VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 21:54:59.59 ID:z5f9c0vu0<>

前スレ
番外個体「やっほうくたばりかけの第一位」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1326201364/

・番外通行(付き合ってる
・ゆったり更新
・一方通行は一人暮らし




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1343134498
<>番外個体「やっほうくたばりかけの第一位」2 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 21:56:05.62 ID:z5f9c0vu0<>
一方通行から電話がかかってきたのは夜の8時。ご飯を食べ終えたころだった。
少しだけ気分を高揚させながら受話器を取ると、まず「こンばンはァ」と挨拶された。吹いた。
彼の用件は明日空いているかというもの。番外個体は目をパチクリさせながら電話越しでこくこくと頷く。

「ミサカ暇人だからね、空いてるよ」

『そォか、じゃァ明日俺ン家な』

「う、うん。わかった」

ぶち、と通話を切られた。
どうやら明日は室内デートらしい。
それにしても、彼からデートを誘うとは珍しい。
くすくすと笑って、番外個体は明日の服を選ぶために自室へと戻った。


ついでに、明日は3月14日。
ホワイトデーである。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 21:57:01.50 ID:z5f9c0vu0<>
「やっほう、ミサカが遊びに来たよー」

番外個体はピンポンを押すと、すぐに一方通行は扉を開けた。
促されるまま彼女は部屋の中に入っていく。

「急に呼び出してすまねェな」

「別にいいよ。ミサカ基本暇人だし」

「働けニート」

「あなたが言うことじゃないよねぇ。ま、ミサカあなたに養ってもらうって決めてるから」

番外個体が言うと、一方通行は苦笑してから、「好きにしろ」とだけ答えた。
どうやら養ってくれるらしい。
その優しさを受け止めつつ、彼女はぐい、と抱きついてみた。

「っ!?」

むにゅ、とした柔らかい感触が背中にあたり、一方通行は声にならない悲鳴を上げる。若干下半身が反応してしまったのは驚いたからだそうに違いない。
その様子に番外個体はニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべた。本当に楽しそうな笑顔で、怒る気も失せてしまう。

「うーわ、第一位はやーらしーい」

「……怒らないから離れようか番外個体さン」

「やだ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 21:57:28.03 ID:z5f9c0vu0<>
はぁ、と一方通行はため息をつく。
番外個体のこういうからかいには不本意ではあるものの、慣れてきている。
慌てふためく一方通行を期待していた番外個体はその期待はずれに頬を膨らませ、すっと離れた。

「あなたはミサカに弄ばれてヘタレっぽくあわあわ言ってればいいのに」

「断る」

「じゃあミサカを弄んでミサカがはしたない声を出すのを眺めるっていうのっ!?」

「なンで弄ぶか弄ばれるかの二択なンだよ……」

ソファに腰掛けた番外個体は一方通行から紅茶を受け取る。沸騰したばかりの熱湯だったせいかコップ越しに痛いくらいの熱気が伝わってきたが彼女は気にしない。
むしろかじかんだ手にはちょうどいいくらいだ。
それをずず、と飲み干すと、

「今日は何するの? 室内デートなんでしょ?」

「昨日、いいこと思いついたンだよ」

「えっちぃこと?」

「王様ゲーム」

番外個体の妄言を無視して彼は言う。
はてなマークを浮かべて番外個体は首をかしげた。

「……二人で? 確かウィキには5人〜10人程度って書いてあったと思うんだけど」

「じゃァ二人王様ゲーム。当たりを引いたほうがはずれを引いたほうにして欲しいことをやってもらう、ってやつだ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 21:58:24.93 ID:z5f9c0vu0<>
ニヤ、と番外個体は嬉しそうに顔をゆがめる。

「へぇ、じゃあえっちぃことでもあなたが普段嫌がることでもなーんでもしていいんだ」

彼女の相変わらずな発言に一方通行は顔色を変えることなく、

「当たりを引いたらな」

「よっしミサカやる気出てきた!あなたをあられもない姿にしてあげるんだからっ」

「はずれ引いたら同じことされるっつゥのは頭に入れておけよ」

「分かってるって」

そう言ってけらけら笑う番外個体の頭の中には自分が負けるというビジョンが浮かんでいないのだろうか。
その軽率さに少々呆れつつ、いやそういうところがいいんだと勝手に一人で惚気る一方通行。

