無料アクセスカウンターofuda.cc「全世界カウント計画」
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫メニュー■ ■VIPService (VIPサービス)■
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みはできません。。。
HTML化した人:横▲
まどか「勇者 エクス☆マギカ 第1話」
1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:02:06.81 ID:PleuwdPS0
等と言うtxt形式で10k前後のが出来上がったのでこちらに投稿させて貰っても宜しいでしょうか?

始めて何でちょっと都合が分からないです。

御教授お願いできますか?
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:05:01.25 ID:PleuwdPS0
すみませんちょっと昼飯食ってきます。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:23:16.44 ID:PleuwdPS0
返事が無い…全く無視のようだ…(笑)
このまま無駄にレスしてもしょうがないので次から投下していきます。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:23:56.50 ID:PleuwdPS0

 走る、走る、走る。
奇怪な模様を描く床を只、ひたすら走る。
その先に、見届けなければいけない物が在って、走り続けている。
不思議と息切れは無く、軽快に走り続けている。
そして見つけた、『非常口』と書かれた、この場にそぐわない不可思議な表示灯。
この先に求めるものがあるのだろうか?
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:24:35.65 ID:PleuwdPS0
否、必ずある、何故かは分からないがそう五感が言っている。
この扉の先に、見届けるべき『何か』が在る!
そう思い、一息に扉に手をかけた。
ガシャン・・・、重厚な音と共に扉が開きその先に待っていたのは・・・。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:25:29.54 ID:PleuwdPS0


 第1話『あなたは…いったい…』


「ふぇ…?」

嫌な夢を見たような・・・そうでもない様な・・・そんな気分で鹿目まどかは起き上がった。

「…なぁんだぁ…ユメおちぃ…?」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:27:21.91 ID:PleuwdPS0

さっきまで見ていたのが夢と分かってホッとした様な、そうでもない様な。
そんな感じでうな垂れていた。

「うう〜ん?…エエェ!!もうこんな時間!!?」

「ち、遅刻しちゃう〜!!」

…学生の朝とは騒がしいものである。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:27:58.72 ID:PleuwdPS0

「おはよう、まどか、やっと起きたね。」

「もぅ〜!!起こしてよ、パパァ〜!!」

大急ぎで身支度を整えながらリビングに行くと弟のタツヤのご飯を父親・知久が食べさせていた。

「そうは言っても、何回も起こしたよ、今日は寝ぼすけさんだったね。」

「ねぼすけ〜」

「そんな事言わないでよ〜!!」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:29:01.02 ID:PleuwdPS0
そう言いながらも出された朝食を全てきれいに食べ、登校の準備を手早く済ませている。
性格が現れていると言った所だろうか、その様を見て知久はしょうがない、とふっと笑いながら。

「慌て過ぎないで気を付けるんだよ〜。」

そう忠告すると、まどかも元気に答えて学校へ走って行った・・・。

「うん!いってきまぁーす!」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:29:55.49 ID:PleuwdPS0
「おはよう、まどか〜!遅いぞ〜!」

「鹿目さん、おはようございます。」

「おっはよ〜!ゴメンネ、待たせちゃって。」

そう言いながらまどかが友人の『美樹さやか』『志波仁美』と合流して、登校を始めた頃。
ひとつの光球が、空から降りてきた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:31:03.26 ID:PleuwdPS0
ふらふらと、目的がある様で、無い様な、だが確実に意思を持った動きで見滝原市に舞い降りた。
このとき、空を見ていたのは奇しくも誰一人としていなかった…。

その光球は最初、何かを探すように同じ高度を彷徨っていたが、何かを見つけたようにある、一軒家に降りていった。
なんなのかは不明だが、この光球は壁をすり抜けられるようで、色々な部屋を探し回った挙句、遂に目的のものを見つけたようだ。
そして、少々まよった様に明滅して、その光球はその物体『ラジコンの車』に染み込んでいき、光る玉は消えた。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:31:34.83 ID:PleuwdPS0
「ん?」

まどかの部屋で何かが光ったように感じた知久は、半開きになっていたドアを開けて確認をした、が何も異変はなかった…。

「…何かが反射でもしたのかな?それにしてもドアを開けていくだなんて、余程慌てていたんだろうな…。」

そういって知久は部屋から出て行った。
確かに、異変はなかった。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:32:24.49 ID:PleuwdPS0
鹿目まどかの自室にたった一台だけ存在する。
場違い、と言われても過言ではない『ラジコンの車』の異変以外は。
そして先程まで動きを見せなかったラジコン車が車体後部のアンテナを情報を収集するかのように伸ばし、先端を回転させ始めた。
車はしばらくアンテナを回転させた後、そのアンテナを自分でたたみ、自らタイヤを動かし棚の上から転がり落ちた。
…否、自分で『飛び降りた』と言ったほうが正解だろうか、どんなラジコンでも高所から落ちることは想定されていない。
だが、このラジコン車、バランスを崩すどころか、着地の衝撃で何処も壊れていなかった。
そのままドアのところまで進み自分から部屋を出て行った…。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:33:45.49 ID:PleuwdPS0
 場所は変わり、まどかの通う見滝原中学校

「暁美ほむらです、よろしくお願いします。」

そう言って転校生は教壇の前で会釈をした。

(あの人・・・夢の中に出てきたような…?)

まどかは凄く気になった、だが自己紹介を終えた少女がこちらを見たように感じて、驚いてしまった。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 12:34:30.02 ID:PleuwdPS0
「ねぇ、まどか、あの転校生こっちを見ていなかった??」

「うぇ?そっそうかなぁ…?」

何かが気にはなる、けどそれ以上に考えが思い浮かばないのでいったん考えるのを中断した。

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 13:51:27.44 ID:PleuwdPS0
ちょっと書き直していました。続きます。


「暁美さん前何処の学校に言っていたの?」

「髪キレイよね、どうやって手入れしているの?」

ワイワイガヤガヤ…

「・・・人気だね、転校生。」

「うん、ちょっと暗い様な気がしたけど大丈夫そうで良かった。」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 13:51:57.78 ID:PleuwdPS0
「御免なさい・・・ちょっと気分が悪くなってしまったの、保健室へ行かせて貰えないかしら?」

「そう?それじゃあ私が・・・。」

「その必要は無いわ。」

そう言ってほむらは立ち上がり、まどかの前までやって来た。

「うぇ!?」

「鹿目さん、保険委員よね?保健室に連れて行ってもらえる?」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 13:54:51.19 ID:PleuwdPS0
「え?あ、その…うん…。」

まどかは戸惑いながらも立ち上がりほむらの後を付いて教室を出て行った。

「あ、あの暁美さん・・・?」

「ほむらで良いわ。」
「…。」

「……。」

周りからは視線が集まるし、ほむらは勝手に歩いていくから、まどかは気まずくなって会話が出来ないでいた。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 13:55:22.01 ID:PleuwdPS0
「…。」

「あ、あの、ほむらちゃん?どうして私が保険委員だって…?」

「……。」

「あ…、うぅ…。」

会話もできないまま歩き続けていると、不意にほむらは振り返り、喋りだした。

「鹿目まどか。」

「へ!?は、ハイッ!!」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:01:50.18 ID:QTaBM2y10

「あなたは、家族や友達のことを大切に思っている?」

「え…?それは「どうなの?」

「…もちろん大切に思っているよ、家族も友達もみんな大好きだから。」

「そう・・・なら忠告しておくわ。」
「その気持ちが本当ならこれだけは守って。」
「このさき、何が起ころうとも『自分を変えよう』だなんて決して思っては駄目。」
「でなければ、貴方の大切なものを全て失うことになるわ…。」

「…ほむらちゃん…?」

まどかには意味が分からなかった、だが、ほむらのその言葉には警告と呼べる緊張の他にとてもやさしい響きがあるのが感じ取れた。
21 :ID変わってしまいましたがID:PleuwdPS0です。[sage]:2011/07/12(火) 14:05:08.18 ID:QTaBM2y10

「まどかぁ〜、まどかはさぁ転校生の事どう思う?」

「へ?う〜ん…。」

時間は過ぎて放課後、町の喫茶店。
ここでまどか、さやか、仁美の3人で雑談に花を咲かせていた。

「私はとても素敵な方だと思いますわ、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。」
「正に絵に書いたような方でしたわ。」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:05:51.19 ID:QTaBM2y10
「私もそう思った、しかも無口キャラと来たもんだ!燃えか!?萌なのか!?く〜!!転校初日からキャラ作り完璧にしやがってぇ〜!!!」

がんっ!という音と共にさやかは頭を盛大に机にぶつけていた。
まどかは痛そうだなぁなどと思いながらほむらの事を考えていた。

「ん〜、変わっているとも思ったけどね、前に会った事がある様な気がするの。」

「ゑ?うそ!?何処何処??」

「知り合いでしたの?」

「ん〜何て言うか、その…夢の中で…会ったような…。」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:06:41.07 ID:QTaBM2y10
ズズーッ。
と、さやかと仁美は一頻り飲み終えた後二人揃って笑いだした。

「アッヒャッヒャッヒャ!まどか!何それマジで!?アヒャヒャ!」

「さやかさん笑いすぎです、と言うかなんかお下品ですわ…。」

「うぅ…言うんじゃなかった…。」

「ご、ゴメン、ププププちょっと変にツボっちゃってプププププ」

「というと何?あの才色兼備文武両道無口属性且つミステリアスな転校生は、実は前世で知り合っていて、まどかとあったのは運命の巡り会わせとな?!」
「くぁー!!前世系!?前世系萌なのか!?まさかぐぬぉぉぉお!」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:07:25.08 ID:QTaBM2y10
ゴン!という音と共にさやかは先程よりも強く頭をぶつけていた。
まどかは、さっきより痛そうだなぁと思いながらしょげていた。

「む〜さやかちゃん酷いよそこまで笑わなくても…。」

「イタタタタ、ごめ、まどかでもさ、そういうのも面白そうジャン?」
「私は支援するよ〜。」

「もう!知らない!」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:08:01.16 ID:QTaBM2y10
まどかはプイ!とソッポを向いてさやかの話は聞かない、という素振りを見せた。
さやかはさやかで今度奢るから〜等と言って宥めようと四苦八苦していた。

「フフッ、ホントお二人は仲がよろしいようで・・・あら?もうこんな時間?」

そういって仁美は時計を確認し立ち上がっていた。

「ありゃ?もうそんな時間?」

「ええ、申し訳ございませんそれでは之にて。」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:08:30.48 ID:QTaBM2y10
「うん、また明日。」

「じゃあね、今日は何だっけ?ピアノに日本舞踊に…。」

「茶道もですわ、ホ〜ント毎日忙しいですわ。」

「さすがお嬢様って感じね…。」

そういってまどか達は喫茶店を出て二手に分かれた。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:09:19.33 ID:QTaBM2y10
「ねぇ、まどかこれからCD買いに行っても良い?」

「いつものでしょ?う〜んどうしようかなぁ〜?」

「頼むよ〜まどかさ〜ん、ネ?さやかちゃんの一生のお願い!」

「別に良いよ、さやかちゃんが私にも買ってくれるならね♪」

「ゑ!?」

そういってさやかは自分の財布を取り出し中身を確認しだした。
その姿を見て堪らずまどかは笑い出した。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:10:06.91 ID:QTaBM2y10
「ティヒヒ♪嘘だよ!行こう、さやかちゃん!」

「あ!待ってよまどかぁ〜それに嘘だなんてぇ〜このさやかちゃんの純情をよくも〜。」

二人は笑いあいながら小走りに走って行った。




ちょっと分割ミスったorz
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:10:40.28 ID:QTaBM2y10
 更に場所は変わり、とあるCDショップの一角。
まどかはさやかに連れられて試聴コーナーで音楽を聴いていた。

『タスケテ…まどか…!』

「うぇ!?誰!?」

まどかは驚いて降り向くが、そこには助けを求めるような姿の人物はいなかった。

『助けて…助けて…、まどか…』

だが、それでも自分を呼ぶ声は直接頭に響いてきた。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:11:22.97 ID:QTaBM2y10
「誰なの…?何処から話しているの…?」

返事の返ってこない声に対してただ、独り言をつぶやきながらまどかは、声を頼りにショップの立ち入り禁止エリアへと歩いていった…。

「…まどか?」

さやかもまどかの異変に気づいて、それを追う形で入っていった。

「誰なの…?私を呼んでいるのは…?」

立ち入り禁止のエリアは電気が通っていないのか、薄暗く足元に何かあったら転んでいただろう。
だが、清掃はそれなりにされている所為か足元はキレイなっているのが分かった。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:12:16.82 ID:QTaBM2y10
『たすけて…助けて…』

「ねぇ…あなたは一体誰なの…?」

声が強くなっている(と思われる)方へ歩いても一向に声の主は現れず、もう帰るべきなんじゃないかと思ったその時。

ギャシャアァン!!!

「キャァ!!」

天井の排気口が剥がれ落ち、脱落したカバーの上に謎の生き物が息絶え絶えと言った風体で横たわっていた。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:13:10.21 ID:QTaBM2y10
『ハァ…ハァ…ハァ…』

「あ・・・ひどい怪我・・・!?あなたが助けを求めていたの?」

生物はボロボロだったが、致命傷は何処にも無い様で、まどかは一安心した。

「そいつから離れて…。」

「!?」

突然、その人物は目の前に現れた、まるで昔読んだ漫画のように止めた時の中を歩いて来たみたいに。
だが、更に驚くのはその人物は見知った顔、転校生の
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:13:45.45 ID:QTaBM2y10
「ほむらちゃん!?」

その人だった。

「そいつを渡して頂戴。」

ほむらは奇妙な衣装に身を包み、感情と言えるものは一切みせずに話し出した。

「鹿目さん、そいつから離れて、そいつはとてもキケンなのよ。」

「まさか・・・こんなことをしたのはほむらちゃんなの!?」

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:14:18.83 ID:QTaBM2y10
「えぇ、そうよ…相変わらず汚い真似するのね…。」

「ひっ!たっ助けて!」

腕の中の生き物は目に見えて疲れ、怯えきっていた。

「止めてよ!ほむらちゃん!この子怖がっている!」

「そう…あなたは傷つけたくないんだけれど、退かないと言うのなら…。」

そう言ってもほむらは止まらず、その手を伸ばした時。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:14:48.01 ID:QTaBM2y10
「まどかぁ!!」

後をつけて来たさやかが消火器を噴出しながら突っ込んできた。

「なぁ!」

「さやかちゃん!?」

「早く!こっちに!」

そういってさやかは消火器を投げ飛ばし、そこから逃げ出した。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:15:19.32 ID:QTaBM2y10
「く…!余計なことを…!」

ほむらが手刀で煙をなぎ払い、まどかの後を追おうとしたその時。
ザワ…ザワ…ザワザワ…

「!?こんな時に相手している場合じゃあ…!」

「はぁっはぁっはぁっ、何!何なの!?コスプレ!分けが分からないとかそういうレベルじゃないって!!」
「ところでまどか、抱えているそれは何?生き物??」

「分からない!?でも助けてって…。」

「喋るの!?しかもその様子だとあの転校生がやったって感じね!まさか動物虐待までするとは…。」

「さやかちゃん・・・そういう事じゃない様な気が…。」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:15:53.16 ID:QTaBM2y10
問答をしているうちに辺りの空間は変異しだして異質な空間が作り出されていった。

「な、何!?ここ何処!?」

「さっきこっちから来た筈だよね…?何か迷っちゃったみたいだけど…。」

「おかしいなぁ、間違っていないはずなんだけど。」

そう言いながら変異した空間を歩いていると、妙な化物が現れだした。

「何、今度は!綿毛の化物!?」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:16:33.92 ID:QTaBM2y10
「何これ…!?」

(我々は使い魔アンソニー隊!)
(我々は使い魔アンソニー隊!主のために働く使い魔!)
(我々は使い魔アンソニー隊!主のために働く使い魔!この結界に入ってきたのなら、その命使い魔の我らが頂戴いたす!)
(ハァハァハァ…女子中学生…ハァハァハァ)

「な、何こいつら!冗談でしょ!?て、言うかさっきからわたし驚いてばっかだよ!!」

「キャッ!こないで!誰か、助けて…!」

(その命!もらったぁ!!!)
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:17:00.96 ID:QTaBM2y10
化物の一体がまどかたちに飛び掛ってきた。
もうだめか、まどかは生き物を抱いて目を瞑ったその時。

ヴイィィィィィィィ……

高速回転するモーター音と走行音と共に『何か』がやってきた。

(グヘェー!!!)

そしてまどかの頭上を飛び越えて化物にぶつかって吹き飛ばし、そのまま着地した。

「え…?」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:18:55.92 ID:QTaBM2y10
「何?まどか…え?ラジコンカー?」

まどか達は驚いた、何で頭上をラジコンなんかが飛び越えられるのか?
何でそのラジコンは化物とぶつかったにも拘らず体勢を崩さず着地したのか?
何でこのラジコンは『まどかの部屋にある筈』の物と同じ形をしているのか?
だが、その疑問が晴れる前にラジコンから声が聞こえた来たのだ。

「命を弄ぶ悪魔達め!これ以上の行いは、私が許さん!!」

「「しゃ、しゃべったぁ!?」」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:19:26.31 ID:QTaBM2y10
まどか達の驚きを他所にラジコンは急加速をして車体後部の噴出孔を開けて飛び上がり、変形した。

「チェェンジッ!エクスカイザー!!」

忽ち車から人型にラジコンが変形し、まどか達はもう分けが分からなくなり呆然と立っていた。

「ねぇ…まどか…これって夢でイイのかなぁ?ちょっと頬っぺた引っ張って。」

「え?ん…。」

ギュウゥゥゥ!
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:20:04.30 ID:QTaBM2y10
「イダダダダダ!!ストップ、ストップ!マジで痛い!」

「あ、ご、ゴメン、つい全力で…。」

「いたたたた…でも痛いってことはこれって現実なの?なんだか頭が…。」

「君達。」

「「は、はい!!」」

振り向いたエクスカイザーと名乗ったロボットに急に声を掛けられてまどか達は驚いて飛び上がってしまいそうになった。
が、何とか我慢してロボットのほうを向きなおした。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:20:31.55 ID:QTaBM2y10
「大丈夫か?怪我はないか?」

「い、いえ、大丈夫です、有難うございます。」

「そうか、それは良かった。」
「君たちはここから動かないでいるんだ!こいつらは私が何とかする!」
「トォア!」

「と、飛んだぁ!?」

掛け声と共にロボットはそのまま飛び上がり、化物の群れに突っ込んで行った。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:22:33.12 ID:QTaBM2y10
「ねえ、あのロボット大丈夫かな・・・?何も武器持っていなさそう出し・・・ほんとに問題ないよね?」

「うん…。」

ただ見守るしかなかった・・・だが、ロボットは軽快に攻撃を繰り返し化物たちを倒していった。

「おおぉ!スパイクカッター!」
「フン!ジェットブーメラン!」
「テェヤァ!」

「すご…これなら…。」

「で、でも数がぜんぜん減らないよ、やっぱりこのままじゃ…。」

「危なかったわね。」

「「!?」」

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:22:59.45 ID:QTaBM2y10
まどか達は、後からの声に驚き振り向くと、今度は女の子が立っていた、自分達と同じ、見滝原中学の制服を着ていた。

「あら?あなた達も同じ学校の生徒さん?」

「は、はい見滝原中の2年の鹿目って言います、こっちの子は同級生の美樹さん。」

「ど、どうも。」

「そうだったの、私も自己紹介したいんだけれど…でも…その前に…!」

「ちょっとその前に、一仕事終らせて!」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:23:50.99 ID:QTaBM2y10
そう言って少女は手に持っていた黄色の宝石を前方に構えると、宝石が突然輝きだした。
そのまま少女は輝きを纏い、制服から独特の装束に変身した。

「へ、変身したぁ!?」

さやかの驚きと共に少女は飛び上がり、腕を水平に薙いだ。
そうすると何もなかった空間から装飾の凝ったマスケット銃が出現した。
それも一丁ではなく数え切れないほど。
少女はそのまま全ての銃を化物の群れに向けて撃鉄を下ろし火砲の豪雨をお見舞いした。

「何!?トァ!」

ロボットもその異様な光景に気付き、間一髪の所で飛び退いて弾丸のスコールに身を晒さずにすんだ。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:24:39.61 ID:QTaBM2y10
「すっごぉ〜。」

「うん…凄い…。」

さっきから同じような言葉しか喋っていない二人もこれでもう何も言えそうに無かった。
そして少女は華麗に着地をしてまどか達に向き直った。


「そういえば、自己紹介がまだだったわね、私の名前は巴マミ。」

「あなた達と同じ見滝原中学の3年生よ。」
「キュゥべぇを助けてくれたのは貴方達だったのね、どうも有り難う。」

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:26:46.07 ID:QTaBM2y10
「へ?イエイエ、助けたのはまどかで、あたしは何も…、ってこの生き物キュゥべぇって言うんだ。」

「そう、私の大事なパートナーよ。」

そう言うとマミはさっきまでの装束から制服に戻り、宝石をキュゥべぇと呼ばれた生き物に掲げた。
そうすると、傷は忽ち治って行き、跡形も無くなった。

「有難うマミ!君が居なかったら今頃どうなっていた事やら。」
「そして有り難う!鹿目まどか!美樹さやか!」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:27:32.60 ID:QTaBM2y10
「えぇ!どうして?」

「何であたし達の名前を!?」

「…と言う事は、もしかしてキュゥべぇ、この子達にも素質が在ると言う事?」

「そうだよマミ!まどか、さやか君達二人お願いがあるんだ!」

「「お願い…?」」

「ボクと契約して、魔法少女になって欲しいんだ!」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:27:59.22 ID:QTaBM2y10
「「魔法少女???」」

「そう、私もキュゥべぇと契約した魔法少女よ、弱きを助け強きを挫く、正義の味方って言った方が良いかしら?」

「せ、正義の味方って…」

さやかは冗談半分、本気半分と言った顔でまどかに至ってはほぇ〜と言った感じだった。

「マミ、それだと分からないと思うんだけど…。」

「いいのよ、後でゆっくりお話しましょう、それに…」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:28:52.70 ID:QTaBM2y10
そう言ってマミは目線を上の方に移動させると、そこにはほむらが立っていた。

「さっきの使い魔、後を追っていけばご主人様の所に辿り着けるかも知れないわよ?」

「どうだって良いわ、私が用があるのは…「飲み込みが悪いのね。」
「見逃してあげる、って言っているの。」

「……クッ。」

ほむらは口惜しそうな顔をして踵を返し何処かへ去っていった。
まどかには何か言いたそうな顔をしている様も見えていた。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:29:43.83 ID:QTaBM2y10
「ふぅ…穏便に済んで助かったわ。」

「全くですよ、いやぁ一時はどうなる事やら、と。」

「ああ、私もそう思う、君達同士で戦うのはおかしいと思ったからね。」

「「「!!??」」」

新たな声が聞こえるや否や、マミは再び装束に着替え、銃を声のした方向に構えた。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:30:19.25 ID:QTaBM2y10
「誰!?出てきなさい!出て来ないと言うのであれば、それ相応の手段でお持て成しすることになるわ!」

そう言い切りマミは眼光鋭く、何時でも撃てるように引き金に指をかけた。
まどか達も追随するようにマミの後ろに回りこんだ。

「すまない、驚かすつもりは無かったんだ、君達と戦う意志はない。」

「そう、なら出てきて貰えますか?」

「分かった、君達に見える所に移動しよう。」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:30:46.28 ID:QTaBM2y10
そう言うと、両手を挙げて戦闘する意思の無いことを示した先程のロボットが現れた。

「あ、あのロボット…!」

「鹿目さん、だっけ?あのロボットと知り合い?」

「い、いえ、けど私たちを最初に助けてくれたんです、マミさんの攻撃に巻き込まれたんだとばかり…。」

「あら、そうだったのね、御免なさい、まさか貴方の様な方が居るとは思いも拠らなかったもので…。」

マミは銃をしまい非礼を詫びる為に右手を差し出した。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:31:17.44 ID:QTaBM2y10
そうするとロボットも右手を出してきて二人は握手をする形となった。

「いや、あのような攻撃をしたのだからその場に居た私が悪かったんだ、以降は気をつけるよ。」

「そういってもらえると私も助かります…。」

マミとロボットは握手したままお互いに謝り謝られを繰り返していた。
だが、我慢の限界が来たのかまどかが切り出した。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:31:57.06 ID:QTaBM2y10
「あ、あの!さっきは助けて頂いてありがとうございます!なんて言ったらいいか…。」

「まどか、と言ったね、礼には及ばないよ、わたしが来なければ危なかったかも知れないしね。」

「いえそんな…、でも…聞きたい事があるんです…。」

「あなたは…いったい…。」

そう言うとロボットは、あっとした顔をして話を始めた。

「そういえば私も名乗るのはまだだったね、忘れるところだったよ。」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:32:37.49 ID:QTaBM2y10
「私の名前はエクスカイザー、宇宙からやってきたものだ。」
「この事は他の人たちには秘密にしてほしい。」

「エクスカイザー…。」

まどかはロボットの名前を繰り返し、宇宙人という単語に驚いていた…。

「本当に、本物の宇宙人…。」



第1話 完


58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:34:31.21 ID:QTaBM2y10
次回予告

「魔法少女って凄いね!何でも1つだけ願いを叶える事が出来るの!」
「でもその代わり魔女と戦うんだって、マミさんは凄い人だなぁ。」
「私だったら怖くて戦えないかも。」
「今度マミさん達と魔法少女体験コースに行ってきます!」
「エクスカイザーさんも一緒にどうですか?」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『それはとっても嬉しいなって』」
「あなたの家にも宇宙人、いますか?」

予告担当:鹿目まどか
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 14:40:06.16 ID:QTaBM2y10
どうも、これにて第1話はお終いです。
楽しめてもらえましたでしょうか?
短く+輪切り状態ですみません。
遅筆&マイペースですので、第2話はもう少し先になると思います。
完結まで頑張れると、それはとっても嬉しいなって。

アドバイスとかあると非常に嬉しいです!
試行錯誤書いたので、所々荒いもので…。

それでは、失礼いたしました。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/07/12(火) 18:55:00.71 ID:IBmpVnAco
ふむ、続けたまえ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/07/12(火) 19:34:02.32 ID:i2IRGTUno
乙乙
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/07/12(火) 22:10:24.78 ID:tMdmiqrz0
乙ー
エクスカイザーとか懐かしすぎるw
ぜひ続けてください
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/12(火) 22:30:28.03 ID:jVkaDprq0
有難う御座います!
まだしばらく掛かると思いますので期待せず待ってください(笑)
そのときはこのスレをageでもしますので。
64 :報告[sage]:2011/07/15(金) 01:21:15.54 ID:rlRljECI0
第2話出来上がりましたぁ!
夜も眠らず昼寝して、出来上がったのは何と前回の倍近い40K!
…どうしてこうなった!

遅い時間ですけど、もし見ている人がいたら、宜しくお願い致します。
65 :マミ「勇者 エクス☆マギカ 第2話」[sage]:2011/07/15(金) 01:22:21.86 ID:rlRljECI0

「私の名前は巴マミ、キュゥべえと契約した魔法少女なの。」

「僕の名前はキュゥべえ!ボクと契約して魔法少女になって欲しいんだ!」

「私の名前はエクスカイザー、この事は他の人たちには秘密にしてほしい。」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:23:05.04 ID:rlRljECI0
「んん…?」

「ふぇえ、夢オチィ…?」

寝ぼけた目でまどかは起き上がり、辺りを見回した後項垂れて一人ごちた。

「…ふぅ…ん?」

がっかりだなぁ、と思いながら枕元に目をやると、見た事の無いぬいぐるみが1体佇んでいた。
67 :しまった、冒頭ageするの忘れていたorz2011/07/15(金) 01:24:11.90 ID:rlRljECI0
昨日の夢に出てきたのと同じ…。

「おはよう!まどか、いい天気だね!?」

そう言ってぬいぐるみ、否昨日会った変わった生き物『キュウべぇ』が挨拶をしてきた。

「あぁ…!夢じゃなかった…!と、言うことは…!」

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:25:03.88 ID:rlRljECI0
そう言ってまどかはベッドから飛び起き、衣装棚の上にあるラジコンカーの前に遣って来た。

「あ、あの・・・、お、おはよう。」

そう言ってまどかはラジコンに対して挨拶をした。
普通なら絶対に返事は無いが、ラジコンは閉じていたフロントライトを開けて、目の様にまどかを見つめて喋りだした。

「おはようまどか、昨日はよく眠れたかい?」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:25:34.41 ID:rlRljECI0
「わぁ…!」

昨日会ったロボット『エクスカイザー』も棚の上から挨拶を返してくれた。


 第2話『それはとっても嬉しいなって』

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:26:10.74 ID:rlRljECI0
「おはようまどか、早速で悪いんだけど、母さん起こしに行ってくれないか?」

「うん、分かった〜。」

父に言われてまどかは母、詢子を起こしに行った。
部屋に入ると既にタツヤが布団の上に乗っかり遊んでいた。

「マーマー朝ー!!」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:26:55.65 ID:rlRljECI0
「う〜後5分〜、寝かせて〜。」

「おーきろー!!」

まずまどかがとった行動は部屋のカーテンを開けることだった。
そしてその後、ガバァ!という音と共にまどかはベッドの布団をはがした。

「ギャアァァァァァァァ!!」

すると絶叫しながら吸血鬼の如く詢子はもだえ、しばらくすると動かなくなり、むくりと起き上がった。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:27:41.87 ID:rlRljECI0
「むえ〜。」

「起きたー!」

「うん、おはよう。」

詢子は起きるとそのまま着替えて顔を洗いに行った、まどかもそれに付いて行った。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:28:49.44 ID:rlRljECI0
「ふぉういやまろか、昨日帰りおそかったんらって?」バシャバシャ

「ん?うん、というかママ顔を洗いながら喋るのはどうかと…。」

そう、まどかは昨日マミのうちによってから帰ってきたのだ。

「別に門限守れって訳じゃないけど連絡は入れろよ〜。」

「うん、気を付ける。」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:29:19.44 ID:rlRljECI0
そういいながらまどかは後ろを気にしながら待っていた。
後ろでキュゥべぇがお湯で寛いでいるからだ。

(…本当に見えていないんだ…。)

そう思いながらまどかはキュゥべぇを見つめて昨日の事を思い出していた…。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:29:55.32 ID:rlRljECI0

「エクスカイザー…。」

「ああ、そうだ、宇宙警察という職に就いているものだ。」

「「う、宇宙警察!?」」

まどかもさやかも驚いてしまった。
謎のエイリアンないし珍妙奇天烈な怪ロボットだと思っていたら宇宙警察だなんて、と。
その中で、マミだけは呆けた様にエクスカイザーを眺めていた。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:30:34.19 ID:rlRljECI0
「マミさん?どうしたんですか?さっきからぼぉーっとしちゃって。」

「??どうしたのさやかちゃん。」

「いや、マミさんがさっきから動いていないんだよね。」

「ん?マミさん?」

マミは今度は動いたと思ったら腕だけを震えながら動かして、指を刺しながら震えていた…。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:31:56.06 ID:rlRljECI0
「え、え、え、エクスカイザーさん??」

「?ああ、そうだが、どうしたんだ?顔が青くなっているぞ?」

「!?マミさん!?大丈夫ですか!?」

「マミ?一体どうしたというんだ?」

どうやらパートナーと言われていたキュゥべぇも気にしているようだった。
こうなったのは始めてらしい。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:32:31.89 ID:rlRljECI0
「き…」

「「「「木?」」」」

「………キャアァアアアアア!!!エクスカイザー!!!本物!?本物だわあ!!!キャー!!!」///

「うぉ!?」

いきなりマミは絶叫し出してそのまま凄い勢いでエクスカイザーに抱きついた。
しかも凄い真っ赤な顔で。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:33:56.24 ID:rlRljECI0
「本当に本物だわ!!!嬉しい〜!!あ、わた、私と、巴マミと言います!!」///
「私!あ、ああなたのファン!と、言うか憧れていいたと言うか何と言うかそのあの。」///
「あああぁ!!!さっきは本当にすみません!!いきなり銃を向けるなんてあんまりですよね!?」///
「言えその、言い訳というか何と言うかあの時顔が見えていたらそのつまり。」///
「わ、わたすぃあなたに会えてくぁwwせdrftgyふじこlp;。」///
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:35:05.94 ID:rlRljECI0
マミは抱き付きながら早口で捲くし立てて、更に自分のした事に後悔して。
そのまま会話を始めようとして処理が追いつかなくなって何を言っているのか自分自身でも分からなくなっている様だった。
目も渦巻いて何処を見ているのか分からなくなっている。

「ま、マミさん!?お、落ち着いてぇ!」

「一体どうしたって言うんですかぁ!!」

「何が一体どうなっているのやら…。」

「お、落ち着いてくれ、一体何があったんだ?」

その後マミが落ち着くまでに数分を要した…。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:35:45.05 ID:rlRljECI0


         ―数分後―



「御免なさい!私あんまりにも嬉しかったものでつい取り乱しちゃいました。」

そういいながらマミは深く反省、といった感じで平謝りを繰り返していた。
止めに入ったさやかとまどかは肩で息をするハメになっていた。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:36:24.58 ID:rlRljECI0
「ハァ…ハァ…イイって事ですよマミさん。」
「幸い怪我とかなかったし…ハァ…ハァ…。」

「そ、そうですよ、ぜぇ…ぜぇ…。」
「このまま落ち着かないほうが大変でしたから…ぜぇ…ぜぇ…。」

「私も助かったよ、ああいう風に抱きつかれたのは初めてだったからね…ふぅ…。」

「僕もあんなマミを見るのは初めてだよ、一体どうしたって言うんだい?」

「うぅ…」///
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:37:03.43 ID:rlRljECI0
マミは暴走はしなかったものの、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
このまま頭に薬缶を載せれば沸騰しそうに真っ赤である。

「ま、まぁそれはともかく!マミさん、魔法少女について教えてくれるんですよね?」
「わたしあの説明じゃ全く分からなかったもので〜。」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:37:37.21 ID:rlRljECI0
そこにさやかがここぞとばかりに救いの手をマミに差し出した。
これにはまどかもサムズアップをしてしまった。

(さやかちゃん!ナイス!!)

(フッフーン!場の空気を読むのもさやかちゃんスキルの一つなのだぁ!!)

「え!?あ!そういえばそうだったわね、御免なさい、すっかり忘れていたわ。」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:38:36.09 ID:rlRljECI0
「忘れてたんかーい!」

「あはは、もうやめたげようさやかちゃん。」

そう言ってまどかはさやかの突っ込むのを諫めた。
さやかもゴメンと両手を合わせていたが、マミは今度は俯かずに喋りだした。

「それじゃあ話しやすいように私のうちに行きましょう、エクスカイザーさんもどうぞ。」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:39:46.53 ID:rlRljECI0
「話が聞けるのはありがたいんだが、良いのかい?私はこんな身だが「お構いなく!問題ありませんので!!」

そう言うエクスカイザーの手を握ったままマミは鼻息荒くエクスカイザーの招待を歓迎していた。

「あ、あはははは…。」

「なんていうか、マミさんってカワイイなぁ…。」

「いつもあんなんじゃないんだけどね、今日は特別らしい。」

三者三様の意見、といったところでマミの案内で自宅へと向かったのであった。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:40:24.34 ID:rlRljECI0

 マンションのある1室、名札には『巴マミ』と掲げられていた。

「いらっしゃい、何にも無いけど寛いでね。」

「うわーキレイな部屋!」

「素敵ー!」

「失礼します、しかし良いのかい?私がこの「お構いなく!!!あ!座布団です!どうぞ!!」

エクスカイザーの言葉にはまるで電光の様に反応して、更に座布団まで用意するその様は、正に神業といってもいい速さだった。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:41:14.75 ID:rlRljECI0
「はやっ!何今の!?超スピードとか催眠術とか!?」

「それは無いと思うな…さやかちゃん。」

まどか友人の変な反応に付いていけず少々面食らっていた。
そのまま2人もテーブルを囲んで座ると、台所の方から優雅な香りが流れてきた。

「この香りは…。」

「はい、マミさんお手製ケーキと紅茶セット、召し上がれ。」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:41:46.67 ID:rlRljECI0
そう言うとマミは台所の方からケーキ1切れと紅茶1杯のせっとを全員分並べて自分も座に着いた。

「すっごぉー!!これって手作りなんですか!?」

「ええ、そうよ、ちょっとした趣味ね。」

「わぁ…。」///

「これは…。」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:42:25.93 ID:rlRljECI0
それぞれケーキのセットに魅入られて殆ど言葉も出てこなかった。
そしてあ、とマミは気まずそうにエクスカイザーの方を向いた。

「すみません、もしかしてケーキとか食べられないとかありましたか?」

どうやらマミは相手がロボット(?)なのを失念してそのまま出していたらしく。
縮こまってしょんぼりしていた。
その様を見て二人はエクスカイザーならどう出る?と言った感じの眼差しで見つめていた。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:43:08.26 ID:rlRljECI0
「お気遣い有難う、マミ。」
「だが心配は要らないよ、私達は食べないだけであって食べられないと言うわけじゃないからね。」
「このケーキと紅茶は有り難く頂こう。」

そう言うとマミは心底安心したようにほぅ、と胸を撫で下ろしていた。
それを見て2人は心の中でエクスカイザーに対してサムズアップしていた。

((グッジョブ!!))
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:44:03.51 ID:rlRljECI0
その後、ちょっとしたお茶会でまどかたちの緊張は解れていった。
食べることが出来るのか?と心配されていたエクスカイザーもパクパクと言う表現が適切なくらいケーキを上品に頬張っていた。
その間マミはずっとエクスカイザーを眺めてニコニコと物凄く嬉しそうだった。

「さて、一段落付いたし、魔法少女の事に関して教えてあげないとね。」

そう言うと、マミは握っていた右手を開いてその中にある宝石を3人に見せた。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:45:13.26 ID:rlRljECI0

「わぁ!」

「綺麗!」

「…ん?エネルギー反応が出ている…?マミ、これは一体?」

エクスカイザーは宝石に見とれずに冷静に分析をしていたようだ。
マミもそれにすかさず答えを出した。

「流石です、これはソウルジェムと言うもので、私が魔法少女になるためのアイテムなんです。」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:45:59.49 ID:rlRljECI0
「こんな宝石が?すご〜。」

「中々な物だろう?これはボクが君達の願いから作り上げるんだ!」

そう言って、今まで喋らなかったキュゥべぇが会話に入ってきた。

「「「願い?」」」

「そう!ボクと契約してくれたら願いを一つ叶えてあげる事が出来るんだ!」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:46:42.93 ID:rlRljECI0
「マジ!?何でも一つ叶うなら…それなら…世界最強とか…金銀財宝とか…不老不死とか…満漢全席とか!」

「さやかちゃん最後のは何か違うような…。」

「けれどね、美樹さん、キュゥべぇと契約をした者には『魔女』と戦う運命が存在するのよ。」

「「魔女?」」

聞いた事のある言葉であった、マミがほむらに対して言っていたようにまどかは記憶していた。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:47:14.58 ID:rlRljECI0
「そう、魔女。」
「私たち魔法少女が『希望』を振り撒く存在なら魔女はまさしく反対、『絶望』を撒き散らす存在なの。」
「世間的に言えば、動機不明の自殺や殺人、これらはかなりの確立で魔女が関わっているの。」
「そして魔女は二人が迷い込んだ様な『結界』の中で身を潜めている、私や彼が助けに入らなければどうなっていたことやら…。」

「そ、そんなに危なかったんだわたし達…。」

「間、マミさんはそんな怖いものと戦っていたんですか?」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:47:48.52 ID:rlRljECI0
「ええ、命懸け、だから契約は慎重に考えるべきよ。」
「願いの報酬に値するのか、それ以下なのか…。」

「うへぇ、でもおいしい事はおいしいんだよねぇ。」

「マミさんの他にも魔法少女はいるんですか?今日ほむらちゃんが似たような格好をしていたし…。」

「そう言えばそうよね、ただの変態コスプレ少女じゃないって事?」

「さやかちゃん、何か下品だよ…。」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:48:23.76 ID:rlRljECI0
「追い払った彼女の事ね?たぶん間違いないと思うわ、それも…かなりのベテランって感じの。」

「でもさ、魔法少女は正義の味方なんですよね?何でまどかを?」

当然の疑問でもあった。
マミ曰く『正義の味方』として存在するのならなぜ一般市民のまどかを狙ったのか?と。

「それは違うよさやか、まどかを狙っていたわけじゃない、彼女は僕を狙っていたんだ。」

「キュゥべぇを?」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:49:01.96 ID:rlRljECI0
「そう、新たな魔法少女が現れるのを阻止したいみたいだったからね。」

「「??」」

「二人の疑問も当然よね、確かに魔法少女は正義の味方、でも『味方同士』とは限らないの。」
「魔女を倒すと見返りがあってね、それの取り合いでぶつかる事があるの。」

「と、言うことはさっきの女の子は彼を狙ってある意味商売敵が増えない事を目論んでいる、と言う事だろうか?」

「恐らく…。」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:49:40.21 ID:rlRljECI0
それを聞いてまどか達は閉口してしまった。
確かに願いを叶えられる、その代わり魔女と戦わなければならない、しかも同業者は味方とは言えない。
考えれば考えるほど難しくなってしまった。

「「うう〜ん…。」」

「御免なさいね、余計悩ませるようなことを言っちゃって。」
「それならさ、二人とも私の魔女退治に付き合ってみない?」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:50:14.34 ID:rlRljECI0
「えぇ!?」

「い、良いんですか?」

「百聞は一見に如かず、て言うじゃない。」
「魔法少女がどんなものか見てみればいいのよ。」
「早ければ明日にでも始めましょ。」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:50:49.68 ID:rlRljECI0
「早!」

「お邪魔じゃないですか?」

「もちろん!大歓迎よ、安心して、あなたたちの安全は私が保証するわ。」

「そ、それじゃあお言葉に甘えてお付き合いさせてもらいます!」
「不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします〜。」

と、言ってさやかは三つ指突いて頭を下げていた。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:52:57.21 ID:rlRljECI0
「さやかちゃんそれ絶対違うよ…。」
「そうだ、エクスカイザーさんはどうしますか?」

ここに来てまどかはずっと聞き手になっていたエクスカイザーに向き直って聞いてみた。

「私かい?…そうだね、マミがいるから問題は無いと思うが、それなら私も「本当ですか!?有難うございます!!」

最早エクスカイザーの会話を遮るのがマミのデフォになりそうになっていた。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:53:33.19 ID:rlRljECI0
「わ、私頑張っちゃいます!見ていて下さいね、エクスカイザーさん!!」

「あ、ああ、期待しているよ。」

流石にここまでされたらエクスカイザーも引いてしまっていた。

「あはは…、でも、マミさんは何でそんなにエクスカイザーにベタ惚れなんですか?」
「昔何かあったとか?」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:56:08.41 ID:rlRljECI0
「べっ!!ベタ惚れだなんてそんな!わ、私はそんなんじゃなくて憧れて…。」

「「憧れ?」」

「憧れ、というのは一体?」

まどか達は揃って口にしていた。
そしてエクスカイザーも疑問に思ったらしく聞き返してきた。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:58:07.38 ID:rlRljECI0
「あ…、個人的な事なんです。」
「昔、貴方に助けられて事があって…。」

「な、何だってぇー!!!!」
「まさかマミさんを助けているとは!宇宙警察ぱねぇ!マジパネェ!!」

「さ、さやかちゃん落ち着いて。」

「?すまないが、何時頃の話なるだろうか?地球には10年ほど来てはいなかったのだが…。」

どうやらエクスカイザーは面識が無い様だが、それでもマミは顔を赤らめながら喋りだした。

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 01:59:45.90 ID:rlRljECI0

「良いんです、私もちっちゃかったし…、エクスカイザーさんの言ったとおり10年前なんですけど。」
「家族と一緒に遊びに行った時の事なんです。」
「ちょうどそのとき家族で観光潜水艦に乗ろうって話しをしていたんです。」
「しかもちょうどニュースで大昔の海賊船が見つかったから良い思い出になるって。」
「今でも思い出せます、あの時私、凄いはしゃいでいて、窓側がいいって駄々をこねて、母親の膝の上に乗せられて窓の外を眺めていました。」
「そしたら青い首長竜のロボット、あの時はまだガイスターって呼ばれていなかったんですよね?」
「そいつがぶつかってきて、潜水艦が動かなくなったんです。」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:00:31.32 ID:rlRljECI0
「本当に怖かった、私は気が付いた時は母親の腕の中で泣いていました。」
「このまま助からないのかなぁ、なんて子供心に。」
「けど、ガイスターをやっつけるために颯爽とあなたが来たのが見えたんです。」
「赤と青と白のトリコロールで、最初見たときは本当にビックリしました。」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:02:43.49 ID:rlRljECI0
「でも、悪い奴をやっつけに来たんだ!って分かったら不思議に安心したんです。」
「その後合体して、化物をやっつけて、潜水艦を抱えて海上に上がった時の水中の景色がとても綺麗で…。」
「それが、私が貴方に助けられた一番最初で最後の思い出。」
「私が知る一番古いあなたの姿です。」

110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:03:22.34 ID:rlRljECI0
「そうだったのか…君もあの潜水艦に…。」

エクスカイザーも思い出したようだった。

「あの時の光景は忘れようにも忘れられない、私にとっても素晴らしい光景だったからね。」

「私、あの後あなたに会うことが出来ないかなって思っていたんです。」
「潜水艦のお礼がしたくて。」

「成程、でも私はそんなお礼を言われる様な事はしてはいないよ。」
「ガイスターのやる事は許せなかった、ただそれだけだよ。」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:04:16.42 ID:rlRljECI0

「でも、言わせてください。」
「でないと私の気が済みませんし…。」
「エクスカイザーさん、あの時は本当に有難う御座いました。」

そう言ってマミは深々と頭を下げていた。

「う゛ん゛う゛ん゛い゛い゛ばな゛じだな゛ぁ゛〜。」

そんな中さやかは何故か涙と鼻水にまみれていた。
手にはハンカチを持って涙を拭いていた。
まどかはさやかの鼻にティッシュを宛がっていた。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:05:27.39 ID:rlRljECI0
「汚いよさやかちゃん。」

「ご、ごべん゛ばどがぁ゛。」ズビー
「で、でも良いじゃん、恩人にやっとお礼を言えたんだがら゛。」ズズッ

「もぅ、さやかちゃんてばっ。」

そう言いながらもまどかもこうゆうのも良いものだな、と感じていた。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:06:09.31 ID:rlRljECI0
「そういえばエクスカイザーさんは何でまた地球に?」

マミはお礼を言えたからなのか少し落ち着いた様子でエクスカイザーに尋ねた。
その事に関してはまどかも気にしていたし、まず第一に…。

「あ、それ私も聞きたいです!後…なんで、その、私の部屋のラジコンなのかな…なんて…。」

段々と声が小さくなっていったがまだ聞き取れる状態だったので、エクスカイザーは喋りだした。

「そういえばそうだったね、先程から喋っていないことばかりだ。」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:06:47.93 ID:rlRljECI0
「あ!イエ!そう言うわけじゃ。」

「分かっているよ、まずはまたこの地球に遣って来た理由からで良いかい?」

エクスカイザーはそう言ってまどかに顔を向けた。
まどかもハイ、と返事をしたので話を始めた。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:07:39.52 ID:rlRljECI0
「何て事は無いよ、観光だと思ってもらって良い。」
「休暇をとっていないと言われてね、お前は無理にでも休めと言わないと休まないから休みに行って来い。」
「・・・そう言われてしまってね、しばらくは地球にいるつもりだよ。」

「きゅ、休暇って・・・てかエクスカイザーさん仕事バカとかそう言うのなの?」

「さ、さやかちゃん!!」

「美樹さん!なんて事を!!!」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:08:30.49 ID:rlRljECI0
まどかはまだ良かったものの、マミは凄い剣幕でさやかを睨み殺せる寸前までいっていた。
さやかは何が起きたのか分からず、ただマミの怒りの形相に怯み上がっていた。
その様を見て、エクスカイザーは苦笑してしまっていた。

「ハハハ、そうかもしれないな、だからこうやって此処にいるんだ。」
「もう少し考えて仕事をするよ、さやかに仕事バカって言われないようにね。」

「あぁ!エクスカイザーまで馬鹿にするぅ!ひどぉい!」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:09:23.33 ID:rlRljECI0
「美樹さんがいけないのよ、あ、お代わりする人いる?」

「あ、良いですか?お願いします。」

「私もお願いするよ、この紅茶とは風味が素晴らしい物だったからね。」

「あ、有難う御座います!」///

「あ、マミさん私も〜。」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:10:12.71 ID:rlRljECI0
「ハイハイ、でも…本当によかった…。」

さやかの悪びれない態度に呆れ半分といった感じだったがその顔はとても優しかった。

「後、まどかのラジコンカーを借りた事なんだが…。」

話がまどかに振られたものだからまどかは背筋をピンッと伸ばして聞き耳を立てていた。

「この車の形自体が懐かしく思ってね、無断で借りてしまったんだ、すまない。」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:10:53.84 ID:rlRljECI0
「いえ!そんな…でも、懐かしいっていうのは?」

「なに、簡単な話だよ、前に此処に居た時に使っていた体と瓜二つだったから、それだけの理由さ。」

「そうだったんですか…。」

「それはそうと、まどか、私も一つ疑問があったんだが。」
「この体に使っているラジコンなんだが、何故あそこに一つだけあったんだい?」
「趣味をとやかく言おうという訳ではないんだ、少々気になったからね。」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:11:29.76 ID:rlRljECI0
「あ、それは、その…。」

まどかは自分の話題になってしまいしどろもどろになっていた。
当然といえば当然である、何で女の子の部屋にあんなラジコンが?たった1台だけ。
だが、その答えを喋ったのはまどかではなく、さやかであった。

「あぁ、その事?答えは簡単、あれはまどかの『宝物』だからさ。」

「宝物?」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:12:17.72 ID:rlRljECI0
「さ、さやかちゃん。」

「いいじゃん?減るものでも恥ずかしがるものでないんだし。」

「で、でも心の準備がぁ…。」

「ほらほら、早く言った言った、でないとあたしが全部喋っちゃうよぉ?」

「う、うん…。」///
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:14:02.50 ID:rlRljECI0
そうさやかに急かされてまどかはやっと喋れるようになっていた。

「昔の話なんですけど・・・パパが一時期ラジコンの大会に参加していたことがあって…。」
「あ、あのラジコンパパの手作りなんです!で、その大会に参加して、何度目かの時に優勝できた時のラジコンがあれだったんです…。」
「その時のパパ、スッゴクカッコよくて、あ、今はカッコいいというより優しいですけど…。」
「でも、その後パパがラジコンを辞めちゃって…あの時のパパはもう見れないのかな、なんて思って。」
「そしたら、もったいないなぁ、って思ってパパから譲り受けたものなんです。」
「カッコいいパパの思い出が詰まっている私の宝物なんです。」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:14:47.91 ID:rlRljECI0
そう言ってまどかは俯いて黙りこくった。

「そうか…君の宝物があんな所に居たら驚くのも無理は無いという事か…。」

「あ!別にその嫌とかそう言うのじゃないんです。」
「ただ、大事にして下されば…それでいいかな…なんて。」

そう言うまどかの心はエクスカイザーは分かったらしく。

「分かった、それじゃあこの体はここにいる間大事に使わせてもらうよ。」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:15:31.00 ID:rlRljECI0
「あ・・・!有難う御座います!!」

まどかはそう言って嬉しくなってはにかんでいた。

「おおぅ、かわいいねぇまどかぁ!私が育てた甲斐があったわぁ!」

「もぅ、さやかちゃぁん」///

その後も談笑をしてまどか達はマミが持ってきたお代わりを飲み、その日は解散したのであった。

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:16:30.94 ID:rlRljECI0
(あ…、そうだ。)

まどかは顔を洗い終えて気になった事があったのを思い出した。

「ねぇ、ママ。」

「ん?どうした、まどか。」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:17:06.46 ID:rlRljECI0
「ママはさ、もし願いが一つ叶うって言われたらどうす「無能な上司を2、3人ほど左遷させたいね。」
「あ、あはは…。」

ある意味絶句するしかなかった。

「あ、後もう一つあるんだけど。」

「ん?なんだい?」

詢子は化粧を整えながらまどかの話を聞いていた。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:17:50.74 ID:rlRljECI0
「ママはさ、ガイスターって知っている?」

「ガイスター?何処でそんな話していたの?」

「う、うんちょっと話題になっていたから。」

まさかその当事者達から話を聞いた、何てまどかは言えそうにも無かった。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:18:50.93 ID:rlRljECI0
「懐かしいな、もう10年か…ま、まどかが知らないのも無理は無いね。」
「突如現れて、世界中の色んなお宝を集めまくっていた宇宙人集団、って話だよ。」
「あたしは詳しくは無いけどあの当時大騒ぎだったっけ、そいつらと敵対していたカイザーズってのもいたし。」

「カイザーズ?」

またまどかの知らない単語がでてきた、だが10年も前にもう地球人は宇宙人と出会っていたのか、と言う思いもあった。

「あぁ、こちらも素性は殆ど不明の宇宙人集団らしいよ。」
「ただ、何時の頃だかからかパッタリ居なくなってね、それっきり話は聞いたことが無かったよ。」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:19:38.23 ID:rlRljECI0

その当時の人には結構有名らしく、酷くピンポイントに暴れ回っていたんだ。
とまどかは思っていた。

「一年位は居たって言われているよ。」

「ふぅん…。」

まどかは一旦話を区切って身だしなみを整え終えた。

「う〜ん、どっちがいいだろう…?」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:20:18.84 ID:rlRljECI0
そして今はリボンの選別真っ最中である。

「こっちだね。」

「え〜、ハデ過ぎない?」

「女は度胸、何でも試してみるもんさ、それにそれ位がちょうど良いのさ、これでまどかはモテモテだよ。」

「もぅ!ママったらぁ!からかわないでよぉ!」

「本気も本気!これでクラスの男子はあんたにメロメロさ。」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:21:19.61 ID:rlRljECI0
「二人とも、ご飯が出来たよ。」

知久の呼び声でまどか達はセットを完了させて朝食に向かった。

「いただきま〜す!」
「うん!おいし、あ、そうだパパはさ、ガイスターって見たことある?」

「藪から棒にどうしたんだい?それにガイスターなんて懐かしい名前だね。」

「あぁ、何か友達と話をして盛り上がっちゃったんだとさ。」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:22:34.24 ID:rlRljECI0
「え?あ、う、うんそうなんだ、くわしいひとがいるんだ。」

やっぱり言える訳が無かった、自分の家にその当事者が内緒で居候しているなんて。

「ガイスターか、10年前にやって来た宇宙海賊、って昔テレビか新聞で見たことがあるよ。」

「ママも同じ事言っていたね。」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:23:45.03 ID:rlRljECI0
「そうか、それじゃこれはどうかな?」
「そのガイスターを捕まえに来たのがエクスカイザーってロボットのチームで、そのエクスカイザーはどこかの家に居候していたって言われているんだ。」

「ムグッ!!!」

まどかはどこかで聞いた事のある状況に思わず咽返ってしまった。

「ゴホ!ゲホ!ガホ!ゴホ!!」

「わぁ!まどか!大丈夫かい!」

「どうしたんだいまどか?いきなり咽るなんて。」

「ハァ・ハァ・ハッァ・ご、ごめん、ゴホ。」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:25:04.34 ID:rlRljECI0
「無理しちゃダメだよ、はい、お水。」

「ングッ、ングッ、プハァ、ハァ…ゴチソウサマデシタ。」

「あぁ、お粗末様…。」

「大丈夫かい?まどか。」

「ウ、ウンダイジョウブ。」

少しの間心配されていたが、まどかの大丈夫コールに押されたのかそれ以上心配はされなかった。
その後咽るのも少し落ち着くと、まどかは準備を忘れていた、と言ってリビングから自室へ戻ってきた。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:25:57.08 ID:rlRljECI0
「ハァ・ハァ・も、もうだめかとおもったぁ…。」

「どうしたんだい?まどか、顔が青くなっているが。」

「へ?あ、いえいえお気遣い無く!」

「…?そうか、ところでまどか、今日はマミの手伝いには行くつもりなのかい?」

エクスカイザーはその事を聞きたかったらしく、まどかも答えるために部屋に戻ってきていた。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:29:47.48 ID:rlRljECI0
「うん、行ってくる、私なんかでも役に立ちたいし。」

「だが、昨日の使い魔でも分かる様に非常に危険だったんだ。」
「危なくない筈は無い。」

「分かっている、それにエクスカイザーさんにも手伝って貰いたいってマミさん言っていたでしょ?」
「だから連絡手段をどうしようかなって。」
「それに…もし何かあったら守ってくれないかな〜なんて…。」

「ム…。」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:30:26.58 ID:rlRljECI0
確かにそうである、エクスカイザーとは言ってもいつもはただのラジコン。
携帯や電話の子機を置いておくわけにはいかないし、置いてあったら父親が訝しがるだろう。

「そうだったね、そうだ、これを渡しておこう。」

「ワッ!?」

そう言うとエクスカイザーは運転席側のドアを上に跳ね開け、中から腕時計のような物が飛び出てきた。
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:31:24.11 ID:rlRljECI0
「これは?腕時計??」

「いや、それはカイザーブレス。」
「単純に言えば私との直接通信機だ、真ん中の下側にあるボタンを押してごらん。」

「ん…これ?」

そう言ってまどかは自分の腕にブレスをつけて、指示されたボタンをしてみた。
すると本体中央が反転して中から獅子の顔が現れた。

ガオォォォン!!

