投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:43:20.99 ID:IuD+YXAm0<>アイマスSS
アニマス見た人向け
注意
・ある作品をパクっています。
・数人キャラ適当
・後半になるにつれキャラの視点がズレて読みにくくなります。
投下します
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360979000
<>春香「私、天海春香……トップアイドル、目指してます!」
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:44:53.33 ID:IuD+YXAm0<> デパートの屋上、特設ステージの舞台袖。
売れないころからお世話になっているいつもの場所に私たちはいました。
春香「……」
売れ始めてからあんまり来なくなったけれど、私はここが大好きでした。
はじめの頃の皆との思い出が詰まっているのはもちろんですが、
歌の最中に歌詞を忘れたり、こけてしまっても、数が少ない観客の皆が笑って許してくれた温かさがそこにはありましたから。
……そう、温かったはずなのに……
アイドルなんて必要ねー!!
そうだ、そうだ! 俺らはお前らの歌を聞きにきたんじゃねーんだよ!!
私の知っている場所で、私の知らない、大勢の観客の怒声が私たちに牙をむいていました。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:45:27.06 ID:IuD+YXAm0<> ……ここで歌わなきゃいけないの?
あの人に負けないように?
私は逃げるように空を見上げましたたが、もちろんそれで声が聞こえなくなるわけではなく、
逆に私の心なんて無関心のように雲一つなく澄み切っている空に裏切られたような気がしました。
アイドルは帰れー!! ……れ、…えれ、帰れ、帰れ! 帰れ!!
激しさを増すブーイング、オーディション、アイドル、恐怖、絶望…………
痛いほどの青空はどこか非現実味を帯びていて、経験のない怒声だけが私のリアルでした。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:46:21.66 ID:IuD+YXAm0<>
1st これからの彼女の始まり <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:48:09.62 ID:IuD+YXAm0<>
春香「トップアイドルオーディション……ですか?」
事務所の移設に失敗しつつも変わらず765プロの皆で活動を続けていたある日、
生っすかサンデーの撮影が終わった後、私と千早ちゃん、そして美希の三人はプロデューサーさんに呼び出されました。
P「ああ。正確にはトップアイドル養成合宿のオーディションだけどな。
まあ、トップアイドルオーディションと言っても変わらないと思う」
プロデューサーさんはそう説明してくれたけれど、私はそんなの聞いたことなくて、
千早ちゃんと美希も同じように状況がわからないといった感じです。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:48:52.06 ID:IuD+YXAm0<>
美希「ねえハニー、それってなんなの?」
P「どうやら今年から導入されたみたいで俺も詳しくは知らないけど、
話を聞く限り、日本中のプロダクションからアイドルを集めて選抜オーディションをして、
選ばれたアイドルをトップアイドルとしてしばらくの間、合宿させるらしい」
美希「説明が長いの」
P「……、まあ簡単に言うと、もっときらきらできる子たちを集めようって話だ」
その説明は適当すぎませんか? そう思ったんだけど、
美希「わかったの! ありがとう、ハニー!」
美希はちゃんと納得しているみたいだからいい……のかな? <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:49:28.26 ID:IuD+YXAm0<>
千早「トップアイドル……ということはそのオーディションに来る人たちは……」
P「ああ、全国でもトップクラスだろうな。……怖気づいたか?」
答えなんてわかっているはずなのにプロデューサーさんは意地の悪い笑みを浮かべて千早ちゃんを挑発します。
もちろん千早ちゃんは、
千早「まさか、むしろ望むところです。
山は高ければ高いほど挑む価値はありますから」
楽しそうに答えました。
わざと犬歯をむき出しにしているあたり、千早ちゃんはそうとう楽しみにしているようです。
美希「ねえねえ、ハニー、ミキもそれに出たい!」
P「ああ、美希には出てもらうつもりだ。もちろん千早と春香もな」
春香「わ、私もですか!?」
千早ちゃんや美希はひいき目無しに見ても他のアイドルよりすごいことはわかるけど……私まで!? <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:49:56.95 ID:IuD+YXAm0<>
全国トップクラスの子たちが集まるって聞いたから、驚いたけど、すぐに一つの考えにいたりました。
春香「……765プロの皆で出場するってことですね!」
765プロ皆で頑張った運動会を思い出し、また皆で頑張れられればいいなって思っていたんだけど、
P「いや、765プロでオーディションに出るのはここにいる三人だけだ。
他の皆は今回は見送ったよ」
春香「えっ?」
P「これにはいろいろ理由がある。まずは……」
私が驚くのをわかっていたようにプロデューサーさんは説明してくれました。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:51:11.24 ID:IuD+YXAm0<>
P「……というわけで、社長や律子とも話し合った結果、今回はお前たちを選んだんだ」
春香「そう……だったんですか」
P「開催は一ヶ月後。
それまでの間、レッスンを中心にスケジュールを組みたいと思う。もちろん、全く仕事を入れないわけじゃないけどな」
そこでいったん言葉を切ったプロデューサーさんは一息つくと、たまにしか見せない真剣な顔になりました。
P「おそらくこのオーディションは出場する全アイドル、全プロダクションの威信をかけた戦いになると思う。
そしてお前たちには、……プレッシャーをかけるつもりはないが、765プロの看板を背負ってもらうかたちになる。
……その覚悟はしてもらえるか?」
プロデューサーさんの声にはいつもの優しさではなく、誤魔化しを許さない厳しさが含まれていました。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:51:46.56 ID:IuD+YXAm0<> でも、プロデューサーさんがそういう顔を見せるときは私たちならできるって信じてくれているときだって知っていましたから、
美希「任せてなの!」
千早「はい、大丈夫です」
美希や千早ちゃんみたいに即答するべきでした。
P「春香……?」
でも、
春香「少し……考えさせてくれませんか?」
千早「春香……」
美希「……」 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:52:29.82 ID:IuD+YXAm0<> 春香「駄目ですか?」
それでも、それは私にとってすぐに答えを出すことができないことだったから。
迷惑をかけることと、それでもプロデューサーさんは聞いてくれることをわかった上で私はお願いしました。
P「……それは、かまわない。急な話だし、俺が勝手に決めたことだから。
もし春香が断るって言っても俺は何も言わないよ。
ただ、まだ迷っている間は美希たちと一緒にレッスンを受けてほしい。
さっきも説明したとおり、春香たちの代役をたてることはできないし、つもりもない。
だから……いいか?」
春香「……はい、すみません」
そうしてプロデューサーさんのお話は終わりました。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:52:59.71 ID:IuD+YXAm0<>
スタジオからの帰り道、私たちは三人で歩いていました。
春香「……」
他の皆は現場から事務所に戻っていたり、他の仕事があったりで一緒ではありません。
千早「……」
会話はありません。
美希「……」
美希から話しかけて、私が反応して、千早ちゃんがあいづちをして、
いつもそんなふうに成り立っていた私たちの会話が今日はありません。
理由はわかっています。
私がオーディションの出場を迷っているからでしょう。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:53:44.93 ID:IuD+YXAm0<>
美希「……今度は何を迷ってるの?」
赤信号に足を止められたとき、美希はポツリとつぶやきました。
千早「美希……!」
美希「千早さん、ミキ、わかっているよ。言い争うつもりはないの。
ただ前みたいに春香が一人で抱え込んで無理するのは嫌だから……」
いつの間にか信号は青に変わっていましたけど、
気付いてないのか、無視しているだけなのか、美希はじっと私を見つめてきます。
美希「怖いなんてことはさすがにないよね?」
春香「……うん」
まったく怖くないということはありません。
全国から集まる強力なライバルたちに、765プロの看板を背負うこと。
それぞれを軽く見ているつもりはありません。
でも、私にはいままで簡単に合格してきたオーディションのほうが少ないですし、
765プロ内の皆は仲間であると同時に強力なライバルでもあります。
それに、ライブでセンターを歌っている時はいつも、765プロの看板を背負っているつもりでした。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:54:29.75 ID:IuD+YXAm0<>
美希「……また、皆と離れ離れになると思ってるの?」
春香「ううん、それももう大丈夫」
思えばあの時は皆にたくさん心配をかけました。
律子さんや小鳥さん……プロデューサーさんはもちろん、千早ちゃんや美希、真、皆。
でもそのおかげで、たとえ私たちは離れていても、前に進み続ける限りずっと一緒だってことに気づくことができました。
美希「それならよかったの。もし同じことで悩んでいるなら怒ってたの。
……でも、じゃあ、どうして……?」
美希の質問に答えなければいけないのはわかっていましたけど、私自身今の気持ちを上手く言えなくて、結局、
春香「……トップアイドルってなんなのかな……?」
そんな抽象的な質問に逃げてしまいました。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:55:29.33 ID:IuD+YXAm0<>
その後、意外にも美希は何も言わないで、先に電車に乗って帰っていきました。
そして、
春香「……じゃあ、またね。千早ちゃん」
駅の改札口。こんな日でもいつものように見送りに来てくれた千早ちゃんに挨拶をして帰ろうと振り返った時、
千早「春香!」
千早ちゃんの声に引き止められました。
千早「……春香のさっきの質問。
春香が何を悩んでいるのか、どうして躊躇っているのか、私は……たぶん美希も、分かった気がする」
春香「ほ、本当……!?」
自分でもわかっていないことなのでさすがに驚きます。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:56:23.46 ID:IuD+YXAm0<>
できればそれを教えてほしいなあ。とか思わないでもなかったわけですけど、
千早「ええ。……でも、それを言うつもりはないわ。
それはきっと春香が自分で見つけるものだって思うから」
春香「……うん」
やっぱり、ずるはいけないよね。
千早「……でもね春香、これだけは覚えておいて」
千早ちゃんはいつもの、左手で右手を押さえる姿勢をとりました。
千早「今回のオーディション、私は春香と一緒に受かりたいわ。
……もちろん美希も一緒に、三人で!」
春香「……うん、私も!」
答えどころか問題すらまだ見えない私の問い。
でも、きっと答えは見つかる気がしました。 <>
投下<>saga<>2013/02/16(土) 10:57:15.62 ID:IuD+YXAm0<>
帰り道、駅のホームで見送った春香を思い出す。
千早「本当に良かったのかしら……?」
言わないという判断は正しかったはず。
もし春香の悩みが私の勘違いなら伝えてた場合、春香を間違いに進ませていたかもしれないし、
あっていたとしたら春香に言ったようにこれはきっと自分自身でなんとかするべきもののはずだから。
でも、オーディションの話を聞いた以降、最後以外はずっと浮かない表情だった。
それは私がアメリカにレコーディングに行く前の様子と同じように見えて、また春香があの時のようになってしまう不安も感じる。
けど、
千早「……大丈夫」
それでも私ができることは春香を信じて待つことだけなのだろう。
もし春香があの時のようにふさぎ込んでしまったら、また私が……ううん、765プロの皆で助けてあげればいい。
千早「……『道の先』、みつかるといいわね、春香」 <>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:29:15.34 ID:Hazc+39r0<> 休憩時間は十分です!
春香「……はあ」
収録の休憩時間が来てセットから出るとため息がこぼれました。
プロデューサーさんの話から経っても、悩みの問いすら未だにみつかっていません。
律子「春香、まだ悩んでいるの?」
春香「律子さん……」
今日は竜宮小町がレギュラーの番組の撮影で私はゲストとして呼ばれてきていました。
竜宮小町ですから当然、律子さんも来ています。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:30:52.98 ID:Hazc+39r0<>
春香「竜宮小町、すごいですね」
肯定するのも情けなくて、質問から逃げるように伊織たちのほうを見て呟きます。
でもたぶん、律子さんならそれだけでわかると思いますけど。
律子「まあね、私のユニットですから。……まだまだでもあるだけどね」
竜宮小町は今、現場監督からお小言を受けているようでした。
私がお小言を言われてないのは、単純に私がゲストだからなのでしょう。
春香「まだまだでもすごいです。これなら「生っすか」の司会、安心して任せられます!」
オーディションまでの間、「生っすか」の司会は竜宮小町がやることになっていました。
これは私たちの負担をオーディションまでの仕事の負担を和らげる意味もありますが、
実はもともと他で竜宮小町がメインパーソナリティを務める番組の話が来ていたらしく、それの事前演習として決まっていたそうです。
そういうわけもあって竜宮小町の三人が今回のオーディションを見送ったそうです。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:31:44.94 ID:Hazc+39r0<>
春香「……律子さんはトップアイドルって何だと思いますか?」
自分の中のもやもやとしたものに対して少しでも手がかりが欲しくて、
私は美希に言ったのを同じ質問を律子さんにしました。
律子「……そうね、私の中でトップアイドルっていったら……日高舞。
彼女は間違いなくそうだったんじゃないかしら?」
春香「舞さん……」
日高舞さんの話は聞いたことがあります。
今のアイドル業界のひな形ができ始めたころ、突然現れた彗星。
圧倒的な歌唱力とパフォーマンスでアイドルどころか芸能界のトップレベルにまで駆け上がった伝説のアイドル。
東にオーディションがあれば有名俳優を蹴散らし主役になり、西にライブがあれば会場は満員にし、交通機能を麻痺させる。
そんな規格外にして最強のアイドル。そして日高愛ちゃんのお母さん。
やっぱりトップアイドルって舞さんのような人なのでしょうか?
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:33:23.55 ID:Hazc+39r0<>
春香「……律子さんは出ないんですか?」
律子「はあ?」
春香「今回のオーディション、どうして律子さんは出ないんですか?」
律子さんの答えを聞いたら、自然とこの言葉がでました。
律子「何言ってるのよ。竜宮小町が大事な時期なのにプロデューサーの私が出るわけ……」
春香「……」
律子「……そうね、私がもしもプロデューサーをしていなかったとしてもおそらくこのオーディションに出なかったって思うわ」
春香「それはどうして……?」
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:34:24.05 ID:Hazc+39r0<>
律子「うーん、なんて言うのかな……正直に言うと、行く意味がないって思っているからかもしれないわ」
春香「い、意味がない……ですか?」
律子「……正確には私にとって意味がないってことだけど……春香は私の夢を知っているわよね?」
春香「は、はい……自分の事務所を持つことですよね?」
律子「そうよ。で、そんな私が今回のオーディションに出てメリットってあるかしら?」
春香「め、メリットですか!? え、えっと……」
質問している側だったのにいきなり立場が入れ替わって、慌てながらも頭を働かせます。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:35:57.76 ID:Hazc+39r0<>
春香「他の事務所のアイドルたちの偵察……?」
律子「まあ妥当な考えね。でも考えてみて、それってわざわざ行く必要あるのかしら?
その気になればDVDや番組を見ればいつだってできるんじゃない?」
春香「じゃ、じゃあその……有名になれるから?」
律子「たしかにトップアイドルになって知名度を稼ぐという考えもありね。
でも、トップアイドルにまでなると今度は逆にアイドルを辞められなくなるのよ。
あの傍若無人の日高舞でさえ辞めた理由は自発的にではなく妊娠というどうしようもない理由が必要だった。
もし今後彼女のような人材が現れたらこの業界は徹底した管理下に置いて、
擦り切れるまで使い続けるでしょうね」
なんだか業界の裏を聞いているようですごく怖くなったけど、律子さんの話もあながち大袈裟とは思えません。
舞さんの妊娠が発覚した当時、業界はすごく荒れたらしいです。
トップアイドル(絶対的偶像)の消失。
それはこの業界を衰退させるには十分すぎるほどの爆弾で、
その余波で多くのアイドルが日の目を見る前に消えざるをえなかったと聞きました。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:37:02.53 ID:Hazc+39r0<>
律子「……ああ、ごめんごめん。別におどかしているわけじゃないのよ?
