以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:00:15.99 ID:pEu0rAd60<>

これまでの事件↓
第一幕・悪魔館殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447491615/
第二幕・魔神島殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449306013/
第三幕・魔月学園殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453539614/
第四幕・傀魔伝説殺人事件
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465030820/

※神崎蘭子が主演のドラマという設定なので、当たり前のようにキャラ崩壊

※事件に巻き込まれるキャラクターは殆ど仮名を使った架空のオリジナルキャラ

※ミス研部員達の名前は思いっきりアイドル名ですが、一応彼女たちは仮名で出演しているという設定です。

※前SSで「魔導海域殺人事件」と予告してましたが色々書き直し、事件名を「逢魔の海の殺人」に変更しました。





※このSSを読むときは、部屋を明るくして、できるだけ離れて観てね!!探偵ランとのお約束だよ!!



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489827604
<>神崎蘭子「逢魔の海の殺人」【堕天使探偵・第五幕】 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:01:12.44 ID:pEu0rAd60<>

〜ここまでのあらすじ〜


天界でのほほんと暮らしていた大天使ラン(神崎蘭子)は

幼馴染である大天使チエリエルのプリンをこっそり食べた罪で人間界に堕とされてしまう。


ランが天界に帰るために、彼女の父である主神によって課せられた使命…

それは、人間界にて人を唆す高位悪魔、七つの大罪の浄化であった。


D県警きっての名刑事(笑)である赤羽根刑事のアパートに居候する傍ら

大罪悪魔にとり憑かれた人間たちが仕掛ける悪魔的殺人計画をことごとく看破していく堕天使ラン


果たして彼女は、七つの大罪の全てを浄化することが出来るのか…!?


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:02:43.20 ID:pEu0rAd60<>

プロローグ



キミは決して間違っていない。


キミは突然、大切なものを失った。

キミの幸せを大きなものにしてくれる、かけがえのないモノだ。


それを、ある人物の至極勝手な理由で失った。

キミの人生に付けられた傷はとても大きい。


奴は、キミが幸せな人生を送る確率を悉く抹殺した。

にもかかわらず、奴はその報いを受けることなく、のうのうと生きている。


キミは奴を許せるかい?

許せる人もたまに居る。それはそれで美しい。尊重すべき意見ではある。


でも…ボクは絶対に許せない。

たとえ天が裁かなくとも、天の代わりにボクが裁いてやりたいくらいだ。


そのくらいボクは、キミを不幸にした奴が憎い。


もしよかったら。

キミが受けた苦痛を、ほんの僅かでも奴にぶつけてみたいと思うなら。

禁断の果実をかじる覚悟があるのなら。


ボクはキミに、あらゆる手段を提供しよう。

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:04:35.01 ID:pEu0rAd60<>

数日前 放課後 D県 聖月学園 1F 職員室



クラリス「…はぁ、ぅー」げっそり


女教師A「随分お疲れみたいですね、クラリス先生」


クラリス「あ…っ、い、いえいえ!…そんなことは…」あせあせ


女教師A「まあまあ、分かってますよ、先生」

女教師A「さすがのクラリス先生も、あの問題児たちの教育は大変でしょう」


クラリス「…はい?」


女教師A「ほら、ミス研の…」


クラリス「あ、ああ…それは…」


女教師A「修道誓願を立て、主に御身を捧げる日々を過ごす」

女教師A「それが私達であるというのに…」


女教師A「あの子たち…やれ、ベルフェゴールだ、サタンだのと…」


クラリス「…」


女教師A「やれ、悪魔のいけにえだ、死霊のはらわただのと…」


クラリス「…」


女教師A「やれ、クリームブリュレだ、クレマ・クレマーダだのと…」


クラリス「…」


女教師A「上級生の城ヶ崎もサボり魔で有名ですし…まともなのは響子ちゃんだけじゃないですかねぇ…」

女教師A「まあ敬虔なクラリス先生ですから、心配はしてないですけど…」


女教師B「若いわねぇ…アナタ」


女教師A「へ?」


女教師B「あーいう真面目そーなコほど、見かけによらず凄いコトやらかしちゃったりするもんなのよ」


女教師A「そーですかねぇ?」


クラリス「あ、あはは…」

クラリス(確かにミステリー研究部は、大目に見ても…シスターらしからぬ子たちばかり…ですが…それよりも…)

クラリス(気になるのは彼女…天使ラン様は、何を御悩みになられているのでしょうか…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/18(土) 18:05:34.09 ID:KbR5Fgv10<> 待ってた 過去作読み返した時に>>1が描いてる絵が期限切れで見れなくなってるんだけどいつか再うpしてもらえないだろうか <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:07:26.15 ID:pEu0rAd60<>

数日前 放課後 聖月学園 東校舎 ミス研部室



メアリー「永遠なる主、ツァバトの神」


小梅「栄光に…満ちたるアドナイの…神の名に於いて…」


メアリー「さらに口に出来ぬ名、四文字の名に於いて」


小梅「オ・テオス…イクトロス…アタナトスに於いて…」


メアリー「秘密の名、アグラに於いて、アーメン」



メアリー「やぁ!!」小梅「はっ…!!」







メアリー「失敗だワ…」がっくし


小梅「なにが、い、いけなかった…のかな」


メアリー「ふむぅ…」



ラン「…」ボーッ…


クラリス「…」チラ

クラリス(心ここに在らず…)

クラリス(遠方の村にて起こった事件を解決したと聞きましたが…此方に帰ってきてからはずっとこんな調子)

クラリス(なんとか私達で癒してあげられないものでしょうか…)んー


美嘉「あのー、先生?」

美嘉「アタシが言うのもなんだけど…アレ止めなくていいんですか…?」


クラリス「…」



小梅「も、もしかしたら…魔法陣の、こ、この…『W』…『VV』の、ま、間違いじゃ…?」


メアリー「あ…なるほど…盲点だったワ!響子センパイ!」


響子「どうしたのー?描き直しー?」



クラリス「!」はっ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:14:37.54 ID:pEu0rAd60<> >>5

実は年始早々PC物故になって、PCメモリに保存してたSS全飛びしました

ただ、どこかの段階でUSBメモリとかに一時置きしたのが残っているかも。

漁ってみますね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:15:30.78 ID:pEu0rAd60<>


クラリス「いけませーん!!二人とも!!」バッ


メアリー「!」

小梅「!」



クラリス「あ、悪魔を調伏などと、何を考えているのですっ!?」

クラリス「いつぞやの一件を忘れたのですかっ!?」

クラリス「悪魔を召し寄せることによってどんな災いを呼んでしまうか分からないのですよ!?」


メアリー「…別に、忘れたわけじゃないノ」

メアリー「でも、いつまた第二第三の宇佐美先輩が現れるか分からないんだカラ、誰かが身をもって恐ろしさを証明しないト」

メアリー「学園のみんなの前で、本物の悪魔を見せつければ…カッコイ…じゃなくテ、恐ろしいと思ってくれれバ…」

メアリー「そうすれば、もうあんな出来事は起こらないと思ったかラ…」しゅん…


クラリス「…」


メアリー「…」うわめづかい


クラリス「そういう、ことならば…仕方ありません…許可しましょう」


メアリー「よっしゃー!小梅ちゃん、黒ミサの女王目指して頑張るわヨ!!」ぱーん


小梅「おぉー…!」はいたっち


美嘉「先生チョロくない?」






ラン「…」ぼーっ


クラリス「はぁ…」


美嘉「…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/18(土) 18:18:18.06 ID:HhBUz7WlO<> おお久しぶりだ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:21:12.95 ID:pEu0rAd60<>

数日前 放課後 通学路


響子「気晴らし、ですか?」


美嘉「ん。なんか良いアイデア無いかなって」

美嘉「あの子、すっかり無口になってんだよね。考え込んでるってか、山の方で事件解決してからかな」



ラン「…」とぼとぼ



メアリー「…それはそうなんだけド…」


小梅「聞いて、み…みても、話してくれな、い…」


響子「向こうで何か、悲しいことがあったんだと思います…」


美嘉「…」チラ



ラン「…」とぼとぼ



美嘉「そっとしとくのもアリっちゃアリだけど…クラリス先生の心労もキツイ感じになってるから、部の仲間としてなんとかしなきゃいけないのは確かでしょ」


メアリー「まーそのお蔭で宿題減ったからちょっぴりハッピーなんだけド…あうち!」


美嘉「で!そんな部全体のムードを鑑みて…」

美嘉「仮にも部長であるアタシは、きたる春休みにどっか合宿しようかなーって考えてるワケよ」


小梅「…合宿!」


美嘉「そ!きれいな景色に、美味しいゴハン…なーんてテンション爆上げの旅行ツアーを探してるんだー」


メアリー「えー!?ミステリー探索じゃないノ!?」


美嘉「だって春休み合宿って、いい思い出が全然なんだもん!」

美嘉「去年なんて山登って遭難しかけたしさ!UFOとチャネリングするだかなんだかで!」


小梅「ね、ね、隣の…県、なんだ、けど、出るって…噂の、は、廃病院が…」


美嘉「なるほど、ミス研的にはいいカンジ。いい感じだけども、それ落ち込んだ中高生が行くトコじゃないからね!」

美嘉「うちらの事情的にも山は却下!病院もダメ!てかそんな所シスターが行く場所じゃありません!!」


響子(それ言っちゃったらそもそもミス研自体…)


メアリー「…」

メアリー「要するに、ミステリーがあっても、食べ物がおいしくて、眺めが綺麗ならパーフェクトなんでしょう?」


美嘉「ん?」




メアリー「フフーン!」

メアリー「アタシに良い考えがあるワ!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:24:08.91 ID:pEu0rAd60<>

前日 夜 D県 赤羽根のアパート 居間



赤羽根「合宿?」


ラン「む。同胞と共に、新緑という名の神癒を享けんとす(今週の春休みにミス研メンバーたちとお泊まりすることになりました)」


赤羽根「へぇ、どこに行くんだ?」


ラン「深淵の赴く儘よ(それが…行ってからのお楽しみ、らしいんですけど)」


赤羽根「…ほぉ、なんか気になるな」

赤羽根「まー大事にはならないだろ。楽しんで来いよ。悪魔退治も残すところ半分以下なんだし」


ラン「ん…」


赤羽根「…ところで」


ラン「?」


赤羽根「橘家の一件以来、元気ないじゃないか」


ラン「それは…」


赤羽根「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:28:00.34 ID:pEu0rAd60<>

ラン「我が翼は天神の翼、即ち不変にして普遍の正義と共に在り(今まで私は、純粋な邪悪と戦っている気持ちで、事件を解決してきました)」

ラン「我が言葉は天神の言葉、闇を祓う曇り無き威光と共に在る(悪魔のやっていることは許されない罪で、絶対に裁かなきゃって思った)」

ラン「しかし我が心は…幾多の邂逅の果て(でも…いろんな事件と出会っていくうちに…彼らは…)」

ラン「確とした答を失いつつある…(この世界で苦しんでいる、救われるべき誰かに、手を差し伸べているようにも見えてしまっているんです)」


赤羽根「…」


ラン「あろうことか、真理を掻き乱す闇は我が掌なのではないかと(もしかして私は…幸せになろうとしていた彼等の邪魔をしているんじゃないか…って)」


赤羽根「…例えば…公共の福祉って言葉があってな」

赤羽根「自分が幸せになる為だったとしても、誰かを蔑ろにしちゃいけないっていうのが、ここ、法治国家の見解だ」


ラン「咎人は無より産まれし従者では無い…忌むべき因果の歪が確とあった(これまでの犯人は…その、蔑ろにされた側の人達でした)」


赤羽根「…だからって、あいつらのしたことが許されるわけじゃないだろ?」

赤羽根「されたからって、やり返していいわけじゃない。終わりがなくなる」


ラン「迷える子羊が茨を愛す理由などない。だが呪われしオルタナティヴは救済を許さない(分かってます…でも、彼等だって別の方法を沢山考えたはずなんです)」

ラン「『色欲』は闇薄き活路を一筋と定め、咎人の背を押した。対する我等は光を射し、傀儡廻を救えたと思うか?(アスモデウスの事件…彼女は罪を犯す以外に、幸せになれる選択があったと思いますか?)」


赤羽根「それは…」


ラン「我が相棒よ、天神と白き翼の至高なる真理は、絶対福音(赤羽根さん、パパと私達天使は、みんなを幸福で満たすため、救済するために生まれました)」

ラン「…大罪の化身はその真言を闇に飲ませ、天に吠えている(…悪魔共は、そんな私達に問いかけているんです)」


ラン「これは、我等にする挑戦よ…(『お前たちは間違っている』と…)」





赤羽根「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:30:32.91 ID:pEu0rAd60<>

前日 深夜 D県 赤羽根のアパート 居間


赤羽根「…むにゃ…ぐぅ…」

赤羽根「…うっうー…にひひ…」








ラン「…」

ラン(私達は間違ってなんかない)

ラン(なのに…私は何故そのことに自信が持てなくなっているの…?)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:34:18.80 ID:pEu0rAd60<>

1日目 朝 埠頭 客船『ブライトウィン』 搭乗口


クラリス「…まあ」

美嘉「お、おう…」

響子「すごーい…」

小梅「ほわぁ…」


ラン「…」


メアリー「えっへん!」ふんす



船員「ブライトウィン号へ、お乗りのお客様でしょうか?」


メアリー「イエース!」


船員「本日は、ようこそいらっしゃいました。失礼ですが、チケットの拝見を…」


メアリー「ハーイ、6人分!!」ピラッ


船員「確認しました。では、お荷物は私達が…」




美嘉「ちょっ」ぐいっ


メアリー「きゃん」


美嘉「どーゆーこと!?合宿って、まさかアレに乗んの!?ダメ、部費枯渇する!!」


メアリー「ノープロブレム!代理だから!」

メアリー「アタシのパパが、オシゴトの都合でどうしてもこれなくなっちゃったチケットを貰ったノ」


響子「豪華客船だぁ…わー初めて見たー…」


美嘉「代理…なんだ…び、びっくりしたー…」

美嘉「でも、そういうことなら、最初から言ってよっ、てかアタシ普通のカッコで来ちゃったんだけど!」


響子「あ、ドレスコードとか平気なの?メアリーちゃん」


メアリー「その辺は、ゴアンシン!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:38:02.51 ID:pEu0rAd60<>

メアリー「この船は今から、アメリカ北東に行く本格的なクルージングの前の…ま、リハーサルをするの」

メアリー「ここから南下して太平洋をぐるーっと回って、そのあと幾つかの港に寄って、ここに戻る」

メアリー「だから世界旅行というよりは、数日泊まれる遊覧船見たいなカンジね。春休みにはもってこいじゃナイ?」


クラリス「…リハーサル、ですか?」


船員「…受け渡し日程の事情により急遽組まれた、船内各所のメンテナンスをしながらの試験的な航海となります」

船員「そういった事情から、万全なセキュリティーを保証しかねる為に、本来お客様を乗せる予定では無かったのですが…」

船員「申請に伴って試験航路が公開された途端、チケットを売ってほしいと方々から殺到が…」


メアリー「とにかく!これも立派なクルーズであることには変わりないってコト!」

メアリー「完成して間もないピッカピカの船に、いの一番に乗れちゃうって話ナノヨ!」

メアリー「さぁ、アタシを崇めなさイ!ひれ伏しなさイ!!」


小梅「わー」パチパチ

響子「めありーさまー」ぱちぱち


メアリー「ふふーん!」どやぁっ















ラン「…?」

ラン(誰かが近づいてくる…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:42:02.87 ID:pEu0rAd60<>

少女(二宮飛鳥)「やぁ、君もこの船に乗るのかい?」


ラン「う、うむ…」

ラン(この子…何処かで…見たような…?)


少女「よかった、年の近い人が見当たらなくて心細かったんだ」ほっ


ラン「同胞も主も無き旅路とは、豪の者だな…(貴女は一人で来たんですか?)」きょろきょろ


少女「家族に会いに行くんだ。偶然ながら、次に寄港するところにボクの姉妹が住んでいてね」

少女「電車や旅客機の旅なんてすぐ終わっちゃうだろう?どうせなら楽しくのんびりと…って思ってさ」


ラン「ふむ…」


少女「造船されたばかりの豪華客船に、たった一度しか通らない航路…その先にボクの目的地があるとくれば…」

少女「なにかの巡り合わせであると夢見てしまっても、不思議ではないだろう?」

少女「幸先のいいことに、こうして同じ年頃の旅仲間も見つかった。やはりこうでなくてはね」


ラン「…」


少女「瑠衣(るい)」


ラン「?」


瑠衣「斉葉 瑠衣(さいば るい)。ボクの名前」


ラン「…我が名は、ラン」


瑠衣「ん。船の中でもよろしくね」ぎゅ

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131030.jpg
※斉葉 瑠衣の外見↑




船員「お荷物をお持ちします」ひょい


瑠衣「どうも。ボクの分はその一つで全部ですから。よろしくお願いします」




ラン「…」






クラリス「ランちゃーん!早く乗りますよーっ!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:45:12.56 ID:pEu0rAd60<>

1日目 昼間 客船『ブライトウィン』 7番デッキ 右舷 ミニスイート



小梅「…!」

響子「あ、動いた!今動きましたよ!」

メアリー「しゅっこー!」


美嘉「窓付きで一番上の階…って、もしかして」


メアリー「ミニスイートといわれる程の事はあるわねぇ。ちなみにダブルの三部屋分用意してあるのヨ!」


クラリス「広さといい、部屋の意匠といい、とてもここが船の中とは思えません…」


響子「見て!バスルームもひろーい!!」ガチャ


小梅「羽毛布団…ふかふかぁ…!」もふもふ


美嘉「こ、こらこら、あんた達!落ち着きなさいってば!」

美嘉「あんまりうるさいとクラリス先生と相部屋にしちゃうよ?」


ラン「…」


クラリス「ランちゃん?どうしました?」


ラン「っあ、い、いえ…」

ラン「フ、フフッ…我が漆黒の軌跡に相応しき舞台よっ!!(た、楽しいですよっ、こんな豪華なの、夢みたいで…)」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:48:09.06 ID:pEu0rAd60<>


美嘉「あのさぁメアリー、豪華客船は良いとして…あの時言ってたミステリー要素って何処にあるの?」

美嘉「もしかして曰く付き豪華客船だったり…新品なのに?」


響子「そういえばこれ、ミス研の合宿なんですよね。すっかり忘れてました…」


メアリー「…フフフ、よくぞ聞いてくれたワ」にやぁっ

メアリー「聞いて驚きなさい!何を隠そうこの豪華客船『ブライトウィン』は…明日の逢魔が時に…」



メアリー「闇に飲まれてしまうのヨッ!!!」バァーン!!



ラン「…」

小梅「…」

響子「…」

クラリス「…」

美嘉「…え、沈むの?」



メアリー「これを見て頂戴ッ!」バサッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:51:18.39 ID:pEu0rAd60<>

小梅「…週刊…アトラン、ティス…」


美嘉「『海坊主:マリン・キッド伝説大特集』ぅ…?」


クラリス「ゴシップ雑誌ですね」


メアリー「17世紀に処刑された伝説の海賊『キャプテン・キッド』が魔人となって転生し…」

メアリー「生前に財宝を隠したと言われる、日本のとある海域を守っているという特ダネ情報ヨ!」


一同「…」


メアリー「そして、コレ!!」バサッ


ラン「蒼の導…(これは…クルーズの航路?)」


メアリー「これと重ね合わせるト…」


小梅「あっ…」


メアリー「奇しくもこの船は…明日の夕方に、入ってしまうのヨ…その海域に…!!」

メアリー「かつてこの海域では『海坊主』と呼ばれた妖怪が、何隻もの船を沈めたと言われているワ…」


メアリー「その正体は、財宝を守らんとする『魔人ウィリアム・キッド』だったのヨ!!」

メアリー「『坊主』と『キッド』…これはダブルミーニングだったってワケ!!」バァーン!!