「……それにしてもさぁ……」

「あン?」

「こんなことを思いつくなんて、あなたほんとは結構性欲もてあましてっていひゃいいひゃいほっへたふねらないへーっ!!」



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 22:00:11.65 ID:z5f9c0vu0<>
というわけで二人王様ゲーム開始だ。
テーブルの上には割り箸で作った当たりとはずれのくじが(割り箸の先に赤い印が入っていたら当たりである)入った円筒の筒が置いてある。

「後で泣き言いっても知らないよ」

「こっちの台詞だ。じゃァいくぞ」

ニヤリ、と意地悪い笑みを両方が浮かべ。
せーの、と同時にくじを引いた。

「……あ、」

声を出したのは、番外個体だった。
先ほどとは違い引きつった笑みを浮かべ、くじの先をみる。
そこは無地。
赤い印が入っているのは、一方通行のほうである。

「デカイ口叩いてたわりにオマエくじ運ねェなァ」

どこかあきれたように言う一方通行に、番外個体は言葉を詰まらせた。

「うっ……。み、ミサカがくじ運ないわけがないでしょ!? これはその、うん、譲ってあげただけだもん!」

「ハイハイ。じゃ、何を命令するかねェ……」

ぎくりと身をこわばらせた番外個体にニヤニヤしつつ、一方通行はピン、と人差し指を立てた。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 22:00:45.39 ID:z5f9c0vu0<>
「そォいや俺が風邪ひいて看病しに来たとき、あーンとかしやがったよなァ……」

「あなた未だにそれ根にもってたの!?」

「そンなこといっちゃっていいンですかァ? 番外個体ちゃン」

「ま、まさか……」

ごくり、と唾を飲み込んだ番外個体に、一方通行が告げる。

「いい子のあーンタイム始めるかァ」



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 22:01:33.40 ID:z5f9c0vu0<>
ご丁寧に雑炊を作ってきた一方通行は、ベットに寝かせた番外個体の口にスプーンを入れた。

「はふっ」

「赤い顔で睨み付けられても全然怖くねェよ」

「ほほへふぇほひはふぉへっ!!!」

「何言ってるか全然聞こえねェよ」

ついでに、本人は覚えておきなよね、といっているつもりである。
一方通行はスプーンをもう一度番外個体の口の中に突っ込むと、ポツリと呟く。

「……オマエさァ……」

「ひゃひ?」

「黙ってれば結構美人なンだよな」

「ぶひゃうっ!?」

驚いて噴出した雑炊は全て一方通行の顔に被弾した。
ねっとりとしたお米の感触が、一方通行の顔を蹂躙する。
思わず双方沈黙。

「……なァ」

「……な、なにかな? あ、えっと、雑炊まみれのあなたも素敵だと思うよ! ぞ、雑炊もしたたるいい男ってごめんなさいーっ!!!」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/24(火) 22:02:42.31 ID:9e+wK5UDO<> なんだ?クソスレかよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/24(火) 22:03:25.42 ID:z5f9c0vu0<> お久しぶりです。今日はここまで。
再構成を完結させてから書こうと思ったけど中々終わらないから同時進行でやっていこうと思います。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2012/07/24(火) 23:03:29.73 ID:y4/Od7Vio<> まさかの続編キタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2012/07/24(火) 23:12:42.94 ID:UVITOfum0<> 楽しみにしてるぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/24(火) 23:22:39.80 ID:TDoGAOUDO<> 乙!
またニマニマさせてもらうぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>sage<>2012/07/25(水) 01:53:14.80 ID:6RIJErDh0<> 続編きた! 楽しみにしてますよぃ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/07/26(木) 01:05:05.85 ID:/sua0YFO0<> これは素晴らしいスレ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)<>sage<>2012/07/26(木) 02:24:19.64 ID:o1YZNH600<> 乙! 好きだっただけに続編うれしいぜ
ところで再構成って何て作品? そっちも読みたいな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/26(木) 23:14:52.54 ID:N341GQU30<>
「酷い目にあったぜェ……」

「あ、あはは……つ、次やろう! 次!」

ぐったりとしている一方通行にそう言って始めた第二回戦。
またもや番外個体の負けである。

「……な、なんで……」

がっくりとうな垂れた番外個体に、一方通行はぽんぽんとひざを叩きながら言う。

「番外個体、ひざに座れ」

「な、なんで!? 今度は何をするつもりなの!?」

びくりと震える番外個体。一体何を要求されると思っているのだろう。
自分は彼女を傷つけるようなことは要求しないというのに。
心中でそう呟きつつ、彼は淡々と罰ゲームの内容を告げる。