あくまでこれは私個人の想像だし、少なくとも765プロの子をそんな目に合わせることは絶対にさせないわ。
けど、これでわかったでしょう?
今回のオーディションは出ることだけでもなく、
たとえ合格してトップアイドルになれたとしても私の夢の実現にとってメリットになることはないのよ」
春香「夢の実現……」
――夢。それは私にとっての原動力であるのと同時に悩みの種でもあります。
アイドルになってから、765プロに入ってからも追いかけ続けていた私の夢。
以前それを見失ってしまって皆に……プロデューサーさんにも迷惑をかけてしまったことがありましたけど、
皆が思い出させてくれた私の夢。
けど、私の今の夢って……
千早ちゃんが言っていたのってもしかして……
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/18(月) 12:37:04.65 ID:Vb/Rxs5Bo<> 堂々とパクリ公言とか何言ってんだこいつ…書かなくていいよ <>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:37:30.02 ID:Hazc+39r0<>
律子「……もし春香がトップアイドルに関して知りたいって言うなら私以上の適任者がいるわ」
春香「えっ? だ、誰ですか?」
律子さんより参考になる人が他にもいるのでしょうか?
律子「それはね……」
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:38:24.92 ID:Hazc+39r0<>
翌日、私はいつもより多めのお菓子を持って765プロに訪れました。
春香「貴音さん、おはようございます」
貴音「おはようございます。春香」
理由はもちろん、律子さんが推薦してくれた人にお話を聞くためです。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:41:09.38 ID:Hazc+39r0<>
春香「貴音さん、私クッキーをつくって来たんです。よかったらどうぞ」
貴音「ありがとうございます。
……ん、やはり春香のクッキーは美味しいですね」
貴音さんはクッキーを気に入ってくれたみたいでみるみるうちにクッキーは消えてなくなります。
そうというのにやはりその姿から優雅さが消さないあたりさすが貴音さんだと思います。
ともかくどうやって話を切り出そうか考えていると、貴音さんは私の顔をじっと見てきました。
貴音「……で、私に何かご用ですか?」
春香「えっ!? ど、どうしてわかったんですか?」
やっぱり貴音さんには不思議な力があるんでしょうか?
貴音「食べている間、ずっと私のほうを見ていましたから」
と思ったらただの私の失敗でした。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:42:12.70 ID:Hazc+39r0<>
春香「貴音さんは、トップアイドルってなんだとだと思いますか?」
気を取り直してというわけではありませんが、さっそくずばっと本題を言いました。
もってきたお菓子はすでに貴音さんのお腹のなかだったりします。
貴音「とっぷあいどる……ですか? どうしてそのようなことを?」
春香「え? えっとそれは…………
……プロデューサーさんが皆をトップアイドルにするって言ってくれているけど、
実際のトップアイドルってどんな感じなのかなー……なんて思っちゃって……あはは」
美希や律子さんには普通に言うことができましたけど、
改めて考えるとこの質問は今さらすぎるんじゃって思って、思わず愛想笑いで逃げてしまいました。
貴音「……春香」
春香「は、はいっ……!」
貴音さんの凛とした声に私は反射的に背筋をピンと伸ばします。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:44:40.99 ID:Hazc+39r0<>
貴音「道に迷い、誰かに尋ねること。それは恥ずべきことではありません。
……ですが、それをそのような態度で聞くことは恥ずべきことです。
この問いはあなたに大切なことなのでしょう?」
春香「……はい。そうですね、その通りですよね。
すみませんでした、貴音さん。
改めて、貴音さんにとってのトップアイドルって何なのか教えてくれませんか?」
貴音「そうですね、私にとっては『高みの先に立つ者』といったところでしょうか」
春香「……舞さんは……日高舞さんはその高みの先に立つ人に含まれますか?」
貴音「日高舞、ですか……? そうですね……」
貴音さんでもきっと舞さんをトップアイドルとして見ているんじゃないかと思っていた私は、
すぐに肯定されないことに意外を感じたのと、
貴音「……私にとってのとっぷあいどるは彼女とは少し違うかもしれません」
否定されたとき何故か安心のようなものを感じました。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:45:12.60 ID:Hazc+39r0<>
貴音「如月千早以上の歌唱力、菊池真以上の足さばき、萩原雪歩以上の演技力。
どれをとっても、全体で見ても彼女の技量は、アイドルの理想形と言える方でしょう。
……ですがアイドルというのは、私の目指す『高み』は……それだけが全てでは決してないはずなのです」
貴音さんにとってアイドルとはなんなのか以前プロデューサーさんは尋ねたことがあるそうです。
そのときの貴音さんの答えは「トップシークレット」と答えたって聞きましたけど、
きっとこれはそのトップシークレットの一部なのかもしれません。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:49:15.16 ID:Hazc+39r0<>
春香「舞さんはトップアイドルじゃなかったんでしょうか?」
貴音「……そうとも限りません。
現に今まで彼女以上の人気と実力を持ったアイドルは他にいませんでしたから。
彼女のことをトップアイドルと評する人がいてもおかしくはないのです」
春香「……」
貴音「ふふっ、納得できないようですね?」
春香「そ、そういうわけじゃ……」
貴音「いえ、いいのです。
トップアイドルが何者なのかという問いに正解はないのですから。
ただあるのは一人一人が持つアイドル像(理想)なのです」
貴音さんの話は難しくて私にはその言葉の真意は半分も理解できていませんでしょう。
……でも、貴音さんが私に伝えたいことはわかったような気がします。
<>
投下<>saga<>2013/02/18(月) 12:50:33.68 ID:Hazc+39r0<> 貴音「そしてトップアイドルがいかなるものなのか、あなたはもうわかっているはずですよ」
春香「……」
貴音「わかっているからプロデューサーからのオーディションの話に躊躇ったのでしょう?」
春香「そうなのかもしれません……」
抱いていたもやもや感と違和感。
そして千早ちゃん、律子さん、貴音さんからもらった言葉が私の中で結びつき、何かが見えてきそうなきがしました。
春香「……貴音さんにとっての高みってなんですか?」
最後に、私は返事をわかっておきながらそれを聞きました。
きっと貴音さんはいつものように人差し指を口元に添えて言うのでしょう。
貴音「ふふっ……それはトップシークレットです」 <>
補足1<>saga<>2013/02/19(火) 14:07:13.29 ID:AXXkaBsR0<> 今回のこのオーディションは出場人数の制限と大物の登場を防ぐため、
一つのプロダクションにつき出せるのは15歳以上、20歳以下の三名という縛りがあります。
それを前提において他の765の子たちが出ない理由
伊織、亜美、あずさ……書いてあるとおり、自分たちの冠番組の話が先にきていた。
真美……年齢制限+真美一人だけは無理という親の反対
雪歩、真……舞台の出演が決まっていた
やよい、響……合格しても家族の世話をしないといけないから合宿に参加できない(+やよいは年齢制限)
貴音……未成年は親の同意が必要だが出身地がトップシークレットなので不可
なお、この補足はこれからの話に全く関係しません
次から二章投下
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:08:23.63 ID:AXXkaBsR0<> オーディションの日、私は自然と目が覚めました。
春香「あれ、まだこんな時間……?」
時計を見ました。時刻は4時。
いつも起きる時間より早い時間です。
春香「どうしよう……」
緊張しているからでしょうか。
今日はオーディションには直接行く予定で、いつもより遅く起きても良かったのですが、
目がさえて全く眠気を感じません。
春香「美希ならきっと今もグッスリ寝ているんだろうなあ」
手持ちぶさただったのでとりあえず今日の準備をすることにしたんですが、
春香「終わっちゃった……」
荷物なんてそんなにあるはずがなく、すぐに終わってしまったのでストレッチをすることにしました。 <>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:09:07.11 ID:AXXkaBsR0<>
春香「ふふ、ふーん……」
ゆっくりと筋に酸素を送り込むように体を伸ばしていくと、
心地よい刺激と共に体が目覚めていくのを感じます。
昨日、765プロでは私たちの激励会が行われました。
激励会といっても今の765プロでは皆がそろうことが難しいので、
私たちが皆の現場に出向いたり、事務所に帰ってきた人から応援してもらったり、
危うく終電を逃してしまいそうになったりもしましたけど、皆から元気をもらえたのはやっぱり嬉しく思います。
「春香ご飯よー!」
春香「はーい! ……え?」
もうそんな時間が経ったのに驚いて時計を見ましたけれど、時計は起きたときから全然進んでいません。
いえ、むしろ……
春香「止まっ、てる……?」
「春香ー! あんた今日オーディションあるんでしょ?」
春香「は、はーい!!」
どうやら私も美希のことを言えそうにないようです。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:09:45.31 ID:AXXkaBsR0<> 2nd 天海春香という人 <>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:13:16.83 ID:AXXkaBsR0<>
オーディション会場につくと千早ちゃんが音楽プレイヤーを片手に立っていました。
春香「おはよう、千早ちゃん!」
千早「春香、おはよう」
春香「ごめんね、待たせちゃった?」
千早「いいえ、私も今来たところよ」
春香「……なんだか恋人同士の会話みたいだね」
千早「ふふ……、そうね」
そんなやりとりをしながら準備を始めます。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:14:50.13 ID:AXXkaBsR0<>
会場にはすでに大勢の人が来ていました。
さすがトップアイドルオーディションというべきか、そのほとんどの人が見たことあったり、
共演したり、以前他のオーディションで戦った人たちもいます。
ねえ、あれって雪月花の雪じゃない? うわっ、最悪ー
あっ、幸運エンジェル。 あれ?テレビで見た時より胸が…… しっ、それはタブーよ
春香「美希まだ来ていないのかな?」
千早「さすがに遅れるようなことはないと思うけど……」
まだ姿が見えない美希を探して周りを見渡していると、
「お久しぶり千早ちゃん」
後ろから声がかかりました。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:16:01.52 ID:AXXkaBsR0<>
千早「……お久しぶりです、雪さん」
千早ちゃんにつられて振り返ると、そこには雪月花のリーダー、雪さんがいました。
雪「やあねえ、さん付けなんて。
いくら年齢が違うといっても同じアイドルなんだから雪でいいのよ?」
千早「いいえ、そういうわけにはいきません。『仮にも』年上ですから。
……それで、何の用ですか?」
千早ちゃん、怒ってる……?
会ったばかりなのにあきらかに嫌悪を表している千早ちゃんに不安を覚えます。
雪「用って挨拶に来ただけだけど、おかしいかしら?」
千早「いいえ、何も。……行きましょう、春香」
春香「えっ、千早ちゃん!?」
事情もつかめないまま千早ちゃんの手に引かれてついていく私でしたけど、
雪「……ふうん。あなたが天海春香さん?」
私たちを逃がさないようにやや大きくなった声でなんとなく理由がわかりました。
……きっとこの人はきっと嫌な人だ。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:16:42.80 ID:AXXkaBsR0<>
雪「私あなたの歌を何回か聞いたことがありますよ。
感想はいろいろありますけど、あえて言わせてもらうなら……酷い歌。
とてもプロの歌だとは思えなかったわ」
訂正、やっぱりすごく嫌な人です。
雪「本当、765プロっておかしい事務所よね。
あなたみたいのをセンターで歌わせているし、このオーディションにまで出してる。
よっぽど人材不足のようね、それともプロデューサーの見る目がないのかしら?」
足が止まりました。その理由は怒り。
でもそれは私の怒りじゃなくて、
千早「……少なくとも、春香の……、彼女の歌はあなたよりましだと思いますが」
雪「……なんですって……?」
私の親友の怒りでした。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:17:20.03 ID:AXXkaBsR0<>
春香「ち、千早ちゃん、私のことなら気にしてないから……」
千早ちゃんが私のために怒ってくれているのは嬉しいです。
けど、千早ちゃんのこんな顔なんてみたくありません。
雪「私が負けてるって言うの? こんな子に?
……歌姫って歌は歌えても聞くことはできないのね。それとも身内に甘いだけかしら?」
千早「どうとらえてもかまいません。
……ただこれ以上春香を侮辱するなら、私はあなたを許さない」
今にも爆発しそうな一触即発な雰囲気が二人の間に流れた時、
美希「おはようなの、千早さん、春香。……あふぅ」
あくびを片手に抑えながら美希が到着しました。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:18:07.09 ID:AXXkaBsR0<>
春香「み、美希……」
普段はのんびりがモットーな美希ですけど、
何気に空気を読むのがうまい美希ならこの状況をなんとかしてくれるんじゃないかと期待しました。
美希「春香どうしたの? そんな顔して……
あ、そこの人、美希そこに荷物置きたいからどいてほしいな」
けど、寝起きで時間が経っていないのかマイペースなところが出ているようです。
雪「そこのひっ……あなた765プロの星井美希ね」
美希「そうだけど、何で知っているの? ミキと会ったことある?」
そう思っていたのだけど、
雪「ないわ。けど、目上の人に対していきなりそこの人はないんじゃないかしら?」
美希「でもミキは名前知らないの」
どうやらそれも違うことに気が付きました。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:19:05.12 ID:AXXkaBsR0<>
雪「……雪よ。もしあなたがこの先もこの業界にいたいなら覚えておいたほうがいいんじゃないかしら?
765プロが潰れたときの用の再就職先として、ねえ?」
美希「ふうん……それはありがとうございましたなの。
で、いつになったらどいてくれるの? 『そこの人』?」
……もしかして美希も怒ってる?
最初はただいつもと同じ様子かと思っていたんですけど、よく見ると口調はいつもと
変わりないんですけど、目が違っています。
雪「!! ……へえ、千早ちゃんといいあなたといい、本当765プロのアイドルって礼儀がなってないのね。
いいわ、そんなに露頭に迷いたいならお望み通り潰してあげる。
せいぜいアイドル最後のオーディションを楽しんでおきなさい」
腹立たしげに去っていく雪さんに美希はふんと鼻をならしました。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:20:12.44 ID:AXXkaBsR0<>
春香「美希何かあったの?」
美希はマイペースで時々ぐさりとする言葉を言うことはありますけど、それはあくまで悪気はなく言うのであって
今回のようにあきらかに喧嘩を売るような態度は美希らしくないように感じます。
今までに雪さんと何かあったのでしょうか? でも、初対面みたいだったし……
美希「……あれだけの声でしゃべってれば、話が聞こえないはずないの」
春香「そっか……そうだよね、プロデューサーさんの悪口を言われたもんね」
あれだけプロデューサーさんのことを好きな美希のことです。
雪さんにプロデューサーさんのことを悪いふうに言われて
さっきのような態度をしてもおかしくないと思ったのですけど、
美希「むー……」
意外にも美希は頷いてくれません。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:20:49.94 ID:AXXkaBsR0<>
春香「あれ? そうじゃないの?」
美希「違うの! ……いや、違ってはないけど、でも違うの!
たしかにハ……プロデューサーの悪口を言ったのはカチンときたよ?
