VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 17:11:14.00 ID:eT2DHOKL0<>
突如として作家的スランプに陥る佐藤友哉。
鏡家サーガの不人気から
彼は読者に絶望し
物語に不安を抱き
何よりそれを紡ぐ自身に激しい怒りを覚えていた。
 
そんなある日突然、佐藤は友人で作家仲間でもある西尾維新に学園都市に行くことを勧められる。
彼はそこで上条当麻やインデックスと出会い、次第に彼らを取り巻く事件に巻き込まれることになる。
学園都市で大きな陰謀が渦巻く中、佐藤友哉は自身の能力『暴力聖夜(クリスマス・テロル)』 を唯一武器に、
戦いに身を投じていく!



見る人少ないと思うけど書いていきます。

<>佐藤友哉「学園都市? いったいなんなんですかそれ??」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/02(土) 17:24:10.69 ID:WoJfiAtEP<> 現実の人間を使ったSSってウメハラ系統ぐらいしかなかったからなぁ
とりあえず期待しておくよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/04/02(土) 20:07:37.71 ID:Xl/lF3NAO<> まさかのユヤタンwwwwwwwwwwwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)<>sage<>2011/04/02(土) 20:49:39.98 ID:v6Bljl5jo<> 小ネタスレで見た時から期待してた
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 20:52:41.59 ID:eT2DHOKLo<> >>2
期待にそえるよう頑張ります!
でもウメハラ系にはならないかも

>>3
お前のような奴を待っていた!!

では書いていきます。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 20:56:19.70 ID:eT2DHOKLo<>
ではお決まりの台詞から



「本書は『ああっ、お兄ちゃーん』と云う方に最適です(嘘 )。」

                          ――フリッカー式――


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:05:00.31 ID:eT2DHOKLo<>

「はぁ……」

佐藤友哉は、深いため息をついた。
いったい今日何度目のため息だろうか?
彼がここに来てから、少なくとも軽く50回は超えているはずだ。

彼は色あせた黒いジャケットを自分の隣に置いて、
力なくベンチに背をもたれ、どっしりと座っている。

真っ白だったワイシャツも心なしかよれよれになってしまっていて、
あちこちに小さな汚れを作っていた。

そんな姿の彼は向かいの手入れの行き届いた茂みを眺めているようだが、
その目には光はない。おそらくどこも見ていないのだろう。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:07:01.27 ID:eT2DHOKLo<>
「……真っ昼間から公園で酒を飲んでるなんて、昔じゃ考えられないな」

彼は今、ここ学園都市にのとある公園のベンチに座って、
昼間だというのにビールを飲んでいる。

近くのコンビニで買ってきたものだ。

ベンチの前の地面には、空になったキリンの『のどごし<生>』ビールが六本も置いてあり、
すでにそこにはアリの行列ができかかっている。

彼は小さなそれらを眺めていた。
自身を投影していた。
絶望していた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:15:09.64 ID:eT2DHOKLo<>


そもそもなぜ彼が、学園都市にいるのか。



事の発端は佐藤自身にある。


佐藤友哉は2001年に第21回メフィスト賞を受賞し、
「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 」で講談社から華やかなデビューを飾る。

これが後に鏡家サーガと呼ばれることになるシリーズだ。

当時彼が19歳であったということも、
大きな話題となった要因のひとつだった。
戦慄の19歳。関係者の間で、彼はそう呼ばれた。

これに調子づいた彼は、続いてその年の12月に「エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室」を発表。
そして翌年2002には三作目にあたる、「水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 」を書き終える。

佐藤は自分の作品たちに、読者に伝えたいメッセージを精一杯詰め込んだ。

だがその思いに反して、佐藤の小説はあまり売れなかった。
彼の小説は、多くの大きな書店では隅にひっそりと、埃をかぶって放置されていた。
地方の本屋となれば、もはや置かれさえしなかった。
言うまでもなく、古本屋に流れてくることもない。
つまるところ、彼の小説は人気がなかったのだ。
佐藤にとって、それは読者の裏切りだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:17:21.34 ID:eT2DHOKLo<>

佐藤友哉は絶望した。


自分の小説を読もうとしない読者に絶望した。
駄作と決め付け、読む価値がないと断定する読者に絶望した。

彼は物語という形式に不満を抱いた。
誰にも伝わらないことに不満を抱いた。

そして何よりも、そんな物語しか紡ぐことのできない自分に激しい怒りを感じていた。
さながら自分自身を焼く、激しい地獄の業火のような怒りを。

彼にはもはや、物語を書く意味を見出すことができなくなっていた。
小説を書く能力を失っていたのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:21:10.32 ID:eT2DHOKLo<>
そんなある日、佐藤の友人であり作家仲間でもある西尾維新から、
突然電話がかかってくる。
彼はいぶかしがりながらも電話を取る。

「やあ友哉!ひさしぶり〜」

「ちょ、西尾さんじゃないですか!? どうしたんですか? 突然」

「実はちょっと用事があってな〜。どう? 元気してる?」

「全然元気じゃないですよ西尾さん。本は売れないし、金も入らない。
 もうどうにかなりそうですよ……」

「ごめんごめん。戯言だったね。そういえば今執筆してる小説の調子はどう?」

「それは新手のいじめですか? 
どうって言われても…… 全然進みませんよぉ。
おまけに編集者さんから鏡家サーガはもう出せないって言われてしまって…… 」

「そりゃ大変だな」

「大変どころじゃないですよ。もう絶望的ですよ。ああもう……」

「そっか〜」

「……西尾さん、いったい僕はどうしたらいいんでしょうか?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:23:02.25 ID:eT2DHOKLo<>
「う〜ん、どうしたらいいんだろうね? 
 君はどう思う?」

「他人事だと思ってるでしょ!まじめに考えくださいよほんとにもう! 
 僕は今切羽詰ってるんですから!」

「考えてる考えてる。あまりにも考えすぎて思考がヘビーだよ。ヘビー。 ……蛇 。
 ウロボロス。 うろ覚えウロボロス? 永遠をつかさどるもの。 永劫の繁栄 。 
 ん??? ニーチェ??? 永劫回帰? エゴ回帰? ……  
 う〜ん…… 難しいな〜」

「ウロボロスって西尾さん…… ちゃんと考えてくださいよ〜」

 
 沈黙。


「……」

「……」

「……ええと」

「……」

「……やっぱそれは俺の口からはなんとも言えないよ。誰しも迷うことはあるさ」

「考えてその答え!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:27:00.42 ID:eT2DHOKLo<>
「いや要するに、やっぱりそれは君自身が考えるべきことなんじゃないか?
人間誰しも一つの信念で生きられるわけじゃないだろ?」