「ひざに座れ」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/26(木) 23:15:18.80 ID:N341GQU30<>
数分後。
一方通行のひざにちょこんと座った番外個体は、もじもじしていた。

「……なんかこれ結構恥ずかしいんだけど……」

身長的にちょうどいいのか、番外個体の頭の上に自分の顔を乗せている一方通行に軽く講義を入れる。
が、まんざらでもないらしい。ちょっぴり頬が緩んでいた。

「けけけ。いきなり膝に座れってなに? やっぱり欲求不満なんじゃあ――」

「愉快なオブジェに変えるぞオイ」

「仮にも彼女にひどいなぁ、第一位は」

「俺はオマエの日頃の行いの方がひでェと思うけどなァ」

半眼で睨み付けてくる一方通行から目を逸らし、だらだらと冷や汗を流す。
……まあ、やりすぎかな、と思うことは多々あることもないような。

「……でも、ミサカこれでも我慢してるんだし」

「あァ?」

馬鹿な、という顔の一方通行に番外個体はキッと睨み付けた。

「だって! あなたが好きなのになぜか悪意とか出てきちゃってそんでわけわかんなくなって時々殺したくなってでも殺したくなくてあとミサカネットワークからリア充爆発しろっていう負の感情が溢れてくるしなんかもう大変なんだからね!」

「お、おゥ……」

たじろいた一方通行にふん、と鼻を鳴らす。
そうだ、実際大変なのだ。最近はもう耐えるのがめんどくさくなってミサカネットワークの接続を常時切っているくらいには。

「なンか……すまねェな」

「……まあいいよ。ミサカあなたが好きだし」

「ン」

頭を撫でてやると、番外個体は幸せそうに目を細める。
可愛いなァ、と心の中だけで思った。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/26(木) 23:17:11.24 ID:N341GQU30<>

さて、12時を回ったころ。
番外個体は連敗していた。それはもう見事に完敗だった。

「おかしいよこれ! なんで何時間もやってるのにミサカ一勝もできないの!?」

「運の問題なンじゃねェ?」

「あなた絶対なにかしてるよね!? ミサカには分かるもん!」

「ハイハイ、とりあえず昼飯でも買いに行くか」

叫ぶ番外個体を一蹴すると、頬を膨らませて睨まれた。

「むー……」

「オマエの好きなもン買ってやるからすねンな」

「ミサカすねてないし! あ……そうだ、一方通行」

「……あァ?」

「あ、あの……その……」

「なンだよ?」

「……これはさ、その……命令じゃなくてお願いだから、ゲームに負けたミサカの言うことでも聞いてくれるかな……?」

「……お願いなら……まァ、いいけどよォ」

「ほ、ほんとっ!?」

番外個体は嬉しそうな声をあげ、恥ずかしそうに『お願い』を口に出す。

「……ミサカ、自転車にあなたと二人乗りしたい」


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/26(木) 23:21:35.64 ID:N341GQU30<> 時間がないのでこんだけ。番外通行スレが増えないものか。


>>16 美琴「だって私は、姉だから」 です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/07/27(金) 00:05:58.99 ID:g2FuypVa0<> おつー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/07/27(金) 00:29:10.64 ID:Yog4RGAjo<> >>1乙
あっちも同じ作者だったのか。両方ともお気に入りさせて頂いてます。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 01:21:27.55 ID:2sESXpxSO<> 続きはよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 17:55:30.35 ID:gU29bdY/0<> もう片方のスレが終わったらでいいから、更新してくれると嬉しいじゃん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/29(日) 20:08:35.60 ID:oaxymMpn0<>
自転車に二人乗りをする男女。今時そうそうみないであろう少女漫画の一ページみたいなことを二人は実行していた。
自転車を漕ぎながら辟易している一方通行とは逆に、鼻歌を歌っている番外個体はよほどご機嫌らしい。得意の毒舌もどこへやったのか、今はしきりに背中へ頬擦りしてくる。それと同時に彼女の豊満な胸も背中にあたるので正直やめてほしいのだが。

