VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 01:38:56.58 ID:WXf83O/p0<>何番煎じになるのかわかりませんが、書いてしまったものは仕方ない。

仮面ライダーカブトと魔法少女まどか☆マギカのクロスです。
カブトは本編終了後。 よってぼっちゃまもいないし影山も居ません。
まどか側は本編10話までを参考にプロットを書きあげています。
最終回までの話の展開によって内容を変更するかも。

※加賀美が相当でしゃばりますので、まどか原作が大幅に改変されます。

それでは、よろしくお願いします。<>まどか「マスクドライダーシステム?」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 01:39:41.66 ID:WXf83O/p0<> 取り敢えず、今回は導入部を投下します。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 01:44:00.85 ID:WXf83O/p0<> ――Maximum Hyper Typhoon――

パーフェクトゼクターから電子音が鳴り響く。
すると、凄まじい力を伴った光が一筋に伸びて行き、刃の形を成した。

「ぬぅうああああああ!」

巨大な光の刃は一気に振り下ろされ、敵に直撃し、これを両断する。

崩れていく巨大な敵。

最強最大の『魔女』――

多くの者を殺し、多くの物を奪ったその魔女は、一撃の下に敗れた。

敵は倒した。

だが、それはあまりに遅すぎて。

彼は、全てを失ってしまった。

だから彼は、過去へ飛ぶ。
今度は、全てを救う為に。

――Hyper Clock Up――

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 01:45:17.79 ID:WXf83O/p0<>
/////


今回も、駄目だった。

まどかは魔法少女になり、キュゥべえと契約した。 その力は今まで彼女が
目にしてきたまどかの中でも飛び抜けていて、『ワルプルギスの夜』すら
一撃で葬り去るほどだった。

だが、魔法少女になるということは、つまり
魔女になるということでもある。

まどかは最強最大の魔女となった。

為す術も無く蹂躙されていく人々に、もはや興味などない。
もうこの先に希望など無い。 


ならばまた、やり直すまで。


そう思った時、彼らはやってきた。
青色の戦士。緑色の戦士。水色の戦士。

彼らは勇敢に戦った。
最強の魔女相手に、善戦したと言っていいだろう。
一人は剣で、一人は自らの足で、一人は銃を使って魔女との戦いを繰り広げていく。

だが、はじめのうちは易しかった魔女の攻撃は段々と激しく、強くなっていった。
対して、戦士達の攻撃は、気休め程度にしかならない。

やはり駄目だった。 と、少女は思う。
魔女の強力な力によって、一人、また一人と倒れていく戦士達。

「君は何故戦わないんだい? 彼らと一緒なら、もしかしたら
 どうにかできたかもしれないのに」

近くでそれを眺めていた白い生物が訊ねてくる。

戦場から目を離し、その生き物に向き直り、答える。

「いいえ――」

「私の戦場は、ここじゃない」

元々、戦士達が魔女を倒すかどうかは関係無いのだ。 彼女が魔女に
なった時点で、目的は達せられなかったことになるのだから。

左手の装備を稼働させ、少女はまた歩き始める。
再び彼女と出会い直すため。 今度こそ彼女を救うために。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 01:46:36.24 ID:WXf83O/p0<> /////

少女の姿が一瞬にして消え、戦士達が全滅する。

その時であった――

最後の『赤い戦士』が現れたのは。



/////



仮面ライダーカブト!


ひどいよ……こんなのあんまりだよ――

運命を変えたいかい?――

ああ、昨日総司君が来たでしょ?その時に――

行ってきます!――


天の道を往き、総てを司る! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 01:50:29.01 ID:fhGZVNG+o<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 01:54:09.05 ID:WXf83O/p0<> これで導入は終わりとなります。

次の話は、いつでも投下できるにはできるんですが、
そのペースで行くと書く方が間に合わなくなりそうです。

どのくらいのペースがいい塩梅なのか、これから模索することになりそうです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 01:55:29.16 ID:7xwdPk6J0<> これ、もしかしてコーカサス=ほむほむのタイムリープ後に、カブトがMADOKAを倒すのか?

ほむほむェ・・・・・・

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 02:21:21.21 ID:WXf83O/p0<> この時間帯に2レスも付くとは……

とりあえず今できる限りの解説をします
まずHカブトとほむらの能力の違いですが、高速化と時間停止は勿論、
時間逆行についても大きく違います。
ほむらはどちらかというと『意識が』戻り、もう一度『本人として』行動することが出来ます。
対してHCは『過去に移動』出来ますが『戻る』ことは出来ません。 つまり、時間を逆行しても、
あくまでその時間帯の天道が行動しなければなりません。

三島に破壊されたPゼクターを使ったことについては、
Hクロックアップマジ便利ということで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)<><>2011/03/17(木) 02:33:10.21 ID:2tgO9mtw0<> ライダーのSSが増えてくれて嬉しいっす(^-^)/
期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 08:55:36.34 ID:QDdKIkKDO<> 期待してるぞ天道! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 13:09:01.92 ID:jJ6t9TbR0<> 我が魂はァァァァア!>>1乙と共にありィィィィイ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(山陽)<>sage<>2011/03/17(木) 13:59:47.47 ID:KB3EAaLAO<> おばあちゃんがいっていた・・・>>1に乙するべきだと。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 16:55:21.56 ID:WXf83O/p0<> 今夜の投下は停電の影響で22時頃になります。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<><>2011/03/17(木) 17:07:10.67 ID:uTKn+bwB0<> >>14おk期待してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 17:36:15.08 ID:on2znTxEo<> アタックライドゥ\セイザデタイキ/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 18:03:29.49 ID:V6vFKou20<> 加賀美がでしゃばって原作改変するって、活躍するって意味ですよね?爆死ソングバックにマミさん庇ってウワァァァァァってなったりしませんよね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 18:12:35.18 ID:on2znTxEo<> >>17
\ハイパーキャストオフ/
\ハイパークロックアップ!!/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 18:18:16.52 ID:rS908GtDO<> もうかがみんが犠牲にならなくていいんだよね…?
むしろハイパーガタックで輝いちゃうんだよね…? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<><>2011/03/17(木) 18:23:22.67 ID:CANj91qAO<> >>17てれびくんで出たハイパーガタックがでるかもしれんぞ。
ハイパーゼクターはマジ便利だから <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 18:33:24.11 ID:jJ6t9TbR0<> かがみん「どうしてこうなった!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 18:52:43.43 ID:rS908GtDO<> さやか「笑えよ…」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 21:01:42.57 ID:on2znTxEo<> マミ「お前はいいよなぁ・・・どうせ私なんか・・・」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/03/17(木) 21:07:02.97 ID:bp4COvQIo<> そんな動画あったなwww
あれは面白かった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 21:49:37.54 ID:WXf83O/p0<> と、いうわけで10分後から投下開始します。
兄貴愛されすぎワロタww
実はこれ書き始めたのも脳内で兄貴が
「奇跡も、魔法も、完璧も調和も無いんだよ……」とささやいたのがきっかけです
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:06:35.61 ID:WXf83O/p0<> 鹿目まどかは夢を見た――

白と黒のモノトーンの屋内。
何故かとても急がなければいけない気がして、自然と走りだしていた。
やけに広い。 道も入り組んでいて、大きなホールもある。
けれど道に迷うことなんて無くて、まるで目的地があるかのように
一心不乱に駆けていった。

やがて階段にたどり着くと、ゆっくりと登っていく。
階段を登り終えると、そこには大きな扉。
やけに重いその扉を開けると、そこには底知れぬ絶望が広がっていた。

地面は割れ、空は曇り、雲は異常な速度で流れていく。
高層ビルは破壊され、空中を漂い、お互いにぶつかっては崩れていく。
その中でもとりわけ異質な、宙に浮く巨大な歯車。

それは何もかもを奪っていく悪夢。
世界の終りを想像させるような光景。

そしてそれに立ち向かう、たった一人の見知らぬ少女。

少女は果敢に挑み行く。 
が、敵はあまりに強大で、少女はすぐに追い詰められていった。

ビルに叩きつけられ、光線に身を飲まれ。
少女は遂に力尽き、倒れこんでしまう。

「ひどいよ……こんなのあんまりだよ……」

自然と言葉が溢れる。 それほど、目の前の光景は凄惨で、信じがたい物だった。

「――まどか、運命を変えたいかい?」

不意に、そんな言葉が聞こえた。
足元に目をやると、そこには見知らぬ白い動物がいる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:07:11.34 ID:WXf83O/p0<> 白い動物は、言葉を続ける。

「なら、君がそれを覆してしまえばいい。
 それを可能にするだけの力が、君には備わっているんだから」

この状況を、変えられる。
あの少女を、助けられる。
それが、まどかにはとても魅力的に思えて。
思わず、問い返してしまう。

「……本当、なの?」

「勿論だよ。だから、僕と契約して――」

少女が、自分に向かって何かを叫んでいる。
きっと、「助けて」と、言っているんだ。 と、感じた。

「魔法少女になってよ」

まどかは、ある決意をして。

――そこから、急に景色が変わった。

あらゆるものが、小さく見える。

あらゆるものを、破壊していく自分がいる。

ああ、もう、終わりなんだ。 そう、思った。

誰も自分に抵抗出来ない。 誰も自分を止められない。

なら全部、壊してしまおう。 ただただ全て、無くしてしまおう。

心の中には、虚無しか無くて、なんでもどうでも良くなって。

そんな自分の目の前に現れた、それは赤い、カブトムシ――


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:09:19.98 ID:WXf83O/p0<>
/////



「……夢オチ?」

少女、鹿目まどかはぬいぐるみを抱きしめながら、ぼうっとした頭の中で考えた。 
自分が、何かになるような夢。 とても怖い夢のようで、
それでいて、不思議と嫌じゃない。 そんな夢。

――なんだか本当に、あんなことがあったような――

「……起きよう」

寝起きの頭ではそれ以上は考えられない。
まどかはベッドから降りると、部屋から出て行った。



「おはよう、パパ」

「ああまどか、おはよう」

庭で家庭菜園を嗜む父に挨拶をし、その手元を見やる。
今日はプチトマトを収穫するようだ。

「ママは?」

「タツヤが行ってる。 手伝ってやって」

「わかった」

母を起こすため、両親の寝室へと向かう。 既に弟が起こしに行っているらしいが、
大抵まどかが起こすまでは起こせない。
寝室に着くと、弟が母を呼ぶ声が聞こえてきた。
すこし強めにドアを開ける。 やはり弟は母を起こせていなかった。

舌っ足らずな喋り方で母を呼ぶ弟を見て、まどかも少し楽しくなる。

ここでまどかがする仕事は決まっていた。

まずカーテンを一気に開ける。すると、朝日が思い切り部屋の中に入ってきて、部屋は一気に明るくなる。
次に母の掛け布団を一気に引き剥がす。 と、同時に叫ぶ。

「ぉおきろぉー!」

「どぅおわああああああああ!」

熟睡しているところにいきなり陽の光を浴びせられて平気な人間は少ない。
少なくともまどかの母は平気では無いらしい。
母を起こすと、次は一緒に顔を洗う。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:12:38.52 ID:WXf83O/p0<>
母と雑談をしながら顔を洗う。
担任教師や友人の恋愛事情、今日付けていく髪飾りの相談。
仕事で忙しい母との、少ない会話がここである。
母は今回少し派手めなリボンを選んだ。 曰く、これでまどかもモテモテ、らしい。


朝の最後は食事を行うこと。 何故か歯を磨いてからの食事となる。
専業主夫の父が作った朝食を、母と弟と食べる。

「あ、今日はお味噌汁にご飯なんだ」

いつもはパンと洋食が並ぶ朝食だが、今日は若干の違いが見られている。
パパの気分かな、とまどかは考えながら呟いた。

「ああ、昨日総司君が来たでしょ? その時にちょっとお味噌汁の話をしてね」

「あ、昨日天道さん来たんだ? 私もう寝ちゃってたのかな?」

最近このあたりにやってきた青年は、父とよく交流している。
お互い、料理が好きだからだろう。

母が時計を見やると、時計はすでに出勤時間を示していた。

「あ、もうこんな時間か…… じゃ、行ってきます!」

母を全員で見送ると、まどかは再び朝食を食べ始める。 時計は7時45分を示していた。

「さ、まどかも急がないと」

「ん? あっ…… ほんとだ」

これでは友人との待ち合わせに遅れてしまう。 まどかは米粒残さずご飯を食べ終わると、
急いで家を出た。

「行ってきます!」

今日も今日とて幸せで、暖かな一日が始まる。

まどかは、そう思っていて。

走りながら、笑みをこぼすのであった。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:15:04.50 ID:WXf83O/p0<>
/////



まどかの起床と同時刻――

とある寮の一室。


「んんんん……ぐぉおおおお……」

青年は眠い目を擦りながら起床した。
普段はもっと早く起きるのだが、最近はちょっと寝不足気味である。
それは丁度一ヶ月前の事の影響となる――



「はぁ……転勤?」

突如知らされた自分の転勤。
転勤先は見滝原……彼が行ったことも無いような土地である。

やっとここの地域の人々と完全に馴染めたと思った矢先にこれは、
彼にとっては厳しい。
直情的で思い込みの激しい彼は、他人に溶け込むのに若干苦労することがあるのだ。
この地域でだって、幾度か住民とのぶつかり合いを起こしたこともある。

それをやっと乗り越えて、街のお巡りさんとして馴染んだ所だというのに。

「俺、何か問題でも起こしました?」

上司が苦い顔をして、彼の肩に手を置く。

「いや、それが私にもわからんのだ……。
 突然上からの通達が来てな……」

「うーん……まあ、わかりましたよ。 もしかしたら何か俺にしか出来ないことが
 あるのかも知れませんし」

「すまんな」



――こうして、彼は見滝原の交番に転勤することになったのだった。

「結局何も起こらないな……ま、平和なのはいい事だ」

青年は呟くと、まず朝食を取るためちゃぶ台に目を移し、
その上にある異物を見つけた。

「飯飯……んん?」

近寄ってみると、そこには一つの銀のトランク。
そのトランクに、彼は見覚えがあった。

しかも、トランクの上には紙が添えてある。
紙には大きく『天』の一文字。

「これって……おいまさか……」

ゆっくりとトランクを開く。
すると中には――
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:17:04.18 ID:WXf83O/p0<>
/////

仮面ライダーカブト!

おいおい!加賀美『さん』だろさやか――

暁美ほむらです。 よろしくお願いします――

天の道を往き、総てを司る男――

もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね――

でも私、他人の為に変われる事って人間の良い所だって、教えてもらったから――

次回『夢の中で会った、ような / そんな調子じゃ肩が凝る』

天の道を往き、総てを司る!





<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 22:18:23.46 ID:on2znTxEo<> \オツベント/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 22:22:22.43 ID:fhGZVNG+o<> \ロイヤル乙レートフラッシュ/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/17(木) 22:22:31.36 ID:jJ6t9TbR0<> \オツ!/

氷川「お巡りさんと聞いて」
須藤「やってきましたよ」
照井「振り切るぜ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/17(木) 22:23:23.63 ID:WXf83O/p0<> 投下完了です。
これくらいの量でいいんでしょうか。
多いってことは無いと思うんですが、少ないかも知れません。
次回投下は3~5日後になります。
書き終わってはいますので、あとは時間が取れるかどうかの勝負になりそうです。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/17(木) 22:28:15.78 ID:on2znTxEo<> >>35
もうちょっと量が多いとうれしいかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)<><>2011/03/18(金) 00:08:33.26 ID:HtpUjU8t0<> \乙レートフラッシュ/
続き待ってるぜb <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/18(金) 15:20:31.40 ID:MRibb+3IO<> これは期待
さやかには地獄兄弟が似合うとずっと思ってたwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/18(金) 16:58:22.34 ID:djl/QdgIO<>
\ハイパー乙ロックアップ/
カブトとのコラボ期待してます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 01:04:48.94 ID:u6WK6D8m0<> 前言撤回です。 今日の昼頃には投下します。
不定期ですみません。しかし出来たものは仕方ない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 01:09:57.26 ID:3O2lez9m0<> >>40
ウホッ!
待ってるぜい! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 02:47:29.46 ID:idnGeL6DO<> カブトもまどかも大好きだ。応援してる
だからこそ、キャラ崩壊にならないことを祈るよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/19(土) 09:17:02.01 ID:/svq4o/Co<> \アタックライドゥ/\クロックアップ/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 10:54:47.32 ID:u6WK6D8m0<> 11時半から投下開始します
前回短かったっぽいんで文章量二倍程度にしてみました <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 11:01:51.89 ID:OKTbsi3Lo<> 舞ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/19(土) 11:14:37.48 ID:/svq4o/Co<> \キタイベント/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:30:40.88 ID:u6WK6D8m0<> まどかは広い道路を走っていた。
都市のように開発されている見滝原は、それでいて緑に囲まれており、
自然と都市の調和が美しい街だ。 木漏れ日も、暖かく降り注いでいる。

ある程度走っていくと、二人の少女が見えてくる。
緑髪のおっとりとした美少女と、活発な雰囲気を醸し出す青い髪の少女だ。
二人はまどかを見つけると、笑顔で彼女に手を振った。

「おはよー、さやかちゃん、仁美ちゃん」

「おはようございます、まどかさん」

「まどか、遅ーい! お、かわいいリボンしてるねぇ」

「そ、そうかな? 派手すぎじゃない?」

「とても似合っていますわ」

まどか達はいつも通りのやりとりをしながら歩き始める。
時折駆けたり、ゆっくりと歩いたり。 笑いが絶えない通学であった。

今度はゆっくりと歩きながら、まどか達は一列になる。

「でね、『ラブレターじゃなく直に告白できなきゃ駄目だ』って」

真ん中に居るまどかは、二人に朝聞いた母の話をしてやる。

「相変わらずかっこいいねえ、まどかのママは。
 美人だし、バリキャリだし!」

一番前を歩いていた仁美が振り返った。

「そんな風に割り切れたらいいのですけど……はぁ……」

仁美が溜め息を吐き、俯く。
その顔は憂いを帯びており、この少女の美しさを際立たせる。

さやかが意地の悪い笑みを浮かべながら、仁美をからかう。

「羨ましい悩みだねぇ?」

「いいなぁ……私も一通くらい貰ってみたいな。 ラブレター」

まどかやさやかは、仁美のようにラブレターを貰うことなど無い。
というより普通は無いのだが、目の前の仁美がこうもよくラブレターを
貰っているのを見ると、羨ましくもなってくる。

「ほぉーう? まどかも仁美みたいにモテモテの美少女に変身したいと?
 それで、まずはリボンからイメチェンですかなぁ?
 ……さては、ママからモテる秘訣を教わったな〜? けしからんっ!」

「ち、違うよ! そんなんじゃないよ!」

「えぇーい、問答無用! そんな子は、私が嫁に貰ってやるぞぉ!」

さやかとまどかがじゃれ合っているさまを見て、仁美はまた溜息をつく。
ここはもう校門に近い。 近くに居る仁美も、かなり恥ずかしいのだ。

「……なにやってんの、お前ら」

そこへ、不意に男の声が入ってくる。 見た目からして警官のようだ。
いかにもなお巡りさんの格好をして、いかにもな自転車に乗っている。
ただ一つ違和感があるとすれば、何故か銀色のトランクを持っていることだ。

「あら、加賀美さん。 おはようございます。
 いえ、あのように二人でじゃれ合っていまして……」

真っ先に気付いた仁美が、彼に挨拶と説明をする。
それを聞いた警官――加賀美と呼ばれた――が、盛大に溜め息をつく。

「ああ、おはよう仁美ちゃん。
 ……お前らな、もうここ校門前だぞ? 恥ずかしいと思わないのか?」

「あ、おはよう、加賀美さん。 違うんですよ、さやかちゃんがぁ……」

「うーっす加賀美ー。 お、私のせいにするのかぁまどか?
 お主がハレンチなのがいけないのだぞぉー?」

「おはよう、まどか。 ……加賀美『さん』だろさやか。 まあ、おはよ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:31:27.23 ID:u6WK6D8m0<>
さやかに釘を差しつつ、二人に挨拶を返す加賀美。
どうやら彼は、年下に慕われやすい上、舐められやすい体質のようだ。
それだけ、親しみやすい人柄というのもあるのだろう。

加賀美の横槍のおかげで冷静になったのか、まどかは頬を若干赤く
染めながら俯く。 対してさやかは、すでに加賀美をからかう方向へとシフトしていた。

「おやおやー? この街のお巡りさんは、いたいけな女の子をいじめる趣味を
 持ってるんですかなー?」

「誰が、いつ、そんなことをしたんだよ……」

顔をひくつかせながら、ツッコミを入れる。
心なしか、まどかと仁美も意地の悪い笑みを浮かべている。

「加賀美さん……私、傷付けられましたぁ……」

「あら加賀美さん? そういうのはよろしくないんではなくって?」

加賀美の顔が、どんどん引きつっていく。
まどか達はとても楽しそうに、加賀美をいじり続けた。
主にさやかが、ではあるが。

「お前ら、いい加減に……しろぉ!」

「おぉぉぉっ……ととと」

加賀美が遂にさやかに拳骨を下ろそうとするが、それは間一髪避けられてしまう。

「うぉっ!? こら逃げんなさやかぁ!」

「やーだね! 捕まえてみなさーい?」

一目散に校門に向かって行くさやかに対し、
加賀美はしてやったり、という表情になる。

「ククククク……流石に俺は大人だからな。 
 もうお前には振り回されないぞ!」

ありもしない顎髭をなぞる動作をしながら、加賀美はまどかと仁美に顔を向ける。
その顔はとても得意げだ。 いわゆる『ドヤ顔』である。

まどか達は、そんな加賀美に苦笑いを浮かべながら、さやかを追いかけ始める。

「それじゃあ、加賀美さん。 いってきます!」

「おお、行ってらっしゃい。 何かあったらすぐに連絡するんだぞー!」

「わかっております。 では、いってきますわ」

こうして、少女達は学校へと入っていく。
あさから元気いっぱいの少女達に、加賀美は満足そうな表情をした。

「街の子供たちの元気な笑顔。 うーん、この仕事してて良かった〜!
 ……さやかの生意気な態度はムカつくけど」

加賀美はそう呟くと、改めて自分の勤める派出所に向かうのであった。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:32:17.93 ID:u6WK6D8m0<>

「さやかちゃん、走るの速いよ……」

結局、まどか達がさやかと合流するのは、教室の中になってしまった。
さやかも得意げな『ドヤ顔』になっている。

「あー、ごめんごめん。 加賀美の反応があまりに面白くってさー!」

「もうっ! 加賀美さん結構怒ってたよ?」

「大丈夫大丈夫。 どうせ明日には忘れてるって!
 毎回そうだし」

あっけらかんと宣言するさやか。
その様子を見て、まどかは溜め息を吐いた。

「はぁ……なんか二人とも、いっつも同じやりとりしてるよね……
 よく飽きずにやるよ……。 あ、先生入ってきた」

時計を見ると、すでにホームルームの時間となっていた。

「お、じゃあ席戻るとしますか。 って言っても、まどかの一個前なんだけど」

「そうですわね」

ホームルーム開始のチャイムがなると、担任教師がおもむろに話し始める。

「今日は皆さんに大事なお話があります。 心して聞くように!」

担任はすうっと息を吸うと、凄まじい声量でまくし立てた。

「目玉焼きとは、半熟ですか!? かた焼きですか!? はい、中澤くん!」

「えぇっ!? えっ……と。 どっちでもいいんじゃないでしょうか……」

「その通り! どっちでもよろしい! 
 たかが卵の焼き加減で、女の魅力が決まると思ったら大間違いですっ!」

担任は感情が高まったのか、遂に持っていた指し棒をへし折ってしまう。
小気味のよい音をならして折れ曲がった指し棒を見ながら、さやかはまどかにひそひそと
話しかける。

