■掲示板に戻る■
■過去ログ倉庫メニュー■
■VIPService (VIPサービス)■
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みはできません。。。
HTML化した人:
lain.
★
マミ「杏子……」
1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:50:30.62 ID:UJglJRMW0
・まどかSS、マミと杏子の前日譚的な話です。二人が時に共闘しつつ、魔女がらみの事件を解決していく!みたいな話をちょっとずつ書いていくつもりです
・マミ杏子以外の魔法少女は出ません。筋の都合上、固有名詞のある独自キャラが一部出ます
同様の理由で、独自設定なども出てきます。あしからずご了承ください
・話は暗めです。エログロは(多分)出ません。ご容赦ください
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:53:14.59 ID:UJglJRMW0
6月も終わろうとしていたある日の昼下がり。見滝原中学の屋上から見渡せる街並みの上には、雨雲が低く垂れ込めていた。
「授業たりー。このままここでさぼっちゃおうか」
屋上の片隅にあるベンチに腰掛けていた女生徒がそう言うと、隣に座っていた眼鏡の女生徒が手を目の高さにかざしながら言った。
「もうすぐ期末試験だよ。それにほら、雨……」
「ちっ。教室戻るか」
「あれ?」
「どした?」
「あそこで誰か寝てる」
眼鏡の女生徒が指さす先には、一人の男子生徒が仰向けの姿勢で、手足を投げ出すようにして横たわっていた。
「ずぶ濡れになんぞ。起こしてやるか。……にしても酷い寝相だな、おい」
「そう……だね」
「……?」
「なんだか、まるで死んでる……みたい……」
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:54:18.95 ID:UJglJRMW0
巴マミが教室を覗くと、中には誰もいなかった。
(あれ……?教室が空っぽだ。移動教室かしら……?でもあの子の机は畳んだままになってるし、やっぱり今日も……)
「うちのクラスになんか用?」
突然後ろから声をかけられてマミが振り向くと、気の強そうな女生徒が立っていた。
「あんた、確かとなりのクラスの……巴さんっていったっけ」
「ええ、そうよ。私は巴マミ。このクラスの青梅さんに借りていたノートを返しにきたんだけれど……お休みみたいね」
「へえ、あんたあいつの友達なんだ」
女生徒はそういうと意地悪そうにマミの顔を見た。
(何なの、この子。人の顔をジロジロと……感じ悪いわね)
「あいつなら当分こないってさ。何かややこしい病気で入院してるらしいから」
「入院……?」
「なに?友達なのに知らないの」
それだけ言って教室に入ろうとする女生徒をマミは呼び止めた。
「待って。入院って、どういうこと?」
「知らないよ。他の人に聞けば」
「そういえばこの教室、あなたの他に誰もいないみたいだけれど……」
「みんな屋上。あたしは血とかそういうの、苦手だから」
「屋上?」
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:54:45.48 ID:UJglJRMW0
「なんだ、あんた聞いてないんだ」
女生徒がそう言うと、マミは少しだけ口ごもってから言った。
「さっきまで図書室にいたから……。何かあったの?」
「屋上で2年が血流して倒れてんだって。自分で手首切ったらしいよ。あ、救急車来た」
「自分で?。自殺、ってこと?」
「そうなんじゃないの。まだ生きてるかも知れないけど」
「でもそれって……」
「そ。今月に入って二人目。しかも両方2年。呪われてんじゃないの、うちの学校?」
女生徒はそう言って笑った。
(呪いだなんて……冗談じゃないわ)
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:55:15.33 ID:UJglJRMW0
そのとき、ものすごい勢いで誰かが階段を駆け降りてきた。
「おい、お前何してんだよ。すぐ屋上来いよ!」
どうやらマミの相手をしていた女生徒を呼びに来たらしかった。
「何なのよ。だからあたしは見たくないって……」
「屋上で倒れてんの、○○なんだよ!」
「え?」
名前を聞いた瞬間、女生徒の表情が凍り付いた。
「○○が……?どういうことよ?」
「いいから早く来い!」
呼びに来た男子生徒に引っ張られるようにして、女生徒は階段を駆け上がっていった。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:55:46.05 ID:UJglJRMW0
(どうやら、あの子の知り合いだったみたいね。……そんなことより)
「キュゥベえ。聞こえる?近くにいたら返事して」
「僕はここだよ、マミ」
その声とともに、猫のような白い身体がぴょこん、とマミの足下に現れた。キュゥベえと呼ばれたその不思議な生き物は、テレパシーでマミの心に直接語りかけた。
「話は全部聞いていたよ」
「どう思う?これってやっぱり……」
「立て続けに二人の生徒が自殺を図ったわけか。魔女の仕業かも知れないね」
「とにかく私たちも屋上に行ってみましょう」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:56:32.03 ID:UJglJRMW0
雨の屋上には既に救急隊員が到着していた。生徒たちは傘もささずに、その様子を遠巻きに見守っている。
「これじゃあ私は近寄れないわ。キュゥベえ」
「了解だよ」
言うが早いかキュゥベえはチョロチョロと人混みの間をぬけ、倒れている男子生徒の傍らでしばらく様子を観察すると、すぐにまた戻ってきた。
「どうだった?」
「当たりだよ、マミ。『魔女のくちづけ』だ」
「やっぱり……」
「あの子はもう、とても助かりそうにないね。手首をバッサリだ」
「そう……なの」
マミの顔が僅かに曇る。
「どっちにしても、今のところこの辺りに魔女の気配はないみたいだ。落ち着いて対策を考えよう」
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:56:57.33 ID:UJglJRMW0
マミが戻ろうとすると、男子生徒を乗せた担架が階段の方に向かってきた。
(……?)
