VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 22:58:24.93 ID:tZuTq0oxo<>和ちゃんといけない女教師のうふふふん

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と、いうわけでこのスレは以前に書きかけでHTML化した同名のスレの書きなおしです

少し修正してはじめから貼り直します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1337435904(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)
<>和「いけない二人」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:00:12.55 ID:tZuTq0oxo<>
 はじめに、屋上。


和「校内は禁煙ですよ、山中先生。」


 風の強い夏の日、絵の具をうすくとかしたような西の空を眺めながら屋上で煙草を吸っていた時のこと。
 写真におさめて残しておきたいほど綺麗な色の中を小鳥の群れがアクロバット飛行していた。

さわ子「あら、和ちゃん。」

 下の名前で呼ぶと彼女は呆れたように溜息をついた。
 真鍋和はすでによく見知った生徒だった。担当するクラスの子であるという以上に。
 教師たるもの、特定の生徒に対してだけ他とは違ったふるまいをするなんてあってはいけないことだと思う。それでも彼女や軽音部のばかたちは特別に気の置けない子たちだ。

 彼女も私のことをよく知っていた。
 綺麗でやさしいさわ子先生がふだん見せない顔、たとえば、放課後の屋上で隠れて煙草を吸うような不良であるところとかも、彼女をふくむ数名の前ではもはやさして隠す意味のないことだった。


さわ子「屋上は立ち入り禁止よ?」

 今さらではあったけれど、さすがに生徒の前で煙草を吸い続けるのは気がひけたので、冗談でごまかしながら火を消して携帯灰皿へとしまった。
 おまけに眼鏡の奥からとっておきのウインクまで投げつけてみた。

和「帰ろうとしたら煙が見えたので。誰か生徒が吸っているのかと思って。」

 案の定彼女はごまかされずに、あくまでまじめだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:01:48.82 ID:tZuTq0oxo<>
さわ子「そんな悪い生徒はうちにはいないって。」

和「どうでしょうね。先生がこれだから。」

さわ子「大人は大変なのよ。」

和「健康と美容に悪いですよ煙草は。男性の印象もよくないそうですし。」

 いやなことをいうな、と思った。
 ちょうど三十分ほどまえに、付き合っていた男からの最後のメールを受け取ったばかりだったのだ。


さわ子「和ちゃんは男の子に興味ある?」

 沈黙すると動揺をさとられるのじゃないか。そう考えた私は、話題はなんでもいいからと話し続けた。
 それにしても間の悪いテーマだ。

和「さあ、べつに。」
 風に吹かれる前髪を気にする仕草が、綺麗だなと思う。
 女子高生はなにをしてても絵になるものだ。


 彼女と同じ年齢の私は恋愛のことばかり考えていた。
 今もそうじゃないのかといわれると、そうではないと断言はできない。
 高校生の私になくて今の私にあるものは、あきらめのよさ。
 振られたこと自体はさびしいが、こうしてお定まりの自暴自棄を演出して、一晩お酒でも飲めば忘れてしまえる。この別れは以前から予想していたことでもあったから。

 対して真鍋和はいかにも恋愛なんて興味がありません、といった感じの生徒だった。
 眼鏡のフレームみたいに、全身が軽金属でできた女の子がいるものだ。

さわ子「彼氏とかいるの?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:02:14.45 ID:tZuTq0oxo<>
 いそうにないな、と思いながらも試しに訊いてみる。

和「いません。」

さわ子「やっぱりねぇ。だと思った。」

和「それって失礼です。」

 自分でもそう思ったので、ごめんなさい、と謝った。

 いいですよ、と答える。

さわ子「独り身はさびしいわよ。あーあ、明日もきっと二日酔いよ。」

和「どうかしたんですか?」

さわ子「振られたの。ついさっき。やんなっちゃう。」

和「恋愛のこととかわかりませんけど、先生はきれいだから、すぐに良い人がみつかりますよ。」

 ふざけた風もなく彼女はいう。慰めようとしてくれてるんだな、と思うとおかしかったので、

さわ子「いっそ和ちゃんが付き合ってよ。」

 と言ってみた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:02:40.80 ID:tZuTq0oxo<>
和「先生が禁煙したら考えます。」

