VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/17(月) 08:19:41.12 ID:e6MgI7go<>【ここって何のスレ?】
長門朝倉喜緑をこよなく愛する、絵、SS、雑談などなど何でもありなスレです。
詳しくはまとめを見てくれ。

朝倉さんにしかなつかない長門スレまとめwiki
http://www33.atwiki.jp/nagatoasakura/

漫画Flash版
http://swfup.info/view.php/6803.swf
<>【絵もSSも】情報統合思念体LOVE【大歓迎】 VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 08:20:22.74 ID:e6MgI7go<>流れ読んでなくてスマンカッタ スレタイこれでよかったんだろうか<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 08:23:35.13 ID:e6MgI7go<>前スレ
朝倉さんにしかなつかない長門が見たいらしい
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1179397380/<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 08:33:55.49 ID:e6MgI7go<>1000で誘導すべきだったorz<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/17(月) 10:37:26.35 ID:z3RbJJQo<>>>1
乙!<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 10:45:07.08 ID:e6MgI7go<>やっと来てくれたww 誘導できなくてスマン<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 12:16:17.02 ID:e7dnM7Ao<>>>1乙<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/17(月) 12:36:37.79 ID:OaGxJiIo<>よし、>>1乙。<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/17(月) 13:10:22.00 ID:zWicnCUo<>まさか本当に立っているとはwwwwww
>>1乙<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 15:32:32.37 ID:e6MgI7go<>みんな放置プレイしてごめんよ 今日からちゃんとまとめメンテします
あと、俺も絵描けるように努力するよ<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 17:14:33.06 ID:e6MgI7go<>いちおう前スレから拾える絵はまとめに貼っておいた
ほとんどが期限切れで404

ぶるぅらいん氏の続き漫画は別にページ作ってまとめようかとか考えてるけど
サークルとしてサイトがあるらしいんで要相談<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>age<>2007/09/17(月) 18:36:15.62 ID:pJCiWI2o<>>>1


そしてあげとく<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/17(月) 18:45:28.24 ID:zWicnCUo<>http://akm.cx/2d2/src/1190022264692.jpg

キャラソンジャケット風味
もしよかったら@wwikiのtopにでも使ってくれ<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/17(月) 18:46:54.98 ID:OaGxJiIo<>>>13
すげえwwwwwwwwwwwwwwwwww
GJwwwwwwwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 22:25:01.58 ID:wgs5pvMo<>>>1
乙!
<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 22:59:32.31 ID:LSs58Ygo<>>>13 GJすぐるwwwwww 早速貼った<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 23:12:53.17 ID:LSs58Ygo<>ええと まとめwikiは誰でも編集できる設定にしてあるんで自由にいじってもらってもおk
絵師が自分だけの絵をまとめてページ作っても可
FTPは今のところ使えない<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/17(月) 23:47:41.30 ID:8KC3/SYo<>喜緑「新スレおめでとうございます。お祝いに、わたしたち三人を象徴した手料理でもお召し上がりください♪」
朝倉「あの、おでん缶の上にレトルトカレーとふえるわかめは手料理とは言わないと思うな」
長門「……ユニーク」


呼ばれた気がするので絵は用意出来なかったが新スレ乙です

投下絵は全部サイトの方から引っ張ってるから私の分だけ残ってて当然ですか
漫画は別ページでも何でもお好きにどうぞ。私Wikiいじれないものでお任せで
当分バタバタですけど原稿用のネタでも小出しに出来ればいいですねー<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/18(火) 23:30:22.06 ID:siCAS2co<>>>18
乙です
漫画そのうち貼らせていただきます<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/18(火) 23:31:24.62 ID:siCAS2co<>>>18 スレでは何とお呼びすればよろしいので?コテ持ってる?<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/18(火) 23:41:51.29 ID:7Cbh7/Ao<>>>18
もう常連なんでコテあったらいいねぇww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/19(水) 21:55:36.85 ID:EYueU42o<>まぁ常連と言ったってここと朝倉さんスレしか投下はしてませんけどね
私のことは懲りないやつでもサイトでの安直な名前でも何でもお好きにどうぞ
コテは何か主張強い感じがして苦手です。付けた方が良いのかも知れませんがねー<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/19(水) 23:41:38.58 ID:IINFsmoo<>おお、次スレがないのでひょっとしてと思ったらやはりここだったか<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/20(木) 06:31:25.05 ID:fmN0mzco<>>>23 おかえりなさいませ 本にしますナイフにします?それともワカメ?<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/20(木) 22:38:52.01 ID:A58S8Kgo<>何か1ページ漫画のネタくだしぁ<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/21(金) 04:17:27.56 ID:m2Phh82o<>ネタつーかお題でよければ「月見」<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/22(土) 19:14:21.36 ID:9iTzHM2o<>>>26
なんか月見とは違うけど
http://akm.cx/2d2/src/1190456000769.jpg<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/22(土) 19:15:42.93 ID:I52Jx.wo<>全力で萌えた<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/22(土) 23:14:30.91 ID:Zm1Zawg0<>>>27
巧さに脱帽。
前スレからちょくちょく見てたんですが、此所はレベルが高い絵師が集うスレでつね。<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/22(土) 23:50:37.21 ID:9iTzHM2o<>なんか面白そうなお題とかネタとかがあれば
書いていってくれると嬉しいな<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/23(日) 07:47:54.97 ID:9z2BzxQo<>>>27
こっ これは長門流のジョークなのかwwwwwwww GJすぎww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/23(日) 13:01:45.19 ID:w3lrpVo0<>面白そうなネタ…
某所で話題になってるTFEIバンドとかww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/23(日) 19:01:13.37 ID:KN7RAjYo<>>>27
GJ
そのあとそれは猫耳かとキョンに聞かれるのを想像したぜww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/23(日) 19:03:08.55 ID:8mjBdmQo<>TFEI系統で思いつきそうで思いつかない・・・orz
とりあえず別のネタ
http://akm.cx/2d2/src/1190541050312.jpg<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/23(日) 19:13:37.68 ID:0N3iVuMo<>>>34
あんたの絵と4コマ大好きだわwwww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/23(日) 20:19:02.77 ID:F5m1Is.o<>>>34
吹いたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/24(月) 08:30:54.48 ID:V9EsK82o<>>>34 ネギ萌えたww<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/24(月) 20:44:34.92 ID:QQt0Llgo<>>>34
長門照れ隠しかわいいぜwwGJ!<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/25(火) 19:58:41.79 ID:J1T.THYo<>http://akm.cx/2d2/src/1190717831003.jpg<> 板設定変更の告知<>sage<>2007/09/25(火) 20:02:49.57 ID:OOrNfJ.o<>■ 新板移動のお知らせ
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/から

http://www.bbs2ch.net/part4vip/
にドメイン、サーバー変更いたします。。


機能的には●、Be(オリジナル)の追加等随時更新していきたいと思います。

■ 次スレッドからこちらに立ててくださるようお願いします。<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/25(火) 20:05:33.73 ID:uro4NO6o<>「■ 新板移動のお知らせ」
は、フェンリル ◆be/xFEN/R.の釣り行為です

ご注意ください<> 板設定変更の告知<>sage<>2007/09/25(火) 20:05:56.85 ID:OOrNfJ.o<>■ 新板移動のお知らせ
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/から

http://www.bbs2ch.net/part4vip/
にドメイン、サーバー変更いたします。。


機能的には●、Be(オリジナル)の追加等随時更新していきたいと思います。

■ 次スレッドからこちらに立ててくださるようお願いします。<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/25(火) 20:29:41.27 ID:J1T.THYo<>新作
http://akm.cx/2d2/src/1190719750455.jpg<> 板設定変更の告知<><>2007/09/25(火) 20:29:56.11 ID:OOrNfJ.o<>■ 新板移動のお知らせ
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/から

http://www.bbs2ch.net/part4vip/
にドメイン、サーバー変更いたします。。


機能的には●、Be(オリジナル)の追加等随時更新していきたいと思います。

■ 次スレッドからこちらに立ててくださるようお願いします。<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<>sage<>2007/09/25(火) 21:02:07.94 ID:zUPnPwYo<>>>43
ちょwwww長門さん何やってんすかwwwwさびしんぼめwwwwww
<> VIPにかわりましてパー速からお送りします<><>2007/09/26(水) 16:18:21.17 ID:IJI/ky2o<>>>43
長門もwwwwwwwwwwwwwwwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/09/28(金) 16:04:01.05 ID:5y3uFoEo<>スレタイ変わってたの今まで知らずに消滅したと思ってたww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/09/28(金) 16:12:19.43 ID:QiNf1Uoo<>>>47
確かに長門とか朝倉とか入ってないと分かりづらかったか<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/09/28(金) 21:39:55.10 ID:7DK0OaYo<>>>47
それでも見つけた貴方のために職人が一枚描いてくれるそうだwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/09/29(土) 03:16:51.01 ID:YqSL6zEo<>>>47-49

今回は、なぜか3時間以上かかった自信作?ww
http://akm.cx/2d2/src/1191003338888.jpg<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/09/29(土) 10:25:31.76 ID:PcWZGe2o<>>>50 長門降臨wwwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/09/29(土) 10:56:21.69 ID:zTda7q.o<>>>50
長門さんの新たな一面wwwwww
ここでキョンは某谷口の如くごゆっくりぃぃぃと言う訳かwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/09/29(土) 12:43:10.71 ID:q0kYdo.o<>>>50
これはきまずいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/09/29(土) 13:12:17.58 ID:egUTya6o<>>>50
これはいいwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/01(月) 01:31:27.80 ID:pNM2ee2o<>そういや新スレになってから未だ何も描いてませんでした
だが原稿で頭がいっぱいいっぱいなので、原稿ラフを携帯写真で撮ってみた
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/nk.jpg

今回はロダ使おうと思ったら503になって自スペースの気軽さを思い知ったヨ<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/01(月) 18:52:05.43 ID:GnVbo6go<>GJ!
なんか修羅場ってるなwwww2人とも容赦なさそうだから困るwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/03(水) 18:34:14.59 ID:hsQTPuIo<>>>55
ワカメ・・・笑顔の裏の顔が見えるwwwwww恐ろしい娘wwwwwwww
授業ハジマタ…のに過疎ってるんだぜ<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/10/06(土) 17:02:02.53 ID:hSHPMxYo<>新作です

http://akm.cx/2d2/src/1191657640079.jpg<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/10/07(日) 01:01:29.62 ID:npxPEGYo<>>>58
全員自己主張しすぎwwwwwwwwww
誰か自重しろよwwwwwwwwwwwwwwwwww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/07(日) 01:38:10.62 ID:WJgyOzo0<>ちょwwwwwwwwまwwwwwwww
ありがとう<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/07(日) 01:47:30.10 ID:3Y1QOFIo<>>>58
よすぎwwwwww ライブ行くよ<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/10/07(日) 01:58:22.34 ID:1wjc0V2o<>次の4コマネタが何かあったら教えてー<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/07(日) 12:07:03.94 ID:Xxi0STYo<>>>58
おまえらwwwwwwww何したいのwwwwwwwwww

>>62
月見 うさぎなのにバニー<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/09(火) 17:56:43.18 ID:Dt2E7Vso<>保守<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/10/09(火) 18:09:40.24 ID:IQOAM1.o<>>>64
ネタとして受け取っておこう<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/12(金) 01:04:45.47 ID:vrZIpQ2o<>保守がてらに
ネタがないねぇ<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/12(金) 20:11:05.85 ID:xzamF3.o<>がてらと言うか保守必要ないんだがな<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<>sage<>2007/10/19(金) 23:02:36.93 ID:TFQaXqEo<>過疎すぐるww<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/10/20(土) 13:48:21.54 ID:IWP8wWwo<>あまりの過疎にマウスで描いてみた
ttp://www.42ch.net/UploaderSmall/source/1192855539.gif<> VIPにかわりましてパー速からトップ絵募集中<><>2007/10/20(土) 17:37:27.37 ID:ZriQkGoo<>>>69
GJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/10/20(土) 22:02:55.85 ID:Sx2m1.ko<>>>69
マウスでもいいからまた描いてくれ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/10/21(日) 02:00:47.53 ID:Bad1I76o<>>>69
マウスとは思えない上手さwwwwwwGJ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/21(日) 12:19:24.33 ID:c/8P3koo<>>>69
スケートもうまいんじゃないかと思ったGJ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/22(月) 00:26:09.14 ID:m91LEW2o<>お、新絵師さんか?

というかみんな思いのほか高い頻度でチェックしてるんだな
過疎すぎて遂に誰もいなくなったのかと思ったほどだww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/10/22(月) 00:30:32.60 ID:3M3Zsgko<>この板は常に開いてるから
VIP見るたびにチェックしてるぜww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/10/22(月) 00:31:25.12 ID:6rGfTe.o<>>>75
よう俺<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/22(月) 22:59:22.67 ID:LdD9eIAo<>私もだがROM多すぎだww

原稿終わって久々に来たので>>55のラフの完成版を貼っておく
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/cut2.jpg
作業一段落したら気が抜けますなー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/22(月) 23:02:20.77 ID:pyGRQ3Mo<>>>77
いやっほぉぉぉぉぉぉうぅぅぅっ!!!!!テラグッジョォォォォォォブ!!!
朝倉さんは俺の嫁ぇぇぇええ!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/24(水) 07:01:03.19 ID:53YSujUo<>>>77
ひゃっほおおおおおおおおおおおおうktkrwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
GJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/10/28(日) 16:42:16.66 ID:za3aFoIo<>久々の新作

>>63
http://akm.cx/2d2/src/1193557287624.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 21:05:11.51 ID:MEtV3u6o<>>>80 バニーキタァァ!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 21:10:24.99 ID:X0NkLy6o<>>>80
1コマ目の長門で飯3杯はいけるな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/10/28(日) 21:13:34.45 ID:RoKstDwo<>>>80
二人とも何やってるんっすかwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:07:50.47 ID:dYpaPlYo<>>>80
GJすぐる

ところで誰かvipの替え歌の「嫁、無言、妄想にて。」と「ユッキー、ハイテンション、和民にて。」持ってないか?
ミスって消してしまったんだ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:13:36.53 ID:X0NkLy6o<>>>84
なんだそれwwwwwwwwwwwwwwwwww




と思ったらそれっぽいのがHDDに入ってるwwwwwwwwww
ちょっと中身確認してくる<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:14:57.80 ID:X0NkLy6o<>>>84
http://mobile.seisyun.net/cgi/read.cgi/wwwww/wwwww_news4vip_1177598677

このスレでうpってたやつか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:17:12.28 ID:dYpaPlYo<>>>85-86
おおそれだww頼むうpしてくれ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:19:12.64 ID:RoKstDwo<>>>86
ちょwwwwwwそのスレはwwwwwwwwww


調子に乗ってホ泉を歌った事を深くお詫び申し上げます<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:23:18.88 ID:X0NkLy6o<>なんでこのスレこんなにあのスレにいた奴が多いんだwwwwww
さすが長門好きの同士たち

>>87
ちょっと待っててくれ。今うp中だ
けど期待してるのが入ってるかどうかは補償できない。
なにせ昔のことだから良く覚えてないんだがとあるフォルダにmp3がまとめていくつか入ってたから
そのフォルダごとzipでうpする。たぶんこのフォルダがあのスレから落としたmp3だろうと思うが
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:34:04.28 ID:X0NkLy6o<>ttp://nullpoarchives.orz.hm/uploader/upload/File139.zip
ほいっと。
俺たぶんこのスレ途中で寝たからもしかしたらご希望のものがないかもしれん

>>88
すまん、ホ泉の歌は保存されてなかった・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:40:39.73 ID:RoKstDwo<>>>90
むしろその方が好都合wwwwwwww
確認したけど長門のはこれで全部だとおも<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:40:47.95 ID:dYpaPlYo<>>>90
うおおdクス!ちゃんと入ってたぜ
このスレなら持ってる奴いると思ったがさすがだなww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:44:40.59 ID:X0NkLy6o<>なんていうかさすがだな俺らwwwwwwww
ちょうど半年前のスレにいたのがこんなにもこのスレにもいるとはwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/10/28(日) 22:51:07.57 ID:RoKstDwo<>しっかりログも保存してあるんだぜwwwwwwww


うpされたの全部保存したと思ってたんだが今見直したらいくつか保存し忘れてる事に気付いた・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/11/01(木) 02:12:22.06 ID:RyKK/7Uo<>長門好きなみんなに
http://akm.cx/2d2/src/1193850407203.jpg

……1日ですが何か(´・ω・`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/01(木) 03:42:44.97 ID:KMY483Uo<>>>95 スバラシイ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/01(木) 07:26:39.74 ID:17.d.nMo<>>>95
なんという腋wwwwwwこれはヤバイだろwwwwww
飴ちゃんあげるぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/01(木) 16:18:40.36 ID:14QQziYo<>>>95
今月はいいことがありそうだ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/11/10(土) 17:57:54.18 ID:7mgng.Yo<>停滞しすぎワロタ
http://akm.cx/2d2/src/1194684934814.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/10(土) 18:16:20.44 ID:c05xC6.o<>>>99 GJ かわゆす!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/10(土) 23:14:40.13 ID:1u7DrGAo<>>>99
さすが俺の嫁<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/11/10(土) 23:40:28.31 ID:Q6m2t3U0<>これの絵師さん(サイト)知ってる人いる?
ちゃんと貼れてるかな?
http://uproda.2ch-library.com/src/lib000007.bin<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/11(日) 00:04:08.23 ID:S28IqOEo<>>>102
GREAT芥<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/11/11(日) 00:29:24.23 ID:KoAsb4k0<>>>103
クソサンクス<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/11(日) 20:42:52.44 ID:f6OL8D.o<>フルゆっきにしてやんよ(´・ω・`)
http://akm.cx/2d2/src/1194780092938.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/11(日) 22:00:42.97 ID:KUtSmlgo<>>>105 もうだめ俺wwwwww鼻血出そうwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/12(月) 00:51:30.47 ID:fS41LJYo<>>>105
なんか胸の部分に違和感。
長門は初音さんすら負けてる気がする
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/12(月) 01:11:55.75 ID:Tfxu1Ugo<>>>107
おまwwwwwwww情報連結解除されるぞwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/12(月) 14:01:49.17 ID:5ZWLceMo<>初音ユキかわええええええええええ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/12(月) 22:54:55.19 ID:2KLjLcso<>ちょっと営業してくる<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/13(火) 16:32:46.41 ID:ZI7t.Kgo<>>>105
kawayusu<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/15(木) 22:42:18.75 ID:b7jyvUQo<>相変わらずの過疎なので、たまにはネタを振ろうかと
未だ下書き段階ですが
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/kenka1.jpg
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/kenka2.jpg

最近はこんな感じのゆるゆるなネタばかり思い付くー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/15(木) 22:44:36.34 ID:5WVVWboo<>>>112
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
激しく期待wwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/15(木) 22:44:39.01 ID:pokpIjIo<>>>112
( ;∀;) イイハナシダナー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/16(金) 00:06:54.69 ID:PU0cMLQo<>>>112 おもろいwwwwwwGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/16(金) 01:07:04.01 ID:ntqLl0Ao<>>>112
キョンがVIPPERすぎるwwwwww
あとうるうる長門かわええwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/16(金) 03:38:43.88 ID:OofcAxoo<>>>112
朝倉さんにしかなつかない(?)長門wwwwwwww原点回帰だなGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/16(金) 23:09:23.89 ID:PU0cMLQo<>最近TFEIネタのSSが書けないのは愛が足りないからだと思うんだ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/17(土) 23:17:56.59 ID:cNzeowUo<>愛は大事だよな愛は。ネタの神様降りてくるかどうかもあるが
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/n_cats.jpg
でもホント、たまには原点回帰もしなきゃ方向性が迷走しちゃうよなぁ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 01:23:45.10 ID:OKxMKoko<>>>119
うわーい GJ!
ずっと小説しか書いてこなかったんだけど
漫画用のシナリオってどう書くんだろ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 01:24:56.85 ID:OKxMKoko<>@wikiメンテ中だったな 後で貼っとく<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 01:28:19.95 ID:OKxMKoko<>今日は長門の誕生日らしい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 10:29:41.66 ID:HvHcmcMo<>>>119
3人ともさらさらっと描けるのがうらやましいぜ……。

>>122
mjd!?

日記の使いまわしですまんが投下
http://nanabuluku.cscblog.jp/img/kanji-file-name-0.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 14:06:11.98 ID:qBc/Wjko<>>>119
なんというほのぼの、いい顔してるなGJ!
>>123
その服どんな構造してるんだwwwwwwきわどいなwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 14:40:33.65 ID:bPXr.gko<>>>123
(;´Д`)ハァハァ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 15:08:55.43 ID:OKxMKoko<>>>123
よすぐる(TдT)

ヒント:みのりん<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/18(日) 19:43:21.53 ID:Bd6QgFso<>さらさらっと描けても良いかどうかは別問題。私は長門が可愛く描けないからなぁ

小説も漫画も、文で見せるか絵で見せるかという表現方法の違いだけで差異はないと思う
最近よく語らせられるけど、絵も文も両方やるからって別に特殊じゃないんだよ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/19(月) 01:13:31.73 ID:/cpE.t.o<>たとえばここで漫画のためのプロット投下するとして
どういう形式がいいんだろ
短編SSそのままでもいいんだろか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/19(月) 01:22:17.40 ID:.X6BySUo<>思ったとおりにやればいいよ
うまくいくかどうかはまた別の話だ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/19(月) 01:26:03.34 ID:LCbLfk6o<>どんなでも歓迎するぜww
なにせこの過疎っぷりだからな

もう慣れたが<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/19(月) 22:15:19.16 ID:5vDYW0Yo<>つまり妄想やお題を職人が絵にするということか
一番最初の頃を思い出させるな。もう始まりから半年以上経ったのか
・・・長門祭受かったら作るTFEI本のネタにしちゃ駄目ですか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/20(火) 04:44:30.09 ID:h/QF2cwo<>>>131
いいんじゃね?

初期スレのあれは一幕ものというか
もっとシナリオっぽい構成の文章を投下したら
絵師がその後を引き継いで描きやすいんじゃないかと思ったりしたんだがどう
絵にしやすい文章ってのはどういうのを言うんだろ?

というか俺プリン用SSで今手が離せないんだわww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/20(火) 19:53:47.37 ID:0XgzHJIo<>長門が3歳になる前ってどんなだったろうか
http://akm.cx/2d2/src/1195555916819.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/20(火) 20:07:52.08 ID:5nMN6I.o<>>>133
だっこならこの俺があああああああ!!!!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/20(火) 20:51:15.32 ID:h/QF2cwo<>>>133
うわああwwwwwwww萌えすぐるwwww
>>134
俺の長門になにをするwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/22(木) 00:28:08.44 ID:5GTpBH2o<>>>133
な ぜ ス パ ッ ツ に し た














     *      *
  *     +  GJです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/24(土) 22:18:02.35 ID:mwZ.ChUo<>http://nanabuluku.cscblog.jp/img/a-147.jpg

シャツとネクタイっていいよね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/24(土) 22:19:48.43 ID:eHl6jTYo<>>>137
(*´Д`)/ヽァ/ヽァ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/24(土) 23:17:50.33 ID:cLZfjp6o<>>>137
この寝顔は一晩中見ていられるwwwwwwww
テラGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/25(日) 01:12:21.30 ID:LyhzZuQo<>>>137
(´д` )ハァハァにゃがと<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/26(月) 00:48:31.22 ID:4fcutmAo<>>>137
頬をつつきたくなるwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/26(月) 03:26:38.08 ID:eTsAZqoo<>>>137
ちょっとよだれ垂れてるとさらにハァハァします<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/11/27(火) 18:39:07.67 ID:ekufMgQo<>頬ずりしたい(*´Д`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/01(土) 00:38:33.36 ID:P/m8nmQo<>リクエストしていいでしょうか
白衣の長門お願いできますか
↓白衣といってもナースではなくて博士が着てるようなやつ
ttp://www.costume.co.jp/medical/elena_care2007/elena_care2007-111.jpg

蝶ネクタイで
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/01(土) 00:42:25.44 ID:P/m8nmQo<>最近はメディカルウェアっていうんだな
ttp://www.costume.co.jp/medical/soins_creer2007/soins_creer2007-049.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/12/01(土) 14:43:13.43 ID:XyxW45go<>医者がメディカルウェアと別称をもうけたのなら
科学者の白衣はなんて言うんだろうな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/02(日) 02:31:21.57 ID:qRy/rMoo<>>>145はドクターウェアと書いてあるね
俺的には外科執刀医のやつが好きだな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/02(日) 21:36:26.84 ID:nCJWqnco<>>>144
これは……誰にリクしてるんだろうか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/02(日) 22:38:36.42 ID:qRy/rMoo<>>>148
>>137の絵師にお願い<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/02(日) 23:59:27.70 ID:nCJWqnco<>ナンテコッタイww
白衣の丈が二通りあるけど、腰から上とか全身とかそのあたりの要望は……?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/03(月) 00:03:56.48 ID:D1mjMo.o<>職人降臨ktkrwwwwwwwwがんばれwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/03(月) 06:27:44.21 ID:h3BWD2.o<>>>150
長門は小柄だから腰までのやつがいいかな
スカートでもパンツでもおk






パンツてズボンww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 00:24:10.12 ID:mkz2Hb6o<>小柄だから大きくて着衣がだぶついてるのがいいんだよっと言ってみる


戸惑の育成ゲーム画面みてつい描いてた落書き。メイド長……?
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/maid.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 01:36:13.36 ID:pSOyaN.o<>GJ!
清楚な感じがするな
これは新しい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 02:14:10.40 ID:0BwMlIoo<>>>153
これはGJwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 02:28:10.43 ID:PxKR3y6o<>>>153
みんな可愛いなぁ……癒されるぜ

>>152
http://akm.cx/2d2/src/1196702706858.jpg
手抜過ぎてごめんよ……もう最近の俺には余力が残ってなくて
スレで絵を描ける時間もあまりないんだ……('A`)

ぐふっ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 02:41:55.34 ID:pSOyaN.o<>久しぶりに行ったら欝入ってるじゃねえかwwww
しっかりしろwwwwそしてGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 05:15:43.90 ID:0BwMlIoo<>>>156
な 長門先生!すげかわいいwwwwwwGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/04(火) 14:39:57.36 ID:xYByoHso<>>>156
あんたの絵大好きだぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/05(水) 05:51:38.03 ID:V9Vopggo<>寒い 人肌恋しい 朝倉のおでんが食いたい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 00:39:44.59 ID:nc9T4aIo<>俺、目が覚めたら面接に行くんだ……。

てことで長門侍おいておく
http://akm.cx/2d2/src/1196869120210.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 00:40:26.85 ID:Hl/3UDMo<>>>161
早く寝とけwwwwww
そして超GJすぎる<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 01:04:36.79 ID:nc9T4aIo<>>>162
おk、寝るわww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 01:06:01.45 ID:Hl/3UDMo<>>>163
面接がんばれwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 02:27:37.81 ID:nc9T4aIo<>なんだかんだで、明日の準備が今終わったっていう……('A`)

>>164
ありがとう、ガンガッテくる
今度こそおやすみだ、ノシ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 07:13:05.92 ID:tsrVcoAo<>>>161
この絵で中指立てた長門を妄想してもうたwwwwww
GJwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/06(木) 07:36:24.99 ID:LXwSex2o<>>>161
    ∧__∧
    (`・ω・´) 御武運を祈るどす
   .ノ^ yヽ、 
   ヽ,,ノ==l ノ
    /  l |
"""~""""""~"""~"""~"<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/07(金) 00:18:23.19 ID:D16Cb4Ao<>なんとか無事?かえってきますた('A`)
何の絵も用意できなくて申し訳ないが……。

受験って場数ふんでも緊張するもんはするよね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/07(金) 00:21:23.18 ID:kLyO.1oo<>別に俺はしなかったが<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/12/07(金) 08:48:10.44 ID:zNQvWdIo<>>>169
それ鈍感なだけじゃね?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/07(金) 11:17:46.08 ID:A1/jet6o<>まあもちつけ 受験生諸君ガンガレ(´・ω・`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/07(金) 19:54:09.70 ID:M.VRaZ6o<>>>168
おwwwwwwwwww疲wwwwwwれwwwwwwwwww
経験論としては不安があればあるほど緊張する気がするな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/08(土) 15:50:50.56 ID:6frDKz2o<>俺はあと何回修羅場をくぐればいいのだろう(´・ω・`)

だが長門がなぐさめてくれる、それだけで報われる
http://akm.cx/2d2/src/1197096557837.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/08(土) 22:15:04.33 ID:e77V2SMo<>>>173
痙攣しそうwwwwwwwwGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/08(土) 22:37:27.01 ID:F4zcoSAo<>>>173
sneg?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/08(土) 22:55:57.61 ID:CHZu0Rwo<>>>173
長門が可愛いのは言うまでも無いけどそれより背景うっまwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/08(土) 23:55:36.63 ID:6frDKz2o<>>>176
背景はとってきますた、サーセンwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/09(日) 22:10:48.23 ID:w4EaPlY0<>このスレまだ有ったんだ。パー速に移った辺りからチェック止めてたよ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/09(日) 22:44:47.93 ID:tS6nEy2o<>>>178
おかえり<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/09(日) 23:12:58.84 ID:rC.1GOUo<>>>178
よく見つけたな、再びようこそ
今は頻繁に過疎るが仲良くやってるよ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/10(月) 00:24:01.55 ID:tCaYzyYo<>結局いま、このスレにいるのって何人なんだろうな
10人いないんじゃね?ww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/10(月) 00:27:33.08 ID:SK8SRAko<>専ブラで開きっぱなしですがなにか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/10(月) 00:33:37.77 ID:2AgbPYQo<>同じく専ブラですが<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/10(月) 00:35:48.00 ID:PmsYaw2o<>ROMってる奴が大量にいると信じている<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/10(月) 00:41:22.46 ID:r8In0ewo<>タブの一列目にあるわ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/10(月) 07:30:14.18 ID:pTJOdr.o<>まとめのリンク元意外に多いのな
けっこうな人数が見てるはず<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/12(水) 01:19:30.76 ID:j66Sihso<>やぁっ!
つhttp://akm.cx/2d2/src/1197389739701.jpg

後は中国後宮コス?の資料と、俺の時間さえあればそれもいけますぜ……('A`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/12(水) 01:21:02.27 ID:kZYAYhEo<>逮捕されますた
ハァハァGJ!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/12(水) 05:16:10.68 ID:xMjbvi2o<>
 __[警]
  (  ) ('A`) ド、ドウモGJデス
  (  )Vノ )
   | |  | | <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/12(水) 05:19:15.53 ID:xMjbvi2o<>唐の衣装ですが 最近のコスプレは幅が広いようでww
http://www.ft76.com/product/81

↓髪飾りはこんな感じでしょうか
http://www.ft76.com/product/48<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/12(水) 12:15:52.64 ID:UQkViIUo<>>>187
よくわからんがアニメなんとなく見なくなってしまった俺は間違いなくゆとり学生wwwwww
やっぱミニスカだよな!んでもってもっと切り込みが深けりゃ神wwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/15(土) 18:57:33.26 ID:XlcVTbYo<>>>190
最近時間なくて遅くなた。
今日ようやく描けたよ(´・ω・`)
http://akm.cx/2d2/src/1197712563461.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/15(土) 20:02:41.59 ID:5SDEZX2o<>>>192

( Д )    ......._。......_。 コロコロコロ…

うますぎる(* Д )ハァハァ
も もうなにもいらないよ俺
この長門抱いて寝るwwwwwwwwGJwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/15(土) 20:18:15.09 ID:5SDEZX2o<>@wikiの構文仕様がまた変わってる 不用意に変更されるんで困るわ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/16(日) 00:08:42.61 ID:65knjh6o<>>>192
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 ちょっとある!ちょっとある!
 ⊂彡
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 13:03:38.37 ID:iPL2XvQo<>今日は消失の日だったのな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/12/18(火) 13:05:07.77 ID:J9feFI2o<>そういや去年もあったな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 13:10:07.35 ID:iPL2XvQo<>公式のパスってなんだっけ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2007/12/18(火) 13:16:52.06 ID:J9feFI2o<>ハレハレ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 16:21:13.97 ID:P.8leEko<>ヒント:アルファベットが5つです<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 17:59:34.43 ID:ZApFlXAo<>これって小説読んでないと普通に無理だろ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 18:20:56.39 ID:P.8leEko<>確かに俺は原作読んでたから普通に分かったが
読んでない人でもあのパスの出し方なら気づいちゃうだろ・・・なんというネタバレ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 22:07:14.44 ID:YHv9fi.o<>で、鍵はなんなの?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 22:19:39.91 ID:P.8leEko<>がんばって考えようぜ
小説読んでれば分かるだろ。まあ順番は・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 22:40:05.99 ID:KfQrTfQo<>>>199の並び順と既に書いてあるな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 22:42:58.99 ID:KfQrTfQo<>今日だけかもしれんし一応転載バレいやな人はスルー頼む



公式消失まとめ
4時になると同時に団員、活動報告等の各ページが消失し始める

4時18分〜19分
涼宮ハルヒの憂鬱オフィシャルトップページ消失
├プログラムの起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後と表示される
│├パスワード入力画面時の画像が透明背景の上に白でクーテオ、キ、ニ。ヲ。ヲ。ヲと書かれている→ttp://www.haruhi.tv/images/mesh.gif
││└エンコード変換→鍵探して・・・
│└パスワードはそれぞれK・N・S・A・K
│ └入力するとhttp://www.haruhi.tv/xterm.htmlに飛ばされる
│  ├最後にエンター以外のキーを押す→・・・deleted
│  └最後にエンターを押す
│   └http://www.haruhi.tv/yuki_pic.htmlへと飛ばされる
└同時刻に長門有希の部員紹介ページが変化→http://www.haruhi.tv/member_yuki.html
 └書庫リストのソースを見ると<!-・ラ・チー・鬣犒ッニーセキ・ヲクー、、ス、タィ、陦」コヌスェエ・ツ。ヲニニ・・->
  └<!-プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後--><> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 22:46:36.59 ID:MhneelEo<>皆が消失で盛り上がってる中、原稿のペン入れやってるkyな私です
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/t05.jpg

もう今年も後二週間位ですね……早いものだ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/18(火) 23:19:15.89 ID:P.8leEko<>>>207
ky→gj<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/19(水) 00:52:58.90 ID:zBSnIaQo<>>>207
相変わらずGJだ!
来年もここのみんなでやっていけたらいいね(`・ω・´)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/19(水) 09:53:16.88 ID:i/5K15Ao<>>>207
GJである!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/20(木) 13:47:35.56 ID:xwWRlJYo<>>>207
色…色を…
かゆ
うま<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/20(木) 14:27:36.51 ID:fvB9D4Uo<>>>211 wwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/25(火) 11:33:55.27 ID:O4D183Io<>メリークリスマスっ!

http://akm.cx/2d2/src/1198549988145.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/25(火) 13:10:30.19 ID:rlUb6Ooo<>>>213
キタ━━━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━━━!!!!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/25(火) 13:22:26.30 ID:yyE0JaIo<>>>213
予定は空いている!!ぜひ俺と二人で!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/26(水) 00:01:18.95 ID:mDkD7Bwo<>>>213
ゆきサンタキター!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/31(月) 17:20:28.07 ID:Wz9ijbIo<>今日は大晦日ですよっと

つhttp://akm.cx/2d2/src/1199089172392.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2007/12/31(月) 17:41:04.45 ID:cTsEUzEo<>照れてる長門かわえええええええええええええ
そしてさりげなくカレンダーwwwwwwww
超GJ!来年もよろしくなんだぜ!!<> 以下、2008年まであと4810秒(紅白から5539レス目)@ガキ使はじまたー<>sage<>2007/12/31(月) 22:39:51.15 ID:J0P5eHQo<>今年の大晦日もまた独りぼっちだ・・・orz

俺・・・バイト後、2chで紅白実況
友・・・彼女と合体

親・・・高級料亭で食事
姉・・・年越し合コン
弟・・・彼氏とディズニーでお泊り

また大晦日に家で一人お留守番する仕事が始まるお・・・<>
以下、2008年まであと4283秒(紅白から5759レス目)@ガキ使はじまたー<>sage<>2007/12/31(月) 22:48:38.99 ID:Wz9ijbIo<>>>219
弟・・・彼氏と?ww

おまいには俺たちがついてるぜ<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 00:42:40.18 ID:Wz8xFkIo<>原稿と睨めっこしてたらあけおめ絵用意出来てませんよ\(^o^)/
ともあれ今年もよろしく<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 00:43:56.98 ID:tz2RbYwo<>みなさんよろしくー<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 01:43:23.53 ID:I87ZJvEo<>>>217
GJだぜwwwwww あけおめ!みんな今年もよろしくな<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 04:46:35.22 ID:3vrHrw2o<>現在4時45分・・・。
ようやく年賀状が仕上がりました・・・。

http://nanabuluku.cscblog.jp/img/a-182.jpg

みなさん、今年もよろしくお願いします(´・ω:;.:...
<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 13:21:25.92 ID:vUDGSa.o<>あれ?気のせいかな?成長してる気がするwwwwwwどことは言わんが
>(´・ω:;.:...
情報連結解除されんなwwwwww<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 15:14:54.83 ID:tz2RbYwo<>む・・・胸がでかいような・・・<> A Happy New Year 2008 !<>sage<>2008/01/01(火) 16:27:54.68 ID:I87ZJvEo<>これはスバラシスwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/02(水) 12:04:44.18 ID:b4scIL.o<>解ってないな貧だからこそ素晴らしいんじゃn


ぬ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/02(水) 20:48:23.99 ID:BIQyUOQo<>新年用は無理だが、それっぽい落書き置いて行きますね
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/moti.jpg
改めて、今年もよろしく<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/02(水) 22:35:57.99 ID:7Muxq3Qo<>おもちうにょ〜んwwwwGJ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/02(水) 23:43:35.10 ID:bZ9jhlQo<>GJ 俺今年まだ餅食ってないんだぜww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/03(木) 02:41:33.48 ID:wBKOL4co<>よこどり長門かわええww
今年もよろしくっ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/12(土) 00:30:05.90 ID:hmKGsG6o<>原稿終わったので何か出せる物がないか漁って来ました
>>211、こんなのいいのですか
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/t05c.jpg

グレスケ前提で塗りが甘いのと、胸のマーク忘れてるのは多めに見てくれ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/12(土) 01:00:11.81 ID:0ufS7lIo<>>>233
仕事も大変だろうに、よく頑張ってくれた!
GJだっ!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/12(土) 12:48:47.23 ID:S5f7zsoo<>>>233
待っていたぞ!絵に生命が注がれたようだ!
GJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/12(土) 23:43:50.10 ID:SXgTySEo<>>>233
ぐっじょー!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/13(日) 00:04:53.99 ID:FIDuehMo<>キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/16(水) 00:35:48.13 ID:xK9Ra1Mo<>いつになるか分からんが シリーズ最後の長門有希の憂鬱Wをここで連載しようかと思うんだが
どうだろうかね?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/16(水) 00:41:23.56 ID:Z.gYB0so<>>>238
超wwktkすぎる
俺的には大歓迎是非カモン状態<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/16(水) 07:43:54.65 ID:/Ysc4T6o<>>>238
何してもおk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/16(水) 20:28:49.67 ID:xK9Ra1Mo<>d 俺はもともとここでSS書きはじめたんで 終わりは生まれ故郷で締めくくろうかと
終ったらちょこちょことTFEIネタを書きたい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/19(土) 23:51:18.15 ID:zEWsil2o<>私もここではあまりSS書いてないし、いつでも何でも大歓迎

ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/nsb.jpg
取り敢えず、明日お出かけしてきます<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/20(日) 16:43:33.79 ID:t6VB/NEo<>ポニテは神!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/20(日) 22:35:10.44 ID:sseZMVso<>>>242 かわゆす<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/01/26(土) 15:23:39.48 ID:2wXwGqUo<>最後の書き込みが約1週間前酷い過疎<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 15:52:11.23 ID:iemkHIko<>この時期は忙しいのな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 17:26:35.72 ID:UPmwfFIo<>実際、ROMってるのが何人いるかも怪しいぜ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 17:33:13.31 ID:yTsYwR2o<>さすがにROMは専ブラばっかだな・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 20:10:41.49 ID:hql6zmso<>ROMっては居るんだがね
皆もっと出しゃばろうぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 20:37:07.34 ID:AyNoRqso<>romでせ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 20:51:13.81 ID:Ua1ymT6o<>常駐でROM<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/26(土) 21:41:23.48 ID:q9GEh1Eo<>チェックしてるが基本ROMだなあ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/01/27(日) 12:30:57.18 ID:JHuVO0so<>ROMだね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 14:05:44.57 ID:XigVDIgo<>うん、ROMなんだ。すまない。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 14:20:49.98 ID:ZzlGPPEo<>ROM多すぎワロタ

まあ俺もなんだが<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 14:21:37.89 ID:yDSUaTso<>おれもおれも<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 14:27:30.86 ID:0ai52LQ0<>俺もROMだ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 17:53:35.21 ID:NdBWukco<>ちょwwwwwwおまいらrom大杉だろwwwwww
誰か何かやらかそうぜ、このスレにも革命が必要だ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 20:44:23.24 ID:qO/ehk2o<>人間はさあ、よく「言いだしっぺの法則」って(ry<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/27(日) 21:37:10.38 ID:kQnSzsUo<>何の変化もないスレに、わたしはもう飽き飽きしてるのね。だから(ry<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/28(月) 07:33:21.17 ID:LITUsXM0<>住人を煽ってこのスレの動きを見る!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/28(月) 13:09:40.23 ID:sTnCL5.o<>とりあえずゆりがほしいです^p^<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/28(月) 22:10:15.58 ID:7LtGB.2o<>サークルカット用の線画を投下して住人の出方を見る
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/sc_cats.jpg

うん、御免。当分朝倉メインで活動なんだ
百合は描く予定はあるが後回しなんだ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 01:51:40.20 ID:VCRm3pco<>>>263
朝倉さんが俺達の出方を見るとな?とりあえず飯に誘うか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 02:09:38.06 ID:Vf9EwJwo<>ここらでひとつ、何の計画性もないものをおっぱじめてみる

http://up4.upload-ch.net/src/up13645.jpg

俺(主人公)の名前候補>>264-270<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 02:59:38.96 ID:tN1JNxUo<>山田<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 06:05:17.68 ID:Nz2DtUso<>アレクサンドル<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 06:19:48.35 ID:Nz2DtUso<>>>263 GJ 最近妙に朝倉がかわいく見えてうわ長門なにすりゃめ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 07:21:42.90 ID:AbaninI0<>小次郎<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 20:14:35.88 ID:FOWCKVwo<>グルタミン酸<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 20:18:05.78 ID:jCeq8TMo<>>>263
か、かわええwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

つか休みの日じゃないとあんま人いない罠か
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 23:48:19.46 ID:Vf9EwJwo<>それじゃ山田小次郎でww

001
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13646.jpg
素材提供:T.O.P<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/29(火) 23:50:23.75 ID:Vf9EwJwo<>ミスってた('A`)

001
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13647.jpg

なんか以前もこんな微調整の嵐だったような……・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/30(水) 00:11:21.15 ID:bYrAzZso<>オラなんだかwktkしてきたぞ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/30(水) 07:28:08.44 ID:lLTeg8oo<>オラもだぞぅwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/30(水) 17:27:04.62 ID:mjP/8zoo<>>>273
これは続きが気になりますね!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/30(水) 23:28:21.17 ID:8yCf.3Yo<>002
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13651.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/31(木) 02:18:54.79 ID:WuhMA8Eo<>>>277
早く立ち絵を、立ち絵をおおおおおおおおお<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/31(木) 11:49:17.12 ID:.TlcypQo<>wwktkが止まらない<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/31(木) 12:06:04.30 ID:h9xw/lgo<>wktkkkk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/01/31(木) 23:50:57.28 ID:PHlp4Y.o<>>>278
も、もちついてくれ……。

003
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13657.jpg

全然進まなくてすまん('A`)

主人公の幼馴染のおにゃのこの名前候補
>>282-292

それらしい名前のほうが後々感情移入できるかと。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/01(金) 01:29:27.44 ID:GK.xweko<>マターリしすぎて今まで気づかなかったが
これはVIPの安価スレ的な流れじゃないか

つ九々木 橘<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/01(金) 08:28:18.85 ID:/s.XA0oo<>長門有希<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/01(金) 11:27:34.03 ID:khneqrco<>>>283<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/01(金) 15:43:21.16 ID:ozahcLw0<>朝倉涼子<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/01(金) 15:45:29.04 ID:Gx.Nz1go<>キョンキョン<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/02(土) 11:05:56.34 ID:drtrqkQo<>喜緑江美里<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/02(土) 23:49:58.50 ID:q5LIQooo<>>>283
d
これどっちも苗字……だよね?
九々木ってなんて読むんだろう。
ググってもでてこない。

>>283-287

主人公はキョンじゃないぞww

一見スレと関係なさそうだけど
ちゃんと長門は後で出てくるから……<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/03(日) 00:44:25.47 ID:7h4dDKMo<>お前らwwwwwwwwオリキャラで本キャラと同姓同名とかwwwwww
同期するのか?wwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/03(日) 09:27:11.23 ID:7Z2.Pnc0<>>>288
名前再安価しるwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/03(日) 10:19:35.84 ID:CMkQv3Uo<>石破茂子<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/03(日) 11:28:08.63 ID:WuHBLBgo<>それじゃちょっとだけ伸ばして・・・
名前候補
>>293-298

オリキャラが嫌いな人にはすまんが頼む<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/03(日) 13:03:03.25 ID:CMkQv3Uo<>じゃあ普通に
財部未奈美<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/04(月) 15:55:07.95 ID:eMtuhlc0<>一応確認させてくれ
オリキャラの性別は?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/04(月) 16:56:22.61 ID:erylmk6o<>>>294
おにゃのこって>>281に書いてあるぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/04(月) 19:47:54.02 ID:H4FDf1Mo<>さすがにパー速じゃ進行度はこんなもんか・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 15:35:30.07 ID:B3t.Eto0<>名字だけ…


霧島<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 17:39:45.64 ID:dF6VLGso<>どうしよう……足して 霧島 未奈美 で進めようかなww

ちなみにこの話にでてくるキャラは全員私服にする予定。
長門はこんな感じ。

ttp://file.nanabuluku.blog.shinobi.jp/07e0ca11.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 17:56:37.07 ID:d6cZgLgo<>>>298
キマシタワー(AAry
霧島 未奈美 でおk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 18:23:14.11 ID:0eomC2Io<>長門にはスパッツが似合うwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 19:11:00.76 ID:Zf5StF6o<>JS<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 21:50:59.10 ID:dF6VLGso<>004
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13668.jpg

005
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13669.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/05(火) 21:54:18.09 ID:YNypu8wo<>ほうほうそれでそれで<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/02/06(水) 08:57:26.99 ID:IzTeHwQo<>長門と言ったら制服じゃね^p^<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/06(水) 11:46:24.07 ID:Uo85G8so<>wwktk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/06(水) 20:51:49.12 ID:ySD4BJ6o<>これは長編の予感<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/07(木) 17:46:49.46 ID:486br.Eo<>006
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13688.jpg

007
ttp://up4.upload-ch.net/src/up13689.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/07(木) 19:10:50.79 ID:feDbchko<>続きキター!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/07(木) 23:59:35.24 ID:486br.Eo<>気がつけば、やることが山のように溜まってる俺。
更新すごく遅いけど、ごめん……気長に付き合ってくれ('A`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/08(金) 07:27:57.33 ID:.tPEFAU0<>いつまでも付き合うぜ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/08(金) 17:34:36.21 ID:2RtxZ8.o<>まったりやってくれ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/13(水) 18:23:27.94 ID:DVjkmr.o<>wwktk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/16(土) 16:42:59.14 ID:r/yfxJoo<>これはいい過疎<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/16(土) 17:24:54.38 ID:5CVnpFco<>まぁ忙しそうだし、他動きもないし、まったりでよろしいかと

床に臥せってたら規制されてたぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/17(日) 19:17:59.30 ID:R3URgVAo<>ほんとごめんよ('A`)
>>314察しの通り、かなり多忙な日々が続いてるんだ・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/17(日) 20:24:36.25 ID:rCP59oIo<>職人がんばれ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/22(金) 11:04:36.45 ID:/Y0WPdYo<>三日長門<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/22(金) 12:32:49.43 ID:N8AMhK.o<>阻止
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/22(金) 23:40:31.65 ID:57Een/.o<>少しだけ頑張ってみた。

008
ttp://upp.dip.jp/01/img/4480.jpg

009
ttp://upp.dip.jp/01/img/4481.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/22(金) 23:48:31.02 ID:n3MrcDAo<>wwktk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/23(土) 18:07:32.60 ID:J6/7OIwo<>+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/02/24(日) 01:57:07.73 ID:FNmsKqMo<>これは期待sage<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/04(火) 20:31:51.87 ID:6.12o9s0<>安価とはいえ主人公の名前wwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/07(金) 22:57:36.49 ID:0Y9SgzAo<>長らく停滞してすみませんでした。
たぶん今日から再開します。

010
ttp://upp.dip.jp/01/img/4938.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/08(土) 01:14:23.37 ID:TDmXySQo<>久々にキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
wwktk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/08(土) 02:02:48.06 ID:u75LiEQo<>>>324
充電完了宣言キター!
まったりでいいよ、だが期待<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/09(日) 02:44:46.72 ID:jar3c12o<>遅くなってごめんよ。

011
ttp://upp.dip.jp/01/img/4987.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/10(月) 01:28:40.35 ID:gKOnxPAo<>012
ttp://upp.dip.jp/01/img/5024.jpg
013
ttp://upp.dip.jp/01/img/5023.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/10(月) 02:21:40.17 ID:oKfQOY6o<>さあそろそろイベント発生の予感<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/12(水) 19:18:25.44 ID:A/Tr0gco<>思ったんだがここは保守しなくていいから過疎ってるんだな
無理やり保守ネタを貼る

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働くTFEI「バーバ朝倉」

カランコロン♪
「いらっしゃいませ〜真ん中の椅子にどうぞ」
「あどうも」
日曜は混んでると思ってたが、ありがたいことに空いてるようだ。
「あのぉ、お客様。今度入った研修生がいるんですけど、その子でよろしかったら無料でカットさせていただきますが」
「えっ、タダでいいんですか」
俺は少しだけ考えた。理髪師の研修生ってどんな人だろ、専門学校の学生か出立てくらいのお姉さんだろうか。いくら新人とはいえ丸刈りにされたりはせんだろ。
「じゃあお願いします」
最近寒い財布の中身も体温並には落ち着くだろうし。

「涼子ちゃん、ご指名よ」
いやあご指名だなんて未成年の俺が聞いたら赤面するじゃないですか、って今なんて言いました、誰ですって?
「あら、キョンくんじゃない。珍しいわね。やっとその鬱陶しいモミアゲ切る気になったの?」
「って朝倉!なんでお前がここにいんだよ」
それにこのモミアゲは俺のトレードマークだ。武士のちょんまげ並に俺の命だ、誰にも渡さん。
「なんでとは失礼ね、わたしだって散髪くらいできるわよ」
いやそういう問題じゃ。なぜここで働いてるのかというそこはかとない素朴な疑問が。
「いくらヒューマノイドでもバイトくらいはしないと、ご飯も食べられないでしょ?」
ヒューマノイドインターフェイスって思念体から給料出てないのか。生活かかってんのな。

「それはいいが、大丈夫なんだろうな。腕のほうは」
「任せて。これでも上達したのよ。そうね、確かあなたで三人目ね」
三人って上達するほどの頭数じゃないでしょうが。
「最初の二人はマネキンだったけど、ふふっ」
なんだかすごく悪い予感がしてきた。悪寒もしてきた。隣のシートに置いてある部分的に禿げたゾンビみたいになってるマネキンがもしかして最初の二人ですか。
「大丈夫よ、後ろで店長も見てくれてるから」
「あんまり切りすぎるなよ。散切り頭になったりしたら学校中でネタになりかねん」
「人間はさぁ、やらなくて後悔するよりやって後悔したほうがいいっていうよね」
ここでそんな末恐ろしいセリフ吐くな。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/12(水) 19:18:37.11 ID:A/Tr0gco<> 
あのー、朝倉さん。そのミリタリナイフはなんなんでしょうか。
「あ、これ?これはミリタリナイフじゃなくてカット用のナイフよ。こっちのクシみたいなのはスキ刈り用で、こっちは仕上げ用ね」
「って全部ナイフじゃねーかよ」
「そんなことないわ。ちゃんと顔剃り用のカミソリもあるわ」
それもナイフだから、一種のナイフだから。
「じっとしてないと眉毛を落としちゃうわよ」
お前の眉毛がそれなのは何度も落としたせい、うわなにするやめ今のはただの妄言だゆるせ。
「ナイフだと落ち着かん。せめてハサミにしてくれ」
「ごめんね、ハサミはわたしの担当じゃないのよ。ハサミの子を呼ぶわ、妹ちゃーんご指名よ」
「キョンくーん、ハサミで切らせて」
「おい!なんでお前がここに!」
だいたい小学生を働かせるなんて児童福祉法に抵触してんだろ!シャミセンがほんとに円形脱毛症になっちまったのはもしかしてお前のせいか。うわお前らハサミとナイフで俺をどうしよってんだ、寄るな触るな近寄るなこっちくんな。
「ねえ、あきらめてよ。結果はどうせ同じなんだしさぁ」
これが抵抗せずにおれるか。丸刈りどころか店を出たらクビがなくなってましたなんてことになりかねん。って店長、あんたも笑ってないで助けて。か、体動かねえ、ありかよ反則だ。
「無駄なの。今この店長はわたしの意のままに動く」
「キョンくーん、じっとしてなくちゃ切れないよー」
「妹ちゃん、長門さんが来る前に早く頭をヒモでしばって!」
「うんっ分かった」

もはや拷問以外のなにものでもない。俺もうお嫁に行けん。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/13(木) 18:39:52.61 ID:KonvE3wo<>続き
----

 このところ谷口の頭がおかしい。いやあいつがおかしいのは元々で、さらに輪をかけておかしくなったというか。
 谷口の奇矯な頭は徐々に片鱗を見せていたというべきだろう。というわけで片鱗その一。髪型が毎日変わる。月曜日には整髪料で適度に固めてまともだった髪型が、火曜日にはモヒカン、次の日にはチョンマゲ、その次の日には赤サビ色のロングヘア、なんとなく眺めていなくてもおかしいのは一目瞭然だった。金曜日にとうとうトゲトゲのパンクヘアになっちまったその頭は、ハルヒの奇矯さを上回り学校中の笑いのネタになった。
「って朝倉、お前だろ、谷口の頭で遊んでんのは」
「えへっ、分かった?」
「えへじゃないよ、まともなヘアスタイルに仕上げてやれねえのか。同じ男として見ちゃおれん」
「いいじゃない本人が気に入ってるんだし」
「き、気にいってんのか谷口」
「キョンよお、お前みたいなスキンヘッドよりはマシだと思うぜ。どうよこのパツンパツン」
うっさいわ!これは金縛りをかけられて俺が気絶してる間に妹と朝倉が人体実験しやがった結果だ。この頭のせいで空手部やら柔道部やらから勧誘されまくって困ってるところだ。

「谷口、いくら朝倉に気に入られたいからって男としてのプライドを捨てることはないと思うぞ」
「そ、そうかな」
「邪魔する気?この人間の髪を切れば間違いなく涼宮ハルヒにウケる。たぶん大きな情報爆発が観測できるはず。またとない機会だわ」
公衆の面前でなにを言っとるんだお前は。まあ確かに頭は爆発してるようだが。
「朝倉、お前のためなら頭のひとつやふたつ、いくらでも提供するぜ」
「ありがとう、やさしいのね谷口くん。そういう献身的なところスキよ」
青春ドラマみたいなセリフを吐きながらそのプルプル震わせてる口元はいったいなんだ。
「次はパツキンなんかどうかしらね」
「おうよ!なんでもやってくれい」

レム睡眠というやつをご存知だろうか。
「谷口、実は俺ポニーテール萌えなんだ」
「はぁ?何言ってんだよバッカじゃねえのお前……はうッ」
うあああ、なんつー悪夢だ。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/13(木) 18:41:11.42 ID:KonvE3wo<>働くTFEI「カレー屋ゆきちゃん」

「キョンくーん、おなかへっちゃったよ」
「まあ待て、今日はおふくろがいないから俺が作る」
珍しく両親がそろっていないんだが、晩飯の材料はとりあえず冷蔵庫に入ってるらしい。ちょっと渋めに回鍋肉にでもするか。
「ピーマンきらーい」
そんなことを言ってると朝比奈さんの胸みたいにおっきくなれませんよ、って俺なに不純なこと言ってんだ。

