16:名無しGEPPER[saga]
2010/04/30(金) 00:54:47.88 ID:sUbiVyUo
学園都市。
世界でも群を抜いて「時代」というものを無視しきった科学力を持つ、最先端の未来都市である。
メタリックに輝くシャープなボディの、いかにもといったロボットが往来を行き来するこの町でも、所詮人間は人間だった。
住人のほぼ全てが学生というこの街では、未熟な精神に行き過ぎた力を宿したため道を踏み外す者、未熟ゆえに世界から脱落していく者が後を絶たない。
そして、それは学生たちだけではない。
それを率いる大人たちでさえ、人の目に付かぬ日陰では人の皮を剥いで化け物となる。
そして、今日もまた、学園都市の闇に飲まれかけるものが一人。
「……や、やめてください……!」
「そう拒絶しないで欲しいな?科学の発展のためなんだ。その体、貸してほしいんだけど?」
監視カメラの死角となる裏路地の、更に裏。
誰一人として目を向けることすらないこの道に、年端も行かない少女が追い込まれてしまっていた。
怯える彼女の前で薄笑いを浮かべる白衣の男の周りには、体つきのいい男たちが六人。
非力な少女に対しては、あまりに過剰とも思われる人数である。
男は、眼鏡を人差し指で押し上げながら、さも残念そうにのたまった。
「本当なら、君を襲うはずじゃあなかったんだけど。予定が変わってしまったのだから仕方がないじゃないか?」
男の背後には、血溜まりに沈む別の少女の抜け殻が転がっていた。
もはや物言わぬ遺体。それは、この上ない分かりやすさで今少女の置かれている状況の危険度を表していた。
「見られちゃったし。モノはついでだ、君にも協力してもらいたいんだ?」
少女は震えながら、後ずさる。しかし、背中は既に無機質な壁の感触を捉えてしまっていた。
もはや、逃げ場などない。
少女は、科学に支配された街で、ただただ無意味に神に祈る。
―――お願いです。私を、助けてください。
「ほら、レベル0とはいえ、色々な素材として使えるしねえ?……じゃ、持って行け」
白衣の男が、背後にいる男たちに指示を下す。
淡々と、男たちは少女へと手を伸ばした。
「あ、や……いやぁぁぁぁぁぁあああっ!!」
少女の叫びが、路地裏の壁に反響する。
そして、血が辺り一面に迸った。
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