VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:35:49.44 ID:f1p+YysHo<>・独自設定がてんこ盛りです。苦手なかたは御注意ください。
・長編とまではいきませんが、中編くらいの長さがあります。全4章。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377772549
<>【ガルパン】大洗女子学園戦車隊 軽音楽特別部隊始末記
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:37:51.36 ID:f1p+YysHo<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1
みほ「何ですか? お話って」
会長「まあまあ、そう焦らずに。干し芋食べる?」
みほ「別に焦ってなんか、ないですけど……。干し芋、いただきます」
小山「はい、お茶」
みほ「ありがとうございます。先輩にそんなことさせて、すみません」
河嶋「気にするな。今日はゆっくり話そうと思って、お前をこの生徒会室へ呼んだんだ」
小山「“気にするな”って……西住さんにお茶を出したのは、桃ちゃんじゃなくて私でしょ?」
河嶋「桃ちゃんて言うな。で、西住。まずは全国大会、御苦労だった」
小山「西住さん、お疲れ様でした」
会長「お疲れさん。そんで、改めてお礼を言うよ。ありがとうね」
みほ「いえ……」
河嶋「どうした? そう堅くなるな」
会長「……西住ちゃん。今、さ」
みほ「今?」
会長「私らのこと、こう考えてるっしょ」
みほ「何ですか?」
会長「“今度は何企んでるの?”って、さ」
みほ「えっ。そ、そ、そんなことは」
河嶋「何を慌てている」
みほ「……」
小山「ふふふ。西住さんって、本当に嘘がつけない性格なのね」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:39:42.01 ID:f1p+YysHo<> 河嶋「順を追って話す。まず、廃校騒ぎの噂についてだ」
みほ「廃校騒ぎ……」
小山「西住さんの周りはどう?」
みほ「はい。すごく、噂になってます。みんな真相を知りたがってます」
会長「結局、戦車道履修生のみんなに箝口令を出しても、ぜーんぜん意味なかったねえ」
みほ「こんなに早く廃校についての情報が漏れて、広まっちゃうとは思いませんでした」
小山「ある程度は仕方ないのよ。全国大会の参加者は何十人もいるんだから」
会長「それに、情報の出元が、大会に関わった生徒とは限らないしねえ」
みほ「どういうことですか?」
会長「例えば、それを知ってる子は生徒会の中にだっている」
みほ「……」
会長「戦車道履修生だけを疑っちゃ、可哀想だよ」
みほ「でも困るのは、その噂のせいで……」
河嶋「西住。やはり、お前にも実害があるか」
みほ「害ってほどじゃ、ないですけど」
会長「西住ちゃんは隊長だから」
小山「一番、大変かもしれませんね。それで、西住さんにはどんなことがあった?」
みほ「この学園を廃校から救ったのは、全国大会で優勝した私たち、ってことになってます」
会長「うん。そこは、この噂の中で正確な部分だね」
みほ「それで、クラスのみんなに話しかけられるようになりました。友達が増えました」
小山「いいことじゃないの」
みほ「だけどもう、質問の嵐なんです。本当にいろいろなことを訊かれて……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:42:48.65 ID:f1p+YysHo<> 河嶋「どんな内容を訊かれる?」
みほ「戦車道のこととか、大会のこととか……」
会長「いーじゃん。戦車道の認知度は一気に上がったよね」
みほ「でも困るのは、廃校のことを訊かれたときで……」
河嶋「……」
みほ「もう、はぐらかすのが大変なんです」
小山「箝口令が解けたわけじゃないものね」
みほ「私だけじゃありません。大会に出たほとんど全員が、同じ目に遭ってるみたいです」
会長「らしいね。でも、そんな噂を公に認めるなんて、できないからねえ」
小山「ほとぼりが冷めるまで、みんなにはもう少し、我慢してもらうしかないですね」
みほ「しかも……ここまでは、まだいいんです」
河嶋「ふむ。やはり、か」
会長「やっぱり、アレかい?」
小山「今度の創立記念日にやる、イベントのこと?」
みほ「皆さん、知ってましたか」
会長「そりゃあね」
みほ「そのイベントで、私たちが何かする、ってことになってるらしいんです」
河嶋「全く理解に苦しむ噂だ」
みほ「何かする、なんて……どういうことなんでしょう」
小山「単純に言えば、私たちがそこで、何か出し物をするということよ」
みほ「出し物? だってそんな予定、全然ありませんよ?」
河嶋「当たり前だ。噂が一人歩きしていて、その中の話にすぎないんだからな」
みほ「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:45:12.62 ID:f1p+YysHo<> 会長「ま、そういう噂になっても、おかしくはないよ」
みほ「え?」
会長「生徒たちは、騒ぎたいんだよ」
みほ「……よく分かりません」
河嶋「その噂が発生した経緯には、こういうものが考えられる」
みほ「はい」
河嶋「我が校のほぼ全員が知らないところで、学園の存続に関わる出来事が進行していた」
小山「でもそれについて、公式の説明が全くない」
河嶋「耳に入るのは本当か嘘か分からない噂ばかり。皆、情報の飢餓状態に陥っている」
小山「でも生徒会は完黙。よって、真相を知ることのできる可能性は皆無」
会長「だからみんな、何らかのかたちで、カタルシスが欲しいんだよ」
小山「それが、イベントでのことね」
河嶋「優勝報告会は開いたが、噂が拡散し始めたのはその後だからな」
小山「もう一回私たちが、みんなの前へ出ていく雰囲気になっちゃったの」
会長「不満が爆発するのと、逆の現象だねえ」
みほ「どういうことですか?」
会長「生徒たちにとっては、廃校になるなんて、本当かどうか分からない」
みほ「……」
会長「でも、すごく不安になる噂だよね。ところが何だか、廃校にはならなかったみたいだ」
みほ「……」
会長「みんな、何だか分からないまま、不安が去ったことを嬉しがりたいんだよ」
みほ「不満を爆発させるんじゃなく、喜びを爆発させたい、ってことですか」
会長「学園を廃校から救ったらしい人たちを祭り上げて、騒ぎたいんだよ」
小山「私たちは何かやらないわけに、いかなくなっちゃった」
河嶋「我々は妙な具合に、追い詰められてしまった」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:46:58.72 ID:f1p+YysHo<> みほ「あの……」
河嶋「何だ」
みほ「私なんかが皆さんにこんな意見言っちゃ、いけないのかもしれませんけど」
会長「なーに? 西住ちゃん、言ってみ?」
みほ「“廃校の危機は回避できた。学園を無駄に動揺させる情報は必要ない”」
会長「……」
みほ「会長が、廃校の件について私たちに箝口令を出したのは、こういう理由でした」
会長「うん」
みほ「でも今、その情報が漏れて、予想したとおりにみんなは不安になってます」
会長「……」
みほ「いっそのこと全部、話しちゃったらどうでしょう。全部、説明しちゃったら」
河嶋「西住」
みほ「はい」
河嶋「そんなことが、できると思うか?」
みほ「……」
小山「この学園艦にいるのは、私たち生徒だけじゃないのよ?」
みほ「……」
会長「ここに生活の基盤を持つ大人だっている。その人たちに今回の顛末を、どう説明すんの?」
みほ「それは……」
河嶋「全くの無名校が全国大会でいきなり優勝し、強引に実績を作ろうとする」
みほ「……」
小山「頼りは、一人の転校生だけ。その子を無理矢理、救世主に仕立て上げる」
みほ「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:48:56.55 ID:f1p+YysHo<> 河嶋「この方法を提案した会長の前で、こんなことを言うのは失礼極まりないが……」
会長「河嶋、気にしないでいーよー。私自身が、河嶋と同じこと考えてるからさ」
河嶋「は。恐縮です……いいか、西住」
みほ「はい……」
河嶋「こんなマンガみたいなやり方を、そのまま説明できると思うのか?」
会長「大人の世界だったら、こういう方法は考えられないからねえ」
みほ「……」
会長「発案者の自分が言うのも変だけどさ、正気じゃないよ」
みほ「……」
会長「こんなのは、リスクヘッジなんていわない。ただのギャンブルだよ、これは」
みほ「説明するなんて、無理……ですか」
小山「ね、西住さん」
みほ「はい」
小山「今のお話のついで、ってわけじゃないんだけど…」
会長「今、河嶋は、私に失礼って言ったけどさ」
小山「この方法が本当に失礼だったのは、西住さんに対して、だったよね」
みほ「……」
河嶋「会長。私もそれは、遺憾に思っています」
会長「一番の被害者は西住ちゃんだよね。こんなやり方を押し付けちゃったんだから」
みほ「いいんです、それは。私なんかが、皆さんの役に立てたんですから」
会長「生徒会の代表として、改めて謝るよ。ごめんね」
みほ「そんなことしないでください。この方法で実際、うまくいったじゃないですか」
会長「西住ちゃんのお陰でね」
みほ「いえ、みんなと一緒だったお陰です。私一人がやったんじゃありません」
会長「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:50:59.53 ID:f1p+YysHo<> みほ「あの……だから、大丈夫なんじゃないでしょうか」
河嶋「何がだ」
みほ「“廃校の危機がありました。こういうやり方で、それを乗り越えました”って…」
会長「……」
みほ「そう説明したって、誰も文句なんて言いませんよ」
小山「うん。私は、西住さんの言うとおりだと思う」
みほ「小山先輩、そう思ってくれますか」
小山「でもね、それは結果論よ」
みほ「……あ……確かに……」
会長「西住ちゃん」
みほ「はい」
会長「私らは、廃校騒ぎなんて存在しなかった、ってスタンスなんだよ」
小山「そんなものは根拠が全くないデマにすぎない、っていう立場なの」
河嶋「生徒会がコメントするに値しない、という姿勢だ」
みほ「……噂は否定どころか、無視、ですね……」
会長「そゆこと」
みほ「……あの」
会長「何だい?」
みほ「じゃあ、廃校の噂は放置、ってことにして……」
会長「うん」
みほ「そして私たちは、訊かれても誤魔化し続ける、ってことにして……」
小山「生徒たちがその噂に飽きるまで、みんなに負担掛けちゃうけどね」
みほ「それは構わないんですけど……。イベントのことは、どうするんですか?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:52:41.78 ID:f1p+YysHo<> 河嶋「うむ。それが次の話題だ」
会長「私らは噂のとおり、何かやらないわけに、いかなくなっちゃったねえ」
みほ「あの、それって何かおかしくないですか?」
小山「おかしい、って?」
みほ「だって、噂は徹底して放置なんでしょう?」
河嶋「今言ったとおりだ」
みほ「それならイベントのことだって、放置でいいと思いますけど」
会長「うん。普通はそう考えるよね」
みほ「放置しない理由、放置できない理由でもあるんですか?」
小山「それが、あるのよ。西住さん」
みほ「え……」
会長「さっき私は、“不満が爆発するのと逆の現象”って言ったよね」
みほ「はい。生徒たちは不満じゃなく喜びを爆発させたい、ってことでした」
小山「それを爆発させなかったら、どうなると思う?」
みほ「それは……どうなるんですか?」
会長「喜びのエネルギーは不満のエネルギーへ、簡単に変わっちゃうんだよ」
みほ「……」
河嶋「それが喜びのエネルギーであるうちに、発散させてやる必要があるんだ」
小山「要するに、ガス抜きね」
みほ「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:54:28.09 ID:f1p+YysHo<> みほ「じゃあ……さっき小山先輩は“出し物”って言ってましたけど……」
小山「うん」
みほ「何か、やるんですか? やらなくちゃ、駄目ですか……?」
河嶋「西住、何を怯えている」
みほ「だって……私たちにできること、っていったら……」
会長「西住ちゃんの指揮で、練習とか模擬戦の実演でもやるかい?」
みほ「そんなの、戦車道へ興味ない人には、面白くも何ともないですよ」
河嶋「それなら、優勝祝賀会でやった隠し芸でも披露するか?」
みほ「は、はぁ!?」
河嶋「どうした? そんなに大きな声を出して」
みほ「だって、あんなもの……私たちの内輪だから面白がってたものばっかりで」
小山「桃ちゃん、仲間内で見せるから“隠し芸”なのよ?」
河嶋「だから、桃ちゃん言うなと言っとろうが」
小山「大体、桃ちゃんはこの話になると、必ず隠し芸のこと口にするのよね」
会長「河嶋ぁ」
河嶋「何でしょう、会長」
会長「アレ、も一回やりたいの? 32回転?」
河嶋「えっ。い、いえ、そんなことは」
小山「ふふふ。取り乱しちゃって」
みほ「あー、なるほど」
河嶋「……おい、西住」
みほ「そういうことですかあ」
河嶋「何だ、その薄笑いは?」
みほ「やりたいならやりたいって、言えばいいのに」
河嶋「それが先輩に対する態度か? ええ?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:56:10.74 ID:f1p+YysHo<> 小山「桃ちゃん、顔真っ赤よ?」
みほ「河嶋先輩、そんなムキにならなくても」
河嶋「だだだ、誰がムキになってる。おかしなことを言うな」
小山「私は、あの1回で十分だからね」
河嶋「えっ」
小山「やるなら、桃ちゃん一人でやってね?」
河嶋「あっ……柚子、裏切るのか!?」
会長「ほら。やっぱり、やりたいんじゃん」
河嶋「……」
会長「まあ冗談はさておき」
みほ「はい」
小山「ほら桃ちゃん、冗談にされちゃったよ?」
河嶋「ふ、ふん。私だって最初から、冗談のつもりだ」
会長「実はさ、その“出し物”は、もう決めてあんだよね」
みほ「え……何ですか、それは?」
会長「バンド」
みほ「バンド、って……音楽の?」
会長「イベントで何かやる、ってことになって、私は小山にこういう指示を出した」
みほ「……」
会長「“戦車道履修生の経歴を、特技に関して精査しろ”」
みほ「……」
会長「その結果から見えてくるものが、イベントでの出し物になるかも、ってわけ」
みほ「なるほど……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 19:58:28.73 ID:f1p+YysHo<> 小山「西住さん。私も驚いたんだけど、みんなの特技を調べていくと…」
みほ「はい」
小山「何人かをピックアップすれば、バンドを組めることが分かったの」
会長「バンドなら観客の生徒たちが、戦車道を知ってても知らなくても大丈夫」
みほ「そうか……音楽は、大抵の人が楽しめますからね」
河嶋「しかも、戦車道履修生や生徒会が組織立って動いているようには見えない」
みほ「どういう意味ですか?」
小山「ただ単に、戦車道の有志数人がイベントに参加した、という体裁になるの」
河嶋「組織立った動きを見せてしまうと、噂と関連付けて捉えられる可能性が高くなる」
会長「“戦車道のみんなが出てきた。やっぱり噂は本当なんだ”って思われちゃうんだよ」
河嶋「だから、数人だけが自発的に参加したようなかたちを取る」
小山「でも、その噂が原因で、カタルシスを得たい生徒は…」
河嶋「バンドの演奏で、一緒に騒げる。戦車道履修生を、祭り上げられる」
みほ「何だかもう、怖いくらいです……。皆さん、どうしてそんなに知恵が回るんですか?」
会長「西住ちゃん。考えてること、そのまま言っていーよー?」
みほ「え?」
会長「“知恵が回る”じゃなくて、“悪知恵が働く”って言いたいんっしょ?」
みほ「あ。いえ、そんな。とんでもない」
河嶋「バンドの具体的な内容が、今日、最後の話題だ」
会長「面白いメンバーになったよ。小山、こっから先の説明、お願い」
小山「西住さん、順に紹介してくね」
みほ「はい」
小山「中心になるのは、1年生。音楽に関して、この子の右に出る生徒はいない」
会長「バンドに関してはその子がリーダー、ってことにした」
みほ「その子、って……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:00:48.90 ID:f1p+YysHo<> 小山「ウサギさんチームの、宇津木さん」
みほ「宇津木さん……」
小山「彼女の特技はピアノ。しかもその腕前は、趣味とか習い事のレベルじゃない」
みほ「どういうことですか?」
小山「小さい頃、外国から招かれてコンサートに参加したことがある」
みほ「……何ですか、それ? お話がすご過ぎて……」
会長「神童と呼ばれてたらしいよ」
みほ「それなら、音楽が専門の学校……音大附属の学校とかに、なぜ行かなかったんでしょう」
小山「彼女は、勉強の成績もすごく優秀なの」
会長「おたくらの冷泉ちゃんほどじゃないけどね」