「ついたぞ」

「えー。ミサカもっとこうしてたい」

「……はァ」

どうせ無理やりやめさせたら拗ねられることは目に見えているので好きにさせておくことにした。ああ、周りの目がいたい。
端からみたら酔狂なカップルなんだろうな、と一方通行はため息をつきたくなった。

「あのね」

抱きついたまま、番外個体が話しかけてくる。

「ミサカね、学校に行けないから。クローンだから。だからね、こういうことしたかったんだ」

僅かに寂寥を含ませながら、番外個体はたどたどしく己の胸中を言葉にして吐き出した。
ン、とだけ返す。先を促すように。
それを感じた番外個体は、ほう、とため息をついた。

「……黄泉川の家にあったんだよね。幸せそうなカップルがこんなことしてる漫画。学園ものってヤツ? キラキラした絵柄でさ。ミサカにはちょっとキツかったかな。……まるで、一生手に入らないものを見せつけられているみたいで、さ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/29(日) 20:09:38.31 ID:oaxymMpn0<>
そう言う番外個体の声は震えていた。もしかしたら、泣いているのかもしれない。後ろから抱きつかれているこの体勢では彼女の顔は見えないので確認しようがないのだが。

「……学校、ねェ」

少しだけ、思い出す。
檻の中に閉じ込められたのと変わらなかった、あの学校生活を。

「ぎゃはは、確かあなた学校ではずっとぼっちだったんだっけ? 御愁傷様っ。……ミサカが居れば、そんな風にはさせなかったのに」

最後の方は、涙交じりの声だった。
ぎゅう、と抱きつく力が強まる。

「……なァ、番外個体」

「なに?」

「今度、泊まりにくるか」

「……はあ?」

いきなりの誘いに困惑した番外個体はあ、と気づいた。
……柄にもなく、そちらから温かさを提供してくれようとしているらしい。
それがあんまりにも可笑しくて、嬉しくて、だから普段通り悪態をつくことにした。

「ミサカのこと食べちゃう気?」

「はァ!?」

「まっそんなわけないか。第一位さんはヘタレだもんね。キスすら自分からできないし」

「……それは違うだろ」

顔を赤くして否定する一方通行が、心底可愛いと思った。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>saga<>2012/07/29(日) 20:12:45.13 ID:oaxymMpn0<> 今日はここまで。
旅行行くので暫く投下できなくなります。すみません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/29(日) 23:31:23.25 ID:fEynIyFDO<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/01(水) 17:16:29.35 ID:0dTGBs9SO<> 乙
大体いつくらいになるのかは記してくれないかね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/05(日) 00:02:12.30 ID:GTzsEdndo<> 保守 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 17:59:28.39 ID:u9f2iz4SO<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/15(水) 18:10:50.80 ID:u9f2iz4SO<> ううむ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/08/16(木) 20:43:39.80 ID:WtcueJgl0<>


結局その日は晩御飯までずっと一緒にいた。
後から聞いたらあの日はホワイトデーだったらしい。

なるほど、あの人が似合わない行動をとるわけだ。

バレンタインデーのお返しをするための日、というのがホワイトデーの存在意義ならしい。
まあ、愛を深めるには絶好のチャンスではある。恥ずかしがり屋(本人は絶対に認めないが)のあの人が一歩進むには十分なきっかけだったのだろう。
例えそれがチョコレート会社の陰謀だったとしても。

あの日から、一ヶ月、二ヶ月……そして半月がたった。
その間にあのヒーローさんはインデックスって人と付き合うことになって、傷心になったおねーたまはどうやらエツァリって人に慰められて色々あれこれあって付き合うことになったらしい。
その辺ミサカよく知らないんだけど。ミサカネットワークにあんまり繋げないし。
10032号曰く、『あの人どころかお姉様まで』あーたらこーたらで、うん、大変そう。
ミサカには関係ないけどね。

ついでに、あの人にその事を伝えたら、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。いやほんとに。
どうも、エツァリって人に嫌な思い出があるらしい。

そしてミサカ達もさらなる一歩を踏み出していたりする。
なんていうか、有り体に言えば“ヤった”のだけれど。

うーん、気持ちよかった、んだろうなぁ。
あんまり事の最中は覚えてない。ただ、あの人の綺麗な顔だけは覚えている。

今思えば、ミサカは幸せだったんだと、そう思う。
あの人がいて、おねーたまとか最終信号とか、他の個体達とか。
それに黄泉川に芳川。そういう人に囲まれて、ぬくぬくと、自分の存在理由を考えもせずに過ごして。