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:32:33.58 ID:rlRljECI0
「わ!ビックリした。」

「この状態にすると私と双方向通信が出来る、何かあったらこれで知らせてくれ。」

「う、うん分かった、もう時間だし学校に行って来るね!」

「あぁ、行ってらっしゃい。」

「行ってきます!エクスカイザー!」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:33:22.97 ID:rlRljECI0
まどかは元気に言うと鞄を持って大急ぎで家を出て行った。

「…魔法少女…何も無ければいいのだが…。」

エクスカイザーは一人呟いた。

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:34:10.96 ID:rlRljECI0
 場所は換わり見滝原中学まどかたちの教室。

(いやぁ、ビックリしたよ、まさかこんな不思議マジカルな事が出来ちゃうなんてさ。)

(凄いよねキュゥべぇって。)

(いやぁ、そんな事はないよ、これくらい出来て当たり前だからね。)

(ま、これの所為で仁美はあっちの世界に行っちゃってたけどね。)

(あ、あはは…。)

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:34:51.34 ID:rlRljECI0
(でもさ、キュゥべぇ、あんたこんな所までノコノコ来て良かったの?)

(どうして?)

(どうしてって…このクラスにはあんたを狙った転校生だっているんだよ?)
(それに、マミさんだってクラス遠いだろうし…。)

(心配ないよ、恐らく彼女は襲ってこないだろう、そこまで愚かじゃないって事さ。)
(それに…。)

(えぇ、私もいるからね。)
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:35:30.47 ID:rlRljECI0
((!?))

突然心の会話にマミが入ってきたものだから二人は驚いてしまった。

(マ、マミさん…!脅かさないでくださいよぉ〜。)

(ごめんなさいね、でも、これで分かったでしょう?)
(あなたたちに何かあってもすぐに気付く事ができる、って。)

(は、はい…有難うございます…。)
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:36:23.56 ID:rlRljECI0
驚いたが、マミが聞き耳を立てていることにまどか達は少々安心できた。
まさかとは思うが、教室で血生臭い事が起きたりはしないだろうことを願って。

(二人とも、噂をすれば来たよ!)

((!))

キュゥべぇの声に教室の入り口を見ると、ほむらが登校して来ていた。
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:37:01.08 ID:rlRljECI0
「ほむらちゃん…。」

まどかはほむらと話をしたかった、しかしほむらはキュゥべぇを見ると睨み付けてそのまま自分の席の着いてしまった。

「あ…。」

(気にする事は無いよ、まどか。)

(そうだよ、無視無視。)

(う、うん…。)

タイミングよく早乙女先生がやって来て、そのまま会話は中断される事となった。

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:37:57.09 ID:rlRljECI0
「ねー、まどか。」
「ねがいごとって何か考えた?」

「ううん、さやかちゃんは?」

「全然だわ〜、命懸けって言われるとどうにも。」
「叶えたい願いを考えさせられるからね〜。」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:39:03.26 ID:rlRljECI0
「以外だね、大概の子達は二つ返事で決めちゃうんだけど。」

「そりゃわたし達が馬鹿なんだよ。」

「そ、そうなのかな?」

「そ、幸せ馬鹿。」

そう言ってさやかはフェンスに背中を預けて伸びをした。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:39:55.73 ID:rlRljECI0
「…なんで…わたし達なんだろうね。」

「命に代えても叶えたい願いがある人なんて、きっとこの世の中には沢山居る筈だよ、それなのに…。」
「…何かさぁ、それってどちらかといえば不公平って感じなんだよね。」
「そう思っちゃうとさ…。」

「さやかちゃん…。」

「ちょっといいかしら?」

そこへ一つの影が近づいてきた、暁美ほむらである。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:40:33.61 ID:rlRljECI0
「アッ!あんた…。」

「ほむらちゃん…。」

「何よ、何か用?こっちは用なんて無いんだけど?」
「それとも昨日の続き?」

「そのつもりはないし、しようとも思わないわ、貴方達の先輩が見張っているもの。」

そう言うとほむらは目線を泳がせた。
さやかはほむらの目線の先、ちょうど反対側の屋上にマミが立っているのが分かった。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:41:13.49 ID:rlRljECI0
「それはそうと、鹿目さん、昨日の話し…覚えている?」

「え…?うん…覚えているけど…。」

昨日の話し、まどかがほむらと保健室に行くまでにしていた会話の事だ。
ほむらは変わる事を望むな、と言っていた、意味は分からないが、聞く事もできるような状態でもなかった。

「そう、嬉しいわ、それなら忘れないでいて、そこにいる奴の甘言に耳を貸して、後悔する事がないように。」
「私の忠告が無駄にならない事を願っているわ。」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:42:02.72 ID:rlRljECI0
「あ…待って!ほむらちゃん!」

「…何?鹿目さん。」

「あ、その…言いたくなければ言わなくていいの、でも聞かせて?」
「ほむらちゃんは、その…どんな願い事をして魔法少女になったの?」

まどかがそう聞くと、ほむらは苦虫を噛み潰したような顔をして踵を返して足早に屋上から出て行った。

「…変な奴…。」

「……。」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:43:38.23 ID:rlRljECI0
そして、時間は経ち放課後。

「あーごめん、仁美!あたしとまどかでさ、ちょっと用事があるから先に帰るわ。」

「…通学時にも思いましたの、もしや御二人はもう私の手の届かない所に行ってしまわれたのかと…。」
「それならそれで、もう私にはどうする事も出来ませんわ…御二人とも…ごゆっくりいぃぃぃ〜。」

そう絶叫しながら仁美は走って行ってしまった、まどか達はどうすればああいう話に飛躍できるのかなぁ、と思いながら見送る事しかできなかった。

(な、何か、仁美凄かったね…。)

(う、うん何て言うか仁美ちゃんが遠いなって思っちゃった…。)
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:44:24.35 ID:rlRljECI0
「ま、気を取り直してマミさんと合流しますか!」

「う、うん、行こっ!」

そう言ってまどか達は教室を後にした。
その様をほむらは静かに眺めていた。

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:44:55.56 ID:rlRljECI0
「さて、それじゃあ魔法少女体験コース第1弾!、行ってみましょうか!」

そう言ってマミは後輩二人を順番に眺めた。

「準備は万端?泣いて謝る準備はOK?」

「なんすかそれ!?でも私は大丈夫ですよ〜。」

そう言ってさやかは手にもっていた長物の袋を解いて中身を見せた。
それは正しく金属バット、そのものであった。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:45:26.78 ID:rlRljECI0
「こんな事も有ろうかとってやつですよ〜体育倉庫からちょっと拝借してきました!」

「い、意気込みは充分みたいね…。」

マミは少々引いてはいたが、よろしいと言って首を縦に振っていた。

「まどかは何か持ってきた?」

「え!?」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:47:50.56 ID:rlRljECI0
そう言ってまどかは自分のかばんの中からノートを取り出してみせた。
中はまどかの描いた魔法少女のラフスケッチになっていた。

「えぇ〜と、その、私はこんなの考えてみたんですけど…。」

見た二人とも噴出し、笑いを堪えている様であった。
まどかはこの時穴があったら入りたいと思っていた。

「さー!準備は万端!行ってみよう!」プププッ

「美樹さん、悪いわよ鹿目さんに。」フフッ
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:51:14.68 ID:rlRljECI0
「酷いよぅ、マミさんまで…。」
「あ、そうだ、私これも貰っていたんです。」

立ち上がろうとした真美たちは親、と言った感じでまどかの近くによって来た。

「じゃ〜ん。」

そう言ってまどかは左腕の裾を捲くって見せた。

「まどか、何これ?腕時計型麻酔銃みたいなもの?」

「違うよぉ!エクスカイザーさんから貰ったの。」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:52:00.29 ID:rlRljECI0
「あら?エクスカイザーさんから?羨ましいなぁ。」

マミは本当に羨ましそうであった。
それを見ながらまどかは今朝教えてもらった操作をした。

「えぇっと、ここのボタンを…。」パシュゥ!

ガオォォォォン!!
中央のパネルが開き獅子の顔が出てきてカイザーブレスが起動状態になった。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:52:28.95 ID:rlRljECI0
「うぉ!かっこいい!まどか、いいなぁ、今度貸して?」

「まどかかい?連絡が来たということはこれから魔女退治かい?」

「うん、そうなの、エクスカイザーさんはどうやって合流する?」

さやかの声を無視して話を進めたものだからさやかはしょぼーんとなっていた。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:53:29.09 ID:rlRljECI0
「君たちはそのまま始めてくれてかまわないよ、私も後から合流する。」
「その代わり。カイザーブレスは起動させたままにしておいてくれ。」
「ブレスを頼りにそちらに向かおう。」
「マミにもよろしく行っておいてくれ。」

「わ、分かりました。」

マミはもじもじしながらまどかの会話を見て。
さやかは後ろで科学の力ってすげー!と驚いていた。
そして、まどか達はマミに連れられて魔法少女体験ツアーに出かけた。


161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:54:30.15 ID:rlRljECI0
 マミ達は昨日使い魔と会った所まで戻ってきていた。

「みて、ソウルジェムが光っているのが分かる?」

そう言ってマミはソウルジェムを目線の高さまで持ち上げて見せた。
ソウルジェムは淡く光っているように見えた。

「ぼんやりとだけど光っていますね。」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:54:59.58 ID:rlRljECI0
「えぇ、昨日此処にいた魔女の魔翌力に反応しているの。」
「魔翌力が強くなればなるほど、輝きが増す。」
「基本的に魔女を探すのはこの反応が頼りになるって訳。」

「…何か、地味ですね。」

「そんなものよ、魔法少女だっていつでも派手に戦うわけじゃないし。」
「こういう地道な作業が魔法少女への第一歩って感じね。」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:56:15.89 ID:rlRljECI0
「へぇ〜、やっぱり大変ですね。」

そう言うとマミは輝きが強くなる方向を見つけて歩き出した。
まどか達はそれに付いて歩いた。

「後、これだけが頼りじゃないのよ、魔女は呪いによって事故を誘発させる。」
「交通事故や殺人事件…自殺も多いわ、だからそう言うのが起こりやすい箇所をチェックするのも近道の一つ。」
「魔女の結界は基本的にどんなところにでも出来るわ。」
「だから弱った人の多い病院に取り付くと生命エネルギーを吸われて更に質の悪い事になるわ。」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:57:17.90 ID:rlRljECI0
「病院…。」

さやかは何か思う事があるのか押し黙ってしまった。
その時、マミのソウルジェムの輝きが強くなった。

「!…近いわね。」
「こっちよ!」

「え!?マミさん!」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:58:39.86 ID:rlRljECI0
突然マミが走り出し、まどか達は驚いたが、すぐに後を追って走り出した。
少し走ると、打ち棄てられた廃ビルの前でマミは立ち止まっていた。

「此処ね…。」

マミはソウルジェムの輝きを見てそう確信していた。
その時。

「あ!マミさん!あれ!」
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:59:20.61 ID:rlRljECI0
さやかの指差す方を見ると、ビルのフェンスに女性がしがみついていた。
その表情は虚ろで、何をしているのか判っていない様でもあった。

「マズイ…!」

そう言ってマミは走り出した。
だが数瞬遅く、女性はそのまま飛び降りてしまった。

「…!ダメ!間に合わない!!」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 02:59:59.91 ID:rlRljECI0
マミは既に変身していたが、それでも彼女を助けに入れない。
あと少し…、あと少し届いていれば…。
そう考えた矢先、トリコロールの小さな風が横を突き抜けていった。

「チェェェンジ!エクスカイザー!!」

風はそのまま変身して人型になると垂直に飛び上がり、女性を抱きかかえて背中のブースターを吹かして降下しだした。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:01:26.07 ID:rlRljECI0
「「エクスカイザー(さん)!!」」

「あ、良かった…有難うございます!」

「いや、君の手伝いをしただけだ、それより、一体どうしたんだ?この女性は?」

そう言って抱いていた女性を地面に下ろし、エクスカイザーは疑問に思った。
身体的には何の問題も無い、だが精神が異常なまでに平静、否無反応に近くなっていたのだ。

「無理も無いわ、これを見て。」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:02:28.21 ID:rlRljECI0
そう言うとマミは女性の首元を見えるようにした。
そこには不思議な模様が描かれていた。

「これは?」

「これは、『魔女の口付け』魔女に魅入られた者の証…。」

そう言ってマミは女性の乱れた髪を撫で付け、戦士の目つきに変わり、立ち上がった。

「鹿目さん、美樹さん此処はもう魔女のテリトリーよ、気を引き締めて付いてきて!」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:04:19.38 ID:rlRljECI0
「「ハッハイ!!」」

「エクスカイザーも気を引き締めて!昨日の使い魔とは一味違うから!」

「分かった!」

そう言って4人はマミを先頭に魔女の結界に侵入した。

「そうだわ、美樹さんそのバットちょっと貸して。」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:04:45.69 ID:rlRljECI0
「へ?はい。」

そう言ってマミがバットを握るとまるで粘土細工のように変化して、バットの形状が変化した。

「うあ!すごっ!」

「強化したけど気休め程度しか効果が無いから気をつけてね!」

「は、ハイ!」

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:05:36.79 ID:rlRljECI0
そしてマミが先陣を切り使い魔を倒し、中間をさやかのバットがバリアを張りながら守り。
後ろから遣ってきた使い魔をエクスカイザーが叩く、と言う形で結界の内部を駆け抜けた。
かなり走ったところでマミが立ち止まった、その目の前には装飾過多なドアがあった。

「皆、此処に魔女がいる。」

「つ、遂に来た…!」

「頑張ろう!さやかちゃん!」

「おう!ってか、わたしたちあんまり活躍してないけどね。」

「行くわよ!!」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:06:47.49 ID:rlRljECI0
そう言ってマミはドアを蹴破った。
そうするとそこには異様に広い空間が広がっており、その中央付近に椅子に座っている。
グロテスクな存在が目立っていた。
どろどろの体に蝶の羽根のような物をくっつけた化物。
あれが『魔女』だと言う事だ。

「うへぇ、グロ…。」
「あんなものと戦うんですかぁ!?」

「えぇ、そうよ、負けはしないわ。」
「二人は此処で待っていて、このバットの魔翌力で障壁を作るから。」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:07:50.05 ID:rlRljECI0
マミはさやかの持っていたバットを地面に突き立てると、そこから周囲に壁が広がってまどか達を包んだ。

「エクスカイザー、支援をお願いします!」

「!?マミ!」

マミはそう言うと一人で飛び降り、魔女の前にまで遣ってきた。

(…?魔法少女?まさか私の結界に入ってくるなんて…。)
(でも…何かしら?あそこにいる変なものは…?)

「どうも、始めまして魔女さん、そして、さようなら。」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:08:44.07 ID:rlRljECI0
マミは足を踏みしめて近くの小さい使い魔を踏み潰した。

(…!!!フンス!!!)
(貴様だけは生かして返さん!!!!!)

「行くわよ!」

マミは被っていたベレー帽を持ちその中から大量の銃を取り出し、地面に突き立てた。
そして、両手に持って片方づつ打ち始めた。

ドォン!ドォン!!ドォン!!!ドォン!!!!
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:10:04.78 ID:rlRljECI0
「す、凄い戦い方…。」

「ああ、問題なさそうだ、だが私も行こう。」

「あ、エクスカイザーさん!」

「?どうした、まどか。」

「あ、あの、その…頑張って!」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:11:24.70 ID:rlRljECI0
まどかは心配だった、確かにエクスカイザーは強そうだった。
事実、使い魔から助けてもらっていた。
だが、あの魔女も更に強そうだったからだ。
いくらマミとエクスカイザーでも無事ではすまない、そう思ったからこそ、頑張って。
そう言ったのだ。
エクスカイザーはそれに答えるように、まどかの頭に手を載せてやさしく笑った。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:12:00.12 ID:rlRljECI0
「有難う、まどか。」
「心配はしなくても良い、必ず帰ってくる!」
「トォ!!」

エクスカイザーはまどかの心配を払拭するように力強く言い。
マミを支援するために飛び降りていった。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:14:08.44 ID:rlRljECI0
「マミ!」

「!!エクスカイザー!」

「トァ!!」

エクスカイザーは降りて来た速度を利用し、そのまま踏みつけ蹴りを放った。
魔女は堪らずに倒れ伏した。
そしてその反動を利用しエクスカイザーはマミの近くまで飛び降りてきた。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:14:50.29 ID:rlRljECI0
(ヌワァ!!)

「命を弄ぶ魔女め!そのような所業!このエクスカイザーが許すわけには行かない!!」

(グウゥ…変な奴も来たか…。)

「マミ!攻撃を合わせるぞ!」

「は、ハイ!」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:16:23.47 ID:rlRljECI0
マミは射撃で牽制し、エクスカイザーが内側に入り込んで打撃を与える。
急ごしらえではあるが互いが互いを気にして戦い、二人とも非常に効果的にダメージを与えていた。

「おぉー!行けー!そこだー!!アッパー!」

「凄い!あの二人、相性バツグンって感じだね!」

(グガガガ…お、おのれ…!)

此処に来て魔女が反撃を開始した。
自分の蔓のような触手を鞭のように使い、振り回してきたのだ。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:17:15.68 ID:rlRljECI0
「!?危ない!エクスカイザー!」

「何!?ウォ!」

マミはエクスカイザーを跳ね飛ばし自分は触手に捕まってしまった。

「!?しまった!マミ!」

「ああ!マミさん!」

「ねぇ、あれってやばくない!!」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:18:02.74 ID:rlRljECI0
そのまま捕まったマミは振り回されて、壁に叩きつけられてしまった。
二人はその様を見て、小さく悲鳴を上げてしまっていた。

「だ、大丈夫よ…これ位…。」
「キャッ!!」

マミはまた振り回されたが、それでも構わず銃を出し、相手に向けて打ち込んでいた。
だが、その事如くが振り回されているために照準を合わせられず、地面に着弾していた。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:18:54.66 ID:rlRljECI0
「く、このままでは…!?」
「ならば!!」

『キィーングローダァー!!!』

そう叫ぶと、エクスカイザーの手から一筋の光が一直線に伸びて地平の彼方を照らし出した。
そして瞬く間に大型のトレーラーが遣って来た。

「ま、まどかぁ!何あれ!?」

「へ?キャア!!」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:20:13.82 ID:rlRljECI0
驚く二人の頭上を今度は大型の物体が飛び越えて戦場に向かっていった。
その物体は先程よりも高度を上げると、後部車輪を左右に展開しだした。
ブースターは徐々に水力を止めると、ブースターユニットが反転し、上部に移動した。
そのまま機体は垂直になると底の部分全体が開き、中の収納スペースが顕わになった。

『トオゥ!!』

エクスカイザーは掛け声と共に飛び上がり、そのスペースに背中から収納された。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:21:02.36 ID:rlRljECI0
『フォームアップ!』

そして開いていたシャッターが閉じエクスカイザーの体が見えなくなると同時に、
頭部と思われる部分にエクスカイザーの顔が現れそこにマスクが着けられた。
横に展開されていた後部車輪から手が出てきて、胸の空洞に獅子の顔が現れ、エクスカイザーは雄たけびと共に合体を完了した。

『巨大合体!キングエクスカイザー!!』
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:23:32.44 ID:rlRljECI0
(!!!???な、なんじゃありゃあ!!!)

「トォアァー!!」

先程と同じようにキングエクスカイザーは魔女に踏みつけ蹴りを浴びせ今度はそのまま踏み倒した。
そしてそのまま後ろに飛び上がり、落ちてきたマミを抱きとめた。

「大丈夫か、マミ!」

「わぁ…!ありがとう!キングエクスカイザー!」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:24:04.32 ID:rlRljECI0
思わずマミは感嘆の声が漏れていた、そして自分がお姫様抱っこされているのに気付いて。
慌てて降ろしてくれと顔を赤くして頼んでいた。

「よし!一気にケリを付ける!マミ!決めるのは君だ!!」

「は、ハイィ!!」

「カイザァーソォード!!」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:25:02.76 ID:rlRljECI0
そう言うとキングエクスカイザーは右腿のハッチを開きそこから剣を取り出して構えた。

(あー、このっ!フザケやがってぇ…!)

「魔女さん?一つだけ忠告しておくわ。」
「私が、ただ銃を闇雲に射ち込んでいた、なんて思っていないわよね…?」

(何…?)

そう言うとマミは片手を上げた。
すると地面に射ち込んだ銃弾から紐の様な物が出てきだした。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:26:46.23 ID:rlRljECI0
(な、何これ!?私の、私の花園に変な物がぁ!!って絡み付いてあばばばば。)

魔女が気にして見に行くと、そのまま紐に絡み付かれて動けなくなってしまった。
文字通り雁字搦めである。

(何よこんな物!!ふんんんんぬいぃぃぃ!!!!)

だが、魔女も負けじと力をこめて紐を千切っていった。

「!?意外に力が強いのね!?このままじゃ…。」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:27:35.79 ID:rlRljECI0
「ならば、これで!」

キングエクスカイザーは自分の胸のライオンから炎を吐き出し、剣を熱し始めた。
剣はそのまま加熱され、表面が赤々と輝きだした。

「カイザーフレイム!!」

キングエクスカイザーは大きく振りぬいて、剣に溜まっていたエネルギーをそのまま魔女に叩き込んだ。
するとそのままそのエネルギーはフィールド上に展開され魔女の動きを束縛した。

(ががががが!!動けないいいぃぃ!!)
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:28:50.53 ID:rlRljECI0
「よし!マミ!」

「ハイ!キングエクスカイザー!!私を上に!!」

そう言ってマミはリボンタイを解いて自分の腕に巻きつけ。
キングエクスカイザーの腕に足を掛けるとそのまま放り投げる要領で上に投げ飛ばされた。

(な、何を!)
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:30:36.07 ID:rlRljECI0
「ちょっと予定が狂っちゃったけど!これが私の戦い方!」
「未来の後輩にこれ以上カッコ悪いところ見せられないからね!」
「これでぇ!終わり!」

マミは腕に巻いたリボンを器用にクルクルと巻きそこから自分以上のサイズの大砲を現出させた。

『ティロ・フィナーレ!!!』

そう言ってマミは激鉄を降ろし、とてつもないサイズの砲弾を魔女に叩き込んだ。

194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:31:48.49 ID:rlRljECI0
(ウボァー)

着弾すると魔女はそのまま爆散消滅した。

それを確認し、キングエクスカイザーは剣を振り払い鞘に収め。
胸のライオンが咆哮した。
マミは優雅に着地をし、一緒に落ちてきたティーカップに口を付け戦いは幕を閉じた。

『ガォオオオオン!!!!』
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:32:30.32 ID:rlRljECI0
「やったぁ!!勝ったぁ!!」

「すっごぉい!!」

二人の様子を見てマミはにっこりと微笑んだ。

196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:33:27.60 ID:rlRljECI0
戦闘が終わると、結界は崩壊し、まどか達は廃ビルの一角に立っていた。
するとそこには黒色の装飾品のようなものが転がっていた。

「みて、これがその見返り『グリーフシード』よ」
「これが孵化すると、その場所に魔女が生まれるの。」

「げぇ!!だ、大丈夫なんですか?そんなもの持って。」

「いや、心配しなくてもいいよ、さやか。」
「そのグリーフシードという物体からは全くと言って良いほどエネルギーの反応がない。」
「いわゆる休眠状態みたいなものなのだろう。」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:34:20.95 ID:rlRljECI0
「そ、そうなんですか?」

「でも、マミさん、それってどういう見返りなんですか?」

「そうね、それじゃあこのソウルジェムを見てくれる?」

最初まどか達は分からなかったが、よく見るとソウルジェムは前に見た時よりも、黒く濁ってた。
そこにマミはグリーフシードをくっ付けると、濁りが晴れて前に見た時と同じ様になった。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:35:12.13 ID:rlRljECI0
「これが見返りの意味。」
「ソウルジェムは使う度に濁り溜まるの、濁ってしまうと魔法が使えなくなるの。」
「そこでこのグリーフシードに濁りを移すの、そうすれば私のソウルジェムも元通りって訳!」

「なるほどー。」

それで取り合いが発生する、そう言っていた意味が分かった。
そんな事せずに、仲間同士で分け合えたら良いのになぁ、とまどかはほむらの事を思っていた。
そうしていると、マミはグリーフシードを暗がりに投げ込んでしまった。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:35:59.18 ID:rlRljECI0
「後1回くらいならそのグリーフシードは使えそうだし。」
「貴方にも分けてあげるわ。」
「暁美ほむらさん?」

名前を呼ばれて、ほむらは暗がりから歩み出てきた。

「ほむらちゃん!?」

「うわ!また出た!」
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:37:00.28 ID:rlRljECI0
「…それとも、人と分け合うのは癪かしら?」
「丸ごとが良かったならごめんなさいね。」

そう言っているとほむらからグリーフシードが投げ返されてきた。

「要らないわ」
「それは貴方の獲物、自分だけのものにすれば良い…。」

そう言うとほむらは踵を返し廃ビルから出て行った。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:37:30.37 ID:rlRljECI0
「何さ、感じ悪っ。」

「仲良く出来たら良いのにな…まどか…。」

「うん…出来ませんか?マミさん…。」

「…お互いにそう思っていたら…ね。」

そして、マミ達は変身を解いて先程助けた女性の元に向かった。
幸い怪我も無く今はただ眠っているだけだった。
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:38:03.40 ID:rlRljECI0
「もし…、大丈夫ですか?」

「う…ん…あ、れ、此処は…。」
「…!?わ、私、どうしてあんな事を…!」

「大丈夫ですよ、ちょっとだけ悪い夢を見ていただけですよ。」

「・・・ふぅ、これにて一件落着!って奴だね。」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:38:56.50 ID:rlRljECI0
「さやかちゃん、ネタが古いよ…。」
「でも、マミさんってステキでカッコいいなぁ。」

「そうだね、すげーかっこいい、エクスカイザーも負けず劣らずって感じ!」

そう言うとさやかはビルの陰に隠れているエクスカイザーに視線を向けた。
まどかも視線を向けると、閉じていたフロントライトを開いて片側だけ閉じ、ウィンクして見せた。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:39:44.85 ID:rlRljECI0
マミの魔法少女体験コース1日目は無事に終わり、まどかはエクスカイザーと共に帰宅していた。
そしてパジャマに着替えて自分の机に向かって何か書いていた。

「叶えたい願いとか私には難しすぎてすぐには決められないけど。」
「こんな私でも誰かの役に立てるとしたら。」
「それはとっても嬉しいなって思ってしまうのでした。」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:41:15.82 ID:rlRljECI0
まどかが机からノートを持ち上げると、そこには昼間見せたスケッチに色がつけられていて。
更に可愛らしくなった魔法少女になった自分の理想の姿があった…。



第2話 完

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:42:15.71 ID:rlRljECI0
次回予告

「大変!今度は病院で魔女の結界が出来上がってしまったわ!」
「えぇ!?あの病院には美樹さんの知り合いが入院しているの!?」
「でも大丈夫!この巴マミさんがいるからには魔女なんて一気に片付けちゃうんだから!」
「エクスカイザーさんもいるし、私、頑張っちゃうんだから!」
「暁美さんとも仲良くしたいけど…どうすればいいのかしら…?」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『もう何も怖くない』」
「貴方の家にも宇宙人、いますか?」

予告担当:巴マミ
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 03:50:57.02 ID:rlRljECI0
なげぇー!!
自分でもビックリしました(笑)
此処まで見てくださった皆さんありがとうございます!
2話は早く書き上げたい一心でソウルジェムが濁るのお構い無しに書いたらこの様よ!
ですので今度の3話は本当に遅くなるはずです。

あと、さやかちゃんファンの皆様御免なさい!
如何してもさやかちゃんがコメディキャラになってしまう…。
動かしやすいんです。

出来た時はまたこのスレがagaると思いますので、期待せずにお待ちください。
それではまた。


あと1話にて仁美の苗字が間違っていました。
(誤) 志波仁美(しばひとみ)
(正) 志筑仁美(しづきひとみ)
この場を借りて謝らせてもらいます。
仁美ファンの方、申し訳ございませんでした。
ちゃんと確認するべきだったorz
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/15(金) 20:27:43.63 ID:ECuRIXEn0
乙です
エクスカイザー懐かしいなー
放映当時自分の家の車も変形しないかなって思ってた奴はかなりいるはず
もちろん自分も
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/17(日) 18:50:58.55 ID:/rWzAqtDO

勇者ロボネタは珍しいし、自分も好きなんで頑張ってくれ。
210 :毎度ID変わりますが同一人物です。2011/07/18(月) 00:15:48.54 ID:+aLOE/1O0
有難うございます!
ちょっとこのままスレが埋まっても怖いんで1回上げさせてもらいます。
頑張りすぎて寝不足になっちまった…。
でも、もう大丈夫、3話は70%ほど出来上がったから心配ないわ。

ではもうしばらくお待ちください。
失礼しました。
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/07/18(月) 00:29:14.14 ID:D/PAwuZr0
エクスカイザー懐かしい!
支援するぜ
212 :毎度ID変わりますが同一人物です。[sage]:2011/07/19(火) 01:06:15.74 ID:Vp77UJqV0
お待たせしました、ちょっと手直しをして明日あたり投稿させてもらいます!
では。
213 :毎度ID変わりますが同一人物です。[sage]:2011/07/19(火) 12:47:12.13 ID:FIrMV1oB0
お待たせいたしました。
13:30ごろから投稿していきます!
此処からが分岐点。
気合を入れていきますので、よろしくお願いいたします。
214 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第3話」2011/07/19(火) 13:40:26.42 ID:FIrMV1oB0

 此処は病院のとある一室。
そこにはベッドに半身を起こしている少年に買って来た物を見せている美樹さやかの姿があった。

「凄いよさやか!このCDもう出回っていない廃盤なんだ!!」

「えぇ?そんな珍しいものだったの?それ?」

「うん!さやかはレア物を見つける天才だね!いつもありがとう。」

「え?い、いやあはははは。そんな事ないって〜。」///
215 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第3話」2011/07/19(火) 13:41:01.19 ID:FIrMV1oB0
「そうだ、さやかも一緒に聞いてみる?」

「うえぇ!良いの!?」

「買ってきたのはさやかだし、ほら、イヤホンこっち。」

「う、うん…。」///

そう言って少年『上条恭介』は片側のイヤホンをさやかに渡し、CDの再生を始めた。
さやかはドギマギしながらも、音楽を一緒に聞いていた。
流れて来たのはクラッシクで、さやかはその音色に昔聴いた、好きな人の演奏を重ねていた。
216 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第3話」2011/07/19(火) 13:41:53.64 ID:FIrMV1oB0
「う、うぅ……っ……。」

音楽を聴いていると、恭介は涙を流し目頭を押さえていた。
その様を見て、さやかは遣る瀬無い気持ちになった。
恭介の左手は酷い怪我をしていて、見ているだけでも痛々しかった…。

「…ねぇ…恭介…?」

「うっ…なんだい、さやか。」

「もしも…もしもさ、願いが叶うなら、どんな事を願う…?」

「…。」
217 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第3話」[sage]:2011/07/19(火) 13:42:27.37 ID:FIrMV1oB0

 第3話『もう何も怖くない』


マミは笑顔と共に導火線に点火し、砲撃を使い魔に叩き込んだ。

「ティロ・フィナーレ!」

ズドォーーーン!!!

爆発と共に使い魔は消滅した。
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:42:55.11 ID:FIrMV1oB0
「やったぁ!」

「いやぁ、使い魔は強敵でしたねぇ。」
「ヤッパリマミさんってカッコイー!!」

「もう、二人とも、遊びじゃないんだからちゃんと危機感は持ってね。」

「イエース!分かっていますって!それにこっちには、無敵のマミさんと、天下御免のエクスカイザーもいるんですよ!」
「負ける事何て無いっすよぉ!!」
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:43:23.20 ID:FIrMV1oB0
「頼って貰えるのは有り難いが、気を抜いちゃいけないよ、さやか。」
「使い魔と言えど、油断は命取りだよ。」

「そうだよ、さやかちゃん、エクスカイザーさんの言うとおりだよ。」

「チェー、いっつもわたしはいぢめられるんだぁ。」

「そんな事ないよ…。」
「でも、今回の敵もグリーフシード落とさなかったね…。」

まどかがそう言うと、今まで避難していたキュゥべぇが駆け寄って、まどかの肩に上って喋った。
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:44:03.62 ID:FIrMV1oB0
「仕方ないよ、倒したのは使い魔だからね。」
「魔女相手なら出てくる可能性はあるんだけどね。」

「それ考えるとさ、ここん所ハズレばっかって事?」

「そうゆう考えはいけないわ美樹さん、使い魔だって成長すれば魔女になるもの。」
「放って置いたら後から大変よ。」

そう言いながらマミ達は夜の巡回の真っ最中であった。
今もまどか達の魔法少女体験ツアーの中である。
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:45:28.23 ID:FIrMV1oB0
「そう言えば、マミさんのあの攻撃。」
「ティロフィナーレでしたっけ?」

「えぇ、ティロ・フィナーレね。」

「そうそう、あれって、何で名前が付いているんですか?」

「どうして?」

「いや、いつも思っていたんですけど、何であれを打つ時だけは決まって叫ぶじゃないですか。」
「必ず、ティロフィナーレ!って。」

「ティロ・フィナーレね。」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:46:33.32 ID:FIrMV1oB0
マミはさやかのアクセントに対してのみ注意をしていた。
だが、まどかも気にはなっていたのだ。

「何でなんですか?」

「もぅ、鹿目さんまで?」

「あ、御免なさい…。」

「いいのよ、じゃあ教えてあげるわ。」
「どうしてフィニッシュを必ずティロ・フィナーレって言うのか。」
「それはね…。」

「「それは…?」」
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:47:19.60 ID:FIrMV1oB0
「カッコいいからよ。」

ズゴー!っと擬音が入りそうなほどさやかは顔面スライディングを敢行していた。
まどかはただボーっと聴いていた。

「え?それだけですか?」

「えぇ、それだけ、他に理由が欲しい?」

マミは妙に誇らしげだった。
さやかは納得がいかない、といった面持ちであった。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:48:05.03 ID:FIrMV1oB0
「いや、エクスカイザーさんを見習って、とかあるんじゃないんですか!?」
「憧れているんなら一つや二つは…。」

「無いわよ。」

アチャー!っと今度は叫びながらヘッドスライディングを敢行していた。
まどかはその様を苦笑いで眺めていた。

「確かに憧れているわ、でもエクスカイザーさんの技は大概が剣なのよ。」
「弓も在るには在るんだけど、私は砲撃、基本的に銃が専門だからね、真似したくても真似出来なかったのよ。」

「な、成程…。」
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:48:36.72 ID:FIrMV1oB0
「まぁ…尤もな意見だね。」
「マミは銃専門だから私の技を真似ようとすると必ずと言って良いほど自分の戦闘スタイルを変えなくてはならない。」
「良い判断ではあると思う。」

「いや、それは何か違う様な気が…。」

エクスカイザーの方向性のずれた回答に、如何な物か、と悩みながらも。
さやかはやっと、納得したようであった。
そのために2回地面に顔をするハメになったが。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:49:20.17 ID:FIrMV1oB0
「あ、でも、参考にした物は在るわ。」

「え!何!何ですかそれ!!」

「さやかちゃん…。」

「一体なんだい?私ではなさそうだが…。」

「はい、ティロ・フィナーレはどちらかと言えば、グランキャノンをイメージしているかなって。」

「「グランキャノン?」」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:49:50.35 ID:FIrMV1oB0
謎の技の登場に、二人は揃ってオウム返しに聴いた。
その技に一考していたエクスカイザーが聞き返してきた。

「それは、もしかしてグランバードの事かい?」

「ハ、ハイ!!御存知で!?」

「あぁ、彼は良き後輩だよ、もっと色々な事を体験してどんどん伸びるよ。」
「私はそう思っている。」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:50:30.94 ID:FIrMV1oB0
「あ、有難う御座います!!」

そう言ってマミは深々と頭を下げていた。
別にマミの事を言っていないのは二人から見ても明らかであるにも拘らず。

「ねぇ、エクスカイザー。」
「その、グランバードって誰?知り合い?」

「美樹さん、分からない?かの宇宙皇帝ドライアスをやっつけた人の事よ。」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:51:34.13 ID:FIrMV1oB0
さやかは少し考え、そしてああ、と思い出していたようだ。
頭を上げたマミはさやかに分かるように話をしていた。

「通称『ファイバード』そしてもう一つの姿が『グランバード』なの。」
「更に合体すると『グレートファイバード』になって戦っていた勇者!」
「美樹さんも見たから分かっていると思っていたけど…。」
「やっぱり知らない人は知らないのね…。」
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:52:05.15 ID:FIrMV1oB0
「去年騒いでいたドライアス騒動ですよね?それを解決したのがファイバードってロボットだっては聞いたことがあります。」

「そういえば、ファイバードはこの地球にやって来ていたんだね。」

宇宙警備隊ファイバード、エクスカイザーに憧れて入隊し、去年ドライアスとの大捕物劇の主役でもある。
エクスカイザーの聞いた話では今、宇宙警備隊の本部に帰還している筈だった。
けれど、それは別のお話。

「ここの被害も酷かったのかい?」

「いえ、そんなには、でも皆怯えていました。」
「私達も家族で、学校の体育館に避難していましたし。」
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:52:37.32 ID:FIrMV1oB0
「私は何時ドライアス軍が来ても良いよう準備は怠らなかったわ。」
「でも、終結した時はホッとしたわ。」

「ホント、あの時はどうなるかと思ったよ。」
「このまま悪の宇宙皇帝だとか言うのに支配されるんじゃないかって。」

「でもファイバードが捕まえたからね。」

「はい、その時の一部始終をテレビで見た時、グランバードがグランキャノンを撃つシーンを見たんです。」
「それをちょっとだけ意識してはいますね。」
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:53:12.59 ID:FIrMV1oB0
「そうなのか。」

「いや、意識とか…もういいや。」

「さやかちゃん、ドンマイ。」

まどかは何故か、そう言うべきかな?と思い肩を叩いた。

233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:53:38.51 ID:FIrMV1oB0

「そうだ、二人とも願い事は決まった?」

マミはそう言って二人の間に来るように歩調を合わせると、二人ともバツの悪そうにしていた。

「いやぁ、まだ何とも…。」

「私も全く…。」

「あせらないでゆっくり考えるべきだよ、そうだ、マミはどんな事を願って魔法少女に?」

そうエクスカイザーが言うと、マミは何時もとは違う、沈痛な面持ちで押し黙ってしまった。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:54:07.29 ID:FIrMV1oB0
「……私は…。」

「えっ!あ、い、いいんです!別に話したくないならそれで…。」

「すまない、マミ。」
「不躾な質問だったのなら謝ろう。」

「良いんです…。」
「ただ、今まで言うタイミングが無かったってだけの話なんです。」

そう言うとマミは懐かしく、それでいて悲しい思い出を語りだした。

「…数年前になるわ。」
「家族とドライブに行った時にね、交通事故にあっちゃったの。」
「それにちょうど運悪く巻き込まれちゃってね。」
「その時、キュゥべぇに出会ったの。」
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:54:50.35 ID:FIrMV1oB0
『「君の願いはなんだい?」』

『「ハァ…ハァ…助けて…」』

「考える余裕さえなかったわ、もちろん、大事な家族を助ける事も…。」
「それだけ、たったそれだけの話…。」

「「「…。」」」

3人は押し黙るしかなかった。
だが、マミは笑って喋りだした。
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:55:16.31 ID:FIrMV1oB0
「だからね、選択の余地が在る貴方達にはきちんと決めて考えて欲しいの。」
「私が、出来なかったからこそ…ね。」

そうマミは言った。
それに堪えられなくなったのかさやかが話を切り出した。

「あ、あのさ!マミさん!」

「?」

「あの、願い事ってさ、自分のための事柄じゃないといけないのかな?」

「え?」
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:55:47.71 ID:FIrMV1oB0
「例えば、例えばの事なんですけど…、私なんかよりさ、ずぅっと困っている人が居て。」
「その人の為に願い事が出来るのかなぁ…、何て。」

「さやかちゃん、それってもしかして、上条君の事?」

「いやっ!だから例え話だって!」

「?まどか、その上条と言うのは誰なんだい?」

「うちのクラスの同級生なんです。」
「でも、事故で手が動かなくなっちゃったんです。」
「もしかしてさやかちゃん…。」
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:56:20.54 ID:FIrMV1oB0
「だ、だから例え話だってば!」

その様を見て、マミは思案をしているようだった、さやかの回答にはキュゥべぇが答えた。

「うん、可能だよ、前例が無いわけでもない。」

「え!?本当!」

「…でも、あまり感心できた話じゃないわね。」

「?マミさん?」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:56:49.16 ID:FIrMV1oB0
「美樹さん、あなたはその人の夢を叶えたいの?」
「それとも、夢を叶えた恩人になりたいの?」

「!!?」

「他人の願いを叶えるのなら尚の事、自分の望みをハッキリさせておくべきだわ。」

「…。」

さやかは押し黙ってしまった、自分の叶えたい願いをある意味否定されてしまったのだからしょうがないといえばそうではあるが。

「…ずるいですよ、そんな言い方…。」

「・・・キツイ言い方でごめんなさい。」
「だけど、そこを履き違えたまま進んだら、きっとあなたは後悔する事になる、そう思うから。」
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:57:30.55 ID:FIrMV1oB0
「……うん…そう、だね。」
「私の考えが甘かった!ごめんなさい!」

そう言ってさやかは平謝りをしていた。

「それで良い、さやか、焦って物事を運ぼうとすると、必ず失敗してしまうからね。」
「私としては、君たちは戦いをするべきじゃないからね。」

「あ〜、エクスカイザーに言われるとな〜んか聞かなきゃならない様な気がする〜。」
「でも、私だって願いは叶えたいし〜。」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:57:59.14 ID:FIrMV1oB0
「ボクとしては早く決めてもらえると嬉しいんだけどな。」

「だぁーめ!女の子を急かす男は嫌われるゾ?」

「あははは。」

そういいながら、今日の巡回は解散となった。
各々帰路について行った。
まどかはエクスカイザーとキュゥべぇと共に家に帰っていった。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:58:27.78 ID:FIrMV1oB0
「やっぱり簡単な事じゃないんだよね。」

「ボクの立場で急かすわけには行かないし、ルール違反だしね。」

「…まどかは、そこまでして魔法少女になりたいのかい?」

「ん〜、今の所願い事ってうまく思いつかないの、ただなりたい、ってだけじゃダメなのかな…?」
「マミさんみたいにカッコ良くて素敵な人になれたら、それだけで充分幸せなんだけどなぁ…。」

「確かに、マミは尊敬に値する人物だと、私は思うよ。」

「エクスカイザーさんが?」
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 13:59:32.25 ID:FIrMV1oB0
「ああ、でもまどか、魔法少女になる、と言うことはそれ相応の覚悟も必要だという事だ。」
「中途半端な気持ちでは、本当の力は発揮できない。」
「そう言うものだよ。」

「ふぅ〜ん。」

「確かに、でもねまどか、君が魔法少女になればマミよりずっと強く慣れるよ?」

「えぇ…!?」

「それは…本当なのかい?キュゥべぇ。」

「うん、まぁもちろんどんな願いで契約するかにも寄るけどね。」
「まどかが生み出すかもしれないソウルジェムはボクにも計り知れない。」
「これだけ素質を持っている子は始めて見たよ。」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:00:15.44 ID:FIrMV1oB0
「そんなぁ、嘘でしょ?キュゥべぇ、エクスカイザーさん、お休み〜。」

「ああ、お休み。」

「…嘘ではないんだけどなぁ…。」

「キュゥべぇも眠ったらどうだい?後は私が見回って来よう。」

「……。」
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:00:44.17 ID:FIrMV1oB0
そう言うとエクスカイザーは窓から器用に窓から地面に降りて一人で夜の見回りに出て行った。
そしてエクスカイザーが出て行って十数分ほど経った時階下から物音がしてまどかは起き上がった。

「…?」

何事かな、と思っていると、ドアがノックされて知久の声が聞こえてきた。

「まどか?まだ起きているかい?」

「うん。」

「実は手伝って欲しいんだけど…。」

246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:01:21.80 ID:FIrMV1oB0
まどかは、あぁ、またか、と思いベッドから降りて階段を降りて行った。

「うぐえぇぇぇ……。」

「あぁ、やっぱり。」

玄関までまどかが降りて行くと、そこには詢子が伸びて、隣には智久が膝を折って介抱していた。

「ゴメンナ、まどか」

「み、みず〜。」

「はいはい。」
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:02:24.97 ID:FIrMV1oB0
そう言って、知久から水を飲ませてもらい。
両側から支えて貰い、詢子は自分の部屋に寝かし付けられた。

「あ〜のすだれはげ〜飲みたきゃ自分でムニャムニャ…、くぁwせdrftgyふじこlp。」

「お疲れ様、ココアでも淹れようか?」

「うん、おねがい。」

まどかはリビングで知久と一緒にココアを飲んでいた。
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:03:16.91 ID:FIrMV1oB0
「ママは何であんなに仕事を好きなのかな?」
「昔からあの仕事をするのが夢だった…って訳じゃないよね?」

「う〜ん、ママは仕事が好き、って訳じゃなく、頑張るのが好きって事さ。」
「嫌な事、辛い事は沢山在るけど、それを乗り越えた時の満足感が、ママの宝物なのさ。」
「まぁ、会社勤めが夢、って訳じゃないだろうね。」
「でも、ママは自分の理想の生き方を生きている。」
「そう言う風に叶える夢も在るんだよ。」

「生き方が夢って事?」

「どう思うかは人其々、でも僕はママのそういう所が大好きなんだよ。」
「尊敬に値するし、自慢にもなる。」
「素晴らしい人って事さ。」

まどかはココアを飲み父親の言葉を反芻していた。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:05:08.27 ID:FIrMV1oB0

 所は変わり、深夜の公園。
マミは誰かを待っていた。
その様は一人出かけたエクスカイザーを待っている様な感じではなかった。

「…。」

「来てくれたのね。」

そう喋ったのは暁美ほむらである。
いつの間にかマミの後ろに立っていた。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:06:24.95 ID:FIrMV1oB0
「分かっているとは思うけど忠告させてもらうわ。」
「あなたが一般人を連れて歩いているのがどれほど危険な事か…。」
「知らない、とは言わせないわ。」

「えぇ、理解しているわ。」
「でもね、彼女達はキュゥべぇに選ばれたのよ?無関係では済まされないわ。」
「それとも、魔法少女を増やしたくないって事?」

「そうよ、はっきり言って迷惑。」
「鹿目まどか、彼女は特に…ね。」
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:07:23.69 ID:FIrMV1oB0
そう言うほむらの眼差しは俯き、翳っていた。

「…そう、あなた位の実力なら気付くのは分けないわね。」
「あの子の秘められた実力を…。」

「そんな事はどうでもいい、彼女を魔法少女にする訳にはいかない。」

そんな事と言い切る顔には幾らか感情が篭もってはいたがマミはその事に気づく事はできなかった。

「自分より才能のある子にはなって欲しくないってこと?」
「いじめられっ子の発想ね。」
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:07:59.01 ID:FIrMV1oB0
「………何と言われようと…構わない…、私は…。」

ほむらは呟いたが、マミには聞こえなかった。

「お友達になりたかったけど…そうは行かないみたいね。」
「これからは、お互い合わないようにしましょ、話し合いはこれで最後、そうなりそうだし。」

「後、一つだけ聞かせて。」

「?何?」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:09:04.85 ID:FIrMV1oB0
「あのロボット…何者?」

「ロボット…エクスカイザーのこと?」

「えぇ、そう。」
「少し興味があったから。」

「…まぁ、知らないのも分けないわ。」
「10年も昔の勇者。」
「そうとだけ言っておくわ。」
「後は自分で調べて、じゃあね。」

そう言ってマミは公園を後にした。
ほむらは唇をかみ締めて、それを見送った。
そして見つめる二つのヘッドライトがあった…。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:09:40.53 ID:FIrMV1oB0

 そして夜は明け、翌日の放課後まで時間は飛ぶ。
まどかはさやかに付き添って病院にやってきていた。

「よっ!まどか、お待たせ〜。」

「あれ?早かったね、上条君に会えなかったの?」

「何かさ〜都合悪いんだってさー、折角来てやったって言うのに失礼しちゃう。」

「仕方ないね、それじゃ帰ろっか。」

「うん。」
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:10:40.21 ID:FIrMV1oB0
そう言ってまどか達は病院のロビーから足を運んだ。
病院の入り口を出てすぐのところで、まどかは妙な物を見つけた。

「ねぇ…、さやかちゃん。」
「あれ…何かな?」

「?どうしたのさ、まどか。」

「あっちの方で何か光ったの…。」

まどかが指差す方へキュゥべぇが向かうと、そこにはグリーフシードがあった。
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:11:33.36 ID:FIrMV1oB0

「!?グリーフシードだ!しかも孵化しかかっている!」

グリーフシードは脈打つように輝き、今にも結界を作り出そうとしていた。

「そんな!何でこんな場所に!?」

「理由はともかく、魔翌力の侵食が始まっている!結界が形成される前に此処から逃げよう!」

「だ、駄目だ!」
「魔女が病院に取り付いたらマミさんがやばいって…!」
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:12:17.82 ID:FIrMV1oB0
さやかはマミが言っていた言葉を思い出していた。
『弱った人の多い病院に取り付くと生命エネルギーを吸われて更に質の悪い事になるわ。』

「わたしここでこいつを見張っている!」
「まどかはマミさんを呼んできて!」

「そんな…!無茶だよ!」

「そうだよ、孵化するまでにはまだ早いけれど結界に閉じ込められたら君は出られなくなる!」

「でも!ほおって置いたら逃げられちゃう!それに…!」
(ここには…恭介が…!)
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:12:54.68 ID:FIrMV1oB0
まどかにも理由は分かっていた。
だがさやか一人だけでは非常に危険すぎる、そう思い立ち止まっていた。

「…仕方ない、分かったよ。」
「ボクも一緒にさやかと残るよ。」
「結界迷路に閉じ込められてもマミとならボクはテレパシーで位置を伝えられるから。」

「・・・キュゥべぇ!」

「まどかはマミを!」

「うん!分かった!私マミさんを呼んでくる!!」
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:13:25.64 ID:FIrMV1oB0
「頼む!まどか!」

「頼んだよ!」

そう言ってまどかは病院の外にマミを探しに飛び出ていった。

「どうしよう…マミさんの携帯番号教えてもらっていれば…!そうだ!!」

まどかは今まで何故気付かなかったのかと悔やみながら袖を捲くり。
カイザーブレスを起動させた。

パシュゥン!ガオォォォォン!!
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:14:05.12 ID:FIrMV1oB0
「エクスカイザー!大変なの!」

「まどか!?一体どうしたんだ!」

「病院にグリーフシードが現れて、さやかちゃんが見張っているの!」
「私はマミさんを探すからエクスカイザーはさやかちゃんの所に行ってあげて!!」

「分かった!!」

そう言い終わると、エクスカイザーはパワーを最大にして、開けられた窓から勢いよく飛び出し。
病院の方角へ疾走して行った。
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:14:41.05 ID:FIrMV1oB0
「マミさん…!」

まどかはマミを探しに力の限り走った。


 その頃さやかは、まどかが離れたと同時に発生した結界迷路に飲み込まれ彷徨っていた。

「怖いかい?さやか。」

「そりゃ、まあ当然でしょ。」

「願い事を決めてくれれば、この場で君を魔法少女にしてあげられるけど…どうする?」
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:15:08.96 ID:FIrMV1oB0
「ん…今はまだ…いざとなったら頼むかも。」
「でも、まだ遠慮しておく。」

「わたしにとっても大事な願い事だし。」
「いい加減な気持ちで決めたくない。」

そう言ってさやかは結界の探索を一人行なっていた。

「こっちです!マミさん!」

「ええ!」
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:16:04.85 ID:FIrMV1oB0
そう言うとマミはソウルジェムをかざし、結界を開きキュゥべぇと交信を開始した。

「キュゥべぇ!状況報告!」

(マミかい!今のところは大丈夫!すぐに孵化するような事は無いよ!)
(急がなくてもいいからなるべく静かに来てくれないか!?)
(迂闊に魔翌力で刺激すると孵化しかねない!)

(分かったわ。)
「それじゃ、行きましょ。」
「全く、無茶しすぎ、って言いたいところだけど、今回に限って冴えた手だわ。」
「これなら魔女を逃がさずにすむ…!」

「?」
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:16:40.10 ID:FIrMV1oB0
そう言っていたマミは後ろを見たまま動かなくなった。
つられてまどかも後ろを振り向いた。
するとそこにはほむらが立っていた。

「ほむらちゃん!?」

「言った筈よね!二度と会いたくないって。」

「ここの魔女は私がしとめる、あなた達は手を引いて。」
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:17:20.38 ID:FIrMV1oB0
「そうもいかないわ、この結界には美樹さんとキュゥべぇもいる。」
「助けてあげないと。」

「二人の安全は、私が保証するわ。」

「…信用すると思って?」

そう言うとマミはほむらを自身の拘束魔法で縛り上げ、宙吊りにしてしまった。

「クッ!なぁ!!」
「こんな事している場合じゃないわ!」
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:18:03.88 ID:FIrMV1oB0
「そこで大人しくしていなさい。」
「怪我させたく無いけど、暴れるとその保証は無いわ。」

「ここの魔女は今までとは違う…!」

「心配してくれるのは嬉しいけど、問題なんて無いわ。」
「帰りに解いてあげるから。」
「行きましょう、鹿目さん。」

「え、は、ハイ。」
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:18:55.15 ID:FIrMV1oB0
「ま、待って…!」

だが、まどか達はほむらの警告を無視し、そのまま結界を進んでいった。

(全く、こんな所に結界貼らんくともいいのに。)
(まぁまぁ、ぼやかない。)
(ほいじゃ、あっち行ってぱぁーと飲みましょか!)
(いいねぇ!それ!)
(あ、御代は割り勘で。)
(かまへんかまへん。)

268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:19:22.63 ID:FIrMV1oB0
2匹の使い魔がいなくなるのを確認し、マミ達は更に奥へと進んで行った。

その道すがら、まどかはマミに話をしだした。

「あの…マミさん…。」

「なに?」

「その、私なりに色々と願い事を考えてみたんです。」

「決まりそうなの?」

「ハイ…でも、マミさんには考えが甘いって怒られるかも知れないんですが。」
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:25:04.84 ID:FIrMV1oB0
「いいわ、聞かせてみて。」

「…私、得意な学科とか、自慢できる才能とか、何も無くて…。」
「きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま迷惑をかけて行くのかなって…。」
「それが嫌でしょうがなかったんです。」
「マミさんに会って、誰かを助けるために闘っているマミさんを見て。」
「同じ事が私にも出来るって言われて、嬉しかったんです。」
「だから私、魔法少女になれたらそれで願いが叶っちゃうんです。」
「こんな自分でも誰かの役に立てるって胸を張って生きていけたら、それが一番の夢だから…。」

マミは歩調はそのままで、ずっと静かに聴いていた。
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:25:52.50 ID:FIrMV1oB0
「…大変だよ?怪我だってするし。」
「恋は勿論、遊んでなんかもいられなくなるよ?」

「でも、それでも頑張っているマミさんに、憧れているんです…!」

その言葉を聴き、マミは立ち止まって語りだした。

「…私、憧れるほどの者じゃないわ…。」
「憧れていた人の前では舞い上がっちゃって…、失敗しそうになったり。」
「無理してカッコ付けているけど、ただ何も言えないだけ。」
「本当は怖いし、泣きたくもなる、一人ぼっちの時は泣いてばっかりいる…。」
「良い、なんて物じゃないわよ、魔法少女なんて。」
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:26:25.02 ID:FIrMV1oB0
「そんなこと無いです…!マミさんは、もう一人ぼっちなんかじゃないです…!」
「私なんかじゃ頼りに何てならないかも知れないけど。」
「私も、マミさんと一緒に戦いたいです。」
「・・・一緒に戦わせてくれますか?」

そう言うとマミは振り返り、涙目になりまどかの手を握った。

「これからも私と一緒に闘ってくれるの?」
「こんな先輩でも?」
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:27:01.21 ID:FIrMV1oB0
「ハイ…!」

「フフッ…やっぱり私先輩失格だね。」
「カッコ悪いところばっかり見せちゃって…。」
「でも、鹿目さん、ありがとう…!」

マミはそう言ってまどかに礼をした。
まどかは照れていえいえと言っているが悪く思っていなかった。
この先輩だからこそ、憧れた先輩なのだ、と思っていたからだ。
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:27:30.50 ID:FIrMV1oB0
「でも、魔法少女になるのだから願いはちゃんと考えて置いた方が良いわ。」
「まだ、見つからない…?」

「は、ハイ、すみません…。」

「いいのよ、それじゃあここの魔女を倒すまでに考える事!」
「でないと、あなたの願いで、キュゥべぇに特大ケーキを頼んでもらうんだから!」

「えぇ!ケーキ!?」
「わ、私ケーキで魔法少女には…。」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:28:12.78 ID:FIrMV1oB0
「嫌なら考える事!でないと祝勝パーティは鹿目さんの魔法少女に入門記念パーティと合わさる事になっちゃうんだから!」

そう言いながらマミは笑顔で語った。
先ほどまでの曇った表情とは違う。
迷いの晴れた表情だった。
その時、キュゥべぇからのテレパシーが送られてきた。

(マミ!)

(キュゥべぇ!如何したの?…まさか!)

(そのまさかだ!グリーフシードが孵化を始めた!)
(このまま魔女が!急いで!!)

「OK!!今日と言う今日は速攻でカタを付けるわよ!!」
「そして祝勝パーティなんだから!!」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:28:46.99 ID:FIrMV1oB0
マミはソウルジェムをかざし、光に包まれると戦闘スタイルに変身した。
その輝きに気付いたのか、下にいた使い魔達も慌しく動き出した。

(ちょっ!魔法少女!!)
(まさか!?あの橋の上!?)
(曲者じゃァ!!出会え出会え!!)
(殿中でござる!殿中でござる!!)
(メーデー!メーデー!!)