「でも……」

「もちろん正解とか真理とかそういったものを探究するのは悪いことじゃない。
 でもそれって俺に求めていいもんなのか?? 
 そこにいたる道は少なくとも一本だけじゃないはずじゃん?」

「……」

「だ・か・ら、最初っからテンプレでやり過ごすのは無理があるのさ。
 ケースバイケース。
 要するに一人一人に違う、自分の道があるってこと」

「……でもそれは売れてる作家だけが言えることですよ、西尾さん。
 卑怯です。僕にとってそれはまったくの戯言ですよ」

「そうかな〜?俺は別にそうは思わないけど……」

「僕には西尾さんのように、物事をシニカルにとらえて
 生きていくことなんてできないんです。
 僕はまっすぐ進んでいくしかないんです。
 でもそれが、他人から見てまっすぐだとは限らないですよね。
 よく言えば僕は単純な人間、悪く言っても単純な人間なんです」

「どっちも同じじゃねえか!?」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:30:29.33 ID:eT2DHOKLo<>
「そうなんですよ。僕は単純ゆえに、
 物事をひとつの方向にしか捉えられない人間なんです。
 だからこそ、僕は迷う。
 作者と読者の間にある、ジグザグのでこぼこ道に。
 《後ろに向かって前進だ、ただしムーンウォーク》みたいなっ!」

「えっ、それは俺のネタ!? って戯言読んでたのか…… 
 つーかなんでそこで!? ちょっと良いこと言ってたのに!?」

「黙っててください!! 僕は今激しく失望しているんです。
 うわべしか理解しようとしない読者に、物語という伝わらない形式に。
 そしてなにより、そんなものしか作れないちっぽけな自分自身に!
 《人探偵浅黄蝉丸、密室首切り殺人事件を即座に解決、ただし犯人現行犯》みたいなっ!」

「また俺のネタじゃ…… しかも今度は全然関係ないような気が……」

「僕は物語を書く意義を失ってしまったんです。
 それも皮肉にも、物語を書くという行為によってね。
 読まれない小説なんて、意味があるんでしょうか?
 あるはずないですよね?
 《日本を代表する推理小説作家・三田村三郎!! 
 彼は今までのスピード感あふれる作風を捨てて、
 傲慢にも新たな境地を目指す!ただしギリシャ語で執筆!》みたいなっ!」

「なんか進化してきちゃった!? しかも微妙に長くて読みづらい!?」

「黙れよ西尾。
 んなこと聞いてねーんだよ。
 今は俺が話してんだ聞いてろよ馬鹿。
 さっさとその口閉じねーとクビキリサイクル密室殺人起こすぞこの野郎!」

「なんでいきなりため口!? つーかそれが本音!? 
 しかも殺人予告!? さらに密室殺人事件!?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:35:23.90 ID:eT2DHOKLo<>
「《鏡家サーガ完結! ただし犯人は全員佐藤友哉みたいなっ!》」

「ついにオリジナル出てきちゃったよ!? しかも自虐ネタ!? 
 もはや密室でもなんでもない!?」

「……と、まあこんな感じで、僕には戯言なんて作れないんですよ。
 戯言を書くこと自体、僕にとっては戯言なんです。
 僕には向いてないんですよ戯言なんて。
 僕は何も書けない人間なんです……」

「いや十分に素質あるとおもうけど!? 
 ……まあでも、他人の作風をパクっても意味がないってのはよくわかるよ。
 それは同人誌で許されることであって、
 作家として書くものじゃないな。
 もしパクるにしても、そこに自分独自の、原作者の考えないような、
 新たな解釈を付け加えないけない。
 でもそれは非常に難しい。
 そうなると俺らには、自分の作風しか残されてないわけだ」

「まったくその通りです。正論過ぎて痛いですね。
 僕は自分の小説が伝わらないことを、嫌というほど知らされました。
 
 それは、ほかでもない読者からです。
 
 そして今、僕はその原因を少なからず自分の作風のせいだと思っている。
 大きな不安を感じているんです。
 物語を書く人間が、それを紡ぐ自身に強い疑念を抱いてるわけですよ。
 そんな人間に、いい話なんて書けるわけないじゃないですか」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/04/02(土) 21:39:18.48 ID:v6Bljl5jo<> ユヤタンそんな悲観しないで(´;ω;`)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:41:39.67 ID:eT2DHOKLo<>

「だからこそだよ、佐藤友哉。だからこそ今日このタイミングで、俺は君に電話したんだ」
 

 彼は西尾の言っていることが理解できない。
 佐藤は電話越しに呆然とする。

 西尾は続ける。

「いいか、君は今、自分を含めた人間そのものを疑いにかかってるんだ。
 人間存在 =ヒューマン・ビーイング自体を、ね。
 しかもすごく病的に。
  
 だから君は、これから人類に対する信頼を取り戻さなきゃならない。
 なぜならそれが、君自身への信頼にもつながるからだ。
 君が作家として再び復活する道は、 もうそれしか残っていないんだよ。
 ……どうだい? 試しに学園都市に行ってみないか? 」

 佐藤友哉はいぶかしむ。 
 
「学園都市? いったいなんなんですかそれ??」

 西尾維新は笑って言う。
 
「楽園だよ。君を救ってくれる。もちろん君にとってのだけどね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/02(土) 21:48:07.59 ID:eT2DHOKLo<> >>4
あのときの人か??
暴力聖夜使わせていただきました!

とりあえず今日は終了です。
全然ためてないので、次はいつ書きこめるかわかりませんが
できるだけ早くなるように善処します。

ユヤタンも禁書も、変なところがあったらご指摘お願いします。
では。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/04/02(土) 22:13:55.30 ID:v6Bljl5jo<> >>18
ROMってたからあの人ではないが期待してた。
次回をPC前で正座待機してます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/04/02(土) 23:35:39.23 ID:OKMkMtdE0<> タイトル不意打ちで笑ったわwwwwwwwwww
これから期待してるよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/04/03(日) 00:20:43.52 ID:kHpc0/KAO<> 小ネタスレで見て是非読みたかったんでスレ建っててすげえ嬉しい、期待
ところで>>1がユヤタン本人ってことは…ないよな…? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/03(日) 00:34:29.55 ID:Z7dvFPFAP<> やっぱり西尾といったら巫女子ネタだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/04/03(日) 00:44:59.94 ID:tWGGpBHAO<> 笑い死にしそうだww西尾との会話が生々しすぎるwwww

著者近影見てるのに見た目が広明(大)で脳内再生されるwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/03(日) 11:57:10.61 ID:nx7DKnrOo<> 殺伐としたスレになると思ってたけど、
以外にも書き込みがあるとは!!

