以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/13(日) 01:00:35.71 ID:Y2TRc2SO<>昨日の晩のことだったんだ、大学受験も終わり、ぐーたらぐーたらしてたわけだ。

うぇwwwwwwこのスレ面白wwwwとかやってたわけだよ。

そしたら妹が部屋に入ってきて、

妹「ねぇねぇ、お兄ちゃん・・・夜ご飯食べ終わったら私の部屋にきてほしいんだけど・・・」

っとか言い出すわけよ。

俺のほうはパソコンを隠すのに必死で妹の顔は見なかったんだけど、ひとつ返事でわかったとだけ言ったんだ。

年も年だし初潮でもきたのかな?とか緊張感無いことばかり考えてた。





この時までは…

前々々々スレ
妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・
yutori.2ch.net

前々々スレ
【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・2【朱雀】
yutori.2ch.net

前々スレ
【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・3【朱雀】
ex14.vip2ch.com

前スレ
【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・4【朱雀】
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/part4vip/1206176198/-20
<>【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・5【朱雀】 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/13(日) 03:58:44.38 ID:lI3w6dQo<>2get
これはどう見てもおかしいだろ。 まず、主語が2。で動詞がget。
2が単数形だとしたら、getsにしないとおかしい上に、目的語がない。
直訳すると「2が得る」 何を得るんだよ!!!いいかげんにしろ。
それを言うなら
I get 2. だろ。しかも現在形だし。 過去形、いや現在完了形ぐらいまともに使ってくれよ。
I've got 2. 少しはましになって来たが、まだ気に入らない。その2だ。
いったいお前は何を手に入れたんだ?2という数字か? 違うだろ、手に入れたのは2番目のレスだろ。
どうも日本人は数詞と序数詞の区別がよく分かっていない節がある。
これらを踏まえて、正しくは
I've got the second responce of this thread.
ここでtheにも注目してもらいたい。このスレの2ってのは 特定の、このレスだけなんだから。だからaでも無冠詞でも なく、the second responceなんだ。
もう一度おさらいしてやる。

I've got the second responce of this thread.<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/13(日) 06:56:25.73 ID:7XFAJIDO<>I've got the third responce of this thread.<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/13(日) 20:55:17.77 ID:LOojxoSO<>スレたて己
早く続き読みてぇ〜<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/13(日) 23:33:42.84 ID:i2t0HZAo<>>>1スレ立て乙
これもついでに

妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1205799370/

【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・2【朱雀】
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1205893138/

【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・3【朱雀】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1206000280/<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/14(月) 01:37:22.12 ID:5M0YD2AO<>>>2-3
吹いたwwww

スレ立て乙<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/14(月) 01:39:29.77 ID:5M0YD2AO<>ついでにまとめサイト
http://07.xmbs.jp/988965/

都合悪かったら言ってくれ<> ただの青龍" ◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:20:23.93 ID:/K73BD60<>ただいま〜。
おかしいよね、一週間のはずだったのに、気づいたら帰ってきてたよ。

一言いいかな、親戚一同皆[ピーーー]♪

じゃあ続き。


〜ご注意〜
中二病小説を読むときは、画面から離れて、
広い心で、昔に立ち戻ってから読んでくださいね!

枕で顔をうずめて足をばたばたさせる準備はOK?



ティラノス聖霊伝。

第五話:いけにえ


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:20:43.00 ID:/K73BD60<>
そして、夜が明けるころ。
すっかり寝付いてしまった俺にすばらしい朝の一撃が。
その一撃は、天から降り注ぎし神の雷のごとく疾く、あまりにも重い。

まぁ、俺の言いたいことはこうだ、こんなに言葉を並べてみても言い表せないほどに、
痛かった…



「お"が…!! マグナ=カルタっ!!!!!」


夢の世界を通り越して新たなる地平に旅立ちそうになったぜ…
俺の神聖で、何者にも平等に輝きを与えし性剣エクスキャリバーが…再起不能なまでに破壊されようとしていたのだ…


「よう、ねぼすけさんよ。
 いいご身分だな、ここに居座ってる身で太陽があがりきるまでお休みタイムとは」


合計して広辞苑ほどもある三冊の本をまとめて俺のエクスryに叩き落すのは、短い白髪のちび。
こいつ、俺が怪我人だって忘れているだろ絶対…

そんなことも全くお構いなしのリースは、じわじわと強くなる押しつぶされるような痛みにもがき苦しむ
俺をずるずると引きずって食卓まで引っ張っていく。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:21:16.13 ID:/K73BD60<>美味しい朝ごはんが終わったあと、玄関になにやら聞き覚えのある明るい声が聞こえる。
瞬時に覚醒した俺の脳みそはその声が昨日の子供たちのものだと気づく。
そして、その声が5人や6人程度のものではないことにも、容易に気づくことが出来たのだ。

恐る恐る窓から外を見やると、ぞろぞろといるわいるわ子供の軍隊。
その中に半ばリンチ状態でのた打ち回るバンガイの姿。
衝撃、子供たちの真実! みたいなタイトルでNHK放送されそうな惨状。


「リュウキー!! 友だちがふえたぜーー!!!」

「リースも早くきなよ〜! 楽しいよ?」


おかしいな? こんなに純粋な子供たちの言葉のはずなのに、凶器に満ちていると感じてしまうのは俺の感覚に齟齬が生じたためか?
ボロ雑巾のようになったバンガイが、俺に向けて懇願のまなざしを向ける。
これほど無視したかった救助要請は向こう一年はないだろう…


「リュウキ…助けてくれ、この数じゃ俺でも…」


…バンガイさん…あんたなにしてはるんですか?

そのちびちびたちはなんですか?
何かのジョークですよね…?


「うっわ、まさか村の子供全員集めたんじゃないだろうな…?」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:21:30.17 ID:/K73BD60<>洋服を着替え終えたリースは、たじろいで言った。
総勢36人。
俺たちを含めれば39人の人間が、家を取り囲んでいる。
皆が皆、昨日の子供と同じくらいの歳で、よく見ればそこそこ大きい子供もいる。

男しかいないのかよ…華がないな…
そう、全員が水色の短髪で、中には俺くらい長い人もいたが、殆んどがリースくらいだ。

俺たちの姿を見るなりきらきらと(俺にはぎらぎらとしか見えなかった)
綺麗な(残酷な)眼差しを向ける72の瞳。


「…あはは…マジッすか?」

「…はは…こやつめ…はははは…」


これは死んだな、マルコシアスに襲われたときよりも危機感があるぜ…
しかし、男ならここで引き下がるわけには行かない、それは、約束がゆえに。
思えば、18年という短いが幸せに満ちていたとおき日々よ。

心の中で、今までの思い出に敬礼を送る、靖国で会おう、と。


「…エリサさん…洋服の洗濯、大変になってしまいますが、お許しを…
 それと、この言葉が遺言となるやも知れませぬ…」

「あっはっは! これは壮観ですね〜、それと、了解しました、めいっぱい汚しちゃって下さいな!」

「…リース、靖国で待っているぞ…」

「ヤスクニ?…はぁ、了解…この服、繕うの何度目だろ…」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:21:43.84 ID:/K73BD60<>はたから見れば、何をやっているのか分からないだろうと思う。
簡単に言えば戦争だが、敵も味方もなく、ころころと遊びが変わるのでついていくのにせいっぱいだ。
加減を知らない子供というのは本当に恐ろしい存在で、それが分かる人もいるのではないだろうか?
自分の欲求に従い、その為に行動する。

彼らは遊びに全身全霊を持って取り組んでいるのだ。
その世界には、もはや対象が誰であれ関係がない。
俺という本来なら距離を置かれるはずの部外者にも情け容赦なく。

いささか、なじみすぎの感があったが、そういう村色なんだろう。

二つの形状の異なる二色の太陽が頂点を昇りきり、少しずつその大きな体躯を傾けたころ。
子供たちのいなくなった戦場には、黒い髪の少年が一人、短い生涯を終えて、横たわっていた…

自らの役割も分からぬまま、故郷の土を踏むこともかなわずに…



ティラノス聖霊伝…END<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:22:00.80 ID:/K73BD60<>「…………………」

「………………」

「…………………いっつ…」


こんなことになるなら、回復魔術の本でもそろえておいて欲しかった…
筋肉痛で、一生歩けないんじゃないかと思うほどにひどい全身の痛み。
若いっていいね…翌日どころか数時間もたっていないのにもうこんなにすさまじい痛みが!!

バンガイさんも、リースも、同じくらいに肩で呼吸をして、所々服が破れていた。
遠慮のない子供のやったことだから…本当に容赦のない数時間だった。

親の顔が見てみたい! 一体どんな教育をしているんだ!!
そう思ったら、彼らの親御さんたちはニコニコとそのありようを見守っていましたとさ。

凄いよね、若いっていいわねぇ、とか言っちゃってるの。
もう馬鹿かと、アフォかと。


「…腹減ってるか? 俺の家にちょうど作ったばっかりのパンがあるんだが…」

「…バンガイ、それ本気で言ってんの?
 金輪際食料を受け付けないような身体になってるんだけど…?」

「……すまん、強がってみただけ、でもよ…なんで子供はあんなに元気なんだ…」

「子供は風の子元気の子って、言葉がありましてね…
 俺の国の言葉なんですけど、まさにその言葉通りって感じでしたよ…」

「…ははははあ…」


エリサさんは、打ち捨てられ故障した古い家電製品のようなの俺たちを見てもからからと笑うばかりで、
新しい着替えを手渡して風呂へ行くように促してくれた。
袖から先がなくなってしまった哀れな服を渡すのはとても心が痛んだが、エリサさんは全く気にしていないようだ。


セティと、マイルズさんはいないみたいだが、どうやら用事があるとか何とか。
明日にある村祭りと何か関係があるのだろう、そこまで詮索する必要も理由もないので、俺は聞くことはしなかった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:22:25.77 ID:/K73BD60<>「…ん? どうしたリース」

「…先は入れよ、俺は後ではいるから。
 あと、いつまでも上半身裸でうろつくなよ」

「?…分かった、出たら呼ぶからな。
 それに言っておくが、裸体というものは生まれながらのry」

「あー知らない知らない! そんな事はいいからさっさと行け!」


それだけ言い残してリースは二階に上がってしまった。
アイツも俺と同じくらい汚れていたはずだが…この村では一人で風呂に入る習慣でもあるのだろうか?

出来るだけ早くリースにバトンタッチしてやりたかったので、手早く脱いで風呂の中へ。
シャワーなどはないので、桶で身体を流して、湯船に入る。

体中が痛むのだが、マッサージをしていくらか翌日に持ち越さないように勤めた。
平和すぎて拍子抜けしてしまう。日本には、こんな場所がどれだけあるのか?

温泉のテーマソングを一曲歌いきってから、俺は早々と湯船から出る。
熱いのだ、こんなところに暫く入っていたら茹蛸になってしまう。


「リースー!」


彼を呼んで、俺は一足早く家を出る。
一人でこの村を観て回りたかったのもあるし、あと一つ…
なんてことない、いつもどおり俺の杞憂さ。


暖かい、太陽の光に、黒い土は、緑の葉をいっそうと茂らしている。
小さな村、人口は500人にも満たないに違いない。

それでも、村の人たちは十分なんだろう、おそらく…
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:22:43.95 ID:/K73BD60<>「…墓地、か? まぁ、村自体が自治を執り行っている以上、それも当然か」


遠目で、簡素なつくりの墓地郡を見やる。
荒削りの石に名前を彫った簡単なつくりで、数もあまり多くない、きっと一族皆が同じ場所に埋葬されるのだろう。
中年の夫婦と思われる人が4組、お墓の前で顔をうずめていた。

俺の母親と、そう変わらないであろう人。何故、そこまでやつれてしまうのか?
家族を失うとは、そこまでに辛いことなんだろう。俺には、まだ理解できない…こと。


さらに遠くまで進んでいく、村の中心とやらは一体どこにあるのか?
俺は、綺麗な小川で多様な色の薬草を洗っている女性を通り過ぎ、すぐ隣で洗ったものを干している男性に道を聞いた。

その途中で、朝方から遊んでいた子供たちとは違う子供に会う。
歳は2・3くらいだろうか、相変わらず水色の髪、短髪。

綾取りと、おままごとをして、俺の顔を不思議そうに見ていた。
これだけ小さな村ならば、全員が顔見知りであるということくらい、無理もない話だ。
見たことのない人間にその視線を向けるのは全く自然なことだったが、
俺が笑って手を振ると、そちらも笑顔で返してくれた。
おままごとに付き合う余力はなかったので、そのまま通り過ぎる。

俺の向かう先は、明日に控えるという村祭りの中心地。

たどり着いた先には、木製の柱が何本も直立して上に小さなやぐらが立っている。
誰かがあそこで祈りでもささげるのだろう、俺もあそこまで高くはなかったが、幼いころに似たようなことをした経験がある。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:23:06.35 ID:/K73BD60<>「…お? リュウキか、一体どうしたんだ?」

「あ、バンガイさん。ここで村祭りの作業をしているって聞いていたんで、見にきたんですよ」


高やぐやの上から、俺を見下ろして大声でしゃべるバンガイ。

祭りのことは、実際は誰かに聞いたというよりも、話しているのを聞いたといった感じで。
俺から聞くのはなんだかはばかられたのだ、仮にも怪我人、祭りよりも回復を優先するのが本来の役目だからね。


「おう、そうだぞ! 今年も天気に恵まれそうでな、まぁ、このやぐらを立てるのは男の仕事ってモンだ」

「しかし高いですね、誰かが上るんですか?…俺は少し遠慮したい…」

「がはは、男がそんなんでどうする? まっ、今年はセティが上るんだがな」

「セティが!?」

「村で毎年決めるんだよ、肉体的にも精神的にも、一番ふさわしい人間をな」

「それで、セティと。彼女がふさわしいって、ここは結構な高さですよ?」


危なくないのか? 軽く6mはあるぞ、この高台。
特に大きな柵があるわけでもないし、落ちたらどうするんだよ?


「…心配か? 顔に書いてあるぜ?」

「そりゃあ、まぁ。落ちたら大変じゃないですか、擦り傷ですむような高さじゃないですよ?」

「いいんだよ、それで……怪我をしても悪いことなんかないのさ」


最後のほうを聞き取ることに失敗したが、もう一度、というよりも前に、バンガイは仲間のところに行ってしまった。
それにしてもセティが、ああいった目立つところが好きそうには見えないのだが、村での取り決めに口を挟むわけにもいかないしな。

夕方も近づき、暗くなる前にリースの家に帰る。
玄関前では両手を組んで不満そうな顔をしたリースが立っている。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:23:58.00 ID:/K73BD60<>


「リュウキ!! どーこいってたんだよ!」

「村めぐりにちょっとな〜明日の村祭りの準備を見てきたんだよ」

「…あぁ、あれか、お前も物好きなやつだな本当に。
 準備風景見ても楽しいのかよ?」

「まぁね、それにしてもリースよ、あの高台って危なくないのか? 
 セティが上るって聞いたんだけどさ」

「そりゃあ、危ないだろ。でも、年に一度のしきたりだからな…
 んあ? ちょっと待って、母さんが呼んでるみたいだ」


そんな声したか? 俺の耳はこの世界で悪くでもなったのだろうか?
パタパタとリースがいってしまって、再び暇になってしまった俺はうろうろと玄関周りを歩き回る。
あいつときたら、家のドアに鍵をかけてしまったわけで…

…あ…あの長い布…形状からして…
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:24:17.05 ID:/K73BD60<>「ないないと思ってたら、こんなところにあったとはね。
 …つーか首飾りからずっとこのままなの? 持ち運びに困るんですけど…」

「リュウキさん! 渡そうと思っていたんですけど、先に見つけちゃいましたか」

「あれ? セティさん。用事があったんじゃないんですか?」

「もう終わってしまいましたよ〜。朝から一日ずっと拘束されてて大変でした」

「そうなんですか…っとそうだ、それと貴方に聞きたいことがあって」

「?」

「村祭りのことなんですけど…」

「……村祭りは、カルカラ村の伝統的な祭りですが、どうかしたんですか?」

「それは聞いたんですけど、セティさん、危なくないですか? あの高さから何かするんでしょう?」

「あぁ、そのこと。大丈夫ですよ、小さいころから馴れたことです、そうは見えないかもしれないけれど」

「…それなら良いんですけど、気をつけてくださいね、怪我なんかしたら…」

「…ありがとう。でも、心配しなくても大丈夫ですから」


そう言いつつ、セティは笑顔を俺に投げかけた。頬が赤く染まるのを避けられない。
チェリーの俺にはその笑顔に平然を装うなんて高等テクニックはないんだぜ?
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:24:38.78 ID:/K73BD60<>顔を見られたくなかったのと、気持ちを切り替えるために俺は布を丁寧にはずして、相変わらず青白く輝く大剣を片手で持ち上げる。
羽のように軽いそれ、元が首飾りだったからだろうか? それよりも、本当に首飾りには戻ってくれないものか、

五回程左右に振るって、使い心地に変わりないことを確認する。
この村では使う機会はないだろうが、念には念を。
その姿をじっと見つめるセティの視線を感じて、俺は振り返る。


「…やっぱり、リュウキさんは力が強いんですね…
 そんなに軽々と扱ってしまうなんて」

「まさか、この剣が羽みたいに軽いだけですよ」

「えっ? でもバンガイさんが持って帰ってきたときは、両手で抱えていかにも大荷物といった感じでしたよ?」

「んなバカな!? ちょっと持ってみてくださいよ、軽いですから。
 これならセティさんも問題なく使えるはず…って」


と、手渡してみたものの、セティはいっこうにそれを構えることが出来ないでいる。
よく、高校の女子が弱弱しい私可愛いって勘違いして握力とか異常に低いように振舞う、といった風では全くなく。
純粋に重くて持ち上げられない様子だったので、俺は諦めてセティから剣を受け取った。


「はぁ、はぁ…重くて持てたものじゃないですよ…」

「すいません、からかってみたんですよ。女の人にはだいぶ苦しいようですね」

「ひどい人ですね、全く…剣なんて持ったことなかったから、少し期待していたのに…」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:25:07.28 ID:/K73BD60<>
膨れたセティの顔は力を入れたためかほんのりと赤く染まり、彼女の柔和な顔には似合わない怒った顔。
俺はあわてて謝罪して頭を下げたが、セティはくすくすと笑って許してくれた。


「はぁ…不思議な人です、貴方は。雰囲気も、出で立ちも、本当にこの世界から来たんですか?」

「俺から見れば、貴方たちも十分不思議ですよ? とても真新しい体験ができたし。
 それに、明日の村祭りのことも楽しみです」

「……ふふ、そうですね」


太陽も低く身を構え、そろそろ月が顔を見せる時間。
俺たち二人は面白おかしく会話をたしなんだ。
町の名前こそ適当に作ったが、幼いころの昔話を、次々と交換し合う。

俺には妹と、父母、そして親友の朱雀がいると。
親父はロリコンで(ロリコンという言葉について質問されて、華麗に小さな子供を大切にする人だと答えた)
母親は、恐ろしく天然でドS(これには、凄く優しいのSだといった)
妹は、この世の天使よりも可愛く、俺の一番大切な人だといった。

セティは俺の家族、そして、朱雀に会ってみたいと始終話していた。
機会があれば、そうしたいものだが、果たして上手く行くものか? 第一俺があっちへ戻る手段も皆目分からないというのに。


「いい家族なんですね、朱雀さんも優しい方です」

「はは、セティさんの家族も素晴らしいじゃないですか、うらやましいのはこっちですよ」


加えて、村祭りが終わったらここから出て行こうと考えていることも伝えた。
怪我は跡形もなく完治しているし、いい加減もとの世界へ帰る手段を探さないといけない。
ここは小さな村だからあまり情報が手に入らなかったが、もっと大きな街へ行けば必ず何かが分かるはずだからだ。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:25:37.83 ID:/K73BD60<>「そっか、あさってには村を出てしまうんですね…」

「いつまでもお世話になるわけにはいきませんから。
 本当に感謝していますよ」

「迷惑だなんてそんな。良かったらいつまでもいてくれて構わないんですよ?
 でも…旅人さんを引き止めるのは無理でしょうね」


夕日が沈み、夜が顔を出す。
セティは思い出したように腰を上げる、このときどんな顔をしていたのか、俺には分からない。


「…私、いかないといけません」

「…? どこへ?」

「…明日のお祭りの準備に、です」

「あぁ、じゃあ俺がそこまで送りますよ、道も暗いですし、何かあるといけませんし」

「…大丈夫ですよ。私も子供じゃないんですから」


俺の背を向けたまま、彼女はそういった。
流石に、年下の男と供に歩くのは抵抗があるのだろうか?

俺に背を向けたまま、彼女はいつもと違う声を出していった。
その言葉は突然噴出した風によって殆んど聞き取ることが出来ずしまいだったが…
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:27:39.61 ID:/K73BD60<>「…ねぇ、リュウキさん…もし、良かったら……」

「…何ですか?」

「……………いいえ、何でもないです、それでは、明日、お祭りで」


暗い夜道を、ランプを持ったセティが歩く。
俺に向けてのいとおしい笑顔は、最初にしてくれたものとは違っていた。
俺の中で疑問が膨れ上がる、どうしても拭いきれない不安。


この村には何かがある、しかし、それが分からない。

そんな俺が、リースの家に上がろうとしたとき、あれ、鍵開いてるな。

玄関で靴を脱いで、廊下へ足を進める。



「どうしてだよ…!!!」


俺は、歩むその足を止める。
悲痛な声、そうとしか聞こえなかった。

何があるのか、その会話を聞いて俺は全てを理解した。
心の中の違和感はすっかりなくなる。

しかし…

やれやれ、俺のいやな予想は、どうやら最悪の形で当たってしまったようだ。
昔から、嫌なときばかり勘がよく働く。

俺はどうするべきなんだろうか?
思えば、さっきのセティの言葉が、俺の頭から離れない。
私も、その後に、何を望んでいたのか? それは一体なんなのか?

明日だ、気づけば俺はそう声を出していた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:28:31.03 ID:/K73BD60<>恩返しのいい機会かもしれない。

それが、そういう意味であれ…




ティラノス聖霊伝。

第五話:いけにえ

…終わり。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/15(火) 14:29:21.46 ID:/K73BD60<>誤字があっても優しく脳内変換よろしく。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/15(火) 19:50:17.06 ID:aT6YxbAo<>>>24
お帰り

毎度うまく書くねー、ああ、俺も上手く書きたいや……<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/15(火) 20:35:13.06 ID:VjTCAfEo<>>>24
おか〜
この文章読んでて苦しくないから好きだ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/15(火) 23:42:46.93 ID:nonlfeco<>おぉ、続ききてたのかー。
gj
青龍の文章は読みやすい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/16(水) 08:26:57.92 ID:bPgvGyIo<>ヘッポコで申し訳ないが
支援させていただきます

ttp://vipmomizi.jog.buttobi.net/cgi-bin/vestri/src/vestri34709.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/16(水) 13:28:21.47 ID:gaqTRAAO<>厨二病って悶えそうになるが
忘れかけてた何かを思い出させてくれるな

今更だが、まとめ全部読んで来て
朱雀の鳳凰演舞に惚れた<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:40:56.85 ID:C6Q4RqU0<>

数学3で心折れたよー








ティラノス聖霊伝

第六話:理由? 何それ美味しいの?




<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:41:20.82 ID:C6Q4RqU0<>村一年での政。
政とは名前ばかりのその行事。

もちろんこのまま黙って引き下がるつもりはなかった。

こんな小さな存在の俺に出来ることといえば…数えるくらいしかないが、
今回必要な手段に俺が実行可能な事柄が含まれているのは幸運だ。

俺は三人の会話(とは言っても殆んどリースが怒鳴っているだけだあったが)
を、廊下で音も立てずに聞いていた。
俺が話の途中で入ってきたら会話が中断される可能性を否定できなかったせいだ。

やれやれ、結局は村の人間ではない俺には話せないことなわけか。

離せない理由に足りる意見は聞くことが出来なかったが、俺にでしゃばって行動されたくないのだろう。
しかし、話を聞けば聞くほどに、俺の中で渦巻く正義感たる存在が炎を吐いて俺を傷つける。

マイルズさんが強引に話を切り上げ、リースもそれにしたがって押し黙ったようだ。
そろそろ俺が帰ってきたことを装ったほうがいいだろう。
立ち聞きしていたのがばれると面倒だからね。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:41:39.54 ID:C6Q4RqU0<>「…すいません、遅くなってしまって。
 さっき入ろうとしたら鍵がかかっていたんで外で立ち往生してましたよ」


「あ、リュウキくん…悪いね、リースのやつが締めたみたいでね…
 もしかして、聞いていたのかな?」


ばつが悪そうに、俺に向けて笑いかけるマイルズ。
瞳は全く笑ってはいない、ただ笑顔の形をしているだけの表情、残りの二人も変わりなく。
もちろん、俺は今までの会話を全て聞いている。
それを踏まえて、言う。


「…あ、いえ、何の話をしていたんですか? 俺は今帰ってきたところなんで」

「ん、いや、聞いていないならいいんだ。実はね、明日の祭り、セティ高台に上るのは聞いたよね?
 それが、なんというかな、親としては心配で」

「あぁ、なるほど! 俺も思ったんですよ、やけに高い台の上に上らないといけないみたいですから」

「そうなんだ、俺も父親の端くれ、あいつが落ちて怪我でもしたらと思うと…ね」


そんな嘘に、さも納得したように返す俺。
彼らが俺に知らせたくないわけはよく分からないが、そんな事はもう関係がなかった。

リースだけはずっと顔をしたに下げたまま、言葉も発しない。
さっきまで散々声を荒げていたのに、浮き沈みが激しいんじゃないか?


「親ならだれだって心配ですって。親じゃない俺が言うのはおかしいですけど
 …あ、エリサさん、おなべ吹いちゃいますよ?」

「え…あぁ、ごめんなさい、やだわもう私ったら。今ご飯の準備をしますから、待っていてくださいな」

「……………………」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:41:56.14 ID:C6Q4RqU0<>エリサさんもこわばった笑みを浮かべたまま背を向けて料理にいそしみ始めた。
唯一リースだけは、何も言わなかった。ただ黙って、俺の隣を通りすぎて行った。
瞳に涙をためて、俺にもはっきりと見えるように。

俺はここではっきりと自分の勘違いに気づく。
やっぱり俺の心の違和感は間違っちゃいなかった。


「ただいまーって、みんなどうしたのよ? リュウキさん、難しい顔しちゃって、
 らしくないですよ〜」


セティは、最初にあったときの笑顔のまま、元気よく部屋に入ってきた。
恐らく家族の後悔の対象、少し前の闇に消えてゆく彼女とは今はまるで正反対のように違う。

頭の上にはてなマークを浮かべたセティさんにかんぐられないように適当な答えを投げ返す。


「ちょっと、考え事を。ほら、リースから借りた難しい本を読んでいて、それについて少し」

「なるほど、でももう少し柔らかい顔をしたほうがいいんじゃないですか?
 そんな表情じゃ子供が怖がりますよ〜」

「生まれつきこんな顔なんですけど?」

「はは、生まれつきそんな顔付きなわけないじゃないですか〜!」



この夜の夕食は、見せ掛けだけの明るさがあっただけだった。
無理をして笑う、エリサさんと、それにあいづちを打つだけのマイルズさん。
リースは晩御飯には姿を見せなかった。
その訳をセティは知っているようで、リースについて何も言うことは無く、
食事が終わったあと一足先に二階へ上がっていった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:42:15.26 ID:C6Q4RqU0<>俺はそんな…に声をかけることは出来なかった。
今はまだ、聞くならば明日、さっきの会話が真実ならば、明日あっちから話してくるはずだ。
子供たちとの運動のおかげか、身体がやけに軽く、動きやすい。
自分の身体ではないように、強力な身体能力が今はある。

何が起ころうと慄くことはしない、勇気とか信念とはそんなものは存在しないひ弱な正義の味方。
そんな俺にも出来る事があるのなら―――――



翌日。村祭りの日はあっという間にやってきてしまった。
時間とは、ゆっくりと近づき、早々に立ち退くものだということは常々理解していたつもりだったが、
相対性というものの不可解さには、俺には永遠に分かることのないことだろう。

俺はというと、この一日ずっとこんな調子で読書にいそしんでいる。


「はぁ…こんな初級魔術じゃおそらく気休めにもならないな…」


そうため息を漏らす。
窓からさす夕陽は、いつになく明るい、だがなぜだろう、
対照的に村の空気は暗く感じてしまうのは。

子供たちの明るい笑い声だけがいつもと変わらずに、二階まで元気よく響いている。

俺に出来ることはすべてやると決めた。
そのため俺は一日を、分厚い魔道書に費やしていたのだ。
行える手段は多いほどいい、とは言ったものの、この本に書いてある内容ではなんともいえないのだが。
書いてある内容はどれも実践向きというよりは生活が便利になる程度のものが殆んどで、
キッチンでマッチ要らずに着火が出来る魔術なんて今はあっても意味が無い。

役に立ちそうなのはリースが俺に施してくれ解毒魔術やその近辺に記述されている軽度の切り傷や
打ち身などに効果がありそうな初級魔術。
俺の言語能力は恐ろしいほどに進歩していて(原因は分からないが、この世界へ至る経緯で何かが起こったのだろう。
俺の身体能力の桁違いの増加も同様に)
もはや日本語と同レベルの解釈も容易に行えるほどであった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:42:36.47 ID:C6Q4RqU0<>

こうやった時間が取れたのも、今日は村祭りを総出で準備するということで(俺も手伝うといったが、軽くあしらわれた)
話す相手もいないからだ。唯一暇そうだと思ったリースは一日どこかにいなくなってしまった。

朝方からセティは、祭りの仕度で家族とともに行ってしまい、俺は一人でここにいる。
一人で悲しいなんてことは無かったんだからね! 勘違いしないでよね!


…ふぅ、あたりが暗くなったので、燃えているランプの火を少し強める。
俺がさっき放った炎よりも、優しくて暖かい炎を、俺の眼が見る。

仮眠を取ろうと横になって数分、リースが綺麗な服装に身を包んで入ってきた。
民族衣装とは少し違うが、正装らしい、きちんとした服。
地球だとスーツとでも表現しようか、見てくれはだいぶ異なるけれど水色に包まれたそれを着て。


「おい、祭りだから準備しろよ」

「はいはい、待ってましたよ。で、その服装はなんだ? やけにきっちりしてるじゃないか…」

「高台に上る者の家族は、みんなこのかっこうするんだよ。だから、リュウキはいつもどおりの服装でいいぜ」

「そりゃあ安心だ、あんなに破れた服を着てはいけないからな〜」

「リュウキの洋服はズタボロでもう着るに値しないだろ…
 じゃ、先行ってるからな。用意、っても何も持ってくもの無いと思うけど、仕度すんだら下来てくれ」


それだけ行って、先にすたすたといってしまう。
全く俺には用意するものが無いので、リースの後を遅れないようにそれについていく。
薄暗くなった村の中心に、たくさんの人だかりが出来ている。
村人全員を一箇所に集めたに違いない。人口が少なくとも、この狭い場所に集合すれば込み入った印象を受ける。
体育館での全校朝会を思い出すような風景に懐かしむこともなく、俺はリースの隣に並んだ。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:42:56.41 ID:C6Q4RqU0<>
「リース、リュウキさん。待ってましたよ!! 
 どうですか? こんな服装初めてなので…似合ってます?」


薄蒼い幾重にも重なった羽衣、細いレースが数本妖精のように纏っていて、スパンコールをちりばめたように
きらきらとたいまつの光を反射する。

いつもとは違って薄化粧施され、一つ結びの髪の毛は優雅に結いあげられている。
村の娘という垢抜けない印象は全く消え去り、そこに立っているのは美しい聖霊が一人。
その女性は俺に微笑みかける。
緊張で少し頬が硬くなってはいたが、優雅に周りを見渡して、懐かしむような眼差しでお辞儀をした。


「…………」

「ほら、リュウキ! 見とれていないで何かいってやれよ!」

「え…?…凄く綺麗ですよ。俺が生きてきた中で、間違いなく五指に入るほどに」

「えへへ、お世辞が上手いんですね〜でも、ありがとうございます。
 あぁ、ちょっと緊張してきちゃったな」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:43:12.26 ID:C6Q4RqU0<>後ろを向いて、俺から顔を背ける。
ふわふわと緩やか振れる羽衣、風も大して吹いていないのに、それ自体に意思があるかのように動いている。
俺は暫くその姿を見つめていた。
本当に美しいものを見ると言葉を失うというが、小説だけの話ではないらしい。
現在俺はそれを痛感している最中なのだから。

ぼーっとしている俺の肩をリースにたたかれ、ようやく我に帰る。
どうやらこれから最後の準備があるようで、家族以外はこの場から立ち退かなければいけないとの話だ。
非常に名残惜しい気持ちだったが、あくまで紳士を振舞う俺はさわやかにその場から離れ、
高台が一番よく見える場所へ腰を下ろす。

そんな俺に向けてきらきらとした視線を投げかける子供たちが数人。
二日巻かけて俺を大いに苦し…もとい楽しませてくれた五人組の欠片だ。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:43:32.91 ID:C6Q4RqU0<>「お〜ミィ、カイン。今日はちゃんとした服装なんだな。
 泥だらけのいつもの格好とは正反対だね」

「だってーきょうはおまつりなんでしょー?」

「わたしたちもよく分からないけどー!! お母さんがこのふくよういしてくれたのー!」

「そっか…俺はいつもと同じだ」

「でも今日はきたなくないのね〜!」

「そうそう〜! そうしてかな〜? 教えてよ〜!」

「……」

「どしたのー? ヘンなかおー? リュウキこまってるの?」

「大丈夫、大丈夫。朝から本を読んでたから少し疲れてるだけ」

誰のせいで服が汚れたのか全く気づいていないご様子…
ったく…でもそんなところが子供って可愛いんだけどな。
あ、別に変な意味で言っているんじゃないですから勘違いしないように。


「ミィー! カインー!…あら、貴方は…もしかしてリュウキさん?」


二人の母親らしい人が、名前を呼ぶ。
俺に気づいたのか、笑顔で近づいてくるも、表情はどこか憂いが伺える。
ミィの頭をなでながら、俺と挨拶を交わす。たいした会話はなかったが、俺もそちらのほうが都合が良かった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:43:48.77 ID:C6Q4RqU0<>祭りの開始までは少し時間があるようだ、近づきすぎず、俺は歩くことにした。
じっとしているのが苦手な性分で、悩み事があるといつでもそうする。
加えて身体を動かしておかないといけないから。

高台を広く取り囲むようにして立つたいまつを順々に回る。
太陽はついに沈み、それらの光だけが人と人を認識する手段となっている。そのためたいまつには人が集まり、
何気ない会話で時間をつぶしている。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:44:01.63 ID:C6Q4RqU0<>
綺麗な笛の音色、俺はふと足を止め、高台を見上げる。
他の村人もみな、雑談をやめにして全ての瞳が一点に集結する。

そこには、さっき見た聖霊がいた。
数日の間で、見慣れたと思っていた姿が、あまりにも神々しく、美しい。
たいまつの中で、まるで火あぶりにされる魔女のごとく、彼女は立っていた。

横笛を優雅に構え、聞いたことのない音色を奏でる。
俺に音楽はよく分からないし、恐らく生涯無縁だろうが、
その音色が物語る旋律は、俺の魂を震わせ、余計な思考を排斥してしまう。

長いメロディーが終わり、あたりからは盛大な拍手が巻き起こった。
あるものは指笛を鳴らし、あるものは感極まって涙をこぼし。
そしてある者は…これからの彼女の境遇を嘆いた。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:44:20.90 ID:C6Q4RqU0<>セティが高台からおり立ち、決まっていたように小さな子供たちが――彼女へ贈り物を手渡す。


遠くからの見物だったので細かくは分からないが手作りの首飾りだった。
売り物にはならないような、ぶきっちょなつくりのそれ。

それでも首飾りにはいろいろな想いが詰まっているに違いない。
セティは笑顔でそれを受け取り、子供たち全員の頬にキスをする。

何も知らない子供たちは、顔中に笑顔を散らばせて、美しい女性の顔を見上げる。
聖母マリアを彷彿とさせる、柔和な微笑み。
かつて見たあどけなさの残る彼女は遠くに行ってしまい、そこには凛とした一人の大人がいた。

俺の視線に気づき、彼女は手を振ろうとして…そして、持ち上げようとしたその手を下げてしまった。
彼女は俺から離れるように、彼女は新たに現れた子供たちのほうを向いてしまう。


「………」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:45:18.10 ID:C6Q4RqU0<>俺は祭りの場を離れ、せせらぐ小川に腰を下ろそうと訪れる。
分かっていたが、そこには先客がいて、俺には気づかずに顔を両手で覆っていた。

本来なら家族の一員としてあの場にいなければならないはずなのに、人の目の着かないこんなに暗いところで独り。

俺はそっと近づき、指先から光をともして涙に濡れたその顔を見る。
そして…彼女に最初に声かけるのにもっともふさわしい台詞を言う。


「そんなに泣いてたら、いい女が台無しだぜ?」

「…リュウキ…?…気づいて、たのか…? じゃあ、昨日の話も…?
 …………なんだ…」


白髪の少女が、俺を見上げてつぶやく。
真っ赤な瞳をして、肩を震わせて。


「まぁ、あんなに大声で話していたら気づかないほうがおかしいかと」

「………………」


この村の違和感。それは。
セティのような若い女が見当たらないこと。いや、正確には女性らしい姿の子供が非常に少ないこと。
あれだけ子供がいれば見つかるだろう、髪の長い子供。
簡単に言うならば見た目で少女と認識できる人間が一人もいないのだ。
短髪が村の習慣でないことは、セティやエリサさんの髪を見れば容易に分かる。

加えて墓地には、普通ならば成人した子供を持つような年齢の両親が涙を流していた。
自らの両親の死を嘆くというよりも、理不尽な別れに対する嗚咽を聞いたからこそ俺には理解できる。

ここまで情報があったのに、俺が今昨日の話を聞くまで、ことの本質に気づけなかったのは、単純に知らなかったから。
日本とは全く異なる世界にいるという事実を。
最初から予想もつかないことについて考えられるほど俺は優秀な頭脳を備えていない。

でも知ってしまったからには。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:45:40.60 ID:C6Q4RqU0<>「…俺に話したいことがあるなら、早めに言っておいてくれよ。
 そろそろ行かなければいけないところがあるからな」

「……リュウキ…?………」


リースの隣に腰を下ろす。
暫くの沈黙、その静けさの中で、彼女の苦痛を少しでも和らげることが出来るのなら。


そして―――――


「…俺たちの村は、見捨てられた村なんだ」


その言葉をはじめに、ゆっくりと、村にせせらぐ小川のように話し始める。
 

「…リュウキも分かると思うけど、この村は都会から遠く離れていて、観光の名所も、有名な特産物もない。
 こんな小さな村でも、俺たちは平和にやってきたんだ…でも」

「今から、8年前…俺がミィたちよりも少し大きいとき時。森にやつらが現れたんだ…」

「…やつら?」

「…オークさ。そんな魔獣に対抗できるような人間はこの村にはいなかった、加えて…
 やつらを取り仕切るオークは普通とは思えないほど強くて…
 実質、俺たちはやつらの奴隷のような位置に貶められてしまったんだ…」


ここで、一旦話をきるリース。
あふれる涙を抑えられなくなったのだろう、だれのために泣くのか?
姉のため?

暫くの沈黙、村の中心からは、まだ騒ぎ声が聞こえてきて、祭りが終わっていないことを知らせる。
そしてまた、話の続きが始まる。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:46:03.89 ID:C6Q4RqU0<>「…そして、やつらは俺たちの村を拠点に好きなように生活をするようになった。
 村を従えるのは簡単なことだった。勇敢に戦った村の男を数人。無残に殺せばそれですんだ。
 俺たちが慕ってたバンガイの兄貴も、それで死んでしまった」

「…そして要求した。自分たちが生活するに十分な食事を…
 俺たちが暮らせなくならなくて、なおかつ楽でもないぎりぎりな線で」

「…その食事に、若い女が入っているって事か?」

「…………」


沈黙は肯定だろう。
言うまでもなく、今夜の食事とやらは…


「…誰かいなかったのか? 倒してくれる人は…? 都会へ行けばそれくらいの術者くらい…
 魔獣を倒すための組織が無いとは思えないんだが?」

「…リュウキは知らないかもしれないけどな、そんなことをする余裕も暇も、今じゃ水の国にはないんだよ?
 光の一族と、闇の一族。それに続く多くの一族での戦争。
 戦いが始まってからもう結構な時間が経つ…10年前のあの日から…こんな偏狭な村に気をかけることは無駄だと思ったのかもしれない。
 助けたところで、それに見合う見返りがあるわけじゃない。」

「最初は、ギルドで狩人を雇おうともした、けど。
 優秀なハンターを雇うほどのお金を用意は出来なかった。なけなしの金で雇った中途半端なハンターは返り討ちにされた。
 それが何回か続いた後、俺たちの村は世界から見捨てられたんだ。
 オークは俺たちの村を監視して、余計なものが外へ出られないようにしてしまった。
 今もそうさ、村から出て行けるのは、商売に近くの町へ行く男だけ」

「…だから俺も、学校なんかへ行くことは出来なかった。
 商売のためにアマルナまで行ってくれた親父が買ってきてくれた魔道書が、精一杯」


「…………」<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:46:20.81 ID:C6Q4RqU0<>「反対したさ、でも…いけにえを届けなければ、恐らく大勢の人が死んでしまう。
 だから、姉貴は志願した。今年青年になる女性は、あまり多くは無かった…
 その中で、誰よりも速く姉貴が手を上げた、さっきと同じあの笑顔で…」


俺の心に、初めての感情が浮かぶのが分かった。
憎しみではなく、かといって怒り、恐怖でもない。

複雑な神経細胞の新たなる組み合わせによって、生み出されたこの感情。
強く握り締めたコブシを、俺は柔らかく解く。


「…いけにえになると決まった後も…姉貴は…普段の生活を望んだんだ…いつもと同じ、変わらない生活を…」

「最後まで、俺は納得できなかった。
 …今も納得なんか出来てやしない…そんな理不尽で優しい姉貴が逝ってしまうという真実が。
 そんなときだよ、リュウキがこの村へ来たのは」

「そう…だったのか…それじゃあ、リースのその髪も言葉遣いも」

「あぁ、オークどもにいけにえを要求されてから、女の見た目を捨てて男として育てることにしたんだ。
 俺もその一人、こんなことが気根本の解決になるかどうかよく分からないけど、これくらいしか出来ることはなかったんだよ。
 そうして女性の数か少なくなったと勘違いしてくれれば、と希望を込めてさ…」


どんなに言葉を変えようと、そんなに見てくれを変えようとしても、今俺の目の前にいるのは一人の少女。
今までの気丈の強さはどこかへ行き、涙だけを流してうずくまる…

俺は、よく妹にそうしたように、リースを硬く抱きしめていた。
そうした理由を聞かないで欲しい。
俺の胸の中でむせび泣くリースの体温を感じながら、俺の心は硬く決まった。

嗚咽をこらえて、俺に向けて話す。
さっきまでとは打って変わり、願いのようなものがな内包されているかのような。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:46:53.04 ID:C6Q4RqU0<>「リュウキ…あんたさ、似てたんだよ。
 顔とかじゃなくてさ、なんていうか、雰囲気というか…そのバンガイのお兄さんにさ…
 だから、話したら行ってしまうんじゃないかって思ったんだ…あの人は姉貴の初恋の人だったから。
 …姉貴の願いなんだ。
 リュウキには言わないで欲しいって…この約束は破ってしまったわけだけど…リュウキ…
 あんたはこのまま明日村を出ればいい。
 何も知らないふりをして…笑顔で村を出て欲しい…」

「……それは約束できないな。
 ここまで話してもらって、見てみぬふりをしろだって?」


この村に来て初めて語調が激しくなる。
溢れる激流のような感情を言葉に織り交ぜて、俺は声を荒げていた。


「バカ! 行くつもりなのか!? 勝てるはずないだろ!?
 俺たちがお前に黙っていた理由が分からないのかよ!?
 リエンさんに似ているあんたに無茶なことをして欲しくなかったんだよ!!
 言っただろ! 中途半端な実力じゃ勝てないって!?
 マルコシアスみたいな野獣とは桁が違うんだぞ? やつらは魔獣なんだ!!!
 最初から勝つ見込みが無いようなことを頼めるはず無い!!!」


「…勝てるか、勝てないか。
 そんな事は全く関係ないんだよ。俺は、この村の人に助けてもらったからその恩返しに。
 そういう感情で動こうとしているわけじゃない。
 助けられる可能性はないかもしれない。でも、俺が何か出来るかもしれない。
 僅かかも知れない、洞窟の中に流れ込む一滴の光のかけら、それよりももっと…
 でもな、俺という人間は、そんな――少しの希望があれば行動しなければいけない…そういう風に教えられて育ってきた」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:47:36.86 ID:C6Q4RqU0<>
…なんでこんな台詞がつらつらと出てくるんだ?…こんなこと、以前にも言った事があったっけ?
誰にだったかな? とても、大切な人へ…言った事があったな…

おかしい気持ちだ。
教えられた記憶などないはずなのに…

まぁいまはそんなことは関係ないだろう。今の言葉に俺の正直が含まれているのは紛れもない事実なのだから。
ここで見てみぬふりをするくらいなら、死んだほうがいい、当然死ぬ気は毛頭ないがね。



今日の朝に、樹の裏へ隠しておいた布巻きの物体を水平に掲げる。



青白い長剣を一凪に振るいあげる。


風を受けた布が、剣の刃に当てられて音もなく切断される。


この世界を照らす優しい月のように、青く輝く名も知らぬこの剣。


それを左手で持ち、リースへ最後の言葉を継げる。
最後というのは、俺のという意味ではなく、この悪しき習慣へ。

救いが無い村? だから俺がここへ来たのだろうか?
俺に施されたこの力は、このために?