「鹿目さんはここにいて!」
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:29:45.28 ID:FIrMV1oB0
そう言ってマミは、まどかの周囲に結界を施し下に飛び降りて行った。
降りるのと一緒に銃を出し臨戦態勢を整え使い魔の群れに飛び込んだ。
着地し、構えて砲撃を開始した。
1撃射ち台尻で殴り、2撃目の構える途中で突っ込んできたのを両手でいなし、3射と同時に前後を貫く。
4撃目を撃つ前にバレエの如くターンを決め、その間蹴りでけん制、そして飛び掛る奴は銃身で殴られるボールへ。
5撃目も両の手から左右に迫撃し、目にも見えない速さで蹴りを入れ、優雅に6撃、7撃目を打ち抜く。
その様は、まるでダンスを踊っているようで。
魔弾の舞踏会の開演と言っても過言で無いほどの優雅さであった。

277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:30:42.03 ID:FIrMV1oB0
「私…一人ぼっちじゃない!」
「憧れの人もいる、慕ってくれる後輩もいる。」
「体が軽い…こんな気持ちで戦うのは始めて…!」
「もう何も怖くない。」

マミの動きに躊躇いは無く、使い魔たちは隙を付こうとしても動きに付いて行けずに全てマミの銃の餌食となっていった。

「鹿目さん!」

「ハイッ!!」

マミは、まどかの手をとり、共にさやかたちのいる最深部を目指し走って行った。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:32:57.27 ID:FIrMV1oB0

 少し時間は少々遡り、マミ達が結界に侵入してから十数分が経った頃。
エクスカイザーも結界の入り口に来ていた。

「もうすぐまどかの言っていた病院だな?」
「!?あれか!」

意を決しエクスカイザーは結界の揺らぎに突っ込んでいった。

「このまま行けば、すぐまどか達と合流できそうだ…?」
「…?何だあれは…!」
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:33:55.95 ID:FIrMV1oB0
そう言って急ブレーキをかけ、宙吊りになっている目の前で変形し、立ち止まった。

「貴方は…!」

「君は…暁美ほむら!」

そこにはリボンに雁字搦めにされたほむらが吊るされていた。

「どうして此処に!?なぜ吊るされているんだ?」

「早く私を降ろして!でないとマミさんが!!」

280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:34:34.50 ID:FIrMV1oB0
ほむらは切羽詰ったようにエクスカイザーを急かしていた。
其処にはいつも冷静にしているほむらの姿は無かった。

「分かった!スパイクカッター!」

エクスカイザーの両腕の射出口から3つの刃の手裏剣を飛ばし。
ほむらの周りのリボンを断ち切っていった。
バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!
スパァ!
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:35:00.48 ID:FIrMV1oB0
「キャッ!」

「おっと。」

落ちてきたほむらをエクスカイザーは背中とひざ裏を支点に支えて抱えた。

「大丈夫かい?」

「えぇ、あ、有難う。」

ほむらは少し恥ずかしかったのか、赤くなっていたがすぐに拘束を解いてもらい。
そのまま立ち上がった。
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:35:39.06 ID:FIrMV1oB0
「行かなくちゃ…!」

「待て、如何するつもりだ、またマミ達と「そんな事じゃない!」」

エクスカイザーは先程から驚かされてばかりだった。
依然見た時や話に聞いた印象とは明らかに違いすぎる、これが本当にまどか達の言う、暁美ほむらなのか、と。

「……。」

「私は戦いたい訳じゃない、まどかに魔法少女になって欲しくないだけ、本当ならマミさんだって助けたい…!」
「でも、ダメなの…!私じゃ、まどかを助けるだけで精一杯なの…!」
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:36:19.50 ID:FIrMV1oB0
そう言うとほむらは項垂れて、地面に座り込んでしまった。
さっき立ち上がった時の気迫は何処に行ってしまったのだろうか?
エクスカイザーは疑問に思った。

「君が何の話をして意気消沈しているのかは分からない。」
「だが、今君は動ける、ならマミを助ける事ができないなんて言っちゃダメだ。」

「…!!」
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:36:46.46 ID:FIrMV1oB0
エクスカイザーはほむらの肩に手を置いて優しく諭していた。
ほむらはエクスカイザーを見つめた。
ほむらの眼差しは強かったが、目には涙を浮かべ我慢をしていた。

「なら…助けてくれるんですか…?」
「まどかを、マミさんを、私を…!」

そう言うほむらの目から涙が零れ落ちた。
エクスカイザーは肩に載せていた手をほむらの頭に乗せて。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:37:28.50 ID:FIrMV1oB0
「何も泣くほどじゃないよ、助けが欲しい時は誰かに助けて、とそう言えば良いだけなんだ。」
「だから、今回は私が助けよう!」
「キングローダー!!」

そう叫ぶと結界の入り口の方から白色のトレーラーがやってきた。
エクスカイザーは車に戻り、車体後部をトレーラーの前部に連結し。
出発の準備をした。
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:38:04.41 ID:FIrMV1oB0
「キングローダーの上に乗るんだ、ほむら!その方が走るより早い!」

「…!!」

ほむらがキングローダーに飛び乗ると、そのままエクスカイザーはアクセルを全開にして結界内を疾走した。

「は、早い…!」
「ラジコンの速さじゃないわ!」

「これなら、間に合うだろう?急ごう!!」

「…有難う…。」
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:38:41.89 ID:FIrMV1oB0
ほむらはそう呟いたが、エクスカイザーは何も返答せず、走った。

「あの…、エクスカイザーさん?」
「エクスカイザーで良いよ、如何したんだい、ほむら。」

「…これから言う事は…まどか達には言わないで欲しい…。」

エクスカイザーは、疑問に思ったが、口出しせずにほむらの話に耳を傾けていた…。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:39:26.79 ID:FIrMV1oB0

 そして時間は戻り、マミはさやか達の元へ着いた。

「美樹さん!大丈夫だった?」

「っマミさん!何とか生きています!」

「そう、それは安心だわ!」

「二人とも!安心している場合じゃない!来るよ!!」
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:40:21.40 ID:FIrMV1oB0
キュゥべぇがそう言い終わると、結界の中央に位置した足高の椅子に魔女が顕現した。
小柄で、前に見た魔女とはまた違う感じだった。
だが、マミは顕現と同時に飛び込んで行き、椅子を蹴倒すと、落ちてきた魔女を銃のストックで殴り飛ばした。

「折角出て来た所悪いんだけど!一気に決めさせて!!」

そう言いながらマミは壁面にぶつかった魔女に召喚した銃数丁で蜂の巣にした。
そのまま落ちてきた魔女を至近距離で弾を撃ち込み、そこから出てきた糸で魔女を拘束し。
マミは、トドメの体制に移った。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:41:03.55 ID:FIrMV1oB0
「ティロ!フィナーレ!!」

気合と共に打ち込まれた砲弾が魔女を貫き、そのまま消滅するかと思った矢先。
魔女の口から恵方巻きのような本体がぬるりと現れ、マミの拘束を解いた。

「!?」

そのまま物凄い速さでマミの眼前まで魔女は迫り、口を開いた。

(いただきまーす。)
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:41:52.79 ID:FIrMV1oB0
「え??」

「あぁ…!」

「ハッ…!」

マミは何が起こったのか分からなかった。
倒したはずの魔女から魔女が出て、その魔女に今殺されそうになって…。

(あぁ…そうなんだ…私…ここで…。)
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:42:39.48 ID:FIrMV1oB0
そう、マミが直感で理解した時、結界の入り口からモーター音と共にエクスカイザーが疾走してきた。

「チェーンジ!エクスカイザー!!」
「トアァー!!!」

ズガァーン!!!
という快音と共に、エクスカイザーはマミの眼前に迫った魔女に飛び込み蹴りをぶちかました。

(うきゃ!)

ズシーン…!
と衝撃に耐え切れず、魔女は吹き飛んで地面に体を横たえた。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:46:24.07 ID:FIrMV1oB0
「弱き人達の命を貪ろうとする魔女め!その行ない!このエクスカイザーが断じて許さん!!」

「エ、エクスカイザー!」

まどか達は驚きと共に歓喜した、エクスカイザーがマミを助けに来てくれた!、と。

『キィーングロォーダァー!』

その掛け声と共にまたもやまどか達の後ろからキングローダーが扉をぶち破ってやってきた。
その上にはほむらが居たのをまどかは見逃さなかった。

「ほむらちゃん!?」
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:47:09.00 ID:FIrMV1oB0
『トゥ!』
『フォームアップ!』

まどかの疑問を無視し、ほむらは飛び上がるキングローダーから飛び降りマミの前に着地した。
その間、エクスカイザーはキングローダーと合体し、キングエクスカイザーにパワーアップを果たしていた。

『巨大合体!キングエクスカイザー!!』

キングエクスカイザーは着地と同時にマミに向き直りマミの安否を心配した。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:48:21.52 ID:FIrMV1oB0
「マミ!大丈夫か!?」

「あ…キングエクスカイザー…さん…。」

「!?マミ!!」

「マミさん!?」

そう言うとマミは気を失ってしまった。
ほむらも心配していたが、気を失っただけだと分かり安堵していた。
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:51:11.87 ID:FIrMV1oB0
「良かった…気を失っただけだ。」
「魔女め!許さん!!」

「!間に合った…!」
「…こいつを倒すのは…私達…!!」

(なになに?またきたー。)

魔女は起き上がり、舌なめずりをし、二人を眺めていた。
先に動いたのは、ほむらだった。
ほむらは先ほど立っていた場所から消え、いつの間にかテーブルの上に立ち、魔女は爆発に包まれた。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:53:18.04 ID:FIrMV1oB0
(むぎゃ!)

「今だ!カイザーソード!!」

キングエクスカイザーはその隙を逃さず、カイザーソードを握り締め、切っ先を魔女に向けた。

(むむむむむ〜)

「こっちよ。」

(?)
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:53:46.35 ID:FIrMV1oB0
そう言ってほむらはテーブルの上を転々と瞬間移動を繰り返し。
魔女の周囲に爆弾をばら撒き爆発させた。

(むぎゃ!うぎゃ!むきゃ!この〜)

「今よ!」

そう言ってほむらは動かない使い魔を踏みつけ。

「カイザァーフレイムッ!!」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:54:45.48 ID:FIrMV1oB0
キングエクスカイザーは、ほむらの掛け声と共に、今まで剣を熱し続けたエネルギーを相手に叩き付け、魔女の動きを封じた。
以前、マミが魔女を倒した時にキングエクスカイザーが使ったのをまどかは覚えていた。

(うにゃあぁー)

「サンダァー…フラッシュッ!!!」

先ほどの炎による荒々しいエネルギーは剣には無く。
剣全体には穏やかだが、とてつもないパワーが煌きとして現れていた。
キングエクスカイザーは仁王立ちのままその剣を最上段に構えると、剣から物凄い輝きと共に光の刃が天を突き抜けた。
その刃をキングエクスカイザーは魔女に向かって真っ向から叩き落した。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:55:17.35 ID:FIrMV1oB0
「でえぇやあぁ!!!!」

輝きはそのまま動けない魔女に吸い込まれるように振り下ろされ。
魔女を顔面から真っ二つにした。

(ぴぎー)

そのまま魔女を切り裂いたエネルギーは失われず蓄積され、魔女自身の大爆発を引き起こした。

ズドガアオォーン!!
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:55:50.63 ID:FIrMV1oB0
その様を確認すると。
キングエクスカイザーは剣に残ったエネルギーの残滓を振り払い。
剣をしまい決着をつけた。

「フンッ!!」

『ガオォォォォン!!!!』

その様を見ていたまどか達は安堵と共に不安にも思った。
マミは大丈夫なのだろうかと、だがその前にほむらが飛び降りてきて、変身を解除した。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:56:27.72 ID:FIrMV1oB0
「安心しなさい、気絶しているだけだわ。」
「そして良く見ておきなさい、巴マミの姿を。」
「今回は彼に助けられたけど、本来なら彼女は死んでいた。」
「判断を間違えれば、その先には『死』が待っている。」
「それが、魔法少女と言う者よ。」

そう、ほむらは二人を突き放した。
さやかは、安心したのと同時に怒りが込み上げていた。
その時、周りの景色が歪み、病院の駐輪所が見えてきた。
魔女を倒した事により、結界は維持できなくなり、消滅したのだろう。
ほむらは、落ちてきたグリーフシードを拾い、握り締めた。
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:57:15.15 ID:FIrMV1oB0
「…返せよ…。」

ほむらが振り返ると、さやかが立ち上がり、ほむらを睨んでいた。

「それは、マミさんの物だ!後から来て横取りなんかして!返せよ!」

「…やはり…あなたとは…。」

「…?ほむらちゃん?」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:57:49.63 ID:FIrMV1oB0
「…えぇ、確かに、横取りになるかしら?でもね、貴方に言われる筋合いは無い。」
「これは魔法少女の為の物であって貴方がとやかく言えるものではない。」
「欲しいなら、力ずくでも奪いなさい。」
「魔法少女となって。」

そう言い残し、ほむらは踵を返し、まどか達を残し帰って行った。
さやかは、ただただ自分の不甲斐なさと、遣る瀬無さに心を焼かれるようだった。
キングエクスカイザーはその様をただ見守っていた…。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:58:42.86 ID:FIrMV1oB0

 まどか達はほむらが帰った後、気を失ったマミを運んで、マミの家に上がっていた。

「う…ん…。」

「あ!マミさん!気がついた?二人とも!マミさん起きたよ!」

「「本当(か)!」」

二人は揃って声を上げ、マミの寝ているベッドに駆け寄った。

「マミさん!良かったぁ〜、もう目が覚めないか、なんて思っちゃいましたよ〜。」
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:59:12.41 ID:FIrMV1oB0
「此処は…?」

「マミの家だよ、すまない、勝手に上がらせて貰った。」

マミは起き上がり部屋を見回していた。
何の変哲も無い部屋、いつもと同じ部屋。
自分ひとりで寝起きしている部屋、みんなと紅茶を飲みながらお喋りした部屋。
そう思うと、マミはひとりでに涙がポロポロと零れだした。
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 14:59:43.82 ID:FIrMV1oB0
「うぇ!?マミさん!!」

「だ、大丈夫ですか?」

「どうしたんだい?マミ、どこか痛むのかい?」

「ううん、大丈夫、何処も痛くないわ、でもね、おかしいの…。」
「涙がね、涙が、止まらないの…。」
「ゴメン…ちょっと外で待っていてくれる…?」
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:00:17.51 ID:FIrMV1oB0
「わ、分かりました、まどか。」

「う、うん。」
「キュゥべぇも。」

「やれやれ。」

「あ、エクスカイザーさんは残ってもらえますか?」

「?」
「ああ。」

そう言うと、エクスカイザーとマミを残し、家から出て行った。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:00:46.61 ID:FIrMV1oB0
「……私、エクスカイザーさんに憧れているって言いましたよね?」
「魔法少女になってから、貴方を目標に頑張っていたんです。」
「あの時の貴方のように…強く…。」
「そうすれば、もう誰も怖い思いをしなくて良くなる。」
「もう誰も、私のような思いをしなくても良くなる。」
「そう…、そう思っていたんです…。」
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:01:30.96 ID:FIrMV1oB0
マミは流れる涙をぬぐいながら話をしていた。
エクスカイザーは黙って話を聞き。
マミはそのまま話を続けた。

「でも、ダメでした。」
「私なんかじゃ無理でした。」
「調子に乗って、はしゃいじゃって、無理して頑張っていたけど、今日思い知らされちゃった。」
「忠告すら無視して死にかけて、助けられて、それで怖くなって…!」
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:02:12.93 ID:FIrMV1oB0
そこまで言うとマミは布団を握り締めてボロボロと涙を流し始めた。

「怖かった…!本当に怖かった!あのまま死んじゃうんじゃないかって…!」
「でも、二人に助けられた時、私安心していたんです!」
「あぁ、生きていられるんだ!って!分かっちゃったんです!」
「私!本当は、本当はただの臆病者だってぇ!!」

マミの独白はもう最後のほうは殆ど絶叫じみていた。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:02:50.10 ID:FIrMV1oB0
「鹿目さんが、一緒に闘ってくれるって言ってくれた時は嬉しかった!」
「でも、それはただ一緒に道連れが欲しかっただけ!一緒に死んでくれる人を探していただけなの!!」
「一人で誰にも知られずに、死んでいくのが怖かっただけなのぉ!!!」

そう言うとマミはもう堪らずに泣き始めてしまった。
エクスカイザーはただ、マミの頭を撫でてやる事しか出来なかった。
撫でると、マミはエクスカイザーに抱きつき、そのまま泣き続けた。

「わぁぁぁぁ!ああああああ!!!」

「マミ…。」
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:03:26.43 ID:FIrMV1oB0
玄関立っていた二人はマミの絶叫を聞いて涙を流していた。

「マミさん…。」

「クッ…うぅ…。」

二人とも思うところはあった。
一番真っ先に怖く無いのか、と。
でも、マミならば、とも思う二人だったが。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:04:32.84 ID:FIrMV1oB0
現実は違った。
マミはお茶目な先輩であり、頼れる魔法少女であり。

まず何より、たった一人の女の子であった。
20にも満たない、一人ぼっちの『少女』であった。

マミの泣き声が聞こえる中、まどかとさやかは声を押し殺し、泣いていた。



第3話 完


315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/19(火) 15:05:37.87 ID:FIrMV1oB0
次回予告

「マミさん…立ち直れるかな…?」
「それまではあの転校生が何とかしてくれるかも知れないけど…。」
「でも!そんなの私は嫌だ!あいつにだけは助けられたくない!!」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『奇跡も、魔法もあるんだよ』」
「あなたのうちにも宇宙人いる?」

予告担当:美樹さやか
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/07/19(火) 15:10:47.58 ID:FIrMV1oB0
と言うわけで、第3話終了です!
マミさん泣かせちゃった…、こんなのマミさんじゃない!って方
本当にすみませんでしたぁ!! oTL
でも、このままマミさん泣かせたままにはしません!絶対に!!
では。


ねんどろマミさんかわいいよ、本気で購入しようか迷っちまう。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/07/19(火) 19:13:04.93 ID:EfKbXDfCo
乙でした。

マミさんマミマミされなかったか〜
続きを楽しみにお待ちしています。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/07/19(火) 19:35:05.20 ID:hFRdVPy9o
お疲れ様でした。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/07/20(水) 23:16:37.20 ID:i7OuwR4+0


ちゃんとした大人キャラがいるってのはやっぱいいもんだな
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/20(水) 23:27:43.71 ID:Zqzw1EE70
有難うございます。
現在4話を書いているんですが、謎展開になりそうで怖いです(笑)
でも突っ切る覚悟で行きますので!
では
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/07/25(月) 00:36:57.11 ID:4SVDjnsm0
どうもお久しぶりです。
書けなくなると怖いんでageさせて貰います。
4話製作中なんですがオリジナル要素強くて強くて…。
もう少しお待ち下さい。

…需要はあるのだろうか?
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/07/25(月) 21:46:25.41 ID:ZLMyhFsK0
需要なんて自分で作るものだ
待つ
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/07/25(月) 23:10:21.07 ID:MXFOqneWo
細かいことは突っ走ってから考えればいいんじゃないかな
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 00:14:39.17 ID:2APj+fK30
すみません、何かあまりにも難産なもので気が迷っていました。
有難うございます!
もう少しだけお待ちください!
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/07/26(火) 01:42:22.06 ID:/94h949DO
がんばって。期待してるよ!
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/07/26(火) 14:25:48.28 ID:LMWdgig/0
お待たせいたしました!
ですが展開的にgdgdです!(笑)
しかもオリジナルの要素いっぱいと来たもんだ。
ssって難しいね。

327 :今の今まで書くのを忘れてました2011/07/26(火) 14:30:42.04 ID:LMWdgig/0
今更ながらの注意!

此方のssはクロスオーバー物として書かれています

題材は 魔法少女まどか☆マギカ×勇者エクスカイザー物です。

そちらを留意の上御鑑賞願います。

それでは、次からお楽しみください。
328 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第4話」2011/07/26(火) 14:31:23.44 ID:LMWdgig/0

 暫くまどか達は玄関先で待っていた。
そうして待つこと十数分。
玄関からエクスカイザーが出てきて、マミが話をしたい旨を伝え。
マミの部屋にやってきた。

「え…?戦えないって…」

「どういう…事ですか…?」

「「…。」」

マミは突如魔法少女を辞める、そう切り出したのだった。
その顔は俯いており見ることは出来なかった。
329 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第4話」[sage]:2011/07/26(火) 14:31:49.81 ID:LMWdgig/0
「そんな、でもあれは、マミさんの所為じゃ…」

「そ、そうですよ!マミさんにだって油断や隙が在ったって事ですよ!」
「次、頑張りましょう!もうあんな「いいのよ」

マミはさやかの言葉を遮りそう呟いた。
さやかに向けた瞳には、かつて見た光は無く。
ただ、虚ろにさやかを見つめていた。
その様を見てさやかは黙るしかなかった。
330 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第4話」[sage]:2011/07/26(火) 14:32:31.51 ID:LMWdgig/0
「ごめんなさい、今回の戦いで、私の力不足を痛感させられたわ」
「私なんかじゃ、役に立てないもの…」

「そんな…!」
「そんなこと無いです!マミさんは…!」

「私は、ただ一人ぼっちが怖かっただけ」
「道連れが欲しかっただけ」
「そんな自分の都合に…あなた達を巻き込むわけには行かないし…」
「巻き込みたくない…」
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:33:11.25 ID:LMWdgig/0
「だからって…だからって何も辞めるなんて…!」

「嫌なの…もう…怖い事は…」

そう言うとマミの目から涙が零れ落ちて、布団に染みを作った。

「エクスカイザーさん達に助けられて、死ぬのが怖くなっちゃった…」

「な!何言っているんですか!?マミさん!!」
「あいつは…あいつはマミさんの手柄を横取りに!」
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:33:40.97 ID:LMWdgig/0
「それについては、私が話そう」

さやかがマミに詰め寄ろうとした時、それを諫めるようにエクスカイザーが口を割った。

「あの時、ほむらと私が一緒に来たのは、途中で私が助けたからだ」

「な…エクスカイザーが?」

「あぁ」
「マミの拘束魔法で縛り上げられていたのを、私が助けた」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:34:12.37 ID:LMWdgig/0
そう言うとさやかはマミの方を振り向いた。
マミは、ただ事実だ、と首肯するだけだった。

「そ、そんな…嘘ですよね!?マミさん!あの転校生を…」

「事実よ、暁美さんを動けなくして、美樹さんの元へ向かったの」
「だからあの時、暁美さんはエクスカイザーさんと一緒に助けに来たの」
「暁美さん自身は助けるとか、そう言うことは思っていなかったかもしれないけど…」
「あの時…、暁美さんを信じていれば…」
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:34:45.65 ID:LMWdgig/0
マミはそう言ってあの時の自分に後悔していた。
もし今の自分があの場に居たら、引っ叩いてでも言う事を聞かせてやりたかった。
マミは、虚ろな目のままキュゥべぇに目を向けた。

「キュゥべぇ…御免なさいね」

「…ボクからは何とも言えないよ、どう動くかは君の自由だし、口出しは出来ない」
「ボクは、君がまた魔法少女として戦うのを願うだけだ」

「…有難う…」
「鹿目さん、美樹さん、御免なさい、もう魔法少女体験ツアー、出来そうになくて…」
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:35:15.55 ID:LMWdgig/0
「いえ!そんな」
「私は…」

「…でも!どうするんです!今もこの町は魔女に狙われているんです!」
「マミさんがいないと!マミさんがいないとこの街は…!!」

「暁美さんがいるわ」

「!!!???」

その言葉にさやかは絶句していた。
あの女に!あのいけ好かない転校生なんかに!!
そう思うと、さやかは拳を握り締めていた。
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:35:46.13 ID:LMWdgig/0
「嫌です…。」

「さやかちゃん…?」

「私!あんな奴に守って貰いたくない!」
「マミさんがそう言っても私は認められない!」
「それならいっそ私が!!」

「駄目よ美樹さん!!!」

二人はいきなり怒鳴ったマミに驚かされた。
怒りに見開かれた目には涙が堪り、こぼれそうだった。
だが、その時のマミの眼は本当にさやかを怒っていた。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:36:13.76 ID:LMWdgig/0
「美樹さん、それだけは駄目」
「そんな事の為だけに、願いを使っては駄目…!」

マミの声には先程までの虚脱感は無く、気迫が満ちていた。
さやかはその様に圧倒されながらも反論した。

「そんな事って…!あいつが街の為に戦うなんて保障は無いんですよ!?」
「それなのに…指をくわえて見ていなければいけないんですか!!」

「そう言うことじゃないわ、美樹さん」
「指を銜えているだけなんて良い分けない」
「じゃあ逆に聞くわ、美樹さんはそんな事の為に叶った願い事で、満足できるの?」

「!?」
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:36:44.75 ID:LMWdgig/0
さやかは、また痛い所を突かれてしまっていた。
もちろん、さやかだって満足できる確証なんて無かった。
でも、街を守るためなら、と言おうとした時、マミが口を開いた。

「確かに、街を守るために魔法少女になってくれるのは嬉しいわ」
「でも、暁美さんにだけは守られたくないなんて対抗心、何時まで続けるつもり?」
「続けられるわけ無いわ、いつか必ず絶対に、私の様になる」

「あ…!」
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:37:23.49 ID:LMWdgig/0
此処で、さやかはマミが自分の心配をしている事に気付かされた。
たしかに戦う事はできる、だがあの転校生とずっといがみ合い続けるのか?
出来ない、出来る訳がない、そんな事していたら、いつか必ず…!
自分を引き合いに出してまで、マミはさやかを止めようとしたのだ。
そこで、さやかは下を向いてしまった。

「…ずるい…ずるいですよ…マミさん…」

「さやかちゃん…?」

「そんな事言って…!ボロボロになって…!わたし…どうすれば良いんですかぁ…!」
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:38:00.60 ID:LMWdgig/0
さやかは涙を流し、ずっと握っていた拳を開き、顔を覆った。
マミは安堵したのか、先程の怒気は収まり、少し生気の灯った瞳でさやかを見つめて語りだした。

「私だって、このままで良い、なんて思えないわ」
「暁美さんと今度話をしてみるわ」
「その返答次第だけど…」

「あ、あの…マミさん…」

マミの話を今まで黙っていたまどかが遮った。

「それ…私にやらせてもらえますか…?」

「鹿目さん?」
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:38:35.77 ID:LMWdgig/0
「まどか?」

「さやかちゃんだと、もしかしたら途中でケンカ腰になっちゃうかもしれないし…」
「同じ魔法少女のマミさんからは取り付く島も無いかもしれないじゃないですか」
「だから、私ならもしかするかも知れない…と思って…」

「鹿目さん…」

マミはまどかの申し入れに感謝するしか他に無かった。
マミも前にほむらと会話した時、半ば絶縁状を渡している様な状態だったから、ある種の賭けだった。
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:39:41.72 ID:LMWdgig/0
「…良いですか…?」

まどかはある種小動物のような眼差しでマミを見つめた。
それにはマミも堪らず笑った。

「…フフッ、可愛い後輩が、頑張ってくれるんだもの…無碍には出来ないわ…」
「お願いできる…?」

「は、はい!」

まどかはそう言って深々とお辞儀をしていた。

「さやかちゃん、良いよね…?」
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:40:21.24 ID:LMWdgig/0
「うぐ…」
「……ぬあー!!分かった!分かったよ!負け!わたしの負け!!好きにしちゃって!!」

「有難う!さやかちゃん!!」

そう言ってまどかはさやかに抱きついた。
さやかはただ、苦笑いするしかなかった。

「あ、そうだ、マミさん」
「前に言っていた、他の魔法少女とかに協力してもらえないんですか?」

「他の魔法少女に?」
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:40:54.47 ID:LMWdgig/0
「はい、転校生に助けられるのはやっぱり癪に障ります。」
「他の魔法少女にも頼れないんですか?」

マミは顎に手を当てて考えた。

「前にも言ったけど、魔法少女は味方同士とは限らない」
「知り合いの魔法少女が居るには居るけど…」
「連絡手段が無いのよ、御免なさい」

「そうなんですか…」

さやかは目に見えてしょぼくれた。
よっぽどほむらに頭を下げるのが気に食わないのだろうか。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:41:43.24 ID:LMWdgig/0
「仕方ないよ、さやかちゃん」
「それじゃ私、明日にでもほむらちゃんに話をして見ますね」

「えぇ、お願い」

「でもなぁ、あの転校生がはい、そうですかって言うとは思えないんだよなぁ〜」

「さやかちゃん、疑ってばかりじゃ駄目」
「信じてあげないと」

「まどかは良い心がけだね」
「相手の事を知るためには、まず相手を信じることだ」
「さやかも見習ってみると良いよ」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:42:47.43 ID:LMWdgig/0
「う〜ん…」

「それでは、私達は失礼するとしよう」
「何時までもマミが休めないからね」

「あ、そだった」
「すみません、マミさん話し込んじゃって」

「良いのよ、それに私も皆と喋っていたら少し元気をもらえたし」

そう言ってマミは両手を持ち上げてちょっとガッツポーズを作って見せた。
それを見てまどか達は安心していた。

「本当ですか?良かった」
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:43:21.85 ID:LMWdgig/0
「ええ、有難う、鹿目さん、美樹さん、エクスカイザーさん」

「はい!じゃ、いこっかみんな」

「うん」

「あぁ、でもマミ、これだけは忘れないでくれ」

「?」

エクスカイザーはまどか達と連れ立って帰る前にマミに向き直り語りだした。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:44:11.90 ID:LMWdgig/0
「確かに、闘うのはとても怖い事だ」
「でも、マミ、君はずっと闘い続けてきた」
「それは、君に『勇気』が在ったからだ」
「恐れずに困難に立ち向かって行く勇気」
「それだけは忘れないでくれ…」

「……。」

そう言い残し、エクスカイザー達は帰っていった。

「…キュゥべぇ」

「なんだい?マミ」

「今日、私の布団で一緒に寝てもらっても…良いかな…?」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:44:54.58 ID:LMWdgig/0
「別に構わないけど…如何したんだい…?」

「…。」

「…やれやれ、今日は特別だよ?」
「僕はちょっとした用事あるから出かけてくるよ」

「…有難う」
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:45:35.13 ID:LMWdgig/0
そう言ったマミの目には再び涙が溜まっていた。
キュゥべぇはそれを察したのか、部屋から出て行った。
気配が無くなると、マミは縋る様に布団を胸元に手繰り寄せ泣いた。

「う…うぅ…!ううううううぅ!」

まどか達はこんな先輩でも、何も言わずに心配してくれた。
エクスカイザーも励ましてくれた。
マミは率直な意見、非常に嬉しかった。
でも、マミはその好意を受け取りたくても受け取れないほどに臆病になっていた。
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:46:09.57 ID:LMWdgig/0


 第4話『奇跡も、魔法もあるんだよ』


 次の日、まどかは制服に着替えて食卓についていた。

「…。」

「どうした?まどか」
「早く食べないと、遅刻するぞ?」

「…うん」
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:47:12.88 ID:LMWdgig/0
どういってまどかは朝食に箸を付け出した。
その間、ほむらに対してどうやって話をしたら良いか考えていた。

「……。」

「どうしたんだい?まどか」
「具合でも悪いのかい?」

「え?ううん違うの…ちょっと考え事をね…」

「何考えていたんだい?」
「友達関係とか?」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:48:06.58 ID:LMWdgig/0
まどかは一瞬ビックリして詢子に向き直った。
すると詢子はニヤリ、と笑い話を進めた。

「図星だったみたいだね、喧嘩とかなら謝れば良いじゃない」
「それで、万事OKさ」

「謝るって…それだけ?」

「それだけだよ」
「ヘタに考えるとさ、余計にこんがらがって分からなくなるから先ず真っ先に謝る」
「それからは二人で話し合えばいいのさ、学生なんだし、シンプルにいきな」
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:48:41.50 ID:LMWdgig/0
そう言うと詢子はコーヒーを飲み干し仕事に向かった。

「じゃ、行って来る」

「行ってらっしゃい」
「…喧嘩じゃないんだけどな」

「ハハハ、でもママの言う事は間違ってはいないよ」
「何かあったときは相手と話し合いをするのが一番さ」
「そうすれば、喧嘩なんかにもならないしね」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:49:40.78 ID:LMWdgig/0

「あやまるー」

「そう、タツヤは偉いね」

「えらいー」

まどかは家族のアドバイスを繰り返しながら朝食を摘んでいた。

「エクスカイザーさんはどう思う?」

「ふむ…。」

朝食の後、まどかはエクスカイザーとも相談をしていた。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:50:31.05 ID:LMWdgig/0
「パパさん、ママさんの言う事も一理ある」
「それにまどか、考えすぎるのもいけないことだよ」

「じゃあいつも通り、で良いのかな…?」

「うん、もし何かあったらカイザーブレスを使ってくれ」
「私も手伝おう」

「有難う、エクスカイザーさん」
「…テヘッ、考え過ぎってエクスカイザーさんにも言われちゃった」
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:51:09.85 ID:LMWdgig/0
そう言うとまどかは学校に行って来ると言い、走って行った。

「…。」


 エクスカイザーは昨日のほむらとの会話を思い出していた。

『…これから言う事は…まどか達には言わないで欲しい…』
『私は…この時代の人間じゃない』
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:51:47.01 ID:LMWdgig/0
『この時代の…君はタイムトラベラーなのか!?』

『厳密には違うわ、でもそう思ってくれても構わない』
『これから先、酷い事が絶対に起きる、その時鹿目さんは魔法少女になることを選んでしまう』
『私は…その未来を阻止するために此処にいるの』

段差に差し掛かり、少し飛び上がったがほむらは体勢を崩さずに片膝立ちを維持した。

『…。』

エクスカイザーは俄かには信じ難かった、が。

『分かった、では私は何をすればいい?』
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:52:34.22 ID:LMWdgig/0
『!?信じて…くれるんですか?』

エクスカイザーは信じる事にした。
ほむらの言葉には、嘘を言っているとは思えない感じもあったし何より…。

『ああ、だが一概に信じる事は私には出来ない』
『それでも、君の様な子がそんな嘘を付くとも思えないからね』

そう確信できる何かが彼女にはあった。

『有難う…』
『今はまだ何もしてもらわなくても構わない、でもまどかが魔法少女になるのだけは止めさせて』
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:53:25.95 ID:LMWdgig/0
『君は、とてもまどかを大事に思っているんだね』

『はい…まどかは…私の…』

そこまで聞いていると段差があり少し飛び上がった。
ほむらは体勢を崩しはしたが、キングローダーから振り落とされずにすんだ。
その事にほむらは内心ヒヤッとしていた。

『おっと、すまない、大丈夫だったか?』

『は、はい・・・後、これだけは言っておきます。』

『?』
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:54:20.39 ID:LMWdgig/0
『キュゥべぇ…あいつにだけは気をつけて…』

『キュゥべぇに?それは一体…?』

『………。』

エクスカイザーが聞き返しても、ほむらは黙っているだけであった。

『言えないのなら仕方ないね』
『そろそろ魔女のいる場所だ!先に行くぞ!!』

『…ハイッ!』
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:55:08.37 ID:LMWdgig/0
そう言うとエクスカイザーはキングローダーとの連結を解除し、最高速を出し魔女の部屋に突入して行った。

「…。」

ほむらがタイムトラベラーと自称したのは概ね間違いではないだろう。
エクスカイザーは確信していた。

「魔法少女…魔女…タイムトラベラー…」
「色々調べなければなさそうだ…」

そう言うとエクスカイザーは窓から道路に飛び降り、人目に付かない様に中心街へと向かった。

363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:55:58.80 ID:LMWdgig/0

 昼休み、まどかとさやかは屋上に佇んでいた。
暁美ほむらと話をするために。

「…マミさん、今日休みだったね」

「うん…やっぱりショックだよね、あんな風になっちゃったらさ」

「…私はさ、マミさんの事、弱いだなんて思っていないよ?」

「さやかちゃん?」

そう言ってさやかは空を眺めながら呟いた
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:56:54.13 ID:LMWdgig/0
「わたし達だってさ、魔法少女の体験コースって名目で一緒に付いていたんだからさ…」
「ああゆう事になるのはさ、いつか起きて然るべき、って感じたの」
「現実はそう甘くない、必ず神様は物事の良い面を見せたら、必ず悪い面も見せ付ける」
「それが、偶々あの時だったってだけだと思う、わたし達が居ないところでされなかっただけ、まだマシ」

「…。」

さやかの眼は遠くを見つめていた。
恐らく上条君の事を考えているのだろう。
そうまどかは思った。

「ねぇ、まどか、本当にするの?」
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:57:45.51 ID:LMWdgig/0
そう言うとさやかは気持ちを切り替えてこれからの事をまどかに質問した。

「うん…話をしないと、マミさんとの約束だし」

「そりゃまぁ、そうだけど…」

「嫌なら先に帰ってもいいよ?さやかちゃん」

「それはダメ!絶対!!」
「マミさんが信じて、エクスカイザーも信じろって言った」
「まどかだって信じるって言うなら、私が信じないって何かズルイ気がする」
「だから、私も転校生を信じてみる」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:58:56.39 ID:LMWdgig/0

「さやかちゃん…!」

まどかは、嬉しかった、何よりさやかがほむらと話をしてくれるといってくれた事。
さやかが会って早々に怒鳴りつけたり、噛み付いたりするんじゃないか、と思っていたが。
どうやらそれは杞憂に終わったようで、まどかはホッと胸を撫で下ろしていた。

「…ねぇ、まどか幾ら私でも早々に怒鳴りつけたり、噛み付いたりはしないからね?」

「え゛ぇ゛!?そ、そんな事考えてないよ!?」

「や・っ・ぱ・り、考えてたぁー!!この〜!」

「キャッ!や、止めてぇさやかちゃん、あはははは!!」

「私の事をそう思っていたバツなのだ〜!!転校生が来るまでくすぐってやる〜!!」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 14:59:45.90 ID:LMWdgig/0
そう言ってまどか達はじゃれ合っていた。
先ほどとは打って変わり、二人は笑いあってはしゃいでいた。
さやかなりの気遣い、と言った所だろう。
まどかは心の中で有難う、と呟いた。

「仲が良さそうね」

「「!?」」///

その言葉に振り向くと、屋上の入り口に暁美ほむらが立っていた。

「あ!ほ!ほむらちゃん!?あの、その、これはね…!」///

「そ、ソウソウ!!まして私とまどかがそんな関係な訳ある訳無いじゃな〜い!!ハッハッハッハッハ!」///
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:00:29.51 ID:LMWdgig/0
二人は真っ赤になりながら取り繕おうとしてはいたが、ほむらは全く意に介していないようだった。

「大丈夫よ、私はそう言うの、慣れているし」

「ほ、ほむらちゃん!!??」

「ぬ、ぬわーーーーーー!!!」
「ま、まさか転校生にそ、そんな属性がぁーーー!!!!」

「嘘よ」

二人は揃って動かなくなり、その言葉の意味を理解すると同時に盛大に溜息を吐いた。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:01:35.69 ID:LMWdgig/0
「も、もうほむらちゃんてばっ」///

「そ、そうだよ、ま、全く、アハハハハハノハッハ」///

「…御免なさい、ちょっとからかって見たかっただけだから」
「で、話って?」

そう言うほむらの眼はまどかに向けられた。
まどかはこの時が来た、と言う面持ちでほむらに話を切り出した。

「あの、魔女の事なんだけど…ほむらちゃん、頼んでもいい??」

「頼む…って言うのは?」
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:02:07.48 ID:LMWdgig/0
「マミさん、なんだけど…魔法少女を引退するって…もう戦う事が出来ないって言っているの…」
「だからね、知り合いの魔法少女にこの街を守ってもらおう!って」

「それで私に白羽の矢が立ったのね…」

「うん…私達が知っている魔法少女はマミさんとほむらちゃんしか居ない」
「だからお願い、マミさんの変わりに、この街を守ってください!!」

まどかはそう言うと深々とお辞儀をした。
ほむらはその様をまじまじと見つめていた。

「言い分は分かったわ、でも私がNOといった時、鹿目さんあなたはどうするの?」
「それに、もしかしたら私はとんでもない奴で、一般人なんて知らない、何て言ったらどうするの?」
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:03:02.02 ID:LMWdgig/0

さやかはその言葉に嫌な顔をし、まどかは、押し黙ってしまった。
が、まどかは手を握ってほむらを見つめ。

「信じる、私はほむらちゃんを信じている」

そう言い切りほむらを見つめた。
その目に、ほむらは驚いていた。

「…転校生!」

そこにさやかが割って入った。
まどかは何をするのだろうと思っていたが、噛み付いたりしないのは分かった。
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:03:46.90 ID:LMWdgig/0
「私は…あんたのことが嫌い、好きになれそうにもない」

「……。」

「でもね、あんただけが戦えるのも事実なんだ」
「だから…私からもお願いする!」

さやかも振り抜ける様に頭を下げたのだった。

「!!!」

ほむらは先程より目に見えて驚いていた。
まどかは嬉しくなり、さやかのほうを向くと、さやかは顔を真っ赤にしてマミさんの為と連呼していた。
それを見たまどかは笑ってしまった。

「…二人とも、頭を上げて…。」
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:04:29.04 ID:LMWdgig/0
何分くらい頭を下げていたのか分からない、でもほむらの声で二人は頭を上げた。

「…分かったわ、ここまでされて断れないわ」

「ほむらちゃん…!」

「それじゃ…!」

「えぇ、魔女は私が何とかするわ」
「巴マミにそう伝えておいて」

「あぁ…!有難う!ほむらちゃん!」

そう言ってまどかはほむらに抱きついた。
ほむらは面食らったのか驚いていた。
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:05:29.41 ID:LMWdgig/0
「ま、まどか!?」

「あ!やっと私のこと名前で呼んでくれた!」

「え?あ…!」

ほむらは一瞬何の事かと思い、今自分が言った事に気づき口に手を当てた。

「良かったぁー、ずっとこのまま鹿目さんで通されるのかと思っていたよ〜」

「いや、その、違っ」

「ほら、さやかちゃんも」
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:06:16.34 ID:LMWdgig/0
「ゑ!?何で私も!?」

「さやかちゃんだって私のことまどかって呼んでくれたんだよ?」
「だったらさやかちゃんもほむらちゃんって名前で呼んであげよう!ね?」

「え!?いや何その理屈!?それならまどかがほむらちゃんって…そう言えば転校初日から言っているね」

「そう言えばそうね…」

「あんたも気付いていなかったんかい!」

そう言ってさやかはほむらに対して突っ込みを入れていた。
どうやらほむらも無意識にまどかとの応答を行なっていたようだった。

「ほら、さやかちゃん」
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:07:10.46 ID:LMWdgig/0
「ぬぅ…ほ、ほ、む…ら…?」

「もっと大きい声で!」

「えぇい!分かった!ほむら!!」

「は、はい!」

突然大声で自分の名前を呼ばれたから、ほむらは目の前にいてもビックリしてしまっていた。
髪の毛がブワッと持ち上がっていた
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:07:53.93 ID:LMWdgig/0
「こ、これで良い?後、ほむら!私はさやかって呼びなさい!」///
「いちいちフルネームは呼びづらいでしょ!?」///
「これからはさやかって呼ぶ事!良い!!」///

「わ、分かったわ」

半ば強引に命令されていたほむらであったが、逆らってはいけない、そう思っていた。
眼が凄い怖かったからだ。

「ほら、ほむらちゃんも」
「さやかちゃんも言えたよ?」
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:08:56.92 ID:LMWdgig/0
「…さやか…」

「うん!これで私達もちゃんとした友達だね」

「とも…だち…?」

「ゑ!?ちょ、まどか!」

「さやかちゃん、さやかちゃんはほむらちゃんのことを好きになれない」
「そう言ったよね」

「う、うん言った」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:10:12.68 ID:LMWdgig/0
「でも、さやかちゃんは『友達にはなれない』って言ってないよね?」

「いや、まぁそりゃそうだけど…」

「だったら…」

「あ…」

そう言うとまどかはほむらとさやかの手を取り、自身の手も載せ。

「これで、みんな友達だね!」

そう言った。
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:11:29.11 ID:LMWdgig/0
「とも…だち…」

ほむらは繰り返し言葉の意味を探していた。
ともだち、トモダチ?まさかあの友達?
そう自問し、まどかに聞き返した。

「そ、そんな…良いの?」
「わ、私、貴方達に良い事なんて一言も…」

「良いの、それじゃほむらちゃん、これからも、よろしくお願いします!」

そう言ってまどかは、再び頭を下げていた。

「あ…!」

やっと理解できたのか、ほむらはその様を見るとそのまま泣き崩れてしまった。
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:12:12.60 ID:LMWdgig/0
「ほ、ほむらちゃん!?」

「ちょ!どうしたのほむら!!」

「何でもない…何でもないの…!ただ…嬉しくて…!」

そう言うとほむらは立ち上がり、涙を拭いて二人を見た。

「改めて、此方からもお願いするわ、まどか、…さやか」

「うん!」

「何でわたしの名前呼ぶ時言い淀むかなぁ…ま、いっか」
「よろしく」
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:12:41.70 ID:LMWdgig/0
そう言って3人は再び手を合わせていた。

「でも、私が此処まで言えたのはさやかちゃんのおかげなんだよ?」

「えぇ!?またわたし!?」

「うん!あの時さやかちゃんがちょっかい掛けてくれなかったら」
「此処まで言えなかったかも」

「な、何と…」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:13:34.68 ID:LMWdgig/0
さやかは自分の行いを半分呪っていた。
どうしてあの時、空気を和ませようとしてしまったのか。
でも、転校生、いやほむらとも友達(?)になれたのだし良しとするか。
と、心の中で思っていた。

「ホント、貴方って空気を読めないのね」

「う、うるさいなぁもう…!」

「でも・・・、悪くないわ」

そう言うとほむらは薄く笑っていた。
その時、ちょうど予鈴がなり、話はお終いとなった。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:14:10.90 ID:LMWdgig/0
「あ、鳴っちゃったね、仕方ないし行こう二人とも」

「えぇ…」

「うん」

「ところでさ、ほむら」

「??」

そう言うさやかをほむらは見ると、にやりとさやかは笑っていた。

「ほむらってさ、笑うと可愛いんだ」

「なっ!!」///
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:15:34.04 ID:LMWdgig/0
「あ、赤くなったー、照れてやんのー!」

「な、待ちなさい、さやか!」///

「あたしはあんたが嫌いなのだ〜だから待たなーい!」

さやかは唐突に走り出し、まどかとほむらを振り切って走って行った。
ほむらは顔を真っ赤にして追いかけていった。
まどかはと言うと。

「もぉー、二人とも待ってよぉ〜」
「…でも、良かったさやかちゃんとほむらちゃんも仲良くなれて…」

屋上のドアから仲なんて良くなーい!!と聞こえてきたが気にせずに二人を追って教室に向かった。

386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:16:26.62 ID:LMWdgig/0

 放課後、さやかは病院に向かうと言ったのでまどかはほむらと一緒に帰っていた。
後、ほむらはマミと話をするために一緒に歩いていた。

「そう言えば、まどか」
「私に魔女の事を頼むということは、忠告を受け取ってくれた」
「そう思っても良い、と言う事かしら?」

「忠告?あ…」

まどかはほむらから転校初日に変わろうと願うな。
そう忠告されたいるのを思い出した。

「もしかして、あの忠告って魔法少女の事だったの?」
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:17:17.90 ID:LMWdgig/0
「えぇ、あの時は魔法少女の事を言う訳にもいかなかったし、抽象的過ぎて御免なさい」

「い、良いんだよ、ほむらちゃんは私の事を思って言ってくれたんだし」
「それに、意味もやっと分かったし」
「でも、どうしてそんなに魔法少女になってほしくないの?」

そう聞くと、ほむらは俯き話が途切れてしまった。
まどかは触れてはいけない話題だったかな、と思っていると。
ほむらは小さいが、はっきりとした声で語りだした。

「…約束したの…」
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:18:03.16 ID:LMWdgig/0
「約束?」

「えぇ、此処に来る前に、巴マミ以外にも在った事があるの」
「その時に、ね…」

まどかは、その魔法少女はマミさんの知っている人だろうか?とも思ったが話は続いた。

「確かに魔法少女になれば願いはアイツに叶えてもらえるわ」
「でも、そこから先は自分次第、魔女との戦いが運命付けられて、その中で生き残らなければならない」
「見返りもなく、自分の願いに振り回される事もある、そして力尽きれば、そこには死が待っている」
「そんな思い、もうさせたくないの」
「今の貴方には」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:19:02.52 ID:LMWdgig/0
そう言うとほむらはまどかに向き直り寂しそうに笑っていた。

「ちょうど、此処に来る前に『ある一人の魔法少女』にあってね。」
「そんな運命に逢う前の子達を、助けてあげて、そう頼まれたのよ」
「その願いが、私を突き動かしているの」

「…。」

ほむらの話をまどかは静かに聞き入っていた。
だからこそ、まどかは疑問に思った。

「その、その魔法少女はどうな「死んだわ」

「…え?」
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:20:25.11 ID:LMWdgig/0
立ち止まり、まどかはほむらを凝視してしまっていた。

「死んでしまったわ、私なんかを助ける為に」
「ソウルジェムが濁って、魔法が使えない状態で…」

ほむらはそう言うと手を握り、悔しそうに顔を歪ませていた。

「…ほむらちゃんは、その人みたいに、人が死ぬ所を…何度も見てきたの?」

まどかはためらったが、聞かずに入られなかった。
ほむらは立ち止まっていた足を再びマミの家に向け歩き出し、そのまま喋りだした。
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:20:59.16 ID:LMWdgig/0
「えぇ、そうよ、数えるのも…諦めるほどにね…」

「…その人達の死は、誰も気付かないの?」

「場合にも寄るわ、巴マミの様な人は身寄りが近くに居ないから」
「失踪手どけとかが出るのは遅れるでしょうね」

それは、暗に[ピーーー]ば誰にも気付かれないかもしれない。
そうまどかは言っているように聞こえた。

「結界の中で[ピーーー]ば死体だって残らない」
「その人は、永久に行方不明のまま…」
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:23:40.31 ID:LMWdgig/0
「酷いよね…マミさんや、他の人たちも誰かの為に戦っていたのに…」
「誰にも気付いて貰えないなんて…」

「…魔法少女なんて、そんなものよ」
「もともと、願いは自分の為であって誰かの為ではない」
「だから誰かの為に戦うのではなく、自分自身の願いの為に闘うのよ」
「例え、誰に気付かれなくても、忘れ去られても」
「それは、仕方の無い事なの」

そう語るほむらの背中は酷く寂しく見え、まどかは声を掛けた。

「私、マミさんの事を忘れない」

「…まどか?」
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:24:44.34 ID:LMWdgig/0
「ほむらちゃんだって、一緒に闘った魔法少女のことは忘れていないでしょ?」
「だったら私もマミさんの事は絶対に忘れない」

「…生きているのに酷い言われようね」

「あ、ご、ゴメン、でもほむらちゃんの事だって忘れないよ!」

「エクスカイザーさんの事だって、私達を助けてくれた事だって」
「マミさんを助けてくれた事だって忘れないよ!!」

「……やっぱり、…覚えているわけないじゃない…」

「?ほむらちゃん??」
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:25:37.65 ID:LMWdgig/0
「いいの、何でもないわ」
「早く、巴マミの所に行きましょう」

「…ほむらちゃん??」

ほむらの目には涙が見え、まどかはただ困惑するばかりだった。

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:26:30.05 ID:LMWdgig/0

 場所は変わり、上条恭介の病室。
さやかが何時も通りお見舞いに来ているところだった。

「おっはー!恭介?元気?って入院していたら元気でも何でも無いよね〜」

ナッハッハッハッハと笑いながらさやかは話したが、恭介は無反応だった。

「…?どうしたの?恭介、具合でも悪いの?」
「あ!そうだ、今日もね…じゃーん!また探してきたから一緒に「ねぇ、さやか」

突然恭介がさやかの会話を切って話しかけてきた。
その声は嫌に低く、さやかは会話を止めて恭介の話を聞いた。

「さやかはさぁ…僕をいじめて楽しいかい?」

「え…」
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:27:36.88 ID:LMWdgig/0
「嫌がらせのつもりなんだろう?何で僕に音楽を聞かせようなんて思っているんだい?」

その声は刺々しく、不満げであり、さやかを攻めているように聞こえ、さやかは。

「そ、そんな事あるわけ無いよ!だって、恭介音楽好きでしょ?だから…」

そこまで言うと恭介は激昂し動かない左手で棚に置かれていたCDをケースごと床にぶちまけた。

「もう聞きたくないんだよ!!自分で弾けない曲なんて!!!」
「こんな腕じゃ!もう弾くことなんてできないんだ!!」

そう言って腕を花瓶にぶつけようとした所をさやかは済んでの所で止めさせた。

「駄目!そんな事!大丈夫だよ!治るから!きっと治るから!」
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:28:19.49 ID:LMWdgig/0
「無理なんだよ…医者に諦めろって…今の医学じゃどうしよも無いって…!」
「奇跡でも起きない限り…!」

「…!」
「あるよ…!」

「?何がだい?さやか」

「奇跡も魔法もあるんだよ」

そう言ってさやかは窓に枠に立っていた白い影を見つめた。
白い影、キュゥべぇは何も言わずにさやかの瞳を見つめていた
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:29:07.57 ID:LMWdgig/0

 少し時間は遡り、まどか達がほむらと話をしている時間。
巴マミの自宅、今日はマミは体調が悪いと言い休みを取っている。
ので、今現在マミはベッドに横になっていた。

「…。」

マミ寝息は穏やかで、起きる様子はなかった。
が、突然魘され出しベッドの上で寝返りをうっていた。

「う、うぅ〜ん…やだぁ、一人に、一人にしないでぇ…」
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:29:51.99 ID:LMWdgig/0
マミの心情を表したような寝言であった。
その寝言を言うと、マミは目を開けて周りを寝たまま確認していた。

「…ハァ、良かった…夢、か…」
「んもぅ、汗かいちゃった、シャワー浴びなきゃ」

そう言ってマミは新しい服を持って脱衣所の方へ向かった。
そのままシャワーを浴びるためにパジャマに手を掛けた。
その時。

ピンポーン!

インターホンが鳴りマミは着替えるのを止めた。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:30:47.33 ID:LMWdgig/0
「?誰かしら…この時間だと、鹿目さんはまだ来ないと思うし…」

そう言って外していたボタンを再び留め、玄関に向かった。

「はーい!どなたですかー?」

「私だ、マミ」
「少々良いだろうか?」

「エクスカイザーさん?」
「あ…すみません!待っていてもらって良いですか?」

「ああ、分かった」
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:31:27.88 ID:LMWdgig/0
疑問に思いながらもマミは寝室まで戻り、パジャマから私服に着替え。
エクスカイザーを招き入れた。

「今日は一体、如何したんですか?」

「ちょっと調べたい事があってね、すまないが、マミ」
「ソウルジェムを見せてもらっても良いかな?」

「ソウルジェムを、ですか?」

そう言うとマミは、指輪の状態にしていたソウルジェムをエクスカイザーに手渡した。

「有難う」
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:33:04.48 ID:LMWdgig/0
エクスカイザーはマミから預かると手に持って見つめだした。

「ふむ…エネルギーはやはりこれから発生されているのか…」
「だとすると…」

「あ、あの…」
「私のソウルジェムに何か…」

訝しげに尋ねるとエクスカイザーは快く答えた。

「ん?ああ、すまなかったね」
「少々、ソウルジェムに関して気になる事があったから見させて貰っていたんだ」

「ソウルジェムの?」
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:33:52.70 ID:LMWdgig/0
そう言ってエクスカイザーはマミのソウルジェムを日に翳して透かして見ていた。
ソウルジェムを通った日の光は綺麗な黄色に見えていた。

「あぁ、このソウルジェムのエネルギーは不可思議な箇所がいくつかあると思った」
「そうしたらおおよそ的中していた、と言うわけなんだ。」

「どういうことなんです?」

「先ず第一に、これはある種のエネルギーの塊と言っても良いだろう」
「不完全ではあるが、我々と同等の代物だ」

「エクスカイザーさんと同等って…そんな凄い代物なんですか?」
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:35:12.49 ID:LMWdgig/0
「ああ、だが不完全なんだ」
「本来こういうものは、大気中からエーテル等を吸収、変換し、動く事ができる」
「このソウルジェムはその吸収用の機能が付けられていない」

「????つまり…どういうことなんですか?」

「すまない難しかったかな?簡単に言うと水車、と言うものにはモーターを回すための水車が存在するだろう?」
「その水車が無い、そう言う状態なんだ」

「はぁ…でも、それじゃあ私はどうやってそのエネルギーを使っているんですか?」
「今まで何の問題も無く変身できていたし…」

「それはエネルギーの取り出し口、つまり水道の蛇口があるのと同じだからさ」
「但し、この状態だとエネルギーの残骸、つまりゴミが堪っていくから」
「使いづらくなっていく、だから欠かさずにメンテナンスが必要になってくる」
「普通なら、残骸は空気中に吐き出されて、新しいエネルギーを吸収する」
「それが正しいサイクルなんだが・・・」
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:35:46.04 ID:LMWdgig/0
そうエクスカイザーが言い、ちんぷんかんぷんだったマミにもある考えが浮かんだ。

「あ…!それってもしかして魔法を使った後にできる穢れですか?」

「ああ、そうだよ、グリーフシードはその穢れを吸い出す事のできるポンプ代わり、だと考えるのが妥当かな?」

「なるほど」

「でも、不思議なのはこの構造だ、どうしてこの様な作りになっているのか?それが分からない」

「そう言う風にしか出来なかったからじゃないんですか?」

「うむ…」
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:36:40.85 ID:LMWdgig/0
そう言うとエクスカイザーは黙り込んで考え出してしまった。
マミはそのままエクスカイザーを眺めたまま黙っていた。

「…。」

「あ、あの良かったらお茶を持ってきますけど?」

「?あぁ、すまない、長居するつもりは無かったんだがな、これは返そう」

そう言うとエクスカイザーはソウルジェムをマミに返し。
帰ろうと立ち上がった。

「あ、もう帰ってしまうんですか?」

「あぁ、あまり長居するのは悪いと思ったのでね」
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:37:52.69 ID:LMWdgig/0
「いえ、もし宜しければ・・・一緒にお話でも、と…」

そう言ってマミはエクスカイザーとの会話をしようと思っていた。
エクスカイザーは此処に至るまで、マミと会話をした事が無かった。
その事を思い出した。

「ふむ、そう言えばそうだったね」
「今まで、話と言う話をした事が無かったね」
「先ず、何から話そうか」

「…はい!」

そう言うとエクスカイザーとマミは会話を始めた。
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:40:05.94 ID:LMWdgig/0

 その後、暫くマミとエクスカイザーはお互いの話をしながら時間が過ぎていった。

「色々あったんですね、エクスカイザーさんも」

「君も色々あったんだね、私なんかよりも濃密な人生だったみたいだね」

「…あ、紅茶入れますね」

マミは立ち上がり、空になったティーカップに紅茶を注ぐため台所に向かった。
その時、マミの家のインターホンが鳴った。

ピンポーン!

