三峰結華「気になるあの子/気にする男」
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8: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/04/08(月) 16:12:23.52 ID:mVFB92gLO


 さて、そろそろ仕事に戻るとしよう。
 これ以上会話していても棘しか飛んで来なさそうだ。

 カタカタカタカタ。
 ディスプレイと睨めっこしながらキーボードを叩く。
 後ろからは再びシャーペンで文字を書く音だけが聞こえて来て。
 それからしばらく、会話は無かった。

 ……例えば、自分に好きな人が出来たとして。
 仕事の関係で絶対に付き合ってはいけないと言われたら、どう思うだろうか?
 仕事を辞めてでもその人と結ばれたい! と言える程の恋を俺はした事が無いから、恐らくそれを考える事すら烏滸がましいのかもしれないけれど。
 それでも年頃の女の子にそれを、たとえ本人がきちんと理解していたとしても、だ。

 何度も突き付けて、『信頼してるから』と縛り付けるのは果たして正しい事なのだろうか?

「……悪かったな、結華」

「んー、なにがー?」

 俺は振り返らなかった。
 ズルイと思う、本当ならきちんと目を見て謝るべきだ。
 シャーペンの音も止まらない。
 明るく返す彼女の頭からは、きっとさっきの会話など消えているのだろう。




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