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HTML化した人:
lain.
★
唯「ああああムナクソ悪いムナクソ悪いよおおおおおお」
1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/22(土) 23:57:53.40 ID:dgCDbhPBo
書き手どもが胸糞悪いSSを書いて読み手どもが格付けするスレ
晒しもあるよ☆
・あくまでも「ムナクソ悪いSS」であって、「駄作」ではありません
・駄作品評会にならないために、今回はあえて駄作にする&書き手の行為によるムナクソ悪さの演出は禁止
ただし書き手が意図せずに駄作扱いされた場合はこの限りではありません
・投票基準は「鬱になった」「○○がクズすぎてムカついた」「グロかった」、どれでも構いません
とにかく「ムナクソ悪くなったかどうか」を基準に投票してください
ただし上記のように「つまんなかった」はムナクソSSとは別物なので、その点は注意して下さい
・「読み物として面白かったランキング」は、例えムナクソSSとしては微妙でも文章力、構成力、発想力、その他もろもろ読み物として面白かった作品に投票してあげてください
もちろん読み物としてもムナクソSSとしても優れていると思ったら一作に投票してもおk!
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:00:01.78 ID:JYdFmQkUo
投票用テンプレ
【ムナクソ悪くなったSS】
1位
感想
2位
感想
3位
感想
【読み物として面白かったSS】
1位
感想
2位
感想
3位
感想
※感想欄は空白でもおk!
○○以外はつまんね!と思ったらその作品以外記入しなくてもおk!
1位4点、2位2点、3位1点として集計し、点数の高さで順位を決めようと思います
1位の配点が高めなのは、1位であることの重みを重要視&企画のテーマ上、3位票の多い作品より突き刺さる作品を優先したいと考えた結果です
なお、投票の際はコチラで↓
唯「かべなぐ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294925211/
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:08:50.23 ID:JYdFmQkUo
投下用スクリプト
http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/197090
pass→kahlua
えー、大変恐縮ではございますがー、最初に前座として一本書かせていただきます
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:10:19.12 ID:JYdFmQkUo
梓「アイス食べてる唯先輩にドライヤーを吹きかけたい」
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:18:41.12 ID:JYdFmQkUo
平沢家
唯「あずにゃんと食べようと思って冷蔵庫にアイスとって置いたんだ!一緒に食べよ!」
梓「けっこうです」
唯「えー?じゃあ私一人で食べちゃうね」ガサゴソ
唯「んー、おいちー」ペロペロ
梓「…」カチ
唯「アイスはお菓子の王様だね〜」ペロペロ
梓「…」ブオオオオ
唯「わっ?あずにゃん熱いよ!」
アイス「」ドロリ
唯「ああっ!?」
アイス「」
唯「わ……私のアイスが……」グスン
梓(ウヒヒヒヒ)
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:19:54.09 ID:JYdFmQkUo
梓「メールしてる唯先輩にワンギリしまくりたい」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:29:01.78 ID:JYdFmQkUo
部室
唯「んーあずにゃんかわいー」スリスリ
梓(ウヒヒヒヒ)
唯「あっ、そーだ。練習の前に憂にメールしないと」
律「なんで?」
唯「晩ゴハンのリクエストだよ〜。よーし!今日はカレーにしてもらおう!」
唯「えーと、きょうはカレーが」ポチポチ
梓「…」サッ ピピッ
唯「ん?電話かかってきた」
梓「…」ピ
唯「あれ??まぁいいや、えーと、きょうはカレーが食べ」ポチポチ
梓「…」ピ
唯「あうっ!また電話がっ。うむむ……きょうはカレーが食」ポチポチ
梓「…」ピ
唯「うぐぅ!今日はカレー」ポチポチ
梓「…」ピ
唯「メールできない……」グスン
梓(ウヒヒヒヒ)
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:31:00.83 ID:JYdFmQkUo
梓「唯先輩とカラオケに行って最初にさだまさしの『防人の詩』を歌いたい」
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:38:47.44 ID:JYdFmQkUo
カラオケ
唯「カラオケ久しぶりだなぁ。えへへ〜。なんかさ、デートっぽくない?」
梓「そんな事どうでもいいですから、とりあえず先に曲入れちゃっていいですか?」
唯「どうぞどうぞ〜」
梓「では」ピピッ
唯「あずにゃん何歌うのかなー?やっぱり可愛い歌だよねー」ワクワク
唯「一曲目はさ!こう、可愛くて盛り上がるのが鉄板だよね!」
唯「えへへ〜たのしみ〜」
チャララララララーン♪
唯「え」
梓「おしえて〜くだ〜さい〜…♪」
唯「……」
梓「海は〜死に〜ま〜すか」
梓「山は〜死に〜ま〜すか」チラ
唯「うう……」グスン
梓(ウヒヒヒヒ)
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:40:13.19 ID:JYdFmQkUo
梓「唯先輩とカラオケに行って唯先輩の番になったらウォークマンのイヤホンはめたい」
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:50:45.24 ID:JYdFmQkUo
梓「終わりです」
唯「わ、わー……あずにゃん渋〜い……」
梓「次、唯先輩の番ですよ」
唯「よーし、じゃあ私は明るいのいっちゃおうかな!」
唯「ていっ!」ピピッ
梓「……」ゴソゴソ
唯「えー、それではあずにゃんのために歌わせていただきます!大塚愛でさくらんぼ!」
梓「…」スチャ
唯「あいしあう〜ふ〜た〜り〜♪」
梓「……」シャカシャカ
唯「と〜な〜りどおしあ〜ず〜にゃんとあ〜たしさくらんぼ〜♪」
梓「アイレッドニューストゥディオーボォーイ……」シャカシャカ
唯「え…えがおさく〜…き〜み〜と〜…♪」
梓「ウォークアップフォロウブベッド……」シャカシャカ
唯「……」ピッ 演奏停止
唯「ううう……」グスン
梓(ウヒヒヒヒ)シャカシャカ
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:52:31.66 ID:JYdFmQkUo
梓「唯先輩が数学の問題やってる横で円周率をひたすら言い続けたい」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 00:59:13.10 ID:JYdFmQkUo
平沢家
唯「あずにゃんごめん!先に宿題だけ終わらせなきゃ!明日私が当てられる番なんだよ〜……」
梓「どうぞご勝手に」
唯「本当にごめんね。すぐ終わらせるから!」
唯「よーし!えーと、ここはまずエックスでくくって……」
梓「3. 1415926535……」
唯「ここをワイで……えっと、だから解は……」
梓「8979323846 2643383279……」
唯「あ、あれ?は、はちきゅーななきゅー……」
梓「5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825」
梓「421170679 8214808651 3282306647 0938446095 5058223172 5359408128 4811174502 8410270193 8521105559」
唯「あううう……」グスン
梓(ウヒヒヒヒ)
14 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 00:59:24.47 ID:YQHTtZBv0
1分したら投下してもいいでしょうか?
>>12
が終わるまで待った方がいいですか?
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 01:00:16.16 ID:JYdFmQkUo
梓「唯先輩の告白の最中にやたらニヤニヤして顔を見てやりたい」
16 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:00:51.48 ID:YQHTtZBv0
終わってた…orz
投下します。
紬「……今日も休むわ」
斎藤「またですか?」
紬「…………」
斎藤「…お嬢様が行かれないと…ティータイムにならないのでは?」
紬「……どうせ誰も…」ボソッ
斎藤「?」
紬「……もう嫌なの。斎藤、学校に連絡しておいて」
斎藤「はぁ…
……そう言い残すとお嬢様は足早に部屋に戻っていった。
お嬢様は最近学校を休みがちだ――一体に何があったのだろう?
……私は少し憂鬱な気分になりながら携帯を取り出し、学校の番号を打ち始めた――
//////////////////////
17 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:01:34.39 ID:YQHTtZBv0
//////////////////////
律「……聡ー」
聡「なんだよ、姉ちゃん」
律「母さんに学校休むって言っといて」
聡「?……風邪でも引いたのか?」
律「あぁ……」
聡「了解、ゆっくり休めよ」
バタン
律「…………澪」
私はそう呟いていた。
階下から母親の声が聞こえる。
「しっかり治しなよ」と言っているようだ。
律「うっ…」グスグス
部屋に入ってこないことがわかると、私はベッドに顔を埋め、また泣き出してしまった。
/////////////////////////
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 01:01:48.30 ID:JYdFmQkUo
>>14
あと10分くらいで終わります
19 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:02:32.48 ID:YQHTtZBv0
すいません、待ちます。
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 01:07:17.00 ID:JYdFmQkUo
校舎裏
唯「あ、あのね、あずにゃん。実はずっと言いたい事があったんだけど……」
梓「へえ〜。なんですか〜?」ニヤニヤ
唯「実は私…その…」
梓「早く言って下さいよぉ〜」ニヤニヤ
唯「私……け、けっこう前から……」
梓「けっこう前からなんですかぁ〜?」ニヤニヤ
唯「病気で……その、もうすぐあずにゃんとお別れになっちゃうんだ……」
梓「もう〜仕方ないですね〜特別に付き合っ……」
唯「ごめんね……。もう抱っこできるのもこれが最後かも……」ギュ
梓(ウヒヒヒ……ヒ?)
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 01:08:07.79 ID:JYdFmQkUo
梓「唯先輩の今際の際に人生全否定する言葉を耳元で言ってやりたい」
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 01:13:53.42 ID:JYdFmQkUo
病院
唯「み……みんないるの……?」
澪「ああ、いるよ……」
憂「お姉ちゃぁん……」シクシク
律「唯がいなくなっても、ちゃんとバンドは続けるからな……」
唯「うん……」
紬「毎日唯ちゃんのところに、ケーキ持って行くからっ……」
唯「それは楽しみだなぁ……」
梓「……」
唯「あずにゃん……私、あずにゃんの事……」
梓「……」
梓「言い忘れてましたけど私、ずっと唯先輩の事大ッ嫌いでした」ボソッ
唯「……」
唯「……そ……っかぁ……」
ピーーーーーーーー
医者「ご臨終です」
梓(ウヒヒヒヒ)ポロポロ
おしまい
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 01:14:40.76 ID:JYdFmQkUo
終わりです
スマン!一番手さんファイツ!
24 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:16:10.67 ID:YQHTtZBv0
こちらこそすみませんでした。
/////////////////////////
澪「……ねえ、ママ」
澪母「何?」
澪「今日は学校休む」
澪母「えっ?具合でも悪いの?」
澪「……いや…」
澪母「?」
澪「……実は…ベースが最近上手く弾けなくってさ……家で特訓したいから――
澪母「……そう、わかったわ、頑張ってね」
澪「……うん」
澪母「じゃ、ママ仕事だから、もう行くわね」
澪「……うん」
澪母「行ってきます」
ガチャ
ママが出て行ったのを確認すると私はベースを弾き始めた。
重低音が部屋に鳴り響く。
……でも――何かおかしい。
澪「……やっぱだめだ…
最近どうも調子が出ない。
私はベースを置き、ベッドに倒れこんだ。
……学校さぼってなにやってんだろ、私。
澪「……律」
律に電話しようかと思ったけれどやめておいた。
朝早くに風邪だと律のママから電話があった。
……昨日イライラしてキツく当たってしまったことを謝りたかったのに――
まぁ、こういうことは直接会った方が良いと思い、またベースを弾き始めた。
弾けば弾くほど音は悪くなっていく気がした。
/////////////////////
25 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:20:00.14 ID:YQHTtZBv0
/////////////////////
梓「…すいません、今日は学校休みます」
私は学校に電話を掛けていた。
担任「……そう、風邪でも引いた?」
梓「……はい」
担任「…ご両親はいらっしゃらないの?」
梓「……はい、でも大丈夫です」
担任「わかったわ、お大事にね」
梓「ありがとうございます」
ツーツー
……本当は風邪なんか引いていない。
気を紛らわせる為にギターを弾き始めた。
……でもだめだ。
すぐにあの人のことが頭に浮かんできた。
最近、急に私に冷たくなった、
大好きな先輩のことが。
……やっぱり行こう、唯先輩に会うために。
//////////////////
26 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:20:34.97 ID:YQHTtZBv0
//////////////////
あれから3日くらいたった気がする。
……今日も影法師が私の代わりに私になる。
唯「…ここから出してよ……どうしてこんなこと――」
唯「あずにゃん…」
/////////////////
27 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:21:14.95 ID:YQHTtZBv0
/////////////////
今日も私は、私を物置に閉じ込める。
親友に嫌われてしまい……
それを大好きな人に見破られ……
……私が全部悪いのに。
あの人を私1人のモノにするため、私は………………
ガチャ
唯『行ってきます』
一文字「あら唯ちゃん、おはよう」
唯『おはようございます』ニコッ
一文字「?」
/////////////////////
28 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:21:55.54 ID:YQHTtZBv0
/////////////////////
【学校】
和「……おはよう、唯」
唯『和ちゃん、おはよう』
和「……」
唯『和ちゃん?』
和「……何かあったら、相談してね」
唯『……うん、わかった』
///////////////////
29 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:22:26.20 ID:YQHTtZBv0
///////////////////
【部室】
唯『……』
梓「……」
梓「あ、あの!」
唯『……何?』
梓「……どうしたんですか?最近変ですよ」
梓「この前は急に突き倒してきましたよね」
梓「その時偶然置いてあった澪先輩のベースにぶつかって」
唯『……』
梓「……その日からですよね、澪先輩がイライラしだしたの」
梓「…………ベース、壊れちゃったんですよ、きっと」
梓「謝りに行きましょうよ! 『唯先輩!』」
唯『…ねえ、梓ちゃん』
梓「えっ!?」
/////////////////
30 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:23:10.84 ID:YQHTtZBv0
/////////////////
体重計に乗る。
……2kg増えている。
……放課後のお茶のせいだ。
////////////////////
31 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:23:59.32 ID:YQHTtZBv0
////////////////////
唯『どうして気づけないの?』
梓「えっ……
そういって彼女は髪留めを取り出した。
ポニーテールを作っていく。
憂「ねぇ、梓ちゃん」
梓「!!」
憂「……助けてよ」
梓「えっ?」
///////////////
32 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:24:47.20 ID:YQHTtZBv0
///////////////
私が悪いんだ。
大好きなあの子に、
完璧なあの子に、
いつも笑顔のあの子に、
嫉妬して、傷つけた。
今日はいつも以上に髪がまとまらない。
どうして私は泣いてるの?
/////////////////
33 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:25:13.24 ID:YQHTtZBv0
/////////////////
憂「……もう嫌だよ」
梓「……何があったのか話して」
憂「……わかった」
/////////////////
34 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:25:54.82 ID:YQHTtZBv0
/////////////////
【数日前】
憂『どうしたの?」
『……部活でちょっとやらかしてね』
憂『大丈夫?』
憂『何か手伝えることある?』
このやりとりは何度目だろう?
何年も前から
私は、憂に助けられてばっかりで。
憂の助けになれない、
憂に迷惑をかけてばっかりの自分が嫌で、
だから私は言ってしまった。
『大嫌い』と
大好きな憂に
35 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:26:51.92 ID:YQHTtZBv0
憂「うっ…うっ…何で――純ちゃん」
プルルル
トイレで私が泣いていたら、電話が鳴った。
唯「もしもし、ういー?」
憂「……何?お姉ちゃん」
唯「?えっとね、今日あずにゃんとデートした後ご飯食べるから、晩御飯いらないんだ」
憂「……バカ」
唯「えっ?」
憂「……なんでもないよ」
憂「あっ、その前に用事があるから、今から家に戻っててくれない?」
唯「……えー、あずにゃんとお話したいよぉ」
憂「」ブチッ
憂『家にいなかったらお金渡さないよ!』
唯「えっ!?それだけは勘弁して!」
憂「じゃあ、梓ちゃんは後にして!」
唯「わ、わかったよお」アセアセ
////////////////
36 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:27:33.64 ID:YQHTtZBv0
////////////////
【数日前、部室】
憂『あれ?あずにゃんだけ?」
梓「はい、先輩達は遅れるみたいです」
憂「なら丁度いいね」
梓「なにす
ドン!
