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lain.
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ぼくらの魔法少女まどか☆マギカ
1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:41:09.77 ID:vZ0FaaUq0
『魔法少女まどか☆マギカ』と『ぼくらの』のクロスオーバーSSです。
■二つの作品の設定をまぜ合わせたため、その作品の設定とは矛盾が生じる場合があります。
■『ぼくらの』からの登場キャラはコエムシのみと考えてください。
■文章はかなり稚拙です。
■物語の中心に絡む完全オリジナルキャラは出ませんが、半オリジナルキャラが多数出てきます。
(主な登場キャラクターの名前)
鹿目まどか・美樹さやか・暁美ほむら・巴マミ・佐倉杏子・志筑仁美・キュウべぇ
藤咲梨香(ゲルトルード)・花澤紗瑠(シャルロッテ)・倉科絵理(エリー)・桜庭ベル(イザベル)・羽鳥玲奈(パトリツィア)・内海マリア(エルザ・マリア)
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:41:59.16 ID:vZ0FaaUq0
―――中学生になった時、ぼくらはもう一人前で何でもできると思った。
―――ぼくらは泣いたり笑ったり怒ったり、もう、この世の中のことはほとんど知った気になっていた。
―――でも本当は父や母に守られ、社会に守られているただの子供だった。
―――本当の悲しみや喜びや怒りは、そんな日常の中になかった。
―――それを知ったのは、あれ……あれに出会ってからだった。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:44:36.78 ID:vZ0FaaUq0
夏休み……まだ子供っぽさが抜けていない中学二年生の夏。仕事などの都合で家を空けがちな両親は、娘である暁美ほむらを一週間の学習交流自然学校へと送りだして……いや、預からせていた。
もともとは学校が企画したもので、そういったものに興味を持つ者が数ないのか、参加した者は少ない。中学一年生が二人、中学二年生が八人、中学三年生が一人に、十一人が、今回の参加者だった。
それと、偶然自然学校の宿泊先で出会った同い年くらいの少女を加えれば、十二人である。
それぞれ、面識があったわけではなくぎこちない会話が最初の頃は続いてはいたものの、同年代で全員が女性ということが幸いしたのだろうか? 一日、二日と経つと、気づけばほとんど打ち解けて気軽に会話できる仲となっていた。
そして今日、自然学校の五日目。今日の主な行事は自然観察という名の、水遊びである。
「風が気持ちいいね、ほむらちゃん」
「うん、いつもよりも涼しく感じる……」
海から少し離れた岩場に座っていた鹿目まどかの問いかけに、ほむらは素直に答えた。座っている岩もちょうど場所が日陰になっているためか、心地いい冷たさを感じさせている。
「このまま横になって寝ちゃおうかな!」
「え、だ、ダメだよまどか……! 危ないよ……」
「えへへ、冗談だよ」
いつもの笑顔を見せた後、まどかは海辺にいる10人の様子をじっと眺める。少し羨ましそうな目で見るまどかに、ほむらは……
「まどか、私に気にしないでいいんだよ?」
「え?」
「昨日、私が足をつっちゃって溺れそうになったから、こうやって傍にいるんだよね」
昨日まどかと別行動をしていたほむらだったが、一人で海に浮かんでいた時、不意に足がつり溺れかけた事があった。
そばにいたマミの救出のおかげで無事に済んだのだが、それからというもの、まどかはほむらのそばを決して離れようとはしなかった。同じ事がもし起きたら……優しい彼女のことだから、きっとそう思っているに違いない。
「そんなことないよ! わたしも、昨日泳いで満足しちゃったし」
「でも……」
「そういえば、みんな昨日と違ってバラバラだよね!」