「マミ、来客のようだが?」
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:41:58.11 ID:LMWdgig/0
「あ、すみません、お願いできますか?」

「分かった」

マミは、台所に立ち、何も考えずにエクスカイザーに頼んでいた。
エクスカイザーは頼まれたのだし、対応せねば、と言う使命感から立ち上がって玄関に向かった。

「はい、どちら様でしょう?」

「ゑ!?男の人の声!!」
「あ!あの!私、後輩の鹿目って言います!」
「巴マミさんはいらっしゃいますか?」

「鹿目?まどかかい?今開けよう」

「あ!まって!エクスカイザー!すみません!今開けま」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:42:51.14 ID:LMWdgig/0
ガチャン!

と、エクスカイザーには少々大きい扉を開けるとまどかが唖然として立っていた。
マミはエクスカイザー後ろで手を上げて止めさせようとした姿勢で立ち止まっていた。

「え?エクスカイザーさん?マミ…さん?」

「どうしたんだい?まどか、マミの家に何か用かい?」

「あ、鹿目さん、あの、その…」

「?どうしたんだい?マミ」

エクスカイザーは何でまどかとマミが固まっているのか理解できずにいた。
その時、まどかの後ろにいたほむらが喋った。
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:43:56.81 ID:LMWdgig/0
「…ある種の修羅場ね」

「君は暁美ほむら、修羅場とは一体なんだい?」

「・・・自覚無しってのが質悪いわね」

「?」

その後、マミがエクスカイザーへの誤解を解くのに数十分要したとか…。
閑話休題

「そうだったのか…、私の不徳だったようで、すまない」

「い、いえ、そう言うわけでは、と言うか論点がずれている様な…」

「不可思議な人なのね、貴方」
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:44:28.09 ID:LMWdgig/0
「あ、謝らないで下さい、私がついエクスカイザーさんに頼んだのが悪かったんです」

まどか達は其々の意見を述べ、其々に謝罪の意を表していた。

「それはそうと、暁美さんもしかして」

「えぇ、そうよ」
「まどか達の頼みを聞いたからこそ、此処に居るの」

そう言って、ほむらはまどか達の頼みを承諾した事を話した。

「そう、有難う、暁美さん」

「礼なんて良いのよ、私は私のやるべき事をやるだけ」
「それだけよ」
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:45:21.00 ID:LMWdgig/0
「それでも良いの、私が戦えないからって無理言って頼むんだもの」
「本当に、有難う」

マミは、そのまま対面のほむらに対して座りながら頭を深々と下げていた。

「…巴マミ、情けないわね、本当なら敵対する魔法少女にまで頭を下げるなんて」

「!」

「ほむらちゃん!?」

「戦わずに自分の中にある恐怖に押しつぶされて死ぬなんて、私は御免だわ」

「そんな言い方止めてよ!マミさんだって…!」

「いいのよ、鹿目さん、事実なんだし」
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:45:58.29 ID:LMWdgig/0
そう言いマミは俯きがちになっていた。
まどかは連れて来てはいけなかったのか、と自問しそうになっていた。

「そう、分かってはいるのね、それなら一つ、警告しておくわ」
「もし、また戦う気があるなら、生半可な覚悟で出て来ないで」
「半端な状態で死にそうになっても、私は助けられないし、助ける気も無い」

「ほむらちゃん…!」

まどかは立ち上がりほむらを止めようと動いたら、エクスカイザーが手を掲げてまどかを止めた。

「いや、良いんだ、まどか」
「ほむらはマミに対してある種の活を入れている、と言えば良いのだろうか」
「魔女との戦いは苛烈を極める、その中でマミが死んでほしくないから言っているんだ」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:46:31.23 ID:LMWdgig/0
「…そうなの?ほむらちゃん…」

「…そう受け止めて貰っても構わないわ」
「私は犠牲を出したくもないし、犠牲にさせたくない」
「それだけ…」

「…暁美さんって、結構口下手なのね」

そういいマミは微笑を浮かべていた。
ほむらは照れ隠しのためか、ソッポを向いていた。

(…あれ?このほむらちゃんの顔さっき…)

「分かったわ、暫くは貴方に任せても良さそうね」
「それじゃ」スッ
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:46:59.96 ID:LMWdgig/0
マミはそう言って右手をほむらに差し出した。

「…?何のつもり?」

「協力をして貰うのだから、その証、それにお友達にもなれそうだし、その握手」

そう言って差し出された右手を、ほむらはまじまじと見つめていた。
そして、手を出して握り返そうとはしているが、なかなか手を握れずにビクビクしていた。
それを見ていたまどかは立ち上がり、二人の間に立ち。

「はい」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:47:52.26 ID:LMWdgig/0
二人の手を掴み寄せ、握手をさせた。

「!?まどか」

「有難う、鹿目さん」

「これで良いね?ほむらちゃん」

まどかは二人を見ながら満面の笑みでほむらに聞き返していた。
拒否の発言は聞かない。
そう顔に書いてあるようだった。

「…ふぅ、有難う、まどか」
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:48:21.46 ID:LMWdgig/0
「どういたしまして♪」

「二人とも、もう仲良くなっていたのね、羨ましいわ」

「大丈夫ですよ、マミさんとももう友達ですよ」

「有難う、鹿目さん」

「良かったな、まどか」

「うん♪」

そう言ってまどか達は笑いあっていた。
ほむらは嬉しそうにはしていたが、悲しそうにもしていたのが、エクスカイザーには見えた。
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:49:55.07 ID:LMWdgig/0

 まどかはほむら達と今後の予定を確認し、家への岐路に付いていた。
エクスカイザーとほむらは別に行動をしており、現在は魔女の捜索中である。
まどかは自分は、ほむらの頼みを聞き、魔法少女になるのを辞めるべきか、それを考えていた。

「…ほむらちゃんは魔法少女になるなって言っているけど…私も、誰かの役に立ちたい…」
「分かっている、マミさんだって怖いって言うくらいなんだもの、私なんかじゃ足手まといにしかならないって…」
「それでも…!」

そう思っていた時、目の前を見知った人影が通り過ぎていった。

「仁美ちゃん?」

クラスメイトの一人、志筑仁美であった。

「仁美ちゃん?どうしたの?こんな時間に…」
「お稽古事は…?」
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:50:51.14 ID:LMWdgig/0
「あら!鹿目さんじゃありませんか!」
「ちょうど良いですわ、鹿目さんもご一緒にどうぞ」

そう言うと、仁美は軽い足取りで歩いて行った。
手には何も持たず、学生服のまま…。

「仁美ちゃん?どうし…!!」
「魔女の口付け!?」

その時まどかは、仁美の首筋にある刻印が在るのが見えた。
それは、以前、OLにも見られた魔女の口付けであった。
デザインは違うが、恐らく同じものだろう。
仁美がるんるんと息を弾ませて歩いていくのを、まどかは堪らずに後を追っていった。
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:51:35.93 ID:LMWdgig/0
「ま…!待って!仁美ちゃん!」
「何処に行くの?」

「何処って…決まっていますわ、此処よりも良い所ですわ」

その言葉に呼応したかのように回りには人が集まってきていた、みな一様に虚ろな瞳をしていた。

(こ、この人達ももしかして…!)
(そうだ!ほむらちゃんたちに連絡を…!)

このままでは大量に犠牲が出てしまう、そう思いほむらたちに連絡を取ろうとした時。
まどかはとても重要な事に気が付き驚愕していた。
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:52:22.01 ID:LMWdgig/0
(あああぁ!!ほむらちゃん達の電話番号!聞くの忘れていたぁ!)
(どうしよう!?このままじゃ…!そうだ!!)

ほむらとマミの携帯の番号を今の今まで忘れていたのを思い出し、何で自分は!
と思っていたが、カイザーブレスがあるのを思い出し、起動してエクスカイザーを呼んだ。

パシュゥン!ガオォォォォン!!!

「エクスカイザー!助けて!!」

「まどか!?一体どうしたというんだ?」

「大変なの!友達の仁美ちゃんが魔女の口付けに…他にも沢山人が居るの!」

「分かった!今すぐに向かう!それまで何とか持ちこたえてくれ!」
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:52:59.16 ID:LMWdgig/0
「うん!」

そう言ってエクスカイザーとの通信をしていたまどかは前にいた大人が立ち止まった拍子に顔をぶつけてしまった。

「キャッ!!」
「いったぁ…、あ、此処は…。」

見上げるとそこには古ぼけた倉庫が見えていた。
シャッターが閉まっていたが、それを中から開ける人が居て、他の人達もそれに続き中に入っていた。
まどかもそのまま入って行くと一人の男の人が椅子に座って頭を抱えていた。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:53:48.89 ID:LMWdgig/0
「お前ら良いよなぁ…俺なんかと違ってよぉ…」
「俺なんかこの町工場を切り盛りする事も出来ずにここで終わっちまうんだよぉ…」
「弱い奴から食われる、結局弱いのは俺だったって事だ…」

その男の足元にはバケツ一杯に洗剤が入っていた。
そこに女性が歩み寄り、別の洗剤を持って来ていた。
まどかは疑問に思い、すぐにその疑問は解決した。
母の言葉を思い出したのだ。
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:55:21.97 ID:LMWdgig/0

『良いかい?まどか、こう言う塩素系の洗剤は他の洗剤と混ぜちゃいけないんだ、どうしてか分かるかい?』

『ラベルに書いてあるから?』

『確かに、他の洗剤と混ぜると化学反応が起きてね、猛毒ガスが出ることが在るんだ』
『下手な事すると、あたしら家族全員お陀仏だから、気を付けてな』

「だ、駄目!そんな事したら…!」

そう言ってまどかは止めさせようとしたのだが、操られている仁美に止められてしまった。

「仁美ちゃん!?離して!」
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:57:08.06 ID:LMWdgig/0
「何を仰っているんですの?私達は今から素晴らしい所へ旅立つ儀式を行ないますの」
「邪魔をしてはなりませんわ」

「儀式!?あんなのが!?」

「えぇ、そうですの」
「鹿目さんも、直にそれがどんなに素晴らしい事なのか、分かってもらえますわ」

パチパチパチパチパチ!
その仁美の高説を聞いていた人達はみな政治家を支持するような拍手で仁美の演説を聞き入っていた。
仁美が手を離して演説していたのが幸いだったのか。
まどかは堪らなくなり、不意を付いてバケツに駆け寄って。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:57:48.58 ID:LMWdgig/0
「そんな事…!」

まどかはバケツを掴み上げ、そのまま窓ガラスに向かって放り投げた。
ガシャァァァァン!!
バケツは窓ガラスをぶち破り、外の地面に洗剤をぶちまけて転がった。

「ハァ、ハァ、ハァ…」

「何て事を〜」
「我々の儀式を〜」
「鹿目さん、許しませんわ〜」
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:58:23.92 ID:LMWdgig/0
さっきまで大人しかった人達は打って変わって、ゾンビの如くまどかに襲い掛かってきた。

「うわ!逃げなきゃ!」

そしてちょうど背中側にあったドアを開けて、入って来れない様に鍵を閉めた。

「は、早く逃げないと…あ、あれ?此処って倉庫?」

まどかは周りを見回して見るが、其処彼処に雑多に荷物が置かれているだけで、扉は自分の後ろにしか見当たらなかった。

「ど、どうしよう…エクスカイザーさんが来るまで…?」

その時、不意に自分の手が揺らいだように見えた。
自分は泣いているのか?と思った矢先、その揺らぎは結界による物だと気付いた。
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 15:58:56.27 ID:LMWdgig/0
「!?け、結界!!」

そして、まどかが結界に飲み込まれると、目の前に魔女が現れた。

「あ…、もしかして…これって罰が当たったのかな?」
「何時までも、誰かを頼りにして、自分では動かない」
「そんな私に、罰が当たったんだ…」

使い魔がまどかに近づき、まどかは無駄目だ、と思ったその時。
青い旋風がまどかの周囲を吹き飛ばし、使い魔を粉砕した。

「え!?エクスカイザーさん!?」
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:00:03.19 ID:LMWdgig/0
だが、その人影はエクスカイザーではなく、少女の姿をしていた。
身長は自分より高く、蒼の髪。
背中はマントで見えないが、その瞳を一瞬見ただけで、まどかは誰か分かった。

「さやかちゃん…?」

そう声を掛けようとしたとき、魔女が使い魔を出しその魔法少女を押しつぶそうとした。
だが、魔法少女は音速を超える速度で、手に持ったサーベルでなぎ払い、使い魔を切り裂いていった。
魔女は慌てて逃げようとしたが、一瞬遅く、魔法少女が切り掛かって行った。

「これでぇ…終わりだぁ!!」
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:01:50.38 ID:LMWdgig/0
ズガアァァァァン!!!!

途轍もない衝撃音と共に魔女は魔法少女の剣で真っ二つに切り裂かれ、爆発消滅した。
それと同時に、結界も消え去り戦いが終わった。

「よっと、はい、大丈夫?まどか」
「間一髪、って所だったかぁ〜」

そう言って、魔法少女『美樹さやか』が座り込んでいたまどかに手を差し出した。

「さ、さやかちゃん?一体どうしたの?その格好?」
「もしかして…」

「ん?あぁこれ?イヤね、実はさ、あたし…」
「魔法少女になったんだ。」
「これでも初戦にしちゃあうまくやったでしょ?」

ニヒヒ、と悪戯っぽくさやかは笑っていた。


432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:02:30.39 ID:LMWdgig/0

 その頃、エクスカイザーはほむらと合流し、まどかを助けに向かっていた。

「こっちからカイザーブレスの反応がある、急ごう」

「えぇ、間違いないようね、魔翌力の反応が強く…!?」

そう言うと、ほむらは驚愕し、立ち止まった。

「?一体どうしたんだ、ほむら」

「そんな…魔女の反応が…消えた?」

「何!?ではまさか…」
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:03:08.46 ID:LMWdgig/0
「いえ、そうではないわ、これは魔女が倒された、と言う事…、そんな…!」

そう言い、ほむらはエクスカイザーを置いて走り出して行った。

「ほむら!?」

エクスカイザーもそれについづいし、一緒に併走し現場に向かった。

反応のあった現場に付くと、そこには切れ味の鋭い刃物で切り裂かれた壁があった。
その中を慎重に二人は覗き込むと、そこには魔法少女になったさやかが立っているのが見えた。

「!!美樹さやか!?」
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:03:50.21 ID:LMWdgig/0
「お?あ、なんだ、遅かったじゃん、ほむら」
「てか、フルで呼ばないように」

そう言い、さやかはほむら達に手を振っていた。
ほむらはその様を見て我慢できなくなったのかさやかに詰め寄った。

「あ、貴方!何で!如何して!どうして!契約なんか!」

「うわ!い、一体如何したって言うのよ!ほむらぁ!」

「ほむらちゃん??」

まどかは何故ほむらがさやかに掴みかかったのか分からなかった。
だが、そのほむらの顔は酷く驚いていた。
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:04:40.33 ID:LMWdgig/0
「アタタ…ちょっとほむら、やりすぎ…」

「!!あ、ご、御免なさい」

そうさやかが言うと、ほむらはやっと気が付いたのか、手を離し謝罪した。

「でも、さやか、どうし「分かっている」

ほむらの言葉を遮り、さやかは続きを話した。

「あんたの言う事は分かっている、どうして、魔法少女なんかになったのさって…」
「あたしだって、本当はなりたくなかったよ…」

「じゃあ、どうして!?」
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:05:16.68 ID:LMWdgig/0
「見つかったの、叶えたい願いがね」

さやかはそう言ってほむらを見つめ返した。
ほむらはただ、呆然とさやかを見つめていた。

「そんな…そんな事って…」

「あ、いや、でも、ほら、ほむらが信用出来ないとかそう言う事じゃないからさ、心配しないでよ」
「あたしだって、そこんとこくらい「バカァ!!」

さやかの耳元で大声で怒鳴り、ほむらは泣きながら走り去ってしまった。
さやかは耳を押さえて何事があったのか、整理しようとしていた。
まどかとエクスカイザーは一体如何したのだろうか?と思い、ほむらの後姿を見つめていた。

437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:05:52.19 ID:LMWdgig/0

 此処は人目につかない鉄塔の上
そこではキュゥべぇと何者かが会話をしていた。

「ハァー??どういう事よそれぇ?聞いて無いんだけどぉ?」

「事実は事実さ、でも驚いたよ、まさか君が来るとはね」

そう言い、少女は手に持った食べ物を食べながら話をしていた。

「こっちはさぁ、風の噂でマミが引退したって聞いたからわざわざ来てやったってのに…」
「話が違うじゃん?」
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:06:52.33 ID:LMWdgig/0
「悪いね、この土地にはもう新しい魔法少女がいるんだ」
「さっき契約したばかりだけどね」
「それに、魔法少女以外にもその利益を横取りしようとする者も居る」

「あ゛ぁ?何それ?チョームカつくんだけど?」

少女は不機嫌そうに食べ物を噛み千切っていた。
そして手に持っていた食べ物が無くなると、口の周りに付いていたかすを嘗め取り、立ち上がった。

「でもまぁ良いや、こんな絶好の縄張り」
「みすみすヒヨッコやくれてやる必要はねぇし」
「見ず知らずの魔法少女以外ってのも気に食わない」
「それに…癪だしねぇ…」
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:08:38.60 ID:LMWdgig/0
「どうするんだい?杏子」

「決まってんじゃん?」
「ブッ潰しちゃえば良いんでしょ?そいつらをさ」

そう言って杏子と呼ばれた少女は狩りを楽しむハンターの目で町を見下ろしていた。



第4話 完

440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:09:19.26 ID:LMWdgig/0
次回予告

「大変!新しい魔法少女が喧嘩吹っかけてきちゃった!」
「でも、エクスカイザーにも牙を剥くなんて、何なのアイツ!」
「こうなりゃ、ミラクルさやかちゃん!発進だぁ!!」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『後悔なんて、あるわけない』」
「あなたのうちにも宇宙人いる?」

予告担当:美樹さやか
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/26(火) 16:33:32.84 ID:LMWdgig/0
4話終わりました〜。
仕事行く前に書き終えて良かったぁ〜(笑)
自分で見直してもなんかコレジャナイ感が…。
今回は説明なんかも増やしたから余計感じると思います。
これで、漫画版のまどマギ1巻までが終わりになりましたので、現在の各キャラの設定をちょっと書いておきます。

まどか:ごく普通の中学生現在宇宙人の居候と同居中。
 本編だとずっとオドオドしていましたけど、性格的には過去回で見せた活発な方で書いています。
1人称は私(わたし)

ほむら:謎の転校生魔法少女。
 結構泣き虫&「…」の多いキャラになってしまいました。orz
1人称は私(わたし)

さやか:まどかの親友4話にて魔法少女に。
 どうしてかさやかが喋るとどうしてもコメディな台詞ばっか喋ってしまう…
 恐らく一番謎台詞の塊になっております。
1人称はわたし、魔法少女になってからはあたし

マミ:先輩の魔法少女、現在活動休止中。
 一番等身大の女の子している様に書いています。
 カッコいい物に憧れ、後輩の前では見栄を張って、怖くなって泣いたり…。
 書いててそのままです(笑)
1人称は私(わたし)

仁美:1話にて苗字を間違えてしまった人、すみませんでしたorz
 基本的に何も変わっておりません。
 弄りたいけどうまくいかないです…。
1人称は私(わたくし)

杏子:謎の魔法少女。
 ハノカゲ版1巻では最後の数ページだけでしたので詳細は書きません(笑)
 次の2巻分には書きますんで…それまでお待ちください。

エクスカイザー:御存知「勇者シリーズ」第1作「勇者 エクスカイザー」の主人公。
 今回のクロスされた人です。
 設定としてはコウタ君と別れて10年後の設定です。
 一応裏設定で、ファイバード、ダ・ガーンとも時代的に地続きになっております。
 ラジコンからの変形と言う事で、身長はエクスカイザー時はシャルロッテ以上タツヤ未満と考えております。
 キング状態はさやかと同程度から少し上くらいで。
1人称は私(わたくし)

それ以外はおいおい…と言う訳で見て下さって本当に有難うございました!

長文失礼しました。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/07/26(火) 17:44:08.77 ID:4BDejfZUo
乙て゛した。
今回も面白かったです。


……これはQB本星への宇宙警察の強制捜査フラグ立ったかな?
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/07/26(火) 20:07:07.84 ID:vFaEOUrLo
お疲れ様でした
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/07/26(火) 22:57:28.17 ID:TEs1pWXd0


宇宙警察ならなんとかしてくれそう
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/07/26(火) 23:02:44.98 ID:fI/2G/Nbo
乙。
ほむほむ泣き虫やな。けどそれでええ
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/07/27(水) 14:02:35.03 ID:u2Xz/N6X0
意外に反応が多くて嬉しいです。
有難うございます。
447 :結構落ちたな…2011/08/01(月) 00:19:43.64 ID:VPGXzEj80
どうも>>1です。
ちょっとこのまま埋もれるの怖いので、1回上げておきます。
第5話はもう少々お待ちください。

それでは。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/08/01(月) 21:46:48.66 ID:F4DA59kx0
のんびり待つさ
449 :どうもお待たせ致しました2011/08/03(水) 01:36:20.63 ID:X1UsJuzo0
待っている人もそうでない人も、お待たせ致しました。
5話が完成いたしましたので、明日には投稿できます!
もう少しだけお待ちください!
ついでにageておきます。

それでは。
450 :まどか「勇者 エクス☆マギカ 第5話」2011/08/03(水) 15:49:31.38 ID:V4/i0buK0


 病院の屋上。
そこにはキュゥべぇとさやかが居た。
さやかは意を決した面持ちで、キュゥべぇを見つめていた。

「本当に、どんな願いでも叶えてくれるんだよね…?」

「勿論だよ、君の願いは間違いなく遂げられる」

「分かった…」
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 15:50:17.60 ID:V4/i0buK0
「でも、ほんとに良いのかい?」
「確かに君に願いは叶える事ができる」
「だが、それを望まない人間も居るはずだ」
「それでも、その願いを叶えるというのかい?」

「?別に良いでしょ?」
「いっつも契約しないか?って言う割りに慎重じゃん」
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 15:50:51.46 ID:V4/i0buK0
「確かにね、でもそれはそうもなるよ」
「美樹さやか、君の願いをもう一度確認させて欲しい」
「良いかな?」

「何さ、改まっちゃって」
「良いわ、じゃあもう一回言ってあげる」
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 15:51:22.25 ID:V4/i0buK0
そう言ってさやかは一度深呼吸をして、キュゥべぇに願いを伝えた。

「ふぅ…わたしの願いは、恭介のような傷ついている人を助けたい」
「それが、わたしの願い」

「…以外だね、彼一人の傷を治すならまだしも、見ず知らずの人間を治したいなんて、どういうつもりだい?」

「…何かさぁ、今日のあんたって、やたら突っかかってこない?」
「別に良いでしょう?私の願いなんだから」
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:51:56.07 ID:V4/i0buK0
「いや…、魔法少女の強さは願いの大きさで決まる」
「そして、君の素質でその強さは左右される」
「君の素質はあまり無いが、その願いであればマミと同様の強さを手に入れられるだろう」
「だが、さやか、気を付ける事だ」

「何?」

「君はそれほどの運命を背負い込む人間ではない」
「それこそ、自分の力に見合わない因果を背負う事になる」
「そうなれば、必ず君は後悔する」
「それでも良いのかい?」
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:52:32.94 ID:V4/i0buK0
そう言いキュゥべぇはジッとさやかを見つめていた。
さやかはその様を訝しいと思いながらも黙って聞いていた。

「マミさんはさ…自分の望みをハッキリさせておけって言っていた」

さやかはそう切り出し、キュゥべぇに自分の思いを話した。
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:53:04.02 ID:V4/i0buK0
「わたしはさ、恭介にまたバイオリンを弾いてもらいたい」
「でも、それだけを願うとさ、私ってバカだし、調子に乗っちゃって、恭介の恩人気取りになっちゃうだろうしさ」
「それならさ、恭介みたいに夢がある人を助けたい、そう言う風に願いを叶えればさ」
「私が納得できるんじゃないか、って思ったの」

「…君の心が納得する為に本来の願いを捻じ曲げたのかい?」

「ううん、願いと私の思いは別々、って踏ん切りを付けたいだけ」
「こうすれば私の願いを叶えられるし、恭介にまた夢を追いかけてもらえる」
「だから「分かった」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:53:35.19 ID:V4/i0buK0
そこまで言いかけて、キュゥべぇはさやかの話を切り、語りだした。

「すまないね、さやか」
「君を試させてもらったよ」

「試す?」
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:54:10.03 ID:V4/i0buK0
「そうさ、さっきボクは願いの大きさで魔法少女の強さが決まる、そう言ったよね?」
「その前提条件にその人間が、何処までその願いを追い求めているのか」
「願いの強度と言うものが影響されるのさ」

「願いの強度?」

「そう、君の願いははっきり言って無謀だ」
「ただ聞くだけでは、その願いはハッタリだらけの中身の無い物様に聞こえた」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:54:41.00 ID:V4/i0buK0
「…ずいぶん言ってくれるね」

「でも、君の真意を聞かせてもらった」
「そう言う風に願いを叶えようと思った人間は、恐らく君が始めてだ」
「だからこれだけは言っておく、君の実力はどの位になるか分からなくなった」
「けど、それだけの信念が在るのならば、君の願いは成就するに値するものだ」
「そしてその信念が在れば、これから待つ運命に君は打ち勝てるだろう」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:55:18.71 ID:V4/i0buK0
そういい終えると、さやかは胸の辺りを押さえて苦しみだした。
立てなくなるほどではない様でその場で胸を押さえている。
そこに、キュゥべぇの両耳(?)が胸に添えられ、そこから光り輝く塊がせり出してきた。

「クッ…あああぁぁぁぁ!!」

「受け取るといい、それが君の運命だ!」

さやかは中空に浮かぶ光を両手で掴み取り、魔法少女の契約を果たした。
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:55:46.84 ID:V4/i0buK0
『…ねぇ…恭介…?』

『うっ…なんだい、さやか。』

『もしも…もしもさ、願いが叶うなら、どんな事を願う…?』

『…。』

『わたしはさ…もし願いが叶うならさ…恭介の怪我を治してあげたいって思うんだ』
『私の願いってそれ位しかないからさ…』
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:56:15.70 ID:V4/i0buK0
『さやか…』

『ねぇ、恭介はどんな願いを叶える?』

『僕は…、そうだな…』
『僕の腕を治して貰いたい』
『だから、さやかは別の願いを叶えて欲しい』
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:56:41.45 ID:V4/i0buK0
『え?ちょ、恭介?』

『良いだろう?僕の願い事なんだから』
『僕は自分で手を治す』
『だから、さやかは別の願い事、君の願い事を叶えて欲しい』

『え…でも…私…、それ以外…』
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:57:14.60 ID:V4/i0buK0
『ならさ、もっと大きくすれば良いじゃん!』
『僕の腕だけじゃなく、怪我をしている全ての人を治したい!くらい』

『え、えぇ〜?それオーバーすぎない?』

『良いじゃん、何でも願いが叶えられるんだろ?』

『で、でもぉ〜』

そう言って二人は笑いあっていた。

(恭介…私は…)
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:57:48.16 ID:V4/i0buK0

 さやかは意を決し、恭介の病室に向かった。
その足取りは軽やか、というよりも猪突猛進と言った感じではあるが。
そして恭介の病室の前まで来ると、一度大きく深呼吸をして気持ちを整えていた。

「スゥーーーーーーーーーーーッ」
「ハァーーーーーーーーーーーッ」
「…よし!」

気持ちを整えたのか、さやかは病室のドアに手を掛けて。
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:58:14.99 ID:V4/i0buK0
「きょぉすけぇー!」

バダァーン!!
という音と共にさやかは恭介の病室に突入した。

「わ!な、なんだいさやか!?いきなり!」

「フッフッフ〜さっきはよくもあんな風に絶望に浸ってくれたわね〜」

「え?あ、いやそりゃ嫌になるでしょ?医者にまで言われたんだよ!」
「大体、どうしてそんなにテンション高いんだよ!?」
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:58:45.17 ID:V4/i0buK0
「それはですねぇ〜、罰ゲームを考えたからですよ〜」

「ば、罰ゲーム?」

「そう!」
「恭介は私を心配させた!だぁ〜から今からあたしの言う事を聞く事!良い!」

「え?いやそれはまぁ、謝るつもりだったけど「喧しい!聞く!」
「は、ハイ!」

そう言ってさやかは恭介を黙らせて言う事を聞かせた。
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 15:59:16.67 ID:V4/i0buK0
「先ず!目を瞑る!その後は何も聞かない!」

「わ、分かった!」

恭介はさやかの命令を聞き、目を瞑っていた。
さやかはその恭介に近寄って行きベッドに乗り上げた。
そして目を瞑った顔の間近に寄っていきその顔をまじまじと見つめていた。

「…。」
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/03(水) 15:59:46.85 ID:V4/i0buK0
「さ、さやか?どうしたんだい?もう良いのかい?」

「!?ま、まだ駄目!」

さやかは慌てて飛び退き、本来の目的の左腕を持ち上げ。
その腕を見つめて、撫でていた。

「ど、どうしたの?さやか」

「…。」
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/03(水) 16:00:33.59 ID:V4/i0buK0
さやかはその痛々しい傷を撫でながら思っていた。
この怪我が無ければ、恭介はバイオリンを…。
この怪我が無ければ、願いを叶えられなかった…。
この怪我が無ければ…。

チュッ

さやかは見つめていた恭介の左手に軽いキスをしていた。
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:00:59.78 ID:V4/i0buK0
「!?」
「さ、さやかぁ!!な、何しているんだよ!!」

「え?あ、えへへ、ばれちゃった」

「ば!ばれるよ!」
「もう、ビックリしたなぁ…」

そう言って恭介は自分の手をさすっていた。
さやかは顔を赤くして照れていた。
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:01:40.24 ID:V4/i0buK0
「いや、あの、恭介がさ、元気じゃなかったからその…おまじない」

「おまじない?」

「そ、おまじない」
「だからさ、治るよ、恭介の腕」
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:02:20.90 ID:V4/i0buK0
「だから…僕の腕は…あれ?」

「あ!もうこんな時間!じゃ!じゃあ今日はこれでぇ!」
「またね恭介!バイバイ!!」

そう言ってさやかは一目散に逃げるように退室して行った。
外から看護士さんに怒られている声が聞こえたような気もしたが、恭介はそれどころでは無かった。

「…僕の腕…動く…?」
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:03:03.87 ID:V4/i0buK0


 第5話『後悔なんて、あるわけない』


「ん…む?う、ふわあぁぁぁぁもう授業終わった?」

さやかはそう言いながら伸びをしており、まどかは呆れた様に見つめていた。

「もう、さやかちゃん授業中寝てばっか」
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:03:43.01 ID:V4/i0buK0
「あら?美樹さんも寝不足ですの?」ふわぁー
「私もなんですの…」

そう良いながら仁美はまどか達の席にやって来た。

「あれ?仁美も寝不足?どうしたのさ」

「いえ、私何だか夢遊病らしくて…、昨日気が付いたら大勢の人と一緒に倒れていたようで」
「夕べは病院やら警察やらで大変でしたの」
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:04:26.93 ID:V4/i0buK0
「ええー、何それ?」

「如何したの?」

さやかと仁美が顔を向けるとそこにはほむらが立っており、此方の話を聞いてきた。

「あ、ほむら、実はさ、仁美がさ…」

まどかはほむらの様子を見て昨日の涙の意味は何だったのだろうか?と思いながらも。
さやかと会話してくれた事に内心ホッとしていた。

(良かった…ほむらちゃん機嫌直してくれたのかな?)
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:05:13.27 ID:V4/i0buK0
ほむらとさやかが話をしているのを仁美は無言で見つめていた。
その目は何かを考えているようであった。

「…そう言えば、何時の間にか美樹さんと暁美さん、仲宜しくなったのですね」

「え?あぁ、そういえば教えて無かったね、わりぃわりぃ」

「ちゃんとしなさいよ、さやか」

「…。」
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:05:46.10 ID:V4/i0buK0
仁美はその様をまじまじと見ていた。
それはもう、まじまじと。

「あははは、?どうしたの?仁美」

「…何?私の顔に何か…」

「そうだったのですね…」
「鹿目さんの時といい、暁美さんの時といい、まさか、美樹さんは天然のジゴロか何かなんでしょうか?」

「バァ!!」

「なっ…!」

「…え〜」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:06:42.49 ID:V4/i0buK0
仁美はまどか、さやか、ほむらの順番に見つめて行き、最後にさやかに向き直り、さやかの手を両手で掴んで見つめていた。

「鹿目さんならともかく…どうして暁美さんまでこうなってしまったのですか!?」
「これはもう責任問題とかそう言う話ではございませんよ!」

「え!?いや、ちょっと何言ってんの!仁美ってば!」

「そ、そうよ!そんな事ありえないから」

「お二人揃って否定するなんて…それほど進展されているなんて…!」
「まさか…!まさかそんな!!!」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:07:17.20 ID:V4/i0buK0
仁美は何処かの劇画調になる位驚きを露にしていた。
二人としてはそんなの堪ったものじゃないと揃って口を開いた。
全くの同タイミングで。

「「いや、だから違うって!」」

「…仁美ちゃんってホント変わっているなぁ…」

「まどかも遠い目で見てないで助けてよぉ!!」

そう言ってさやかが助けを求めていたので、まどかはしょうがない、と重い腰を上げて二人の手助けに向かった。
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:07:50.09 ID:V4/i0buK0

 時は移り、放課後。
まどか達は河原の土手で寛いでいた。

「あぁ〜、何か変に疲れた」
「仁美ってどうしてああいう思考に結びつくんだか…」

「ま、まぁそれは仁美ちゃんの個性って事だよ…多分」

「多分って…」

482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:08:18.46 ID:V4/i0buK0
まどか達はそんな何気ないやり取りで笑いあい昼過ぎの快晴の空を満喫していた。

「…ねぇ、さやかちゃん」

「ん?何、まどか」

「さやかちゃんはさ、魔法少女になって…怖くないの?」

「なーに?藪から棒に」

そう言ってさやかは上体を起こしてまどかの方を見ると、まどかは心配そうにさやかを見つめていた。
さやかは最初からかおうか、とも思っていたが、止めて本当の事を言おうと思った。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:08:49.46 ID:V4/i0buK0
「…そりゃ、まぁちょっとは怖いよ」
「あの魔女は案外あっさり倒せたけどさ」
「でも、まどかと仁美、二人とも亡くしていたかもしれないって方がよっぽど怖いじゃん」
「だからさ」

さやかは手を付いて上体を起こしていたのをそのまま立ち上がり左手を太陽に翳しながら喋った。

「自身とか?安心感とか…ちょっとだけ、自分を褒めちゃいたい気分なんだよね」
「ナハハ、舞い上がっちゃっていますねぇ〜」
「と、言うわけであたしは後悔してなーい!」
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:09:51.67 ID:V4/i0buK0
そこで大声を出して川に向かって叫んだ。
そして斜面を物ともせずくるりと1回転すると両足をハの字に開いて豪語しだした。

「これからこの見滝原の平和は!この、魔法少女、ミラクルさやかちゃんが守るのだー!!」

なっはっは、と背を反らして笑うさやかを見てまどかは思った事を口にした。

「…さやかちゃんは強いんだね」
「私なんか、今でも迷っているの、魔法少女になるべきなのか、それとも…わぷ」
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:10:37.93 ID:V4/i0buK0
まどかは自分の迷いを告げようとしたら頬っぺたをさやかに突かれ中断された。

「まぁ、まどかはそれでも良いんじゃない?」
「なっちゃった後だから言えるんだけどさ」
「あたしはさ、命を懸けてでも叶える願いが見つかったって事」
「なるべくして魔法少女になったって分け」
「まどかが引け目を感じる必要なんて無いからさ!もっと元気に」

「…うん」

そうは言ってもまどかは後ろめたさみたいな腑に落ちない感じであった。
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:11:09.55 ID:V4/i0buK0
「ふっふ〜ん?まどかさんはまだ腑に落ちないって感じですなぁ」

「えぇ!?なんで分かるの?」

「さやかちゃんアイは心を見抜くのだーってそうだ、あたしちょっと出かけてくる」

「え?どこか用事?」

「ん?まぁ、ちょっとね」///
「まどかも何時までもうじうじしてちゃいかんよ〜」
「じゃあね〜」
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:11:43.22 ID:V4/i0buK0
そう言い、さやかは笑顔で道を走って行った。

(さやかちゃん…嬉しそうだったなぁ…)

まどかはさやかの笑顔を思い返しつつ、自分もこのままじゃいけないな、と思い立ちあがったその時。

「まどか」

「?」
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:12:25.73 ID:V4/i0buK0
振り向くと其処にはほむらが立っていた。

「さやかはどうしたの?浮かれていたようだけど…」

「あ、ほむらちゃん、実は私にも分からないの」

「そう…やはり…」

「??」

ほむらは顎に手を当て考えて、何かの結論に達していたが、その事はまどかに何も言わずに話を振ってきた。
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:13:16.04 ID:V4/i0buK0
「そういえば、この後、ちょっと良い?」

「良いけど…どうしたの?ほむらちゃん」

「これからの事についてよ」

そう言って二人は河原を後にし、中心街に向かった。
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:14:15.67 ID:V4/i0buK0


 場面は変わり此処は恭介の病室。
さやかは嬉しそうに恭介と談笑していた。

「でも、ビックリだよね、正に奇跡!って感じで治っちゃうんだもん」

「あれは僕も驚いたね、さやかがキスした時は気のせいかな?って思っていたんだけど」
「あの後、先生に調べてもらったら治っているって言われた時の驚きは無いよ」

「あ、あれね」///
「タハハ、いやあの、うでなおればいいなぁなんておもいながらちょっとかるくしたわけなんですが」///
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:14:47.04 ID:V4/i0buK0
「あはは、どうしたんだい?さやか」
「顔真っ赤だよ」

「〜〜〜〜」///

そうさやかはからかわれながらも、心から良かった、と思っていた。

「あ…でも、退院、まだなんだよね?」

「流石に足のリハビリがまだだしね、でも基礎的なことを終えれば後は自宅でも出来るみたいだからさ」
「退院はもうすぐってところだよ」
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:15:20.38 ID:V4/i0buK0
「…そっか」

さやかも、恭介も話さない、病室に沈黙が訪れた。
居心地の良いとは言えない沈黙だった。
それは何故かと言うと、どちらとも、切欠が無くて話す事が出来ない、そう言う沈黙であったからだ。
その沈黙が数分経った時、恭介は意を決し、さやかに話を掛けた。

「…さやか、僕は君に謝らなくちゃいけない」
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:15:51.16 ID:V4/i0buK0
「え?どうしてさ」

「君は僕を励ましてくれただろう?それなのに僕ときたら…」

そんな事か、とも思ったが、恭介は真面目に話しているから、その空気を払拭しようと
さやかは元気に返していた。

「良いの、良いの!あの時は、恭介だって大変だったんだからさ」
「別に問題ないよ!」

「…有難う、さやか」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:16:37.39 ID:V4/i0buK0
「えへへ」///

そうテレながらもさやかは自分の腕時計を見て、時刻を確認していた。

「…そろそろかな?」

「?どうしたんだい」

「ねぇ、恭介、外の空気、吸わない?」

「きゅ、急にどうしたんだい?」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:17:10.30 ID:V4/i0buK0
「あ〜、あたしは吸いたいな〜、恭介も吸いたいんじゃないかな〜なんて思っていたりするんだけどな〜」

そう喋っている間はさやかの目は恭介のほうをチラチラ見ながら誘っていた。
恭介は顎に手を当て考えながら喋った。

「う〜ん、さやかが連れて行ってくれるなら良いんだけど、今ちょうど看護師さんもいないし…」
「頼んでもらってもい「いよっしゃぁ!このさやかちゃんに任せなさい!」

そう言うと病室の入り口に止めてあったのか、車椅子を速攻で持ち出し。
恭介を慣れた手つきで抱え込んで車椅子に乗せて走り出した。
その間に巡回中の看護師さんに注意されたのは言うまでもない。
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:17:37.36 ID:V4/i0buK0
「…ねぇ、さやかどうしたんだい?そんなに嬉しそうにして」

「ん〜?ひみつ♪」

そう言いながらさやかはエレベーターに乗り込み屋上のボタンを押した。
エレベーターはアナウンスを流し、屋上へ向かって動き出した。

「屋上に用でもあるのかい?外の空気位なら玄関からでも…」

「いいから、いいから!」
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:18:07.02 ID:V4/i0buK0
そうこう言っている内に屋上に着いたアナウンスが流れ、エレベーターのドアが開いた。
さやかが車椅子を押して出ると、其処には何人か恭介が知っている人の顔があった。
その誰もが皆、笑顔で恭介に拍手を送っていた。

院の先生、看護師さんが何人か、それに…。

「父さん?みんな?」

「本当のお祝いは退院の後だけどね」

さやかがそう耳元で囁くと、恭介の父親が手に大きなケースも持ちながら歩み出て来た。
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:19:07.46 ID:V4/i0buK0
「!父さん、それは…」

「あぁ、そうだ、お前には処分しろと言われていたが、どうしても棄てられなかったんだ」

そのケースを開けると、その中には年季の入ったヴァイオリンが入っていた。
恭介の宝物だったヴァイオリンである。

「…。」

恭介はそれを手に持ち、久しぶりの重さに驚いていた。
それを見ていた掛かりつけの先生は、やってみてくれと首を縦に振っていた。

「さぁ、試してごらん」
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:19:37.81 ID:V4/i0buK0
父親も待ちきれないのか、恭介に促して見せた。
恭介は緊張の深呼吸をした後、息を整えてヴァイオリンを構え、弦を走らせた。
その音色は、とっくの昔に聞くことが出来ない、そう思っていた彼の演奏そのものであった。
恭介の父は歓喜に涙を流し、看護師達もその音色に聞き入っていた。
さやかは願いで恭介を助ける事が出来、感無量、といった感じであった。
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/03(水) 16:20:40.15 ID:V4/i0buK0
「まどか、マミさん、ほむら…」
(あたしの願い、叶ったよ…)
(まどかは何て言うだろう?)
(マミさんは怒るだろうか?)
(ほむらは…嫌われちゃっているかもなぁ…)
(それでも、あたしは…)
(後悔なんてあるわけない)

さやかは空を見上げ、友人達の顔を思い浮かべていた。
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 16:24:42.77 ID:V4/i0buK0
すみません!途中なんですけど仕事で行かなきゃならないのでここまででAパートとさせてもらいます。
続きは22時以降になりますので、あしからず。

それでは一度失礼します。
502 :お待たせしました早くに帰ってこれたので更新です2011/08/03(水) 21:58:49.27 ID:sTgp79qr0
その姿を魔法で作った望遠鏡で覗く一つの影があった。
キュゥべぇと話をしていた魔法少女である。

「ふーん…」
「あれがこの街の新しい魔法少女って奴ね」
「何かチョロそうね」

「そうはいかないと思うな、全てが君の思惑通りには行かないと思うよ」
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 21:59:49.15 ID:sTgp79qr0
その横ではキュゥべぇが一緒にお菓子を食べながら喋っていた。

「横取りヤローの事だろ?」
「それ以外にも何かあるって言うの?」

「そうさ、この街にはもう一人魔法少女がいる」
「後、君には横取りと証したけど、その実、違うのかもしれない」

「ったく、後手後手ねぇ、でそいつら、特に魔法少女の方は何者なの?」

「ボクにも良く分からない」
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:00:33.23 ID:sTgp79qr0
「ハァ!?あんた分かんないって、そいつと契約したのあんたじゃないの?」

「そうとも言えるし、そうとも言えない」
「ボクにも何とも言えないんだ」

「ハァ?何それ」

「あの子は極めつけのイレギュラーなんだ、どういう行動に出るか僕にも予測出来ない」
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:01:15.23 ID:sTgp79qr0
魔法で出来た望遠鏡を解除し、少女は手に持った菓子を頬張ると不敵な笑みを見せていた。

「フン、上等じゃん」
「退屈しなくても済みそうね」

そう言って少女は舌なめずりをし、今は遠くに見えるさやかを眺めていた。
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:02:19.65 ID:sTgp79qr0


 場所は変わり、喫茶店。
まどかはほむらと話をするために此処に来ていた。

「…あの、ほむらちゃん」
「話って何なの?」

「ちょっとね、まどかはまだ魔法少女になりたいって思っているのかなって…」

「あ…」
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:03:06.47 ID:sTgp79qr0
まどかはその事を聞かれると、言葉を濁してしまった。
ほむらは分かっていたように溜め息を吐いた。

「…まだ、なりたいって思っているの?」

「あ、ち、違うのそうじゃないの」
「私にも…分からないの…」

「分からない?」

ほむらは小首を傾げていた。
対するまどかも俯いていた。
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:03:54.20 ID:sTgp79qr0
「私、みんなに対してできること全然無いし…」
「でも、魔法少女になれば何かできるかもしれない…」
「でも、ほむらちゃんに心配させるわけにも行かないし…」
「そしたら、どうするべきかなって…堂々巡りで…」

「そう、でも今は私のお願いを聞いて、貴方は自分を大事にするべきよ」

「…でも、さやかちゃんも戦っているんだよ?」
「私だけ戦えないなんて…」
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:04:33.82 ID:sTgp79qr0
「そう…後、そのさやかの事なんだけど」

「さやかちゃんの?」

そう、と頷くとほむらは真剣な面持ちで語りだした。

「はっきり言うわ、さやかはもう、助ける事ができない」

「ほ、ほむらちゃん!?突然何を言っているの!?」
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:05:05.28 ID:sTgp79qr0
助けられない、その言葉に当然まどかは驚いてしまっていた。
だが、ほむらの方もしまったと言った面持ちで顔を顰めていた。

「御免なさい、言い方が悪かったわ」
「さやかを助ける事ができないって言うのは、彼女の手伝いを出来ないという訳ではないわ」

「じゃあどうして?もしかしてさやかちゃんが魔法少女になったのに怒っているの?」
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:05:42.40 ID:sTgp79qr0
「いえ、そう言う訳でもないの、彼女が魔法少女になるのはある意味仕方なかったとしか言い様が無いから」
「怒っているのとも違うわ」
「私が言いたいのは、彼女の運命的なものについてよ」

「運…命…?」

まどかはどうしてそんな物の話になるのか全く理解できなかった。
そして、なぜその運命的な物にほむらは手助けで気無いのか。
それが知りたかった。
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:06:23.91 ID:sTgp79qr0
「…話してくれるの?」

「そうでなきゃ話がしたい、何て言わないわ」
「運命的なものに協力しないって言うより、出来ない」
「って言う方が正しいわ」

「協力出来ない?」

そう言うとほむらは頼んでいた飲み物に口をつけて一度話を中断した。
少し飲んで、ほむらは話を再開した。
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:07:07.41 ID:sTgp79qr0
「そう、それはさやかが乗り越える物であって、手助けできる物ではない」
「そう言いたかったの」

それを聞いて、まどかはやっと安堵できた。

「良かったぁ、絶交するとかじゃなくて…」

「絶交したくてもさせそうに無いじゃない、さやかって」

ほむらは薄く笑うと、まどかもそうだね、と言って二人で笑いあった。

「でも、さやかちゃんなら大丈夫だと思うよ」
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:07:52.42 ID:sTgp79qr0
「?どうしてそう言えるの?」

「ほら、さやかちゃんってさ、スグ誰かと喧嘩しちゃうでしょ?」
「でも本当はスッゴク良い子なんだ」
「優しくて、勇気があって、誰かの為になるといつも必死で…」
「そんなさやかちゃんなら、そんな物、乗り越えられるんじゃないかな?」
「そう思うの」

納得したのか、顔を下げて話を聞いていた。
そして目を瞑りながらまどかに話し出した。
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:08:29.58 ID:sTgp79qr0
「…成程、でもまどか、それは魔法少女として致命的よ」

ほむらはさやかの事を理解しつつもまどかに伝えた。

「度を越した優しさなら甘さにつながるし、蛮勇は油断にもなりうるの」
「そしてどんな献身にも見返りなんて無いわ」

「そう言う言い方…酷いよ…」

「えぇ、酷いわ」
「それが魔法少女の真実なの」
「でもさやかなら、ううん」
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:09:00.81 ID:sTgp79qr0
「?」

そう言うとほむらは下を向いていた顔をまどかに向けて、告げた。

「今の私達ならそんな真実も超えられるかもね」

「ほむらちゃん…!」

「当然、私だって指を銜えて待つ心算もないし」
「助けない何て言っていないわ」
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:09:38.07 ID:sTgp79qr0
「有難う!ほむらちゃん!」

まどかは本当に嬉しそうに立ち上がり、ほむらの手を握った。
ほむらはちょっと顔を赤くして恥ずかしいような感じだった。

「それに、ほむらちゃん、エクスカイザーさんもいるんだよ」

「ええ、彼には一度助けられているしね」
「借りを返さないとね」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:10:32.13 ID:sTgp79qr0
「うん!」

「でも、酔狂よね」
「地球まで休暇をとりに来る宇宙人なんて」

「宇宙にも色々あるんじゃない?たとえば…避暑地…とか?」

そう言ったまどかの顔を見てほむらは噴出してしまった。

「あぁ!ほむらちゃんヒドイ!」

「御免なさい、でも、そう言うのも悪くないかもね」
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:11:16.95 ID:sTgp79qr0
「んもぅ、ほむらちゃんのイジワル」

その後は、二人揃って笑い合っていた。
それから少し話をして、ほむらは時計を見て時間を確認した。

「もうこんな時間」
「御免なさい、まどか、付き合せちゃって」

「良いんだよ、友達なんだし」
「また今度は、皆一緒にね」
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:11:53.97 ID:sTgp79qr0
「…ありがとう」

ほむらは小さくな声で感謝をまどかに呟いた。
鞄を持ち上げていたまどかはちょうど聞こえなかったのか、?と言う顔でほむらに向き直った。

「何か言った?ほむらちゃん」

「い、いえ…私は今から用事があるから」
「魔女探索は恐らく遅れると思うの」
「そう、そう言いたかったの」
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:12:42.81 ID:sTgp79qr0
「?何だ、その事ね」
「大丈夫だよ、さやかちゃんも居るんだし」
「でも、早く来てね」

「…えぇ、分かったわ」
「なるべく早く合流するから」

「うん、それじゃあまた後で」

「えぇ、また後で」
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:13:38.81 ID:sTgp79qr0
そう言い合い、二人は別方向に分かれていった。
まどかはさやかと合流する為。
ほむらは…。

「…このまま、うまく行ってくれると良いんだけど…」
「…今は『ワルプルギスの夜』に対抗する準備もしないと」

そう言い終えるとほむらはその場から影も形も消え去った。
周囲にいた人達は、その事に気が付かずに平和な日常を謳歌していた。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:14:49.15 ID:sTgp79qr0


 時間は更に過ぎ、夕方になる。
此処はさやかの住むマンション、今さやかは自分の部屋の姿見の前に佇んでいる。
顔は酷く緊張しており、これから立ち向かうべき脅威に対する恐怖だろうか。
それでもさやかは、自分の頬に両手で張り手を入れて気合を入れ直していた。

「…よぉーし!!!」

パァーーーン!!!

と言う子気味の良い音が鳴ると、さやかはその場に頬を押さえてしゃがみ込んでいた。
思い切り張り過ぎたのだろう。
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:15:53.27 ID:sTgp79qr0
「イツツツツ…」

「緊張しているのかい?さやか」

「そ、そりゃ当たり前でしょ?イツツ…」
「一歩間違えたらお陀仏だし」
「マミさんの分まで頑張らなきゃ!」

そう言ってさやかは自分の部屋を出て魔女捜索を開始した。
マンションの入り口にまでくると、そこには良く見知った姿があった。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:16:39.65 ID:sTgp79qr0
自分より背の低い、かわいらしい友人。
そして車から変身するナイスガイ。

「!まどか、エクスカイザー!」

まどかは、明かりから歩み出てさやかの近くに歩み寄った。

「さやかちゃん、もしかしてこれから…」

「そ!魔女捜しのパトロール第1回!」
「ちゃんとやらないとね」
「まどか達はどうしたの?」
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:18:09.48 ID:sTgp79qr0
「あ、あのね…」

そう言い、まどかは、戸惑いながら自分の気持ちを喋りだした。

「足手まといって分かっているんだけど…」
「邪魔にならない所までで良いから一緒に連れて行って欲しいの…」
「…駄目かな?」

まどかはそう言うと、俯いてさやかの返事を待って居た。
そうしていると、エクスカイザーもさやかに頼んできた。
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 22:20:31.02 ID:sTgp79qr0
「私も一緒に手伝おう、君一人では不安だろうし」
「それに、まどかは、及ばなくても君の力になりたい、そう思っている」
「そのような判断は、普通の人にはできるものじゃない」
「まどかは、まどか也に勇気を振り絞って此処に来たんだ」
「さやか、私からも頼む」

そう言い終えるとエクスカイザーも頭を下げていた。
さやかはその様を黙って見ていた。
まどかは駄目だ、と思い話を切り上げようとしていた。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:30:01.52 ID:sTgp79qr0
「あ、ご、ごめんね駄目だよね?」
「無理言っちゃって…」

そう言いかけた時、まどかはさやかに手を握られていた。
その手は微かに震えているのがまどかには分かった。

「ううん、凄い嬉しいよ」
「分かる?あたしの手、さっきから震えちゃってさ…」

「あ…」
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:30:45.00 ID:sTgp79qr0
「情けないよね、あたし…」
「一緒に行こ、まどか達が来てくれるなら、凄く心強いし」
「何より、エクスカイザーも一緒に来てくれるんでしょ?」
「それなら百万人力って奴よ!」

そう言うと、さやかは両手でガッツポーズを作って見せた。
その二の腕にキュゥべぇが乗り、話し出した。

「さやか、分かっているのかい?危険だと言う事を」
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:32:48.55 ID:sTgp79qr0
「無論!承知の上よ!」
「まどかが居るなら、あたしだって無茶出来ないし、しないと思う」

「…分かった、考えがあるのなら良いんだ」
(そう…君にも考えがあるんだろう?まどか)

「!?」

まどかは急に自分の頭に語りかけてきた声に驚いたが、キュゥべぇのテレパシーだと気付き。
そのまま聞き手に入った。
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:36:37.75 ID:sTgp79qr0
(君達が側に居れば、ボクは最悪の事態に備えた切り札を一つだけ用意できる)
(もし、君が心を決める時が来たら、いつでも準備は整っているからね)

そう言い、キュゥべぇはさやかと同じ方を向いてパトロールを開始した。
それに着いて行く様にエクスカイザーも変形し走り出そうとしていたが。
まどかがずっと立ったままで居たので疑問に思い声を掛けた。

「まどか?如何したんだい?具合でも悪いのかい?」
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:38:38.13 ID:sTgp79qr0
「え?ううん…何でも無い」
「行こう!」

そう言ってまどかはさやかを追い掛けて走り出した。
エクスカイザーは少し疑問に思ったが、気にせずについて行った。

(私は…私は如何したら良いんだろう?)
(私の願いは…)
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:39:46.96 ID:sTgp79qr0


 その後、さやか達は色々所を歩き回っていた。
いつもの通学路から、喫茶店、初めて使い魔と遭遇した所から色々と。

「ほむらって今日これないんだっけ?」

「ううん、用事があるから遅くなるって言っていた。」

「何よ?用事って、さやかちゃんが一人頑張っているのに、ひっどいなぁ」

「そう言わないであげて、ほむらちゃんも大事な用があるんだよ」
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:41:37.48 ID:sTgp79qr0
「だが、魔女捜し以上の用事、となると少々気になるな…」

「でしょ?まどかさぁ、今度ほむらに聞いてみてよ」

「えぇ?何で私が?さやかちゃんが聞いてみたら?」

「いや、あたしアイツとは仲良くないし、この前の時の引き摺っているだろうし…」
「…ハッ!」
「今、あたし途轍もない事に気づいたかも!!」
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:42:50.14 ID:sTgp79qr0
「な、何?」

「どういうことだい?さやか」

そこで、さやかは溜めを作ってまどかたちに向き直り、真顔で語りだした。

「ほむらが行っている用とは、これから来るべき戦いの為の準備であり!」
「その為に武器を掻き集めているんだよ!!」

「「な、なんだってぇー!!」」

と、まどか達は驚愕をあらわにしていた。
エクスカイザーまで驚愕するほどである。
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:43:36.47 ID:sTgp79qr0
「「「…。」」」

そして3人揃ってお互いを見合い。

「…無いよね?」

「無いよね?」
「あるわけ無いじゃん!」

「そうだと良いんだが…」

「って、あたしとしてはエクスカイザーが乗ってくれるとは思わなかったんだけど…」
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:44:35.82 ID:sTgp79qr0
「?今のは本当の憶測じゃないのか?」

「いや!冗談ですよ!」
「本当だったら堪ったもんじゃないですよ!?」

そう言ってさやかはエクスカイザーに突っ込みを入れていた。
まどかは心配半分でその様を眺めていた。

(もし、本当にそうだとしたら…私は…)

その時、さやかのソウルジェムが淡く輝きだし、魔力反応を掴んだ。
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:45:19.44 ID:sTgp79qr0
「!?さやか」

「うん!分かっている!コッチ!」

そう言うとさやかは路地裏に入って言った。
二人はその後を追いかけて行くと、既に結界の中に進入していた。

「此処は…既に結界の中なのか?」
「結界の外が見え隠れしているみたいだが?」

「いや、違う、この結界自体が不安定なんだ」
「恐らくこれは使い魔の結界だよ」
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:46:01.14 ID:sTgp79qr0
「そうと分かれば話は簡単!」
「初心者としては持って来いだわ!」

「あ!見て、さやかちゃん!」

「使い魔か!?」

「早速でてきたわねー!」

見上げると結界の中を落書きのような使い魔が一匹、飛行機みたいな体で飛び回っていた。
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:47:21.66 ID:sTgp79qr0
「ヴゥンヴゥンヴゥーン」
(うはwww何あの子供www超受けるwww)
(コッチは一発でも貰うと死ぬのにwww無理ゲーとか言う奴ですかwww)

「逃げちゃうよ!」

「よぉーし!」

そう言ってさやかはソウルジェムを待機状態から戻し、変身の準備に入った。
変身は一瞬で終わり、さやかは制服の姿からマントを羽織った、魔法少女の姿になった。
そのままさやかはマントで全身を包み、下を向いたまま着地した。
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:48:39.13 ID:sTgp79qr0
「ヴゥンヴゥーン!!」
(げぇ!ま、まさか、魔法少女!)