ベースが巻き込まれて倒れた。
ブチッ と嫌な音がした。
梓「な、何するんですか!」
憂「また後でね、『あずにゃん』」
バタン
梓「…」
/////////////////
37 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:28:05.58 ID:YQHTtZBv0
/////////////////
【その後の部室】
律「なぁ、澪」
澪「……また失敗した、どうして……」イライラ
律「ち、調子の悪い日なんて誰にでもあるって! 落ち込むなよ」
澪「うるさい」ボソッ
律「えっ?」
澪「うるさいって言ってるだろ!」
律「……ごめん」
//////////////////
38 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:28:35.39 ID:YQHTtZBv0
//////////////////
憂「その日の夜ね、お姉ちゃんに見られちゃったんだ」
梓「?」
憂「泣いてる所を」
梓「……」
憂「……それがとても嫌だったんだ」
憂「お姉ちゃんに慰められるのが」
梓「……憂」
憂「その時初めてわかったよ」
憂「大好きな人に見られたくないものを見られた時の気持ちが」
//////////////////
39 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:29:09.24 ID:YQHTtZBv0
//////////////////
憂「こっち来て、お姉ちゃん」
唯「何?憂」
ガチャリ!
唯「えっ? あ、開けてよ! 憂、憂!」
//////////////////
40 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:30:27.45 ID:YQHTtZBv0
//////////////////
梓「それって……
憂「……そうだよ」
梓「…………やめて」ガクガク
憂「もう遅いよ」
唯「……」
『さよなら、あずにゃん』
41 :
◆JEuhH1uHN.
[sage]:2011/01/23(日) 01:33:10.31 ID:YQHTtZBv0
おまけ
ピンポーン
澪「はーい」
澪「どちらさ
グサッ 腹に包丁が刺さった。
澪「えっ――
ドサッ
律「澪に嫌われたら生きていけないんだよ…しかたないよな? 澪?」
澪「はぁ…うっ……さ、寒いよぉ――
律「……可愛いよ、澪」
律「大丈夫、みんなですぐそっちに行くから」
律はそう言って私にキスしてきた。
……ちょっと暖かいな。
終わりです。
次の方お願いします。
42 :
◆4Hbfrw6L5M
[sage]:2011/01/23(日) 02:00:10.61 ID:GEAJzUjLo
1番手の方、乙です。
投下します。
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:00:41.33 ID:FlwY9VcFo
思っていたよりサクサク感
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:01:41.88 ID:GEAJzUjLo
『ウワサ』
最初は、自分のことだと気付かなかった。
女子高生たる者、ヒソヒソ話の一つや二つくらい
別に珍しいものでもない。
いつからか、クラスの皆がどこか暗い視線で何かを見ているような
そんな気はしていたが、まさかその視線が向けられているのが
自分だったとは夢にも思っていなかった。
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:02:42.13 ID:GEAJzUjLo
律「今日はムギの奴、休みか……」
その日、ムギが休んだ。
季節の変わり目ということもあったし、おそらく風邪でも引いたのだろう。
昨日の部活の時も、どこか気のない感じだった。
後でメールでも送っておくか……
1限目の休み時間、そう思った時ふと視線らしきものを感じる。
感じた方を向いてみると、数人のクラスメイトが
不自然に顔を逸らしたのが目に入った。
内輪でこっそり話をしているのは一見してわかるが
どうやら、その話の標的は私だったようだ。
私は見逃さず、席を立ちその一団の方へ歩いて行く。
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:03:33.60 ID:GEAJzUjLo
律「お〜いお前たち。私の方見てただろ〜?何の話してたんだ?」
いつもの軽い調子で話を振る。
そうすれば、いつもと同じように向こうも軽いノリで返してくる。
はずだった。
彼女たちは、複雑そうな表情でお互い顔を見合わせ
私の方をチラチラ見ては、何か言いたげな、でも言うのをためらう様子を見せる。
……何なんだよ。
流石の私も少し気分が悪くなる。
それはそうだ。
ヒソヒソ話の標的にされ、しかもそれが本人の前で言えないような
内容であったというならば、不快感を覚えない人間などまずいない。
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:04:47.46 ID:GEAJzUjLo
律「なあ、気になるだろ?何話してたんだ?」
嫌な気分を殺しながら、努めて明るい口調でもう一度尋ねる。
ただ、先程より少し語気が強めだったのか、私の声に反応して
体をビクっと縮こませる子もいる。
……私が何かしたってのか?
この時、既に私の表情から笑顔は消えていたのだと思う。
軽いノリではいられない、重い空気にその場は飲まれていた。
静寂が場を支配する。
やがて、輪の中一人が周りに目配せしつつ一言「何でもない」と小声で言う。
……何でもないわけないだろう。
本人の前ではどうしても言えないような話なのか。
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:06:27.78 ID:GEAJzUjLo
実は、今目の前にいる面子から
ヒソヒソ話を追及するのは初めてではない。
前にも同じようなことがあった。
その時は、軽いノリでやりとりしあったのを覚えている。
・・・
「おい、何見てるんだよ〜?」
「りっちゃんのオデコが輝いてたから見てたんだよん」
「何だとこの〜」
・・・
記憶をたどると、そんな会話が思い出された。
このようなことがあったからこそ、私は遠慮無くこの輪に飛び込んで来たのに。
状況は、その時とまるで違っていた。
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:07:59.40 ID:GEAJzUjLo
心の奥から様々なものが込み上げてくる。
怒り、不快感、吐き気……
私はそれら全てを一息に飲み込み、「あっそ」と彼女たちに返事をした。
これ以上この場にいては、私自身が耐え切れない。そう感じたのだ。
私は踵を返し、ドタドタと足音を響かせ自分の席に戻る。
周りの視線が少し目に入るが、おかまいなく
私は乱暴に椅子を引き、ドサリと腰を落とす。
横目で先程の輪をもう一度確認する。
彼女たちは懲りもせず、また内緒話を始めているようだった。
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:09:56.65 ID:GEAJzUjLo
昼休みになり、私は今朝あったことは既に忘れようとしていた。
嫌なことはさっさと忘れる……私の特技の一つだ。
私は弁当を持って、いつも昼食を共にしている仲間のもとへ向かう。
律「はあ〜、腹減ったな〜」
そう一言告げて、私は手近な席へ勢い良く腰掛ける。
唯「りっちゃん、お行儀悪ーい」
唯が冗談めかしく私を咎める。私は、へへと返す。
いつものお昼時間。勉強があまり好きじゃない私にとっての憩いの時間。
今日は一人足りないけれど、まあたまにはそんな時もあるだろう。
私はいつもの面子の顔を見渡し――
ふと、その内の一人がどこか浮かない顔をしているのに気付く。
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:11:00.72 ID:GEAJzUjLo
律「澪、どうしたんだ?」
私は、俯き加減な澪に声をかける。澪は、少し周りの様子をチラチラ見るような
仕草を見せて、「何でもない」と気のない返事をする。
……何でもない、なんてことは嘘だ。一目でわかった。
ふと、私は忘れようとしていた今朝のことをもう一度
頭の奥から引っ張り出した。いや、引っ張り出さざるを得なくなった。
……視線を感じる。
今朝と同じような感覚。それも、一箇所からではない。
……私のせいか?
何か私が噂されるようなことをしたせいで、澪まで過敏になっているのか?
そう思うと澪や唯――もっとも唯は周囲の視線に気づいていないようだが――に申し訳
なく感じる。しかし、それ以上に実態不明のこの視線に対する苛立ちが大きくなる。
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:13:02.74 ID:GEAJzUjLo
律「さ〜て、今日のおかずはどんなのかな〜」
私はイライラを押し[
ピーーー
]ように、出来る限り明るく振舞う。
今ここで澪に何か言うことは難しいし、何より唯にまで変な心配を
かけるわけにはいかない。
唯「あれ、澪ちゃん。食べないの?」
何も気づいていない唯は、いつも通り明るく元気に澪にも話しかける。
澪はやはりどこか気の抜けた返事を返そうとする。
その瞬間を狙い……私は澪の弁当からおかずを取り上げる!
律「ほーう、食べないんなら私がもーらい♪」
澪「な……!」
流石に勝手に弁当を取られたとあっては、澪も反応しないわけにはいかなかったのか。
澪は「何すんだよ!」といつもと同じ口調で、いつもと同じく私にツッコミを入れる。
痛っ!
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:14:32.19 ID:GEAJzUjLo
容赦のないツッコミに、私は涙目になる。
けど――
ひとまずは、これでいい。
周りのことなんか気にしなくていい。
その後も、私は異常なテンション――我ながらそう感じた――でお昼休みを乗り切った。
ムギがいないにも関わらず妙に元気の良い私の態度に、唯は少しヒイていたみたいだったが
変に気を使わせるよりは遥かにマシだ。
……しかし、この判断が余計に事態をややこしくするなんてことを
私は微塵も考えていなかった。
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:15:16.68 ID:GEAJzUjLo
放課後。
私は掃除当番だったため、先に澪と唯を部室に向かわせ
さっさと終わらせるために、サクサク作業を始める。
ここでも、周りの皆はあからさまに私を
腫れ物に触るかのように扱う。
気に食わない。
しかし私は、なるべく気にしないようにして
黙々と当番業務をこなす。
何を噂されているのかは知らないが
放っておけば、そのうち勝手に収まるだろう。
そうタカをくくる。
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:16:19.62 ID:GEAJzUjLo
掃除当番を終え、逃げるように私は部室に向かう。
その途中、教室に忘れ物をしたことに気付く。
……仕方ない、戻るか。
私はあの耐え難い空間に戻りたいとは思わなかったが
やむなく教室に向け足を運ぶ。
「……ホントに? 田井中さんが?」
教室の戸を開こうと手を伸ばした瞬間、教室の中から
私の名が聞こえた。声の主は、先程の掃除当番の一人だ。
……なんだよ、またかよ。
私はイライラを募らせる。
しかし、その気持とは裏腹に、私は次の瞬間には
極めて冷静に、何の迷いもなく教室の声に耳を傾けていた。
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:17:40.52 ID:GEAJzUjLo
・・・・・・
「でも……軽音部で仲良く……」
「さっきのお昼の時も……」
「琴吹さんが……」
「でも……」
・・・・・・
断片的にしか聞き取れなかったが
少なくとも、ムギの名前やさっきの昼休みのことが聞こえた。
……意味がわからない。
彼女たちが何を言っているのか。
彼女たちが何を噂しているのか。
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:21:15.19 ID:GEAJzUjLo
苛立ちがいっそう強くなる。
私は次の刹那、無意識の内に目の前の戸を勢いよく扉を開いていた。
バァンという弾けるような大音量に、中のクラスメイトたちは驚きの様子を見せる。
扉を開いたのが私であるとわかると、彼女たちはまた視線を不自然に逸らし
わざとらしく、寄り添うように縮こまる。
律「なあ……一体、私が何をしたっていうんだ?」
我ながら、怒りに満ちた声であると思う。しかし、私は既に
自分を抑えきれなくなっていた。
律「なあ、答えろよ……何なんだよ」
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:22:38.71 ID:GEAJzUjLo
少しの沈黙の後、彼女たちの中で一番気の強そうな子が前にでて
しかしそれでもためらうような仕草を見せながら、口を開く。
「田井中さん……あなた、琴吹さんの何?」
発せられた質問は、ワケがわからないものだった。
ムギの何か、だと?
ムギは私の大切な友人の一人、そんな当たり前のこと……
律「ムギは私の友達だよ。部の仲間だよ。それがどうかしたのか?」
「……田井中さんが、琴吹さんにたかっているって……」
律「はあ?」
たかっている……それはどういう意味なのか。
「……高いお菓子やお茶を催促してるって聞いたの」
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:23:51.21 ID:GEAJzUjLo
ちょっと待て。
要するに、お前たちは、私がムギを金蔓のように扱っていると
そう言いたいのか?
「……そんな噂が最近立ってるのよ」
私の怒りは頂点に達した。私は無意識に、手近な机に拳を振り下ろしていた。
拳と机がぶつかる音に、クラスメイトたちはまた体をビクつかせる。
律「……誰だよ。誰が言い出したんだよ。」
「……わからないわよ。でも、ここ数日そんな噂が広まっているの」
律「っ! ふざんけんな!!」
私は痛む拳を広げ、今度は平手を机に落とす。また、机はバァンと音を立てる。
遠まわしに、私がムギを虐めているというような噂を立てられて、私が大切な
友人を虐めているというような噂を立てられて、黙っていられるはずがなかった。
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:24:30.76 ID:GEAJzUjLo
それからのことは、あまりよく覚えていない。
頭に血が昇った状態で口論していたせいもあるのだろうが
それより何より、終わり際に放った相手の言葉が強烈に私に突き刺さったからだ。
「今日、琴吹さんお休みなのに妙にテンション高かったし」
「そもそも、なんで今日琴吹さんお休みなの?」
「もしかして、琴吹さんも自分が金蔓にされてるって思ったんじゃないの?」
そう、根本問題――
なぜ今日、ムギはいない?
昨日からどこか変な様子はあった。
私はそれを体調不良と思っていたのだが……
誰か、ムギに喋ったのか。
こんな他愛もない噂を。
ムギは信じたのか。
私じゃなくて、こんな噂を。
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:25:19.03 ID:GEAJzUjLo
もうこれ以上クラスメイトとやりあっても埒があかないと感じた私は
足早に教室を出て、部室へと急いだ。
そして、部室の戸を開き、皆に一言告げる。
律「すまん、今日用事が出来たから帰る!」
部室にいた仲間の顔も返事も確認せずに、私はまた駆け出す。
走りつつ携帯電話を開き、電話帳から彼女の番号を開く。
プルルル…… プルルル……
出ない
プ…ルル…… プル…ル……
自らの呼吸の音と走る足音が、コール音とともに頭の中に響く。
ブツッ…只今、電話にでr
私はそれだけ聞いて通話を切る。
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:27:08.98 ID:GEAJzUjLo
その後も何度か電話を掛けてみるが、ムギは出なかった。
私は駅まで休みなく走り、丁度ホームにいた電車に飛び込んだ。
息を切らし、髪型も服装も乱れ気味で、汗まみれになった女子高生が
急に電車に駆け込んだせいか、周りの視線が少しながら集まる。
気にするほどのことじゃない。さっきまでの視線に比べれば。
私は携帯電話をもう一度開き、今度はメールを送る。
「今から行くから」
そう一言だけ書く。
返事は来るだろうか……私はメールを送信し、開いてる席にドサリと腰をおろす。
……ムギに会ったら何を話そうか。
私は、考えを巡らせながら電車の揺れに身を任せ考えを巡らせた。
63 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:29:05.39 ID:GEAJzUjLo
……
ムギの家には、思いの外すんなり入ることが出来た。
お見舞いに来たと告げると、執事の方が応接室に通してくれた。
しかし、ムギの部屋に入れるかどうかはわからない。
執事の斎藤さんが、ムギと話をしてきたらしいが
最初に返ってきた返事はこうだった。
「合わせる顔がない」と。
……どうやらムギは、私が今日ここに来た理由を既に察している。
となれば、ムギがどう言おうが私は今日あいつに会わなければならないと思った。
やがて、二度目の交渉に行っていた斎藤さんが私の元に戻ってきた。
彼は申し訳なさそうな表情で、「すみませんが」と一言丁寧に私に告げる。
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:30:12.56 ID:GEAJzUjLo
既に心を決めている私は、その言葉に「そうですか」と返し席をたつ。
そしてカバンを手に持ち、帰る素振りを見せながらこう切り返す。
「お手洗い、借りてもいいですか?」
トイレを借りるふりをして、ムギの部屋に強行する。
それが私の考えた作戦。
少し琴吹家の廊下をさまようことになりそうだが
そんな些細なことに構っていられない。
斎藤さんが「どうぞ」と答えてくれたので、私は、トイレへ向かう振りをしようとする。
しかし、斎藤さんは不意に「お待ちを」と私を呼び止めた。
……もしかして、バレたか?
