【艦これ】一九四八年:あるいは爆雷でいっぱいの海
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1:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:10:31.15 ID:leW1YX1c0
駆逐艦娘・響は考える。
                                   キャリア
自らが不治の病に侵され、生存は絶望的であると知った保菌者は三通りに分けられる。

「こうしてめでたく病気持ちになれたことにある意味感謝すべきかもな!」
           ポジティブ
感染を可能な限り前向きに捉え、残りの人生を静かに過ごそうと考える者。

「妻と娘も同じ症状だった! もう俺が死んでも悲しむ人間は誰も残ってない」
ネガティブ
後ろ向きに捉え、残された時間を生きる希望すらなくしてしまう者。

「おかげでようやく決心がついた、その前にお前らを少しでも道連れにしてやろうってな!」

――そして、目の前の警察署で立てこもっている男のように、自暴自棄になり反社会的行動に走る者。

氷点下近い寒空の下、もう二時間近く男の益体もない話に付き合わされている。
   コート
響は外套の襟を合わせると、署内放送の送信機を手に取った。


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2:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:11:22.80 ID:leW1YX1c0
・地の文あり。
・死亡描写あり。
・スマホの方はルビの表示位置の都合上、専ブラ等のAA表示モードでの閲覧を推奨。
・タイトルの元ネタとは直接関係ないので、小説のネタバレは特に含みません。

以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:12:08.52 ID:leW1YX1c0
「……ナノファージは潜伏期にも空気中に蔓延する。ご家族の件は残念だけど、そうなる可能性が高かったのも事実だ」

「それに知っての通り、警察署には艦娘が常駐してるわけじゃない」
                                  リスク
ナノファージウイルスを高確率で媒介し、『戦後最大の負の遺産』とも呼ばれる艦娘が就くことのできる職業は少ない。多くの場合は日雇い作業員となり、汚染が酷い区域での労働に駆り出される。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:12:58.59 ID:leW1YX1c0
「なるほど、それで警察か」
       モディング・オペ
警察官は人体拡張手術を行っている比率が高い。ここで男が粘るほど、彼らの感染率は上がっていくだろう。
                      ニューロミッション
響は別回線で空母・葛城を呼び出す。神経通信なら第三者に傍受される恐れはない。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:13:33.62 ID:leW1YX1c0
                 ロック
「――なら、心配はないね。禁固施設では最低限の薬しか使われない」
               スタンドラム                     パルス
裏口から非殺傷のEMP陸上爆雷が投げ込まれる。激しい閃光と電磁波で男が完全に無力化した隙を突いて葛城達が突入した。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:14:02.09 ID:leW1YX1c0


"Or All the Seas with Depth Charges."




7:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:14:40.26 ID:leW1YX1c0
『七月に君の転属が決定した』

帰投した響を待っていたのは、『提督』の無感情な宣告だった。

かつての大戦で甚大な被害を受けた横須賀は半ば放棄され、現在は舞鶴の一部と併合される形で横浜に機能を集約している。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:15:13.81 ID:leW1YX1c0
ナノファージウイルスの感染者が初めて確認されたのが当時のロシア東部だった。

原因も対処法も分からない脅威にたちまち国家としての機能は分断・消失し、現在では内陸から港に至る巨大な防壁で感染者ごと隔離されている。

生き残ったわずかな都市に住む人々の行動も厳しく制限されており、壁の外に出るためには何か月もかかる審査を待たなければならない。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:15:57.96 ID:leW1YX1c0
「……それは、決定事項、なのかな」

感染の危険度も桁違いに高い上、未だ不安定な情勢が続く地域への単独派遣だ。一度向かえば生きて祖国の土を踏める可能性は高くないだろう。

『国境線への艦娘派兵は国際会議での決定だが、艦種及び艦の指定はされていない。私が君なら適任だろうと判断しただけだ』
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:16:57.73 ID:leW1YX1c0
執務室を後にしながら、響は男の言葉を思い出す。
                        エクスペンダブル
「発症しなくても、私たちはいつだって使い捨ての消耗品だよ」



11:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:17:28.22 ID:leW1YX1c0


"Or All the Seas with Depth Charges."




12:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:18:04.21 ID:leW1YX1c0
                 ドック
彼女は空襲で大破した姉を船渠まで曳航していた。

口が悪いせいで誤解されがちだが、誰よりも優しく、理不尽に立ち向かう強さを持っていた自慢の相棒。

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:18:48.05 ID:leW1YX1c0
                      i
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以下略 AAS



14:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:19:27.35 ID:leW1YX1c0
響は当てもなくふらふらと歩きまわっていた。

気づけば人通りのない街の外れ。『国立特別療養所』と書かれた風化した看板の前。
キャリア
保菌者の確保は数えきれないほど行ってきたが、よく考えてみればその先に何が待っているかは正確に知らない。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:20:12.02 ID:leW1YX1c0
サナトリウム
療養所の中は、確かにある意味で緩やかな地獄だった。

誰もが生気なくぼんやりとそこかしこに佇み、どこか遠くの方で苦痛に呻く声が聞こえてくる。

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:20:56.53 ID:leW1YX1c0
「潮……なのかい?」

幾分やつれてはいるが、かつての戦友、駆逐艦・潮に間違いなかった。

「覚えてるかな? 同じ部隊にいた響だよ。あの時――」
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:21:38.37 ID:leW1YX1c0
「……」

「大丈夫ですよ。これはきっと、あたしが役に立つチャンスだと思うんです」

潮の目は確かに正気でありながら、続く言葉は狂気に踏み込んでいた。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:22:19.03 ID:leW1YX1c0
「……私は、潮が思うほど立派じゃないよ」

震える声で潮に告げる。

「今も死ぬための仕事から逃げてここにいる。私が覚悟を決めれば、皆は生き延びられると知りながら」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:22:54.42 ID:leW1YX1c0
                        タイミング
「誰かの役に立てるのが権利なら、その時機を決めるのもまた権利。あの時の響ちゃんは、誰かに強制されてあたしの思いを受け取ったんですか?」

「……それは、違う」

以下略 AAS



20:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:23:26.30 ID:leW1YX1c0


"Or All the Seas with Depth Charges."




21:名無しNIPPER[saga]
2018/07/09(月) 00:24:04.03 ID:leW1YX1c0
姉を沈めた空襲により自身も大きな損傷を受けながら、彼女は祖国へと辿り着いた。
チェック
診断結果は回復の見込みなし。予備艦として別命まで待機すること、と辞令が下る。

刻一刻と悪化する戦況をただ見ていることしかできない。
以下略 AAS



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