「キョンくーん、家の前に変な車が止まってるよ」
「なんだ右翼の黒塗り街宣車でも来たのか?」
窓から外を覗いてみると道のど真ん中に妙なかっこうをした小屋みたいなものが建っていた。なんだありゃ、モソモソ動いているところを見ると車か、などと思っていると、懐かしいラッパの響きがパララーララと聞こえてきた。ってチャルメラかよ!今どきそんな懐古趣味は流行ってねえだろ。
「ねえねえキョンくん、晩御飯はラーメンにしようよう」
お前これがラーメン屋の屋台だって知ってるのか。まあ適度に腹は空いてておかずを作る手間も省けるな。しょうがない、俺は財布を握って家のドアを開けた。
「すいません、ラーメン二人前おねがいします」
「……これは、ラーメン屋ではない」
って長門さん、人んちのまん前でなにしてはるんですか。道路往来妨害もいいとこですよ。
「ラーメン屋じゃないって、そのリヤカーの家みたいなのは何だ?」
「……家じゃない。屋台」
いや、それは分かってるんですが。
「あれっ、ユキちゃーん。新しく家建てたの?」
だから家じゃないらしい。
「いいにおいがするー」
「こっ、この匂いは食欲をそそる!」
「……カレー屋ゆきちゃん、はじまります」

「じゃあ晩飯はカレーにするか」
「さんせーい!」
「……いらっしゃい。お二人様?」
「ま、まあ見てのとおり二人しかいない。なんの偶然か親が晩飯作ってくれてなくてな」
「……店内でお召し上がり」
店内って青天井だろここは。長く垂れ下がったのれんのこっち側が店内ってことか。
「……禁煙席、喫煙席がございます」
未成年なのに吸うわけねー、なんて突込みどころを間違えている俺である。リヤカー屋台で禁煙席って効果ねえだろ。
「……風上が禁煙席、風下が喫煙席」
いや、どっちでもたいして変わらんから。まあその木の長椅子に禁煙マークを貼った細かい配慮は認める。
「カツカレーあるか?」
「じゃあ、あたしコーラ」
そんなもんじゃなくてちゃんとカレー頼め。
「……ペプシとコカ、どっち」ってあんのかい。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/13(木) 18:41:51.61 ID:KonvE3wo<> 
「じゃあ晩飯はカレーにするか」
「さんせーい!」
「……いらっしゃい。お二人様?」
「ま、まあ見てのとおり二人しかいない。なんの偶然か親が晩飯作ってくれてなくてな」
「……店内でお召し上がり」
店内って青天井だろここは。長く垂れ下がったのれんのこっち側が店内ってことか。
「……禁煙席、喫煙席がございます」
未成年なのに吸うわけねー、なんて突込みどころを間違えている俺である。リヤカー屋台で禁煙席って効果ねえだろ。
「……風上が禁煙席、風下が喫煙席」
いや、どっちでもたいして変わらんから。まあその木の長椅子に禁煙マークを貼った細かい配慮は認める。
「カツカレーあるか?」
「じゃあ、あたしコーラ」
そんなもんじゃなくてちゃんとカレー頼め。
「……ペプシとコカ、どっち」ってあんのかい。

「辛さレベルとかあるのか?」
「……レア、ミディアム、ウェルダン」
それは味じゃなくて肉の焼き加減だから。
「じゃあ俺辛いの好きだから、最高に辛いやつで」
「……推奨はしない。ハバネロ入り」
いくら辛党でもハバネロは死ぬって。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/13(木) 18:42:08.62 ID:KonvE3wo<> 
「……注文が入った、カツカレー二人前。……あいよ」
ウェイトレスとシェフをひとり二役でか、たいへんだな。
「……お湯で暖める。十分待って」
ってボンカレーかよ!確かに簡単でローコストだが。
「……これは、わたし用。客用はこっち」
長門はずいぶんと年季の入った寸胴鍋を指した。それ長門の家にあったやつだろ。家庭の味をそのままって感じか、これはこれでありかもしれん。
「……できた。甘口と辛口」
「おう、うまそうだな」
「いただきまーす」
「……福神漬けは、オプション価格」
ふつータダだから。らっきょもタダだから。
「うむ。うまいな。これ自分で香辛料を調合したのか」
「……そう」
なるほど。いつも工業用缶カレーしか食ってないようなイメージだったが、ちゃんと本場のカレー粉っぽい。子供にはけっこうな辛さらしく妹がハヒハヒ言いながら水を飲みつつ食っている。卵の黄身を落とすと辛さが多少まろやかになるぞ。

「うまかったぜ。いくらだ?」
「……二人で1200円。……あ」
「なんだ」
「……今日はサービスデー。タダ」
そんなんじゃ赤字になっちまうだろ。
「……あなたは、特別」
「そ、そうか。じゃあいつかなにかの形でお礼するわ」
「……そう」

「そりゃそうと、この屋台お前が経営してるのか」
「……そう。生活費は自ら稼ぐ」
情報統合思念体は意外に厳しいのな。
「儲かってるのか」
「……ぼちぼち、でんな」
誰もやんないような商人の挨拶を勉強したらしい。

重たいリヤカーを引いて帰っていく長門の後姿がえらく寂しく見えたので、俺も魔が差したのだろう。
「おーい長門ぉ、また来いよ。今度は親にも食わせたい」
「……分かった」
振り向いた長門が少しだけ微笑んでいたのは見間違いではあるまい。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/13(木) 18:51:40.91 ID:KonvE3wo<>貼るとき行が重複してたスマソ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/14(金) 01:21:30.57 ID:FB/UDm6o<>全力で支援<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/14(金) 18:59:21.28 ID:E.Z.P5Io<>働くTFEI「働かない喜緑さん」

初期スレ的な流れで:

「喜緑さん、あなたはどうやって生活費を稼いでるの?」
「……わたしも、疑問。喜緑江美里には労働の記録がない」
「わたしもちゃんと働いていますわ。あなたたちのような肉体労働ではありませんけどね、ふふ」

「お邪魔だったかな。江美里いるかい?」
「あら会長さん、いらっしゃい。お待ちしてましたわ」
「江美里、今月の分だ」
「お世話かけてごめんなさいね。あら、いつもより多くありませんか」
「いいんだよ。キミのためならどんなことでもしてやれる」
「おやさしいのね会長さん。そういうところ、好きですわ。*chu*」
「わーははは。じゃ、私は生徒会の会議があるんで失敬する」
「またいらしてね、"わたしの" 会長さん」

「喜緑さん今のはいったいなに?」
「お手当てですわ」
「あなたまさか会長さんに貢がせてるんじゃ」
「とんでもございませ……あら、お客様がいらしたわ」
「喜緑くん、久しぶりだね会いたかったよ」
「部長さんお久しぶり。ずっとお顔をお見せにならないから寂しかったですわ」
「ごめんよ。近頃SOS団にパシリをさせられてて忙しくてね」
「いいんですわ。部長さんがわたしのことを想ってさえいてくだされば、わたしはいつまでも待ちつづけますから」
「え、えみりん……そこまで僕のことを信じてくれてるんだね」
「泣かないで部長さん」
「これは少ないけど取っておいてくれたまえ」
「あらあら、いつもごめんなさいね。一人暮らしでたいへんでしょうに」
「いいんだよ。僕のえみりんのためなら一週間食わなくたって平気さ」
「お気持ちはとても嬉しいのですけれど、体こわさないようにしてくださいね」
「じゃ、僕は部活があるから」
「またいらしてね、"わたしの" 愛しい人」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/14(金) 18:59:37.30 ID:E.Z.P5Io<> 
「喜緑さんってば、それ絶対カツアゲでしょ」
「人聞きがよろしくないですわ。みなさまからの善意の寄付と言っていただけませんかしら、オホホ」
「あなたまさかほかにも、」
「WAWAWAこんちわー谷口です」
「どうも国木田ですぅ」
「岡部だが」
「新川でございます」
「ミャ〜」

「喜緑さん……あんたは鬼や、人の仮面かぶった鬼や……」

翌日

「すまん長門、少ないがこれ今日の分だ。本でも買ってくれ」
「……そう。ニヤリ」
「長門さんまで悪魔の真似しちゃダメ!!」

END<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/15(土) 00:57:34.31 ID:Bav0Yy2o<>うめええwwwwwwww喜緑の黒さは素晴らしいよな<>
あなたの回線はvs302鯖に接続されてるですよ(新鯖)<>sage<>2008/03/15(土) 19:19:48.02 ID:rrH/7XYo<>働くTFEI「長門不動産」

「すいません、先ほどお電話差し上げた者なんですが」
「……用件を聞こう」
いきなりヒットマンみたいな対応だな。って長門かい!
「こんなところでなにしてんだ」
「……食費を賄うためのバイト、もしくはそれに準ずる労働」
「そうか。ヒューマノイドもいろいろと大変だな」
「……用件は」
「ああそうだ、卒業したら一人暮らしするんでアパート探してるんだ。いい物件あったら教えてくれないか」
「……分かった。希望する条件を尋ねたい。部屋数、階数、木造・鉄骨、家賃そのほか」
バイトにしちゃ堂に入ってるな。宅建とか持ってるのかもしれんな。
「んーそうだな、ゼイタクは言わん。駅にできるだけ近くて1LDKくらいのアパートで、造りは木造でも軽量鉄骨でも構わん。足音が気になるからできれば二階な」
「……予算は」
「家賃5万くらいかな」
「……4件のファイルを抽出」
「おう早いな、見せてくれ。南向きの2階か、これ明るそうでいいな」
「……推奨しない。1階の住人が夜中に大声で怒鳴るという報告がある」
「こ、怖いなそれ。じゃあ中学校の向こうのこれなんかどうだ。こぎれいなハイツだぜ」
「……その物件は3年前、泥棒が入ったことがある」
「じゃ、じゃあやめとこう。祝川公園の近所とかどうだ。環境よさそうだ」
「……一人暮らしには妥当。でもオーナーが神経質すぎて店子が頻繁に入れ替わる傾向にある」
「そういうのもいやだな。引っ越すようなことになったら敷金がもったいない。築15年とか、ちょっと古いがこれなんかどうだ」
「……それは、ダメ。精神衛生上お勧めできない」
「なんだその精神衛生って」
「……向かいに同年齢の独身女性が住んでいる」
「いいじゃないか、むしろ歓迎したいくらいだ」
「……ダメ、ぜったい」
な、なんだそりゃ俺は別に薬物乱用するわけじゃないぞ。
「気を使ってくれてるのは分かるんだが、多少のことなら我慢するぞ」
「……一件だけ、お勧めがある」
「おう、それそれ。長門オススメってのは」
「……光陽園駅から歩いて5分。コンビニ近し。敷金礼金、管理費なし」
「いいじゃん。部屋の広さは?家賃は?」
「……74平米。家賃は5000円」
「74平米って……うちより広いじゃねーか。それまじで5000円?もしかしてヘンなのが出るとかじゃ」
「……ヘンなの、とは」
「いやいろいろとアレだ、超常現象的な」
「……そういう現象は見たことがない」
「まあいいや、一度見に行ってみよう。どこなんだそれ」
「……光陽園パークサイド、708号室」
「ってそれお前んちだろ!」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/17(月) 19:45:30.69 ID:1o9PY4ko<>働くTFEI「ナガドナルド」

「……来店を歓迎する。現在、シャカシャカチキン、てりたまバーガーのキャンペーン中。高コレステロール高血糖、高塩分で非常に不健康な食品で不本意だがわたしは立場上販売の義務を負っているのでやむをえず、」
「ちょっと長門さん、その回りくどい説明は客が引いてるからやめて」
「……払え、食え、帰れ」

---

「……ご注文は」
「てりたまバーガーのスペシャルで」
「……あなたは、卵アレルギーの兆候がある。卵抜きを推奨する」

---

「……ご注文は」
「プレミアムローストコーヒーがおいしいらしいね」
「……あなたは寝不足。まず、客席で2時間ほど休憩を推奨する」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/17(月) 19:46:23.26 ID:1o9PY4ko<>「ななな、長門さんが勤めてらっしゃると聞いてやってきましたハァハァ」
「……そう。ご注文は」
「ビッグマックセットとマックラップとマックフルーリーを2セットお願いします」
「……推奨しない。あなたは、体脂肪率が高すぎる」
「じゃ、じゃあ極力ヘルシーなメニューでお願いします」
「……水」

---

「……ご注文は」
「スマイルひとつください」
「……?。もう一度」
「ゼロ円のスマイルください」
「……」
「スマイルくださいよ〜」
「……エマージェンシーモード。店長、シフト交代を申請する」

---

「……ご注文は」
「おっ、かわいい子じゃん。バイトふけたらお茶しない?」
「……爽健美茶なら、セットメニューにある」
「ねえねえ、30分くらい付き合いなよ」
「……次の客が待っている。注文しないなら退出を要請する」
「つれねえなあ、うんと言うまで俺帰らないぜ」
「……このマックシェイクを食べることができたら、検討する」
「ほんとだな!?じゃあチョコレートのマックシェイク」
「……オーダー、チョコシェイクワン」
 … … …
「ウボアアアアあの女!シェイクにマスタード入れやがった!!」

---

「最近ハンバーガーも飽きたわねぇ、味もマンネリ化したわ。これほんとに牛肉なのかしらね」
「……このハンバーガーに使用されている牛肉は、オーストラリアカウラ地区で人工種付けされて2006年5月8日に生まれたヘレフォード種肉牛第6722号。18ヶ月間牧場で飼育された後、脳を麻痺させて電気屠殺され皮と肉に解体加工され、冷凍輸入された。あなたが食べているのは、その一部」
「な、長門さんお客さんもう帰っちゃったから」

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「よっ長門。バイトの調子はどうだ」
「……順調」
「そうか、がんばれよ。じゃあビッグマックのセットをひとつな」
「……今なら、ハッピーセットがお勧め」
「それ薄っぺらいハンバーガーかチーズバーガーのセットだろ」
「……NARUTO螺旋眼ボールで遊べる」
「おもちゃはいらないからふつうのセットでいいよ」
「……なかむらくんムービーカメラも付ける」
「俺は腹減ってるから」
「……ハナちゃんジュエリーコンパクトも付ける……グスン」
「分かった分かった、ハッピーセットにするから泣くな」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/24(月) 13:15:02.64 ID:6.uHQc.o<>一週間長門<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/03/24(月) 18:26:47.38 ID:sTH/mF.o<>一週間鶴屋さん<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/03/24(月) 18:33:21.12 ID:v3bqbe.o<>>>344-345
ss<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/01(火) 22:58:25.60 ID:kP0kbgUo<>4月1日ねた
ttp://upp.dip.jp/01/img/5554.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/05(土) 05:10:45.75 ID:RO8mU36o<>>>347
GJ ごめんここんとこスレ読んでなかったww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/05(土) 12:11:34.27 ID:kyKU49Qo<>>>347
やっとネット環境が再構築されたぜGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/07(月) 22:25:11.56 ID:sdV0WWQo<>バタバタしてたのでうっかり一日読み間違えて遅れてしまいましたが
このスレの前身、朝倉さんにしかなつかない長門スレが立って一周年でしたね
細々とですがここまで続いてこれたのも皆の力があってこそ

ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/1year.jpg

もうちょっとしっかり描きこみたかったんですが、後日改めてでご容赦を
ま、これからもまったりと。ゆっくりしていってね!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/07(月) 22:47:40.18 ID:E/VU8Cco<>お久しぶりGJ

なんともう一年が……。
これからも細々とやっていきましょうww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/08(火) 02:10:06.39 ID:/JzWEAco<>>>350
この目つきが大好きなんだよな俺
職人さんもmゆっくり描いていってね!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/11(金) 23:48:10.05 ID:JGRaW5go<>>>350
GJ おひさしぶりです
もう1年になりますか 月日の経つのは早いものです

まとめのFTPquotaがMAXになっちまったww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/27(日) 23:00:29.64 ID:VBro3Uko<>ほす<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/27(日) 23:10:49.88 ID:n3z5U0Io<>>>354
なつかしいなww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/30(水) 18:49:40.26 ID:SiOgWWIo<>長門のマウスパッドを安く手に入れる方法って何か知らない?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/30(水) 23:23:52.22 ID:jUDBO8Yo<>ヤフオクとかないのか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/30(水) 23:35:14.58 ID:SiOgWWIo<>送料とかかけたくないなと思って

なんかメイトに売ってるらしいが……<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/02(金) 20:29:32.62 ID:295aT86o<>キャラのマウスパットって光学式だと使えないですよね
使わないで飾るんですね、わかります

まぁ、原稿の一部で茶を濁しておきます
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/kt04c.jpg
私の描く九曜はここが定位置っぽい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/03(土) 01:37:36.92 ID:vy2liNco<>つ い に 九 曜 が き た か
GJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/12(月) 21:21:44.87 ID:m16f2iQo<>おまえらどうしたんだ連レスしてしまうじゃないか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/12(月) 22:31:27.52 ID:v5UDy4go<>もう過疎で過疎で…
驚愕発売日にVIPで宣伝って話もあったけどいつ出るのやら…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/13(火) 00:22:32.54 ID:9Ua60WIo<>定期的に、このスレ見てるひとが
どのくらいいるか聞いたりしてるけど

本格的に数えるくらいしかいないかもな・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/13(火) 07:27:14.67 ID:ZaXawAI0<>まずここに一人<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/13(火) 23:05:36.66 ID:3p/wpjco<>人が居ないのは、保守いらずでスレに張り付く必要が無いのも一因かなぁ
もっと絵が描ければ良いが、同人始めると原稿に時間取られて仕方なし
それでもちゃんとミテマスヨー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/14(水) 13:38:04.56 ID:woJXmtYo<>毎日ではないが定期的に見てる<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/17(土) 01:09:20.86 ID:NFo5S6Io<>もうね、いろいろと忙しくて
まともに絵も描けない状況が続いておりますよ

でも自分で元気がでるシチュを描いてみたぜ
ttp://upp.dip.jp/01/img/6833.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/18(日) 01:13:29.74 ID:oPe3I6go<>長門は病気ですね、わかります<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/18(日) 04:54:51.40 ID:2qTQJ3Mo<>>>367
うまいな( ゚д゚ )<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/19(月) 22:50:42.21 ID:6R1VKIco<>長門有希の上書き保存
ttp://file.nanabuluku.blog.shinobi.jp/2d545454.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/21(水) 00:32:07.06 ID:MV1Qs6wo<>>>370
なんか軽そうなイメージがよく出ている気がするな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/21(水) 08:02:52.70 ID:f0k0ZCQo<>長門って何キロだろ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/23(金) 02:52:57.87 ID:8zGx7j2o<>>>371
キョンの姿勢がいいからだろう
素晴らしいなGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage hosu<>2008/05/28(水) 02:42:59.66 ID:ASw5bbco<>がんばれ朝倉さん<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/30(金) 03:02:48.14 ID:BzvU71Eo<>がんばれ昆布<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/31(土) 22:22:32.08 ID:56Ve.U6o<>がんばれワカメ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/08(日) 03:18:07.97 ID:L3gF2tko<>貼らざるを得ない
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper81243.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/08(日) 07:38:53.72 ID:a4lQuPMo<>九曜も出るというのか……?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/14(土) 21:08:36.41 ID:NJ1EEwAo<>TFEIのお見合い
 
長門編

 あんたももういい歳なんだからいつまでもチョンガーでいないで見合いのひとつでもしなさい、などとおふくろに散々言われた挙句、俺は承諾するかわりに新車を買ってくれなどととうてい無理だとわかっている交換条件を出した。
「縁談が決まってあんたが結婚でもするようなことになれば、ね」
まかり間違ってそんなことはないとは思うが、でもちょっとは期待してもいいかなぁなんて。今まで彼女なしでやってきた俺がそんな見も知らない相手を選ぶなんて世界がひっくり返ってもありえない話なんだが。まあ、俺はそれほど暇だったのだ。
「キョンくん、かっこいいね」
こっちはちゃんと彼氏をつくって親にも紹介している妹が、俺のスーツ姿を眺めながら言った。お前に誉められてもうれしかねーよ。
「がんばって、お嫁さんを釣ってきてね」
「お、おう。ゲットしてくるぜ」
なんだかUFOキャッチャーの前で妙に力んでしまいそうなプレッシャーと同じものを感じつつ家を出た。

 叔母の紹介だという見合いの相手が待つ会場に、自転車をキコキコとこぎつつ五分前に到着した。車でもありゃよかったんだが。やれやれ時間どおりか。

 路地に漆喰の塀が延々と続く日本庭園の瀟洒なお屋敷だった。門の向こうに竹やぶがのぞいている。格好だけのシシ脅しの音がカコーンと聞こえる。最近はこういう貸切の場所もあるのな。時間あたり一万くらい?

 名前を言って通された畳の部屋にでかい座卓がでんと置いてあり、叔母とその向かいに見知らぬおばさんと小柄な女の子が座っていた。
「あらキョン、珍しく時間どおりじゃないの」
「はじめまして、ご紹介します。こちらは長門有希さん。県立北高出身のおとなしいお嬢様です。以後お見知りおきを」
「どうもはじめまして、俺のことはキョンと読んでください」
「……長門有希」
「キョン、長門さんはあんたと同じ歳よ」
そうなんですか。見かけは俺より五歳くらい若そうだけど。

「長門さん、和服がとてもお似合いですよ。西陣織ですね」
「……ありがとう。彼のその19800円のスーツも値段の割には似合っている。ズボン二本付きで、コストパフォーマンス抜群」
そこで親指を立ててくれるのは非常に嬉しいんですが、あなたはなぜ値段までご存知なのでしょうか。

「あ、あの、ご趣味はなんですか」
「……わたしの趣味に興味があるのはなぜ」
「あ、いえ差し支えなければでよろしいんですが。日ごろどんなことをして楽しんでらっしゃるのかなぁと」
「……強いて言えば、本、など」
「あ、あはは。本がお好きなんですね」
俺もう帰ってもいいかなあ。
「どんな本がお好きなんですか」
「……これ」
その風邪薬みたいなタイトルの分厚い本どっから出したんですか手品ですか。
「SFがお好きなんですか」
「……そう」
「いやぁ、俺もSF好きなんですよ。こないだ見たターミネーター5はかっこよかった」
「……あれは初期作品とは監督も脚本も違う。ネームバリューだけの焼き直しに過ぎない」
「す、すいません。実はジョンコナーがターミネーターだったなんてあまりに意外だったもんで」
「……ネタバレは、推奨しない。むしろシュワルツネッガーが人間であることのほうが、意外」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/14(土) 21:08:50.51 ID:NJ1EEwAo<>どうも話が進まない。見かねた叔母が話題を振った。
「長門さん、学生時代はなにをしてらしたの?スポーツとか部活とか」
「……」
「たしか文芸部でしたかしら?」
「……文芸部ではない。進化の可能性と時間移動体、自称少年エスパーが集合し無意味な活動にひたすらエネルギーを消耗する集団」
「面白いことをなさっていたようですね。どんな活動内容だったの?」
小柄な長門さんはどう説明したらいいのかとうんうんと唸った挙句、
「……言語では概念を説明できない」
「まあ、言葉にできないような楽しい学生時代だったんですね。おほほほ」
無理に笑ってみせる二人のおばさんの顔は少しひきつっていた。
「……お、おほほほ、ほ」
長門さん、小指立ててるのはかわいいんだけど顔が笑ってない、ぜんぜん笑ってないよお。

「じゃあ、後は二人だけにしましょうか」
「そうですね。二人とも気が合うみたいだし」
おばさんたち、そう言いつつ体よく逃げてるだけじゃないのか。俺たちのどのへんが気が合いそうなのか箇条書きにして読み上げてくれ。叔母はあとは俺に任せるからうまくリードしてくれとという感じに片目をつぶった。こんな話の通じない女の子をどうしろってんだ。
「あ、あの」
「……なに」
「こんなつまらない見合い、やめませんか」
「……そう。わたしも、意味もなく時間を無駄にしていると思う」
今日、はじめて意見が一致した気がする。
「こんな堅苦しい場所はやめて、どっか出かけませんか」
「……分かった」
「どこに行きます?」
「……図書館」
この人が落ち着ける空間はどうやら本があるところのようだ。そのまま二人で、片方は晴れ着のまま、もう片方はキリキリっと無駄にネクタイを締め上げたスーツという成人式の帰りかと思わせるようないでたちで、市民図書館へと足を運んだ。結い上げた髪とその端正な横顔を眺めつつふと感じた。なんとなくだが、いい子じゃないか。

END<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/14(土) 21:11:53.32 ID:NJ1EEwAo<>今投下してる誤算のNGシーンだったんだがこっちに持ってきた<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/15(日) 03:37:55.36 ID:3JB12OUo<>これで・・・終わりだと?
こっからじゃないか!こっからじゃないか!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/15(日) 18:54:17.40 ID:oaQBSuoo<>スマン そのへんは憂鬱Wを待っていてくれww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 04:03:05.54 ID:1.3B5DEo<> 
お見合い朝倉さん

「キョンよお、折り入って頼みがあんだがよ」
土曜日、アホの谷口から電話がかかってきた。あいつのことだからどうせまた金を貸せとかナンパしようぜとかヤキソバを食わせろとかアホな用件にちがいない。
「なんだあ、金なら貸さんぞ」
「違うわい。実はよ、先月マリッジマッチングサービスに登録しちまったんだが」
「なんだその、まいっちんぐなんとかって」
「マリッジマッチングだ、しらねーのかよ。平たくいや結婚斡旋会社だ」
最初からそう言えばいいんだが、かっこつけようとして正体がなんなのか分かんなくなってる会社だな。
「お前もとうとう身を固める気になったのか。それとも二十三才恋愛暦ゼロの末に血迷ってそんなサービスに手を出しちまったのか」
「こないだ会社のやつとネタで登録しちゃってさあ」
「結構なことじゃないか。ナンパと違って下手なまねはできんだろう」
「それが、途中で怖くなって、」
「怖くなって?」
「お前の名前で登録しちまった」
こ、このバカ野郎が!!俺の個人情報をこともあろうに結婚斡旋なんかに漏らしやがって。
「最近郵便受けに見覚えのない広告がやたら入ると思ったらお前のせいか!!」
「いやぁ、わりぃわりぃ。ちょっとした下心ってやつだよ」
それを言うなら出来心だろうがバカ、おまえみたいなやつは庭に穴掘って首突っ込んで窒息死しちまえ。

「で、頼みってのはなんだ?」
「見合いの申し込みがあったんだ」
「まさか俺に会いにいけとか言うんじゃあるまいな」
「頼む。予定が入って急に行けなくなっちまったんだよ。費用は俺が出す」
俺はここで0.5秒間だけ考えた。谷口のおごりで女の子とデートすると考えるか、見も知らない女に愛想笑いを浮かべて気を使いつつ退屈な世間話をして消耗するだけだと考えるか。
 俺が黙っていると谷口は自ら金を釣り上げてきた。
「諸経費プラス一万でどうよ」
「うーん。……二万」
「よっしゃ」
俺も釣られたふりをした。って谷口、そんな金あるんだったら借金返せ。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 04:03:23.65 ID:1.3B5DEo<> 
 というわけで今俺の目の前にいるのはさらりと長い髪を背中に垂れた美女だ。
「どうかしたの?」
少し眉毛の主張が強いかなっていう、たまにウインクする目がなんとも麗しい女の子だった。歳は俺と同じらしい。
「ああ、いえ。なんでもありませんよ朝倉さん。こんなにきれいな女の人に会えて、まいっちんぐサービスに申し込んでホントよかったですよ」
「あなたも、写真よりずっと素敵ね」
「よかったらキョンと呼んでくれませんか」
「ええ、キョンくん」
デートの場所が思いつかず子供ばかりの遊園地のベンチで愛想笑いをしていた。なにやってんだろうね俺は。

 それにしても、俺はずいぶんとラッキーな目に遭っているのかもしれない。こんなきれいな顔をした女の子はそうそうお目にかかれるもんじゃないぞ。性格も優しそうだし、谷口のやつきっと悔しがるに違いない。
「あなたのその美貌なら引く手あまたでしょうに、なんでまた結婚斡旋サービスなんかに?」
「それにはいろいろと事情があってね……」
も、もしかして、なにか隠された暗い過去があるとか夜中に油をなめるとか頭に開いた口から大量にご飯を食うとかですか。
「わたし、気が短いの」
「それだけ?」
「うん……」
なーんだ、それだけのことか。はっはっは。

「気が短いだなんて、ふつーだと思いますよ。男でも女でも、俺の周りには気の短いやつ多いですから」
「そうかしら……。人間はさあ、やらなくて後悔するよりやって後悔するほうがいいって言うよね。これどう思う?」
「ええまあ。そのほうが経験豊かな人生になると言いますね」
「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するだけではジリ貧になることは解っているんだけど、どうすればいい方向に進むか解らないとき。あなたならどうする?」
「難しいことはわかりませんが、とりあえずなにかやってみるんじゃないですか」
「でしょ?でもね、わたしの両親は頭が固くて、急な変化にはついてゆけないの。だったらもう、わたしの独断で強行に変革を進めちゃってもいいわよね」
「え、ええ」
なんだか妙に切迫感があるんだが気のせいか。誰かに弱みでも握られてるのか。
「何も変化しない毎日にわたしはもう飽き飽きしてるのね。だから……」
「だから?」
「あなたと結婚して幸せな日々を送る!」
いきなり、朝倉さんが抱きついてきた。俺は美女に抱きしめられて息が止まりそうだった。こんな白昼の、衆人環視のど真ん中で。おいお前ら見世物じゃない、などという視線を送ってみるんだが、遊園地のアトラクションの一種かなんかだと思われているらしく、子供は溶けそうなアイスクリームも気にせず呆然と二人を見詰め、お父さんはニヤニヤと俺たちを鑑賞している。お母さんからは盛大な拍手すらいただいた。あ、どうもありがとうございます。おひねりはご遠慮ください。
「あ、朝倉さん。まだ気が早いですよ。俺たち知り合ったばかりじゃないですか」
「そ、そうね。ごめんなさい」
朝倉さんはポッを顔を染めてうつむいた。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 04:03:42.95 ID:1.3B5DEo<> 
「せっかく来たんだから、ちょっと遊んでいきませんか」
「ええ。遊園地なんて何年ぶりかしら」
「ローラーコースターとかバンジージャンプとか平気ですか」
「わ、わたしそういうの苦手で……」
そうだったんですか。じゃあもっと軽いやつにしましょう。
 最近の遊園地は大掛かりな機械ばかりで、心臓の悪い人は乗らないでくださいという注意書きばかりだ。だったらいっそのこと車椅子をレールに乗っけてみてはどうか、そのまま病院に直行してもらえるようにな。
「あれなんかどうですか」
メリーゴーランドの横に並ぶ売店のそばで、小さくテントを構えている射的があった。コルクの弾をライフルで撃つあれだ。
「なつかしいですね、昔よくやりました」
朝倉さんは爽やかな笑顔で目を細めた。俺も子供の頃には祭りの屋台でよくやったもんだ。

 景品には小さいものでは駄菓子とかガチャガチャで出てきそうなフィギュアなんかが並び、なかなか倒せそうにない大当たりの賞品にはぬいぐるみやゲームなんかがあった。俺はライフルを借りて朝倉さんに渡した。
「弾は二十発あります。小さいやつのほうが倒せる確率が高いです」
「このライフル……MP44レプリカね。射程は短いんだけど精度は高いわ」
な、なんか妙に詳しそうですね。百発あっても倒せそうにないぬいぐるみなんかを狙いそうな雰囲気だが。

 俺が十発くらいでやっと小さなケロヨンを倒したところで脇を見てみると、朝倉さんは妙に堂に入った構え方でパスパスと連射していた。この人、ミリタリヲタだったのか。
「ああっもう!横風で弾が流れるわ。店員さん、もう二十発ください!」
格好だけはピシッと決まっているんだが、射撃の腕前はいまいちなようである。全弾、かすりもしない。
「もうっ、こんなヘボライフルなんかじゃ敵を打ち落とすのは無理だわ!」
「朝倉さん、熱が入ってますね」
と笑いながら言おうとするとやおらエモノを取り出して的に投げ始めた。そ、それってナイフですか!?見るからに切れ味のよさそうなミリタリナイフをいくつも取り出しプスプスとぬいぐるみに投げ始めた。店員の女の子が真っ青になった。
「お客さま、武器の使用は厳禁です、あぶないですぅ」
などと言いながら頭を覆って縮こまっている。
「あの倒したぬいぐるみ、いただけるかしら?」
朝倉さんは、断ろうものならギザギザ付きのナイフで切り刻んであげるわよとでもいうような雰囲気ですごんでみせた。かわいそうに、店員はブルブルと震えながら熊のぬいぐるみを抱えて渡した。
「キョンくんっ、プーさんをゲットしたわっ」
「よ、よかったですね。あ、あははは」
先ほどの海軍特殊部隊のような目つきはどっかにいっちまって、爽やかに笑ってみせる朝倉さんだった。にしてもそのプーさん、頭にナイフが刺さったままなんですが。

 無事景品を獲得したので俺たちは警備員を呼ばれないうちにその場を撤収した。
「あの……ごめんねキョンくん。わたしは獲物を狙うと見境がなくなるの」
まるでイリオモテヤマネコかチーターのようなお方ですね。あなたが結婚斡旋サービスで出会いを求めた理由が、なんとなく分かったような気がしますよ。
「……嫌いになっちゃった?」
抱えたプーさんをギュッと抱きしめてうつむいた。俺は朝倉さんの細い手を取った。
「俺にはミリタリのよさは分かりませんが、いいんじゃないですか。人間ひとつくらい熱中できるものがあるほうが、人生楽しいに決まってますよ。それに、本当に欲しいものは躊躇していると逃げてしまうかもしれませんしね」
「キョンくん、やさしいんですね」
え、えへへ。女の子からやさしいだなんて言われたのははじめてです。

「そうだ、ジュラシックパークを再現したジャングルがあるんですよ。あそこに行きませんか、エアソフトガンで恐竜を撃てるらしいです」
「わあ、ほんと?楽しみだわ」
二人とも繋いだ手を離さず、足取りも軽く前人未到のジャングルへと冒険の旅に出た。俺は帰りにミリタリショップにでも寄ってみるかな、などと考えつつ、右手の温かい温もりを堪能していた。

END<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 04:31:39.61 ID:1.3B5DEo<>なんだか朝倉の語調が朝倉っぽくないな 原作読み直そう<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 20:25:59.22 ID:1.3B5DEo<> 
お見合い喜緑さん

 部室のドアをノックする音がする。控えめにドアを開けて現れたのは、無翼の天使、未来人に違いなかった。
「四限まで昼寝してたら寝過ごしちゃって……」
結構なことじゃないですか、寝る子は育つといいますからね。言わなくてもいい言い訳を言いながらためらうように廊下にたたずんでいる。なぜかそのまま入ってこようとしない。
「ええと、その……ですね」
俺たちの視線が未来人に集中した。それから思い切ったように言った。
「あ、あの……お嫁さんを連れてきました」
な、なんですとぁ!?今お嫁さんとか、女の子に飢えた俺の耳が勝手に誤変換した聞き間違いですか。

 未来人に連れられてきてじっとうつむいて座っているのは、喜緑江美里さんという、おとなしく清楚な感じの女の子だった。
 団長がボールペンを耳に差し込んで鼻から取り出すという、小学生がやる手品を誰に見せるでもなく延々繰り返しながら質問した。
「するとあなたは、我がSOS団に彼氏を探して欲しいというのね?」
いつからSOS団は出会い系になったんだよ。いっそのことブライダルプランニングまでやるか。
「はい」
「ふうむ」
「もう何日も彼氏ができないんです」
ふつー、何年もとか言うでしょう。あなたの恋愛感覚にクレームをつけるつもりは毛頭ありませんが。
「ええと喜緑さんとやら、お住まいはどちらです?」
「たしかホンジュラスだったと思います」
たしか思いますって、あなた他人事みたいに言ってますが。などとツッコミどころを間違えている俺である。ホンジュラスっていうと、中米でしたっけ。
「夜中に部屋にひとりでいるとお先真っ暗ですし。わたし、心配なんです」
なんだかよく分かりませんが、そんなに思いつめなくてもあなたの美貌なら彼氏のひとりや二人作れるでしょうに。

 団長は腕組みをして神妙な顔つきをして言った。
「むう。あなたの気持ちは分からないでもないわ。あたしもここ三年間、まともな彼氏がひとりもいないのよ。我がSOS団が全力を投じてあなたの彼氏を見つけてあげるわ」
「そうですか、お気遣いありがとうございます」
今にも消え入りそうな薄く浮かんだ笑顔だった。
「幸いSOS団には最適な人材が用意してあるの。そうね……時間あたり五千円でいいわ」
ついにデートクラブか人身売買まではじめやがったのかこの団長は。って待て、人材って誰のことだ。
「キョンに決まってるでしょ。なんでもいいからこのかわいいな女の子が満足するまで付き合ってあげなさい」
そんな、むちゃくちゃな……って喜緑さん、そのしっかりと捕まえているのは俺の腕ですか。
「お借りします。あの……後払いでもよろしいでしょうか」
「ええ、ボーナス二回払いでも分割払いでもいいわ。カードはVISAマスターアメックス対応よ。ただし、キズものにはしないでね」
レンタカー並みの扱いかよ俺は。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 20:26:14.42 ID:1.3B5DEo<> 
 お客様にはちょっと失礼して、未来人をドアの外に引っ張った。
「いったいどういうことなんですか」
俺が未来人に向かって顔をぐっと寄せ充血しそうな目で問い詰めると、未来人はオロオロと一気に喋り始めた。
「キョンくんがいつまでたっても彼女ができないので、上司から女の子を紹介しろと命令されちゃいまして……あ、これ禁則事項でした。
 未来では人類が絶滅の危機に瀕していて、キョンくんが存亡の鍵を握っていて、つまりキョンくんの子供だけが生き残るっていう、あ、ごめんね、これも禁則事項なの」
あの、ぜんぜん禁則事項になってないですが。
「ごめんなさい、わたしにはこれ以上言えないの。誰でもいい、ただ女の子と付き合ってほしかっただけなの」
えらく投げやりな未来人の政策ですね。まあ喜んでいいのか俺の顔は緩みっぱなしでニヤニヤが止まらない始末であります。
「いつまでたってもって、俺まだ十六歳なんでまだまだこれからだと思うんですが」
「未来では平均寿命が十五歳なの」
って俺すでに死んでんじゃん!!そんな早死にしちゃ年金もらえないじゃないですか。

 そのようなわけで平の団員からホスト並みの待遇に降格された挙句、この清楚なレディと駅前で待ち合わせている俺である。
「どうも喜緑さん、待ちましたか」
「いえ、今来たところですわ」
その手の中でクシャクシャになったマクドナルドの紙コップ、三十分は経っているとお見受けしますが。
「キョンくん、あの、よろしかったら本名で呼んでいただけます?」
「喜緑さんが本名じゃなかったんですか」
「国ではエミリンって呼ばれてます」
「か、かわいい名前ですね。エミリンさん」
「エミリン・キミドリンって言うんです」
ホンジュラスではそういう変わったかわいい名前が多いんですか。なんだか栄養ドリンクに1000ミリグラムくらい配合されてそうな名前ですね。

 待ち合わせたはいいが、この後どうするか考えていなかった。団長のやつ、デートコースの設定くらいしといてくれりゃよかったのに。金さえもらえばいいのかよ。こういう場合は水族館にでも行って食事して、また今度ねーみたいな流れになるんだろうか。
「あの、キョンくん、よろしかったらそこの喫茶店に入りませんか」
「そうですね。ちょうどノドも乾いていたところですし、行きましょう」
俺は財布の中身を確かめた。経費は団長にしっかり請求してやるからな。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 20:26:28.36 ID:1.3B5DEo<> 
 夢を見そうな名前のこじゃれた喫茶店に入ると、コーヒー豆を煎るいい香りが漂っていた。自家焙煎ってやつだな。
「あれっ!?喜緑さん?」
後ろを振り返ると彼女はいなかった。どっか溝にでもハマってんじゃないかと慌てて自動ドアの外に出てみるがいない。
「キョンくん、お入りになって」
突然メイド姿の喜緑さんが現れ、店の中から手招きしている。ここってメイド喫茶だったんですか、ってなんでまたあなたがそんなかっこしてるんですか。デートだからってそこまで大サービスしてくれなくても。
「ふふっ。実はわたし、ここで働いてるんです」
「そうなんですか。そのお姿、実によくお似合いです」
俺のメイド萌えもビョーキの域にまで達しているが、この人のエプロン姿は実にキマっていて、これを着るためにこの世に生まれてきたんじゃないかとも思えるほどだ。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
「じゃ、じゃあカプチーノで」
「カプチーノおひとつですね、かしこまりました」
「いえ、二つください。二人で飲むほうがおいしいんです」
「まあ……」
丸いお盆を胸に、ポッと頬を染めてみせるミドリンだった。

 メイド服の美少女と静かにカプチーノを堪能したあと、地下鉄で水族館へと向かうことにした。
「キョンくん、乗車券をどうぞ」
素早いですね、ありがとうございます。いつもふんぞり返っている誰かとは違ってこの人は実に気が利くなぁ。
 電車が来てドアが開くと、喜緑さんは目も止まらぬ速さでササッと車内に入り込み、
「キョンくん、こっちです。席を確保しておきました」
なんという手際のよさ。座席のスペースを二人分しっかりとキープしている喜緑さんがいた。通勤時にもお願いしたいくらいです。にしてもそこ、シルバーシートですが。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 20:26:43.71 ID:1.3B5DEo<>
 水族館の入口には入場券を求める客で行列ができていた。三十分は待たされるだろうな。
「少し待たされそうですね。ってあれ?喜緑さん?」
見回してみるがいない。またもどこかへ消えたようだ。もしかしてここでもメイド服に着替えてるんだろうか。
「キョンくん、団体様入口へどうぞ」
スピーカーで名前を呼ばれて俺は目を見張った。窓口に従業員の制服を来た喜緑さんが座っている。
「喜緑さん、そんなところでなにやってんです」
「あの、実はわたしここで働いているんです」
だってさっき喫茶店で働いてませんでしたか。
「かけもちなんです……」
喜緑さんは恥ずかしそうに言った。見かけによらずバイタリティありますね。いいことだ。

 延々と並んでいる一般客を尻目に、俺はVIP扱いで先に入場を許された。いやぁ、持つべきは水族館に勤めている知り合いですね。
「わたしがご案内しますわ。中は暗いですから足元に注意してくださいね」
などと言いつつ俺の腕を取って、ぐっと自分の腕にからめている喜緑さんである。

「右手をご覧ください。この縞模様のお魚はシクラソーマ・カッテライといって、ホンジュラスではポピュラーな種類です」
なんとなく日本の淡水魚の生態系を脅かしているブルーギルに似てますね。
「実はホンジュラスではお魚が天から降ってくることがあるんです」
「え?魚が降ってくるんですか?」
「ええ。豪雨が二三時間くらい続いたあと、家の外に出てみると魚があちこちに散らばっていることがあります」
「漁師さんたちは大喜びでしょう」
「はい、この豪雨は魚祭りの雨と呼ばれて祝い事になっています」
奇妙なこともあるもんですね。ホンジュラスの七不思議のひとつでしょうか

 でっかいクエやらヒラアジやらが泳いでいる大きな水槽の前で、俺の腕が軽くなっていることに気が付いた。振り返ると喜緑さんがいない。あれれ、まさか迷子になっちまったのか。などと見回していると視界の端に奇妙な魚が映っているのに気が付いた。
「き、喜緑さんそんなところでなにやってんですか!!」
喜緑さんが水着を着て水槽の中で手を振っている。いくらここで働いてるからってそこまでサービスしなくても。
 喜緑さんはにっこり笑って、手に持った籠から小エビらしいものを取り出して餌付けをはじめた。その途端に周りを泳いでいた魚が群がり始め、エサが手から離れる間もなく争奪戦を繰り広げていた。
なんだかピラニアに襲われてるようで怖いんですが、って喜緑さん、あなたの後ろにサメが、でっかいサメが匂いをかいでますよ!!
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 20:26:59.47 ID:1.3B5DEo<>
 俺たちは水族館を後にして、近くの公園のベンチに座った。喜緑さんは濡れた髪を気にしていた。
「楽しんでいただけましたか」
「ええ、そりゃもう。客にも受けてましたよ」
そこで喜緑さんは少しだけ悲しげな表情になって、
「あの……わたしって、ヘン、ですよね」
もう日は暮れかかっていて、喜緑さんのうつむいた顔はオレンジ色の夕日に照らし出されていた。
「ヘン、とおっしゃいますと?」
「わたし、ウェイトレスとか窓口の女の子みたいに人になにかをしてあげるのが好きで、生まれついてのホストなんです。よく世話を焼きすぎて嫌われちゃうんです」
「ぜんぜんヘンじゃないですよ。むしろみんな喜緑さんを見習うべきです。自分より他人の幸せを願うなんて、そうそうできるものじゃありません」
「ありがとう……」
「他人もですけど、あなた自身にも幸せになってほしいです」
俺は別にかっこつけるつもりはなかったのだが、喜緑さんの目は少し潤んでいた。
「キョンくん……。あの、よかったら、今晩わたしの家に来ませんか」
ええっ、あのあのっ、俺たちまだ出会ったばかりでそんな急展開は心の準備が必要というか仮にも未成年で。
「晩御飯、作りますわ」
「そ、そうですか。あはははは。晩御飯ね」
妙に冷や汗をかいているバカな俺である。
「いいですよ。ただしひとつだけ、」
「なんでしょうか?」
「晩御飯は俺に作らせてください。なあに、人様に出しても恥ずかしくないレパートリーのひとつやふたつ、俺にだってあります」
ええと、カツ丼とか親子丼くらいしかなかったな。
「ええ、いいですわ。わたしは黙って待っていますから」
「じゃあ、行きましょうか、エミリン」

 そのまま二人で手を繋いで、スーパーに買い物に行くことにした。なんとなく、これが未来の俺たちなのかもしれないと妄想などを取り混ぜつつ、顔の緩みが止まらない俺である。

END<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/17(火) 21:17:38.17 ID:KEdmzdgo<>絵師さん ↑漫画のネタにどう?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/18(水) 02:44:09.29 ID:KboPO0Qo<>朝倉さんがミリオタとな!?
エミリは萌えるな
GJ

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/28(土) 03:12:19.27 ID:iWY5BkEo<>お前ら何か書き込んでくれよww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/28(土) 21:32:17.90 ID:RpaieJoo<>いやぁ 最近忙しくてww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/02(水) 18:46:43.88 ID:5GWEUTko<>
|´・ω・`)つttp://www2.imgup.org/iup638264.jpg

|彡サッ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/02(水) 19:01:47.47 ID:X9jS5T2o<>>>397
死なないで><<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/02(水) 19:07:53.31 ID:HYqTiEUo<>このスレもおわりなのか・・
もともと勢いのあるスレではなかったが・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/02(水) 20:49:56.00 ID:Af3cHYso<>>>397
俺がいるから泣くなああああ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/02(水) 21:53:18.10 ID:PpFpZYoo<>>>397
これはwwww

>>399
2期がくればきっとにぎわうはず!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 18:40:41.47 ID:ZWDw0YQo<>今日は七夕ではないか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 20:57:45.21 ID:ZWDw0YQo<>SSの断片貼りたくなってきた<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 21:08:08.34 ID:CkKsOYco<>(屮゚Д゚)屮カモォォォン<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 22:40:20.18 ID:ZWDw0YQo<>ごめんもう少し我慢するww なんか前作以来鬱憤が溜まってる<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 22:49:56.42 ID:22NUFcUo<>ゆっくりかいていってね!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 23:22:27.56 ID:ZWDw0YQo<>>>397
ごめん もう一度貼ってもらえない?まとめに貼ろうとしたらキャッシュ消えてた<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 23:34:41.64 ID:6kjOY9Uo<>・・・場つなぎ程度に

つttp://upp.dip.jp/01/img/8164.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/07(月) 23:36:09.20 ID:ZWDw0YQo<>>>408
アカン まじ泣けてきたww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/08(火) 00:33:05.74 ID:AnO8zjso<>>>408
              |::l::::::::',::|:::::::::_!ム_∠__/;/  !:::: /  l:::/ !: /i::::: /!::::  |
  ┏┓┏━━┓   !:i!:::::r‐t:::::::::: |/_ //`ヽ /:/ _,,ム'-‐lメ‐|:::: /: |:::::  !     ┏━┓
┏┛┗┫┏┓┃   ヽ', !/`!::::::::: !,r=〒〒ミ==ヽ/'   ,,r'===ヾ-、!::/l::: ハ:::: !    ┃  ┃
┗┓┏┫┗┛┃┏━ヽ ヽ(_!::::::::. |《 i、ヒ''ィノ    ゝ-‐-《 !;;.q,ノ ´/レ:: |:: i .l:::::/━━┓┃  ┃
┏┛┗┫┏┓┃┃    ヽ{ トヘ::::::. | \  ̄   ノ   ヘ_. ̄  /:ノ::: /!:::l !::/    ┃┃  ┃
┗┓┏┻┛┃┃┗━━━`ヽト、::: l   ̄ ̄ ̄  `;    ̄ 7:::::: / .i:/ l/━━━┛┗━┛
  ┃┃    ┃┃         .ハヽ:::l\      r_ァ    /!::::: / /         ┏━┓
  ┗┛    ┗┛        /ハ:ト、! ` 、       _, < |イ::::: /               ┗━┛
                     /.:::::rノ. \  ` ‐r-‐<    'l::: /



>>407
つttp://www.imgup.org/iup641827.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/08(火) 04:28:10.20 ID:8/KRDbko<>>>410
トン っ ttp://www33.atwiki.jp/nagatoasakura/pages/106.html<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/08(火) 22:50:25.26 ID:2uc7rdEo<>>>408
タバサは異時間同位体ですね、わかります
元気をだして<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/10(木) 02:40:57.27 ID:Ey.iVsYo<>gdgd感満載で描き終えた

つttp://upp.dip.jp/01/img/8220.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/10(木) 10:36:37.27 ID:npnXyu6o<>うむ夏らしいではないかGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/10(木) 11:24:51.35 ID:7OGlp/6o<>>>413
    _,,,,._                、-r    r--,      、-r
   ,.','" ̄',〈... _,,,_   _,,,_   _,,,,,| |     ~`l |  _,,,_   | |,,,,,_
  { {   ,___ ,'r⌒!゙! ,'r⌒!゙! ,.'r⌒| l      .| | ,'r⌒!゙! ..| |⌒','i
  ゝヽ、 ~]| ,i i  i l i l  i i .i i  .i .i      .| | i i  i l  .| i  .i |
   `ー-‐'"  ゞ_,.'ノ ゞ_,.'ノ ゞ__,.',、'ュ    ..l l  ゞ_,.'ノ.. .L、-_,'ノ
                        (~'-'ノ
                         `~~<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/11(金) 02:01:47.94 ID:sgJRhTUo<>昨日は一日すばらしい日だったかいみんな!

