藤原肇「手を伸ばせばそこにあって」
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1: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:23:46.16 ID:1Ml/enjOo

アイドルマスターシンデレラガールズ。藤原肇のss

おめでとう、ただただおめでとう。


少し前の話たち↓
藤原肇「手を取って連れ出して」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479457346/

藤原肇「はるまつ三角、あまくて四角」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490953400/

モバP「ミツフジ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1505227001/


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2: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:34:51.13 ID:1Ml/enjOo

 夏の青ささえどこかへ吹き飛ばしてしまったような、透き通った風がひとつ、そこに吹いていました。

 朱に染まった西日はどこか遠くへと溶けきってしまい、辺りはもう星を迎える準備をしているみたい。



3: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:36:32.38 ID:1Ml/enjOo

「お疲れ様」

「プロデューサーさんもお疲れ様です」

以下略 AAS



4: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:38:23.93 ID:1Ml/enjOo

「撮影、どうでしたか?」

「ああ、良かったよ。その路線もいけるんだなって」

以下略 AAS



5: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:39:42.98 ID:1Ml/enjOo

 なんだか、信じて良かったという言葉を反芻しては、その言葉がたまらなく嬉しくて、少しだけ視線を宙に浮かせてしまった。緋色に染まったその頬は少し見せられない。

 自分の視線を上へ上へと押しやり、やがてひとつの到達点へと止まった。

以下略 AAS



6: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:41:00.02 ID:1Ml/enjOo

 いつの間にか目の前には、すぐにでも届いてしまいそうなぐらい、近く、大きな月が私たちを煌々と照らしていた。




7: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:43:13.04 ID:1Ml/enjOo

「素敵な皓月ですね……」

 いつの間にか秋の色に移り変わっていたそれを、プロデューサーさんと二人で眺める。うるさい胸を抑えるために吸い込んだ空気が体の中を駆け抜けていったおかげで、さっきよりもずっと頭が冴えていくのがよく分かってしまった。

以下略 AAS



8: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:45:14.45 ID:1Ml/enjOo

 天を仰げば、闇に溶けきらない強い光がまばゆく輝く。夜空は故郷の海の様にただただ広がっていって果てが見えなくなってしまった。

「確か、天の海って表現がどっかの詩にあったよな」

以下略 AAS



9: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:47:19.43 ID:1Ml/enjOo

「それならこの月は何に例えましょうか?」

「月か、月でポピュラーなのはやっぱりかぐや姫だな」

以下略 AAS



10: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:50:13.71 ID:1Ml/enjOo

 そう言うプロデューサーさんの視線は、どこか遠くを見つめるようで、その瞳の色は、私がアイドルになるということを伝えた時のおじいちゃんと同じ色をしていた。

 少し自嘲気味に笑うプロデューサーさんの、そういうところが嫌で、気づけば私は両手を差し出して彼の右手を包み込んでいた。

以下略 AAS



11: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:51:54.09 ID:1Ml/enjOo

「プロデューサーさん、私の姿はちゃんと見えていますか?」

 見上げた視線がぶつかる。いつもなら何言ってるんだって、茶化してくるはずなのに、こんな夜だからなのかな。真っすぐ私のことを見つめたまま「見えているよ」って。

以下略 AAS



12: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:53:20.73 ID:1Ml/enjOo

「それなら私の声は……」

 プロデューサーさんが目を閉じて静かに頷く。

以下略 AAS



13: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:55:42.62 ID:1Ml/enjOo

「私はちゃんとここに居ます」

 どんなに幻想的な衣装をまとっていても私は日々の中で生きる器でありたいから。

以下略 AAS



14: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 01:58:02.88 ID:1Ml/enjOo

「肇」

「どうしました?」

以下略 AAS



15: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:01:09.22 ID:1Ml/enjOo

「さすがに帰りは空いているな」

 これなら予定よりも早く帰れそうだとプロデューサーさんは嬉しそうに呟く。

以下略 AAS



16: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:02:55.93 ID:1Ml/enjOo

「あともう少し、お待ちくださいね」

「免許取ったとしても運転席は譲らないぞ」

以下略 AAS



17: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:04:37.70 ID:1Ml/enjOo

 車の免許をとったら真っ先にプロデューサーさんを乗せて走ろうと心の中で決めながら窓の外を眺めれば、進む先に橙色の明かりが現れてはあっという間に流れていく、その間も大きな月は悠々と浮かび、私たちを照らしていた。




18: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:06:51.42 ID:1Ml/enjOo

「……っと、ほら着いたぞ」

 いつの間にか見慣れた事務所の駐車場に着いていて、降りる準備を、とプロデューサーさんに促される。

以下略 AAS



19: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:08:58.79 ID:1Ml/enjOo

 今も変わらずにそこにある月に手をかざしてみた。

 やっぱりというか、当たり前というか、その手は虚空を掴むばかりだったけれど、それでも私が歩みを止める理由にはならない。

以下略 AAS



20: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:10:18.44 ID:1Ml/enjOo

「ん? なにか言ったか?」

 一歩前を行くプロデューサーさんが振り向いて心配そうに声をかける。

以下略 AAS



21: ◆BoSt6wfla6[saga]
2017/09/13(水) 02:11:22.67 ID:1Ml/enjOo


 私の伸ばす手の先に、理想の私とあなたがいつも居てくれるように。


以下略 AAS



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