使い魔は驚いているのか、動きを止めてさやかを見つめていた。

「そう…その通り!!」

さやかはそう言って使い魔に向き直ると両腕でマントを大きく開き豪語しだした。

「銀の翼に!」

そう言うと何処からともなく羽が舞い消えていった。
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 22:49:54.11 ID:sTgp79qr0
「望みを乗せて!」

左手を握り締め前に伸ばし、手の甲を使い魔に向けた。

「灯せ!平和の青信号!!」

左手を引き、右手を人差し指と中指だけ伸ばし、顔に近づけて、ウィンクしてみせる。

「魔法少女!ミラクルさやかちゃん!」
「定刻通りにただいま到着!!」

一回転してその場でポーズを決め、さやかは使い魔と相対していた。
まどか達はその様に如何したのだろうか?と言う視線を投げかけていた。
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:50:40.10 ID:sTgp79qr0
「「「……。」」」

「あ、これ?いやぁ、実は一度言ってみたかったの、こういうのって結構イケテナイ?」

「いやいや…ボクからは何とも…」

「え?う、うんかっこいいと思うけど…」
「と、言うか誰にその通りって言っていたの?」

「わざわざ考えておいたのかい?」
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:52:27.74 ID:sTgp79qr0
「えぇ!?いやそんなんじゃないよ?たまたまそう!アニメで見た事があったような無かったような…」

「…ヴゥンヴゥーン」
(…今のうちに逃げるか)

使い魔はその隙を見て逃げようとしていた。
その様をエクスカイザーは見逃さずにさやかに伝えた。

「!さやか、使い魔が逃げるぞ!」
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:53:24.38 ID:sTgp79qr0
「言われなくてもぉ!!」

そう言い、さやかはマントの裾を掴みまたもや一回転するように翻すと。
マントの中から7本の剣が現れ、地面に突き立てられていた。

「さやかちゃん!目標を駆逐する!!」
「うりゃりゃりゃりゃー!!」

さやかは、そう言い放つと剣を1本ずつ抜き取り、使い魔に投げつけた。
まどかは、その様が以前戦った時のマミさんに似ている、と思い見つめていた。
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:54:33.33 ID:sTgp79qr0
「ヴゥヴゥーン!ブヒィー!!」
(危ねぇ!こりゃ堪らん!!)

使い魔は自分の下半身を飛行機から車に変えて高速で逃げようとしていた。

「逃がさない!!」
「くらえぇ!!」

そう言ってさやかは7本目を渾身の力を持って使い魔に投げた。
剣は使い魔に吸い込まれるように近づいていき、あと少しで突き刺さる、といった所で。

ガキイィン!!
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:55:30.19 ID:sTgp79qr0
突如伸びてきた槍の穂先に邪魔されてしまい、剣は空しく地面に落ちていった。

「な!」
「何、今の!弾いたの?」

「ちょっと、ちよっと、あんたさ、何してんのさー」

「「!?」」

その声と共に路地の反対側から女の子が歩いてきた。
服装は変わっており、胸元に宝石のあしらわれた不思議な服装だった。
その手には穂先が十字型の槍が握られており、先ほどの攻撃を邪魔したのが彼女だと分かった。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:55:59.44 ID:sTgp79qr0
「魔法少女!?」

「よく見なよ、アイツは使い魔だよ?」
「グリーフシードなんて持っている訳無いじゃん?」

「ど、どういう事?」

「やっぱり来たんだね、杏子」

「あぁ、そうだよ、ったく、面倒な事させやがって」
549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:56:42.10 ID:sTgp79qr0
「ヴ、ヴゥーン」
(死ぬかと思った〜、お疲れさん)

「あ!使い魔が!」

「まずい!追わなきゃ!」
「行こう!みんな!」

そう言ってさやかが走り出そうとすると、その眼前に槍が横倒しになってその刃がさやかに向けられていた。

「!!」

「だからさぁ、止めろっつーの」
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:58:34.39 ID:sTgp79qr0
「な…!何すんのよ!あれ、放っておいたら誰かが殺され「当たり前だろ?」
「なん…だと…?」

そう言っている間に、使い魔の結界の範囲から出たのか、辺りは普通の路地裏に戻っていた。

「使い魔に4、5人食わせりゃ魔女になるんだ」
「そうすれば、グリーフシードだって孕むのにさぁ」
「卵産む前の鶏、締め上げてどうするの?」

さやかは、その台詞を聞き、こいつは何を言っているんだ?と理解が出来なかった。

「な・・・あんた、見殺しにするとでも言いたいの!?」
「魔女に襲われる人達の事を!」
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 22:59:21.08 ID:sTgp79qr0
「・・・なんかさぁ、あんた大元から勘違いしているよねぇ?」

そこで少女は区切り、手に持っていた菓子を食べて話を続けた。

「弱い人間を魔女が喰う」
「その魔女をあたし達が喰う」
「それが当たり前のルールでしょ?」
「ガッコーで習ったよねぇ食物連鎖ってやつ?」

「あんた…」
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:00:09.63 ID:sTgp79qr0
そこまで言うと少女は睨み付ける様な視線でさやかを見据えて喋った。

「まさか、とは思うけど…人助けだの、正義だの、そんな冗談をかます為にアイツと契約したわけじゃないよねぇ?」

少女はそう言ってキュゥべぇに目線を向けていた。

「あんた……!!」

ガギィン!!

さやかはその言葉を聴き、そのまま勢いで少女に切りかかった。
だが、少女は槍で、あまつさえ片手でその斬撃を受け止めていた。
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:01:41.48 ID:sTgp79qr0
「ちょっとさぁ…止めてくんない?」

だが、それでも少女はあくまで片腕で剣を止め、さやかは更に力を入れるために両手で踏み込んでいたがそれでも微動だにしていなかった。

「・・・遊び半分で首突っ込んで貰っちゃこっちが困るってんだ。」

ガッ!ドゴォン!

少女は槍で受けていた剣を押し返し、さやかの体制が崩れた所に槍の柄を叩き込み、さやかを吹き飛ばした。
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:03:04.61 ID:sTgp79qr0
「ガッ!!!」

「さやか!」

「さやかちゃん!」

「ふぅ、トーシロが、ちったぁ頭冷やせよ」
「それに、あんたかい?横取りしようって魂胆なのわ」

そう言うと少女はエクスカイザーに矛を向けていた。

「何?何の話だ」

「バックレルって言うの?」
「でも、まあ良いわ、もしあたしの邪魔をする様なら、そこのトーシロと同じ目に遭ってもらうよ」
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:04:35.01 ID:sTgp79qr0
少女の眼は明らかにエクスカイザーに対し、敵意を見せていた。
エクスカイザーは何もせず、まどかの前に佇み相手の動向を探っていた。
その時。

「…う……」

さやかが剣を頼りに立ち上がったのだった。

「…おかしいなぁ、大体全治3ヶ月って位にぶっ飛ばしてやったんだけど…?」

「さ、さやかちゃん?大丈夫なの…?」
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:05:43.01 ID:sTgp79qr0
「彼女は『癒しの祈り』により契約をしたからね」
「ダメージの回復に関しては人一倍はある」

「さやか!大丈夫なのか?」

「だ、大丈夫、こんな事で…」
「それより…誰が、あんたなんかに…!」
「あんたみたいなのが居るから!マミさんは戦えなくなっちゃったんだ!」

そう言い、さやかは再び剣を良手持ちに構えた。
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:06:31.63 ID:sTgp79qr0
「…ウゼェ」
「超ウゼェ!!」

少女は菓子を食べ切り、得物の槍を両手で構え、さやかに向き直った。

「てか、なに?大体さぁ、口の利き方がなってないよねぇ?」
「先輩に向かってさぁ…!」

「黙れぇ!!!」
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:08:26.36 ID:sTgp79qr0
金属のぶつかる音が路地裏に木霊し二人の間で火花が爆ぜていた。
少女が攻撃に回り、さやかは防戦一方だった。
少女はさやかが崩れるとそこに攻撃をし、さやかがガードをしたらそれ以外のガードの甘い箇所を狙い攻勢をかけた。
さやかは何とか守っているが、それでもついて行くので精一杯という有様であった。
その中でも少女は余裕で、攻勢を強めて行った。

「チャラチャラ踊ってんじゃねぇよぉ!ウスノロォ!!」

「クッ!!」

「いかん!このままでは!」
「トォア!」
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:09:53.94 ID:sTgp79qr0
エクスカイザーはさやかの危機を察し、大きく飛び上がり、少女を牽制する様に割って入ろうとした。

「う、ぜえぇんだよぉ!!」

さやかへの横薙ぎをそのままエクスカイザーに向けて少女は振りぬいた。
だが、そのままではエクスカイザーに届かないのは明らかだったのだが…。

ガキィン!!ジャララララララ!!

「!?何!?」

少女の持った槍が分裂、否、伸びてエクスカイザーに襲い掛かったのであった。
その驚きと、槍の一撃によりエクスカイザーは壁にぶち当てられてそのまま落下して体の前面から叩き付けられていた。
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:11:10.16 ID:sTgp79qr0
「グォア!」

「!エクスカイザー!!」

「く…多接型の槍だと…!」

「あんたさぁ、あたしらは魔法少女だよ!普通の武器で収まるはず無いでしょぉ!!」

そう言いながら少女はエクスカイザーに向かって飛び込んで行き、エクスカイザーも応戦しだした。

「ホラホラホラホラァ!!」

「く!この少女!戦いに慣れている!このまま相手をするのは不利だ!」

「エクスカイザー!!」
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:13:25.16 ID:sTgp79qr0
その後ろからさやかが少女に飛び掛ったが、少女はそれに反応し槍の後端の大き目の石突でさやかの鳩尾を突き。
そのまま持ち上げ、エクスカイザーにブン投げた。

「ガハァッ!!」

「あんたにやるよ!」

「!!さやか!」

投げられたさやかをエクスカイザーは両腕で抱えると、その隙を待っていたといわんばかりに少女は大振りに槍を叩き付けた。

「避けてみなぁ!!」

「クッ!」
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:14:30.28 ID:sTgp79qr0
ブゥン!!!ガキィン!

ドゴオォン!!

「グオァ!!」

エクスカイザーは槍の攻撃からさやかを守るために自ら盾になり、そのまま壁面に叩き付けられた。

「…ハッ!エクスカイザー!!」

「ったく、弱いクセにしゃしゃり出るからこういう事になるんだよ」

「…あんたぁ!!!」
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:15:16.60 ID:sTgp79qr0
「さやかちゃん!」

「駄目だ!まどか、君では危険過ぎる!!」

そう言っている間にも、さやかは槍の鎖に巻き取られ、壁に叩き付けられていた。

「うあ!」

「言って聞かせて分からねぇ、殴っても分からねぇバカとなりゃ」

多接状態にしていた槍を繋げて構えさやかに向かって少女は走り出した。

「あとは殺しちゃうしかないよねぇ!!!」
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:16:14.92 ID:sTgp79qr0
「!?さやか!」

「クッ!!!」

だが、さやかも意外な方法で反撃に出た。

キィン!!

「なっ…!」

「何…?」

少女の矛先に自分の剣先で防ぐという荒業で反撃に乗り出したのだった。
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:17:41.51 ID:sTgp79qr0
「…負けない…!」

バチバチバチバチ!

お互いの魔力が拮抗し、火花が生まれ切っ先が包まれ見えなくなった。

「負けるもんかぁ!!」

そのまま剣を押し込んで槍を弾いたが、少女はそのまま飛び退き体勢を立て直していた。

「なっ!!」
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:19:07.58 ID:sTgp79qr0
少女はそのまま連接状態から槍に戻し、重力に任せ槍を突き込んだ。
さやかは間一髪で交わし、後に飛び退いたが、槍の直撃した地面が酷く抉れ、土煙が上がった。

「チィッ!」

その土煙に紛れ、エクスカイザーも少女に攻撃を再開した。

「オオオオオォ!!」

「このっ!」

ガキン!

「ああああああ!!!」
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:20:03.69 ID:sTgp79qr0
ガィン!

少女そのまま前をさやか、後をエクスカイザーに挟まれる形で応戦をしていた。
だが、それでも少女は槍のリーチを生かした取り回しを持って二人と互角に渡り合っていた。
その様を見てまどかは、酷く悲しくなっていた。

「ねぇ?どうして…?」

ギィン!テヤァ!

「どうして魔女じゃないのに…味方同士で戦わなくちゃならないの?」

ガィイン!ヤァ!
ガァン!遅いよ!

「ねぇ!キュゥべぇ!止めさせてよ!!」
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:20:47.62 ID:sTgp79qr0
「どうしようもない」
「エクスカイザーはともかく、彼女達は互いに譲る心算なんてまるで無いよ」

クゥ!ギキィン!
キングローダーを呼べれば…ドゴォ!

そう言っている間にもさやか達は押され気味になってきていた。

「こんなのって無いよ…!」

「…確かに、でも、どうしても力付くで止めたいと言うのであれば、方法が無いわけじゃない」

「え…?」
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:21:52.46 ID:sTgp79qr0
そう言い、キュゥべぇはまどかの前に進み出て語りだした。

「この戦い、彼女達と同じ魔法少女にならなければ駄目だ」
「その資格が、君になら有る!」
「本当にそれを望むのならね」

そう言っている間も彼らは戦っていた。
キング…!
何かは知らないけどさせないよ!ギャララララ!!ドカァン!!
何!グアァ!!

(そうだ…!あたしが契約すれば…!)

ガアァン!!

570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:23:08.63 ID:sTgp79qr0
途轍もない音と共にさやかが吹き飛ばされ、エクスカイザーは足を鎖で巻き取られ、バランスを崩し倒れていた。

「うああ!」

「クッ!さやか!!」

その様を嘲笑う様に少女は悠々多節槍を構え、伸ばしていた槍を元に戻して、大きく飛び上がった。

「終わりだよ!!」

そのまま矛先をさやかに向けて、少女は吶喊した。

「私…!」

まどかが願いで二人を止めようとしたその時。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:24:03.22 ID:sTgp79qr0
「それには及ばないわ」

「え…!?」

その言葉と共に、少女の槍は地面を貫いた、がさやかの体は貫かれなかった。
一体何をしたのかは分からないが、少女の貫いた場所にさやかは居なくなり、その少女の背中側に大きく移動していた。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:24:52.87 ID:sTgp79qr0
「何!?」

「な…?」

「…!君は…!?」

そしてその二人の間に出来た水溜りを踏み、何処からともなく、華麗にもう一人の魔法少女。
暁美ほむらが現れた。



第5話 完

573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/03(水) 23:26:11.76 ID:sTgp79qr0
次回予告

「ほむらちゃんが割って入ったお陰でさやかちゃんは大怪我しなくてすんだよ!有難うほむらちゃん!」
「それなのにさやかちゃん、あの子と決闘するって…!」
「えぇ!エクスカイザーさんがあの子と戦うの!?」
「そんなの駄目!エクスカイザーさん!戦わないで!」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『こんなの絶対おかしいよ』」
「あなたの家にも宇宙人、いますか?」

予告担当:鹿目まどか
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/03(水) 23:31:55.32 ID:sTgp79qr0
第5話、終わりました。
杏子ちゃんが怖い事になってしまった。
どうしてこうなった!
そして仁美が変な方向に走っていってしまう…。
本当すみません。

そして次回は恐らく杏子VSエクスカイザーになると思いますので、期待せずお待ちください。

後、前回のキャラ紹介でエクスカイザーの1人称がわたくしになっていますが、正しくはわたしです。
大変失礼しました。
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/08/03(水) 23:40:26.12 ID:ARzGc89Do
お疲れ様でした。
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/08/04(木) 00:14:18.79 ID:m3GcSDqV0
乙なんだぜ
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/08/04(木) 01:54:24.85 ID:FKK+lupw0


エクスカイザーが押され気味だが、ヒーローは女の子に手を上げられないからなぁ…。
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/04(木) 23:08:14.42 ID:IFen5pEs0
有難うございます。

女の子に手を上げないというより、後ろにまどかがいたので手を出すか迷っていたと言った方が正しいかもしれないです。
更に、エクスカイザーはクロスの際にサイズダウンしていますのでしょうがないんです…。
キングになっていれば押されても、吹き飛ばされる事はなかったんですが。
お約束の合体阻止をさせたのでこうなりました。

後はおいおい…。

それでは。
579 :1です2011/08/08(月) 01:53:29.57 ID:lVjR5hcY0
ちょっと埋もれ方が怖いので一度上げさせてもらいます。
なかなか進まないぜ、オリジナル展開挟まなきゃもちっと速いと思うんだが…。
止める訳にはいかんのよなぁ?
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/08/08(月) 23:35:09.69 ID:m99CYjbB0
オリジナルでもいいんじゃないの?
鬱フラグをぶった切ってくれるヒーローいるし
581 :1です[sage]:2011/08/08(月) 23:43:55.68 ID:crZIik460
>>580さん
すみません、待たせてしまって…。
もう少しお待ちください。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/08/12(金) 01:46:36.44 ID:VxAIznDlo
一瞬パト吉さんかと思ったらSLの方だったでござる
583 :お待たせ致しました!2011/08/12(金) 12:51:42.82 ID:BDw/y4L90


  このSSを投稿する前に言っておくッ! 
                    おれは今SS作者の苦労をほんのちょっぴりだが体験した
                  い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれは4K程度の文章を書いていたと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにか消していた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    クソAA乙だとかエターなっちまっただとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしい生みの苦しみを味わったぜ…


などと、訳の分からない事を申しており。

本当にお待たせしました。
なかなかエクスカイザー達の会話パートが思い浮かばず幾星霜…。
やっと完成しました。
ただ、杏子ちゃんがかなり凶暴になっております。
申し訳御座いません。
ちょっと推敲しますので13:30頃から投稿させて貰います。

では。

>>582さんが突っ込みを入れてくれるまで実は今か今かと待っておりました(笑)
他にも在りますが、誰も突っ込んでくれないからスルーが基本なのかな?とも思っていたところです。(笑)
長文失礼しました。
584 :仁美「勇者 エクス☆マギカ 第6話」2011/08/12(金) 13:53:31.44 ID:BDw/y4L90


パシャァン!!
ほむらは水を跳ね上げ、二人の間に佇んでいた。
その様に少女は驚愕していた。

「な!?あたしの攻撃が外れた!?」
「いや…違う…!」

少女は一瞬でほむらが何かしたと予測し、その槍で貫こうとした。

「てめぇかぁ!?何しやがったぁ!!」
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:54:14.79 ID:BDw/y4L90
ガアァン!!

轟音と共にほむらのいた地面は抉られ、これで終わったか、と少女は思っていたが。

「!!!???」

いつの間にかほむらは少女の後ろに佇んでおり少女を見つめていた。

「な、何だってんだ??」
「…!そうか…そう言うことかい!」
「あんたが、噂のイレギュラーってやつね?」

「……。」
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:54:51.44 ID:BDw/y4L90
「クッ、ほ、ほむら…」

さやかは剣を杖代わりに立ち上がり、ほむらを見ていた。

「ヒドイやられ様ねさやか、エクスカイザーも」

「う…すまない、ほむら」

「…!どいて!ほむら、あたしはそいつを…!」

「無理しては駄目よ、さやか」
「悪いけど、今の貴方では彼女に勝てないわ」
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:55:21.16 ID:BDw/y4L90
「!?何を!やってみなきゃ分からないでしょ!?」

そう言ってさやかはほむらにまで突っかかろうとしていた。

「…何?仲間割れ?やるんならよそでやって欲しいんだけどぉ?」
「つか、あんたはどっちの見方なの?」

「私は冷静な人の味方で、無駄に争いを広げようとする馬鹿の敵」
「…そう言う貴方はどうなの?」
「『佐倉杏子』…」
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:56:00.30 ID:BDw/y4L90
「!?」
「どうしてあたしの名前を…!」
「あんた…どっかで会ったか?」

「さあね…」

ほむらはそう言って戦闘する意志も見せず、そのまま杏子と呼んだ少女を見据えていた。
杏子は如何した物か、と考えていたが。
やがて、諦めたようにため息をついて喋りだした。

「…ハァ、まるで手の内が見えねぇとあっちゃねぇ…」
「今日は退かせてもらうとするよ」
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:56:34.23 ID:BDw/y4L90
「待て!逃がさない!」

さやかは杏子に走って行こうとした所をほむらに止められた。

「駄目よ、さやか」

「は、離してよ!ほむらぁ!!」

それを横目に杏子は軽々と槍を伸ばし路地裏のビルを蹴り上がって行った。
そして屋上に足を架け、下の方を見やって大声で怒鳴った。
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:57:06.93 ID:BDw/y4L90
「よっと、おい!そこの奴!」
「今日はこの位にしておいてやるよ!またな」

そう言い残し、杏子の姿は見えなくなった。

「あ、待…て…」

さやかは途中まで叫ぶと、そのまま変身が解除されその場に倒れてしまった。

「さやかちゃん!!」

「さやか!」
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:57:38.94 ID:BDw/y4L90
まどかとエクスカイザーはさやかの安否を確認するためにほむらの近くに向かった。
ほむらはさやかの容態を見るために、さやかの近くで片膝を着いていた。
キュゥべぇもその近くにいて様子を見ていた。

「…大丈夫だよ、気を失っているだけみたいだ」

容態を教えてくれたのはキュゥべぇだった。
そのキュゥべぇをほむらは一瞥するだけで、さやかを看ていた。

「あ、有難うほむらちゃん…助けに来てくれて」

「良いのよ、約束したし」

そう言ってほむらはさやかを抱き上げてまどかの方を向いた。
592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:58:13.35 ID:BDw/y4L90
「此処からなら私の家より、巴マミの家が近いわね…」
「一度、巴マミの所に行きましょう」
「そこならさやかを休める事ができるし」
「行きましょ、まどか、エクスカイザー」

「あぁ、分かった…」
「さっきの轟音が聞こえていないとは限らないしね、急ごう」

「う、うん…」
「でも、エクスカイザーさんは大丈夫なの?」
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:58:46.21 ID:BDw/y4L90
まどかはエクスカイザーも心配であった。
先程、あれだけ壁や地面に叩き付けられていたのだ。
心配するなと言われるのが無理な話であった。
だが、それでもエクスカイザーはまどかに笑顔を見せ。

「心配させてしまったようだね、まどか、だが問題は無いよ」
「これくらい、ダイノガイストと戦った時とは比べるまでも無いからね」

そう言って問題無い、と言い切ったのだ。
ただ、その言葉の中に一つだけ、まどかは聞いた事が無い単語があるのに気が付いた。

「ダイノガイスト?」
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 13:59:26.26 ID:BDw/y4L90
「まどか、此処で話すより、巴マミのうちで話しましょう」
「さやかを寝かせてあげたいし」

ほむらは暗に話は此処でするな、と眼が語っていた。
いつかの時のほむらみたいな目つきで、まどかは少し驚いてしまった。

「あ、ご、ゴメン!ほむらちゃん!」
「エクスカイザーさん、後でお話してもらっても良いですか?」

「ああ、良いよ、それじゃあ行こう」
「チェンジ!!」

そう言うとエクスカイザーはラジコンに変形して、一足先に路地裏を抜け。
人目に付かない様にマミの家に向かった。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:00:02.21 ID:BDw/y4L90
「まどか、私達も行きましょう」

「うん…!」

ほむらはさやかを抱えたまま走り出し、まどかはそれに付いて行く様に路地裏を後にした。
その後、謎の轟音を聞き付けた人や、調べに来た警察で路地裏は騒然となっていた。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:01:13.49 ID:BDw/y4L90


 第6話『こんなの絶対おかしいよ』


 場所は変わりマミの自宅。
マミはさやか達の陥っている事態を知らないらしく、優雅にお茶とケーキを楽しんでいた。

「フフフン、フフフン、フーフフーフン〜♪〜♪」

鼻歌を歌いながらマミは紅茶を口にし、窓から見える夕日を見つめていた。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:01:55.58 ID:BDw/y4L90
「…良い物ね…、今までの戦場と共にあった日常が嘘の様…」
「でも…この平和は仮初めの物、今しか見る事が出来ない甘い夢」
「そう、それは儚い、水泡の様な夢…」

そう言いながらマミは遠く、果てない地平を見つめるような目で夕日を見つめていた。
だが、その眼は夕日を見ておらず、その眩しさの中にある何かを見つめていた。

「魔法少女になって、見知らぬ誰かの為に戦うようになって、あれからどれ位経ったんだっけ?」
「何時になったら戦いを終えて、普通の女の子に戻れるのかなぁ…?」
「もう…一生戻れないのかなぁ…」
「…こんな人生、生きていればちゃんとした幸福が待っているよね?」
「そうだよね…?、パパ…ママ…」
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:02:25.92 ID:BDw/y4L90
一筋の涙が頬を伝い、テーブルに落ちて弾けた。
ちょうどその時。

ピンポーン!

と、チャイムが鳴り、来客を報せた。

「あら?誰かしら?」

マミは、いけないと思い、カップとソーサーをテーブルに置いて涙を拭い、すぐに立ち上がり玄関に向かって声を掛けた。

「はーい!どちら様ですかー?」

「マミ!私だ!開けてくれないか!」
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:02:58.25 ID:BDw/y4L90
「エクスカイザーさん?今開けます」

マミはエクスカイザーさんって他の人目も有るかも分からないのに結構無用心なのね
などと思いながらも玄関の鍵を外し、扉を開けると。
するとそこにはほむらがさやかを背負っており、マミに頭を下げたと同時に話を始めた。

「御免なさい、此処が一番近かったの、さやかを休ませたいのだけれども…良いかしら?」

「え?何?美樹さん?どうしたの?」

マミはほむらに背負われているさやかを見て驚愕していた。
だが、すぐに思考を切り替え。

「私のベッドがあるわ、そこに美樹さんを寝かせてあげて。」
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:03:32.35 ID:BDw/y4L90
「有難う」

一言そう言ってほむらはさやかをマミの寝室に運んで行った。
見送り、玄関にいるエクスカイザーたちにマミは向き直り。

「…何があったか、説明してもらえますか?」

「あぁ、その心算だ」

…数分後。
マミは来客用のティーカップに紅茶を注いでまどか達に振舞っていた。
さやかはベッドに寝かし付けられており、今もまだ眠っている。
ほむら達は先ほど路地裏で起こった事の顛末をマミに話していた。
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:04:07.35 ID:BDw/y4L90
「…成程、美樹さん、魔法少女になっていたのね」

「ご、ゴメンなさい、マミさん、一言も相談しないで勝手に…」

「良いのよ、結局決めるのは自分自身なんだし」
「それより、佐倉さんが来ていたのね…」

「マミは知っているのか?彼女の事を」

「一応、何度か戦った事のある子なんです」
「まさか、見滝原に来ているなんて…」
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:04:46.28 ID:BDw/y4L90
マミは顎に手をやり、考え込んでしまった。
それを見ていたまどかは俯いて話し出した。

「やっぱり…魔法少女同士、戦わなくちゃならないんですか?」

「鹿目さん?」

まどかの言葉に反応して、マミは一旦考えるのを止めてまどかの方を向いた。

「こんなのおかしいです!」
「どうして同じ魔法少女で戦わなくちゃいけないんですか?」
「私…」

「…仕方が無い、としか言いようが無いわね」
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:05:22.19 ID:BDw/y4L90
その言葉を発したのはほむらであった。
まどかは何故ほむらが喋ったのか疑問に思い、ほむらに向き直った。

「ほむらちゃん?」

「魔法少女は己の利益の為に戦う者だもの」
「巴マミのような人こそ稀なケースよ」
「普通はああいう態度をとって間違いないの」
「私も『何人も』ああいう魔法少女は見たことがあるわ」

「…それでも同じ魔法少女なんだし、戦って欲しくないよ」

「まどかの言う事は間違ってはいないよ」

そう言って、また俯いていたまどかを、エクスカイザーは優しく諭しだした。
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:06:00.11 ID:BDw/y4L90
「正しい事を正しい、間違っている事を間違っている、と考えるのは簡単な事だ」
「だが、それを口にするのは、とても難しい」
「それでも、まどかは勇気を持ってそれを言う事ができる、それはとても大切な事だよ」

「でも…私…ただ言うだけで、力も無いし、何も出来ないし…」

「何も無い、何てことは無いよまどか」
「君は、そうやって間違いを喚起する事ができているんだ」
「それこそ、今の君のできることだよ」

「そうよ、鹿目さんが負い目を感じなくて良いんだから、ね」
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:06:41.71 ID:BDw/y4L90
まどかはその言葉を聴いて少しは気分が軽くなったのか。
俯いていた顔を上げてエクスカイザー達にお礼を言っていた。

「有難う御座います、エクスカイザーさん、マミさん」

「いいの、後輩が悩んでいるんだもん」
「放っておけないでしょ?」

「礼なんて要らないよ、まどか、私は感じた事を言っただけだからね」
「だが、これからどうするか…」

「そんなの簡単だよ、あいつを倒せばいいんでしょ?」

「「「「!?」」」」
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:07:22.31 ID:BDw/y4L90
いきなり声がしたのに驚き、その方向を向くと其処にはさやかが立っていた。
酷く不機嫌そうな顔で。

「さやかちゃん!大丈夫なの?」

「…ちょっときついけどね、大丈夫」
「それより、ほむらどういうことよ?」

「どういうことって?」

「惚けないで、あんたアイツの事知っていたじゃん」
「どうして知っていたのよ」

「転校して来る前に会った、じゃ駄目かしら?」
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:08:10.42 ID:BDw/y4L90
「ふざけないで、アイツはアンタの事知らないみたいじゃない」
「アンタ一体…「そこまでよ」

そう言ってマミは二人の間に立ち塞がった。
聞き分けの無い後輩二人を宥める為に。

「ここで言い合っても始まらないでしょ?」
「それとも、私の家で大騒ぎする気?」

だが、その眼は本気で、此処でするのなら、手段云々と語っていた。

「あ…」
「そう言えば、ここマミさんの…」
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:08:53.37 ID:BDw/y4L90
言われて初めてさやかは辺りを見回し、ここがマミの家だという事に気が付いたようだ。
そして、バツが悪くなったように頭を掻いて、ほむらから目を逸らし謝りだした。

「…ゴメン」

「良いのよ…、こっちも言い方が悪かったわ」
「慣れていないの…こういうのに…」

「宜しい」
「それじゃ、美樹さんの分の紅茶を淹れてあげるわね」

そう言ってマミは笑顔になり、さやかの紅茶を淹れるために台所の方へ小走りに向かった。

「だが、さやかも少し休んでいた方が良いのではないか?」
「あれだけの攻撃を受けたんだちょっとやそっとで回復するような怪我でもあるまい」
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:09:30.42 ID:BDw/y4L90
「でも…」

「その心配は無いと思うな」

其処にキュゥべぇが会話に割り込んできた。
マミとほむら以外は全員どういう事だ?を浮かべていた。

「キュゥべぇ?どうしたのさ?」

「さやか、君は癒しの祈りで契約をしたんだ」
「もう怪我なら治っているんじゃないかな?」

「嘘ぉ?冗談でしょ?」
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:10:08.48 ID:BDw/y4L90
「憶測ならまだしも、僕は嘘は言わないよ」
「腕の怪我を見てみたらどうだい?」

そう言われて、さやかは渋々制服の袖を捲くって見た。
すると其処には先ほどの戦いで受けた傷はもう殆ど見えなくなっていた。

「嘘!?本当!?」

「すごぉい…!」

「余裕の回復力だ、パワーが違うね」

そう言ってキュゥべぇはさやかから目線を外すと、まどか達の要るテーブルの方に向き直った。

「そう言えば、まどかはどうするんだい?」

「え?」
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:10:45.63 ID:BDw/y4L90
「ボクとの契約の事だよ」
「まどか、君はまだ悩んでいるようだけど、それならいっそ魔法少女になってしまえば良いんじゃないかな?」
「そうすれば、もしかしたら悩みなんて吹っ飛んでしまうかもしれないよ」

そう言ってキュゥべぇはまどかに向けて話をした。
その間、ほむらはキュゥべぇをずっと睨み付けていた。
鬼気迫る、といった感じである。

「そうであれば、さやかを危険に晒す事は無いだろうし、何より魔女と戦う戦力は多ければ多いほど良い!」
「まどか、君はどうしたいんだい?」

「あ、私は…」
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:11:23.56 ID:BDw/y4L90
まどかはその先を言おうとしたのだが、ティーポットを持って来たマミが話を中断させた。

「お待たせ、美樹さん、紅茶をどうぞ」
「他に、お代わりが欲しい人はいる?」

「頂くわ、まどか、あなたはどうする?」

「え?あ、はい…お願いします」

ほむらのフォローが無ければまどかは暫く思い悩んでいただろう。
そして、どうぞと紅茶のお代わりを貰いそれに口を付けていた。
その様をキュゥべぇはただ、見つめていた。

「……。」
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:11:59.86 ID:BDw/y4L90
「駄目よ、キュゥべぇ」
「言ったでしょ?急かす男子は嫌われるぞって」

マミはキュゥべぇの隣に座ってメッと言っていた。
キュゥべぇもこの場での契約は無理と判断したのか、諦めて溜息をついていた。

「…そうだね、僕も急ぎすぎていたようだよ」
「また今後、お願いするとするよ」

「よろしい、ところで美樹さん、ソウルジェムの方は大丈夫?」

「大丈夫って言いますと?」
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:12:39.93 ID:BDw/y4L90
「穢れの事よ」
「あまり無茶すると大変だし、私のグリーフシード1個だけだけどあげようかなって思って」
「今は私にはそんなに必要ないし…」

「え?あ…その…」

そう言ってマミは取って置いたグリーフシードを衣装棚から出してきて、テーブルの上に置いた。
さやかはいきなりの事だったので戸惑いを隠せないでいた。

「良いから、貰っちゃって」

「そんな…出来ないですよ!」
「マミさんが苦労して手に入れたグリーフシードだし!それにあ、あたしなんてまだまだヒヨッコだし…」
「それに…マミさんと、一緒に戦えると思っていたのに…」
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:13:20.46 ID:BDw/y4L90
さやかは俯いて、落胆したようであった。
当然と言えば当然か、憧れていた人が事実上の引退を宣言したのだから。
マミは、あ…と言って済まさそうな顔をして、それを否定するように言葉を紡いだ。

「あ、御免なさい、そう言う事じゃないの」
「今戦っているのは美樹さん何だし、戦いもしないで普通に暮らしている私より、有意義に役に立ててくれる」
「そう思ったからよ」

「マミさん…」

「それじゃあマミは戦線から離脱する、と言う事なのかい?」

「一時的に、です」
「可愛い後輩が、頑張っているのを尻目に日常には戻れないですよ」
「美樹さん、もうちょっとだけ、時間をくれる?」
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:13:55.26 ID:BDw/y4L90
マミはさやかにそうお願いした。
さやかは時間は掛かるが、それでもマミは戦ってくれる、という事に嬉しくなり。
大きな声でお礼を言っていた。

「あ…!有難うございます!マミさん!!」
「いつか、いつかは一緒に魔女退治しましょう!」

「えぇ」
「いつか、共に戦いましょう」

二人の手はいつの間にか両手の握手に変わり。
マミは後輩の無事を。
さやかは先輩の早期復帰を願っていた。
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:14:28.09 ID:BDw/y4L90

 その後、マミ達と会話をし、さやかは一足先に自宅に帰って来ていた。
今さやかは自分で手に入れたグリーフシードにソウルジェムの穢れを移していた。

「…うん、もう大丈夫だね」
「これで暫くは戦えるよ」

「うはぁ、真っ黒…これ大丈夫なの?」

そう言ってさやかはかなり黒くなっているグリーフシードを見つめていた。

「流石にこれ以上穢れを吸ったら魔女が孵ってしまいそうだね」
「グリーフシードを貸してくれるかい?」
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:15:10.46 ID:BDw/y4L90
「…?はい」

さやかがグリーフシードを渡すと、キュゥべぇは頭の上で転がしてから背中に出来た穴にグリーフシードを器用に放り込んだ。

「ん〜、きゅっぷぅぃ」

「うへぇ、食べたの?」

「僕の役目の一つだよ、食べる、とは違うけどね、君たち的に言うと、エネルギーを貯めたのさ」

「エネルギー?」

「そう、言ってなかったけど、このグリーフシードはとても良いエネルギー源となるんだ」
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]:2011/08/12(金) 14:15:43.07 ID:BDw/y4L90
そう言ってキュゥべぇは猫のように体を伸ばしていた。
さやかはその様を見てふぅん、とだけ言ってソウルジェムを眺めていた。

「次に浄化する時はグリーフシードが必要だね」

さやかはその間も蒼に輝くソウルジェムを無言で見つめていた。

「ねぇ、これを綺麗にしておくのってそんなに大切なの?」

「勿論だよ、魔翌力を使えば使うほど、穢れは溜まる」
「最大限の力を発揮するには穢れを取り除いて、コンディションを最良にしておく必要が存在する」
「佐倉杏子が強いのはその為さ」
「彼女の強さは常に最良の状態で戦っている事なんだよ」
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:16:42.59 ID:BDw/y4L90
「!?、だからってグリーフシードのために他人を犠牲にするなんて…」

そこで、さやかは何か思いついたのか頭に電球が閃いた様なポーズをしていた。

「そうだ!ねぇキュゥべぇ、だったらさ、グリーフシードに穢れを吸わせて魔女を孵してさ」
「そいつをやっつければまたグリーフシードを落とすんじゃないの?」

その提案にキュゥべぇは呆れた様に返答していた。

「…君の中々な事を考えるね」
「でも、それは止めて置いた方が良いよ」

「?どうしてさ、それならグリーフシードの取り合いにならないし」
「何より戦わなくて…あ」
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:17:21.76 ID:BDw/y4L90
そこまで言って、さやかは何かに気が付いたようだ。。
キュゥべぇもその様子を見て言った。

「分かったようだね」
「今までに試した事がある人間は何度もいた、と言う事さ」

「で、でもそれは運が悪かったからじゃないの?」

「運が悪いのであれば、誰かがそれを試して、成功したって話をマミが喋っているんじゃないかな?」

「う…」

さやかは自分の考えどうりにいかない、と分かるとしょぼんとしてしまっていた。
キュゥべぇはその様子を眺めながら話を続けた。
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:17:53.30 ID:BDw/y4L90
「それに、これは僕自身の統計なんだけど。」
「今までそれをやった人間がその魔女から再びグリーフシードを手に入れた確立は…」
「0%だ」

その数字を聞いてさやかは驚いてしまった。
1桁とかならまだしも、全く居ない0%とは…と。

「一応、成功した者は居たよ」

「な、何よ、それじゃ0%じゃないんじゃない」
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:18:33.80 ID:BDw/y4L90
「それは前提条件が違うからね、それとは別の計算さ」
「さっきのは君の言うとおり、穢れを貯めて魔女を孵した後、その魔女をその場で倒す、と言う場合さ」
「その場合は0%だった」

「じゃ、その成功例ってのは…?」

ゴクリ…。

とさやかは息を呑んだ、そしてキュゥべぇが話の続きを喋った。

「魔女が孵化した後に人間を襲わせて数人喰らった状態を倒した時、さ」
「その場合の人数統計を、聞きたいかい?」
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:20:00.05 ID:BDw/y4L90
ニコリ、とキュゥべぇは微笑んだ、だがさやかにはその笑顔がおぞましい物に感じたのか。
直ぐに断った。

「い、いい!聞きたくない!」

さやかはショックを受けていた。
まさか、自分の提案で犠牲者が出る可能性があったなんて…。
これじゃ正義の味方なんて言えない…。
アイツと同じだと、ゾッとする思いであった。

「…まぁ、どちらにしろ魔女は倒さなければ被害が拡大するばかり、と言う事さ」
「それに、ソウルジェムの穢れを抑えるのなら色々ある」
「一番良いのは魔力の消費を抑えることだけどね」
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:20:26.45 ID:BDw/y4L90
「そんなので穢れを抑えられるの?」

「まぁ、初心者の君には無理だろう」
「ベテランのマミはそういう事にも精通しているからね」
「だからこそ、彼女は強かったんだ」
「消費を抑えながら且つ、必勝の破壊力を維持する」
「並の魔法少女では難しいだろうね」

そう言ってキュゥべぇはマミの戦う姿を回想するように上を向いていた。

「うぅ〜やっぱり場数が違いすぎるってきついなあ」

「それは追々近づけば良い、でも中には全く経験が無くても才能だけでマミや杏子以上の力を持つ人間も居るんだ」
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:20:59.14 ID:BDw/y4L90
その言葉にさやかは自分に才能が無い、と言われている様であまり気分は良くなかった。
だが、興味もあった。
もしや、あの転校生…ほむらの事だろうか?

「誰よ、それ、もしかしてほむらの事?」

「鹿目まどかさ」

その言葉にさやかは耳を疑ってしまった。
あの、まどかが?
いっつものほほんとして、それでいて心配性で、それなのに頑固な時があったり。
お節介焼きのまどかが?
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:21:32.03 ID:BDw/y4L90
「…何それ?冗談でしょ?」

「冗談なんて言わないよ」
「もし、杏子に対抗したいのならまどかに頼むのも手だよ?」
「彼女が契約をすれば…「駄目」

そう言ってさやかはキュゥべぇの話を切った。
何か、キュゥべぇの言葉に引っかかったのだが。
何より。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:22:08.69 ID:BDw/y4L90
「これはあたしの問題」
「まどかを巻き込むわけにはいかないもん」

まどかはただの女の子、私は魔法少女。
そして彼女は守るべき友達。
そう心の中で自分に言い聞かせていた。
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:22:57.48 ID:BDw/y4L90

 時間はさやかがマミの家から帰って数時間。
見滝原市の中心街のゲームセンターにその影はいた。
画面に浮かぶ矢印に合わせて足元のパネルを軽快にステップを踏んでダンスを踊っている少女。
佐倉杏子の姿がそこにあった。
杏子は魔法少女の姿ではなく、シャツの上に空色のパーカーを着、下はジーンズの短パンと言う、至って普通の服装でゲームに興じていた。

その後に、いつの間にか暁美ほむらは立っていた。

「よぉ、今度は何さ?」
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:23:33.59 ID:BDw/y4L90
杏子はあくまで話半分でほむらに声を掛けていた。
今もゲームに合わせてステップを踏んでいる。

「ちょっとね、貴方にこの街を預けようと思って」

「…どんな風の吹き回しよ?」
「つか、アンタあいつの仲間じゃないの?」
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:24:16.72 ID:BDw/y4L90
「確かに、私は彼女の仲間よ」
「でもね、美樹さやかは魔法少女としては不向きなの」
「魔法少女は、貴方みたいな子こそ相応しいわ」
「それと、今後、私たち間で諍いを起こさないで欲しい」
「巴マミにも手出ししないで欲しい」

「やたら注文が多いんじゃない?」
「…いいよ、じゃああいつが突っかかって来ない限り相手はしないよ」
「マミも同様って所かね」
「ま、この街を頂こうと思ってはいるけどさ…」
「アンタ一体何者だ?何が目的なのさ」
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:25:03.95 ID:BDw/y4L90
「…2週間後、この街に『ワルプルギスの夜』が来る」

「!?」

一瞬バランスを崩し、画面の矢印を踏み損ねそうになったが、すぐに体勢を立て直し、ゲームを続けていた。
杏子は意識をほむらに向けながらもゲームを続けながら話した。

「…何故分かる?」

「秘密」
「そいつを倒す事ができれば私は何処へなりとも行くわ」
「後はあなたが好きにすれば良い」
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:25:35.12 ID:BDw/y4L90
「成程…その為に邪魔者は居ない方が良いってやつか」
「それに、『ワルプルギスの夜』ね…」
「1人より2人掛りなら勝てるかもってやつか…」
「ハッ!面白そうじゃん!」

そういい終えるのとほぼ同じタイミングでゲームも終わり、リザルト画面が表示されていた。
画面にはハイスコア更新と書かれ、総合ランキング1位に杏子の点数が着ていた。
それを見て満足したのか、杏子はほむらに振り返り、後ろポケットに入れていたお菓子をほむらに向けていた。

「食うかい?」
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:26:16.85 ID:BDw/y4L90

 日付は変わり、放課後の時間。
さやか達は昨日使い魔のいた路地裏まで来ていた。
ソウルジェムを起動状態にして周囲の魔力の残滓を探していた。

「…駄目だね、時間が経ちすぎた」
「昨日の使い魔の痕跡はもう残っていない」

「そうみたいだね…」

さやかはそう言ってソウルジェムを待機モードにして、周囲を見ていた。
まどかは声を掛けようかどうしようかまよっていたが、意を決して声を掛けた。
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:26:55.04 ID:BDw/y4L90
「…ねぇ、さやかちゃん」

「ん?何、まどか」

「昨日の子と一度話し合っておくべきだよ」
「でないと、また遭った時にケンカになっちゃうよ」

「ハァ…まどか、夕べのあれが、ケンカに見えたの?」

「え…」

「夕べのあれは、正真正銘の殺し合いだったよ」
「あの時の戦いは、お互いが本気で相手の事を終らせようとしていた。」
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:27:38.35 ID:BDw/y4L90
「だったら…!尚更だよ!」

「バカ言わないで!」
「グリーフシードの為に人間を餌にするような奴と折り合いが着く筈なんてあるわけ無いじゃない」
「あたしは魔女と戦うだけじゃない」
「大切な人を守る為にこの力を手に入れたの」

そう言ってさやかはこぶしを握り、自分の前に持ち上げていた。

「だから、魔女よりも悪い人間がいるのなら、あたしは戦うよ」
「例えそれが、魔法少女であったとしても…!」

そう言うさやかをエクスカイザーは思案しながら見つめており。
纏まったのか、さやかに声を掛けていた。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:28:13.17 ID:BDw/y4L90
「さやか、それでは君は彼女が戦うと言うのなら君はそれに応じるのか?」

「当たり前でしょ?エクスカイザーは戦うなって言いたいの?」

「そうだ、君たちは戦うべきじゃない」
「ほむらの事を忘れたのか?」

さやかはほむらの顔を思い浮かべると、少し前の彼女との関係も思い出していた。

「…じゃあエクスカイザーはほむらの事もあるからアイツの事も信じてみろって言いたいんですか?」

「信じ切ろ、とは言わないが、一度でもいいから話をしてみるべきじゃないか?」

「…。」
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:28:49.53 ID:BDw/y4L90
「さやかちゃん、お願い」
「私、魔法少女同士で戦って、さやかちゃんが怪我するのなんて見たくないよ…」

まどかはその様を思うと、涙を流さずにはいられなかった。
それを見てさやかは、少し考えるとおでこに手を付いてため息をついた。

「ハァ…泣く子と宇宙人には敵わないわ…」

「さやかちゃん?」

「分かったよ、でも期待はしないでよ、あたし喧嘩っ早いし」
「それでも良い?」

「あぁ、それでも構わない」
「もし、何かあったら私達に相談してくれ」
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:29:23.45 ID:BDw/y4L90
「うん、でも、まどか」
「もし、あいつと戦うとこを見るのが嫌なら付いてこなくても良いよ」
「見てて気持ちの良い物じゃないだろうしね」
「…あたし、もう少し探してみるから、それじゃ」

そう言うと笑顔を作って振り返り、一人で探索に出て行った。

「さやかちゃん…」

「何も無いと良いんだが…」

二人はその後姿をただ見送っていた。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:30:03.89 ID:BDw/y4L90

 時間は更に経過し、夜。
魔女探索は終了し、まどかは家に帰ってきていた。
そしてベッドでエクスカイザーと向き合い話をしていた。

「さやかちゃん、本当にあの子と戦ったりしないで欲しいなぁ…」
「エクスカイザーさん、私…どうしたらいいのかなぁ…」

「私からは自分が出来る事をする事だ、とだけ言わせて貰うよ」
「魔法少女になって二人の間に入り、力付くで止めるのは簡単だ、だが、それでは根本的解決にはならない」

「でも、さやかちゃん、ちゃんと話し合ってくれなさそうだし…」
「一応話してくれるって言ったけど…」
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:30:47.58 ID:BDw/y4L90
「信じよう、さやかはさやか也に考えがあるんだ」
「だがもし、彼女が戦うのを選んだのならば」
「私が戦おう」

「えぇ!エクスカイザーさん!どうして!?」

突然の告白にまどかは驚きベッドの上で跳ね上がってしまった。
それほどに予想外の事であったのだろう。

「マミの家で言ったように、私は仲間同士、魔法少女同士で戦うのは間違っていると思う」
「例え私の行動が間違っていても、彼女達の戦いは止めようと思っている」
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:31:25.98 ID:BDw/y4L90
「そんな…エクスカイザーさんが怪我しちゃいます!止めて下さい」

まどかのその姿を見て、エクスカイザーはヘッドライトの両端を下げて、優しく言った。

「まどかは優しいんだね、その言葉だけでも私には充分だよ」
「本当なら私も戦わないのが望ましい」
「でもヒトと言うのは、曲げる事の出来ない物がある」
「だからこそ、皆でそれを合わせるべきだと思うんだ」

「合わせる?」
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:32:04.33 ID:BDw/y4L90
「ああ、例え話になってしまうが、まどかは3本の矢の話を知っているかい?」

「え?あ、はい」

「1本の矢だとすぐ折れてしまうが、矢を3本束ねると折れない、という古いお話だそうじゃないか」
「その話のように、マミやさやか、ほむらに杏子の力を合わせる事ができるなら」
「負ける気がしない筈だと思うんだ」

「…それは、私もそう思います」
「でもその為にエクスカイザーさんが危ない事をするなんて…」
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:32:49.77 ID:BDw/y4L90
「まどか、この世界は今の君達の様な若い世代が作っていくんだ」
「私はその為ならば、正しい事は正しい、間違っている事は間違いだと言い続けるだけさ」

「…ウェヒヒ、何か、エクスカイザーさんがおじさんみたいな事言ってる」

「?ああ、ハハハ地球の年齢だと若い筈なんだがな」
「長々と喋りすぎたよ」

「あ、本当だ、もうこんな時間」

「あぁもうこんな時間だ…、まどか、もう眠った方が良いよ」
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:33:41.04 ID:BDw/y4L90
「うん…有難うエクスカイザー」
「それと、お休み、エクスカイザー」

「ああ、お休みまどか」

まどかは、エクスカイザーにお礼とお休みを言って眠りに着いた。
エクスカイザーはその様子を見つめていたが、少ししてヘッドライトを閉じ。
自らも休憩を取った。

まどかは一応ベッドで寝る体制に入っていたのだが、全く眠れなかった。
ずっとさやかの事が気になってしまい全く眼が冴えたままだったのである。

「……。」
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:34:53.44 ID:BDw/y4L90
それでも、まどかは眠ろうとしていると階下から鍵を開ける音が聞こえてきた。
寝返りをして時計を見ると、詢子が帰って来そうな時間を指していた。
その後、シャワーの音が聞こえてきた時、まどかは詢子に相談してみようと思い立ち。
シャワーの音が鳴り止むと、意を決して起き上がり、階下に下りていった。

「…まどか?」

エクスカイザーはその後姿を見つめ、ただ見送る事にした。
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:35:28.80 ID:BDw/y4L90
リビングに二人、まどかと詢子の影があった。
まどかは、詢子にさやかの事を(出来るだけ暈して)話をしていた。
詢子は時折、相槌をうち話を聞いていた。
そして、まどかの話が終わると、詢子は話し出した。

「そーゆうのはね、良くある事なのさ」
「悔しいけどね、正しい事を積み上げていってもハッピーエンドにはならないのさ」
「むしろ、自分の正しさを信じて意固地になればなるほど、幸せって遠ざかっていくもんだよ」
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:36:04.85 ID:BDw/y4L90
「…間違っていないのに幸せになれないなんて、酷いよ」
「私、何かしてあげられないかな…?」

「そいつばかりは、他人が口を突っ込んでも綺麗な解決にはならないと思うよ?」

「それでも、たとえ綺麗じゃない方法でも解決したいかい?」
「それならさ、間違っちゃえばいいんだよ」

「え?」
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:36:42.15 ID:BDw/y4L90
まどかは思わず聞き返してしまった。
間違えてしまえばいい、それは一体どういうことなのか?と。

「まどかはさ、正しすぎるその子の分まで間違えてあげればいい」

「間違える…?」

「そ、ズルイ嘘付いたり、怖い物から逃げ出したり…」
「でも、後になってそれが正解だった、って分かる事もあるんだ」
「どうしても、それこそもうドン詰まりになってどうしようも無いって時は、いっそ間違えてみるのも手なんだよ」

「それがその子の為になる、って分かってもらえるかな?」
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:37:21.19 ID:BDw/y4L90
「最初は理解してもらえないかもしれないよ?」
「もしかしたら、ずっと分かってもらえないかもしれない」
「綺麗な解決じゃないからね…」
「でもさ、その子の事諦めるか、それとも誤解されるか」
「どっちがマシだい?」

カラン

と小気味の良い音がグラスから鳴り、辺りの宵闇に消えていった。
まどかはずっと詢子に耳を傾けていた。
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:38:14.18 ID:BDw/y4L90
「まどかはさ、充分良い子に育ったよ」
「嘘も付かないし、悪い事もしない」
「いつも正しくあろうと頑張っている」
「子供としては、もう合格だよ」

そう言って詢子はウイスキーの入ったグラスを傾け、中身を少し飲んでいた。

「…ふぅ、だからさ、まどかは今度は大人になる前に間違え方もちゃんと勉強しときな」

「勉強…なの?」
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:38:53.71 ID:BDw/y4L90
「若いうちは怪我の治りも早いからね、今の内に上手な転び方を覚えておけば、後々役に立つよ?」
「大人になっちゃうとね、どんどん間違えるのが難しくなっちゃうんだ」
「背負った物が多くなるほど、下手を打てなくなる」

「…それってさ、辛くない?」

「辛いに決まっているでょ?大人は皆、ね」
「だから酒飲んでもいい、って事になっているの」

そう言って詢子はグラスを指の先でもち、揺ら揺らとまどかに振って見せた。

「フフッ、私もママと一緒にお酒飲んでみたいな」
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:39:50.93 ID:BDw/y4L90
「ハハッ、さっさと大きくなっちゃいなよ〜、辛い分だけ楽しいよ?大人は」

カラン

とグラスの中の氷が動き、気持ちの良い音色を奏でていた。

「あ、後ね、他の友達なんだけどね」
「正しい事は正しい、間違った事は間違っている」 
「そう言えるのは凄い勇気のいる事だって言われたの」

「へぇ、その友達は中々に真っ直ぐな奴なんだね」
「そしてまどかを良く見ているみたいだ」
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:40:33.11 ID:BDw/y4L90
そう言って詢子はグラスを煽っていた。

カラン

と再び小気味の良い音が奏でられた。

「ママは、今の言葉だけで、その人が分かるの?」
「それに良く見ているって?」

「それはね、そう言えるのは今まで色んな苦労をしてきて、尚且つ」
「それでも自分を曲げないでいる人間の言う事だよ」
「正しい行いも、間違った行いも全て肯定してそれをバネに生きている人間さ」
「更に、相手を見る眼にも優れている、って感じかな」
「まどかにそんな人生経験豊富な友達が居たんだ?」
「私はそっちの方が驚いたよ」
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:41:16.74 ID:BDw/y4L90
「エ!?い、いや、そうなの!ちょっと知り合っちゃって!アハハハハ…」

「?何だか知らないけど、その友達は大事にするんだよ」
「そういう事の言える人間は、本当に少ないからね」
「私は無理だねぇ、間違いは間違い、正しいは正しいなんて、そういう風には言えないよ」
「守るものがイッパイあるし、ね」

そういうと詢子はまどかも見つめてウィンクをした。
まどかは、少し恥ずかしくなってしまいジュースを飲み干してすぐに立ち上がった。

「ん…ぷはっ、ご馳走様」
「ママ、お休み」
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:41:55.28 ID:BDw/y4L90
「ああ、まどかも、お休み」

そう言ってまどかは知久やタツヤを起こさない様に抜き足で階段を上っていった。

「…人間じゃないんだけどね」

そう一言呟くと、少し心配だった物が軽くなったような気がした。
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:42:32.63 ID:BDw/y4L90

 次の日。
放課後を迎え、さやかはCDショップでお宝を買い、恭介の居る病院にまで走って来ていた。

「はっ、はっ、はっ、ハァ、ハァ、…よし!」

さやかは病室の前で上がった息を整えると、勢い良く病室のドアを開いた。

「オーッス!恭介!今日もさやかちゃんがCDを…ってあれ?」

途中から病室が変な事に気が付いて、トーンダウンしていった。
居ないのだ、入院しているはずの上条恭介その人が。

「あれ…?恭介?」
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:43:47.52 ID:BDw/y4L90
「あら、さやかちゃん、どうしたの?」

声を掛けられたのに気が付き、振り向くとそこには恭介の病室を主に担当していた看護師さんが居た。
以前、屋上で恭介の演奏を聴いていた人だ。
何回も通っているうちに名前を覚えられていた様だ。

「あ、どうも…あの、恭…上条君は…?」

「畏まらなくて良いわよ、上条君なら昨日退院したわよ」
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:44:28.62 ID:BDw/y4L90
看護師さんは笑いながら喋っていたが、さやかには笑えない冗談であった。

「え?昨日?」

その言葉にさやかは驚かされた。
どうして恭介はあたしに連絡をくれなかったんだろう?と。

「あら?聞いていなかった?御免なさい、私聞いている物だとつい…」

「あ、イエ、良いんです、有難うございます」

そう言ってさやかはお辞儀をし、踵を返すと、まっしぐらに恭介の家に向かって走り出した。

「廊下は走らない事!後、また上条君の演奏聞かせてね!」

その言葉に生返事をし、さやかは病院を駆け抜けていった。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:45:31.78 ID:BDw/y4L90

 恭介の家は意外に遠い。
と、言うか病院からは遠い、と言うだけであり、実際には学校からは歩いて登校出来る距離である。
だが、今さやかは病院から恭介の家に向かっている為に、電車を使っての大移動となっているのである。
時間はとっくに過ぎて、夜の時間、人じゃない者達が蠢く時間になっていた。
上条邸宅、その正門前にさやかは立っていた。

「…もう、あたしに何も言わないで退院していたなんて、許すわけにはイカンのよなぁ」
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:46:05.13 ID:BDw/y4L90
そう言ってさやかは制服の捲くり、玄関のインターホンを押そうとした時
ヴァイオリンの音が微かに聞こえてきた。

♪〜♪〜♪〜

その音色が聞こえて、さやかの指は押す直前で止まった。
恭介は今、ヴァイオリンを弾いている。

「……。」

さやかは思った。
今、挨拶しても邪魔じゃないだろうか?そもそもこんな時間だし、迷惑じゃないだろうか?
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:46:55.03 ID:BDw/y4L90
「…ッたく、仕様が無いんだから…」

そう言ってさやかは今日は止めて、また今度話をしよう、そう思っていた。
その時。

「オイ、せっかく来たって言うのに挨拶も無しに帰るのかい?」
「今日一日追い掛け回したくせに」

「!?」

さやかは驚き振り返ると、そこには手にお菓子を持った杏子が立っていた。

「!…アンタ」
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:47:36.48 ID:BDw/y4L90
「おっとぉ、あたしはあんたの姿が見えたからついて来ただけさ」

嘘だ、さやかはすぐに分かった。
1日なんて言葉、付いて周らない限りそんな言葉でない筈、だとするなら。

(こいつ…あたしをつけていた…!)