さわ子「え?」

 まじめにそんな答えが返ってくるとは思わなかった。

 心臓が5センチくらい跳ね上がった。


和「じゃあ、私帰りますね。屋上の施錠お願いします。」

 何食わぬ顔で堂々と退出する彼女の背中に「さよなら」の一言をかけるのも忘れて、その場所にそれから何分も立ち止った。
 その時はじめて、自分がずいぶん前から真鍋和という生徒に気をひかれていたことを知った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:03:25.92 ID:tZuTq0oxo<>
……

 彼女には意外とふざけたところもある。
 それに気付いたのは軽音部での集まりでのことだった。


 屋上での出来事にさかのぼる初夏のこと。

 私は日曜日にりっちゃんに誘われてカラオケに行った。
 行った、というか、正確にはドライバー役をまかされたというのが実際だ。
 暇だったし(すでに恋人との仲は危うかった)下心があってのこととしても、顧問の自分まで誘ってくれたことはすなおに嬉しかった。

 途中でりっちゃんと澪ちゃんの二人を拾い、澪ちゃんの案内で新しくできたというカラオケ店へ向かう。

律「さわちゃん、おごってよ!」

澪「おい、ずうずうしいぞ。」

さわ子「いやよ。でも歌で私に勝てたら考えてあげる。」

律「ほんと? それなら楽勝だ。」

さわ子「あなたね。」

澪「先生、すみません。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:04:54.20 ID:tZuTq0oxo<>
 目的地に着くと、先に部屋を確保してくれていればいいのに、店先で他の子たちが待っていた。
 メンバーの中には唯ちゃんの妹の憂ちゃんや、軽音部とは関係のない和ちゃんまでいる。
 軽音部の集まりとはいうが、それは私を都合よく呼び出すまでの名目で本当はただの遊びだったのだ。

 大人数なので比較的広い部屋に通された。それでも椅子のサイズは十分ではなく、ぎゅうぎゅう詰めで座った。
 一度立ったら二度と座れそうもない。
 室内は清潔で煙草を一本でも吸ったら真っ白な壁紙がよごれてしまいそうだった。
 そもそも禁煙ルームだ。高校生のグループなのだから仕方がないだろう。梓ちゃんなんか中学生に見られたかもしれない。

 だらだらとした雰囲気のなか、それぞれが思い思いの曲を入れる。

 この子たちはきっと、自分たちの時間が永遠に流れると思っているのじゃないかしら。


さわ子「真鍋さんも何か歌ったら?」

 隣席の彼女が飲み物ばかり飲んでいたので、無理やりにリモコンを渡す。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:07:13.67 ID:tZuTq0oxo<>
和「私はいいですよ聴いてるだけで。下手だから、恥ずかしいです。」

さわ子「だめよ、楽しまなきゃ。それにりっちゃんだって歌ったんだから。」

律「せんせー、それってどういう意味ですか?」

澪「そのままだろ。」

 じゃあ、と俯いて彼女はリモコンを操作する。
 間をおいて日本のロックバンドの曲が流れ始めた。


さわ子「あなた、この選曲ってわざと?」

 マイクを取って彼女は歌い出す。

 唯ちゃんが「いよっ、和ちゃん!」とはしゃぎ、憂ちゃんがあんまりリズムに合ってない手拍子をした。
 歌声はまずまずというものだろう。
 曲が終わると、彼女は悪戯気な笑顔で視線をよこした。


 曲はthe pillowsの、Midnight Down。
 このバンドの歌い手は「山中さわお」というのだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:07:43.38 ID:tZuTq0oxo<>
……