一同「…」


響子「こ、航路が決まってからチケットを欲しがる人が増えたって船員さんが言ってたけど…こういうことだったんだー、あはは…」


小梅「あの…で、でも…ね、メアリーちゃん?」

小梅「海坊主の…『坊主』は、法師…と、か、尼さんのことをい、意味して…」


クラリス「ついでに言わせてもらうならば、確か…ウィリアム・キッドの綴りは『kidd』で…」

クラリス「発音は似てますが、『坊主』を表す単語ではなかったような…」


メアリー「失礼な!そんなことわかってるわヨ!!」

メアリー「でも聖書の世界にだって、『アントリオン※』がいるじゃない!!」


美嘉「杏ロリ?」


クラリス「確かにあれも誤訳で生まれた存在ではありますが…実際に目撃されたわけではありませんし…」



※ヘブライ語で記されている聖書をギリシャ語に翻訳する過程で
 『雄じし』の単語が誤訳され『蟻獅子』というジレンマ生命体が爆誕した。
 ミルメコレオとも呼ばれ、クトゥルフ神話レベルの信ぴょう性がある。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 18:54:45.91 ID:pEu0rAd60<>

メアリー「とにかく!アタシたちはこれから、マリン・キッドとの対決に向けて準備を進めるのヨ!!」


クラリス「しかしですね…」


響子「まぁまぁ先生、オカルトの真贋を確かめることがミス研の役割ですから…」

響子「それに…そんなのどうでもいいじゃないですか!」


クラリス「はい?」


響子「豪華客船…一度でいいから乗ってみたかったー!」




響子「ねぇ、メアリーちゃん」くるり


メアリー「なぁに?」


響子「マリン・キッドに出くわしたら、私達は決死の覚悟で調査をすることになるんだよね?」


メアリー「そうなるわネ」


響子「じゃぁ…もしも、もしもだよ?明日その海域に行っても、キッドさんが腹痛とかで出てこなかったら、どうする?」


メアリー「んー…それは…すごく困るわネ…」


響子「…」


メアリー「それじゃぁタダの、豪華客船で贅沢し放題の日々になっちゃうワ」


小梅「ぜ、贅沢…」どきっ

美嘉「し放題…!?」どきどきっ


メアリー「だ、ダメダメ!『逢魔の刻、英知の箱舟は鋼鉄の棺桶と転ず』ってちゃんとアタシの占いに示されているんだかラ!」

メアリー「明日の準備を怠っちゃいけないの!今日は、はしゃぐのは厳禁ヨ!!」


メアリー「たとえ豪華客船で贅沢し放題遊び放題食べ放題飲み放題でも、絶ッ対はしゃがないよう二!!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:00:48.93 ID:pEu0rAd60<> 1日目 昼間 客船『ブライトウィン』 アミューズメントエリア


ラン・響子・小梅・メアリー「ハイ、チーズ!」カシャーッ


響子「ね!こんだけ広いんだから船全部使ってかくれんぼだってできるよね?」うきうき


メアリー「響子センパイ!!出発1日目なのに、そんな遊びの発想…」


小梅「…」

ラン「…」


メアリー「天才ダワ!!」



1日目 昼間 客船『ブライトウィン』 スパプール


きゃー♪ バシャーン


ラン「清龍波っ…!小癪なぁ!(やったなぁ!このぉ!)」ばっさばっさ


響子「小梅ちゃんバリアー!」

小梅「ひゃああああ…」びしゃびしゃ


メアリー「後ろががら空きヨ!!」ばしゃーっ


ラン「わぷーっ!」



1日目 昼間 客船『ブライトウィン』 3番デッキ ゲームエリア


クラリス「…」パチンッ

カッ カッ ゴトッ


美嘉「クラリス先生うまーい!」


クラリス「何度かレナ先生に、お手ほどきをしてもらったことがあるので…」


小梅(連れてこれなくて残念だなぁ…)


響子「わ、私の番ですかっ?…えーと…どれを弾けばいいんでしたっけ…」


美嘉「手玉。番号無いやつ」

美嘉「これを、あのオレンジのに当てて…まぁどれか穴に落とせばとりあえずオッケーだから」



1日目 昼間 客船『ブライトウィン』 6番デッキ レストラン「ヴェリータ」


美嘉「せんせー、向こうのテーブルのプチケーキが補充されてまし…顔変形するほど食べてる!?」


クラリス「あろれほりにいきわふー」もむもむ


美嘉「よーし、アタシも負けないんだからッ!」

美嘉「あむっ…んー♪しあわせ―★」


クラリス「ほにかくいふぁほのほきをはのひみまひょう」もちゅもちゅ

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131031.jpg
贅沢の限りをつくす敬虔なシスターたちであった。 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:07:06.48 ID:pEu0rAd60<>

1日目 夕方 客船『ブライトウィン』 7番デッキ 右舷 ミニスイート


小梅「くぅ…」

響子「すぅ…」

メアリー「すやぁ…」


美嘉「遊び疲れちゃったか」なでなで

美嘉「…あれ?ランは?」


クラリス「もう一度船内を回ってくるって、出てっちゃいましたよ?」


美嘉「…」


クラリス「この旅行が、少しでも彼女の癒しになってくれると良いのですが…」


美嘉「きっと大丈夫ですよ、先生」

美嘉「なんだかんだで楽しんでましたし、食欲もあるみたいだし」


クラリス「…」


美嘉「それにしても、不思議ですよね…天使が本当に降ってきた、なんて」

美嘉「とてもそうは思えないような子ですけど」


クラリス「…だからこそランちゃんは、この世界に降り立ったのでしょう」


美嘉「え?」


クラリス「芯が強くて、純粋で、そして誰よりも夢想家」

クラリス「全人類が幸福で満たされると本気で信じておられるほどに」

クラリス「だから天神様は…今の彼女に必要なのは、無情な現実と、残酷なほど冷たい試練だと御考えになった」


美嘉「…それ、ひどくないですか?愛娘に対して」


クラリス「そうかもしれません…でもきっと乗り越えてくれますよ。ランちゃんは」

クラリス「世界をがらりと変えるような人達は、みんなそうやって生まれてきたんですから」


美嘉「でも、アタシは…ちょっと危ういと思ってるんです」


クラリス「…」


美嘉「アタシが恐がってるだけかもしれないです。レヴィアタンの事件で仲間が三人もいなくなっちゃったことが、まだ頭から抜けなくて」

美嘉「思いつめてるあの子を見ると、いつか向こう側に行っちゃうんじゃないかって…」


クラリス「…」


美嘉「なんかアタシ…ほっとけないんです」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:11:41.52 ID:pEu0rAd60<>

1日目 夕方 客船『ブライトウィン』 展望台



瑠衣「おや、先客がいたのか」


ラン「!」


瑠衣「ここの眺め、凄いよね。まるで空を飛んでいるようで、いろいろと思い出す」


ラン「…傷を癒す寂の調べ(良い場所です)」


瑠衣「悩みを抱えているとき、ボクはこんな風にたそがれて、ゆっくり考えてみるんだ」


ラン「…」


瑠衣「これまでボクが進んできた路…速度や方角、そして、分岐点」

瑠衣「更に言うならば、その中で幾度と無く選択してきた自分の行動と…それが度々招いた悲劇」


ラン「!」


瑠衣「そして自問する。はたして自分は、本当に正しい道を歩んでいるのだろうかと」

瑠衣「でも、いくら考えたところで堂々巡り。答えは出ない…何故ならその正誤を判断するのは自分じゃないからだ」

瑠衣「例えば陰で支え合う弱者、あるいは心を閉ざす病人、物言わぬ獣、天の上、もしくは…もう息絶えた誰か…彼らが自分の善悪を決めている」

瑠衣「行動しないと結果が分からないのに、自分は正解を選ばなければいけない。しかし勝ち続ける丁半博打なんてあるわけがない。」


ラン「…」


瑠衣「そんな時ってね、問題の方が間違っているんだよ」

瑠衣「セカイの中での選択は、本来正しいかどうかで測るべきものではないんだ」

瑠衣「『正しさ』は、不特定多数の他人に基づく価値観だ。そんなものに自分を縛りつける必要が何処に在る?」

瑠衣「重要なのは。いいかい、重要なのは…自分にとって、幸福か否か、だよ」


ラン「…」


瑠衣「…なんてね」

瑠衣「いやぁすまない、冗談のつもりだったのに、こうも真に受けてしまうとは思わなかった」

瑠衣「せっかくの船旅なんだ。セカイのしがらみなんて一旦忘れて、もっとこの瞬間(トキ)を楽しまないと」


ラン「う、む…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:14:45.00 ID:pEu0rAd60<>

瑠衣「ああ、そういえば君、フォトサービスってやってみたかい?」


ラン「…フォトサービス?」


瑠衣「客室に備え付けのカメラが一台あっただろう?つまりこれのことだが」ひょい

瑠衣「これで写真を撮ると、撮影データを船内サーバーにアップロードできるんだ。そうすると…」カシャ ピピッ


瑠衣「ほら、こんな風に…船内各所にある液晶パネルに、送信したものが映し出されるという寸法さ」

瑠衣「巡回スタッフに頼めばシャッターも押してもらえるし、動画を送って船中の液晶で再生させることもできるようだ」

瑠衣「絶景をおすそ分けしたり、楽しむ自分をみせびらかしたり、使ってみると、これがなかなか面白くて…」


ラン「ふむ…」


瑠衣「はははっ、唸ってばかりだねぇ」

瑠衣「ほら、キミもやってみなよ。楽しいよ?自撮りとか…あれ?やったことないかな?」

瑠衣「そうだ、代わりといってはなんだけど、キミ達が今日まわって特に楽しかった場所とか、教えて欲しいな」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:20:50.86 ID:pEu0rAd60<>

1日目 夕方 客船『ブライトウィン』 展望台


美嘉「お」


瑠衣「うん?」


ラン「あ」



美嘉「いたいた。らーん、そろそろ先生の言ってた時間だよー。部屋に戻らないと」


ラン「我が同志…この荘厳なる力を感じ取ったか…(美嘉さん、よくここがわかりましたね)」


美嘉「や、サッパリわかんなかった。そんで下の方ばっか探してたんだけど…」

美嘉「なんかいきなり、船の中にあちこち付けられてる液晶にランが映って、場所が展望台だったから…」


ラン「…ほう」


瑠衣「ふふっ…ね?面白いだろう?」




美嘉「…ん?誰?」


ラン「えっと、彼の者は…」


瑠衣「ボクは瑠衣。まぁ名も無き旅行者だと思ってくれたまえ」




美嘉(なんか雰囲気がランとそっくり…)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:23:21.67 ID:pEu0rAd60<>

1日目 夜 客船『ブライトウィン』 7番デッキ


コツコツコツ…


美嘉「瑠衣の通ってる学校、聞いたことない名前だけど…もしかして私立?」


瑠衣「家庭の事情でね。美嘉さんのところの聖月学園と言えば、そっちは一時期話題になってたような…」





??「い、いた!あの娘だ!!」ドタドタ


ラン「!?」

美嘉「ん?…わわっ!?」

瑠衣「…」


??「俺たち、こーいうモンなんだけど…ちょっと話聞かせてくれないかな」


美嘉(ルポライター、真壁晶…)


瑠衣「またこの人達か…」ぼそっ


ラン「え…?」


瑠衣「この人達、ボクにも執拗に話しかけてきたんだ…都市伝説になんか興味無いってのに」


ラン(都市伝説?…ルポを書く人が??)



真壁「き、きみ…もしかして…聖月学園殺人事件を解決したっていう…ランって女の子でしょ?」ずい


ラン「わっ」


美嘉「な、なんでそれ知って…」



真壁「やっぱりだ!さっきフォトサービス使って自撮りしてたでしょ?なんか似てるなって思ったんだ」

真壁「まさか本人と出くわすとは!もしかしてキミも『マリン・キッド』の噂を聞いて?」


美嘉「マリン・キッドって、確かメアリーが言ってた…」


真壁「お!じゃあヤッパリ噂を確かめに来たのかな!?」ずいっ


美嘉(あ、ヤバ)




真壁の隣にいた男性「真壁さん!僕らはあくまで豪華客船の取材で…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:26:17.21 ID:pEu0rAd60<>

真壁「いや、待て待て…これはチャンスだ…」

真壁「都市伝説の現場に別事件の関係者が居合わせるなんて偶然、そうそうあるもんじゃない」


ラン「え?えっ?」


美嘉「ちょっと、アンタら一体…」



真壁「編集次第だが、ハマればとんでもなく売れそうだぞ…」

真壁「マリン・キッドの財宝を探す我々が乗る船に、聖月学園の惨劇の関係者が偶然乗り合わせた!!」

真壁「『連続殺人犯を生んだ呪われし学園』の、秘められし真実が、今明かされる!!…と!」


ラン「!?」

美嘉「な…っ!!」


真壁「宗教による洗脳、そして暗黙の選民思想による歪みが、人の背徳意識と結びつき…」


瑠衣「…やれやれ」


美嘉「ち、ちょっと!さっきから黙って聞いてれば…」


真壁「つまり隣の君も聖月の生徒ってことだよねぇ?だったら聞かせてくれないかな、あの時何があったのか」

真壁「裏の界隈じゃ、形を変えた天使と悪魔の戦争だとか、まことしやかに噂されているんだ」

真壁「遺体見た?悪魔の形相で壮絶に死んだっての本当だった?」


美嘉「っ!?そ…そんな…こと…」


ラン「…せよ」


美嘉「え…」


真壁「?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:29:54.66 ID:pEu0rAd60<>

ラン「失せよ愚か者共っ!!」バッ


一同「!」


瑠衣「…」



ラン「私の同志達を…私達を想ってくれている者を侮辱するなっ!!」

ラン「たとえ理不尽に苛まれようとも、常に正しくあらんと祈る者達を、好奇の玩具にするなっ!!」


ラン「悔い改めよ!私には、貴様らに話す事など、一句たりとも無いっ!!!」ビシッ

ダダッ!


美嘉「ら、ラン!」

美嘉「っ…」キッ





取り巻きの一人「真壁さん、いい加減こっちの仕事をしましょう?」


真壁「…ちっ」













??「…どうやら終わったようですね」


??「見ればわかるわ。わたくし達も部屋に戻りましょう。早くリンゴジュースが飲みたいの」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:34:19.89 ID:pEu0rAd60<>

1日目 深夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 客室(真壁)



真壁「くそ…あのガキ…」

真壁「いや、まだだ。まだ時間はある。何日も同じ船の中、逃げられるなんてことは無い」

真壁「それに同級生と一緒にいた…あの二人以外にも何人かいるんだったら、連中の中から聞き出せそうな奴を先に…」




出航1日目の深夜。船の進路は真南。その遥か先に件の海域はあった。

帆船の時代、その海域は頻繁に霧が発生し、海流の向きも変わりやすいために

帰ってこない船が出てきては、海坊主に喰われたのだと噂された。




真壁「ん?誰だこんな夜中に…」




真偽は不明である。

しかし、今まさに行われんとする殺人劇の幕は、確かに人ならざる者の手引きによって上げられようとしていた










<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 19:38:12.51 ID:pEu0rAd60<>
1日目終了

過去絵のサルベージついでに、ご飯に行ってきます

しばらく休憩です

m(_ _)m <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:28:00.37 ID:pEu0rAd60<>
>>5

データは完全に飛んでましたが、描いた紙が見つかったので再うpオッケーですよ。

とりあえず当SS終了後でよければ御希望のものを自炊してきます。


再開しまむら <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:29:32.92 ID:pEu0rAd60<>

2日目 未明 客船『ブライトウィン』 3番デッキ カジノエリア



メアリー「レイズ」スッ


ディーラー「…」ススッ


メアリー「…」じー…


ディーラー「…」


メアリー「…フッ」


ディーラー「…」


メアリー「アナタの背中、煤けて見えるワ!!」ビシッ


ディーラー「…」



クラリス「ちょちょちょちょっ!?」だだだっ

クラリス「何をやっているのですメアリー・コクラン!!」

クラリス「というか何時の間にドル紙幣なんて持ち込んで…!?」


美嘉「部屋にいないと思ったら…朝っぱらから…」


メアリー「えぇー!?」

メアリー「ちょっとぐらいイイじゃないのー!!」


クラリス「いいえ、なりませんっ!」ズイッ

クラリス「賭け事は人々を堕落させてしまう悪しき行いです!」

クラリス「神に御身を捧げる私達シスターがやっていいことでは絶対にありません!!」


メアリー「…ううん、一山当てたいんじゃないの…賭け事に負けて堕落した人の苦しみを知りたかっただけなノ…」

メアリー「同じ苦しみを背負うことができたなら、きっと同じ境遇の人たちは、アタシの言葉に耳を傾けてくれル…」

メアリー「アタシ…そんなギャンブラーな人たちも救ってあげたいって…いつも思ってテ…」しゅん…


クラリス「…」


メアリー「…」うるうる


クラリス「仕方ありません…そういうことなら…」



メアリー「…ディーラーさん!倍プッシュ!!」ぱちん


ディーラー「では、オープンカード、三枚目…」ピラ




美嘉「先生チョロすぎない?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:33:57.22 ID:pEu0rAd60<>

2日目 朝 客船『ブライトウィン』 7番デッキ ミニスイート


メアリー「燃え尽きたワ…」しゅー


響子「燃え尽きたんだ…」


美嘉「よかったじゃんアンタこれで宣言通りギャンブラー救えるよ?」


メアリー「あそこで勝負乗っておけは…ハッタリだったなんテ…OMG…」


ガチャ


小梅「おは、よ…?な、なにか…あっ、た、の…?」


響子「それがねー小梅ちゃん」


メアリー「ヤメテ!3カードに屈したストレートの話なんて思い出したくないワ!!」





ラン「…」


クラリス「こちらはこちらで、その…悪化しているような…」

クラリス「昨晩、いったい何があったんですか?美嘉さん」


美嘉「大したことじゃないんですけど…」



ラン「私としたことが加減を誤った…(昨日…初対面なのに言いすぎちゃったかなって…)」


美嘉「ランが言わなきゃアタシが言ってた。気にしない気にしない」ぽんぽん


クラリス「?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:42:23.17 ID:pEu0rAd60<>

2日目 昼間 客船『ブライトウィン』 6番デッキ レストラン「ヴェリータ」前


食事後


クラリス「さて、今日は2番デッキの劇場エリアに行ってみましょうか」

クラリス「確か次の公演の時間は…」


どよどよ…


響子「あれ?むこうで人だかりができてる…何かあったのかな…」

響子「あ」


小梅「どうしたの…?」


響子「船の液晶に、ヘンなのが映ってる…」


メアリー「!!」



―夕刻5時20分、『マリン・キッド』が乗客の命を頂戴する―



ラン「マリン・キッド…」


小梅「い、いのち、を…頂戴…って…」


メアリー「一大事だわ…キッドが早くも船をジャックしたのヨ!!」





美嘉「ん…ちょっと待って、コレ」

美嘉「普通に誰かが画像送っただけじゃないの?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:43:56.44 ID:pEu0rAd60<>