その結論に達していた。
杏子の方はさやかから目を逸らし、恭介の家のほうを見遣っていた。
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:48:24.64 ID:BDw/y4L90
「知っているよ?この家の坊やなんだろ?アンタが契約を交わした理由」
「ッたく、たった一度の願いのチャンスをくだらねぇ事に使いやがって」
「魔法ってのはな、自分の為に使うもんだ」
「自分の望みだけを叶える為にあるモンなんだよ」
「それなのに他人の為に使うなんて…」
「碌な事になるわけないのさ」

さやかは何か話がかみ合わない、そう思いながら杏子の話を聞いており、その違和感にやっと気が付いた。

(…こいつ、あたしの願いが恭介の腕を治した事だけだと思っている?)
「…ねぇ、何か勘違いをしているんじゃない?」
「言って置くけど、あたし、恭介の為だけに魔法少女になった訳じゃないから」
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:49:09.76 ID:BDw/y4L90
「あぁ?何を勘違いだよ?」
「もしかしてアンタ、セージン君子気取ってんの?」
「ハァ…、これだからトーシロは…」

そう言いながらお菓子を食べ、空いている方の手で頭を掻いていた。

「何よ…」

「アンタさぁ、もう少しいい方法あるんじゃないの?」
「惚れた男を物にするならさ、もっと冴えた手があるじゃん?」
「せっかく手に入れた魔法でさぁ…?」

「今すぐ家に乗り込んでいって、あの坊やの手足をもう一度潰してやるんだよ」
「もう一度、あんた無しで生きていけない体にしちまえばいいんだよ」
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:50:04.45 ID:BDw/y4L90
はっきり言うと、さやかは怒りが爆発しかねない状況だった。
拳は握られ、相手への憎悪に身を焦がし、ここまで人は言えるものかとも驚愕していた。
だが、それでも事を起こさなかった。
さやかは、それでも律儀にまどかとの約束を果たそうと怒りを堪えて対峙していた。

「……!!!!あんたぁ…!」

「わりぃ、わりぃちょっとからかわさせてもらったよ」

そう言うと杏子はからからと笑いながらさやかを見ていた。

「しっかし、よく我慢したねぇ、好きな男の前だとってヤツ?」

「うるさい、後一つだけ、一つだけ聞かせて」
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:50:45.66 ID:BDw/y4L90
「何よぉ、そんなに言うんだから一つだけよ」

「…あの時、あの時あんたが言った台詞、覚えている?」

「?あたしの言った台詞??何の話だよ?」

「4、5人喰わせりゃ魔女になって、グリーフシードをってやつの事よ」

「あぁ、あれ?あれがどうかしたの?」

そういいながらも杏子はお菓子を頬張っていた。
さやかはその態度が気に入らないのか、自然と噛締めていた。
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:51:39.71 ID:BDw/y4L90
「アンタ…本気で言っていたの?」

「…あ?」

「本気で言っていたのか、って聞いているの」
「もし、本気じゃないなら「本気だよ」
「…え?」

さやかは一瞬何があったのか分からなかった。
だが次の杏子の言う最初の方の台詞で完全に怒りの炎が燃え上がった。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:52:37.24 ID:BDw/y4L90
「よく聞こえなかったの?」
「本気だ、つってんでしょ?」
「あたし達は魔法少女だ、その魔法少女が戦う為にはグリーフシードが必要だ」
「人を襲わせるのは確かに好い気はしねぇが、そうでもしないとあたし達だって戦えないんだ」
「でないと、守れるものまで守れなく…「許さない…」
「…あぁ?」

杏子は今まで目を閉じ、己の回想を思いながら喋っていたが、さやかの横槍が入り、目を開けた。
するとそこには怒りと憎しみのみで杏子を見つめるさやかの姿があった。
その様は、恐らく睨んだだけでも魔女すらも臆してしまうのではないのだろうか、と言うほどの物でもあった。
恐らく話の途中まで聞いてキレてしまったのだろう。
最早、聞く耳は持たないそう言った感じであった。
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:53:18.94 ID:BDw/y4L90
「…へっ、良いぜぇ、そうかい?分かったよ」
「話はこれまでって所ね、それじゃあ場所を移そうかぁ?」
「ここじゃ、勝手が悪いだろぉ?」

そう言って杏子は手に持っていたお菓子を頬張りさやかに背を向け、場所を移動しだした。
さやかは無言で、杏子に付き従っていた。
恭介に迷惑は掛けられない、そう理性が最後にブレーキを掛け、場所の移動に同意していたのだった。

671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:54:01.58 ID:BDw/y4L90

 ここはまどかの自室。
まどかは自分がどうするべきなのか、母の言っていた。
その子の分まで間違える、というのはどうすればいいのか、考えていた。

「…。」

目の前には学校の宿題があるのだが、心此処に在らずで全く進んでいなかった。

「…どうしたらいいんだろう?」
「さやかちゃんの分まで間違えるって、何をすればいいんだろう?」

そう思案を巡らせていると、いつの間にか、窓の外にキュゥべぇがいた。

(まどか、まどか!!)
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:54:35.98 ID:BDw/y4L90
「!?キュゥべぇ…?」

(まどか、さやかが大変なんだ!早く!)

「さやかちゃんが…!?」
「エクスカイザーさん!」

「!分かった!!」

まどかはキュゥべぇに話を聞くために窓を開け、その開け放った窓からエクスカイザーはそのまま飛び出て地面に着地をし。
一目散に疾走して行った。
その途中で、アンテナを伸ばし、エクスカイザーはある人物に連絡を入れた。
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:55:22.91 ID:BDw/y4L90
プルルルルルル、プルルルルルル

プルルルルルル、プルルル 

ガチャ

『はい、巴です』

「マミか!私だ、エクスカイザーだ!」
「さやかが危ない!」

そのまま場所は変わり、見滝原市の動脈とも言える、大型高速道路の上。
此処には、景観を損なわない様に道路の端から端へのシンメトリーに作られた橋が架けられており。
そこには二人の魔法少女の影があった。

美樹さやかと佐倉杏子

この二人であった。
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:56:07.95 ID:BDw/y4L90
「此処なら、遠慮はいらないよなぁ?」
「いっちょ派手に行くぜぇ!!」

そう言ってソウルジェムをかざし、杏子は赤い光に包まれて魔法少女の姿になった。
初めて対峙した時と寸分違わない姿であった。

杏子が変身を終えて地面に着地すると、さやかはそれに続くように変身しようとした。
その時。

「待てぇ!!」

「「!!??」」
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:58:29.05 ID:BDw/y4L90
その声と共にさやかの後の方から高速回転するモーター音と共に一台のラジコンカーが疾走して来た。

「何?あれ?」

「あ…!エクスカイザー!!」

ラジコンはさやかの後方で飛び上がると、そのまま変形を終えて、さやかの目の前に着地した。

「チェーンジ!エクスカイザー!!」

「な…!エクスカイザー!!何で此処が!?」

「キュゥべぇがまどかに教えに来たから分かったんだ」
「さやか、やはり戦う事を選んでしまったのか…」
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 14:59:17.35 ID:BDw/y4L90
その言葉に、少し頭の冷えていたさやかは怯んだが、それでも反論をした。

「…ゴメン、でもアイツだけは私が倒したいの!ううん!倒さなきゃならない!!」

「駄目だ!君達は魔法少女だ!同じ仲間同士なのに戦う事はないだろう!」

「アンタさぁ、何か勘違いしているんじゃない?」

そう言ってエクスカイザーの言葉を杏子が遮った。
構えは解いているが、それでも臨戦態勢は崩していないのがエクスカイザーには分かった。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:00:14.90 ID:BDw/y4L90
「あたし等はさぁ、確かに御同類だよ?でもね、仲良しごっこやお遊戯の為にやっているわけじゃないの、お分かり?」

「それは分かっている、だからこそ、君達は手を「ハッ!」

「ウザイ奴にはウザイ仲間が付き物ってねぇ?」

「フザケんな!エクスカイザーまで馬鹿にしやがって!!「止めるんだ!」

「「!?」」

そのエクスカイザーの怒声にも似た一括にさやかと杏子は驚き、立ち止まってしまった。

「…杏子、と言ったね」
「どうしても、さやかと戦うしかないのかい?」
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:00:57.52 ID:BDw/y4L90
「な、今更何言ってんだよ、こいつとあたしの話はとっくの昔に平行線を辿っているんだ」
「なら、そんな事は当たり前だろう?」

そう言って杏子は中腰になり、槍の石突を水平からやや上の方に向けて構えた。

「ほら、掛かって来なよ、そのために此処まで移動してきたんだろう?」

顔には不敵な笑みを浮かべ、こちらを挑発していた。

「言われなくても…「さやか」

エクスカイザーはただ、優しくさやかを止めた。
さやかはその顔の見えない後姿を見つめていた。
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:01:29.31 ID:BDw/y4L90
「…仕方が無い、分かった」
「そこまで言うのならば…私が相手になろう!!」

「な…!何言ってんだ!」

「君達魔法少女同士が戦うのは間違っている!」
「それが、己の信念の下であってもだ!」
「ならば!杏子!さやか!君達を力付くでも止めて見せる!」
「私が二人の相手だ!!」

そう宣言すると、エクスカイザーは二人に対し、闘う姿勢を見せたのだ。
もし戦うのならば、状況は挟み撃ち、魔法少女二人に対し一人。
それでも、エクスカイザーは怯まずに二人に対し、宣戦布告していた。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:02:09.68 ID:BDw/y4L90
「…本当に何でさ、何であたしが戦っちゃいけない何て言うのさ!」

あまりにもその無茶振りにさやかは半分絶叫をしていた。
だが、その絶叫も、彼方から聞こえてきた声に冷静さを取り戻させられた。

「それは、彼が『勇者』だからよ」

「「!?」」

その言葉と共に上空から華麗に着地を決める、黄色い魔法少女の姿が、さやかの前に着地した。
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:02:53.62 ID:BDw/y4L90
「マミさん!?」

「巴マミ!?馬鹿な、引退したはずじゃ…!」

「お久しぶりね、佐倉さん」
「それに、御免なさい、引退は今この時を以って撤回する事にしたの」
「無鉄砲な後輩を諭す為に、ね」

そう言ってマミは後ろを一瞥した。
するとさやかは流石に頭が冷えてきたのか微かに怖気づき始めたのだった。

「うぅ…」

「エクスカイザーさん思う存分戦って下さい」
「美樹さんは私が見ていますから」
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:03:34.66 ID:BDw/y4L90
「有難う!マミ!」
「さあ!行くぞ杏子!私が相手だ!」

「…なんだってこんな事になってんだぁ?」
「…ウゼェ、ウザすぎんだよぉ!」

我慢の限界が来たのか、杏子は槍をエクスカイザーに向けて突っ込んでいった。
それを見据えてエクスカイザーは回避する為、前方に飛び上がった。

「トォア!!」
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:04:05.44 ID:BDw/y4L90
「また落とされてぇのかぁ!!」

ギャラララララ!!!

鎖同士が擦れる音と共に槍が伸び、エクスカイザーに襲い掛かった。
だが。

「トォアァ!!」

ガアァアアン!

エクスカイザーは機用に空中で向きを変えると、そのまま回し蹴りの用量で槍を迎撃したのだった。

「何!?弾いた!?」
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:05:23.87 ID:BDw/y4L90
「杏子!同じ技が効くなどと、思わないで貰おう!」

そう言ってエクスカイザーは着地して豪語した。

「私も本気で行かせて貰う!!」

『ドラゴンジェット!!』

そう言ってエクスカイザーが角飾りにエネルギーを溜めそれを開放すると、そこから一筋の光が伸びて空に消えていった。
するとたちどころに暗雲が轟き、その中から蒼く輝く戦闘機が雷光と共に姿を現した。

「な、何だあれは!」

「な、今度は戦闘機!?」

「あれは!」
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:06:14.31 ID:BDw/y4L90
其々が意見を述べている間にも戦闘機には変化があった。
先ず上部パネルが展開し、金のレリーフが露になり、そこに金の飾りが出現した。
更に尾翼が機体に張り付くように畳まれ。
そして機体側面のキャノン砲と思われるユニットが両方共砲身を180度回転しキャノン砲の連結されている基部から拳が出てきた。
そのまま機首が折れ曲り、中に何かの兜が一瞬見えたかと思うと、そのまま機体両側のパーツが上部に折りたたまれ。
機体上面がそのまま跳ね上がるように開くと機体は垂直になり、中から赤いエネルギーが放出され地面を走っていたエクスカイザーを捕らえた。
すると、エクスカイザーの体は消え、垂直になった機体の前方の出現しキングローダーの時のように背中から収容された。

『フォームアップ!』
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:06:56.18 ID:BDw/y4L90
掛け声が上がると、開いていた上部パネルが降ろされ、エクスカイザーの腕が見える所にそのままサイドユニットが腕として連結された。
先程見えていた兜にエクスカイザーの顔が現れ、そこにマスクが装着されると共に瞳が輝いた。
胸の金の飾りが持ち上がり、そこにも瞳が現れるとそれは正しく、東洋の龍を真正面から見据えたレリーフである事がわかった。
そしてエクスカイザーは、その新たな姿を雄叫びと共に現した。

『巨大合体!ドラゴンカイザー!!』
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:07:32.39 ID:BDw/y4L90
そのまま着地をし、杏子の前に立ち上がった。

「な…!合体してデカくなりやがった!」

「行くぞ!杏子!」

「…ハッ!でかくなった位で、チョーシにのんなぁ!!」

そう言って、ドラゴンカイザーと杏子は互いに距離を近づけていった。

「馬鹿みたいに突っ込みやがってぇ!!」

そう言って、杏子は得物の槍をドラゴンカイザーに向けて薙ぎ払った、だが。
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:08:20.27 ID:BDw/y4L90
ガキィン!

「な、何!」

「トォアァ!!」

薙いで来た槍をいとも簡単にいなすと、杏子の懐に入り込みそのままアッパーカットを叩き込んだ。

「ぐぁ…!」

「な…!つ、強い…!」

「当たり前よ、美樹さん」
「彼、エクス…いえ、ドラゴンカイザーは」
「美樹さん、強さの定義って分かる?」
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:09:07.68 ID:BDw/y4L90
マミがさやかにそう言っている間も、さやかはドラゴンカイザーの戦いに目を奪われてしまっていた。
杏子の槍を弾き、いなし、受け流しその全てを攻撃を無効化し、圧倒的なまでの強さを杏子に見せ付けていた。

「ぐぁあ!」

「フゥーッ」

「……。」

「彼が強いのはね、美樹さん」
「貴方以上の覚悟が在るからよ」

「覚悟…?」
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:09:51.44 ID:BDw/y4L90
それ位ならあたしにも在ります、とは言いたくても言えなかった。
ドラゴンカイザーの戦いはそれほどに圧倒的で、流れるように優雅で、力強かった。

「確かに、私たち、魔法少女は覚悟の上で戦っている」
「でも、彼はその覚悟すら越える覚悟で戦っているの」

「魔法少女の覚悟を超える覚悟…?」

「恐らく、間違いを正す、その一点だけでしょうね」
「純粋な思いだから彼は強いの」

「ふっ…ざけんなぁ!!」
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:10:32.36 ID:BDw/y4L90
そう言って杏子は魔力を爆発的に上げてドラゴンカイザーに向かって行った。
そこで始めてドラゴンカイザーは真っ向から杏子の攻撃を受け止めた。

「何がアンタの覚悟だよ!魔法少女ってのはなぁ!」
「その程度の覚悟で勤まるモンじゃねぇんだよ!」
「あんたに分かるか?あたし達の覚悟を!願いを叶えた時の覚悟を!」
「戦う為の覚悟をぉ!!」

「分かるわけが無いだろう!」

「!?な…」
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:11:14.11 ID:BDw/y4L90
杏子は自分の全力を真っ向から受け止められ、半ば恐慌状態にいたのだが、ドラゴンカイザーのその言葉に正気を取り戻した。
そして鍔迫り合いの状態のままドラゴンカイザーは会話を始めた。

「杏子、私は君じゃない」
「君は君であり、私は私だ、誰でもない、自分自身だ」
「だから、私は君の覚悟の程を分かる訳が無い」

「な…アンタァ!」

「だが!それでも、君の覚悟を知る事ができる!」
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:12:06.20 ID:BDw/y4L90
そう言ってドラゴンカイザーは拮抗状態から杏子を力任せに思い切り弾いた。
そして出来た隙を逃さずに、両腕のキャノンユニットの砲身を畳み、構えた。

「ドラゴントンファー!!」

一瞬であり、何が起こったのか分からない杏子に追撃の3連撃を叩き込み、杏子に膝を付かせた。

「ガハァ!」

「だが、杏子、さやか、それ以前に君達は間違っている」
「魔法少女同士、争う事は無いんだ」
「願いは己の為でも良い、だが、戦いは自分の為だけではなく、誰かの為にも戦うべきなんだ」
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:12:43.17 ID:BDw/y4L90
「…まるでマミさんみたいですね」

そう言って、さやかはマミを見ると、マミは複雑な表情をしてドラゴンカイザーを見ていた。

「……。」

「マミさん?」

「自分の為だけではなく、誰かの為にも、か…」
「私も…誰かの為に戦っていたけど、自分の為には戦っていなかったなぁ」
「ドラゴンカイザーの言う覚悟が足りなかったのかも…ね」
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:13:58.46 ID:BDw/y4L90
「そ!そんな事無いです!マミさんは…」

「ペッ、ウダウダ喋りやがって…!」
「そんなにご高説垂れたいのなら、あたしを倒しな!」
「そしたら聞いてやるよぉ!」

それでも尚、杏子は槍を構えドラゴンカイザーに向けた。

「…分かった!」

そう言って、ドラゴンカイザーは突進して行き、再び杏子と刃を交え始めた。
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:14:29.60 ID:BDw/y4L90
「マミさん…あたし…「さやかちゃぁーん!!」

そう言いかけた時、後ろの方からまどかが息を切らせて遣って来ていた。

「ハァ、ハァ、ハァ、駄目…だよ…こんな事…」
「こんなの絶対おかしいよ」

「まどか…」

「大丈夫よ、鹿目さん」

「え…?マミさん?あれ?戦っているのは…?」
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:15:12.86 ID:BDw/y4L90
「今佐倉さんと戦っているのはドラゴンカイザーよ」
「エクスカイザーのもう一つの姿」

「ドラゴン…カイザー?」

「ええ、そうよ…それに、もう出てきてもいいんじゃない?暁美さん」

「「!?」」

そう言ってマミはまどかの更に後方を見遣ると、そこには闇夜に紛れほむらが立っていた。

「ほむらちゃん?」

「ほむら?どうして其処に居たのよ」
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:15:53.12 ID:BDw/y4L90
「…御免なさい、私には貴方の戦いを、止められそうになかったものだから…」
「佐倉杏子にも根回ししたんだけど、無意味だったようだしね」

そう言ってほむらはしょぼくれていた。
マミは、何だそんな事か、といった面持ちでほむらを見ていた。

「良いのよ、本当なら美樹さんの戦いに割って入るべきじゃないんだから」

「でも…!彼は…!」

「ええ、ドラゴンカイザーはそうしたわ」
「でも、貴方はドラゴンカイザーじゃないじゃない?」
「それに…彼って以外に石頭みたいだし」
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:16:29.97 ID:BDw/y4L90
マミはそう言うとほむらに笑ってウィンクして見せていた。

「…有難う」

「いえいえ、どういたしまして。」

「…これなら、一度話したほうが…」

「?ほむらちゃん、どうしたの?」

「?!い、いえ…実は、貴方達に話しが…」

ガキィン!!

「「「!!」」」
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:17:12.32 ID:BDw/y4L90
その快音と共にドラゴンカイザーは後ろに飛び、杏子との距離を取った。

「やはり強い…だが!私も負ける訳には行かない!」

「このぉ…!」

「行くぞ!ドラゴンアーチェリー!!」

その掛け声共に、胸の飾りが左右に開いたと思うとそこに持ち手が存在しており。
ドラゴンカイザーは巨大な弓として構えた。

「ハッ!此処で大技かよ!させると思ったかぁ!」
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:17:51.82 ID:BDw/y4L90
そう言って杏子はすぐさまドラゴンカイザーに弾丸の如く飛び込んでいった。
だが、それでもドラゴンカイザーは動じる事はせず。

「その隙を待っていた!!」

とだけ言って弓を片手で持ちのまま、両肩を相手に見せるように構えた。

「ドラゴンアンカー!!」

すると、ドラゴンカイザーの両肩からアームが飛び出て、杏子を掴みかかった。

「なにぃ!!」

流石にこの奇襲攻撃に杏子は驚いてアンカーに拘束されてしまい、そのまま欄干にたたきつけられた。
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:18:36.08 ID:BDw/y4L90
「ガハァ!!」

「終わりだ!」

ドラゴンカイザーはドラゴンアーチェリーを両手で持ち、その場で飛び上がると上段に構え、そのまま杏子への直下コースで斬りかかった。

「あ!危ない!アイツが!」

「大丈夫よ美樹さん、彼はそんな事しない」

マミはドラゴンカイザーを信じ、ただ見つめていた。
さやか達は、その様を固唾を飲んで見つめていた。
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:19:24.63 ID:BDw/y4L90
「クッ!…あ…」

杏子が解こうともがいていた時上空から迫る影が見え呆然と見上げていた。

「あ、あ…」

その様に杏子は正に『死』を意識していた。

「でぇやぁ!!」

その掛け声と共にドラゴンアーチェリーは振り下ろされ杏子の目の前で止まった。
かに見えた。
704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:20:22.82 ID:BDw/y4L90
「!?何!!」

確かに杏子はその場所に射止められていた。
そしてドラゴンカイザーの振り下ろしも杏子の目の前で止められていた。
だがしかし、ドラゴンアンカーはいつの間にか外されており。
ドラゴンアーチェリーを振り下ろした先の杏子は霧になったかのごとく、忽ちに消えてしまったのだった。

「な…!消えた!」

「!ドラゴンカイザー!!うしろ!」
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:21:37.11 ID:BDw/y4L90
マミが忠告すると、其処には呆然とする杏子の姿があった。
杏子ぎこちない動作で何故か自分の手を見て驚愕していた。

「あ…アアアア…!」

「今の何!まどか見えた!?」

「う、ううん、ふわって消えたと思ったら何時の間にかあそこに…」

「まさか…佐倉杏子の能力…!」

更に、槍の先端が動き出し十字型だった槍の先端は両側に突き出した刃が折りたたまれ。
先端に集中するように刃が動くと、そのまま魔力で変形し、三角形型の刃へと変わった。
だがその途端、杏子は頭を抱え空に向かって絶叫しだした。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:22:24.80 ID:BDw/y4L90
「あ、ああ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

「な、何だ!」

そして叫んでいた杏子が消えたと思うと、今度はドラゴンカイザーの後ろから杏子が現れ槍で薙ぎ払った。

「オオオオオオオオアアアアアアアア!!!!!!」

ブォオン!!!!!

「なっ!グアァ!!」

「ドラゴンカイザー!!!」

マミの絶叫にも似た叫びが木霊し、杏子はその表情を怒りと悲しみの涙で歪めていた。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:23:20.05 ID:BDw/y4L90
「よくも、よくもよくもよくもよくもぉ!!!」

其処から先の杏子の動きは出鱈目だった。
槍の振り方ならまだしも、その動きも出鱈目だった。
絶叫は獣の雄叫び染みており、何よりその攻撃が不可思議であった。
後から攻撃したと思ったら、前からの打撃に驚かされ。
地を這う様な横薙ぎを仕掛けてきたと思ったら、何時の間にか脳天にしこたま叩き込まれていたり。
3人に増えて切り掛かって来たりと、杏子の攻撃は全くの予測不可能なものに変わっていた。

「うあぁ!であぁ!このぉ!」

「う!くっ!何!グアァ!」

不意の一撃を貰いドラゴンカイザーはドラゴンアーチェリーを手放し、欄干が歪むほどに叩き付けられた。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:24:48.56 ID:BDw/y4L90
「ドラゴンカイザーが!」

「アアアアアアアアアア!!!」

「ツッ!!」

さやかは、意を決して杏子の後に組み付いていた。

「止めなよ!アンタ!もう自分で何しているのか分かっているの!?」

「アアアァ!放せぇええええ!!」

杏子はそのまま振り回し、さやかを放り投げて欄干にぶつけた。

「ガァ!!」
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:25:47.00 ID:BDw/y4L90
「さやかちゃん!」

「美樹さん!」

その時、衝撃でソウルジェムの指輪が外れ、水銀灯の輝きを受けて高架したに落ちていき。
ちょうど通ったトラックの荷台に連れて行かれた。

「!!?そんな!いけない!!」

その様を見ていたほむらは瞬時に『消え』ドラゴンカイザーではなく、ソウルジェムを追いかけて行った。

「ク…アンタ、何だってそんなに取り乱してるのよ」
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:26:30.11 ID:BDw/y4L90
「煩い!アンタなんかにあたしの事なんてわか…」

ポスッ

突然さやかは体勢を崩し、杏子に縋り付く様に倒れた。

「?さやかちゃん?」

「さ、さやか?」

「オ、オイ、何だよ、気持ちわりぃ」

その様子をキュゥべぇは何時の間にか来て見ていたようで、歪んだ欄干に飛び乗り、呆れた様に杏子に話し出した。。

「よっと、杏子、いくら不可抗力でもこれは酷いよ」
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:27:33.05 ID:BDw/y4L90
「あ?何言ってんだよ?こいつがただ寄り掛かって来ただけだろ?」

「そういうことじゃないんだ」

「え?それって…どういう…?」

その時、さやかの異変に気が付いたのか、杏子はさやかを自分の目の前に持ち上げた。
だが、さやかは意識を失っているのか、全くの無反応であった。

「クッ!さやか!止めるんだ!」

「あ…!止めて…!」
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:28:29.80 ID:BDw/y4L90
「……!どういうことだよ…オイ!」
「こいつ…死んでいるじゃねーかよ!!」

「「…え?」」

まどかとマミは絶句した。
今の杏子の言葉の意味が理解できなかったからだ。

「え…?な、に…?さやか…ちゃん?」

「嘘…美樹さん!?起きて、ねぇふざけないでよ!」

「何がどうなっていやがる…」

杏子はすぐにキュゥべぇに向き直って問いただした。
先程までの荒々しさは鳴りを潜めており、冷静に対処していた。
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:29:05.03 ID:BDw/y4L90
「オイ!てめぇ!どういうことだ!」

「君達魔法少女が体をコントロールできるのは精々100メートルが限度だからね」
「肌身離さずに持っていれば起きる様な事故じゃないんだけど」

さやかを見ていたマミとまどかもその話しが気になり、耳を傾けながらさやかにずっと呼びかけていた。
ドラゴンカイザーもその様子を見ていた。

「100メートル!?何の事だ!どういう意味だ!!」

「嫌だよ…!さやかちゃん!起きてよぉ!」

「止めてよ美樹さん!冗談だって言って!いい加減にしないと怒るわよ!」
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:30:26.32 ID:BDw/y4L90
「キュゥべぇ助けて!さやかちゃんを死なせないでぇ!!」

「…はぁ、だからマミ、まどか」
「そっちはさやかじゃなくただの抜け殻なんだって」

「なん…だと…?」

「気が付かなかったかもしれないけど、『さやか』は君たちの戦いの所為で吹き飛ばされちゃったじゃないか」

「え…?キュゥべぇ…どういう…?」
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:33:34.78 ID:BDw/y4L90
「マミ、僕が只の人間と同じ壊れやすい体のままで、魔女と戦っておくれ、なんて」
「とてもじゃないがお願いできるわけが無いよ」
「君達魔法少女にとって、元々の身体何て言うのは外付けのハードウェアでしかないんだ」
「そして本体としても魂には魔力をより効率良く運用できる、コンパクトで安全な姿が与えられている。」
「魔法少女との契約を取り結ぶボクの役割はね」
「君たちの魂を抜き取り、ソウルジェムに変える事なのさ」

マミは、まどかはただただ、驚愕するしかなかった。
ドラゴンカイザーも、その事実を聞かされ、衝撃を隠しきれて居なかった。
そんな中で杏子だけは気丈にキュゥべぇに掴みかかっていた。

「テメェ…!それじゃああたし達はゾンビにされたようなモンじゃないか!!」
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:34:14.15 ID:BDw/y4L90
「何を言っているんだい?むしろ便利だろう?」
「心臓を貫かれて破壊されようと、体中のありったけの血を抜かれても」
「魔力で修理すればまた動くようになるんだから」

「な…君は…本気で言っているのか!?キュゥべぇ!」
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:35:44.32 ID:BDw/y4L90
「本気も本気さ、ソウルジェムを砕かれない限り、魔力がある限り、君たちは無敵だよ?」
「弱点だらけで、しかも寿命は100年と持たない人体より、余程戦いでは有利じゃないか?」
「それにマミ、君はドラゴンカイザーに憧れていたんだろう?良かったじゃないか」
「少し違うけど、彼と同じように戦う事が出来る身体なんだよ?」
「感謝しても然るべきだと、ボクは思うんだけどな」

「そんな…!こんな!こんな事ってぇ…!」

「酷いよ…こんなの…あんまりだよぅ…」

二人ともただただ、涙を流す事しか出来なかった。
魔法少女の真の姿、友達に突き付けられた残酷な真実。
中学生の彼女達には荷が勝ちすぎていた。
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:36:29.56 ID:BDw/y4L90
「ハァ…君たちは何時もそうだね」
「事実を在りのままに伝えると、決まって同じ反応をする」
「どうして人間はそんなに魂の在処にこだわるんだい?」
「訳が分からないよ」

キュゥべぇがそういい終わるのとほぼ同時に、ほむらがやって来て。
失くしたさやかの指輪を倒れているさやかの手に置いた。
すると、忽ち瞳に生気が戻り、さやかは再び呼吸をした。

「…はぁっ!」
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:37:34.63 ID:BDw/y4L90
「あ…さやかちゃん!」

「美樹さん…!」

「「さやか…」」

倒れていたさやかは起き上がり、戦闘が終わっている事に気が付き。
何より、皆が皆、其々悲しみを眼に湛えている事に理解が追いつかなかった。

「……?何…?どうしたの…?」


第6話 完

720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/12(金) 15:38:43.80 ID:BDw/y4L90

次回予告

「さやかさん…自暴自棄になってしまってはいけませんわ」
「杏子さんが自分の事を御話して下さるんですから、真摯に聞かせてもらいましょう?」
「それに…美樹さやかさん」
「お話が御座いますの」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『本当の気持ちと向き合えますか』」
「貴方のお家にも宇宙人、いらっしゃいますか?」

予告担当:志筑仁美
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/12(金) 15:47:21.42 ID:BDw/y4L90
第6話これにて終了!
色々書いてて50K少し超えとった…。
そしてママの台詞を遂行したのがエクスカイザーだという罠。
やっちゃった☆

後、今回の杏子はトラウマで自身の力を封印しているとどこかで聞いたことがあるのでそちらを使わせてもらいました。
しかも半暴走みたいなものだからこのような表現…許してください。orz

基本的に話の大筋は変わらない様にそこかしこに表現をアレンジしたり追加したりしていますが。
>>717のキュゥべぇの追加で書いた台詞に自分でもイラッときてしまいました。(笑)

そして待望のドラゴンカイザー登場ですがサンダーアローは次回以降に持ち越しです。
すみません。

感想を書いてもらうと、それはとっても嬉しいなって。
それでは7話でまた会いましょう。
長文失礼しました。

それでは。
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/08/12(金) 15:54:19.71 ID:7p67H0Nvo
乙。
なんか次回予告が仁美だとマジ腹黒い仁美腹黒い
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/08/12(金) 22:32:32.92 ID:VQoRnwqy0


やっぱQBは悪だな
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/08/12(金) 23:56:40.03 ID:NdTQ1EmL0
マミさんがソウルジェムが魔法少女の本体だと知っても動揺するイメージ沸かないな
魔法少女が魔女化する方のやつなら話は別だけど。

彼女の場合、契約しなければ死んでいたというのもあるけど、
薄々人間を止めている事に気付いているイメージかな。
長い間戦ってきたからケガは日常茶飯事だろうし、稀に重症を負う事もあったかもしれない。
725 :どうもです。[sage saga]:2011/08/14(日) 23:10:44.86 ID:i+cAPg0Q0
墓参り行って来ました。

感想有難うございます!
>722さん
マジかwwwそんな感じにしないようにしたんだが。
まあ、次タイトルの台詞を言うキャラが次回予告をしているので御勘弁を。
>723さん
妹に少し話したら。
「それ何処のリボンズよ?」
と返されてしまった、そして自分でもそう思ってしまった…。
…グアァ!!OTL
>724さん
確かに、マミさんなら通常時ならそれ位
「成程、やはりそういうことなのね」
とか言ってやり過ごしてくれるかもしれませんが、今マミさんのメンタルは非常に豆腐状態な物でして…
などと言い訳を(笑)

中々うまく行きませんが、それでも見て下さって感想をくれるのは本当に嬉しいです。
まだ7話投稿まで時間が掛かりますので、これにて失礼します。

感謝と長文失礼しました。
726 :どうも1です。[sage saga]:2011/08/18(木) 00:25:11.18 ID:ihAKgJ+L0
後聞きたい事があったんですが。
新しい話を投稿するたびにageは良いんですが、保守の為にageはしていた方が良いんでしょうか?
それと、コテハンとか言うのは付けた方が良いですか?ここまで書いておいてあれですが…。
すみません意見か何かお願いします、後コテハンのやり方が良く分からないのでそちらの方も…。

では、失礼しました。
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/08/18(木) 01:42:26.28 ID:h9klCw7do
コテは#の後に好きな文字列
例えばエクスカイザ#YUSYAとか名前欄に入れればいい
この板は3か月書き込みし0でない限り落ちないので保守不要
ageは更新の時だけでOK
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/08/18(木) 02:30:30.15 ID:FwtaXxvuo
酉はあると分かりやすいね

進行は本編saga、他sage sagaでいいんじゃなかろうか
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/08/18(木) 11:29:52.40 ID:rihLg1jMo
酉があるとSSだけ抽出して読めるから、つけてもらえるとありがたい
730 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/18(木) 11:32:49.91 ID:HSBvW3CK0
これでOKかな?
これから此方のコテで書いていきます。
アドバイスどうも有り難う御座います!
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/08/18(木) 11:33:24.78 ID:rihLg1jMo
あー、しかしこのSS読んでると初めてグレートエクスカイザーを見た時の感激が甦るな
今じゃ割と当たり前だけど、2号メカと1号メカが合体する作品てアニメじゃ初めてで予想してなかったから、
無茶苦茶感動したんだよなあ
732 :お久しぶりです ◆1B0iEDnTxU2011/08/20(土) 22:15:40.85 ID:36dXnCMj0
どうも、先日酉消し忘れて書き込んで、注意されてしょげておりました(笑)
もうすぐで7話投下できそうなので一度ageておきます。
明日明後日には投下しようと思いますので、それまでもう少々お待ちください。

>>731さん
有難うございます。
ただ、尺の関係上グレートは1度位しか出番は無いと思います。
期待せずに待っていて下さい(笑)

それでは。
733 :お久しぶりです ◆1B0iEDnTxU2011/08/20(土) 22:19:35.99 ID:36dXnCMj0
ageらないとか…orz
今度はageて欲しいなぁ。
734 :さやか「勇者 エクス☆マギカ 第7話」 ◆1B0iEDnTxU2011/08/22(月) 00:28:23.98 ID:2zA0zbUg0


 此処はさやかの自室、あの乱闘のあと、さやかはソウルジェムの真実を知らされて愕然とした。
そしてそのソウルジェムを机に放り投げキュゥべぇに問い詰めた。

「あんた、あたし達を騙していたのね」

さやかは凄んでは見せたが、相手はどうにも怖がるそぶりを見せない。
暖簾に腕押し、と言うヤツに近かった。

「騙すだなんて、ボクはそんな気は無かったんだけどな?」

「何で教えてくれなかったのさ」
735 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:29:26.18 ID:2zA0zbUg0
「訊かれなかったからさ、訊かれたら教えていたよ?」
「別に知らせなくても何の不都合も無いからね、あのマミでさえ気づく事ができなかったんだから」
「それに、ボクは『魔法少女』になってくれってきちんとお願いしたはずだよ?」
「実際の姿はどんなものかは説明を省略させてもらったけれどね」

「ふざけないで」

そう言ってもキュゥべぇは悪びれる様子など全く見せずに話を進めた。

「ふざけてなんかいないさ」
「人間は生命が維持できなくなると精神まで消滅してしまう」
「そうならないようにボクは君たちの魂を実体化し手にとって守れるようにしてあげたんだ」
「少しでも、安全に魔女と戦えるようにね」
736 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:30:07.33 ID:2zA0zbUg0
その言葉にさやかは憤りを感じ。
遂に噛み付いていた。

「大きなお世話よ!そんな余計な事を…!」

だがそれでもキュゥべぇはその様を見てただ溜息を付いていた。

「…ハァ、さやか、君は闘いという物を甘く考えすぎだ」

そう言うとキュゥべぇは机に飛び上がりソウルジェムに前足を当てていた。

「良いかい?例えばお腹に槍が突き刺さった場合」
「肉体の痛覚がどれだけの刺激を受けるかと言うとね…」

キュゥべぇの前足がソウルジェムに触れると、ソウルジェムに作用し輝きだした。
すると、途端にさやかが腹部を押さえ、額に脂汗を垂らし、激痛に悶えていた。
737 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:30:43.45 ID:2zA0zbUg0
「う、ぐあぁぁぁぁ!!!」

「理解したかい?これが本来の『痛み』さ」
「ただの一発でも動けやしないだろう?」

その間も痛みを再現しつつ、さやかに説明をしていた。

「君が杏子と戦った時に生き延びられたのは強すぎる苦痛がセーブされていたからさ」
「君の意識が肉体と連結していないからこそ、可能な事なんだ」
「おかげで君は、あの戦闘を生き残る事ができた」

そう言ってキュゥべぇはやっと手を離しさやかは地獄の苦痛から開放された。

「慣れてくれば完全に痛みを遮断する事もできるよ」
「でも、動きが鈍るからあまりお勧めはしないけどね」
738 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:31:31.83 ID:2zA0zbUg0
言い終わると、痛みで動かなくなっていた身体を動かせるようになったさやかが、やっとの思いで言葉を吐き出していた。

「クッ…ハァハァハァ、何で…どうしてあたし達をこんな目に…」

「戦いの運命を受け入れてまで叶えたい望みが、君にはあったんだろう?」
「それは間違いなく実現したじゃないか」
739 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:33:51.60 ID:2zA0zbUg0


 第7話『本当の気持ちと向き合えますか』


 深夜、マミはあの戦いの後、家に帰って気持ちを落ち着けていた。
取り乱しはしたが、至ってその分、冷静でもあった。
帰って来てからシャワーを浴びて、パジャマに着替え、ただ、ひたすら黙考を続けていた。

「……。」

そして、ソウルジェムを宝石状態にし、昨夜キュゥべぇの言った事を反芻していた。

「私達のソウルジェムは己の魂を物質化した物…」
「キュゥべぇはそう言っていたわ、」

テーブルの上のソウルジェムを指で器用に回しながら、マミは突き付けられた現実と真実を訥々と語りだした。

740 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:34:37.05 ID:2zA0zbUg0
「そして、エクスカイザーと似た様な存在、とも言っていた」
「身体は魔力で治す事のできる部品…」
「真実って…何時も残酷な物なのね…」

回していたソウルジェムは何時の間にか手から離れ、テーブルの上で残った遠心力でクルクルと廻っていた。

「これを壊される事は私達の、即ち『死』」
「これを壊せば…?」

ソウルジェムの回転が終わり、それを両手で持ち上げ、マミは一つだけ。
たった一つだけ、疑問が浮かんだ。
前に、エクスカイザーが来て似たような事を言っていたのを思い出したのだ。

「そういえば、エクスカイザーさんは不完全だけど、我々と同じような代物って言っていた…」
「そして、キュゥべぇはこれを物質化した私達の魂と言った。」

マミはそこでふと思った疑問を解決する為にある行動に出た。
741 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:35:35.27 ID:2zA0zbUg0
(キュゥべぇ!いるんでしょ?)

念話を使い、自分のパートナーを呼んだのだ。

(如何したんだい、マミ)

(キュゥべぇ、少し、聞きたい事があるんだけれど、良いかしら?)

(急にどうしたんだい?ボクが話せる範囲でなら答えてあげられるよ)

キュゥべぇの先程の態度もあってマミは、些か迷ったがそれでも聞かなければならない、と思い質問した。

(…キュゥべぇはさっきソウルジェムを砕かれない限り無敵だって言ったわよね?)
742 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:36:26.17 ID:2zA0zbUg0
(勿論だよ!ソウルジェムを壊されない限り、君たちには『死』というものが恐らく存在しないんじゃないかな?)

(それは良いの、後エクスカイザーと同じように戦えるって言ったのはどういう事?)

(簡単な事だよ、彼、エクスカイザーはエネルギー生命体)
(要するに、身体を持たない種族なんだ)
(ある意味、個としてのアイデンティティの塊といっても過言じゃないかもね)
(身体が不確かな分、精神的な強さが他の種族を抜きん出ているんだ)
(彼の所属する宇宙警察も結構な数のエネルギー生命体で構成されているんだ)

(…それはまた今度教えて頂戴ね、成程、後もう一つ教えて、ソウルジェムの事についてよ)

(ソウルジェムの?)
743 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:39:35.77 ID:2zA0zbUg0
そこでマミは切って一度大きく深呼吸をしてキュゥべぇに尋ねて見た。

(まだ言ってない事が在るんじゃないか、って思ってね)
(魔法を使えば穢れが溜まるのは分かるわ、だったらその穢れが溜まりすぎると私達はどうなってしまうの?)
(死んでしまうのか、それが聞きたかったの)

マミは、途轍もない賭け事をしてその結果が出てくるのを待たされているような気分であった。
うなじの辺りがざわざわしているような感覚がしており、今か今かと待ち構えていた。
だが、キュゥべぇはマミのそんな心情など全く知らずに即答した。

(何だ、そんな事か)
(マミは神経質になり過ぎてるんじゃないかな?)
(穢れが溜まりきっても君達は死ぬことは無いよ)

(…そう、なの…?)
744 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:40:35.16 ID:2zA0zbUg0
マミはその言葉に何か引っかかったのだが、キュゥべぇがそのまま話を続けたので聞く事を忘れてしまっていた。

(そうさ、でも魔女と戦う時は気を付けるべきだよ)
(いざと言う時にソウルジェムに穢れが溜まりすぎて、魔法が使えないなんて笑い話にもならないからね)

それにはマミは同意見であった。
助けられた命、確かに人間ではなくなっても命は命だ。
例えどんな形であっても今、自分は生きている感覚を知っているのだから。
マミは無駄に死ぬ、と言う心は持ち合わせていなかった。

(…分かったわ、有難うね、キュゥべぇ)
(明日、美樹さんと話もしたいし、先に寝かせて貰うから)
745 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:41:21.11 ID:2zA0zbUg0
(ああ、それじゃあマミ、お休み)

(お休み)

そう言ってマミは念派を中断すると立ち上がって伸びをしてベッドに向かった。

「ソウルジェム…美樹さん、落ち込んで居なければいいんだけどな…」

マミは後輩魔法少女の心配をしながらベッドの中で眠りに着いた。
その夜、マミは夢を見た、何時もの様な悪夢ではなく、自分も含めて5人の魔法少女が仲良く笑っている。
そんな夢を見た。
746 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:42:21.82 ID:2zA0zbUg0

 翌日、まどかは少し心配になりながらも学校に登校した。
そしてホームルームに入った。
だが、その後ろの親友は席に居なかった…。
先生は風邪だ、と言っていたのだが、まどかにはそうは思えなかった。

(…さやかちゃん、昨日の夜の事を…)

1時限目の休み時間、来るとは思えない親友が来るのを祈りながら教室の入り口を見ていた。
そうしていると、さやかとは違う、見知った顔が入り口から教室の中を眺めていた。

「あ、いたいた、鹿目さ〜ん」
747 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:43:28.07 ID:2zA0zbUg0
「ま、マミさん?」

巴マミが入り口から笑顔で此方に手を振っていた。
まどかは、どうしたのかと思い席を立ち入り口までやって来ていた。

「ゴメンなさい来ちゃった、今忙しかったかしら?」

「い、いえ大丈夫です、如何したんですか?」

「ちょっとね、美樹さんはいる?」
748 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:45:36.26 ID:2zA0zbUg0
その名前を聞いただけで、まどかは理解できた。
マミはさやかを励ましに来たのだろう、と。
嬉しく思う反面、申し訳無くも思った。

「あ、御免なさい…マミさん」
「さやかちゃん…今日休みで…」

それを聞いて、真美は失敗したな、と顔を歪めていた。

「そう、励ましてあげようと思ったんだけどね、あ、そうだ暁美さんも休み?」

マミはそう言ってクラスの中を見渡していた、そこにほむらの姿が見えなかったからだ。
749 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:46:35.62 ID:2zA0zbUg0
「ほ、ほむらちゃんは職員室に行ってて休み時間ぎりぎりじゃないと戻って来ないです…」

「あら…随分と間が悪かったのね」
「良いのよ、鹿目さんがそんな顔をしなくても」

マミは笑顔で曇った顔をまどかを見つめていた。

「でも…」

「話くらいなら何時でも出来るから良いの」
「美樹さんには励ましを、暁美さんには復帰を伝えておいてね」
「昨日、言いそびれちゃったから」
750 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:47:18.22 ID:2zA0zbUg0
そう言ってまどかに言伝を頼むとマミは自分の教室に走って帰って行った。
そうしてすぐ、始業のベルが鳴り、ほむらが先生と一緒にクラスに帰ってきた。

「あ、ほむらちゃん、さっきマミさんがね復帰したって伝えてって」

「そう、でも、さやかの事が心配だからそのまま共闘する、と後で伝えに行くわ」
「有難う、まどか」

「エ?ううん良いの!私これ位しか出来ないし…」

「良いの、さ、授業に集中しましょ」
751 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:48:03.30 ID:2zA0zbUg0
そう言ってほむらは前を向き、授業に向き直った。
まどかもそれに続いて黒板に向いた時、マミの事であ、と思ってしまった。

「…そういえば、念話で良かったんじゃ…」

その疑問は先生に質問され、驚いて頭から抜けてしまう事となったまどかであった。
752 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:48:56.83 ID:2zA0zbUg0


 場所は移り、さやかの家。
さやかは今日ズル休みを緩行していた。
勿論、ただのズル休みではなく、昨日の事が衝撃的過ぎて、学校に向かう気になれなかったと言うのが本音だ。
なので気持ちの整理プラス眠りたいと言うのもあり布団に潜っていたのだが。

「こんな身体になっちゃって、あたし…」
「恭介にどんな顔して会えばいいんだろう…」

そこまで言って布団を頭まで覆い、眠ろうと目を瞑っていた。

「…眠れない」
753 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:49:55.79 ID:2zA0zbUg0
さやかは、今眠る事無く布団に包まっている状態だった。
眠ろうとしても脳がヘタに覚醒している所為で眠れず。
気持ちの整理も、中々進まずに悶々と布団に包まっていると。

(いつまでしょぼくれている気だぁ!ボンクラァ!)

「!?」

頭の中に大声が飛び込んできて布団から飛び起きた。
暫く何があったのか分からずキョロキョロ周りを見ていると、また同じ声で頭の中に響いた。

(何処見てんだよ!アンタん家の前に居るんだから、早く顔を見せな)

「ま、まさか…」
754 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:50:38.01 ID:2zA0zbUg0
そう言ってさやかは自分の部屋のカーテンを開け放つと、朝日の眩しさに眼が眩んだ。

「ッ!!」

驚いて眼を細めていると、大分視界が回復し、下に見える道路に目を遣ると、そこには紙袋を持った杏子が佇んでいた。

「あ…!」

何事かと思っていたのだが、さやかがまた戦いに来たのか、と思うその前に杏子の念話がさやかに届いた。

(ちょっと面貸しな…)
(話がある…)
755 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:51:20.01 ID:2zA0zbUg0
さやかは疑問に思ったが、相手に戦意が無い事を悟ると、分かった、とだけ言ってさやかは着替えた。
数分後、さやかが待たせていた杏子の前に来ると、杏子は無言で歩き出した。
紙袋から林檎を取り出し、それを頬張りながら杏子は歩く、それを少し警戒しながらさやかは着いて歩く。

「…食べ歩くのは行儀が悪いわよ…」

そう棘を見せながら言うと、杏子は後ろを振り返りながらニシシと笑っていた。

「へへっ、かも知れねぇな」
756 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:52:44.25 ID:2zA0zbUg0
さやかには何故笑っていられるのか不思議でならなかった。
こんな身体になって笑っているなんて気でも触れているんじゃないのか?と。
そう思いながら付いていると、何時の間にか小さな林の中を歩いている事に気が付いた。
来た事の無い場所であった、杏子を注視し過ぎていた所為で正確な場所は分からなかったが、恐らく見滝原市郊外だという事は判った。
そして視界が開けるとそこには古びた教会があった。
余りにも寂しい佇まいから、此処は人が寄り付かなくなって結構な時間が経つんだな、とさやかは思った。
その壊れた扉を杏子は身軽に飛び越えて入って行った、さやかもそれに続くように扉の破片をくぐって中に入っていった。
すると、外観は廃れても、それでも全く破損の無いステンドグラスの光が差し込み厳かな空間を構築していた。
杏子は中央の祭壇の前まで来るとそこで振り返り、さやかが着くのを待っていた。

「…こんな所まで連れて来てどうする心算よ?」

「どうもしねぇよ、取って食うわけじゃあるまいし、その前に…」
757 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:53:32.21 ID:2zA0zbUg0
杏子は紙袋に手を突っ込んで何かを探していた、そしてすぐに見つけてさやかに放り投げた。
さやかが驚きながらその物体を眼にすると、それは紅く色付いた林檎であった。

「食うかい?」

杏子はそう言って手渡したのだから、恐らくこれは食べて良いのだろう、だが。
さやかはその林檎を投げ捨ててしまった。
さやかからすれば、敵に情けを掛けられたも同じ様なものであったから当然だったのだが。
その瞬間に杏子はさやかの胸倉を掴み上げ、いとも簡単にさやかを片手で持ち上げ恫喝していた。

「食べ物を粗末にすんじゃねぇ…」
「殺すぞ…!!」
758 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:54:11.12 ID:2zA0zbUg0
さやかはその剣幕に驚かされてしまい何も言えなかった。
杏子は持ち上げていたさやかを離してやると落ちていた林檎を持ち上げ、袖で表面を磨くと、そのままさやかに渡した。
今度は投げ捨てずにさやかは受け取った。

「宜しい」
「……此処さ、あたしの親父の協会だったんだ…」

突然の独白だった、さやかは驚いて周りを見回していた。

「正直すぎて、優しすぎる人だったよ…」

そう言い、杏子は悲しい目をしてそのまま語りだした。
759 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:54:57.40 ID:2zA0zbUg0
「親父は新聞を読むたびに涙を浮かべてさ、どうして世の中が良くならないのか、って」
「真剣に悩んでいる人でさ」
「新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だって、それが親父の言い分でね…」
「ある時、親父は教義に無いような事まで説教するようになったのさ」
「そしたら当然、信者の足はパッタリ途絶えちゃってね、所属していた本部からも破門されたさ。」
「あたし達は一家揃って食うに事欠く有様になっちまった」
「親父は、何も間違った事なんて言っていなかった、それなのに誰も真面目に取り合ってくれなかったのさ」

そう言って杏子はステンドグラスに落ちた影に遠い日の記憶を見つめていた。

「許せなかったんだ…それに悔しくもあった」
「何で、誰もあの人の事を解ってくれないのか」
「何で、誰も話を聞いてくれないのか」
「あたしには我慢できなかった…」
「だから、あたしはキュゥべぇに頼んだんだ」
760 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:55:54.59 ID:2zA0zbUg0
「『皆が、親父の話を真面目に聞いてくれますように』って」

さやかは何も言わずに杏子の話を聞いていた。
杏子の話はそれでも続いた。

「次の日からはもう驚きさ、嘘みたいに怖い勢いで信者が増えたのさ」
「そしてあたしは晴れて魔法少女の仲間入り」
「戦って、戦って、戦い抜いたよ」
「…バカみたいに意気込んじゃってさ」
「親父が説法をして、あたしが魔女を倒す」
「裏と表、両方からこの世界を救おう、救える、そう信じていたんだ」
761 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:57:27.69 ID:2zA0zbUg0
だが、そこまで話すと杏子は視線を落とし自分の足元を見つめだした。
何かがあったのだろう、さやかはすぐに察知した。
その予感はそのまま杏子が話をしてくれた。

「でもね、ある時そのカラクリがばれた」
「信者が集まってきたのは魔法の力だって知った時」
「親父はぶち切れたよ、それはもう盛大に…」
「あたしの事を、人の心を惑わす魔女だって罵られもした」
「弁解できなかったね、あたしはその願いで魔法少女になったんだし…」
「それで、親父は壊れちまったよ…」
「酒に溺れて、頭もイカれて」
「最後はお決まりの無理心中さ」
「あたし一人きりを残して…ね」
「あたしの祈りが…家族を壊しちまったんだ…」
762 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:58:14.75 ID:2zA0zbUg0
杏子の哀しい目がさやかに突き刺さっていた。
さやかは何も言わず、否、何も言えずに俯いていた。
知りたくもなかった敵の過去、だが、それは酷く自分と似通っており、結末は今し方知らされた、悲劇としか言えないものであった。
自分はその話を聞いて、何も言えなかった、言える筈も無くただ俯いていた。

「他人の都合も知りもせずに願い事をした所為で結局誰もが不幸になった」
「だから、心に誓ったんだ、二度と、他人の為に魔法は使わないってね」

そう言いながら杏子は林檎をおもむろに取り出して見つめていた。
763 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 00:59:07.23 ID:2zA0zbUg0
「奇跡ってのはタダじゃない」
「奇跡を祈った分だけ、同等の呪いが撒き散らされる」
「そうやって差し引きゼロにして世の中は回っているんだよ」
「アンタもあたしも、同じ間違いから始まった」
「アンタはこれ以上後悔するような生き方をするべきじゃない」
「対価としては高すぎるモンを支払っちまっているんだから」
「これからはそのつり銭を取り戻す事を考えなよ」

後は何も言わず、杏子はさやかを見つめていた。
その眼は優しく、何時か戦った時とは違い、仲間へ、友達に向けられる様な優しさを帯びていた。
764 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:00:06.77 ID:2zA0zbUg0
「……あたし、アンタの事を色々と勘違いしていたみたい」
「その事はごめん、謝るよ」

意を決し、そう言うとさやかは、深く頭を下げていた。
杏子は何か言おうとしたが、さやかは頭を上げるとそのまま話を続けた。

「でもね、あたしは人の為に祈った事を後悔してなんていない」
「ましてや、高すぎる物を支払ったなんて思ってもいない」
「この力は、使い方次第で幾らでも素晴らしい物に出来る筈だから」

そう言ってさやかは自分の指輪を見てから掌を返して握り締めていた。
杏子は納得がいかない様な顔をしていた。
765 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:00:51.60 ID:2zA0zbUg0
「アンタ…「それからさ」
「その林檎、どうやって手に入れたの?」
「お店で払ったお金はどうしたのさ?」

杏子は痛い事突かれ何も言えなかった。
さやかはそれをある種の肯定と見なし、話を続けた。

「…言えないんだね、ならあたしはその林檎を貰えない」

そう言うとさやかは踵を返し協会から出て行こうとした。
杏子は引き止める様に大声を張り上げていた。
766 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:02:14.45 ID:2zA0zbUg0
「な…!待てよ!あたし達は魔法少女なんだ!」
「同類なんて他にいないんだぞ!!」
「知ってて言っているのかよ!!」

さやかは足を止めて振り返り、杏子の目を見て。

「知っている、でもあたしはあたしのやり方で戦い続けるってだけ」
「それが目障りならまたあたしを殺しに来れば良い、あたしは負ける気なんて無いし」
「もう、恨んだりもしないから…」

「な…!馬鹿!そんなことを言っているんじゃ…!」

杏子の言葉を最後まで聞かずにさやかは教会から出て行った。
杏子は気に食わない面持ちで林檎に噛り付いていた。
さやかに渡した林檎は床に置かれており、夕日を浴びて宝石の様に紅く輝いていた。
767 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:03:23.51 ID:2zA0zbUg0


 翌日、さやかは気を取り直して学校に行く為に制服の袖に腕を通していた。
気は進まないが、友達が心配するだろう、特にまどか辺りが。

「…ヒーローは休んでもいられない…か…」

姿見の前で憂鬱な自分に少し気合を入れて、さやかは自分の家を後にした。
そして学校への道を歩いていると。

「さやかちゃ〜ん(さーん)!」

「?」
768 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:04:13.18 ID:2zA0zbUg0
声の方を向くと案の定、心配性な友人達が走ってやって来た。
さやかは気落ちしている顔を見られまい、と笑顔を作って応答した。

「オー、まどかじゃん!」
「元気が良いねぇ、何か良い事でもあった?」

「無いよぅ、でも大丈夫?昨日突然休んだから…」

「えぇ、そうですわ、何とかは風邪を引かないって言いますし…」

「いやぁ、ちょっと風邪っぽいかな?なんて思ったから昨日休んだだけ」
「もう心配ないから、て仁美さぁ〜ん?それどういう意味〜?」
「仁美が言うと嫌味にしか聞こえないんですけど〜」
769 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:05:17.35 ID:2zA0zbUg0
そう言いながらさやかは手をワキワキさせて仁美ににじり寄っていた。
仁美は驚いて後ずさっていた。

「へ?あ、イエ、さやかさんでも風邪を引くのかと思って…」
「べ、別にさやかさんがそうだとは「言ったも同じじゃー!!」

と言ってさやかは仁美に飛び掛って擽り攻撃を敢行していた。
さやかは呪いの言葉のように「一緒に馬鹿になれ〜」とか言いながら仁美の脇を擽り回していた。

「キャハハハハハ!も、申し訳…アハハハハハ!!」

「ゴメンで済んだら警察も正義の味方もいらんのだー!」
「さやかちゃんの正義の鉄槌を食らえくらえクラエー!!」
770 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:06:52.08 ID:2zA0zbUg0
(あはは…さやかちゃん、もう大丈夫なの?)