VIPに佐藤友哉の読者がこんなに潜んで?いたなんて
なんか感激するわ…… 
本人に代わってお礼を言っときます。

>>20
期待に応えられるよう頑張ります!

>>21
あの小ネタスレ見てくれてたのか!?
なんかうれしい!

>>22
西尾さんは再び登場します
そして彼の能力に期待!

>>23
広明はまんまユヤだよな〜
少なくとも創士ではない
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/03(日) 23:37:19.78 ID:VLSfl1fDO<> 支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<><>2011/04/04(月) 17:01:36.63 ID:pqL2bCREo<> 早いですが投稿していきます。

厨二病全開で行きます。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/04(月) 17:03:25.12 ID:pqL2bCREo<>


そんな西尾維新とのやり取りがあって、
佐藤友哉は急遽(きゅうきょ)学園都市を訪れることになる。
それがちょうど一週間前の話。

佐藤はとにかくこの地獄のような現状から、
何とか脱出したかった。

彼は見知らぬ新しい場所に行き、
新しい人間に出会い、
新しい体験を求めていた。

そうすればこのひどく落ち込んだ気分を
ぬぐえるのではないか。
そんな方法がどこかにあるのではないか、
彼はそう考えていたのだ。

佐藤は絶望の境地で、光を見いだした気でいた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:07:09.95 ID:pqL2bCREo<>

さっそく彼は事前に講談社などの各出版社と連絡を取り、
しばらく作家を休業する旨を伝えた。

彼はもともと次々と本を書いてベストセラーを叩き出すような
部類の作家ではなかったので、
講談社以外の出版社はそれを二つ返事で認めた。
畜生め。
 



そしてその年の7月13日、彼は学園都市の土を踏む。




といっても彼は実際に土を踏んだわけではない。

そこに地面という原始的な自然さえ許されない学園都市。
世界中から集まったあらゆる学術を、
無理やりセメントで固めてできた町。

実際にはコンクリートジャングルといっても過言ではない場所だったのだから。
つまり佐藤はその異質感に圧倒され、すっかり騙されていたのだ。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:09:13.55 ID:pqL2bCREo<>
駅に降りると、そこには超近代的な風景が広がっていた。
首都である東京にも引けを取らないような斬新なデザインの町並み。

「……」

佐藤は思わず言葉を忘れる。


都庁にも匹敵するような、前面ガラス張りの背の高いオフィスビル。
この町の人間を全員収容してしまうようにさえ思える大きなマンション。
そして何より、その中を自由に闊歩する住民たち。
それら全てがまるで一つの芸術のように輝いて見える。

「……すごいな。 想像以上だ……」

彼は息を呑んでその光景に見入っていた。
救済の地。
ここまでとは。

佐藤は思わず呟く。


「ここなら何かが見つかるかもしれない」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/04(月) 17:10:28.20 ID:pqL2bCREo<>
「きっと見つかりますよー。サトウユウヤさん」


突如背後から声がする。
女性の声が佐藤の思考を遮る。

サトウユウヤと言ったのか?
でも僕にここに住んでいる知り合いは皆無のはず。

自分でないサトウユウヤである可能性はあるだろうか?
それは理論上はありうる話だ。
でもそんな機会なんて人生で滅多に訪れるものではない。
その可能性は限りなくゼロに近いに違いない。

……あれ?これってまさか戯言??
もしかして西尾さんに侵食されてる??

佐藤は周囲を確認するが、自分に気を止める人はいない。

「ちょっとー」


「……えっ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:13:20.03 ID:pqL2bCREo<>
また誰かから声をかけられた?
佐藤は振り返る。しかしやはり、そこには誰もいない。

「ここですよここー」

「あっ……」


彼は声の方向を認識し、自分の足元をを見る。
そこには背の低い、小学生??のような一人の女の子が立っている。
声をかけてきたのはこの子だろうか?
佐藤は思わず彼女に話しかける

「お嬢ちゃん。迷子かい?」

「違いますよー。失礼ですねー」

「ははっ。ごめんごめん。」

「わたしはちゃんとした大人ですー」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:16:14.06 ID:pqL2bCREo<>
佐藤は絶句する。

この子は何を言っているのだろうか?

なんでこんな女性がいるのだろうか?


彼は思考する。

もしかして彼女は学園都市の研究対象なのではないだろうか?
ここでは奇形の人間を集めて研究しているとか?
それとも若返りの研究実験の被験者?
十分ありうる話だ。
何せここは学園都市。
世界中の知識が集積される場所なのだから。

「あー!もしかして今変なこと考えてませんでしたかー?」

「いや〜 すみません!失礼しました。まさか成人されているとは
思っていなかったので…… 本当にごめんなさい……」

「いいですよー、別にー。私は慣れてますからー」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:19:04.31 ID:pqL2bCREo<>
彼女はちょっとすねたような顔で言うが、
その表情にさっきまでの敵対心は見えない。
どうやら許してもらえたようだ。

佐藤は安堵して言う。

「それであなたは?」

「私は月詠小萌ですー。ここ学園都市で教師をやってますー」

「そうなんですか〜。そりゃすごいな」

「えへへー」

「それでその小萌先生が、僕に何か用ですか?」

「実はわたしは今日、西尾維新さんに頼まれてあなたを迎えに来たんですよー。」

「えっ、西尾さんに! あの人何も言ってませんでしたよ!?どういうことだろう?」


もしかして西尾さんってすごくいい人なんじゃないか?

「……すみません。ちょっと西尾さんに電話してもいいですか?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:22:25.18 ID:pqL2bCREo<>
「いいですよー」

彼はポケットから携帯を取り出して、西尾維新の情報を呼び出し電話してみる。


ぶつ切りの発信音が鳴る。

ぷるるるるるる。ぷるるるるるる。
がちゃ。

「もしもし西尾さ……」



『ただいま西尾維新は殺されております。犯人は佐藤友哉です。
あなたが佐藤友哉なら、ピーという発信音の後に懺悔(ざんげ)の言葉を、
他の人ならお悔やみを入れてください』

P。

 

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:24:59.65 ID:pqL2bCREo<>

その瞬間佐藤は思いっきり携帯を駅の床に叩きつける。
パキッっと小気味よい音がしてディスプレイが割れる。

「クソッ!クソッ!あの戯言詭弁詐欺師め!!
どれだけ人をおちょくれば済むんだ! ファッキンガッデムシット!!」

直後彼は床に転がる携帯を踏みつける。
バキッバキッバキッバキッ!

