけて研究したいと思います」
「手頃なテレポーターってなンだおい」
「わ、わたしに聞かないでよ」
「テレポートはかなりの希少能力のはずですよね?」
「既にめぼしは着いてるってことかにゃー」
「というわけで、研究の成果が上がり次第お持ちいたします、よろしいですね? そこでダダ漏れの密談をしている四名様?」
「あ、ところで紅黄さん? 一つだけ聞いていいかにゃー?」
「はい、なんでしょうか? 土御門さん?」
「あなたの敬語って聞くの初めてですが……」
「ああ、それはもちろん――」
やはり笑顔は崩さず――
「策略のネタばらしをする時は落ち着いて丁寧に、と決めているものでして」
紅黄碧、風紀委員所属のレベル3にして暗部組織『グループ』の下部研究員
そして、白井黒子のお目付け役である。
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/27(日) 03:05:47.72 ID:RIqcOKo0<>二話目ここまで、3レスで収まってしまった……
とりあえずキャラ紹介的な意味でオリジナルを出しました<>
なすーん<>なすーん<>なすーん<> __ 、]l./⌒ヽ、 `ヽ、 ,r'7'"´Z__
`ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ `iーr=< ─フ
< /´ r'´ ` ` \ `| ノ ∠_
`ヽ、__// / |/| ヽ __\ \ヽ |く ___彡'′
``ー// |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|! | `ヽ=='´
l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ| | |
┏┓ ┏━━━┓ | || `Y ,r‐、 ヽl,_)ヽ ゙、_ | | |. ┏━┓
┏┛┗┓┗━━┓┃ ...ヽリ゙! | l::ー':| |:::::::} |. | / l|`! |i |. ┃ ┃
┗┓┏┛ ┃┃┏━━━━━━━.j | l|.! l::::::ノ , ヽ-' '´ i/| !|/ | |リ ━━━━┓┃ ┃
┃┃ ┏━┛┃┃ ┌┐ | l| { //` iー‐‐ 'i 〃/ j|| ||. |ノ ┃┃ ┃
┃┃ ┃┏┓┃┗━━━.んvヘvヘゝ | l| ヽ ヽ / _,.ィ ノ/川l/.━━━━━┛┗━┛
┃┃ ┏┛┃┃┗┓ i .i ゙i\ゝ`` ‐゙='=''"´|二レ'l/″ ┏━┓
┗┛ ┗━┛┗━┛ ノ ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、 ┗━┛
r|__ ト、,-<"´´ /ト、
| { r'´ `l l /|| ヽ
゙、 } } | _|___,,、-─‐'´ | ゙、
`‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/ | | |、__r'`゙′
| |/ i |
| | |<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/27(日) 03:26:42.45 ID:IiWrp9c0<>寒気が<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/27(日) 04:19:17.59 ID:RIqcOKo0<>
「さて……」
足元に転がった人物を見つめて、白井は首をかしげる。
「これはどうすればいいんですの?」
支部から近い公園の土に倒れているのは身長170半ばの男、名前は紅黄碧、レベル3の能力者にして白井の監視役……だったはず。
紅黄が第177支部に出向してまずしたことは白井の実力の見極めだった。
すなわち訓練であり実戦である。
その結果が御覧の有様だった。
「はぁ……」
「ええ、と、どうすべきかしらね」
観戦していた初春と固法も同様に固まっている。
「はっきり言って、全然大したことないですわね」
「わぁ! 白井さん、そんなばっさり」
「わたくしと一緒に前線に出る気ならば、もう少しなんとかなりませんの」
「と、とは言っても、俺は基本的に研究者で能力も実戦向きではなく」
「じゃあなんでこんなことしてるんですの」
「そ、その方が試験官らしいと思って」
「……アホですわね」
果たしてどんな男が来るのか、読人感応能力<サイコパスヒューマン>とはどんな能力なのか。
期待と不安で胸が高鳴っていた白井にしてみれば、肩透かしのいいところだった。
「で、とりあえず実戦ではわたくしの全戦全勝ですけれど、次はなにをしますの?」
「ちょ、ちょっとまって、少し休ませて」
「……はよ動けや、ですわ」
その後たっぷり1時間休憩して、紅黄はようやく行動を再開した。
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/27(日) 04:20:42.42 ID:RIqcOKo0<>
「ええと、次は判断能力と行動力だ」
「なにをするんですの?」
「君たちの普段通りのやり方で構わない、この学区内にあるマンホールの数を数えてくれ」
「はぁ?」
「どういう手段で数を調べるかを判断する判断力、そしてその選択を信じて実行する行動力、さぁ、どこまでやれr」
「全部で13623個ですね」
紅黄が言い終わる前に初春が速攻で答えた。
「……はい?」
「ですから、13623個です」
「ええと……根拠は?」
「下水道の管理所のデータを参照しました」
「……」
「で、次は何をやりますの?」
その後も終始こんな感じだった。
出された課題を、判断に悩む問題を、白井と初春は二人だけで解決していった。
「もういい加減にしませんこと?」
「……ああ、そうだね、もう無意味だな」
お互いにどこかぐったりしながら、白井と紅黄の意見が初めて一致した。
そろそろ日が沈む。オレンジ色に染まった公園にぐったりしながらも呆れた表情の白井と本当にぐったりしている紅黄。
ちなみに初春と固法は離れたベンチでウトウトしている。
「では、最後に」
「まだあるんですの?」
「奇妙な窃盗事件と迷子伝書鳩の捜索、どっちがいい?」
その選択に、白井のぐったり加減だった脳が一気にシャキッと立ち直った。
「どちらも、学区を跨いだ事件ですのね」
「そう、前者は同じ手口だが学園内様々な箇所で起こっている。後者はそれこそどこに行くかわからないからね」
「もちろん前者、窃盗事件の方ですわ」
しっかりした眼と口調で答える、それを見てどこか楽しそうに紅黄が応じた。
「決まりだね、じゃあ明日の放課後から土日を加えて実質3日、連続してこの件に当たってみよう」
「ええ、よろしくお願いしますわ」
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/27(日) 04:22:00.07 ID:RIqcOKo0<>
ひとまず初日は終了。明日から本格的にテストは開始される。
紅黄にしてみれば、白井と初春の能力は予想以上だった。
正直に言って、暗部においても十二分に活躍できるであろう実力を持っている。
(まぁ性格的にも環境的にも、風紀委員が一番だろうけど)
もし暗部に引き入れようものなら、一方通行あたりに殺されそうだ。
足取りは軽く、けれど心はそれ程軽くはなく、風紀委員として家路に着く。
能力が高いことは喜ばしい、しかし、それ故に下手に突っ込ませすぎれば暗部に触れかねない。
(なるほどなるほど、確かに、上条勢力の表にいる人物では一番闇に近いかもな)
白井にしてみれば、紅黄の能力は予想以下だった。
謎の能力、年上で先輩風紀委員、そして試験官。
固法に対して抱いていたイメージをさらに巨大にしたもの、それが白井の中での紅黄だった。
(ものの見事にぶっ壊れましたわね)
実戦では仕方ない、白井の能力はレベル4のテレポーター。
サイコメトラー系統の能力では太刀打ちできないことはわかっていた。
はぁ、と枕に突っ伏したままため息をつく。
それにしても、もう少しなんとかならないのか。
テストしてくる相手のすべてを自分達が上回ってしまったのだ、もう落胆を通り越して幻滅に近かった。
「さっきから何ため息ついてるのよ」
隣のベッドに寝転んでカエルのストラップのカタログ(何故にそんなカタログが)を読んでいる御坂が言った。
「お姉さま! お好きな本を読みながらもしっかり黒子のことを気にかけてくださるそのお心使い、黒子は大変うれしゅうございますわ!」
「はいはい、で、どうしたのよ、この前言ってた風紀委員の試験っての上手くいかなかったの?」
「いいえ、逆ですわ……すべてにおいてわたくしと初春が上を行きましたの」
「なら問題ないじゃない」
「いいえ、逆ですわ……もしかして、わたくしの周囲にはものすごいレベルの人物が揃っているのでしょうか」
「もしかして、その試験官の方が全然ダメだったの?」
その言葉に、白井は再びはぁと、ため息をつく。
「その通りですわ、学区外の活動や初春が認められることは嬉しいのですが、はたしてアレと一緒に前線に出てはわたくしにとってプラスになるのかどうか」
思えばパートナーにも恵まれてましたのね、お姉さまに初春に固法先輩に―――とぶつぶつ呟いている。
「んー、でもその人の能力ってサイコメトラー系統なんでしょ? それにAIM拡散力場の研究もしてるなら、そういう専門の話になれば頼りになるんじゃないかな?」
「そうだといいのですが」
「もしかしたら、真の実力を隠してるだけかもしれないわよ」
「そんなゲームキャラみたいな……まぁないとは言えませんし、明日からに期待することにしますわ」
―― 一方、紅黄碧は悩んでいた。
「おかしい、今日が終わる時点では多少なりとも尊敬と一目置くとか、そんな評価になるはずだったのに」
素だった。足取りは軽くない。
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/27(日) 04:23:00.20 ID:RIqcOKo0<>またも3レスで収まった
とりあえず上げて落とすことに終始したので駆け足気味かもしれない
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/27(日) 04:41:48.75 ID:CEoKFEDO<>別にゆっくり歩いても構わないと思うんだが<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/27(日) 04:46:55.24 ID:CEoKFEDO<>最初のレスで上げて次のレスで落とせば……間に茶々レスが入れば変わるかもか
アレだ。お好きなように!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/27(日) 08:35:08.03 ID:AzxhlADO<>オリキャラが自己投影丸出しのオナニーキャラにならないことを祈る
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/06/27(日) 16:04:18.51 ID:TgXkNTk0<>今んとこはそうでもない<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/27(日) 16:06:22.65 ID:Mir8dRU0<>>>24
同意
だが続きが気にやる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/06/27(日) 22:57:15.63 ID:rL/tskDO<>>>24
こいつが全部言った<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sagesaga<>2010/06/27(日) 23:50:07.96 ID:cpnixks0<>今日は来ないのかな
期待してる<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 00:54:18.24 ID:STDmowk0<>ども、皆様方々ありがとうございますとひらにひらにご感謝を
ほんとに、こうやって感想とか来てるの見るとめっちゃうれしい、自然と顔がにやけてくる
一応本日も少し更新予定です
何時になるかわからないのでワールドカップでもみるか他のSSでも見るか夢の世界に旅立つかゆるゆるとお待ちください
……自己投影丸出しのオナニーキャラ……オリキャラは良くも悪くもオナニーなので
ある格言に沿って行きたいと思います
●ブスのオナニーは見たくないが、美人のオナニーなら是非見たい!
さて、わたくし美人になれるかどうか、ゆるゆるとご期待くだされば幸いです( ^ω^)<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 02:17:47.01 ID:STDmowk0<>今日の分出来たので投下します<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/28(月) 02:18:30.29 ID:STDmowk0<> 金曜日の午後3時。
真意城大学の正門から顔に絆創膏をつけた男が出てきた。
紅黄碧(くおう あおい)、元『グループ』の下部構成員にして現下部研究員、そして風紀委員(ジャッジメント)にして白井黒子の監督員である。
「いや、いきなり俺の紹介文長すぎだろ」
ついでに言えば身長は170半ばで、AIM拡散力場の研究をしている大学生で、顔の絆創膏は昨日白井にぶちのめされた生傷である。
「うーむ、もうちょっとかっこよく魅せて、こう、なんというか、尊敬の眼を向けられるはずだったんだけどなぁ」
いまさら言っても後の祭りである。
彼の能力は読人感応能力<サイコパスヒューマン>と言われる読心能力(サイコメトリー)の一種。
実用面や汎用性からするとそもそも空間転移者(テレポーター)に及ぶべくもなかった。
「おーい、紅黄、もう今日はあがりか? なら早いけど飲みに行かないか?」
年下の中学生にのされた記憶を、能力差があるから仕方ないと強引に自分を納得させていたところ、後ろから声がかかった。
「酒? 早すぎるだろ、まだ3時だ」
「だからこそ飲むんだ、昼から飲む酒はそれでそれで美味い」
ニヤニヤしながら昼から酒を飲むアル中気味の男は、紅黄と同じくAIM拡散力場を研究している学生だった。
入学の頃からなにかと一緒になることが多く、時間があれば共にバカ騒ぎするような間柄だ。
だが、普段はともかく今日は先約があった。
「あー、悪いな、これから俺は風紀委員の仕事に行かねばならないんだ」
「なんだ、さぼり気味だったくせに」
『グループ』の方で忙しかったからな、とは流石に言えない。
「まぁな、でも今回はちょっと事情が違う。なんせ常盤台中学のお嬢様と二人きりで実地研修だ」
「んなぁ!? お、お前、そんなうらやましい」
「しかも研修期間の指定はなし、場所の指定も特になし、どこに連れまわそうが何しようが思いのままってわけだ」
ぐっふっふ、とわざとらしく口元をぬぐう。
「は、はんざいだ、取り締まるべき風紀委員がはんざいをおかそうとしてる」
「犯罪? バカを言うんじゃありませんですよ? これは風紀委員の実地研修なのですから」
「うおーー、俺も、俺も風紀委員になっておくんだったーー!!」
「くっくっく、まぁ諦めるんでやすな……というわけで、これから実地研修だ、飲みに付き合えなくて悪いな」
「おう、行け行け、んで性犯罪で捕まっちまえ」
誰が捕まるか、と軽くこづいて分かれる。
バカなやりとりをしたせいか、さっきまでの落ち込み具合が解消されたことに心の中で少しだけ感謝。
天気は快晴、疲労はなし、擦りむいた頬がちょっぴり痛いくらい。
実地研修初日、お嬢様との初コンビ開幕の出だしはそれほど悪くなさそうだった。<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/28(月) 02:19:54.07 ID:STDmowk0<>
その頃、白井黒子の方は――
「お、お姉さま、これは、これはどういうことですの」
「違うのよ黒子! 別にこれは、ってあんたも早く離れなさいよ!」
「いてっ、なんで殴られなきゃならないんだ」
「い、いつまでも私にくっついてるんじゃないの!」
「いや、でも、もう大丈夫か? 暴走しないか?」
「暴走なんか最初からしてないわよ! は、早くどきなさい!」
常盤台中学の寮の前、御坂美琴とツンツン頭の殿方、上条当麻が抱き合って転がっていた。
しかもその状態で痴話喧嘩まで始めた。
事の起こりはいつもの通り。
たまたま上条を見つけた御坂が、いつのように電撃を放ち、追いかけっこをしているうちにちょうど寮の前までたどり着いた。
その光景を寮から見られるのは必然。
しかも御坂と上条は一回逢引現場(と思われている)を寮生ほぼ全員から見られている、ちょうど今と同じ場所で。
結果、ひやかしの言葉であっけなく真っ赤になった御坂がバチバチと所かまわず電撃を放出しはじめ。
これはまずいと意を決した上条が突撃して御坂の頭に右手を置き……そのままいきおい余って押し倒したわけである。
「なんというか、またですの、お姉さま」
「ま、またって何よまたって!?」
「え、御坂って暴走癖でもあるのか?」
「……何もわかってない殿方はお黙りくださいまし」
やれやれとクビを振って、それにあわせてツインテールの左右に揺れる。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/28(月) 02:20:21.91 ID:STDmowk0<>
「とにかく、これ以上お姉さまを見世物にしたくはありませんの、場所を代えてもよろしいでしょうか」
「そ、そうね、うん、そうしましょう」
まだ顔が赤い御坂が、よく考えないままとりあえずのってきた。
「いや、上条さんは夕食の買い物とか」
「いいから、あんたも来なさい、ほら」
「お、おい、遅れたら修道服の大食漢に頭からやられるのは俺なんだぞ、ふ、不幸だーー!」
理由もなにもなく、とりあえず上条の腕をとって歩き出す。
傍目から見れば、仲のいいカップルに見えなくもない。
(お姉さまったら、テンパりすぎですの)
それほど、公衆の面前で押し倒されるという行為は刺激的だったのだろうか。
(あるいは、お姉さまにとってそういうことが望むものであったのかもしれませんわね)
ちくりと胸が痛くなる発想だった、けれど実際、今の御坂は顔は真っ赤だけれど、すごく、ものすごく嬉しそうだ。
(やれやれですわ)
前の二人は特に行き先を決めずにただ歩き出してしまっている。
こうなれば自分がどこに行くかを提示した方がいいだろうと思い……
(支部しかありませんわね)
本日午後四時、支部に集合予定なのだが、もうあまり余裕はない。
ま、大丈夫でしょう、と白井は二人の後を追いかけて行く。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/28(月) 02:21:31.72 ID:STDmowk0<>
「……」
一足先に支部へと到着していた紅黄は、出されたお茶を飲みながらメモ帳をめくっていた。
それは通常のメモとは異なり、カードを一まとめにしたような一枚一枚が非常に固い作りをしていた。
そのメモ帳を複数個並べ、タロット占いをするように組み合わせを選んで行く。
やがて、5つの束に分けた直したそれらのうち、4つをポケットにしまい、1つを手に取る。
カードに書かれているのは『一方通行』『エツァリ』『土御門元春』『冥土帰し』『初春飾利』
など、の一枚に一人ずつ人物名と知りうる限りのプロフィール。
茫洋とした、どこか虚ろな眼でそれらのカードをまとめて、またポケットに入れる。
ちょうど作業を終えた時、支部の扉が開いた。
「お疲れ様ですの」
「あははー、どもー」
「なんで俺まで風紀委員の支部に来ちまったんだ」
白井黒子と、超電磁砲の御坂美琴と、幻想殺しの上条当麻。
「あら、紅黄さんもういらしてたんですの」
白井の言葉に、御坂と上条の視線が紅黄の方に向く。
「あ、はじめまして、わたし御坂美琴って言います、白井のルームメイトで風紀委員ではないんですけど、たまにここに――」
「超電磁砲と――幻想殺し」
「はい?」
「ああ、いやすまない、ちょっと驚いて、もしかして常盤台の超電磁砲?」
「え、はい、そうですけど」
「おお、やっぱりそうなのか、すまない白井君、実地研修は少し待ってもらってもいいか、是非この二人の話を聞きたいんだ」
「ええ、それはまぁ構いませんが……」
いぶかしげな眼をする白井だが、もう紅黄はそちらに向いていなかった。
御坂と上条に熱心に話しかけながら――
その手には、先ほど整理していたカードが握られていた。
数は2枚、それぞれに『超電磁砲』『幻想殺し』と、新しく書かれていた。
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 02:27:32.23 ID:STDmowk0<>今回ここまで、4レス分
当麻と美琴の組み合わせは大好きなのでやはり一押しです。
紅黄の能力はカードということでわかるかもしれませんが
超能力というよりも魔術側であるオリアナに近い特性を持ってたりします
ただし、この紅黄はオリアナ程強くありません<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/28(月) 02:39:27.36 ID:WAd6juwo<>乙
次も期待してまっする<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sagesaga<>2010/06/28(月) 03:44:41.12 ID:qYYUYg60<>乙
オリキャラもそうだけど、地の文に対して作中でツッコませるのも控えた方がいいかもね
文章自体は面白いし友人もいいキャラしてるから期待してます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/28(月) 18:18:42.37 ID:YEc91DA0<>>>35
紅黄ってどんな容姿?
眼鏡?<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 19:33:59.63 ID:STDmowk0<>レスがあれば製作パワーがよりわいてきます、マジでありがとう。
地の文に対しての突っ込みは――まぁ、その、ノリでやっちまった感があります。
>>38
紅黄の容姿は、眼は細めでちょっとゆったりしたいい人ちっくな見た目です
言ってしまえばモブっぽい
眼鏡ではないです、アクションの時描写しにくいので<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 20:57:18.93 ID:STDmowk0<>黒子の私服ってどんなんだろう?
下着は派手だけど見た目は案外地味とか
やっぱり派手でひらひらとか・・・<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/28(月) 21:09:12.66 ID:3Pu4PUAO<>常盤台は私服禁止じゃなかったっけ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/06/28(月) 21:12:31.63 ID:pjDu4cc0<>>>40
はいむらーの黒子ワンピ絵なら、pixivにあるよ<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 21:16:22.35 ID:STDmowk0<>>>41
碧「常盤台の制服は目立ちすぎだ、着替えてくれ」
黒子「うっわ、いい趣味してますわね」
碧「……なら自分で選んでくれ」
>>42
ありがとう、見てみる<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 21:23:20.72 ID:STDmowk0<>ガラは地味だけど胸元とか裾とかキワドイのね >pixivの黒子ワンピ
あわきんの格好が随分露出度が減ってまともに……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/06/28(月) 21:50:03.07 ID:YEc91DA0<>>>39
なるほどなー
服装はやっぱり白衣?(細かくてすまん)<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/28(月) 21:59:28.31 ID:STDmowk0<>>>45
服装は一般的な服、としか考えてなかった
イメージで言えばpixivはいむらーの垣根の服+上着はポケットの多くてやや丈が長い
白衣な感じで白でもいいのかもしれない
ポケットにはそれぞれカードが入ってる<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/29(火) 00:13:21.92 ID:/qkPp2.0<>本日も投下予定、またしても時間は不定ですのでワールドカップでもみるか他のSSでも見るか夢の世界に旅立つかゆるゆるとお待ちください<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/29(火) 00:43:03.23 ID:/qkPp2.0<>
「さて」
足元に転がった人物を見つめて、口元を釣りあがらせながら白井は首をかしげる。
「これはどうしてくれやがりましょうか?」
風紀委員第177支部の床に転がった紅黄を睨みつける。
電気系統の能力は使えないはずだが、なぜかツインテールの髪の毛が逆立ってる気もする。
「い、いや、でもな、もう遅いし」
「あなたがお姉さまと殿方相手に長話しているからこうなったのでしょう!」
白井がたまたま、今日に限って支部に連れてきた御坂と上条。
その二人を見て、話を聞きたいと言った紅黄。
そのまま2時間以上が経過して、日はとっぷり暮れていた。
「今日は、実地研修に、行くのでは、なかったでしたかしら?」
一言ごとずつ区切りながら、眼が釣りあがった白井が言っていく。
気づいたらもう暗くなっていたので、行くのはまた明日にしよう、と言った結果がこれである。
「わたくし、これでも少しは期待してたんですのよ」
怒りに肩を震わせながら、けれど表情は今にも泣きだしそうなくらいしょんぼりしていた。
「なのに、昨日はあらゆる意味でボコボコになった上に、今日は無駄話で予定変更ですの? 肩透かしどころか本当に幻滅ですわ、幻滅」
「ちょ、ちょっと黒子、さすがに言いすぎよ、私たちもついつい長話しちゃったんだし」
「お姉さまは黙っていてくださいまし、これは風紀委員の問題ですの」
ちなみに、上条はもうこの場にいない、噛み殺されると叫びながら一足先に出て行ったところで、初春は白井の代わりに巡回ルートを多めに回っていて、そのまま帰宅していた。
「あー、ところで白井君」
「なんですの? へっぽこ先輩」
「へ、へっぽ……ま、まぁソレは置いておいて……その、な、このアングルだと」
白井は仁王立ち、そして紅黄はその足元に転がっている状況で
「な・に・を、見ているんですの」
思いっきり踏んづけられた、それ故さらによく見えた。
「ぐふっ、いや、不可抗力、というか倒れてるのは俺の意思じゃなくて」
「もう結構ですわ、あなたのようなちゃらんぽらんな方とはこれ以上つきあっていられませんの
一応検収期間中は同行してして差し上げますが、あなたがわたくしに評価を下すのと同様にわたくしもあなたを評価して差し上げますわ」
このままだとメッタくその書いて提出してやりますわよ、と言い残して、白井は背中を向けた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/29(火) 00:44:13.11 ID:/qkPp2.0<>
「お姉さま、わたくし巡回ルートを通りながら帰りますので、先に寮に戻っていてくださいまし」
「あ、うん、気をつけてね」
「ええ、門限までには帰りますわ」
それでは、と白井の身体が掻き消えた。
「……」
「……」
残されたのは、ようやく立ち上がった紅黄と呆れ顔の固法と少し申し訳なさそうにしている御坂。
なんとも言えない沈黙が支配していた空間を――
「あっはっはー、いやー、まいった」
その空気の中心にいた紅黄があっけなくぶち破った。
「あの、すいません、黒子も普段はもう少し、その、なんというか」
「御坂さん、気にする必要はないわよ」
長話をしている時も、白井が怒り狂っている時も終始無言を貫いた固法が口を開いた。
「紅黄さん、もしかして……昨日と今日のこれ、わざとですか?」
「えっ?」
「いやいや、俺はここまでマゾヒストじゃないぞ」
「性癖は関係ありません、そもそもあなたの行動は昨日も今日も……その前から明らかに不自然です」
ヒラヒラと、手にした一枚の紙をなびかせる。
調べ始めた発端は、なぜ警備員(アンチスキル)ではなく風紀委員が監督員なのか、という素朴な疑問からだった。
「格闘などの能力は並、とりたてて前線向きでもなく、そもそも能力を使用した場面すらほとんど確認されていない……
何か意見を言うわけでもなく、いてもいなくても同程度の存在……幽霊委員、それがあなたの仇名だったそうですね」
「おお、よく調べたね」
ここまでは私ではなく初春さんです、と紅黄の情報が細かく書かれた用紙をテーブルに置いた。
「そんなあなたが、今回の白井さんの件に関してだけは異常とも言える行動力で指導員に納まっている」
学区を気にせず行動させるのであれば、本来は警備員(アンチスキル)と組むべきなのだ。
けれど、実際にやってきたのは中学高校の風紀委員よりは行動範囲が広い、けれど教師に比べれば圧倒的に範囲が狭い大学生。
ここに至った細かい経緯は不明だが、紅黄碧は、白井黒子の試験官になるために他の風紀委員や警備員のシステムすらも絡め取っていた。
「非合法というわけでもないし、正式に許可も下りている……だいぶ強引で狡猾な手法でね」
気がつけば、御坂美琴の表情も変わっていた。
申し訳なさや心配という顔から、後輩に執着を見せる、もしかしたら敵かもしれない存在へと。
眼鏡の奥の視線が、揺らぐことなく正面の男を捉える。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/29(火) 00:46:58.66 ID:/qkPp2.0<>
「なるほどなるほど、改めてみると俺の行動は怪しいな」
「ええ、行動が怪しいだけならばまだよかった、けれど――」
続けて取り出したファイル、中身は数枚の写真だった。
つい写真を覗きこんだ御坂が思わず硬直する。
そこに写っていたのは、まだ小学生だった頃の、白井黒子。
そこから段々と、成長に合わせて髪が伸び服装が変わり、それらの変化がすべて納められていた。
「大変失礼ですが、あなたの荷物を調べさせていただきました」
「……」
「改めて見なくても、怪しすぎます」
「……」
「あなたは、白井さんに一体何をするつもりだったんですか?」
「……」
無言の視線が絡み合う。
ここに至ってなお、紅黄の眼に澱みはなかった。
なにか信念を秘めたような、少なくとも歪んだ思考は見えない――もしくは、本物の狂人か。
「黒子は、楽しみにしてました」
にらみ合う年上二人が次の言葉を紡げずにいると、今度は一番年下の御坂が音の主導権を握った。
「自分がやってきたことが少しは認められたって……一体どんな人が来るんだろうって……昨日だって、あなたのことを悪くいいながら、それでもこれから起こることに期待してた」
バチバチと、前髪から電流がほとばしる。
「なのに、本当に……本当にそんな目的なんですか? あなたは黒子を弄ぶために来たんですか!?」
「……」
後方の超電磁砲、前方の風紀委員。
逃げ切れない状況にして紅黄は――
「すべて、事実だな」
あっけらかんと肯定した。
「こ、このっ!」
「いや、弄ぶってとこは事実じゃないぞ? 今のところいいように転がされてるのは俺の方だぞ? だからそのバチバチ止めて、ねぇ、止めて?」
興奮した御坂にドウドウと言いながら掌を向ける。
「それに、ここに来るために強引な手法を使ったのは確かだが、その写真は俺のものじゃないぞ」
「じゃあ誰の? なんであなたが持ってるの」
「それは――」
紅黄が命がけの弁解を開始するとほぼ同時
固法の携帯が着信を知らせる音楽を響かせた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/29(火) 00:51:15.91 ID:/qkPp2.0<>
「もしもし? 初春さん? ……え?」
「「?」」
固法は一瞬御坂の方を見て、このまま聞かせた方が早いと思ったのか携帯のボタンを押した。
通話状態がスピーカー形式に代わり、焦った初春の大声が離れた二人にも聞こえるようになる。
「初春さん、もう一度お願い」
『はい! わたし、さっき巡回ルートの商店街で白井さんと合流したんですけど、ちょうど近くでスキルアウト同士の大きな喧嘩がはじまって、それで、白井さんなんだか怒ってたみたいで、ムシャクシャするんで少しだけ痛い目に遭ってもらいますわって行っちゃって』
一拍、息継ぎをして、さらに大声で叫んだ。
『そしたら路地裏の方で爆発とか何度も起きて! もうなにがなんだかわからなくて! スキルアウトもたぶん何十人も集まったすごく大きなけんっ――きゃあぁ!?』
初春の悲鳴とそれよりさらに大きな爆発音が携帯からもれて来る。
「う、初春さん!?」
『わ、わたしは、だいじょうぶです、ちょっと驚いただけですから、それより白井さんが……』
「初春さん! 待ってて、すぐに行くから!」
言うとほぼ同時、御坂がその能力をフルに使って走り出していた。
残った二人は、携帯から流れるノイズと段々聞こえにくくなる初春の声を聞いている。
残念なことに、超電磁砲の御坂がこの中では一番早く一番強い、彼女に任せるのが最善だった。
「……固法君、ここから商店街まで、どのくらいかかる?」
「御坂さんなら、おそらく10分から15分くらい、白井さんのテレポートなら連続で飛べばあっという間なのだけど……」
10分。かなりの速さだろうが、その時間は生死を分かつには充分な時間だった。
駆けつけるなら1分でも、1秒でも早く――。
「俺の罪状に関しては、とりあえず保釈ってことでいいか?」
「え? それは、まぁ……」
手近にあった懐中電灯を手に取り、それをクルクルと回す。
どこかのツインテールがやるように、狙いを定めるための道具として。
「逃げるわけじゃないからな、すぐに戻ってくる」
「はい?」
紅黄の手がポケットに突っ込まれて、一束のカードを取り出す。
同時に、ヴ…ゥゥン、と固法の脳内に何か振動のような響きが伝わってきた。
紅黄が選んだの一枚――『結標淡希』と書かれたソレを手に取り――一気に引き裂いた。
「座標移動(ムーブポイント)、起動!」
瞬間、紅黄が身体が虚空に消える。
「多重…能力……?」
呆気に取られた固法だけが一人、第177支部で戦況を聞いていた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/06/29(火) 00:52:48.93 ID:/qkPp2.0<>本日ここまでっす
へっぽこオリキャラにようやく活躍の場が、同時にストーカー疑惑が浮上してるのがあれですがw<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/06/29(火) 01:14:32.76 ID:.vXH.eko<>まあ強すぎるのも問題ですが、全く活躍しないのもあれですな。
じっくりと見守らせていただきます。
なんとなくオリキャラの能力に見当が付いたような。
絶チルのあの爺様と同系統の能力かな?<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/29(火) 01:38:22.43 ID:/qkPp2.0<>>>53
オリキャラの能力は扱いが難しいので、基本黒子をヒーローにと考えております。
脳内で描く活躍を出来るだけ黒子が奪っていく、そのくらいでちょうどいい
絶チルはよくわからんのですが、あの爺様って一体<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<><>2010/06/29(火) 17:59:18.04 ID:Qqzt5io0<>>>1
さすがに能力を100%真似るとかはないよね?<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/06/30(水) 03:15:59.30 ID:zPXB13.0<>>>55
それは流石にないっす
次回バトル描写ありなのでちょっと苦戦中
能力についてはバトル内にてさらに触れる予定です<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/01(木) 02:29:56.60 ID:M9/UHNg0<>朝に近い時間にこんばんは、今回ちょっと長いけど投下します
……この時間は人まずいないと思うけど<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 02:57:47.16 ID:M9/UHNg0<>
「まったく、あっついですわね」
熱気に包まれた狭い路地を駆けて、倒れてきた障害物や噴出した炎をテレポートで回避してまた駆ける。
手当たり次第に爆弾をばら撒かれたことによって、辺りは既に災害と呼べる規模の火事になっていた。
ここまで事が大きくなってしまえば、風紀委員一人の手には負えない。
素直に災害救助や消防の専門家に任せるしかなかった。
いま白井に出来ることは、これ以上の被害の拡大を防ぐこと。
「いた!」
さらに数回のテレポートを繰り返した先、火の手に包まれた雑居ビル屋上に人影があった。
その人物が何かを放り投げるたび、落ちた先で爆発と火の粉が散る。
「これ以上の狼藉は許しませんわ!」
力強く地面を蹴り、白井の姿が宙に消える。
出現先は雑居ビルの屋上。爆弾魔の目の前にその身を躍らせる。
「風紀委員(ジャッジメント)ですの! 今すぐそのバカな行為を止めなさい」
現われた白井に、しかし爆弾魔は一切注意を払わず淡々と手にした爆薬を投げ続ける。
「無視するんじゃ――ありませんの!」
頭上への転移からドロップキック、さらに杭を服に打ち込んで拘束する。
「こんな酷いマネをして一体全体あなた方はどういうつもりなのでしょうか、とりあえずスキルアウトの中でも最低の部類ですわね」
「う、うるさい! は、離せ! 俺は爆弾を、炎を、ほのおを作らないとダメなんだ!」
「はぁ? 何を言いやがりますか」
「お、お願いだ! これを外してくれ! はやく、はやくしないとあいつが、あいつがぁ!!」
「な、なんですの?」
鬼気迫る爆弾魔の表情に、逆に白井の方が気おされてくる。
さっきまで無差別に爆破をしていたはずだが、この男は狂人や愉快犯には見えない。
むしろ、何かに怯えて、必死に抗っているような、そんな追い詰められた感じがした。
「そういえば……さっきから静かですわね」
暴れまわっていたスキルアウト達の声も聞こえなくなっていた。
パチパチと炎が爆ぜる音だけが商店街を支配している。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 02:58:20.41 ID:M9/UHNg0<>
「そんな、みんな、みんなやられちまったのか……?」
「やったとかやられたとか、自分達の喧嘩にここまで周囲を巻き込んで、出てくる言葉がそれですの?」
「ば、バカやろう、これは喧嘩じゃなくて戦争だ」
「わたくし、女ですので野郎ではございませんわ」
『そうそう、そんな綺麗な子に野郎なんて失礼よ、それに、これは戦争じゃないわ、狩りよ』
「っ!」
直感だけで身体が動いた。
振り向かず、そのままテレポートで数メートルだけ身体の場所をずらす。
転移が完了するとほぼ同瞬、視界の隅でなにかが光った。
(レーザー?)