まどかはさやかに念話を送ってみた、するとさやかは擽りながらも返事を返してきた。

(うん、大丈夫、もう平気)
(心配ないから、有難う)
(でも、仁美の態度が気に入らないからこうしているのだぁー!!)

と、心の中で言い、更に擽り攻撃の威力を増していた。

「キャー!ハハハハハハハ!!!ご、ゴメンなさい、さやかさん!ゆ、許してー!」
「た、助けてまどかさーん!」

「…さやかちゃん、程々にね」
771 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:07:35.13 ID:2zA0zbUg0
そうじゃれ合いながら3人で歩いていると、急にさやかが手を止めてある方向を見つめていた。

「ハァハァハァ、ど、どうしたんですの?さやかさん?」

「?さやかちゃん?」

そうして二人もその視線を追うと、その先には松葉杖を突いて男友達と話しながら登校する。
上条恭介の姿があった。

「あら?上条君、退院なさっていらしたの?」

「……。」

「あ……」
772 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:08:37.33 ID:2zA0zbUg0
その後、まどかは何も言えずに学校へと向かう事になった。

そして休み時間、恭介はさやかの事を気にせずに他の友達との会話に興じていた。
その様子をジト目で見るさやかにまどかは聞いてみた。

「ね、さやかちゃん」
「さやかちゃんも行って来なよ」
「まだ、退院してから声掛けていないんでしょ?」

そう言うと、さやかは不機嫌そうにソッポを向いていた。

「いいよ、あたしは…」

まどかはやはり、一昨日の事を思い遠慮しているのかと思いながら親友の心配をしていた。

「……。」

仁美はさやかのその素振りを見て、何かを決心したかの様な顔をしていた。
その時、恭介が振り返りまどか達、主にさやかに目を向けていたのだが、誰も気付いてはいなかった。
773 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:10:39.15 ID:2zA0zbUg0


「…で?話って何さ、仁美」

放課後、さやかは仁美に呼び止められて、馴染みの喫茶店にいた。
まどかは先に帰っている、いとしの居候宇宙人と仲良くお喋りしている頃だろう。
と、さやかは頭の片隅で思っていた。

「私、前々からさやかさんに秘密にしてきた事があるんですの」

秘密?と言われてさやかは何の事だろうか?と思った。
仁美が使っているシャンプーの事とか、それとも稽古と称して何か良からぬ事でもしているのだろうか?
それとも、等と考えていると仁美が話を続けてきたのだ。

「私、ずっと前から」
「上条恭介君の事をお慕いしていましたのよ」
774 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:11:33.66 ID:2zA0zbUg0
さやかは一瞬止まってしまった、仁美が?あの仁美がか?
しかも寄りにも寄って恭介に…。

「………そ、そぉーなんだぁー」
「アハハハハ、恭介のヤツも隅に置けないんだからー」

等とは言っていたが、心中ずっと上の空であった。

「…さやかさんは上条君とは幼馴染でしたよね?」

「へ?ん、ん〜…まぁ、腐れ縁と言うか、何と言うか…「本当にそれだけですか?」

さやかはその言葉に動けなくなった。
そのまま仁美は話を続けていた。
775 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:12:11.01 ID:2zA0zbUg0
「私、もう自分に嘘は付かないって決めたんですの」
「さやかさん貴方はどうですか?」
「本当の気持ちと向き合えますか」

「…ゴ、ゴメン、仁美、な、何の話をしているのか皆目検討が…」

「分からないだなんて、そんな見え透いた嘘は言わないで下さい」
「さやかさん、貴方は私にとって大切な友達ですわ」
「だからこそ、抜け駆けなんて横取りするような事もしたくありません」
「正々堂々、此処で言わせて貰います」

そう言うと、仁美は深呼吸をしてさやかの眼を見つめて宣言した。
776 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:12:48.72 ID:2zA0zbUg0
「1日だけ、1日だけお待ちしようと思いますの」
「私、明日の放課後に上条君に告白します」
「それまでに、後悔なさらないよう決めてください」
「上条君に、気持ちを、どう伝えるべきなのかどうか」
「…それでは」

仁美は立ち上がり、お辞儀をしてそのまま帰宅の徒に付いた。
一方さやかは、何が起こったのか、脳が理解するのを拒絶するほどに混乱していた。
その後、さやかは一人で帰宅したのだが、自分でもどうやって帰ってきたか分からない位の動揺していた。
777 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:13:44.45 ID:2zA0zbUg0


 夜、さやかは何時ものパトロールを始める為に玄関を出た。

「さやかちゃん、今日も魔女退治、付いて行って良いかな…?」

「…まどか」

そこにはまどかと、マミ、それにエクスカイザーも車の状態で居た。
3人を代表するように、まどかが喋りだした。

「さやかちゃんに独りぼっちになって欲しくないから…ほら!マミさんも一緒に戦ってくれるし!」
「エクスカイザーさんも居るし…だから…ね?」

その言葉に、さやかは心底嬉しくなってしまい、涙を流してしまった。
まどか達はその様をただ見守っていた。
778 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:14:28.45 ID:2zA0zbUg0
「…なんでアンタってそんなにあたしに優しいかな…」
「あたしにそんな価値なんて無いのに…」

そう言うとさやかはそのまま自分の心をありのままに語りだした。

「……あたしね、今日後悔しそうになっちゃった」
「あの時、仁美を助けなければって…ほんの一瞬だけ思っちゃった」
「最低だよ…正義の味方失格だよね」
「マミさん、ゴメンナサイ…あたし…」

「…さやかちゃん」

「美樹さん…」
779 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:15:30.51 ID:2zA0zbUg0
そこまで言うと、まどかは優しくさやかを抱きしめてあげた。
するとさやかはポロポロと涙を流して本当の気持ちを喋りだした。

「仁美に恭介取られちゃうよぉ…!」
「でもあたし、何も出来ない…!」
「だって、もう死んでいるんだもん!ゾンビなんだもん…」
「こんな身体で抱きしめてなんて言えない…キスしてなんて言えない……!」

そのままさやかは、まどかの胸の中で暫く泣き続けていた。
780 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:17:18.19 ID:2zA0zbUg0
暫くして、さやかが泣き止むと、マミはさやかに諭す様に言った。

「美樹さん、駄目よ、そういう風に考えちゃ」
「正義の味方失格、なんて言わないで」

さやかの涙を拭いながらマミを見つめた。

「え…?どうしてですか?あたしなんて…」

さやかは本気で疑問に思っているようであった。
更にしょげ返って、本気でそう思っているようだ。
それを見てマミは少しい笑い、訳を話した。
781 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:18:30.96 ID:2zA0zbUg0
「フフッ、私も同じだからって事よ、私だってそんな事言ったら失格だもん」
「一人ぼっちが怖いで正義の味方が失格なんて、ひど過ぎじゃない?」

「あ…」

「さやか、私からも言わせて貰うよ」
「確かに、君達は色々な事で後悔するべきだと思う」

「エ、エクスカイザー?」

「だけど、君達はその後悔をそのままにしておくのかい?」
「後悔したのなら、それをバネにして、後悔しない様にするべきだと、私は思うんだ」
「君達はまだ若い、全てを知っている訳でも無いんだ、焦らず、ゆっくり考える事も大切なんだ」
「…あと、時間も大事に、な」
782 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:19:26.69 ID:2zA0zbUg0
そう言ってエクスカイザーはウィンクして見せた。
まどか達はその仕草を笑い、少しだけ、憂鬱だった空気が軽くなった。

「有難う、エクスカイザー」

「良いんだよ、さやか、そこで駄目だ、と足を止めるのではなく、出来る事を探して歩き続ける事も大事だよ」
「それに、君は自分の体の事をゾンビと証したけど、君以上に長い間戦っているマミの事もゾンビと呼んでしまうのかい?」

そう言われて、さやかはマミの方を見た。
マミは、ん?とさやかの方を見た。
さやかは気まずそうに目を逸らし、指を回しながら謝りだしていた。

「あ…、御免なさい…マミさん…」
783 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:20:45.96 ID:2zA0zbUg0
「あら?恋する乙女はもう良いの?」
「もう少しだけ落ち込んでても良いのよ?後は私が魔女退治に行くから」

「あぁ!ご、御免なさい!マミさん!ほんっとーに御免なさい!」

神速の速さで頭を上げ下げしているさやかであった
その様は、メトロノームより早いのではないのか、とまどかは思って笑ってしまっていた。

「マミさん、イジワルだよ」

「フフッ、元気になったみたいね、美樹さん」

「あ、はい…少し…前向きになれるかもしれないです…」

「『なれるかも』、じゃなくて『なる』、よ」
「それじゃ、行きましょ、手早く魔女を退治して、平和な日常を謳歌するんだから!」
784 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:21:56.27 ID:2zA0zbUg0


 時は少し経ち、魔女の結界の外側、ほむらはその揺らぎを見つめていた。
今、さやかがあの中で戦っている、マミとエクスカイザーも一緒にだ。

「…貴方は魔女を倒しに行かないの…?」

そう言いながらも目線を外さず、後に何時の間にか現れた杏子に話しかけていた。

「……今日のあいつは魔女と戦っている、無駄な狩りじゃないさ」

「…以外ね、そんな理由で獲物を譲るなんて」

「うるさい」
「…それに、今アイツの隣にはマミも居るし、あのロボット野郎も居る」
「無駄ないざこざは勘弁ってやつだよ…」
785 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:23:23.39 ID:2zA0zbUg0
「…そう」

ほむらはそのまま結界を見つめていた、何かを諦めるような目付きで。
杏子も同じ様に結界を見つめていた、何かを信じる様な目付きで。
その時、結界が揺らぎ、火花が奔った。

「あの馬鹿、何てこずっているんだよ…」

杏子のやり場の無い独白がほむらの耳に届いていた。
786 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:24:38.96 ID:2zA0zbUg0
「ぐあぁ!」

絶叫と共にさやかは黒白の空間を横一直線に吹き飛ばされた。
マミとエクスカイザーも応戦してはいるが、如何せん使い魔が多すぎてさやかの支援に回れない状態で居た。

「さやかちゃん!」

「美樹さん!クッ!どいて!」

影と光の空間の中、マミの銃撃が鮮やかな火花を灯すが、それも一瞬で白と黒の空間に掻き消えていった。

「クッ!数が多い!ならば!」
787 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:26:04.55 ID:2zA0zbUg0
『ドラゴォーン!!』

その掛け声と共にドラゴンジェットが虚空からやって来た。
そしてフォームアップの段階まで行くと、ハッチが開かずにそのまま着地し。
エクスカイザーの背中を援護する様に動き出したのだ。

「エクスカイザー!それは!?」

「ドラゴンジェットのもう一つの姿だ!今は遠隔操作状態のドラゴンとして戦わせている!」
「使い魔を倒し、道を開けるぞ!」

よく見ると、ドラゴンカイザーの時の頭部の瞳は見えずに黒く染まり。
胸の飾りも上がっておらず、こちらの瞳も見えていなかった。
だが戦力が一人分増えても数の上での劣勢を変える事が出来ないでいた。
788 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:27:33.95 ID:2zA0zbUg0
「クゥ!キリが無い!さやか!!」

次々何処からともなく、黒の地面から使い魔が湧き出て手出し出来ない状態であった。
そんな中でも魔女は祈るような姿勢を変えず、その場に居続けた。

(祈りましょう、さすれば皆は救われます…)
(祈りましょう、さすれば皆は癒されます…)
(祈りましょう、さすれば汝は赦されます…)

魔女の本体が目の前に居るのに戦えるのは唯一、さやか一人という状態であった。

「ク…!このオオオオオォ!!」

さやかは一直線に再び魔女に突っ込んで行き、直前で飛び上がると。
上空で魔方陣を足場代わりに踏ん張り、ミサイルの如き速度で魔女に突貫した。
だが、魔女は姿勢を変えずに背中と思われる部分から木の様な枝を張り出し、さやかの動きを止めてしまった。
789 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:28:32.14 ID:2zA0zbUg0
「う、おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

懇親の力で切り抜けようとしたのだが、そのまま枝に絡みつかれ動きを封じられ、押し潰されそうになった。
その時。

シュイン、ガガガガガキィイン!!!

閃光がさやかの居る地点を中心に走り、纏わり付いていたツタが全て破壊されていた。
まどかが見ると、そこにはさやかを背負った杏子が立っていたのだ。

「あ…!」

「杏子!」

「佐倉さん!」

「勘違いすんなよ、助けた訳じゃないんだ」
790 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:29:23.64 ID:2zA0zbUg0
そう言ってさやかを降ろして一瞥すると槍を構え臨戦態勢に入った。

「ッたく、見てらんねーっつーの」
「此処はすっこんでな、あたしが手本を…「いい、一人でやれる、マミさん達を頼む」

「!?オ、オイ!!」

そう言ってクラウチングポーズをとり、まるで陸上選手のように走って魔女に近づいていった。
するとさやかは先程とは違い、低空に飛び込んで行き。

「デェアァ!!!」

ズバァ!!!!

そのまま魔女を横一文字に両断した。
するとその切り口から血しぶきと共に無数の手の様な触手が現れ、さやかを一瞬の内に針の筵状態にしてしまった。
791 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:30:51.93 ID:2zA0zbUg0
(あ、ああああああいの、り祈る祈る祈るいのるいのるいのるイノルイノルイノル…)

「!!!!!!」

「さやかちゃん!!!」

「!!さやかぁ!!」

「いけない!エクスカイザー!!ここは私が!だから!」

「分かった!!トォア!!!」

そう言って、エクスカイザーは使い魔の包囲を無理矢理突き抜け、さやかの下に向かった。
それを見てたのか魔女の触手はエクスカイザーにも突っ込んできた。

「何の!ドラゴン!!」
792 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:32:18.68 ID:2zA0zbUg0
そう言うと、ドラゴンは飛び上がってエクスカイザーの支援を開始した。
エクスカイザーがドラゴンと共に周囲の触手を叩き落し、さやかに近付こうとしていると。
その中で、さやかはおもむろに起き上がり、笑い出したのだ。

「ハ、ハハハハハハハ…」

「!?さ、さやかちゃん…?」

「!さやか…動けるのか!?」

「?…ハッ!まさか…!アンタ…!」
793 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:33:20.06 ID:2zA0zbUg0
さやかは飛び上がり、先程と同じ様に魔女に突っ込んで行った。
魔女は先程とは違い、蛇の様な触手を無数に飛ばし、さやかに攻撃を仕掛けていた。
だが、さやかはそれを物ともせずにそのままの勢いで魔女に肉薄していた。
しかも、あろう事かその攻撃を避ける素振りを見せず、腕に当たろうと、脚を削られようと、胸を抉られようと、切り掛って行った。

「オオオオオアアアアアアァァァァアアアア!!!!」

渾身の一撃で魔女を踏みつけると、そのままさやかは剣のガードでしこたま殴りだした。

「エィ!エィ!グゥ!ハ、ハハハハハハハ!!!」

ガッ!ガッ!ガッ!ガッッ!

「本当だぁ!!」

ガッ!ガッ!グシッ!グシィ!!
794 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:35:23.75 ID:2zA0zbUg0
「その気になれば、痛みも完全に消す事が出来るんだぁ!!!」

グチャ!グヂャ!グシャ!グシャァ!!

「ハァーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」

グザ!グシャ!グジャァ!グザァ!

(うご、ごごごごごごごごごごがァ…)

さやかは血の涙を流し、身体は所々ボロボロになりながら執拗に剣で滅多刺しに変わっていた。
その様は、まるで悪鬼羅刹と呼ぶに値する様な、凄惨な戦いぶりであった…。
795 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:36:15.58 ID:2zA0zbUg0
「!?み、美樹さん?」

「オイ、さやか…」

「さやか…一体何が…!」

3人は何が起きたのか理解ができていなかった。
ただ、その中でまどかはさやかのその姿を見て。

「どうして…?さっきの元気は嘘だったの…?」
「……やめて」

そう呟き、涙が一筋零れ落ちた。
魔女の結界の中で、唯一輝きを持った涙は重力に引かれて落ちていき、黒の地面で弾けて消えた。
796 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:38:14.49 ID:2zA0zbUg0


 同時刻、さやかの家に一本電話が鳴っていた。
その主はさやかの見知った人物であった。

「…もしもし?あ、どうも、上条です」
「さやかさんはいらっしゃいますか?」
「…え?居ない?こんな時間に…?」
「あ、ハイ、そうですか、分かりました」
「いえいいです、学校でも会えると思うので、言伝は良いです」
「失礼しました」

そう言って恭介は受話器を置くと、心配な様子で話をしたかった相手の事を思っていた。

「…さやか、どうしたんだろう?」


第7話 完


797 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/08/22(月) 01:38:51.20 ID:2zA0zbUg0
次回予告

「恭介が話したい?いいよ、あたしはこんな身体なんだし、無意味だよ」
「そんな顔するのは止めてよまどか、あたしアンタを恨んじゃいそう」
「ねぇ、女は貢がせるってどういうことよ?」
「こんな…こんなやつらの為に…あたしは…」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『あたしって、ほんとバカ』」
「あんたの家にも宇宙人、いる?」

予告担当:美樹さやか
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/08/22(月) 01:45:40.94 ID:2zA0zbUg0
と、言うわけで7話完です。
コテはSSのみ抽出して見たい人用に外してあります。

比較的あっさりめです。(容量的な意味で)
次は…まぁ…ね?
予告に使っている言葉は原作と同じですけど、気持ちの入れ方で、違うニュアンスが現れる。
そう俺は信じている。
恭介は幼馴染ルートを開拓するべきだと思うんだ。

それでは。
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sase saga]:2011/08/22(月) 01:50:20.79 ID:2zA0zbUg0
後、これ以降の話は。
完成報告sage
アバンタイトルage
それ以降の本編sage
あとがきage
のスタンスで行こうと思います。

…てか、もう800行くのかよ…。
800 :1[saga]:2011/08/22(月) 07:33:42.53 ID:92XpLT5p0
おつかれさまでした。

さやかちゃんはどうやっても、こうなっちゃうのね…。
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/08/22(月) 07:35:03.95 ID:sOVEa4w9o
お疲れ様でした
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]:2011/08/22(月) 07:35:06.44 ID:92XpLT5p0
ageてしまった。すみません
803 : ◆1B0iEDnTxU[sase saga]:2011/08/22(月) 14:11:19.25 ID:+3XVuWs50
どうも有り難うございます。
>>800さん。
自分も偶にあるから気にしないで下さい(笑)
さやかちゃんは今回こうなってしまいましたが、結末まで同じとは限りません。
こうしないとちょっとした事が出来ないもので…。

まだキツイ展開がありますが、もう暫くのお待ちを!
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]:2011/08/22(月) 14:14:44.95 ID:+3XVuWs50
sase sagaって何ぞ…orz
失礼しました。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/08/22(月) 23:19:12.33 ID:GrEC4MBC0


さやかには救いが欲しい
806 :お待たせしました![sage saga]:2011/08/26(金) 01:23:31.62 ID:3t32eJtZ0
遅いけど明日がお休みなんで気にせず投稿させて貰います!

>>805さん。
さやかの救いは確実ッッ!!。
807 :杏子「勇者 エクス☆マギカ 第8話」 ◆1B0iEDnTxU[saga]:2011/08/26(金) 01:26:31.52 ID:3t32eJtZ0


 グジャアァ!!
とても聴き心地の良いとは言えない音と共に魔女はさやかの剣で以って無惨な姿に変えられていた。
まどか達はその様をただ黙って見ている事しか出来なかった。
何撃目かをさやかが入れた途端、結界が軋み出し、崩壊しだした。

「ガァ!ガァ!ガァ!ガァ!ガァ!ふ、はははハハ」
「ハァ、ハァ、ハン、やり方が分かればこっちのモンよ」

その最中でも、さやかは執拗に攻撃をし、魔女の攻撃によって出来た傷を全て魔力で以って修復していた。
結界が完全に崩壊すると、さやかの足元にはグリーフシードが転がっていた。
さやかはそれを取り上げると杏子に向かって投げつけた。
808 :杏子「勇者 エクス☆マギカ 第8話」 ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:27:52.94 ID:3t32eJtZ0
「あげるよ、それが目当てだったんでしょ?」
「これで借りはチャラ、それで良いわね」

杏子は投げられたグリーフシードとさやかの顔を交互に見ており、何か言いたそうにしていた。

「…何?あたしはもう用は無いんだけど?」

「な、何言ってんだよ!お前!」
「あんな戦い方で魔力が消費されないとか言うつもりかよ!?」
「テメェ、死にたいのかよ!?」

「死ぬわけ無いじゃん?」
809 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:28:43.14 ID:3t32eJtZ0
「「「!?」」」

そう言うと、さやかは杏子を小馬鹿にした様な顔で続けた。

「あたし達は魔法少女だよ?」
「正義の味方なんだから、死ぬわけ無いじゃん」
「身体も魔力で治せるし、それとも、正義の味方じゃなくて悪魔の手先とでも言いたいの?」

その言葉に真っ先に反応したのは先程さやかを諭していたマミであった。

「美樹さん!貴方なんて事を…!!」

「…マミさんの気持ちは分かります、でも…」
「あたしって、どうにも前向きに出来そうも無いです、御免なさい」
810 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:30:44.01 ID:3t32eJtZ0
さやかはそう言ってマミに対して頭を下げていた。
マミはそんなこと言っているんじゃないと言いたかったが。

「?マミさん、怪我してる」

さやかが目敏く、マミの二の腕の怪我を見つけた。
マミは気付いていなかったのか、言われて始めて気が付いたようだ。

「エ?あ、結構やっちゃったわね…」

血はもう止まっていたが、二の腕の外側が広範囲で擦り傷になっていた。
恐らく使い魔と交戦した時に出来ていたのだろう。

「見せて下さい」

「み、美樹さん?今はそんな事より…」
811 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:34:07.39 ID:3t32eJtZ0
さやかはマミに近づいて傷に手を当てると、淡い光と共にその傷は瞬く間に消えてしまったのだ。
その様にはマミ達は驚いてしまっていた。

「…よし、これで良いですね」

「な…ど、どうしたんだ!今の!?」

「凄い…傷が一瞬で…」

「これがあたしの祈り、ってヤツですよ」
「あたしが触れて意識すると、その傷は治す事が出来るんです。」

その言葉に一番驚いていたのはまどかでもマミでも杏子でも無く、ほむらであった。
812 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:35:30.42 ID:3t32eJtZ0
さやかはマミに近づいて傷に手を当てると、淡い光と共にその傷は瞬く間に消えてしまったのだ。
その様にはマミ達は驚いてしまっていた。

「…よし、これで良いですね」

「な…ど、どうしたんだ!今の!?」

「凄い…傷が一瞬で…」

「これがあたしの祈り、ってヤツですよ」
「あたしが触れて意識すると、その傷は治す事が出来るんです。」

その言葉に一番驚いていたのはまどかでもマミでも杏子でも無く、ほむらであった。
813 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:36:09.46 ID:3t32eJtZ0
「そんな…!待って!さやか、あなたの願いは上条恭介の腕を治す事じゃ無かったの!?」

「???」
「何言ってんのよ、ほむら」
「確かにそう願おうとも思ったよ、でもね、たった一人治すより、色んな人を治す事が出来る方が良いじゃん?」
「たった1度の願いなんだからさ…」

「そんな…でもそんな事したら貴方のソウルジェムは…!」

しつこく聞いて来るほむらに嫌気が差し、ため息混じりに説明を始めた。

「ハァ…だからさ、心配無いって言っているの」
「それに、もうあたしにはグリーフシードは必要ないの」

「な…に?それ、さやかちゃん…?」
814 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:37:20.31 ID:3t32eJtZ0
「…ふぅ、どう?分かったでしょ?」

「凄い…!凄いなんて言葉じゃないわ!美樹さん!貴方凄すぎる!!!」

「どうして…こんな事、見た事も聞いた事も無い!」

まるで何でも知っているかの様なほむらの言葉。
その言葉に憤慨したようにさやかが返した。

「あのね、ほむら癒しの祈りで契約したって言ったでしょ?」
「だから、あたしはあたしの怪我プラス穢れを治す事ができるの、分かる?」

「い、言い分は分かるけど…!」

「ならそれで良いじゃん?」
「行こう、まどか、エクスカイ…」

さやかが帰ろうとした時、何の前触れも無く脱力して、倒れそうになった。
だが、倒れる前にエクスカイザーがさやかを支え難を逃れる事が出来た。
815 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:37:52.62 ID:3t32eJtZ0
「大丈夫か?さやか」
「無理をするんじゃない、疲れが溜まっているのならそう言ってくれ、キングローダーで近くまで運ぼう」

「…有難う、エクスカイザー」
「ほらまどかも…何震えているのさ、行こう」

「う、うん…」

そう言って3人魔法少女の3人を置いて帰って行った。
その様子をマミは打って変わって冷静に見つめていた。

「…確かに、あの能力はとても凄いとしか言い様が無いわ」

「アァ、同感だ」
816 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:38:33.53 ID:3t32eJtZ0
「でも、良い方向、だけではなさそうね…」

ほむらの言葉に2人は首肯していた。
あのふらつき方、戦いの疲労だけでは無さそうであったからだ。

「えぇ…私…」

「駄目よ、巴マミ」

マミが何か言おうとしたのをほむらは遮った。
マミはほむらに向き直って質問した。

「どうして?いまさら放って置けなんて、私は出来ないわ」
「それとも、貴方は見殺しにする気?」

「そんな気は無いわ」
「でも、今の彼女はどんな言葉も耳を貸そうとはしないでしょう」
「親友であっても…例えそれが、勇者であっても…」
817 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:39:11.39 ID:3t32eJtZ0
ほむらは、遣り切れない気持ちを涙に変えて頬を伝わらせていた。
その様を見て杏子が口を開いた。

「…あんたが何知っているのかは分からない、でもな」
「あいつが話しを聞かないのなら、聞く時に話してやれば良いだろ?」
「何も今生の別れじゃないんだ」
「それに、あたし達に出来る事があるなら、それをやるべきだろ?」
「マミ、あんたは知っているか?」
「近々、『ワルプルギスの夜』が来るって」

その名前を聞いた途端、マミは愕然とした。

「わ、『ワルプルギスの夜』ですって!」
「何処で知ったの?」
818 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:40:00.71 ID:3t32eJtZ0
「こ、こいつから聞いたんだよ」

そう言って杏子はほむらを指差していた。
そのほむらは未だに俯いて無反応であった。

「暁美さん…、貴方は隠し事が多すぎよ」

マミはほむらに苦言を呈した。
すると、ほむらはその言葉に反応して、再び涙を零して呟いていた。

「…御免なさい…マミさん…」
819 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:40:54.80 ID:3t32eJtZ0
「!?な、何もそこまで攻めた訳じゃないわ、…?暁美さん?」

「オイ…どうしたんだよ…?」

杏子が近づいて方を叩こうとしたら、大丈夫、と手で止めて、ほむらは涙を拭っていた。
やっと涙を止めて、ほむらは二人を交互に見つめた。

「御免なさい、巴マミ、佐倉杏子」
「私は貴方達に秘密を持ちすぎているわ」
「…でも、今はまだ言えない」

その顔は暗いが、先程よりは少しマシであった。
820 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:41:48.95 ID:3t32eJtZ0
「言えないって、お前…「でも、時が来たら話す事が出来る」
「それだけは信じて」
「今は『ワルプルギスの夜』を如何するべきか」
「手を貸して欲しい」

その言葉をマミは黙って聞いて、信じる事にしていた。

「…良いわ、信じてあげる」
「でも、その代わり、美樹さんを見殺しなんて、絶対しないでね」

「…分かっている」

「…良いのかよ?そんな簡単に信用して?」

「良いから、私は信用するって言ったのよ?」
「美樹さんも大事だし『ワルプルギスの夜』の対処も大事」
「佐倉さんも協力してくれるからこそ、帰ったりしなかったんでしょ?」
821 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:42:29.06 ID:3t32eJtZ0
杏子に話を振ると、少し赤くなりながら返してきた。

「ば、別に話を聞く位なら良いだろ」///

「フフッ、さて、暁美さん」
「『ワルプルギスの夜』対策会議、始めましょう?」
「その後、美樹さんが話を聞いてくれるように頑張りましょう」

「…えぇ、まどか、エクスカイザー」
「さやか…御免なさい…」

そう小さく呟くと、3人の魔法少女はその場を後にした。
822 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:43:46.62 ID:3t32eJtZ0


 第8話『あたしって、ほんとバカ』


 少し時間が経ち、雨が降り出していた。
雨脚は強く、数分居たら全身ずぶ濡れになっているだろう。
まどか達は雨宿り兼、休憩の為にルーフの付いたバス停に居た。
バスの営業時間は等に終わっており、バスが来ない事を告知する表示灯が点っていた。
周囲は街灯が点っており、明るくなってはいたが、さやか達の顔色は暗かった。

「………。」

「…ねぇ、さやかちゃん」
「あんな戦い方、無いよ…」
823 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:44:26.00 ID:3t32eJtZ0
「無いって…何よ…」

「痛くないなんて、嘘だよ」
「見ているだけで痛かったもん…」
「感じないから傷付いても良いなんて、そんなの駄目だよ…」

雨音だけが煩く、耳に入ってきていた。
その中、やっとさやかが口を開いた。

「ああでもしないと、才能の無いあたしには勝てないのよ…」

「あんなやり方で勝っても、さやかちゃんの為にはならないよ…」

その言葉に反応したのか、さやかは急にまどかに食って掛かる様に喋りだした。
824 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:45:16.03 ID:3t32eJtZ0
「あたしの為に、って何よ?」

「え…?」

そう言うとさやかは立ち上がりソウルジェムをまどかに突き付けていた。

「こんな身体にまでなって…何があたしの為だって言うのよ?」

「さ、さやかちゃん…?」

「今のあたしはね…魔女を殺す事しか意味が無いの」
「確かに癒しの能力は在る、でもそんなのがあたしを救ってはくれない」
「あたしはどうしたって石ころなのよ…」
「死んだ身体を動かして、生きたフリをして満足する、お人形遊びをしているだけ」
「そんなあたしの為に、誰が何をしてくれるって言うのさ?」
「考えるだけ、無意味じゃん…」
825 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:46:19.44 ID:3t32eJtZ0
「でも…あたし…そうであっても、どうすればさやかちゃんが幸せになれるかなって…」

「だったらあんたが戦ってよ…」

その瞬間、まどかは周りの音が聞こえなくなった。
さやかが言った言葉が頭の中をグルグル廻っていたのだ。
まどかは理解できずに呆けた様な声を出して、さやかを見返した。

「…え…?」

「キュゥべぇから聞いたわよ…」
「アンタ、誰よりも才能があるんでしょ?」

以前、まどかも聞かされた事があった。
だが、それで何が如何なるとかではなかった。
今、まどかは何も言えなかった。
826 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:47:28.49 ID:3t32eJtZ0
「あたしの為に何かするって言うなら、まずあたしと同じ立場になってよ」
「…ハッ、無理でしょ?当然だよね?」
「ただの同情だけで人間止められるわけないよね!」

「ど、同情なんて…そんな…!」

さやかは、そう言ったまどかを睨み付けていた。
その眼は酷く淀んでおり、とても正常な思考をしているとは思えない程であった。

「何でも出来るくせに!何もしないアンタの代わりにあたしがこんな目に遭っているの!!」
「それを棚に上げて、知った様な口を利かないで!」

「さやか!」

その声に振り返ると、そこにはエクスカイザーが変形して立っていた。
酷く怒っているようだった。
827 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:48:16.75 ID:3t32eJtZ0
「…何よ?エクスカイザー」

「さやか、まどかに謝るんだ」

「謝る?どうして?あたしは本当の事を言っただけ、なのに何で謝らなくちゃなんないの?」

「君は、本気でそんな事を言っているのか?」
「君はどんなに姿が変わろうとも人間だ」
「それが「ふざけないで!」

その言葉をさやかは怒鳴って掻き消した。
828 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:49:18.16 ID:3t32eJtZ0
「在り様が変わっても人間ですって?」
「ハンッ!人間じゃないからそんな事が言えるのよ!」
「あたしはアンタとは違って人間だったの!それが気付いた時にはもうゾンビでした!ッてね!」
「マミさんやほむらだって、アイツも同じ!」
「自分を騙して生きているのよ!」
「もう戻れないくせに!正義の味方として人助けして、自己満足に浸っているの!」
「それで死ぬなら本望よ!」
「ソウルジェムが濁って!魔法が使えなくなって!そこを魔女に喰われるのならそれまでなのよ!あたしの運命なんて!」
「誰も知らずに!誰かに知って貰えずに!後悔だけが募って!」
「こんな身体で人知れず「止めるんだ!!!」

「「!!!」」

その先を言おうとした時、エクスカイザーの本気の怒鳴り声が響いた。
今まで聴いた事の無い、怒りの声にさやかはただ、怯んでいた。
829 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:49:59.51 ID:3t32eJtZ0
「…さやか、そんな事を言っては駄目だ」
「君は、どれだけ自分を傷つければ気が済むんだい?」

そう言うと、エクスカイザーはさやかの左手を両手で優しく包んだ。
先程の怒気は何処へ行ったのか、と思うほど優しい言葉であった。

「確かに、君の魂はこのソウルジェムという石になってしまった。」
「だが、その心まで石なったのではない、違うかい?」
「魔法少女になってからも、何時も明るく振舞い、場を和ませる事ができる」
「後悔も知っているし、まだまだ知らない事も沢山ある」
「力が欲しいなら、私に言ってくれ、何時でも力になってあげよう」
830 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:50:40.83 ID:3t32eJtZ0
「エクスカイザー…」

「けれど、そこで友達を非難するのは話しが違うよ」
「まどかは本気でさやか、君の事を心配しているんだ」
「それを忘れてはいけないよ」

「あ…私…」

此処でさやかの眼にやっと光が戻り、自分が言った言葉の意味を理解しだした。
さやかは涙を零してまどかの方を向いていた。

「まどか…あたし…あたし…」

「良いの、私が優柔不断で、さやかちゃんを怒らせちゃったんだし…」
「だから、ね?」
831 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:51:25.73 ID:3t32eJtZ0
そう言ってまどかは右手を差し伸べてきた。
仲直りの心算なのだろう。
だが、さやかはその手を握り返す事が出来なかった。

「…!まどか…ゴメン…あたしに、そんな資格ないよ!」

そう言って雨の降る中を走って出て行ってしまった。

「さやかちゃん!」

「さやか!」

まどかたちも後を追う様に飛び出したが、雨で視界も悪く、さやかは走って行った為にすぐに見失ってしまった。

「まどか!私はさやかを追う!君は家に!」

「う、うん!」
832 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:52:10.34 ID:3t32eJtZ0
「チェーンジ!」

そう言って車の状態になると、アクセル全開でさやかの走って行った方向に見えなくなった。

「さやかちゃん…」

まどかは降り頻る雨の中ただただ、親友の行く末を見つめていた。

「うぅ、馬鹿だよ!バカだよ!!何で!あたしあんな…!」
「救いようの無いバカだよ!あたし…!」
「うぅ、ああああああああああああああ…」

さやかは涙と雨に濡れながら宛ても無く走り続けていた。
そのソウルジェムは先程よりも淀んでいた。
833 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:53:55.35 ID:3t32eJtZ0


 さやかが雨中を宛ても無く走っているその頃。
さやかを追っていたエクスカイザーは人型になり、さやかを捜索していた。
理由は一つ、この強い雨である。
エクスカイザーがいくら宇宙人と言えども身体はラジコンカーである。
そのラジコン状態で雨の中道路を走っていたら、路面に溜まった雨水でタイヤがスリップを起こしてしまったのだ。
コントロールが効かなくなる前に変形して、事無きを得たが。
その後は走っての捜索を強いられる事となったのだ。

「…駄目か、さやかの反応が掴めない」

しかも此処に来て、さやかの反応を追えない、と言う事態に発展していた。
さやかの魔力反応はインプットしているから普通なら追えるのだが、何故か今はその反応を見つけることが出来ないでいた。
更に、市街地に入り込みづらい、と言う現実がエクスカイザーを困らせていた。
834 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:55:10.42 ID:3t32eJtZ0
「く…さやか、無事なら良いのだが…?」

そう言いながら見回していると、人気の無い廃ビルの一角に白い影を見かけた。

「キュゥべぇ?」

エクスカイザーがその姿を認めると、その物体はそそくさと、誘うように廃ビルの中に入っていった。

「!?待て、キュゥべぇ!」

見失わんとエクスカイザーも追って廃ビルに入っていった。
廃ビルの内部は一応電気が通っているらしく、非常灯の明かりだけが周囲を緑色に染めていた。
その中で、エクスカイザーは視界を暗視モードに切り替えると、直ぐに動体反応を見つけて追いかけた。

「待つんだ!何処へ行くんだ!」
835 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:56:23.30 ID:3t32eJtZ0
そう叫んでも、その物体は返事をせずにそのまま進んでいった。
エクスカイザーは相手を野良犬か何かと見間違えていたのだろうか?と思い出した時。

「いい加減にしてもらえないかな?エクスカイザー」

「!!?」

突然周囲から声が聞こえてきたのだ。
何処かから反響させているのだろうが、その位置が特定出来ずエクスカイザーは周囲を見回していた。

「キュゥべぇ!何処にいるんだ!姿を見せるんだ!」

「別に良いだろう?この状態でも話す事は出来るんだから」

「ふざけないで出て来るんだ!」

「君こそ、何時までふざけた事をするつもりだい?」
「悪いけど、君はボクを捕まえることは出来ないよ」
836 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:57:22.21 ID:3t32eJtZ0
「!」

「君はボク達を取り締まりに来たのは最初から分かっていたよ」
「それなのに、君は一向にアクションを起こさなかったからね」
「どうやら、当たりだったみたいだ。」

そう言ってキュゥべぇは物陰から現れた。
エクスカイザーは出てきた陰にそのまま言葉を投げかけた。

「…それなのに君は魔法少女の勧誘を行なっていたのか?」

「そうさ、僕の行動は宇宙を救う事に貢献しているからね」

「だが、その為に犠牲になる命があるんだぞ!」
837 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:59:02.41 ID:3t32eJtZ0
「…君もそんな事を言うんだね、エクスカイザー」
「この地球上には66億と下らない人類がいるんだ」
「その数人が魔法少女となっても然したる問題ではないだろう?」

「キュゥべぇ…」

「それに、この地球は非常に恵まれた環境でもあるんだ」

そう言ってキュゥべぇは、感情の篭っていない瞳でエクスカイザーを見つめた。
その瞳の表面にはエクスカイザーが反射して移っていた。
838 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 01:59:59.79 ID:3t32eJtZ0
「先ず1つ目にオーリンの意志が働いていない事にある」
「これが一番だね、大抵の星でオーリンが無い、と言うのはプラネットエナジーが開放された後だからね」
「それほどのエネルギーは見込めないんだ、君も知っているオーボス軍が荒らした証拠だし」
「でも、その『オーボス』はこの地球で終わった」
「そのおかげで、ボク達は活動しやすくなったんだ」
「しかもおまけにオーリンの意志たるこの星の勇者たちは消滅したからね」
「一石二鳥、と言うヤツかな?」

オーボス、宇宙全土を震撼させた謎の軍団の長である。
その正体は全く不明で、諸説あるが、今は原初のエネルギー生命体の始祖ではないか?とも言われている。
だが、オーボスは地球時間で西暦1990年頃、この星に眠る伝説の力と呼称されるエネルギーによって消滅をした。
その際、軍団の主要幹部も全てこの地で潰えたと聞いている。
839 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:00:58.00 ID:3t32eJtZ0
「更に、君の追っていた『宇宙海賊ガイスター』」
「果てには『宇宙皇帝ドライアス』までこの星目当てで遣って来たんだ」
「この星は色々な力を惹きつける何かを秘めているんだ、ボクはそう思う」

「だが、それと君の行なっている事の因果関係は無い!」
「宇宙刑法に違反する行為だ!」

「勘違いしないで欲しいなぁ、ボク達がこぞって違法行為を行なっていると思うかい?」
「残念だけど、ボク達の行いは適法なんだ」
「宇宙刑法では非宇宙進出レベルの惑星内での原生生物の肉体と魂を許可無しに分離させるのは違法行為として取り締まっている」
「けれど、その生命体が危険的状況、若しくは許諾があれば、それはあくまで合法にできるのさ」
「知らないとは言わせないよ?宇宙警察エクスカイザー」
840 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:01:41.88 ID:3t32eJtZ0
キュゥべえはそこで言葉を切った。
エクスカイザーは宇宙刑法を熟知していたが、まさかそのようなすり抜けとも言える事をする種族が居たとは信じ難い思いであった
驚き、キュゥべぇを睨む形になっていた。

「…そこまで、分かった上で、彼女達に過酷な運命を背負わせているのか…」

「ボクはあくまでその道を示すだけさ」
「その道に進むのは彼女達の意思だ」
「ボク達に非は無い」
「そうだろう?」

エクスカイザーは自然と拳を握り締めていた。
今まで、色々な悪党と渡り合ってきたが、この様なタイプの悪党は初めて出会った。
侵略者ではなく、あくまで相手の同意を得ているから、法規的には裁く事の出来ない、非常にやり辛い相手であり。
許すことの出来ない悪党であった。
841 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:03:27.92 ID:3t32eJtZ0
「まだ他に隠している事は?」

「無いよ、宇宙警察には、ね」
「それではボクは失礼するよ、暁美ほむらが何をしているのか知りたいしね」
「それと、今後僕の仕事の邪魔はしないでほしい。」
「君がやっている行為は、営業妨害だよ?」

そういうと、キュゥべぇは影の中に入って行った、すると気配すらも消えてしまい、この場にはエクスカイザーのみになった。

「………。」
「…まどか、聞こえているかい?」

エクスカイザーはまどかにカイザーブレスを通して連絡を取った。
すると、直ぐに返事が返ってきた。

「エクスカイザー!?さやかちゃんは!?」

「…すまない、途中邪魔が入ってしまい、見失ってしまった。」
842 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:04:10.59 ID:3t32eJtZ0
本当は見つけた、と言いたかったが嘘を付いてまどかを安堵させるのは彼には出来なかった。
隠れるのは得意でも、嘘に関しては苦手だった。

「…そうですか…エクスカイザーさんも一度戻ってきて下さい」

「!?だが、まどか…」

「うん、分かっています」
「さやかちゃんは、もしかしたら明日学校で話が出来るかもしれないから」
「だから、エクスカイザーさんも休んで下さい」

エクスカイザーは非常にすまなく思っていた。
さやかを見つける事も出来ず。
今再び、コウタと同じか少し上の女の子に休んでくれ、と言われた事に。
843 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:05:04.79 ID:3t32eJtZ0
「…すまないな、まどか」
「さやかを見つけられなくて」

「良いんです、明日さやかちゃんが学校に来ていなかったら連絡します」
「だからそれまで休んでください」

そこまで言われると、流石にエクスカイザーは断る事はできず。
了承し、廃ビルの中から真っ直ぐまどかの家に向かう事とした。

「分かった…」
「チェンジ!」

エクスカイザーはロボットから車に変形し、少し雨脚が弱くなった道路を、スリップしないように走って行った。
844 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:06:08.06 ID:3t32eJtZ0

 エクスカイザーが帰宅をしている最中。
此処は暁美ほむらの家。
魔法少女3人が揃って対策会議を開いていた所だ。
テーブルの上にはほむらが持ち出した見滝原市の市街地図が広げられており。
所々にマーカーでマルやバツ等の記号が描かれていた。
その一つにほむらが指で示した。

「『ワルプルギスの夜』が現れるのは、恐らくこのマルの範囲内」
「いずれのパターンにも迎撃できるようにするには最低でも2箇所龍脈を確保する必要があるわ」

「…『ワルプルギスの夜』が出てくる予測円…やけに範囲が狭いわね」
「此処まで出現地点を絞ったって言う事?」

「えぇ、そうよ、統計的に言えば此処に出現する確立はほぼ、いえ確実と言っても良いわ」
845 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:06:55.11 ID:3t32eJtZ0
「ふぅーん、やけに詳しい統計だな?」
「何処でそんな事調べたんだよ?」

そう言いながら杏子はカップ麺を啜っていた。
マミは隣で行儀が悪い、と言っていたのだが、聞く耳持たず、である。

「秘密、でもこれも時が来たら教えるから…それまで待っていて」

「…教えてくれるのは良いけどさぁ、もう少し手の内を今の内に見せて貰いたいんだけどぉ?」
「そうでないと、作戦つっても合わせらんないじゃん」

「…そうよね、暁美さんの能力や戦法、少しでも良いから教えて欲しいわ」
「どんな能力なの?」
846 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:07:49.33 ID:3t32eJtZ0
「それは…「それはボクからもお願いしたい所だよ」
「暁美ほむら」

「「「!!!」」」

ほむらの言を遮るように聞こえてきた第3者の声、見るとちょうど影が出来る所にキュゥべぇが佇んでいた。
それを確認するや否や、杏子はソウルジェムから槍を生成して突き付けた。

「何処から湧いて出やがったテメェ…!」

「やれやれ、何かと同じ様に扱うのは止めてほしいな」

「あ゛ぁ!?」

「でも、キュゥべぇ盗み聞きは悪い事よ」

「…まぁそうだろうね、聞かれたくない話なら尚更だ」
847 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:09:02.95 ID:3t32eJtZ0
「…マミ、退け、今からこいつ3枚に降ろして…」

「止めて佐倉さん!暁美さんも止めて!」

「…消えなさい、貴方に用は無いの」

「…やれやれ、酷く嫌われたものだ、折角『重要』な情報を持って来たと言うのに?」

その言葉にほむらは見ようとしていなかったキュゥべぇの方を睨みつけた。
二人は、情報と言う言葉が気になっていた。

「情報?何だよそりゃ?」

「美樹さやかの消耗が思った以上に早い」
「魔法を使うだけじゃなく、自ら呪いを生み出し始めたんだ」
848 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:09:56.34 ID:3t32eJtZ0
「ちょ、ちょっと待って、キュゥべぇ」
「美樹さんは自分の力でソウルジェムを浄化できるのよ?」
「それなのに消耗が早いっておかしくない?」

「…やはり、タダで浄化が出来る訳がない、って事ね」

ほむらは判り切ったかのように呟いていた。
それにキュゥべぇは即答していた。

「そうだよ、けれど驚いたよ」
「まさか、美樹さやかがあんなイレギュラーな能力を身に付けるとは思わなかったよ」
「でも、結局は同じだった、と言う訳さ」

「どう言う事だ…おい?」
849 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:10:40.63 ID:3t32eJtZ0
「…私達の身体は魔力で動かしているわよね?」

「あ、アァ、そうだけど…」

「さやかはその穢れを自らの身体に吸収してソウルジェムを浄化した」
「その穢れが、そのまま身体から排出されると思った?」

「…あ!」

今の説明で、マミは理解ができたようだ、杏子は相変わらず頭にハテナを浮かべていた。

「そうさ、マミは気が付いたようだね」
「美樹さやかの身体に吸収された穢れはそのまま肉体のダメージに変換されたのさ」
「そしてその怪我を治すためにソウルジェムの魔力が消費される、結局魔力の消費量は大きくなる、と言う訳さ」

「アンタ…!」
850 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:11:34.65 ID:3t32eJtZ0
「消えなさい」

「そうだね、僕は此処でお暇するとしよう」
「でも、美樹さやかをこのままにして置くと『ワルプルギスの夜』よりも質の悪い厄介な事が起きるかも知れないから」
「注意した方が良いよ」

そう言ってキュゥべぇは影の方を向き出て行こうとした。
それに杏子が質問をした。

「おい、厄介な事って何だよ」
「少し教えてけよ」

「…そこに居る彼女なら知っているんじゃないかな?」
「暁美ほむら」
851 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:12:45.90 ID:3t32eJtZ0
「消えなさい」

それだけ言うと、キュゥべぇは影の中に入って行きほむらの家から居なくなった。

「どういう事?暁美さん」
「返答如何によっては…」

「…巴マミ、佐倉杏子」
「この事を聞いて、取り乱したりしないでね…?」

「?お、おう…」

「……。」
852 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:13:33.51 ID:3t32eJtZ0

 次の日、まどかは学校へ登校すると、さやかの姿があった。
一安心したが、だが、どうにも元気が無い様に見えた。
まどかは、昨日の事もあり、元気に挨拶をした。

「さやかちゃん!おはよう!」

「!?」

だが、まどかが挨拶をするとさやかは目を合わせずそそくさと教室から出て行ってしまったのだ。

「あ…」

まどかはそのまま追いかけようとしたのだが。

「鹿目さん、ちょっと保健室に行ってもらって良い?」
「ちょっと中沢君気分悪いみたいで」
853 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:14:37.14 ID:3t32eJtZ0
「え?あ、はい」

クラスの保険委員の仕事ができてしまい、さやかの後姿を見送る事しか出来なかった。

「さやかちゃん…」

さやかは昨日の晩と同じく、今度は学校の廊下を闇雲に走っていた。
学校に来れば必ずまどかと顔を合わせる事は予測出来ていたのだが、それでも会って謝りたい。
そう思ったから登校したのだが、いざまどかに挨拶をされると、急に怖くなって逃げて来てしまったのだ。

「うぅ…!何であたしってこう…!」

さやかは臆病な自分に嫌気が差していた。
仁美の事、まどかの事、魔法少女の事、そして…。
854 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:15:40.98 ID:3t32eJtZ0
「あたしって…ホント…!」

ドカァ!!

