9:名無しNIPPER[saga]
2019/02/20(水) 21:02:29.55 ID:vutjDZzWo
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帰宅後、食事と風呂もそぞろに私は自室へ閉じこもった。
奇妙に映ったかも知れないが、どうせ妻と娘のことだ、さして気にも留めていないだろう。
むしろ普段はTVを占拠している親父がいなくなってくれて居間での心地も良いと思っているかも知れない。
パソコンを起動し、記憶力の衰えた脳の片隅にベタリと貼り付けておいた名前をそっくり打ち込む。
「長、富、蓮、実……と」
カタカタとうるさくキーボードを叩き、カチッ、と大げさにクリックする。
これも中年の性、悪い癖だとよく言われるがついやってしまう。
……驚いた。これといった情報がほとんどない。
唯一見つけたのは、346プロダクションの公式サイトにある所属アイドル紹介欄。
昼間見た雑誌の写真と全く同じものが、頁の一番下に貼り付けられていた。
使い回しとは……これほどまでか。確かにデビュー前の候補生とは聞いたが、それでも芸能界の人間なのだろうに。
「うん、どうしたものかな」
機械に詳しいわけでもないので、気になったものをインターネットで調べてみるのが私には精一杯だ。
つまるところ、早速、詰まったのだ。
試しに部下の持っていた雑誌を買ってみようか?
───否、どうせ先ほど見た写真以外の情報はあるまい。
流行りのアイドルに多少は詳しい娘に聞いてみようか?
───そんな話題を振ればきっと気味悪がられる。
他に誰か、そのあたりの事情に詳しそうな人間はいないだろうか?
「……仕方ない」
しばらく悩んだ挙句、今度はスマートフォンを取り出し、連絡先を指でツツと探っていく。
「番号、変わっていないといいが」
“旧友”に尋ねてみることにした。
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