VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 21:16:16.29 ID:hP4IuoAM0<>「わたし、おーきくなったら"あいどる"になるの!」

女の子は玩具のマイクを片手にくるりと回転し、何度も練習していた可愛らしいポーズをする。

ボクはそんな女の子を見て首を傾げた。

「"あいどる"ってなんだっけ?」

「えっとね。いーっぱいの人の前でね、おうたをうたったり、ダンスをおどったりする人だよ!」

そういうと女の子は歌を歌い始め、曲に合わせたダンスを披露する。

その歌声は音程なんて合っていない調子はずれなもので、ダンスは足踏みするだけの単調なものだ。

ただ、それでも。

女の子の歌声を聴いていると温かな気分になり、女の子のダンスを見ていると自然と笑みが零れるのだった。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1344773775
<>P「昔の約束、か」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 21:37:15.19 ID:hP4IuoAM0<> 「いーっぱいの人をね、しあわせにするのが"あいどる"のおしごとなの!」

「それはとってもすてきだね」

「うんっ! ……それでね、えっと」

元気に頷いた女の子だったが、途端に顔を赤らめ身体をもじもじとさせる。

「わたしが"あいどる"になったら――結婚……してくれますか?」

女の子の言葉を理解して、体温が上がるのを感じた。

しかしボクは、すぐに、迷うことなく、少しの躊躇いもなしに頷く。

「う、うん! もちろんだよ!」

だって女の子がボクのことが好きなように、ボクも女の子のことが好きなのだ。

こんなにもボクを幸せにしてくれる"あいどる"である女の子のことが、大好きなのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 21:49:16.09 ID:hP4IuoAM0<> 「ほんとうに?」

「ほんとうに」

「ほんとにほんとう?」

「ほんとにほんとう」

「やったやったやったーっ!」

不安そうにしていた女の子がそこでようやく笑顔を見せる。

今日一番の、とびきりの笑顔。

つられてボクも笑顔になって、二人で手を取り合って喜んだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 22:00:49.86 ID:hP4IuoAM0<> 「じゃあ"約束のしるし"に、これをあげる」

辺りが朱色に染まった頃、女の子が手を差し出してきた。

その手に握っていたものを、ボクはおずおずと受け取る。

「それはね、わたしのお気に入りのリボンだよ」

確かに見覚えがある。

女の子はいつも髪にリボンを結んでいて、ボクの手の中の真っ赤なリボンは特に目にしていた。

「いいの?」

遠慮がちに訊くと、女の子はにこりと笑って頷く。

「でもね、わたしが"あいどる"になったとき――あなたと結婚したときに、そのリボン、つけてほしいな」

ああ、だから"約束のしるし"なのか。

ボクはそのリボンを胸に抱きしめる。

大切に、大切に。

女の子の想いを胸にしまうように。

「わかったよ。大切にするね」

「約束だよ?」

「うん、約束」

夕焼けに照らされたボクらの顔は、幸せに満ちていたのだった―― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 22:03:18.32 ID:hP4IuoAM0<> と、いうわけでオープニングでした!

書き溜めなんてしていないので更新頻度も少なく、結構な遅筆となりますが宜しくお願いします!

割と長くなるかも……です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/08/12(日) 22:23:49.94 ID:dHRA0ExOo<> 乙、同じ地元として期待してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/08/12(日) 22:31:21.16 ID:nq1WFCu90<> 乙
気長に待つ、頑張れ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<><>2012/08/12(日) 22:38:33.89 ID:00RnmxjN0<> 期待
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 22:39:02.96 ID:hP4IuoAM0<> ……………………
………………
…………
……

「――また懐かしい夢を……」

寝ぼけ眼で一人呟く。

久しぶりに見た夢――幼い頃の記憶になんとなく感傷的な気分に浸ることしばし、ようやく頭が覚醒してきた。

カーテンから差し込む朝の眩しい日差しに顔をしかめつつ、ベットから身体を起こす。

はぁ……なんだかなぁ。

昔のことだからと割り切ってたつもりなのに、こうして夢に見るってことはやっぱり、それなりに未練があるってことなのか。

「でも、顔も年齢も、名前すら思い出せないんだよねぇ……」

なにせ随分昔のことなのだ。

覚えているのは、女の子の夢と、約束だけ。

うん、やっぱり割り切れてなんかいないや。

それを思い出すだけでもこれだけ温かな気持ちになれるのだから。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 22:49:48.57 ID:hP4IuoAM0<> ふと時計を見ると、針は6時を示していた。

「そろそろ準備しないと」

さすがに初出勤で遅刻するわけにもいくまい。

軽めの朝食を摂り、手早く身支度を済ませ、まだ新品同然に糊の利いたスーツに袖を通し、玄関へ向かう。

「――おっと。危ない危ない」

靴を片方だけ履いたところで忘れ物に気づき、慌てて部屋へと引き返す。

そしてタンスの上に置かれていた目当てのもの――真っ赤なリボンを鞄に結びつけた。

「これでよし」

紳士用の鞄に対してあまりに不恰好だけれども、それでも良い。

だってその方が目立つからね。

そんなことを考えながら、"約束のしるし"と共に、俺は意気揚々と部屋から出たのだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 23:02:03.26 ID:hP4IuoAM0<> 東京都大田区矢口二丁目一番七六五号。

そこに今日から俺が勤める職場――アイドル事務所、765プロダクションがある。

「……しかし、何度見ても小さな事務所だなぁ」

なんというか、事務所の佇まいからすでに弱小オーラが滲み出ているような……。

実際それは気のせいなどではなく、ここ、765プロはユニット『竜宮小町』を除いて殆どが無名のアイドル候補生が集まる弱小事務所なのだ。

その最たる理由は、プロデューサーの不在。

そして現状に危機を感じたのか新規のプロデューサーを急募していたところを応募すると、驚くほどのトントン拍子で採用が決まったのだ。

正直、不安を覚えなくもないが、覚悟は昨日の晩に済ませておいた。

緊張していないといえば嘘になるが、いつまでもここで立っているわけにもいくまい。

意を決して事務所の扉を開く。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/08/12(日) 23:12:31.08 ID:5acOsRYDo<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽)<>sage<>2012/08/12(日) 23:22:41.08 ID:DKGuH/QAO<> 乙。
これは、そそられる…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 23:30:39.40 ID:hP4IuoAM0<> 「お、おはようございます!」

「あ、おはようございます」

事務所に足を踏み入れた俺をにこやかに迎えてくれた女性の名は音無小鳥。

765プロのただ一人の事務員で、俺の同僚にあたる人物だ。

「今日からよろしくお願いしますね、プロデューサーさん」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

音無さんとは採用試験の面接の際、社長と共に一度顔を合わせていた。

初めて彼女の姿を見たときは、どうしてここまでの美人がアイドルではなく事務員をしているのだろうと首を傾げたものだ。

「はい、どうぞ。お茶ですよ」

「ありがとうございます」

差し出された湯飲みを受け取る。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 23:35:33.58 ID:hP4IuoAM0<> 「……うん。とっても美味しいです」

「うふふっ。ありがとうございます」

そう言って笑う彼女はやっぱり魅力的で、ますます疑問に思ってしまう。

「あの……」

訊いてみようか、なんて一瞬思ったのだが、たかだか好奇心如きで詮索するのは良くないよね、と思い留まる。

「どうしました?」

「いや、えっと……」

「おっはようございまーーっす!」

俺の言葉を掻き消すように、事務所に明るい声が響いた。

声の方向――事務所の入り口に顔を向けると、そこには頭の左右にリボンを結んだ少女の姿が。

確か彼女は―― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/12(日) 23:44:13.76 ID:hP4IuoAM0<> 「おはよう、春香ちゃん。今日もとっても元気ね」

そう、天海春香さん。

プロフィールで確認していた765プロのアイドル候補生の一人だ。

「おはようございます、小鳥さん。えっと、そちらの方は……」

天海さんの視線がこちらへ。

よし、まずは自己紹介をしようかな。

何事も第一印象が肝心だから、なるべくにこやかに、爽やかなイメージを心がけて。

「おはよう天海さん。俺は今日からここで働くことになった、君たちのプロデューサーだよ」

「プロデューサーさんですか!?」

天海さんは驚いたように声を上げ、素早く俺の傍に駆け寄ってきた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/13(月) 00:14:06.79 ID:mEz3DjgDO<> Pって何歳? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 00:21:30.83 ID:CY3sY5UI0<> >>17
それは物語に関わってくるので、各々で補完をしてください!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)<>sage<>2012/08/13(月) 00:31:38.59 ID:1TNa8+NAO<> 良さそうな雰囲気なんで期待してる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)<>sage<>2012/08/13(月) 09:24:44.56 ID:5MewQKePo<> 期待する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 11:11:56.65 ID:CY3sY5UI0<> 「あのっ、私、天海春香っていいます! 趣味はお菓子作りと長電話で、それから、ええっと――きゃあ!?」

「危ない!」

突然バランスを崩した天海さんの身体を咄嗟に受け止める。

よかった……なんとか間に合った。

大切なアイドルに怪我でもさせたら大変だ。

「大丈夫?」

「ひゃ、ひゃい……」

丁度俺の胸元の位置にある天海さんの顔は、真っ赤で。

まるであのリボンのように、真っ赤で――

あれ? なんというか、この状況に僅かに既視感が……。

よく思い出せないけど、随分昔に同じように女の子を―― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 11:21:41.43 ID:CY3sY5UI0<> 「ぷぷぷプロデューサーさん……その、えっと……」

天海さんの声で我に返る。

さっきの感覚は……うん、きっと気のせいだろう。

既視感なんてよくあることだろうし。

それよりも、だ。

「どうしたの?」

訊くと天海さんはさらに顔を赤らめ、しどろもどろに口を開いた。

「あのえとそのっ、そろそろ離してもらっても大丈夫かなーって……」

言われてみると、確かに彼女の身体を抱きとめたままだった。

「あ、ごめんごめん」

「い、いえ、こちらこそ……ごめんなひゃい」

お互い深々と頭を下げる。

アイドルとプロデューサーのファーストコンタクトにしては、なんだかおかしな状況だなぁ、なんて思っていると・

「ふふふっ」

音無さんの笑い声が。

「早速仲良くなれましたね」

「そうなんですか?」

「そうねんですよ」

「……あうぅ」

天海さんの顔は、まだ赤いままだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 11:39:54.51 ID:CY3sY5UI0<> 「うおっほん! では、我が765プロ、期待の新プロデューサーを紹介しよう」

765プロの社長、高木順次朗の紹介に合わせ、俺は一歩前に出る。

「今日から君たちのプロデュースを担当させていただきます!」

九人のアイドル候補生(竜宮小町の姿はない)の視線を一手に受けて、つい緊張してしまう。

ずっと自己紹介の練習をしていたおかげで何とか噛まずに言えたけど。

「今日からよろしくお願いします!」

パチパチと拍手を送られようやくほっと息を吐く。

やっぱり人の前に立つって緊張するなぁ。

何度やっても慣れないや。

「ねーねー兄ちゃん!」

すると一人の少女が顔を覗き込んできた。

兄ちゃんって……俺のこと?

