◆CEzmHsJrWFNc<><>2012/03/10(土) 03:50:53.28 ID:ifDOgt6po<>美琴と婚后さんのコンビを書きたくなった
週一連載を目標に頑張りたいと思う
息抜きに書くSSだから暇な時にでも読んでくれ
そんでなおしたほうがいいところとか指摘してくれると嬉しいな
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1331319053(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>佐天「風雷コンビは二人でひとつ!ですよね!」
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:52:06.48 ID:ifDOgt6po<>
〜〜〜
学園都市、そこは科学と超能力、そして―― 学生の街。
街中は様々な表情の学生で溢れており、表面的に見たら治安はよく見える。
が、一歩路地裏に入れば……。
「や、やめてください」
「あ?てめぇがぶつかってきたんだろーが?イシャリョー払えよイシャリョー、あー腕いてぇなぁあ!
折れてっかもしんねぇなぁ!おれカルシウム不足だからよぉ?」
「あ、あんたが前みて歩かないからぶつかってきたんでしょ!」
威勢を張るが、少女の目には涙がたまり足は震えている。
「あ?悪りぃ事したのに謝る事も出来ねーのか最近のチューガクセーってやつは?育つのは身体だけですかぁ?」
こういう時、小説やアニメならば、かっこいいヒーローが現れるものだが……と少女はありもしない幻想を思い浮かべる。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:52:58.96 ID:ifDOgt6po<>
「ほら、さっさと金だせよ……なんならその無駄に発育した身体で払ってもらってもいいんだぜ?」
ぎゃははは、と男達は下品に笑った。
少女は虚構の威勢も消え、ただ震えるだけだ。
―― 誰か……助けて!
ジリジリと後ずさりながら、神に祈りを捧げるように強く思う。
しかし助けなんて来るとは思ってはいない。
先に言ったとおり、こんな時に助けに来てくれるのはヒーローで、助けられる幸運な子はヒロインである。
少女は自分が物語のヒロインだなんて思った事はない。
後ずさる少女を男たちはニタニタ笑いながら追い詰める。
そして、男たちの手がその少女にまさに伸びようとした時、
「ちょろっといいかしら?」
漫画のようにヒーローが現れた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:54:28.86 ID:ifDOgt6po<>
いや、ヒーローではない。
現れたのはパチパチと電気をまとった一人の女の子。
その目は怒りに満ち、全身からは自信と正義感が溢れ出ていた。
「あ?んだてめぇは?カンケーねぇだろすっこんで―― 」
男たちの一人が発電少女に突っかかろうと一歩近づいた瞬間、男の顔面に空きカンが恐るべき疾さで突き刺さった。
「か弱い少女に狼藉を働く輩など、有無を言わせず黙らせた方がよろしいですわよ?御坂さん」
「い、やぁ……流石にいきなりはどうだろう?
でも、ま、これでカンケーないから消えろってわけにはいかなくなったんじゃない?ねぇ?」
カツカツと気品さと優雅さが服をきたような一目でお嬢様とわかる少女が電気を纏う少女の後ろから歩み寄って来た。
電気を纏う少女―― 御坂と呼ばれた少女―― は苦笑いながらそのお嬢様に苦言を漏らすと、次に男たちを睨みつけ威嚇するように纏う電気を激しくさせた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:55:02.00 ID:ifDOgt6po<>
男たちはターゲットを突如現れた二人組に変更し、ズカズカと距離を詰めていく。
そして拳を振り上げ殴りかかろうとした瞬間、ぱたっと力なく崩れた。
「え?」
最初に絡まれていた少女は驚きの声を上げる。
男に目立った外傷はない。
突然気絶したようにしか見えなかったからだ。
電撃少女が特別何かをしたようにも見えなかった。
「な、なにが起きたっ?」
男たちは謎の力に恐れる。
「ちょっと触れて体内電流いじっただけよ、ガタガタ騒がないで」
電撃少女は静かにそういい、そして、大きく息を吸い続ける。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:55:38.92 ID:ifDOgt6po<>
「あんたらがその子に与えた恐怖を考えたら気絶させるだけなんて良心的でしょう」
その一言で、男たちの戦意は喪失しかける。
「ぐぐぐ……ぜ、全員で一斉にかかれ!能力者でもガキはガキだ!」
しかし、リーダーのその声に、喪失した戦意を敵意と変え御坂へと襲いかかった。
「逃げればよろしかったものを」
御坂の後ろから襲いかかってる連中に小声でそうつぶやき、向かっていくのはお嬢様風の少女だ。
先頭にいた男の拳をよけるとその男の腹に手を当て思い切り―― 吹き飛ばした。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:56:58.19 ID:ifDOgt6po<>
「運が悪かったですわね私達―― 」
扇子をピシャリと閉じると先端を男たちに向け言った。
「常盤台の」
御坂も次の男を今度はわかりやすく電撃で気絶させるとそれに続き叫んだ。
「風神!」
派手に雷を男たちと自分達の間に落とす。
「雷神コンビの目が黒いうちは!」
「か弱き者に卑怯な狼藉など許しませんわ!」
―― これが、私佐天涙子と常盤台の風雷コンビこと、婚后光子と御坂美琴との出会いであった。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:57:52.45 ID:ifDOgt6po<>
〜〜〜
「ふん、どんなもんだい!」
逃げる男共の背中を見つめながら御坂は腕組みをし、満足気に笑った。
「……」
襲われていた少女はぽかんと阿呆のように口を開けている。
「大丈夫ですか?」
そんな彼女にお嬢様風の少女は優しく声をかけた。
その声に襲われていた黒髪の美しい少女は我に返る。
「あ、はっはい!どうも、あの助けていただいてありがとうございます!
