橘ありす「二人ぼっちのアリス」
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2:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:03:12.79 ID:/E20kLoAo
 アリスという名前が、いまは好きだ。
 三十の坂を越えようかというところ。
 歳を重ねていくごとに、名前が自分自身に馴染んでいくような気持ちがしている。

 私は現在、小学校の教員として働いていて、
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:04:19.54 ID:/E20kLoAo
 橘ありす――。

 いまや押しも押されぬ人気アイドルとして、様々な業界から引っ張りだこという話だ。
 けれど、あの頃の彼女の夢は、歌手になることだった。
 芸能界で活躍しているとはいえ、必ずしも思い描いていたままの夢を叶えたわけではないのだと思う。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:05:14.73 ID:/E20kLoAo
「アリス」と名前を呼ばれるたび、私は、あの少女を思い出さずにいられない。

 ありす、同じ空の下のアリス。二人ぼっちのアリス。

 ずっと迷っていてほしい。迷って、傷ついて、それでも夢を忘れないでいてほしい。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:11:23.01 ID:/E20kLoAo
 ――――

 雨――、夏休み明けの一週間は雨が続き、暑い夏をゆっくりと冷やしていた。
 この雨に残暑の残り香がさらわれたら、きっと秋になるだろう。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:14:52.23 ID:/E20kLoAo
 喧嘩らしい。いまは口論に留まっているが、一触即発の事態だという。
 私は焦った。どうも、長い休みのあとで、すっかり平和ボケしてしまったようだ。

「それで、誰が喧嘩を?」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:20:01.27 ID:/E20kLoAo
 どうやら、すでに一触即発の状態は脱してしまったらしい。
 推察するに、ありすが男子を言い負かした、ということだろう。

 二人の衣服に乱れはなく、机がぶっ倒れていたり、なにかがひっくり返ったりしているわけでもない。
 とりあえず、掴み合いに発展しなかっただけよかった――私はホッとため息をついた。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:21:59.72 ID:/E20kLoAo
「喧嘩じゃありませんよ、先生」と、ありすは言った。

 それはあまりにきっぱりとした言い方で、私はついつい面食らってしまった。

「ちげーよ! こいつが泣かせたんだよ!」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:23:24.95 ID:/E20kLoAo
「それで、なにがあって喧嘩したの?」

「喧嘩じゃありません」

 ありすはまたピシャリと言った。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:25:05.45 ID:/E20kLoAo
 ことの発端は橘ありすの持っているタブレット端末だった。
 放課後、タブレットを操作するありすを、彼が咎めた。
 規則上、タブレットは学校に持ってきてはいけないものだ。
 そうして、口論に発展したそうだ。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:25:58.67 ID:/E20kLoAo
「え、ああ、……ごめんね。それで、橘さんは?」

「話に嘘はありません。だけど、先につっかかってきたのは向こうです」

 ありすの言い方に、私は思わず苦笑してしまった。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga sage]
2017/11/09(木) 12:28:26.65 ID:/E20kLoAo
「きちんと話してくれてありがとう。先生も一生懸命、このことを考えるからね」

 そう言って、私は彼を先に帰してやったが、ありすはそれに不満を募らせている様子だった。

「決着がまだついてません」
以下略 AAS



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