 屋上での会話からしばらく変わったことはなにも起きなかった。
 ほんらい生徒との間に何か起きる方がおかしい。

 それでもホームルームや授業の時間、彼女のふとしたしぐさが、折々心にふれた。
 ひょっとして自分に目配せしたのでは、とか。
 授業中に教師の方を見るのは当たり前なのに。
 休み時間肘をついて考え事をしているのを見てさえ、自分について考えてくれてるのではないかと期待してしまう。
 自分のことながら、相当あぶない。

 朝目が覚めて、感じやすい子どものような自分を発見する。
 無性におかしかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:08:11.36 ID:tZuTq0oxo<>
 同性にそういう関心を抱くことに疑問を持たなかったのは、高校時代の経験があったからかもしれない。


 バンドでギター兼ヴォーカルを務めていた私は、自分でいうのもおかしいが校内では目立つ方だった。
 そのためかいくにんもの生徒が、すこし恋文じみて、半分はファンレターであるような手紙をくれた。
 それは周囲に女の子しかいない女子高生の遊び半分の恋愛ごっこだったのだろう。

 けれどその中で一人だけ真剣にアタックしてきた子がいたことを覚えている。
 たぶん、控えめにいっても、あの子のだけは本当の恋だったのだろう。
 他に好きな人がいた私はその子の告白は断ったのだが、そういう縁でライヴの機会があるたびに彼女は楽屋まで足を運んでくれた。
 わずらわしく思うこともないではなかったが、自分を好きでいてくれる人間がいるということが嬉しかった。
 人懐っこくやわらかい性格の子で、姿恰好も真鍋和とはぜんぜん似ていないが、その子も眼鏡はかけていた。


…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:08:42.49 ID:tZuTq0oxo<>
唯「さわちゃん、最近いーことあった?」

 かじりかけのラングドシャを振り回しながら唯ちゃんが訊いた。

さわ子「へ?急になによ。」

唯「最近なんか輝いてるよ。絶対なんかあったでしょ。」

紬「そういえば、最近の先生、ますますおしゃれになってきてる気が……」

さわ子「私は前からおしゃれよー。」

律「あー、ひょっとして、彼氏でもできた?」

梓「ちょっと、律先輩。」

さわ子「残念、はずれよ。彼氏とはついこないだ別れました。」

唯「ふーん。それにしては嬉しそうだね。」

…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:09:13.84 ID:tZuTq0oxo<>
 夏休みの直前。軽音部の部室前の廊下。


さわ子「あら真鍋さん。どうしたの。」

和「先生こんにちは。ちょうどよかった、このプリント、軽音部の田井中さんに渡しておいてください。」

さわ子「私を小間使いにする気かしら。」

和「先生も目を通さなければいけない書類なので……よろしくお願いします。」

 ぺこり、と一礼をして、あわただしく引き返そうとする彼女の肩に手を載せて引きとめる。


さわ子「ねえ、私、なにか変ったことに気付かない?」

和「さあ。わかりません。」

さわ子「もっとちゃんと考えてよ。ヒントはにおいよ。」

和「そう言われましても……」

さわ子「香水じゃないわ。」

 彼女は沈黙して私の顔をまじまじと見る。じれったいなあ。

和「もしかして、煙草やめました?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:09:41.31 ID:tZuTq0oxo<>
さわ子「そ、正解!」

 思わず顔がにやけてくる。


 『先生が禁煙したら考えます。』


さわ子「忘れたとは言わせないわよ、こないだの話。」

 顔を真っ赤にしてあわてふためく彼女が見れることを期待したのだが、そうはならなかった。

和「じゃあ、これあげます。」

 といって、千切った手帳の切れはしを渡してくる。
 濃い青色のインクで携帯のメールアドレスらしきものが記してあった。

和「先生、さようなら。」

 真意を問いただす前に、真鍋和はクールに去って行った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:10:08.64 ID:tZuTq0oxo<>