まどかは話を逸らすように、海辺にいる10人の少女たちに向けて指さす。
ほむらは、そんなまどかを見て申し訳ない気持ちになってしまう。でも確かに、まどかの言う通り昨日は全員が海の中にいたのに対して、今日の“みんな”の行動は大きく違っていた。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:49:54.82 ID:vZ0FaaUq0
ほむらとまどかの視線の先には、
「こらぁさやかーっ! 昨日ずいぶんと泳いだんだから今日は私たちの手伝いしなさい!」
「えー委員長のケチー」
「芸術は自由を求めなきゃいけないんですよ、センパイ♪」
美樹さやかと桜庭 ベル(イザベル)に注意しているのは、見滝原中学3年生で風紀委員長でもある羽鳥 玲奈(パトリツィア)だ。しかし、さやかとベルがまったく言う事を聞かないためか、実力行使で海から引きずり出そうと二人を追いかけ、それを楽しむように二人は逃げている。
「あっ、いまの貝はすごく綺麗だね」
「ひゃう!? も、もしかして……欲しかった……?」
「いや……ボク、そういうつもりで言ったつもりなかったんだけどな」
「あまり怯えさせるなよな」
磯辺で倉科 絵理(エリー)が貝や石を集め、お菓子を食べながら佐倉杏子と花澤 紗瑠(シャルロッテ)がその様子を眺めている。
「わっ!? ……コレ、なに?」
驚いた声を上げたのは、藤崎 梨香(ゲルトルード)である。
「いそぎんちゃくね、写真を撮っておきましょう。あ、岩場にくっついている貝で足を切りやすいから、足下には注意するのよ」
「はい、マミさん」
「さすがマミさん、よく周囲の動きをよく把握していますね」
「先輩……だからね」
巴 マミ、藤崎梨香(ゲルトルード)、そして志筑 仁美と内海 マリア(エルザ・マリア)は自然観察に取り組んでいる。
しかし、マミを中心に雑談を交えているためか、そこまで真剣といった雰囲気はなく、むしろ和気あいあいといった雰囲気が遠くからでも感じられた。
「みんな、楽しそう」
「うん! 多分だけど、みんな今じゃこの自然学校に参加してよかったと思っているんじゃないかな」
この自然学校に来てよかった……確かに、そう思う。いままではまどか、巴マミ、それと美樹さやかと志筑仁美しか友達がいなかったほむらも、いまでは11人全員とそれなりに親しく話せるようにまでなっている。
「私も……来て、よかったと思う」
「うん、わたしもだよ! ほむらちゃんとも……もっと仲良くなれた気がするし」
ほむらは、その言葉に恥ずかしくなり視線を逸らしてしまう。
その時だった―――
ほむらが、黒い少女が磯辺に立っているのを見たのは……
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:51:47.53 ID:vZ0FaaUq0
(誰だろう……あの人……)
夏とは思えない黒一色のジャケットとロングスカートを身にまとい、同じく黒く長い髪を赤いリボンで一つに束ねたその姿は、あまりにも「いつもの」風景にとっては異物といえる存在だった。
その黒い少女は、じっと海の方だけを眺めている。
「ん……? あれ、誰だ」
「うっわ、黒いですね〜」
「ゴスロリ……? コスプレ……?」
他の人も、その少女の異端さに目線を止め、引き寄せられるように彼女の方へと集まっていく。
ある者は不審な目で、ある者は興味の目で、ある者は心配の目で見つめているが、黒い少女はまったく無関心と言わんばかりにこちらへ反応しなかった。
「じ、地元の人ですか?」
玲奈が意を決し、黒い少女へ言葉を向ける。
まるでいまさら気づいたかのように、黒い少女は12人の方へと視線を向けた。急に向けられたため、玲奈は誤魔化すように愛想笑いを浮かべてしまう。
「あ、あはは……」
「……あなたたちが、ね」
黒い少女は12人を見渡し、値踏みするような目で見ていく。その超然たる様子に圧倒されてしまい、声を出そうにも漏らすことしかできない。
そして、何かに納得したようにうなずき、言った。
