【デレマス】デレP「宝石になった日」
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10: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:25:49.12 ID:3cTkaN/s0
 自分の部屋の掃除はできないくせに、職場や他人の部屋の掃除はやたらとしたがる姉さんの性格を完全に忘れていた僕は。結局母さんがアパートを訪ねてきた時のように、姉さんに小言を言われながら部屋の大掃除をすることになった。
 食事を終え、姉さんを送るためにアパートを出る頃には、夜はどっぷりと更けていた。

「えへへー、お姉さんの料理はおいしかったですかあ?」

以下略 AAS



11: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:26:52.50 ID:3cTkaN/s0
「母さんたちは、もう覚えてないかもしれないけどね。ウサミンは、子どもの頃にアニメを見てた生み出した、私の初めてのオリジナルアイドルなの。ずーっと憧れていた、十七歳の魔法少女……だからアイドルになろうって思ったときに、ウサミンになるって決めたんだ」

 それが、ウサミン星から来た宇宙人を名乗る理由。永遠の十七歳を、自称する理由。
 
「もう後戻りできない。何をしたって後悔することになるなら……やりたいことを、やりたいだけやっちゃおう、って。ウサミンのことを笑う人がたくさんいたとしても……私と一緒に同じ景色を見て、楽しんでくれる人がいたら。ファンがウサミンを見て楽しんでくれたら、きっとすごく幸せだから」
以下略 AAS



12: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:27:56.79 ID:3cTkaN/s0
 振り返った姉さんは、月明りの中で、その逆光の中でもはっきりとわかるほどに。
 
「……楽しいよぉ。だって、夢が叶ってるんだもん」

 いつかの日に見たように、幸せそうな満面の笑みを浮かべた。
以下略 AAS



13: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:28:25.16 ID:3cTkaN/s0
 職員室に出版社から郵便物が届き。
 安部菜々の熱愛報道として僕と姉さんのツーショット写真が世に出回るのは、それから二週間後のことだった。


14: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:29:38.29 ID:3cTkaN/s0
 実家から取り寄せたアルバムを見せることで、職員室やら教育委員会やらには納得してもらえたけれど、世間様相手にはそういうわけにもいかないようだった。
 まあ、アルバムの件で電話した時、モザイクのかかっていた成人男性を本気で姉さんの彼氏だと思っていた母さんに「それは僕だよ」と説明するときも、中々骨は折れたのだけれど。
 本来はどうあれ、「永遠の十七歳の現役JK」として売り出している以上、条例だったり契約関係だったり、いろいろと問題は出てくるのだろう。
 対策を考えたい、と姉の事務所から連絡があったのが、週刊誌発売日の前日。一昨日のことになる。
 呼び出された事務所を訪ねオフィスに通されると、スーツを着た男性の隣で、姉さんはその小さい身体をさらに縮ませて座っていた。
以下略 AAS



15: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:30:42.91 ID:3cTkaN/s0
「……すみません。てっきり年上なのだと」

「いいんですよ、昔っからよく間違えられていましたから。中学の頃から変わらない上にあの性格なもんだから、高校の時なんかは妹に世話を焼かせるダメ兄呼ばわりされたものです」

 促されて、僕はソファの対面に腰かける。おそらくは秘書かなにかなのだろう、蛍光色のスーツを着た女性が紅茶をテーブルに用意してくれた。
以下略 AAS



16: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:31:34.63 ID:3cTkaN/s0
「せっかくですから、少し身の上話をさせてください」

「……どうぞ」

 どうせ、結論は何パターンかしかないのだ。いい機会だから、言っておきたいことがいくつかあった。
以下略 AAS



17: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:32:15.37 ID:3cTkaN/s0
「その後は……正直なところ、僕は姉と疎遠になっていました。実家を出て大学で教職を取り、そのまま今の仕事に就いてようやく、そういえば姉はどうなったのだろう、と思ったくらいですよ……その頃はまさか、まだ夢を追っているなんて思いもしなかった。その後の姉のことは、あなたの方が詳しいでしょうね」

 そこでいったん話を区切り、僕は紅茶を飲み干す。姉さんのプロデューサーは、僕の話を興味深そうに聞き入っていた。やっぱり、姉さん自身の口から姉さんの過去は語られていないのだろう。悪いことをしたかな、とも思うけれど、これはたぶん、僕が語らなければいけない話だ。

「公務員なんてつまらない仕事、なんて人もいますけどね。別に、機械のように無感情に仕事してるわけじゃあないんです。変わらない日常って言ったって、毎日何かしらの変化はある。それに」
以下略 AAS



18: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:33:01.79 ID:3cTkaN/s0
 ああ、きっと。きっと目の前の彼が、姉さんがあの時固まった理由なのだろう。
 確証もないただの予感ではあったけれど。おそらく確かなのだろうと僕は考えていた。

「なら、僕の腹は決まっています」

以下略 AAS



19: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:34:42.78 ID:3cTkaN/s0
 そうして今日も、僕は教壇に立つ。
 事務所での会談から数日後、姉さんによる記者会見が行われた。
 アレは、同じように地球に来ていた兄である。熱愛報道は事実無根である。
 それが会見の要旨であり、実際に「ウサミンの兄」も会見には同席した。
 翌日昼のワイドショーではその男性の顔にはモザイクがかけられ、声も加工されていたけれど……まあ、見る人が見れば、すぐに僕だとわかるだろう。
以下略 AAS



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