光とほぼ等速で放たれたそれは、白井が先ほどまでいた空間を通過して、地面に縫いとめていた男に突き刺さった。
「ぎ、いぎゃあぁぁぁぁああぁぁぁっっ!!??!?」
太腿を貫通された男は、磔にされたまま絶叫を上げてのたうちまわる。
「炎喰らい(ファイアイーター)はもう仕留めたわよ、火を食べる前で火力不足のあの子なんて敵じゃなかったわ」
階段を昇りきった女が、屋上に姿を現す。
年齢は恐らく大学生かそれ以上、大人びているというよりも妖艶という言葉が合う女性だった。
爬虫類を思わせる切れ長の眼と、こんな場所に似合わない黒一色のスパンコールドレスがやけに似合っている。
「あなたは、何者ですの」
少なくとも、味方ではない――警戒をより強めて、白井はレーザー使いを見据えた。
「あら、人に名乗る時はまず自分からと教わらなかった? 可愛い子猫ちゃん」
「……風紀委員ですの、あなたにも伺いたいことがあるので、ご同行いただきたいのですが」
「んー、それは無理ねー……むしろ」
右手がスッとあがって、白井の方を指差す。
白井の背筋に悪寒が走るのと、切れ長の眼がニヤリと歪んだのはほぼ同時。
「あなた可愛いから私がお持ち帰りするわね、いいことして遊んであげる。いいでしょう? レベル4の白井さん」
「なんで、わたくしの名前を!?」
問いに答えはなく、代わりに右指の先から文字通り光の速さで光線が放たれた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 03:00:54.01 ID:M9/UHNg0<>
紅黄がテレポート先に選んだのは、建物が解体されたばかりの更地だった。
「これは、当たりというのか外れというのか」
そして、偶然かそれとも開けた場所を選んだのか、ここが戦場のど真ん中だった。
十名以上のスキルアウトと炎の能力を持つ少女が、相対する光の能力を持つ女性に全力で挑み……決着は着いた。
現在、立っているのは紅黄一人だけ。
スキルアウトの大半は無事だったが、皆一様に膝を折って崩れ落ちている。
「炎喰らい(ファイアイーター)……確か、レベル4の能力者だった、よな?」
胸の中心を撃ち抜かれ、無残に打ち捨てられた死体を確認する。
胸部以外に傷はないので、確かめることは容易かった。
興野陽子、炎を吸収することによって大きな力を発揮する通称『炎喰らい』、レベル4。
学園都市暗部の資料で見たことがある顔だった。
「ちく、しょう……おれが、もうすこしでもつよければ……」
「ちくしょう……ちくしょう!」
「ひっく、なん、で、そいつが、そんな殺されなきゃ、ひっく、えぐっ」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 03:02:18.33 ID:M9/UHNg0<>
ようやく現実を受け入れだしたのか、スキルアウト達に動きが出始めた。
一人がノロノロと炎喰らいの死体に近寄ると、ゆっくりと優しく抱きかかえた。
「ごめんなぁ、なんにも出来なくて、助けられなくて、ごめんなぁ……」
「……」
すすり泣きと懺悔と後悔が入り混じった場を、紅黄は無言で後にした。
おそらく、炎喰らいはあのスキルアウトの集団となんらかの接点があった。
いや、接点以上の親密な関係だったのだろう、あの無法者達が全力で彼女を守ろうとしたのだから。
「スキルアウト同士の抗争ではなく、能力者とスキルアウトの戦い……この火事と爆発も、それが原因か」
炎喰らいのために、なりふり構わず炎を作り出した、こういう時のために常に爆弾を準備していたのかもしれない。
しかし、それらの想いはすべて、光そのものを矢として放つ能力者によって壊された。
光の矢(ライトアロー)矢切莱・レベル4。
こちらも暗部の情報で見たことがある名前だった。
「レベル4同士の抗争……いや、殺し合い、か」
学園都市の裏、それこそ『グループ』と同等かさらに深い闇の気配がする。
どのような意図でどういう目的なのか、まるでわからない。
「まさか、レベル4のテレポーターは……標的じゃないよな」
嫌な予感が蠢いていく。たまたま居合わせてしまった遭遇戦が、実はどす黒い背景を持つ襲撃戦であったとしたら。
「っ!」
カードを一枚抜き取り、破り捨てる。
書かれていたのは、能力者の名と<サイコサーチ>という能力名。
「白井!」
100m程離れた雑居ビルの屋上にいる白井黒子と、ビルの階段を昇る切る矢切の姿を感知。
全力で走りながら、また一枚カードを破り、右手を前方に伸ばす。
記された名称は『査楽』――能力は、対象の背後への空間転移。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 03:02:50.93 ID:M9/UHNg0<>
白井黒子は、まだ若いながらも自分の能力をわきまえていた。
彼女は最大の特徴は、扱いが難しいテレポートという能力を、何の制約もなく使いこなせること。
白井に勝る力を持つ結標も、自分を転移させることに弱点を抱えていた。
能力の状態を把握し運用する実力は、全能力者の中でも最上位に位置するかもしれない。
それ故に、白井は回避を諦めていた。
敵の攻撃は光の速さ。それは人の脳が認識するよりも早く貫いてくる先手必勝の矢。
つまり、正面から相対して先に動かれた時点で勝ち目はないのだ。
テレポートだろうと炎喰らいだろうと、例え超電磁砲であろうと、光の速度に敵うものは存在しない。
「なっ!?」
光の矢(ライトアロー)の手から光が放たれる直前、呼吸すらする暇のないわずかな間隙。
背後から衝撃で、思い切り前方に投げ出された。
白井の背後に――右手を伸ばしたままの紅黄が転移していた。
(空間転移者同士の、緩衝!?)
紅黄は右手は、そのまま白井の身体を貫くように転移していた。
だが、同系統の能力同士での反発がその腕を食い込ませずにはじけあう。
ドンッ!という衝撃がぶつけられて、紅黄よりも体重が軽い白井が前方へ吹き飛ばされた。
「諦めが早すぎる、理解力が高すぎるのも考え物だな」
したたかに顔面を打ちつけた白井の上を、ついさっき幻滅した男の声が通過していく。
倒れた白井の背中に、地面に、ぼたぼたと赤いものが落ちていくのがわかる。
光の矢は、前方に伏せる形で転がった白井の代わりに、後ろに現われた紅黄の身体に命中していた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 03:03:24.56 ID:M9/UHNg0<>「速度も威力も申し分ない――だけどな」
顔を上げると、光の矢(ライトアロー)に肉薄した紅黄の背中が見えた。
「単発な上に範囲が狭すぎる、これじゃレベル5には届かないな」
貫かれた太腿は一切意に介さず、手刀を振り上げ――
「判決(ジャッジメント)だ、しばらく寝てろ」
――首筋に落とした。
鈍い衝撃音と共に、ぐるりと白目を剥いて姿勢が崩れる。
一撃で意識を刈り取られた矢切が、糸が切れた人形のように倒れこんだ。
「ふぅ……さて、後始末は警備員(アンチスキル)に任せますか」
「ちょっ、へっぽ…じゃなくて紅黄先輩、なぜこちらに!? 一体どうやって追って来たんですの!? それに、その怪我、ちょっとどころじゃないくらいまずいですわよ、穴開いてますわよ!」
「落ち着け、とりあえず白井に大きな怪我がなくてよかった……では、風紀委員として迅速に負傷者の救助に当たってくれ」
杭で縫い付けられたまま太腿を貫かれたスキルアウトを指差す。
「俺の方は自分で処置するけど、あっちは早く手当てしないとまずいぞ、近くまで警備員は来てるはずだ、運んでやってくれ」
詳しい話はそのあとだ、とまずは人命救助を優先させる。
渋々といった様子で、白井は負傷者を担ぐと空間を跳躍した。
どこまでを隠してどこまでを話すか、わずかながら考えを整理する時間を得られた。
「……」
しばし考えを廻らせた後、意を決して携帯のナンバーをコールする。
ディスプレイに表示されている名は土御門元春。
これはただの喧嘩ではない、何か、暗部すらも巻き込んだ大掛かりな出来事の一幕にすぎない。
その実体を知るためにも、情報が必要だった。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 03:04:33.78 ID:M9/UHNg0<>本日ここまで
能力解説とかそっくり次回持ち越しになってしまった
そして……いつの間にか活躍してる紅黄、どうしてこうなった<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/01(木) 03:19:13.63 ID:DY0mzUDO<>乙
文章は頑張って書いてるのは分かるんだが、これって禁書でやる必要あるのか?
オリキャラどんどん増えてオリキャラ同士の戦いとか掛け合いやられてもな…
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/01(木) 03:22:19.85 ID:FNQFFL2o<>乙ですの
俺はなんだかんだ楽しめてるよ
ただ今後もオリキャラ増やされると色々混乱しそう
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/01(木) 03:36:25.39 ID:M9/UHNg0<>こんな時間にありがとうございます。
オリキャラは今回のように基本使い捨てで、常時登場は紅黄だけです。
イメージとしては仮面ライダーやウルトラマンのように、1話限定で倒せば次が出てくる
あれらほど毎回は出てきませんがw<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/01(木) 05:30:24.44 ID:Yly78YDO<>ストーリー有りのバトル物書くにはオリキャラ使うのは仕方ないわな
平行世界や心理掌握のなんかもオリキャラ使ってるが、禁書ぽくキャラ付けしてるし参考にするといいかも<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/01(木) 07:21:29.93 ID:EPYskNY0<>>>65
二次創作に意味なんて求めるなよって思うが
やる必要がなんていったら、すべての二次にそんなものはないでしょ
世界観だけ借りて、登場人物はオリキャラだけのストーリーとかでも面白いものは面白い
嫌なら見なければ良いってことさ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/01(木) 17:25:15.89 ID:G1SDAwM0<>>>1
オリキャラあんま出さないで禁書キャラつかってくれ
あと細かいが能力名は漢字4文字にしないと禁書らしくない<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/01(木) 19:27:44.98 ID:5Zl4J0s0<>>>68の言うとおり、オリキャラは仕方ないと思うんだけど……
戦闘で原作キャラをかませにすると怒る人もいそうだし
オリキャラは使っても使わなくてもいいけど、最後まで頑張って欲しい
楽しみにまってます<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/01(木) 22:33:53.65 ID:M9/UHNg0<>こんばんは
オリジナルの扱いはやはり難しいところですが、そんなとことは関係なくレスが多いのが純粋に嬉しいですww
オリジナルは特にやられ役に配置しやすいです。例えば
@黒子が歩いてるところを奇襲されて一撃でノックアウトされてしまう
Aオリジナルが歩いているところ、黒子が突然現われなにかの事件の容疑者として一瞬でノックアウトする
ほぼ同じ内容でキャラクターの立ち位置が変わっただけですが
ファン感情というか読み手感情というか
Aは受け入れられても@は受け入れがたいと感じる方が多いと思います。
また禁書キャラV.S.禁書キャラにした場合
勝敗の行方やつけ方に賛否は出てきますし、それぞれが戦う背景が必要になってきます(オリキャラは背景を好きに創造可能)
ストーリーの展開を重要視した場合、どうしてもキャラにそぐわない背景や、場合によっては背景の捏造が必要になってきます。
そして延々と戦うことになった背景の説明ばかりになりそうなのです。
ただ現われて倒されたらそれこそかませなので
結論から言えば
@ストーリー展開を基軸に
A禁書キャラが登場&バトルになっておかしくない場面は禁書キャラで
Bそれ以外はオリキャラで
今回のオリジナル二人は扱いが完璧にかませなのでオリキャラとなりました。
以上、現在の考えです(今後変わるかもしれない)長々と失礼しましたー( ^ω^)<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/02(金) 10:07:08.69 ID:O1mufpg0<>期待してまってますよ
オリキャラは作者のすきでいいと思うよ
さすがにオリ主人公が原作キャラ相手に完全に無双状態とかだとどうかと思うけど
例えば原作キャラが味方サイドで、オリキャラがボスとして出てくるっていうんなら強い方がいいだろうし<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/03(土) 18:44:46.16 ID:LC74F760<>超電磁砲の漫画6巻を読んだ、面白かった
フレンダってレベル0なのかなぁ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/04(日) 17:12:23.53 ID:0AQrHXQ0<>主人公が強いのか弱いのかわからないけど、限定的な強さとかいう感じなのか
複数の能力が好きに使えるなら原作設定を完全につくがえす無双キャラになりそうだけど
>>1は100%真似できるわけじゃないって言ってるし、どういう能力にしてくるのか期待
あと、能力云々よりもキャラ同士の掛け合いをみてみたいな
あと、俺はフレンダは能力者だと思ってる、爆弾作成とかそっち系統の<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/04(日) 22:01:38.26 ID:oi5qeOQo<>>>74
お前タイムリープしてね?<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/04(日) 22:16:29.67 ID:2YjlPz20<>本日投下予定、いつものごとく時間は未定ですので、のんべんだらりとお待ちください
( ・∀・)たいむりーぷ?<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/04(日) 23:55:18.08 ID:2YjlPz20<>出来たので投下する<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/04(日) 23:55:46.82 ID:2YjlPz20<>
第7学区内にある総合病院。
表向きはスキルアウト同士の抗争と発表された火災の被害者は、全員ここに収容されていた。
「まぁ、とりあえず昨日のことは感謝しますわ」
「感謝は受け取るけど、見舞いの品がなんでサプリメントなんだ?」
矢切莱との戦いを制した翌日、午前10時。
足の傷で病院に担ぎ込まれた紅黄はそのまま入院していた。
ただし、穴が開いた箇所を強引に止血だけをした状態である。
「コラーゲンを取れば怪我の治りが早くなりますの、ところで、なぜ治療を受けないのです?」
「いや、昨日の件でスキルアウトの連中も結構運ばれて来てただろう? 風紀委員(ジャッジメント)としてはそっちを優先してもらいたくて」
「穴が空くような大怪我しておいて何を言ってますの、しっかりとした治療をしませんと本当に治りませんわよ」
「検査はしてるさ、その結果次第で治療法を決めてもらう」
個室病室に備え付けられたテレビのチャンネルを、適当にリモコンで変えながら受け応える。
「やっぱ、どのチャンネルも昨日の火事関連か」
「……ええ、どうやらわたくしと同年代の女の子が一人犠牲になったとか……まったく、なんでこんなことが」
「――わからん、警備員(アンチスキル)からの結果報告待ちだな」
「待つしかない状態というのは、性に合いませんわ」
「勝手に動くなよ、昨日の一件はまともじゃない、迂闊に首を突っ込むな」
「言われなくてもわかってますわ、まずは情報を集めることから始めませんと」
「お? やけに物分りがいいな」
「ええ、当然です、のっ!」
白井の腕が唐突に伸ばされ、紅黄の腕を掴む。
「おぉっ!?」
次の瞬間、うつ伏せの状態で転がされた。
床ではなくベッドの上なのは、一応けが人に配慮したということなのか。
「3日連続で転がることになるとは……というか、けが人に何をするかぁ!」
「実は先輩を平伏させることが一種のルーチンワークというか快感になってきまして」
「そんな習慣行動はいらんわい! いいから背中から降りてくれ」
「あら、黒子は内側でくすぶる衝動をなんとか発散しようとしただけですのに……一体実地研修はいつになるんですの」
「さっきのは訂正だぁ! ぜんっぜん物分り良くなってないな! これはあれか、不満の爆発かぁ!」
「病院ではお静かに、ですわよ」
がっちり関節を決めたままの白井と決められた紅黄がギャーギャーと言い合っている。
起こったこと、場所、怪我などをひっくるめても、なぜだか妙に平和な風景だった。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/04(日) 23:56:28.82 ID:2YjlPz20<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『昨日発生した大規模な火災の原因は現在も不明です。統括理事会からは、現場を引き続き立ち入り禁止として調査を続けると発表が――』
土曜の昼下がり、街頭の大型ビジョンは朝から繰り返し大規模火災についてのニュースを流していた。
「ふーん、初春はそれからその紅黄って人にも白井さんにも会えてないんだ」
「はい、二人共そのまま事情説明で警備員(アンチスキル)の方達に同行してしまって、紅黄さんは怪我も酷かったようですし」
定番のクレープを食べながら、昨日の一部始終を説明していく。
「しかし、よくわかんないよね、その紅黄って人」
「わからない、ですか……確かに白井さんの監督員になった経緯はおかしいところが多いって、固法先輩も言ってましたけど」
「ん、そっちじゃなくてさ、例えば白井さんと初春にぼこぼこにされても能力は使わなかったりとか」
「それは、精神感応系ですから、荒事には向いていなかったからだと思いますよ。あと、わたしはボコボコにしてません」
「じゃあなんでそんな人が、荒事に自分から突っ込んで行くような白井さんの監督なの?」
「だから、経緯がおかしいって言ってるじゃないですか」
「んー、なんだろう、なんか釈然としないなぁ」
食べ終えたクレープの包みをくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱にえいやっと投げ入れる。
「初春、ただの勘なんだけどさ、紅黄って人と白井さん、もしかしたら過去になにかあったのかもしれないね」
「ええ!? でも、年も随分離れてますし、白井さんも紅黄さんのことは知らなかったはずですよ」
「でもさ、幽霊委員なんて言われてた人が強引に監督官になったと思ったら、日が暮れるまであらゆるテストで白井さんを計り、昨日はヒーローのように白井さんを助けた」
「――それは、そうですけど……」
「初春から伝聞で聞いただけの情報だけどさ、その人……白井さんが絡む時だけ異常に行動力が高いよね」
「まだ会って3日目ですよ、それだけの行動で決めるのは早いんじゃ」
「それって、3日で丸分かりなくらいあからさまってことじゃない、やっぱり何かあると思うのよね」
それに――、と、佐天は白井に出会った当初を思い出してみた。
(あの時は、御坂さんにだけ注目して、白井さんはなんだか変わった人だなぁって思ったくらいけど)
あの頃はレベルが高いというだけで見下してくると思い込んでいたし、そもそも会うことにも積極的でなかった。
もっとも、その後すぐに仲良くなることが出来たのだが――
(いくらなんでも、3日でドツキ漫才まで出来るくらい仲良くなれたっけなぁ?)
