11: ◆uYNNmHkuwIgM[saga sage]
2017/10/31(火) 22:37:09.06 ID:sIBhOQZK0
ライブの後、お兄ちゃんに車で家まで送ってもらう。いつもの距離、いつものようになんでもない会話をする。
何千回、何万回って交わしてきた言葉。きっと下手な演技じゃバレちゃうから、桃子の役者生命を全部かけて必死に演技をする。何でもない、明日には忘れちゃうような言葉をやり取りする。
家の前で車が止まる。
また明日って、さらっと言うお兄ちゃん。
でもきっとこれが最後の会話。だから、これくらいはいいでしょ?
桃子「お兄ちゃん、もし明日世界が壊れて記憶も全部なくなっちゃっても、桃子を見つけ出してくれる?」
いきなり変な質問だって自分でも思うよ。でも、お願い、聞かせて。
お兄ちゃんは考えもせずに、にかーっと笑顔で即答した。
ミリP「当たり前だ。俺はお前のプロデューサーだからな。すぐにお前を見つけだして、すぐに記憶を取り戻して、またアイドルにするからな」
ぶわっと感情の波が押し寄せる。指先から頭の先まであったかくなって、でもこころは痛い。
泣き出してしまいそうだったけど、それを閉じ込めて最後の演技をする。お兄ちゃんが笑顔でそこに行けるように。
桃子「ふん、合格。桃子のプロデューサーだから、当たり前だよ!」
その言葉にいつものように笑顔で反応して、車のエンジンをかけるお兄ちゃん。
車が走り出す直前、開け放した窓に向かって桃子は言う。演技じゃない素顔の桃子で。
桃子「さよなら、お兄ちゃん。桃子、幸せだったよ」
その言葉はエンジンの音にかき消されて、きっとお兄ちゃんには届かなかった。
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