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HTML化した人：
Kastanie
★
ロレンス「狼は夢をみる」
1 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:31:06.29 ID:gz0LXl2DO
月のきれいな夜だった。
＊短い
＊香辛料
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1391880666
2 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 02:32:54.66 ID:vj1Es+x2o
支援
3 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:32:57.06 ID:1qVLRqWMo
「？」
「…あっ」
「す、すまんの。起こしてしまったかや」
「…ああいや」
「ちょうど腹の虫に起こされたところだ」
「休みをとるべきときにとることができるのも、いい旅人の条件だ。へんに飯をけちるもんじゃないな」
「……ではぬしはどうしてもよい旅人にはなれそうにないの」
「商人だからな」
「たわけ」
くつくつとホロが笑った。
4 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:34:58.30 ID:gz0LXl2DO
「それで。どうした。寒かったか」
「……んむ、それもまあ、あるがの」
「？」
「……ほれ」
「小腹が空いておるなら塩辛いものでもどうじゃ。一杯わっちに付き合わぬかの」
「塩辛いもの？」
「むぅ」
「これのことか？」
そう言って軽くホロの頬を拭った。
「た、たわけ。くさい台詞を……ね、寝起きなんじゃ！茶化すでない」
「いって」
5 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:36:06.44 ID:1qVLRqWMo
「まあ」
「んぷ」
「いいぞ。俺も寒かったしくっついた方が暖かいしな」
「……」
「ふん。どうせわっちの尻尾が目当てなんじゃろーが」
「分かってるならその尻尾を落ち着かせてほしいんだが」
「……っ。たわけっ」
「いたいって」
6 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:37:42.46 ID:gz0LXl2DO
「む……」
そっと、耳ごと頭を優しく撫でると、大人しくなった。……元々寝惚け交じりなだけかもしれない。
「ふん」
「少しだけだぞ」
「かまわぬ。ぬしがしっかりとした旅人たるためにわっちも協力しんす」
「……ああ。ちゃんと休めるときには休まないとな」
「んむ」
くすぐったそうにホロが笑った。
7 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:39:07.57 ID:1qVLRqWMo
「今日は月がきれいじゃ」
「ああ」
「んむ。…ほれ。ぬしのぶん」
「……どうも」
「くふっ。ぬしは可愛いのー。いつまでもこれには慣れぬのー」
「……」
「……生憎。ただの商人なもんで」
「くふふっ」
また笑った。
8 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:40:40.11 ID:gz0LXl2DO
「怖い夢でもみたのか？」
「…………、くふ」
「夢ならいまもみておりんす」
「ん？」
「……ずーっと昔から……夢みていたような……いまは平和な毎日じゃ」
「……平和か」
「これでも、俺は毎日必死に生きているんだが」
「くふっ。そんなぬしを尻に敷いてわっちは平和に生きておる」
「いつになったら俺を隣に座らせてくれるのかな」
「いつかのぉ」
嬉しそうにとぼける。
9 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:41:18.40 ID:1qVLRqWMo
「ときどき夢から覚める」
「……？」
「寒くて思い出す。だからこうして」
「……」
「わっちは夢をみておる。いまもこうして……」
「醒めぬよう。夢をみておるんじゃ」
「……」
「そうか」
「うむ」
10 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:42:09.35 ID:gz0LXl2DO
くり返し、頭を撫でる。
とてもやわらかい亜麻色の髪。
人の姿の彼女はとにかく小さくて……頼りない。丸めれば耳だって、まとめて、その小さな頭は片手に収まる。
「……むぅっ耳を押さえるでないわ！」
「はは」
怒られた。
11 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:42:57.38 ID:1qVLRqWMo
「よしよし」
「……むぅ」
「むー。……ふん。後にも先にも……わっちを子のように扱うのはぬしくらいのものじゃ」
「それは光栄だ」
「たわけ」
「ええたわけですとも」
「……くふふ。たわけ」
「はい。……ははは」
12 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:44:41.06 ID:gz0LXl2DO
いつものように皮袋を手渡し合いながら、お互い、いつもよりくり返し舌を湿らせた。
「だが産まれたときから賢狼様だったというわけでもないだろう」
「そんな昔のことは忘れてしまいんす」
「じゃあいま夢をみているということも、忘れてしまえばいいさ」
「いまだけでも、忘れてしまえばいい」
「…………んむ」
「ああ」
13 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:45:24.20 ID:1qVLRqWMo
「うたがあるんだ」
「うた？」
「ああ。商人に伝わる、まあ……まじないみたいなもんだ」
「夜こうした眠れないときは、うたう」
「……それは子守り歌ではないかや？」
「失敬な。勇敢な旅人のうただぞ」
「ぷっ」
「べつに笑うところじゃないんだが……」
「くふ、ふ……すまぬすまぬ。くふふっ……まあよい。聴かせてくりゃれ？」
「ああ」
14 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:46:01.93 ID:gz0LXl2DO
「……音痴じゃのぅ」
「初めて言われたぞ」
「それはぬしが」
「その歌を聴かせるのはわっちが初めてじゃからじゃろ」
「う……」
「くふふ。たわけめ」
「いて」
「まあ、よい」
15 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:46:32.77 ID:1qVLRqWMo
ホロは俺の胸に埋まるように丸くなり、目を閉じ、小さく微笑んだ。
「ぬしのうたでがまんしんす」
「そうしてくれ。残念だがここには俺しかいないから」
「んむ」
「ぬししかおらぬから」
「ああ」
「んむ」
「ぬしも、わっちしか聴き手はおらぬ。気にせず歌ってくりゃれ」
「ああ」
「ホロしかいないからな」
「んむ」
16 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:47:27.01 ID:gz0LXl2DO
「では……お休みじゃ」
「ああ。お休み」
今日は月がきれいだ。
けれど狼はこちらを向いて、静かに寝息を立てている。
俺のうただけが静かに響く。
狼は今日も夢をみる。
「……おやすみ」
17 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:47:55.91 ID:1qVLRqWMo
おしまい
18 ：
◆CGghdYInt.
[saga]：2014/02/09(日) 02:49:06.93 ID:gz0LXl2DO
寝るわ
読んでくれたひとさんくす
19 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 02:49:53.80 ID:696eKKbDO
乙
20 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 03:19:01.11 ID:lniweNSb0
乙！
21 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 03:30:29.55 ID:XjdnT+GEo
乙
ホロとロレンスはホント好き
22 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 07:20:09.54 ID:2beVjlw10
久々の香辛料SS、よかった乙
寝起きだし夢から醒めるのが怖くていつもより素直なホロ可愛い
23 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 09:10:57.51 ID:xhHB+q80o
懐かしい
乙なんだぞー
24 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 09:41:39.30 ID:vj1Es+x2o
乙乙！！
25 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 12:10:01.60 ID:pSmSxyDAO
乙
26 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[saga]：2014/02/09(日) 17:05:23.05 ID:aqKrCOseo
長いことやってた人のスレが落ちて久しいから読めて嬉しかった
貴重な香辛料SS乙
27 ：
以下、２０１３年にかわりまして２０１４年がお送りします
[sage]：2014/02/09(日) 17:08:47.23 ID:8Og1vSERo
ホロかわええなぁ やっぱり香辛料SSの火は消してはならないな 乙です
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