「どうしたんだい、マミ?」
「いえ、あの子……」
ちょうどすぐ傍らを運ばれていった男子生徒の顔に、マミは何かしら引っかかるものを感じた。
「マミの知り合いかい?」
「そういうわけじゃ、ないんだけれど」
(気のせいかしら。よく考えれば、同じ学年なんだから顔に見覚えがあっても当然だし。でも……)
見世物は終わったとばかりに、屋上の生徒は三々五々教室に戻っていく。雨足は少しずつ強くなって行くようだった。誰もいなくなった屋上で、マミはひとり、物思いに沈んでいた。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:57:41.73 ID:UJglJRMW0
(入院だなんて……どうして私に何も教えてくれなかったのかしら)
午後の授業が始まっても、マミは全く身が入らなかった。屋上での出来事も気にかかったが、それよりもその前に聞かされた事実の方がマミにとっては衝撃的だった。
(まあ、仕方がないかも知れないわね。幼なじみとは言っても、この頃は……ほとんど話をする機会もなかったし)
マミは傍らで丸くなっているキュゥベえをちらりと見た。何を考えているのか分からない赤い瞳を今は閉じて、気持ちよさそうに眠っている。
(私が魔法少女をやっているなんて知ったら、どんな顔するんだろう、あの子。やっぱり、羨ましいって言うのかな……)
巴マミと青梅あきは子供の頃からとても仲が良かった。小学校に入ったころは二人でよく遊んだ。しかし高学年になると、少しずつ疎遠になっていった。もともと大人しい性格だったあきは、クラスが離ればなれになってしまったマミに積極的に会いに来るようなことはなかった。それでもマミの方は、新しい友人たちとのつき合う一方であきの事も気にかけ、時々遊びに誘ったりもしていた。
……あの事故が起こるまでは。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:58:06.80 ID:UJglJRMW0
(もし……なんて考えても仕方のないことだけれど)
交通事故に遭い、失われる筈だった命をつなぎ止めることと引き替えに魔法少女になったマミは、二つのものを同時に失った。
家族と、ふつうの少女としての青春とを。
それまでクラスの人気者だったマミは、事故の後、だんだんと自分が周囲から浮いた存在になっていくのを感じた。事故で一度に家族を失った悲劇の主人公にうまく接していくには、マミの友人たちはまだ幼すぎたのだった。もちろん、それだけなら時間が解決してくれたのかも知れない。孤独の影をひきずりながらも、一人の十代の少女として、人並みの青春を送れていたのかも知れない。
しかし、自分一人助かったことの代償に、マミは他の誰も背負ったことのない、過酷な運命を課されることになった。
(もし、もし魔法少女になんてなっていなければ、まだあの子と仲良しでいられたのかな)
魔法少女として魔女と命がけの戦いをするようになったマミの目には、かつての友人たちはもはや違う惑星の住人のように見えた。ほんの少し前まで、自分もその輪の中で同じように笑いあっていたのだということが、どうしても信じられなかった。
誰もマミに近づこうとしなかったし、マミも誰にも近づこうとはしなかった。学校にいるあいだ、空き時間は読書をして過ごした。そして、あきに声をかけることもまた、なくなったのだった。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:58:34.58 ID:UJglJRMW0
「で、これからどうする気だい、マミ?」
放課後、黄色い傘をさして家路につくマミの肩にしがみつきながら、キュゥベえは尋ねた。
「今日の事件が魔女の仕業だと分かった以上、放っておくとまた次の犠牲者がでることになるよ」
「ええ、分かっているわ」
マミは言った。
「でも、魔女の居場所も分からないとあっては、ね。まずは何かとっかかりを見つけないと」
「そう言えば、前の事件というのはどういう状況だったんだい?」
「私も人づてに聞いただけだから、詳しくは……。2週間くらい前に、2年の女子生徒が自殺したって話だけど」
ぴょん、と肩から飛び降りたキュゥベえは、大きな目でマミを見上げながら言った。
「もしその事件が今回と同じ魔女の仕業なら、何か共通点が見つかるかも知れないよ。調べてみる価値はありそうだ」
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:59:10.75 ID:UJglJRMW0
「あったわ。小さく記事になってる」
見滝原市立図書館の閲覧室で、マミは一人目の生徒の自殺を報じた新聞記事を見つけた。
「『……10日朝9時頃、見滝原市のショッピングセンター△△の屋上で、少女が血を流して倒れているのを警備員が見つけた。倒れていたのは見滝原中学2年の××(14)で、すぐに病院に運ばれたが既に死亡していた。少女の右手首には切り傷があり、警察では自殺を図った可能性もあるとみて捜査を進めている……』ですって」
「どう思う?」
「同じ魔女が関係していることはほぼ間違いないでしょうね。場所こそ違うけれど、どちらも建物の屋上で手首を切るっていうやり方が同じだもの。それにしても……」
マミは新聞を畳み、替わりに地図を取り出した。
「ずいぶんと奇妙だわ。どうして部屋の中じゃなくて、わざわざ屋上におびき出してそんなことをさせるのかしら」
「さあ、どうしてだろうね。それは魔女に聞いてみないと」
「え?」
「いや。それはともかく、少しだけ手掛かりを得たってことになるのかな?」
「どうかしら。これだけじゃまだ、雲を掴むようなものよ」
地図を指さしながらマミは言った。
「いい?見滝原中学の場所がここ。で、一人目の子が死んでたショッピングモールというのがここなの。直線距離で言っても1キロ以上離れているわ。これじゃとても魔女の居場所を割り出す事なんてできない」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 00:59:38.74 ID:UJglJRMW0
「魔女は移動しているのかな」
「だとしたら、そうとう逃げ足の早い相手ね。今日私たちが屋上に行ったときにはもう、気配の痕跡さえ感じられなかったんだもの」
「でも、もし遠く離れた場所から二つの事件をおこしたのだとしたら、それはそれで手強い相手だよ、マミ」
「ええ、分かってる。いずれにしても、これ以上は魔女の居場所を知る手がかりはなさそうね」
マミは立ち上がった。
「当面は、地道にパトロールするしかないみたい。かなり広い範囲を警戒しなくちゃいけないけど……」
「……」
「?どうしたの、キュゥベえ」
「……何でもないよ。とりあえず他に方法はなさそうだね。うまく使い魔でも見つけられるといいけれど」
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:00:39.24 ID:UJglJRMW0
図書館から出ると、雨はますます激しくなっていた。遠くからは微かに雷の鳴る音も聞こえてくる。
「ひどい雨……。キュゥベえ、魔女も気になるところだけど、今日のところはひとまず家に帰りましょう」
マミは制服のスカートの裾をひらひらさせながら言った。
「この雨じゃ、こんな格好であまりうろうろするわけには行かないもの」
「君にまかせるよ、マミ」
「向こうの道を通れば、屋根があるわ」
そう言うとマミは、歩いて5分ほどの距離にある商店街のアーケードの方角に歩き始めた。
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:01:11.69 ID:UJglJRMW0
(魔法少女なんていっても、雨から身を守ることさえ自由には出来ないなんてね)
マミは心の中でそう呟きながら苦笑いした。
もちろん魔法を使えば、雨よけのシールドを作り出すことなどたやすい。しかし、そんなささやかな術であってもソウルジェムを濁らせるとあっては、迂闊に魔力を使うわけには行かなかった。
(何をするにも代償、代償……。どこまでだって飛んでいける羽根を持っているのに、籠に閉じこめられてしまった小鳥のようなものね)
商店街の入り口で傘を畳みながら、マミは暗い空を見上げた。
(あき。魔法少女なんて、所詮こんなものよ。あなたが知ったらきっとがっかりするんでしょうね……)
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:01:39.15 ID:UJglJRMW0
「マミ!」
その時、キュゥベえが突然心の中に話しかけてきた。
「気配を感じるよ。このすぐ近くだ」
「!」
マミはすぐにソウルジェムを取り出すと、辺りの気配に意識を集中した。
「この感じは……おそらく使い魔ね」
「あの路地の辺りだ」
キュゥベえは、商店街の本通りから一筋離れたところにある暗い路地を指し示した。
「今回は逃がさないわよ」
「待つんだ、マミ」
マミが路地に向かって駆け出そうとすると、キュゥベえが待ったをかけた。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:02:14.80 ID:UJglJRMW0
「僕に考えがある」
「何なの?モタモタしてると、また逃げられてしまうわ」
「だったら逃がしてやろうよ」
「?」
「ここで使い魔を倒しても、魔女の本体を捜し当てる手掛かりにはならない。でもこっそり気配を追っていけば……」
「駄目よ」
マミはキュゥベえの言葉を遮った。
「もし見失ったらどうするの?やっつけるチャンスがあるのに、みすみす街の人たちを危険にさらすわけにはいかないわ。それに、あの使い魔の本体が昼間の魔女だとは限らないわけだし」
「でも……」
「絶対に駄目」
しばらく沈黙したあと、キュゥベえは言った。
「……分かった。実際に戦うのは君だからね。君の考えを尊重するよ、マミ」
「ありがとう、キュゥベえ」
言うが早いか、マミはソウルジェムを目の前にかざした。ジェムから放たれた黄色い光がマミの身体を包み込む。
「まずは、お手並み拝見ってとこかしら」
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:03:05.01 ID:UJglJRMW0
光の中から現れたマミは、もう見滝原中学の制服などまとってはいなかった。白いブラウスに、髪の毛と同じ色のリボンとスカート。ブラウンのコルセットに、戦いにはやや不似合いなベレー帽。「魔法少女」としての、いつものマミのスタイルだった。
「油断は禁物だよ、マミ。どんな相手かよく分からないからね」
「分かってる」
マミが路地に駆け込むと、そこには思った通り結界が張られていた。
(あまり強い魔力は感じない……。使い魔は……あそこね!)