でも、それ以上に許せなかったのは春香の悪口を言ったことなの。
春香のすごさをわからない人にアイドルって向いてないと思うな」
春香「美希……」
美希のべた褒めに恥ずかしい気持ちになったけど、
それ以上にプロデューサーさんより私のことに対して怒ったことに驚きました。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:21:32.81 ID:AXXkaBsR0<>
千早「美希、おはよう。それとありがとう」
美希「別に千早さんにお礼を言われるようなことはしてないの。
それよりも千早さんがあんな怖い顔したことにミキは驚いたな。
あの人と何かあったの?」
そういえば、千早ちゃんと雪さんは知り合いのようでした。
千早「……何かあったって言えるかどうかはわからないわ。
けど以前……」
「これより、第一回トップアイドル養成合宿オーディションの開会式を始めます。
アイドルの皆さんはこちらに集まってきてください」
間が悪いことに千早ちゃんの言葉は放送によって遮断されてしまいました。
しかたないので私たちは指定された場所へと移動します。
千早「……気を付けて。雪さんはあまりいい噂を聞かないわ」
千早ちゃんの言葉に少しの不安を覚えながら。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:22:25.11 ID:AXXkaBsR0<>
やがてアイドル全員がそろうと開会式が始まりました。
開会式は学校で行われる体育館での全校朝礼のように
集まったアイドルたちに下で審査員や役員の人たちが檀上に上がっている形。
内容は今回のオーディションの大まかな流れでプロデューサーさんが説明していてくれたとおり、
一次審査、二次審査があって三次審査、そして最終審査の順で行われると聞きました。
「……次は今回のオーディションの審査員長の挨拶です」
美希「……長いの」
春香「美希、まだ十分も経ってないよ?」
こんな時でさえ隣であくびをしだす美希にあきれながらもその図太さは少しうらやましく思います。
けどそんな美希でも、
「それでは審査員長、お願いします」
一気に眠気が吹き飛ぶような人が現れました。それは……
黒井「うぃ。ごきげんよう諸君」
春香・千早・美希「く、黒井社長!!?」
765プロの事務所移設をパーにした疑い(ほとんど確定的ですけど)がある黒井社長でした。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:23:15.81 ID:AXXkaBsR0<>
美希「ど、どうしてここに黒井社長がいるの?」
春香「私に聞いてもわからいよ! 千早ちゃん!」
千早「わ、私もわから……それより春香、周り……」
春香「……え?」
突然騒ぎ出した私たちに周囲の視線はいっせいに突き刺さっているのに気付いて、
春香「あぅ……」
私たちは顔の熱くなるのを感じながら俯きました。
黒井「ふん……才溢れる諸君、そんな虫けらどもを見てないでこっちを見たまえ。
いいか、トップアイドルすなわち真の強者というのは……」
黒井社長は会ったときから嫌味しか言わない嫌な人ですけど、このときだけは助かった気がします。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:24:04.25 ID:AXXkaBsR0<>
黒井「……以上だ。諸君の検討を期待しておく。アディオス」
意外といっては失礼なのかもしれないけど、黒井社長の挨拶は最初以外は普通に終わりました。
「続いて特別審査委員の紹介です」
黒井社長のことがあったから私たちは誰が来ても驚かないつもりでした。
だけど、
「どうぞ」
ステージに現れた人物を見た瞬間、
舞「はーい、皆、元気?」
千早「……日高」
春香「……舞さん……」
美希「……なの」
私たちは先ほどのことも忘れて唖然としました。
<>
投下<>saga<>2013/02/19(火) 14:24:56.17 ID:AXXkaBsR0<>
え!? ひ、日高舞……? 本物?
うっそー、表にはもう出てこないって聞いたのに。
だけど今度ばかりは周りも同様に騒いでいたので目立たずにすみました。
舞「説明にもあったとおり、今日は特別審査委員として呼ばれたので来ちゃいました。
日高舞っていうんだけど、皆私のことわかるかな?」
わからないはずがありません。
最強のアイドルであり、生ける伝説である彼女。
舞さんが現役時代を知っている人はもちろん、今の時代でも彼女を知らない人はいないでしょう。
舞「まあ特別審査員といっても基本観客みたいなものだから気楽にね?
それじゃあ、挨拶終了っと!」
大雑把にして豪快。
話に聞いていた現役時代のイメージと遜色ない挨拶で舞さんは去っていきました。
そして、
「え、ええ……それでは! これよりオーディションを始めます!」
私の長い一日は幕をあげました。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/19(火) 20:12:06.65 ID:J0XEAfJjo<> 面白い!期待 <>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:45:26.82 ID:e4xnZN1c0<> 「一次試験はボイス審査です。呼ばれたグループは指定の部屋に来てください。
そこで楽譜を配りますので、それを歌ってもらいます。
では1番から10番の方から入っていってください」
春香「千早ちゃん、美希、いってくるね」
番号の振り分けはオーディションに参加を申し込んだ時点で決まっていて、
私が前の方、美希が真ん中、千早ちゃんが後ろのほうの番号でした。
春香「ええっと、ここだよね……失礼します」
指定された部屋であるか確認した後入室すると、黒井社長を含めた審査員と、
雪「……」
先に来ていた雪さんを見つけました。
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:47:20.82 ID:e4xnZN1c0<>
「ではこれが楽譜になります。五分後に始めますのでそれまでに楽譜を読んでいてください」
全員がそろうと楽譜が配られ、私はそれを見ながら開会式後の千早ちゃんの話を思い返していました。
千早『正確な証拠はないんだけどね……』
千早ちゃんの話によると千早ちゃんは以前、雪さんとオーディションで戦ったことがあるそうです。
そのオーディションで千早ちゃんは黒井社長にされたときと同じような状況になっちゃって、
そのときも前と同じようにアカペラで乗りきれて、また千早ちゃんはそれを雪さんがしたことだとも思ってなかったんだけど、
その後のプロデューサーさんの調べと、雪月花にささやかれている黒い噂から、そうである可能性が高いと聞きました。
「それでは音を流しますので楽譜の通り歌ってください」
でも千早ちゃんはそれだけで雪さんを嫌っていたのではありません。
というより、嫌ってはいないようです。なぜなら、
雪「――――♪」
彼女の実力から、彼女がどれほどアイドル(仕事)に真剣なのか伝わってきましたから。
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:48:15.28 ID:e4xnZN1c0<>
雪「――――♪」
春香「――♪」
雪「! ……――――♪♪」
春香「!? っ、――♪」
――やっぱり、すごい。
テレビとかで見てたかわかっていましたけど、一緒に歌って改めて雪さんは上手いと実感します。
伸びに張りに声量。
そのどれもが私が敵うレベルじゃないほどに高くて、ついていくのがやっとです。
でも、だからこそ余計に……
千早『……なぜあれほどの実力を持っていながら彼女はその手を汚さないといけないのかしら?』
千早ちゃんの言ったことが気にかかります。
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:49:13.71 ID:e4xnZN1c0<>
千早『……彼女を苦手に思うのは、前の自分を思い出すからかもしれない』
千早ちゃんはそう言っていました。
歌に固執していた以前の自分と勝つことに執着している雪さんが似ている。
だから余計に雪さんに自分を重ねてしまい、見ていられないと。
たしかに雪さんの歌は上手いけど周りとは決して合わせようとせず、それこそ雪のように冷たくて、
ただ一人何か執念のようなものを背負って歌っているように思えます。
だけど私が雪さんに感じたのは千早ちゃんに似ているというよりも、
むしろ……舞さんに似ているんじゃないかという思いでした。
雪さんにとってのトップアイドルってやっぱり日高舞さんなのかな……?
数日前のことを思い出しながら私はそう考えました。
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:50:31.17 ID:e4xnZN1c0<>
春香『プロデューサーさん! 私、オーディションに出ることに決めました!』
四条さんと話した翌日、私は早速プロデューサーさんのもとに報告に行きました。
朝一番の報告だったのでプロデューサーさんはいつもの席で出迎えてくれています。
P『本当か!?』
春香『はい!』
P『そうか、それなら良かった……
それにしても、どうして最初は渋っていたんだ?』
その答えは当然用意してあります。
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:51:29.21 ID:e4xnZN1c0<>
春香『それは私にとってこのオーディションが意味がないものなんじゃないかって思ったからなんです』
P『意味がないもの?』
春香『はい。……私にとってアイドルって憧れだったんです』
アイドルは小さいころからの私の夢で、それをかなえるために頑張っている。
プロデューサーさんがまだ私たちのプロデューサーではなくカメラマンをしていたあの日、
アイドルとは何かって聞かれたときの私の答え。
春香『憧れに手が届くように今まで頑張ってきました。
……その私が目指す憧れは、今回のオーディションに合格したってきっと手に入りません』
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:54:56.89 ID:e4xnZN1c0<>
春香『私自身、まだトップアイドルってなんなのか答えが出ていませんでした。
けど、オーディションに合格したかとか、誰よりも歌が上手いからとか、
そんな理由でトップアイドルだって言われるのは間違っていると思うんです。
だから私は、最初にプロデューサーさんに持ちかけられたとき返事ができませんでした。
まだ答えが出ていないうちはトップアイドルになんかなりたくなかったから』
私は嫌だったのだ。
こうあるべきなんだ、こうでなければならない、
と他の人たちが勝手に決めたトップアイドル(理想)を押し付けられることが。
だってトップアイドルはアイドルそれぞれの憧れの形のはずだから。
P『そうだったのか……また俺は春香の悩みに気付けなかったみたいだな。
……ごめんな、春香』
春香『い、いえ! 謝らないでくださいよプロデューサーさん!
私、プロデューサーさんがこの話を持ちかけてくれたから気づけたんですよ?』
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 10:59:42.74 ID:e4xnZN1c0<>
P『そう言ってもらえると少し楽になるよ。
……でも春香、出るって決めたってことは答えが見つかったのか?』
春香『……いいえ、まだ見つかっていません……』
P『……答えが出てない状態では参加できるのか? 大丈夫か?』
プロデューサーさんは心配そうに聞いてきました。
きっとプロデューサーさんはまだ以前の私のことを引きずっているんだと思います。
でも……だから、
春香『……たしかにそうです。
でも私そのことに気づいてから、昨日から私にとってのトップアイドルってなんだろうって
ずっと考えていたんですけど結局答えは見つかりませんでした』
今までずっと考え、それ自体も昨日になってようやく気づいた悩み。
当然昨日考えたぐらいで答えが見つかるはずありません。
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 11:00:31.22 ID:e4xnZN1c0<>
春香『……でも、それに気づけたからこそ私今回のオーディションに出たいって思ったんです。
自分一人だけじゃ、考えるだけじゃ私が納得できる答えが見つからないと思ったから。
他のトップアイドルを目指している人たちに会って私は自分のトップアイドル(憧れ)の答えを見つけたいんです!』
P『……なるほど、トップアイドルになりにいくんじゃなくて
トップアイドルを見つけに行くってことなんだな?』
春香『あの、だめでしょうか……?』
P『いや、それでいいさ。それが春香らしい。
……なあ春香――』
<>
投下<>saga<>2013/02/21(木) 11:01:23.24 ID:e4xnZN1c0<>
「以上で第一審査終了です。お疲れ様でした」
春香「はぁはぁ……」
雪「……ふん」
第一審査の私たちのグループは最後まで雪さんのステージでした。
私を含めアイドルたちは雪さんについていくのが精一杯で、
オーディションの緊張感よりも、一曲がようやく終わったと安心したくらいでした。
雪「思ったよりはやるわね。
でも安心した。その程度の実力なら私には及ばない。残念だったわね」
そして、あれだけ周りを引っ張っていた雪さんはまるで疲れを見せていなくて、それに驚いたのは当然なんですけど、
ただ……歌っている姿にたびたび悲しさを感じたのは私の気のせいなのでしょうか……?
<>
補足2<>saga<>2013/02/21(木) 11:03:00.29 ID:e4xnZN1c0<> 「」内の『』は強調、引用
名前『』は基本、過去の会話を表しています <>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:48:31.21 ID:qsg7gAxL0<> 一次試験が終わり、やがて二次試験が始まった。
二次試験はダンス審査。
ここでは指定された曲に対してトレーナーの後に続いて踊りきればいいらしい。
春香「はぁはぁ……」
千早「春香、お疲れ様」
春香「千早ちゃん……うん、ありがとう」
やはり雪さんは春香を潰すつもりなのだろうか。
春香から濃い疲労の色が見える。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:49:23.59 ID:qsg7gAxL0<>
できることなら春香とグループを代わってあげたい。
そぅ思うのはたしかであるけれど、それを口や態度に出すのは春香に対する冒涜だ。
春香はこれくらいで潰されるような人じゃない。
その証拠に、
春香「次は千早ちゃんの番だよね? 頑張って!」
千早「ええ」
こんなときでさえ春香は私の応援をしてくれている。
春香は私にとってはもちろん、私の大事な家族(765プロ)の太陽的存在だ。
彼女が応援してくれるってだけで私の心はこんなにも落ち着いていられる。
今思えば私は春香に助けられてばかりだったのだろう。
あのころから……
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:49:54.49 ID:qsg7gAxL0<>
―――――
765プロの門をたたいて数ヶ月後のある日。
私は屋上で一人、歌を歌っていた。
―――――
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:51:49.94 ID:qsg7gAxL0<>
千早『ー♪』
空はどんより、曇り空。
本当ならレッスン場を使いたかっけど、今は使えない理由があった……いや、正確には使いにくい理由が。
まあ、なんでもいい。雨さえ降らなければ問題ない。
千早『―♪ ……誰?』
ドアのすりガラス越しに人が見えて声をかける。
見えた頭のリボンには見覚えがあった。
春香『……はは、邪魔してごめんね、ち…如月さん』
千早『あなたは……』
天海 春香。私と同じ日にここに入った子。
そして、私がここで歌っている元凶。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:52:40.46 ID:qsg7gAxL0<>
春香『あ、あのね如月さん、メール見てくれた? 昨日送ったんだけど……』
千早『ええ、見たわ』
そしてそのメールこそ私がここで歌っている原因。
そこにはこう書かれてあった。
『明日、スタジオ空いているらしいから、皆でダンスレッスンしない?』と。
春香『良かった。返事がなかったから届いていないのじゃないかと心配しちゃったよ。
……今から皆でダンスレッスンに行くんだ。』
千早『そう、それはよかったわね』
だから何だと言うの?
春香『だからね、その……如月さんも一緒に行かないかなって……』
千早『行かないつもりだから返事をしなかったのだけれど』
本来なら今日、私がそこで歌のレッスンをしている予定だったから、横取りされたような気がしてつっけんどんな態度で返した。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:54:12.42 ID:qsg7gAxL0<>
―――――
思い返すととても酷いことを言ったものだ。
でも、今以上に人付き合いの下手な当時の私は、こんなふうに周りと接触することしかできず、
当然孤立したり、対立することを繰り返していた。
そんな中、春香は根気よく私に話かけてくれた。
―――――
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:55:45.93 ID:qsg7gAxL0<> 私は彼女のことを嫌っていたというほどではないけど、少なくとも好意は持っていなかった。
春香『で、でもね、皆来てくれたの。だから、如月さんも……』
彼女は基本的に笑顔を張り付けて相手の様子をうかがいながら話し、何かとつけて群れたがる。
千早『私はいいわ。ダンスならいつものレッスンで十分だし』
それは私にとっては弱い人がやることだった。
千早『だいたい、私は歌えればいいもの。ダンスなんて本来、必要ないわ』
だから私がそう言えば彼女はきっと引くだろうと思っていた、過小評価していた。
その分、
春香『……そう考えるのってすごく悲しいことじゃない?』
彼女がそう言い返してきたときは驚いた。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 11:58:06.49 ID:qsg7gAxL0<> 千早『えっ?』
春香『今は、望む道の先から見ると凄く無意味に思えるかもしれない。
だけどだからって、今の自分を否定しなくてもいいんじゃないかな?』
千早『……』
その時初めて私は彼女に興味を持った。
千早『それってどういう意味?』
春香『え?』
千早『あなたのさっきの言葉、どういう意味なのかしら?』
春香『え、えっとね、うーん……』
そう言って彼女は少し考え始める。
普段ならすぐに答えないとことを苛立っていたかもしれないけど、
このときは不思議と彼女の言葉を待っていた。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:00:34.65 ID:qsg7gAxL0<>
春香『如月さんは歌手になるのが夢なんだよね?』
765プロに入った日、社長の前で二人でアイドルとしての目標を言ったのを思い出す。
私は彼女がなんて言ったか忘れたが、彼女がまさか覚えているとは。
千早『……ええ』
「夢」なんて陳腐なものにされたのは癪だったけれど、そんなことを目の前の彼女に言ってもしかたない。
春香『私はアイドルなることが夢だったの。
アイドルになって、たくさんのファンの前で、皆と一緒に歌うことが私の夢』
千早『良かったわね。その夢、時期にかなうわよ』
当時は率直に言ったつもりだけど、これはあきらかに嫌みっぽかったって今は反省している。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:02:06.80 ID:qsg7gAxL0<>
春香『それはそうなんだけどね……今度はどうしよう。って迷っているんだ』
千早『迷う……?』
夢がもうすぐかなうのに迷うことなんてあるの?