その音は駅の中まで響き渡り、
周囲の人々がギョっとした目でこちらを見始める。

ざわざわと喧騒が広がる。

さすがに佐藤もそれに気づいて冷静になるが、
しかしもはや後の祭。

ははは〜、と彼はごまかしながら、携帯だったものを決まり悪そうに拾って
ポケットに入れる。まさに粉々だ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:26:42.55 ID:pqL2bCREo<>

佐藤と小萌の間に沈黙が続く。

なんで誰も悪くないのに妙な居心地悪さを
感じなければならないのだろう?

いや悪いのは間違いなく西尾さんだ。

「……」

「……」

「……なんかすいません」

「……いえ」

そこで彼女は気を利かせて新しい話題を切り出す。

「そっ、そういえば聞きましたよー。佐藤さんは作家なんですってねー。それも推理小説家ー。すごいですよー」

「……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:27:46.31 ID:pqL2bCREo<>
「推理小説ってすごく頭を使いますよねー。わたし全然解けなくてー」

「……まあでも、たいしたものは書いてません」

「そんな謙遜しないでくださいよー」

「いやいや本当にたいしたものじゃないんです…… むしろ……」 


いや、これは彼女には関係ないことだ。

佐藤は気を取り直して言う。


「あ〜 それで、小萌先生は西尾さんにいったい何を頼まれたんですか?」

「あなたの能力開発を頼まれたんですよー」

「能力開発?いったいなんですか?それ」

「そのままですよー。能力を開発するんですー」

「えっ?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:29:58.60 ID:pqL2bCREo<>
「質問ですー。佐藤さんは作家ですよねー。
でもそれは何ででしょうかー?」

どういうことだ?
彼女は何が言いたいのだろう?
何を言わせたいのだろう?


作家である理由とは何だ?
果たしてそんなものあるのだろうか?

でも作家はポンッっ、と卵のように唐突に生まれてくるわけではない。
そこには確かに流れがあり、
原因があり、結果があるはずだ。
考えなければ。

彼は混乱しつつも何とか答える。

「ええと、僕がほかの人よりちょっとだけ国語が得意で、推理小説が大好きだったからですかね?」

「正解ですー!」

彼女はよくできたと言うようににんまりと笑う。
おそらく学校ではこういう様子なのだろう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/04(月) 17:31:44.38 ID:pqL2bCREo<>
「前者はあなたの能力、後者はあなたの意志ですー。
この二つあったので、佐藤さんは推理小説を書けましたー」

「なるほど」

「逆に言えばー、この二つがなければ佐藤さんは作家になれませんでしたー」

「ずいぶんひどいことを言われた気がする!?」


まるで自尊心を思いっきりハンマーで叩かれて、
めちゃめちゃに砕かれてしまった気分だ。
でも果たして僕に自尊心なんてあったっけ?

小萌先生は無視して話し続ける。
なんかすごく悲しい。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:34:05.29 ID:pqL2bCREo<>
「……続けますねー。『能力』と『意志』、この二つの要素によって、
佐藤さんは無事推理作家になれましたー。
わー。素晴らしいー。お見事ですー」
 
「……」

「でも佐藤さんには、別の人生を歩む可能性もあったわけですよねー?
たとえば時計職人とか、あるいはお医者さんとかー。

でもそれはただの可能性という話で、
実際に佐藤さんはそんなものになりませんよねー?」


彼は答える。
即答。


「僕には時計職人にも、医者にもなる、強い『意志』がなかったからね」


佐藤はポケットからメモとペンを取り出して簡単な図を書いて、小萌に見せる。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:34:59.66 ID:pqL2bCREo<>


  作家になる強い意志 + 意志に沿う能力 = 作家(職業)


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:38:01.24 ID:pqL2bCREo<>
「そうですー。佐藤さんには強い『意志』がありませんでした。
だからたとえ医者になる能力や技術があったとしても、
決してその職業に就かなかったんですー。
佐藤さんには、作家になる『意志』しかありませんでしたからねー。

でももしも、佐藤さんの 作家になる『意志』 に沿う形で
別の能力があったらどうでしょうか?」

「でもそんな都合いいものあるはずが……」


佐藤は言いかけて、はっ、と気づく。ここは学園都市。
予想の遥か斜め上を行く場所なのだ。

「そうなんですー。ここではそういう人間の能力分野を研究し、
開発しているんですよー。専用のカリキュラムを使ってねー。

その結果、今では「意志」と「能力」がうまく噛み合って、
魔法のように思えることができる生徒もいますよー。

たとえばある場所からある場所へ瞬間移動(テレポート)できたり、
あるいは電気を操ったりー。
体に触れたあらゆる力の向き(ベクトル)を操作できる生徒も生まれているんですー。
でもそれらは、確かに理論と証明をもちいて、
科学の中で行われていることなんですよねー」

佐藤は息を呑む。
彼はメモを書き直してみる。
つまりこういうことだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:39:22.73 ID:pqL2bCREo<>


           意志に沿う能力 
      ↓ 
作家になる強い意志 + 開発された新しい能力 = 超能力


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:41:22.86 ID:pqL2bCREo<>
彼は内なる興奮を抑えきれず、思わず震えだす。

「っじゃ、じゃあもしかして、僕もそのカリキュラムをこなしたら、
その魔法を使えるようになるってことですか??」

「魔法じゃないですよー、佐藤さんー。
超能力ですってー。
 
もちろん使えるようになるとははっきりは言えませんが、
十分可能性はありますねー。
 
今まで見てきた中でも、超能力を持つ作家さんは結構多いですよー。
佐藤さんの知ってる人で言うと、村上春樹さんや、
舞城王太郎さんとかですねー。
 
そういえば西尾維新さんもそうでしたねー」

佐藤は驚く。

「えっ!?西尾さんもっ!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:43:30.17 ID:pqL2bCREo<>
西尾さんも学園都市に?
でもそれはつじつまが合う話じゃないか?

なるほど。

彼は理解する。

西尾さんは以前ここに来たことがあった。
そして彼は、学園都市の研究機関で能力開発カリキュラムを受けた。
そのとき西尾さんはカリキュラムの過程で、
小萌先生と知り合い、能力開発を手伝ってもらったのではないか?
だから今回、彼女に頼むことができた。


じゃあなんで西尾さんは、僕をここに呼んだのだろう?