路地の奥の方に、醜い雛鳥のような姿をした異形のものが蠢いている。
「一気にカタをつけるわよ!」
マミはそう叫ぶとベレー帽を空中高く放り投げた。ふんわりと空中に描かれた放物線をなぞるようにして、美しい装飾を施した白いマスケット銃が次々と現れる。
(この距離なら……負けない!)
激しい轟音とともに、夥しい数の砲身から一斉に銃弾が放たれる。それらは一つ残らず使い魔の身体に命中した。
(やっつけ……た?)
蜂の巣にされた使い魔はしばらくその場でもがいた後、声一つ上げることなく掻き消えた。周囲に巡らされた結界がみるみる崩壊していく。
「さすがだね、マミ」
キュゥベえが足下に近づいてきて言った。
「相手に反撃の暇を与えないなんて」
「え、ええ……」
マミは変身を解きながら、あまりにあっけない勝利に微かな違和感を覚えた。
(反撃させなかったというより……相手に攻撃の意志を感じなかった)
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:03:44.83 ID:UJglJRMW0
「でも、事態は少しばかりやっかいになってきたね」
「え?」
問い返すマミを見上げながらキュゥベえは言った。
「君の学校から見ると、ここは一つ目の事件が起こった場所のちょうど反対側だろう?この使い魔の本体が何であるにせよ、これで僕たちがパトロールしなくちゃいけない範囲はますます広くなったと言わざるを得ない」
「それはまあ、そうかも知れないわね」
「……きみ一人で対応できるのかい?」
キュゥベえがそう問いかけると、マミの目元がわずかに険しくなった。
「……どういう意味?」
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:04:16.53 ID:UJglJRMW0
「言葉どおりの意味だよ、マミ。これだけの広い範囲を、君一人だけでカバーするのにはやや無理がある。今回の件に関しては助っ人がいた方がありがたいんじゃないかな」
「あの子のことを言ってるの」
マミはキュゥベえを睨みつけるようにして言った。しかしキュゥベえはそれに動じた様子もなく言葉を続ける。
「彼女なら、君もやりやすいだろう?一度は一緒に戦ったこともある仲間なんだし、それに……」
「あの子が協力してくれるわけがないわ」
吐き捨てるようにマミが言うと、さすがのキュゥベえも黙った。
「たとえ来てくれたとしても、前みたいに、なんて……」
「それは僕には何とも言えないね、マミ。でも、彼女の実力は……」
「あの頃とは違うのよ!」
マミは叫びが薄暗い路地にこだました。降りしきる雨の音が、しかしすぐに辺りを包み込む。
「……あの子はもう、昔のあの子とは違う」
力なくマミは呟いた。
「私の知ってる、佐倉杏子とは」
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/06(日) 01:05:37.48 ID:UJglJRMW0
とりあえず今日はここまでです。またある程度ストックができた時点で投下します
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/03/06(日) 13:08:08.17 ID:+d5z6XpP0
とりあえず犯人はインキュベータ
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/06(日) 16:34:32.02 ID:iGzS3qKDO
こういうSSを待っていた
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/06(日) 19:13:45.12 ID:a8RDaRCDO
乙
ゆっくり待ってる
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/06(日) 19:36:20.03 ID:x0PtQXZH0
杏子スキーとしては期待せざるを得ない。
そして、未来永劫出番のないマミさんに救済の手を・・
読み易さという点で、もう少し改行が欲しいです。
視覚的に文が重く見えるし、見栄えすると思うので。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/07(月) 03:31:29.82 ID:7V6//Hjuo
超乙
まどマギSSを待ってたんだよ
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)
[sage]:2011/03/20(日) 15:55:58.46 ID:UiT9yYsA0
連絡だけでもくれると嬉しいなって
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:30:24.75 ID:Yy1uM7Da0
随分と間が空いてしまいました。
まだ見てくださっている方がいるか分かりませんが、少し書けた分を投下します。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:31:32.77 ID:Yy1uM7Da0
「なんであたしが出ばらなきゃなんないのさ」
鯛焼きをかじりながら、マミの顔も見ずに佐倉杏子は言った。
「あの街はあんたの縄張りじゃなかったのかい?巴マミ」
「杏子……私はそんな話をしにきたんじゃないわ」
「じゃ、何だってのさ」
杏子は鯛焼きを食べ終えると、包み紙を丸めてマミに投げつけた。
「!」
「あんたはあんた、あたしはあたし。ついこの間、『話しあい』で決めたばかりじゃないか。忘れたのかい?」
「……」
「全く。ほんとに相変わらずだねえ、あんたと来たら」
そう言いながら杏子は立ち上がった。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:32:51.67 ID:Yy1uM7Da0
「とにかく、あたしの方には話すことなんか何にもないんだからね。用が済んだらとっとと帰りなよ」
「杏子……!」
マミは唇を噛みしめて押し黙った。
マミが訪ねて行ったのは、見滝原の郊外にある打ち捨てられた教会だった。
石造りの聖堂の中の空気は冷たく、降り続く雨の音も聞こえてはこなかった。
杏子が歩み去っていく足音が、重苦しい静寂の中で響きわたる。マミは俯いたまま、握りしめた拳を震わせていた。
「待つんだ、佐倉杏子」
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:34:38.91 ID:Yy1uM7Da0
沈黙を破ったのはキュゥベえだった。杏子は振り返ることなく、ぴたりと足を止めた。
「君の力が必要だ」
「知ったことじゃねーっつーの」
冷たい空間に杏子の声が響き渡る。
「あたしはね、もう他人のためには金輪際戦わないってきめたのさ。何度も言ってるだろう?」
「それは僕もわきまえているつもりだ」
「じゃあ何かい?それ相応の見返りって奴を用意できるってのかい」
キュゥベえは俯いたままのマミをちらりと見てから言った。
「戦いで得られたグリーフシードは君が持っていっても構わない」
「ハッ」
杏子は、お話にならないとばかりに両手を広げた。
「グリーフシードだって?そんなもの間に合ってるよ。あたしはマミと違って効率のいい稼ぎをしてるからね。こっちからお裾分けしてやりたいくらいさ」