メアリー「…へ?」


美嘉「えーっと、カメラは…と」パシャ

美嘉「…これを送信」ピ、ピ


パッ


響子「あ、私達の写真に変わった…」


美嘉「ほらね」


クラリス「…文字は新聞の切れ端、並べていた場所は何処かのテーブルのようでしたね」


美嘉「本当にシージャックとかだったら、手作りじゃなくて、もっとしっかりしたデザインにするんじゃない?」

美嘉「考え過ぎだよ、メアリー」


メアリー「なぁんだ…つまんなーイ」ぶー


クラリス「しかし…悪戯とはいえ、些か度が過ぎていませんか?一体誰がこんな…」








??「真壁部長!!返事してくださいよ!」

??「あなたでしょう!あれやったの!!」




ラン「!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:48:47.49 ID:pEu0rAd60<>

2日目 昼間 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 真壁の客室(スタンダード)前



??「聞きゃしねえ…返事ぐらいしろよ…」


??「ま、まぁ、あの人の奇行は今に始まったことじゃないでしょう、美浦さん」


美浦「妃、だからって幾らなんでも悪趣味だろあんなの…前の職場のノリ引っ張りすぎてんじゃねーの」


妃「いつき君は、さっきの怪文書の件って聞いてないわよね?」


いつき「…全く以て」


美浦「な?百歩譲って企画すんだったらせめて部下である俺達にそれ伝えろって話だよ」

美浦「なんで俺らまであいつのドッキリに付き合わされなきゃいけないんだ」

美浦「なぁ、遠山、お前もそう思うだろ?」


遠山「確かに、いくらなんでも度が過ぎてますよね」

遠山「謹んで貰わないと」


鈴木「…」


美浦「俺達は単に新しく造船された豪華客船の特集を組むために来たんだ」

美浦「怪しい噂とかひろめに来たんじゃねーっつの!」


いつき「過去の栄光を忘れられないのでは。一応あれでもやり手の雑誌記者だったみたいですから」

いつき「だからこっちに移ってもすぐに編集やれているんでしょう」


美浦「やり手なら、ねつ造しても良いってか」


いつき「そう言ってるわけでは…」


妃「…今は好きにさせといてあげましょ?そのうち満足するわ」

妃「こっちはこっちで船内設備を余すことなく取材して、完璧に仕上げとけばいい」


美浦「…」


妃「原稿を見て貰えば、いくら彼でもどっちを載せるべきかは分かるはず」


美浦「くそ…」




ラン(イタズラ…?)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:51:17.03 ID:pEu0rAd60<>

遠山「あれ?君は…」


ラン「あ…」


遠山「昨日は…申し訳なかったね」

遠山「真壁さん腕は良いんだけど…あんな感じでよく他の人と衝突するんだ」

遠山「僕達は、決して君や生徒の子たちを傷付ける意図は…」


ラン「…」ふるふる

ラン「時に、この只ならぬ瘴気の奔流は…(それより、何かあったんですか?)」


遠山「いや、大したことじゃないんだ。別に気にしないで…」





船員「失礼します…真壁様、ボトルのお届けに参りました」コンコン

船員「真壁様…真壁様…?」コンコン


妃「…ボトル?」


船員「ええ。昨夜ルームサービスの注文があり、このワインを昼間に届けるように、と」ピラ

船員「…札がかけられているようなので、扉の前に置いておきます」

コトッ




鈴木「真壁さんってワイン飲みますっけ?」


遠山「飲んでるの見たことないな」


いつき「いや、好みとかじゃなく、単に雰囲気に酔っているだけなのでは」


美浦「暗躍者ぶってんじゃねーよ。気分悪い」






ラン「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 21:56:00.03 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 2番デッキ 劇場エリア




響子「おもしろかったー♪」


美嘉「これで、昨日まわれなかったトコは全部いけた…んだよね」

美嘉「にしてもホント桁違いの大きさだわ…こんなのが海に浮かぶってことが自体不思議」


クラリス「だからこそ世界一周の旅行にも耐えうるのでしょうね」

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131049.jpg
↑各エリアの位置関係




ラン「使徒を求めし汝に問う(…メアリーちゃん)」


メアリー「?」


ラン「蒼魔の戦皇の名は彼方まで轟いているのか(『マリン・キッド』って、その…オカルトの界隈では有名なの?)」


メアリー「んー…マイナーな括りの中ではメジャーなんじゃないカシラ?」


美嘉「それってどっちなのよ…」


メアリー「…マニアの間では有名な部類ってコト」

メアリー「キャプテンキッドの財宝伝説は世界各地にあるけど、それを地方のモンスターと絡めたのは新鮮だったカラ…」

メアリー「それに、実際それ目当ての人がイッパイいたからこそ、このクルーズが成立してるワケだし…」


ラン「…」


響子「ランちゃん、もしかしてあの脅迫文の事、気になってるの?」


美嘉「ルポライターの連中はもう犯人に目星つけてたみたいだから、ほっときゃいいんじゃないの?」


ラン「しかし、狼煙は誰しもが使い得る(でも、マリン・キッドの存在さえ知っていれば、誰でも作り得たメッセージですから)」

ラン「早計はタナトスの鐘か、或いは…(決めつけるにはまだ早い…そう思うんです)」


美嘉「…」


ラン(もし事件の前兆だとしたら…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:01:12.64 ID:pEu0rAd60<>

クラリス「あれよという間にもう4時…」

クラリス「確か…パーティは午後5時から、3番デッキで行われるんでしたね」


美嘉「へ?それ、逢魔なんたらと時間被っちゃうけど、どうすんの?」


メアリー「もちろんパーティしながら見守るワヨ?あそこ窓あったから平気だモン」

メアリー「逢魔ヶ時になったら、どっちから海賊船が攻めてきてもいいように、みんなでカバーしあうの。わかっタ?」


クラリス「…船内は一通りまわり終えましたから、迷うことも無いでしょう。ここで一度、自由時間にしましょうか」

クラリス「各々で準備をし、夕方5時にパーティエリアに集合すること」


小梅「わ、わかりました」


響子「はーい!」


クラリス「自由、とは言いましたが、貴女は今朝のリベンジなどと考えないように」ずい


メアリー「わ、わかってるワヨ!」あせあせ




ラン「…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:05:49.70 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 真壁の客室(スタンダード)前


ラン「!」


ラン(相変わらず客室のドアノブには『Don't Disturb(入るな)』の札がかかっているのに)


ラン(昼に置かれたワインボトルは、手つかずのまま玄関に残っている…)チャプン…


ラン(従業員のミス?それとも単なるど忘れ?いや、違う…)








??「…」



ラン(届ける時間に注文を付けている人間が、数時間たってもそれを放置する理由は何?)



ラン(…)



ラン(ルームサービスを頼んだ人間が真壁本人ではない)



ラン(もしくは、彼がワインボトルを取りに行ける状態ではない)



ラン(つまり、何かに巻き込まれて…)



??「…」ガバッ!!



ラン「む…ぐっ!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:09:21.33 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア 『ウェルカムパーティ』



船員「みなさん、ブライトウィン号へようこそ!」

船員「私は、今夜のパーティの司会を担当させていただきます、宮野 志乃と申します」


パチパチパチ!


宮野「ありがとうございます」ぺこ

宮野「はじめに、メインスタッフのご紹介をさせていただきます。まずは…」






美嘉「…いた?」


クラリス「いえ…」


響子「どこ行っちゃったんだろう…」


美嘉「ケータイにも出ないんだよね…電源切ってるみたいでさ」

美嘉「響子、相部屋だったでしょ?なにか知らない?」


響子「一緒に行こうかなと思って部屋で待ってたんですけど、来なかったんです、ランちゃん…」


小梅「…もう…ご、5時」


メアリー「そろそろ『マリン・キッド』の海域に入る時間…」

メアリー「みんな、急いで窓際をチェックよ!こうなったら天使サマ抜きで対決するしかないワ!!」ぱたぱた


美嘉「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:11:10.72 ID:pEu0rAd60<>

瑠衣「…そういえば」


美嘉「わぁっ!?びっくりした…瑠衣か」


響子「えっと…どちら様ですか?」


瑠衣「斎葉瑠衣。ただの乗客だよ。ランちゃんと美嘉さんには顔を合わせているけど…」

瑠衣「キミ達とは初めてだったね。宜しく」


メアリー(ルイ…サイバ…)


瑠衣「そう、夕方5時といえば…乗客の命を頂戴するって液晶で予告されていた時間だったよね」

瑠衣「正確には5時20分だったけど…」


響子「お昼のときの、あのイタズラのことですか?」


瑠衣「何か関係があるんじゃないかな?」


小梅「…」


美嘉「…やっぱアタシ探してくる。みんなここで待ってて」


クラリス「私も行きます」


メアリー「ほえっ!?ちょっと…対決はどうするの!?」


ブツン…


一同「!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:15:42.70 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 客室(部屋番号不明)


カチャカチャ…


ラン「…ぅ」

ラン(…ここは…何処…部屋…客室…みたいだけど)


??「…ぐ、く…くぅっ」


ラン「!?」

ラン(目の前にいるのは…誰?)

ラン(袋を被ってて顔は見えないけど…椅子に縛り付けられてる!助けなきゃ!)グッ


ラン「んむ、ん、ん…ん!?」ガタッ


ラン(う、動けない!?…わ、私も縛られて…!?というか、喋れな…)ぎしぎし


怪人「…」ピ、ピ



ラン「!」

ラン(アイツがやったのかっ!)

ラン「ん!んー!んんーっ!!」ガタガタ


怪人「…」チラ


コツ コツ コツ


ラン(カメラ…撮ってる…?)きょろきょろ

ラン(今、何時?…日は落ちてないみたいだけど、どこかに時計は…)

ラン「!!」


―夕方5時20分、『マリン・キッド』が乗客の命を頂戴する―


ラン(まさかあの予告…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:16:57.21 ID:pEu0rAd60<>

怪人「…」バサッ


ラン「!?」


??「…!?っく!?」


ラン(椅子に縛られていたのは、真壁さんっ!?)


真壁「くふーっ、ふーっ」


ラン(目が…合った…)


怪人「…」ゴ…


ラン(ワインボトル…あれは確か部屋の前にあった…なにかまずい…このまま見てるのはまずい…)

ラン(この怪人は、まさか、真壁さんを…!)


怪人「…」ブオッ


ラン(待っ…)


バ リ ン ッ !


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:17:55.44 ID:pEu0rAd60<>

真壁「」ボタボタボタ…


ラン「…っ!!!」

ラン(し…死…んだ…!)


怪人「…」グルッ


ラン「んぅっ…!」ビクッ

ラン(カメラをこっちに向けた…今度は…)


怪人「…」


コツ コツ コツ


ラン(今度は私…!?)


コツ コツ コツ


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:19:39.84 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア


ブツン…


宮野「続きましてお送りするのは…!?」


どよっ…



響子「!」


メアリー「き、来た…!」


小梅「…」


美嘉「…え、えっ?」


クラリス「これは…お昼の時と同じ…」




瑠衣「…犯行文だ」




『マリン・キッドによる公開処刑』

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:23:11.03 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 城ヶ崎美嘉の視点 5時21分に映し出された映像


『マリン・キッドによる公開処刑』と書かれた画面が、音もなく切り替わった。


どこかの客室が映っていた。映像を見ていた美嘉は、そこが何処であるかピンと思いつかなかったが…

スタンダードクラスの客室を利用している人間たちは、自分と同じ客室の窓側が映っているとすぐに気付いた。

部屋の電気はついていない様だったが、水平線に半分ほど隠れた陽光が窓から差し込み、それが室内の異様な光景を照らしていた。


部屋の中に、椅子に縛り付けられた囚人の様な人間が一人。袋を被せられ、人相は分からない。

右隣に、首をやや傾け直立している人間が一人。黒いマントと髑髏のような仮面を身に着け、こちらも誰であるかは不明であった。

しかし、仮面からのぞく眼差しは幽鬼の如く、沙汰の外に在るかのような、何かを訴えているように見えた。


美嘉の視線は、二人から自然と上へ…壁の時計、その文字盤のローマ数字、そして二つの針へと流れ…

5時19分。


美嘉は慌ててスマホを起動する。5時21分を指していた。

フォトサービス…美嘉はすぐに連想した。たしかあれは動画も送信できたはず。

ということは、つい今しがた、船のどこかで、こんな狂ったことをしていた人間が…?


画面の中の髑髏の怪人が、椅子の人間に被せられていた袋を乱暴に脱がせた。

…真壁晶だった。口にはテープが張られ、声を出せないでいるようだ。呼吸は荒く、血走る彼の視線がぎょろぎょろと彷徨う。

会場で息をのむ音が聞こえる。ルポライターの人間たちだ。


髑髏の怪人はテーブルに置かれたワインボトルを手に取り、真壁にこれ見よがしに見せつけ、そのまま…


バリン。


まるで映画の撮影のようだった。砕けたボトルの破片が、数十秒にもわたってきらきらと宙に舞っているように錯覚した。

高く振り上げた瓶が、そのまま一直線に降ろされ、真壁晶の頭蓋を砕いたのだ。

会場のあちこちで悲鳴が上がる。美嘉は寸前で飲み込んだ。そして小梅の顔は何となく見ないようにした。


先程まで恐怖に震えていた彼の頭は一転して、糸の切れた人形の様に、こちらに頭頂部を晒したまま停止した。

ピクリとも動かなくなったそれに一瞥もくれず、髑髏の怪人は速やかにカメラに迫り、レンズを手で覆う。映像は暗転。


何て事。マジで実在すんの。てか作り話でしょキッドって。暗転した画面を前に様々な謎が美嘉の頭をよぎる。

…が。ほどなく覆っていた手が離れ、画面に映った『それ』を見て、ぐるぐる回っていた思考は凍り付いた。


髑髏の怪人が先程レンズに手をかけたのは、カメラの角度を90度ほど変えるためだったようだ。

部屋の別角度が映し出され、その先に…見慣れた銀色の髪が見えた。

え…。思わず声が漏れる。



それが『ラン』であると認識するのと、美嘉がパーティエリアの入口に向かって駆けるのは同時だった。


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:27:14.43 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア


ダダダッ…


クラリス「み、美嘉さんっ!?」


美嘉(ランが…ランが!!)





??「待ちなさあい!!」カッ!


一同「!」


瑠衣「!?」


美嘉「ど、どいてよ!誰よアンタっ、このままじゃランが…!」


??「現代社会の難事件…人が絡んでいる限り、解けない謎は絶対ない!」ビシッ

??「たったひとつの真実見抜く!」シュバッ


??「見た目は大人!!」

??「頭脳も大人!!」


検事ワカバ(日下部若葉)「その名は、名検事、ワカバッ!!!!」ドォーン!!
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131054.jpg


クラリス「け、検事さん…!?」


メアリー(見た目は大人…?)

小梅(見た目は大人…?)

響子(見た目は大人…?)

美嘉(見た目は大人…?)

瑠衣(見た目は大人…?)

美浦(見た目は大人…?)

いつき(見た目は大人…?)

妃(見た目は大人…?)

鈴木(見た目は大人…?)

遠山(見た目は大人…?)

宮野(見た目は大人…?)


日部の隣に立つ男「…」パチパチ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:30:04.46 ID:pEu0rAd60<>

×日部の隣に立つ男「…」パチパチ

〇ワカバの隣に立つ男「…」パチパチ


です。すいませんm(_ _)m <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:31:54.22 ID:pEu0rAd60<>

美嘉「わ、ワカバだか、フタバだかわかんないけど、邪魔しないでっ!」

美嘉「てか検事じゃん!!警察じゃないじゃん!!」


ワカバ「モノを知らない子ねっ!この場においては似たよーなモノなのっ!!」

ワカバ「捜査権限を持つものとして、今この瞬間から、わたくしが現場を指揮しますっ!!」


美嘉「だからって…!」


瑠衣「美嘉さん落ち着いて!…貴女はこれから、二、三百近くある客室を一つずつ調べるつもりですか?」


美嘉「っ!」


瑠衣「調べるための客室のカードキーは?」


美嘉「それは…」


瑠衣「事態は一刻を争う…むやみに探したってランちゃんは助けられないよ」


ワカバ「そこのブラックコーヒーが苦手そうな娘の言う通りです!わたくしたちに任せなさい!!」


美嘉「く…」


ワカバ「たけうちっ!!」


『たけうち』と呼ばれた男「…はっ。ワカバ様。なんなりと」


ワカバ「この船は現在どっちの方角を向いてるかしらっ!?」


『たけうち』と呼ばれた男「…」スチャ


ワカバ「かがみなさい!わたくしにもコンパスを見せるのっ!!」ぴょんぴょん


武内検察事務官(346P)「…どうぞ」


ワカバ「…ふむふむ」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:38:38.33 ID:pEu0rAd60<>

ワカバ「あなた!」ビッ


美嘉「!」


ワカバ「映像に出てきた女の子を知っているのよね?彼女の部屋は何処にあるの?」


美嘉「な、7番デッキのミニスイートだけど…」


ワカバ「なら違うわね。あの部屋の雰囲気はスイートじゃなかった」


武内「ワカバ様、映像の窓の景色…昨日私が6番デッキのベランダから見た高度に酷似しているものと思われます」


宮野「あ、あの!おそらく映っていた客室はスタンダードのものであるかと…」


ワカバ「6番デッキ、スタンダード、成程…日差しから考えて右舷海側…」

ワカバ「ここにいる乗客の中で、殺された男性の方と面識のある者は!?」


ジャーナリスト達「「は、はい!」」


ワカバ「彼の部屋が何処にあるか御存知?」


妃「真壁さんはスタンダード客室、6番デッキの右側です!」


ワカバ「そっちは条件に一致する…船員さんはマスターキーを!わたくしは6番デッキへ急ぎます!」


美嘉「…え?」


ワカバ「ニブイわねぇ!いま、船は南を向いてるのっ!」

ワカバ「映像のなかの部屋は、窓から夕陽が差し込んでいたっ!」

ワカバ「見なさい!」ビシッ

ワカバ「会場の窓からも見えるでしょう?今、太陽は進行方向の右側にあるの!!」

ワカバ「つまり、あの映像は右舷海側の部屋が映し出されていた可能性が高いってことっ!!」


美嘉「そうか…!だったらそこにランが…!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:40:58.94 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 客室(真壁)



美嘉「ラン…!ラン!返事して!!」ドンドン!


