過去ログ - ピカチュウ「昔はよかった・・・」 Part8
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名無しGEPPER
[sage]
2010/09/12(日) 09:49:01.81 ID:P7eql.wo
庭から二人の姿が消える。
ピジョットは場所を変えた。通りに面した玄関前が映る。
ちょうどカスミとピカチュウが家に入っていくところで、
そのあとに精悍な顔つきの男と、見るからに悪戯好きそうな少年が続く。
シゲルと、シゲルの息子に違いなかった。
シゲル――お前も父親になっていたんだな。
俺がもしもカスミと一緒に暮らしていたら、
あの談笑の輪の中で、お前と育児の苦労でも愚痴りあっていたのだろうか。
玄関の戸がしまる。ピジョットは動かなかった。
だから俺も感覚共有を解かずに、ぼんやりと実家を眺めていた。
これで見納めだと思った。
カスミとヒナタはマサラタウンでの平穏な生活を、
母親は二人を援助する形で寂しさとは無縁の生活を、
ピカチュウも外見の若々しさはそのままに『普通』のポケモンとしての生活を送っている。
血に塗れ、別の家庭を築いた俺に、みんなに合わせる顔はない。
できるのはせめてこの平和が壊されないように、組織に献身することだけだ。
これまでどうりに。俺が死ぬまで、ずっと。
長い休暇が取れなくなったことを、サヤは悲しむだろう。
だが、会えないわけではないのだ。
サヤとアヤへの裏切りは、五年間放置し続けたカスミやヒナタへの罪悪感の前では、小事だった。
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