「やっぱり駄目だったんだ、新しい彼氏と」

「あはは……」

その間にも、担任はガミガミと大声でしゃべり続けている。
よほど鬱憤が溜まっているようだと、生徒一同で感じとっていた。

そんな教室に、急に入ってくる男性が一人。
いかにもなスーツを着込んでいる男性の首には、『研修』と書かれた札がかけてあった

「……話が長いぞ」

「て、天道さん!?」

「うっそ、マジ?」

その男を見たまどかが、驚きの声を上げる。
後ろのさやかも、同じ反応をしていた。

「あ、天道先生。 卵の焼き加減は――」

もはや暴走状態となっている担任は、天道にも同じ質問をしようと
するが、途中で遮られる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:33:25.10 ID:u6WK6D8m0<>
「目玉焼きは、難しい料理の一つだ。 それに好みの問題でもある。
 だが、あえて言うならば、そうだ、固くも無く、半熟でもない。
 それでいてしっかりとしていて、しかも口に入れるととろけるような、
 そんな目玉焼きこそが最高の物だ。 ……中澤、目玉焼きには何をかける?」

「ま、また俺? 醤油、ですけど」

「ちなみに俺は何もかけん。 卵料理一つとっても、好みはそれぞれだ。
 そういう訳だ。 わかったか?」

いきなり目玉焼きについての持論を展開する天道。
それを見て担任も落ち着いた、というよりも圧倒されていた。

「あ、ああ、その通りです、ね?
 ……あ、こちら教員研修生の天道総司先生です」

さらっと衝撃発言をする担任。
おいそっちの方が大事だろと、生徒全員が思った。

そんな生徒達などには構わず、天道はデジタルボードに名前を書き込んでいく。
名前を書き終えると生徒の方へ向き直り、その腕を掲げ、天に指差した。

「天の道を往き、総てを司る男――
 天道総司。 存分に俺に教えを請い、成長するといい」

あまりに前衛的な自己紹介に、生徒のほとんどが唖然とする。
天道は更に続ける。

「今日は転校生が来ている。 新しい人間というのは話しかけづらいが、
 まあ仲良くしてやってくれ。 ……入れ」

いかにも前から自分がここに居たように天道が入り口に向けてそう言い放つと、
転入生の少女が教室に入ってくる。 
長い黒髪に細身の体。
かわいいというよりも、凛々しい顔つき。

その少女に、まどかは見覚えがあった。

「うっわ、すげぇ美人!」

「……うそ……」

さやかがまどかに耳打ちする。
まどかには、それに答える余裕もない。

少女は教卓の場所で立ち止まり、正面を向いた。
担任が少女に自己紹介を促すと、少女はゆっくりと口を開いた。

「暁美ほむらです。 よろしくお願いします」

担任が、名前をボードに書こうとするが、ボードの左から右まででかでかと
書かれた『天道総司』の字が邪魔をする。
こんなにも大きく書いておいて、達筆なのに腹が立つ。

ほむらはもう一本のペンを持つと、隙間に器用に名前を書いた。

書き終えるともう一度生徒達に向き直り、深く一礼すると、
生徒達は戸惑いながらも拍手する。

「愛想が悪いな。 これから同じクラスなんだ、
 もっと明るくわかりやすく挨拶したらどうだ」

「……アンタが言うか、アンタが」

小声でさやかが突っ込む。 天道が居ることに既に適応しているあたり、
適応力は流石に高い。

まどかとほむらの目が会う――否。 ほむらがまどかを見る。
まどかはそれに耐え切れず、軽くうめいて目を逸らした。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:34:15.15 ID:u6WK6D8m0<>

休み時間に入ると、ほむらは真っ先に女生徒に囲まれた。
転入生の宿命、質問攻めである。
ほむらはある程度それに答えると、突然立ち上がった。

「ごめんなさい……ちょっと気分が悪いから、保健室に行かせてもらってもいいかしら」

ほむらがそういうや、周りの生徒は皆して案内役を申し出る。
しかし、ほむらは全て断ると、別の席でさやか達と雑談していたまどかのもとへと歩み寄る。

「鹿目まどかさん。 あなたが、このクラスの保健係よね。
 保健室に連れて行ってくれないかしら」

「あ……うん」

まどかは戸惑いながらも了承し、二人で教室を出た。

ほむらと共に保健室へ向かう廊下を歩く。
まどかが案内すると言いつつ、先導するように歩くのはほむら――
何故か彼女は何の迷いも無く廊下を歩いて行く。 
まるで予め道筋を知っているかのように。

まどかはオドオドしながら、ほむらの後ろに付いて行く。

「あ、あの……その。 私が保険係だって、どうして……?」

「天道先生から聞いたわ」

そう言われるとまどかは得心が行ったのか、苦笑いを浮かべた。

「あはは……そ、そうなんだ……。
 あ、て、天道さ――先生はね? あんな感じだけどいい人……だから。
 ……担任の早乙女先生もだよ?」

「……そう」

ほむらは一言だけ応えると、あとは無言で進んで行く。
時折まどかが話しかけても、一切返してこない。

「あ、あの、暁美、さん?」

「ほむらでいいわ」

「ほ、ほむら……ちゃん?」

「……何かしら」

きちんと名前を呼ぶと、一応は返事をしてくれる。
そうわかると、まどかは何とかして話題を探す。

「え、っと、か、かわった名前だよね!」

ほむらは答えない。
名前というのは何分コンプレックスになりやすいものだ。
怒らせてしまったのだろうか。

「いや、その……変な意味じゃ無くてね? か、かっこいいなあ、なんて……」

ほむらが突然振り返る。
まどかがびくんと肩を震わせ、どんな怒りの言葉が飛んで来るのかと
怯えた瞳でほむらを見た。

だが、その口からは突拍子も無い言葉が出てきた。

「……鹿目まどか」

「は、はいっ」

「……あなたは、自分の人生を尊いと思う?
 家族や友達を、大切にしてる?」

怒られるものと思っていたまどかは、多少安堵しつつも、
質問の意味をはかりかねていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:35:20.09 ID:u6WK6D8m0<> 「えっ、と。 私は……大切、だよ。 家族も、友達の皆も。
 皆みんな大好きで、とっても大事な人達だよ」

それは、まどかにとっては当たり前の認識。
家族も友達も、皆全て大切にする。
微笑みを携えて、まどかは答えた。

「本当に?」

「本当、だよ。 嘘なわけないよ!」

「……そう」

ほむらは、一切表情を変えずに語る。

「もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね。
 ……さもなければ、全てを失うことになる。 あなたは、鹿目まどかのままでいい。
 今までも、そしてこれからも」

そう言うと、ほむらは振り返り、歩き出す。

「ま、待って!」

しかし、まどかに呼び止められ、また振り返った。
まどかは、今度は真っ直ぐにほむらを見つめる。

「……何?」

「あ、あのね? わ、笑わないで聞いてね?」

「……だから、何だというの?」

まどかは、恐る恐る語りだした。
自分が学んだことを。

「わ、私の、尊敬する人がね? 教えてくれたんだ。
『世界は自分を中心に回ってる。 そう思った方が楽しい』……って。
 あの時はわからなかったけど、もしかしたらそれってさ、
『自分が変われば世界も変わる』って意味なんじゃないかな、って……」

ほむらが苦い表情になる。

「でも、その変わった世界は、あなたの望む物では無いわ」

底から沸き上がる悲しみを抑えるような声で、ほむらが返す。
まどかは、あくまで穏やかに、ほむらを見つめていた。

「でも私、他人の為に変われる事って人間の良い所だって、教えてもらったから」

「っ……!」

まどかが、恥ずかしそうな笑みを浮かべながら、控えめに腕を掲げ、天を指差す。

「『天の道』って、言うんだって。 えへへ……まだ、よくわかんないけどさ」

「天の、道……」

ほむらは一度そう言うと、今度こそ踵を返して歩き出した。
その顔は、怒りに歪む。
今度はまどかが追ってこない。

まどかと完全に別れると、歩きながらほむらは呟いた。

「天道、総司――
 許せない、あの男は」

「呼んだか?」

「っ!」

今一番憎い相手が、ほむらの前に現れた。
ほむらは、怒りのままに言葉をぶつけてしまう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:36:20.99 ID:u6WK6D8m0<> 今一番憎い相手が、ほむらの前に現れた。
ほむらは、怒りのままに言葉をぶつける。

「あなたは! どうしてそんな無責任なことを……っ!
 その言葉が、あとでどんな影響を及ぼすか、考えたことがあるの……!?」

天道は、余裕の笑みを崩さない。

「何をそんなに怒っている。 俺は無責任などではない。
 世界の中心は俺だ。 全ては俺が背負っている。
 中心たる俺の近くにいたまどかが変わったのは、必然だ」

「それは傲慢よ! 何も守れない癖に!
 為す術も無い癖に!」

もしかしたら、この男はあの戦士達の一人だったのかも知れない。
しかし、結局は何もできなかったではないか。
ほむらの言葉には、そういった意味が込められていた。

天道は笑みを消し、ほむらを見つめ直した。
しかしその眼差しの中に敵意は無い。 
それでいて、鋭い眼差し。

「お前が何を知っているのかは知らん。 だが、一つだけ言えることがある」

天道がほむらに近づき、その肩に手を乗せる。
その手をほむらはすぐに打ち払い、キッと天道を睨みつけるが、天道はそのまま通りすぎていく。

「そう攻撃的になるな。 そんな調子じゃ肩が凝る。 少しは力を抜け。
 おばあちゃんが言っていた――『未熟な果物は酸っぱい。 未熟者ほど喧嘩をする』ってな」

ほむらはもう答えない。
天道はもう一度立ち止まり、振り返らずに言った。

「それともう一つ。
 朝にも言っただろう――『存分に俺に教えを請い、成長するといい』ってな。
 それはお前も例外じゃない。 お前が求めるなら、俺はいつだって応えてやる」

天道はほむらからの返答を待つこともせず、そこから立ち去った。

――そこに残ったのは、ただ立ち尽くすほむらだけであった。




/////



仮面ライダーカブト!

助けて、加賀美! まどかが、まどかが――

またこいつを使うことになるなんて……変身!――

私は巴マミ。 あなた達と同じ、見滝原中の生徒よ――

僕と契約して、魔法少女になってよ――

おかしいに決まってるだろ! 同じ魔法少女なんだろ? なら、協力すべきだ――

次回『それはとっても嬉しいなって / 来てくれ、ガタックゼクター!』

天の道を往き、総てを司る!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/19(土) 11:40:00.87 ID:u6WK6D8m0<> 以上で終了です。
いまだライダー登場無しでごめんなさい。
本編終了後とはいえ、天道が柔らかすぎるでしょうか。
というより悟りすぎですね。
天道はカブト本編でも何の脈略もなく登場するので、実はかなり使いやすいんです。
加賀美も直情型なので出しやすい。

今回は長すぎたかも知れません。
ただ、次回はもっと長くなるかも。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/03/19(土) 11:56:56.77 ID:jOiIRTMDO<> 乙乙。

ハイパーガタック出るのかなぁ〜? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 11:58:45.36 ID:8msjo1KIO<> オツベント
そういえば本編終了後だと剣はいないのか…
好きなキャラだったからちょっと残念だw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2011/03/19(土) 12:12:55.34 ID:8PDES3tho<> 1000に到達する前に完結、または不要になったスレッドは、HTML化依頼スレッドへ報告を。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2011/03/19(土) 13:47:31.91 ID:U7shc1hAO<> 乙
天道があらゆる鬱フラグを薙ぎ払ってくれるって信じたいです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<>sage<>2011/03/19(土) 16:08:18.01 ID:KrcmA4wKo<> 乙
導入もそれらしくて読み易かった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/19(土) 16:20:55.88 ID:/svq4o/Co<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 20:24:00.39 ID:3O2lez9m0<> 天道の脳内再生率が異常だw
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 23:29:35.61 ID:VXvwcUjSO<> 乙。

全然長くなってよかですよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/19(土) 23:52:08.81 ID:xUZ7I0tW0<> 乙〜
TVでの加賀美は良いように使われる事が多かったから
ここではQBの思惑を引っ掻き回して欲しいなww

所でTV終了後ってことは現存のライダーは
天道=カブト
加賀美=ガタック
矢車=キックホッパー
風間=ドレイク

ってとこか。弟と坊ちゃま… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/03/20(日) 00:12:45.26 ID:IObBEADyo<> ザビーゼクター…
ぜひまどかは魔法少女じゃなくてザビーになって欲しいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/20(日) 00:26:10.85 ID:+omqYSEX0<> カブティックゼクターズ「僕達のこと…時々でいいから(ry」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/20(日) 11:49:37.77 ID:EVa74pcIo<> >>64
むしろさやかがザビーになってなんやかんやあって矢車さんの妹に(ry <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/20(日) 12:30:20.56 ID:Ym1xCcGBo<> >>66
そして背後で魔女化したさやかにぶっ飛ばされる矢車さん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<><>2011/03/20(日) 13:28:04.52 ID:RxtJGCug0<> じゃあ緑はパンチホッパーに… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/20(日) 22:09:10.28 ID:EVa74pcIo<> 仁美「あなたたちはいいわねえ・・・どうせ(ry」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/20(日) 23:09:28.65 ID:pYUEVPOd0<> 報告するの忘れてましたすいません。
次回の投下は2〜3日後になると思います。

あと、某スレでそういう話があったのであらかじめ宣言しておくべきかと思ったのですが、
このSSはまどかのSSかカブトのSSのどちらかと聞かれたら間違いなくカブトのSSです。
『まどか☆マギカにカブト勢がいたら』というよりも
『カブト本編後にまどか☆マギカの物語が始まっていたら』という考え方です。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<><>2011/03/21(月) 15:18:21.51 ID:wjsNB0QE0<> >>70そうなのか

そういえばダークカブトゼクターはどうなったんだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/21(月) 16:31:04.83 ID:GT2z/5xs0<> >>71
そういやゼクター自体は壊れたわけじゃないんだよな、パンチホッパーやサソードも <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(山陽)<><>2011/03/21(月) 20:26:07.75 ID:Mbzq7DbAO<> >>72
ダークカブトゼクターは故障してクロックアップできないけどな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/21(月) 20:32:20.75 ID:XL/Fas7e0<> >>73
それはいってやるなよwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/23(水) 19:41:15.91 ID:I5lXIlYbo<> \クロックアップ/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/23(水) 22:45:53.43 ID:HGbgorxN0<> 本当にすみません
投下は明日になりそうです

ところで聞きたいんですが、
まどマギ側のキャラがライダーに変身するのはアリですかね?
嫌な人が多いようなら展開を変えます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/23(水) 23:04:29.18 ID:zsJwaChi0<> >>76
見せ方によっては
っていうかそれってつまり地獄妹…! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/03/23(水) 23:07:47.05 ID:+MNB94kXo<> まあヒーローショーでもミサキーヌがザビーに変身してたりオリジナルのライダーとかがいたりするしな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/03/23(水) 23:12:34.98 ID:aPaHEdz40<> 魔法少女にもなるんだったら全然おk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/23(水) 23:15:40.12 ID:dWupJKT10<> ザビー、サソード、パンチホッパーになると見せかけて
どこからか飛んできたドレイクゼクターで変身するんですね分かります。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(栃木県)<>sage saga<>2011/03/24(木) 10:11:25.58 ID:zoahmrIzo<> そしてハイパーカブトに昆虫採集剣でパクられると <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/24(木) 20:12:03.89 ID:8CGo+Vtro<> \マドカパゥワー/\サヤカパゥワー/\マミパゥワー/\キョウコパゥワー/
\オールソウルジェムコンバイン/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/24(木) 23:01:06.48 ID:0dUFtv5z0<> 11時半〜12時に投下します。
第二話は二回に分けて投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/24(木) 23:09:46.85 ID:x+UfKuOT0<> 期待してますぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:29:36.00 ID:0dUFtv5z0<> ほむらの転入から一ヶ月前――

天道総司は、バチカン市国を歩いていた。
あまりに場違いな作務衣、軽やかな音を立てる下駄。 
そしてどこで手に入れたのか、ボールの中には豆腐。
天道は、やはり豆腐を買いに来ていた。

今日はどこで料理を作るか。
――教皇に食べさせるのもまた一興かも知れない。
天道の料理行脚は果てしなく続いていた。

「お、お前は……」

一年半前のあの時、世界規模で有名になった自分の姿。
今まで何度外人に呼ばれたことか。

その度に天道は言ってやる。

「おばあちゃんが言っていた。
 俺は天の道を往き、総てを司る男……
 天道総司だ」

と。


そんな天道に変化が訪れた。
道路を歩く天道の眼前を横切る物――
それは、天道にとって余りにも見慣れた物であった。

「……カブトゼクター?」

今、自分はカブトゼクターを呼び出してはいない。
戦いは終わったのだ。 しかし、天道以外でカブトゼクターを呼べる者――
ネイティブがここにいるのなら、いや、ネイティブがカブトになるような事態なら、
見過ごすわけにはいかない。

天道は、迷わずカブトゼクターを追いかける。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:30:44.45 ID:0dUFtv5z0<> カブトゼクターを追いかけて路地裏に入ると、
天道はあっという間にカブトゼクターを見失ってしまった。

「この俺としたことが……。
 しかし戦闘しているような音も聞こえないな……
 単に戦闘が無いのか、クロックアップしているのか……」

天道は不思議に思いながらあたりを見回す。
すると、ありえないものを見つけてしまった。

「ハイパーゼクター……だと?」

カブトゼクターとは違い、ハイパーゼクターは天道にしか呼び出せない筈。
ならば、あのカブトゼクターも、天道が呼んだ物。
そうとしか考えられない。
あたりを付けた天道は、誰もいない筈の場所で問いかける。

「何かあったのか。 未来の『俺』――」

どこからも答えは聞こえない。
その代わり、カブトゼクターが天道の下にやってくる。
その口には、一枚のメモ。

「なんだこれは……。 読め、というのか」

当然ながら、何も答えずにカブトゼクターは去っていく。
そのメモには、最低限の事しか書いていなかった。

『日本、見滝原に向かえ。 全てが手遅れになる前に。
  黒い長髪の少女に気をつけろ。 ――天――』

「……まずは家に戻るか。 ベルトを回収しなければな」

こうして天道は、日本へと帰還した。

結局何をすればいいのかわからなかった天道は、見滝原でも料理行脚に
入ってしまったり、まどかの父に出会って料理対決をしたりするのだが、
それはまた別のお話。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:31:56.12 ID:0dUFtv5z0<> /////


「……なーんか暇だなあ」

昼食を食べてからもう3時間は経っただろうか。
加賀美は雑務もあらかた終わり休憩を取っていた。
普段なら、道に迷ったご老人や落し物を届ける人がいるのだが、
今日はただの一度も人が来ない。

することが無くなった加賀美がパトロールにでも行くかと考えていると、
机に乗せた携帯電話が鳴った。

目をやると、携帯電話のディスプレイには『美樹さやか』の文字が。
あの子は生意気だが、いたずら電話をするような子ではない。
加賀美は不思議に思いながら電話に出る。

「はいもしもし? どうしたんださやか――」

『助けて、加賀美! まどかが、まどかが!』

切羽詰ったようなさやかの声。
加賀美はすぐさま異常事態を感じ取り、外に出る準備を済ませながら答える。

「どうしたんださやか。 ……落ち着いて、何があったのか、そこはどこなのか
 教えてくれ」

警察官として過ごした時間は、加賀美を確実に成長させていた。
加賀美は決して慌てず、さやかに問いかける。

『う、うん。 ……』

「……場所は……ああ、ここから近いな。 わかった、すぐに行く。
 絶対に早まった行動はしないで待ってるんだぞ!」

さやかの口から出てきたのは、あまりに不可思議な状況。
突如居なくなったまどか、不思議な動物、そしてそれを追う転校生――
加賀美の頭の中に、朝の出来事がよぎる。
なぜ、『あんな物』が置いてあったのか。 

「……杞憂であってくれよ」

加賀美はロッカーを開け中のトランクを取り出すと、そのトランクの中身を
取り出した。

銀色のベルトが、光り輝く。 
まるで戦いが始まることを、待ち望んでいるかのように。


「加賀美……頼むから、早く来てよ……」

閉鎖されたフロアの中――

柱を隔てた向こう側のほむらとまどかに聞こえないように、さやかが呟く。
向こうでは、ほむらがまどかと言い合いをしていた。
まどかはその胸に、傷だらけの動物を抱えている。
その傷がほむらがやった物であろうことは、彼女の態度から分かる。

一触即発の事態。 
今すぐにでも飛び出して、まどかを助けてやりたい。
しかし、信頼している警察官の指示を破る程、さやかは馬鹿では無かった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:33:04.58 ID:0dUFtv5z0<> 幸い、ここから派出所は近い位置にある。
急いで来れば5分とかからないだろうし、あの熱血馬鹿なら
もっと早く来るかもしれない。
そんな希望的観測が、さやかをかろうじて支えていた。

時間にして数十秒――
それが、さやかには数時間にも感じられる。
未だ加賀美は到着しない。

遂にほむらがまどかに向かって歩き出した。
まどかの眼前で立ち止まるほむら。
まどかは動物を抱え、庇うように構えた。

加賀美はまだ、来ない。


――もう、無理だ。
今すぐ行けば間に合う。
まどかを、助けださなきゃ。

さやかは近くを見回す。
足元には、消化器。

無我夢中でそれを取り、走りだす。

柱の陰から飛び出し二人に近寄ると、迷いなく噴射口をほむらに向け、
安全ピンを抜く。

反動に耐えながら、まどかに声をかける。

「まどか、こっち!」

「さやかちゃん……!」

まどかが立ち上がり、自分の背後に回ったのを確認すると、
丁度消化器の噴射が止まった。
空の消化器を放り投げ、まどかの手を引き、その場から逃げ出す。

走る、走る、走る。

「……なんだよあいつっ! 今度はコスプレで通り魔かよ!?
 ていうか、何なのそれ……ぬいぐるみ、じゃないよね!?」

まどかも必死に走りながら、腕の中の動物を見つめる。

「わからない……。
 でも、この子を助けなきゃ!」

二人の前から、大きな足音が聞こえてくる。
その足音の主は、やっと到着した加賀美であった。

「ごめん遅くなった! 二人とも無事か!?」

まどかとさやかは、やっと来た大人の存在に、安堵の笑みを浮かべた。

「だ、大丈夫です。 加賀美さん」

加賀美は、まどかの胸元に目をやると、怪訝な表情を浮かべる。

「その動物は……いや、今は早くここから――」

そう言い終わる瞬間、周りの世界が変貌する。
閉鎖された薄暗いフロアから、意味のわからない不気味な空間に。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:35:18.38 ID:0dUFtv5z0<> その空間の中には、なんとも言えないこれまた不気味な存在。
飛び回る鋏、高い声を上げながらカタカタと動く、髭のついた綿。