ワカバ「マスターキーは?」


船員「す、すみません!まだ…」


瑠衣「中にランがいるかもしれないんだ!急いで入らないと…!」


ワカバ「船員さん、事態は急を要します。ドアを壊してもよろしくて?」


船員「は、はい!?…ええと…」


ワカバ「…」


船員「…」


ワカバ「…たけうち」


武内「…」

ベキョッ


美嘉(ぶ、ブリキ細工みたいに剥がれ開いた…)




武内「ワカバ様、中は危険です。ここはまず私から」

ワカバ「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:43:12.67 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 客室(真壁)


ザッ


武内「!」






ワカバ「ッ、みんな、入らないで!!」


一同「!!」ビクッ
















真壁「」


武内「…手遅れのようです」

武内「ワカバ様、足元に気を付けて下さい」


ワカバ「破片でしょう?そんなこと言われなくても承知してるわ」コツコツ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:48:20.03 ID:pEu0rAd60<>

武内「少女の方は?」








ラン「」


ワカバ「…」ぺちぺち








ラン「…」


ワカバ「失神しているだけみたい。命に別状は無いわ」








ラン「っん…」

ラン「…わた…し…は…」


ラン「…ぃっ!?」ビクッ


ワカバ「大丈夫、落ち着いて…わたくしの顔が分かる?」ぎゅ


ラン「…」


ワカバ「なにがあったの」


ラン「わ…わわ、わたしの、目の前で…真壁、さんが…」ぶるぶる


ワカバ「…そう」


ラン「あ、あの…あなたは…?」


ワカバ「私はワカバ。名検事ですっ」フンス


ラン「…」




ラン(こども…?)






http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131057.jpg

主演:神崎蘭子・赤羽根P(765プロ)


堕天使探偵ラン 逢魔の海の殺人

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:49:29.49 ID:pEu0rAd60<>

二日目 夕方 17:31現在



 A 7番デッキ 右舷 ラン

 B 6番デッキ 左舷 美浦 エイジ

 C 6番デッキ 左舷 遠山 和樹

 D 6番デッキ 右舷 真壁 晶←DEAD

 E 5番デッキ 右舷 いつき 陽

 F 5番デッキ 右舷 鈴木 園香

 G 5番デッキ 左舷 妃 英美

 H 4番デッキ 右舷 斉葉 瑠衣

 I 7番デッキ 左舷 ワカバ検事

 J 7番デッキ 左舷 武内検察事務官


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:52:46.78 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夕方 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 客室(真壁)





武内「申し訳ありません、犯人をとり逃がしてしまいました」


ワカバ「姿を見たの?」


武内「それが…ここから展望台まで船員さんと手分けして探し回ったのですが…怪しい人影は何も」


ワカバ「…何も?」


武内「…」


ワカバ「たけうち、あの映像を見てから、わたくし達が3番デッキ中央の螺旋階段に着くまで、どれくらいかかったか覚えてる?」


武内「…1分から2分といったところでしょうか」


ワカバ「フロアを移動するためには必ず中央の螺旋階段かエレベーターを使わなければいけないわ」

ワカバ「あそこは大きな吹き抜けになっていて、階段を上り下りする人間ならどこからでも見つけられるようになっている」

ワカバ「…映像を見てから2分、映像と現在時刻のラグが約2分、計4分間…犯人はその間にどこまで行けるかしら」


武内「…検証してみるまで断言できませんが、せいぜいフロアを2つ移動するので精一杯かと」


ワカバ「つまりあの時点では、犯人は4番デッキから展望台までのどこかにいたことになる」

ワカバ「…上のフロアに居ないのなら…わたくし達はどこかで犯人と鉢合わせしているはずなのだけれど」


武内「4番デッキと5番デッキは客室が並ぶのみ。隠れる場所の無いフロアですから、そこで我々をやり過ごそうとしても見つかってしまう…」

武内「犯人は我々の初動対応の速さを見越し、何かしらの手を打っていたということでは?」


ワカバ「犯人は袋の鼠だった…なのに、まるで亡霊のように消えてしまった…?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 22:58:24.90 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア



美嘉「大丈夫!?」


メアリー「どこも怪我してないノ!?」


ラン「この程度、傷の内にも入らぬ…(大丈夫です…ありがとう…)」


小梅「し、心配した…よぉ…」


美嘉「ホントだよ!何回電話しても出ないんだもん!」


ラン「電話…?」ピッ

ラン(スマホの電源が…切られてる…)


響子「私達とはぐれた時、一体何があったの?」


ラン「今宵紡がれし追憶…あれは伝奇の求道者の籠の傍ら…(…あの時私は、6番デッキの真壁さんの客室の前にいたんです)」

ラン「宴の残滓残されし地にて、我が頭脳は歪みを捉えた(ワインボトルがまだ外に残っていたから、おかしいなって思って)」

ラン「刹那、背後から闇の波動が…(そうしたらいきなり、後ろから…)」


クラリス「ともあれ、無事でなによりでした…」ほっ


ラン「…」


響子「でも…だれがこんな…」


メアリー「そんなの、マリン・キッドの仕業に決まってるじゃなイ!!」

メアリー「出たのよ、ホント二!!」


ラン「…」ふらふら


美嘉「あ、ちょっと!ラン!」




美浦「スクープ…本当に起きちまったな」


妃「マリン・キッド…ってアレ、単なる都市伝説でしょ?しかも信ぴょう性皆無の」


いつき「信憑性があったらそんないわくつきの海域、航路に選ぶはずも無いですからね」


鈴木「ていうことは、船にいる誰かの仕業?じゃないとあり得ないですよね…せっかくの豪華客船なのにそんな変質者、乗せないでよ…」


ラン「あの…」


妃「?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:01:19.55 ID:pEu0rAd60<>

美嘉「ちょっと、ラン!?」


妃「事件の録画データが見たいだなんて…急にどうしたの?」


ラン「我が思慮に楔を打つ幻、これは捨ておけぬ(ちょっと、気になることがありまして)」ピッピッ


美嘉「あんた襲われて間もないんだから、無理しない方が良いって、ねぇ!」


ラン「…」


美嘉「ラン…」


妃「…これ鈴木のカメラだっけ?よく撮ってたわね…」


鈴木「ま、まぁ…ジャーナリスト時代のちょっとした習慣というか…」


ラン「足りぬ…!もっとだ!(もう一度見せて貰っても良いですか?)」


美嘉「…」


<バリンッ!


ラン(ボトルで頭を一撃…)

ラン(犯人は、まるで生放送のように、殺人の一部始終を船の液晶に流していた…)

ラン(でもこれを見る限り、なぜか私の椅子だけ中途半端に離して…別々にカメラに収めている)

ラン(あの時カメラの後ろには、まだ十分なスペースがあった。引いて撮れば私も一緒に映れた筈なのに)


<バリンッ!


ラン「デュオニューソスの仮面…(ラベル…)」


妃「?」


ラン「血錆染まりし冥府道の轍や如何に…(客室に駆け付ける時の、みんなの映像も見せてください)」


妃「…」ピピッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:05:15.65 ID:pEu0rAd60<>


<日部「マスターキーは?」


<船員「す、すみません!まだ…」


<瑠衣「中にランちゃんがいるかもしれないんだ!急いで入らないと…!」


<日部「船員さん、事態は急を要します。ドアを壊してもよろしくて?」


<船員「は、はい!?…ええと…」




ラン「…」ピピッ




<ワカバ「捜査権限を持つものとして、今この瞬間、わたくしが現場を指揮しますっ!!」


<美嘉「でもっ…!」


<瑠衣「美嘉さん落ち着いて!…貴女はこれから、二、三百はある客室を一つずつ調べるつもりですか?」


<美嘉「!」


<瑠衣「調べるための客室のクルーズカードは?」


<美嘉「それは…」


<瑠衣「事態は一刻を争う…むやみに探したってランちゃんは助けられない」


<ワカバ「そこのブラックコーヒーが苦手そうな娘の…」



ラン「…」



ラン(やっぱり亡霊なんかじゃない…犯人は間違いなく人間。それも、確実に大罪悪魔が絡んでいる…)


ラン(暴食か、怠惰か、傲慢か)


ラン(…)


ラン(私がやらなきゃいけないんだ…早く解決しないと、また救われない人たちが…)

ラン(赤羽根さんは居ない…私が持てる手掛かりは、この映像と私の記憶の光景だけ…)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:10:19.21 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア


ガチャッ


ワカバ「みなさん!!」


一同「!」


ワカバ「先程船長と連絡をとり、この船は可及的速やかに、港に引き返すことになりました」

ワカバ「本土へ着くのは明日の夜頃、到着次第警察に捜査権限を委譲するつもりです」

ワカバ「それまではわたくしが事件の捜査を担当します。くれぐれも、現場に立ち入るなどの勝手な行動は慎んでください」

ワカバ「…」じっ…


ラン「…??」

瑠衣「…」


妃「検事さん、現場の状況はどうだったんですか?」


ワカバ「…真壁さんの死因は後頭部殴打による脳挫傷。殴られた後頭部以外に目立った外傷はありませんでした」

ワカバ「凶器となったワインボトルは、昼間にルームサービスで客室前に運ばれた物のようですね」


遠山「それは、確かに覚えてます。居合わせてましたから」


鈴木「あれが凶器に使われた…ということは、あれはもしかして犯人が?」


ワカバ「おそらくは。注文した時間は昨日の夜遅く。その時点で犯人は真壁さんを部屋の中で拉致していたと考えるべきでしょう」


いつき「つまり昼に僕達が部屋の前で集まっていた時には、すでに監禁されていた…!?」


美浦「うげぇ…」


ワカバ「今日の昼に起きた犯行予告も犯人によるものとみて間違いありません」

ワカバ「引き出しには、その時使われたであろう切り抜きが残っていました」


ラン「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:13:39.42 ID:pEu0rAd60<>

ワカバ「次に死亡推定時刻ですが…」

ワカバ「微かに体温が残っていて、死後硬直もまだであることから、死後一時間も経っていない…」

ワカバ「いま船医さんにも検死してもらっていますが、概ねわたくしと同じ分析になると思います」


美浦「ちょっと待て、殺されたのは5時20分だっただろ?時計が映ってたんだ。それぐらい俺達にも分かる」


妃「でも…壁の時計なんてアテになるの?あの針、弄られていたかも」


鈴木「それは…た、確かに…」


ワカバ「わたくしも当然考えました。しかしスタッフの話では、時計の調整には特注の工具が必要らしいので、それはありえません」

ワカバ「少なくとも映像の中の時計は正確な時刻を差していた…と考えていいでしょう」


いつき「つまり、犯人はその時間にはアリバイが無い…と?」


ワカバ「そういうことになります」


妃「だったら、私達は違うわね。パーティ会場で映像を見ていた人には無理」

妃「あのとき現在時刻と映像の中では2分間のラグがあったわ。2分で現場から会場まで行けっこないもの」


ラン「…」


ワカバ「その検証も含めて、事実確認を急いでいるところです。あと事件前後の船内の状況も」






宮野「あの…そのことなのですが」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/18(土) 23:14:26.64 ID:KbR5Fgv10<> 推理に必要な見取り図系の絵は再うpしてほしいですね <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:17:03.14 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ 螺旋階段


ワカバ「全員出席していたんですか!?」


宮野「はい…受付にて、お客様のサインをとっていましたから、間違いありません」

宮野「ラン様と真壁様を除く全員の出席を確認しております」


武内「誰かが二人分のサインを書いた…ということは?」


宮野「…それは無いと思います。受付担当のスタッフは、怪しい動きをしていた人物はいなかったと」


武内「…」


ワカバ「だったら、パーティが始まってから席を立って、そのまま帰ってこなかった人間はいるかしら?」


宮野「席を立った人間は何人かいたようですが、もどってきていない人となると…」


ワカバ「もう一度確認してきて頂戴。あと…適当な空き部屋を用意してくださる?」


武内「ワカバ様?」






ワカバ「どうやらこの事件、ひとりひとりに話を聞いてみる必要があるみたいね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:26:50.97 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア


ワカバ検事、事情聴取中


メアリー「今のうちに小梅ちゃん、現場に連れてけるんじゃない?」

メアリー「そしたら一発解決よ!!」


美嘉「見てきたけど、検事が取り調べを一人でしてて、もう一人が現場見張ってる。無理っぽい」

美嘉「それに、どうにかしたいのは山々なんだけど…ランがあの調子じゃ…」


ラン「…」


メアリー「い、行き詰まってるんだったら、なおさら手掛かりを見つけなきゃでショ!」


美嘉「そうじゃなくて…ランの奴、なにか事件以外のことで悩んでる気がするの」




ラン「…」

ラン(誰もが救われるべき人間…)

ラン(これまでの、宇佐美美音や橘千種のように)



ラン(私の目の前で殺人が行われた、あの時…確かに違和感があった)

ラン(もっとよく思い出さないと…右目で覚えた光景を…ひとつも漏らさず…)キィィィン



ラン(あの時の…叩き付けられた怨の塊)

ラン(狂気を孕む眼…)

ラン(滴る鮮血)

ラン(生臭い脳髄)


ラン(終わってしまう、人の命)


ラン(もっと、鮮明に…!)



バチ…ッ!!



ラン「!?」ゾクゾクゾクッ!

ラン(ぁ…)



ドシャァッ!



美嘉「!!」


クラリス「ランちゃんッ!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:36:42.28 ID:pEu0rAd60<> >>62

oh...

ぱっと確認した感じ、現時点で第四幕の画像がごっそり消えてるみたいですね

応急処置として、とりあえず四幕の挿絵をこっちで再うpしようと思っています

ただ結局それもいつかは消えると思われるので、何かしらの対策を考えなければ… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:40:00.21 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


『事情聴取・美浦』


・美浦の持ち物

着替え、取材用具一式、タバコとライター、携帯食料、十得ナイフ(船員が預かっている)



ワカバ「これといって気になるものは無いわね」


武内「骸骨の面や外套でも誰かの荷物から見つかれば決定的なのですが」


ワカバ「さすがに窓から放ってるでしょう。甲板に引っかかってないか一応確認してよね、たけうち」



・アリバイ

美浦「俺達は固まって取材することは無いんだ。だから他所で取材した仲間のアリバイの証人にはなれないってことは言っておく」

美浦「で、俺はというと、午後は1番デッキにあるフィットネスクラブを取材して回っていた。筋トレ趣味だし書きやすいからな」

美浦「4時半頃にパーティエリアに向かうまで満遍なく器具を使わせてもらってたから、俺を見てた人は多いと思うぜ」

美浦「証明できない時間っつったら、一回部屋に戻った時ぐらいだな。すまんがそのとき何時だったかは思い出せない」


・真壁晶との関係

美浦「奴との関係?…ただの部下だよ」

美浦「三か月前に真壁の野郎が務めていた出版社が倒産してな、うちの会社に移ってきたんだが…」

美浦「詳しくは知らねぇよ。そのあたりの話は同じ『拾われ組』の遠山と鈴木が詳しいと思うぜ」

美浦「俺にとっちゃ、いきなり俺の上にふんぞり返ってあーだこーだ指図するいけすかねー奴ってこった」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:43:07.88 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


『事情聴取・遠山』


・遠山の持ち物

着替え、取材用具一式、小型クーラーボックス、音楽プレイヤー、電子辞書



武内「見てください、ワカバ様」


ワカバ「?」


武内「このクーラーボックスならばワカバ様も片手で持てるのでは?」


ワカバ「イキナリ何。喧嘩売ってんの?」


武内「…メーカーを控えておきましょう」サラサラ

武内「私めが忙しいときはこれで冷えたリンゴジュースを運んでいただけると助かりま…」


ワカバ「…」ゲシッ



・アリバイ

遠山「…昼からはずっと3番デッキを回ってました。途中から鈴木も一緒に」

遠山「本当は初めから鈴木と共同だったんですけど、なにか用事だとかで部屋に籠ってて」

遠山「パーティ会場に合流したのは僕が最後だったかなぁ…一回部屋に戻ってからだったんで、4時50分ぐらいです」

遠山「少なくともその時は全員が会場に居たはずです。途中で席を立った人…はちょっと覚えてません」



・真壁晶との関係

遠山「…たしかに真壁さんとは、前の職場からの付き合いです。そのころから暴走する癖がありました」

遠山「都市伝説マニアでもあったので、なんでもない事件と陰謀論を結び付けたりして、たびたび顰蹙を買って…」

遠山「ただ、勘が鋭いというか、事件のスクープを嗅ぎ付ける能力自体は高かったから、目を瞑って貰っていたんだと思います」

遠山「勝手が違うこっちの会社に移った後も、あの人は同じ調子だったので、毎日みんなと衝突してましたね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:45:35.38 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


『事情聴取・いつき』


・いつきの持ち物

着替え、取材用具一式、酔い止め薬、抗アレルギー剤、本5冊、ペンライト


ワカバ「これは?」


いつき「アレルギーですか?ピーナッツです。粉程度でも気管が塞がってしまうので」

いつき「毎回シェフに確認とったり、ルームサービスで注文付けたりしてるのはそのせいです」


ワカバ「ルームサービス…そういえば、真壁さんにアレルギーは?」


いつき「無かったと思いますけど」



・アリバイ

いつき「午後は2番デッキの劇場エリアで仕事してました。」

いつき「四時になってからは真っ直ぐパーティエリアに、一番乗りに到着したのを覚えてます」

いつき「ウェルカムパーティの取材担当僕だったんで。準備風景も撮る必要がありましたからね」

いつき「パーティの最中に席を立った人?…美浦さんが一回トイレに立ったかな、確か」

いつき「時間は覚えてませんけど」



・真壁晶との関係

いつき「確かに部長は変に暴走するし、現場を私物化したり大変ですけど、僕は別に気にしてなかったです」

いつき「あいにく取材方針で喧嘩に発展できるほど仕事に熱持ってるわけでは無いので。いつも遠目から眺めてました」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:49:12.27 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


『事情聴取・鈴木』


・鈴木の持ち物

着替え、取材用具一式、化粧品多数、ヘヤーアイロン、ヘヤースプレー等々


武内「化粧品…こんなに色々必要なものなんでしょうか?」


ワカバ「あら、わたくしでもこの半分くらいは常備してるわよ」




・アリバイ

鈴木「あ、もう遠山君から聞いてました?ランチの時に紅茶こぼしちゃって、着替えてたんです」

鈴木「わたし服変えると髪もそれに合わせたくなっちゃうんで、3時くらいまで部屋にいました」

鈴木「その後は遠山君と手分けして3番デッキの取材ですよ」




・真壁晶との関係

鈴木「わたし、前の職場のときは部署が遠かったので噂でしか知らなかったんですよねー」

鈴木「まあ想像通りの人だったわけですけど…あれでよくポンポン昇進できたなあって」

鈴木「仕事に熱心なトコはまあいいとしても、気に入らない記事とかは文脈とか粗探しして、速攻没にしちゃうのは勘弁」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:53:03.52 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


『事情聴取・妃』


・妃の持ち物

着替え、取材用具一式、化粧品、眼鏡、ノートPC、護身用スタンガン(船員が預かっている)


ワカバ「取材用具は皆似たり寄ったりね」


武内「ノートとペン、レコーダー、カメラといった具合ですね」




・アリバイ

妃「毎日の行動は分単位で覚えています。忘れないように全部手帳に書き写してましたから」

妃「夕方はスパプールの方で取材。4時に部屋に戻って資料をまとめて、4時20分にパーティエリアに向かったわ。私より先に来てたのはいつき君だけでした」

妃「4時30分頃に美浦、35分に鈴木、50分に遠山の順で合流。パーティ直前に真壁部長に電話してみましたが、不通のまま…」

妃「パーティの最中は皆同じテーブルに集まっていました。5時10分頃に美浦君がトイレに立ったけど、例の映像が始まる頃には戻ってきてたはず」

妃「こんなところかしら」



・真壁晶との関係

妃「…実は言い寄られたことが何回か。でも興味なかったし、というかそういうの間に合ってるし、何か言えるほどの事でも無いわね」

妃「動機の線で探ってるつもりならお生憎様。でも、哀れよねぇ…」

妃「真壁さんの死、誰もたいして悲しんでないでしょう?私はこうはなりたくないわね」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/18(土) 23:58:00.66 ID:pEu0rAd60<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