「そーだよ!」

無邪気に笑うこの娘の名前は、双海真美さんだったか。

確か双子の妹である双海亜美さんが竜宮小町の一員だったはずだ。

「兄ちゃんが、真美たちをプロデュースしてくれるんだよねっ?」

「うん、そうだよ」

「じゃあじゃあ――」

双海さんの表情が、変わる。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 11:48:32.32 ID:CY3sY5UI0<> 「真美を竜宮小町に――亜美に負けないようなアイドルにしてくれる?」

その表情は、不安、悲しみ――様々な感情が入り混じっていて。

「…………」

ああ、そっか。

双海さんは、妹さんのことが羨ましいのか。

確かにそうだよね。

だって二人は双子なのに、二人の実力にに大差なんかないのに。

それなのに、一方だけがアイドルとして成功しているなんて、そんなの。

俺だったらきっと、耐えられない。

「もちろんだよ」

そんなことを考えていて。

「俺に任せて」

「ホント!?」

結局それは、あまりに的外れな考えだった。

「これで真美と一緒にお仕事できるね!」

「……え?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 12:00:04.12 ID:CY3sY5UI0<> つい、言葉が漏れる。

それだけ驚いたのだ――彼女の想いに。

『これで真美と一緒にお仕事できるね!』

それは、つまり。

羨ましいとかそんなのじゃなく、ただ単に。

一緒にいられないことが、寂しかっただけなのか。

ふと他のアイドルたちに目を向けると、全員が温かな瞳で双海さんをみつめていて。

――うわぁ……俺、なんて恥ずかしいんだろう。

初めて顔を合わせたとはいえ、とんでもない誤解をしてしまった。

でも、これで理解できた。

これが765プロなんだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/08/13(月) 12:06:29.59 ID:Gfm2bf9u0<> 真美と亜美間違ってません? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/08/13(月) 12:08:11.68 ID:M7h04Qf70<> これは面白そう。なんかワクワクする!
応援しています。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 12:08:48.98 ID:CY3sY5UI0<> なかなかどうして、良い事務所じゃないか。

彼女たちの団結力が手に取るようにわかってしまう。

「――あははっ」

うん、彼女たちはアイドルだ。

こんなにも幸せな気分にしてくれる――"あいどる"なんだ。

「良い娘たちばかりでしょう?」

「……はい、本当に」

柔らかな笑みを浮かべる音無さんと共に彼女たちを見つめながら、俺は心に決めたのだった。

――絶対、彼女たちの想いに応えてみせる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 12:11:36.32 ID:CY3sY5UI0<> しまった! >>24>>25

「これで真美と一緒にお仕事できるね!」→ 「これで亜美と一緒にお仕事できるね!」

です! すいませんでした! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/13(月) 13:22:04.81 ID:mEz3DjgDO<> いいね〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/08/13(月) 16:57:09.46 ID:TyG+q/4p0<> 期待の支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/13(月) 18:28:58.72 ID:ZAXRXMvNo<> 雑談の方か!
期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 21:42:02.74 ID:CY3sY5UI0<> それから数週間、初めてのプロデュース業に戸惑いつつもなんとか仕事をみんなに持ってくることができていた。

「プロデューサーさん! お仕事ですよ、お仕事!」

「うん。俺はついて行けないけど、我那覇さんと二人で頑張ってきてね」

「はいっ!」

「なんくるないさー!」

意気揚々と事務所から出発する二人を見送る。

決して仕事は多くないしどれも小さなものだけど、みんなやる気十分なようだ。

しっかりと仕事をこなしてくれている。

きっとようやくできるようになった本格的なアイドル活動が楽しいのだろう。

なにせ俺が来てすぐの765プロのスケジュール管理用のホワイトボードには、竜宮小町以外の目立ったスケジュールなんて書かれていなかったしなぁ……。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 21:50:53.27 ID:CY3sY5UI0<> 「頑張ってますね」

対面のデスクで事務作業をしていた音無さんが呟いた。

「ええ。みんな、よく頑張ってくれています」

「みんなもですけど、プロデューサーさんが、ですよ」

俺が……ですか?

「そうですかね?」

「はいっ。アイドル達とも良い信頼関係が築けているみたいですし。プロデューサーさんのおかげで765プロは順調ですよ」

「そんなこと……」

ないと思うけどなぁ。

順調というところではなく、俺のおかげというところが。

それはやっぱり彼女たちの努力の成果だろう。

俺はただ、その努力を生かす場を用意しているだけなのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/13(月) 22:04:40.54 ID:CY3sY5UI0<> 「それに、信頼関係も微妙な部分がありますし……」

「へ? それってどういう――」

「ひーーん!」

扉が開く音と同時に甲高い大きな悲鳴が。

「待ってよ雪歩ぉ!」

「ゆきぴょん速いよー!」

遅れて二人の声。

どうやら三人のアイドルが帰ってきたようだ。

ちらりと時計を確認すると――やっぱり予定より随分早い。

「ああ……なるほど」

どうやら音無さんはさっきの俺の言葉を理解したようだ。

苦笑いを浮かべている。

はぁ……どうしたものか。

ため息をついて立ち上がる、すると――

「あっ、兄ちゃんだーー!」

「やあ、双海さ――ごふっ」

帰ってきた三人のアイドルのうちの一人、双海真美さんが俺の身体に飛びついてきた。

彼女の額が丁度鳩尾にめり込み深刻なダメージを負ってしまうが、そこは大人の余裕でグッと我慢。

「もー、兄ちゃん! 双海さんじゃなくて、真美は真美だってば!」

不機嫌そうにぷくりと頬を膨らませる姿が可愛らしい。

そんな年相応の可愛らしさが彼女の魅力のひとつである。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/08/14(火) 00:35:44.76 ID:JedF4kdQ0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/14(火) 02:06:51.88 ID:EPBLFfADO<> 美希がどう絡んでいくのか、気になる…

期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/14(火) 07:34:08.59 ID:KfkQ8vbDO<> 竜宮小町は亜美なはず
だったらアレ(>>24>>25)は真美で間違ってないんじゃ… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/08/14(火) 09:35:59.76 ID:po4Uxlv70<> >>38
真美が真美と一緒に仕事したいって言ってることになるが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/08/14(火) 10:03:36.51 ID:EPBLFfADO<> こまかいことを気にするな!
               ,、
             //
           ///)
          /,.=゙''"/       _,r'三 ̄`ヽ、
         i f ,.r='"-‐'つ     /ヘ/" ゙̄\,ミ\
         /   _,.-‐'゙~     ,! 、!r r。-r ミ   i
        ,i    ,二ニー;     ドツ ヽ ̄  fハ, il
        ノ    il゙ ̄ ̄      l ー-_゙   ,、/ /
      ,イ「ト、  ,!,!         ゙! )二」゙  ,!i Y
     / iトヾヽ_/ィ"___.     ヽ.t  _/,!  i
    r;  !\ヽi._jl/゙_ブ,フヽヾーtー:、__ ,トf-≦-=、_,L
    ∧l   \゙7'゙ .j!/ / /\jr=ニ:ー-゙┴、 ゙ミ三ヽi]l「/l
   ./ i !   \.// /./  ./   \ ┌‐ヽミ≦‐十'"!
  /  i゙i     /  ̄ ̄ ̄       i .l ッー-、\_ミ「彡゙ー=r.、
 ノ   ヾ、  /            i! ! \_ ̄i i l r‐へ__\ー-、
/      ゙''y'              l .i  、 l  !.j .l l 「,> ゙t.,>‐fi <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/08/14(火) 10:06:29.67 ID:po4Uxlv70<> >>40
sage推奨 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/14(火) 13:26:29.90 ID:i3YkZADP0<> >>40
AAのチョイスに笑ってしまったww
真美の描写すごく可愛い・・・。抱きしめたいな! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/14(火) 13:29:07.97 ID:EPBLFfADO<> >>41 サンクス!

忘れてた! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/14(火) 22:52:46.58 ID:x8armwwK0<> それにしても、真美は真美、か……。

確かに双子である双海さんを苗字で呼ぶのは紛らわしい、けど。

人の名前を呼び捨てにするのって、苦手なんだよなぁ。

「う、うん。お疲れ様、真美ちゃん」

「にししー」

しばし迷った挙句、結局『ちゃん』付けしてしまったけど、どうやら真美ちゃんは満足してくれたようだ。

真っ白な歯を見せ付けて満面の笑みを浮かべている。

この笑顔をもっと多くの人に知ってもらうためにも、頑張らないと。

「あの、プロデューサー」

すると、少し困ったかのような声を掛けられる。

「あ、お疲れ様。菊地さん」

「はい、お疲れ様です」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/15(水) 00:02:43.68 ID:uHUDjHcDO<> まっこりん、キター! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/15(水) 01:34:24.35 ID:TJkgDlea0<> 声の主の名は菊地真さん。

ボーイッシュな顔立ちが特徴の765プロのアイドルだ。

彼女は自分の男勝りな面を嫌っているようだけど、彼女を引き立たせる為の立派な魅力だと思う。

菊地さんはなんとも微妙な面持ちで口を開いた。

「実はレッスンなんですけど、途中で抜けてきてしまって……」

「何かあったのかな?」

大体の理由は察せるけど、一応訊いておく。

「あの、雪歩が……」

「うぅ……」

菊地さんの背に隠れるように俺の様子を窺っている少女――萩原雪歩さんが涙目で声を漏らした。

はぁ、やっぱりそうか……。

「ごめんね真ちゃん……私の所為で、また……」

「し、仕方ないよ。先生が男の人だったんだし」

「うぅ……ぐすっ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/15(水) 14:08:12.98 ID:TJkgDlea0<> そう、これが俺の頭を悩ませていた問題。

萩原雪歩さんの男性恐怖症である。

萩原さんはとにかく男性が苦手で、話すときは大股で三歩程度の距離が必要とし、触れられようものなら気を失ってしまうほどなのだ。

これはアイドル活動を行っていく上で非常に重要な問題である。

「でもね、兄ちゃん」

俺の微妙な表情を気にしてか、真美ちゃんが口を開いた。

「ゆきぴょん、最近変わったんだよ? 兄ちゃんが来てから男の人相手でも頑張ってるっていうか」

「頑張ってるのは知ってるけど……」

俺が来てから?