私、柵川中学校の一年生で佐天涙子っていいます!」
「弱き者を助けるのは強き者の役目ですから……お気になさらず。
私は婚后光子と申します、以後お見知りおきを……では、御坂さん行きましょう」
ニッコリ笑うと、御坂の手を取り走り去って行った。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:58:35.65 ID:ifDOgt6po<>
―― 弱き者……か。でも、ああやって助けてくれる高レベルの能力者もいるのか……。
佐天も二人を見送ったあと、いそいそとその場をあとにする。
―― 婚后さんと、ミサカさんか。また会えたらいいなぁ……って無理か、常盤台といったら本物のお嬢様。
婚后さんは雰囲気が既にお嬢様だったし……それに比べて私は庶民だもんなぁ。
佐天涙子は自身が無能力者という事もあり、能力者、特に高レベルの能力者が苦手であった。
嫌えてしまえばいっそ楽なのだが、それは完全なる逆恨みである。
そんな事はしてはいけない。
だから「苦手なだけなんだ」と自分に言い聞かせていた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:59:01.41 ID:ifDOgt6po<> では何故苦手なのか、それは高レベルの能力者は自分達無能力者を見下している。
佐天にはそう思えてしょうがなかったのだ。
そして、高レベル者の前に立つと「出来損ない」と烙印を押されているような気分になってしまうのだ。
そんな事をあれこれ考えながらとぼとぼと、遠回りになるが、大通りを歩いて寮へとむかった。
佐天はまだ知らない。
数日後にこの二人と再開する事を……。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/10(土) 03:59:36.00 ID:ifDOgt6po<>
〜〜〜
「佐天さん!佐天さん!」
風雷コンビとの出会いから数日後学校に着くなり、佐天は親友の初春飾利にまくしたてられる。
「どうどう、落ち着け初春……で?どうしたの?」
興奮する初春を落ち着かせようと肩を抑え、軽く揺する。
「今日放課後暇ですか?暇ですよね?佐天さんですもんね!」
「ちょっとまて」
「待ちません!実は風紀委員の同僚があの常盤台の超電磁砲、レベル5の第三位御坂美琴さんと会わせてくれるって言うんですよ!」
「常盤台?……ミサカさん?」
数日前の出来事を思い出す。
『では、御坂さん行きましょう』
そして、あの時互いに自己紹介をした婚后さんはもう一人を御坂さんと呼んでいたことを思い出した。
―― ま、御坂なんて珍しい苗字じゃないし偶然だよね。ビリビリ能力なんてのも珍しくないし。
「佐天さん?」
急に黙り込み、なにやら考え込んだ佐天の顔を初春は覗き込んだ。
「ん、いやなんでもない。あんま興味ないけどいいよ、付き合うよ」
こうして、佐天と雷神御坂美琴の再会はあっさりと果たされる事となる。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/10(土) 04:03:03.62 ID:ifDOgt6po<> こんな感じで少しずつ更新していくんでよろしく <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/10(土) 04:38:23.15 ID:ItI4twTgo<> 期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/10(土) 08:39:49.09 ID:XYB+vZNIO<> 婚后さんとか完全に俺得
超絶期待 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2012/03/10(土) 11:13:30.49 ID:m8/3nWBAO<> 合体はよ
撃翌龍神まだか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)<>sage<>2012/03/10(土) 14:02:43.16 ID:1UXzy1upo<> 「北斗の拳」、カサンドラの門番を思い出したのは俺だけでいい <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/17(土) 10:23:43.34 ID:PSmiB/iao<>
〜〜〜
「あ、いたいた!おーい!白井さーん!」
放課後、るんるん気分の初春はあまり乗り気では無い佐天を引っ張るように、待ち合わせ場所へと向かった。
そして、同僚の姿を見かけると、手をぱたぱたと振りながら駆け寄る。
「あれ?御坂美琴さんはいないんですか?」
そして、そこにいるだろうと思っていた憧れの人がおらず、白井一人だと言う事に気がついた。
「お姉様ならコンビニにいますわよ」
そういう白井が指差した先にはコンビニで漫画雑誌を立ち読みする常盤台の制服を着た茶髪と金髪の間のような髪色をしたボーイッシュな雰囲気の女の子がいた。
―― 顔はよく見えないけど、多分あの時の人と同じだろうな。
佐天は心に何か引っかかりを感じる。
そんな佐天の心など二人は知り用もない白井は初春に佐天の事を尋ねる。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/17(土) 10:24:37.40 ID:PSmiB/iao<>
「そろそろ読み終わると思うので……そちらの方は?」
「あ、初春の友達の佐天涙子でーす。無能力者でーす。役立たずでーす」
白井さんはレベル4の空間移動能力者で優秀といえば優秀な風紀委員だと初春から聞いていた佐天は、バカにされる前に「レベル0だなんて、そんな事気にしていない」という態度を取る事で、自分の気持ちを保とうとほぼ無意識に考えていた。
「……白井黒子ですの。レベル4の空間移動、初春とは風紀委員の同僚ですの」
三人の間に微妙な空気が流れる。
「ごめんごめん!黒子の友達もう来てたんだ!」
そんな最悪な空気だとは知らず飛び込む御坂。
その御坂の顔をしっかりと確認し、やはりこの人だったか。なんか複雑だなぁ。と佐天は心の引っ掛かりをさらに強く感じた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:26:43.58 ID:PSmiB/iao<>
―― どうせ気づかないんだろうな、婚后さんとは自己紹介したけどこの人は私なんかに興味もなかったみたいだし。
「あれ? あなた……佐天涙子ちゃんだ!」
「へ?」
―― お、覚えてるの?なんで?
御坂が佐天を知っている事に初春、白井も疑問の声をあげたが御坂はそれどころではないというように、佐天の手を取った。
「また会えたね、そういえば婚后さんは自己紹介してたけど私はしてなかったわよね?
婚后さんたら自分が無理矢理引っ張って行ったくせに自己紹介しなかった事怒ったのよ?
本当、自分勝手よね!ね、そう思わない?」
「え?あ、いや……はぁ? そう、ですね?」
「あ、ごめんごめん。私は御坂美琴、常盤台の二年生よ。
あなたが佐天涙子ちゃんだから……こっちの子が黒子のいってた初春さんね?よろしく!」
ニコニコと饒舌に話す御坂に、佐天も初春も完全に面食らっている。
だが、そんな御坂の元気が三人の間の空気を入れ替え、和やかな物へと変えた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:28:04.43 ID:PSmiB/iao<>
白井はため息をひとつつくと、若干微笑みながら佐天に視線を向けながら首をかしげた。
「……御坂さん、こないだはありがとうございました。私御坂さんの事知ってはいましたけど気づきませんでした。
まさかレベル5にこんな助けても特にならないような無能力者を助けてくれる人がいるなんて……とても思えなくて」
佐天は白井から目を逸らすと、一瞬で打ち解けている御坂と初春の方へ意識を移し、そう言った。
「どういたしまして、でもなんの特にもならないって……そんなわけないじゃない!
現に今、こうしてすぐに仲良くなれた!これって多分こないだの事があったからよ」
またしても、佐天は面食らう事になった。
―― これが学園都市のトップに君臨する超能力者の第三位?