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/04(日) 23:57:04.03 ID:2YjlPz20<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「紅黄碧は……多重能力者(マルチスキル)……ですか」
「ええ、紅黄さんの能力は読人感応能力<サイコパスヒューマン>という名で登録されているわ、どう間違ってもテレポートではないわね」
風紀委員第177支部。
御坂と固法という割と珍しい組み合わせが話をしていた。
「昨日、御坂さんの前で紅黄さんは何か能力を使ったかしら?」
「いえ、私が着いた時にはもう終わっていて……」
「バンクに登録されている情報を鵜呑みにすれば、精神感応系をベースにした多重能力に近い能力ということになるのでしょうけど」
「それこそありえませんよ、そんなので多重能力が可能ならテレパス系は皆可能性があることになります、実現が不可能なんて言われてませんよ」
「そうなのよね……と、なると……バンクの情報が間違っているか、意図的に違った情報を読み込ませたか」
「実は、紅黄さんはテレポーター、ですか」
「そう考えるのが、一番自然なのよね……」
白井さんに執着するのも、同系統の能力故に何かの事情があるのかもしれないと、傍らに置きっぱなしになっているカバンを見ながら思う。
現場から直接紅黄が入院してしまったため、白井が写っていた写真もそのまま残されていた。
「紅黄さんは自分のものじゃないって言ってましたよね、あの写真」
「ええ、その辺りの事情も、再度聞いてみないといけないわね」
「昨日の事件のことも含めて、ですね」
「そうね、幸か不幸か、昨日の事件が起こったおかげで、紅黄さんは白井さんの味方であると分かったし、白井さんの紅黄さんへの感情もだいぶ落ち着いた様子だったわ」
「あれ? そういえば黒子は」
「紅黄さんと同じ病院よ、怪我は大したことなかったけど、一応検査を受けることになっていたから」
「うわー、会ったら黒子イライラするかもしれないですね、実地研修はどうなりますのって」
「病院内だから、おかしなことにはならないでしょうけど」
そういえば、と白井と紅黄の関係を少し思い起こす。
能力まで使って……まるで御坂が白井にするような少し過激なコミュニケーションの場面が容易に想像できた。
(白井さんに男性の知り合いは、ほとんどいなかったはずよね)
慣れないはずの男性と、いつのまにやら気の置けないやりとりをしていて、周囲も割りとそれを平然と見ていた気がする。
今日で3日目、あの二人が会ってから実質2日しか起っていないにもかかわらず。
「やはり精神操作系の能力……いえ、それなら私たちが彼に猜疑心を浮かべることはないはず」
「? どうしたんですか」
「第三位の御坂さんを完全に掌握することは不可能なはず、となると……」
「もしもーし、固法先輩?」
「御坂さん、協力してもらえるかしら?」
「え? なににですか?」
「もう一度、紅黄碧に関してのデータを洗い直してみるわ」
失礼な言い方になるが、彼には御坂のように絶対的に人を惹きつける魅力があるわけではない。
そして、精神操作系の能力でもないのであれば……。
おそらく紅黄は、白井黒子の性格と扱いを、よく知っていたのではないだろうか……。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/04(日) 23:59:07.13 ID:2YjlPz20<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あのー、白井君? そろそろ降りてくださいませんか? 背中に乗っかったままですと太腿が当たりまして、こう、なんといいますか……男として問題が発生しそうでして」
「あら、一体どんな問題ですの?」
「ええと、普通セクハラって男から女にするもんだよね? 逆だよね?」
うつ伏せに組み伏せられた紅黄と、その上に乗った白井の軽口が続く。
「大体、さっきも言ったが俺は怪我人だ、穴あいてるんだぞ」
「ええ、そうですわね――空間転移者同士の緩衝で、わたくしをレーザーの射程外に押し出した際に負った傷ですわね」
「っ……、……、ああ、そうだが」
「ではなぜ、いまわたくしは、あなたを転移させて組み伏せることが出来たんでしょうか?」
気づけば、声色が変わっていた。
冷静に、ともすれば血が昇りそうになる思考を抑えながら、得体の知らない存在を見極めようとする。
「能力のオンオフが自由? それとも……それとも、もっと別な能力でしょうか?」
「なるほどなぁ、組み伏せてればテレポートで逃げられないもんな」
「能力について語りたがらないように思われましたので、まずは逃げられない状況をつくらせていただきましたわ」
「まぁ、大っぴらに語りたくはないけどなぁ」
「わたくし、昨日の事件の真相並に、その能力が気になってますの――話していただけますかしら」
ほう? と今度は逆に紅黄の口調が少しだけ余裕を見せた。
「この能力に関して、なにか心当たりでもあるのか?」
「っ!? あ、ありませんわ! だからこうして聞いているんですの!」
「そうだよな、覚えていても不思議はない」
「だ、だからーーっ!」
「いきなりこうやって抑えつけたり行動が唐突すぎる、少々冷静さが失われてるな」
「知らないと言っているでは、ありませんの!」
「あー、君たち? ここは病院なんで、静かに願えないかな?」
「「!?」」
知らない間に病室の扉が開いていて、小脇にクリアファイルを抱えたカエル顔の医者が立っていた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/04(日) 23:59:34.69 ID:2YjlPz20<>
「君の怪我はそれなりに深刻なんだ、過度な運動はお勧めしないよ」
はぁ、とため息をついて、白井の拘束が緩んだ。
第三者の登場で、能力にるいて聞き出すことは難しくなったと思ったのだろう。
しかし、話は白井の予想とは真逆に動いた。
「紅黄君、彼女にも話しておくべきだと思うよ、君の能力のことを」
「……ああ、適当なとこまで話してやってくれ」
「適当なところまでか、では、ボクの判断で話させてもらうよ」
「ど、どういうことですの?」
「俺の身体と能力の調整を行なっていたのは、その医者だ」
「そして、白井黒子君、君も知っているはずだよ、彼の能力を」
カエル顔の医者がファイルから差し出した資料には――
「君も被験者の一人だったからね」
小学生の白井と、複数人のレベル0の少年少女のデータが並んでいた。
「こ、この、実験は―――失敗に終わったはず、ですわ」
虚数学区制御端末実験と題された一枚のレポート用紙に、白井は見覚えがあった。
「そう、この実験は失敗した、君がテレポーターとして協力していた事実も、他の協力者のデータもすべて抹消された」
カエル顔の医者は、語りながらベッドの上で転がされた男を見る。
紅黄が無言で顎をしゃくり、続きを許可した。
「実験の唯一の遺産が彼、紅黄碧だよ」
ただし――失敗作とされているけどね、と付け加えた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/05(月) 00:00:03.70 ID:WMcKy..0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第177支部
「これは――」
「読人感応能力<サイコパスヒューマン>って、こういうことだったんですか」
風紀委員第177支部内にて、御坂と固法はパソコンの画面を見つめていた。
二人は、御坂の能力でバンクの機密データにアクセスしていた
御坂は、固法がこういった不正を容認することを珍しいと思いながら、けれどアクセス権の壁を突破しても見る価値はあったと思えた。
「一度でも出会って、脳波を感知できれば」
「いつでも、能力をコピー可能……」
総合病院
「なんという反則能力ですの」
「でも、これには制限があってね、コピーできるのは一度だけなんだ」
例えば、御坂の超電磁砲を一度使えば、二度と使うことはできない。
「つまり、彼の能力は消耗品なんだよ」
第177支部
「回復不可能な、消耗品の能力、ですか」
「それでも、充分すごいわ、なんで失敗能力扱いになっているのかしら」
「研究者が求めるモノと違ったのか、それとも――」
たぶん、こちらの方が可能性が高いと思いながら、御坂は続きを口にする。
「なにか、もっと致命的な欠陥が存在するのか」
バンクのデータも、カエル顔の医者が語る内容もちょうど同じところで途切れていた。
最後にわかったのは、能力に対する異名(コードネーム)。
レベル5【認定翌日に即取り消し】
『砂上楼閣(レヴォリューションエラー)』
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/05(月) 00:03:31.52 ID:WMcKy..0<>本日ここまで、今回はちょっぴり長いですが説明多し
説明ばっかりだったんでコミカルなシーンとかも入れようとしてならに長くなってしまった感じです
「」の前に名前をつければやりやすいけれど、ギャグ系ならともかくシリアス系では
なるべくやりたくないのでもうちょっとこの形式で頑張ってみる。
>>75
期待感謝、掛け合いはやりすぎを気にして大人しくなりすぎる傾向があるので頑張る
フレンダ能力者派とレベル0派ってどっちが多いんだろう<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sagesaga<>2010/07/05(月) 02:53:29.94 ID:1P3Z8GQ0<>乙!
俺は好きだよこういうの。頑張ってくだせう<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/05(月) 02:59:53.91 ID:WMcKy..0<>レス激しくありがとう
正直、今回はオリジナルな説明ばかりになってしまったので
ハラハラドキドキだったんだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/05(月) 03:02:38.04 ID:xINPrg.o<>オリ設定のわりには上手く出来てると思う
今後も期待で乙<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/06(火) 03:08:47.60 ID:QvMKBuw0<>レス感謝、設定は練るの大好きなので嬉しい
大筋の話は決めていたのだけど、細かいとこは書きながら決めていたら
細かいとこにひきづられて大きなとこがちょっと動いてきた
この黒子、だいぶ闇に近くてかっこいい方面のダーク黒子になりそうな予感
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/06(火) 10:46:21.89 ID:6rbIgIDO<>乙乙。
かなりピーキーなオリジナル設定ですね。
能力の一回の使い捨てより劣化して消耗していく方がやりやすいのでは、と個人的には思いました。
それも含めて期待です。上から目線ですいません。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/06(火) 15:28:44.25 ID:L3kICkc0<>乙ー 砂上楼閣かっけえなw
ビクビクしないでもっと気楽に書いてくれよー、叩かれてもイイぐらいの気で
まぁほどほどにねー<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/06(火) 17:40:47.94 ID:IZltWWc0<>>>90
よく読むんだ、使い捨てにプラスして何かまだ欠陥があるみたいだぞ
結標と査楽つかっちまったから原作登場のテレポーターってあと黒子だけだな
他のテレポーターと会ったことがあるということにすれば問題ないけど
上条さんのカードも作ってたけど、まさか幻想殺しまでコピれるのか?
何はともあれ、期待してるからがんばってくれ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/06(火) 22:16:13.09 ID:6rbIgIDO<>>>92
おお、すまん。読み過ごした。
致命的な欠陥か…
同じ精神系の最上位である心理掌握の存在か
常に周りにコピーの元になる能力者がいないと、一人の能力者としては大した能力者ではないとか
変に邪推して本当に申し訳ありません。
純粋に楽しみにしてます。頑張ってください。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/07(水) 02:46:04.83 ID:7bV7CA.0<>>>93
なら長文やめようね<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/08(木) 17:46:07.70 ID:OhRWMK6o<>追いついた
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/08(木) 23:29:31.79 ID:CGIUCQo0<>感想感謝感激雨あられ
レスついてるとホントに気力湧き出てくるよ
展開予想とかしていただけるのは凄く嬉しい、たぶんそういう考えが出てくるのは楽しんでもらえてるということだと思うので
でも、予想された展開とかぶっちまったらやりにくいので、ほどほどにお願いしやす(;^ω^)
追伸:むぎのんとみことが仲いいSSを見て麦野をガチ卑劣系敵キャラで使う決意が鈍る今日この頃……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/08(木) 23:44:19.41 ID:nwVeFfUo<>よしキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!???<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/08(木) 23:55:34.90 ID:CGIUCQo0<>いや、すまん、まだ区切りまで書けてないんだ(´・ω・`)<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/09(金) 23:51:04.48 ID:zO.iCvk0<>ちょっと方向性に迷いつつ今夜中に投下予定
例によっていつになるかはわかんないのでにゃーにゃーとお待ちください<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:46:11.78 ID:pB.3v2A0<>〜〜〜〜〜〜〜〜
6年前。
まだ白井黒子が小学生になったばかりの頃のこと。
彼女は、ある実験に被験者と参加していた。
「くろこちゃんは、しょうらいなにになるの?」
「わ、わたくしはテレポートをもっとみがきますわ、いまはレベル2ですけど……」
「わたしレベル0だから……クロがうらやましい、うん、うらやましい」
「へん、くろこのテレポートなんて、はしったほうがはやいって」
「あー、そういうのひがみっていうんだぞー」
「ひがみなんてないぞ!? ……ところでひがみってなんだ?」
内容はひどく単純だった。
同年代のレベル0達と実験部屋で一緒に暮らすこと。
白井の部屋の他にも、いくつか同じような構成で実験部屋が配置されていた。
1名の能力者と、同じくらいの年齢の男子女子が4名、一部屋5名で割り振られている。
あとは特にすることはない、外に出られないことを除いて難しいことは何も要求されなかった。
「あ! じ、じかんですわ、わたくしほうこくにいきませんと」
「いってらっしゃいクロ……はやく、かえってきてよね? うん、はやく、ね?」
白井は話の輪から外れると、部屋の片隅に置かれた黒塗りの電話ボックスのような筐体の扉を開けた。
「きょうも、なにもおきませんでしたの」
中に入って報告内容を告げる。
これも日常のひとつ、毎日決められた時間に、光も音もないこの筐体の中で起こったことを報告する。
他の部屋の能力者達も同じ行動を、決まった時間にとっていた。
そして、報告が終わるとすぐに扉を開けて筐体から脱出する。
筐体の中では、彼らは常に何かに飲み込まれているような感覚に襲われていた。
まるで、食われていくような、生理的な嫌悪感を催していた。
それ故に彼らは逃げ出す。定期的な報告でやむ終えない場合を除いて、必要最小限の時間で筐体から離れる。
ただ一人―――
「なんですの? いいたいことがあるならいえばいいとおもいますの
いっつもそうやって、うじうじうじうじ……ねくらにもほどがありますの
よろしければ、わたくしがきいてもいいんですわよ」
――白井黒子を除いて。<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:47:29.63 ID:pB.3v2A0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
※現在 総合病院
「レヴォリューション……エラー……」
ぽつり、と白井の小さな唇がその単語を繰り返す。
とりあえずいまは紅黄の背中から降りて椅子に座りなおし、カエル顔の医者の話に耳を傾けていた。
「暫定でレベルは3になっているけれど、ほんの一瞬だけレベル5に認定された能力だね」
「と言っても、失敗作であることには変わりないけどな」
能力を模倣できる、ただし一回だけ。
それ以上の機能は一切存在しない欠陥品。
「それが……あの実験と…………なんの関わりがあるんですの」
「まず、あの実験の結末を、君は知っているかな?」
「し、知りませんわ、だって――わたくしは、わたくしだけ――最終実験の前に、解放されたのですから」
途切れ途切れに、白井の口から否定の言葉がでてくる。
「そう、白井黒子は解放された――で、他の者は、どうなったと思う?」
「そ、そんなこと」
「白井、お前は気がついていたはずだ、あの時お前の脳波はまだシンクロに近い状態にあった」
紅黄がそこまで話した所で、カエル顔の医者がめずらしくはっきりと表情を変化させた。
そこまで話す必要はない、彼女の負担になるだけだと。
「皆が死んでいったことに、何か恐ろしいことが起こったということに――そして、生まれた能力者の存在に」
「――ぁっ」
しかし、一切の躊躇もなく、滑らかに事実は告げられた。
「……わたくしも、そんな気はしてましたのよ……でも、確かめる術すらなかった……」
「そして、知りたくもなかった――という感じか」
「……否定はしませんわ」
どこか虚ろに、斜め下の方向に視線を這わせながら白井が受け答える。
「……あの実験の目的は二つあった、正確には表向きと裏向きというべきなんだけどね」
「一つはAIM拡散力場の干渉実験、なるべく波長が合いやすい同年代をまとめて、特殊な部屋で脳波に刺激を送り続けて、能力の方向性を固定しようとしたんだ」
5〜6歳程度の子どもであれば、まだ自分だけの現実(パーソナルリアリティ)も曖昧な者が多く、好きな物や近しい人物の能力などに影響されることもある。
この実験では、テレポートなど希少価値の高い能力者を意図的に生み出そうとしていた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:49:45.57 ID:pB.3v2A0<>
「能力をシンクロさせて、他の子どもたちの能力を統一しようとした」
「で、でもそれは、失敗で――」
「なぜ、失敗したと思う?」
「それは――」
「失敗の影には、もう一つの裏の実験が絡んでいた、ロクでもない実験がな」
紅黄は言いながら、視線でカエル顔の医者に続きを促す。
「もう一つの実験、それはAIM拡散力場の統合実験……ぼくは、これ以上彼女に語る必要はないとは思うけどね……」
けれど、諦めたように説明を再開する。
紅黄の要望もあるが、白井の目がその続きを聞きたがっているように見えたからだ。
「同種の脳波から派生して生み出された4名の能力者、彼らの能力はまだ安定しておらず、宙に浮いたような状態だった」
乖離しやすいのであれば、4人の能力をまとめて一つにすることも可能と理論付けされた。
4人で運営する、1つの能力。
「単純計算では4倍の能力が発揮されるわけだ」
あるいは、ミサカネットワークを作るモデル実験だったのかもしれない。
……いずれにしても、その理論はあまりに稚拙だった。
「実験は失敗。被験者たちの脳波は、お互いに食い合いをはじめた」
打ち消しあい、共食いをしていった。
残ったのは4分の1、実験に参加して能力を得たレベル0たちの4人に1人。
けれど、事態はそこで収まらなかった。
「今度はその4分の1達が、他の4分の1を食い始めたんだ」
原因は不明。
能力は違えど脳波の調整の仕方は同じだったからではないか、と推論されているが確証はない。
とにもかくにも、被験者達はお互いに食い合った。
相手の脳を噛み砕き消化していく、殺しなき潰しあい。
それは、最後の一人になるまで続いた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:51:12.33 ID:pB.3v2A0<>
「実験終了時、98名の被験者が脳死と判断された――途中で実験から外れた君と、生き残りを除いた全員だよ」
「――生き残り」
「そして、最近までその研究は継続していた。
もっとも、元々存在していたメインプランは一切合切破棄されて、98名分の能力を食った生き残りが以後被験者として続いていくわけだけど」
まぁ、そこは今語る必要はないな、と紅黄が続きを制した。
「あなたが、実験の生き残り、というわけですのね」
「否定はしないぞ」
「……そういうこと、ですのね」
「昔の友達の死がわかってショックか?」
「――――そうですわね」
「なんだ? 感慨がわかないか? ああ――それとも――――嬉しかったのか?」
パァン! と小気味いい音が響いた。
振りぬいた右手は紅黄の頬に真っ赤な手形を残して、睨みつけるような眼は、しかしどこか壊れそうな泣き顔にも見えた。
「そんなわけ、ありませんの!!!」
「ああ、そうだよな、そんなわけない――で、なんでそんなに過剰反応した? 白井」
「あ、あなたがあまりに非常識だからですの! ちょ、ちょっとでも怪我を心配したわたくしがバカみたいですわ!」
「そうか、ならばそのバカさ加減に乗じて一つ頼みたい……もう帰れ、お前」
「ん、なっ!」
「砂上楼閣については理解できただろう? お前の過去とも繋がりがないわけじゃないが、基本的に部外者だ」
そして――紅黄にとっても何よりも。
「……やはりお前は、あの実験の影を引きずっている」
「っ! そ、そんなこと」
「いくら言い張ろうと変わりはない、だからまず今日は帰れ、一晩休んで、改めて話しを聞く気があれば来い」
有無を言わさぬ押し付けに、白井は紅黄を睨み、カエル顔の医者を見て。
「――また、明日来ますわ」
姿を消した。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:51:47.10 ID:pB.3v2A0<> 病室に残った二人は、たっぷり30秒程の間をとって、まったく別種の会話をはじめる。
「白井は、やはり完全に白か、実験についての会話も……非常に白井黒子らしい反応だった」
「彼女の古傷を無理に抉る必要はなかったんじゃないかな?」
「自覚しているが、俺は白井黒子にはどうしても甘くなる……あれくらいでちょうどいい」
「やりすぎだと思うけどね?」
「いずれにせよ、白井黒子が鍵であることは間違いない、実験参加の最後の一人……あいつ以外にもう手がかりはないんだ」
静かに、紅黄が言葉に出していく。
実験はつい最近まで続いていた。
当初のメインプランは破棄され、98名の脳波を喰らった怪物を新たにメインとして。
6年の時を掛け、様々な脳波を食い漁って成長した『彼女』は、裏の世界では新たな可能性を提示する存在として注目されつつあった。
しかし、一週間前『彼女』は脱走した。
多くの脳波を取り込んだ彼女は能力を発する現象に近い存在となっており、発見は困難。
現在も、消息はまったくつかめていなかった。
「彼女が脱走してもう一週間……君か白井君、どちらかの元に、彼女は現われるはずだけどね」
「今日を含めて3日間白井と行動を共にしたが、まるで動きはなかった……超電磁砲を警戒したのか」
「君が白井君の護衛についたことも原因かもしれないね」
それは違う、と紅黄は思う。
能力で言えば敵の方が圧倒的に上等。そもそも常に一緒にいるわけではないので、隙の付きようはいくらでもあったはずだ。
「ところで……能力を使ったね? 君の力は代償が大きすぎる、医者としては絶対に使うなと言いたいよ」
「まぁ、多少は仕方ない、風紀委員として白井と活動する以上避けられないことだ」
「仕方ない、か……支払う対価にしてみればもの凄く軽い言葉だね」
君は、本当に白井君が大切なのだね、という言葉を聞き流す。
紅黄は携帯を取り出すと短縮ダイヤルで電話をかけた。
「病院内での携帯電話の使用は遠慮ねがいたいけどね」
「ああ、土御門……昨日の件は」
一切聞く耳もたず、昨日相談した内容の続きを尋ねた。<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:52:55.62 ID:pB.3v2A0<>『こっちもよくわかってない状況だ、俺にも一方通行にも■■にも海原にも昨日の情報は入ってこない』
「そうなると逆に怪しくなるな、暗部にも一切の情報なしか」
『ああ、ただ一つ面白い情報がある、炎喰らい(ファイアイーター)を支援していたスキルアウトからなんだが。どうやら、つるむようになって3日くらいだったらしい』
「いや、けれどあいつらの歎きと悔しさは普通じゃなかったぞ、一朝一夕でそんな関係が」
『なにかを操作されたのかもしれないな』
それは、騒ぎを起こすために――
騒ぎを起こせば風紀委員が来る。
あの近場で、なおかつ最速で移動できるのは。
「白井、黒子か」
もしくは、空間転移を使用した紅黄碧。
実際、その両名とも現場に姿を現し……
「あの時、超電磁砲は、間に合っていなかった……」
つまり、あの時既に、誘い込まれていた――ということなのか。
『ああ、すまないが俺が協力できるのはこれが最後だ』
「あん?」
『実質お前は抜けた状態だ、これ以上お前に肩入れしても、益にはならん』
「――ああ、お互いに、な」
どういう理由であろうと、紅黄は闇の深部から浅い部分へと浮上してきた。
暗部の情報を知ろうとすることは、再度ヘドロの底へ潜るのと同じ行為だ。
『ま、そっちのテレポーターは■■とは違ってちびっこくて可愛いから、仲良くやるにゃー』
「ああ、すまない、感謝する……じゃあな」
携帯を閉じて、電話での会話を反芻する。
一箇所、明確に認識できなかった言葉があった。
■■。おそらく、人名なのだろう。
「なにか、影響でもでたのかい?」
「ああ、大したことじゃない」
「そうかい、でも、肝に銘じておくことだ」
「能力を使えば、その元となった能力者の存在は君の頭から抹消される
忘れるのではない、存在そのものが認識できなくなる、未来永劫にね」
文字通りの使い捨て。
いくら強固な力で作り上げようと、土台そのものが崩落していく砂上の楼閣。
レベル5の失敗作。
紅黄碧。
砂上楼閣(レヴォリューションエラー)には、致命的な欠陥があった。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/10(土) 02:57:22.71 ID:pB.3v2A0<>本日ここまで
前にもまして説明ばかりでえらいこっちゃ状態です
たぶん、説明はこれで終わり
過去の実験とその遺産とそして砂上楼閣の代償。
黒子がちょっと考えれば気が付くとんでも勘違いをしたまま飛び出していっております。
弱った黒子とか強がる黒子とか、気が弱い黒子とかとかとか、色々妄想広がり中<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/10(土) 03:03:06.09 ID:9q5OGzUo<>乙!<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/10(土) 03:03:36.39 ID:Fb/vulMo<>■■はあわきんか。
あわきん自体が消えたんじゃなくてただ認識できないだけね
じゃあもう一度会って再び認識したらまた能力使えるの?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/10(土) 03:32:12.34 ID:fjOSEcDO<>乙カレー
誰かを守るたびにどっかの誰かを忘れ、独りになっていくのか…
展開上手いなわくわくする<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/10(土) 03:37:22.78 ID:zuSedlgo<>それが出来ないんじゃね<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/10(土) 03:40:20.26 ID:9q5OGzUo<>>>108
使い捨てだから二度と会えないか会っても認識できないんじゃないか?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/10(土) 08:32:38.60 ID:LKNigGk0<>能力の効力の時間てのはどんなもんなんだろうか?能力によっても違うのかな<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/11(日) 03:11:12.78 ID:AA44ddQ0<>レスに多大なる感謝を
オリ説明ばかりだったんでどうなるもんか前回以上にハラハラしましたがレスくれて本当にありがとう
ご指摘のとおり、■■はあわきんです。
そして、以後あわきんと出会っても初対面状態で、ちょっとでも認識が外れようものならすぐ初対面状態に戻ります。
記憶障害にあるような、目の前にトランプを置いてから隠して「ここにあったトランプの柄は?」と聞いてもわからない、そんな状態です。
効力の時間についてはちょっと思案中、そんなに長くはないですが一定にするか変化をつけるか……
お次はちょっと話術サイド方面の話にする予定です。
黒子のそげぶ返しとか、弱った黒子かわいいよ黒子<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/12(月) 01:09:43.94 ID:rIM5.f6o<>はやくいちゃラブ話書いてよIDが凄いことになってる作者さん<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/12(月) 01:38:42.46 ID:ecgQAxM0<>IDから辿られたか……
といってもここから急にイチャラブは無理だww
だって上琴が全然出てきてないので……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/12(月) 02:23:00.63 ID:rIM5.f6o<>このスレもいちゃラブも期待してるからがんばれ<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/13(火) 01:34:59.59 ID:iW.xXi60<>なかなか脳内で想定していた展開どおりに書けない今日この頃
というか、俺の脳内展開は破綻しすぎだ、もうちょっと整合性をもてよ脳内
◎どっちゃでも一言◎
キャライメージを掴むために勝手にイメージソングを設定してそれを聴き続けたりする<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/13(火) 05:16:59.29 ID:LZqueIDO<>ネタバレになるなら答えなくてはいいけど
ちなみにどんな曲聞いてんの<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/14(水) 23:15:46.74 ID:U3lOgDg0<>昨日落ちてたのかな?繋がらなかった
>>118
ニコ動やようつべで適当に再生しながら、イメージに合うのがあればしばらくそれを聴き続ける
まったく関係ない曲が思いがけずイメージぴったりだったりする(個人的にだけど
その@ ベタだけど『英雄』
当麻と一方通行と浜面をかっこよくイメージしたい時に非常に良い曲。
ちなみにこのSSだと当麻を前にして後ろ向いてる紅黄のイメージ。一度使うと修復不可能な能力なので『転んで』も立ち上げれない、ただそれだけが出来ない。
そのA 『タンデムテイル』
東方のアレンジ、ぼんやり聞いてたら黒子とイメージが合った。自分でもびっくりな連想イメージ曲。
タンデムテイル=ツインテール 美琴に必死に追いすがって隣に並びたい頑張る黒子。
思いっきり勝手なイメージだけど、こんな感じ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/14(水) 23:28:55.69 ID:0F4t9Jco<>第二か第三火曜は毎月落ちるのが製作名物<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/19(月) 00:30:19.76 ID:jE42DqU0<>本日投下予定、話の筋が変更不可能なところまで固まっていくのでちょっくらチェックに時間をかけています
例によって何時になるかわからないので、熱中症にお気をつけてお待ちください<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/19(月) 01:37:57.48 ID:jE42DqU0<>一区切りまでにはちょっと遠いけど半区切り的に投下します<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/19(月) 01:38:38.48 ID:jE42DqU0<>
白井黒子は強い。
能力的な強さはもちろんだが、何よりも精神が強い。
(わたくしは、いま、なにを望んでいますの?)
時折もろさを見せる超電磁砲や、打ち止めという支えに寄りかからなければ立てない一方通行よりも。
場合によっては上条当麻にすら匹敵するほどの芯の強さ。
(これから、お姉さまと初春と佐天さんと……いつものように、これから、いつものように……)
それが白井黒子の強さであり、精神状態に大きく依存する転移能力を最大限に活かす原動力にもなっていた。
(一緒にお昼を食べて、話して、笑って……そう、楽しい時間のはずだというのに……)
それは彼女を知る者であれば、誰もが知っていること。
白井黒子は負けない。たとえ弱っていても、必ず立ち上がり毅然と前を向く。
間違いがあれば正し、決して諦めず、レベル4でありながらレベル5の御坂美琴と同じ目線に立つことが出来る唯一の人物。
(どうして……どうして、6年も前の記憶が、いまに影を作るんですの)
けれど、その強さの矛先が――自らに向いてしまった場合。
(嬉しくなんてない、喜んでなんてない――!)
白井黒子の強さは、最大の弱さになる。
(わたくしは、――人の不幸を、死を、喜ぶような人間になんかじゃ、ありませんわ!)