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:48:41.17 ID:C6Q4RqU0<>
「リース、一つだけ…言っておきたいことがある。
 エリサさんへの伝言だ」

「……なにさ…?」

「明日の朝ごはん。ちゃんと"5"人分作っておいてくれ、って。エリサさんによろしく」

「っ! おい! リュウ――――――……」



彼女の返答を聞いて、俺は走り出していた。
風よりも敏く、音よりも速く。

体のどこからこの力が湧き上がるのか分からない。
俺のうちにある魂から? それとも、別の何かが?


もっと単純な理由。


「…ありがとう、リュウキ…」


その一人の声、それだけで十分だ。


誰もいない門を出て、漆黒の森へ駆けてゆく。
月明かりだけを頼みにして、それでも俺の眼は辺りを鮮明に視る。



後戻りは出来ない、基、するつもりもない。

セティを運ぶための御輿を見つけ、走り際に両断する。
全くといっていいほどに手ごたえも無く二つに分かれるそれを見向きもせずに突き進む。

門番が身を呈して俺の外出を防ぐよりも遥かに速く、俺は門を粉砕して森へ出た。
何かを叫びそうになったので、手加減して顎を塚の部分でたたく。
悪く思わないでくれ、もしかしたら顎が折れてしまったかもしれない、手加減って難しい。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/16(水) 19:49:19.77 ID:C6Q4RqU0<>真っ暗の闇をさっきの光で輝かせて、獣道であるはずなのに、しっかりと整備された道をただ駆けていく。
その先に何があるのかは分からない。
ただ、マルコシアスに襲われたときに感じた恐怖は微塵にも感じなく、
吹き上がる感情の波が肉体という器を突き破って放出しているかのようだった。



この気持ちが消えないうちに事が終わってくれれば、そう想った。



ティラノス聖霊伝

第六話:理由? 何それ美味しいの?

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/16(水) 20:14:22.59 ID:c4C9eY6o<>おーけい。
って言うか、正直なところ地味に悔しいな。
異世界ファンタジー俺ここまで王道展開書けないぜww

気になったところはいくつかあるが、聞きたい?
青龍<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 00:41:50.51 ID:j80KupYo<>盛り上がってきたなww
数3は数2をきっちりやればすぐに慣れるぜwwww
青龍ガンガレ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 01:20:06.24 ID:/P9SrWwo<>なんだこれ…鳥肌がやばい…
続きに期待ww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/17(木) 02:50:24.48 ID:Sq99NKko<>王道展開ktkr!!
wwktkが止まらないwwwwwwww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/17(木) 12:29:04.41 ID:FP6Yl.I0<>>>28
今更だけど、乙。

>>50
聞きたくないな〜…(^-^;;)


でも・・・何ここよく分からないザマスはっきり説明して頂戴とか、
うはwwwwwwwwこんな序盤なのにwwwwww早くも矛盾がwwwwwwwwwwとか気になることは聞いてくれていいよー

答えられることは答えようと努力はするから。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 12:48:55.11 ID:vBj9KGko<>まぁちょっとしたことなんだけどねー……
門番のあごをわざわざ剣の柄じゃなくて反対側の腕でべしってやって上げてくださいよ、とか思ったくらいだしww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/17(木) 12:58:53.64 ID:FP6Yl.I0<>あぁ、それか。
俺も迷ったんだけど、一応リュウキは一般人だから、的確に顎を殴って気絶させることを確実に出来る保証はないの。
だから、100%気絶してもらうために柄で殴ったと。

こんな感じでおk?

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 13:13:36.24 ID:vBj9KGko<>>>56
そんな事言ったら、なおさら剣で殴って気絶させる、ってのも確実でないぜ?
大体剣なんてものは切るためのものだから。柄で殴るのは槍か棒か杖くらいのもの。
自分が握ってる柄を相手に向けてそれで殴るより普通に自分の手で殴った方が加減も出来る。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 13:47:06.34 ID:k9KrCTUo<>リース女かよ描き直しだよウワーン

ヘッポコ支援2枚目
ttp://vipmomizi.jog.buttobi.net/cgi-bin/vestri/src/vestri34856.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 13:48:21.55 ID:Xw71hN6o<>wktkして続きを待ってるwwwwwwwwwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/17(木) 16:26:57.36 ID:vdazZ6AO<>同じくwwktkして待ってるぜ!

いつも気が付いたら夢中に読んでるんだ。せ、せいりゅうったら…やりよる…!<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/17(木) 19:03:09.47 ID:FP6Yl.I0<>
>>57
ぐぬ・・・じゃ、急いでたからってことで。



青山龍樹
※この人物はフィクションです。
実在する人物とは全く関係がありません。

ttp://www.vipper.org/vip796675.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/18(金) 00:06:00.81 ID:EvObjM.0<>>>61
なんというイケメンwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/18(金) 00:18:29.48 ID:fhHZ0/6o<>現在龍樹が出した剣を適当にデザインしてみようと試みたんだが、難しいですねww
特にブレードの部分、大抵形決まっちゃうから悩みどころ<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:38:11.60 ID:veRPnYM0<>
雨止まないかなー。

前半部。

ティラノス聖霊伝

第七話:中途半端

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:38:26.62 ID:veRPnYM0<>一台の馬車がからからと軽快なリズムを刻みながら川沿いを走っている。
手綱を握るのは角ばった細い腕で、軽装に帽子をかぶった老年の男性がパイプをくゆらせながら馬を引く。

荷台には大量の空の樽と、わずかに残った干し肉と果実。
そして、背の高いハンサムな男。


「それにしても、わざわざ街まで送ってくれるなんて感謝してますよ〜!
 あそこで貴方に会わなかったら今頃ミイラになってたに違いないですもの」

「ははは、お礼を言うのは私のほうだよ、
 君が助けてくれなければ私は今頃やつの夕飯になっていたところだ」

「じゃあ、お互い様ってことでいいですかね?」

「あぁ、それが良い。それにしても、君ほど腕が立つ人間がどうしてあんな所に?
 ハンターでもないって言っていたし、まさか脱走兵でもないだろう?
 ここら一帯はまだ戦場にはなっていないからね」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:38:41.86 ID:veRPnYM0<>老人は彼のほうを向いて質問する。
扱いのなれた馬のことは自分の身体のようによく知っている。
少々目を離したところで勝手に動くことはないのだ。
馬は主人の言うことをよく聞いて、わずかに歩調を緩める。


「うーん…というよりどうしてここに俺がいるのかがよく分からないんですけど…
 家で夕飯作っていて、気づいたら森の中にいたわけで。
 頭がこんがらがってて困ったもんですよ…」

「ははは、寝ぼけて夢でも見ていたんじゃないのかね?
 それともお腹の減りすぎで幻覚作用でもあったのかな?」

「…違うと思うんだけどなー…(俺にしては今の状況が夢なんだけどね…)」


ハンサムな男はさっきから本当に悩んでいる様子だったのだが、
それは老人に理解してもらえなかった。

男は馬車にある食べかけの干し肉を手にとって噛り付き、豪快に食いちぎる。
荒塩の濃い味が口中に広がる。

男は満足そうに息を吐いて、よく分からない世界のことをとりあえず考えないことにした。
老人は不思議そうに男の顔をまじまじと見つめて、ついにこう言う。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:39:02.10 ID:veRPnYM0<>「にしても、君の髪の毛の色は珍しいね…十二色なんて初めてみたよ。
 それに…なんだいその服は? 商人として私は毛皮や繊維には詳しいつもりだが、
 見たことないよそんなに光沢のある服はね」

「へぇー、俺に取っちゃあじいさん髪の毛のほうが珍しいんだけどな?
 黄色い髪なんて初めて見たっつうか、それ地毛ですか?」

「そりゃあ私が雷の一族なんだから髪が黄色いのは当たり前じゃないか!
 黒髪なんてもういないと思っていたが、これは家内にもぜひ観て欲しいな」

「(雷…)じゃ、奥さんも黄色い髪?」

「いや、あいつは風の一族だから薄い緑色だよ。
 同じ勢力の一族同士だから本当に運がよかった」

「緑…本当に凄いところに来ちゃったな…
 なんだか…俺今寝ぼけてるわけじゃないですよね…?」


男は思いっきり大きなため息を漏らしてもう一口かじる。
チャックをしたまで下げた大き目のジャージは、赤黒いマーブルに染められていて荷台の隅に放ってあって、
今は薄手のシャツ一枚と汚れの少ないズボン姿だ。
本来なら珍しくもなんともない服装なわけだが、ここでは事情が違う。


(おかしいよな…いつから太陽が二つになったんだか…それに、明らかに俺の力が強くなってるし。
 これじゃあ中二のときにしてた妄想が現実になったみたいじゃないかよ…
 第一この爺さんの話が全く理解できない…)


そんなことを考えているわけで、彼は幾らかそのハンサム顔を崩していた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:39:33.13 ID:veRPnYM0<>「…そうだ! じいさん、所で本当に日本って国知らないんですかね?」

「うーん…ニホン? やっぱりそんなおかしな名前は聞かないね。
 第一国なんて世界全部で12しかないんだから…そんな国は存在しないよ?」

「……はあー…マジですか? とことんおかしな夢物語だな…」

「ははははは。でも、さっきの戦いは見ていて爽快だったねー! 迫り来るケンタウロスを剣一本で倒すなんて!
 達人でもそこまで上手くはいかないよ!」

「…あれケンタウロスって言うんだ…うーん、褒められるのは嬉しいんだけど、
 俺はがむしゃらに突っ込んだら倒せてたってだけで強いとかじゃないと思うんですけどね。
 剣だって…今は首飾りに戻ってくれてるけど、少し前に貰ったやつがひとりでに変化しただけで。
 生き物はおろか動かないものだってきった経験ないんですよ?」

「はっはっは! 全く謙遜しなさんなこんな老いぼれの前で!!
 あの動きを見れば君の力の程は素人目でもよーく分かるよー!」

(…本当に経験ないんだけどなー…
 体育の授業で剣道したことはあるっちゃあるけど、さっきのあれってどう見ても真剣だし…
 そういや俺って生き物殺したんだよな…あーあ、動物を愛するって信念あったんだけどな…ご愁傷様)
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:40:04.27 ID:veRPnYM0<>見た目に似合わない高らかに笑う老人ににが笑いで返す男。
赤と黄色に輝く小奇麗な石のついた首飾りを手にとって、これをくれた少女の姿を思い出す。

短い髪をした不思議な少女、どうしたわけか俺の名前を知っていたので、おかしな子だと思っていたが、
もらえるものは貰っておくという彼の精神から首飾りを受け取ったのだ。

別に付けるようには言われてなかったのだが、偶然にも最近まで大切にしていた首飾りが壊れてしまって
すこし首あたりが寂しかったのもあって、渡された日から身に着けていたのだ。

あんなことが起こった以上は、捨てるに捨てられないものとなってしまった。
勝手に剣に変わる首飾りなんて世界でも自分しか持っていないと思ったし、懐かしい思い出を思い出したりしたからだ。


「じいさん〜あとどれくらいで…えっと、なんていったから、爺さんの住んでる町…」

「アルマナだよ、水の国じゃ有名な大都市なんだけどなー…聞いたことないかい?
 魔道と大海の街アマルナって」

「いやー全く初耳で…もしかしたら俺はその魔道とか言うのでここに来ちゃったのかもしれないですね」

「魔術でかい? はは、それはないと思うなぁ…大昔ならともかく、今人間みたいに魔翌力回路が複雑な物質を遠くまで
 運べるような空間移動魔術師は存在しないはずだよ?
 かの高名な空魔導師『ファウスト=カラマゾロフ=ダンテ』も5年前になくなったわけだし」

「…ははは、面白い話ですねー…つーか、魔法ってこの世界じゃあ一般的なもので?」

「おいおい冗談かい? はははは、まあ良いか、魔法っていったらこの世界の基本法則の一つじゃないか! 
 でも、君は魔術は唱えられないみたいだね?」

「うーん、唱えるも何も知らないっていうか…(妄想でならいくらでもしたんだけどなー。
 そんなこと人前で…昔は言っていたけどさ。今じゃそんな痛い発言は出来ねぇって…)」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:40:18.47 ID:veRPnYM0<>「へぇー! 珍しいな、学校にはいってなかったのかい?」

「…一応高校は卒業したんですけど…ここって高校あります?」

「魔術学校高等部のことかな? だったら私よりも魔術を知ってるはずなんだがなー…
 …あ、分かったぞ、さっきと同じで実力を偽っているわけだね?
 あーあー、いいよいいよ、何かいえない理由でもあるんだろう? 深くは詮索しないから安心してくれ。
 思えば君は黒髪の持ち主だから魔術が唱えられないなんて聞く私が馬鹿だったね! すまないすまない」

「…はぁーーー…こんな時にリュウキがいれば…あ、ダメだ。
 あいつといたら…俺たち間違いなく再発する…」

「…リュウキ?」

「あ、親友なんですけどね、なんかこうなった以上暫く会えないみたいなんですよねー…
 そいつ頭が良いからもしもここにいたらって思ったんですよ」

「その彼も黒い髪なのかい?」

「まあ黒ですよ(つーか普通は髪の毛黒なんだけどな…)
 そいつがまた面白くって良いやつなんです」

「友人か、羨ましいことだなぁ…私の歳にもなると友人も先に逝ってしまうからね。
 もう数えるくらいしかいないな…君くらいのときは友人の数なんて考えたこともなかったんだがね」

「え? 爺さん何才なんです?」

「私かい? 今年で63だよ。こんな高翌齢じゃ商売をやるのも一苦労だ。
 身体が思うように動いてくれないからね、それに、今じゃ戦争の真っ只中。
 これからの世代によくないものを残していくのはなんともね…」

「63じゃまだまだ若いじゃないですか! そんなに悲観することないと思うけどな…?」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:40:35.19 ID:veRPnYM0<>
これを境に、明るかった老人の瞳に初めて影が生じる。
それはほんのわずかな変化に過ぎなかったのだが、
男が見逃すことはなく、その言葉以降また暫く沈黙が始まった。

鞭を打たれて足を速めた馬は、一定のリズムでしっかりと川沿いを歩く。
時々通りかかる商売仲間から挨拶を交わされたり、やけに物騒な格好をした屈強な戦士にも何度か声をかけられた。

そのたびにハンサムな男はまじまじとその姿を見て変な視線を受けてしまったが。
彼には全く気にならないことのようだった。

干し肉も全て食べ終わってしまい、馬の休憩で川に降り立ったとき、渇いたのどを潤した。
川には見たこともない色をした魚が泳いでいて、釣りをたしなんでいる人もちらほらと見受けられる。
男は上着にこびり付いてしまった血液を落とそうと躍起になっていたが、乾いてしまってからだいぶ経ってしまっていたので、
殆んど落ちることなく、諦めて前のままの服装でいると決めたようだ。


老人はというと川の水を飲む馬の身体を丁寧に拭いてやってり、話しかけたりしてやっている。
馬が話しかけてくれるとは到底思えないが、老人の愛情の形なのだろう。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:40:51.11 ID:veRPnYM0<>静かで水のほとばしる音以外本当に何も聞こえない美しい空間にただ彼は太陽の日を浴びてのんびりと過ごしていた。
と言っても生来じっとしていることが苦手な男はズボンのすそを太ももまで上げ、上半身真っ裸で川に飛び込み、
熊のように魚を捕まえていた。
それが上手いこといき、夕方になる頃には大将あわせて13匹もの色とりどりの魚たちが浜辺に横たわっていた。


老人が言うには、今日はここで泊まっていくらしい。
馬車に積んであった大きな荷物を手伝って引っ張り出し(男のあまりの力強さに老人は賞賛した)
四方をくいで止めて簡単なテントを製作する。


空だと思っていた樽からは商売用ではない食材が出てきて、それがあまり常識はなれな姿でないことに男は安堵した。
老人が何かを言ったかと思うと枯れ木には煌々と火が燈り、彼が川で捕まえてきた魚と樽の中の食材とを混ぜたスープを老人が作る。

男も料理には並々ならぬ自信があり、それが決して独りよがりではないことも知っていたので、
老人とは別に自分で食べやすい一品を作る。
幸運にも香辛料や調味料の類は自分が使ってきたものと大差なかったので製作は滞りなく行われた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:41:10.18 ID:veRPnYM0<>「いやー! この料理なんていうんだい?
 初めて食べてみたけどこんな美味しいものはめったに味わったことがない!
 ぜひ調理法を教えてくれ! 家内にも作らせたいからな」

「そんなに美味しいですか? 簡単な魚のソテーなんですけどね。
 まっ、そう言ってもらえると作ったほうもかいがあったってものです。
 それに、爺さんが作ったこのスープも中々いけますよ、豪快な感じがまたいい」

「ははは、私はいつもこんなものしか作れないんだよ。
 食材をぶつ切りにして、調味料で大雑把に味付け、君みたいな付添い人がいたら食卓も豪勢になるんだがなー」


綺麗に全部の食材を食べ終わった後、老人をテントに先に入らせて、男は食器を荒い、綺麗な夜空を見上げていた。
馬は膝をたたんで首をひねって、テントの脇で眠っている。
そんな姿を笑って見つめて、もう一度作業に戻る。

食器を全て洗い終わり、青く輝く月をまた暫く見る。
こんな美しい夜空は本当に久しぶりだ、不安な気持ちはどうしても拭いきれるものではなかったが、
できれば親友にも見せてやりたいと心から彼は思う。

心に幾らかの余裕が生まれ、森でさまよっていたあの日々は幾らか記憶から薄れた。
地球にいる家族や親友にむけて夜の挨拶を終えて、彼――ー朱崎志輝は瞳を閉じた。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:41:32.72 ID:veRPnYM0<>






同刻。そんな彼と同じ月の下に、森を駆け抜ける男の姿があった。






<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 08:46:54.26 ID:veRPnYM0<>なんだか朱雀の名前がころころ変わってる気がするけど気にしたら負けです。


赤崎志輝で決定。

ttp://www.vipper.org/vip797127.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/18(金) 10:10:29.44 ID:5Dwl96Eo<>朱雀キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/18(金) 11:51:16.44 ID:GGCy3hoo<>朱キタワァ

>>61
再うp
だれか
たのむ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/18(金) 13:39:37.93 ID:4M2l87.0<>朱雀ktkr
朱雀の活躍に期待せざるを得ないwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/18(金) 15:29:23.44 ID:GWXl4sAO<>ジイサンが幻の幻獣使いですね分かります<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/18(金) 20:55:54.35 ID:GVJmjQ6o<>>>75
再うp求む・・・
次からはもう少し流れの遅いところにうpしてくれたらありがたい
家帰ったら流れてるとかねぇよwwww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/18(金) 22:45:57.83 ID:veRPnYM0<>
リースとセティ。

ttp://www.vipper.org/vip797531.jpg


>>80
流れ遅いところ教えてくださいな。
ここ以外知らないんだ俺・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/18(金) 23:43:58.96 ID:GVJmjQ6o<>>>81

http://viploader.net/

こことかどうだろうか<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 06:53:47.30 ID:6kOzJxQ0<>
再うぷするほどの出来じゃないからご了承。

青山龍樹
ttp://up2.viploader.net/upphp/src/vlphp186080.jpg

朱崎志輝
ttp://up2.viploader.net/upphp/src/vlphp186082.jpg

セティ&リース
ttp://up2.viploader.net/upphp/src/vlphp186083.jpg
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/19(土) 09:15:11.66 ID:Pqx2uxEo<>>>83
再うpありがとう
無理言ってすまんかった

続き楽しみに待ってますねww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/19(土) 17:10:26.80 ID:IVA0IwDO<>セティとリース
http://imepita.jp/20080419/614720
青龍
http://imepita.jp/20080419/614850
朱雀
http://imepita.jp/20080419/615100

また自重できなかった。
妹はどこにいるんだろう、続きwktk<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 17:58:37.54 ID:6kOzJxQ0<>何も知らない門番を気絶させて、村を出てから暫く時が過ぎる。
森の中でやけに綺麗な広い歩道を伝っていけば、どこへ付くのかは大方想像が付いた。

昨日覚えた発光魔術を左手で唱えて、俺は光を確保している。
森に入ってからは光を保つ余裕はないだろうし、夜目に馴れておく必要もあるからじきに消さなければならないが、
光があることは心に余裕も持たせるのだ。



魔獣オーク。
俺は見たこともない魔獣。
物語や空想の世界では、豚に類似した醜い巨体をしている。
が、ここはそんな空想とはかけ離れた世界、と言うのは嘘だが、未知の生物に戦いを挑むことに変わりはない。

正直に言おう、勝つ自信はあまりない。
たとえこの世界において俺の身体能力が企画外にまで増幅されているとしても、だ。
俺は一歩一歩を走り幅跳びのように走り抜ける。
疲れは全くなく、むしろここまで風を受けて走った経験は初めてのことであった。
早くと望めば望むほど、この身体はそれにこたえてくれるような気さえした。


しかし俺もよくわからない生き物だと思う。
数日世話になった村のために今、命をかけて戦いに挑もうとしているとは。
実戦経験は皆無であるのに。

俺の中の中二病。
それがこの身体を動かす一番の要因に違いはない。


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 17:59:02.63 ID:6kOzJxQ0<>
「…あれか、森のど真ん中で焚き木をするなんてな…
 野生の動物は火を怖がると言うけど、魔獣には当てはまらないか…」



頭数は15の異形の獣。
たくましい岩の様な体躯に、別の生物のものと思われる毛皮を纏い、
マルコシアスの刃よりも太く、鋭い2本の牙が、豚の鼻の左右から生えている。

醜い鼻息がここからでも容易に聞こえ、何のものか分からない肉を火であぶっていた。


青白い長剣をしっかりと握りなおし、その手にあることを確認する。
暗闇というものは時には便利な隠れ蓑となる。
殆んど光の入らぬこの場所にいてもなお、夜目の利くようになった俺には昼間とそう変わりなかった。


それにしても、この森にああまで巨大な生物が生息しているとは気づきもしなかった。
思えば最初に森に来たときに歩いてきた道も、やつらの通った軌跡なのだろう。
あぁ、無駄話はここまでにしようか、神など信じてはいないが、豚に殺害される生涯だけは勘弁してくださいと、一度だけ祈って。


俺は上っていた樹の上から飛び降りた。


村にあった高台よりも高い場所から、恐れもなく飛び降りる。
怪我をしないことはよくわかっていた。

左手でしっかりと握り締めた剣に、添えるようにして右手を。

落下地点にいる大柄な一頭めがけて、垂直に刃を付きたてた。
血飛沫が俺の身体をぬらし、川に落ちてでずぶぬれになったかの錯覚を覚える。
鉄の匂いを鼻で感じて、俺は敵陣に入り込ん<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 17:59:38.95 ID:6kOzJxQ0<>奇襲。
一番敵の不意を付きやすく、なおかつこちらには体制を整える余裕も幾らか生まれる。
身近にいた一体を破壊して、森を背に赤い鮮血を纏う剣を相手に向ける。

頭部を粉砕された一体が地面を揺るがして倒れこむ。
残りの13は一斉に野生の射[ピーーー]ような目つきで俺をにらみつける。


「…ダレだ…?」

「ニンゲン!! ニンゲンのオトコ!」

「ドコカラキタ!!」


なるほどね。仲間のことを思いやるものは一頭も存在しないようだった。
野生の狼でさえ仲間の死に悲しむというのに、これが魔獣というものか。

次々と怒りの咆哮を上げ、あれめがけて突き進んでくるオークの群れ。
動き自体はマルコシアスよりも遅く、目をそらさなければかわせない事はない…多分。
さっきの大声に森中が驚きあわてる。
眠っていた鳥たちは一斉に飛び立ち、小動物たちも木々の間を走り抜ける。
この森の王者の怒りに触れたのは誰かと見に来るつもりだろうか?

馬鹿でかい石の斧を掲げ、怒り心頭の13頭が襲い掛かってくる。
いくらなんでもこの数を相手には出来ない。しかし、機動性なら俺に十分の利がある。
それならばやることは限られてくる。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:00:39.76 ID:6kOzJxQ0<>俺の持つ得物の特性もあって、上手くいけば斧ごとやつらを殺害することも可能には違いないが、
その後続く12の一撃によって飛沫にされては意味がない。
回れ右をして一旦距離を置いて森の中へ逃げ込む。


俺の右隣から顔面めがけて遠慮のかけらのもい一撃が迫る。
しゃがみこんでかわした風を切るがごとく一撃に背面に聳え立っていた巨木はなぎ倒され、まだ勢いを失わない斧が一回転して俺を襲う。

トラック通しがぶつかり合ったようなすさまじい音が響き渡り、体重で遥かに劣る俺の身体は吹き飛ばされる。
なんとか空中で体制を建て直し、続けざまに襲い来る攻撃を前転でやり過ごす。


その拍子にがむしゃらに振るい上げた一閃が運良くオークの片足を切断した。
だが痛みを全く感じていないのか、残りの左足だけで身体を支えたまま、転がる俺の身体に強烈なのをお見舞いする。

背中が地面にめり込む。

激しい痛み、その力はどんどん強くなり、その間にもぞろぞろと残りの仲間たちが集まってきてしまう。
一瞬だけ斧を受け止めていた剣の方向を横から縦に向きを変え。すると石の斧はその切れ味に負けて真っ二つに切れる。
俺はその隙に空かさず残りの足の太もも部分から切断して、その一頭を飛び越えてきた新たなるオークの両腕をなぎ払う。

残り10体、それが総数であればだが。


口の中から鉄の味が無視しようとしても感じてしまう。
どうやらさっきの攻防の過程で切ってしまったらしい。
だが構うことなく次に迫る三頭に視線を戻す。身体はまだ十分に動く。

逃亡という選択肢が最初からない俺にはやることは一つだけ、成し遂げることの難易度は果てしなく高い。
今更リースの警告が耳に響いているが、後悔したところで遅すぎるのだ。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:01:07.98 ID:6kOzJxQ0<>Dead or Arive


格闘ゲームに興味はないが、そのフレーズが頭に浮かび上がる。
俺が死ぬのかあちらのほうか、語調を強めておれが叫ぶ。


「来いよブタ野郎ども!! 俺はここにいる!」

「ユウハンのジャマ!!」

「ニンゲン! チッサナニンゲン!!」

「シネ!!! コロスコロスィィィ!!」

「っ! 馬鹿力が! 言葉喋るならもっと人間語にしろ!
 そんなカタカナ言葉じゃ意味不明だよ野豚がぁ!!」


顔面をかち割られそうな一撃を目前で受け、思わず目を閉じてしまう。
プロ級のボクシング選手は自分の殴られるときでさえ目を見開いているというが…
俺には当分まねできない芸当のようだ。

そこにいた三頭の息の根を止めたときには、俺の疲労も溜まりに溜まっていた。
極度の緊張状態が前進の疲労速度を急速に速めているのがわかる。
さっさと脳内麻薬でも分泌して欲しいと思うが、例の格闘漫画の主人公のような操作は出来ない。


暫くの時間がたち、森はもはや何が起こっているのか把握するのは困難を極めていた。
俺は目前を掠める恐ろしい死の一撃を避けるために神経をすり減らすしかない。

せっかく勉強したはずの魔法などは選択肢の蚊帳の外へ除かれてしまっている。
第一どこまで効果があるのは分からない。本には対人賞による影響は記述しておらず、
基本的にその行為は違法だということは最初の数ページにしつこいくらいに書いてあった。


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:01:27.65 ID:6kOzJxQ0<>「っらぁ!!」

「ギビィ!!」



相手のどこを切断したかも見るまもなく、俺を掴み掛かる手を上段蹴りで弾き飛ばす。
力ではほぼ同等に渡り合うことが出来ていたが、如何ともしがたい体重の差は埋めようがない。

突撃を受ければこの身体は遠くへ飛び、そのたびに頭が恐ろしい衝撃に揺れる。
いつの間にか折れたらしい鼻から生暖かい液体が流れ出る。

しかしそれを気にする余裕も暇も今の俺には存在しない。
後から現れる一頭に背を向けることなく、しっかりとその目を見る。
相手の斧を振り上げる瞬間に俺の一撃が入り込む。

戦い方が解ってきたのか? 前よりもよく敵の動きを認識できるようになっていたのだ、
疲労は比べ物にならないと言うのに。


少し前まで全く縁のなかった血液の味、今では口中がその味で満たされている。
何回きり伏せたのかもはや分からない、全身の痛みは体の許容量を当に肥えているに違いないが、この動きを止めることは許されない。
ここまで知能の低い魔獣が相手では、俺が敗れた後にその報復があの村に来ることは簡単に想像できるからだ。


死ぬならば相打ちでしかない。


しかして…どうして俺はこんな事に命をかけているのだろう?
本当に理解できないことをしている。俺は歴戦の勇者でもなければ、全ての魔術を知る賢者ですらない。
挙句の果て、この世界は俺が生まれた世界ですらないのに…?

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:01:53.86 ID:6kOzJxQ0<>剣を横に沿えて巨大な石斧の一撃を受ける。
事前に空へ身体を逃がし、その力のまま遠くへ退避する。
着地点には何もいない、今はの話だが。
早くも、一頭のオークが鼻が詰まったような素晴らしい嫌悪感を抱かせる呼吸音を上げて現れる。

しかし一対一の勝負ではこちらに分があるのは分かりきっている。
ふらりと振り向いて相手を挑発する。
それに意味があるかはわからないが、血を吐くと同時に口を開く。



「…所詮はでかいだけのブタだな! ブタは家畜みたいに搾取されてればいいんだよ!!
 人間様に者を謙譲させようなんざ四世紀は早い!!」

「ジンニク――――!!!」



理性のかけらを微塵にも感じさせない言葉の後に、俺の刃が石斧の根元ごと首を切断した。
疲労に膝を突き、あたりの情景がかすむ。
体のどこが動き、どこが動かないのかも確認する暇もない。
次から次へ湧き出るやつらの悲鳴と、俺の咆哮が森に響く。


さっきの自分への問い。
答えは分からない、恐らく…

小さいころからの夢。
正義の味方気取りがしたかったのか? ちょっと理想がかなったから、自分を変えられるチャンスだと思ったのか?
解答を示せ、青山龍樹。


後悔していることを認めろ!! 青山龍樹!


悪いが貴様には回答時間を稼ぐような暇はないぞ?
無駄な思考に脳みその領域を使おうというのなら、貴様の主導権は俺が握る。

本能と自分の脳内とが互いにすれ違うことを考えているがゆえに、どちらも思い通りには進まない。
先ほどから指先の感覚がなくなり、腕を振るった後に落下しているものを目視して初めて剣がまだ自分の手の内にあることに気づく。
何体殺したのか? いつまで続くのか?


どうして俺はこんなに確率の薄い勝負に頭を突っ込んだのか?<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:02:15.55 ID:6kOzJxQ0<>そんな時だった。


相手の攻撃が止み、おぞましい鳴き声がなくなる。
感覚が徐々に戻りだす身体、伴っていたる所に鈍い痛みが走る。

声の方向に剣を向けながら、俺はその姿を見た。



「いきなり現れてずいぶんと威勢のよいガキだな」



片言の言葉ではない。
しっかりと知性をもって発せられた言葉。

それは助けなわけがなく、俺にとって最悪の状況となるべき存在だった。
じっとりとした汗が全身を包み込む。


「ふふ、騒がしいと思ってねぐらから出てきたら、なんとこんなガキが我等の領域に足を踏み込み、
 挙句の果てには9つに及ぶ同胞を土へ帰すとはな」


今までのオークとは何もかもが違う。
やつらが子供であったのではないかと錯覚を起こすような山のような体躯。
それでいてその瞳には人間のみが持っているはずの理性が輝き、明らかに仲間の死に対して怒りに満ちている。
冷静さを失うな、恐怖は今は足かせにしかならない。


「……あんたがボスかい?」

「ボス? あぁ、その通りだよ、人類。
 こんな真夜中に、そして単身で侵入してきたその度胸は認めよう。
 しかしな、この日は我らにとって重要な時。だが…まぁ、貴様の目的は容易に想像が付く。
 どうせいけにえに情でもわいたのだろうよ、違うかね? なんとも下らぬなぁ…中途半端な力ではわれらと相対できないことすら解らなかったのか?
 あれだけ力の違いを見せ付けてもご理解いただけないとは、なんとも愚かで度し難い…」

「生憎と、俺はあの村の出身じゃないんでね、あんたたちの力なんて知らないのさ。
 それに…強い強いといいながら、俺はまだ生きているんだぜ? 逆にあんたの部下はそこらじゅうに転がってる。
 見せ掛けの中途半端な力の持ち主はどっちだい?」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:02:48.57 ID:6kOzJxQ0<>剣の先端をボスののど元へ向けたまま、この言葉を搾り出しながらも、今まで味わったことのないプレッシャーをいやでも感じてしまう。
目前に立つ巨体は他のオークとは桁が違うことを。
あれだけ暴れていたブタどもも、ボスの出現とともに静かにこちらを見やるだけで、いっこうに手を出そうとはしない。

ボスが戦う以上、我等の手出しは無用、と無言のうちにいっているのように。


「どうして、あんたらはあの村を搾取する?
 彼らがあんたたちに何をしたって言うんだ!?」

「…愚かで低レベルな質問だな…貴様ら人間は、牧場で泣き喚く我等の声を聞いたことがあるか?
 ここから出たい、自由になりたい。そして生きていたい、生かされるのではない、生きていたいと。
 同志たちも人間に何もしてはいない、貴様らの勝手な都合であそこで死ぬのを待っている。
 それと同じだよ、われらのほうがあの村の家畜どもより力がある、都合など考える必要は毛頭ない、人間も同じだろう?」

「ふざけるなよ、ブタ野郎が…! それがセティをここで[ピーーー]ことの正当な理由になるとでも思っているのか!?」

「ふむ、今年のいけにえはそんな名を持つのか。 それに[ピーーー]という表現は適切ではないな人類。
 我等の子を産むための苗床となってもらうだけのことだ。
 ま、今までその過程で生き残った女はいないがね、気が狂うか、陵辱と痛みの果てに死ぬか。
 だがそれもわれらを繁栄させるための必要な犠牲、貴様らとは違い、節度ある搾取に留めているではないか、不満かね?」

「あぁ不満だね、俺は人間なんだ、ブタがなんと言ったところで考えを改めるつもりはない。
 俺はあんたを殺してその首を村に持ち帰ってやるよ」

「……くくくははははは!! 考えなど改めてもらわずとも良い。
 貴様はここで我が[ピーーー]のだからな。その後は、間違いを起こしたあの村折檻をしなければな。
 二桁ほど殺せば、もうこんなことは考えはしまい、つくづく不憫な村よ、余所者のでしゃばりで人が死ぬとは」

「言ってろブタ野郎が…俺が殺せるのか? なめるのも大概にしろよ?」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:03:31.89 ID:6kOzJxQ0<>ブタという言葉を口にするたびにやつの鼻が痙攣するのがわかる。
あれだけ知性を持っていても、この言葉は耳に障るらしい。

そして俺も、もはや引くことは出来なくなった。
最初からないとは思っていたが、はっきりと口で言われると逆にすっきりする。
俺が何のためにここへ来てしまったのかはこの際どうでも良い、俺が負ければ村が死ぬ。
これからも、ずっとそうだろう。

やつらの言い草もわからなくはない、しかし耳を傾けるわけにはいかない。
俺は人間であり、あの村を失いたくないのだから―――



「口先だけはよろしいな。我らはブタではない。 人間よりも優れた知識を持ち、優れた力を持つ。
 それに貴様も、疑問に思っているのではないか?
 しょせんは力だけのオーク、それも30に満たない少数の組織があの村を抑制可能か否か…
 なぜあの村の住民が雇ったハンターが尽く返り討ちにされたのか…見せてやろう、これが私の特別だ…!!」



やつの姿が消える。
帰り道で襲い来た魔神のそれよりも速い。

油断しているわけでもない、そのはずなのに、刹那よりも速い一瞬のうちにやつは俺の背後に回りこみ、銀色に輝く大鎌を振るった。
運良く相手の得物の長さに助けられ、太い樹木に突き刺さったおかげで速さが鈍る。
しかしなお十分な力を保ちながら俺の剣に襲い来る。


「が…!! ぐっう…!!!」

「どうだ? 我の姿すら感知出来ないだろう?」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:04:07.76 ID:6kOzJxQ0<>そしてまた姿は消え、俺の頭上から鎌を振り下ろす。
速いのではない、存在が消えてからまた生じている。
しゃがみ込んで鎌をかわしたはいいが、刃ではなく塚のほうが俺の頭をぶん殴る。
昏倒したこの身を引き起こし、恐ろしい現実に目を向ける。

信じたくはない可能性、最悪の形で俺に立ちふさがってしまった。
魔術をあつかう生物、可能性として考えられないことではなかった、しかし…
魔法をこの身に受けたことがない俺には理解など出来ない、やつはまさしく、空間を移動しているのだから。


「…ち…それって移動魔術か…? 難しい魔術だと聞いたんだけどな…
 リースのやつの勘違いか…?」

「理解が早い、優秀だな人類。
 この冷静さが欠如しやすい戦いの場でそこそこの頭の回転だ。
 だが、理解できたところで意味は在りはしない。我が魔術は空間転移。
 一般の魔術師ならたどり着くことさえ叶わない力だ」


地面に突き刺さったはずの鎌をその手に持ち、やつは高らかに笑う。
さっきの一撃によって出来た裂け目から血が滴る。
鉄の匂い、少しずつ近づく死の匂い。


「どうだ? 抵抗すら出来ずに死んでいくというのは?
 そして、貴様のでしゃばりのせいで大切な人が殺されるという無力な気持ちはどう胸を震わせる?」

「弱者をなぶるのが好きみたいだな…なめやがって…」

「貴様が強いことは認めてやろう、しかし、それもおしまいよ!!」


再び姿が消え、俺の腹に強靭な爪が食い込む。
口から面白いくらいに血液が零れ落ちる。
何も出来ないで地面に落下し、周りの慣習が残酷な歓声をあげる。
やけにゆっくりと世界が動いている、俺が地面に落ちているからか?

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:04:28.16 ID:6kOzJxQ0<>











…死…?






<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:05:05.77 ID:6kOzJxQ0<>
「ぐふふふふふ、面白い音が聞こえたな、内臓がつぶれる音だ」

「シンダカ? シンダカ??」

「…勝手に[ピーーー]な…おい…豚の親方野郎……口調が下品な家畜のものに…なってるぜ…?」

「ぐひひひ…おっと、失礼失礼。この笑い声は癖でね…つい出てしまったよ」

「……おい、そんな余裕ぶっていていいのか?」

「その身で何が出来る? これは勝利の余韻だよ人類…?…な"に"!?」


胸部に一筋の切れ込みが這入り、それ相応の血液が地面にしみこむ。
決して命に届くものではない、がおそらく久しぶりの反撃の痛みにボスの顔が歪む。


「…ぐお"…なんだ、さっきの攻撃を予測できるはずが…?」

「…現れる…場所…は…わからない…けどな…
 お前がけりを入れるときの一瞬に一太刀を入れる余裕は十分あるんだよ…
 力に頼ってばっかの…お前じゃ…体術自体は…部下のほうが…よっぽど速いぜ…」


何とかして立ち上がろうとするも、痛みと、破裂した内臓はそれを許してはくれない。
一瞬だけ観衆にざわめきが走る、ざまあみろ、何も出来ないで死ぬわけにはいかないからな…


あれ?…起き上がれない…

…死ぬ?


[ピーーー]ば元の世界に戻れるだろうか?

これは夢かな? それなら楽しい思い出になるのにな?