そう思って、斉藤さんのほうを向き直る。
斎藤さんは優しげな表情を崩さすに、一言こう言った。
「お手洗いは、そちらじゃありませんよ」
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:31:00.93 ID:GEAJzUjLo
……ああ
そういうことか。
「ありがとうございます」
私は斎藤さんにそう言うと、案内されてもない、そしてトイレがないであろう
方向へ足早に歩を進める。
向かう先は、ただ一つ。
「ムギっ!!」
私は、彼女の部屋の扉を勢い良くブチ開ける。
結構な音が響いたが、しかしムギはベッドに腰をかけた姿勢のまま
微動だにせず、でも私が来たことに驚きの表情を見せる。
紬「りっちゃん……」
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:32:20.11 ID:GEAJzUjLo
律「なあ……ムギ」
紬「ごめんなさい」
律「何がごめんだよ……例の噂のことか?」
紬「……」
律「……ムギ、さ。私のこと……信じてない、のか?」
我ながら卑怯な聞き方だったと思う。
でも、私にとってそれが一番引っかかる事柄であったし
オブラートに包んでじっくりと聞き出そうなんて余裕は私にはなかった。
紬「……違うの」
ムギは消え入りそうな声で、体を微かに震わせ返事をする。
俯いて私を見ようとしないその目に、涙を溜めているのがわずかに見て取れた。
紬「私……りっちゃんのこと、信じてる。でも……」
律「でも?」
紬「……心配してくれたクラスメイトのことも、信じたいって思ってしまった」
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:34:06.10 ID:GEAJzUjLo
律「……」
紬「本当はわかってる。りっちゃんが酷いことを考えてるはずなんてないって
でも、それでも彼女たちの心配そうな表情が、頭から離れないの……」
そして、ムギは言った。昨日の部での私の最初の一言が、自分を惑わしたと。
冗談でしかない軽い言葉。でもムギに取っては惑いの言葉。
『ムギ、今日のお菓子何〜?不味いものなら承知しないぞ〜』
ムギはひと通り言って、黙り込んだ。
今にも涙が瞳からこぼれ落ちそうだ。
……私とクラスメイトたち、どっちを取ればいいのか。
そんなことでムギは悩んでいたのか。
……いや、ムギにとっては重大なことなのか。
そして、いつもだったら軽いノリで済ませられるはずの私の言葉が
結果的にムギを縛り付けたのだ。
律「……ごめんな、ムギ。」
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:34:52.09 ID:GEAJzUjLo
紬「違う……」
律「え?」
紬「違うの……りっちゃんは何も悪くないのに。それなのに……!」
ムギの頬を一筋の涙が通る。彼女はそのまま突っ伏す。
肩が小刻みに震えており、泣いているのが見えずともわかる。
……そうか、ムギは。
ムギは、友人を信じられない自分への自己嫌悪に陥ってしまった。
だから、今日は学校を休んだ。「合わす顔がない」と。
あまりに重苦しい話。今まで、友人関係でそんなに重苦しく悩んだことのない私に
は、正直ついていけない部分はあったかと思う。
でも――
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:36:14.75 ID:GEAJzUjLo
律「なあ、ムギ」
ムギに声をかける。ムギは、ややあってゆっくりと顔を上げた。
涙で腫らした瞼の奥、潤んだ瞳が私の方を見る。
私の方に顔を向けたその瞬間――
律「てい」
ペチーン
紬「きゃっ」
デコピンを一発。
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:37:32.45 ID:GEAJzUjLo
ムギは、何が起きたかわからないようで、涙目で額をさする。
紬「な、何するのりっちゃん」
律「へへん、お仕置きだよ」
私は明るく言う、つもりだったがやはり少し元気のない語気になった。
しっかりしろ、私。心のなかで言い聞かせる。
律「私がさ……」
紬「……」
律「私が、何とかするから……お前は気にするなよ」
紬「でも、りっちゃん……!」
律「うっさい! 部長命令だっ!」
紬「だって……きゃっ」
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:38:51.72 ID:GEAJzUjLo
私はキツめの言葉をかけ、ムギが反論する前に
彼女の体を引き寄せ胸元で抱きしめる。
突然のことに彼女の体が一瞬ビクンと震える。
律「噂なんてさ、すぐ消えるよ。あいつらも、すぐにわかるよ……」
あいつら――私の噂をしていた、クラスメイトたち。
彼女たちは彼女たちなりにムギのことを心配していたのかもしれない。
でも、私とムギは仲間なんだ。
噂なんか気にせず、今まで通りやっていこう。
そうすれば、今の状況なんてすぐに変わるさ。
私は、慎重に言葉を選び、胸元のムギに対し言葉を掛ける。
ムギは黙って聞いていたが、やがて、私の腰に手を回す。
紬「りっちゃん……りっちゃん……!」
ムギは、また泣き出す。
やれやれ……私は子どもをあやすように、ムギの頭を撫でてあげる。
72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:39:31.02 ID:GEAJzUjLo
当面は、噂のせいで過ごしにくいかも知れない。
でも、こんな日々はすぐに終わる。
私が少し耐えればいいだけの話なんだ。
周りの視線は確かに痛いものだけど
でも大切な友人を失うよりは遥かに良い。
私は、覚悟を決めた。
次の日から、ムギは学校に戻ってきた。
今までと変わらない様子で、今までと同じ笑顔で。
また、いつもの日々が戻ってくる。私はそう思った。
しかしもう一つ、私は大切な事を見落としていた。
そして、気付いたときにはもう――
73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:40:28.56 ID:GEAJzUjLo
律「澪、入るぞ」
澪が学校を休んだ。私はお見舞いがてら家に行き
彼女の部屋の扉を開ける。
澪は布団にくるまっていた。
律「おーい、澪。なに芋虫みたいな格好してるんだー?」
私は軽い調子で話しかけたが、澪は反応しない。
よっぽど体調が悪いのか……と思い、少し自重してみる。
……?
様子がおかしい。
いつもなら、体調が悪くても私を無視するなんてことはないはず。
律「なあ、澪……大丈夫?」
私は、今度は慎重に声をかける。
74 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:41:21.57 ID:GEAJzUjLo
澪は、布団の中で少し体をうねらせ、やっと私の方に顔を向けた。
青白い顔で、体調がよろしくないのが一目でわかる。
私はこれほどか、と思い今度は気遣うように声をかける。
律「辛そうだけど、大丈夫か?」
澪「……ん」
律「いつぐらいから学校来られそうだ?」
澪「……い」
律「ん?」
澪は、聞こえないような小声で何かを言っている。
先日、ムギの家に行ったときのことを思い出す。
律「ごめん、ちょっと聞こえないよ。何?」
私はいつもの態度と違い、努めて優しい声で問いかける。
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:42:39.80 ID:GEAJzUjLo
澪は今度は、比較的はっきりした口調で言った。
その言葉に私はまたワケがわからなくなる。
「がっこう、いきたくない」
学校に……行きたくない……
澪ははっきりと、確かにそう言った。
澪とは長い付き合いだが、こんなこと言うのは初めてだ。
冗談か、とも思ったが彼女の顔はそんな嘘を言っている風ではなかった。
律「澪……何言ってるんだ……?」
私は頭の整理がつかず、ただ率直な言葉で聞き返すことしか出来ない。
澪はパニックに陥っているそんな私の様子を察してか、その理由らしき言語を告げる。
澪「最近……周りの、視線が怖いんだよ……」
76 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:44:55.26 ID:GEAJzUjLo
周りの視線――
おそらく、私が疑惑を持たれたときと同じ種のものであろう視線。
私は、この時初めて自分の迂闊さ、認識の甘さを呪った。
私だけじゃなかった。
澪も、私と同じように……
律「なあ、澪……」
言葉が続かない。
澪は、どこまで知っているのだろうか。
視線の原因、理由。
澪はそれを知っているのだろうか。
私は、今この場で、澪にどんな言葉をかけてやるべきなのだろうか。
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:46:44.48 ID:GEAJzUjLo
律「澪さ、聞くけどそんな見られるような心当たり、何かある?」
澪「……ないよ」
心当たりはない、か。澪の表情からは真意は読み取れないが
だからといって、追及するようなマネは出来ない。
私はとりあえず、本当の理由はさて置いて澪を励ます。
律「あんまりさ、気にし過ぎるなよ」
極めて無難な物言いだったと思う。
これで良かったのかどうかはわからないけど、でもこれ以上は強要できない。
私は、その後二言三言澪を会話をし、彼女の家を後にした。
思った以上に尾を引く問題に嫌気を感じるが
それでも、私は皆と一緒にいたいんだ。
その為なら、多少の我慢は問題ない。そう、自らを鼓舞した。
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:47:21.51 ID:GEAJzUjLo
次の日も、澪は学校を休んだ。
唯やムギに澪の状態を一応は伝えるが、学校に行きたくないと言ったことに
ついては伏せておいた。
最初の事件から数週経って、ようやく少しづつ黒い噂も落ち着きを
見せている頃合いだ。何か下手なことは言えない。
そうだ、もう少しの辛抱だ。
それが、終われば。
今までの、皆との楽しい日々が戻ってくるんだ――
しかし――
澪が学校を休んで4日目、その日はムギも学校を休んだ。
そして、ムギは二度と学校に出てくることはなかった。
79 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:49:38.26 ID:GEAJzUjLo
ムギの言い分はこうだ。彼女は私にメールを残し、どこか別のところへ転校していった。
紬「私が最初に、学校を休んでしまったから……
私が種を撒いてしまったから、今澪ちゃんは苦しんでいる
全部、私が……私が悪いのよ……」
澪にも話を聞いた。一連の噂のことについては、一人で見舞いに来たムギの口から聞いたらしい。
澪「ムギは何も悪くない。私が勝手に参ってしまっただけなんだ。
私だって、ことの真相をちゃんと知っていたら……
私だって、ムギのために頑張れた……!!」
澪は、ムギから事の顛末を聞き一度は立ち直りかけた。
しかし、澪のことに責任を感じたムギは逃げるように転校してしまった。
『ムギを、助けることが出来なかった』
澪はそう言って更に一人で責任を背負いこみ、結局引きこもってしまうこととなった。
まさに負の連鎖――私はこうして二人の仲間を失ってしまった。
80 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:50:34.27 ID:GEAJzUjLo
あと、一人のクラスの仲間――唯はどうだったのだろうか。
唯は、実は噂の視線を向けられていなかったらしい。後でわかったことだが。
裏表のない彼女は、そもそも悪意の意識を持つ人間ではない、と
最初からクラスの皆は感じていたらしい。
唯は、特別だったのだろうか。
卒業が間近に迫ったクラスの中、孤独にふける私とは対照的に
唯は私以外のクラスメイトとも上手くやっているようだった。
唯が羨ましい。いや、そんな爛漫な彼女だからこそ
私も好きになったと言えるんだろうが……
高校を卒業し、私は唯と同じ大学に通うことになった。
最初は別々の進路を考えていたのだが、唯が「りっちゃんと一緒がいい」と
言って、無理やり押し切った形だ。
81 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:51:32.58 ID:GEAJzUjLo
私だけじゃない、唯も大切な友達を二人失った立場なんだ……
だから、私がどこかに行くんじゃないかって不安になっていた
ということを、後になって憂ちゃんから聞いた。
まったく、唯らしいよ……
私も、彼女だけは離すまいと思った。
澪はしばらく引き篭っていたが、欠席日数がギリギリになった頃に学校に戻ってきた。
とはいえ、特別クラスのような扱いとなり学校で会うことはなかったが。
その後何とか卒業し、今は地元を離れて別の地方の大学へ行ったらしい。
82 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:53:32.27 ID:GEAJzUjLo
他愛もないはずの噂。
信憑性のないような話。
そんなもの、女子高では日常的に飛び交っていることだろう。
しかし、私はその噂のせいで二人の親友を失った。
噂する側も、あったのは悪意ではなく心配。
澪やムギを縛り付けたのは、相手を信じられない自らへの自己嫌悪。
誰が悪かったのか。いや、誰も悪くなかったのか。
理不尽すぎる結末に、涙すらこぼれない。
唯「りっちゃん……どうしたの、怖い顔して?」
過去のことを思い出していた私の顔を、唯が覗き込む。
私は、「ちょっとな」と一言返す。
83 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 02:54:42.88 ID:GEAJzUjLo
もうこれ以上、大切なものを無くしたくない。ゆえに私は改めて強く思う。
唯……お前だけは、何があっても離さない、と。
もし、お前がどこかに行こうというのなら……その時は……
失うくらいなら、いっそ……
懐に忍ばせたナイフが、カタっと小さな音を立てた。
84 :
◆4Hbfrw6L5M
[sage]:2011/01/23(日) 02:55:20.50 ID:GEAJzUjLo
終わりです
次の方、よろしくどうぞ
85 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:05:34.62 ID:lkawafWAO
律「ショートケーキ頂き!」
唯「あ、ずるい!まだみんな決めてないよ!」
律「もう遅いぞ〜」
唯「遅くなんかないよ!りっちゃんのクズ!」
律「早い者勝ち!弱肉強食!クズはお前だ!」
86 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:06:35.29 ID:lkawafWAO
唯「わたしはクズじゃないもん!クソりっちゃん!」
律「クソだと?…何がなんでもわたしのだ!」
ぺっ ぺっ
律「唾つけたからな!」
唯「最低だよこの人…」
澪「律!せっかくムギが用意してくれたんだぞ!」
87 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:07:19.23 ID:lkawafWAO
律「友達のことクズ呼ばわりするような奴のセリフかよ!」
唯「誰が友達だって?勘違いしないでよ」
律「ああ、こんな奴こっちからお断りだ」
唯「大体りっちゃんだって、わたしのことクズって言ったもんね」
律「お前がクズって言ったからだろ!」
唯「りっちゃんはクズだもん、仕方ないよ!」
律「何だとー?わたしがクズならお前はのろまクズだ!」
紬「ちょ、ちょっと…」
梓「二人ともやめてください!」
澪「お前らなあ…」
88 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:10:10.06 ID:lkawafWAO
紬「今のはどちらも悪いわね」
唯「何で!?今のはりっちゃんでしょ!」
律「は?お前はほんとバカだな!」
梓「元はと言えば律先輩の行為がいけませんが」
澪「唯も唯で、話し合うこともなく律を悪く言ったからな」
唯「わたしが悪いの!?」
紬「そういう意味じゃなくて、ね?」
唯「ちょっとムギちゃん黙ってて」
梓「そんな、あんまりです!」
唯「あずにゃんもうるさいよ」
紬梓「…」
89 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:10:58.28 ID:lkawafWAO
唯「いいよね、りっちゃんには無条件で肩持ってくれる人がここにいて」
澪「どういう意味だ?」
唯「こんなクズでも幼なじみだもんね、嫌でも肩持つよ」
澪「そんなんじゃないだろ!」
律「悔しかったら和でも呼んでこいよ」
澪「わたしは別に律の肩持ったわけじゃないぞ!」
律「へえ、わたしのこと裏切るのか?」
90 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:13:07.30 ID:lkawafWAO
澪「お前…ほんとバカだな」
律「何だと!?」
澪「今回は救いようない」
律「…お前なんか一人じゃ何も出来ないくせによ」
唯「はは、幼なじみにも見捨てられてる〜」
唯「所詮クズの親友はクズだったんだね」
澪「…お前らいい加減にしろよ」
91 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:13:58.29 ID:lkawafWAO
澪「律、最初強引にケーキを取ったお前も悪い」
澪「でもそれだけのことで、話し合う間もなく暴言吐いた唯だって悪い」
澪「喧嘩両成敗だ」
律「うるっせーな…」
唯「何でわたしが…」
92 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:14:46.97 ID:lkawafWAO
澪「いいか二人とも」
唯「…何?」
律「何だよ」
澪「やり方は卑怯だけど、欲しいケーキを手に入れた律が勝ちとして」
澪「ケーキを取られた唯が負けとする」
律「ま、当然だな」
唯「わたしは認めないけどね、クズの唾つけたケーキなんて汚物だからいらないや」