そして、紅黄碧の予測よりもはるかに近く。
「あハ、ウフふ、あハは、クロはかわいいね、うん、かわいいね」
『彼女』は、すぐそこまで迫っていた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/19(月) 01:40:04.46 ID:jE42DqU0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜
病院から出て、白井は第七学区にある喫茶店に足を運んだ。
時刻は午後1時、ちょうどお昼時だ。
「あ、来た来た! 白井さぁ〜ん、こっちですよ〜」
「お待たせしましたわ」
「怪我とかどうだったの? 白井さんって結構怪我多いしさ、病院通いってあんまよくないよ」
「今回は特に怪我はありませんでしたわ、ただの検査ですの」
オープンテラスに並べられたパラソルが、やや大き目なテーブルをすっぽり影で覆っていた。
そんな席の一つ、初春と佐天が陣取っていた六人掛けのテーブルにつく。
「お姉さまは、まだですの?」
「ええ、固法先輩と話があるとかで」
「なんか珍しい組み合わせだよね、御坂さんと固法先輩って」
「そうですわね、二人きりというのは……もしかして初めてかもしれませんわ」
「やっぱり昨日の火事の件でしょうか」
「え、ええ……まぁ、そうかもしれませんわね」
「でもさぁ、最近白井さんとコンビだっていう紅黄って人、結構やるよね」
紅黄の名前が出た瞬間、白井の表情が明らかに強張った。
「な、なにがですの」
「だって、御坂さんと固法先輩は知り合って結構経つのに、二人でいるのが珍しいくらいだよ?
でも白井さんと紅黄さんが一緒だって聞いても、私会ったことないのに違和感ないもん、なんかドツキ漫才してる絵が浮かんできそう」
「初春? あなた佐天さんにどういう伝え方をしたんですの」
「え? ええと、見たままを?」
「どこをどうやったら漫才に変換されるんですの……」
むしろ、あれはもうお約束とでも言うべきなんじゃないかな、と思いながら初春は話題をこれ以上広げず。
「ところで白井さん、一体昨日の現場で何があったんですか?」
代わりに、一番知りたかった疑問を提示した。
「あ、それ私も聴きたい。スキルアウトだけじゃなくて高位能力者もいて、それを白井さんと紅黄さんで捕まえたんでしょ?」
「まぁ、それはその通りなのですが……」
「? なんか歯切れ悪いよ、今日の白井さん、おとなしいっていうか……」
「あれ? 御坂さん来たみたいですよ? ……なんか、男の人と一緒ですけど」
「ホントだ、珍しいね、御坂さんが誰か連れてくるなんて、それも男の人だなんて」
「あの〜、上条さんとしては別にそんな必要性を感じないわけで」
「い、いいから来なさい、こ、これは重要な会議なんだから、当事者もいないと」
「重要な会議をファミレスでやるのか?」
「う、うるさいわよ、ほら、わたしが誘ってるんだから文句言わない」
「まぁ、御坂さんの奢りって言うならお誘いにあがりますけどね」
「あくまで会議よ! 会議がメインなの! 一緒に食事するとかはおまけなんだからね!」
「へいへい」<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/19(月) 01:40:39.30 ID:jE42DqU0<>
「あ、あの類人猿が何故、何故ここに! しかもお姉さまったらその手を掴んで離そうともせず顔も真っ赤で嬉しそうでぇぇぇぇぇえええ!!!!!」
「あ〜、いつもの白井さんに戻った」
「お待たせ〜、ごめんね、こいつ連れてくるのに時間掛かっちゃって」
「うわっ、女子中学生4人に対して男は上条さん1人ですか」
「ちょっと、私の友達に間違っても変なことしないでよ」
「しませんしません、だからビリビリは引っ込めてくれ」
何はともあれ、6人掛けの席に5人、奇数のため座り方で少しもめた。
結局、御坂を挟むようにして上条と白井が座って問題解決。
上条の方を見ながらガルルルルと言ったりしているツインテールはとりあえず許容範囲内とした。
「えと、はじめまして、あたし佐天涙子っていいます」
「私は初春飾利です、以前お会いしましたけど、改めてご挨拶いたします」
「佐天さんに初春さんね、こちらこそよろしく。俺は上条当麻と言って、ビリビ…じゃなくて、御坂の……」
「…………(ごくっ)」
「……、……ストレス発散用の的?」
「ッッ!! あ、あんたは私をそういう目で見てたのかぁぁ!」
「い、いや他に適当な表現が」
「み、御坂さん、落ち着いてください!」
上条の方を向いてビリビリしている御坂を、とりあえずなだめる。
同じく上条の方を向いてガルグル言ってる白井は放置した、怖いから。
「と、とりあえず、ほら、御坂さん、何か新しい情報があるんですよね、ね」
「え、ああ、そうだった……その、紅黄さんについてなんだけど」
「紅黄さん?」
「この前、風紀委員の支部で私とあんたにインタビュアーみたいに話しかけてきた男の人よ」
「白井さんやわたしと同じ風紀委員で、大学生なんです」
「ふうん……って、どうしたんだ白井?」
「ふぇ? な、なんですの?」
「いや、さっきまでガルルルって言ってたのに急に大人しくなっちまって」
「な、なんでもありませんの! お、お姉さま、なにがわかったというんですの?」
白井の様子がおかしいとは思ったが、まぁおかしいのはいつものことと特に気にも止めず、先ほど固法と集めた情報を話し出した。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/19(月) 01:42:23.47 ID:jE42DqU0<>
「うん、紅黄さんの能力なんだけどね、一度レベル5に認定された能力らしいの、すぐ取り消されたみたいなんだけどね」
「レベル5!?」
「ふわー、そんなすごい能力者だったんですか」
「へぇ、そんな風には見えなかったけどなぁ」
「……」
話を聞いた三人が驚く中、白井だけが冷静だった。
レベル5。そういえば、病院で聴いた時もそこにはまったく驚かなかったのはなぜだろうと、ぼんやり頭を動かしてみる。
「能力名は砂上楼閣《レヴォリューションエラー》、どんな能力でも一回だけコピーする能力」
「能力をコピー!?」
「それ多重能力《マルチスキル》じゃないですか!」
「……」
「多重能力とはちょっと違うみたいなんだけど……それでね、私とこのツンツン頭が紅黄さんに会った時、話をしながら私たちの名前を書いたカードを作ってたのよ」
そして、固法先輩は紅黄さんがカードを破るとこを見たって言うの、その時はテレポートしたらしいわ」
「つまり、そのカードで能力を管理しているということですか」
「そっか、使ったのを忘れちゃったら困りますもんね」
「でもでも、一度きりだとしてもすごい能力ですよ」
そこなのよねー、と先ほどまでの口調をやや落ち着かせて、御坂が続ける。
「確かにすごい能力なんだけど、でも、それだけじゃない気がする、なにか……なにかある気がするの」
「なにかって、なんです?」
「バンクの情報が二重三重のプロテクトになってるのよ、いまは固法先輩が表層のデータをさらってると思うけど、秘匿深度が不自然なくらいに深いのよ。
大体、そんな特殊な能力者が何の話題にもならないほうがおかしいの、絶対なにかあるんだわ」
「そうか? 確かに珍しい能力なのに有名じゃないけど、そんなに変なのか?」
「アンタが珍しさを語るんじゃないわよ……」
御坂はこほんと咳払いをして、ちらちらと上条の方を見ながら、意を決して口を開く。
声一つかけるにもとんでもない勇気がいるような、そんな気合の入れよう。
ちなみに、その様子を佐天と初春が正面からしっかり見ていたりする。
「まず、あんたの……幻想殺し《イマジンブレイカー》だっけ? それを紅黄さんに使ってみて欲しいのよ」
聴いている3人とも知らないことだが、御坂が上条にお願いをすることは非常に珍しかったりする。
そんな御坂の可愛らしい行動に、白井の反応がまったくないのもまた珍しいことではあった。
「いいけど、そこまでするようなことなのか?」
「絶対に何かあるわ、写真の件だってまだ疑惑が晴れたわけじゃないし」
「写真?」
「う、わわわわ、なんでもない、この件とは関係ないの」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/19(月) 01:43:01.53 ID:jE42DqU0<>
こほんともう一度咳払い。
「勘の域を出ないけど、プロテクトには隠す者の意思が見えるものよ」
例えば、妹達《シスターズ》の存在や絶対能力者進化計画を知った時のような、得体の知れない不安感とそれが現実になってしまった恐怖。
せめて、現実になった時に白井だけでなく皆で背負えるように、最悪でも自分は一緒に戦えるように。
「そして、あの手のプロテクトの裏には大抵ロクでもないことが隠れてる」
紅黄に関するデータの奥にさらに秘匿されたデータがあるという事実と、なによりも、過去の妹達《シスターズ》に関するトラウマが彼女を駆り立てていた。
「黒子がこれから一緒に学区外に出るのよ、できるだけ知っておきたいじゃない、何で秘密にするのかどういう秘密なのか」
実際、御坂の勘は当たっていた。
御坂がDNAマップを提供したのと同様に、白井も事件に踏み入れる引き金をはるか昔に引いてしまっていた。
ロクでも結果と、ロクでもない意思に則った、ロクでもない続きが、今もなお白井に近づいて来ている。
そして、御坂の意思は痛いほど白井に伝わっていた。
「お姉さま、わたくしの身を案じていただいたことは感謝しますわ、でも、もうおやめください」
「黒子? あー、その、ごめん、黒子の相棒を疑うような真似して……その、あの人の持ち物にさ、まぁちょっと変なのがあったし、そもそも能力とか隠してたのもあるし、それに――」
「だから! おやめください!」
これ以上、杞憂かもしれないことで御坂の手を煩わせたくなかった。
「あ……黒子、ごめん」
煩わせてしまうのであれば、確固たる原因を知っておくべきだろう、と。
「いいえ、お姉さまが悪いのではありませんわ、ただ、その先の情報を、わたくしは少しだけ知っていますの
だから、少しだけ黒子の昔話にお付き合いくださいませ。わたくしもまだ頭のなかでグツグツ煮えているようで、正常な判断ができない話なのですけど」
かつての実験について、ぽつりぽつりと語っていく。
要所だけをかいつまんで、つい先ほど知った実験の最終結果も含めて。
そして、話しながら気づいていく、一つの大きな矛盾点に。
(わたくし、そうとう頭に血が昇ってましたのね)
仲間に語ることによって、煮えるように揺れていた頭の中が落ち着いていく。
「紅黄さんの能力は、その実験によって、生み出された……」
「うーん、、でもそれっておかしくない?」
「ええ、そのとおりですわ……わたくしと紅黄さんでは年齢に差がありすぎます」
実験は『自分だけの現実《パーソナルリアリティ》』が未発達な子どもを対象にしていた。
紅黄碧は当時すでに15歳、いまの上条と同年代だ。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/19(月) 01:43:44.06 ID:jE42DqU0<>
「えっと、ということは紅黄さんは実験被験者じゃなくて、でもその実験で生み出されたわけで……んー?」
首をひねる佐天と初春、最早さっぱりわからんという感じの上条、難しい……というよりも睨むような顔でテーブルを見つめる御坂。
「お姉さまは、わかりまして?」
「うん……多分、紅黄さんはその実験のメインプランだったんじゃないかしら?」
「ええ、あの実験の本来の目的であり、新たに生まれた能力者に取って代わられた欠陥能力者」
一拍、間を取って告げる。
「それが、紅黄碧ですわ」
そして――
「アはha、クロ、ねぇクロ、おぼえてくれてるよねクロ?
そんな失敗作なんかじゃない、あなたをもとに、あなたに模して、あなたに追従するために同じ部屋にいれられたわたしのことを
さぁ思い出して、ねぇ語って、ほらクロ、あなたはきっとわたしをおもいだす。ううん、わすれてなんかない、ぜったいない。
100人の中での生き残りはわたしだってあなたはきっときっとシンジテくれてる、だからおねがいわたしに気づいて、ねぇキガツイテ」
『彼女』は、もう、すぐ、そこまで―――
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/19(月) 01:47:14.09 ID:jE42DqU0<>本日ここまで、ちょっと一区切り未満の途中位置なので次は早めにいきたいところ
今回より黒子のキャラ付けにちょっぴり作者の好みが出ています。
書き手によって変態だったり真面目だったり恋する乙女だったりする黒子ですが
わたくし的には弱気を隠す強き少女……になればいいなと思う今日この頃<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/19(月) 01:49:44.94 ID:rOIK1UAo<>乙っす次も期待っす
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/19(月) 05:05:42.72 ID:K0jLA8go<>乙<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/19(月) 22:06:05.71 ID:jE42DqU0<>レス感謝っす、続けて今晩も投下予定とりあえず区切りまでいきたいところ<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/20(火) 01:00:16.12 ID:JhjSQLI0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
紅黄碧は一般病棟の大部屋に来ていた。
この部屋には昨日の事件で現場に居合わせたスキルアウト達がまとめて放り込まれている。
「じゃあ、お前達は本当にあの子、炎喰らい《ファイアイーター》興野陽子と会って3日しか経ってないんだな?」
「あ、ああ、そうだよ、それがなんだよ」
「3日しか経ってない割には随分と入れ込んでたじゃないか、それもお前ら全員が揃いも揃って」
炎喰らいが殺された時のスキルアウト達の歎きは尋常ではなかった。
絶望のあまり炎が迫ろうが警備員に捕縛されようが、ろくに動こうともしなかった。
「その3日の間になにがあった」
「特に何もねぇよ、ただちょっとした顔なじみ程度だ」
「顔なじみ? その程度で全員ああなるのか?」
「知るかよ! あの時は本当に守りたかったんだ、命に代えても、どんなことをしても」
それこそ、街中を火の海にしてでも――あの時、確かに何をしてでも守りたかったはずの少女――
「その割にお前、元気だな」
大部屋に押し込まれたスキルアウト達は10名。
紅黄と話をしているのは疾走光矢《ライトアロー》に足を撃ち抜かれた男だが、それ以外の9名にも共通していることがあった。
「あの時の絶望はどこに行った?」
10名全員、あまりに元気すぎた。
知り合いの死を悼む雰囲気こそあるものの、陰鬱な様子はまるでなかった。
今も、本を読みながら音楽を聴きながら各々が勝手なことをしつつ、紅黄の話に興味津々と聞き耳を立てている。
「し、知るかよ、仕方ないだろ、今はあいつのことをそんな特別と思えないんだからよ!」
「………」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/20(火) 01:00:42.16 ID:JhjSQLI0<>
(なんだ、これは?)
明らかに異常だった。
冥土返し《ヘヴンキャンセラー》からの診療報告には、全員異常なしと記されていた。
つまり、能力や薬物によって思考や感情を強制された後はなかった。
紅黄の背筋を、薄ら寒い汗がつたっていく。
昨日の事件で、白井黒子と紅黄碧は、あの現場に誘いこまれていた。
誰が、なんのためにやったのかは検討がついていた。
『彼女』が、超電磁砲に邪魔されず確実に白井黒子を見つけるために。
けれど、それを――どうやって行なったのか――
「おい、待てよ、そんな能力じゃないだろ、あいつのは」
「な、なぁ、やっぱ俺たちって異常なのか? 死んじまった途端にどうでもよくなるなんて、その」
「……異常かもしれんが、その原因は外部にあるのかもしれない、ちょっと、その原因を探らせてもらう」
「は? なあ、おい、待てよ、どういうことだ、ってあんた俺と同じ怪我してたはずなのになんでそんなに治り早いんだよ!?」
歩きながら破り捨てたメモは肉体再生《オートリバース》のレベル3。
脚の組織の再生完了、痛覚が収まり精神状態が安定すると同時に今度は音波系能力《メロディビート》のレベル4を破り捨てる。
音の周波数を増幅、変換させて面会謝絶になっている隔離病棟に合わせた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/20(火) 01:01:11.51 ID:JhjSQLI0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いつまでもこれじゃ埒があかないじゃん」
総合病院、隔離病棟の一室。
そこには、光の矢――正式登録名は疾走光矢《ライトアロー》矢切莱(やぎり・らい)が収容されていた。
「お前がしたことは殺人、重罪だ、それに理由がないなんてありえないじゃん」
取調べ室代わりに用意された部屋に、警備員《アンチスキル》黄泉川愛穂の声が響く。
それをハラハラしながら鉄装綴里が後ろで記録しているのだが、どれだけ強い口調で言おうが矢切の態度はまるで変わらなかった。
憔悴した、末期の病人のような女がそこにいた。
「だって、仕方ないじゃない、殺そうって思っちゃったんだから」
「お、思っちゃったって……ふざけんじゃないじゃん!」
「ふざけてないわよ、元々あの子のことは気に入らなかった。可愛らしくてちやほやされて、ピーピー泣いて、ちょこちょこつきまとってくる鬱陶しい奴」
「だから、殺したって……」
「あの時はね、なぜかそう思っちゃったのよ、なぜかわからないけどね」
その言葉を受けて、資料を見ながら鉄装が控えめに言った。
「あ、あなたの脳波や状態の検査結果は出ています。特に精神操作を受けた後はありませんでした、それはつまり、あなた自身が……」
「そうよ、操られてない、あれは紛れもなく私の意思で私の行動よ」
でもね、と弱弱しく首を振る。
「なーんであんなことしちゃったか、私自身も説明できないのよ」
「なんとなく人を襲い、傷つけ、殺したっていうのか……そんな、そんな馬鹿な話あってたまるわけないじゃん!」
「あ、言っておくけど白井黒子は別よ、私あの子のことほとんど知らないし」
うなだれたままの顔から、ぼそぼそとした声だけが聞こえてくる。
「耳元でウルサイ感じだったのよ、こう、白井黒子のとこへ行けって、延々と言われ続けてる感じ」
「それは、テレパスか何かじゃん?」
「仮にそうだとしても、私がやったことには変わらないでしょ?」
ゆっくりと矢切の目が黄泉川を見据えた。
けれどその視線にはまるで力がなく、犯した罪とこれから背負う罰に絶望していた。
「まったく、なんでこんなことになっちゃったんだか、ほんとうに、わからないの」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/20(火) 01:02:06.50 ID:JhjSQLI0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
音波系能力《メロディビート》音声が途切れると同時に携帯電話を取り出す、発信先は白井黒子。
3コール目で通話が繋がる、とりあえずの無事に安堵する紅黄をよそに、白井の様子は落ち着いていた。
『はいはい、なんですの?』
「ああ、分かれたばかりですまないが、いまどこにいる?」
『第七学区内のレストランですわ、もしかして先輩もいらっしゃいますか? 喫茶店としても営業している店なのでオープンテラスもあって見つけやすい位置ですわよ』
「いやいい、それより今誰といる? なにかおかしなことは起きたか?」
『わたくしの友人と一緒ですが……おかしなことですの?』
「AIM拡散力場の統合実験における生き残りから攻撃を受ける可能性が高い、すぐにその場を離れろ」
『や、やはり被験者はわたくしの他にもう1人生き残りがいましたのね、そいつはどういう能力を持っているんですの』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そいつはどういう能力を持っているんですの」
電話の向こうで紅黄が説明する事柄を、周囲にもわかるようにメモにしていく。
研究所では転移を元とした統合能力としか判別されていなかったこと。
昨日の事件は、そいつが裏で糸を引いた囮だったであろうこと。
そして、思考を本人の意図するまま制御する奇妙な能力を持っていること。
『恐らく思考の増幅か助長、少しだけ考えたことがあることならば、それを後押しする能力だ』
「……、……まるで、キリスト教の聖書に出てくる悪魔みたいな能力ですわね」
『……知恵の木の実を食べるようそそのかした蛇、か』
「ええ、どうやら……手を持つ蛇は近くにいるようですわ」
思えば、間違いなく異常な行動だった。
けれど、物珍しさと敵愾心から、連れてこられた方を注視しても、連れて来た方の行動の不自然さに気がついていなかった。
「……お姉さま」
「ん、なに?」
「どうして、お姉さまは上条さんを連れて来たんですの?」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/20(火) 01:02:42.98 ID:JhjSQLI0<>
四人で集まる時、美琴が予告なく誰かを連れて来たことなど一度もなかった。
まして、上条当麻との関係は出来るだけ秘密に、親しいようには見せないようにしていた。
それが、どうして、今日に限って――
「え、ええと、それは、ほら、作戦会議にはこいつも必要だし、その」
「必要あったか? 俺」
「う、うっさいわね、あったに決まってるでしょ!」
「うわっ、ビリビリすんなって」
美琴は上条を好いている、黒子にとって非常に許しがたいことだが、これは事実だ。
美琴は上条と一緒にいたいと思っている、ならば能力をかけることも簡単だろう。
上条と一緒にいたいと思う心を助長してやれば、美琴はどんな不自然な場面んでも彼と行動を共にする。
『異常は見付かったか』
「ええ」
『ならばすぐに離脱しろ、彼女の狙いはお前だ』
「それは出来ませんわ」
『なぬ?』
「だって、わたくしのお姉さまの純情なお心を弄びやがったんですわよ、このまま引き下がる気にはなれませんわ」
黒子は立ち上がると、カバンから予備の金属矢を取り出して両腕に巻きつけていく。
「く、黒子? どうしたの?」
「お姉さま、しばしお待ちくださいませ、不届き者を懲らしめてやりますわ」
『ばっ、無茶をするな、まだ相手がどんな存在かわかっていないんだ』
「あら、その割りには紅黄さんは『彼女』さんについてお詳しそうですが……当事者のわたくしに情報を隠して何を企んでいるんですの?」
『く、ぬ、おぉぅ』
「それに、大体見当もついてますのよ、わたくしに対する執着と他者を喰らってでも生き延びる強靭さ」
『……、……はぁ、わかった、なるべく早くそっちに行く、だから無茶するな』
「善慮しますわ」
前後左右上下あらゆる方向に目を光らせて、黒子は携帯を閉じた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/07/20(火) 01:04:10.52 ID:JhjSQLI0<>
「お姉さま、初春に佐天さん、あとついでに上条さんも」
「俺はついでか……」
「すぐにこの場を離れてくださいな、出来ればわたくしからもっとも遠ざかる形で」
「ちょっと黒子、なんなの? 何が起きてるの?」
「少しばかり、因縁の相手を捕まえるだけですわ」
すぅと息を吸って、
「風紀委員《ジャッジメント》ですの! 木原灰花! おとなしくお縄につきなさい!」
前後左右上下あらゆる方向に届くように声を張り上げた。
「あハ、アはha、アハハははハははhaはハhaハ!!!」
狂ったような笑い声、狂ったような叫び声。響く声色になによりの喜びを乗せて、
「嬉しい、嬉しいうれしいうれしいウレシイよ!! ウン、うれしい!!!
クロが、クロが私のことを話してくれた、伝えてくれた、想ってくれた、うん、想ってくれた。
ずっとずっとあなたを待ってた、クロ、待ってた
だからクロ、あなたを、食べさせて
アハ、あはhaハ、美味しいよ、きっとクロは美味しいよ、とろとろでふわふわでぐちゃぐちゃでぐちょぐちょで
舐めてもいいよ吸ってもいいよ噛んでもいいよ剥いてもいいよ
クロはクロはおいしいよおいしいすごくすごくぜったいおいしいおいしいおいしいにきまってる」
『木原灰花』は姿を現した。
「だから、ね、たべさせてクロ? いいでしょ?」
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/20(火) 01:05:51.99 ID:JhjSQLI0<>本日ここまで、ようやっと敵方のオリジナル登場です。
ライトアローに関しては漢字四文字でないと禁書感が薄いということで、ちょっくら変更してみました
だいぶ強引な手法ですが<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/20(火) 01:29:42.54 ID:tEQ3nJ2o<>また木原ファミリーかwwww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/20(火) 09:31:42.51 ID:Bgx4yJQo<>ああ木原一族ってことにしたのか
なんか木原って字が入るだけで納得できるキチぶりだ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/20(火) 18:05:52.73 ID:RSRi1Tg0<>>>1です
長い間、スレを放置してしまい申し訳ありませんでした。
諸事情で時間に余裕がなくなってしまったため、続ける事が困難になってしまいました。
大変残念ですが、ここで打ち切りという形にさせて頂きます。
スレ見ていただいた方どうもありがとうございました。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/20(火) 23:13:06.68 ID:ejbPuASO<>釣りか<>
このスレの1より ◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/21(水) 00:02:26.57 ID:NVj4QW20<>>>142
スレ間違えてますよ(´・ω・)?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/21(水) 00:28:52.73 ID:N8MxhTUo<>ほぼ全てのスレに同じことやってる荒らしだから無視しなさい<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/21(水) 00:36:48.59 ID:NVj4QW20<>>>145
(`・ω・)ノはーい<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/23(金) 01:18:23.61 ID:mV5EFuQ0<>ふむ……文章は一行を句点までかくのではなく
半分くらいで切って行った方が読みやすいのか<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/26(月) 01:39:26.29 ID:DFManWM0<>これまで毎週投下していたが、今回はちょっと無理ぽいす
読んでくださっている方々申し訳ない
ちょっと勢いだけで書いていた部分があるのでここらで色々と整合性を取るため、今回はパスいたします。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/26(月) 02:01:04.76 ID:yMZPM/Yo<>あいあいさ( ´∀`)<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/26(月) 03:04:58.45 ID:DFManWM0<>何度か読み直したけれど大幅な修正はなく行けそうです。よかったよかった
何もないのもあれなので、せっかくだからオリジナルの設定をちょこっと
※御坂と白井は備考部分に勝手な解釈はいっております
名前:御坂美琴
分類:電撃使い《エレクトロマスター》
LV:5
俗称:超電磁砲《レールガン》
能力:原作通り、最強の電撃使い
備考:自分だけの現実《パーソナルリアリティ》が強固なため、
洗脳などの支配系能力に抵抗値が高い。
名前:白井黒子
分類:空間移動《テレポート》
LV:4
俗称:―
能力:原作通り
備考:転移の安定性が全能力者の中でも極めて高い。
(オリジナル)
名前:紅黄碧
分類:読人感応能力《サイコパスヒューマン》
LV:1〜5相当
俗称:砂上楼閣《レヴォリューションエラー》
能力:能力把握&コピー
備考:出会ったことがある能力者の能力をコピー可能
ただし、一度きりの使い捨てで以後元となった能力者を認識できなくなる。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/27(火) 03:02:51.97 ID:3shbmfg0<>何気に>>100の中に木原灰花いるのな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/07/31(土) 22:41:07.04 ID:99bxR2SO<>続き書く…んだよな?<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/07/31(土) 23:56:06.85 ID:s/QgdIs0<>>>152
書きますよー
週一ペースだったのですが、前回ちょこっと合併号的にお休みでした<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/02(月) 03:17:12.31 ID:pt7YPwA0<>遅くなったけど、投下しまーす<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/02(月) 03:18:30.56 ID:pt7YPwA0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜
白井との電話を終えた紅黄は、冥土返し《ヘヴンキャンセラー》の元へ来ていた。
「木原灰花の出現を確認した、培養槽の用意をしておいてくれ」
「言っておくけどね、彼女はもう生きてはいない、
肉体的に彼女はもう死んでいる。あれは現象なんだ」
「それでもだ。あんたが、俺があの実験唯一の遺産であるというのなら
その遺産を支える物が白井黒子と木原灰花だ」
片方はプラスであり、もう片方はマイナス。
長い間、紅黄碧の世界のすべてであった、原点の二人。
「それに、彼女は君に恨みを持っている。あの狂った実験のメインプランに
させられたという恨みがね」
「だからと言って許しを請うわけじゃない、恨まれるならば、本望だ」
カエル顔の医者は、軽く首を振ると、飲みかけのコーヒーを一気に呷った。
彼はすべての患者に必要な物を用意する。
けれど、治る意思のない患者に施す術はなかった。
「状況は、どうなってるんだい?」
「場所は第7学区内のレストラン、出来れば白井に場所を代えてもらいたかったが
聞き入れられなかった」
木原灰花が始めてみせた人心誘導の能力もまだ実態がつかめていない。
なによりも、超電磁砲がいる状態での戦いを望んだことが気がかりだった。
「単純に白井と木原がぶつかれば、おそらく白井が勝つだろう、
あいつの心の強度は並じゃない」
それこそ、ヒビが入ろうが腐食がおきようが、まったく揺るがない程度には。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/02(月) 03:18:56.98 ID:pt7YPwA0<>
「そして白井は白だ、俺に関しても木原に関しても必要以上の知識はもっていない」
「このまま白井君が木原君を捕らえれば、君の目的は達せられるというわけかい」
「何事もなく、終わればな……俺もこれから現場に向かう」
おそらく、昨日の段階で木原灰花は自らの能力の実験を行なったのだろう。
そして、判断した。
自分の能力は、超電磁砲《レールガン》にも対抗できる、と。
「同じ読人感応能力《サイコパスヒューマン》の俺ならば、木原の能力支配にも
収まりにくいはずだ、いざとなったら心理定規《メジャーハート》でも使って
支配から抜け出すさ」
「カードを使うことはおすすめできないけどね、それより、横槍に注意した方がいい」
「横槍?」
「テレスティーナ・木原・ライフラインが動いている、気をつけるんだね」
忌々しい名前が出た途端、紅黄の顔が歪んだ。
「もしかして、木原灰花を解放したのがばれたか?」
「いいや、君のことは良くも悪くも彼女の眼中にないよ、ただ追跡の部隊を手配した
ようだね」
「あいつはまだ捕まってるだろう、ということは正規部隊じゃなくて、暗部か」
「それも、いつ現われるかわからない現象である存在を捕捉し、追尾できる能力を持った、ね」
考えるまでもなく、適任なのを知っていた。
「滝壺理后……『アイテム』か」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/02(月) 03:20:28.94 ID:pt7YPwA0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第6学区の大通り。
特徴のない、ワンボックスカーが走っていた。
乗っているのは運転席に男が一人と、後部座席に女が四人。
学園都市の暗部『アイテム』の構成員。
『だから、仕事だって言ってんでしょ!』
「だって、わたしらの仕事は学園都市内の不穏分子の削除・抹消でしょ?