「はい、ボクもそう思います」

萩原さんの頭を撫で付けて宥める菊地さんも、真美ちゃんに同意した。

「前はレッスンの先生が男の人だとレッスン室に入ることすらできなかったんですけど、プロデューサーが来てから大分マシになってるんです」

「今日もセンセーが肩に触るまではゆきぴょん、チョー調子良かったしねっ!」

「そうだったんだ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中国地方)<>sage<>2012/08/15(水) 21:58:37.84 ID:lcskqBiro<> 菊池真 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/08/15(水) 22:51:20.85 ID:yNKayqVAo<> 菊地、な。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/08/16(木) 19:51:31.49 ID:qFFQ44bf0<> 真一「真の出番か。素晴らしい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/08/16(木) 22:27:20.95 ID:/Y3XzQja0<> だったらやっぱり、嬉しいな。

こんな自分でも、アイドルたちに良い影響を与えられているってことだから。

萩原さんの背を押せているのなら、俺はもっと頑張りたい――そう思える。

「萩原さん」

穏やかな声で語りかける。

「俺も頑張るから、萩原さんも一緒に――」

「わ、わわわ、私、お茶を淹れてきますぅーーーーっ!」

俺の言葉を途中で遮り給湯室へ駆け込む萩原さん。

「…………」

男の人が苦手なだけで、悪気がないのは解ってる……けど。

「こ、これは結構堪えるなぁ……」

「……んん?」

俯いて頭を抱えているといると、隣で音無さんが首をひねっていた。

いや、俺だって男ですから、女の子からあそこまで避けられると傷つきますって。

「いえ、そうじゃなくて――ねえ、真ちゃん。雪歩ちゃん、少し変じゃなかった?」

「……はい。ボクもそう思いました」

変って……どういうこと?

「そだった? 真美には、兄ちゃんがゆきぴょんから嫌われてるようにしか見えなかったけど〜?」

「う……真美ちゃん、そんなにはっきり言わなくても……」

そんな風に俺の心に傷がどんどん増えていく中、音無さんと菊地さんは給湯室の方を見つめ続けていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/16(木) 22:31:16.95 ID:/Y3XzQja0<> まとまった時間がとれずに投稿がぽつぽつとしかできず、本当に申し訳ありません……

これからもこんな状況が続くと思いますが、よろしくお願いします!

投稿できない分構想はしっかりと練りたいと思います。

約束の相手、誰なのかなぁ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 22:39:50.80 ID:tk3JWsMzo<> 乙
まったり待つぜ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/16(木) 23:14:35.70 ID:qFFQ44bf0<> お疲れさん。
最後まで付き合うぞ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/18(土) 21:51:32.92 ID:XrxTS3m20<>

■ ■ ■ ■


「対策を考えようと思うんだ」

会議用のホワイトボードの前に立ち、ペンを手に取る。

「というわけで、真美ちゃんに手伝って欲しいんだ」

対面には椅子に座った真美ちゃん。

雰囲気作りのためか眼鏡をかけていた。もちろん伊達だろうけど。

俺と真美ちゃんはまるで教師と生徒のように見え、どこか心踊ってしまう。

「対策ってなに?」

「萩原さんの男性恐怖症の対策だよ」

ホワイトボードに、萩原さんと仲良くなるために、と書き込む。

その文字を見た真美ちゃんが苦笑いを浮かべた。

「兄ちゃん、ケッコー苦労してるもんねぇ」

その苦労は、未だ報われていない。

だからこそ会議を開いたんだけど。

「でも何で真美なの?」

「うん? ああ、それは真美ちゃんがこういうの得意かなって思ってね」

真美ちゃんの明るく元気な性格から考えるときっと友達は多いだろうし、人と心を通じ合わせることに関してこれ以上の適役はいないと考えたのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/18(土) 22:25:34.46 ID:XrxTS3m20<> それともう一つ。

「それに、765プロの中で真美ちゃんと一番仲が良いからね」

もちろん他のアイドルや音無さんとも仲良くしてもらっているが、特に真美ちゃんとは関わりが深い。

というのも、どうやら真美ちゃんは俺に懐いてくれているみたいでよくじゃれてくるのだ。

じゃれると言っても、それは悪戯をしてきたり意味もなく飛びついてきたりというものなのだが、可愛らしいからつい微笑んでしまう。

「だから真美ちゃんには相談しやすかったんだ」

十三歳の女の子に相談するのも情けない話だが、真美ちゃんは頼れる仲間だし、きっと協力してくれるだろう。

「そういうことで真美ちゃん、よろしくお願いします」

「…………」

「真美ちゃん?」

あれ? どうしたんだろう?

いつも元気な真美ちゃんが急におとなしくなってしまった。

そっぽを向いていて、顔もどことなく赤いし……ひょっとして体調が悪いのだろうか?

「兄ちゃん……それ天然でやってんの?」

「どういうこと?」

「だったら余計タチが悪いよー……」

真美ちゃんの言ってることがいまいち理解できず首を傾げていると、呆れたようにため息ををつかれてしまった。

お、俺、何かやってしまったのかな?

「まあ、兄ちゃんの鈍感さについてはびゅーんってどっかに投げ飛ばしといてー」

ど、鈍感って……。

一応アイドルのマネジメントもやっているんだけど……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/08/20(月) 23:34:55.10 ID:aAWYlwAl0<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/23(木) 00:41:09.49 ID:pHS1w5+DO<> マダカナ-? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/08/28(火) 22:27:41.55 ID:5ZTG5DhH0<> 「確かに兄ちゃんの言うとおり、真美は友達多いかんねー。ゆきぴょんを堕とすくらい楽勝だよ!」

「お、堕とすって……」

なんだか不敵な笑みを浮かべているけど……大丈夫かなぁ……。

いきなり自分の人選に不安になってきたぞ……。

「ゆきぴょんは男の人が苦手っしょ?」

「うん、そうだね」

「だったら顔を隠せばいいんじゃない?」

そういうと真美ちゃんはバッグの中から覆面を取り出した。

……いやいや、なんでそんな物持ってるの?

「これを被れば顔を隠せるから、兄ちゃんだってばれないよん」

「ええええ……」

それって確かに俺の顔は隠せるけど、性別までは隠せないんじゃあ……。

「まーまー。物は試しってやつだよ。行っちゃえ兄ちゃん!」




と、いうわけで。

「やあ、萩原さん。今日の仕事なんだけど……」

「ひぃっ!?」

相対する俺(覆面付き)と萩原さん(涙目で硬直)。

……うん、やっぱり無理があるよね。

「きゃああああああああ! 変態さんですぅうううううう!」

「熱ぁああああああああああ!?」





<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/28(火) 22:46:15.06 ID:5ZTG5DhH0<> 数十分後。

「あちゃー。ダメだったかー」

「うん。熱々のお茶を浴びせられて危うく全身大火傷だったよ」

結局俺だとばれて謝りながらどこか行っちゃったし。

「ゆきぴょんのダンセーキョーフショーもなかなかの強敵ですなー」

断言できるが、さっきの失敗は萩原さんの男性恐怖症が原因ではない。

「じゃあ遊びはこれくらいにしてマジメに考えよっか」

「えっ」

今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような……。

いや、きっと気の所為に違いない。自分にそう言い聞かせよう。

気を取り直して真美ちゃんの言葉に耳を傾ける。

「正直、真美にはどうすることもできないよ。多分」

「えっ? どうして?」

「だって真美がどうにかできるくらいだったら、ゆきぴょんが自分で何とかしてるっしょ」

「それは……」

……そうかもしれない。

「だから色々試すより、ちょっとずつ慣らしていくほうが良いと思うよ?」

結局そこに落ち着いちゃうかぁ……。

まあ、そうだよね。

こちらが誠意を持って接すれば、きっと萩原さんは応えてくれる筈だ。

「ありがとう真美ちゃん」

「真美、何もしてないよ?」

「いやいや、十分だったよ」

「そ、そうかな。えへへ……」

それじゃあ早速、やってみますか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/28(火) 23:08:17.37 ID:5ZTG5DhH0<>

■ ■ ■ ■


「萩原さん、ちょっといいかな。あ、無理しないで。そこからで大丈夫」

大またで三歩ほど離れた位置から萩原さんに話しかける。

「は、はいぃ……何で、しょうか……?」

うん、この距離なら平気みたいだ。

顔こそ俯かせているが逃げ出しはしない。

「そんな身構えなくていいよ。ただ雑談したいだけだから」

「雑談……ですかぁ?」

「そ。雑談」

仲良くする為にはどうすれば良いか。

考えた結果、まずは萩原さんのことを知る必要があると判断したのだ。

勿論アイドルとしてのプロフィール上の萩原さんではなく、一人の女の子としての萩原さんのことを。

だから、雑談。

気兼ねなくできる雑談がピッタリなのだ。

俺の提案に萩原さんは恐る恐る頷いた。

ふむ。これだけで大きな進歩ではなかろうか。

「萩原さんって趣味とかある?」

「しゅ、趣味……ですかぁ?」

「うん、趣味。好きなことでもいいけど」

「え、えっと……お茶を淹れたりすることですかね。ゆき――私、お茶が大好きなんですぅ」

彼女が給湯室でお茶を淹れている姿は何度も目にしていたし、彼女が淹れてくれたお茶は何度も飲んでいる。

まあ直接渡されたことは無いのだけど。

「いつもありがとう。とっても美味しいよ」

「い、いえっ、そんなこと……」

萩原さんにお茶の仕事をさせてみるのも――って駄目だ駄目だ・

今は仕事の話し抜きのただの雑談なんだ。

もっと気楽な話にしないと。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/08/28(火) 23:31:04.88 ID:5ZTG5DhH0<> 「じゃあさ、今度教えてよ。俺にお茶の淹れ方」