「ま、そんな話はいいわ。とりあえず遊び行きましょ!」
太陽のような、と例えるのがふさわしい、いや彼女の爛々と輝く笑顔は佐天には太陽よりも輝き、稲妻よりも美しく思えた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:29:20.81 ID:PSmiB/iao<>
「白井さん」
佐天は歩き出した御坂の背中を見つめながら白井に声をかける。
―― もしかしたら、この人たちと一緒にいたら、私も何かが変わるかもしれない。
「……お姉さまはレベル1からレベル5まで上り詰めましたの。
だから、レベルで絶対的な評価を下されるこの街の中でも、レベルで人をみようとしませんの……自身も低レベルの時代の苦しみや辛さを知っておりますから」
―― この人は、あの人を尊敬してそばについている。
そして、あの人もこの人を受け入れているんだ。
「白井さん、ごめんなさい。私……」
―― だから多分、この人もレベルなんかで人を見ない。ちゃんと、私自身をみてくれる。
佐天は、自分自身に笑いかけるようにうつむき頬を崩した。
学園都市に来てから約三ヶ月、たったそれだけの期間だが、佐天の心はこの街でレベル0だという現実に蝕まれている錯覚にとらわれてしまうのだ。
「別に、気にしておりませんの」
白井はまっすぐ前を歩く御坂の背中を誇らしげな視線で見つめながら、そう答えた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:30:05.23 ID:PSmiB/iao<>
〜〜〜
御坂を先頭に四人は特に当てもなく歩いていた。
学生の街は夏休みも間近という事もあるのか、活気に満ちている。
飛行船の落とす影と、楽しそうに歩く年齢も性別も、そして制服も様々な学生たちはみんな笑顔であった。
その中に、目の下にくまを作った夏の太陽にも負けぬような確固たる意志を持った目を妖しく光らせる白衣の女性が歩いていた。
御坂達は、その女性とすれ違うが白衣の大人などこの街では珍しくもない。その存在を視覚してもその記憶は脳内の奥底へと葬られる。
だが、四人の中でただ一人佐天はその異質な空気を感じ取っていた。
―― なんだ?あの人……なんか、怖い?とはちょっと違う……けど、なんだろ? <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:30:53.20 ID:PSmiB/iao<>
「佐天さん?どうしたの?」
足を止めその女性を目で追おうとすると、御坂が一人遅れる佐天に声をかけてきた。
「あ、いや……なんでもないですよ」
佐天は再び足を動かしながら三人の元へと、駆け足気味に駆け寄った。
そして四人はまたそのまましばらく歩く。
「新しくそこの公園にオープンしましたー、クレープ屋でーす!よかったらどうぞー」
エプロンをし、バンダナを頭に巻いたいかにも屋台の店員さんといった風貌の明るい声に、思わず四人は順番にそのチラシを受け取ってしまう。
「……こういうチラシって配るのやけに上手い人っていますよね」
歩きながらチラシに目を通しながら、佐天はあきれたように言った。
「何も四人全員もらう必要はありませんのにね」
白井も同じように、クレープのイラストと簡単な地図の書かれたそれを、苦笑しながら見ている。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:31:33.41 ID:PSmiB/iao<>
「逆にティッシュとか配っててちょうど鼻かみたいのに切らしてたから欲しいなぁって時に自分だけスルーされる事もありますよね」
「あるある!でも自分から下さいとは言えないよね」
白井にその感覚はよくわからなかったらしいが、佐天と初春はティッシュ配り、チラシ配りのあるあるネタで盛り上がる。
そんな二人を気抜けしたような表情で見つめていた。
そして佐天が、御坂に話を振ろうとして、気がついた。
「あれ?御坂さんは?」
「え?」
「あら?」
三人は、周りを見渡す。
すると、チラシを受け取った地点から、数メートルのところでチラシを凝視しながら固まる御坂の姿があった。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:32:12.36 ID:PSmiB/iao<>
「御坂さん?」
小走りで駆け寄り、佐天は御坂の肩を揺らす。
そこで、自分の足が止まっていた事に気づき、慌てて顔をあげた。
「え?あ、いやなんでもないわ!うん、なんでもないの!さて、どこいこっか?」
不自然なほどニコニコしながら、御坂は佐天の手を取り白井と初春の元へと歩みを進めた。
佐天と初春はそんな御坂の不審な行動に首をかしげたが、白井だけは呆れたようにため息をついていた。
「お姉さま? “また” カエルですの?」
「カエルじゃない! ゲコ太よ! ……あ」
「なるほど、御坂さんはクレープ屋さんで貰えるこの珍妙なカエルマスコットが好きなんですね!」
「案外子供っぽいんですね。まぁ、じゃあ行きましょうか」
佐天、初春は顔を赤くする御坂を置いて勝手に話を進める。
「べ、別に欲しいわけじゃ……」
先輩としての面子を保ちたいのか、第三位としての威厳を保ちたいのかはわからないが、御坂は嬉しそうに“しょうがないから行くんだからね!”という姿勢を崩さなかった。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/17(土) 10:35:37.64 ID:PSmiB/iao<> 俺が佐天さん書くとどうも精神不安定な子になっちまうなぁ
あと前回SS書いた時詰め込みすぎだと言われたから今回かなりスカスカにしてるけど逆に見にくかったりしたらいってください
ではまた一週間以内に来ます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/03/19(月) 16:53:08.40 ID:UdsD+Fa90<> 乙! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/03/19(月) 20:27:04.24 ID:B3fvy6BAO<> 乙。
これは良い意味で厨二だな。年齢的にも。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:17:13.19 ID:GNKMUqVIO<> では、また少しだけど投下します
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:17:44.95 ID:GNKMUqVIO<>
〜〜〜
三人は御坂をからかいながら、クレープ屋のある公園までやってきた。
近くにはかき氷を売っている販売車もあり、公園は賑わっている。
空はどこまでも青く夏らしい雲と生ぬるく鬱陶しいようなだが、どこか心を弾ませる匂いを持った風が通り過ぎる。
「……あ、私クレープよりかき氷の方が食べたいかも! 」
クレープ屋さんを目にいれた途端、好きなお菓子を一個だけ買ってあげるよと言われた幼稚園児の様に顔を輝かせた御坂に、意地悪をするかの様に佐天が言った。
「え? あ、う、うん……最近暑くなってきたし、かき氷も……いい、かもね」
御坂は今度ははしゃぎすぎてガラスを割ってしまい、学校の先生に怒られた小学生のように、顔を曇らせる。
―― 表情がコロコロ変わる人だなぁ。なんか、可愛い。
佐天は、途端に自分が凄く悪い事をしたかの様に思えてきた。
「で、でも! 今日はクレープですよね! チラシに割引券ついてるし!」
慌てて、クレープ屋の列にならぶ。
「もう! 佐天さんは少し意地悪ですよ」
列に並ぶと初春が小声で叱る様に佐天を軽く睨んだ。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:19:00.25 ID:GNKMUqVIO<>
「えへへ、ごめんごめん。なんか御坂さん可愛いからさ」
「……まぁ、わからなくはないですね」
白井に嬉しそうに何を食べるか相談、というより勝手に喋り倒す御坂を見て初春は、困った様に頷いた。
数分ならび、クレープの匂いがより強くなってきた。
その甘く温かな匂いは学校終わりのお腹を猛烈に刺激する。
そして、やっと佐天の前の客がクレープを受け取り、佐天達に微笑みながら列を出た。
―― なんで今私の顔見て笑ったんだ?