 その翌日、今度は階段の前で彼女を待ち伏せした。
 来る保証はなかったが、彼女は来た。


和「そんなところに座ってどうしたんですか。」

さわ子「真鍋さん、今日はどうしたの。もしかして私に会いに来てくれた?」

和「別に、そうじゃありません。」

さわ子「いじわるね。私はあなたが来るのを待っていたんだけどなあ。」

和「じゃあ、私もそうかもしれません。」

さわ子「じゃあってなによ。」

 私は笑った。
 私たちは内緒話をするみたいに、声を抑えて話す。音楽室の中の子たちに覚られないように。

和「どうして昨日メールをくれなかったんですか。」

さわ子「してよかったの?」

和「当たり前です。」

さわ子「どんなメールを?」

和「先生って、性格悪いって言われません?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:10:35.20 ID:tZuTq0oxo<>
 薄暗くてよく分からないが、彼女の頬は今日こそ赤く染まっているのかもしれない。

 ようやく私は確信した。
 私たちは内緒の話をしているのだ。
 誰にも言えない話。

 携帯を取り出して、メールを打った。
 鈍いバイブ音が響き、あわてて彼女は携帯の画面を開く。


 『わたしのこと、好き?』


 すぐに返事が来た。


 『はい。』


 『私も和ちゃんが好き。』


 『うれしいです。』


 『私たち、付き合っちゃおうか。』


 和ちゃんは少し逡巡してから、自分の声で「はい」と答えた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:11:02.72 ID:tZuTq0oxo<>
◆◆◆◆


 電話やメールがあれば、いつでも繋がっていられるというのは嘘だ。
 会えない間のメールは、その人がそこにいない事実を際立たせるばかりだから。



 和ちゃんというのはどういう子なんだろう?
 あの階段で付き合いはじめて以来、よく考える。
 一見してまじめ。クール。
 よく見てもまじめで、クール。
 ちょっととぼけて、おかしなところもあるみたいだけど。

 いったいこの子は、人と付き合うってことを何だと考えているんだろうか。
 あの日、彼女はひどく可愛く見えたものだけど、それからはなかなか隙を見せてはくれなかった。

 なんだか、おもしろくない。
 私はイライラしていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:11:28.88 ID:tZuTq0oxo<>
 彼女は今、私の部屋で読書をしている。

 昼日中に界隈を出歩いて、二人でいるところを学校関係者に見られるとことだからという理由で、会いたくなったら彼女が私の家に来る。という約束が出来ていた。
 それは仕方のないことだし、いい。けれど、こうして恋人の家にやって来て、一人で本を読んでいるというのはどんな神経をしてるんだろう。

 クールなのもいいけど、もうちょっと恋人らしい時間の過ごし方ってのがあるのじゃないか、と思う。

さわ子「和ちゃん。」

 眼鏡をかけた横顔を見ながら、名前を呼んでみる。

和「はい?」

 和ちゃんは本を置くこともせず、こちらに顔だけ向ける。悔しいけどかわいい。

さわ子「むう。」

 私はこの不満をぶつけるべく、思いっきり彼女の顔を睨みつけてみた。
 さあ、どうだ。

和「あの、先生。顔が近いんですけど。」

さわ子「……。」

和「先生?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:11:59.92 ID:tZuTq0oxo<>
 敵はなかなか動じるようすがない。こうなれば持久戦だ。
 私はますます顔をしかめ、目元に力を込める。
 ぱちぱちと瞬きをしているのがはっきり見える。

 和ちゃんは何度目かの瞬きの後、読みさしの本に栞を挿しこんでテーブルに置き、それから再び私の方へ向き直った。

和「……。」

さわ子「……ちょっと。なんで目を閉じてるのよ。」

和「キス、してくれるのかと思って。」

さわ子「はあ?」

 なんでこういうこと言うかな。
 私の表情が見えてなかったんじゃないか。眼鏡の度があってないに違いない。フレームも下半分だけだし。おしゃれのつもりかもしれないけど、よく似合っててすてきだし、街中で男の目を引くかもしれないからやめてもらいたい。