「え、ええーーーーっ!?」

すると萩原さんは信じられないといった風に目を丸くし、それから顔を真っ赤にさせた。

急に大きな声を上げて……どうしたのだろう。少し驚いてしまった。

「ど、どうしたの?」

「ゆ、雪歩がお兄ちゃんに教えるのぉ!?」

そ、そんなに驚くことかなぁ……――って。

「お兄ちゃん?」

今、俺のことお兄ちゃんって……。

ハッと口元を手で押さえる萩原さん。

でも今さら発言を訂正できるわけもなく。

「い、いいい言ってないですぅ!」

「いや、確かに言ったよね?」

「あうぅ……!」

そっかそっか、お兄ちゃんか。

これってやっぱり、そういうことだよね。

「萩原さん、俺、嬉しいよ」

「……へ?」

俺のことをお兄ちゃんって呼んでくれるってことは、つまり。

「真美ちゃんと同じ呼び方で、俺と仲良くなろうとしてくれてるんだね!」

いやあ、嬉しいなあ。

俺と萩原さんが男性恐怖症をなんとかしたいという同じ気持ちだったなんて。

萩原さんが実は芯が強い子だとは知っていたけど、それでもやっぱり嬉しいや。

「……うぅ」

なんてことを思って浮かれていたけれど、萩原さんの表情はどこか優れない。

どうしたのかな? 気分でも悪いのかな?

「わ、私なんて……」

「は、萩原さん?」

すると萩原さんはどこからかスコップを取り出した――って、やばい!

「――穴掘って埋まってますぅーーーー!」

「なんでぇええええええ!?」

やっぱり萩原さんの男性恐怖症は、一筋縄ではいかないようだ。



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/08/29(水) 00:39:25.39 ID:v4VGl46a0<> 待ってた、待ってたよ。
引き続き支援! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/08/29(水) 12:32:55.95 ID:OIR23w5o0<> >>62
ゆ、雪歩がお兄ちゃんに教えるのぉ!?

アカン・・・これはアカンでぇ・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/31(金) 07:10:40.82 ID:PssSZ5UDO<> ひさびさにキター
支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/01(土) 22:49:50.58 ID:ctxf/dvM0<>



■ ■ ■ ■



「妙だと思いませんか?」

数日後、出社した俺を出迎えるように音無さんがそんなことを話しかけてきた。

「妙って、何がですか?」

「雪歩ちゃんですよ」

……萩原さんが?

そうかなぁ……ミスはあるものの仕事はしっかりとこなしてくれているし、男性恐怖症も相変わらずだけど。

「その男性恐怖症……というより、プロデューサーさんへの態度ですよ」

びし! と俺の胸に人差し指を突きつける音無さん。

そのポーズはどこか様になっていて恰好良い。

「ずばりプロデューサーさん! 雪歩ちゃんに何かしましたかっ?」

「何もしてませんよ」

というより、何もできていない。

事務的な会話こそすれど、それ以上踏み込んだ会話をしようとすると逃げられてしまうのだ。

いくら男性恐怖症といっても、このレベルではアイドル活動は愚か日常生活にも支障をきたしそうだけど……。

「そこですよ、そこ」

音無さんは椅子に座ったまま隣に移動してきた。

「雪歩ちゃんは普通に生活できているんです。確かに男性との必要以上の接触は苦手なようですけど、それでも会話くらいだったら問題はないんです」

ふむ、確かに雑誌の記者とは緊張しながらも普通に話していたし、スタッフからの指示も大またで三歩の距離を保ちながら受け答えしていたような……。

それに驚愕の高校に通っているらしいし、となると。

「俺個人が嫌われてるってことですか……」

これは物凄くショックだ。

理由はどうであれ異性に嫌われるというのは……うう。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2012/09/01(土) 22:55:16.75 ID:IalyzpeYo<> 驚愕の高校ってどんなところなんだ…
男塾的な? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/01(土) 23:01:46.55 ID:ctxf/dvM0<>
「いえ、嫌われてはないと思いますよ」

さも当然といったように言う音無さんだけど、そんなの解らないでしょう。

それこそ本人に訊いてでもみない限り……。

「訊いてみましたよ? 真っ赤になって逃げられちゃいましたけど」

い、いつの間にそんなことを……というか。

「やっぱり嫌われてるじゃないですか。俺がいない場所でその反応なんだし」

「そうではなくてですねぇ……」

あれ、音無さんが呆れたような顔つきになっている。

俺、何かしましたっけ?

なんてことを訊いてしまうときっと怒られてしまうので、黙って音無さんの言葉に耳を傾けることにする。

「雪歩ちゃんはプロデューサーさんのことを避けているんですよ」

「どうちがうんですか?」

「逃げられるのと避けられるのじゃあ全然違いますよ」

……まあ確かに、行動自体は同じでも、それに至る理由によっては区別できるかもしれない。

「じゃあ避けられる理由は何なんでしょうね」

「ああ、それには心当たりが」

「と、言いますと?」

「あくまで私の憶測ですし、こんなことを言っていいのかどうか解らないんですけど――」

音無さんは俺の耳元に口をそっと近づけて、こんなことを言ってきた。

「雪歩ちゃん、プロデューサさんのこと――好きなんじゃないですか?」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/01(土) 23:03:59.63 ID:ctxf/dvM0<> >>66

驚愕の高校→共学の高校

に訂正です。

指摘ありがとうございます! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/01(土) 23:20:29.03 ID:HebkJ0Fdo<> 男がいるのに高校に通っている→驚愕の高校(通い)
ってことかと思ったww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/01(土) 23:27:39.39 ID:ctxf/dvM0<>

その言葉の意味を理解するのに、一秒、二秒、三秒、……。

途端に顔が沸騰しそうなくらいに熱くなる。

「あ、ああっ、ああああなたは何を言ってるんですかぁ!?」

「おや? プロデューサーさん、顔が真っ赤ですよ?」

「そりゃ赤くもなりますよ!」

ニヤニヤと笑いを浮かべる音無さんに対し声を荒げる。

「いくら憶測といってもそんなこと言われたら、嬉しいやら恥ずかしいやらで訳が解んなくなっちゃいますって!」

「うふふっ、プロデューサーさんってば可愛いですねぇ、もう!」

「可愛くないです!」

それに、女の子から好意を寄せられるなんて初めてのことで――

……初めてのこと、で――?

……いや、初めてではないか。

ずっと昔、幼い頃に好意を寄せられたことはある。

その娘は俺のことが好きで、俺もその娘のことが大好きで、だからこその。

――"約束のしるし"なのだから。

「プロデューサーさん?」

「……やっぱり有り得ませんよ。だって俺はプロデューサーで、萩原さんはアイドルなんですから」

だから、絶対に有り得ない。

俺はそれを覚悟してまで、"あいどる"のプロデューサーになったのだから。

「あの、プロデューサーさん……。気分を害してしまったのなら……ごめんなさい」

急に調子を下げたのが気にしてしまったのだろう。

音無さんが申し訳なさそうに顔を覗き込んできた。

……ああ、駄目だ駄目だ、他人を不安にさせてちゃ。

俺は誰かを幸せにする"あいどる"のプロデューサーなんだから。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/09/02(日) 20:17:00.54 ID:PRvF9W5r0<> 乙です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/09/13(木) 20:17:30.60 ID:Imbzyn6t0<> 「いえ、なんでもないです。それより音無さん。今日の予定を確認させてもらってもいいですか?」

「は、はい! えーと、今日は雪歩ちゃんのオーディションがありますので、プロデューサーさんは雪歩ちゃんの付き添いをお願いします」

「了解です。他には何か?」

「それ以外は何も。午後からは雪歩ちゃんもオフなので、どこかに連れて行ってあげてください」

ふむ、確かにそれも良いかもしれないな。

もし嫌われてるならこれを機に、距離を縮めておきたいし。

男性恐怖症をこれ以上悪化させないように努めなければ。

そうと決まればどこに行こうかなぁ――なんてことを考えていると。

「おはようございますぅ」

「おはよう、雪歩ちゃん」

事務所の扉が開く音と共に萩原さんが姿を見せた。

恐怖を与えないように、なるべく自然な笑顔で挨拶を、と。

「はい、今日もよろしくおねがいしますぅ、音無さん……と、おに――プロデューサー」

「うん、おはよう萩原さん」

「……っ」

……うう、やっぱり駄目かぁ。

そんなに強面ではないし、寧ろ童顔だと言われる方が多いんだけど……萩原さんにとっては怖いんだろうなぁ……。

今日もまた萩原さんに顔を逸らされてしまい、がっくりしていると、

「やっぱり、雪歩ちゃんは……」

何やら音無さんが呟いているけれど、よく聞き取れな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/09/13(木) 22:02:15.16 ID:M34/2RrRo<> 待ってるわよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<><>2012/09/14(金) 14:25:44.25 ID:Oca2Ko6r0<> 縺医∴繧繧 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/09/15(土) 00:50:27.74 ID:wF17Qmhe0<> >>73 よく聞き取れな→よく聞き取れなかった です

本当、ぽつぽつとしか更新できなくてごめんなさい!