あぁ…やっぱ立てないな…


なんだ、おしまいかよ…やっぱり、でしゃばった真似なんかしなけりゃあ良かった…

結局…俺は正義の味方にはなれないんだな…もう少しだけ、強くなってからここへ来れば…また違った未来でもあったのか…

やっちまった…馬鹿だな、これじゃあ、セティさんじゃなくて、みんなのことも護れないじゃん…
情けないな…こんな時、妄想なら新しい力でも都合よく現れるんだろうけどな……

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:05:30.91 ID:6kOzJxQ0<>「…死んだか?…それとも、気を失っただけか?
 ……まぁよい。じきに死ぬことに変わりはないだろうな、しかして、これをどうしてくれようか?」



観衆は勝利の雄叫びを上げてわめき散らす。
この場での公開処刑を望む声で満たされ、その返答はもちろん。


「では、諸君…この愚か者は、薪代わりに火の中に突っ込むとしよう。
 脂肪が少なそうだから燃えはよくないだろうが、人間の燃える匂いというのは食欲をそそるからな…」


リュウキの身体を片手で持ち上げ、しっかりと意識がないのを確認する。
だらりと下がった両手の片方には、青白い剣がいまだにしっかりと握られている。


「その剣、それも同様に燃やしてしまえ。
 同志の死に濡れた忌まわしいものなどここには必要ない」


他のオークがしぶしぶと仲間の遺体を背負って歩き始める。
ボス以外のオークにとっては、仲間意識などあまりないに違いない。
運びながら舌なめずりをするものまでいるのだから。

ぞろぞろと歩き、炎の元へ帰るオークたち。
しかし、その場にはいるはずのないものが、立っていた。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:05:52.56 ID:6kOzJxQ0<>













「ハイオークたち、そこの人間は[ピーーー]な」













<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:06:29.27 ID:6kOzJxQ0<>
その新たなる声の持ち主の方へ一斉に頭をもたげるオークの群れ。
気配もなく、音も立てずに現れた何者かに警戒の色を放つ。


「ニンゲン!!…?」

「…今日はおかしなやからが多いようだな。
 ん? 魔術師か…こいつの仲間だな?」


せっかくの勝利の余韻を奪われたためか語調が強まるオークのボス。
彼はオークメイジと称される突然変異種。
通常では考えられないほどの高い知能を持ち、人間に匹敵するほどの魔翌力をその身に蓄えることが出来る。
言うならば奇形と呼ぶべきか、彼らの生活では全く必要のない力まで得てしまったその存在を。

筋肉の鎧に纏われたその胸の傷は早くも塞がり始め、戦いの場で失いかけていた理性を完全に取り戻している。
その真紅の双眸が声の主をにらみつける。


「…ふむ、薪としてくべるにはいささか小さすぎる気がするが、
 この男を、と言ってもそろそろ屍と化すだろうが、を連れて行きたいならかかって来るがいい」

「マキ―――!!!」

「げひゃげひゃ!!」


げらげらと下品にボスの周りにいるオークが笑い声を上げる。
おのおのが武器を構え、ぞろぞろと一人を囲む。

一頭が人間の目の前に唾をはきかける、その行為に眉一つ動かすことはなく、
その人間はゆっくりと片手をポケットから出す。
見慣れない形のローブが風に揺られて伸び、木々は葉を揺らす。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:07:28.01 ID:6kOzJxQ0<>「しかたない…ただ渡してくれればよいものを」




それだけ言って、左手を振り下ろした。





森全体が地震が起こったかのように鋭くゆれる。
大気が悲鳴を上げ、木の枝は葉を手放してしまう。

その場から音が奪われ、小さな鼓動さえ聞こえることはない。
そこで生き残った、と言っても消え去る命に変わりはない。


「…バカな……? こ…これは空間断裂魔術…?…それもこうも精密に空間制限選択を施して…

 挙句の果てに…詠唱破棄までする…だと……

 不可能だ…人間には到底…いや…かの魔神達でも…出来るかどうか…

 く…はははは……はは……

 信じられん…まった…く…一体…貴様は……?」


胴体以外がばらばらに吹き飛んだ不恰好になったそれは、最後まで自らの敗北理由がわからなかった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:09:05.73 ID:6kOzJxQ0<>木っ端微塵に吹き飛んだオークの成り果てを、見下げて、自分の身体を不思議そうに見つめる。
何か支障でもあったかのように、まじまじと手のひらを観て最後にこうもらす。


「…あちらにいた時間が長すぎたかな? 力の制御が上手くいかない。
 あそことは魔翌力密度の濃さが違うことを失念していたな…」


ローブにこびり付いた血糊を消し去って、さっきまでオークの肩にいた血だらけの少年に近づく。
5秒ほど彼の身体を観察して、どこが重症でどこが自然回復に任せられるかを判断する。


「…全く、あれだけやられても致命的な損傷は避けている、か。
 この状態なら私が何か手を加える必要は無いな…」


損傷部を手でなぞっていきながら、一つずつ確認していく。
とても軽症とはいえないその身体を支えもなく浮かび上がらせて、ポケットに入っていたもう片方の手を出す。



「………………」




その人間が消えた後、彼の首に光るのは、青と緑の小奇麗な石が飾られた首飾り。

彼を呼ぶ叫びが森中にこだまする。
その声が彼に聞こえることは今はなかった。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:09:19.41 ID:6kOzJxQ0<>

ティラノス聖霊伝。

第六話:中途半端

…終わり。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/19(土) 18:18:21.88 ID:UnHKq3Uo<>すごいな・・・・・才能に嫉妬<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/19(土) 18:28:27.97 ID:IVA0IwDO<>続きキテター
gj戦闘の描写動きがあってイイ(・∀・)<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:29:09.22 ID:6kOzJxQ0<>

ティラノス生物辞典(改暦1880改訂版):サラマンダー社出版

312ページ

オーク。

B級指定危険生物

種族分類:魔獣・非魔術使用種

平均体長:2.0m〜3.0m
平均体重:120kg〜150kg


巨大な体格と、それに見合う怪力を備えたイノシシの変種。
鼻下から生える二本の牙の長さは年齢とともに伸長し、大きなものは40cmを超える。
完全二足歩行を行うが、緊急時などには四速歩行での走行を行うと言う報告もあるため一様に断言は出来ない。

知能はあまり高くなく(IQ60程度)人語を話す個体も少なくは無いが、その殆んどが支離滅裂な片言であることが殆んどである。
性格は凶暴で、自分よりも小さな生き物は全てえさだと考えて行動する傾向がある。
一般に仲間意識というものは皆無で、一番力のある個体に付き従うと言う形を取り、一種の家族単位での生活を行う。
しかしながら弱った同固体さえも摂食の対象とすることも少なくない。

オーク自身の性別は雄しか存在しえないため、
生殖の際には他の種別の雌を強引にはらませると言う行為をしなければならない(過去に人間の被害も報告されている)
しかし、多くの種は出産のときの痛みにより死に至り、生き残るものはかなり少数である。

攻撃には強力な腕力を持って打撃を主とする、口先の牙は威嚇用に用いられるのみで、先頭には用いない。
中には簡単な凶器を製作してそれを使用するものもあるが、そこまで知能が発達したオークは危険である。

対処としては基本的には縄張りに近づかないことが最善であり、オークの通る道は用意に判別できるはずだ。
どうしても戦闘に巻き込まれた場合は、正面からの白兵戦は自殺行為であり、撹乱魔術を用いて同士討ちに持ち込むのがベスト。
それと、集団のリーダーを倒すと次世代のリーダーの決定のために集団内で争いが始まるため、それを利用して逃げることも可能ではある。
しかし人間では知能以外全てが劣っているので、相当の実力が要求されるのはいうまでも無い。

突然変異として魔術を使用するオーク(これはオークメイジを総称するが後記してあるので説明は省略する)
も存在し、人間並みの知能を有するのだが、希少な種でこの書が改定されてからは確認されていない。


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/19(土) 18:29:51.48 ID:6kOzJxQ0<>オーク。

あれだよね、ゲテモノ書いたほうがやる気が出るよ。

ttp://up2.viploader.net/upphp/src/vlphp186250.jpg

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/19(土) 18:30:25.11 ID:UnHKq3Uo<>股間部分も凶悪そうだww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/19(土) 20:41:25.70 ID:8m7nmCso<>さりげなく隠してるあたり紳士ですねwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/19(土) 22:07:26.46 ID:ABEdPQ60<>茶色くてテラテラしてるんですよね、わかりますー。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/20(日) 00:15:52.42 ID:CChr2v2o<>カイジとかに出てきそうな顔で吹いたwwwwww
書籍化の暁には某イベントでこいつらに女キャラが色々されちゃうんですね、わかります<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/21(月) 11:38:52.68 ID:3Ps/I2Ao<>なんで青龍がうpったのは俺が見る時にはきえてるん?
いじめ?ヽ(`Д´)ノ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/22(火) 09:05:41.24 ID:3JbZoXAo<>IQってのは(精神年齢÷実年齢)×100なんだぜ<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/22(火) 13:22:33.36 ID:bWnRQvQ0<>>>114
そうだね、でも、頭のいい悪いを単純に表すのに便利だからこの表現。
よくIQ200とか言うとすぐに天才って結びつくでしょ?
表現自体は適切じゃないけど、まぁ大目に見て欲しい。


あと、続きは今日中には、恐らく、多分、きっと。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:30:46.64 ID:5fs0Q6Q0<>
ティラノス聖霊伝


第八話:小さな英雄



何を見ているのか?

あの風景はなんなのか?


そこは、俺の知らないはずの場所で、訪れたことなんてあるはずないのに…
そこは、まるで毎日遊んでいた空き地のように鮮明に。
そこは、ただ、俺の目の前に広がっていた……


綺麗な丘、小高い…丘。


知らない、知らない、知らない…ここは……どこだ?


音もなく、声も出せないこの意味不明な空間。
迷い込んでしまったのだろうか? どうやって?


遠く、丘の果てに見えるのは何だろうか?



『…――――――』


誰だ? 何を伝えたいんだ…―――


靄がかって分からないそれ、そのまま俺の意識は飲み込まれてゆく――――――

夢の世界の記憶とともに…<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:31:09.47 ID:5fs0Q6Q0<>「……っは!……んあ…リース…?」


なんだかデジャブな展開に大きなクエッションマークが浮かび上がるわけだが、
どうしてここにいるんだろうか? オークと一戦交えていたのは夢のはずないんだけどな…


あり? 俺のベッドの上に顔をうずめたまま、って寝てるなこいつ。


…しっかし…痛いってレベルじゃねぇぞこれ…
全身の痛覚を麻痺させて欲しいくらいだ…頼むよ俺の奇跡の再生能力…さっさと治しておくれ…


で、俺は…あの森で意識を失って…そんで…
それで? その後どうなったって…デジャブ過ぎるが全く思い出せん…

今の俺と言えば、マルコシアスとやりあったときとは比較にならないくらいに包帯だらけだ。
そりゃそうだ、あんな巨体の化け物どもにしこたま殴られたわけだからな、
それに見合う痛みも心臓が動くたびに全身を駆け巡ってるわけだし…

肩から吊ってある力ない右腕、頭に圧迫感があるのは包帯がきつく締められているからだろう。
脳みそが出てしまっていないだろうか? この思考の遅さはそれすら考えられる…

この処置をしてくれてたのは目の前にうずくまってる小娘だろうか…あ、こっち見た。


「…ん…あ!! リュウキ!!!」

「あ、あぁ…おはよう? リース」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:31:39.18 ID:5fs0Q6Q0<>
目を開けるなり大声を上げるリース。
真っ赤な目の周りをこする事もしないで、俺に飛びついてくる。
そんな彼女の軽い身体を受け止めようとするも、傷だらけのこの身では全身に激痛が走る。

我慢しようとしたが、やはり無理だ、額からはじっとりとした汗がわく。
そんな俺のことを見るなり腫れたまぶたが再び緩み、大声で泣き出してしまう。

おいおい、勘弁してくれ、女性の涙は俺に対して効果が抜群なんだぜ?
しかも、胸にしがみついてくれるな、痛いのを超えてる。


「馬鹿やろう!!」


俺の着ている服に涙とか鼻水とかを盛大にこすりつけた跡に、鼻声混じりにそう叫ぶ。
そんな大声に気づいて下から現れたのは、真っ青な顔をしたセティさんと、外見に全然似合わない蒼白な表情を浮かべたバンガイさん。
加えてマイルズさんとエリサさんが続く。

なんだかとても気まずい状況な訳ですが…
セティさんを助けるためにオークたちに戦いを挑んだのにこんなところでまた看病…っておい!


「オークたちはどうした!?
 俺はあいつらの親分を倒せなかったんだ!! 急いでいかないと村が…!!」

「…は?…何言ってんだよ…寝ぼけんなって…ばか…」


そういってまた泣き始めるリース、俺何かおかしいこと言ったか?
つーか、皆は勘違いしてるんじゃないか! 俺はあいつを倒さないといけないんだ!!

速くこんなところから出て…いっつつ…!!……くあ、立てもしねぇ…くそ…

やばいやばいやばいやばい!!! 誰でも良いから森へ行ってくれ!!!

何を俺はこんな場所でのんきに寝てたんだよ畜生が!<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:32:21.07 ID:5fs0Q6Q0<>「…記憶が混乱しているんじゃないか? 何せあの暗闇で…」

「くおぉ…いってぇ…から、バンガイさん! 俺はあいつらを倒さないと…!!
 まだ生きているんですよ! 俺は全てを倒すことは出来なくて…?」

「…リュウキ君…本当にありがとう…」

「だから!! みんな勘違いを…って……はい…?」


混乱している俺に向かって、深く頭を下げるマイルズさんとエリサさん。
よく見ればここにいる人みんなが汚れた服装のままだ。
バンガイさんの上着は血で(恐らくオークのものか俺のものだろう)塗れていて、
セティさんも綺麗だったローブは泥だらけで、あちこち擦り切れてしまっている。


「えっ?…あの…ちょいまち……よく状況が分からないですが…?…それと、頭なんか下げないでください…
 どうしたんです、改まったりして…?」

「いや、君は本当に私たちの恩人だ、今は頭を下げさせて欲しい…」

「だから…俺は…」


まただ、全身にさすような痛みが生じて、俺はベッドの上にうずくまる。
なんだよ、意識がなくなっても俺が戦っていたって言うのか…? それとも、誰か助けが…?
いや、それはないな、村の人は太刀打ちできないってことは奴が言っていた…でも…


「リュウキ、君はあの森に巣食うオークたちを全て倒したんだぞ?
 忘れたわけじゃあるまい、もちろん、その証拠に足る光景を俺たちは見た(その言葉の後にエリサさんがブルリと震えた)
 それに、リースが話したと思うが…それが、セティの命を救うという結果に繋がったと言うことも、分かっているんだろ?」

「はい、俺は確かに…助けようとはしました…でも、俺は途中で意識を失って…半分も倒してはいないんです…
 これは間違いない事実で…」

「…いや、俺たちは、君が森へ言ってから暫くした後に森へ行ったんだ。
 村中に響き渡る衝撃と、リースが全てを話してくれてな…
 それに、さっきも言ったろ? 証拠に足るものを見たって…ちょっと動くぞ…」


バンガイさんは俺によく見えるようにベッドを窓際まで運んで、そこから下を見るように言う。
恐ろしいほどの怪力だ、俺だって平均並には体重を有してるし、このベッドは木製のしっかりした作りのもので…うお、浮いてる…

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:33:09.43 ID:5fs0Q6Q0<>「…あい…つは……」


そこには、真夜中だから正確には見えなかったが、昼間見れば恐らくそんなような姿をしていたと思われる、
巨大な豚の化け物が、ばらばらの姿で横たわっていた。
四肢全てを綺麗に切断され、一見醜いだるまのようになっている姿は多少滑稽ではある。
それを村の男と思われる人たちが熱心に調べて、ナイフを突き立てたり、さりげなく蹴りを入れたり…


……俺がやったのか? 一体どうやって?

…俺は、無力だった…あいつらの前に、それなのに…?

彼らは勘違いをしている、俺はみんなの恩人じゃない…中途半端にしか戦えなかったはずなのに…



「…でも…」

「…あれを見てもまだ納得がいかないか?
 あれは間違いなく斬撃によって倒されていた、この村で、剣術に優れているものは一人もいない、
 そして、リュウキが持っているあの剣だけが、あれを倒しえた唯一のものなんだぞ」

「…リュウキ…ごめんな……」

「リース…? 何で謝るんだよ…?」


さっきまで俺の胸にいたリースは今や、両親よりも深く頭を下げて、涙で床を湿らせて俺に謝罪している。
そんなことを俺はしてもらいたくない、動くほうの腕で彼女に頭を上げるように促す。

それでも彼女は姿勢を崩さない、そして、震えるその声で俺に言う。


「……俺…あの時どうして止められなかったのかって…後悔して…そんなに…傷だらけになって…
 俺はぁ…姉貴を助けて欲しかった…それは俺が一番望んでいたことだった…でも、リュウキ…
 あんたがそんなになるまで戦うなんて思わなかった…
 森であんたを見たとき…本当に死んでると思った…俺が止めなかったから…俺が………」

「…何言ってるんだよまったく…謝るなんてらしくないんじゃないか?
 それになリース、勘違いしないでくれ。俺は、あの時言ったように、俺自身の意思であの森へ言ったんだ。
 オークたちのことをリースが話したからとか、この村に恩があるとかそんなんじゃない。
 助けたい、そう思っただけだから、リースが謝ることなんて何もない…第一さ、俺はこんなに元気に生きてる。
 手も足も、どこも欠けてなんかない、それなのに何を俺は?」

「………リュウ…キ……」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:33:24.61 ID:5fs0Q6Q0<>あ。

ふっと、全身の力が抜けてしまう。
バンガイさんに支えられて上手く枕の上に頭をおくことが出来たが、そのまま落ちていたら到着点は固い床だっただろう。
自分が想像していた以上に俺の身体は壊れてしまっているようだった。
力が抜けてから、どこに力を入れれば身体がどう動くのかも分からなくなってしまった。

朦朧とした意識は川面に石を投げ込まれた直後のように複雑にうねり、俺から意識を奪い去ろうとする…

辛うじて…まだ動く頭と口、わずかな感覚器。

それも長くはもたないだろう…握り締めていた意識を手放す前に、ひと言だけ。


「…ちょっとごめん…リース、セティさん…バンガイさんにエリサさんとマイルズさん…疲れちゃって…俺…少しだけ寝ます…
 流石に起きてからすぐに歩いたりはこの前みたいに出来ないみたいだ…
 ……そんな顔するなよ…ただ寝入るだけだから…」


にやっとみんなを見て笑って(実際には少しだけほおが吊りあがるくらいしか出来なかったので笑顔とはいえなかったが)
抜けてしまった力に従って瞳を閉じる。
もう少しだけ夢を見ておきたい、思えばこんなに疲れたことなんて今までなかった。
知らない世界に来て、分不相応な力を貰って、魔獣と戦って…

あまりのんびりはしていられないけれど、今は少しだけ何も考えずに休んでおきたい。
夜に必死で手繰り寄せようとあがいていた意識の糸は、簡単に俺から離れてしまって、
暖かな日差しを顔に受けたまま、俺の心は光の中に沈んでいった。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:34:05.66 ID:5fs0Q6Q0<>
『…綺麗な月。いつまでも変わらない…』





彼が見ていたであろう夢の景色。
そこに全身を黒に包んだ人間が、一人。




彼が見る夢、彼が見ていた夢。

同一性を保ちながら、絶望的なほどの相違点を含む存在。
彼のこの物語での重大なファクター。

それを知っているのは、誰もいないのか? それとも…?




『…もう少し…』




闇と共に紛れ、わずかな余韻すら残らない、人間の見ていた月の下。
世界と呼ばれる超越者たち…


彼か彼女かも分からぬその個体は、何を月に望むのだろうか?




<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:36:26.18 ID:5fs0Q6Q0<>明らかに嫌悪でまみれた言葉を吐き捨てるように紡ぐ金髪の女性。



『…どういうことです? 貴方がでじゃばる用件ではないでしょう?
 それと、その甘ったるい丁寧語は止めていただけますか?』


『君の手腕を疑っているわけじゃあないから、そんなに邪険にならないでくれませんか?
 私のこの喋り方は癖なのですよ? 今更矯正などは出来ますまい
 しかし、この世界に転送された者のうちに、早くも4人の人間が星に帰ってしまったのは紛れもない事実』


『く…それはそうですが…それは転送先を誤ったティラが言われることでしょう?
 私が言われるようなことではありません』


『なるほど、それは一理ありますね。どういうわけか、今回転送先が見つからずに新個体としてここに召喚されたものが多すぎる気がする…
 光の女王や招かれざる魔女の娘のように収まるべき場所にいればよかったのですがね…
 全く、過去数回の召喚例にはどれも該当しない懸案ですよ、これは』


『……白々しい台詞を…ジオ。貴方は我々が気づいていないとでも思っているのですか?』


『ん? 何のことかですかな? ミスエストメルゼ。私が今回の転送障害にかかわっているとでも?
 それが不可能だと言うことは君たちが一番よく分かっていると思ったんですがね?』


『…今回の件だけではありません! 元はと言えば、闇と光の対立でさえ…』


黄色い髪をした長身の女性が始めて言葉を荒げる。
その相手は氷のように冷たい瞳をした男性で、血液のように濁った長髪をなびかせている。


『だから、一体何のことですかな? あれは勝手に人間たちがやっていることではありませんか?
 第一、我々十二神が…といっても今は数が一つ少なくなっていますが、ティラノスの世界にわざわざ滅びの種子を持ち込んで何の利益が?』


『くっ…それは、貴方が考えていることは分からない、しかし…
 貴方はあまりにも怪しすぎる…こう考えているのが、決して私だけではないことを知っておいて貰いましょう』


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:36:48.63 ID:5fs0Q6Q0<>


飲みかけのカップを手を払って消し、雷の女神はそこから退席する。
一人残った男は手に持ったグラスを微笑みながら口につける。

仮面からは口の一部しか見受けられずに、本人の表情は覆い隠されて見えはしない。


円状に並べられた十一の席、そこの一つが輝いたと思うと、男と同じ服装の人物が現れていた。


『…君ですか…ノアズ…君はこの前もいませんでしたな…自由人過ぎるのもどうかと思うのですが…?
 なにかやりたい事でもあったりするのですかな?』


『……やりたいことがあるのは貴様のほうだろう? 違うか?
 それと、エンデからの伝言だ。
 ”偶然”地獄との空間障壁が脆くなっている、至急修復をお願いしたいとな』


『…なるほど、それは気づきませんでした。生憎、私は外界へあまり興味がありませんのでね。
 しかし空間修復は私の管轄。ミスターエンデのご意向に従いますか』


『………伝えることは伝えだぞ…貴様はやることだけをやってくれればいい…ジオ。
 この戦争は次の召喚期が訪れる前に必ず終結させる。それだけの駒がそろったのだからな。
 人間は無駄が多すぎる、どれだけ英雄を浪費すれば良いのか……』


『…ほう? 始まりから辿れが40年にも及ぶこの大戦がたかがあっちの住人によって終わるとでも?
 それは買いかぶりすぎと言うものでは?』


『……そうかもしれないな』


後から来た人物は、女性の歩いていった通路とは逆向きに歩いていってしまう。
再び一人となってしまった彼はその微笑を崩さないままだったが、頬にはわずか係の汗が見受けられた。


『…恐ろしい神(ひと)だ…私も生き神となって十数世紀が経つが、あの独特の魔翌力にはどうも慣れない…』



空になったグラスをそのままにして、誰も座っていないテーブルに一人で座る。
何を考えているのか、それは誰にも分かりはしないだろう、その仮面の下からは何も…

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:37:12.62 ID:5fs0Q6Q0<>
朝、恐らくもう一日カレンダーがめくられた後の朝だろう。
よく分からない夢の内容をいちいち思い出すほど俺は暇人ではない。
全く、この世界に来てから似たような夢ばかり見る、大丈夫か俺…?

寝起きの俺はゆっくりとその身を起こし、昨日とは比較にならないほどの身体のしなやかさに驚いた。
再起不能ではないかと覚悟していた肉体は何事も無かったように修復されている。

吊られている右腕も骨はしっかりとくっ付いている様子で、包帯を取り払って自由にしてやる。
ありがとうどこの誰とも分からない人、俺にこんな素晴らしい再生能力をくれて…!

おかげであの苦痛をもう一日味わうことは無いみたいです。
でも、これ以上人間離れするのもどうかと思う俺もいるわけで、だって、どう解釈してもまともな身体じゃないよね。


「リュウキさん!! 目が覚めたんですね!…って! 何包帯外して…あぁもう! 歩き回るなんて無茶しないでください…!」

「あ、おはようございますセティさん。
 相変わらずいい朝ですね」

「そうじゃないでしょう! ほら、さっさとベッドに戻ってください!!
 貴方は重体なんですよ!! 重症じゃなくて重体!!」

「でも、俺の身体はもうばっちり回復しているんで、これ以上ここに暇するのは性に合わないというか…」

「そんな事ある訳…あ…あれ? ここにあった怪我はどこです…?」


セティさんはしきりに俺のおでこあたりを触っているが、そこにあったはずの切り傷はもう無い。
包帯を外してみればあら不思議、綺麗さっぱり! と宣伝するジャパネット○田の洗剤くらい綺麗に落ちてます。

信じられないと言う顔をしたセティさんに微笑みかけてみる、よし、しっかり表情筋も回復しているみたいだね。
驚くのも無理はない、俺の身体にはARMS…違った、よく分からない力が秘められているのだからね。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:37:33.69 ID:5fs0Q6Q0<>「信じられない……貴方の身体どうなってるんですか…?」

「まぁ、鋼のから引用すると、ちょいと頑丈に作られちまったってことかと」

「は……ぁ…? いやいやいやいや!! おかしいですよ! 昨日まであんなにぼろぼろだったのに!!
 それに! 痕も残さず綺麗さっぱり!! これじゃどこを怪我したのか分からないじゃないですか!!」

「だからそういう仕様なんですって…あ、あのセティさん!? 
 一体ナニを…いや、俺も年頃の男なんでシャツを脱がされるのは…あっと…」

「…ない…リュウキさん!? 貴方にあった酷い怪我はどこに隠れているんです!?
 もしかして貴方リュウキさんのそっくりさん!?」

「…そんな訳ないじゃないですか…いや、だから、治ったってことですよ。
 俺の身体は人よりも治癒速度が速いんです…多分…化け物を飼ってるとは思えないですし…」


あ、そんなにかがむと谷間が見えてます…うーむ、目算Dはあるね。
内の家計は代々つるぺったんが続いてるからなんて新鮮な…このシチュエーションはとても素晴らし…間違えたまずーい。

しきりに俺の身体を物色するセティさんを引き離して、急いでボタンをとめなおす。
おかしいぞこのときめき…俺はロリコンでぺったん派ではなかったのか…?

間一髪のところでリースが部屋に入るよりも前にはだけたシャツを元の状態に戻すことが出来た。
やれやれやれ…いつもよりもやれが多くなっちまうじゃないか。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:37:54.30 ID:5fs0Q6Q0<>「お、ようやく起きたのか寝ぼすけ」

「お、誰かと思えばつるぺ…リースか。昨日のしんみりとは打って変わって辛辣な台詞ですこと」

「な…! うるさい! 昨日は取り乱していただけだボケ!!
 忘れろ! 今すぐ記憶から取り消せ!」

「…ごめん…俺が止めなかったせいで…(裏声)」

「てめぇ!!」

「いやぁ、男とばかり思ってたけど、あのときの君はどう見ても女だったね…
 見てくれはともかく…」


と、セティさんとは全く異なるフラットな胸を見て、鼻で笑う。
つるぺったんは素晴らしいのは認めるが、生憎俺は妹のぺったんしか認めるわけには…


ごつ


「アウ!! ステルリッツ!!!」



…ぐおぁ…これはいい一撃が入ったぞ…俺はまだ怪我人だと知らないわけじゃ無かろうに…
畜生…完治したかと思ったらまだ痛いじゃないか……待て…ちょっと洒落にならない…
あぁ…あんなに綺麗な花畑が見えます…気持ちいい…

半分白目の俺の両肩に強引につかみかかって前後に揺らして忘れろと連呼するリース。
その表情はとてもかわいらしいのでこれからも続けて欲しいと思いますはい。

で、セティさんから俺の化け物具合を細かに説明されるリース。
殆んど誇張表現で、セティさんは俺の何を見たのか不安に思ってしまう…

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:38:41.48 ID:5fs0Q6Q0<>「…お前の身体は一体どうなってやがるんだ…?」

「さぁ? ちょっと頑丈なだけだと思うけど…それに、今言った頭吹き飛ばされても再生するなんてこと全くないから」

「そうなんですか?」

「当たり前でしょう! 俺をなんだと思ってるんですか!?
 ただの人間! 丈夫な一般人!!」

「ちょっと頑丈なだけ…?…はぁ? そんなの理由にならないっての! ったく、昨日心配した俺が馬鹿だった…」

「心配してくれてたなんてなんて優しいのかしら! 渡し嬉しくて涙出ちゃうかしら!!」

「…うっさいな!! そのカナリア口調止めろ!」


なおも俺に執拗な攻撃を続けるリースであるが、もはやそんなゆるい攻撃に動じるような俺ではない。

と、余裕をぶっこいていたら…


「…あ、ほら! まだリュウキさんは怪我人だからはいっちゃ…」

「リュウキ!!!!」

「いきてるかー!!」

「お、チビどもじゃないか、俺のことが心配だった?」

「ぜんぜーん!! リュウキが負けるわけないもんね!
 リュウキつよいって言ってたでしょー!」

「ははは、可愛い奴だなこいつ、どっかの雌とは訳が違う」

「………」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:39:30.28 ID:5fs0Q6Q0<>たくさんの小さな子供たちに囲まれて、病室はにぎやかに様変わりする。
彼らを…小さな女の子と男の子が見受けられる明るい花のような子供たち。

この子らの未来を護ることが出来たという事実があるだけで、俺がでしゃばっただけの甲斐があるというものだ。
残りのオークを倒してくれたのが誰だかは知らないけれど、そいつにも感謝しないといけないな。

セティは、最初に会ったときと同じ朗らかで優しい笑顔をしてその風景を見守っている。
そうだ、俺はこのために戦いに臨んだのだった。
あの夜に、何を悩んでいたのか? 全く、バカな奴だな…俺は。


「おい、リュウキと戯れたいのは分かるがよ、
 チビたちよ、ちょっと俺の用事の手伝いするために一緒に来てくれよ」

「何でー! リースー? まだリュウキのおみまいおわってないよー!?」

「だいたいー! じぶんでそゆことはやりなさーい!!」

「いいからいいから、付いて来いって! ほら、カインとセレナ! そこのガッシュ!!
 いつまでもべったりくっ付くな!」

「えー? なんでよ!ーなんでー?」

「リース、別にみんな連れてく必要ないだろ? 強引にどうかしたのか…?」

「ったく、リュウキ…まだ怪我人なんだから休んで欲しいんだって。
 姉貴、この馬鹿のこと見張っててくれ、いきなり外で遊びだしそうだからよ」

「…え?…あ、うん分かった…」


リースにしぶしぶ付いていく五人の小さな子供たち。
まるで親鳥の後に付く雛のようなその風景はおかしみのあるものだった。

みんないなくなってしまい、なんだかよく分からないが気まずい沈黙が立ち込める。
セティは何も言わないでじっとしたまま、手をこねこねして俯いていて、俺はと言うとそんな彼女に声をかけることもしないで手持ち無沙汰にしていた。

外にはリース子供たちの声が聞こえ、このまま平和に毎日が続いていくような、
そんな希望を抱けるかのような、黄色い声に微笑みながら耳を傾ける。

なんだか、ああいう風景を見ると、無性に家が恋しくなってしまう。
そういえば、母さんも父さんも奏も…おれがここにいるなんて事知らないんだよな…
心配してるだろうな…志輝も、あぁでもあいつは大学いってるからそんなことないかな…?
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:41:35.67 ID:5fs0Q6Q0<>「…ありがとうございます…」


そんなことに頭を働かせているとき、不意のひと言。

緊張した彼女の声に、俺は振り返る。
いつの間にか、俺のそばで立っている一人の女性。
その言葉の意味は、ひと言だけで、俺には十分すぎた。


「本当に、村を…私のことを助けてくれて…ありがとうございます…」


「…ははは、俺もこれでやったかいがあったってものですよ。
 貴方はこれで豚の花嫁にならずに済みます。
 これからは自分の幸せをつかむことが出来るんです、まぁ、俺はそこまでは保障できませんがね」

「…………」

「でも…セティさんみたいな美人をほって置く男なんかいないに違いないし、
 俺が心配することでもないですか…」

「…やっぱり、行ってしまうんですか…? この村で一緒に暮らすことは出来ませんか?」


そんな言葉を、そんな顔で言われてしまうと、行かないと殆んどの男は言ってしまうだろう。
でも、俺には出来ない。

俺には帰らないといけない故郷がある、待っていてくれるであろう家族が、親友がいる。
だから、つらいけれどお別れをしないといけない。


「ごめんなさい…本当に…本当につらい選択です…
 でも、俺はもう行きます。俺の暮らしていた世界に帰る方法を、探さないといけないですから…
 こんなに素晴らしい村に着かなかったら、甲は思わなかったと思います、けど…この村のおかげで、ホームシックになってしまったんですよ…
 今年で19歳にもなるのに、情けない話ですけどね」

「…そう、ですよね。
 貴方は旅人、こんな小さな村に生涯をささげるなんて出来ませんよね…」

「こんな村だなんて、この村は素晴らしいです。
 元気な子供たちがいて、親切な村の人たち、優しいご両親。
 そして、貴方がいる…だからこんな村だなんていわないで欲しい」

「……はい。すいません…分かっているんです…私も、この村に生まれてきてよかったってこと…
 リュウキさんも、そんな場所を捜しに行くんですよね…?」

「そうですね…たどり着けるかは分からないけれど、そこに行くためにもう少し歩こうと思います」

「……はい」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:41:59.25 ID:5fs0Q6Q0<>太陽の日差しがまぶしくて、俺はつい目を細めてしまう。
彼女の顔が一瞬見えなくなってしまう、美しいあの顔が、何で輝いていたのか。
きらきらと頬を光らせるそれ、それさえも美しい。


「…貴方は…不思議な人です…私たちとは違う…説明できないけど、
 そんな気がするんです、理由なんて、ないんですけれど…」

「はははは…あながち間違ってもないですよ?」

「…はっきりしました。リュウキさんのこと、引きとめるのは無理ですよね?
 この村で…一緒に暮らして…ちょっとだけ、そんな未来を見ていました…」

「……すいません。俺は帰らないといけない場所があります。
 旅人なんていったけど、本当はただの迷い鳥なんです。故郷を求めて海を飛ぶ、
 貴方はここが安息の場であるように、俺にも同じ場所があるんです。
 そこは、ここじゃない、似ているけれど、違うんです…」

「…私にはよく分からないかな…? でも、納得することにします」

「…そろそろ、いかないと…俺は誰かに見送られるのは好きじゃなくって…見送りは貴方だけで十分。
 セティさん、助けてくれたこと、しかも二回も、俺のほうが感謝してます。
 ……それでは、もしかしたら、また会うかもしれないですが…さよなら」

「…私も、ありがとう、リュウキさん…あと、私のお願いを一つだけ聞いて欲しいんですが、良いでしょうか…?
 これはセティ=ローズフリーナからではなくて、一人の姉として…」

「…」


彼女はその言葉を俺に告げる。
その提案は俺には少し重荷ではあったが、彼女がそうしたいと言うのなら俺が止める理由は無い。
ちゃっかり貰ってしまった洋服と、変えの服を二着。

辛うじてまだ着ることの出来る、穴だらけとなってしまったコートを羽織り、俺はセティさんに最後の別れを告げる。
こんな美女に送ってもらえるなんて、贅沢な男だよ俺は。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:42:15.81 ID:5fs0Q6Q0<>玄関を通らないで、裏の窓を開く、ここから森を抜けてしまおう。
それが一番手早い手段だと判断して、片足をかける。
さぁ、楽しい旅の…って、やはりいたか…



「おい! こそこそと何をやってる? まさか俺に黙って姿を消すつもりじゃないだろうな?
 まだ文字も全部教えてもらってないのになんて無責任な…」

「…いやぁ、言った通りになったか…で、何それ? そんな大荷物で一体どこへ?
 大体予想は付くけどな…」

「なら林が早いや、俺も連れてけリュウキ。オークどもがいなくなったから、村から出るのも自由に出来るんだぜ?
 でもよ、こんなか弱い女の一人旅って危ないんだよなー。どっかにいい用心棒でもいればなー」

「…で、俺にと? それが人に物を頼む態度かい?
 って、リースに行って無駄だろうけど…」

「そゆこと。それによ、俺を連れて行く利点もあるぜ?
 ほら、リュウキ水の世界について全く無知じゃん? そこでだ、俺が道案内してやるよ。
 なにかやりたいことでもあるんだろ? 姉貴の告白を断るくらいだからな、酷い男もいたもんだ…」

「…あのー、盗み聞きはよくないことだと思うんだけどね…
 それに、付いていくって相談したのか? しっかり両親には言ったのかよ? 俺は誘拐と勘違いされるのは勘弁だぜ?」

「ご心配なく、あんたがすやすやしてる間に説得したから。
 断ることなんかさせないぜ? 第一リュウキ地図も持ってないのにどうするつもりだったんだよ?
 俺がいなかったらまた行き倒れて今度は死ぬかなぁ〜?」


にやにやと下から俺を見上げるリース。
確かにそうだった、俺は何も持たずにどうするつもりだったんだ?

無計画症候群Lv5発動してるなこりゃ…

まぁ、こいつ一人増えても問題は無いかな。俺としても解説役がいると言うのは心強い。
性格言動、その他もろもろと問題は山済みの小娘だが、ここで置いてきぼりにして一人で無茶されるのもいただけない。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:43:24.23 ID:5fs0Q6Q0<>「…はぁ、しょうがない…じゃ、行きましょうかね?
 行き先はどこだいお嬢さん? 地図を見て決めてくれたまえ」

「うーん…そうだな…沢山あるけど…歩きながら決めようぜ? 俺は何よりもあんたに読み書きを習いたいんだからさ。
 ちなみに、見送りがいやなら抜け道知ってるけど、リュウキは村で豪勢に送られたい派?」

「まさか、その抜け道を行こう。別れを告げたい人にはもう告げたからね。
 リースこそ良いのか? 友達とかいたんじゃないの?」

「昨日済ませた、面倒だったよ、みんな泣いてやがるの」

「は、そういう君の腫れたまぶたはどういうことですかね?」


うっさい! そう言う彼女の隣に、すたりと着地する。
よし、身体の具合はばっちりだ、ナイスマイボディ。



どこへ行くのかもまだ未定だが、行き当たりばったりと言うのはまさに俺を象徴しているんではなかろうか?
元気な付添い人とともに、俺は村を後にした。

これで、俺の小さな冒険は終わり、この出会いが、大きな冒険への足ががりになっているなんてことは…


「これはどう読むんだ?」

「…こことここがこの同士で繋がってて、この…関係代名詞って言うんだけどな、が、接着剤になってるんだよ…
 それよりリース! この道であってるんだろうな?」

「なるほど…じゃさ、ここのとこは…?
 あと、このページも、あとあそこも! あれもこれもあれやこれや」



…因みに…この後ずっと、リースの質問攻めを受けて歩いていたので、道に迷って死に掛けたのは黒歴史だ…
大きな冒険の前に、教会で死んでしまうとは情けないと言われそうになりました…
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/23(水) 07:43:55.94 ID:5fs0Q6Q0<>

ティラノス聖霊伝

第八話:小さな英雄

…終わり

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/23(水) 08:30:11.04 ID:pdvQhIAO<>早朝更新乙です

世界設定がすごいシッカリしてる
厨二病に分類していいのか迷うな <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/23(水) 08:47:55.75 ID:eQzh0t.o<>すげぇファンタジーwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 09:10:42.81 ID:T8hW8qYo<>ツンデレリース(;´Д`)ハァハァ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:05:18.27 ID:.51wneIo<>魔翌力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:05:35.98 ID:.51wneIo<>魔翌翌翌力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:09:53.35 ID:.51wneIo<>翌<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:10:48.91 ID:.G5N4Bco<>魔‎力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:17:47.55 ID:.51wneIo<>魔翌力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:18:03.44 ID:.51wneIo<>魔( ゚д゚ )力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:18:18.28 ID:.51wneIo<>いったい何が…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:19:36.24 ID:UiT33soo<>魔‍力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:24:19.19 ID:.51wneIo<>魔翌力<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/23(水) 18:24:46.16 ID:.51wneIo<>魔 力<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/24(木) 10:54:22.21 ID:1wFp06s0<>
新しい鉛筆(6B)が手に入ったので殴り書き。
後悔はしてない。

後、剣のデザインが適当なので、もっとカッコ良く描ける様に頑張ります。

ttp://up2.viploader.net/pic/src/viploader627944.jpg

ttp://up2.viploader.net/pic/src/viploader627945.jpg

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/24(木) 11:01:42.25 ID:YHeO92SO<>これマジで書籍化出来ると思うのは俺だけですか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/24(木) 20:16:46.81 ID:4heyyEMo<>>>149
そこをあえてしないのが粋ってもんだぜ<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:55:39.93 ID:5.dy9tQ0<>>>149
ねーよwwwwww



前半部のみ。


ティラノス聖霊伝

第九話:まぁ、最初だしね

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:56:08.38 ID:5.dy9tQ0<>「…ホントすいません…いや、マジで反省してマス許してください…」

「………………」

「や、だからさ、あれじゃん? 君はつい最近まで男として振舞ってたわけだし。
 な? だから、偶然…そう! あれは偶然の事故だったんだって!!
 まさか……あんなところで着替えてるなんて思わなかったし…」

「黙れ[ピーーー]腐り落ちろ! その後にその腐った身体を肥料にして撒いてやる!!」

「だから、謝ってるんだろ! いい加減機嫌直せよ!」

「切れるのは俺のほうだ! ったくじろじろと凝視しやがって変態! 変態!! 変態!!!」

「…誰がお前みたいな未完成型を見たいと思うかっての…」

「何か言ったかよ変態野郎!」<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:56:21.52 ID:5.dy9tQ0<>「…………いらっ…ああそうかい、こっちが下手に出ればいい気になりやがってこのクソガキが!!
 俺だってなぁ! あんな平面体見たってこれっぽっちも欲情しないわボケ!
 セティさんみたいに出るところでてるならともかく!! なんだあのつるぺったんは!?」

「ガキじゃねえって何度も言わせんなペド野郎!!
 俺はしっかり今年で17だ!! お前と一つしか変わらないだろうが!!
 それにな!! それが乙女の裸体を見た後の男の台詞かよ!?」

「はー? 誰が乙女だって?…俺が見たのは小汚い野良犬だけなんだけどな〜?
 第一、乙女はあんな場所で服は脱がないんですけどね〜?
 それにだ!! 元はと言えばお前が道を間違えなきゃこんな場所で野宿することもなかったんだろうが!!
 それなのに全く反省の色なし、しかも開き直って逆切れだと!?」

「話を取り替えるんじゃねぇ! お前がいきなり俺の裸見たのが全面的に悪いに決まってんだろ!
 小さい池があってこんなに汗だくなんだから水浴びくらいしたいと思うのが乙女の心情だろう!!
 そんな細かい配慮も出来ないのかよ!!」

「はぁ!? 出来るかよヴォけ!! 乙女だぁ!?
 笑わせる! お前は芋女だ! 泥にまみれたイモだイモ!!」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:56:35.80 ID:5.dy9tQ0<>道のど真ん中で怒鳴りあう二人。
こなた黒髪の青山龍樹、かなた白髪のリース=ロースフリーナ。

両者双方真っ赤な顔で怒鳴りあっており、もはや引き際まで失ってしまったようだ。
勝負は泥沼の延長戦で、どっちもひくことを知らず、ほぼ半日硬直状態が続いている。

こんな獣道の延長では通りかかる旅人や商人もおらず、それは幸運と言えば幸運だった。


「もういい!! こうなったら武力で黒白付けようじゃないの!?」

「はぁ!? 望むところだっつうの! お前なんか髪の色ですでに黒星なんだよ!!」

「言ってくれるじゃねぇか…チビでぺったんで、お前に何が出来る?」

「ぺったん言うな!! もうゆるさねぇ…火達磨にしてやるからな!!」

「やってみやがれ! お前のマッチ火なんて吹き消してやんよ!」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:57:41.97 ID:5.dy9tQ0<>
怒髪天を突く、リースは両手を十字に交差させて言葉を紡ぎだす。
もちろん、この魔術はさっきまでリュウキに教わっていたものであるが、威力は申し分ない。
(とは言え、リュウキが教えたのは文章の読みからのみで、魔術自体はほぼ独力で習得しているのだが)

リュウキから一気に距離を開き、呪文詠唱を試みるリース。
詠唱とは、その言葉が重要と言うわけではなく、むしろその言葉によって必要な扉を開くことに焦点がある。

よって、イメージや固定の物質などの扉を開くことに有用なものがあるのならわざわざ詠唱することは必要ないのだ。
高位魔術師ならば世界の扉と自らを同調させることによって多くの魔術を詠唱破棄するが、未熟で師もいないリースにとってはそれは不可能に近い。
そのため、本来ならば本を熟読した程度で詠唱可能な魔術はファステン級、及びセルバネス級の一部が限界。

のはずなのだが…



やっべぇ…熱くなってつい言い過ぎたな…
しかしどうしたもんだ…? あいつ本当にあれ唱えるつもりなのか?
さっき森で練習して山火事起こそうとしたばっかなのに…?