日付変わったけど勘弁してつかーさい
つttp://upp.dip.jp/01/img/8246.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/11(金) 15:37:17.67 ID:BtaQQtAo<>>>416
GJ 3こま目で納豆を食ってる長門を期待した俺は間違ってますかww

http://ja.wikipedia.org/wiki/7%E6%9C%8810%E6%97%A5

なるほど。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/11(金) 21:18:50.42 ID:buU9rg6o<>>>416
長門が恥らういいものを見せてもらったぞwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/16(水) 01:33:33.04 ID:y/EddyEo<>PC買い換えた
vistaもいうほど悪くないね

つttp://upp.dip.jp/01/img/8383.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/16(水) 17:04:45.65 ID:AZ7NNLco<>長門有希vista仕様乙
俺はXP2が死ぬまでこれでいくぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/16(水) 19:23:17.41 ID:giuqc6Ao<>>>419
GJ 新PCおめー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/24(木) 23:00:54.92 ID:leNRCHso<>夏ですねー

ブラを装着し忘れた
つttp://upp.dip.jp/01/img/8680.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/25(金) 00:27:07.55 ID:muNBFFYo<>スカートのひらっとした感じがいいぜGJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/25(金) 02:00:44.83 ID:lHufrAso<>>>422
ふぁいとぉ〜ゆ☆き☆り☆ん

ないのはボンボンかと思ったww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/28(月) 17:22:14.04 ID:YjemN0Mo<>あさくらさんまんが萌えた
ttp://www117.sakura.ne.jp/~nyano/

(リンクが分かりづらいので ttp://www117.sakura.ne.jp/~nyano/asa_man-01.1.htm )<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/05(火) 21:22:37.58 ID:RBN7fHYo<>hosyu<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/05(火) 21:38:53.15 ID:a1R90HEo<>相変わらず静かですね……。私もなかなか来れなかったのもありますが

最近暑くて寝苦しくて。涼しい部屋でゴロゴロ昼寝したい
ttp://scribbledata.hp.infoseek.co.jp/tfeiharuhi/image/sleep2.jpg

しかし、ここを盛り上げる方法……なにかありますかねー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/06(水) 00:10:36.46 ID:02vRj2wo<>>>427
あー・・・この中にうもれたい・・・
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/06(水) 06:07:36.26 ID:JwBKZM2o<>盛り上げるのは難しいかもしれんが
二期さえ始まれば・・・
九曜かわいいぞ、早く動くのが見たいぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/07(木) 00:38:04.15 ID:DYAXjOco<>>>427
GJだぜ
お気に入りのTFEI系同人サイトを教えてくれたらうれしい 名前だけで<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/07(木) 14:23:14.60 ID:H38LSlQo<>CG定点観測だっけか、それでなんとかならんかい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/07(木) 22:33:39.85 ID:56S7CrEo<>それぞれの好みもあるし、自分で見付けるのが一番さ
もう直ぐコミケだから、色々見て回るのも楽しいねー
まぁ行けるなら、になってしまうけどね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/08(金) 18:51:52.75 ID:uNFYI8ko<>そいやもうそんな時期だなぁ 行けないけど<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/11(月) 03:56:55.27 ID:xgw3Hlc0<>もうコミケ一週間前か<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/25(月) 05:19:51.25 ID:LWk1Uhco<>コミケみんなどうだったんだろう<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 22:03:42.41 ID:CGiiSQco<>今更だが、コミケのハルヒジャンル結構あったよ。まぁ女性向けが大半だが
原作止まってるからどうかと思ってたが。この調子なら、冬も期待出来るかな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/01(月) 20:30:35.22 ID:j.QtYR.o<>お前ら最近だらしねぇぞwwww夏休みか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/06(土) 19:14:15.73 ID:8w56isAo<>>>437
うー うーうー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/06(土) 20:30:05.41 ID:fjvuQA.o<>ハルヒちゃんが出たら何かアクションがあるだろうか・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/10(水) 22:41:58.31 ID:Y3quXDoo<>ネタかと思ったらまじなのあれ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/10(水) 23:14:52.45 ID:h9bVxdko<>ようつべで放送するとかなんとか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/16(火) 23:12:20.42 ID:mb2GYgAo<>過去スレ読んで笑ってる場合じゃなかったorz<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/20(土) 02:05:08.47 ID:vpn0SbMo<>もうすぐ長門有希の憂鬱Wが書きあがるんだが 1箇所だけ宣伝して人呼んでもいいかと思うんだがどうだろうね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/20(土) 13:52:36.82 ID:z0/V6rwo<>今あんまもりあがらんからなあ
二期までとっておいて満を持して投下ってのもいいかもしれんよ
見たいけど<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/20(土) 15:09:03.64 ID:vpn0SbMo<>ネタがちょうど今頃だからなぁ 今を逃したら11月18日に合わせるとか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/20(土) 21:34:49.56 ID:vpn0SbMo<>神絵師がイラストを描いてくださることになった ありがたや<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/27(土) 19:41:55.41 ID:r2odXSUo<>明日から投下しようと思うよ ここは落ちることはないんで見に来た人が読んでいってくれればおk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/28(日) 00:54:05.77 ID:JW9.iPEo<>これは久しぶりのwwktk

専ブラだから毎日チェックしてるけど話すネタないからROMってのが現状だからなあ
秋はクラナドafterだから二期は来春以降かな<>
◆nomad3yzec<>sage<>2008/09/28(日) 20:07:14.41 ID:8DvV1V.o<>長門有希の憂鬱W

共著:kisekig7LI nomad3yzec
連載期間:2008年9月28日〜10月4日

涼宮ハルヒの経営U(執筆中)→古泉一樹の誤算→涼宮ハルヒの経営V(執筆中)の後の話です
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:07:47.63 ID:8DvV1V.o<>
 「お前のために世界を失うことがあっても、世界のためにお前を失いたくない」 ジョージ バイロン


プロローグ

 ハルヒと古泉、そして俺の三人は北口駅の南側にあるバスターミナルでじっと並んで待っていた。ハルヒはガラにもなくフリルのついた白い日傘なんぞ差しおって、後姿だけ見たらなんとなくいいところのお嬢さんみたいじゃないか。着てる服までがお嬢様のそれっぽくなったのは、古泉と付き合いだしてからなのは気のせいではあるまい。

 傘の柄を肩に当ててチラリと後ろを振り返ってシナを作ってみせるのは誰かに見せ付けてんのか。ホワイトフォーカスでもかかってるようなお嬢様はニコっと笑うどころか前歯をむき出しにして俺に言った。
「なによジロジロ見て。なんか文句あんの?」
「いや別になにも。その日傘、高かったろう」
値段なんか知ったこっちゃないんだが、ハルヒが少し淑女らしくなったなぁなんてセリフを口にした日にゃ炎天下で頭がどうかしちまったんじゃないかと疑われそうだからな。
「古泉くんがプレゼントしてくれたのよ」
通りで。最近のハルヒのファッションセンスがこれなのは古泉の趣味か、こいつも変わってんな。
「お似合いですよ、涼宮さん」
古泉の口調をまねして言ってやったらハルヒに足を踏まれた。古泉は苦笑していた。

 いやまあ、それはどうでもいいんですがという感じて古泉が何度も腕時計を確かめている。
「有希さん遅いですね」
「もしかしたら途中で事故にあったんじゃないかしら」
「そんなこたぁないだろ」
「だってほら、こないだ交差点で曲がり損ねて、直進してきたダンプと衝突とかあったじゃない」
「大丈夫だろ。あいつが事故なんか起こすわけない」
「なに言ってんの、最近じゃ無関係に事故に巻き込まれることが多いんだから」
長門に限ってそんなことはないと思うが、ハルヒがあんまり心配するので俺はロータリーの先に伸びる道路のはるか向こうを眺めた。

俺はくるりと振り向いて、
「大丈夫だ。あいつに限ってそんな目に遭うはずがない」
「なんで一緒に行かなかったのよ」
「しょうがないだろ、あいつの希望なんだから」
「いくら本人の希望でも初運転をひとりで乗せるなんて考えられないわよ」
「そんなこと言ったってなあ、いやそれも……そうかな」少し不安になってきた。
「はじめて道路に出るときは誰だってナーバスになるものよ。あんたにだって覚えがあるでしょ」
まあ、そういうこともあったかもしれんが、あんときは頭の中が真っ白になっちまってどこをどう走ったのかほとんど覚えてない。

 ハルヒはため息をついた。
「まったく、しっかりしなさいよね。かりそめにもひとりの女の子の旦那様なんだからね」
「お前に言われなくても分かってるさ」
分かってるんだが、なんというかこう、いまいち実感がないというか。いつもの俺の悪い癖だが、身の回りで起こってることに現実味がないっていうか、ありとあらゆる事象がいつでも他人事のようで頭以外の五感でそれを認識できないというか。一歩か二歩下がって客観的に見てるんだといえば聞こえはいいかもしれないが、ゲームのキャラクタを後方四十五度の俯瞰から見てるプレイヤーの位置にいるというか。

 ハルヒはまた深いため息をついた。これで三度目だ。
「あんたを見てると先が思いやられるわね」
「お前にそう言われるとプレッシャーで気が重くなる」
「だってほんとのことでしょ。まったく、こんな男のどこがよかったのかしらね……」
「まあまあ涼宮さん、二人のことは二人に任せましょう。案外そのへんがうまくバランス取れているのかもしれませんよ」
「そうね。昔の人はいいこと言ったわ、割れ鍋に閉じ蓋ってね」
ハルヒ、お前はなにげにきついことを言う。当たってるだけに言い返せないのが悔しい。

 まだ夏の名残をいっぱいに含んだ太陽の光がさんさんと降り注ぐ九月の、とある週末だった。車の免許を取ったばかりの長門に、買ったばかりの車を取りにたったひとりで行かせたのだ。予約していたディーラーの店頭まで俺が乗せていってやると何度も言ったのだが、どうしても鍵は自分で受け取ると言い張ったので、俺はただ帰ってくるのを待つことにした。あいつに限って事故ったりなんかするはずがないし、そういう場面に遭遇してもこいつなら自力でなんとか回避するはずだ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:08:33.46 ID:8DvV1V.o<>そういえば前に一度だけハンドルを握る長門の助手席に乗ったことがあったっけな。力学的にやたら正確な運転だった覚えがあるんだが、いつだったかは忘れちまった。

 県道から駅前に入る交差点から、黄色い、小さくて丸っこい車が静かなエンジン音を響かせてやってきた。ボンネットに貼られた若葉マークがひときわ眩しく見える。なかなか前に進まないように見えるのは制限速度ぴったりで走っているからに違いない。って長門、後ろが五台くらいつかえてるぞ。
「ニュービートルLZにしたんですね、二リッターですか」
車を見ただけで車種と排気量が分かるらしい古泉が言った。
「かわいいじゃないの。キョンが選んだの?」
「ああそうさ」
「ふーん。あんたにしちゃいいセンスだわ」
車の種類なんて軽と普通車の違いしか見分けることができない俺なのだが、いつも路上で出会うVとWのロゴが入ったこの丸っこい車を見るたびに、なぜか長門が運転しているところを妄想してしまうのだった。意表をついてJEEPとかRVでもよかったんだが、まあ最初の一台だしマンションの駐車場もそんなに広いとはいえないし、好きな虫の名前がついた車というのが選択の理由だったかもしれない。考えてみりゃ安易だな。

 チカチカとウィンカーを点滅させ、丁寧に左に寄せて車がスゥと止まった。助手席のパワーウィンドウがジーと音を立てて開き長門が顔を見せた。
「……お待たせした」
「おう、どうだ乗り心地は」
「……快適」
そいつはよかった。内装もシンプルでゴテゴテしたアクセサリもない。スピードメーターも丸っこいのがひとつ、エアコンの送風口もラジオのつまみもすべてが丸っこくて自己主張しない控えめなデザインだ。その割にはなぜかハンドルの脇に一輪挿しなんかがあるんだが。

「いい車じゃないの有希。あんたに似合ってるわ」
「オートマでも六速まで実装してるんですね。いい車です」
「……そう」
「さあっ、これからみんなでドライブよ。二人ともさっさと乗んなさい」
ハルヒが助手席の背もたれを倒して後ろに乗れと促した。
「お前は後ろだろ」
「だめよ、初運転は上司であるあたしがしっかりと見守るんだから」
「こういうときは旦那が横に座るもんだろう」
「ちゃんと道案内できる人じゃないとだめよ」
「俺にだって道くらい分かるさ」
っていうかハルヒ、お前は見晴らしのいい助手席に座りたいだけだろうが。俺もだが。

「……早く乗って。四十五秒後にバスが到着する」
「ご、ごめん」
ひとつしかないシートを取り合いして親に怒られた姉と弟を演じているような気分になり、二人はぽっと顔を赤くした。しょうがないのでジャンケンで決めることにし、俺が勝つとハルヒはブーブー言いつつ後ろのシートに座った。頭に血が上るとハルヒは決まってグーを出すのだが、気が付いてないらしい。
「……左右後方確認。発進」
長門はゆっくりとアクセルを踏み、キビキビとミラーを確認しながら駅前ロータリーから車を出した。なんだか懐かしいなそのフレーズ。

 長門の運転はテストドライバーも顔負けの正確さで、どっちかというと機械的というかロジック的というか。もしかしたら長門独自の能力で、遠くの信号が変わるタイミングをあらかじめ把握してるような、予定ルートの混雑状況を検知しているような、あるいは車から周囲百メートルくらいの情報を収集しながら走っているような気さえする。

 標識が制限速度四十キロでも見通しがよければもう少しスピードを出しても大丈夫だし、交差点の手前で信号が青から黄色になっても少しくらいは余裕があるんだが、ピタリと止まるのはまあこれが長門のスタイルだ。年中フルスロットルなハルヒも、ふつうに丁寧な運転をする古泉もなにか言いたそうにしていたが、俺が黙っているのでなにも言わなかった。

 後ろからハルヒの手が伸びてきた。
「ちょっとキョン、これかけて」
「なんだこの無印CDは」
「あたしがわざわざ選曲したのよ、感謝しなさい」
殊勝なことにドライブ用のBGMまで用意してきたらしい。気が利くというか、曲によっちゃメロディが気になって運転の邪魔になったりリラックスさせすぎて眠くなったりするんだが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:08:56.14 ID:8DvV1V.o<>「ええと、これどうやって再生すりゃいいんだ」
「もー、機械に弱いんだからあんたは」
お前に言われたかねーのだが、CDの挿入口が分からない。
「カーステレオに押し込めばいいだけでしょ」
「どこに押し込めばいいんだ?」
「だから助手席に座らせなさいって言ったのよ。んーっと、これHDカーナビだっけ?CDはチェンジャーなの?」
ハルヒがシートの間から身を乗り出してあれこれリモコンをいじっているがうんともすんとも言わない。最近のカーナビは高機能すぎてどうやってスイッチを入れるのかすら分からん。っていうかテレビのリモコン以上のもんは俺には無理だ。前方に全神経を集中させてる長門に聞くのもすまないんだが、
「長門、これどうやってやるんだ?」
「……前面のオープンを押すとパネルが開く。パネルにメニューが出る」
「全部パネルからやるのか、なるほど」
カーナビの液晶パネルが出てきたな。ぽち。

 じゃあ、話を始めようか。

<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:09:16.98 ID:8DvV1V.o<>
一 章

 我が社の社員旅行、じゃなくてSOS団夏の強化合宿から帰ってきてからやっと仕事のペースが戻った八月。ゲームと業務支援ソフトの開発とメンテで寝る間もない開発部の連中に気を使ってのことか、俺たち取締役も夏休み返上で出社していた。お盆はどこも営業してないんだからせめて三日くらいは休みをくれと上訴してみたのだが、「社員旅行楽しかったわよねぇ」ニヤリ笑いをしながらのたまう社長にむなしく却下された。
俺は合宿でCEOの権利を得たはずなのだが、ハルヒの言う次期ってのが四半期のことを言っているのか営業年度を言っているのか分からず、結局はまだまだ先の話だ。

 そういやこの会社に入ってまともな休みはなかった気がするが、それはハルヒが土日にやる突発的イベントのためで、そのほとんどは市内不思議探索パトロールなのだが、疲れ果てた体に鞭打ってまで駅前広場に集合させられるのは確実に俺の寿命を縮めてる気がする。なんでそんなに必死になって不思議を探しているのか、俺たちもう若くはないんだしスタッフの福祉も考えてくれよ。いや、まだ二十四歳の盛りだが。

 俺は定時になると長門と退社し、途中でスーパーに寄って買い物などをしつつ長門の部屋でメシを食って帰るという習慣めいたものが定着していた。長門のレパートリーはかなり増えたが、たまに俺の手料理もお粗末ながら披露したりもしている。

 食器を片付けて長門は本を開き、俺は静かにお茶をすすっているともう十一時を過ぎていて、いつものように時計を見ながら腰を上げた。
「そろそろ帰るわ。ごちそうさん、うまかった」
「……そう」
暖かく電球が灯る玄関で靴を履いていると長門が俺の携帯を持ってきてくれていた。分かってはいても、いつも忘れる。

 俺は少しだけ長門の肩を抱いて髪の匂いをかいだ。サラサラした感触が鼻の先をかすめた。
「……泊まって。……」
長門がぼそりと言った。もっとなにか言いたげな、でも躊躇しているような、そんな表情だった。今日は泊まってと言った。いつもは泊まる?とか、ここで休む?なのだが、今日だけはなぜか違う。今日はなにか特別なことがあったろうか。
「いや、今日は帰るよ。また今度な」
「……」
そのときの長門の表情は、はるか昔のなにかを思い出させた。朝比奈さんと七夕の日にここへ押しかけてきたその帰り、高校一年の五月にここへ呼ばれてハルヒと情報統合思念体のことを教えられたその帰り、それから文芸部の入部届を白紙で突き返したとき。

 実に、寂しそうだった。

「な、なあ。よかったらそこまで送ってくれないか」
「……分かった」
 俺は確かに長門の部屋に泊まったことがない。夜中の十二時をまわっても、長門の部屋で二人きりで一夜を明かしたことはない。付き合ってそろそろ六年になるが、それくらい共有した時間のあるカップルなら互いの家に泊まったりはふつうよくあることだろう。エレベータの中でそれがなぜか考えたのだが言葉にならない。前にも似たようなシチュエーションはあった気がするのだが、いつだったか思い出せないでいる。

 公園が見えてきたので俺は街灯の下の、いつものベンチに向かった。
「ちょっと、座らないか」
「……」
「あのさ長門。泊まりたいのはやまやまなんだが、」
本当は泊まりたいと言いたいのではなく泊まれない言い訳をしようとしていたのだが、長門はそれを遮った。
「……あなたがわたしの部屋に泊まらない理由は、知っている」
「そうなのか。そういう話をしたことあったかな」
「……あなたは覚えていない」
ああ、俺の記憶にはない俺たちの歴史があるんだな。

「そのとき俺はなんて言ってたんだ?」
「……母親にもらった装飾品の話をしていた」
「装飾品?ネックレスとか?」
「……例え話」
よく分からんが、以前にも同じ話題があったらしい。
「なあ、最近エラーはよくあるのか」
「……ここ数年安定している。でも許容範囲を超えてピークに達することもある」
「ピークってどんなときにだ?」
「……あなたの背中を見ているとき」
帰ろうとする俺を玄関で見送るとき、光陽園駅で別れるときのことだ。俺が帰った後の長門はどんなことを考えてなにをしているんだろう。独りぽつねんと食器を洗い、部屋をかたづけているのだろうか。青白い蛍光灯の下で茶をすすり、ごそごそと冷たい寝室に入る。眠るときはいつも猫を呼んで抱いて寝ているのを俺は知っている。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:10:19.63 ID:8DvV1V.o<> こいつは寂しいという言葉を使ったことがない。そのエラーはたぶん、そういう感情から生まれているんだと思う。俺は長門の肩を抱き寄せて手を握った。
「なあ、せっかく携帯があるんだからもっと会話に使おうぜ。同じ電話会社だからタダなんだし」
「……」
「別に用事がなくてもいい、声を聞きたいだけでもいいんだ」
「……分かった」
長門はポケットから携帯を取り出した。こいつとのメールのやりとりも待ち合わせやら仕事上の連絡事項がほとんどだ。もっとバカ話をしてもいいし、意味不明な宇宙論をしてくれてもいい。喧嘩はしたくないが、そういうのもあって悪いもんじゃない。離れていても会話を重ねていけば近くにいるような気になれるというか、物理的な距離をそうやって精神的な距離で縮めていく、というか。
「……もしもし、長門有希」
「もしもし。俺だ」
「……」
目の前にいる相手になにを話せばいいの、と、首をかしげて俺を見ている。

「じゃあ、俺そろそろ行くわ。また明日お前の顔を見たい」
「……分かった。おやすみ」
「待て待て、まだ切るな。こうやって話しながら少しずつ離れていけば、」
俺は街灯の光で柔らかく影を作っている長門の顔を見ながらあとずさった。
「まだそこにいるような気分になるだろ」
「……」
長門には分からないか、この名残という感覚。
「……体温が残っているのは分かる」
「ま、まあそれに近いもんだ」
俺は夜道を歩きながら、どうでもいいような話を続けた。バカップルがよく「今コンビニの前歩いてる〜」とか「階段あがる〜」などとやっているのを見かけるが、まさか自分が同じまねをするとは思ってもいなかった。

「俺が帰った後はなにしてんだ?」
「……食器を片付けている」
「ほかには?」
「……ミミのエサを補充」
「それから?」
「……布団を敷いて寝る」
やっぱりそれだけか。
「じゃあ寝る前に電話をくれ。少し話をしてから二人で眠ろう」
「……分かった」
俺が飽きたり忘れたりしなければ続けられるはず。
「……着信が入った」
「電話か、じゃあ終わったらかけなおしてくれるか」
こんな夜中に電話なんて誰だろう。大学院の知り合いか、いやいやハルヒ以外には考えられない。

 五分くらいして長門からかかってきた。
「おう、済んだか」
「……終わった」
「当ててやろうか、今のハルヒだろ」
「……そう」
「こんな夜中に何だって?」
「……とりとめもない、女同士の与太話」
長門が女同士の与太話って言ったか今。
「それ、ハルヒにそう言えって言われたのか」
「……そう」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:11:00.66 ID:8DvV1V.o<>「で、なんの話だったんだ?」
「……それは、内緒」
なんだか陰謀くさいものを感じるのは気のせいか。
「じゃあ、ハルヒには内緒でその内緒話を教えてくれ」
「……それは、契約に違反する」
哀しいことに最近の長門は簡単には騙されてくれない。
「すごく気になるんだよなあ。眠れなくなる」
「……あなたのこと」
「俺の噂してたのか」まあ女同士ってのはそういうもんだろう。
「……あなたをわたしの部屋に引き止められたかどうか」
な、なに。今日のあのなんともいえない寂しそうな表情はもしかしてハルヒの仕込みだったのか。
「……涼宮ハルヒとはたまにそういう話をする。あなたには言えないような、話」
「で、なんて答えたんだ」
「……玉砕した、と」
こりゃハルヒに一度、俺と長門の恋愛について釘をさしておく必要があるな。俺たちはふつうの男と女がやるような付き合い方はしないんだと言って聞かせないといかん。また長門にヘンなことを吹き込まれてはかなわんからな。

 しかし俺のことがハルヒに筒抜けだったとは、弱みを握られてるも同然じゃないか。まあ長門もほかに相談する相手もいないだろうし、しょうがないといえばしょうがないことなんだが。
「いいか、あんまりハルヒの言うことを真に受けるなよ。あいつは俺たちをラブロマンス映画のキャストかなんかだと思ってんだからな」
「……それはそれで、楽しい」
いかん、完全に毒されてるな。
「それで、ほかにはなんて?」
「……涼宮ハルヒと古泉一樹の状況について」
キター!!ハルヒと古泉の生々しいスキャンダル。あいつらあれからどうなってるのか俺も知りたかったのだが、古泉が貝のように口を閉ざしてひと言も言わないんで気になっていたところだ。
「それは面白そうだ。俺にもぜひ聞かせてくれ」
「……だめ」
「教えてくれよ。きっと赤裸々な話が展開されているに違いない。あいつらいきなりやっ、ゲフンゲブンしちまうくらいだからな」
「……泊まったら、話す」
むぅ、巧妙な根回しに出やがったな。俺がうーむと唸っていると、
「……今のは、冗談」
長門、お前の冗談はいつもきわどいんだから、せめて予告くらいしてくれよ。

 それからなんとかハルヒと古泉の私生活を聞き出そうとしたのだが、頑として教えてくれなかった。ということは俺たちのこともそれなりに秘密は守られているってことだよな。秘密ってのがあるのかどうか分からんが。
「家に着いた」
「……おつかれ」
「シャミが足にまとわりついてる。運動不足で丸々太った」
「……そう。耳の後ろをなでて」
俺は歳をとってそろそろ毛並みのツヤがなくなってきたシャミセンの、耳の後ろをかいてやった。
「おいシャミ、この電話の向こうにいるのは長門だ、分かるか」
猫相手になにやってんだろうね俺、と恥じ入っているとスピーカーから猫の鳴き声がしてきた。それって江戸屋猫八バリの声帯模写ですか。しかもサカってる猫の声だし。
「風呂に入るから、一旦切るわ」
「……分かった」

 にしてもハルヒのやつ、味なまねをする。俺がこういう恋愛に慣れていなくて、たぶん長門も戸惑うことが多くて、誰に相談するともいかないようなボタンの掛け違いを、見かねたハルヒが間に入って俺たちを和ませているのだ。

 俺と長門の付き合い方についてあいつが正面から意見することはない。俺が反発するのが分かっているからな。長門を焚きつけて妙な行動をとらせることはたまにあるが、あれがハルヒ流の恋愛なのだ。ジョンスミスをみすみす逃してしまい(シャレじゃないぞ)、十年も探した挙句がすぐそばにいたという灯台下暗し的運命の出会いが、ハルヒをそうさせているのかもしれない。あいつの奇矯ぶりは恋愛観にまで達してしまっている。中学生の頃は男をとっかえひっかえだったらしいしな。まあその要因を作ったのは俺なのだが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:11:25.43 ID:8DvV1V.o<> 俺が中学生のハルヒの恋愛観を作り、ひたすらジョンスミスだけを待ちつづける人生を過ごさせてしまったのだが、当の本人である俺が長門と付き合うきっかけを作ったのは、何の因果であろうハルヒ自身なのだ。

 ぬるい湯船に浸かってまったりとそんなことを考えていると深夜零時を過ぎていた。俺は慌てて長門に電話をかけた。
「……ジュル。もしもし、こちら情報統合思念体主流派」
長門、寝ぼけてるんだよな。

 みんな寝静まった頃、足音を忍ばせてキッチンに入ると冷蔵庫に俺宛の手紙が貼り付けてあった。往復ハガキだった。高校のときのクラス会をやるので出席と欠席のどっちかに丸をつけて返信を出せということだった。
「同窓会って、今頃やんのか?」
まあ世間的には夏休みで、みんな働いていて忙しい身の上なら時間を作って会うには今時分が適当か。中央やらよその地方やらに出ていったやつも帰ってくることだし。

 差出人を見ると阪中になっていた。あいつももういい歳だよなあ。って俺もだろ、などと独り突っ込み的感慨にふけっているとおかしなことに気がついた。阪中が俺にハガキをよこすはずがない。俺が改変した歴史だと五組にいたのは古泉で、俺は隣の六組にいたはずなのだ。もしかして学年合同でやるのかと裏書を読み返してみたが、ちゃんとクラス会と書いてあり頭の周りでクエスチョンマークが渦巻いた。

 不思議に思って古泉の携帯にかけた。
「古泉、遅くにスマン。今いいか」
「少々お待ちを」
数秒して「どうぞ」と返ってきたのだが、後ろでハルヒの甘えた声らしきものが聞こえていたのは気のせいってことにしとこう。
「阪中から俺宛に同窓会の案内状が来てたんだが、」
「ええ、高校のときのクラス会ですね。僕のところにも来てますよ」
「改変した歴史の俺って一年六組の生徒だったよな。なんで俺に来てるんだろう」
「はて、なぜでしょう。あの後、朝比奈さんの組織がフォローにまわったと言ってましたよね」
ちょっと困ったことになった。つまり俺の改変した歴史と、改変前の俺自身の記憶と、それから朝比奈さん達がフォローした歴史が存在することになる。いったいどれが正しい歴史なのか、ちょっとどころか俺とクラスメイトの記憶が一致しなくて会話が成立しない事態になりかねん。
「僕も自分の歴史がどうなっているか気になるので、機関のデータベースを調べてから折り返しお電話します」
「すまんが頼む」
つまり当事者の俺も三パターンの歴史を覚えてないといけないってことだな。ややこしくて頭痛に襲われそうだ。あのとき朝比奈さんが怒髪天を突く勢いで怒った理由が今さらながらに身に染みて分かった。

 五分後、携帯が鳴った。
「どうも古泉です。お待たせしました」
「どうだった」
「あなたの周辺はかなりカオスな状態になっていますね」
「カオスって具体的にどうなってるんだ」
「改変前は涼宮さんの周辺で起こった出来事のうち、大部分はあなた自身がトリガになっていまして、それを修復するために朝比奈さんたちが無理やりあなたを動かしているようです」
「お前が肩代わりできなかったのか」
「もちろん僕自身も駆り出されているようです。ですが、フォローするにもやはり限界があったのでしょう。たとえば涼宮さんと口論するイベントなどは、僕というキャラクタには無理ですからね」
ハルヒを怒らせる役回りは俺にしかできないってことか、なんだかこの問題はこの先もずっとついてまわりそうな悪い予感がするぞ。

「日誌には修復の痕跡が見え隠れしていまして、かなり苦労したようです。ある部分はどうしようもなくてツギハギ状態のようなありさまで」
「つまり俺の周りだけ歴史が茹ですぎたスパゲティ状態なのか」
「簡単に言えばそういうことです」
電話の向こうで古泉のニヤニヤが見えるようだ。
「それは今後朝比奈さんと相談しつつなんとかしよう。話は戻るが、俺は長門と同じ六組のはずだよな」
「記録によると、四人とも二年になってから五組になっていますね。涼宮さんとあなたが別のクラスだと発生しないイベントがあったのでしょうか」
イベントイベントってギャルゲのフラグっぽいんだが、全員が同じ部屋に押し込められたのか。なんだかもう、未来人もデタラメだなあ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:11:48.43 ID:8DvV1V.o<>「俺に関する当時の資料をもらえないか。自分の記憶と一致させねばならん」
「あいにくとすべて機密扱いなので簡単には持ち出せないのですが」
「お前の力でなんとかならないか。歴史改変の事情は幹部も知ってるだろう」
「なんとか取り計らってみましょう。改変のおかげで機関内での僕の地位も上がってますし」
「昇進したのか」
「戻ってきたらシニアチーフになっていました」
チーフにシニアがついたのがどれくらいの待遇向上なのかは分からんが、きっとボーナスがいいんだろうね。
「それはいいとして、あの頃に収集された情報は相当な量になりますが」
「できれば概要だけ頼みたいんだが」
つまり俺が改変した歴史がどうなったかかいつまんで教えろ、と俺は言っているのだ。自分で言っててなんて勝手なやつだとは思うのだが。
「かしこまりました。明日の朝一までにそろえておきます」
いつもながら、古泉のこういう手配力には頭が下がる。また借りができたな。
「すまんな」
「いえいえ、これくらいお安い御用です」

 次の日、職場で受け取った書類の量はまじにハンパではなかった。古泉は三百ページはありそうなA4用紙の束をドンと机の上に置いた。
「十一年前の七月七日から、あなたに関する情報を抜粋したものです。これでも全体の十パーセント程度に減らしてあります」
古泉はこれ見よがしに前髪をさらりと跳ね上げ、オレっちはこれが仕事じゃけんのうと鼻を鳴らしそうな勢いだった。まあ俺が頼んだことなんで、突っ込むわけにもいかん。腹立たしいことだ。

 全ページにCONFIDENCIALと赤くスタンプが押してある。ページをめくると、まずこの資料をまとめた人間の俺に対する所感が書かれていた。モラトリアム、自主性に欠ける、行き当たりばったりで人生の目的が不明瞭などとかなり辛口だったが、俺が古泉に電話したのが昨日の零時くらいだから、きっと徹夜仕事でイライラだったんだろうなあと同情しそうなくらいに気持ちが文面に漏れていた。
それから目次、続いて十一年前からの月次レポートと年次レポートで俺の行動が事細かに書かれていた。といっても概要だけらしいのだが、自叙伝でもここまで詳しくは書けないぞ。

「いかがですか、自分の観察記録を読んだご感想は」
「まだ読んでる途中だ。なんというか、俺が一冊の本になってるな」
機関の設立はあの七夕の日から数週間後らしい。まあハルヒに超能力を与えられて即日組織化されるってのも急すぎて人間技じゃないからな。七夕事件のことは機関の運営が軌道に乗ってから遡って調査したことらしい。つまり人づてに聞いたことをまとめたのか。

 あんなこともあったこんなこともあったと、第三者視点の我が人生の記録をしみじみと読んでいる俺だった。他人の目にはこんなふうに映ってたんだななどと相槌を打ったり、かたや、あのときは違うんだよ俺のせいじゃないんだってばというようないい訳じみた独り言をブツブツと吐いていた。

 俺の記憶とは部分的に違う二年五組の様子を読んでいるところで携帯がブルブルと震えた。知らない番号からだった。
「はい、もしもし」
「阪中だけど、キョンくん?」
かなりドキリとした。同級生に会うのにこれから丁寧にアリバイを用意しようと考えていた矢先に突然電話がかかってきちまったんだもんな。
「お、おう。阪中か。久しぶりだな」
「ほんとにお久しぶりなのね。ハガキ届いたかしら?」
「来た来た。たぶん出席できそうだ」
「そう、よかった。折り入ってお願いがあるのね」
「いいけど、なんだ?」まさか俺に司会をやれとか言うんじゃあるまいな。
「涼宮さんと同じ職場にいるって聞いたんだけど」
「そうだが。同じというかあいつが社長でな」
「そうそう、聞いてるわ。涼宮さんを同窓会に連れてきて欲しいのね」
「自分で頼めばいいだろう」
「それがね、毎年誘ってるんだけどいつも断られるのよ。同窓会が嫌いみたいなのね」
まあ、前進あるのみで過去にはこだわりたくないっていうハルヒの考え方は分からんでもないが。
「阪中が頼んでだめなら、俺が頼んでも無理だと思うが」
「そこをなんとかお願い。あなたなら涼宮さんを動かせるんじゃないかって」
またそれか。ハルヒのお守り役は古泉に譲ったはずなんだが、そのへんは修復で元に戻っちまったんだろうか。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:12:12.85 ID:8DvV1V.o<>「そういう話は古泉のほうがいいと思うぞ。なんせカレシだしな」
「頼んではみたんだけど、自分じゃ無理みたいだからキョンくんに頼んでくれって」
なんだあいつ、自分が説得できないからって俺に鉢をよこしたのかよ。
「しかしなあ、ハルヒが嫌がってるんだったらテコでもクレーンでも動かんと思うが」
「みんな涼宮さんの話を聞きたいのよ。あたし達の間で社長にまでなったのは涼宮さんだけなのね。出世頭っていうのかしら」
出世頭か、その言葉は俺にもグッと来た。高校大学と奇矯なまねばかりしていたハルヒだが、見るやつが見ればなにかでかいことをやるやつだという予感めいたものがあったに違いない。そこで二十四歳にしてこの社長椅子に座ってるとなりゃ、堅物の岡部でさえグッジョブを出すに決まってるさ。
「分かった。俺がなんとかする」
「ほんとう?ありがとう。じゃあ四人とも参加にしとくわね」
四人って?と問い返そうとしたのだが阪中にじゃあよろしくね!と勢いよく切られてしまった。俺達全員が同じクラスってことは古泉と長門のことも頼んだってことなのか。やれやれ。

「なんであたしが高校のクラス会なんかに出なくちゃいけないのよ」
「無理に行けとは言わんが、お前の代わりに出席の返事をしちまったからなあ。お前が行かないと古泉も行かないだろうから、俺が会費を払わされることになる」
「あんたが勝手に返事をするのが悪いんでしょ。あたしの知ったこっちゃないわよ」
「毎年やってんだからたまには顔を出せよ。お前がいないとメンツが締まらない」
「あたしは同窓会と名のつく集まりは嫌いなの」
「なんでだ?昔遊んだよしみじゃないか」
「イヤよ。年取って小じわが現れたのをお互いに数えあうなんて。昔の顔と比べて使用前使用後みたいな集まりは」
同窓会は別に化粧品の実演販売じゃないんだが、うまいこと言うな。

「メンツの中で社長やってるのはお前だけなんだよな。なんつーか、みんな聞きたいわけだよ。お前のサクセスストーリーを」
「社長なんてその気になりゃ誰でもなれるわよ。とにかくあたしをネタにして酒を飲もうなんてお断りよ」
やっぱりというか思ったとおりの反応というか、幹事をやっている阪中に拝み倒されて事後承諾みたいにしてOKを出した俺がバカだった。今は反省している。
「まあそこまでイヤだっていうんならしょうがない。俺が自腹でお前達二人分の会費を払うしかないな。せっかく古泉をお披露目できるチャンスだったんだが……」
最後のはボソボソともったいつけて言った。
「お披露目ってなによ」
「知らないのか、八年も付き合いのある同級生を彼氏に持ってるってのは希少なんだよ。あいつらはそういう話をうらやましがるのさ。幼馴染みの彼氏に近いかもな」
「そ、そうかしら」
ハルヒがポッと顔を染めた。ふっ、釣れたな。だがまだ引き上げないぞ。

「いやいいんだ、気にするな。俺もあんまり同窓会って集まりは行きたくないしな。気持ちは分かる」
「あんたが払えないんだったら行ってあげてもいいわ」
「忙しいんだろ、無理すんな。会費くらいなんとか払える」
「いいの、あんたの寒い懐具合を凍らせたら有希がかわいそうだから」
「今月は余裕あるから大丈夫だ」
「あたしも行くつってんでしょうが!」
くっくっく。とうとう切れやがった。

 とは言うものの、古泉はあまり乗り気ではないようで、仕事にかこつけて後から顔を出しますとごまかしていた。この古泉の記憶にはないクラスメイトの、しかも彼氏を見せびらかすだけの同窓会になんて喜んでついていくわけがない。

 飽きもせず毎年やっているだけあって集まるメンバーにそんなに違いはないんだが、来るやつは毎年来るし来ないやつは招待のはがきを出そうが電話をかけようが絶対に来ない。よっぽど学生時代にいやな思い出でもあったんだろうか。かつての担任岡部は呼ばれればまめに顔を出しているようだが、今年は来ていないようだった。
「やあキョン、来てたんだね」
「キョンよお、お前あいかわらず涼宮とつるんでるんだって?」
国木田と谷口がコップを握ってにじり寄ってきた。なんで知ってるんだこいつ。こいつらの記憶と俺の記憶がどこまで一致しているか果たして疑問だが、適当に話を合わせておこう。
「あの頃のクラスメイトが集まって昔話に花が咲くといや、必ず一度は涼宮の話になるもんさ」
「あいつとは腐れ縁だしな。俺もそういう星の下に生まれたんだとそろそろ諦めの境地だ。俺だけじゃない、四人ともだ」
「キョン、涼宮さんと会社作ったんだって?」
「ああ。なにがしたいのかよく分からん会社だがな」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:12:36.43 ID:8DvV1V.o<>「いいよなあお前ら。俺も雇ってくんねえかな」
お前が宇宙人未来人超能力者のどれかに属するなら考えてやらんこともないが、それよりお前にハルヒのお守りが勤まるとは思えんので却下だ。
「長門有希とはまだ付き合ってるのか?」
谷口は、別れたならぜひ自分がカレシ候補にとでもいいたげな目をして、ヒシと俺に問いかける。
「ああ。ハルヒと一緒にいるはずだが」
俺は遠目に、いい歳になった女どもに囲まれているハルヒのほうを指差した。歳をとってハルヒも多少なり角が取れ、あの頃話もしなかったクラスメイトともちゃんと会話しているようだ。

 谷口は目を細めて長門を探していた。
「おーおー、長門だ。ほかの女どもがすでに下り坂ってえのに、あいつはぜんぜん変わらんな」
なんだその黄色い道路標識みたいな下り坂ってのは。女子連に聞かれたら締め上げられるぞ。
「長門さん、きれいになったねえ」
「ほう、国木田には分かるのか」
「そりゃ分かるよ。女の人は恋をするときれいになるんだ」
意外に見る目あるんだなこいつは。国木田の左手薬指にはもう指輪がはまっていた。こいつは結婚が早かったと聞く。

「お前らあんまりジロジロ見るな。女は長門だけじゃないだろ」
「見たって減るもんじゃねえだろ。男なら誰だって六年経ったアレがどんな姿になってるか、気になるだろうがよ」
気持ちは分からんでもないがアレ呼ばわりはないだろ。
「にしても、まさかお前がトリプルAの長門有希と」
「Aマイナーじゃなかったのかよ」
「俺のランキングは市場連動型なんだよ」
「なんだそりゃ」
「朝倉みたいな清純派はあの時代にはハイクラスだったが、今は萌えだ、萌えの時代なんだ」
こいつもまたハルヒみたいなことを言い始めたぞ。
「なるほどな。お前あの頃は朝倉が好きだったもんな」
谷口がポッと顔を赤らめた。

── 俺の記憶によればだが、高校三年のとき俺と長門が付き合いはじめたことが谷口の耳に入るのは朝のラッシュアワーをすっ飛ばして行く原付よりも早かった。こいつには一度長門と抱き合っているところを見られた経緯もあって、二人の仲はずっと疑われていたらしい。あのとき谷口は俺のネクタイをハルヒ張りにひっつかんで締め上げた。
「キョン、お前長門と付き合い始めたってほんとか!」
「ハ、ハルヒに告げ口したのはお前だろ。おかげでとんでもない目にあったぞ」
「キョンが人気のない教室で抱き合ったりするから噂が立つんじゃねえか」
「いやあれは抱き合ってたんじゃなくて長門が具合悪そうだったから支えてやってたわけでだな」
「この期に及んでそんな言い訳が通用するか、よっ」
ふざけているのかまじめなのか分からん谷口に腕卍固めを決められてマイッタを何度も叩いている俺だった。
「で、長門有希のどこに惚れたんだ?」
どこと申されましても、俺と長門の関係が曖昧すぎてハルヒが付き合うのか付き合わないのかはっきりしろと怒ってそれで強制的に団公認みたいな流れになっちまったんだが、なんてことを言ったら谷口は切れるだろうな。俺はただひと言、
「萌えた」
このセリフが予想以上に谷口にショックを与えたようで、やおら涙目になって、
「末永くお幸せにっ」
ごゆっくり、のときと同じシチュエーションでダダダッと駆け出して教室のドアをガラガラピシャっと閉めて出て行った。いったい何があったんだとシーンと静まり返った教室内に谷口の賭けていく足音だけが遠く遠く国境を越えてカナダにまで行ってしまいそうな勢いで聞こえていた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:13:47.25 ID:8DvV1V.o<> 今じゃなつかしい、恥ずかしい話だ。こいつの歴史と一致するのかどうかは知らんが。
「谷口は長門にも惚れてたのか」
「おうよ、キョンが長門と付き合いだしたって聞いてそりゃもう逆上もんだったしな」
どうやら一致してるらしい。
「お前らは知らないだろうけどな、俺あのときマジ泣きしたんだぜ」
いや、知ってたから。みんなの前で十分涙流してたから。ついでに言うと翌日から下級生を手当たり次第ナンパしてたのも知ってる。欲をかいて新卒の研修生にまで声をかけてひっぱたかれたのも知ってる。さらに近所の中学生に、
「分かった、分かったからもういいって」
「あははは、あのとき谷口が生徒指導室に呼ばれたのはそれでだったんだね」
「頼むから思い出させないでくれ。酔いが覚めちまう」
「お前は女のことになると見境がないからな」
「あれは俺なりの治療薬なんだよ。女で受けた傷は女で癒せ、って昔からいうだろ」
それは寝取られたときとかに使うセリフだ。お前が勝手に空回りして傷ついてるだけじゃないのか。

 谷口がぼそりと言った。
「あーあ、朝倉に会いてえぜ。今ごろどうしてんだろな」
今からでもカナダに行っちまえよ、などというと本当に行ってしまいかねんやつなので言わなかったが。

 二次会が終って三次会のカラオケに付き合い、ほろ酔いの頭でそろそろハルヒと長門を連れて帰らなきゃなと見回してみたがすでに姿はなかった。そういえば一次会の終わりごろ古泉がちょこっとだけ顔を出して一緒に帰っちまったな。やっぱりあの三人がクラスにふつうに溶け込むにはキャラが立ちすぎてたか。

 その後の記憶は曖昧なのだが、ただ谷口が俺に向かって言ったことだけはかすかに覚えていた。
「キョン、ちゃんと呼べよ?」
谷口がなんのことを言っているのか、酔った頭で数秒考え、
「おい、何のことだ?」
もう一度谷口を見たがタクシーはすでに走り去っていた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:14:07.13 ID:8DvV1V.o<> それからどうやって家に帰ったのか、一切記憶がない。

 目が覚めたのはたぶん夜中だったと思う。俺のベットで隣に誰かが寝ていた。部屋は暗く、物音はなく静かだ。顔を横に向けてみると、見慣れた顔がそこにあった。長門がうつ伏せで眠っていた。肘を曲げ、口元に軽く握った手を置いていた。耳を澄ますとスゥスゥという寝息が小さく聞こえる。
 ああ、俺は夢を見ているんだなと思った。昨日は飲みすぎたからな。こういう夢なら大歓迎だ。ハルヒと夜の校庭を走り回ったりするんでなければな。

 俺は長門の顔をじっと見ていた。すやすやと、吐息に合わせて髪が揺れる。いい夢だ。
 …………。おかしい。この夢、いっこうに覚める気配がない。不思議に思って右のほっぺたをつねってみたが現実に近い痛さだ。左のほっぺたをつねってやっと理解した。ベットだと思っていたのは実は敷き布団で、自分の部屋にしちゃ三十センチくらい天井が高いなと感じていたのは、実は長門の部屋の天井だったのだ。俺はガバと飛び起きた。
「な、なんで俺がここにいるんだ!?」
声は出さなかったが、心の中で叫んだ。
 ええっと、昨日なにがあったんだっけ。確か同窓会でだいぶ飲みすぎて、あ、誰かに抱えられて歩いたな。記憶の中で、ふらふらと歩いている自分の映像のあちこちに長門の顔があった。俺は自宅に戻るつもりがここに押しかけちまったのか。しかも酔っ払ったまま。しまった、長門に嫌なところを見せちまったな。まさか長門を襲ったりしてないだろうな俺。……記憶がぜんぜんない、冷や汗もんだ。

 俺は布団から抜け出た。そこは和室だった。朝になって長門になんて説明しよう。音を立てないようにそっとトイレに行って洗面台で顔を洗った。顔がやたらベタついていた。ザブザブと洗ってふと顔を上げると、鏡の中の俺はひどい顔をしていた。髪はぼさぼさ、顔色は悪く目の下にクマができていた。
 あれ、俺、長門のパジャマを着てる。と思ったがボタン穴が左で男用だった。そういや長門は同じのを着てたな、ということはおそろいのパジャマか。俺は想像した。酔ってヘロヘロになった俺が長門の部屋のドアをガンガンと叩いて起こす。長門はしょうがなく俺を中に引き入れて水を飲ませる。俺はそのまま倒れこんで眠ってしまい、長門がパジャマに着替えさせる。頭を抱えたくなるようなシーンだった。

 それにしても……前にも見た気がするがいつ買ったんだこのパジャマ。俺はハッとした。長門がこれと同じ緑色のパジャマを着ているのを最初に見たのはいつだっただろうか。昔、あいつが熱かなんかで寝込んだときだったような気がする。ありゃまだ俺たちが高校二年くらいのときだ。あのときすでにこのパジャマがここにあったんだとすれば、長門は俺が泊まることを予測していたわけだ。
 俺は鏡の前に立ててあった新品の歯ブラシを取った。硬めのブラシしか使わない俺用だった。コップとその横に二日酔いの薬が置いてある。
「長門……」
はみがき粉も俺が自宅で使っているのと同じやつだった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/28(日) 20:14:24.30 ID:8DvV1V.o<> 歯ブラシをくわえ、口を泡だらけにしてこっちを見ている男が鏡に映っていた。そいつが言った。

── ここが、お前の帰る場所なんだよ。

その意味はなんだ?俺はがしがしと歯を磨きながら複雑な表情をした。男がまた言った。

── もう、自分の居場所を決めてもいい頃だろ?

「黙ってろ」俺はタオルで鏡をはたいた。電気を消すと鏡の中の男がニヤリと笑った、ような気がした。

 暗いリビングに戻ると、俺のスーツとシャツがきちんとハンガーにかけてあった。テーブルの上に乗っていた携帯を開くと午前二時半だった。メールも着信もない。ふと、発信履歴を見てみると夜中の一時ごろに長門にかけている。うわ、まったく覚えてないぞ。なに話したんだ俺。長門を怒らせるようなことを言ったんじゃあるまいな。情報連結解除されたらどうしよう、このまま逃げ出して自宅に帰ろうかなどと古泉と同じ穴の二の舞をやっているような気分になった。

 和室をのぞくと俺が抜け出したままの布団に長門が眠っていた。俺は足音を立てないようにそろそろと布団に近づいた。
 カーテンのない窓から、月の光が差し込んで長門の顔を柔らかく照らしていた。シンと静まり返った部屋の中で、長門の吐息だけが小さく波を打っていた。

 俺は長門の隣で横になってその寝顔を見ていた。布団の上に青白く冷たい光が長門の顔の形に影を作っている。寝顔を間近で見るのはあまりなかったと思うが、覚えている限りではたぶん二度目くらいだろう。じっと見つめていると、スヤスヤと寝息を立てる長門の半開きになった柔らかそうな唇に引き寄せられそうになったが、起こしてはまずいと思い自分を抑えた。

 こいつに会ってそろそろ八年だな。もっとも、長門からすると十一年くらいか。いや、終わらない夏休みとかタイムトラベルとか歴史のループを合わせるといったいどれくらいになるのか検討もつかん。なんて感慨にふけっている俺だが、この数年間は実にあっという間だった気がする。会ってからずっと、俺も長門もハルヒという台風の目に振り回されっぱなしだった。困ったときはいつでもこいつを頼った俺だった。こいつのために俺がなにかしてやったことがあったっけ。思い出せない。せめてそばにいてやることくらいはしてやりたい。そう、ここ、長門の隣。ここがたぶん俺の……。鏡のあいつ、なんて言ったっけ。
 そんなことを考えているうちにまた眠りに落ちた。長門のかわいい寝顔がいつまでも目蓋の裏に焼きついていた。今度はいい夢を見れそうだった。

(続く)

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/28(日) 20:15:07.14 ID:8DvV1V.o<>4日までしばしの間お付き合いください ここは連投規制がなくていいなww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/28(日) 21:16:28.49 ID:tkQKTFso<>ありゃ
経営の人もここの住人だったのか
そういえば見たような希ガス


<> 長門有希の憂鬱W
◆nomad3yzec<>sage<>2008/09/29(月) 19:27:08.47 ID:ICLZwPgo<>
二 章

「……起きて」
長門の声で目が覚めた。
「おう、おはよう」
俺はこめかみを抑えた。自分の声が頭にガンガン響く。長門が二日酔い用の薬と水を持ってきてくれた。
「すまんな……」
俺は頭をかきむしりながら起き上がり顔を洗いにシンクに向かった。

リビングの壁にかかった自分のスーツを見て、言うべきことを思い出した。
「長門、昨日はすまん。俺どうやってここまで来たんだ?まったく覚えてないんだが」
「……午前一時に、電話があった」
「それで俺、なにか言ってた?」
「……意味消失していたが、昔好意を抱いていた女性の話」
ま、まじか。そんなたわけ話をしたのか俺は。
「そ、それから?」
「……会話の途中で意識を失った。わたしが迎えに行った」
長門に抱えられてここまで来たのか。マンションの七階まで。なんて野郎だ。

「あの、俺、なんか変なこといたしました?」
妙に壊れた敬語だが、聞くのも怖い。
「……なにも。そのまま眠った」
よかった。長門の表情をもう一度探ってみたが、どうやら本当のようだ。
「あのさ、俺が酔って変なことしようとしたらブン殴ってくれ。気絶させてもいいから」
「……分かった」
まじめにうなずいた長門はちょっと怖かった。北高の教室で朝倉と戦ったとき長門に蹴飛ばされた、あの脚力を思い出した。しばらく酒は飲まないことにしよう。

 顔を洗って鏡を見るが、ふつーのいつもの俺だった。顔色は悪いが。
「あの、長門?」
「……なに」
「このペアのパジャマいつ買ったんだ?」
「……むかし」
長門はそれしか答えず、少しだけ微笑した。かなり前ってことは確かだな。
「シャワー借りていいか」
「……いい。バスタオルを用意しておく」
熱めのお湯を頭からかぶった。これで酒が抜けてくれると助かるんだが、昨日いったいどれだけ飲んだんだ。

 浴室の壁にもたれてシャワーの熱をむさぼっていると、少しずつ脳が目覚めた。泡が体を伝って排水口に流れていく。この浴室も、使うのは実は今日が初めてだったりする。

── ここが、

昨日、鏡の中の野郎が言ったことのそこから先が思い出せない。浴室を出ると棚にバスタオルが置いてあった。その横にカミソリとヒゲ剃り用の泡があった。泡を搾り出して顔に塗った。

 なにか分からない、微妙な違和感があった。鏡を見ながら思った。これがいつもの自宅の鏡ならなんでもなかっただろう。横で妹がドライヤをかけていたり足元をシャミセンがうろついて踏んづけそうになったり。だがここは長門の家なのだ。俺は戸惑っていた。神聖にして不可侵な長門空間でヒゲなんか剃っている、ということに。
「あ、痛て」カミソリが横滑りしちまった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:27:48.44 ID:ICLZwPgo<>「さっぱりした。ありがとよ」
キッチンをのぞくと、あろうことか長門が……あろうことか長門が……割烹着を着て朝飯を作っていた。その格好はいったいなんなんだと言おうとしたが、振り向いた長門があまりに似合っていたのでドキリとした。こんな朝っぱらからときめいたりして俺も若いよな。
「その割烹着、に、似合うと思うけど」
「……ありがとう」
手ぬぐいを姉さんかぶりにして、おばあちゃんがやるような格好で味噌汁の味を見ている。

「……味、見て」
小皿にダシを注いだ。俺は受け取ってすすった。
「うん。いいんじゃないか?」
俺の推測だが、長門は俺の好みをずっと研究しているようだ。味噌汁の分子構成がどうなっているかは知らないが、長門の作る有機物およびミネラルの化学的配合比は完璧に近い。
 それにしても楽しそうだな。ミリ単位で違わぬ長さで刻まれるネギの音がどことなくリズミカルなのは気のせいではあるまい。
「……うん、楽しい」
あうっ、いかん。振り向いた長門の表情にまた萌えた。

 味噌汁と卵焼き、焼き魚の純日本の健康的な朝飯が整った。俺と長門は正座して慎ましやかに食卓を囲んだ。長門は茶碗に山のように丸くご飯をよそって俺にくれた。
「……食べて」
「いただきます」
二人は手を合わせていただきますを言った。まずは、青ネギがたっぷり浮かんだ甘味のある白味噌の味噌汁。
「味噌汁がうまいな」
「……そう」
二日酔いの朝には味噌汁がいい。長門はご飯の山を切り崩しながらもくもくと食った。テーブルには箸立てと醤油挿しが並び、窓から射してくる朝日が、二人のお碗からゆっくりと立ち上る湯気を照らしていた。こうして長門と朝の食卓を囲んでいると、ここがまるで──。
「……どうしたの」
「い、いや、なんでもない」
ここがまるで、俺の居るべき場所のようじゃないか。

 たいして汚れてないんでいちいち着替えに帰ることもなかろうと、俺は昨日のシャツのまま出社した。昨日電話しそこなったので今朝自宅になって連絡を入れておいた。飲み会だったんで友達んちに泊まったとごまかしたのだが、妹が邪推して女の人んちでしょ〜と歌うようにからかって俺はしどろもどろに否定してしまった。

 マンションを出て長門と並んで歩いた。こうやって隣に長門がいるのはいつもならデートなのだが、今日は同伴出勤だ。電車は通勤客でごった返していた。ひとり分空いている席に長門を座らせた。
「……ありがとう」
「いいって。今日は大学はいいのか」
「……学会発表が終わったから、しばらくはいい」
かけもちでご苦労だな。そのうち海外出張とかもあるんだろうけど、博士論文が終わるまではできるだけ支援してやらないとな。

 事務所があるビルに入るとき、長門と二人で出社しているところを誰かに見られないかと気になった。別にやましいところがあるわけじゃないんだが、「俺たち同伴です」みたいなところを見咎められたくないような。

 長門と付き合い始めた頃にこそこそ隠れたりしてハルヒに怒られたことがあったんだが、かといって堂々と今そこで会いました的な偶然を装って入るのもどうかと。そんな俺の気持ちを察してかどうか、長門は
「……先に行って」
「分かった」
ああ、内心ほっとしている自分が情けない。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:28:21.24 ID:ICLZwPgo<>「おっはよ」
「おう。おはよう」
この社長はいつもニワトリ並みに出社が早い。俺が遅刻すると全員にお茶をおごる規則だけはここ八年間変わることがない。後から長門が入ってきた。
「……出社した」
「おっはよ有希、ちょっと待ちなさい二人とも」
「……」
「あんたたち、今日はなんか変ね」
「な、なにがだ」
ハルヒは鼻先をくんくんと俺の顔やらスーツやらに近づけた。
「あんた昨日家に帰ってないでしょ」
な、なんで分かったんすか。
「しかも、シャワー浴びて朝ご飯まで食べてきたわね。そうでしょ、有希」
その鼻は警察犬から移植でもしたんですか。俺と長門は顔を真っ赤にして目をそらした。ハルヒはケラケラと笑った。
「ふーん。お熱いことねぇ」
「い、いや。昨日は酔っててだな。目が覚めたら長門んちにいたんだ」
「ふーん」
「眠ってたから何もなかったんだから」
「あんたなに慌ててんのよ。あたし何も言ってないでしょ。キヒヒヒ」
ううっ。これをネタにしばらくおもちゃにされそうだ。

「あんたたち、いっそのこと一緒に住んじゃえばいいのに」
「お前ったら突然なにを言い出すんですか」
俺は動転している。限りなく動転している。
「家も職場も近いし簡単じゃないの。同棲よ同棲」
「いきなりそう言われてもな」
考えたこともなかったが俺ってウブなのか。俺は長門を見た。長門の表情は、なにかを期待しているような、でもあからさまには言い出したくないような、微妙なところだった。
俺は「それもいいかもしれんな。考えとこう」などと、適当にお茶を濁すような返事をした。たまに泊まってるうちに荷物が少しずつ増えて、なし崩し的に一緒に住んでたりしそうだな。自然発生的でいいかもしれん、なんて甘いことを考えているとハルヒに釘をさされた。
「ただし、ちゃんと相手のご両親に挨拶に行くのよ。隠れてこそこそやっちゃだめよ」
「わ、分かった」
すべてお見通しだった。

 古泉と昼飯を食った。
「ハルヒが俺に同棲しろと言うんだが」
「ええっ、あなたと涼宮さんがですか!?」
「俺と長門がだよ」
「考えたらそうですね。失敬しました」
古泉、自分の立場が分かってないだろ。
「まさかないとは思うが、お前同棲した経験は、」
「残念ながら僕にはありませんね」俺が最後まで言い終えないうちに言葉を継いだ。
「じゃあその、未経験ながらどう思う?」
「よろしいんじゃないですか、二人とも大人ですし。自分のすることに責任は取れるはずです」
最近じゃ、ちゃんと責任が取れる大人がどれだけいるかあやしいもんだがな。

「予行演習と思えばいいでしょう」
「な、何の予行演習だ?」
古泉の発した次の言葉が、古代中国宮廷の銅鑼ような音色で俺の脳内に響き渡った。
「結婚ですよ。そのご予定なんでしょう?」
ううっ。考えてもみなかったと言えば嘘になる。ちゃんと計画的に検討していたと言えばそれも嘘になる。いつかはちゃんと考えるつもりだったと言うともっと嘘になる。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:28:49.24 ID:ICLZwPgo<> 俺はいつだって曖昧なのだ。周りが動いているうちはなんとかなると思っている。試験までの残りの日々を数えつつ、まだ大丈夫、まだ大丈夫だと自分を安心させて過ごす。可能な限りのモラトリアムな日々、それが俺の人生だった。
「もうそろそろ考えてもいい時期ですよ。あなたがたは」
ゲームが下手なはずの古泉に、少しずつ攻め込まれて俺は逃げ場を失った。俺は味方だと思っていたチェスの駒が寝返って全部敵になっちまったような気分だった。
ポーン一同がこっちを見てニタニタ笑いを繰り広げている。頼みのクイーンもすでにいない。もしかしたら人生のツケがすべて今になって襲ってきているんじゃないだろうか。
「それともあなたは、長門さんがいつまでも待ちつづけるとお思いですか?」
古泉のチェックメイトが、槍のごとく胸に刺さった。

 古泉と食った昼飯はまったく味がしなかった。ろくに噛まずにコーヒーで流し込み、打ち合わせがあるからと古泉に千円札を渡して先に戻った。
事務所に戻ったが長門ともハルヒとも目を合わせられなかった。俺はなんでもないぞと自分を落ち着かせようと新聞を開いたのだが、そこに印刷された活字がすべて“結婚”に見えて目をしばたいた。めまいがして新聞をゴミ箱に放り込みトイレに駆け込んだ。

 顔をザブザブと洗ってペーパータオルを何枚も取り出し、顔を拭いて丸めてゴミ箱に投げ込んだ。鏡に映った自分を見ながらほっぺたをペシペシ叩いた。落ち着け俺。どうってことはない、不用意に長門の部屋に泊まったりしたから動揺してるんだ。そうだ、アレルギーみたいなもんだ、すぐ治まる。

 俺は何度も深呼吸して、それだけじゃ足りないかもしれないので風がそよ吹く緑の草原を想像した。それから鏡を見て営業スマイルを作り、ガッツポーズを取った。よし、俺はやれる。なにをだ。