そんな前のお客さん―― 大学生くらいのアベック―― の行動に少し疑問を浮かべながら、佐天は注文した。
目の前で出来上がる様を見ていると、お腹はどんどん空腹を訴える。
そして、代金を払いクレープとカエルのマスコットを受け取る頃には、佐天の顔は自然と笑顔になった。
「はい、こちら六百五十円になります。あ、そのチラシ見てきてくれたなら百円引きで五百五十円です。……そして、どうぞ!」
そういい店員がクレープと一緒に差し出したのは、カエルのマスコットである。
「これ、先程のお客さんが最後の一個ですよって言ったら“私たちはいらないからあの子達にあげて”って言ってくれたんです。良かったですね!」
どうやら、佐天が大喜びで真っ先にならんだ事を、あの二人は“あの子はきっとカエルのマスコットが凄く欲しいんだ”と勘違いしたようだ。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:19:44.00 ID:GNKMUqVIO<>
同時に、自分に向けられた笑顔を思い出し、その意味を理解した。
―― なるほど、いい人達だなぁ……。でも、これは……。
「すみません、それ本当に欲しいのは、三つ後ろに並んでる茶髪の子なんですよ。だから、その子にあげてやってください」
カップルの好意を無駄にする様で気が引けたが、佐天は楽しそうにはしゃぐ御坂の声を後ろで聞きながら、店員に小声でそう伝えた。
「……そうですか。わかりました。君は、友達思いのいい子だね、サービスするからまたおいでよ」
店員は、軽くウインクしながら、そのカエルのマスコットを引っ込め、クレープだけを差し出した。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:20:48.95 ID:GNKMUqVIO<>
〜〜〜
「んー! 美味しい! なにこれ!すっごい美味しいじゃない! 」
その美味しさは、彼女のカバンに大切に仕舞われたマスコットの存在で何倍にも膨れ上がっているのだろう、と三人は思っても口にはしない。
それは、クレープが本当に美味しいという事もあるのだが、折角の楽しい気分を余計なちょっかいで壊したくはなかったのだ。
四人は木陰のベンチでそれぞれの学校のことを話したり、夏休みの予定のことを話したり、中学生らしいお喋りをしながらクレープをパクついた。
「少し見直しましたわ」
初春が御坂に学び舎の園の事を質問攻めにしている時、ポツリと白井が呟いた。
「んえ?」
ちょうど、クレープにかぶりついた所だったので、佐天の返事は間抜けなものとなる。
が、それを気にせず白井は自分もクレープを食べながら続けた。
「カエルのマスコット、お姉さまのために譲ってくださいましたの」
「……あー、いや別に私はいらないですし。
それに元々は私の前にならんでいた大学生くらいのお兄さんお姉さんが譲ってくれたものですからね」 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/20(火) 22:23:37.66 ID:GNKMUqVIO<>
「佐天さんの手から渡されていたら、子供趣味を隠したいお姉さまは今ほど素直に喜べてはいないと思いますの。
だから、貴女は最善の方法でお姉さまに譲ってくださったんですのよ」
「んー、そこまで考えてはいませんでしたけどね……。
それに御坂さんには恩もありますし、意地悪しすぎちゃいましたしね。
……それより白井さん!」
佐天は何故か携帯電話を取り出し白井に向けた。
「なんですの?」
その行動にクエスチョンマークを頭に浮かべながら白井は首を傾げる。
「ほっぺにクリーム、ついてるよん! 」
かっこよく決めているつもりだった白井は顔を真っ赤にし、直ぐに紙ナプキンで口を拭おうとするが、それよりも早く佐天はカメラのシャッターを切った。
「お、綺麗に撮れたよ! 白井さん! 」
「な、そ……さ、佐天さん!」
ほら、と今度は携帯電話のディスプレイの方を白井に向け、たった今撮ったものを見せる。
「いやぁ、白井さんも可愛らしい! モテるでしょ?って女子校か……」
「うるさいですの! こんなほっぺにクリームつけた小学生の様な黒子は可愛くなんかありませんの! 佐天さんひどいですの……」
「いや、私たちほんの半年前まで小学生ですよ」
「じゃあ幼稚園児ですの!」
子供の様なことを言いながら、顔を覆いツインテールを振り回す。
「まぁまぁ、怒らないでくださいよ。ほんの茶目っ気ですよ」
佐天はそれを待ち受けに設定しながら、白井を宥める。
多少強引ながらも佐天は自らが作ってしまった最悪の出会いをぶち壊した。
二人の間にあったどこかぎこちない空気は今ここで完全に入れ替わった。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:24:49.80 ID:GNKMUqVIO<>
四人がそれぞれ楽しんでいると、初春が急に何かに気づいた様に顔をしかめた。
「白井さん、あの銀行、今日定休日ですか?」
初春が指差す先にはシャッターのしまった銀行がある。
「……いえ、そんなことはありませんの……初春、行きますわよ」
表情を真剣なものへと変え、腕章をつけた。
その瞬間、シャッターが派手な音をたてながらひしゃげ、中から数人の男が出てきた。
「チィッ……初春!すぐに警備員に連絡と、周囲の人の避難を!お姉さまと佐天さんはここから出ないでください!」
「連絡はすでに済ませました!御坂、佐天さんの事よろしくお願いしますね」
白井は言い終わるなり能力を使い、御坂達の目の前から文字通り消え、初春は白井が消える直前に、連絡は済ませたと報告、消えるのと同時に走り出そうとする。
「初春!」
「大丈夫ですよ!自分の事は自分が一番わかります。だから危ない事はしません。佐天さんも、御坂さんから離れないでくださいね?」
佐天に笑いかけ、御坂に軽くお辞儀をすると一度止めた足を再び動かしはじめた。
そして、性格上真っ先に飛び出しそうになった御坂だが、白井の牽制でその足が鈍り、初春の言葉が完全にその足を止めた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:25:33.30 ID:GNKMUqVIO<>
「……大丈夫よ、佐天さん。黒子はあんな奴らに負けるとは思えないし、もしヤケッパチになっても佐天さんにはこの常盤台の超電磁砲、御坂美琴がついているから」
御坂は、急な非日常に怯える佐天を励ます様に笑いかける。
「……常盤台の雷神、じゃないんですか?」
「あー、それはなんというか一人じゃ恥ずかしいというか……婚后さんが言い出した事だし」
「その割にはノリノリでしたよね」
「うー……ってあれ?どうしたんだろ?」
唸る御坂は、視界の端の方で慌てる数人の大人に気がついた。
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/20(火) 22:30:17.12 ID:GNKMUqVIO<> キリが悪いがここまで
また読んでください
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/20(火) 22:34:11.31 ID:GNKMUqVIO<> あ、次回もまた一週間以内にきます <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/20(火) 22:50:02.49 ID:AbMDkg9M0<> 乙! <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/21(水) 07:32:39.96 ID:sYKvW5mAO<> 乙。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)<>sage<>2012/03/21(水) 21:24:21.86 ID:9bKV7rwAO<> 乙! <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/22(木) 00:01:02.63 ID:4yhVSR6Go<> キリが悪かったのできりのいいところまで投下
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:02:33.18 ID:4yhVSR6Go<>
〜〜〜
「どうかされたんですか?」
慌てふためく女性二人に、御坂は迷わず声をかけた。
二人の女性のうち一人は普通のどこにでもいそうな"お母さん"といった雰囲気の人で、もう一人はバスの添乗員の格好をしていた。
二人の後ろにはバスが停まっており、バスには『学園都市観光・入学案内』と書かれていた事から、観光と来季新一年生となる年齢の子供を持つ親用の学校説明会を兼ねたイベントだと、わかった。
「まさか……」
そこで御坂はひとつの可能性に気がつく。
「うちの子がいないんです!バスの中にも、公園内にも!どこにも!」
母親は藁にも縋る気持ちで見た目普通の女子中学生の御坂に、助けを求める様な目を向けた。
だが、その母親が縋ったものは藁なんてものではない、もちろん、カルネアデスの板なんて誰かを犠牲にしなければならないものでも無い、そう、それは―― 。
「大丈夫ですよ、私も探すの手伝いますから!強盗は私の後輩がもうすぐやっつけちゃうと思うし。
警備員……あぁ、外でいう警察みたいなものですね。
それももうすぐ来てくれます。絶対見つけてみせますから」
―― 大木だ。御坂さんは、どんな状況にも流されない、希望も捨てない、一本の大きな木だ。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:03:26.34 ID:4yhVSR6Go<>
「佐天さんはここにいて、大丈夫あなたは強い。あの時もスキルアウトに立ち向かったし、今だってちゃんと自分の足で立ってる」
御坂は、公園を見渡しながら言った。
「みんな怯えて表情が硬くなってるし座り込んじゃってる子もいる。それがかっこ悪いだなんて思わないけど、佐天さんはかっこいいよ」
にっこり笑うと、御坂は公園の銀行に近い方へ体の向きを変えた。
「常盤台の“雷神様”が言うんだから間違いないわよ」
そして、走り出した。
天下無敵の雷をパリっと身に纏いながら、悪を打ち砕き幼き者を守るために―― 。
「そ……んな、私は御坂さんがいたから……でも、私……私も……」
残された佐天は途端に顔を不安で一杯にする。
「私なんて……なんの力もなくて、誰も、自分すら守れない……」
“ あなたは強い! ”
“ “雷神様”が言うんだから間違いないわよ ”
「強く、なりたい……私は、御坂さんや婚后さんや、白井さんや初春みたいに、誰かを守れるくらい―― 」
―― だったら、まず、一歩踏み出さなきゃ。御坂さんは私を認めてくれた。私だって、自分より力無い子供を守らなきゃ!
