佐久間まゆ「凛ちゃん聞いてください! まゆ、プロデューサーさんとキスしました!」
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10: ◆E055cIpaPs
2017/10/29(日) 14:11:52.31 ID:T3zoKt8I0
 意識を失っていたのか、眠っていたのかは分かりませんが、気が付くとまゆは誰かの膝の上に頭を乗せて横になっていました。

 うすく開いた瞼の向こう、そこにいるのは当然凛ちゃんです。

 プロデューサーさんでは、ありませんでした。

 まゆが意識を失ってからだいぶ時間が経ってしまっているからでしょうか、どうやら凛ちゃんも眠ってしまっているようでした。

 月明かりに照らされている凛ちゃんの寝顔。

 そこには、少し前までは影も無かった皺や隈が浮かんでいて。

 きっといつもは全力で誤魔化しているのだろう疲れや苦労が感じられます。




 あの日、凛ちゃんは普段のインタビューとは全く違う内容を話すまyのことを少しだけ笑った後、「そっか、私と一緒なんだ」と言いました。

「私も、アイドルになればきっと何かが見つかると思って、プロデューサーのスカウトを受けたんだ」

「ねえ、まゆ。アイドル、続けようね」

「私も、まゆも、プロデューサーのことが本当に好きだったけど、ここにあるのはきっと、それだけじゃない筈だから」

 まゆ達がアイドルを始めた理由も、アイドルを続けてきた理由も、全く別物であることはきっと凛ちゃんだって良くわかっているはずです。

 それなのに凛ちゃんが何を思ってそんなことを言ったのか、まゆには痛いほど良くわかりました。

 まゆ達はきっとこの先、プロデューサーさんが大好きだったことから目をそらさなければやっていけないから。

 そんなまゆ達がこの先アイドルを続けるには、何か別の理由を無理やりにでも用意しなければならないんです。

 だからまゆは、自分に嘘をついて凛ちゃんと一緒にアイドルを続けることにしました。

 『アイドルになれば、きっと何かが見つかると思った』と話す凛ちゃんに自分を無理やり重ねて。

 最初に”プロデューサーさん”を見つけてからアイドルの世界に飛び込んだ自分を消し去って。

 アイドルを始めたのも、厳しいレッスンに耐えられたのも、アイドルとしての生活に可能性を感じたから。

 決して間違っていないけど、それでも致命的に間違った嘘。

 それでもまゆは、もうこれ以上に何かを失いたくないんです。

 アイドルを目指す中で出会えた友人や、自分の力を存分に発揮できる舞台。

 そして、大好きな、プロデューサーさんといっしょに過ごせる日常を。

 でも、まゆは正直なところ限界を感じていました。

 だから、次の日のテレビの本番中に膝から崩れ落ちて倒れてしまった自分が、ちひろさんに5日間の休暇を命じられるがままに、新幹線で地元に帰って行く姿はどうも俯瞰的に見えて、心の中では焦りや申し訳なさではなくて「あーあ、やっぱりですか」というどうしようもなさが溢れるばかりでした。

 改札まで見送りに来てくれた凛ちゃんはただただ寂しそうに笑うだけで、まゆはもう一度あのセリフが聞きたかったのになぁ、と思いました。



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