恵美「あの人と、結婚した。」
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9: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/06(火) 22:27:46.78 ID:T5tfdE0X0
「すぐ帰ってくるから、良い子にお留守番してるんだぞ?」

Pが今起こった事を誤魔化すかのようにニヤニヤしながら、アタシの頭を撫でてからかうような口調で言った。…あ。湿っぽくならないように、元気づけようとしてくれてるのかな?よぉし、それなら。

「もー、子供扱いしないでよねっ!アタシもうオトナなんだから!お酒だって飲めるもんね!ばーかばーか!」

アタシも怒ったフリをして、それに応じる。

「ははっ、まぁまぁ」

「ふんだ、いじわるなPなんか知らない。さっさと行っちゃえば」

う、なんか引っ込みつかなくなってきちゃった…と内心焦るアタシの心を見透かしたのか、ぷいっと顔を逸らしたアタシを両腕で後ろから捕まえたPは、

「うん、行ってくるな。…恵美、愛してるよ」

「…ふぇっ?」

そう愛おしげに耳元で囁いた。耳まで真っ赤になるのを感じる。頭が甘く痺れ、喉の奥がきゅんきゅんする。

「ま、毎日電話するから!ちゃんと出てくれよ?」

「…えっ?あ、うん!出る!絶対出る!」

「ん。じゃ」

と短く言い残したPは自分で言ったくせに今頃照れたのか、アタシを残して足早に駅の方へと歩いて行った。

「あっ…」

まさかの二重不意打ち。アタシは頭がぽーっとなって、Pが見えなくなるまでその場に立ち尽くしてしまっていた。朝はまだ肌寒い季節なのに、頭も体もアツくて仕方ない。

何それ、ズルい!Pが突然あんな事言うからびっくりしてきゅんきゅんして、まともに返事できなかったじゃん!Pのばかぁ!この気持ちをどこにぶつければいいのー!?

…でも、やっぱアタシってチョロいな。

「えっへへぇ…♪」

パジャマの上に羽織ったコートで口元を覆いにやけ顔を隠しながら、軽く悶える。愛してるって言って貰っちゃった…♪これでしばらくはP成分は尽きないかな!そーだ、あの二人に自慢しちゃお!


…なーんて思っちゃってたあの時のアタシは、完っ全にのーてんきでお気楽な大バカとしか言いようがない。アタシは自分がどれだけ寂しがり屋で甘えんぼで泣き虫で、Pがアタシにとってどれだけ大きな存在だったのかを分かってなかったんだ。




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