小山「本人に訊いてないけど、多分、ピアノより勉強の方が面白くなったんじゃないかな」
河嶋「宇津木の志望進路はだな」
小山「桃ちゃん? あまり詳しいことは駄目よ?」
みほ「あ、大丈夫です。心配しないでください」
会長「さすが西住ちゃん、分かってるね。今してる話で、個人情報の部分は全てオフレコね」
みほ「はい。絶対、誰にも言いません」
河嶋「宇津木は現時点で、理系の大学への進学を志望している」
みほ「ということは、今は、ピアノは……」
小山「弾いてないみたい。でもバンドの話をしたら、すぐにOKしてくれた」
みほ「あ、もう本人へ訊いてるんですね」
会長「あの子は音楽に関することになると、まるで別人だよ。話し方とか」
小山「彼女は何ていうか、独特の感じで喋るよね。それがガラっと変わる」
会長「ま、そんなわけで宇津木ちゃんの担当楽器は、キーボード」
みほ「はい」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:02:58.01 ID:f1p+YysHo<> 小山「ギターの経験者もいた」
みほ「誰ですか?」
小山「アヒルさんチームの近藤さん」
みほ「わあ、カッコ良さそう」
小山「でも、バンドで弾いてほしいって言ったら、意外な答えが返ってきたの」
みほ「何て言ったんですか?」
小山「“ギターでもいいですけど、私の体格なら、ベースじゃないですか?”」
みほ「ベースって、ギターより大きい、低い音の楽器……」
小山「“ベース、一度弾いてみたかったんですよねー”って、言ったの」
みほ「いいですね。どっちでも似合いそうです」
小山「私はよく知らないんだけど、スラップとかチョッパーっていう弾き方があるらしいの」
みほ「全然知りません、私も」
会長「何かさ、弦をバキバキ鳴らす弾き方。音を聞けば“ああ、これか”って思うよ」
小山「近藤さんはそれをやってみたい、って言ってた」
会長「そゆことで、近藤ちゃんの担当楽器は、ベースギター」
みほ「はい」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:05:04.31 ID:f1p+YysHo<> 会長「ドラムを誰がやるか聞いたら、西住ちゃん、びっくり仰天するよ」
みほ「今度は誰ですか? もう、聞いていくのが楽しみです」
会長「カバさんチームの左衛門佐」
みほ「ええっ!?」
河嶋「本当にびっくり仰天したな」
みほ「だって、完全に予想外で……」
小山「実は、ドラムの経験者はいなかったんだけどね」
みほ「あ、そうなんですか?」
小山「杉山さんは、和太鼓の経験者だったの」
みほ「すぎやま?」
河嶋「左衛門佐の本名だ」
みほ「あ」
会長「駄目だよ西住ちゃん、隊長が忘れちゃ」
みほ「本人には悪いですけど、正直、誰?って感じでした」
小山「あの子は本当に多才よ。弓道もやってるしね」
みほ「でも、和太鼓とドラムって、大分違うんじゃ……」
小山「私もそう思ったけど、杉山さんは平然として、こう答えたの」
みほ「はあ」
小山「“和も洋も、拍子に合わせて叩くのは同じでしょう”って」
みほ「……」
会長「で、実際にやらせてみたんだけど」
みほ「……」
会長「“違うのは、足まで使うことだけか”って言いながら、あっという間にマスターした」
小山「バスドラムとかの、ペダルのことね」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:08:32.86 ID:f1p+YysHo<> みほ「あの、“実際にやらせてみた”って……」
会長「何ー?」
みほ「みんな、もう練習を始めてるんですか?」
会長「そーだよ。一人を除いてね」
みほ「“一人を除いて”?」
会長「ま、とにかく左衛門佐の担当楽器は、ドラム」
みほ「はい」
会長「で、私がギター」
みほ「えええっ!?」
小山「やっぱり、驚くよね」
河嶋「ドラムの担当が誰かを聞いた時より驚いたな」
みほ「ギター、って……弾けたんですか、会長?」
会長「弾けるわけないじゃん」
みほ「あ、あれ?」
会長「私ら生徒会のうち、誰かが、何かやらないわけにもいかないっしょ」
みほ「……」
河嶋「西住」
みほ「はい」
河嶋「我々は、他人に何かを押し付けて口だけは出す、そんな人間じゃない」
みほ「……」
小山「戦車道だって、みんなにやってもらったけど…」
会長「私ら自身も、参加したよね?」
みほ「はい」
小山「みんなには、今回も無理なお願いをするんだもの」
会長「言い出しっぺの私も、加わることにしたんだよ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:10:19.56 ID:f1p+YysHo<> みほ「でも、弾いたことがないのに……。どうするんですか?」
会長「いやーそれがさ、何とかなっちゃうもんなんだよね」
小山「会長は元々、すごく器用だから」
河嶋「対プラウダ高の試合を憶えているはずだ」
みほ「はい。戦車に乗り始めて間もない人とは、とても思えない活躍でした。……でも」
河嶋「何だ」
みほ「小山先輩も河嶋先輩も、同じです。あの作戦は、皆さんの活躍があったから……」
河嶋「話の腰を折るな、西住」
小山「今は、私と桃ちゃんのことを話してるんじゃないよね?」
みほ「あ……はい、すみません」
小山「話を元に戻すと……」
みほ「でも、今みたいな場面で、3人の結束を感じますね……」
河嶋「くどいぞ西住ッ。黙って聞けないのか?」
みほ「ご、ごめんなさい」
会長「河嶋ぁ。ま、いーんじゃない?」
河嶋「は。しかし……」
会長「今のは、河嶋が出した喩えが悪いよね」
河嶋「そうだったでしょうか」
会長「あるチームの中で一人だけを褒めるなんて、西住ちゃんの立場じゃ難しいっしょ」
みほ「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:11:59.44 ID:f1p+YysHo<> 会長「もちろん、私は楽器演奏の経験なんて全くない」
みほ「……」
会長「自分でも、私みたいなド素人がバンドへ参加するってどーよ?と思ったさ」
みほ「はあ」
会長「でも軽音楽部の人に頼んで、必要最低限のことを教えてもらって…」
みほ「……」
会長「練習してるうちに、自分でも驚くほど早く、何とかなってきちゃったんだよね」
みほ「……さすが会長」
会長「それに、当ったり前だけど、義務教育で音楽の授業を受けてきてるんだ」
みほ「はい」
会長「楽譜に何が書いてあるかは、分かるしね」
みほ「でもギターは、ソロ、っていうんですか? 目立つ機会が多い気がしますけど」
会長「ああ、ボーカルが歌ってない時、つまり間奏でね」
みほ「それです。その時、指をすごく早く動かして、メロディーを弾いたりしますよね」
会長「そういうのは全部、神童に任せるから大丈夫」
みほ「あ、宇津木さん……」
会長「ギターソロがなくても、間奏は全部、キーボードソロにしちゃえば問題無し」
みほ「なるほど」
会長「てな感じで、私の担当楽器は、ギター」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:13:55.60 ID:f1p+YysHo<> みほ「……」
河嶋「西住、どうした? 急に暗い顔になって」
みほ「……残るパートは、多分、一つ……」
小山「うん、そう。あと一つだけ」
みほ「……一番目立つ、一番大事なパート、ですよね……」
河嶋「そのとおりだ」
みほ「……さっき“一人を除いて”もう練習を始めてるって、言ってましたよね……」
会長「確かに、言ったねえ」
みほ「……私はどうして、今、この生徒会室へ呼ばれてるのか……」
小山「どうしてだろうね?」
みほ「……どうして突然、バンドの話なんて聞かされたのか……」
会長「さーあ? どしてなんだろねえ?」
みほ「……とぼけないでください。その“一人”が誰なのか、分かりました……」
河嶋「さすが西住隊長。優れた洞察力だ」
みほ「……こんなの、誰だって分かります……」
小山「以上、キーボード、ベース、ドラム、ギターの各担当を、紹介してきました」
河嶋「残る、最後のパートについて…」
会長「一応、担当紹介、やってみよっか?」
小山「さあ今度は、どんな意外な人の名前が、出てくるでしょう?」
みほ「……」
小山「残るパートは……ボーカル!」
会長「バンドの中で、一番目立って、一番可愛い子がやるパート」
河嶋「一番、重要なパートだ」
小山「そのパートを担当するのは、この人しかいません!」
会長「そんなわけで、西住ちゃんの担当は、ボーカルっっ!!」
みほ「ええええっ!!?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:15:53.22 ID:f1p+YysHo<> 会長「……」
小山「……」
河嶋「……」
みほ「……はぁー……」
会長「いやー西住ちゃん、ノリがいいねえ」
小山「見事に、お約束を演じてくれましたね」
みほ「私だって……空気を読む、って言葉くらい、知ってます……」
会長「今くらいの演技力があれば、ステージに立っても問題ないね」
河嶋「はい。“イエーイ”とか、言ってもらわなければなりません」
小山「何それ。“イエーイ”なんて、今時ダサいんじゃない?」
会長「バンドのボーカル、やってくれるよね? 西住ちゃん」
みほ「どうして、私なんですか……」
河嶋「諸事情を総合的に考慮した結果だ」
小山「このパートをやるのはやっぱり、西住さんしかいないのよ」
みほ「私、歌なんて、下手ですよ……」
会長「そんなことないじゃん」
小山「西住さん、上手だと思うけど」
河嶋「一定以上の水準であることは認めよう」
みほ「何言ってるんですか……? 皆さん、私が歌うのなんて聞いたことないくせに……」
会長「あるよ」
みほ「えっ?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:17:46.47 ID:f1p+YysHo<> 小山「西住さん。これからするお話を、怒らないで聞いてくれる?」
みほ「何ですか?」
河嶋「お前は先週、チームの連中とB街区の総合アミューズメントセンターへ行ったな?」
みほ「は……?」
会長「で、そこにあるカラオケボックスへ入ったよね?」
みほ「な、何ですか? どうして皆さん、知ってるんですか?」
河嶋「西住。我々はこの学園艦で絶大な権限を持つ、大洗女子学園生徒会だ」
会長「プライバシーを侵すことは、絶対しない。でも、必要な調査はするよ」
小山「ね。怒らないで聞いてほしいのは、この後なんだけど……」
みほ「……皆さん」
会長「お……?」
みほ「もう聞く必要、ないです」
小山「西住さん……?」
みほ「もう、どういうことなのか、分かりました……」
河嶋「既に、怒っているのか? 西住……」
みほ「カラオケボックスには、各部屋に防犯カメラが、あります……」
会長「……」
みほ「生徒会の特権で、その記録データを入手。私が歌ってる映像を、見たんですね……?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:20:06.27 ID:f1p+YysHo<> 会長「ホントに、ごめんねー」
小山「許してねって言っても、許してくれないだろうけど」
河嶋「遺憾ではあったが、必要かつ重要な調査だったんだ」
みほ「皆さん、ひどいです……」
会長「ごめんね西住ちゃん。もう幾らでも、謝るからさ」
みほ「会長」
会長「何だい?」
みほ「私が、会長たちからのお願いを、断るとでも思ってるんですか?」
会長「ん?」
みほ「私って、そんな薄情な女に見えるんですか?」
小山「西住さん……」
みほ「私たち、全国大会で、あんな大変なことを一緒にしてきたんじゃないですか」
河嶋「西住……」
みほ「あれに比べれば、全校生徒の前で歌うことの方が、まだ簡単です」
会長「西住ちゃん……」
みほ「それなのに、私以外の全員からもうOKを取ってたり、隠れて私の歌唱力を調べたり……」
会長「……」
みほ「こんな、外堀を埋めてくようなこと、しなくてもいいじゃないですか」
小山「……」
みほ「面と向かって、頭ごなしに、言ってくれてよかったんです」
河嶋「……」
みほ「歌います。私、歌いますよ。みんなと一緒に、バンド、やります」
会長「……うん。ありがと。ありがとうね、西住ちゃん」
小山「ありがとう西住さん。私、今ちょっと、ジーンとしちゃった」
河嶋「今の西住は、なかなか男前だったぞ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:26:26.12 ID:f1p+YysHo<> みほ「全くもう……。やっぱり、何か企んでたじゃないですか」
会長「いやー、さすがにちょっと、気が引けてねえ」
小山「西住さんには今までも、いろいろなことをお願いしてるから」
みほ「自分から、“何か企んでるって、考えてるでしょ”なんて言って……」
小山「とにかく良かった。引き受けてくれて」
河嶋「一時は、どうなることかと……やっぱり隠し芸に変更か、と思ったが」
小山「桃ちゃん、まだ言ってるの?」
みほ「それで私は、どうすればいいんでしょう」
会長「うん。早速、練習に参加してもらう」
みほ「場所とかスケジュールとか……」
会長「まあ慌てないで。場所は第4音楽室」
みほ「第4音楽室……あそこって、艦内ラジオの音楽番組でも使われる……」
河嶋「我が艦で、その種の設備が最も整った場所だ」
小山「音楽室って名前だけど、スタジオよね。本番までは、このバンドの貸切り状態よ」
みほ「そんなことできるんですか?」
会長「ま、特権ってのは、こういう時にも行使すべきものなんだよね」
みほ「“すべき”って……。あと、楽器はどうしてるんですか?」
小山「それは、軽音楽部から借りてるの」
河嶋「事情が事情なので、生徒会の予算を割くことは難しい。既にある備品を使用している」
会長「イベントのためだけに結成、それが終わったらすぐ解散しちゃうバンドだから」
みほ「その理由については、みんなには…」
会長「言ってないよ。これを伝えたのは、隊長の西住ちゃんだけ」
みほ「……」
小山「でもみんな、バンドについてすごく乗り気よ」
みほ「……余計な情報は、必要ない。この場合もそうなんですね……」
会長「西住ちゃんは心配しないでいーよ。私が全ての責任を取るし、みんなのフォローもする」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:29:29.31 ID:f1p+YysHo<> みほ「あと、ボーカルをやる私にとって、一番大事なことなんですけど…」
河嶋「何だ」
みほ「曲って、もう決まってるんですか?」
会長「3曲か4曲を予定してるんだけどね。選曲はバンドのメンバーと相談中」
小山「取りあえず、1曲だけが決まってる状態よ」
みほ「何て曲ですか? 早く歌を憶えます」
会長「その必要ないよ。西住ちゃんがボックスで歌ってたヤツだよ」
みほ「あの時は、何曲か歌いましたけど」
会長「タイトルは……何だっけ? 出だしのすぐ後に♪空に〜災〜い♪って、歌うヤツ」
みほ「あ……『DreamRiser』ですね」
会長「そう、それ。みんなで、それの練習はもう始めてる」
小山「あの曲、元気でいい曲ね」
みほ「でも今の、“空に災い”って、何ですか?」
会長「え?」
小山「え?」
河嶋「え?」
みほ「……え? って……」
会長「だって、そう歌ってんじゃないの?」
みほ「そう歌ってないです」
小山「違うの?」
みほ「違います」
河嶋「確かに、歌詞として変だと思っていたが」
みほ「変でしょう? “空に災い”なんて」
会長「じゃあ、何て歌ってんの?」
みほ「そこは、“空にrise & ride”って歌ってるんですけど」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/29(木) 20:31:28.33 ID:f1p+YysHo<> 会長「……」
小山「……」
河嶋「……」
みほ「あの……どうして皆さん、黙っちゃうんですか? 何か変でした?」
会長「これは……」
小山「歌詞の、英語部分について……」
河嶋「発音を逐一、チェックする必要がありますね……」
みほ「な、何ですか? どうして3人とも急に、内緒話みたいになるんですか?」
河嶋「西住の奴、思わぬところで……」
小山「仕事を、増やしてくれたよね……」
みほ「何か、様子が変ですよ? どうしてこっちをチラチラ見るんですか!?」
会長「ほかの曲が未決定なのは、不幸中の、幸いだねえ……」
河嶋「歌詞に英語がない曲を選ぶ、ということが、可能です……」
みほ「ちょっと、ボソボソ喋るの、やめてください! 不安になってくるじゃないですか!」
会長「いろんな準備、イベントまでに、間に合うかな……」
小山「やるしか、ありませんけど……」
河嶋「最悪の場合、隠し芸に、変更か……」
小山「桃ちゃん、それだけは、絶対にないから……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/29(木) 20:33:07.87 ID:f1p+YysHo<> 今日は以上です。
一日に1章ずつ、投下することを予定しています。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/29(木) 20:37:44.03 ID:cEL9a0Z5o<> 乙でした!