「な、何よ、これ……」

「へ、変だよ、ここ……。 どんどん道が変わってく……っ」

「な、何だこれ……なんなんだよこれは……」

加賀美が、少女二人を庇うように立つ。
この空間は、危険だ――
異常事態を感じ取った加賀美は、迷いなく近くの化物を殴り飛ばす。

「二人ともじっとしてろ!」

しかし、無情にも化物の数は増えていく。
化物はまどか達に近付き、今にも攻撃してきそうだ。

化物が舞い上がり遂にまとか達に降り注ぎ始める、その瞬間。
どこからとも無く鎖が現れ、まどか達の周囲を囲う。
すると、オレンジ色の光が、まどか達の周囲に降り注いだ。
光に当てられた化け物たちは、力なく倒れていく。
間違いなくチャンス――
加賀美はすかさず手をかざし、強く念じる。

「(頼む……! 来てくれ、ガタックゼクター!)」

すると空中に時空の歪みが出現し、空間に穴ができた。
その中から現れたのは、青色のクワガタ――ガタックゼクター――


ガタックゼクターは加賀美の思いに答えて現れ、
真っ直ぐ加賀美の手の中に収まった。
加賀美が上着を捲ると、銀色の機械じみたベルトが露出する。

「またこいつを使うことになるなんて……変身!」

加賀美は叫び、ゼクターをベルトのバックルに装着した。
エコーのかかった電子音声が鳴り響く。

 『Henshin』

加賀美の体に、機械仕掛けの鎧が装着されていく。
一瞬にして装着を終えると、加賀美はまた二人を庇うように構えた。

「か、加賀美、それ――」

「詳しい話は後だ! 今は俺から離れるなよ!」

しかし、周囲の化物は一向に動かない。
安堵の溜め息をつくまどか達とは逆に、加賀美は緊張感を高める。

不意に遠くからの足音が聞こえてくる。
加賀美は瞬時に音源に向き直り、肩のバルカンを待機させた。

「危なかったわね。
 でももう大丈夫」

が、現れたのは化物では無く、一人の少女。
その手には鎖と、光り輝く黄色の宝石が握られている。
少女は加賀美達の目の前まで来ると、にっこりと笑った。

「……とは言っても、助けは要らなかったかしら?
 ねぇ、『マスクドライダー』さん」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:36:10.09 ID:0dUFtv5z0<> 「お、俺は……。
 君はどうしてそれを――」

言い淀む加賀美の後ろから、まどかが声を上げる。

「わ、私……呼ばれたんです! この子に……『助けて』って……」

少女はまどかの腕に抱かれている白い動物に目をやると、
得心がいったように頷いた。

「……わかったわ、説明しましょう。
 でも、その前に……」

少女は手に持っていた宝石を目の前に掲げた。
その瞬間、少女が光に包まれる。
光が収まり、その中から少女が現れると、その姿は制服姿から
舞台か何かの衣装のような服装へと変わっていた。

「ちょっと一仕事、やっちゃおうかしら!」

再び動き出す化け物達。
化物達は加賀美達から離れ、一斉に少女の下へと飛んでいく。

少女が飛び上がり、その腕を振るうと、数多のマスケット銃が
どこからともなく現れ、一斉に弾丸を射出する。
轟音と共に、弾丸の雨が化物達に降り注いだ。

圧倒的な殲滅射撃となったその攻撃により、化物達は焼き消されていった。

空間が再び歪んで行く。
辺りを見回すと、そこは元のフロアとなっていた。

さやかとまどかは顔を見合わせ、そこでやっと笑みをこぼす。
助けてくれた少女の下に、まどかとさやかが駆け寄った。

「やっと戻った……!」

「あ、あの、あなたは?」

「そうね、先に名乗っておこうかしら。
 私の名前は巴マミ。 で、その白いのが――」

「ま、待て三人共!」

その場が和やかな雰囲気になっていこうとするが、加賀美が声を張ってそれを
元の緊張の中に戻した。

新たな人影を、マスクドライダーの超感覚が捉えたのだ。

人影は、二つ。

「何か来る……気をつけろ!」

再びまどかとさやかの顔が強ばる。

先に現れたのは、先ほどの少女と似た意匠の服をまとった一人の少女。

やがてそれが目視できる位置までやってくると、まどか達は驚きの表情を浮かべ、
加賀美は素っ頓狂な声を上げた。

先に現れたのは、先ほどの少女と似た意匠の黒い服をまとった一人の少女――
暁美ほむら。

「ま、また女の子ぉ?」

「ほ、ほむら、ちゃん……」

ほむらは冷たい視線をまどかに向けて、一度目をそらし、軽く後方を
見やる。
ほむらの後ろから出てきた人物を見た瞬間、加賀美が驚きの声を上げた。

「あ、あなたは……!」

現れたのは、加賀美とは違う鎧を纏った人物。
マスクに覆われた顔から表情は読み取れないというのに、
その身から陰鬱な『闇』を漂わせる者。

加賀美が、その名を呼んだ――

「矢車、さん……!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/24(木) 23:37:14.49 ID:0dUFtv5z0<> 矢車と呼ばれた者は、加賀美に一瞥をくれると、すぐに視線を外す。
次に視線を向けたのは、マミ。

マミは、大して驚いた様子も無くその者に声をかけた。

「何の用かしら。 矢車想さん?」

マミは、『フルネーム』でそう呼んだ―― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/24(木) 23:39:37.40 ID:0dUFtv5z0<> 今回の投下は終わりです。
二回に分けたので、一回の量が少なくなっています。
前回よりも遥かに多い量になってしまった為こうしたのですが、
こうしたらこうしたで少なくなってしまいました。

次は早ければ3日後には。 遅くても5日後までには投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/24(木) 23:52:28.90 ID:b+a9Kvdw0<> 矢車さんマミさんと知り合いかよ
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<><>2011/03/24(木) 23:55:02.14 ID:jsmM5wVY0<> 乙
兄貴と知り合いということは色的なものやマスケットのパーフェクトあれとかでまさか…? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/03/25(金) 00:30:57.42 ID:2H04b4Gvo<> 乙
兄貴もっと後に出ると思っていたがここで来るとは <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)<><>2011/03/25(金) 01:11:55.85 ID:47cQuaJY0<> \乙レートフラッシュ/
あれ?加賀美戦わないの?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/25(金) 01:16:08.05 ID:ry/3m1ME0<> 今回も素晴らしい内容だ
今回のあなたの仕事を称えるなら……えっと…その… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/03/25(金) 12:57:29.00 ID:CsBv+xFOo<> どうせ・・・乙なんて・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/25(金) 16:58:14.41 ID:L9f8E6Tqo<> \オツベント/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/03/26(土) 00:54:23.16 ID:ttxmZ7Hf0<> すいません今情報入りました。
まどマギ4月中には終わるらしいので、少々投下スピードが下げて行こうと思います。
次の投下は予告通りにしますが。

>>94 、 >>95 、>>93
嘘みたいだろ……実ははじめは兄貴単体でクロスさせようとしてたんだぜ……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/26(土) 16:41:51.60 ID:8Hn8xPxZo<> マミさんとさやかに
「俺の妹になれ・・・」と言う兄貴を受信した <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/03/27(日) 23:42:22.84 ID:bR35bxe/o<> 特撮板のまどかスレはその話題が出てたな
地獄姉妹も見てみたいような <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/03/29(火) 03:38:14.38 ID:aUHOohrAO<> メガミマガジンのインタビューより

・(フォワードに載ってたキービジュアルは)本編とは無関係。単なるファンサービス
・本編で5人揃うことはありえない
・ラストはかなりショッキングなものになる
・まどか以外は死ぬのが前提だった
・さやかは初期段階で救いのないことは決まっていた・さやかやほむらとの別れがまどかを成長させる
またそれぞれ別れのイベントを用意
・まどかの願いは奇跡とかそういうものではない。この作品で奇跡は否定
・続編の予定は考えていない

もし、これが本当なら全く誰も報われない救いのない物語だな… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/29(火) 05:21:27.59 ID:r18qmbDd0<> >まどか以外は死ぬのが前提
>さやかやほむらとの別れがまどかを成長させる
>続編の予定は考えていない

> こ の 作 品 で 奇 跡 は 否 定

ほむほむーーーーーーーー!?!?
成長も何も、後1、2話でどうしろと!?
QBの一人勝ちって事かよ…………orz <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/29(火) 17:42:40.52 ID:cnnNoalHo<> >>103
これはガチでひどい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/29(火) 20:34:01.22 ID:9DsogonK0<> >>103 >>104

「安心しろ。 奇跡は無くても天道総司はここにいる」
と天道さんがおっしゃっていますのできっとここは大丈夫。

投下は明日朝になります。 毎回遅れてすみません。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/03/29(火) 20:54:56.50 ID:aUHOohrAO<>
すいません。あのバレ書いた者ですがガセだったみたいです。
ネタバレスレや本スレで受け取った情報を鵜呑みにしてしまいました。
今度からは本当に気を付けます。大変おさがわせしました。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/29(火) 21:12:04.28 ID:cnnNoalHo<> 明日の朝把握 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:13:48.06 ID:d2x+Xq1g0<> 十分後投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:25:05.00 ID:d2x+Xq1g0<> 「何の用かしら。 矢車想さん?」

マミは、『フルネーム』でそう呼ぶ。
矢車は何も答えず加賀美達を眺めると、無言で背を向けた。
マミはそんな矢車を見て穏やかにクスリと笑うと、次はほむらに視線を向ける。

「魔女は逃げたわ。 仕留めたいならすぐに追いかけなさい
 今回はあなたに譲ってあげる」

怖い位に友好的な声色で、マミはほむらに話しかけた。
ほむらはあくまで無表情のまま、答える。
その目は、まどかの腕の中に向けられていた。

「私が用があるのは――」

「察しが悪いのね。 見逃してあげるって言ってるのよ」

マミは強い口調でほむらの言葉を遮った。
ほむらが黙ってマミに視線を向けると、マミは再び友好的な声色で問いかける。

「お互い、無用な争いは避けたいと思わない?
 私はあなたに魔女を譲る。 あなたはここで手を引く。
 それが今のベストだと思うのだけど」

そう言うと、マミは矢車に顔を向けた。

「矢車さん、彼女に付き合ってあげてくれないかしら」

「……」

矢車は何も答えず、ただマミに顔を向けた。
マミはそれを了解と受け取り、再びほむらに顔を向ける。

「矢車さんが居ればすぐに終わる筈よ。
 ……それでもまだ用があるようなら、私の家に来なさい。
 勝手に上がっても良いわ、鍵は矢車さんが持ってるから」

ほむらはマミに沈黙で返す。
了承では無いが、拒絶でも無い返事である。

ほむらはゆっくりとマミ達に背を向け、歩き出した。

矢車もそれに合わせマミ達に背を向ける。
が、加賀美がそれを呼び止めた。

「矢車さん! あなたなんでここに!? い、いやまあ
 いきなりなのはいつも通りですけど……。
 影山さんはどこに――」

矢車は顔だけを後ろに向けた。
だが、マスクの向こうのその目は加賀美に向けられてはいない。

矢車がぼそりと呟く。

「……マミ」

「何かしら、矢車さん」

マミはそれに微笑みながら返す。
心からの穏やかさを表すような声。

「麻婆豆腐が作ってある。
 ……食いたければ、食え」

それだけを言い残し、矢車は去っていった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:25:54.08 ID:d2x+Xq1g0<> 「ええ、頂くわ」

マミは静かに答えると、呆然と立っているまどか達に振り返った。

「……さて、それじゃ説明をしましょうか。
 その前にキュゥべえの怪我を治したいから、ちょっとこっちへ来てくれる?」

まどかはそう言われ、はっとしたように返した。

「あ、はいっ!」


/////


「あなたが、私を呼んだの?」

「そうだよ、鹿目まどか、それと美樹さやか」

まどかが聞くと、キュゥべえははっきりと答えた。

まどか達は、フロアの中でブルーシートを見つけ、そこに座ることにしていた。
そこでマミがキュゥべえに、先ほどのような不思議な力で治療を施したのだ。
加賀美は既に変身を解き、同じようにブルーシートに座っていた。

回復したキュゥべえにまどかが問いかけると、キュゥべえはまどか達の名前を言い当てたのだ。
困惑するまどかとさやかの横から、加賀美が手を挙げる。

「……あの、俺は?」

加賀美がそう聞くと、キュゥべえは驚いたような声を出した。

「……君は僕が見えるのかい?」

「いや、むしろなんで見えないんだよ」

「……僕の姿は、魔法少女かその才能のある子にしか見えないはずなんだけど」

「なにぃ!? じゃ、じゃああれか、俺が魔法少女になるのか!?」

『魔法少女まじかるアラタ☆ 今日もまじかるガタックカリバーで
 悪い人達をカッティングしちゃうぞー!』まで考えてから、加賀美は首を横に振った。

「いやいや俺少女じゃないし、少年ですらないから!」

「落ち着けよ加賀美……そんなの見ればわかるから……」

さやかが呆れたように加賀美に突っ込む。

「うーん……多分、あそこで『使い魔』と戦ったからじゃないかしら。
 キュゥべえが弱ってたから見えやすかったとか、色々考えられるけど。
 矢車さんにも見えてたから、その線では無いでしょうね」

マミは一寸考えて、加賀美の問いに答えを出した。
すると、加賀美は思い出したかのようにマミにまくし立てる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:26:30.53 ID:d2x+Xq1g0<> 「そ、それだよそれそれ! さっきから言ってる魔女とか使い魔とか魔法少女って
 一体なんなんだ!? あんなの、俺も見たこと無いぞ! それに、矢車さんは君達
 とどんな関係があるんだ?」

マミは苦笑いを浮かべながら、それに答える。

「それには色々説明しなきゃいけないことがあるので、ここではまだ……。
 簡単に言うと、使い魔って言うのはさっきの化物で、魔女って言うのはその親玉。
 魔法少女は、それと戦って人々を守る者の事です」

「へ、へぇ〜……。 (やっべぇ、意味わかんねえ)」

「てことは、マミさんが魔法少女ってことなんですか?」

急な事に頭が追いつかない加賀美に代わり、まどかがマミに問う。
マミは、まどかとさやかに向いた。

「そうよ、私が魔法少女。
 キュゥべえが見えるってことは、あなたたちにもその才能があるみたいね」

「そうだよまどか、さやか。
 ……僕はね、君達にそのお願いをしたいんだ」

そう言うとキュゥべえは元気よく起き上がり、明るい声で言い放つ。

「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ!」

キュゥべえは、可愛らしい笑みを浮かべた。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:27:33.79 ID:d2x+Xq1g0<> /////


「さ、上がって」

加賀美も含めた一同は、そのままマミの家に同行し、そこで説明を受けることにした。
時刻はもう夕方で、日差しはオレンジ色に染まっている。
マミの家に入ったまどか達が、感嘆の声を漏らす。

「うわぁ……!」

「素敵なお部屋……」

「俺の寮の数千倍綺麗だ……」

「いやそれは汚すぎだろ」

マミの家は、ごく普通のマンションの一室だが、よく物が整頓されていて落ち着いた部屋だった。

「ひとり暮らしみたいな物だったから、遠慮しないで。
 ろくにおもてなしの準備も無いんだけど」

そう言うとマミは三人をガラスのテーブルへと促す。
三人を座らせると、マミはキッチンへと向かった。

やがてマミは人数分のケーキと紅茶を持って戻ってきた。

まどか達が、並べられたケーキを口に運ぶ。
すると、一様に笑顔になった。
三人はどんどんケーキを食べていく。

「マミさん、このケーキとってもおいしいです!」

「ん〜! メチャウマっすよ!」

「おお、こりゃうまい!」

「ふふ、ありがと。 それじゃ加賀美さん、魔法少女についてご説明します。
 ……二人もキュゥべえに選ばれた以上、人事じゃないものね。
 ある程度の説明は必要でしょう?」

マミが謝辞も程々に、本題を切り出した。
加賀美達はフォークを動かす手を止め、加賀美は緊張した面持ちで、まどかとさやかは
特に緊張感も無く耳を傾ける。

マミが手を差し出す。
すると、マミの手の中に黄色い宝石が現れた。
宝石は、美しく輝いている。

「……これがソウルジェム。 キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。
 魔力の源であり、魔法少女である証でもあるの」

さやかがいまいち要領を得ないように聞き直す。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:28:14.94 ID:d2x+Xq1g0<> 「契約って?」

その質問に答えるのは、マミではなくキュゥべえ。

「僕は、君達の願い事をなんでも一つだけ叶えてあげる」

「何でも?」

「なんだって構わない。 どんな奇跡だって叶えてあげられるよ」

「えぇ……何でも!?」

「願い事、って……」

「なんだって構わない。 どんな奇跡だって起こしてあげられるよ!」

あまりに現実離れした契約内容に、まどかは驚き、さやかは胸を躍らせる。
また、加賀美は純粋に関心していた。

「っはぁ……すげぇなそれは」

「わー……金銀財宝とか……不老不死とか……満漢全席とか!」

思い当たる奇跡をウキウキとした声で徹底的に挙げるさやか。
それをまどかは苦笑いしながら見ている。

「でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェムなんだ。
 この石を手にした者は、魔女と戦う使命を課されるんだ」

まどかは、不安そうに聞き返す。

「魔女……って」

「そ、そうそうそれだよ! 魔女って一体何なんだ?」

加賀美が思い出したかのようにテーブルに身を乗り出す。
キュゥべえと加賀美の顔が、くっつきそうになるほどに近づくが、加賀美の顔は
真剣そのもの。

さやかは加賀美を無理やり引っ張り戻すと、気を取り直してキュゥべえに問う。

「魔女っていうのは一体何? 魔法少女とは違うの?」

「魔法少女が願いから生まれる存在なら、魔女は呪いから生まれる存在なんだ。
 魔法少女が希望を振り撒くように、魔女は絶望を撒き散らす。 しかもその姿は
 普通の人間には見えないからたちが悪い。
 不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ……そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

キュゥべえの説明に、マミが補足を加える。

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。
 形の無い悪意となって、人間を内側から蝕んでいくの」

話を聞いていくにつれ、加賀美の表情は険しく、
さやかとまどかの表情は怯えを強く表していった。
さやかがおずおずと質問を返す。

「そんなやばい奴らがいるのに、どうして誰も気付かないの?」

「確かにそうだ。 俺だって色々と事件に関わってきたのに、魔女なんて物は
 ついさっきまで見たことも聞いたことも無かった」

「お、お巡りさんも気付かない事って……」

「魔女は結界を作って、いつもその奥に潜んでいるの。
 さっきあなた達が迷い込んだ空間が正にその結界なの。
 もちろんその結界の入り口だって一般人には見えないから、
 加賀美さん達警察が無能な訳では決して無いわよ」

マミのフォローに、加賀美は複雑な表情になる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:29:25.25 ID:d2x+Xq1g0<> 「……マミさん、そんな怖いのと戦っているんですか?」

「ええ、命懸けよ。 
 だからあなた達も、魔法少女になるかは慎重に考えた方が良いわ。
 魔法少女になればどんな願いも叶えられるけど、それは死と隣り合わせの行為なんだから」

さやかとまどかが目を伏せる。

「そこで提案なんだけど……。
 しばらく私の魔女退治に付き合ってみない?
 そうして経験してから、危険を冒してまで叶えたい望みがあるのかどうか、考えて欲しいの」

「ち、ちょっと待てよ!」

当然、そんな危険な行為を加賀美が許す筈もなく。

しかしマミは、あくまで落ち着いた様子で加賀美に向き直る。

「提案は終わりじゃありません。
 加賀美さん、あなたももう部外者ではないんです。
 当然、協力をお願いさせて頂きたいんですが」

そうマミに言われ、加賀美は明らかに動揺した。
彼女らに危険な事はさせられないのは当然だが、願いが叶うことは大きな魅力である。
自分がここで止めても、この子達は結局――
そこまで考えて、加賀美は答えを出した。

「……わかった、同行しよう。 ただし――」

不意に、玄関のドアの開く音が聞こえてきた。
マミ達が入ってきた時とは違う、乱暴なドアの閉まる音。

さやかが瞬時に反応し、マミに視線を向ける。

「あれ? マミさん、一人暮らしなんじゃ?」

マミは苦笑しながら、困ったように首を傾げた。

「うーん……一人暮らしなんだけどね。
 今は、半分同居してる状態の人がいるの。
 ……同棲、とは違うんだけど」

静かでゆっくりとした足音が近づいて来る。
足音は、真っ直ぐ加賀美達の居るリビングに向かってきた。
廊下とリビングを隔てるドアが開く。

「あ、お邪魔してま――」

加賀美は即座に正座に直り、出てきた人物に挨拶をしようとして、
そこで固まった。
出てきた人物は加賀美にとって馴染みのある者。
あるときは憧れ、またあるときは驚かされた存在。
黒いレザー製の服をだらしなく着る、やさぐれた男。

「――矢車、さん?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/03/30(水) 09:30:16.32 ID:d2x+Xq1g0<> /////


「……さて、改めて要件を聞こうか」

警視総監である加賀美陸は、警視総監室で訪問を受けていた。
デスクから席を外し、革張りのソファに向い合って座っている。

その表情は極めて真剣で険しい。

「とぼけないで下さい。
 ……あなたは知っているはずだ。 まだマスクドライダーシステムには、
 僕達が知らない機能がある」

彼以上に険しい表情で、半ば怒鳴るように問いかけるこの男こそ、その訪問者。
整った顔立ちに気障な雰囲気を漂わせる服装の優男。
常にその傍らに居てサポートする小さな助手は、今は居ない。

「……風間君、私は――」

まずはこの男を落ち着かせようと、陸は穏やかな口調で話しかける。
しかしそれは、テーブルを思い切り叩く音で中断された。

「前置きなんてどうでもいいんです!
 ……柄でもありませんがね、許せないんですよ、今回ばかりは。
 あなたの説明不足のせいで、杏子が、一人の少女が傷ついた!」

風間と呼ばれた男は、鋭い目で陸を睨む。
風間はテーブルを叩いた両手の拳を解き、膝の上に戻した。
軽く一呼吸入れてから、今度は落ち着いた声色で切り出した。

「……あなたがどんな人なのかは聞きました、ネイティブ関連の話もです。 
 そのことについてはあなたを素直に尊敬しますよ。
 でも、今回の事ばかりは許せない」

風間の口調から何かを察したように、陸は神妙な面持ちで口を開いた。

「……そうか、君は関わってしまったのか。 『魔女』に」

「やはり知っていたんですね。 なら、ドレイクにあったあの機能にも納得が行く」

陸は一瞬躊躇してから、拳を開けたり握ったりしながら答える。

「君には話さなければならないな。
 マスクドライダーのもう一つの機能について」

陸は決心し、風間の瞳をしっかりと見据えた。

「ネイティブにとってのもう一つの懸念……。
 君達マスクドライダーは、それを視認することができる」

風間は息を飲み、次の言葉に耳を傾けた。

「ネイティブが懸念していたもの。
 その名は『インキュベーター』――」



/////



仮面ライダーカブト!