言い捨てると、杏子は再びその場を立ち去ろうとした。
「杏子……あなたは私が憎いの?」
その時、マミが絞り出すような声で言った。
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:36:10.03 ID:Yy1uM7Da0
「私が……私の事が憎くて、あなたは……」
「馬鹿か、てめーは」
杏子は舌打ちした。
「これはあたしの生き方の問題なんだよ。他人は関係ない。あんたも含めてね、マミ」
杏子はマミに向き直ると、正面からその瞳を睨みつけながら言った。
「だいいち、あたしのことが許せないって言ったのはあんたの方だろう?だからあたしはおとなしく『縄張り』を譲ってやったんじゃないか。それを今さら助けてくれだなんて、虫がいいにも程があるってもんさ」
「……」
「辛気くさい顔してんじゃねーよ。分かってんでしょ?もうあの頃には戻れないってことくらい。正義の味方気取って、一緒に仲良く魔女をやっつけて、あんたの淹れた紅茶飲みながら二人で夢を語りあって……なんてやってたあの頃にはさ」
それだけ言ってしまうと、今度こそ杏子は振り返ることもなくその場を後にした。
「杏子……」
残されたマミは、杏子の消えた方向を見つめたまま、ただその場に立ち尽くすだけだった。
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:38:49.97 ID:Yy1uM7Da0
期末試験が始まった。
試験期間中もマミはなるべく時間を作って街をパトロールするようにはしていたが、さすがに普段と同じというわけには行かなかった。
「あまり無理はしないほうがいいよ、マミ」
気遣ってくれているのか、キュゥベえがいつもと表情こそ変えないものの、そんな言葉をたびたび口にした。
「大丈夫よ。ありがとう、キュゥベえ」
無理をするなと言われるたび、マミは決まってそう答える。
しかし、実際は相当の披露が蓄積していることを本人も十分承知していたのだった。
(見えない敵を相手にするというのは、想像以上に応えるわね……。本当は試験勉強なんかやっている場合じゃないのかも知れないけど)
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:40:06.26 ID:Yy1uM7Da0
期末試験も終わろうとしていたある日の放課後、一人図書室で自習をしていたマミは、ペンを走らせる手を止めて窓の外に目をやった。
試験期間前から続く梅雨空を背に、見滝原の街並みがシルエットのように浮かび上がっている。
雨は小やみになっているようだったが、帰るころにはまた降り出すかも知れないとマミは思った。
(ノート……夏休みまでに返そうと思っていたんだけど)
マミは手元に置かれている灰色のキャンパス・ノートに目を落とした。
表紙には小さな小さな文字で「青梅あき」と記名されていた。
(私、頑張ったんだから)
そっと表紙に触れ、マミは目を閉じる。
(そう言えば、あの日はあの子がこの席に座ってたのね……)
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:41:05.96 ID:Yy1uM7Da0
それは5月の中頃のことだった。
昼休み、いつものように一人で図書室にやってきたマミは、お気に入りの窓際の席が誰かに取られているのを見てほんの少しがっかりした。
(あ、先客だ)
しかしすぐに、その小柄な後ろ姿にどことなく見覚えがあることに気づいた。
(あれ?この子、もしかして……)
相手も気配に気づいたのか、振り返ってマミの顔を見た。
そして一瞬の間をおいた後、にっこりと笑みを浮かべて、言った。
「ひさしぶりだね、マミ」
それはマミの幼なじみのあきだった。
「あき!本当、ずいぶんと久しぶりね。図書室に来るなんて珍しいのね」
「えへへ」
あきはあどけない顔を崩して笑う。昔とちっとも変わらないな、とマミは思った。
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:42:25.41 ID:Yy1uM7Da0
「勉強していたの?」
机の上にノートと辞書が置かれているのを見てマミが聞くと、あきは少し決まりが悪そうな様子を見せた。
「ん……まあ、そんなとこかな……」
よく見ると、辞書はイタリア語の辞書だった。
「!イタリア語を勉強していたの?すごいわ。あこがれてるっていってたものね、イタリア留学」
あきの父親は会社を経営していて、家は比較的裕福だった。
小学生のマミがあきの家に遊びに行くと、きれいな母親がいつも美味しいお菓子と紅茶を出してくれるような、そんな家だった。
家族でよく海外旅行もしていて、中でもイタリアが一番好きだと、あきはいつも言っていた。
「うん……」
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:43:06.17 ID:Yy1uM7Da0
笑みこそ浮かべていたが、あきはあまり元気がなかった。
マミが言葉に詰まっていると、あきは急に思いついたように言った。
「ねえマミ。屋上、行こ」
「え?」
「今日、すごくお天気いいし。ね、屋上行こ」
そう言うとマミの返事も待たずに机の上を片づけ始める。マミは戸惑いながらも窓の外を見た。
確かに、とても爽やかな5月の空が広がっていた。
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:44:02.43 ID:Yy1uM7Da0
「うわぁ。やっぱり外は気持ちいいね、マミ」
屋上のベンチに腰掛けたあきは、空を見上げながら気持ちよさそうに伸びをする。マミはその様子を見ながら、くすっ、と笑った。
「本当に変わらないのね、あき」
そういいながらマミは、ほっとするような、胸がちくりと痛むような、何とも言い表しにくい気持ちになった。
小学生のころはマミとあきの体格はほとんど同じくらいだったのに、今はマミの方が頭半分くらい高くなっている。
体つきも、マミはずいぶんと女らしくふくよかになっているのに、あきはとても華奢だった。
黒く透き通った瞳と、首筋から肩に流れる美しい髪の毛がなければ、痩せこけた男の子のように見えたかも知れない。
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:45:20.60 ID:Yy1uM7Da0
「マミはずいぶん変わったね」
「え?」
その一言にマミはどきりとする。
「すごく色っぽくなったよ。お姉さんって感じ」
「もう。からかってるの?」
「えへへ。ばれた?」
「あきったら……!」
マミは笑いながらあきを軽くこづいた。冗談だよー、と言ってあきも笑い始める。
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:46:39.93 ID:Yy1uM7Da0
空はきれいに晴れ渡っていた。
遙か頭上で、一羽の鳶が円を描きながら宙を舞っている。
校庭で遊びに興じる生徒たちの笑い声が、風に乗って微かに聞こえてきた。
「でも、ほんとにマミはきれいになったよ」
そう言いながらあきは、ブラウスの袖から伸びる白くて細い腕をマミに見せた。
「私なんて、こんなにやせっぽちだし。いつまでたっても何だか子供みたい」
「そんなこと気にしてるの」
マミは言った。
「だいじょうぶ。あきはもともと美人なんだし、それに……」