しかし“空に災い”はお約束の空耳ですよねww <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/29(木) 22:17:52.61 ID:0ZxRuiBB0<> 乙
西住殿カワイイ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/30(金) 01:55:07.96 ID:uzEpvqRto<> 面白い <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:26:22.78 ID:YXYpJZRwo<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2
会長「おーっす、みんなー。お疲れさんー」
左衛門佐「会長、こんにちは」
宇津木「こんにちは〜」
近藤「こんにちは、会長」
会長「練習のセッティング、大丈夫かい?」
左衛門佐「あとは、会長が準備するだけです」
会長「みんながお待ちかねの人、連れてきたよー」
近藤「あ、遂に…」
宇津木「例の人が、やってきたんですね〜」
左衛門佐「真打登場だな」
みほ「……みんな、こんにちは」
宇津木「わ〜! 隊長だ〜!」
近藤「隊長、待ってましたよー!」
左衛門佐「やっと来たな、隊長!」
みほ「みんな、よろしくお願いします。みんなの足、引っ張らないようにしますから」
宇津木「何言ってるんですか〜」
近藤「ボーカルが言うことじゃないですよ」
左衛門佐「私たちこそ、隊長が歌いやすいようにしなくちゃならない」
宇津木「隊長は、カラオケと同じ感覚でいいんですから」
みほ「でも、みんなと一緒に演奏するんだし」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:28:12.14 ID:YXYpJZRwo<> 会長「西住ちゃん。今のリーダーは、誰だっけ?」
みほ「あ……そうでした」
宇津木「隊長、よろしくお願いします〜」
みほ「こちらこそお願いします、リーダー」
宇津木「えへへ〜。隊長にそんなこと言われたら、照れちゃいます〜」
みほ「カラオケと同じ感覚で、いいの?」
宇津木「伴奏を機械がやってるか、生身の人間がやってるかの違いだけです」
みほ「それって、かなり違うと思うけど……」
宇津木「やってくうちに、慣れてきます。気楽にしててください」
会長「ほんで宇津木ちゃん、今日は何を?」
宇津木「最低5回は、曲の頭から最後までやりましょう。だんだん音が合ってきました」
みほ「何だか本格的だね」
宇津木「普通の手順ですよ。まだお互いの癖をよく知らないから、曲の節目がズレるんです」
みほ「会長……」
会長「何?……」
みほ「本当に宇津木さん、話し方がガラっと変わりますね……」
会長「でしょ? 怖いくらいだよ。目つきも全然違うしさ……」
宇津木「何か言いましたか〜二人とも〜」
会長「あっ、何でもないよ。ごめんね、練習中に私語は駄目だよね」
みほ「宇津木さん、私はどうする? 早速歌う?」
宇津木「隊長は聞いててください。私のソロがあったりして、カラオケとかと微妙に違うので」
みほ「あ、そうなんだ」
宇津木「そういう違いを把握してもらってから、隊長には入ってもらいます」
みほ「了解」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:29:52.38 ID:YXYpJZRwo<> 左衛門佐「いいですか、会長?」
会長「ちょい待ち……あと、チューニングだけ」
宇津木「じゃあ、Aの音出しますよ。妙子ちゃんもチューニング確認よろしく」
近藤「はーい」
♪〜
会長「いーよー、左衛門佐」
左衛門佐「宇津木」チラ
宇津木「…」コク
左衛門佐「1、2、1・2・3」ドドタンッ
♪ダダンッ♪ターララターララー♪ダダンッ♪タラターララータラララタラララ♪
みほ「うわ、すごい……。やっぱり生演奏って、全然違う……」
〜〜〜
♪チャーンチャーンチャーン♪
会長「……ふう」
みほ「すごーい! 練習なのに、拍手しそうになっちゃいました!」
宇津木「……」
左衛門佐「……」
近藤「……」
みほ「あれ? みんな、どうしたんですか?」
宇津木「私のソロが終わって、次のメロディーに移る所」
左衛門佐「やはり、そこか」
近藤「そこですね」
会長「あー、例の、ごちゃっとする所?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:31:31.63 ID:YXYpJZRwo<> 宇津木「左衛門佐先輩は、そこ、どんなことやってます?」
左衛門佐「私は、こうだ」ダンドコドコドコダシャーンダンダダン
宇津木「妙子ちゃんは?」
近藤「えーと、どこから始めればいい?」
宇津木「その辺りを、どこからでも」
近藤「うん」ボンボンボボンボーンブーンドッドッドッボンボボン
宇津木「二人でやってみて」
左衛門佐「近藤、適当に始めろ。私が合わせる」
近藤「はい」ボンボンボボンボーン
近・左「…」ズドダズズンドダシャーンズドドン
宇津木「会長、同じ所を」
会長「あいよ」チャッチャッチャーチャッチャチャッ
宇津木「会長。その刻み方、こうしてもらってもいいですか?」テッテッテテーテッテテ
会長「もう一回お願い」
宇津木「はい」テッテッテテーテッテテ
会長「…」チャッチャッチャチャーチャッチャッ
宇津木「そうです」
会長「おっし。分かったよ宇津木ちゃん」
宇津木「以前の方が、好きだったりしました?」
会長「いや、構わないよ。とにかく新しいのを早く憶えるね」チャッチャッチャチャーチャッチャッ <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:33:07.80 ID:YXYpJZRwo<> みほ「……すごい……みんなが何やってるのか、全然分からない……」
宇津木「隊長〜さっきから“すごい”しか言ってませんよ〜」
みほ「だって本当に、分からないんだもの」
会長「何かさ、演奏しててごちゃっとする所があったんだよね」
左衛門佐「気にせず流してしまえば、どうということはないんだろうが…」
近藤「やっぱり、やってて、気持ち悪いんです」
宇津木「聞いてる方だって、あまり耳触りがよくない部分だと思います」
みほ「それを宇津木さんが、はっきり指摘したってこと?」
宇津木「はい。でも原因が何なのか、分からなかった」
みほ「……」
宇津木「だから一人ずつ、演奏してもらった」
みほ「……」
宇津木「ドラムとベースは問題ない。じゃあ、ギターかもしれない」
みほ「そしたら、ギターが、ちょっと……」
宇津木「そのとおりです。ほかと、特に私のキーボードと、合ってなかった」
みほ「……」
宇津木「だから会長には悪いですけど、私のやり方に合わせてもらいました」
会長「気にしてないよ。バンドリーダーの指示なんだから」
宇津木「はい。こんなことをお互い気にしてたら、演奏なんてできません」
会長「楽譜どおりのつもりだったけど……。いつの間にか、自己流になってたんだねえ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:35:45.82 ID:YXYpJZRwo<> みほ「楽器の演奏って、こうやって、合わせていくんだね……」
宇津木「それは、違うかもしれませんよ?」
みほ「え? そうなの?」
宇津木「私の専門は元々、クラシック音楽ですから」
みほ「……」
宇津木「ロックバンドの人に、今みたいなやり方を見せたら…」
近藤「“どうしてそんなメンド臭いことするの?”って、言われちゃうかも」
宇津木「うん。もちろん、ロックでもいろいろな理論や方法があるけど」
近藤「もっとアバウトだよね。要するにノリ。ノれればいい、ノせられればいい」
宇津木「私はアンサンブルを確認するのに、こういう方法しか知らないから」
みほ「そういえば、プロの人って実はルーズだって聞いたことある。実は、練習しないって」
宇津木「個人的な練習は、死ぬほどやってると思いますよ。技術的に難しいフレーズとか」
みほ「……」
宇津木「自分ができない箇所を丸一日、繰り返す。できるようになるまで、何日も続ける」
みほ「……」
宇津木「でも、みんなで合わせる練習は本番前の数回だけ。それで十分」
左衛門佐「まあ、プロの話だけどな」
宇津木「はい。私たちは、どっちの練習も死ぬほどやらなくちゃ駄目です」
みほ「……何だか、とんでもないことに、関わっちゃったのかも……」
近藤「隊長、覚悟しといた方がいいですよ? 優季ちゃんは結構スパルタですから」
みほ「分かった……」
会長「あれ? 西住ちゃん、ビビってる?」
宇津木「大丈夫です〜。優しくしますよ〜隊長には〜」
左衛門佐「宇津木。お前のそういう発言には、何か別のベクトルを感じる。自重しろ」
宇津木「やだな〜左衛門佐先輩、考え過ぎですよ〜」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:37:42.83 ID:YXYpJZRwo<> 会長「宇津木ちゃん、今の所からやってみる?」
宇津木「そうしましょう。隊長、入ります?」
みほ「うん。マイクのセッティングしておいたけど、大丈夫だと思う」
宇津木「カラオケとの違いは?」
みほ「多分、問題無し。1回聞けば憶えられる程度だったよ」
左衛門佐「宇津木、隊長が入るなら…」
宇津木「もっと前からの方がいいですね。じゃあ、私のソロからで」
近藤「分かった」
会長「了解」
左衛門佐「行きます。1、2、1・2・3・4」
〜〜〜
♪チャーンチャーンチャーン♪
みほ「気持ちいいー! カラオケよりこっちの方が、歌ってて楽しいです!」
左衛門佐「……」
みほ「みんなの顔を見ながら、演奏してる人を見ながらって、いいですね!」
近藤「……」
みほ「一緒に音楽をやってるって感じがします!」
会長「宇津木ちゃん」
宇津木「分かってます」
みほ「……え?」
宇津木「うーん……どうしようかなあ」
みほ「な、何? どこか、駄目だったの!?」
宇津木「……」
みほ「私の歌、駄目!?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:40:15.03 ID:YXYpJZRwo<> 宇津木「妙子ちゃん」
近藤「何?」
宇津木「隊長に説明してあげて」
近藤「私が?」
宇津木「妙子ちゃんと左衛門佐先輩。二人が一番、分かってると思うから」
近藤「でも、私が隊長に対して、何か言うなんて……」
左衛門佐「近藤、ここはバレー部じゃない。そういうのは無しでいこう」
近藤「あ、そうですね……。じゃあ隊長、失礼ですけど…」
みほ「うん。何でも言って、近藤さん」
近藤「隊長は、私たちの方に気を遣い過ぎです」
みほ「え……」
近藤「今、“みんなの顔を見ながら”って言ってましたけど…」
みほ「うん」
近藤「そうする必要は、ないと思います」
みほ「……」
近藤「私たちを気にし過ぎて、歌い出しがいつも遅いんです」
みほ「あ……」
近藤「バンドでは基本的に、土台を支えるのはリズムを刻むドラムと、低音のベースです」
みほ「……」
近藤「だから左衛門佐先輩と私が、テンポを意識的に早くしました」
会長「西住ちゃんも、分かってたっしょ?」
みほ「そう言えば……途中から、何だか早くなったな、って……」
左衛門佐「私たちがそうしたのは、隊長に、自分が遅れていることを気付いてもらうためだ」
近藤「もっと急いでもいい、ってことだったんです」
左衛門佐「そうしなければボーカルに引きずられて、私たちまで遅くなってしまう」
みほ「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:41:46.43 ID:YXYpJZRwo<> 左衛門佐「珍しい現象だな、宇津木」
宇津木「はい。大抵の人は、どんどん早くなっていくんですけど」
近藤「私たちと合わせようとしてくれてる。でもそのせいで、周りの音を聞き過ぎてるよね」
会長「こーゆーのって、何回も練習すれば直るもんなの?」
宇津木「うーん……アインザッツがいつも遅い……妙子ちゃんの言うとおり意識の問題かな……」
みほ「あのー、みんなの話に、全然ついていけません……」
左衛門佐「私だって宇津木の言ってることなど、分からないぞ?」
みほ「へ?」
近藤「私もそうです。優季ちゃんが使う、音楽の専門用語なんて知らないのばっかりで」
宇津木「隊長」
みほ「うん」
宇津木「私は最初、“カラオケと同じ”とか、“気楽にしててください”って言いました」
みほ「うん」
宇津木「結局、そういうことなんです。隊長は私たちを、カラオケマシンだと思ってください」
みほ「そんな……だって、一緒に演奏するんだし」
宇津木「本番では隊長が私たちの方を見るなんて、ほとんどないですよ?」
会長「ボーカルが観客にお尻向けて歌うわけには、いかないよねえ」
みほ「あ、そうか」
左衛門佐「私たちは、常に決められたテンポでやる」
近藤「隊長は、そのカラオケに合わせるだけでいいんですよ」
みほ「うん……分かりました」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:43:28.12 ID:YXYpJZRwo<> 会長「周りに気を遣い過ぎ。西住ちゃんらしい、悪い癖だねえ」
みほ「だって、私の取り柄っていったら、それくらいで……」
左衛門佐「隊長。過ぎたればなお及ばざるが如し、だ」
会長「ボックスではこんなこと、なかったじゃん。あれと同じでいーんじゃん?」
みほ「はい……」
宇津木「もちろんお互い、機械じゃなくて生身の人間です。不測の事態には対応します」
左衛門佐「生演奏は、何が起こるか分からない」
みほ「どういうことですか?」
宇津木「よくあるのが、歌手の声が出なくなる。又は、歌手が歌詞を度忘れする」
みほ「どうするの? そんなことが起きたら……」
宇津木「決まったやり方は特にありません。ケースバイケースです」
近藤「少なくとも、私たちは機械じゃありませんから…」
左衛門佐「ボーカルへ不具合があったのに、伴奏だけ進行するってことはあり得ない」
近藤「伴奏だけが勝手に進んじゃったら、それは本当にカラオケの機械と同じですね」
宇津木「でも、歌手が声を出せないまま伴奏だけが流れると、応援の拍手が湧くこともあります」
左衛門佐「逆に、盛り上がるのか」
会長「宇津木ちゃん。不測の事態に備えて、対処方法やその合図とか、決めとくべき?」
宇津木「どうでしょうね……。今の段階では、何とも」
左衛門佐「会長。まだやる曲さえ、ロクに決まっていませんよ」
会長「それもそっか」
宇津木「とにかく演奏面は、しっかり準備しておきましょう」
会長「そだね。それ以外のことは、その後で考えればいいね」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/30(金) 19:45:02.64 ID:YXYpJZRwo<> みほ「うう……憶えること、たくさんありそう……。前途多難だなぁ……」
宇津木「隊長〜」
みほ「何?」
宇津木「今、こう考えてるでしょ〜」
みほ「こう、って?」
宇津木「“話が違うんだけど。ただ歌うだけじゃないの?”って〜」
みほ「そ、そんなことないよ」
宇津木「だって、顔にそう書いてありますよ〜」
近藤「隊長」
みほ「何? 近藤さん」
近藤「戦車道では私たち、隊長のあのシゴキに耐えてきたんですよ?」
みほ「え……? 近藤さん、何を言い出して……」
会長「西住ちゃんは全然、あれをシゴキだなんて思ってなかっただろうけどさ」
左衛門佐「隊長は就任後に一貫して、私たちを隊長が普通だと考えるレベルで練習させたんだ」
近藤「初心者の私たちを、ですよ? あれはまさにシゴキでした」
みほ「……」
会長「ま、そのお陰で私らは短期間に、全国トップレベルへ追いつけたんだけどね」
近藤「だから、優勝できたんです」
宇津木「でもバンドでは、立場が逆ですよ〜」
左衛門佐「もちろん今、あの意趣返しなどというつもりはないが…」