でも、絶対完結させるんで、よろしくお願いします! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(岡山県)<>sage<>2012/09/15(土) 01:21:44.25 ID:+WW2IQoOo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/09/16(日) 21:27:53.49 ID:aZpDgbV+0<>
■ ■ ■ ■




「今日のオーディション、上手くいったね」

歌番組のオーディションを無事に終え、休憩所で一息つく萩原さんに話しかける。

もちろん、大股で三歩の距離を忘れずに。

「さすが萩原さんだ。よく頑張ったね」

目立った失敗も無かったし、儚げで繊細な彼女の印象は十分に審査員の目を惹きつけていた。

この分ならきっと、オーディションは合格だろう。

「そんなこと……ゆき――私なんかだめだめで……」

うーん、どうやら謙遜なんかでなく本気でそう思ってるみたいだなぁ……。

今までの萩原さんの努力は本当なんだから、もっと自信を持っても良いのに。

「あの、おに――プロデューサー」

そんなことを考えていると、萩原さんから声をかけてきた。

おお、これは珍しい。

彼女の方から話しかけてくるなんて、ひょっとすると初めてかもしれない。

さっきは自信無さ気だったけど、実のところは手応えのあるオーディションができて自信が持てたのかもしれない。

なんにせよ、とにかく嬉しい。

自然と声が弾んでしまう。

「うん、どうしたの?」

「あの、この後は何か……」

そういえば言ってなかったかな。

音無さんから言われたとおりどこかに誘うにしても、まずは萩原さんの了承を得ないとね。

「いや、この後は仕事もレッスンも無いよ。萩原さんはこの後予定は?」

「い、いえ。何もありませんけど……」

良かった。企画倒れにならなくて済みそうだ。

「何かあるんですか?」

「うん。萩原さんさえ良ければ一緒にどこか行こうと思ってね」

「一緒にどこか……」

きょとん、とした表情で呟く萩原さん。

しかし、次の瞬間。

「ええええええええええ!?」

顔を真っ赤にさえて、絶叫。

まさか萩原さんからこんなに大きな声が出るとは予想しておらず、思わず驚いてしまう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/16(日) 21:57:02.94 ID:aZpDgbV+0<> 「そ、そそそっ、そそそそれって二人きりなのぉ!?」

「も、もちろんそうだけど……」

「お兄ちゃんとふたりきり……」

顔を俯かせて何か呟いている萩原さん。

よく聞こえないけど……そんなに嫌かな、俺と二人きりが。

「えーと、萩原さん? 別に無理しなくてもいいからね?」

「こ、ここここれって、で、デート……なのかな……」

「なんだったら菊地さんも呼んでも良いよ? 確か午前中までのレッスンだから」

「お、お兄ちゃんとで、デートなんて……夢、なのかも」

「都合が悪いのなら日を改めても良いし――って、萩原さん?」

「そうだよ、これは夢なんだよ。でないとひんそーでひんにゅうでちんちくりんな雪歩なんかを誘うわけな――」

「ねえ萩原さん? 聞いてる?」

「ひゃう!?」

ぼーっととしていたのが気になってつい肩に触れてしまった。

しまった、こんなことしたら萩原さんに逃げられて――

「び、びっくりしたぁ……」

「……え?」

――逃げられ、ない?

ど、どういうことだ?

萩原さんは男の人が苦手で、先日は男性のトレーナーから肩に触れられた所為でレッスンを途中で断念したのに。

どうして俺は触れられる?

どうして俺は触れずに避けられる?

俺がプロデューサーだから?

いや、それはきっと違う。

だって『プロデューサー』と『トレーナー』に違いなんて無いからだ。

『アイドル』を想う気持ちに違いなんて無い。

だから俺の肩書きと男性恐怖症は何の関係もない。

じゃあ、どうして。

どうして『俺』だけ―― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/16(日) 22:40:28.49 ID:aZpDgbV+0<> 「ねえ、萩原さん」

「な、なに?」

「俺、触ってるんだけど」

「へ…………ひゃわわ!?」

自分の肩――に乗せられている俺の手を見た萩原さんは短く悲鳴をあげ後退る。

そして顔を赤くさせたり涙目になったり口をぱくつかせたりした後、

「き、きききっ、着替えてくるねぇーーーーーーっ!」

物凄い勢いで更衣室へと駆け込んでいった。

「……えっと」

……これはどう判断すべきなんだろう。

逃げられたのか、避けられたのか。

触れてすぐに反応がなかったあたり、嫌われてはいない、のかなぁ……。

あ、そういえば。

「萩原さん、この後付き合ってくれるのかなぁ?」

あんなことになっちゃったから答えを訊きそびれてしまった。

うーん、仕方ない。萩原さんが出てくるのを待つとしよう。

「あ、ああああの、おに――プロデューサー……」

すると萩原さんが更衣室の扉を少しだけ開き、まだ赤いままの顔を覗かせた。

「シャワーを浴びたいので……少し待っててください」

「勿論だけど……それって――」

「……はい」

その声はいつになくか細く、今にも消え入りそうだけど。

「おに――プロデューサーと、その……お散歩、したいですぅ」

はっきりとした彼女からの初めての意思表示だった。


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/09/16(日) 23:25:53.21 ID:aZpDgbV+0<> 今日はここまでです。

もうすぐchapter1が終わります。

因みにchapter3くらいまでを予定としています。

まだ完全な構想は練れてないけど、頑張りますので今後ともよろしくです! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/16(日) 23:29:10.85 ID:uObC0V0go<> 乙
雪歩あざといよ雪歩 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/17(月) 02:04:21.94 ID:6vbYYlqW0<> 更新キタキタ!
乙です。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(岡山県)<>sage<>2012/09/17(月) 12:39:06.53 ID:95akrpnvo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>age<>2012/09/18(火) 14:03:24.15 ID:3g5DARXro<> なんか新しいな楽しい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/09/26(水) 10:17:44.27 ID:fHLNPbjDO<> 雪歩かわいい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/08(月) 02:23:48.45 ID:8DNN+IwDO<> 雪歩かわいいよ雪歩 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/10/18(木) 22:25:19.55 ID:nRRIJmK30<> 「それにしても、良い天気だね」

「そ、そうですね」

コンビニに寄った後、近くの公園のベンチに座ってランチタイム。

俺と萩原さんの距離は人二人分くらい。

少しは物理的にも精神的にも、距離は近づいたのかな。

「ぽかぽかしてて、眠くなっちゃいます」

「あはは、確かに。お腹が膨れると、余計にね」

ひょっとしたらこの場の雰囲気が萩原さんの緊張を和らげているのかもしれない。

だったらチャンスだ。色々なことを訊いてみよう。

「萩原さんはよく、こういう所に来たりする?」

「は、はい。真ちゃんとは、よく来ます。といっても、子供たちと真ちゃんが遊んでいるのを見ているだけですけどね」

「へえ、なんだか保護者みたいだね」

「あ、でも砂遊びは得意なので一緒にします。この前は大きなお城を作ってみんなを驚かせちゃいました」

楽しげに、誇らしげに語る萩原さんを見ていると、こっちまで楽しくなって。

「…………あれ?」

そしてなんだか、懐かしくなって。

えっと……ちょっと待って。

どうして笑顔の萩原さんを見ているとこんな気分になるのだろう。

とても懐かしくて、とても楽しくて、とても幸せで――

無意識に、鞄に結ばれている赤いリボンを見つめてしまう。

いや、まさか、そんな。

萩原さんが"約束"の相手だなんて、そんなこと……。

「――なーんて、あるわけないよね」

「へ? あ、あの……どうかした――じゃなくて、どうかしましたか?」

「あ、ごめん。なんでもないよ。それより喉渇かない?」

浮かんだ考えを振り切るように首を振りながら、財布を取り出し立ち上がる。

「俺、飲み物買ってくるよ。緑茶で良いよね?」

確か少し歩いた所に自動販売機があった筈だ。

「そ、それなら私も一緒に……」

「平気平気。萩原さんはゆっくりしてて」

萩原さんは申し訳なさそうにしていたけれど、俺は気にせず背を向け歩き始める。

礼儀正しい良い娘だけど、俺に遠慮する必要はないのだ。

真美ちゃんなんかは自らねだってくるというのに。

まああれは甘えたい盛りだからだろうけど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/10/18(木) 22:52:28.89 ID:yY//eugu0<> 待ってた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<><>2012/10/19(金) 00:22:26.42 ID:T6JYSl1W0<> 「ふぅ、意外と歩いたなぁ。えーと、緑茶と……あれ?」

いつも飲んでいるお気に入りの微糖のコーヒーが売り切れている。

他のコーヒーにも目を通すが、無糖のもの以外全て売り切れていた。

「あー、どうしよう」

なんとなく、コーヒーが飲みたい気分だったのだが……。

うーん、諦めて萩原さんと同じ緑茶にしよう。

ブラックコーヒーは苦手なのだ。

苦くて、苦しくて、どうしようもなくなるから。

「……はあ」

二本の缶を手に取り、思わずため息をつく。

「どうして萩原さんのこと、懐かしいなんて思っちゃったんだろう……」

じっと缶を見つめても、答えなんて出るわけも無く。

「……早く戻ろう」

行きとは逆に駆け足で進む。そして公園の入り口に着くと。

「…………ん?」

萩原さんは相変わらずベンチに座っているのだが、その傍に見知らぬ男がいる。

知り合いかな、なんて思ったけど。

「ひぅ……! や、やめてください!」

そんな考え、すぐに頭から吹っ飛んだ。

思考だとか、冷静さだとか、とにかくまとめて吹っ飛んだ。

あの男は、何を――

萩原さんに、俺のアイドルに一体何を――

「なァ、いいだろォ? ちょっくら付き合ってくれねェか?」

「だ、だから人を待ってるんで……ひぅ! さ、触らないでください!」

萩原さんの元に駆けつけながら、缶のプルタブに指を掛ける。

カシュ! と軽快な音が鳴り響くが、そんなの気にならないし、どうでもいい。

「悪いよォにはしないって。着いてくるだけでいいからさァ」

「い、嫌ですぅ!」

「……アン?」

手を振り払われ拒絶された男の、目の色が変わる。

そして再び、今度は荒々しく伸びた手が萩原さんに触れる――その前に。

「えいっ」

「――っ!?」

缶の中身――緑茶を男目がけて思いっきりぶちまける。

あ、ついでに空き缶も投げつけておこう――えいっ。

「萩原さん、大丈夫?」

俺に気づいた萩原さんは、一瞬だけ瞳を輝かせるが、

「怖かったよぅ、お兄ちゃん……!」

すぐに涙を流し、俺の身体に抱きついてきた。

「ごめんね。俺が独りにさせたばかりに……」

萩原さんにもしものことがあれば、俺は―― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/10/19(金) 00:25:39.11 ID:T6JYSl1W0<> 今日はここまで。