…まさかな?


俺がまず驚いたのは、あいつの身体能力の高さだった。
本気で走ればこの世界で強化されている俺でさえ追いつくのに苦労するほどの脚力を持っているのだ。
それでいて、身体に合わない持久力も併せ持っている。

本来ならば3日かけていくはずの距離を一日足らずで制覇できそうだったのはこれがあったから。
だがこの森の中じゃあいつがどこにいるのか…不意を疲つかれて逃がしちまうとは…
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:59:14.37 ID:5.dy9tQ0<>「…炎の聖霊、万物の流動…あらゆる物を灰燼に帰す炎の魔神サラマンダー…
 我に力を、閉じられたその門を開け…」


リュウキの予想はもちろん当てにはならず、リースは言葉どおりの意味で彼のことを灰燼に帰するつもりのようだ。
詠唱の大半を終え、リュウキの前に現れるリース。
その口から紡ぎだされる呪文の一説が彼の耳にこだまする、瞬間、彼女がなにを唱えようとしているのかが理解できる。


「い"い"!? 待て待て待て待て!! まさかマジでやるのかよおい!!
 こんな場所で唱えたらさっきみたいに森林破壊をだな…
 だから聞きやがれーー!!」


まずいぞ、これは実にまずい…


隆起の額に汗が沸き、彼もまた状況の回避のために深く思考する。
彼女との距離は目算で25m弱。
この世界において著しく強化されたリュウキの五感は、この距離でさえも容易に彼女の声を聞き取ることが可能であるが、
それにより直接の攻撃が呪文解除には間に合わないところまで来ていることも気づいている。

基本的に詠唱の前半部が終了した時点で扉は開いており、そのままでも魔術の行使が可能ではある。
ならば後半の詠唱に意味はあるのだろうか? 答えはもちろんある。
後半の詠唱、一般に後唱と呼ばれる行為によって術者の魔翌力負担を減らす役割を果たす。
本来魔術は膨大な魔翌力を必要とする、これを軽減するため、周囲の空間から魔翌力を供給して魔術を唱えるのだ。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 07:59:56.14 ID:5.dy9tQ0<>妖精族、天使族、悪魔族のように自身が巨大な魔翌力媒介ならばこんな必要はないが(彼らが高位魔術を詠唱破棄できる理由の一つでもある)
人間は扉を開きやすい一族ではあるが、その身に蓄えることの出来る魔翌力絶対量は先述した一族には遥かに及ばない。

そのため、扉の開放と周囲の魔翌力の吸収を一繋ぎの魔術とすることで、他の一族同様に膨大な数の魔術を扱えるのだ。


現在リースが行為している魔術はマヴレイン級の周炎魔術。
生活の一部として扱われるファステン級魔術とは全くその用途が異なり、対生物において使用される明らかな戦闘系魔術である。

使用されれば最低でも周囲10mは綺麗に焼け野原となる。


リュウキはその効果の程を身をもって味わっていたため、今回の詠唱を否定しなければ
燃え移った罪のない木々を大量に切断しなければならないこととなってしまう。

しかし彼も馬鹿ではない。
一回の失敗を次に生かすことを忘れるようなタイプの人間ではないのだ。
まぁ、それは冷静な場合においてだが。

彼女と同じ腕の形を取り、後唱を完全に破棄して詠唱を行う。
これならばぎりぎりで彼女の詠唱終了に間に合うだろう。

それを可能にする彼の潜在能力は、もちろん彼が知っているわけはない。
無論前に書いた魔術のいろはでさえ、殆んど知らないだろう。

ならばなぜ彼が後唱破棄などの技術を行えたのか?
それは単に、彼が前唱部しか知らなかったからにすぎない。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:00:48.11 ID:5.dy9tQ0<>
「見つけたぞクソガキ!! いい加減頭冷やしやがれ!!
 『気高き水の聖霊! 世界の源泉…母なる星より全てを生みし水の妖精アクアス…
  詠唱者の命に従い、その扉を開け!!』」

『大いなる懐から我に力を…!!』

「後悔しても遅いからな! 喰らえ!」

「っとぎりぎり!!」


『シェリスヴェリング!!』

『グランシュトレイン!!』


二種類の魔翌力が形状変化を行う前にぶつかり合う。
これが相殺作用と呼ばれるもので、それぞれに対応した魔術を同士詠唱することにより、
空間、聖霊、世界、神を媒介にするよりも前に魔翌力だけを放出してしまうことを言う。

こうなると消費されるのは魔術師の扉を開くときに使う魔翌力のみで、その魔翌力の総量、強さで効果が変わるが、
扉の開放に使用する魔翌力の量は、魔術の使用時に吸収する魔翌力とは違って非常に少なく、一見も起こらなかったように思える。

だが、外空間から魔翌力を供給して補助を行いながら行使しようとしたリースと、
自身の肉体からのみ魔翌力を放出したリュウキとでは、さすがにその魔翌力量は違ってくる。



「………」

「………く…ぁ…」

「…ふぅ……っておい! リース!…もう世話の焼けるクソガキだよ本当に…」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:01:23.43 ID:5.dy9tQ0<>リュウキの高密度の魔翌力になでられ、一時的に意識を失ってしまうリース。
これは高位術者と低位術者との戦いにおいてしばしば見られることがあり、呪文を唱えるに足らない相手を無力化する際に、
単に魔翌力で攻撃して気絶させるのだ。

これは高位者側の配慮であり、本来ならばチリも残さずに破壊できるほどの魔術をもつが、
殺さずに意識だけを奪う。

超高濃度の魔翌力(ドミニオン以上の天使や、ダイモス以上の魔神)に相当する生物の魔翌力は、
垂れ流すだけで人間の致死魔翌力量を上回ることはある。
が、そんな生物が出現することはめったにないので、先例の対象として扱うには疑問が残る。



「…っつう…頭打った…」

「起きたか? で、俺に何か言うことあるんじゃないの…?」

「なんだよ、変態…あ、そっか、また俺自然破壊しちゃった…?」

「間一髪セーフだった。
 ホントにふざけた奴だなお前、俺があの一件の後にちゃんとあれの背反魔術を調べておいたからよかったものを…」

「げー…でも、良かったー! 俺もあれ以上木を燃やすのは良くないって思ってたしな…なんだよ、
 そんなに怖い顔しなくてもいいじゃん…分かったよ、謝るから…」

「…まぁ、俺も見てしまったことは事実だからな、お互い水に流そうぜ?
 水の国ゆえに」

「はは、寒いっての! でも、これからも一緒に行動するわけだし、許してやるよ」

「どうしてリースはそんなに上から目線なんだ…はぁ」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:02:06.62 ID:5.dy9tQ0<>一応仲直りした二人の背には、もう赤く染まり沈みゆく太陽があった。
これ以上の行動は無意味だと言う結論に早々とたどり着いた二人は、水辺の周りでキャンプをしてこの日を過ごすことに決めたのだ。

リースの大荷物はこんなときのために役立つもので満たされていて、リュウキ一人ならばどうなっていたかは想像もしたくない。
背負うタイプのリュックからは、携帯に便利な柄の部分を取り外しして複数の大きさに付け替えられると言う便利ななべを取り出す。
続いて折りたたみ式のナイフ、塩などの調味料が少々顔をのぞかせる。

隆起はその間黙々と燃えやすそうな枯れ枝を探していて、それはこの森の中ではそんなに難しいことでもなかった。
リュウキには幼い頃からこういった経験があったが、それは家族で行くキャンプがせいぜいで、自分で荷物を用意するといったことは頭になかった。
だが、火をつける方法は心得ていたし(着火はこれまでで一番たやすいだろう)ある程度その方面の知識はある。
が、池の水をそのまま飲む前に煮沸すべきとか、基本的なものにとどまっていたが。


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:02:31.44 ID:5.dy9tQ0<>「…つーかさ、リュウキって本当に旅人なわけ?
 なんだか、旅する知識なさ過ぎじゃね? って思ってたんだけどさ、ずっと…第一俺が道案内するって理由で同行許可するって…
 冷静に考えたらずいぶんとおかしいよな…?…野宿の知識はある程度あるみたいだけどさ?
 服装から言っても南の土の国から着たんじゃないだろ?
 第一あそことは敵対してるから簡単にはこっちにこれないだろうしな…」

「…まぁ…そこはいいじゃん? 逃げるようにして村出てきたわけだからさ、知識なんかないって
 (…この世界とは別の世界から来ましたなんて電波な発言したらどう思われるか…口が裂けてもそれは言えねぇ…)
 それに、俺の一族は地図にも載ってないような少数族だから、仕方ないって」

「ふーん。まぁ、普通の地図じゃあ俺の村だって記載されてるか微妙だしな…」


火を取り囲むようにして、お手製の料理を口にする二人。
リュウキが素手で川にすむ魚を捕まえ、リースは山で食用になる山菜を探した。

どちらもここら辺一体には豊富にあるので、採取に困ることはなく、
食用になるのかどうかの判断も、森の中で長年暮らしてきたリースにとっては赤子の手をひねるように容易い。

味付けは簡単に塩のみであったが、リースにはそこそこ料理の知識もあるようで、リュウキにとっては全く苦にならない夕食となった。
彼は料理に恵まれない男で、母親は絶望的なまでに料理のセンスがなく、妹にもしっかりとそれは受け継がれていた。
幸い父親が料理の出来る人間だったのだが、負けず嫌いの母は自分がと無理に毎日作ろうとするので、
リュウキの舌は常人よりもずいぶんタフになっているのだ。

そんな二人の会話の中で、数回出てくる戦争という単語。
そのどちらも直接経験のしたことがないことで、リースにいたっては歴史の知識が乏しかった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:02:58.55 ID:5.dy9tQ0<>「でさ、そいつが俺に言うんだよ…ん? 変な顔してどうしたんだよ?」

「…あ、いや、別になんでもない…んー、やっぱ聞いとこう。リース…
 さっきから出てくる戦争ってワードなんだけどさ… 
 この世界って今本当に戦争の真っ只中なのか? そんな風には全然思えないんだけどな…」

「うーん…俺もよく分からないんだよな、なにせどが付く田舎出身だしよ…でも、戦争をしているってのは事実みたいだぜ?
 水の国は大元の光と闇の国とは別の大陸にあるから、まだそんなに戦火に晒されてないだけだろうな。
 でも、南には闇の国と同盟を結んでる土の国があるし、真上のバビロニア大陸には火の国が接してる、ここは風の国が上手く抑えてくれてるから平気だとは思うけど…
 どれもこれも、世界中では戦いの真っ最中なんだぜ? 北アルテミス大陸ではこの混乱に乗じて巨人族と犠の一族が暴れまわってて、
 それを雷の一族が抑えようとして争い。
 俺たちの国も土の国以外直接面してる国がないから攻め込まれてないけど、火の国とは昔からそりが合わなくて小競り合いが続いてる、
 中立を護ってる時の一族も今じゃ闇の国と提携を結ぶとか言うことも言われてるし…って、これ常識だぞ?」


揺らめく炎ごしに俺のことを見つめるリース。
よく見れば見るほどに、セティさんとは似つかわしくない少し吊りあがった二重の猫目、
その中にきらめくアメジストのような瞳。リュウキとは対照的な真白い髪。
言動と、少しだけ髪の毛を伸ばせば間違いなく美女の分類にされる顔立ちであるが、
それにはリュウキはおろか当人でさえ気づいていない。


アメジストの瞳は現在リュウキのほうを少し怪訝そうな光を放って見つめていて、
その常識さえも全く知らない彼は急いで言い訳を探し始める。

彼はこう思っているだろう、こんな事になるくらいなら、最初のときに真実を話しておけば良かった…と。
いずれはばれることに違いはないが、今はまだ言うときではないと勝手に判断していた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:03:23.42 ID:5.dy9tQ0<>「んー、いやさ…俺の村はそのどがつく田舎よりさらにど級な田舎町だし? 村での生活も100%自給自足で今までやってきたから
 村の外の情報なんて殆んどないまま育ってきちゃったんだよ。
 争いの犠牲にもなったことないし、知るきっかけがなかったというか…」

「にしてもなー…俺はおろか、リュウキだって生まれる前からの争いだぜ?
 大人たちも良くやるよな? 一おww殺してなにが楽しいのって感じ。
 …さっさと終わらせて欲しいもんだけどな…直接俺が何かされたって訳じゃないけどさ、世界で血と涙が流れてるのはなんだかさ…
 いい気持ちしないって言うか…分かる?」

「…そうだな…戦争なんて何も生まないのにな…利益確保とか、
 信念を曲げられないからとか、くだらない理由掲げて人が死ぬのはいやだよな…
 なんとなくリースの言いたいことは分かるよ」


彼の知識は、ごく最近地球で習ったもので、その根幹までに渡る知識はない。
だが、それがもたらす現実と、現在まで残る爪あとから察するに、どんなものなのかは想像に難しくない。
そのためだろう、リースの考える気持ちはなんとなく分かるものだ。
しかし、40年も続くこの戦争はどこかおかしいと思わざるをえないのが、彼を難しい顔にさせる要因である。。
イギリスとフランスはかつて100戦争を繰り広げていたが、100ともなると国王が3から4代は変わってしまう。
そのたびに考えも変わるはずなのに、そこまで戦いを続ける理由は、教科書に書いてある内容だけでは納得できなかった。

戦争に関する詳しい原因は、リースも知らないようだったが、きっとくだらないことが引き金になっているのだろう。
彼は戦争を知らない世代と位置づけられ、戦争の悲しみも、絶望も、そこの中にあるかもしれない利益も、ステレオタイプの思考しか持ち合わせていなかった。

だからか、そこにあるであろう引けない理由も、その思想も信念も、理解できるはずがないのだ。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:03:44.14 ID:5.dy9tQ0<>「…はぁーあ…綺麗な月だなー…毎日見てるのに、まだ見飽きない…」

「またそれか? でも、今日はいつにも増して綺麗だな、心が洗われるような気持ちになる。
 …でもさ? どうして神様は太陽を二つ作って月は一つしか作らなかったんだろうな?
 どうせなら二つ作ってやったほうが取り合いにならないのに…」

「え? ははっ! 以外にロマンチストなんだなリース。
 太陽が月に恋をする、なんてさ、赤い太陽、青い太陽、そして青色の月か…
 どっちを月が選んだのかは察しが付くんじゃないか?」

「まぁ、普通に考えて赤い太陽だろ?」

「はぁーー!? 青だろ常識的に考えて…だって同じ色をしてるんだぜ?
 青い太陽の光に染まって月の色も青くなったんだよ」

「分かってないなリュウキは…女心が全く分かってない…
 いいかい、青い月は自分にない赤い色を求めているんだって、だから、赤だよ赤」

「いやいや待て待て、前提からして月が男かもしれないだろ?
 昔の人の言葉にもあるんだぜ?
 かつて、女性は太陽だった、今では、女性は月であるってな…あ」

「なんだ、それじゃあ結局月が女性じゃんか…でも、何で女性が月になったんだ?」

「確か…昔の女性は自分で輝いてあたりを照らしていたけど、今じゃ青白い顔をして誰かに照らされないと輝いていられないからって
 これさ、女性の権利を向上させようとして戦った女の人の言葉なんだ、リースは知らないと思うけどな」

「知らないも何も、男と女で違いも何もないだろ? ちょっと女のほうが力がなくて、
 男が子供を作れないだけ。権利とかそんなのが異なるなんてまずありえんって」

「そうだよなー。リースの言ってることが正しいんだよな」

「…ずっと思ってたけど変な奴だな、何も知らないと思ったら俺も知らない難しいことを言ってさ?」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/25(金) 08:04:18.53 ID:5.dy9tQ0<>「俺もそう思うよ、俺は変人かもしれないってね〜、良いのかいお嬢さん?
 こんな変人と一緒にいて?」

「ばーか。リュウキが変人だってことはさっきの一件でよく分かってるよ。
 まぁでも、リュウキが俺にちょっかい出せない事くらいは、見れば分かるけどな」

「うーん、そんな意味で言ったんじゃないんだけどな〜…取り合えず褒められたってことで良いのか?」

「解釈はご自由に、俺は意気地なしでそんなこと出来ない男だって思ってるだけだし?
 それに俺だって最大限に抵抗させていただくからそこんところご了承」

「…言ってくれるじゃないの…俺は夜の狼さんなんだぞ…?」

「牙も爪もないのに狼さんとは笑わせるな…! いいとこでワンちゃんだろ?
 
「……ん…あぁぁああ……眠い…先に寝るから、二時間後に交代でいいよな…?
 あと、念のために言っておくけど、交代でやるって決めたんだから無理に気を使うんじゃねぇぞー!
 …ふあぁ…分かったな…? じゃぁ…おやすみぃ…」


これはまた、便利なリースのお荷物から出てきた携帯用の寝袋。
それに上手く包まって、リースは早々に寝息を立て始めた。


(…ったく、そうは言ってもなリース…そんな顔で寝られたら起こすことなんか出来るわけないだろ…
 俺だって、そのくらいの男気は持ち合わせているんだよベイベー…)



やれやれ、また俺の夜は長くなりそうだな、明日起こしたときにどういった言い訳を考えておこうかな…
あーあ、やることなくって暇だよなー…本も全部読み終わったし、こんな場所に夜盗とか魔獣とか…
金もない俺たちを襲う物好きはいないだろうに…

唯一心配なのはリースのことだが、と言っても彼女の言動や一見しただけならば男に間違えるだろうし、
野党も色気のかけらもない小娘を手篭めにしようなんぞ思わないだろ…
それでも万が一のことがあってはたまらないから、ぼんやりとしてきた視界をこすって明瞭にし、暗い夜空を見上げた。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/25(金) 08:37:46.28 ID:.6z5y4ko<>つづき よみたい<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/26(土) 09:34:00.42 ID:D1pCOZ.o<>
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/26(土) 15:33:01.17 ID:ma6..2AO<>-----ここまで読んだ-----<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/04/26(土) 19:12:42.06 ID:pu/e6QSO<>書籍化はいつ?<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/27(日) 17:45:27.09 ID:iOIAybc0<>
続きの内容迷ってるから遅れてるんだ、すまない。

だからデフォルメ絵でも見てイライラして欲しい。

らき○すたに似てるなんてことはないです。


志輝
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d361867.jpg

リース
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d361868.jpg

龍樹
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d361869.jpg<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/27(日) 21:30:00.15 ID:HxT2VIAO<>兄妹そろって絵がうまいとは…やるな
とりあえずがんがれ、応援してるよ<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:31:10.77 ID:OwEKoVQ0<>…翌日。

ティラノスの暦に従うと、改暦1895年の3月35日。


川沿いを歩くのは、巨大なリュックを背負い、自分よりも一回り小さな身体の人間をおんぶしている長髪の男。
その鴉髪を風に揺らして、太陽の光を受けて輝いている様は、彼の表情とはまるで逆だ。

背負われている、真珠を振り撒いたような美しい白髪をしたほうは、
今にも倒れてしまいそうなほどに顔面蒼白で、紐でしっかりとつなぎとめていないと道端に落下してしまいそうだ。
鴉髪の男の服装は、半袖長ズボンの軽装で、なぜか上着を着ていない、理由は現在の気温によるものが原因ではない。

巨大なリュックは相応の力を受けて歪み、肩から垂れ下がる幅の広い紐とバッグとの接合部分は今にも解離してしまいそうなまでに軋んでいる。
だが、男はそんな大荷物をものともしないでのしのしと歩みを進めている。
目の前に見えるのは厳重な門番の仕切る国への入り口。
美しい装飾が施された正門の近くにある部屋に言われた通りについていく。

やっとの思いでたどり着いたそこで、簡単な手続きを行う、
たかが街へ入るのに審査が必要だとはなかなか重々しいと思うだろうか?
それについてリュウキが説明を受けると、やはり出てくるのは戦争中という言葉。
万が一のことが起きてからでは遅い、そう一点張りの兵隊は、明らかに重病といっても差し支えないような顔をしているリースを見ても、
リュウキに数枚の書類の書き込みと、バッグの中の検査を免れることは出来なかった。

それなりの時間が経ち、ようやく街の中へ入ることが出来る。
時間経過も彼女の表情は良くなることはなく、ぐったりと顎をリュウキの肩に乗せている。
そんなリースに、気遣うようにしてリュウキは背中に話しかける。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:31:49.50 ID:OwEKoVQ0<>「…やっと着いたぞ…ほら、さっきの守兵さんたちが近くの病院の場所教えてくれたからそこまでの我慢だ。
 気持ち悪くないか…?…いや、聞くまでもないか…
 我慢してな? 急ごうとするとまた揺れちまうからさ…」

「…うぅ…ごめん…でも…気持ち悪い…あと頭も痛い…ついでに身体がだるい…」

「OKOK、我慢してくれすぐにでも探すから。
 中途半端に俺が治療魔術となえて悪化しても困るからな…でも、リースの村に比べて広い街だなここは…
 よし、見えてきたぞ…その解術師とやらに頼めばすぐにようなるさ」

「うっぷ…吐きそうだよ…ごめん、また吐くかもしれない…
 もう少し速度落としてくれる…?」

「分かった……でも、吐きたいなら吐いちゃっていいぞ?
 もう俺の服は汚れちゃってるから一回も二回も変わらないから良いって。
 ……でも、出来るなら我慢してくれ、このままの格好で、汚いから入室できなかったら笑えるぜ…」


村を出て、いつかの歳月をかけてついにたどり着いたのは、イシュタールと言う水の都。
本来のリースたちの目的地、水の都アマルナまでは相当の距離があり、いくらなんでも徒歩でたどり着くのは不可能に近い。
そのため二人が出した結論は、この街イシュタールを経過して、そのすぐ東にあるという海峡都市ギザで飛空挺に乗って向かおうというものだ。

旅は至って順調、なはずだったのだが、朝からリースの身体は調子がすこぶる良くなく、森を出てすぐに倒れこんでしまった。
原因は恐らく森での食事に何か問題があったのだろうとはだいたいの想像が付くが、二人とも解毒に関する知識は不十分で、
厳密な原因も不明な以上はむやみな中和、解毒魔術は逆効果だと判断し、足早にイシュタールに行き、治療を行うことが最善だと決めた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:32:16.45 ID:OwEKoVQ0<>リュウキにしてみれば、通常の女性となんら変わらないリースをを背負うことは全く苦ではなかったが、
少しでも走ろうとすれば、酷い船酔い状態のリースがそれに耐えられずに吐いてしまうので(これで、もうリュウキのシャツとコートは再起不能に近くなっていた)
急がず焦らず、それでもってリースが完全にダウンする前にここにたどり着かないといけないと言うミッションインポッシブル。
いつもの元気はまるでないリースを励ましながらも急いで目的地を目指す。

入街の際に兵士から聞いた、解術師と呼ばれる地球での医者の位置に属する集団。
どんなものかはリュウキに分かるはずはないが、とうとうそこにたどり着く。

壮大な造り、ヨーロッパでのバロックを髣髴とさせるような厳かなそれ。
何とか吐くこともなく持ち直したリースを背負ったまま、リュウキは急いで受付に事情を説明する。

彼のお世辞にも適切とはいえないその説明でも、受付の女性には何の症状で、原因がなんなのかはすぐに分かったようで、
他にも診察を待っている人が沢山いる中で二人をすぐに奥の治療室へ通してくれた。


「はいどうぞ、ん?…これはまた珍しい…どちらが患者さんかは聞くまでもないね。
 さ、ここに下ろして、うん。無理に座らせなくてもいいから、横になってくれればね」


奥に座っている人物は、リュウキが見慣れた医者の姿そのもので、きっちりと分けられた髪の毛、少し背の低く、ふっくらとした体躯。
白衣とは違うが、ゆったりとした薄紫色の布を何枚も重ね合わせて一着の服にしたような、
インドや中国で修行僧が着ているのと相違ない服装。

なによりも、対面する人を安心させるようなその微笑みは、医者にとって必要不可欠なものだ。
リースの身体をベッドに横たえて、リュウキは受付でしたと同じ説明を解者に言う。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:32:34.51 ID:OwEKoVQ0<>
「…ちょっと森で食べたものにあたったみたいで、苦しそうなんですぐに何とかして欲しいんですけど…
 即効性の魔術とか、薬とかあります?」

「…ふむ、これは…スカラベに感染してるね。
 もしかしてここに来るときに…池で生水飲んだりしなかったかな?」

「あぁ、昨日の晩に一回…でも、一応煮沸消毒したんですけど、不十分だったんですか?
 しっかり沸騰するまで過熱したんですけど…」

「はは、こいつには湯銭なんかしても意味ないって。スカラベはね、熱にはすこぶる強くて、セ氏200度までなら活動できるんだ。
 それと引き換えは雷に弱いから簡単な帯電魔術でも唱えればよかったんだけどね…
 水の一族は雷魔術は嫌煙しがちだから旅人でもかかる人はたまにいるんだよ…よし、これでもう大丈夫だね。
 体内の菌は全部殺しておいたから、少し寝れば元通りだよ。
 …よし、これをさっきの受付の女性に渡してくれればすぐにベッドを用意させるから」


ぱっと、手のひらが光ったかと思うと、リースの顔色は見る見るよくなっていった。
さすがは、と言ったところか、人目でなにが原因かが分かるのは。

リュウキはリースのことを早々にベッドへ連れて行こうとして、子供を抱くような格好で持ち上げようとする、
しかし彼女はそれを拒否するように手を出してさえぎり、低い声で言う。
それはリュウキに抱き起こされることへの拒否ではなく、別のことに対してだった。


「……いい…」

「ん? 一体どうしたんだよ?」

「病室のベッドにはいなくても良いから。 俺はもう平気、だからさ、早く街を見たいんだよ。
 俺はこんな場所で寝るためにこの街に来たんじゃねぇもん」

「はぁ? なんでだよ、どう見てもまだ弱ってるじゃないか、無理するなって、俺は適当に宿探しとくからさ。
 今日は休めって…それに、こんな所っていうようなことは言っちゃいけません、失礼も甚だしいだろ?」

「だから平気だって! 病室って嫌いなんだよ…小さいこと一回行ったんだけど…
 その…トラウマが…ここじゃ落ち着くどころか逆に心労しちゃう…」


医者のことを恨めしそうに見つめて、蒼い顔でそういうリース。
その視線は医者と言うよりも、その後ろに光っている細い針状の器具に向けられていて、リュウキもその視線でなんとなく理解する。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:32:55.48 ID:OwEKoVQ0<>…注射がトラウマ…? 全く、ガキじゃないんだからそんなことくらい我慢しろって…
 確かにあんまり楽しいものじゃないけどさ」

「そんなことだって!? リュウキは分かってないな!!
 俺がどれだけ…とにかく! 俺は絶対にここでは過ごさないからな! ほら、もう行くぞ!!」

「ふらふらすんなって! まだどう見たって完全回復にはほど遠いだろ? 先生もそう思いますよね?」


てこでもここに留まるつもりのないリースは、すぐに上着を羽織って部屋を後にしようとするが、
そのさいに背負おうとしたバッグの重さにたじろいで一時動きが止まる。

医者はといえば、そんな彼女の様子を見てそこまでここに拘束するつもりはないようだ。
診断書もいつの間にか書き終えて、それをリースに渡しながら言う。
リースはさっさと診察室を出て行ってしまって、今頃代金を払うために待っている最中だろう。
そこまで病院を嫌悪してしまう彼女には正当な理由があるわけだが、それは今はまだ話すことではない。


「…うーん、でも、彼がそう言っているんだし、無理をしてここにいてもらわなくてもいいよ?
 問題の菌は全部退治したし、彼があんな調子なのは別に原因があるみたいだから。
 それに、君がしっかりと付いてあげていれば不測の事態でもなんとかなるでしょ?
 ところでさ、君は平気なのかい? 見たところは元気そうだけど、彼と同じ水を飲んでたんだろう?」

「そうですけど、俺は身体丈夫だからなんともないと思いますよ。
 気持ち悪くなったこともないですし」

「へぇ、流石は黒髪といったところかな、でも、油断大敵だよ?」

「はぁ…でも、あいつのことだからじっとなんかしていませんよきっと。俺としてはここでじっとしてもらったほうがいいんですが…
 また倒れられたら俺の服が…」

「服? あぁ、さっきから変なにおいがすると思ったらそれか、君も大変だなぁ…
 でも、珍しい組み合わせだね、念のために聞くけど、兄弟じゃないでしょ?」

「まさか、先の村で知り合った間柄ですよ」

「やっぱりね、遺伝の関係で黒髪は黒髪しか生まれることはないから、そうだと思ったよ。
 でも…いやー、私も長年解術を営んできたけど、黒髪は初めてだ。
 本当にいるのか半分疑問だったけど、これでやっと教科書の記述を信用できるよ」

「それって会う人みんなに言われるんですよね…あ、そっか、
 前々から感じてた変な視線ってこれか」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:33:13.17 ID:OwEKoVQ0<>「恐らくそうだろうね。黒髪なんか滅多にいないし…でも、君は見たところ旅をしているみたいだけど。
 もしもこのまま続けるなら、その髪のままじゃ…」


解者は興味深そうに彼の頭髪を見ていたが、遠くから彼を呼ぶ声に気づき、あわてて彼と話し込んでいたことに気づいたようだ。
二人は軽く会釈して、リュウキも早々に部屋を出る。
リースが結局運ぶのを諦めた巨大なバッグを持ち上げ、彼女がいる窓口まで歩いていく。


「遅い! こんな薬臭い場所は長居は無用だ」

「ったく、で、金のほうは平気なのかよ? 俺は全く持ってないぜ?
 それにリースだって…」

「は? 金なんて払うかよ。解院は公共施設だぜ?
 無料だって、無料。全部国が出してくれるんだから俺たちが出す必要はないの」

「そうなの? なんて便利な…でも、その金はどこから出てるのさ?」

「そりゃあ国民の税金からだよ、俺たちの村だって少しだけどちゃんと払ってるんだぜ?
 ほら、前に言った他の町へ薬草とか売りに行くって言ったじゃん、その時に村全体の分を払ってるわけ、まぁすずめの涙だろうけどな」

「…しっかりしてるんだな…ん? じゃあ俺みたいな浮浪人はそういう援助受けられない?」

「…さぁな、俺もそんなに良く知らないし、でも、ここに入ることが出来たんだから平気なんじゃないの?
 国民登録だって多分俺もしてないし、リュウキなんてそんなこと知りもしないだろ?」

「うん、もちろん」

「まっ、ここは法の国じゃないから結構アバウトでも良いんだって、解者のほうだってしっかり国から金が出てるんだから
 いちいちそんなこと心配しなくてもいいわけだし」


そんな会話を続けているうちに、二人は安そうな一件の宿谷に付く。
まだ日が暮れるには時間があったが、リュウキはまだわずかに残るからだの匂いを何とかしたかったし、
リースも一日以上洗っていないままの身体で街をうろつくほど不潔でもない。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:33:29.03 ID:OwEKoVQ0<>「…はい、御二人でリース=ローズフリーナ様のお宛名でよろしいですね?
 お部屋はご一緒でよろしいですか?」

「いや、別べt「はい一緒で、別に困ることもないですし、そっちのほうが安いですよね?」


部屋は三階の端っこという一番料金の安い場所で、一泊3000ルール、夕飯と朝ごはん付きという破格のものだった。
だが、この世界ではそれは別に普通のことで、リュウキが驚くほどのことでもないようだとは後ほどリースから言われた。

荷物を片付けて、リースが先にシャワーを浴びる。
そのときもリースは田舎もの丸出しで、始めてみたであろうホース状の細長い機動性に富んだものの先端に細かい穴が無数に開いた金属製の器具を見てはしゃいでいた。
一応文明の利器の中で育ってきたリュウキにとっては全く珍しいものではなく、むしろ時代遅れのそれに少々落胆の様子だった。

その後も、リュウキが汚れてしまった上着を洗っている間にもいちいちリースが声を上げるので、なにが起こったのか彼はいちいち確認をしなければならなかった。
ついにシャワーを浴びることが出来たのは、暫く後になってからだった。

汗でべたべたになった服を洗面所に投げ捨てて、リースが使った後なのでもう温かいシャワーの蛇口をひねる。


「……ふぅー…生き返るわ…形は少し古いけど、ちゃんとシャワーもあるんだな。
 俺はてっきり機械なんてないと思ってたが、リースの村が都会離れしてただけってことか」


濡れると鼻下近くまで垂れて来る真っ黒な髪を掻き揚げて、久々の感触を味わう。
ポンプ式のシャンプーといった類のものはなく、あくまで石鹸を使って身体を洗うようだ。
リュウキにとっては身体を洗うものと頭を洗うものとが同じなのは少々抵抗があったが、そんなことを言っても無駄なことも十分分かっていたので、
髪がしっかりとあわ立つまで三回も頭を洗浄した。


「…にしても、あいつは俺が男だと分かっているんだろうか…?
 普通考えて男女が同じへやってのは危険が伴うと考えてりしないのかね…まぁ、俺が何かするって訳じゃないけど…」


そんな事を呟いていた。


ぞんぶんに身体を洗って、湯船につかって身体を暖める。
風呂好きのリュウキはその木になれば2・3時間は風呂にいることも苦ではないが、そこまでしてしまうとリースにどやされないとも限らないので、
あまり長くならないよう、額にうっすらと汗が浮き出るくらいで風呂から上がる。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:34:01.17 ID:OwEKoVQ0<>ぞんぶんに身体を洗って、湯船につかって身体を暖める。
風呂好きのリュウキはその木になれば2・3時間は風呂にいることも苦ではないが、そこまでしてしまうとリースにどやされないとも限らないので、
あまり長くならないよう、額にうっすらと汗が浮き出るくらいで風呂から上がる。

ベッドには、小さな丸まった物体が一つ。


「……こいつ、寝ていやがる…」


リュウキが数十分の天国を味わっていたとき、リースはすでに夢の世界へ飛び立っていた。
無理もない、と言う気持ちが満ち溢れてきながらも、今日と言う日をここで過ごさなければならなくなってしまったことに多少の落胆を隠せない
表情で、まだ乾ききっていないその髪を拭きながらそうこぼす。

その寝顔は昨夜見たものよりもなお愛くるしいもので、表現するならば羽を休めている天使とでも形容しようか。
胸に湧き上がるたとえようのない気持ちを強引に押しとどめて、リュウキはもう一つのベッドに腰を下ろす。

ベランダには綺麗になった、それでもほつれや傷跡などで日差しをさえぎれ切れない黒いコートと、
リースの鞄から出したタオルや、下着が風に揺れて黄色く透き通る。
そんな風景を見ているうちに、リュウキもまた一日以上の疲れを癒すために瞳を閉じた。

彼は昼寝のつもりだったのだが、しっかりと朝まで寝入ってしまう。
珍しく、この日にリュウキは夢を見ることはなかった。


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:34:18.90 ID:OwEKoVQ0<>「……あの野郎…好き勝手やりやがって…」



翌日になって、ようやくすっかり寝てしまったことに気づいたリュウキのそばに書き留められていたのは、たどたどしい文字で、
わずかに表現のおかしなリースからの言伝だった。

要約すると、この広い街を一人で散策するつもりだと言うことが容易に分かる。
まだ起きていない頭もそれを読むなり覚醒し、急いでその後を追おうとしても後の祭り。
とっくの昔に一人減ったこの部屋で、リュウキは苛立ちよりも心配する気持ちが湧き上がった。


「…あいつ、一人でこんな広い街を歩き回って大丈夫なのか…?
 いや、そんなはずはないだろ、第一リースはこんなに大きな街を経験したことはないんだから、特有にある危険に対する耐性も皆無に等しいはず。
 だったら余計にまずい…一刻も早く追いつかないと…でも、あいつどこに行った…うーむ…」


そんな彼に避けられない生理現象が。
くー、と、間抜けな音が彼の心理状態とはま逆、しかしはっきりとリュウキの中から聞こえる。
しばしの沈黙の後で、最初にまず腹ごしらえをすることにしたようだ。


「…へー、あんたそんな田舎から来たのー、ここまでは歩きで?
 ごくろうなこったねー」

「そうですねー、それ以外の足もなかったですし、歩くのは嫌いじゃないですからね」

「ふーん…お、よく食べるね、お代わりいるかい?」

「お願いします。後、さっきの続きなんですけど、リースもここへ来たんですよね?
 あいつどこへいくとか言っていませんでしたか? 黙って出て行ったみたいで」

「そうさねぇ…本を沢山見たい! とか言ってたから、西部の商業区にでも行ったんじゃないかい?
 でも、この街を歩き回ったって別に治安が悪いとか言うことはないよ? 兄さんはそれが心配みたいだけどさ、それは杞憂ってもんさ。
 この街の警備体制は水の国でも有名でね、ランスロッド防衛術師段団って聞いたことくらいあるんでないかい?」


フランスパンに似た、でもそれよりも遥かに横幅が広いそれを切り分けもせずに齧り付きながら、リュウキはカウンターの向こうにいる
ふくよかな中年の女性と話していた。
彼女の髪は珍しく水色ではなく深い山吹色、だが生え際からは緑色の髪が覗いている。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:34:51.52 ID:OwEKoVQ0<>「聞いたことないですけど、そんなに有名なんですか?
 そのランスロッドなんたらっていうのは」

「そりゃあ、エリート集団だからねぇ。首都のアトランティアの軍事組織ともなんら遜色ないと思うよーあたしの意見だと。
 強みってのがね、種族とか、一族とか、そんなの関係なく能力のみで組織されてるってことかね。
 例えばね、兄さんは竜人族なんて見たことないだろう? そういう人里はなれた場所にいるような一族も、メンバーの一員にいるくらいさ。
 ここは水の国の有益な補給ルートだからね、そう簡単に攻め込まれないように作られてるわけさ」

「なるほど…じゃあ、俺が別に心配するようなことでもないと?」

「だねぇ、下っ端でも兄さんよりも強いと思うし、この街で悪さをするような頭の弱いやつはそうそういないよ、
 だから安心して兄さんは兄さんでこの町を観光するといい、こんなご時世で数少ないかつての活気を保ってる町のひとつだから」


大きな手でリュウキの肩を叩きながら、もう一回お代わりをするか聞いてくる。
それを丁寧に断って、リュウキは食べ終わった食器を彼女に手渡す。
カウンターではない席には数人がおのおのの会話を楽しんでいるようだが、まだ早朝なこともあって人だかりはない。
すでに食欲は失せ、早くも探検欲が生まれつつあったリュウキであったが、彼女の会話を断ち切るつもりはまだない。
しばらくは彼女がリュウキに対して質問を続けていたが、すぐにねたも尽きたのかこんどはリュウキが質問する立場に回る。
話好きな彼女はリュウキが聞くこと全てに丁寧に答えてくれ、
この街の地理や、街風、それに、現在一番彼が気にかかっていたことも答えてくれた。
そして、お互いに敬語やら何やらを気にしなくても良くなったころ。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:35:07.17 ID:OwEKoVQ0<>「なるほどね、兄さんは金がないわけか、それじゃあ歩きでここまで来たのも納得がいくねぇ」

「そう、で、簡単に金を稼ぎたいんだけど、いい場所知らないかな?
 この宿の代金も相方に全部出させちゃってさ、俺としては年上としてそれじゃあ面子が立たないというか」

「そうさねぇ…簡単にって言うと結構沢山あるけど、兄さん旅人だからここにはずっといるわけじゃないだろ?
 となると…やっぱり手っ取り早いのはギルドかねー、兄さん、腕に自信はあるの?」

「…あんまり自信はないんだな…この前も負けて帰ってきたくらいだから…
 でも、ギルドってなんなのさ? それには興味があるんだけど?」

「えぇ? ギルド知らないってあんた…あたしは冗談で聞いたんだよ?
 旅人だったらギルドくらい…っても、さっきからの会話を聞く限りじゃあ、にいさんが知らなくても、無理はないかねぇ…」


幾らかオーバーに驚くようなそぶりを見せて、その後でにやりと特徴的な笑みを浮かべる。
その顔をした後はちゃんと答えてくれることは今までのことでリュウキは分かっていて、似たような笑みを返して言葉を待つ。


「ま、ひと言で言うなら何でも屋かな。依頼を受けて、それをこなす。
 その難易度に応じた報酬がギルドから支払われるって仕組みよ。
 詳しくは…あったあった…ここに行き先が載ってるから、興味があるなら行って見るといい、あたしの説明よりもずっと分かりやすいと思うよ」


後ろの伝票やら、メモ書きやらで埋もれた掲示板から、四つ折になった黄色がかった紙をリュウキに手渡す。
そこにはこの宿から、目的地までの簡易な地図が書いてあって、綺麗な聖書背ないところを見ると誰かの手書きによるものだろう。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/04/29(火) 16:35:36.03 ID:OwEKoVQ0<>それを丁寧にお礼を言って受け取り、リュウキはギルドに向かうことにした。
歯ブラシがあったので歯も磨き、顔を洗い、服を着替える。
セティに着替えを貰ったことを改めて感謝しなおして、リュウキは出かける準備を整えた。
まだ湿った感は残るコートも文句を言いつつ着て、だいぶ磨り減ってしまった靴の紐を締めなおす。
彼の心の中には再び未知のものへ対する計り知れない興味と興奮が湧き上がっていたが、出来るだけそれが表に出ないように勤めて宿を出る。

現在地とギルドのある場所はあまり離れているわけではないようだが、この広い街でのあまり離れていないというのは十分距離がある。
リュウキはもちろんお金など持ち合わせていないので、言われた道を走ってかけてゆく。
その速度は周りの人たちがやっと目で追えるくらいのもので、安全運転をした馬車よりも遥かに速かった。
リュウキの姿を見た人はどう思ったのかは知らないが、彼は疲れ知らずのこの身体がどこまで速く走れるのかを測るように遠慮せずにどんどん歩幅を広げる。

そしてたどり着く。
思ったよりもずっと小さな建物。
造りはとても丁寧とは言えず、小さな家に沢山の付属品を取り付けて増築したような危なっかしい外観。
正面の扉には気色の悪い生物の剥製が白い瞳を濁らせて備え付けられていて、一目では何の生き物なのかは分からない。
もちろんリュウキが見たことのない生き物に違いなく、フジツボを何百体も背中につけたような亀みたいな甲羅を持つ生き物の剥製も
同じように建物から飛び出ている。

そんな建物に少なからず驚きを抱いてはいるものの、それよりも遥かに興味が勝る。
リュウキの倍以上はあるんではないかという大男がその扉をリュウキよりも先に開き、独特のあまり好きになれないような臭いが内部から立ち込める。
男はリュウキが入るのを考慮したのか扉を開いたままにして、彼もそれに続く。

外観があんなにも異様だった以上、それなりの覚悟を持って中に入ったリュウキだったが、
内部の風景は予想に反して…



ティラノス聖霊伝

第九話:まぁ、最初だしね

…終わり

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/29(火) 16:59:27.03 ID:dgn6QEoo<>都市名とかの設定が細かくてすごいな…

やっぱり異世界冒険物描くならこれくらい設定固めとかないと駄目なんかなあ…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/04/30(水) 03:02:48.55 ID:GeDEFYAO<>複線張りまくりですごいな…
完全に回収するまで終わらせるなよ〜 <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/01(木) 00:08:55.07 ID:nNxTckSO<>青龍ガンガレ!!
いつもwwktkしながら読んでるんだぜ!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/03(土) 21:00:33.94 ID:Bub19wAO<>1ヵ月ぶりにのぞいた
やべえこいつ話すげえ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/05(月) 04:02:19.21 ID:oC8TygQ0<>続きマダ〜?wwktkしすぎて一日10回くらいチェックしてるぜ!<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/05(月) 14:16:10.76 ID:siVGix20<>
すまん、ゴールデン中はハイパー賢者モードで勉強するつもりだから全く進んでない・・・

続き待ってる人いたらごめん。

だから、前に書いた何時出番が来るのか全く分からない七人衆でも。
あ、一人いないけど。

上手さは期待しないで、あくまでイメージとして。



戦士
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d365419.jpg


ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d365420.jpg

AH
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d365421.jpg

魔女
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d365422.jpg

ボス
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d365423.jpg

クー
ttp://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d365424.jpg
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/05(月) 14:19:23.43 ID:62hFwzso<>いつも楽しませてもらってるよー
普段からあくまでも勉強優先で結構だぞ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/06(火) 03:40:39.83 ID:XaPNq.AO<>そうだね…勉強の息抜きにでも書いてくれると嬉しいぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/06(火) 12:34:55.07 ID:awGJKyQo<>しばらく来れなかったけど、やっと追いついた
青龍勉強頑張れよ〜
ところで、>>170の画像再うpしてくれると嬉しいんだが…<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 13:58:17.71 ID:pDnoiGA0<>
遅れてすまない・・・


あと、どうでも良いけどさ、日曜に親父が握力計貰ってきたんだよね〜
で、みんなで測ってみたんだけどさ。


親父
右:75 左:71

母親
右:28 左:26

朱雀
右:65 左:71


右:66 左:68

親父の後輩の先生
右:85 左:77


母親以外はりんごもいけるぜ!