宇津木「バンドでは隊長、私たちのシゴキに耐えてくれなくちゃ、困りますからね〜」
会長「ね〜」
近藤「ね〜」
みほ「……さっきは、優しくしてくれるって、言ったのに……」
宇津木「何か言いましたか〜」
みほ「えっ。なっ何のこと? なな何も言ってないよ!?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/30(金) 19:46:52.45 ID:YXYpJZRwo<> 今日は以上です。
いただいたレスへのお礼などは、4章全てを投下した後としたいと思います。御容赦ください。 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/30(金) 19:59:38.61 ID:weBa6zpdo<> 乙〜 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:24:58.25 ID:l+gJlLB8o<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3
左衛門佐「隊長じゃないか?」
みほ「あ……左衛門佐さん」
左「街なかで会うのは珍しいな」
み「うん」
左「いよいよ、明日だな」
み「うん……」
左「まあ落ち着いて、練習どおりでいこう」
み「……」
左「隊長にはこんなこと、言わずもがなだろうが」
み「……」
左「……どうかしたか?」
み「う、ううん。……どうも、しないよ」
左「……」
み「じゃあ、私、こっちだから」
左「ああ。気を付けて。また明日」
み「うん。また明日」
左「……」
み「……左衛門佐さん、行かないの?」
左「隊長こそ」
み「……」
左「なぜ“こっちだから”と言ったのに、立ち止まったままなんだ?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:27:33.59 ID:l+gJlLB8o<> み「……ね、左衛門佐さん」
左「何だ」
み「今、用事があって、急いでたりする?」
左「いや、暇だ」
み「少し、お話しない?」
左「ああ。構わないが」
み「どこかに座ろうか」
左「ここからだと、左舷の公園が近いな」
み「……ね、今日…」
左「何だ」
み「もっと練習しなくて、よかったのかな」
左「多分、そうしなくても問題ないんだろう」
み「確かに、宇津木さんの指示どおりだけど……」
左「ああ。本番前日の練習は、軽めでいい」
み「……」
左「全曲通しの練習も、本番と同じ条件でやる舞台練習も済ませてる」
み「だから、前日の練習を念入りにやって、もし問題点が見付かっちゃったら…」
左「それまでの積み重ねが、台無しになる可能性がある」
み「……」
左「これが宇津木の指示だ。間違いないんだろうし、実際、合理的だ」
み「……」
左「……あそこのベンチにしよう」
み「夕焼けが綺麗だね」
左「創立記念日の明日も、いい天気になりそうだな」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:29:09.29 ID:l+gJlLB8o<> み「何か飲む?」
左「いや、今はいい」
み「……」
左「隊長が奢ってくれるんだろうが、話の後でも構わないだろう?」
み「そうだね……」
左「隊長」
み「うん」
左「はっきり、訊くが…」
み「……」
左「不安なんだな?」
み「うん……。不安だし……何だか、モヤモヤする気持ち……」
左「不安なのは、私も同じだ」
み「そうなの?」
左「だが隊長にとっては、戦車道と同じじゃないのか?」
み「試合の前、ってこと?」
左「ああ。私たちでさえ、もう何度も経験したんだ。隊長に至っては…」
み「うん。数えるのが嫌になるくらい」
左「いちいち不安になることなど、ないと思うが」
み「でもやっぱり試合の前、緊張はするよ」
左「それだ。不安じゃなく、緊張で済むんじゃないか? 試合と同じに考えれば」
み「試合と同じに、考えられればね……」
左「無理か」
み「難しいよ……」
左「西住隊長から、弱音を聞くとはな」
み「私なんて、いつも弱音ばっかりだよ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:31:10.59 ID:l+gJlLB8o<> 左「まあ弱音を聞くも何も、私たちは今まで話をする機会など、ほとんどなかったな」
み「うん」
左「隊長は少なくとも立場上、全員と会話することがあっただろうが…」
み「……」
左「私は、例えば1年たちと話した経験など、皆無だったといっていい」
み「バンドのお陰で、みんなとたくさんお話できた?」
左「たくさん、じゃないけどな」
み「でも今回のことで、学年やチームが違う人たちとの距離が、近くなった気がするよね」
左「私は…」
み「何?」
左「自分が、自分のチーム以外の人と、こんなに話をできるなんて思わなかった」
み「……」
左「逆にチーム以外の人が、自分へこれほど普通に話をしてくれるなんて、思わなかった」
み「そんなことは…」
左「いや、率直な感想だ」
み「……ね、左衛門佐さん」
左「何だ」
み「私たち、ずっとこのままで、いられないのかな……」
左「どういう意味だ」
み「明日、本番が終わったら…」
左「ああ、そういうことか。このバンドは解散らしいな」
み「解散……」
左「たった1回の舞台。そのために結成されたバンドと聞いている」
み「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:33:11.56 ID:l+gJlLB8o<> 左「寂しいのか?」
み「左衛門佐さんは、寂しくないの?」
左「寂しいさ」
み「私は最初、義務感だけで、やってたの」
左「……」
み「もちろん、悪い気はしなかったよ」
左「生徒会から、ボーカルをやってほしいと言われた時か」
み「うん。でも同時に、こう思ってた」
左「……」
み「歌なんて、音楽の授業や、カラオケボックスで歌ったことがあるくらいなのに、って」
左「……」
み「どうして自分がそんなことしなくちゃ駄目なの、って思ってた」
左「ほかに、もっと適任な者がいた可能性はあるな」
み「うん。例えば宇津木さん、きっと上手いのはピアノだけじゃないと思う」
左「あんなに才能のある奴だからな。歌だって上手くなければおかしい」
み「でも、生徒会の人たちが、また私を必要としてくれてる」
左「……」
み「こんな私でも、また当てにされてる」
左「……」
み「だから、それに応えなくちゃ、って思ったの」
左「だが……最初は少し、つらそうだったな」
み「リズムを直されて、音程を直されて…」
左「歌詞の中にある英語の発音にも、注文を付けられたらしいが」
み「やっぱり、引き受けるんじゃなかった……。そう思ったこと、あるよ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:35:26.39 ID:l+gJlLB8o<> 左「しかし、今はバンドの解散を寂しがっている」
み「うん。ボーカルをやってるうちに、どんどん、楽しくなってきちゃったの」
左「……」
み「最初は、無理だと思った。みんなが要求するレベルの演奏なんて、不可能だと思った」
左「……」
み「でも、やっと何とかなってきた……そう思えた時は、嬉しかった」
左「“やっと”じゃなかっただろう。隊長は急速に上達した」
み「自分自身だと、そんなの分からないけど。それに…」
左「何だ」
み「宇津木さんやみんなに、初めて褒められた時は、それ以上に嬉しかったの」
左「……」
み「知らない人が聞いたら変に思うよね。1年生に褒められて嬉しいなんて」
左「私だって宇津木に初めて認められた時は、嬉しかったさ」
み「そうなの?」
左「あいつは音楽に関して、学年や年齢に関係なく、私たちよりはるかに上の存在だ」
み「うん。自分よりすごい人に褒められるのって、嬉しい」
左「ああ」
み「今、演奏するのがすごく楽しい」
左「……」
み「みんなとも、仲良くなれた」
左「……」
み「今、仲良しのみんなと、思いっ切り楽しい時間を過ごしてる」
左「だがそれは、明日で終わってしまう…」
み「うん……。終わって、ほしくない……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:37:25.02 ID:l+gJlLB8o<> 左「しかし隊長、バンドは解散しても…」
み「うん。みんなと仲良くなれたことは変わらない。それは分かってる」
左「分かってるなら、バンドにこだわることはない」
み「……」
左「多分、そのことも分かってるんだろうが…」
み「うん、分かってる。バンドにこだわる必要なんてない」
左「……」
み「でも、みんなと一緒に演奏してる時、歌ってる時…」
左「……」
み「その瞬間が、楽し過ぎて……今が、この瞬間が、ずっと続けばいいのにって思うの」
左「だが、そんなことは…」
み「そうだよ。これも分かってる。そんなことは絶対ない。あり得ない」
左「……」
み「ごめんなさい……。こんなの、ただの我儘だし、愚痴、だよね……」
左「いや……。隊長」
み「何?」
左「私も、こう思う」
み「……」
左「なぜ、楽しいことは長く続かないのか、と」
み「……」
左「楽しいことが過ぎ去るのは、早い。長く続かない」
み「逆に、苦しいことやつらいこと、悲しいことは…」
左「ああ。なかなか終わらない」
み「こんなことがいつまで続くんだろう、って思うよね」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:39:04.43 ID:l+gJlLB8o<> 左「隊長」
み「うん」
左「明日、泣くなよ?」
み「……」
左「最後の曲で、隊長は泣いてしまいそうだ」
み「……」
左「泣いても、その涙の理由を、集まってくれた生徒たちは理解できない」
み「多分、生徒がたくさん集まって盛り上がってくれたから、とか…」
佐「ああ。それで感極まった、くらいに思われるだけだ」
み「……」
左「隊長が泣く意味など、誰にも伝わらない」
み「……」
左「私だってそうだ。今こうして、話を聞いたから…」
み「私が泣く意味を分かる……って、ことだよね」
左「ああ」
み「左衛門佐さんには、悪いけど…」
左「何だ」
み「私、約束できない」
左「何をだ」
み「泣くな、ってこと。私、最後の曲で自分が泣くかどうかなんて、分からない」
左「……」
み「もちろん、泣かないかもしれない。でもやっぱり、泣いちゃうかもしれない」
左「……」
み「だから、泣かないって……今ここで、はっきり、約束なんてできないよ」
左「……」
み「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:41:26.13 ID:l+gJlLB8o<> 左「……なあ、隊長」
み「何?」
左「今、私に何か、できることはないか?」
み「できること、って?」
左「無論、今の隊長に私がしてあげられること、しなくてはならないことは…」
み「多分、バンドのこと…」
左「そのとおりだ。バンドの中で自分の役割を果たし、隊長の伴奏を務め上げることだ」
み「左衛門佐さん、そんな言い方しないで。私たちは一緒に演奏するんだよ?」
左「まあ聞いてくれ。それ以外に、何かできることはないか?」
み「何か、って?」
左「いや。何もなければ、いいんだ」
み「……」
左「ただ、今の隊長にはバンドのこと以外に、何か必要なんじゃないか…」
み「……バンドのこと、以外……」
左「今ここにいる私は、その何かを、してあげるべきなんじゃないか…」
み「……」
左「そう、思っただけだ……」
み「ね、左衛門佐さん」
左「何だ」
み「それなら……手を、握ってほしいな」
左「…」ガク
み「え? どうして、ズッコケるの?」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:43:01.90 ID:l+gJlLB8o<> 左「……手?」
み「うん」
左「手って……この手か?」
み「うん」
左「意味が、分からないが……」
み「駄目、かな……?」
左「……」
み「駄目なら、別に……」
左「い、いや、私ので良ければ……」
み「いいの?」
左「手を……出していれば、いいのか?」
み「じゃあ…」
左「…」スッ
み「あっ、どうして避けるの!?」
左「す、すまない。反射的に」
み「いいって、言ったのに……!」
左「あのー……隊長」
み「何?」
左「大体、これって、違くないか?」
み「何が?」
左「“握ってほしい”と言っても、握ろうとしてるのは隊長の方だが」
み「左衛門佐さんって意外と、細かいこと気にするんだね」
左「いや、そういう問題か?」
み「握ってくれるの? くれないの? どっち?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:45:11.62 ID:l+gJlLB8o<> 左「えーと…」
み「何?」
左「隊長って、その…」
み「だから何?」
左「アッチの人……なのか?」
み「あっち?」
左「いや、アッチというかソッチというか、その、女同士で…」
み「あっち? そっち? 何それ?」
左「え?」
み「左衛門佐さんが言ってること、全然分からない」
左「ああ……私の、思い過ごしか」
み「どうしたの?」
左「いや、何でもない。……隊長」
み「何?」
左「手……だったな」
み「うん」
左「……ほら」
み「うん……」ギュッ
左「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:47:32.31 ID:l+gJlLB8o<> み「あ……」
左「どうした?」
み「柔らかい」
左「手が?」
み「もっと、硬いと思ってた」
左「それは、スティックを握るからだな」
み「うん」
左「打楽器奏者の手はタコやマメだらけ。そう思う人がいるのは知ってる」
み「違うの?」
左「自分のようなにわか仕立てのドラマーが、こんなことを言うのは僭越だが…」
み「何?」
左「手にそんなものがあるドラム奏者は、恐らくあまり上手くない」
み「どういうこと?」
左「もし、手にできているタコやマメの数と、ドラムの上手さが比例するんだったら…」
み「……」
左「プロは全員、手が野球のグローブみたいになってるぞ」
み「あ、そうか」
左「私も太鼓を叩き始めた頃は、手にそういうものができた」
み「……」
左「だがある時、フッと力の抜けることがあった」
み「ある時、力が抜ける……」
左「隊長にも分かるだろう。変に力を入れなくても、演奏ができる…」
み「力まなくても、音量が出る。高い声や低い声が出る。それに気付く瞬間、ってことだね」
左「それだ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:50:13.27 ID:l+gJlLB8o<> み「そうか。左衛門佐さんは、力んで演奏してないんだね」
左「自分ではそのつもりだ。タコやマメができないのは、その証拠だと思っている」
み「余計な力が、入ってない……」
左「近藤も多分そうだ。あいつの左手はきっと柔らかいぞ」
み「あんなに太い弦を押さえてるのに」
左「指へテーピングしてる時があるのは、バレーボールをやっているからだろう」
み「じゃあ、会長はまだ全然駄目だろうね」
左「きっと、ガッチガチだ」
み「ふふふ」
左「隊長…」
み「何?」
左「手を、撫でないでくれ」
み「え? 駄目? くすぐったい?」
左「くすぐったいし、何か、変だろう?」
み「変?」
左「私はもちろん、隊長にもそのケはないはずだし…」
み「そのけ?」
左「……」
み「どうかした?」
左「隊長はかなりのネンネと聞いていたが、これほどとは…」
み「ねんね?」
左「いや、何でもない」
み「ね、左衛門佐さん」
左「何だ」
み「自分でこんなこと言うの、恥ずかしいんだけど…」
左「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:52:29.15 ID:l+gJlLB8o<> み「私ね、すごく甘えんぼなの」