「それに?」
「ふと気づいたときには、変わってしまっているものよ、人って。たとえ望んでいなくたってね」
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:47:35.55 ID:Yy1uM7Da0
それを聞くとあきはしばらく神妙な顔をしていたが、やがてくすくすと笑いだした。
「?どうしたの?私、何かおかしなこと、言ったかな」
「ううん。ただ、何だか本当に、お姉さんみたいって思ったの。私よりもずっと先のほうを歩いてるって感じ……」
「そんなこと、言わないで。寂しくなるじゃない」
笑いながらマミは言った。そこで会話は途切れた。
屋上を渡る風の匂いは、マミにはとても懐かしく感じられた。
もうずいぶんと長いあいだ、マミにとって記憶とは、思い出すのも辛い悲劇が暗い影を落とす場所でしかなかった。
けれどもそのときマミの鼻先をくすぐっていった風は、確かに、かつてほんとうに幸せだったころの何かを象徴しているように思えた。
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:48:32.19 ID:Yy1uM7Da0
「ねえ、マミも勉強してみない?イタリア語」
そろそろ戻りましょうか、とマミが言おうとしたとき、あきが唐突にそう言った。
「え?」
「ね、そうしよ。きっと楽しいよ。それに、そしたら来年一緒に勉強できるかも知れないし」
見滝原中学では、3年になると総合学習の一環として第二外国語のカリキュラムを履修することができる。
しかし、もちろんマミはそんな先のことなど考えたこともなかった。
「別に、興味がないわけじゃないんだけれど……。私は、あきみたいにイタリア留学することなんてないだろうし」
「えへへ。ほんとは、私もきっとムリなんだ。夢は夢のままで終わりそう」
あきは力なく笑いながら、言った。
「あんまりうまく行ってないんだ。私の家」
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:50:42.95 ID:Yy1uM7Da0
「そう……なの?」
マミが聞き返すと、あきは俯いたまま、ぽつりぽつりと語り始めた。
「お父さんがあまり家に帰ってこないようになって……。お母さんもそれでふさぎ込んじゃって、最近じゃ私が家事なんか全部してるの」
「そうだったの……」
「別にそれはいいんだよ?お母さんが辛いときは、私が支えてあげなくっちゃ、って思うし。でも、イタリアに行きたいなんて、とてもじゃないけど」
「でも、イタリア語の勉強をしてるってことは、あきらめてないってことなんでしょ?」
「そうだね。っていうか、それをやめちゃったら本当におしまいになっちゃいそうな気がして……。それが、怖くて」
あきはベンチに両手をついて空を見上げた。マミもつられて空を見た。どこまでも青く、そして高い空が、二人の頭上には広がっていた。
あきがささやくように言った。
「マミ。夢ってほんとに、遠いんだね」
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:52:33.83 ID:Yy1uM7Da0
その夜。
「危ないマミ!」
キュゥベえの声で、マミはすぐ脇に迫っていた使い魔の攻撃をかろうじてかわした。
「こっの……!」
マスケット銃の台尻でその一匹を殴り飛ばすと、すぐさま持ち替えて後ろから襲いかかってきたもう一匹に弾丸をお見舞いする。
「しつこいんだから!」
空中から次々と銃を取り出しては乱れ打つマミの華麗な攻撃の前に、使い魔たちは一匹、また一匹とその数を減らしていった。
「これで終わりよ!」
その叫びと同時に、マミの周囲に浮遊していた無数のマスケット銃が一斉に吼哮する。
残っていた使い魔どもは跡形もなく消し飛んで行った。
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:53:36.87 ID:Yy1uM7Da0
「ふう……」
マミは変身を解くと、大きく息をついた。
「どうしたんだいマミ?」
いつの間にか足下にすり寄っていたキュゥベえが、マミを見上げながら話しかけた。
「なんだか集中できていないように見えたよ。疲れているんじゃないのかい」
「大丈夫よ。ちょっと油断しただけ」
「だといいんだけど」
キュゥベえはそういうと口をつぐんだ。
空にはぼんやりとした月が浮かんでいた。雨は結局降らなかったらしい。
昼間、図書室で知らぬ間にうたたねをしてしまったマミは、キュゥベえが止めるのも聞かずにパトロールを決行した。
疲れているのは自覚していたが、何らかの形で、睡眠で無駄にした時間の埋め合わせをしなければいけないと思ったのだった。
(それにしても……今日も「はずれ」だったわね)
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:54:22.82 ID:Yy1uM7Da0
マミにはむしろそのことが気がかりだった。
先ほど片づけた使い魔たちは、マミが目下その行方を追っている、二人の中学生を自殺に追い込んだであろう魔女とは魔力のパターンが異なっていた。
無関係ということだ。
(今日も手がかりなし、か。やっぱり、一人では少し荷が重すぎたのかしら)
その心の内を見透かしたかのように、キュゥベえが語りかけてくる。
「マミ。もう一度考え直して、佐倉杏子に助太刀を頼んでみたらどうかな」
マミはそれには答えず、ゆっくりと歩き始めた。
「やれやれ」
キュゥベえは呆れるように言った。
「いったい何にこだわっているんだい、巴マミ。僕にはわけが……」
「行くわよキュゥベえ」
キュゥベえの言葉をマミは遮った。
「大丈夫、これくらいで音を上げたりするもんですか」
小さくため息をつくキュゥベえを後ろに従えて、マミは家路につくのだった。
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/03/28(月) 00:55:25.11 ID:Yy1uM7Da0
今日はここまで。
がんばって何とかペースを上げていくつもりです。
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/03/28(月) 01:18:27.06 ID:Yt4+noTWo
乙 楽しみに待ってる
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(香川県)
[sage]:2011/03/28(月) 03:48:43.51 ID:Tf+3QaSU0
乙です
のんびり待ってますよ〜
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/28(月) 07:49:24.14 ID:/vkg54hso
おつ
無理だけはしないでくれ
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)
2011/03/28(月) 12:41:12.74 ID:dEYdzbt70
お
続きがきてる
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/03/29(火) 12:21:10.02 ID:B8j1QigIO
乙っちまどまど
あのイタリア語はそう言う事だったのか……!