あ、別にどうでも良いですね。






ティラノス聖霊伝

第十話:一人目



<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 13:58:31.85 ID:pDnoiGA0<>
「…あれぇー?…これはどういうことなのかな…?」


あまりのことに我を忘れて素っ頓狂な声を出してしまうリュウキ、
彼の目の前に広がっている光景は、小さなあの外観からは決して予測できない巨大な体積。

次元が歪んでいるのか、はたまた何かの魔術なのか、扉の先にはきちんとある種の対称性を持ち、整理された空間が広がっている。
さっきの大男はリュウキの遥か前を歩いていて、そのほかにも数え切れないほどの人数が伺える。

自分よりも大きな赤い弓を持った銀髪の女性や、つなぎ姿の長身の男、それに続く薄緑色髪の少年。
それだけではない、頭がうろこで覆われ、洋服から出ている部分にもそれは見られ、顔はワニを100倍勇敢にしたような生き物。
耳が常人の二倍はあるのではないかというこの世のものとは思えない美しい女性に、その隣に彼女の腰の位置までもいかないような小さな少女。
この少女も背中から生えている羽を常に震わせて空を浮翌遊していると言う始末で、さすがにその驚きを隠すことなどはリュウキには出来ない。

しかしながら、どこを見回しても黒い髪の人間は見当たらなかった。


「……うわー…仮装大賞じゃないよな…? あれって被り物じゃないのか…?
 って、あの人手が4本あるし…第一…あれは人間と言うべきなんだか?…阿修羅?」


さっきの食堂で話してくれた女性の言葉が蘇る。
竜人と彼女は言っていたが、恐らくあれがそうなのだろうと思える、
岩石を精巧に削って作られたようなとっきに包まれた鎧の姿に、爬虫類特有の細い眼光、その中にも理性がうかがえる。

そんな人たちを凝視しないように努力を続けながら、リュウキはギルド登録の場所を探す。
しかし広すぎる、この空間ではその限られた場所を見つけ出すのは至難のわざと言えるだろう。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 13:58:54.27 ID:pDnoiGA0<>
「お、黒髪なんか珍しいな…あんた、どこの街から来たんだ?」


突然話しかけられ、その方向に振り返るリュウキ。
その方にはリュウキよりも10cmほど小さいくらいの背をした細身の女性が話しかけてくる。
紫の瞳に、グレーの長髪を一つにまとめて結いていて、この世界にリュウキが来てから初めて見る、眼鏡をかけていた。


「どこの街って…ここはイシュタールじゃないんですか?
 俺はそういう街から入ってきたんですけど…でも、ここって俺が入った建物とはなにも類似性がないんですが…」

「…はははは! 面白いことを言うな君は! ここはギルドだよ?
 でもイシュタールからか、中々遠くからご苦労なことだ。
 …しかし、今の発言を伺うに君はもしかしてここに来たのは初めてだったりするのかい?」


女性はその見た目とは想像の付かないような大きな声で笑い、その声に周りの人間(そうではないものの多数いるが)が幾らか振り返る。
リュウキの黒髪を見たのか、そのうちの数人はリュウキのそばにより、会話を聞こうとする。
自らの身長よりも大きな斧を持った女性が、危うく隣の男の肌を切り付けそうになったとかで争いが起きそうになっていたが、
誰も仲介しようとはしないしリュウキ以外は見向きもし<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 13:59:21.89 ID:pDnoiGA0<>「泊まってた宿谷で教えてもらったんですよ。
 ここへ行けば簡単に金が稼げるって。旅費が殆んど(全く)ないので、稼がないといけないかなと思いまして」

「ふむ、つまりはアルバイト感覚でここへ? 君も変わっているというか…
 普通はそんな理由でここへ来るようなやつはいないんだがな…大体が腕自慢のためとか、名誉のためとか…
 あ、でも私も似たようなものだから別に取り上げるようなことでもないかな」

「なるほど…で、さっきの質問の続きなんですけど、ここは一体どこなんですか?
 考え付く限り、イシュタールのどこかではないんですよね?」

「もちろん、ここは…そうだな、君のいたイシュタールがある水の国よりもずっと北、火の国と風の国があるバビロニア大陸よりも北にある、
 四方を海に囲まれた小さな島にあるんだよ。
 どうやってここへ来たのかは、簡単さ、空間移動魔術を使っているんだからな」

「(空間移動か…いい思い出ないな)なるほど、じゃあ、元へ戻るにはどうすればいいんです?
 世界中から繋がっているとするのなら、別の街に言ってしまうってことはないんですか?」

「確かにそれは考えられなくもないが…ないな。君が来たときに、君が通るゲートはイシュタールと連結した。
 それによって君の情報は一時的に登録されているからな。
 だから、君が同じ扉…と言っても出入り口に使われるものは結局は全て同じなのだが、は君の情報を読み取ってもとの街の扉の前に戻してくれる。
 第一、今は戦争やらなんやらで物騒だから、許可なく好き勝手なゲートを開くような真似はいくらギルドでも出来ないさ。
 でも、それくらいは知っていてここへ来たのかと思っていたが」

「いや、全然知らないです。それより…えと…名前は…?」

「私か? 私の名はシェ……クーレネ=ランカスターと言う名だ。
 みんなからはクーと呼ばれているから、君もそう呼んでくれていい」

「クーレネさんか、俺はリュウキ=ラストフレイヴ。
 名もないド田舎出身です」


とっさに考え付いた適当な名前を挙げるリュウキ。
いつまでもこのカタカナの国で青山という苗字ではどうもしっくりこないと思っていた彼は、
思い切って別の苗字を掲示してみたのだ。
彼はこの街に来てから一度も苗字を名乗っていないことにも彼は気づき、これで決定で良いかと勝手に納得してしまう。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 13:59:59.35 ID:pDnoiGA0<>「ははは、自分からそんなことを言うとはな。あ、それと、私は他人に敬語を使うのも使われるのもあまり好きではないんだ。
 それが年上であろうとなかろうとな。だから、リュウキもそんな言葉遣いで話す必要な全くないぞ、私はそうするつもりはないから」

「(結構強引な人だな…)じゃ、いつもどおりの言葉遣いで、俺も…正直言って敬語は得意じゃないから、その提案は快く受けさせてもらうよ」


「うむ、そうしてくれるといい。しかし…ラストフレイヴ…? それはまた有名な…しかし、珍しい…まぁ、黒髪の君に珍しいも何もないか…
 ってやり取りを、察するに何回もしたんじゃないか? 顔がうんざりそうだぞ?」

「まぁ、誰にあってもそんな反応なんでなれましたけど、黒髪が珍しいってのは…
 それに…あ、いいや」

「確かに珍しい、でも、最近一人だけ見たぞ。もしかして知り合いなんじゃないか?」

「はは、それは何があっても全く全然ありえないよ。
 理由は話すと長くなるから省略するけどね(この世界に俺の知り合いがいるかっての)」

「なにもそこまで否定しなくても…だが、その男もリュウキに印象が似ていたものでな。
 背が高くて、何より周囲とは比較にならない二枚目だった。君もその水準からそこまで遜色しないがね」

「…それは…褒めてるってこと?」

「そうだが、表現が足りなかったかな?」

「うーん…まぁいいや…で、そいつの名前とか聞かなかったのかな?」

「いや、少し話してたら何かにつられて歩いてしまってな、名乗らず仕舞いだった。
 しかしリュウキよ、関係ないといっておきながら興味がありそうな素振りじゃないか?」

「まぁ、同じ黒髪としての希薄な仲間意識とでも言おうかな。」


二人の真後ろでは、さっきのいざこざが争いに発展したようで、女性は巨大な斧を片手で持ち、男性は鎖の付いたメイス状の武器を掲げ、
互いに間合いを取りながらじりじりとにじり寄っていた。
その周りには少しの野次馬がいるだけで、他の人間は注意はおろか見ることもしない。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:00:17.99 ID:pDnoiGA0<>
「…あのさ、あれのこと止めなくて良いのか…? 前から思ってたんだけど、あのままじゃ怪我しちまうんじゃ…?」

「あれか? いいんだいいんだ、勝手にやらせておけば。こっちにまで迷惑をかけてくるようなら対処すれば良い。
 というのが、ギルドの基本だぞ、間違っても不用意な助太刀や正義感の誇示はしないほうが身のためだ、感謝されることはあまりないし、
 相手には逆上されることも多いからな。
 ギルドに繰るような奴らは、多少なり腕に自信があるものが多い。だからああやって互いに引かずに争いに発展するわけだ」

「血の気が多いってことか、じゃ、クーの警告に従って傍観することにするよ。
 念のために聞くけど、死人が出たりってことは」

「たまーにあるな、でもそれはご法度だから私がここを出入りするようになってからは4件しかない。
 私が直接見たのは一件だけだが、その時は流石に近くで鑑賞できるような状況ではなかった」


金属音がBGMとなって、広いホールに響き渡る。
それでも、受付に立っている女性はいつもどおり目の前の客に対応していたし、
争いのすぐそばではさっきとなんら変わらず仲間同士で会話を楽しむメンバーの姿も多い。

それが普通なのだとリュウキも察して、ちらちらとその光景を見やることをやめた。


「…あのさクー、ここに来て聞くのもどうかと思うんだけど、どこでギルドの登録をすればいいんだ?
 こう広くっちゃ探すのも一苦労な気が…」
 
「そうなのか、じゃ、あそこの…気色の悪い髑髏マークが光ってる場所に行くといい。
 ギルドに登録しておかないとハントしても報酬が受け取れないからな、登録そのものは簡単だから問題はない」

「ん、分かった。終わったらまた来るから近くで待っててくれ、他にも聞きたいことがあるからさ」

「了解だ、私もイシュタールには用があるからな…と言っても、肝心の用がある場所はギサだが」


クーは光を反射しない紫かかった眼鏡を少し持ち上げる。
その仕種ではっきりとリュウキは、彼女の深い、黒に限りなく近い紫色の瞳が見た。
その色がどの一族を示すのかは彼には分からず、特に注意することでも無いので聞くこともしなかった。

彼女が教えてくれた場所にたどり着く。
遠くで見るより実物はずっと気色が悪く、近づくにつれてそれも分かっていたことなのだが、
虹色配列の大小様々な頭蓋骨がその扉を覆い、おまけに取っ手にまでご丁寧に下顎の骨が歯付きで着いていた。

決して長時間触っていたくないそれを、指二本でつかんで後ろに引く、と思ったら引き戸だったので、横にずらして中に入る。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:00:34.58 ID:pDnoiGA0<>「…お? 初めて見る顔だに〜、と言っても俺がここに住み着いてからだけどに〜」

「あのさコレット、ここはギルドメンバー登録所。普通は初めて来る人しかいないでしょ?」

「もっちろん、んなの分かってるのに〜! 俺の一種の習慣みたいな〜?」

「やれやれ…あれ? そこの少年、そんなに下顎ぶら下げていったいどうしたのかな?」


「………え?だって……何でしゃべってるの? 猫でしょ…君達……?」


「はい〜〜? 俺達が猫だからって喋れないって道理はないのに〜! 
 それに〜〜、俺達のような高貴な生き物を、猫みたいなネボスケと同じにするなに〜! 誇り高きベリアルの一族なんだからに〜」

「ま、その血脈は限りなく薄いけどね。で、もしかして少年は田舎からの出身だったり?
 だったら僕たちみたいな幻獣を見るのは初めてかもね、水の国じゃ幻獣なんてあんまり見ないだろうし」


リュウキの目の前で会話をしている二匹の猫。姿は彼が地球で可愛がっていた猫となんら変わらない姿である、が、見てのとおりの饒舌。
白い身体に茶色と黄色と黒をブレンドした眠そうな顔をした方が、リュウキに近づいていく。
自分の身体くらいの長さのある尻尾をピンと上に張り詰めて、それでも目は半開きのままだ。


「……あは、兄ちゃんの服オークの血のニオイがするに〜? もしかして仕事帰りかに〜〜??
 ちなみに、おれはその匂いが好きなのに〜、物好きって言われるのに〜」

「う〜ん…しっかりと洗ったんだけどな…君鼻いいのね。
 嗅覚って犬の専売特許だと思ったけど、そうじゃないんだ」

「当たり前〜! でもに〜! 俺は君って名前じゃないのに〜〜! ちゃんとコレットって名前があるのに〜!
 そう呼んでもらわないと反応しずらいのに〜」

「あ、そっか悪い悪い…コレットで良いんだよな。で、そっちの真っ白い子は?」

「僕? 僕はミルクだよ、あ、ミルクって名前だからね?
 身体が白いからミルク、単純でしょ?」

「ミルクに、コレットか。俺はリュウキ、しかしな…会話する猫なんて初めて見たよ……」


猫じゃない! っとコレットがいつの間にか上ったリュウキの背中から言っていたが、
下顎を指でくすぐられて満足そうにする様はどう見ても猫そのものだ。

ミルクの方はずっと初期位置から動かずに顔だけをリュウキに向けて話している。
彼の身体に対してずっと長い尻尾だけが、別の生き物のように自由に動いていて、耳を触ったり髭を整えたりしていた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:01:01.85 ID:pDnoiGA0<>
「…うーん…とさ、俺はここにギルドメンバーの登録しに来たんだけど、誰に頼めばいいの?……もしかして君達に…?」

「あぁそうだったに〜!」

「だね、でも、僕たちがギルド登録をしている訳じゃないよ。リュウキの予想通りね…ホントは…仕事しなきゃいけないんだけど……」


ミルクの尻尾が矢印のように後ろのカオス空間を指す。
リュウキにはよく見えなかったのかミルクの隣に歩み寄って、ようやく分かる。


「……ま、言うならば職務怠慢ってやつだよ、この人はレインさん。レイン=ガーフィールドって聞いたことない?
 僕たちのご主人かつギルド登録総監督…ってもこの人しかいないから…総とかはいらないんだけどね」

「レイン…? 聞いたことないな、有名人なの?」

「少し前まではね、今はただの半ニート状態のおっさんだよ」

「ミルク〜、この人全然起きないのに〜! リュウキちょっと待ってに〜こいつを起こす簡単な方法があるからに〜」


そういってコレットが書類の山の中に横たわる男性の頭に座る。それでも起きるような気配は全くなく、もぞもぞと動きもしない。
コレットの尻尾が複雑に動き、耳、髭にいたるまでピンと張られる。
リュウキには彼が何をやろうとしているのかはよく分からなかったが、ミルクが促すようにしてそこから引き離したので、余り安全な方法ではないようだった。
そして、それは間違ってもいなかった。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:01:15.93 ID:pDnoiGA0<>「いっくに〜〜?」

「手加減してよ〜? しっかり空間限定してね?」

「お任せあれ〜! 俺は空間限定は得意分野なのに〜!」


コレットは自信たっぷりでそう言ったが、ミルクは遠くから見つめるだけで、リュウキにだけ聞こえるように呟いた。


「……あれでいつも僕にまで被害が来るんだよ?リュウキもそこにいたほうがいいかもね…」

「…何をしようっていうのさ…?」

「簡単に言えば目覚ましだけど……コレットの起こし方はかなり強引だがら…」

「なん――――」


それ以上をいう前に、轟音を防ぐために両耳を塞ぐ。
ミルクも丁寧に耳を畳んでリュウキの影に隠れて、吹き荒れる風と光を避ける。
リュウキも同じくコートを背にしてそれを耐え抜く。
紙の山は風に吹き飛ばされて、乱反射する稲妻がそれを貫く。


「おはようご主人〜」


一人だけ上機嫌のコレット、コートから顔を出す一人と一匹。
そして、コレットを両手で抱き上げて起き上がる男。


「…あいたたた………もっと優しく起こして…って、ここ職場…?」

「なに寝ぼけたこと言ってるの?さっきまでぐっすり寝ていた見慣れた職場でしょうがここは…」

「…あぁミルク〜…に、コレットと…そっちの男の子は……どなた…?」


むくりとそのカオスから起き上がる、長身の細身の男。
ぼさぼさのくすんだオレンジ色の髪は伸び放題で四方八方に自由に展開していて、鼻から上はよく見えない。

リュウキのすぐそばに行くとその伸長差がよく分かり、リュウキよりも頭一つくらい大きい。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:01:35.62 ID:pDnoiGA0<>
「…おー、もしかして新規登録に来たのかな?」

「はい、リュウキって言います、今ここで出来るって聞いたんですけど…どこにそんな空間が…?」

「まぁまぁ、気にしないで気にしないで、じゃあ登録で良いね?
 ちょっと待ってて…確かこの辺にマニュアルが…」


そう言いながら紙の山をあさって何かを探し始める長身のぼさぼさ男。
山が崩れ落ちてほこりが舞い、それを気にすることもなく続けて新しい山を切り崩す男、
二匹と一人はとっくに非難していて、コレットが案内してくれた辛うじて座れる形を留めたイスと、黄ばんだテーブルに座る。

暫くして、汚らしい青い表紙の本を持って男が現れる、頭には埃の巣が出来ていた。


「はい、これこれ、新規登録をする人なんて珍しくってさ、埃かぶってたんだよ」

「はい嘘つかないでねご主人。一昨日も新規で登録したばっかりでしょ?
 なんで、意味のない嘘をつくかなー?」

「だっけ?…まぁいいや、取りあえず始めるけどいい?
 えっとね…まずは自分の名前を名乗る…と、よし! 僕の名前はレイン=ガーフィールド。本名はもっと長いけど面倒だからこれで良いよ。
 君は…リュウキだね、苗字は?」

「ラストフレイブです」

「…フムフム…よし、登録終了、後はこれを受付に…」


レインは薄っぺらいその冊子をめくって、いきなりそんなことを言い出す。


「…次は…ってはい!? もう終わり? 他に聞くこととかないんですか? 身分証明とか? 
 家族とか国とか?」

「うん、これでお仕舞い。だって、ここはあくまでギルドだし、特別に何か掲示しろって事も書いてないしね」


レインは一枚の紙をリュウキに手渡して、向かい側のイスに座る。
その拍子に髪の上の埃が舞ってコレットがくしゃみをする。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:01:51.88 ID:pDnoiGA0<>「…どう? 簡単で拍子抜けしちゃった?」

「まぁ、こんなに簡単だとは…」

「でも、これで終わりじゃないからね、受付で簡単な身体調査とかあるから、
 登録は終わったってだけだよ」

「リュウキはもっと難しいことを期待してたみたい」

「ん? そんな事ないけどさ…」

「……君さ、ラストフレイブって本姓?」

「え……? あ、はぁまぁ」

「ふーん…じゃああの英雄と同じ苗字な訳だね、羨ましいな…」

「…?」

「え?…もしかして知らないって訳じゃないよね…?」

「…あ、まぁ、知ってますよ! はい」


リュウキはあわてて肯定して、手に持った紙を握り締める。
その光景を不思議そうに、と言ってもぼさぼさの髪からは唇の一部しか覗いていなかったから詳しくは分からないが、
レインは息を大きく吐き出した。


「まぁ、ティラノスだったら誰よりも有名な人物だしね、マーリン=ゾディアック。
 幼名はラストフレイブ=アメストリウス」

「超々々有名人なんだからいちいち確認する必要なんてないと思うんだけどね?
 何十冊も本でてるし、まぁ、殆んどが他人が勝手に解釈した伝記ものだけどね」

「…まぁいいじゃん、ミルク。伝記ってのは読むと楽しいものだよ?
 書く人書く人でまったく解釈が違ってることも多いしね」

「ほらほら、話の路線がずれてるのに〜! リュウキはもうこんなところはうんざりだって顔してるのに〜」

「え!? あ、別にそんなんじゃないって、確かに…綺麗とはいえないけどさここ…」

「…?…そっか! すっかり忘れてた、リュウキは登録に来てたんだったね!
 いやー、マーリンネタは僕大好きでね、ついついそれに近しいことがあるとそっちのほうに話が…」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:02:08.09 ID:pDnoiGA0<>
確かに、レインの部屋…には、大量の書物、書類が燦燦としていて、足の踏み場も一見無い様に思えるほどだが、
そんな場所のごく一部に、整理された棚が一竿、そこには彼が大事にしていた英雄に関する古い蔵書が埃をかぶらずに整頓されている。

その棚から一冊を抜き出して、リュウキの目の前に差し出す。


「ほら、大英雄マーリンについての簡単な書物だよ、古いけど、僕はこれが一番気に入っているんだ。
 文体は少し古臭くて硬いけど、良かったら読んでみるかい? その様子を察するにリュウキはマーリンについて何にも知らないようだし」

「どんだけー、田舎ものにも程があるのに〜…あ、でもさご主人、リュウキは字が読めないかもよ?
 そんだけ田舎じゃ習わないかも…」

「コレットよ、俺は読み書きは出来るんだぜ? そこまで無学じゃないの…(この世界については無学だけど)
 それじゃあ、ご親切に甘えてこれ、お借りしますね。いつ返しに行けば良いですか?」

「うーん…返すのはいつでも良いよ、僕は内容暗記してるし、リュウキが返したいときにどうぞ」


一人と二匹にお礼を言った後、リュウキは再び扉を開く、舞い込んだチリにもう一度だけミルクがくしゃみをして、
コレットがそれに続く。

もう一度、振り返って手を振るリュウキを涙顔で見送ったあとに、その扉はひとりでに閉じられた。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:02:23.38 ID:pDnoiGA0<>「お、思ったよりも時間がかかったみたいだな、で、登録は済んだか?」


銀色の水が放射状に吹き出る時代物の装置の近くに、いつ頼んだのか分からないコーヒーを二つ、片方はもう空で、
一方も冷め切ってしまっている。
そのテーブルにクーが座っていて、飲み終わったそれで手持ち無沙汰にしていた。


「うん、終わったよ。しっかりライセンスも作ってもらったしね。
 もしかして…これ俺に…?」

「あぁ、一応な、まさかこんなに時間がかかるとは思わなかったから…良かったら飲んでくれ、いやなら私が貰おう。
 帯熱魔術を使えばすぐに温かくなるはずだ」

「ありがとう。でも…俺その魔術知らないや、クーがやってくれるか?」

「そうか? じゃあ便利だからここで覚えてしまうのが良いだろう。
 級等はファステンだから、呪文名はこうだ、『レンジ』」


クーがカップを持ってそういうと、すぐさま入れたてのようにコーヒーから湯気が立ち込めてくる。
リュウキの知らない香りのするコーヒーだったが、ブラックのままでも十分に楽しめるくらい苦味の薄いものだった。

一回の説明でリュウキはその魔術を習得し、クーを驚かせた。
その後、お代わりをクーが頼み、それが来るより前に、リュウキが手に持っている本に話題が移る。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:02:40.33 ID:pDnoiGA0<>「珍しいものを持ってるな…それ、180年以上も前の本じゃないか。確か…そうそう、筆者はマクラーゲン=グリステン。
 一体どうしたんだそれ? 図書館でも貸し出し禁止になっているはずだが…」

「あぁ、これさ、レインさんが貸してくれたんだよ、ほら、登録処理の」

「…レイン? 今はそんな名前なのか…私のときとは別だな、私が登録したときはコレットと言う人物だった」

「…? コレット…それって人?」

「当たり前だろう、何を言っているんだか…しかし…よくそんな堅苦しい本を読む気になるな…読書はごめんだ…」


片手では持ちづらいほど分厚いその本を見て、すぐにリュウキに突き返す。
タイトルはかすれて殆んど読むことが出来なかったが、肝心の中身は綺麗なままで、
拍子裏には金の箔押しでこう綴られていた。



『大英雄伝:マーリン=ゾディアックと七人の命友』


その下に、続けてこうある。


『神が殺された日(インフェニア=ヴァンセント)』

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:02:55.63 ID:pDnoiGA0<>「しかしながら…本当に来るとはね…コレットの勘は鋭いと言うか…」

「だろ? しっかし…この姿も楽じゃないに…四足歩行はかくかくする…」

「コレットは不器用なんだよ、ほら僕なんかこんなに緩やかに…あいて」

「ダメじゃん…ところでさ、そこの人どうするの? 眠ってるだけだよに?」

「…さぁ? 抵抗したから反撃したまでだけど、死んではいないんじゃないの? それ」


四色の色が入り混じった髪を持つ青年は、書物の森の中に横たわる、ぼさぼさの髪をして、全身いたるところが赤い物体を見ていった。
それに答えるのは、全身を雪でまぶしたように真白い少年。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:03:09.14 ID:pDnoiGA0<>「…まぁいっか。暫くは俺がレインとして振舞えば良いだけだしに。
 で、どうするのティラ? やっぱり彼のこと[ピーーー]?
 場所は、さっきの本を彼が持ってる限りどこにいても分かるけど?」

「…うーん…どうしよっかね〜…第一さ、今回は俺様のミスが原因なのかも怪しいんだよ?
 地獄との連結も緩かったしさ…人間がジャマしたのもあるし…」

「はいはい、言い訳は良いからさ、だって、彼を殺せは残りは二人でしょ? 
 えっと…残りはシキと…シズクだっけ…?」

「確かね、ん、合ってるよ…でもさー…あっちの世界出身だから探すのも一苦労だよ…ったく。
 ミュトスの方まで人体登録しているわけじゃないし…つーかさ、俺様があれだけ言ったのに…殺したろミルク?」

「…だね…さーてと、暫くはコレット、変装頼むね…ティラが代わりの総監督探しだすまではね…」

「やっぱりやってたんじゃん…手加減しなよ、ミルク…」

「だってさ、ぼさぼさの髪の毛は生理的に無理と言うか…ほら、分かるでしょ…?」

「でも、凄いねこの人の髪、地毛なのかな?」

「知らないよ…俺に聞くなってはなし〜」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 14:04:30.22 ID:pDnoiGA0<>

「よし…善は急げ、さっさとやるか〜…あっちは今空けてきたけど…嘗て無いほど不穏な雰囲気してるし…
 俺様がのんびりして乗り遅れたりするのだけは勘弁だからな…それだけは洒落にならん…
 それまで…頼むよ二人とも、出来るだけ早く代わりを持ってくるから」

「了解、油断しないでね…って…するだけ無駄か…」

「ご心配なく、これでも1600年以上のキャリアがありますから」



水色の髪をした、一人、それに続く二人。


「はーあ、せっかく13人も来たのに…これで残り7人か…」





ティラノス聖霊伝

第十話:遅れてマジですいません

…終わり
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/09(金) 15:02:20.78 ID:jnlZL3Eo<>いかんww
だんだんややこしくなってきたww
俺読解力ねぇww
つまりコレットやミルク、レインはなんなんだ?ww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/09(金) 17:26:36.49 ID:pDnoiGA0<>>>210
ごめんね、俺もよく分からなくなってるかもシレン・・・
いちごミルクとれもんコレットって知らない?
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/09(金) 17:29:59.66 ID:Tjf.D.Eo<>会話ばっかで情景描写みえないから見えてこない<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/10(土) 00:43:06.72 ID:isWlLBko<>もう少し、会話と会話の間になんか描写が欲しかったな……と地味に思った
途中から、場面が想像出来んくなったwwwwww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:00:27.42 ID:.Sgz0aA0<>
修正版、もう一回呼んだら酷い酷い・・・

これで幾らかマシになったかも・・・?

ティラノス聖霊伝

第十話:一人目
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:00:45.96 ID:.Sgz0aA0<>…あれぇー?…これはどういうことなのかな…?」


あまりのことに我を忘れて素っ頓狂な声を出してしまうリュウキ、
彼の目の前に広がっている光景は、小さなあの外観からは決して予測できない巨大な体積。

次元が歪んでいるのか、はたまた何かの魔術なのか、扉の先にはきちんとある種の対称性を持ち、整理された空間が広がっている。
さっきの大男はリュウキの遥か前を歩いていて、そのほかにも数え切れないほどの人数が伺える。

自分よりも大きな赤い弓を持った銀髪の女性や、つなぎ姿の長身の男、それに続く薄緑色髪の少年。
それだけではない、頭がうろこで覆われ、洋服から出ている部分にもそれは見られ、顔はワニを100倍勇敢にしたような生き物。
耳が常人の二倍はあるのではないかというこの世のものとは思えない美しい女性に、その隣に彼女の腰の位置までもいかないような小さな少女。
この少女も背中から生えている羽を常に震わせて空を浮翌遊していると言う始末で、さすがにその驚きを隠すことなどはリュウキには出来ない。

しかしながら、どこを見回しても黒い髪の人間は見当たらなかった。


「……うわー…仮装大賞じゃないよな…? あれって被り物じゃないのか…?
 って、あの人手が4本あるし…第一…あれは人間と言うべきなんだか?…阿修羅?」


さっきの食堂で話してくれた女性の言葉が蘇る。
竜人と彼女は言っていたが、恐らくあれがそうなのだろうと思える、
岩石を精巧に削って作られたようなとっきに包まれた鎧の姿に、爬虫類特有の細い眼光、その中にも理性がうかがえる。

そんな人たちを凝視しないように努力を続けながら、リュウキはギルド登録の場所を探す。
しかし広すぎる、この空間ではその限られた場所を見つけ出すのは至難のわざと言えるだろう。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:01:28.52 ID:.Sgz0aA0<>
「お、黒髪なんか珍しいな…あんた、どこの街から来たんだ?」


突然話しかけられ、その方向に振り返るリュウキ。
その方にはリュウキよりも10cmほど小さいくらいの背をした細身の女性が話しかけてくる。
紫の瞳に、グレーの長髪を一つにまとめて結いていて、この世界にリュウキが来てから初めて見る、眼鏡をかけていた。


「どこの街って…ここはイシュタールじゃないんですか?
 俺はそういう街から入ってきたんですけど…でも、ここって俺が入った建物とはなにも類似性がないんですが…」

「…はははは! 面白いことを言うな君は! ここはギルドだよ?
 でもイシュタールからか、中々遠くからご苦労なことだ。
 …しかし、今の発言を伺うに君はもしかしてここに来たのは初めてだったりするのかい?」


女性はその見た目とは想像の付かないような大きな声で笑い、その声に周りの人間(そうではないものの多数いるが)が幾らか振り返る。
リュウキの黒髪を見たのか、そのうちの数人はリュウキのそばにより、会話を聞こうとする。
自らの身長よりも大きな斧を持った女性が、危うく隣の男の肌を切り付けそうになったとかで争いが起きそうになっていたが、
誰も仲介しようとはしないしリュウキ以外は見向きもしない。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:01:44.50 ID:.Sgz0aA0<>「泊まってた宿谷で教えてもらったんですよ。
 ここへ行けば簡単に金が稼げるって。旅費が殆んど(全く)ないので、稼がないといけないかなと思いまして」

「ふむ、つまりはアルバイト感覚でここへ? 君も変わっているというか…
 普通はそんな理由でここへ来るようなやつはいないんだがな…大体が腕自慢のためとか、名誉のためとか…
 あ、でも私も似たようなものだから別に取り上げるようなことでもないかな」

「なるほど…で、さっきの質問の続きなんですけど、ここは一体どこなんですか?
 考え付く限り、イシュタールのどこかではないんですよね?」

「もちろん、ここは…そうだな、君のいたイシュタールがある水の国よりもずっと北、火の国と風の国があるバビロニア大陸よりも北にある、
 四方を海に囲まれた小さな島にあるんだよ。
 どうやってここへ来たのかは、簡単さ、空間移動魔術を使っているんだからな」

「(空間移動か…いい思い出ないな)なるほど、じゃあ、元へ戻るにはどうすればいいんです?
 世界中から繋がっているとするのなら、別の街に言ってしまうってことはないんですか?」

「確かにそれは考えられなくもないが…ないな。君が来たときに、君が通るゲートはイシュタールと連結した。
 それによって君の情報は一時的に登録されているからな。
 だから、君が同じ扉…と言っても出入り口に使われるものは結局は全て同じなのだが、は君の情報を読み取ってもとの街の扉の前に戻してくれる。
 第一、今は戦争やらなんやらで物騒だから、許可なく好き勝手なゲートを開くような真似はいくらギルドでも出来ないさ。
 でも、それくらいは知っていてここへ来たのかと思っていたが」

「いや、全然知らないです。それより…えと…名前は…?」

「私か? 私の名はシェ……クーレネ=ランカスターと言う名だ。
 みんなからはクーと呼ばれているから、君もそう呼んでくれていい」

「クーレネさんか、俺はリュウキ=ラストフレイヴ。
 名もないド田舎出身です」


とっさに考え付いた適当な名前を挙げるリュウキ。
いつまでもこのカタカナの国で青山という苗字ではどうもしっくりこないと思っていた彼は、
思い切って別の苗字を掲示してみたのだ。
彼はこの街に来てから一度も苗字を名乗っていないことにも彼は気づき、これで決定で良いかと勝手に納得してしまう。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:02:02.54 ID:.Sgz0aA0<>「ははは、自分からそんなことを言うとはな。あ、それと、私は他人に敬語を使うのも使われるのもあまり好きではないんだ。
 それが年上であろうとなかろうとな。だから、リュウキもそんな言葉遣いで話す必要な全くないぞ、私はそうするつもりはないから」

「(結構強引な人だな…)じゃ、いつもどおりの言葉遣いで、俺も…正直言って敬語は得意じゃないから、その提案は快く受けさせてもらうよ」


「うむ、そうしてくれるといい。しかし…ラストフレイヴ…? それはまた有名な…しかし、珍しい…まぁ、黒髪の君に珍しいも何もないか…
 ってやり取りを、察するに何回もしたんじゃないか? 顔がうんざりそうだぞ?」

「まぁ、誰にあってもそんな反応なんでなれましたけど、黒髪が珍しいってのは…
 それに…あ、いいや」


途中まで出てきた言葉を飲み込む、聞きたいことは今までの会話であったのだが、リュウキにはこれ以上無知をさらけ出すほど勇気はなかった。
相手から有名ななどと言われたらなおさらだ。リュウキは全く知らない名でも、こちらでは有名なのかもしれない。
クーはリースとは違う一般である以上、下手に質問を重ねるのは避けたほうがよいと判断した。


「?…黒髪か…確かに珍しい、でも、私は幸運にも最近一人だけ見たな。もしかして知り合いなんじゃないか?」

「…ははは、それは何があっても全く全然ありえないよ。
 理由は話すと長くなるから省略するけどね(この世界に俺の知り合いがいるかっての)」

「なにもそこまで否定しなくても…だが、その男もリュウキに印象が似ていたものでな。
 背が高くて、何より周囲とは比較にならない二枚目だった。君もその水準からそこまで遜色しないがね」


リュウキの顔を見つめて、真顔でそう言い放つクー、そのストレートな言動にリュウキはたじろいでしまう。
生まれてこの方、女性に縁のないリュウキは、そ知らぬ美人に見つめられることには馴れていないのだ。

そう思って、彼はこの星に来てから女性運が限りなく上がったことを実感した。
思い出せばセティ、クーと、美人ぞろいの道への旅路、
これはとてもよい兆候だと内心にやましい気持ちを抱きながらも、さっきの言葉に気取らないで返す。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:02:17.93 ID:.Sgz0aA0<>「………それは…褒めてるってこと?」

「そうだが、表現が足りなかったかな? 黒髪補正がかかっているのかも知れないが…恐らくはな」

「…うーん…まぁいいや…ありがと。でさ、そいつの名前とか聞かなかったのかな?」

「……いや、少し話してたら何かにつられて歩いてしまってな、結局名乗らず仕舞いだった。
 しかしリュウキよ、関係ないといっておきながら興味がありそうな素振りじゃないか?」

「まぁ、同じ黒髪としての希薄な仲間意識とでも言おうかな。」


二人の真後ろでは、さっきのいざこざが争いに発展したようで、女性は巨大な斧を片手で持ち、男性は鎖の付いたメイス状の武器を掲げ、
互いに間合いを取りながらじりじりとにじり寄っていた。
その周りには少しの野次馬がいるだけで、他の人間は注意はおろか見ることもしない。

クーとの会話の途中でもリュウキにはそれが気になっていたのだが、周りの対応と自分とのギャップに悩んでいた。
ついに互いの得物が交差し、独特の、リュウキも最近になって耳にするようになった摩擦音が響く。


「…あのさ、あれのこと止めなくて良いのか…? 前から思ってたんだけど、あのままじゃ怪我しちまうんじゃ…?」

「ん?…あれのことか? はは、いいんだいいんだ、勝手にやらせておけば。
 こっちにまで迷惑をかけてくるようなら対処すれば良いだけの話だからな。
 というのが、ギルドの基本概念だぞ、間違っても不用意な助太刀や正義感の誇示はしないほうが身のためだ、感謝されることはあまりないし、
 相手には逆上されることも多いからな。
 ギルドに繰るような奴らは、多少なり腕に自信があるものが多い。だからああやって互いに引かずに争いに発展するわけだ」

「血の気が多いってことか…しっかし…どっちもいい動きしてるな…あれじゃ軽症じゃ済まないんじゃないか…?
 …クー、念のために聞くけど、死人が出たりってことは…ないよな?」


有り得ないだろうと思い、軽い口調でそう聞いて見るも、クーの返信は思いがけないもので。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:02:38.72 ID:.Sgz0aA0<>「…たまーにあるな、でもそれはご法度だから私がここを出入りするようになってからは4件しかない。
 私が直接見たのは一件だけだが、その時は流石に近くで鑑賞できるような状況ではなかった」


何かを思い出すようにして二人の争いを見るクー、暫くその光景を見た後に、
リュウキにだけ聞こえるような声で、あれとは比較にならないな、そう呟いた。

両者の金属の摩擦音がBGMとなって、広いホールに響き渡る。
それでも、受付に立っている女性はいつもどおり目の前の客に対応していたし、
争いのすぐそばではさっきとなんら変わらず仲間同士で会話を楽しむメンバーの姿も多い。

それが普通なのだとリュウキも察して、ちらちらとその光景を見やることをやめた。

東京ドームほどもあるこの広い敷地のなにもない場所で立ち話をするのもなんだと言う理由で、
クーはリュウキをつれて噴水が聳えるカフェに向かう。

その過程でリュウキはギルドの登録が出来る場所を目で追いながら探していたが、
結局それらしいものは見つからなかった。
それでも、その瞳には初めて見るさまざまなものがあり、太陽系を模したそれ単体で宙に浮かぶミニチュアの模型や、
風景を切り取って保存した、写真に似た大小多彩な水晶を展示している露店。

リュウキの二倍以上の大きさの、かわいらしいハムスターのぬいぐるみ、しかし彼がその身体を触って、むくりと動き出して初めて、
それが生き物だと知った。

噴水に近い四人がけの席に向かい合って座り、何を頼むこともしない。
リュウキはついにクーに登録所の場所を聞くこととした。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:02:50.55 ID:.Sgz0aA0<>「…あのさクー、ここに来て聞くのもどうかと思うんだけど、どこでギルドの登録をすればいいんだ?
 こう広くっちゃ探すのも一苦労な気が…」

「そうなのか、じゃ、あそこの…気色の悪い髑髏マークが光ってる場所に行くといい。
 ギルドに登録しておかないとハントしても報酬が受け取れないからな、登録そのものは簡単だから問題はない」

「ん、分かった。終わったらまた来るから近くで待っててくれ、他にも聞きたいことがあるからさ」

「了解だ、私もイシュタールには用があるからな…と言っても、肝心の用がある場所はギサだが」


クーは光を反射しない紫かかった眼鏡を少し持ち上げる。
その仕種ではっきりとリュウキは、彼女の深い、黒に限りなく近い紫色の瞳が見た。
その色がどの一族を示すのかは彼には分からず、特に注意することでも無いので聞くこともしなかった。

リュウキは来た道をまた戻り、彼女が教えてくれた場所にたどり着く。
彼が見ていた方向とは逆のほうにそれははっきりと登録所と書いてあって、思わず自分に悪態をついてしまう。

それは、遠くで見るより実物はずっと気色が悪く、近づくにつれてそれも分かっていたことなのだが、
虹色配列の大小様々な頭蓋骨がその扉を覆い、おまけに取っ手にまでご丁寧に下顎の骨が歯付きで着いていた。

決して長時間触っていたくないそれを、指二本でつかんで後ろに引く、と思ったら引き戸だったので、横にずらして中に入る。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:03:04.53 ID:.Sgz0aA0<>「…お? 初めて見る顔だに〜、と言っても俺がここに住み着いてからだけどに〜」

「あのさコレット、ここはギルドメンバー登録所。普通は初めて来る人しかいないでしょ?」


リュウキが部屋に入ると、そこは一見ゴミ屋敷にしか見えない風景が広がっていて、
その匂いに思わず鼻をふさいでしまう。

間違いなくいい匂いではないが、立ち込める薄赤色の煙を見る限りだと、一種の御香でも焚いているのだろう。
そう考えると、それらしい匂いに感じるから身体は不思議だとリュウキは思った。

そんな彼の頭上で、二匹の猫が会話をしている。
最初はどこから声がしているのか分からずに、リュウキは辺りを見回していたが、
積み重なった本の塔から降りてきた一匹を見て口をあんぐりと開く。


「もっちろん、んなの分かってるのに〜! 俺の一種の習慣みたいな〜?」

「やれやれ…あれ? そこの少年、そんなに下顎ぶら下げていったいどうしたのかな?」

「………え?だって……何でしゃべってるの? 猫でしょ…君達……?」


そんなリュウキに構うことなく、まだ塔の上にいる一匹に話しかけているブチ猫。
しかし猫と言う単語に反応して、リュウキの方へ振り返って尻尾でリュウキを指す。


「はい〜〜? 俺達が猫だからって喋れないって道理はないのに〜! 
 それに〜〜、俺達のような高貴な生き物を、猫みたいなネボスケと同じにするなに〜! 誇り高きベリアルの一族なんだからに〜」

「…まぁ、その血脈は限りなく薄いけどね。で、もしかして少年は田舎からの出身だったり?
 だったら僕たちみたいな幻獣を見るのは初めてかもね、水の国じゃ幻獣なんてあんまり見ないだろうし」

「…そうなんだ…いや、なまじ見慣れた生き物だから余計ギャップがね…」


リュウキの目の前で会話をしている二匹の猫。姿は彼が地球で可愛がっていた猫となんら変わらない姿である、が、見てのとおりの饒舌。
白い身体に茶色と黄色と黒をブレンドした眠そうな顔をした方が、リュウキに近づいていく。
自分の身体くらいの長さのある尻尾をピンと上に張り詰めて、それでも目は半開きのままだ。