左「……」
み「私ね、すごくお姉ちゃん子だったの」
左「……黒森峰の……」
み「うん。あの隊長が、私のお姉ちゃん」
左「……」
み「小さい頃からずっと、お姉ちゃんの後ばっかり追いかけて……そのせいかも」
左「“甘えんぼ”になった、理由か」
み「うん。優しくしてくれる人がいると、つい縋っちゃう。頼っちゃう」
左「何だか、いろいろおかしいと感じるが」
み「おかしい、って?」
左「つまり、隊長は今…」
み「うん」
左「私に縋っている、ということか?」
み「うん。そうだよ」
左「だが私は別に、隊長へ優しくなどしていないぞ?」
み「左衛門佐さんは、優しいよ」
左「そうなのか」
み「そうだよ」
左「そんなことを言われたのは初めてだ」
み「優しくされてる方が言うんだから、間違いないよ」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:54:11.38 ID:l+gJlLB8o<> 左「それから、つい他人へ縋ったり頼ったりしてしまう、ということだが」
み「うん」
左「そんな人が隊長をやっている。何十人もの隊員を率いている」
み「……」
左「全国大会優勝という、成果まで上げている」
み「……」
左「全く矛盾しているように思えるが、これはどうなんだ?」
み「だって、私が隊長をやったり優勝できたりしたのは、私一人でやったことじゃないもの」
左「……」
み「みんなと一緒に、やったことだもの」
左「だが、隊長の任にあることは、ほかの誰でもない、自分自身がやっていることじゃないか」
み「私は一人で隊長をやってるなんて、全然思ってないよ?」
左「どういうことだ?」
み「みんなが支えてくれるから、協力してくれるから、こんな私でも隊長が務まってる」
左「……」
み「私が隊長をやってるのは、みんなと一緒にやってることなんだよ」
左「……」
み「ね? こう考えれば、おかしくないでしょ?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:56:31.84 ID:l+gJlLB8o<> 左「隊長」
み「何? 左衛門佐さん」
左「さっき二人で、ボーカルにより適任な者がいた可能性がある、という話をしたな」
み「うん」
左「だが、生徒会は隊長を選んだ。なぜだと思う?」
み「えーと……それはやっぱり、私が隊長をやってるから」
左「恐らくそれが一番の理由だろう。我が戦車隊の代表で、最も人目につく人物だから」
み「……」
左「その人物がバンドで最も目立つパートを担当する。実に分かりやすい」
み「あとの理由は……歌がそんなに下手じゃない、とか…」
左「ああ。歌唱力が要件であることはいうまでない。それから、本人の見た目も重要だ」
み「……」
左「どちらも、隊長は十分以上に条件を満たしている」
み「そんな……」
左「だが、こうしたこと以外に、生徒会が重要と考える要素がある」
み「こうしたこと、以外?」
左「これら以外に、生徒会が隊長へボーカルをやらせた理由がある。私は、そう思っている」
み「何、それは?」
左「飽くまで、憶測に過ぎないが…」
み「うん」
左「それは隊長へ、人前で喋るのに慣れさせる、ということだ」
み「……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 19:58:31.21 ID:l+gJlLB8o<> 左「こんなことを言っては、悪いんだが…」
み「何? 言って?」
左「隊長は人前に出ると、妙に慌ててしまう癖があるだろう?」
み「……」
左「おたおたというか、わたわたというか…」
み「……」
左「私たちを前にしても、まだそんな感じだ。ましてや、不特定多数の前では…」
み「うん。人前に出たり、そこで喋ったりするのって、あまり得意じゃない」
左「だが、そうも言っていられないだろう?」
み「……」
左「こんなことは、隊長自身が分かっていると思うが…」
み「うん、分かってる。そんなのじゃ駄目だって」
左「今まで対外的なことは、生徒会がやってくれた。だが、あの3人が卒業したら…」
み「私たち自身が、やらなくちゃならないね」
左「その中心にいるのが、隊長だ。だから今回みたいな機会に、そうした状況へ慣れさせる」
み「……」
左「生徒会には、そんな意図があるんじゃないかと思うんだ」
み「……」
左「明日、私たちの演奏を聞きに集まる生徒の数は分からない」
み「でも多分、大勢だよね。大勢の、知ってる人や知らない人…」
左「ああ。ボーカルの役目は、歌うだけじゃない。その大勢へ語りかけるMCも重要な役割だ」
み「……」
左「生徒会の3人は、それを普通にこなせるようになれ、と考えているんじゃないか」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 20:00:57.57 ID:l+gJlLB8o<> み「確かに、試合の結果報告とかで、人前に出ていく機会は増えるよね……」
左「隊長。誤解しないでほしいが、私はプレッシャーをかけているんじゃない」
み「うん。今、左衛門佐さんは、私へアドバイスをしてくれてる」
左「アドバイスというほど、大したものじゃないが……」
み「言ってること、分かるよ」
左「……」
み「いつまでも甘えんぼだったり、人に縋ったり頼ったりしてしちゃ、駄目だよね……」
左「いや、それは場合によると思うぞ」
み「え? どういうこと?」
左「例えば、家族にそうしたって、他人は何も文句を言わない」
み「あ、そうだね。それが駄目かどうかなんて、家族の中での問題だよね」
左「ああ。私が言っているのはそうした状況以外の、立場の問題だ」
み「……」
左「隊長は、ある集団の代表だ。集団を率いるリーダーなんだ」
み「……」
左「縋ったり頼ったりするのはむしろ、その集団のメンバーが、リーダーに対してだ」
み「そうだね……」
左「隊長は、そういう立場にいる人間なんだ」
み「だから、それにふさわしい態度を身に付けろ、ってことだね」
左「そのとおりだ。競技の面ではとっくの昔に、隊長はそれをできている」
み「……」
左「それ以外の運営の部分で、隊長としての風格を身に纏え、ということだと思うんだ」
み「うん……」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 20:03:06.79 ID:l+gJlLB8o<> 左「もちろん私は、一介の砲手だ。今回のバンドでは、ドラム奏者」
み「……」
左「それ以上でも、それ以下でもない。隊長へ意見できる立場になど、ない」
み「……」
左「今は戯言を、思いつくまま、口にしたまでだ……」
み「……左衛門佐さんは、やっぱり、優しいね」
左「優しくしているつもりなど、ないんだがな」
み「優しいよ、左衛門佐さんは。今、お話ができてよかった」
左「本番の前日なんだから、もっと穏やかに過ごすべきだったが…」
み「ちょっと重いお話、っていうのかな。そういうのをしちゃった、ってこと?」
左「ああ」
み「でも、話せてよかった。分かったことが、たくさんあった」
左「そうか」
み「うん」
左「手……」
み「え?」
左「手……もう、いいか……?」
み「あ……ごめんなさい」
左「いや……」
み「……」
左「そろそろ、行こう。もう日が沈む」
み「うん。飲み物、奢れなかったけど」
左「じゃあ、次の機会に頼む」
み「分かった」
左「途中まで一緒に行こう」
み「うん」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2013/08/31(土) 20:05:46.75 ID:l+gJlLB8o<> 左「なあ、隊長」
み「何?」
左「いうまでもなく私は、隊長だけへいろいろなものを背負わせるつもりはない」
み「……」
左「生徒会の3人が卒業したら、運営の仕事を、みんなでやらなくちゃならない」
み「……」
左「私自身はもちろん、うちのカエサル、隊長車の五十鈴、アヒルさんチームの磯辺…」
み「みんなで仕事を分担する。私がそのまとめ役になる、ってことだね」
左「ああ。私だけじゃなく、皆も隊長の助けになりたいと思っているはずだ」
み「……」
左「今挙げたような皆に比べて、私にできることは、ごく僅かだろうけどな」
み「そんなことないよ」
左「いや、私が隊長にしてあげられることなど……」
み「ね、左衛門佐さん」
左「何だ」
み「じゃあ、今でもいい?」
左「今?」
み「左衛門佐さんが、私にしてくれること」
左「ああ、もちろんだ。言ってくれ」
み「もう一回…」
左「もう一回?」
み「手を、握ってほしいな」
左「…」ガク
み「ねえ、どうして、ズッコケるの?」 <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2013/08/31(土) 20:07:09.52 ID:l+gJlLB8o<> 今日は以上です。
明日の投下分で、完結の予定です。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:35:34.93 ID:vz60xhPHo<> 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4
近藤「隊長、元気出してくださいよ」
みほ「……」
宇津木「隊長〜いつまでも落ち込んでちゃ駄目ですよ〜」
みほ「……うー……」
左衛門佐「隊長、いい加減に切り替えろ。若しくは忘れろ。どっちかにしろ」
みほ「……もうやだ……」
宇津木「気にしてるの、あれをやった本人の隊長だけですよ〜」
近藤「そうですよ。超ウケてたじゃないですか」
宇津木「バカウケだったの、舞台から見て分かってたでしょ〜」
みほ「……やっぱり私には、向いてないんだ……」
近藤「それにしても隊長、どうしていきなり、あんなこと始めたんですか?」
宇津木「MCの練習、何回もしたのに〜」
みほ「……訊かないでよぉ……」
左衛門佐「観衆を目の前にして、頭の中が真っ白になってしまったんだな?」
みほ「……左衛門佐さん、分かってるじゃない……」
左衛門佐「それで、何をやっていいか分からないまま、何か始めてしまった、と」
みほ「……分かってるのに、どうして訊くのよぉ……」
会長「おーっす、みんなー」ガチャ
近藤「あ、会長。お疲れ様でした」
宇津木「お疲れ様でした〜」
左衛門佐「会長、お疲れ様です」
近藤「もう、生徒会の仕事は終わりですか?」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:38:39.73 ID:vz60xhPHo<> 会長「うんにゃ。あと、実行委員会へ挨拶をしないと」
宇津木「激務ですね〜」
会長「今回はそうでもないよ。それよりさ、そこに、ごろんって寝転がってるのは……」
宇津木「会長、何とかしてくださいよ〜」
みほ「……」
近藤「この部屋に入ってから隊長は、こっちに背中向けたあの体勢で動かないんです」
左衛門佐「会長、ところで…」
会長「何だい?」
左衛門佐「生徒会の人に案内されて、この部屋に入らせてもらいましたが…」
近藤「ここが、会長の部屋なんですか?」
会長「うん。生徒会の会長室」
宇津木「私なんかが、入っていい場所なんでしょうか〜」
会長「何言ってんのさ。いつでも遊びにおいでよ」
近藤「でも会長はここにいる時、お仕事中ってことでしょうから」
左衛門佐「今、会長の机と椅子は端へ移動させてあるんですね」
会長「うん。空いた場所にこうしてカーペットを敷いて、たまにみんなで食事をしたりする」
宇津木「え〜楽しそう〜」
会長「西住ちゃんは1回、あんこう鍋を食べに来たことがあんだけどね」
みほ「……」
左衛門佐「その本人は今、あんこうみたいにごろんとなったままですが」
会長「あんこうというか、マグロというか」
近藤「お通夜みたいな人が一人いるんじゃ、ライブの打ち上げになりませんよ」
宇津木「揺らしてみましょうか〜。隊長〜」ユサユサ
みほ「……」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:40:18.17 ID:vz60xhPHo<> 会長「じゃあ悪いけど、私はまた行かないと。今はちょっと、顔出しに来ただけ」
宇津木「またお仕事ですか〜早く戻って来てください〜」
会長「次の挨拶で最後だよ。あ、それからさ」
近藤「何ですか?」
会長「みんなのリクエストどおり、お寿司、頼んでおいたよー」
近藤「えー!? 本当ですかー!?」
宇津木「きゃ〜! 嬉しい〜!」
左衛門佐「本当にいいんですか、会長?」
会長「打ち上げだからねえ。パァーっといかないとね」
左衛門佐「じゃあ食器や、お茶の用意をしておきます」
近藤「あそこの専用キッチンを使って構わないんですね?」
会長「うん。あと、冷蔵庫の中にジュースがあるから、先にそれで乾杯しててくんない?」
宇津木「何から何まで、ありがとうございます〜」
会長「少しだけどお菓子もあるよ。キッチンの、上の棚ん中」
近藤「それは、我慢しておきます」
宇津木「お寿司が来るんですから〜」
会長「そだね。じゃ、後でね」パタン
みほ「……」
左衛門佐「ほら隊長、会長が寿司をとってくれたぞ」
みほ「……食欲なんて、ない……」
近藤「あれ? じゃあ隊長、食べなくていいんですか?」
宇津木「私たちが、隊長の分まで食べちゃいますよ〜」
みほ「……」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:42:03.23 ID:vz60xhPHo<> 左衛門佐「隊長。気にするな、と言っても無理かもしれないが…」
みほ「……」
左衛門佐「隊長のやったことは結局、全て観衆にウケたんだ。それでいいんじゃないのか?」
みほ「……だって……」
近藤「隊長。最初はどうして、突然MCを始めちゃったんですか?」
みほ「……」
宇津木「冒頭はMC無しで、いきなり『DreamRiser』ってシナリオでしたよね」
みほ「……だから、訊かないでって、言ってるでしょ……」
左衛門佐「唐突に喋り始めた隊長の様子に、生徒たちは皆、唖然としてたな」
近藤「“このバンドは、マジなのかネタなのか”って、区別がつかないみたいでしたね」
左衛門佐「だが、その区別を決定付けたのが…」
近藤「『DreamRiser』間奏での、隊長の不思議な踊り」
みほ「……」
左衛門佐「あそこはキーボードのソロで、宇津木の見せ場だったはずだが」
宇津木「でも隊長があの踊りを始めて、完全にもっていかれちゃいました」
みほ「……ごめん……」
宇津木「謝らないでください。ウケれば勝ちじゃないですか」
左衛門佐「しかしまあ、そういうネタ要素を挙げていけば切りがないな」
近藤「演奏面はしっかりできたんだし」
宇津木「あの舞台は、大成功でした」
みほ「……」
左衛門佐「だから隊長、元気を出せ」
近藤「いつまでも、落ち込んでちゃ駄目ですよ」
宇津木「早く立ち直ってくださいよ〜」
みほ「……」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:43:47.37 ID:vz60xhPHo<> 左衛門佐「今の隊長には何を言っても駄目だな。こうなったら……近藤」
近藤「はい?」
左衛門佐「やれ」
近藤「え? 何を?」
左衛門佐「隊長が起き上がるようなことを、だ」
近藤「起き上がるようなこと……ですか?」
宇津木「左衛門佐先輩、そんなの“無茶振り”ってやつですよ〜。妙子ちゃんが可哀想です〜」
左衛門佐「まあ見てろ、宇津木」
宇津木「何をですか〜」
左衛門佐「“運動部のノリ”の底力だ。どんな無茶振りにも、近藤は応える」
宇津木「……」
左衛門佐「何か、芸をやってくれる。頭で何も思い付かなければ、体を張った芸を見せる」
宇津木「……」
左衛門佐「与えられた場を、常に全力でこなす。それが運動部のノリだ」
近藤「分かりました……」スック
宇津木「あ、立ち上がった〜」
近藤「3番、近藤妙子! 芸、いかせていただきます!」