それがどれくらい奇跡なのか、平和ボケしたミサカは全然理解していなかった。

ミサカはそれを、嫌なくらい思い知らされることになる。
死にたくなるくらい、体と心に。

少しずつ、何かがずれていく。
取り返しのつかないところまで。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/08/16(木) 21:16:22.56 ID:WtcueJgl0<>
チャイムの音で目が覚めた。ゆっくりとまぶたをひらき、緩慢な仕草で一方通行は体を持ち上げる。
体がだるい。主に下半身が。昨日はそこまではっちゃけていないはずなのだが。
壁にかかった時計を見ると2時だった。案外このだるさも寝すぎから来ているのかもしれない。二人揃っていつまで布団でごろごろしているのやら。

「番外個体、起きろ」

そう言って毛布を持ち上げる。
まだ蒸し暑いこの季節。隣で寝ている番外個体は裸のままだった。
はぁ、と嘆息してしかし自分も全裸だったことを思い出し、バツの悪い顔をする。いそいそと服を着替えると、番外個体へと向き直った。

「番外個体――」

その瞬間、一方通行は慌てて首元のチョーカーへと手を伸ばした。パチンと勢いよく目を見開いた番外個体がレベル4程度もの威力を持つ電撃を放ったからである。
一方通行のベクトル操作によって電撃は上へと反れたが、一瞬でも遅れていたら危なかった。冷や汗を垂らしながら一方通行は番外個体を叱咤する。

「オイ! 危ねェだろ!」

「……んー?」

上半身を起こした番外個体はほけっという顔をしていた。一方通行の声がぐっと詰まった。
勿論その顔に見惚れたからに他ならない。
が、すぐにその感情を振り払うと、

「ンー、じゃねェ! ったく、俺を殺す気かっての」

「うぁ……、ミサカもしかして寝ぼけて電撃放っちゃった?」

「……気づいてなかったのかよ」

こく、と素直に頷かれた。再度溜息を漏らす一方通行。
まあ、わざとではないのなら仕方がないか。

「ちゃンと次からは気をつけろよ」

「ん。ごめん」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/08/16(木) 21:16:59.42 ID:WtcueJgl0<>
とそこで、またピンポーン、と音が響いた。そうだ、この音で自分は目を覚ましたのだった。
番外個体に服を着るように言うと、一方通行はドタドタと駆け足で玄関へと向かう。そして、相手が誰かも確かめずに扉を開いた。

直後、彼は後悔することになったのだが。

「やっほー、可愛い可愛い妹と未来の義理弟に会いに来たわよ」

「ついでに自分もご一緒していますけどね」

にっこり笑う番外個体の姉はさておいて、その彼氏に一方通行は一言、

「テメエは帰――」

「あーっ!! おねーたま!!」

いえなかった。
後ろから一方通行以上に足音を立てて近づいてきた番外個体は、まるで打ち止めのように美琴へと飛びついた。
体格差で後ろへ倒れそうになったところを、エツァリは笑顔で受け止めた。

「ちぇー、攻撃失敗」

「オマエはオマエで何やってンだよ……」

心底残念そうに言う番外個体に、一方通行は呆れるようにつっこんだが、当の美琴は可愛くて仕方がないとでもいうように笑顔を絶やしていないので問題はないのだろう。
まったく、と一方通行は思う。

(一応和解したとはいえ……無防備すぎンだろ……)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/08/16(木) 21:17:33.27 ID:WtcueJgl0<>
呆れを通り越して尊敬の念すら浮かぶ。
そのとき、番外個体ににらまれているのに気がついた。
顔を見ると、さらにその顔は険しくなっていき、