先に降りてきた一匹が、なれなれしくリュウキに近づき、全身をこすり付けるように彼を周る。
そしてリュウキのコートに鼻を押し付けて、気持ち良さそうにのどを鳴らす。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:03:29.21 ID:.Sgz0aA0<>「……あは、兄ちゃんの服オークの血のニオイがするに〜? もしかして仕事帰りかに〜〜??
 ちなみに、おれはその匂いが好きなのに〜、物好きって言われるのに〜」

「…う〜ん…しっかりと洗ったんだけどな…君鼻いいのね。
 嗅覚って犬の専売特許だと思ったけど、そうじゃないんだ」

「当たり前〜! でもに〜! 俺は君って名前じゃないのに〜〜! ちゃんとコレットって名前があるのに〜!
 そう呼んでもらわないと反応しずらいのに〜」

「あ、そっか悪い悪い…コレットで良いんだよな。で、そっちの真っ白い子は?」


リュウキが見上げた本の塔の上には、さっきの白い猫は見当たらず、いつの間にかリュウキのコートの中にお邪魔しているその一匹は、
顔だけを出してリュウキを見上げる。


「…僕? 僕はミルクだよ、あ、ミルクって名前だからね?
 身体が白いからミルク、単純でしょ?」

「確かに…見たまんまだな…ミルクに、コレットか。
 俺は…名乗るべきかはワカランけど、リュウキって言う。しかしな…会話する猫なんて初めて見たよ……」


猫じゃない! っとコレットがよじ登った塔の、高さはリュウキの肩の位置で、言っていたが、
下顎を指でくすぐられて満足そうにする様はどう見ても猫そのものだ。

ミルクの方は、リュウキのコートに移動してからはその初期位置から一向に動かずに、顔だけをリュウキに向けて話している。
彼の身体に対してずっと長い尻尾だけが、別の生き物のように自由に動いていて、耳を触ったり髭を整えたりしていた。


「…うーん…とさ、俺はここにギルドメンバーの登録しに来たんだけど、誰に頼めばいいの?……もしかして君達に…?」

「あぁそうだったに〜!」

「だね、でも、僕たちがギルド登録をしている訳じゃないよ。リュウキの予想通りね…ホントは…仕事しなきゃいけないんだけど……」


リュウキの中から抜け出て、本の上を駆け上がったミルクの尻尾が、矢印のように後ろのカオス空間を指す。
初めは何を指しているのかリュウキにはよく見えなかったが、ミルクの隣に歩み寄って、ようやく分かる。

机の上に突っ伏している一名の姿が。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:04:12.21 ID:.Sgz0aA0<>
「……ま、言うならば職務怠慢ってやつだよ、この人は……レインさん。レイン=ガーフィールドって聞いたことない?
 僕たちのご主人かつギルド登録総監督…ってもこの人しかいないから…総とかはいらないんだけどね」

「レイン…? 聞いたことないな、有名人なの?」

「少し前まではね、今はただの半ニート状態のおっさんだよ…多分」

「…ミルク〜、この人、やっぱり全然起きないのに〜! リュウキちょっと待ってに〜こいつを起こす簡単な方法があるからに〜」

「あ、やっぱり起きないか…」


そういってコレットが書類の山の中に横たわる男性の頭に座る。それでも起きるような気配は全くなく、もぞもぞと動きもしない。
コレットの尻尾が複雑に動き、耳、髭にいたるまでピンと張られる。
リュウキには彼が何をやろうとしているのかはよく分からなかったが、ミルクが促すようにしてそこから引き離したので、余り安全な方法ではないようだった。
そして、それは間違ってもいなかった。


「いっくに〜〜?」


その男の真横から、リュウキたちに聞こえるくらい声を張り上げてコレットが言う。
一人と一匹はそこからだいぶ離れた位置に非難して、声だけで返す。


「…頼むから手加減してよ〜? しっかり空間限定してね?」

「お任せあれ〜! 俺は空間限定は得意分野なのに〜!」


コレットは自信たっぷりでそう言ったが、ミルクは遠くから見つめるだけで、リュウキにだけ聞こえるように呟いた。


「……あれでいつも僕にまで被害が来るんだよ?リュウキもそこにいたほうがいいかもね…」

「…何をしようっていうのさ…?」

「簡単に言えば目覚ましだけど……コレットの起こし方はかなり強引だがら…」

「なん――――」


それ以上をいう前に、轟音を防ぐために両耳を塞ぐ。
ミルクも丁寧に耳を畳んでリュウキの影に隠れて、吹き荒れる風と光を避ける。
リュウキも同じくコートを背にしてそれを耐え抜く。
紙の山は風に吹き飛ばされて、乱反射する稲妻がそれを貫く。

耳をふさぐタイミングを一瞬取り違えたリュウキは身体の心まで響き渡る、
黒板を引っかく音を100倍酷くした騒音に顔をゆがめていた。
ミルクは上手くそれを防いでいて、 リュウキのコートがそれに一役買っていた。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:04:29.48 ID:.Sgz0aA0<>「おはようご主人〜」


一人だけ上機嫌のコレット、コートから顔を出す一人と一匹。
そして、コレットを両手で抱き上げて起き上がる男。


「…あいたたた………もっと優しく起こして…って、ここ職場…?」

「なに寝ぼけたこと言ってるの?さっきまでぐっすり寝ていた見慣れた職場でしょうがここは…」

「…あぁミルク〜…に、コレットと…そっちの男の子は……どなた…?」


むくりとそのカオスから起き上がる、長身の細身の男。
ぼさぼさのくすんだオレンジ色の髪は伸び放題で四方八方に自由に展開していて、鼻から上はよく見えない。

リュウキのすぐそばに行くとその伸長差がよく分かり、リュウキよりも頭一つくらい大きい。


「…おー、もしかして新規登録に来たのかな?」

「はい、リュウキって言います、今ここで出来るって聞いたんですけど…どこにそんな空間が…?」

「まぁまぁ、気にしないで気にしないで、じゃあ登録で良いね?
 ちょっと待ってて…確かこの辺にマニュアルが…」


そう言いながら紙の山をあさって何かを探し始める長身のぼさぼさ男。
山が崩れ落ちてほこりが舞い、それを気にすることもなく続けて新しい山を切り崩す男、
二匹と一人はとっくに非難していて、コレットが案内してくれた辛うじて座れる形を留めたイスと、黄ばんだテーブルに座る。

広い部屋なのだろうが、散らばった書類と本の山のせいでだいぶ小さく見えてしまう。
本が一室を迷路のように複雑にしていて、
暫くしてからレインが、汚らしい青い表紙の本を持って男が現れ、頭には鳥の巣みたいな埃山が出来ていた。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:04:43.90 ID:.Sgz0aA0<>「…はい、これこれ、新規登録をする人なんて珍しくってさ、埃かぶってたんだよ」

「はい嘘つかないでねご主人。一昨日も新規で登録したばっかりでしょ?
 なんで、意味のない嘘をつくかなー?」

「だっけ?…まぁいいや、取りあえず始めるけどいい?
 えっとね…まずは自分の名前を名乗る…と、よし! 僕の名前はレイン=ガーフィールド。本名はもっと長いけど面倒だからこれで良いよ。
 君は…リュウキだね、苗字は?」

「ラストフレイブです」

「…フムフム…よし、登録終了、後はこれを受付に…」


レインは薄っぺらいその冊子をめくって、いきなりそんなことを言い出す。
耳に大工のようにして取り付けていた何の鳥のものか分からないペンを手に取り、
必要な項目にサインをする。


「…次は…ってはい!? もう終わり? 他に聞くこととかないんですか? 身分証明とか? 
 家族とか国とか?」

「うん、これでお仕舞い。だって、ここはあくまでギルドだし、特別に何か掲示しろって事も書いてないしね」


レインは一枚の紙をリュウキに手渡して、向かい側のイスに座る。
その拍子に髪の上の埃が舞ってコレットがくしゃみをする。

少ししわのある一枚の紙を手渡されて、座っていた席を思わず立って、
間違いなのではないかとミルク、そしてコレットを交互に見渡すリュウキだったが、二匹の回答はそろって首を縦であった。


「…どう? 簡単で拍子抜けしちゃった?」

「まぁ、こんなに簡単だとは…この髪を見る限りだと間違ってもいないみたいだし…」

「うん。。でも、これで終わりじゃないからね、受付で簡単な身体調査とかあるから、
 登録は終わったってだけだよ」

「リュウキはもっと難しいことを期待してたみたい」

「ん? そんな事ないけどさ…」


ぼさぼさの髪を掻き揚げて、それでも目が見えないくらいに伸びたそれをくしゃくしゃにするレイン。
その仕草にミルクは顔をゆがめてリュウキの後ろに退避して、再び顔を出したときには、
レインがリュウキに質問を投げかけるために髪をいじるのをやめてからだった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:04:59.34 ID:.Sgz0aA0<>
「……君さ、一応聞くけど、ラストフレイブって本姓?」

「え……? あ、はぁまぁ」

「ふーん…じゃ…あの英雄と同じ苗字な訳だね、羨ましいな…」

「…?」


ちょうど、紙を持って部屋を後にしようと、再び席を立ったリュウキが、振り返って首をかしげる。
クーにも似たようなことを言われていたことを、彼はすでに忘れていた。


「え?…もしかして知らないって訳じゃないよね…?」

「…あ、まぁ、知ってますよ! はい」


リュウキは、よくわからないが取りあえず肯定して、手に持った紙を握り締める。
その光景を不思議そうに、と言ってもぼさぼさの髪からは唇の一部しか覗いていなかったから詳しくは分からないが、
レインは息を大きく吐き出した。


「…まぁ、ティラノスだったら誰よりも有名な人物だしね、マーリン=ゾディアック。
 幼名はラストフレイブ=アメストリウス」

「超々々有名人なんだからいちいち確認する必要なんてないと思うんだけどね?
 何十冊も本でてるし、まぁ、殆んどが他人が勝手に解釈した伝記ものだけどね」

「…まぁいいじゃん。伝記ってのは読むと楽しいものだよ?
 書く人書く人でまったく解釈が違ってることも多いしね」


テーブルからミルクが不満そうな声を上げて、それに穏やかにレインが話しかける。
その話題になにも興味のないコレットは、宙に舞う大きな埃を懸命に追っかけている途中で、猫らしからぬ情けない姿を晒していた。

ようやくして、埃をしとめるのに飽きたコレットは、少しばかりうんざりそうなリュウキの表情を読み取って、
たて続けに熱心に歴史の有名人の名前を羅列しようとしているレインのことを諌めた。


「ほらほらご主人、話の路線がずれてるのに〜! リュウキはもうこんなところはうんざりだって顔してるのに〜
 こんな場所に長く居たい人なんていないのに〜汚くってありゃしないのに〜」

「え!? あ、別にそんなんじゃないって、確かに…綺麗とはいえないけどさここ…」


どこで触ったのか、黒く汚れてしまった自分の手のひらを叩いて綺麗にしようと努力しつつも、
全くその効果が得られないリュウキは苦笑いしかできなかった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:05:29.83 ID:.Sgz0aA0<>「…?…そっか! すっかり忘れてた、リュウキは登録に来てたんだったね!
 いやー、マーリンネタは僕大好きでね、ほかにも、アルトリア、モルガナ、ソロ、クロノス、ガウェイン…
 ついついそれに近しいことがあるとそっちのほうに話が…」


確かに、レインの部屋…には、大量の書物、書類が燦燦としていて、足の踏み場も一見無い様に思えるほどだが、
そんな場所のごく一部に、整理された棚が一竿、そこには彼が大事にしていた英雄に関する古い蔵書が埃をかぶらずに整頓されている。

その棚から一冊を抜き出して、リュウキの目の前に差し出す。
とても古めかしい外見の、分厚い書物。


「ほら、大英雄マーリンについての簡単な書物だよ、古いけど、僕はこれが一番気に入っているんだ。
 文体は少し古臭くて硬いけど、良かったら読んでみるかい? その様子を察するにリュウキはマーリンについて何にも知らないようだし」

「どんだけー、田舎ものにも程があるのに〜…あ、でもさご主人、リュウキは字が読めないかもよ?
 そんだけ田舎じゃ習わないかも…」

「コレットよ、俺は読み書きは出来るんだぜ? そこまで無学じゃないの…(この世界については無学だけど)
 それじゃあ、ご親切に甘えてこれ、お借りしますね。いつ返しに行けば良いですか?」

「うーん…返すのはいつでも良いよ、僕は内容暗記してるし、リュウキが返したいときにどうぞ」


一人と二匹にお礼を言った後、リュウキは再び扉を開く、舞い込んだチリにもう一度だけミルクがくしゃみをして、
コレットがそれに続く。

もう一度、振り返って手を振るリュウキを二匹は涙顔で見送ったあとに、その扉はひとりでに閉じられた。



<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:05:44.11 ID:.Sgz0aA0<>「お、思ったよりも時間がかかったみたいだな、で、登録は済んだか?」


銀色の水が放射状に吹き出る時代物の装置の近くに、いつ頼んだのか分からないコーヒーを二つ、片方はもう空で、
一方も冷め切ってしまっている。
そのテーブルにクーが座っていて、飲み終わったそれで手持ち無沙汰にしていた。


「うん、終わったよ。しっかりライセンスも作ってもらったしね。
 もしかして…これ俺に…?」

「あぁ、一応な、まさかこんなに時間がかかるとは思わなかったから…良かったら飲んでくれ、いやなら私が貰おう。
 帯熱魔術を使えばすぐに温かくなるはずだ」

「ありがとう。でも…俺その魔術知らないや、クーがやってくれるか?」

「そうか? じゃあ便利だからここで覚えてしまうのが良いだろう。
 級等はファステンだから、呪文名はこうだ、『レンジ』」


クーがカップを持ってそういうと、すぐさま入れたてのようにコーヒーから湯気が立ち込めてくる。
リュウキの知らない香りのするコーヒーだったが、ブラックのままでも十分に楽しめるくらい苦味の薄いものだった。

一回の説明でリュウキはその魔術を習得し、クーを驚かせた。
その後、お代わりをクーが頼み、それが来るより前に、リュウキが手に持っている本に話題が移る。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:06:06.50 ID:.Sgz0aA0<>「珍しいものを持ってるな…それ、180年以上も前の本じゃないか。確か…そうそう、筆者はマクラーゲン=グリステン。
 一体どうしたんだそれ? 図書館でも貸し出し禁止になっているはずだが…」

「あぁ、これさ、レインさんが貸してくれたんだよ、ほら、登録処理の」

「…レイン? 今はそんな名前なのか…私のときとは別だな、私が登録したときはコレットと言う人物だった」

「…? コレット…それって人?」


登録所に居た猫と同じ名前を言われて、とっさにそう言い返してしまうが、
よく考えるとそんな事は有り得ないと思いもした。


「当たり前だろう、何を言っているんだか…しかし…よくそんな堅苦しい本を読む気になるな…読書はごめんだ…」


片手では持ちづらいほど分厚いその本を見て、すぐにリュウキに突き返す。
タイトルはかすれて殆んど読むことが出来なかったが、肝心の中身は綺麗なままで、
拍子裏には金の箔押しでこう綴られていた。



『大英雄伝:マーリン=ゾディアックと七人の命友』


その下に、続けてこうある。


『神が殺された日(インフェニア=ヴァンセント)』


「まぁ、俺はそこまで読書嫌いじゃないし、俺よりも好きそうな連れが居るしな」


本を閉じたリュウキとクーは、昼間の一時を他愛ない会話で過ごして、
特に特別なフラグは立たなかった。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:06:26.28 ID:.Sgz0aA0<>
「しかしながら…本当に来るとはね…コレットの勘は鋭いと言うか…」

「だろ? しっかし…この姿も楽じゃないに…四足歩行はかくかくする…」


やり難そうに歩くブチ模様の猫、それに冷ややかに言い返す真っ白なもう一匹。


「コレットは不器用なんだよ、ほら僕なんかこんなに緩やかに…あいて」

「ダメじゃん…ところでさ、そこの人どうするの? 眠ってるだけだよに?」

「…さぁ? 抵抗したから反撃したまでだけど、死んではいないんじゃないの? それ」


さっきまで文句を言っていた二匹の猫はそこにはもう居なく、
四色の色が入り混じった髪を持つ青年が、書物の森の中に横たわる、ぼさぼさの髪をして、全身いたるところが赤い物体を見ていった。
それに答えるのは、全身を雪でまぶしたように真白い少年。

細い手足をよく伸ばして、猫のような伸びをして八重歯がちらつく。


「…まぁいっか。暫くは俺がレインとして振舞えば良いだけだし。
 で、どうするのティラ? やっぱり彼のこと[ピーーー]?
 場所は…さっきの本を彼が持ってる限りどこにいても分かるけど?」


四色髪の青年は、二本足ですっくと立ち上がり、その空間に新たに現れた水色の髪を持つ女性に問いかける。
困ったような声を出しているその女性は、乱立する塔を崩さないように行ったり来たり。
顎を触りながら、それに答える。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:06:47.49 ID:.Sgz0aA0<>「…うーん…どうしよっかね〜…第一さ、今回は俺様のミスが原因なのかも怪しいんだよ?
 地獄との連結も緩かったしさ…人間がジャマしたのもあるし…」

「はいはい、言い訳は良いからさ、だって、彼を殺せは残りは二人でしょ? 
 えっと…残りはシキと…シズクだっけ…?」


真白い少年がそっけなく女性のほうを向いて、ばつが悪そうに女性が視線をそらす。
四色の髪の少年が真白い少年の隣へ着き、構ってもらいたそうに動き回るが、それを適当に払いのける。


「確かね、ん、合ってるよ…でもさー…あっちの世界出身だから探すのも一苦労だよ…ったく。
 ミュトスの方まで人体登録しているわけじゃないし…つーかさ、俺様があれだけ言ったのに…殺したろミルク?」

「…だね…さーてと、暫くはコレット、変装頼むね…ティラが代わりの総監督探しだすまではね…」

「やっぱりやってたんじゃん…手加減しなよ、ミルク…」


ぼさぼさの髪をしたそれを横目で、うんざりした表情をしたままコレットと呼ばれた四色の髪の青年が言う。
それに無表情のままで、弁解するようなそぶりも見せずにミルクと呼ばれた間白い少年が答える。


「だってさ、ぼさぼさの髪の毛は生理的に無理と言うか…ほら、分かるでしょ…?」

「でも、凄いねこの人の髪、地毛なのかな? でもよ、俺様の面倒も考えてくれないかね?
 どうするんだよ…ま、暫くはお前たちにここを監視してもらうつもりだからいいけどさ…」

「ぼさぼさの髪のことなんて…俺に聞くなってはなし〜
 それより…暫くここにいろってマジ…?」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:07:05.13 ID:.Sgz0aA0<>それに答えることなく、水色の髪の女性が真っ黒な、足元まですっかり隠れるコートの麓を払う。
殆んど全開の前方からは本来見られるはずのふくらみは殆んど見られず、
黒のコートの下は至って普通のシャツ一枚という軽装。
彼女は意を決したような顔で、ずっと顎に当てていた右手を下ろし、二人に向かって言う。


「よし…善は急げ、さっさとやるか〜…あっちは今空けてきたけど…嘗て無いほど不穏な雰囲気してるし…
 俺様がのんびりして乗り遅れたりするのだけは勘弁だからな…それだけは洒落にならん…
 それまで…頼むよ二人とも、出来るだけ早く代わりを持ってくるから…まぁ、結構時間かかるかもしれないけどな」

「了解、油断しないでね…って…するだけ無駄か…」

「ご心配なく、これでも1600年以上のキャリアがありますから」



水色の髪をした、一人、それに続く二人。


「はーあ、せっかく13人も来たのに…これで残り7人か…」


両手を組んで頭上で伸ばし、大きく息を吐きながら、水色の髪をした女性は、姿を消し去った。



ティラノス聖霊伝

第十話:最初の一人

…終わり<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/10(土) 19:07:36.87 ID:.Sgz0aA0<>多分これでいいと思われる。

じゃ、また。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/10(土) 19:12:09.20 ID:EjUV15Yo<>すごい・・・・・すごいよ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/11(日) 21:29:10.12 ID:iVjyvQgo<>すげーなおい……分かり易くなった……<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/12(月) 14:44:41.12 ID:Hn4kVSwo<>ティラが現れた辺りがちょいアレだが
幾分良くなったなww
乙ww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/12(月) 20:02:04.02 ID:pys2Xbw0<>相変わらず描写がうまくて羨ましいぜ
どうでもいいんだが、つなぎに反応したのは自分だけだろうかwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/13(火) 07:19:06.62 ID:S57mcwDO<>つなぎの男と緑髪の〜ら辺?
俺は緑服って見間違えて某ヒゲ兄弟がうかんだww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/13(火) 11:00:31.47 ID:CAvrs.Q0<>>>239
そうそうその辺り
阿部さんもあれだけど、ヒゲ兄弟がいるティラノスってのもなんかシュールだなww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:24:31.63 ID:AN0HTGA0<>

マーク模試簡単すぎ高得点うめぇwwwwwwwwwwww


・・・続き書くよ。






ティラノス聖霊伝

第十一話:英雄

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:24:46.15 ID:AN0HTGA0<>今から遠い、遠い大昔。まだ、太陽が一つしかなかったときの物語。



ティラノスの神様はとても困っていました。
神様の悩みの種は、私たち人間の先祖でした。
人間は、神様の手塩にかけて作った星を、自分たちの都合のいいように破壊して、作り変え、
ティラノスに住む他の生き物たちのことは一切考えずに、やりたい放題をしていました。

神様はそのたびに上手いこと解決策を編み出してきましたが、何度も過ちを繰り返す人間にとうとう
我慢の限界が超えてしまいます。

そこで、神様は簡単な結論に達します。間違っていたのは自分だったのだと。
自分が未熟だったから、ティラノスのような失敗作が出来てしまったのだと。

そして決めました。
一度全てを壊してから、新しい世界を作り直そう、と。
砂場で新しい砂のお城を作ろうと思ったら、前に立ててあったお城は壊さなくてはいけません。
神様も同じことをすることにしました。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:25:05.86 ID:AN0HTGA0<>しかし、神様も一人で星を壊すのは大変です。
だから、自分の身体を使って、三人の戦う神様を作り出しました。


地上を司りし、自然を操る神様『フェミン』

天空を司りし、時空と法律の神様『ぺスティレンス』

地獄を司りし、生と死の神様『デス』


彼らは神様の命令どおりに、ティラノスの破壊を行うようになります。

これが、後に『大粛清』と呼ばれるものです。

最初は、人間たちは神々に抵抗を見せました。
彼らだけではなく、エルフ、ドワーフ、ドラゴン、妖精族、ティラノスに住む多くの生き物が三闘神の侵略を阻止しようとしました。

しかしながら、所詮は神が創った土塊が昇華された程度の存在の彼らが、三闘神に勝てるはずもありませんでした。
一年が経ち、二年が経ち、そして、十年が経った頃、もうティラノスに抵抗をしようと思うものはいなくなっていました。

人間は、自分たちの過ちを悔いるだけで、みんなが口をそろえて、神の裁きを受けよう、と
言い出す始末。
司祭は新たな世界での転生を民衆に説き、前もって自ら死を選ぶものも少なくありませんでした。


世界はもはや絶望の奥底で、住む生物みんなが、いつか来る、そして、決して遅い日ではない終わりの日に脅えていました。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:25:39.90 ID:AN0HTGA0<>

…そんな時でした。

ティラノスに蔓延る絶望にも負けずに、そのコブシを天に掲げる二人の若者が居たのです。

海のように青い蒼髪を靡かせ、闇のように黒い瞳をした、ラストフレイブ=アメストリウス。
朝焼けの様な紅髪を靡かせ、同じく漆黒の瞳をした、アルトリア=エクスカリス。


彼らは時代が遣わした使者だったのでしょうか?
絶望、苦しみ、悲しみ、憎しみ、恨み。
それらの感情も、彼らには通用しませんでした。

そして言います、世界はまだ終わってはいないと。
自分たちは神様の失敗作かもしれないけれど、それでも今日まで懸命に生きてきた。
確かに正しいことばかりをしてきたわけじゃない、でも、大人しく滅びを受け入れるのが真実なのか?

二人は小さな村の出で、世間知らず。
しかし、正義を思う心は誰よりも強い青年でした。

でも、彼らに耳を傾けるものは殆んど居ませんでした。
それほどまでに、世界は病んでいたのです。


フレイブと、アルトリアは、たった二人だけで戦いに望みます。
勿論、普通の人間よりは強靭な肉体とは言え、三闘神の呼び出す悪魔、天使には敵いません。

フレイブとアルトリアは、数百を殺し、数千を斬り、
それでも、無限大の宇宙のごとく戦う敵は生まれてきました。


ついに命の危機にまで追い詰められたとき、その場所は、奇しくも彼らが立ち上がった故郷の村の廃墟。

二人は全身血まみれで、魔翌力も底をつき、しかし眼光だけは微塵にも衰えない、
だが、彼らには絶望的なまでに力が足りません。

アルトリアが気を失い、フレイブは魔術を唱えることも出来なくなります。
ここで終わりなのか、跡形もなくなった故郷の真ん中で、彼は頬に涙を感じます。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:26:20.82 ID:AN0HTGA0<>そして、フェミンの槍の如き爪が彼を引き裂こうとしたとき、
月の輝く空の果てから、一人の女性が、舞い降りてきたのでした。


彼女の名は『リリィ』


夜空を照らす月のように純白の髪を持ち、この世のものとは思えないほどに神秘的な、そして美しい人でした。

凄まじい力で二人の窮地を救った彼女は、彼らに言います。

世界はまだ終わってはいないと、まだ出来る事がある。
ティラノスは、滅びなど望んではいない、神様がどうした? 世界を終わらせるような奴が、神様と呼べるのか?
君たちは、そんな神様の命に従うのか? と。


彼らの返答は聞くまでもありませんでした。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:27:04.70 ID:AN0HTGA0<>リリィは、彼らに神様と戦うための力を授けます。

とある古びた神殿にそれはありました。

想像もつかないほどに、巨大な剣でした。
かつて見たことがないほどに、不思議な輝きを放ち、一度見れば白く、眼を話して再び見れば紫に、
一度として同じ色にはならないその輝きの前に、二人を心を震わせます。

これこそが、神を倒すことの出来る唯一の力だと、リリィは言いました。

これを引き抜いたものは、世界を救う資格を持つもの、嘗て、神様自身が創り上げた世界の本質。

石柱に突き刺さったそれを、まずはアルトリアが引き抜こうと言います。
自分のほうがラストフレイブよりも背が高く、力がある、自分のほうが引き抜ける可能性があるだろうと。


もちろん、フレイブは了解します。


しかし、いくら力を込めても剣はびくともしません。
いい加減疲れきってしまったアルトリアは、フレイブにバトンタッチをします。

フレイブは、自分のほうが魔術の才があるから、もしかしたら引き抜けるかもしれないと。

もちろんアルトリアそれに了解します。

しかし、ラストフレイブがいくら剣に力を込めても、いっこうに動くことはありません。

二人は深く落ち込んでしまいます。
自分たちには、世界のために戦う資格がないのではないかと。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:28:48.26 ID:AN0HTGA0<>「そして、この物語は大きな世界の流れへと進んでいくのです。
 っと、はい、これで今日のお話はおしまい」

「えー! もうおしまいなの!? もっと続きを読んでよお兄ちゃん!」


夕陽が町を薄暗く照らし、町の人も殆んど姿を見せない。
そんなさびしい場所に、少しの人だかりが出来ている。
そこにいるのは、みんなが小さな子供たちで、大きくても十歳に満たないであろうその場の中心にいるのは、
本を広げて座っている、長身のとてもハンサムな男。

そんな彼に、一番大きな男の子が、赤い夕陽のような髪をした少年が、ハンサムな男に続きを催促します。


「まぁ待つんだ少年、君の妹はもうお疲れで寝ちゃってるぞ?
 小さい子はこれ以上の長話には耐えられないの。明日は、俺じゃないかもしれないけど、
 続きを読んであげるから今日はみんなと一緒に帰るんだな」


彼は立ち上がって本を閉じ、少年の髪を優しくかき乱してそう言う。
しぶしぶそれを了承した夕陽色の髪の少年は、同じ明るさの髪を持つ、まだ小学校にも行ってないくらいの小さな妹を連れて、
たくさんいる友達と一緒に夕陽に近づいた街を帰っていった。

たった今まで本を読んであげていた、黒髪のハンサムな長身は、最後の一人が見えなくなるまで送った後、ふぅ、と息を漏らす。


「…あーあ…俺は何をやっているんだ…? あっちの世界に帰る方法は全くわからねぇってのに、毎日毎日子供たちの前で読書とは…
 これをしないと泊まる宿も無いってのはいささかなさけない気もするけどよ…」

「まっ、それも今日か明日までのことだと思うわよ?
 あの人の具合ももう良くなってると思うし、それに…面倒だと言う割には貴方結構楽しそうじゃない?」

「…だから、耳元でいきなり話しかけるなって…」


がっくりと肩を落として、子供たちとは反対方向に足を運ぶ男。
その首には、赤と黄色に輝く、今は夕陽に照らされて殆んどが赤く染まった綺麗な石のついた首飾りを着けている。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:29:23.35 ID:AN0HTGA0<>「おっ、おつかれさん、シキ君。本当にいつも悪いねぇ、私が足を骨折しなければ君に頼むこともしなかったんだけどね。
 でも、ほら、歩いても殆んど痛くないんだ、これで明日には私が本を読んで上げられると思うよ。
 添え木も取ってしまおうかな…」

「気が早いんじゃないですか? 
 まっ、俺は止めませんけどね」

「はは、やっぱり明日はずすことにしようかな?
 シキ君が子供たちに本を呼んであげたいみたいに見えるしね」

「……。気にしないでいいっすよ、ローエンさん。
 俺たちだって、宿を探さないといけないときにここに泊めてもらって感謝してます。
 こちとら一文無しで生活してきたんで…」


そういうシキに、ローエンと呼ばれた初老の男は微笑んで、に添え木をしている左足を軽々と運んで、シキに座る場所を開ける。
その手作りのソファにシキはゆっくりと腰を下ろして、手に持っていた分厚い本をもとあった場所に戻す。
絵ばかりの子供向けの本がその本棚の殆んどを占めていたが、一部だけ、とても読めない難しい内容の書籍が顔を覗かせていた。

『浪費された英雄〜隠された歴史の中で〜:ファウレン=オックスフォード著』『真実の悲しみ〜英雄から外された魔女〜:スタンレー=ハーヴァード著』
『相対空間魔翌力密度に対する魔法力学の矛盾と、その修正点。改訂版:ロード=ケンブリッジ著』
『人類の限界とその含蓄魔翌力の臨界点〜セラ級の魔術は果たして詠唱破棄可能か?〜:リスト=イエール』など。

そんな専門的な知識を問うような本を手に取るものの、シキはすぐに飽きてもとの場所に戻してしまう。
シキのそんな態度に、殆んど色素が抜け落ちてしまった赤い髪をして、枯れ枝のようにほっそりとした、ローエンは、にっこりと微笑んで、
さっきまで自分が読んでいた、式が開いたらすぐに棚に戻してしまうだろうと思われるそれを開いた隙間に埋めて、言う。


「そういえば、シキ君は魔術を知らないんだったね。
 何かと不便じゃないのかい?」

「うーん…確かに、最近はそう思わざるをえないですね…でも、ちょうどいい機会があったのでそれも解決しそうです」

「何よ? 私はいい機会だっていうのかしら?」


シキの胸のポケットから、二人の男性のものとは違う高い声が不満を交えた口調で言う。
しかしその抗議をシキは全く気にすることなく、ローエンのほうを向いたまま会話を続ける。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:29:43.63 ID:AN0HTGA0<>「今日は何にします? そろそろ材料がなくなりそうなんで調達しないとならなくなりそうですけど?
 それより、ローエンさん、どうしてこんな森の中に住んでるんすか?
 不便と言っちゃあローエンサンも相当不便じゃないですか…
 近くにそれほど大きくも無いけど、ちゃんとした街があるって言うのに」

「もう長いことここに住んでしまったからね、不便にもとっくに慣れてしまったのさ」


そんなもんなんですかね? シキが呟き、そんなものだよと優しくローエンが呟く。

暫く、ソファで身体を休めた後に、再び腰を上げて、シキはキッチンのほうへ向かう。
シキはキッチンに吊るしてあるロープから、だいぶそのたるみがなくなってしまうほどに少なくなってしまった材料をはずす。
どの動物のものか分からないソーセージをまな板に乗せて、今日収穫されたものらしいキャベツに似た野菜と一緒に適当な大きさに切り分けながら、
何度もいっていたことを繰り返し、同じようにして言う。
それでも、ローエンの回答は決まりきったものと変わらない。


「はは良いんだよ、気を使わなくても、私はここが気に入っているからね、
 もうこんな歳だし、街に移り住んで迷惑をかけたくも無いんだ」

「そうは言いますけど、ローエンさんあの町で人気者なんですから誰も反対なんてしませんよ?
 今日までで七回、あの街行ってますけど、まだローエンさんの身を案じる人がたくさんいるんだし、
 それに、貴方の足の怪我だって治せる人がいるに違いないでしょう?」

「うーん…私はこんな歳だからね…もう治癒魔術はむやみに使ってもらえないよ、身体に負担がかかってしまうからね。
 でも…いい匂いだな…流石は一流シェフだね」


立ち込めるハーブと、スパイスの匂いに頬を緩めて、ローエンはシキの言葉を遠くへ飛ばしてしまう。
シキもその話題を無理につづけようとはせずに、もっと大きな街で、
食材を豊富に使えたらこれとは比べ物にならないくらい美味しいものを作れますよ、とだけ言った。


「はは、私には過ぎた贅沢かもしれないな…」

「何いってるんですか…贅沢でも何でもありませんよ。
 でも、ローエンさんがここから動かないって言うなら、俺が無理に言う必要もない気がしますし、
 これ以上は言及しないことにしますね」

「それはありがたいな…はは、でも、そこまで遅くはならないと思うよ?」

「…遅くって、何が遅くなるんですか?」

「……そうだったな…はて、何が遅くならないんだっけかな?
 いやだなぁ、歳を取るのは、何も思い出せやしないよ…」

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:30:03.88 ID:AN0HTGA0<>
「…はぁ…」


夕食も終わり、いつものように何もすることが無く、ベッドに横になってため息をつく。
地球にいた頃はこの時間にはテレビを見たり、音楽を聞いたり、友人と連絡を取りあったりしていたものだが、
ここではそんなことをしていたという思い出だけしか残っておらず、
科学的な電球さえもここには無く、月の明かりだけが窓から怪しく床を照らす。


「…あの時は…確かに居たはずだったんだけどな…」


胸に光っている首飾りを手に取りながら、そう呟く。
その声にこたえるものは誰一人としていない、勿論、シキもそれを望んで言ったのではない。


「…シズク…ったっけな…あの子。
 俺にこの首飾りをくれて、その後俺はこのよく分からないティラノスとか言う異世界に来ちまった。
 こりゃあ偶然で片付けるには出来すぎだって…それに、あのギルドで見た、黒いコートで全身を包んでたあいつ、
 俺には見間違えも無い…名はずなんだけどなぁ〜…やっぱり見間違えただけなのかな〜…」


シキは、一度話したり、名前を聞いた人物の顔を記憶する術にとても長けており、
さかのぼると幼稚園のときの同級生の顔さえもほぼ正確に記憶している。
その記憶力の良さは人物にのみ働き、例えば教科書の暗記や人の話していることを覚えることは苦手であった。

しかし、現在シキの絶対的に自信のあったその能力を彼は疑っていたのだ。
現在から5,6日前のこと、シキはアマルナにて自由に歩き回っていたとき、偶然、何の気なしに入った扉の先が、
ギルドへ直通するゲートだったのだ。

何も聞いていなかった彼はもちろん困惑し、見るもの見るものに純粋な反応を見せて争いに巻き込まれてしまいそうだったのだが、
その時眼鏡をかけた女性に仲裁してもらい、この場所『ギルド』について教えてもらったのだ。


「…あー…思えば、俺…あの人の名前も聞かないで行っちゃったんだったな…
 もう会うことは無いかもしれないけど…悪いことしちまったかな〜…」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:30:27.39 ID:AN0HTGA0<>ギシリと大きくきしむベッド、彼がその大きな身体を起こし、窓のほうへ歩いていったためだ。
地球にいるときに見ていた月よりもだいぶ大きな、この世界での月を見た。

手を伸ばせば届いてしまうんじゃないかと錯覚するような、でも、伸ばしたところで届くはずは無い。
窓に腰掛けて、さっきの記憶を続きから掘り起こす。

ギルドで彼が見たのは、紛れも無くシズクそのものだと思っていた。
服装は違えど、後ろで束ねられている黒髪、この世界に来て常識外れに鋭くなったシキの視力でようやく見える位置に彼女は立っていた。
もちろん、助けてくれた女性に見えるはずも無い、しかし、彼は彼女のことを考えるよりも先に身体はその方向へ動いていた。

その速度は次第に速くなっていって、彼はとうとうその姿を目前に捉えていた。
しかしながら、彼が見た人物はシズクとは似ても似つかない女性で、いきなり肩をつかまれて驚いているばかりだった。
普段ならここで争いにでもなってしまうのだろうが、彼の容姿が幸いしてそういうことにはならずにすんだ。


「…ここで、手持ち無沙汰にしている場合じゃないよなやっぱり…
 でも、ここで俺に何が出来るって言うんだ? 魔術なんて何も知らねぇし…
 知り合いにでも合えればな〜…絶対あれがシズクだと思ったんだけどな〜…」

「そうね、間違ってはいないと思うけど…?」

「…あ、またお前かよ…いちいち俺についてくるのは良いけど、何の前触れもなしに話しかけないでくれよな。
 俺は人語を喋るネズミに会った事なんて…あ、一匹いるけど、殆んど無いんだからよ。
 不意に耳元で囁かれると驚くのなんのって…」

「そうかしら? 私はそこまで尖った声を出した覚えは無いけど?」


シキは自分の肩に乗った、スリムな身体に、黄金色の体毛をしたネズミにうんざりしたように話しかける。
そのネズミは長いまつげとひげを忙しく動かしながら、穏やかな、高く通った声で話す。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:31:02.86 ID:AN0HTGA0<>「そうじゃなくてだな、何て言うか、あんたの存在自体が俺には驚きの連続なわけでよ〜
 この世界に来てからそんなことばっかりだし、一人でたそがれる時間くらい俺に与えてくれよ」

「…全く…心外だわ〜…貴方、まるで私が化け物みたいなそぶりじゃない?
 確かに言語を操る齧歯目は珍しいかもしれないけど、貴方みたいなデリカシーの無い発言をする人間のほうが
 よっぽど珍しいと思うわ。私はこれでもレディなのよ?
 それに、ローズって名前があるのを前にも言ったはずよね? シキったらそうやって私をあんた呼ばわりして…」


金色のネズミ、ローズと呼ばれたそれは怒ったように両手を組み、とはいえ短いその腕では上手く形になっていなかったが、
シキの耳元で語調を荒げる。
彼はというと、そんな彼女の発言を面倒くさそうにさえぎって、
肩に立っている彼女の身体を優しく両手で包み、自分の目の前に連れて来る。

手の中で暴れまわるローズのことをしっかりと捕まえて、深く輝く彼の黒い瞳が
意地悪そうに歪む。


「レディって言う割には…こうやって俺が捕まえたときの反応は世間一般のネズミと何も変わらないけどな?
 ローズが自分のことをレディって自覚してるなら、もう少し落ち着いて入れるんじゃないのか?」

「ちょっと! 貴方は持ち方がなっていないわ!! こんな不安定な足場じゃ落ち着けるわけ無いじゃない!
 最初に、指の隙間を開けないで、私の手と足がその隙間に落っこちちゃうわ。
 次に、そんなに強引に頭を撫でないで、私はそういう赤子を触るような仕草をされるのは侵害も甚だしいわ」

「あー、はいはい。じゃ、ここに座って話してくれよ。
 今夜は月が綺麗だぜ? 昨日も同じくらい綺麗だったけど」


そういって自分のしたいように愛でていたローズのことを自分がさっきまで腰掛けていた場所に下ろしてやる。
ローズは丁寧に毛づくろいをして、不器用な男ねとシキに向かって怒鳴ったが、
彼のハンサムな顔は微塵にも歪むことなく、笑顔でその発言を流す。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:31:22.21 ID:AN0HTGA0<>暫く二人で夜空を見ながら、これまでのことをシキは思い出しているのだろうか?