「あなたたち、ゲームをしてみない?」
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:53:55.72 ID:vZ0FaaUq0
……ゲーム? ほむらには、その言葉が理解できなかった。
他のメンバーも同様のようで、眉をひそめ困惑の表情を作っている。
「ゲームって、なに?」
初めに言葉を返したのは、紗瑠だった。少女は黙ってその問いにうなずく。
「私が作ったゲームよ。そのテストプレイヤーを探していたところなの」
テストプレイヤー。その言葉で少しだけ理解できたのか、少女たちはさまざまな反応を見せていく。黒い少女は気にすることなく話を続ける。
「あなた達なら、ちょうど適任ね」
「どんなゲームなの?」
質問したのは、さやかだ。
「世界の悪魔の手から守る、魔法少女のゲームよ」
“魔法少女”という言葉が聞こえたとき、まどかの目がわずかに見開かれたのをほむらは見逃さなかった。
「この世界に、12体の魔女という怪物が襲ってくる。当然、人の手では対抗できない……対抗できるのは、契約を交わした魔法少女のみ。あなた達は、魔法少女になって魔女の手からこの世界を守るのよ」
「へぇ〜……おもしろそう!」
「魔法少女は、やっぱりロマンの結晶ですからねー。俄然、興味が出てきました!」
興味を強く持ったのか、さやかやベルが目を輝かせて前に出ている。他のメンバーも一週間何もない村で過ごして退屈だったのか、興味を持って黒い少女を見ていた。
「興味は持ってもらえたみたいね……どう、やってみないかしら?」
「はいはい! あたしやるー!!」
最初に手を上げたのは、やはりさやかだった。
「んじゃ、アタシもやろうかな」
「では、私も」
「やるけど、報酬とか出ないの?」
「コラ紗瑠、そういう考えはいけないわよ!」
次々と手を上げる10人の少女たち。そして、黒い少女はほむらをじっと見据えた。
「あなたは……どうするかしら?」
彼女と目が合った時、ほむらはゾワリとした寒気を感じた。言葉が出ず、コクコクと少女の問いにうなずくしかなく、彼女が目線を外すと重くのしかかった感覚は消えていった。
「これで11人。これでいいわね」
「あ、あの……」
少女たちのほとんどが手を下げた中、おずおずと手を上げたのはまどかだった。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 17:57:45.45 ID:vZ0FaaUq0
「わたし……ゲームとか、よくわからないですけど、やっていいですか?」
「ダメよ」
黒い少女は、きっぱりと言った。
「いまので定員になってしまったの。途中からならかまわないから、我慢して頂戴」
「……はい」
「一人くらいならいいじゃない」
「あなたは黙ってなさい」
黒い少女の言葉にさやかはムッとした顔を見せるが、渋々と引き下がった。まどかもそれ以上は何も言わず、少しだけうつむいていた。そして、それを見ていたほむらは、胸を締めつけられそうになる。
「さて、それじゃあゲームを始めましょうか」
黒い少女は気にせず、話を続ける。
「ゲームって言っていたけど、コンピューターゲームなの?」
紗瑠が尋ねる。黒い少女は首を横に振り、その問いを否定した。
「そんな小さな物じゃないわ。行くわよ―――」
黒い少女の言葉の意味がわからなかったが、次の瞬間、視界にノイズのようなものが走った。
「やぁ、来たみたいだね!」
少女たちは確かに、炎天下の磯辺にいたはずである。しかし、いま目の前に広がる光景は……海も、磯も、それどこか空すらなかった。
白。白の空間。そこにあるのは壁がどうかもわからない白一色の空間。そして目の前に、ソファと様々な風景を映像のように映し出している巨大な紙のようなものが何枚も天井にぶら下がっていた。
それと、ぴょんぴょんと跳ねまわる白い動物だ。
「ここは神聖なる契約の場所。すべての始まりの地だ」
12人の少女たちの目の前で、白い動物が言った。
「驚かなくていいよ。君たちはもう、ゲームの中にいるのだから」