和「してくれないんですか?」

さわ子「するに決まってるじゃない。」

和「よかった。」

 おもしろくない。
 何食わぬ顔で黙っておきながら、こういうことはしっかり要求するのだから。
 いいや、キスを奪うのは私の方。
 なまいきな女の子に大人のやりかたを見せてやるんだから。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:12:26.46 ID:tZuTq0oxo<>
和「……なんだか今日はすごかったですね。」

さわ子「感想言うのやめてよ、恥ずかしいんだから。」

和「あら、先生でも恥ずかしくなるんですか?」

 こっちの台詞。

 顔色一つ変えないくせに。

さわ子「それ、いやみ?」

和「先生は、こういうこと慣れてるんじゃないかと思って。」

 和ちゃんは言いにくそうに目を伏せた。ひょっとして、嫉妬してくれてるのだろうか。だとしたらうれしい。
 なので、「そりゃあね」と自慢してみる。和ちゃんのクールの壁を崩せるのならどんな手段も惜しまない所存だ。

和「……私は、先生がはじめてなんですから、すこしは気を遣ってください。」

 見事に不満げに口を尖らせてくれたので、思わず私は噴き出しそうになった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/19(土) 23:12:39.48 ID:WBu+AfqSO<> こんなSS知らんな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:13:09.95 ID:tZuTq0oxo<>
さわ子「あなたかわいいわね。時々すっごくかわいくないけど、かわいい。」

和「私はまじめに言ってるんです。」

さわ子「今はあなた一筋よー。キスしていい?」

和「さっきしたじゃありませんか……。」

さわ子「何度してもいいでしょ。キスは一日何回までにするべし、って規則でもあるの?」

和「でも、なんだか勿体ない気がしません?」


 この子が普段なにを考えているのかまだよく分からないが、今はなんとなくわかる。
 これは冗談でなく本気で言っているのだ。
 キスなんて勿体ながってどうするんだろう。とっといた分はパックに包んで冷凍保存するつもりだろうか。私にはキスより、こうして一緒にいる時間が流れていくのが惜しい。もしそうできるのなら、この家ごと和ちゃんを閉じこめて、永遠に捕まえておきたい。

さわ子「バカね、惜しんでいたら楽しい時間なんてすぐに消え去っちゃうんだから。若い時間は短いのよ。」

 私はなにか言いかけた彼女の口を無理やりにふさぐ。

 きちんとキスに反応してくれるのがうれしい。かわいい。
 私は満足した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:13:50.51 ID:tZuTq0oxo<>
◆◆◆◆


 それから、和ちゃんについて気がついたこと。


1.くせ

 和ちゃんは、緊張すると眼鏡を拭く癖がある。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:14:16.75 ID:tZuTq0oxo<>
さわ子「最近どう?」

和「どうって、何がですか?」

さわ子「あなたね、こういう質問そんなふうに返されても困るわよ。」

和「はあ」

さわ子「勉強の具合とか、生徒会の仕事とか……」

和「いつも通りです」

さわ子「なんだかぎこちないわね」

和「先生と一緒にいるとどきどきして口がうまく回らないんです。」

さわ子「そういう台詞はもう少しどきどきしてそうな顔を作って言いなさい。……今日泊まってく?」

和「……どうしてですか?」

さわ子「どうしてだと思う?」

和「……。」

 眼鏡を外した。
 すこし困ってるようだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:14:45.08 ID:tZuTq0oxo<>
2.冗談をこのむ

 これについては私もちょっと困ってる。


さわ子「あー、海外行きたいわあ。ハワイとか。」

和「いいですね。」

さわ子「和ちゃんはどこか行ったことある?」

和「私帰国子女で、カリフォルニアで生まれたんです。」

さわ子「え!? 初耳よ、それ。」

和「と、言っても、向こうで暮らしてたのは三歳までですから、英語は喋れないんですけど。」

さわ子「へえー、なんかすごいわね。」

 これがまったくの嘘であった。
 どういう意図かわからないけれど、要は私をかついだらしい。

和「私の家と唯の家の付き合いも向こうで始まったんです。私たち、今でも年に一回くらい向こうに遊びに行くんですよ」

 もちろんそんな事実はない。


 これに類したことはたびたびあった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:15:22.15 ID:tZuTq0oxo<>
 曰く、