「私も探します。お母さんと添乗員さんはバスに戻っててください、もしかしたら戻ってくるかもしれないから、待っててあげてください」
佐天も、御坂のあとを追った。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:04:04.37 ID:4yhVSR6Go<>
〜〜〜
「警備員がこんなに大勢どうしたのでしょうか? ……あちらには確か……」
常盤台の風神こと、婚后光子はとあるカフェでのんびりと穏やかな時間を過ごしていた。
「でも何かあったのは確かですわね、そして第七学区でのこういう事には大体白井さんが真っ先に飛びつきますわね……そうしたら御坂さんもいる可能性大ですわね……ならば、この婚后光子も馳せ参じましょう! 」
扇子をパチリと鳴らすと、席を立ち警備員の車の向かった方へと走りだした。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:04:57.26 ID:4yhVSR6Go<>
〜〜〜
佐天と御坂が、子供を探し始めるより少し前、白井は強盗団と対峙していた。
「風紀委員ですの!」
腕章を見せつける様に、数人の男達の前へと飛び出る。
風紀委員というセリフに一瞬“しまった”という顔をした強盗団だが、その風紀委員が年端もいかない女の子だと理解すると途端に大声で笑だした。
「ハッ!ビビらせんなよ……お嬢ちゃん、そこどかねぇと怪我するぞ?」
下っ端らしい男が白井に殴りかかった。
「そういう、三下の台詞は―― 」
が、空振る。
「―― 死亡フラグ」
そして男が次の瞬間みたものは、真っ直ぐ綺麗に透き通った空であった。
「ですのよ?」
男達の表情が、一変した。
喧嘩慣れしているのか、咄嗟に身構えるが、白井の前では素人の喧嘩慣れなど無意味である。
「卑怯な銀行強盗如きが私に、勝てると思ってるんですの?」
一瞬で、二人の男を地面に磔にし、残りの一人も同じようにしようとするが、それは叶わない。
白井の眼前に炎の塊が迫ってきたのだ。
髪を少しだけ焦がしながらそれをなんとか回避するが、男は無差別に炎塊を撒き散らす。
「くっ……」
無闇にテレポートし、テレポート先が灼熱でした。では笑えない。
白井はテレポートを使わず己の身体能力だけで、かわす。
「ハッハァアア!逃げなきゃ黒焦げだ!ほら逃げろ逃げろォオオ!」
男は炎を撃ち出しながら、ジリジリと白井から距離をとり、道の真ん中へと移動する。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:05:40.29 ID:4yhVSR6Go<>
〜〜〜
「まっずい、どこにもいない……」
御坂は、公園中を探し回っていたが、目的の子供らしき存在は確認できていなかった。
焦る御坂の耳に、爆発音が届く。
音のした方をみると、いくつもの炎塊を必死によける白井の姿が目に飛び込んできた。
「あっちもピンチっぽいわね」
どうするべきか、白井を信じて任せるか、それとも白井のプライドを傷つけるような事になろうとも助けにはいるか。
その迷いを、佐天涙子が振り払う。
「御坂さんっ! 白井さんを助けてあげてください、迷子は、私が……」
息を切らしながら、佐天は叫んだ。
「―― ッ! わかった!」
御坂は、頭を切り替え、そしてまた、走り出す。
「はぁ、はぁ……探さなきゃ」
佐天もまた、息を整えてから足を動かす。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:06:27.24 ID:4yhVSR6Go<>
〜〜〜
「終わりだぁあ!」
勝利を確信したかのように、男は雄叫びを上げた。
白井の周りには無数の炎弾。
よける道は―― ない。
―― まずい!
被弾を覚悟し、白井は目を固くつむった。
が、いつまでたっても襲ってくるはずの熱は感じない。
恐る恐る目を開くと、日頃よく見るものが、パチっと音を立てた。
「ふう、良かった。力抑えれば超電磁砲連発も案外楽ね」
白井を襲うはずだった炎は、御坂の超電磁砲により全て相殺されていたのだ。
「お、姉さま?」
「……アンタのプライドより、アンタの安全のが万倍重要だからね」
「申し訳、ございませんの」
「違う違う」
ため息をつくように、首を横に振る。
「ごめんなさいより『ありがとう』でしょ?」
そして、優しく微笑んだ。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:07:08.33 ID:4yhVSR6Go<>
〜〜〜
佐天涙子は、焦っていた。
―― どうしよう、どうしよう、どうしよう! 偉そうな事キリッと言っちゃったけど、いきなり自信なくなってきたよう……。
学園都市にくる時、母親が渡してくれたお守りをぎゅっと握りしめる。
科学の街でお守りなんて、と笑っていたが何故かこのお守りを大事な時に握りしめると頭が冴えるような気がするのだ。
―― 落ち着け、さっきまでのやる気と熱い気持ちを思い出せ。
一旦目をつむり、深呼吸する。
遠くで超電磁砲らしき派手な音が数発分聞こえた気がした。
ゆっくり目を開き、ゆっくりと足を進める。
その足は次第に速度をあげて行き、やがて一台の乗用車までたどり着いた。
「……見つけた!」
そして今まさに、子供は無理やり乗せられようとしているところであった。
「ど、どうしよ……捕まってる可能性全く考えてなかったよう……いや、でも―― 助けなきゃ!」
佐天は、震えそうになる足に活を入れ、カタカタ鳴りそうな歯を思い切り食いしばる。
そして、心の中で気合いを入れると、男に向かって走り出した。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:09:23.45 ID:4yhVSR6Go<>
「その子を離せぇえええ!」
そのまま突進し、子供を守るように抱きかかえた。
髪の毛を引っ張られているのだろうか、頭に鋭い痛みが走るが子供だけは必死に庇う。
背中を蹴られた。肺の空気が全部押し出され、咳き込むが、耐える。
佐天は意外にも冷静であった。
落ち着き、頭の中では「このあとどうしようかな」とだけ考えている。
痛みも確かに感じてはいるが、それはとても些細な事のように思えた。
佐天の中には子供を最悪の状況からは守れたという安堵の気持ちと、やはり自分だけでは完全に助ける事は出来はしないんだという絶望が混ざり合っている。
「そこまでになさい」
そんな声と共に聞き覚えのあるカーンという音が響いた。
「その子がこの、婚后光子の友人と知っての狼藉ですの?」
バサァとセンスを広げ、不自然なほどサラサラな髪の毛が美しくなびく様に気流を操作する。
「飛んでお行きなさい」
空き缶を額に受けた男は、一瞬婚后と戦う事を考えたがその考えをすぐに破棄する。
すぐさま逃走用の車に乗りのみアクセルを全開にし車は動き出した……のではなく、男が乗った瞬間、婚后は車の側面に噴射点を指定、車の力など問題にもならぬ速度で撃ちだしたのだ。
「後は任せましたよ、御坂さん」
広げた扇子をパシリと閉じると、佐天へと歩み寄り、手を差し伸べた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/03/22(木) 00:13:42.20 ID:4yhVSR6Go<> このままだとスレタイ詐欺になりそうだったから婚后さんも参戦