もしかしたら学園都市で目覚めた能力や経験が、
彼を変えたんじゃないか?
彼の作風に、彼の価値観に、あるいは彼の生き方自体に
に大きな影響を与えたのかもしれない。

とにかく彼は、ここで大事なものを受け取った。

だから今回、西尾さんは僕を学園都市にいざなったわけだ。

「ちなみに西尾さんはどういった能力なんですか?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:45:26.23 ID:pqL2bCREo<>
「それは西尾さんから口止めされてるんですー。
それも佐藤さんには絶対教えるなときつく言われているんですよー。
ごめんなさいねー」

「あのクソッタレ詭弁術士め! 
今度会ったらクビシメロマンチストにしてやる!!」

小萌は笑顔のまま、それをさらりとかわす。
無視ですか……

「……あ〜、でもヒントは言えますよー。
 今までのデータではですけどー、物語を書く人の超能力は、
 その人自身の作品や『作風』に深く関わってくるみたいですよー。」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:47:05.18 ID:pqL2bCREo<>
佐藤は突然、背筋にひやっと冷たいものを感じる。
彼の額から、一気に粒のような汗が吹き出る。
思考が固まる。


彼は恐怖を感じていた。


いまや佐藤は、
自身の読者を逆恨みし、
物語の形式をあざ笑い、
そして自身の作風を疑いにかかっているのだ。

そんな人間が、果たしてまともな能力なんて持っているだろうか?

彼は大きな影を感じて震え始める。
底知れぬ闇。
消えていく希望。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/04(月) 17:49:40.83 ID:pqL2bCREo<>
それを察した小萌は、すかさず彼をフォローする。

「まだわかりませんよー、佐藤さん。
データはデータであって、
それ以上でもそれ以下でもないんですからねー。

それにほかの作家さんたちと同様に、
佐藤さんの能力が作風に関係するとは限らないじゃないですかー? 
それは大きな傾向であって、
絶対そうと決まってるわけじゃないんですからー。
例外だってありますよー。

佐藤さん、とりあえず一週間ほど開発カリキュラムを受けてみましょうよー?」


彼は自分を鞭打ち奮い立たせる。
自身の肉体を、自身の精神を。
そして再び小萌をしっかりと見て言う。

「……わかりました。やってみましょう。
 僕はそのために来たんです。僕には最初から、
 後戻りなんて許されてないんですからね。」
<> <>sage saga<>2011/04/04(月) 18:03:13.11 ID:pqL2bCREo<> >>43

  
  
  作家になる強い意志 + 意志に沿う能力 = 作家(職業)
                ↓
  作家になる強い意志 + 開発された新しい能力= 超能力 



修正です こうですね〜
すみません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/04(月) 18:11:26.93 ID:pqL2bCREo<> 今日の分は終了です。
なんだか変に理屈っぽくなっちゃいましたね。
次回から気をつけます。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/04/04(月) 19:18:35.30 ID:8rEJdsKAO<> 乙
西尾ww
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/04/04(月) 20:49:43.40 ID:FmahozUAO<> このスレは場合によっては駒野を超える逸材wwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)<>sage<>2011/04/04(月) 23:22:41.84 ID:pqL2bCREo<> >>51
もう西尾さんはギャグ要員ですねww
ですが能力を持たせた以上、活躍してもらうつもりですww


>>52
駒野のスレは秀逸でしたね
あれにかなうとは思いませんよww
でもなんかうれしいww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/04/05(火) 10:58:44.09 ID:M9lsHQpgo<> 荒木先生×乙一の濃厚なBL関係とそれに嫉妬し乙一を押し倒す西尾とかどちんに萌えたころがありました。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)<><>2011/04/05(火) 17:18:26.19 ID:mWfJ68IPo<> >>54
それはなんていうか……

今日も少し早いですが
投稿していきます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:22:39.59 ID:mWfJ68IPo<>


そして今、佐藤友哉は7月20日の
うねるような夏の暑さの中にいる。

彼は学園都市のとある公園のベンチに疲れ果てたように、
どっしりと座り浴びるようにビールを飲んでいるのだった。


地面の空き缶はすでに8本に増えている。
アリは佐藤を無視して空のビールへ向かう。
すでにそれらは何本かの行列を作っていた。
アリにさえ無視される僕って……

彼は新しい『のどごし<生>』ビールをシュポッ、と開けて一気に飲む。
それからゆっくりと息を吐き出して、
再び五十何回目かのため息をついた。

「はぁ……」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:26:42.64 ID:mWfJ68IPo<>


結果から言おう。

佐藤友哉の能力開発は成功した。


7月13日から20日の今日まで、
彼は学園都市のある研究所で
カリキュラムを受け続けた。
彼は半ば引きこもりのような状態で
能力開発を指導された。

それを担当したのは芳川桔梗(よしかわ ききょう)
という研究員。

残念美人な感じの優しそうな女性。
そしてその予想を裏切る彼女の性格。
彼はおそらく死ぬまでその姿を忘れないだろう。


なぜなら佐藤友哉はそこで、

検査され、
調査され、
薬物投与され、

解釈され、
評価され、
批判され、
信頼され、

裏切られ、
痛めつけられ、
絶望させられ、

なにより自身を剥ぎ取られたからだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:27:56.50 ID:mWfJ68IPo<>
だがしかし、佐藤友哉は耐えぬいた。
地獄のような一週間を。
肉を裂き、骨を断ち、
血を流させるような一週間を。


それは彼はまだ希望を失っていなかったからだ。
暗闇の中で一筋の光を見た気でいた。
彼にはまだそれを手放すには早すぎた。
なにより佐藤自身が最後まで信じていたかったのだ。



それゆえ佐藤友哉は裏切られる。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:30:13.67 ID:mWfJ68IPo<>
信頼と裏切りは紙一重。

それとまったく同様に、希望と絶望は
一枚のコインのように存在しているはずだ。

どちらの面も同時に見ることはかなわない。

ならば彼が見た光は何だったのだろうか?


佐藤は公園の中心に設置されている、幼児向けの砂浜に目を向ける。
そこには一人のかわいい男の子が、優しそうな顔をした
母親と一緒にシャベルで小さなお城を作っている最中だった。

男の子と母親はときどき互いの顔を見合わせては笑い、
二人でまだ完成していない城を大きくしようと熱中している。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:31:27.06 ID:mWfJ68IPo<>

おそらく佐藤が見たものは他人という名の光だったのだ。
その光はあまりにもまぶしすぎて、
佐藤のコインの絶望の面をも照らした。

だから彼は、それを希望だと考えた。
偶然自分に差した幸運の光だと感じた。

そして勝手に裏切られたと思い込んだ。
つまり最初から希望なんてありはしなかったわけだ。


彼はつぶやく。

「ははっ、また戯言を語っちまったよ。僕はそろそろ西尾さんのゴーストライターになれるんじゃないかな?」

だが今の佐藤友哉には、絶望に反射した他人の光さえも
もはや見ることができない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:34:13.50 ID:mWfJ68IPo<>
そもそも公共の場である公園で、しかもこんな真っ昼間から、
酔っ払いがベンチに座ってビールを浴びるように飲んでいるのは
変ではないだろうか?