「キャア!」

「うわぁ!!」

突然、目の前が暗くなり、つんのめる様に倒れてしまったのだ。
恐らく前を見ていなかった所為か、誰かに頭から衝突してしまったのだ。
その事に酷く後悔をしながら顔を上げて謝罪をしようとした。

「あ、その、すみません!大丈夫…」

「あ、良いんです、此方…こそ…」
855 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:17:04.65 ID:3t32eJtZ0
お互いの目が合った。
さやかがぶつかったのはあろうことか、仁美が今日の放課後に告白する予定の人物。
上条恭介その人であった。

「あ…恭…介…」

「さ、や、か…」

お互いに何も言えずに固まっていたのだ。
そしてどちらとも無く、お互いの安否を確認しだした。

「あ、恭介!」
「あ、さやか!」

「「怪我は無い!身体は大丈夫!?」」

全く同じタイミング、同じ言葉とはお互いに予想だにできなかった。
856 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:18:21.95 ID:3t32eJtZ0
「あ…あたしは、大丈夫…」

「ぼ、僕も大丈夫だよ…」

「……。」///

「……。」///

そして再び、お互い何も言えずに固まってしまっていた。
だが、その沈黙を破ったのは恭介の方だった。

「…ク、ククク」

「?恭介?」

「ク、ククククク、クハハハハハ」

「え?きょ、恭介?」

「ハハハハハハハハハ!」

「ちょっ!恭介!」

「アハハハハハハハハ!!」
857 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:19:28.53 ID:3t32eJtZ0
その後、数分の間、恭介は大層可笑しい、と言った感じで腹を抱えて笑っていた。
周りの教室からは野次馬が出てきており、さやかはその様を見て茹蛸のようになりながらも恭介を支えて場所を移動した。
その際、後から野次の笛が飛んできたのは言うまでもない。
そして場所を移して、学校の屋上。

「ははははは…ほんとに可笑しかった…」

「も、もう!何が可笑しいのよ!おかげでコッチが恥ずかしかったじゃない」///

「ゴメン、ゴメン、でも二人揃って同じ事を言うなんて…ぷぷぷ」

「も、もぅやめたげてよぉ!」

「あははは!なんだいさやか!その口調!アハハハハハ!!」
858 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:20:12.22 ID:3t32eJtZ0
恥ずかしくなり、ろれつが回っていなかったさやかの態度が更に来たのか、恭介はフェンスに寄り掛かって大爆笑をしていた。

「む〜、恭介のイジワル」///

「あはは、ゴメン」

そう言って恭介は片手でゴメンのポーズを取っていた。

「全く…そういえば恭介、如何したのさ?あんな所で一人で」

「?何を言っているんだい?さやか、僕は今し方、登校して来たんだよ」
「それで内履きに履き替えていざ教室に行こうとしたら、横からの激突さ」

その事実にさやかは更に赤面する事になった。
恭介がまだ登校していない事に気が付かず、あまつさえまどかから逃げて来て、恭介にぶつかって今話をしている事に。
859 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:20:57.04 ID:3t32eJtZ0
「かぁ〜、このさやかちゃん、一生の不覚ッ!」///

「別に良いだろ?怪我は無かったんだし…」
「あ、そうだ、さやか、昨日は何処行ってたんだい?」

さやかはそう質問され酷く暗い思いになった。
だが、本当のことは言えないし、少しオブラートに包んで話す事にした。

「…ちょっと用事があってね、それで出かけていたの」

「出掛けていたって…あの時間にかい?」

「そうよ…悪い?」

そう言ってさやかは恭介を睨んでいた。
恭介はその様に少し違和感を感じながらも話を続けた。
860 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:21:38.36 ID:3t32eJtZ0
「?いや悪くは無いけど、君に話が在ったからさ」

「…話す事なんて無いんだけど?」
「何さ?」

さやかは、内心、恭介とは話したくなかった。
こんな身体で、とさやかは思い俯いていた。
だが。

「僕と、付き合ってくれないか?」

「……ハッ、そう言う事ね」
「全く恭介はさ、どうして何時も……え?」
861 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:23:17.49 ID:3t32eJtZ0
さやかは何時もの相手の気も知らない様な言葉だと思い、今日は更に棘を付け足した心算で返したのだが。
相手からは、全くお門違いの台詞が飛んできていた。

「……ゴメン、恭介」
「もう一度…言ってくれる?」

さやかは確信が欲しくて、尋ね返した。
それには恭介も驚いていたらしく赤面していた。

「えぇ!聞いていなかったの!?そ、そんな…もう一度言えだなんて…」///
「…あれでも頑張った方なのに…」|||

「?恭介?」

「!?な、何でもない!」
「良いよ!もう一度言うよ!」
「一回しか言わないよ!それでも良い!?」
862 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:24:37.03 ID:3t32eJtZ0
「わ、分かったから!顔近い!」

そう言って間近の恭介の赤面を押し返し、二人は揃って深呼吸をしていた。

「スゥー、ハァーッ!!」
「よし、言うからね?今度は聞いていなかったなんて止めてくれよ?」

「良いから!近いって」

再び暴走しそうな恭介を抑えて今度こそ、と深呼吸していた。

「…さやか、いや」
「美樹さやかさん!」

「は、はい!」
863 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:25:26.83 ID:3t32eJtZ0
「ぼ、僕と…」///
「ぼ、僕と付き合ってください!!!!」///

その言葉言い切るのと頭を下げるのはほぼ同時であった。
恭介はそのまま最敬礼をしており、さやかの顔が見えていなかった。
さやかの返事があるまで、との意気込みで恭介は頭を下げていた。
その時間は1分でも何億光年にもなるような思いで待っていた。
やがて、絞り出すような声でさやかは喋りだした。

「な、何で…?」

「?さやか良く聞こえ…「何でなの?」
「何で今なの…?」

言葉の意味が分からず、恭介が顔を上げると、目の前のさやかはポロポロと涙を流していた。
864 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:26:19.46 ID:3t32eJtZ0
「さ!さやか!!」

恭介は驚き、さやかに近づいて両肩を抱こうとしたが、松葉杖無しには立っていられそうもなく断念した。
恭介は今だ完治していない足をこの時は恨めしく思った。

「どうして?どうしてあたしなんかに?」

そう言いながらさやかは両手で顔を覆っていた。
何がなんだか分からなくなっているようだった。
その様子を見て、恭介は姿勢を正して続けた。

「…前に、ほら、僕が落ち込んでいた時にさ、さやかはおまじないをしてくれた、だろ?」

そう、さやかはキュゥべぇに願いを叶えて貰い、一番最初に恭介の腕を治していたのを思い出した。
865 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:27:51.97 ID:3t32eJtZ0

『いや、あの、恭介がさ、元気じゃなかったからその・・・おまじない』
『おまじない?』
『そ、おまじない』
『だからさ、治るよ、恭介の腕』

「あ、あれはただのおまじないであって、あたしが治した訳じゃ…」

「でも、君は僕の腕が治るように祈ってくれた」
「それは事実じゃないか」

「そ…!確かにそうだけど…!何で此処で告白になるのよ!」
866 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:29:08.19 ID:3t32eJtZ0
「…あの時、僕の腕が治って本当に驚いたよ、奇跡も魔法も在るって信じたくなった位だ」
「でもね、それ以上にさやかの事ももっと知りたい、って思ったんだ」

「あ、あたしの事…?」

「うん、さやか、僕は今まで君の事を只の幼馴染にしか思っていなかった」

「…随分酷い言われ様なんですが」

「けれど、退院してからなんだ」
「君の事が頭から離れないんだ」
「もしかしたら、あの時のキスが原因かもしれない」

さやかはもう自分の奥底にしまって置きたい古傷を抉られるような恥ずかしさに襲われていた。
867 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:30:30.87 ID:3t32eJtZ0
さやかはその痛々しい傷を撫でながら思っていた。
この怪我が無ければ、恭介はバイオリンを…。
この怪我が無ければ、願いを叶えられなかった…。
この怪我が無ければ…。
チュッ
さやかは見つめていた恭介の左手に軽いキスをしていた。

さやかは、この時ほど自分の手で死にたいと思ったのは初めてだった。

「それからなんだ、この腕を見るたび、この傷に触れるたびに」
「君の事が頭に浮かぶんだ、さやかの仕草が、笑顔が」
「それを思うと、大好きなヴァイオリンすらも手が止まってしまうんだ」
「だから昨日電話して留守だと知った時には心配して夜も眠れなかったんだ」
「さやか、如何してくれるんだい?」
868 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:31:42.73 ID:3t32eJtZ0
何時の間にか涙は止まり、恥ずかしさで真っ赤になっていた。

「え?あ、いや、その、それはおきのどくだな、と」///

「だからさやか、責任を取ってもらいたい」///

「せ、責任て…「僕の恋人になって欲しい」///

その時、二人の時間は止まっていた。
お互いが、お互いの瞳を見つめて、お互いの姿を瞳に映し出し。
このまま動けなくなるんじゃないか、と錯覚した。
869 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:32:31.74 ID:3t32eJtZ0
「……無理だよ…」

静寂を破ったのはさやかであった。
その声は暗く、先程のさやかとは別人の様であった。

「な…!そんなさやか僕は「違うの!」
「違うの…嬉しいの…!嬉しすぎて…涙が止まらないの…!」

そう言ってさやかはまた泣き出してしまった。
恭介はただ見つめていた。

「嬉しいのに、恭介の気持ち…受け取れない…!」
「だって!あたし…ゾンビなんだもん!」

「…?なんだって?」
870 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:33:19.44 ID:3t32eJtZ0
今度は恭介が聞き返す番になってしまっていた。

「あの時ね、あたしの願い、叶えて貰って恭介の腕、治してもらったんだぁ」
「でもねぇ…!あたし!もう死んでいるの!ゾンビなの…!」

すると、さやかはその場で泣き崩れてしまった。
恭介は今度こそ驚いて、さやかに駆け寄った。

「さやか!」

「来ないでぇ!」

さやかは大声を張り上げると、恭介を足止めした。
だが、恭介はそれに動じずに、松葉杖を放って、泣き崩れたさやかに膝立ちで目の前に立った。
871 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:33:58.12 ID:3t32eJtZ0
「何があったんだい!さやか!どうして君がゾンビだなんて言うのさ!?」

「駄目なのぉ!私!私…!」

「落ち着くんだ!さやか!」

「う、うう…あああああぁ」

「さやか!」

何時までも泣くさやかを宥める為に恭介は目の前でずっと肩を揺すっていた。
さやかはもう何も考えずに恭介の左腕を掴み、自分の胸に押し当てさせた。

「な!!!さやか!!!」///

「ほら!分かるでしょ!心臓なんて動いていないって!」
「あたしの身体が冷たいって!」
「もう、ゾンビだから!」
872 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:34:56.53 ID:3t32eJtZ0
そう言うと、さやかは恭介の腕を抱きしめて俯いて泣き出してしまった。
最初は恥ずかしがっていた恭介は、さやかのその様子を見て、決心し。
優しく抱き寄せた。

「な!きょ、恭介!!!」

「どうだい?さやか、落ち着くかい?」

「な、何言って、離して…あ…」

幾分か落ち着いてくると、恭介の心臓が早鐘を打つのが聞こえて来ていた。
緊張とその他の感情がない交ぜになって心臓の鼓動が速くなっていたのだ。

「聞こえるだろう…?僕も…ドキドキしてるんだ…」///

「あ…、僕…も…?」
873 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:36:12.42 ID:3t32eJtZ0
その言葉に引っ掛かりを覚え、さやかは恭介の顔を覗いた。
すると、恭介は笑って言った。

「さやか、君の心臓もちゃんと動いていたよ」

「え…!嘘、あたし…」

「それに、こうやっていると、伝わって来るんだ、さやかの体温が」

そう言って恭介は抱擁を強くした。
さやかは、今更自分がドキドキしているのが理解できて。
恥ずかしさが限界を突破して恭介の腕の中で暴れ出した。

「あ…!」///
「きょ、恭介…!離して…!」///
874 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:37:32.86 ID:3t32eJtZ0
「いいや、離さない」
「一番最初に僕の演奏を聴いてくれたファンを、手放すわけ無いだろう?」

「!?」

「最前列で僕の事を見てくれた居たんだ、忘れる訳がないよ」
「それに、君はもう僕の中ではただの幼馴染じゃなくなったんだ」
「美樹さやか、って言う一人の女の子になってたんだ」

「きょ、うすけ…!」

その後、さやかは辺り構わずに泣き続けた。
色々な感情が綯い交ぜになって出てきた涙であった。
その間、始業のチャイムが鳴るのが聞こえたが、二人は気にせずに抱き合っていた。
屋上だったから良かったものの、それでもさやかの鳴き声が誰かに聞こえてないか恭介はドキドキしていた。
授業が開始して数分、さやかは落ち着きを取り戻していた。
875 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:38:17.49 ID:3t32eJtZ0
「…授業、始まっちゃったね」

「…うん」

二人は揃って1時間目をサボっていたのだ。
さやかがそう言って、二人は学校の屋上で空を見上げていた。

「…ねぇ、恭介」

「なんだい?さやか」

先程の様な恥ずかしさはなく、今二人は普通に会話していた。
さやかは決心をして、話し出した。

「恭介の言ってくれた事、本当に嬉しい」
「でもね、今はまだ考えさせて」
「その代わり…」
876 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:38:56.20 ID:3t32eJtZ0
「…?その代わり、なんだい?」

「私の秘密、恭介だけに教える」

さやかは己の全てを打ち明けたのだった。
877 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:39:29.85 ID:3t32eJtZ0

 その後、1時間目をサボった二人は職員室に行って早乙女先生に平謝りをしていた。
その態度が認められたのかそれともただ単にその迫力に押されたのか、二人は直ぐに開放され、教室に戻って来ていた。
二人揃って帰って来たのが、色々言われたが、さやかは恭介が家に忘れ物があったので、それを取りに行くのを手伝っていた。
その一点張りだった。
そして、さやかはまどかの前にやって来ていた。

「あ…や、やぁ、まどか…元…気?」

「あ、さやかちゃん…」

「そのさ、昨日は、ゴメン、あんな事言われて気分良いわけ無いよ、ね?」
「だから、ゴメン!」

そう言ってさやかは謝っていた。
まどかはその様子を見て、ただ、ふぅと息を吐き。
878 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:40:22.02 ID:3t32eJtZ0
「うん、良いよ」

そう許してくれたのだ。
その言葉を聞いて、さやかは頭を上げてまどかを見ていた。

「…良いの?あたし、まどかに色々酷い事言ったんだよ?」
「もしかしたらまた言うかもよ?」

また泣きそうになってしまう自分に心の中で叱咤して、涙目で堪えていた。

「良いんだよ、私はさやかちゃんの友達だよ?」
「そんな暴言くらいで友達を止めるなんて、それこそ酷いよ」
879 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:41:17.28 ID:3t32eJtZ0
「でも…」

そう言うのをまどかは人差し指を立ててさやかを黙らせた。

「それならさ、今度何時もの喫茶店で何かおごって?」
「それで充分だよ」

「…まどか」

「あ、後でエクスカイザーさんにも言って上げて?」
「エクスカイザーさんも凄く心配していたんだから」
880 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:42:08.71 ID:3t32eJtZ0
「…ハァ〜」
「やっぱり、泣く子と宇宙人には敵わない、か…」
「…有難う」

「ティヒヒ♪」

涙を一筋零し、さやかはまどかにお礼を言った。
そうして自分の席に戻っていった。
その様子を見て、まどかは嬉しく思い。
仁美は何か思う事があるのか、さやかの事をずっと見てた。
だが、声を掛けることは無かった。
881 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:42:53.98 ID:3t32eJtZ0

 そして放課後、さやかは公園の影に身を潜め、恭介と仁美を見つめていた。
さやかは屋上で恭介と話した事を思い出していた。

『…これが、あたしの本当の姿だよ、恭介』

『…凄すぎて何も言えないよ…』

『そう、だよね』

そう言ってさやかは変身を解除していた。
願いの事、魔法少女の事、ソウルジェムの事。
自分自身が知る、全てを恭介に打ち明けた。
882 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:43:39.19 ID:3t32eJtZ0
『でも、ヤッパリさやかはさやかだ』

『?どうしてよ?』

学生服に戻りながらも、さやかは全く動じない恭介にある種の疑念があった。
まさか本当は初めから知っていたのではないか?と。
けれど、次の言葉で大体謎は解けてしまった。

『だってそうだろ?その願い、まんま僕が言った物じゃないか』

ギクッ、と擬音がする位さやかは驚いていた。
…気付かれていたのか…と。
そして単純な自分を呪っていた。
883 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:44:26.87 ID:3t32eJtZ0
『分かるよ、だってさやかは幼馴染だったんだよ?』

『う…そういう言われ方すると何か恥ずかしい』///

ははは、と恭介は笑い、さやかは赤面していた。

『でも、さっきも言ったとおり、考えさせて』
『こんな身体じゃ、私、恭介に何も言えないから…』
『次に私が話をしたいって言った時に言わせて』

『…分かったよ、さやかも鹿目さんに似て頑固だからなぁ』

『な…!どうしてそこでまどかが出てくるかなぁ!』
884 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:45:12.03 ID:3t32eJtZ0
『あはは、ゴメンゴメン』
『…でも、待っているから』
『さやかの返事』

『…さ、いこっ!』
『2時間目まで休んでられないっしょ!』

そう言って、さやかは屋上から出ようと、入り口の方を向いた。
恭介は松葉杖を使って立ち上がっていた。
そして、何かを閃いたのか、ニヤリ、と笑いさやかに近づいて行った。

『さやか』

『ん?何…』
885 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:46:09.28 ID:3t32eJtZ0
さやかが振り向いた瞬間、二人の唇が重なり合っていた。
さやかはただ驚いて眼を見開いていた。
数秒の間唇を重ねていたのだが、さやかにはその数瞬が数時間にも感じられていた。

『え…あ、き、恭介…?』

『約束だよ、僕は待っている』
『さ!早乙女先生に謝りに行こう!』

そう言って恭介が先に屋上から出て行った。

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!』///
『きょ、恭介ーーーーーー!!!!』///

一足遅れてさやかも覚醒して、走って追いかけて行った。
886 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:47:00.94 ID:3t32eJtZ0
「……。」

その恭介が今、仁美と話をしている。
恐らく、仁美の告白を恭介は断ると思う。
あそこまで言ったのだからそれ位は分かる。
けれど、さやかはその様子を見ずに振り返り、公園を後にした。

「有難う、恭介、嬉しかったよ」
「…さよなら」

そう言って振り返る事無く、さやかはいなくなった。
その後では、二人で楽しそうに話をしていた。
887 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:47:44.48 ID:3t32eJtZ0

 夜。
さやかは偶々見つけた使い魔を追いかけて、退治をしていた。

「ハァアアアアア!」

その戦い振りは、昨日の物よりも冷静で、相手の動きを見ながら戦ってはいたのだが、それでも何処か闇雲に戦っている節が在った。

「ハァ、ハァ、ハァ」
「やっと、倒せた、ハァ、ハァ」
「よし…次…「どうしてそうまでして無謀な戦い方をするの?」

「…?」

その声に振り返ると、暁美ほむらが立っていた。
魔法少女の姿で。
888 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:48:25.51 ID:3t32eJtZ0
「無理はしない方が良いわ、余裕が無いのが丸分かりよ」
「正義の味方を気取って戦うのは良いけど、少しは自分を労わりなさい」

そう言ってほむらはさやかに向かって何かを投げた。
さやかが手にとって確認すると、それはグリーフシードだった。

「…使いなさい、貴方のソウルジェムはもう限界の筈よ」

「…何でもお見通しってヤツね、でもね」
「あたしはマミさんと同じ様な魔法少女になるって決めたんだ」
「だから誰も見捨てたりしないし、利用しない、見返りも要らない」
「もし、それで魔女に殺されてしまったら、それはそれで仕方の無い事なのよ」
889 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:49:34.62 ID:3t32eJtZ0
そう言ってグリーフシードを投げ返した。

「そうやって悲劇のヒロインでも気取る心算?」
「反吐が出るわ」

「…アンタこそ、何が目的なのさ?」

「??」

さやかはグリーフシードを握り締めているほむらを見つめていた。
その眼は、怒りの炎が燃えているわけでもなく、憎しみに身を焦がしている様でもなかった。

「ほむらってさぁ、何でも卒無くこなすじゃん?」
「容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能」
「どれをとっても文句なしってヤツ?」
890 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:50:26.86 ID:3t32eJtZ0
「?急に何を言っているの、さやか」

「…あたし馬鹿だからさ、率直に聞くよ」
「アンタ…何を諦めているのさ?」

「!?」

「アンタの目って何でも諦めているのよね」
「勉強の時も、体育の時も、魔法少女として戦っている時も…」
「それなのに、言葉には時々希望に縋る様な感情が篭もっていたり」
「偶に泣いたり、あんたは何を求めているの?」

「わ、私は…」
「……私は諦めてなんか「嘘」
「嘘、そうやって自分の本心を隠そうとしているの、直ぐにわかるよ」
891 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:51:10.44 ID:3t32eJtZ0
ほむらは後退りして、さやかを見つめていた。
そのさやかは先程と変わらずに冷静にほむらを見つめていた。
やがて沈黙に耐え切れなくなり、言葉を切り出したのは、ほむらだった。

「…どうやら、貴方に嘘を突き通すのは、無理みたいね」
「ええ、そう、私は諦めていたわ、美樹さやか」
「あなた自身をね…」

「?私自身?」

さやかには全く意味が分からなかった。
そしてほむらは目を瞑りそのまま続けた。
892 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:52:09.02 ID:3t32eJtZ0
「えぇ、貴方はいずれこうなって自滅の道に向かうのは『知っていた』のよ」

「『知っていた』…?」

「ちょっとね、でもわたしが知っている様な展開じゃなかったから今までその一縷の希望に縋っていたの」
「結局、駄目みたいだけどね…」

そう言ってほむらはさやかを一瞥した。
その瞳は冷徹で、見た者を凍てつかせる事が出来るのではないか、とさやかは錯覚した。

「私は、まどかに絶望して貰いたくないだけ、貴方が破滅する様を見せたくないの」

「ま、まどかを…?」

「そう、此処で貴方が拒絶するのなら、運命は確実に貴方を殺しに掛かる」
「それなら今、此処で…貴方を…!」

そう言ってほむらの手が、さやかの胸元に触れようとした、その時。
893 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:53:37.34 ID:3t32eJtZ0
「オイ!!」

ほむらの後から、杏子が遣って来てほむらを羽交い絞めにしたのだ。

「!?佐倉杏子!!」

「アンタ…!」

「何ボサッとしていやがる!早く逃げろ!!」

その言葉を反動に、さやかは立ち上がり、その場から逃げ出したのだった。

「ヘ…オイ、昨日あんな事言っておいて、もう負け犬ムードかよ?」
「何で助けようって思わねぇんだよ!」

「……。」

だが、その言葉にほむらは反応しようとせず、さやかの行く先のみを見つめていた。
894 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:54:20.20 ID:3t32eJtZ0
「?オイ、人の話…!」

杏子がほむらの顔を覗き込むと、ほむらは泣いていたのだ。

「!?お、オイ!」

「駄目なの…私じゃ、彼女を助けられない…」
「私なんかじゃ…」

杏子が腕を放すとそう言ってその場に泣き崩れてしまっていた。
その様に、多少の苛付きを覚えながら杏子は喋った。

「…なんであんたが動いて助けられないって分かるんだよ?」

「『知っているから』よ…!」
「『知っているから』手出し出来ないの…!」
895 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:55:11.94 ID:3t32eJtZ0
「…アァ!もう!アンタはそこで泣いてな!あんたが助けられないなら」
「あたしが助けに行く!」

そう言って杏子はさやかの後を追うために、飛ぶ様に走って行った。

「あ…!待って!…杏子…!」

その言葉は誰も届いておらず、ただ虚空に吸い込まれていった。
896 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:56:21.03 ID:3t32eJtZ0

 さやかがほむらと会話していたその時、まどかは自宅からさやかの家に電話を掛けていた。

「あ、どうも、鹿目です」
「さやかちゃんいますか?」
「…え!?帰って来ていない!」
「学校に行ってから!?」

その言葉にまどかは驚いていた。
まさか、さやかは大変な事になっているんじゃないのか、と。

「分かりました!有難うございます」

そう言って受話器を乱暴に置くと、自分の部屋に駆け上がっていった。

「エクスカイザー!!大変!」

棚の上のエクスカイザーにこの事を知らせると。
897 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:57:19.06 ID:3t32eJtZ0
「分かった!まどか!君も一緒に来るんだ!」

「え?で、でも私そんなに足速くないし…」

大丈夫だ、と言ってエクスカイザーはまどかの部屋の窓から外へ飛び出していった。
その際、家の前で待っている、とも言っていた。
何があるのだろうか?と思いながらまどかは出かける準備をして。
玄関まで遣って来た。

「何処へ行くんだい?まどか」

「!?」

そう呼び止めたのは父親、知久であった。
タツヤを寝かし付けた所なのだろうかちょうどタツヤの部屋から出て来た所であった。
898 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 02:59:11.41 ID:3t32eJtZ0
「あ、パパ…!」

「こんな時間に如何したんだい?」
「何処へ行こうとしたんだい?」

言えなかった、魔法少女の真似事をしているなんて、しかも友人が大変かもしれないなんて。

「……。」

「…言えないんだね」

「ゴメンなさいパパ…でも!「良いよ」

「え?」

「行ってらっしゃい、急ぎなんだろう?こんな所で時間を食っていたらまずいから、慌てているんだろう?」
899 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:00:08.31 ID:3t32eJtZ0
「う、うん、でも…!」

「まどかは、誰かの為に行こうとしているんだろう?」
「なら僕はまどかをとめる事は出来ない、言えることは唯一つだよ」
「怪我だけは無いように、ね」

「…!有難う!パパ!」

そう言ってまどかは靴を履き替えて慌しく、静かに玄関を閉じていた。

「……。」

「以外だね、パパが止めないだなんてさ」

玄関前には何時の間にか暗がりから母、詢子が姿を現していた。
900 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:01:26.56 ID:3t32eJtZ0
「若い内は、苦労を重ねるのもあり、かと思ってね」
「まどかは何か言えない事をしている」
「でも、それは自分の為だけじゃなく、誰かの為にしている事なんじゃないかな?って思ったのさ」

「だからって、子供の夜遊びを許した覚えは無いんだけど?あたしは」

詢子の背中には鬼が見えそうになっていたが、知久は笑って続けた。

「ハハッ、ママ、まどかは誰の子だい?」
「僕と、ママの子だ」
「頑固な所はママに似て、絶対に譲らないよ」
901 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:03:26.44 ID:3t32eJtZ0
「…そうだったね、優しさはパパ譲りってヤツだけどね?」

そう言って二人揃ってクスクス笑いをしていた。

「まどかを信じてあげよう」

「あらぁ?私は最初から信じていたよ」
「パパは信じていなかったの?」

「まさか、信じているからこそ、だよ」

そう言って知久は背伸びをしていた。
その様子を見ていた詢子は笑みを浮かべて話しかけた。

「ねぇ、知久、久しぶりに、飲も?」

「良いね、それじゃ取って置きを出そう、リビングで待ってて、詢子」

そう言って二人は其々に抜き足差し足で動き出していた。
娘の成長を祝う為。
水入らずで、二人で飲む為に。
902 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:04:26.84 ID:3t32eJtZ0

 見滝原市の電車内、さやかは行く宛も無く、ずっと乗っていた。
そんな中、会話が聞こえてきたので、そちらに耳を向けていた。

「言い訳とかさせちゃ駄目っしょ?」
「稼いで来た分は全額きっちり貢がせないと」
「オンナって馬鹿だからさ、ちょっと金持たせとくと直ぐ下らない事に使っちまうからねぇ」

「いやぁホント、オンナは人間扱いしちゃ駄目っすねぇ」
「犬か何かだと思って躾けないとねぇ」
「…アイツもそれで喜んでいる訳だし」
「顔殴るぞって脅せばまず大抵は黙りますからね」
903 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:05:04.39 ID:3t32eJtZ0
「ケッ!ちょっと油断するとスグ付け上がって籍入れたいとか言い出すからさ」
「甘やかすの禁物よ」
「ったく、てめぇみてぇなキャバ嬢が10年後も同じ額稼げるかって言うの」
「身の程を弁えろってんだ」
「なぁ?」

誰の話しかは分からないけれど、更に効きたくなり、さやかは走る電車に逆らうように先頭車両に歩を進めた。

「捨てる時も、アァ、ホントウザイっすよね」
「その辺ブレさん上手いから羨ましいっすよ」
「俺も見習わないと…?」
904 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:05:57.86 ID:3t32eJtZ0
「ねぇ、その人の事、聞かせてよ」

「ハイ?」

「今アンタ達が話していた女の人の事」
「もっとよく聞かせてよ」

「お嬢ちゃん中学生?」
「夜遊びは良くないぞ」

「…その人、アンタの事が大事で、喜ばせたくて頑張っていたんでしょ?」
「あんたにもそれが分かっていたんでしょ?」
「なのに犬と同じなの?」
「ありがとって言わないの?」
「役に立たなくきゃ捨てちゃうの?」

「何コイツ?知り合い?」

「へ?い、いや…」
905 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:06:45.34 ID:3t32eJtZ0
「ねぇ…この世界って守る価値あるの???」
「あたし何の為に戦ってたの?」
「教えてよ…今すぐあんたが教えてよ…」
「でないと、あたし…」

「そんなヤツに守る価値なんてねぇよ」

「「「!?」」」

さやかは驚いて声の方を向くとそこには杏子が立っていた。

「アンタ…」

「そんなヤツらに、守る価値は無いって言ってんだよ」
「…オイ、テメェ」
906 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:07:31.26 ID:3t32eJtZ0
「な、何だよ…」

「今あたしは頗る機嫌が悪い、これ以上此処にいるんじゃねぇ、殺すぞ…」

「…何だぁ?人に散々言っておいて、ハイそうですかと言うと思ってんのか?」

「止めとけよ、こんなヤツ放っておけ」

「しかし、ブレさん…」

杏子も相手を如何にかする気は無い様で、さやかを掴んで後部車両の方に歩いて行った。

「ちょ…!放してよ!」

「…うっせぇ」

さやか達がいなくなると、ホステスの一人が盛大にため息を付いてワザとらしく大声で喋りだした。
907 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:08:20.66 ID:3t32eJtZ0
「…ったくなんなんすかねぇああいうのって?」

「親の育て方が悪かったんだろ?ま、俺達には関係ない話だよ」

そう言ってホステス二人はゲラゲラと笑っていた。
さやかは飛んで行って如何にかしてやりたかったが、杏子が掴む力を強くし、我慢しているのを見て、諦める事にした。
908 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:09:05.72 ID:3t32eJtZ0

 深夜の公園。
まどかはさやかを探す為にエクスカイザーと分かれて此処に来ていた。
だが、さやかの足取りを辿る事は出来ないでいた。

「…さやかちゃん、何処なの…?」

そう言ってベンチに腰を掛けた。
そして、近くの地面に目を向けると、そこにはキュゥべぇが佇んでいた。

「君も、ボクを恨んでいるのかい?」

そうキュゥべぇは切り出した、だが、まどかは力なく首を横に振った。

「貴方を恨んだら、さやかちゃんを元に戻してくれるの?」

「無理だねそれは僕の力の及ぶ所じゃない」
909 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:09:47.47 ID:3t32eJtZ0
その回答に落ち込みながらも、まどかは話を続けた。

「…前に話していた、私が凄い魔法少女になれるって話、本当なの?」

その言葉にキュゥべぇは反応を示し、喰い付いて来た、全く現金だ、とまどかは思っていた。

「凄いなんて言うのは控えめな表現だよ」
「君が魔法少女になれば、恐らく世界最強になれるだろう」
「もしかしたら、望みによっては万能の神にだってなれるかもしれないよ」
「ただ、なぜ君がそんな素質を持っているのかは、理由はボクにも分からない」

「…キュゥべぇに出来ない事でも、私には出来るのかな…?」
「私がキュゥべぇと規約したら、さやかちゃんの身体を元に戻せるのかな?」
910 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:10:57.99 ID:3t32eJtZ0
キュゥべぇは即答した。

「造作もないだろうね、君のその願いは魂を差し出すのに値するかい?」

「…うん、さやかちゃんの為なら、良いよ」
「ほむらちゃんには止めてって言われているけれど…」
「私、魔法少女に…」

その瞬間、まどかたちの周囲、全ての時間が『止まった』。
そしてその事を知らないまどかは知る事も出来ない、キュゥべぇに大量の弾丸が向かっている事を。
その弾丸が止まった時にばら撒かれたものであることも、そして時が『動き出した時』その全てが動き出す事も。

ボッ!!
911 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:12:09.07 ID:3t32eJtZ0
そんな音を立てて、キュゥべぇは穴だらけにされ絶命していた。
一瞬、何が起こったのか分からなかったまどかはその様を理解すると恐怖した。

「ひっ!!きゅ、キュゥべぇ…?」

ガシャァン!!

何か重たい金属の塊が落ちる音に驚いて振り返ると、そこには弾倉を空にした拳銃が地面に横たわっており、その後ろにはほむらが立っていたのだ。

「ひ、酷いよ!ほむらちゃん!」
「何も、殺さなくても…「どうして…?」

「え…?」
912 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:13:19.38 ID:3t32eJtZ0
「いい加減にしてよ!」
「勝手に自分を粗末にしないで!」
「貴方を失えば悲しむ人がいるって、如何して気付けないの!?」
「貴方を護ろうとした人は、どうなるの!?」

そう言ってほむらはまどかの肩を掴んで、泣いていた。

「……。」

その時、まどかの脳裏に何か、懐かしいような記憶が蘇っていた。
その記憶の中では『誰か』が『何か』と戦っていたのだが、思い出す事が出来ないでいた。
その誰かが、ほむらではないか?と思っていた。
913 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:14:15.69 ID:3t32eJtZ0
「う…うぅ…!」

「ねぇ、それってほむらちゃんの事?」

「!?」

その瞬間、ほむらは飛び退いてまどかから離れていた。

「私達って…何処かで会っている…?」
「此処じゃない、何処かで…」

「それは…」

ほむらが黙り込んで泣いてしまってた時、カイザーブレスから連絡の知らせが鳴った。
914 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:15:25.01 ID:3t32eJtZ0
「まどか!さやかの反応を見つける事が出来た!」

「ほ、本当!」

「あぁ、間違い無い!」
「直ぐに合流しよう」

「うん!」
「ほむらちゃん、私、さやかちゃんの所に行かないと…」

そう言ってまどかはエクスカイザーと合流する為に公園から走って行ってしまった。
ほむらはそれをただ涙を流して見送る事しか出来ないでいた。

「!ま、待って!行かないで!美樹さやかはもう…!」
「まどかぁ!!」

その後は、ただその場で両手で顔を覆い泣いている事しか出来なかった。
だが、そこに一つの影が、現れた。
915 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:16:25.09 ID:3t32eJtZ0
「やれやれ、無駄な事だと分かっているのに、懲りないんだな、君も」

ほむらは涙を拭い立ち上がり、振り向いた。
すると、そこには先程穴だらけになって絶命したはずのキュゥべぇがいたのだ。

「君に殺されるのは『2度目』だけどね、無意味に潰されるのはこっちだって困るんだよね」
「勿体無いじゃないか」

そう言って、自分の残骸の所まで行くと、その残骸を食べ始めたのだ。
その様をほむらは、おぞましい物を見るかの様な目で見つめており。
キュゥべぇは食べ終わるとそのまま喋りだした。
916 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:17:21.96 ID:3t32eJtZ0
「きゅっぷぃ、だが、おかげで君の攻撃の特性も見えてきたよ」
「先程のは時間操作の魔術だろう?」
「暁美ほむら」
「そして、君はこの時間軸の人間じゃないね?」

「…えぇ、そうよ、お前の正体も、企みも、全て知っているわ」
「だからこそ、まどかの運命を変えるために此処に居るの」

「なるほど、だからこんなにしつこく邪魔をするわけだ」

「お前の思惑通りにはさせないわ」
「キュゥべぇ…いいえ…」

「インキュベーター…」

ほむらの瞳は、その白い『悪魔』と証するに相応しい物に向けられていた。
917 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:18:10.26 ID:3t32eJtZ0

 見滝原市のとある駅、あのホステス達を無視してさやか達は下車してからずっとホームの椅子に座っていた。
二人揃って終始無言で、辺りは静寂に包まれていた。

「……。」

「……悪いね、いつも手間かけさせちゃって」

そう言って静寂を破ったのはさやかの方であった。

「何よ?改まっちゃって?」
「らしくないじゃんよ…」

「うん、何かさ、色々とどうでも良くなっちゃった」

そう言ってさやかはベンチに背中を預けて背伸びをしていた。
その様子を杏子は鼻を鳴らしながら見ていた。
918 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:19:36.50 ID:3t32eJtZ0
「ふーん、それで、如何するんだい?」

「如何しようかなぁ…」
「…といってもさ、これじゃ、如何しようも無いんだよね」

そう言って、さやかは手の上にソウルジェムを見える様に置いていた。
さやかのソウルジェムは酷く濁っており、もう限界が近い事を示していた。
それなのに、のんびりとしているさやかに杏子は驚いていた。

「な…!バカ野郎!早く浄化しろよ!」
「さっきアイツから貰った物があるだろ!?」

「良いんだよ、だから言ったでしょ?」
「どうでも良くなっちゃったって…」
919 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:20:59.97 ID:3t32eJtZ0
さやかの眼は何も見ておらず、ただ虚空を見つめていた。
それを見て、杏子は絶句していた。

「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって言ったでしょ?」
「今なら分かるよ」

そう言って、杏子に目を向けていた。
その目は澄んでおり、何の感情も載せていなかった。
逆にそれが杏子には怖く思ってしまっていた。

「確かにあたしは何人か救いはしたよ、でもその分、心には恨みや妬みが溜まっていった…」
「一番大切な友達も傷付けた」
「けれど、一番大切な人に一番言って貰いたかった事も言って貰えた…」
「誰かの幸せを願った分、他の誰かを呪わずにはいられない…」
「自分の幸せすらも、自分の呪いで駄目になる…」
「魔法少女ってそう言う仕組みだったんだね…」
920 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:21:43.07 ID:3t32eJtZ0
そう言ってさやかは涙を流していた。
その様に我慢できずに杏子が声を掛けた。

「アンタ…!」
「良いじゃんか!別にそれでも!だから言ったんだ!小銭を取り戻す努力をしろって!それなのにアンタは…!」

「…杏子ってさ、結構優しいんだ」

「な…!」

「こんな風にさ、近くに居てくれるのに、その好意すら受け止められない」
「あたしって、ホント「馬鹿だよ!」

「「!?」」
921 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:22:23.41 ID:3t32eJtZ0
突然の声に二人は驚いてその方向を向いた。
駅のホームにつながる階段の前。
其処には、何故か松葉杖を突いた恭介が居た。

「きょ、恭介!?」

「あの家の坊ちゃん?どうして此処が?」

「ハァ、ハァ、さやか、君の家から電話が、あったんだよ、ハァ」
「僕んちに来ていなかって、ハァ、だから、探していたんだ」
「そうしたら、ハァ、叫び声が聞こえてきて、ハァ…」

「だ、だからってそんな身体で…!」
922 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:23:14.50 ID:3t32eJtZ0
恭介は松葉杖を支えに上がった息を整えていた。

「はぁ、はぁ、さやか、君は本当に馬鹿だよ!」
「どうしてだよ!待っているって言ったじゃないか!?」

さやかは屋上での会話を思い出し、恭介の言葉に怯んでいたが。
直ぐに立ち直り、言い返していた。

「な、そんなの!恭介が勝手に言った事じゃない!」
「あたしには関係ないよ!」

「関係無くないだろ!僕は君の返事をまだ聞いていないんだから!」
923 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:23:59.05 ID:3t32eJtZ0
「何で待つのよ!あたしは魔法少女だよ!正義の味方だよ!ゾンビだよ!」

「そんな事知らないよ!」
「それに、さっきも聞いたよ!」

「そっ…!」

「大体、さやかは人の話を聞かなさ過ぎなんだ!」
「何時も自分一人で話しを進めようとして!偶には僕の話も聞いてくれよ!」

「な、い、何時、話を聞いていなかったって言うのよ!」

「何時もだろ!」
「僕の気なんか知らないで!勝手に今だって、自己完結しようとしていたじゃないか!」
924 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:24:36.55 ID:3t32eJtZ0
そう言って恭介は松葉杖を持ち上げてさやかに向けて指を刺すようにしていた。

「こうするしかないからこうしているの!」
「恭介には関係ないでしょ!」

さやかは立ち上がって、恭介を睨みながら反論していた。

「好きな人が目の前で自殺紛いの事をしているって言うのに止めない人がいると思うのかい?」

「何よ!アンタは好きでも!あたしはアンタを好きじゃないかもしれないじゃない!」
925 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:25:54.16 ID:3t32eJtZ0
「じゃあ何で待ってくれ何て言うんだよ!それなら脈ありみたいな事を言うなよ!」
「馬鹿さやか!」

そう言いながら恭介は松葉杖を突きながら二人に近づいて行った。
その言葉にキレたのか、さやかも蟹股で恭介に向かって行った。

「何よ!少し女の子にもてるからって天狗になっちゃって!仁美とでもくっ付いていれば良いじゃない!」
「アホ恭介!」

仕舞いにはお互いのおでこをぶつけ合っての押し合い圧し合い状態で睨み合っていた。

「何さ!」

「何だよ!」

「うっさい!!!!」

ガッ!!!ゴン!!!

鈍い音と共に二人の脳天に杏子の懇親の拳骨が叩き込まれていた。
926 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:26:45.86 ID:3t32eJtZ0
「喧しいよ!あんたら二人!夫婦喧嘩ならよそでやれ!」

そう言って杏子は駅の出入り口を指差していた。
その杏子に、頭を抑えながら、二人揃って同じ事を言っていた。

「「だって、恭介(さやか)が…「あ゛ぁ??」」

その途端、杏子に物凄いメンチを切られ、二人揃って謝る事になった。

「「御免なさい…」」

「……ハァ、ったく何よ、あんなに元気無かったくせに、今じゃ元に戻っちまって」
「これじゃあたしの立つ瀬が無いじゃん?」
927 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:27:26.78 ID:3t32eJtZ0
「あ…ゴメン、杏子」

「謝んなよ、謝るんなら、そこの坊ちゃんに謝りな」

そう言って杏子は親指で恭介を指差していた。
その恭介はその場で正座をしてさやかを見つめていた。

「さやか…」

「……。」

「あ・や・ま・れ」

杏子はそう言いながら怖い笑顔を近づけて、さやかはその迫力に負けていた。
928 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:28:07.63 ID:3t32eJtZ0
「わ、分かったから…恭介、あたし」

謝ろうとしたその時、周囲の視界が揺らぎ、変質しだした。

「「!?」」

「な、何だ!?これ!?」

「結界…!くそっ!こんな時に!」

そう悪態をつきながら杏子は変身してさやか達の前に立った。

「さやか!、そこの坊ちゃんを連れて逃げな!」
929 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:28:57.18 ID:3t32eJtZ0
「何言ってんの!あたしもたたか…「バカ言うな!」
「アンタのソウルジェムはもう限界なんだよ!戦える訳無いだろ!」

「でも…!」

「さやか…!」
「あれが、魔女なのかい!?」

そう恭介が言うと、遥か上空に羽を生やした箱の形をした物体が突然現れた。
すると、回りから人形のような化物が現れて囲まれてしまった。

(魔法少女、なう)
(それは無いでしょ、まさかこんな時間に)
(在り得ない事なんて在り得ない)
(ちょwww何処かで聞いたことあるwww)
(こんな所で話している俺らテラワロスwww)

「か、囲まれた!」
930 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:29:46.39 ID:3t32eJtZ0
「っ!恭介!あたしから離れないで!」

そう言ってさやかは恭介の目の前に移動して、守る態勢に入った。

「な、さやか早く逃げろ!」

「こんな状況で逃げられないよ!」
「それにあんただけ置いていけないよ!」

「さやか、戦うのかい?」

「うっ…」

そう言ってさやかはソウルジェムを見つめた、相変わらず黒く濁っており、何時魔法が使えなくなるか分からない。
もしかしたら、もう使えないのかもしれない。
931 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:31:06.48 ID:3t32eJtZ0
「クソッ!こんな時に助けがいれば…なんて、夢見すぎかね?」

そう言って杏子は槍を構え、使い魔たちを牽制していた。
さやか達に向かった使い魔にも同じ様にしていた。

「この、離れな!」

(一人でよう頑張る、なう)
(しかし、こちらも我慢の限界ktkr)

「!?うぁ!」

油断していた好きに、恭介が使い魔に捕まえられて、持ち上げられていた。

「しまった!」

「恭介ぇ!!」

「!さやか!!」
932 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:31:50.83 ID:3t32eJtZ0
さやかは飛び上がって恭介の手を掴んだのだが、それでも浮かび上がる速度は変わらず、二人とも持ち上げられてしまった。

「くぅ!」

「あ…!恭介!」

何時の間にか、助けようとしていたさやかの立場は逆転しており。
落とすまいと、恭介が必死になってさやかの手を握っていた。

「しっかり!さやか!」
「離さないから!」

「どうして、どうして恭介は…「好きだからだよ!」
「好きだからカッコいい所見せたいんだ!」
「ぐぅ!」

そう言ってはいたものの、病み上がりの恭介の腕ではさやかを掴んでいられる事はできず。
ズルズルとさやかの腕が落ちていった。
933 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:33:04.02 ID:3t32eJtZ0
「は、離して!恭介!落ちてもあたし!大丈夫だから!」

さやかは咄嗟に恭介に嘘を付いていたのだが、直ぐに恭介にばれてしまった。

「嘘だよ!さっき君は自分の宝石を見て動けなかった!」
「もう使えないんだろう!魔法が!」

「でも…!このままじゃ恭介の腕が…!」

「この程度で、また動けなくなる訳…!」

(面倒な男、なう)
(引っ張っちまえ、なう)

使い魔が上昇を止め、その場で恭介を方々に引っ張り出したのだ。
すると恭介の身体はゴムの様に伸ばされ、今にも引きちぎられてしまいそうになっていた。
934 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:34:33.98 ID:3t32eJtZ0
「うぐああぁ!!」

「恭介!」

「くそぉ!あんな所じゃ跳んでも届かねぇ!」

そう言いながら杏子は、群れた使い魔の相手をして焦っていた。
このままじゃ、二人とも助けられない、と。

「あたしが、あたしが魔法を使えたら…!」
「こんなヤツら…!」

「離さない、絶対離すもんか…!」

「恭介…!」

今にも恭介に亀裂が入って引き千切られそうになり、さやかは自分の非力を呪い、涙し。
来るとは思えない、助けを願っていた。
935 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:35:23.47 ID:3t32eJtZ0
「…助けて…助けて…」

「ぐぅ、さ、やか…」

「さやかぁ!!」

「誰か!助けてぇ!!」

936 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:36:34.62 ID:3t32eJtZ0
そう叫んだ時。
結界の頂点辺りに光が輝いた。
その光は自分で光っている様に見え、ブースターの様な輝きを放っていた。
そして次第に、その輝きは大きくなり、恭介達に近づいているのが分かった。
しかも、大きくなる毎にその光を放っている物体の上に誰かが乗っかっているのが分かった。
垂直に降下しているにも拘らず、その人間は物体の上にひざ立ちになっているのが分かった。
更に、その人物は脇を閉めて何かを構えているのが分かった。
その格好は恭介は見た事があった。
但し、映画やアニメの中だけで、本物は見た事が無かった。
ライフルを構えるその射撃姿勢は。
937 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:37:17.08 ID:3t32eJtZ0
「美樹さん!!!」

その人物はそう叫ぶと共に、構えていた銃から火を噴出した。

バババババアァアアン!!

一度に何度発射したのか分からないが、周囲の使い魔は全て吹き飛んだ。
すると、先程まで伸ばされていた、恭介の身体は元に戻り。
支えを失った恭介達はそのまま自由落下を開始した。
だが、落ちると思った瞬間。
その人物が載っていた小型のジェット機に助けられ、二人はその上に乗っけられていた。

蒼く輝く機体、ドラゴンジェットそのものであった。
そしてそれと入れ替わるように、乗っていた人物は杏子の方に突っ込んで行き。
途中で独楽の様に回転したかと思ったら、両手に持っていたマスケット銃で杏子の周りの使い魔を殴り飛ばして着地した。
938 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:38:09.14 ID:3t32eJtZ0
「御免なさい!遅れちゃった!」

其処には黄色を主体にした装束を着た、巴マミが立っていた。

「!!!」
「おせぇんだよぉ!」

そう言いながらも、その顔は笑顔で、杏子は周りの残っていた使い魔を叩き潰していた。
マミはその動きに合わせて、ダンスを踊る様なステップを交えながら杏子の後ろと、取りこぼした使い魔を打ち倒していった。

「ヒーローは遅れてやってくる、って言うじゃない?」

「ッハァ!超ウゼェ!!」
「でも…悪くねぇ!」

二人の動きは正に練達の動きで互いが互いの動き邪魔せず、互いの動きを加速させていった。
その中でも、何か気になったのか、杏子は振り向かずに、背中合わせのマミに声を掛けていた。
939 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:38:48.10 ID:3t32eJtZ0
「…もう大丈夫なのか?」

「当然よ、私は暁美さんの結末を認めないし」
「美樹さんをそんな結末にさせない!」
「そのために此処に来たの!」

「…ヘッ!」

そう言って二人はまた戦いを開始した。

「凄い…!」
「あの人達、さやか仲間の人なんだろう!」

「…うん」

さやかは嬉しくもあり、情けなく思っていた。
だが、その思考はマミの言葉で吹き飛ばされてしまった。

「美樹さん!後悔するのは後よ!悪いけど貴方達二人は私達が守るから!」
940 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:39:37.93 ID:3t32eJtZ0
「で、でもマミさん!」
「あの魔女が…」

そう言っている間にもドラゴンジェットの高度は下がり、マミ達が作った着陸地点に着地していた。

「言ったわよね?美樹さん」
「ヒーローは遅れてやってくるって」
「それは真打も同じって意味よ!!」

その言葉と同時に一つの影が結界を破って現れた。
影は大きく、人一人乗せられる位の細長い台車と、ラジコン位の車の連結した姿だった。

「エクスカイザー!!!」

「トォアァーーー!!!」

エクスカイザーは、キングローダーからブーストをかけてそのまま魔女に近づくと、変形してその右腕で魔女の側面を力の限り殴り抜けた。

(ボアーーー!!)

魔女はそのままの勢いで結界の側面に叩き付けられて動けなくなっていた。
941 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:40:27.43 ID:3t32eJtZ0
「抵抗する事の出来ない者達を甚振り、愉悦に浸る魔女よ!」
「そのような行い!このエクスカイザーが、許す訳にはいかない!!」

着地してエクスカイザーは壁面の魔女に指を刺し、大見得を切っていた。

「大丈夫か?さやか!」

「え、エクスカイザーまで…どうして…「さやかちゃーん!」

「!!」

そのよく聞いた事のある声に上を向くと、キングローダーがフライトモードで降りてきている姿が見えた。
その上部が見える所まで降りてくると、その上には親友が乗っかっていた。

「まどか!?」
942 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:41:22.11 ID:3t32eJtZ0
「えへへ、さやかちゃん、ゴメン、来ちゃった」

そう言って、まどかは舌を少し出して謝っていた。

「まどか、君達は此処にいるんだ!」
「魔女の相手は私がしよう!」

「うん!頑張って!エクスカイザー!」

「あぁ、勿論だ!」

『ドラゴンジェットォ!!』

エクスカイザーが叫ぶと、ドラゴンジェットが反応し、変形してハッチを開け、エクスカイザーを収納し。
ドラゴンカイザーへ合体した。
943 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:42:16.98 ID:3t32eJtZ0
『巨大合体!ドラゴンカイザー!!』

「ドラゴンカイザー!あの魔女を倒す方法は!?」

「一応ある、だが、私には飛行能力が無い!」
「マミ達がサポートして、足止めしてくれるか?」

「言われなくても!!」

そう言ってマミは上空から迫り来る使い魔に飛び掛り、そのまま足蹴にして上空に跳んだ。
そして、魔女が何とか使い魔に引きずり出されている所に銃弾を打ち込んでいった。
更にマミは、先程の様に回転しながら周囲の結界に銃弾を打ち込んでいた。
すると、以前薔薇の様な魔女を倒した時に使われた様な紐が生えてきて、箱型の魔女に絡み付いてちょうど結界の中心部に磔にした。
魔女は動けずにガタガタしていた。

「この拘束は以前よりも強力なの!」
「一筋縄ではいかないわよ!」

そういいながらマミは重力に引かれて落ちていき、その間にもマスケット銃を召喚して地面近くにいる使い魔達に掃射していた。
944 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:43:29.88 ID:3t32eJtZ0
「ドラゴンカイザー!!」

「今だ!かましちまえぇ!」

「分かった!」
「ドラゴンアーチェリー!!」

マミ達の声にドラゴンカイザーが雄叫びを上げると、以前と同じ様に金の飾りが変形し、巨大な弓へと変形した。
今回はその端から端まで一本の糸が見えており、ドラゴンカイザーは和弓の様に構えていた。
すると、背中に折り畳んだジェットの機首近くが開き、そこから一本の矢じりが見えた。
ドラゴンカイザーはその矢じりを掴み、引き抜くと、銀の矢の全体が現れた。
その矢を、ドラゴンカイザーが弓道を嗜む武人の如く構えると、何処からともなく稲妻が鳴り響いた。
その一つがドラゴンカイザーに命中すると、そのエネルギーがそのまま矢に流れて発光しだした。

「サンダァーアロォー!!」

ドラゴンカイザーはそのエネルギーが最大まで蓄積されると雄叫びと共に魔女に打ち込んだ。
雷の矢は光と共に魔女に命中し。
大爆発を引き起こし、魔女を撃ち倒した。
945 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:44:22.42 ID:3t32eJtZ0
(グ…パァーーーーーー!!!!)

そしてドラゴンカイザーは相手が倒れたのを確認すると。
弓を頭上で回転させて、胸部に取り付けて、龍の瞳の輝きで戦闘を終えた。

「フン…デェヤァ!!」

ヴュイィィン!!!

魔女が倒された事によって結界は維持できなくなり、自壊した。
そしてほむらを除いた魔法少女が今、此処に終結していた。

「さやかちゃん…」

「まどか…」

「全く、放って置くと無茶ばかりするんだから、今度は助けないわよ?」
946 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:45:17.84 ID:3t32eJtZ0
「マミさん…」

「あぁ、そうだよ、これだからトーシロのさやかは困るってんだ」

「杏子…」

「さやか、君が如何思おうとも、彼女達は君の事を心配して此処まで来たんだ」
「言う事があるだろう?」

マスクを外してドラゴンカイザーはそう言っていた。
さやかは最初モジモジしていたのだが。

「さやか」

恭介のその言葉でようやく口を開きだした。
947 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:45:58.36 ID:3t32eJtZ0
「…マミさん、杏子、恭介、ドラゴンカイザー」
「…まどか…」
「…有難う」

「良いのよ、仲間なんだもの」
「助けるのは当たり前よ」

「…はぁ、マミ、あんたはどこまでお人好しなんだか」

「あら?そのお人よしと一緒に闘っていたのは何処の誰だったかしら?」

「う、うるさい!」///

「ははは、さやか、君の仲間は本当に凄いね…?さやか?」
948 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:46:45.39 ID:3t32eJtZ0
恭介が見るとさやかは俯いて泣いていた。

「…ホント、馬鹿だよ…あたし…」

ピシッ!
949 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:47:26.94 ID:3t32eJtZ0
「こうしてあたしの心配をして駆けつけてくれる仲間がいたのに、それすら跳ね除けてようとして、無理して、カッコ付けて…」

パキパキパキッ!

「結局駄目になって…」

ピリピキキキキッ!

「迷惑かけて、仲間の大切さを教えてもらって…」

キキキキキキピキッ!
950 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:48:01.47 ID:3t32eJtZ0
「仲間を信じる事が、どんなに大事なのか教えてもらって…」

「お、オイ、さやか…」

ビキッ!!

「あたしって、ほんとバカ」

さやかの涙がソウルジェムに落ちて弾けると。

パキィン!!

ソウルジェムが弾け、一際大きく光り輝くと、それを飲み込むように黒い波が周囲を吹き飛ばした。
951 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:48:37.03 ID:3t32eJtZ0
「うわぁ!」

「キャァ!!」

「ぬわぁ!!」

「クゥ、さやかぁぁぁぁぁぁ!!!」

さやかは倒れ伏し、その上でグリーフシードが一際大きく脈動すると、そこから新たな魔女が生み出されようとしていた。
952 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:49:24.82 ID:3t32eJtZ0
「この国では、成長途中の女の事を」
「『少女』って呼ぶんだろう?」
「それなら、やがて『魔女』になる君達の事は」
「『魔法少女』と呼ぶべきだよね?」

感情の篭っていない瞳が、その波動を生み出す地点をただただ、眺めていた。


第8話 完
953 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/26(金) 03:50:18.03 ID:3t32eJtZ0
次回予告

「あれがさやかだって!?フザケんな!」
「あんたら、もしかしたらさやかを助ける事が出来るかも知れない」
「一人ぼっちは、嫌だもんな」
「!?な、何でお前が…!」
「次回 勇者 エクス☆マギカ『そんなの、あたしが許さない』」
「あんたの家にもさ、宇宙人いる?」

予告担当:佐倉杏子
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga]:2011/08/26(金) 03:56:45.47 ID:3t32eJtZ0
予定としては10話位までで1スレ消化と思っていたのですがこのザマよ!
と、言うわけで8話終了です。

恭介をイケメンに書き過ぎた、此処まで大胆に動くなんて予測つかねぇし…。
そうなってしまったのは全て私の責任だ。
だが私は謝らない。
こうしなければ、さやかハッピーエンドフラグが成立しない予定だったからだ。
一応ココマデデハノカゲ版2巻が終わりますので次レスはキャラ紹介です。

後、もう新しいスレは建てておいた方が良いでしょうか?
もし良いのなら、此方の残りのレスは全て質問等で埋めようかな…と思っているんですが。
どうでしょう?
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[saga sage]:2011/08/26(金) 04:13:35.39 ID:3t32eJtZ0
鹿目まどか:主人公です…一応…
 さやか達に食われ気味で動かせない!
 魔法少女にはなりませんのであしからず。
 
美樹さやか:さやかちゃんに幸せになって欲しいんだ!
 さやかの幸せになる条件の一つにソウルジェムが関わっていると思います。
 後、恭介の動向。
 8話にて一度だけ私になっております。

暁美ほむら:もう一人の主人公…?
 だけど、手札は見せない、動かない、泣き虫、ほむほむ。
 4話までとはえらい違いでコッチが泣きそうです。

巴マミ:先輩風を吹かせれば錯乱しないんじゃないか、と思いました。
 本編中一度だけ病んでいましたけど、状況にもよるんじゃないでしょうか?
 安直ですが…。

佐倉杏子:さやかは仕方の無い妹みたいな感じで見ております。
 割と熱血な感じになってしもうた…。
 あんこファン、ゴメンよ…!

エクスカイザー:地球にやって来たのは矢張り理由があったからです。
 キュゥべぇにはもう悪い印象しか持っていませんが、それでも対等に接するのが宇宙警察の彼である。
 そう思っています。

キュゥべぇ:元凶
 スーパーなのかは分かりかねますが、営業マンであるのは確実。
 ずっとエクスカイザーを監視していました。
 ついでに、エクスカイザーがさやかの反応を見失ったのはこいつの所為と言う事で。

志筑仁美:
 今回さやかに幸せになってもらう為に貧乏くじを引いてもらう事になってしまいました。
 ゴメンよ…!

上条恭介:謎のイケメン化
 そげぶはしませんが、行動力が半端無い事に…。
 でも、これ位ならするのではないかな?とも思っています。

すみません、流石にもう限界が来たので落ちます。
それでは。
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/08/26(金) 07:27:53.94 ID:q/SagF9Co
お疲れ様でした
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/08/26(金) 15:14:51.06 ID:EiepPCwD0

まどかはやっぱ魔法少女にはならんか
本編でもほとんど傍観者だったしな
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/08/27(土) 00:04:54.54 ID:sH7Ss30T0
上条恭介も本編でもコレくらい行動力があれば、さやかも絶望しなかっただろうな…
でもコレだとさやかが絶望するには説得力が足りないと思う。

ハッピーエンドフラグもなにも
魔女化=死亡だと思うし、(魔女は魔法少女の生前の残留思念が実体化したものだと思う)
魔女化したら助からないと思うけど(QBと契約すれば話は別だろうけど)。
959 : ◆1B0iEDnTxU[saga sage]:2011/08/27(土) 01:09:18.21 ID:6Tn/feX+0
レス有難うございます。

>>957さん
まどかは本気で悩みました。
けど、今回のまどかは戦いを後から見守る。
戦わない戦いをしてもらっています。
…意味分からなかったらすみません。

>>958さん
確かに少し弱いかな、とも思ったんですが。
ネタバレすると。
さやかのソウルジェムが割れた原因は他にあります。
一縷でも希望があるのならソウルジェムが濁らない様に、少し無謀な設定を考えております。
ソウルジェムはどんなものに反応するのか、詳しく言及されていません。
恐慌状態のマミさんでもジェムは輝いていましたし…。
ならば…。

と言う感じです。
その辺りも、追々語って行こうと思いますので、お待ちください。

それでは、長文失礼しました。

本気で何言っているか分からなかったらすみませんでした。
960 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/09/03(土) 14:51:41.00 ID:tyMB5B5B0
どうもお久し鰤です。
一応報告兼スレの保守です。
9話はやっとこさ軌道に乗ってきたのでもう少しで投下できると思います。
もう暫くお待ちを。
後、これ以上このスレで投下すると途中で切れてしまうと思いますので。
9話完成時には
ほむら「勇者 エクス☆マギカ」
で立てようと思います。
その際にはアドレスを此方に立てようと思いますので、しばしお待ちください
それでは。
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/09/05(月) 00:13:08.28 ID:enFYkMq9o
まだー
962 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/09/05(月) 00:40:01.58 ID:2aa9vHKG0
>>961さん
すみません!もう少しお待ちを!
戦闘の描写がうまく行かん…。
963 :お待たせしました ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/09/06(火) 03:56:03.03 ID:FRdcbQBa0
完成したので推敲してからの投稿になります!
でも無理、寝ます。
投稿は恐らく明日以降になるものと思ってください。
それでは。
964 : ◆1B0iEDnTxU[ saga]:2011/09/07(水) 00:39:41.18 ID:mHFcqSHg0
新スレ移行&9話投稿完了しましたので此方にも新スレのアドレス貼っておきます。
ほむら「勇者 エクス☆マギカ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1315310334/

これで、此方での更新はなくなったと思うのですが、HTML化依頼スレに報告した方が良いんでしょうか?
あと、HTML化したとき現行スレからも閲覧できるのでしょうか?

教えてもらえますでしょうか?
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)[sage]:2011/09/07(水) 23:50:12.58 ID:A1PZX5vQ0
HTM化依頼した方がいいかもね
HTM化したら現行スレは閲覧できなくなるから次スレに今のスレのアドを載せるの推奨
966 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/09/08(木) 00:19:52.62 ID:L7Kjpo5t0
成程。
有難うございます。
早速申請しておきます。
967 : ◆1B0iEDnTxU[sage saga]:2011/09/08(木) 00:29:13.65 ID:L7Kjpo5t0
よし、依頼完了。
これで此方の更新は無いと思います。
続きは新スレにて。

見て下さっている方、本当に有難うございました。
続きもどうか御贔屓にお願いいたします。

それでは。



Pastlog.cgi Ver2.0
Powered By VIP Service
Script Base by toshinari