澪「まだ話は終わってない!」
93 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:15:39.46 ID:lkawafWAO
澪「勝った律がイラクで、負けた唯がアメリカだとするだろ」
律「は?何言ってんの?」
唯「さすがクズの幼なじみ、意味がわからないや」
紬「ちょっと!澪ちゃん、話がずれてる」
梓(わたしもう喋んないから)
94 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:16:20.80 ID:lkawafWAO
澪「イラク、つまり律がケーキと言う核兵器を所有してるってのがアメリカである唯の言い分だ」
律「あーマジ意味わかんねえ」
唯「聞かなきゃダメなの?この話」
澪「でもそれは大義名分だ、本来の目的はオイルマネー。つまり唯はケーキを理由にただ律に暴言吐いただけだ」
唯「結局はわたしが悪いってことじゃん」
律「当たり前だろのろま」
澪「とにかく!」
95 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:17:14.76 ID:lkawafWAO
唯「はー…まだ続くんだね、めんどくさ〜」
律「何かどうでも良くなってきたわ」
澪「日本は直ちに日米安保を破棄、憲法第9条を改正すべきなんだ!」
唯「ほんとどうでもいい…」
律「わたしケーキ食おっと」
澪「日本は軍隊を持つべきなんだ!永世中立国のスイスだって軍隊を持っている!」
澪「それが何故だかわかるか?梓」
梓(喋んない、喋んないんだから)
96 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:18:01.41 ID:lkawafWAO
澪「…ムギ!」
紬「えっと…自分を守るため?」
澪「そう、さすがムギ」
紬(何だろう、嬉しくないわ…)
唯「…結局さ〜」
律「何が言いたいんだよ、澪は」
97 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:18:41.25 ID:lkawafWAO
澪「戦争は良くないよ、ただ自分の身は自分で守るくらいの覚悟はしなきゃ」
律「そんな話してねーし」
唯「…こんな幼なじみ持って大変だね、りっちゃん」
律「ああ、よく付いていけなくなる」
唯「…ぐだぐだ言ってないでケーキ食べよっと」
98 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:19:27.48 ID:lkawafWAO
唯「あ、これおいしい!」
律「うん、こっちもうまい」
唯「一口食べる?」
律「…いいのか?」
唯「うん、はいあーん」
律「あーん」
うっ
99 :
◆IhaQs0Ql/bFy
[sage]:2011/01/23(日) 15:21:12.95 ID:lkawafWAO
律「おえっ」
唯「やだ、汚い」
律「お前が奥までフォーク突っ込むからだろ!」
唯「ふん、甘いよ」
律「喉突いただろうが!何すんだ!」
唯「ただで貰えると思うなんて愚かだね、クズ」
律「クズはお前だよ!クソが!」
紬(どうしてこうなった…)
梓(あずにゃんにゃん♪)
澪「天皇万歳!皇居に向かって敬礼!」
終わり。
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 17:41:50.50 ID:RCA16eE8o
言っていいのかわからんけど、物凄く胸糞悪い。書きてに対して
101 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 17:52:58.88 ID:nYRQYsWLo
ここは投下スレだからそういうこと言っちゃだめよ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294925211/
102 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 19:59:08.36 ID:RCA16eE8o
>>101
thx
感想はこっちにかけばいいのか
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 20:48:46.26 ID:0qwnACvpo
飛び入り参加
唯「さいきんあずさがうざい」
104 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 20:51:42.32 ID:0qwnACvpo
唯「ねーみんなー、あずさのことどう思う?」
澪「別になんとも」
律「空気じゃね?」
紬「別にいなくても部には影響しない存在ね」
梓「……」
唯「あずさー、ネコミミつけてにゃんにゃんしてよほら」
梓「……にゃんにゃん」
律「……は?」
澪「恥ずかしくないのか?」
紬「よくできるわね」
唯「媚びてんじゃねーよ後輩」
阿須さ「にゃ、にゃ〜ん」
105 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 20:55:46.70 ID:0qwnACvpo
唯「猫ってさ、こんな不細工じゃないよね」
澪「もっとかわいいよな」
律「こいつには愛らしさが欠けているな」
紬「愛らしさを出すにはどうすればいいと思う?」
梓「床に這いつくばってごろごろとかですか?」
唯「ちげーよカス、脱げよ」
梓「え!? なんでですか」
唯「あのなぁ梓、今からおまえの愛らしさをな、先輩達がアップさせてやるからさ」
梓「い、嫌です! そんなことできません」
唯「黙って脱げよ! おまえ、退部になりたいの?」
梓「そんなことするくらいなら退部します」
澪「これなーんだ」
梓「あ、返して下さい!」
106 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:01:20.35 ID:0qwnACvpo
律「うわ、澪ひでーなそれ梓のムスタングじゃねーか」
澪「これ、折っちゃおうかなー、ここから投げ捨てたら折れるかな」
梓「やめて下さい! 壊したら弁償してもらいますから!」
紬「梓ちゃんが自分で壊したものをなんで私たちが弁償しなくちゃいけないのかしら?」
唯「梓が自分から投げ捨てましたーってみんなが言えばその通りになるよねww」
梓「さ、最低です! いつまでもへらへらしてると思ったら大間違いです!」
律「っは? なにかすんの? ほらやってみ」
梓「こんのぉ!」
律「澪、それで梓殴ってやれ」
澪「おっけー、そーれ!」
梓「うげぇ! おごぉ! ぐげぇ!」
唯「やっちゃえやっちゃえ!」
紬「顔は避けるのよ、バレちゃうから!」
107 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:05:22.32 ID:0qwnACvpo
唯「わたしもやるやる〜」
澪「唯はギー太使わないの?」
唯「ギー太汚したくないし」
澪「じゃあ、はい」
唯「えーと、ゴルフスイングってこんな感じだったっけ?」
律「そうそう、上から思いっきり振り下ろすんだ」
梓「や、やめっ」
唯「せーのぉ!」
あずさ「ぶえぇえ! おぇえええ! ぎゅぷるぐぐぴぇ……」
律「あーあー、吐きやがったよ」
紬「すごい音がしたから肋骨でも折れたんじゃない?」
澪「唯、そんなに梓のことが嫌いだったのか(笑)」
唯「えーだってこいつ偉そうじゃん! 何様って感じだし」
律「部長のあたしより偉そうだしな」
108 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:09:26.18 ID:0qwnACvpo
梓「……ぷくぷくぷく」
唯「ちょ、見てよ泡吹いてるよ〜」
律「顔がゲロまみれだし、きったねえな」
澪「消毒してやれ、消毒」
紬「ちょうどあったまった紅茶があるわよ」
唯「貸して貸してー」
紬「はい」
唯「あーずーさー、今綺麗にしてあげるからねー」
梓「…………」
唯「そーれどぼどぼどぼどぼ」
梓「dg不gふgk@:kgp@:んjkが」
律「顔が真っ赤になったぜ!」
澪「床でジタバタもがいてる姿がいっそう滑稽だな(笑)」
紬「これ1杯20000円だからね」
唯「たっか! 野良猫にはもったいないね!」
109 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:13:30.63 ID:0qwnACvpo
澪「でさ、これどうすんの?」
律「気絶しちまったなあ、なんか面白いことできねえかな」
唯「面白いこと? あるよ〜」
紬「どんなのどんなの?」
唯「トンちゃんを使います」
律「ほぉ、面白そうじゃねーか」
唯「あずさの下着を脱がせます」
澪「おお」
唯「トンちゃんを股座につっこませます」
紬「唯ちゃん、最高よ!」
唯「じゃあさっそく、トンちゃんを水槽から取り出してー」
澪「私が下着を脱がしてやるか」
紬「あ、私も手伝うね」
律「私はデジカメで撮影でもしてるか」
110 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:17:10.48 ID:0qwnACvpo
梓「……ピクピク」
唯「準備はおっけーだね」
澪「おお、このきたないマンコにぶちこんでやれ」
唯「大人しくしててね、とんちゃん!」
律「しっかり撮ってるからなあ」
唯「まずは指で広げて、きっついなあ」
律「あずさのおまんこ写真、あとでネットに流しておくか、キモオタどもが食いつくだろ」
唯「んー入れ入れ!」
紬「もっとグイって押し込んでやるのよ」
澪「頭部分は入ったな」
唯「これ以上は無理かもね」
律「ケリで押し込むか」
唯「あ、それいいね〜」
111 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:22:12.98 ID:0qwnACvpo
律「いっくぜー、ほら」
梓「あ゛゛あ゛あ゛あああああああああああああああ!」
紬「あ、意識戻った」
澪「アンコール、アンコール」
唯わたしやるよー・・・そぉーっれ!」
梓「ぐぎゃあああああああああああああああああああ」
紬「性器裂けてきてるわね」
澪「どうせならこのまま裂いちゃおうよ」
唯「もちろん! ほら! ほら! ほら!」
梓「…・・・」
律「まーた失心しやがったぜ」
唯「でもこれもう使い物になんないんじゃないの?」
紬「生殖機能がなくなるなんてもう生物失格ね」
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:27:10.12 ID:0qwnACvpo
唯「でさ、この汚物どうするの?」
澪「捨てておけば?」
律「カッター置いておくか」
紬「自殺してくれると楽よね」
唯「じゃあ私たち帰るけど、綺麗にしてから死んでね〜」
澪「ついでに梓の財布の中身頂いておくか」
律「けいおんぶは1600ゴールドをてにいれた、なんてな!」
紬「なにそれ〜」
唯「どらくえどらくえ」
澪「はぁー今日の部活もつまんなかったな」
紬「次は澪ちゃんのファン倶楽部の子とかどうかしら」
唯「あ、あのこは? ほらたまに梓と一緒にいるモップみたいな髪型の子」
律「あいつはビジュアルが最悪だからな」
澪「いじっても楽しくないな」
113 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/23(日) 21:30:16.77 ID:0qwnACvpo
唯「まあいいか、帰ろ帰ろ」
澪「じゃあまた明日なー梓」
律「生きる気力があればな」
紬「じゃあね、さようなら」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
梓「――という夢を見ました」
おわり
114 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:06:22.14 ID:Vcxel4KFo
唯「平沢どっきりカメラ!」
115 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:08:22.63 ID:Vcxel4KFo
おはようございます!
ただいま6時30分、きょうはちょっぴり早起きして桜ヶ丘高校の教室にきております。
さてやってまいりました、平沢どっきりカメラのお時間です!
わたくし桜ヶ丘高校3年軽音部の平沢唯、今回の仕掛け人です。えへへ。
え? なにりっちゃん、企画の紹介? ああっうんわかったー。
えっとぉ、この企画はりっちゃんが「唯の演技力が試される」って言われてえ、
わたし……主演女優ばってき?! みたいにまいあがっちゃってえ……えへへへ。
あ、もうわかってるよお! ちゃんと説明するってばあ!
じゃありっちゃんカメラあっちの教室に向けて。
こほん。
今回、どっきり企画をしかけるたーげっとは……この子です!
憂「……♪」
そうです、わたしのたった一人の妹。平沢憂さんです。
116 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:10:23.05 ID:Vcxel4KFo
どうやら本を読んでるようですねえ……どんな本だろ?
まあとにかく、さっそくいたずらをしかけてみたいと思います!
まずはベタに……これをこうしてっと。
くふふっ。
うん、じゃありっちゃんは隠れてて!
唯「あーういー、ちょっとこっちきてー」
憂「おねえちゃん……どうしたの?」
お、きましたきました。さてそろそろですね・・・。
憂「きゃっ?!」
117 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:12:23.80 ID:Vcxel4KFo
きました! 憂の顔に黒板消しがくりーんひっと!
憂のかわいいほっぺも制服のえりもとも粉まみれです。
憂「げほっ…ごほっ……」
唯「だっだいじょうぶ、うい……?」
憂「う、うん……大丈夫、心配しないで……」
唯「まったく……ひどいことする人もいるもんだね! ぷんぷんだよ!」
ちょっと憂のためにおこってみました。
ついでにいたわってみます。
唯「……もう、えりに粉がとんじゃってるよ?」ぱしっぱしっ
憂「お、おねえちゃん…ありがと」
憂は照れたように笑っています。なんだかうれしそうです。
ていうかりっちゃん、音入っちゃうからそんなに笑わないでってばあ……。
118 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:14:24.26 ID:Vcxel4KFo
ふう。ひとまず朝はこれぐらいにしておきましょう。
これから憂にはもっとびっくりしてもらわなきゃいけませんからねー、くふふっ。
りっちゃん、おぬしもワルよのう。ぐふふふふっ。
ところで憂はあんな格好で大丈夫なんでしょうか。
知っての通り、うちの高校の制服はチョークの粉が目立つ色です。
そりゃさっきちょっと払ってあげたけど、やっぱりちょっと汚れが目立ちますね。
うーん。
あの汚れを誰かが見つけたら、平沢どっきりカメラの企画がピンチです。
うーん……あ、そうだ!
ねえねえりっちゃん、あとで憂の服をあらってあげようよ!
119 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:16:24.68 ID:Vcxel4KFo
そんなわけで一時間目の授業がはじまりました。
ここからはもう一人の仕掛け人、中野梓ちゃんのご協力により、教室からの映像と音声のみでお伝えしたいと思います。
え? わたしとりっちゃん?
いやだなあ……ほら、三年生はもうこの時期は授業ないじゃないですか。
だからこうしてわたしの家でで……わありっちゃん、いいにおーい!
ごめんなさい。なかなかおいしそうな料理ができそうなので、ついそっちをれぽーとしてしまいました。
それでは二年生の教室の方をみてみましょう! ぶいてぃーあーる、どうぞ!
――――――
――――
――
120 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:18:25.21 ID:Vcxel4KFo
純『うわ……その服どうしたの』
憂『ううん、なんでもないよ。あさ学校来て……その、黒板掃除してたらちょっとね』
純『もう、憂らしくないなー……そんなん日直当番にやらせときゃいいじゃん』
憂『……あ、えっと、その…黒板、きたないままだと悪いかなって』
純『……』
憂『ほら、教室はいってきたない黒板だと気分よくないよね?』あせっ
純『……ふふ』
憂『な、なにかな…』
純『憂って、嘘つくの下手だね』
憂『う、うそじゃないよ…』
121 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:20:25.84 ID:Vcxel4KFo
――――――
――――
――
ふーむ。これは純ちゃんが企画進行のじゃまになりそうですね。
ちょっとなんとかしなきゃいけないかも……。
梓『っていうかきょうの日直当番、純じゃん』
純『へ? ……そ、そうだっけ?』
梓『ほらー、日直が休みの日は次の人がって』
純『……ああっ、わすれてた!』
梓『いろいろ仕事あるでしょ、ほら』
純『そうだった! ごめん憂、今から演習ノートとってくる!』
おお、あずにゃんナイス!
さすがわたしのかわいい後輩、やってくれますねぇ。
122 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:22:26.76 ID:Vcxel4KFo
憂『あのね、梓ちゃん』
梓『なに?』
憂『……お姉ちゃん。きょう、どうしてるかな』
梓『憂の方がわかるんじゃない? っていうか直接聞けばいいじゃん』
憂『あは……そうだね。そう、だよね……』
うーん、なんだか憂がかわいそうに見える画ですね。
私が撮りたいのは泣ける話とかじゃなくって、みんなでげらげら笑えるこめでぃなんだけどなあ……。
123 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:24:27.36 ID:Vcxel4KFo
さてさて時刻は13時、お昼休みも半分ほど過ぎたころです。
わたしたちも桜ヶ丘高校にふたたび到着、平沢どっきりテレビも再開です!
さて平沢憂さんの様子はどうなんでしょうか?