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/03/29(火) 20:25:34.20 ID:hFoVLb0oo
乙乙
先が気になるよ
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/04/16(土) 22:08:13.86 ID:0oMVbrHFo
続きマダー?
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/05/03(火) 14:16:01.39 ID:wriI0x+6o
いつまでも待ってるよ
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:45:13.53 ID:7hte62mY0
放送は無事最終回を終え、季節はすっかり夏。
一身上の何やかやで長らくストップしてしまいました。
もう時期を逸した感はありますがorz、けじめとして完結まではこぎつけたいと思います。
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:46:34.17 ID:7hte62mY0
「あ、巴さん」
期末試験最終日。エントランスに向かうために保健室の前を通り過ぎようとしていたマミは、中から出てきた誰かにそう呼び止められた。
「今、帰り?」
「あら……久しぶりね」
1年生のときに同じクラスにいた女生徒だった。
そう仲がよかったわけではないが、今でも会えば立ち話くらいはする。
「どうしたの?体の具合でも悪かったの?」
マミがそう尋ねると、女生徒は保健室の奥を顎で指し示しながら言った。
「ううん。私じゃなくて、彼女がちょっとね。保健委員だから、私」
何気なく奥のベッドで横になっている生徒を見たマミは、それが先日あきにノートを返しに行ったときに話をした少女であることに気づいた。
「……?あの子……」
「なに?巴さんも、あの子の知り合い?」
「あ、ううん。そういうわけじゃ、ないんだけれど……。」
マミは、ひょっとしたら何か糸口が掴めるかも知れないと思い、切り出してみた。
「ねえ、ちょっと歩きながら話さない?保健室の前で立ち話するのもどうかと思うし」
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:47:53.95 ID:7hte62mY0
女生徒がマミに話してくれたところによると、保健室で寝ていた少女は、このところずっと様子がおかしかったのだという。
「で、今日は試験中に気分が悪いからって抜け出して保健室。さっき話した感じじゃ、大したことはなさそうだったけど」
「もともと身体が弱いの?あの子」
「全然。普段は元気だよ、気強いけど。それが、最近ずっと暗い顔しててね。ま、ムリもないなーなんて、みんな思ってたんだけど」
「ムリもない、というのはどういうことかしら」
マミがそう聞くと、女生徒は声を落とした。
「ほら、先月あったじゃん、屋上で」
「自殺……のこと?」
「彼女、死んだ男の子と幼なじみだったのよ」
「!そうだったの」
あのとき少女が、自殺した生徒の名前を聞いたとたんに血相を変えて駆けだしていったのをマミは思い出した。
「朝も一緒に登校したりとか、仲よかったみたいだからね。精神的に来るのはわかるんだけど」
「……二人は、おつきあいしていたのかしら」
「それは違うんじゃないかな。自殺した○○君には別に恋人がいたって話だけど」
「うちの学校の人?」
マミがそう尋ねると、女生徒の表情がわずかに曇った。
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:48:44.40 ID:7hte62mY0
「そこまではちょっと……。まあ、あの子なら知ってると思うけど」
女生徒は、保健室の方をちらちらと振り返りながら、ベッドで寝ていた少女の名を教えてくれた。
そして更に何か言おうとしたが、何を思ったのかそのまま口ごもってしまった。
「?どうしたの?」
マミが水を向けると、女生徒はためらいがちに口を開いた。
「う、うん。これはあまり人には言わないで欲しいんだけど、実はこのことで妙な噂があってさ……」
その時だった。
「お、保健室に行ってくれてたのか。どうだった、様子は?」
女生徒のクラスの担任がちょうど階段から降りてきたところに鉢合わせした。
そのまま二人は立ち話をはじめてしまったので、マミはその場を立ち去らざるを得なかった。
(何かしら。噂というのも気になるけれど)
(それよりも、ベッドで寝ていたあの子……やっぱり自殺した男子生徒と面識があったみたいね)
(うちの生徒が立て続けに同じ魔女の犠牲になったのは、単なる偶然なのか、それとも……。とにかく、彼女ともう一度話をする必要がありそう)
(さすがに保健室に乗り込んでいくのははばかられるけど……夏休みが始まるまでに話をするチャンスはあるのかしら)
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:49:32.47 ID:7hte62mY0
その日の午後。マミは一人で(正確にはキュゥベえを引き連れて)繁華街をぶらついていた。
「学校の試験とやらも終わったんなら、少しは息抜きをしたらどうだい」
と言うキュゥベえの言葉に従ったのだった。
キュゥベえがそんなことを言うのは珍しかったが、よほど今の自分は疲労をため込んでいるように見えるのだろう、とマミは思った。
(実際、かなり無理をしているのは確かだし……。変に意地を張って、また佐倉杏子の名前を出されても鬱陶しいものね)
マミはそう考え、久々に羽根を伸ばすことにしたのだった。
街は華やかだった。
このところ、パトロール以外の目的で街を歩くことなどほとんどなくなっていたマミにとって、新しくできたカフェや服飾店などが立ち並ぶ様子は刺激に満ちていた。
舗道沿いのショーウインドウは、大胆な胸元のワンピースや色とりどりのシャツが鮮やかに彩っている。
(そういえば、夏服も欲しいところね……)
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:50:20.33 ID:7hte62mY0
「ねえ、キュゥベえ」
「ん?なんだい、マミ」
「私、新しい服を買いたいの。つきあってもらえるかしら」
マミがそう言うと、キュゥベえが不思議そうに聞いた。
「どうしてだい?衣服なら既にたくさん持っているじゃないか」
「持っていても、欲しいの。私だって女の子なんだもの」
「改めて言われなくても君の性別くらい承知しているつもりだよ。まあ、確かに最近のマミは、肉体の成長度合いと比較して若干衣服のサイズが小さすぎるとは思っていたけれど」
マミは思わず顔を赤くした。
「ばっ……。そんなことまで言わなくていいわよ」
「何を怒っているんだい?正直なところ、僕にはそのくらいしか、君が新しい衣服を買う合理的な理由が思いつかないんだけれど。それに、一体なんだって僕が……」
「もう、うるさいわね!黙ってついてくればいいの」
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:51:39.06 ID:7hte62mY0
試着室の中では、ライトブルーのキャミソールを試着したマミが、鏡を前に考え込んでいた。
(ううん……デザインは、とても素敵だと思ったのだけれど)
(私には似合わないのかしら……。人が着ているのを見たらきっと綺麗だと思うのに、自分だと何だか気後れしてちゃってダメだ)