人探しなんか明らかに管轄外じゃない」
『仕方ないじゃない、そういう依頼が来たんだから』
「いい加減にしてくんないと、滝壷の能力は負担大きいのよ?」
『わかってるわよ、一週間経って反応なければ切り上げることになってるから』
『電話の声』と麦野のやり取りが続く、その間に滝壷のつぶやくような声が割り込んだ。
「きはらはいか……出現した、第7学区方面」
ピタッと争いの声が収まった。
「おお、ついに反応がありましたね、超待ちぼうけでしたし、やっちゃいましょうか」
「結局、足を使って探し回るよりも、絹旗頼りが確実な訳よね」
『お、出たのね、よっしゃ捕まえちゃいなさい』
「はいはい、んじゃ切るわねー……というわけで浜面、全力で第7学区まで、
でも鮭弁まだ残ってるから、こぼれないよう安全運転でね」
「無茶言うな」
ワンボックスカーが走りだす。
第七学区の、レストランを目指して。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/02(月) 03:21:39.80 ID:pt7YPwA0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第七学区のレストラン前にて、二人の少女は相対していた。
「ね、クロ、クロが最後の1人だよ? ね? クロ
わたしはずっとクロを待ってた、分かれてからずっとクロの行方を気にしてた
だからいっつもお願いしてた、クロはどこへ行ったのかどんなとこにいるのか、
たまに写真もみせてもらった、クロはすごくすごく綺麗に可愛くなってた、
だから間違わなかったもんクロだもん、それはクロだもんだから食べるもん」
目的は、昨日の事件の原因と思われる人物がいるので拘束する、それだけだ。
別に相手が誰であろうが関係ない、どこからともなく突然現われたとか、
異常な言動と行動とか、そんなのは二の次だ。
だが、白井黒子はとまどっていた。
(これが、心理誘導の能力、というわけですのね)
黒子の両腕に、それぞれ纏わりつくように、佐天と初春が絡み付いていた。
「そうですよ白井さん、友情は大切にしないと」
「うんうん、あの人はきっと白井さんと仲良くなりたいんですよ」
さらに、レストランの客や従業員、近くを通りかかった通行人までもはやし立てる。
「お嬢ちゃん、友情は大事だぞ」
「仲良くなりたいっていう子を、無碍にするのはよくないわよ」
「一緒にメシ食えよ、そうすればわだかまりも消えるぜ」
「そうよ、喧嘩の原因なんて些細な誤解がほとんどよ」
「いいねぇ、若さと友情って」
「ほら、あの子の思いに応えてあげなさいよ」
「なぁおじょうさん、友達は大事だぞ」
「おねえちゃん、あのひとのこときらいなの?」
「そんなわけないわよ、ちょっと照れてるだけなのよ」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/02(月) 03:22:30.98 ID:pt7YPwA0<>
(なんですの、この異常な光景は)
友情を大切にする、誰もが感じるその心が、いま最大限に増幅されている。
「白井さん、だめですよ、もっと可愛い顔しなきゃ」
「そうですよ、白井さんは可愛いんだから、ねぇ御坂さん」
「えっ、あ、ああ、そうね」
群集の中で、美琴だけは戸惑ったようにキョロキョロしている。
(おかしいとは思いつつも、何がおかしいのか分かってないようですわね)
電撃使いの特性か、それともレベル5の強さか、
ともかく美琴には灰花の能力が完全におよんでいない。
そして――
「え、ええと、な、友情は大事だと思うけど過度なのはどうかなぁって思うんだが」
能力の影響を受けていないが、状況をまったく理解できていないのが一人。
「ねぇ、クロ、クロ、クロ、いいでしょう? ねぇ、クロ」
木原灰花がせまる、ゆっくりと、確実に。
この空間に白井黒子の味方はいない、誰もが友情を目指す灰花の味方になる。
誘導ではなく、自発的に白井黒子がそう思うようになるまで――。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/02(月) 03:22:59.45 ID:ElUgDK.o<>くそうこんな時間に!明日早いのに<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/02(月) 03:23:39.47 ID:pt7YPwA0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一方、『アイテム』を乗せたワンボックスは、
ビル間の路地裏で事故っていた。
「……は〜〜まづらぁぁ〜〜〜」
「いや、まて、俺のせいじゃないぞこれは」
大通りがなぜか封鎖されていたため、近道しようと路地に入った。
ワンボックスの車体ギリギリしか幅がない道に、
釘が撒かれてパンクして
背後には屋上から粗大ゴミの山が落下してバリケードをつくり
そして、前方には右手に発光するまでに電力を集中させた男が立っていた。
「私たちに喧嘩を売るとは、超命知らずな奴ですね」
「やっぱりアイツも暗部かな? ま、結局殺しちゃうから変わらないわけだけど」
「……AIM拡散力場を確認、電撃使い《エレクトロマスター》」
「それは見ればわかるぞ……」
動かなくなった車体から抜け出して来た4+1名。
それに対して、電撃使い――の能力を使用した紅黄碧はただ一人。
最後に出てきた麦野沈利は、後ろのゴミ山を見て前を見て、
唯一の出口を塞いでいる男を見て、ニヤッと笑った。
「ブ チ コ ロ シ か く て い ね」
原子崩し《メルトダウナー》が放たれる。
レベル5の一撃が――
「シッ!」
――右手に集中した電子と干渉してグニャリと曲がった。
外れた原子崩しの一撃が左右の壁に穴をあけた。
続けて放たれる、二撃目、三撃目も同じ要領で回避する。
使用している能力は雷神右腕《トールハンド》。
その強力な電力にも関わらず、分類はレベル4にすら至らないレベル3。
右手に集中することしか出来ない、力の調節も制御もできない。
有り余る力を暴発させるだけの研究価値が低い能力。
ただし、この場合、紅黄にとってこの能力は非常に都合がよかった。
麦野沈利の原子崩し《メルトダウナー》に干渉できるほどの高出力で、
警戒されるほどに高いレベルの能力でもない。
「ったく、うざったいわね、いいわ……こっから先は手加減なし、全力で潰してあげる」
勝つ必要はない、決着が着くまで『アイテム』にはここで止まっていてもらう。
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/02(月) 03:25:47.18 ID:pt7YPwA0<>本日ここまでっす
やや遅くなってしまった
二元中継バトルでアイテム登場
というか、バトル描写のメインは紅黄とアイテムの方で
心理的な駆け引き及びぶつけあいが黒子と灰花
黒子の方がちょっぷり話術サイドっぽくなりそうな感じです<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/02(月) 03:57:59.57 ID:ElUgDK.o<>乙です
黒子の説教はあるのかな?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/02(月) 05:08:00.22 ID:vHeK8QAO<>激しく厨二だが、それが良いww
こういうの待ってた
毎回楽しませてもらってます<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/03(火) 00:12:53.17 ID:YSHpOkg0<>一部ありえねぇ誤字が…
>>157のフレンダの台詞の絹旗は滝壷の間違いです
それはそうと、やっぱり書いて少しでも反応あればとっても嬉しい
>>160
すまんさ、できるだけ投下時間には気をつける
>>163
黒子の説教……うーん…?
>>164
厨二は正義!ありがとう!!<>
書き途中 ◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/05(木) 01:52:39.81 ID:yw/ZFLs0<>バトル中、滝壷は仕方ないにしてもフレンダが空気だ……なんとかせねば<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/05(木) 02:05:46.83 ID:igpVckQo<>フレンダは萌え担当で<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/06(金) 02:09:32.14 ID:qGdONs.0<>紅黄って後先考えず全力出せば一方通行と同等ってことなんだよな、敵なら最強クラスか
でも味方として考えると直せない消耗を強いられ続けるわけだから、ものすごく使いにくいのな
すげぇ両極端ww<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/07(土) 16:12:48.44 ID:XX1sJek0<>a<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/07(土) 16:17:41.43 ID:XX1sJek0<>↑ミスったすまん
オリキャラでシリアスやると、多少は俺つえぇになるのは仕方ないと思ってるが
俺つえぇすればするほど死亡フラグっていう設定は結構斬新な気がする
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/08(日) 01:47:08.31 ID:EA3qVDc0<>>>167
フレンダと麦野は蛇足になりそうだけどちょびっと深く描写したいところ
>>168
味方にすると使いにくくて敵にすると超厄介、そしてロリ趣味で21歳な主人公
>>170
それでもオリキャラ無双が可能なことは可能なのでやりすぎないよう気をつけます<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/08(日) 23:35:22.68 ID:EA3qVDc0<>投下予定、今日中にいけるかも
なんか凄い雨降ってきたよ<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/08(日) 23:39:46.05 ID:EA3qVDc0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
閃光が奔る。
雷神右腕《トールハンド》が干渉。
原子崩し《メルトダウナー》の一閃が右へ左へ乱れ飛ぶ。
既に十合は繰り返した、麦野沈利と紅黄碧の攻防。
「ああ、もう、これだけ出力上げてるんだからいい加減貫通しなさいよ」
原子崩し《メルトダウナー》は出力の高さに反比例して連射性能が落ちる。
出力の増加は、むしろ休む間が増える分ありがたかった。
「ふぅ」
『アイテム』の弱点は奇襲からの正面突破だ、と紅黄は思っている。
攻撃翌力の麦野、接近戦の絹旗、探査の滝壷、範囲爆破と罠のフレンダ。
『アイテム』はそれぞれの分野で高いレベルを持つ、暗部の中でもバランスが取れた一団だ。
それが今、まったく機能していない。
奇襲によって、待ち伏せが主体になるフレンダの戦力を削げる。
正面から戦うことで滝壷の探査を無意味なものにできる。
さらに、狭い路地で相対することで、戦いの方向を前方だけに集中させる。
結果、原子崩し《メルトダウナー》の巻き添えを避けて、絹旗は前に出てこられなくなる。
あとは高出力の電撃使い《エレクトロマスター》の能力さえあれば、とりあえず防御は出来る。
「ッ!」
原子崩し《メルトダウナー》に干渉する。
曲がった十一発目の閃光が左右の壁に穴をあけた。
このやり取りを繰り返す限り、麦野が紅黄を押し切る頃には充分な時間が稼げているはずだ。
頭に血が昇った麦野は気がつかない。
実際、彼女はこのまま押し切れるのだから、別に今の状況が罠だとは思わないだろう。
他の『アイテム』にしても同じこと、レベル5である麦野の判断と行動にわざわざケチはつけないはずだ。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:40:19.14 ID:EA3qVDc0<>
(なんとか、なりそうだな)
十二発目を回避しながら、心のどこかで安堵した。
その安堵という幻想を、ただ一人の無能力者《レベル0》が打ち砕く。
「う、おおおぉぉぉ!!!」
「!?」
「は、はまづら!?」
いるのはわかっていた。だが、誰からも戦力と見なされていなかった。
その男が、麦野の隣に立ち――
(まずっ)
――手にした銃の引き金を引いた。
「くっ」
緊急回避。
銃口を見て着弾方向を予測する間もなく、避けることだけを考えて地面を転がる。
「よくやった浜面ぁ!」
合わせるように放たれる原子崩し《メルトダウナー》。
崩れた体勢では右手の防御は間に合わない。
咄嗟に転がった勢いのまま壁に突撃して全力で電撃をぶつけた。
原子崩し《メルトダウナー》で脆くなっていたコンクリートはあっさりと崩落する。
逃げ込んだ建物の中には誰もいなかった。
改装中なのか配線や蛍光灯がむき出しになっており、
中に服らしきものが入ったダンボールがいくつも積み上げられていた。
入って来た壁の穴以外に光源はなく、紅黄の右腕から発せられる光が店内をほのかに照らしている。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:40:53.03 ID:EA3qVDc0<>
「予想外というか計算外というか……あのレベル0にやられたか」
地の利も心理的な優位も失った。
残る選択肢は逃走か、『アイテム』全員を同時に相手が出来るカードを切るか――
「超チェックメイトですね」
背後の、紅黄が転がり込んだ壁の穴からは絹旗最愛が、
「はっ、少しはやるようだけど、所詮この程度か」
別の壁が崩落して、そこからは麦野沈利が姿を見せた。
「チッ」
バックステップで距離をとる。
放たれる原子崩し《メルトダウナー》。
右腕の電子で軌道を曲げる。
足が止まったところに絹旗が迫る。
右ストレート、前蹴り、左フック、回し蹴り。
繰り出される窒素装甲《オフェンスアーマー》の攻撃を紙一重で避けきり、
逆に左ストレートで突き放す。
一撃の重さでは勝負にならないが、体重とリーチでは紅黄が勝る。
蹴りを放った不安定なところで攻撃を受けた絹旗がたたらを踏む。
そこへ、再び原子崩し《メルトダウナー》が発射された。
最大出力の右腕を叩きつけて歪曲させる。
防ぐことは出来たものの、防御の間に絹旗の体勢が元に戻る。
(じ、ジリ貧だ)
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:41:19.83 ID:EA3qVDc0<>
麦野と絹旗を一直線上に並べられればいいのだが、この広い空間ではそうもいかない。
「やって、られるか!」
思い切って二人に後ろを見せて、入ってきた方向とは逆の壁に走る。
絹旗が追いつくよりも、麦野の射撃よりも早く、
垂れ下がった極太の配線に、雷神右腕《トールハンド》を叩き込んだ。
バチンッという破裂に似た大音響とともに、目を焼く光が周囲に満ちた。
「うっっおっ、覚悟してても目に、くるなぁ」
来るとわかっていて目をつぶっていたが、それでも世界がぼんやりと白く見える。
「うっ、ああああっっ!!」
「ううう、超目が痛いです」
代償分の効果はあった、麦野と絹旗は二人とも目をおさえてふらついている。
座り込んでいないのは意地か、それともまだ攻撃する気があるのか。
「――このあたりが、潮時か」
いまの一撃を最後に、雷神右腕《トールハンド》の効果も切れていた。
この店本来の出入り口であるドアの方向に、見えにくい視界を頼りに足を動かす。
「結局、漁夫の利って訳よね」
崩れた壁の向こうから、なにかが紅黄に向かって投げられた。
よく見えない、近づいてくる――――――――人形だ。
わかった瞬間、人形が爆発した。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:41:48.10 ID:EA3qVDc0<>
「ぐっ、ああぁぁ!!」
爆風に吹き飛ばされ、三回四回と地面を転がってようやく止まる。
「建物の中は凄かったけど、ワゴン車から使える備品を取り出してた私には大した光じゃなかった訳よ」
『アイテム』の三人目、両脇に人形を抱えたフレンダが店内に足を踏み入れた。
「あんたなんか倒しても撃破ボーナスもないから爆弾は使いたくなかったけど、
麦野と絹旗が逃がしそうになった相手を仕留めれば、それはそれで美味しい訳なのよね」
爆風をもろに喰らった紅黄は起き上がれない。
カードを使おうにも、昨日で3枚、今日は既に4枚使用している。
もう強力な能力は扱えないほど今の紅黄は消耗していた。
「自信満々な能力者を地面に這わせるのは、最高の快感なわけよ」
そんな様子を見て、フレンダの口元がにやりという形にかわり、
「結局、アンタがどこの誰かは知らないけど、これで終わりな訳」
両手の人形を二体、倒れた紅黄の背中に放り投げた。
放物線を描く人形は、しかし落下することはなく、
その頂点で爆発四散した。
「はっ? なんで??」
「お前の得物が、爆弾で、助かったよ」
使用したのはレベル1の発火能力《パイロキネシス》
わずかな火種を散らすだけの能力だが、それによって事態は大きく動いた。
フレンダの想定外の位置で爆発した人形の火の粉が、あちこちに置かれたダンボールに引火。
瞬く間に燃え広がっていった。
「ちょ、うわっ、って麦野、ほら、フラフラしてないで外に出ないと」
「うっ、あによ、まだ目がしょぼしょぼして……」
「いいから! ほら、絹旗も……窒素装甲《オフェンスアーマー》あるから大丈夫か、
と、とにかく、周り火事だから、早く脱出する訳よ」
火の壁を通した向かい側では、『アイテム』がバタバタと壁の穴から外に出て行く。
「さて……俺も出ないと」
「超まちなさい」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:42:48.94 ID:EA3qVDc0<>
ギクッと紅黄の身体が固まった。
窒素装甲《オフェンスアーマー》の彼女ならば、この火も大して苦にならないだろう。
方や、紅黄にもう戦う力は残っていない。
「……、……まだ、視界がはっきりしないだろう? ここはもうお開きといかないか」
「ええ、その通り。わたしはまだ物がはっきり見えませんし、アナタに力が残っていないことは超明白です」
「……、……ならば誘導してやる、真後ろがちょうど出口だ、壁に当たったら全力で殴れ」
「それは誘導とは超言いません……それよりも、聞いておきたいことがあります」
まだ眩しさが残るのか、それでも薄く目をあけて、絹旗最愛は紅黄碧を見据えた。
「暗闇の五月計画……あなたもしかしてあの計画にいませんでしたか?」
「……」
一方通行の演算パターンを参考にパーソナルリアリティの最適化を目的とした、暗闇の五月計画。
「やはり、あの超くそったれな計画の一部でしたか」
「お前の能力は、あの実験の副産物だったのか」
能力の最適化とは、まるで対極に位置するサンプルとして、
確かに、紅黄碧もその実験に関わっていた時期があった。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:44:14.09 ID:EA3qVDc0<>
「ええ、一度だけあなたを見たことがあります、しかし随分変わりましたね」
「……」
「能力一つ発現させることに、泣いてわめいて気が狂う程に抵抗していたのと同一人物とは、とても思えません」
「……、いまは、目的があるだけだ」
「目的ですか」
それならば、と言いながら、絹旗は後ろを向いて真っ直ぐ歩き出した。
「わたしにも目的はあります、差し当たっては生きるという、大変難しい目的ですが」
やがて壁にぶち当たると、思い切り拳をたたきつけた。
「次に敵対する時は全力で来てください、今回のやり口は少々手が込んではいますが、所詮付け焼刃、
わたしたちが命を省みずに攻撃していたら、あなた10回は死んでます」
「……、忠告感謝しよう、窒素装甲《オフェンスアーマー》」
「また会うかもしれませんね砂上楼閣《レヴォリューションエラー》、その時は敵でなけれいいですが、」
それは超無理でしょうけど、という言葉を聴きながら、
紅黄も出入り口のドアを開けて外へ出ようしていた。
「あなたの生き様すべてを変えさせる程の目的、
『アイテム』への依頼はおそらくそれに直結していますので」
最後の言葉を心に刻んで、同時にポツリと呟く。
「窒素装甲《オフェンスアーマー》を、使いにくくなっちまったな」
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/08(日) 23:48:16.79 ID:EA3qVDc0<>本日ここまで
まずはアイテム戦を消化
捕捉すると、紅黄はレベル3の電撃使いのみでアイテムに対抗していますが
作戦はアイテム全員の能力と性格がわかった上でのものです
次は黒子の方ですが、夏コミに出展予定なので来週更新できるかどうか……
とりあえず近くなったらまた書き込みます
感想予想その他もろもろありがとうございます、乙の一言がなによりの活力となる今日この頃
ではまたです<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/09(月) 00:23:20.47 ID:04TMaLgo<>乙!
つか夏込み何出すの?<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/09(月) 00:25:23.02 ID:3uOfPys0<>>>181
オリジナルでちょこっとコピ本を、現在大急ぎ製作中なりです<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/09(月) 00:45:23.92 ID:3uOfPys0<>むぅ(´・ω・`)、やっぱ黒子じゃなくてオリジナルの方がメインになるとコメントしずらいのかな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/09(月) 01:07:04.29 ID:FQwIEADO<>乙でした
レベル3程度で麦のんがどうこうできるとは思わないけど
能力だけじゃなく性格までわかってるなら対抗できるかもね。
レールガン漫画の対美琴戦も原作の浜面戦も敗因は性格だし<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/09(月) 02:19:21.38 ID:C2qeysDO<>少しでもその執筆スピードを分けて欲しい、乙乙。<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/09(月) 02:34:58.94 ID:3uOfPys0<>レス感謝
>>184
特に対麦のんに適した能力&レベル自体は高くないので舐められてた&撃ち合いが続けば麦のんは勝てた
などの事情により、足止めならばこれで行けるだろうと選んだ戦法なのです
>>185
わたくしスピード早くないですよ、ええ
コピ本間に合わなかったら挿絵描いてもらった友人に殺されそうでgkgkbrbr
まったく関係ない話ですが
>>1は上琴派であり通行止め派です<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/09(月) 02:37:17.49 ID:04TMaLgo<>なんだ同士だったのか<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/09(月) 03:00:04.21 ID:3uOfPys0<>>>187
同士よ(`・ω・´)
ちなみに浜面はアイテム内の誰と組み合わせでもいけるクチ
初春や佐天さんをメインに据えるなら同じく誰とでもいけるクチ、あと黒子かわいい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/12(木) 01:31:56.30 ID:NWoC4K.0<>終わり方が予想しにくい話だな<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/16(月) 00:11:04.98 ID:DgNkRK20<>むう、今日はちょっと更新難しいかもしれませぬ
それだけではあっけないのでちょっと小話
実はこの話、現在序章で合計五章くらいまであります
ダメだと思ったら途中の章をすっぱり抜くかもしれませんが……<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/16(月) 20:53:53.34 ID:DgNkRK20<>>>189
正直、現段階だとキャラ紹介前半みたいな感じなのだ<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/19(木) 02:33:13.34 ID:jCdQI4E0<>現状、ちょっと詰まった
アイテム戦が割合さらっといけたせいで逆に黒子の方が厄介に
というか、台詞ばっかで……次の土日までになんとかしよう……
これだけだとあれなんでどうでもいい小ネタを投下
名前:矢切莱
分類:光子使い《フォトンマスター》
LV:4
俗称:疾走光矢《ライトアロー》
能力:光の収縮と放出
備考:光を一点に集中して放つことが出来る。速度はまさに光速に達する。
だが、小さい面積ににしか放てない、連射が効かない、応用幅が少ないなど問題点も多い。
※電撃使いにしてもいいけど一応別分類に<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/19(木) 02:38:17.99 ID:5E5I0w6o<>オリキャラ増やしすぎるのも厳しいと思うが…
どうやってまとめるかは気になる
がんばって<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/23(月) 03:10:47.87 ID:G3dPHX20<>ちくしょう……今日も更新できそうにないっす
お茶にごしの小ネタ第二段
名前:興野陽子
分類:発火能力《パイロキネシス》
LV:4
俗称:炎喰らい《ファイアイーター》
能力:炎(熱)を取り込んで自分のエネルギーに変える
備考:火を発さないが、放出と吸収のプロセス意外は同じため発火能力の扱い。
現状は火のみだが、熱量すべてを変質させる可能性をもった能力、発展性や研究性は非常に高いとされていた。
初登場が死亡後という最低な扱いのオリジナル、自分で言うけどこりゃひどい<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/23(月) 03:31:45.02 ID:G3dPHX20<>「〜〜〜」
と黒子が言った
よりも
黒子「〜〜〜」
の形の方がいいのだろうか……
書き方としては上の方が正しいが読みやすさとしては圧倒的に下の方・・・うー・・・orz<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/23(月) 03:34:28.82 ID:xAWBIZ2o<>個人的には下のほうがいいな
正しさよりも読みやすさ<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/23(月) 03:37:01.10 ID:G3dPHX20<>>>196
やはり、、、そうか、、、
いまからでも書き方変えてみようかな……<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/23(月) 03:38:50.12 ID:G3dPHX20<>そして、一行空けながら、なるべく会話のみで、か……
その方が断然読みやすいもんなぁ……
一からスレ別にして書きなおした方が読みやすいかな……<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/23(月) 03:45:42.46 ID:xAWBIZ2o<>いや読みやすさとは書いたが別に投下した文が読みづらいとは思ってないよ
むしろ俺なんかよりよっぽど上手いし
こうゆう雰囲気、内容のSSなら地の文多目のほうが良いかもね<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/23(月) 04:01:16.44 ID:G3dPHX20<>>>199
ありがとう
な、悩みどころです……うーむ
地の文はなるべくこのままで 黒子「〜〜」 の形にするのがベターか<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/23(月) 04:09:48.72 ID:xAWBIZ2o<>あーでもどうなんだろね?禁書の登場人物に関しては口調とか把握してるからわかるけど
このSSの場合オリキャラいるからね。
オリキャラに関しちゃ名前「」のほうがわかりやすいかなやっぱり<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/23(月) 04:58:26.10 ID:wzqXzGQ0<>>>198は多分、台本形式で書く場合のやり方だな
地の文ありで黒子「〜〜」にすると文章がゴチャゴチャするぞ
個人的には今の文体を希望する
>>1くらいの文章力があれば今のままでも十分読みやすいと思うけどな<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/23(月) 13:00:50.21 ID:aXXUn5ko<>面白ければ文体だとか気にならないからどうでもいいから
早く書いて投下してくれ<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/24(火) 00:38:12.38 ID:tqTpTaE0<>ありがとう、コメがジーンと心に染みるぜ
とりあえず今の文体でそのまま書いてみて、間に挟むギャグなんかの時に
名前「〜〜」 を試してみる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/24(火) 01:56:09.51 ID:DASwWEEo<>面白く読めれば文体とかどうでもいいから
プロが仕事の小説を書いてるんじゃないんだからさ
一番嫌なのは前にもあったけど>>1が投下するたびこの書き方はああだこうだで議論(笑)が起こって
最終的に>>1が書く気を無くして終わりってパターン<>
ただの小ネタ ◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/08/25(水) 00:59:37.45 ID:jL3m97.0<>>>205
ありがとう、そしてこのスレ結構見てくれてる人がいると知ってさらにありがとう
とりあえず書き方はこのままで言ってみます。
一応、名前付きでギャグ風味で書くとこうなる
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ニックネーム
紅黄「そういえば、お前ら仇名では呼ばないのか?」
黒子「特にありませんわね、能力名が仇名のようなものでしょうか」
紅黄「レベル3以上の能力者しかいない常盤台ならではの仇名だな」
黒子「先輩はなにか仇名で呼ばれたことがありますの?」
紅黄「あるぞ、信号機だ」
黒子「……紅黄碧、名前のまんまですわね」
紅黄「お前なら白黒とかネガポジとか呼ばれたかもな」
黒子「ひねりがありませんわね」
紅黄「ひねりか……そうだな……白井黒子……うーむ」
黒子「……」
紅黄「……、……、グドン」
黒子「なんですのソレはぁぁ!!??」
紅黄「いや、ツインテールと思ったが、お前はどう考えても食われるより食う側だろ、だからグドン」
黒子「け、喧嘩売ってますの? それが女の子につける仇名ですの? ありえませんの」
紅黄「じゃあバードン?」
黒子「怪獣から離れろって言っとるんじゃゴルァァ!!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
……ごめん、スルーして<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/25(水) 01:08:32.12 ID:BmdwGe.o<>台本形式は見やすいな。あくまで会話のみの場合だけど
でもやっぱり俺は地の文大目のが好きだわ
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/25(水) 11:22:10.92 ID:YdsOmgDO<>単純にギャグとかテンポを重視するところは台本形式でやって、戦闘だとかは地の文でやればいいんじゃないかなーってミサカはミサカは続きを期待しながら意見してみる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/30(月) 00:02:11.82 ID:s7TrDMA0<>本日投下予定、例によって時間不定です<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:31:38.36 ID:s7TrDMA0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第七学区のレストランの周囲は、人垣で包囲されていた。
「ねぇ、クロ、クロ、お願いクロ、あなたをちょうだい、クロ」
木原灰花が迫る。
ゆっくりと、薄ら笑いを浮かべながら。
「そうですよ白井さん、お友達は大切にしないと」
「白井さんだって、冷たくされたらいやですよね?」
両腕の初春と佐天の言葉に、周囲が口々に同調する。
通りがかりの者も巻き込み、さらに友情の同調者は増えていく。
事態のおかしさに飲み込まれないまでも、何がおかしいかまでには届かない御坂美琴。
おかしさがわかっていても、なにが起きているか理解できていない上条当麻。
辛うじて味方と呼べる二人も、あふれるように集まって来た人ごみの飲まれはじめていた。
「白井! 一体なんだよこれは!?」
「上条さんは――任せるのは不本意ですがお姉さまをお願いしますわ」
「え? わ、わたしを?」
「ええ、中途半端に制御が利かない状態でお姉さまが能力でも使おうものなら、
ここにいる全員が黒焦げになってしまいますわ」
上条に告げながら、視線の先の木原灰花を睨みつける。
「初春、佐天さん、あいにくですが、わたくしは風紀委員ですの
それに、誤ったことをした者を正してやるのもまた友情ですわ」
両腕の二人を、数メートルずらして後方に転移させた。
支えを失ったためか、重なり合うように倒れる。
すぐに起き上がり、再び黒子の腕を掴もうとするが、
その時すでに木原灰花の真後ろへと黒子の身体は移動していた。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:32:29.19 ID:s7TrDMA0<>
「木原灰花、あなたは昨日起きた大能力者同士の抗争に関与した疑いがもたれています、
事実解明のため詰め所まで同行願いますわ」
灰花の肩を掴む、抵抗するならばテレポートでその動きを封じるために。
「うふふ、あは、あはは、ダメだよクロ、そんなうそついちゃダメ
クロが聴きたいのはそんなことじゃない、言いたいのはそんなことじゃない
おどろいてるでしょ? わたしが生きててびっくりしてるでしょ?」
灰花の顔がまるで仮面を付け替えたように、ニタッ、という形に歪む。
「だってさ、あのとき、クロ、嬉しかったんだもんね?」
「……」
「嫌いな人間の不幸は嬉しいもん、あたりまえだよね? だよね?」
6年前の実験は、確かに白井の記憶に残っている、どちらかと言えば嫌な思い出として。
それは、同一空間に押し込められた少年と少女の共同生活において、絶対に起こりえること。
ヒエラルキーの決定、序列の構築、上位と下位の仕分け。
無能力者4名に対し能力者1名の構成は、その在り方を大きく2つに分けた。
能力者が支配するか――
無能力者が支配するか――
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:32:57.38 ID:s7TrDMA0<>
「わたしたちは皆すてられたゴミだった、なんの能力もあらゆることをされても発達しなくて
最終的に捨てるために実験に放りこまれた、ゴミだった」
白井黒子は、運がなかったといえるだろう。
幼い彼女が押し込まれたのは、そんな無能力者たちの部屋だった。
「だからね、わたしたちはあなたが大嫌いだった
能力があって、夢を語って、将来があるあなたが、心の底から大嫌いだった。
クロに、ひどいこともしたよ、でもクロは変わらなかった、クロはずっとクロだった。
決して在り方を曲げなかった、逃げてもビクビクしても、決して曲がらなかった。
すごいと思った、強いと思った、馬鹿だとも思った」
でも、クロも人間だもんね――と、さらに唇が釣りあがる。
「だから、ね、わたしたちが死んで、クロ、嬉しかったんだもんね?」
他人の不幸を喜ぶ気持ち、嫌いな相手を蔑む気持ち――
それは、誰もが思うこと――
けれど、誰にも知られたくはない感情――
「上条さんは思わない、うん、思わない。あの人は別格。他人の痛みを自分のことのように悲しめる」
「御坂さんは思うかもしれない、そしたら解決策を考える、うん、一生懸命考える」
「佐天さんも思うかもしれない、でもそんなことを思った自分を反省する、うん、後悔する」
「初春さんも思うかもしれない、でもそれを糧に強くなれる、うん、頼って相談する」
「でも、クロは違う、クロは違う、クロだけは違う
クロはそもそも気づかれない、そんな弱さをクロは持たない、
思っても思わなくてもクロはクロ、誰も責めない誰も問わない、
それでもクロはクロでいられる、そう思った自分すべてを受け入れられるから
そんなことしてると、クロ壊れるよ? 強すぎて壊れるよ? だってクロの正義はとっても重いのに」
最後は笑うように、ケタケタと、声のような音を発していく。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:33:30.14 ID:s7TrDMA0<>
「だから、ね、壊れる前に、一緒になろう、みんな一緒、みんなみんな一緒
クロ、ねぇ、クロ、食べさせて、ねぇ、タベサセテ」
吊りあがったままの唇から音が漏れる。
白井の心を揺さぶるように、着実に木原灰花への謝罪と申し訳なさを想起させるように
望む友情を受けいれさせるように。
「やっかましいですわ」
だがしかし、白井黒子にまるで効果はなかった。
「アら?」
木原灰花の身体が上下さかさまに転送され、そのまま地面に投げ捨てられる。
「あなた方の死を良きことを思った、そこは事実で変えようがないことですわ
けれどそれは、所詮わたくしの心の問題、あなたにとやかく言われるようなことではありませんの」
地面に転がった灰花を、冷静に金属矢で縫いとめていく。
「それに、こんな押し付けるだけの友情なんて、全身全霊で御遠慮しますわ」
「ア、アれ? え? なんで? なんでクロぜんぜん平気なの?