「一方通行、何おねーたまじろじろ見てんの。何、浮気?」

「ごめん一方通行。私には今エツァリがいるから」

「っていうか御坂さんの妹を彼女にしておきながら御坂さんを狙うとか万死に値するんですが」

三者三様の非難の言葉に「はァ!?」と一方通行は言葉を荒げた。
いきなり何を言われているのだ自分は。

「なわけねェだろ! 俺が好きなのは番外個――」

体、とまでは言えなかった。
はめられたな、とニヤニヤ顔の三人が自分を見つめていたからだ。

「いやーミサカ愛されてるよねおねーたま」

「うんうん。この調子じゃオリジナルから義理姉さん呼びになる日は近そうね」

「結婚式にはぜひ呼んでくださいね」

姉妹二人どころかエツァリにまでからかわれて、一方通行の堪忍袋の緒は切れた。
彼は叫ぶ。

「オマエら絶対許さねェ! 愉快なオブジェにしてやンよ!!」

直後、将来の義理姉からぐーのパンチを頂いた。
しかも割りと本気で。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/08/16(木) 21:20:44.65 ID:WtcueJgl0<> 全然ネタが思い浮かばなくていきなり終わったホワイトデー。もっといちゃいちゃさせたかった
そのせいでかなり駆け足になってしまった
エツァ琴好きなんだけどあんまりないんだよなぁ…… 増えろ。超増えろ

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 22:05:24.77 ID:jZYWD++Co<> 乙

ここでエツァ琴かよ・・・
個人的には他のCPはあまりいらんかった

しかしながら乙
次は早めに頼む <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/16(木) 22:06:14.61 ID:jZYWD++Co<> 一応あげておく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 22:16:21.40 ID:yQsoCXwoo<> エツァ琴……確かに珍しいな

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/24(金) 00:42:57.67 ID:/ZVVhFcSO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/28(火) 20:16:24.66 ID:dYOKVJ2SO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/28(火) 20:39:23.68 ID:WNfzLqvIO<> 乙
向こうもはよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/09/03(月) 20:38:00.48 ID:NLgJ/B+SO<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/09/07(金) 09:49:35.87 ID:XPjS5DOmo<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/09/08(土) 20:11:22.98 ID:lGTykAdSO<> はよう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/09/23(日) 16:22:09.03 ID:4Qt7y0H8o<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/09/23(日) 16:34:01.94 ID:CeduWE9wo<> はいはい逃亡逃亡 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/12(金) 11:19:40.38 ID:Be+IsqtWo<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/14(日) 16:02:29.40 ID:HnOGu2Ueo<> はやくしろよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/14(日) 17:29:45.42 ID:MbwXqZXq0<> お久しぶりですすみません!!生存報告です!
スランプすぎて全然かけない……。書いては消しの繰り返しです
もう少し待っていただけると嬉しいです
それでは <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/14(日) 21:50:36.95 ID:Msjcykxxo<> 待ってます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/15(月) 13:40:06.61 ID:AJGIJWlIo<> ううむ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/10/31(水) 01:02:22.46 ID:1XJFrAnSO<> 待つか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/10/31(水) 14:31:56.24 ID:OiRXXfupo<> 再構成もこっちもすごく好きなスレだ

シリアスフラグ立てっぱなしで終わるなんて悲しいことにならないでほしいし
エタらない程度にゆっくりでいいよー待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:18:36.15 ID:chVWEka30<>

「……嵐みてェな奴らだったな……」

「そうだねぇ、さっすがミサカのお姉さま、最高だよ!」

ぐったりとうな垂れる一方通行とは対照的に、番外個体はけらけらと豪快に声を立てて笑った。
5時を告げる放送がなるのと同時に、美琴達は帰っていった。それまでに何があったかは、一方通行の名誉のために黙っておくことにしよう。
番外個体はひとしきり気が済むまで笑い終えると、

「今日もミサカ泊まっていこうかな」

「あァ? まァ構わねェけど。じゃァ晩飯会に行くか、何がいい」

「ミサカお手製ハンバーグが食べたい」

「了解、お前は家で待ってろ」

「えー、ミサカもついてくよ?」

「その間風呂洗っといてくれ」

「あー、分かった。んじゃ、いってらっしゃい」

指示を与えると、番外個体は素直に頷いて風呂場の中へと消えていった。
そんな彼女に背を向けて、一方通行は玄関のドアノブへと手を伸ばす。
外の世界には、赤く染まった広大な空が、無限に広がっていた。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:19:04.30 ID:chVWEka30<>

少女は夢を見ていた。
しばらく見ることのなかった、けれど確かに自分の根本にある、忌まわしい記憶の再生を。
それは、暗い、深い、終焉の夢。
とある少女達の世界を終わらせた、悲しい哀しい殺戮劇。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:19:53.66 ID:chVWEka30<>