(それに……やっぱりこの胸元はあんまりよね。いくら何でも大胆すぎるもの)
「いいんじゃないかな、マミ」
いきなり後ろからキュゥベえに声をかけられて、マミは危うく叫び声をあげるところだった。
「……キュゥベえ!いきなり入ってこないでよ!」
マミがテレパシーでそう伝えると、キュゥベえはまた不思議そうな顔をした。
「どうしてだい?入っていかなきゃ、君がどんな格好をしているか分からないじゃないか」
「だからって、いきなり女の子の着替えを覗くなんてマナー違反よ」
「君たちのマナーはよく知らないけれど、そもそもつき合って欲しいと言ったのは君のほうだろ?」
「そ、それはそうだけど」
「その衣服はなかなかいい選択だと思うよ、マミ」
「……そ、そうかしら?」
63 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:52:18.58 ID:7hte62mY0
腹を立てていたことを忘れてマミが思わずそう聞き返すと、キュゥベえは言った。
「そうとも。気温や湿度が高くなりがちなこの国の風土によく適しているし、肩関節を覆うものがないからとても動きやすそうだ。難をあげるとすれば物理的な耐久力に乏しい点だけど、まあ君たち魔法少女は戦闘に際しては変身するわけで……」
マミは大きくため息をついた。
「はぁ」
またしてもキュゥベえは怪訝な様子をして言う。
「一体なんだというんだい、マミ。僕はこうして肯定的な見解を述べているのに、何が気に入らないのかな」
「いえ、何でもないわ。無理を言って付き合わせた私が悪いんだものね……」
疲れはてた様子でマミはそう言うと、キュゥベえを試着室から追い出すのだった。
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:53:31.82 ID:7hte62mY0
結局キャミソールをあきらめたマミは、書店に立ち寄った後、駅の近くの小さなカフェに入った。
「ここの紅茶はとても美味しいのよ。それにマドレーヌも」
「へえ、マミがそう言うということはよほどなんだろうね」
キュゥベえはそう言ってくれるものの、果たしてどこまで興味があるのかよく分からない。
(本当に、何を考えてるのかよく分からない子……)
マミは窓際の席に腰掛けると、鞄からさっき買ったばかりの書物を取り出した。
それは、真新しいイタリア語の辞書だった。
(本格的に勉強するなら、これくらいの辞書がなくちゃ、ね)
「お待たせしました」
ウェイトレスが紅茶を運んでくる。
その香りを楽しみながら、マミはさらに鞄から灰色のノートをとりだした。
(とりあえず、あなたのノートのおかげで初等文法はマスターしたつもりよ、あき。あなたがくれた”進級試験”にだって、今なら答えられるわ)
マミはマドレーヌの欠片を紅茶に浸すと、それをそっと口に運んだ。甘く物憂い香りが、目を閉じたマミの鼻腔の奥深くでゆっくりと広がっていった。
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:54:13.90 ID:7hte62mY0
あの日の屋上。
マミは、別れ際にあきから一冊のノートを受け取った。
「イタリア語の初歩的な文法について、自分なりにまとめてみたの。その辺で売ってる参考書より、きっと分かりやすいと思うんだ。だからこれでマミも勉強してみて」
「でも、いいの?ノートがなかったら、あきが困るんじゃないの」
「大丈夫だよ。私はもう基礎のところは頭に入ってるし、それに……」
あきがそこまで言ったとき、可愛らしい電子音が鳴った。
「あら?」
「!あ、ごめんマミ、ちょっと待ってて」
そう言うとあきは後ろを向いて携帯をいじり始めた。
どうやらメールが着信したらしい。
マミはそっとあきの横顔をのぞき込んだ。
驚きと喜びの入り交じった表情で、あきは懸命に返信メールを打っている。
(そういうこと……か)
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:55:07.16 ID:7hte62mY0
マミは胸の奥の方からわき起こりそうになる寂しさをどうにか押し隠して、わざとらしいほどに明るくあきの携帯をのぞき込んだ。
「どうしたの?いったい誰からのメール?」
「わ!ダメだよ恥ずかしい」
滑稽なほどに取り乱したあきが、あわてて携帯を隠そうとする。
その僅かな一瞬に、男子生徒と二人並んで写った写真が待受に設定されているのがマミには見えた。
「あら?その写真は誰なのかしら?」
「もう、マミったら……!」
そう言うとあきは俯いてしまった。
どうやら本当に恥ずかしがっているらしい。
「マミには今度話すよ……。また時間がある時にでも」
そのとき、昼休みの終了5分前を告げる予鈴が鳴った。
「あ、昼休み終わっちゃう」
あきは急に現実に引き戻されたように顔を上げて言った。
「教室に戻らなくちゃ」
「そうね。じゃ、また……」
マミがさよならを言いかけると、あきはマミの目を正面から見つめてきた。
「……?」
「マミ」
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:55:46.55 ID:7hte62mY0
「どうしたの?」
「マミ、また二人で遊びに行こう?その時までに、ちゃんとそのノートで勉強しといてね」
「え?でも、私……」
「約束だよ」
マミの返事も聞かずに、ノートを強引に押しつけてあきは立ち去ろうとした。
しかし、急に何かを思い出したのか、
「あ、そうだ。ちょっとノート貸して」
と言うと、あきはペンを取りだしてノートの最後のページに何かを書き付け、改めてマミにノートを手渡した。
「えへへ。「進級試験」をつけといたよ。ちゃんと勉強したかどうか、分かっちゃうんだからね!」
あきはそれだけ言うと今度こそ一人さっさと階段の方へと走って行った。
(もう。強引なんだから……)
後に残されたマミは、手にした灰色のノートを見つめながら、屋上でひとり小さく呟いた。
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:56:40.01 ID:7hte62mY0
「どうしたんだい、マミ」
キュゥベえの声でマミは我に返った。
「冷めてしまった紅茶は嫌いじゃなかったのかい」
「あら……」
窓の外に目をやると、街はすっかり夕暮れに染まっていた。
窓枠が店の中にひょろりと長い影を落とす。
キュゥベえが言うとおり、マミの目の前の紅茶はすっかり冷めてしまっていた。
(もうこんな時間……)
そろそろ帰らないと。
そう考えながら、マミは手元のノートを何気なくめくった。
かすかに黒く汚れたページの上に、あきが綴った小さなアルファベットがびっしりと並んでいる。
その時だった。
(!あの子……)
店のすぐ前を通り過ぎようとしている少女の姿がマミの目に止まった。
昼間、保健室で寝ていた少女だった。
(ちょうどよかったわ。話を……話をきかないと)
「キュゥベえ!行くわよ」
言うが早いか、マミは机の上の辞書やノートを鞄に押し込むと、少女を追うために店のドアへと向かった。
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/28(火) 00:57:25.57 ID:7hte62mY0
続きはまた明日です
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/06/28(火) 09:01:57.90 ID:z3Ln6Vu7o
続ききてた!