春香『うん、如月さんが言ったみたいに私の場合、デビューすると同時に夢がかなっちゃうから、
……デビューしてから何を目標にすればいいかなって。
……如月さんはそういうの決まっているの? 夢がかなった後どうしようとかって……?』
千早『夢がかなった後……』
そんなこと考えたこともなかった私は、彼女の質問に答えられず、
春香『……やっぱりそうだよね、普通、夢って一生かけてもかなえるものだもんね。夢の先なんて考えないよね。
だけど私の夢はもう少しでかなってしまうんだと思う。』
また望んだはずの夢に対して「かなってしまう」と言わざるをえない目の前の彼女の気持ちを、私にわかるはずがなかった。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:03:12.85 ID:qsg7gAxL0<>
春香『でもね、だからこそ私は決めたんだ。今を一生懸命頑張ろうって』
でもわかることは、彼女は弱いだけの人物ではないということだ。
春香『たとえ不満があっても、意味なんてわからなくても、
今いるここは私の道であることには変わらないはずでしょ?
たしかにそれがどう私の道の先にどうつながるのはわからない。
けど、いつかつながることだけは確かだから』
たとえそれが我慢や背伸びのカッコつけであっても、彼女は前に進もうとしている。
千早『……』
春香『だからね、無意味に思えることだってきっと如月さんの道の先につながっているって思うの。
だから……』
千早『……千早で』
春香『え……?』
千早『千早でいいわ。如月さんって長いし』
春香『! ……うん、千早ちゃん!』
千早『……「ちゃん」もいらないのだけど』
春香『ええー、可愛いと思うんだけどなー……』
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:04:23.02 ID:qsg7gAxL0<>
そうしていくつかの月が流れて、プロデューサーが来て、ようやく本格的に歌の仕事ができると思ったのだけれど、
千早『今日の仕事も歌は中止ですか?』
やっぱり最初はそう望んだとおりになんていかなかった。
P『……すまないとは思っている。
けどな、千早、こうやって地道な仕事でも続けて知られていけばいずれは歌えるように……』
千早『……少し、歌ってきてもいいですか?』
P『ああ……』
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:05:16.28 ID:qsg7gAxL0<>
ステージ外れのいつもの隅、私は嫌なことがあるといつもそこに行く。
千早『――♪』
理由はもちろん歌うためだ。
千早『―♪ ……』
今日の仕事もくだらないと思う。
今日の私の出る番組は社会問題に対して色んな方面から人を集めて討論するというもので、私はアイドル代表として集められた。
けど、こんなところでいくら議論したって何にもならない。
結局は全て、大変だなあ。困ったなあ。の他人事なのだ。
その証拠に、番組が終わった後になるとほとんどの出演者はその社会的問題とやらに関しては話題にもしなくなる。
……でも、
千早『『今いるここは私の道であることには変わらない』……そうよね? 春香』
私はこの言葉を信じて羽ばたき続ける。
私にはまだかなっていない、夢だけでは終わらせたくない、憧れの世界があるのだから。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:05:59.86 ID:qsg7gAxL0<>
「70番から80番までの皆さんようこそ。
二次試験は、ダンス審査です」
ダンス。
歌手を目指している私には将来的には必要のないもの。
でも、この今だって私の進む道につながっているはず。
なら、私のすべきことは……
「課題曲は、『自分REST@T』です。それでは流します」
昨日までの生き方を否定するだけじゃなくて これから進む道が見えてきた――――
今を一分一秒無駄にすることなく私の道の先に繋げることなのだろう。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:06:48.30 ID:qsg7gAxL0<>
エンドレスな向上心で――――
「終わりです」
千早「ふう……」
踊り切り、一息つく。
ちゃんと間違わずに踊りきれた。失敗もない。
課題曲ゆえに私が有利な形になったけれど、罪悪感なんて感じたら失礼だろう。
「……はい、採点集計終わりです。お疲れ様でした。
三次試験に残る人たちは全てのグループが終わった後に発表するので先に戻っていてください」
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:07:36.85 ID:qsg7gAxL0<>
控室に戻ると場はピリピリと緊張していた。
仲良しグループと呼ばれているユニットですら互いに話しかけることすらしない。
だけどそれは当たり前ともいえた。
今回のオーディション、一次審査および二次審査は基本的に全員受けられるが、
三次試験に進めるのはこの半分。さらに最終審査に進められるのはわずか五人だ。
同じ事務所だからといって、ユニットのメンバーだからといって、
アドバイスはもちろん、自身の審査のできさえ言わないのが大半だろう。
<>
投下<>saga<>2013/02/22(金) 12:09:34.45 ID:qsg7gAxL0<>
春香「あ! 千早ちゃん、お疲れ様!」
そんな中、春香はそんなことを平気で言ってくる。嘘偽りのない本心で。
それを甘いという人もいるかもしれないけど、それによって過去救われた私にとってみれば、
春香のは甘さや弱さではなく、優しさそして強さだ。
千早「……春香」
春香「何?」
千早「いつもありがとう」
春香「え!? う、うん……?」
千早『今回のオーディション、私は春香と一緒に受かりたいわ。
……もちろん美希も一緒に、三人で!』
この言葉に、偽りはない。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/25(月) 12:11:20.93 ID:kMr+a2pR0<> 乙
続き期待してる <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/26(火) 00:11:04.32 ID:CvN4yodp0<> 期待 <>
補足3<>saga<>2013/02/26(火) 11:33:12.99 ID:zwTzsWp20<>
時系列としては
>>66−74
本編開始より前
>>75−76
本編4話以降の話です
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:34:46.63 ID:zwTzsWp20<>
二次試験の結果、私と千早ちゃんと美希は三人とも無事に三次試験に進みました。
黒井「三次試験は全体審査だ。
五つのグループに分かれて一曲、ダンスも含めて歌いきってもらう。
そして、この試験で選ばれた五人が最終選考へと駒を進めることができる」
五つのグループから選ばれるのは五人。
単純に考えると、一組に一人選ばれることになります。
黒井「ちなみに課題曲は自由だ。……と言っても、選ぶことができるのは各グループで最初に呼ばれた者のみだがな。
おおっと、勘違いするなよ? 別にこれは不公平でもなんでもない。
なぜなら、各グループ最初に呼ばれるのは一次試験、二次試験で優秀だった上位五名なのだからな」
……つまり、最初に呼ばれる人たちは合格に近くて、それ以外の人たちにはこれがラストチャンスなのでしょう。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:35:32.15 ID:zwTzsWp20<>
黒井「では組み分けを発表する――A組、如月千早」
千早「はい」
千早ちゃんA組なんだ……呼ばれませんように。
黒井「――、続いてB組、朝比奈 りん――」
ほどなくA組の人全て呼び終わりました。
千早ちゃんと戦わずにすんでほっとします。
黒井「C組、東豪寺 麗華――」
けど今度は私の名前がなかなか呼ばれません。それと美希の名前も。
黒井「D組、星井 美希――」
美希「はい」
美希はD組かあ……E組になりますように!
私にとって美希と直接戦うことに千早ちゃんのときと同様に気が進むものではありません。
だけど、
黒井「天海春香――」
春香「っ! ……はい」
現実はそう都合よくできていないみたいです。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:36:40.23 ID:zwTzsWp20<>
黒井「最後にE組――――――……――――以上だ。
自分のグループが呼ばれるまでは好きにしていてかまわない。
そのうちアナウンスを流す」
黒井社長が去っていってから、私と美希は互いに視線を交わしました。
美希は強敵です。実力的な意味でも、それ以外の意味でも。
以前舞台で主役をかけて戦ったときもやる気を出した美希がどれほどすごいかも見せつけられました。
だけど、私が美希を強いと思っているのは、うらやましいと思っているのは……
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:38:42.98 ID:zwTzsWp20<>
美希「春香、ミキ手加減しないからね!」
律子『美希の一番すごいところは、あの子自分が何をすればいいか、何をするべきなのかわかっているのよ』
美希の純粋の目に律子さんの言葉を思い出しました。
律子『皆、あの子のポテンシャルやプロポーションばかりを目にいくけど、本当にすごいところはそこなのよね。
キラキラしたいってすごく抽象的な目標を持っていながら、それを実現するために具体的にはなにをすればいいかわかっている。
まったく、アイドルになるために生まれてきたような子だわ』
律子さんの言葉はその通りだと思います。
だって美希はいつだって迷わずに自分のしたいこと、することに真っ直ぐ進んでいけるから。
私がプロデューサーさんを怪我させたときも美希は仕事をさぼったり、立ち止まったりせず
プロデューサーさんの帰りを信じて頑張っていたのは間違いなく美希の強さです。
春香「わ、私だって……!」
そう返したものの、私の中を埋め尽くしていたの意気込みや張り切りではなく不安。
美希に勝てる……いや、勝たなくちゃいけないのでしょうか?
トップアイドルになるためには……?
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:39:57.10 ID:zwTzsWp20<>
美希「千早さん、お疲れさま」
千早「美希……ありがとう」
三つ目の試験が始まってまず、千早さんたちA組が帰ってきたの。
様子はいつもと変わらなかったけど、千早さんのことだからきっと大丈夫だったって思うな!
美希「千早さん、ミキも頑張るから応援し……」
そこまで意味を考えて言ったわけじゃなかったけど、
千早さんが複雑そうな顔をしているのに気付いてミキは失敗しちゃったって思った。
美希「ううん、なんでもないの!」
千早「美希……」
美希「ミキなら大丈夫なの。それより春香の応援をしてあげて。
春香、ちょっと緊張しているみたいだから」
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:40:50.14 ID:zwTzsWp20<>
千早さんに応援してもらえないのはちょっと寂しいけど、千早さんと春香はとっても仲良しだからしかたないよね。
そう思っていたから、
千早「……私にとって二人は大切な存在よ」
美希「え……?」
ミキの考えていることの返事みたいに言われるとちょっと驚いちゃった。
千早「だから、美希も頑張ってきてね」
美希「……うん!」
ハニーに頑張れって言われるのはもちろん嬉しいけど、千早さんに言ってもらうのも同じくらい嬉しかった。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:41:38.92 ID:zwTzsWp20<>
「D組は指定された部屋に来てください」
アナウンスが流れたからミキは春香と一緒に控室から出た。
春香『あなたが今日から来た人?
私、天海春香。よろしくね!』
リボンが目印の可愛いけれど、どこにでもいる女の子。
春香と最初に会ったときミキはそう思った。
それとこの子がアイドルやれるならミキだってやれるとも。
でもそれはちょっと違った。
春香『大丈夫! まだまだこれからだよ。そのための練習なんだし』
春香と一緒にいればいるほど、見れば見るほど春香がキラキラしているのがわかった。
そしてあの日をきっかけにミキは春香に対してそれまでとは違う気持ちを持つようになった。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:42:22.81 ID:zwTzsWp20<>
キラキラを初めて経験したライブ以来、レッスンに真面目に取り組もうって思ったミキだったけど、
美希『痛っ!』
当然最初は上手くいかなかったの。
『美希さん、大丈夫? 少し休憩いれましょうか?』
そのときはつまづいてこけただけだから、本当はもっとできたんだけど、
ここで頑張ったってかっこよくないの……
美希『……うん、少し休むの』
逃げてばかりで、結局ライブ前からあまり変われていなかったの。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:42:59.90 ID:zwTzsWp20<>
何度も倒れて、何度も失敗して……
そしてようやく、ミキは今までなんでもできたわけじゃなくて、できることしかやってこなかったことに気付いたの。
普通の人ならそんなこときっととっくの昔から経験してて、それを努力とかで乗り越えてきたんだと思うんだけど、
ミキは今までそんな経験なかったから、余計辛かった。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:43:56.82 ID:zwTzsWp20<>
『違うわ、星井さん』
その日のレッスンも上手くいってなかった。
美希『え?』
『らー♪ じゃなくて、ラー♪ よ。もっと、音を聞いて』
美希『は、はいなの……らー♪』
『違う! ラー♪ はい!』
美希『ら、らー♪』
『ラー♪』
美希『らー♪』
『違う、違う、違う! 星井さん、あなたちゃんと真剣にやっているの?』
この日のレッスンの先生は、他の先生と比べて厳しくて、ライブ以前のミキはこの先生のレッスンだけはずっとさぼっていたの。
美希『や、やってるよ?』
『じゃあ、なんでできないの?』
美希『そ、それは……』
『……はあ、もういいわ。ちょっと離れて如月さんのを聞いていなさい』
美希『……はい』
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:45:07.35 ID:zwTzsWp20<>
『天海さん、あなたもです!』
春香『は、はい!』
『さっきから全然良くなってませんよ? やる気はあるのですか?』
春香『す、すみません……』
春香もレッスンスタジオの隅に来た。
美希『……ミキ、あの先生酷いから、や!』
春香『あはは……たしかにちょっと厳しいよね』
美希『ちょっとじゃないの! それに美希には特に厳しいって感じ』
春香『そうかな?』
美希『そうだよ。この前だって……』
続きの言葉は、聞こえてきた歌声に遮られた。
千早『ラー♪』
透き通るような千早さんの声。
さっきまでミキができなかったところも完璧に歌っていて、
ミキ、カッコ悪いの。
美希『っ……』
聞きたくない声まで聞こえてきちゃってた。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:46:29.66 ID:zwTzsWp20<>
春香『……やっぱり、千早ちゃんは凄いね』
千早さんは尊敬していた。でも頑張ればミキだってすぐに千早さんみたいに上手く歌えるって思ってた。
でも、レッスンをすればするほど、真面目にやればやるほど、千早さんが遠くに感じた。
美希『……春香は嫌じゃないの?』
春香『え?』
美希『ミキたちができなかったところを千早さんが簡単にできているんだよ?
悔しくないの? 嫌じゃないの?』
春香『美希……』
美希『ミキ、いままでなんでもできてたし、すぐにできてたの。
……だから、ミキが一生懸命頑張ってやっていることを他の人がすぐにできるようになっているのを見るのって、辛いの……』
今思えば、ミキってすごく傲慢で嫌な子だったの。でも、
春香『はは、美希らしいなあ』
春香は笑って許してくれた。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:47:24.31 ID:zwTzsWp20<>
春香『……私だって、辛くないわけじゃないよ?