クロ、すぐビクビクしてたのに、つよがってもこっちの言うこときいてたのに」
「もしかして、あなたの中のわたくしは6年前のまんまですの?」
「ちがう、ちがうちがうちがうチガウ! クロじゃないクロはちがうクロじゃない!!」
「いいえ、これがわたくしですわ、6年も経てば人間変わりますの」
「ちがう、チガウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」
木原の灰花の雄たけびと同時に、空気が歪んだ。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:34:38.10 ID:s7TrDMA0<>
周囲の喧騒が突如としてその色を変える。
「おらぁ! 死ねてめぇ!」
「ざっけんな、てめぇが死ね!」
「ちょっとあんた、さっきから臭いのよ!」
「邪魔だテメェ、存在が邪魔だ!」
「よくもわたしと目を合わせたわね!」
「廻りぬいてやるよ、きたねぇからな!」
「な、なにをしたんですの」
「クヒ、ウヒヒヒ、ちがう、チガウ」
操られたのは憎悪。
密集した人垣のそこかしこで殴り合いの争いがはじまっていた。
「よくもわたしのスカート捲ってくれましたね、死に値します!」
「レベルが関係ないとか、レベル5がどの口で言いますか!」
「え、ちょ、なにこれ……きゃあ!?」
近くでは、初春が佐天を追いかけ、その佐天は御坂を追い掛け回していた。
言っていることはどこか滑稽だが、顔には本物の殺気を浮かべいる。
「これも、あなたの能力ですの?」
「クロは違う、こんなの違う、チガウ、ちがう」
「っ! いますぐ能力を解除しなさい、でないと……」
「ウヒ、ウヒヒヒ」
白井は迷っていた。
気絶させることは容易い。
けれど、それで能力が解除できるのか、下手をすると暴走するのではないか。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:36:04.31 ID:s7TrDMA0<>
決断を下せない白井に、背後から声がかけられた。
「し、白井! 大丈夫か」
「上条さん!? お姉さまについていてくださいと――」
「す、すまん、はぐれちまって……それより、この混乱の原因はその子なのか?」
地面に縫いとめられたままウヒヒヒと笑い続ける灰花を見る。
「ええ、ですがどうやって能力を解除したものか」
「……試してみるか」
言って、上条は灰花の額に右手を押し付けた。
「ウヒ、ウヒヒヒ…………!!?ナッ、なニコれ!!!??!?」
幻想殺し《イマジンブレイカー》。
どんな能力であろうと、その右手の効果から逃れることはできない。
「佐天さん、ごめんなさい、わたし、わたし何にも考えずにあんなこと」
「えっと、その、み、御坂さん、その」
「え……あれ、わたし……」
喧騒が、とまどいの声に変わり、やがて落ち着いていく。
「ふう、効果あったみたいだな」
「ナニコレ!? おかしい、コンナのおかシイ!! オガジイィィィ!!!!」
縫いとめられた衣類を引き裂いて強引に自由を得る。
そのまま上条の右手に食いちぎる勢いで噛み付く。
「はっ? うおっ!?」
反射的に右手を引っ込める。
噛み付かれることはなかったが、木原灰花が行動を再開する。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:37:03.60 ID:s7TrDMA0<>
「っ、往生際の悪い奴ですの」
「!! わるくわい! わたしわるくないもん!!」
よろよろと足をひきづりながら、両手で顔を覆う。
「わるくない、わるくないもん、クロも、クロまで、わたしを否定するの?」
「お、おい」
「これは、どうなってますの」
幻想殺し《イマジンブレイカー》の影響か、それとも灰花の能力か、
ボロのようになった服も一緒に、木原灰花の身体がぼんやりと透け始めた。
「わるくない……ぐすっ。わたし、わるくないよおおおぉぉ!!!!」
幼児のように泣きながら、
木原灰花は、その姿を消した。
まるで、溶けるように、跡形もなく。
「どこに、行ったんだ?」
「さぁ……取り逃がしてしまいましたわ」
やれやれと、どこか影の表情で首をふる黒子。
「ま、相手の能力についてもわかりましたし、次は逃がしませんわ」
「ん、ああ、そうだな」
「では、わたくしはこの件で報告書を書かなければいけないので」
自分から話を進めることで、意図的に木原灰花に対する質問をさせないようにする。
だが、上条は白井との関係以上に木原灰花の消え方が気になっていた。
(なんだか、風斬みたいだった)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/08/30(月) 02:39:39.14 ID:s7TrDMA0<>本日ここまでっす
間があいてしまったり書き方について悩んだりスレの方々に助けていただいたり
色々とありがとうございます
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/30(月) 02:41:32.28 ID:hZUnzPoo<>>「上条さんは思わない、うん、思わない。あの人は別格。他人の痛みを自分のことのように悲しめる」
>「御坂さんは思うかもしれない、そしたら解決策を考える、うん、一生懸命考える」
>「佐天さんも思うかもしれない、でもそんなことを思った自分を反省する、うん、後悔する」
>「初春さんも思うかもしれない、でもそれを糧に強くなれる、うん、頼って相談する」
ここらへん凄く納得できる
乙です<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/30(月) 04:17:14.20 ID:rX9CkcDO<>乙ンダ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/08/31(火) 19:27:37.02 ID:oTzyjMSO<>地の文付の物書きとして応援してるよ。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/01(水) 00:55:41.50 ID:jk6zSBs0<>コメントに感謝感激雨あられ
>>218
そこは最後まで悩んだ部分でもあります、上条さんの部分だけはあっさり書けました
>>219
乙感謝
>>220
ありがとう、地の文付でこの先も行ってみますのでよろしくお願いします<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/09/06(月) 03:05:37.74 ID:0EzpMiI0<>諸事情で本日投下延期します
あ、明日か明後日にでもなんとか……
そして場繋ぎの小ネタを
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ニックネーム2
白井「……もうわたくしの仇名は結構ですわ」
紅黄「では次は御坂君でも」
白井「お、お姉さまになんという無礼な」
紅黄「……、……ミコチュー」
白井「あら、意外と可愛らしいですの」
紅黄「好評でなによりだ、色んなとこで使われている名だし、元ネタは言うまでもないな」
白井「ちなみに、初春だとどうなりますの?」
紅黄「ビオランテ」
白井「悩む時間が皆無でしたの!? そしてまた女性に有るまじき名づけ」
紅黄「あれ、人間の遺伝子と植物を掛け合わせた存在なんだ」
白井「……あー」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ビオランテにはゴジラ細胞も入ってます<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/06(月) 03:15:01.31 ID:O/AvUEoo<>初春の本体の話か
Gウイルス…<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/09/08(水) 02:43:52.76 ID:/1Z3Lak0<>こんな時間に帰宅だよ(´・ω・)
……本編にはいれないのでまたしても場繋ぎにネタ投下
使用能力一覧表
レベル5
○一方通行《アクセラレータ》
○未元物質《ダークマター》 垣根帝督
○超電磁砲《レールガン》 御坂美琴
○原子崩し《メルトダウナー》 麦野沈利
○???《ナンバーセブン》 削板軍覇
レベル4
×座標移動《ムーブポイント》 結標淡希
×音信感応《メロディビート》
○疾走光矢《ライトアロー》 矢切莱
○炎喰らい《ファイアイーター》 興野陽子
○心理定規《メジャーハート》
○窒素装甲《オフェンスアーマー》 絹旗最愛
○能力追跡《AIMストーカー》 滝壺理后
○量子変速《シンクロトロン》 釧路帷子
○絶対等速《イコールスピード》
○念動力《テレキネシス》 海原光貴
○空力使い《エアロハンド》 婚后光子
○空間移動《テレポート》 白井黒子
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/09/08(水) 02:44:20.23 ID:/1Z3Lak0<>
レベル3
×死角移動《キルポイント》 査楽
×雷神右腕《トールハンド》
×能力探査《サイコサーチ》
×局部再生《ポイントヒーラー》
○気力絶縁《インシュレーション》 薄絹休味
○意見解析《スキルポリグラフ》 鉄網
○偏光能力《トリックアート》
○水流操作《リキッドフロウ》 湾内絹保
○欠陥電気《レディオノイズ》 妹達
○透視能力《クレアボイアンス》 固法美偉
レベル2
○発火能力《パイロキネシス》 丘原燎多
○量子変速《シンクロトロン》 介旅初矢
○視覚阻害《ダミーチェック》 重福省帆
○精神感応《テレパス》 春上衿衣
レベル1
×発火能力《パイロキネシス》
○保温能力《キープテンプレーチャー》 初春飾利
レベル??
○吸血殺し《ディープブラッド》 姫神秋沙
○幻想殺し《イマジンブレイカー》 上条当麻
○最終信号《ラストオーダー》 打ち止め
□幻想御手《レベルアッパー》 木山春生
□正体不明《カウンターストップ》 風斬氷華
他オリジナル登場予定
○豪力鬼神《ヘカトンケイル》
○強制交信《ジャックテレパス》
○透過物質《オールスルー》
○等価同列《ザ・ワンコイン》
○雷撃散弾《ショットガンボルト》
○清涼快復《ヒーリング》
○変体能力《メタモルフォーゼ》
○水化雲翔《テンペストストーム》
○座標固定《ストップポイント》
○物体交換《アポートポイント》
いまんとこの紅黄の手札でござい、オリジナルの能力を考えるのはすごく楽しい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/08(水) 03:09:15.79 ID:dQXR7Xko<>豪力鬼神《ヘカトンケイル》 これ気にいったww
つかオリジナルの能力名考えるのって凄く苦労するな
マジかまちーのセンス凄いと思う<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/09(木) 03:49:59.23 ID:/nD2z820<>他スレのオリジナルキャラを能力だけ借りればいいと思う
ちょっとしたクロスオーバー的になって面白いし<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/09/12(日) 02:32:54.13 ID:Xxpmuhs0<>>>226
ありがとう、それは個人的にも気に入ってるww
>>227
それは他スレの作者さんの許可的にも難しいのです
さて、久々に小ネタではなく本編投下<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:33:51.67 ID:Xxpmuhs0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――そして、事態は流動する。
「結局、邪魔が入って現場にたどり着けなかった訳よ」
『じゃあ今すぐ追いなさいって! ボ〜っとしてないで!』
「そうしたいけど、滝壷の能力からも反応が消えて追いようがない訳よね」
『く〜、大体麦野はどうしたのよ! なんで電話にでないのよ!』
「さぁ、ずっと考え込んでるからわかんないわよ」
フレンダと電話の相手の会話を聞きながら、麦野は正面に置いたモニターを睨んだまま微動だにしない。
(滝壷の能力から逃れられる能力者は存在しないはず……ということは、あれは別の何か?)
謎の電撃使いとの戦いの後、新しい車を浜面が探し出した頃には、木原灰花の存在は消えていた。
それ以上どうすることも出来ず、全員で近場にあったアイテムの隠れ家へと移動した。
そして、到着からずっと、麦野は今回の相手について考えをまとめている。
つい先ほどまで麦野は、捕獲対象は能力が不安定な実験用のサンプルか何かだと思っていた。
(違う、あれはそういうものじゃない)
モニターに表示されているのは、数時間前に起きた第7学区での集団ヒステリー事件。
情報規制がされているのか、その場にいた全員がおかしな行動をとったこと意外は伏せられている。
公式発表には目もくれず、個別の書き込みやその場にいた人物の証言情報を元に真相を組み立てて行く。
(感情を操る能力? 規模は大きいけれど、それだけで滝壷からは逃げられないし……)
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:34:21.13 ID:Xxpmuhs0<>
目を閉じて、麦野は情報を整理していく。
数秒後、目を開いた時には麦野沈利と『アイテム』の行動方針は決定していた。
「フレンダ、伝えといて、私達は木原灰花を追うって」
「え? 麦野、でも」
「真っ直ぐ追えないなら、回り道するしかないのよ」
それで言いたいことは言ったのか、視線はフレンダから滝壷に移る。
「滝壷、邪魔に入った奴の位置は探れるわね?」
「うん、だいじょうぶ」
「どこの誰か知らないけど、あれは木原灰花について何か知ってるはず、まずはそこから攻める」
「……、それは、まぁ、超理に適ってますね」
「私たち『アイテム』に喧嘩売ったこと、たっぷり後悔させてやらないとね」
――アイテムが追跡する。
――『邪魔をしてきた能力者』を。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:35:11.52 ID:Xxpmuhs0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――そして事実は廻り動く。
――あるいは、より大きな崩壊に向かって。
アイテムの迎撃に成功した紅黄は、そのまま自宅あるマンションに戻っていた。
怪我は能力で治していたため入院を続ける必要はなく、特に荷物もなかった。
もっとも、玄関先で待ち伏せていた人物に捕まってしまい、まだ中に入れていなかったのだが。
「さて、詳しい経緯を説明してもらいましょうか、とミサカは抜け出した入院患者に詰め寄ります」
「あー、なぜここにる……えーと、10032号だっけ?」
「正解です、とミサカの胸元に視線が向けられていることに少し驚きを感じつつ返答します」
「いや、ペンダントを見てただけだ、大きさは一切変わりないとおもっ……って、不機嫌になるなおい」
自宅に戻りながら白井に連絡をしたところ、どうやら特に大きな怪我はなかったらしい。
現場の騒ぎと、友人関係の過去のトラブルが少し再燃したせいで苛立ってはいたが、
彼女の口調ははっきりしていたし、特に問題はないだろうと紅黄は踏んでいる。
もっとも、白井から木原灰花について語られることは一切なかったのだが。
「さて、ミサカ達に監視カメラの映像をジャックさせておいて礼もなしに飛び出していったのですから、とミサカはそれ相応の対処を要求します」
「おかげで助かった、ありがとう」
「本当に礼だけで済まそうとしています、とミサカはやれやれと首を振ります」
「ならばどうしろと言うんだ」
「主治医からの命令です、とミサカは言うことを聞かない患者を尋問する係りを仰せつかったことを告げます」
「尋問?」
「はい……『この二日でいくつ能力を使った? 5つ以上ならいますぐ君を隔離する』と、ミサカはそのまま伝えます」
「……ん、ああ」
「いくつですか?」
「4つだけだ」
「本当にそう伝えていいのですか? とミサカは確認をとります」
「ああ、事実だからな」
「わかりました、とミサカはその事実に納得してみます」
その返答に紅黄はほっとした表情を浮かべる。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:35:42.08 ID:Xxpmuhs0<>
「ところで、一つだけ聞いてもいいでしょうか、とミサカは好奇心から質問をしてみます」
「ん? なんだ?」
「5つ以上能力を使うとどうなるのですか?」
「……」
「答えにくいことでしょうか?」
「……、壊れて、戻らなくなる、それだけだ」
「それは1つでも2つでも同じではないのですか? とミサカはミサカの知る砂上楼閣《レヴォリューションエラー》の知識と比較してみます」
「能力元の人物を認識できなくなるってとこは同じだ、けどその後が違う」
一拍おいて、さもなんでもないようにその事実を告げる。
「まさに能力名の通り、俺の能力は砂上の楼閣、けれど失った砂が一部なら他からの埋め合わせでなんとか補修できる」
さらに一拍おいて、さもどうでもいいことのようにその真実を告げる。
「埋め合わせに必要な時間は大体一週間程度、
5つ以上、つまり埋め合わせをする間もなく失った土台部分が大きすぎれば、補修は不可能になり」
間をおかず、ここだけは一息に告げる。
「紅黄碧という人格は、土台から崩れ始める」
その基準が約5人分――
そして、能力を1つ埋め合わせるために必要な時間は、およそ一週間。
――あらかじめ覚悟の上とでも言うように。
――平然とそのウソを貫き通す。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:36:12.35 ID:Xxpmuhs0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――そして事態は動き出す。
――様々な存在を巻き込みながら。
「ちがう、ちがうよ、ちがうよぉぉぉぉ……」
時刻は午後11時をまわっている。
明かりが落とされた繁華街を、フラフラと小さな影がうろついていた。
「クロ、わたしわるくない、わるくないよクロ、わるくないよぉぉぉ」
行く当てもなく、頼る者もおらず、夢遊病のように彷徨い歩く。
救いの手が差し伸べられるか――あるいは、朽ち果てるまで。
「どうしたんですか、こんなところで一人ぼっちで」
そして、差し伸べられた救いの手の主は――
「辛いことがあったなら、どんなことでも先生が聞いちゃいますよ」
――幼い少女の姿をしていた。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:38:00.70 ID:Xxpmuhs0<>本編ここまでっす
あまり動きがない回ですが、禁書本家的なノンストップガチバトルへの布石に……なるといいなぁ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/12(日) 02:45:44.14 ID:JW./Vy6o<>乙!
オリ能力とかよく思いつくな<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/12(日) 02:49:48.43 ID:Xxpmuhs0<>>>235
thx!
元が厨二脳なせいで、ポンとオリ能力は思いつく
実は紅黄の能力はそんな思いつき能力達をフル活用するためでもあったりします<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/12(日) 02:51:04.80 ID:LFKSebc0<>乙!
最後まで頑張ってほしい。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/14(火) 20:26:13.73 ID:cfe2e/Yo<>この作者にはかなりの才能があるな
この発想力は厨房なみ
かなり期待ができる
来週には投下されるといいな
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 01:40:04.96 ID:omMiHRw0<>本日投下予定、ぬるっとお待ちくださいな
>>237
ありがとう、最後まで頑張るよ
>>238
ものすごい嬉しいっす、でも才能なんか皆無なんでいっつもギリギリです
……厨房並って褒め言葉だよな?<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/09/21(火) 03:13:58.80 ID:omMiHRw0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第七学区・風紀委員《ジャッジメント》詰め所
木原灰花が現われてから一週間、それ以前の二日間の慌しさとは打って変わって平凡な日々が続いていた。
もっとも、それは事態に進展がないのと同意でもあるのだが。
「はぁ、また夜中になってしまいましたわ」
警備員《アンチスキル》の捜査に協力して調書をまとめて、
白井が帰宅する頃には、もう日付が変わろうとしていた。
「木原灰花に関してはまぁ保留としまして、もう一度まとめてからですわね」
炎喰らい《ファイアイーター》の殺害、及び災害クラスの火災に関わったとして、木原は指名手配されていた。
だが、目撃情報はおろか、足取りの片鱗さえつかめていない。
「それにしても、実地研修は本当にいつになるのやら」
紅黄は「自宅療養に切り替わった」と言って、松葉杖を突きながら詰め所に通っている。
ちなみに、それを理由に大学には休み届けを出したらしい。
退出登録をせずに公休にすると、休み中の講義が全部出席扱いになるバグがあるとかなんとか。
「……あれ、絶対治ってますわよね」
たまに杖を忘れたままふらふら歩き回っていたりする。
「まぁいいですわ、わたくしも先輩も木原灰花の件を解決してからですわね」
明日か、明後日か、その先か、いまのような日常が続くと信じて――
白井黒子は帰途に着こうとする。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:14:54.62 ID:omMiHRw0<>
「ようやく上がりか、白井」
掛けられた声は、最近ようやく馴染み深くなってきた男声。
「あら、紅黄先輩こそこんな時間まで……というか、今までどこにいましたの?」
「ちょっと邪魔を、これから仕上げに行かなきゃいけないけどな」
「意味がわかりませんの」
「とりあえずカタは付きそうだ、怪我したフリもようやく終わりだな」
「やっぱりその怪我はウソでしたのね、まったく、学校サボるために怪我を捏造だなんて」
「いやいや、怪我してたのは事実だぞ、治したのは俺自身だが」
言ってから松葉杖を放り出して、冷蔵庫をごそごそとあさり始めた。
「なにか飲むか? って、武蔵野牛乳しかないな……」
「それで結構ですわ、後で補充しておいてくださいまし」
でないと、固法先輩が怖いですわよ、と紙パックを受け取ると、慣れた手つきでストローを突き刺した。
「……、紙パックはあまり慣れんな」
「うわ、なんでパックの両側を開けてしまったんですの」
「気づいたら空いてたんだ、まぁ中身に代わりはない」
しばらく、無言で飲み物を口に運ぶ、牛乳なのがちょっとアレだが。
「それで、わたくしに何かお話ですの?」
「ん? よくわかったな」
「わざわざ、わたくししかいない時間に来て、帰ろうとしてるところを引き止めて、
これで何もなかったらわたくしちょっと怒りますわよ」
「ふむ、確かにその通り……」
飲みかけの牛乳パックをテーブルに置いて、白井と対面になるソファーに座った。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:15:40.56 ID:omMiHRw0<>
「一週間、野暮用でフラフラ出歩いていたからな、その間なにかあったか聞きたいと思って」
「わたくしから話すことはありませんわ、木原灰花については先輩の方が詳しいでしょう?」
共に過去の実験を生き残った者同士。
けれど、白井はあくまで一参加者であり、紅黄のようなメインではない。
「詳しいと言ってもな、俺も灰花が人心操作なんて能力を使えるのを知ったのは事件が起きてからだ」
「では、最後に身体が溶けるように消えた件は?」
「あいつは人間よりも現象に近くなっている、そのせいだろうな、具体的には知らん」
「いま一体どこにいるのでしょうか」
「知らん」
「……」
「……、……役に立たない情報源ですわね」
「……ひどい事言うなぁ」
「いつも通りですわ」
パックの中の牛乳も、そろそろ尽きようとしていた。
切り出すならば、もうこのタイミングしかない。
そのことを理解して、白井はあえて自分から切り出した。
「探りあいは結構ですわ、本題をおっしゃってくださいまし」
「はぁ、まったく可愛げがないというか……」
「あら、先輩がわたくしに可愛さを求めているとは思いませんでしたの」
「あぁ、今のお前はまるで可愛らしさがない――本題を言うのは俺ではなく、お前の方だしな」
「……」
数秒、沈黙が場を支配した。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:16:47.66 ID:omMiHRw0<>
「どういう意味ですの」
「なぜお前はこんな夜遅くまで一人でデータを洗っていた?