和「先生知ってますか? こういう市販のコラーゲンはカンガルーの肉から抽出されたものなんですよ。」


和「日本にはじめてギターが伝来したのは、戦国時代。
 歌のうまい宣教師が聖書と一緒に持って来たんです。」


和「ケバブというのは地中海にすむ大型の魚で、焼くと美味しいらしいです。」


和「餡パンの『餡』ってフランス語で、本来はあの甘い餡子とは関係ないそうですね。」


 云々。


 あんな真面目な顔で話されては、どんな懐疑家といえどもその話の内容を疑いえないだろう。

 おちゃめな面を見せてくれるのは信頼してくれている証かもしれない。
 しかし、そろそろ私が彼女のことを信じられなくなりそうなのでやめていただきたい。
 ぜひとも。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:15:51.50 ID:tZuTq0oxo<>
……


唯「和ちゃんの新しい恋人ってさわちゃんでしょ。」

 ああ神様。
 私の教師人生おしまいでしょうか?

唯「どうしたの、さわちゃん。鳩が豆電球食ったような顔して。」

 それを言うなら鳩が豆鉄砲……。
 喉元まで出掛けたツッコミをすんでのところでこらえる。
 この際、そんなことはどうでもいい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:16:40.10 ID:tZuTq0oxo<>
 ある日の放課後、私は唯ちゃんに人気のない暗がりへと連れ込まれ、この有様である。

 バレた。


さわ子「どうして……」

 と、言ってしまってから後悔する。
 バカ。
 それじゃ私達が付き合っていることを認めてしまったのと同じだ。


唯「こないだお使い行くときに見たんだー、先生と和ちゃんが仲良さそーに手つないで歩いてるの」

さわ子「ああ……」

 確かに三日前の「お泊り」の日、コンビニで買い物をした帰りに、ちょっとの間だけ、和ちゃんと手をつないでいた。
 やめておけばよかったのだ。
 彼女も普段着だったし、私もラフな格好で髪型も変えていたから問題ないと思ったのだけど。甘かった。
 ああ、けれど私から手をつないだ時の、彼女のうれしそうな顔はかわいかったな。
 いや、この際そんなことは問題じゃない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:17:26.90 ID:tZuTq0oxo<>
唯「声かけようかなって思ったんだけど、なんか邪魔しちゃ悪そうなフンイキだったから。
 おかげで憂に何頼まれたか忘れちゃって。」

さわ子「ひ、平沢さん?そのことは他の人には……」

唯「先生が、生徒に手を出しちゃいけないんだよねー。」

さわ子「うっ。」

唯「……ふへえ。」

 唯ちゃんは私の反応を見て、意地悪そうに笑った。
 まさか、これをネタに私を強請るつもり?
 唯ちゃんはそんな悪い子じゃないとは思うけれど。それでも、私の置かれた状況は圧倒的に不利だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:18:54.80 ID:tZuTq0oxo<>

 女同士とはいえ、未成年の生徒と付き合っているなんてことがバレれば、私はおしまいだ。いや、同性愛という事実は、かえって周囲に悪印象を与えるかもしれない。

 最悪なら逮捕。
 少しよくて、不名誉な辞職。
 どっちみち私と和ちゃんは、二度と一緒にはいられない。


唯「――さわちゃん!」

 唯ちゃんはビシッと私の顔を指さすと、責めるように私の名を呼んだ。

さわ子「は、はい!」

唯「和ちゃんを、ちゃんと幸せにするつもりはありますか。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/19(土) 23:19:48.52 ID:tZuTq0oxo<> 今日はここまで ではまた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府)<>sage<>2012/05/20(日) 00:40:06.35 ID:8IKXCBTqo<> 以前のを読んでただけにこれは嬉しい!
また続き楽しみにしてます! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/20(日) 00:43:19.09 ID:QvGTzPI4o<> 前のは知らないけど面白いんで期待してます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/05/20(日) 08:50:23.92 ID:4W/4ydaNo<> こういう雰囲気いいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/05/20(日) 20:56:37.54 ID:8vTNqnHgo<> 面白い
期待してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:30:18.28 ID:pJlDHHKEo<>
 意外な一言だった。