約一ヶ月ぶりの更新……遅すぎだろう、いくらなんでも。

というのも、忙しい日々がきっと今年度いっぱいまで続きそうで、正直SSを書いている場合では無いのですが……

それでもなんとか暇を見つけて書いていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 00:38:58.24 ID:q7AqN9Wvo<> 乙
雪歩が可愛すぎるだろ

忙しいのはしょうがない
頑張れ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2012/10/19(金) 00:46:18.73 ID:bdn8wllao<> りあるだいじに <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)<>sage<>2012/10/19(金) 02:07:33.20 ID:1FoY6kiRo<> 待ってた乙
完結するまでちゃんとやってくれるのならゆっくりでもおk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/19(金) 23:49:12.92 ID:CAPT5yzPo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(岡山県)<>sage<>2012/10/20(土) 22:40:27.95 ID:EJNGg6ypo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/10/22(月) 00:07:09.77 ID:4BT5x/2q0<> 乙!
ゆっくり書いてくれ、まったり待つから。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 01:37:37.50 ID:akK7WZVDO<> 私ま〜つ〜わ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/02(金) 01:42:57.59 ID:kop5nPH8o<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 18:14:09.58 ID:szJKiq8q0<> 「てめェ! ナニしやがンだ!?」

震える萩原さんの身体を背に隠し、怒鳴る男を見据える。

「あなたこそ、俺のアイドルに何か用ですか?」

「……アイドル?」

男の目の色が変わり、萩原さんを値踏みするように見つめた。

嫌らしくて、気持ち悪くて、気色の悪い視線。

感心したように笑みを浮かべる表情も、とても見ていられない。

「確かに、よくみたらケッコーな上玉じゃねェか」

「そんなことは訊いてない」

「アン?」

「俺のアイドルに何するつもりだったのかって訊いてるんだよ!」

精一杯の力を込めて声を上げ、男を睨む。

見れば見るほど嫌な顔だ。吐き気すら催す。

こんな奴が萩原さんに触れていい訳が無い。

こんな奴に――

「――萩原さんに触れさせる訳にはいかない!」

「てめェ!」

男が拳を振り上げる。

後ろで萩原さんが身をすくめるのを感じ、遅れて顔面に重く鈍い衝撃が。

殴られたのだ。顔面を、思いっきり。

一瞬だけ痛みに顔をしかめるが、怯むまず覇気を込めて男を睨む。

「気は済みましたか?」

「…………チッ」

短く舌打をして踵を返す男。その姿が見えなくなったのを見計らい、漸く息をつく。

「た、助かったぁ……」

「お、お兄ちゃん!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 19:16:40.02 ID:szJKiq8q0<> ぺたんと座り込んだ俺の正面に回る萩原さん。

男がいなくなったというのに、相変わらず涙を流している。

「怪我は無い?」

笑顔をつくり萩原さんに訊くと、余計に泣かれてしまった。

「ごめんね……ごめんね……!」

「な、泣かないでよ」

「でも……でも……っ!」

「あはは、大丈夫だか――……ら?」

あ、あれ? なんか急にくらっときたぞ?

「……おお?」

それからぱたりと身体が傾く。

あちゃー、やっぱり無茶だったかぁ……。

そりゃそうだよね、喧嘩なんてやったことないし。

うう、それにしても恰好悪いなぁ……。

こんな恰好悪いこと、今まで一度も――

……いや、前にもこんなことがあった気がする。

あの時は確か、人じゃなくて犬で……ああ、もう駄目だ・

頭がボーっとして何も考えられない。

「お兄ちゃん!?」

そういえば萩原さん、俺のこと普通にお兄ちゃんって呼んでるなぁ、なんてことを彼女の泣き顔を眺めて思いつつ。

ゆっくりと意識を失うのだった。



■ ■ ■ ■



「や、やめろ!」

泣いている女の子を庇うようにして立ち、どこからか拾ってきた木片を構える。

僕の前には牙を剥いて低く唸る。

大型犬とはいえない程の大きさだが、僕や女の子にとっては十分に恐ろしい存在だ。

「ひぐっ、えぐっ……こわいよぅ……!」

「あ、あっちいけ!」

泣きじゃくる女の子をせめて安心させようと、恐怖を押し殺し犬を睨みつける。

結局散々噛みつかれれたりひっかかれたりされた挙句、何事も無かったように去っていく犬の姿を見送ることしかできなかったけど。

「怪我は無い?」

笑顔をつくり女の子に訊くと、余計に泣かれてしまった。

「ごめんね……ごめんね……!」

どうやら僕が怪我したことに責任を感じているようだ。

そんなの、別にいいのに。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 19:35:48.63 ID:szJKiq8q0<> 「でも……でも……っ!」

うーん、どうしたものか。

何とかして泣き止んで欲しいのだけど。

あ、そうだ。

「ひゃう!?」

女の子の頭に掌を乗せる。

そして柔らかな髪を撫でつけた。

「わ、わ、わっ! おおおお兄ちゃん……!?」

「よしよし」

「あぅ……」

最初は顔を赤くして戸惑っていた女の子だったけど、しだいに落ち着いてきたようで。

「はぅー」

今は気持ち良さそうに目を細めている。

「僕ならほら、平気だよ。だから泣かないでよ――雪歩ちゃん」

それはずっと昔の記憶。

女の子――萩原雪歩ちゃんとの思い出だった。




■ ■ ■ ■




「…………」

意識が戻ると、何やら後頭部に柔らかな感触が。

ゆっくりと目を開けると、目の前には。

目を真っ赤にさせた女の子の姿が。

「良かったよぉ……雪歩の所為で、またお兄ちゃんが……」

その女の子の名は、萩原雪歩。

「俺ならほら、平気だよ。だから泣かないでよ――雪歩ちゃん」

俺が昔出逢っていた女の子――雪歩ちゃんだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 19:54:32.69 ID:szJKiq8q0<> 彼女の名を昔のように呼ぶと、驚いたように目を丸くさせた。

そして恐る恐る口を開く。

「思い出して……くれたの?」

「遅くなってごめんね」

どうやら膝枕をしてくれていたようだ。

身体を起こし、雪歩ちゃんと向き合う。

「でも、思い出したから」

と言っても、部分部分だけどね。

苦笑いを浮かべると、雪歩ちゃんの顔がくしゃりと歪んだ。

まずい、と思った時にはもう遅く、

「ふぇえええええええええええん!」

雪歩ちゃんは泣き声をあげていて。

瞳から大粒の涙を零していて。

「な、泣かないでよ」

「だって……嬉しくて……! お兄ちゃんが思い出してくれて……お兄ちゃんにまた逢えて!」


そう言うとさらに激しく泣きじゃくる雪歩ちゃん。

ど、どうしよう。

嬉しいのは俺もいっしょだけど、このままでは流石に困る。

何とかして泣き止んで欲しいのだけど。

あ、そうだ。

「ひゃう!?」

雪歩ちゃんの頭に掌を乗せる。

そして柔らかな髪を撫でつけた。

「わ、わ、わっ! おおおお兄ちゃん……!?」

「よしよし」

「あぅ……」

それはあの時と同じ光景。

唯一違うのは、

「……えへへ」

雪歩ちゃんの笑顔。

「お兄ちゃんになでなでされると、落ち着くよぅ」

「そうかな?」

「うん。だから……もっと、して?」

言われるがままに続ける。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 20:34:18.99 ID:szJKiq8q0<> それから暫く、満足したのか雪歩ちゃんはこくりと頷いた。

「うん。もういいよ」

涙はもう止まっていた。

瞳は赤いままだけど、照れくさそうに笑っている。

「えへへ」

「どうしたの?」

「ううん。なんでもないっ」

「そっか」

あはは、えへへ、と二人で笑いあう。

誰かと再会することがこんなにも嬉しくて、温かなものだとは知らなかった。

ここで気になったことを訊いてみる。

「雪歩ちゃんは俺のこと、いつ気づいたの?」

「最初はもしかしたらって、曖昧だったんだけど……見てる内に確信したんだ」

「だったら言ってくれたら良かったのに。それになんだか避けられてるみたいだったし」

すると萩原さんは顔を赤らめて、気まずそうに目を逸らした。

「それは、その……恥ずかしかったから……うぅ」

「あー、なるほど」

思い返してみれば、昔の雪歩ちゃんは極端な恥ずかしがり屋で、今もしっかりそのままの性格だ。

そんなところも彼女の魅力なのだが、つい苦笑いを浮かべてしまう

「ごめんね、お兄ちゃん。ごめんね?」

「ううん、すぐ思い出せなかった俺が悪いから」

これはフォローではなく、俺の本音。

人のことを忘れるなんて、最低だ。

「お兄ちゃんは悪くないよ。それに、思い出してくれたから……」

「そう、だね」

ふと辺りを見ると、空は茜色に染まっていた。

そろそろ事務所に戻らないと、音無さんが心配しているかもしれない。

「あの、お兄ちゃん」

立ち上がったところで、雪歩ちゃんが声をかけてきた。

「雪歩ね、まだ……"約束"、守れてないの」

「――っ!?」

心臓が鷲掴みにされたかのような感覚に、身動きが取れなくなる。

今、雪歩ちゃんは何と言った?

やくそく――"約束"

俺の心にいつまでも残っている、"約束"。

いつまでも未練たらしく引きずっている、"約束"。

名前も顔も覚えていないけれど、その相手が。

「……雪歩ちゃん」

目の前の女の子――萩原雪歩ちゃんなのだろうか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 21:14:41.51 ID:szJKiq8q0<> だったら確かめれば良い。

簡単なことだ、本人に訊くだけなのだから。

でも。でも、どうして。

どうしてそれを訊くことが、こんなにも怖いのだろう。

どうしてこんなにも苦しいのだろう。

結局俺は、曖昧に頷くことしかできなかった。

「だからね、お兄ちゃんに甘えちゃうと思う」

「う、うん」

「でも……ううん、だからこそ」

雪歩ちゃんはまっすぐに俺を見つめる。

その意志の篭った力強い瞳が怖い。

怖い。苦しい。辛い。

そんな目で俺を見ないでく――

「"プロデューサー"として、雪歩のこと、見守ってて?」

「……え?」

動揺が、ピタリと止まる。

"プロデューサー"として……?