御坂美琴は、初春飾利はどうした?
そもそもお前は夜遅い時は自室で仕事をしていなかったか?
なにか、寮に居にくい理由でもあるのか?」
「……いまさらですが先輩、わたくし以外にそんな物言いをしたら、一発で嫌われますわよ」
「安心しろ、言いやしないしそれならそれで構わない」
ほう、と息をついて、白井は一週間の変化を話し出す。
「お姉さまと佐天さん、そして初春の仲が非常にギクシャクしてますわ」
「やはり、木原灰花の影響か」
あの場にいた人物、特に仲が良かった者同士に同様の現象が起こっていた。
「解決したと思っていた過去のしこりや、普段の大したことのない行動、
それらによって産まれた、ほんのわずかな、笑い飛ばせるような思い出の中の悪意、
それが、あの時……人を殺しかねないほど膨大に増幅された……」
「ええ、佐天さんは許していて、もう気にしていない、けれどお姉さまからすればいつまでも許されていない
初春も別に気にしていない、けれど佐天さんから見ればもう迂闊にそんなことは出来ない」
最近、みんなで集まってもあまり楽しくありませんの、と寂しそうに言う白井に――
「なるほど、まぁそんなことはどうでもいい」
――紅黄の台詞は強烈だった。
「あっ、んなぁ!!?」
「時間が経てば解決する、お互いに行き違いを認識しているならなおさらにな」
心底どうでもいいという具合に淡々と言い捨てる。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:17:33.07 ID:omMiHRw0<>
「それよりも、もっと重要な点があるだろう、目を逸らすな」
「なっ、にっ、がっ! ですの!! わたくしの友人をどうでもいいなどと――」
「白井黒子、お前自身だ――木原灰花を捕らえるためにも、な」
「――なにを言ってますの、わたくしのなにが問題ですの!!」
いきり立つ白井を見据えながら、努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「御坂さんは思うかもしれない、そしたら解決策を一生懸命考える」
「佐天さんも思うかもしれない、でもそんなことを思った自分を反省して後悔する」
「初春さんも思うかもしれない、でもそれを糧に強くなって頼って相談する」
「その、言葉は――」
「あそこには監視カメラがあってな、上手い具合に音声まで拾ってくれてた」
飲み終えた牛乳パックを、少し悩んでから、洗うつもりで流し台に放り投げる。
「おかしいよな、その3人はそれぞれ軋轢が生まれたのに、なぜお前にはない?
むしろ、お前こそ一番触れられたくない部分だったんじゃないか?」
白井の手にあった紙パックが転移して、同じく流し台に落ちる。
顔は紅黄の方を向いてはいる、聞いてもいる、でもどこか、焦点が合わない目をしていた。
「人の死を喜んだ、それをただ昔のことだと切って捨てた」
それは、白井黒子にあるまじき暴虐な振る舞い。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:18:01.90 ID:omMiHRw0<>
「誰からも責められない罪、それ故に誰からも許されない罪」
そんなこと、気にしなければいい――
誰でも思うことで、別に特別なことではない――
それに、白井黒子は強い、そんな罪の意識くらい簡単に乗り越えられる――
「だからこそ、お前には毒だ、誰でもないお前だからこそ毒になる」
罪の意識だけはゆらゆらと、その心に闇を作っていく。
「お前の正義は強い、強いからこそ、誰にも理解されず壊れていく、
木原灰花も警告していただろう? お前の正義は強すぎる、と」
時計を確認する、時刻は午後11時をまわっていた。
そろそろ、紅黄碧からの本題を切り出す場面だ。
「その上で、さらにお姉さまと友達の心配か、そりゃそうだよな
だってお前は白井黒子だ、そんなことがダメージであると誰にも認識されていない
されたとしても、お前自身が揺るがない」
それでも――なお、紅黄が見つめる先の白井の瞳は力強い。
決して折れない、それが白井黒子だから。
「だから……どうしたと言うんですの、そんな話に何の意味が?」
「意味などいくらでも付けられる、重要なのはお前の危うさとその自己認識だ
はっきり言って、御坂美琴よりもお前の方が精神的にずっと壊れやすい」
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:18:29.92 ID:omMiHRw0<>
白井黒子にとって、それは始めてのことだった。
誰にも理解されないことが、あまりに普通だったために。
むしろ、白井はレベル5になった方がその精神は安らぐかもしれない。
レベル5が体感する、並ぶ者がない孤高の高みが故の孤独感。
彼女が経験しているのは、並ぶ者がいるはずのレベル4で、並ぶ者が一切いないという疎外感。
「人は一人でいる時ではなく、群集に紛れている時こそ最大の孤独を体感する」
白井黒子は強すぎた。
そして、孤独だった。
並ぶ者すらいない程に強くありながら。
その能力は群集の中にあることを強要されたのだから。
だからこそ、御坂美琴に惹かれた。
並ぶ者がないレベル5に、その孤独さと孤高のあり方に憧れた。
――たとえ、御坂が普通の少女であるとわかっても、変わらずに。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:19:10.20 ID:omMiHRw0<>
紅黄は、流し台で紙パックを二つ洗い流すとゴミ箱に放り投げた。
魂が抜けたように、けれど瞳の力はそのままに――生きた人形のように、白井黒子は座っている。
「木原灰花を捕らえるには、否定では届かない――あいつの言うことから考えまで全部飲み込んで乗り越えろ」
そうでもしなければ、あの現象を捕まえることはできない。
「もう、俺には不可能だ――6年間の実験の続き――お前が終止符を打て――」
一枚のメモ用紙を渡しながら『事件解決から脱落したもう一人の生存者』が告げる。
「上条当麻、俺が知る限り、唯一お前を超える存在がそこにいる」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:19:37.43 ID:omMiHRw0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
麦野沈利は怒っていた。
『アイテム』として活動し始めて、何度か失敗はあった。
けれど、ここまで、ここまでコケにされた経験はかつてなかった。
「コロス、絶対にコロス、ブチコロスッ!」
「む、麦野、お、落ち着くわけよ……さ、鮭弁でも食べて」
「あぁんっ!?」
「ひっ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
雷神右腕《トールハンド》の所在地を突き止めてのが6日前。
そこには邪魔男(呼称:麦野命名)とは似ても似つかぬ少女が暮らしており、背後関係は白。
調査を進めているうちに、今度は風力使いの能力を使った邪魔男が車を横転させて逃げていった。
今度は風力使いを調べてみたら大柄な男だった。
今度は発火能力を使った邪魔男が現われて邪魔をしていった。
発火能力を辿れば、今度は肉体強化の邪魔男が、肉体強化を辿れば磁力使いの邪魔男が現われた。
そうしているうちに、能力の使用過多で滝壷が倒れた。
やむを得ず、手近な隠れ家に身を寄せて――思えばこれが失敗だった。
『アイテム』の中核は滝壷であり、その能力に依存するところは大きい。
敵は、真っ先に滝壷を潰した。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:20:07.36 ID:omMiHRw0<>
そこから先は嫌がらせの波状攻撃だった。
車のタイヤがパンクさせられていたり、電話線がすべて切られていたり、
警備に下部組織の者を置いたら来なくなった代わりに異臭騒ぎが起きたり。
いい加減、所構わず原子崩しをぶっ放しそうな程麦野がキレていた。
そうしている内に、たまたま浜面がその情報を見つけたのは、果たして偶然か――
「砂上楼閣《レヴォリューションエラー》ねぇ、こんな能力もあるんだな」
かつて、一瞬だけレベル5に登録された能力を、麦野は覚えていた。
名前と能力名を、暗部組織の権限を使って捜索。
真意城大学所属ということを突き止めた。
夜の11時、まだ退出記録がないことを確認して、怒りに震える麦野と怯えるフレンダ、
そして恐々と言った表情の浜面は隠れ家から出て行った。
「……」
絹旗は滝壷の看護と、もし襲撃された場合の護衛として隠れ家に残っていた。
おそらく、自分の方が本命だろうと思いながら。
そして、その予想は過たず―――ピンポーンという、場違いな程気の抜けたチャイムが響く。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:20:37.06 ID:omMiHRw0<>
「……」
絹旗は無言で立ち上がると、玄関の鍵とチェーンを外した。
「なんとなく、来ると思ってましたよ」
「一応、まだ敵同士という認識でいいか?」
「ええ、超構いません」
「その割りに、あっけなく開けてくれたな」
「ええ、下手に小細工されるよりも正面から超ぶつかった方が好みです、しっ!」
振りぬいた右腕を、しかし簡単にバックステップで回避する。
「戦うつもりはないんだけどな」
「あいにく、わたしには超あります……わたしは、『アイテム』ですから」
「――そうか、ならば」
絹旗の能力は割れている。
威力は凄まじいが、速度が上がるわけではなく、リーチでは紅黄が勝る。
「判決《ジャッジメント》だ、お子様の夜更しせずに寝てろ」
正面から相対する、そこは絹旗最愛の距離であり、それ故に彼女が退くわけにはいかない位置だった。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:23:34.00 ID:omMiHRw0<>本日投下以上です
黒子の設定が独自解釈はいってるような気もしますが
原作の残骸《レムナント》事件とアニメの超電磁砲見てると黒子の一切の揺るぎのなさと強さは
「黒子って女版上条じゃね?」と思ったのが発端、以来>>1の中では黒子は美琴以上にかっこいいキャラになってます<>
能力紹介 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/21(火) 03:35:06.77 ID:omMiHRw0<>
小ネタ
白井「小ネタと言う名の能力紹介コーナーですの」
紅黄「オリジナル能力考えるの大好きだからな」
白井「この小ネタは本編の時系列とか基本無視してすすみますの」
紅黄「ま、あくまで小ネタだな」
白井「では早速、>>226でレスを頂きました豪力鬼神《ヘカトンケイル》ですわね」
紅黄「肉体強化系の一種だな、複合能力で肉体再生の属性も持ってる」
白井「具体的にはどうなりますの?」
紅黄「物凄く力が出る、けれどその力に耐え切れず肉体が瓦解する、それを再生する、の繰り返しだな」
白井「……、……戦闘場面が18RGになりそうな能力ですわね」
紅黄「ヘカトンケイルってのはギリシア神話に登場する五十頭百手の巨人でな、あまりの醜さで父親に幽閉されていたんだ
その後ゼウスに助け出され重要な戦力になっていったんだが……」
白井「この能力の持ち主、なにかそう言った事情も含めてこの名をつけたんでしょうか……」
紅黄「能力自体はシンプルだが、名付けの裏になにかありそうではあるな」
白井「それでは、今回の能力紹介はここまでですの〜」
紅黄「機会があればまた次回」
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 04:40:28.12 ID:bwdGRQQo<>乙
信念で動くって意味じゃ黒子は上条さんと美琴に似てるかもしれないが
上条さんも美琴も行動理由に善悪の判断は含まれないからな、そこらへんが黒子は違うんだと思う。
個人的には女版上条さんは美琴で、黒子は「割かしまともになった美琴」って感じがする。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 06:32:53.23 ID:jLQ61sso<>風紀委員組の二人は信念を持ってるからなあ。
上条のそれは天然だけどこの二人のは意志というか。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/21(火) 18:31:08.36 ID:.txgVqo0<>でも、美琴にはレベル6シフトの時のどうしようもなさがあったし
初春はアニメ後半で春上さんに肩入れするあまり失態演じて泣くだけだったからなぁ
アニメ後半では美琴も猪突猛進しまくって失敗してたし、運もあるだろうけど確かに黒子って上条さんクラスのアンチ絶望キャラだよな
<>
能力紹介 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/24(金) 03:30:40.38 ID:KL9UKMM0<>>>253-255
レス感謝
個人的な思い込みや願望も入ってるかもしれないですが、黒子は精神力で言えば最強ヒロインだとおもとります。
上条さんと美琴と黒子が決定的に違うとすれば、悪を悪として裁くことに躊躇いがないところかな、と
上条さんのように自然と信念が正義になるのではなく、こうあるべきという信念があってそれを元に自分の正義を決めるというか
信念という土台が異常に強い黒子と、信念という土台(過去)がそもそも必要ない上条さんの違いはそこかなと
……なんだかよくわからん話になってしまいましたが
『黒子・強い・可愛い・かっこいい』という結論でござい……結論でないとか言わないで
〜〜〜〜〜〜〜〜
小ネタ
黒子「能力紹介コーナー第二段ですの」
紅黄「今回は強制交信《ジャックテレパス》、テレパシーの一種だな」
黒子「名前からすると、相手のテレパシーに割り込めるんですの?」
紅黄「それも出来るが、テレパシーのみでなく他の能力一通りだな」
黒子「AIMストーカーと似た能力ですのね」
紅黄「違うとこは、こっちは干渉専用で探査も乗っ取りもできないってとこだな」
黒子「要は、交信することに特化した能力なのです?」
紅黄「交信というより、本人の意図以外で能力を発現させる力だな」
黒子「暴発専門ですのね、使い方が限定されそうな能力ですわ」
紅黄「この能力のすごいとこはな、複数の相手に同時干渉できる」
黒子「つまり、能力者に囲まれた多対一の環境こそが大好物、というわけですのね」
紅黄「消耗が早いから乱発はできんし、俺が使うとすれば一発逆転専門に近い能力だ」
黒子「相手がスキルアウトだったりした場合は?」
紅黄「袋叩きにされるだろうな」
黒子「……、……超限定版幻想殺し《イマジンブレイカー》ですわね」
紅黄「否定はしない」
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 03:52:14.58 ID:jwAz0oQo<>黒子は自分の正義を貫くのに手段を選ばないとこあるね。
だから自分の信念のためなら救える人は全員救うの上条さんやなんだかんだ甘い美琴よりも人を[ピーーー]ことに躊躇しなさそう。
個人的には科学サイドで一番成長しそうなキャラだと思う。色んな意味で。
でも胸は成長しないで良いと思う。<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 10:36:48.87 ID:M59SxUE0<>黒子の生き方は黒か、白しかなくグレーゾーンがないから辛いだろうな
硬くて、真っ直ぐな物ほど折れやすいものなく、自然の中で完全な真っ直ぐな物ないからな
ただ、あの胸はあれでこそ至高<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/24(金) 23:21:02.81 ID:9GP4WsDO<>>>258
>黒子の生き方は黒白誰がうまいことを言えと
硬度と強度は違うからな
だからこそあの胸であの変態水着は芸術なんだろうな、うん<>
能力紹介 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/25(土) 00:58:44.93 ID:3kwBBvU0<>>>257-259
レスに感謝感激雨あられ
シリアスなレスがもらえてもうそれだけで感無量
もちろん普通のレスも嬉しいけど、今回はより特殊だったが故に嬉しさもひとしお
グレーゾーンがなくて上条さんや美琴程甘くはない
そして、胸はあのままがいいと激しく同意いたす
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小ネタ
黒子「能力紹介コーナー第三段ですの、この異常な速度は一体……」
紅黄「この手のオリジナル能力は大好きらしく、ぽんぽん湧いて出てくるそうだ」
黒子「流石永遠の厨二病ですわね」
紅黄「さて、今回は雷撃散弾《ショットガンボルト》、これは読んで字の如くだな」
黒子「雷撃を散弾銃のように飛ばす能力ですの?」
紅黄「複数の雷撃弾を同時に飛ばせるってのは、御坂にもない特徴だな」
黒子「能力名から想像はつきますが……それ以外には?」
紅黄「なんにもできん、雷撃弾を放つ、それだけの能力だ」
黒子「応用性のへったくれもありませんの」
紅黄「>>1は特にヘカトンケイルとこの能力が気に入っているらしい」
黒子「描写が楽そうですわね」
紅黄「心理描写ばっかりなのを少し反省中だそうだ」
黒子「先輩のペナルティも眼に見えて現われてませんわね」
紅黄「ある事項を優先したら他の時効がおざなりになる、バランスよく進めようとしたら話があっち行きこっち行き」
黒子「紹介ではなく悩み相談になってきたのでこの辺で〆ますの、ではまた次回ですの〜」
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 01:21:20.85 ID:blxbFj6o<>美琴の能力は応用力が半端ないけど、それって自分だけの現実の認識範囲が広いってことだと思うんだ
ってことで今後のパワーアップというか新技に期待してる。
生体電気を操ったり中の人繋がりで桜華崩拳使ったr
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/25(土) 15:32:07.36 ID:pGWrMYDO<>美琴「ラス・テルマ・スキル・マギステル……」<>
能力紹介『炎喰らい』 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/09/26(日) 01:40:50.39 ID:qhWr7cc0<>>>261 >>262
電気加速とか雷撃パンチとか普通にやりそうな技だけど、そういえば原作でも漫画でも使ってない……
御坂って接近戦苦手なのか
〜〜〜〜〜〜
黒子「>>1はこればっかり書いてるんですの? と言いたくなる第四段ですの」
紅黄「厨二であるが故に説明厨でもあるからな、本編で出来ない分を発散させてるんだろう」
黒子「さて、今回は……あら、炎喰らい《ファイアイーター》ですのね」
紅黄「説明を本編でしようとして自重した能力だな」
黒子「1レス分が能力説明で埋まったとき我に返ったそうですわ、危ないところでしたわね」
紅黄「さて、手短にまとめるとそれほど多く説明することはない能力だ」
黒子「炎吸収の能力ですわね、スキルアウトが火事を発生させたのもこの能力を補助するためでしたわ」
紅黄「吸収すればするだけ身体能力その他諸々が強くなる、一応炎を撃つ力も備わっている」
黒子「逆に炎がなければ何も出来ない、ガス欠を常に起こしている能力ですのね」
紅黄「実を言うと、書き始めた当初では、俺の能力はこれになっていたかもしれなかった」
黒子「能力を使わずわたくしにボコボコにされたシーンとか、その名残ですのね」
紅黄「いまの砂上楼閣は、果たして強くなったのか弱くなったのか……」
黒子「随分話が逸れてしまいましたわね、では次回はそれでいきましょう」
紅黄「それ?」
黒子「次回は砂上楼閣《レヴォリューションエラー》ですわ、説明に必要な話も本編でほぼ出揃ったことですし」
紅黄「ふむ、まぁそれもいいか、あと一つ、半オリジナルが表以外で登場予定だ」
黒子「さらに増えますのね……では、また次回ですの〜」
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 01:45:09.93 ID:sl5NYCYo<>ハルヒコ「ショットガン・ボルト!」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 04:40:30.07 ID:/55pj/Q0<>第四波動ですねわかります<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/09/26(日) 05:51:54.19 ID:mARcskAO<>>>263
電撃なんて能力持ってたら、纏うより撃つに使うのが当然じゃないかな、弾数無制限だし武道を志してる訳でもないし、少年ジャンプ連載じゃないし<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/09/27(月) 02:06:59.53 ID:4XYS15E0<>ちょっと致命的なシナリオミスが発覚したため修正作業中ですorz<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/03(日) 20:17:11.04 ID:Pi8vJdIo<>がんば
期待してる<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 20:53:24.49 ID:UmAg2B2o<>お、落ちてないよな?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/10(日) 23:42:27.26 ID:TxdMeRwo<>GEPは落ちないとあれほど<>
能力紹介『砂上楼閣』 ◆qOeedHp6KI<><>2010/10/21(木) 02:11:32.92 ID:Oo3BPZY0<>おお、復活した、もう戻らないんじゃないかとハラハラしてたんでよかったよかった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒子「第五段、砂上楼閣《レヴォリューションエラー》ですの」
紅黄「これは本編でも説明されてるが、他者の能力を模倣する能力だな」
黒子「ただし制約がかなり多いんですの」
紅黄「まとめるとこんな感じか」
@能力であればコピー可能
A一度使った能力は二度使えない
B使うとコピー元の能力者を認識できなくなる
C5つ以上の能力を一気に使うと記憶崩壊が始まる
D全能力をフルに使ってレベル5相当
E能力を一切コピーしない状態でレベル3相当
F能力使用時のAIM拡散力場はコピー元の能力者と同質になる
黒子「はっきり言って反則能力ですの、一戦だけなら間違いなく最強クラスですの」
紅黄「特にレベル5は華奢なのが多いからな、能力部分を互角にすれば格闘ではこちらが有利だ」
黒子「逆に普通に生活は……先輩、もう記憶崩壊に足突っ込んでますわね」
紅黄「ちなみに、Fに関しては妹達《シスターズ》を想像してくれるとわかりやすい」
黒子「同等の能力ですと、まぁそうなりますわね、能力の合成はできますの?」
紅黄「無理だ、一つの能力を使って続けざまに別の能力を使えば、並列起動のようなことはできる」
黒子「幻想殺し《イマジンブレイカー》をコピーできますの?」
紅黄「できるぞ」
黒子「マジですの!?」
紅黄「AIM拡散力場の完全空白をコピーした」
黒子「それはつまり、幻想殺し《イマジンブレイカー》の影響を受けた状態、ですの?」
紅黄「俺の能力まで根こそぎ空白になって、発動中はただのレベル0だな、もちろん右手はただの右手だ」
黒子「……、……、レベル0になれる能力ですのね」
紅黄「他の能力と違って上書きも出来ないから時間切れを待つしかないだろうし、使いどころはなさそうだ」
黒子「そうそう、上手くはいきませんのね」<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 13:46:35.79 ID:j737mcDO<>今回長かったな
運営がお金払わないまま海外出張行ってたみたい<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 21:57:21.26 ID:cd3OQ3k0<>乙
質問すまんけど紅黄の身長、体重、体術の練度はどれくらいなの?
答えにくかったら、答えなくても大丈夫です
<>
◆qOeedHp6KI<><>2010/10/21(木) 22:22:02.99 ID:Oo3BPZY0<>>>272
おのれ運営め、我が精神を削り取っていきおったわ
>>273
身長は170半ばくらい、上条一方よりは高くて青ピよりはたぶん低い
黄泉川と並んで同じか少し高いくらいのイメージ
体重はあまり考えてなかったけど、体格は悪くないレベルなので、60後半から70半ばまでかな
体術はアンチスキルとの演習でひけをとらないレベル、ただし風紀委員での評価は並
上条より上、土御門はちょっとわからない、高位能力者相手だと厳しいけど下位なら体術のみで対応可能
得意技は首筋に落とす手刀
こんな感じかな?<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/21(木) 23:09:10.59 ID:cd3OQ3k0<>答えくれてありがとう<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/22(金) 10:59:44.35 ID:NzVOqXMo<>条件付きレベル5相当で体術完備だと…<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/23(土) 03:04:54.90 ID:rQacaeE0<>オールラウンダーだけどスペシャルリストじゃない
かと言ってプロフェッショナルじゃないから、
戦力としては扱いにくいだろうな…
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/10/24(日) 02:37:26.68 ID:CPf0MbY0<>数年前に書いた小説が出てきた……、……昔の方が上手かったんじゃないか?俺<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 02:47:37.70 ID:88SS1nYo<>俺はとりあえず続きを読みたいですな<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/10/24(日) 02:51:39.14 ID:CPf0MbY0<>そろそろ投下するっす、少々お待ちください<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 03:09:27.89 ID:88SS1nYo<>うん!うん!<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:22:14.55 ID:CPf0MbY0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
振りぬかれた拳を真後ろに飛んで回避する。
絹旗最愛の弱点は射程距離だ。
単純に遠距離戦が出来ないだけでなく、得意の近距離戦においてもリーチ差が出る。
小柄な少女が発揮する怪力は、知らない者が見ればその光景に圧倒されるだろう。
だが、知る者が冷静に対処すれば、窒素装甲《オフェンスアーマー》は決して対抗できない能力ではない。
(能力の本質は怪力ではなく防御力の方だが……今は関係ないな)
段々と『アイテム』の拠点から場所を遠ざけながら、攻撃を避け続ける。
わざわざドアを開けて顔を付き合わせるところまでお膳立てしてくれたのだ、
話せる位置までエスコートくらいはしなければ、男として情けない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
午後十一時半・総合病院
地下に設けられた、一般とは異なる特殊医療施設。
その一室、御坂妹が以前使っていたものと同系統の医療カプセルが鎮座していた。
「培養槽、ですか」
「うん、使わないで済むのが一番なんだけどね」
カエル顔の医者に同行して、一人の女性がこの部屋に足を踏み入れた。
木山春生。
幻想御手《レベルアッパー》事件の主犯であり、御坂美琴や白井黒子とも縁深い研究者。
「紅黄君は止まらないだろうね、彼は自分の終わらせ方が最善だと思っている」
まるで、弱い者が偶像にすがるように、それ以外の一切の選択肢を排除して。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:22:46.71 ID:CPf0MbY0<>
「私にできることであれば、協力はします……しかし」
「白井君がその培養槽に入ることになった場合、管理は君にまわってくることになるね」
紅黄碧が信用するのは冥土返し《ヘヴンキャンセラー》のみ。
そして、彼が信用する者の中で、彼女がこの役目に一番適していた。
「おそらく、紅黄君は既に戻れない位置まで能力を使っているだろうね、けれどそれを明かさない」
その意図するところは「治療はいらない、邪魔をするな」ということ。
「もう取り返しはつかないなら、せめて雑事に追われぬように……
彼が能力を治せない位置まで進行させたのは、ボク達に準備をさせるためなのかもしれないね」
もう、戻れない。
出来ることは対処療法のみ。
「すまないね、再び御坂君を騙すような役目を負わせてしまって」
「それは、仕方がありません……ですが、その紅黄という人物の目的はどういうものなのですか?
