デート・ア・ラタトスク
1- 20
3:エミル[saga]
2019/06/13(木) 05:10:48.30 ID:lgqDpcCf0
少女
「ぁ――――」


嘆息に、微かな声が混じって消えた。


他のどんな要素も不純物に成り下がるほどに、その少女の存在は、精霊であるエミルと同じ位の圧倒的存在だった。


まるで、金属のような、布のような、不思議な素材で構成されたドレスにエミルは目を引いた。


そこから広がった光のスカートも、綺麗だった。


しかし彼女自身の姿容は、それらが脇役に霞ませるものだった。


肩から腰に絡みつくように煙るは、長い闇色の髪。


凜と見上げるは、何とも形容しがたい不思議な色を映す二つの瞳。


女神マーテルにも、嫉妬を覚えさせるほど、顔を物憂げに歪め、静かに唇を結んでいるその様子は。


視線を、注意を、心をも、


――一瞬にして、奪った。


それくらいに、あまりにも、尋常じゃないほど、
、、、、、、、、、、、
暴力的なまで、に美しい。


エミル・キャスタニエ
「――君、は……」


五河士道
「――君の、名前は?」


呆然と。エミルと士道は声を発していた。


そして少女が、ゆっくりと二人に視線を下ろしてくる。


少女
「……名、か」


心地のいい調べの声音が、空気を震わせた。


少女
「――そんなものは、ない。」


どこか悲しげに、少女は言った。


五河士道
「―――っ」


エミル・キャスタニエ
「……名前が、無いの?」


その時、エミルと士道に目が交わり――エミルと士道の物語は、始まった。


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