彼女とシキが出会ったのは、彼がギルドに迷い込んだ後、しずくを探してよく分からない扉を開けると、
登録未判定というアナウンスと共に最初にいたはずのアマルナではなく、また森のど真ん中に連れて来られてしまった。

シキは途方にくれてまた林中を歩き回っていて、見たこともない、と言っても彼はこの世界において
見たことが無いものが殆んどなのでその表現はおかしいのだが…。
その森で彼は、高校生活で唯一、リュウキに勝つことが出来た教科である得意な世界史の知識の中にも、
当てはまらない不思議な建造物を見つけた。

バロックでも、ロココでも、ゴシックにも類似性を全く見出せず、
古代に残されたボロブドゥールや、アンコールワット、パルテノン神殿とも違う。

最初から人間が住むことを目的として造られていないようなその建造物。
円形のアーチが前方に聳え、その先に大理石のような光沢のある六角形の床。
その各頂点からは同じ質感の、上に伸びるにしたがって直径が広くなっていく奇妙な柱が立っていて、
天井は初めから造られていないようで、太陽の光をもろに受けて光を反射している。

その中心には複雑な呪文が羅列してあり、もちろんシキが読めるようなものではない。

そこで、彼はローズに出会ったのだ。
彼女は神殿で行くあてもなくとりあえず一眠りをすることにした、まるで緊張感、危機感の欠如したシキを見つけ、
いつもは自分しか訪れない場所に見たこともない人間がいることに驚いた。

勿論、彼女はそこで寝そべることはしないが、自分だけの場所を取られたような気になったのか、
彼のことを追い出そうとシキの耳を噛み付いたのが始まり。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:31:36.59 ID:AN0HTGA0<>以来共に行動をしているわけだが、そこに絆と言うものは無いに等しいと感じられる。

シキは別に自分の服の中にいても重くないし、自分がこの世界の人間ではないと言っても変な顔をしなかった彼女を
気に入っているから一緒にいる。
ローズはいい加減森での生活に飽き飽きしていたし、この男についていけば自分で歩かなくてもいい、都合のいい足だと解釈している。

その他にも二人を近づけた要因はあるのだが、それは重要なことではないだろう。

ローズは幻獣の一種で、その一族の名を『リーフ』と言った。
幻獣の中でも太古の生き物として存在し、遥か昔の知識を携えて今を生きているといわれている、
ベリアルやアトラス、ケルベロスと同列に解釈されるその生き物は、長い歴史の中でその数を減少させていた。

そのために、生まれながらにして一人であった彼女は、同じ言葉を話せる仲間が欲しかったのかもしれないし、
先に書いた理由だけかもしれない。
シキも、一人で心細かったと言えなくも無いだろう。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:31:59.34 ID:AN0HTGA0<>「…なぁ、ローズ」

「どうしたの? 急に神妙な顔して、貴方には似合わないわよ?」


月を見ていたその身体をひねって、同じく月を見ているローズの方を向くシキ。
珍しい彼の表情に、ローズはそっけなくそう言った。


「いやさ、今改めて考えると、ローズはどうして俺が『この世界の住人じゃない!』って言っても変な顔しなかったのかなって。
 不用意にそんな発言をする俺も俺だけどさ、普通頭がおかしいんじゃないかとか思ったりしない?」

「そうね、でも…貴方のことを見れば見るほど、あ、言っとくけど外見のことじゃないわよ?
 内面よ、そう…貴方の中に流れる魔翌力の、異質さってところかしら?」

「…そんなこと分かるのか? 人間と会うのは俺が初めてなんだろ?」

「…そうだけど、根本的に貴方は違うのよ。私みたいな幻獣はね、人間が見えない、感じることの出来ない
 部分に敏感に感じることが出来る生き物なのよ。これは私たちだけの特権と言えるかしら。
 貴方がいる場所だけ、この世界とは別物に感じてならないのよ」


ローズはシキの顔を見つめてそう言った。
シキはそんな彼女の琥珀色の瞳を見つめて、そんなもんなのかと呟いた。

彼は窓際から離れて、古臭くも決して居心地の悪くは無いベッドに横になる。
その時にローズはシキの手から肩に登っていって、一緒になってベッドにもぐりこむ。

シキの長い手足ではそのベッドは少し小さく、足先が出てしまっていたが、それに気にすることも無く
大きく伸びをして布団を取り出す。

ローズに強く当たらないように上手く力を入れてそれを自分と彼女にかける。
枕を都合のいい位置に調節して、再び大きく伸びをする。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/14(水) 08:32:12.47 ID:AN0HTGA0<>

「あぁ…あー…なんとなく眠くなったから布団に入ったけど、ローズは?」

「私も同じよ、本来私の睡眠時間は貴方よりも長いんだから、くあぁ…念のために言っておくけど、
 その大きな腕で、私のことを押しつぶさないように気をつけてね?」

「あぁ、一応気にしといてやるよ。じゃ、また明日な」

「…えぇ、あの人の足はもうよくなっているでしょうから、明日かあさってにでも、新しい場所に行きましょ?
 私はあそこにいってみたいわ、『炎の湖』に。火の国の観光名所で、ずっと行きたかったの、でも、こんな姿じゃ遠出は無理だったし」

「場所が分かるならな、俺はこの世界のこと何にも知らないからよ」


シキがそう言った後、ローズはすぐに眠りに落ちてしまった。
その丸まった大福のような彼女を微笑みながらシキは見る。
昔親友の家にもいたハムスターととても似ていたからだ。
それが幻獣とはとてもおかしな話だったが、彼もまた、彼女のように身体を丸めて夜の眠りについたのだった。



ティラノス聖霊伝

第十一話:英雄

…終わり

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/14(水) 13:15:11.83 ID:v7kEFfco<>もふもふと喋るハムスターかわええのう<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/14(水) 14:56:48.93 ID:kPid58co<>居眠りして耳をねずみにかじられるってそれなんてドラえm<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/14(水) 17:17:12.27 ID:UG7PLcoo<>乙

ちなみに神の単位は「柱」<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/22(木) 19:21:07.36 ID:mtMdffco<>青龍乙
伏線いっぱい!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/24(土) 21:22:57.42 ID:/G3Pg5Yo<>今日で十日間音沙汰なしか…
なんかあったんかな?
ちょっと心配<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/24(土) 21:50:38.85 ID:POIM08Yo<>確かに・・・
まぁ受験生だから忙しいんだろう<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/24(土) 22:36:30.71 ID:HZTHjAAO<>模試とかかな…
この時期は全統記述とか駿台記述とか色々あるし

身体壊さない程度に頑張れよな青龍〜
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/25(日) 13:11:18.81 ID:98NUy2AO<>そうなのか…大変なんだな受験は。
経験したことないからわからないww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/25(日) 18:45:39.19 ID:.Ovvrz20<>すまん、心配かけてたか?

今日模試受けてきたから明日から続きかけると思う。
五月に風ひいて死んでたってのもある・・・
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/25(日) 21:27:58.59 ID:CNKEhEAO<>さては記述模試を受けてきたな??
俺の友達もうけてたよ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/25(日) 22:46:23.41 ID:XFxUuESO<>青龍乙!
無理はするなよ
ゆっくりでいいからな!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/27(火) 20:25:52.75 ID:TNxke/U0<>もう全快したか? 体調悪かったら無理しないでゆっくり休めよ!<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:45:53.14 ID:.NQgOvs0<>
遅くなって本当に申し訳ない。
不定期更新でさらに申し訳ない。

・・・しかも今日歯医者とかもうね・・・orz




ティラノス聖霊伝

第十二話:依頼


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:46:12.88 ID:.NQgOvs0<>朝の日差しが開きかけの窓からフローリングの床を照らし、それによって白く輝いている。
傷だらけなのは否めない決して綺麗ではないその部屋に、分厚い本を広げるリュウキが一人。


(…あれだな…アーサーとか、マーリンとかが出るからてっきりそっち系の神話と繋がってると思ったけど。
 名前が同じだけで全く違うストーリーなわけか。それにしても読んでみると中々面白いな…)


「なぁリュウキ」


(…マーリンとアルトリア、そしてモルガナ…それを導くリリィなる女性…
 これはアニメ化決定か? アニメといえば…らき☆すたの二期あっちで始まってないだろうな…)


「なぁリュウキ…」


リュウキは昨日借りた黄ばんだ本を半分くらいのページで広げて、数分に一回の間隔でページをめくる。
普段あまり本を読まないので何回かページを行ったり来たりを繰り返しながらも、他にやることが無いのでここまで進んでいるのだ。


(…それにしても…二人の使ってる剣って…俺が持ってるやつと似てるような気がするな…
 本に書かれてることだけだと少し曖昧だけど…まぁ、俺自身が中二病的存在だから幾らか類似点があってもおかしくないか…)


「おいこら、いつまで俺のことをシカトしてるんだよ!」

「ん? あぁ、リースか」
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:46:31.52 ID:.NQgOvs0<>四度目で、むかっ腹の立ったリースは語調を強め、リュウキの目の前までずんずんと進んでくる。
そんな彼女にリュウキは本から視線を外して、紫色が抗議の形に変わるのを見る。


「あぁ…じゃないだろ!? 昨日の午後からずっとそればっかり読んでよ!
 俺たちの目的はそうじゃないでしょうが! ギザに行かなくちゃいけないんだろ!?」

「全く…自分の目金に合った本が無かったからって、そうやって自分勝手なことばっか言いやがってよ…
 第一な、ギザからアマルナ行きまでの空間転移装置が点検中なんだから、暫くここにいるしかないって旨は昨日ちゃんと話しただろ?」


ギルドでクーから手に入れた情報は、一字一句違わずにリースに伝えられたのだが、彼女はどうも納得できていないようだった。
勝手に出て行ったのはリースで間違いないのだが、彼女の欲しかった本はイシュタールには存在しなく、
加えてリュウキがいかにも楽しそうなギルドと言う組織に遊びに行ったと聞いては、イライラは募るばかりな様だ。


「俺はしっかりの自分の目で見ないと納得できない性質なの!
 それにリュウキだってそのクーとか言う闇の一族の女の子と信用してもいいのかよ?
 フランドールから来ましたなんてやつは俺は胡散臭くて胡散臭くて…」

「クーのことを悪く言うんじゃない、あったことも無いくせに批判はよくないぜ?
 自分の目で判断するならクーのこともそうするんだな」


そう言い放ち、リュウキはまた本に視線を落とす。
リースは全く納得している様子は無かったが、何も出来ることが無いのは認めざるをえないようで、
それでもリュウキだけが暇をつぶせているのにはどうも面白くない、そう考えているみたいだった。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:46:46.31 ID:.NQgOvs0<>
「その本面白いのかー? なあなあ、どんな内容なの?」

「…おいリース、俺は見れば分かるように読書中なわけだが?」

「いいじゃん、で、どんな内容なのさ! タイトルだけは読めるんだけど…俺その話読んだことないんだよね〜
 最近まで字も読めなかったからそれも仕方ないんだけどさ」


リースは沈黙の時間が大嫌いで、リュウキが一人で楽しんでいるのも我慢ならない。
わざとリュウキが読書にいそしめないように隣に座り込んで、表紙を許可なくめくったり、
昨日も聞いたような質問を々投げかけたりしている。

その姿はとても17の少女が行うようなことではないのだが、リュウキはそれを指摘すれば間違いなく読書を続けることができなくなってしまうだろうと言うことは、
ここ数日で彼が観察した彼女の性質を考えると容易に想像がついたので、
うーとかあーとかやる気の無い空返事をストックして、それをアトランダムに返答するだけだった。


「ちょっと俺にも読ませろよ! 自分ばっかり楽しみやがって!」

「そうは言ってもな〜、リースじゃ難しすぎてまだ読めないと思うぞ?」

「じゃあ最初から音読してくれよ!」

「はいはいわろすわろす。もう半分過ぎたから俺が読み終わったら貸してやるよ。
 それまで持ってきた魔術書でも読んどけばいいだろ? まだ半分も進んでないだろうし」

「でも俺読めないかもしれないんじゃないの? だったら待ってても意味無いじゃんか!
 それに! こんな室内でマヴレイン級魔術の練習なんかしたら部屋がどうなることやら…
 基本的に禁止されてるんだぞ! マヴレイン級以上の魔術を街中で唱えるなんてことは!」

「そうなんだ〜知らなかったよ。じゃあ昼寝でもしてるんだな」

「んな時間の無駄できるか!」


初めはリースのうざったい質問攻めにも華麗なスルースキルをもって対応していたリュウキだったが、
当初はすぐに飽きると踏んでいたリースは勢いを衰えることなく口を開く。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:46:59.83 ID:.NQgOvs0<>「なーなー、外行ってなんかしようよ〜! こんなところで暇してたら身体にコケが生えちゃうだろ?」

「んなことないない、世間では同じ席に一週間位じっとしてても気合で(ネトゲで)狩りとかしてる廃人がいるんだぜ?
 ましてやこんなに日のあたりがいい部屋にいてコケが生えるなんて…」

「違う違う違うー!! 俺が言いたいのはそういう現実的なことじゃなくてだな!!
 じっとしてないでせっかくの機会なんだから街の観察をだな…!」

「でもよ、昨日は朝っぱらから俺のことを置いて好き勝手に一人歩きしていたのはリースじゃないか?
 朝起きたら置手紙なんて妙なことしてさ」

「…道に迷って…気づいたら知らない場所に…」

「…あぁ…なる…」


田舎の村出身のリースには仕方の無いことかもしれないのだが、彼女にはそれを除いても決定的に
地理感がかけてしまっているのだ。

リュウキと一緒にイシュタールまで来るときでも、リースの指す方角に従ったら間違いなく行き止まりが、良くて無限ループ。


リースがしおれたような声を出して、ついにリュウキは読書を諦め、黄ばんだそれをベッドに横たえる。
自分の願望がかなったリースは大げさにもう読書はいいのかとリュウキに問いかけて、
そうしながらも外へ行く準備をしている。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:47:16.99 ID:.NQgOvs0<>
「…俺は読書はやめたけど、外へ行くなんて一言も言っていないんだけどね?
 聞けよおい、外へいく気満々か? どこへ行くんだよって話…」

「どこでもいいじゃん! ギルドのメンバーになったんだろ? なんか仕事でもこなせばいいじゃないか!!
 俺も手伝うし、そら、早くしないと日が暮れちまうぜ!」

「…こんな大きい街に経験ゼロの俺を雇う懐の大きい奴なんかいないだろ…
 そうじゃなくても戦争中でギルドの風当たりはきついって言うのによ…」


そんなリュウキの言葉に耳を貸すこともなく、リースは上着を着こんでドアを開ける。
階段を駆け下りる音がだんだんと小さくなり、リュウキは諦めたように大きなため息をつく。

五大元素がバランスよく存在する水の国では、一年を通して春のような天候が続く住みやすい国で、
服装をとやかく考える必要があまり無いのは、リュウキにしても都合が良かった。
セティから頂いた代えの服をリースの巨大バックから取り出して、自分のサイズとぴったりなのに驚く。

水色の刺繍が施された、通気性を重視した動きやすいそれのボタンを外す。
形状はワイシャツと同じなのだが、襟は折り返していない。
似たような模様の入ったズボンもリュウキの寸法とあっていた。
思い返せば、セティがリュウキの着ていた服を捨てていなかったことを考えると、これは誰かのお古ではなく、
彼のために造られたものだと言うのは、流石に気づかざるを得ず、彼女の笑顔を懐かしく思い返しながら、彼もまた階段を下りる。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:47:28.19 ID:.NQgOvs0<>「なぁ、外へ出たのはいいけどさ、仕事ってどうすればもらえるんだよ?
 一人一人聞いてくわけじゃないだろ?」


何も持たずに行ってしまったと思ったリースは、右手にしっかりと本を携えて、隣を歩くリュウキに問う。


「掲示板があるらしいんだよな〜、聞いた話によると。酒場とか、大広場とかに」

「そこに書いてあるって言うのか?」

「うん。契約条件、ギルドの内容、雇い主の名前が簡潔にな。
 それを持ってこのライセンスと一緒に委託所にいけばいいとか。試してないから他にも必要なことがあるのかもしれないけどな」


リュウキは地味な光沢性のある、図書カードのようなそれをリースに見えるように取り出してそういう。
リースからはそんなんで大丈夫なのか? と、自分から引っ張り出しておいて心配そうな発言をしていたが、
二人の会話が尽きるよりも前に、目的の場所に着いた。


「未成年だから仕方ないけど、酒場って入るの初めてだな〜。無論酒なんか飲んだこと無いけど、美味しいのか?」

「…経験から言って…あんなものはドリンクとは言わないな。
 気分も悪くなるし、味も大してよくない…加えて、俺はアルコールに強くないからな」

「あー、酔っ払いやすいってことね、姉貴も少し入っただけで顔がりんご見たくなって面白かったな」


それと引き換えバンガイは樽ごと飲んでも平気そうだといった後に、リースは一足先に掲示板に駆け寄っていく。
ピンで留められた大小さまざまな大きさ、色の紙は赤・白・青・黄・緑、真新しいものからだいぶ古ぼけたものまで多種多様で、
幾重にも層を成しているそれのせいで、元の掲示板が何色なのかも分からない。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:47:44.66 ID:.NQgOvs0<>「んー…かなりたくさんあるけど、汚い字で読めないのもあるな。
 …っと、あれなんか霊語で書いてあるぜ? リュウキ読めたりしないよな?」

「あ、これって霊語っていうんだな…無理だ、何が書いてあるのか検討もつかない…」


地球で雫が読んでいた本に書かれていた文字とどう形状をした時で埋め尽くされたその紙を手に取り、すぐに元に戻す。
リュウキたちのほかにもそれを読もうと試みて断念した人がいたらしく、紙の上のほうはピンの穴だらけだった。

リースは自分でも読める丁寧な字で書かれたものや、タイプされているものを中心に探して、時々分からない単語をリュウキに聞いていた。
因みに、リースが同じ単語について二度聞くことは今まで一度も無く、リュウキが彼女に読み書きを教える場面も少なくなっていた。


「これなんかどうだ? 経験問わず、面接で判断ってあるぜ?」

「…内容は…お、魔物の討伐か、これなら俺たちでもこなせそうだな。面接で判断ってことは、あまりに危険なことでもなさそうだし。
 そっそく持っていってみるか?」


同じ事が書かれた赤いその紙は何枚か同じピンで留められていて、複数の人物を必要としていることは容易に伺えた。
二人はその中の一枚をとって、委託所に足を運ぶ。
酒場で何も頼むことをしなかったので店内からは不満の声が聞こえたが、二人は聞こえないふりをして、
反対側に立つ小柄な建物に入っていく。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:48:02.22 ID:.NQgOvs0<>「おい、どうかしたのかリュウキ?」

「え、あ…普通だなぁと思ってさ。別のところに飛んで行ったりしないし」

「リュウキの考えてる普通って…普通じゃないんじゃないか?
 ドアを潜ったら別の場所なんて、有り得るはず無いだろが…」

「…(こいつもギルドに連れて行ったらどんな反応したのかな…いっか)そうなんだけど…まぁ…
 んで…委託所って行っても結構人いるんだな。てっきりみすぼらしい場所かと思ったのに」

「だよな、委託所ってもイシュタールでここだけじゃないんだろうし、
 酒場に来た人限定だから…リュウキ、紙かして、後ライセンスも」

「…まさかリースが聞きに行くのか?…あぁ、大丈夫か。はい、これ。
 何かあったらすぐに読んでくれよ、あそこで待機してるから」


リュウキがイスが立ち並んだ場所を指差して、リースはうなずく。
その後ライセンスとさっきの紙を受け取って、単身で受付に行ってしまう。
どうしてまた一人で、とリュウキは疑問に思ったりしたのだが、世間知らずの彼女は、何かと新しい経験を求めているのだろうと思ったりした。
そうは言っても、リュウキは腰掛けたイスでくつろぐようなことはせずに、リースが助けを読んだらすぐに駆けつけられるようにずっと彼女のほうを向いていた。

暫くした後、リュウキの心配は杞憂のものとなり、リースは鼻高々にさっきの紙と引き換えに、羊皮紙の書類を一枚、
左手で躍らせながらリュウキのそばに駆け寄ってきた。


「お疲れさん、どうだった? 上手くいったのか?…て、その顔見ればおおよその見当はつくけどな」

「おうおう、まっこれを見てくれよ。マーティン=クラーレンって言う人の屋敷に今日の午後7時だってよ。
 面接に来る人全員に夕食を振舞ってくれるそうだぜ?」

「…だな、書いてあることはそのことについてと、マーティンさん宅までの地図くらいか…
 面接に合格したら仕事内容を詳しく教えてくれるんだろうな。
 今何時か分かるかリース…?」

「さっき受け付けの人に聞いたら午後の3時だとよ。あと4時間暇なんだけど、何して暇をつぶす?」


委託所を出て、書類にさらっと目を通しながら、二人は時間までこの商業区で時間をつぶすことに決めた。
時間つぶしといっても、リュウキは全く持ち合わせがなく、リースもお目当ての魔道書は昨日一通り回っても見つからなかったようなので、
おもにウインドウショッピングをするに留まった。

ギルドでも真新しいdものは多く見てきたリュウキだったが、この商業区で売っているものはギルドのそれとは比較にならないものばかりで、
ペットショップでは羽の生えた小人『妖精』や、頭部が二つある鳥がかごの中で美しい声色を奏でていて、
驚かされたのだが、そこに張ってある金額のラベルを見て、破格の値段にさらに驚いた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:48:18.71 ID:.NQgOvs0<>「…150000って…どのくらい高いんだ…?」

「…知らないよ…でも、確か俺が住んでた村の一年の収入額と同じくらいだった気がする…」


次に素材店に入ると、龍の牙や、不死鳥の羽、漫画やゲームの世界のアイテムがごく普通に陳列されている様はなにかシュールで、
リースは何も買わないといいつつも、羽毛ネズミの尻尾を買っていた。

その他にも鎧専門店や、武器が大量に飾ってある店。リースが昨日入った魔道書専門店やリュウキも見たことがある生活品を売ってある店。
それらを見ていて、リュウキは今までで一番大きなため息をつき、隣にいるリースを驚かせた。


「いきなりどうしたんだよ? 竜がため息をついたのかと思ったじゃないか…」

「…恐らくこれまでで…いや…これからも、俺がここまで金を持っていないことに後悔したときはないと思う…」

「…何か欲しいものでもあったのか? だったら俺に言ってくれりゃあいいのに、
 おごるとは言わないでも、貸すくらいなら構わないって…」


そんなリースの気遣いも、今のリュウキにはたいした効果も無く。


「…女に…加えて年下の奴に金を借りるなんて真似は…これ以上は俺には出来ない…
 はぁ…思い返せば宿代もリースに出してもらってる俺って…ひも…?」


誰にも聞こえないように、心の中で思っていた言葉が、残念ながら口に出ていた。



そして、時間も過ぎて、夜を迎える。
温暖な気候といえども、太陽が海の果てに沈んでしまえば流石に肌寒い。
二人は一旦宿谷に戻って、リュウキはぼろぼろのコートを、リースは自分の髪の色とは対照的に真っ黒な上着を羽織る。


「なんだよ、黒魔導師のつもりか?」

「は? なんだよ、クロマドウシって…?」

「あ、そっか…なんでもない…」

「?」<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:48:36.09 ID:.NQgOvs0<>こんな時間に外出と言うことで、受付の人に聞いてみたところ、今晩の食事代金は免除してくれると言ってくれ、
お世辞にも金銭的に余裕があるとはいえない二人は大変感謝をする。

綺麗な月を背に、リュウキが前を歩いて目的の場所に向かう。
この街は治安がよいと言われているとはいえ、いくらなんでも丸腰で歩き回ることは出来ないので、
とりあえずいつでも剣を使えるように首飾りを手の中に潜めておく。

リースはと言えば、こんな闇夜でも灯火魔術を使いつつ読書をいそしむ勉強熱心ぶりで、
リュウキが知らない魔術も多く扱えるようになっている様子だった。




「…委任状を確認しました。ギルドから御越しになられたリュウキ=ラストフレイヴ様ですね?
 …そちらの白髪の女性は…?」

「連れのリースといいます。別に仲間がいても構いませんよね?」


屈強なガードが門を守護しているあたり、相当の地位にいる人物であることは容易に想像がついた。
その洋館の外観は中世のルネサンスを思い出させるような厳かな造りで、それでいて古ぼけたようなイメージを受けることも無い。

そこを護っている門番の一人が、リースのことを見てリュウキにそう問う。それに対して何気なく返答して、
門番か特にリースのことを留めようとすることもせずに、静かに双方の金属製の扉が開いて、二人を中に案内する。


「…やべー…この壺いくらするんだろ…?」

「おいー! リュウキ見ろよ! この絵画どこから見ても俺たちのほうを見つめてるぜ!!」

「…頼むから静かにしてくれ…家政婦さんが笑ってるじゃないかよ…」


危なっかしく館内の私物を見つめているリースを軽くいさめながら、リュウキは若い家政婦の後を着いていく。
彼女はリースのことを疎ましい目で見ることなく、自然体な笑顔を維持したまま、リースが心ゆくまで楽しめるように歩みを緩める。

リュウキが後ろ髪をクシャクシャにしながら彼女に気を使わせて済まないと言う内容のことを言ったが、
この館に興味を持っていただけるならそのご好意を無駄にするわけには行きません、と微笑みかけられた。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:48:51.81 ID:.NQgOvs0<>そして、赤い模様が円状に描かれた扉の前で、彼女は言う。


「この部屋の中でお待ちください。室内には食事を用意してありますので、お時間になったらお呼びいたします」

「どうもありがとうございます…おい、リース!」

「おいおい! これって凄い古い本なんじゃ…あ、なんだよリュウキ」

「……部屋の中に入っても、あんまり目立つような行為はしないでくれよな?
 そかのギルドのメンバーもいると思うから、マジで頼むぜ?」


リュウキの忠告を聞いたのか聞いてないのか、リースは目の前の扉を開き、先に進んでいってしまった。
果てしなく大きなため息を付いた後にリュウキも続いて入っていく。

その部屋は奥行きが広く、中心に長いテーブルが設置してあり、その周りをこれまた豪華な金縁のイスが囲っている。
リュウキたちは部屋の混雑具合を見る限りだいぶ後のほうに訪れたほうのようで、
バイキング式の料理は手がつけてあるものが多く、もう食事を終えているものもいた。

彼らは二人のことを一目見た後、特に気にすることも無かったのかすぐに視線をそらして、自分たちのことに戻る。
殺伐とした雰囲気ではあったが、それよりも空腹だった二人は構うことなく取り皿に食事を盛る。

リュウキは何の生き物の肉か分からない大きなソーセージを数本、それを包むレタスに似た野菜を、
加えて小ぶりのパンと黄色いスープをなみなみ注いで、誰も座っていない二つ空きの席の左側に座る。
リースもまた手当たり次第に料理を持って、一人で食べきれるのか甚だ疑問なその量を、いとも簡単に腹の中に収めていく。

リュウキはその様子を見て質量保存の法則の疑問点について考えようとしたが、料理の美味しさの前にそんな考えは吹き飛んだ。
出されてから時間がたったはずなのに焼きたてのように湯気を放つソーセージはかじりつけば肉汁が滴り、スープはまろやかでそれでいてしつこくない。

志輝の料理とくわべてもなんら遜色の無いそれを存分に平らげて、二人は同時に息をつく。
リースの皿には残りかすの一つさえ伺えず、リュウキの食べ終わった皿の上とはわけが違う。
<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:49:07.76 ID:.NQgOvs0<>
「食ったなー! あれだ、久しぶりに美味しい食事をしたもんだから止まらない止まらない!」


女性と言う自覚が無いのか、イスにのけぞって腹を叩いているリースにリュウキは呆れることはもうしない。
慣れというものは恐ろしいと誰かが言ったものだが、まさしくその通りだと彼は思った。


「だな、宿谷の食事も悪くなかったけど、リーサさんのご飯とか志輝の飯とかと比べると今までのはちょっとな。
 それに引き換えこの食事は最高だった…もう食えないけど」

「でもさ、もしも面接が戦闘技術的なことを要求することだったらリュウキどうするんだよ?
 満腹だったら身体動かせないんじゃないの?」

「あ、そうだったな…でも、リースだってそれは変わらないだろ?
 面接っても順番があるだろうし、最後のほうにしてもらえば無問題だろ?」

「やれやれ、俺はきっちり考えて食べたから、腹八分目でやめといたって。ホントはデザートも食べたかったけど、俺が手伝うって言ったのに
 ここで待機なんてことになったら面目丸つぶれだろ? そのために色々と魔術も覚えてきたし」

「え”…? リースあれで八分目なの…?」

「そりゃそうだよ、思えば、リュウキって結構小食だよな〜、そんなんじゃ大きくならないぜ?」


あきれ返る量を腹に収めていたはずなのに、全然苦しそうにしないリースを見て、リュウキはやっぱり質量ryは当てにならないのでは? と思わざるをえなかったが、
それの答えを出す前に、ヒゲ面のネクタイを締めた男が扉を開いた。

その人物が入ってくるなり他のギルドメンバーも視線を男に向けて、突っ伏して眠っていたリュウキの目の前の男も顔を向ける。
蝶ネクタイを少し傾けた初老の男は、部屋の墨にまでよく通る声でこういった。


「本日はマーティン=クラーレン様のお屋敷に足を運んでいただき、まことにありがとうございます。
 早速ですが、あなた方が今回の討伐を行うにあたり、相応の実力を秘めているのかを試す試験を行いますので、
 準備の出来た方から部屋を出て右側の、深緑色の扉の前までお越しください。
 試験といっても、単純な実技を労して頂くのみですので、ご安心を」


丁寧にお辞儀をした後、男は再び扉の向こうに去っていった。
男がいなくなったあと、数人のグループがイスから立ち上がり、何も言わずに部屋の向こうに消える。<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:49:21.92 ID:.NQgOvs0<>「よしっ、俺たちも行くぞリュウキ!」 

「ま、まて…俺はまだ食べたばっかりで腹がつらい…
 俺たちが最後に着たんだから行くのも最後でいいだろ?」

「えー!…ったく、情けない奴だなもう!
 …それにしてもリュウキ、こんなに人数集めて一体なにをするつもりなんだろうな?
 討伐っても二桁も必要なもんなのか?」

「さぁな。でも、あのオークどもみたいに群れをなしてるなら、このくらいいたほうが確実だとは思うぜ。
 一体を倒すような仕事じゃないかもしれないしよ」

「あぁ、なる」


リースはイスを傾けたまま、上手くバランスを取りながらリュウキのほうを向いている。
その指には一本一本に小さな炎が燈り、一定の間隔をあけて一つずつ大きくなったりちいさくなったりを繰り返している。
リュウキは読みかけだった本を取り出そうとして、正面の男がいきなり話しかけてきたのでそれを止めた。


「あんたたちさ、もしかして新人なのかい?」

「…もしかして俺に言ってるのか?」

「ん? そうだよ、そこのオセロ柄の二人に聞いてるの。で、どうなのさ?」


さっきまで眠っていた男―赤い髪の毛をメッシュ状に編みこんでいて、リュウキをさしている指には色とりどりの指輪がはまっている。
身長は座っているから正確には分からないが、リュウキとあまり変わらないのではないだろうか、八重歯を口から覗かせ、野性的な印象を受ける男は、
繰り返し同じことを二人に問いかける。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:49:39.16 ID:.NQgOvs0<>「………さぁ…「そうだ! 俺たちは新人も新人! だって任務なんてしたこと無いからな!」

「おい、こらリース!」

「だってウソ言っても仕方ないだろ? で、メッシュのあんたはどうしてそんなことを聞くのさ?
 つーか、どして分かったの?」


リースはメッシュの男を指差して、大声で言う。
男はそんなリースの態度がおかしいのか、こらえるように口をゆがめていたが、とうとうこらえきれなくなったようだ。


「あっはは! 面白いこと言うね姉ちゃん! 新人なのに赤色を選んだって言うのかい?」

「ん? 赤色ってあんたの髪の色のこと?」

「違う違う、あんたたち、酒場で委任状を見てみたくちだろ? 俺も黒髪を見かけたからさ。
 黒髪はこの街でもそんなにいるわけじゃないし、あんたたちで間違えないと思う…でも…」


メッシュの男は外見に似合わず高い声で笑うので、周囲の人間たちもリュウキたちのほうに関心が移ったようだ。
リースは笑われたのが気に召さなかったのか、リュウキに止められたからいいものの暴れようとしていた。


「話が見えないな、俺たちが新人だってどうして分かったんだ?
 それに、赤色って言う言葉についての答えもまだなんだけど?」

「悪いね、黒髪の兄さん。だってさ、あんたの連れの姉ちゃん、声が大きいから無理にでも聞こえちゃうって。
 で、赤紙について知らないってあたりでも、二人が新人だってことは分かるよ」


メッシュの男は陽気に笑いながら、リュウキに話しかけてくる。
そして、指を組んで姿勢を整えたあと、ニコニコを保ったまま話を続ける。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:49:56.11 ID:.NQgOvs0<>「赤紙ってのはさ…というより、委任状の紙の色で任務の種類・ランクが決まってるって事も知らない?」

「…全く、初耳だな…」

「やっぱね、まぁ紙に書いてある内容を見れば自分にあってるのかが分かるもんだけど、あんなにたくさんあるのに
 いちいち探すのはめんどうでしょ? だから紙の色でそれを見つけやすくするわけだ。
 例えば、緑色だったら人探し、白色だったら雑用、って感じでね。
 それで、この赤色、書いてある内容は経験者問わずって書いてあるけど、赤ってのは危険度ランクB以上、別名:死んでも文句なしって任務なわけだ。
 兄ちゃんたちをギルドで見たことなかったし、それなのにこの任務を引き受けちゃうのは新人としか思えないからね。」


男はぺらぺらと噛むことなく話していたが、話していること自体は深刻なものだった。
リースはメッシュの男が気に入らないのか話半分で頬杖を着いたままだったが、リュウキはその話を神妙な顔で聞いていた。


「…因みに、今回の任務の内容についてあんたは知ってるのか?」

「多少はね、マーティンって言うと魔獣関係での著書を複数出してるから、今回の任務もそれと関係してると思うよ。
 それにしても、兄ちゃんたち面接があってよかったね。むざむざ死にに行くようなことにならなくてすんだじゃん」

「なんだと! 俺たちがよわっちいみたいな言い草じゃないかよ編みこみ野郎!」

「こら、リース。多分この人は俺たちのことを考えて言ってくれてるんだからそんなこと言うなって…」

「はぁ!? なに言ってるんだよリュウキ! 魔獣? んなもん関係あるかよ、要は面接に通ればいいって話だろ?
 受ける前から逃げ腰になってどうするんだよ!」

「威勢がいいな姉ちゃん。でも、止めといたほうがいいと思うよ、これは先輩風を吹かして言ってるんじゃなくてさ。
 万が一、君たちが面接に通っても、俺たちにとっては足手まといが増えると面倒だから言ってるんだよ」

「黙って聞いてりゃこの編み込み…「…んだとこら?」


リースを諫めていたリュウキは、リースの両手を離し、メッシュの男をにらみつける。
その視線に動じることはないにしろ、メッシュの男はニヤニヤをに引っ込める。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:50:11.20 ID:.NQgOvs0<>「…だからさ、足手まといは帰れって言ってるのが分からないかな?
 それとも、身をもって知らないと分からない性質?」

「…なめてくれるじゃねぇか、俺たちが足手まといだってどうして分かる?」

「お、おい、リュウキ!…キャラが違うぞ…なぁ……?」

「分かるさ、これっぽっちも纏ってる魔翌力の力強さを感じないからね。
 それに、魔術師なのか知らないけど、得物も持たないでこんな場所に来るなんてどうかして…!」


メッシュの男が言い終えるより前に、彼の真横を青白い刃が伸びる。
先端をリュウキの左手が握り、メッシュの男は思わず席を立つ。


「これが俺の得物だけど、何か文句がおありで…?」

「……へぇ…面白いもの持ってるね兄ちゃん…どんな魔法を使ったんだ…?」

「別に、答える必要は無いな…おい、リース行くぞ。
 さっさと面接に受かって、魔獣の討伐だ」

「え? あ? おい! 待てってリュウキ!!」


青白い長剣を握りしめたまま、リュウキは扉のほうへ歩いていく。
それにリースも続き、部屋にはメッシュの男と4人が取り残された。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:50:24.14 ID:.NQgOvs0<>「…………」

「…らしくないな、得物を差し出されたならそのまま再起不能にしてやればよかったのによ。
 それとも、今更優しい先輩面をしたかったわけ?…あり得ないね」


端の席に座っていた長身の黄色髪の女性が、いつの間にかメッシュの男の隣に座り、彼に問いかける。


「…いや…ラフレンツェ…お前は気づかなかったのか…?」

「なにがさ? あんなガキに舐められるなんて、『紅のシェイン』も大したこと無いのか?」

「…………」


シェインと言われた男は、さっきまでの調子のいい顔ではなく、真剣な顔を保ったまま、ラフレンツェの言葉を無視した。
彼の握られたこぶしの中には、じっとりとした汗が握られていた。


(…さっきの魔翌力の膨張…あれは一体…? 一瞬ではあったが…あの質…密度は…)


シェインは黙ったまま席を立ち上がり、扉を開けて消えた。
リュウキとシェインは、程なくしてまた会うことになる。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/05/30(金) 11:51:02.37 ID:.NQgOvs0<>「なぁ、どうしてあんなに怒ったんだよ! なぁリュウキ?」

「…さぁ…? あいつの話し方が癪に障ったから自然に…かな…?」

「キャラが違いすぎて驚きを隠せなかったぜ…ま、面接通ったからいいけどさ。で、この後どうするんだ?」

「……さぁ」

「あと、その剣ちゃんと元に戻したほうがいいんじゃないの?
 場所取るし、あぶなっかしいったらありゃしない」

「あぁ、すまんリース……(うーん…大人になったつもりだったんだけどな〜…ああやって侮辱されると持(中二)病が…)」





ティラノス聖霊伝

第十二話:依頼

…終わり<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/30(金) 13:12:44.26 ID:oReXCsAO<>きたああああああああ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/30(金) 13:14:44.94 ID:fz1yaT2o<>おつー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/05/30(金) 17:37:26.76 ID:gvGCXroo<>乙!!!!!!!!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/30(金) 22:21:44.41 ID:RUTPKn6o<>乙!
久しぶりだなwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/05/31(土) 22:02:40.88 ID:T.6hMEDO<>乙!
いやー待ったかいがあった!
いつも楽しみにしてるんだぜww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/02(月) 06:37:58.08 ID:EBOp6IDO<>全力で乙!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/02(月) 17:33:26.12 ID:WLNiT7.0<>持病乙wwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/11(水) 07:33:38.34 ID:E0KdskDO<>続きwktk
でも無理するなよー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/11(水) 20:46:08.93 ID:E/jvGkc0<>勉強忙しいみたいだな
ガンガレwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/15(日) 21:06:49.61 ID:NaB8FFQ0<>青龍何かあったのかな?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/15(日) 23:07:25.29 ID:KDgE816o<>受験生だから本業の方の勉強に集中してるんじゃないか?
まぁ、さすがにここまで音沙汰無いと少し心配になってくるけどなww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/16(月) 00:06:54.85 ID:843DLyko<>小説はのんびり書いてくれればいいんだけどたまには顔出してほしいな
書いてからじゃないと書き込めないとか真面目なこと考えてそうだwwwwww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/16(月) 12:54:12.01 ID:ZXhOrVc0<>すまない・・・心配しなくても生きてるから大丈夫だ。

しかし・・・ちょっと最近困ったことが・・・

独り言なんだか・・・朱雀の色恋沙汰に巻き込まれて勉強どころじゃ・・・ったく・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 12:58:58.71 ID:KCtiiZUo<>独り言kwwsk<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/16(月) 13:29:00.95 ID:ZXhOrVc0<>要約すると・・・

朱雀大学生になる、自宅から通い、でも一人暮らし。

サークルに入る、勿論もてる。

でも朱雀は大学の女には全く興味が無い、だって彼ロリコンだし。

どういうわけか大学の女どもがどこから手に入れたのか俺のアドレスを知る。

毎日メール、俺困惑、朱雀は華麗にスルー。

朱雀が女たちに振り向かないので、俺に何とかしろと逆切れされる。

俺マジで意味不明、でも女たち怖い&複数。

いつの間にかありえもしない誤解をされる(俺)

勉強できない(させてくれない)&朱雀は気にすんなって(無理)&今週中にみんなで話す(何で俺も含まれてるの?)&誤解がひどい←今ここ

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 13:45:19.31 ID:KCtiiZUo<>かわいそすぐるwwwwwwww
誤解kwwsk・・・と言いたいけど、それ言ったらさすがに特定されるか?ww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 14:51:36.62 ID:YNME8dco<>なるほど…
くそみそな誤解をされてる訳か…

「朱雀はロリコンだからそれは誤解だしお前らあきらめろ」

って言えばいいんでね?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/16(月) 18:20:11.68 ID:KcDi8Dco<>「朱雀はロリコン」っていう部分を隠してるんなら誤解ってのはアッー方面かね
隠してない場合は・・・?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/17(火) 01:18:03.93 ID:7Pku22SO<>朱雀「ただの人間には興味ありません。この中に童顔、低身長、貧乳がいたらあたしのところに来なさい。以上」
ってわけか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/17(火) 08:54:48.07 ID:hP.60CUo<>とりあえずメールアドレス変えたほうがいいんじゃね?
あとどっから流出したのか調べてそいつには教えないようにするとか<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/17(火) 09:59:50.21 ID:coi21CA0<>つーか、朱雀がめんどくさかったから俺ホモだよって言ったのが元凶・・・

その発言でどうして俺が巻き込まれたのかは・・・分かるよな・・・?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/17(火) 10:08:05.12 ID:dLjVi6DO<>アッー!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/17(火) 23:37:19.46 ID:xgNa78k0<>朱雀wwwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/18(水) 01:44:39.38 ID:xg8CZIDO<>予想通りすぐるwwww
ガンガレ青龍wwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/18(水) 19:32:48.42 ID:mxcGuf2o<>これはもう代わりの相手をでっちあげるしかないなwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/18(水) 22:07:56.36 ID:PmQcLQ6o<>そもそも朱雀と青龍が本当にアッーな仲だとしてもだ、
その仲に介入する資格は他人である女どもにはないんでないの?