自分を壊してまで、一体何を望んでいるというんです?」
「……彼はね、割り切れる人物なんだ、ダメなものはダメとすっぱりとね」
それは、自分の命も、自分よりも大切な他者の命でさえも。
「そもそも、紅黄碧の目的は、木原灰花の救出だったんだ」
語り始めるのは不可避の原因。
超能力者が多かれ少なかれ見ることになる、地獄の一部だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ええと、改めて順を追って話すと……暗闇の5月計画あたりか、
ようやく俺の精神が安定してきたのは、使えば忘れるという恐怖を克服できたわけだ」
「それで正式にレベル3に都落ちですか、超へタレですね」
「ヘタレと言っては当時の俺に失礼だな、真剣だったんだ、あれでも」
学生寮と思われる建物が立ち並ぶ区画。
その空き地に作られた公園に、紅黄碧と絹旗最愛はいた。
「いいから、とっとと話を進めて下さい、何十分も戻らないと超怪しまれます」
「はいよ、けど隠れ家に監視カメラとか、少なくともグループにはなかったぞ?」
「暗部上層部というよりフレンダの趣味ですね、おそらく目視で起爆するタイプの爆弾とかあるはずです」
「恐ろしい趣味だな」
「とにかく、わたしはアイテムを裏切るつもりはありません……ただし、あなたの話が有益であるなら、聞いてみてもいいかもしれません」
言外に続きを促されて、紅黄は話を本筋に戻す。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:25:08.07 ID:CPf0MbY0<>
追いかける絹旗から、紅黄が脚力と歩幅の差で逃げ回っていたのがほんの10分前。
数分走り回ったところで、互いに確信を持って相対した。
「前回に比べて今回は周到すぎますね……デートの誘い方が超最悪です」
「やれやれ、話を聞いてくれそうでなによりだ」
滝壷の側を離れるというあからさまな判断ミスと、一切の反撃をしないというメッセージを受け取りあい、
いま、二人はわずか十数分の会談機会を手に入れていた。
「んで、そこから白井黒子と木原灰花を探し始めた、
俺は二人のことを知っていたが、二人は俺を知らないからな、
まぁ元気で生きていればその手助けを影ながらできればいいと思ったわけだ」
「超ストーカーですね」
「俺自身ぶっ壊れてたからな、自分だけの現実《パーソナルリアリティ》を砕かれて、
実験のメインプランとして接続されたのがだいぶ堪えた」
「ちなみに、それ以前の記憶は?」
「あるぞ、再生された映像を見てるみたいでまるで現実味ないけどな」
「なるほど、そんな中で唯一現実味を持ったのが」
「白井黒子だ、話しかけてくれたのあいつだけでな〜、もう俺の世界は白井黒子一色だった」
「名前は超二色ですけどね」
「で、まぁ実験が佳境に入って来たんだが、俺はここで白井を実験から外した、助けたかったからな」
「おや、ただの廃人のはずが意思をもったということですね」
「そのせいで統合実験が早まって、結果的に最悪の暴走をした」
自販機で買ったコーヒーを煽ると、ほぅと一つ息を吐く。
「結果、俺が得たのは不完全なレベル5、そして感情を取り戻していた俺は能力の使用を極端に嫌った」
「あなたは放棄され、実験は木原灰花をメインにシフトしていったわけですか」
「汚い部分を背負わせたようなもんだからな、相当嫌われてるはずだ」
「ま、汚いだのおぞましいだのは超慣れてますので」
同じく自販機で買ったサラサラおしるこを一口煽る。
「その木原灰花の救済があなたの目的ですか?」
「ああ、紛いなりにもいまこうして俺が人間のように話をしていられるのは、あいつの影響が大きい」
木原灰花から得たのは、歎きと恐怖と憎悪。
自らの精神を切り貼りされ、あまつさえ食い合うという想像を絶する恐慌を経て発した感情。
「白井によって俺の感情は無二の信頼という赤ん坊レベルにまで構成され、
木原によって人間が持ちうる感情を叩き込まれた感じだな」
「……、能力よりもあなたそのものの方が超レア存在のように思えてきました」
どこまで信じていいかわからないが、嘘をつくような内容ではない。
それに、嘘にしてはあまりに突飛すぎた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:25:39.91 ID:CPf0MbY0<>
〜〜〜〜〜〜〜〜
「自分だけの現実《パーソナルリアリティ》の粉砕に再構築、ですか」
木山は、俄かには信じがたいという表情で冥土帰し《ヘヴンキャンセラー》の話を聞いていた。
「一体どこまでが紅黄碧で、いつからが紅黄碧と言えるのか、それは彼自身にももうわからない
だから紅黄碧は過去の自分をただの記録と割り切った」
捨てるのではなく、それらにデータとしての価値しか見ない。
「そして、現在と未来にもっとも大切なものだけを見据えた」
それが、白井黒子と木原灰花。
「けれど、彼が紛いなりにも活動を始めた時、既に木原灰花はその能力に食われていた」
モルモットであり、肉体も朽ちた現象としての存在。
「二週間前に、木原灰花は脱走した……脱走するよう筋道を作ったのは紅黄碧だけどね」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:27:10.65 ID:CPf0MbY0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「事情はわかりましたが、わたしにどうしろと言うのですか?
アイテムは木原灰花の件から手を引けというのであれば、それは超無理な相談です」
「いや逆だ、むしろ手を貸してくれ」
「……、……、……はい?」
「グループからの情報が途絶えてな、暗部側の情報が手に入りにくいんだ」
「アイテムを、グループ代わりの情報源にするつもりですか?」
「そこまでは期待しないさ、ただ少しだけ協力してくれればいい」
「アイテムとしての協力なら超不可能です」
「絹旗最愛個人的にならば?」
「アイテムに支障が出ないよう、見返りしだいですかね」
「充分だ」
「で、望む内容は?」
「その時々のささやかな協力、全部の事情を知られてもいい協力者がいなくてね」
「見返りの方は」
「パティスリー・イグアスのタダ券5枚」
「超バカにしてますね」
「では10枚」
「……、……超もう一声」
「では、お前の求めに応じてこちらも助けになろう」
「なぜそこでシリアスに戻りますか、超不愉快です」
結局、タダ券は(交渉の末)12枚で落ち着いた。
「ああそうだ、ついでに頼みたいんだが」
「なんですか?」
「お前の携帯貸してくれ」
13枚に増えた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:28:14.05 ID:CPf0MbY0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
麦野沈利は怒り狂っていた。
原因は電話の相手、声は男。
ただし掛かってきた番号は絹旗から。
麦野とフレンダ(と運転手の浜面)は真意城大学に乗り込んだはいいものの、
留守にしている間に逆にアジトを押さえられ、挙句の果てに人質までとられていた。
『というわけで、絹旗最愛と滝壺理后は俺が捕らえた』
捕らえたじゃねぇっつぅんだよぉぉぉぉおお!!! と麦野の表情が語っていた。
『俺の正体はわかってるんだろう? 仮にも元レベル5だ、レベル4一人を護衛にして、
後先考えず突っ込んだのは失敗だったな原子崩し《メルトダウナー》、お前さんがいれば
厄介だったんだが、いやぁ、頭に血が上るとレベル5でもこんな単純になるんだなぁ』
ブチコロシ確定どこじゃねぇ、真理だ、絶対真理としててめぇをブチコロス!!
横でフレンダが怯えながらそのメッセージを理解していた、表情で。
声自体は怒りのあまり出ていなかった。
『さて、それでは取引と行こうか』
取引とか関係ねぇ、ぜってーブチコロスと、やはり表情が語っていた。
『木原灰花、俺も追ってるんだがなかなか見付からなくてね』
せせら笑うような声がトーンを落として、落ち着いた声色に変化していく。
『だが、彼女が根城にしていた場所は突き止めた
第10学区に収容所がある。といってもそこに服役してるのはただの囚人じゃない、
ただ捕らえておくよりも有効活用した方がいいと判断された囚人だ。
名こそ収容所だが、中身はそこらの施設よりずっといい専門の研究設備なんかが揃ってるらしい
木原灰花がいたのはその収容所の中だ、ああ、勘違いするな、木原灰花が収容されていたんじゃない
彼女を研究していた科学者がそこに収容されているんだ』
気がつけば、麦野の表情が落ち着きはじめていた。
彼女も知っていた。木原という姓と、そこに収容されているその血族を。
テレスティーナ・木原・ライフライン。
『暗部として手を回しても直接乗り込んでもいい、テレスティーナを吐かせてみろ、面白い情報が出てくるかもしれないぞ』
それだけ言って、電話は切れた。<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/10/24(日) 03:30:33.07 ID:CPf0MbY0<>
「……」
「む、麦野? その、どうするわけよ?」
「滝壷と絹旗をわざわざ失うのは痛いし、有力な手がかりであることは事実……
情報の裏を確認しだい、第10学区へ向かうわよ」
「へ? あ、りょ、了解」
「それと……」
「な、なに?」
「フレンダ、あんたは個別に砂上楼閣《レヴォリューションエラー》を調べなさい
わかってるわね? ブチコロスわよ、必ず泣くほど後悔させてやるわよ
だからフレンダ、いい? 絶対にやつの尻尾つかんでやれよぉぉ!!!
「ひ、ひぃぃ、わ、わかったわけよ、じゃ、じゃあわたしは別行動でっ」
転がるように離れていくフレンダ、残されたのは猛り狂う麦野と硬直している運転手。
「さて浜面、行こうか」
(な、なんでこんな状態のこいつと二人きりに……っ!?)
「……なぁ、行こうかって……いってんだよォォ!!!」
狂気を孕んだレベル5が動き出す。
目標は第10学区。
紅黄碧にとっての忌まわしき存在、テレスティーナ・木原・ライフラインの元へ。
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/10/24(日) 03:32:18.59 ID:CPf0MbY0<>今回ここまでです。
前回から一月くらい間が空いてしまって申し訳ない。
シナリオ修正もなんとかなりそうな具合です。ちょっとおかしいとこがあるかもしれないので多めに見てやってくださいorz
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 03:38:13.48 ID:J6U.ujgo<>乙
次も期待して待ってるぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/24(日) 09:58:37.41 ID:4QzHR7o0<>乙
昔のを見て、絶望した事は何度でもあるさ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/10/29(金) 11:19:41.56 ID:BDnDZcM0<>なんとなく最初から読み返してみたが、>>1の世界観はほんと独特だな
オリキャラ除いても禁書SSの中では異彩だわ、エログロがないのにいい意味で独特のエグさがあるというか<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/11/08(月) 03:42:59.70 ID:VdSrQ420<>レス感謝です。
再び難航中、というかメインで動くキャラが多くなったので書き方が厄介になった感じ
やっと上琴がメインで動くのでいちゃいちゃさせたいけれど、ものの見事に別行動でやっはー<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/11/09(火) 02:40:46.22 ID:UXZC23s0<>間空きすぎなので出来たとこまで投下、たぶん3レスくらい<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/09(火) 02:51:30.70 ID:UXZC23s0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
猛り狂う麦野沈利が動き始める、少し前。
白井黒子は常盤台の寮に戻っていた。
「お姉さま……もうおやすみですの?」
電気が消えた暗い室内にテレポートで入りこむと、御坂を起こさないよう静かに服を着替えていく。
いつもならば、お姉さまの寝顔を観察したりだのするのだが、今日はそういった気分になれなかった。
紅黄から渡されたメモはポケットに入っている。
言われた通り尋ねてみるべきか、尋ねたところで何を聞けばいいのか、白井には検討もつかなかった。
(そういえば、この住所をお姉さまに教えたら、不本意ながら大喜びでしょうね)
逆に、何も言わずに発見されれば、あらぬ誤解を与えそうな気がする。
(お、恐ろしいですわね……そう、あの殿方の自宅を尋ねたことがお姉さまに伝われば、
わたくしにもお姉さまにも良い事はありませんわ、やはりもう一度先輩を問い詰めて――)
ぶつぶつ呟きながら服を脱ぎ終わる。
シャワーを浴びるか、それともこのまま寝てしまおうか思案して――おかしなことに気がついた。
(お姉さま……やけに静かですわね?)
寝息も気配も、まったくない。
「お姉さま……?」
ゆっくりと、掛け布団を捲っていく。
中には、御坂のかわりに押し込められた大きめのぬいぐるみが一体。
「お、お姉さま、一体どちらへ!?」
以前にも同じようなことがあった。
何か大きな事件に足を踏み入れて、けれど白井にはその真相を最後まで明かしてはくれなかった時。
だが、今回は――
「最近の出来事と言えば、初春や佐天さんとのすれ違い、ですわよね」
御坂が、二人との間に出来た溝を意識していたのは事実だ。
会えばどことなくぎこちなく会話をして、互いに刺激しないような言葉を並べる日々が続いていた。
なんとかしたいとは白井も思っていたが、紅黄が言っていたように時間が解決するとも考えていた。
「けれど、お姉さまはそう思っていなかった?」
こんな、夜中に飛び出すほどに思いつめていたのか。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/09(火) 02:56:40.23 ID:UXZC23s0<>
「………いいえ、そんなはずありませんわ」
御坂の外出自体は別に珍しいことではない。
ただ、いずれの場合も何か必ず目的があった。
そう、夜中でなければならない目的が。
友人との仲直りに尋ねるには、少々不向きな時間だ。
現在の御坂の行動は、もっと他に原因がある。
「まさか……」
白井はクローゼットを開けると、納められた衣類をチェックしていく。
「制服は、全部ある……ないのは、上着に……短パンに……」
常盤台は外出時も制服着用が義務付けられている、御坂はそれを破って私服で出かけている。
「……っ」
例えば、どこかに忍び込む場合、制服では身元がばれやすい。
「お、お姉さま……まさか、そんな」
木原灰花と遭遇して一週間、御坂は明るさを失っていた。
いつもやや暗めの表情で下を向き、時折無理に見せる笑顔が余計に痛々しさを煽っていた。
それは、初春や佐天との件が原因だと、白井は勝手に想像していた。
「……違った……、……わたくしの、思い込みでしたのね」
会って、話して、その繰り返しで時間が解決する。
だから、積極的に四人で会うようにしていた、例えギクシャクしても、その溝さえ埋めるように。
あの三人にすれ違いなどなかった。
ただ一人、白井黒子だけがそんな機微に気がつかなかった。
その間、白井は――ただ逃げていた。
人の死を喜んだ後ろめたさから、御坂を初春を佐天を正面から見ていなかった。
いつも目を逸らして、表面上は何事もなかったかのように装いつつ。
どこか、距離をあけて活動していた。<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/09(火) 02:58:10.79 ID:UXZC23s0<>
「ば、ばかばかばかぁ! 黒子のばかっ! なんで、どうして気づきませんでしたの!」
そして、御坂は後輩の異変とその原因を、ずっと憂いていた。
だから、行動に移した、その原因を探るため、木原灰花の足取りを追うために。
「お姉さま……黒子は、」
御坂の行動理由は、白井さえも知らぬようなものでない限り、それが一番有力だった。
「一体、どこに……」
手がかりはない。
パソコンやデータディスクを調べればもしかしたら痕跡があるかもしれないが、すべてを見直す暇はなかった。
「ダメ……、……お姉さまは、お姉さまこそあの木原灰花に一番近づいてはならないというのに」
灰花が黒子に執着しているのであれば、その黒子が慕う御坂こそが、最大の憎悪の対象に成り得る。
「お姉さま、どこに行ってしまわれたんですの」
途方にくれた掌から、いつの間にか握り締めて丸まったメモが落ちていく。
「……」
そういえば以前、御坂が巻き込まれていたであろうなんらかの事件が解決した時、
あの男との距離が、やけに縮まっていた。
というより、御坂美琴は、上条当麻をはっきり意識していた。
「もしかして、今回も、あの殿方と関わりが……?」
確率は低かった。
けれど今は、それに縋るしか方法がない。
深夜の空に、再び白井は飛び出した。
上条当麻の元に向かって。
<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 03:11:21.88 ID:F8XZTcAO<>お久しぶり!<>
流れまとめ ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/09(火) 03:11:33.69 ID:UXZC23s0<>本編ここまで、ほんとにきっかり3レスだった
ついでに、ここまでの流れをざっと並べてみた
(7年前)
白井黒子・木原灰花・紅黄碧
AIM拡散力場の統合実験に参加
↓
↓7年
↓
木原灰花・テレスティーナの研究施設から脱走
↓
↓一週間
↓
紅黄碧・白井黒子の監督員として第177支部に配属
>>2はここからスタート
↓
↓一日
↓
夜、疾走光矢との戦闘
↓
↓一日
↓
病院にて、紅黄碧の入院と白井黒子見舞い
同日午後
白井黒子、木原灰花と遭遇
紅黄碧、アイテムと交戦
↓
↓同日
↓
アイテム、木原灰花の最追跡の方針を固める
紅黄碧、自宅に戻ったところを御坂妹の待ち伏せ
木原灰花、小萌先生に拾われる。
↓
↓一週間
↓
紅黄碧・177支部にて白井黒子に上条当麻の住所を教える。
麦野沈利・フレンダ・浜面仕上、真意城大学に移動。
↓
↓同日
↓
紅黄碧・アイテムの拠点を襲撃、絹旗最愛と裏取引
麦野沈利、真意城大学からテレスティーナの研究所へ移動。
白井黒子、寮に戻り御坂の不在に気づき上条当麻の元へ移動。
御坂美琴、テレスティーナの研究所に侵入。
現状こんな状態
レス感謝、なるべく書くスピード上げたいところですorz<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 03:11:45.11 ID:7jOCGLso<>おおうここで終わりか
続き期待<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage saga<>2010/11/09(火) 03:13:55.80 ID:F8XZTcAO<>続き期待してる
wktk astk<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2010/11/09(火) 09:59:22.45 ID:UpsBvMAO<>面白いじゃないのよ<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/14(日) 21:41:07.32 ID:gvHiIFs0<>レス感謝感激雨あられ、レス乞食の気持ちがとってもわかる今日この頃
期待や面白いという一言が大きな力になります
本日投下予定ですが、冬コミ出展予定なのでそちらの作業に追われてやや不定期になるかもしれません
(でも何かに追われてる時ほどなぜか筆が進んだりもする)<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/11/14(日) 21:44:11.47 ID:gvHiIFs0<>うむ、トリップを付け忘れてた<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/14(日) 23:44:06.37 ID:gvHiIFs0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……」
午前0時。
月詠小萌宅。
三人で暮らすには明らかに狭いおんぼろアパートの一室では、少女(少なくとも見た目は)二人が並んで寝ていた。
木原灰花は、暗闇を見つめていた。
眠ることも出来ず、かと言ってなにもすることもない。
すぐ傍らには、彼女を拾ってきた見た目が小学生の教師が眠っている。
小萌に拾われてから一週間。
ほとんど喋らず、何を言われても反応せず、灰花は室内でただ時間を過ごしていた。
そんな灰花に、小萌は事ある事に声を掛けていた。
今日は学校でなにがあった、誰が補修になった、上条ちゃんはまた女の子を云々。
同居している結標淡希の方は適当に感情を逸らしてしまえば、なんの問題もなかった。
彼女は今も灰花に興味すら抱いていないはずだ。今日のように、仕事と言って帰らない日も多い。
たが、小萌の方はそうはいかなかった。
「灰花ちゃん? また眠れないのですか?」
感情を操れない。
たとえ操っても、出勤して帰って来ると元に戻っているのだ。
3日目あたりから、徒労を感じて灰花は小萌に能力を使うのをやめていた。
「……」
そして、おせっかいなことに、あまりにおせっかいなことに、彼女は灰花の内情に迫りつつある。
「灰花ちゃんには、辛いことがあったのかもしれません、前を向くのが今は怖いかもしれません」
優しく、あまりに優しくそっと手を握られた。
身じろぎすれば身体が密着するような状況で、誰よりも近くに接近された状態で。
なぜか、木原灰花はかつてないほどに無防備だった。
「けれど、前を向く意思をなくしてしまってはいけません、いつかきっと、灰花ちゃんが勇気を持って進めるように」
白井黒子を食べたかった。
しかし、彼女はそれを拒んだ。
そして、灰花以上の意思の強さと明確な答えを持って突き返した。
その時点で、既に木原灰花は死に瀕していた、明確な感情と目的を抜きに、ただの現象は一所には留まれない。
「その時まで、小萌先生は灰花ちゃんの側にいますからね」
現象でしかない掌を、小さな手が包み込む。
意思が薄れたこの身体が一体なぜ一週間も持ったのか、いまわかった気がした。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/14(日) 23:45:04.67 ID:gvHiIFs0<>
「もちろん、結標ちゃんも味方ですよ? だから、夜は、ゆっくり、眠っても大丈夫なんです」
この暖かさに、身をゆだねたくなっていた。
思えば、いつからおかしくなったのか。
無能として、木原一族の爪弾きにされた時か。
そのため、他の無能力者と一緒に実験に放りこまれた時か。
あるいは、その中で白井黒子に陰湿な嫌がらせを繰り返した時か。
それとも、紅黄碧からメインプランを押し付けられた時か。
他者を殺し、喰らうことに慣れてしまったせいか。
(あ――)
思い出した。なぜ、白井に固執したのかを。
考えられない脳で必死に策を張り、おびき寄せ、《レールガン》にさえ自分は対抗できると確信して。
なぜ食べたかったのか、なぜ白井だけを追い求めたのか。
その理由を、思い出した。
木原灰花は、生物として既に死んでいる。
灰花本人は知らないことだが、その在り方はAIM拡散力場の一部であり、端的に言えば「超能力の塊」である風斬氷華に酷似した物になっている。
「人間」としての彼女を知るのは、白井黒子ただ一人。
紅黄碧がそうであったように、木原灰花もまた、白井黒子を心の拠り所として生きてきた。
能力を喰らう化け物のような存在に変わっても、そこだけは変わらずに。
「あ、そうか――」
「?……灰花ちゃん?」
食べるという行為しか残されていなかった。
だから食べようとした――。
それ以外の人間としての感情を、今ようやくおぼろげに思い出した。
「わたし、クロのこと、大好きになってたんだ――」
「灰花ちゃん、一体――」
唐突に、小萌の携帯電話が振動した。
「って、なんですかこんな夜中に……、……上条ちゃん?」
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/14(日) 23:45:35.16 ID:gvHiIFs0<>
携帯のディスプレイが淡い光を発する。
表示されているのは、灰花が《レールガン》を対象に能力を使った際、対象となって巻き込まれたレベル0。
「イマジン……ブレイカー……」
「もしもし、上条ちゃん? こんな夜中に……もしもし? どうしたんです?」
電話の向こうから聞こえるのは、話し声ではなく叫び声。
その声は、灰花がよく知る人物のものだった。
「……、クロ?」
なぜ白井の声が聞こえるのか、どうして幻想殺しの元にいるのか、灰花にはわからない。
そして、なぜ洩れ聞こえる音に、ガラスの割れたような音や怒号が混じっているのか。
「上条ちゃん? なにをしてるんですか? どうして女の子の声が――って、灰花ちゃん、どこにいくのですか!?」
木原灰花は一瞬で起き上がると、はだしのまま玄関から飛び出した。
「クロ……クロは、どこ?」
木原灰花が能力を起動する。
「クロ、クロは、どこ?」
会ってどうするかわからない、ただ灰花は白井黒子に会いたかった。
「クロは、どこっ!?」
自発的に能力を発動するのは、これが始めて。
明確な名前のないそれに付けられたコードネームを思い起こす。
「……っ! 空中楼閣《リミテッドエラー》……起動」
瞬時に、AIM拡散力場を通じて学園都市に存在する全能力者の位置が割り出される。
白井黒子の位置を確認すると、今度はAIM拡散力場に自分の身体を溶け込ませていく。
姿が溶けて消えていく。
現象として、虚数学区・五行機関に迫る実験体としての姿。
<>
本編 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/14(日) 23:49:35.83 ID:gvHiIFs0<>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
学生寮が立ち並ぶ、第7学区。
裏取引を終えた直後、絹旗の電話に着信があった。
「ん? 携帯に着信が来ました」
「ばれたか?」
「なら携帯になんか連絡してこないでしょう……もしもし? こんな夜更けに電話してくるなんて常識が超ありません」
『こいつときたら! やっと繋がった!麦野が電話に出やしないし!!』
「わたしのとこにまで連絡が来るなんて珍しいですね、超緊急事態ですか?」
『こいつときたら! なんでそんなのんびりしてるのよ、木原灰花の捕獲に別働隊が動いてるのよ!』
「は? 別働隊?」
『そいつらはもう木原灰花に関係が深そうな奴を突き止めて追ってるらしいわ、今データそっちに送るから』
そう言って、絹旗の端末に一方的にデータを送信してくる。
「えっ、これは……」
『ターゲットの名前は白井黒子、常盤台中学所属のレベル4よ』
傍らで、険しい顔をした紅黄がメモを書き殴って絹旗に見せる。
「あ、ええと『追ってるのはどこの組織?』ですか」
『同じ暗部よ! ああもう腹立だしい、こいつときたら人の仕事に横槍いれてきて!』
「えっと……?」
『アンタ達、確かいま第7学区よね? ちょうど近いし奴らも事故ってことで適当にやっちゃって』
「その……『そいつらの名前は』?」
『グループよ!』
現在時刻、午前0時。
一週間の時を経て、事態がさらに動き始めた。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/14(日) 23:52:41.87 ID:gvHiIFs0<>本編ここまでです
ちなみに原文では触れていませんが、小萌先生が毎回灰花の能力から解除されてるのは学校で上条さんの幻想殺しに触れてるからです。
灰花が感情を取り戻していったのも、同じく上条さんの幻想殺しの影響です。
<>
◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/11/14(日) 23:55:31.63 ID:gvHiIFs0<>なんか今日は各スレの更新が活発だ、いいことだ
やはりきぬはた荘の安定感はピカイチだな<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 00:21:03.36 ID:Yaz8IBso<>乙
ついに変態グループ来るか…<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/15(月) 00:21:55.40 ID:PogNGfs0<>乙
<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/11/20(土) 23:52:43.57 ID:ukBxtl20<>冬コミ原稿ド修羅場中につき、しばらく更新できそうにありませんorz
再開はおそらく12月半ばになります。<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/21(日) 03:40:20.18 ID:Wiovh2Y0<>身体に気をつけろよ!<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/11/21(日) 03:45:20.55 ID:Wiovh2Y0<>酔い過ぎ連投すまん
×身体
○風邪<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/12/08(水) 01:15:10.94 ID:xcCsfRg0<>>>309
カミやんは毎日子萌先生をナデナデしとるんかいな……ビキビキ<>
◆qOeedHp6KI<>sage<>2010/12/20(月) 02:12:03.22 ID:LgWMykw0<>お久しぶりです、なんとか冬コミの原稿も終わりまして復帰いたします<>
能力紹介『透過物質』 ◆qOeedHp6KI<>saga<>2010/12/20(月) 02:13:06.48 ID:LgWMykw0<>黒子「そんなわけで第六段ですの」
紅黄「どんなわけだ」
黒子「今回は透過物質《オールスルー》ですの」
紅黄「読んで字の如く、物質透過能力だ、割と便利だぞ」
黒子「わたくしのテレポートとはどう違いますの? 物質を通り越して転移もできますのよ?」
紅黄「転移よりも変化の亜種だろうな、転移は移動だがこいつはあくまでその場での変化だ」
黒子「何者も触れられない状態になるということですの?」
紅黄「さらにその属性を他の物質に付与することもできる、ただし離したら効果は消える」
黒子「発動中は無敵、けれど行動を起こすためには解除しなければならない」
紅黄「攻撃時が最大の弱点だが、特に俺が使う場合この弱点は致命的だ」
黒子「能力を切る必要がある、つまりその時点で先輩の透過物質は発動しなくなる」
紅黄「ご名答。本家よりも能力の幅がずっと狭いんだ」
黒子「……もしかして、先輩の能力は多かれ少なかれすべてこういう弱点を?」
紅黄「同じ能力でぶつかり合えば互角、けれど慣れない能力を砂上楼閣を通して使う分持久戦は不利だな」
黒子「持久戦をするだけの持続時間もないでしょうし……だからこその体術、だからこその首筋への一撃ですのね」
紅黄「基本的に、能力は補佐程度にしたほうがいいんだよ、俺の場合は」<>
以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします<>sage<>2010/12/21(火) 19:55:18.71 ID:ngOW2EM0<>待ってましたぜ<>
VIPにかわりましてGEPPERがお送りします<>sage<>2011/01/13(木) 23:08:36.19 ID:xGLODwywo<>板移転みたいだから依頼出したほうがいいぞ作者
■ 【必読】 SS・ノベル・やる夫板は移転しました 【案内処】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1294924033/
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/
<>
真真真・スレッドムーバー<><>移転<>この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/29(土) 15:14:40.18 ID:WF88Ao/DO<>来たか…<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/01/30(日) 11:09:50.15 ID:mbIuSezAO<> まだですかぁ? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/02/07(月) 14:33:27.28 ID:I2jvOcSj0<> 超wwktkなんですけど! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/08(火) 01:12:09.39 ID:pOFNXuIB0<> 続きマダー? <>
sage<><>2011/03/30(水) 12:37:31.32 ID:03PdZLHP0<> 作者さんが被災していなければいいが…。 <>
saga<>sage <>2011/03/30(水) 15:04:18.54 ID:3Uk1NuTZ0<> >>326
ワロタ <>