さわ子「……はい?」

唯「さわちゃん、ちゃんと返事して。」

さわ子「えっと、それはどういう……」

唯「和ちゃんと遊びで付き合ってるなら、わたし先生のことゆるさないからね。」

さわ子「……。」

唯「……でもー、もし先生が、和ちゃんのこと真剣に考えてるなら、平沢唯は二人の恋を応援したいと思うのです。幼馴染アーンド生徒として!」

 そう言って、唯ちゃんは笑った。
 今度はベビーカーを覗きこまれた赤ちゃんが顔を蕩けさせたような笑顔だった。

 やばい。ちょっとかわいいって思っちゃうじゃない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:31:47.16 ID:pJlDHHKEo<>
さわ子「少なくとも、あの子のこと不幸にするつもりはないわ。」

唯「そんなのだめ。もっとはっきり。」

さわ子「幸せにします。」

唯「うん。よろしい。先生、和ちゃんのことよろしくお願いします。ふかぶか。」

さわ子「『ふかぶか』というのは頭を下げるときの擬音じゃないのよ。」

唯「こういうのはけじめなんだよ。私の大切な箱入り娘の人生を任せるんだから。」

さわ子「未成年のくせにずいぶん大きなお子さんがいるのね。」

唯「箱入り娘というのは、そのくらい大事にしてるっていう例えだよ?」

さわ子「説明しなくてもいいです。」

 人生か。結構重いなあ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:32:40.95 ID:pJlDHHKEo<>
さわ子「ねえ、それより。ちょっと気になることがあるんだけど。」

唯「なあに?」

さわ子「さっき、『和ちゃんの新しい恋人』って言ってたわよね。それってつまり、真鍋さんに、前にも誰か付き合ってた人がいたってこと?」

 べつに、いいんだけど。
 べつに良いんだけど。私だって、和ちゃんが初めての相手じゃないんだし。当然。
 べつに良いんだけど。気になるじゃない。

唯「いたよ。私。ピースピース。」

さわ子「は。」

唯「ちょっと前まで和ちゃんは私の彼女でしたー!…………なんてウッソー、だよ。びっくりした?」

さわ子「心臓に悪いからよしなさいよ、そういう冗談……。」

唯「ふへへえ。引っかかった、引っかかった。」

さわ子「あなたそういうキャラだったかしら……。」

唯「ベー、だ。大事な幼馴染に手を出したいけない先生には、このくらいのお仕置きは必要だもん。」

さわ子「それは悪かったわね。でもあの子はもう私のものだから。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:33:14.08 ID:pJlDHHKEo<>
唯「ひゅーひゅー。」

さわ子「ひゅーひゅーって。でも、唯ちゃんが唯ちゃんでよかったわ……。」

唯「私が私?」

さわ子「私はてっきり、『この事をばらされたくなかったら』なんて脅されるんじゃないかと思ったわよ。」

唯「あ、そう言えば、わたし、欲しいスニーカーがあったんだよねえ。さわちゃーん?」

さわ子「シャレにならないわ。」

 本当に。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:34:07.24 ID:pJlDHHKEo<>
唯「まー、それは冗談として。えっとね、和ちゃんはね、人と付き合うのはこれが始めてだよ。」