 部屋に戻って自分の椅子に座り、開発部に内線を入れてスケジュールの調整を話し合った。なんだぜんぜん平気じゃないか。俺は克服したぞ。
俺はメモを渡そうと、受話器を耳と肩に挟んだまま長門のほうを振り向いた。長門の額には大きく結婚の二文字が書かれていた。
驚愕に襲われて目をこすったがなにもなく俺は受話器を取り落とした。こいつはいかん、プレッシャーで目がおかしくなっちまってる。
「ちょ、ちょっと下に行ってくるわ」
俺はダッシュで逃げ出した。とくに用事はないのだがほかに逃げ込めるところがなかった。

内線で話したのと同じ内容を繰り返すので部長氏は怪訝な顔をしていたが。俺は正直に、ちょっとだけここにいさせてくれと頼み込んだ。
「上で揉めごとでもあったのかい?」
「そういうわけでもないんですが。一時的にちょっと居づらくなってしまいまして」
「はっはは。よくあることさ。好きなだけいていいよ」
「ありがとうございます」
俺はうやうやしく頭を下げた。
「キミもケッコン苦労してるんだね」
「え、今なんと?」
「だから、キミも結構苦労してるんだろう。あの社長のそばにいるのは神経が磨り減りそうだからね」
俺はとうとう耳までどうかしちまったようだ。
「副社長もよく我慢してるね。あんなのと付き合ってたら嫁に行きそびれてしまうだろうに」
くそっここにも伏兵がいたのか。味方が全滅して命からがら逃げのびてたどり着いたところが敵の本拠地だった。誰か助けてくれ。

 行く場所も逃げる場所もなく俺はまた自分の机に戻り頭を抱えた。軽くノイローゼになっちまってる。
「キョン、あんたどうかしたの?」
「い、いやなんでもない」
「さっきから挙動がおかしいわよ。熱でもあるんじゃないの」
ハルヒは俺の額に触れようとした。
「俺に触るな」俺はその手を振り払った。
「なに怒ってんのよ、熱を見ようとしただけじゃないの」
ハルヒにぐいと耳を引っ張られた。いかん。完全にどうかしちまってる。
「すまん……ちょっと頭痛がするんで今日は早退するわ」
「具合悪いんだったらちゃんと病院行きなさいよね。最近は若年の脳溢血が多いんだから」
縁起でもないこと言わないでくれ。俺はカバンをひったくって逃げるようにして部屋を出た。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:30:18.18 ID:ICLZwPgo<>
 病院には行かず家にも戻らず、俺は電車で終点まで行き映画館で昼寝をしていた。何の映画をやっていたのかすら覚えていない。

 最終上映が終わり、掃除に来た従業員に起こされて俺は映画館を出た。時計を見ると七時を回っていた。ふらふらとどこに行くでもなく、腹が減ったのでファーストフード店に入った。四時間は眠ったはずなのになぜかすっきりしないこの目覚め。味気ないハンバーガーをかじりながら俺はぼんやりと窓の外を見ていた。

「あれ、もしかしてキョンじゃないか!?」
後ろから声をかけられビクッとした。こんなところでこんな気分のときに知り合いに遭遇するなんて。振り返ると、ガタイのいい見るからに体育会系のアルマーニスーツ野郎が立っていた。
「ええと、思い出せないんだが。誰だっけ」
「忘れたのか。俺だよ俺」
そいつは地面に膝をついて、右手を脇に抱え、今しもスタートダッシュを切ろうかという格好をしてみせた。
「相撲取りに知り合いはいないが」
「ちがうだろ、アメフトだアメフト」
「ああ、思い出した。中河か」
こいつを忘れることがあろうか。長門にひとめ惚れし、緻密なる人生設計を提出した末、十年後に迎えに行くから待っていてくれと愛を謡ったやつだ。その恥ずかしい恋文を長門の前で読み上げてハルヒに締め上げられたのは俺だったが。

「その節はいろいろとすまんかったな」
中河は体格に似合わず顔を赤く染めた。
「いやまあ、あのときは俺たちも楽しんだ」
「そりゃそうだ。あんなケッタイな手紙は大爆笑モンだ」
中河は大声で笑った。自分の恥ずかしい歴史をすっきり爽快笑い飛ばせるなんて清々しくなったな。思い出して二人で笑った。
「暇なら飲みに行かないか」
「これからか」
「もちろんだ。俺のおごりだ」
おごりってことなら行く。今日はいろいろと忘れたいこともあるんでな。

 こいつの通いの店らしい、地下街にあるひなびた居酒屋に入った。
「キョン、あれからどうしてたんだ」
「いちおう会社勤めだ」悲しいことに、ハルヒが社長のな。
「どんなことやってんだ」
「ええと一言で説明するのは難しいんだが、ソフトウェアの開発とかやってる」
「ほう、ってことは同業者か」
中河はポケットから名刺入れを取り出した。俺はうやうやしく受け取った。この両手で小さな紙片をやり取りする日本の習慣が俺には未だに不可思議だ。

「なんと、中河が代表取締役かよ」
「ああ。もう四年になるかな」
「四年ってことは大学には行かなかったのか」
「行ったさ。学生のときに起業したんだ」
すごいな。俺たちがワイワイ遊んでた頃すでに社長だったんだな。
「中河テクノロジーって、そういえばこの会社の名前最近よく聞くな」
雑誌でもよく見る大手グループの傘下だ。
「まあ業界では上昇気流に乗ってるからな。こないだ二部上場した」
こいつの言ってた十年間の人生ロードマップよりすごいじゃないか。軽く五年くらい前倒しだぞ。
「いい人材に恵まれただけさ。俺自身は開発には深く関わらない。いちおう情報工学出だが」
「あのとき言ってた経済学部じゃなかったのな」
「経営者がプロダクツの中身を知らないでどうする」
中河は笑った。そこへ行くと俺は自分がなにを売ってるのかさえ、いまいち理解してない。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:30:40.94 ID:ICLZwPgo<>「お前んとこはどんなシステム作ってるんだ?」
俺は返答に詰まった。
「ええと、俺はあんまり詳しくないんだが。人工知能を使った他のシステムの統合管理というか」
「ほう。面白いことやってんだな。今度見せてくれ」
「ああ。そういう話は俺より長門のほうが詳しいと思う」
口元まで動いていた中河のグラスがそこでピタリと止まった。その名前を耳にして中河の口元が緩んだ。
「長門有希さんも同じ職場なのか」
「ああ。あの頃つるんでたメンバーはみんないるさ」
「そうか。元気にしているのか、長門さんは」
「相変わらずだ。あのままだな」
俺から見ればだいぶ変わったところもあるが。

 それから中学時代の話に戻り、佐々木の一件やらもネタになった後、俺と中河は店を出た。
「いい職場にいるみたいだな、お前」
「そうか?」
「その会社、大事にしろよ。好きなことが自由にやれるってのはシアワセなんだからな」
「ああ」俺はそれなりに苦労してる気もするんだが。
「そのうち挨拶にでも寄るわ。人工知能の構造も見てみたいしな」
「分かった。来るときは電話をくれ」
中河は手を振って夜の町に消えた。その背中が俺なんかよりずっと貫禄があるように見えた。

 翌朝、昨日に引き続き頭痛がするからとハルヒに電話して午後出社にしてもらったが、まさか昨日飲んでたなんてことがバレたりしてないだろうな。

 昼になってもまだぼんやりとした頭をシャワーでなんとかごまかして、重い体を引きずり電車で出社した。駅前は昼飯を食いに出てくるビジネス街の社員でごった返していた。みんなと同じ時間に出社しないなんてなんとなく後ろめたい気分だ。

 いつもより重たく感じる我が社のドアを開けると社長椅子が空いていた。珍しく客が来ているらしくパーテーションの応接室から声がする。
「キョン、ちょっと来なさい。あんたにお客様よ」
「誰だ?」
「おう、キョン」
中河が突然現れた。来るなら電話しろつったのに。
「遅いわよ、あんたを訪ねて見えたのに」
「具合が悪くてな」
昨日一緒に飲んでただろ、という感じで中河はニヤリと笑った。
「ええと、ハルヒ、中河のことは覚えてるよな。アメフトの」
「もっちろんよ。あんたが来るまであのときの話で盛り上がったわ」
中河は体格に似合わず照れた表情をしてわははと笑った。

 俺は長門を呼んで引き合わせた。中河は長門の手を取って両手で握った。
「ご無沙汰しております。その節はいろいろとご迷惑をおかけしました」
「……」
かつて惚れられた、というか勝手に熱を上げて勝手に冷めてしまいサヨナラを告げられた相手に、長門もどう応じたものか迷っているようだった。
「羽振りいいんだってね、中河さんのところ」
「ハルヒ、中河の会社知ってるのか」
「当然じゃない。テレビでインタビューに出てるの見たわ」
「いえまあ、仕事内容より名前だけが先走りしてましてね」
中河は体を揺すってはっはっはと笑った。よく笑うやつだな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:31:55.09 ID:ICLZwPgo<> ハルヒと中河は同じ経営者同士で話が合うらしく、業界の裏話やらこれから流行るかもしれない技術ネタなんかで盛り上がっていた。ハルヒがIT業界ネタについていけてるとはちょっと意外だったがそれなりに勉強はしているらしい。少なくとも俺よりはな。
「聞けば人工知能を開発されているとか。ぜひ拝見したいものです」
「もっちろんいいわ。キョン、中河さんにうちの開発部を見せてあげて」
「俺は構わんが、部外者に見せていいのか長門」
「……問題ない」
まあうちの商品は簡単にはまねできないようなもんばかりだし、長門の設計をパクれるようなやつはそうそういないだろう。俺は中河を連れて三階の開発部の部屋を案内した。

 開発部のドアを開けるとあいかわらず阿片窟のようなありさまで、部長氏に来客を告げるとあわてて雑誌やらパソコンのパーツやら袋菓子やらをロッカーの棚に放り込んでいた。リサーチと称して他社のゲームをやっていた部員はあわててモニタの電源を切った。
「ちょっとあんたたち!昨日までちゃんとかたづいてたのになによこれは」
いや少なくとも二週間はこの状態だと思うぞ。散らかった息子の部屋をかたづけるおふくろのように、ハルヒがイライラとゴミなのか備品なのかわからんクズを段ボール箱にかき集めた。

「部長氏、こっちは中河テクノロジーの中河社長だ。俺の中学のときの同級生だが」
「は、はじめまして。部屋がカオス状態でして恐縮ですが」
「はっはは、弊社も似たようなものです。特にモノが生まれる現場では」
部長氏はウエットティッシュで丁寧に手を拭いてから中河の手を握って振った。
「部長氏、例の人工知能のデモ見せてもらえる?」
「ちょうどいい、次のバージョンをテストしているところだよ」
三十インチはありそうなでかいディスプレイの隅っこに3Dのフィギュアみたいなアシスタントが現れた。メイド服を着て丸いメガネをかけている。
『こ、こんにちわ。あの〜、なんなんですか皆さん、その方はいったい誰なんですかぁ、どうしてわたしはメイド服なんですかぁ?』
知ってる誰かに、しかも若い頃にすごく似てる気がするんだが。これ、本人の許可取ってんのか。

 部長氏がマイクに向かって話しかけた。
「みちるちゃん、今日の予定教えてもらえる?」
『あ、ちょっと待っててくださいね。ええっと、メモどこやったのかな……んと、んと』
秘書としてはあんまり技能的に秀でてないっていうか、モノ忘れが激しそうっていうか、時間が過ぎてから予定を告げられそうっていうか、これじゃ仕事が進まんだろうけどそれはそれで萌えどころか。
『あ、あった。ありました。ええとですね、今日のスケジュールは、十二時からわたしとお昼ご飯です。ほ、ほんとにわたしなんかでよかったんですかぁ、受付の女の子とかのほうがよかったんじゃ』
飯を食うだけがスケジュールなんてどこの天下りだよ、と苦笑しつつ中河を見ると凝視するほど画面に見入っていた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:32:11.82 ID:ICLZwPgo<> ピロリンと音がして画面にメールのアイコンがポップアップした。
『わぁ、誰かからメールが来ましたよ、うふっ』
「みちるちゃん、メール読んでもらえる?」
『えっと、タイトルはですねぇ“十六才の女の子です、お友達になってください”。わあ、女の子からお手紙ですよぅ。きっと学校でお友達ができなくて部長さんにお友達になってほしいんですね。本文はぁ、“夜ひとりでベットでいるのが寂しいの”……こ、これ以上は禁則事項ですっ』
真っ赤になっているミニ朝比奈さん、それは仕事のメールじゃなくて世に言うスパムってやつですよ。
『好青年の部長さんをかどわかすなんてさせさまさせん!わたしが守ってみせまーす。み、み、ミチルビーム』
いつぞやの朝比奈ミクルの変身のテーマがパパララーパパパーと流れ始め、メールのアイコンを目から飛び出すビームで勢いよく燃やした。
メイドにしては嫉妬心が強いっていうか怒らせるとファイルを壊されそうで怖いっていうか、どうでもいいくらいに凝った演出の上にセリフを噛んでいるところまで忠実に再現されているようなのだが、いったいどういう技術を使ってるのか実に気になる。

 ニヤニヤ笑いの部長氏はCCDカメラのレンズを塞いで中河にメモを渡した。
「中河さん、ちょっとこの番号に電話をかけていただいていいですか」
「え、はいはい」
中河が携帯に耳を当てていると画面の中の電話が鳴ってミニ朝比奈さんが飛び上がった。これ、電話回線と直接対話できるのか。
『キャ、あ、電話だ、どうしましょう』
とりあえず受話器を取ればいいんじゃ、ってダイヤル式黒電話ですか、レトロ趣味にもほどがありませんかそれ。
『あ、あの、もしもし……SOS団開発部です』
デスクトップにペタン座りをして、消え入りそうな声のミニ朝比奈さんが受話器を重そうにしながら耳に当てた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:33:10.06 ID:ICLZwPgo<>「中河と申しますが部長さんはいらっしゃいますか」
『あ、あのですね、部長さんは今ご不在で、たぶんそのへんにいらっしゃると思うんですが……もしかしたら机の下でお昼寝中かも』
「じゃあ伝言をお願いしてよろしいですか」
『伝言ですかぁ、伝言なら得意ですっ』
「ではいきますよ、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」
『ま、待ってください、ええっと坊主がジョーズの映画を見に行った、と』
どんな生臭坊主だよと突っ込まれそうなくらいにいい伝言ゲームになってるな。
「それから、カエルぴょこぴょこみぴょこぴょこ、」
『か、カエルは苦手なんですっ、ヒヨコとかにしてもらえませんかぁ』
中河、あんまり朝比奈さんAIをいじめるな。

「部長さん、これはどうやって動いているのでしょうか?」
「実は僕たちにもよく分かっていないんですが、正確には自律思考型業務支援仮想人格クラスタと言いまして、副社長の設計によるものです」
部長氏は外様向けの仕様書を中河に見せた。ページをめくる中河の手がプルプル震えている。
「これは今までに例のない次世代のプログラム技術ですね。一社独占で国際特許ものだ」
そんなにすごいシステムだったのかこれは。
「すばらしい、ぜひうちにも導入したい。グループ全社にも紹介したい」
ちゃんと仕様を読んだかオイ、こんな秘書システムでいいのか。じっと食い入るようにモニタを見つめる中河の両目にピンク色のゴシック体太字で“萌”の字が写っていた。やれやれ、こいつも同族だったのか。
「今すぐ仮見積もりを出すわ。まいどありぃ」
ハルヒはニヤリと笑って部長氏の肩を叩いた。やれやれ、ミニ朝比奈さんでお得意様一名確保か。中河ならミニ長門のほうがよかったんじゃないのか。

 人工知能と簡単に言っても、全部が全部、ロボット型の男の子がフェアリーテールを探して旅をしたり、人類を発電所の電池代わりにしてしまったりするというもんでもない。
最近よく知られてるのが映像から人の顔を識別する画像認識プログラムで、カメラの映像からその人の顔かたちと一致するかを判断する門番の役をしていたりする。
カメラに向かって写真を見せられたら本物と区別できないっていう間抜けな門番だが。

ほかにも、身近なところでは大手通販サイトなんかでよく“この商品を買った人はこんなモノまで買っています”なんていう、ただ売りつけたいだけじゃないのかと疑わしくなるような商品列挙をしてくるサービスがあるが、データマイニングという一種の人工知能らしい。
カーナビに向かってしゃべるとちゃんと反応して道案内してくれるのも、一応は人工知能だ。

 この長門が作った人工知能はカメラからの映像やマイクの音なんかのデータを拾うのは同じだが、ごちゃごちゃしたまわりのデータからテーマを決めて意味のあるものに組み立ててから理解するという今までにはなかった造りをしていて、そこが売りなんだとか。作ったというよりは育てたというか、元はウィルスなんだがね。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:33:29.13 ID:ICLZwPgo<> 中河はこの朝比奈さん、じゃなくて人工知能がいたく気に入ったらしく、俺にはよく分からない専門用語を駆使して長門に質問を浴びせていた。
「バックで動いているDBですが、どういう構造なんでしょうか」
「……人の記憶プロセスを模倣し、複数の時間軸を含めた多次元構造を擬似的にリレーショナルに格納している」
「ということはあのキャラクタは黙っていてもデータを蓄積しているということですか」
「……そう。自らの思考プロセスを含めてすべて記憶している。データ加工の工程もまたデータになる」
「主時間は今までの人工知能にはない概念ですね。しかし主時間を二十四時間記録し続けると膨大な量になりませんか」
「……四六時中というわけではない。業務時間以外にはもっぱら過去データの分析と再構築が行われている。通俗的な用語を用いるなら、昼寝」
長門が、画面上でミニ朝比奈さんがうたた寝しているところを再現してくれて、そのあまりのかわいさに野郎三人共にハァとため息をついた。

 突発的なデモが終わりハルヒは中河を連れて開発室を出た。部長氏は突然の来客に緊張していたらしく大きな脱力系ため息とともにソファにぶっ倒れてそのままぐうぐうと眠った。

「涼宮さん、これまでの導入実績の件数はどれくらいですか」
「そうね、まだ両手と両足に余るくらいかしら。なんせ人が足りないからね。この先二年は予約でいっぱいよ」
「そうだったんですか、今日中に仮契約をお願いできませんか。必要なら手付けの小切手を切りますが」
「あら気前がいいわね。いいわ、キョンの知り合いってよしみで最優先でやってあげる」
「おいおい中河大丈夫か。コンビニで買い物するのとはわけが違うんだぞ」
「なに言ってんだキョン、こんな業界をひっくりかえすような製品を手に入れられるチャンスはそうそうないぞ。社長決済で役員を説得してみせる」
八桁の買い物を事後承諾でぺろりと決済できるとは、お前のところはワンマン社長っぽいな。まあうちは売る立場だし、まったく構わんのだが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:34:55.69 ID:ICLZwPgo<>「今後の事業展開はどのようにお考えですか」
「そうねえ。信頼できる会社に技術供与をして、代理店契約してもいいかもね。この秘書はまだ特許申請中だけど、ライセンスは高いわよ」ハルヒはニヤリと笑った。
「その折には、代理店第一号をぜひうちにご指名ください」
「いいわ。うちはまだ新参だから流通が狭いしね」
中河の目がキラリと光った。驚くべきことをサラリと言った。
「涼宮さん、よろしければうちの傘下になって流通を使いませんか」

 アタックオブ中河 Episode_00とでもタイトルを振ってやろうかという勢いで、突如襲来ではじまったソフトウェア販売契約の話が、妙に利害が一致するらしい社長同士の会話の流れで会社の買収にまで発展してしまった。
ハルヒときたら野心丸出しで、相手が上場企業なもんだから世界にSOS団の名前を知らしめる絶好のチャンスなどとのたまっている。
「俺は反対だ」
「あんたが反対しても鶴ちゃんが決めることでしょ。とはいっても、この会社はあたしに一任されてるわけだし、あたしの一存ってことになるわねぇ」
「そりゃそうだが、俺たちは会社を売るために作ったわけじゃないだろう。モノ作りのためだろ」
「別に会社を売るわけじゃないわよ。先方の持ってる顧客とマンパワーを使わせてもらうだけよ」
「それだけじゃないだろ、傘下になりゃ財政も経営方針も握られてしまうぞ。そうやって提携の泥沼にハマって会社を乗っ取られたりするんじゃないのか」
「これが業界ってもんでしょ、あんたは杞憂しすぎよ」

「俺はずっとこの五人で地味にやっていければと思ってたんだが」
「この会社を作るとき最初に言ったわよね。生き馬の目を抜くスピードの今の時代じゃ、ベンチャーしかないって。会社経営ってのは生モノなのよ。いつまでも同じところにしがみついていたら流れに乗り損なってしまうわ。買収なんて会社が成長していくための小さな流れのひとつよ」
まあ言ってることは分かるんだが、それにはちゃんとした方針っていうか目標っていうか経営の方向性があってのことでだな、行き当たりばったりで好きなことをやってる俺たちが言えることじゃないと思うんだが。

「買収ってことは株主が変わるってことだ。つまり今の取締役会は解散ってことだろ、お前は俺たちをクビにしたいのか」
「あたしはクビにはならないわよ。あんたならまあ、部長にでも採用してあげるけど」
「俺は職が欲しくて言ってるわけじゃないんだがな」
「あんたがそこまで言うなら、いいわ。ストックオプション付けてあげる」
「金の問題じゃねえよ!」
俺はハルヒの机をドンと叩いた。ハルヒが言っているのは、中河の会社の株を安く買える権利をくれるってことなのだが、俺はそんな数年分の年収を越すほどの金が欲しいわけじゃない。……いや、欲しいな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:35:18.29 ID:ICLZwPgo<> 翌日、ハルヒと長門は会社にいなかった。表向きは業務支援ソフトの営業だと言っていたが、たぶん買収の打診に行ったのだろう。企業買収ってのは資本の横槍が入ったり株価に影響したりするんで、極秘裏に進めるのがセオリーらしい。
「あいつらがいないとやけに静かだな」
「そうですね」
「古泉、お前はどう思ってるんだ」
「どうと申しますと」
「中河の買収話だよ」
「ああ、あれですか。よろしいんじゃありませんか」
「聞くだけ無駄だった。お前はいつでもハルヒの味方だからな」
「なにも贔屓目で賛成しているわけではありませんよ。少なくともここは涼宮さんが作った会社ですから、自分が不利になるような買収は受け入れないはずです。ということはSOS団のメンバーにとって不利益になるようなことは起こらない、と考えるべきでしょう」
「そんな悠長なこと言ってていいのかよ。株式会社ってのは資本を掴まれたらおしまいだぞ」
「今回の買収がどういう待遇で行われるのか、それにもよると思います。独立した事業部として編入されるのか、あるいは別の子会社として存在できるのか」
「跡形も残らないくらいに組織に吸収されたらどうするんだ」
「まあ、どうなるか今後の展開を見てみましょう」
機関という本業が別にあるからか、こいつはSOS団の行く末に少し能天気すぎる。グループ内に入ってしまえば子会社やら事業部なんてどうにでも再編されちまうんだが。

 前にも話したかもしれないが、うちは簡単に株式を売ることはできない株式譲渡制限会社で登録している。会社を解散するとか売るとかしたいときは取締役会の同意が必要だ。
なはずなのだが、不安に思って登記のときに作った約款を見てみると、役員の過半数の賛成が必要ってことになっていた。あんときはテンプレートを多丸さんにもらってそのままコピーして作ったのだが、今になって考えれば全員一致の賛成票にしとけばよかった。そうなれば俺一人ででも阻止できただろう。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:35:44.08 ID:ICLZwPgo<> 反対と言ってるのはまだ俺ひとりなんだが長門はどうするんだろう。あいつは元々ハルヒの監視が役目だし、部長氏は意外とハルヒの尻に敷かれてるから賛成にまわるかもしれない。いやまて、それ以前に株主が株を手放す意思がないと成立しないはずだ。
まかり間違って鶴屋さんがうちを叩き売ったりはしないだろうが、ハルヒのゴリ押しで売られないとも限らん。先に根回ししておこう。

 俺は電話を取って鶴屋さんにかけた。
「キョンです」
「もしもーし、鶴ちゃんだよ」
「どうも株主さん、いつもお世話になっております。今ちょっと話せます?」
「いいよ。もしかして中河くんのことかい?」
「あれれご存知だったんですか」
「ハルにゃんからちょっと相談があるんだけどってメールが来ててね、近いうちに株主総会を開きたいらしいのさ」
鶴屋さんひとりの株主総会か。なんだか寂しいな。

「じゃあ単刀直入にお願いしたいんですが。鶴屋さん、反対票を投じてもらえませんか」
「キョンくんはいやなのかい?」
「なんというか、考え方が古いのかもしれませんが、俺は別に上場企業にならなくても持ち前の技術を売るだけの経営で細々とやっていきたいんです」
「キョンくんは根が職人なんだねえ。分からないでもないさあ」
その割には技術らしい技術は持ち合わせていませんが。

「買収っていうと聞こえが悪いけど、目的地にたどり着くために乗り物を乗り換えるって考えればいいんじゃないのかな。電車から飛行機に乗る感じでさ。うっとこも、会社そのものじゃないけど経営権を買ったり売ったり繰り返しながらきたんだけどね」
いっぱしの経営者らしく、思いのほか鶴屋さんは平然としていた。
「そうだったんですか。でも、自分が手塩にかけて育てた会社を売るのっていやじゃないですか」
「うーん。あたしはその会社が手を離れるのを“卒業”だと考えてるさ。同じ経営者が続けるより業界と景気にもまれたほうが企業としての競争力が強くなるっていうかね、まあモノにもよるんだけど」
「はあ、そんなもんですか」
「今SOS団は流れの速い業界にいるわけでさ、知識がなくてなにもアドバイスしてやれないあたしなんかが株主やるより、動向を知ってる親会社がいたほうがいいってのはあるよね」
なるほどね。俺もそれくらい割り切ってこの会社をやっていければいいんですけどね。
「まあ株主さんがそうおっしゃるならしょうがないですが」
「いやいや、あたしはSOS団の経営にはタッチしないつもりだから。今後どうするかはハルにゃんの方針次第ってことさね」
電話を切る前に、鶴屋さんはひとことだけボソリと言った。
「でもね、ゼロから育てた、自分の子供みたいな会社が手を離れるのはやっぱり寂しいさ」

「たっだいまあ、みんな朗報よ!」
「……戻った」
「おかえりなさい、社長、副社長」
勢いよくドアを開いて入ってきたハルヒと長門を古泉が出迎えた。

「みんな集まってちょうだい。取締役会を非常招集するわ」
いよいよ来やがったか。多忙な部長氏も呼んで会議室に五人を集めた。
「聞いてるとは思うけど、我がSOS団がIT業界に躍り出る一世一代のチャンスがやってきたわ。大手企業グループの傘下に入るよう誘われてるの。具体的には中河テクノロジーに吸収合併されるんだけど、あたしたちは独立した事業部として活動できるわ。しかも部下が五十人に増えるわ」
「すっごいじゃないか社長。中河テクノロジーといえばいまや花形だよ」
部長氏が目を輝かせて喜んだ。やれやれ、事業部編入か。ただの歯車だと思うんだが。

「まだあるわ。現在の取締役は起業とこれまでの労をねぎらって、新株購入権付き社債を受け取れるわ。まあ時価にするとひとり当たり二千万くらいだけど、将来は株価に比例して膨れ上がることは確実よ」
「株主の鶴屋さんはどうなるんだ」
「それはまだこれから相談しないといけないんだけど」
「おそらくですが、株式交換になるんじゃありませんか。もちろんレートは高いほうがいいですが」
まあ好意で出資してくれた鶴屋さんがそれで納得するならいいんだが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:37:48.80 ID:ICLZwPgo<>「それにしても、二千万はたいした額の報酬ですね」古泉がうなずいた。「勝手ながら先方のIR情報の裏を取ってみましたが、あの会社の経営状態は非常に安定しているようです。まだ二部上場したばかりですが、顧客数も四半期純利益も右肩上がりに上昇。ITベンダーにありがちな株価の急騰急落もありません」
「でしょでしょ、あたしにはピンと来たわ。これは伸びるって」
お前のピンとやらを安全ピン程度に信用してもいいものかどうか迷うところだが、問題はそういうことじゃない。

「中河テクノロジーの決算書なんかどうでもいいんだがな、俺たちが今までやってきたことはどうなるんだ?」
「もっちろん全部ノシつけて持参よ」
「タイムマシン開発はどうするんだ」
全員が黙り込んだ。と思ったんだがひとり部長氏が不思議な顔をしてたずねた。
「あの、タイムマシンってなにかな?」
やべ、ここにひとりだけ秘密を知らされていない内部の人間がいた。
「あー、部長氏。これは守秘中の守秘で、うちでやってる研究事業のひとつなんですが。絶対に漏らしたりしないでくださいね」
「え……キミ本気で言ってるの?」
今にも笑い出しそうな部長氏だったが、この人はまだまだ正常な人間と見えるな。
「本気に決まってるじゃないの。特許申請もしてるわ」
「そうだったのかい」
「部長さん、これは一世紀くらい未来への投資と考えてください」
古泉が苦笑しつつとりなした。笑わない四人の真顔を見て急にまじめな顔になり、部長氏はうなずいた。いざってときには記憶を消してしまうとか禁則をかけるとか、長門の手を借りないといかんな。

「で、どうするんだハルヒ」
「タイムマシンねえ……」
ハルヒは古泉を見て言った。
「実はもうタイムマシン開発の目的は達しちゃったのよねえ」
「もしかしてジョンスミスか、ジョンスミスだなオイ」
「えへ、じっつはそうなの」
 ハルヒが顔を赤く染めてシナを作り、古泉と目を合わせてニコっと笑ってみせた。えへじゃないよまったく。お前のタイムマシン願望のために過去に飛ばされたり未来に行ったり散々だったんだからな。

 しかし困ったことになったぞ。歴史改変のフォローは過去だけだと思っていたが、このままだと未来にも影響しかねん。つまりハルヒのはじめたタイムマシン開発は朝比奈さんの時代に繋がっているわけで、それが必要なくなってしまうと俺たちの過去も危うくなる。
ここはなんとか続けさせないと、俺は朝比奈さんに未来を託されているわけだからな。

「長門とハカセくんにあれだけ仕事させといて今になってやめるってのはどうかと思うぞ」
「今すぐやめるとは言ってないわよ」
「出資してくれた鶴屋さんにも申し訳ないだろ。秘密裏にでも進めてくれ。お前がやめるってんなら俺がやる」
「あんたに言われなくてもやるわよ」
ハルヒの願望とやらは欲しいものを手に入れてしまうと消えてしまうらしい。もしかしたら宇宙人未来人超能力者も消えてしまいかねん。安易に願い事をかなえてやるのも考え物だ。

「長門は買収についてどう思ってるんだ?副社長として」
「……わたしは部下に過ぎない。社長の意思に準ずる」
「お前が主力製品の業務を担当してるんだから、もっと忌憚なく意見を言っていいぞ」
主観での意見を求められて少し迷っているようだったがやがて口を開いた。
「……十分な資金力のある企業の内部組織として活動することには一定のメリットがある。ただし将来的に二転三転して売却されることも考えておかなければならない」
かなりシビアな見方だが的を得ているな。

買収のときに特許権やら技術資産やらが本社に持っていかれるのは必至だ。その後でもし中河の会社の経営がやばくなったら真っ先に売却候補に挙がるのは新参の俺たちだろう。
あるいは中河の会社そのものがグループ内でバラバラに分解されるかもしれない。
今どきはグループ内の資産を分割して整理することが多く、子会社の株をひとつの持ち株会社に集めて経営権を集中管理するようになっているからな。
そこで働く人たちも資産として扱われるらしく、正社員と思って働いていたら実は関連の人材会社からの出向だった、なんてこともよくある話だ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:38:37.75 ID:ICLZwPgo<> 今は鶴屋さんの暖かい羽の下で好きなことをやって暮らしているが、そんな金と数字に分解されてしまう複雑な仕組みの中に入って俺たちが無事生き残っていけるのかどうか。
「ハルヒに古泉、その辺はどうなんだ?俺たち全員がバラバラになって、中河の企業グループの部品として生きていく覚悟があるのか?」
「次のステップに登るためならそれくらいの犠牲は必要でしょ。今までは経営戦略を固めるための予備期間だったけど、そろそろ実力を発揮する段階だと思うわ。目標は市場のシェア一位よ」
「今までが準備運動だったってのか。俺は今の顧客をベースにしてもっと足場を固めるべきだと思うんだが」
「まあまあ、僕たちはまだまだ小さな企業ですし、今だから冒険ができるというメリットを活かすチャンスでもあります。失敗してもまたやりなおせばいいんです。もし中河さんの会社が解散しても、僕たちが失うものはなにもありません」
「そ、そうよね古泉くん。入ってみて面白くなければやめればいいのよ。またみんなで会社作ればいいんだし」
「言うことはまあ、もっともなんだが」
「とにかくあたしはもっとでかいことをやりたいのよ」
「まあお前がそこまで言うなら、平の取締役の俺にはなんとも言えないさ。ただし、」
「ただしなによ」
「今日の議事録には反対票として記録してもらうぞ」
悲しいかな、それが俺のささやかな意思表示だった。

 なんだかんだ言って俺はこの会社が気に入っていた。ハルヒが部活をはじめたときもそうだったが、最初は正体不明でなにをするのか分からない集団が、やっているうちにやめられなくなり、次第にそれなしでは生きていけなくなる。あいつの願望を実現する能力とか奇妙な空間や巨人を作り出す能力とは別で、ハルヒには人にわけの分からない生き甲斐を感じさせるという不思議な力がある。

 もちろん本人が楽しいからやるんだろうが、飽きてしまうと別のことに目が行ってしまうのはいつものことだ。俺はどっちかというと同じところで同じ幸福を味わっていたい。可能な限りいつまでもそうしていたいと願うんだ。

 ハルヒのやりたいことは分かっている。あいつはいつも遥か上を、自分の手の届かない場所を見つめて生きている。宇宙人を呼んだときも未来人を呼んだときも、タイムマシンを作ると言い出したときも。ハルヒの辞書には満足という文字がないのか、休む間もなく願い事を実現している。
あいつにとっちゃ願いの星なんていくらでもあるのかもしれないが、俺にしてみればそんなひとつひとつの流れ星が希少すぎていとおしくて、もう二度と手に入らないかもしれないというか、いつまでも手の中で包んでいたい。今じゃそう思う。

 ハルヒと長門と古泉は、鶴屋さんを連れて中河の会社に今後の打ち合わせに行った。俺はどうしても留守番すると言って行かなかった。どうせ平の取締役だ、俺の欠席のまま勝手に決議でもすりゃいいさ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:39:29.08 ID:ICLZwPgo<> 夕方、ハルヒから電話がかかってきた。受話器を取ると笑い声が漏れ出し、やたら上機嫌なようだ。
「キョン、あたしたち飲み会で直帰するからカギかけて帰ってね。暇ならあんたも来なさいよ」
「……」
俺は何も言わずに電話を切った。別にイライラしてるわけではないんだが、生まれては消えるやり場のないモヤモヤしたこれっていったいなんだ。

 事務所のドアを閉めて帰ろうとすると、エレベータの前で長門に会った。
「直帰じゃなかったのか」
「……少し、話がしたい」
帰ってきた長門は少しだけ喜んでいるような、でも後ろめたいような複雑な表情をしていた。
「……本社で取締役の椅子を用意すると言われた」
そりゃまたえらい好待遇だな。社員二百人の会社の経営陣か。
「それで、OKしたのか」
「……まだ。株主と涼宮ハルヒが買収に応じれば、そうなるかもしれない」
そうなったら、技術知識の下地がない俺はいつか追い出されるかもしれんな。
長門は天にも届きそうなビルの最上階で個室に秘書付き、俺はもしかしたら営業課長くらいにはなれるかもしれんが、どっちかといえば地面に近いフロアでぺこぺこ頭を下げながら働いている。
あるいは退職金で食いつなぎながらハローワーク通いか。急に長門が手の届かない雲の上に行ってしまいそうな気がした。

 ところが、長門が次に放った言葉の衝撃はもっと大きかった。
「……わたしと、付き合いたい、らしい」
俺は血の気が引いた。長門はじっと俺を見つめていた。一分くらいそうしていたと思う。

 にらめっこは俺が負けて目をそらした。
「お前の好きにしたらいい」
ほんとはこんなセリフを言うつもりはなかったんだが。嫉妬とか自己憐憫とか自暴自棄とか、職を失うかもしれないという寂しさやらがぐるぐると渦巻いて、俺はもうどうにでもしてくれという気分だった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/29(月) 19:40:20.75 ID:ICLZwPgo<>「……」
「俺はお前を束縛なんかしないから。好きなほうを選んでいい」
「……本気で言ってるの」
「もちろんだ」
二人は真正面から見詰め合った。長門の漆黒の双眸は少し潤んで、握っている手が心なしか震えているように見えた。黙ってつかつかと俺に歩み寄り、右手を大きくふって俺のほっぺたをひっぱたいた。ぺっちんと乾いた音が廊下に響いた。
「……もう、いい」
長門はくるりときびすを返してエレベータに乗った。
「な、なが……」
俺が手を上げて呼び止めようとするも、無残にもドアが閉まった。俺は叩かれたほっぺたをなでつつ、そのまま固まっていた。あいつ、こんな意思表示もするようになったのか……。

(続く)

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/29(月) 19:49:04.99 ID:dDvRBcIo<>おつーん<> 長門有希の憂鬱W
◆nomad3yzec<>sage<>2008/09/30(火) 18:33:31.26 ID:PpltkjUo<>
三 章

 翌朝、俺はわざと遅れて自転車で会社に行った。昨日長門に謝ろうとずっと電話していたのだが電源を切っているか電波が届かないが延々続いて結局そのままになってしまった。

 ハルヒは俺が出社しないうちに二人を連れて中河に会いに行った。俺は知っていてわざと遅刻したのだが、今度は先方の取締役会と親会社の役員に会うらしい。さっさと進めてしまいたい気持ちは分かるんだがな、交渉ごとを急いでやると損するぞ。

── というわけなので、以下は聞いた話である。

 中河テクノロジーの親会社、つまり筆頭株主だが、揃いもそろってでっぷり太ったお偉いさんばかりだった。バブル崩壊を潜り抜けて来たつわもの共で、きっとあくどい事をして稼いできたに違いないと思わせるような連中だった。
こういう連中は市場の注目を浴びそうな目新しい技術がお好みらしく、人工知能を使った業務支援プログラム技術というものに惹かれているらしい。

「これまで、人工知能と謳われた技術のうち実用化したものは、限定された環境においてのみ稼動するものばかりでした。実用化のコストもさながら、どんな情報にも応じられる汎用性の高いプログラムロジックは実現が難しいとされてきました」
中河のプレゼンだが、技術的な話を延々述べても右から左に素通りするだけだろうというので、深く突っ込んだ話はしなかったらしい。まあこいつらは金を出すだけだからな。
「ここに新時代の人工知能技術を設計された長門有希さんを紹介します。彼女を取締役最高技術責任者として迎え、海外も含めた事業展開を任せたいと考えています」
会議室に全員の拍手が響いた。ハルヒも椅子から立ち上がって深々と頭を下げている。

 突然拍手の波を破ったのは、固いテーブルをドンと叩いた長門の拳だった。経営陣を、それから中河を睨みつけていた。
「……この買収、断る」
「有希ったら、いきなりどうしたのよ」
長門は中河を指差して叫んだ。
「あなたはわたしに近づくために会社を買い取る。わたしは、売り物ではない」
「い、いえ、そんなつもりはまったくありません」
中河は顔を真っ赤にして弁解した。長門は皿のような目で一堂を見回してから、文字通り席を蹴って出て行った。座っていた椅子がクルクルと床に転がった。
「皆さん申し訳ありません、私の言動が誤解を招いたようです」
「とんでもありません、長門が失礼を申しまして、すいませんすいませんっ」
ハルヒが冷や汗をかきかき、平謝りに謝った。
 結局会議は中座し、鶴屋グループの会長と取引銀行も呼んで後日再交渉ということになった。

 俺はといえば、長門、よくやったという気持ちだった。最初この話があったとき、長門の評価がもっと上がればいいという正直な気持ちも確かにあった。ところが上がったのは中河テクノロジーの株価で、新技術の買収に動いてるというネタのリークがあったようだ。
古泉によると親会社の役員筋からの情報漏れらしいのだが、インサイダー無法地帯にも等しい日本の株式市場ではよくある話だという。そして今日、SOS団の経営陣が交渉を渋っているという噂が流れた途端、株の買い気配が止まった。ざまあ見ろだな。

 いやいや、株価なんかはどうでもいいんだがなにか腑に落ちない。ここに来てなにが不満なのかよく考えてみたが、俺たちの作ったSOS団を誰か外部の人間に操られるのが嫌だという、非論理的でマネージメントともビジネスともまったく関係ないところから来る率直な気持ちだった。
SOS団を金を生むためのネタにされるのが嫌なのだ。金にあかせて会社を食っちまうアメーバみたいな大手グループなんぞにSOS団を渡してなるものか。
中河なんぞに長門を渡してなるものか。これは俺の会社だ。俺の長門だ。

 その日、長門はとうとう会社には戻らなかった。自宅の電話にも携帯にも出ない。
「もう、有希ったらいったい何考えてんのかしら」
「SOS団が売りに出されるのが嫌なんじゃないか」
「売るわけじゃないわよ。手漕ぎのボートから豪華客船に乗り換えるだけじゃない」
「俺は長門の気持ちは分かるぜ。金を稼ぐだけが目的の仕事は嫌なんだろう」
「もう、場合によっちゃ取締役から外すからね」
「まあ長門には俺から話すから待ってくれないか」
「いいけど、この交渉がこじれたら有希のせいだからね」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:34:56.92 ID:PpltkjUo<>俺は少しだけハルヒをじっと見て、それから言った。
「お前、中河が長門を誘ってたの知ってたか」
「えっ……」
「たぶん長門は、自分が買い取られるように感じたんだろう」
「そんなこと有希はひとことも言わなかったのに」
「言うわけないさ。俺しか知らん」
「で、あんたはなんて言ったの」
「好きにすればいいと答えた」
「あんた、ずっとバカだと思ってたけど、ほんと最低ね」
「自分でもそう思う」
「あのねキョン、この際だから言うけどね。有希がどれだけ気持ちを溜め込んでるか分かってないでしょ」
「俺なりに多少は分かってるつもりなんだが」
「あたしだったらね、好きだと思ったら嫌われても真正面から好きと言うわよ。でも有希は簡単に表に出すタイプじゃないわ」
「お前が長門を観察してたとは意外だな」
「あったりまえじゃないの。団員の精神状態くらい把握してるわよ」
長門の微妙な心の動きを察知できるのは俺だけだと自負していたが、実はなにも分かっちゃいなかったのかもしれない。

長門の表情に広がる小さな波紋はちょっとした眉毛の動きとか瞬きのタイミングとか視線の流れとか、あるいは口元の緩みなんかなのだが、それを見ていれば今どう思っているか分かる。でもあいつの心の中にある、見えなくて時間のずっと先にあるものは分かっていなかった。
「今から有希に会って謝ってきなさい」
「俺だけが悪いのかよ」
「当たり前でしょ、有希にとっちゃ中河くんなんてどうでもいいのよ。問題はあんたよ。ちゃんとフォローしなさいよね」
「分かってるさ。二三日したら長門も落ち着くだろうと考えてたんだよ」

ハルヒはイライラと眉毛を吊り上げた。
「あんた、あたしが今までやったことでひとつだけ後悔してることがあるの、知ってる?」
「さあな。自信家のお前が後悔するようなことがあったのか」
ハルヒはまっすぐ俺の目を見据えて言った。
「十一年前に、ジョンスミスの電話番号を聞かなかったことよ!」
俺はどう答えていいのか分からなかった。その件に関しちゃ、別の意味で責任を感じているわけなのだが。
「そのときはどうでもいいことのように感じたけど、あれから気になって毎日のように探したわ。近隣の電話帳で探した。身元調査会社も雇ったわ。市役所で調べてもらおうとしたら断られた」
「まあ、そりゃそうだろう」
「何度もあきらめようと思ったし、いっそ別の誰かと付き合おうかとも考えたわ。見合いをしたのはかなりヤケだったけど」
「そうだろな。あれは見ていて痛々しかった」
「そんなことはどうでもいいのよ。あたしが言ってるのは、一度の出会い、一度のデート、一度のキスがそれからの一生を決めることもあるってことよ」
俺はなにも言えなかった。

「昔の人はいいことを言ったわ、一期一会ってね。あんたは十年も待てるタイプじゃないでしょ?」
このハルヒの一言は、俺にはかなり重くのしかかった。もし俺がハルヒの立場だったら。簡単にあきらめてさっさと別のやつに視線を移していたに違いない。
「分かった……。これから行ってくる」
「ちゃんとバラの花束を持っていくのよ」
分かってるさあ、いちいち。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:35:38.22 ID:PpltkjUo<> 長門になんて謝ろうかと難しい顔をしつつロッカーから背広を取り出していると、古泉が、なにがあったかは知らないけどがんばってくださいとニヤつきながら言った。歴史改変のときには散々ハッパをかけたこいつに言われるとはな。

「なあハルヒ、思ったんだが」
「まだいたのあんた、さっさと、」
「お前が打ち合わせに行くたびに中河テクノロジーの株価が動いてるの知ってるか」
「そうなの?」
ハルヒが古泉に向かって首をかしげると黙ってうなずいた。
「買収の目的が一緒に仕事をしたいってのは表向きで、情報やら技術やらを金のネタにされた挙句骨抜きにされるなんてことはよくある話なんだが」
「中河が株価操作してるっていうの!?」
いきなり呼び捨てかよ、さっきまでさん付けだったろう。
「そうとは言い切れないが、グループの中に俺たちをネタに一儲けしようってやつがいるのは確かだ」
「それくらい、業界じゃふつーのことでしょ」
「会社経営はそういうもんだってのは分かってるさ。だがなハルヒ、お前はSOS団が汚い金にまみれてしまうところを見る覚悟があるか?」
ハルヒは黙った。俺たちには金の質をとやかく言うほどの経験もないし経営判断ができるわけでもない。

「でも、SOS団にないものが中河テクノロジーにはあるのよね」
「中河テクノロジーのリソースじゃなくて、鶴屋さんのリソースを借りるほうがまだ安全だろ」
俺たちは傘下にいながら鶴屋グループのことをほとんど知らない。正式には傘下ではなくて鶴屋さんのポケットマネー的な孫会社ってことになっているのだが、ハルヒはそれもそうねぇという表情をしていた。

 あーそうだ、鶴屋さんといえば花を買っていこう。俺は長門のマンションに向かう前に鶴屋さんの店に寄った。
「いよっ、キョンくんじゃないか。今日も疲れた顔してるねっ」
「どうもです鶴屋さん。長門の件はすいませんでした。もしかしたら今回の話は見送りになるかもしれませんが」
俺は腰四十五度の礼をした。
「いやいや、いいっさ。もう買収交渉はうちの親父に任せることにしたから、あたしはノータッチなのさっ。ハルにゃんがやりたいようにやるのがいいさ」
「なんというか、鶴屋さんの親父さんにまでご迷惑をおかけして申し訳ないです」
「わははっ、固い話は抜き抜き。あたしはただの花屋さっ」

世間話に来たんじゃないんだった。
「花束をひとつお願いしたいんですが」
「ほほーう。して、どういうシチュエーションなんだい?」
「実は長門を怒らせてしまいまして」
「あははは。怒った長門っちには萌えそうだね。まあ、男と女にゃそういうこともあるっさね」
「ピンクのバラを入れてもらえますか」
「ようがすっ。ちょい待ち」
予算は一万円くらいにしてもらった。今月はあれこれ出費がかさむ。
「メッセージカードは入れるかい?」
「ええと、ください」
マジックで、ごめんよ長門と書いて刺してもらった。俺にはラテン語なんて書けない。
「まいどありっ。がんばれキョンくん、キミならやれる!」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:36:41.26 ID:PpltkjUo<> 右肩をガシっと叩かれ、二十四時間元気営業中の鶴屋さんパワーをもらって少しだけ気分が軽くなった。自転車の前カゴにバラの花束をのっけて鼻歌なんか歌ってしまうくらいに意気揚々と長門のマンションへと向かった。

 玄関で長門の部屋の番号を押したが、出てこなかった。もしかして眠ってるか、あるいはまだ怒ってて出てこないか。俺は四桁の番号を押して自動ドアを開けて入った。部屋のドアの前でインターホンを押してみるが出てこない。いないのか?

 電話をかけてみるが部屋の電話にも携帯にも出なかった。あいつがこの時間にひとりで出かけてるとは思えないんだが、図書館はもう閉まってるし。気になってあちこちかけてみたが誰も行方を知らないようだった。

 俺は喜緑さんにかけてみた。
「喜緑です」
「もしもし、キョンです。ご無沙汰してます」
「あら、こんばんわキョンくん」
「長門が昼過ぎくらいからいなくなってしまいまして、もしかして行き先にお心当たりがあるんじゃないかと」
「ちょっと待っててくださいね」
喜緑さんは送話口を手でふさいで、なにか話しているようだった。
「キョンくん、あのね。長門さんここにいるんですけど、今は会いたくないらしいんです」
な、なんですと。長門に避けられてるなんて俺も終わりだ。
「ちょっとだけ話したいんですが、電話に出してもらえませんか」
「えっと……ごめんなさい、いやだって言ってますわ」
これは困った。何号室かは知らないが喜緑さんってたぶんこのマンションだよな。新聞の勧誘のフリをして一軒ずつノックして確かめてみるか。
「ドアの前に花束を置いておくので水に挿してくれ、と伝えてもらえます?」
なんだか古泉のときと同じ展開だな。バケツの水を被せられないだけマシか。
「分かりました」それからヒソヒソ声で、「あのねキョンくん、落ち着くまで少し時間を置いたほうがいいと思いますわ」
それもそうだな。とりあえず居場所は分かったんで、俺はよろしくと頼んで電話を切った。喜緑さんならなんとか取り成してくれるかもしれない、なんて甘いことを考えつつ。

 マンションを出て、俺は建物を見上げた。すべての部屋の明かりが灯っている中で、長門の部屋の窓だけが暗かった。

 このまま長門が別れるなんて言い出したらどうしよう。中河と仲睦まじく会社経営にいそしむようになったら、なんかの拍子に中河と付き合うようになったりしたら。
中河も悪いやつじゃない、カリスマ的で誰もが安心して頼れるタイプだ。俺でも男惚れする。
俺は蚊帳の外、取締役が決まっているハルヒとも会えず、古泉とひっそり昼飯を食うだけの毎日。たぶんだが俺はやる気をなくして会社をやめちまうだろうな。

 ついこないだ高校一年の俺を見てあまりのだらしなさに腹が立って殴ったが、根本的に中身が変わってない気がする。こんな俺に誰か喝を入れてくれないものか。そんな他力本願なことを考えてるからダメなんだということは重々承知しているんだが。

 そのまま家に帰る気にはなれなくて、俺はなんとなく公園に足が向いた。街灯の下に黄色いベンチがぼんやりと浮かんでいる。俺は自転車を止め、ため息をつきながら腰を下ろした。
「はあ……」
別に目的があって来たわけじゃなくて、考え事をするときなぜかここに来るのだが、思えばこのベンチにもいろんな思い出があるよな。ここに来ればパブロフ的に安心するというか、時間と空間がからむようなトラブルには必ずといっていいほどここにやって来たものだ。
今でも街灯の下でぽつりと座っている長門がいるような気がするし、振り返れば茂みの中に朝比奈さんがいるような気さえする。いつでも俺を待ってくれていた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:37:35.26 ID:PpltkjUo<>
 公園の入り口のほうから人影が歩いてきた。
「キョンくん、こんばんわ」
「あれ、喜緑さんですか。さっきはどうも」
「お元気そうね」
「元気といいますか、まあ、精神的にはかなり参ってますが。長門のことでいろいろお世話かけてすいません」
「いいんですよ。男性と女性にはいろいろありますから」
この人には色恋沙汰というものがありそうでなさそうで、日ごろがおっとりしているだけに恋愛したらハリケーン並みの嵐になるんだろうななんて失敬なことを考えている俺だが、にっこりと微笑む喜緑さんを見ていると少しだけ気持ちが癒された。

「では、行きましょう」
「行きましょうって、いったいどこへです?」
「キョンくんに会いたがっている人がいるんです」
こんな唐突にいったい誰だろう。俺が不思議がっていると「キョンくんの古い知り合いです」と言った。昔テレビでやってた初恋の女の子とご対面みたいな感じがしなくもないですが、今の俺はそんなやつに会っても愛想笑いのひとつもできんと思いますよ。

 喜緑さんは俺の隣に座って手を握り、
「ちょっと揺れますから、目を閉じていてくださいね」
手が触れたときちょっとドキリとしたが俺は言われるままに目を閉じ、深呼吸をした。たぶん時間移動かなんかだろう。と思った途端やっぱり重力が上下反転する感覚に襲われ、閉じているはずの目蓋の裏で明滅する幻影がぐるぐると浮かんでは消えた。
「もういいですよ」
二人はベンチに座ったままだった。
「どこですかここ」
「駅前公園のベンチです」
時間移動したんじゃなかったのかと周りを見回したが、夜空も公園の木々も同じままで俺の知る風景となんら変わりはなかった。もしかして茂みの中に朝比奈さんが潜んでいるのかと目を凝らして待ったが、ウサギの気配すらない。

「その相手ってのはどこにいるんです?」
「線路沿いの道を下っていくといます」
「そっちって長門のマンションじゃないですか」
「わたしはここで待っていますね」
「喜緑さんも一緒じゃないんですか?」
「ええ、キョンくんだけで会ってきてください」
見も知らない人にひとりで会いに行くのかと、俺が不安げな表情を見せると喜緑さんはにっこり笑って大丈夫と言った。
 喜緑さんは俺の耳元でそっと囁いた。
「ちょっと驚くようなことがあるかもしれません」

 言われるままに俺は公園から出て道なりに進んだ。また妙なことになりそうな予感がして、心細げに後ろを振り返りつつ道を歩いた。
もうすぐ通いなれた長門の住むマンションだが。俺の古い知り合いで最近は会ってなくて、俺に一人で会えってことは朝倉なんかじゃなさそうだし谷口やら国木田なんかに呼び出される筋合いはまったくないし、いったい誰だろう。俺は同級生の顔をいくつか思い浮かべた。まさか中河が俺に用があるとかでこんな呼び出し方をしたのか、なわけはないよな。
この先にはハルヒが地上絵を描いた中学校もあるが、もしかしたらそこかもしれない。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:38:20.76 ID:PpltkjUo<> 右手に、さっき出てきたばかりの長門のマンションが見えてきた。敷地の入り口に人影が立っていて、じっとこっちを見ていた。近づくとよく見知っている女の子がゾウリ履きにワンピースという姿で門柱に隠れるようにしていた。
「……キョン?」
やっぱり長門だったが、俺を二人称代名詞でなくてあだ名で呼んでくれるなんて珍しいじゃないか。昨日から今日の間にずいぶん変わっちまったな。
「そ、そうだが」
「もっと、顔をよく見せて」
長門は目を細めて俺を凝視し、メガネを外してハンカチでレンズを磨いた。よく見ると伊達メガネじゃなくてレンズに度が入っている。

 俺の知ってる長門じゃなかった。あだ名であろうと偽名だろうと、俺のことを名前で呼んだりはしない。この長門は頬を染めて俺に駆け寄るなり両手を握り締め、嬉しくて同時に悲しいという俺でも滅多にしないような複雑な表情をしていた。もしかして俺の歴史改変のせいで長門がこんなに表情豊かに変わっちまったのかとまで疑いもした。
潤んでくる目をメガネを外して何度も拭い、ここに俺が存在するのが信じられないという様子で何度も目をパチパチと瞬きした。
「……ぜんぜん、変わってない」
「長門、だよな?」
「そう。わたしが分からないの?」

 なぜか俺にはそれが分かった。人間の、長門だった。

 長門はまるで俺に逃げられるのが不安とでもいうようにずっと手を離さず、お茶を入れるから上がって上がってと言いながら部屋のドアまで手を引いた。長門に引っ張られて部屋に入るなんて前代未聞だぞ。

 脱いだ靴も揃えぬまま、ともかくテーブルの前にペタン座りをさせられ、長門がキッチンへ駆け込んでいって急須に茶葉を入れてお湯を注ぐ音をじっと聞いていた。
「ええと、聞きたいんだが、ここはどういう世界なんだ?」
「どういう世界、とは?」
「ここが過去なのか未来なのか、お前なら分かるんじゃないかと思ったんだが」
長門はまた妙なことを言うやつだという目で俺を見つめ、
「あなたは、前にも同じようなことを言った。わたしが宇宙人だとか」
抑揚がないところは似ているが、この長門は表情筋の動きが活発で、しゃべりも流暢でたまに身振りすら入れる。それにいつもは少し間を置いて無言からはじまる会話がない。

 見たところマンションの様子も部屋の様子もあまり変わりはないし、俺の知っている長門の部屋と違和感はない。若干カーテンやら家具のデザインやら、インテリアの趣味が華やかな気もするが。
にしても、こいつがヒューマノイドインターフェイスでなくて人間なのはなぜだろう。喜緑さんは俺になにをさせたかったんだろう。こいつはいったい誰なんだ、情報統合思念体はとうとう長門を人間の女の子にしちまったのか。
「それっていつのことだっけ」
「高校の頃、はじめて文芸部部室に来たとき」
文芸部部室にはじめて訪れたのは、ハルヒが部活をはじめるからというんで首根っこをひっつかまれた仔猫のようにして連れてこられたときのはずだが、俺が改変した歴史だと長門に勧められて入部したときだったか。
どっちにしても長門とそんな会話したっけ。宇宙人の話はむしろ長門がしてくれたんじゃ……。
「涼宮さんはあなたが部室に連れてきた。他校の生徒だったので驚いた」
「ハルヒがよその学校の生徒?」
俺はしばらく考え込んだ。ふと、あるシーンが目に浮かんだ。はにかみながら白い紙片を差し出す長門。門の前で体操着に着替えるハルヒ。学ランを着た古泉。朝比奈さんのグーパンチ。つまりこいつは長門が自らと世界を作り変えちまったときの長門か!?俺はまたあの日に戻ってきたのか!?