なんで同じ魔法少女なのにそんなことに――

学校にペットを連れてくるな――

まどか、それはちょっと恥ずかしいぞ――

お前の瞳の中にも闇が見える――

ティロ・フィナーレ!――

……ライダーキック――

次回『それはとっても嬉しいなって(後)/『友達』との再開(前)』

天の道を往き、総てを司る! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/30(水) 09:32:29.33 ID:d2x+Xq1g0<> 以上で投下終了です。
また投下が遅れてすみませんでした。
しかも次回予告の場面まで進まないとか……
次回からはこんなことはないようにもっとプロットと相談しながらやっていきます。

投下は早ければ5日後には。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/30(水) 11:33:21.19 ID:P7juF7oDO<> 乙!
兄貴がマミさんと同居だと…!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/03/30(水) 12:12:58.72 ID:XiaVQlEDO<> おおぅ此処で風間か、とにかく>>1乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)<>sage<>2011/03/30(水) 12:38:20.47 ID:rdkU/kkAO<> 矢車兄貴吹いた。
いや、あの人はもはや何してようが不思議には思わんけどさww

ともあれGJだ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)<><>2011/03/30(水) 12:38:25.83 ID:YNn4zGAa0<> \乙レートフラッシュ/
杏子?てっきりゴンが魔法少女になるんかな〜と、・・・・いや、それはないか(~_~;) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/30(水) 13:07:25.85 ID:bSKGKA3K0<> 大介「今回も素晴らしい内容でした。
今のあなたを一言で褒めるとすれば…
えっと…その…」
杏子「>>1乙?」
大介「そうそう、それそれ」

ぼっちゃまなら「俺は魔法少女においても頂点に立つ男だ」とか言いそうだw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(香川県)<>sage<>2011/03/30(水) 14:10:12.14 ID:uHVT+jCT0<> 乙です
魔法少女とライダーで上手くペアができてますね〜
しかしサソードはもういないし、珍しくほむらがハブ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/30(水) 14:27:13.83 ID:GI5/Ci6To<> >>1乙
なんとなく…さやかがザビーに選ばれてザビーに見捨てられて地獄魔女になる未来が見えた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(九州)<>sage<>2011/03/30(水) 14:41:49.17 ID:rdkU/kkAO<> ぼっちゃまの魂に導かれ、その遺志を継いでさやかがサソードに変身かもしれんぞ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<><>2011/03/30(水) 16:53:47.62 ID:s+FI5Unw0<> ぼっちゃまとさやかは何となく似てるかもしれない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/04/05(火) 21:14:13.01 ID:rzISJO3Go<> (^U^)<どうした? 投下しないのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/04/07(木) 00:55:57.40 ID:QRCKt8JL0<> 投下遅れてますすみません。
次回の分が遅れてます。
その先の話とかは重要だから書けるんですが……。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/07(木) 19:34:52.32 ID:4yNj5bhQo<> you酉つけちゃいなYO <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/09(土) 09:48:08.12 ID:rh6F4JfIO<> 楽しみにしてる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/22(金) 09:58:01.36 ID:oG5232tEo<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/25(月) 13:47:01.29 ID:vGRnUUvn0<> まどかの作風のせいか仮面ライダークロスがいろいろある中、電王とのクロスがない。

まどか神によって王道魔法少女の世界観になったんだから、改変後の世界でクロスをやってもいいんじゃないかな?

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/25(月) 18:08:26.67 ID:0rME9rGTo<> >>132
書いてくれてもいいよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/27(水) 01:55:09.30 ID:bgs4XbG50<> >>132
頑張って書いてくれいや書いてくださいお願いします
良太郎とまどかが二人してオドオドしてるのとか見てみたい

遅くてすいませんもうすぐ投下できそうです。
遅くても一週間程度には…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/27(水) 02:06:12.95 ID:8yCunpJBo<> おk
アギトの人も帰ってきたしまた盛り上がるな・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 20:38:11.67 ID:gVtyfcgh0<> と、言うわけで投下します。
今回は前編投下。
21時頃からになります。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 21:00:13.47 ID:gVtyfcgh0<> 「――矢車、さん?」

ぽかんと大口を開けて驚く加賀美。
マミ以外の面々も、驚きを隠せないでいた。

「ま、マミさんの同居人って……男の人だったんですか……」

「マミさん、年上のこんなイケメンと同棲とは――」

「だからそういうのとは違うって言ったでしょう……」

とは言っても、加賀美以外の二人の驚きは、思春期の女の子相応の
色恋への好奇心から来るそれだったようだが。

矢車はその場を軽く見回し人数を確認すると、静かに口を開いた。

「麻婆豆腐は食ったか?」

「まだ頂いてはいないけど……そのうち食べるわ」

「……そうか」

矢車は一言だけ返すと、リビングから出て行った。
すぐに聞こえたのは軽いパタンという音で、それが冷蔵庫を開け閉めする音なのは
その場の誰もが経験から推し量れた。

マミはそれを聞くやクスリと笑うと、時計を見やった。
さやかとまどかもそれを追って時計を見やるが、
加賀美は未だに矢車が言ったキッチンの方向を見ている。

「え、あぁもうこんな時間かぁ……そろそろ帰った方がいいかな?」

「それについて、ちょっとお願いがあるんだけど……」

まどかが鞄に手を伸ばそうとするが、マミはそれを遮った。
マミは微笑みながら人差し指を立てて、こう提案する。

「皆さん、今日は夕飯をうちで食べていかない?」

「おお、マジっすか!?」

その提案にすぐに食いついたのはさやかだった。
さやかは膝立ちになるほどにテンションを上げる。

「さ、さやかちゃん落ち着いて……。
 でも、いいんですか? お夕飯にお邪魔しちゃって」

「手作りの飯が食えるのはありがたいけど……いいのか?」

「大丈夫、いつも二人だし……それにあの人、もう人数分作っちゃってるわ」

キッチンからは、炒めものをしている音が聞こえてきていた。
夕飯の準備をしているのだろう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 21:01:12.81 ID:gVtyfcgh0<> 「矢車さんが夕飯を……なーんか想像できないんだよなあ」

「まあ、あの人も作る時とそうでない時があるし……。
 帰ってこない事も多いから」

結局一度も矢車の料理を口にしていない加賀美は、不安そうな表情で呟く。
その言葉を聞いて、さやかは思い出したように一度キッチンの方を向くと、すぐに
マミに向かい直った。

「そうだそうだ! マミさんとあの矢車さんってどんな関係? 加賀美とも知り合いみたい
 だったけど」

「加賀美『さん』ださやか。
 ……でもそれは俺も気になってたんだよな。 マミちゃんと矢車さんの関係」

加賀美はやっと落ち着いた様子で、足を崩してからマミに問う。

「うーん、ああ、えっと……どう説明したらいいのかしら?」

マミは紅茶を一口飲んでから、再び困ったように笑う。

「ちょっと前に魔女を狩っていた時、ドジっちゃったことがあって……。
 その時に助けてくれたのが『マスクドライダー』に変身した矢車さんだったの。
 それが縁になって、色々あって今みたいな事になってる……って感じかしら」

「ちょっと前って言うと、どの位なんだ?」

マミはカレンダーを軽く見て、指差し確認をしてから答えた。

「丁度一年と四ヶ月前ね。 あの時はワームの騒動があって、色々ごたごたしてた
 時期だったの。 皆が不安になってたせいで魔女も活発になってたから、忙しくて……」 

「一年と四ヶ月前か。
 ……と言うとあれから二ヶ月の時か……」

誰にも聞こえないように加賀美が呟く。
ネイティブとの最終決戦から今までは一年半経っているので、矢車はそこから二ヶ月後
にマミと出会ったことになる。

「あ、ちょっといいですか?
 あの、さっきから出てくる『マスクドライダー』……? って何ですか?」

「そうそう、その単語の意味が分かんなくってついて行けないんだよ」

「私も詳しくは聞いてないわね。 矢車さんはあんなだし、加賀美さんにお伺いしよう
 かしら」

三人の視線が一斉に加賀美に集まる。
加賀美は複雑な表情で黙りこみ、その場を見回した。

「ん、あ、いや、それは……あの――」

「おい」

「――矢車さん!?」

どう答えようかと悩んでいた加賀美に、思わぬ救いが現れる。
それは、麻婆豆腐を盛った大皿を持っている矢車その人であった。

「……飯だ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 21:02:57.35 ID:gVtyfcgh0<> /////

「叶えたい事、かぁ」

「そんなにして悩む必要は無いと思うけどね」

あくる日の朝、まどかは通学路で昨夜の事を思い出しながら呟いた。
その肩にはキュゥべえが乗っており、時折あくびをしながらまどかに
語りかける。

キュゥべえの言っていた通り、人とすれ違っても誰もキュゥべえに気づいていない様子で、
まどかはより自分の置かれた状況を思い知ることになった。

そのまま歩いて行くと、いつも通りの場所でさやかと仁美が待っている場所が
見えてくる。

「おっはよー!」

「おはようございます、鹿目さん」

「おはようまど――うえぇ!?」

まどかが二人に向かって手を振ると、さやかと仁美はそれを返してくれる。
が、ある程度距離が縮まると、さやかは驚きの表情を浮かべた。
まどかの肩に乗っている小動物、キュゥべえの存在にである。

「おはようさやか」

そんなさやかの態度を気にも留めないキュゥべえだったが、やはり仁美はその
存在を認識していないようだった。

さやかは足早にまどかに近寄り、耳打ちする。

「……やっぱり、あたし達にしか見えないんだ?」

「そうみたい……」

さやかがきょとんと立っている仁美をちらと見ると、仁美は首を傾げた。

「あ、いやいや何でもないって! さ、行こ行こ!」

そう言ってさやかはごまかし、仁美を押して再び学校に向けて歩き出した。
仁美はやや不思議そうな顔をしながら、さやかに流されるがまま歩いて行く。
しかしすぐさま歩みは止まった。
さやかの頭の中に直接まどかの声が届いてくるのだ。

「(頭で考えただけで、会話とかできるみたいだよ)」

突然の出来事に、さやかは肩をびくんと震わせると、すぐさま振り向いた。
まどかが言っていた――口には出していないが――ように、自分も思考を
まどかに向けてみる。

「(嘘!? 私達、もうそんなマジカルな力が?)」

「(いやいや、今はまだ僕が間で中継しているだけさ)」

キュゥべえは内緒話には便利だと言い足し、にっこりと笑った。

「(なーんか、変な感じ……)」

さやかは納得しつつ、再び歩き出した。
当然ながら、この間のやり取りは仁美には聞こえていない。
何事も無かったかのように歩き出す二人に、仁美は不審の眼差しを向けた。

「お二人とも、さっきからどうしたんです?
 しきりに目配せしたりして」

「え、あ、いやぁこれは……」

「んー……」

二人は気まずそうにまた目配せをしながら言い淀む。
その様子を見て何を思ったのか、仁美はバッグを落とし、ワナワナと口を震わせた。

「ま、まさかお二人とも……私の知らない間にそんな間柄に……!?」

「いやそれは流石にねーわ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 21:03:28.13 ID:gVtyfcgh0<> 突拍子も無い仁美の言葉に、さやかはすぐさま否定の言葉を加えたが、
仁美はそれでも妄想を止めようとはしなかった。

「いけませんわお二方……女性同士で……。
 それは禁断の愛ですのよぉぉぉぉ!」

大声で叫びながら、仁美は鞄とドップラー効果だけを残して走り去っていった。

「鞄忘れてるよー……はぁ……」

「まるでいつものお前だな、さやか」

「あ、天道さ、先生」

「学校までは天道さんか天道様でいい。
 あと、学校にペットを連れてくるな」

「いや様は無いわ……」

走り去った仁美と入れ替わりに現れたのは天道であった。
天道は仁美が見えなくなると、まどかに視線を向けた。

その視線の先には、見えないはずのキュゥべえ。

「まどか、まさかその生き物を学校に連れて行くつもりか?」

「あ、はい。 ……って」

「見えてるぅ!?」

「(ま、また僕が見える人に会ったね……びっくりだよ)」

天道がキュゥべえを視認出来ていることに、三者は驚きを隠せない。
逆に天道はそんな三者に、正確に言えばまどかとさやかに怪訝な表情を向けた

「見えない筈が無いだろう。
 ……そういう設定なのか?」

「え、ああまあそういうことですよアハハハハハ……」

「こ、このぬいぐるみの設定なんです……」

しどろもどろになりながらも、二人は必死で繕おうとする。
天道は二人を怪しみながらも納得したようで、ふむ、と頷いた。

「そうか。 ……まあそれくらいなら問題なかろう」

そう言うなり、天道はあろうことかキュゥべえに手を伸ばした。
まどかにそれを避けるほどの反応はできず、それを許してしまう。

「あ、あぁっ……!」

この世の終わりのような声を上げるさやかだったが、それは杞憂に終わった。
キュゥべえは実に上手くぬいぐるみの真似をやってのけたのだ。

あまりに本物に近い(実際に本物なのだが)キュゥべえの感触に多少関心しながら、
天道はキュゥべえをいじくり回す。
その間もぬいぐるみの役を実に上手くやってのけるキュゥべえに、二人は涙を流しそうにすらなった。

「……学校では出すなよ。 流石にかばってはやれんからな」

「は、はい」

まどかがいそいそとキュゥべえを鞄の中にしまう。
天道はそれを見届けると、すぐに歩きだした。
と、しかしすぐに立ち止まる。

「……む」

「わたぁっ!」

天道の真後ろを歩いていたさやかが思い切り天道の背中にぶつかり、
すぐに非難の眼差しを向けた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 21:04:06.12 ID:gVtyfcgh0<>





しかし天道はそれには全く反応せず、ただ後ろに振り向いただけだった。
その目はさやかには向けられていない。
その目線の先には、何も無いように思われた。

「あ、あの、天道さん?」

さやかがおずおずと天道に声をかけた。

「……お前達、先に学校に行っていろ」

「それってどういうこと――」

「俺は今日少し遅れるかもしれん。 
 そう伝えておけ」

そう言うと、天道はすぐに道を逆行した。

「て、天道さん! サボりはダメだよぉ!」

「ま、待ってまどか! もう時間、時間!」

まどかはそれを止めようと走りだそうとするが、時間がそれを許さない。
余裕が無いわけでは無いが、天道を追いかけるだけの時間は残っていない。
結局まどかは方向転換してから必死に走ることになった。

「お、お前らおはよ――」

「ご、ごめん加賀美! 今急いでるから!」

「ごめんなさい加賀美さん!」

「お、おお……頑張ってこいよー」

通りがかった加賀美も、二人の急ぎように目を白黒させた。

二人を見送ると、加賀美は再び自転車を漕ぎ出した。

そう、天道の歩く道と同じ道を。




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/04/28(木) 21:06:34.69 ID:gVtyfcgh0<> 一方、天道はというと――

「……そろそろ出てきたらどうだ」

ある程度歩くと天道は立ち止まり、そう声を上げた。
人気の無い通学路。
天道の正面に、一人の男が踊り出る。

その男の名は、風間大介。

「……お前か、風間」

「ええ、お久しぶりですね。 相変わらず小憎らしい顔をしていて安心しましたよ」

嫌味を言う軽口。
しかしその表情は真剣で緊張感に満ち満ちていた。
天道はその表情から何かを感じ取ると、小さく笑いながらゆっくりと風間を見据える。

「どうやら再開を喜ぶ時間は無いようだな。
 ……何の用だ」

「……簡単な事です。 僕が君をわざわざ尋ねる理由なんて一つしかない」

そういうと、風間は素早く『何か』を取り出した。
それは正しく、銃のグリップ部。
天道はすぐさま身構え、カブトゼクターを呼び出す。
同時に飛来するのは、水色の機械トンボ――ドレイクゼクター。

ドレイクゼクターは、風間の頭上周囲をゆっくりと飛んでいる。

「……何があったんだ、風間」

「色々あるんですよ、僕にもね」

天道の手にカブトゼクターが滑りこみ、素早くベルトのバックルに装着される。
同時に、風間がかざしたグリップにドレイクゼクターが着地した。

「変身!」

二人が発声する。

それに応えるように、双方から電子音声が鳴り響いた。

『――Henshin――』

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/28(木) 21:07:31.34 ID:gVtyfcgh0<> 前編投下終了です。 ありがとうございました。
後編も近いうちに。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/28(木) 21:11:38.31 ID:AsgTOMAMo<> 乙
何と言う井上脚本 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/28(木) 23:00:47.80 ID:lT/Hg2Sh0<> 乙

面白くなってきた
しかし、矢車さんとマミさんが1年以上同棲してたとは……
家族が増えたよ!やったねマミさん!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/28(木) 23:20:21.75 ID:SvyMxYyPo<> 一年以上同棲とかパネェ面白くなってきたし乙です!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/28(木) 23:59:43.77 ID:lf65tzoco<> 兄貴とQBとの同棲生活を1年以上ということか!
俺なら胃に穴が開く <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/29(金) 04:26:18.80 ID:JOQRtdVh0<> >>147
でも兄貴は身内には優しいからな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/07(土) 13:52:05.17 ID:KpM5c4HSO<> まだかな〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/13(金) 01:32:50.16 ID:xpbD63si0<> 近いうちにとか言いながらこんなに時間がかかってしまって……本当にすみません
長くてもあと一週間程で投下できる筈です  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/05/16(月) 22:56:05.00 ID:YoEJfFo+0<> のんびり待つさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 13:50:38.16 ID:tGB9dntG0<> 一週間以内とか言っといてこのザマです本当にすいませんでした。

今回は中編になります。 長すぎる。

2時から投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:00:36.74 ID:tGB9dntG0<>
――――「で、結局何なのさ? 『マスクドライダー』ってのは。
     ……お、ありがとさんです」

「い、いやあまあそれは……あ、どうも」

矢車が麻婆豆腐を取り分けるのを受け取りながら、相変わらず加賀美は困っていた。


こんな少女達に真実を話してしまっていいものだろうかと、加賀美は考える。

何しろ重すぎる。

加賀美新という人間が経験した一連の戦いは、彼自身を大きく成長させた反面、
多くの悲劇を生んだからだ。
語り部が天道であるならば、それこそ偉大な英雄物語のように話せるのだろうが、
そうするにはいかんせん加賀美は『等身大』過ぎた。

加賀美自身、あの戦いの中には未だに納得の行かないものが多い。
友人の死や無駄な対立、巨大な陰謀。
特に陰謀については、その全てが潰えたとは未だに思えない。

把握出来ていない事柄が多すぎる。

なにしろ加賀美は脳筋だったのだから。

そしてその中でも取り分け大きく、彼の心に引っかかっていた気がかり――
それは、今正に自分の分の麻婆豆腐を取り分けている目の前の男だった。

『マスクドライダー』という存在だけを簡潔に説明するのも彼には難しい。
父に電話でもすればわかるかも知れない、しかし余計な心配は掛けたくない。
何より、確実にこの男、矢車想の話も必要になって来る。

この男については本当に分からない。
そもそもキックホッパー自体、加賀美にとっては謎だらけの存在なのだから。

敵か味方かも分からないレベル。
きっと敵では無いのではあろうが。

加賀美は麻婆豆腐を見つめながら、思考を巡らせる。

ふと顔を上げると、他の全員が麻婆豆腐に舌鼓を打っていた。
思えばこの麻婆豆腐は美味そうである。

流石に焦ってこれを一口一杯に頬張ってみる。
ゆっくりと噛み締め、飲み込む。

「……美味い」

思わずそう声が漏れる。
それほどの絶品料理であった。

それから数分、加賀美はただひたすら麻婆豆腐を掻き込み続けた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:01:22.85 ID:tGB9dntG0<> /////

夕食を終え、そそくさとリビングから出て行く矢車を見送ってから、
さやか達は再びマミからの説明を受けていた。


「あの転校生も、えっと……その……魔法少女、なの? マミさんと同じ……」

さやかがそう質問すると、マミは多少声のトーンを下げた。
さやかはそうでも無いようだが、まどかは不安そうなな表情でその答えを待った。

「そうね、間違いないわ。 かなり強い力を持った魔法少女みたい」

「でもそれなら、魔女をやっつける正義の味方なんだよね?
 それが何で、急にまどかを襲ったりしたわけ?」

「彼女が狙ってたのは僕だよ」

答えたのはマミではなくキュゥべえ。
キュゥべえは寝そべっている体制から座り直すと、軽く首を傾げながら続けた。

「新しい魔法少女が生まれるのを、阻止しようとしてたんだろうね」

さやかが、明らかな疑念を表情に浮かべた。
まどかも同じように、キュゥべえを見つめ、加賀美は神妙な面持ちで話を聞いていた。

「なんで? ……同じ敵と戦うなら、仲間は多い方が良いんじゃないの?」

その言葉に、マミは大きな溜め息を吐き、憂いの表情を浮かべる。
その目は伏せられ、紅茶の水面を見つめていた。

「それがそうも行かなくってね……むしろ、競争になる方が多いくらい」

「そんな……どうして……?」

そう言うと、まどかはすがる様に加賀美に顔を向けた。
加賀美はそんなまどかの視線に気付くと、ゆっくりと首を横に振る。
マミは一瞬そんな加賀美を見てから、話を続けていく。

「魔女を倒せば、それなりの見返りがあるの。
 だから、時と場合によっては手柄の取り合いになることもあるのよ」

「……わかるよ、そういうの」

しばらく沈黙を守っていた加賀美が、遂に声を上げる。

加賀美は自分に視線が集まっていることを感じながら、決意を持って顔を上げた。

「例え同じ使命があったとしてもさ、皆考えてる事って違うだろ。
 だから、ぶつかり合うこともあるさ」

「でも……」

まどかが、縋るように加賀美を見つめた。
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。

「俺達ライ――警察官もさ、あったからな……そういうこと」

普段の彼からは想像もできない様な、重く悲しげな声。
その場の少女達は、彼の言葉に、ただただ押し黙るしか無かった。

「……ん?」

しかし、そんなつもりが加賀美には無かったのも事実である。
加賀美は周りの状況を察すると、慌てて明るく声を掛けた。


「あ、ああいやいや! 俺達、結局分かり合えたからさ!
 マミちゃん達だって大丈夫だって! そう言いたかっただけだから!」

加賀美が場の雰囲気を元に戻そうと、必死に声を上げる。

「そ、そういえば美味かったな〜あの麻婆豆腐!
 ありゃ絶品だ! まどかもそう思うだろ? な?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:02:04.79 ID:tGB9dntG0<> 「え、ああ、はい……?」