目の前に動いているこの奇妙な白い動物は何なのだろう? さまざまな疑問が浮かんでいくなか、ほむらはソファに先程の黒い少女が座っているのを見つけた。
「あ、あの……」
「私から話すことはないわ。そこにいる白い動物の話を聞きなさい」
少女は決してこちらを向かず、ソファに座ってうつむいたまま言った。まるで表情を見られたくないように、少女の顔はこちらからは見えない。ほむらは仕方なく白い動物の方へ向くと、いつの間にか動物はさやかと杏子に弄ばれていた。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:01:02.69 ID:vZ0FaaUq0
「こいつなんだ? ウサギ……いやネコか?」
「そもそも何で喋れるの?」
足を引っ張ったり、頬をつまんだり、ポンポンと頭を叩いている。
「やめて、僕をいじめないで!!」
「いじめてねーよ」
しかし嫌がっているようなので、杏子は白い動物を手からパッと離した。急に離されたためか、受け身をとることができず白い動物は頭から床へ激突する。
「ぷぎゅ!?」
「ああ、悪いな」
杏子は悪びれる様子もなく、そう言って形だけ謝る。マミが倒れている白い動物を抱きかかえるが、どうやら目が回っているようで頭をクラクラと揺らせていた。
「ちょっと佐倉さん、少し酷いと思うわ」
「これくらい着地できると思ったんだよ」
「いきなり落とされて着地できる動物がいるハズないじゃない!」
「いや、いいんだよマミ……」
もそりとマミの手から起きあがった白い動物は、杏子から少しだけ離れた場所に立つと、12人に対して満面の笑顔を見せた。
「僕の名前はキュウべぇ。このゲームのプログラムみたいなものだと思ってくれてかまわない……さぁ、僕と契約して魔法少女になってよ!!」
「契約って言っても、そもそもここはどこなのですか?」
キュウべぇの言葉を聞いても、状況を理解できない様子だったマリアが尋ねた。
「マリアさん、さっき言ってたじゃないですかー? ここはもうゲームの中みたいですよ」
「ゲームの中? それでは、バーチャル空間みたいなものなのでしょうか?」
その言葉を聞いて、キュウべぇはマリアにうなずく。
「まぁ、そう思ってくれてもかまわないよ。さて……それよりも」
キュウべぇがそう言うと、いきなり野球の三角ベースのような板が現れる。宙にふわふわと浮いたソレは、ますますこの場所が非現実だという事を思わせる。
「僕と契約して、魔法少女になりたい者は……この板に手を触れて名前を言うんだ」
「触って、名前を言うだけ?」
「そうだよ!」
絵理の質問に、キュウべぇは明るい口調で答える。
「それじゃあ、あたしから!」
さやかが前に出て、躊躇することなく板に手を触れる。
ほむらは気になってソファへ視線を移すが、黒い少女は相変わらずその光景を決して見ようとしなかった。
「美樹さやか」
何が起きると後ろにいた少女たち、そして何よりさやかが固唾を飲んで待つが、とくに何か起きた様子はない。
「まだ契約しただけだからね。さぁさぁ、次だよ次」
「ちぇっ、ちょっと拍子抜けだなー」
不満そうな声をあげるさやかとすれ違う形で、巴マミが前に出る。
「巴マミ」
マミは板ではなく、キュウべぇを見ながら板に触れ、名前を言った。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:02:24.18 ID:vZ0FaaUq0
あとは、交替していく形で少女たちは次々と板に手を触れ、名前を言っていく。
「志筑仁美です」
「佐倉杏子だ」
「倉科絵理……です」
「桜庭ベル!」
「羽鳥玲奈よ」
「花澤紗瑠」
「藤崎……梨香」
「内海マリアです。よろしくお願いします」
マリアが石板から手を離し、後ろへと下がっていく。残ったのはほむらとまどかだけだ。
「君たちは契約しないのかい?」
キュウべぇが不思議そうに尋ねてくる。
「あ、あの……一人余分に契約することは、できませんか?」
「全然かまわないよ! 契約者は多いに越したことはないしね!!」
その言葉を聞いて、まどかの顔がぱぁっと明るくなる。