「それにしちゃ、いろんな意味で俺の記憶と違う気がするんだが」独り言がポロリと漏れた。
「あなたの記憶?」
「あ、いやなんでもないんだ。最初に会ったときのことを詳しく聞かせてくれ」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:39:12.85 ID:PpltkjUo<>「あなたと会ったのは、本当はもっと前。中央図書館がはじめてで戸惑っていたわたしに貸し出しカードを作ってくれた。あのときのあなたはとても親切で印象に残っていた」
「そのへんは覚えてなくてな。学校でもあれがお前だとは気がつかなかったんだ」
それは長門が作った俺との馴れ初めストーリーだな。あんときは過去を捏造されたんだとばかりにイライラしたが、あれは長門流のロマンスだったのかもしれない。
「そう。それから二度目は冬、あなたが突然部室に現れた。わたしが宇宙人だと言い張って戸惑った」
あんときの俺はそりゃもう必死だったからな。今思い出しても赤面するぜ。
「それからわたしが誘って、ここでおでんを食べた。朝倉さんが作ってきてくれた」

 おかしい、この長門はなぜすべてを遠い過去形で語っているんだろう。凝視していると長門は顔を赤くしてうつむいた。それでもじっと見つめていると、俺の長門とは微妙に違うところに気がついた。
「長門、ちょっと立ってくれないか」
「なに?」
長門はテーブルに手を着いてスクと立ち上がった。薄手のワンピースの裾が揺れる。
「身長は今いくつだ」
「ずいぶん測っていないけど、一六〇くらい。どうして?」
あのときとは背丈が違うな。スラリとしていてどっちかというとスレンダーっていうか。
「今、何歳なんだ?」
「二十四。なぜ?」
その答えに衝撃が走った。あの日から八年も経っている。長門によって改変された世界は十二月十八日の未明に俺たちの手によって上書きされ、なにもなかったことになったんじゃなかったのか。
古泉の説明を信じるなら、時間軸が交差して無限記号のような二つの十二月十八日があり、未来からの干渉で事態を修復したんじゃなかったのか。
この長門はあれから八回のクリスマスを数え、北高を卒業して成人を迎えて今ここにいる。未来の本人によって修正プログラムの短針銃を打たれたにもかかわらず、こうして俺の前でメガネをかけたままでいる。じゃあ朝倉はまだ健在で相変わらずおでんを作ってきたりするのか、ハルヒや古泉はどうしているのか。
この世界がどうなっているのか、俺になにをさせたいのか喜緑さんの意図が分からない。

 長門は続けた。
「その次の日にあなたは三人を連れてきた。ひとりは北高の二年生、あとの二人は光陽園学院の生徒だった。そしてあなたはパソコンの電源を入れて忽然と消えた。わたしたち四人を残したまま」

 俺は言葉を失った。あの後がどうなったかなんて考えもしなかった。世界は元通りになり、全員がなにごともなかったと同じように暮らしているとばかり思っていた。

 突然消えたりして残された人がいったいどんな気持ちになるか、心配どころか悲嘆に明け暮れそれが身内なら飯も食えない日々だろう。自分がそんな仕打ちを周りにしていたなんて今になってショックを受けている。結果がどうなるか、Enterキーを押す前に長門のメッセージの意味をもっと深く考えるべきだった。それを受け入れるだけの覚悟が自分にはあるのかちゃんと考えるべきだった。

 俺はあの日に文芸部部室に置き去りにした長門を見た。せめて旅に出るくらいの一言はあってもよかっただろうに。
「その後はどうなったんだ?」
「覚えてない?」
「すまん、記憶が曖昧でな」
「次の日の朝、あなたはカナダへ転校したと聞いた。それ以降まったく音沙汰もなかった」
「そうだったのか……」
「……そして八年経った今、突然現れた」
つまり、こっちの世界から消失したのは俺で、朝倉の代わりに俺自身が行っちまったのか。別れの挨拶もなしに消えた俺を知って谷口の唖然とした顔が目に浮かぶようだ。

 静かな部屋の中で沈黙が二人を包んだ。俺は詫びることすらできなかった。この長門は白くなるまで唇をかみ締め、その後に訪れた俺のいない空白の時間を思い返しているようだった。
いくら自分の世界に戻るためとはいえ、俺はこの長門を別れも告げずに置き去りにしたのだ。意図的ではなかったにしろ長門を八年も独りにしてしまった。信じてくれなくても事情くらいは知っておいてもらうべきだった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:41:52.93 ID:PpltkjUo<> 俺は自分がしでかしたことよりも八年という長い時間が経っていることのほうがショックで呆然としていた。
「長門、すまなかった」
ようやくそれだけが口からこぼれ出た。
「なぜ消えたのかどうして今になって戻ってきたのか、なにがあったのか教えてほしい。それに、わたしが驚いているのに、あなたは再会を喜んですらいないのはなぜ」
この長門は少し怒っている風でもある。その様子を見てなんとなく安心した。なんというか、人間には不条理なことに遭うとそれに対して怒ったり嘆いたり感情を露にすることで少しは落ち着くという、はけ口みたいなものがある。俺の長門みたいに処理不可能なエラーが延々積もったりはしない。それで気が晴れるなら俺を恨んでくれてもいいさ。

「朝倉の知り合いで喜緑さんって人がいてな、その人が俺をここによこしたんだ」
「……」
長門は疑いの目を向けていた。これだけじゃ説明になっていないよな。いっそのことすべてを話すことができたなら、いや、話しても信じてくれるかどうか自信がない。

 長門は俺の手の上に自分の手を載せた。その温かさに動かされるように、俺は口を開いた。ここまで心配かけたんだ、空白の時間を償えるならすべてを明かしてもかまわないだろう。
「長門、お前は異世界を信じるか」
「異世界?」
「うまく説明できるかどうか分からんが、これから話すことは人間のお前には信じられんことかもしれん ──」
俺はいつかの長門を思い出してひとり笑いした。長門流に言うなら、情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない、ってところだな。心配するな長門、ちゃんと伝わったから。

── そう、まるで夢のような話だ。

 俺は、俺自身の世界で最初にハルヒに会ったときからの過去をかいつまんで聞かせた。長門はじっと黙って聞いていた。ときどきうなずいたりはして、俺の長門が世界を改変してしまった日の話にかかると、空想世界の話を聞いているような表情は少しずつ消えていった。

 話の途中でふと思い出してポケットから財布を出した。今も持ち歩いている、存在しないはずの西宮中央図書館のカード。
「これは長門が、つまり向こうのお前が作ってくれたんだ。あのときみたいにな」
長門は見慣れない図書カードを手にして不思議そうにいじっていた。それから一枚の写真。ホームレスのおっさんたちに握り締められて、もうよれよれになって色あせたハルヒと長門のツーショット写真だ。
「これがもう一人の、つまり俺が親しくしてる長門だ。こっちはハルヒで、世界をひっくり返すんじゃないかと超恐れられている存在だ」
「そう。涼宮さんとはときどき会う」
「こっちのハルヒは、あいつらはその後どうしてるんだ?」
「あなたが消えてからかなり怒っていた。いきなりやってきて宇宙人や未来人の話をした挙句、忽然と消えたりするのは卑怯だと」
「あいつらしいな。まさかSOS団の活動を続けたりしてないだろうな」
「続けていた。市内不思議パトロールであなたを捜索していた」
ま、またそんな不毛なことを。やみくもにジョンスミスを探してるなんて俺たちのハルヒと同じじゃないか。まあ唯一の救いはといえば、こっちのハルヒのイライラで閉鎖空間が発生したり世界が滅亡の危機にさらされたりしないことか。

「向こうのハルヒは猫にモノしゃべらせたり目からレーザーを出したりする映画作ったもんだが」
「映画はわたしたちも作った。特殊効果はなかったが、社会問題を扱ったドラマを作った」
「ハルヒが社会派の映画か、俺も見たかったな。四人とも学校が違うのに撮影大変だったろ」
「サークルで作った。四人は同じ大学に入って活動をした」
なるほどね。三年遅れだが結局はみんな同じところに集まったんだな。

 思えば、うらやましい環境かもしれない。ハルヒは世界を作り変えたりせず、長門はエラーを起こさず、朝比奈さんは上司にパシリを命じられたりせず、古泉は神人と戦ったりせず、シャミセンは日本語をしゃべったりしない。
この世界には宇宙人的魔法も時間移動も、世界を救うための超能力も、そしてなにより世界を覆す力もない。当然、俺というハルヒのストッパー役がいないのでそれはそれでバランスは取れているのかもしれないが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:42:48.61 ID:PpltkjUo<> でもまあ、もしあの日と同じ十二月十八日がもう一度あったとしても、俺は元の世界を選ぶだろう。ハルヒのセリフじゃないが、だってそのほうが面白いからな。
「あのとき俺がEnterキーを押したのは、向こうの世界が好きだったからなんだ」
「そう。二つのうちどちらかを選べと言われたら、たぶんわたしもそうする」
和らいだ表情で人間の長門はうなずいた。

「あれからどうなったんだ?長門は今はなにをしてるんだ?」
「大学を出た後、図書館で司書をしている」
俺は中央図書館のカウンターで静かに座っている長門を想像した。俺の長門は実験着を着て論文を書いたり、パソコンのキーボードを光の速さで叩いたりしているが、図書館の司書は本が好きなこいつにいちばん似合う職業かもしれない。

「あいつらはなにをしてんだ?」
「涼宮さんは大学院に進んだ。量子物理専攻だったと思う。朝比奈さんは教職課程を取って小学校の先生。古泉くんは、確か警察庁幹部候補」
古泉がおまわりかよ!趣味の推理好きが高じて仕事になりましたって感じがしないか。
「涼宮さんと古泉くんは去年結婚した」
ま、まじっすか。やっぱりその展開になったのか。尻に敷かれてんだろうなぁ、古泉。北高に入学して来なかったところを見るとこっちのハルヒにとっちゃジョンスミスはあんまり重要な位置づけじゃなかったようだし、それはそれでいいとするか。

「長門は好きな人はいないのか?」
「いる。婚約している」
なにげなく聞いた質問だったのだが、その答えに落雷が落ちたような衝撃が走ってすべての髪の毛と体毛が逆立った。そ、そうだよな、二十四歳だもんな。この美貌じゃ男どもが放っておくはずがないよな。

 長門はキャビネットの中から写真立てを持ってきた。野郎と並んで長門が写っている。極上なスマイルを浮かべながら長門の肩に手をやった野郎の姿が非常に嫉妬を掻き立てる。えらく体格がいいな。なんか、知ってるやつのような気がするんだが。
「こ、これ、中河じゃないか!!」
「そう。なぜ知ってるの」
「中学校のときのクラスメイトでな」
っていうか、俺のいたの世界じゃ中河が長門に遭遇するのは高校一年の冬休みで、長門が世界を改変する後のことなんだが、時系列がおかしくないか。
「彼とは大学で一緒だった」
なるほど、世間は狭いっていうがまさにそれだな。そういや中河が長門を見初めたのは高校一年の五月ごろのことで、あれがそのまま引き継がれてこっちの世界にも繋がってるんだとしたらありうる話かもしれん。

 っていうか、あんな小型のブルトーザーみたいなゴツイ男のどこがよかったん、……。
「……」
「なに?」
「いや、なんでもない」
こいつにはこいつの人生があって、幸せになる権利がある。いや、幸せにならないといけない。二人を祝福してしかるべきことのはずが、なぜだか悲しい。
「それがお前の望んだ幸せならいいんだが」
「そう。わたしは今、幸せ」
「そうか、ならよかった」

 何度も言うが、こいつにはこいつの人生がある。ハルヒのときだって、朝比奈さんにだって、俺は勝手に嫉妬したり干渉したりしていた。長門のときだって、中河が今にも燃え出しそうな情熱的なラブレターを俺に託したときも正直いい気はしなかった。できることならほかの男をそばに寄せたくはなかった。

── あなたは、彼女には彼女の人生があるということを知るべき。

長門の声が耳にこだまする。それを聞いたのはいつだったろうか。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:43:54.97 ID:PpltkjUo<> 喜緑さんが俺をここへよこした理由が、なんとなく分かった気がする。ハルヒに釘を刺されたセリフじゃないが、人生なんてたったひとつのタイミングで簡単に変わってしまう。
干渉したり嫉妬できるうちはまだいいが、一度流れが別のほうへ変わってしまえば、ダダをこねようが地団太を踏もうがどうすることもできない。
人生もそれぞれ、行く道もそれぞれ、重なり合った二人の時間線がふとしたことで永久に離れてしまうこともあるんだ。
「よかったらこの写真もらえないか」
「え……これでいいの?」
「ああ。幸せそうなお前が写っているこの写真が欲しい」
「そう。それでよければあげる」

 喜緑さんのことを思い出してふと時計を見ると九時回っていた。だいぶ話し込んでしまった。
「すまんがそろそろ帰るわ。人を待たせてるんだった」
「そう、」
長門がそう言い終えないうちに電話がかかってきた。長門はうんとかええとか返事をしていたが、やがて、
「彼が今から寄ると言ってる」
「中河か、これからか」
「そう。あなたにも会ってほしい」
どうしよう。俺はその、なんというかいくらガタイのいい中河でもあいつが怖いなんてことはないが、向こうのあいつは俺にひどい仕打ちをしてくれてるわけで、面と向かって堂々と話をするなんてことはできそうにないぞ。
「すまん、やっぱ落ち着いて話をするのは無理だ。いくら異世界でもお前はやっぱり俺の長門だし、その婚約者なんかと堂々と話ができるほど度胸の座った男じゃないし」
「そう」
「小心者だからな」
そういうと長門は目を細めてクスクスと笑ってみせた。ああ、この長門はちゃんと笑うんだな。

 立ち上がって腰を伸ばそうとすると、足元でみゃあという鳴き声がした。鼻のまわりと前足が黒い、白猫がズボンの裾にまとわりついていた。俺にシャミセンのにおいがついているのかもしれない。
「猫飼ってるのか」
「そう。あなたに言われてから飼っている」
ここはペット禁止だったはずなのだがまあバレなければいいか。俺はその猫を抱き上げた。妙に見覚えのあるその表情と模様に、もしかしたらこいつは時空に対して曖昧な長門んちの猫なんじゃないかと、その名前を呼んでみた。
「おい、ミミ」
猫の姿は消えるはずもなく、みゃあと一声だけ鳴いた。
「なぜこの子の名前を知ってるの」
「いや、なんだかそんな気がしたんだ。俺のいた世界でお前がちょうど逆の模様をした猫を飼ってる」
「そう……」
これはたぶん偶然なんかじゃなくて、なにかの因果ってやつだろう。ミミ、長門のことをよろしく頼むぜ。

 靴を履いて玄関を出るとビーチサンダルをペタペタと鳴らして長門がついてきた。エレベータの前に立ち止まり下向きボタンを押して待った。
エレベータのドアが開いて中に入り、ここでいいよと手を振ったのだが、長門はそのままドアの内側に入り込み俺から離れようとしなかった。ドアが閉まり、そこが密室になると長門はじっと俺の目を見つめた。
「あなたが……好きだった。今でも」
湧き上がる気持ちを抑えきれないように俺の背中に腕を回し、肩に顔を埋めた。俺は心拍数が少しずつ上昇するのを感じた。なにやら名状しがたいモヤモヤが胃の辺りで生まれて止まない。こいつを連れて遠くに逃げたいという衝動となぜだか泣き出したくなるような衝動が、水面に垂らした絵の具のようにぐるぐると渦巻いて心の中に溶け込んでいく。俺も長門の小さな背中に腕を回してギュッと抱きしめた。

このまま永久にエレベータが止まらず下降し続ければいい、そう願った。そして俺の長門がこれを見たらどう思うだろうかという説明しがたい後ろめたさに充たされた。
「ああ、知ってた。許してくれ……」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:45:00.91 ID:PpltkjUo<>長門は俺の胸に顔を埋め、じっと鼓動を聞いていた。
「ごめんなさい。ずっと言えなかった。やっと言えた」
あんまり俺を責めないでくれ。もう少しで泣きそうだから。
「もし誘ったらだが、俺といっしょに来るか?」
言ってはならないことを言ってしまった気がする。婚約までした長門が相手を裏切るなんてことはありえないのは分かっていた。いくら感傷的になっているとはいえ俺は裏切りをそそのかすようなことを言う自分を恥じた。だが長門は一瞬の躊躇も考えることもなく、
「あの人はずっとわたしを待っていてくれた。だから、彼に報いたい」
「そうか。安心した」

中河は一途なやつだ。十年経ったら迎えに来るとまで誓った男だ。最近じゃ誘うほうも誘われるほうも恋愛が極端に簡単になっちまって、一人の女のために人生を投げうてるやつはそうそういない。俺なんかよりよっぽど根性ある男だと思う。
この長門だって、ここで一時の感情に流されるより、心に決めたやつと一緒になるほうが幸せになれるさ。
「変なこと聞いてすまんな、今のは忘れてくれ」
「いい。ときどき遊びに来て。年に一度でもいい」
それができるのかどうかは、俺には分からない。この世界と向こうの世界がどうやって繋がっているのかも俺には分からないのだ。
「約束はできんが、もし来れたら向こうの長門を連れてくるよ」
この長門はにっこりと笑ってうなずいた。

 エレベータのドアが開いた。さっきまで密室を満たしていた重たい空気は少しずつ薄まってゆき、昼間の名残の匂いのする微風にまじって流れた。

 玄関の自動ドアを出てマンションの門柱のところで長門はぴたりと止まった。俺は数歩歩いて手を振り、また少し歩いては手を振った。もうひとりの長門、会えてよかった。さよならだ。

 振り返ると、マンションの明かりを背に受けた長門の小さな影がぽつりと見えた。それに歩み寄る別の影がひとつ、そして二つの影が寄り添い互いに抱き合ってひとつになった。長門がこっちを指差してなにかを話していた。

 ここで中河と話をする勇気はさらさらない俺だが、一声だけ叫んだ。
「こら中河!長門を不幸にしたらタダじゃおかんぞ!」
俺はそのまま走った。走って逃げた。ニヤニヤ笑いを浮かべながら。

「おかえりなさい」
駅前公園に入ると喜緑さんが笑っていた。さっきのが聞こえていたようだ。
「喜緑さん、長らくお待たせしました」
「いかがでしたか」
「ええ。あいつも元気そうで安心しました」
「それはよかったですわ」
「あの長門、ヒューマノイドインターフェイスじゃないですよね」
「ええ」
「あれは人間の長門でしょう」
「あの子は長門さんがそうなりたくて生まれた長門さんです。八年前の十二月十八日に」
「ここがどういう世界のなのかなんとなくは分かったんですが、古泉の話だとあの日は確か未来からの干渉で上書きしたんじゃないですか?ええと、ベルヌーイ曲線でしたっけ」
「いいえ、上書きはされていないんです。ただわたしたちの時間軸から切り離されただけ」
「俺たちの時間とは別に存在してたんですか」
「そうです。十二月十八日の未明に、情報統合思念体によって切り離されたものなんです。この時間軸はわたしたちのいる世界とは二重化された世界。一枚の紙の裏側みたいなものですね」
なんだか難しい話になってきたが、つまり並行世界みたいなものか。長門も言っていた覚えがある。時間が分岐するのは要素の重ね合わせだ、と。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:46:15.83 ID:PpltkjUo<>「でも、長門のエラーから生まれたこの世界をなぜ残したんです?」
「……」
喜緑さんはそこで少し考え込む様子を見せた。
「たとえばですが、キョンくんが別の世界を作ったとして、それが失敗だったからといって消してしまうでしょうか」
「難しいですね……」
前にも同じジレンマを感じた覚えがあるが、あれはいつのどんな事情だったか。ハルヒならそれをやりかねんが、俺自身がそれをやるかどうかと言えばたぶん無理だろう。どんな世界でもそれが最初から存在するべきでなかったなんてことは俺には言えない。少なくとも、そこに長門がいる限りは。

「時間線と世界線はつねに同じ点で繋がっているんです。時間のほうだけを都合よく修正することはできないんです」
「でもまさか、俺のいない世界が八年も存在し続けていたなんてショックです。俺自身が突然消えてしまったわけですから」
「ええ。わたしたちも放置していたわけではなくて、キョンくんの周辺はできるかぎり調整を施しました。この時空は、今は情報統合思念体の管理下にあります」
「ということは俺の家族なんかも、俺がいなくてもいつも通り生活してるわけですか」
「はい。長門さんが二重化したために複雑な修正を施してしまいましたが、今のところちゃんと機能しているようです」
単に時間を元に戻すだけだと思っていた、俺たち人間の考えが浅かったってことだな。そういうことならまあ、こっちの長門とハルヒと、それから朝比奈さんをよろしく頼みます。古泉?あいつは俺のコンプレックスの塊みたいなやつなんでどうでもいいですが。

「こちらでのみなさんはごく平均的な人生を過ごしている、と観測されています。ただひとり、あなた以外は」
そこで喜緑さんは俺に伺うような目線になった。
「これで……よかったでしょうか?」
「よかった、とは?」
「わたしたちは人の幸福という概念について研究して来ましたが、まだ不明な点が多いんです。それに関与する資格はないのかもしれません」
「それは人間自身にも分からないことですよ、きっと」
「キョンくん不在の穴埋めが本当にできたのかどうか分からなくて……」
銀河を支配する集団にしちゃえらく控えめなこの質問は、穏健派の喜緑さんだから腰が低いのか、あるいは、すべての派閥を代表する率直な気持ちなのか。

 思い起こせば、あの日に起こったのは長門のエラーなんかじゃなかったのかもしれない。
長門は俺に二つの人生を用意してくれた。毎日が全力疾走で手段を選ばず願望を叶えるハルヒに特殊な力を持った三人がそのフォローに追われる世界と、かたや、ハルヒの引き起こすドタバタに魔法や時間移動や超能力を使わなくても生きていける世界。
ハルヒだって長門だって、特別な力がなくても幸せになれるんだ。願望を実現する能力があってもなくても毎日がドタバタなのには変わりない。こっちの長門に会ってみてそれが分かった。
どっちの世界の住人もそれなりに幸せを享受していて、それなりに苦労していて、ああだこうだ言いつつもやっぱりこっちがよかったとそれぞれが思うに違いない。
隣の芝は青い、青すぎてそこに住んでみたくなるなんてことはなくて、いくら雑草がはびこっていても庭は庭、自分ちの敷地が住みやすいもんだ。

「喜緑さん、ボスに伝えてください、ありがとう、と」
喜緑さんのやや不安げな表情は消え、にっこりと微笑んだ。

「では、帰りましょうか」
「またいつか、来れますよね」
喜緑さんはただ微笑むだけで肯定も否定もしなかった。
 喜緑さんが右手を上げて詠唱し、二人の周囲にぼんやりとオレンジ色の球体が生まれた。俺たちを包む球は最初ゆっくりと浮上し、地面を離れてからぐんぐんと急上昇した。町の明かりが次第に小さくなってゆき暗い宇宙が目の前に迫ってきた。だんだんと気が遠くなる。今までのことがすべて意識の彼方に飛んでいく。

 気がつくと俺はベンチで眠っていた。公園だった。見上げると星が出ていた。
「喜緑さん?」
見回してみるが気配はない。先に帰っちまったのかそれとも最初からいなかったのか、もしかしたらあれはすべて夢だったんじゃないか。確かに眠ってはいたが夢にしちゃリアルすぎるだろ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:47:32.31 ID:PpltkjUo<> 俺はかくも長き長編映画を見た後のような余韻に包まれ、しばらく頭がぼーっとしていた。気温はかなり下がっているはずだがなぜか顔だけは火照っている。
メガネをかけた長門を思う後ろ髪を惹かれるような気持ちと自分の現実に帰ってきた安堵とがないまぜになって、浮かんだ花びらのように俺の心の水面をくるくると踊っていた。やがて俺の長門のことを思い出し、エレベータの中での心臓が締め付けられるようなあのモヤモヤは少しずつ消えていった。

 俺はポケットを探って携帯を取り出した。ベンチの背もたれに体を預けたまま夜空を見上げ、呼び出し音を数えた。向こうの中河がどうあれ、こっちの中河には話をつけておかなければならん。俺のモチベーションが下がらないうちにな。
『なんだ、キョンか。どうした』
「おい中河、お前に言っておくことがあるっ」
必要以上にハァハァと鼻息が荒い気がするんだが、まあ普段からこういうことに慣れていないからだな。
『尋常じゃないな、なにがあったんだ』
「愛してるんだ。誰にも渡さん」
『は?大丈夫か、酔ってんのかキョン』
「俺は八年をかけてやっと本当の愛に目覚めたんだ。横槍を入れるやつは断じて許さん」
『気持ちは嬉しいんだがキョン、すまんが俺にはそういう趣味は、』
気のせいか前にも同じシーンがあったような。
「俺の女に手を出すなつってんだよ。お前がいくら体育会系アメフト出身でも喧嘩の相手くらいなってやるぞ」
体力勝負からいってタックルは無理だがコイントスなら勝てる自信はあるぞ。
『な……』
中河はしばし沈黙したまま、どう答えていいのか分からないようだった。

『もしかして長門さんのことか』
「あったりまえだろうが」
『その……なんだ。キョン、すまん。俺が思い違いしてたようだ。お前はてっきり涼宮さんと付き合ってるのかと思ってたんだ』
ま、またそれか。ったくどいつもこいつも俺とハルヒをくっつけないと気がすまんのか。
「ハルヒは古泉と付き合ってるんだよ」
『知らなかった、あのハンサムなニヤけ男とか』
ニヤけ男は合っているが、お前に言われるとなぜか腹が立つな。

「いくら長門が好きでも先に誰かに打診するもんだろうが。たとえば俺にだな」
『そうだな。いや、八年前に道化師を演じた大失態があるから分かってくれてるだろうって思ってたんだが』
まあ、気持ちは分からんでもない。あの一件以来、中河といや俺たちの間ではピエロだったからな。
『どうだ、これから飲みにいかないか。お詫びに俺のおごりだ、長門さんも呼べばいい』
俺は腕時計を見たがすでに十時を回っていた。あ、ええっと、どうだろう。
「今ちょっと長門とトラブっててな、今日は無理だな」
『なにかあったのか』
「お前のせいで長門を怒らせちまったんだよ。俺と中河の好きなほうを選んでいいなんてことを言っちまったのさ」
『俺もかっこ悪いが、お前も相変わらずだな』
携帯のスピーカーから中河の笑い声が漏れてきた。つられて俺も他人事のように笑った。
『まあ、俺が言うのもなんだが、長門さんを大事にしろ。ああいう女性は滅多にいない』
当たり前だろ。長門みたいな女は世界中、いやこの宇宙のどこを探しても見つかるまい。この銀河を統括するやつらの中でもユニークな存在なんだぞ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/09/30(火) 18:48:10.38 ID:PpltkjUo<>「ああ、それからな中河」
『なんだ』
「今回の買収の件なんだが、ほんとは長門が欲しかったんだろ」
中河は少し黙り、電話の向こうではたぶん顔を赤くしているんだと思うが、
『図星だ。長門さんと二人で仲むずまじく会社経営なんて甘い夢を見てた』
「なんとまあ、お前もよく夢を見る男だな」
中河は、それが俺の生きるためのエネルギーさ、と言って笑った。
「ここんとこ会社の株価が上がってるのはお前の仕込みなのか」
『ああ、あれか。俺自身は関与してないがグループ内の金融機関でやってる買収の資金繰りみたいなもんでな、一部は別会社を経由してSOS団に流れるはずだった。厳密に言えばまあインサイダーなんだが』
自社の株価を操作して資金調達する仕組みになってたのか、知らなかった。

「買収はきれいごとばかりじゃないってことか」
『ああ。だが長門さんの協力が得られないのなら今回の話はあきらめようと思う』
「まあそう急ぐな。無理に傘下にしなくてもビジネスパートナーとして付き合っていけばいいじゃないか」
『長門さんが許してくれればいいんだが』
「あいつは根に持つやつじゃないさ。ひとこと侘びを入れとけばいいだろ」
『そうか。お前にも悪いことしたよ』

 中河は悪いやつじゃない。女のことになるとちょっと空回りするってだけだ。空回りしすぎてひとりクラッシックバレエを踊ってしまうことも多々ありだが、世の中に男と女がこれだけいりゃ、こういうこともあるさ。

『なあキョン』
「なんだ」
『あのときの長門さんの怒った顔』
「それがどうした」
『正直、惚れた……』
な、中河てめえ!この期に及んでホの字になってんじゃねえ。

(続く)
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/30(火) 18:48:44.49 ID:PpltkjUo<>う〜風邪引いた寝る<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/30(火) 19:36:53.64 ID:P1nuHDEo<>ふぅ・・・<> 長門有希の憂鬱W
◆nomad3yzec<>sage<>2008/10/01(水) 19:15:46.02 ID:FrfKX/so<>
四 章

 電話を切ってベンチから立ち上がり、軽いめまいに似た妙な達成感に浸っているところで携帯がブルブル震えた。ハルヒに電話するのをすっかり忘れていた。
『キョン、ずっと話中だったけどどうしたの』
「ああ、中河と話してた」
ハルヒはクククと漏らすような笑い声を出しながら、
『で、で、ひとりの女をめぐって男同士のケリをつけたのね?』
「別に決闘を申し込んだわけじゃないさ。あいつは知らなかったんだよ、俺と長門が付き合ってることを」
『へー。世の中にはあんたより鈍い男がいるのね、見直したわ』
それは褒めてんのかけなしてんのかどっちなんだ。

「長門と一緒に会社経営したかったんだとさ。昔と変わらず熱に浮かされてるっていうか夢見がちっていうかな」
『前言撤回、中河さんはあんたよりずっと情熱的だわ。好きな人と仲むずまじく会社を運営していくなんてロマンがあるじゃないの』
冷めてて悪かったな。俺のロマンスは爬虫類並みの体温かもしれんがあんなゴジラ級アメフト野郎のどこがいいのか教えてくれ。

「買収の話はあきらめるらしい」
『そう。まあ有希が乗り気じゃないみたいだし』
「買収はきれいごとだけじゃないからな。SOS団が汚い金にまみれるのは俺も見たくない」
『そうね。これで反対票が二人になったわね、あたしも考え直すわ』
収入のほとんどを長門テクノロジーに頼っている我が社の状況から言えばあいつの票は俺の三人分くらいは裕にあると思うが、しがらみってやつを好きになれないのはハルヒも同じだと思う。

『それで有希はどうしたのよ、あんたちゃんと謝ったの?』
「ああ、ずっと喜緑さんちにいるらしいんだが、会ってはくれなかった」
『やっぱりね。有希はあんたにかなりがっかりしてるわよ』
俺ばかり責めないでくれ。
『あんたがどうでもいい態度を取るから悪いんでしょ、自覚しなさいよね』
「それは十分分かったから。ここんとこ胃がキリキリ痛んでつらいんだからな」
『あんたにはちょうどいい薬よ』
ハルヒは笑った。俺の性格にまともに効く薬があったら一ダースでも欲しいもんだ。ハルヒは自分がシアワセなもんだから、余裕で他人の恋愛を批評しやがる。

 ハルヒが俺の手を離れたことは俺にとっちゃ万歳三唱でも脱帽旗振れでもするところなのだが、長門がもし俺の前から消えてしまったらどうなる?
俺のことを三年プラス五年も待ちつづけてくれた長門有希が、とうとう愛想を尽かしてしまったらどうするんだ?
あいつにとっちゃゆるやかな恋愛のほうがいいだなんて、実は自分に都合のいいように解釈してただけじゃないのか。あいつの本当の願望が何なのかすら、いまだに分かってないのに。

「いいや、それは違うぞ」
自分で自分に説教するなんてのは誰もやらんだろうが、ボソリと口をついて出た。あいつのことは分からなくてもいいんだ。分かっていなくても俺はあいつを手放したくない。独りにしてはいけないのは長門じゃなくて、俺が独りになりたくないんだ。
 自分が何が欲しいのかやっと分かった。もう前借りでもローンでもなんでもいい、今すぐダイヤの指輪が欲しい。
『なにが違うってのよ』
「なんでもない今のは独り言だ。ハルヒ、ちょっと今から会えないか」
『何言ってんの、もうお酒飲んでしまったわよ』
「相談したいことがある」
『もう、めんどくさいったらないわね。車で迎えに来なさい』
俺の思いつめた声で雰囲気を察したのか、ハルヒはそれ以上は怒らなかった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:17:05.47 ID:FrfKX/so<> そこから一度自宅に戻り、車のキーを取ってまた出かけた。ハルヒのアパートの前で車を止めてクラクションを鳴らすと、ドアが開いてブラウスに膝までのジーンズに雪駄履きのハルヒが出てきた。なんて格好してんだ。
「いい?あんたのおごりだからね」
分かったから、とりあえず乗れ。
「ちょっと相談があるんだが」
「なによ、できることとできないことがあるけど」
「こんなときになんだが、退職金を前借りできないか」
「はぁ?そういう話は職場でしなさいよね」
近場の喫茶店に入った。酒場でもよかったんだが、どうもこういう話をするのに酒を飲むのは不謹慎な気がしてな。

「それで、なんでそんな急にお金が必要なのよ」
「長門にプロポーズしようかと思うんだが」
こいつとの付き合いも長いが、相談ごとを持ちかけるのははじめてかもしれない。それも結婚の相談と来た日にゃ、俺もかなり思いつめているということだな。
「そう。有希にもとうとう春が来たのね……。今まで努力した甲斐があったわ」
ハルヒが目頭をおさえて……口元はニヤニヤ笑っていた。お前がなにをどう努力したんだ。
「なに言ってんの、あたしはこれでも団員のシアワセのために尽くしてきたんだからね」
「じゃあその、団員のシアワセためにボーナスを前借りさせてくれ」
「取締役にボーナスはないでしょ。あんた、貯金いくらあんの」
「三十万、くらいしか」
「あたしが五十万カンパするから、それでエンゲージリングを買いなさい」
「それはありがたいんだが、カンパじゃなくて貸すってことにしてくれ」
ハルヒにお恵みを受けるなんて夜眠れなくなる。
「いいわ、催促はしないから。キヒヒヒ」
なんだその不吉な笑いは。これでまたハルヒに弱みを握られてしまうかと思うとため息のひとつも漏れそうだが、まあ弱みのストックはまだあるわけでひとつくらい増えたところで変わりはしないだろう。

「サイズは分かってんの?」
「ああ、九号だ。前にイエロートパーズをやった」
「じゃあついでにマリッジリングも買いなさい」
「それはまだ早いだろ。そんとき長門とジュエリーショップに行くほうがいい」
「そう、じゃあそれでもいいわ。問題は明日中にサイズを揃えてくれる店があるかどうかね」
「明日って、いくらなんでも急すぎんだろ」
「あんたはモチベーションが下がるのが早いから、思い立ったらすぐやんなさい」
高モチベーションだけで生きてるお前に言われちゃ、グウの音も出ないよ。

「ともかく、店のほうはあたしが手配するから、貯金降ろしておきなさい」
「現金でか」なぜか所はばかるように声を潜めて言った。
「あったりまえじゃないの。あたしたちの就業年数で八十万をカード決済できるわけないでしょ。即金で買いなさい」
明日、現ナマで三十万を持ち歩くのか。ボディガード付けたほうがいいんじゃないのか。

 翌朝、長門から休むと連絡があった。長門から直接ではなく喜緑さんからだった。あいつこのままやめるつもりじゃあるまいな。まあ待ってろ、今日はなんとしてでも会いに行く。一軒ずつドアを叩いてでもな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:17:30.93 ID:FrfKX/so<> ハルヒが指輪の手配は任せろというから情報戦でも仕掛けるのかと思っていたが、なんのことはない、手当たり次第に電話をかけまくっているだけだった。
「もしもし、予算八十万くらいで九号のサイズのダイヤの指輪在庫ある?ない?あっそう分かった」ガチャン。
「ええと次はっと」
分厚いイエローページをめくって一軒ずつシラミつぶしらしい。
「僕も手伝いますよ。こういう手配ならお手の物です」
「さっすがはあたしの古泉くん、頼りになるわ」
「涼宮さんのためなら、たとえ火の中、水の中」
ハルヒは古泉のほっぺたにチュと音を立ててキスをした。やれやれ、お熱いことで。本当に溶鉱炉の中にでも突っ込んでもらいたいところだ。

古泉が携帯電話で誰かに問い合わせ、たぶん機関のお抱えの宝石商かなんかだろうが、朗報を伝えてきた。
「夕方までにならなんとかサイズ調整するそうですが、どうします?見てみますか」
「時間が惜しいわ。数点をデジカメで撮ってメールしてもらって」
「かしこまりました」
数分後、古泉宛にメールが送られてきた。
「これ、これにしなさいキョン。ピンク系のダイヤ」
知らなかった、透明だと思ってたダイヤにもほんのりだが色がついてたんだな。
「なんだかインスタントすぎないか。もっとゆっくり品定めしたかったんだが」
「今まで十分に時間があったのに、さぼってたあんたが悪いんでしょ」
「分かってるって。まあ、俺はいいんだが指にはめるのは長門だからな」
「好きな人からもらえるならなんでもいいのよ。ダイヤなんてただの炭素の塊だわ」
それを言っちゃおしまいだろうが。鉛筆の芯でも指に載せてろってのかよ。

 結局その、ハルヒのお気に入りというダイヤを頼むことにした。
「手配できました。細工が済んだら連絡をくれるそうです」
「キョンいいわね?連絡が来たらダッシュで受け取りに行くから、二十四時間体勢で待機してるのよ」
はいはい。まるで自分のプロポーズみたいじゃないか。古泉を見ると細い目で俺たちを見て笑っている。余裕かましてるなこいつ、明日はお前の身に降りかかることかもしれんぞ。
「僕はちゃんと計画性を持って行動していますからね」
いまいましい、ああいまいましい。

 夕方五時ごろ、古泉の携帯が振動した。俺とハルヒはビクッと飛び上がった。
「すいません、間違い電話でした」
なにやってんだ俺たち。結局店から電話があったのは六時過ぎてからだった。
「そろそろ出かけましょう。用意はよろしいですか?」
「ラジャ」
「らぢゃ!」
なぜか意味もなく敬礼などしている俺たちである。ハルヒも楽しいのは分かるがそこまで付き合わなくてもいいのに。古泉のBMWに飛び乗り隣の街まで高速を飛ばした。

 ジュエリーショップなど滅多に来るもんじゃないんだが、というよりはじめてだな。前に長門に指輪を買ってやったときにはネット通販で選んだからな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:17:54.38 ID:FrfKX/so<> 店員が白いジュエリーケースをうやうやしくトレイに乗せて持ってきた。ふつうより大きめの、タバコの箱くらいのサイズだった。うやうやしくフタを開けるとまわりにぱっと光が散った。手をかざすとダイヤから放たれた光の点々が映っている。これは美しい。
 ダイヤの光の屈折の角度を計算して面を作ったとかいう、確かええっと、
「ブリリアントカットですね」
「今そう言おうとしてたんだよ」
カットした面が五十八面あるというこの輝きは確かにきれいだ。本物を手にしたのははじめてな気がする。おふくろが持っているのは知っていたが、一度も触らせてくれなかった。
「なかなかいいじゃないの」
「このランクにしてはかなりお買い得ですね」

「注文したのって指輪だけだよな。このイヤリングはなんだ?」
ジュエリーケースにはひとつの大きな点と二つの小さな点が光っていた。
「ああ、それはさる方からの贈り物です」
「俺がいくら動物が好きだからって猿からもらうわけにはいかんぞ」
「指輪とイヤリングのセットをプレゼントすると、長門さんに約束したのでしょう?」
華麗にボケてみせたのにスルーしやがったなこいつ。それになんであのときの会話を知ってんだ、と怪訝な顔をして見せたらハルヒがニヤリと笑っていた。情報漏れはこいつか。
「鶴屋さんからのプレゼント、ということにでもしておきましょうか」
なるほど、出所は機関ってことか。また借りができてしまった。

「ではお会計を」
現金で札束を見せても店員は驚いた様子はなく、丁寧に二度数えていた。即金で買う客って俺たち以外にもいるのか。
「稀にですが、いるらしいですよ」
「ふつうはローンとか銀行振込だとかだと思ってたが」
「まあ宝石を買うような金額を生で持ち歩くのは危険ですからね。月賦や金利なしボーナス一括払いなどのほうが多いでしょう。ブライダル専用ローンなどもあります」
どっちが店員か分からんような営業スマイルで解説する古泉は、すぐにでも宝石商に転職できそうだった。

「それからこれは、涼宮さんに」
古泉は店員から小さなケースを受け取り、ハルヒに差し出した。
「まあっ」
ハルヒの目が少女漫画のようにキラキラと輝いた。
「急なので、指輪ではありませんが」
箱を開けると薄紫色のピアスが入っていた。古泉はピアスをハルヒの耳につけてやり、鏡を見せた。
「あたしたちの記念の石、アメジストね。すてきだわ、古泉くん」
さっき宝石なんてただの石だとか言ってなかったか。
「なに言ってるの、こういうのは気持ちなのよ。この石には愛がこもってるの」
その言い方、俺のダイヤにはなにも詰まってないみたいじゃないか。などと鬱っぽく突っ込んでる場合ではない。俺はダイヤの指輪が入ったジュエリーケースを握り締めた。今日、これを長門の薬指にはめてやる。カナヅチで叩き込んででもはめてやる。

「さあっ、もたもたしてないで戦場へ行くわよ」
ハルヒの号令一過、ジュエリーショップを飛び出して今にも駐車違反の切符を切られそうな古泉の車に乗った。<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:18:24.55 ID:FrfKX/so<>
 長門のマンションの前で車が止まった。
「あたしたちは駐車場で待ってるわね。すぐ結果を知りたいから」
「分かった。とりあえず行ってくる」
「何度も言うと重みがなくなりそうですが、今度こそ幸運を」
「おう、ありがとよ」
窓から伸びた古泉の手のひらをパシリと叩いた。

 入り口の前で七〇八を押してみるが、やっぱり出ない。まだ帰ってないのか。俺は四桁の解除キーを押して中に入った。
 ドアの前に昨日残して帰った花束がまだ置かれたままだった。あれからまだ帰ってきてないらしい。もし帰ってるならこんなところに花を放置したりするはずがない。せっかく鶴屋さんパワーが注入された花も一日放置されたとあってはつらかったようで少し萎びていた。

 俺はハルヒに電話をかけた。
「いないようだからここで待ってみる。お前たち帰ってていいぞ」
『分かったわ。あとで連絡ちょうだいね』
「おう。振られてもここから飛び降りる前には電話を入れる」
『なに縁起でもないこと言ってんのバカ!』
怒鳴られて耳がキンキンしたが、俺にも寒い冗談を言えるだけの余裕が出てきたってことだ。これもハルヒパワーの恩恵か。

 ドアの前でじっと待ってると管理人室に通報されそうなので、長門から借りていた合鍵で部屋に入った。当然ながら電気はついておらず、換気されていない空気が淀んでいた。

 長門のいない長門空間。問題が起こるたびに、ここに来ればなんとかなった安心の場所。元々静かな部屋だが主が居ない今は静かというより無音だった。ここには長門の無言もない。ページをめくる音もない。静かな吐息もない。俺を見つめる瞳の瞬きすらない。時間すらも止まっているように感じた。

 俺は部屋の電灯を付け、手に持っていた花束の重さを思い出してキッチンへ行った。リボンと包みを解き、全体に水をまぶした。空いてる花瓶がないのでパスタ入れを洗って花瓶代わりにした。萎れた花には水に砂糖を入れるといいと誰かが言っていたのを思い出し、調味料入れの砂糖を少しだけ水に落とした。
 バラを挿し真中に背の高い花を立ててまわりにカスミ草を挿した。俺が花を活けるなんて今までにあっただろうかね?

 俺は喜緑さんに電話をかけた。
「どうも、キョンです」
『お疲れさま、長門さんはまだこっちにいるんです』
「伝えてもらっていいですか、帰ってくるまで長門の部屋で待っている、と」
喜緑さんは少し考え、『分かりましたわ』と言った。『でも、無理しないでくださいね』とも言った。

 俺は蛍光灯が寒々しく部屋を照らす下でテーブルの前にぽつりと座り、じっと待ち続けた。ポケットからジュエリーケースを取り出して、ため息をついては開け、中身を見て閉じ、またポケットにしまうということを何度か繰り返した。

 時計の針が八時を回った。長門はなかなか帰ってこない。もしかしたら今日も喜緑さんの部屋に泊まるつもりなのかな。俺はまたポケットからジュエリーケースを取り出そうとして、これが何度目かを数えてやめた。
こんなことならもっと前に、大学時代にでもあいつと結婚しとくんだった。ガラじゃないが駆け落ちの末に学生結婚でもすればよかったんだ。
長門と付き合いだしてからまさかこういう未来が俺の行く先にあるんだとは微塵も考えていなかった。

 今日だけで数年分のため息をついたかもしれないが、またため息をつき、テーブルに突っ伏した。
「疲れた……」
そう呟いた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:18:51.25 ID:FrfKX/so<>

 長門は公園にいた。

 なにを探すでもなく、なにを見るでもなく、ただじっと立ち尽くしていた。
 両手のひらを、なにかをすくい上げるように、ゆっくりと上に向けた。
 やがて静かに、まわりに、白い綿の切片が舞い降りた。
 小さな手のひらの上で、舞い降りては消えるそれをじっと見ていた。
 消えたそれは小さな水の玉になり、降りてくるのと同じ静けさで滴り落ちた。

 顔を上げ、こっちに向かってゆるやかに手を振った。
 長門の唇が、五文字の言葉を呟いた。

 そして長門はゆっくりと消えた。



 物音で目が覚めた。ドアを開ける音だ。誰かが靴を脱いで入ってくる音がした。
「……」
立ったまま、じっとこっちを見ていた。
「な、長門。おかえり」
「……ただいま」
返事だけはしてくれた。こないだ俺をひっぱたいたときのような、なにかを言わんとする真剣な表情は消えていた。少し落ち着いたようだ。
「あ、あのときはすまん。俺は完全に動転していた」
「……」
長門は何も言わなかった。俺がパスタ入れに活けた花をチラリと見た。
「中河に嫉妬していたんだと思う」
言い訳にしては聞こえがいいが、ほんとはそれだけじゃない。

 長門は、少しだけ首をかしげて俺を見た。
「……なぜ、泣いてるの」
「え?」
俺は頬の皮膚がやたら突っ張るのに気が付いた。泣いてたのか俺。
「ああ、さっきうたた寝していた。お前の夢を見た」
「……」
俺は顔を洗いにシンクに行こうかと思ったが改めて座りなおした。言うべきことを言うまではここを動かないぞ。

 長門はキッチンに行った。お茶を入れる音が聞こえてきた。俺はネクタイを整えフローリングに正座した。背筋を伸ばしてごくりと唾を飲み込んだ。口の中がカラカラに乾いている。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:20:14.89 ID:FrfKX/so<> 長門が現れた。まっすぐにその瞳を見据えて……、そのはずが、視線が揺れてどこを見ているのか自分でも分からなくなった。
「な、長門、俺と結婚してくれないか」
長門は一瞬、湯飲みを載せたお盆を落としそうになった。
「……結婚」
その言葉を噛んで含めるように発音した。その意味を探っているようだった。
「婚姻関係、一対一の男性と女性による法的な関係。財産、生殖、子供の親権などを共有する。通常、生涯連れ添うとされる」
「そうだな。当たってる」
「……」
「ここ数日お前との距離が開いて、やっと分かったんだ。お前と一緒にいたい。この先もずっとな」

── 長門、お前とは長い付き合いだ。ハルヒのドタバタのフォローに駆けずり回ったり、とち狂った急進派に命を狙われたり、未来に行ったり過去に行ったり、時間にすりゃ何万年か何億年か分からないがそりゃもういろんなことがあったさ。なにかあるたびにお前に助けられてきた俺だが、お前は愚痴ひとつ言わず、なんの見返りも求めなかった。そんなお前のために俺ができるのは、いっしょにいてやれることくらいしかない。あと五十年か六十年かは分からないが、こんなドタバタが続いてもいい、残りの人生をお前と過ごしたい。毎朝目が覚めて、最初に見たいのはお前の顔だ。

 俺はポケットからジュエリーケースを取り出し、長門の目の前でフタを開いた。
「受け取ってくれるか」
「……ダイヤモンド。炭素の純結晶体。地球上の物質でもっとも固いとされる。これは……かなり高価」
いつになく饒舌だな。化学の授業はいいから。
「……分かった。承諾する」長門はうなずいた。
そ、それだけでいいのか?もっとこう、“ほんとにあたしでいいのっ?”、“ああ、世界中どこを探してもお前しかいないさっ”とかいう感動的なセリフはないのか。せめて目を潤ませて笑顔のままキラキラと輝いてみせるとか、いや、俺はメロドラマの見すぎだな。
「よかった。断られたらどうしようかと思った」
「……わたしの答えは、ひとつしかない」」
俺は一気に緊張が崩れ、脱力系のため息と笑いに誘われた。

 長門らしいといえば長門らしい返事だが、濃厚な感慨にふけりたいところなのにあっさり味過ぎてレッドペッパーとかレモン果汁を振り掛けたくなるようなプロポーズだった。しかしまあ、女の子の気持ちに鈍い俺とあまり感情を露にしない奥ゆかしい長門にすれば、これがこの二人に似合った運命の瞬間なのだろうね。

 長門は指輪をつまんで眺めていた。俺はそれを左の薬指にはめてやる。細い指の上で透明の石が八方に光を放った。
「……これの意味は、なに」
「これはだな、自分には近々婚姻届を出す予定の人がいる、という意味だと思う」
「……把握した」
長門は何を思ったか、ごそごそとノートパソコンを取り出してACアダプタを繋いだ。
「なにをするんだ?」
気が早いが結婚式場でも調べるのか。
「……住基ネットに侵入する。あなたとわたしの戸籍データベースを改竄する」
「ま、待て待て」俺は笑いながら制した。「そういうことじゃなくてだな、もっとちゃんとした手順でやりたいんだ」
「……わたしには、まだ戸籍がない」
「そうだったのか」
考えてみれば、長門には出生届も国民健康保険もないだろう。長いこと一般市民として暮らしているヒューマノイドなのに、その人口にカウントされていないなんて意外だった。

 長門はいつものように真っ暗なコマンドプロンプトを開き、呪文のようにやたら長いコマンドをパタパタと入力していた。カーソルがぴこぴこ点滅していたかと思うと、あっという間に大量の数字と記号の羅列が流れ始めた。
「……侵入コードを解析。暗号化ロジック解析、完了。……住民基本台帳データベースにアクセスした」
長門の指はかつてコンピ研と一戦を交えたときより高速に往復していた。長門の手にかかれば住基ネットのハッキングなんてちょろいもんだな。
「……わたしの戸籍謄本を偽造し、あなたとの婚姻関係を記録する。さらにあなたの戸籍謄本、住民票にも手を加える」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:20:43.35 ID:FrfKX/so<>そこで指が止まった。俺をじっと見つめる黒い瞳。俺の脳内では曲名すらよく分からない交響曲が大音響で鳴り響いていた。
「……許可を」
その表情を見て俺はハッとした。長門がはじめてみせる満面の笑顔。俺には光輝いて見えた。もしかしたらこれが、長門、これがお前の待っていた奇蹟なのか。
「よし、やっちまえ」
「……そ」
賽は投げられた。二人はいまここに、正式に結婚した。
 ほんとは二人で婚姻届を出したかったんだが、まあこういうのも長門流か。

『なにやってたのよアホキョン!携帯の前でずっと待ってたのにぃ』
十一時を回ってハルヒから電話がかかってきた。
「すまんすまん。つい甘いムードになっちまって。長門にかわるよ」
『有希、元気?鈍いバカキョンのせいで辛かったでしょう?』
「……彼と結婚する」
『ほんとにキョンでいいの?なんならもっといい男紹介するわよ』
やっと丸く収まりそうなのになんてこと言い出すんだ。長門は俺を見て、ひとことだけ言った。
「……彼がいい」
『妬けるわ。まあ、あんたが選んだのなら、相手が誰であろうと応援するから』
「……ありがとう」
『ただし、もし飽きたら代わりはいくらでもいるんだからね』
「……分かった」
おいおい、ほんとに分かったのか。俺の代わりっていったい誰がいるんだ。
「ということなんで、古泉にもよろしく伝えといてくれ」
『スピーカーモードで聞いてるわよ』
古泉の、ご婚約おめでとうございますという声が聞こえた。

 電話を切って、俺はしばらく長門を抱いていた。イヤリングのことを思い出しケースから取り出して柔らかい耳たぶにつけてやった。襟元に光る点を落としてキラキラと小さく揺れている。長門は薬指の上に乗った石をじっと見つめていた。俺もそんな長門をじっと見つめていた。もう言葉なんていらない気がする。
「……ひとつ、教えて」
「なんだ?」
「……わたしと結婚しようと決めた、その動機」
「それは、なんというかだな、」
そこで口ごもった。俺はたいていの場合、誰かに背中をせっつかれるとかケツを蹴り上げられるとか、外圧でどうしても動かざるを得ないようになってはじめてコトを決める性質なのだが、長門にもそれが分かってるようで、俺がなぜ自発的に重大な決定をしたのか不思議に思ったのだろう。

「ややこしくてどう説明すればいいのか分からんのだが、」
俺はポケットから写真を取り出した。長門はそこに写っている中河と自分の姿を見て首をかしげた。
「……この写真を撮ったときの記憶がない」
「これはお前じゃない。信じられないかもしれんが、別世界のお前に会ったんだ」
「……異次元同位体?」
「そういうのとはちょっと違う気がするな。向こうのお前は中河と婚約しててな、なんというか、実に幸せそうだった」
ずっと俺を待っていたことは言えなかった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:21:12.78 ID:FrfKX/so<>「……そう。わたしには考えられない」
「俺もまあ気持ちは複雑だったけどな。あいつにはあいつの人生があって俺の出る幕なんかじゃない、俺には俺の長門がいるって思ったんだ」
「……」
「俺の長門を幸せにできるのは俺しかいない。そう思った」
「……そう。嬉しい」
「正直言うと、二人も中河に取られてたまるかって感じだったんだが」
ガラにもなくかっこつけて汗をかいている俺を見て、長門は微笑んだ。急にまじめな顔になり、

「……わたしも、異世界のあなたを知っている」
「異世界の俺?どこにいるんだそいつ」
「……物理的な位置を示すことはできない」
「紙の表と裏の間だよな。どんなやつなんだ?」
「……あなたとほとんど変わらない」
「やっぱりお前といるのか」
「……わたしではない別の女性と一緒にいる」
「その女って誰だ?」
「……」
長門はなにも言わず、少しだけ寂しそうな表情をした。それはもしかしたらハルヒなのかもしれないし、俺の知らない別の誰かかもしれない。
異世界の俺ってやつが俺と同じ性格を持っているんだとしても、人ってのはひとりで生きてるわけじゃない。誰と誰が出会うかはまったく予想できないわけで、たぶんそうやって歴史も世界も変わっていくのだろう。
メガネをかけた長門のことを思い出すと今でも寂しい気持ちは起こるが、あいつのおかげで俺自身がなにをするべきかを知ることができた。そのことを、向こうの長門には感謝するべきだろう。そうじゃないか?