ましてや警備の厳重な学園都市の中でだ。


良識のある誰かがその状況を見て、
彼を注意してもおかしくはないはずだ。
それほど行動力がない人でも、
近くの警備員に通報しても違和感はない。


だが、この公園にきている人間は、
老若男女誰一人として佐藤友哉に気を止めない。
佐藤のベンチの隣にある自販機で買い物をする人さえ
彼の存在に気づくことはない。
チラッとも見ようとしないのだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:35:36.74 ID:mWfJ68IPo<>

そう。

これが佐藤友哉の能力。
一週間の血の結晶。

そして彼の希望の代償であり。
そして彼の絶望の反映でもある。


    
能力の名は暴力聖夜(クリスマス・テロル)。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/04/05(火) 17:37:16.78 ID:6F6k6oLAO<> 俺、佐藤裕也(`ェ´)ピャー
かと一瞬思ったが全然違った <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:38:44.27 ID:mWfJ68IPo<>
一般的に人は他人とコミュニケーションを取ろうとする時、
まず対象である相手を意識しようとするはずだ。

たとえば一週間前の駅前では、
背が低くて見えない小萌に話しかけられた佐藤は当惑し、
彼女を見つけるまで会話を交わすことができなかった。

でもそれは彼が小萌を意識するまで具体的な会話が
できなかったわけではない。

佐藤が「相手を意識してから話をはじめる」という方法で
今まで生きてきたからだ。
そしてそれは万国共通の習慣であり、常識でもある。

その流れを吹っ飛ばしていきなり独り言をつぶやき始めるような人間は、
何かを悟ってしまった詩人か、どこかの作家(NではじまりNで終わる推理小説家とか??)か、
あるいは狂人かに絞られるはずだ。



<一連の流れ>

相手を意識する→意思疎通(コミュニケーション)を取る→会話になる

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:40:16.70 ID:mWfJ68IPo<>
佐藤友哉の能力は、この最初の過程である『相手を意識する』の部分を
かっ飛ばすことができる。

彼に『相手を意識する』過程をかっ飛ばされた相手は、
もちろん佐藤を意識することも不可能だし、
実際に現実で見ることもできない。

そして意識ができないので、
佐藤とコミュニケーションを取れず、
会話も成立しない。

そのとき佐藤は周囲の空気と同化する。

ただ彼が透明人間とは違うところは、佐藤の着ているものや
持っている物も見えなくなることと、
彼を意識していない時にはなんとなく誰かいると感じるところだ。


見ようとするが故に見えない。


まさに invisible (不可視)× inventor (創作者)。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:42:39.75 ID:mWfJ68IPo<>
「……まったく戯言だよな。もはや作家じゃないだけじゃなくて、
人間ですらないなんて。
無能力者だったらどれだけよかったか……」


問題は彼の能力の内容ではない。


『なぜこの能力なのか』と言うことだ。


自分の小説を読もうとしない読者。
そのことに絶望した自分。

物語と言う伝わらない形式。
そのことに不満を抱いた自分。

そして何より、そんな物語しか紡げない
自分自身に怒りを感じた自分。

この暴力聖夜(クリスマス・テロル)という超能力は、
まさに全てに不信感を抱く
佐藤友哉の心情を表しているのではないか?

「クソッ、何でこんなことを考えてるんだ。なんだかだんだん
 極まっている気がする……
 きっといーちゃんのモデルは僕だったに違いない」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage saga<>2011/04/05(火) 17:44:04.90 ID:mWfJ68IPo<>

自虐とも取れる暴言を吐きながら、
彼は早くも空になった『のどごし<生>』を
向かいの茂みの奥へと投げ入れる。
佐藤はふとあの、カランッという乾いた缶の音が
聞きたくなったのだ。


だがその予想に反して、音が鳴ることはない。
茂みの向こうで何かが動く。


「痛ったーーー!!」


代わりに彼の耳に飛び込んできたのは若い女の子の声だった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/05(火) 17:49:24.68 ID:mWfJ68IPo<> 今日の分はこれで終了です。

理屈っぽいんだよとか
図なんて入れんなよ馬鹿とか言われそうですね……
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/04/05(火) 17:53:10.99 ID:M9lsHQpgo<> ユヤたんは怒る怒る怒るで知ったからてっきりラノベじゃなくて一般でブイブイ言わせてると思ったんだよ
がんがれ舞城に勝てなくてもがんがれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage <>2011/04/05(火) 21:11:29.79 ID:5skbXno20<> たまには滝本の事も思いだし下さい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東)<>sage<>2011/04/05(火) 21:23:06.45 ID:TQx+TptAO<> この世の中に居場所がない感じがまさにユヤタンwwでも見えないのは開発じゃなくて原石だと思(ry

このスレが毎日の楽しみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(茨城県)<>sage<>2011/04/05(火) 23:25:54.22 ID:mWfJ68IPo<> >>69
怒る怒る怒るは僕も好きです。
牛男が女の子に無理やりパンダを食べさせて
その後すぐ爆発させるところはすごくショックでした……
1000の小説は舞城に負けてないはず!
パンダラヴァー。

>>70
NHKにようこそ!は面白かったです。
今調べて知ったんですが、すごい経歴なんですね。


>>71
そう言ってもらえるとすごくうれしいです!
その言葉はホントに励みになります!
時間がかかっても必ず完結させます。
ありがとう!!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/04/06(水) 01:10:11.20 ID:1ge4J40AO<> 乙
クリスマス・テロルって具体的にはどんな能力にするんだろうと思ってたが、こうなったか…
すごい納得したwwww
村上春樹や舞城が能力者ならサリンジャーはきっと原石 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/06(水) 17:51:37.15 ID:YK/EfpcLo<> >>73
サリンジャーはすごく繊細ってところが
まさに原石って感じがしますよねww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<><>2011/04/06(水) 21:50:32.36 ID:x2atY8ge0<> >>54
勃ってきた
上一で抜いてるだけだったのが気付かないうちに腐ってるから困る <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/04/07(木) 00:11:57.24 ID:q56/PaXAO<> >>54にユヤ入ってないwwww
…クリスマス・テロルのせいで意識できなくなってるのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/07(木) 00:47:40.65 ID:Mkh3bQ84o<> すみません。
ついに明日になってしまいましたね。
今日はちょっと忙しくて……

では投稿していきます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>saga<>2011/04/07(木) 00:49:59.14 ID:Mkh3bQ84o<>

「いきなり何すんのよあんたっ!!」

背の低い茂みの向こうから出てきたのは、
これまた背の低い、まだ子供の女の子だった。
制服を着ているので、おそらく中学生だろう。

彼女は灰色のプリーツスカートに半そでのブラウス、
そのうえにはサマーセーターといういかにも
暑苦しい格好をしている。
夏なのにセーターとかありえねーだろ普通。


その中学生??が耳をつんざくような声で再び叫ぶ。

「ちょっとちゃんと聞いてる!? 黙ってないで何か言ったらどうなの

っ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 00:52:22.02 ID:Mkh3bQ84o<>