憂「……あ、おねえちゃん…」
つい少し前までひとり浮かない顔をしていた憂ですが、わたしを見つけてにっこり。
ていうか教室に人が少ないです。どうしちゃったんでしょうか?
唯「ねぇうい――」
憂「おねえちゃん、私の体操着知らないかな……?」
おおっと、そうでしたそうでした。
そういえば昨日のうちに体操着隠しといたんだっけ。
124 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:30:04.21 ID:Vcxel4KFo
唯「うーん……だれかが持ってっちゃったのかも?」
憂「そ、そんなことはないよ……たぶん」
まだ服に白い粉の目立つ憂は、困ったようにうつむいてしまいました。
しょうがないのでお姉ちゃんが一緒に探してあげましょう。
唯「どっかで落として来ちゃったんだよ、きっと!」
憂「あ……そう、かも」
唯「じゃあ、一緒にさがしてみようよ!」
憂「……うん!」
憂に少しばかり笑顔が戻りました。
125 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:33:04.88 ID:Vcxel4KFo
わたしたちは憂が朝歩いてきた廊下を二人並んで歩きます。
りっちゃんも前の方で憂に気づかれないようにわたしたちを映し続けています。
唯「……この辺にもないねえ」
憂「……ごめんね、おねえちゃん」
唯「なぁに?」
憂「……んーん、なんでもない」
なにを言おうとしたんでしょうか。まあどうでもいいですけど。
とにかく、そろそろ次の仕掛けが待っています。
唯「あ、わたしちょっとトイレいってくるね!」
憂「え……あ、うん」
126 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:36:05.62 ID:Vcxel4KFo
ふぅ……なんとか抜けてきました。
さて憂はいま、二階の階段を降りたところにいます。
みなさんにも見えるでしょうか。
やっぱり一人になるとちょっと落ち込んだ様子が見えます。
うーん、制服汚れちゃったのはショックだったのかなあ?
まあ、憂だって女の子ですもんね。
……よい、しょっと。
憂「ひゃあっ――?!」
ばっしゃーん!
憂の頭上めがけてバケツの水をひっかけてやりました。
平沢どっきりカメラ、2度目の作戦も成功です!
127 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:39:06.21 ID:Vcxel4KFo
唯「う……うい、だいじょうぶ?!」
憂「あ……お、おねえちゃん……」
水びたしの憂はまだなにが起こったのかよくわかっていないようです。
とりあえず風邪をひいちゃうといけないので、タオルでからだをふいてあげましょう。
唯「な、なにがあったの……?」
憂「……うぅ……おねえちゃぁん……」
ちょっぴり涙目の憂が私に泣きついてきました。
もう……私の制服もぬれちゃうよ。ってそんなのいっか。
唯「よしよし……あ、そうだ! 音楽室で着替えよっか!」
憂は涙ながらにこくりとうなづきました。
どうやら返事を返す余裕もないみたいです。
128 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:45:23.17 ID:Vcxel4KFo
ところかわって音楽室です。
憂はいま、私の教室から持ってきたジャージいちまいに着替えてストーブに当たっています。
制服も下着もぜんぶびしょぬれなので、いつかのわたしのように譜面台に乗せて乾かすことにしました。
憂「……おねえちゃん」
唯「だいじょうぶだよ、憂は心配しないで! あっそうそう」
そこでわたしはさっきりっちゃんとつくったお弁当を出します。
唯「これね、りっちゃんと作ったんだ!」
憂「えっ、あ……」
唯「みんなで食べようって思ってたんだけど……憂にあげるね」
憂「おねえちゃん……」
きょうの憂は泣き虫さんなので、また頭をなでてあげました。
えへへ、いっぱいたべて元気におなり。
129 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:48:23.69 ID:Vcxel4KFo
ふと、わたしに抱きついてた憂がぶるっとからだをふるわせました。
唯「……さむいの?」
憂「んーん、なんでもない…」
見ると憂はなにやら両足をもぞもぞさせてがまんしているようです。
はっはーん、憂はトイレにいきたいようですねえ。
と、いいタイミングでりっちゃんからメールがきました。
え? いつまでこれやるのって? んー……じゃあそろそろ切り上げよっかな。
長くやってても見る人おもしろくないもんね。
唯「ごめん、ちょっと憂待っててくれる?」
私は憂の言葉も聞かずに部室を出ました。
130 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:51:24.31 ID:Vcxel4KFo
さてこちらは3年生の教室です。
ムギちゃんに借りたのーとぱそこんで、部室の憂の様子を見てみましょう。
憂『…………』もぞもぞ
憂『…………』もぞもぞ
憂『おねえちゃん、まだかなあ…』
うーん、がんばってわたしを待ってくれてるみたいです。
憂はむかしからけなげないい子だったもんねー。
ちょっとためしにメールしてみます。
ヴヴヴ
憂『ひゃ?! ………あ、お姉ちゃんだ…』
憂は思わずあそこを押さえました。
あはは、やっぱりメールのバイヴに刺激されちゃったようです。
131 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 00:56:06.66 ID:Vcxel4KFo
おもしろいのでもう一回やってみましょう。えいっ。
憂『ひゃっ……も、もう……今晩のおかずは、まだ決めてないよお……』
わあ、わたしの携帯にもターゲットの平沢さんからメールが届きました!
今晩、平沢家のおかずは鳥の唐揚げだそうです! あはははっ。
……って。りっちゃん、いま笑うとこだよお!
こほん。しつれいしました。
そうそう、そろそろ憂がガマンできなくなる頃ですね。
ぶいてぃーあーる、きゅー!
憂『……あれ、このドアあかない…』ガチャガチャ
132 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:00:07.37 ID:Vcxel4KFo
ふっふっふー。
実はあのドアはさっき、外側からしか開かないように細工をしておいたのです!
え? そんな工作、簡単にできるのかって?
もー。これはフィクションなんですから、まじめに考えないでくださいよぉ。
こういう企画にヤラセはつきものじゃないですかあ。
……って、口がすべっちゃったよもう。
憂『お、おねえちゃん出して! あけてよお!!』
左手であそこを押さえて、右手でドアをがちゃがちゃたたく憂さん。
助けてあげた方がいいのでしょうか?
うーん……でも、そこでおもらししちゃった方が視聴率あがるよね、ぜったい……。
憂『おねえちゃん、おねえちゃん……うぅ……ぐすっ……』
あちゃー。憂ちゃんとうとう泣き出しちゃいました。
これはそろそろ限界のようですね。
りっちゃん、助けにいくよっ!
133 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:05:30.28 ID:Vcxel4KFo
わたしたち撮影チームはのーとぱそこんを持って音楽室へと向かいます。
え、りっちゃん忘れ物? ピンマイクおいてきちゃった?
もーしょうがないなあ。じゃあ戻ろっか。
……しつれいしました。
私たちはのーとぱそこんを持って……ってりっちゃん、今度はなにー?
あはは、この床すべっておもしろいね! つるつるだね!
なんだかりっちゃんとの会話が楽しくて、当初の目的を忘れちゃいそうです……。
おっといけない、そろそろ憂も我慢が限界でしたっけ。
憂『……うぅ…ぐすっ……』
憂はなにやらドアの前でへたりこんでいます。
お、これはもしかして……!
憂『……ぐすっ、くふぅ……うぅ…』
そのとき、われわれ撮影スタッフはみたのです!
憂のジャージが黒くぬれはじめ、足下に黄色い水たまりができるのを!
134 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:09:30.76 ID:Vcxel4KFo
憂『……くふぅ……ひっく……』
本格的に泣き出しちゃいました。
仕掛けといてなんですが、これにはちょっとどんびきです……。
憂、やりすぎだよお……。
憂『あ……おねえちゃん……たべなきゃ……』
するとここで憂はとっぴょうしもない行動にでました。
なんと、わたしのつくったお弁当を食べようとし始めたのです!
これはいったいどうしたことなんでしょうか?
憂『……おねえちゃん、がんばってつくってくれたから・・・たべなきゃ・・・』
おおっ、これは姉妹のきずなってきずなってやつでしょうか!
すごいですねー、かんどうてきですなー。
え? りっちゃん、「ゲンジツトーヒ」ってなに?
まあいっか。
とにかく憂はお弁当箱を開けて、中のおにぎりを食べ始めました。
するとそこには……。
憂『――ぷへっ、くはっ?!』
135 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:14:06.96 ID:Vcxel4KFo
憂はせっかく作ったわたしのおにぎりを吐き出してしまいます。
ひどいなーまったく。……まあ、中身があれならしかたないか。
憂『これって……クリスマスの……』
ここで視聴者のみなさんに問題です!
このとき憂がたべちゃったおにぎりの具は、次のうちなんでしょーか!
いち、憂がクリスマスにくれた手袋。
に、
……うーん、りっちゃんなににするー?
あたっ! もう、りっちゃんいきなりたたかないでよお!
うん……たしかに選択肢は先にかんがえるべきだったね……。
というわけで、答えは――
憂『なんで、おねえちゃん…こんなこと……』
てぶくろでしたー!
ってちょっと予想外すぎたかな? えへへっ。
136 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/24(月) 01:16:27.66 ID:MejxKBiVo
おにぎりどんだけ大きいんだよ!
137 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:18:07.68 ID:Vcxel4KFo
ともかく、ようやく音楽室にたどりつきました。
りっちゃん鍵あけて。私、手が離せないから。
うん、ありがと。
じゃあ音楽室に潜入してみましょう……ひゃあっ、おしっこくさっ!
憂「あ……うぅ……ぐすっ……」
音楽室のまんなかで見つけたのは、顔をごはんつぶまみれにして私の手袋にむしゃぶりつく憂でした。
138 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:22:51.34 ID:Vcxel4KFo
唯「……だめだよういー、そんなの食べちゃ」
憂「あっ…やあっ、食べるのぉ……おねえちゃんが、わたしのこと、きらいにっ、ならないように…」
なーんかどっかで聞いたような台詞ですねえ。
人間、追い詰められると意外とベタなことを言うものなんでしょうか。
まあ私はシスコンじゃないので、とくに感じ入ったりもしませんけど。
唯「ほら、落ち着いて……憂。ぺっしなさい、よしよし」
ごはんつぶが付いて気持ち悪いですけど、正気を失った妹をなだめるのもお姉ちゃんの役割です。
憂「おねえちゃん……どうして……?」
唯「へ?」
まだまだしゃくりあげてますが、さっきよりは落ち着いてきた憂がたずねます。
そっかあ……じゃあ、りっちゃん看板持ってきて!
139 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:26:51.93 ID:Vcxel4KFo
唯「じゃじゃーん! どっきりカメラでしたー!」
憂「……あ……ひっく…ぐすっ……」
涙と鼻水とごはんつぶでぐちゃぐちゃな顔の憂は、お手製の看板をみて目をまん丸にしています。
そうです……企画者としてはこのあっけに取られた顔がみたかったんです!
これを見てるみなさんだってそうでしょう? こういう企画なんですから。
……いまさらチャンネル変えて、いい子ぶったりしないでくださいね。
憂「なんで……どうしてえ……?」
おもらししっぱなしの汚い憂はまだ状況が飲み込めてないようです。
床の黄色い水溜りには、わたしたちの努力の結晶たる特大おにぎりのかけらが白くうかんでます。
うーん、せっかく企画のために手袋を小さくちぎって詰め込んだ特大おにぎりなのに……もったいないなあ。
さて、最後に感想を聞かなきゃいけません。
これもどっきりテレビのお約束。
140 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:31:04.44 ID:Vcxel4KFo
――憂、どうだった?
憂「……やだよう……おねえちゃん……やだぁ……」
――あのさ、憂。いま撮ってるんだけど。
憂「……え?」
――話の都合ってあるじゃん。こういう話でもネタばらしして、あははーって。
憂「……あ……うぅ……ぐすっ…」
――いい加減、空気読んでよ。子供じゃないんだからさあ。
憂『……………あはは、だまされちゃったぁ……』
141 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage saga]:2011/01/24(月) 01:32:13.64 ID:Vcxel4KFo
これには憂も苦笑いのようです。
憂「……おねえちゃんが…ひっく……いろいろするから……びっくりしちゃった……ぐすっ」
唯「えへへ、ちょっとやりすぎちゃったかなあ?」
律「やりすぎってレベルじゃないだろゆいー!」ぽかっ
唯「あっりっちゃんひどーい! ていうかりっちゃんだってノリノリだったじゃーん」
律「そうだけどー! ごめんなー憂ちゃん、こんどなんかおごるから!」
憂「……ぐすっ……ひっく…」
そんなわけでお食事中のかたはごめんなさい。
でもでも、平沢どっきりテレビは大成功でしたー!
えへへ、こんなにうまくいくと思わなかったね、りっちゃん。
それではまた来週、つぎは……だれにしよっかな。
もしかしたらあなたの街に行っちゃうかもしれませんよー?
とにかく、またみてくださいねー! ばいばーい!