『事情聴取・船内スタッフ』


宮野「あの関係者の中で、騒動が起こるまでの間にパーティエリアを出られた方は美浦様のみでした」

宮野「時間は夕方5時10分頃から、騒動の起こる5時20分の間だったそうです」


武内「ふむ…」


ワカバ「騒動のあった時間、船内スタッフの中で、不審なものを見た人は?」


宮野「特に何も…現場と同じフロアにあるレストラン『ヴェリータ』には少数のスタッフがおりましたが、店の外には出なかったそうなので」

宮野「4番デッキ、5番デッキは全ての部屋が客室のフロアでして、常駐スタッフはおりません」


武内「レストランスタッフは犯行可能な状況だった…」


ワカバ「動機の問題を無視するなら、ね」

ワカバ「中央の螺旋階段とエレベーター以外のフロア移動設備は?業務用エレベーターくらいありますよね?」


宮野「…中央のエレベーターとは別に、料理を運ぶ時などに使う業務用エレベータはございます」

宮野「しかし、およそ16時から例の騒動が起きるまでの間は、会場に料理やセットを運ぶため、常に動かしていました」

宮野「なので、第三者に使われていた…などということは考えられないと思います」


ワカバ「なるほど…」

ワカバ「スタッフの中で真壁さんの顔を最後に見た時間は何時ぐらいになりますか?」


宮野「『ヴェリータ』のスタッフが、ルームサービスでステーキディナーを運んだ時、お顔を見られたそうです。時間は昨夜10時半頃」

宮野「それ以降に真壁様の姿を見たスタッフはいませんでした」

宮野「ワインボトルの注文の際は、客室内ディスプレイにて頼まれたため、実際にお顔を拝見しわけではありません」

宮野「また、そのワインボトルをお運びしたスタッフも、真壁様の客室ドアに札がかけられていた為に、入ることは出来なかったそうです」

宮野「本日午後1時から2時の間、ハウスキーピングが全ての客室をまわり、掃除をすることになっていますが…」

宮野「その際も真壁様の客室には変わらず札がかけられていたらしく、中を窺うことは…」


ワカバ「…」

<> >>1です<>saga<>2017/03/19(日) 00:07:00.52 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 4番デッキ 左舷 空き室


武内「取材を受けた船員たちはルポライターのことを覚えていました。間違いありません」


ワカバ「…」


武内「何人かは所用で自室に戻っている時間があるようで、その間のアリバイは無いものと考えてもいいでしょう」

武内「美浦さんが午後3時から30分ほど、遠山さんが午後4時から40分ほど」

武内「鈴木さんは午後2時から一時間弱、そして妃さんが、午後4時から20分…」


ワカバ「…パーティ以前の時間なら殺せる余裕があったってことね」


武内「しかし、肝心の事件前後のアリバイは完璧です」

武内「美浦さんが僅か10分ほど席を立ったのみ。現場を往復して殺人を行える時間ではありません」


ワカバ「その上パーティに出席しなかった乗客は事件被害者の二人だけ…」


武内「…乗客に犯行は不可能です。となれば残っているのはパーティに出席していない船内スタッフのみ」

武内「真壁さんと彼等の間に何らかの関わりが無いか調べなければ…」


ワカバ「記者殺すために豪華客船のスタッフになる人間って不自然過ぎない?」


武内「しかし…」


ワカバ「たけうち、もっと単純に考えるの」

ワカバ「動機を考えると船内スタッフの線は無いわ。でも状況を考えると会場にいた誰かでも無い」


武内「…」


ワカバ「だったら、犯人になりえる人間は一人しかいないじゃない」


武内「!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:12:51.84 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ 医務室


ラン「ん…」パチ


小梅「あ…起きた…!」


クラリス「ランちゃん!」


ラン「ここは…」


響子「医務室。倒れちゃったんだよ、ランちゃん」


メアリー「もー、心配させないでチョーダイ!!」


ラン「…」

ラン(力を使い過ぎたのか?強烈なフラッシュバックが…)


美嘉「無理しないでよ、アタシたちには、アンタが頼りなのよ?」


ラン「…」ふいっ


美嘉「ラン…?」



ラン「我が器は…漆黒を拓く者のそれとは…(別に私は…頼れるような存在じゃ…)」


美嘉「ねぇ!ランってば!」がしっ!


ラン「っ」


美嘉「しっかりして」

美嘉「…この事件、悪魔がらみだって思ってるんでしょ?」

美嘉「だったら一筋縄じゃいかない。あの刑事さんだって居ない。ラン一人じゃ解決できないかもしれないのよ?だから…」



ラン「そんなことわかってますっ!!」



一同「!!」


ラン「でも…私が頑張らなきゃいけないんです…!」

ラン「私は天使だから…私が…みんなを救わなきゃ…みんなに応えなきゃ…」


クラリス「ラン…ちゃん…」



ガチャ


妃「ちょっと、いい?」

妃「ワカバさんが…みんなを集めるように言ってるわ」

妃「犯人が分かったらしいわよ」


一同「!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:15:51.98 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア


美嘉「犯人が分かったって…いったい…」


ラン「…」


鈴木「本当なんですか!?日部さん!」


美浦「さっすが、見た目は子供、頭脳は大人の…」


ワカバ「見た目は大人ですっっ!!!」ビシッ!


一同「…」



ワカバ「…こほん」

ワカバ「今日の午後5時20分…パーティ会場に集まった私達の前に、恐るべき殺人映像が映し出されました」

ワカバ「僅か二分前に行われたその殺人映像から、私達は速やかに現場の位置を割り出し急行しましたが…」

ワカバ「そこに犯人の姿はなく、二人の被害者が残されていただけでした…」

ワカバ「パーティ参加者が見ている前での犯行…そして逃げ場のない状況にもかかわらず、私達を嘲笑うかのように姿を消した犯人…」

ワカバ「あの時間…現場に行くことも、出ることも、どの関係者にもできなかった状況…変則的な密室と言えるでしょう」

ワカバ「確かにこれは、一見亡霊の仕業…と考えてもおかしくない不可能犯罪に見えます」


ワカバ「でも、その不可能を可能にできる人間が、この中にいるのですっ!!」ビシッ!!


一同「!?」




美浦「どういうことだ?そんなの、どう考えたって不可能だろ?」


妃「あの殺人ビデオが映ったとき、今ここにいる全員にアリバイがあったのよ!?」



ワカバ「一人だけアリバイの無い人間がいたんです」

ワカバ「まず、あの時の映像を、もう一度確認してみましょうか」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:28:52.06 ID:kpip1hiO0<>

※現場の状況と映像の位置関係
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131076.jpg
(この資料貼り忘れてました。くさべぇの現場検証の時に貼ったと勘違いしてました。ごめんなさい…)


映像の順番


『マリン・キッドによる公開処刑』と書かれた画面。



客室に真壁と怪人。



怪人、ワインボトルで真壁を撲殺。



怪人がレンズを手で覆い暗転。



手がはらわれる。



拘束されたランが映り、映像は終了。



美嘉視点での一部始終は>>47参照

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:32:42.16 ID:kpip1hiO0<>



ワカバ「一見この映像は、あの現場で起こった全てを映しているように見えます」

ワカバ「しかし、もしこの映像が『半分だけニセモノだった』としたら、どうでしょうか」


遠山「えっ…?」


ワカバ「見てください。犯人は真壁さんを撲殺した後、画面が真っ暗になるようにカメラのレンズを手で隠していますね」

ワカバ「向きを変えるだけなら側面のグリップを握るだけで良い筈です。何故わざわざレンズを覆ったのか」

ワカバ「実はこの時、犯人はカメラを止めて、これを『前半の映像』として会場の私達に見せたんです」


美浦「…おいおい、そんなことしたら、そこで動画がストップしちまうだろうが」


妃「そのあとの、あの子が映っていた映像はどう説明する気なの?」


ワカバ「そっちは、現場の辻褄を合わせる為に犯人があらかじめ用意した『後半の映像』だったんです」

ワカバ「暗転から始まる映像を間髪入れず繋ぐことで、別の映像に切り替わったことに気付かせないようにした…」

ワカバ「つまりこの殺人ビデオは、『真壁殺害の映像』と、『拘束されたランを映した映像』を組み合わせたものだったんです」

ワカバ「テレビや映画でよく使われる手法ですよ」


瑠衣「…ふむ、成程ね」


鈴木「でも…なんのためにそんなことを…?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:35:34.35 ID:kpip1hiO0<>

ワカバ「あの場に三人いたと思わせる為です」

ワカバ「なぜなら、犯人は真壁さんを殺す時、ランちゃんを同時に映すことが出来なかったから」

ワカバ「その時彼女は…怪人の格好をしてワインボトルを構えていたんですからね」



一同「!?」

いつき「まさか…」




ワカバ「そう、犯人はあなただったんですよ、ランちゃん」



ラン「な…!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:40:00.17 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア


美嘉「ランが…」


クラリス「犯人…!?」


ラン「た、戯け事をっ、我が名は…(ち、違いますっ!私は…!)」


鈴木「…」

妃「…」

いつき「…」

遠山「…」

美浦「…」


日部「…」キッ

武内「…」


ラン「っ」ぞくっ



妃「でも…『自分を拘束した映像』なんて…そんなの事前に撮れるものなの…?」

妃「撮る時自分は縛られているんだし、それとは別にカメラを手で覆っている人間が必要なのよ?」


ワカバ「一人でも十分可能です」

ワカバ「『ランの映像』でレンズを覆っていたのは、手ではなく布のようなもので、それを紐か何かで引っ張って作ったんだと思います」

ワカバ「映像の中のランちゃんは両手は後ろに回されていて、拘束具の有無は確認できませんから」


美浦「それなら…」

いつき「不可能ではない…のかも」


ワカバ「あなたは昨晩、真壁さんに自分の学園のことを侮辱されていましたね」


ラン「!」


ワカバ「あの言葉であなたは自身の信仰を否定され、また神を否定されたと感じた」

ワカバ「だから真壁さんに殺意を抱き、この犯行を思いついて実行した」

ワカバ「『取材に応じる』とでも言えば、あなたは簡単に部屋に入ることができたでしょう。その後、真壁さんを監禁…」

ワカバ「その後はさっき話した通り。そして、私達が部屋に駆け付けるまでの10分弱の間に変装を解き海に捨て、自分の手足を縛った」


ラン(そんな…)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:43:39.65 ID:kpip1hiO0<>

ワカバ「おそらく貴方の計画では、自分が容疑者候補から外れることだけが目的だったはず」



ラン(…私が…犯人!?…そんなコト絶対に…私は確かに人間を見た…あれが幻なわけが…)

ラン(でも…犯行時刻にあの場に居たのは私と真壁さんだけ…状況はそう示している)

ラン(ワカバ検事の推理で…辻褄があってしまう)



ワカバ「船内がパニックになれば、誰が何処にいたかなんて確認できずに、全員のアリバイが曖昧になる…」


ラン「…」ズキッ

ラン(頭が働かない…先刻の眩暈が尾を引いて…痛い)

ラン(ちぃっ、私はこんなに出来損ないだったかっ!?)

ラン(…)


ラン(出来損ない、だったじゃないか…)



ワカバ「でも、会場には偶然わたくし達が居合わせた。目論見が外れ、逆に全員のアリバイが証明されてしまった…それが敗因よ」



ラン(地に落とされ、羽根をもがれ、何時ぞやは犯人の心を見誤って)

ラン(挙句、正義に自信を持てないばかりか、もはや自分の無実すら証明できないでいる…)

ラン(人を救えない天使なんて、天使じゃない)

ラン(私は所詮…)






瑠衣「…」


ワカバ「…沈黙。潔く罪を認めるのね。まあそっちの方が全然楽だけど」

ワカバ「たけうち、はやく縛るものを…」くいくい


ラン(ただの堕天使に過ぎなかったのか…)



バッ!



美嘉「待って」


ラン「!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:46:30.39 ID:kpip1hiO0<>

ワカバ「…どいてくれないかしら」


美嘉「ランは絶対に犯人じゃない」


ワカバ「美嘉さん…一体何を根拠に?」


美嘉「わかんない」


ワカバ「…はい?」


美嘉「でもランは殺してない。そんな子じゃない」


ワカバ「犯人の知人は決まって『そんな奴じゃなかった』って言うものです」

ワカバ「でも…先程話した推理のとおり。彼女が犯人であることは疑いようのない事実」


美嘉「…」


ワカバ「二人とも拘束するしか無いようね」ぱちん


クラリス「…」

クラリス「ならば私も…」コツコツ

クラリス「自分の生徒を守ろうと思います」


ワカバ「え」

ラン「なっ…」


響子「はーい!私も!」バッ

小梅「は、背後、霊…」ババッ

メアリー「ガード!」バババッ


ラン「ち、血迷ったかっ!?我が同志達…(みんな…!?)」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:50:06.29 ID:kpip1hiO0<>

武内「…わ、ワカバ様、どう致しましょうか」おず…


ワカバ「ち、ちょっと!?あなた達、自分のやってること分かってるの!?」

ワカバ「今は誇らしい行動をしてるって、思ってるのかもしれない。でもムショ入ったらそんなコト言えなくなるわよ!?」


美嘉「そんなんじゃないっ」

美嘉「仲間だし、後輩護んのは先輩の務めだし、ぶっちゃけコイツ種族的に天使だし、そーいうのもあるけどそれだけじゃない」

美嘉「ねぇ、推理してた時の口ぶりから察するに、アンタも昨日のランの啖呵、聞いてたんでしょ?」

美嘉「だったら、アンタだってなんとなく分かるはずよ」


ワカバ「…」


美嘉「アタシ達がこうしてるのは、ランのことを正しいと思ってるからじゃない」

美嘉「てか何が正しいかとか、正義とか真実とか、そんな途方もないことアタシは考えるだけ無駄だと思ってる」

美嘉「でも…この子は絶対に考えるのやめない。それでどんだけ酷い目にあっても逃げないし、嫌な記憶だって絶対に忘れない」


美嘉「見たくないコトでも、聞きたくないコトでも、関係なく真正面から向き合ってる!」


美嘉「うまく言えないけど、だから私達はランを信じていられるの!」

美嘉「私達は、天神に仕えるシスターだからっ!」


ラン「!!」


瑠衣「…」




ラン(そうだ…私は…!)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:54:22.78 ID:kpip1hiO0<>

ワカバ「…あー!もぉ!めんどっちーわねぇ!」ばりばり

ワカバ「たけうち!手伝いなさいっ!」

ワカバ「そこまでわたくしの邪魔をしたいんだったら、いっそのこと全員捕まえて…」




ラン「…ふ」

ラン「ふふふっ…」



美嘉「…?」

クラリス「ラン…ちゃん?」









ラン「フーッハハハハァーッ!!!」カッ!!



ワカバ「!?」


一同「!?」



ラン「この感覚っ、久しいぞぉ!!魔力が漲ってくるわぁ!!」ゴォォォォ



ワカバ「ちょ、ちょーっと!?今更往生際悪くなるなんてどういうキャラして…」





ラン「いつから私の咎と錯覚していたッ!?(ワカバさん、貴女の情報不足を指摘して見せましょう)」ビシィッ



ワカバ「!?」


一同「!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 00:57:00.51 ID:kpip1hiO0<>

ワカバ「じょ、情報不足ですってぇ!?」


ラン「咎人に対する恐れを超え、相対せねば、この幻術は破れんぞ(貴女はこの事件の象徴ともいうべき要素を見落としていますよ)」

ラン「我が器は、確かに供物を捧ぐに値する適性があるだろう(確かに私は、あの映像の後半部分を前もって用意することができたかもしれない)」

ラン「だが、それだけでは足りぬ…(でも、前もって用意しなきゃいけないものは、他にもあります)」


ワカバ「…」


ラン「即ち蒼天のペルソナと外套の事よ(仮面とマント)」


ワカバ「!」


ラン「これ程の高等幻術…幾ら幻術を得意とする私でも相応の備えが無ければ叶わぬよ(計画殺人であるならば、あれらも乗船前に用意していたと考えるのが自然です)」

ラン「それこそ刹那の滅意であるならば猶更不可能よ(しかしそれは、私が乗船後に殺意を抱いたという貴女の推理と矛盾します)」


美嘉「そ…そうだ、アタシら荷物検査受けてるんだ」

美嘉「変なもの入れてたら、その時に怪しまれてるはず」


ワカバ「い、いいえっ!それも凶器と同じく、この船のどこかで調達していた可能性だってあるわ」

ワカバ「ここは豪華客船。無いものを探す方が難しいもの。だいいち、二番デッキに行けば劇場エリアが…」


ラン「戯曲のスコアは覚えている…我等が覇道の茨となるは『彷徨えるファミリア』に他ならぬ(演目の中で骸骨の衣装を使うものは歌劇「こうもり」だけでした)」

ラン「使い魔は今宵も踊り狂うだろう。羽根が欠ければ無様に啼くのも又、道理(そしてそれは今夜も開演される予定で、準備を進めるスタッフによれば紛失した小道具は無かったそうですよ)」


ワカバ(い、いつの間に…)


ラン「断罪者に拓かれし導は暗い…(貴女の推理の中で、確かと言えるものがあるとすれば…)」

ラン「射し込む光は箱舟に潜む蒼天魔を一瞬淡く照らしたにすぎぬ(これが何らかのトリックを使った計画殺人であることと、それを仕組んだ犯人はこの船の中にいるという事)」

ラン「詰めが甘いのだ未熟者っ!!(この二点だけなんです!)」ビシィ!


