過去ログ - 上条「…死体?」土御門「ああ、屋上と体育館裏で見つかった」
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10:断片(海賊版)[sage saga]
2010/06/26(土) 14:51:35.10 ID:ESomw2w0


 《彼女》が自分に名前をつけて欲しい、と言ったのはその《実験》が始まる三日前だった。
 その前後から自分の傍から《彼女》は離れるようになった。

 自室で二日間考えたが、全然女性の名前なぞ自分には考えられず、不本意ではあるが人に頼る事にした。

 頼ったのは、何度か自分と面識がある『完全ニートマニュアル』を愛読する女性研究者だった。
 女性研究者は、自分が二日間ろくに寝ずに考えた問題を三秒足らずで解決し、《彼女》の名前を書いたメモを自分に渡した。
 自分は彼女に礼をいい、その部屋を急いで出た。

 小さく後ろで聞こえる、
 『ごめんなさいね。
 わたしって、どこまでいっても、甘いから。
 優しくなくて、甘いから』
 と、いう言葉が聞こえず、《彼女》の部屋にむかった

 しかし、《彼女》は部屋にはいなかった。
 薄暗い部屋の中、雨の音だけが響いた。
 電気をつけると、机の上にメモが残しあった。

 『今まで、超ありがとう。そしてごめんなさい』と。

 《彼女》の嘘に気付いたのは、その時だった。
 いや、この嘘に気付いていないのは、自分だけだったかもしれない。
 自分はゆっくりと女性研究者のメモを開く。
 そして、そこに書かれた文字を見て、周りの音が消え、感情が一定になり静かに涙が出た。


 メモの文字。
 そこには自分が《彼女》に与え続けようと思った感情。
 これから先欠け続け、ずっと埋まる事がないであろう気持ちが書かれていた。
 たった二文字。


 ――『最愛』と。





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