『はい、よろしくお願いします、とミサカは返答します』

最初は、ただ何も分からなかった。

分からないまま、引き金を引いた。

自分の命の重さも、それを失うことによって悲しむ人の存在も、何も知らなかった。

だから、最後の引き金も、ためらわずに引いた。

そして、やっぱり何もかも分からない、真っ白のまま、

少女の世界は、終わった。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:20:47.08 ID:chVWEka30<>


『さようなら、お姉様』

そう言って哀しそうに(だと思う。自分は彼女ではないのでその心は正確には分からないが)別れを告げる少女の姿が一転。

彼女は左足をもがれ、地面に這いつくばっていた。

そして、迫りくる強大な質量をもつ凶器から逃れることはできず。

ただ、自分の大切な、かけがえのない宝物を抱えて、

少女の世界は、終わった。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:21:29.61 ID:chVWEka30<>

『お姉様にとって――ミサカは否定したい存在だったのですね』

自分の素体である人間に、存在を否定された。

彼女の悲痛な叫びが何度も頭の中を巡って。

子猫を一緒に触りたかった。そんな思いの根本も。

なぜか走る胸部の痛みの答えも知らないまま、

少女の世界は、終わった。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:22:10.58 ID:chVWEka30<>

そう、彼は少女達の世界を終わらせたのだ。
何度も何度も、自分の身内を。
とある少年と少女が、全てを終わらせるまで、幾度となく。
だから、だから自分は――、

「ミサカは――……、……、  あ、れ?」

ふと気がつくと、ソファの上で寝転がっていた。どうもお風呂を洗ったあとに寝てしまったらしい。
いつの間にか窓の外には暗黒が立ち込めていて、部屋の中にはそれを払拭するために文明の利器が煌々と自分を照らしていた。
一体誰が付けたのか。自分は電気なんてつけていないのに
そんなことを考えながら重い瞼を開け、緩慢な仕草で部屋へと降り立つ。
羽のない、天使というにはあまりにも闇に染まってしまったその堕天使の姿を眺める人間が、一人。
否――白い悪魔は、呆れ顔を浮かべながら寝起きの彼女に声をかけた。

「起きたのか」

「……あー、あなた、帰ってたんだ」

後ろに首を傾けると、そこには彼の容姿にはあまりにも似合わないエプロンとフライパンという家庭的な格好で、晩御飯を作っていた。
勿論彼とはここの家の主である、一方通行である。
番外個体はすんすんと鼻をならし、

「いいにおい」

と感想を一方通行に告げた。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:23:04.49 ID:chVWEka30<>
「そろそろできる。椅子に座って待ってろ」

「はーい」

いい子のお返事をして、番外個体は腰掛けた。
鼻腔擽り、食欲をそそらせる匂いに思考が鈍くなり、

(そういえば――何の夢、見てたんだっけ)

思い出せない。
ただ、泣きそうなくらい悲しくて苦しい夢だったような気がする。
けれど、それについての思考はやはり一方通行の持ってきた料理でさえぎられて。

(ま、いっか)

そう心のなかだけで呟いて、彼女は笑った。
それは淡く、優しい、人間のような笑みだった。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/10/31(水) 20:25:42.36 ID:chVWEka30<> お久しぶりです本当間空けすぎてすみません
そのくせあんまり量がなくて申し訳ないです
次回更新はできるだけ早くにします。頑張ります。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/31(水) 20:39:27.45 ID:xnXzP77DO<> 乙〜
あまり無理せず頑張れー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/01(木) 00:28:53.90 ID:kVQgeq6zo<> 頑張ってくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/01(木) 00:29:31.46 ID:kVQgeq6zo<> 乙
頑張ってくれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2012/11/02(金) 18:06:18.50 ID:UMND41ta0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/07(水) 12:53:24.05 ID:pTSSIp1Qo<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/10(土) 00:40:18.28 ID:hL8y4SYSO<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/12(月) 01:09:08.62 ID:JjMReUpJo<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/11/17(土) 17:06:49.55 ID:K4m+xBNco<> はよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)<><>2012/11/17(土) 18:13:28.13 ID:3aVOAOkk0<> はよ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(田舎おでん)<><>2012/11/17(土) 21:22:53.81 ID:F1cMOITZ0<> こいやああああ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/11/17(土) 22:39:37.93 ID:E0yJ2GzP0<>
「ただいまー」