「うるさいです」

「〜〜〜ッ!! 何それ!! 人の頭に空き缶当てといて!!」


中学生は空になった『のどごし<生>』を佐藤に見せつける。
そしてわざとらしく彼の前でそれをつぶして見せた。
めりめりめり、という嫌な音がする。


おお怖い。


少女が怒鳴る。

「あんた私に言うことあるでしょっ!?」


しれっとした顔で佐藤は言う。

「未成年の飲酒は禁止だよ」

「違うでしょっ!! そこじゃない!!」

「えっ、じゃあもしかしてご家族の方に頼まれたのかな? でも平成の

今じゃ法律が厳しくなってるからそれも違法だけど……」

「全然違う!!! 私はそんなこと言ってるんじゃない!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 00:54:43.41 ID:Mkh3bQ84o<>
「ああそうか、わかった。
ノンアルコールのお酒を買おうとして間違ったんだね。
でもちょっと君にはKIRINのキリンフリーはお勧めできないな。
あれは苦すぎて初心者にはハードルが高いと思うよ。
僕的にはどちらかというとサントリーのオールフリーがお勧めだね。
シンプルな缶自体のデザインがいいし、のど越しもいい。
何より味が……」

「ふざけんのもいい加減にしろっ!! 
全然関係ないじゃない!!」

「じゃあいったい君は何が言いたいんだッ!!!」

「なんであんたが逆切れしてんのよ!!」


どうやらふざけすぎたみたいだ。
彼女は顔を真っ赤にして僕をにらんでいる。
なんだか頭から湯気が出てきそうな雰囲気だ。
ちょっとコミックじみていて面白い。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 00:56:07.37 ID:Mkh3bQ84o<>
「ぷっ、くくく」

佐藤は思わずふき出してしまう。

「〜〜っ!!何がおかしいのよ!!」

「……ごめんごめん。でも……っくくく」

「〜〜ッもう頭にきた!! さっさと認めて謝りなさいよッ!! 
あんたが缶を投げたことは分かってるんだから!!」

女の子が握っている缶が次第に小さくなっていく。
いったいどういう仕組みだろう??


佐藤は知らぬふりを通す。

「他の誰かが投げたんじゃない? 僕は見てないけど」

「そんなはずないでしょ!?
 この公園にはあんたと私しかいないんだから!!」

「そんなはずないよ。だって……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 00:57:38.60 ID:Mkh3bQ84o<>
その言葉を聞いて、
佐藤は周囲を見渡してみる。

さっきまでは確かにいたはずの散歩客がすっかりいなくなっている。
近くの砂場で遊んでいた親子の姿も忽然と消えてしまっていた。
公園には自分たち以外にはもう人っ子一人いない。


……あれ?


彼は苦し紛れに言い訳してみる。

「きっ、きっとその空き缶を君にあててすぐ逃げたんだよっ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:00:22.28 ID:Mkh3bQ84o<>
「そんなわけないでしょっ!!
何よりあんたのすぐ足元に、空き缶が
大量に転がってるじゃない!!」

「ッ!!」

しまった!


証拠を自分で提示していたなんて……
なんということをしてしまったんだ……
推理小説家としてのこの失態。
あっ、もう違うんだっけ?
とにか事態は本格的にまずい状況だ。


少女は怒りに顔を引きつらせて言う。

「あんたを見てるとあのツンツン頭の馬鹿を思い出すのよね。
いっつも人を見下したような口の利き方で、相手の話を聞こうとしないアイツ。
人の気持ちを考えないあの強者の態度。ああムカつく!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:02:18.56 ID:Mkh3bQ84o<>
そのとき彼女は何かを思いついたのか、
にやりと不気味に笑う。
絶対にいいことじゃなさそうだ。

「そうだ。この際だからあんたで試してみるわ」

「えっ?」

「超電磁砲(レールガン)って知ってる?」

レイルガン?何だそれ?
聞いたこともないぞ?
なにか特殊な銃だろうか?

「理屈はリニアモーターカーと一緒でね、超強力な電磁石を使って金属

の砲撃を打ち出す艦載兵器なんだけど…… 」

少女はいきなりはピン、と指でコインをはじいて自分の真上に飛ばす。
そして彼女は落ちてきたコインをちょうど親指に載せて、


「――こういうのを言うみたいなのよね」



 ズドーーーーーーーーーーン!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:05:44.19 ID:Mkh3bQ84o<>

その瞬間、佐藤友哉は自分に何が起きたか
まったく理解できなかった。

ただ自分の顔のすぐ横を、まるで超スピードのジェット機がすれすれで
飛んでいったような感触だけが彼に残っている。
もしかしたら既に、彼の鼓膜は跡形もなく
破れ散っているかもしれない。

それほどの衝撃。


そして彼の角膜には、得体の知れないオレンジ色の
光線が焼きついている。
その出所はおそらく佐藤の目の前に立っている
少女から発せられたものだろう。

なぜなら少女が依然として、佐藤に向かって自分の親指を
向け続けているからだ。

「こんなコインでも、音速の3倍で飛ばせばなかなか威力がでるのよね

〜」

「っ!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:10:13.75 ID:Mkh3bQ84o<>

彼は体全体が瞬時に固まった氷のようになってしまい、
うまく考えられないでいる。


「どうやら言葉も出ないようね」

少女は悦に入ったようにニヤニヤと笑って言葉を続ける。

「でもこれで終わりと思ったら大間違い。
あんたは私にあんな屈辱を
味わわせたんだから。
その責任はとても大きいわよ!!」

彼女は獲物を追い詰めたような目で彼をにらむ。
その口はゆがんでいて、
不気味に白い歯を彼に見せる。

そして少女の肩まである茶色の髪は、
まるで力を持ったようにゆらゆらゆれて、
時折電極みたいにバチバチと花火を散らしている。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:12:15.62 ID:Mkh3bQ84o<>

それを見た佐藤は、不意に西尾維新との
会話を思い出す。

そういばここに来る前に、
西尾さんは序列が何とかって
言ってなかったっけ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:15:52.04 ID:Mkh3bQ84o<>
「おいよく聞けよ佐藤。
学園都市には能力の強さに応じて
ランキングみたいなものがある。
能力者に各自の能力に応じて
レベル0からレベル6までの段階に分類されるんだが、
まあそれは気にしなくていい。無視しろ。