宇津木「お〜カッコいい〜! 左衛門佐先輩の言ったとおりですね〜」
左衛門佐「だろう? でも3番って何だ?」
宇津木「妙子ちゃんが今着てる、バレー部ユニフォームの番号じゃないですか〜」
左衛門佐「なるほど」
近藤「隊長のモノマネ、やらせていただきます!」
宇津木「来ました〜!」
左衛門佐「これは、予想以上のものが来たな」
近藤「題して『第2射の説教』、いきます!」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:45:34.71 ID:vz60xhPHo<> 宇津木「うわ〜。よりによって、隊長が雷を落とした時のモノマネです〜」
左衛門佐「無線で全車を怒鳴りつけて、皆がビビりまくった時か」
近藤「“各車、第2射が遅いです!”」
宇津木「ひえ〜そっくり〜」
近藤「“砲手と装填手、連携を確認しましたか?”」
左衛門佐「気味が悪いくらい似てるな」
近藤「“各チームが個別に練習する時の、課題だったはずです!”」
宇津木「で、この後…」
左衛門佐「怒られるのは、砲手と装填手だけじゃないんだよな」
近藤「“各車、車長!!”」
宇津木「この時、不意討ちを受けた梓は、飛び上がってました〜」
左衛門佐「うちのカエサルはリーダーと装填手を兼務してるから、真っ青になってたぞ」
近藤「“連携の監督! 第2射の目標に関する指示! 個別練習の内容とその成果!”」
宇津木「怖いよ〜」
近藤「“これらは全て車長の責任です! 今日は練習の後、緊急の車長会議をやります!”」
宇津木「説教部屋への御案内、来ました〜」
左衛門佐「車長たちは皆、ゲンナリしてたな」
近藤「“会長。生徒会室を会議で使うの、構いませんね?”“いーよー”」
宇津木「あ、会長のマネも〜」
左衛門佐「さすが芸が細かいな」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:47:25.34 ID:vz60xhPHo<> みほ「……何よ、もう……」
近藤「うわ、隊長が私たちの方を見てる」
宇津木「いつの間にか、首がこっちへ向いてる〜」
左衛門佐「背中がそのままで、首だけ180度回転してるように見えるな」
みほ「……みんな、本当は私のこと、嫌いなんでしょ……」
宇津木「そんなことないですよ〜」
近藤「みんな、隊長のことを大好きです」
左衛門佐「全員が信頼しているのは間違いない」
みほ「……じゃあ、どうしてそんなに、意地悪するのよぉ……」
近藤「だって隊長、起きてくれないじゃないですか」
宇津木「早く立ち直ってほしいんです〜」
みほ「……」
左衛門佐「大体、隊長が大噴火したのは、この時くらいだったと思うが」
宇津木「そうですよ〜。鬼みたいに怖かったのは、この時だけです〜」
左衛門佐「だから皆が憶えていて、近藤がこうして芸にできるんだ」
近藤「普段は、頼りになって優しい、しかも可愛い隊長じゃないですか」
みほ「……」
宇津木「こんなに可愛い隊長が、どうしてあんなに怖くなっちゃうんでしょう〜」ナデナデ
左衛門佐「こら宇津木、隊長を撫で回すんじゃない」
みほ「……」グルン
近藤「あ、首があっち向いちゃった」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:48:55.98 ID:vz60xhPHo<> 宇津木「何だか、余計に不貞腐れちゃったみたい〜」
近藤「これじゃ、モノマネは逆効果だったんでしょうか」
左衛門佐「だが甘やかしていると、本人のためにならん。もっと刺激を与える必要がある」
近藤「じゃあ、思い切って…」
左衛門佐「何だ」
近藤「今日の例のヤツ、やります?」
左衛門佐「今日のヤツをか? やれるのか、近藤?」
宇津木「例のヤツをやるの〜? 超期待〜」
近藤「じゃあ近藤妙子! 再び、いかせていただきます!」
宇津木「待ってました〜!」
左衛門佐「よっ、真打!」
近藤「今日のライブ冒頭のネタ! 『勝手に突然MC』!」
みほ「……」
近藤「“わ、わ、わ、わたわたわた私私私私たち大洗女子学園戦車隊は……!”」
宇津木「キャハハハハハハハハ」
左衛門佐「ギャハハハハハハハハ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:50:29.34 ID:vz60xhPHo<> 宇津木「すご〜い! 妙子ちゃん、そっくり〜!」
左衛門佐「こんなに笑ったのは久しぶりだ」
宇津木「もう、可笑しくって涙が出そうです〜」
左衛門佐「1回聞いただけなのに、近藤はよく憶えられるな」
宇津木「隊長もどうすれば、あんな綺麗に言葉を噛めるんでしょう〜」
近藤「ラップみたいだよね。“わ、わ、わ、わたわたわた私私私”」
左衛門佐「ギャハハハ。やめろ、笑い過ぎて苦しい」
みほ「……」ムク
宇津木「あ、隊長がやっと起き上がった〜」
左衛門佐「刺激が功を奏したか」
みほ「……どうして、みんな……」
宇津木「何ですか〜」
みほ「私のこと、そんなにイジメるの……?」
宇津木「イジメてなんかいませんよ〜」
近藤「いつもどおりの隊長に戻ってほしいんです」
左衛門佐「隊長、自分のやったことに向き合え。目を逸らすな」
みほ「……」ゴロン
宇津木「あ、また寝転んじゃった〜」
みほ「……」ゴロゴロ
近藤「転がりながら、カーペットの端へ行っちゃった」
左衛門佐「やれやれ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:52:21.80 ID:vz60xhPHo<> 会長「いやー、やっと終わった。お待っとさんー」ガチャ
左衛門佐「あ、会長。今度こそお疲れ様でした」
宇津木「お疲れ様でした〜」
近藤「会長、お疲れ様でした」
会長「お寿司、来たよー」
宇津木「きゃ〜! 会長、ありがとうございます〜!」
近藤「会長、本当に御馳走様です!」
左衛門佐「御馳走になります、会長!」
会長「みんな、いーってことよ」
左衛門佐「あ。食器とかの準備を忘れてました」
宇津木「ちょっと盛り上がり過ぎちゃいましたね〜」
会長「何やってたの? 扉の外まで笑い声が聞こえてたみたいだけど」
近藤「隊長に元気出してもらおうと思いまして」
宇津木「妙子ちゃんが芸をしてくれたんですよ〜」
左衛門佐「それで少々、はしゃいでしまいました」
会長「でもさ。肝心の、ごろん、ってなってる人は…」
近藤「何だか、効果はイマイチだったみたいです」
宇津木「私たちには大ウケだったのに〜」
会長「西住ちゃん、こっちおいでよ。一緒にお寿司食べよ?」
みほ「……うー……」
会長「ね、左衛門佐。西住ちゃんの声、何だか泣きそうになってない?」
左衛門佐「さあ? いつまでたっても凹んでる人のことは、よく分かりません」
みほ「……会長ぉ……みんなが、私をイジメるんです……」
会長「あんなこと言ってるよ? みんな?」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:54:25.82 ID:vz60xhPHo<> 宇津木「そんなことよりお寿司ですよ、お寿司〜」
近藤「あ、インスタントのお吸い物が付いてますね。皆さん、要ります?」
左衛門佐「ここには、お椀なんてあるんでしょうか」
会長「うん、あったはず。でも、この人数分はどうかなー」
宇津木「それならお椀とお湯だけ出しておいて、希望者はセルフサービスですね〜」
近藤「お茶は最初から、人数分用意します」カチャカチャ
宇津木「食べ物も来て、打ち上げらしくなってきました〜」
近藤「あーお腹空いた」
左衛門佐「私もだ」
会長「そだね。早く食べよ」
宇津木「食べよ〜食べよ〜」カチャカチャ
みほ「……」
〜〜〜
会長「ね、みんな」ムグムグ
左衛門佐「何でしょう、会長」モグモグ
会長「食べながら、聞いてほしいんだけど」
宇津木「何ですか〜」ムグムグ
会長「みんな結局、今回のバンドのこと、何も訊かなかったねえ」
近藤「バンドのこと?」モグモグ
会長「なぜバンドを結成したのか。なぜイベントに参加したのか」
宇津木「……」
会長「そんで、なぜその1回だけで解散するのか。結局、誰も、何も訊かなかったねえ」
左衛門佐「会長。質問に質問で答えて、失礼ですが…」
会長「何だい? 左衛門佐、言ってみ?」
左衛門佐「会長はそれを、私たちに訊いてほしかったんでしょうか」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:56:41.83 ID:vz60xhPHo<> 会長「どっちでもいーよ。訊かれたら、ちゃんと答えようとは思ってた」
左衛門佐「率直に言います」
会長「うん」
左衛門佐「私はそういうことに、興味ありません」
会長「……」
左衛門佐「バンド結成には恐らく、生徒会の深謀遠慮があると思っていました」
会長「……例えば、戦車道を復活させた時、みたいな?」
左衛門佐「そのとおりです。でも、私には興味ありません」
会長「……」
左衛門佐「私は、私のやりたいこと、やるべきことをやる。それだけです」
会長「……」
左衛門佐「V突での砲手も、バンドでのドラム奏者も、それに該当しただけのことです」
宇津木「私も、同じです〜」
近藤「私もです」
会長「うん」
宇津木「別に、会長たちが何を考えてても構いません〜」
近藤「会長たちは、学園のために何が大事かをいつも考えてくれてるって、分かってますから」
宇津木「ひょっとしたら、私たちは生徒会に利用されたのかもしれませんけど〜」
近藤「私たちだって、バンドで遊ばせてもらいました。おあいこです」
宇津木「楽器、練習場所、本番の舞台まで用意してもらったんです〜」
近藤「これで利用されたなんて言ったら、バチが当たっちゃいますよ」
左衛門佐「背後にどんな事情があるにせよ、準備はうまくいったし、舞台は成功でした」
宇津木「会長。私たちのことを気にしてるんでしたら、そんな必要ないですよ〜」
会長「……うん。みんな、ありがとうね。私はいい仲間を持って幸せだよ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 19:58:11.85 ID:vz60xhPHo<> 左衛門佐「ただ、問題なのは…」
会長「アレの、ことかい?」
宇津木「はい〜」
近藤「アレのことさえなければ、万事うまくいった、って言えるんですけど」
会長「アレ…じゃなかった、西住ちゃん。お寿司食べないの?」
左衛門佐「おい隊長。隊長の分まで食べてしまうぞ?」
宇津木「本気ですよ〜」
近藤「私たち、育ち盛りなんですから」
みほ「……」ゴロゴロ
近藤「あ、転がりながらこっちへ来た」
宇津木「立ち上がるのも億劫みたい〜」
会長「西住ちゃん。やっぱり、お腹空いてたんでしょ?」
みほ「……はい……」ムク
宇津木「お腹が空いたら戻ってきました〜」
左衛門佐「犬じゃあるまいし」
近藤「とにかく、やっとこっちへ来て、起き上がってくれました」
宇津木「はい、隊長のお箸と小皿です〜」
近藤「ちゃんと用意しておきましたから」
みほ「……ありがと。……会長、いただきます……」
会長「うん。食べて食べて」
みほ「じゃあ……」スッ
左衛門佐「あ」
宇津木「あ」
近藤「あ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:00:10.37 ID:vz60xhPHo<> みほ「……え? あ、って……?」
左衛門佐「今の見たか?」
宇津木「見ました〜驚きです〜」
近藤「最初に箸をつけたのが、ウニですよ、ウニ」
左衛門佐「やはり隊長は、お嬢様なんだな」
宇津木「名家の生まれですもんね〜ウニなんて普通なんでしょうね〜」
近藤「会長は何から取りました?」
会長「私は、カッパ巻き」
宇津木「左衛門佐先輩は〜?」
左衛門佐「私は玉子だ」
近藤「会長でさえ、カッパ巻きなのに…」
宇津木「同じ学年の左衛門佐先輩は、玉子なのに…」
近・宇「お嬢様の隊長は、ウニ……!」
みほ「……」スッ
左衛門佐「あっ隊長! 何てことするんだ!」
宇津木「一回取った物を、寿司桶に戻すなんて〜!」
近藤「汚ーい! 信じらんない!」
みほ「……何よぉ……」
左衛門佐「お、何だ? 逆ギレか?」
みほ「何よもうさっきから!! みんなで私をバカにして!!」
宇津木「隊長〜。ウニ持ったまま怒っても、全然怖くありませんよ〜」
近藤「いいからそのウニ、食べちゃってくださいよ」
みほ「全くもう……大体、会長も会長ですよ!!」
会長「えっ。な、何? 私が何かした?」
みほ「どうして会長がカッパ巻きから食べるんですか!?」
左衛門佐「何を言ってるんだコイツは」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:02:15.84 ID:vz60xhPHo<> みほ「私なんて、ウニはこの1個だけで、後はマグロだけ食べてりゃいいんでしょ」ムグムグ
近藤「遠慮した結果が、マグロですか」
宇津木「育ちが違い過ぎます〜」
会長「マグロになってた人が、マグロを食うとはこれいかに。なんちて」
近藤「会長、河嶋先輩レベルのギャグなんですがそれは」
会長「とにかく、西住ちゃんが立ち直ってくれてよかった」
左衛門佐「どんなに不貞腐れていても、食い気には勝てなかったようですね」
みほ「もう、何とでも言って」ムグムグ
会長「じゃ、西住ちゃんが復活したことだし……」
宇津木「何ですか〜」
会長「ちょっと待ってねー。パソコン起動するから」
左衛門佐「手に持っているメモリーに、何が……」
会長「本当は大画面で見たいんだけどね。この人数だからいいよね」
近藤「あ、じゃあそのディスプレイをこっちへ向けます」
会長「まだ完全に編集してないんだけど、取りあえずデータを借りてきた」
宇津木「立ち上げたのは、動画ソフト……。何かの映像ですか〜」
会長「うん。何だと思う?」
左衛門佐「おおっ、これは……」
近藤「これ、今日のライブの映像です!」
宇津木「もう、見られるなんて〜!」
みほ「……」ポト
宇津木「あ。隊長が、お箸を落しちゃいました〜」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:04:37.69 ID:vz60xhPHo<> 会長「生徒会の子に撮らせたんだ。まだ、編集されてるのは画面の切り替えだけなんだけど」
左衛門佐「隊長」
みほ「……何?」
左衛門佐「正視できるか? この映像を」
みほ「ふ、ふん……みんなにさっきイジメられたから、もう慣れた。平気だよ」
宇津木「お〜。隊長、完全復活ですね〜」
会長「“みんながイジメた”って……何やってたの?」
近藤「今日のライブで、隊長がやったことのモノマネです」
会長「あー、なるほど……」
みほ「会長、みんなを怒ってくれないんですか? 私を同情の目つきで見るだけなんですか?」
宇津木「あ、私たちが舞台に出てきた〜」
近藤「制服着用だったのは、少し残念だったね。学校行事だから仕方ないけど」
左衛門佐「近藤はいつもの、そのユニフォームだったじゃないか」
宇津木「もしステージ衣裳でもOKだったら、露出しまくりの服とか着たのに〜」
会長「最後に、ボーカルが登場した」
左衛門佐「この時点で隊長はもう、カチンコチンに緊張していたんだな」
宇津木「直立不動ですね〜」
近藤「来ますよ、例のシーン……」
『左衛門佐「1、2、1・2・3」ドドタンッ』
『みほ「わ、わ、わ、わたわたわた私私私私たち大洗女子学園戦車隊は……!」』
宇津木「キャハハハハハハハハ」
左衛門佐「ギャハハハハハハハハ」
会長「ガハハハハハハハハ」
近藤「キャハハハハハハハハ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:06:33.36 ID:vz60xhPHo<> 宇津木「苦しい〜もう今日は、笑い過ぎて駄目〜」
左衛門佐「明日、間違いなく腹筋が痛くなっているな」
会長「それにしてもさ、この時みんな、よく演奏をストップできたよね」
近藤「何言ってるんですか。これは会長のお陰じゃないですか」
宇津木「会長は最初の音を弾かずに、ピックを持った右手を横へ突き出しましたよね」
