◆1BrjSSUSHI<>sega<>2012/01/25(水) 00:20:02.40 ID:NUXA2sMd0<>茜「会って欲しい人がいるんだよ、杏ちゃん」

茜がこんなことを言ってきたのは、昨日の帰り道だった
誰かと聞いても茜は答えようとしない
でも
会わなきゃいけない気がした

たぶん
わたしの不安感から来ているのだろう
最近、物事を忘れるようになってしまった
原因はだいたいわかってる

枯れない桜が枯れ始めたからだ

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<>杏「桜はいつか散るもの」D.C.UPS
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:21:47.28 ID:NUXA2sMd0<> 杏「ちょっと早く来過ぎちゃったな」

早めに家を出て来たせいだ
約束を忘れてしまうんじゃないかって思ったから

杏(わたしが会う人を覚えていられてればいいんだけど)

???「お待たせ」

その人を見て、わたしは驚いた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:23:31.88 ID:NUXA2sMd0<> 杏「茜?」

茜「う、うん」

杏「どうして?」

茜「ごめんね、今日だけは杏ちゃんと過ごしたくて」

そう言う茜の顔は真剣で
まったく茶化す気にもなれなかった <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:25:06.28 ID:NUXA2sMd0<> なにか心配事でもあるんだろうか
そう心配するわたしをよそに
茜は延々と思い出話を始めた

時々忘れてしまってることが出てきて切なくなったけど
わたしには有難かった
茜の思い出の中のわたしは
揺らいでいた、わたしの存在感を取り戻してくれたから

茜「懐かしいよね、杏ちゃん」

屈託のない茜の笑顔
でも、なぜだろう
わたしは違和感を感じた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:29:37.25 ID:NUXA2sMd0<> 杏「茜・・・だよね」

茜「え?」

杏「あなた、茜だよね?」

返事はなかった
その代わり
茜の顔は、みるみる内に涙でくしゃくしゃになっていった
しまった
すごくひどいことを言ってしまった
謝らなきゃ

でも
茜の口から出て来た言葉は、全く予想と違ってた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:32:41.23 ID:NUXA2sMd0<> 茜「ありがとう」

茜「ちゃんとわたしを感じてくれたんだね」

杏「え?」

どうしよう
思考が全然追い付いていかない
茜はなにを言ってるんだろう

茜「笑わないで聞いてくれる?」

わたしは黙って頷いた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:36:32.89 ID:NUXA2sMd0<> 茜「わたしは茜じゃないの」

杏「どういうこと?」

茜「わたしは藍・・・茜ちゃんの妹だよ」

なにを
言っているの

藍「こう言えば杏ちゃんにはわかるかな」

藍「わたしは枯れない桜が起こしてくれた奇跡」 <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:42:38.06 ID:NUXA2sMd0<> 杏「茜も枯れない桜に願い事を?」

茜、いえ藍はなにも言わずに頬笑みを浮かべた

杏「やっぱりあったのね、桜の魔法」

藍「そう、魔法かもしれないね」

藍は包み隠さず、ゆっくりと話を続ける
まるで記憶を噛み締めるように

わたしは全てを理解した
茜が望んだ願い
かなえられた奇跡
そして

藍がわたしに会うのを望んだのが
今日である理由も <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:46:26.94 ID:NUXA2sMd0<> 杏「いなくなってしまうの?」

藍「うん」

杏「茜はいま、どうしてるの?」

藍「一緒にいるよ」

藍「一緒にいて、心の中で話を聞いてる」

わたしは茜の苦悩を思い浮かべた
茜は二度も妹を失うことになるのだ <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:50:01.04 ID:NUXA2sMd0<> 杏「どうにかならないの?」

藍「それは杏ちゃんも良くわかってるはず」

その通りだった
でも言わずにいられなかったのだ

杏「今日なのね」

藍の瞳から、一筋の涙がこぼれた
わたしはいままで
こんなに寂しい涙を見たことがなかった <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:54:58.42 ID:NUXA2sMd0<> 藍「行こう、あの場所へ」

そして、わたし達は歩いている
夕闇に包まれ始めた公園の道
枯れない桜へと続く道を

手をつなぎ、互いのぬくもりを感じて歩く
忘れないように
記憶の中に、とどめておけるように <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 00:59:19.78 ID:NUXA2sMd0<> 藍「枯れちゃってるね」

杏「うん」

どうして枯れない桜が枯れてしまったのか
原因はわかっていないらしい
でも
いまは自然なことに思える

杏「桜はいつか散るもの、か」

藍「そうだね」

藍「散って、また次の春に花を咲かせるんだよね」 <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 01:04:52.76 ID:NUXA2sMd0<> 藍「午前中はね、小恋ちゃんに会いに行ってたの」

杏「そう」

藍「わたしの存在は明かさなかったけど」

杏「小恋も義之に恋人が出来て、辛いだろうしね」

藍「うん、早く元気になるといいな」

わたしは改めて藍を見た
茜の姿をした藍は
その名の通り、藍色に染まっていた

いつの間にか夕日が沈んでた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 01:10:50.40 ID:NUXA2sMd0<> 杏「雪月花は四人だったのね」

藍「・・・杏ちゃん」

杏「雪月花が藍色に染まる・・・なかなかいいよね」

藍は泣き崩れた
抱き締めるわたしの顔もくしゃくしゃになってるなんて
言うまでもないことだ

わたし達の泣き声以外に音もなく
辺りは冷たく静まり返っていた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 01:16:19.43 ID:NUXA2sMd0<> 藍「そろそろお別れかも」

杏「そう」

それしか言えない
なにか言おうとしたら崩れてしまいそうだ

藍「茜ちゃんをよろしくね」

わたしは
黙って頷くしか出来ない

藍「杏ちゃんにも、茜ちゃんの存在は支えになるはずだよ」

わかってる
でも
その未来に藍がいないことに
改めて寂しさを覚えた <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 01:21:05.53 ID:NUXA2sMd0<> 杏「消えちゃだめ、消えないでよ」

理不尽なことを言ってる
こんなの全然わたしらしくない
だけど

だけど

藍「思い出の中にわたしはいるよ」

藍「杏ちゃんの中に、いつまでもいるよ」

そして藍は消えた

わたしが抱き締めているのは
わたしと同じく、寂しさに身を震わせる茜だった <>
◆1BrjSSUSHI<>sage<>2012/01/25(水) 01:25:48.76 ID:NUXA2sMd0<> 春
わたしは本校の制服に身を包んでいた
桜並木を歩く
そこはあの日、藍と並んで歩いた道

そう
わたしは藍の存在を忘れないでいられた

茜「おっはよー、杏ちゃん」

杏「おはよ」

茜「桜が満開だねぇ」

それはそうだ
だって

藍『散って、また次の春に花を咲かせるんだよね』



END <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/01/25(水) 01:52:02.78 ID:10MtEGKDO<> おつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/25(水) 08:27:12.95 ID:dWSbtn3IO<> 乙乙 <>