俺がお前が言っておきたいのは、
学園都市における超能力者の序列だ。

いいか、何があっても1位から7位までの超能力者には手を出すな。
近づくのもだめだ。まともにやりあう前に殺されるぞ。


まず1位が一方通行(アクセラレータ)。
こいつは体表面に触れたあらゆる力のベクトルを任意に操作できる。
一番危険なやつだ。
こいつに会ったら最後、過ぎ去るまで
自分の幸運を願うしかない。


次に出てくるのが第二位の垣根 帝督(かきね ていとく)。
未元物質(ダークマターを操る能力者だ。注意しとけ。


そして3位が御坂美琴(みさか みこと)。
まだ中学生の少女にすぎないが、
油断してるとぶちのめされるぞ。

彼女は電気を自在に操ることができるんだ。
でもそれだけじゃない。
もっと厄介なのは彼女が編み出したレールガン。
こいつは物体に電磁加速を加えて高速で放つ、さながら巨大な弾丸だ。
食らったらひとたまりもないぞ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:17:34.82 ID:Mkh3bQ84o<>


……そうか、思い出した。

今僕の目の前にいる少女は、
序列第三位の御坂美琴じゃないか?
いやそうに違いない!

髪が火花を散らしているのは電気を放出してるからじゃないか?
それについさっき彼女が放った攻撃を、
自分でレールガンって言ってたわけだし。

つまり彼女がこの学園都市で3番目に強いやつってわけだ。
なんか四天王の一人みたいだが。いや七天王か? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:19:49.80 ID:Mkh3bQ84o<>


でもそれがいったい何だって言うんだ?


そんなの僕には関係ないはずだ。
なぜなら今の僕はinvisible(不可視)にしてinventor(創作者)。
暴力聖夜(クリスマス・テロル)の能力者。

僕を捕まえることは誰にもできないし、
僕を殴ることは誰にもできない。

それに彼女はすごく怒っているようだけど、
僕だって負けないくらい憤っているのだ。
はらわたが煮えくり返るほどに。


僕はあらゆるものを許せない。
森羅万象を拒否したいと思う。

僕は今、怒って怒って怒っている。

その限界値はなく、その境界線はない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:22:41.79 ID:Mkh3bQ84o<>
佐藤は少女に向かって挑発する。
激しい怒りに身を任せて言う。

「さっさとやってみろよクズが!
レールガンがなんだ!
どうせ直前になって、
人を傷つけるのが怖くなって躊躇してんだろ?
んなやつは早くママのところに帰って震えてろよ。
結局お前は何にもできない無能力者と何一つ変わらないんだ。
ほら打ってみろ!超電磁砲さんよ!!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!! 
 だったらお望み通り打ってやるわよ!!
 その身がふっとんでから後悔しろっ!!」


美琴は再びコインを空中に飛ばし、
超電磁砲(レールガン)を放つ準備を始める。

その瞬間佐藤は暴力聖夜(クリスマス・テロル)を発動させ、
立ち上がってベンチから離れようとする。

だがその佐藤の意思に反して状況は変わらない。
彼女はその目でいまだ彼の姿を捉え続けている。
どういうことだ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:23:54.47 ID:Mkh3bQ84o<>

そこでやっと佐藤は気づく。
自分の足元のものに。
地面に大量に転がっているビールの空き缶に。

「クソっ!そういうことか!」

佐藤はアルコールを取りすぎていたのだ。
まはや彼の頭の中では世界がぐるぐると回っているだけで、
演算の機能を果たそうとしない。
彼の脳はずいぶん前から自身のコントロール下にはなかったのだ。
彼はしくじったのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:26:16.79 ID:Mkh3bQ84o<>

ここまでか、と佐藤は思う。


僕が悪かったのだろうか?
周りの世界に絶望するあまり、
他人に怒りをぶつけた自分が。
全てを拒否しようとした自分が。

ならばこれはその報いであり、罰じゃないのか?
もしここで僕が能力を発動して一時的に危機を避けたとしても、
いずれこうなる運命だったのではないだろうか?

それならば僕はその運命と、
僕の報いを受け入れるしかないだろう。


佐藤友哉は覚悟する。
自分の終わりを。
自分の死を。


そして彼は目をつぶろうとする。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:27:06.21 ID:Mkh3bQ84o<>

美琴の周囲にものすごい火花がバチバチと散っている。
きっとさっきの一撃より強くする気なのだろう。
彼女の親指にコインが載り、ついに超電磁砲(レールガン)が発射され

る。



「諦めるのはまだ早いんじゃねえか?」



ズドーーーーーーーーーーン!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:31:08.60 ID:Mkh3bQ84o<>

この瞬間自分に巨大な衝撃、


が来てない?


佐藤は自分の体を意識するが、
どうやら無事なことを知る。
それどころか彼は傷ひとつ負っていないようだ。
なんでだ?


目を開けると、彼の前に一人の少年が立っている。
ツンツン頭の少年はこちらを振り向くと、
佐藤に話しかける。

「あのーー、大丈夫っすか?怪我はないみたいですけど……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage saga<>2011/04/07(木) 01:33:31.42 ID:Mkh3bQ84o<>
「君が助けてくれたのか?」

「まぁ、そういうことになるかもしれないですね」

「……」

直後佐藤は意識が遠くなり始める。
さっき能力を使おうとした時の演算の負荷が
今になって脳を襲い始めたのだ。
これも報い。


佐藤友哉は薄れゆく意識の中で少年に尋ねる。

「君の名前は……」

「上条。上条当麻です。上座の上に、二条城の条です」

「そっか…… 上条君か…… 
ありがと……」

そう言い終えると、彼はベンチの上で完全に意識を失う。


これが上条当麻と佐藤友哉の最初の出会いであり、
同時に7月20日という地獄の始まりでもあった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/07(木) 01:43:42.48 ID:Mkh3bQ84o<> これで今日?は終了です。

誤字が多くてすみません……

>>75
なんていうか……
いろいろとひどいww


>>76
それは間違いなくクリスマス・テロルの
影響ですww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/04/07(木) 02:47:12.17 ID:+9AtEh0Lo<> ヤバいユヤたんが可愛く見えてきた <> 名無しNIPPER<>sage<>2011/04/07(木) 09:32:37.45 ID:x6wtL5NAO<> この情緒が安定してない所がまさにユヤタンwwwwww途中途中弘明から公彦みたいになってるwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/08(金) 00:19:52.38 ID:TqILa0RHo<> >>98
そうですかww
これからがユヤタンの見せ場
です!たぶん……

>>99
言われて気づきました。
確かにそうですねww
事件の中心でありながら
活躍しないところとかww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/04/13(水) 00:30:36.53 ID:hpOXgtYS0<> すみません……
一週間ぐらい投稿できません
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/04/14(木) 16:43:18.06 ID:5CkntEhv0<> 待ってるよ <>