何もできない自分……皆が進んでいるのに一人立ち止まっている経験、何度もあった。
……でも、そんなことで私は夢を諦めたくなかったから……』
そう言っているときの春香は凄く大きく見えて、それで……
春香『できない言い訳を探すより、しがみついてでも頑張った。
……いつか必ずやってくる、「できるようになる」瞬間(とき)までね』
美希『……』
春香『だってそうしないと自分に負けちゃいそうじゃない?』
美希『……!』
カッコ悪いの……
みっともないの……
美希『……なんか、春香が年上っぽく見えるの』
春香『ふふーん……って、美希! 見えるんじゃなくて、私のほうが年上だからねっ!?』
それで、この時からかな。ミキが春香に対してこの気持ちを持ったのは。
――負けたくないって
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:48:34.57 ID:zwTzsWp20<>
『1、2、1、2、』
美希『はあ、はあ……』
『1、2、…』
美希『はあ、はあ……あっ!』
『美希さん!?』
足がもつれてはでに転んだら、レッスンの先生が心配そうに来た。
『美希さん、大丈夫ですか? 少し休みましょうか?』
先生がそんなこというから、また聞こえてきたの。
ださいの……
こんなの全然キラキラしてないの……
でも、
美希『はぁ、…ぅ、るさい……のっ……!』
『えっ?』
あ、声に出しちゃったの。
美希『う、ううん……なんでもないの。先生、続けて!』
しがみつかなきゃ。なにがなんでも、何度でも――「できるようになる」瞬間まで。
自分に、春香に、負けたくないから――!
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:50:15.25 ID:zwTzsWp20<>
『尊敬するアイドルは誰ですか?』
前に雑誌のインタビューでそんなことを聞かれたことがあった。
そのときはミキはもちろん千早さんって答えたけど、目標とするアイドルは誰ですかって聞かれたら、絶対にこう答えてたの。
美希「……春香」
春香「ん? 何、美希?」
ミキ、春香には感謝しているんだよ?
だって、ミキの世界を変えてくれたのはハニーだったけど、ミキを変えてくれたのは春香だから。
美希「ミキ、今度は負けないからね!」
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:51:22.90 ID:zwTzsWp20<>
スタジオに入ると黒井社長のほかにも数人、どこかで見たことあるような顔をした人たちがいた。
この人たちも審査員なのかな?
「――星井さん、選曲はどうしますか?」
美希「あっ……」
その中の一人にあの厳しいレッスンの先生――に似ている人がいた。
後から話を聞くと、他の人たちもそれなりに有名な人たちらしかったけど、今の美希にはそんなことはどうでもよかったの。だって、
「? どうかしましたか?」
ミキが見返したい人(に似ている人)、
美希「ううん、なんでもないの」
見返す場、
春香「美希?」
負けたくない人。
そこには全てがそろっていたから――見ててね、
美希「曲は『CHANGE!!!!』にするの!」
ホンキのミキ、見せてあげる!!
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:52:31.25 ID:zwTzsWp20<>
A、B、C、D、E、五組全ての演技が終わると私たちは集められました。
黒井「ウィ、諸君お疲れ様」
現れたのはこのオーディションの審査長である黒井社長。
黒井「本来ならここで講評やらなんやら言って、敗者を慰めるべきなんだろうが、生憎私には弱者になどかける言葉はない。
さっさと最終選考に残った五人を発表して弱者には帰ってもらうつもりだ」
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:53:26.85 ID:zwTzsWp20<>
黒井「それでは、最終選考に残った五名を発表する。
――まずはA組から――如月 千早」
千早「は、はい」
発表された瞬間、おそらく他のAグループの子だと思うけれど、泣き崩れるのが見えました。
でも、同情することはできません。私もすぐ後にあの子たちと同じになるかもしれないから。
黒井「B組、朝比奈 りん。C組、東豪寺 麗華……」
次々と泣き崩れるアイドルをよそに、黒井社長は淡々と読み進めました。
そして、
黒井「D組――――」
春香「……」
美希「……」
千早「……」
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:54:04.02 ID:zwTzsWp20<>
黒井「――星井 美希」
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:57:04.22 ID:zwTzsWp20<>
千早「!」
美希「やっt……はい!」
春香「……」
わかってはいました。
美希とは同じ組で一緒に踊っていたから。
今日の美希はいつもよりずっとすごくて、曲が終わった瞬間負けたと思っていました。
美希の名前が呼ばれてから、千早ちゃんはすぐにこっちを向いてくれて、
今も私のことをじっと見ています。心配そうな顔で。
だから、私は、平気だよ。大丈夫だよ。って意味を込めて笑顔をつくろうとしましたが、
春香「……っ」
涙は勝手に溢れてきていて、止まりそうにありません。
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:57:36.19 ID:zwTzsWp20<>
千早「っ……」
ごめんね、千早ちゃん、約束果たせなくて。
美希「…………」
大丈夫だよ、美希。恨んでないから。頑張ってきてね。
黒井「――D組、天海 春香」
<>
投下<>saga<>2013/02/26(火) 11:58:27.49 ID:zwTzsWp20<>
私はここで終わっちゃったけど、二人のこと応援しているからね。
黒井「……天海春香」
ごめんね、皆。ごめんなさい、プロデューサー。期待に応えられなくて……でも、私、
黒井「天海春香!」
春香「悔いはありま…って、は、はいっ……!?」
………えっ?
黒井「ふん! ……最終選考の者は以上だ。弱者はとっとと自分の巣に帰るんだな」
……えっ、私……受かったの…………?
去っていく黒井社長を私はぼうっと見送りました。
<>
2章投下終了<>saga<>2013/02/26(火) 11:59:34.17 ID:zwTzsWp20<>
うえーん、おちた―。一生懸命レッスンしたのに……
なんでD組だけ二人入っているのよ、おかしくない?
E組にまともなやつがいなかったからでしょ。
あちこちから聞こえてくる声がどこか他人ごとのように聞こえて、
春香「千早ちゃん、美希……私、」
千早「……春香、良かった……!」
抱き着いてくる千早ちゃんと、
美希「あーあ、残念なの。せっかく春香に勝ったって思ったのに」
そう言いながらも笑顔な美希が来るまで私はうまく事態を把握できていませんでした。
そして、
雪「……っ!」
私たちのほうをにらんでいる人のことにも気付きませんでした。 <>
>>90 訂正<>saga<>2013/02/26(火) 12:12:50.66 ID:zwTzsWp20<>
「D組は指定された部屋に来てください」
アナウンスが流れたからミキは春香と一緒に控室から出た。
春香『あなたが今日から来た人?
私、天海春香。よろしくね!』
リボンが目印の可愛いけれど、どこにでもいる女の子。
春香と最初に会ったときミキはそう思った。
それとこの子がアイドルやれるならミキだってやれるとも。
でもそれはちょっと違った。
春香『私たちも練習頑張って、早く伊織たちに追いつこうよ!』
春香と一緒にいればいるほど、見れば見るほど春香がキラキラしているのがわかった。
そしてミキが春香に対してそれまでとは違う気持ちを持つようになったのは、あの日からだと思う……
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/26(火) 12:32:34.39 ID:LDOHYevp0<> 乙
やっぱり春香は天使だな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/02/26(火) 16:17:24.02 ID:1BlOOxug0<> おつ <>
補足4<>saga<>2013/03/04(月) 19:38:25.74 ID:Cj4CeOkc0<> 時系列としては
>>91-97
アニメ本編13話と14話の合間としてください
次から三章投下 <>
補足4<>saga<>2013/03/04(月) 19:39:30.19 ID:Cj4CeOkc0<>
発表が終わってからも、ほとんどのアイドルはその場に残って泣き崩れていました。
ぐすっ……、ひぐっ……ぉぢ、だぁぁ……
うぇ……ぅぅぅぅ……ぅえええええん…………
春香「……わ、私ちょっとトイレに行ってくるね」
千早「春香?」
その人たちを見るのが辛っかったわけではありませんでしたけど、
それ以上になんとなくそこに居づらくて、廊下へと私は逃げました。
ただそのとき、
雪「……」
彼女も一緒に消えたのを私は気付けませんでした。
<>
補足4<>saga<>2013/03/04(月) 19:40:51.67 ID:Cj4CeOkc0<>
淡いクリーム色の床は太陽の光を優しくかえしていました。
誰もいないし、会場の泣き声も届いてこない廊下。
床の材質のせいか、足音がしない廊下にいるのは私と静寂。
春香「私……、残った……んだよね?」
呟いてみたけどまだ実感はありません。
込み上げてくるはずの喜びの代わりにふつふつわいてくる違和感と困惑。
春香「どうしてだろう……」
嬉しくないわけではありません。
本来の目的とは違うけれど、それでも今日この日のために、オーディションに合格するために、
今までレッスンを積み重ねてきたんですから。
けれどやっぱり、
春香「……本当に私だったのかな……?」
心のどこかにそんな思いが染みをつくっていました。
<>
補足4<>saga<>2013/03/04(月) 19:41:49.29 ID:Cj4CeOkc0<>
やがてトイレ手前まで来たとき、
「ともみ、残念だったわね合格できなくて」
トイレから声が聞こえてきました。
誰だろう……?
なんとなく中に入るのが躊躇われて外の様子を伺っていると、話をしている人たちの正体がわかりました。
春香「……幸運エンジェル」
幸運エンジェル。東豪寺プロの代表アイドルユニット。
今はまだ雪月花に及ばないものの彼女たちもまた有名なアイドルです。
りん「まあ、如月千早と同じグループだったからしかたないんじゃない?」
三人はどうやらトイレの中で話をしているようでした。
ともみ「私のことはいい。……麗華、りんも、頑張って」
麗華「ええ、ありがとう」
たしか幸運エンジェルのリーダー、東豪寺麗華さんはアイドルをしながら、
ユニットをプロデュースしているという、律子さんの逆(律子さんはプロデュースしながらアイドルをやっている)
をやっているすごい人だって聞いたことがあります。
<>
補足4<>saga<>2013/03/04(月) 19:43:44.38 ID:Cj4CeOkc0<>
りん「それにしても、最後に呼ばれたやつ、春香って言ったけ?」
春香「!」
突然名前が出てきて私は驚くと同時に嫌な感じがしました。
りん「私、一次と二次であいつと同じ組だったけど、たいしたことないよ。
正直、ともみのほうが上手いし」
春香「っ……」
わかっていたけれど、やっぱり良い気持ちなんてしません。
ともみ「……それより、雪が残っていないのが意外」
そして追い打ちのように私の心臓は再びドキリと跳ねました。
りん「たしかにねー。一次と二次、あいつちょーすごかったから普通に受かってるって思ってた。
おおかた三次でポカでもやらかしたんじゃない?
まあ私としてはラッキーだけど、やっぱり麗華としては愛しの雪様がいなくて残念?」
麗華「は、はあ!? 何よ愛しの雪様って」
りん「照れない、照れない。
私は麗華がそっち系でも、スキャンダル起こさない限り応援するよ?」
麗華「照れてない!」
たしか以前雑誌で、麗華さんの尊敬する人で雪さんって言ってたような……
<>
補足4<>saga<>2013/03/04(月) 19:44:24.52 ID:Cj4CeOkc0<>
りん「それよりも最終選考どうするんだろう」
麗華「さあ? とりあえず……」
私はかんも鈍い方ですし足音もしませんでしたから、
これはしかたのなかったことだったのかもしれません。
でも私は気付くべきだったのでしょう。
「……ちょっと」
後ろから伸びてきた手が私の肩を叩くことに。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:45:37.48 ID:Cj4CeOkc0<>
会場の関係者用通路を黒井社長は一人で歩いていた。
黒井「……チッ」
黒井社長の機嫌は悪いかった。理由はもちろん、今回のオーディションの結果にある。
最終選考に残った五名の内、三人が765プロ。
自分が最終的に選んだとはいえ、それは黒井社長にとってはらわたの煮えくり返るようなことである。
??「待って」
通路の脇から一人の人物が現れた。
黒井「……ここは貴様らは通行禁止のはずだが?」
雪「それくらい私の力を持ってすればどうにかなるわ」
現れたのはアイドルグループ『雪月花』のリーダーにして、Eグループ代表の雪だった。
力というのはおそらく雪月花の活躍の陰でささやかれる黒い噂であるだろう。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:46:40.71 ID:Cj4CeOkc0<>
雪「聞いたわ」
黒井「……何を?」
雪「あなたが私を落としたんだってね」
黒井「ふん、落としたのではない。
ポンコツどもの目が腐っているから正当な評価をしただけだ」
雪「他の人の目が腐っているならあなたは節穴だらけね。
私の演技ちゃんと見てなかったの?」
黒井「見ていたとも。歌にダンス、日高舞のように素晴らしくできていたな。
我が961プロに来てほしいぐらいだ」
雪「だったら……!」
黒井「……で、それを含めたうえでの結果だ。
何か納得がいかないことでも?」
雪「っ、納得いかないに決まっているでしょ!
どうしてあの春香って子が残っているのよ!?」
黒井「……」
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:47:52.11 ID:Cj4CeOkc0<>
雪「あんなのどこにでもいる平凡なアイドルでしょ?
他のはともかく、少なくともあの子なら私のほうが実力が上のはずだわ」
黒井「……何が言いたい?」
雪「金でしょ?」
さも当たり前といわんかのように雪は言い放つ。
誰かに聞かれていたら間違いなく問題になる発言だが、もしも聞いている者がいても
その者ごと買収してしまえばいいと思っているほど雪の思考は怒りで麻痺していた。
黒井「……」
雪「いくら? いくらあの子……いや、765プロからもらったの?
金で積めばすむなら私だって出すわ。だからいくらなの?」
だがそれは当然ともいえた。
彼女は今の芸能界の地位を自分の実力と力によって確立してきたため、
それ以外のやり方を知らないし、あるとも思っていないのだ。
自分より実力が劣っている天海春香が受かって自分が落ちた理由なんてそれ以外に考えられなかった。
黒井「……はぁ」
雪「私は765プロの二倍……いや、三倍出すわ! だからさっきの発表を手違いにして私を……」
黒井「……黙れ小娘」
雪「っ……」
黒井社長の低く唸るような一言に雪は本能的に恐怖を感じた。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:49:35.29 ID:Cj4CeOkc0<>
黒井「いいか、エレガントな私は買収はしても、買収されるという醜いことはしない。
特に、あの765プロにだけは、な」
雪「じゃ、じゃあ、私があの子より劣っているというの?」
黒井「どう解釈するのはお前次第だ。
しかし覚えておけ、これはトップアイドルを探すオーディションではなく、
トップアイドルになれる者を探し出すオーディションだ」
雪「!」
千早『……少なくとも、春香の……、彼女の歌はあなたよりましだと思いますが』
雪「……っ、同じことじゃない! 結局、私よりあの子のほうが素質あるって判断した! そういうことでしょ?」
黒井社長の言葉は、雪に今朝の千早の言葉を思い出させ余計に彼女を苛立たせた。
黒井「……まあ、いくらオーディションだからといって、
一緒に踊っているメンバーを無視してまで一人独断で踊るような小娘よりはましかもな」
一次試験に二次試験、そして三次試験までの雪の様子を端的に表すと異常。
異常なまでに雪は周りから突出していた。
特に三次審査にいたっては圧倒的な歌唱力とパフォーマンスの雪にEグループほとんどのアイドルがついていけず、
曲の終盤には数人が踊りを止めてしまう者が出てしまう始末。
その凄惨たる光景にその場にいた審査員全員が在りし日の日高舞を思い出し、ほぼ全員が最終選考に彼女を押した。
ただ一人、黒井社長を除いて。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:50:07.44 ID:Cj4CeOkc0<>
雪「協調性? そんな選考基準があるなら先に言うべきでしょ?