どうでもいい話だけど、ここの書き溜めはこっくりこっくりしながら書いてたから突然婚后さんが
「これにて我が藩は安泰ですわね」
とか言ってたりしてて読み直した時ビビった
では次回も読んでください
また一週間以内に来ます
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/03/22(木) 00:35:11.26 ID:ILm2bHNn0<> こんごーさんかわいいよ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/23(金) 17:33:49.51 ID:zdVYwvYU0<> 乙です
藩主なこんごーさんもかわいいよ <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/03/27(火) 16:47:52.53 ID:2E6/zFfPo<> すみません、一週間と言いましたが、少し遅れて30日か31日になりそうです
なるべくギリギリ一週間以内の木曜日までにはくるようにしますが……
よろしくお願いします! <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:25:59.76 ID:xv3ELRaIO<>
〜〜〜
その微笑みはまるで天使のようだと佐天は思った。
「二度目ですわね」
大丈夫ですか? と、あの時と全く同じように、婚后は佐天に笑いかけた。
「欲を言えば、あと少し、早くきてくれてたらこの子に怖い思いさせずに済んだんですけどね」
佐天は、痛みに顔を少し歪めた奇妙な笑顔をしてみせた。
その、佐天の腕には、来年小学生になるくらいの男の子が抱かれている。
男の子は、佐天にしがみつき、離れようとしなかった。
そのこどもをあやすように、佐天は優しく抱きしめる。
「あっはは、大丈夫だよ。もうあっちのお姉さんが悪いやつを……うん、その吹っ飛ばしてくれたから」
文字通り吹っ飛んで行ったよ、車に乗ってる男と車の着弾点にもし人がいたら確実に死ぬレベルの速さでね。
そう心の中で思ったが、口には出さなかった。
そして、普通ならば大惨事になるであろう力で車と男は吹っ飛ばされたのに、当事者の婚后は勿論、あまり婚后の事をよく知らないはずの佐天までもが、大した事ではない、と確信していた。
―― だって、確かに婚后さんは言ったんだ。『後は任せましたよ、御坂さん』と、この二人がいれば、大丈夫。誰も傷つかないハッピーエンドがそこにはある。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:27:24.48 ID:xv3ELRaIO<>
「婚后さん」
佐天は男の子の頭を優しく撫でながら、婚后へと、視線を持って行く。
「また、助けてもらっちゃって……すみません。
私も、自分より力のない子供くらいは守らなきゃって思ったんですけど……やっぱ、私なんかじゃ無理でした」
もどかしさや悔しさ、自分に対する失望にも似た様々な感情を目に溜めながら、佐天は笑った。
「佐天さん」
そんな佐天を、婚后は怒りを宿したような目で見つめる。
「自分の価値を、低く見るような人間はそこで成長を止めてしまっているのですよ」
決して怒鳴っているわけでは無い、がその声には力があり、静かな怒気をまとっている。
その声と目と表情に、佐天は強盗に立ち向かった時よりも恐怖を感じていた。
「あ……うぅぅ……」
そして、ポロポロと涙をこぼした。
それは、結局は婚后の力を借りなければ男の子を守れなかった悔しさからかもしれない。
もしくは御坂が“佐天は強い子だ”と認め、男の子を探すのを任せてくれたのにそれを裏切る事となった情けなさかもしれない。
だが、佐天涙子が泣く必要などないのだ。
ここでこぼした涙は佐天がなにひとつとして理解していないという証になってしまった。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:29:22.96 ID:xv3ELRaIO<>
「お、姉ちゃん?」
自身を抱きしめてくれる暖かな存在の様子が変わった事に、男の子は気づく、そして、そっと顔をあげた。
「ごめん、なさい」
少年は佐天が泣いているのが自分を庇い、暴行を受けたからだと思っていた。
「ごめ、んなさい、でも、ありがとう……お姉、ちゃんのおかげで、助かった……本当に怖かった、ごめん、なさい」
ありがとう。
もしも佐天がそれを正しく理解していたならば、少年に胸を張ってその台詞に、どういたしまして、と言えたはずである。
だが、佐天はなにもわかってはいない。
本来別々であるはずの答えが同じに見えてしまっているのだ。
そんな佐天にとって、今の少年からの言葉は自分を責め、同情されているようにしか聞こえなかった。
―― 違う。この子を助けたのは婚后さんで、この子も本当は婚后さんにお礼をいうべきなんだ……。
私なんかじゃなくって……。
静かに涙を流す佐天に、婚后は困ったようにため息をついた。
「佐天さん、御坂さんは恐らくあなたに『あなたは強い子だ』とかなんとか言ったでしょうね。
でも、あなたが向いている方向と御坂さんの……いえ、私達風雷コンビの向いている方向は全く別なようですわ。
あなたの向いている方に私達が向いていたら、私はこう言いますよ」
扇子を佐天に向けた。
「あなたは弱い」
そして、冷たく言い放った。
「御坂さんが言った事も、私が今言った言葉も嘘偽りなどありません。そうですね」
婚后は扇子を頬に当てながら、なにやら少し考える。
「宿題、ですわ。私の言った『御坂さんの言葉も私の言葉も嘘偽りなどありません』この意味を次に私とどこかでお会いするまでに佐天さんなりの答えをだして置いてくださいな」
婚后は、今までの突き放したような空気を取り払い、優しく朗らかに言った。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:30:08.78 ID:xv3ELRaIO<>
〜〜〜
聞きなれたカーンという音が御坂の耳に届いた。
―― やっばい、きっと婚后さんだ。
婚后はよくゴロツキに空き缶をぶつける。
どこから缶を調達しているのかは不明だが、それを恐るべきスピードで、悪行を働いているスキルアウトにぶつけるのが彼女のいつもの行動パターンだ。
何故空きカンなのかと聞くと、婚后はこう答えた。
「あの、カーン! という音が私好きなんですわ」
そして、その婚后が好きな音が聞こえてきたという事は、それすなわち婚后は今戦闘中だという事である。
そして、その戦闘に佐天が巻き込まれている確率は高い。
―― もし、もしも戦闘開始前に婚后さんと佐天さんが出会ってれば最高ね。
佐天さんを助けにはいる形で今の音だとしたら……まっずい気がする。
パチパチと電気を迸らせながら、御坂は少し顔を曇らせた。
「レ、レール……ガン……だと」
そして、御坂よりもさらに顔を曇らせたのは、発火能力者の男だ。
風紀委員を仕留めたと思い、得意げにしていたらそこにさっそうと現れたのが決して手の届かない学園都市の誇る超能力者だったのだ。
男の顔は曇りから、驚き、そして焦りと変化して行く。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:30:49.82 ID:xv3ELRaIO<>
「なんで第三位が出てきやがるんだクッソ」
男の頭から戦うという選択肢は消失した。