会長「うん。何か異変が起こったと思って、咄嗟にやったんだけど」
近藤「打合せになかったジェスチャーでしたけど、意味は一瞬で分かりました」
左衛門佐「“止まれ”の合図。あれで私たちは演奏をストップできた」
宇津木「あそこで音が出てMCとカブっていたら、事故が発生したと観客に分かってしまう」
近藤「でも、誰も演奏を始めなかった。だから、隊長が喋り始めたのは自然な流れになったね」
会長「あ、やっと曲が始まった……けど、生徒たちがザワザワしてる」
左衛門佐「マジなバンドなのかネタなのか、判断しかねているんですね」
会長「ほんでこの後、その方向性を決定付けることが、起こんだよね」
近藤「優希ちゃんのソロが、始まった……」
宇津木「そろそろかな〜」
『みほ「…」スッタスッタスッタ』
会長「出たー!」
宇津木「不思議な踊りキタ〜!」
近藤「キャハハハ。可笑し過ぎー!」
左衛門佐「これで観客の誰もが、コミックバンドと認定したな」
宇津木「これって何ていうか〜スキップっていうか〜」
近藤「踊ってるような、飛び跳ねてるような。謎のステップだよね」
左衛門佐「隊長。ここはどうして、こんなことを始めたんだ?」
みほ「だって、間奏で……手持ち無沙汰、っていうか……」
会長「間奏では、リズムに合わせて体を軽く揺らせてるだけでいい、ってことだったよね?」
みほ「ごめんなさい……」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:08:40.76 ID:vz60xhPHo<> 近藤「でもこれが、妙にウケたんですよね」
宇津木「観衆は爆笑です〜」
左衛門佐「この謎ステップに合わせて、手拍子の音が大きくなった」
会長「だって、踊ってる本人がメチャクチャ楽しそうだもん」
近藤「鼻歌でも歌ってそうな雰囲気ですね」
左衛門佐「しかも、動きにやたらとキレがあるのはなぜなのか」
近藤「アドリブの踊りとは思えません」
宇津木「もしかして隊長、普段でもあんなことやってるんですか〜」
みほ「嬉しいときにやる、かな……」
会長「そんなこんなで、1曲目、終了ー」
『みほ「え、えーと次のきょ、きょ、曲は……」』
『\ニシズミサーン/\ミポリーン/\カワイイー/』
宇津木「隊長〜みぽりんコールが起こってますよ〜」
みほ「あれは……同じクラスのみんなだ……」
会長「西住ちゃん、人気者だねえ」
近藤「今回のライブで、違う科とか、違う学年のファンもできるんじゃないですか?」
左衛門佐「間違いないな」
〜〜〜
近藤「とうとう次が、最後の曲です」
会長「この時ってさ、みんなで一旦、舞台袖に引っ込んで……」
左衛門佐「はい」
会長「予定してた曲はアンコールも含めて全部やっちゃった。でも拍手が鳴りやまない」
近藤「そうでしたね」
会長「もう一回『DreamRiser』をやろう、って誰が言ったんだっけ?」
左衛門佐「それは……そういえば、誰だったでしょうか」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:11:03.35 ID:vz60xhPHo<> みほ「会長じゃなかったんですか?」
会長「実は私、宇津木ちゃんだと思ってたんだけど、記憶が定かじゃなくてさ」
宇津木「私は、隊長が言ったと思ってました〜」
みほ「じゃあ本当は、左衛門佐さんとか?」
左衛門佐「私はそんな提案などしない。僭越にもほどがある」
会長「それなら近藤ちゃん?」
近藤「先輩たちや優希ちゃんを差し置いて、私なんかが言えるわけありません」
宇津木「……それは、こういうことですね」
会長「何だい? リーダー」
宇津木「も〜リーダーはやめてくださいよ〜。バンドは解散したんですよ〜」
左衛門佐「いちいち話し方が変わって面倒臭い奴だな。いいから宇津木、言ってくれ」
宇津木「全員が、全員の声を聞いたんです」
みほ「どういうこと?」
宇津木「このバンドの全員が、同じことを考えていたんです」
みほ「じゃあ本当は、誰も、何も言わなかったかもしれない…」
宇津木「はい。みんなの気持ちが一つになるのは、演奏の途中ではよくあることですけど」
左衛門佐「練習でも舞台の上でも、何度もそういう瞬間があったな」
宇津木「この場合は舞台袖に引っ込んでも、それが続いてたんです」
会長「でも誰かが、“もう一回行こう”くらいは言ったよね」
宇津木「多分。でも、どの曲をやろうとか、どういう進行でやろうとか…」
会長「……」
宇津木「そういう具体的なことを言ったかどうかは、分かりません」
近藤「何も言わなくても、全員が何をやるのか、何をすべきかを分かってた、ってことだね」
会長「そんな状態の私らが、もう一回、出てきたよ」
『みほ「皆さん」』
左衛門佐「隊長の、最後のMCだ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:13:13.11 ID:vz60xhPHo<> 『みほ「こんなに多くの皆さんが集まってくれて、ありがとうございました。
私たちの演奏を聞いてくれて、本当にありがとうございました。
私たちのバンドには、名前がありません。
今回のイベントのためだけに、結成したバンドだからです。
戦車道の仲間たちで、楽器ができる人たち。そういう人たちが集まったバンドです。
戦車道の仲間たちは、全国大会で優勝できました。
優勝するまでの道程は、すごく大変でした。練習を、たくさんやりました。
試合では何度も、絶体絶命になりました。でも全員で、それを乗り越えました。
それができたのは、みんなで、仲間を信じあったからです。
戦車道の仲間たちには、いろいろなチームがあります。
趣味が同じ人たちが集まったチーム。同じ部活の人たちで結成されたチーム。
学年が同じで統一されたチーム。いろいろです。
今、このステージに立っているのは、そういうチームではありません。
楽器ができる人たちが、ただ集まっただけ。そんなバンドです。
だけど、戦車道のチームでも、バンドでも、やることは一つだと思っています。
それはやっぱり、仲間を信じること、仲間同士で信じあうことです。
どんな困難があっても、それさえできれば、乗り越えられると思っています。
私たちのバンドは、次の1曲で解散します。
でも、最後の瞬間まで、私たちは仲間を信じて演奏します。
そして、それを聞いてくれる皆さん。皆さんという仲間を信じて演奏します。
じゃあ最後に、もう1回『DreamRiser』を……本当に最後の曲を、聞いてください!
皆さん、本当にありがとうございました!」』
『左衛門佐「1、2、1・2・3」ドドタンッ』
『みほ「♪I just feel my wind♪I just feel my shine♪」』 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:15:48.10 ID:vz60xhPHo<> 近藤「隊長、カッコいい……」
宇津木「惚れ直しちゃいました〜」
会長「最後、バッチリ決まったね。西住ちゃん」
近藤「それまでギャグ路線だったから、シリアスな雰囲気とのギャップがすごいですね」
会長「だから一層、観客は話に引き込まれたんだよ」
左衛門佐「そして来るのが、宇津木の最後のソロ」
近藤「今度は隊長、踊らなかったんですね」
みほ「この時のこと、はっきり憶えてる。宇津木さんのソロに聞き入っちゃったの」
宇津木「……」
みほ「でもすぐに気付いた。自分がステージの上で、お客さんみたいになっちゃ駄目だって」
会長「このソロを聞けば無理ないよ。ほら始まった……神技だもん、これ」
近藤「指や手の動きが早過ぎて、目で追えない……」
みほ「練習では全然、やらなかったことだよね」
会長「宇津木ちゃん。この時のは全部、アドリブなんでしょ?」
宇津木「ちょっと気分がのっちゃいました。最後ですし」
左衛門佐「宇津木、本気出したな?」
宇津木「昔、リストやプロコフィエフを弾かされたことがあったんですけど…」
左衛門佐「……」
宇津木「難易度としては、それと同じくらいですかね」
会長「とんでもないことを、サラっと言うねえ」
近藤「優希ちゃんのソロが終わって…」
左衛門佐「少しの間があって、大拍手」
会長「演奏がすご過ぎて、みんな、拍手するのを一瞬忘れたんだね」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:17:59.47 ID:vz60xhPHo<> 近藤「今度は、会長が踊りだしました」
会長「宇津木ちゃん、ごめんねー。つい、はっちゃけちゃったわ」
宇津木「いえ、良かったと思いますよ」
近藤「そうですよ。やっぱりギターは、このくらいパフォーマンスをしないと」
宇津木「会長はルックスがいいんですから、視覚効果は絶大だったと思います。それに…」
会長「何ー?」
宇津木「あれだけ踊ってても、会長はきちんと楽譜どおりに弾きましたよね」
会長「そりゃまあ一応ね。最低限、しなくちゃいけないことだもん」
宇津木「左衛門佐先輩も、もっと何かやってよかったんじゃないですか」
左衛門佐「私は、普段入れてるフィルを、少し派手なものに変えた程度だったな」
近藤「シンバルを1枚か2枚、割っちゃうと思ってましたけど」
左衛門佐「冗談を言うな。楽器は全部借り物なんだぞ」
宇津木「妙子ちゃんこそ、会長と一緒に踊ればよかったのに」
近藤「私のレベルだとそんな余裕ないよ。たまにスラップのアドリブ入れるのが精一杯」
会長「西住ちゃんも、アクションが大きくなってきた」
みほ「この時は、何だかもう、体が勝手にステージの上を動き回ってる感じでした」
左衛門佐「宇津木の超絶技巧がまだ続いているな」
近藤「私はこれ聞いて、“あれ? こんな打ち込みの音、あったっけ?”って思いました」
会長「機械がやるような複雑なことを、実際に手で弾いちゃうんだからねえ」
宇津木「最後の曲に関しては、私、リーダー失格だったかもしれませんね」
会長「どして?」
宇津木「みんなを引っ張っていったのは、左衛門佐先輩と妙子ちゃんだったから」
みほ「……」
宇津木「ほかの3人が好き放題にできたのは、二人が音の土台を支えててくれたからです」
近藤「だってそれが、ドラムとベースの役目じゃないの」
会長「私みたいな素人が言うことじゃないけどさ、いい態勢だったと思うよ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:19:37.45 ID:vz60xhPHo<> 左衛門佐「それにしても、隊長」
みほ「何?」
左衛門佐「さっきは、どうしてあんなに落ち込んでいたんだ?」
みほ「だって……それは、やっぱり……」
左衛門佐「最後のMCは、何の準備もしていなかったんだろう?」
みほ「うん」
左衛門佐「それでも、あれだけ喋れるんだ。私が昨日言ったことは的外れだったか?」
みほ「あのMCを喋った時のことも、よく憶えてる」
左衛門佐「……」
みほ「ものすごく緊張して、でも、ものすごく集中してた」
左衛門佐「……」
みほ「まるで、全国大会の試合の時みたいだった」
左衛門佐「それなら、やっぱり戦車道と同じじゃないか」
みほ「……」
左衛門佐「隊長にとって、試合と同じに考えれば済むことじゃないか」
みほ「……自分だと、そんなの分からないよ……」
左衛門佐「……」
みほ「とにかく、この時は……これで最後、だったもの……」
左衛門佐「……」
みほ「最後、だったから……」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:21:16.63 ID:vz60xhPHo<> ♪チャーンチャーンチャーン♪
近藤「終わった……」
宇津木「終わった〜」
左衛門佐「終わったな」
会長「終わったねえ」
みほ「……」
近藤「……隊長?」
みほ「……う……」
宇津木「隊長〜?」
みほ「……ぐすっ。ううっ……」
会長「ありゃ。西住ちゃん……」
みほ「ぐすっ。ううっ。ぐす……」
近藤「隊長が、泣いてる……」
みほ「うう。うぐっ。ぐすっ」
会長「決勝で勝っても、表彰式でも、泣かなかったのにね」
みほ「ぐすっ。ううっ」
宇津木「隊長〜泣かないでください〜」
みほ「ううっ。ひぐっ」
宇津木「私が、抱き締めてあげますから〜」ギュッ
左衛門佐「何をやってるんだお前は」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:22:57.18 ID:vz60xhPHo<> 宇津木「何って〜隊長を抱き締めてるんですよ〜」
左衛門佐「宇津木」
宇津木「何ですか〜」
左衛門佐「隊長に、泣かせてやれ」
宇津木「どうしてですか〜」
左衛門佐「隊長は、涙をずっと我慢していたんだ」
近藤「ずっと我慢……どういうことですか?」
左衛門佐「昨日の夕方に偶然会った時、隊長が話していたんだ」
宇津木「何をですか〜」
左衛門佐「最後の曲で、泣いてしまうかもしれない、と」
宇津木「……」
左衛門佐「私は、泣くなと言った。泣いてもその意味は、生徒たちに伝わらない」
近藤「バンドの解散が悲しい、っていう意味……」
左衛門佐「そうだ。今の私たちは、その涙の意味を分かる」
宇津木「……」
左衛門佐「でも生徒たちは、泣く理由を理解できないだろう」
近藤「……」
左衛門佐「だから泣くな、と言った。隊長は、それを約束してくれなかったけどな」
宇津木「でも隊長は、最後の曲で泣きませんでした〜」
左衛門佐「ああ。だから、もし約束をしていれば、隊長はそれを果たしたことになる」
宇津木「……」
左衛門佐「だから、泣かせてやれ。涙をずっと、我慢していたんだ」
みほ「ぐすっ。うう。ううっ」
左衛門佐「だが、隊長」
みほ「ううっ。ぐすっ。ひぐっ」
左衛門佐「いつまでも泣いているんじゃない。すぐ切り替えるんだ」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:25:03.39 ID:vz60xhPHo<> みほ「……み、みんな、は……ううっ。どうして、そんなに……平気、なんですか……?」
近藤「平気って、何がですか? 隊長」
みほ「か、悲しく、ないんですか……? ぐすっ。バンドが、解散、しちゃうのを……」
宇津木「それは、悲しいですよ〜」
近藤「私だって悲しいし、寂しいです。隊長と一緒ですよ」
みほ「それなら、どうして……私みたいに、泣かないん、ですか……?」
宇津木「泣いちゃうくらい寂しいのは、私も同じです〜」
近藤「でも……隊長にこんなこと言って、いいのかどうか分かりませんけど……」
会長「近藤ちゃん」
近藤「はい」
会長「今の西住ちゃんに、そういう気の遣い方は意味ないよ。言ってみ?」
近藤「あ、はい……。だって、隊長…」
みほ「……」
近藤「泣いてたら、先へ進めないじゃないですか」
みほ「……」
近藤「うちのキャプテンが、戦車道の試合の最中に、こう言ったことがあるんです」
みほ「何……?」
近藤「“泣くな。涙はバレー部が復活した、その日のためにとっておけ”」
みほ「……」
近藤「キャプテンはきっと、涙は嬉しいときに流すものだ、って言いたいんだと思います」
みほ「でも…」
近藤「はい。確かに、悲しいときやつらいときには、どうしても涙が出ちゃいます」
みほ「……」
近藤「だけど、泣いたままでいることは、悲しさをもっとひどくすると思うんです」
みほ「……悲しさを、もっと、ひどく……」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:27:22.74 ID:vz60xhPHo<> 会長「近藤ちゃんの言うとおりだねえ」
みほ「会長……」
会長「西住ちゃん」
みほ「はい」
会長「私ら3年は、そろそろ引退すっから」
みほ「……!」
会長「生徒会も、戦車道も。戦車道は授業だから、参加しなくなるってことはないけど」
みほ「……」
会長「練習はこれから、今後の試合や大会に向けたものになってくと思うんだ」
みほ「……」
会長「そういう練習の主流から、もう、私らを外してもらった方がいいよね」
みほ「……と、いうことは……運営も……」