各グループで一人ずつ選ばれると思ったから私は個人をアピールしたのに……!」
黒井「では今日のお前は全て嘘ということか?」
雪「……?」
黒井「いったいいつがお前の本当なんだ?」
雪「……あんたが何を言いたいのかわかんない」
黒井「わからなくて結構。帰れ。最終選考の邪魔だ」
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:52:01.73 ID:Cj4CeOkc0<>
黒井社長が会場から会場から出る。
待っていた高級車のドアが開くと黒井社長は当たり前のように乗り込んだ。
黒井「出せ」
雪「ちょ、ちょと話はまだ話は終わって……」
黒井「早く出せ」
「はっ」
もはや雪のことなど眼中にないかのように黒井社長を乗せた車は発進した。
黒井「……」
その車は最終選考のための審査員の移動用の車として用意されていた。
審査員全員を運ぶため、とうぜん車内は広いつくりになっていたが車内にいるのはわずか三人。
黒井社長はほとんどの審査員を最終選考の同行に連れて行かなかった。
ゆえにその車に乗っているのは黒井社長と運転手、そして
舞「いやーまいった、まいった。
春香ちゃんが教えてくれなかったら私、完全に置いてきぼりくらってたわね」
トップアイドル、日高舞だった。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:54:27.13 ID:Cj4CeOkc0<>
黒井「少しは静かにできんのか」
舞「ええー。黒井社長はさっき可愛いこと散々しゃべっていたじゃない」
黒井「……貴様、聞いていたのか」
舞「まあね。あなたもあいかわらず年頃の女の子になかなか酷いこと言うわよね。
だから木星(ジュピター)の子たちにも逃げられたんじゃない?」
黒井「……くだらん、あれくらいで消えるような人材、最初からいらん」
舞「はいはいそうですね。
で、本題なんだけど、オーディション、最終選考に選んだ天海春香ちゃん。
なんであの子を選んだの? 他にも良さそうな子はいたと思うんだけど?」
黒井「トップとはいえ一アイドルだった貴様ごときに、
一流で高尚な私の考えは理解できるとは思わないが、特別に答えてやろう。
あの高木のところの小娘はお前にないものを持っている……かもしれないのだよ」
舞「は? かもしれないってどういうことよ?
しかも全然質問の答えになっていないじゃな……」
言葉の続きは車のブレーキによって遮られる。
黒井「おっと、ついたようだな。これをくれてやるからさっさと行ってこい」
舞「話は終わってないんだけど……って、何よこれ!?」
黒井「それが今日、このくだらないオーディションにわざわざ貴様を呼んだ理由だ」
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:55:39.69 ID:Cj4CeOkc0<>
舞『ちょっと、関係者用通路ってどこか知らない?』
私の肩を叩いたのは日高舞さんでした。
『はっ』
トイレの中から幸運エンジェルの誰かの息の飲む声が聞こえて私は慌てて隠れる場所を探したんですけど、
もちろんそんな都合の場所なんてなく、
春香『こ、こっちです!』
しかたなく私はそれ以上聞くのは諦めてせめて聞いていたのが私だとばれないように
舞さんの手を引きながらその場所から逃げました。
……舞さん、無事につけたかな?
「最終選考の会場はここになります」
結局トイレにはもういかず、戻った私が最終選考は会場を変えると言われて、
車に揺られること数時間、私たちが案内されたのは
春香「デパート……?」
まだ私たちがアイドルをはじめてばっかりの頃、何回も屋上でライブをしてきたデパートでした。
黒井「うぃ、諸君、機嫌はどうかね?」
困惑している私たちのもとに黒塗りの車から降りてきた黒井社長。
何故ここに連れてきたのか聞きたい思いありましたけど、
黒井「では建物に入ろう。こっちだ」
返事を待たないで行ってしまうので私たちは慌ててついていきました。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:57:30.04 ID:Cj4CeOkc0<>
千早「これは……どういうことですか?」
黒井社長を先頭に、デパートの関係者用通路を進んでいく私たち。
黒井「なに、君たちもここまで残りながら、最後まで私の采配で決められるのは不服だろう?
喜びたまえ、最終選考、合否を決めるのは私ではない。ここにいるお客様たちだ」
意味深な黒井社長から感じる嫌な予感。
ここはライブするときいつも通っていた場所だったから繋がっている先も、
そこですることであろうこともわかっていましたけど、得体のしれない不安がつきまといます。
美希「決めてもらうって、どうやって?」
やがて私たちがいつものステージ袖にたどりつくと、ステージにパッとスポットライトがともされました。
するとそこには――
黒井「簡単なことさ、引退した老いぼれに引導を引き渡してやればいい」
そこには、伝説のアイドル……日高舞さん本人が立っていました。
<>
投下<>saga<>2013/03/04(月) 19:58:05.62 ID:Cj4CeOkc0<>
黒井「最終試験――『トップアイドルを超えてみせろ』」
<>
投下終了<>saga<>2013/03/04(月) 19:59:25.57 ID:Cj4CeOkc0<>
3rd 伝説、アイドル、そして絶望
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/05(火) 07:25:58.42 ID:7YEY4S5b0<> 乙
無理ゲーですやん・・・ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2013/03/06(水) 23:21:43.71 ID:IbUMCNtU0<> ≫122
×舞「ええー。黒井社長はさっき可愛いこと散々しゃべっていたじゃない」
○舞「ええー。黒井社長はさっき可愛い娘と散々しゃべっていたじゃない」
≫124
×黒井「簡単なことさ、引退した老いぼれに引導を引き渡してやればいい」
○黒井「簡単なことだ。引退した老いぼれに引導を引き渡してやればいい」 <>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:37:24.43 ID:IbUMCNtU0<>
舞「みんなー! 今日は来てくれてありがとうー!」
突然の日高舞の登場に、会場は混乱を極めていた。
もともとこの屋上は主婦たちの買い物に付き合わされた夫の待ち場、
子供たちの遊び場として開放されており、アイドルなどの出し物も、
屋上で暴れられて怪我人を出さないための催し物でしかない。
つまり、ここでのステージは見向きもされないアイドル専用のステージなのだ。
しかしそんなステージには今、引退したはずの伝説のアイドルが立っている。
本物か――? いや、そんなはずはないだろう……
で、でも、そっくりさんにしては似すぎているというか……
当然観客席からは真偽を問う声が飛び交っていた。しかし、
舞「いろいろ言いたいこともあるけど、時間がないから早速、いかしてもらうねー!
曲名は――『ALIVE』」
一度歌が始まった途端、状況は一変する。
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:43:16.17 ID:IbUMCNtU0<>
ひとつの命が生まれていく
二人は両手を握りしめて喜び合って幸せかみしめ
静かに、しかし力強く。ゆったりとしたメロディからこの歌は始まった。
やがて育まれた命は ゆっくり一人で立ち上がって歩き始める
豪快で知られる彼女からは考えられないほどの繊細に歌いあげられる歌は、まさに聖者の声。
どよめきなどものともせず観客の耳を魅了する。
やがてざわめきは収まり、彼女が現役だった時代を知っている者はもちろん、
彼女というアイドル(伝説)を知らないであろう年齢の子供さえ聞き入っていた。
そして、サビにさしかかるころには静かにされど熱狂的に観客は彼女を見て、聞いて、感じていた。
Trust Yourself どんな時も命あること忘れないで
観客はわすれないだろう。今日の奇跡を、神話の再現を。
春香「……」
春香は畏怖した、彼女の力を。
感謝した、彼女と同じ時代のアイドルでなかったことを。
そして理解した、人々がどうして彼女をトップアイドルと言うのかを。
今、歌っているこの瞬間、ステージ上の彼女は間違いなく世界の中心に君臨していた。
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:47:28.31 ID:IbUMCNtU0<>
素晴らしい世界がある……
歌が終わり名残惜しむように音楽が途切れると、
ウオオオオオ!! ワァアアアアア!! ォォオオオオ!!
まさに怒号。われんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。
舞「……ふう、ダイエット程度に愛と一緒にレッスンしてきたけど、その甲斐ありってとこかしら?」
わずか一曲、7分弱。
たったそれだけの時間で人がまばらに点在していたはずの屋上は、
屋上に通じるまでの階段を含めて、彼女のいままでのそして今日できたファンで埋め尽くされていた。
舞「久しぶりだけどやっぱり思いっきり歌うって気持ちいいわね」
未だ興奮さめやらぬ観衆の熱気と自身の熱にあてられて、
風邪のときのような少しぼんやりと、けれど不快じゃない感覚を日高舞は懐かしむ。
引退を決めてから面に出ないと決めたのは
この麻薬のような中毒性のある快感に再び手を伸ばすことを抑えるためだった。
舞「……でもあの子たちには悪いことしちゃったかしら?」
ステージを去りながら日高舞はアイドルたちがいるところを見る。
さすがに距離があってぼんやりとしか見えないが、その様子からだいたいの状況は察することができた。
彼女たちの表情はきっと現役時代に何度も見たであろう顔。
諦めと絶望だろうと日高舞は思った。
舞「……ま、いっか。私は黒ちゃんに言われたとおりにやっただけだし」
そして彼女は去っていく。また一つ、新たな伝説を残して。
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:49:35.81 ID:IbUMCNtU0<>
舞「ただいまー」
デパートの最上階、屋上の一つ下のモニタールーム室。
監視カメラの映像が入ってくるこの部屋に男が一人座っていた。
舞「黒井社長、おかえりぐらい言ってもいいんじゃない? それとも盗撮に夢中?」
座っていたのはもちろん黒井社長。
彼が見ている画面に映っているのは屋上にいる観客の興奮とアイドルたちの絶望だった。
黒井「……」
舞「冗談よ、冗談。だからそんなに怖い顔しないでこっちを見ないでよ」
日高舞はイスに座り、水の入ったペットボトルのふたをあけながら机に足をのせる。
それはライブ後でほんのり赤まった頬も加わって扇情的だったが、
黒井社長は心底興味がないように画面に視線を戻した。
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:51:00.81 ID:IbUMCNtU0<>
黒井「まあいいだろう。教えてやる。
まずは……貴様は、あの高木のところの小娘をどう見る?」
黒井社長はモニターから目を離さずに話し始めた。
まともな返答ではなく回りくどくしゃべり始めだが、
これが黒井社長の性だと日高舞は知っていたので付き合うことにする。
舞「春香ちゃん? ……そうね、悪い子ではないわ。
ダンスは目を見張れるものではないけど基本に忠実で、変な癖もない。
歌唱力はけっこうあるほうだし、協調性もあって他人を引き立てることも引っ張ることもできる。
……でも、総合的にあの子より上の子なら他にいたわ。正直、あの子じゃないといけないっていう」
黒井「理由(才能)が見当たらない……か?」
舞「ええ」
黒井「ふん、まあ間違ってはいない。
間違ってはいないが、だからお前は所詮一介のアイドル風情なのだよ」
黒井社長は得意げに伝説(過去の遺物)を笑い捨てた。
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:52:40.79 ID:IbUMCNtU0<>
黒井「現時点、残ったアイドルには三種類のアイドルが存在する」
千早「……」
黒井「如月千早、十分に研磨されたダイアモンド。
アイドルとしてのこれ以上の成長は難しいとはいえ、
人生のほぼ全てを費やして磨き上げられた歌唱力はそこだけを見れば現役時代のお前をも上回る。
ダンスも悪くはない。暫定的だが次のステージの最有力候補。
今回の課題について現時点、唯一お前を超えているところのあるアイドル」
美希「あふぅ……準備、長すぎるの」
黒井「星井美希、磨かれ輝きながらも未だにその大きさが測りきれないダイヤモンド。
集中時のあいつは振付を一回見ただけで覚えられる目と、
それを自身のパフォーマンスで活かせる身体能力を持っている。
おそらく次のステージで今見たお前の動きのトレースをやるだろう……できるかどうかは別だが。
今回の課題について現時点、唯一お前を超えられる可能性があるアイドル」
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:54:04.78 ID:IbUMCNtU0<>
黒井「……そして」
りん「む、無理じゃね。あんなのの次に歌えって……」
麗華「…………だ、大丈夫よ、どうせ皆できないのだから、自分のアピールさえしっかりしていれば……」
春香「……」
黒井「そして、石ころのアイドルたち。
今回の課題ほぼ確実にお前に勝つことが不可能だと確定しているアイドル。
まあ、それは先に言った二人以外、今日オーディションに来たアイドルほぼ全てに言えることだがな」
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:55:11.29 ID:IbUMCNtU0<>
舞「何? じゃあ、あの二人はもう合格が決まってて、他の子たちはただの数合わせってこと?」
黒井「なぜ私がそんな弱者を残さないといけない?
最終選考に残るのは五名と言ったが、結果次第では当然減らすことも考えていた。
今残っているのはあの三人も含めて、可能性がある者たちだ」
舞「可能性って?」
黒井「言っただろう、貴様が持っていないものを持っている可能性だ」
舞「だからその持っていないものってなんなのよ?」
黒井「……ダイアモンドと、石ころ。その差は一目でわかる。
しかしダイアモンドが石ころと変わらない原石の時点で見分けるのがプロデューサーの役割だ」
<>
投下<>saga<>2013/03/06(水) 23:58:43.32 ID:IbUMCNtU0<>
舞さんがいなくなった後、私はぼうって立っていました。
舞さんは本当に凄かった。
今の実力で現役ではないことが信じられないくらい。
一瞬で過去の彼女のファンはもちろん、新規のファンの心をもつかんだんだと思います。
だって、今この会場には
マーイ! マーイ! マーイ! マーイ! マーイ! マーイ! マーイ!
こんなにも彼女のアンコールを待ち望んでいる人たちがいましたから。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:00:03.86 ID:+3+k9lXS0<>
「ご来場のお客様、次はアイドルたちによるパフォーマンスです。
準備に時間がかかるのでもう少々お待ちください」
アナウンスが流れ、時期に私たちの出番であることを告げられました。
でも私はまったくといっていいほど緊張しない……いや、できません。
だって、
他のアイドルなんてどうでもいいー!! 日高舞だー、日高舞をもっと出せー!!
そうだ、そうだー!!
デパートに私たちを待ち望んでいる人なんて一人もいなかったから……
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:00:41.92 ID:+3+k9lXS0<>
…………これがトップアイドルなの?
一アイドルと伝説のアイドルの差?
本物と……贋物……?
……こんなの、絶望――――するしか――
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:02:07.91 ID:+3+k9lXS0<>
――――――――――
小鳥『……今日も来れそうなのは春香ちゃん一人みたい』
春香『……そうですか、ありがとうございます。
しょうがない……ですよね、皆忙しくなっちゃったんだし……』
――――――――――
千早『私、レコーディングにアメリカまで行くことに決まったの』
春香『そう……なんだ……が、頑張ってきてね! 千早ちゃん!』
――――――――――
春香『今日も皆仕事なんだ……しかたない、しかたない…よね…………』
――――――――――
千早「春香?」
――そういえば絶望ってなんだっけ……?
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:03:35.26 ID:+3+k9lXS0<>
――――――――――
P『春香、話ってなんだ?』
春香『い、いえ、なんでもありません。なんでも……』
P『春香っ!!』
――――――――――
そうだ
――――――――――
美希『春香はキラキラできて楽しくないの? 嬉しくないの?』
春香『そんなことない! 私だって……主役に選ばれて嬉しかったもん』
――――――――――
絶望は……
――――――――――
美希『春香はどうしたいの……?』
春香『……わからない、わからないよ…………』
――――――――――
私にとっての絶望はこれだった。 <>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:04:15.17 ID:+3+k9lXS0<>
――じゃあこれは……?
マーイ! マーイ! マーイ! マーイ! マーイ! マーイ!
千早「春香、大丈夫?」
これは―――――
――――――――
千早『私は春香と一緒に受かりたいわ』
美希『春香。ミキ、今度は負けないからね!』
――――――――
春香「……違う」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:05:42.65 ID:+3+k9lXS0<>
――――――――
真『春香、頑張ってきてね! ……へへっ、やーりぃ!』
雪歩『春香ちゃん頑張ってね。私、ダメダメだけど何もできないけれど、
春香ちゃんなら大丈夫って信じることはできるから』
やよい『春香さん、頑張ってきてくださいね! それじゃあ、やりましょう! はい、たーっち!』
伊織『にひひっ、この伊織ちゃんの代わりに出るんだから合格するのは当然よね!』
あずさ『春香ちゃん、頑張るのもいいけど、無理はしないようにね?