「いやそうじゃなくて……あぁそういえば矢車さんはどこに行ったのかな〜!
 気になるな〜!」

「さ、さぁ……?」

「う、う、うおおおおおおおおおお! 空気が重いんだよおおおおおおお!
 俺か? 俺が悪いのか!? そうか俺か! すまん、すまんからそんな顔しないでくれ!」

平謝りすら始めた加賀美。
まどかやマミはそれに圧倒されながらも、それでもその顔からは
先のような重苦しい表情は拭い去られていた。

頭をブンブンと振りながら、もはや謝っているのか怒っているのかすら
分からない加賀美に、最初に笑顔を向けたのはさやかだった。

「……あはは」

小さく、呆れたように笑い声を上げる。
その真意を知ってか知らずか、加賀美は歌舞伎役者のような顔でさやかに視線を向けた。

「んん?」

「いーや? 加賀美はやっぱり加賀美だなぁ、って」

ね、とさやかが二人に問うと、他の二人も微笑みを浮かべて頷いた。
三人の表情には、もう重い物は無い。

「うん。 加賀美さんは加賀美さんだね」

「ええ、分かりやすい人ね」

「お、お前らな――」

「うん……でも、分かりました」

マミは、ゆっくりと紅茶を口に運ぶと、大きく息を吸った。

静かにティーカップを置き、もう一度頷く。

「……私も、少し頑張ってみます。 あの子と私が、戦う事にならないように」

「マミちゃん……! そう! そうだ! そうだそれがいい! 俺も全力で応援する!」

加賀美は勢い良く立ち上がり、マミに詰め寄るとその手を取る。

「頑張ろうぜ!」

握手しながら、二人の手がぶんぶんと縦に動く。
マミは苦笑いして半身下がりながらも、その手を振り払ったりしない。
さやかとまどかも、それを見て楽しそうに笑っていた。

しかし、何事もそう上手くは行かないもので。

「水をさすようで悪いんだけどね」

キュゥべえの、透き通るような声が場を静めた。

「無理だと思うな、それは」
 
「……え?」

場が一瞬にして凍りつく。
皆一様に理解が追いつかず、ただただ目を見開いて動きを止める。

「お、おいおいちょっと待てよ……なんだよ、どういうことだよ……?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:02:48.67 ID:tGB9dntG0<>
一番最初に動き出したのは加賀美だった。
マミの手から手を離し、そのままキュゥべえに手を伸ばす。
しかしキュゥべえは、上手く身を翻してその手を避けた。

キュゥべえはまどかの肩に飛び乗り、話を再開した。

「力の差が大きすぎるのさ。
 マミの力に暁美ほむらはついて行けない筈だよ」

「どうして? ……彼女もかなり大きな力を持っている、そう言ったのはあなたよ」

嘘を吐かれたと思ったのか、マミは多少強い口調でキュゥべえに問いかけた。
しかしキュゥべえは動じるわけでも無く、あくまで無感情にそれに答える。

「確かに言ったね。 でもそれはあくまで普通の魔法少女としては、という事だよ」

「普通の、ってどういうことさ?」

さやかが発するのは当然の疑問であった。
それは当のマミも同じであり、ある意味最も今の言葉に疑問を覚えているのも彼女である。

「私と彼女では何か違うの? キュゥべえ」

「何か、というよりもね……何もかもが違うよ。
 そもそも彼女の存在は異質だ。 普通、魔法少女になる子は
 僕と契約して魔法少女になるんだけど……」

「あの子は違うのか?」

「そうとも言えるし、そうでないとも言える。
 だからこそ僕は彼女を信頼できない」

「訳分かんないよそれ……でも、もしマミさんと転校生が戦ったら――」

「考えるまでも無い。 マミが彼女に圧勝するね」 

加賀美達も、マミの力ははっきりと目撃している。
その為、それを直接否定する事もできない。

しかしほむらの力が未知数なのもまた事実であった。

「待てよ……お前は知ってるのか、あの子の実力」

「はっきりとは見てないけど……大体は察しがつくな。
 さっきも言った通り、彼女は強い力を持ってはいるよ? でも、それでもマミの足元にも及ばない。
 才能からしてマミは凄まじかったからね」

キュゥべえが言うには、マミの持つ魔法少女としての実力は、加賀美達の見たそれを遥かに
上回るという。

ライダーシステムに頼らずにそれだけの力を、しかもこんな少女が発揮する。
加賀美はその事に背筋を凍らせた。

「じゃ、じゃあマミさんが手加減すれば……」

「手加減すれば今度はマミがやられるかも知れないよ?
 魔法少女同士、何が起こるかは分からないんだから。
 それとも、ただ仲良くする為にマミが命を張るのかい?」

キュゥべえが言葉を発するたび、少女達はその顔を諦めに染めていく。

キュゥべえはそれを後押しするように、彼女達に現実を叩きつけ続けた。

加賀美は言葉より行動を選ぶ男である。
故にキュゥべえの言葉に論理的な反論はできない。

加賀美は大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐いた。
そして震えるまどかの肩に手を乗せ、優しく声を掛ける。

「……大丈夫だ、まどか、さやか……マミちゃん」

「加賀美さん?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:04:25.05 ID:tGB9dntG0<> そして今度は強く、毅然とした声で宣言する。

「そんなことは、絶対にさせない。 俺が止めてみせる。
 ……それでいいだろ」

言葉で言い表せることができないからこそ、短い言葉で。
それは、何度も自分と向き合ってきた加賀美だからこそ可能な事。

キュゥべえは尾の動きを止め、今度はテーブルの上に陣取る。

「僕は構わないけどね」

そう短く告げると、キュゥべえはテーブルから降り、リビングから出て行った。

すぐさまさやかが加賀美に手を伸ばす。

「ねえ加賀美――」

「すまん、ああ言うしか無かった。 
 でも本当だ、信じてくれ」

「……うん」

先ほどと同じ、重い物を感じさせる加賀美の声。
さやかは、ただ言われる通りに黙るしか無かった。


それから数刻は、無言の時となった。
誰も一言も発さない。
少女達は複雑な表情を作り、俯いている。

厳しい現実と、加賀美の言葉。
加賀美の発した言葉が嘘ではないことは分かっても、ただそれができるのかが分からない。
笑顔になればいいのか、泣けばいいのか、怒ればいいのか。
どうすることが正しいのかが、判断出来ないでいた。

一方加賀美は、何か考え事をしている様に口に手を当てていた。
しかし、少女達の表情に気づくと、すぐに顔を切り替える。

「……そんな顔すんな。 大丈夫だからよ!
 ……き、今日の所はもう解散だ! もう時間も時間だしな」

時計の針はもう大分進んでいた。
中学生にはかなり遅い時間である。

しかしさやかは納得が行っていない様子で、口をすぼめた。

「んー……帰っちゃっていいのこれ?」

それはマミやまどかも同じだったようで、同調するように二人で頷いた。

だが加賀美もこれで警察官の端くれ。
少女を遅い時間まで帰宅させない訳にも行かない。

「それはまた今度だ。 さ、俺が送って行くから準備しろ」


こうして、加賀美達三人は、マミ宅から帰宅することになった。
まどかは納得したようだったが、さやかはまだ少し不満げな表情を浮かべていた。

そして数刻経ち――

「じゃあな、また明日」

「はい、ありがとうございました」

さやかを送り終え、加賀美はまどかの家の前までまどかを送り終える所だった。
まどかが扉を開け、家に入るのを確認すると、加賀美も帰路に着こうと方向を変える。
が、加賀美が自転車に跨った所で、少女の声が彼を引き止めた。

「加賀美新」

「ん? ……お前は……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:09:46.11 ID:tGB9dntG0<> 加賀美が振り向いて確認すると、そこにいたのは黒髪の少女――暁美ほむらだった。
これは好機とばかりに、加賀美は彼女に明るく話しかけた。

「奇遇だなあ! そうだ、俺が家まで送って――」

「聞きたいことがある」

加賀美とは対照的に、ほむらは冷たい声で彼の声を遮った。
無表情に、抑揚の少ない声で彼に問いかける。

「『黒崎一誠』」

一言、ほむらはただそう言った。
加賀美は顔をしかめて問い返す。

「くろさき……?」

「聞き覚えは?」

「……無い、けど」

加賀美にとっては聞き覚えの無い名。
黒崎一誠。
それは、今の彼が知り得るはずのない名。

「人探しか? なら、その人の特徴とか、顔写真とか――」

「結構よ。
 恐らく『ここ』には居ないから」

「は? え? あ、ちょっと待っ――」

それだけを聞くと、ほむらはそこから姿を消した。
その場から消滅するように、瞬間的に消えた。

加賀美は彼女の持つ力に驚きながらも、その名を頭の中で探していた。

「黒崎……黒崎……やっぱ知らないな」

そう呟くと、気を取り直して自転車を漕ぎかけるが、また彼は呼び止められた。

「おい新!」

「鹿目さん?」

ほむらとは違い快活な声で呼ぶのは、まどかの母だった。
まどかの母は加賀美に向かって手招きをしている。
それに従って加賀美は自転車を降り、ドアの前まで歩いて行った。

「こんばんは。 どうしたんです?」

「おおこんばんは。 まどか、送ってくれたんだってね。 ありがとな」

「当然の事をしただけっすから」

当たり障りの無い会話をしながら、加賀美は疑問を浮かべていた。
わざわざ呼び止めながら、こんな会話だけな筈が無い、と。
その予感は当たっており、まどかの母は数分経ってやっと本題を切り出した。

「ちょっとウチに寄ってきなよ」

「……はあ。 でももう時間が」

「今来てる客人がさ、加賀美の名前聞いたら『呼んで欲しい』って言ってね」

「俺を……?」

まどかの母も、若干困ったような表情を浮かべた。
加賀美はそれ以上に頭上に疑問符を浮かべていた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/22(日) 14:09:54.60 ID:r+8ZPoNy0<> 続きキターーー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 14:10:05.22 ID:tGB9dntG0<> 「だからさ、頼むよ」

両手を合わせて頼み込んでくるまどかの母に、加賀美はすぐに折れた。

「まあ、そういう事なら……」

「すまないね、こんなこと言って」

そう言うと、加賀美はまどかの母に案内され、家の中へと入っていった、

「ほら、連れてきたよ」

リビングへ着くと、そこには三人の人物が椅子に座っていた。
そのメンバーを確認すると、二人ほど彼にとって見覚えのある顔がある。

加賀美は驚きの表情を浮かべ、叫んだ。

「岬さんに……天道おおおおおお!?」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/22(日) 14:10:45.20 ID:YdeQKdTBo<> GSLの世界から来たのか?
あっちはズタボロだったなそういや <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/22(日) 14:11:28.52 ID:tGB9dntG0<> 中編終了。
かなり雑な文章になってきています。
読みにくかったらすみません。

後編もできるだけ早く投下したいと思いますのでよろしくお願いします。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/22(日) 14:42:57.99 ID:r+8ZPoNy0<> 投下乙です

劇場版も絡んでいるのか…コーカサスに出番があるなら、それはとっても嬉しいなって
それにしても矢車兄貴が相変わらずマイペースなのにワロタwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/05/22(日) 21:05:14.67 ID:tGB9dntG0<> 忘れていたんですが補足です。
疑問に思われるかもしれませんがこのスレのマミさんは相当強化されてます。
具体的にはCU無しのライダーとならある程度張れる程です。
理由は劇中できちんと明かしますので、えこ贔屓という訳ではないとだけ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/22(日) 21:05:56.07 ID:tGB9dntG0<> sage忘れすみませんでした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)<>sage<>2011/05/22(日) 21:44:02.28 ID:86/cueZd0<> 仮面ライダーと魔法少女って相性いいなぁ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/05/22(日) 23:06:12.65 ID:ddVpq9mAO<> 乙
QBマジ空気読め <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/23(月) 17:45:48.28 ID:MlJFT/py0<> オオオオオツゥ!

黒崎一誠ってコーカサスのやつか


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/06/03(金) 07:54:59.70 ID:/1oatWgso<> 完結までじっくりがんばれ。期待してる乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<><>2011/06/17(金) 12:27:15.62 ID:59CwnnWY0<> 続きマダー? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/06/19(日) 03:03:20.33 ID:RroLB4NO0<> こんなにお待たせすることになるとは……本当に申し訳ありません。
6月中には必ず投下しますのでもう少し時間を下さい。

しかしおりこも結構あっさり終わったな。
想像の余地も多々ある内容だったし、おりこ含めて番外としてGSLとかできそうだな…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)<>sage<>2011/06/19(日) 17:38:45.22 ID:0O1IFJzNo<> 某ライダークロススレからきたけどベルト位しかライダー的単語ないのに
このスレ検知してくれるとかこのアプリまじ天道 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/30(木) 23:15:29.56 ID:I4z8df9x0<> すみません明日の夜投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)<>sage<>2011/07/01(金) 00:10:45.27 ID:y0Vr2r+Xo<> <●> <●> <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:44:51.45 ID:E8sOEsJ70<> やっと帰ってこれた……
5分後には投下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:45:24.73 ID:E8sOEsJ70<> ――話は現在に戻る。

まどかとさやかは学校へ着くと、まず仁美の席に向かい弁解を済ませ、
すぐに自らの席についた。
テレパシーが使える以上、お互いが近くに居る必要は無いからだ。

キュゥべえはまどかの机の上に座っている。

二人と一匹は、テレパシーで会話をしていく。

「(つーかさ……あんた、ノコノコ学校までついてきて良かったの?
  昨日のあいつ、このクラスの転入生なんだよ?)」

「(むしろ学校の方が安全だと思うな。
  マミだって居るし)」

「(マミさんは三年生だから、教室は遠いよ?)」

「(ご心配なく。 話はちゃんと聞こえているわ)」

突然の声に動揺するまどかとさやかだったが、その主がマミだと知ると、
得心が行ったように溜め息を吐いた。

テレパシーの仕組みの中では、ある程度の距離は物ともしないらしい。

三人と一匹は適当に挨拶を済ませてから、
その場には居ないマミも交えて会話を進めていく。

「(ちゃんと見守ってるから安心して。 それに、あの子も人前では襲ってこないでしょうし)」

当然議題にあがるのは件の少女、暁美ほむら。

「(なら、いいんだけど……。 そういえばあの後あいつ、結局魔女を倒したのかな?)」

「(矢車さんによると、あの後すぐに彼女を見失ってしまったようね。
  矢車さんが見失うって滅多に無いんだけれど……。
  ライダーは魔女を探すことが出来ないから、そのまま家まで帰ってきたのよ)」

「(ほむらちゃん、一体どうしたんだろ……)」

「(さぁね。 アイツの考えることはわかんないよ。
  ……ってうわ……噂をすれば影、だね)」

教室の扉を見やると、そこには丁度登校してきたほむらが居た。
さすがにほむらにはこの会話が聞かれていないことにほっと胸を撫で下ろし、
さやかはさらに続けた。

「(……でも、いつまでもいがみ合ってるのもアレだしね……。
  加賀美の言ってたようにさ、仲良くするのが理想ってことだし)」


そう言うと、さやかは昨日の出来事を思い出す。

加賀美は彼女達の問題に、実に親身になってくれていた。
彼が一生懸命なのは今回の事だけではない。
彼は一警察官として、困っている住民を助けることに全力で取り組んでいた。

飼い犬が居なくなれば日が暮れても探し続け、
喧嘩が始まれば殴られ役になってでも止める。

小学生や幼稚園児からの相談にも全力で取り組み、
徹夜してでも自分の答えを見つけ出す。

そんな普段の彼を知る者は、彼に不信感を抱く事が一切無い。
さやかやまどかも、勿論その一員だった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:45:52.15 ID:E8sOEsJ70<> 「(……ま、それは後で考えよっか。 加賀美も一緒にさ)」

まどかがふとほむらを見ると、ほむらは真っ直ぐにまどかを見つめていた。
まどかはキュゥべえを強く抱きしめ、その視線に返す。

――と、ここで校内にチャイムが響き渡った。
周りの生徒達が一斉に着席するのを横目に見ながら、まどかはキュゥべえをバッグに乗せる。

授業の準備を進めながら、まどかはこれからの事に思いを馳せた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:46:18.67 ID:E8sOEsJ70<> /////

「――そして、ここでおばあちゃんはこう言った訳だ『もういっそ、どっちも作ったら?』とな」

「(これ、ノート取った方が良いのかな……?)」

天道の授業――国語の筈がいつのまにか『おばあちゃん学』に変わっていたもの――を聞きながら、
まどかはさやかに視線を向けた。

さやかはついさっきまで頑張っていたが、遂に睡魔に負けてしまったようで、その目を
完全に閉じている。

「これはつまりおばあちゃんの寛大さと、『二兎を追うものは二兎とも捕まえろ』という考えの深さが
 垣間見え――ほう」

天道はそれにいち早く気付くと、すぐさまさやかに向けてチョークを投擲した。

「あたっ!」

チョークは寸分の狂い無くさやかの眉間へと飛び込み、小気味良い音を立てて落下する。

「この俺の授業で寝るとはいい度胸だ。
 よし、お前には特別に俺の目の前で授業を受ける権利をやろう」

天道はそう言うと、教卓の目の前に机を準備した。
天道がその机とコンコンと指で叩くと、さやかは渋々その席へと移動する。

こういった事は天道の授業ではもはや恒例の出来事となっていた。

まどかはそんなさやかから視線を外すと、自分の机の上に視線を戻した。

そこには、たくさんの絵が書いてあるノートが。
その絵は全て、まどかによる魔法少女の衣装デザインだった。

まどかのノートの中で、魔法少女達は、跳ねていたり、笑っていたり。
それは、まどかの望む『魔法少女』の形であった。



――余談だが、天道は調理実習の時間も完全に私物化していたようだ――

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:46:50.28 ID:E8sOEsJ70<> /////

午前中の授業が終わると、さやかはまどかを連れて屋上へとやってきた。
手には弁当と、肩にキュゥべえ。

適当な場所に陣取り、ベンチに腰掛けると、二人で弁当を食べ始める。
雑談を交わしながら、キュゥべえに弁当を分けつつ食べていく。


昼食を食べ終わり弁当を片付けた後、さやかは大きく伸びをし、話題を切り替えた。


「ねえ、まどか……願い事、何か考えた?」

まどかは首を横に振りながら、キュゥべえの背を撫でる。

「さやかちゃんは?」

「私も全然。 ……あーあ、いっくらでも思いつくと思ったんだけどなー……」

さやかは立ち上がると、金網へと向かう。

「思いつくっちゃあ思いつくんだけど……命を賭けてまでって所で、
 やっぱりひっかかっちゃうよね……『そうまですることじゃ無いよねー』ってさ」

金に困ったことも無い、何かを渇望したことも無い。
それはとても幸せなことだと、さやかも理解はしていた。

「以外だな……大抵の子は二つ返事なんだけど」

「きっと、私達が馬鹿なんだよ。 幸せ馬鹿」

さやかは目線を街並みへと向けると、物憂げに金網を握りしめた。

「別にめずらしい事でも無いはずだよ……命を引き換えにしてでも、
 叶えたい望みがある……って」

「そう、かな……?」

「一杯居るはずだよ、そういう物を抱えた人ってさ」

さやかの脳裏に、ある情景が流れる。
病室のベッドに佇む、一人の少年――

「っ……!」

金網に触れる手に力が入る。 金網はその力を受けて軋み、独特の金属音を上げた。

「だから、それが見つからない私達って、その程度の不幸しか知らないって事じゃん……!」

さやかの表情が歪む。
見下ろす街の人々の中で、何故自分だけがこのチャンスを得たのだろうか。
傍目から見れば類稀なる幸運でしか無いそれは、彼女にとっては大きな不条理だった。

「恵まれ過ぎて、馬鹿になってるんだよ」

さやかは振り返り、まどかとキュゥべえに問いかける。

「不公平だと思わない? こういうチャンス、本当に欲しいと思ってる人は他にいる筈なのに……!」

「さやかちゃん……」

まどかは
さやかのその言葉が何を意味しているのか、誰を思って言っているのか、それは簡単に推測できた。

だからこそ、何も言うことができない。 口出しなどできようはずもない。
まどかは何も言えずに黙りこむ。


――そこに、第三者の介入が起こった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:47:23.99 ID:E8sOEsJ70<> 足音が聞こえてくるよりも早く、二人の耳に聞き覚えのある声が響いてくる。

「例えば、だ――」

二人の意識がはっと出入口に向く。
現れるのは、一人の男。

「何でも願いが叶うとしても、俺は何も頼まない」

その男は、ゆっくりと二人に近づく。
足音もならないようなゆっくりとした足取り。

「俺の願いは、俺自身が掴み取ることで、初めて意味を成すからだ」

その男は、独特な語り口を見せながら、二人の元へ辿り着いた。

「……ついさっき話の成り行きを把握した。 我ながら遅すぎたとも思うが、な」



天道は風間の説明により、大体の状況を理解していた。

魔法少女が願いを叶えてから変身できるようになる存在であること。
魔法少女になるのは、一般に女子中学生であること。
魔法少女は魔女と一生戦う宿命の中にあること。



「しかしまさか……その候補がこんなにも身近にいるとはな」

まずさやか。 これは話の流れから確定した。
そしてまどかは――
天道がゆっくりと視線を向けると、まどかは暗い表情を浮かべ、俯いた。

その反応が意味する所は、一つしか無い。

「……まさか、お前もなのか、まどか」

天道はまどかに直接問いかけた。

まどかは困ったように視線を右往左往させ、やがてゆっくりと首を縦に振った。

「……そうか」

天道は状況を整理し、思考を一巡させると、静かに口を開く。

「簡潔に言おう――」

「やめておけ」

天道ははっきりと、それでいてゆっくりと告げた。
その言葉には注意や警告ではない、はっきりとした『命令』のような響きがある。

「……どうしてさ」

さやかはやっと金網際から身を離し、足早に天道へと駆け寄った。
その勢いにまどかも驚き立ち上がるも、それは天道に制される。

天道はしかし動じる気配も見せず、さやかに視線を向けるでも無く、ただ静かに答える。

「必要が無いからだ。 ……いや、正確には『無くなった』と言った方が正しい」

「……は?」

「……え?」

二人はいきなりのお役御免宣言に、呆けた声を上げた。

天道の正体など知る由もない二人にとって、これはまさに眉唾物の話。

一寸の静止時間を置いた後、さやかは怪訝そうな顔で問い返す。

「ちょっと、それ……どういう事ですか?」

「お前達が知る必要の無い事だな」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:47:51.89 ID:E8sOEsJ70<> 無表情に返される言葉の中に、二人はどうしても冷たさの様なものを感じてしまう。

「だ、だから、それじゃあ意味が分からないんですってば!」

有無を言わさぬ天道の口振りに圧倒されながらも、
さやかは納得の行かない言葉に喰らいついた。

「お前は『無関係』の人間だ。 よって知る権利を持たない」

感情の読めない瞳は、さやかを眼中に入れようともしない。
突き放すような天道の言動に、さやかも眉を釣り上げる。
さやかの中にある一つの感傷のような心情に、天道が土足で踏み入ったかのように思えた。