逃走用の車が、早く来ないかと御坂、白井の後ろに視線を移し、そして思考が止まった。
「は?」
男の様子に、白井と御坂も思わず振り向いた。
「え?」
「……あー」
驚きの声をあげたのは白井である。
たいして御坂は、また厄介な事を……と顔をしかめた。
「本当に、どうしてあのお嬢様は、こうも派手な事をするの、か、ねぇえええ!」
自身の能力をフルに使い、こちらにものすごい速度で迫ってくる鉄の塊を、急停止させる。
中にいる男は身体をつんのめさせたが、死にはしないだろうと御坂は気にしない。
「……ハァ、ハァ、ほんっと、無茶させるわ……」
少し車に歩み寄り、ボンネットに手を置いた。
中の男は気絶しているようである。
胸が上下しているのを視界にいれ、生きている事を一応確認すると、御坂は振り返り発火能力者の男に顔を向けた。
男は、完全に戦意を喪失しており、ため息をつくと、ダメだ、とでもいうように首を振り空を見上げた。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:31:48.57 ID:xv3ELRaIO<>
男が逃走を諦めた様子をみて、能力者同士の戦いをみていることしか出来なかった警備員は若干悔しそうなやりきれないような顔で男へと歩み寄る。
そして、一言二言話すと男は自分で警備員の車へと乗り込んだ。
すれ違いざま、御坂に何か言いたそうにしていたが、結局は何も言わなかった。
しかし、何かを言いたかったのは御坂も同じだったようで、そして御坂は屈託なく、心からそう思っているのがひしひしと伝わる声、表情、話し方でこういった。
「嫌味にしか聞こえないと思うけどあなたの能力、すごいと思うわ。
出てきたら、ちゃんと更生して今度は何かを守るために、その力を使って欲しいな」
「もう一度……頑張ってみるよ」
男は車から引き摺り下ろされる仲間を見ながら続ける。
「あいつらと、さ……こんなにすごいやつが俺より年下でしかも女の子でさ。
……俺がここまで能力使えるようになるのにかなりしんどい思いしたのに、それ以上を常盤台の超電磁砲は経験してきて、けろっと正義の味方やってるところ見せつけられたらなにやってんだって思っちまうさ……。
無駄かもしんねぇけど、もう一度、頑張ってみるよ」 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/04/01(日) 03:35:39.62 ID:xv3ELRaIO<> ここまで
次も読んでください
また一週間いないにはきたいと思っています
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/01(日) 06:11:26.85 ID:ivsv1h1YP<> 期待してるんだよ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/01(日) 09:56:09.30 ID:qO3ZJ0A5o<> 黒子こんなに弱くねぇよ <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/04/01(日) 13:15:45.65 ID:xv3ELRaIO<> >>63
もっともです
でもここで黒子弱体化しとかないと婚后さんの出番なくなってしまうんで目をつぶってもらえると嬉しいな
おれも黒子は好きなんで後々見せ場は作りますので
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sage<>2012/04/02(月) 18:50:00.41 ID:MVGq3Hlg0<> 今、PSP超電磁砲のプレイ動画見ていたら風雷コンビとか単語が出てたから元はそこからかな? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)<>sage<>2012/04/02(月) 19:38:24.95 ID:9gkzXzU1o<> >>64
下着が卸したてでゴワってたとか理屈あればおk
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/04/04(水) 23:51:40.86 ID:GMPmYyyIO<> すみません
少し忙しくなりそうなので、まるまる一週間あいちゃうかもしれません
なるべくくるようにはしますが
超電磁砲のゲームあるのを今知った
ゲームはそんなに興味ないからなぁ
禁書の格ゲーみたいのが出るってのはずいぶん前に聞いたけど
自然と風雷コンビって出てきたからどっかで宣伝やプレイ動画みてるんだと思います
だから、ゲームが元です
というか原作だからね!当たり前に元だよ!
ついでに黒子は……せいr……いや、なんでもない
無理があるし後付だけど銀行強盗のあった日、寮に帰った御坂と黒子を書いてみた
本編と食い違いとかあるかもしれないけど気にしないでください、おまけみたいなものなんで
〜〜〜
「あー、今日はつっかれたなぁ」
御坂は寮の自室へ帰るとカバンを放り投げ、自身の体もベッドへ沈めた。
「お姉さま、シワになりますわよ」
「んー、わかってるー……というかさ!」
呆れ顔で制服を脱ぎ、それをハンガーにかける白井に御坂は思い出したように心配そうな顔を向けた。
「な、なんですの?」
御坂の突然の大声に下着姿という格好で、白井は驚き固まる。
御坂の記憶が正しければ、今身につけている下着はいつ買ったのか、おニューであった。
「あんた、またそんな下着で……じゃなくて、どっか具合悪かったりするの? 確かにあいつは強かった。
でも、普段のあんたならあそこまで追い込まれたりしないでしょう? 」
「……あぁ、そのことですの」
てっきり御坂は
“お姉さまが黒子のことを心配してくださるなんて! 黒子はもう、もう! おっねぇえさまぁああん!”
と来ると思っていたが、白井ははずかしそうに笑いながら、普通に答えた。
「私の能力は、テレポート。
もしも私が能力フルで使ったとしたら、あの発火能力者はもっと広い範囲に炎を撒き散らすのではないかと思いましたの。
能力はばれてましたし、一撃で倒すのは難しかったと思いますの。
だから、ジリ貧になろうとも、被害を少なくしようと考えた結果ですのよ」
白井黒子は立派な風紀委員だ。
小さな身体で日々街の安全を守ろうと必死である。
そんな素敵な後輩を持てたことを、御坂は心から嬉しく思うのと同時に、素直に頼ってくれない歯痒さを感じた。
婚后光子は良きパートナーであるが、同時にライバルでもある。
だから、弱いところを見せたくないと思ってしまうこともあるのだ。
しかし、白井は違う。
白井は御坂にとって本当の意味で良き親友なのだろう。
番外編『風紀委員』了
〜〜〜
ところでおニューって死語? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/04/12(木) 18:48:56.63 ID:VDGVYhG1o<> 死語どころか化石かもなんだよ
所で、わた…じゃなくて素敵なシスターであるインデックスさんの出番はないのかな? <>
◆CEzmHsJrWFNc<><>2012/04/14(土) 02:49:18.31 ID:EPEvh4MIO<> インデックスはまだ迷ってる段階だけど、インデックス大好きだから多分出ると思う。
そして化石なのか……
いまは新しい服とかそういうの言う時なんて言うんだ?