ワカバ「むぐ…」


一同「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:04:52.37 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 7番デッキ ミニスイート


美嘉「もぉ!平気なんだったらそう言ってよぉ!!」


ラン「あ…あはは…ごめんなさい」


美嘉「だまり込んでんだもん!!」

美嘉「ピンチだと思った!!ぜったいピンチなんだと思ったっ!!」

美嘉「おりゃー!!こんにゃろー!!」こちょこちょ


ラン「ひゃっひっふっ!?」ぐねぐね


クラリス「あなたもです」こちょこちょ


美嘉「ひゃー!?」ぐにゅぐにゅ


クラリス「疑いが晴れたからよかったものの、公務執行妨害で逮捕されてもおかしくなかったのですよ?」


美嘉「そりゃーまー…悪いと思ってますよ。考え無しでした。ごめんなさい」

美嘉「…でも、結局みんなこっち来たじゃん」


一同「…」


クラリス「…ふふ」


美嘉「あははっ」



ラン「みんな…ありがとう…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage <>2017/03/19(日) 01:05:45.11 ID:apOHvS960<> 人生初のリアタイ遭遇が楽しみにしていたこのシリーズとは‥ <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:11:48.11 ID:kpip1hiO0<>


ラン「今、闇は祓われた…(私、やっと…)」

ラン「我が器は、悪魔の瘴気に侵され、惑っていたのだ(私の中で、くすぶっているものの正体が、やっとつかめたんです)」


響子「くすぶっている、もの?」


ラン「その瘴気とは…『畏れ』よ(ずっと『恐い』って思ってました)」


クラリス「…恐い?」


ラン「我が魂魄に打ち込まれし悪魔の楔…色欲の名の如くこの身を侵す毒…(アスモデウスが仕掛けた事件で、私はくい止められたはずの犯人の死を止められませんでした)」

ラン「私には抗う術など無かった…受けた事の無い、未曽有の呪術(そんな失敗、許されないって、自分自身の存在意義を疑うくらい、自己嫌悪して…)」

ラン「憐れにも、我が心は闇に飲まれ…迷宮の奥底へと誘われてしまった…(だから怖くなってしまったんです。二度とあんな結末にしたくないから、臆病になっていた…)」

ラン「だが幸運にも、アリアドネの女神は私の隣に微笑んでいたのだな(でも…美嘉さんの言葉でわかりました)」


美嘉「ラン…」


ラン「無様にも私は、この世界にて完全なる顕現を遂げてはいなかった(私、覚悟を決めなきゃいけなかったんです)」

ラン「私は、天神の名の下に降り立ち、掠れ、移ろい、脆く崩れる白き翼なり(私はパパみたいに全能じゃない。ただのちっぽけな天使)」

ラン「だが我が辞書に逃走など存在しない。メフィストも、テティスだろうと屈してやるものか(だから、私が掲げるべきは『悲劇を生まない正義』じゃなくて、『悲劇を乗り越える正義』だった)」

ラン「全ての不義に神の鉄槌を下す、デウス・エクス・マキナになってやる!!(私の使命は、全ての罪の天敵として、真なる正義を示すことだから…!)」



ラン「我等の僕となりし者共よ!天の鉄槌を下す糧となれ!!(だから、みなさん!私に力を貸してください!!)」



クラリス「ふふ…当然です!」

小梅「ランちゃん…!」

メアリー「ばっちこーイ!」

響子「やっぱり…ランちゃんはこうでなくちゃ!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:14:12.50 ID:kpip1hiO0<>

美嘉「…こほん」

美嘉「さぁて、注もーく!!」ビシッ


一同「!?」


美嘉「メアリーの読み通り!マリン・キッドとやらが逢魔ヶ時にやってきた!」

美嘉「天神に仕えるシスターとしても、ミステリー研究部としても、これは絶っ対に見過ごせない!」


美嘉「だから、部としての方針を伝えるわっ!!」



美嘉「みんなで力を合わせて、天に仇なす悪党をブッ倒してやるわよっ!!」



一同「おーっ!!!」






ラン「闇に飲まれし真実はっ、我が両腕で必ず掬い上げて見せようぞ!!(この事件…必ず私が犯人の正体を暴いて見せます!!)」


ラン「天神の名の下に!!(パパの名にかけてっ!!!)」


<> >>85 恐悦至極に御座います<>saga<>2017/03/19(日) 01:21:53.88 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 7番デッキ 左舷 スイート


ワカバ「…」


武内「どうか機嫌を直してくれませんか、お嬢様」


ワカバ「…いいもん。わたくし物理トリック専門だもん」

ワカバ「玄関とベランダの死体をロープで繋いで宅配呼ぶとか、図書館のエレベーターに死体隠すとかそれ系専門だもん」


武内「確かに推理が失敗してしまうのは計算外でした」

武内「しかし皆様に解決を約束した手前、こうしてぶー垂れまくっていても…」


ワカバ「ただちょっとびっくりしただけよ。他の推理だってちゃんと考えてるわ」

ワカバ「あなた執事のくせに生意気よ、もう」


武内「…」


ワカバ「…はいはいわかった。現場、もう一度洗い直してみましょうか」


武内「そうしましょう…ん?」


コンコン






武内「…どちら様でしょう?」


ガチャ


クラリス「あの〜」おずおず

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:25:26.77 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 客室(真壁)


美嘉「…よし!」

美嘉「今のうち!クラリス先生が検事さんの気を引いている間に…早く!」こそこそ


ラン「…」ごそごそ


メアリー「…で、いる?」


小梅「いる…でも…うまく聞き出せ、ない」

小梅「こ、混乱してる…みたい…ちょっと…ま、まって」


メアリー「むー…一筋縄じゃいかないのね」


小梅「…じゅ、順番に、き、聞いてみる…」

小梅「…」

小梅「…」


ラン「むー…んー…」きょろきょろ


小梅「まかべ、さん…誰か、に…呼ばれた…こ、声が籠っ…て…わからない」

小梅「玄関…を…えと、ろ、廊下に出て…後ろから、い、きなり」


メアリー「後ろから…顔は見えなかったのネ…」


小梅「気付い、た、ら…真っ暗…動けな、ない…」

小梅「見えるように…なったら…骸骨の顔が…そ、そして、そのまま」


メアリー「むむむぅーっ、無敵の小梅チャンパワーがカタナシとは…」

メアリー「マリン・キッドめ…なかなかシッポを掴ませないのね」


小梅「ボトルで、頭が…真っ赤にぃ…♪」ぽわぽわ


メアリー「それにしても…なんでボトルで殴ったのかしらネ?」

メアリー「ドラマとかの犯人って、たいてい凶器は自分で用意してるものなの二…」


美嘉「乗る前に手荷物検査があったからじゃないの?あれX線とか使って、飛行機みたいに厳しかったし」

美嘉「凶器なんて持ち込める状況じゃなかっ…あれ?」


ラン「…」


美嘉「でも…犯人は仮面とマントを持ち込めてるんだよね?だったら凶器も持ち込めたっていいんじゃないの?」


ラン(そうだ…現場で感じた違和感…!)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:28:56.50 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 7番デッキ 左舷 スイート


わいわい


クラリス「ええ、そうなんです…苦労しているんですよぉ」


ワカバ「なるほど…問題児揃いの生徒たちなんですね…」

ワカバ「あの銀髪の子も含めて」ハァ


クラリス「ところで、ワカバさんは…」

クラリス「見たところ『経験が豊富』そうですし…」


ワカバ「…」ぴく


クラリス「私とは比べ物にならないくらい苦労話も多いのではないでしょうか」

クラリス「やはりこういった事件によく出くわしたりするんですか?」


ワカバ「そりゃーもー」フフン

ワカバ「業務で裁判所に行った回数よりも多いかもしれませんねー」


クラリス「まあ」


ワカバ「例えば、一番印象に残っているのは…たけうちと遊園地に行ったときの話が…」


クラリス「ゆ、遊園地?…お二人、随分仲がよろしいんですね」


ワカバ「へ?あっ!べ、別にそんなんじゃ…」

ワカバ「と、とにかく!そこでジェットコースターを利用した首切り殺人に出くわしまして…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:32:04.24 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 客室(真壁)


ラン「この刃こそ、幻術を解く鍵とならん!(私が感じた違和感の正体はこれです!)」カチャン


響子「…ステーキナイフがどうかしたの?」

響子「多分、ルームサービスで運ばれた料理のものだと思うけど…」


ラン「清酒の芳香纏いし禊の丘…(向こうの洗面台、微かにお酒の匂いがしていました)」

ラン「其は、デュオニューソスが名を冠す惨劇の布石(多分犯人が、ボトルを凶器に使う前に中身を捨てたんだと思います)」

ラン「芳香は魔犬を呼ぶ。嫌うのは道理である。が…(中身を捨てたのは、割った時に衣服や足にワインが付く万一を考えてのこと)」

ラン「しかし鮮血を啜る為、酩酊の器は不可欠ではない(でもわざわざそんな手間をかけなくたって、殺そうと思えば、このナイフを使って簡単にやれたはずなんです)」


美嘉「まー言われてみれば、確かにね…」


ラン「次なるパラドクス…其れは器の名(もう一つ気になるのが、ワインボトルのラベルです)」


メアリー「ラベル?」


ラン「名を冠するものは、之、忘却の彼方に在り(なぜか剥がして、ごみ箱に捨てられてるんです)」

ラン「歪む因果など知れておるというに(ラベルの有無なんて、それこそ気にしなくてもいいはずなのに)」


響子「えっと…整理させてね?」

響子「犯人は、前もって仮面とマントを持ち込んで、多分凶器も持ち込める余裕があった」

響子「でも、持ち込まずに、部屋にあるナイフも無視して、ルームサービスでワインを取り寄せた」

響子「中身を捨てて、なぜかラベルも剥がして、それで真壁さんを殴った…」


ラン「絶対の因果を操った…デュオニューソスは、その代償…(そこまで拘るのは、相当の理由があると思います)」



ラン(それこそ、『凶器がボトルでなければいけない』ほどの理由)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:34:33.53 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 7番デッキ 左舷 スイート


ワカバ「遊園地の事件を解決した帰りに、建物の裏手に走り去る男を見つけて後をつけたんです」


クラリス「まあまあ!」


ワカバ「そこで黒ずくめ組織との、怪しげな取引現場を目撃しまして…!」


ワカバ「取引を見るのに夢中になっていたわたくしは、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づきませんでした!」


ワカバ「わたくしはその男に気絶させられ…」


ワカバ「目が覚めたら…!」






武内「ワカバ様、そろそろ現場に行かれた方が…」


ワカバ「あ…そうだったわね。行きましょう」

ワカバ「クラリスさん、なかなか興味深い話をどうも」


クラリス「!」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:37:52.37 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 右舷 客室(真壁)


ラン(バッグの大きさにしては、中身がちょっと少ないような…)ごそ…

ラン(荷物が少ないと言えば…あの人も…)


美嘉「あっ…!」

美嘉「先生から連絡!検事がこっち向かってるって!」ばたばた


メアリー「あーん!モウ!いいとこなのニ!」


小梅「ま、正夢?…デジャ、ビュ?」

小梅「あの…いったい、な、何の、こと…言って…?ひにゅ!?」


美嘉「撤収、撤収!!」ぐいっ


響子「ランちゃんも、早く!」


ラン「う、うむ!」たたたっ…

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:41:23.44 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 螺旋階段






クラリス「…大丈夫でしたか?」


美嘉「現場入ったのは、バレてないと思います」


響子「ふふっ…私たち、まるでスパイ映画の主人公みたい」


小梅「わく、わく」


ラン「黙示は我が手中に収めた。誉めて遣わすぞ、我が同志(現場の状況は全部確認できました。先生、ナイスです)」


クラリス「えへん♪」


メアリー「で、次はどうすればいいノ?ランちゃん」


ラン「私は蒼魔の亡骸を欲す(できれば遺体を調べたいです。あの部屋には無かったので…)」


響子「遺体…医務室に運ばれたのかな?」


メアリー「豪華客船だったら、どこかに霊安室があるはずだけド…」


美嘉「霊安室なんてあんの!?」


小梅「れいあんしつ…!」ぽわぽわ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:46:59.69 ID:kpip1hiO0<>

2日目 夜 客船『ブライトウィン』 霊安室


ギイィ…バタン


クラリス「っと…案外簡単に入れてしまいましたね…」


美嘉「怖ぁー…」


小梅「♪」うきうき



ラン(所持品は…携帯に、手帳、タバコとライター)


メアリー「犯人の手掛かりっポイものは見当たらないわネ」


ラン「…」ごそごそ



メアリー「なにかしら…この手帳の『タネ』っテ」

メアリー「ブライトウィン号にマル囲ってあるわよ」


響子「ブライトウィン号だけじゃなくて、いろんなとこにも書いてあるよ?『タネ』…業界用語かなぁ?」


メアリー「スクープのタネってコト?人の名前にも書かれてるみたいだケド」


響子「うーん…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:51:58.10 ID:kpip1hiO0<>

ラン「…」サラサラ…べたっ

ラン「?」

ラン(上着のポケット…なんか手にべた付くものが…)


ラン(ボトルの破片…)べたべた

ラン(でも、べた付かない破片もある…この違いは…)


響子「それにしても…すごく意地悪ですよね…犯人」

響子「真壁さん、ポッケの中で鳴ってる電話に出られないまま、殴られちゃったんでしょう?」


美嘉「…妃さんの話だと、ランのスマホと同じで、電源切られちゃってたんだって」

美嘉「だから鳴りすらしなかった…と思う。ランもそういうの聞かなかったって話だし」


ラン(携帯の電源は二つとも切られていた…着信できなかった…)


ラン(…)


ラン(まさか…!?)

ラン「ん…!」ぱくっ


響子「ら、ランちゃん!?何してるの、ガラスだよ!?」


ラン「…」

ラン(この破片…そういうことか…!)


クラリス「…何か分かったんですね?」


ラン「蒼魔の霧はこれで晴れた…(みんなが駆けつけた時、現場に犯人がいなかった謎が解けました)」

ラン「残るは終のパラドクス…幻視(残る謎は…あの映像だけです)」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:54:46.88 ID:kpip1hiO0<>

2日目 深夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 左舷 遠山の客室(スタンダード)前


ラン「幻視の歪を見極めれば…我が魔眼の前に、奴の幻術は風前の灯よ(私の推理が正しければ、あの殺人映像にトリックを解く最後の手がかりが残されているはずなんです)」


美嘉「最後の手がかり?」


ラン「うむ」


美嘉「手掛かり集め初めて、たったの二時間。すごいなぁ…アタシにはなにがなんだかサッパリ…」


ラン「天神の使者よ、役割は果たされた。後は私に任せよ(美嘉さんも、もう皆と一緒に休んで良いんですよ?)」


美嘉「アタシはさ、ほら、無理に突っ走りがちな後輩を止めるって役割がさ」


ラン「…ふふっ」




コンコン

ガチャ


遠山「…い、いらっしゃい?」


ラン「煉獄の残滓を持つ者、それは貴方だと聞き及んだ(例の殺人ビデオの録画データ、今は遠山さんが持ってるって聞きまして)」

ラン「血錆の轍もその手に在ると(客室に駆け付けた時のビデオカメラも今はあなたが持っていると…)」


遠山「ああ…あれを見たいの?どうぞ…中に入って」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 01:58:34.84 ID:kpip1hiO0<>

2日目 深夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 左舷 遠山の客室(スタンダード)


ラン「ふむ」きょろきょろ


美嘉「…一般の客室って、間取りは右舷も左舷も同じなんだね」




遠山「はいコレ。映像の入ったカメラ」

遠山「見終わったら言ってね。僕は向こうで作業してるから」


美嘉「え、できればコレ借りてきたいんですけど…」


遠山「商売道具だから、それは勘弁してほしいな」ぼりぼり





ラン「…」きゅるきゅる


美嘉「…事件の手掛かりとはいえ、何度も見たいとは思わないな…」


ラン「…」

ラン(もし私の推理通りのトリックが使われていたとすれば、5時20分のアリバイは消滅する)

ラン(でも…あれを使ったんだとすると、二日目に殺人を実行したのでは『早すぎる』)

ラン(だからこそ…この映像のどこかに、不自然な点があるはず)

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:01:38.53 ID:kpip1hiO0<>

2日目 深夜 客船『ブライトウィン』 6番デッキ 左舷 遠山の客室(スタンダード)


ラン「…」

ラン(鏡かなにかで左右反転している映像では無い…)

ラン(時計の文字盤だっておかしくなるし、部屋の間取りも反転してしまう)

ラン(遠山さんの部屋を見た感じ、右舷も左舷も同じ間取りみたいだし、それは考えられない…)


遠山「…」のびー


ラン「…」


美嘉「…ん」うつらうつら


ラン(…合成映像でもなさそう)

ラン(これは正真正銘…5時20分の映像…でもそんなはず…)




遠山「…悪いけど、そろそろ帰ってくれないかな」

遠山「もう、後は寝るだけなんだ」




ラン(うー…分からず仕舞いかぁ…もう少しなのに…)


ガチャ


美嘉「ありがとうございまひた…」ぼー…


ラン「…?」

ラン(あれ?…遠山さんの部屋…)


バタン

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:08:23.21 ID:kpip1hiO0<>

3日目 早朝 客船『ブライトウィン』 7番デッキ 右舷 ミニスイート


ラン「んぅー…」


美嘉「…ぅぁー」


小梅「ぜ、ぜんぶ…とけた?」


美嘉「とけたよーにみえるー…?」

美嘉「ランは夜通し唸ってるばっかだし、どうしよ…もう今日のうちに港ついちゃうんだよね?」

美嘉「万が一、推定有罪ってことでランが捕まっちゃうことだってありえるかも…」


小梅「そ、そんなぁ…!」


ラン「歪みは確と感じる…それには一片の疑問も無く…だが(本当に最後の謎なんです…)」

ラン「幻視の魔物めぇ…大人しく私の贄となれば良いものを…(でも、もしかしたら私…勘違いしてるのかなぁ)」



カー!カー!


メアリー「うん!良い子良い子!」なでなで

メアリー「そぉーれとってコーイ!!」ぽーい



ラン「…」


美嘉「何やってんのアレ?」


響子「カラスなんですけど…いつの間にかここのベランダに迷い込んじゃってて…」


小梅「メアリーちゃん、餌付けして、つ、使い魔、に…する、って」


美嘉「…大丈夫なの?」


響子「カラスって結構賢いですから」


美嘉「いやそっちじゃなくて」




クラリス「まちなさーーーーーいっ!!!」ズザーッ!!


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:12:48.47 ID:kpip1hiO0<>


メアリー「えー!カラス飼っちゃダメなのー!?」



クラリス「なりませんっ!」ズパッ

クラリス「カラスは害獣としてだけではなく魔女の遣い魔としても忌み嫌われる存在です」

クラリス「魔の存在を近くに寄せるなど、どんな悪影響を及ぼすか分からないのですよ!?」

クラリス「そもそも野鳥飼うの禁止って法律が…」


メアリー「でもでも、シントーではカラスは神様の遣いなのヨ?」

メアリー「太陽を運んでくれるから日の出と夕方にかあかあ鳴くノ」

メアリー「きっとこのカー君なら、主神様の助けになってくれると思うの…オネガイ」しゅん


クラリス「…」


メアリー「…」ぐすっ


クラリス「…ならば…やむを得ない…のかもしれませんが…」


メアリー「っしゃおらぁ!ささ、たーんとお食べなさイ!カー君!」




美嘉「そろそろツッコんで良いですか先生」






ラン「…そういうことだったのか!」

ラン「我が同胞よっ!!(メアリーちゃんっ!!)」がしっ!


メアリー「ちぃ…ッ、流石に天使サマの眼はごまかせなかっ…」


ラン「蒼の導だっ!(航路ですっ!)」


メアリー「…へ?」


ラン「私の魔眼は蒼の導を欲しているっ!!(船の航路を見せてくださいっ!!)」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:17:31.85 ID:kpip1hiO0<>

バサッ!


メアリー「どうしたのよイキナリ」


美嘉「解けたのね?ラン!」



ラン(2日目の船の進路は…ほぼ南で固定されてる…!)