さやかは一言二言天道に投げかけるが、当の天道は口を開こうとはしない。

「なんとか言って下さい! そんな事で終わりって……そんなの!」


――と、天道は不意に入り口に振り向いた。

その視線の先に居るのは一人の少女。

「……暁美」

天道が僅かに目を見開く。
ほむらはそんな天道に向かって早く大きめの足音をたてながら近づいた。

「……チッ!」

ほむらは天道を憎々しげに見やると、隠そうともせずに舌打ちする。
天道は一瞬目を細め、すぐに平常の表情に戻った。

一方さやかは、ほむらから守るようにまどかの前に立ち、すぐさまほむらに声を掛けた。

「な、なんの用だよ」

さやかの声にほむらが反応し、その目を二人に――否、まどかに向けた。
値踏みするような目で数秒彼女を見やると、ほむらはやっと答える。

「……昨日の話、覚えてる?」

まどかはその問いに、おずおずと縦に首を振った。

「ならいいわ。 忠告が無駄にならないことを、祈ってる」

ほむらはただ一言残し、踵を返した。

「ま、待って!」

去って行くほむらをまどかが引き止めた。
ほむらは立ち止まらない。

まどかはそれでも、お構いなしに言葉を続けた。

「あなたは、どんな願い事をして魔法少女になったの?」

びくり、とほむらの背が震える。
反射的に振り向いたほむらの表情からは、何も察することができない。
それも束の間、ほむらはまたすぐに歩き出した。

今度はもう止める者はいない。


屋上での出来事は、ここで終わりを告げた――

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:48:46.90 ID:E8sOEsJ70<> /////

屋上での出来事から数時間後
          ――見滝原某所――

放課後になり、さやかとまどかはすぐに教室を出、校門前でマミと合流した。
共に帰宅できないと言った時の仁美がした反応に困ったり、マミを友人達からひっペがしたり
するのに時間がかかり、集合場所のカフェに着いた頃には既に日が傾き始めていた。

「えーっと……加賀美あと30分くらいかかるってさ」

店員に案内された席に座りながら、さやかは加賀美からのメールの内容を告げる。
店員にオーダーを伝えると、まどかは周囲を見回し、小さく溜め息を吐いた。

「それにしても、いい雰囲気のお店だね、ここ」

「ほんとほんと! 加賀美が紹介した店なもんだから、ラーメン屋か何かだと思ってたけど……
 こんなオシャレな店とは思ってなかったよ」

「それは名前で気付こうよ……」

「綺麗だし、結構アットホームな感じがするわね。
 名前だけは知ってたけど、入ったのは初めてだわ」

「ディスカビル・コーポレーションだっけ? このチェーン系列」

「そうそう、最近よく雑誌とかTVで特集されててさぁ、結構気になってたんだよねえ。
 入ってみたいんだけど、中学生だけじゃ入りづらいっていうか……」

「気になってたなら尚更早く気付こうよ……」

「そこはほら、加賀美補正っていうか……恐るべし加賀美」

他愛もない会話をしながら、注文したケーキと遅れている加賀美の到着を待つ一行。
こうしている間にも、夕焼け空はどんどんと暗みがかっていく。

「ん、そろそろ30分経つわね」

ケーキも全て平らげ、マミは時計を見ながら呟く。

「――ごめん! すっげえ遅れた!」

と、やっとここで加賀美が到着した。
相当急いで来たようで、制服のまま、息切れは激しく、汗だくになってしまっている。

マミが加賀美を促し、加賀美はひとまず席に着く。

「麦ち――エスプレッソで」

加賀美も加え、話はいよいよ本題へと入る。

「さて、それでは魔法少女体験コース第一弾! 張り切って行きましょうか」

マミが音頭を取り、一同は大きく頷く。
それを見回すと、マミは満足気に頷き、微笑みを浮かべた。

「準備はいいかしら?」

「準備になってるかは分からないけど……持ってきました」

さやかは自慢気にある物を取り出した。
包みを開けると、そこには金属バット。

「何も無いよりは、ましかと思ってさ!」

「バットを武器に、か。 俺としてはやめてほしいんだが……まあ仕方ないか」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:49:20.72 ID:E8sOEsJ70<> やはり野球道具を武器にするには抵抗があるのか、加賀美は複雑そうな表情を浮かべる。
まどかやマミも苦笑いだ。

「わ、私は……」

まどかは恥ずかしそうに、一冊のノートを取り出し、テーブルの上に開いた。
そのノートに描いてあったのは、ファンシーな服を着た少女達。
ところどころに描いてある武器から、それが魔法少女なのだと推察できる。

「一応、衣装だけでもと思って……」

それを見た一同は、一瞬静止し――

「……まどか、それはちょっと恥ずかしいぞ」

ぼそり、と一言。

一間置き、さやかの笑い声。



――「ふぅ……あんたには負けるわ」

「ひどいよ皆……」

ひと通り笑われ、まどかは顔を真っ赤にして俯いていた。
ノートはとうに閉じられ、バッグの中にしまい込まれてしまっている。

「あと、は……」

「加賀美さんは、何か持ってきました?」

「……俺は」

加賀美は、そっと腰の辺りを撫でる。
制服に隠れて見えないが、そこには金属のベルト。

加賀美は、既に戦闘の準備を終えていた。


「うん。 それじゃ、行きましょう」

マミが立ち上がる。

「はい」

「おおっ!」

さやかとまどかも。

「――ああ」

そして、加賀美も。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>saga<>2011/07/02(土) 02:50:14.04 ID:E8sOEsJ70<>
/////


仮面ライダーカブト!

これが魔女……でっけぇ――

なんか、かっこいい――

て、ティロ、何だってぇ?――

綺麗な人――

初めまして、私は岬祐月――


次回『上條家とディスカビル家』


天の道を往き、総てを司る!

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/02(土) 02:51:25.19 ID:E8sOEsJ70<> 遅れた所の話じゃないですね。
本当に申し訳ありませんでした。

岬さんはまだあんまり影濃くないけどさやか編では最重要キャラなのです。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<>sage<>2011/07/02(土) 08:22:43.91 ID:8nx5OWGUo<> おっつおっつ
こうして良いものを読ませてもらうだけで満足です、はい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/07/02(土) 09:10:43.87 ID:hjU5JMPyo<> 来てた!乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<><>2011/07/02(土) 14:55:58.49 ID:E8sOEsJ70<> 一つお聞きしたいんですが、マミと兄貴の話には一話割いてもよかですか?
それとも、本文中にさらっと説明を入れるだけの方がいいでしょうか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/07/02(土) 14:59:47.19 ID:Vjm98x6ho<> 乙
マミさんと矢車さんのエピソードなら、一話入ってもかまわないです
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/07/02(土) 15:33:21.71 ID:hjU5JMPyo<> むしろ大歓迎です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/07/02(土) 15:56:40.57 ID:SHp+5zXo0<> >>188
ぜひとも1話裂いて頂きたいで御座るの巻き

兎に角、乙
じいやが頑張ってるみたいで、何かジーンときた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/02(土) 16:41:03.76 ID:qrLV+KsJo<> ぼっちゃまの悲願、「イギリスの名門ディスカビル家」再興が果たされた訳だ……良くやったな岬さん




べぇさんが「NEXT LEVEL」の最初の歌詞を言いそうな予感 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/07/02(土) 16:53:15.49 ID:80RLWy0s0<> >>192
そしてあの男が「選ばれし者は、俺だ」と言ってのけるんだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/02(土) 21:40:13.44 ID:e2oLbK200<> >>192
そしてほむほむが二番の歌詞を歌うと。

しかしミサキーヌがさやか編の最重要人物、となると…ふむ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/07/02(土) 21:42:16.66 ID:JE8/MPIKo<> ウンメイノー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>sage<>2011/07/03(日) 05:32:39.47 ID:m3/yLWRSO<> 番外編

カブト・クロックアップVSキリカ・速度低下 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/07/03(日) 12:09:53.47 ID:vLECQKcAO<> 乙
マミさんに友人がいて泣いた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage <>2011/08/05(金) 14:58:46.43 ID:f1qSZdRB0<> 生存報告
ちょっと今書けない状況にあります
投下できても短くなるかもしれません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/05(金) 15:07:26.12 ID:qf2+C3BIO<> おk把握

待ってるからなー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/08/05(金) 15:45:23.96 ID:hcWSGHyQo<> 投下厳しいなら一応酉つけとけ分からなくなるといけないし <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage <>2011/08/06(土) 11:45:27.78 ID:30TL+CC60<> こんな感じでしょうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)<>sage<>2011/08/06(土) 18:14:45.04 ID:28T08YL8o<> おk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2011/08/14(日) 17:01:39.73 ID:Bvc8WfLAO<> トゥーフゥーワロタwwww <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage <>2011/08/22(月) 16:03:58.96 ID:AnMr5SOQ0<> 生存報告
もう少しで投下できる……はず
9月になるかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/08/28(日) 09:09:41.54 ID:BeckNLFAO<> オーズ終わっちゃったね

もう俺の楽しみはここだけだよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/28(日) 09:13:04.25 ID:msebAV97o<> フォーゼとゴーカイ、見とけよ見とけよ〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/09/01(木) 09:19:06.80 ID:LefRvH4AO<> さあ、9月だ
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage<>2011/09/01(木) 19:52:10.77 ID:g7oFNpkR0<> ローカルルールの変更で猶予が短くなったらしいですが
長さ半分〜三分の一で投下頻度を増やす方向性で行ったほうが良いんですかね
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2011/09/01(木) 21:51:48.84 ID:2ry3rNIyo<> 切りがいいところまでのほうがいいけどとりあえず投下無しでも書き込めばいいんじゃないか
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/03(土) 08:00:23.70 ID:lSwRcHZAO<> 三ヶ月に一回生存報告しとけばあとは俺らが保守しとく
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/03(土) 08:02:10.57 ID:lSwRcHZAO<> 間違えた
生存報告は二ヶ月以内だ
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage<>2011/09/12(月) 23:29:00.55 ID:n2cQ1HYY0<> そろそろ
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/13(火) 03:03:56.94 ID:BAVRmqQS0<> 半端無く遅れたので、
本編の前に一つ投下。
まどか側でない、カブト側の導入です <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/13(火) 03:04:29.42 ID:BAVRmqQS0<> 宇宙――

人の創り上げた軌道エレベータ『天空の梯子』。
背を向け合い立つ、二人の男。
その頂上で、この者達が闘った。
相反する『赤』と『金』――
未来と、力と、そして愛。
彼らの全てを賭けた闘いが、遂に終わろうとしていた。

「ぐ、あぁ……っ!」

『赤』を纏った男は、その膝をついた。
その鎧には無数の傷が刻まれ、時折火花を吹き出している。
立ち上がろうと何度膝に力を入れても、その体は決して答えてはくれない。



『金』を纏う男は悠然と振り返り、その目の前に歩み出る。

その鎧は燦然と輝き、その圧倒的な力を象徴していた。

「そこが君の限界です。 やはり最強の座に相応しいのは私ただ一人……」

呟くと、『金』を纏った男は手を頭上に掲げる。

呼応するように、銀色の機械虫が舞い降り、彼の掌の中に収まった。

「これが最後ですね――私は揺るぎ無き最強の座を手に入れる。
 君はここで終わる」

ゆっくりと、ベルトに虫を装着する。
そしてその角に手をかけ――押した。

「ハイパークロックアップ」

『Hyper Clock Up』

電子音声が、感情のない言葉を告げる。

『赤』の男にとって、それは死刑宣告に等しい。


       等しい、筈だった。



「……何?」

おかしい。
電子音声が声を上げてから、もう数秒が経った。
何も起こらない。

そんなことはありえない。
両人とも、それはよくわかっていた。

そして、それは突然起こった。

「……ぐ、お……?」

『金』の男のベルトが、火花を吹き出したのだ。

「な、なんだ、これは!?」

戸惑いを隠せない男は、すぐに側腰の虫に手をかけ、外そうと力を入れた。
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/13(火) 03:05:00.32 ID:BAVRmqQS0<> ――が、無意味。

「こ、これは……これはなんだ!?」

火花の吹き出す部位が、全身へと変わっていく。

「加賀美、加賀美陸! これは一体!?」

苦し紛れに、男は地球へと電波を飛ばす。
この力を最もよく知る人物に。

男のマスクの内側に、初老の男が映しだされる。

この男こそが加賀美陸。 先ほど倒した男の、父親。

陸は、ゆっくりと告げる。

「貴様はそこで終わるべきだ」

「何ぃ!?」

「こんな時代は、間違っている」

「ぐあっ!? き、貴様……っ!」

遂に、『金』の男は膝をつく。
火花を吹き出していた鎧は、既に各所に爆発を起こしていた。

「加賀美……っ! 図ったな、図ったなぁぁぁぁぁぁぁ!」

ベルトが、一際大きな爆発を起こす。
同時に、『金』の男の頭上に大きな『穴』が開いた。

「う、や、やめろ……やめろおおおおおおお!」

協力な引力を発し、その穴は『金』の男を吸い込んだ。

「許さん……決して!許さ――」

言葉の余韻を残し、男は消えていった。

残されるは、『赤』の男。

未だに立ち上がれない男の仮面に、遂にヒビが入る。



「私の役目は終わった……」

陸は、ぼそりと呟いた。

「後は頼むぞ、『仮面ライダー』」

そして、万感の思いを込め、こう言った。

「――頼んだぞ、新」

そうして陸は目を瞑る。



赤い男のマスクが、割れた―― <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/13(火) 03:06:11.69 ID:BAVRmqQS0<> 本当に遅れてすいませんでした。
前話の続きは今日の夜に投下……できるかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/13(火) 09:20:55.47 ID:gCRu05HAO<> 来たか・・・ <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/14(水) 16:50:00.55 ID:022b2UE60<> そろそろとかいってすいませんでした
本当にもうすぐなんで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/09/14(水) 17:09:00.10 ID:elCVkw/Yo<> これはMUSASHIが来るということか
ゲームのせいで声は中田譲治で脳内再生だけど <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 02:54:41.24 ID:wO4bO4Lu0<> ダークサイド導入編もう一話 <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 02:55:07.72 ID:wO4bO4Lu0<> 走る、走る、走る――

何故?
逃げるために。
生きるために。

何から?
あの悪魔から。
あの死神から。

それは―― <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 02:55:44.71 ID:wO4bO4Lu0<> 「ぐ、う……ぁっ!」

必死で酸素を拾い続けている口からうめき声が漏れる。
我慢できずにそうなり、それが呼吸の妨げになり、また苦しくなっていく。

この悪循環をもう何度繰り返した事だろうか?
人外と化したこの体なら、酸素など無くとも活動できるし、実際そうやって戦ったこともある。

では何故今『苦しい』のか――

それは『怖い』からに他ならなかった。

「なんだよ……何なんだよ、あいつは……っ!?」


――いつものように魔女を狩ろうと結界に入り、魔女に遭遇した。
  そこまでは良かった。


襲い来る小型の爆弾を、身を捩って避ける。
爆弾が『速く』無くて助かった。
爆弾なら『遅く』できる。

「痛っ……く、ぅ……っ!」

右腕はもう動かず、ただ肩からぶら下がっているだけ。
痛みはとうにシャットアウトしている筈なのに。
激痛が走る錯覚、いや、これはむしろ感覚を蘇らせているのか?


――魔女に止めを刺そうとした刹那に見えたのは、緑の鎧を着た男、もしくは緑のロボットだった。
  ただそこに突っ立って、こちらの方向を見ている。
  その目からは、はっきりとした焦点が読み取れない。
  別に興味は無かったが、ただの気まぐれで手を出してしまった。
  それが最大の過ちだったのだろう。


「織莉子ぉ……っ!」

ここに居はしない愛しい人の名を呼ぶ。
助けが欲しい訳ではない。
ただ、自分を奮い立たせる『何か』が欲しいのだ。

「……?」

自分を追っていた爆弾の雨が止んだ。
何事かと後ろを振り向く。
振り向いてしまった。

『Clock Over』 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 02:56:28.38 ID:wO4bO4Lu0<> 悪魔の声が聞こえる。
目の前に広がったのは、真っ赤な複眼。
緑の体。

――魔女は倒した。
  自分が、ではない。
  『あいつ』が消し飛ばしたのだ。
  無数の爆弾を飛ばして。

まず拳が飛んで来る。
その場で宙返りすると、何とか避けることができた。
そこにすかさず蹴りが飛んで来る。
これは予測していたので、わざとブロックし、吹っ飛ぶ。

距離は開いた。
ここからどうすれば、と思考する前に耳に届いた声。
『Clock Up』


――少々目を見張ったが、問題はない。
  だが危険なので処分しよう。
  ……結論から言えば、それはあまりに無謀だったのだ。
  先に『低速』の魔法を掛け、確実に狩るつもりだった。
  

「どこに、どこにいるんだよぉ!?」

半ば恐慌状態になりながらも、必死で周囲を探す。
すでに『低速化』の魔法は全力で張り巡らせている。
攻撃には一片も魔力を割かず、ただひたすらこの魔法を強めていく。
なのに、あの――恐らく男――は視界にかすりもしない。

瞬間、左腕に衝撃。
痛みはしない。 だが痛みは伝わってきた。

「が、うあああああっ!?」

切磋に左腕を庇おうと右腕に力を入れると、また激痛。
やむを得ず左を構えようと力を入れ……更に激痛を味わう。

見ると、左腕も完全に逆方向へと曲がっていた。

両腕が使えない。
自分にとって、それは戦闘不能と同じ意味を持っていた。


――力の差は歴然。
  こちらの攻撃はかすりもしないのに、あちらの攻撃はかわし切れない。
  仕方なく攻撃の手を緩め、『低速化』の魔法を強めた。
  ……聞こえてきたのは恐怖を呼ぶ電子音声だけだったのだが。


『Clock Over』

<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 02:58:20.71 ID:wO4bO4Lu0<>
「う、ぁ……」

死神が、現れた。

ゆっくりと歩いてくる。

怖い。
怖い。



怖い。


 
視界が狭まる。

 

完全に視界が闇に染まる寸前。
『私』が目にしたのは。

青い、薔薇――


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 02:58:49.60 ID:wO4bO4Lu0<> 終了。
流石に本編投下しないと

<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 21:29:54.78 ID:wO4bO4Lu0<> 十時に投下します
やっと本編
前編です <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 21:57:59.22 ID:wO4bO4Lu0<> 「……近いわね」

「この近く、か」

喫茶店を出た一行は、魔女を探し街を散策していた。
人の命を吸うという魔女がどこに憑いているのか――それを探すのもマミの持つ
ソウルジェムの役割の一つあるらしかった。

ソウルジェムが放つ光が強くなっていき、最も強くなる時、
一行はある廃ビルの下へ辿りついていた。

一行はビルの入り口に接近する。

「やっぱり、このビル周辺で間違い無いわね」

一同の緊張感がどんどんと高まって行く、その瞬間。

「――――あ、あれ!」

さやかが突然ビルの屋上を指差し、叫んだ。
その指先には、今正に飛び降り自殺を図ろうとする女性の影。

「あれは……!?」

マミ達が一瞬、呆気に取られるその瞬間。
反射的に加賀美はその女性の真下に駆け込んだ。

「聞こえますかああああ! 落ち着いて! 早まっちゃ駄目だ!」

加賀美が声を張り上げて女性に呼びかける。
決して聞こえない距離では無い筈だが、女性がその声に反応することは無い。

一寸の間を置き、マミ達も加賀美の元へと駆け寄ってきた。

マミは突出するとすぐに変身し、女性を見据えた。

すぐに女性が飛び降りる。

「うおおおおおおおお!?」

加賀美は反射的に女性の落下地点に滑り込んだ。
来るべき衝撃に耐えようと歯を食いしばる。 
が、いつまで経ってもその腕の中に女性は落ちてこなかった。

「……ん?」

不思議に思い頭上へと視線を向けると、そこには無数のリボンが。
リボンは幾重にも重なりあい絡み合い、蜘蛛の巣のように女性を受け止めていた。
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 21:58:28.89 ID:wO4bO4Lu0<>

「ごめんなさい加賀美さん。 こういうのは私に任せて下さい」

リボンに受け止められた女性は、そのままゆっくりと降ろされる。

リボンが消え、女性が地面に寝かせられると、4人はすぐに駆け寄りその無事を確認した。

「やっぱりこれ……『魔女の口づけ』ね」

女性の首筋には、赤黒い痣のようなもの――魔女の口づけ――が付いていた。

「これが魔女の呪いって奴か……」

改めて現実に魔女の力を見せつけられ、加賀美達は息を飲んだ。
加賀美は女性の顔に耳を近づけ、呼吸を確認する。

「……気絶してるだけみたいだな。 とにかく木陰にでも運ぶから、ちょっと待っててくれ」

加賀美は気絶したままの女性を人目につかないような木陰に寝そべらせ、すぐに
マミ達の元へ戻ってきた。

マミを先頭に、一行はビルの中に入る。
暗くジメジメとした空気が漂う中に、見た目が異質な物は無い。
ただ、ぞくりと背筋が凍るような威圧感が、マミを除く者達に訪れる。

「では、行きましょうか」

「ああ、わかった。 ――さやか」

「……んぁ? え、何?」

突入と体勢になったさやかは、素っ頓狂な声を上げた。
加賀美はさやかに歩み寄ると、構えていたバットを取り上げる。

「ちょっ――」

「バットより、こっちの方が使いやすいだろ」

そう言うと、加賀美は腰に下げていた警棒をさやかの手に握らせた。
ハンカチを床に敷き、取り上げたバットをそっと壁に立て掛ける。

「まあ、バットをこういうことに使って欲しくないってのもあるけどな」

微かに笑みを浮かべながら、加賀美はバットを撫でた。

「加賀美さん、あの、その……」

「ん?」
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 21:58:55.07 ID:wO4bO4Lu0<>
言い淀むまどかだったが、その視線は確かにある場所に向いていた。
加賀美は首を傾げるが、その代わりマミがそれを察した。

「流石に拳銃を持たせる訳には行かないわよ。 その代わりと言っては何だけど……」

マミが手をかざすと、警棒は急に眩い光に包まれた。
光が晴れると、警棒はケミカルチックな装飾の棒に変わり、さやかの手に収まっていた。

「これでバットより……ううん、拳銃よりもマシになったわ」

「うわぁ……!」

「すごい……!」

「はぁ〜……そんなことも出来るのか」

加賀美も二人と同じように感嘆の声を漏らす。
あくまで機械的な物であるライダーシステムと、明らかに違う魔法の力。
どちらが上という訳では無いが、そこには確かな違いがあった。

「――さ、行きましょう」

雰囲気を入れ替える様にマミが一声入れると、全員の表情が引き締まる。

「よし。 ――変身!」

『Hensin』

加賀美の体に、重厚な機械の鎧が装着されていく。
完全に装着が終わり、赤い複眼が発光すると、加賀美はマスクドライダー『ガタック』となった。

マミが髪飾りになっているソウルジェムに手をかざすと、ソウルジェムは一際強い光を放ち、
一行の目の前には不気味な穴が現れる。

「まずは私が前に出ます。 加賀美さんは二人を」

「わかった。 二人とも、俺のそばから離れるなよ」

二人が静かに頷くのを確認すると、マミを先頭にして穴に飛び込んでいく。

「うし、行くぞ!」

加賀美は頬を叩いて自分自身に気合を入れ、勢い良く飛び込む。

「こ、ここまで来たら……さやかちゃんも頑張っちゃうぞぉ!」

さやかは強く目を瞑り、また自棄になったように突っ込んだ。 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 21:59:25.61 ID:wO4bO4Lu0<> そしてまどかは無言でキュゥべえを強く抱きしめると、意を決したように飛び込んだ。