会長「もちろん。西住ちゃんや左衛門佐の学年が、やってくことになる」
みほ「……」
会長「西住ちゃんを中心にして、ね」
左衛門佐「来るべき時が来たな、隊長」
みほ「……」
宇津木「泣いてる場合じゃないですよ、隊長〜」
近藤「私たちが、全力で支えますから」
みほ「……」
宇津木「それに、バンドが解散しても、私たちのつながりが消えちゃうわけじゃないです〜」
近藤「これから何回だって、この5人で集まりましょうよ」
宇津木「今度は、戦車道や楽器の練習とかじゃなくて…」
近藤「どこかへ遊びに行ったり、しませんか?」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:29:36.92 ID:vz60xhPHo<> みほ「……」
左衛門佐「名案だ、近藤。打ち上げの第2弾といくか」
みほ「……うん……分かりました!」スック
宇津木「おわっ」ドテ
会長「おっ、西住ちゃんが立ち上がった」
左衛門佐「仁王立ち」
近藤「でも、その勢いで…」
左衛門佐「抱き付いていた宇津木が跳ね飛ばされたな」
みほ「ごめんなさい宇津木さん、大丈夫?」
宇津木「へ、平気です〜」
みほ「みんな!」
会長「うん、何だい? 西住ちゃん」
左衛門佐「何だ、隊長。言ってくれ」
宇津木「隊長、指示してください〜」
近藤「私たちは何をすればいいですか?」
みほ「今度の帰港日、この5人で、遊びに行きます!」
会長「お。いいねえ」
近藤「やったー! 行きましょー!」
左衛門佐「そういえば、大洗への帰港日がもうすぐだな」
宇津木「何をしますか〜」
みほ「みんなで、ドライブです!」
近藤「えっ? だって私たち、免許も、車も……」
みほ「私が車を出します!」
左衛門佐「どういうことだ?」
会長「西住ちゃん、あの免許を使うんだね」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:33:05.88 ID:vz60xhPHo<> みほ「やっぱり会長は、私がそれを持ってるのを知ってましたか」
会長「そりゃあね」
近藤「“あの免許”って?」
会長「西住ちゃんはね、公道を戦車で走れる特殊な免許の保有者なんだよ」
みほ「戦車道の競技者は、学校や警察が指定した区域内を、戦車で走行できます」
近藤「学園艦の場合は丸ごと学校だから、全部の区域ですね」
宇津木「その範囲なら、免許なんて要りません〜」
左衛門佐「だが隊長が持っているという、その免許は?」
みほ「陸地の、指定された区域外でも、自由に走れるんです」
近藤「それって、普通の車と同じじゃないですか。そんな免許があるんですね」
みほ「黒森峰にいた時、取得させられました。元々は緊急時の移動や輸送用なんです」
会長「でも走るとき、制限が厳しいんでしょ?」
みほ「はい。今、近藤さんが言ったとおり、普通の車と同じ交通ルールに従いますし…」
左衛門佐「主砲や機銃を使うなど、とんでもないな」
みほ「弾薬と火器には全て封印が必要。方向指示器を取り付けなくちゃいけません」
会長「事前の許可申請や、ナンバープレートってどうすんの?」
みほ「どっちも要りません。お巡りさんに停められたら、免許を提示するだけで大丈夫」
宇津木「どの戦車を使うんですか〜」
みほ「あんこうチームのW号にします。私が一番操縦しやすいから」
近藤「W号なら、天気がよければ、ハッチを全部開けて…」
みほ「はい。快適に走れると思います」
宇津木「気持ち良さそう〜ワクワクしてきました〜」
みほ「練習中じゃないから、音楽でもかけながら走りましょう」
宇津木「それなら、私が担当します」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:34:45.00 ID:vz60xhPHo<> 近藤「どうするの?」
宇津木「ポータブルのキーボードを持っていく」
会長「宇津木ちゃんが、万能のジュークボックスになるんだね」
宇津木「ジュークボックスでも、カラオケでも。知らない歌でもすぐに伴奏しますよ」
左衛門佐「そんなことができるのか」
宇津木「即興演奏、即興伴奏、初見は基本ですから」
みほ「宇津木さん、キーボードの電源は?」
宇津木「丸一日くらいだったら内蔵バッテリーで大丈夫です」
みほ「分かりました。じゃあそれを担当してください」
宇津木「喜んで〜」
左衛門佐「私は、糧食を担当しよう」
近藤「糧食……お弁当ですか?」
宇津木「左衛門佐先輩が〜? 大丈夫ですか〜」
左衛門佐「バカにするな。このくらい普通にこなすのが、女の甲斐性というものだ」
宇津木「左衛門佐先輩って、古い女なんですね〜」
左衛門佐「そういう場合は“古い”じゃなく“古風な”と言え」
みほ「じゃあ左衛門佐さんには、それをお願いします」
左衛門佐「了解」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:37:20.09 ID:vz60xhPHo<> 近藤「あの、私は何を……」
みほ「近藤さんはナビを担当してください」
近藤「あ。通信手の席に座って、ですね」
みほ「うん。それと、ハッチから頭を出して、目視で周囲の警戒をしてほしいの」
近藤「走るのは、競技のために交通が制限されてる場所じゃないから…」
みほ「ほかの車はもちろん、歩行者や自転車だっている。私も気を付けるけど」
近藤「背の高い私が、いつも周りを見てた方がいいわけですね」
会長「西住ちゃん、私は?」
みほ「会長は、一番大事な役目です」
会長「何だい、それは?」
みほ「常にキューポラから頭を出して、周りに会長の顔が見えるようにしてください」
左衛門佐「なるほど……。うまいやり方だな、隊長」
宇津木「どういうことですか〜」
左衛門佐「冷静に考えてみろ。この計画は、微妙な行動といえなくもない」
近藤「あ……それもそうですね。学園の備品を私用で持ち出すなんて」
宇津木「それに、ほかのみんなが知ったら、いろいろ言われちゃうかもしれません〜」
近藤「“あの子たちだけ、何やってるの?”って、ね」
左衛門佐「でも、やりたいだろう?」
宇津木「もちろんですよ〜」
近藤「こんな機会、滅多にありません」
左衛門佐「だから、会長……生徒会長には、周囲からよく見える場所にいてもらうんだ」
近藤「そうか。この5人以外には、生徒会の活動だって思わせるんですね」
左衛門佐「会長は学園艦の中だけじゃなく、大洗でも顔が売れている」
宇津木「会長が乗ってるなら、この戦車は生徒会の仕事中って、誰もが思いますね〜」
近藤「音楽を流しながら公道を走っても、広報や宣伝活動くらいに思われるだけです」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:39:36.53 ID:vz60xhPHo<> 会長「何だよー。私ゃ、公務を偽装するためのお飾りかよー」
左衛門佐「会長、拗ねないでください。これは極めて重要な役割です」
宇津木「この5人以外、戦車道のみんなにさえ、勝手に誤解してもらうんですから〜」
左衛門佐「会長が乗っていたことが明白なら、公務だったことを誰一人疑いません」
近藤「隊長。生徒会の活動を偽装できるなら、いっそのこと……」
宇津木「私服でも、いいんじゃないですか〜」
みほ「はい。そのつもりです」
宇津木「やった〜! 私服で戦車です〜!」
左衛門佐「パンツァージャケットや制服以外の格好で戦車に乗るのは、新鮮だな」
近藤「ラフな私服の方が意表をついてて、宣伝活動らしくなりますね」
みほ「通りかかった人に、私たちの写真を撮ってもらいましょう。これで完璧だと思います」
会長「アリバイ作りが、だね? 西住ちゃん」
みほ「もし後で何か問題が起こったら、私が責任を取ります」
会長「そんな必要あるかい?」
みほ「え……どういうことですか?」
会長「西住ちゃん。目の前にいるこの私を、一体誰だと思ってんの?」
宇津木「おお〜会長、カッコ良過ぎます〜」
近藤「万事、生徒会長に任せとけ、ってことですね」
左衛門佐「後光が差して見えますよ」
みほ「会長……ありがとうございます」
会長「いーってこと。みんなには今回、無理なお願いをしたんだから」
近藤「だから、そんなことありませんって」
左衛門佐「もし、私たちへのお礼だと考えているのなら、そんな必要ありません」
宇津木「そうですよ〜。こうして、打ち上げまで開いてもらってるんですから〜」
会長「じゃあ、この計画のフォローが、私からの最後のお礼だね」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:40:58.10 ID:vz60xhPHo<> みほ「でも、会長にそういうことをしてもらうのは、そろそろ終わりにしたいと思います」
左衛門佐「そうだな。会長たちの持つ政治力に、いつまでも頼ることはできない」
みほ「私、これから、いろいろなことを憶えます」
会長「……」
みほ「生徒会の皆さんと同じくらい知恵が回るようになるとは、とても思えませんけど」
会長「何言ってんのさ。もう西住ちゃんは、それをできてるじゃん」
みほ「今回の、この計画ですか? 会長はやっぱり分かってましたか」
会長「とーぜん。これは、私たちがやった方法の応用でしょ?」
みほ「はい。“余計な情報は、必要ない”」
会長「自分たちからは余計な情報を何も与えない。何も語らず、何もコメントしない」
みほ「そして、周りの人たちには全員、こちらに都合のいい誤解をさせたままにしておく」
会長「くっくっく。西住ちゃん」
みほ「何でしょう、会長」
会長「おぬしも、なかなかワルよのう」
みほ「いえいえ、会長にはかないませぬ」
会・み「むっふっふっふ」
左衛門佐「何をやっとるんですかアナタたちは」 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>saga<>2013/09/02(月) 20:43:16.46 ID:vz60xhPHo<> 会長「何だか西住ちゃんは、一気に逞しくなっちゃったね」
左衛門佐「素早い計画立案、その計画の巧妙さ、メンバーへの矢継ぎ早の指示……」
会長「遊びの計画ではあるけどね。立派になったよ。もう私は、何も心配してない」
左衛門佐「でも逆に、このくらいじゃないと困りますよ」
会長「それは、そのとおりだねえ」
左衛門佐「隊長が元から持っている純粋で素直な性格は、そのままでしょうから」
会長「うん。左衛門佐もそう思うかい?」
左衛門佐「相変わらず、誰かが手を握っていてやらないと、駄目でしょうね」
会長「手?」
左衛門佐「いえ……。とにかく隊長は、競技以外でも風格、貫禄が身に付いてきました」
会長「そーだね。これなら、私ら3年がいつ引退しても大丈夫だねえ」
みほ「会長と左衛門佐さん、二人だけで何話してるんですか?」
左衛門佐「あっ、何でもありません、隊長!」
会長「……左衛門佐、どうして敬語になるの?」
左衛門佐「……何となく」
みほ「じゃあ今度の帰港日! この5人で…」
近藤「普段は走れない、公道上を…」
宇津木「音楽を流しながら…」
左衛門佐「弁当を持って…」
会長「ジャケットでも制服でもなく、自由な私服で…」
みほ「戦車に乗って、お散歩です!」
終 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/02(月) 20:44:48.96 ID:vz60xhPHo<> 以上です。
レスをくださった皆さん、ありがとうございました。
こんな、ただ長いだけのようなSSでも読んでくださるかたがたがいると分かり、
励みになりました。
そして、これを読んでくださった全ての皆さんに、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。
数日後にhtml化申請をしますが、その際に「なぜ、この5人なのか」ということを
中心に、少し解説のようなものを書いてみたいと思います。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/02(月) 20:46:00.30 ID:mQPWTAezo<> 乙でした。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/02(月) 21:04:47.69 ID:5nCByxxko<> 乙〜 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/02(月) 21:46:36.94 ID:KqtMu3+b0<> 乙 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/03(火) 19:18:18.81 ID:U4V2whsd0<> 今、おいついたー、乙
すごく珍しい組み合わせで、みんないきいきしてて楽しかった! <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/04(水) 19:11:53.09 ID:3tc4pgIJo<> >>1です。
皆さんが既にお気付きのとおり、この5人の組合せには元ネタがあります。
それは、『メガミマガジン』2013年7月号の付録ポスターです。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/04(水) 19:13:10.13 ID:3tc4pgIJo<> このポスターが公になった際、描かれたキャラクターの人選について少し話題に
なりました。これは、延べ人数でいうと車長、砲手、通信手がそれぞれ二人ずつ、
操縦手がいないというメンバーです。こうなった理由についていろいろな
推測がなされましたが、私は、その時に出された「最初期の各車から一人ずつ
ではないか」という見解が妥当だと思っています。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/04(水) 19:14:12.00 ID:3tc4pgIJo<> 人選の理由が何にせよ、ポスターはいわゆる版権絵なので、この組合せは
公式なものです。私は、それならこの5人でSSを一本書いたれ、と思いました。
このポスターにある状況、つまり私服の5人が戦車とともに公道上にいる、という
場面を可能にする物語を考えていったのです。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/04(水) 19:15:48.82 ID:3tc4pgIJo<> そこに、バンドという要素を絡めました。学園コメディの定番テーマには、文化祭、
体育祭、修学旅行、卒業式などの学校行事、バレンタインデー、夏祭り、海水浴、
クリスマス、初詣などのいわゆる季節ものに加え、野球、バンド、主要キャラの
退部騒動、些細な誤解をきっかけとした友情崩壊の危機などがあります。今回は、
バンドというテーマを使ってみたのでした。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/04(水) 19:19:07.27 ID:3tc4pgIJo<> 訂正とお詫びを申し上げます。
第4章において宇津木ちゃんの名前を3か所、「優希」と誤表記しています。
正しくは「優季」です。申し訳ありませんでした。特に宇津木ちゃんファンの皆様に、
深くお詫びを申し上げます。これを読んでくださった数少ないかたがたの中にいるか
どうかは分かりませんが。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/04(水) 19:20:05.55 ID:3tc4pgIJo<> 最後にもう一度、これを読んでくださった全てのかたがたにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。 <>
以下、新鯖からお送りいたします<>sage<>2013/09/10(火) 07:50:55.66 ID:jF+e5t+Ko<> 今更だが乙! <>