その連中何、リアル犯罪者?モンペ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/18(水) 22:20:39.14 ID:1gDnxcAO<>>>313
宮城バカにすんな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/18(水) 22:36:28.75 ID:mxcGuf2o<>わざと女共の前でいちゃついて見せてだめだこいつら…と思わせるのもありか?<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/19(木) 09:20:40.62 ID:xcXyNbE0<>
めんどくさい今の状況について。


朱雀が大学にいってから、早くも1ヶ月が経とうとしていた。
俺はというと、勉強勉強勉強アニメ漫画の毎日を送っているわけで。

幸運にも五月病は俺には感染せず、未知の理系科目に全力で立ち向かっていた。

朱雀からは煌々の時と変わらない付き合いが続いていくことは期待していなかったが、
朱雀自身は大学生になっても少しも変わってしまうことは無かったのだ。


そんな時、朱雀から珍しく飯食おうといったメールが届いた。

俺には断る理由なんて無かったから、勿論即座に了解。


朱雀「困っているわけだ、助けてくれ」

俺「はい?」




<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/19(木) 09:26:40.24 ID:xcXyNbE0<>朱雀「だから、困ってるから助けてくれよ」

俺「まず説明しろよ、話はそれからだ・・・つーか、いきなり困ってるなんて言われても
  分かるわけ無いだろ常考・・・」

朱雀「・・・なんかサークルの先輩に目を付けられたみたいでな・・・」


珍しく歯切れの悪い朱雀、朱雀が○○サークルに入っているのは前から聞いていたが、
朱雀からは結構充実しているといったことしか聞いてなかった。


俺「・・・それってどういうこと? ガラスの仮面?」

朱雀「・・・そうじゃなくて・・・あー・・・っと・・・」

俺「はぁ? 歯切れが悪いなはっきり言ってくれ、飯がさめちまう」

朱雀「・・・あー・・・言っとくが、嫌味で言うんじゃないからな?
   分かってくれるよな?」

俺「ったくもう・・・何年友達やってると思ってるんだよ・・・?
  ほら、言いたいことがあるなら言ってしまえ」

朱雀「・・・・・・サークルの女子から求愛されてる・・・複数から・・・」


はいはい、池面は[ピーーー]<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/19(木) 09:30:39.56 ID:UXugM.DO<>このスレまだ続いてたのか…
青龍のファンです<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/19(木) 09:32:08.76 ID:xcXyNbE0<>俺「はいはい池面は[ピーーー]」

朱雀「うわー酷い奴だな・・・嫌味じゃないって言っただろ?」

俺「あれだよね、女の子成分が枯渇してる俺に対しての宣戦布告のつもりなのかな?
  もう朱雀は雌の穴でも追い掛け回してるといいよ」

朱雀「・・・だから言いたくなかったんだよ・・・」

俺「自分から言い出しておいて言いたくなかったとはこれ如何に?」

朱雀「・・・・・・」

俺「でー・・・どうして困ってるの? 
  大学って女の子可愛いのが大量じゃないわけ? しかもお前の顔なら選り取りじゃん?」

朱雀「・・・・・・そういわれても・・・」

俺「・・・そういわれても?」

朱雀「・・・成人した女には興味がもてないと言うか・・・(性癖的な意味で)」

俺「・・・あぁ・・・なる・・・」


忘れてた・・・顔が顔だからイメージしにくいけど・・・この子ドがつくロリコンだった・・・<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/19(木) 09:39:28.25 ID:xcXyNbE0<>
俺「・・・・・・あれだよな・・・お前って外見と内面のギャップが激しいから俺でも分からなくなるときあるよ・・・」

朱雀「・・・ダメなんだよ・・・成人しててもこなたやゆたかみたいならまだしも・・・
   あんなに膨れ上がった脂肪の塊を振動させてる女なんか・・・生理的に無理・・・」

俺「・・・それは言いすぎじゃないの? 第一、サークルで活動してるんだろ?」

朱雀「そうだよ、友達としてならありだけどさ〜、恋愛的には・・・」

俺「・・・はぁー・・・困った奴だ・・・で、肝心の顔は・・・?」

朱雀「顔? そんなこと重要じゃないだろ? さっきも言ったが体つきは・・・」

俺「最重要だろ? 俺には目の保養が必要だ。
  こんな詰まらない用件を聞いてやってるんだから写真くらい見せろ」

朱雀「・・・はい、この前飲み会で撮ったときの」

俺「・・・・・・なん・・・だと・・・?」


そこにいるのは俺なら即OKを出してしまいそうな美人が。
一部報道規制を食らいそうな奴も混ざってはいたが・・・断言しよう、ここに写っているのがサークル全員の女子だとすると・・・
顔面偏差値は60超だと。

<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/19(木) 09:47:44.01 ID:xcXyNbE0<>
俺「なんなの? これで生理的に無理とか、あほなの? 馬鹿なの?」

朱雀「・・・これなんかオーク見たいじゃん、全員可愛いわけじゃないじゃん」

俺「・・・この子とこの子はどう見ても可愛いじゃないかよ!
  それに・・・残りの子だって十分及第点だろ・・・」

朱雀「・・・青龍は浪人生活のせいで眼が弱ってるんだって・・・」

俺「ないないない・・・これはどう見ても美人です。
  で、この中で朱雀にアプローチをかけてるメスはどいつ?」

朱雀「・・・えーと・・・これと、これと、あれ・・・」

俺「・・・まじかよ・・・? 三人も?」

朱雀「こいつらは明らかメールの内容おかしいもん。
   普通にメールしてくる奴を含めるならこいつとこいつも」

俺「・・・マジで選り取りだな・・・一人キングスライムが混じってるけど・・・」

朱雀「あぁ、その人サークルの女将。一番ウザイ」

俺「・・・まーた困ったことに・・・」

朱雀「でさ・・・どうしたらサークルをやめずに女たちを諦めさせられると思う?」

俺「・・・本当にこの中の女全員に欲情できないの?」

朱雀「・・・五歳くらい幼ければなんとか・・・」

俺「・・・・・・前々から思ってたけど・・・本当に病気だろ・・・」

朱雀「生まれついた性質だからこればっかりは・・・」


<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/19(木) 09:55:28.22 ID:xcXyNbE0<>俺「しっかしな・・・俺だって女と付き合ったことなんか無いし・・・
  それは朱雀もそうだけど・・・」

朱雀「どうして可愛い小さい系の子がこの世には不足してるんだ・・・?」

俺「もうそういう発言はいいよ、黙っててよ。
  やっぱり、一番手っ取り早いのはサークルをやめて携帯変えることかな?」

朱雀「やだよ、なんでせっかく入ったサークルをやめないといけないんだよ。
   それに、男の先輩いい人が多いし」

俺「だったらどうしてその先輩に相談しない・・・?」

朱雀「相談するなら青龍しかいないだろ」

俺「え?・・・あ・・・そっか、うん。ありがとう」

朱雀「でもなー・・・このまま気まずい関係もいやなわけだし・・・」

俺「だろうな、サークルの規模はどのくらいなんだ?
  それによっちゃあちかづかないってのも手だぞ?」

朱雀「確か20くらい」

俺「はい無理。他の案を探しましょう」



でも結局名案を見つけることは出来ず、だって二人ともちぇりーじゃねぇー・・・


まぁ、時が解決してくれると思って我慢してもらおうとしたんだよ。



そしたら・・・


俺「んあ? 知らない奴からメール着てる・・・アド変でもないな・・・誰だこいつ・・・?」


悪夢の始まりだ
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/19(木) 10:55:54.53 ID:nTwM42Yo<>ネタだろww

てか勝手にアド教えて押し付けるとか
朱雀もひどいなww
ほんとに友達か?ww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/19(木) 21:05:02.07 ID:wz5NH5co<>これはひどいwwww
でも朱雀の意見には賛成(ロリコン的な意味で)<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/19(木) 22:34:46.17 ID:kmhicCg0<>勉強どころじゃないなこれは……青龍大丈夫か?
なんで朱雀は中二病設定じゃなくて、こうホモとかいう
微妙に現実的な設定にしちゃったんだろう<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/19(木) 23:49:51.84 ID:lYY2DNMo<>青龍以外の彼氏若しくは彼女がいる様に見せかけたらいいんじゃねえの?
それかいっそ開きなお…いや何でもない<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/20(金) 08:07:53.25 ID:2hU4KAIo<>朱雀 「すまない。俺には心に決めた女性がいるんだ」

女 「誰よそれ?私よりいい女なの!?」

朱雀 「婚約してるんだ。今は外国にいる。俺はそいつが帰ってくるときまでずっと待つ」

女 「素敵!!抱いて!!」 



あれ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/20(金) 10:38:26.01 ID:9ItwreEo<>青龍に何とかしろってどんなメール送ってくるんだろうなwwwwww
「豆腐の角に頭ぶつけて[ピーーー]!ガチホモ野郎!」とかかwwwwwwww
青龍と朱雀が友達に戻ったとしても朱雀がホモってことなら女共が2人の邪魔する意味なくね?そいつら馬鹿なの?<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/20(金) 18:59:26.73 ID:UAdK26M0<>もう少し蛇足で続きます、我慢して。


俺「・・・なんだよ、気づけば新着で4件?
  俺のアドレスネット上に流失でもしたのか・・・?」

しかしここで俺は知らないメールは開いてはいけないと言う鉄則に従い全てのメールを削除。
後で変な請求着たらそれのほうが面倒だしねwwww


・・・そしたら。

夜もとうに深け、俺はもう寝ようとしていたわけだ。
寝る前に携帯を確認しようとしたら、また来ている新着メール。

どうせまた朱雀だろ? とか思って何気なく開いてみたら・・・


知らないアドレス

件名:はじめまして

内容:初めまして〜絵文字絵文字絵文字
   朱雀君からアドレス聞いちゃったのぉ〜絵絵絵
   なにかあったらよろしくぅねぇ!!絵絵絵絵←表現できない部分は省いた(気持ち悪い女メール的な意味で)



以下似た様なメールが数件・・・

面白いことしてくれるじゃないの・・・<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/20(金) 19:07:08.30 ID:UAdK26M0<>すぐに電話をかける、勿論朱雀に。
しかしあいつ電話に出ず、恥ずかしい着うたなんだから気づくと思ったが・・・

繰り返し電話したものの、電話には出ることの無い朱雀。
いい加減むかついて、何で俺が何回も留守電になって無用な電話代を消費しなくてはいけないんだ!
とも思ったから、明日かけようとベッドにねっころがったら・・・

♪〜

かかってきた、朱雀の電話から。

俺「おいこら、お前何していやがるんだよ?
  何回も電話しても出ないで無いと思ったら・・・」

ここで、勿論朱雀の声が聞こえてくるはずだったのだが、
どういうわけか電話越しに聞こえる声はやけに高い。

俺「おい! いつまでもだんまりしてないで声を出せ声を!」

雌「ねーみんなー! 本当に出ちゃったよ〜!
  どうするどうする〜!?」

俺「・・・・・・?」

雌「はじめましてぇ〜! 朱雀君の友達の青龍さんですよねぇ!」

俺「・・・・・・・・・」

電話越しで話しかけてくるのは、聞き覚えの無い女の声。
妙に活舌の悪い話し方で、聞いてるほうが気分悪くなる、そんな声。




<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/20(金) 19:11:57.28 ID:tHD0TC6o<>うっわ、気色悪っ
俺だったら耐えられねぇよ・・・<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/20(金) 19:25:33.47 ID:UAdK26M0<>つか何なのこの子?

何で朱雀の携帯から俺に連絡してくるわけ?
それよりも朱雀はどうしたんだよ? もしかして襲われたのか!?

俺「つーかなんで朱雀の携帯から電ww」雌「本当に青龍さんなんですかぁ〜?」

俺「だから話をk」雌「ちょっとぉ〜! 今あたしが話してるんだからジャマしないでよぉ〜!」

雌「えへへ〜いきなりお電話してびっくりしちゃいましたか〜?」


えへへーじゃねぇよ、なんだってんだよこいつ、明らか酔ってんじゃん・・・・・・まてよ・・・酔ってる・・・?


俺「あんたさ、朱雀の携帯で何やってるんだよ? 明らかに迷惑だろが、つーか朱雀にかわれって」

雌「それでね〜、みんなでぱーっっといっちゃおぅってことでぇ〜・・・」


だめだこいつ、全く話がかみ合わない・・・でも酔ったからって何でもしていいってわけじゃないだろ・・・

俺「おい! 朱雀に代われって!」

女「あっ! すいません本当に! リエちゃんお酒飲んじゃってて・・・」

俺「!? 今度はどなたですか・・・?」

女「あ、私は朱雀君のサークルのメンバーで・・・あの・・・本当にすいません・・・
  いきなりメールとか、電話とか・・・」

俺「やっぱり・・・で、朱雀に代わってくださいよ」

女「あの・・・それがですね・・・」

朱雀「うはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwおkwwwwwwwwwwwwww」

俺「・・・・・・朱雀・・・?」

朱雀「はーいwwwwwwwwwwwwww朱雀ですよwwwwwwwwwwww何すか!? 青龍〜wwwwwwww
   お前も来いってwwwwwwwwwwww車で送るよんwwwwwwwwwwwwwwww」


・・・なるほどね・・・
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/20(金) 19:30:02.54 ID:tHD0TC6o<>酔っ払いうぜぇwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/06/20(金) 19:30:13.19 ID:Lzcw1kAO<>ダメだコイツ・・・早く何とかしないと既成事実が・・・<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/06/20(金) 19:37:48.23 ID:UAdK26M0<>
朱雀はとっくの昔に使い物にならなくなっていたらしく、意味不明な言葉を繰り返しつぶやくのみで対応の仕様が無い。

俺「・・・どうしてこんな事になったんですか?」

女「それがですね・・・いつも来るはずの先輩たちが都合悪くなっちゃって、今日は一年と二年だけで飲んだんです」

俺「ふんふん、それで?」

女「いつもは先輩たちが静止してくれるからこんな風にはならないんですけど・・・
  はめをはずしちゃって・・・こんな様に・・・」


因みに女はさっきの雌とは別人。
話し方もまぁ普通、酔ってはいないみたい。

俺「で、酔った朱雀が俺のアドレスをみんなに教えたと?」

女「そうですね、朱雀君は酔っ払うと別人みたいになってしまうので」

俺「はぁ、それはよく知ってるんで分かります・・・所で、そっちでまともに動けるのは何人くらいなんですか?」

女「・・・私と、一年の女子が二人。一つ上の男の先輩が二人、女の先輩が一人」

俺「・・・母集団は何人・・・?」

女「11人です」

俺「なにその全滅状態・・・加減しなよ・・・」

女「・・・すいません・・・思いのほかみんなお酒に弱くて・・・」

俺「・・・はぁ・・・場所は・・・? 馬鹿を迎えにいくから、場所を教えてくれ」


結局、べろんべろんの朱雀を俺が迎えに行く始末。
でもあっちはあっちで大変そうだった・・・ちなみに電話の女は56、雌は60だった(顔面偏差値)。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/20(金) 19:59:56.36 ID:9ItwreEo<>おかしいな…物語ではかっこいい朱雀がすごくダメなやつに見えるよ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/20(金) 22:42:52.73 ID:uleGjEDO<>女いい子に見えるな
つかビッチ共うぜぇwwwwwwwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/06/22(日) 16:30:34.88 ID:mhN906wo<>朱雀教えんなよwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/01(火) 22:51:44.30 ID:mUdWcASO<>青龍生きてるかー?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/02(水) 05:11:37.72 ID:1Ioi0coo<>気づいたら1週間以上たってるな
青龍は大丈夫なんだろうか・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/04(金) 22:59:12.19 ID:QFLOOYQo<>ホモ騒動長引いてんのかね?wwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/04(金) 23:20:41.11 ID:.LvDhfEo<>やぁ、しばらく見てない内に面白い話になってるじゃないか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/11(金) 01:04:59.04 ID:.639asSO<>捕手<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/11(金) 12:26:32.10 ID:2IlZr6DO<>青龍こないねぇ。

大丈夫かなwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/11(金) 20:11:37.24 ID:Fkqus0Yo<>朱雀の相手である青龍が女の魅力を知ればいいのよ!→青龍逆レイプ→青龍が女性恐怖症に→朱雀とのリアルホモ展開へ…

こんな流れが思いついたけど大丈夫だろwwwwww<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/07/13(日) 19:38:27.33 ID:llkUgac0<>ホント悪い、パソコン買い換えてからずっとここにこれなかったわ・・・
ビスタ使いにくすぎだろ・・・

・・・とりあえず解決はしたんだけども・・・男性恐怖症に加えて女性恐怖症になりそうな件・・・

・・・通院は勘弁だろ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/13(日) 19:38:59.17 ID:1egJkq6o<>おかえり〜<> ただの青龍"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/07/13(日) 19:40:21.51 ID:llkUgac0<>


・・・マジで人生終わりそうなんだけど・・・

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/13(日) 19:43:40.29 ID:1egJkq6o<>悩みがあるなら相談にのるぜ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/13(日) 20:18:08.07 ID:aa3PmBMo<>なにやらエライ事になってる?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/13(日) 20:33:23.30 ID:FCOYhUQo<>やっと帰ってきたと思ったらやばいことになってそうだな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/13(日) 22:11:15.02 ID:4vbl09Q0<>なにがあったんだ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/13(日) 23:24:50.64 ID:Jve2wnMo<>今はゆっくり休んで自分を落ち着かせる事が先決かもしれん
なんとなくだが、予想は付く……女は集団を組むと怖いと聞くからな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/14(月) 00:09:06.10 ID:nxcevXYo<>おかえり、落ち着いたらkwwsk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/14(月) 01:58:41.49 ID:Eu/2AsSO<>お帰り!!
まぁ今は続きを気にせずゆっくり休んでくれ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/14(月) 14:27:44.16 ID:CRDN93w0<>とりあえずは解決したようでよかった、けど精神的な打撃も大きいんだな
今回の件が青龍の今後の恋愛に影を落とさないことを祈るよ
直接力になれるわけじゃないけど、何かあればここで相談してくれよ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/15(火) 00:17:52.47 ID:jRh3KbAo<>久しぶりに来たら/(^o^)\ナンテコッタイ
通院ってどういうことだ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/16(水) 02:42:23.25 ID:phHXvUgo<>大丈夫か青龍?
いや、大丈夫じゃないから通院なのか・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/18(金) 21:11:09.92 ID:QJcue/wo<>今頃入院生活を送ってたりして…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/20(日) 19:25:03.74 ID:vbb/.iE0<>心配だな…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/23(水) 00:11:56.49 ID:9BuaCcUo<>このスレ続いてたのか<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/24(木) 22:15:53.90 ID:9cLEpdM0<>青龍帰ってこ〜い<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/29(火) 15:03:29.83 ID:Nb126JEo<>まだ具合悪いんかね?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/29(火) 17:09:12.80 ID:0t1.s1Eo<>ビッチ共に何されたんだ…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/29(火) 20:17:00.06 ID:t9DUfkAO<>青龍頼む返事をくれ

今は好きなだけ休んでいいから一言無事かどうか書き込んでくれ

皆心配してるから<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 18:01:38.68 ID:bnorC320<>青龍なら暫く来れないぞ。
・・・主に俺のせいで<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 18:06:02.35 ID:RqCJyuY0<>あなたは誰なんだ?
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 18:09:53.20 ID:bnorC320<>あぁ、悪い、俺朱雀ね。

ここには書き込まないつもりだったんだけどさ、事情が変わったって言うか・・・
・・・・・・あ、青龍死んではいないからそこは誤解すんなよ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 18:13:31.99 ID:MAp7tUAO<>本…物…?<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/07/30(水) 18:15:11.75 ID:bnorC320<>本物。
あれだ、青龍の酉知ってるから。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 18:21:53.25 ID:qU34iDUo<>>>370
とりあえず掘らせろ
ようじょやるから。<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/07/30(水) 18:27:01.41 ID:bnorC320<>>>371
男の相手は青龍の仕事だってwwww
・・・いや、妄言だったな・・・

彼女は暫くいらないわ・・・
教師になって生徒と恋するまではな・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 19:02:06.12 ID:MAp7tUAO<>>>372

本当ロリコンだなぁwwwwww




で、青龍の現状とかは話せないのか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/30(水) 19:30:03.99 ID:4IgaGS2o<>さて、突如沸いた朱雀はおれたちの好奇心に応える義務がある
はなしをきこうか
つ旦~~~<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/07/30(水) 19:30:14.05 ID:bnorC320<>話してもいいんだけどさ、俺とあいつじゃ感じ方とかだいぶ違うと思うぞ?
俺はほぼ加害者、あいつはもろ被害者だからな・・・

あと、青龍はいま母親方の祖母の家にいってるから夏中はあっちで勉強するらしい。
パソコンもない、コンビニは自転車で1時間みたいなド田舎だとさ。

今のあいつにはそっちのほうが良いと思われるしな。
俺も夏中に落し前つけないとならないしよ。

何か聞きたいことがあるなら書いといてくれ、ちょい用事あるからよ。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 19:38:22.15 ID:qU34iDUo<>男性恐怖症に加えて女性恐怖症になりそうな件
通院

この辺りの理由kwwsk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/07/30(水) 19:38:58.45 ID:MAp7tUAO<>とりあえず飲み会後から女性恐怖症?になるまでの経緯が気になる…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/30(水) 20:38:42.89 ID:Xj8Mx3oo<>まさかの朱雀降臨ww
まぁ俺も聞きたいのは大体みんなと一緒のことだな
話せる範囲で話してほしいが・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/30(水) 22:05:13.27 ID:A6cLMv6o<>話せる範囲でkwwsk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/07/30(水) 23:40:00.05 ID:xbRe.xIo<>青龍は入院じゃなくて療養ってところか…
話せる範囲で事情をkwwsk
青龍は元気?ではないだろうな、体調を崩したりしていないか教えてほしいぜ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/01(金) 00:45:06.76 ID:Omna4oSO<>ロリコン乙!

とりあえず青龍が無事だってことだけで充分なんだぜ!<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/01(金) 23:52:50.30 ID:xZ/7.D60<>わりぃ!
答えるとか言っておいて暇取れなくて時間かかってるわ。
明日の6時ごろまで待ってくれ!すまねぇ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 09:23:26.79 ID:E5CmHADO<>おk把握<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/02(土) 19:01:35.00 ID:u4HUh1M0<>待たせたな!

詳細話すとは言ったものの、やっぱり詳しく話すのは青龍の仕事だと思うわけよ。
だから大雑把に現状を並べるだけになるけどいいよな?

まず、青龍が男性恐怖症って言ったことについては、
高校の時にアッー!なことをバスケ部の先輩にされたのが原因だ。

あの時は青龍が自[ピーーー]るんじゃないかと思ったぜ・・・
それから男だけで遊ぶのは控えるようになったわけだ、俺とは遊ぶけどな。

まぁ俺とは腐れ縁が続いてるからだろうけどな、
一時不登校になったりして本当に大変だったんだぜ?
バスケ部の先輩は・・・まぁ高校辞めたよ、色々と復讐したからなww

つーか病院行ってるのは多分精神的なのじゃなくて単に骨折したからだと思うぞ、
まぁそれもいろいろあったんだよ・・・俺のせいで・・・


後、俺をロリコンとか言ってる奴がいるみたいだけどよ、失礼だぜ?
俺は世間一般のロリコンじゃないから、ブルマ姿の女の子とか、
小学生みたいな体つきの女の子と遊びたいだけだから。
いや、ホントに、性的な意味じゃなくてね?
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 19:10:45.27 ID:jb28ipQo<>>>384
ロリコンさん報告ありがとうがざいます^^<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/02(土) 19:13:02.82 ID:u4HUh1M0<>で、現状は。

青龍:現在田舎にて勉強中。
俺とは友情の崩壊は無い、でもおもいっくそ殴られて俺の歯が折れたけど。
今も連絡してるしな、俺がここに書き込んでることも知ってるぞ。


俺:いざこざをとりあえず解決。
でも根本的な部分では多分まだ未解決、これから解決&復讐。
まぁあれだ・・・まさかこの世に本気でぶち殴ってやりたい女がいるとは思わなかった。
マジで。
あぁ、サークルはやめた、携帯も変えた。

女ども:問題になった女のうち4人はもう大丈夫。
でも残りの二人はまだうざいことこの上ない、GEレクイエムで殴ってやりたい。

女の概要

BLオタク:顔面偏差値54

ぱっつん眼鏡:顔面58

いい年してツインテ雌:顔面60

でこビッチ:顔面47

ドドリア兼ハート様:顔面測定不能

純真風腹黒(最も性質が悪い)顔面65


<> 朱雀?"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/02(土) 19:15:27.71 ID:u4HUh1M0<>これくらいかな?
事件の内容も書く必要あるか?

これからバイトだから・・・月曜になると思うが・・・?
あ、嘘、月曜は歯医者あるから無理かも・・・

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 19:18:30.21 ID:aBMos9.o<>できれば書いて欲しいが無理しなくてもおk
と俺は思う<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 19:19:29.32 ID:jb28ipQo<>>>387
ロリコンさんの報告待ってます^^<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 19:56:32.46 ID:E5CmHADO<>ロリコン乙!
歯医者さんwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 20:16:56.17 ID:I8ZNpNoo<>好きな相手が幼い姿をしていただけだ、ロリコンじゃないぜ
そうだよな、ロリコン<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/02(土) 23:22:20.95 ID:tHZNWoco<>事件の内容も大雑把にでいいから教えてほしいな
時間があったら報告してください、ロリコン朱雀さんwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/06(水) 12:32:44.74 ID:eRxnQ6ko<>忙しいから来れないだけだよな
ロリコンロリコン言い過ぎたから報告に来てくれないとかそんなことないよな…

言い過ぎました朱雀さんすいませんでした。
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/11(月) 23:34:36.64 ID:8b613V.o<> <> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/11(月) 23:44:02.46 ID:8b613V.o<>ほ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/13(水) 09:04:41.64 ID:X9Ghn6SO<>受験生の俺も保守<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/14(木) 18:34:41.92 ID:BLn8oAAO<>最近携帯からみれなかったのは俺だけ保守


保守はいらなかった様な気もするが一応

イケメン朱雀マダー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/23(土) 18:52:30.95 ID:57Sjq2go<>ほ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/23(土) 18:54:22.50 ID:57Sjq2go<>ほし<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/24(日) 01:17:59.51 ID:zZA4trIo<>ほしひ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/24(日) 09:56:00.79 ID:q.Fxc8U0<>パー速保守いらんだろ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/24(日) 15:25:55.56 ID:iRnhsm2o<>ロリコンさん来ないな・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/26(火) 18:22:21.63 ID:BU5wqcDO<>青龍もこないしなあ
みんな待ってるぜー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/27(水) 06:50:50.15 ID:/eKIXASO<>ロリコンさん、いらっしゃーい<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/27(水) 18:09:52.38 ID:yvRERCM0<>大学生の夏休みはここからなんだぜ?

つーか気づけば3週間も放置プレイしてたわけだが・・・
悪かったな、まぁ俺も忙しかったんだ大目に見てくれい。

じゃあ、簡単に夏前に起こった事でも書こうかね。<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/27(水) 18:12:51.63 ID:yvRERCM0<>どっから話せば良いのかよくわからんけど・・・
スレ見る限りだと俺が酔っ払って青龍につれて帰ってもらってからで良いんだよな?

良いよな、そこから書くぞ。

俺はこう言うの得意じゃないから文章がおかしいかも知れんけど、
そこはバファリンの優しさで何とかしてくれ。
<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/27(水) 18:22:04.21 ID:yvRERCM0<>とはいったものの、夜のことはあんまり覚えてない。
お酒って怖いね。

で、青龍が言うには俺は一晩中ゲロリーノ、アバレーノ。
調子乗って飲みすぎたのは言うまでもないよね。

俺が目を覚ましたのは太陽がとっくに昇った後。
俺自身は自分の部屋で、青龍は下の階のソファで、睡眠中。

俺「・・・頭が痛くて力がでないよママン・・・」

青龍「zzzz・・・」

俺「・・・ん? 青龍、どうして俺の家に・・・?」

青龍「・・・zzz」

俺「・・・おーい、俺んちにいるのは良いけどよー、
  起きてくださいよー、おい青龍・・・?」

青龍「・・・んあ・・・?
   ・・・・・・ぉお・・・やっと起きたか糞野郎・・・」

寝起きなのにめっさ怒ってる青龍さん。
おいおい、いきなりそんな目つきで見られても困るんだぜ?<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/27(水) 18:30:26.69 ID:yvRERCM0<>俺「・・・どうした?
  なんでそんなにご立腹なんだい?」

青龍「・・・貴様と友達やめようと思ったのはこれで二回目だ・・・」

因みに一回目は小6のときね。

俺「は? 全く話が見えないんだけどよ、なんで青龍俺ん家にいるんだ?」

青龍「・・・・・・・・・」

つーかよく見れば青龍俺の服着てんのな、もうめちゃくちゃ怖い、1オクターブ声が低いもん。

俺「・・・もしかして俺何かしました・・・?」

青龍「・・・ここで問題です。
   貴方は昨日どうやって自分の家まで帰ってきたのでしょうか?」

俺「どうって普通に・・・・・・あ」

ここで思い出してくる。

青龍「・・・酔っ払いの対処は相当大変だったぞ・・・?
   バイクの後ろで暴れるは、家に帰ったら帰ったで奇声発して暴れるは・・・
   お陰で俺のシャツは燃えるゴミだ・・・」

俺「・・・・・・いや・・・その」

青龍「・・・・・・まぁ、とりあえず一発な」

もうね、少しは手加減しろと、本気で腹部とか馬鹿かと、あほかと。
胃液が口いっぱいに広がったのは言うまでも無いね。
吐く物無いのに吐きそうになったから。<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/27(水) 18:37:33.85 ID:yvRERCM0<>で、俺は青龍にことの全てを聞いたわけだ。
とりあえず土下座して話を聞いてたんだけど、あれじゃね?
俺って最低じゃね?

青龍のメールアドレス流出するは、青龍にメイドみたいなことさせるは・・・
話の節々に青龍が身体のどこが痛いそこが痛いと愚痴ってたけど、俺は謝るばかり。


青龍「でさー、俺はアドレスを代えないといけないわけ?
   ねぇ、○○?←俺の苗字」

因みに、こいつが俺を苗字で呼ぶときは相当切れてるときだけだ。

俺「・・・」←再度土下座中

青龍「・・・昨日もお前をここに連れて帰ってから携帯鳴りっぱなしだったんだけど?
   主にお前のことで・・・」

俺「・・・・・・」

青龍「・・・俺は浪人生として夏からマジで勉強しないといけないんだけど。
   ねぇ?」

俺「・・・あれじゃね? 女の子友達が増えたと思えば・・・」

この後横っ腹おもいっきし蹴られて悶絶。<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/27(水) 18:43:29.86 ID:yvRERCM0<>俺「いや、マジですまん!
  超反省してる! このとーり」

青龍「・・・・・・アド変したらお前には送らないからな」

俺「ちょ、それはダメだろ・・・お前友達いないじゃん?」

青龍「・・・・・・」

俺「嘘! 嘘だって! マジでそんな眼で見るなよ・・・
  あれだ、俺から言って青龍のアドレスは消去させとくからよ、だから許してくれ!」

青龍「お前この後もメール気続けたらマジで[ピーーー]からな?
   それによ・・・酒弱いのにどうして見境なしに飲むんだよ・・・大体お前は」


流石は父親が教師なこともあってくどくどと説教を始める青龍。
俺はその間終始正座。

それが長い長い、30分は優に話し続ける始末。
俺は頭痛いし腹痛いし・・・でも反省はしてたから最後まで聞いてたわけよ。

<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/27(水) 20:01:11.50 ID:o8OxYfco<>ロリコンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

続き続き!!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/28(木) 03:24:49.87 ID:PktEpIDO<>青龍容赦ねぇなwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/28(木) 08:28:49.59 ID:6H8JTVIo<>いや、自分の適量も知らずに酒をかっくらうやつは一回死んだ方が良い
一回死ぬと適量わかるだろ
って言うか前後不覚になるくらい酒を飲むな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/29(金) 09:12:27.90 ID:0GwvkTEP<>あれ?ロリコンは?
続き気になるじゃねぇか<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 16:22:08.58 ID:1lafBQw0<>ちょいと止まったけど問題なく続き。

>>413
ごめんな、以後自重してるよ。


青龍「はぁー・・・はぁー・・・
   ったく・・・」

俺「(・・・説教してて息切れてる奴初めて見たわ・・・)」

青龍「なぁ、腹減ったから飯作ってくれよ。
   後今から俺シャワー浴びてくるから」

俺「・・・はぁ(俺は全然減ってない)・・・何がいい?
  ストックあんまり無いんだけども」

青龍「モツ煮」

俺「あるわけ無いでしょ」

青龍「ガンモ」

俺「居酒屋池よ」

青龍「・・・オムライスで良いや」

俺「はいはい・・・卵あるかね・・・」

青龍「あれだぞ、スプーンでオムレツ広げるやつだぞ、半熟の」

俺「・・・おk」

で、青龍は俺ん家の風呂を勝手に使って、俺はその間に痛い身体を動かして調理。
つーかオムライスってよ・・・ここは俺のことを考えてホットケーキとか言えよな・・・


<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 16:26:04.93 ID:1lafBQw0<>〜少年?調理中〜

で、青龍はオムライスを食べ、俺はそれを見届けてまた寝。
青龍はその日はもう勉強できないとか言い始めながらも、ぶつぶつ言いながら図書館へ消えた。

いついなくなったのかは知らない・・・ってか俺が目を覚ましたのは次の日の6時。
あれじゃね? 誰でも経験あるよな? 夕方だと思ったら朝だったこと。

<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 16:39:01.51 ID:1lafBQw0<>幸い飲んだのが金曜だったから俺は日曜日に暇をしていたわけだ。
大学の友達から誘いがあったけど、なんか気が載らないからスルーしてた。

俺から女子たちに青龍へメールをするなと言っておいたが、直接確認しないとまたトラブルがあってはいけない・・・
って普通は考えるんだろうが、あの時の俺は何を考えていたのか・・・
別にメールで伝えたから良いんじゃね? なんて思ってたのが間違いよ。

〜数日後〜

大学では何一つトラブルも無く、俺は日々を楽しんで過ごしていたわけだが、
最近サークル内の女子がやたら俺に絡んでくる。

前からもそうだったんだけど、高校の時にも似たようなことがあったからそん時の要領で対処してたんだ。
しかし、飲みに行った日から無駄に肩とか手とか触ってきたり、どうでもいいことに同意を求めてきたり。

終にはどういうことか俺の高校時代のネタを知った風で話してくる始末・・・
何でこうなったのかは明らかだった。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 17:54:58.76 ID:fWUrLIAO<>wwktk<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 20:35:21.25 ID:URo9CN.o<>あれか朱雀、おまえの時間経過はとてもスローなのか?ww<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 22:01:55.11 ID:1lafBQw0<>>>419
うっせwwww
俺は普段ぐーぐる先生で検索(非エロ)する以外にパソコンなんて使わないんだよ!

メモ帳に書いて貼り付けてって作業の大変さを知れ!


続き

俺「・・・間違いなく・・・俺のミスだよな・・・」

6月に入り、じめじめした暑ささもうざったくなってきた頃。
青龍から再び徴集命令、メールに句読点が無い時点でやばいとは思いつつ、とある喫茶店へ。

俺「・・・言おうとしていることはよく分かる・・・よーく分かるぞ」

青龍「ふーん・・・まぁ、アドレス変えたわけだけど?」

俺「・・・すまん・・・あいつらによく言っておくからよ・・・」

青龍「女たちは別に朱雀から何も言われてないって言ってんだけど?
   ・・・毎日毎日お前のことを聞いてくる女どもにはいい加減うんざりでよ」

俺「・・・はぁ!? 俺はちゃんと言ったぜ?・・・でもよ、アドレス変えたんだからもうメールは来ないだろ?」

青龍「・・・お前さ、俺の電話番号も喋っただろ?」

俺「・・・あ」

青龍「もうね、うざいってレベルじゃない」

青龍が言うには、ここんとこ毎日のように電話がかかってくるらしく。
加えて時間も深夜とかに平然とかけてくるからマジで困ってるとのこと。

青龍の性格上女のいない場所では何でも(中傷的なことも)いえるが、当人を前にすると何でも肯定モードになっちまう。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 22:07:04.59 ID:URo9CN.o<>糞女どもは人の悪口に人生をかける節があるからな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 22:22:53.36 ID:./1m1zUo<>・・・深夜は携帯の電源切っておけばいいような<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 22:53:52.30 ID:N2hvHooo<>ロリコンさん充分文章うまいっすよwwwwww<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 23:02:53.61 ID:1lafBQw0<>
俺がどんな内容を聞かれて困ってるんだって聞いても、青龍はどうも歯切れが悪い。
話を聞くとどうやら女たちに俺には内緒でって約束をさせられてるみたいでよ。

まぁ、俺も馬鹿じゃないし、推測するとさ(この時ではな)
多分に・・・あー・・・真に自分で言うには馬鹿らしいんだが・・・
俺に惚れてる女がいるみたいな訳だ、複数。

で、これもこのときは憶測だったんだけど、サークル内の女子で、3.4人。

でも誰がどうなのか青龍に聞いても、それはさ・・・とかもじもじするばっか。
そんな態度を青龍が取ってるからさ、俺もだんだんイライラしてきて。

もしかしてこいつ、今の自分の状況楽しんでるんじゃねえの?
とか、考えちまったわけだ。

青龍は浪人で、あんまり友達付き合いもしないからさ。
飲み会で青龍にあった女も言ってたけど、青龍は浪人生活がつらいって愚痴ってたらしいし。

正直姿形は女っぽいの青龍だったら見ず知らずの女も何かと相談しやすいんだろうからな。
そんで、俺と青龍は小学校からの・・・まぁ親友だし?

後、関係ないけどみんなが俺たちに釣られてたとき、青龍は自分のこと173あるとか書いてたみたいだけどさ、
スレを見直したらそれを訂正してないんだよなwwww
実際あいつは165ないからなwwソースは高3の時の身体測定wwww

ネタばれしたけど、悪く思うなよ青龍ww


まぁ、話は飛んだが戻すぜ。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 23:04:06.06 ID:URo9CN.o<>165が高いのか低いのかわからなくなるオレは181だ<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 23:04:25.43 ID:1lafBQw0<>でよ、全く話は進展しないんだよ、全然。全く。

今だからいえるんだが、そん時の俺は青龍が真剣に困ってるって気づいてやれなかったんだ。
・・・自分の身の可愛さにな。

俺はサークル活動が楽しいし、大学生活も上手くスタートできた。
青龍のことを考えれば、女たちにきびしく言ってやるのが第一だったんだけど、
それで雰囲気悪くなるのがいやだったし、俺は孤立したくなかったんだよ。

ここ見てる大学生なら分かると思うけどさ、夏過ぎてから友人関係を築くのってけっこう難しいんだ。
みんながみんなある程度関係を持ってから、他人が入っていくのってよ・・・

そんなこんなで、俺は青龍がマジで困ってることにきづかず、言うならばその話題から眼をそむけたんだ。

俺「青龍もいやだとか言いながら実は女に相談されて楽しいんだろwwwwww」←当時の本音

・・・馬鹿だよな・・・<> 朱雀"
◆w/Wl9gxZzQ<><>2008/08/29(金) 23:05:11.73 ID:1lafBQw0<>雷怖いから続き明日で。

やべーよ、すぐ近くに落ちたぜこりゃあ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 23:06:10.25 ID:URo9CN.o<>乙、おまえ一回雷に打たれりゃww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 23:06:38.10 ID:N2hvHooo<>165ないとかwwwwwwwwww
俺もないから安心しろwwwwwwww青龍wwwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/29(金) 23:07:34.07 ID:N2hvHooo<>>>427
ロリコンさん乙!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/08/30(土) 18:44:47.93 ID:9MleC1g0<>ロリコンさん続きまだー?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/08/31(日) 07:40:45.60 ID:.yV4IgAO<>俺wwwwwwwwwwwwwwwwww
156wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwテラhydewwwwwwwwwwwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/04(木) 15:25:58.42 ID:KPnKBbko<>もう9月なんだぜ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/11(木) 00:08:59.29 ID:mN0Hg.SO<>ロリコンさん生きてますか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/15(月) 04:58:39.57 ID:H59xQsDO<>青龍も朱雀も大丈夫か?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/19(金) 21:43:39.59 ID:v.tH5KMo<>報告マダァー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/25(木) 01:10:41.36 ID:uuFDTcSO<>もうロリコンなんて言いませんからwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/26(金) 09:38:54.65 ID:8BqcyCMo<>おーいまだか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/26(金) 18:52:40.75 ID:5E8X9v60<>朱雀も青龍も生きてますか?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/09/26(金) 22:20:03.00 ID:4DsSaqwo<>そろそろ少し報告がほしいところだよな・・・
さすがに心配になってきたぜwwwwwwwwww<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/30(火) 04:21:14.73 ID:JqZlwwAO<>頼む返事をしてくれ

一言だけでいいんだ

無事を確認したいんだ
頼む<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/09/30(火) 19:57:30.15 ID:M.CH14Mo<>もうこのスレのことなんて忘れちゃったんだよ
ひと夏の思い出に過ぎないんだよ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/02(木) 03:24:56.14 ID:8s2HcADO<>まとめスレから読んできて一気に虜になったぜ!!!けど追い付いてみたら過疎ってたwwひでぇwwww
大学の夏休みは一般的には9月までだから、10月になれば朱雀戻ってくるよね‥?きっとそうだよね?

青龍でも朱雀でもいいから一言返事してくれ(;_;)
青龍の厨二病が一生完治しませんように‥しませんように‥<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/02(木) 03:26:26.46 ID:8s2HcADO<>まとめスレから読んできて一気に虜になったぜ!!!けど追い付いてみたら過疎ってたwwひでぇwwww
大学の夏休みは一般的には9月までだから、10月になれば朱雀戻ってくるよね‥?きっとそうだよね?


青龍の厨二病が一生完治しませんように‥しませんように‥<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/04(土) 10:07:02.71 ID:g37.xUDO<>まだここ人いるー‥?

どなたか‥青龍さんがうpした画像保存してる方おられませんかーー‥?
できれば朱雀の。いやもう何でもいいですホント。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/04(土) 10:13:41.21 ID:6CNlnBIo<>いるよ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/04(土) 18:43:12.96 ID:Jql.z4ko<>いるよ。
画像も全部持ってるけど、勝手に再うpはだめだろ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/04(土) 20:53:41.56 ID:g37.xUDO<>え?再うpダメなの??そっか‥(´・ζ・`)

じゃあ、>>447さんが青龍さんの絵を模写して描いたヤツで我慢する‥描いて?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/10/11(土) 00:07:26.55 ID:APv6UoSO<>なんか変なうp厨が湧いてるな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/14(火) 22:27:50.94 ID:V4sePmQo<>2人が報告に来ることはもうないのか…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/14(火) 22:51:17.02 ID:f6oRwzYo<>青龍来なくなってどのくらい経ったっけ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/15(水) 02:42:26.57 ID:WgP71sQo<>3〜4ヶ月ってとこじゃね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/10/15(水) 21:28:51.97 ID:3UPUCPko<>両人の最終カキコ

348 名前:ただの青龍" ◆w/Wl9gxZzQ[] 投稿日:2008/07/13(日) 19:40:21.51 ID:llkUgac0



・・・マジで人生終わりそうなんだけど・・・


427 名前:朱雀" ◆w/Wl9gxZzQ[] 投稿日:2008/08/29(金) 23:05:11.73 ID:1lafBQw0
雷怖いから続き明日で。

やべーよ、すぐ近くに落ちたぜこりゃあ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/16(木) 07:24:39.18 ID:/XoLjUDO<>朱雀は大学、青龍は受験を頑張っていて来れないんだよ

たぶん<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/10/16(木) 13:19:10.65 ID:IlAdj9oo<>青龍は受験だろうな
朱雀はどうしてるかわからんが<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/10/16(木) 14:38:34.03 ID:tnblXMso<>最近まとめ見て追いついたんだが、過疎だな…。<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/02(日) 16:34:44.33 ID:a4ZZ6dYo<>さて・・・全く音沙汰無なわけだが・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/02(日) 22:48:07.07 ID:bJLVa0Qo<>田舎に帰った青龍は何か大きな秘密に触れてしまって
それを聞かされた朱雀もろとも消されてしまったとか
ファンタジーな陰謀説を推すよ!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/11/05(水) 23:36:48.06 ID:3UBLeQ.0<>青龍か朱雀まだー?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/05(水) 23:59:31.78 ID:NO54Kqso<>音沙汰無いなぁ……
<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/09(日) 20:48:07.30 ID:VkfpasDO<>サンデー連載の「お茶にごす」で山田くんを見るたび、何故だか朱雀を思い出す‥

今頃どーしてんだろーなー‥<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/12(水) 22:01:37.24 ID:tLyzau6o<>ここってどのくらいで落ちるの?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/11/23(日) 12:13:02.96 ID:WwynjGYP<>大学受験終わるまでは過疎かなぁ…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/23(日) 20:47:08.80 ID:9xzSlfI0<>>>462
落ちないのがパー速なんじゃね?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2008/11/25(火) 03:50:53.65 ID:7yRBHUAO<>もしかして
あの雷でワープしちゃったんじゃね?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2008/12/08(月) 13:54:44.33 ID:Ivz1v/60<>朱雀はティラノス行ったんだよ、きっと。
で、今連絡取れないんだよ<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<><>2009/01/04(日) 11:04:13.99 ID:pVS00kSO<>もうすぎセンターだな<> A HAPPY NEW YEAR 2 0 0 9 !<>sage<>2009/01/04(日) 20:06:49.35 ID:aKUuEpYo<>そういえばそんな時期だな<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/01/07(水) 17:22:59.58 ID:BBcCkYDO<>青龍が大学受かりますように<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/01/17(土) 14:37:08.92 ID:xhgYbtgo<>今頃センター受けてんのかねぇ・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/01/21(水) 17:56:44.95 ID:htr3bkAO<>センター終わったな…<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/01/27(火) 16:01:33.96 ID:vpI7tkSO<>センターは終わったけどまだ面接とかあるからな!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/02/15(日) 18:32:00.25 ID:gBxk4oAO<>25日に旧帝大の試験受ける俺が通りますよ。と<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/03/05(木) 16:11:49.86 ID:XpcJpESO<>そろそろ来てもいい頃なんじゃないか?
未だに青龍と朱雀の帰りを待ってる奴がいるということを忘れるなよ?<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/03/09(月) 20:43:09.01 ID:8ylx/6AO<>>>473ですが合格しました
すんません関係ないですね<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/03/09(月) 23:10:48.32 ID:jgrdVDIo<>関係ないけど祝ってやる!<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/03/11(水) 13:07:11.75 ID:aqQ7JAs0<>俺も祝ってやる!

あぁハヤクカエッテキテネ・・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/04/14(火) 00:54:07.89 ID:Dt.d6Ig0<>久々に覗いてみたけど帰ってきてないのか・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/05/02(土) 21:02:42.15 ID:3JdF1Ts0<>まだ見ている奴いるのかね・・・<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/05/02(土) 21:18:07.93 ID:SXEBRMco<>ノシ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/05/03(日) 00:05:20.50 ID:GVtSuA2o<>ノ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/05/04(月) 00:17:10.13 ID:h372DQAo<>ノシ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/05/09(土) 07:50:10.85 ID:Ty8L7wDO<>ノシ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/05/09(土) 07:58:47.96 ID:DYiMcOAo<>ノシ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/05/13(水) 23:21:21.09 ID:hVMbSUw0<>チェック<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<><>2009/06/08(月) 08:24:16.57 ID:2TrYvsQ0<>6月になりましたー<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/06/08(月) 12:58:27.33 ID:0rxCF7oo<>いらぬ世話かもしらんが、前スレがDat化したんでとりあえず張っておく。

前スレ
【青龍】妹が重篤な病気にかかったんだけど・・・4【朱雀】
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/part4vip/kako/1206176198<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/06/08(月) 20:27:17.00 ID:s56iCPco<>レスの一つくらい欲しいなぁ<> 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします<>sage<>2009/06/15(月) 23:04:12.50 ID:3ZoHKyYo<>大丈夫かなぁ<>