めでたしめでたし。
142 :
◆nKE2AQhF0Q
[sage]:2011/01/24(月) 01:32:46.37 ID:Vcxel4KFo
終わりです
次の方いらっしゃいましたらどうぞ
143 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:41:49.09 ID:q2EZjBm7P
憂「余命一ヶ月の姉」
144 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:44:46.72 ID:q2EZjBm7P
「お姉さんの寿命は、あと一ヶ月です」
憂「えっ……?」
桜の花が咲き始めた4月初めのこと。
淡々と告げられたその言葉に、私と家族は絶望した。
憂「ウソ…ですよね?お姉ちゃんは、元気になりますよね?」
お医者さんは、黙って首を横に振った。
「残念ですが、今の医療技術ではどうすることも…」
憂「そんな……」
憂「やだ、やだよ…。お姉ちゃん…」
憂「う、うぅ…。うわあああああああああああああ」
私は泣き叫んだ。
お父さんも、お母さんも、泣いていた。
お姉ちゃんが、あと一ヶ月で死んでしまう。
145 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:45:23.58 ID:q2EZjBm7P
唯「………」
別の病室では、お姉ちゃんが静かに眠っていた。
腕には数ヵ所の点滴が打たれ、口には特殊なマスクがされている。
部活から帰ってきたお姉ちゃんは、夜ご飯の前に血を吐いて倒れた。
何の前触れも無かった。今朝だっていつも通り、2人で仲良く登校していたのに。
急いで救急車を呼んだ。お父さんとお母さんも病院に飛んできた。
お医者さんが言うには、珍しい病気らしい。(病名を聞いてもよくわからなかった)
治療法は無かった。あるのは、一ヶ月という「余命」だけ。
憂「お姉ちゃん…」
お姉ちゃんの手を握る。
このぬくもりが、あと一ヶ月しか感じられないだなんて。
私は再び涙した。家に帰ってからも、ひたすら泣き続けていた。
146 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:46:19.57 ID:q2EZjBm7P
翌日、私は和ちゃんと軽音部の方たちを音楽室に呼んだ。
事情を話すと、端を発したように泣き崩れた。
和ちゃんも、澪さんも、紬さんも、律さんも、梓ちゃんも、みんな泣いていた。
私は我慢した。
ここで私まで泣いてしまったら、どうすることも出来なくなってしまうから。
涙をこらえ、私はみんなに一つお願いをした。
憂「このことは…、お姉ちゃんには言わないで下さい」
憂「最後まで、お姉ちゃんには笑っていてほしいから…」
みんな了解してくれた。
それが正しいことなのかはわからない。
だけど、知ってしまったらきっと死の恐怖や絶望に追われてしまうだろう。
そんなのいやだ。お姉ちゃんには最後の最後まで笑っていてほしい。
お姉ちゃんはもう学校には行けない、みんなに会いに行くことも出来ない。
だったら、私たちがお姉ちゃんの元に行けばいい。
残りの一ヶ月、お姉ちゃんと共に笑って過ごそう。そう決めた。
147 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:46:51.58 ID:q2EZjBm7P
学校が終わると、私は病院に向かった。
病室に入ると元気な声がした。
唯「あ、うい!」
お姉ちゃんは目を覚ましていた。
いつもの調子で、私を呼んだ。
唯「寂しかったよー。病院ってすごく静かなんだもん」
憂「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
唯「うん、平気だよ!ご飯もたくさん食べたし」
唯「でもお医者さんったらひどいんだよ!全然平気なのに退院させてくれないんだもん」
唯「早く帰って憂のごはんが食べたいよ〜」
憂「…そうだね。早く、退院出来るといいね…」
唯「?」
この笑顔を見れるのがあと一ヶ月もないなんて。
ウソだと言ってほしい。変われるものなら変わってあげたい。
私はヘタクソな笑顔で、お姉ちゃんに接していた。
148 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:47:26.82 ID:q2EZjBm7P
次の日は、軽音部の方たちと一緒にお見舞いに行った。
律「おーっす!」
澪「ばか、声が大きい。病院なんだぞ!」
律「いいじゃん個室なんだし」
紬「唯ちゃん、こんにちは」
梓「こんにちは唯先輩」
唯「みんな!来てくれたのっ?!」
律「どうせ一人で退屈してるだろうなと思ってさ。唯がいないから練習も出来ないし!」
澪「普段からしてないだろっ」
唯「えへへ、ありがと」
149 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:48:27.04 ID:q2EZjBm7P
紬「さ、お茶にしましょうか♪」
律「えぇっ?!ここで?!」
澪「やけにムギの荷物が多いと思ったら、ティーセットが入ってたのか…」
紬「いつもに比べて少し小さい物だけどね。持ってきてみたの」
梓「い、いいんですか?病院から出される以外のものを勝手に飲んだりして…」
唯「大丈夫だよ!それにムギちゃんのお茶飲めばもっと元気になれるし!」
紬「うふふ、まかせて♪」
まるで音楽室での一場面を切り取ったかのような光景。
みんながいれば、病院だろうとそこは部室だった。
唯「あ!あずにゃんあずにゃん」ちょいちょい
梓「…?なんですか?」
唯「ぎゅーっ!」
150 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:49:14.13 ID:q2EZjBm7P
梓「な、なにするんですかっ///」
唯「あずにゃん分の補給だよーっ。だってベッドから動けないんだもーん」
律「ったく、相変わらずだな」
唯「早く退院して、思いっきり抱きつきたいなぁ」
梓「………」
さっきまで抵抗していた梓ちゃんから、急に力が抜けた。
唯「…あずにゃん?どうしたの?」
梓「す、すいません。目にゴミが入っちゃって…。ちょっと目洗ってきますね」
そう言うと梓ちゃんは病室から出て行った。
梓ちゃんは、目に涙を浮かべていた。
ふと考えてしまったんだろう。あと何回こんなやりとりが出来るのだろうかと。
病室を出て行った梓ちゃんを見た律さんたちも、どこか悲しげな顔をしていた。
だけどそれを表に出さなかったのは、先輩としての意地なのかも知れない。
151 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:50:16.22 ID:q2EZjBm7P
さらに翌日、次は和ちゃんと一緒にお見舞いに行った。
和「あら、随分と元気そうね」
唯「和ちゃん!」
こんな風に3人でいるのも、随分と久しぶりだ。
和「病院といえば、小さいころの憂は…」
憂「もーっ、やめてよ和ちゃん!」
唯「懐かしいねぇ、そんなこともあったっけ」
この日は、3人だけしか知らない小さい頃の思い出話に花を咲かせていた。
和「それじゃ、今日はもう帰るわ。また今度ね」
唯「うんっ、ばいばーい」
和ちゃんはいつも通りだった。
寂しげな素振りは一切見せなかった。
お姉ちゃんの勘が良いことをよく知っているから、悟られないよう振る舞ったんだろう。
こんな毎日が続いていた。
会える時はみんなお見舞いに来てくれた。
お姉ちゃんは、そのたびに笑っていた。
私の大好きな笑顔で。
152 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:51:22.20 ID:q2EZjBm7P
唯「………」
夜。
私が入院してから、10日ぐらい経った。
何で倒れたのかわからないし、お医者さんも何も教えてくれなかった。
病院のベッドは嫌い。冷たいし、お薬の匂いが鼻をくすぐるから。
早くおうちに帰りたい。ギー太を抱いて寝て、憂のご飯を食べて…。
そんないつも通りの毎日に戻りたい。
唯「…眠れないなぁ」
起きるのが遅かったからか、いつまで経っても寝付けなかった。
数日ぐらい前から、起きている時間が少なくなっていた。
看護師さんは、お薬が効いているからって言ってたけど…。
夜の病室は静かだった。誰もいないし、何もない。
言いようのない孤独感に襲われる。
しばらくすると、部屋に誰かが入ってきた。
153 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:52:03.76 ID:q2EZjBm7P
お医者さんだった。
何やら難しいことを看護師さんと話している。
毎日来ているのだろうか。ベッドの傍の機械を見つめ、何かを書いているようだ。
私は寝たふりをして2人の会話を聞いていた。
「平沢さんの様態は?」
「…ダメみたいです。進行が予想以上に早く、数値も下がり続けてます」
「もってあと10日ほどかと…」
「そうか…」
唯(えっ…?)
154 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:52:47.20 ID:q2EZjBm7P
なに…?もって10日ほどって。
すぐに退院出来るんじゃないの?
私、10日後に死んじゃうの?
しばらくよくわからない難しい話をしたあと、
お医者さんと看護師さんはため息をつきながら病室を出て行った。
唯「あと10日。あと、10日…」
自分の両手を見た。
目に写る10本の指。それを一本ずつ折っていく。
小さな手のひらが、あっという間に握り拳に変わってしまった。
こんなちょっとしかもう生きられないの?
やりたいことも、したいこともいっぱいあるのに。
あと10日しか生きられないなんて、やだよ。
私は、声を殺して泣いた。
真っ白な枕が、涙でシミだらけになっていた。
唯「死にたくないよ…。うい…」
ずっと憂の名前を呼んでいた。
ねぇ、憂。
私、もう憂と会えなくなっちゃうのかな?
155 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:53:38.88 ID:q2EZjBm7P
翌日。今日は日曜日だ。
ゆっくりと目が覚める。時刻は12時を回っていた。
泣き疲れたからなのか、それとも体が弱ってきているのか、今までで一番遅い目覚めだ。
ガラッ
憂「お姉ちゃん、おはよう」
お昼ごはんを食べたあと、憂がやってきた。
日曜日だって言うのに、あと10日も生きられない姉のために時間を割いてくれている。
私はなんて恵まれた、幸せな姉なんだろう。
唯「うん、おはよう」
憂「今日はね、リンゴ買ってきたの。お姉ちゃんリンゴ好きでしょ?」
唯「ありがとう」
何を恨めばいいのか、憎めばいいのかわからなかった。
こんな健気な妹を、一人ぼっちにしなければならないだなんて。
156 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:54:46.19 ID:q2EZjBm7P
憂「それでね、梓ちゃんがね―――」
私はリンゴを剥きながらお姉ちゃんに話しかける。
曜日なんて関係ない、お姉ちゃんに会いに行くために全力だった。
精一杯おしゃれして、お姉ちゃんが好きなものをたくさん買って。
まるで恋人に会いに行くみたいに。
唯「………」
でも、今日のお姉ちゃんは元気がなかった。
どんなに話しかけても空返事だし、上の空だった。
憂「どうしたの?お姉ちゃん。元気ないみたいだけど…」
唯「んー?さっき起きたばっかりだからさ、頭がまだ回らなくて…」
憂「…?そっか」
リンゴを剥くシャリシャリという音だけが病室に響いた。
憂「うん、上手に向けた」
ちょうど剥き終わってお皿に盛り付けようとしたとき、お姉ちゃんは口を開いた。
唯「ねぇ、うい。私…さ、死んじゃうの?」
157 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:56:15.19 ID:q2EZjBm7P
憂「えっ…?」
突然だった。
誰かがお姉ちゃんに告げたの?いや、そんなことするような人はいない。
でも、なんで…。
憂「ど、どうしたの?お姉ちゃん」
唯「昨日ね、たまたまお医者さんたちが話しているところ聞いちゃったんだ」
唯「私、もってあと10日の命なんだって」
…最悪だ。
どうして、どうしてこのタイミングでお姉ちゃんが知ってしまったんだろう。
お姉ちゃんに元気がなかったのも頷けた。
目が腫れぼったく見えたのは、泣いていたからなのだろう。
しかも、あと10日って…。2週間もない。
お姉ちゃんは、あと1回しか日曜日を迎えることが出来ないの?
唯「ねぇ、うい。私―――」
憂「聞き間違いだよ、お姉ちゃん」
158 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:57:11.70 ID:q2EZjBm7P
唯「えっ?」
しばらく黙っていた憂は、口を開いた。
憂「お医者さんは、いい薬があるって言ってたもん」
憂「絶対に治るよ。お薬が出来るまで、あと10日ってことなんだよきっと」
唯「うい…」
うい。私、お姉ちゃんなんだよ?
私には何でもわかるんだから。
だから…。
そんな悲しい顔で、ウソをつかないで。
唯「うい。私、わかってるから」
憂「早く元気になって、また一緒に学校に行こう?」
憂は頑なに受け入れようといなかった。
唯「うい。私は―――」
憂「…やめてよっ!!!」
唯「……!!」びくっ
159 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 03:58:37.43 ID:q2EZjBm7P
大きな声が耳をつく。
憂に怒られたのなんて、初めてかも知れない。
すると憂は私に抱きついた。
顔も見せず、ただただ震えていた。
憂「…そんなこと、言わないでよ」
憂「お姉ちゃんは死んだりなんかしないもん…」
憂「ずっとずっと、私のお姉ちゃんでいるんだもん…」
私は、ダメなお姉ちゃんだね。
妹を泣かせることしか出来ないんだから。
唯「…ごめんね」
食べたリンゴはしょっぱかった。涙の味がした。
私も、泣いていたのかな?
160 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:01:58.14 ID:q2EZjBm7P
憂「ふぅ…」
昨日はみっともない姿を見せてしまった。
泣かないって決めてたのに、お姉ちゃんに抱きついて泣いてしまった。
私は、ダメな妹だね。お姉ちゃん。
でも、もう泣かないよ。残りの日々を笑って過ごすんだから。
私は今日もまたいつものように病室に向かっていた。
背中にお姉ちゃんのギターを背負って。
お姉ちゃんから夜中にメールがあった。
次来るときに、ギー太を持ってきて欲しいと。
学校から帰り、お姉ちゃんの部屋に入る。
少し散らかった部屋の隅にギターが置いてあった。
憂「よい…しょっと」
ギターを背負う。
憂「…んっ」
たくさんの思い出が詰まったギター。
ずっとずっとお姉ちゃんの傍にあったギター。
それを私が背負うには、ほんの少し荷が重いような気がした。
161 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:02:34.47 ID:q2EZjBm7P
ガラッ
憂「お姉ちゃん。ギター持ってきたよ」
唯「あっ、ギー太ぁ!」
ギターを渡すとお姉ちゃんはうれしそうにそれを抱いていた。
ほんのちょっぴり、妬けたりもした。
けど、こんなに幸せそうなお姉ちゃんを見たのは久しぶりだった。
思わず私もうれしくなってしまった。
そのあとお姉ちゃんは、私のためにギターを弾いてくれた。
しばらく弾いてなかったせいかどこかぎこちなかったりしたけど、
その時のお姉ちゃんの顔はとても輝いていた。
唯「ここはね、こう押さえて…」
憂「えっと…こう?」
唯「そう!さすがうい。優秀だねぇ〜」
憂「えへへ、ありがとう」
その後、私にギターを教えてくれた。
去年の文化祭の時にお姉ちゃんになりすまして弾いたことがあったから弾けないことはないんだけど、
お姉ちゃんに教えてもらって弾くということが私には特別で新鮮だった。
162 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:03:24.68 ID:q2EZjBm7P
ジャカジャカ
唯「ふわっふわった〜いむっ」
憂が帰ったあとも、私は一人でギー太を弾いていた。
もうこうしてギー太を弾くことも出来なくなるのかな。
そう考えると怖かった。
久しぶりに触ったギー太はやっぱり楽しかった。
憂も、弾いてる私を見てすごくうれしそうだった。
初めて憂にギターを教えた。
まだまだ教えられるほど上手ではないけど、せめてこういう時ぐらいはお姉ちゃんっぽくね。
憂は私とちがって飲み込みも早いし、センスもある。
これなら私がいなくなった後でも、ギー太は寂しくないよね。
唯「ね、ギー太?」
夜はギー太を抱いて寝た。
ほんの少しだけ、寂しさが薄れた気がした。
めずらしく寝付きもよかった。
163 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:05:17.50 ID:q2EZjBm7P
それからは、毎日誰かが必ずお見舞いに来てくれた。
澪ちゃんは、学校であったことをいっぱい話してくれた。
私が茶々を入れると、その度に顔を真っ赤にして恥ずかしがったり、怒ったりした。
その姿がかわいくて、さらに澪ちゃんのことを茶化してた。
りっちゃんとは、ゲームとかくだらない遊びをずっとしてた。
最初はりっちゃんの圧勝だったんだけど、回数を重ねるごとに私の勝ちが増えてりっちゃんの負けが増えてきた。
負けず嫌いなりっちゃんの相手をするのは、とっても楽しかった。
ムギちゃんとは、おいしいケーキとお茶を飲みながらたくさんお話しした。
私はムギちゃんにたくさん質問した。実はムギちゃんのことあんまり知らなかった気がしたし。
お茶の淹れ方とかも教わったりした。ムギちゃんはずっと笑っていてくれた。
あずにゃんとは、ギターで一緒に演奏したり教わったりした。
時々ぎゅって抱きつくと、しゅんとするあずにゃんがかわいくて、その姿をおちょくったりしてた。
私はいい後輩を持ったなぁ。つくづくそう思った。
和ちゃんは、私のくだらない話にずっと付き合ってくれた。
幼稚園の時からこういう関係だったから、何か特別なことをしていなくても楽しかった。
私のバカに和ちゃんが突っ込んでくれて、時々和ちゃんをからかって、そんな関係。
憂も毎日来てくれた。
日を追うごとに自分の体が重くなっていくのがわかったけど、
誰かが来たときはそんなの感じなかった。
それほどまでに、充実していたし、幸せな時間だったから。
164 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:06:01.92 ID:q2EZjBm7P
ガラッ
憂「お姉ちゃん」
再び訪れた日曜日。
明日から隔離病棟に移動するようで、そこからは誰も面会出来ないらしい。
言ってしまえば今日でお姉ちゃんと病室で会えるのは最後。いや、最期だった。
お昼過ぎに軽音部のみなさんと和ちゃんで一緒にお姉ちゃんの病室に向かった。
唯「あ、みんな…」
かなり無理しているのが伝わった。
顔も痩せ細っているし、体もふらふらしている。
唯「ごめんね、寝起きで頭回らなくて…」
お姉ちゃんがウソをついてるのはみんなわかっていた。
それでも誰も弱音は吐かなかったし、泣きもしなかった。
最後まで、笑顔で。そう決めていたから。
紬さんのお茶をみんなで飲みながら、最後のティータイムを過ごす。
しばらくして、お姉ちゃんが口を開いた。
唯「一人ひとりとお話したいな」
そんな提案から、一旦病室を出て一人ずつお姉ちゃんとお話しすることになった。
165 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:06:38.78 ID:q2EZjBm7P
唯「………」
私は、みんなを病室から出した。
もうこれで最後。
お医者さんにも、明日からもうみんなには会えないと知らされた。
時間がいくらあっても足りない。
もっともっとお話したいし、色んなことしたかった。
でも、それは出来ないから…。
せめて、みんなにお礼を言わなくちゃ。最後ぐらい、ね。
なんてことを考えていると、扉が開いた。
ガラッ
澪「ゆい」
唯「みおちゃん」
最初は、澪ちゃんか。
りっちゃんかなって思ったんだけど、ちがったみたい。
166 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:07:07.28 ID:q2EZjBm7P
澪「なんだ?話って」
唯「えへへ、ありがとうを言いたくて」
唯「私にたくさん優しくしてくれて、ありがとう」
澪「……!」
澪ちゃんの顔が一瞬崩れたのがわかった。
泣くのを我慢しているのが伝わってくる。
私も、泣きたい。でも泣いちゃダメ。
最後まで笑っているって決めたんだから。
唯「私さ、ドジだし、頭もよくないからたくさん迷惑かけちゃったと思うんだ」
唯「でも澪ちゃんは、その度に色々と私のこと助けてくれて…」
唯「ライブでも、2人でボーカル出来てすごくよかった」
唯「だから、ありがとう」
167 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:08:01.93 ID:q2EZjBm7P
澪ちゃんは黙って聞いてくれた。
顔は下を向いていた、泣き顔を見せたくないんだね。
そんな強がりの澪ちゃんのこと、私は好きだよ。
澪「…私こそ」
澪「私の方こそ、ありがとう」
澪「唯がいたから、毎日が楽しかった」
澪「唯といるとな、すごく心があったまるんだ」
澪「これからも何かあったら助けるよ。私がいないと、唯はダメダメだからな」
澪「だから…さ」
澪「また、学校でな」
唯「うんっ」
そう言って澪ちゃんは足早に病室を出て行った。
学校で、か…。また、部室に行きたいな。
叶わないことなんだろうけど、澪ちゃんはそう言ってくれた。うれしかった。
168 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:08:37.73 ID:q2EZjBm7P
ガラッ
律「うーっす」
唯「あ、りっちゃん」
次に来たのはりっちゃん。
いつもの調子で病室に入ってきた。
律「んで、なんだよ話って」
唯「へへ…」
唯「りっちゃん。ありがとう」
律「な、なんだよ急にかしこまって」
唯「りっちゃんは、私の人生を変えてくれた」
唯「軽音部に誘ってくれて、ありがとう」
唯「私、危うくニートになっちゃうところだったよ!」
律「なんだよ、ニートって。私たちまだ学生だろ?」
唯「ふふ、それもそうだね」
169 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:09:20.55 ID:q2EZjBm7P
律「………」
律「澪もムギも梓もどっちかって言うと真面目な方だろ?」
唯「?」
律「だからさ、平気でバカ出来る唯がいてくれてすごく楽しかったんだ」
唯「そうだね。いつも私たち澪ちゃんに怒られてたかも」
りっちゃんとはずっとバカやっていたかった。
本当にそう思うよ。
律「いいか。またあのゲームで勝負だかんな!」
律「勝ち逃げすんなよ、わかったな!」
唯「…ふふっ、わかってる。いつでも相手になってあげる」
律「待ってるからな、絶対…」
そう言うとりっちゃんは背を向け病室を飛び出して行った。
りっちゃん、背中震えてた。我慢してたんだね。
ちょっと泣いた顔も見てみたかったな、なんて。
170 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:09:58.53 ID:q2EZjBm7P
ガラッ
紬「唯ちゃん、こんにちは」
唯「ムギちゃん!」
次はムギちゃんが入ってきた。
ムギちゃんはすでに目に涙を溜めながらも、必死に笑っていた。
唯「ムギちゃんには、特にありがとうを言わなきゃだ」
紬「?」
唯「ムギちゃんがいなかったら、ギー太なんて持ってなかっただろうし」
唯「合宿も、あんなに楽しいところなんて行けなかったかも知れない」
唯「私ね、ムギちゃんのお茶が楽しみで毎日音楽室に向かってたんだよ」
唯「それだけじゃない。いつも笑ってて、ほんわかしてて、私を癒してくれた」
だからね、ムギちゃん。
紬「………」
そんな泣きそうな顔を、しないで。
紬「唯ちゃんっ…」
ムギちゃんに、そんな顔は似合わないよ。
171 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:10:33.61 ID:q2EZjBm7P
紬「…ぐすっ。私ね」
唯「?」
紬「唯ちゃんのおかげでたくさんの夢が叶ったの」
紬「楽しいことも、うれしいことも、たくさん経験出来た。本当に感謝してるわ」
紬「唯ちゃん。戻ってきたら、またお茶しましょうね」
紬「唯ちゃんの大好きなケーキたくさん用意してるから!」
唯「うん、楽しみにしてるよ♪」
紬「絶対よ?」
唯「うん」
そう言ったムギちゃんの顔は、笑っていた。
やっぱりその顔が一番素敵だよ、ムギちゃん。
172 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:11:27.86 ID:q2EZjBm7P
唯「………」
ムギちゃんが出てからしばらく経った。
けど、一向に誰かが入ってくる気配がない。
次は順番的にあずにゃんかな?
