長富蓮実「ザ・ラストガール」
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9:名無しNIPPER[saga]
2018/12/14(金) 23:14:04.36 ID:wXX+fiS7o
 
都会のビルの地下にある、小さくて古くて暗いこんな場所にもアイドルがいて、一生懸命になって歌っている。
子供で、無知だった私には驚きでした。
自分の中のアイドル像は、私の生まれるずっと前の、在りし日の彼女たちの姿であり、TVでの華々しい光り輝くステージばかりを眺めてきた私にとって、
今ここにいるアイドルのような人は、想像していたのとは全く異なる舞台にいたのです。
もちろん今時のアイドルのステージも、直接ではないにしろ観たことがないわけではありません。
ですがそれを含めても、目の前にあるその光景は私にとって異様とすら思えました。

カメラもない、マイクは時折音が途切れる、狭くて暑くてむせるような狭い空間で観客も数えるほどしかいない、
けれどもそんなところにアイドルはいたのです。

ただ、私の夢とかけ離れたようなそんな場所で歌い、踊っている彼女は、
額に汗を浮かべ、肩を上下させながらも、
苦しそうな表情一つ浮かべず、心の底からその瞬間を楽しんでいるみたいで、観客一人一人に目を合わせ、一つ一つの歓声に応えるかのように歌っていました。

狭くて暗くて小さなステージだったけれど、間違いなく、彼女のステージでした。


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