「そ、それじゃあ―――」
「ダメよ」
不意に、後ろからの声によって、まどかの言葉を遮断される。先程までソファで座っていた黒い少女が、立ち上がり冷たい目をまどかに向けていたのだ。
「あなたはダメ。どうしても契約したいなら、ゲームが途中まで差しかかってからにしなさい」
「別にいいじゃないか。それとも……君にとって、何か不都合があるのかい?」
さやかとベルが「そうだぞー!」と後押しするように言葉をぶつける。黒い少女は落ち着いた仕草で髪をなびかせ、その言葉を受け流した。
「この子が契約したら私を含めて契約者は13人。13という言葉は不吉なのよ」
「僕から言わせれば、すぐに12人になるから構わないと思うけどね」
キュウべぇの言葉に、マーヤは鋭い目つきで睨む。その目には敵意が感じられ、明らかにプログラムに対する感情とは思えなかった。
「……わかりました! じゃあ、わたしはいいです」
「まどか……私が代わりにやらないでも、いいんだよ?」
「それはダメだよ、ほむらちゃん。それに、途中からなら参加しても大丈夫みたいだし!」
まどかはニコッと笑顔を見せるが、明らかに無理している様子だった。
「わたしは、大丈夫だから」
「……うん、わかった」
「じゃあ、最後は君だね」
「……はい」
ほむらは歩き、石板の前へ立つ。そして、石板へ手を近づけ―――
「暁美……ほむらです」
自分の名前を、言った。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:04:40.95 ID:vZ0FaaUq0
※いまさらだが、少女たちより“みんな”とかの方が良かった気がしてきた OTL
「―――これで契約は成立だ。おめでとう! 君たちは晴れて魔法少女の卵となった!」
「魔法少女の卵? それじゃあ、まだ魔法少女になってないってこと?」
「いまのところは、まだあなた達は魔法少女じゃないわ」
「大丈夫! すぐに君たちも魔法少女になれるよ」
キュウべぇの声は祝福するように明るかった。しかし、それに対して黒い少女の表情はまったく変わらず冷たい雰囲気を漂わせている。
「これから、次々と魔女がやって来るわ。最初の敵は私が倒す。そこからは、あなたたちの番よ」
黒い少女は、契約された少女たちを一人一人見ながら喋っていく。
「気を引き締めてね。負けたらそこで終わり、リセットボタンは効かないわ」
最後に、まどかとほむらを見た黒い少女の目は、どこか悲しそうだった。
「では、また―――」
黒い少女の言葉と共に、ほむらの視界はノイズで覆われる。最後に見た黒い少女の表情を残して、ほむらの記憶はそこで唐突に途切れるのだった。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:07:26.57 ID:vZ0FaaUq0
なにも起きる事なく、自然学校5日目は夕食の時間へと向かっていった。
「結局、あれは夢だったのかな?」
「夢よ夢、いくらなんでも非現実すぎるわ」
「でも、12人全員が同じ夢を見るかなー?」
思い出すのは、数時間前の光景である。
ほむらが次に見た光景は、炎天下の中の岩場だった。猛烈な暑さが、冷えていたハズの体を再び熱くさせていく。慌てて起きあがると、他の11人も岩場の上で倒れている。
「熱いッ!」
不意に横から聞こえてくる大声と共に、ベルが勢いよく起きあがった。
「ん? あ、ほむらおっはよ〜!」
気の抜けた声とほわわんとした笑顔を向けるが、顔からは汗をダラダラと流し始め、やがてウンザリとした表情へと変わっていく。ほむらの周りでは他のメンバーも倒れており、暑さによってか疲れたように次々と起きあがっていく。
この場にいたままだと熱中症になりかねなかったため、全員は岩場から離れ陽の当らない木陰へと移動したのだがそこで帰りが遅いからと心配した引率の先生が迎えに来てくれて、そのまま利用している民宿へと戻ってきたのだ。
「全員が同じ夢を見るのと、いきなり変な場所に連れられて契約なんてさせられるのは、どっちがありえると思っているのよ」