 喜緑さんのことを思い出して俺はふと疑問が浮かんだ。
「情報統合思念体はどう思ってるんだろうか」
「……これが涼宮ハルヒにどう影響を与えるかを検討している」
「お前自身の意思については?」
「……尊重するか、任務を優先させるか、それも検討している」
「相変わらず勝手なやつらだな」
「……しょうがない。彼らの意思は集合の総意」
「よく分からん。俺があいつらと直接話はできないのか」
「それは……難しい。あなたは概念での会話を理解できない」
「それもそうだな。いやまあ、ふつう結婚するときは相手の両親なり後見人なりに挨拶をするものなんだが」
「……わたしを通して伝えることは可能」
「じゃあ、長門と人生の時間を共有したい、と伝えてくれ」
「……分かった。伝える」
長門は部屋の宙をぼんやりと見つめる。

「……我々とは時間の概念が異なるが、あなた自身の自時間でいいか、と聞いている」
「それでいいさ」
「あなたが年老いて寿命を全うしたとしても、長門有希の存在は永世残るがそれでもいいか」
「そうなのか……」
考えてもみなかった。長門は俺が生まれる前から情報統合思念体にいる。俺が死んでからもたぶん存在し続ける。情報生命体から見た有機生命体の寿命は、たぶんカゲロウくらいのもんだろう。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:21:38.45 ID:FrfKX/so<> 俺はまじまじと長門を見た。
「長門は俺が死んだらどうするんだ?俺は人間だ。いつ事故が起こらないともかぎらん」
「あなたが自時間を終えても、わたしは残る」
「そうだよな。旦那が先に死んで未亡人になるようなものだな」
「……あなたが死んでも、わたしの中に残る」
「そうか。じゃあ質問への答えはこうだ、それでいい」
長門は俺の首に腕を回して抱きついた。
「……伝えた」その声はどことなく頼りなかった。

 俺も長門も、二人の存在があまりに違いすぎることに、いまさらながらに気が付いたようだった。

 翌朝、俺はハルヒのニヤニヤに遭遇しないうちに古泉を捕まえて男子トイレに引っ張っていった。
「古泉、ちょっと相談があってな」
「なんなりと」
「昨日、長門と入籍した」
「婚約の間違いですか?」
「いや、入籍だ」
「まじっすか、失礼。それはまた電撃的ですね」
「大声じゃいえないんだが、住基ネットに入り込んで戸籍を書き換えた」
「なんということ、それは重大な発言ですよ。こともあろうにシステム構築会社のスタッフが官庁のシステムにハッキングだなんて」

「実は長門には正式な戸籍がなくてな。ついでだっていうんで婚姻情報も書き込んでしまった」
「そうだったんですか。長門さんらしいですね。まあ知られなければ構わないでしょう。わが国のセキュリティ事情なんてその程度のもんです」
「さっきと言ってることが違うような気もするが、今のは聞かなかったことにしてくれ」
「分かりました。それで、相談というのは?」
「入籍したはいいが、まだ親に婚約すら話してなくてな。可及的急ぎで結婚式をやらねばならん」
「それは順序が逆というか、また急な話ですね。まあ、なんとかならないこともないでしょうが」
「それで、長門の後見人というか、親族代表を誰かに頼めないだろうか」
「ああ、それならお安い御用です。うちの機関にも長門さんのファンがおりましてね」
「そうだったのか」
「年齢的にも新川さんあたりがよろしいかと。彼も長門さんの大ファンです」
うーむ。闇の組織に長門の隠れファンがいたなんて、ちょっと不安だ。

「長門さんのお父さんの役でどうでしょう。イメージ的にぴったりだと思いますよ」
「そうだな。新川さんに頼もう」
「承知しました。打診しておきます」
「それからな、これは無理なら断ってもいいんだが」
「水臭いですよ。なんでも言ってください」
「式場がな、図書館がいいと思うんだ」
「中央図書館ですか。面白い試みですね」
「休館日に場所を借りれないかと思ってはいるんだが、どうだろう」
「ほかでもないあなたと長門さんの頼みです。なんとかしますよ」
「無理言ってすまんな」
「こういうことにかけては、うちの機関はお安い御用です」
なんだかSOS団御用達の便利屋稼業をやらせてしまってるような気もするが、スマン幹部、そのうち埋め合わせはする。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:22:12.62 ID:FrfKX/so<>「それにしても、あなたがよもや長門さんと結婚されることになるとは。正直驚きました」
「高三の頃から付き合ってたのは知ってるだろう」
「僕が言うのは、宇宙人製アンドロイドと婚姻関係を結ぶということがです」
「俺にとっちゃあいつの素性がなんだろうが関係ないんだ」
「さすがですね。ときに、長門さんのどこがよかったんですか」
「なんというかな。ハルヒはひとりででも勝手に暴走していられるだけのエネルギーがあるが、長門には、ひとりにしてはおけないと思わせるものがあるんだよな」
「長門さんには強力なバックボーンがあるじゃないですか」
「そりゃあ長門には何度も窮地を助けてもらった。だが、完璧を期しているはずのアンドロイドがだ、感情を処理できなくて暴走したり、人間的な自我に目覚めたり、誰かがフォローしてやらないといけない。お前はそうは思わないか?」
「なるほど。もしかしたら、それは彼女の計算の上でのことかもしれませんよ……」
そうなのか……。少し不安になってきた。

「冗談ですよ。彼女はあなたが好きなんです。それは僕にもずっと前から分かっていました」
「どれくらい前から?」
「例の、暴走したときでしょうか。あれはどう考えてもあなたへの熱いメッセージですよ」
やっぱりそうか。俺は少しだけ考え、思い直して言った。
「仮にあいつが計算の上でやったとしてもだな、俺は長門と一緒にいるほうが自分が必要とされていることを感じていられる」
「あなたが言うと実に真に迫ってますね。さすがです」

「お前のほうはどうなんだ?ハルヒとはうまくいってるのか。あれから浮いた話すら聞かないが」
「ええ、おかげさまで僕たちは幸せそのものですよ」
ハルヒと古泉がくっついてからというもの、こいつらが単体でいるのを見たことがなかったな。今すぐにでも同棲しそうな勢いだが。
「僕はそうでもないんですが、どちらかというと涼宮さんのほうが事を急ぎがちといいますか」
「まさか親に引き合わされたんじゃないだろうな」
「実はそのとおりでして」

 ハルヒは古泉を連れて親類縁者全員に会わせてまわったらしい。
たいていの場合、付き合っている相手を親兄弟に紹介するのはそろそろ結婚してもいいかなという打診も含めてそうするもんなんだが、あの告白の日から舌の根も乾かないうちにハルヒの家に連れて行かれ両親とご対面させられたというのだから、ハルヒという生き物の特性を熟知している古泉でなければとても耐えられんだろう。
スーツを着てハルヒの実家に乗り込んでいく古泉に向かって、魔よけの札を貼ってやるとか合掌くらいはしてやればよかったなと思う俺だった。

「ご苦労だったな、緊張したろう」
「いえいえ、それなりに楽しいイベントでした」
こいつの、人生でどんな局面でもスマイルを通せる余裕はいったいどこから来るのか。
「あいつの両親ってどんな人なんだ?」
「いたって真面目なお父様、物静かで温厚なお母様でいらっしゃいますよ。良妻賢母というのはあのような方をいうのですね」
「親父さんのほうが厳しいタイプか。お前を見る目も厳しかったろ」
「いえいえ。ご存知ないかと思いますが、お父様とは以前から知り合いでして」
「なに、機関のコネか」
「ええまあ。あまり大きな声では言えませんが、涼宮さんが手をつけられない状態になったときの保険の意味で、機関では涼宮さんの身内にツテを作っておいたのですよ」
な、なんと用意周到なのだ。
「ときどき野球の試合を見に行ったりしています」
「なんとまあ。元々の知り合いかよ。それなら安心して娘を任せられるってもんだな」
「僕もこういう展開になるとは思ってもみませんでしたが。先方は僕が涼宮さんの会社の取締役になったことを知って、婿候補の期待のようなものはあったらしいですが」
なるほど。向こうは向こうで前から品定めしてたわけか。まあなんにせよ、ハルヒの父親が味方についてくれているのは心強いことだ。外堀から埋めていくとは俺よりずっとハルヒの扱いがうまい気がするぜ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:22:39.55 ID:FrfKX/so<> 長門テクノロジーによって唐突に入籍したのはいいのだが、うちの親は露も知らないでいる。二人ともときどきハルヒと遊びに来ていた長門とは遭遇しているはずで、付き合ってることも妹を通じて知ってるはずだった。
盆休みに叔母から早く嫁さんを見つけろと言われたばかりなのだが、できるだけ早く今週中にも婚約を周知させなければいけない。
いくらなんでも急すぎんだろと自分に突っ込みをいれたいくらいなのだが、すでに入籍という既成事実が発効してしまったので笑うどころではなくなってしまった。
「おやじとおふくろ、ちょっと相談があるんだけど」
「なによキョン、改まって」
「……なんだ」
最初にしておそらく今回きりの出演だが、うちの親である。息子が改まって話をしようとしているにもかかわらずテレビのバラエティ番組なんかに釘付けになっている二人だった。

「ええと実は、唐突だが来月結婚することにした」
あんぐりと口を開けた二つの頭がくるりとこちらを向いた。結納とかもう古臭い習慣はいいからと言おうとしたのだが、息子の結婚します宣言があまりに唐突過ぎたらしく、おやじは呆然としおふくろは泣いて怒った。
「あんたいきなりなに言い出すのよ、心の準備ってもんがあるでしょ!」
この口調、知ってる誰かにすごく似てるな。ネクタイを引っ張られてクビを絞められそうな勢いだ。
「ごめん。ちょっとこみいった事情があってな」
「まさか出来ちゃった婚とかいうんじゃないでしょうね」
違う、断じてそれは違う。長門とはそういうハプニングには至っていない。
「指輪を買うのに金が足りないんだけど少し貸してもらえないかな」
「結婚指輪くらい買ってあげるわよ。この日のために貯金くらいしてあるわ」
いや、自分の結婚のために親のスネかじるのはどうかと思うんだが。まあいつか何かの形で返すことにするか。

「それで、ご両親にはご挨拶に行ったの?」
「いやまだだけど」
「まだって、なに考えてるのあんたは。ちょっとキョンそこに座んなさい」
「さっきから座ってるけど」
「苦労して育てた娘を他所にやるのにまだ挨拶もないなんて、あんた常識でモノを考えなさいよね」
それから一時間ばかし説教された挙句、ともかく先方のご両親と会う席を用意しろと約束させられた。
 長門の両親か、困ったな。まさか情報統合思念体を呼び出すわけにもいかんしな。なぜか羽の生えた朝比奈さんの姿が浮かんだが。

「キョンくん、結婚するにも手順ってもんがあるでしょ。まあ相手が有希ちゃんだっていうから驚かないけどね」
妹にまで言われちゃ俺もヤキが回ったな。
「……」
親父はまだ呆然から開放されなくて最後まで黙っていた。その無言、誰かに似てる気がするんだが。

 一度長門を晩飯に呼べということになり連れてくることにした。
「長門、結婚指輪を買いに行きたいんだが、いっしょに行くか?」
「……うん」
「その帰りにうちでメシを食いに寄ってもらっていいか。うちの親が会いたいそうだ」
「……分かった」
「ドタバタしててすまんな。ほんとはもっとゆっくり進めたかったんだが」
世間では婚約から結婚式、新居への引越しまでは一年くらいかけるものらしい。俺が言うのもなんだが、気の長い話だな。
「……いい。あなたらしい、やり方」
長門もだんだん俺という生き物が分かってきたようだな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:23:21.96 ID:FrfKX/so<>
 その週の終わりに、長門を助手席に乗せて古泉の知り合いのジュエリーショップに行った。注文して当日中に婚約指輪を調達するなんて無茶なことをやってのけた店なのだが、そんな芸当が出来るのは機関直営の宝石店だからかもしれんな。もしかしたら多丸さんが直々に経営する店とか。

 店に入ると店員が俺の目を見て軽く会釈をした。さすがに顔を覚えられていたようだ。隣にいる長門を見て、この娘さんだったんですね、という感じでニコっとうなずいた。
「あの……今日は結婚指輪を見に、」
堂々と言うのが恥ずかしくて耳元で囁くように言うと、黙ってマリッジリングのショーケースを教えてくれた。
ご婚約おめでとうございます!とか大声で叫ばれると覚悟していたのだが俺の誇大妄想だったようで、店員はそっと遠くから二人を見ていて静かに品定めさせてくれた。

 白い柔らかな光の下にいろんなデザインのリングが並んでいた。
緩くカーブして上から見るとハートになっているやつや、小さなダイヤがリングに沿ってずらりと埋め込まれたやつ、リングの縁に細かい溝が刻まれたやつ、それからエンゲージリングと同じデザインをしていて重ねてはめるやつ。どれもプラチナだが金属なのに温かい感じがする。
「長門、どれがいい?」
いくつかケースから出してもらい試してみていたが、ひとつを手に取った。シンプルな平たいリングに小さなハート型のダイヤがちょこんと埋め込まれたデザインだった。もちろんダイヤがはまっているのはレディスのほうだが。
「いいなこれ」
サイズは九号ではないので少し緩いが長門の細い指にはめてやるといい感じに映えていた。手を握ったり開いたりしながらリングを眺める長門の顔が下からの淡い光に照らされていて、なんとなく花嫁らしい感じがする。

「……これにする」
「すいません、これペアでお願いします」
俺は自分の指輪のサイズなんか知らないので店員に測ってもらった。
「長門、リングの裏に文字を入れてくれるらしいんだがなにを入れてもらおうか」
長門は少し考えてメモ翌用紙を取り、ボールペンで線画のようなものを走り書きした。
ラテン語じゃなさそうだが、あれれ、それってハルヒが校庭に落書きした宇宙文字に似てないか。店員はメモ翌用紙を上にしたり横にしたりして、いったいどこの国の文字だろうかとしきりに考え込んでいたのだが、長門がそのままの図案で入れてくれと言ったので注文書の欄にペタと貼り付けていた。
文字を上下に分割し、リングを二つ重ねたときに文字が読めるようになっている。気の効いたデザインだ。

 前金で払って引き換え証をもらって店を出た。車の中で長門に尋ねた。
「あの文字はどういう意味なんだ?」
「……あの記号にはさまざまな情報が内包されている」
「簡単に言うと?」
「……大まかな意訳をすると、絆」
宇宙文字でいう絆か。なるほど、長門らしい。

 自宅のドアを開けて待ち焦がれている俺ファミリーに来客を告げた。
なんつーか、あらかじめ彼女として紹介しておけばこんな緊張することもなかったのだろうが、この歳になって初めて女の子を親に紹介するというイベントで妙に照れくさいというか、すでに知られているのに改めて顔合わせをするのが気恥ずかしいというか、俺もヘンなところでシャイなやつだな。
「おーい、帰ったぞ。長門を連れてきたぞ」
「キョンくんおっかえり〜、待ってたよ有希ちゃん」
妹が口にアイスをくわえたまま出てきた。いつもは俺が帰ってもにゃあとも言わないシャミセンも、なぜか今日だけは玄関に出迎えていた。こいつも長門のファンだからな。

「長門さん、我が家へようこそ。キョンの母です」
「……ようこそ。父」
居間には、俺の血を分けた、じゃなくて血を分けてもらった二親がまるで雛人形のお内裏様お雛様のようにちょこんと座っている。なにかしこまって正座なんかしてんだ。長門もそれに合わせたのか二人の前に座って三つ指を突き、丁寧に頭を下げて口上を述べた。
「……長門有希。お見知りおきを」
「こ、こたびは当家の息子がお世話に、」
お世話に相成り候、とか言い出しそうなので俺が割って入った。
「おいおい三人とも、時代劇じゃないんだからもっと軽くやってくれ。ほら親父、ビールだビール」
「あいわかった」
カクンとうなずいて冷蔵庫に向かっている。妙に緊張していてどっちが客なのかわからん。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/01(水) 19:23:40.17 ID:FrfKX/so<> テーブルで長門が親父にビールを注ぎ、親父が長門にビールを注ぐという奇妙なループを見ながら焼肉を食った。こんな日だ、妹がこっそり飲んでいたのはまあ大目に見てやろう。食いながら長門と話をしていたのはほとんどおふくろで、おやじはたまに会社経営のことを聞いていた。

 妹が突然、
「有希ちゃん、どうしてキョンくんに惚れたの?」
などと身も蓋もない質問を浴びせて俺はビールを噴いた。こういう顔合わせではあんまり突っ込んだ恋話はしないもんなんだが。
「……時間軸における因果関係の結果そうなった。通俗的な用語を使用すれば、運命」
「そうなんだあ、赤い糸なんだ。キョンくん聞いた?運命の人だよお」
酔いがまわってるらしく妹は長門のノロケに感動してひとりでキャーキャー言っている。

「二人は付き合ってどれくらいなの?」今度はおふくろだった。
「……六年三ヵ月と十二日、五時間と八分」
「六年前っていうと、ええと、」
「付き合いだしたのは確か高校三年の五月だな」
もしかして長門、付き合っている時間を今もカウントし続けてるのか。あ、もうすぐ九分だ。
「そうなんだ。どういうきっかけだったの?」
「あ、それあたしも聞きたい聞きたい」
「なんつーか、あんときはハルヒが怒ってだなぁ、一時はどうなることかと」
って、それを説明させると夜中になっちまうぞ。

 適当にかいつまんで話していると九時を回っていた。長門がそろそろおいとまするというと、おふくろがお約束のごとくに今日は泊まっていきなさいよと引きとめようとした。
客布団もあるしそれはそれで悪くはないんだが、長門が猫にエサをやらなくてはならないと言うので俺は酔い覚ましがてら歩いて送っていくことにした。

 帰りに玄関灯に背中を照らされながら親父が言った。
「……長門さん。うちの息子、親に似て出来が悪いがよろしくお願いする」
「……分かった。責任を持って承る」
なんだか引き取られてしまった仔猫みたいな気分だが。

(続く)
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/01(水) 19:24:30.96 ID:FrfKX/so<>プロポーズのシーンの断片を貼ったのは去年の5月だね やれやれ時の流れるのは早いもんだ<> 長門有希の憂鬱W
◆nomad3yzec<>sage<>2008/10/02(木) 18:42:34.70 ID:0b5n8Y.o<>
五 章

 これからやろうとするやつは誰もが未経験なわけで、結婚の経験が豊富だとかいう人はあんまり幸せでもなさそうなのだが、未経験な人のためにブライダルプロデュースとかプランナーなどという、ゼロからサポートしてくれる職業があるらしい。
結婚専門のプランニング会社ってのもあるのだが、ホテルやブライダルホールにも専属のプランナーがいて、招待状のデザイン、式場の手配から披露宴のシナリオ、スピーチ原稿まで手取り足取り面倒を見てくれる。
結婚するカップルを集めて合同の式場ツアーなんかも催されているらしい。

 ホテルやブライダルホールの中にミニ教会があったりミニ祭壇があったりして、教会や神社に行かなくてもその場でやってくれるようだ。まあ本格的にやりたい人は現地に出向いて神様の前でやるのがいいんだろうが。
宗教色をなくした人前結婚式ってのも多くて、広々とした芝生の上でやるとかプールなんかでやるカップルもいるらしい。
むかし見た映画で一面の芝生が広がる豪華な家の庭に白い椅子を並べてやってるシーンがあったが、あれはやってみたい気もする。

 俺もはやいとこ場所決めとかないとなぁなどとため息混じりに式場のWebサイトを見ていると、今まで居眠りをしていたハルヒがガバと顔を上げて尋ねた。
「そういえばキョン、あんた結納どうすんの?」
俺としちゃ、もうそんな形式ばかりになった日本古来の儀式なんてやめちまっていいと思うんだが。
「親同士の顔合わせだけでいいだろ」
「あんた、めんどくさいからってまた手抜きしようとしてるわね」
「結納なんてもともとお武家様とか由緒ある商家でやってたもんだろ。庶民がマネしてやってもお飾りにすぎんと思うんだがな」
「そういう問題じゃないでしょ!」
ハルヒがまじで怒っている。

「まあ長門がやりたいって言うんなら考えるが」
「分かってないわね。結婚は誓いのキスだけじゃないのよ。二人が出会って好きになってプロポーズして、双方の親に紹介して指輪を選んでウエディングドレスをあつらえて、モチベーションを上げていくすべての過程が結婚なのよ。遠足は家に帰るまでが遠足だって言われたでしょ」
「お前にしては分かりやすいな」
「あったりまえでしょ。女は生まれたときからこの日を夢見て生きてるんだから。言っとくけど、結婚した後は女のほうが大変なんだからね」
「まあ結婚するまでは男が大変なのは分かる」
男の俺はいまいち真剣味が足りないようで、ハルヒはため息をついた。
「いい?一生に一度しかないんだから、やれることは全部やんなさい」
お前まさか、スモークを炊いたステージで新郎新婦の乗ったゴンドラから降りて来いなんて言わないだろうな。あれは恥ずかしいぞ。
「あんなのはただのお芝居よ。結納ってのはね、昔は家と家が契りを結ぶ大事な儀式だったのよ。不精してないでちゃんとやんなさいよね、ケジメよケジメ」
またそれか。日ごろが大雑把かと思えばこういう妙なところでまめなんだからなこいつは。

「長門、結納どうする?」
横でずっと話を聞いていたのだが、長門に改めて問い直した。
「……あなたに、任せる」
式まであんまり時間がないからなあ。略式でも結納品の手配とか手順を覚えたりもあるしな。
「……伝統には興味がある」
「そうか。長門がそういうならやってみるか」
正直、長門の晴れ着姿を見てみたい。いや、単純にそれだけの理由なんだが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:43:35.26 ID:0b5n8Y.o<>「古泉、ちょっと相談なんだが」
今度はハルヒに聞かれては困る話なのでまたトイレに呼び出した。
「なんでしょうか」
「ハルヒが結納をやれというんで正式なのをやろうと思うんだが」
「あなたにしては珍しいですね」
「長門も興味あるらしいしな。俺的には男尊女卑の名残っぽくてあんまり気が進まないんだが。あれは嫁さんに準備金を渡すためのもんだろう」
「最近は記念品の交換くらいで済ませるカップルも多いと聞きますね。元々は華族とか士族などで家同士の契約の名残らしいですからね」
「うちは武士でも貴族でもないしな。お前ならどうする?」
「僕はどっちかというと洋風で、家族より本人達が主体のほうが好みですね」
「だよな」
俺だけかと思っていたが、男はなんというか、結婚後の生活のほうに夢膨らませていて、あんまり儀式的なことにはこだわらない気がする。結婚するまでの準備期間が楽しいという女には理解できないらしいのだが。

 まあそれはともかくだな。
「新川ならいつでもご用意できますよ」
そんな隣の長屋から猫を借りるみたいに、渋くてダンディな新川さんを表現するな。あまつさえ年上なんだから。
「機関の人は事情を知ってるからいいんだが、ハルヒにどう説明するかだ。結納に出るのは両親と決まってるわけだし、まさか長門の父親が突然出てきましたってのも無理がありすぎると思うんだが」
「難題ですね。新川の面は高校のときすでに割れていますし」
「どうしたもんか。ほかに頼めそうな人はいないだろうか」
「それはもう機関は人材には事欠きませんが、別に新川が父親でなくても養父ってことでもいいんじゃないでしょうか」
「執事のかっこした新川さんが長門の義理の父か。それもかなり無理な設定だとは思うが」
「では叔父ではどうですか」
うーん、マンションの管理人のほうがまだ説得力ある気がするが。落語にもあるだろ、大家さんが仲人で親代わりになるみたいな話。

「あのなハルヒ、ちょっと長門のことで話があるんだが」
「なに、有希になんかしたの!?」
なんでそう長門のことになるとムキになるんだこいつは。
「前に長門の親族がどうとかいう話をしたことがあったろ」
「有希が引っ越すかもしれないとかいうあれ?」
「あの親族ってのは実は新川さんなんだ」
「見た目渋くてかっこいい新川先生が有希の親類だったの?実は悪いやつだったのね」
そうか、こいつの記憶では新川さんは臨時の先生だったんだな。

「いや、それは俺の誤解でな。あのときは年端もいかない娘が一人暮らしをしてるのは問題があるだろうってことで行政の児童福祉担当が無理に引っ越させようとしてたらしいんだ」
「問題ってなによ、女の子が一人暮らししちゃいけないっての」
「俺に噛み付くなって。経済的にとか防犯上とか、いろいろと鑑みてのことだろう」
「やっぱりね、お役人ってのは丸いものを四角い枠にはめないと気がすまないのよ。個人の事情なんてお構いなしだわ」
「まあそれはいいんだがな。新川さんに長門の後見人というか、まあ親代わりを頼もうと思う」
「あれ?有希の親御さんってエルサルバドルにいるんじゃないの?」
ううっ、確かにそんなことを言ったような記憶があるっ。ホンジュラスとかエルサルバドルとか、ヒューマノイドはなぜ中南米にこだわるんだと突っ込んだ記憶もあるっ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:44:04.92 ID:0b5n8Y.o<>「実は、飛行機事故で、」
「ええっ亡くなったの?いつ?」
「高校を出て、すぐくらい」
「なんで黙ってたのよアホキョン!!」
「俺も、最近知った」
俺がロボット並みに棒読みしてるのにハルヒがまったく疑いもしないことが返って悲しいのだが、本当のことを吐けと首を絞められないだけでもマシなのかもしれん。これもいつかはバレるんだろうなあ。嘘で嘘を上塗りしちまってまたハルヒにドヤされる覚悟を今からしなきゃならんとは。

 まるで自分の親の訃報を街頭テレビで知ったかのようにハルヒが呆然としているところへ、ドアが音もなく開いて長門が入ってきた。
「ゆ、有希!!もうなんで言ってくれなかったのよ!!」
雨の日の公園を散歩中に段ボール箱で鳴いている捨て猫を見つけた女の子のように、ハルヒはやおら涙目になって長門に抱きついた。
こういう不幸な身の上話には徹底的に弱いとみえる。最近のハルヒは映画を見てもチープな恋愛ドラマを見てもよく泣くらしい。気のせいかもしれんが、たぶん古泉と付き合いだしたあたりからだな。もしかして古泉に不幸な作り話を散々聞かされてるとか。

「……なんの、話」
「あんたのご両親が亡くなってたってことをたった今聞いたのよ」
「……」
長門はいったいなにごとが起こったのだという感じで、首をちょこんと傾けて俺を見る。俺は両手を合わせて、スマン長門適当に話を合わせてくれと唇だけ動かして伝えた。
「……そう。両親は五年前、ホンジュラス経由で渡航中に飛行機事故に遭遇。テグシガルパ空港当局者によれば、着陸時に上空を低気圧が通過中で視界不良、滑走路を二百メートルほどオーバーランして大破した」
って長門、その親類にロイター通信の記者がいますみたいな話の合わせ方は逆にあやしいぞ。仮にも不幸な話なんだから少し悲しい表情をしてくれ。

「あんたのことはあたしが面倒を見るからね、心配しなくてもいいからねっ」
「待て待てハルヒ、その役は俺だ」
「だめよ社会的責任のある人じゃなきゃ」
「じゃあ俺は無責任男かよ」分かっちゃいるけど言われたくないっと。
「あたしが有希を養女にするわ」
「養子縁組って二十五才以上で結婚してないとできないんじゃなかったか」
突っ込みどころ違うだろ、結婚の話そっちのけでなに言ってんだ俺は。
「じゃあうちの親の養女でもいいわ、あたしの妹ってことにすれば。里帰りはうちの実家に来ればいいじゃない」
まさかそこまで言い出すとは考えていなかった。
古泉は右手のグーを左の手のひらにポンと打ちつけ、ナルホドその手がありましたねとうなずいた。
無責任に感心してる場合かよ、そんな無茶苦茶な姻戚関係が発生したら俺の周辺の家計図はどうなる。ハルヒが俺の義理の姉になっちまうぞ。
ハルヒの尻に敷かれるのは古泉だけで十分だ。これまでずっと俺が座布団代わりに敷かれてきたんだからな。

「まあ待て、お前たちには媒酌人を頼もうと思うんだ」
「そ、そうなの?」
媒酌人ってのは披露宴で新郎新婦の両隣に控えている人で、慣習的には夫婦が引き受けるもんなんだが、まあほかに当てがあるわけじゃなし、ハルヒにもなにがしかの役割を与えておかないとなにをしでかすかわからんしな。
「有希、あたしでいいの?」
「……いい。あなたが適任」
「なにより、俺たちが付き合うきっかけを作ったのはお前だからな」
「あ、あたしはそんなことはしてないわよ。キョンがあんまり優柔不断だからケツを蹴ってやっただけじゃない」
真っ赤になりながらそう弁解するハルヒはまんざら悪くもなさそうで、一組の男女の運命を決めた切り札が自分だったことを喜んでいるようだ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:44:32.18 ID:0b5n8Y.o<>「分かったわ、あたしにまっかせなさい。あんたたちの挙式は我がSOS団が責任を持って取り仕切るわ」
おいおい町内のお祭りかなんかと間違ってないか。今までお前のお遊びでやってきたSOS団のイベントとはわけが違うんだぞ、などという心配はすでに時遅しで、ハルヒの目んたまキラキラ度が三百パーセント増量中だ。
「新規事業として我が社はブライダルプランナーをやるわよ!」
うちはイベント会社じゃないんだが前回のゲームショウで味を占めたらしいな。やれやれ、とうとう色物事業にまで手を染めちまったか。

 長門の親代わりを頼むのに、古泉に新川さんを呼び出してもらった。機関の事務所は実は北口駅から近いらしく、喫茶ドリームで待ち合わせた。
「おひさしぶりでございます」
執事姿でない新川さんが濃いグレーのダブルのスーツにステッキを突いてやってきた。
俺みたいななで肩が着るとそうでもないのに、こういう肩幅のある人が着るとスリーピースのダブルも映えるんだよなあ。どことなく雰囲気が大手の経営者とか重役っぽい。うちの取締役に欲しいくらいだ。

「お忙しいところお呼びたていたしまして恐縮であります」
育ちが悪いのか付き合ってるやつらが悪いのか、使い慣れない丁寧語に舌を噛み奉りそうな俺である。
「いえいえ、お役に立てて嬉しく存じます」
「……ご足労、謝意を表する」
長門は丁寧的なのか古風的なのかよく分からん挨拶をした。
「ええと、このたび、長門有希と婚姻の儀を取り計らうことに相成りまして、」
このまま喋ってたら舌噛んで死んでしまいそうなのでふつうに話すことにした。
「ぜひ新川さんにご協力いただけないかと。長門の個人的な事情はご存じでしょうか」
「はい、伺っております。わたくしども機関はあなたがたのサポートが使命です。どんな役目を仰せつかっても完遂する所存にございます」
やる気満々、任務のためなら一命を賭しても悔いはない勢いの新川さんだ。俺たちみたいなの珍奇な集団にそこまで言っていただけるとはどうも恐縮してしまうのでありますが。

「新川さんに長門の親代わりをやっていただけないかと思っていまして」
「喜んで承ります。どのような背景を持った人物をお望みでしょうか」
「ええと、両親のいない長門を引き取って面倒をみていた叔父の役というところでどうでしょう」
「かしこまりました。設定に合わせた簡単な略歴などをご用意しましょう。キョンさんのご両親とスムーズな会話をするために」
毎度ながら、機関の人のこういうところはすごいなあと思うわけだ。

「ええとそれから、これがちょっと厄介なんですが、ハルヒには偽のアリバイを仕込んでありまして」
「伺っております」
新川さんは口ひげを揺らして微笑んだ。
「長門の両親はエルサルバドルにいたことになってまして、で、亡くなったことがつい先日ハルヒにバレて、実は新川さんが血縁だったことが判明した、イマココなわけですが」
「それはまた複雑なイマココでございますな」
「勝手にアリバイの証人に仕立ててしまいまして申し訳ないです」
「いえいえ、長門さんのお身内になれるなら喜んで」
古泉なんかの無責任スマイルとはまったく違う、酸いも辛いも味わった人生観の漂う渋いスマイルを見せる新川さんだった。長門も少し口元を動かして微笑んでいる。

 氷の浮かんだコップに口をつけてから新川さんは意外なことを言った。
「ひとつだけ問題がございます。わたくしは実は独身でございましてね。叔父とはいえ祝いの席に出るには夫婦そろっての役のほうがよろしいのではないかと」
「え、そうだったんですか」
「恥ずかしながら、離婚暦がございます」
まれに見るシブメンの新川さんがバツイチだとは知らなかった。なんというかその渋さは苦労したがゆえの哀愁からきているのかもしれない。
「身の回りが軽い相方がいればよいのですが、あいにくとこればっかりは妥当な人材がおりませんで」
つまり新川さんに歳の近い未亡人か独身女性で、長門の事情を知った上で親代わりとしてあれこれ面倒を見てくれそうな人ってことですか。そんな特殊な身分の人は日本中を探してもいないだろうな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:46:29.46 ID:0b5n8Y.o<>「片親でもいいんじゃないでしょうか。最近は多いようですし」
「結納に片親だけでは少し寂しい気もいたしますが、長門さんのお気持ちのほどはいかがでしょうか」
「……気持ちだけで嬉しい。贅沢は言わない」
長門は控えめにボソリと答えた。
本当は家族に似たものが欲しくて、一度は消えた朝倉を呼び戻したり失踪した姉を数億年も待っていたりしたことを俺は知っている。
だからなおのことだ。かりそめでもいいから長門にも身内と呼べるものを作ってやりたい。

「お待たせしました」
三人で考え込んでいるところへコーヒーが来た。どうもなじみのある雰囲気がして顔を上げた。
「あれれ喜緑さんじゃないですか。こないだはどうも」
「こんにちは、皆様おそろいで。ホットコーヒー三つですね」
「こんなところでなにやって、」
「もちろんアルバイトですわ」
この喫茶店でもたまにしか見かけないこの人が、日ごろの糧をどうやって得ているのか非常に気になるところだが。

「ええ。ときどきここで雇っていただいています。こちら伝票になります」
お盆を脇に挟んでしずしずとカウンタへ戻っていく喜緑さんを眺めた。
「あの、ちょっと待ってください喜緑さん、」
「はい?」
重要なことを忘れていた。俺の知る限りこの地球上で長門の唯一の関係者がここにいる。長門の身内がひとりもいないなんてとんでもない勘違いじゃないか。
新川さんも気がついたようで、これはしたり大事なことを忘れておったわいという感じで眉毛を髭と同じ角度のハの字に曲げている。
「ちょっとここへ座って話を聞いていただけませんか」
「あいにくと勤務中ですから……」
「重要な話なんです」
俺は店のマスターにちょっと従業員を借りますという感じで指を刺して合図した。あとで心づけを払っておかんといかんな。

 喜緑さんは俺の向かい側、新川さんの隣に音もなく座った。
「お話とはなんでしょうか」
「じ、実は長門と結婚します」
「そうですか。お二人様、ご婚約おめでとうございます」
思念体の情報網とか話の流れからしてすでに知ってはいたとは思うのだが、喜緑さんは立ち上がって丁寧にお辞儀をした。俺もなんだか条件反射的に立ち上がって何度もハアドウモアリガトウゴザイマスとペコペコしてしまった。
「ちょうど新川さんに長門の親代わりをお願いしていたところなんです。突然でまったく申し訳ないんですが喜緑さんに相方をやっていただけないでしょうか」
「まあ……わたしにですか。嬉しいですわ」
喜緑さんはなんというか、ほんとうにそうなれれば幸せなのになという感じで新川さんを見つめてポッと頬を染めてみせた。
「でも、わたしは年齢的には娘さんの世代ですから」
「娘ということではいかがでしょうか」新川さんが言った。「わたくしが長門さんの叔父、喜緑さんがその娘ということで」
「つまりわたしが長門さんの従姉妹ですか」
バツイチの叔父にその娘ってことなら一般的にありそうだな。無理にこじつけて叔父夫婦を用意しなくてもいいわけだ。なんとなくだが、不ぞろいだったパズルのピースがはまりそうな気がする。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:47:02.49 ID:0b5n8Y.o<>「それでいきましょう。意外にもリアリティあっていいですね」
新川さんの渋い顔が苦笑になってしまった。ややリアリティがありすぎたのかもしれない。
 長門がひとこと、喜緑さんに向かってつぶやいた。
「……借りができた」
「そんな、水臭いですよ長門さん」
にっこりと笑う喜緑さん。この二人を見ているといつも思う、喜緑さんが姉で長門が妹という設定でこの地上に現れてもよかったんじゃないかと。
「新川さん、喜緑さん、お手数おかけしますがよろしくお願いします」
「……謹んでお願いする」
珍しく長門も深々と頭を下げた。それから二人の出番になりそうな当面の予定を伝えた。

 スケジュールと呼べるほどの余裕はまったくない唐突にはじまってすでに進行中の日程だが、まず親同士の顔合わせ、その後で結納、式場の見積もりと披露宴のプラン、招待客のピックアップと招待状の発送、衣装とヘアメイクの準備、ハネムーンの手配、などなど、覚え切れなくて俺でなくてもため息が出そうなくらいやることがある。
しかもこれを一カ月以内にこなさないといけないなんて尋常じゃないわな。だから言ったじゃないのというハルヒの声が聞こえてきそうだ。

 ロケット打ち上げ計画書の頭から二百ページ分を省略したいくらいの気分なのだが、式と披露宴はハルヒに任せてあるのでその部分は省略するとしよう。
はじめての結婚式の仕切りにハルヒがやたらとはりきってるが、あいつに任せたらなにが飛び出てくるか分かったものではないので監視役に古泉をつけて二人で立案しろと言っておいた。
ミイラ捕りがミイラになっちまう不安もないのではないのだが。

 うちの両親と新川さん喜緑さんを引き合わせるのに適当な場所が思い浮かばなくて、近場の料亭でお座敷をチャージして晩飯にすることにした。
自宅に呼んでもよかったんだが、唐突過ぎておふくろがパニくってしまい、なにを着ればいいのか寿司を取ればいいのか中華を取ればいいのかバナナはおやつに入るのかなどと、どうでもいいことでフル回転していたので外に連れ出すことにした。
「キョン、あんたそんなかっこうでいいの?」
「そんなかっこうって、スーツでいいだろ」
「仕事着でしょう、それ」
「いいんだよこれで。向こうは顔見知りなんだから」
とは言うがこれ以外のスーツは持ち合わせていない俺だった。フォーマルなやつをひとつ新調しなくてはな。
「……どうだ」
「あんた、似合ってるわよ」
親父は妙にかしこまってダークスーツなどを着ているありさまだ。まあ初めての挨拶だからあながち間違いではないんだが。

 玄関を入って名前を告げると長い廊下の先にある座敷に通された。こないだと同じスーツ姿の新川さんが待っていた。
「お待ちしておりました」
「……は。はじめまして、キョンの父であります」
水を吸った水飲み鳥のように何度も何度も深々と頭を下げていた。見ていてこっちが赤面してしまうが、この世代の挨拶はこれなんだろうな。
「こちらこそ、はじめまして新川と申します。こっちは娘の江美里です」
「お初にお目にかかります。よろしくお願い申し上げます」
喜緑さんは襟が広めのオレンジのワンピースを着ていた。その隣で長門が無表情に座っている。
「は、はいよろしくお願いします。この度はうちの息子が有希さんを見初めたようで、なにとぞよしなに、よしなに。こらキョン、あんたも頭下げなさい」
親父とおふくろはまるで自分が結婚するかのように緊張しっぱなしでペコペコと頭を下げていた。
ふつうに食事会なんだからそんなに冷や汗を垂らさなくてもいいのに。ともあれまあ、このギクシャクした雰囲気も酒が入ればなんとかなるだろう。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:47:43.02 ID:0b5n8Y.o<>「有希さんにこんなきれいなお従姉妹さんがいらしたなんて知りませんでしたわ」
「有希が親を亡くしてからというものは、ずっと姉がわりの江美里の背中を見て育ったものです」
「それはそれはまあ、ご苦労なさいましたねえ」
「素直で優しく育ったこの子の晴れ姿を両親に見せてやれたらと思うと、まったく不憫でなりません」
「まったくよくできた娘さんですね。キョンにはもったいないお相手だわ」
おふくろはヨヨヨと涙に誘われていた。某国営放送の連ドラにでもありそうな展開だな。
「……いやあ、キョンみたいな息子をこんな美しい娘さんが好いてくださるとは、もうなにも思い残すことはありませんな」
親父は酒が回ってきたらしく饒舌になっている。俺はそろそろ飽きてネクタイを緩め、あと何分くらいここにいればいいだろうかなどと考えていた。おふくろが俺の耳をひっぱって、キョンなに胡坐かいてんのよちゃんと正座しなさい正座と耳打ちした。

「すまん、ちょっとトイレ」
俺は立ち上がりかけたのだが足に力が入らず、みんなの前でゴロンと転んだ。
「キョンなにやってんのあんた!」
おふくろは真っ赤になって怒りあわてて俺の腕を引いて起こした。なんつーか笑いを取ろうとしたわけじゃなくて足がしびれて動かなかっただけなのだが。長門がクスリと笑っている。

 新川さんと喜緑さんは終始笑顔を崩さず、たまにお酌をしたりされたり、長門の架空の昔話をしたりしていた。人間の長門だったらそういうエピソードもあったのかもしれないと思えるくらい、デティールに凝っていた。このへんはどうやら古泉の仕込みっぽい気がするな。

 俺と親父がホロ酔いになったところで宴はお開きになった。
「……有希さん。出来の悪い息子で申し訳ない」
「……問題ない」
「……親に似てまったくふつつかな息子だが、よろしく面倒みてほしい」
「……承知した」
素直に承知してくれる長門も嬉しいんだが、もともと酒に弱い親父が何度も同じことを言いはじめたので、俺は二人をせかしてさっさと帰ることにした。

 帰りのタクシーの中でおふくろがボソリと言った。
「いい家族ね」
「……そうだな」
即席だが、いい感じの叔父と従姉妹だったと思う。これからは俺が本物の家族になってやらないとな。

「やあキョンくん、長門っちと結婚するんだって?」
二日酔いで頭痛のする翌朝に電話がかかってきた。
「あ……どうも、いつもお世話になっております」
「水くっさいなあ、あたしも噛ませておくれよ」
「え、あ、そうですね。お手数おかけします」
冬眠から覚めたと思ったらまだ雪の中だった熊並みに脳の反応が鈍い。えっと、俺はいったい誰と何の話をしてるんだ。
「あのすいません、どなたですか」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:48:18.37 ID:0b5n8Y.o<>
 聞けば、昨日ハルヒと呑んでいて、俺がとうとう結婚するという話で盛り上がったらしい。人の婚姻をネタに酒を呑むなと言いたいところだが、どこの酒の席でもそれは常だからな。
「それで、結納は終わったのかい?」
「まだ昨日やっと親同士の顔合わせが終わったところなんです」
「じゃあうちの座敷でやんなよ。うちの床の間広いよ、畳二枚分はあるんだから」
「床の間?」
「知らないのかい?古来より結納品は床の間に飾るんっさ」
そいやシキタリについてはまだなにも調べてなかったな。
「じゃあちょっと長門と相談して後ほどお電話入れます」
「あいよっ」
朝から元気のいい人だ。今朝まで呑んでたらしいんだが。

 結納結納っと、少し予習しとかないとな。
 結納てのは、嫁さんの両親に今まで娘さんを育ててくれてありがとうという挨拶と、旦那の親から嫁さんへよろしくという挨拶を形式的に表したものだという。
実際は衣装やら嫁入り道具やら、いろいろとモノ入りな女のために結婚準備金を渡すための儀式なのだが、地方によって決まりごともシキタリも違うし、いつごろから始まったというはっきりした歴史があるわけでもないらしい。

 正式には仲人がすべてを取り仕切るもんで、まず仲人が新郎の家に結納品と目録なんかの書類を取りにゆき、新婦の家に届ける。二人は挙式まで顔を合わせない。
今は仲人なしの略式結納ってのが多いらしいが、その場合は新郎が両親と連れ立って新婦の家に挨拶に行くのか。嫁に来てもらうわけだから当然そうなるわな。

 結納品は紅白のノシで飾られた品で、五個とか七個とか九個とか、小数点を使わないと二で割り切れないセットで用意する。
これが勝男武士(かつおぶし)とか寿留女(するめ)とか子生婦(こんぶ)とか、漢字を習いたての小学生でも使わないような、ダジャレにもほどがあるというかガード下の落書き夜露死苦を上回る勢いの当て字で名前をつけてある。
いくらなんでも結美和(ゆびわ)はやりすぎだと思うんだが。

 それを寿の文字がでかでかと書かれた箱に入れて大風呂敷に包んで新婦の家までいそいそと運ばにゃならんのだが、今は店頭から直送してくれるらしい。
新婦の家に着いたら軽く挨拶をし、床の間を借りると断って飾り付ける。床の間に赤い布を敷いて、松竹梅の模型を飾る。この松竹梅の下に結納金を置くことになっている。
指輪はすでに渡してあるわけだから、九品の中でいちばん高価なのはこのプチ盆栽セットってことだな。

 飾り付けが終わるとみんなで仲良く並び、新郎の親が前の晩に必死で覚えたセリフ「本日はよいお日柄で……」とはじまる。目録を渡すと新婦の親がリストを確認して、受け取りの証書みたいなものを返して一件落着となる。

 とても覚え切れんわ。こりゃあ身内でリハーサルやらんといかんな。
「もしもし長門か、俺だ」
「……頭、痛い」
長門よ、お前が二日酔いするなんてガソリンでも飲んだのか。
「鶴屋さんが結納するのに座敷を使えって言ってくれてるんだが」
「……歓迎すべき提案。うちには床の間がない」
「じゃあ鶴屋さんちで場所を借りることにするわ」
「……分かった」
「また後で連絡する」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:50:09.38 ID:0b5n8Y.o<>
「、ということでした。お願いしてもよろしいでしょうか」
「鶴ちゃんにお任せっ、なあに、あたしはこういう祝い事は好きでね。うちのおやっさんもあたしのリハーサルだと思えばいいっさ」
「まことに唐突なんですが、」
「うちは明日でもいいよ」
いやぁ、こういう即対応してくれる人にはほんとに助かる。
「次の土曜日あたりはご都合いかがでしょうか」
「ほいさ。土曜日ねえ、っと友引か。じゃあ夕方ってことにするさ。いいかなっ」
そいや仏滅とかだめなんだよな。六曜までは気にしてなかった。
「それでお願いします。じゃあ俺は出席者全員に伝えます」
「うちにも毛せんとか風呂敷もあるから、もし足んなかったら使うといいっさ」
「なにからなにまでありがとうございます。そのときはお願いします」

 その週末、風呂敷で包んだミカン箱を三つ抱えて鶴屋さんのお屋敷まで車を出した。
直接鶴屋さんちに発送してもらってもよかったんだが、妹が結納品を見たいとせがむのでやむなく自宅に配達してもらった。まあ親同士の顔合わせのときに連れて行かなかったんでだいぶスネてたからな。

 親父はダークスーツ、おふくろも黒のフォーマルドレスを着ていた。俺はというと、いつものスーツに長門からプレゼントされたネクタイだが。
妹はここぞとばかりに新しいドレスをねだり、両親もいろいろとモノ入りで金銭感覚が緩くなっているのか二度返事でOKしてやった。
こいつが結婚するときはさぞかし派手なんだろうなあ。娘がひとりでよかった。

 鶴屋さんちの前に車を停めて、親父と二人でミカン箱を運ぶ。両親はその屋敷の豪華さに圧倒されて終始無言だった。
門から母屋の玄関までがやたら長いんでいったいいつたどり着くのかとキョロキョロしていた。昔の結納は庭の縁側から入ったらしいんだがな。

 俺は何度も来ていて手馴れているところを見せようと、玄関の扉を開けて、ちわー結納の品お届けに参りましたぁ、などとジョークを飛ばそうとしていたのだが、最初の「ち」のところで親と同じく無言の行に陥ってしまった。
玄関に並んだ靴の数々。いくら鶴屋さんがマリーアントワネット張りの生活をしているとはいえ、この靴の数は多すぎる。急に足の数が増えたのか、にしちゃサイズがまちまちじゃないか、ハイヒールと革靴が並んでるのはどういうアンバランスだ、などとなかなか正しい解答にたどり着かない俺である。

「キョン、おっそいじゃないの、もうみんな待ってるわよ」
「な、なんでお前がここにおるんだ」
「なにいってんの部下の結納には、あら、お父様にお母様。お久しぶりでございます」
なにそのいきなり猫かぶりに豹変する態度は。カメレオンでももう少し時間をかけて変身するもんだぞ。
「あらハルヒちゃんじゃないの、古泉くんは元気?」
「元気元気、もうカラ元気よ」
おふくろとはなぜか気の合うハルヒであるが。まあハルヒの第一声のおかげで両親の緊張が一気にほぐれたことだけは感謝しておこう。
「お父様、相変わらずお元気そうでなによりです」
「……」
親父は顔だけで声もなく笑っていた。

 座敷のほうがやたら騒がしい。
俺が真顔に戻って座敷の障子を開けると、鶴屋さんを筆頭に、古泉、部長氏、開発部の面々、それから森さんに多丸兄弟がずらりと並んで座っていた。今日は神聖にして荘厳なる儀式だってのになにやってんだこいつらは。
古泉がビデオカメラなんか構えてるが、お祭りじゃないっての。あ、来てくれてたんですね朝比奈さん、あなただけは大歓迎ですよ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:50:53.06 ID:0b5n8Y.o<> 二つの和室が敷居で繋がった超広いお座敷で、片方にギャラリー、片方に出演者が座っている。
床の間に向かって左側に黒スーツの新川さん、留袖の着物の喜緑さんが座っている。右側に俺の両親と俺が座る。結納の出演者には座布団は敷かないものらしい。

 親父が両手をついて頭を下げ、
「床の間をお借りいたします」
寿と書かれたミカン箱を床の間の前に運び、赤い布を敷いた。厚手のフェルトの布なんだが、これが毛せんという。
ちゃんと把握してくれている鶴屋さんが、鶴と亀の掛け軸を掛けてくれていた。こういうときは縁起物の掛け軸をかけるのが慣わしらしい。

 箱を開けて、松竹梅のジオラマ、白髪の爺さんと婆さんのフィギュア、熨斗(のし)から柳樽料(やなぎだるりょう)までを丁寧に配置してゆく。
 飾り付けが済むと一同がシンと静まり返った。新川さんが隣の部屋から長門を連れてきた。スルスルと裾が床をすべる音がする。
「おおー」
こんなときに大声を上げるなんてマナー違反もいいところだが、みんなが感嘆の声を上げた。
はじめて見る、長門の振袖姿だった。濃い紫色の生地に七色の花柄をあしらったきれいな振袖だった。短い髪もうまくまとまっている。
ハルヒと鶴屋さんがごにょごにょと内緒話をしているところをみると、この二人が着付けをやったらしい。いや、ご苦労だったな。

 長門がしゃなりと座り、喜緑さんが振袖の袂を広がるように整えた。膝の前に扇子を置くのだが、実はこれ相手との間に衝立を置く意味らしい。
「……」
この無言は長門ではなくて、うちの親父が完全に固まっていた。長門の姿を見て脳の思考停止に陥ったようだ。おふくろが肘で突付くとやっと我に帰り、再生ボタンを押されたCDプレイヤーのようにしゃべり始めた。
「オホン。……この度は良いご縁談を賜り誠にありがとうございます。本日は良いお日柄につき、ご婚約の印として結納のご祝儀を持参いたしました。幾ひさしくお納めください」
ほとんど棒読みだったが、おふくろが結納品のリストを書いた目録をふくさに包んで親父に渡し、親父が新川さんに渡す。新川さんが目録を開いて一読し、
「結構な結納の品々、誠にありがとうございます。幾久しくお受けいたします」
新川さん、喜緑さん、長門が手をついてお辞儀をする。

 次に、喜緑さんがふくさに包んだ受書を新川さんに渡し、新川さんが親父に渡す。受書ってのは受領書みたいなもんだ。
「結納の受書にございます。お改めください」
親父が中身をチラ見して、
「無事、結納をお納めすることができまして、本日はありがとうございました。今後とも幾ひさしくよろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ、幾ひさしくよろしくお願いいたします」
両者が深々と頭を下げる。

 終わりの合図がどれなのか分からず、そのまま無言のままじっとしていた。おふくろががホゥとため息をついたのをきっかけにギャラリーから拍手が沸いた。芝居じゃないってんだが、アンコールも必要か。

「キョンくん、よくやったねっ」
なんというか、俺は座っていただけでほとんどなにもしてなくて、途中かなりはしょったりもしたんですが、そう褒められると背中がムズムズします。
「鶴屋さん、お座敷をお借りしましてありがとうございました。親父さんに厚くお礼を言っていたとお伝えください」
「いいってことさぁ、キョンくんと長門っちのためなら、ひと肌でもふた肌でも脱いじゃうからね」
着物の袖を捲り上げてガッツポーズを取る鶴屋さんだった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/02(木) 18:52:39.22 ID:0b5n8Y.o<> 鶴屋さんが手でラッパを作って叫んだ。
「さあっみんな、向こうの部屋に酒が並んで待ってるよっ、早いもの勝ちだよ」
そう言うが早いか、ハルヒを先頭に縁側をドタドタと走って全員が消えた。この家にはいったいいくつ客間があるんだろうね。って妹はまだ未成年なのだが。
 同じ広さの和室にテーブルがコの字に並べてあり、まるで披露宴かと思えるような料理の品々が並んでいた。まさか仕出しを頼んでくれていたなんて、ずいぶん予算を使わせちまったなあ。
「ちっちっち、これうちで作ったんさ」
それまた手間を取らせちまって、なんというか鶴屋さんには一生頭が上がらない気がする。今日から屋敷に足を向けて寝れないな。

 俺は帰りの運転があるんでずっとウーロン茶を飲んでいたのだが、妹はすでに回ったらしく朝比奈さんの膝枕で眠っていた。さぞかしいい夢を見てんだろうね。
「キョンくん、おめでとう。いよいよ結婚するのね」
「ありがとうございます朝比奈さん。よく時間と場所が分かりましたね」
「えへ。スケジュール通りだから」
まあ未来人からしたらすべては時間通りってことだな。
「古式ゆかしい結納の儀式をはじめて見たわ」
「未来ではもう結納はやってないんですか」
「伝統を残そうって人たちがやって……。あっ、これ禁則事項ですね」
朝比奈さん、今なんか情報漏れが。

 古泉を見ると酔って大騒ぎをしているハルヒをずっとビデオカメラに収めていた。お前、それ後日なにかに使うつもりだろ。
 みんな腹も膨れて酔いもまわったところだが、まあこれが本番の披露宴ってわけでもないんで適当なところでお開きになり、タクシーを呼んだり迎えが来たりしてそれぞれ帰っていった。誰もいなくなって静かになった座敷で、うちの親と新川さんが静かに昆布茶を飲みながら鶴屋さんに礼を言っていた。
「鶴屋さんのお嬢さん、とてもいいお屋敷ですね」
「あははっ、でも固定資産税がハンパじゃなくってね。せめてこういうときのためのもんだとあたしは思ってるよ」
「お嬢さんがお屋敷を継がれるんですか」
「そうするっきゃないねえ。あたしはひとりっ娘だから」
「じゃあいいお婿さんを捕まえないといけませんなあ、はっはは」
「いやあ、キョンくんみたいないい男がなかなかいなくってねぇ、あはははっ」
鶴屋さんは真っ赤になって俺のほっぺたをつねった。これ、冗談だよな。

(続く)
<> 長門有希の憂鬱W
◆nomad3yzec<>sage<>2008/10/03(金) 18:50:46.70 ID:fxCr22.o<>
六 章

 頼んでいたマリッジリングができたという連絡が入り、俺と長門は受け取りに行った。
当然だが俺が長門のをもらい、長門が俺のを預かる。こっそり蓋を開けてみたがポツリと埋め込まれた小粒のダイヤがなかなかにかわいい。
リングの裏側には長門デザインの宇宙文字の半分が刻まれている。これが俺たちの絆になるんだよなあ。

 招待客のピックアップだけして、会場と衣装の用意はハルヒが一式任せろというので放っておいた。長門の招待客リストを見ると俺とほとんど被っていて、うちの社員とハカセくん、機関の顔見知り、トータルで二十人にも満たない。
「俺たちの知り合いって、数えてみると意外に少ないんだな」
「……そう」
「じゃあ高校のときの同級生なんかも呼ぶか」
「……いい」