「うん。だって雪歩は――私は"アイドル"ですから」

そして俺は、"プロデューサー"。

「私がトップアイドルになるまで……雪歩が"約束"を守るまで――よろしくお願いしますぅ」

……そっか。そうだね。

今と昔は違う。

犬に怯える子供同士なんかじゃないんだ。

俺と雪歩ちゃんは、プロデューサーとアイドルなのだ。

そこに過去は関係ない。

雪歩ちゃんがトップアイドルを目指すのなら、それを応援するのが俺の役目だ。

怯える必要なんか無い。

ぺこりと頭を下げる雪歩ちゃんに微笑みかける。

「こちらこそ、よろしく。雪歩ちゃんの目指すアイドルになれるよう、俺も精一杯背中を押すよ」

それが"あいどる"なのかどうか解らないけれど、今はそれでいい。

いつか、全てを思い出すその時まで。

「プロデューサーとアイドルとしての――"約束"だ」

今を精一杯がんばって、今の雪歩ちゃんの想いに精一杯応えよう。

"約束のしるし"がある限り、僕と女の子は、繋がっているのだから。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 21:48:42.15 ID:szJKiq8q0<>


■ ■ ■ ■




「上手くいったみたいですね」

次の日、昼休みに入ってすぐ音無さんが顔を寄せてきた。

軽く伸びをして、パソコンを閉じる。

「何がですか?」

「雪歩ちゃんですよ」

まあ解ってましたけどね。訊かれることは。

だって昨日までと明らかに態度が違うし。

「そうですね。無事、仲良くなれました」

正確には、男性恐怖症は治っていないのだけど。

「どんな手を使ったんですか?」

「えっと……」

どうしよう。俺と雪歩ちゃんの関係、音無さんに話しておくべきだろうか……。

「……いや、やっぱり何も言わないでくださいっ」

悩んでいると、音無さんは掌をこちらに向けてストップのポーズ。

詮索するのは良くないと思い直してくれたのだろうか。

「私には解ってますから」

「えっ」

「きっとプロデューサーさんが雪歩ちゃんに、デートと称してあんなことやこんなことを……」

「ななな何言ってるんですか!?」

「ナニって……言わせないでくださいよ、もう」

ああ……もう駄目だ。

こうなった音無さんはもう止められない。

落ち着くまで放っておくのが一番だ。

「……はぁ」

「あの、プロデューサー」

ため息をついていると、声を掛けられる。

この弱々しげな声は……。

「どうしたの、雪歩ちゃん」

絶賛音無さんの妄想に出演中の萩原雪歩ちゃんだ。

因みに彼女自身の要望で、呼び方は昔のままである。

このくらいなら違和感はないしね。

「何か用事かな?」

「あ、あの……えと……」

急かすことなく彼女の言葉を待つ。

顔を赤くしてもじもじしているけど……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 21:56:50.17 ID:szJKiq8q0<> 「せ、せっかく真ちゃんに勇気を貰ったんだもん……頑張れ雪歩! 負けるな雪歩!」

すると決心したようにぎゅっと目を閉じ、背中に回していた両手を突き出した。

「どどどどうぞぉ!」

その手には、可愛らしい小包に包まれた箱のようなものがあって。

「手作り弁当キターーーー!」

音無さんが言うように、それはお弁当のようだった。

「俺にくれるの?」

「は、はいぃ! 頑張って作りました!」

向こうの方で菊地さんが小さくサムズアップしている。彼女も一役買ったのだろうか。

「そういうことなら、ありがとう。とっても嬉しいよ」

「……えへへ」

パアァっと眩しい笑顔を見せる雪歩ちゃんにお礼を言い、お弁当を受け取る。ズシリとした重みを感じるあたり、相当に気合が入っているのだろう。

今まで女の子にお弁当を作ってもらったことなんてないので、嬉しくもあり恥ずかしくもあり、なんだかむずがゆい。

「ただいまー……って、ああーーーーっ!?」

すると丁度レッスンから帰ってきた真美ちゃんが、俺と雪歩ちゃんの方を指差し大声を上げた。

「ゆきぴょんが兄ちゃんにお弁当あげてるよーー!?」

改めて言われると相当に恥ずかしいなぁ……。

雪歩ちゃんも同じなのか、真っ赤な顔を伏せている。

「ひょっとしてひょっとして! ゆきぴょんは兄ちゃんのことが好きだったり〜?」

ボンッと頭から煙出す雪歩ちゃん。それから勢い良く顔を左右に振ってみせる。

「ゆゆゆ雪歩がお兄ちゃんのことが、す、すすす、好きだなんて……そんなこと……!」

あまりの衝撃に素が出てしまっていた。これはフォローしないと。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 22:13:21.06 ID:szJKiq8q0<> 「真美ちゃん、それは誤解だよ。雪歩ちゃんが俺のことが好きなわけないじゃないか」

このお弁当だって他意はないよ。

真美ちゃんと同じで懐いてはくれてるようだけどね。

なんてことを言うと。

「…………あれ?」

何故かみんなが微妙な顔つきに。

真美ちゃんは呆れていて、音無さんはまるで駄目な子を見るかのように俺を見ている。

菊地さんに至っては上に向けていたはずの親指を下に向けていた。

ど、どういうこと? 俺、何かしたっけ?

「……頑張ったのに気づいてもらえないなんて」

すると傍でガシャンと金属音が。

恐る恐るそちらを向くと、雪歩ちゃんがどこからかスコップを取り出していて。

そういえば、昔から砂遊びが好きだったよね――ってまさか!

「こんなだめだめな雪歩は、穴掘って埋まってますぅーーーー!」

「なんでぇええええええええ!?」




―――― Chapter 1 END ―――― <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<><>2012/11/04(日) 22:20:18.19 ID:szJKiq8q0<> と、いうわけでようやくひと段落着きました。

長々と拙い文章に付き合っていただきありがとうございました!

まだまだ続きますので、これからもどうぞよろしくお願いします!

話は変わりますが、皆さんシャイニーフェスタやってますか?

もちろん三本買いましたよね? 買いましたよね?

俺は勿論買いましたよ。美希のタペストリーとおにぎりケース、雪歩と千早のマグカップもついてました。

俺はSFを活力に、次の構想を練っています。

次の更新がいつになるかわかりませんが、それまでしばしお待ちを <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/11/04(日) 22:24:08.74 ID:Os6SAM+jo<> おもしろい
乙乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/04(日) 22:49:41.15 ID:CWxR9ROeo<> 気がついたら更新してた乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(西日本)<>sage<>2012/11/05(月) 00:23:17.83 ID:1GUAQStXo<> もちろん3本かったぜ
続きも期待

乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/05(月) 00:31:02.55 ID:2E38FXGso<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/11/05(月) 02:31:33.29 ID:NtGLQK1fo<> もちろん三本買ったがどのタイミングで切り替えるべきかわからないまままだハニーサウンドしかやってない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)<>sage<>2012/11/05(月) 16:34:56.38 ID:oeQU8H/ho<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/07(水) 01:54:30.45 ID:3zMvMNXUo<> 追いついた!乙!
りあるだいじにしつつChapter3まで頑張って下さい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/11/14(水) 00:23:28.95 ID:wuk0r85DO<> 続きはよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<>sage<>2012/11/26(月) 01:18:05.60 ID:FeKMovTDo<> しぇん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)<>sage<>2012/11/30(金) 11:14:15.25 ID:HyqmJT5qo<> 支援 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/11(火) 02:02:18.87 ID:jT6Vn5jDO<> 保証 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/11(火) 20:39:37.80 ID:F0Dy1syE0<>



■ ■ ■ ■




「……………………」

茜色に染まる公園で、僕はブランコを揺らしていた。

ゆらり、ゆらり。

公園にいるのは、僕独りだけ。

大人の姿どころか、子供の姿さえない。

それは、そうだ。

良い子は帰らなくちゃいけない時間なんて、もうとっくの昔に過ぎているのだから。

じゃあどうして僕はまだ公園にいるのか。

その理由は、とても簡単。

僕が、悪い子だからだ。

大好きだった女の子を、笑顔で見送ることさえできなかった、悪い子だからだ。

「……………………」

ブランコが揺れる音だけが辺りに響く。

ゆらり、ゆらり。

女の子の歌声は、もう聞こえない。

「……………………っ」

胸にぽっかりと穴が空いているような気がして。

その穴に、悲しみだとか後悔だとか、詰まっていくようで。

ごちゃごちゃと、ぐちゃぐちゃと、じゅくじゅくと、溢れてくるようで。

苦しくて、辛くて、どうしようもなくなって。

「うわぁああああああああん!」

僕は大声で泣き続けたのだった。

そんなことをしても、女の子は戻ってはこないのに――



<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/11(火) 20:43:21.33 ID:F0Dy1syE0<> お久しぶりです……本当に。

忙しさのピークを乗り越えたので、更新したいと思います。

今さらですが、このSSはオリジナル要素を多分に含みますので、その辺ご注意を。

それではchapter 2、どうぞよろしくお願いします! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/11(火) 20:52:05.09 ID:HmClsANDO<> おお、お疲れさん。2も期待してるよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/11(火) 20:56:16.58 ID:BZ62lh8Co<> おお頑張れ
読み始めた最初はリボンなんていうからモバマスのヤンデルのかと思って戦慄してたよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/11(火) 21:45:19.52 ID:F0Dy1syE0<>