/////

穴の中は、存外に広い空間だった。
ここがビルの中とは思えないほどの広さのこの空間は、まどか達が以前味わった
異様な雰囲気を醸し出している。

マミを先頭に奥へ奥へと進んで行くが、大量の使い魔がその行く手を阻む。

「このっ!」

マミは遠くに待ち構える使い魔を狙い打つ形で、進路を確保していく。
その間にも周囲にどんどんと使い魔が増えていくが、それらは皆ガタックの肩に
装備されているバルカンの掃射で消えていった。

「うおぉぉ!」

バルカンを掃射しつつ、合間に格闘で使い魔を処理していく。
結局、さやかは一度も武器を振っていなかった。

「これ、行けるよ! 余裕じゃん!」

「油断すんな!」

興奮気味に叫ぶさやかに、加賀美が檄を飛ばす。

すかさず、使い魔が三体加賀美の腕に組み付く。
加賀美は瞬間的に腕を振り、これを離すと、ガタックバルカンを発射。
が、これは全て狙いから逸れる。

「なっ、外れ―― さやかっ!」

使い魔は方向を転換し、さやか達の所に回りこむ。
加賀美はまた別の使い魔に組み付かれ、そちらに向かえない。

「うわぁっ! 来るな、来るなぁっ!」

さやか達の目の前で、使い魔は合体した。
合体使い魔が襲い掛かろうとするも、それはマミに阻まれる。

「大丈夫? 美樹さん、落ち着いて!」

「は、はいっ」

「すまん、三人とも、大丈夫か!?」

一瞬の間を見て加賀美が二人の様子を見ると、まどかがどこか呆けた表情をしていた。

「まどか!」 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 21:59:52.60 ID:wO4bO4Lu0<> 「……あっ、す、すみません!」

「大丈夫か? 駄目そうなら――」

「だ、大丈夫です、行けます!」

その口振りや表情からは調子の悪さが感じられない。
不安要素とはなるものの、今から退く訳にも行かなかった。

改めて二人を見ると、やはり疲れが色濃く現れていた。
素質があるというだけで、二人はただの少女である。 無理をさせ、今後の人生に
支障をきたすことになってはならない。
この中で――もちろんマミも含めて――唯一の大人である自分が、
少女達を守らなければいけない。 
強く重い責任が、加賀美を押し付けていた。

「急ごう……この子達の精神が持たないかもしれない」

そういう加賀美の声からも、疲労が見え隠れしていた。
久しぶりの戦闘と、結界の持つ異様な雰囲気が、加賀美を内側からも外側からも疲労させていたのだ。

なりふりかまってはいられない。

加賀美はガタックゼクターの角――ゼクターホーン――に手を掛けた。

ゼクターホーンを開く。
するとガタックを包んでいた機械の鎧の外郭が一斉に浮き、蒸気を吹き出す。

「キャストオフ!」

ゼクターホーンを逆側に完全に倒す。

『Cast Off』

体を覆う「蛹」が弾け飛び、ガタックの真の姿が現れる。
再び電子音声が告げる。

『Change Stag Beetle』

クワガタムシを思わせる角が立ち上がり、複眼が発光する。


「青くなった!?」

思わずさやかが叫ぶ。

だが加賀美はその声などどこ吹く風で、念入りに調子を確認しはじめた。
腕を回し、手を握り離す動作を繰り返す。
当然だと思っていたことが出来なくなっているかも知れない。 それが異様に気がかりだった。
加賀美にとって、先程バルカンが外れたことは存外気になることであった。
ただのブランクでは済まされない違和感が、加賀美の中に居座っていたのだ。
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 22:00:28.44 ID:wO4bO4Lu0<> 「加賀美さん……その姿は」

マミの表情にも困惑の色が浮かんでいる。 
それもその筈である。 マミの中ではマスクドライダーといえば矢車想であり、
キックホッパーだったのだ。
ガタックや他のライダーに存在する形態変化など知る由も無い。

「大丈夫だ、重い装甲を剥がしただけ。 これでクロックアップもできる」

切り札を切る。
わざわざ堅牢な装甲を捨ててまで形態を変化させるのは、その為であった。
不安もあったが、いつでも使用可能であった方が良いと判断したのだ。

「キュゥべえ、あとどれ位で本体に辿りつけるんだ?」

「もう少しで最深部に辿り着くよ」

邪魔な使い魔達を蹴散らしながら進むと、キュゥべえの言った通りに最深部らしき
場所に辿り着いた。

最後のあがきとばかりに大量に使い魔が現れるが、全てマミに撃ち落され
消えていった。

そして、その先の不気味なドアを掻い潜ると、そこには――


「見て、アレが『魔女』よ」

だだっ広い空間に、ソレは鎮座していた。

巨大で不気味な『魔女』――

「うわ、グロい……」

さやかが思わず呟く程のグロテスクさを持つ魔女。
その体の下では、触手にも見える物がいくつも蠢いている。

「『薔薇園』の魔女だね』

「薔薇園?」

足元からの声に、まどかが聞き返す。

「その特性は『不信』――さっきまで湧いてきていた使い魔が二種類だったことに気付いたかい?
 あれがこの魔女の使い魔だったんだ。 その役割は差詰め『造園』と『警戒』といった所かな」

「そうだったのか……全然気にしてなかったけど」
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 22:01:00.82 ID:wO4bO4Lu0<> 改めて魔女を見ると、なるほど確かにその様な装飾が施されている。
顔らしき場所にはいくつも薔薇が咲いているし、触手も植物で言う蔦なのだろう。

「……とにかく、行くしかないな」

あの敵に向かうのには流石に気が引けるのか、加賀美も小さく呟いた。
一方マミは慣れた様子で、さやかの持つ警棒を地面に突き刺し、結界を生じさせた。

「これでしばらくは安全よ。 ここで見ていて」

「あの……あれと、本当に戦うんですか?」

「それが仕事だもの」

当然の様に微笑んで答えた後、マミはもう一度魔女を見据えた。

「加賀美さんが前、私が援護でいいですね?」

「ああ」

「加賀美さんは魔女をひきつけるだけで結構です。 魔女戦は私の方が慣れていますから」

「分かった――行くぞ!」

加賀美が魔女の目の前に躍り出ると、魔女はすぐさま蔦を這わせ捕らえんと襲いかかる。

「ガタックカリバー!」

すぐさま両肩のガタックカリバーを抜き、これを次々と切り裂いていく。

襲いかかる蔦を切り払いながら、本体へと駆ける。

「うおぉっ!?」

本体へと辿り着いた加賀美に、死角から蔦が襲いかかった。
が、その蔦はマミによって撃ち落とされる。

加賀美は一旦距離を取ろうとするも、左右からの蔦がこれを邪魔する。
それを切り落とし一歩下がり、今度は正面からの攻撃を全て切り落とす。

「マミちゃん! こいつ、まだ近付け無さそうだ!」

「一度逃したからしぶとくなっているみたいです! 突破口を見つけないと……っ!」

しぶとく、とは言うものの、恐らく戦闘力自体が跳ね上がっているのだろう。
攻撃の手は緩むこと無く加えられ、手数も威力も時間が経つ毎に大きくなっていった。
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 22:02:49.12 ID:wO4bO4Lu0<> はっ……はぁっ……っ!」

呼吸が荒くなっていく。
今こうして魔女と戦っている間にも、加賀美の体力は圧倒的な速度で奪われていっていた。
先ほどまでととは比べ物になら無い程に体が重い。

「(この感覚……どこかで……)」

「――っ!!」

悩んでいる間に魔女が待ってくれる筈もなく、加賀美は初めて
攻撃をその腕で受け止める事となった。

「くっ……うおぉ!?」

あっという間に四肢を抑えられ、加賀美は呻く。
反射的にマミの方向を見やると、マミも魔女からの総攻撃を受けていた。
まだ捕まっていない様だったが、マミは元々格闘戦が得意では無い。
魔法少女としての身体能力だけでこなしている格闘戦は実に危うい。 これでは
そう長くは持たない。

瞬間、加賀美の左腕に振動が伝った。
マミがなんとか狙撃してくれたようで、なんとか左腕が自由になった。

「ナイスだ!」

右腕に絡みつく蔦を引きちぎり、両足の物も払う。

状況は逼迫している。


加賀美は迷いなく叫んだ。

「クロックアップ!」

同時にベルトのスイッチに触れる。

そうすることで、ゼクターから電子音声が――

「……え?」

――鳴らない。


と、突然、加賀美の視界がブレる。

「ぐ、あ……?」

思わず膝を着いてしまうが、それは一瞬だけ。
すぐさま立ち上がろうとするが――

すでにそのベルトにはガタックゼクターは鎮座していなかった。

加賀美の頭上に、舞い上がっていたのだ。

システムの恩恵を得られなくなった体は、いとも簡単に崩れ倒れる。
急激に覚醒する苦痛。

「加賀美さんっ!」

「ぐ……っ」

マミの声に答える余裕はとても無かった。
こうしている場合ではない。 それはわかっている。

「ガタック、ゼクター!!」

必死の思いで手を伸ばす。
その刹那――



「――加賀美危ないっ!!」





<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/09/15(木) 22:03:15.52 ID:wO4bO4Lu0<> 前編投下終了です




<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<><>2011/09/15(木) 22:21:53.89 ID:bqonfulx0<> 加賀美・・・
なんというガッカリ感・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/09/15(木) 22:22:53.51 ID:6klk1kmdo<> 乙

安定の加賀美 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/15(木) 22:23:45.52 ID:XvfzaK4f0<> これは「おばあちゃんが言っていた」フラグ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/09/15(木) 22:54:45.62 ID:rdka3xqL0<> 乙
今まともに投下してくれるのここだけだな
アギト落ちたし、龍騎は一ヶ月誰も書き込んでないしWオーズは作者が忙しいのか一ヶ月投下無しでも雑談のお陰で書き込み数はかなり多い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<>sage<>2011/09/16(金) 02:11:57.35 ID:xHQWjkMHo<> 乙乙

>>239
ライダーとのクロスを言ってるなら、あと名護さんのもだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/16(金) 11:00:15.44 ID:vC0Yk2ovo<> >>239
アギトのは文章も上手かったし、翔一君が翔一君してて好きだったなあ
エターなったの残念だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/09/16(金) 11:27:08.01 ID:gpbfZQJAO<> カブトライダー最高クラスのポテンシャルのガタックなのにこのガッカリ感といったら <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/09/16(金) 16:43:12.84 ID:vC0Yk2ovo<> いつもの事だろ <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage<>2011/10/09(日) 09:35:13.93 ID:o4WStTTo0<> 生存



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<>sage<>2011/10/11(火) 00:28:51.33 ID:XSVdGdTno<> 来たか(ガタッ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(和歌山県)<><>2011/10/11(火) 19:08:29.52 ID:dmgWXOoA0<> きたああ <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage<>2011/10/11(火) 19:39:31.01 ID:JGctrfpD0<> すいませんまだなんです
もうちょっと待って下さい

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2011/10/11(火) 21:24:11.93 ID:tKSi5e/AO<> 坊っちゃんの活躍はまだですか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/10/11(火) 22:17:07.63 ID:yR6/6jgVo<> (期待する音) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)<>sage<>2011/10/11(火) 22:19:37.92 ID:I8WnhePAO<> (せき) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/10/12(水) 00:03:38.15 ID:piCM/EiY0<> >>248
(言えない…このssがカブト本編後のssだなんて…) <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/10/20(木) 00:07:04.38 ID:q/3SrOcd0<> 1時間後に投下します <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/10/20(木) 00:07:33.92 ID:q/3SrOcd0<> 1時間後に投下します <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/10/20(木) 00:16:02.59 ID:q/3SrOcd0<> すいません大きなミスを見つけたので明日の夜に投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)<>sage<>2011/10/20(木) 01:46:17.57 ID:J4pLfUGYo<> ウェーイ <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 19:21:06.45 ID:q/3SrOcd0<> 9時頃になります <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)<><>2011/10/20(木) 19:26:31.18 ID:J4pLfUGYo<> 待機age <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:06:51.47 ID:q/3SrOcd0<> 「加賀美危ないっ!」

耳に入ってくるその声に反応し、すぐさま後ろを向く。

眼前に迫る蔦、蔦、蔦。

もはや加賀美自身に、それから逃れる術はない。

万事休す。

「あ――」

瞬間、

――Rider Kick――


加賀美の視界を、激光が覆い尽くした。
視覚を塞がれた加賀美の耳に届いたのは、幾つかの打撃音。
それが良い物か悪い物かを考察するには、加賀美の体力は消耗しすぎている。

「う、ぅ……」

ぼやけた視界の中に映ったのは、緑の人影。

「あなたは――」

切磋に、その人に声を掛けようとし――

「後ろだ」

「うわぁっ!?」

それが愚行であったことに気付く。
疲労と光による衝撃が、加賀美の思考能力すら奪っていた。

なんとか後ろからの攻撃を避けると、すぐさま援軍の男がそれを蹴り砕く。

「助かったわ、矢車さん!」

その姿はバッタをイメージさせる機械装甲、キックホッパーに他ならなかった。
いつの間にか矢車が助けていたマミは、賞賛の声も程々に加賀美のもとへ走る。

「大丈夫ですか!?」

「うぁ、ああ、ごめん――ぐぁ!」 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:07:24.40 ID:q/3SrOcd0<> なんとか立ち上がろうとする加賀美が、また突然頭を抑えて苦しみだした。
マミは思わず狼狽えるが、
しかし一度矢車と視線を合わせ頷くと、すぐに冷静さを取り戻した。

加賀美を抱き上げてさやか達の下へと一息に飛び退き、加賀美を下ろす。

「加賀美さんを!」

「は、はいっ!」

まどか達はすぐさま加賀美に駆け寄り、しゃがみ込んだ。
しかし加賀美は、これを手で制する。

「だ、大丈夫だ……! 二人は結界の奥にっ……!」

加賀美を置いてすぐに前線へと舞い戻ったマミを見ながら、そして今
魔女を相手に大立ち回りを演じている矢車を見ながら、加賀美は拳を震わせた。

「情けねえ……何やってんだよ、俺……っ!」

床を力なく殴りつける。
そんな事をしようとも、彼の足には力が入らず、ガタックゼクターが戻ることも無かった。



マミの防護結界の外では、マミと矢車がもう魔女に止めを刺そうとする所だった。

流石にもう体力が持たないのか、魔女からの攻撃は緩慢になり、もはや二人にはかすりもしていない。


マミは胸元のリボンをほどく。

「矢車さん!」

矢車は答えもせずに、ホッパーゼクターを展開する。

『Rider Jump』

矢車が地を蹴る。
同時にマミのリボンが渦巻き、瞬く間に巨大な砲身へとその姿を変えた。

「ティロ――」

『Rider Kick』

矢車が空間を蹴り、真っ直ぐ魔女に突っ込む。

大砲が、火を吹いた。


「フィナーレ!」


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:09:22.98 ID:q/3SrOcd0<> /////

「矢車さん!」

「…………」


魔女が消滅し空間が元に戻ると、矢車はすぐに加賀美達に背を向けた。

声をかける間もなく行く矢車に、加賀美がふらふらとした足取りで追いつく頃には、
もう少女達の声が届かない所にまで来ていた。

矢車がようやく足を止める。
加賀美はやっと辿り着くと、深く深呼吸をし、もう一度大きく息を吸い込んだ。

「あなたは一体、何を知っているんです」

矢車は答えない。

「影山さんの事は……天道達に聞きました。
 俺の配慮が足りなくて、その、すみませんでした」

夕焼けの影に隠れ、矢車の表情は見えない。

「あの戦いの後も、すぐに居なくなっちゃって……。
 言えなかったけど――ありがとうございました!」

矢車の影は、動かない。

「素直な気持ちです。 俺達、色々あったのは確かだし、
 ぶつかり合ったことだってあったかもしれませんけど……! でも……
 もう一度力を合わせることだって――」

「加賀美」

「は、はいっ!」

矢車は加賀美に近づき、手を差し出した。
加賀美がその手を握ろうとすると、金属で出来た[何か]にそれを阻まれた。
矢車がその手に握っていた物は、一つのブレスレット。

加賀美は、そのブレスレットに見覚えがあった。
その表情が、一瞬のうちに驚きと戸惑いを孕んだものに変わる。
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:10:18.19 ID:q/3SrOcd0<>
「こ、これ――」

加賀美の手に無理やりブレスレットを持たせると、矢車はまたすぐに背を向けた。

加賀美の脳裏に、先ほどの出来事が過ぎる。

「ど、どうして――」

「ガタックの力は使うな」

言葉を失う加賀美を置き去りに、矢車は夕暗に消えていった。
矢車は、誰にも聞こえない声で、呟く。

「『赤い靴』は二度踊る――」

月が、輝き始めていた。



「相棒、俺は……」
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:11:05.33 ID:q/3SrOcd0<>
/////


廃工場後から、マミ達が既に立ち去った後。

そこには立ち尽くす一人の少女の姿があった。
俯き、その瞳からは止め処なく涙が溢れる。

「どうして……」

弱々しく、思いが口からこぼれる。

「『戦いたくない』なんて……『分かり合える』なんて……っ!」

マミに掛けられた優しい言葉が、彼女の心に突き刺さる。

「分かり合えなんてしないのに……! 生きていくことなんてできないのに……っ!」



「どうしてあんな、優しい顔をするのよ……っ!」


体が、膝から崩れ落ちる。
後に残るのは、嗚咽だけ。
しかし――

「暁美ほむら君だね」

その少女の前に、声をかける人物が、現れた。

「君と話がしたいんだ」

その手に握られているのは、青い薔薇。

<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:13:03.88 ID:q/3SrOcd0<>
/////


とある病院。
その中の一つの病室の前で、さやかは大きく深呼吸した。

「……よし」

大きく頷き、その扉を開ける。

「恭介ー! 来た、よ……?」

どうやら先客が居たようだ。
先客は、その病室の入院者に向かい、さやかには背を向けていた。

恭介はさやかの姿を確認すると、笑顔でその手を上げた。

「やあ、さやか」

それに呼応し、先客もまた振り向く。

スーツを着たその女性は、上品にゆっくりと、さやかにその顔を向けた。

「わぁ……綺麗な人……」

思わずさやかは呟く。
その女性は、さやかの知る友人達の誰にも無いような、落ち着いた雰囲気を持っていた。
女性は微笑み、さやかに声をかける。

「初めまして、私は岬祐月。 あなたが美樹さやかさんね」


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:17:19.60 ID:q/3SrOcd0<> /////

「そんで、どうしてまた岬さんみたいな人がここに?」

しばらく会話を続けてみると、岬の人柄が見えてきた。
どうやら第一印象とは違い、フランクな部分も大きい、男勝りな女性らしい。

意気投合したさやかは、岬への態度も随分と親しげになっていた。

「恭介君のお見舞いにね。 ……今こそ、ある程度軌道に乗ってきているけど……
 会社、ううん、『ディスカビル家』は一時期、とても危ない事になっていたの」

「うんうん」

「それを何とかしようとした人は、日本中を駆けずり回ってお金持ちの家に声をかけたのよ」

「それで助けてくれたのが――」

「大抵は無視されたらしいんだけど……中には少しづつでも、援助してくれた方々がいたの。
 その中には恭介君のお父さんやお母さん……上条家の方もいたのよ」

「まあ、家がした援助なんて微々たる物だって父さんも言ってたけど……
 岬さんは、それでも律儀にお礼をしてくれているんだ
 それに元々、たまたま僕が剣君と交流があっただけだし」


「っへぇ〜! かっこいいなあ、岬さん!
 ……それにしても、剣さんって神代剣さんだよね? 
 懐かしいなぁ、もうずっと見てないよね。
 剣さんは、今何を――」

そこまで言って、さやかは岬の表情が曇ったことに気付いた。
若干ではあるものの、その表情は悲しげに沈む。

代わりに、恭介が慌ててさやかを止めた。

「さやか、剣君は……その、交通事故で……」

「そ、そんなことって……あ、ご、ごめんなさいっ! 変な事言って――」

「大丈夫よ」

深々と頭を下げるさやかに、岬は優しく語りかけた。

「反射的にあんな顔しちゃってごめんなさいね。
 でも、もう大丈夫よ。 彼は満足したと思うし……それに
 彼を慕ってくれていたって子も、見つかったしね」

「剣君は、今でも僕の憧れで……
 あんな風に、いつでも自信を持って居られるようになりたいし」

岬は恭介に視線を移した。
恭介は照れくさそうに頭を掻きながら笑う。

「剣君みたいに全部、って訳にはいきませんけど……
 この腕が治ったら、きっと」

小さな声で、しかし存分に気持ちを込めて、恭介は言う。

「大好きなことでくらいは、頂点に立てたらいいなあ――って」
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/10/20(木) 21:18:43.79 ID:q/3SrOcd0<> /////




仮面ライダーカブト!