ラン「海坊主…貴様の正体見たり!!(やっぱり、犯人はアレを使ったんです…!!)」


小梅「…アレ?」


響子「??」








ラン(これで全部ハッキリした…)


ラン(何故ワインボトルに拘っていたのか)

ラン(そして何故犯行時刻を逢魔ヶ時にしたのか)


ラン(アリバイトリックの全貌)

ラン(そして犯人の正体)






ラン「万物の理は我が手中に在り!!(謎は全て解けました!!)」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:25:53.39 ID:kpip1hiO0<>

3日目 昼間 客船『ブライトウィン』 7番デッキ スイート


武内「お嬢様、起きてくださいお嬢様」ゆさゆさ


ワカバ「んー…」


武内「お嬢様」ゆさゆさ


ワカバ「あとごふんー…」むにゃむにゃ


武内「ランさんが今、真相を解き明かすために、関係者全員をパーティエリアに集めています」

武内「どうなさいますか」


ワカバ「じけんー?」

ワカバ「らいじょーぶなのだわー…じけんならもうすぐわたくしがー…」


武内「…」


ワカバ「…」







ワカバ「…ふわっ!?」ガバッ

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:28:53.87 ID:kpip1hiO0<>

3日目 昼間 客船『ブライトウィン』 3番デッキ パーティエリア



ワカバ「ランちゃん!!」ガチャ


ラン「良し、役者は揃った、幕を上げよ!(全員集まりましたね)」



ワカバ「集まりましたねーじゃなくて!!」

ワカバ「どういう事ですか!?満足に現場も検証していないようなあなたが!!」

ワカバ「いったいどうやって犯人を突き止めたというのですっ!!」


武内「私も興味があります」

武内「犯行時刻、現場には貴女と真壁さんの二人しかいなかったことは、もはや覆しようのない事実…」

武内「あなた以外による犯行は、物理的に不可能とさえ言えるこの状況…それでも、犯人は別にいる…と?」



ラン「…」コクン



ワカバ「ふんっ…何を話すかは、わたくしにも全く見当がつかないけど…」

ワカバ「お手並み、拝見させてもらおうじゃない」



ラン「叡智の箱舟にて奏でし煉獄の旋律…(この豪華客船にて起きた、海坊主:マリン・キッドによる真壁晶の公開処刑…)」

ラン「其は魔道に唆されし哀れなる従者のしらべ(それは、大罪を背負う悪魔にとり憑かれた、一人の人間による計画殺人でした)」



妃「…悪魔?」







ラン「そして、幻術を巧みに操りし海坊主、マリン・キッドは…」



ラン「この中にいるっ!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:36:40.88 ID:kpip1hiO0<>


美浦「おいおい、少なくとも俺達は、真壁が殺された時間には全員パーティ会場にいたんだぞ?」


いつき「それは何よりも完全なアリバイの筈…そんな僕らが容疑者だって?」



ラン「逢魔ヶ時の不在証明などまやかしだったのだ(5時20分のアリバイなんて存在しないんですよ)」



妃「えっ…?」


ラン「我等が役柄は云わば意思無き弦(私達は、マリン・キッドに巧妙な暗示をかけられ…)」

ラン「大罪のタクトを振るう儘に、心臓から指先までその身を呪われていたの(知らず知らずのうちに、私達の身に起こった出来事が不可能犯罪であると錯覚してしまったんです)」


遠山「ある暗示…?」


ラン「現視と幻視の境を曖昧にし、実体の在る幻を生み出す魔術よ(私の見た光景と、皆の見た光景が全く同じものであるという暗示です)」


鈴木「い…一体どういう意味?」


ラン「『動乱の目撃者』そして『孤立せし観測者』双方合わさり、揺るぎ無き真理は完成せん(犯人の計画には『映像を見た者』と『殺人を見た者』の二つの役割が必要でした)」

ラン「終焉の嘶きを聞いた猟犬は主の下へ駆ける。そして地獄の芳香を嗅ぐ刹那…(つまり、映像を見た人間が殺人現場を推理して駆けつけ、部屋のなかに居る生存者に話を聞いたとき)」

ラン「咆哮と芳香は同じものであったと錯覚させる幻術…(互いが互いに『同じ殺人を見た』と思わせるように仕向けられていたんです)」


ワカバ「え…?それこそ信じられないわ…あなたとわたくしは、違う光景を見てたなんてこと…」


ラン「幻術が双つの片詩であることに異論は無い。法の司者と寸分違わぬ(映像が前半と後半に分かれていたという点は、私もワカバ検事と同じ推理です)」

ラン「だが最早、偽の『真理:aemaeth』は首を刈られ、それは偽りの『死:maeth』と転ず(でも、見方によってはその両方ともが真実で、そして嘘でもあった)」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:43:41.15 ID:kpip1hiO0<>

ラン「我が神器は、初めに真理の歪を示さんとしていたの(私が最初に違和感に気づいたのは、現場から助けてもらった後、自分のスマホを見た時です)」


美嘉「スマホ…?」


ラン「私達を黒き幻で包むため、咎人は神器を鎮めた…(犯人によって、電源が落とされていたんですよ)」

ラン「だが、四肢無き傀儡に一体何が出来ようか(私と真壁さんは椅子に縛られ、電話をかけられる状態でも、出られる状態でもなかった…)」

ラン「我が神器など、咎人を縛る鎖でも…いや、行く手を阻む楔ですらなかった(なのに犯人はわざわざ手間をかけてまで、二人分のスマホを探り…電源を切った)」

ラン「何を畏れることがあろうか?箱舟を支配せし咎人に(殺人の途中で着信が来たところで、無視して犯行に及べばいいだけの話でしょう?)」


ワカバ「…それがどう関係するの?」


ラン「それは…可能性という名のパラノイア(…もし電源が切られていなかったらどうなっていたか)」

ラン「電子の号令に我が身は答えられぬ。が、耳には届き、真実は脳髄に刻まれる(着信が来たら、着信音や振動で私は確実に気付きます。そして、その時の着信時間が端末に記録される)」

ラン「そのオブサーヴァーは時限の鍵を孕み…咎人の悪夢は現実となる(計画の都合上私は殺せない。十中八九、私は後でその履歴を確認するでしょう)」

ラン「即ち、彼の偽りの真理の崩壊と、その黙示録(その瞬間、その場のあらゆる状況に矛盾が生まれ、すぐに計画は破綻してしまうんです)」


クラリス「たったそれだけのことで…?」


ラン「咎人はそれを畏れた(犯人にとって、それは絶体に阻止しなければなりませんでした)」

ラン「号令、狼煙、そして私という名のオブサーヴァー…手札の役が揃うことを畏れた(万が一にでもどちらかの携帯に着信が来ること…私に着信を察知されること…それ自体を恐れていたんです)」

ラン「だからこそ我が躰は、これ見よがしに『偽の真理』を網膜に焼き付けられていながら(思い返せばあの時…時計を背にして椅子に縛り付けられていたことだって、偶然ではなかった)」

ラン「『真実』からは遥か彼方にまで遠ざけられていたのよ(犯人はそういった、現在時刻に関する全ての情報を私から隠す必要があったんです)」


妃「いったいなんでそんなことを…」


ラン「…我が瞳に刻まれし『真実』は、刻の封印を解放する鍵だからよ!(何故なら…私が目撃した殺人は、5時20分に行われていたものでは無かったからです)」


ワカバ「な…!?」


ラン「其の封印開かれし時…一重の楽譜は身を裂かれ、隠されし真実が姿を見せる(犯人は、『撮影用』に一度、『私に目撃させた時間』に一度)」

ラン「煉獄の旋律は、二重奏だったのよっ!!(真壁晶を二度殺したんです!!)」


一同「!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:49:05.72 ID:kpip1hiO0<>

ワカバ「まっ…待ちなさい!?」

ワカバ「二度殺した!?…そんなコトあり得るわけが…」


ラン「饗宴の残滓…之がその証よ(それを示す証拠が、遺体の上着ポケットに入り込んでいた、このガラス片)」

ラン「一つと見紛うこの残滓は、我が身の熱によって様相を変える(一見、ただのビンの破片に見えますが…こんな風に、手にべた付く欠片とそうでない欠片の二種類あるんです)」

ラン「さて、この異物…如何様に定義すべきか(この、べた付いた方…なんだと思いますか?)」


美嘉「ガラス…じゃ、無いの?」


ラン「これは真なる凶刃では無い。私達の真理を捻じ曲げし幻影の欠片(このべた付く破片は『飴ガラス』と言って、本物のガラスよりもずっと脆い素材でできているんです)」

ラン「享楽の種。まやかし。ともすれば番犬の世迷言の如し(『テレビや映画でよく使われる手法』…犯人はまんまと偽装殺人映像を作ってみせた)」


ワカバ「…」


ラン「いざ、全ての真理を紐解かん(つまりこういうことです)」

ラン「伝奇の求導者を手中に収め、偽りの処刑を作り出す。これで残る術式は半分となる(犯人は1日目の夜に真壁さんを気絶させ、監禁…しかる後に飴ガラスで彼を殴る映像を記録した)」

ラン「逢魔の御前、我が眼は見せつけられた真理を刻み、私を檻の囚われとして壇上に上げる(2日目の夕方、私の目の前で本物のガラス瓶を使って彼を撲殺し、怯える私をカメラに収めた…)」

ラン「血染めし刻は饗宴の前…既にヴェールは上がっているというのに…(殺人が行われた時間は、検死の状況を考えて死亡時刻の1時間前…つまり、午後4時20分から、パーティ開始までの間のどこかで行われた)」

ラン「仕掛けを施した貴様は傍観者の仮面を被り、舞台袖から羊の群れへ紛れ込む(犯人は何食わぬ顔でパーティに参加し、時間に合わせて『飴ガラスで殴った映像』と『私を映した映像』を送信)」

ラン「そこにて残る半分を刻み、これで幻術は完全となる(あたかも夕方5時20分に犯行が行われたように見せかけた…)」


ラン「我等は皆、虚像の凶宴を見せられていたの(貴方達が見ていた殺人映像は、飴ガラスで殴った偽物の方だったんです)」


ワカバ「そ、そんなバカな…!ニセモノのはず無い!夕方5時20分の映像なのよ!?」

ワカバ「真壁さんが監禁されていた時間は1日目の深夜から、事件のあった2日目の夕方までの間!」

ワカバ「…あの映像を撮れるチャンスがあったのは、実際に犯行があった時間一回きりなのよ!?」


ラン「その点に異論は無い。初日の事象は因果律(確かに1日目の夕方に用意するなんてことは不可能です)」

ラン「しかし、時を動かせぬなら空を動かせば、造作も無き事(でも、場所の限定さえしなければ、日光の差し込む5時20分の客室を撮るチャンスが、もう一回だけあるんです)」


ワカバ「え…?」


クラリス「まさか…朝!?」


一同「!!」


ラン「無から有へ。死から生へ。同じ様に、逢魔ヶ刻から夜明けへと真実は姿を変える…!(そう…左舷の客室であれば、朝の5時20分に『偽装殺人の映像』を撮ることができるんです)」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:52:48.59 ID:kpip1hiO0<>

ラン「これぞ、箱舟を二重奏の舞台に選んだ真意(犯人がこのクルーズを殺人に選んだ理由はそこにありました)」

ラン「蒼天の軌跡は揺らぐ事無く英知を目指していたわ(公開されていた航路によれば、2日目は早朝から日没までほぼ南に進路を固定している…)」

ラン「即ち煌天は常に紅から黄へと、絶対なる法則に囚われていたの(朝日は左舷、夕陽は右舷の部屋に光が差し込んでいる状況が常に維持されていた)」

ラン「彼の偽りなる旋律…其を司るはソレイユの閃光であるっ(だから『朝日』の映像を『夕陽』だと偽ることができたんです)」


妃「左舷の客室の映像を見て、事件現場は右舷だと推理してしまったっていうの?」

妃「私達、そんな大変なことに、気付きもしなかったなんて…」


ラン「咎人は凶行の為に全ての因果を操った(犯人は様々な手段で私達を惑わせていました)」

ラン「煉獄の悲鳴を聞かせる刻を設定し…(まず私達は『夕方5時20分に人を殺す』という犯行予告を見ています)」

ラン「朱に染まりし狂宴の残滓はゴートの群れの意識の底に…(そして凶器に使われたワインボトルが『昼の時点では割れていない』ことも確認させられていた)」

ラン「そして我が躰を宴の奴隷へと引きずり出し…(更に『昼間まで元気だった私』が殺人を実際に目撃している)」

ラン「集めた『虚』と『実』の境界を丹念に混ぜ合わせれば…(左舷の映像を見て、現場を右舷だと錯覚しても、実際に右舷の客室が現場になっているのならば、映像を疑おうとは思わない)」


ラン「万物は頭から尾の先まで『幻』の布で包められる(…私達は、恐ろしいほど念入りに先入観を植え付けられてしまっていたんです)」

ラン「憐れな羊は『見紛うものか』と自ら外套に包まるだろうな(『あの殺人映像が昼間以前である筈はない』…と)」


武内「…いったい、犯人は誰なんです?」


ラン「煉獄の礎となる器は脆く、その存在を定着させる刻はごく僅かである(この計画において重要なキーとなる飴ガラスは、常温でも数時間おくだけで溶けてしまうものです)」

ラン「故にその熱量に反し、絶対零度の恩寵を以て構築せねば、煉獄は崩壊してしまう…(ここに持ち込むときにはクーラーボックスか何かで冷蔵しておかなければ、使えなくなってしまう)」

ラン「更に、この夢幻術は両手で唱えねばならぬ(また、現場の反対方向…つまり左舷の客室を自由に出入りできなければ偽装映像を作れない)」



ラン「適性のある者は一人…(この二つの条件を満たす人間は一人しかいません)」



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131084.jpg
ラン「遠山和樹…貴様だ!!」


一同「!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 02:58:03.84 ID:kpip1hiO0<>

鈴木「遠山君が…」


いつき「マリン・キッド…!?」


遠山「ば…」

遠山「バカなことを言うなっ!!僕が殺人犯だって!?」



ラン「伝道師の骸は逢魔の門前にて形作られる(真壁さんの本当の死亡推定時刻は最速で夕方4時20分)」

ラン「そして、骸とともに日差しを浴びる蒼魔は貴様を置いて他におらん!(その時間以降アリバイの無い関係者は貴方しかいませんよ)」



遠山「だが確証はないだろう!?」

遠山「条件に一致する乗客は確かに僕だけかもしれないが、船員も含めれば話は別だっ」

遠山「キミは計画が実行できる人間の条件を言ったに過ぎないっ」



ラン「戯けめ。私もこれのみで終わると思っていない(もちろん。これらは状況証拠にしかなりません)」

ラン「畏れずとも、望みの証は程無く来たる(だから今、動かぬ証拠を持ってきてもらっています)」


遠山「な…!?」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:04:54.24 ID:kpip1hiO0<> >>108

×武内「…いったい、犯人は誰なんです?」

〇いつき「…いったい、犯人は誰なんです?」

配役ミス。武内くんは次レスから登場でした… <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:07:25.97 ID:kpip1hiO0<>

ガチャ


武内「…戻りました」


ラン「號の者に命じ…貴様の籠を覗かせて貰ったぞ(武内さんに頼んで、貴方の部屋を調べさせてもらっていたんです)」


日部「い、いつの間にたけうちに指示を!?」


武内「今朝ワカバ様が寝ている間に、推理の途中でこっそり抜け出すようにと」


日部「こんのぉー!」



ラン「残滓の飛沫は意になど添わず、方々に散るものだ(割れたガラスの破片って、全部片付けたつもりでも、部屋の隅に残っていたりするんですよ)」

ラン「小細工の器となれば猶更よ(ましてや、飴ガラスは普通のガラスよりも細かく散らばりやすいですから…)」


武内「…彼女の推理通り、ガラスの破片の様なものが複数確認できました」

武内「これがその破片です」


遠山「!?」


ラン「癪であるが、これは微かな魔力波動を感じ取ったに過ぎぬ(ある程度の予測に過ぎなかったんですけどね)」

ラン「貴様は臆病なほど領域に踏み入る存在を警戒していた(昨夜、貴方の部屋のベッドは皺だらけのままになっていました)」

ラン「それこそ魔霧雨の一粒すら許さん程であったのでな(つまり、ハウスキーピングを呼んでいない、ということに気付いて…)」

ラン「故に煉獄の飛沫は未だ籠に焼き付いているのだと踏んだ(自分の部屋に飛び散った飴ガラスの破片を完全に処理しきれていないのだろうと考えました)」


ラン「魔人の外套ならば写し絵の箱と共にし、番犬の鼻を誤魔化すことができようが(それに、仮面とマントは撮影器具と一緒の荷物に隠してX線をかわせますけど…)」

ラン「暴食の徒を潜らせる程生温い箱舟では無い(破片を吸い込む掃除機なんてそう簡単には持ち込めませんからね)」


ラン「運が良く…いや、運が悪ければ貴様の咎の全てが紐解かれるだろう(これを鑑識に回せば…一つくらいは、真壁さんの皮膚組織や血液が付着している破片が見つかるかもしれません)」

ラン「審判の時は近い…言い遺すことは?(それでも、貴方は言い逃れをするつもりですか?)」



遠山「…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:10:31.30 ID:kpip1hiO0<>


遠山「分からないかなぁ」


ラン「…」


遠山「君だってあの時心底ウンザリしていただろう」

遠山「あいつは…死んで当然の人間なんだよ」


ラン「…」


遠山「君の推理は一つだけ間違ってるんだ」

遠山「怪人のマントと仮面を持ち込んでいたのは僕じゃない」

遠山「あいつだよ。あいつがいつもやってきた手口さ」


ラン「!」

いつき「真壁さんがやってきた…手口?」


遠山「あいつはスクープを撮る腕が良かったんじゃない…そんなの精々並だっただろうさ」

遠山「あいつが出世できていたのは…いいか!」

遠山「あいつが出世できていたのは!自分でスクープを作っていたからだ!」

遠山「僕に、その片棒を担がせてなっ!!」


鈴木「えっ…?」


遠山「最初に話を持ち掛けられたのは前の職場に入ってすぐの時だ」

遠山「僕はホテル火災で家族を亡くし、そういった企業の怠慢が許せなくなって、それで記者を志した」

遠山「一つでも多くの不正を暴いて、少しでも世の中が良くなればと思って、がむしゃらに働いた」

遠山「…忘れもしない。入社して一年が経つ、二か月前のことだ」


遠山「ある場所のロッカーに重要書類を入れてほしいと奴に言われ、その通りにした」

遠山「疑問なんて何も浮かばなかったし、僕はただ言われるままに封筒を中に入れたんだ」

遠山「それが取り返しのつかない事だったと知ったのは、それから二ヶ月経ってからだ」

遠山「後に大々的に報道された、俳優の薬物使用疑惑…いの一番に記事にしていたのは、あいつだ」


妃「まさか…」


遠山「違法薬物をとり出した一瞬を撮られたことが決め手となっていた…」

遠山「それは紛れもなく、あのとき僕が封筒を入れた場所だったんだ…!」


美浦「おいおい…嘘だろ」


遠山「嘘なもんか…僕はすぐに奴に問い詰めた!」

遠山「そしたら少しも悪びれる様子なんか見せずに言い放ちやがった!」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:14:24.46 ID:kpip1hiO0<>

真壁『それがどうかしたか?』

真壁『記事ってのは読まれてナンボの世界だ。見出しが衝撃的であればあるほど有り難がられる』

真壁『偉ければ偉いほど、人気があればあるほど、そいつは長く派手に転がり、大衆を愉しませる』


真壁『不満か?いや、別にいいんだぜ?訂正記事を書いても』

真壁『そんときは、俳優じゃなく、どっかの下っ端ジャーナリストがヤクを運んでたっつー糞つまらない記事になっちまうが』

真壁『くく…自分の立場がようやくわかったようだな。だからお前に頼んだんだよ』


真壁『手駒を補充する必要があったからな。精々読者の為に気張れや。仕事は山ほどある』




遠山「それから、潔白の人に罪を着せる、自分の志とは真逆のことばかりやらされる日々が続いた…」

遠山「たとえ会社が潰れようとも終わらなかった地獄…それでも、僕は耐えてきた」

遠山「いつか、この抜き差しならない状況から解放されると信じて…」

遠山「だがっ」




真壁『今度は大仕事だぞ。なにせ、かの大企業が造船した豪華客船にタネを仕込むんだからな』

真壁『セキュリティーのメンテナンスが残ってるから潜り込みやすいし、おあつらえ向きに怪しい噂のある海域を通る』

真壁『道具はこっちで用意する。お前は俺の指示通り動け』


真壁『なぁに。足のつかない手口を考えるのは得意だ』









真壁『俺はホテル火災をでっち上げたことだってあるんだぜ』


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:17:18.30 ID:kpip1hiO0<>

ラン「…!!」


クラリス「それって…まさか…」


遠山「ああそうさ、僕は馬鹿だ…その時まで全く気付かなかったんだからな…」

遠山「自分が、本当は何を憎むべきだったのかを…!!」


遠山「もう僕は、なにもしたくない」


遠山「あいつを見るのも、あいつの言いなりになるのも、あいつと同じ空気を吸ってることすら虫唾が走る!!」


遠山「だから、あいつの用意した小道具を、逆にあいつを殺す為に利用してやったのさ!!」


遠山「何が悪い!!それがあるべき正義だろうが!!」




ラン「…ふん、話にならん」


遠山「何…!?」


瑠衣「!」




ラン「何が悪い?あるべき正義?悲しきかな咎人よ」

ラン「ならば何故貴様はマリン・キッドを騙った」


遠山「!」


ラン「罪人に正当な裁きを。本当にそう思うなら、先ずこれまでの自らの罪を懺悔せよ」


遠山「…」


ラン「世の不正を許せないなら、自らも罪を逃れようと小細工をするな」


遠山「ぐ…」


ラン「復讐に駆られた挙句、我が身可愛さに自分の信念を曲げ、貴様は本当に自分が正しいと思っているのか?」


遠山「…っ!」


ラン「貴様がやったことは裁きでは無い。あるがままを直視しない、真壁晶と同類の愚か者が、気安く正義を騙るなっ!!」






遠山「う…うるさいっ!!」バッ


一同「!!」


ワカバ「ひゃ!?」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:24:03.71 ID:kpip1hiO0<>


ワカバ「は…はなしなさい!!」じたばた



シャッ


遠山「お前ら動くなっ!!」


一同「!!」

ラン(ナイフ…何故この男が…!)