「あ、おかえりなさいってミサカはミサカは抱きつきいてみたり!」

玄関を開けた瞬間、腰に幼女が抱きついてきた。
もちろん幼女とは、自分の姉の一人である打ち止めである。
二日ぶりの我が家(ただし居候)には、なぜか打ち止め以外の気配がない。番外個体は打ち止めの体を引き剥がしつつ、

「黄泉川達お出かけ?」

「うん、ご飯買いに行ってるの! ミサカ偉いからお留守番なのだー!」

「ふぅん、ミサカの分もあるのかね」

「あるとおもうってミサカはミサカは頷いてみる。お鍋だって!」

「お、ミサカ楽しみ」

そんなことを言いながら帰って早々ゲームを準備する番外個体。負けると分かっている打ち止めは嫌そうな顔をしたものの、なんだかんだでコントローラーを手に取った。
ゾンビを撃ち殺すことで点数を得、その得点が多い方が勝ちというこのゲーム。撃たれるとかなりえぐい映像になるので、自分たちの実年齢ではやってはいけないような気がする。
打ち止めなら、外見年齢でも駄目だろうが。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/11/17(土) 22:40:36.14 ID:E0yJ2GzP0<>
「そういえば、ミサカ昨日おねーたまに会ったよ」

「えーずるいずるい!! ミサカも今度遊んでもらうってミサカはミサカは宣言してみたり!」

「あ、じゃあこのゲームに勝ったほうがおねーたまと遊ぶ権利を勝ち取るってことで」

「むがーっ!! ミサカが負けるって分かってて言ってるでしょってミサカはミサカは憤慨してみる!!」

バンバンバン!! と調子良くゾンビを撃ち殺すのは番外個体。対して、ぎゃーだとかひーだとか悲鳴をあげてまともに弾が敵に当たっていないのは打ち止めだ。
同じ『実験』用の戦闘知識を頭に入れているはずなのに、この差は一体どこから出てきているのやら。
呆れ顔で姉を不憫に思いつつも、決して手加減をしない番外個体は、指を素早く動かしながらぼんやりと思案した。

(――ゾンビ、ねぇ)

死んでいった姉達の顔が、自然と思い浮かぶ。
もし、彼女達が今の自分を見たら、なんというだろう。
最悪の宿敵に恋をし、体を許し、いつまでも一緒にいたいと望む、そんな自分を見たら。
許さないと、言うだろうか。
――忘れるな、と釘を刺されるだろうか。

(……ミサカは、狂ってるのかなぁ)

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>saga<>2012/11/17(土) 22:41:11.45 ID:E0yJ2GzP0<>
だとしたら。
隣にいる打ち止め。彼女も一方通行に家族としての好意を持っている彼女も、狂っているのだろうか。
お姉様は、どうなのだろう。
かつて彼を憎み、苦しみながら和解をし、泣きながら許し許され、今は『友人』として一方通行を扱っている身内の一人。

(和解をする日、お姉様、泣いてたっけ)

私はアンタの罪を忘れない。あの子達の死んでいった姿を絶対に忘れない。
いや、忘れることなど出来ないのだと。脳裏に焼きつき、今だって心を蝕んでいるそれを、忘れることなど不可能だ。
それでも、許すと、彼女は言った。
そんな彼女も、狂っているのだろうか。

(ミサカには、わかんないや)

何が正しくて、何が間違っているのか。
もっともっと、沢山生きたらわかるのだろうか。

ゾンビがまた一人撃ち殺される。
血が画面を覆った。打ち止めが悲鳴をあげる。
番外個体は、その様子を無言で眺めていた。

(――ミサカは、あの人への復讐を、完遂するべきだったのかな)

そんなことを思いながら。
番外個体はあやふやな道を、歩き続ける。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/25(日) 01:01:53.01 ID:3QLFK7TNo<> 乙
続きは四 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/05(水) 04:35:41.96 ID:TSjNWCb0o<> 乙
続きまだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/16(日) 23:08:08.25 ID:BEiSky07o<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <><>2012/12/23(日) 00:44:04.41 ID:0bIfOlnJ0<> こんにちは <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/01/03(木) 03:10:56.37 ID:9n50gTZSO<> まだか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/01/07(月) 23:47:09.64 ID:wrNiWE29o<> まだかよおら <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/01/15(火) 20:48:02.24 ID:3Tt269pIo<> はよ <>