■ ■ ■ ■




「プロデューサー! 起きてください!」

「……んん?」

声を掛けられると同時に、身体を揺らされる感覚で目が覚める。

寝ぼけ眼で顔を上げると、そこには。

「……ああ。秋月さんか。おはようございます」

「おはようございます」

生真面目さを感じさせる黒縁眼鏡に手を添えたスーツ姿の女性――秋月律子さんがいた。

彼女は俺と同じプロデューサーで、アイドルユニット『竜宮小町』担当している。

昔はアイドルだったらしいけど、どうしてプロデューサーになったのだろう。

それとなく訊いてみたことがあるけど、軽く流されちゃったんだよなぁ。

「そんなことより! プロデューサー、また徹夜ですか?」

眉をつり上げ怒ったようにする秋月さんに、あはは……、と苦笑いで応える。

「もー、何度注意すれば解るんですか? 頑張るのもいいですけど、身体を壊したら意味が無いんですからね!」

「うーん……解ってるんだけど、つい夢中になっちゃって」

「夢中にって……」

すると秋月さんの目が俺のデスク――正確にはデスクに広がる書類に留まった。

「その書類って何ですか? アイドルたちの名前が書いてますけど……」

「えーと、読みますか?」

書類を掻き集め、手渡す。

かなり多くの字を大量の紙面に乱雑に書き込んでいて……うん、我ながら汚いなぁ。

「うわっ、これ、アイドルひとりひとりの情報ですか? 趣味とか好物、性格やら癖まで……」

「うん、他にも会話の内容とかも書いてますよ」

秋月さんの言うように、アイドルたちの情報をここ数日で纏め上げていたのだ。

俺が今日まで見てきた彼女たちの全てが、その書類にある。

そして最後の一枚には――

「え、これって……」

俺は笑顔で頷く。

「はい、ユニット企画です。俺が担当する、765プロの新たなユニットですよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/11(火) 22:38:43.65 ID:F0Dy1syE0<>



■ ■ ■ ■




ユニットのメンバーを決めるにあたって、非常に頭を悩ませた。

なにせ、全員が全員、それぞれの素晴らしい個性があり、選べないからだ。

きっと彼女たちならどんなメンバーでユニットを組んでも、きっと成功するだろう、けど。

だからと言って適当に選ぶことはできない。

個性には相性があり、ぶつかり合ったが為に765プロの結束が崩壊してしまうなんてこと、あってはならないからだ。

だからこの数週間、アイドルたちのことをもっと深く知るために、様々なコミュニケーションをとってきた。

お菓子作りをしたり、ショッピングに行ったり、遊園地に遊びに行ったり、山のようなラーメンを食べたり、ペットショップに行ったり、スーパーのセールで主婦たちと闘ったり、お茶をたてたり、スポーツジムに行ったり、オーケストラを干渉したり……。

ただ遊んでいるように見えるかもしれないが、、実に有意義な時間を過ごせたように思う。

そして、さらに悩んだ。

彼女たちのことを知れば知るほど、より魅力的に感じるのだ。

悩んで、悩んで、悩んで――

「四人とも、集まってくれてありがとう」

集まってもらったのは、四人のアイドル。

「あの、プロデューサーさん。どうしたんですか?」

一人目は、天海春香さん。

彼女のアイドルへの想いや、仲間思いの明るい性格は、きっと良い影響を与えてくれるだろう。

「え、えと、おに――プロデューサー……私、また何か失敗しちゃいましたか……?」

二人目は、萩原雪歩ちゃん。

一見気弱な雪歩ちゃんだけど、その実とても強い意志を持っていて、ユニットを引っ張っていってくれるはずだ。

また、引っ込み思案だからこその的確な客観的意見にも期待できる。

「兄ちゃん兄ちゃんっ! 話が終わったらゲームしよっ!」

三人目は、双海真美ちゃん。

真美ちゃんの良い意味での子供らしく元気な面は、ユニットを大いに盛り上げてくれるだろう。

それに、思いやりのあるところも含めて、良い存在になれる。

「プロデューサー、ミキね、レッスン頑張って眠いから、早めに終わって欲しいの。あふぅ」

そして最後、四人目に、星井美希さん。

星井さんのマイペースな性格はユニットの癒しに……なると思う。

それに、俺には彼女のアイドルとしての才能を見過ごすことはできなかった。

この四人が、ユニットのメンバー。

悩んで、悩んで、悩んで決めた、俺がプロデュースするユニットのメンバーだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/11(火) 22:50:50.58 ID:/xwnLLd0o<> >趣味とか好物、性格やら癖まで……

無意識に性癖と読んでた…寝よう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/12/14(金) 10:59:22.97 ID:VkXeyfrKo<> >>124
なんでや! ままゆ可愛いやろ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/23(日) 04:06:17.32 ID:r2Jr3Y3o0<> 「実は四人に知らせないといけないことがあるんだ」

「知らせないといけないことって……」

「ナニナニ兄ちゃん? それって面白いこと?」

「うぅ……私、また何かやっちゃったかなぁ……」

「あふぅ」

それぞれがそれぞれの表情をする中、俺はにこりと笑みで伝えた。

「この四人で765プロの新ユニットを結成することになったんだ」

「「「「…………」」」」

途端に訪れる沈黙。

そして四人は顔を見合わせてぽかんと口を開く。

そして次に俺の顔を見て――

「「「「ええええええええええ!?」」」」

会議室に轟く絶叫。

あはは、やっぱりみんな、良い反応をしてくれるなぁ。

うん、悩んだ甲斐があったというものだ――なんてことを思っていると。

「ど、どどっ、どういうことですかプロデューサーさん!?」

「兄ちゃん、ホント!?」

「ゆゆゆ雪歩がユニットって……お兄ちゃん!?」

「なんなのなの! なんなのなの!」

「お、落ち着いてよ! ああ、頭を揺らさないでででで」

パニックになって押し寄せてくる四人に揉みくちゃにされてしまう。

興奮するのは解るけど、これじゃあ話が進まない。

それにそんなに揺らされると気分が……うっぷ。

「と、とにかく! 今後はこの四人でユニット活動をしていきます!」

強引に椅子に座らせ言い放つ。

そわそわしているものの、これでようやく話が進められる。

「あ、あの、どうして急にユニット活動なんて……」

挙手した天海さんに頷いて答える。

どうせそのことを話そうと思っていたところだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/23(日) 04:51:19.90 ID:r2Jr3Y3o0<> 「みんなも知ってる通り、765プロには秋月さんの担当するユニット『竜宮小町』がある。竜宮は徐々に人気を獲得していって、今ではライブが即満員になるほどの人気だよね」

「あずさも亜美もデコちゃんも、みんなキラキラしてるの」

笑顔で言う星井さんだけど、その表情はどこか憂いを帯びていて、彼女なりに思うところがあるのだろうか。

「そのおかげで事務所にも余裕ができたんだ。そこで、新たにプロジェクトを発足したってわけ」

「それが……」

「うん。俺が担当するキミ新ユニットだ」

そしてメンバーはキミ達四人。

悩みに悩んで悩みきって決めた、最高のメンバーだ。

「ウソじゃ……ないよね」

星井さんが小さく呟く。

その顔は少しだけ不安げで……ううむ、まだ疑ってるのかなぁ。

まあ、今までの閑古鳥が鳴いていたかのような状況を考えると、当然か。

「ねえってば」

もう一度そう訊いた星井さんに、微笑んで頷く。

「もちろん、嘘じゃない。全部本当だよ」

「……あはっ」

どうやらようやく信用してくれたようだ。

星のように輝く笑顔を浮かべ飛び跳ねている。

「やったやったやったぁ!」

そのあまりの喜びように、なんだか俺まで嬉しくなってしまう。

さすがに大人として飛び跳ねたりはしないが。

そしてその影響を受けたのは他の三人も同じようで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2012/12/23(日) 05:28:53.15 ID:r2Jr3Y3o0<> 「やったよ美希! ユニットだよ、ユニット!」

「はるるんとゆきぴょんとミキミキといっしょだとか、ゼッタイ楽しいっしょ!」

「みんなと一緒なら、私でも頑張れそうですぅ!」

四人の姿を見ていると、やっぱり俺の選択は間違っていなかったんだなぁ、とつくづく思う。

実を言うと、事務所に余裕ができたと言うのは嘘で、なんとか音無さんがやりくりをして事務所は成り立っている……のだが。

そんな中、俺は社長に新ユニットのプロジェクトを頼み込んだのだ。

無理な願いと言うのは解っていたが、どうしてもユニットをつくりたい理由があった。

それは――団結。

彼女たちの、765プロの団結力だ。

アイドルたちと触れ合っていく内に、俺はそれを強く実感した。

そしてお互いがお互いを支えあう姿はきっと、多くの人を幸せにしてくれるだろう。

だからこその、ユニット。

誰もが団結力を感じられるユニットが必要だと感じたのだ。

俺の意見に社長は大いに賛同してくれて、早速企画を進めようとしたのだが……。

いやはや、俺の優柔不断の所為で遅くなってしまった。

まあ、頑張った甲斐はあったかな。本当に頑張るのはこれからだけど。

「あの、プロデューサーさん」

「うん?」

「ユニット名は決まっているんですか?」

ユニット名、それも悩んだんだよなぁ。

覚えられやすくて、アイドルらしいものとなると、相当に難しかったから。

「い、一応は考えてるんだけど……」

宣言するとなると、かなり恥ずかしい。

だ、大丈夫だよね? 気に入ってくれるよね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/01(火) 01:53:25.99 ID:GF4S7puLo<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/10(木) 14:55:30.57 ID:unMIzOJDO<> ヘイ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/15(火) 01:07:08.62 ID:D8Dk5RiAo<> しぇ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/23(水) 10:05:38.60 ID:p22BsmWDO<> まだ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 18:59:35.16 ID:o2L/M0ku0<> すいません……忙しくなくなったと思ったら、全然そんなことありませんでした……。
早く続き書きたいのですけれど、いかんせん時間が……。
完結はさせるので、時間がかかるぶん、しっかりと構想を練ろうと思います。
どうか、よろしくです! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/01/27(日) 20:25:10.42 ID:pM7pAm4Do<> おう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/07(木) 22:33:18.50 ID:A2rxs+cDO<> 仕方ねえ保守してやんよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/22(金) 09:58:32.30 ID:acpiBg8DO<> 保守は必要なのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/22(金) 12:56:10.49 ID:cviI+v2Vo<> いらん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/11(月) 00:47:30.67 ID:ev85LyXDO<> そうだね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/20(水) 16:35:21.59 ID:9cK97Paqo<> あと一週間か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/26(火) 16:49:38.00 ID:EG4EzvLmo<> 明日だな <>