たぶんあずにゃんのことだから、部屋に入るのを渋ってるんだろうな。
ふふっ、わがままな子猫ちゃんだね。
・・・・・・
【廊下】
憂「………」
軽音部の方達が次々とお姉ちゃんの病室に入っていった。
澪さんは戻ってくると端を切ったように泣き出した。
律さんは泣くのを必死に我慢し、紬さんは優しい顔で泣いていた。
梓「………」
次は、梓ちゃんの番だった。
紬「梓ちゃん、いいわよ」
梓「………」
しかし梓ちゃんは扉の前で立ち止まったまま、動こうとしなかった。
憂「…梓ちゃん?」
梓「…いやです」
173 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:12:11.45 ID:q2EZjBm7P
梓「行きたく、ないです」
梓ちゃんは、病室に入ることを拒絶した。
憂「ど、どうして…」
梓「だって、これってつまり、唯先輩にさよならを言いに行くってことでしょ?」
梓「私は、さよならなんてしたくない…」
澪「お、おい梓…」
紬「私たちは唯ちゃんにさよならを言いに行ったつもりはないわ」
梓「じゃあどうして!!」
梓「どうしてそんな簡単にこの扉を開けられるんですか…?」
梓「これが最後になるのかも知れないんですよ…?」
梓「先輩たちは、唯先輩の死を簡単に受け入れることが出来るんですか?!!」
パチィン…
174 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:12:58.74 ID:q2EZjBm7P
梓「えっ…?」
梓ちゃんの体が横に大きく揺れた。
律「………」
律さんだった。
律さんが、梓ちゃんの頬を叩いたのだ。
律「…いい加減にしろよ」
紬「りっちゃん、落ち着いて…」
律「ここにいるみんな、唯とさよならなんかしたくないんだよ!!!」
梓「……!」ビクッ
律「けどさ、唯が最後まで笑っていられるようにしようって、約束しただろ」
律「最後の最後に、唯を悲しませるようなことすんなよ…。ワガママ、言うなよ…」
澪「律…」
律「…くそっ。なんでだよ…。なんで、こんなことに……」
澪「お、おいっ」
律さんはそう言うと、どこかへ行ってしまった。
175 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:13:38.54 ID:q2EZjBm7P
ガラッ
梓「………」
唯「あずにゃん、遅かったね」
梓「す、すいません…」
目が真っ赤だ。泣いてたんだね。
頬も赤く腫れてる。
大方ワガママ言ってりっちゃんあたりに怒られたんでしょ?
ふふっ、かわいいなぁ。
唯「あずにゃん、おいで」
梓「………」
唯「ぎゅーっ…」
腕に力が入らない。
もう抱きしめてあげることも出来なかった。
それでも、力を振り絞ってあずにゃんを抱いた。
唯「あずにゃん分、補給だよ」
梓「…離さないで」
176 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:14:56.54 ID:q2EZjBm7P
初めてだった。離さないでだなんて言われたのは。
今まで事あるごとにイヤイヤ言われていたのに。
梓「お願いです、離さないで」
唯「あずにゃん…?」
梓「いやです…。やっぱり、いやですよ…」
梓「お別れなんて、したくないです」
あずにゃんはそう言って泣いていた。
まったく、困った子猫ちゃんだ。
お別れしたくないのは、私の方だよ。
こんなかよわい後輩を残してお別れだなんて、絶対に嫌。
でも、こればっかりはどうすることも出来ないから…。
せめて最後ぐらいは、先輩らしくいさせてね。
唯「ねぇ、あずにゃん」
唯「軽音部をよろしくね」
唯「いい子でいるんだよ?歌も練習して、ギターももっと上手になってね」
177 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:15:27.70 ID:q2EZjBm7P
梓「そんなこと言わないで…。いやだっ、いやですよぉ…」
唯「ワガママ言わないのっ」
梓「…!」
唯「ねっ?」
梓「…はい」
そう言うと、しぶしぶ私から離れた。
梓「…約束してください」
唯「?」
梓「絶対、またこうしてぎゅっくれるって」
唯「…うんっ」
今の私は、どんな顔をしているのかな?
先輩らしい顔になってるかな?
梓「…私、待ってますから」
そう言ってあずにゃんは病室を出て行った。
最後の最後まで迷惑かけて、ごめんね。ありがとう。
178 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:16:31.84 ID:q2EZjBm7P
スッ
あずにゃんが出て行ったのと入れ替わりで、和ちゃんが入ってきた。
唯「和ちゃん」
和「無理しないで起き上がらなくていいわ、そっちまで行くから」
和ちゃんはそう言うと私のすぐ近くまで来てくれた。
こういう気が回るところは相変わらずだね。
和「私の後ろ、随分と静かになったわ」
唯「…へへ。ずっと騒がしかったもんね」
和ちゃんの後ろの席は、なぜかいつも私だった。
何かあったらすぐ助けてもらえたし、お話しも出来た。
これって運命だったりしてね。和ちゃんはそんなことないって鼻で笑うだろうけど。
和「………」
唯「………」
唯「ねぇ、和ちゃん」
唯「私がいなくなったら、寂しい?」
179 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:17:13.49 ID:q2EZjBm7P
ふと、和ちゃんに聞いてみた。
長い付き合いでたくさん迷惑かけたし、お世話になった。
もしかして、私がいなくなったら和ちゃんはもっと自由に過ごせるのかな。
なんてことを思ったからだ。
和「………」
和「寂しくなんか、ないわ」
唯「…へへ、だよね!私、和ちゃんに迷惑かけっぱ―――」
和「なんて、言うと思う?」
唯「えっ?」
そう言った和ちゃんは、泣いていた。
和ちゃんが泣いてるところなんて、初めて見た。
和「…寂しいに決まってるじゃない」
和「バカね…」
唯「…ありがとう」
思わずもらい泣きしてしまいそうだった。
私、和ちゃんと一緒にいれてよかった。
本当に、そう思ってるよ。ありがとう。
180 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:17:57.68 ID:q2EZjBm7P
憂「………」
和ちゃんが戻ってきた。
和「憂。いっておいで」
と、言い残して和ちゃんは歩いていってしまった。
和ちゃんは、泣いていた。
憂「お姉ちゃん…」
本当は、私も行きたくなかった。
梓ちゃんが言っていたように、さよならを言いに行くみたいで嫌だから。
でも、行かなきゃ。お姉ちゃんが待ってる。
最後まで、笑っていようって決めたんだから。
そして、扉を開けた。
181 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:18:41.09 ID:q2EZjBm7P
唯「うい…」
憂「お姉ちゃん…」
お姉ちゃんは、だいぶやつれていた。
もうこのまま眠ってしまうんじゃないかってくらい。
唯「うい。ごめんね」
唯「お姉ちゃんらしいこと何一つしてあげられなくて」
憂「そんなことないよ、お姉ちゃん」
私は精一杯強がった。
溢れそうになる涙を抑えて、ぎこちない笑顔で笑った。
憂「頑張ってるお姉ちゃんも、だらけてるお姉ちゃんも、大好きだから」
憂「だから…笑って?」
憂「私は、笑ってるお姉ちゃんが一番好きだから」
182 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:19:48.75 ID:q2EZjBm7P
唯「………」
目の前にいる妹は、泣くのをぐっと堪らえていた。
強いね、憂は。本当に、よく出来た妹だよ。
本当は伝えたいことがたくさんあった。
ちゃんとご飯食べてね?
和ちゃんとケンカしないでね?
澪ちゃんたちと仲良くね?
あずにゃんを支えてあげてね?
でも、言葉に出来なかった。
ただただ、別れが悲しかった。
鼻の奥がつんとする。
涙がこみ上げてくるのがわかる。
けど、ここで泣いちゃダメ。
憂が頑張って我慢してるのに、お姉ちゃんの私が泣いたら…。
でも、でもっ…。
唯「ねぇ、うい…」
憂「…なぁに?」
唯「…ありがとう……」
やっぱり、我慢出来ないよ。
お別れしたくないもん。もっとずっと一緒にいたいもん。
183 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:22:24.16 ID:q2EZjBm7P
憂「お姉ちゃん…」
ありがとうを言ったお姉ちゃんの頬を涙が伝った。
憂「お姉ちゃんっ!!!」
私はお姉ちゃんに抱きついた。
もう我慢出来なかった。大声を出して泣いた。
唯「うい、うい…。ごめんね、ごめ…んね…」
憂「う、ううっ。うわああああああああああ」
ずっと我慢していた涙が滝のように溢れた。
嫌だよ、離れたくない。もっとずっと一緒にいたい。
唯「ごめんね…ごめんね…」
お姉ちゃんも泣いていた。
2人で抱き合いながら大粒の涙を流していた。
ごめんね、ダメな妹で。最後まで笑っていようって決めたのに、出来なかったよ。
でもね、お姉ちゃん。
私、お姉ちゃんの妹でよかった。
ねぇ、お姉ちゃん。
大好きだよ。
――――――
――――
―――
――
…
184 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:23:18.98 ID:q2EZjBm7P
時が経ち、9月。
まだ日差しが眩しい季節だ。
お姉ちゃんが亡くなって、5ヶ月ほど経った。
今日から文化祭の準備が始まる。
装飾やら何やら学校の至る所で活気づいている。
純「ういー。早く行くよー」
憂「あっ、うん…」
私は純ちゃんと買出しに行っていた。
憂「………」
体育館の前で立ち止まる。
扉には、文化祭当日の体育館のタイムスケジュールが貼ってあった。
しかし、軽音部の名前はそこにはなかった。
185 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:24:55.05 ID:q2EZjBm7P
お姉ちゃんを失った軽音部は、水を与えられなくなった花のように枯れていった。
澪さんも、律さんも、紬さんも、いる意味を失ったかのように軽音部から離れていった。
残ったのは梓ちゃんだけだった。
梓ちゃんだけは、お姉ちゃんの言葉を守っていた。
―――軽音部をよろしくね―――
そして、お姉ちゃんの帰りを待っていた。約束を信じていた。
もう帰ってこないとわかっていながらも、ずっと待っていた。
私は何度も梓ちゃんを慰めた。
梓ちゃんも、壊れそうになっていた私を支えてくれた。
体を重ねたりもした。お互い醜く傷を舐めあっていた。
体を重ねる度に梓ちゃんは、お姉ちゃんの名前を呼んでいた。
そうすることでしか、私たちは生きられなかった。
一週間ほど前のことだ。
梓ちゃんが自殺したという話を聞いたのは。
186 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:27:06.74 ID:q2EZjBm7P
たぶん、文化祭が近づくにつれて思い出してしまったのだろう。
軽音部のこと。お姉ちゃんのこと。
耐え切れなかったのだ。それほどまでに、お姉ちゃんの存在は大きかった。
私なんかで埋められるようなものではなかったのだ。
ねぇ、お姉ちゃん。
やっぱり、ダメだよ。お姉ちゃんがいなくちゃ。
お姉ちゃんは今何してるの?
そっちに梓ちゃんはいる?
もしかして、一緒にギター弾いてたりしてね。
いいなぁ…。私、もう疲れちゃった。
お姉ちゃんのいない家ってね、すっごい静かなんだよ。
ご飯もおいしくないし、何してても楽しくない。
憂「………」
私は空を見上げた。
この空のどこかで、お姉ちゃんは私を見ていてくれてるのかなぁ。
お姉ちゃん。もう少ししたら、私もそっちに行くから。
向こうで会えたら、また一緒に色んなことしよう?