「それは同じ夢を見る方がありえそうですけど、それでもさっきのが夢だとは到底思えないんですよねー」
「いーえ、夢よ夢、非現実的すぎる」
「ほむらちゃん、ほむらちゃん!」
ベルと玲奈の口論の様子を眺めていたほむらの肩を誰かが叩いてくる。振り向くと、まどかが目を輝かせながら目の前にノートを広げていた。
「あれ……まどか、これって……」
それは、まどかがいつも持っていた“魔法少女ノート”だった。
「これ、まどかの新しいデザイン?」
ほむらの後ろから身を乗り出してくるのは、美樹さやかだ。
「うん、魔法少女って変身するものだと思うから、もし服を好き選べるならこんなのがほむらちゃんに似合うかなーって」
白と淡い灰を基調とした、可愛らしさより格好良さを押し出したデザインである。
「あーほむらだけズールーい! あたしのも描いてよ!」
「うん、さやかちゃんもあるよ……ほら!」
さやかの服は、背中の大きなマントが特徴的で快活さと騎士っぽさを併せ持ったデザインだった。
「さっすがあたしの嫁! あたしのことよくわかってるー!」
「ちょ、ちょっと……くすぐらないで……あははは!!」
さやかが抱きついてくすぐるのを、まどかは笑いながら押しのけようとするが、そんなに力を入れていないからかさやかを引きはがす事はできていない。もう恒例のスキンシップとなっているためか、抵抗感が出ないのだろう。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:09:16.11 ID:vZ0FaaUq0
「…………」
「少し、妬いちゃうんじゃありませんか?」
「え?」
そんな二人の様子を見ていたほむらに向けて、後ろにいた仁美が声をかけてくる。
「さやかさんがああやって積極的な行動に出られるのが、少し羨ましいのではないかと思いまして」
「…………」
『まどかーっ!』
『えへへ、やめてよほむらちゃん!』
抱きつく自分と嬉しそうに嫌がるまどかを想像して、思わず口元で笑みが出来てしまう。
「やっぱり、羨ましいみたいですわね。顔に出ていますわよ?」
「か、顔に出てた……?」
「ええ、それはそれはとっても」
仁美のいじわるそうな笑顔と言葉で、ほむらは顔を紅潮させてうつむいてしまう。仁美はというとそれ以上の追及をすることなく、まどかとさやかの様子をじっと眺めていた。
「さやかさんの積極的……私には本当に羨ましいですわ」
「え?」
ふと、仁美が聞こえるか聞こえないかの小ささでボソリと呟いた。聞かれたのに気づいたのか、仁美はほむらに対して笑って誤魔化す。
「何でもありませんよ」
夕食を終えると、全員は夜の散歩と言って外に出ていた。夏は夜でも蒸し暑い日が多いが、海が近いここでは、夜は心地よい涼しさとなっている。
「結局、夜になったけど何か変わった様子はないね」
紗瑠が残念そうに言う。
「やっぱり、あれは夢だったのよ」
玲奈は当然だと言いながら、散歩の先頭を歩いていく。
「でもでも、夢にしては明確すぎませんか?」
「そういう夢もあるんじゃないの。もう……この話はおしまい!」
無理矢理話を終わらせると、玲奈は前へと進んでいく。
ベルやさやか、紗瑠などは腑に落ちない表情を浮かべているが、玲奈の意固地なまでの否定に、何か言い出す機会を失っていた。おそらく玲奈も含めて12人のほとんどが、あれがただの夢と思っていないはずだ。
ほむらも同じだった。あの光景が夢だったとは、とても信じられない。
「マミさんは、どう思いますか?」
横に並んでいたほむらの問いに、マミは考えているように視線を宙に向けるが、すぐにこちらへと視線を戻した。
「もしかしたらだけど……」
そう念を押した上で、マミは言葉を続ける。
「さっきのも含めて、これが現実だとしたら……」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:12:14.18 ID:vZ0FaaUq0
その言葉を、ほむらは最初理解できなかった。
「それってどういう―――」
「きゃぁあああああああああああ!!」