さわ子「そう。」

唯「先生と違って初心で天使なんだから、大切にしてあげないとだめだよ。」

 ふう、とため息をつく。
 安心したのを、悟られてしまったかもしれない。

唯「まあ、『ちゅー』だけは昔、私がしちゃったけどね。……あ、なんて。やっぱりこれも嘘ってことで……。」

さわ子「……あなたね。」

唯「大丈夫、ラブアンドピースだよ。ロックだよ。」

さわ子「わけわかんないわよ。」

唯「和ちゃんがいるのに浮気とかしたら、警察に言いつけるからね。」

さわ子「でもさっき、唯ちゃんの笑顔見たら思わずキュンとしちゃったわ。」

唯「それは和ちゃんに言いつけます。」

さわ子「ごめんなさい、嘘です。」

唯「めっ、だよ。」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:35:43.32 ID:pJlDHHKEo<>
さわ子「そういえば、嘘で思い出したけど、和ちゃんってやけに嘘が好きよね。あの子って、普段からああいう子なの?」

唯「和ちゃんが嘘?」


 私は和ちゃんの吐いた可愛らしい嘘をいくつか紹介した。


唯「そうなんだ…………スパゲッティって、スパゲッティの木になるんだね。
 それに私のお父さんがドイツ人だなんて知らなかったよー。なんで和ちゃんそんなこと知ってたんだろ?」

さわ子「だからそれは嘘なのよ。」

唯「あ、そっか!すごい!」

 すごいのはあなたよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:40:45.90 ID:pJlDHHKEo<>
さわ子「とにかく、突拍子もなくこんなことばかり言うんだけど。どういうことなのかしら?」

唯「うーん、さわちゃんのことが嫌いだからまじめに話したくないだけじゃないかなあ。」

さわ子「適当なこと言って大人の繊細な心を弄ぶのよしなさいよ。傷つくのよ。」

唯「きっと先生と仲良くしたいんだよ。」

さわ子「な、なかよく?」

 恋人同士として、微妙におかしくない?それって。

唯「和ちゃんは不器用で意外と恥ずかしがり屋さんだから。どうしたらいいかわかんないんじゃないかな。」

 恥ずかしがり屋……。


唯「それか、さわちゃんの素の顔が怖すぎて動揺してるとか。」

さわ子「唯ちゃん、担任に対してその口の聞き方はあなたの将来のためにならないわよ。」

唯「教育委員会。警察。」

さわ子「はい。」

 唯ちゃんはニイッと笑う。
 今度はなぜか地獄の穴を覗きこまれた悪魔の笑顔のように見えた。
 本当に唯ちゃんが唯ちゃんでよかったのか、私は自信を失いつつあった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2012/05/23(水) 17:42:25.88 ID:pJlDHHKEo<> それではまた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/05/23(水) 18:16:54.88 ID:QC9Y4IGfo<> 乙
この唯は原作唯っぽい性格だねww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/23(水) 18:51:30.38 ID:HwxYf5bBo<> 乙
続き楽しみ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(京都府)<>sage<>2012/05/23(水) 21:29:28.59 ID:FCHlZcHpo<> 乙
お姉さんしてる唯もいいね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/05/24(木) 11:24:36.67 ID:/tFV9S+Do<> 展開潰しのつもりはないけど
さわちゃんの次の敵は憂wwたぶん唯より強敵wwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/06/03(日) 07:42:57.12 ID:zYZfaVsno<> もう来ないのかな?
面白いのになあ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/03(日) 13:08:23.46 ID:4Rlj1W/+o<> 前回よりちょっと進んだところで、
止まるなよ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/06/14(木) 07:58:37.95 ID:3t+fYKfNo<> そろそろ来ないかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/06/28(木) 11:01:42.66 ID:SCA+8cGIO<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/15(日) 12:29:01.86 ID:qjvoTeux0<> 展開もつまらないしもう続かなくていいです <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)<>sage<>2012/07/15(日) 12:42:17.64 ID:79gwk4d0o<> アンチがレス残すくらいには面白いのか…
読んで見よう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/18(水) 17:51:04.07 ID:kGQnIU1z0<> 読んでも感想や支援レス残さないくらいにつまらないのか…
まあ珍作にすらなれない駄作だしな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(空)<>sage<>2012/07/18(水) 21:33:30.59 ID:iP5I8hZpo<> 面白そうだな俺も読んでみるかww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/20(金) 22:22:09.45 ID:eawybPfD0<> ばーか <>