頭数といっちゃ失礼かもしれないが、式場と披露宴会場を埋めるために阪中に頼んで同窓生名簿をFAXしてもらった。三年五組の卒業生全員と、あとはENOZのメンバーくらいか。ああ、岡部を忘れてた。
ハルヒが披露宴の客を百人集めろと言っていたのだが、いくらかき集めてもそんなにいないよな。
「長門、大学院の先生とか同級生も呼んでくれ。人数が足りない」
「……分かった」
もう“ご出席・ご欠席”の返事をもらうのがめんどくさくて、来たいやつは来い、来れないやつはメッセージでもよこせと一方的に招待状を送りつけた。
いったい何パーセントの人間が集まるのか予測もつかんが、まあなんとかなるだろう。

 俺たちの周辺はほとんどが学生の頃からの付き合いばかりで、SOS団の奇矯な活動ぶりを知らないやつはいないんだが、招待された客の中でハルヒを知らないやつらが初めてハルヒを見たらさぞかしぶったまげるに違いない。

 そんなこんなしているうち、式もいよいよ翌日と迫り、なんだかやり残したことがまだありそうな気がして妙に不安にかられるんだが、思いつく限りの用意はしたはずであとは野となれ山となれって気持ちだ。

 式の前日はなにもすることがなくひとりで自室にこもっていたのだが、どうも落ち着かなくて長門にこっそり電話をかけた。
「な、なあ。今日お前んちに泊まろうと思うんだが」
このひと言を言葉にしてノドから出すのにやたら緊張して目が泳いでいた。
『……すまない。今日は、用事がある』
意を決してお泊りを申請したのだがあっけなく却下された。ホッとしたというか、でも少し寂しいみたいな。
「そうか。いやいいんだ。式が終わったらお前んちに引っ越すわけだし」
にしても、俺が泊まれない用事ってなんだろ。
『……涼宮ハルヒの部屋に呼ばれている』
「あ、もしかしてあれか。花嫁の女友達を呼んで式の前日にやるとかいう、」
バ、バチェラーパーティかよ!マッチョなストリッパーを呼んでテーブルの上で腰をクネクネ躍らせたり着てるもんを剥ぎ取ったりしねーだろな。俺はハルヒと長門が一万円札を筋肉隆々ストリッパーのパンツに挟んでいるところを妄想してしまい頭を振った。
 長門曰く、今までハルヒの部屋に泊まったことがなかったので、これが最後だからと呼ばれたのらしい。最後というか結婚してもたぶん呼ばれると思うぞ。俺たちの新婚生活に探りを入れるためにな。

 その日俺は自室のベットでまんじりともせず眠れない夜を過ごしていた。家の中は緊張感とも期待感とも惜別の思いとも言えない奇妙な雰囲気に包まれていた。
妹も両親もやけに無口で、テレビの画面を意味もなく眺めるほかは思い出したように長門のことを聞いてくるくらいだった。
俺もああとかうんとか曖昧に答えるだけで、どうもこの家から出て行くという実感がないことに戸惑っていた。シャミだけが変わらず俺の足元をぐるぐるとまわって甘えている。
「キョンくん、シャミはどうするの?連れて行くの?」
「こいつはこの家が気に入ってるようだから置いてく。お前が面倒みてやれ」
「うん、分かった。シャミ〜明日からあたしと寝るんだよ」
シャミセンはそんな我が家のイベントを知ってか知らずか、猫マフラーをしようとした妹の手から逃げた。猫ってのはそうあれこれかまってやることはないんだが。人形のように動物を扱う妹には犬のほうが合ってるかもしれん。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:51:19.83 ID:fxCr22.o<>
「ああそれからな、俺の部屋にあるテレビとかゲームとか全部やるわ」
「ほんとう?わーい」
貸していたハサミは結局俺のところには戻ってこなかったが。

 ベットの上でじっと天井を見つめたままなんだか落ち着かない。不安とかそんなありきたりな感情ではなくて、ここから俺のなにが変わるんだろうかという一抹の……なんだろう。言葉にならない。
生活のスタイルだけが変わって俺自身はなにも変わらないのだろうけれど。気持ちとしては長門と二人でうまくやっていけるかという迷い、あるいは長門が家族になることへの戸惑いか、俺なんかが長門を幸せにしてやれるのかという疑問か、たぶんそんなところだ。もう長門とは呼べなくなるよな。
「有希、有希、か」
口に出して言ってみたがどうもしっくりこない。いっそのことのろけモードでユキリンと呼んでみようか。
「なあユキリン」
「……なに、ダーリン」
などと周囲がブリザードに見舞われてしまいそうな二人の会話を想像して俺は枕をボスボスと叩いた。やたら恥ずかしいじゃないか。

 にしてもあいつら今ごろなにしてんだろ。ハルヒと長門がその夜なにをしているか俺の知るところではないのだが、── これもまた後になって聞いた話だ。

 ハルヒが電灯のヒモをパチリと引いて消した。そのままスヤスヤと寝息が聞こえてくるのかと待っていたがそうでもなかった。長門はじっと息を潜めてハルヒが眠りにつくのを待っていたのだが、どうやらハルヒも長門が眠るのを待っているらしいのである。
「有希、どうしたの?」
「……眠れない」
「そうよね。あたしもなんだか頭に血が登っちゃって眠れないのよね。遠足の前の日とか、旅行に行った先の宿とかね」
「……一種の興奮状態」
「そうそう、アドレナリンが漏れ出してる感じね」

 ハルヒが唐突に切り出した。
「ねえ有希」
「……なに」
「前から思ってたんだけど」
長門には、どこかでギクという音が聞こえたそうだ。
「キョンってふつうじゃないわよね」
「……ふつう、とは」
「はっきり言うけど笑わないでよね。キョンってもしかしてふつうの人間じゃないんじゃないかしら」
「……それは、わたしも疑っていた」
「でしょでしょ、有希もそう思うでしょ。あいつはほかのやつとはどこか違うって、会ったときから思ってたんだけどね。もしかしたら宇宙人とか」
暗闇の中で、長門はどう答えようかと何パターンもの会話のやりとりを計算した。

「なんでそう思ったかというとね、あのね、秘密だけど、古泉くんは実は未来人だったのよ」
「……」
「実を言うと十年前に一度古泉くんに会ったことがあるの」
ハルヒは誰にも教えてない秘密を打ち明けるように目をキラキラと輝かせて言った。まずい、これはまずい。ハルヒが危険エリアに近づきすぎている。といっても明後日の方角だが。
「……そう」
長門はどう反応したものかずいぶんと迷ったそうだ。ハルヒと古泉が遭遇したいつかの七月七日、その場に居合わせていたがために、話を合わせるのも知らぬ存ぜぬとごまかすのも困難を極めた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:51:47.67 ID:fxCr22.o<> こういうときは相手に話をさせるに限る。
「……詳しく」
「聞きたい?聞きたいでしょ。あたしもまさかあそこで未来人と遭遇するとは夢にも思ってなかったわ」
ハルヒがモノローグを延々続けるどっかの主人公のようにもったいぶって言うと、長門もしょうがなしに釣られたふりをした。自分も古泉を未来人に仕立て上げた一味なのだが。
「……かなり、興味がある」
「あたしが中学生のころなんだけどね。夏だったかな、夜中に中学校の運動場に地上絵を描いたことがあったのよ」
「……どんな絵」
「なんていうかね、あたしが勝手に作った宇宙文字なんだけどね。この広い宇宙にもし人類以外の知的生命体がいるなら、あたしのところに来なさい、みたいな意味のね」
「……それは、新聞で見たことがある」
「そうそう、地方欄に出たのよあれが。謎の地上絵出現とかタイトルがふってあってもう笑っちゃったわ」
「……」
「でね、運動場に忍び込もうとしたとき古泉くんにバッタリ会ったの。そのときは近所のおっさんだと思ってたんだけど、よくよく見るとこっれがまたいい男なのよ」
「……」
俺だったらハルヒのノロケ話なんかまともに聞いていられなかっただろうが。長門はコクコクとうなずいて真剣に聞き入っていた。

「絵を描いたあと二人で少し話してたんだけど、宇宙人も未来人も超能力者もいるって言うじゃない。思ったわ、これこそあたしの求めていた人だ、ってね」
「……それで、好意を持った」
「ううん、そのときはまだそういう気分じゃなかったの。あたしはもうどっかにいる宇宙人に送るメッセージのことで頭がいっぱいでね。それから二三日してからだったわ、古泉くんのことをもっと聞いておけばよかったと思ったのは」
「……そう。四字熟語を用いるなら、一期一会」
「まさにそれよ。チャンスはそうそう訪れるもんじゃないわ。人生で一度あるかないかってこともある。それを逃したらもう後は後悔の日々よ。思ったわ、どうしてあのとき古泉くんの電話番号を聞かなかったのかって」
「……」
「あんたも、幸せになるチャンスは絶対逃しちゃだめよ。乗り損なったら、それからはつらいだけだからね」
「……分かった」
しみじみとうなずいてみせる長門だった。

「でさあ、古泉くんが未来人ってことはよ?もしかしたらキョンは宇宙人で、みくるちゃんは超能力者かもしれないじゃない」
「……そう、かもしれない」
そこで話を合わせるにはかなり無理があるが。
「で、思ったわけよ。あんたも実はなにかしら特殊な能力があるんじゃないかって」
話はそこにたどり着くわけか。さて、長門がどう答えたか。
「……」
「あたしの勝手な妄想だけどね。そうだったら楽しいじゃない」
「……実は」
「え?」
「……わたしは、魔法が使える」
ま、まじか。いよいよ正体が明かされるのか。
「どんな魔法?」
「……見て」
長門は寝たままの姿勢で、なにかを包むように両手を合わせ、ゆっくりと手を開いた。真っ暗な部屋のまんなかで、黄緑色のぼんやりとしたホタルのような光が手のひらの上にともった。
「すごいすごい、きれい」
ハルヒは闇の中にともるその光を呆然と見つめた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:52:21.41 ID:fxCr22.o<>「どうやってやってんのこれ」
「……ただの、手品」
「タネは?」
「……内緒。教えると価値が下がる」
「そ、そうね」
それは手品じゃなくて長門の本当の魔法だったのだが、ハルヒにとってはどっちでもよかった。
「きれいね。形があるわけじゃないのね」
長門の手の中で光るホタルのようなものに触れようとして、そこには形も熱すらもないことを不思議そうに見ていた。
「……そ」
長門は手を握り、光を消した。もう一度開くと何もなかった。

「へー、こういうのやれるんだ。またいつかやってみせてね」
「……分かった」
「ねえ」
「……なに」
「手、握ってていい?」
「……」
ハルヒはやっと落ち着いたらしく、スヤスヤと寝息を立てて眠りについた。長門もその寝息を聞きながらうとうとと眠りに落ちた。

 と思っていたらハルヒが突然話し掛けた。
「ねえねえ」
寝るのか話があるのかどっちかにしろと。
「あんた、自分がちっぽけな存在だって気づかされたことってある?」
「……これまでに二度、ある」
ハルヒは別に質問しているわけではなくて、自分にはそういうことがあったんだという問わず語りだった。
「小学生のときだったと思うけど、親父に連れられて野球を見に行ったのよ。そのとき球場には五万人くらいいたんだけど、帰って計算してみたら日本の人口の二千分の一でしかなかった。あんなにたくさん人がいるなかで、あたしの存在はそのまた五万分の一に過ぎなかった。驚愕だったわ」
「……そう。わたしの場合は、」
と言いよどんで、
「……自分の能力で動かせると思っていても、実際には大きな渦の中を泳ぐ一点の泡にしかすぎないということに気が付いたとき」
「難しいわね」
「……自分の力を過信していたのかもしれない」
「自分の力で生きていると思ってても、実は何か別の力に背中を押されてたってこと?」
「……そう。近い」
自らの能力を意のままに操る長門と、まったく知らずに能力を使っているハルヒがこういう話をするのは実に面白い。

「あたしもね、たまにだけど誰かに人生をいじられてるような気がすることもあるのよね」
「……」
長門は返事をしなかった。ハルヒを、あるいは世界を守るためとはいえハルヒ個人の人生に意図的な影響を与えている俺たちの存在にうすうすながら気が付いているのかもしれない。
「でもま、別に誰が干渉しようといいわ。今はシアワセだから」
「……そう」
長門はわざと寝息を立てて寝たふりをした。目を閉じたまま物思いにふけっていた。

 しばらくしてハルヒもスゥスゥと寝息を立てた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:52:51.23 ID:fxCr22.o<>
「キョンく〜ん、いつまで寝てるの、起きないと遅刻しちゃうよ」
「いやだ。まだ目覚ましは鳴ってないだろ」
「今日が最後だっていうのに、やーっぱりあたしが起こさないとだめなんだよねえ」
やけにリアルな結婚式の夢を見ていてやっと終わったなぁなどと布団の中で温かい安堵感に包まれていたのだが、妹の声を聞いて俺はガバと飛び起きた。
「おい、今何時だ」
「もうすぐお昼だよ」
やっべ、完璧に遅刻だ。またハルヒにどやされる。
「キョンくん、朝ごはんは?」
「こんな緊張する日に飯を食う余裕なんてない」
「だめだよ〜、せめて牛乳だけでも飲んでいかないと。式の途中で倒れちゃうよ」
妹だけがいつもどおりうるさくて、親父とおふくろは自分達の衣装で手一杯で俺にかまけてる余裕はないようだ。吐きそうになりながら牛乳をガブ飲みして家を出た。

 長門はハルヒと会場へ直行、うちの家族はタクシーで時間までに来ることになっている。俺はひとりで自転車に乗って中央図書館まで全速力で飛ばした。

 今日は休館日で正面玄関はまだ開いておらず、地下の通用口から入ると古泉が待ち受けていた。
「おはようございます」
「おおう、おはよう。なんだ、顔が疲れてるぞ」
「式と披露宴の用意で徹夜でしたからね」
古泉は頭を掻き掻き一階のドアを開けた。フロアに足を踏み入れると、ここが図書館だとは思えないほど立派に飾り付けられていた。
すべてのガラス窓のカーテンを取り外し、外から光が射すようになっている。西側の壁に花のアーチがあり、その前にミニ教卓みたいな演壇が置いてある。洋式にすると言ってたからたぶんここに牧師か神父様が立つんだろう。
その演壇の前から東に向かって白い布が敷いてあり、階段口まで伸びている。これが花嫁と付き添いが歩いてくるバージンロードだ。そのバージンロードの両側にフラワースタンドが立ててあった。ここに招待客の椅子が並ぶのだろう。

 確かこの場所には一般書籍の棚があったはずなんだが、本棚を全部動かしたらしい。カウンタも一部なくなっている。肉体労働ご苦労だったろうに。
「よく使用許可が下りたな」
「それはもう、機関の仕事ですから。市議会にもコネはあります」俺の知らないところでかなり予算を使わせたようだな。

 招待客は普段と同じ正面玄関から入る。入り口の両脇に大きなフラワースタンドが飾ってあった。
通路に並んだ小さなフラワースタンド同士はリボンで結んであり、花でデコレーションされた道に沿って進むと、自然光で白く浮かび上がる式場を目にするという演出だ。
「よくできてるな」
「そうでしょう。今回は自信作みたいですよ」
まじでブライダルプランナーとして食っていけそうだぞ。
「なにやってたのよキョン!」
「すまん、昼飯おごるわ」
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ、ほら手伝いなさい」
青いつなぎを着て頭にはタオルを巻いて走り回っている。徹夜明けだとはとても思えんバイタリティだな。

「キョン!ぼーっとしてないで照明取り付けるの手伝いなさい、あんたの挙式でしょうが」
「分かった分かった。おい古泉、時間まで寝てていいぞ」
「じゃあお言葉に甘えます」
俺はジャケットを脱いで腕まくりした。作業着でも着てくるべきだったか。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:53:17.51 ID:fxCr22.o<>「長門は来てるのか」
「有希は二階の会議室でメイクと衣装合わせしてるわ。花嫁は人前に出ちゃいけないのよ」
「リハやんないのか」
「リハーサルなんてやらなくていいわよ。すべてあたしの予定通りよ」
なにをやらかすか予測すらつかんお前だから余計に心配なのだが。

「みんな、残り三時間を切ったわ。一気に攻め落とすわよ!」
なにと戦ってるのかよくわからんのだが、走り回っているのはハルヒだけではなくて、うちの社員全員と、それからハカセくんと、機関の人やら鶴屋さん経営の花屋さんまで借り出されているようだ。
場所を借りれたのは今日一日だけで、十時にカギを開けてもらってから一階の本と雑誌の三分の二を書庫に移し、椅子と本棚を上の階にある展示室まで動かしたとのことだ。
終わったらまたこれを元に戻さなければいけないのだが、そのときには俺も動員されるわけだな。やれやれ今から腰が痛いぜ。
「おいハカセくん、あんまり無理すんなよ」
「あ、おはようございます先輩。それからおめでとうございます」
「ありがとよ。適当なところで休んでいいからな」
やせっぽっちのハカセくんは足元もふらつく危うい様子で、教会にあるような五人掛けくらいの横長椅子を抱えて運んでいる。
「日ごろ運動してないんで、やっぱりきついですね」
「研究室に筋トレのベンチプレスでも置いてやろうか」
ハカセくんは肩にかかったタオルで汗を拭いながら苦笑していた。

「みなさん、お昼ごはんにしませんか〜」
メイド姿の朝比奈さんが現れるやいなや作業していた人たち全員の目がそっちに動いた。それまで動いていたハンマーやら曲尺やら電動ドライバやら園芸用ハサミなんかがぴたりと止まった。
「おはようございます朝比奈さん」
「いよいよ今日ね」
「そのメイド衣装もひさしぶりですね。ハルヒの命令ですか」
「いいえ、今日くらいは自分で着てみようかと思ったの。キョンくん、この衣装好きでしょう?」
俺のために大サービスですか、感涙です!
「なんというかその、この雰囲気にすごく似合ってますよ」
メイドといえば朝比奈さん、朝比奈さんといえばメイドというくらいに俺の中では代名詞化しているこの姿が若かりし頃を彷彿とさせる。

 夏向けメイドスタイルの袖も裾も短めなドレスに白エプロンを鑑賞しているとドヤドヤと飢えた作業員が押しかけ、テーブルに盛られたおにぎりやらお菓子やらサンドイッチなんかをむさぼりはじめた。むさぼりながら朝比奈さんのメイド姿をうんうんとうなずいて眺めていた。
「キョンくんも今のうちに食べておいたほうがいいわ。披露宴じゃ二人とも食べてる時間ほとんどないから」
「そうなんですか、いただきます」
「じゃ、また後でね」
朝比奈さんは大盛のサンドイッチを半分ほど取り分けて長門のために持っていった。俺と長門はハルヒにいったい何をさせられるんだろう。

 ホールの掛け時計が一時を回った頃、ハルヒに呼ばれた。
「キョン、そろそろメイクするから控え室に来なさい」
ハルヒの大声にビクリと振り返った。
「メイクっておしろいでも塗るつもりか」
「はぁやくぅ、メイクさんスタンバってるから来なさい、顔剃って髪の毛もセットしないといけないでしょ」
いちおう髭は剃って髪の毛も整えては来たんだがそれだけじゃ満足できないらしい。その辺にいる機関の人に、そいじゃ後頼みますと工具を渡して作業から抜け出した。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:53:48.21 ID:fxCr22.o<> 市民がイベントなんかで使う二階の集会室を控え室にしているらしい。ドアを開けると鶴屋さんと朝比奈さんの笑い声が聞こえた。盛り上がってるようだな。
「キョン、間仕切りからこっちは女子ルームだから、絶対覗いちゃだめよ」
「そんなマネしねーよ」
「式の前に花嫁に会っちゃ縁起が悪いんだからね」
昔から言われてることだろ、分かってるって。でもちょっとくらいいいよなーなんて隙間から覗こうとしたらハルヒに耳をひっぱられた。
「さっさと髭剃るから耳貸しなさい」
イテテ俺の髭は耳には生えてません。

 ハルヒと朝比奈さんが交互にカミソリを当てて顔をなでた。メイクさんって朝比奈さんだったのか。
「なんで顔なんか剃るんです?」
「お化粧のノリをよくするの」
なるほどね。うぶ毛と一緒に顔の表面の脂を取ってるわけか。女の人はいつもこれをやってるわけだ。
「なんなら眉毛も剃る?」
「いえ、眉毛だけは自前で行きたいと思います」
というより、朝顔洗うときに眉毛のない自分の顔を見て腹抱えて笑いそうだからな。最近は剃ってる野郎も多いらしいが。

 とはいうものの、キョンくんは眉毛が薄いわねというので少し書いてもらった。
鏡を見るとなんというかこう、舞台役者とまではいかないがモデルくらいにはキリリとした眉毛になっていた。アイブローペンシルってのは実に便利だな。
鏡を前に眉毛を上げたり下げたり寄せたりしているとハルヒが顔を覗かせて多少はマシじゃないのと笑っていた。いつもは間抜け面で悪かったな。

 ピシっとモーニングを着込んで髪にドライヤを当ててもらっているとドアを開けて国木田が入ってきた。娘らしき子供の手を引いている。
「キョンおめでとう」
「おう国木田か、すまんがまだ準備中だ。下で待ってろ」
「ひどいなあ、僕はキョンの付き添いだろ」
「え、俺聞いてねえぞ」
「あたしが頼んだのよ」
「てっきり古泉がやるもんだと思ってたんだが」
「古泉くんは披露宴のほうが忙しいの。こういうイベントは全員に満遍なくキャスティングするのがいいのよ」
ハルヒ流の配役か。なるほどね。
「そいうことならまあ、頼むぜ国木田」
「お任せ」
国木田は自分の胸をドンと叩いてケホケホ咳をしていた。

「その子、国木田の子か」
「そうだよ」
「こんにちはお嬢ちゃん、何歳かな」
手を振ってみせたのだがはにかんで父親の後ろに隠れ、四本の指だけ立ててみせた。なるほどね。年齢的に言えば俺にもこれくらいの子がいてもおかしくないんだよな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:54:17.04 ID:fxCr22.o<> ドアが開いて作業服姿の部長氏が入ってきた。
「社長はこっちかな?」
「待ってたわよ部長、さっさとそれ脱いで」
「ま、まさか僕を身包み剥ごうってのかい!?」
「バカなこと言ってないで、さっさと鏡の前に座りなさい」
部長氏は隣の椅子に座り、
「ベストメンはふつう結婚式の仕切り全般をやるんだけどね」
「部長氏、ベストメンってなんですか」
「知らないのかい?新婦の付き添いがブライドメイド、新郎の付き添いがベストメンだよ」
「ああ、部長氏もだったんですか。こっちは同じく付き添いの国木田です」
「こんちわ。元コンピ研の部長さんだよね、涼宮さんの会社で働いてるんだって?」
「これはこれはどうも、うちの社長がお世話になってるようだね。よろしければ名刺交換などはどうかな?」
部長氏の丁寧語もなんだが変だが。こんなとこで営業モードか、やれやれ。

 部長氏と国木田が揃いのタキシードを着込んでいるのを見ていて、なにか忘れているような気になった。とはいってもどうでもいいような、でも忘れると後々厄介なことになりそうな、でもやっぱり思い出せない。忘れ、わ、わわわ……。
「やべ、忘れてた」
「どうしたの?」
「谷口だ。あいつに招待状出してない」
「あんなもの、結婚しましたのハガキ出しとけばいいわよ」
「絶対に呼べと言われてたのに俺殺される」
俺は携帯を開いて谷口に電話をかけた。
「おい谷口」
『なんだキョンか。今日暇ならお前のおごりで呑みに行くか』
「それどころじゃねえ、今から結婚するからすぐに来い」
『は?なに言ってんだお前』
「もうスタンバってんだ、今すぐ式場に来い」
『すまんがなキョン、俺にはそういう趣味は、』
「自分で呼べって言ってただろうが」
『もしかして今日が長門との結婚式だったのか』
「そうだ」
『バカ』
着ていくものがないとかタクシーが捕まらないとか祝儀に包む金がないとかタクシー代払えとか、到着するまでアホの谷口に散々悪態をつかれた俺だったが今日だけは黙って聞き逃しておいた。
長門の晴れ姿を一目見せないと一生恨まれそうだからな。まあ忘れていた俺が悪い。

「呼ばれて飛び出ました谷口です!」
あまり歓迎されてもいないのにドアを勢いよく開けて飛び込んできた谷口は、目も覚めるような真っ白な衣装だった。
「おい谷口、誰が白のタキシードで来いつったよ。漫才でもやるつもりか」
「しょうがねえだろ、俺これしか持ってねえんだから」
お前はタキシードで通勤してんのか。どんなエンターテナーだ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:55:10.30 ID:fxCr22.o<>「ちょうどいいわ。谷口、あんたがその格好でベストマンをやんなさい」
「ベストマンってなんだ?」
「ベストメンの代表よ」
「おう、アイアムベストオブザベストマン。まっかせなさい」
俺もハルヒも国木田も、こいつはなにも分かってねえなという顔をしていた。新郎と一緒に並ぶのがベストメンで、その代表役がベストマンだ、覚えておけ。俺も今知った。

「涼宮、ブライドメイドは誰がやるんだ?」
「それは始まってからのお楽しみよ」
谷口は女性の声が聞こえてくる間仕切りの向こう側が気になるらしく、
「そ、その声は麗しの朝比奈さんではありませんか」
「勝手に覗くんじゃないっ、わよ」
ハルヒにヘッドロックをかけられてマイッタを叩いている谷口だった。

 式開始三十分前に新川さんが登場した。ノリの効いたピシっと決まったモーニングコートで、髪型も眉毛も髭もネクタイもまったく非の打ち所がないミスターダンディが現れた。
「皆様おはようございます。おかげさまで本日は好天に恵まれまして、有希の挙式にお越しいただきありがとう存じます」
「こ、これは新川先生、長門……さんのお父さんだったんですか!」
「ふつつかながら叔父でございます。有希がいつもお世話になっております」
谷口の記憶じゃやっぱり先生らしく、やたらとペコペコしている。お前も見た目ばっかりかっこつけてないでこういう芯から渋い紳士を見習え。かっこいいってのはこういうのを言うんだ。

「新川先生かっこいいわ。メイクを入れるところがないわね」
「お褒めいただきありがとう存じます。そろそろ招待客のほうも揃い始めたようです」
「新川先生は女子ルームに入っていいわ。キョン、そろそろ出番よ」
「お、おう。行ってくるぜ」
助けてくれ膝が笑って立てない。
「さあキョン、しっかりしてくれよ」国木田に肩を借りた。
「おう、しっかりするぜ」
恥ずかしいことにこれから死刑執行される囚人みたいにして、国木田と谷口に支えられながら一階に下りた。
俺が姿を見せると妹とその隣にいるのはたぶんミヨキチだと思うのだが拍手が沸いた。いや、今日の主役は長門だから拍手はそっちに取っといてくれ。

 うちは親類と呼べる近縁のやつらが少ない。式に呼んだのは田舎の爺さんと婆さん、俺の名付け親である叔母とその家族だけだった。あとは会社の連中とかつてのクラスメイトが一部。長門の通う研究室の先生などなど。
ENOZの四人にはオーケストラを頼んだ。最前列の親父とおふくろは借りてきた猫みたいに座ったまま固まっている。この後の披露宴で親族代表の長いスピーチをやらされることになっていて、もうそればっかりが頭にあるようだ。

 俺は右の列のいちばん前の席に座った。ビデオカメラを手にした古泉が隣に寄ってきた。
「立派ですよ、その姿」
「お前が付き添いをやるとばかり思ってたんだがな」
「僕だけがおいしい役をもらうわけにもいきませんしね。みなで分け合わないと」
ハルヒと同じことを言ってるが、こいつの受け売りだったのか。

 三人のブライドメイドが進み出た。朝比奈さんに鶴屋さんに喜緑さん、三人とも豪華なシルクのメイドスタイルのドレスを着ていた。そりゃまあ花嫁のメイドだからメイド服なのは分かるが、似合いすぎている。
朝比奈さんと鶴屋さんは前にもメイド姿を拝ませてもらったことがあるが、喜緑さんがこのかっこうをするのを見るのははじめてだ。これはいい目の保養になった。鶴屋さんが親指を立ててウインクしてくれた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:55:36.69 ID:fxCr22.o<>
 白いバラを襟元に挿したベストメンは黒いカラスの中に一羽だけ白いのが混じっていてなんともこっけいな姿だったが、俺のためにやってくれているわけで笑っちゃ悪いよな。
「もう時間だが牧師さんか神父さんはまだ来ないのか」
「来てますよ、ほら」
黒い祭服を着た司祭様がブンブンと玉ぐしを振り回しながら演壇の向こうに歩いてきた。
「なんつーかっこしてんだハルヒ、いつからカソリックになったんだ、しかもそれ神式用だろ」
「これは無宗派の結婚式よ。とりあえず祈っとけばどれかの神様が祝福してくれるに違いないわ。鰯の頭も信心からというでしょ」
「そんなことわざ使ってバチ当たっても知らんぞ」
「黙りなさい」
ハルヒが演壇の前に立つと、さっきまで流れていたBGMがフェードアウトした。
「これより、神聖にして厳粛なる儀式を執り行います」
ハルヒの後ろのガラスから入ってくる光がまるで後光のように射しこんでいる。
まあ祭服コスプレはこの場に似合わなくもないわけで、見えないジャンヌダルク並みの神通力でも宿ったのか客席はシンと静まり返った。

 時計の針が三時を指すと同時に、両側の壁に据えてあるでかいスピーカーからパイプオルガンの音が流れてきた。ENOZの榎本さんのキーボード演奏らしい。俺も招待客も、全員が起立して後ろを振り返った。

 席の後ろのほうがざわついた。階段ホールから新川さんに付き添われた長門が現れた。観衆はオオッとかホゥとか、それぞれ好きに感嘆の声を上げパチパチと写真を撮っている。撮影タイムが終わると二人は白い道の上を一歩踏み出した。

 結婚行進曲が響き渡り、客が見守る中バージンロードの上をゆっくりと、一歩ずつ歩いてくる。照明の光の中にくっきりと浮かび上がったピュアホワイトのドレス。そりゃもう白を超える白というか、まぶしくて瞳孔を細くするだけじゃ足りずに何度も瞬きをした。

 スポットライトが天井から二人を照らす。赤い口紅をさした長門の顔が少しだけ微笑んでいた。肩まで垂れたベールは頭の後ろでふわりと広がり、頭の上にハート型の小さなティアラがちょこんと乗っている。肩が露になったノースリーブで胸元には二重のフリルが縁取られていた。肌の上に雪の結晶をモチーフにしたネックレスをつけている。

 腰まで滑らかにシルクの光沢が続き、腰から丸く広がるプリンセスラインのドレスだった。両腕は半透明な長いグローブに包まれ大きな白と緑のブーケが右手を隠している。

 スカートの部分にはコサージュがぽちぽちとあつらえてあり、大きな巻きスカートのように片側でカーブを描いて止まっている。後ろの裾が長めに垂れていた。急遽付き添い娘に採用されたらしい国木田の娘がドレスの裾を持って後ろをついてくる。父親に似て目がぱっちりしていてかわいい。

 古泉が小声で言った。
「今日の長門さんはひときわ美しいですね」
「ああ。極上の美しさだ」
「知っていますか、このワーグナーの結婚行進曲はオペラ『ローエングリン』で使われている曲なんです」
こんなときに豆知識を披露しなくてもいいって。古泉はクスクスと笑い、
「素性を隠した王子と娘が結ばれ、王子である正体が明かされてしまい破局に陥るという物語なんです」
「なにがおかしいんだ」
「誰かの境遇によく似ているとは思いませんか」
またそんなミステリーヲタクな話を持ち出しやがって、大昔のオペラの登場人物とひとつふたつ似てるところがあるからってどうってことないだろ。
「いえまあ、こんなときに持ち出すのもなんですが、ひとつだけお願いがあります」
「なんだ」
「今日を境に、ジョンスミスの名前を封印してください」
「久々だが顔が近いぞ、笑顔のまま深刻な話をするな」
「あなたは人生の伴侶として長門有希を選びました。ジョンスミスはひとりしか存在を許されません」
古泉に釘を刺されるのはこれがはじめてかもしれない。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:56:06.60 ID:fxCr22.o<> そんなことはお前が心配しなくても俺自身の口から漏れることはないだろうよ。俺は自分の意思で鍵をこいつに渡しちまった。それを取り戻そうなんてことは思わんさ。
「よし、分かった。誓おう」
古泉は黙ってうなずき、花嫁の歩いてくるほうを目で示した。新川さんにエスコートされた長門が目の前に近づいてきた。
「がん、ばれ、よっ」
古泉が俺の肩をポンポンポンと叩いた。こいつ、はじめて俺にタメ口を利いたな。

 新川さんが長門の右手を俺の左手に重ね、俺に向かってうなずいてみせた。二人でハルヒ扮する司祭様の前に立った。
 すると、突然ハルヒが両手を上げて待ったをかけた。
「ちょ、ちょっとストーップ!そのまま待って!」お前が待ったしてどうする。
「なんだ、どうしたんだハルヒ」
「あれがない、聖書を忘れたわ」
「聖書なんかいらんだろ、無宗派なんだし」
「だめよ、ちゃんと信条にのっとってやんなきゃ」
さっきと言ってることが百七十九度くらい違う気がするんだが。
「……これ、使って」
長門が心得ているというふうに分厚い本を取り出した。って、どっから取り出したんですかそれハイペリオンですかそれ。そんなんで誓いを立てて大丈夫なのか、俺がトゲトゲの化けもんの生贄にされたりしないだろうな。
などと突っ込もうとすると、長門の黒い瞳がお願いっという感じで俺を見つめたのでそれだけでもうなんというか反則というかなんでも許してしまえそうな勢いだった。
いやまあ、その本が長門のバイブルだというんならそれはそれでいいさ。

 ハルヒはまわりを見回して叫んだ。
「さあっ、気を取り直していくわよ」
ハルヒが座れという感じでゼスチャーをすると全員着席した。
「おほん。本日、ここにキョンと有希の婚姻の契りの場に立ち会うという機会を得たことを、神様に深く感謝するものであります」
どの神様か分からないが、厚手のSF小説にうやうやしく右手を置いてありがたい説教を始めるハルヒである。
「はるか昔、アダムとイブの結婚式はたった二人でした。地球上にたった二人っきりで愛の誓いを立てたのです。そのとき相手と結ばれる確率は百パーセントだったかもしれないけど、今では三十億分の一の確率です。いえもう三十五億分の一かもしれません」
人類創世の話がしたいのか人口増加の話がしたいのかよく分からんのだが。
「相手の候補が三十億もいるってことはよ、ボヤボヤしてると見失ってしまうかもしれないわ。昔の人は言いました。恋は気がつかないうちに訪れる。我々はただ、通り過ぎたその後姿を見るだけである」

ハルヒは一息ついて客を見回し、
「つまり、好きな人がいるならさっさと結婚しちゃいなさいってことよ。世界は広くて人生は短くて、迷ってたら幸せなんか手に入らないんだからね」
それが言いたかったのか。話にオチがついたところで皆は納得したようで笑い声が沸いた。恋愛なんて精神病の一種だと誰かが言ってたような気もしなくもないのだが、まあいいこと言ったんで許そう。

「では、誓いの言葉」
俺は長門と向き合い、両手を握って見つめあった。
「キョン、あなたは有希を、健やかなるときも病めるときも、つねにこれを愛し、これを敬い、これを慰め、生命の限り固く結ばれることを誓いますか?」
「は、ハイ。誓いマス」
声が裏声っていたが後ろのほうまでちゃんと聞こえたか。
「有希、あなたはキョンを、元気なときも具合の悪いときも、優柔不断なときもグズグズして待たされるときも女心に鈍くてどうしようもないときも、つねにこれを愛し、これを敬い、これを慰め、生命の限り固く結ばれることを誓いますか?」
「……誓う」
「よろしい。では指輪の交換をしなさい」
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:56:31.32 ID:fxCr22.o<>長門は朝比奈さんから、俺は谷口から結婚指輪を受け取った。俺はその銀色に輝くリングをケースから取り出し、きっと酸素が足りなくて頭がぼけていたのだろう、自らの薬指にはめようとしていた。は、はまらねえ。
「……こっち」
長門が自分の手を差し出して促した。本番中にトチるなんてなにやってんだろね俺は。

 長門の細い薬指にリングをはめてやると、ハルヒが、
「人類とこの宇宙のすべての存在から与えられた権限により、キョンと有希が夫婦であることをここに認めます。さあっ誓いのキスよ」
え、この衆人環視の前でやんのかよ、聞いてねえぞ。ふつうはここで音楽が鳴って拍手に包まれながら退場だろう。
「キョンなに躊躇してんのよ、さっさとやるの。皆さん、神聖なるキスシーンの撮影はご遠慮ください」
そうは言ったがハルヒはやおら古泉を指差し、
「古泉くん、ちゃんと撮ってる?」
こ、このバチ当たり神父が。

 古泉のカメラのインジケータが赤く光ったままじっとこっちを見ていた。向き合ったままの長門はそのまま固まって俺を待っていた。
しょうがない。これが生涯で二度目になるキスなのだが、俺は長門のあまりに真剣なまなざしに少し不安になり、チラと喜緑さんを見た。喜緑さんは微笑んでうなずいてくれた。

 溜飲が下がる思いで俺は長門の肩を抱き寄せた。長門の左手が俺の腰を捉え、俺の右手はゆっくりと長門の左頬に触れた。その手で耳の後ろを支えて、目を閉じた長門の顔との距離が少しずつ狭まってゆく。乾いた唇を少しだけ濡らし、やわらかな、温かな、ぽってりと濡れた感触が唇の先に広がった。

 視界がぼんやりと白い光に包まれてゆく。過去も未来も、そして現在までもがゆっくりと流れ、やがて音もなく止まった。

 閉じた目を開けゆっくりと唇を離すとそこにはなにもなく、ただぼんやりとした白い風景だった。誰もいない、なにもない、無音。目の前にいるのは長門だけだった。
「ここは……どこだ?俺は夢でも見てるのか」
「……閉鎖空間。あなた自身の」
なんと、俺が作ってんのか。そういえば前にも来たことがあるような気がする。なぜか巫女衣装の朝比奈さんが思い浮かぶが。いや、長門の親父さんだったかな。異空間はハルヒの専売特許だとばかり思っていたが、それにしちゃハルヒのとは色も雰囲気もずいぶんと違うな。
「……そう。閉鎖空間は本人の精神世界を反映する。今のあなたの気持ちが、これ」
真っ白ってのが俺のどんな気持ちを表すのか、フロイト先生を聞きかじった程度の俺にはちょっと分からんが、でも、今どんな気持ちかと聞かれたらちゃんと答えられる。そう、今こそが本当に幸せそのものだ。

「俺がここにいるってことは、どうやってここから出るんだ?」
「……もう一度、キスして」
長門は目を閉じ、頭を反らして小さな唇をちょんと突き出した。俺は最初のときと同じに両手で暖かい頬を包み、長門の後ろ髪の感触を指先に感じながら唇を近づけた。

── 今まで、ちゃんと言えなくてごめんな。大好きだ……

 やがて人の声、拍手と指笛、まぶしい光、足音、花の香り、長門の化粧の匂いが一気に戻ってきた。目を開けると頬を染めた長門がじっと俺を見つめていた。

 次の瞬間、聞き覚えのあるもうひとつの結婚行進曲が鳴り響いた。メンデルスゾーンだっけな。
 そのまま長門の手を引いてゆっくりとバージンロードを歩いた。招待客がバラの花びらを二人の上に放り投げ、派手なフラワーシャワーを浴びた。いやあなんというか、こういう演出は嬉しいね。

 そういえばこの後の予定を聞いてなかった。古泉にこの後どうするんだという視線を送った。
「車を用意していますので、そのまま披露宴の会場に行ってください」
拍手の合間を古泉が大声で答えてきた。この会場誰が片付けるんだろうと不安になったのだが、まあ後のことはこいつらに任せておこう。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/03(金) 18:56:54.04 ID:fxCr22.o<>
 正面玄関まで来たところでなにか大事なことを忘れているような気がして、俺は振り返ってみんなを呼んだ。
「あそうだ、皆さん、ブーケトスをやりますよ」
「待ちなさい、ちょーっと待ちなさいキョン、あたしが行くまで投げちゃだめよ。ほらほらみくるちゃんも走って」
言うが早いかハルヒ神父を先頭に、ブライドメイドの三人や、赤やピンクやパープルで着飾った女性陣がスカートを捲り上げて殺到した。独身女性がこんなにいたのか、こりゃあ争奪戦になるぞ。
 長門が俺の耳元でボソボソ話した。
「……ブーケトスってなに」
「後ろを向いてその花を投げればいいんだ。まあアミダくじみたいなもんだな」
「……ひとつしかない」
「取り合いになったら困るから少し増やしてくれ」
「……分かった」
 長門が後ろを向いてふわりとブーケを投げた。全員がその行方を見つめる中、まるで計算されたかのような緩やかな放物線を描いた。
小さな花束は空中でポンと分裂し、いくつものブーケになって舞い降りた。突然増殖したブーケに慌てた女どもはどれを捕まえればいいのか右往左往していたが、たぶん全員分はあるだろう。
なに喜んでるんだ谷口、お前は男だろうが。

 玄関を出ると黒塗りの個人タクシーが止まっていた。なんとなく見覚えはあるのだが後部シートがやたら長くて普通車の二台か三台分はある。ってこれリムジンとかいうやつじゃ。モーニングのままの新川さんが運転席のドアを開けて出てきた。
「お二人様、ご成婚おめでとうございます」
「……ありがとう」
「どうも新川さ、お義父さん。運転手までさせてしまってすいません」
「いえいえ、わたくしはこれが本業でございますゆえ」
新川さんがドアを開けて長門が乗り込むのを手伝った。スカートの重なったレースがふわふわと膨らんで花嫁が埋もれている。
中に入るとほのかにライトがともり、テーブルの脇にはシャンペンとグラスが用意してあった。ゆったりサイズのL型シートには軽く六人は座れそうなのだが、俺と長門は隅っこに身を寄せ合って座った。
ふわふわの布張りの床、壁には液晶テレビと電話、サイドテーブルにはワインクーラーと冷蔵庫、乗るのも見るのもはじめてだがこいつは豪華だ。
「長門、シャンペン飲むか」
「……うん」
俺は冷えきった瓶の栓をポンと抜いてしゅわしゅわとグラスに注いだ。二人のグラスを合わせるとチリンと軽い音がした。

 新川さんの演出らしく車内に洋楽ラブソングが流れはじめた。壁のインターホンが鳴った。
「披露宴までまだ時間はありますから、少しドライブに出ましょう。到着までゆったりとおくつろぎください」
おくつろぎくださいと申されましても、もうこの車のゴーシャスな内装に圧倒されて正座なんかしている俺なのでありますが。とりあえず新郎らしく長門の肩を引き寄せてみたりした。長門も首を傾けて俺の肩にもたれている。

 車が走り出すと、突然後ろのほうでやかましい金属音が鳴り響き驚いて振り向いた。ああ、あれだ。空き缶のガラガラだ。
今どきこんな派手なガラガラを引く新婚カップルもいないと思うが、でかい音を出して悪魔を追い払う魔除けなんだとか昔はひも靴を引っ張っていたんだとか、どれがほんとなのかは知らん由緒曖昧な古の習慣らしい。
道行く人がなにごとかとこっちを見て、空き缶を見て指差して微笑んでいる。若いあんちゃんが親指を立てているのを見て、俺たち結婚したんだぜと急に自慢したくなってきた。このまま突っ走って世界中を駆け巡ってみたい気分だ。

(続く)
<> 長門有希の憂鬱W
◆nomad3yzec<>sage<>2008/10/04(土) 18:17:49.93 ID:3ULgLh.o<>
七 章

「お二人様、そろそろ披露宴会場に到着します」
俺と長門は寝ぼけ眼をして、よだれが垂れた口元を拭きつつ起き上がった。シートがふかふかであんまり気持ちがいいので二人とも眠っていたらしい。新川さんが気を利かせて景色のいいところを通ってくれてたようなのだがあいにくと夢すら見ていない。窓の外はそろそろ暮れはじめ夕日が差していた。
「ここどこですか」
「海岸沿いのリゾートホテルです」
リムジンは超高層ホテルのロータリーに止まっていた。ドアを開けて降りると潮のにおいがする。地理的には中央図書館から十五分くらいのところにあるらしい。

 俺は花嫁衣裳のままの長門の手を取って車から降ろした。制服を着たドアボーイが胸に手を当てて深々とお辞儀をして俺たちを案内してくれた。長門は裾を引きずらないようにスカートをちまっとつかみ、いそいそと歩く。

 ガラス張りのエレベータで最上階まで上った。そこはレストランになっていて俺たちの名前で貸切の札が立ててあった。まわりの海が一目で見渡せるいい場所だ。休日にこんな高級ホテルのワンフロアを借り切るなんてふつーは無理だが、こりゃ古泉の手配だな。

 俺たちが車の中でうたた寝していた間に客はもう集まっているらしく、入り口の受付前には人だかりができていた。メイドドレス姿の朝比奈さんが出迎えてくれた。
「キョンくん、有希さん、お待ちしてましたよ」
デジタルカメラでパシャパシャと写真を撮られ、プリンタから出来上がったばかりの写真がにゅるりと吐き出されている。
「写真ができたらウエルカムボードに貼っておきますね」
そのウエルカムボードとやらは読んで字のごとく披露宴の看板のようなもので、畳二枚分はありそうなパネルに二人の等身大イラストが描いてあった。
二人だけじゃなくてハルヒも朝比奈さんもなぜか古泉も描いてあるんだが、昔自主制作映画のときに作ったでかいポスターに似てるな。その上に朝比奈さんが撮ったらしい招待客の写真がペタペタとピンで刺してあった。
ボードの上には“二人の愛のステージ造りはお任せを!── 株式会社SOS団ブライダル事業部”とでかでかと書かれている。商魂たくましすぎるぞヲイ。

「みなさん、お二人が到着なさいましたよ」
朝比奈さんがファンファーレのようにさえずると拍手が沸いた。受付のテーブルからブライドメイドの喜緑さんがやってきて俺と長門の手を取った。
「さあ急いで、涼宮さんがお待ちですわ」
当然ながらリハーサルもなくハルヒからは披露宴のプログラムも知らされていないんだが、いったいなにをさせられるんだろうね。

「おっそいじゃないのよキョン!」
「いやあスマンスマン、車の中でうたた寝してたんだ」
控え室に入るなりネクタイを引っ張られてゴムがびょーんと伸びた。残念だったな、これは長門にプレゼントされたインスタントネクタイなんだよ。
「キョン、有希、さっそく着替えてもらうわよ」
また着せ替え人形ごっこがはじまったな。ハルヒが用意してきた衣装とやらは黒一色の……、なにこれ紋付ハカマ?
「江戸時代じゃあるまいしこんなん着ろってのか」
「文句言わないの。日本では古来よりこれが正装なんだから」
いやまあ正装なのは分かるが、背中にあるマークがうちの家紋と違うのはなんでだ。いや待て、俺がこれなら長門はどうなるんだ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:18:28.41 ID:3ULgLh.o<>「先に有希の着付けやってるから、あんたはそっちで着替えなさい」
「俺ハカマの着方とか知らんぞ」
「いいから適当にやんなさい。後で手伝うから」
しぶしぶ間仕切りカーテンの向こうに隠れてモーニングを脱いだのだが、帯のセットの中に妙な布切れが混ざっているのに気がついた。そのブツがなんなのか理解した俺は顔を赤くして、
「おいハルヒ、お前俺にふんどしを締めろってのか」
「あったりまえでしょ、日本男児がフンドシを締められなくてどうすんのよ」
いや、日本とか国籍とかそういう問題じゃ。
「コスプレは見えないところが肝心なのよ。なんなら古泉くん呼ぼうか?着付けくらいやれると思うけど」
それだけはやめてくれ、俺ひとりでなんとかする。古泉にフンドシの締め方を教わるなんざ日本が鎖国してブリーフとトランクス禁止令が出てもやなこった。

 相撲取りが巻いているマワシみたいな六尺とは違って、一反木綿に紐がついたような越中フンドシらしいのだが、へそのところで結んで後ろに垂れた布を前に回して垂らすだけの簡単なものだった。
よく見りゃふんどしが入っていた袋にイラスト入りで締め方を書いてある。腰紐をキリリと締め上げると、うむ、なんとなく気持ちまで引き締まった気がするぞ。

 日本の古式ゆかしい下着と白足袋まではいいんだがその先はちょっと無理難題だった。
「おーいハルヒ、これどうやって着るんだ」
カーテンの向こう側で長門が着替えてるらしいので覗くわけにはいかんのだが、肌襦袢だか長襦袢だか麻布十番だか知らんが着る順番すら分からない。
「ったくもう、あんたそれでも日本男児なの!?」
「んなこと言ったって百年も前の衣装を俺に自分で着ろってほうが無理だぞ」
「百年じゃないわよ、戦後しばらくまで和服のほうが多かったんだから」
お前はいつの生まれだと突っ込もうとしたのだが、ハルヒは電話をかけて鶴屋さんを呼び出しているようだった。俺たちの知り合いで着付けができるとしたら鶴屋さんくらいなもんか。

ドアが開いてメイド姿の鶴屋さんが飛び込んできた。
「はいよー、着付けインストラクターの登場だよ」
「受付が忙しいのにごめんね鶴ちゃん、キョンがどうしてもひとりで着られないって」
「いいっさぁ、あたしにお任せ」
俺はフンドシ姿を見られそうになって衝立の陰に隠れた。
「さあさあ、恥ずかしがってないでさっさと済ませるよ」
「あ、あの鶴屋さん、俺今パン……フンドシ一丁なんですが」
「心配御無用、そんなもんは見慣れてるさあ」
見慣れてるって言われても俺にも羞恥心というものが。っていうか鶴屋さん、なぜにあなたは男の着付けをご存知なのでしょう。
「は、はあ。お手柔らかにお願いします」
「なかなかいいお尻してるじゃないかね、キョンくん」
鶴屋さんに俺の青っ白い尻をぺしっと叩かれるとなぜか気も心も尻も引き締まった。

 シャツの代わりに肌襦袢とやらを着てその上に長襦袢を着る。やや暑苦しい気はするんだが、着物を汚さないための古代人の知恵だそうだ。その上から本当の着物である長着を着る。

 普通の和服の場合はこのまま帯を締めるんだが、ハカマを履くときは長着の後ろを上げて腰の紐に挟んで止めておく。これをしないと刀を振り回して走れないからな。
時代劇でチャンバラをやる侍を見たことがあると思うが、あれはハカマだからできるんであって普通の着物だと裾が足にまとわりついてとても無理らしい。和服の女の人が小股でしか走れないのと同じだ。

 そこでやっと帯を締めてギャザースカートみたいなハカマを履かせられる。前を先に止めて後ろで紐を結び、台形みたいな形の袴板を腰に当てて前で紐を結ぶ。
黒の羽織を着て羽織紐を止めると、どんな男でもキリリと締まった純日本男児コスプレの出来上がり。鏡の前で扇子をパラリと開いてみたが、日本舞踊なんか踊ってしまいそうな雰囲気だ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:18:50.67 ID:3ULgLh.o<>「いよっ、なかなか似合うじゃないか色男」
「ありがとうございます。日本に生まれてよかったと思えることで数少ないうちのひとつですね」
「ハルにゃん、ちょっと見てみなよ。めがっさ日本男児だねぇ、どうにょろ」
「へー、馬子にも衣装とはよく言ったものね」ハルヒがカーテンを開けて顔を覗かせた。
「っておい、なんでお前まで着物なんだ。さっきまで神父コスプレだっただろ」
「媒酌人が神父コスなんてネタでしかないでしょ」
忘れていたが、そうだったな。披露宴の席では俺と長門、その両脇に古泉とハルヒが座ることになるわけだ。

「そろそろ時間ね。さあ、お披露目に行くわよ」
「せめて長門とご対面させてくれ」
「ふふっ、見て驚くな」
ガラガラと重いカーテンを開けて現れた長門の姿は、なんというかこう……。
「スマン、眩しくて見えない」
「しっかり目んたまを開いて鑑賞しなさい」
その白無垢に包まれた長門の姿を見て、俺と鶴屋さんは大きくため息をついた。そのまま数秒間固まっていた。
白い被り物の下に少しだけうつむいた長門の艶やかな赤い唇が見え、着物には鶴が羽ばたく柄が浮かび上がって神々しいまでに輝いている。なんだか目が潤んでくるんだが気のせいか。
「なにか言いなさいよキョン」
「なんというか……きれいだ。この世のものとは思えないくらい」
「はぁ……」
鶴屋さんはため息しか出ないようだった。

 会場の入り口まで連れてこられると部長氏が待っていた。タキシードのままヘッドセットをつけ、マイクに向かってボソボソと話している。進行役でも任されたのか。
「社長、もうすぐオープニングだ」
「お役目ごくろうさん。キョンと有希は合図があるまでここで待ってなさい」
俺たちを残してハルヒと鶴屋さんはさっさと中に入った。部長氏は長門をまじまじと眺め、
「副社長、晴れ姿がとてもお美しいです」
「……ありがとう」
「俺の羽織ハカマはどうです、自分でもなかなかキマってると思うんですが」
「キミはまあ、それなりに似合ってるね」
生涯に一度なんだからそう率直過ぎるよりもっと褒めてくれてもいいんだが、まあ披露宴の主役は花嫁だからな。
「開演三分前。二人とも準備はいいかな」
「OKです」
「……いつでも」
「新郎新婦スタンバイ」
部長氏のGOサインでドアを開けて中に入ると部屋の中はカーテンが閉められ真っ暗で、唯一のスポットライトが俺たちを照らし出した。
長門の衣装が白く浮かび上がった。新郎新婦の入場です、みたいなアナウンスが流れるのかと思ったがなにもなく、ドドンドドンという腹の底から響くような音がホールに響いた。
なんだありゃ和太鼓か。祭りとか踊りのリズムじゃなくて、相撲とか和風のイベントのオープニングで鳴らされるようなドンドコドンドコと鳴り響く大太鼓だった。
招待客の拍手の中、俺は長門の手を取って床に敷かれた花道の上を進んだ。

 ステージの前まで来ると舞台黒子のように椅子の陰に隠れた国木田が、そこで止まってと合図した。もうひとつのライトがともり、ステージの上に羽織ハカマを着た古泉が浮かび上がった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:19:15.20 ID:3ULgLh.o<> 太鼓の音がやむと古泉がパラリと扇子を開き、唸るような低い声で呪文のようななにかを唱え始めた。呪文じゃなくてええと、そうそうタカサゴだ。いつだったか長門も唱えていたような気がするが。

── 高砂や この浦舟に帆を上げて この浦舟に帆を上げて
   月もろともに出で潮の 波の淡路の島影や 遠く鳴尾の沖過ぎて
   はや住吉に着きにけり はや住吉に着きにけり

暗闇の中に滔々と古泉の謡が流れた。あいつがマイクなしであれだけの声量を出せるとは知らなかったな。にしてもこいつの羽織ハカマ、俺が着るのとは雰囲気も風格も違うんだが同じもんのはずだよな。

 謡が終わってパチリと扇子をたたみ、古泉が深々とお辞儀をすると嵐のような拍手喝采だった。歌詞の意味はいまいち分からんのだが雰囲気だけはインパクトあったな。
部屋全体の照明がともると、どっから借りてきたのかステージの上に本物の大太鼓が据えてあった。留袖の着物の袂を捲り上げてタスキをかけてるが、ま、まさかハルヒが自分で叩いてたのか。

 ここは本当はレストランなのだが大きめの丸テーブルをいくつも置いて客席にしていた。いちばん奥には新郎新婦と媒酌人が座る横長のテーブルがあり、客席には五人掛けくらいのテーブルがぽつぽつと間を空けて置かれている。

 花で盛り付けられている新郎新婦のテーブルに案内され、古泉とハルヒに挟まれるようにして俺たち二人が座る。
さっきの大太鼓と謡の印象が強かったようで招待客があれこれと感想を言い合っていた。ハルヒと古泉が椅子から立ちグラスをスプーンで叩くと静かになった。
「媒酌人といたしまして、ご挨拶申し上げます」
ハルヒはヘッドセットのマイクを使って話し始めた。着物にその姿はミスマッチすぎないか。
「この度、キョンと有希の挙式が滞りなく行われたことを大変喜ばしく思っております。わたくし涼宮ハルヒは二人が勤務する職場の上司として、この契りを見届ける機会に預かることができ歓喜の至りです」
ふつう挨拶は男のほうがやるもんだが、まあこれもハルヒ流か。それから親族とか二人の経歴なんかを軽くおさらいしていた。
「どうぞ皆様におかれましても、この新しき門出に暖かいご声援を賜わりますようよろしくお願い申し上げます。本日はご多用中のところ、ご光来賜りまことにありがとうございました」
後で聞いたのだがこの舌を噛みそうなセリフは全部アドリブだったらしい。

 ステージにライトがともりこれから漫才でもやるのかという野郎がマイクを握って現れた。
「それでは、本日ベストマンの役を賜りましたわたくし谷口が乾杯の音頭をとらせていただきます!」
やたらはりきってんな谷口。場違いな白タキシードが役に立ったじゃないか。客席にシャンペンとビールと枡酒とオレンジジュースが行き渡ったところで谷口がグラスを掲げた。
「キョンに有希さん、結婚おめでとう。キョン、お前とは長い付き合いだがまさか先を越されるとは思わなかったぜ。俺の代わりに有希さんを幸せにしてやってくれい。では、ご両家のますますのご繁栄と、新婦の末永い幸せを願いまして、乾杯!」
俺は招待客に向かって深く頭を下げた。新郎が抜けてるぞヲイ。
「ちなみにわたくし谷口は、キョンと同じ歳でありながら未だ独身であります」
客席がドッと沸いた。どうでもいい宣伝してんじゃねえ。

 今回はバイキング形式らしく客の丸いテーブルにはドリンク類しか並んでいない。まあ配膳の手間が省けていいだろう。客が席を立って、和洋中華の色とりどりに並んだテーブルで料理を物色している。
長門はそっちが気になるようでチラチラとテーブルのほうを見ているが、花嫁は披露宴では食ったり飲んだりしないもんだから、まあ我慢してくれ。
「お召し上がりの途中かと存じますが、ここで祝電を読み上げたいと思います。えーと、おいキョン、これなんて読むんだ?」
笑いを取るのはいいんだがな、お前は素でやってんのか狙ってやってんのか、リアクションに困るぞ。

 祝電と来賓の紹介で何度も名前を読み間違えた谷口からマイクを奪い、ハルヒがステージに立った。
「ここでケーキカットよ。メイドさん登場!」
ハルヒが指を鳴らすとブライドメイドの三人がキャスター付きワゴンを運んできた。レースのテーブルクロスとリボンで飾られたワゴンの上に四角いケーキが乗っている。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:19:37.87 ID:3ULgLh.o<>丸いタワーのようなウエディングケーキだと思っていたが、長方形の、ちょうど百科事典を開いたような形をしたデザインだと分かって俺は笑った。なるほど、本をモチーフにしたケーキね。三つのケーキにはそれぞれチョコレートクリームで文字が書いてあって、

"Let's share and write down to the page of life."