乙です!
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/06/28(火) 10:05:21.72 ID:LI1AS/EUo
乙っちまどまど!
72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:00:19.35 ID:lwCysnoq0
昨日の続きです
73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:01:15.02 ID:lwCysnoq0
「よっと」
佐倉杏子が当て身を食らわせると、そのOL風の女性は小さな呻き声を上げてからその場に崩れ落ちた。
「しばらく眠ってな。あんたにゃ、ちょっとばかし刺激が強すぎるだろうからね」
言いながら杏子は、気を失っている女性の髪をそっとかきあげ、「魔女のくちづけ」が確かに刻印されていることを確認する。
「さて、と……」
杏子は立ち上がって周囲を見回した。
そこはビルの地下駐車場だった。
居並ぶ車が、非常口のランプに照らされて無機質な影をアスファルトに落としている。
「とっとと出てきなよ。あたしが片づけてやるからさ」
杏子の声が無人の地下空間ににこだました。
74 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:02:14.17 ID:lwCysnoq0
低い機械音のほか、何一つそれに応えるものとてない、と思われたその時。
何もなかった空間に突如裂け目が走ったかと思うと、そこから浸み出すように現れた異様な風景がたちまち辺りを包みこんだ。
魔女の「結界」だった。
「へへ、おいでなすったね」
杏子は指にはめたソウルジェムを目の前にかざして目を閉じた。
指輪から放たれた光は杏子の全身を包みこみ、やがてそれは深紅のドレスへと変わっていく。
最後に空中から現れた、自らの武器である長い槍を手にすると、「狩り」を行う時のいつもの杏子のスタイルが完成した。
「さっさと片づけさせてもらうよ。せっかくの食い物が冷めちまうからね」
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:04:43.43 ID:lwCysnoq0
杏子にとって今夜の「狩り」は、ちょっとしたハプニングだった。
いつものようにふらふらと買い食いをしていると、目の前を魔女に魅入られたとおぼしき人間が通りがかった。
「狩り」をするつもりはなかったものの、獲物をみすみす逃すのももったいない。
そう考えた杏子がこっそりその後をつけてみると、この駐車場まで来たところで案の定魔女の気配と遭遇した、というわけだった。
「そこか!」
杏子の槍が一閃する。2、3体の使い魔が身体を両断されて断末魔の叫びを上げるが、本体に一撃を食らわせることはできなかったらしい。
「すばしっこいヤローだな」
油断なく杏子は周囲に目を配る。
目まぐるしく変化する結界の景色の中から、突然巨大な鋏が現れて杏子の眼前に迫ってきた。
「!」
すんでのところでその攻撃をかわしざま、後ろから槍を見舞う。今度は手応えがあった。
「てめえが本体か……!」
反撃の暇を与えず、一気に決着をつけようと考えた杏子は、そのまま踏み込んで更なる一撃を加えた。
しかし、そこにもう敵の姿はなかった。
「……?」
杏子が槍で突いたあたりの空中には黒い穴があき、やがてそれが爆発的に広がったかと思うと、周囲の光景は元の駐車場に戻っていた。
(ちぇ……)
杏子はため息をつきながら槍をしまうと、変身を解除した。
(逃げられたか)
76 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:05:31.24 ID:lwCysnoq0
不意打ちこそ食らいかけたものの、一太刀交えた感じでは、さほど強力な魔女ではないようだった。
だからこそ、一気に屠り去ってしまおうと畳みかけたのだが、魔女の方も形勢の不利を敏感に感じ取ったらしい。
「はぁ、全くやってらんねーっての。ムダ足踏ませんじゃねーよ、雑魚が」
そう毒づきながら立ち去ろうとした杏子は、足下で倒れているOLの存在を思い出した。
(あ、そうだった)
どうしたものか思案しながら杏子は辺りを見回す。
(別に、このまま放置しても大丈夫っしょ。凍え死ぬ、って季節でもないしねー)
その時、OLの右手に何かが握られているのが目に入った。
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:06:32.14 ID:lwCysnoq0
(……?)
それは、赤く錆び付いたカッターナイフだった。
(!そうか。こいつ、これで手首を切るつもりだったんだな)
杏子が後ろから声をかけたとき、OLはかがみこんだまま自分の左手首をじっと見つめていたのを思い出した。
(間一髪だった、ってことか。それにしても……)
気を失ったままのOLの手からナイフをもぎ取ってから、杏子は記憶の糸を手繰る。
(この前、巴マミが探してた魔女のやり口ってのも、確か、理由もなく手首を……)
その時、遠くの方から車のエンジン音が聞こえてきた。
人が来る前にこの場を立ち去らなくてはならない、と杏子は思った。
(……どっちだ?)
杏子は指輪をかざし、魔女の逃げた方向を探る。
2、3秒の間杏子は目を閉じていたが、やがて小さく舌打ちした。
「……ちっ」
暗い地下駐車場の片隅で、杏子は声に出して呟く。
「まったく、めんどくせーことになってきやがったな」
ソウルジェムは、見滝原の市街地の方を指し示していた。
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage saga]:2011/06/29(水) 00:08:05.44 ID:lwCysnoq0
あまり進みませんね
今日はここまで
79 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/06/29(水) 01:19:38.10 ID:Dl0VhwGxo
待ってた
80 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/06/29(水) 15:49:58.47 ID:y+CSX38qo
うおおおおおまってたあああああああああ
81 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/06/30(木) 01:33:45.71 ID:bB6g0mY3o
乙っちまどまど!
82 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)
2011/07/03(日) 17:13:49.22 ID:OKymYVIL0
杏子可愛いよ杏子
83 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/05(火) 08:13:00.83 ID:J6O8YQDSO
追い付いた乙
84 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/06(水) 14:05:36.52 ID:w2hA/KdIO
なぁ、まさかあきって…なんでもない
85 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/07/10(日) 12:19:13.97 ID:H2i5OJn2o
ゆっくりやってくれ
86 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/08/19(金) 02:32:44.96 ID:8kZ/UPGDO
おつ
87 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2011/09/04(日) 05:51:56.09 ID:0BNa7ILYo
いろいろあってスレ落ちちゃう危険性が出てきたよ
生存報告を頼む
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
Pastlog.cgi Ver2.0
Powered By
VIP Service
Script Base by
toshinari