2:名無しNIPPER[saga]
2018/02/13(火) 18:27:52.62 ID:K48b6BSl0
「芸能界って、もっと身だしなみに気を遣わなきゃいけないところだと思ってた」
足先から頭のてっぺんまで、彼の姿を確認して、素直にそう口にした。彼は苦いものを口にした時のように表情を歪める。
「外に出る時は、もうちょっとちゃんとするから」
「してるかな?」
私はわざとらしく首を傾げた。しかしそんなわざとらしい振る舞いでも彼にとっては無視できないものだったらしい。恐る恐ると言った調子で「してませんか?」と彼が尋ねる。
「さあ、どうでしょう」
意味ありげに微笑むと、彼は困ったように眉を下げた。その表情を引き出せたなら満足だ。
「なんてね。そんなに心配しなくてもいいよ。良くはないけど、悪くもないから」
それは本音だった。良くはないけど、悪くもない。
「それは、安心していいのか?」
「ううん。もっと気をつけた方がいいんじゃない?」
「はい……」
「ふふっ。さっきも思ったけど、どうしたの?」
「下手に出ると優しくしてくれないかな、と」
「それ、口に出したら意味なくない?」
「承知しております」
今度はぴしっと背筋を伸ばして。プロデューサー、ふざけてるな? それとも……。
「そんなに優しくされたいの?」
彼の頬が微かに引きつる。お、図星。
「へぇ。されたいんだ?」
にやにやしながら尋ねると、彼は嫌そうに顔を歪める。
「ちょっとちょっと、自分から言ったんでしょ? そんな顔しないの」
「いや、今のは」
「じゃあ、されたくないの?」
「……」
固まる。うん、やっぱりされたいっぽい。
「それじゃあ、どうする? 優しい優しい加蓮ちゃんに、プロデューサーは何をしてほしいのかなー?」
「優しい優しい加蓮ちゃんって誰だよ」
「何か不満でも?」
「ございません」
ないらしい。それにしても……なさけないなぁ。本当に、まったくかっこよくない。
身だしなみに普段から気を遣うようなことはなくて、だらしなくて、なさけない。
本当に、まったくかっこいいとは思わないんだけど……どうしてなのかな。我ながら謎だ。
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