"To one person you may be the world."

"Love is to looking together in the same direction."

意味は分からんがたぶん恋愛のことわざで、ハルヒか古泉の仕込みだろう。

 俺は長門の手を取って、用意された長めのナイフを一緒に握った。ご丁寧にリボンを結び付けてある。勢いよくナイフを振り上げると岡島さんのドラムがバラララと鳴った。
なんというか卵とバターと小麦粉と砂糖でできた洋菓子にそこまで気合を入れるのは少し恥ずかしいというか、まあこれも女の子のロマンなのだと理解しておこう。
「みんな、全員分あるから好きなだけ切って食べてね」
追加のケーキがいくつも運ばれてきた。これ全員分あんのか。たぶん会場には辛党の人とか糖尿の人とか甘いのが食えない人も大勢いると思うぞ、ケーキ好きな女性陣に全部お持ち帰りさせてくれ。
「キョン、そこで有希に食べさせてもらいなさい。ファーストバイトよ」
「ファーストバイトって何だ?」
人生初のアルバイトでもなさそうだが。
「知らないの?奥さんから食べさせてもらう最初の一口よ」
そんな儀式があったのか。長門がケーキナイフでささっとケーキを切り取り、手づかみで俺の口に押し込んだ。
うぐ、そんな雛にエサをやる親鳥みたいにしなくても。口の周りをクリームだらけにしながら客席をふり返り、うんうまいよ、という感じで無理やり笑顔を作って見せてみた。

「……あなたも、して」
長門は軽く両手を合わせて、あーんという感じで口を開けている。そのまま唇に吸い付いてしまいそうな勢いなのであるが、期待されているのはケーキであって俺の唇ではない。
イチゴが乗っているところを少し切ってフォークで食べさせてやった。長門がほっぺたについたクリームをしきりに指差し、
「……なめて」
と言うので、そのとおりにしてやったらニヤニヤ笑いの嵐に見舞われ、ヒューヒュー指笛を鳴らしているやつまでいた。

「さーて、お腹も膨らんだことだし、そろそろいい頃合ね」
長門の隣でケーキをもさもさと食っていたハルヒが客席の様子を見て言った。なにをやらかすんだヲイ。
今日は俺たちの披露宴なんだから、少し手加減してくれよ。などと願うのはむなしいことだと分かっているのだが。

 ハルヒがステージに上ると大げさにスポットライトが当たった。やおら懐から扇子を取り出し、
「さてお立会い。ここにおわす本日の主人公二人、キョンと有希がいったいどこをどう間違ってくっついてしまったのか。知りたい人は近くで聞け、知りたくない人も遠くに聞くがいい、ここが二人の馴れ初めだァお立会い」
ハルヒは扇子でペンペンとありもしない演台を叩いた。なんだそのガマの油売りみたいな始まり方は。
「時は平成、今を去ること六年前、キョンと有希は手と手を繋ぐこともできないシャイで不器用な高校生だった。この二人がくっつくなんてこたぁ、はりまや橋で坊さんがカンザシを買うのを見るくらい、まんずありえない」
はりまや橋がどこなのか知らんが、その例えはかなり無理があると思うぞ。

「そんな二人をここまでベタ惚れにしたのがっ、これ。映画史に残るミリオンセラー『新たなるロマンス Episode_00』です。この映画に出演した主人公の二人があまーいあまい雰囲気に包まれて恋に落ちてしまったのに違いないわ。では、SOS団の血と汗と涙が実を結んだ大ヒット映画の、はじまりぃはじまりぃ」
ありゃ一時間映画だろうが、延々上映すんのかよ!などと突っ込む余裕もなく会場の照明が落とされ、明かりは緑色に光る非常口のライトだけになった。
俺もあの絵みたいに逃げ出したいところだ。ハルヒがディレクションしたEpisode_00シリーズ映画の、ちょうど俺と長門が抱き合っているシーンが入っている映画だ。
雑用だったはずなのに急遽キャストとして俺が引っ張り出された、セリフ棒読みのあんなこっぱずかしい映画をここで一時間も見せられるとは、多忙中にもかかわらず集まってくれたお客様に申し訳ない。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:19:57.60 ID:3ULgLh.o<>「ご心配なく、三十分に圧縮したダイジェストのようですよ」
古泉がボソリと耳元で囁いた。だよな、いくら人が集まってるからって披露宴が上映会になったりしないよな。
 映画のストーリーは、なぜかは知らんが突然俺が出演している。
『ユキ、イツキのことが好きなのか』
『……好き嫌いについての質問なら、好きの部類に入る』
『やっぱりな。じゃあ俺は身を引くわ』
『……恋愛の対象としての好きではない』
『どういうことだ?』
『……彼は、わたしの兄』
『な、なんだってー!!』
タイトルからしてネタバレしてんだろと突っ込んでしまいそうな生き別れ兄妹の事実が報じられ、そのままヒシと抱き合って濃厚なキスシーンに変わった。
カメラが二人を中心にしてグルグルと回り、長門の背中を支えた俺の手が震えているのが見える。
「うおぃ古泉、こんなシーンいつ撮ったんだ!」
ここは抱き合って終わったはずだが、高校でこんなん上映したら即営業停止だ、免許取り消しだ、ガサ入れだ。古泉はクックックと甘い笑い声を漏らしながら、
「ここでも歴史が一致してませんね」
俺が出てるにもかかわらず俺の記憶にない赤面しそうなシーンがいくつも流れた。
歴史が歪んだ原因は俺にあるわけでしょうがないっちゃしょうがないんだが、俺が長門にここまでベタ惚れしてたとは思いもしなかった。せめて上映前に検閲くらいしてくれ。

 やたらめったら展開の激しい三十分間の映像が流れた挙句、ジャジャーンと仰々しくシンバルが鳴り響いて圧縮された本編が終わった。なんだか分からん拍手の嵐に見舞われつつ天井の明かりがともり、
「お楽しみいただけましたでしょうか。なお、この映画の本編DVDは本日ご出席の皆様にお持ち帰りいただけます!」
まさか売りつけるつもりじゃあるまいな。百人は来てるはずだから一枚千円としてもええっと十万の利益か。などとどうでもいい皮算用をしている俺だったが、引き出物といっしょに配るらしい。
客のほうはダイジェストに踊らされて期待しているようで拍手していた。シリーズ最終話だけ見ても話の流れが分からないだろうに。
ってあれ、つまりこれを見たやつは朝比奈ミクルの冒険と長門ユキの逆襲の話が気になるわけか。これも営業か、商魂たくましいぞハルヒ。

 再び谷口がステージに上がり、
「それではご親族様、ご友人、同僚などの各代表の方に軽くスピーチをお願いしたいと思いますが、まずはキョンのおとうさ……え?飛び入り?」
谷口がヘッドホンを耳に当ててぼそぼそ言っていた。
「ご紹介します。トップバッターは、SOS団のお得意様です」
お得意様って誰だろ、鶴屋さんの関係者かな。などと思いながら見ていると、ステージに向かってのたのたと歩いてくるやつはこれまた奇妙ないでたちで、赤地に白く丸いまだら模様でミッキーマウスが履いているような五十センチはありそうなやたらでかい靴を履きペタペタと音をさせながらやってくる。
ライトに照らされたそいつの顔は真っ白にメイクされ口の周りが赤く塗られていた。トナカイ並みに真っ赤な丸い鼻がちょこんと乗っている。
ぶかぶかの衣装を揺らしながらステージの段の前でつるりと滑って派手に転び、客席からドッと笑い声が沸いた。

 マイクスタンドの前で照れ笑いをしながら白い手袋でモシャモシャの頭をかいた。道化師なんか呼んだ覚えはないんだが、いったい誰だこいつ?

 ピエロのかっこうをしたそいつは手品のようにして何もない空中から風船を取り出し、ぷぅと膨らませてきゅきゅっとひねってプードルの形を作った。
それを椅子にちょこんと座っている国木田の娘に渡したが、うまいもんじゃないか。ああ、たぶん古泉が呼んだプロの大道芸人だろう。

 そいつはマイクを握って口をぱくぱくやりながらスイッチが入っていないよというパントマイムをした挙句、
「どうも、ご紹介賜りました中河テクノロジーの中河です。キョンとは中学時代からの付き合いになります」
な、なんだ中身は中河だったのかよ!あいつ招待客リストにあったっけ?と長門を見ると首をかしげていた。
隣にいたハルヒが、あたしが呼んだのよとニヤリと笑った。なにをやらかす気なんだ中河、なにを企んでるんだハルヒ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:21:59.54 ID:3ULgLh.o<>「本来なら私はこの席に呼んでいただくのもはばかられるような不届き者でありまして、そこにいらっしゃる涼宮社長に恩赦をいただいて参じた次第であります」
中河の野太い声が会場内に響いた。なにがやりたいんだ中河。長門ならもう入籍済みで、そんなかっこうをしてどさくさに奪って逃げようたってそうはいかんぞ、などと考えているとハルヒがまあ落ち着きなさいという感じでドウドウと抑えた。
「自分はキョンと有希さんが相思相愛の間柄であることを知らず、有希さんの光り輝くようなオーラに熱を上げて勝手に空回りしてしまいまして、いやはやまったくお恥ずかしい。皆さんお気になさらずに笑ってやってください、ネタですから」
ネタじゃなくてほんとのことなんだが、中河のコスプレにつられたのか笑い声まじりのスピーチに乗せられて客も笑っていた。

「ついでながら昔のエピソードをひとつ。思えば、私の熱にうなされる病は今に始まったことではありませんで、八年前くらいでしたでしょうか、キョンに頼んで有希さんに愛の告白のメッセージを送ったことがあります。今思い出してもまったく赤面して顔から火が出る思いなのでありますが、」
でかいポケットからクシャクシャになった便箋を取り出した。な、なんであれがそこにあるんだよ。年末の大掃除のときにゴミと一緒に捨てたはずじゃなかったのか。
ピエロ中河が丁寧に広げた一枚の古びたA4用紙、時を超えてルーズリーフが今俺たちの目の前に現れた。

「SOS団の皆様はすでにご存知かと思いますが、そうです、あのときのラブレターがここにあります。涼宮社長がなにかの記念にと取っておいていただいたそうで、私のバツゲームとしてこれをここで、読み上げます」
お裁きを言い渡すお奉行様のようにやおら広げ、いやもう十分広がってるのだがなにせクシャクシャな上にところどころ破れかかってるもんで改めて広げなおしている。

── 拝啓、長門有希さま。いても立ってもいられず、このような形で思いを告げる無礼をお許しください。実は私はあなたに一目会ったその日から、

終始汗をかきかき読んでいる中河だったが、客には大ウケに受け、同じ中学だった国木田は腹を抱えて笑っている。
十一年後に迎えに行くから待っていてくれというあたりでは沸きに沸いて、スピーカーから流れる中河の朗読がかき消されてしまったほどだった。

「── 敬具。以上、実はこのラブレターは長門さんの目の前でキョンに読み上げてもらったわけでして、キョンの人のよさは昔からのようですね」
全員が俺を見てドッと笑った。中河め、フィニッシュで俺にサヤ当てをして逃げる気か。
「キョン、有希さん、これで赦していただけますか。はっはっは」
赦すもなにも中河よ、自分の黒歴史をネタに自らピエロを演じるとはなんて男なんだお前は。目が潤んでくるよ。
「恥ずかしい昔のネタなど披露して恐縮ですが、ビジネスパートナーからのお祝いの言葉とさせていただきたいと存じます。キョン、有希さん、ご成婚おめでとうございます。末永い幸せをお祈りします」

 中河は昔はごつくて鈍い男で、体育会系を体現する熊のような野郎だと思っていたのだが、この人を惹きつけるカリスマ性の高さにおいしいところを全部持っていかれてしまったような気がする。さすがは一社を率いる社長だよな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:22:35.39 ID:3ULgLh.o<>
 中河に続いてうちの親が親族代表の挨拶をしたが、コチコチに緊張して右手と右足が同時に前に出るロボットダンスみたいな歩き方でステージに上がった。用意されたジョークも原稿どおりの棒読みで、聞いているほうも“客ここで笑う”のような棒読みで笑った。まあご愛嬌だな。

 ありきたりの慣用句的に三つの袋を大事にしろとか、なりふり構わずてんとう虫のサンバを歌い出すやつとか、まさかいないだろうとは思っていたのに案外まだ生息していて、歌うはずの曲名がかぶって慌てるやつも出てきて苦笑していた。
髪の毛に白いものが混じり始めた岡部は説教めいたスピーチをしていたが、意外にもこういう場には似合っていた。

 スピーチが続いている中、ハルヒが俺たちに向かって言った。
「さーて、あんたたちにはそろそろお色直しに行ってもらうわ」
「俺も着替えるのか」
「あんたは燕尾服よ」
「燕尾服って、まさか指揮者が着てるあれか」
「なにいってんの、イブニングの礼服は燕尾服に決まってるでしょ」
タキシードとモーニングの違いすら知らない俺だが、どうやら時間帯によって使い分けるものらしい。

 ハルヒがヘッドセットのマイクに向かってなにやらボソボソと指令を伝えると、谷口がステージに上がってマイクの前に立った。
「みなさん、ここで新郎新婦にはご退場いただき、気持ちも新たに衣装を一新していただきます。拍手でお送りください」
いやま、なんというか恥ずかしいんでスポットライトはやめてくれ。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:22:56.35 ID:3ULgLh.o<> 俺は長門の手を取って椅子から立たせ、ゆっくりとドアへ向かった。なんせ打掛衣装ってやつは重ね着で重たいうえに裾がやたら長いときている。
ラブソングのBGMが流れる中を白い花嫁と黒い花婿がのろのろと歩いていく。いっそのこと俺が背負っていけたら楽なのだろうが、と考えていると長門もイライラした様子で裾をふわりと舞い上がらせて軽々と歩いていった。は、早いぞ。

 新郎新婦の席には俺たちが留守中を預かるとかいうミニキョンとミニ長門のヌイグルミがぽつりと座らされていた。
俺たちに似せてタキシードとウエディングドレスをまとっている。長門のはよく出来てるな、俺が持って帰ろう。

「さあ、新郎新婦がいない間にお待ちかねのカラオケタイムです。トリはもちろんわたくし谷口が熱唱をお聞かせします!」
会場を出ようとすると後ろで谷口のやたら張り切った声がガンガン響いた。なに舞い上がってんだあいつは、俺と長門の披露宴なのにどっちが主役かわからん、などと思っているとENOZ演奏の懐かしいイントロが流れてきた。

『LOST MY ITEM』 作曲:ENOZ 作詞:谷口

キョンの顔見上げ 誰もいない夕暮れの部屋で
あなたはなぜここで 二人抱き合ってるの?
楽しくしてること思うと さみしくなって
たそがれの廊下 ひとりきりで走る

大好きな忘れ物よ
なくして泣きたくなるの
あした目が覚めても
ほら きっと見つからない Good bye

One way One way I love you
I'm looking looking for you
One way One way I love you
WAWAわっすれもの Yay!

あのときのシーンを歌ってるのは分かるんだがな谷口、替え歌にしちゃその歌詞はちょっと無理がありすぎるんじゃないか。まったく聞くに耐えん絶唱なので俺と長門は早々に退散した。

 ドアの外で部長氏が待っていた。
「朝比奈さんがスタンバイしているよ。僕が控え室までご案内しよう」
部長氏はどうしても新婦のエスコートがやりたいらしく、うやうやしくお辞儀をしてから長門の手を取って歩いた。

 控え室の男子ルームに入ろうとしたら朝比奈さんに呼ばれた。
「キョンくん、女子ルームに入っていいわ。衣装はこっちに用意してあるから」
「え、よろしいんですか。じゃ失礼します」
俺は見られても構わんが長門が着替えなくてはならないので部長氏は外に追い出した。

 長門が鏡の前に座ると朝比奈さんは白い被り物を取った。雪やコンコンあられやコンコンという歌に“綿帽子”という言葉が出てくるのを知っていると思うが、今長門が被っている白い布がそれだ。白い絹を丸く袋の形にしたもので、高島田の形に結った髪を上からすっぽりと隠すようになっている。
「お嫁さんの髪型って江戸の奥方様みたいになってたんですね」
「そうそう。むかしお武家さんの奥さんがこの形に結ってたらしいわ。あ、もちろんこれはカツラなの」
自前ってわけにもいかないから、まあそれもそうか。朝比奈さんはそういって髪を丸ごと抜き取った。髪をまとめるネットを取ってサラサラにドライヤをかけている。それから白い打掛を取り帯を解いて掛下を取った。
着替えるところをまじまじと見るのもなんなので俺は後ろを向いて座っていた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:23:19.57 ID:3ULgLh.o<>「キョンくん、いいわ」
振り返ると長門は頭に蒸しタオルを巻き白いガウンをまとっていた。
「二人ともおなか減ったでしょう。食事用意したから食べてていいわ」
「ありがとうございます」
「……分かった」
俺は適当にケーキをかじったりしていたのでそうでもないのだが、白無垢をまとっていた長門はずっとうつむいたままバイキングのテーブルにも行けずじっと座っているだけだった。この着物じゃ身動きとれまい。

 バイキングとは別に二人のために用意されたメニューをもくもくと食ったあと、俺は羽織ハカマを脱ぎ捨てて燕尾服に着替えた。
シャツのせいで目立たないがピシッと決まった白の蝶ネクタイだ。長門はやたら派手なバラの柄の衣装をまとっていた。
袖は短く、襟元が広く黒い生地に赤いバラの絵がちりばめられている。スカートの部分は裾がやたら広くてフリルになっている。足元を見るとかかとの細いハイヒールだ。
「これ、なんていうコスプレなんです?」
「これはラテン系のね、……ふふっ、行けば分かると思うわ」
俺が燕尾服で長門がこれって、いったいなにをさせるつもりなんだろ。

 ドアの外で待っている部長氏に長門の衣装を見せてみたが、やっぱり何のコスプレかは分からないようだった。クエスチョンマークを頭の周りに巡らせたまま長門を連れて会場に戻った。ホールの入り口に差し掛かると部長氏がヘッドセットに向かって、
「新郎新婦、スタンバイOK」
部屋の中から谷口の声が響いてきた。
「新郎新婦の再突入です」
それを言うなら再入場だろ、空から降ってくるスペースシャトルみたいに言ってんじゃねえ。

 部長氏に背中を押されて中に入ると、またもやスポットライトのビームを浴びた。
「似合ってるわよ有希」
「ハルヒ、こりゃいったい何のコスプレなんだ?」
「ダンス衣装に決まってるじゃないの。キョン、ちょっと前に来て踊ってみなさい」
練習もリハもまったくなしで、二人に踊れってのか。いくらなんでも無茶が過ぎるぞ。
「エノちゃん、ダンスミュージックお願い」
エノちゃんってのは榎本さんの愛称らしく、バンドメンバーが四ビートくらいの軽いダンスミュージックを演奏し始めた。
俺にしちゃ四ビートだろうが八ビートだろうが踊れないことには変わらんわけで、こんな早いテンポで体が動かせるわけがない。盆踊りくらいにもっとゆっくりな俺たちに合った曲にしてくれ。
「長門、タンゴのステップは分かるか」
「……タンゴ。アルゼンチン、ブエノスアイレスで発祥したダンス。後にヨーロッパに輸入され、コンチネンタルタンゴとして広まった」
いや、百科事典はいいから。
「……足運びは分かる」
「即席で悪いんだが、俺の脚を動かしてもらえないか」
「……分かった」
タンゴタンゴといってもいろいろあると思うんだが俺が知ってるのは、……と。黒猫のタンゴとかだんご三兄弟くらいか。あんなんでハルヒが納得するんだろうか。
「黒猫のタンゴでいいか。俺はそれしか曲を知らん」
「……妥当」
俺はそばにいた国木田に耳打ちして黒猫のタンゴを頼むと榎本さんに伝えてもらった。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:23:42.19 ID:3ULgLh.o<>
 二人がステージの前まで歩いてゆくとスポットライトが後をついてきた。うわ、こりゃかなり緊張するぞ。
スピーカーからアコーディオン風の音が流れ始めて俺は長門の手を取った。これだけじゃいまいち盛り上がりに欠けるような気がしてテーブルの上に活けてある花瓶から赤いバラを一輪抜き取り、長門の前で膝をついた。
バラの花を捧げるように両手で持ち、長門の前に差し出した。もったいつけた雰囲気がよかったのかパチパチと拍手が沸いていた。

 長門がバラを口にくわえ、俺は左手で長門の右手を取った。踊ってるうちにトゲが刺さったりしないだろうな。
 俺は膝をついた姿勢から立ち上がって右手で長門の腰を支えた。左に一歩、前に一歩ステップを踏み、そのまま丸く円を描くように歩いた。
脚の動きは長門の魔法でほとんど自動操縦っぽい運びなのだが、さすがに足がもつれて何度も長門の足を踏みそうになり、ずっと足元を気にしながら踊っていた。
リズムにメリハリのあるオルガンが鳴り響き、軽快というより直線的なステップで動き回るのはなんとなく俺と長門に似合っているような気もする。

 動きが滑らかになりだんだんとスピードが乗ってきたのを見たのか、榎本さんは曲のテンポを上げてきて俺はやや振り回され気味だった。バラの花を二人の右手と左手で持ち、まっすぐ横に進み顔を真正面で合わせる。間奏で爪先立ちになった長門の体をクルクルと回すとスカートの裾がヒラヒラと舞った。
再びバラを口にくわえて手をパンパンと叩いている。タンゴなのかフラメンコなのか踊りのカテゴリがかなり曖昧になっている二人だが、まあどっちもラテン系ってことでよしとしてくれ。

 そろそろ曲終わりかなーというあたりで長門の体を仰け反らせ、チャンチャンと終わった。き、決まったぜ。
「すっごいじゃないのキョン!フラダンスなんかいつマスターしたのよ」
フラダンスは国も衣装も違うだろ。

「いいダンスだったわ。新郎新婦に盛大なる拍手を!」
超インスタントの無国籍ラテン系ダンスだったが、観客からは割れるような拍手をいただいた。
俺は踊りつかれて椅子にへたりこみ、汗を拭いながらジュースを飲み干した。長門のほうは汗ひとつかかずに平気な顔をしているようだったが。



『新郎新婦に盛大な拍手を!』

『新郎新婦に盛大な拍手を!』
「なあ長門」

『新郎新婦に盛大な拍手を!』
「なあ長門」
「……なに」
なんだか嫌な予感がして隣を向いた。前にもこの感じはあった気がするんだが。

『新郎新婦に盛大な拍手を!』
「なあ長門、さっきから時間がループしてる気がするんだが」
「……そう」
またやっちまったのかハルヒよ。しかもよりにもよって俺たちの披露宴の最中にとな。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:24:05.27 ID:3ULgLh.o<>『新郎新婦に盛大な拍手を!』
「なあ長門、さっきから時間がループしてる気がするんだが」
「……そう」
「笑ってる場合じゃないと思うんだが。せめて会話が続くようにしてくれ」

『新郎新婦に盛大な拍手を!』
「……分かった」
「関係者を呼んでくれ。対策を協議したい」
「……了解した」

『新郎新婦に盛大な拍手を!』
「ハルヒが壊れたファービーみたいで怖いんだが、とりあえず一時停止にさせてくれないか」
「……分かった」

『し!』
部屋の照明が、というより全世界が真っ暗闇になった。
「あの……。長門?そこにいるのか?」
「……ここにいる」
「真っ暗でなにも見えないんだが。時間を止めてくれるだけでいいんだけど」
「……止まっている。時間が止まると光の速度も停止する」
そういうことか。時間を止めて好き勝手やってるSFネタの理屈が崩れたな。
「この辺だけ顔が見える程度に明かりをともしてくれないか」
長門の指先がぽぅとオレンジ色に光った。俺と長門と、朝比奈さんの顔が浮かび上がった。長門はまあいつもと変わらないのだが、こんな状況にもかかわらず朝比奈さんは笑顔だった。
「キョンくん、またループかしら?」
「朝比奈さん、またやっちまったみたいです」
「そう。よくあることね」
「あんまり驚いてませんね、未来と連絡がつかないんじゃないですか」
「あのときはなにも知らされてなかったから。今回のことはもう……ふふっ、禁則事項です」
百鬼夜行しそうな暗闇の中でウインクされてもときめいてしまう俺は、とうとう病気の域に達してしまったんでしょうかね。

「喜緑さん、喜緑さんいますか」
「ここにいますわ」
「ハルヒが時間のループをはじめちまったようなんです」
「特に問題はないと思いますわ」
にこにこ笑顔の喜緑さんの顔が見えた。問題ないって、楽しんでるんだかこの人もなんだか緊迫感に欠けるなあ。
「しかしこのままこの時間を繰り返すわけには」
「以前のときも無事抜け出せたのだから、大丈夫だと思いますわ」
以前っていうと、高校のときの夏休みでしたっけ。一万五千と四百と何回だったか、あのときは俺の部屋で宿題をやるなどという本当にそんなんで解決するんだか疑わしくなるようなありきたりな手法だったのだが。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:24:37.97 ID:3ULgLh.o<> ドタバタとあちこちのテーブルにぶつかる音をさせながら足音が近づいてきた。
「お待たせしました。とんだハプニングですね」
「古泉、ハルヒをなんとかしてくれ」
「こういう問題に関してはあなたのほうが得意だと思いますが」
「お前は自分の立場が分かっておらんようだな」
「いえいえ、重々承知していますよ」
「今じゃお前はハルヒの彼氏だろうが」
「恋愛は恋愛、フォロー役とは別です。あなたにはあなたの役割を担っていただかないと」
「むぅ……」
この野郎、ジョンスミスの名前を封印しろとまで言ったくせに都合のいいときだけ逃げを打つのか。歴史を書き換えてまで役を譲った俺の苦労はなんだったんだ。

「じゃあハルヒはいったいどうしたいんだ」
「この状況からして、涼宮さんは自分が花嫁じゃないことに不満なんじゃないでしょうか」
「ハルヒが長門に嫉妬してるってのか」
「いえ、そういう意味ではなくて“自分が花嫁衣装を着ていない”ことが不満なのではと」
自ら仕切るから任せろと言っておきながら自分が主役じゃないと気に入らないのか。まったくわがままなやつだな。
「それはもう、女性なら誰でも披露宴の主役になりたいものでしょう」
「そうなんですか?朝比奈さん、喜緑さん」
「ええ」
「そうですね」
二人とも異口同音に同じ反応をした。長門、今チラっとだが得意げな顔をしたろ。

「しょうがない、ハルヒにも白ドレスを着せてやれ」
「あなたと有希さんの披露宴で、それはちょっと無理があるかと思いますが」
「いいんだよ、こういう祝い事にハプニングはつきもんだろ」
ハプニングというか、他人の披露宴にウエディングドレスを来て乱入するなんて前代未聞の珍事だが。ここはひとつ俺が仕切ることにしようじゃないか。
「まあここは俺に任せろ。予備のドレスくらい用意してあるだろう」
「新郎であるあなたがいいとおっしゃるのでしたら」
「朝比奈さん、ハルヒのメイクと衣装をお願いできますか」
「えっ、わたしがするの?」
「ええ。なんならハルヒを着せ替え人形にして遊んでもいいです」
「そんな、着せ替え人形だなんて」
朝比奈さんの頬が一瞬だけニヤリと動いたのを俺は見逃さなかった。

「じゃあそういうことでよろしくお願いします。皆さん、それぞれの位置についてもらえますか。古泉はハルヒを運べ」
「分かりました」
「……」
「長門?」
「……わたしも、涼宮ハルヒに付き添う」
「そうか。じゃあ用意ができたら再生ボタンを押してくれ」
古泉はマネキン人形のように固まったハルヒを抱えて控え室に向かった。その後ろを朝比奈さんと長門がついていく。なんだか三人とも背中が小刻みに震えてるような気がするんだが気のせいか。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:24:58.76 ID:3ULgLh.o<>
 じっと暗いステージに立っていると突然時間が動き出して世界のライトがともり客席のボリュームが一気に上がった。俺はマイクに向かって喋った。
「それでは、新郎からひとことご挨拶したいと思います」
自分を指して新郎などとはふつうは呼称しないもんだが、突然ハルヒと入れ替わった俺を見て観衆は変わり身の手品でもやったのかと唖然としていた。

俺はスタンドからマイクを抜いてステージの真ん中に立った。
「皆さん、今日はお忙しいところ二人の披露宴にお集まりいただきありがとうございます。婚約から一ヶ月という常識では考えられないようなドタバタスピード挙式でしたが、お義父さんに江美里さん、うちの両親、古泉にハルヒ、鶴屋さん。それから、各方面からお越しいただいた関係者の方々。大勢の皆さんのご支援でこうして結ばれることができました。厚くお礼申し上げます」
なんとなく堅苦しい感じがして、リラックスしたくてポケットに手を突っ込んだ。
「さっきの映画ですでに知っているかと思いますが、二人が出会ったのは高校一年のときでした。最初に会ったときはなんて無口で愛想の悪いやつだと思ったものでしたが、豪快快活なハルヒとは対照的で、逆に物静かでおしとやかなところに惚れたといいますか、」
この辺で汗を垂らしながら真っ赤になっている俺だが、客にはそれが受けているようだった。

「実は俺たちをくっつけたのはハルヒ自身なのでありまして、本人は否定してますが、キューピット役のハルヒがいなかったら二人の運命は大きく変わっていたでしょう」
古泉まだか、そろそろ間が持たないぞ。などと冷や汗を垂らしながら話の続きを考えているとホールの後ろのドアが少しだけ開いて古泉が顔を覗かせた。苦笑を見せつつ右手でOKサインを出している。
「では、はなはだ異例のことではありますが、俺からみなさんにサプライズがあります。キューピットの入場です」
スポットライトが一瞬消えて入り口に向いた。
ハルヒが顔を覗かせ眉間にしわを寄せていたが、えへへー呼ばれちゃいましたーみたいな感じでパッと営業スマイルに表情を変えた。ドアの直前までなんであたしがこんなことしなくちゃいけないのよ、とブツクサ言っていたに違いない。

 現れたのはウエディングドレス姿だった。もとい、ウエディングコスプレだな。肩から裾まですらりと流れるスリムな感じのドレスだった。長いベールは頭の後ろに垂らしてくっつけている。
それはいいんだが、朝比奈さん、あなたまで同じコスプレしてるってどういうことですか。後ろから長門も式のときに着た白ドレスでついてきている。
これは古泉の陰謀なのかそれとも四人が共謀してやってるのか、いやきっとハルヒの命令だろう。

 ジャカジャーンとポップスアレンジの結婚行進曲が高らかに流れ出し、白いドレスに身を包んだ三人は仲良く手をつないでスポットライトの下を歩いてきた。
客席からは拍手と指笛がやかましいくらいに鳴り騒ぎパシャパシャとカメラのストロボが光った。俺と長門のときより人気あんじゃねえか。

 ハルヒはステージに駆け上がって俺からマイクをひったくった。
「キョン、こんなサプライズ聞いてないわよ」
聞いてたらサプライズとは言わん。眉間にしわを寄せて怒ってるのか笑ってるのかよく分からん表情をしてビシ指をしている。まあいくら怒ってもステージの上でネクタイをひっぱったりはせんだろう。俺はハルヒからマイクを取り上げ、
「ええと皆さん、この三人の中で誰がいちばん似合っているか決めたいと思います。名前を言ったら拍手をお願いします」
「そんなのあたしに決まってんじゃないの」
「聞いてみないと分からんさ。有希がいいと思う人!」
長門、ハルヒ、朝比奈さんの順で聞いてみたのだがどうやら観客は三人ともに盛大な拍手をしているらしく強弱が聞き取れない。勝者なしのドローということにしておいた。
「女の子の衣装をそういうふうに格付けするもんじゃないわよ」
さっきは自らが一番だと言ってたじゃないか。

「ハルヒ、そのまま一曲踊れ。このままじゃ観客が満足せん」
ハルヒは、いきなりなに言ってんのよ、と言いかけて、
「しょうがないわね。じゃあ有希、みくるちゃんいくわよ。エノちゃん、あの曲お願い」
榎本さんは把握しているといった感じでうなずきギターを抱えた。
 ハルヒがワン、ツー、ワンツースリーフォーと両手を打ち合わせて拍子を取り、俺たちがよく知っている曲の演奏が始まった。
今日は長門が主役だからだろうか、長門を前にして自分は後ろに下がって踊っている。終幕はウエディングコスプレ三姉妹によるダンスである。

 ナゾナゾみたいに地球儀を解き明かしたら
 みんなでどこまでも行けるね♪
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:25:14.24 ID:3ULgLh.o<>
エピローグ

 最後に新川さんが丁寧に謝辞を述べ、古泉が閉会の挨拶と二次会の案内をして披露宴はお開きとなった。新郎新婦は拍手の中を退場、とふつうはプログラムにあるはずなのだが、突然ハルヒが叫んだ。
「ちょっとみんな、外見て!」
「どうしたんだ?」
「すっごいじゃないの、目の前で花火をやってるわ」
「まさか、もう九月だぞ」
ハルヒの指令ですべてのカーテンが開けられた。窓の外はもう暗くなっていて、眼下に広がる俺たちの町の夜景と夜の海、そのはるか上空で、光の大輪の華が大きく広がっては消えていく。
ドドンと腹の底に響くような大きな音と共に赤黄色オレンジと青に緑の輪が咲いていた。今日のセレモニーの最後を飾るイベントだと思ったらしく招待客からやたら歓声が上がっている。

「あれは誰がやってるんだ?古泉、お前の機関の仕込みか」
「とんでもない。あんな予算のかかる見世物をやるなんて聞いていません」
「あれは……」長門が宙を見つめた。「情報統合思念体がやっている」
「なんと。思念体って人類に直接干渉したりしないんじゃないのか」
「……わたしたちへのプレゼントのつもり、らしい」
こいつは驚いた。あいつらも味なマネをするな。

「……自律進化の閉塞状態を打開するヒントを得た、そのお礼」
「なんだそれ」
「わたしはあなたと出会って、自律進化を遂げた。その報告が貴重なヒントとなった」
「なるほどな。お前のパトロンも気の効いたことをするんだな」
「……あれは、主流派ではない」
主流派以外に俺たちに興味があるってのは、え。
「もしかして急進派か」
「……」
長門はなにも答えず、ただ黙って遠くを見つめた。急進派といえば、ナイフが好きなあいつが消えてからそろそろ八年になるか。
あのときの二人のアクションシーンは今でも忘れない。そもそも長門と俺が親しくなったのはあいつが要因じゃなかったか。
「……おめでとう、と言っている」
「そうか。ありがとうと伝えてくれ」
かつて清涼感あふれる女子高生だった髪の長い女の子が、どこか遠くから見守ってくれているような気がする。長門はテーブルの下で俺の手を握った。俺も握り返した。

「みんな、二次会に行くわよ、あたしについてきなさーい」
とりあえずは披露宴は終わり、俺たちは控え室に戻ることにした。ほとんどが二次会に直行するようで、受付でブライドメイドとベストメンが引き出物の紙バックを配っていた。
なにが入っているのか謎な年末の福袋っぽい感じもしなくもないが。ボードに貼られた朝比奈さん撮影の写真が奪い合うようにして剥がされ、長門はもちろんメイド三人が写った写真はすぐにソールドアウトし、物好きなやつはハルヒの写真も持って帰っていた。
なぜか古泉のも消え、残ったのは俺の写真だけだった。長門がそれを大事そうに一枚ずつ手に取っていた。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:25:47.92 ID:3ULgLh.o<>
 控え室でメイクを落とし、衣装を脱ぐと気持ちまで脱力してハァとため息をついた。
「やれやれ、やっと終わったな」
「……おつかれ」
鏡の前で赤い口紅と化粧を落とす長門を見ていると、こいつがほんとに俺の嫁さんになっちまうとはなぁなどと感慨じみたものが沸いてきた。
あれれ目が潤んでる。長門の姿がぼんやりとかすんで、その隣にもうひとりの影が見えた。涙目で姿がにじんで見えていたのかそれとも本当にそこにいたのか、メガネをかけた長門だった。
目をこすってよく見ようとすると、そいつは俺を見て少しだけはにかんで、スッと消えた。

 長門はどうしたのという表情で首をかしげて俺を見ていた。
「……なに」
「い、いやなんでもない。古い知り合いがいたかと思ったんだが気のせいだった」
たぶん長門には分かっていたんだと思う。なにも言わなかったが、ただうなずいていた。

 新川さんが自宅まで車で送ってくれるというので俺たちはホテルのロビーに降りていった。もうとっくに二次会会場に行ったかと思っていたハルヒ達がずらりと並んでいて、いやはやそこまでしなくてもいいのにバラの花びらが頭から降り注いだ。
全員には無理だったが俺はそこにいる人にできるだけお礼を言った。ピエロ衣装のままの中河が笑いながら俺の手を握った。

 新川さんがリムジンのドアを開けてくれ俺たちは乗り込んだ。空き缶のガラガラはもう付いていなかったが。

 長門のマンションの前で車が止まった。玄関の明かりの中で新川さんに何度もお礼を言った。
「新川さん、なにからなにまでありがとうございました。機関の皆さんにもよろしくお伝えください」
「いえいえ、私どもも今日は楽しませていただきました」
「……」
別れ際に長門がなにか言いたそうにしていた。
「長門、どうしたんだ?」
長門は新川さんに近づいていきなり抱きついた。
「……お父さんを、ありがとう」
新川さんは顔を赤くして、はっはっはと笑った。
「実は私には有希さんと同じくらいの娘がいましてね。今は母親と暮らしているんですが、いい予行演習になりました。有希さん、幸せになってくださいね」
「……そうする」
里帰りがわりに新川さんに会いに行ってやろう。こいつには実家というものがなかったからな。

 リムジンが走り去り、俺と長門は手をつないでマンションの玄関を入った。ひとつだけ思い出してぴたりと足を止めた。
「大事なことを忘れてた」
「……なに」
「こういうときは嫁さんを抱えて入るのが慣わしらしい」
「……そう」
長門の頬がポッと染まり、軽く手を握るようにして、俺の首にぎこちなく腕を回した。ほとんどといっていいほど体重が感じられない長門の体をお姫様抱っこで抱えてエレベータに乗った。
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:26:11.93 ID:3ULgLh.o<>
 最初にここを訪れてからもう八年になる。あのときは寒々しい思いをしたが、今はこうやって長門の温かさを感じている。
宇宙論を聞かされたり、布団で時間移動したり、缶カレーを食ったりおでんを食ったり、ここを去るたびに長門が見せていた寂しげな表情はたぶんもう見ることはないだろう。
そばにいてやりたい、難しくはないこんな単純な願いをかなえるのに長い時間をかけてしまったが、これからその時間を償っていきたいと思っている。
長門よ、ずいぶんと待たせちまったな。気がつくと七〇八号室の表札は、長門のではなく俺の名前になっていた。

 足元でミャーと仔猫が鳴いて出迎えた。
「ただいま、有希」
「……おかえり」

 そしてやっと、ここが俺の帰る場所になった。

END
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:27:44.39 ID:3ULgLh.o<>
おまけNG


LOST MY ITEM(フルバージョン) 作曲:ENOZ 作詞:谷口

キョンの顔見上げ 誰もいない夕暮れの部屋で
あなたはなぜここで 二人抱き合ってるの?
楽しくしてること思うと さみしくなって
たそがれの廊下 ひとりきりで走る

大好きな忘れ物よ
なくして泣きたくなるの
あした目が覚めても
ほら きっと見つからない Good bye

One way One way I love you
I'm looking looking for you
One way One way I love you
WAWAわっすれもの Yay!

クラスの中で輝いてた思い出のキミ
あなたの眉毛には少し無理があった
ミジンコ並みの俺のハート ときめいたのに
突然にカナダの遠い空に消えた

大好きな忘れ物よ
いつまでも探してしまう
きっと目を閉じても
まだ 夢の中探している

I lost I lost something
You're making making me nervous
I lost I lost something
どこにあるんだよ?Hey!
<> 長門有希の憂鬱W<>sage<>2008/10/04(土) 18:27:58.67 ID:3ULgLh.o<>大好きな忘れ物よ
なくして泣きたくなるの
あした目が覚めても
ほら きっと見つからない Good bye

大好きな忘れ物よ
なくして泣きたくなるの
きっと目を閉じても
まだ 夢の中探している

I lost I lost something
I'm looking looking for you
I lost I lost something
どこにあるんだよ?

One way One way I love you
I'm looking looking for you
One way One way I love you
WAWAわっすれもの Yay!

「谷口、どうでもいいが眉毛は禁句だぞ」
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/04(土) 18:28:38.13 ID:3ULgLh.o<>お付き合いいただきありがとうございました<>
◆kisekig7LI<>sage<>2008/10/04(土) 18:32:49.99 ID:8xj8Q6so<>6部作やっと終わったね お疲れ様<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/04(土) 18:40:52.34 ID:3ULgLh.o<>>>558 どもー おつっす 疲れたww

どこここ氏がイラストを描いてくれています まったり順次掲載予定

プロローグ:長門の初運転
ttp://iroiro.zapto.org/cmn/jb2/data2/jb3028.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/10/04(土) 19:57:32.33 ID:R0WUlxso<>おー、長門が運転するのk・・・


ん?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/05(日) 18:25:30.04 ID:TSGFX0oo<>久しぶりにこのスレに大作かつ名作が投下されたな・・・
一気に読んだぜ
朝倉さんと鶴屋さんが地味に話に絡んできてうれしかった
いやしかし二人とも奥手だからその進展具合を描かれるとニヤニヤがとまらなくなるなww
最後の方も前半並みに感情描写が欲しかったぜ
行事を進める描写が必要だから無理な注文なんだろうが
それにしても俺は細かいことはよくわからんがすばらしい構成で引き込まれる文章だったよGJ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/05(日) 19:14:09.75 ID:voJjuu6o<>>>561 d

長門が片付いちまったから次は喜緑さんだなフヒヒ
えみりんは外伝として書くよ 朝倉は心残りだが(´;ω;`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/06(月) 01:40:33.70 ID:66U5nWEo<>人呼びたかった気持ちもわかるわ
これはある意味もったいない
確かエロじゃない小説スレがあった気がするがそこにも投下するべきではとも思うな
そしてえみりん期待<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/06(月) 20:21:29.04 ID:MHlxVpUo<>>>563
いやま SS in VIPまとめには貼らせてもらうからおk
えみりんのプロット練ってるんだがどうしてもハッピーエンドにならない(;Д;)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/06(月) 23:49:32.46 ID:66U5nWEo<>それでいい、描かないか
俺はBADENDでも構わずくっちまう男なんだぜww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/07(火) 19:47:47.08 ID:HND6YGoo<>毎回文庫一冊の文章量は書くようにしてるんだが それでもいいかい?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/08(水) 01:13:49.41 ID:UKXWSGko<>ちょwwww生産能力たけーなww
やっちまえ
その際は人多いとこに投下するのがいいと思う
そこに読みに行くわ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/08(水) 05:33:22.68 ID:S9uchSko<>
まとめ掲載終えた
ttp://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5239.html

このスレへのリンクはあえて貼ってないです

>>567
いつになるか分からんがまったり待っていてくれい
長門憂鬱IVも投下予告から9ヶ月経ってるんだがww
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/08(水) 23:54:27.99 ID:UKXWSGko<>>>568
まとめ乙
2期もある、まだ慌てるような時間じゃない
鳴くまで待とうではないか!期待してるぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/25(土) 21:43:12.64 ID:gcwG7oQo<>長門スレでやっと感想が出たな

喜緑さんSSのタイトルが思いつかないわ
いまさらだけどエロパロの喜緑江美里の憂鬱シリーズは素晴らしい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/26(日) 15:37:38.07 ID:BeOdG1U0<>どっかでお勧め作品の一つとしてあったな
えみりんは露出度の割りに人気がある<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/26(日) 23:39:30.30 ID:jmb9Kigo<>続きのイラストをいただきました

一章:長門の寝顔
ttp://iroiro.zapto.org/cmn/jb2/data2/jb3814.jpg

ありがとうございます<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/27(月) 14:29:39.38 ID:xdYZKDco<>>>572
どこここ氏の絵キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
長門腕細いよ長門<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/29(水) 01:00:01.26 ID:OTOGQVAo<>>>572
もうため息しか出ない GJ
悪さしないから添い寝していいですか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/31(金) 10:19:20.88 ID:SOI9Xrwo<>ハロウィンですね

つttp://nagatoyuki.info/up/file/1566.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/31(金) 14:25:42.87 ID:nLvO5sIo<>>>575
かわゆすぎて腹いてぇwwwwwwwwww GJ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/31(金) 17:09:35.78 ID:MXWrsZ.o<>そのカレンダーはなんですか長門さんwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/01(土) 00:32:17.81 ID:392yMIUo<>かwwwwwwwwぼwwwwwwちwwwwゃwwwwwwwwぱwwwwwwんwwwwwwwwつwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/08(土) 19:30:57.88 ID:ZYTbyico<>関係ないけどfanficiton.netとかいう二次創作専門サイトを見つけた

http://www.fanfiction.net/s/4635370/1/Nagato_Yuki_no_Yuuutsu
英語版長門有希の憂鬱wwww

ちょっと英語勉強するわ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/20(木) 23:44:06.44 ID:ebOH/hko<>もう趣味でゆきりん描けるほど
時間なくなってきたなー・・・

つttp://nagatoyuki.info/up/file/1597.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/21(金) 00:57:08.12 ID:tg2nsXwo<>年末になると忙しくなるからな・・・
つーか見えているじゃないか長門!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/21(金) 08:55:48.26 ID:kDXNnjUo<>  _  ∩
( ゚∀゚)彡 >>580 GJ ぱんつ!ぱんつ!
 ⊂彡

18日忘れててごめんよ有希<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/12/23(火) 03:49:10.80 ID:uPuval6o<>みんな元気?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/12/23(火) 05:26:28.26 ID:SHweAPQo<>元気よ〜<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/12/23(火) 11:33:39.50 ID:6b3MN4go<>「・・・元気<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/12/25(木) 02:00:12.29 ID:2IEFMuwo<>ttp://nagatoyuki.info/up/file/1643.jpg

メリークリスマス<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/12/26(金) 22:51:47.10 ID:msN3YAgo<>>>586
GJ クリスマスは今年もひとりだったお(´・ω;`)
人肌恋しや<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/01(木) 02:48:16.88 ID:bW/H.rko<>……あけおめ<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/01(木) 03:11:17.40 ID:McoRCxko<>ことよろ<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/04(日) 02:35:37.34 ID:w43RaK.o<>そろそろまた社会生活がはじまる・・・
短い休みだったな<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/04(日) 05:34:07.50 ID:DKtyy1co<>正月休み短いよー<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/04(日) 22:21:16.61 ID:ftlheNso<>こっちは今日から出勤だったぜ
日曜は休ませろよ…<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/04(日) 22:42:41.03 ID:BsTB3lko<>お疲れだぜ・・・wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
俺は明日から仕事

みんな今年もがんばろうな<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/04(日) 22:43:53.12 ID:BsTB3lko<>あれ、打ってないのに大量のwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwが入ってた
なんだこれ・・・・・・<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/05(月) 03:17:58.73 ID:3g4OZPQo<>正月仕様か?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/05(月) 03:18:24.06 ID:3g4OZPQo<>どうやらマジらしいな<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/05(月) 05:12:32.85 ID:m/APBBwo<>なんだっけ
特定の文字列は特定の文字列に変換されるとどこかで聞いた希ガス
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwと打つだけでwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwになったり<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/05(月) 05:12:44.37 ID:m/APBBwo<>うはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/05(月) 05:13:20.71 ID:m/APBBwo<>なるほど正月仕様かvv<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/01/23(金) 17:45:46.82 ID:uS/O7CMo<>wwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/03(火) 21:02:29.88 ID:9HjmIoUo<>節分です

つttp://nagatoyuki.info/up/file/1711.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/04(水) 02:20:20.32 ID:p7Lfgt2o<>久しぶりに職人がきたか
これはうれしい
鬼は内福も内が望ましいなww
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/04(水) 05:09:32.36 ID:EDGLrGUo<>最後のコマ角生えてるww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/05(木) 19:15:41.72 ID:NDwcbjwo<>GJGJw<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/14(土) 22:32:15.30 ID:wdW.R8Qo<>みんな、有希が頑張って作ってくれてるよ!

ttp://nagatoyuki.info/up/file/1734.jpg

キョン「……ホワイトチョコレート、最高。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/15(日) 05:17:41.83 ID:XyZRCqgo<>うむ、エロい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/02/15(日) 15:11:58.51 ID:Bch1jqso<>最近の流れにのってキョンも長門にチョコを送るべきだろう<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/03/11(水) 03:40:59.83 ID:2wknSmko<>ほす<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/03/11(水) 05:11:12.13 ID:1B8oMu6o<>保守って要ったっけ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/03/12(木) 04:46:31.74 ID:evIJeM2o<>いらんのじゃね
ハルヒちゃんやってるがあまり盛り上がらんな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/03/19(木) 19:51:07.07 ID:CcCDQV.o<>ひさしぶりに誰か描こうと思ったら誰も描けなくなってた…
これは違う作品にうつつを抜かしてたバツだな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/03/20(金) 19:05:39.33 ID:gX8jZlEo<>>>611
ちなみに違う作品のタイトルを聞いておこうか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/03/30(月) 23:01:50.61 ID:EXjdh.Uo<>>>611
あれ、こんな所に俺が
辛うじて朝倉さんだけは何とか描けるが他厳しいぜ…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/22(水) 20:16:35.72 ID:5bsHp4wo<>セブンイレブンでバイトする長門さん
ttp://rainbow2.sakuratan.com/img/rainbow2nd49166.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/22(水) 20:31:27.49 ID:cOPYS/co<>ttp://www33.atwiki.jp/nagatoasakura/pages/19.html

あと漫画を読もうと思ったら↑のところの30ページと31ページが同じ画像になってたYO!
誰か正しい画像に修正してくれまいか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/22(水) 20:34:22.59 ID:cOPYS/co<>おっと、肝心の絵のコメント忘れてたwwwwアホすぎる俺wwww

>>614
GJ!長門がいるなら毎日通っちゃうよ俺は<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/22(水) 23:25:35.50 ID:VgJK4EMo<>>>614
GJ ひさびさだのう〜 ハート温めてください

>>615
スマン今まで気がつかなかった なぜか同じファイル名で上書きしてるっぽい
どこここ氏に頼んでみる<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/22(水) 23:31:21.01 ID:tp8PnfAo<>>>614
やべえwwwwwwかわええwwwwwwGJ!

>>615
ぅお、ほんとだww
でも直し方わかんねえ('A`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/22(水) 23:40:22.93 ID:VgJK4EMo<>おk サンクス<どこここ氏

しかし久しぶりに読み返してみるとなつかしい あの頃は楽しかった<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/23(木) 19:23:44.60 ID:BxybG6wP<>うおおおおお!レスがやけに増えてるから
変なコピペ荒らしがここにも沸いたかと思ったら新作画像だ!

>>614
最高。これ最高。シリーズ化して全コンビニ制覇希望<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/23(木) 21:31:08.07 ID:JN6v/Lco<>制服がかわるだけとかww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/25(土) 12:48:51.51 ID:WcQOanIo<>どこここ氏が長門有希の憂鬱Wの3章イラストを描いてくださった
直リンですまんがこちらからご覧ください

http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5235.html<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/25(土) 23:53:31.63 ID:M6ccrrQo<>ttp://file.nanabuluku.blog.shinobi.jp/7dbfcf3f.JPG

振袖ってむずいね・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/26(日) 11:52:55.98 ID:DfgUyDQo<>>>623
ご ごめんなんか妄想たくましくてはなぢが(´・m・`)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/26(日) 14:56:09.38 ID:DfgUyDQo<>いつも使ってるろだが繋がらないんでスレ専用ろだを用意しようと思う<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/26(日) 15:10:53.26 ID:DfgUyDQo<>二章の絵も描いてくれたのでうpします

ttp://www4.uploader.jp/dl/isisuke/isisuke_uljp01928.jpg.html
(メンテ中だったので他所を借りた)

どこここ氏ありがと<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/26(日) 20:53:47.89 ID:DfgUyDQo<>続いて五章の絵です
ttp://www4.uploader.jp/dl/isisuke/isisuke_uljp01951.jpg.html

に 似合いすぎですよ (´Д`;)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/26(日) 21:37:39.15 ID:HxenaSAo<>↑のでかい版

ttp://file.nanabuluku.blog.shinobi.jp/dd7dec9b.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/26(日) 21:38:06.22 ID:DfgUyDQo<>はやwwwwww ってかGJwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/04/30(木) 01:36:11.90 ID:uAUyjfco<>ろだサーバ移行で画像消えてるんでまとめwikiで見て<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/05/06(水) 01:16:18.00 ID:uF02.hQo<>スレ用あぷろだ作った

【絵もSSも】情報統合思念体LOVE【大歓迎】@ろだ
ttp://ux.getuploader.com/nagatoasakura/

個人間のファイル受け渡しに使っても終わったら消しといてね<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/05/21(木) 20:50:02.74 ID:ee4hK0.o<>長門有希の憂鬱IV 六章イラストをいただきました
http://ux.getuploader.com/nagatoasakura/download/2/chapter06.jpg

ありがとうございます!
<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/05/21(木) 20:51:27.69 ID:ee4hK0.o<>あー 直に開けないんだここ
すまんがURLコピってブラウザで見て<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/05/21(木) 20:56:24.41 ID:ee4hK0.o<>まとめに貼っておいた
http://www33.atwiki.jp/nagatoasakura?cmd=upload&act=open&pageid=125&file=chapter06.jpg<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/05/29(金) 13:02:46.41 ID:HRRw6/go<>七章の白無垢姿です
拡大してみると鶴の図柄が詳細に入ってますね

http://www33.atwiki.jp/nagatoasakura?cmd=upload&act=open&pageid=126&file=siromuku_originalsize.jpg

ありがとうございます!<> 旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv<>sage<>2009/06/05(金) 19:39:47.48 ID:YxDhw2wo<>最後のフラメンコ衣装を頂きました
http://www33.atwiki.jp/nagatoasakura?cmd=upload&act=open&pageid=127&file=flamenco.jpg

いやはや 忙しいのにほんまありがとう(´・ω・`)<>