結果も大事だけど、春香ちゃんの体も大事よ?』
亜美真美『はるるん、お土産よろしくよろしくね→!』
律子『春香、私はプロデューサーだから他の皆みたいに楽観的に励ます言葉だけ言うわけにはいかないわ。
けど、あんたたちが不在でも765プロはしっかり守るから、あんたは自分の力を出し切ることだけ考えるように』
響『いくら春香が完璧になって帰ってきても、すぐに自分は追いつくさー
だから春香は行けなかった皆のことを気にせず頑張ってきてよね!』
貴音『狭き門でしょう、苦しい戦いになるでしょう。
……しかし春香、あなたは一人じゃありません。そのことを忘れてはいけませんよ?』
小鳥『春香ちゃんはアイドルで一番他の皆のこと好きだし、知っているから、
自分が出ることに自信がないかもしれないけど、春香ちゃんなら大丈夫!
事務所で一番皆のことを大好きで、一番知っている私が言うんだから、間違いないわ!』
高木『天海君、月並みの言葉だが、頑張ってきたまえ』
P『――なあ春香、お前がどういう結論を出すかはわからない。
けど、――『全員まとめてトップアイドル』、俺の夢の第一号をお前たちに託すからな』
――――――――
これは―――――
春香「絶望――なんかじゃない!」
これは、きっと幸せっていうんだ。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:06:29.54 ID:+3+k9lXS0<>
黒井「怪我や、事故、パパラッチによるスキャンダル……そして才能の限界。
どうしようもない現実に打ちのめされたとき、アイドルとしての真価が問われる」
麗華「勝てなくても……」
黒井「諦めるのか」
りん「……」
黒井「下を向くのか」
春香「……皆、頑張ろうよ!」
黒井「前を向き、進み続けられるのか」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:07:57.20 ID:+3+k9lXS0<>
黒井「熟練の技、天賦の体、そんな土くれに隠れて見えない、煌々なる心(心の素質)。
アイドルとして一番大切な要素。
そしてあのとき、逃げに走った貴様が唯一持っていなかったものだ」
舞「……耳が痛い話ね。
でも、まさかあなたがそういうこと言うなんてね。どういう心境の変化?
……やっぱり、音無さんの件を引きずっているの?」
黒井「ふん、嫌味ならもっと違うことを言うべきだな……」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:09:31.94 ID:+3+k9lXS0<>
アイドル皆の視線が私に集まって、千早ちゃんが心配そうに見てくるのを視線で返事をしました。
――大丈夫。
私の言うべきことは……私たちのするべきことは、
きらめくステージに立つ準備をしていたあの頃と何も変わらないはずだから。
春香「……たしかにこれはオーディションだけど、せっかくこれだけ大勢のファンの歌えるんだよ?
だったら不器用でも、格好悪くても、精一杯歌おうよ!」
麗華「……何よ精一杯歌うって、馬っ鹿じゃないの! いいこぶってるつもり!?」
りん「そうよ! こんな中歌うなんて恥さらしもいいところじゃない!
……だいたい、なんであんだがリーダー気取っいるのよ!!」
春香「……っ」
そんなこと私が一番わかってるよ。でも、だけど……!
千早「……たとえブーイングの中でも歌い続けることと、ここでいつまでもぐずぐず言っていること。
本当に恥をさらしているのはどちらなのかしら?」
麗華「!」
りん「そ、それは……」
千早ちゃんの冷たい目に二人のアイドルは黙ってしまいました。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:10:58.12 ID:+3+k9lXS0<>
春香「……千早ちゃん、あり……!」
お礼を言おうとしたのだけれど、千早ちゃんはその目を私にも向けてきました。
千早「……春香、私も正直こんな中で歌いたくはないわ。
歌には、歌う側にはもちろんだけど、聞く側にもふさわしい態度があると思うから。
それすらわきまえていない人たちの前で歌う意味が感じられないもの」
春香「……っ、そう、だよね……」
反論なんてできるはずありません。
千早ちゃんの言っていることは正しいし、これが私が知っている誰よりも歌に真剣な千早ちゃんだから。
千早「……でも」
春香「え?」
千早「それでも、『無意味に思えることだってきっと道の先につながっている』
……だったら、やらないわけにはいかないわよね?」
いたずらをした後の亜美と真美のような笑顔をする千早ちゃん。
どうやら今さっきの目は演技だったようです。
春香「……うん!」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:13:23.72 ID:+3+k9lXS0<>
美希「そうなのー!」
千早「きゃあ!?」
春香「み、美希!?」
いつの間に近づいたのか、美希が千早ちゃんの背中に抱き着いていました。
千早「み、美希離れて……」
千早ちゃんは恥ずかしそうに言いましたけど、聞く気がないのか美希は離れようとしません。
美希「だいたい、皆難しく考えすぎだって思うな。
そんなにブーイングが嫌なら、愛のお母さんよりキラキラすればいいと思うな。あはっ☆」
麗華「そ、それができたら苦労しないわよ! できないから困っているんでしょ!」
美希「……できる、できないじゃないの。やるの」
麗華「だからできないって言って……」
美希「やるべきこともやるべきが決まってて、そこにしか道がないのなら、
しがみついてでも頑張らないといけないの。
……そうしないと溺れちゃうよ? 自分の中の言葉の海に……」
麗華「……?」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:15:15.83 ID:+3+k9lXS0<>
美希「……頑張ればいつか、きっと出会えるはずだから。
『いつか必ずやってくる、「できるようになる」瞬間』と」
春香「!」
千早「美希……」
美希が劇的に変わったのはやっぱりあのライブだったでしょう。
でもそれ以降も、美希はまだ長を続けていると思います。技術的にも、精神的にも。
美希の言うことは物事を確信をつくことならけっこうありますけど、
それは正しいと同時に……こう言っちゃうのもあれだけど、少し冷たくて、
今みたいに誰かに投げかけるような言葉はなかったから。
美希「ま、でも、どうしても嫌なら仕方ないの。ミキたち三人でキラキラすればいいと思うな」
春香「ちょっと美希ー!?」
と、思った瞬間、あっさり私の感動を返してと言いたくなることを言う美希。
まあらしいといえばらしいのかもしれないけど……
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:16:19.36 ID:+3+k9lXS0<>
千早「……そうね、歌う側にだってふさわしい態度が必要だもの。
歌うつもりのないならわざわざステージに立たなくてもいいんじゃないかしら?」
春香「千早ちゃんまで……」
たしかにそうかもしれないけど、今は仲間割れしている場合じゃ……
麗華「……ちょっと、待ちなさいよ。誰が歌わないっていったのよ」
りん「そうよ、勝手に話を進めないでくれる?」
春香「……え?」
いつの間にか立ち上がっていた二人の目には闘志が戻っていました。
……もしかして美希も千早ちゃんもこれを狙って?
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:17:16.53 ID:+3+k9lXS0<>
麗華「だから、歌うって言ってるの。
……下手な挑発にのせられる形になるのは癪だけど、そこまで言われるほど落ちぶれているつもりもないわ」
美希「でこちゃんみたいなの」
美希がぼそりと呟いていました。
麗華「……それとごめん、さっきは失礼なこと言って。
たしかにあんたの言うとおり、私たちが相手にするのは日高舞じゃなくて、観客だものね」
春香「ううん、気にしてないから大丈夫だよ」
麗華「……ほら、りんも謝りなさい」
りん「ええー、私は本当のこと言っただけ……」
麗華「りーん?」
りん「あっ、ご、ごめんねー!」
春香「あはは……」
なんとなく東豪寺プロ内の力関係がわかった瞬間でした。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:20:55.39 ID:+3+k9lXS0<>
舞「あら? あの子たち全員立ち直った……?」
画面越しで会話は伝わらないがアイドルたちが生気を取り戻し、
さらにさっきまでのばらばらな状態からまとまりを見せ始めたことに日高舞は驚きを見せる。
黒井「ふん、エレガントな私が選んだのだ。これくらい当然でいてくれないと困る」
舞「はいはい……団結、か……」
アイドルたちを見て日高舞はポッとその言葉が浮かんだ。
それは765プロの社訓の一つでもあったはずだ。
私にもあんなふうにできる仲間がいれば今は違って……なんて考えてもしかたないわよね。
愛を生んだことには後悔など微塵もないといえる日高舞であるが、今のアイドルたちの姿を見て、
アイドルに未練はなかったと聞かれてすぐに肯定できる自信はなかった。
……なるほど、たしかに私には心が足りなかったのかもね。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:22:50.14 ID:+3+k9lXS0<>
舞「……ねえ、あの子たち何を歌うと思う?」
黒井「くだらんことをきくな。すぐにわかることだ」
そう返ってくるのを日高舞はわかっていた。
だから、次の言葉も当然用意している。
舞「そうかもしれないけど、そこをビシッと当ててみせるのが一流ってものでしょ?」
これは餌だ。安っぽくてみみっちい、釣り針も見え見えの餌だ。
しかし日高舞は黒井社長が必ずこの餌にぱっくり食いついてくることがわかっていた。
なぜなら彼がここで逃げることは、彼自身の自尊心を傷つけられる行為に他ならず、
そんなこと彼が許すはずなどないからだ。
黒井「ふん。……『I Want』だな。
東豪寺プロ、765プロ、それぞれの持ち歌において、この曲以上の支配力のある歌はあるまい」
黒井社長の選択はまぎれもなく的確だった。
即興でやる以上、有名な曲や他のプロダクションの曲をやったところでアイドルたちが日高舞に勝てるはずがない。
それなら、765プロか、東豪寺プロの曲にして歌える者たちを前面に出したほうがいい。
ゆえに、東豪寺プロと765プロの持ち歌全てを想起、解析、比較し、
さらに観客の状態、これまでの流れを考慮したうえでの最善手。
それを一瞬で導きだしたのはさすがに大手プロダクションの社長の手腕といったところだろう。
だがしかし、
舞「やっぱり、くろちゃんってプロデューサーとしては優秀だけど、乙女心がわかっていないわよね」
それだけでは足りない。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:23:51.97 ID:+3+k9lXS0<>
黒井「なっ……く、くろちゃんだと……
貴様、その呼び方はやめろと昔から言って……」
舞「ええーいいじゃない、可愛くて。
それより、相変わらず鈍いくろちゃんに良いこと教えてあげる……」
たしかに黒井社長の選択は最善手なのだろう。
しかし、必ずしもその最善手がイコールで彼女たちの最高のパフォーマンスにつながるわけではない。
日高舞は考える。
もし私が彼女たちだったら、もし本当に彼女たちが日高舞の持っていないものを持っているんだとしたら、
きっと彼女たちの選ぶ曲は――
舞「女の子の偉大さはね、数値(男)じゃ計れないのよ」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:25:12.26 ID:+3+k9lXS0<>
「後、五分で開演となります。今しばらくお待ちください」
アイドルいらねーって言ってるだろ! 日高舞を出せー!!
野次は少しも収まる気配をみせず、観客たちの不満がどんどん高まっていくのがわかります。
でも、私たちの誰一人として諦めている人はいません。
「楽曲を教えてください」
いつものディレクター方が来てくれました。
春香「き、曲ってどうしよう……」
すっかり忘れていたけれど、私たちはまだ何を歌うのかきまっていません。
もう時間がないから、焦っていたのですが、
りん「どうすんの?」
麗華「早く決めなさいよね」
美希「春香、早くするの!」
千早「春香、何を歌うの?」
春香「ええ!? わ、私が決めるの?」
皆は私のほうを向いていました。
りん「『ええ!?』じゃないわよ。
765プロのほうが多いんだし、あんたが言いだしっぺなんだから当たり前でしょ。
それに私も麗華も天才だからあんたらに合わせるのくらいわけないわ」
春香「……うん、ありがとう!」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:25:54.83 ID:+3+k9lXS0<>
選曲ってもちろん大事です。
どの曲を選ぶかによってパフォーマンスが決まるのはもちろん、
ファンの皆に伝えたい思いを決めることでもありますから。
それにこれは最終試験の曲です。
これで今日の結果を左右するといっても過言ではありません。
だからたとえ時間がなくても少しは悩むべきだったんですけど、
春香「――でお願いします」
私は全く悩まず、ある曲に決めました。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:30:00.52 ID:+3+k9lXS0<>
ディレクターさんからの準備完了の合図が出て私たちはあることをしました。
春香「……それじゃあ、いくよー」
あることとはもちろんステージ前の円陣を組むことです。
美希「オーディションの合格と」
なぜあの曲を選んだのか、まともな理由付けはいくらでもできますけど、
りん「打倒、日高舞に向けて」
そんなのに意味はありません。
千早「私たち765プロと」
こんなとき何を歌うのかなんて、
麗華「私たち東豪寺プロ」
最初から決まっていました。
春香「ファイト―」
「「「「「オー!!」」」」」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:31:23.60 ID:+3+k9lXS0<>
ステージでは私がセンターに千早ちゃんと美希がサイド、
その奥に東豪寺プロの二人といういつもと近い隊形に決まりました。
あーあ、とうとうアイドルが出てきちまったぜ……ってあれは765プロ!? 東豪寺プロもいるぞっ!?
おいおい、どういうことだよ? 知らねえよ、俺が聞きたいくらいだ
出たら会場は少し静かになりましたけど、
それは私たちに期待しているからではなく、ただ動揺しているからでしょう。
765プロだろうが東豪寺プロだろうがどうでもいい
所詮、ただのアイドルだろ? 日高舞をだせよ
でも、大丈夫。私はもう今日のステージに立つ準備は終わりましたから。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 00:32:17.24 ID:+3+k9lXS0<>
春香「『みんなー! 今日は来てくれてありがとうー!』」
うるせー、お前のために来たんじゃねえよー!
美希「『いろいろ言いたいこともあるけど、時間がないから早速、いかしてもらうねー!』」
ひっこめー!
千早「『曲名は――』」
即興で考えた私たちのメッセージ(宣戦布告)。舞さんは受け取ってくれるでしょうか。
もしかしたら喧嘩を売っていると思われているかもしれません。
でもそれでもかまいません。
せっかく見つかった私の新しい夢。それから逃げたくなかったから。
「「「「「――――REDAY!!」」」」」
<>
3章投下終了<>saga<>2013/03/07(木) 00:33:27.32 ID:+3+k9lXS0<>
――皆、美希、千早ちゃん、プロデューサーさん。
ARE YOU REDAY!! I'm Lady!! 始めよう
――いつも迷ってばかりの私だけど、今なら胸を張って言えるよ。
やれば出来る きっと 絶対
『私No.1』
――私、天海春香……トップアイドル、目指してます!!
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 01:49:14.83 ID:UPe2M07Lo<> 乙
楽しみにしてるよ <>
>>143 訂正&補足<>saga<>2013/03/07(木) 12:38:47.20 ID:cfQ9Qe6X0<> 訂正
×雪歩『春香ちゃん頑張ってね。私、ダメダメだけど何もできないけれど、
春香ちゃんなら大丈夫って信じることはできるから』
○雪歩『春香ちゃん頑張ってね。私、ダメダメで何もできないけど、
春香ちゃんなら大丈夫って信じることはできるから』
補足
真『春香、頑張ってきてね! ……へへっ、やーりぃ!』
これは「……へへっ」の前に春香と真がこぶしを合わせていたと思っていてください。
次から最終章投下 <>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 12:40:09.94 ID:cfQ9Qe6X0<>
オーディション翌日の新聞はどの記事も一面で屋上でのライブを取り上げていました。
『日高舞復活か?』
『三百人が見た! デパートの屋上の七分の奇跡』
『若者よ! これがアイドルだ!』
伊織「……なによこれ、あんたたちのこと全然書かれていないじゃない」
ただし、記事の内容は全部舞さんのことだけでしたけど……
美希「でこちゃんうるさいの」
伊織「でこちゃん言うな!