まだ暑いから、いっぱいアイス食べようね。
ねっ、お姉ちゃん。
ごめんね。
187 :
◆.eZhvV6kr4vA
[sage]:2011/01/24(月) 04:27:32.21 ID:q2EZjBm7P
おしまい。
長々とすんませんですた。
188 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:09:09.51 ID:R6ImK8zAO
この先閲覧注意
189 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:09:43.61 ID:R6ImK8zAO
「.....ん...あ....んっ....」
そんな声を聞いて目が覚めた。いつの間に私は眠ってたんだろう。
辺りは暗く、日が落ちてることだけは容易にわかった。
歯も磨かずに寝てしまうなんて私らしくないな……唯先輩みたい。
そう言えば晩御飯も食べてない気がする。お腹減ったな……。
なんで起こしてくれなかったんだろう、お母さん。酷いなぁもう。
夜中だった明日の朝ごはんまで我慢しよう。21時以内なら食べよう、台所詮索の始まり始まり。
夜ってある程度日が落ちるともうそれが何時ぐらいなのかわからないよね。
190 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:10:24.38 ID:R6ImK8zAO
「──んあ.....あっ.....んぐっ......」
だから夜はちょっと怖い。知らない間に異世界に飛ばされたんじゃないか……そんなファンタジックなことを考えてしまう。
澪先輩とかしてそう。そういう想像。
それで怖くなって律先輩を呼んだり。
可愛い、澪先輩。
ああ、そろそろ起きなきゃ……これでまた眠ってしまったら虫歯が進行してしまう。
虫歯は寝てる時に一番進行するってテレビでもよく言ってるし、痛いのはやだし。
あれ? ベッドで寝てる割には体が冷たいな。
布団被り忘れたのかな。風邪ひいちゃわないか心配だ。
191 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:11:09.08 ID:R6ImK8zAO
「──あああっ....やめっ.....もう.....んぐっ.....ぐる゛し......」
布団で思い出した。ムギ先輩家の布団はさぞ暖かいんだろうな……。
合宿の時に寝たベッドも私のとは比べ物にならないぐらいふかふかだったし。
ふかふかタイム……。澪先輩ですか。
あれなら毎日寝るのが楽しみになりそう。
もっといいのにしようかな……ベッド。
こんな固くて冷たいんじゃまるで……
梓「コンクリートみたい……」
「あれ? 起きたんじゃね?」
「おーマジか。やっとかよ。さすがに一人に三人行くのは窮屈だったから助かった」
192 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:11:47.83 ID:R6ImK8zAO
「.....あっ.....い゛っ......」
「てかおめ〜が叩き起こすのはやめたげてよぉ〜とか言うからだろうが」
「こっちのやつは文字通り叩き起こしたのにな」
「バッカこっちのは猫みたいでなんか叩けないじゃん? 俺猫大好きなんだわ。人間大嫌いですけど」
「うわきもっ。動物愛護のやつって大体どっかねじ曲がってるよな。お前みたいに」
「優しさは一定なんだよ。バファリンみたいに半分しかないの。その半分は猫に使われてるってわけ。じゃあ俺あっち行くから」
「ロリコンだねぇお前も」
「どっちも似たような面だろうが」
「違いねぇ」
193 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:12:25.32 ID:R6ImK8zAO
──何か、暗い影の塊が近寄って来る。
「起きたか? 寒かったろ〜? すぐに暖めてやるからな、人肌で」
言ってる意味も、状況も、この人が誰なのか、何なのか、全く何もわからない。
ただわかるのは、目の前の人はいい人ではないってことだ。
ニヤついた口がそれを語っている。
ただ、本能が言っている。
逃げろと。逃げなきゃ……
梓「あ……れ……」
体が上手く動かせない、腕も、足も、固定されてしまっている。
「あ、そういや君名前は?」
梓「えっ……」
194 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:13:04.25 ID:R6ImK8zAO
予想外の質問に、条件反射的に答えてしまう。
梓「梓、です」
「あ〜あ〜やっぱりそっか。いや〜ヤる前に聞けて良かった。名前呼びながらヤるの好きなんだよ俺」
梓「……は?」
この人は何を言ってるんだろう。
「あずにゃんあずにゃん言うから多分梓だと思ってたけどさ。間違ってたら悪いじゃん? 浮気してて他のやつとヤってる時に違う名前叫んじゃったみたいな感じになるじゃん? まあーそんなとこ」
梓「さっきから何を……」
「は? ……あ〜あ〜まだ理解してらっしゃらない? あーそっか。どうすっかな〜ん〜……」
195 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:13:51.16 ID:R6ImK8zAO
「ほい」
梓「ちょっ……」
「ちっせ。でも悪くないな〜こういうの嫌いじゃないよ俺は」
梓「やめてくださいっ! 警察呼びますよッ!?」
「うん、呼んでもいいよ。呼べたら、な」
梓「あっ……ああっ」
体は、縛られている。
ここは、家ではない。
目の前には、怖い男の人。
梓「あ……ああ……そんな……」
「わかった? 君さ、今レイプなうってわけ」
梓「ウ……ソ……」
その現実がわかった瞬間、涙が押し上げてくる。
「あ〜泣くのはプレイしてからにして欲しかったな。まあ後か先かの違いか」
196 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:14:29.59 ID:R6ImK8zAO
「桜ヶ丘の制服って可愛いよな〜マジ芸術品だわ。よっと」
ブレ、ザーのボタ、ンが、、外さ、れていく
「俺の胸の触り方的にさ、このタイプならブレザーの上から、シャツの上から、んでブラからちょっといじった後から生触るってのが理想なんだよね」
そう言い、ながらシャツの上、から私の胸、をまさぐる、
きもち、、わるい
梓「……やめて…ください」
ヤメテクレルワケナイノニ
「だめー。じゃあ次はブラの……。うおっ、可愛いのつけてんじゃ〜ん。もしかして俺のため?」
ヤメテ……クダサイ
197 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:15:09.01 ID:R6ImK8zAO
そのま、ま滑る、ように手がちぐ、さをまさぐる
「あれ? 気持ちよくない? 小さい子は乳首の感度いいっていうのはやっぱ都市伝説かぁ〜」
ヤメテ……
「うわ足ツベツベ。いつまでも触ってたいわこれ」
その、まま、手は、私の……。
梓「やめてっ!!!!! お願いだから……。やめてください……。お願いします……」
泣きながら懇願する。
こんなことは全く経験ないけれど、最初だけは……最初だけは好きな人としたい。
「うんそれ無理ー。よいしょっと」
梓「ひあっ」
冷たい、指が、私の陰部に、触れ、、、、た
198 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:15:37.86 ID:R6ImK8zAO
梓「ひやっ……やめて……くだ……」
「お〜濡れてきた濡れてきた。エロゲーならしっかり感じてんじゃねぇか! の流れだけどこれって体の防衛行為なんだよな。性器が傷つかないようにって。いや〜良くできてるわ女の体は」
そのまま、指は、中に入って……
クチャ、クチュ、クチャ、
「いい音だわ〜アンサンブルだわ〜」
なんだか、よくわからなくなって……。きた。ただ、体が暖かく……なって
「あ〜もう我慢できね」
そう言うと、男は、自らのズボンをズリ落とし、
「しゃぶって」
とだけ言った。
199 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:16:09.18 ID:R6ImK8zAO
知らないわけじゃないけど……実物を見るのは初めてだ……きもちわるい……。
なに、あれ。
映画に出てくるミュータントみたい……。
「しゃぶれっての」
梓「や……っ」
無理やりそれを口に押し込もうとする、臭い、汚い、ヤメテ
「ッっ、お前さ〜状況わかってんの? レイプなうなわけなの。ここは廃工場で、誰も来ない。こっちは男三人で、お前は縛られてて、もうわかれよいい加減さ」
「な〜に和姦に持ってこうとしてんだよお前」
「うっせぇ! てめぇらはそっちで黙ってヤってろ!」
200 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:16:36.77 ID:R6ImK8zAO
「俺達もさ、別に[
ピーーー
]つもりとかないわけ。ただお互い気持ちいいことして? 終わったら忘れましょ? 的な一晩のラン[
ピザ
]ー的な感じなんだよ」
梓「意味わからないっ! 早く離してよっ! 絶対警察呼んで捕まえてもらうんだから!!! 嫌なら今すぐ離してっ!!!」
最後の虚勢、この人達だって捕まりたくはない筈だ。それに案外下手に出てる……なら、もしかしたら……。
「はあ……。じゃあお前もああなるか?」
梓「……え」
男が指差した方向には、知ってる人が、いた。
「んあっ……ああ……もう……やめてよ……やめてよぉ…」
201 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:17:09.96 ID:R6ImK8zAO
下から突かれながら、口に異物を突っ込まれている。
衣服は乱れ、胸をさらけ出し、髪もボサボサで、ただ、男の人のあれをくわえている。
「いいからしゃぶれっての」
唯「んぐ」
頭を鷲掴みされ、異物を出し入れされている。
唯「おえ……ぐる゛……じ」
「次歯立てたらマジさっきのじゃすまねぇから。丁寧にやれよ」
唯「!!! ……ふぁい」
目が慣れて来たのかよく見ると唯先輩の顔がところどころ腫れているのがよくわかる。
殴られたんだ……。
言うこときかないから……。
ここは……なんだ?
202 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:17:44.85 ID:R6ImK8zAO
「俺はあずにゃんをああしたくないわけ。出来ればただ数十回セックスして帰してあげたいのよ。わかってくれないかな〜?」
唯……先輩。
「だからさ〜しゃぶってくんないかな〜優しくさ。こうペロペロってさ。上目遣いで」
こんなとこ、いちゃいけませんよ……唯先輩
唯「あんっ……んっ……こう?」
「わかって来たじゃねぇか。飲み込み早いなお前」
唯「……。」
頭を撫でられて、なんでちょっと嬉しそうな顔してるんですか……唯先輩。
ああ、そうか……。
そうするしかないんだ、もう。
壊れるしか、ないんだ。
203 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:18:30.82 ID:R6ImK8zAO
嫌がったら殴られる。
やるまで、なんども、なんども、
言うことを聞くまで、死ぬまで、なんども、なんども、なんども、なんども、殴られるんだろう。
唯先輩はきっと、そうされたのだろう。
だから、もう、ここから逃げるには、おとなしく従って、機嫌を取るしかないんだ。
自分を壊して、今までの日常を壊して、従うしかないんだ。
ここは、そういうところなんだ。
すべてを、理解した。
梓「……」
「やっとやる気になったか。ほれ、優しくな」
ここは、腐っている
204 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:18:59.56 ID:R6ImK8zAO
男のものを丁寧に舐め回す。臭く、汚く、おぞましいそれを。
「やっべそれ最高」
男の注文通り上目遣いをしながらやると機嫌良さそうに私の頭を優しく撫でてくれた。
そうだ、従えば痛いことはされない。
確かにこれは臭いし、汚いけど……我慢は出来る。
くさやを舐めているとでも思えばいい。
プライドはここでは一時的に捨てよう。今日この日は私の人生でなかったことにしよう。
明日から、また、中野梓を始めよう。
「じゃあそろそろ本番いこっか」
梓「えっ……」
それは、駄目だ。
205 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:19:28.76 ID:R6ImK8zAO
今日と云う日が明日からも残ってしまう。
それだけは避けないと、この日を思い出さない為にも。
梓「それだけは……やめて。他のことならなんだってします……だから」
「あ、もしかして梓処女?」
梓「ち、がっ」
「うわマジかよやったよおい俺1/65000引いたかこれフリーズ引いたかおい!」
梓「処女なんかじゃ……」
「優しくするからな(キリッ な〜んつって」
梓「お願いします……やめて……」
「だからさ、無理だって。ほら、足上げて」
梓「……」
仕方ない、ボールペンか何かで破ったことにしよう。
206 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:19:56.56 ID:R6ImK8zAO
もう、何もかも諦めた。
この人達は満足するまで自分を通し、私達はそれに従うしかない。
「じゃあいくぞ〜?」
この後多分中に出すだの出さないだので揉めても、結局はあっちの好きなようにされる。
じゃあ、もう黙っていよう。
あれこれ言うのはもうめんどくさい……。
考えるのが、めんどくさい。
「うわキツ。……おおお入ったあああ」
梓「ッ〜〜〜」
初めては、ただ痛くて、お腹が気持ち悪くて、世界がぐるぐる回ってた。
「はあっ……はあっ……」
そして目の前にいるのは、名前も知らない人で。
207 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:20:27.62 ID:R6ImK8zAO
ただ、別のことを考えるようにした。
梓「あっ……」
そうだ、そうだった。
今日? 私達はいつも通り部活が終わった後一緒に帰ってて、好きなアイスクリームの話になって、一方的にされてたんだけどね。
そして、人気のない場所で、ちょっと前に止まっているワゴンの横を通ろうとしたら、
「はっ……ああっ」
この悪魔達に捕まったんだった。
思い出した。
ただ、それだけだったんだ。
それなのに、唯先輩は……。
唯「もっとぉ……もっと撫でてよぉ」
ああなって。
208 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:20:56.23 ID:R6ImK8zAO
私は、
「イクッ!」
こうなった。
お腹が熱い。精液を出されたのだろう。
「あ〜まだまだいけるわこれ。最高」
どうやらまだ飽き足りてないようです。早く終わらしてくださいよ……こんなこと。
「二回戦、行くか!」
また異物が私の中に溶け込む。
「何だかんだであずにゃんも乗り気じゃないの。声出しちゃってさ」
は? 私が? 声? なに言って……。
梓「んっ……もっと……優しくしてよ。んっ……そう……それぐらいっ……ちょっと気持ちよくっ……なって……」
ああ、そうか……。
209 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:22:22.58 ID:R6ImK8zAO
もう私とこの子は違う人なんだ。
梓「はぁ……はぁっ」
「はあっ……あずさっ」
梓「んむぅ……ずちゅ……んにゃ……」
「あずさっ……あずさっ……!」
梓「んんっ……また……出るんですか? 出来たら……外……に……んあっ……熱い……」
こいつ、いっちょまえにちょっとだけ拒否ってやがる。ビッチ野郎め。
くたばりやがれです。
「俺の子供作ろうな、梓」
梓「……私のこと、好きになってくれるなら」
そう言って、また腰を振りだす私。
さよなら、アホな私。
頑張ってね、後何時間かわからないけどさ。じゃ、私は寝てるから。
終わったら起こしてね。
210 :
◆8TwvTVB6bg
[sage saga]:2011/01/24(月) 05:24:39.94 ID:R6ImK8zAO
今日という日はなくなった。
でも、
「また……イクッ! ううっ!」
お前の顔だけは、忘れない。
梓「赤ちゃん……出来ちゃう……かな」
梓「(忘れない……。お前だけは)」
同じ地獄の中で殺してやるから。
了
211 :
◆8TwvTVB6bg
[sage]:2011/01/24(月) 05:26:25.42 ID:R6ImK8zAO
参加者少なかったみたいなんで即席で書いた
書いた自分ですら胸糞悪い
トリがこれとか最悪だろ……。
企画的には成功だけど
212 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/01/24(月) 05:52:27.31 ID:7r/BHlVbo
もくじ!
タイトルは直感で
一番手
>>16
◆JEuhH1uHN 監禁
二番手
>>44
◆4Hbfrw6L5M 『ウワサ』
三番手
>>85
◆IhaQs0Ql/bFy ケーキ
四番手
>>103
ID:0qwnACvpo 唯「さいきんあずにゃんがうざい」
五番手
>>114
◆nKE2AQhF0Q 唯「平沢どっきりカメラ!」
六番手
>>144
◆.eZhvV6kr4vA 憂「余命一ヶ月の姉」
七番手
>>188
◆8TwvTVB6bg この先閲覧注意
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