1:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 20:53:16.66 ID:AZDT1Nlu0
 
  
  「いちばんっ、三船美優っ……歌います!」 
  
  「かれこれ四人目の一番ね」 
  
  「何でみんな一番槍を掲げようとするんスかね?」 
  
  「それはやっぱり、アイドルですし?」 
  
  
 案の定と言っておくべきだろうか。 
 喧騒の中心は年長組の集団で、ごくごくと、それはもう楽しげに飲酒を決めている。 
 そこかしこで学生組や年少組がごくごく節度を持って楽しんでいる。 
 『ごくごく』の含意を再定義するべき時期かもしれない。 
  
  
  「楽しんでいらっしゃいますか?」 
  
  
 隣から涼やかな声が聞こえた。 
 見慣れた笑みを浮かべながら、肇が両手の紙コップを揺らす。 
 軽く頷き、一つを受け取る。 
 ジンジャーエールが乾いた喉に染み渡った。 
  
  「もちろん」 
  
 何の気なしにそう返してみたが、肇は少し困ったように笑うばかりだった。
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2:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 20:58:26.23 ID:AZDT1Nlu0
  
  「……もう少し、気を緩めてもいいと思うのですが」 
  
  「まぁ、何人かはこういう役も必要だ。昔から慣れてる」 
  
3:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 20:59:05.76 ID:AZDT1Nlu0
  
 心地良い春の風こと藤原肇ちゃんのSSです 
  
  
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4:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 21:08:23.23 ID:AZDT1Nlu0
  
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
  
 潰れた三船さんが担当の奴に押し付けられたり。 
5:名無しNIPPER[sage]
2018/05/04(金) 21:14:37.52 ID:KcNWYpXfO
 肇ちゃんメインは久しぶりかな? 
6:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 21:16:05.35 ID:AZDT1Nlu0
  
  「楽しめたか?」 
  
  「ええ。皆さんと居ると退屈している暇がありません」 
  
7:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 22:15:53.28 ID:AZDT1Nlu0
  
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
 こつ、こつ。 
  
8:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 22:28:11.88 ID:AZDT1Nlu0
  
 ラジオを掛けようかとも思ったが、あまりそういう気分でもない。 
 隣の肇はどこかぼんやりとした表情で夜の街明かりを眺めていた。 
  
  「今更だが」 
9:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 22:45:25.44 ID:AZDT1Nlu0
  
 夜中に窓から抜け出すなど不審以外の何物でもない。 
 当然ながら誰何は受けた筈だ。 
 首を傾げて水を向ければ、肇は薄く笑みを浮かべた。 
  
10:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 23:12:51.69 ID:AZDT1Nlu0
  
 このままでは飲まれそうな予感しかしなかった。 
 話の矛先を変えるため、彼女の帽子を指差す。 
  
  「そうだ。帽子は外しておいた方がいい」 
11:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 23:54:34.54 ID:AZDT1Nlu0
  
 対向車のハイビームが一瞬だけ車内を照らした。 
 濡羽色の髪の中に、一輪の藤が咲いていた。 
  
  「あなたに頂いた、大切なものですから」 
12:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 00:41:53.62 ID:6HNBSVHX0
  
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
  「何処でしょうか、ここは」 
  
13:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 15:23:10.52 ID:6HNBSVHX0
  
  「それで」 
  
 温かい緑茶を一口だけ傾け、肇が細く息をついた。 
  
14:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 15:56:09.60 ID:6HNBSVHX0
  
  「……ふっ、ふふっ……! 私が、18歳になったから……ですか?」 
  
 頷いた。 
  
15:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 17:43:44.69 ID:6HNBSVHX0
  
  「綺麗、ですね」 
  
  「ああ」 
  
16:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 17:55:13.91 ID:6HNBSVHX0
  
 言い返すだけの言葉はとっくに尽きていた。 
 ただただ黙っているくらいしか出来やしない。 
  
  「……」 
17:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 18:00:52.03 ID:6HNBSVHX0
  
  ― = ― ≡ ― = ― 
  
  「……」 
  
18:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 18:17:05.23 ID:6HNBSVHX0
  
  「あくまで推測の話にはなってしまいますが」 
  
  「ああ」 
  
19:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 18:29:24.70 ID:6HNBSVHX0
  
  「ですが……中でも昔。奈良、万葉集の頃、『花』は『梅』を指していたそうです」 
  
  「梅?」 
  
20:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 18:39:07.94 ID:6HNBSVHX0
  
  「……前置き?」 
  
 目線で訊ねると、肇はゆっくりと、だがしっかりと頷いた。 
  
21:名無しNIPPER[saga]
2018/05/05(土) 19:02:31.63 ID:6HNBSVHX0
  
 悪いことをしに来た癖に、悪くないとばかり言い張る。 
 果たしてそれは、立派な悪い子に違いない。 
  
  「……上手くなったな、理屈を捏ねるのが」 
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