はあ、まったく……これならあんたたちじゃなくて私が出るべきだったわ」
真「伊織、そんな言い方はないだろ」
やよい「そうだよ伊織ちゃん。
千早さんたち、レッスン頑張っていたの知ってるでしょ?」
千早「ありがとう高槻さん」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 12:41:51.42 ID:cfQ9Qe6X0<>
あずさ「結局、春香ちゃんたちの結果はどうなのかしら?」
春香「……たぶん落ちちゃったと思います。
ライブの後、黒井社長に会いませんでしたから」
私たちが歌い終わった後、だいたいの人たちが拍手をくれて野次もほとんど聞こえなくなりました。
だけどステージ袖に戻ると再び舞さんコールが起こり、私たちは何も言われないままデパートに来たとき
黒井社長が乗っていた高級車でそれぞれのプロダクションに送られたのでした。
雪歩「わ、私は、最終選考に残っただけでもすごいと思うよ……?」
小鳥「そうね。オーディションに来てた他のアイドルの子たちも有名な子ばかりだったんでしょう?
その中で春香ちゃんたち三人とも最後まで残ったのはすごいことだと思うわ」
春香「ありがとうございます、小鳥さん。ありがとう、雪歩。
でも大丈夫。私たちは引きずっていませんから。ね、千早ちゃん、美希?」
千早「ええ。技術だけじゃないそれ以外のところ。
……新たな音楽の可能性が見つけられました」
美希「ミキはハニーと一緒にトップアイドルになるから別にいいの」
今回のオーディションは落ちちゃったけど、もちろんこれで私たちの挑戦が終わったわけではありません。
むしろ答えを見つけることができた私にとってはこれからが新しいスタートです。
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 12:42:30.92 ID:cfQ9Qe6X0<>
響「それにしても今日は皆が事務所にいるなんて珍しいぞ」
亜美「たしかにそうかも。ね→りっちゃん、今日なんかあるの?」
律子「えーっと、何かあるかというか、これから決まるというか……」
貴音「律子嬢にしては珍しく歯切れの悪い返事ですね」
律子「……プロデューサーが来てから説明するわ。どうせそれまでは決まらないし」
真美「そういえばまだ兄ちゃんだけ、来てないね……」
美希「ミキ、寝るの。
あずさ、ハニーが来たら起こしてね」
あずさ「あらあら〜」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 12:44:06.84 ID:cfQ9Qe6X0<>
真「……うん、春香のクッキーはいつも美味しいよね」
春香「ありがとう真……あ! そういえば今日は他にも持ってきたんだ!」
小鳥「それって給湯室に置いてあるやつかしら?」
春香「はい! 今持って来ますね」
小鳥「いいわよ私が持ってくるから。
春香ちゃんはそのままソファーに座ってて」
雪歩「……じゃあ私、お茶をいれます」
貴音「それでは私も手伝いましょう」
<>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 12:45:44.58 ID:cfQ9Qe6X0<>
響「あー! もうこんな時間だぞ!」
千早「我那覇さんどうしたの?」
響「今日テレビで自分の故郷の近くの特集やるんだ。
たぶん皆も知ってるぞ。○○島って言うんだけど……」
亜美「真美、聞いたことある?」
真美「うんうん。まこちんは知ってる?」
真「ボクも聞いたことないなー」
響「うーん……あ! これならきっと皆聞いたことあるぞ」
春香「なに?」
響「『バケーションアイランド』って言うんだけど……」 <>
投下<>saga<>2013/03/07(木) 12:47:31.98 ID:cfQ9Qe6X0<>
4th そして、彼女たちは次なるステージへ
春香「私、天海春香……トップアイドル、目指してます!」end <>
後書き<>saga<>2013/03/07(木) 12:51:53.39 ID:cfQ9Qe6X0<> ・ある作品をパクっています。
→パクリ元「リアル」おもに9,10,11巻
・数人キャラ適当
→雪、幸運エンジェルの三人、黒井社長、日高舞
最後に読んでくださりありがとうございました。
近い内にちょっとしたおまけを書いてhtmlに出します <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/07(木) 17:20:11.95 ID:CCPI6j5Uo<> 乙だぞー <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/08(金) 17:24:23.66 ID:Ftfz/Dlc0<> 乙
面白かった、掛け値無しに <>
おまけ投下 NGシーン集<>saga<>2013/03/09(土) 10:58:29.37 ID:qhxlmwCH0<>
>>33の後 面妖?
春香「なんで貴音さん、舞さんを呼び捨てだったんですか?
それに舞さんの現役の頃を見てきたかのように語っていましたし……」
貴音「しっ! しまっ……面妖な……」
春香「……なんでもかんでも『面妖な』で隠せると思ったら大間違いですよ?」
なんか春香さんが黒く見えるのでNG
<>
おまけ投下 NGシーン集<>saga<>2013/03/09(土) 10:59:39.72 ID:qhxlmwCH0<>
>>43 そこの人はどこの人?
春香「み、美希……」
美希「春香どうしたの? そんな顔して……
あ、そこの人、美希そこに荷物置きたいからどいてほしいな」
雪「そこの人とは失礼ね」
美希「……そこのお人?」
雪「……『お』をつければ丁寧になるわけじゃないわ。
それにそういう問題でもないし!」
美希「じゃあ、そっちの人!」
雪「そっちでもない!
というか、『じゃあ』って何よ! 『じゃあ』って!」
美希「もう、文句が多いの! どこの人ならいいの?」
雪「だからそういう問題じゃ……」
どこの人かわからないのでNG
<>
おまけ投下 NGシーン集<>saga<>2013/03/09(土) 11:00:57.65 ID:qhxlmwCH0<>
>>59-60 あざとい?
P『そうだったのか……また俺は春香の悩みに気付けなかったみたいだな。
……ごめんな、春香』
春香『い、いえ! 謝らないでくださいよプロデューサーさん!
私、プロデューサーさんがこの話を持ちかけてくれたから気づけたんですし』
P『そう言ってもらえると少し楽になるよ。
……でも春香、出るって決まったってことは見つかったんだな? その答えが!?』
春香『いえ! まだ全然見つかっていません!!』
どんがらがっしゃーん!
元気よく私が返事をするとプロデューサーさんはいすから転げ落ちてしまいました。
プロデューサーさん、さすがにそれはあざといですよ?
さすがにがあざとすぎるのでNG
<>
おまけ投下 NGシーン集<>saga<>2013/03/09(土) 11:01:58.07 ID:qhxlmwCH0<>
>>151 千早ちゃん……
麗華「だから、歌うって言ってるの。
……下手な挑発にのせられる形になるのは癪だけど、
たしかにここまで来て『ぐずぐず』、『ぐず』っていてもしかたないからね」
千早「ぷっ、くすくす……」
春香「ち、千早ちゃん……」
NG
<>
おまけ投下 NGシーン集<>saga<>2013/03/09(土) 11:02:58.50 ID:qhxlmwCH0<>
>>155 危機一髪?
りん「どうすんの?」
麗華「早く決めなさいよね」
美希「春香、早くするの!」
千早「春香、何を歌うの?」
春香「ええ!? わ、私が決めるの?」
りん「『ええ!?』じゃないわよ。
765プロのほうが多いんだし、あんたが言いだしっぺなんだから当たり前でしょ。
そうしないとあのババアに勝てないじゃない」
春香「はは……」
ババアは言い過ぎじゃないかな。と思っていたら、
りん「……ひっ、ご、ごめんなさい!」
突然、怯えるように腕で顔を隠しました。
麗華「ちょ、ちょっとりん!? どうしたの?」
りん「はっ! い、いやーなんというか、その……殺気が……」
あきらかに顔色を悪くする彼女。自業自得なのかな……?
殺気がしたのでNG <>
おまけ投下 裏エンド<>saga<>2013/03/09(土) 11:07:13.14 ID:qhxlmwCH0<> >>160の続き
START始まる今日のSTAGE CHECK!! マイク・メイク・衣装 IT'S SHOW TIME♪TRY CHALLENGE!!
黒井「……舞。貴様、なぜ今回、あの雪という小娘を落としたのか聞きたがっていたな」
STARDOM光り光るSPOTLIGHT 眩しい輝きまっすぐDEBUT
黒井「なんてことはない。
おとしたのはあいつはお前に勝つことはもちろん、超えることもできないとわかっていたからだ。
あいつはお前になろうとしていた。
……星井美希のやる模倣などではなく、お前になろうと、な」
夢は叶うモノ 私信じてる
黒井「言うまでもなく、トップアイドルはナンバーワンにしてオンリーワンな存在だ。
大衆はそれに魅了され、人心を掌握する……しかし魅せる側でなければならないあいつがお前に魅せられていた」
さあ位置についてLET'S GO☆
黒井「ボンクラの審査員どもは小娘の猿真似(雪の実力)を評価したのではない。
お前という陰に怯えていただけだ」
ARE YOU READY!! I'M LADY 歌を歌おう
黒井「だから私はあいつをおとした。お前の真似など完璧にできたところで
偽物をトップアイドル(本物)と呼べるはずがないからな」
ひとつひとつ 笑顔と涙は夢になるENTERTAINMENT
黒井「……三次試験、もしあいつがお前になろうとしていなかったら、
まわりを気にかけて(お前とは違うことをして)いたら、あいつは最終選考まで残っていた」
ARE YOU READY!! I'M LADY!! 始めよう
黒井「……さてと、そろそろ行くか。
どこに行くかって? 決まっているだろう。
トップアイドルの卵が生まれるならそれを導く者も選ばなければなるまい」
やれば出来るきっと 絶対 私NO.1
<>
おまけ投下 裏エンド<>saga<>2013/03/09(土) 11:08:27.16 ID:qhxlmwCH0<>
私たちが歌い終わった後、だいたいの人たちが拍手をくれて野次もほとんど聞こえなくなりました。
だけどステージ袖に戻ると再び舞さんコールが起こり、私たちは何も言われないまま、
デパートに来たとき黒井社長が乗っていた高級車でそれぞれのプロダクションに送られました。
<>
おまけ投下 裏エンド<>saga<>2013/03/09(土) 11:09:35.67 ID:qhxlmwCH0<>
裏4th オーディションの終着点(結果) <>
おまけ投下 裏エンド<>saga<>2013/03/09(土) 11:11:24.37 ID:qhxlmwCH0<>
翌日、結果を報告することになっていた私はプロデューサーさんと面談していました。
P「春香お疲れ様……今回のオーディションは残念だったな。
それとすまなかった。たいして力になってやれなくて」
春香「そんなことありませんよ!
プロデューサーさんが組んでくれたスケジュールのおかげで私たち最終選考まで残れたんですよ?
だから私はもちろん、千早ちゃんも美希もプロデューサーさんには感謝していると思います。
それに私、見つけました。
悩みの答え……私が目指すトップアイドルの形を。
……私にとってトップアイドルって皆を導ける人だと思うんです」
P「導ける人……?」
春香「はい。私、前も今回も迷ってしまったんですけど、それってきっと他の人も同じだと思うんです」
麗華さんとりんさんを見てわかったこと。
それは美希や千早ちゃん、そしてプロデューサーさんだって困難にぶつかったときに
迷ってしまう、悩んでしまうんだという簡単なものでした。
春香「迷って、立ち止まって、悩んで……孤独に絶望しかけている誰かに、
大丈夫、ちゃんと見ているよ。ちゃんと知っているよ、って私の歌で伝えてあげたいんです」
私が本当に絶望したときに皆が導いてくれたみたいに、今度は私が誰かを導きたい。
たとえ技術が不足していてもその心で。直接は言えなくてもその姿で。
あの日、小さいころの私をアイドルへと導いてくれたテレビの向こうのお姉さんのように。
<>
おまけ投下 裏エンド<>saga<>2013/03/09(土) 11:14:21.11 ID:qhxlmwCH0<>
P「そっか……それが春香が目指すトップアイドルなんだな?」
春香「はい! ……とは言っても私自身が迷ってばかりですから先は遠そうですけど、あはは……」
そんなことはない。春香はいつだって765プロの皆を導いてくれた。俺を、千早を救ってくれた。
そう言いたくなった衝動をプロデューサーはぐっと抑え、代わりに
P「……春香なら絶対に大丈夫さ」
その言葉をトップアイドル(自分の夢の代一号)におくった。
律子「プロデューサー、ちょっと……」
P「ああ。じゃあ春香、これからも一緒に頑張ろうな!」
春香「はい! こちらこそよろしくお願いしますね、プロデューサーさん!」
律子「すみません、お話中なのに呼び出したりして」
P「いや、ちょうど話も終わったところだからよかったよ。
それよりどうしたんだ?」
律子「実はさっきFAXでこれが届いて。
どうやら他のプロダクションにもきているみたいなんですけど……」
P「ええっと、なになに……
……『トップアイドルを導け! トッププロデューサー、通称、アイドルマスター選考オーディション』……?」
春香「私、天海春香……トップアイドル、目指してます!」 裏end <>
おまけ投下 裏エンド後の裏プロローグ<>saga<>2013/03/09(土) 11:16:08.64 ID:qhxlmwCH0<>
P「えっ? 仕事のキャンセル!?
いったいどういう……あっ! ……すみません、音無さん」
小鳥「いえ……最近皆の仕事が少なくなってきたわね」
変わり始めた日常、漂う不吉な予感
律子「最近、テレビでは雪月花ばかり見るわね」
雪「…………す、……ぶす、潰す、潰すっ!!
961プロも、東豪寺プロも、765プロも……私が気に入らないやつらは全部潰してやる!!」
暴走する雪、猛威を振るう雪月花
雪「なっ……どうして……?」
??「さようなら雪月花、さようなら……雪。
あんたたちのおかげで芸能界で本当に必要なのは何かわかったわ」
枯れゆく雪月花、そして……
麗華「今日からは私たち魔王エンジェルが芸能界を支配する!」
堕ちた堕天使、降臨する魔王。
<>
おまけ投下 裏エンド後の裏プロローグ<>saga<>2013/03/09(土) 11:17:28.03 ID:qhxlmwCH0<>
黒井「……本当に雪月花や魔王エンジェルが圧力をかけたせいで仕事が減ったと思っていたのか?
トップアイドルオーディション、あんな馬鹿げたものが開催された理由を考えなかったのか?」
明かされる真実。現実という名の絶望。
黒井「テレビはもはや娯楽の王様ではなくなった。
エンターテイメント性も信用性もどんどん落ち続けている中、お前たちだけが成長を続けている。
そうなればテレビ局がお前たちのギャラが払えなくなり呼ばなくなるのは当然の帰結だ」
がけっぷちの765プロ。起死回生の一手など存在しない。
それでも信じられるのは……
P「……たしかに黒井社長の言うとおりかもしれません。でも社長、俺は……!」
高木「ああ、私も信じているよ。彼女たちを……そしてアイドルという可能性を……」
はたして765プロの運命は!? アイドルの結末はいかに!?
続かない <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/09(土) 11:20:56.60 ID:/gwMekwSO<> これでおまけも投下終了です
最後まで読んでくださった方々、ありがとうございました <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/09(土) 18:40:32.54 ID:qcw5I14Xo<> REDAYwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/03/09(土) 19:30:51.91 ID:Px5yFLvx0<> 乙
面白かったよ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/03/10(日) 08:33:25.31 ID:Ths/mgRx0<> 乙
続きはいつだ? <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2013/03/10(日) 16:09:42.48 ID:0VBXNk3Xo<> いつREST@RTしますか? <>