もう一度、俺がザビーに――

やっぱすごいなあ、マミさん――





私と、矢車さんの出会い――





次回『因果の出会い』


天の道を往き、総てを司る!
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/10/20(木) 21:21:31.13 ID:q/3SrOcd0<>
以上で今回は終了です。
長い間投下できませんで本当にごめんなさい。

あと、恭介はまどか側でも貴重な男キャラです。 
そういった都合上、出番も増えます。
スレ立ての時点でお知らせすれば良かったのですが、それが受け入れられない方には
申し訳ありません。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛媛県)<>sage<>2011/10/20(木) 22:46:03.97 ID:VhgOt+NP0<> 案の定、赤い靴は魔女システムにも対応する様ですな <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<><>2011/10/21(金) 20:35:33.60 ID:uXq7w8By0<> あ、次はもう少し早くできると思います <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/10/21(金) 20:36:03.55 ID:uXq7w8By0<> さげ忘れ失礼 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/10/22(土) 17:32:40.65 ID:ToA878PAO<> SSの内容がクロックアップしてて置いていかれた感が半端ない <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/10/22(土) 23:45:24.48 ID:3adc2ezy0<> >>270
すいません
今回は次回予告をミスってしまって、かなり詰め込み気味になってるんです
次回からは無いようにしたい <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/11/05(土) 14:13:32.47 ID:vLZFxRRg0<> 生存 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西・北陸)<>sage<>2011/11/07(月) 22:03:21.14 ID:ohOYfMVAO<> ライダーロケットドリル支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/19(土) 00:39:03.17 ID:NEwSlI2t0<> つまらん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長野県)<><>2011/11/19(土) 20:24:10.33 ID:x1JgG6WL0<> >>274
いちいち口に出すお前も大概だが <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/11/19(土) 21:46:24.75 ID:NsyyoWaZ0<> 生存
早くできるとか言っといて遅れそうという
>>274 すいません頑張ります <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(関東)<>sage<>2011/11/27(日) 20:57:50.85 ID:M+ohv7aAO<> 仮面ライダーエターナる <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/13(火) 01:26:09.00 ID:T6P8kAJ50<> 申し開きのしようがない エターナルとか言われても仕方ないレベル
投下 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:26:46.21 ID:T6P8kAJ50<> 『Rider sting』

「うおおっ!」

光の針が直撃し、魔女の動きが止まる。

「今だっ!」

「ティロ・フィナーレっ!」

巨大な砲弾が、動けぬ魔女に直撃した。
この世の物とは思えないような呻き声を響かせながら、化物は消え去った。
続いて結界が解かれ、風景が日常の物へと戻っていく。

「や、やった……!」

「すげえ、マミさん、加賀美っ!」

地面に降り立った二人の元に、さやかとまどかが駆け寄った。

「いやあ、かっこいいねえ。 なんか、ヒーローって感じ!」

興奮醒めやらぬ様子で、さやかは飛び跳ねる。
まどかも遠慮がちながら、嬉しそうに笑う。

「もう、見世物じゃないのよ?
 危ない事してる、って意識は忘れないでおいて欲しいわ」

マミは困ったように二人を諌めるが、二人の耳には届いておらず、
たださやかのふざけたような返事が戻ってきただけだった。

そんな三人を横目に見ながら、加賀美は物思いに耽る。

「もう一度、俺がザビーに……なった、のか?」

手首のブレスを見ると、しっかりと機械蜂――ザビーゼクター――は鎮座していた。
あまりにあっさりと呼び出すことの出来たその蜂を、加賀美は信頼できない。

「不調も無かった……クロックアップは短時間しかしてないけど、問題無くできた」

だからこその疑問。

「こいつの資格者は、俺……? 捨てた筈なのに、どうして?」

ゼクターをブレスから離し変身を解除すると、ザビーゼクターは飛び去った。

ふと、さやかの声が聞こえてくる。

「いいじゃないですか、教えて下さいよー」

「いや、だから、大したものじゃないのよ」

加賀美は気をとり直し、マミらに近づく。
その顔は、既に一介の警察官に戻っていた。

「そろそろ帰るぞ。
 ……何の話してたんだ?」

それは少女たちにとって、他愛もないからかい話だったが。

「な、何でもないですよ、ほら帰りましょ――」

「マミさんと矢車さんの話! 加賀美も気にならない?」

「そりゃあ……なあ」

「私と、矢車さんの出会いなんて……」

加賀美にとっては、割と本気で知りたい事柄である。

しかし。

その後加賀美は少女達を家まで送り届け、釈然としないまま帰宅するのであった。 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:29:26.28 ID:T6P8kAJ50<> /////



『因果』
……因と結果。また、その関係。
……前に行った善悪の行為が、それに対応した結果となって現れるとする考え。特に前世あるい過
  去の悪業(あくごう)の報いとして現在の不幸があるとする考え。



///// <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:30:14.45 ID:T6P8kAJ50<> ――俺は……兄貴の知らない闇を知ってしまって――

――俺も一緒に連れて行って欲しかったけど、さ――

――俺はこの暗闇から出られそうにないよ――


――さよならだ、兄貴――




日が完全に暮れ、人々が殆ど床に就く時間。
小奇麗な街にただ一つ存在する廃工場の屋上に、一人の男が居た。

「――あれから2ヶ月」

満月とは程遠い三日月を見つめながら、男は呟いた。
退廃的な服に身を包んだその男の雰囲気は暗く、そして切ない。

この男が今まで歩んできた人生を鑑みれば、無理もない。 むしろ必然とも言えるだろう。

男は、ぼそりと呟く。

「ここでも無かったよ、相棒」

男は立ち上がり、屋上から軽く飛び降りる。
生身の人間なら良くとも骨折、最悪即死の高さから、である。

まるで階段の二段目から飛んだかのようにふわりと着地すると、男は歩き出した。

とある場所を求めて。


廃工場の敷地から出てしばらく歩くと、丁度繁華街に出た。
こんな時間と言えど、明るい場所に出ればまだ明るく、むしろ活気づいて居るようにも見える。
こういう時間帯が最も繁盛する。 ここはそういった類の――悪く言えば下品な――エリアなのだろう。


「お兄さん! ちょっとイイコトして行かない?」

「今日いい子が入ったんだよお! お兄さんみたいな男前ならお持ち帰りできちゃうよ!」

この手の通りを一人で行けば必ず声がかかる。
男はそういった声を全て無視し、視線すら向けずに歩いて行く。

「ちょっとお兄さん! 話聞くだけでもいいからさあ!」

気付くと、気色悪い笑みを浮かべる禿げた中年の男が腕を掴んでいた。
この中年にとっては営業スマイルなのであろうそれを、男は興味無さ気にちらりと目を向ける。

「他のとこと違って、ここは本物だよお? なんたって――」

男はそんな声には耳を傾けず、やはり興味無さ気に視線を戻し、歩き出した。
中年は予想だにしない男の動きにすぐさま反応し、その行く手を阻もうと眼前に立つ。
と、その瞬間――
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:30:54.12 ID:T6P8kAJ50<> 「うぉわあ!」

中年の肥えた体が前のめりに倒れた。
男はこれを身を流して避けるが、流石に少々驚いたのか、その目を中年に向ける。
中年は起き上がり、後方へと視線をやった。

「おい、危ないだろう!」

怒りを隠さずそういう中年の目線の先には、一人の少女。

「す、すみません! 急いでいたもので……」

少女が深々と下げていた頭を上げると、男の顔は驚きに染まった。
しかし少女も中年もそれには気付かない。

「ちっ、ガキか……おいお前――」

突然、中年の肩が男に捕まれ引っ張られる。
見事な速度で表情を営業スマイルに戻した中年の眼前で待っていたのは、猛スピードで迫る拳だった。

「がっ! ……」

中年はうめき声すらあげずに膝から崩れ落ちる。
男は倒れていく中年には目もくれず、少女に視線をあわせる。

「お前――」

「おいなんだあれ、喧嘩かぁ?」

どうやら少々手荒過ぎたらしい。
男が周囲を確認すると、ものの見事に野次馬が集まってきていた。
少女の方も何がなにやら理解出来ていない様子である。

男の決断は早かった。

「おい」

「は、はいっ?」

少女が自分の呼びかけに応じた事を確認すると、矢車は野次馬の数が少ない方面に視線をやった。

「早く行け」

ここは俺が引き受ける、とその目は告げていた。

「あ、ありがとうございます!」

少女は一言礼を言うと、再び駆けて行く。

が、急に振り返り、男にもう一度声を掛けた。 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:31:43.66 ID:T6P8kAJ50<> 「あ、あの……お名前をっ!」

「矢車――矢車、想」

「ありがとうございます、矢車さん!」

少女は今度こそその場から走り去った。

男はそれを見届けると、周囲をゆっくりと見回す。

近寄るな――

それだけがこの男が言いたいことであると、それが誰の目にも明らかだった。

野次馬達が一歩後ずさる。
男はゆっくりと歩き始めた。
少女の行った道を追うように。


少女を追って暗い路地の中に入る。

「……く、くく、はは――ははははははははっ!」

静寂の中、男は急に大声を上げて笑い出した。

「『因果』――か」

矢車はぼそりと言うと、またゆっくりと歩き始める。

ジャキン、ジャキン、と。
鋭利で不器用な音が、夜空に吸い込まれていった。


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:32:21.74 ID:T6P8kAJ50<> /////

――――「……B班、C班、状況はどうだ」

『こちらB班、ワームの反応はありません』

『こちらC班、サーモグラフィーは正常に動作していますが……』

小型の無線機からくぐもった声が聞こえてくる。

「こちらもそのようです、隊長」

耐衝撃スーツに身を包み、特徴的なヘルメットを被った者達。
――秘密結社『ZECT』――
彼らは地球を襲う未曾有の危機に対抗するため、ZECT内部で編成された部隊『ゼクトルーパー』。

異様な見た目に扮した彼らの中に、たった一人だけ見慣れた服装をした男が居た。
その男は、手に持った無線機に語りかける。

「分かった、観測を続けろ」

この男の名を、矢車想という。 矢車は極普通のスーツにその身を包んでいた。

「……しかし隊長」

部下の一人が、サーモグラフィーに目を向けたまま声を上げた。

「ん、どうした影山」

「どうして我々『シャドウ』がこんな下っ端みたいな仕事をしてるんですかね?」

「不満たっぷり、だな」

くく、と笑いを漏らしながら、矢車はそのヘルメットにデコピンする。
しかしすぐに顔を引き締め、その視線を上へやった。

「ここにワームが出る『らしい』」

「らしい?」

「タレコミがあったんだとさ。 しかし奴らは市民には認知されていない」

「それって……」

「十中八九、罠だろうな」

話を聞いていた部下たちがにわかにざわつく。
矢車が見回すとすぐに静まったが、彼らの動揺は見て取れた。

「考えてもみろ、奴らが仕掛けた罠だ。
 なら、罠の内容は勿論……わかるな?」

「戦闘になる、って事ですか」

「ほぼ、そうなる」

隊員達は、皆一様に息を飲んだ。

「し、しかし……こんな大きな交差点で、なんて」

「盲点だろう? だから突かれるんだ、そういう所を」 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:33:02.12 ID:T6P8kAJ50<> 時計を覗く。

「話は終わりだ。 もうすぐ最も混雑する時間帯になる。
 気を引き締めろ」


――ジャキン、と。
規律のとれた無機質な音が、フロアに響いたのだった。
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2011/12/13(火) 01:33:32.74 ID:T6P8kAJ50<> /////


仮面ライダーキックホッパー……


私を、助けて――

逃したか――

こいつらは――

説明している暇はありません。 じっとしていて――

そうは、させん――



次回『決意の麻婆豆腐』

<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/12/13(火) 01:34:19.38 ID:T6P8kAJ50<> 以上です <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/12/13(火) 01:34:58.15 ID:T6P8kAJ50<> ていうかもう見てる人いないだろ
まあ良いか <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/12/13(火) 01:35:28.56 ID:T6P8kAJ50<> 誤爆 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 01:40:21.33 ID:LAByJhSMo<> そりゃあこれだけ間隔あけば更新してるのに気づく人も少ないから仕方無いだろ
俺のように待ってた人間も居るんだからふてくされないでくれよ
乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 01:47:52.08 ID:CQ4c537Xo<> ずっと待ってたよ
乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 02:17:19.85 ID:zrcOcnM90<> いいぜ兄弟、一緒に地獄におちようぜ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 02:55:33.70 ID:0adCTboSO<> 乙
帰ってきてくれて嬉しいよ <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/13(火) 12:54:57.07 ID:aTJgYIQto<> これだけ放置していても僕の所より一度のレスが多い
それはとっても、くやしいなって。



乙 お帰りなさい <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2011/12/15(木) 13:59:44.93 ID:ePVgut6i0<> そういえば次の日程まだでしたね
うん、できるだけ早くしますんで
今回程待たせるのはもう無いようにしたいと思ってます <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/20(火) 22:14:23.68 ID:OY3EOxk7o<> 乙

まぁ腐るなよ 待ってるから <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/01/15(日) 18:27:02.28 ID:kZ+H5boAO<> 保守 <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/01/15(日) 22:21:17.32 ID:VooQvU2Z0<> 保守ありです
ちょっと今月は無理かも知れない
というか書く時間が無いです  <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長野県)<>sage<>2012/02/06(月) 01:38:38.24 ID:82Je0EDCo<> おう待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県)<>sage<>2012/02/10(金) 12:34:36.77 ID:zQsMQ0KZ0<> ようつべでカブト配信してるせいで妄想爆発、誰かやってないかと思ったらやっぱりあったか。続き楽しみにしてる <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/02/11(土) 18:49:54.15 ID:Expb1Ng40<> 本当にごめんなさい
必ず投下しますのでもう少し待って <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<><>2012/02/23(木) 20:00:50.38 ID:JWlI67XAO<> エターナらないよう定期保守 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage <>2012/02/28(火) 01:56:38.65 ID:2sQhW63Y0<> 生 <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage <>2012/02/28(火) 01:57:54.08 ID:2sQhW63Y0<> 生 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/03(土) 17:40:29.52 ID:DRoFgg/90<> 色々まどか×ライダーあるけどここに一番期待してるんだからな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県)<>sage<>2012/03/29(木) 00:27:39.76 ID:0GyGhFnPo<> ほ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/29(木) 13:55:50.63 ID:t1P5cVBzo<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<><>2012/04/01(日) 16:58:25.96 ID:jNJ3j6TAO<> \エターナる!/ \マキシマムドライブ!/ <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/04/07(土) 22:44:18.11 ID:Ftx1LTAt0<> 生
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/11(水) 20:27:14.92 ID:sPVCj5Fgo<> カブトの配信みて面白かったのでこっちも見に来た。描写が上手い。見習いたいものだ。まだ序盤だけど、もっと暴れてもいいのよ?せっかくのクロスなのに。

頑張って下さい! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/29(日) 21:42:57.88 ID:Q8u/ZnNDO<> エターナルレクイエム阻止 <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:06:14.34 ID:PrYGK/Y90<> ゴールデンウィーク様々
あと前回の予告のサブタイトルは無かったことにして下さい。そこまで進まなかった <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:06:53.21 ID:PrYGK/Y90<> 一人は眼鏡をかけた初老の男性。
もう一人はレザー製の服を着た生気の無い男性。

「では、やってくれるという事でいいのだな、矢車君」

「……どうせもう失うものも無い」

テーブルの上には真新しい金属製のベルトが二着と、機械の飛蝗が二匹鎮座していた。

矢車は気怠げに目線を投げ足を組み直すと、右手を胸元で上向きに広げる。

飛蝗が掌に飛び込んで来るのとほぼ同時にすっと立ち上がりベルトを腰に巻くと、
組織の名をあしらったバックルが開く。

初老の男性もそれに合わせて立ち上がり、手を後ろで組んだ。

「ライダーとして最も長いキャリアを誇るのは君だ。
 ザビーの資格を失ったのは君にとって不幸だったのだろうが――」

刹那に矢車の足が目前を通り過ぎると、男性の眼鏡は宙に舞い、
無残にもそのレンズを割ってしまう。

しかし男性は微塵も怯む事なく目を細め、射殺すかの如き矢車の視線を正面から受ける。

「さて、今の言葉のどこで君の機嫌を損なったのかは定かではないが……。
 話を戻そう。 兎角、私にとっては朗報だったのだよ。 正に僥倖、といった所か」

「……」

「無論、私が裏で糸を引いていた訳ではない。 ザビーに見放されたのは君自信の責任、無能故だ。
 ……今から『切り札』を託そうという者に対する言葉では無いかもしれないが」
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:07:20.57 ID:PrYGK/Y90<>
「――は」

「ん、なんだね?」

「これはどうする」

矢車の目線の先には、もう一組の機械とベルト。
男性はふむ、と置くと、矢車にこれを手渡した。

「怠慢に聞こえてしまうかも知れないが……もう一人の資格者、これは君に選んで貰いたい」

「選ぶのは『俺が』か、それとも『これが』か」

「正確には『これが』だ。 しかし私は、君が選ぶのならば相応しい者であると考えている」

「怠慢だな」

「そう聞こえてしまうかも、と言った筈だね」

矢車はジャケットの裏にベルトを隠し飛蝗は二匹とも放すと、
余ったベルトは肩に掛け、扉へと向かう。

男性は座り直しもう一度矢車を呼び止めると、より一層の小声で呟いた。

「最後に一つ……これは当面、いや、君には一生関係の無い話かも知れないが」

矢車は一切振り返らず、視線をあちらこちらと興味なさそうに揺らす。

「アレにはもう一種類の情報が記録してある」

「……種類は」

「もう一つの……我々の、人類の、『敵』のものだ」
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:07:52.43 ID:PrYGK/Y90<>
//////


「え、炎上している車は10台以上!」

「被害状況、報告! 炎でワームの見分けが付きません!」

「くっ……まだ擬態していない奴が居るはずだ、探せ!」

交差点での惨状は、正に地獄絵図と言えた。

車は複数が炎上し、巻き込まれたバイクの運転手は、見るも無残な形となって転がっている。

阿鼻叫喚のさなかで、精鋭であるシャドウも慌ただしく動いていた。

「ワームは恐らく3体! 事故直前、僅かに車の中に反応がありました!」

「その車は!?」

「か、確認しました! 乗員が一人残らず消えています!」

「その近くに居るはずだ! 探しているか!?」

「もうやっています! ……あ、み、見つけました、3体!」

「よし、お前達は他にワームが居ないか調べていろ、行くぞ!」

矢車は部下数人を連れ、ワームの下へと向かう。

その途中、三つ目の車の横で、部下が一人しゃがみこんでいた。
矢車は思わず怒鳴り声を上げる。

「影山、何をやっている! 輪を乱すな!」

「――た、隊長」

影山の向こうでは、被害者であろう少女が車内で血を流しながら呻いていた。
圧迫されて動けないのであろう少女――その下半身の惨状など、想像する必要すら無かった。

「……お前も来い、影山」

「しかし隊長、この子――」

「もう手遅れだ、冷静になれ影山!」

「う、うう……はい」

影山は立ち上がると、何度か振り返りながら矢車の下へと戻った。

「そうだ、『完全調和』を忘れるな影山」

「……はい」



しかし矢車の耳には、その呻き声が確かに届いていた。



――私を、助けて――


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:08:33.76 ID:PrYGK/Y90<> /////


あの時の『少女』――

そんなはずは無い。 常識的に言えばそうである。

しかし彼は、矢車想は、何故かその理由をすんなり理解していた。

そして今、彼の目の前には、同じ様に現実的で無い物があった。

何もない空間に開く巨大な穴と、その向こうの空間。

先程、少女はここに単身で乗り込んだようだ。


――矢車は、事もあろうに生身でそこに乗り込んだのだった。

<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:09:22.98 ID:PrYGK/Y90<>
/////


結界内――

「……っ、はぁ、くっ!」

降り注ぐナイフを避けながら、時に捌き、時に弾く。
一瞬間を置いたかと思えば、魔女は触手を伸ばし、マミを捕縛しようと動く。

魔法少女巴マミは、珍しくピンチに陥っていた。

「これはちょっと、やばい、かもっ!」

なんとか触手を避け手に持ったマスケット銃を放つが、一発では大きなダメージを与えられない。

「どうすればっ!いいかしら」

再びナイフの雨。

「これを避けている間……は――」

ナイフの向こうに、見える筈のないものが居る。
マミはナイフを避けながら器用に目をこすり、もう一度そこに目をやる。

「なっ……ど、どうして人がいるのよっ!?」

ナイフの雨が止むと、マミはとにかくその人物の下へと飛んだ。

「あ、あなたはさっきの……」

その人物は、先程マミを助けた矢車想、その人だった。

矢車は魔女を見つめ、多少驚いたように目を開けていた。

「なんで追ってきてるんですか!? 変態!」

「お前……こいつらは――」

「説明している暇はありません。 じっとしていて!」

時間も無い。 マミはその場にマスケット銃を創りだし、そこを中心に結界を張った。

「事情は後で聞きますから――」

その瞬間だった。

触手がマミの右腿を貫いたのだ。

「――!」

矢車の目の色が変わる。

「あぐっ……!」

思わず倒れこみ、魔女を見やるマミ。
今にも第二波を送り込んできそうな魔女を睨むも、もうしばらくは動けそうにない。

触手が迫る。
足はまだ動かない。

<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:10:04.77 ID:PrYGK/Y90<>

結界は――貫かれるだろう。

万事休すか。

その瞬間。

「――へ?」

体が持ち上げられる感覚の後、思い切り後ろに飛んだのだ。

上を見やると矢車想の顔があり、その状況が事実をマミに告げる。

「だ、抱っこされてる!?」

「黙っていろ」

矢車はマミを抱えたまま、触手を二度飛びあがり避ける。

一瞬の隙の間に、矢車はマミを地面に下ろし、その前に立った。

「む、無理ですそんな――」

触手が迫る。
矢車など眼中に無いとばかりに、その触手が突き進む。

「も、もう――」

マミは諦め、強く目を瞑った。


マミの耳に、声が届く。


「そうは、させん」


――Henshin――

――Change Kick・Hopper――
<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:11:01.83 ID:PrYGK/Y90<> /////

「……って所かしらね」

「なるほど、そこでマミさんは矢車さんに惚れたわけだ!」

「さ、さやかちゃーん……」

「だからそういうのは無いと何度言えば……歳の差ってものがあってね?」






「……あ、また見てね!」

「加賀美ー、何言ってんの?」

「ぎ、儀式だ儀式」


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage saga<>2012/05/02(水) 20:13:15.21 ID:PrYGK/Y90<> 終了。
次回予告は取り敢えず無しで、半分くらい書き終わったら別に投下します。
その代わりといっては何ですが、SHTの終了後的なのを入れてみましたが
余りに微妙すぎるので今回で終わりです安心してください


<> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2012/05/02(水) 20:14:09.31 ID:PrYGK/Y90<> あ、sageてた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/05/02(水) 20:49:30.29 ID:B5OSlqoZo<> 乙です!

待ってました <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/05/02(水) 21:03:21.72 ID:Zg5ojL7io<> 乙!
やさぐるまさん見てるとザビーなんていらなかったんや!って分かるねww <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>saga<>2012/05/03(木) 23:53:38.04 ID:bWjMOmGl0<> ここまで放置しても見て下さるとは・・・ぐう聖すぎるやろ
GW中には予告を投下できそうです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/05/04(金) 00:28:57.30 ID:ZmbB0zi4o<> よし、待ってる
特撮三昧はすこぶる残念だった
所々良い所もあっただけに <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)<>sage<>2012/05/04(金) 00:31:08.78 ID:LCDHCk/AO<> 生串田様の生タトバを拝聴できただけで満足でした <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>saga<>2012/05/06(日) 20:22:41.13 ID:vZRZ5V4m0<> なんとかGW中に予告投下できる・・・では投下 <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>saga<>2012/05/06(日) 20:24:16.29 ID:vZRZ5V4m0<> 仮面ライダーカブト


願いって、他人の為でも良いのかな――

説明しなさい、加賀美君――

そんなに地獄が見たいか――

もう何も怖くない――

これはあなたの触っていいものじゃない――






全ては復讐が為に――


金色の、ライダー――




次回『黄金』


天の道を往き、総てを司る! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/05/12(土) 18:13:45.54 ID:drPKIcUyo<> いいスレをみつけた
ゆっくりでもいい、がんばってくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2012/05/12(土) 21:15:16.40 ID:sb4fQ1EU0<> 乙
続いてるようで何よりです <> トゥーフ
◆aYPblnZtes<>sage<>2012/05/13(日) 10:00:26.55 ID:dr4/MP4+0<> 今更抜けている所に気付くという失態
>>313の頭

――――某日、隠れ家――――

古びたテーブルを挟み、二人の男が向かい合っていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/06/12(火) 08:09:36.13 ID:pqZNR+BAO<> ハイパー保守 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<><>2012/06/24(日) 00:30:39.36 ID:eNwugXp40<> まだかー <> トゥーフ ◆aYPblnZtes<>sage<>2012/06/28(木) 12:28:23.28 ID:JYDunTYS0<> 生 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2012/07/02(月) 03:43:56.71 ID:rw11KpTn0<> この生はなんなんだろうか……
生存報告なのだろうか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<><>2012/07/04(水) 21:35:19.11 ID:B+vZO9hw0<> お願いだ、はやく書いてくれ
もう限界なんだ
死んでしまう・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<><>2012/08/01(水) 00:42:39.56 ID:mYPk6Dre0<> \アタックライドゥ/\セイザデタイキ/! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/18(土) 17:42:27.32 ID:vkA8XleIO<> ほ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/08/20(月) 09:58:04.29 ID:8AZqRv4T0<> し <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)<>sage<>2012/09/12(水) 00:10:44.56 ID:szrqSOnAO<> ほ <>