遠山「言ったろ?僕が撮影器具に隠していたのは仮面やマントじゃないってな!」






ワカバ「ぁ…ぁぁ…」ぶるぶる


遠山「正義を騙るな?…正しいに決まってんだろ…僕がやったのは罪でもなんでもない…!!」

遠山「間違ってるのはこの世界だ…!!」


ラン「…」


クラリス「子供を盾にするなんて…なんと卑怯なっ!」



日部「ちょっ!?わ、わたくしはあなたと同いど…ひっ!?」


遠山「黙ってろっ!」

遠山「港につくまでの間…いや、それじゃ足りない…俺が完全に逃げ切るまで、安全を保障させてもらおうか」ギリギリ…

遠山「オマエ検事なんだろ?権限でもなんでも使って、今すぐデッキにヘリを着陸させるように連絡しろっ」

遠山「警察だろうが報道のだろうがなんでもいいッ、とにかくヘリだ!」


ワカバ「…た」


遠山「聞いているのか!」


ワカバ「た、たた、た、た…」


遠山「『助けて欲しい』んだろ?だったら俺の言う通りに…」










ワカバ「たけうちいぃーーっ!!!」


武内「はい」
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131086.jpg

ゴッシャアアアアアァァァッ!!!




遠山「」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 03:27:21.95 ID:vi8w6SJbo<> ヤクザキックwwwwwwwwww <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:30:34.28 ID:kpip1hiO0<>
>>115

×日部「ちょっ!?わ、わたくしはあなたと同いど…ひっ!?」

〇ワカバ「ちょっ!?わ、わたくしはあなたと同いど…ひっ!?」


最初は日部(にちべぇ)検事にする予定だった名残がorz
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:32:10.46 ID:kpip1hiO0<>


遠山「」ビクンビクン…



一同「」



ワカバ「ひっく…ひっく…」


武内「お怪我はありませんかワカバ様」


ワカバ「ぜったい…ぜったいにわざとでしょう…捕まっても少しほっといたの…」


武内「…」


ワカバ「わたくしの慌てふためく姿をみたくて放っといたんだわっ…ぐすっ…」


武内「…『お嬢様』」

武内「お嬢様が検事を志すと仰った時から、私は散々言っているのです」

武内「こういうことがあるから、合気道なり護身術を学ばれた方がよろしいのでは…と」



ワカバ「いやよ…いたいのキライだもん」



武内「…帰りましょう」






武内「彼女が白日の下に曝した、この男の罪。それに正当なる裁きを下すことが、我々本来の仕事ですから」


ワカバ「くすん…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:35:49.01 ID:kpip1hiO0<>

遠山「」


コツコツ…


ラン「…」スッ




ラン「天の名において貴様を浄化する」

ラン「大人しくひれ伏し、この男から出ていけ。『怠惰』の化身、ベルフェゴール」キィィィン



バキィッ…




ラン「最後の最後まで、自分の正義を疑わない…か」


ラン「私はそんなふうに正義を考えた事などなかった」


ラン「自分の中にある、正義の心…それでも疑わなかったことなど、無い」


ラン「天神の名の下、私がそれを背負えているのは…」


ラン「…いや、お前達には、幾万の時が過ぎようと、解らんかもな」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:39:10.30 ID:kpip1hiO0<>




3日目 夜 埠頭


美嘉「ぐあー…もぉヘトヘト…」


メアリー「ミス研の活動として、とってもナイスでスリリングな三日間だったワ!!」


響子「でも…なんだろ、ちょっと怖いですよね、こう立て続けに殺人事件続くのって」


小梅「…いいかも」


響子「まぁ小梅ちゃんはね」


クラリス「…我らが天使様は、そういう運命の下に降臨なされたのかもしれません」

クラリス「ですが、そうであろうと私達のすることは変わりませんよ」

クラリス「弱きを助く為、人々を幸福で満たす為、世界を少しでも良きものにする為…」

クラリス「これからも、天使様にお力添えしてゆきましょう、皆さんっ」




??「おーい」タッタッタッ


クラリス「…赤羽根刑事?」


赤羽根「旅先で事件あったって連絡が届いて、迎えに来たんだけど…あいつは?」


美嘉「…あれっ」きょろきょろ


響子「そういえばいつの間に…何処にいったんだろう?」



<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:42:51.08 ID:kpip1hiO0<>

3日目 夜 埠頭 外れ







瑠衣「全く、とんだことに巻き込まれてしまったね…けど、悪くない船旅だったよ」


ラン「…」


瑠衣「また、いずれ会おう。ばいばい、ラン」


ラン「旅人よ、我が問いに答えて貰おうか(待ってください、瑠衣さん)」


瑠衣「うん?」


ラン「いや…汝はアバターと呼ぶべきか?(貴女は、何者ですか?)」


瑠衣「…」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:45:01.78 ID:kpip1hiO0<>

瑠衣「なにさ、いきなり…ボクは見てのとおり、事件に何ら関係のない、巻き込まれただけの憐れな乗客だよ?」


ラン「初めの邂逅…その時既に漆黒の尾は見えていた(最初に『あれ?』と思ったのは、最初に港で会った時)」

ラン「貴様は着飾る事を嫌い、彼の能力と合理を至上の価値としていた節がある(バッグのデザインから察するに、貴女は荷物をオシャレではなく入れる量で選ぶタイプです)」

ラン「だが鋼鉄の鎧に守護られし旅路とはいえ、露を払う剣は要る筈なのだ(でもその荷物…一週間近く船の中で生活するにしては、貴女の荷物はあまりに少なすぎた)」

ラン「貴様は未来を見透かすかの如くに贅を殺ぎかくも鮮やかに幕を下ろした。それは何故か(まるで、長くとも三日も経つころには、上陸する羽目になると分かっているかのような量)」


瑠衣「…」チラ


ラン「確信に変わったのは、ひとつの、煉獄への道標…(決定的だったのは、私がとらわれている部屋に入り込む場面の録画ビデオを見た時)」

ラン「貴様が、私を案ずるように言い放つ言の葉…(貴女は真壁さんの部屋の前で『私が中にいるかもしれない、早く部屋に入らないと』と言った)」

ラン「しかしあれこそが、貴様の被る羊の皮を暴く禁句であった(事件発覚後すぐに現場に急行したあの状況で、部屋にいるかもしれない人が、私だけであるはずがない)」


瑠衣「…」


ラン「凶刃を前にあの言葉、無知でなくば些か無謀に過ぎる(『部屋の中で犯人が待ち伏せている可能性があった』…にも拘わらず、それを全く考慮していない発言だった)」

ラン「鉄槌の代行者が號の者に、修羅の先陣を切らせた程で在るというのに(事実、ワカバ検事はそれを警戒し、腕の立つ武内検察事務官に先導させて部屋に入っていた)」


瑠衣「何が、言いたいのかな」


ラン「見透かしていたのではない…貴様は『全てを知っていた』(貴女は、私と犯人、そして事件の手口を事前に知っていて、私が犯人と相対することも想定済みだった)」

ラン「あくまで葬列の一体として、ともすれば支配者が一柱として…(それでいながら、自分はひたすら傍観に徹し、事の成り行きを見ていたのではないか…)」





ラン「何者だ…貴様…」



瑠衣「…」

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:49:33.48 ID:kpip1hiO0<>

瑠衣「―はははっ!!」

瑠衣「そうか、口を滑らせていたのか!ボクとしたことが、気づかなかったよ!あはははっ!」


ラン「!」


瑠衣「全く以て素晴らしい観察眼…いや感服したよ。正直に白状しよう」

瑠衣「確かに僕は君も、遠山和樹のことも、そしてトリックのことも知っていた」

瑠衣「というより、ボクが事件のトリック構築に一枚噛んでいた…と言った方が正しいか」

瑠衣「虚と実を織り交ぜた、大掛かりな心理誘導トリック…準備してる最中に察知されたら台無しになってしまうからね。だからキミを襲わせたんだけど…」

瑠衣「有利な証言をするはずの目撃者の立場を、逆に利用し真相に辿り着くとは…完全犯罪って難しい」


ラン「!?」


瑠衣「ついでに言うと、本来の計画ではボクが探偵役に立候補するはずだったのさ」

瑠衣「誰も事件の不可能性を説くことができなければ、興醒めしてしまうからね」

瑠衣「もっとも、今回はワカバ検事とかいう計算外があったから、展開が読めなくて、傍観に徹せざるを得なかったんだけど」



ラン「まさか…」


瑠衣「そうだな…この際だからもう一つ白状してしまおうか」

瑠衣「ボクは家族に会うために船に乗ると言ったが…あれは嘘なんだ」








瑠衣「こんな船に乗らなくたって、会おうと思えば会える」

瑠衣「ボクの妹は…今、目の前にいるのだから」


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:55:12.84 ID:kpip1hiO0<>

ラン「…!」


瑠衣「ボクの本当の名前は、瑠衣ではない」

瑠衣「遥か太古、父上に反逆し、永遠に地の底へ堕とされた…」


瑠衣「『傲慢』の罪を背負いし堕天使、ルシファー」





ラン「ルシファー…!?」





ルシファー「こんなとき、例えば人間であれば、『父は元気か』と聞くものだが、残念ながら答えは聞かなくても理解る」

ルシファー「相も変わらず、異を唱える者に自らの無能さを押し付け、地に蹴落とし、残った自分は希望だと嘯く」

ルシファー「キミもそうやって堕とされたクチなんだろう?…何千年経とうとも…やることは変わらないんだね…我が父は」

ルシファー「それでもキミは、いまだに我が愚父の側についていると見える」


ラン「…既にわかっているだろう。私は貴様とは違う」

ラン「貴様等が人の子を唆す限り、私は天神の名の下に、我が正義を説き続けるのみ」


ルシファー「…出航前のキミは、今にも堕ちてしまいそうな顔つきだった」

ルシファー「すこし背中を『撫でる』だけで、新しい仲間として迎えられそうだったのに…何故だろうか」

ルシファー「いくら強く押しても、キミはすれすれで踏みとどまっている…一体、何がキミを繋ぎとめているんだろうか」ザワッ…


ラン(黒い翼…!)


ルシファー「君とは近いうちにまた会うつもりでいるよ。そのときはボクが『犯人』として」

ルシファー「精々この世界で、堕ちないように、もがいていると良いさ…」


ルシファー「ボク等は只『問い』続けるだけ…父が作った世界の『欠陥』を余すこと無く赤裸々に…ね」パチン

バサッ




ラン「っ、待て!まだ話は…」


ルシファー「僕の用事は二つ。殺人の傍観と、ただの挨拶。どちらももう済んだ」

ルシファー「いつか、キミに黒い羽根が生えてくる日を、楽しみにしている」



ビュオオッ…



ラン「…」

ラン(消え…た)


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 03:58:54.94 ID:kpip1hiO0<>

後日 ???


ルシファー「残された駒は二つ」


ルシファー「一つはボクの親友」


ルシファー「もう一つは、ボク自身」


ルシファー「あれよという間に、七つの大罪も壊滅寸前まで追いやられてしまったが…まぁ良い」


ルシファー「ボクが墜ちるか彼女が堕ちるか、たぶんその二つしかないのだから」









ルシファー「…さて、ボクもそろそろクライアントを探すとしようか」



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira131087.jpg

逢魔の海の殺人 幕引


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 04:00:07.38 ID:kpip1hiO0<>


こんな変なSSに長いこと付き合ってくれてありがとう

HTML依頼出した後は

もっともっと面白い話が作れるように修行してきます


<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 04:00:42.88 ID:vi8w6SJbo<> 乙! <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>saga<>2017/03/19(日) 04:05:24.54 ID:kpip1hiO0<>
今回舞台裏小話は特に考えていなかったので、サブキャラ達の設定をば…


・クラリス先生(仮名)
聖月学園中等部のクラスを受け持つ敬虔なシスター。
チョロくてかわいくてたくましい。三拍子先生。


・メアリー(仮名)
黒ミサの女王が夢である敬虔なシスター。
裕福な家庭でオッカルトマニア。占いが得意。


・小梅(仮名)
スプラッター映画をこよなく愛する敬虔なシスター。
幽霊が見える体質だが、意思疎通が可能なだけで、記憶の同調や除霊はできない。


・響子(仮名)
宗教画よりお耽美派である敬虔なシスター。
部室で度々行われる召喚儀式の失敗は、魔法陣を描いた彼女が詠唱に関わっていないため。


・美嘉(仮名)
腹痛の時はガチで神に祈るくらい敬虔なシスター。
なんだかんだ言ってまとめ役。みんなの精神的支柱になっている。


・検事ワカバ
 法廷に立てば勝率100%とまで言わしめる凄腕検事。
 『1日署長』のアダ名でも知られる。(由来は外見によるもの)
 父は世界に名を轟かせる推理作家で、母は女優。豪邸住まい。
 推理力は高いものの、やや高飛車で高圧的。そのため敵は増える一方である。
 ちなみにスケボーには乗れないがパラパラは踊れる。


・武内検察事務官
 ワカバの執事兼検察業務の補佐。
 『賭郎立会人』のアダ名でも知られる。(由来は立ち振る舞いと戦闘力)
 ワカバとは幼いころから面識があり、二人きりの時は「お嬢様」と呼ぶ。しばしば暴走するワカバのブレーキ役
 かと思えば、気紛れなのか、暴走余った彼女が無様を晒すまで黙って眺めてたりする。読めない人物
 ポエムが趣味。


第四幕の挿絵再うp前に一旦寝させて下さい

m(_ _)m
<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 07:09:14.67 ID:2NoRorom0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 09:20:32.60 ID:izOo7nGDo<> 乙
是非とも完結までがんばってほしい <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 09:59:59.77 ID:YOwHCxkQO<> おつおつ、今回も面白かったわぁ
客船だしコーヒーネタあったから誰かが頼むとおもったがそんなことはなかった <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 10:40:04.98 ID:2a/6ja0o0<> 乙、あなたのSSを待っていました!

仮名ってか役名?
そしてワカバ検事は薬を飲まされてあんな背になってしまったんですね・・・ <> >>1<>sage saga<>2017/03/19(日) 15:20:07.09 ID:kpip1hiO0<> >>131

思いついたネタをひたすらくっつけたりはずしたりして書いているので

そういう未回収なバリみたいなのがしばしば残ってたりします。今回でいうとピーナッツアレルギー云々もその類です。

減らす努力はしてますがご容赦をm(_ _)m


>>132

確かに役名と書くべきでした…すいません。劇中のセリフも役名で彼女達を呼んでいると思ってください。

遊園地のくだりはご想像にお任せしますm(_ _)m


只今挿絵再うpするろだを探し中 <> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/19(日) 15:25:43.77 ID:YOwHCxkQO<> >>133
いやいや、別に気にしてるとかじゃないっすよ
ストーリーを推理してて、あー外れたかーくらいの話です <> >>1<>sage saga<>2017/03/19(日) 17:04:28.64 ID:kpip1hiO0<> >>134

や、こっちも敏感になり過ぎてました…すいません。

受け手の人の反応を悪い方向に考えがちな性分でして…それでも創作はやめられないっていう

ともあれ、楽しんで読んでいただけているようなので感無量です。

<> >>1<>sage saga<>2017/03/19(日) 17:42:47.95 ID:kpip1hiO0<>
予告通り挿絵をうpします。

せっかくなので第一幕から第五幕まで全部まとめました。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1191121.zip.html

パスワード「ran」

対応レス番をファイル名にしています。 <> >>1<>sage saga<>2017/03/19(日) 18:14:12.32 ID:kpip1hiO0<>
四幕の挿絵だけ死んでんのが謎…

ただ、森きのさんとかまとめサイトの挿絵は何故か生きてるので
見れない人用にそっちのurlを併記する手もあるんでしょうか
それか自分でページ作って過去作はそっちに誘導するとか

いろいろ考える必要があるようです…

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/20(月) 01:37:25.42 ID:PQgQrCxwo<> ※エロというより隠語・下ネタ多し
↑こっちの系統のやつの過去スレをまとめてほしい。

酉がないから、ふと読み返したくなっても見つけるのに苦労するんです <> >>1<>sage saga<>2017/03/20(月) 18:10:38.28 ID:AmOJNhSl0<> >>138

そっち方向も含め、良い方法考えます
m(_ _)m <> >>1<>sage saga<>2017/03/25(土) 15:45:23.03 ID:4EHz1dbY0<>
今更ですけど暫定でモバマス過去スレ貼っときます


凛・加蓮・奈緒「青春タイム」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480155170/

白菊ほたる「帳尻合わせ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451046663/

森久保乃々「幕の中」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448107338/

神谷奈緒「腕に巻いた約束」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447413874/

北条加蓮「初期症状」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446292997/

本田未央「完全勝利」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445686365/

池袋晶葉「一粒の幻想」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445244649/

三好紗南「たのしむ心」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444899175/

姫川友紀「泥酔黙示録」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444663818/

渋谷凛「魔法使い騒動」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444577277/

島村卯月「頑張り狂想曲」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444380057/

岡崎泰葉「よこしまな想像」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444034346/


現状pixiv小説でアップする戦法が現実的っぽいですが、イラスト欄が荒れちゃうのがネック

かといって一からホムペ作るのは大変そう…ううむ…

<> 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします<>sage<>2017/03/25(土) 19:16:36.46 ID:OZLgitPnO<> 魔法使い騒動見たかったんだありがてぇ <>