ほむらが意味を聞こうとしたその時、前から高い悲鳴が聞こえてきた。前に行っていた玲奈の声である。マミが誰よりも早く前へと走り、続いてマリア、そして次々と前へと走り出す。
すぐに玲奈の姿は見つかった。尻餅をつき、体を震わせながら前方を指さしている。
そして―――ほむら達は目の前に立っている、異形の存在に気づいた。
「え……なに、これ……」
「じょ、冗談……だよね?」
猿……いや、犬? 二足歩行で前に姿勢を傾けた『怪物』は、こちらを見て低い音と共に息を吐き出している。
「みんな、急いで逃げなさい!」
マミが前に立ち、他のメンバーに向けて言おうとした時だった。『怪物』は一直線に走り出し、口を大きく開けて飛び込んでくる。
飛び込む先には……マミが立っている。
「マミさ―――」
まどかが悲鳴に近い声を上げるが、マミは驚くだけで体をピクリとも動かせない。
そして、成す術もなくマミの頭は『怪物』の牙に挟まれてかぶりつかれる―――
……そのはずだった。
急な出来事で、ほむらは自分の目を疑った。
『怪物』の飛び込んだ先にいたマミの姿は消え、いきなり上空から降ってきた鋭い光の矢のようなモノによって『怪物』は胴体を貫かれていたのだ。
何が起きたのか、さっぱりわからない。
「―――先に謝っておくけど……これはゲームじゃないわ」
上空から聞こえてくる声に11人は一斉に上を見上げると、マミを抱きかかえた黒い少女が空中でふわりと浮いていた。ゆっくりと地面に着地すると、マミをほむらに預けるように渡す。
そして、『怪物』の方へ振り返り、一歩、一歩と近づいていく。
黒い少女は、12人の少女たちに視線を向けることなく……宣告するのだった。
「これは―――現実よ」
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 18:15:37.40 ID:vZ0FaaUq0
今回はここまで
正直、怖くて投稿した後の自分の文章を読めない有様ですww
そもそも、構成ミスったかなぁと少し後悔中でございます
それでは。できれば今日か明日の昼までに続きを投稿したいです!
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/05/02(月) 18:37:01.86 ID:YijhBJtDO
乙
ココペリ役わっかりやすいなww ぶっちゃけ最初はプロローグだし、各キャラの話がはやく見たいものだ
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 19:18:49.94 ID:vZ0FaaUq0
やっばい、消し忘れした項目があった。初期の名前をそのままにした場所発見。
マーヤ=黒い少女 です
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
2011/05/02(月) 19:40:49.37 ID:vZ0FaaUq0
>キュウべぇの言葉に、マーヤは鋭い目つきで睨む。その目には敵意が感じられ、明らかにプログラムに対する感情とは思えなかった。
正しくは
キュウべぇの言葉に、黒い少女は鋭い目つきで睨む。その目には敵意が感じられ、明らかにプログラムに対する感情とは思えなかった。
です。
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/05/03(火) 16:35:30.07 ID:xFodtcdM0
当分は更新できない状態のため、しばらく放置します
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2011/05/11(水) 23:17:16.31 ID:FSS6RcB10
色々と不都合が出た為、このスレッドは削除します。
また、話の展開などに整理がついたら、また1から投稿します。失礼しました
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