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/05/08(火) 00:25:05.06 ID:RSoF58Sko<> マダカ <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/05/09(水) 08:18:13.51 ID:NssaRfn2o<> すみません
もう少し待ってください <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/06/16(土) 21:55:40.09 ID:TzpXRRi3o<> わたしまーつわ <>
◆CEzmHsJrWFNc<>sage<>2012/06/18(月) 16:57:06.95 ID:sqZujWMIO<> てす <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 16:57:41.62 ID:sqZujWMIO<> よし、すみませんでした
すこしだけどあとで投下します <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:05:48.85 ID:sqZujWMIO<>
〜〜〜
「あ、佐天さーん!」
白井、初春は状況説明など、風紀委員としての現場にしばらく残ると言い、御坂は一人公園へと戻ってきていた。
「御坂さん……」
佐天は一人ベンチに腰掛け、ぼんやりと地面を眺めていた。
「大丈夫だった? 子どもは? あと佐天さんに怪我は? 婚后さんは間に合ったの?」
次々と質問をぶつけるが、佐天は黙り込み、答えなかった。
「……ちょっと? 大丈夫?」
顔を覗き込むように御坂は姿勢を低くする。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:06:39.98 ID:sqZujWMIO<>
「え? あ、すみません。
……考え事していて、子どもは大丈夫です、いま婚后さんがお母さんのところへ送り届けてくれてます。
私も大丈夫です。婚后さんにまた助けられました」
「そう? ならいいけど……婚后さんになんか言われた? 」
「あ、いえ……なんかというより、宿題をもらいました」
「宿題?」
「はい」
佐天は、少し顔をあげるとまだ少しガヤガヤとしている銀行をみた。
「まぁ、婚后さんが意味ない事するとは思えないし……それは多分佐天さんにとって大きな意味を持つと思うよ!」
御坂は、婚后を信頼している。
「御坂さんは、レベル1からレベル5になったんですよね?」
「そうよ」
「すぐになれたわけじゃないんですよね」
「そうね、3から4、4から5は大変だったわ」
「どうしてそんなに頑張れたんですか」
「私の力はこんなものじゃない、って私だけは信じていたかったから。
もちろんいまもまだこれが限界だなんて思ってないわよ」
「御坂さんは……強い」
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:07:37.22 ID:sqZujWMIO<>
「……」
御坂はなるほどね、というような顔をしたあと、立ち上がり佐天の横へ腰掛けた。
「でも、私より強いやつなんてたくさんいるわよ。第一位に第二位……。
序列は私の方が上だけど出力だけ考えたら第四位にも負けるかもしれない。
それに、何回挑んでも勝てない無能力者もいるしね」
御坂は話をつづける。
「ねぇ、佐天さん。
貴方が求める強さってなに?」
「私が、求める……強さ?」
「よく考えて、ただ、なんのために、なにがしたいから、それを、よく考えて。
そうしたら、きっと婚后さんの宿題の答えもでるよ」
御坂はいつものように、明るく笑う。
「なんのため……なにをしたいか?」
―― そんなの、わからないよ。
ただ、弱くて情けなくてかっこ悪い自分を捨てたいだけだ。
<>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:08:21.27 ID:sqZujWMIO<>
〜〜〜
御坂と別れると、佐天はぼんやりと帰途へついた。
色々考え事をするのに、誰にも邪魔されたくないと携帯の電源を落とした。
そして、人通りの割りと少ない道を選んで歩いていた。
―― 強くなりたい。
弱くてかっこ悪い私自身を救える強さが欲しい。
その足の動きはとてもゆっくりだ。
―― 誰かを、救える強さが欲しい。
ゆっくりだったその足はやがて止まり、佐天は空を見上げた。
―― もう、嫌だな。
何もかもが嫌でしょうがない、というようにため息をつく。
「嬢ちゃん、こんなところでなにしてるんだい?」
―― 私は馬鹿だなぁ。強くなる前に学習しなきゃ……でも、もういいや。
こいつに穢されても、別にいい。
もう、何もかもどうでも……いい。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:27:27.97 ID:sqZujWMIO<>
「うるさい、あっちいけ。
私、今イライラしてるんです」
「はぁ……そんなのであっち行くような奴はおらんで?
嬢ちゃん可愛いんやから少しは自分を大切にせな」
男はため息をつくと急に似非関西弁を話だした。
「は?」
「あ、別に僕力づくでどうこうする気は無いで?
僕純愛派やし、そういうプレイ好きなら僕とまず純愛しようや!
そしたら次はそういうプレイで楽しも!」
ニコニコとバカみたいな事を男は喋る。
佐天は呆気に取られたが、その瞬間だけは悩みも何もかもを忘れていた。
「お嬢ちゃんなんか悩み事でもあるんか?
悩むんはええけど、投げやりになるんはあかん!
折角可愛くて黒髪で長髪な絶滅危惧種なんやから、嬢ちゃんにはもっと自分大切にして幸せになってもらいたいわ」
恥ずかしげもなく、ペラペラと喋る男を、佐天は何故か強いと思った。
「でも」
小さく、つぶやく。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:29:13.04 ID:sqZujWMIO<>
「ん?」
「どうせあなたも能力者なんでしょ?
それも高位の」
じゃなければ人にお節介など出来るわけがないとその目は訴えていた。
「……」
男は佐天の言葉に目をパチクリさせ、不思議そうにこう言った。
「いや、無能力者やけど?
なんで高位の能力者なんて思ったん?」
嘘をついている様子はない。
佐天はますますわからなくなった。
「だって……」
「あのなぁ、嬢ちゃん。
僕を見損なわんといてや」
男は少しだけ気分を悪くしたように、声に怒気を混ぜる。 <>
◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:30:02.51 ID:sqZujWMIO<>
「女の子守るのに、レベルなんて関係ないやろ!
ここで、嬢ちゃんほっといて嬢ちゃんが悪い奴らに絡まれて傷ついてしもうたら、僕は男で無くなるんや!」
見損なうな、と初対面の人に言うのはどうかと思うが、熱意は伝わったようだ。
「なんか、変な人ですね」
佐天は笑った。
「お、やっと笑ったなぁ。
うん、君は笑ってた方が何倍も可愛いで!」
そして、男は青髪ピアスと名乗った。
二人は移動し、ベンチに腰かけジュースを飲んでいる。
「青髪さんは、高校生ですか?」
「そそ、あっちの高校や」
言いながら学校のある方角を指差した。
「私は―― 」
「柵川中学やろ?」
自分の通う学校を教えようとすると、青髪は当たり前のように知っていた。
「な、なんで知ってるんですか」
「なんでって……その制服、柵川やん」
「青髪さん制服で、学校分かるんですか?」
まさかと思いながら、聞いてみる。
「あったりまえやん!
この学園都市にある制服なら見たら一発やで!」
自慢気に青髪はいった。
そうして、佐天涙子の青髪の認識は、変な関西風男、から変態な関西風男に格上げされたのだ。
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◆CEzmHsJrWFNc<>saga<>2012/06/18(月) 19:30:30.56 ID:sqZujWMIO<>
〜〜〜
青髪と話し込んでしまっていたので、佐天が家につく頃には、日は完全に落ちていた。
玄関をあけ、家に入りかばんをおろすと佐天は携帯を取り出した。
そして電源を入れると初春から着信が数十件入っていることに気づく。
「やっべ……」
佐天はつぶやき急いでかけ直した。
「あ、初春?お疲―― 」
そして何事もなかったかのように、明るい声でお疲れ様と言おうとしたが、いい終わる前に、初春が佐天の言葉にかぶせてきた。
『どうして電源切ってたんですか!』
その声は明らかに怒っており、佐天は狼狽える。
「ご、ごめん。
少し考え事してて」
『佐天さんはおバカなんですから一人で考え事なんかしちゃダメです』
「ちょ、ひどくない?」
『ひどいのは佐天さんの方ですよ!
……電話かけても出ないし、家行ってみてもいないし……私がどれほど心配したと思ってるんですか!』
「ごめんって……本当、悪かった」
『……なにか』
初春も少し落ち着いたのか声のトーンを落とす。
『なにか悩みがあるなら、相談してくださいよ……友達じゃないですか』
そして、さみしそうにそういった。
「……ごめんね、初春。
明日学校で会ったらちゃんと相談するからさ」
佐天はまだ知らない。
当たり前にくる、この当たり前の日常的な明日がなかなか来ない事を……。
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VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/18(月) 19:47:29.82 ID:jzxeA7VDO<> 今さらこのスレに出会った
合体して覇王剣になるまで期待して待ってる
>>35
>>「連絡はすでに済ませました!御坂、佐天さんの事よろしくお願いしますね」
初春が本性を現した <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)<>sage<>2012/06/18(月) 22:07:48.15 ID:y4FxdQYAO<> 乙 <>